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あまりにも南の島のまりさ 36KB 自滅 飼いゆ 自然界 現代 独自設定 うんしー ぺにまむ 自然界タグなのに基本室内です… 作:神奈子さまの一信徒 どこかで見たことのあるお話のパロディです。 『あまりにも南の島のまりさ』 ここは、とある南の果てにある島。 ここには観測基地が一つあるほかは、建物もなく、観測員以外の人間も住んでいなかった。 そんな環境にゆっくりたちはいた。彼らはこの島の観測員たちに飼われているのである。 秋 北半球なら初春にあたるこの季節、観測基地の外気温は−10℃に近づくことが多くなった。 もうしばらくすれば平均気温ですら−10℃に届かない冬が来る。 南極大陸近傍に位置するとある島、その観測基地の内陸側に位置する建物、それがゆっく りたちのいる飼育棟だった。飼育棟の広さはそれなりなのだが、雑多な荷物や観測機器が 所狭しと並べられている中で、ゆっくりたちが実際に生活しているスペースは、せいぜい 小さめのコンビニ程度だった。 飼育員は今日も朝の体操と朝礼の後、ゆっくりたちにエサを与えるべく、飼育棟にやって きた。通路の片側は、一定の規格の木箱が所狭しと重ねられ、木箱は本棚のようにその中 身を通路側へと向けていた。食料品、飲料水、衣料品、生活雑貨、文庫本など雑多な品揃 えの露店が並んでいるみたいだ。観測隊員によってアメ横と呼ばれる光景である。 飼育員はそこから、市販のゆっくりフードをとり、さらに調理場から分けてもらった残飯 を混ぜ、水と一緒に持っていく。 「ゆゆ!?お兄さんが来たよ!」 「「ゆっくりしていってね!!!」」 飼育員が姿を見せると、ゆっくりたちは一斉に挨拶した。 「おう!今日もゆっくりして行けよ!」 そう言って食事と水をプラスチックの容器に空ける。 「ゆゆ~!!れいむはおみずさんじゃなくてじゅーすさんが飲みたいよ!!お兄さん、ゆ っくりしないでじゅーすさん持って来てよ!」 成体れいむがもみあげをぴこぴこと上下させながら催促する。 「ジュースは昨日ので終わっちまったよ。」 「ゆゆ!?じゃあお兄さんはゆっくりしないでじゅーすさんを買って来てね!!」 このれいむはここがどこだか、まったく分かっていないようだった。おそらく、食べ物が もらえてゆっくりできれば、もう後はどうでもいいのだろう。 「南極に店はねーよ。ジュースは、いや何もどこにも売っていない。次の観測船が内地か ら来るまで、ジュースは飲めないよ。我慢するんだな。」 飼育員は嘘をついた。本当は少しだけジュースは残っているのだ。しかし、これはゆっく りたちの身に何かあったときのための治療用であり、今飲ませるわけには行かなかった。 そもそも、ジュースがなくなった原因は、このゆっくりたちが勝手に飼育スペースから出 てジュースを盗み飲みしたせいだった。その頃はまだ、今の観測隊が基地に到着したばか りであり、廊下は今以上に雑多な荷物にあふれていたのである。 結局、今目の前にいるれいむたちにオレンジジュース1ダース近くが飲まれてしまい、飼 育員がそのことに気づいたのは、雪上飛行機からの荷物の積み下ろしが終わった後だった。 「ゆ!!おにいさんはびゅーてぃほーなれいむがゆっくりできなくてもいいの!!!」 そう言うとれいむはぷくーっと膨れ上がって飼育員を威嚇した。このれいむは子供たちの 面倒見はいいものの、一番の厄介者でもあった。 飼育員は優しくその頬を潰し、空気を抜いてやる。 「ぶぴっ!ぶぴぴっ!!ぶぼぼぼぼぼっぴ!!!」 ひどい音がした。 「うわっ!唾飛ばすなよきったねええな。」 いつまでもれいむにかまっているわけにはいかないので、他のゆっくりたちにもエサをや っていく。 「おにいさんありがとう!!!」 「ありがちょー!おにーちゃん!!!」 「おう!ゆっくり食えよ!!」 基本的にここにいるゆっくりたちは、厳選な餡統の審査によって選抜されたゆっくりだっ た。