約 312,777 件
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/3221.html
『境界線 後編その3』 39KB 制裁 自業自得 駆除 群れ ゲス ドスまりさ 希少種 独自設定 ナナシ作 完結です *注意 anko3083 境界線 後編その2 の続きです。 この物語はフィクションであり、実在の人物、団体、国家とは一切関係ありません。 独自設定の希少種が出ます。 人間が犯罪行為を犯す場面が出てきます。 いつも通り過去作品の登場人物や世界観が出ますが読んでなくても大丈夫です。 「ゆっゆっゆー!ゆっくりー!」 今、山の山道を鼻歌を歌いながら呑気にゆっくりとした速度で下っているゆっくりがいた。 ドスまりさ(本物)とその帽子の上に乗った幹部ぱちゅりーだ。 「むっきゅう!まったくこのけんじゃのぱちぇと、どすをさしおいて、みんなでさきにいくなんてどういうつもりなのかしら!」 「まあまあぱちゅりー!どすはそのくらいべつにかまわないよ!」 ご機嫌なドスとは違い、やや不機嫌な様子の幹部ぱちゅりーをなだめるドス。 群れ総出で出発したはずなのに、今のドスの周りには頭の帽子に乗っかっている幹部パチュリー以外のゆっくりの姿は見当たらなかった。 何故かといえば理由は簡単で、ドスは移動しているゆっくりたちの集団の最後尾にいたからだ。 通常、大勢のゆっくりたちと共にドスがどこかへ移動する場合、ドスの居場所は必然的に先頭か最後尾になる。 何故なら迂闊に行軍の真ん中などにドスが居座られると、その巨体ゆえに移動時に他のゆっくりを踏み潰してしまう危険性があるからだ。 故に今回の群れを率いての大移動は、はじめはドスを先頭にしてその後ろにゆっくりの集団を配置しての進軍の予定だった。 がしかし、えいっゆうまりさの集団が先走って前に出てしまい、それに釣られる形で大勢のゆっくりたちが、 我先へと憧れのお野菜プレイスを目指したため、現在ドスは最後尾に陣取ることになってしまったのだ。 そういったわけで、ドスは前にいるゆっくりたちを急かすことのないように、わざとゆっくりと前進し、 結果として前の一団とは大きく距離が空いてしまっていた。 今ドスの周りに、帽子に乗った幹部ぱちゅりー以外のゆっくりが一匹もいないのはそういうわけだ。 きっと今頃は、全てのゆっくりが目的地であるお野菜プレイスに到着している頃合だろう。 「むっぎゅー!こんなかってなまねをしたのは、きっとさいきんちょうしにのっているあのまりさね! どす!こんなことはゆるされることではないわ!くそにんげんとのけんにかたがついたら、 ただちにあのばかまりさを、せいっさいするべきよ!」 「まあまあぱちゅりー!そんなにかっかしないで!」 命令違反をしたえいっゆうまりさを制裁すべきだとドスに主張する幹部ぱちゅりー。 幹部ぱちゅりーとしては、最近勢力を強めているえいっゆうまりさは自身の地位の維持のためにもなるべく早い内に潰しておきたい相手。 そういった下心からの進言だったのだが、それを知って知らずかドスはまったく取り合わなかった。 「ぱちゅりー!そんなちいさなことで、せいっさいなんてゆっくりできないよ! どすはね、ほんとうはだれもせいっさいなんてしたくないんだよ、それがたとえ、くそにんげんであってもね!」 「むぎゅ!いったいなにをいってるのどす!くそにんげんたちは………」 「わかってるよ!ぱちゅりー!くそにんげんはるーるをやぶった! だからせいさいしなければならない!あやまちは、おおいなるただしきそんざいが、あらためなければならない! それがいだいなそんざいである、どすの、ぎむだってことはね! ふぅ……でもね、わかってはいてもつらいものだよ!おろかなそんざいをせいっさするのはさ! おうはね、つねにこどくなんだよ!ゆふふふふふ!」 遠い目をしながら、わけのわからないことを口走るドス。 実際のところドスは、本気で人間を制裁するのを辛いと思っているというわけではない。 それは昨日意味なく男を土下座させて、悦に入っていたことからも明らかだ。 結局のところこの行為は、見当違いの自己憐憫により、自らは特別な存在であるという優越感を感じて自分に酔っているに過ぎない。 まあ、要するにこれは新しい遊びというやつなのだ。 名づけて「つよーいドスは誰にも理解されなくて孤独なんだよ、かわいそうでしょ」ゴッコである。 無論本人にはそんな意識は毛頭ないが。 「むぎゅ!どすはきっとやさしすぎるのね!いいわ!そのぶんこのけんじゃのぱちぇが、きびしくゆっくりとにんげんをみちびいていくわ! なんといっても、ぱちぇはいだいなけんっじゃだからね!」 「ゆゆ!そうだね!たよりにしてるよぱちゅりー!」 そして幹部ぱちゅりーもまたドスと同じように酔っていた。 愚民を導かなければならない、偉大なけんっじゃという自分の立場に。 にやにやと笑い合う両者。 そんな両者の間にはなにか奇妙な一体感があった。 それは多分、集団で集まって誰かの悪口を言い合うときのアレだ。 自分以外の全てを劣として見下す笑みだ。 結局人間もゆっくりも、皆で集まって誰かをバカにしたり、見下しているときが一番ゆっくりできているのかもしれない。 「ゆう!そろそろぷれいすにとうちゃくするよ!」 そんな気持ち悪いやり取りをしながら進んでいくと、やがて木々が薄れ、目の前の視界が開けてきた。 目的地のお野菜プレイスはもうすぐそこだだろう。 先行したゆっくりたちはみなどうしているだろうか? もしかしたら群れのみんなはもう既に、人間たちを制裁してしまっているかもしれない。 もしそうならば、止めるつもりだった。 何故ならば制裁は絶対者たるドスの役目だからだ。他の何者にも裁く権利は無い。 そして制裁を止めたドスは、さっきぱちゅりーに言ったことを、群れのゆっくりたちと人間どもにも聞かせるのだ。 強大さゆえのドスの苦悩を知ったみなは、きっと感動するに違いない。 人間などはドスのあまりの偉大さと慈悲深さに涙することだろう。 ああ、なんだろう、そのときのことを想像すると、何故かとてつもなくゆっくりできる。 はっ、はやく!はやくその瞬間を味わいたい!ゆっくりしたい! そんな妄想を加速させながら、ドスはわきめも振らず、畑へと飛び出した。 「またせたね!みんなのすーぱーりーだー!どすさまのとうっじょうだよおおおおおお!」 「むきゅ!てんっさいけんっじゃのぱちゅりーもいるわよおおおおおおお!」 満面の笑みで、勢いよく飛び出したドスと幹部ぱちゅりー。 しかしその笑みは、広場の惨劇を見た瞬間にこおりつく。 その場に広がっていた光景は、ドスの予想とは違いゆっくりが人間を制裁している物ではなかった。 いや、確かに制裁はされていた。 ただし、それはまったく対象が逆で、人間がゆっくりに対して行なっていたのである。 それはドスたちが想像だにしていない光景。 プレイスの所々には黒い染みが四散しており、各所には苦悶の表情をしながら事切れているゆっくりたちの死体が大量に転がっている。 まだ息のあるゆっくりは全員ネットに押し込められ、泣きながら一箇所に集められてた。 そして、畑の中央にいる人間の女が、今手に持っていびっている物体は……。 「ゆっ……が……どす、だずげで……」 れいむ?だろうか。 全身をズタズタにナイフで切り刻まれ、ほとんどの髪は無理やり引っこ抜かれ、目も片方抉り出されている。 かろうじて残る黒髪が、かつてれいむだった名残を残すのみで、もうほとんど気味の悪いハゲまんじゅうと成り果ていた。 「あらんドス、やっとごとうちゃくぅ?あんまり来るのが遅いもんだから、おねいさん先に少し遊んじゃったわぁん」 そう言っておねいさんは、手に持っていたれいむらしきものを、ヒョイ、とドスの方へ向かって無造作に放り投げた。 ベチャ! 「ゆがべ!」 全身を切り裂かれていたせいで餡子が流れてでいたれいむは、落下の衝撃に耐え切れずあっけなくドスの足元で自壊する。 「なっ、なっ、なんなのおおおおおおおおおおお!これはわあああああああああああああああ!」 「むっきょおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」 あまりに自身の妄想とかけ離れた光景を前にして、ドスと幹部ぱちゅりーの絶叫が周囲に響き渡る。 「あらあら、どうしちゃったのぉ?突然そんな大声出してぇ?」 驚愕にわななくドスと幹部ぱちゅりーに対して、何気ない風に話しかけるおねいさん。 今広がっているこの光景の、一体どにに不自然なところがあるのか?と言わんばかりである。 もちろん不自然なところなど何所にもない。 人間がゆっくりを虐待しているのも、ゆっくりたちが虐待されているのも、ごく自然な光景である。 むしろ今まで異常だった展開が、ただ正常に戻っただけ。それだけのことである。 だがドスにはそんなこと理解できようはずもない。 「ふざけるなあああああああああ!おまえらじぶんのしたことがわかってるのかあああああああああ!」 怒りのままに咆哮するドス。 しかしおねいさんは涼しい顔だ。 「ああん、そうそう、一応言っとかないとねぇ。あんたたち、うざいんで一斉駆除することになったからん。 で、私は一斉駆除するついでに、こうして今までの鬱憤を虐待で晴らしてるってわけよん。 自分で言うのもなんだけど、おねいさんはとっても小物でねぇ。 たとえゆっくりだろうと、売られたケンカは残らず買い取るし、やられたことはきっちりやりばっちり返す主義なのよん。 それでこういう状況になっているわけよ。おわかりいただけたかしらん?」 「わかるかあああああああああああああああああああ!」 大声で怒鳴り返すドス。 挑発的とすら言えるおねいさんの言動に、ドスの怒りはとどまることを知らない。 「どすううううう!はやくあのくそにんげんをせいっさいしてねええええええ!」 「どすすぱーくで、はやくやっつけてえええええええ!」 「あのくそにんげんが、むれのなかまたちおおおお!ゆるせないよおおおおおおおお!」 「わかるよー!どすがきてくれたからもうあんっしんなんだねー!あやまるのならいまのうちだよー!」 そんな中、ゆっくり捕獲用ネットによって一箇所に固められている他のゆっくりたちが、必死にドスに声をかける。 目の前で凄惨な虐待を見せつけられて、次は自分の番かと今までの絶望の泣き顔をしていたゆっくりたち。 しかし一転、ドスが来てくれたという希望が、捕まっていたゆっくりたちを活気づけた。 もしかしたら助かるかもしれない、いや助かるべきなのだ!何せあの無敵のドスが来てくれたのだ! きっと人間を土下座させた上に制裁してくれるに違いないんだ!ざまあみろ! 「むっ、むっきゅ!そうよどす!もうこれはきょうていいはんとか、そういうじげんのもんだいじゃないわ! くそにんげんは、おろかではじしらずにも、じぶんたちのつごうがわるくなったから、ぼうりょくにうったえるきよ! そんなことはむだだということを、しらしめるためにも、あのくそにんげんをかくじつにせいっさいするひつようがあるわ! それでどすにさからうことのおろかさを、くそにんげんども、にいちどみせしめるのよ!」 周りのゆっくりたちの叫びにより、ショックから立ち直った幹部ぱちゅりーがドスに進言する 「いわれるまでもないよぱちゅりー! いくらかんだいなどすでも、むれのなかまをこんなにした、くそにんげんをゆるすことはできない! そう!てんがゆるしても、このどすがゆるさない!これは、してきなせいっさいではないよ! いだいなどすによる、せいっぎのさばきだああああああああああああ!」 そう言い、キノコを口に含みながら大きく口を開けるドス。 ドススパークの体勢だ。 が、おねいさんは、自分の足元にあった物体をドスに見せるつける様に乱暴に持ち上げ、言い放った。 「おおっと!そこまでよぉん!これを見てもドススパークを撃てるかしらぁん!」 「ゆ?」 目を見張るドス。 おねいさんの手に握られていたもの。 それは、 「どすううううううう!たすけるのぜええええええええ!」 えいっゆうまりさだった。 腹部からあんよにかけて、やや大きめのクギのようなものが貫通しており、痛々しい姿を晒している。 しかし、クギが栓になって傷口から餡子が漏れ出るのを防いでいるようで、苦痛こそ感じているものの命の別状はないようだ。 それが証拠に、今も痛みに涙を流しながらも大声でドスに助けを訴えている。 「ゆうううううううう!どすうううううううう!はやくこのむれのえいっゆうである、まりささまをたすけるぜえええええ! それから、このくそにんげんを、せいっさいするのぜええええ!はやくしろおおおおおおおおおお!」 「ちょっとうるさいわよん、まりさちゃん。今おねいさんが話してるところでしょお!」 手もとでやかましく騒ぐえいっゆうまりさを、腹部を貫通しているクギをぐりぐりと上下に動かすおねいさん。 「ゆぐああああああああああああ!いだいいいいいいいい!やめでえええええええええ!ぐりぐりしないでえええええ!」 「まりざあああああ!」 「やめてあげてね!いたがってるよ!」 「おいいい!このくそにんげん!いいっかげんにするみょん!」 その様子を見て騒ぎ出すその他のゆっくりたち。 だがそんなゆっくりたちに対しておねいさんは、 「お前らもいい加減、うるさいわねん」 おねいさんは、ブン!と、懐から取り出したクギを無造作にネットで拘束されているゆっくりたちの集団に向かってぶん投げた。 ブチョ! 「ゆぎゃああああああ!わがらないよおおおおおおおおお!」 クギはネットに内にいるちぇんの目に命中した。 「ひいいいいいいい!」 「あ、あああ……」 ちぇんの隣にいたゆっくりたちは、目にクギが突き刺さり、痛がるちぇんの様子に戦慄を覚える。 「やべろおおおおおおお!なにやってんだおまえええええええええ!」 それを見て、再び怒りの叫び声を上げるドス。 しかし、おねいさんはまったくペースを崩さずに言う。 「あらん、おほほほほ、ごめんなさい、ちょっと話しが逸れちゃったわねん。 それじゃ話を戻すけど、要するに今手に握ってるこのまりさはゆん質よん。 あなたが私の言う事を聞かなかったら、こいつの命は保証できないわぁん。 そしてそれは同時に、ドススパークを私に向けて撃ったらこいつの命もないってことねん。 理解できたかしらん?」 「ゆあああああああああああ!ちからでかてないからって、そんなのひきょうだよおおおおおおおおおおお! このひきょうものおおおお!くそにんげんはあくだよ!はきけをもよおすじゃあくだよおおおおお!」 「ほっほっほぉ!なんとでも言いなさいな。 あーやっぱり、ゆっりは面白いわぁ、この茶番じみた行為を本気でやるバカバカしさが面白いわぁ」 歯を食いしばって悔しがるドスに対して、余裕の笑みを浮かべるおねいさん。 それにしてもこのおねいさん、ノリノリである。 「むきゅ!どす!おちついて!ひとじちならこっちにもいるわ! あのくそにんげんと、まりさをこうかんするようにいうのよ!」 ドスとおねいさんの対応を見ていた幹部ぱちゅりーが、ドスに提案する。 「ゆっ!ゆゆっ!そうだよ!そうだったよ!こっちにだってくそにんげんのひとじちがいるんだよ! わかったらさっさとまりさをはなしてね!それからおとなしくどすにせいっさいされてね!すぐでいいよ!」 幹部ぱちゅりーの進言により、自分たちの側にも人質がいることを思い出したドス。 これで状況は五分だと急に強気になるが、しかしおねいさんは余裕の表情をまったく崩さない。 「え゛何それ怖い、人間の人質がいるなんて話、今はじめて聞いたんですけどぉー。 何のことだか、おねいさんさっぱりわからないわぁー」 おちょくるように言うおねいさん。 「なにいってるのおおおおおおお!きのういったでしょおおおおおおおお! そんなこともおぼえてないの!ばかなの!しぬのおおおおおおお!」 話しがかみ合わずヒステリックにドスが叫ぶ。 「そ・ん・な・事実は…………なかった! 私たちは、そんな話は聞かなかった! つまりはそうゆうことよぉん」 「むっきゅううううううう!さっきからなにわけのわからないことをいっているの! ごちゃごちゃいってないで、さっさとまりさをはなしなさい!ひとじちがどうなってもいいの!」 おねいさんのふざけた態度に業を煮やしたのか、幹部ぱちゅりーが人質を引き合いに出す。 しかし、 「どうやって?」 「むぎゅ?」 「今群れのゆっくりたちはこの場に全員いるのよぉん、 それなのにどうやってこの場にいない人質に危害を加えるつもりかしらん? まっ、もっともぉん、人質なんて『いない』んだからそもそも何の心配もないんだけどぉん」 「むっ、むぎゅ!そ、それは……」 思わず言葉に詰まる幹部ぱちゅりー。 「ふふふふふ、ようやく自分たちの置かれた立場が理解できてきたみたいねぇ。 それじゃあまず手始めに、あんたたち二匹には土下座して『人間に逆らってごめんなさい』してもらいましょうか。 上手にできたら、このまりさちゃんを放してあげてもいいわよぉん」 「ゆなっ!」 「むぎゅ!」 昨日の交渉時の意趣返しとでも言うべきおねいさんの要求に、声を上げるドスと幹部ぱちゅりー。 「ほらほらぁ、はやくしないとこのまりさちゃんが永遠にゆっくりしちゃうわよぉ」 楽しげに言いながら、えいっゆうまりさに突き刺さったクギをグリグリといじくりまわすおねいさん。 「ゆべががががば!やべでえええええええええ! どすううううううう!なにじっどしてるのおおおお! さっさとどげざじろおおおおおおおお!えいっゆうであるまりささまがどうなってもいいのおおおおおおお!」 自身を貫く痛みにたまらずドスに向かって土下座を催促するえいっゆうまりさ。 その様子を見て唸るドス。 「ゆぐ!ゆぐぐぐぐぐ!」 (こんな!こんな卑怯で下等な生き物であるクソ人間に、こうっすいな存在であるこのドス様が土下座なんてできるわけないよ!) ドスは思っていた。 偉大な存在である自分が人間に頭を下げることなどあってはならないと。 そんな世界の真理を無視した行いが許されるわけがない。 こんな!こんな……。 「むきゅ、どすおちついて」 憤るドスに、幹部ぱちゅりーがおねいさんに聞こえないような小さな声で話しかける。 「ゆうう!ぱちゅりー!いったいどうすれば…」 「かんたんよどす!あのおんなを、まりさもろともどすすぱーくでふきとばせばいいのよ!」 「ゆゆ!」 幹部ぱちゅりーの驚愕の提案に驚くドス。 なんとあのえいっゆうまりさを見捨てて、人間に攻撃を仕掛けろというのだ。 「で、でもそんなことしたらまりさが」 「むきゅ!いいどす!あなたはゆっくりのおうなのよ!そんなちいさなことにこだわっていて、たいきょくをみうしなってはいけないわ! ここでゆっくりのとっぷであるどすが、くそにんげんなんかにあたまをさげたら、それこそにんげんのおもうつぼよ! くそにんげんは、ゆっくりよりもおとったそんざいだという、しぜんのせつりをくつがえしてはいけないわ! これはどすだけではなく、ゆっくりぜんたいのもんだいなのよ!」 「ゆっ、ゆゆ!そうだね!そのとおりだよぱちゅりー!」 幹部ぱちゅりーの説得にあっさり応じるドス。 というかぶっちゃけた話、ドスとしては土下座を回避できるのなら別の何でもよかったというのが本音だった。 そして、そんなドスの様子を見て幹部ぱちゅりーはひそかにほくそ笑む。 (むっきょきょきょきょ!ちょろいもんだわ! あのバカまりさがゆん質に取られたときは一瞬驚いたけど、よく考えてみればこれは好都合ね。 もともとあのバカまりさは、ことが終わった後で消えてもらうつもりだったわけだし。 むしろどうやって自然な感じで始末をしようかと悩んでいたところだわ。 そこにきて、このバカまりさがゆん質に取られるという展開。 これを利用しない手はないわね。 バカまりさには人間と一緒に消えてもらいましょう。 これで邪魔者を始末できると同時に、クソ人間たちへの見せしめにもなる。 皆が見ている前でドスがバカまりさを始末するのだから、自身に責が及ぶこともまったくない。 まったく一石二鳥とはこのことね。むっきょきょきょきょ) 幹部ぱちゅりーがそんなことを考えてる間にも、ドスはキリッとおねいさんの方に向き直り、ガバッと大口を開けた。 ドススパークの体勢だった。 「かくごしてね、くそにんげん!これからどすがおまえをせいっさいするよ!」 一片の戸惑いもなくおねいさんに言い放つドス。 そんなドスに対しておねいさんは、いささかわざと臭い、大げさな仕草で驚いて見せる。 「え゛え゛ええええ、ちょっと本気なのぉ? こっちにはゆん質がいるのよぉん。それでも撃つ気なのん?」 「どすううううううう!なにがんがえてるのぜえええええええ! まだまりささまがつかまってるのぜええええええ!せいっさいするのはまりささまを、たすけたあとにするのぜええええええ! ただたんに、どげざすればいいだけのはなしでしょおおおおおおおお! このくず!げどうがああああああああああ!」 自分もろともドススパークで吹き飛ばしてしまうという、ドスの考えを悟ったえいっゆうまりさもまた叫びだす。 「そうだ!そうだ!この外道!人でなし!あら、こういう場合はゆっくりなしって言うのかしらん?」 茶化すようにまりさの叫びに追従するおねいさん。 「だまってねええええええ! どすはおうなんだよ!いだいなんだよ!ゆっくりのだいひょうなんだよ! どすは、あくにくっするわけにはいかないせきにんがあるんだよおおおおおおお! そのためには、ちいさなぎせいはやむをえないんだよおおおおおおおおおお!」 そんなことを口走りながら、標準をおねいさんに固定するドス。 どうやら撃つ気なのは間違いないらしい。 「きゃあーーー!いやーーーー!」(棒読み) 「ゆあああああああ!やめるのぜえええええええ!」(迫真) ドススパークの発射態勢を前にして、 うさんくさいおねいさんの悲鳴と、えいっゆうまりさの緊迫の絶叫が周囲に響き渡ったその瞬間。 ヒュッ!と何かが風を切る、鋭い音が聞こえ、 ブスッ! 「ゆぶぇえ!」 今まさにドススパークを発射せんとしていたドスに、矢が突き刺さった。 「ゆっ!がっ!あがががががががが!ふがげげげげげ!」 突然襲った激しい痛みに訳がわからず唸り声を上げるドス。 「なっ、なにが……、ゆっぐう、ゆがああああああああああああああああ!」 訳がわからない状況のドス。 だがしかし、はじめは矢が刺さった部分の一点だけだった痛みが、何故か全身にまでまわりはじめて、苦痛の悲鳴をあげることしかできない。 もちろんドススパークなど撃てるはずもない。 「むっ、むぎゅう!なにやってるのどす!そんなちいさなやがつきささったくらいで! はやくどすすぱーくであのくそにんげんたちをふきとばすのよ! どうしたの!はやくしなさい!このぐず!」 ドスの無様な様子に、幹部ぱちゅりーが苛立ながら叱責する。 確かにドスの体積からすれば、小さな矢が突き刺さっただけでのこの痛がりようは少々異常だった。 「ゆぐぐぐう、ど、どすのからだが……どじで…」 先ほどからまったく身動きできずに唸るドス。 と、そこへ、 「ああ、いくら足掻いても無駄だよ。その矢には対ドス用の特殊な薬品が塗ってあるからね。 それをくらったからには、ドススパークはおろか、二三日まともに動く事すらできんよ」 今まで死角に隠れていた先輩が、ボウガンを抱えながらドスたちの前に姿を現した。 「むっ、むぎゅ!なんですって! ひっ、ひきょうよ!ひきょうだわ!こそこそかくれていて、とつぜんふいうちするなんて! くそにんげんには、せいせいどうどうとたたかおうっていう、ぷらいどがないの!」 「卑怯とは失礼だな。 相手の注意を引いておいて、そのスキに側面から攻撃するのは戦術の基本だよ。 相手が攻撃する瞬間こそ、もっともスキができるものだからね。 次からはもっと周りにの様子にも注意を払うべきだな。 まあもっとも………」 先輩はてくてくとドスと幹部ぱちゅりーのところまで歩いていくと、幹部ぱちゅりーの顔面を無造作に蹴り飛ばした。 「むっぎょっばああああああああああ!」 無様にコロコロと転がっていく幹部ぱちゅりー。 「君たちに次はないんだけどね。 まっ、正直な話、君たち程度の相手にここまで念入りに下準備する必要はまったくなかった。 でも今回は万に一つの失敗も許されない状況だったんでね。 念には念を入れさせてもらったというわけだ。 そしてこれは最後の仕上げだ」 それだけ言うと先輩は、隣で身動きできずにプルプルと震えているドスに、入れ物から取り出した矢を突き刺した。 「ゆっがぶがあああああああああああああああああ!」 身動きできない状況にて、さらに薬が塗られた矢を追加され、絶叫を上げるドス。 これで完全にドスの動きは封じられた。 もう何をどうやっても動くことはできないだろう。 「作戦完了っと」 ボソリと先輩が呟いた。 こうして畑に集まったきた群れのゆっくりたちは全て制圧された。 今や群れの大半のゆっくりは潰され、畑のそこかしこに散乱している。 潰されずに残った生きているゆっくりたちは全て、ゆっくり捕獲用ネットによって一緒に集められており、 頼みのドスは先輩によって完全に無力化させられてしまった。 今のところ唯一捕まってないのは、ゆっくり中で最も運動能力の低い幹部ぱちゅりーのみだが、 それも先ほど先輩に蹴飛ばされ意識を失っている。 もっとも起きていたとして、何ができるというわけでもない。 完全に詰みだ。この状況を絶望と言わずして何と言おうか。 「あっ、ああ、そんな、うそなのぜ……」 えいっゆうまりさは目の前の光景が信じられなかった。 ドスが自分もろとも、ドススパークで人間を吹き飛ばそうとしたのも信じられなかったし、 そのドスが、いつの間にか死角に隠れていたもう一人の人間に、何もできずにあっさりやられてしまったことも信じられかった。 この光景は果たして現実のものなのか、それすらもあやふやな状況だ。 「ゆぎぎいいいいい!」 しかしそんな漠然とした意識は、身を貫く激しい痛みによって強制的に現実に引き戻される。 おねいさんがまりさを貫いている大きめのクギを掻きまわしたのだ。 「あらん、どうしちゃたのまりさちゃん。 ぼーっとしちゃってさ」 「ゆがあああ!こんなばかなことがあるはずないんだぜえ! むれのえっゆう、であるこのまりささまが、こんなめにあうはずが! これはなにかのまちがいなのぜえええええ!」 必死に現実を否定するえいっゆうまりさ。 今のまりさには、もうそれくらいしかできることがなかった。 「ふーん、群れのえいっゆうねぇ。 でもおねいさんの見立てではぁ、あなた今回の主犯というよりは、ただ単に利用されただけのザコって感じなのよねぇ。 まあ、せいぜい調子に乗ったチンピラってとこかしらん? どこの群れにもいるような、取るに足らない、居ても居なくても別に誰も困らない存在ってことねん」 「ちっ、ちがう!まりさは、まりささまは、むれのえいっゆうなんだぜえええええええ! ざこなんかじゃないいいいいいいい!とくべつなそんざいなんだぜえええええ! いずれはどすになって、むれも、にんげんもしはいして、それから!