金バッジ保持個体、または金バッジを両親に持つ子ゆっくりの中から、さらに我慢強 い個体のみが選ばれ、ここに連れてこられたのだ。 ゆっくりの構成は、りーだーのまりさ、そしてさっきのれいむ、二匹のこどもである子ま りさと子れいむ、そしてありすとちぇんの六匹である。 彼らは、ここ南極でゆっくりが非常食として飼育可能かどうか、その実験生物として持ち 込まれたのだ。 ただし、彼らが直接食べられることはない。あくまで彼らは実験要員であり、そのために わざわざ優秀な個体を選んで持ってきた。ここで生活し、繁殖していくことができるかど うか、そのコストはいくらぐらいか、彼らを通じて、この閉鎖的で極限の環境下にある観 測隊員の精神的なケアは期待できるかどうか。 それらの情報を集めるための、実験要員なのだ。もっとも、実験といっても、毎日行うわ けではなく、定期的に糖度や弾力性、健康状態がチェックされる他は、ほとんど自由に生 活させられていた。時折、暇をもてあました観測隊員が遊びに来るぐらいである。 「おにいさん!今日もごはんさんありがとう!おかげでまりさはゆっくりできるよ!!」 ここのりーだーであるまりさだ。言葉遣いだけでなく、人の言いつけも良く守り、この飼 育スペースの掃除もやってくれる優秀な個体である。帽子はピンと張っており、体も丈夫 だった。もしペットショップで販売すれば万冊が飛んでいくことになるだろう。 この観測基地でもっとも人気者のゆっくりだ。 「おうおはようまりさ!!」 そう言ってまりさの頬をすーりすーりしてやる飼育員。 「ゆゆ!すーりすーり…ゆゆ、しあわせ~!!!」 飼育員にはこのまりさたちが可愛くて仕方なかった。時折、わがままを言うれいむを見る と、なんでこいつが選ばれたんだろうと思うこともあったが、みんなでゆっくりしている 姿を見ると、どいつもこいつも可愛い、そんな気持ちになるのだった。 「むーしゃむーしゃしあわせ~!!!」 ゆっくりたちが食事している間に、うんうんを回収する。うんうんの糖度や水分含有量も ゆっくりたちの健康状態を知る、貴重なデータだ。 ここにゆっくりたちが来て半月以上が経とうとしていた。 その頃、観測基地への補給物資、観測隊の交代要員などを積んだ観測船は、既に南極大陸 沿岸まで来ていたが、悪天候に阻まれ、連絡用の雪上飛行機を飛ばすことができないでい た。観測船は海氷に何度も突入を試みたが、例年よりも氷の張り出しが早く、そして厚か った。なかなか補給が届かない観測基地では、一部の物資に使用制限がついた。 その日、飼育員はゆっくりたちの飾りを洗濯してやった。壊さないよう一つ一つ手もみで 洗い、乾燥させる。さすが選抜されたゆっくりだけあってか、お飾りを洗濯のために外す ということには抵抗がなかった。きれいになったお帽子をまりさに被せてやる。 「ゆゆ!ありがとうおにいさん!!きれーなおぼうしさんはとってもゆっくりできるよ~ !!!ゆふふ~なんだかいいにおいだよ~!!!」 他のゆっくりやこどもたちにもお飾りをつけてやる。 「ゆふふ!れいむのおりぼんさんはわんだほぉゥ!だよ!」 「ゆゆー!!まりちゃのおぼうちぴかぴかじゃよ!!!」 「ありすのかちゅーしゃさん、ますますとかいはだわ!ありがとうおにいさん!!」 喜ぶゆっくりたちを一匹ずつすーりすーりなーでなーでしてやる。 「おにーちゃん!おにーちゃん!まりちゃにまたおうたさん教えてほしいんだじぇ!!」 子まりさはゆっくりたちの中でも特に飼育員に懐いていた。 「よ~し、じゃあ今日は一緒に『さん・せばすてぃあん』を歌おうな!」 「ゆ~!『さん・せばすてぃあん』はまりちゃたちのあんせむなんだじぇ!!」 飼育員が笑顔で子まりさと一緒に歌おうとしたとき、建物に呼び出しのベルが鳴った。 観測隊員集合の合図である。この時間は南極大学の時間だった。南極大学とは、観測 員が交代で自分の専門分野の話をする勉強会のことである。南極観測隊の伝統行事で あり、今日のテーマはは南極の湖沼に生息するコケ坊主と呼ばれる植物集合体につい てであった。 「ごめんなまりさ!お兄さん、集まらなきゃいけないんだ!!」 「ゆ~゛…いっちょにあんせむ…」 「また今度、な。」 飼育員は子まりさの頭を軽く撫でてやった。子まりさが機嫌を直したのを確認すると、 会議室へと急いだ。 観測船の到着予定日から二週間以上が過ぎても、観測船は依然として分厚い海氷に覆 われた沖合いの海にいた。このままでは冬が来て次第に氷が厚くなり、観測船の出力、 氷砕能力では本土へ帰還できなくなる可能性すらある。 だが、いつになっても天候は好転することがなく、観測船は地上の隊員たちを収容す ることができなかった。船に積んである食糧、水は有限ではない。 船長は決断に迫られていた。 観測隊員の交代、物資の補給を行わずに撤収するか否かを。 その日、観測基地では何時間も会議が続いた。 観測船が基地に接近できない以上、連絡用の雪上飛行機を何回か往復させて、観測員 だけでも収容するか、もしくはそれが悪天候により不可能な場合、観測隊員は次の南 極探検が行われるまで、観測基地に篭城することになる。 重苦しい雰囲気の中、今後の天候の予測、飛行機以外の移動手段、他国の基地への救 援要請、食糧や燃料の備蓄量などについて報告・議論が展開された。 結局、観測船は更に一週間、海氷の突破を試みることになったものの、観測隊員には いつでも基地を離れられるよう、私物や機材の整理が通達された。 「観測基地を放棄する。雪上飛行機にて地上の隊員たちを回収せよ。」 放棄命令が出たのは、その翌々日のことだった。突破の目途が立たない海氷、久々に 訪れた好天下に、甲板上に露天繋留してあるDHC-2軽輸送機でもって観測隊員だけを 観測船に退避させることにしたのだ。 数時間後、飼育員は観測隊長に呼び出された。 「観測基地を放棄し、DHC-2にて観測船に撤収することが決まった。ゆっくりは連れて 行けない。」 天候の回復は一時的なものであり、DHC-2軽輸送機は観測船−基地間を二往復するのが 精一杯と予想された。そして、小さな雪上飛行機二往復で回収できるのは、観測隊員 だけだった。かさばる私物や、高価だが大きな実験機器でさえも基地に残すよう指示 が出た。飼育員は必死に抗議し、そして絶望した。 飼育員がゆっくりたちのために動くことができる時間は限られていた。彼はゆっくりの 飼育・観察を主な任務としていたが、限られた人数しか滞在することができない南極基 地では、他にも施設の管理や、屋外観測の補助、内地との通信業務など、彼がこなさな ければならない仕事は多々あったのである。そして、今、雪上飛行機が飛び立つまでに それらの仕事の後始末をし、自身の荷造りをしなければならなかった。 飼育員は全員にゆっくり用の防寒服を着せた。基地が一時放棄となれば、凍結防止用の 暖房を除けば、ほとんどの電源は切られてしまう。ここにいれば外気温に曝されること はないだろうが、それでも節約のために暖房は最低限の温度に設定され、今までのよう に快適な環境でゆっくりするというわけにもいかないだろう。 「ゆゆ!!おにいさんこれ苦しいよ!!!」 れいむが急いで防寒服を着させられ苦情を言う。 「ごめんな…本当にごめんな!絶対にこれを脱ぐなよ!!二度とゆっくりできなくなる からな!!」 「ゆ?お兄さん?」 ゆっくりたちは飼育員の様子にただならぬものを感じたが、今はただ何も分からず混乱 していた。 次に飼育員は急いで、運べる限りのエサを、ゆっくりの飼育施設の余剰スペースに放り 込んでいった。 ゆっくりのエサは全てパックされており、その大半は密閉性を重視して缶詰が占めてい た。どうひいきめに見ても、ゆっくりに独力で開けられるものではない。 しかし、基地で飼われているゆっくりの実質的なりーだーであるまりさは、道具の扱い を小さな頃からしっかりと教育されたエリートだった。 「ゆゆ!?どーしたのお兄さん?ゆわ!お空飛んでるみた~い!!」 飼育員は慌しくまりさを抱きかかえ、ゆっくりのエサが陳列されている通路に連れて行 った。 「ゆ!?ごはんさんがいっぱいだよ!!