ずっとずっとゆっくりするんだぜええええ!」 「へー、まっ、どっちでもいいわん。もうあんたみたいな小物には用はないから殺してあげる。 それじゃあねぇん、哀れな道化のえいっゆうさん」 おねいさんはえいっゆうまりさに突き刺さったクギをグッと握ると、 それをメリメリと横に動かしはじめた。 「ゆがああああああああ!どうしてえええええええええええ!こんな!こんあはずじゃあああああああああ! ゆがぼげがはばああああああああああああああああ!」 おねいさんがクギを動かすことによって、今まで塞がっていた傷口が抉れ、どんどん広がっていき、そこから大量の餡子があふれ出す。 中身が出るにつれ、みるみるえいゆうまりさからは生気が失われていき、やがえて身体の半分くらいが裂けた頃になると、 「もっど、ゆっくり……」 小さな断末魔を残し、えいっゆうまりさは永遠にゆっくりした。 「ふん、ただの雑魚が語るには、随分と不相応な夢だったわねぇ。 一時でも夢を見なければ、もっと楽に逝けたかもしれなかったのにねん」 おねいさんはグチャグチャになった物体を、地面に放り投げながら言う。 「やれやれ、まあなんと言うか、哀れなヤツだったね」 その様子を見ていた先輩もまた、手に持ったボウガンを分解しながら呟く。 「まっ、別に自業自得だからいいけどねん。さーて、お次は誰の番かしらん」 「「「「「ゆひいいいい!」」」」」 おねいさんの視線がネットに捕まっているゆっくりに向けられたのを見て、恐怖する群れのゆっくりたち。 もはやゆっくりたちは抵抗しようという気力はなく、ただ怯えるばかりだ。 「お、おでがいです!だずげてくだざい!れいむがまちがってましたあああ!」 「わがるよおおお!もうにんげんさにさからったりしないよおおお!だからたすけてねええええ!」 「どすがああ!どすがわるいだよおおお!まりさははんたいしたのに、むりやりここにつれてこられたんだよおおおお!」 「そっ、そうよ!ありすたちは、ただどす、やぱちゅりーのしじにしたがっていただけよ!だからわるくないわ!」 「みょおおおん!しにたくないみょん!たすけてみょん!」 何とか助かろうと、次々と反省や無実を訴えるゆっくりたち。 「ふーんそっかぁ。反省している上に、無理やりやらされたってんじゃしょうがないわねぇ。 それじゃあ許しちゃおっかなぁ」 「「「「ゆ、ゆるされた!?」」」」 そのおねいさんの一言によって、パアッと明るい顔になるゆっくり一同。 が、 「ゴメンやっぱり許さない」 「「「「ゆあああああああああ!そんなああああああああ!」」」」 またもやおねいさんの一言によって、絶望の表情になるゆっくり一同。 「はっきり言ってさぁ。もう許すとか許さないとかそういう段階はとっくに過ぎちゃってるのよねぇ。 せめてもう少しそれがはやければねぇ。 でもまあ、あなたたちは基本的に何もしてないから、楽にサクッと殺してあげるわん。 まっ、恨むなら自分たちのトップを恨むことねん」 そう言いながらおねいさんが、恐怖に慄くゆっくりたちに向かって歩き出したそのとき。 「むきゅ!そこまでよ!くそにんげん!」 いつのまに復活したのだろうか? 先輩に蹴り飛ばされてて気絶していた幹部ぱちゅりーが、おねいさんに向かって声を上げたのだった。 「あら、ぱちゅりーちゃんどうしたのかりしらん? 心配しなくてもあなたは後でおねいさんがたっぷり可愛がってあげるわよん。 おねいさんの見立てでは、今回の件のゆっくり側の首謀者はあなたみたいだからねん」 ニヤリと笑うおねいさん。 しかし幹部ぱちゅりーは臆することなく言い放つ。 「いいかげんにしなさい! こんなごくあくひどうなこういが、ゆるされるとおもっているの! きょうっていいはんからはじまり、けんじゃのぱちぇのていあんをうけいれないばかりか、あまつさえむさべつなぼうりょくこうい! こんなしゃかいてき『あく』は、せけんがみとめないわ! いまならまだおそくないから、はんせいして、おとなしくこのけんじゃのぱちぇのどれいになりなさい!」 「………はぁん?」 この後に及んでいったい何を言っているのだろうか、このクソ袋は? 流石のおねいさんも、この幹部ぱちゅりーのトンチンカンな言動の意図を察しかねた。 「ほぉ、世間とは……なかなか面白いことを言うね君は」 だが困惑するおねいさんとは対照的に、面白そうな顔をしながら幹部ぱちゅりーに近づく先輩。 「それで?君の言う事を聞かないと、我々はどうなってしまうのかなぱちゅりー君?」 「む、むぎゅ!だ、だからいったでしょう!こんなことせけんがゆるさないわ! なっんったって、さいしょにきょうっていをやぶったのは、そっちなのよ! そうよ!『せいぎ』はぱちぇたちのほうにあるのよ!あななたちは『あく』なの! せけんは『せいぎ』をおうえんするわ! ぱちぇたちをころせば、きっとくそにんげんたちは、せけんてきせいさいをうけることになるわ!」 「バカだね君は。 先ほども彼女が言ってたが、君たちが今ここで全滅したら、誰がそのことを世間とやらに伝えるのかな」 「そっ、それは、そう!そうよ!にんげんさんよ! ぱちぇたちのばっくには、にんげんさんがいるのよ! ぱちぇたちになにかあったら、そのにんげんさんが、きっとそのことをつたえるわ! これでわかったでしょう!『せいぎ』のぱちぇたちを、おうえんしているにんげんさんもいるのよ! わかったら、さっさとひざまずきなさい!いまならまだ、はんごろしのうえに、うんうんどれいでゆるしてあげるわ!」 勝ち誇ったようなドヤ顔の幹部ぱちゅりー。 そんなぱちゅりーの目に先輩は、グチョリ!と、無造作に人差し指を突っ込んだ。 「むぎょおおおおおおおおお!ぱちぇのおめめがああああああああああああ!」 突然の行為に悲鳴をあげる幹部ぱちゅりー。 先輩は無言で目に差し込んだ人差し指をグリグリと回すと、そのまま目玉を引き抜いた。 「あんぎゃあああああああああ!どじでえええええええええ! さっきのはなしをきいてたのかあああああああああ! けんっじゃのぱちぇにこんなことして、ただですむとおもってるのかああああああああああ!」 「ああ、もちろん聞いていたさ。そしてもう大方知りたいことは聞き終えた。 だからもう死んでいいよ」 「あああああああああああ!なんなのおおおおお!どういうことなのおおおおおお!」 「うるさいなぁ。まあめんどくさいけど冥土の土産に教えてやるよ。 私たちにとっての最悪の事態は、人間とゆっくりが手を組んでいる場合ではなく、 本当にゆっくりが人間の人質を取っている場合だったのさ。 普段ゆっくりに関心がない連中でも、人命が関わってるとなれば血相を変えるからね。 だから混乱をさけるためと、それと私的な理由で、とりえずそんな事実はなかったことにしたのさ。 で、今の君の話によって、我々の予想通り、ゆっくりと人間が結託していたことがわかった。 人質は自演で、バカな人間がゆっくりを先導して、なにかやらかそうとしているだけだったと判明したわけだ。 後は、はじめに人質を取ったと宣言したゆっくり連中を残らず始末して、人質宣言をなかったことにしてしまえば、 人間がゆっくりと組んで迷惑行為をしていたという事実のみが残るというわけだ。 ゆっくりと人間が結託して、我々の妨害行為を行うことは、たまにある事だしね。 多少ゴタゴタしたところで、たいしたお咎めはないのさ。 ああ、そうだ、今となってはどうでもいいが、君の言う協力者の人間の目的が何なのか聞いてないかい?」 「むっきゅううううううううう!こんな!こんな!『あく』がゆるされるわけないいいいいいいい!」 唸る幹部ぱちゅりーに溜息をつく先輩。 「やれやれ、さっきから悪だの正義だのくだらない。 それじゃ聞くがね、君にとっての正義とはなにかな?」 先輩が幹部ぱちゅりーに質問する。 「むきょおおおお!そんなのゆっくりが、ゆっくりすることにきまってるでしょおおおおおお! そんなせかいのしんりもわからないのおおおおおおおお!ばかなの!しぬのおおお!」 「では悪とは?」 「ゆっくりをゆっくりさせないくそにんげんにきまってるでしょおおおお! この『あく』があああああああ!なんでもかんでもひとりじめしてえええええええ! だいたい、くそにんげんも、ほかのだゆっくりどもも、どすだって、そうだよおおおおお! おまえらぜんいん、おとなしくこのけんっじゃのいうことをきいていればいいんだよおおおおお! それこそが『せいぎ』なんっだよおおおおおお! このけんっじゃにさからうものは、みんな『あく』だああああああああああ!」 「そうかい」 幹部ぱちゅりーの叫びに短く答えた先輩は、入れ物から矢を取り出し、 それをブスッ!と幹部ぱちゅりーの脳天に突き刺した。 「むっびょええええええがばああああああああああああ!」 体中を何かが弾け回るような痛みに、声にならない絶叫を上げる幹部ぱちゅりー。 先輩が刺した矢は、対ドス用の薬が塗られたものだ。 それを普通の、しかもゆっくりの中でもっとも身体の弱いぱちゅりーがくらうとどうなるか。 「むぎょ!がべぱはっ!えれえれぐばあぁああああぁあぁあ!」 突然口から、そして中身を抉り出されて、穴のあいた目から中身を吐き出しはじめる幹部ぱちゅりー。 それを無感動に見下ろす先輩。 「自分の行動に正義があると思い込むのは、まあいいよ。人間だって似たようなものさ。 だがそれが全ての存在にとっての、共通の正義だと思わないことだね。 ああ、ちなみに私たちは君が言ったように悪さ。 なにせ君を殺すのは正義のためなんかじゃなく、自分たちの都合のためなんだからね そしてその悪が許せないというのならば、遠慮なくかかってくるといい、いつでも相手になろう。 ただしこれだけは言っておく。ゆっくりの正義では人間の悪には絶対に勝てないよ」 「むっ……がっ」 最後の先輩の言葉は、果たして幹部ぱちゅりーに聞こえただろうか。 しかし聞こえていたところで意味はないだろう。 そこには自身の薄っぺらい正義を全て吐き出して、ぺちゃんこになった気持ち悪い物体があるだけだった。 「うーむ、少し……大人気なかったかな。つい偉そうに説教などしてまって…」 ふと我に返ったように、先輩は少しバツの悪そうな表情でカリカリと頬を掻く。 「いやー、よかったんじゃないのぉ。 そりゃ、私らだって決して誉められた人間じゃないけどさぁ。 いままで散々やりたい放題やっといて、 都合のいいときだけ正義だ世間だ言って、ドヤ顔するようなクズゆには遠慮は無用よん」 そう、おねいさんが先輩をフォローする。 「さぁて、それじゃあ群れの雑魚共は後でまとめて処分するとして、残る最後の先導者はドスちゃんだけねぇ。 いよいよ大ボスって感じかしらん。 ていうかぁ、あんたさっからずっと黙ってるけど、どうしちゃったのぉん? もっとこう、ほらさ、ゲスッっぽくバカだの死ねだの暴言を吐いててもいいのよん? そのほうが、こっちもやる気出るからん」 おねいさんがドスに向かって挑発的に語りかける。 確かに彼女の言うとおり、ドスはさっきっから一言も発していない。 えいっゆうまりさが真っ二つにされたときも、幹部ぱちゅりーが中身を全て吐き出したときもだ。 いくら薬で全身が動かないとはいえ、喋ったり叫んだりはできるはず。 しかしドスはうつろな目をしながら、ただピクピクと痙攣しているだけだ。 ドスは昔を思い出していた。 そう、それはまだドスになる前の、ただのまりさだったときの記憶。 あのときの自分は気弱でいつもオドオドしていた。 自分よりも大きな人間に逆らうなんて、もってのほかだと思っていたはずだ。 そしてその考えは、ドスになった当初もかわらなかったはず。 むしろ、何かと人間の悪口ばかり言っていた幹部ぱちゅりーと違って、 自分はちゃんと人間のと付き合っていこうと思っていたはずだ。 それが、一体なぜこんなことに? どうして自分は人間に逆らうなんてバカな真似をしてしまったのだろう? 何故自分は世界一強いと勘違いしてしまったのだろう? 何かがおかしい。 どうしてこんな……。 「おいぃ、さっきからなに黙って余裕ぶってんのよ、このタコォ!」 ドカッ! 「ゆぶぇえ!」 ずっと黙ったままのドスに腹に、おねいさんのケリが炸裂する。 薬で痺れ、体が敏感になっているドスにはたまらない痛みだった。 「ちょっとぉ、あんたしっかりしなさいよぉ。 一応この群れの長のドゲスでしょうがぁ。 なーんか、さっきから覇気がないわねぇ」 怪訝な表情をするおねいさんにドスは小声で何かを呟く。 「……さぃ」 「あぁん?」 「ごべんなざぃいぃいいいいいいいいい! どすがちょうしのっでまじだあああああああ!」 「………はぁ?」 急に大声で泣きながら謝罪しだすドス。 「お前……いまさらなんなのぉ」 呆れた表情で言うおねいさん。 「ちがうんでずううううううう!ほんとは、どすはにんげんさんにさからうきなんてなかったんですうううううう! それなのに、むれのみんながあああ!ばじゅりいがああああ!あのおねいざんがあああああ! にんげんをゆるずなっでいったんでずうううううう! だから!だから!どすはしかたなくうううう!」 涙を滝のように流しながらドスは語る。 しかしその言葉を聞いて群れのゆっくりたちは黙ってなかった。 「ゆあああああ!なにいってるのどすうううううう!れいむたちのせいにしないでねええええ!」 「んほおおお!ほかのゆっくりのせいにするなんて、とかいはじゃないわああああ!」 「わがるよおおおお!どすがいちばん、にんげんのとちをのっとるのに、せっきょくてきだったよおおおおお!」 「くそにんげをどげざさせたって、じまんげにはなしてのを、まりさはきいたんだぜええええ!」 自分らの責任にされてはたまらないと、口々に叫びだす群れのゆっくりたち。 「だまれええええええええ!ぜんぶおまえらのせいだろうがああああああ!どすはわるくないいいいいい!」 「黙るのはテメェだよ、このカス!」 思わず興奮して乱暴な言葉を吐き捨てながら、おねいさんが長めのクギをドスに突き刺す。 「ゆぎいいいいいいいいい!いだいよおおおおおおおお!」 涙を流しながら金切り声を上げるドス。 「チッ、まったく、白けるわぁん」 「なんというか、流石にこれは醜いと言わざるを得んな」 「ほんともう、なんかどうでもよくなってきたわん。 さっき殺った、えいっゆうまりさはチンピラで小物だったけど、コイツはそれ以下のクズね。 こんなヤツに、力を尽くした虐待をするのもアホらしくなったわん」 「なんだ?もしかして助ける気か?」 「んなわけないでしょバカね、予定をはやめるのよ」 そう言うと、おねいさんは置いてあった自分の荷物をゴソゴソといじりだした。 「おねがいですうううううう!たすけてくださいいいいいいい! これからはこころをいれかえますうううう!もうけっしてにんげんさんにはさからいませんんんん! げすゆもきちんとせいっさいしますううううう!だからああああああ!」 なおも続く懇願を無視しておねいさんが取り出したもの、それは……。 「ちょ!おまっ!それは」 思わず声を上げる先輩。 そんな先輩を無視しておねいさんは、勢いよくドスに、黒くて臭くてよーく燃える液体をぶっかけた。 「そぉら、くらえぇい!」 「ぶひゃあああああ!なにごれくさいいいいいいい!」 自身にかけられた、危険極まりない液体の性質を知ってか知らずかドスはその臭いに不快を訴える。 「おい!お前そんなもの一体どこで調達した!」 「今朝、民家のおばちゃんからゆずってもらったのよん」 「正気かおい、ここは一様、私有地の畑だぞ」 「昨日、罠を仕掛ける際に何やってもいいって持ち主に許可もらったでしょう。 大丈夫、大丈夫、大した量じゃないからさ、終わったあときちんと片付けるわよん。 それにこの虐待はなかなかやる機会がないのよぉ。 室内はもちろん、主にドスが生息する森の中でも危険極まりないしね」 「どこでやっても危険極まりないわ、バカ者」 「まあまあ、いいからいいから」 「な、な、な、なんなのおおおおおお!いったいどすをどうするきなのおおおおおおおお!」 先輩とおねいさんの会話に不吉なものを感じ取ったのか、ドスが堪えきれない様子で叫びだす。 「あぁん、それはねぇ」 おねいさんはポケットからマッチ箱を取り出し、シュッと擦り火をつけると、 「こうするのよ!ヒャッハー!点火だぁ!」 それをドスに向かって放り投げた。 マッチは動けないドスへ命中し、そして、 「ゆぎゃあああああああああああああああ!あち!あち!あずいいいいいいいいいい! なにごれええええええええええ!あついいいいいいいいいいいいいい! だずげでええええええええ!あばばばあばあばああああああああ!」 一瞬にして身体全体に炎が燃え広がり、もだえ苦しむドス。 薬で全身を麻痺させられているため転げまわることもできない。 全身を一気に焼かれる苦しみは、通常の足焼きなどとは比較にならないだろう。 「うんうん、さっすが、ゴミクズはよく燃えるわぁん。 そんじゃ、ついでに残った連中も処理しちゃうとしますか」 そう言うと、おねいさんはネットに拘束されているゆっくりの一匹を外に取り出した。 「ゆゆ!おそらをとんでるみた…」 そしてそのまま、そのゆっくりを炎に包まれ、悲鳴を上げているドスの口にヒョイと投げ込んだ。 「ゆばがああああああ!あじいいいいいいいいい!がらだがもえるうううううううう!」 当然のことながら、投げ込まれたゆっくりも地獄の業火に全身を焼かれることになる。 唯一の救いはドスほど身体が大きくないため、すぐに焼き尽くされ永遠にゆっくりしてしまうことだろうか。 「さぁて、どんどんいくわよぉ」 「ゆひいいいいい!やめてえええええ!」 「ああああ、いやだあああああああ!」 「わがらないよおおおおおおおおお!」 次々に燃え盛るドスの口内へとゆっくりたちを投げ入れるおねいさん。 「しねええええ!このくそどすがあああ!ぜんぶおまえのせいだああああ!ゆあづいいいいいいいいいい!」 「なんでまりさがこんなめにいいい!このやくたたずがあああああ!」 「ばかああ!どすのばかああああ!おまえさいいなければこんなことにわあああああ!もえるううううう!」 ドスの口内で焼かれるゆっくりたちは、みな最後にドスへと恨み言を吐きながら散っていく。 そして皮肉にも、口の中に次々と投げ込まれるゆっくりたちが栄養分となり、ドスの余命を、即ち苦しむ時間を長くしていく。 「ゆがばばあああああ!もうやべでええええ!もうあついのいやだあああああああああああ!」 ドスは泣いていた。 熱のせいで、涙はどれだけ流しても一瞬で蒸発してしまうが、それでもドスは泣いていた。 自身を焼く炎の痛みに、口の中で消えていく群れのゆっくりたちの憎悪に、そして自身の運命に。 そして果ての無い後悔の末に、ついにドスは永遠にゆっくりしたのであった。 その後…。 「ふう、終わったみたいねん」 「なんともまあ、壮絶な光景だった」 「ふふ、楽しかったでしょう」 「別に」 「あら、つれないわぁん」 焼け残った物体を前にして語り合うおねいさんと先輩。 こうしてこの付近の群れは一匹残らず全滅した。 そして彼女らは知る由もないが、今頃は山中にて男が女を倒している頃だろう。 「まったく、わかってるのか?面倒なのはこれからなのかもしれないんだぞ?」 「あの女のこと言ってるの? だったら平気よん、きっと彼が上手くやるわん。 そもそも女とゆっくりが手を組んでるってわかったんだから、 人質の件さえもみ消しちゃえば、後は女が何言っても、知らぬ存ぜぬで通しちゃえばどうとでもなる話だしねん」 「まあ確かにそうなんだけどな。 しかし、結局あの女の目的は謎のままだからなぁ、どうなることやら……」 「やぁねえ、心配性。 どうせ大した目的じゃないわよん。 大方、世界平和とかそういう夢想の類じゃないぉ?あの手のキチガイのやることってさ。 それにね、たとえ世界の誰かが、ゆっくりでどんな企みをしようとも、確実に言えることが一つだけあるわん」 「んん?なんだそれは?」 「ふふん、それはね、この世におねいさんがいる限り、ゲスゆは必ず制裁されるってことよ!」 グッと親指を立てると、おねいさんは誰にともなくウインクをしたのであった。 おしまい。 後書きと、過去作品は容量制限のため省略。 そんなわけでまた次の機会によろしくお願いします。 ナナシ。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/679.html
※お兄さんが試験官です ※虐待要素がほとんど無いです ※⑨というゆっくりがで増す 「ゆっくりテストを受けてね!」 突然だがゆっくりの知能が非常に低いことは知っているであろうか。 しかし、ゆっくりでも知識が高いゆっくりもいるのだがその知識はどれほどか気になるので 知性が高くも低くも無い通常種のゆっくりも含めてテストを行うことにした。 テストは小学一年生のたしざんひきざん①と書いてあるものを使用する。 回答者は れいむ、まりさ、ありす、ぱちゅりー、みょん、ちぇんというおなじみのメンバーと あと、特別ゲストにらんも入れている。 (席順は左からありす、みょん、れいむ、まりさ、ぱちゅりー、ちぇん、らんの順番) このメンバーでテストに挑戦してもらう。 ちなみに試験官はお兄さんが入る。 (ゆっくり何ぞに任せたらテストじゃなくなるため) 「おっけー、じゃテスト始めるぞー」 「「「「「「「ゆん!」」」」」」」 「あ、後逃げ出そうものならようしゃ無く叩き潰すからいいね? あと点数低いやつはお仕置きな では・・・はじめ!!」 お兄さんの合図とともにゆっくり達鉛筆を口に銜えるようにしてテストを始める。 それと同時にお兄さんはあたりを見渡す。 ぱちゅリー、らんの二匹はすらすらとテストを進めている ちぇん、みょんは少し考えひらめいたという感じの顔をすると少しずつ書いていた。 ありすは少しは知識があるのか頭(?)を捻らせがんばっている。 結構がんばっている姿はかわいらしいが 問題がひとつだけあった それはれいむとまりさだった。 れいむとまりさ種はそこらへんに生息しているゆえ 子供だのえさだのゆん生などでその他のことはまったく考えない奴らなので 頭はよほど悪いほうではないかと思った。 れいむとまりさのほうに視線を向けると わからないという顔をしてテストとにらめっこをしている。 ああ、だめだこりゃ、とお兄さんが呆れ顔でれいむとまりさを見ていると声が聞こえた。 「「おにいさん!てすとできた(わ)よ!」」 目の前に移ったのはらんとぱちゅりーだった。 おお、もうできたのかと関心し らんとぱちゅりーのテストの答案を受け取り採点を始める。 ふむふむ。 と答えと赤ペンを取り出し しゅっしゅっしゅっしゅっしゅっしゅっしゅっしゅっ・・・ と得意げに丸をふっていった。 「らん、すごいなお前。 100点満点だぞ!」 答案をらんに返す。 らんの答案の名前の隣にでかでかと100と書いてあった。 「どうする?らん。 もっと難しいのがあるが・・・」 「ぜひやらせてね!」 とらんが自身ありげに言うので今度はたしざんひきざん②というテストを渡す。 らんはテストを銜えて自分のいた場所に戻っていった。 次にぱちゅりー 「じゃあ、採点だな」 とまた得意げに赤ペンのキャップをはずし そして しゅっしゅっしゅっしゃっしゅっしゅっしゅっしゃっ・・・ 「惜しいなぱちゅりー 80点だ」 「むきゅん・・・」 「もう一回がんばってみろ・・・またできたらもってくればいい 間違えたところは俺が消しといてやる・・・ ほら」 と消しゴムでぱちゅリーの間違えたところを消す 「むきゅ、ありがとう。」 というとぱちゅりーはテストの答案用紙を銜え席に戻る。 しかし席に戻るなりまりさが声をかけた。 (ぱちゅりー・・・とうあんをみせてほしいのぜ・・・) (むきゅぅっ!? なにをいってるのまりさ!) (まりさはたすかりたいのぜ! となりのれいむはぜんっぜんだめなのぜ!!) (だからってかんにんぐはだめよ!まりさ!!) (うるさいのぜ!!ぱちゅりーはだまってとうあんをみせるのぜ!) (むきゅー!いやよ!) とこそこそと話しかけていたがついにまりさの堪忍袋の緒が切れたのか立ち上がって叫んだ。 「ゆっ!いちいちうるさいよ!ぱちゅりーはだまってとうあんをみせればいいのぜ!!」 その声を上げた後体当たりを仕掛けようとしたがすぐにそれを止めた。視線を感じる。 周りを見るとぱちゅりーを除く、すべてのゆっくりから冷たい視線が放たれた。 当然お兄さんからも。 「まりさ・・・」 「ゆっ・・・ゆゆっ!! ちがうよ! ぱちゅりーがとうあんみせろとうあんみせろっていちいちうるさかったからなんだよ! わるいのはぱちゅりーなんだよ!」 と必死の言い訳をする。 しかも他人に罪を擦り付けるとはこのまりさ・・・ゲスだなとお兄さんは呆れ顔で見ていた。 当然解答者からは 「みぐるしいよまりさ!」 「ちんぽー!!」 「しぼうふらぐなんだねー わかるよー」 「ちぇん、こんなわるいことをするとむくわれないんだよ。 わかってね」 「わかったよーらんしゃまー」 と罵声。 そして試験官がまとめに入る 「ま、まりさには罪を擦りつけようとしたし罰を与えんと。 異議は無いか?」 「「「「「「いぎなーし!」」」」」」 「ゆげげっ!」 「おっけーじゃあ、まりさにはれみりゃのえさになってもらおう!! 餡子を吸われてじわじわと死んで逝ってね!!」 「そ・・・そんなぁぁぁぁぁああああああああああああ!!」 「じこうじとくね、むきゅん」 「ぶざまだね!」 「まらぺにーす」 「ばかなんだねーわかるよー」 「ちぇん、ああいうばかのことを⑨っていうらしいよ」 「そうなんだ!らんしゃまはなんでもしってるねー すごいよー」 「まりさは⑨なんかじゃないいいいいいいいいいいいい!!」 再び罵声。 と、言うよりなぜらんが⑨を知っているのかが不思議だが 「おk、じゃあおぜうさまのところに案内してやろう。」 「やだあああああああああああああああたすけてええええええええええええええええええ!!!」 まりさを断音性のあるかごに入れ放置する まりさのことはおいておいてとりあえずまりさが脱落したところでタイムアップ できたところまででいいから見せてくれといい。 答案に採点をする 答案を採点した後それぞれに返す。 結果 1位 らん 100点 2位 ぱちゅりー 80点 3位 ちぇん 60点 4位 みょん 50点 5位 アリス 40点 6位 れいむ 10点 圏外 まりさ (反則行為を行ったため) 0点 となった。 やはりぱちゅりー種はやはり群れでは欠かせない存在だなと感じた 「ぱちゅりーはよくがんばったな。偉いぞ」 「むきゅ~んほめてくれるとうれしいわ」 終わり 「おわりじゃないでしょおおおおおおおおおおおおお!!」 「ん?なんだ、まだいたのか」 「まだいたかじゃないよー ぱちゅりーだけほめてちぇんたちはほめてくれないの?」 「いや、これはあくまでもゆっくりの知性を測るためのものだから ほめても意味無いぞ」 「ち・・・ちんぽぉぉぉおおおおおおおおおおおお!!」 「そうよ!ありすをほめちぎったってなにもでないんだから!!」 「お前は何が言いたい。」 「ほ・・・ほめたってなんにもでないからね!」 「はいはい、ツンデレツンデレ あ、でもらんはよかったな。 100点とか 森の中で競い合ったら一番になれるんじゃないの?」 「ゆん、ありがとう、おにいさん できたらちぇんもほめてあげてね。」 「はいはい。ちぇん よくがんばったな」 「ゆん、うれしいよー」 「おk、らん、帰るぞ」 「わかったよ」 「じゃあなお前ら。元気でやれよ」 「またね!ちぇん!」 「またあおうねーらんしゃまー ゆ、もうちぇんもかえるよー じゃあねれいむ、みょん」 「けっきょくれいむはほめてくれないのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」 「まらああああああああああああああああああああ!」 「・・・ありすにもほめてほしかったな」 おまけ(まりさ その後) お兄さんの家の一室 「おーい、れみりゃ~ でてこ~ぅい」 とお兄さんはれみりゃの名を呼ぶとソファーから聞いてるだけでいやになる声がした。 「うっうー☆おにいさんのおよびだしだどぉ~ きっとかり☆しゅまなおぜうさまにいいたいことがあるんだどぉ~ よんだかだどぉ~」 「おお、きたか。 今日のご飯だ。 子供と一緒に味わって食えばいい。」 とまりさをぽいっと投げつける。 「うー☆おいしそうなあまあまだどぉ~ えんりょなくこどもたちとたべるどぉ~」 「そうするといいぞ。あ、そうだ 後、こいつもね一緒に食べな」 と無造作に投げ出されたのはテストを受けたれいむ。 「いたっ!おにいさん!もっとていねいにあつかってね! ・・・ってなんでれみりゃがいるのおおおおおおおおおおおおおおおおおお!! あとなんでれいむがこんなことにいいいいいいいいいい!」 「いやお前テスト点数低かったじゃん。」 「ええええええ!?きいてないよおおおおおおおおおおおおおおお!!」 「いや、最初言ってたよね『点数低いやつはお仕置きな』って そういうわけだ。 ゆっくり食べられてね!!」 とお兄さんは部屋を後にした。 「「そんなあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」 「こどもたち、くるどぉ~」 「う~☆おきゃ~しゃんにゃんぢゃどぉ~」 「う~☆あみゃあみゃがありゅどぉ~」 「おかあさんといっしょにたべるどぉ~」 「いただきまーすだどぉ~」 「いぢゃぢゃきまーしゅだどぉ~」 「「い・・・いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」 今度こそ終わり あとがき 何日間かいろんな人のSSを見てきたけど やっぱすげー byさすらいの名無し このSSに感想をつける
https://w.atwiki.jp/idol7/pages/3291.html
藤瀬じゅりをお気に入りに追加 藤瀬じゅりとは 藤瀬じゅりの88%はカルシウムで出来ています。藤瀬じゅりの6%はツンデレで出来ています。藤瀬じゅりの4%は黒インクで出来ています。藤瀬じゅりの2%は嘘で出来ています。 藤瀬じゅり@ウィキペディア 藤瀬じゅり 藤瀬じゅりの報道 gnewプラグインエラー「藤瀬じゅり」は見つからないか、接続エラーです。 藤瀬じゅりをキャッシュ サイト名 URL 藤瀬じゅりの掲示板 名前(HN) カキコミ すべてのコメントを見る 藤瀬じゅりのリンク #blogsearch2 ページ先頭へ 藤瀬じゅり このページについて このページは藤瀬じゅりのインターネット上の情報を時系列に網羅したリンク集のようなものです。ブックマークしておけば、日々更新される藤瀬じゅりに関連する最新情報にアクセスすることができます。 情報収集はプログラムで行っているため、名前が同じであるが異なるカテゴリーの情報が掲載される場合があります。ご了承ください。 リンク先の内容を保証するものではありません。ご自身の責任でクリックしてください。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/2251.html
前編より 「美味しいね!すっごくゆっくり出来るよ!」 「ゆっくり!ゆっくり!」 「オイオイ…何だよこりゃあ…」 場面は変わり村の畑の中。 仲良く農作物を齧る3匹のゆっくりの前に男が立ち尽くしていた。 男は人の言葉を解するこの生物の事を他所の村人から聞いてはいたものの 見るのは初めてな事もあって、どうしたものかと頭を抱えていた。 「「む~しゃ!む~しゃ!しあわせ~♪」」 そうとも知らずに食事を続けるゆっくり達。 いい加減止めない事には始まらないと考えた男は 三匹のゆっくり達の近くにしゃがみ込んでまず食事を止めさせた。 「オイ、お前等な」 「ゆ?人間さん?」 「「「ゆっくりしていってね!!」」」 それを聞いて『話に聞いた通りだ』と眉を顰める男。 ゆっくりー中身は餡子だが、基本的に草食で畑に姿を見せる事もあり、 何かに遭遇すると大きな声で『ゆっくりしていってね!』と叫ぶこの生き物。 どうして森の餌にならないでここに来れたのか、実に不思議だ。 だが、その辺の説明は賢い人が上手い事見つけ出せば良い。 俺の仕事は野菜を育てる事とそれを守る事なのだからな。 男は困った様な表情で 人の言葉を解すると言うゆっくりに説明する事にした。 これはお前等の食っていいものではないと。 「どうしたのオジさん!ゆっくりしていってね!」 「あのなぁお前等、これは…」  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 「やっぱ死んでるんじゃねーかな?」 「いいや、息してるよ」 「ゆぅ…ゆぅ…」 場面は変わり、4匹のゆっくり達がいるのはある小さな廃屋の中。 元々は誰かの倉庫だった様だが、少年達が産まれた頃から誰も使っておらず 今では少年達の秘密基地として活用されている。 廃屋とは言え綺麗好きな少年達の手によって掃除が行き届いている為 中は綺麗なものである。 ぱちゅりー達は秘密基地に行く途中の この少年達に見つかって気絶し、連れて来られたのだった。 「ゆっくりって何食うんだろ?」 「そんなの知るワケないだろ… りんごでも食わせ…オイ、起きたぞ!」 「………?」 横たわっているぱちゅりーは気絶から目覚めた時、 何か暖かいものの上に自分の体があるのを背中に感じた。 何だかゆっくり出来るもの、いつかの母の頬の様な暖かいもの。 ふと視線を動かすと他の3匹も寝ているのが見えた。 柔らかい毛布の上でゆーゆーと寝息を立てて寝ている。 「急に動かなくなったから死んだかと思ったな」 「っていうか今でも動いてない」 その視線が少し上を向いた時、ぱちゅりーは恐怖に凍りついた。 見下ろしているのは数人の人間。 自分達を殺そうとした人間達よりもかなり小型だが、同じ姿をした生き物。 ぱちゅりーは余りの恐怖から声も出なくなった。 「…………!!」 「何で動かないんだろ?つまんねぇな」 「やっぱコレ、怪我だったんだろうな」 そう言ってぱちゅりーを持ち上げてひっくり返す少年。 凍りついたまま動けないぱちゅりー。 ぱちゅりーの底部には包帯が巻いてあった。 顔まで覆わない様にと、下膨れの部分に不器用に何重にも巻いてあるそれは ぱちゅりー達を持ち運ぶ際に一人の少年がぱちゅりーの怪我を見つけ、 治療のつもりで巻いたものだった。 「○○、もういい加減暗くなるから帰ろうぜ おれ薪割り手伝わなきゃいけねーんだ」 「おお」 「コイツ等どうするの?」 「……放っておくか、持って帰るわけにもいかないし」 そう言って二人の少年達はぱちゅりー達を一瞥すると 鞄を肩にかけると廃屋から出て行き、民家の方へと夕暮れの道を歩いて行った。 「…………」 ぱちゅりーは最後まで口を開く事が出来ず 震えながら少年達の背中を見送る事しか出来なかった。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ぱちゅりーが少年達に出会った次の日。 4匹のゆっくり達はまだ廃屋の中に居た。 廃屋の扉は開かれていた。 昨日の少年達がゆっくりが出て行ける様にと開けておいたからだ。 しかし4匹が出て行かなかったのは、ぱちゅりーがまだ動けないからだった。 「ゆっくり食べていってね!」 「早く良くなってね!」 「むきゅ…れいむ、ありがとう…ごめんね」 動けないぱちゅりーにご飯を用意する3匹。 ぱちゅりーは巻かれた包帯のせいで 今までの様にまりさの帽子の上に乗せられても、直ぐに滑り落ちてしまう。 それが包帯のせいだと中々気付けない4匹は、 やはりぱちゅりーを見捨てられず、人間の巣の中で過ごす事を余儀なくされた。 「…!? オイ!○○!昨日のゆっくりまだいるぞ」 その日の夕方近くになってから、また昨日の少年達は姿を現した。 少年達が驚いたのは、この4匹のゆっくりが きっと一晩の内に何処かに行ってしまうだろうと考えていたからだ。 (当然の事ながら少年がぱちゅりーに包帯を巻いたのは 不器用ながら善意からのものだった、 少年はそのせいでゆっくりが廃屋から出られなくなるとは想像していなかったのだ) 「「「「……………」」」」 そんな事も知らない4匹にとっては絶体絶命の状態。 何しろ違う個体とは言え、 自分達の群れを滅ぼそうとしたのと同じ生物が5人も集まったのだ。 当然4匹は恐怖で震える筈であった。 だが、ぱちゅりーは昨日の件から今まで何も考えずに過ごして来たわけではない。 人間達が昨日、何故自分達に対して何もしなかったのか。 それを考えていたのだ。 一晩掛けて考えたその結果、 ぱちゅりーは『何も喋らなかったから人間は自分達に危害を加えなかった』 そう解釈するに至った。 思い返してみればあの日、群れが滅ぼされた日に人間に向かって 色々話しかけてから急に人間は暴れ始めたのだ。 食い扶持を減らされた事もあったのだろうが もしかしたら人間は自分達ゆっくりの喋り方が嫌いなのかもしれない、と。 ぱちゅりーは他の3匹のゆっくりにも 人間が来たら決して口を開かない様にと釘を刺しておいた。 口を結んで少年達を見上げる4匹のゆっくりの前で 話に聞いているゆっくりとは随分違うな、と首を傾げる少年達。 実際の所、これは身動きの取れなくなるという窮地に立たされたぱちゅりー達が、 殆ど自分を安心させる為に考え出した無茶苦茶な作戦であった。 「やっぱ紫のだけじゃなくて他のも喋んないね…」 「おかしいよな…ゆっくりって喋るんじゃないのかよ?」 「「「「…………………」」」」 だが、この的外れな思い込みこそが 後にぱちゅりー達を救う事になる。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 「帰れ!この饅頭もどき!!」 「「「ゆわーーー!!!」」」 男がゆっくりに農耕について説明してから20分後、 そこには畑から放り出されて宙を舞うゆっくりの姿があった。 比較的我慢強いところのあるこの男も ゆっくりに農耕を概念を説明する事を諦めたのだ。 べたべたっ、と音を立てて土の上に落ちるゆっくり達。 「ゆっぐり”でぎないぃぃいぃ!!」 「ゆ”ぐうぅうぅ!! オジさんもゆっくり出来ない人なんだね!大っ嫌いだよ!」 「帰れ帰れ!二度と来るな!バカ饅頭!」 「ゆん!ありす!まりさ!もう行こ!」 そう吐き捨ててプンプンと山の方へと跳ねて行く三匹のゆっくり達。 全くゆっくりしていない。 結果的にこの様な形になってしまったが、 短い時間の中で男は畑のものは自分達が育てた物だと言う事を ゆっくりに懸命に教え込もうとした。 種を野菜の赤ちゃんと例え、 土の中で太陽の光と、自分達の与える水と栄養を食べて成長する事も。 そして自分が母親代わりとなって何ヶ月も世話をする事で ようやくこの様な姿になって、自分達の食べ物になってくれるのだと。 そこまで育てた自分達にこそ食べる権利があり、 だからこそゆっくり達はこれを食べてはならないと。 『オジさんは赤ちゃんを食べるの?』 『そんな事よりゆっくりしていってね!』 『このご飯は勝手に生えてくるんだよ!!』 『おじさん!嘘はゆっくり出来ないよ!』 『む~しゃ!む~しゃ!しあわ』 ゆっくりに野菜の事を教える事は、実に難しい。 だがあんな目に遭わせてやったんだからもう来ないだろう。 去って行くゆっくり達を青筋を浮かべて見送りながら、男はそう願った。 「おぉーい!!○○!今のゆっくりだろ!?」 そこに男の友人が訪ねて来た。 それは男と同じく畑を耕す者。 「おお○○3日ぶり、聞いてくれよ 初めてゆっくりを見たんだが キャベツ齧られたんで今追い出したところなんだ」 「途中から遠くで見てたよ 災難だったな、お前も」 「でも、痛い目に遭わせてやったんだから もう来ないだろ……『お前も』?」 「…あのゆっくり達、今お前がやったみたいに 一昨日俺が痛めつけてやった奴等と同じなんだ…」 「え?」 「一昨日は俺のところに来たんだよ あいつら、そんなに頭は良くないんだってさ …○○サンなんてとうとう畑で見つけ次第殺すようになったぞ」  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 結果から言うとぱちゅりーの立てた作戦は成功した。 少年達は喋らないぱちゅりー達に対して暴力を持って干渉する事は当然無く、 それどころか少年達がオヤツにと家から持って来た煎餅やキュウリまで与えてくれた。 それに対して、4匹のゆっくりは警戒心から中々口をつけなかったが 少年の中の一人が自分の分の煎餅に口をつけると 4匹は安心して目の前でいい匂いを放つ煎餅に口をつけ始めた。 (細かく砕かれた煎餅はカケラも残さず美味しく食べたが 過去のトラウマから、野菜であるキュウリだけは決して手をつけなかった) 少年達は自分達で塩を付けながらキュウリを食べると、 廃屋の中でドタバタとチャンバラ遊びを二時間程してから また昨日の様に、扉を閉めずに家へと帰っていった。 初めは内心恐怖でどうにかなりそうだったぱちゅりーも、 ありすも、れいむもまりさも勝ち誇った顔つきで確信していた。 自分達が喋らなければ人間はゆっくりしてると。 何故なら少年達が無口な自分達に対して危害を加えない事に加えて 少年達の中の一人が連れて来ていた、4匹のゆっくりと同じ様に口を利かない子犬が 少年達に大切そうに扱われているのを見たのだ。 それを見た4匹のゆっくりは最早、間違いない、 喋らなければ自分達は怖い人間達ともゆっくり出来る、そう確信した。 だが、少年の中の一人が帰り際に言ったこの台詞。 「じゃーなゆっくり!ゆっくりしてけよ!」 「「「「ゆっくりしていってね!!」」」」 4匹はそれを言った瞬間死を覚悟した。 しかし『やっぱそれだけは言うんだな』と笑って廃屋から出て行く少年達を見て ぱちゅりー達は『ゆっくりしていってねだけは言っても大丈夫』と認識した。 この廃屋に少年達以外の、 あの日ぱちゅりー達の群れを滅ぼした人間と 同じサイズの人間が来るのはこの次の日の事だった。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 「どうじでごんな”ごどずるのぉおぉぉお!!?」 場面は移り、いつかゆっくりを放り投げた男の畑の中。 男の目の前には頬を蹴られて泣くゆっくりありすとゆっくりまりさ。 そしてそれぞれの口から吐き出されたキャベツのカケラ。 この二匹のゆっくり、かつて男に放り投げられたゆっくり達と同個体である。 その顔を真っ赤に染めて男は次の様に言った。 「お前等!二度とここに来るなと言っただろうが!」 「どぼじでえぇえぇ!? ばでぃざもあでぃずもゆっぐりじだがっただけなのにいいぃぃ!!」 「…………」 それを聞いた男は少し頭を冷ました様で、泣きわめく2匹のゆっくりに対して また1から、野菜は自分の育てたものでゆっくりのご飯では無い事を、 そしてここに来るのはお互いの為に良くないと説明しようとした。 「…いいかお前等、この前も言った事だがな ここにある野菜…いや、ご飯は俺が作ったものでな」 「…ゆ!まりさぁ!こっちだよ!」 「まりさ!こっちに来て加勢して頂戴!」 話を聞けと怒ろうとした瞬間、男は 二匹の視線の先に随分大きなゆっくりまりさが跳ねているのを見た。 そのゆっくりまりさは二匹の声に気付くと 怒った様にこちらに向かって急いで跳ねて来た。 それを見て畑の主である男は嫌な予感しかしなかった。 大きなゆっくりまりさが2匹の元に辿り着くと 男をまるで敵の様に睨んでから叫ぶ様に言った。 「ゆ”!人間さんがまたご飯を独り占めしてるんだね! いい加減ゆっくりさせてね! ご飯を守るよみんな!」 「「「えいえいゆー!!」」」 そう言って男を囲んで攻撃して来る3匹に増えたゆっくり。 2匹の体当たりは大した事は無いが、 大きなゆっくりまりさの体当たりは当ったところが少し痛むくらいの衝撃がある。 「オイお前等!やめろ!!」 急な展開に驚き、ゆっくり達から少し距離を取った男は 後ずさりながらなんとか冷静さを取り戻し、 こちらに向かって跳ねて来るゆっくり達を見ながら 前々から考えていた事を頭の中で纏めようとしていた。 「ゆっくり!ゆっくり!」 「…………」 そうする事は悪い事なのだろうか? 目の前のゆっくりを殺す事は悪い事なのだろうか? 山に住むゆっくりは人間と違って山の中のルールに従う野生動物と同じだ。 俺が稀に殺す機会のあるその野生動物と目の前のゆっくりを区別している理由は何だろう? 同じ言葉を使う?それは何の意味があるだろうか? 数瞬の内に生まれた疑問に対して、男は ゆっくりまりさからのふくらぎへの噛み付きの痛みの御陰で 強引ながらも答えを出せた。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 男の視線の先にあるのは広がった餡子やカスタードに段々と集っていく、蟻の行列。 そして痙攣する大きなゆっくりまりさ。 激情にかられてやってしまったと少し嫌な気分になったが それも大したものでは無かった。 「ゆ”っ……ゆ”っ……ゆ”っ」 「………………」 痙攣している大きなゆっくりまりさはまだ生きている。 いっそのこと楽になって貰おうかと男は思ったが、 かつて他所の村から来た男に聞いた話を思い出して止めた。 『近くの山の中のどっかに群れがあるんだよ どこかって?見つけるのは簡単だ 捕まえた一匹を群れまで道案内させりゃいいんだからな』 その言葉を思い出してから男は一つ後悔した。 それは小さな方のゆっくりを殺さずに残しておけば良かったと言う事。 コイツでは大き過ぎて持ち運びに苦労する。 そんな事を考えていた男がふと、廃屋のある方向に目を向けると このゆっくりよりも小さそうなゆっくりが廃屋の周りで跳ねているのが見えた。 縛る事で動けなくなるのかどうかは疑問だったが、 男は縄を用いてボロボロのゆっくりまりさを縛って倉庫に置くと ゆっくりと廃屋の方向へと歩いていった。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 「ゆっくり!ゆっくり!」 「ゆっくりしていってね!」 廃屋の前の野原で追いかけっこをして遊ぶゆっくりありすとゆっくりれいむ。 口を開かないというのもゆっくり出来ないと感じる4匹のゆっくりは 許された只一つの言葉『ゆっくりしていってね』だけは喋る様になっていた。 それは不思議な感覚だった。 まるでそれが元々の自分達の言語だったかの様に、 最近ではその言葉だけで4匹の間では大体の意思疎通が出来る様になっていたのだ。 「ゆっ?」 「「ゆゆ?」」 二匹はその体に影がかかった事に気付き、その視線を上げた。 その先に居たものは知らない人間。 それも成体の人間、先程の男である。 「「ゆ”ゆ”ーーーー!!」」 「あっ!おい、待て!」 ゆっくりれいむとゆっくりありすは今度は恐怖から 男が驚く程の叫び声を上げると廃屋の玄関へと跳ねていった。 4匹のゆっくり達が今まで少年達に対して、それ程怖がらずに相手出来ていたのは かつて群れを滅ぼした人間よりもずっと小さかったから。 そういう所もあったのだ。 あの群れの崩壊の日から、久しぶりに成体の人間を見た2匹は 男から何かゆっくり出来ないモノを敏感に感じ取り、 ぱちゅりーとまりさが昼寝している廃屋の中へと、 そして少年達のいる廃屋の中へと入っていく。 それを追って男も廃屋に入っていった。 「……? こんなトコで何やってんだお前…」 「ちゃ…チャンバラごっこ… 父ちゃんこそ何やってんの?」 「「………………」」 「ゆっ…ゆっ…」 父親に秘密基地とチャンバラごっこを見られた少年と ゆっくりを追って子供達の秘密基地に入って来た、その父親との気まずい空気の中 ゆっくりれいむとゆっくりありすの泣き声だけが静かに響いていた。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 「コイツ等はそんなのと絶対そんなのと違うって 野菜も食わないし、それに人間の言葉だって喋んないじゃん」 「つってもなぁ…」 「ほら見て、野菜食べない 最初からこうだったんだって、そうだろ皆!」 差し出されたキュウリから逃げる様に顔を背けるゆっくりれいむ。 そして少年の言葉に頷く周りの少年達。 この時、既に4匹のゆっくりは少年達の秘密基地のマスコット的存在となっており、 少年達は自分達の秘密基地であるこの廃屋に住み着いた (と言ってもぱちゅりーが動けないだけだが)4匹のゆっくり達と 『秘密を共有している』という意識から仲間意識を持つ様になっていた。 男がこのゆっくりを捕らえようとしていると知ったその息子は 4匹のゆっくりを守る様に父親を説得し始めたのだ。 「ホントだ…ゆっくりってのも色々あるのかね?」 「でしょ?」 先程のゆっくりだったら迷わずキュウリを口に含んだ事だろう。 それに廃屋の玄関で会った時から今に至るまで 4匹のゆっくり達は怯えた視線を男に送るばかりで何も喋らない。 目の前でゆっくりはまるで先程のものとは別生物の様だ。 そう思った男は 何もこんなにゆっくりを保護しようとしている息子から 無理にゆっくりを捕らえる事も無いと考え、 先程の2匹のゆっくりに向かってごめんなと謝ると 今度は唯一他のゆっくりと姿の異なるぱちゅりーが気になって目を向けた。 「………」 「ゆっくりしていってね…?」 無言でこちらを見つめる男に怯えながら 取り敢えずの挨拶を済ませたぱちゅりーは、 返事をしない男に対する恐怖でまたその身を強張らせた。 「何だよアレ?包帯? お前等、あんなのをゆっくりに巻いてたら動けなくなるんじゃねぇの?」 「あぁ、それは怪我してたみたいで… でももう治ってるかも ちょっと解いてみようぜ」 少年の手がぱちゅりーを素早く持ち上げて包帯を解き始めた。 何重にも巻かれた包帯が床に落ちてとぐろを巻いていく。 「む…きゅ?」 「怪我、もう治ってるみたいだな」 そう言って少年はぱちゅりーを床に置いた。 数日ぶりに露になったぱちゅりーの口から下の体。 包帯から解放されたぱちゅりーは開放感と共に、 その裂けかけていた底部が既に治っている事を実感した。 「ゆ…ゆ…」 「ん?」 「ゆっくりしていってね!」 久しぶりに言った本心からの『ゆっくりしていってね』 この少年がぱちゅりーの怪我を治したわけでは無かったが、ぱちゅりーは 目の前の少年がいつからか自分を縛る様になった鎖を解いてくれた様な気がしたのだ。 その喜びからぱちゅりーは少年に言いたくなったのだった。 ありがとうという意味の『ゆっくりしていってね』を。 その意味を理解したのか、していないのだろうが 少年は頭を掻くと父親に耳を引っ張られながら 畑仕事を手伝いの為に廃屋から連れ出された。 そしてその後ろを子犬がトコトコと付いていった。 この日を境にぱちゅりー達は少年達にだけは信頼を置く様になり、 夕方に来る彼らに対して『ゆっくりしていってね』と歓迎する事さえする様になった。 結局4匹のゆっくりは、ぱちゅりーの底部が治る事で いつか見つけたゆっくりプレイスに戻れる事も出来る様になったが それはせずに廃屋の中で暮らす様になった。 廃屋に来る人間はゆっくりしてるし、この廃屋も雨風も通さず、 ご飯も周りにあり、4匹全員で住める立派なゆっくりプレイスだと分かったからだ。 4匹は少年達以外の、成体の人間に対しても、 いくつかの事件を通じて段々と心を開く様になっていくが、それは別の話である。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ それから数日後の山の中。 村の男達は数人で山道を歩いており、 その中の一人が縄で縛られた大きなゆっくりまりさの縄を掴んで乱暴に揺すっていた。 「ゆぎいいぃいぃぃ!!だずげで!! ゆるじでえぇえぇ!!」 「うるさいな全く… ホレ、次はどっちだ?」 「ごご!ごごの広場に皆がいる”よ”!!」 「おぉ、アレか? 本当だ居た居た オイ皆!こっちだこっち!」 「ゆ?皆!人間さんが来たよ! ゆっくり挨拶してね!」 「「「ゆっくりしていってね!!」」」 「…………」 男達は冷めた目つきで挨拶をするゆっくり達を見渡した。 ぱちゅ達の抜けた時点ではまだ20数匹は居た群れの ゆっくり達の数は既に10匹ちょっとまで減っていた。 『狩り』に行った際に段々と始末されていったからだ。 「オイ、お前等全員これを見ろ」 そう言った男が手の中で暴れるゆっくりまりさを 集まっているゆっくり達に向かって放り投げる。 「「「ゆ…?」」」 ズザーッと音を立てて着陸する大きなゆっくりまりさ。 実はこのゆっくりまりさ、この群れのリーダー的存在だった個体だ。 「「「まりざああぁあぁ!!?」」」 「「どうじでええええぇえぇえぇ!!?」」 ゆっくり達の悲鳴に眉を顰めた男は 今度は背負った籠から齧られたキャベツを取り出す。 かつてゆっくりに齧られたキャベツだ。 「ゆ!人間さん!それをれいむにゆっくり頂戴ね! そうしたらおじさんの事ゆっくり許してあげるよ!」 そのキャベツを見てポンポン跳ねて男に近づいて来るゆっくり達。 そのゆっくり達に教え込むように男は説得を始めた。 「…いいか、そこのゆっくりまりさはこの野菜を食べたからこうなった これから俺等人間の元に来てこの野菜を食べる奴は」 「ゆぴ」 男の説得が終わるまで待たずに 一人の男が集まって来たゆっくりを一匹踏み潰した。 説明を始めようとしていた男は驚いた風も無く ゆっくりを踏みつぶした男に顔を向けた。 「ゆ”ゆ”!?」 「もういいだろそんなマネは とっとと終わらせて戻ろうぜ」 「れいむぅぅぅうぅぅうぅ!!?」 「この前2匹も殺しておいてなんだが 丁寧に長い時間かけて恐怖を絡めながら教えれば きっといつかは聞く様になると思うんだがね…」 「どぼじでごんなごとずるのぉぉおおぉおおぉお!!?」 「来る前に決めていた事だろ? …それにそんな時間掛けても俺等には何の得も無い」 「ゆっぐりでぎない人間はゆっぐりしねえぇぇえ!!」 「全部踏みつぶせば解決する事なんだからな」 この群れのゆっくり達にとって、それは気付きようも無い事だった。 人の言葉を理解出来なければゆっくりまりさは 人間に群れの場所や情報を教える事も無かった事に。 人と同じ言葉を話さなければ人を怒らせる事も無かった事も。 この日群れは壊滅し、以来この村は 畑を荒らす他のゆっくりの群れに対しても 他所の村がそうする様に群れ単位で責任を取らせるようになった。 ゆぎゃああぁあぁぁあぁ!!! 「ゆっくりー! ゆっくりしていってね?」 『れいむ、今何か聞こえなかった?』 「ゆっくり!ゆっくりしていってね!」 『分かんないよ!ゆっくりしていってね!』 その頃4匹のゆっくりは廃屋の中で、どこまでもゆっくりしていた。 いつしか4匹の喋る言葉は『ゆっくりしていってね』の中の10文字だけとなり、 それだけで会話をする様になっていた。 不思議な事に、かつて使っていた言葉を使って話す事はもう出来なくなってしまったが、 そんなものはもう4匹のゆっくりにとってどうでも良い事だった。 日が昇ってからゆっくりと廃屋の外に出て、 その辺りに生えている雑草をついばみ、たまに『お煎餅』を貰う。 たまにあの少年やおじさん達がくれる『お煎餅』は凄くゆっくり出来る。 お腹が膨れたら4匹揃って横になってお昼寝をする。 そしてお昼過ぎに起きては皆で遊んで、 夕方になったら廃屋の中で少年達と遊んで、帰っていくのを見送ってから また巣で食べる為のご飯を口の中や帽子の中に詰めて廃屋の中へ持ち帰るのだ。 どこまでも争いの無い平和な廃屋の中。 4匹のゆっくりは皆、幸せ一杯に暮らし、 どんな時でもゆっくり出来るようになった。 ー完ー ーーーーーーーーーーー後書きーーーーーーーーーーーーーー 前作がゆっくりボールマンさんの作品と余りに被ってて恥ずかしかった… ボールマンさんすいませんでした。 このSSに感想をつける