これだけごはんさんがあればとってもゆっくり できるよ!!」 「まりさ、よく聞いてくれ。これからお前たちは越冬しなければならないんだ。」 「ゆ!?まだこんなにぽ~かぽ~かだよ?」 「もうすぐ寒くなる。暗い冬が来る。お兄さんはお前たちを助けてやれない…お前がこ こからエサをとって、みんなにくわせてやるんだ。」 「ゆゆ!?なんだかゆっくりできないじたいの気がするよ!!」 飼育員は泣きそうになるのを必死にこらえ、話し続ける。その心底では、正直に今の状 況を言えない自分の弱さを、そして予測できなかった不運を呪い続けていた。 だが、観測隊はおまえたちを見捨てるんだ、と言って状況が何か良くなるのか? 「まりさ、カッターは使えるか?」 飼育員は「アメ横」の木箱から毛布を手当たり次第に取り出し、ゆっくりの飼育スペー スに放り込んでいく。 「まりさはかったーさんは使えるよ!」 「さすがだな!栓抜きは?缶切りはどうだ!?」 飼育員は次に木箱を組み替え、ゆっくりのエサが入った木箱を下段に移していく。 自力でエサが取れるようにするためだ。 「せんぬきさんとかんきりさんはむずかしいよ!でもゆっくりすれば使えるよ!!」 「よし!蛇口はひねれるか?」 飼育員はさらに人間用の食料や飲料水を木箱ごと下段へと移し変える。 「ゆゆ~…じゃぐちさんはゆっくりできないよ…」 いくらまりさが優秀でも、手のないゆっくりでは蛇口を自在に使うことは困難だった。 「う~ん、そうだな、蛇口はさすがに難しいな。」 飼育員はまりさをウォータークーラーの前に連れてきた。そして、水が出る部分にゴ ムホースをつなぎ、ペダルを踏めば、床に置いたプラスチック容器に水が出るように 即席の改造をした。 「まりさ、そこに乗ってみろ。」 「ゆ?」 まりさは言われたとおりにペダルに乗る。 「ゆゆ!!おみずさんが出てきたよ!!」 「越冬中、水はそうやって飲むんだ。もし、この機械が動かなかったら、あそこに水 の入ったペットボトルがあるからカッターで切り裂け。理解したか?」 「ゆゆう~!!おぼえなきゃいけないことがたくさんあるよ!でもゆっくりりかいし たよ!!」 「お前は本当にいい子だな。とてもゆっくりしてるよ…」 「?おにいさん…?」 まりさは気づいた、飼育員の声が微かに震えていることに。 その時、ベルが鳴り、基地内に放送が入る。 「基地放棄10分前、基地放棄10分前、観測隊員は食堂に集合せよ。観測隊員は荷物を もって食堂に集合せよ。」 「まりさ!俺はでかける。長い狩りだ!いつ帰ってこれるか分からない。次にここに 人間が帰ってくるまで頑張って越冬しろよ!お前がみんなを守るんだ!」 「ゆゆ!?やだよ!まりさ、おにいさんと一緒にいたいよ!みんなで一緒にゆっくり したいよ!」 飼育員はもう泣いていることを隠そうとはしなかった。隠せなかった。 「人間の群れのりーだーの命令だ。頑張って…ゆっくりしろ…ごめんよ、絶対生き延 びていくれ!」 飼育員はそう言うとまりさを降ろし、食堂へと向かった。 「おにいさん!!」 「?」 「ゆっくりいってらっしゃい!!」 飼育員はそのときのまりさの顔を一生忘れることはなかった。 観測船に到着後、飼育員は何度も、もう一度だけ軽輸送機を飛ばしてくれるよう船長 に懇願した。数日でいいから、天候の回復を待ってほしい、そしてゆっくりたちを助 けたいと。だが、観測船のまわりは既に氷が厚く張り始めており、観測船は外国の最 新鋭氷砕船に救援を依頼していた。最早、観測船独力で氷の海から脱出できる状況で はなくなっており、船長や観測隊の判断で予定を変えることはできなかった。 翌日、悪天候の中、外国の氷砕船が観測船の救援活動を開始しても、飼育員はなお、 船長に、観測隊長に食い下がった。しかし、一等航海士に、船長や隊長も氷砕船や政 府に対して、何度も観測隊交代要員を上陸させるために、そして置いてきたゆっくり を助けるために交渉したがダメだったのだ、と聞かされた。 飼育員は今更ながら、辛いのが自分だけではないことを悟り、もうそれ以上フライト の強行を意見具申することはなかった。 こうして、人間は観測基地を去り、南極の冬の中にゆっくりたちは取り残されること となった。 観測隊が基地を去ったその日、ゆっくりたちに危機感はなかった。 何やら慌しいことがあったが、また明日になれば、おにいさんがエサを持ってきてく れる、たっぷりすーりすーりしてくれる、と。 翌日、静まり返った基地の中で、誰もエサを持ってきてくれなかった。誰もうんうん を掃除してくれなかった。誰もすーりすーりしてくれなかった。 「ゆゆ…おにいさんとすーりすーりしたいよぉ…」 「ゆえええん…きょうこそおにいちゃんとまりちゃのあんせむうたいたいんだじぇ ~…」 「どぼじでれいむにごばんざんもっでぎでぐれないのおおおおおおお゛!!」 「おなかすいたよ~分かるね~?」 「うんうんをおそうじしてくれないなんて、とかいはじゃないわああああ゛!!!」 そしてなんだか寒い。 「ぶるぶる…ぶるぶる…なんだかさむいのじぇ…」 「れいみゅはさむくちぇゆっくちできにゃいよ~!!!」 「ゆゆ~!!寒いよ!ふゆさんが来たんだよ!!ままとすーりすーりしてあったま るよ!!」 暖房のレベルがいつもの18℃前後から、10℃ぐらいにまで落とされたのだ。 基地に来て以来、室内ではぬくぬくとした環境で育ってきた彼らはゆっくりできな かった。 「こんなところにたくさんもーふさんがあるよ~!分かるよ~!!」 ちぇんが見つけたのは、昨日、飼育員が必死に持ち出した毛布だった。 ゆっくりたちはそれを寝床に持ち込んで、保温を図る。 「もうふさんぬーくぬーくでとかいはだわ~!!!」 「ゆゆ~れいむはきゅーとににどねするよ…すーやすーや…」 ここで、まりさは昨日のお兄さんの言葉をゆっくり思い出した。 越冬は本当なんだと。 「みんなきいてね!!まりさたちはこれからえっとうするんだよ!!」 まりさはみんなに説明した。人間さんは群れ全員で長い長い狩りに出かけてしまった こと、まりさたちはその間えっとうしなければならないこと、食糧と水はお兄さんが たくさん用意してくれたこと。 「ゆっくりりかいしたよ!!」 「「りかいちたよ!!」」 「れいむはこどもたちのために早速狩りに行くよ!!!」 そう言うとれいむは飼育員が飼育スペースにおいていってくれた箱から、スナック菓 子やら缶詰やらを持ってきた。 「ゆふう…かりはいのちがけだったよ!!だいしぜんのめぐみにかんしゃしてゆっく りむーしゃむーしゃしてね!!!」 「みゃみゃすごーい!!」 「さすがまりちゃのみゃみゃなのじぇ!!」 子まりさと子れいむは大喜びでお菓子や缶詰にかじりつく。 「ゆぎぎ?これあじしゃんしないよ!!ゆっくりできないよ!!」 「いじゃい!!いじゃいんだじぇえええ!!!」 いつも飼育員がパッケージや缶から取り出してから与えていたので、食べ物が中にそ の入っているということが理解できないようだ。子まりさの方は歯が何本か欠けてし まっていた。 「ゆゆ!?おちびちゃん泣かないで!!!」 事態に気づいたまりさが慌てて子まりさのもとへ跳ねていく。 「ごはんさんはふくろさんや、かんさんに入ってるんだよ!!ふくろさんやかんさん に入っているからいつでもむーしゃむーしゃしあわせーができるんだよ!!!」 まりさは子まりさをなだめると、舌を器用に使って、帽子の中に入っていたカッター でスナック菓子の袋を切り開いた。しかし、缶きりで缶を開けるのには苦戦した。 まりさはいくら道具を使う訓練を受けているとはいえ、そもそも人間の缶詰はゆっく りには開けにくい構造なのである。 「ゆふ~……かんきりさんはゆっくりできないよ…」 結局、まりさが缶詰を開けたのは、一時間後のことだった。 「ゆゆ!やっと開いたよ!!みんなでゆっくり食べようね!!」 「むーしゃむーしゃ、しあわせ~!!」 「うっめ!これめっちゃうっめ!!!」 「ゆゆ!ふたさんにもごはんさんついてるよ!もっちゃいないからぺーろぺーろする よ!!」 子まりさがふたについた残りをぺーろぺーろする。 「ゆぴぴっ!?」 