https://w.atwiki.jp/futabayukkuriss/pages/2487.html
銀の翼は呪いの翼 53KB 虐待-普通 群れ 現代 人間に抗わざるを得なくなったゆっくりの群れは…… とある片田舎。人間達の住む集落から少しばかり離れた所に、ゆっくり達が棲む森が 有った。 この森は、それほど木が密集していたわけでも、起伏が多いわけでもないが、自然が 豊かで、ゆっくり達も他の小動物達と同じく、その恩恵に浴していた。勿論、他の捕食 者に殺されるゆっくりもいたが、それも既に正常な食物連鎖の内となっていた。 ここのゆっくりの群れは、実に三桁に及ぶ多くのゆっくりを抱えていたが、最初から そんなに大きな群れだったわけではなかった。いくつかの小さな群れが、生き残りのた めに身を寄せ合い、徐々に大きくなっていったのだった。 そして、人間の集落、というより、人間には近寄るべきではない、と、彼らは経験的 に知っていた。興味本位で近寄ったゆっくり達は、その殆どが二度と帰る事はなかった のだ。 しかしそんな中、まだ群れがそれほど大きくなかった頃に、人間の集落に向かい、そ こに住み、森に戻ってきた一匹のぱちゅりーがいた。 幸運な事に生まれつき聡明だったそのぱちゅりーは、幼い内から自らの種の短所であ る体の弱さを気にしていた。そして、体を鍛える事によってそれを克服しようとした。 その努力は見事に実り、少なくともぱちゅりー種としては間違いなく群れで一番の、そ して、並みのゆっくりには決して負けないだけの身体を手に入れた。 充分に強靭な体を資本に、彼女はその生活の中で触れる全ての知識を吸収していっ た。先ゆん達の教訓、自然の厳しさ、それらに基づいた生き残るための術。ぱちゅりー は、まさに賢者と呼ばれるに相応しいゆっくりとなっていた。 ただ、彼女はそれだけで満足する事はなかった。 とどまる事を知らない未知への関心は、禁忌とされていた人間の集落への興味へと向 けられた。それでも、彼女が勝手にそこに向かう事はなかった。 ぱちゅりーは、その時の長であったまりさに直談判に行った。長まりさは、当時既に 群れの貴重な頭脳であったぱちゅりーを失うかもしれないその願い出を、最初は堅く禁 止した。しかし、何度でも願い出るぱちゅりーの熱意に押し切られた形で、長まりさは 渋々それを許した。 勿論、ぱちゅりー自身も危険は承知していた。ただ、命を賭してでも人間の集落へと 向かいたいほど、彼女の知識欲は抑えられなくなっていた。彼女にとっては、知識欲を 封じられる事はゆっくり出来ない事であり、生きながらにして死しているのと同じ事な のだった。 集落へと向かったぱちゅりーは、しかし、ほどなく人間に捕らえられてしまう。即座 に叩き潰されてもおかしくはなかったのだが、ぱちゅりーが普通のゆっくりと違って落 ち着いて理性的な話をしていた事と、そもそも害獣としての行動をしていたところを捕 らえられたわけではないという事とで、森へと帰される事になった。 しかし、当のぱちゅりーは森へは帰らないと言った。『帰らないと潰してしまうぞ』 と脅されても、主張は曲げなかった。 と、そのやり取りを聞いていたある老翁が笑い出した。『腹の据わったゆっくりだ な。人間でもお前ほどのはそうそうおらんぞ』と。そして、自分の飼いゆっくりになる 気はないか、と聞いてきた。ぱちゅりーはそれも面白いと思い、承諾した。 飼いゆっくりとなったぱちゅりーは、さらに人間の世界の知識を深めていった。新し い刺激の洪水だった長い長い日々が落ち着き始めた頃、飼い主である老人の周囲はにわ かに騒がしくなる。彼の家を含めて周囲の土地の買収計画が持ち上がったのだ。 老人は買収反対運動に参加するようになったが、心労が重なって倒れ、そのまま帰ら ぬ人となってしまった。 残されたぱちゅりーには、選択肢が与えられた。これから他の有志に引き継いで飼わ れるか、それとも、森へ帰るか、である。 今度の彼女は、森へ帰る事を選択した。何時の間にか大好きになっていた、そして、 もういない老人への郷愁と後悔。それと、森のゆっくり達に迫るかもしれないこの騒ぎ への危機感。それらが彼女に森へ帰る事を選択させたのだ。 ぱちゅりーが集落で過ごした長い時間は、森のゆっくり達にも等しく流れ、彼女が居 ない間にも群れの状況は少しずつ変化していた。群れ自体も大きくなっていたが、かつ て長だったまりさは既に死に、当時ぱちゅりーの友−−そこそこ年上ではあったが−− だったありすが群れの新しい長となっていた。 群れの性質にもよるが、野生のゆっくりの群れは概ね、他所から訪れたゆっくりを好 意的に(よく言われる、『ゆっくりしていってね!』の挨拶から始まる一連の『プロシー ジャ 手続き』によって)迎え入れる。 しかし、この例外として、普通、一度でもその群れを離れたゆっくりや、人間に飼わ れていたゆっくりが野生の群れに加われる事はまずない。 ただ、このぱちゅりーは、その知識と能力という実力と、長が古い友だったという幸 運によって、再び群れへと迎え入れられた。 群れに戻ったぱちゅりーは、その実力ゆえにすぐに重用されるようになり、やがて長 の参謀とも言えるような地位に就いていた。 それから暫くの間、彼女達の努力もあって、群れのゆっくり達はゆっくりした生活を 楽しんでいた。 彼らのゆっくりした毎日がにわかに慌しくなったのは、その冬の雪の季節が過ぎた頃 の事だった。 それまでまるで不可侵条約でも結んでいたかのように森のゆっくり達の生活圏には入 って来なかった人間達が、度々そこに姿を見せるようになった。彼らはゆっくり達に直 接危害を加える事はなかったが、森を訪れるたびに柵や塀を設置し、ゆっくり達の行動 範囲を徐々に狭めていくのだった。 もし群れがさほど大きくなかったならば、当面の問題はそれほど無かったのかも知れ ないが、十分に大きい群れとなっていたゆっくり達にとっては大きな問題だった。群れ が大きいという事は、それを維持するために多くの食糧が必要という事であり、ゆっく り達の生活圏に人間が侵入し、その行動範囲を狭めていくという事は、獲れる食糧の減 少、即ち、群れの維持の危機となる可能性をはらんでいたのだ。 ぱちゅりーが進言するまでもなく、長ありすは野生のゆっくりが人間達と関わる事の 危険性を理解していた。人間達と野生のゆっくり達の利害関係が一致するケースはほぼ 無いし、両者の間で真っ当な契約や協定が成立したケースもほぼ無い。 人間にとってはどうか分からなかったが、少なくともゆっくり達にとっては接触しな い事自体が自らの身を守る最大最良の手段である事は明らかだった。 接近してきた人間と接触しないようにするには、人間の手の届かない場所へと群れ自 体が移動、つまり引越をすれば良いのだった。但しそれは、この群れのような大きなゆ っくりの集団にとっては簡単な話ではなかった。 そもそもゆっくり達にとっては引越というものは生命の危険の伴うもので、その危険 性を少しでも抑えるためには充分な下準備が必要なのだった。それは群れごとの引越と なればなおさらで、これほどの大きさの群れとなれば『さらに』であった。 この群れがそれなりに安全な引越が出来るようになるまで準備をするには、どんなに 急いでも数日や何十日程度では済むわけがないのは明らかだった。 そして、今のペースで人間達の『侵略』が進んで、ゆっくり達の行動範囲が狭められ ていき、食糧の充分な確保が出来なくなるなら、充分な引越の準備が出来ない内に食糧 が底をついてしまうのもまた自明だった。 まずは、長ありすは群れのゆっくり達に引越の準備を進めるように伝えた。それが完 全には間に合わない可能性が高くても、努力しておいて困るような対処法ではなかった からだ。季節的な問題としては、赤ゆっくりも少なく、雪も無くなっていたという点に おいて、引越には最悪のタイミングというわけでもなかった。しかし、住み慣れた土地 から離れるという事は、多くの動物がそうであるように、好ましい事ではなかったし、 多くのゆっくり達もそれを望んではいなかった。 ただ、この件に関しては、長ありすは全く妥協はしなかった。いくつかの反対意見を 強く押さえ込み、引越の準備を進めさせた。実際に、不満を漏らしていたゆっくり達も 『今まで群れをしっかり守ってきた長が、そこまで言うのならば』とそれに従った。長 ありす自身も、これが杞憂に済んで群れが無事ならば、自分の強行な態度に不信を持た れる程度は構わないとも思っていた。 一方で長ありすは、人間達の行動の真意を計りかねていた。ただ、ぱちゅりーが群れ に戻ってきた頃に彼女が話していた人間の集落の混乱が、森に訪れつつあるのかも知れ ないというのは容易に想像がついた。 しかし、これだけ大きな群れである。不要な不安を煽ってしまえば、パニックに陥っ たゆっくり達が何をするか分からない。場合によっては、破滅的な行動を取るゆっくり も出てくるだろう。確実な事が分かるまでは、どんな最悪な事態が推測されようとも、 うかつな事を群れのゆっくり達の前では話すべきではない、とも、長ありすは思ってい た。 そうなると、今現在一番欲しいのは、人間達が何をしようとしているのかの情報だっ た。但し、人間達の情報を得るためには、当然の事ながら人間に接触しなければいけな いし、それは危険を伴う事だった。 そんな事を長ありすが近しいゆっくり達に漏らしていたところ、ある歳若い−−と言 っても、立派な成体の−−まりさが、自分にその役目をやらせろと立候補してきた。 このまりさは、身体能力は高いものの、すこぶる他愛のないまりさで、いかにもまり さ種らしい個体だった。それ故に、長ありすも、参謀であるぱちゅりーも、彼を独りで 人間の元に送り込む事は心配だった。 それを聞いて一計を案じたのは、ぱちゅりーの補佐役に就いていたれいむだった。彼 女はその上司のぱちゅりーと同じぐらいの変わり者で、感情の起伏の激しいれいむ種と しては珍しいほどの冷静沈着なゆっくりだった。この群れの生え抜きであるこのれいむ は、その物腰の柔らかさとも相まって、群れの他のゆっくり達からのゆん望も厚かっ た。 れいむはとある別のまりさの元を訪れ、かのまりさと共に人間の元へ向かって欲しい と頼んだ。れいむの旧友であったこのまりさは、身体能力は並以上であるが、逆に少し ばかり臆病な面があった。ただその臆病さが故に、それまでのゆん生における幾度もの 危険を乗り越えて来られたのでもあった。 頼まれたまりさは一瞬考えたようだったが、それでもまるで近所へのお遣いでも頼ま れたかのような軽さで『いいですよ』と答えた。勿論、れいむは命の保証は無い事は告 げたが、それでも彼は『れいむのたのみなら』と答えた。まりさには、彼が断ったられ いむが自分で行くであろう事が分かっていたし、それは確実に旧友を失う事を意味する のだろうと思っていたからだった。 そうして、れいむがぱちゅりーと長ありすに具申したお陰で、二匹のまりさ−−厳密 には、一匹のまりさと一匹のお守り−−が人間の元へと向かう事に決まった。 猫の爪のような細い月が光る夜、二匹のまりさは人間の集落に向かった。 単に人間と接触するだけなら夜間に集落へと入る必要は無かったが、接触する前に何 らかの情報を収集が出来ればそれに越した事はない、という理由で、まりさ達は夜の内 に人間の集落へと忍び込む事にした。あわよくば、というか、情報を充分に収集出来れ ば、人間と接触するという危険を冒すことなく、そのまま森へと帰る事が出来るかも知 れない……。 ただ、得てして希望的観測は現場で否定されるものであり、この場合も目論見通りに はいかなかった。 夜で、まばらではあるが、人通りが無い訳ではない。他愛のないまりさがちょろちょ ろと動き回っては、お守りまりさの肝を冷やす。運が良いのか悪いのか、まだ人間に見 つかってはいなかったが、心配するお守りまりさの気持ちなぞ知らず、他愛のないまり さの方は自分が先陣を切っているのだと言わんばかりに迂闊に動き回っては、自らの勇 敢さ(だと思っているもの)に酔いしれていた。 その無謀な突進のお陰で、至近距離の藪の中から人間達の動きを見たり会話を聞いた りする機会も得る事が出来たのでもあったが。 こっそりと人間達の会話を聞く内に、お守りまりさはある違和感に気がついた。その 会話の内容自体は良く分からなかったのだが、問題はその言葉だった。以前にも彼は何 度か人間達の会話を聞いた事があったが、その時は人間達の言葉がそれほど自分達ゆっ くりが使う言葉と似ていなかったような覚えがあったのだ。もっともそれは、違ってい ると言えるほど違っていた訳でもないのだが、今回耳にした会話は、驚くほど自分達が 使う言葉と似通っていたのだった。 ただ、あまりにも漠然とした違和感だった上、いちいちそんな事を話したとしても、 あの他愛のないまりさはウザったがるだけだろうと思った彼は、その違和感を心にしま ったままにしていた。 しかし、無謀な行動に対する幸運など、おおよそ長続きするものでもない。 民家に興味を示した他愛のないまりさは、その手前にある畑を横切ろうとしていた。 「そこをとおっちゃだめだ!」 お守りまりさが叫ぶ。彼は畑に入った時点で害獣扱いとなり、駆除されても仕方がな いという事を知っていた。人間に捕らえられる事自体は、人間と接触する手段として必 ずしも悪くはない。但し、害獣として捕らえるのはマズい、と、お守りまりさは思って いたのだ。 「ゆうかんなまりささまは、こんなとこはへいきなのぜ!」 お守りまりさの制止も聞かず、他愛のないまりさは畑の方へと跳ねていく。確かに、 見る限りは害獣捕獲用の罠などは見当たらないが、それでも安全な行為ではない。 ボコッ! 「おそ……ゆぐっ!」 他愛ないまりさの台詞が終わるより先に、彼は底まで落ちていた。落とし穴だ。 カラカラン…… 鳴子の音がした。この落とし穴に獲物が入った事を知らせるものだろう。 お守りまりさは、その落とし穴の淵にまで寄った。良く見ると、害獣捕獲用の檻型の 罠が穴の中に縦に仕掛けられている。普通はこんな仕掛け方はしない。つまり明らか に、ゆっくりを捕獲するための物だ。 「ゆぎぎ……、はやくまりささまをたすけるのぜ!」 「まりさ、おちつけ!」 騒ぐ他愛のないまりさに、お守りまりさが一喝する。静かに、しかし強く言われたそ の台詞の迫力に、他愛のないまりさは静かになった。 急がないと人間が来るだろう事は分かっている。ただ幸いにして、檻の入り口はまだ 閉まっていない。うまくやれば助け出す事が可能だ。少なくとも、このまりさを見捨て て自分だけが逃げるよりは後悔はしないだろう。 お守りまりさはそう思い、穴の淵で体勢を低くして踏ん張ると、自分のお下げを穴の 中へと垂らした。 「つかまれ!」 それを聞いた他愛のないまりさは、檻の底から狙いを定めてジャンプする。そして、 お守りまりさのお下げの先に噛み付くようにしてぶら下がった。 穴の中の方へとグイッと引っ張られるお守りまりさ。しかし、それを踏ん張る。踏ん 張り切った感触で、よし、これで引き上げられる、と、彼が確信した時だった。 お守りまりさは何者かに背後から蹴られ、他愛のないまりさと共に穴の底へと落ちて いった。 窓も無い殺風景な部屋。捕らえられた二匹のまりさは、それぞれが透明なアクリルの 箱に入れられ、机の上に置かれていた。 箱は成体ゆっくり一匹がなんとか入るぐらいに狭く、彼らの帽子さえ縁が壁に当たっ て折れているほどだ。天井は空いているが、その床面積の狭さに比べて壁は高く、ジャ ンプで逃げ出す事もかないそうにない。かといって箱を倒して逃げ出そうにも、箱の底 は奇妙な金具で机にガッチリと固定されていてビクとも動かない。 二匹が入れられている箱はお互いに一メートルも離れておらず、しようと思えば会話 も可能だったが、まりさ達はむしろ、その部屋にたった一人居る男に向かって話しかけ ていた。 「ここからだすのぜ! まりささまを、ここからだすのぜ!!」 他愛のないまりさはひたすら叫んでいたが、お守りまりさの方は近くにその男が通り 掛かった時だけ落ち着いて話し掛けていた。 「にんげんさん、ゆっくりおはなしをきいてね! まりさのおはなしを、ゆっくりきい てほしいよ!」 男が彼の言葉に動きを止める事はなかったが、それでもお守りまりさは男に聞こえる ように話を続けた。 「もりのゆっくりたちはね、にんげんさんとなかよくしたいんだよ! だからまりさた ちは、にんげんさんがどうしたいのか、ききにきたんだよ!」 その言葉自体に嘘は無かったが、男は聞いてはいなかった。というか、厳密には聞こ えてはいたが、聞き流していた。 しばらく部屋の中を行き来して何かの作業をしていたらしい男だったが、やがてまり さ達の前で歩を止めた。そして手に持っていた白い箱を机の上に置くと、その中から銀 色に輝く物を取り出した。 それは果物ナイフだった。森生まれ森育ちのまりさ達は、勿論それを知るはずもなか ったが、未知の輝きを見るにつけ、漠然とした恐怖が心の中に湧き上がってきていた。 男は右手に持ったナイフの刃先を、左手の人差し指でなぞるようにしていた。 「つッ……」 不意に男が声を上げた。他愛のないまりさは、男の指先からその中身が流れ出してい るのに気がついた。あの銀色の物体は、人間の体をも切り裂く事が出来るのだ、と気が つくに至って、それは自分達の体など簡単に切り裂けるのだろうと思うと、それまでの 漠然とした恐怖が徐々に具体化してくるのだった。 「さて……」 男は指を口にくわえて血を舐め取ってから短く言うと、今度はその左手でナイフの刃 をつまんで柄を下にすると、まりさ達が入っている箱の間にぶら下げるように持った。 そしてそのまま柄を机面につけると、刃をつまんでいた指をパッと離した。 ほんの一瞬だけ不自然に立っていたナイフは、コトン、カラカラと音を立て、刃先を お守りまりさの方に向けて倒れた。 「お前の方か……」 薄笑いを浮かべながら言った男は、おもむろにお守りまりさの帽子を掴み、ポイと肩 越しに後ろへと放り投げた。 「まりさの、おぼ……」 お守りまりさは、それでも辛うじて歯を食いしばり、言葉の残りを飲み込んだ。た だ、体の震えは隠す事が出来なかった。男は再びナイフを手にすると、お守りまりさの 上にそれをかざした。 「ゆっくりしてね! にんげんさん、ゆっくりしてね!!」 お守りまりさは、男の尋常ならざる殺気を感じ取り、必死になってなだめようとして いた。ただ、ゆっくり史上の多くの場合と同じく、何ら状況を改善する結果とはならな かったが。 ナイフが一閃される。 「ゆぎッ……」 お守りまりさの目の脇がパックリと開き、中の餡子が覗いていた。彼の悲鳴は、それ でも精一杯我慢した声だったのだろう。 「……安心しろ。目は傷つけん。目が見えなかったら、楽しみも減っちまうだろ?」 男はそう言って、お守りまりさを頭上から鷲掴みにし、徐々に力を込める。成体のゆ っくりは片手に余るサイズだが、人間の力が掛けられて無事な訳もない。開いた傷口か ら餡子少しずつが絞り出されてくる。 「ゆ……ぐ……ぐ……」 いくら我慢しても、開いた傷口が意志でどうにかなるものでもない。 「やめるのぜ!」 お守りまりさの苦悶の表情に耐えられなくなった他愛の無いまりさが声を上げた。 と、男が振り返る。 「お前も構って欲しいのかッ?」 そう言うなり、乱暴にナイフを振る。帽子のツバが裂かれた他愛の無いまりさは、恐 怖のあまり声が出なくなった。 お守りまりさは男は再び鷲掴みにされ、そのまま箱の外へと引きずり出された。お守 りまりさは、致死量ではないものの餡子を絞り出されて、ぐったりとしていた。 男はお守りまりさの、あるかどうかよく分からない胴に紐をきつく結んで抜けないよ うにした。 「おそら……」 少しばかり意識を回復したお守りまりさは、それでも反射的に言いそうになった台詞 を抑えようと努力をしていたが、椅子の上に登った男は、天井の梁に紐の端を結ぶよう にして彼を吊るした。そして、まるでゴム動力模型飛行機のプロペラを巻くかのよう に、その哀れなゆっくりの体を水平に回し続け、吊ってある紐をねじり上げていった。 回されている間、お守りまりさは目を回さないようにと必死だったが、吊っている紐 が硬くたわみ始めるほどにねじり上げられた頃合で、男はその手を離した。 ゆっくりと、お守りまりさの体がさっきとは逆方向へ回転していく。いや、ゆっくり なのは最初だけだった。徐々に回転の速度が増すにつれ、彼の体は今まで経験した事の ない不快感を感じていた。それが遠心力によるものだという事は彼が知る由もなかった が、それでも彼は薄れゆく意識を集中して体を堅くし、餡子を噴き出さないようにして いた。 しかし、回転速度が最高速に達しようかという頃、傷が大きく開き、そこから餡子が 噴き出した。そして、それによって体の力を失ってしまったのか、お守りまりさは口と 尻の穴からも餡子を噴き出しながら回転し続けた。 「ゆあ……あぁ……」 やっと声を出せるようになった他愛のないまりさの上に、お守りまりさの餡子が降り そそぐ。 回転が止まった時に紐の先にぶら下がっていたのは、かつてお守りまりさだった物だ った。 他愛のないまりさの入れられた箱は、机の端の方へと移されていた。相棒だったまり さの死体は無造作に部屋の隅っこにあるゴミ箱へと捨てられ、あの男は既に部屋を去っ ていた。 まりさは自分がまだ生きている事を喜ぶ余裕は無く、目の前で相棒が惨殺された事に 対するショックで放心状態だった。普段のゆっくりだったら大いに気にするだろうはず の帽子のツバの裂け傷さえも、忘れてしまったかのように呆然としていた。 ショックのあまりか、まりさは目眩を起こしてよろけた。背が壁に当たり、箱がグラ リと揺れた。 ハッ、とまりさは気がついた。さっきまで箱は机に固定されていたが、移動された 後、つまり今は固定されていないのではないか? だとしたら、この箱から脱出が出来 るかも知れない。 彼は、自分の前の壁に体当たりしてみた。ガタン、と音がして、箱が揺れる。繰り返 し、少しずつ強く体当たりを繰り返す。何度か目の体当たり、まりさなりにかなりの力 を込めたその時、箱は大きく傾き、ついに横倒しになった。 箱が横倒しになったため、したたか顔面を打ちつけたまりさだったが、それでもすぐ に箱から這い出てきた。 彼は部屋の中を見渡した。この部屋の唯一の出入り口であるドアが開いているのを見 つけた。窓の無いこの部屋では、唯一、脱出が可能かも知れない経路だ。まりさはそっ ちへと動きかけたが、ふと思い立ち、机の上を歩いていった。 その目的は、あの白い箱。相棒の体を切り裂き、自分の帽子を切り裂いた、あの刃物 が入ってる箱だった。あの銀色の物体は、人間の体さえも切り裂く事が出来る。これを 持って行けば、きっといざという時に役に立つはず。まりさはそう思ったのだ。 とてもゆっくり出来ない状況にも関わらず、まりさの思考は恐ろしいほど冷静になり つつあった。それはむしろ、狂気に近いものだったのかも知れない。 自分が怪我をしてはたまらない。箱が勝手に開かないように慎重に、しかし無理矢理 に、白い箱を帽子に詰め込む。奇妙な形に変形した帽子を被ると、その重さにバランス を崩しそうになったが、それをこらえて部屋の出口をうかがう。 帽子とその中身を落とさないように慎重に床まで降り、開いているドアへと向かう。 もしそこが行き止まりなら、どの道、脱出はかなわない。まりさは祈るような気持ちで ドアをくぐった。 その部屋には、もう一つのドアが有るものの、それは堅く閉ざされていた。ただ、部 屋には窓が有り、その窓が開くなり、ガラスを破ることが出来るなりすれば、外へと脱 出が出来そうだった。まりさには、ガラスを破る自信は無かったが、いずれにせよ窓の 所にまで辿り着かなければ脱出の可能性はない。なんとか机の上に乗る事が出来れば、 窓にまでは到達出来そうだ。 彼は部屋の中を見回した。そして床に置かれた何かの箱を見つけると、それを椅子の そばまで押し動かした。 重い帽子の中身にバランスを崩しそうになりながらも、まりさは箱、椅子、机と跳ね 登っていった。 窓の際まで辿り着いたまりさは、祈るような気持ちで窓に触れてみた。 ガラガラ……。 窓には施錠されておらず、開いたのだった! まりさは思わず上げそうになった狂喜の声を抑え、窓の外へと飛び出した。無様な着 地のせいで跳ね飛んだ帽子とその中身を拾うと、まりさは森の方へと駆けていった。 ほうほうの体で脱出したまりさは、疲れ切った体を引きずりながらも森の群れの住処 まで辿り着いた。 迎えた長まりさ達はその様子から、命からがら脱出してきたのだろうとすぐに分かっ たが、中でもぱちゅりーと共に迎えたれいむは、あのお守りまりさが死んだのだろうと 直感し、唇を噛んだ。れいむはそれ以上は表情には出さないようにと思ってはいたが、 察したぱちゅりーはれいむを気遣っていた。 実際、まりさが持ち帰った情報は殆ど無かった。害獣として捕らえられ、人間とのコ ミュニケーションも殆ど無く、ようやく逃げ帰っただけなのだから、それ自体は仕方の ない事なのだが、その代償として優秀なまりさ一匹を失った事は痛かった。 