そして、フタの端で舌を切ってしまった。 「ゆんやああああああ゛!!!いじゃいよおおお゛!!!」 「ゆゆ!?おちびちゃんだいじょうぶ!?ゆっくりしてね!!」 そこへれいむがお菓子の袋をくわえて現れる。 「ずーりずーり…まりさ、このふくろさんも開けて欲しいよ!ゆっくりしないで開けて ね!あいするあいするれいむがおなかすかしてるんだよ!!!」 「ゆゆ!?ちょ、ちょっとまってね!ゆっくりまってね!!」 その後、まりさは怪我した子まりさの面倒を見、れいむの食べたがるお菓子の袋を開け、 部屋の掃除を指揮しなければならなかった。飼育員がいなくなったことで、ゆっくりの 中では飛びぬけて優秀なまりさに一度に負担が集中したのである。 食事の後、部屋を掃除したものの、うんうんはなくならなかった。 うんうん用の容器の中には、こどもたちの豆粒のようなうんうんが、まりさたちの一口 饅頭のようなうんうんが、そしてれいむの大魔神のようなうんうんが中央に覇王の如く 君臨していた。 「どぼじでうんうんざんいなぐならないのおおおおお゛!?」 今まで巣の外にうんうんを運んでいたのは飼育員である。その飼育員がいなくなった以 上、うんうんを指定の場所に集めてもなくならないのは当たり前である。そして、しー しーをするしーしー砂を取り替える者も誰もいなかった。 「ゆええええんん!!ぐじゃいよおおおお゛!!!」 「うんうんばっがりじゃゆっぐりでぎないんだじぇええええ!!!」 こどもたちはぴーぴー泣いてしまった。その横でれいむはどうしていいか分からずおろ おろしている。 「もう自分たちでうんうんとしーしーを捨てるしかないよ~!分かるね~?」 まりさたちは協議の結果、飼育スペースから少し歩いたところにある、ごはんさんなど が置いていない場所−それは観測隊の資料室だった−をうんうん置き場にし、毎日、う んうんやしーしーが染みこんだ砂をそこへ捨てに行くことにした。 「うんうんはきたないけど、おちびちゃんのためならしかたないよ!」 「よごれしごとを積極的にやるのもとかいはね!!」 れいむがうんうんを、ありすがしーしーの入ったプラスチックケースを口にくわえて運 び、うんうん置き場の奥に中身を捨ててくる。そして、そこへまりさがしーしー用の砂 を補充した。野生や野良の個体ならば、巣の外で済ますか、巣の中に乾燥するまで放置 することで排泄物に対応しているのだが、優秀なゆっくりであるばかりに、まりさたち にはうんうん、しーしーが巣の中にあることが許せなかったのである。 「ゆっくりぷれいすがきれーになったんだよ!分かるよ~!!!」 「ゆゆ!この調子ならえっとうもきっと大丈夫だよ!!」 自分の世話をお兄さんに頼らずに完遂しただけで士気が上がる。いくら優秀でも所詮は 飼いゆっくりということなのだろう。 「ゆ~…おにいちゃんにすーりすーりちてほしいんだじぇ…」 「おにゃかいっぱいになったらすーりすーりしちゃいよおおお!!」 毎日、お兄さんにたっぷりすーりすーりしてもらっていたゆっくりたちには耐えられ なかったのだろう。子まりさと子れいむは寂しさのあまり泣き出してしまった。 「おちびちゃん!大丈夫だよ!!ぱぱとすーりすーりしようね!!」 「ままもおちびちゃんとすーりすーりするよ!!」 「ありすともすーりすーりしましょうね!!」 「みんないっしょならさびしくないね!!分かるよ~!!」 みんなですーりすーりをする。ゆっくりたちが心からゆっくりできる瞬間だ。 このとき、このゆっくりたちは自分たちならこの「えっとう」を乗り切ることができる という自信にあふれていた。 「ゆゆゆ!みんなですーりすーりすればあったきゃいんだじぇ!!」 「ゆゆ~!れいみゅはぜんぜんさびしくないよ~!!」 人間さんがいなくなってからなんだか寒い。 その思いもあって、ことあるごとにすーりすーりして互いの体を温め合った。 それから新しい赤ゆが生まれるまで、大して時間はかからなかった。 冬 南極の冬は暗い。 太陽の光が建物の中まで差し込んでくる時間はほとんどなくなった。 証明のほとんどない観測基地の中で、ゆっくりたちは陰鬱な気分に悩まされながらも、 まだゆっくりしていた。 観測基地から人間がいなくなって約一ヶ月、まりさは焦っていた。 あれだけたくさんあった食糧が随分減っているように思えたからだ。 実際のところ、減っているのは巣の近くの木箱だけで、通路に出ればまだまだ餌は豊富 にあった。しかし、優秀と入っても、野性を経験したことのない飼育用ゆっくりである。 初めての越冬、それも終わりの見えない状況で、不安に駆られたとしても、無理なから ぬことである。 「ゆゆ!!みんな食べすぎだよ!!!今はえっとうしてるんだよ!おなか一杯食べてた ら春になる前にごはんさんがなくなって、みんな永遠にゆっくりしちゃうんだよ!! これからは一日三食にして、ごはんさんをせーぶするよ!!」 ある日、まりさは皆にそう呼びかけた。 飼育員がいなくなったことで、自分たちの面倒を自分で見なければならなくなった代わ りに、自分たちの好きなときに好きなだけ食べられるようになった。ゆっくりすること が何よりも大切なゆっくりたちにとって、その喜びは大きく、今まで一日三食だったと ころを、四食、五食と食べたこともあった。特にれいむの暴飲暴食ぶりは凄まじく、赤 ちゃんを身ごもっているからと、主にお菓子を食い散らかしていた。 こんなにたくさん食べなくてもゆっくりできる。 それよりも、えっとうのためにまだまだ「しっそけんやく」するべきだ。 そうまりさは主張した。 「ゆゆ!!れいみゅはごはんしゃんいっぱいたべちゃいよ!!」 「ありすはおちびちゃんたちにおなかいっぱい食べさせたいわ!」 ありすとちぇんの間には、二匹の赤ちぇんが産まれていた。 「でもえっとうに失敗するとえいえんにゆっくりしちゃうよ!分かるよ~!!」 異論を持つゆっくりもいたが、最後には皆納得した。 そもそも食糧減少に対して彼らの責任が占める割合は比較的低い。 「なにい゛っでる゛の゛お゛おおおおお!?にんぷはたくさんたべなきゃいけないん だよおおおおお゛!!!たりないこがうまれてぎぢゃっだらどうずるのおおお゛!?」 おなかを大きくしたれいむを除いては… れいむはこの頃、観測基地のゆっくりの中でもっとも大きく成長していた。成体サイ ズの比喩として、よくサッカーボールぐらいと言われるが、れいむは最早、ビーチバ レーのビニールボールぐらいの大きさだった。 ハロウィン用のお化けかぼちゃにでもなりたいのだろうか? 「げんぎなあがちゃんがうまれないどゆっぐりでぎないでじょおおおおおおおお!? れいむはだぐざんだべなぎゃいげないんだよ!!!にんぷさんはずどれずたまるんだ よ!!ぢゃんどまわりをきづがっゆっぐりかんがえでね!!!ゆぶぶぶ、ぎゃわいぐ でごめんでぇ!!!」 このれいむ、飼育員がいた頃は、わがままを言うことはあったものの、まりさや飼育員 の言うことはちゃんと聞くゆっくりだった。しかし、自分を止められるものがいなくな り、餌の心配をする必要がない(れいむはそう認識している)環境下で、次第にげずとみ なされても仕方のないような言動が増えてきてしまったのだ。 おそらく、にんっしんっしたことにより、餡子内のほるもんバランスが変化し、群れよ りも自身とその子供を優先するようになったのだろうか? 「ゆゆ!!怒らないでね!れいむ!ゆっくりできないよ!!やせいのゆっくりはまりさ たちみたいにいいもの食べてないってお兄さんが言ってたよ!!だかられいむもそんな に食べなくてもきっと元気なおちびちゃんを産めるよ!!ゆっくりりかい…」 「どぼじでぞんなごどいうのおおおおお゛!!!れいむはにんげんさんにえらばれだゆ っくりなんだよおおおおお!!!やせいのゆっぐりなんがどいっじょにじないでね!!」 れいむは顔を膨らませてぷくーっをする。だが、それは怖いというより不気味だった。 「ゆえええええん!!みゃみゃのぷくーっはゆっぐりでぎないいいいいい゛!!!」 思わず子まりさが泣き出す。 「どぼじでぞんなごどゆうのおおおお゛!!!