長まりさから帽子のツバの裂け傷を気遣われると、その傷を与えられ、相棒のまりさ が殺された事を苦々しく思い出したまりさだが、帽子を脱ぎ、その中に押し込まれてい る白い箱を取り出さねばならない事も思い出した。 帽子に無理矢理押し込んだ箱を取り出す事もまた、それほど楽な仕事ではなかった が、まりさはなんとかそれを取り出すと、箱を開けて中身を誇らしげに見せた。 「むきゅ? これは……、はものさん?」 人間との生活が長かったぱちゅりーは、勿論それが何なのかは知っていた。そこに は、小型ではあるが、数本のナイフや包丁が入っていたのだ。 「これをつかえば、にんげんさんのからだを、きりきざめるのぜ! にんげんさんとた たかって、かてるのぜ!」 まりさは、半ば狂気の表情でその武器の威力を熱弁していた。目の前で相棒を殺され た彼の心に、人間に対する過剰な敵愾心が渦巻いているのは仕方のない事だったが、そ れが危険な事であるというのも、長ありすやぱちゅりーには分かっていた。 ましてや、害獣として捕らえられた以上は、殺されても仕方はないという事も彼女達 は知っていたのだ。 そして、ぱちゅりーは、この『刃物』というゆっくり達にとってのオーバーテクノロ ジーが、かえって群れに危機をもたらすのではないかと、漠然とした不安を感じてい た。 彼女達は、人間への怒りによって疲れも忘れ興奮するまりさをなんとかなだめ、床に つかせた。ただ、長ありすは、残酷な言い方をするなら、このまりさが生きて戻ってき た事自体の方がむしろ群れに悪影響をもたらすのではないか、と心配していた。 彼が無事に帰ってきて欲しくないなどとは、ほんの少しも考えた事は無かったのに。 人間の元へ向かったまりさが殺された事が知れると、群れのゆっくり達は色めき立 ち、人間との対決機運が高まっていった。勿論、長ありすはそれが馬鹿げた事だと思っ てはいたが、それを少しでも長く抑えるには別の手段が必要だと感じていた。 長はゆっくり達が『広場』と呼ぶ場所に群れのゆっくりを集めた。この広場はとある 洞穴にあり、人間でも何十人かが楽に入れるほどの大きさだった。ゆっくりにとっては 『大ホール』とでも言えるような場所だ。その中に群れの殆どのゆっくりが集まってい た。 「みんながにんげんさんをにくむきもちは、よくわかるわ」 長ありすは、群れのゆっくり達に向かって声を上げた。 「でも、たたかいになれば、おおかれすくなかれ、わたしたちもきずつくことになる わ。そんなのは、とかいはじゃないでしょう?」 ざわついていたゆっくり達が、少しだけ静かになった。 「だから、もういちどだけ、にんげんさんとおはなしをするきかいをつくりたいの。お はなしでかいけつすれば、もうだれもきずつかないですむわ」 再びざわつき始めたゆっくり達を静かにさせるため、彼女は語気を強めた。 「こんどは、おてがみをにんげんさんにとどけようとおもうの。それのおへんじがとど くまで、……そう、みっかだけみんなもまってほしいの」 周りのゆっくり達は気がつかなかったかも知れないが、長ありすの表情は明らかに曇 っていた。 「そのおてがみを、とどけるやくめは……」 長がその台詞を言い始めると、広場は静まり返った。誰かが指名されるとでも思った のだろうか。 そんな危険な役目に立候補するゆっくりはそうそういないだろうし、立候補するよう なゆっくりは、そんな役目で失いたくない優秀なゆっくりだろう。だから自分がその役 目をやるべきだろう、と、長ありすは思っていた。 が、よく通る声が長の台詞の続きを遮った。 「わたしがやるわ」 皆の視線が、声のした方へと集まった。そこから前に出てきたのは長の娘のありす。 二匹姉妹の姉の方だ。 もう立派な成体で、将来は今の長に負けず劣らずのリーダーシップを発揮するだろう と、群れの誰もが期待している賢いありすだ。 「……そうね。あなたにまかせるわ。……あしたのひるの、はやいうちにとどけてね」 長は一瞬顔をこわばらせたが、静かにうなずきながら言った。 長が『昼の早い内』と時間を指定したのには訳が有った。 人間は野生のゆっくりにとっては険な存在だが、それでも大人が特に理由もなくゆっ くりを殺す事はそれほど多くはない。むしろ子供、それもある程度成長した子供が一番 危険なのだ。 長は経験上、そんな子供達に一番見つかりにくい時間帯が昼の早い内だと知っていた のだ。 任命を受けて、誇らしげな顔で戻ろうとするありすを、親友でもあるぱちゅりーが引 き止める。と、ありすはわざと周りに聞こえるような大きな声で言った。 「こんなとかいはなおしごと、わたしにふさわしいでしょう?」 「ありす、わかってるの? しぬかもしれない……、いえ、ほぼまちがいなくころされ るようなしごとなのよ?」 ぱちゅりーが押し殺したような低く小さい声で言うと、ありすは一瞬、厳しい顔つき になった。 「ぱちゅ、いまありすができることは、これぐらいしかないのよ……」 ぞっとするほど静かに言われたありすの台詞に、ぱちゅりーは彼女の覚悟を感じ取っ た。そして、彼女が細かく震えているのを見て、それ以上は何も言えなかった。 その夜、ぱちゅりーは自分の巣穴にこもり、人間に宛てる手紙を書いていた。長あり すに頼まれた物だ。この森においてはとても貴重な白い紙に、それはそれは慎重に文を したためていた。その紙は、彼女がかつて人間の集落から森に戻るときに持ち帰り、そ の後も大事に取っておいた物だった。 その手紙は言わば最後通牒ではあったが、これの出来がそれを届けるゆっくり−−親 友のありす−−の命にも関わるかも知れないと思えば、慎重に渾身の文章を作らざるを 得なかった。 それの文脈は単純だった。かいつまんで言うなら、『森のゆっくりが人間の邪魔にな るなら退去するので、引越が終わるまでの間だけ待ってください』という事だ。 それでも彼女は、自分の全知全能を傾けて文を綴っていった。意味の取り間違いが起 きないように何度も推敲した文章を、人間の大人が十分に読みやすいようにふんだんに 漢字を使って書き記していった。それは少なくとも、この群れの他のどのゆっくりでも 出来ない事だった。 そうして書き上げられた手紙は、人間の書いた文章と比べても遜色が無いと言える物 だった。 長ありすは今はもう成体となった娘達とは別々に暮らしてはいたが、その晩のご飯だ けは久しぶりに長の巣穴で一緒に摂った。 三匹揃っての食事はそれが最後になるかも知れないと全員が理解してはいたが、誰も その話題は出さず、多少の不自然さはあったものの努めて明るく食事を楽しんでいた。 長ありすの娘達が各々の巣穴に帰ってからしばらくした頃、書き上げた手紙を渡すた め、ぱちゅりーが長の巣穴を訪れた。 彼女は、奥の壁を向いたままの長の背中に声を掛けた。 「おてがみさん、できたわよ」 「ありがとう。さすがはとかいはなぱちゅりーね」 背を向けたまま答えた長の声がわずかに震えているのに、ぱちゅりーは気がついてい た。恐らく泣いているのだろう。当たり前だ。娘を死地に送り出さなければならない親 が、悲しくない訳がない。ただ、そこまで覚悟を決めている親子に、ぱちゅりーが掛け られる言葉もまた、無い。 「……じゃ、ここにおいとくわね」 ぱちゅりーは丁寧に折り畳んだ手紙をそっと置き、長の巣穴を後にした。長ありすも また、自分が泣き顔を見られたくないという事をぱちゅりーが察してくれた事を分かっ ており、無言の内に感謝していた。 朝やや遅く、手紙をたずさえたありすが出発するのを、長……と言うより母と妹のあ りす親子と、参謀のぱちゅりーとその補佐のれいむが見送りに出ていた。 「みっかたってももどらなかったら、しんだものだとおもって。いきていたら、そのま えにかならずかえるし、それいじょうまっても、むれのみんながなっとくしなくなるだ けでしょうから」 手紙をしまったありすは、言っている内容に関わらず、ひどく軽い調子で言った。そ れは勿論、見送る彼女達に極力心配を掛けないようにとの心配りであり、自分の仕事の 重要性を理解していないという訳では、決してなかった。 「わかったわ。……がんばってね」 他にも色々な言葉を掛けられたような気もするが、ありすは母から最後に言われたそ の言葉しか覚えていなかった。言葉を覚えていなくても、思いは伝わっていたが。そし て、必死に涙をこらえる妹の表情も忘れられなかった。 ありすは、人間の集落を目指した。 まりさが人間に殺された事が知れ渡って以来、群れのゆっくり達の殆どは、引越の準 備よりも人間との戦いに向けた準備を急ぐようになっていた。 生還したまりさが持ち帰った刃物だけでは、勿論、群れのゆっくりには行き渡るはず もなかったが、それでも殆ど全員が何らかの得物を持つようになっていた。それは、 『宝物』として持っていたか、あるいはつい最近どこからか拾ってきたであろう物で、 錆びた釘やらナイフだったり、時間を掛けて磨いて刃物のようにした硬貨やら石だった り、それさえも手に入らない場合は、昔ながらの木の枝だったりした。 刃物を得物として使う場合の心得も広まっていった。 旧来の木の枝を武器とする場合は主に突く事しか出来なかったので、口にくわえた状 態で硬い物に当たった場合は自分の口内に刺さって自滅する事があった。 しかし、ナイフや包丁といった刃物を使う場合は相手を斬る事が出来るので、口から 横にくわえた状態で敵の横をすり抜けるようにして攻撃する事が出来る。つまりこうす る事によって、自滅する危険性を減らす事が出来る。こうした刃物の使い方が広まって いったのだ。 もっとも、そうした戦いの準備は、長ありすやぱちゅりーが薦めていたものではなか った。そもそも彼女達は、ゆっくりが人間にまともに戦いを挑んで勝てるとは露ほども 思ってはいなかったのだから。 子供達の笑い声が響いている。 日曜の昼早く。村のはずれ、川の近く。 ゆっくりありすであったろう物体が転がっていた。 村の子供達に捕まり、サッカーボール代わりに蹴りまくられたそれは、中身のカスタ ードクリームをぶちまけ、全く原型を留めていなかった。 「あぁもう、うだら汚れちったさー」 一人の子供がカスタードクリームで汚れた靴を洗おうと川の中へと入っていくと、そ れに何人かの子供が続く。 「これ、投げんでいいん? ゴミ放っておくと怒られるっしょ? あれ……?」 そんな中、ゴミとなった物体の始末を心配していた一人の子供が、そのカチューシャ の下に挟まれていた紙を見つけた。 「なんじゃこりゃ?」 その子供が折り畳まれていた紙を広げようとすると、川から戻ってきた一人の子供が 鮮やかに奪い取って広げ、視線を落とした。 「んー……、ムズコい漢字ばっかで、さっぱ分からんべや……」 その子供は、不愉快そうな顔をすると、手早く紙を折り始めた。 「したっけ、こうじゃ!」 乱暴に投げられた紙飛行機は、それほど飛ばずに川に落ち、そのまま流れていった。 「はんかくせー!」 子供達の笑い声が響いている。 結局のところ、人間に手紙を届けに行ったはずのありすは、その期限の三日の内には 戻らなかった。それは喜ばしい事実ではなかったが、非情な言い方が許されるなら、三 日の期限を切った事は不必要な苦悩の時間を延ばさずに済んだという事でもあった。 期限を過ぎた事で、群れのゆっくり達の人間に対する敵愾心は既に抑えが利かない状 態になりつつあったが、ぱちゅりーはそれでも、ありすが無事に帰ってくればという希 望を抱いていた。 ただ、どちらかと言えば、群れのゆっくり達を抑えるためというより、ありすを独り で手紙を届けにやった事への悔恨によってであったが、ぱちゅりーはありすを探す事に しようと決めた。 「やるかいがないかもしれない、きけんなおしごとよ。それでも?」 ありす探しに同行したいと言うれいむに向かってぱちゅりーは言ったが、れいむは顔 色一つ変えずに答える。 「れいむはね、ぱちゅのおしごとをてつだうようになったときから、きめていたの」 そして、ぱちゅりーの顔を真っ直ぐに見て続けた。 「あなたとならば、どこまでも」 切迫した状況にも関わらず、なんだか気恥ずかしくなったぱちゅりーは、苦笑を浮か べるしかなかった。 それでも無断ではありす探しに出ようとしなかったぱちゅりーは、長ありすの元に許 可を求めに行った。 娘を探しに出る事自体への親としての本心はどうだったかは確かではないが、その可 能性の低さの割に危険の大きい任務にぱちゅりー達をあてがう事に対しては、長として 許可する事は出来なかった。 ただ、ぱちゅりーも頑として引かなかった。最後のわがままを聞いてほしいと言う彼 女に対して、それならばせめて何らかの援護をしたいと思った長ありすは、邪魔になら ない程度に何匹かのお供を連れて行く事を条件に、彼女の願いを許可する事にした。 多くのお供を連れ歩いて賑やかに実行出来るような任務ではないので、長ありすは、 彼女が最も信頼するゆっくりの内の二匹だけ、まりさとありすをお供としてあてがう事 にした。 長が許可を出す事に対する交換条件ではあったが、ぱちゅりーは恐縮してそのお供を 賜った。そしてその優秀なお供は、実際にぱちゅりー達の助けとなった。 期限切れの日の宵の口、ぱちゅりー達四匹は住処を後にした。 一夜明け、群れのゆっくり達は出撃準備が整っていた。長ありすは勿論、そんなもの は実際にはままごと程度の物だとは思っていたし、いずれにせよ人間とまともに戦って 勝てる訳もないとは思っていた。 ただ彼女は、これ以上群れのゆっくり達に自制を求めても、その人間に対する憎しみ が、自分を含めた群れの内部に対する不満に変わり、群れが内部から崩壊するであろう 事も分かっていた。 そこで仕方なく、長は『出撃』する事にしたのだ。実際に人間との戦いになったら、 最悪の結末を迎えるだろう事は想像に難くない。ただ、その『出撃』が『ちょっとした 遠出のお散歩』で終わってくれたら、という希望もわずかには持っていた。 もう一つ、長ありすは最悪の事態を想定して、策を講じていた。子ゆっくりと赤ゆっ くり全員、そして、その子守役の十数匹のゆっくり達を、住処に残していく事にしたの だった。勿論、本気の戦いとなれば、幼いゆっくり達は邪魔になるし、危険に遭わせる わけにもいかない。ただ、この場合は、そういった理由を付ければ納得して残るゆっく り達もいるだろうし、恐らく全滅するであろう人間との戦いになったとしても、残され た彼らは戦いと関わり合わずに生き延びてくれるのではないか、という考えの方が大き かった。 洞穴広場に幼いゆっくり達と子守役を残してはいたが、その入り口前にその他のゆっ くり達は集まり、大きな集団となっていった。そしてそのゆっくり達は、各々が武器を 携えていた。 麗かな陽気の日の朝、それにそぐわない殺気立ったゆっくりの集団が、人間の集落へ と向かって動き出した。 ぱちゅりー達は夜の内に人間の集落へと忍び込み、行方不明となっていたありすの捜 索をしていた。四匹で交互に仮眠を取りながらも一晩中探していたが、それでも全く、 手がかりさえも見つからなかった。 明るくなるにつれ、人間との接触の危険を避けるために徐々に人家からは離れていっ たが、それでもぱちゅりー達の捜索は続いていた。 「にんげんさんよ!」 朝になり、彼女達が人家からやや離れた草むらを探っていた時、周りを見回していた ありすが、小さく、それでもぱちゅりー達全員に聞こえるように、強く叫んだ。と、四 匹全員が草むらで体勢を低くして隠れた。 あ、流石だ、と、ぱちゅりーは思った。普通のゆっくりは、こう咄嗟に物陰に隠れ、 一言も発さないなどという事は出来ない。言ってみれば、それぐらい間抜けな生物だ。 しかし、自分とれいむはともかく、お供のまりさとありすも見事に隠れているのだ。ま りさに至っては、言われるまでもなく帽子を脱いで背を低くしている。よほど『訓練さ れた優秀な』ゆっくりでないと、こうはならないだろう。 彼らはそれまでも良く働いてくれてはいたが、長ありすがこの二匹をお供につけた理 由が一段とはっきり分かり、不謹慎だとは思ったが、ぱちゅりーは少しばかり愉快な気 分になった。ただそれと同時に、この優秀なゆっくり達は自分の身を犠牲にしてでも生 きて帰さなければならないとも思っていた。 と、ぱちゅりーの目には、ありすが見つけた人間達の姿が映った。それは、どうやら 森の方へ向かおうとしている三人の男達だったのだが、その中の一人が銀色の箱のよう な物を持っているのに気がついた。 ぱちゅりーは、その箱のような物に見覚えがあった。『ビデオカメラ』とか言ったは ず……。人や物の動きを記録できる物だ。 あの男達は何をしようとしているのだろう? 一体、何をしに森へ向かっているのだ ろう? 言いようのない不安が、スコールの黒雲のようにぱちゅりーの心に広がる。た だ、群れの本隊は、あの聡明な長ありすが率いている。きっと大丈夫だ……。ぱちゅり ーはそう思い込む事によって、自分達の任務に集中しようとしていた。 人間の集落へと向かって進むゆっくり達。長ありすにとっては憂鬱なその進軍は、中 にはピクニック気分の暢気なゆっくりもいるのだろうが、その規模も相まってそれほど 静かなものでもない。人間達にいつ見つかってもおかしくない状態だったが、住処から はそこそこ離れたと言えるほどに進んだ頃、人間に遭遇する事になった。 そこに現れた人間達は、三人の男だった。先頭の男が家庭用の小さなビデオカメラを 構えているのを除けば、いずれも素手のようだった。 男達と対峙したゆっくり達は、それでもまだ長ありすの制御によって沈黙を保ってい た。群れのゆっくり達は既に、人間達と戦うものだと思っていたが、長は人間との戦い になれば間違いなく群れは壊滅すると知っていた。それ故、最後まで人間との戦いは避 けようとしていた。 「にんげんさん、おはなしがあるわ」 長ありすは、努めて静かに話を始めた。これからする話次第で群れの運命が決まるか も知れないと思えば、慎重に話をせざるを得なかった。 「にんげんさんが、なぜもりにかべさんをたてているのか、おしえてほしいの」 長ありすの声に男達は誰一人、そして何も答えない。 「もりのゆっくりが、にんげんさんにめいわくをかけたのなら、それはあやまるわ」 ゆっくり達は、何故そこまで長が人間達に対して下手に出るのかが理解出来ず、不快 な思いをつのらせていた。勿論本来なら長自身のプライドも傷つくものだったが、群れ のゆっくり達の命が助かるならば、その程度の代償は取るに足らないと彼女は思ってい た。 「だから、にんげんさんがわたしたちになにをのぞんでいるのか、おしえてほしいの」 男はまだ無言のまま、ビデオカメラを向けたままだった。 一瞬の静寂。と、人間からの答えが無い事に苛立った一匹の若いまりさが、怒声を上 げた。 「なんとかいったらどうなのぜ?!」 ビデオカメラがその方向へと向く。 「まりさ、やめなさい!」 長の声も、いきり立ったまりさを止める事は出来なかった。次の瞬間、そのまりさは 口にしたナイフを振りかざし、ビデオカメラを構えている男に飛び掛っていた。 ゆっくりの突進を避ける事など簡単な事だったろうが、その男は避けるというほどに は避けなかった。ただ冷静に、そのナイフが自分のデニムのズボンに切り傷を付ける様 子をビデオカメラに収めていた。 と、その男は、他の二人の男の方を振り返ってうなずき合うと、やはり無言のままゆ っくり達に背を向けて走り出した。 「にんげんさんが、にげだしたのぜ!」 誇らしげにナイフを掲げたそのまりさの声を聞き、ゆっくり達は勝どきのような声を 上げていた。彼らはその『勝利のようなもの』に酔いしれていたが、長ありすは最後の 交渉が決裂してしまった瞬間だと認識し、それまで抑えていた体の震えが止まらなくな っていた。 熱狂するゆっくり達の渦の中、長ありすは娘−−帰ってこなかった娘ありすの妹−− を呼び寄せ、手早く二言三言伝えると、ぱちゅりー達がいるであろう方へと走らせた。 人間に対する勝利に沸くゆっくり達は、最早、長の制止さえまともに聞かないほどに 士気が上がり、集落へ向かってと歩を進めていた。 そこにはハーメルンの笛吹きが居るだけだというのに。 ぱちゅりー達の元へありすがやってきた。伝令として遣わされた長の娘のあのありす だ。よほど急いで走ってきたのか、あるいは、ぱちゅりー達を探すのに手間取ったの か、おしゃれなありすとは思えないぐらいに泥だらけだ。足にも自信があったはずの彼 女だが、表情にも疲労の色が浮かんでいる。 「ありす! だいじょうぶ?」 心配したぱちゅりーが声を掛けたが、ありすは構わず伝令の任務を遂行した。 「おさたちは、にんげんさんたちとあったわ。でも、こうげきされたにんげんさんが、 にげていってしまって……」 「むきゅ? なぜ? おさはわかっているはずなのに……」 ぱちゅりーはれいむと困惑の表情の顔を見合わせた。 「こうふんしたゆっくりが、にんげんさんにおそいかかってね……」 ありすが苦々しげに言ったところで、ぱちゅりーははたと気がついた。人間の大人達 はそう安易にゆっくり達を殺したりはしない。ただ、ゆっくりが人間に害をもたらした となれば別だ。遠慮なく害獣として駆除する。ましてや、刃物を持ったゆっくりが人間 を襲ったとなれば……。 そして、さっき見た光景−−人間がビデオカメラを持っていた−−を思い出し、目眩 のような感覚と共にある結論に辿り着いた。人間達の挑発的な行動から、ゆっくり達に 攻撃させる事までの全てが、人間達の罠だったという事に気がついたのだ。無念と共に 襲い来る吐き気は、恐らく彼女が並のぱちゅりーだったら抑える事が出来なかっただろ う。 「あと、ぱちゅ。おさからあなたに、でんごんがあるわ」 そこから後は、絞り出すような声になってありすが言った。 「『あとはたのむ』と……」 そこまで言ったありすの目からは、ボロボロと大粒の涙が流れ始めた。恐らく、長あ りす、いや、母ありすが死を決意しているのが分かっていたからだろう。 「ありす……」 ぱちゅりーとれいむが優しく体を寄せようとすると、ありすは一瞬だけ後ろを向い た。その短い間に彼女の涙が乾く事はなかったが、前に向き直った時には、もう既に涙 は止まっていた。 精神的にかなりまいっていたはずだが、最悪の事態の中でも最善の行動を探っていた ぱちゅりーの判断は、それでも早かった。 「ありす。わるいけど、もうひとしごと、してくれるかしら?」 「はい?」 ありすの答えは疑問のニュアンスを含んでいたが、それはぱちゅりーの判断への疑問 ではなく、ぱちゅりーの命令を間違いなく聞こうという意志の表れだった。 「これから、すみかさんにもどって、のこっているゆっくりたちに『たべものさんをも てるだけもって、おちびちゃんたちをつれてにげて』とつたえて。なるべくにんげんさ んたちのむらから、はなれるようにね。わたしたちも、あとからいくわ」 ぱちゅりーの言葉を聞いて、ありすは静かにうなずいた。 「わかったわ。まかせておいて」 「つかれているのに、わるいわね……」 ぱちゅりーが、自分ではどうにもならないありすの体の事を案じて声を掛けると、気 を使わせまいとしたありすは、いつもの高飛車な表情を作ってみせた。 「まらそんさんは、とかいはなすぽーつなのよ。もんだいないわ」 心身共に疲れているはずのありすは、それでも普通のゆっくりよりは遥かに速いスピ ードで駆けていった。 「おさのこは、みんないいこにそだったわね……」 小さくなっていくありすの背中を見ていたぱちゅりーがつぶやいた。それを聞いてい たれいむも、優しい顔でありすの背中を見ていた。 「あのおさのこたちですもの」 ゆっくり達の住処からは大分遠くはなったが、それでも人間達の集落には届かない小 高い丘。長にさえ制御が困難になった興奮状態のゆっくり達の前に、人間の集団が姿を 現した。 彼らは総勢十数人だったが、ゆっくり達にとっては、『自分達よりはるかに少ない』 としか認識出来ない。興奮状態でなければもう少しはまともな判断が出来たかも知れな いが、今の彼らには個体の戦力差なぞ考えられるわけもなく、『さっき人間に勝ったん だ。今度も負けるはずはない』と、間違った根拠の元に人間に勝てると思っている無謀 なゆっくり達と化していた。……ただ一匹、長のありすを除いては。 人間達は手に手に道具を持っていた。四本鋤や銛のようなもの、大きなトングやハン マー……、まちまちではあったが、そのいずれもがゆっくり駆除を目的として持ち出さ れた物であろう事も明らかだった。 彼らは、台車に乗せた自動粉砕機も運んできていた。大規模なゆっくりの駆除には、 こうした粉砕機が使われる事が少なくない。 脆弱な体の割になかなか死なないゆっくりという生物は、その最中に人間の言葉で騒 ぐ事が駆除における最大の難点である。 一般に大量駆除の場合は、袋に詰め込んで収集し、その後にまとめて殺処分する事が 多いが、ゆっくりにそれを行うと、袋に詰め込んだゆっくり達が延々と泣き叫び、悪態 をつき、懇願をする状態が延々と続く。鳴き声のようなものだと分かっていても、人間 の言葉で発せられるそれは、駆除人の精神衛生にとっては良いものではない。 ゆっくり達に騒がせないようにするには、一気に潰して即死させるのが一番だが、そ れはそれで周囲が汚れ、その後始末が面倒になる。 そこで、粉砕機が使われるようになったのだ。ゆっくりを粉砕機に放り込んでしまえ ば、周囲を汚す事もなく処分が出来るからだ。勿論その瞬間、聞くに堪えないゆっくり の悲鳴がする事もあるが、延々とゆっくり達の『鳴き声』を聞き続けるよりは遥かにマ シだろう。 長ありすは元より、人間達と戦って勝てるとは思っていない。群れ全体が興奮状態と なり、自分の制御がまともに利かなくなった時点で、破滅へ向かっているのも分かって いた。ただ、暴走する群れを救う手段が何か無いか、最後まで考えてここまで来たし、 たとえ救う事が出来なくても、最期まで長である自分が群れと共に居るべきだと思って いた。 このまま人間達と戦えば、まず間違いなく群れのゆっくり達は全滅するだろう。逃げ てくれれば、全て助かるとは思えないが、それでも何匹かは生き残ってくれるかも知れ ない。ただ、人間達に勝利する事を盲信している群れのゆっくり達が、自ら逃げ出すと はとても思えない。 思えば、この群れのゆっくり達は、長い間ゆっくりし過ぎていたのだ。長い間、人間 と接触をしないでゆっくりしていたため、人間の恐ろしさを知るゆっくりが殆どいなく なってしまったのだ。それが今の盲信につながっていた。 長ありすは、このゆっくり達が逃げるきっかけと成り得る最後の可能性を考えてい た。彼らは自分達が人間達に勝てると思っているから、逃げようとしていない。ならば もし、たとえば長である自分が人間に殺されれば、旗を巻くのではないかと。そう考え た長ありすは、最期の賭けに出た。 長ありすは群れのゆっくり達を押し留め、自ら独りで人間達の方へと跳ねていった。 彼女の思いも知らず、どんなに見事に人間をやっつけるのかと他のゆっくり達は期待し ていた。 「ゆぐっ!」 それが長ありすの声だという事には気がついたものの、ゆっくり達には一瞬、何が起 こったのかが理解できなかった。一人の男が持つ四本鋤が長ありすの体を貫通している のだと彼らが認識しきるより早く、串刺しの彼女の体は宙を舞い、そのまま粉砕機へと 放り込まれた。 「ゆぎいぃっ……!!」 意識さえも粉砕される直前、長ありすは悲痛な悲鳴を上げた。しかし、本来なら彼女 は、そんな事で悲鳴を上げるような弱いゆっくりでもなかった。ただ、自分の悲惨な死 を群れのゆっくりに印象付けて、彼らが逃げ出してくれればという、彼女なりの最後の 策だった。結果はどうあれ、彼女は最期の瞬間まで立派な長だったのだ。 ゆっくり達の時間が一瞬止まった。いや、一瞬、何が起きたのか認識出来なかった。 認識出来ていたとしても、意識がその事実を拒否しようとしていた。だが、その恐ろし い事実は、正に目の前の真実だった。 長が、や、ら、れ、た、……! 長ありすが命を賭した策は、しかし失敗に終わった。あるゆっくりは怒りのあまりに 自暴自棄に突進し、あるゆっくりは絶望のあまり脱力し、あるゆっくりは恐怖のあまり 硬直していた。ただ、まともに逃げ出そうとするゆっくりはいなかった。それは群れか ら離れる事の不安によるものも有ったのかも知れないが、いずれにせよ結果は、その丘 で死ぬゆっくりの数を減らせなかっただけだった。 人間達に向かって突進していったゆっくりの多くは、人間に触れる事さえ出来ずにハ ンマーで叩き潰されたり、踏み潰されたりした。ちょこまか避けようとしたゆっくりも いくらかはいたが、それでも四本鋤で地面に刺し止められてから潰されるだけだった。 運良くその足に刃物で斬り掛かれたゆっくりも、対策としてズボンの下に脛当てをし ているであろう人間にはさして威力無く、また、ゆっくりごときの動きが人間に何度も 通用するはずもなく、二度は触れる事が出来ずに死ぬだけだった。 一方で脱力したり硬直して動けなくなっているゆっくり達は、全く事務的に処理され ていった。四本鋤や銛のような物で刺されたりトングで掴まれたりしては、持っていた 得物は簡単に奪い取られて回収箱に放り込まれ、ゆっくり本体は粉砕機に放り込まれ た。 粉砕機を中心に、丘のあちらこちらで上がるゆっくり達の悲鳴は、その他のゆっくり 達をより恐怖させ、硬直させ、人間達の作業を捗らせるだけだった。 ぱちゅりー達が洞穴広場に戻った時でも、まだ何匹かのゆっくり達−−子ゆっくりと 赤ゆっくりを含む−−と先に着いていたありすがまだそこに居た。 「あぁ、ぱちゅ……。ごめんなさい。まだ、どうしてもここをうごきたくないっていう ゆっくりたちがいて……」 「おつかれさま。だいじょうぶよ。あとはわたしたちが……」 それがありすの失策ではない事を十分知っていたぱちゅりーは、労をねぎらう声を掛 けたが、その間にもれいむは、残っているゆっくり達に向かって厳しい表情で、厳しい 口調で怒鳴った。 「あなたたち! ありすにいわれたことがわからないの? おちびちゃんたちをつれ て、たべものさんをもって、でていくのよ!」 普段、温厚で物腰の柔らかいれいむがひどく怒っているのを見て、それまでざわざわ と騒いでいた残りのゆっくり達は凍りついた。他のれいむ種ならともかく、このれいむ がこれほど厳しい態度を取ったのを見た事など、それまでのゆん生で一度も無かったの だろうから、それも無理もない話だった。 「ゆっくりいそいで!」 畳み掛けるように続けたれいむの言葉で、それでも渋々、ゆっくり達は準備を始め、 そして広場を後にしていった。 ぱちゅりー達に同行していた二匹を含めた他のゆっくり達を送り出し終わる頃、ぱち ゅりーはありすに向かって言った。 「ありすも、はやくにげなさい」 彼女がその台詞を言うのを予測していたかのように、ありすは即座に聞き返した。 「あなたたちは?」 「あとからいくわ」 ぱちゅりーの答えに、ありすは少しばかり口元を歪めた。 「そう……。わかったわ」 ありすは微妙な間と調子でそう言い、入り口で一度だけぱちゅりー達の方を振り返る と、そのまま去っていった。 「うそつきね。ありすもわかっているはずよ」 ありすを見送り、二匹きりになってから、れいむは小声で言った。が、ぱちゅりーは それには答えず、少しばかり強い調子で言った。 「れいむも、はやくいきなさい」 「ぱちゅは、ここにのこるんでしょ」 さっきとは全く違う穏やかな顔でれいむが言うと、ぱちゅりーも穏やかに言った。 「……わたしには、さいごをみとどけるせきにんがあるの。……れいむは、まだしぬべ きじゃないわ」 れいむは美しくも儚げな微笑をぱちゅりーに向けた。 「いったでしょ。『あなたとならば、どこまでも』って……」 ぱちゅりーはクスッと笑った。恐らく、乾いた笑いだったろうが。 その丘にいたゆっくりは、三種類のゆっくりだけだった。粉砕機に入れられ、既に原 形を留めないもの。地面上で潰され、既に絶命しているもの。体皮を裂かれ、瀕死の状 態で横たわるもの。 餡やクリームで染まったその丘の唯一の例外は、あのまりさだった。 「あぁ、あの時のゆっくりか……」 近寄ってきた男の内の一人が、まりさの帽子のツバの裂け傷を見つけて言った。ナイ フを口で構えたままのまりさがその男の顔を見上げると、意識がそれを誰なのか認識す るより先に、ナイフと歯がカチカチと音を立て始めた。 あの臆病な……、いや、勇敢な相棒まりさを殺した、あの男だった。 「おまえはぁ……!」 まりさの震えた声を、男のいささか軽い調子の声がさえぎった。 「お前が最後まで残っていたとはな。……いや、お前には感謝してるよ。よく働いてく れたもんだ」 「ゆ……?!」 まりさは男の言っている意味が分からなかった。その様子を察した男は、薄ら笑いを 浮かべた。 「分からないか? ま、お前に理解出来るかどうか分からんが、冥土の土産に教えてや ろう」 男は冷ややかな調子で続けた。 「実はな、ゴルフ場建設の話が持ち上がってな。この辺りの土地を整地しないといけな くなったんだよ。ただ、私有地とはいっても自然に手を入れるとなると、色々と周りが うるさくてな」 まりさは『ゴルフ場』が何を意味しているのかは知らなかったが、話自体を概ね理解 するのには問題はなかった。男は苦々しげな表情に変わった。 「特に、動物愛護団体の連中とかがな。ま、他の動物達は、別に居ても困らんし、嫌な らば勝手に逃げるだろうから問題は無い。問題なのは、お前らゆっくり共だ。何かとい うと人間に楯突く。自分らの立場も能力も考えずにな。だから、この森からとっとと駆 除しちまいたかったんだ。しかし、駆除するとなると、動物愛護団体の連中がうるさい んだ。連中は現実のゆっくり共がどんなに厄介かなんざ、知らんし気にもしないから な」 そこまで話すと再び、男の表情は薄ら笑いになった。 「しかしな、刃物を振り回して人間を襲う害獣となれば、話は別だ。そんな危険な害獣 を駆除する分には、流石の動物愛護団体もそうそう文句は言ってこんさ」 まりさにはまだ話の核心は見えてこなかったが、漠然とした恐怖によってその体の震 えは大きくなってきていた。男は薄ら笑いのまま、今度はまりさの顔をしっかりと見据 えて話し続けた。 「お前は実に良く働いてくれた。いや、期待以上だったよ。うまい事逃げ出したと思っ たのか? 誰にも後をつけられなかったでも思ったのか? 全く餡子脳だな。いや、怒 るなよ。ほめ言葉さ。お陰でお前らの巣穴が集まってる場所も分かったしな」 男はほんの少しだけまりさに近づいた。まりさの震えは止まらない。 「仲間を殺されたゆっくり共が逆上して、人間を襲撃するところまでやってくれればこ っちとしては御の字だったんだが、まさか刃物を使うところまでやってくれるとはな。 本当に見事に、こっちの計画通りにやってくれたよ。……あぁ、まだ巣穴には何匹か残 ってるのか? 安心しろ、そいつらもそろそろ片付いてる時分だ。……お前には感謝し てるよ。餡子脳のゆっくり君よ」 まりさは何時の間にか、口にくわえていたはずのナイフを取り落としていた。体の震 えどころか、目からあふれ出る涙も止まらなくなっていた。 自分の身に危機が迫っているための涙ではなかった。群れのために命を賭けて働いた はずなのに、たとえ人間の計画にはめられたとはいえ、それは結果として群れのゆっく り達を皆殺しにしてしまった。その後悔が涙を流させていた。 あの時から、悪夢のシナリオに乗せられてしまっていた。 きっと、自分さえ生きて戻らなければ、この悲劇は起きなかったはず。 ちっぽけな自分の命など、あの時に捨てていれば良かった。 ゆっくりしていたあの群れは、今やこの丘を覆う汚物となってしまった。 うらむ相手は、自分自身なのか? いくら後悔しても、それはもう遅い。 「……にんげんさんは……」 まりさは、ゆん生で最初で最期の、人間達に対する呪いの言葉を口にした。 「みんな、しねえぇ!!」 まりさが最期に見たのは、自分の涙で歪んだ視界の向こうに見えた靴底だった。 ぱちゅりーとれいむは、ただ静かに待っていた。 たった二匹にとってこの広場は広過ぎたが、暫くの間、静寂のみが支配していた。ぱ ちゅりーはただ静かに最期の時を待ち、れいむはただぱちゅりーに寄り添っていた。 にわかに人間達の気配がし、静けさは破られた。 入り口から数人の人間がバタバタと入ってきた。二匹のゆっくりがたたずんでいるの は見つけたが、見回しても他のゆっくりが全く居ないのをいぶかしがっていた。 ぱちゅりーは、ある事に気がついた。その先頭で入ってきた男に見覚えがあったの だ。恐らく、並のゆっくりであったら到底憶えていなかったであろうが、それは彼女が 集落に人間と共に住んでいた頃の記憶だ。老翁の近所の住民だったその男には、いくば くかの世話になった覚えがあった。心静かに最期の時を待っていたぱちゅりーだった が、ほんの少しだけ懐かしく切ない感情が込み上げてきた。 その男は、じっと自分の事を眺めているぱちゅりーを不思議そうに見ていたが、やが て彼女があのぱちゅりーだという事を思い出したようだった。 「お前は……」 実際には、ほんの数秒だったのだろうが、視線を合わせた男とぱちゅりーの間には、 言葉にはしない思いが交錯していた。 止まった時間を動かしたのは、ぱちゅりーの方だった。 「かくごは、できています」 彼女は静かに、しかし、はっきりと言った。 「……そうか」 男はその言葉に一瞬戸惑ったが、そう答えると隣の男に目くばせし、それぞれがぱち ゅりーとれいむの前にしゃがんだ。男達はそれぞれが、彼女達を驚かさぬよう静かに左 手を出し、自分の前のゆっくりの視界を覆うようにその目の前に手の平をかざした。 そして男達は、せめて苦しまぬよう、一息にそのゆっくり達を叩き潰した。 あれから二年が経った。 この森は、ゆっくり達を全く見掛けなくなった事を除くならば、何も変わっていなか った。 急激な不況の影響で、ゴルフ場建設の計画は白紙に戻っていた。結局のところ、森の 木々が伐採される事も、草むらが整地される事もなかった。ゆっくり以外の小動物は、 その自然の恩恵に浴している。 ただ、ゆっくり達が姿を消しただけだった。 わずかに生き延びたはずのゆっくり達は、どこへ行ってしまったのだろう? どこか 他の土地で生きているのか? それとも、生き延びる事なく全滅してしまったのか? それは分からない。 ただ確かなのは、この森には一匹のゆっくりも存在しない事。 神も悪魔も降り立たぬその森で、ゆっくりの姿を見る事はもう無い。 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る まっちょりーほどじゃないけど 鍛えればパチュリー種も元気になるのか むしろ、思いの力の影響が強いのかな? -- 2012-09-02 02 37 12 直後に書いてあるよ。 普段聞く人間の言葉は(自分達と違う)方言だったけど、その時の人間は(自分達と同じ)標準語を喋っていたということ。 つまり、地元じゃない人間がそこにいたということ(お守りまりさは、そこまでは頭が回っていないけど)。 -- 2011-10-27 23 35 53 お守りまりさの感じた違和感ってのは結局なんだったの? -- 2011-10-08 21 25 05 いいなぁ、読ませるわ、これ。 -- 2011-01-03 10 13 55 いいねこれ -- 2010-08-20 08 55 00 面白かった -- 2010-06-20 00 50 45 プロシージャ 手続き 新しい単語を知って使いたかったのかな? -- 2010-05-17 05 24 12
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau9/pages/1907.html
ドスまりさの哀しみ 暖かな日差しが差し込む山の中 ゆっくり達は精を出して狩りを行っていた それぞれ木の実を取り、虫を捕まえては葉っぱでくるみ巣に持ち帰る 巣に持ち帰るとこの日食べる分といざというときの備えとを分ける 備えは先日この群のリーダーとなったドスまりさの住かである洞窟へと保存される 「ふゆにそなえてたくさんあつめないとね!」 ドスまりさが来る前のリーダーであったぱちゅりー 彼女は冬に備えて早々と食糧を溜めることを提案した 始めは今をゆっくりしたいと言うゆっくり達が反発を起こしたが、それでも越冬の厳しさを思い出しぱちゅりーに賛成をするようになった あるゆっくりがいつもより離れた場所で狩りを行っているととても大きなまりさと出会った 始めは食べ過ぎてデブまりさになってしまったのかと思っていた しかし、その寂しげな顔はデブゆっくりのように大きさと顔の比率がおかしいわけではなかった その大きな体に見合った顔、そのゆっくりは気付いた。 このゆっくりはドスまりさだと。 ドスまりさはまりさ種が突発的に変異を起こした上位種だ 変異条件は不明だが、ドス化すると茸を使った能力を身につけることが出来る また、成体ゆっくりを超える巨体を誇り群を守ることで知られている だが、ドスまりさは一匹だった それを見たゆっくりは群の仲間を呼び寄せた ドスまりさを見たゆっくり達はその大きさに驚くと同時に歓喜し、ぱちゅりーが群のリーダーとなってくれるように頼んだ ドスまりさは承諾したわけではなかったが、済し崩しにこの群のリーダーとされてしまった 「ドス、あなたはこのむれのりーだーよ!しっかりしないと!」 「……そうだね」 ぱちゅりーから見てもこのドスまりさは覇気がなかった いつも寂しそうな顔でどこか遠くを見つめている ぱちゅりーはそれについて深く考えなかった そして1日でも早くリーダーとしての貫禄を身につけてもらおうと思った ある日、大雨が降った ゆっくり達は急いで巣に避難し雨が止むのを待った 梅雨ではないので雨はじきに止むだろう が、ドスまりさは大雨に打たれていた 実はドスまりさの住かである洞窟は見かけほど広くはなかったのだ そのためどうしてもドスまりさの体がはみ出してしまう 帽子があるがそれでもはみ出た分だけ、ドスまりさは雨に打たれて濡れてしまう ドスまりさは涙を流した しかし、その涙も大雨に流されていった 雨が開けて数日 再びゆっくり達は狩りをしていた 今日はドスまりさも混じって狩りである しかし、ドスまりさはその巨体故に足元の花が見えない そうしていくつかの花を踏み潰してしまった 「どす!おはなさんをふまないでね!」 一匹のれいむに注意されてしまった このれいむはしっかり者でぱちゅりーの幼馴染みだ れいむとぱちゅりー。二人は協力して群をまとめていた 「ゆっくりごめんね。まりさは大きいからじめんのお花さんがみえないんだよ」 ドスまりさはその後花が取れないので木の実を取ることにした しかし、巨体が災いして木の実は中々見つけられない 終わってみれば子ゆっくりと同じくらいしか見つけていなかった これを見た群のゆっくりはドスまりさを群れのリーダーに相応しくないと思い始めた だが、ぱちゅりーはドスまりさの凄さを知っていたためゆっくり達を説得した そしてドスまりさは狩りが上手くできなかったから今日のご飯は少なくされてしまった 元々1日の食事はドスまりさからすれば満腹にはほど遠い その巨体故に摂取しなければならない量も多いからだ 「む?しゃむ?しゃ…ふしあわせ…」 雀の涙ほどの食事を終えてドスまりさは洞窟に戻ろうとした せめて自分の住かをもう少し広くしようと思ったのだが 「「「ふらんだあああああ!!!」」」 しかし、ふらんの襲来のよってそれは阻まれた 胴体無しふらんが2匹、群のゆっくりを襲い始めた 「うー!あまあま♪」 手近な場所にいたありすにかぶりつくとふらんは素の中身を吸い出し始めた 「いやぁあぁああ!!ありすはもっどゆっぐりじだいいいいい!!!!」 「うー♪あまあまおいしい♪」 そのありすはカスタードを全て吸い取られてデスマスクと化してしまった 混乱は加速しゆっくり達は逃げまどう 「むきゅ!いまこそどすのちからをみせるときよ!」 いつの間にかドスまりさの傍らにはぱちゅりーがおり、ふらんを倒せと言い出した ドスまりさは茸を使ったドススパークという必殺技を持っている これを受ければ捕食種と言えでも忽ちに焼けこげてしまう しかし、ドスまりさはスパークを使わなかった 「どす!ゆっくりしてないでみんなをたすけてね!」 れいむも一緒になってドスを急かす れいむとぱちゅりーが二匹で騒ぎ出し、ふらんがそちらに気が付いた 「どすのちからをみんなにしめすのよ!」 「ゆっくりはやくふらんをたおしてね!」 ふらんが来ると二匹はスタコラサッサと逃げ出してしまう 一匹になったドスまりさの元へふらんが飛んでくる そしてドスまりさのほっぺたに噛みついた 「ゆぎぃいぃぃぃぃぃぃ!!」 噛みつかれたドスまりさは悲鳴を上げのたうち回る あまりの痛さに我も忘れて だがそれが功を奏してもう一匹のふらんを潰すことが出来た 反対側に回り込んでいたふらんはドスまりさが暴れたため下敷きとなった 「うー!うー!」 それをみたふらんはさらに噛みついた口に力を込め、頬の一部を引きちぎる 「ゆぎゃああああああああああああああ!!!」 いかにドスまりさといえど頬を引きちぎられては激痛が体を襲う 皮が分厚かったために餡子は漏れだしてはいない ふらんはそれに気を悪くし再度攻撃を仕掛けようと近づく が、ドスまりさも痛みを回避するためにふらんに立ち向かった そしてその巨体でジャンプするとふらんを踏み潰した 踏み潰されたふらんの餡子があんよに付いてしまったが群を守ることができた とにかくドスまりさはホッとした 「どすはおそいよ!どうしてふらんをすぐにたおしてくれないの!?」 「とかいはのありすのいもうとがたべられちゃったのよ!どおじでぐれるのよおおお!!」 群の仲間からは罵声を浴びせられた ドスまりさなら一瞬のうちにふらんを倒せると思いこんでいるのか 先ほどのドスの対応に不満を爆発させている 「まりさはふらんをたおしたよ!」 ドスが抗議するもそれを聞き入れるようなゆっくりはいなかった その後、傷を負ったゆっくり達は互いに傷をぺろぺろとなめて傷を癒やしていく ドスまりさも頬に傷を負った しかし、誰もぺろぺろしてくれなかった ドスまりさに見合うだけの大きさのゆっくりはいない そのためドスまりさは一人寂しそうにぺろぺろしているゆっくりを眺め続けた このドスまりさはまだドスに成り立てだった しかも、胎児型出産で産まれたため見かけによらずまだ精神は子どもなのだ ドスになる前のまりさはとてもゆっくりしていた 幼馴染みのれいむと親友のだぜ口調が特徴的なだぜまりさ そして4匹の妹と両親に囲まれて幸せだった れいむとだぜまりさ、三人でよく遊び将来のことを話し合った だぜまりさは大人になったら自分だけのゆっくりプレイスを探しに行きたいと言い、れいむはゆっくりとして赤ちゃんが欲しいと言った まりさはまだ将来について深く考えていなかった ただ、今のようにみんなでゆっくり出来る生活がしたいと思っていた しかし、ドス化したことでその希望は打ち砕かれた まりさが目覚めると急に体が大きくなっていた 妹たちも自分もとても驚いていたが両親は祝福してくれた 「まりさはドスになれたのよ!」 まりさもドスのことは知っていた だが、自分がドスになるなどとは考えたことがなかった れいむとだぜまりさも驚いていたが共に祝福してくれた 始めはまりさも嬉しかった。しかし、ドス化したことで弊害が発生した いつものようにれいむにスリスリをしようとしたところれいむに止められてしまった 「ドスになったまりさとすりすりしたられいむがつぶれちゃうよ!」 そう、その巨体ですりすりをしたら加重を誤れば潰れてしまう しかし、すりすりは拒否されたがそれ以外は普通に接してくれていた それが余計にまりさには堪えた すりすりはゆっくりにとって敬愛を示す行為だ それを幼馴染みであるれいむにできなくてとても悲しんだ そしてもう一つ。 まりさはいつかれいむに告白しようと思っていた れいむは赤ちゃんが欲しいと言っていたから子供を作りゆっくり育てようと考えていた だが、ドスになったまりさとれいむの結婚は叶わない そもそもすっきりーしないと子どもが出来ないのだが、まりさが大きすぎてすっきりーできない まりさの哀しみは積もる一方だった そんなある日、だぜまりさが大人となり独り立ちをした 両親とれいむ、まりさに見送られて自分のゆっくりプレイスを探しに行くのだ 「ゆっくりいってくるんだぜ!まりさがゆっくりプレイスをみつけたられいむとまりさもあそびにくるんだぜ!」 そういってだぜまりさは旅立った その姿がまりさには羨ましかった だぜまりさは自分の夢を叶えようとしている それに比べ、自分はドスとなったことで夢叶わぬこととなった 人知れずまりさは涙を流した だぜまりさが旅立って数日立ったある日のこと まりさ達の元へれみりゃの群がやってきた 胴付きのれみりゃに次々と仲間が食べられた あまりの恐怖にまりさは白目をむいて気絶してしまった 目が覚めるとそこには地獄が広がっていた れみりゃに食べられて体が半分になったゆっくりやデスマスクと化したもの 必死に妹たちや両親の名を呼ぶが、答えるものはいなかった 生きているゆっくりはまりさだけだった 哀しみのあまりまりさはその場を離れた そうして、現在に至る 結局まりさの哀しみは深まる一方だった 「まりさはドスになんてなりたくなかったよ…ドスじゃなくてまりさってよんでほしいよ…」 ドスまりさと言えばゆっくり達の憧れの的だ しかし、ドスまりさからしてみれば、普通のゆっくりの方がとても素晴らしいものだった ドスとなったことで群のことを第1に考えさせられる 群をまとめられて当たり前、それができないと批難させられる 愛情を表現できる相手もいない 「まりさはもっとゆっくりしたいよ…」 だが、ドスまりさの孤独を理解できるものはこの群には一人もいなかった… by お題の人
https://w.atwiki.jp/trpgken/pages/1016.html
くまきち/"C90003" 「どうも。僕はウォーレンの遣いで、活動型のインテリアです。くーちゃんと呼んでください」 「おや、また僕の仕事ですか。住まわせてもらっている以上は協力しますが、正直、あなた方の好戦的思考は理解しかねます」 「やはり、くーちゃん、では呼びにくいのですか。成人男性の多くがそのように言いますね。僕には不可解です」 「僕の本業はインテリアです。インテリアは日常の彩りですので、僕は日常を守る活動を行います」 「……譲歩しましょう。くーさんと呼んでください」 消費EXP:27 設定 人の名 くまきち 魔の名 “C90003” 年齢 数年 性別 人格としては男 外見的特徴 本体→一抱えもあるくまのぬいぐるみ お仕事時の格好→大きなくまのぬいぐるみを背負った、無表情な十代前半の少年(本体のぬいぐるみが、少年型ロボットに背中で接続している) 種族/種別 機械、来訪、概念 カヴァー インテリア 出自/絆 脱走(組織、逃避) 邂逅 千種令(恐怖) エゴ 私は人形 変異 機械のきしむ音がする 設定 数年前、ある組織が開発した戦闘用ロボットの試作品が自我を持って脱走したという事件が裏社会を騒がせた。 それは、幻の永久機関「心魂機関(ゴスペル・エンジン)」で駆動し、電脳世界を利用して本部と緊密に連携をとりながら任務を遂行する「人型」戦闘ロボット。 組織の執拗な追撃にもかかわらず、ロボットの行方は知れず。 逃走の中で与えた損傷は激しく、人知れず活動限界を迎えたと噂されていたのだが―― そのロボットが、ペルソナネットワークに回収されているということを知る人物は少ない。 というのも、心魂機関は稀少である。組織は修復と生活手段の確保を交換条件に、任務やデータ採取に協力させることのしたのである。 ちなみに、現在そのロボットはすっかり組織に居着いて馴染んでいる。 拾われて最初の修理の際に、剥き出しのコアを見た構成員が冗談で与えたくまのぬいぐるみ「くまきち」を、彼は随分と気に入った様子。 彼自身の手で勝手に魔改造された「くまきち」は、今ではメインのボディである。人型より落ち着くらしい。 最近では、自分のアイデンティティを戦闘用ロボットではなく「インテリア」に見出しているようだ。 仕事が無い時は、ペルソナネットワーク支部の休憩室のテーブルの上で、無線LAN接続可能なしゃべって動けるくまさんとしてのんびりしている。 性格・行動 淡々としていて、無表情かつ抑揚無く話す。 感情が薄いように見えて、どこかずれた場面で妙なこだわりを見せることもある。 データ スタイル サポーター ブラッド フルメタル ストレンジャー ルーツ 自動人形 電脳魔術師 肉体 技術 感情 加護 社会 基本能力値 5 9 7 4 4 能力値B 2 4 3 2 2 アーマー値 11 13 12 11 11 白兵値 射撃値 回避値 行動値 FP 初期人間性 元値 7 7 4 11 41 56 修正値 7 7 4 12 41 52 アーツ Lv Time コスト 効果 アレナ展開 魔獣化 マイナー 絆の救済者 効果参照 愛 真の死を回避し、【FP】完全回復。1/シナリオ サポートフォーム 常時 魔獣化をイニシアチブにも使用可能。回復、支援の効果 +【最も高い能力B】 異界のコスチューム 常時 2 防具を一つ選択し、アーマー値と行動値修正を + 2 心魂機関 1 常時 2 アーマー + Lv × 2 感情 + 2 ブービートラップ 1 効果参照 3 ガードを行う際、攻撃側が【技術】 + Lvd6 のFPを失う ワンモアチャンス 判定直後 2 判定振り直し。ラウンド1回。 ニューロマンサー 1 判定直前 2 あらゆる判定を【技術】 + Lv で行う 1 / ラウンド フォローアシスト 1 判定直前 2 (自分以外)達成値 + 3 1 / ラウンド チャンスメイク メジャー 3 未行動にする 一気呵成 効果参照 4 攻撃直前、対象を範囲に 1 / ラウンド アウトオブコントロール ダメージ直前 3 ダメージ + 2D6 ダメージ入る→狼狽 1 / ラウンド 軍神 3 メジャー 3 範囲。シーン間ダメージ + Lv × 3 クイックサポート イニチアシブ 5 メインプロセスを即座に一度行う 1 / シーン 装備品 防具 ドッジ アーマー 行動値 常備化P 備考 くまさん(複合装甲相当) 0 7 +1 10 異界のコスチュームで選択 名前 常備化P 効果 超再生薬×2 12 マイナー、単体。FP + 4D6 障壁符 5 ダメージ前、ダメージ - 1d6 アクセスコード 5 情報判定を【技術】で。使用後人間性 - 2 通信機器 小動物やろうかな→私は猫好き→でも猫はやったことがある→犬? 魚? 熊?→熊→くま→ぬいぐるみ!!! 動物ではなくなりました。 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/1625.html
・ゆ虐度数はC-(ぬるめ)です。 バケツまりさ 「昨日は雨さんが沢山降ってきたけど 今日はご飯さんが沢山降ってこないかな」 雨上がりの朝、町で過ごすゆっくりまりさは餌を探していた。 水溜りを避けるため道路を右往左往しながら。 目的は餌場でありその場所を目指してはいたのだが 場所の当ては何もなくたださまよっているに等しかった。 雑草のひとつでも生えていれば口にでも突っ込むのだが 町で住むゆっくりにとって雑草はお気軽な食料で 見付けられる様な場所にある場合すぐ食べられてしまうし 人間さんが作った道路の近くではそれすらもあまり生えてこない。 はぁ~と、ため息をついてるとまりさの全身に衝撃が走った。 「ゆがっ!!」 まりさはぼいんぼいんと鞠のように弾みながら吹っ飛ばされる。 一旦飛ばされると、途中で踏ん張る等の防御方法はまったく取れない。 まりさは吹っ飛んだ後もそのままごろごろと転がっていき 奥にあったゴミ捨て場に突っ込むことでようやく止まった。 「んあ、ゆっくりか。 蹴っちまったな、わりーわりー」 携帯電話を片手に持った人間がうっかりした表情で まりさの方に話しかける。 「ぐーるぐーる」 「おーい、ゆっくり大丈夫かー?」 目が回っているまりさには、それを聞き理解するのは困難だ。 人間はまりさを見てふき出し、携帯電話のカメラでまりさを撮った。 ぴろりろりん。 「ぷはwwwコリャ傑作だわ」 人間は先ほど撮った携帯電話の画像を見て もう一度まりさを見ると笑いながらその場を去っていった。 「ぐーるりぐーるり」 人間の持つ携帯電話には目を回したまりさの画像が映っていた。 そのまりさの頭の上部にはいつもある黒い帽子ではなく 緑色をしたプラスチックのバケツがズッポリはまっていた。 そして、まりさはしばらく起きることが出来なかった。 我に返ったまりさは自分の住みかに戻ってくることが出来た。 口には戦利品がくわえられている。 そしてバケツはまだ頭に被った状態のままであった。 まりさがたどり着いたそこはまりさのゆっくりプレイスであり 空き地にコンクリート製の土管が3本積み重ねて置いてある。 生まれたすぐ後からこれまでずっとその上で生活を行ってきた。 土管の中は空洞になっていたので、中でよく雨風をしのいだものだ。 「やれやれ、今朝はなんだかひどい目に遭ったよ う~ん。まだ調子悪いのかな。肩さんがとても重いよ でも、そのおかげか、ご飯さんが降ってきたから運がいいね」 まりさはありもしない肩がさもあるかのように首を左右にかしげる。 まりさがご飯さんと呼ぶ戦利品のコンビニ弁当だが 先ほどまりさが突っ込んだゴミ捨て場にて見付けたものだ。 半透明のゴミ袋の中から丸見えだったため簡単に探すことが出来た。 久しぶりにありついた豪勢な食事を一生懸命口にする。 満足な食事をしながら、頭上に広がる澄み切った青空を満喫していた。 「今日はなんだかいつもよりお空さんが沢山見えるよ きっと雨さんが晴れたからお空さんもゆっくりしているんだね まりさもとってもゆっくりしているよ」 まりさは空を見上げたままゆっくりと眠りについた。 「むきゅーーーーーん たじゅけてーーーーーー」 昼寝をしていたまりさはゆっくり出来ない声で目が覚めた。 「おがあじゃん、目をさましてーーーー!!」 まりさは声の方向へ走る。 なにかしらの影が見えたので、まりさは飛び込んでいった。 「まりさのなわばりでゆっくり出来ないことは許さないよ!」 飛び出したまりさはそこでの散々な有り様に目を疑った。 潰れたゆっくりが1体。ぱっと見て助からないことがわかる。 ゆっくりの中身である餡子が止め処なく流れ出していた。 そして追いかけるものから走り逃げるゆっくりが1人。 逃げているゆっくりはピンクの帽子をかぶったぱちゅりーであった。 その逃げるぱちゅりーを追いかけている、片手に棒を持った人間が1人。 人間さんの大きさで比較すると小さい方に見えるが それでもバスケットボールぐらいのゆっくりの5倍はある。 「ひゃはー、ぎゃくたいー!」 「むきゅきゅーーーー 誰かだじゅけてーーーーーーー」 まりさは一度こういう場面を遠くから見たことがあった。 だから潰れたゆっくりは人間がやったことだとすぐわかった。 人間にはゆっくり出来ないそんな悪い人間がいる。 そして、とてもゆっくりしているゆっくりが妬ましいのか襲い掛かる。 まりさは普段から腕っ節が良いほうで 子供ゆっくりにすっきりをしようとしたレイパーや 縄張りを荒らすゆっくりを幾度も追い払ったことがあった。 人間がゆっくりを潰そうとしたときも まりさはその悪い行為を制裁するため駆けつけたのだが 人間は事が終わると煙の様にその場から消え去っていったため 人間にやられ事切れ残されたゆっくりしか見たことは無かった。 だからこそ、まりさはまだ生き残っているゆっくりを見て駆けつけた。 これ以上の被害は出してはいけないと。 人間が手持ちの棒で逃げるゆっくりに殴りかかる。 「あぶない!」 まりさは走るが、まだ遠い。 このままでは棒がぱちゅりーに当たる。 ブン!! 人間が棒を振り下ろしたがそれは当たらず 逃げるぱちゅりーのピンクの帽子を吹き飛ばすだけで済んだ。 ほっとしたのも一瞬、キッと目を細めるまりさ。 「これは勝機だよ!」 まりさは空振りしたことによりたたらを踏んでいる人間に 真横から思いっきり体当たりをした。 バランスを崩していた所を横から押されたため簡単に転ぶ人間。 まりさはあっけなく倒れた人間を見て相手の力量を悟った。 「よし、もう一度体当たりをすればヤレル!」 まりさは力を入れるため思いっきりためを作る。 人間は、転んだままくるっとまりさの方を向いて棒を握りなおした。 「むきゃ! 油断はきんもつよ!」 逃げていたと思ったぱちゅりーがまりさに向かって叫んでいた。 その声を聞いたまりさはフッと笑った。 「ゆっくり見てるんだぜ、ぱちゅりー まりさはこれまで悪いゆっくりを9体もたおしてきたんだぜ 今、目の前にいる悪い人間さんも制裁してやるのぜ ぱちゅりーは悪党10体制裁の祝いをどうするか心配するのぜ」 ためた力を一気に開放し人間へ跳躍するまりさ。 人間は転んだ体制のまま棒を使ってまりさに殴りかかった。 ガイィーーーン!!! 「ゆげ!!」 「うわぁ!」 ゆっくりと人間の声が重なった。 頭から一刀の元にやられた!! まりさは考えていなかったその結果自身に絶望した。 人間の動きは早く、まりさの頭天辺へ棒の一撃が綺麗に決まったのだ。 まりさはそのまま死を覚悟した。 くちおしや、まりさも今まで人間にやられて来た中の1人になるなんて。 ぼいん。 衝撃はあったものの地面にまっすぐ落ち、まりさは驚いた。 さほど痛くない。 殴られたらしき頭は無事のようだ。 やはりこの人間は強くない。勝てる。まりさに負ける要素が無い。 「なんだこいつ!! バケツなんかかぶりやがって!!」 人間もまたまりさのタフさに対して驚いているようだ。 しかも、今のまりさの一撃で人間は持っていた棒を落としたようだ。 「なんだかチャンスなんだよ まりさが人間さんなんかに遅れをとるわけないでしょ?」 「むきゅ!!すごい!人間さんが悲鳴を上げたわ! このまま人間さんなんてやっつけるのよー!!」 人間は起き上がったが、まりさがその足へ体当たりを仕掛けた。 「いったーーー! 脛に当たるなんて卑怯だぞ!!」 「戦いにひきょうもひほうもないんだぜ!」 まりさは人間へそう言い切った。 「そのバケツをとってやる!!」 人間が突然ジャンプし、上から全身でまりさに覆いかぶさった。 まりさはその重みで潰れるかと思った。 「うぶっ、体だけは大きいなんて人間さんは本当に汚いね こらー、まりさを離してね!離してねー!!」 人間はまりさへのしかかっていた体重をあっさり引き離す。 それと一緒に、まりさが被っていた帽子は人間に引き剥がされた。 美まりさの象徴である大切な帽子を。 それをこんなよわっちい人間なんかに! 「やめてーーー まりさの帽子を取らないでねーーー! すぐ返してねーーーー!!!」 まりさは今にも泣きそうな目で人間に訴える。 だが、まりさが人間の手に取ったバケツを見て驚いた。 「バケツさん?」 なんだ、まりさの帽子は取られてないじゃないか。 「ぷふ、人間さん、今頃新しい武器を出しても遅いよ 最強のまりさにびびりまくってるのが一目瞭然だね」 「何言ってんだ、これはお前のものだろ」 人間はまりさにバケツを投げつける。 「あだっ まりさの頭に傷がついたらどうするの!! ・・・って、あれ?? 帽子さんがないよ???」 まりさは気がついた。 素の頭に衝撃があったことで気がついた。 やっぱり、まりさの帽子がない。 「人間さん!!! まりさの帽子さんをどこにやったの!!!」 「ばーか、そこに転がってるだろ」 そう言って、転がったバケツを指差す人間。 「これはバケツさんでしょーー!!」 まりさはきょろきょろして帽子を見つけた。 慌てて駆け寄ったが、色が違う。 先ほど逃げていたぱちゅりーが飛ばされたものだった。 「まりさの帽子さん、こんなところにあったよ! って、違うよ!! こんなド派手なピンクの帽子さんじゃないよ! しかもちょっと小さいし!」 「これはぱちゅりーのお帽子さんよ!! ゆっくりかえしてね!」 まりさを見て近くによってきたぱちゅりーがその帽子を拾い そのまま被ると帽子はぱちゅりーにぴったりとフィットする。 それを見てまりさは自分の帽子がないことを再認識する。 「まりさの帽子さんは?? まりさの帽子さんは??? どこいったの?まりさの」 「うるさいな! 返せばいいんだろ! お前の帽子また被せてやんよ!」 人間はバケツを両手で掴むや、まりさの頭にずぽっと被せた。 「ゆんやぁーーー!! こんなのゆっくりできないーーー!!!」 その時、遠くから別の人間の声がした。 「こらーー! 糞ガキーー!!」 目の前にいる人間の倍の大きさはあるだろうか。 それほど大きさに違いがある人間がもの凄い勢いでやってきた。 「やば、カミナリオヤジ来た!」 まりさにバケツを被せた人間はビクッと立ち上がった。 「むきゅきゅきゅきゅきゅきゅ! 人間さんが仲間を呼んだわ! あ、あれは大人の人間だわ!! もうだめだわーー!! 捕まって殺されるーーー! えれえれ・・・」 周りが騒がしくなってきていたが バケツを被ったまりさは直接は見えない頭上のバケツを見ようと 目玉がひっくり返るぐらい上向きになっていた。 「帽子さん帽子さん まりさの帽子さん? そういえば、つばがないよ?? バケツさんがまりさの帽子さんなの?? まりさの帽子さんがバケツさんなの???」 呪文の様に呟くまりさにしがみ付くため ぱちゅりーは自分で流れ出した中身をじゅじゅじゅと吸う。 「むきゅきゅ・・・じゅる・・・! ぱちゅりーとまりさ、人間さんに挟み撃ちになっちゃったわ? まりさどうじゅるる?? さすがの・・じゅる・・・けんじゃにもわからないわーー!!」 人間がもう1人近づいているにも関わらず まりさ達はそれに対処できず、その場にいることしか出来なかった。 「バケツのお前、覚えたからな!」 そう言うと子供の方の人間はくるっとまりさに背を向けると走っていく。 「こらーーー!! 道路にゆっくりを撒きちらかすんじゃないぞーー!! 掃除していかんかーーー!!!!」 「むきゃーーーー!! 潰されるわーーーーーー!!」 大人の人間はまりさ達は眼中になく子供の方を真っ直ぐ見ていたため まりさ達の存在を意識していなかった。 「そうだ、帽子さんをゆっくり脱いで確認するよ・・・」 まりさは帽子であるバケツをはずしてみる。 そのとき丁度まりさの顔面ぎりぎりを、大人の人間の足がかすめる。 大人の人間はまりさがはずしたバケツに足を突っ込む形になった。 「ゆ゛??ゆ゛??ゆ゛??」 踏み込んだ足はそのままバケツによって後ろの方へ大きく滑り込む。 「ぐもぉぉぉぉぉぉおおおおおお」 大人の人間は思わぬ事態に対応できず派手にその場に倒れこんだ。 大人の人間は咳き込みながら立ち上がる。 子供の人間も咳き込んでいた。笑いすぎたらしい。 「やーい!ばーーかぶぁーーーか! ゆっくりで転んでんなよ!! だっせーんだよ!!超うける!」 「このガキャーーーー!!!」 転んだ理由はまりさだったのだが、大人は怒り沸騰子供しか見ていない。 そのまま子供の人間を追いかける形で大人の人間は走っていった。 二人の人間はあっという間にその場からいなくなった。 「む、むきゅーー!!すごいわ!! まりさはすごすぎるわーーーー!! 人間さんを2人ともやっつけちゃったわ!!」 あまり元気のないまりさの隣では 中身を完全に食べなおしたぱちゅりーがはしゃいでいたが とても一緒に喜ぶ気にはなれなかった。 まりさは人間に踏まれて飛んでいったバケツを拾いなおす。 「ゆう・・・」 まりさはバケツを脱いだり被ったりしながらその感触を確かめていた。 「ぴったりくるし、しっくりくるよ 産まれたころから被っているからこそわかるよ このバケツさんこそまりさの帽子さんなんだよ まりさの帽子さんはバケツさんになっちゃったよ」 落ち着きを取り戻したぱちゅりーがまりさに近づいてくる。 ぱちゅりーはバケツを取ったまりさをゆっくり見たことで まりさがまりさ種であることにやっと気づいた様だ。 もっとゆっくり見たならばまりさの頭上部の形がバケツの形に 変形していたことがわかったのだろうが、そこまでにはいたらなかった。 「まりさはまりさだったのね 帽子さんがそんなんだからわからなかったわ でも、とってもゆっくりしているわね」 「ゆ?」 「まりさは人間さんも倒しちゃうし 何も出来ないぱちゅりーと違って とってもゆっくりしたゆっくりなのだわ」 「ゆ?そうかな?」 「そうだわ! 帽子さんも硬くて強そうだわ! いいえ、それはけんじゃのちしきだと兜だとおもうわ えらばれしゆっくりだけが手に入る兜なのだわ」 「このバケツさんはかぶとなの? まりさはえらばれしまりさなの?」 「そうよ、まりさは伝説のえらばれしゆっくりなのだわ!! 大人の人間さんもなぎ倒すなんて普通は出来ないわ! 伝説のゆっくりがいるなんてけんじゃですらわからなかったわ」 「ゆっへん!! ぱちゅりーは実に幸運だよ! 伝説のまりさがたまたま通ったことにね!」 「ほんとだわ!! ぱちゅりーは町のみんなに 伝説のゆっくりが現れたこの出来事を伝えていくわ」 「てれるぜ・・・ほどほどにしてくれよな」 その後、ぱちゅりーの母親であるゆっくりの亡がらへ黙とうすると まりさとぱちゅりーはそれぞれの住処へと分かれた。 「どこでまりさは選ばれたんだろう・・・」 夕方、まりさは1日の行動を振り返ってみた。 昨日はもう、雨のことしか覚えていなかったけど おとといはまだバケツが帽子だった様な気がしたからだ。 今はすごい強いかぶととして頭の上に乗っかっているとはいえ まりさはまりさを象徴するお飾りである黒い帽子に未練があった。 「まず ご飯さんを食べたいなーと思っていたんだ」 そう考えながらまりさは町の中をぶらつく。 朝は溜まっていた水溜りもすっかり無くなったようだ。 「ひそひそひそ・・・」 「くすくすくす・・・」 「ふふふふふ・・・・」 ふと、すれ違う人間がまりさを見てにこやかな顔になっていた。 まりさはなんだろうと考えた。 今日は悪い人間さんもやっつけてとてもゆっくりしたんだ。 そうだ、ゆっくりしたまりさを見ると人間もゆっくりするんだ。 伝説のまりさを見て、人間がまりさにびびりまくっているのも それはそれで気持ち良いものだとは思ったが まりさはゆっくりした人間を見るのも悪くないと思った。 「途中にまりさの帽子さんは落ちてなかったな・・・」 どこをどう歩いてるか、自分でもわからなくなってきたころ 既にゴミが回収されていたゴミ捨て場にたどり着いた。 「それから・・・ えっと? 気づいたらここでご飯さんが降ってきたんだ」 まりさは頭のバケツを脱いでその場に置くと すぐさま上に乗っかり周りを見渡した。 バケツに乗って上から見下ろせば 普段ゆっくりに見えないものも見つけられるはずだ。 だが、ゴミが捨ててあった場所やその周りには何もない。 まりさはバケツの上でため息をつく。 後は何をしただろうか。 「そして、おうちでご飯さんを食べたら眠くなって・・・」 あれ??? その後は悪い人間からぱちゅりーを助けて そこでバケツを被ってることに気づいたんだよ! 「選ばれるってのは突然なのかな・・・ もしかして・・・帽子さんが突然へんけいしたのかな このバケツさんはまりさが産まれたころから ずーと被っている帽子さんなんだよね」 無理矢理自分を納得させたまりさは さっき助けたぱちゅりーを思い出した。 「ゆ! こんなことで落ち込んでいられないよ まりさは最強のかぶとさんからえらばれたゆっくりだからね! 悪い人間さんがいても追い払えるんだからね」 その時まりさは「お巡りさん」と呼ばれる人間が通っていくのを見て 悪い人間を捕まえる「お巡りさん」がいることは聞いて知ってはいたが ゆっくり殺しをした人間を捕まえなかった話を聞いていたので なんて役に立たない人間なんだろうとまりさは思っていた。 まりさは「そうだ」と言うと、バケツの上からぴょんと飛び降りた。 「まりさはパトロールをするよ! 伝説のまりさが治安管理をすれば この町はゆっくりも人間さんもみんなゆっくり出来るよ! これはえらばれしまりさにしか出来ないことだね!」 そう言うと、まりさはバケツを被り直し夕焼けを背に歩き出した。 ところで、まりさが最後にいたゴミ捨て場だが そのゴミ捨て場の金網で出来たフェンスの上の方に コンビニ袋に入ったある黒いものと紙切れが挟んで置いてあった。 紙切れにはこう書いてある。 「帽子が落ちてました 雨に濡れないように袋に入れてあります」 だが、その中身を取りに来るものは一向に現れなかった。 今日も緑色のバケツを被ったゆっくりが 町中をぽよんぽよんと元気に巡回している。 おわり あとがき 4作目っす。前回は書き足りないSSですいませんでした。(作品は消してます) 今回は反省して書けるだけ書いてみましたが、いたらなかったらすいません。
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/3228.html
『隻眼のまりさ 第八話』 18KB 戦闘 群れ ゆっくりって可愛くかけば可愛いのだよなぁ…。 初めましての方は初めまして 他の作品を見てくださった方はありがとうございます。 投稿者の九郎です。 タイトルどおり前作の続編です。 ――――――――――――――――――――――――――――― ~第七話~ ドスの思い!その存在が生み出すものは… ――――同日、深夜―――― 自分の知識をもって皆のために働こうと そう決心したぱちゅりーにはもう迷いがなかった。 たとえ嫌われようとも自分の理論武装は完璧だ。 何を言われても言い返せる自信がある。 そう考えたぱちゅりーは隻眼のまりさとドスを呼び ここで話の決着をつけようと思った。 それに自分も含めて三匹をとも お互いを大事に思っているのだ。 話をして、わだかまりをなくせば この一件は収束に向かうであろうと そういう思いもあった。 「まりさ、とりあえずドスにも同じ話をしてあげて」 「うん…」 「……………」 だからぱちゅりーは、自分の口からではなく 隻眼のまりさに自分で言わせようとしたのだ。 「ドスは、きめぇ丸って知ってるかな?」 隻眼のまりさは言いにくそうに切り出した。 この二匹は自分より付き合いが長い。 何よりチームを組んでいたもの同士だ。 悪い言い方をすればその裏切り行為とも言える 考えを持っていたことに後ろめたさもあるのだろう。 だがそれも、直接思いを伝えれば理解し合えるはずだ。 その行動は違っても、その思いは同じなのだから。 少し長くなりそうなので、次にどうするかなどを 考えていた矢先 「ゆんやあああああああああああ!!! れみりゃがああああああああああああ!!!」 「!!!」 れみりゃだって、とぱちゅりーは思った。 なんて悪いタイミングで出てくるのだろう。 だが実際今のところはれみりゃの対応が先だろう。 「まりさ!ドス!」 「う、うん!!」 「いくよ!!」 やはり一番切り替えの早かったのは自分だ。 まあでも重い話をしていたのだからそいう言い方は酷かなどという どうでもいい思考をしながらぱちゅりーはドスの帽子に乗った。 「ドス!ドス!前見て!!」 「う、うん!!」 「何よ…これ…」 まさしく自分が危惧していた状況。 例の取引がすんだ直後の出来事。 タイミングから考えてこのれみりゃ達は 人為的に放たれたものと疑いようがない。 二年前のあのときでさえデタラメな数だと思っていたのに 見える範囲でもあの時のざっと倍近く捕食種がいるかもしれない。 「………!!ドス!ドススパークを!!」 「わ、わかったよ!!」 考えるのは後だ。 とにかく今は最低でも自分は冷静でいなければならない。 ドスはもうほとんど自分の指示があるまで動かない、というくらいに 自分の指示につき従っている。 逆に言えば自分が崩れたらこの集落は一気に 崩壊するおそれがあるという危惧もしなければならなくなっていた。 「ドス!かまわないわ!薙ぎ払って!!」 「ドス!一旦洞窟の中に下がって!!」 「ドス!!いいわ!!その位置から仰角10!真っ直ぐ発射!」 ぱちゅりーに言わせればれみりゃに限らず 一般的なゆっくりは動きが単純で至極読みやすい。 特に応用力のなさと行動前の発言がそれに拍車をかけていた。 『目の前にあるものに対してしか反応しない』 これは位置取りにさえ気を使えば全く同じ行動しかしないということ。 『何かをする際、ゆっくり~するよ!と言う』 こちらは実際に自分から何をするか教えてくれるので 指示さえ追いつけば簡単に対応が出来る。 ぱちゅりーの頭には同じような文章が多く並んでいる。 これは敵に限らず味方にも言えるので 指示を出す際にもうまく誘導してやれば こちらの意図を伝えなくても思い通りに動かすことが出来る。 頭の回転が或いは人間より早いぱちゅりーにとっては チェスや将棋をしているのと変わらない。 敵も味方もまさに盤上の駒だ。 「いいわ!!第一次攻撃は成功!!まりさ達は前進して! 私が合図するか危ないと思ったら左右の木の枝の中に避難して! 決して自分たちだけで戦おうとしないでね!!」 隻眼のまりさに指示を出してからしまった、と思う。 あの力を今この場で使ってしまったら ドスだけでなく集落の皆全員に見せることになってしまう。 そう思ってからまあいい、と思い直す。 隻眼のまりさは自らの責任で行動を起こしたのだ。 それに、あれは強力な力だ。 集落が受け入れれば戦力になる。 万が一受け入れられなくとも自分にはもう 理論武装もあるしドスの後ろ盾もある。 なんだ、自分はこんな単純なことに悩んでいたのかと可笑しくなった。 冷静に考えれば当然のことだ。 隻眼のまりさ自体がどうこうではなく 起こった事態に対して必要な対応をしていくだけのことだ。 自分は少々感情で考えすぎていた。 …が、どういうわけか隻眼のまりさは例の攻撃を使わないでいた。 少しはまりさも考えて行動しているのか、とぱちゅりーは感心。 まりさ三匹がれみりゃを倒した。 次にかかってくるふらんに対して回避運動をとっている。 練習どおりの型が出ている。 これなら心配ないなと、地上の戦闘を見ながらぱちゅりーは 既に次の考えに入っていた。 敵を散らして、集まってきたところをドススパークで粉砕。 これを繰り返せば大した危険もなく殲滅は可能。 だがその使用回数には制限がある。 とりあえず次を撃たせたら洞窟の中に引っ込もう。 地上のまりさ達の援護もあればさほど難しくはないはず。 れみりゃはなんだかんだと言っても夜間しか行動しない。 朝まで持ちこたえれば戦術的勝利は収められる。 「ドス!発射準備!!私の言うタイミングに合わせて!」 「ゆっくり分かったよ!!」 まりさ達が周囲のれみりゃに気付かれ包囲され始めたのを確認。 ドスにドススパークの発射体勢をとらせる。 「ドス!!カウントダウン!!3、2、1!!…発射!!」 「発射あああああああああああああ!!!!」 発射直前まりさ三匹はぱちゅりーから見て左に避けた。 上からではドススパークの光が激しくて見えないが きちんと回避できていることだろう。 「ドス!キノコは後いくつあるの!?」 「あと二つしかないよ!!」 あと二発か。 三発ならどうしようかと考えたが 二発分しかキノコが残っていないのであれば 隻眼のまりさ達を再突撃させるのは危険だ。 そう判断したぱちゅりーは後退の指示を出す。 「じゃあすぐに後退!!篭城戦に入るわ!! ドスはすぐに奥へ!!だけど外を見ながら後ずさるのよ!! まりさ達は私の部屋に入って!!」 「ゆっくり分かったよ!!」 ドスがずりずりと後退を始める。 あとは洞窟の中で最低限の迎撃をしながら朝を待てばいい。 ドスはなりが大きいためれみりゃ達の目に付いてしまい 集中攻撃を浴びる危険があるのだが 洞窟に入ってしまえば一、二匹程度が散発的に襲ってくるだけだ。 連携して同時に洞窟の中に突入されれば危険だが 捕食種は通常種よりも優れているという心の余裕からか 連携は勿論のこと戦闘中に他の個体の話を聞くことすらない。 仮に彼らがただ漠然と加工所で生きてきただけである連中ならばなおさらだ。 「まりさ!?」 「何処行くの!?ドスの洞窟の中が安全だよ!?」 隻眼のまりさだけが急に外へ飛び出していった。 まさか、自分の指示に従わない気なのか。 「ゆっくり追うよ!!」 「駄目!!言ったでしょう!?勝手に行動しないで!! ついていったら死ぬわよ!!」 そう考えて先ほどの答えをすぐに打ち消した。 そうだ、隻眼のまりさは単独で戦う練習をしていたのだ。 ならばあえて一匹にさせてみるのも手かもしれない。 このまま外で戦ってくれれば洞窟に入ってくる敵の数も減るだろうし なにより自分達にかまうことなく例の技を使うことが出来るはずだ。 「ぱちゅりー!!どうしてそんなこと言うの!?」 「まりさを助けに行かないと!!」 まりさとドスが的外れなことを言う。 むしろ助けが必要なのはこっちかもしれない。 ドスの大きさに対して護衛が二匹では心もとないし なにより地上戦の指揮を一番うまく執れるのが隻眼のまりさだ。 「あなたたちはもう忘れたの!? 助けることよりも、生き残ることを考えなさい!!」 自分には理論武装がある。 何よりこの状況は利用できるし 仲間が離脱した時の対処法に関しても既に伝えてある。 勝手な行動をした者は自らの力のみで責任を取る。 他者に迷惑をかけた場合はそれも含めてだ。 それに全員が予定外の行動をとればその一匹だけでなく チーム全体に危険が迫る。 「ドスは、村長なんだよ!?皆を守るドスなんだよ!?」 ドスの言葉に苛立ちを覚える。 今はそんなことを言っている場合ではないだろう。 何より、目の前のことにとらわれて何の考えもない行動は 危険であるということを理解していないのか。 「駄目!私にも状況がつかめていないのよ!」 この状況。まりさが一匹いないし 人間達の動向もわからない。 ただ、もしかしたら集落のゆっくりの増加に対する 対策のために捕食種を送り込んだという可能性もある。 本当に集落を壊滅させるつもりなら人間が直々に駆除に来るはずだ。 ならば、集落の肥大化という問題を これにかこつけて解決してしまってもいい。 「れみりゃが何匹いるか!まりさが何処へ行くのか!」 なによりれみりゃがどれくらいいるか 分かったものではない。 隻眼のまりさもこれからどうするかはっきり分かっているわけではない。 ただもしこのまま死んだら問題は自動的に解消されるかもしれない。 それもまたよし、とぱちゅりーは考える。 「この状況で動けば悪い方向にしか行かないわ!」 ただ漠然と戦ったら命を落とすだけだ。 二年前のドスも半死半生だったのだ。 この戦いに出て行けば危険であるだけ。 「自分のことだけ考えて!でないと全滅するわ!」 所詮はゆっくりの身だ。 自分を守ることすら怪しいのに 他者を戦闘中に守りながらなどというのは不可能だ。 「戦えるものだけでも生き残らないと!」 自分達が崩れてしまえば集落に戦えるものがいなくなる。 自分達が残っている限り集落は壊滅しない。 自分達が集落にとっての最後の砦なのだ。 「じゃあぱちゅりーは、ぱちゅりーが生き残ればそれでいいの?」 状況に全くそぐわないドスの冷たい声が聞こえた。 「何を言っているのドス!早く下がらないと危険よ!」 ぱちゅりーは相変わらず早口でまくし立てる。 先ほどの第三射でれみりゃが散っている間に引っ込まないと危険だ。 今は議論している暇などない。 「ぱちゅりー答えて。 ぱちゅりーの作戦は何をするためのものなの? 集落を守るために戦うためなんだよね?」 「今はそんなこと言っている場合じゃ」 「駄目。答えて。 答えてくれないとドスは下がれない」 何を言っているんだ。 死にたいのか。 これは戦いだ。 生か死しかない。 「ぱちゅりーの作戦は生き残るためのものよ! 死にたくなかったら早く下がりなさい!」 ぱちゅりーは焦っていた。 まさか、こんな状況でドスが自分に対して疑念を抱くなんて。 ぱちゅりーの存在意義は物事を考え物事を効率よく進めることだ。 だがそれは考えを実践する者がいるから成り立つのだ。 自分自身に出来ることは少ない。 だからこそ言葉を尽くさなければならなかった。 自分だけがいかに正しいことを考えていたとしても それを信じてついてきてくれる者達がいるからこそ意味を成す。 ドスの考えが及んでいないというのは 頭が悪いというわけではなかった。 ぱちゅりーの頭の回転が早すぎるのだ。 生かすところは生かし、捨てるところは捨てる。 普通に考えれば当たり前のことなのだが それが村長としてドスが決心した内容と食い違ってしまったのだ。 そして今は、この食い違いを議論して解決に導いていくだけの 言葉も時間もない。 ドスの帽子のつばに乗っているぱちゅりーには ドスの表情も考えも全くうかがい知れなかった。 せめて、もう少し早くこの疑問にぶつかっていれば。 せめて、もう少し遅くこの疑問にぶつかっていれば。 袋小路に入り込んだ思考は、そんな意味のないことを考えた。 そして、その疑問に答えられるものなど誰もいなかった。 ――――同日、同時刻―――― 「ドス!危ない!!」 「むきゅっ!!」 「うわあ!!」 危なかった。 出たとたんドスの鼻先にれみりゃが向かっていったので 思い切りジャンプして止めた。 これだけ高く跳べるならもうドスの帽子に自力で乗れるほどかもしれない。 「………!!ドス!ドススパークを!!」 ぱちゅりーの声がする。 隻眼のまりさの位置からではぱちゅりーの姿は見えない。 だが以前上から見ることであたり一体を 全て見渡すことが出来るのだ、と言っていた。 地上から見えない部分を上から見ているため 指示が出せるのだ、と。 自分も、あそこまで跳べるようになれば 指示を出す立場になることが出来るのだろうか。 「……っ!!!」 ドススパークが木々をなぎ倒す。 やっぱりすごい。 自分が使ったあの技の威力もすごかったが 流石にこれほどのことは出来ない。 が、もう自分はかつてのリーダーを、今ここにいるドスを 目指しているわけではないと自覚できているので特別な感慨はない。 ドススパークは撃てなくても 同じことが出来る何かを掴めばいいだけのこと。 そう思った。 「いいわ!!第一次攻撃は成功!!まりさ達は前進して! 私が合図するか危ないと思ったら左右の木の枝の中に避難して! 決して自分たちだけで戦おうとしないでね!!」 「分かったよ!」 「突撃するよ!!」 いつの間にかいた二匹のまりさを連れて 隻眼のまりさは飛び出していく。 もうれみりゃなど全く怖くなかった。 遅いし弱いしとどめも刺せる。 二匹のまりさが足手まといになるとすら考える。 「行くよ!!『あろーふぉーめーしょん』!!」 「「ゆっくり理解したよ!!」」 『ゆっくり理解した』という台詞に怖気を感じた。 何を言っているんだこいつらは。 だったら勝手にゆっくりしてれみりゃに討たれていろ。 自分についてこれるのはリーダーと同じように ついてこようとしている者だけだ。 帽子を少し傾けて木の棒を取り出す。 しかしこれはもう棒というよりは破片などという表現のほうが正しい。 口にくわえてみると鋭い先端が数センチでる程度だ。 まりさはそれを口の横のほうへ移動させる。 正面に突き出して突き刺すのではなく 横に構えて斬るための装備だ。 「あまあまがあったんだどー!」 こちらを目で捉えたれみりゃが嬉しそうな顔で向かってくる。 間抜けめ。 今すぐその表情、潰してやる。 「ふっ!!!」 手を伸ばしてきたれみりゃの左頬にカウンター。 同時にくわえた木の棒で目元に浅く斬り込む。 深く刺さってしまったのなら手放すことも視野に入れる必要があるが 手ごたえはゆるい。 隻眼のまりさはそのまま反動でれみりゃから離れた。 「うー!?いぎゃああああああああああ!!! でびでゃのおべべがああああああああああ!!」 ざまあみろ。 自分があの時どれだけの痛みを味わったか思い知ったか。 「とどめだよ!!」 「ゆっくり死ね!!」 「うー!?いだいいいい!!やべろおおおおおおお!!!」 そのまま顔を押さえてバターンと仰向けに転んだれみりゃに 二匹のまりさが襲い掛かった。 どちらにしてもそう簡単に戦闘復帰できる状態ではなかったが とどめを刺しておくにこした事はないか。 「立ち止まらないで!着いて来て!!」 「分かってるよ!!」 死んではいないが明らかに致命打を食らわせたれみりゃから なかなか離れようとしなかったまりさ二匹を叱咤する。 やはり完全に動かなくなるまで攻撃しないと不安なのだろうか。 それでも自分が走り出すと斜め後方から 二匹のまりさが何とかついてきた。 「右に避けるよ!」 「「ゆっくり理解したよ!」」 「よぐもおおおおおおおおおお!! じねえええええええええええええ!!!」 隻眼のまりさ一匹なら正面から迎え撃つことも出来ただろうが 厄介なのは突き出された『ればていん』とふらんが呼んでいる 木の枝を危惧して回避の指示を出した。 カウンターをとっても後方二匹のどちらかに ふらんの攻撃が当たるのはよろしくない。 胴付きふらんが向かってくる。 ふらんはれみりゃより強いと噂されていたが実際どうなのだろう。 「うー!?どこいったー!?」 「後ろを取ったよ!!回れ、右!!」 「「回れ、右!!」」 正面しか見ていないふらは目の前の目標が消えたことで そのまま前の方をキョロキョロと見回している。 そして方向転換の指示。 だが隻眼のまりさの中ではだんだんと二匹が足手まといだという 想いが強まってきていた。 はっきり言ってこの二匹は遅い。 せっかく修行で得た自分のスピードという特性が 殺されてしまっているのではないかと思い始めていたのだ。 「一点集中!!」 「「一点集中するよ!!」」 まず最初に無防備なふらんの後頭部に体当たりを当てる。 そのままうつぶせに倒れてしまったふらんに集中攻撃。 「ゆっくり死ね!!」 「とどめだよ!!」 「ゆぐびぃ!!」 ふらん撃破。 以前なら一匹倒すたびに嬉しさがあったものだが 今の隻眼のまりさには何の感慨も沸かなかった。 ただ冷静に次にとるべき行動を考える。 「よぐもおおおおおお!!!」 「おがーじゃんがあああああああ!!!」 「ばりざなんがゆっぐりじないでじねえええええええええ!!!」 頃合だ、とまりさは思う。 この数は流石の自分でも手に余る。 これだけの敵を全て避けきるのは大変だろう。 「――――!!??」 その時、自分の中に何かが宿るのを感じた。 そして隻眼のまりさの見えない左目に何かが映った。 それは、無数の『何か』。 それを遊びのように避ける自分。 何か、同じようで違う場面を自分は目にしたことがある。 それが何かは全く分からない。 だが、隻眼のまりさは間違いなく何かの『既視感』を感じた。 一瞬の思考だった。 「ドスのところに戻るよ!!」 「「ゆっくり理解したよ!!」」 すぐに思い直しドスのところへ引き上げるように指示をする。 このような状況、通常のゆっくりなら恐怖のあまり逃げ出していただろう。 だが、なまじ訓練や実戦をこなしてきていた二匹のまりさは 逆に指示があるまで逃げ出さないようになっていた。 故に逃げろ、と言わなければ逃げないのだ。 ドスのところまでは20m程度。 人間のスケールサイズに合わせて言うなら100m以上だ。 急がなければ戻れなくなる。 「ドス!発射準備!!私の言うタイミングに合わせて!」 「ゆっくり分かったよ!!」 ある程度近づいたところでぱちゅりーがドスに発射体勢をとらせた。 今度は間違いなく足元も含めて狙ってくる。 そう判断したまりさは徐々に右へとずれていく。 あまり横に大きく回避したらついてきているれみりゃ達を ドススパークの射線軸上から外してしまうことになる。 「まりさ!!れみりゃが来るよ!!」 「急いで!!頑張って走るんだよ!!」 「頑張ってるよ!!」 「ドス!!カウントダウン!!3、2、1!!」 カウントが始まると同時にさっと横に避けた。 それにならって後ろの二匹が回避行動をとる。 「発射!!」 「発射あああああああああああああ!!!!」 ドススパークが発射された。 そしてその瞬間、例の『既視感』がまたきた。 この技、何か感じるものがある。 いや、ドススパークは二年前リーダーがドスになったときから見ていた。 しかし、それとはまた違う何かを感じていたのだ。 「ドス!キノコは後いくつあるの!?」 「あと二つしかないよ!!」 「じゃあすぐに後退!!篭城戦に入るわ!! ドスはすぐに奥へ!!だけど外を見ながら後ずさるのよ!! まりさ達は私の部屋に入って!!」 「ゆっくり分かったよ!!」 そこで隻眼のまりさは『え?』と思った。 何で?まりさはまだ戦えるよ? 集落のゆっくり達はどうするの? ドススパークもあと二発残ってるんでしょう? こんな弱い奴らから逃げるの? なんで? なんで? 隻眼のまりさだけはそこで固まった。 そして、先ほどのフラッシュバックをもう一度思い浮かべた。 思考も停止していたので先ほどとは違い余裕を持って思い出せた。 あれは何だ? 赤や青の何かがたくさん飛んでくる感じ。 それを何の危機感もなく遊びのように避ける自分。 分からない。分からないけど。 自分はそれを知っている。 そんなまりさの思考に誰も気がつくことなく 洞窟へ下がっていっていた。 隻眼のまりさの頭の中で様々な物が渦巻いていた。 あれは何だ?分からない?でも知っている? 誰が?何故?いつ?何処で?どうして? それもまた一瞬の思考。 その一瞬の間に様々なものが駆け巡った。 以前から、あの時違和感が形になってからずっと考えていた。 ゆっくりって何だ? ゆっくりすることはいいことなのか? ゆっくりすることって何だ? 次の瞬間、隻眼のまりさは洞窟の外に飛び出していた。 「まりさ!?」 「何処行くの!?ドスの洞――――」 後ろから何かが聞こえた。 だが聞こえただけで理解してはいなかった。 恐らく、この戦いの中で何かを見出すことが出来る。 そういうある種の確信が隻眼のまりさの中にあった。 危険だって?無謀だって?悪いことだって? かまわない。 コイン一個じゃ命も買えやしない。 この辺は死臭で一杯だ。 狂うのには慣れている。 構わないさ。 こんなにも高揚したのは、初めてなんだから―――― 続く 次回予告 すれ違った思いはそれぞれの願いの元に動き始める。 もう何も譲れないから。 もう何も、失いたくないから。 次回 隻眼のまりさ ~第九話~ それぞれの孤独な戦い!そして時は動き出す… 乞うご期待! あとがき 結局こういう展開になってしまうのはご愛嬌。 やっぱり私は場面場面を切り抜いて書くより 物語を作ってそれに沿った中でキャラクターを動かす方がいいようです。 結末は既に決まっているのですが なかなか整合性をとるのが大変な気がします。 言い訳がましいですね。すみません。 今後も頑張っていきたいと思いますのでどうぞよろしくお願いします。 最後に、この作品を読んでくださった全ての方に無上の感謝を。 私がここに投稿させて頂いた作品一覧 anko3052 ゆっくり駆除業者のお仕事風景 以降そのシリーズ anko3061 隻眼のまりさ プロローグ 以降そのシリーズ anko3127 ゆっくり加工業者のお仕事風景
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3344.html
糸の切れた人形のように小悪魔はぐったりとイスに座り込んでいた。 目の前にはゆっくりありすがゆっくりまりさに頬ずりしている。 「下品な女・・・」 小悪魔は口だけを動かす。 「ゆ?おねーさん、こいびとのまりさのわるぐちはやめてよね」 「あなたですよ。この阿婆擦れ」 小悪魔はゆっくりぱちゅりーを少し強く抱きしめ、ゆっくりありすを睨みつける。 「この阿婆擦れ、絶対に殺してくださいって言わせてやる」 小悪魔は小声で呟く、それはゆっくりまりさとイチャイチャするゆっくりありすには届かなかった。 小悪魔が仕事の合間に見つけた暇つぶし、 それはゆっくりの世話だった。最近見つけたもう使われていない掃除用具入れを掃除し、 主のパチュリーから少しばかりの賃金と休日をねだり、改装したご自慢の飼育部屋だった。 丸っこい可愛い文字で「ゆっくりのお部屋」と彫られ、ゆっくりパチュリーとゆっくりまりさが描かれていた。 ファンシーなプレートまでドアに飾っていた。二週間前までは、 小悪魔が飼っていたのは、 屋敷の前で日向ぼっこをしていたゆっくりまりさ、 人里のゆっくり屋で売られていたゆっくりありす、 その帰りに拾ったボロボロのゆっくりぱちゅりー、 だった。 三匹は最初、平等にエサを与えられ、平等に相手をされていた。 しかし、小悪魔はボロボロのゆっくりぱちゅりーを不憫に思い、 傷を治療をしてやったり、帽子を縫ってやったりしてやったのがよくなかった。 「ぱちゅりーはズルい!!」 意地汚いゆっくりまりさはすぐにゆっくりぱちゅりーに嫉妬した。 「やめなさい、ぱちゅりーは傷ついてたから治療してあげたのよ」 小悪魔は何度も言って聞かせたが、このゆっくりまりさはそれまでかなり不条理な世界で育ってきたのだろう。 ゆっくりぱちゅりーを不満のはけ口にしていた。 ゆっくりありすはというとゆっくりまりさに気に入られたいがためにゆっくりまりさに味方していた。 小悪魔は仕方なくゆっくりありすとゆっくりまりさをゆっくりぱちゅりーから遠ざけるため部屋に透明の仕切りを作った。 それでも二匹はゆっくりぱちゅりーに汚い言葉を投げつけた。 小悪魔がゆっくりぱちゅりーを庇えば庇うほど、二匹の行動は激化していった。 ゆっくりまりさも自分に同調してくれるゆっくりありすが居る事で良心は停止してしまっていた。 小悪魔が仕事で忙しかった日、二匹は仕切りに向かって体当たりした。 仕切りはグラつき、もう一度体当たりを受け、仕切りは倒壊した。 小悪魔がニコニコとエサを持ってきた頃にはゆっくりぱちゅりーは酷く痛めつけられ震えていた。 すぐさま、小悪魔はゆっくりまりさを払いのけ、ゆっくりぱちゅりーを抱きかかえる。 「誰、こんな事した子は?まりさ?!」 「ゆ!まりさじゃないよ・・・」 ゆっくりまりさは余所見をして答える。 「じゃあ、誰なの!!」 「とかいはのありすだよ。だってまりさがそのこのこときらってるんだもん!!」 ゆっくりありすはゆっくりまりさに頬ずりをする。 小悪魔はその日、一生懸命作ったプレートをゴミ箱に捨てた。 代わりに小悪魔が用意いたのは一斗缶と握り拳ぐらいの小石だった。 ゆっくりまりさを一斗缶に縛り付ける。極簡単な魔法で小石を焼け石に変える。 ゆっくりまりさはやめろと喚くが、小悪魔には聞こえない様子だった。 コトン、熱せられた小石を一斗缶の中に落とす。 もう一つ、コトン 次第に一斗缶の温度が上がってくる、今でちょうど人肌程度、 無論、ここで辞めるつもりなど毛頭ない。 「おねえさん、はやくこのなわをほどいてね」 「・・・」 コトン、返事をするように真っ赤な小石が一斗缶の中に落とされた。 「ゆぎゅ!!!ゆぎぃぃ!!」 ゆっくりまりさが痛がる様を少しでもよく見たいのだろうか、 小悪魔の目は目玉が飛び出るほどに開けられている。 ギョロっとした目でゆっくりまりさが悲鳴を上げる様を見ている。 口元は緩み、今にもケラケラと笑い声が聞こえてきそうだ。 「やめなよ。おねえさん、まりさがいやがってるでしょ!!」 「ゆぎぃ!!そう・・・だよ。はやくやめて・・・ね」 二匹は抗議をする。しかし、ゆっくりありすは熱いのが嫌なのか一斗缶から随分離れた場所に居る。 「まだお喋りに余力が残っているのですか、売女が。でしたら、もう少々熱を上げさせてもらいましょう。恋で焦がれていたいでしょ」 それからゆっくりまりさは右の頬が壊死するまで高温の一斗缶に縛り付けられていた 最後は悲鳴を上げる事すらできず、ただ白目を向いているだけだったが 翌日、また一斗缶と小石が用意された。 ゆっくりまりさは逃げようと努力はしたが、あっさり捕まってしまう。 「お、おねえさん、まりさがだめなところがあったらおしえてね。まりさ、ゆっくりなおすよ」 引きつりながらも明るく笑ってみるまりさ、 右の頬は動かず、左右非対称の気持ち悪い笑みだが、まりさには精一杯の行動だった。 小悪魔は無言で一斗缶にゆっくりまりさを縛り付ける。今度は左の頬を一斗缶にあてがう。 「なおすから!!まりさのわるいところなおすから!!」 コトン、小悪魔の返事は焼けた小石を一斗缶に落とす事だった。 昨日の繰り返し、ゆっくりまりさが熱いと騒ぎ出し、ゆっくりありすが心配し小悪魔にやめる様に抗議し、 小悪魔が小石を落としそれに答える。 昨日のようにまたゆっくりまりさは白目を向き気絶する 「そんなに心配ならもっと寄って慰めてあげてくださいまし」 ゆっくりまりさを心配そうに、しかし離れた場所から見守るゆっくりありすに小悪魔は声をかける 「私が怖いですか?あなたの愛ではここまで来れないのですよ。所詮は年中欲情女の勘違いですよ」 それでもゆっくりありすは動かないでいた。 自分をまず守らなきゃ、ゆっくりありすは選択をし、自分の命を生きながらえさせた。 その選択が正しいかどうかは後で分かる事となる。 両頬が壊死してしまったゆっくりまりさから笑顔が消えた。 笑えなくなったのだ。顔が全く動かない。喋る事には不便は無いが、表情を作れなくなってしまった。 ブスッといつも不機嫌そうな顔をしているゆっくりまりさ。 「ブサイクな顔がよりブサイクになりまして、そんな事では誰も買ってくれません事よ。売女さん」 小悪魔がゆっくりまりさの帽子を奪い取るとヒステリックに何度も踏みつけた。 ボロボロになった帽子をゆっくりまりさの頭の上に載せる。 「まあまあ、前衛的なお帽子ですこと。ブサイクには勿体無いぐらいです」 だんだんと自分達の待遇が悪くなってくる。エサは減り、部屋の掃除もされなくなった。 かける言葉も刺々しくなり、ゆっくりまりさは毎日苛められる。 ゆっくりぱちゅりーはテーブルの上で二匹を見下ろすように飼われている。 クッキーや紅茶、美味しいものばかり毎日食べさせてもらえている。 すると、ゆっくりありすは態度を一変させる。ゆっくりパチュリーに媚を売り出したのだ。 「ぱちゅりー、ありすにもクッキーちょうだい」 ぷいとぱちゅりーは身体をありすとは別の方向に向ける。 「ねぇ、ぱちゅりー、あやまるからぁ。ごめんなさい、ゆっくりゆるしてね!」 それを見て気分がよくないのはまりさだ。 「ありす?」 不安そうにゆっくりありすを見つめる。仲違した、ぱちゅりーはそう思った。 しかし、共犯関係はそう簡単に崩れるものではなかった。 小悪魔が部屋に戻ってくると、ぱちゅりーが死んでいた。 テーブルの上から落ちたのだ。そして、その死体をありすとまりさは食べている。 小悪魔はすぐに死体に集る二匹を蹴り飛ばした。 仕掛けておいた監視用の魔法の鏡を起動させる。 この鏡は数時間前に映した様子をもう一度再生する事ができる。 「ねぇ、ぱちゅりー、ありすとすっきりしない?」 「むきゅ?すっきり?」 「そうよ。とってもきもちいいのよ」 ぱちゅりーは野生だったが、今まですっきりした経験は無かった。 所謂、処女だった。それは体力的な問題、不運な境遇が原因だった。 決してすっきりししたくないわけではなかった。 今は毎日食事が取れ、病弱とは言え体力はかなり付いた。そして境遇は。 形の良いゆっくりありす。ペットショップで売られていた美しいゆっくりありす。 今までは自分を苛めていた嫌な存在だったが、そんな関係も終わった。 目の前にいるのは自分とすっきりを望む綺麗なゆっくりありす。 「むきゅー、そこまでいけないわ」 「ちょっとまっててね」 かかった。ありすは急いで小悪魔が用意したクッションを持ち出す。 「ここにとびおりればいたくないよ!!」 「むきゅー、ありすってかしこいね!!」 そして、ぱちゅりーは飛んだ。 ありすはクッションを別の場所に投げ捨てる。 糸の切れた人形のように小悪魔はぐったりとイスに座り込んでいる。 目の前には先ほど蹴ったゆっくりありすがゆっくりまりさに頬ずりしている。 痛かったねなどと痛みを慰めあっている。 「下品な女・・・」 小悪魔は口だけを動かす。 「ゆ?おねーさん、こいびとのまりさのわるぐちはやめてよね」 「あなたですよ。この阿婆擦れ」 小悪魔はゆっくりぱちゅりーを少し強く抱きしめ、ゆっくりありすを睨みつける。 「この阿婆擦れ、絶対に殺してくださいって言わせてやる」 小悪魔は小声で呟く、それはゆっくりまりさとイチャイチャするゆっくりありすには届かなかった。 まりさは嬉しかった。ありすは裏切ったわけじゃない。 ありすはあの憎たらしいぱちゅりーをやっつけてくれた。 とても嬉しかった。まりさは目を覚ます。大好きなありすが傍にいると思って。 「お早い御起床で、この鈍間。お食事は何になさいますか?生ゴミ?泥?それとも肥溜めから糞尿でもすくって参りましょうか?」 目の前にいたのは小悪魔だった。逃げないとまた酷い事をされる。今まで忘れていた事が蘇る。 どうして、ゆっくりしていたんだろう。ぱちゅりーを殺して小悪魔が黙っているわけ無いじゃないか、 必死に身体を動かすが、どうにも動かない。いや、動こうとするととても痛い。 「いひゃい」 声がおかしい。大きい声が出せない。 「あひふ、ひゃふひぇて」 クスクスと小悪魔は笑った後、ギョロっとした目でまりさを見つめ、説明した。 「足はこの通り、切り取らさせていただきました」 目の前に置かれたのは今まで自分の底だった部分、ゆっくりでは足と呼ばれる部分だ。 円く切り取られている足、まりさは吐き気がする。 人間だって自分の足が切り取られて見せ付けられれば恐怖のあまり嘔吐するだろう。 「あと、口元を縫い付けさせていただきました。それと」 口元が縫い付けられていて思ったような声が出せない。 急に小悪魔が消える。よく考えれば視界が狭い。 「左の眼球を摘出させていただきました」 まりさは小悪魔の元から逃げ出し、ありすを探す。 「あひふ、あひふ、ほひへ」 「ゆー?まりさ?」 眠気まなこのありすにも分かる。まりさがおかしい。 小悪魔がありすのところまで来て説明する。 「あなたのパートナー、私が壊して差し上げました、如何でしょう?髪もイカしますでしょ?」 「あ・・・ああ」 ありすは目に一杯の涙を浮かべている。 髪は所々無残に切られ、目をなくし、口を縫われ、 「綺麗でしょ?パートナーの容姿を褒めてあげて下さいまし。都会派の阿婆擦れ、ほら、笑ってくださいまし、フフフ」 元々焼かれている頬とボロボロの帽子、ありすはまりさに何の好感も持てない。 「愛していると言ってあげてくださいまし、あなたが愛したせいでこうなったんですから」 ありすの頬にまりさの焼けてゴツゴツした頬を押し当てる。 次第にありすの顔が青ざめていく。そして、まりさがありすに呼びかける。 「あひふ、ひゃふへへ」 「し、しらない!!こんなかいぶつしらないよ!!こんなのありすのまりさじゃないよ。はやくでていってね!!」 せきを切りありすがまりさを拒絶する。 「あひふ、まひははほ。まひははほ」 「そうです。これはあなたが愛したゆっくりまりさですよ。しっかりしてくださいまし、壊れるにはいささか早うございますよ」 「じゃあ、まりさなんていらない。こんなのありす、いらない!!」 そう言うと、ありすは何度もまりさに体当たりを繰り返す。 「あひふ、ひゃへてへ!!」 「うるさいよ!!おまえなんてゆっくりできないよ!!はやくしんでね!!」 何十回、何百回と体当たりを繰り返し、ようやくまりさは動かなくなりました。 「それでは最後はあなたですよ。皆様あちらであなた様がお死にになるのをお待ちしていますよ」 ゆっくりありすは最期に。 「ころしてね」と力なく言ったが、それから三ヶ月も拷問は続いた。 by118