ままはびーなずなんだよおおお゛!!!」 話が変な方向に逸れそうなので、思わずまりさが咳払いをする。 「ゆっふん!!とにかく!!だめなものはだめだよ!!無事えっとうするためだよ!! ゆっくりりかいしてね!!」 懲りずに喚きたてるれいむをまりさはそれ以上相手にしなかった。そして、まりさの管理 によってそれ以降、ゆっくりたちの食事は三食に制限された。それでも、普段、飼育員が 与えていた食事に比べて量は大して変わらなかったのだが。 「ゆぶぶぶ…これじゃあしあわせーってできないよ…」 あっという間に自分の分を平らげて、寂しそうに餌を入れるプラスチック容器を見つめる れいむ。しかし、食事制限に不満を持っていたのは、この太ったれいむだけではなかった。 「ゆゆ…おなかいっぱいになれないんだじぇ…」 「これじゃあゆっくちできないよ…」 子れいむと子まりさはずっと母親のれいむと一緒に食事していたため、一日に何回もごは んさんを食べることに慣れっこになってしまっていたのだ。 夜中、子れいむは空腹によって目が覚めてしまった。 「ゆゆ…おなかすいたよ…」 なんとか我慢して眠ってしまおうとするが、空腹を意識すればするほど眠れなくなる。 「ゆゆ…もうがまんできにゃいよ…」 子れいむはこっそりと起き上がり、毛布から抜け出した。途端にあったまっていた体が 冷たくしっとりした夜の空気によって冷やされる。 「しゃむいけどがまんするよ…そろ~りそろ~り…」 子れいむは餌が蓄えてある通路に向かった。しかし、 「ゆゆ!!なんじぇぱぱがごはんさんのところでねてるおおおお!!」 まりさは誰かが空腹に耐え切れず、ごはんさんをこっそり食べてしまうのを防ぐために、 通路で眠っていたのである。 「むーにゃ…むーにゃ…すーや…すーや…」 鼻ちょうちんを膨らませながら眠るまりさ。 子れいむは何とか、その防御壁をすり抜けて、餌にたどり着こうとした。だが、まりさ が通路の中央付近で眠っているために、それは難しかった。おそらく、どこを通っても まりさに触れるか、毛布を踏んでしまうため、起きてしまうだろう。 「そろーりそろーり…」 それでも餌への接近を試みる子れいむ。 「…んん!…」 「!!!」 まりさは寝返りをうっただけだったが、子れいむは思わず飛び退き、通路の入り口まで 全速で撤退してしまった。 「ゆゆ…おなかすいててゆっくりできないのに…」 子れいむのおなかは容赦なく空腹の悲鳴をあげ続けている。 子れいむは決心した。 よし、お外にごはんさんを取りに行こうと! 観測基地は厳重にロックされていたが、ゆっくりのために、飼育棟から外へ出られる小さ な出入り口があった。これは、夏に外で飼育員と遊んだときに、ゆっくりの要望で飼育員 が作ってあげたものだった。猫用の出入り口のようなもので、ドアを何重にも取り付ける ことで外気の侵入を阻んでいる。 この出口は建物の影、南極の冷たい風を完全に遮断できる位置にある。さらに、そのすぐ 近くに発電機があるため、そこから発せられる熱によって、この出口が完全に雪に塞がれ てしまうことはなかった。 子れいむは真っ暗な通路を、触覚のみを頼りに進んでいた。 「ゆぎゃあ!!…ゆゆ~ん…まっくらでどあさんみえないよ…」 子れいむがなんとか出口から外に飛び出したとき、子れいむを迎えたのは−20℃近い寒 気だった。 「にゃにきょれえええええええええええええええええええ!!ざむびいいいいい!!! ゆっぐちでぎなびいいいいいい!!!」 子れいむは歯をがちがちと鳴らし、縮こまって寒さに対抗しようとした。しかし、無駄 なあがきだった。空から降っているのか、地面から巻き上げられているのかも分からない 雪の欠片が途切れることなく子れいむの防寒服を打つ。 「じゃむび…がちがち…じゃ…がちがち…」 南極は寒いというイメージがあるが、それと同時に極めて乾燥した場所である。 気象庁のホームページに記載されている基地の湿度を見ると、60~80%といった数字が 並んでおり、湿度が高いように感じられる。しかし、湿度には相対湿度と絶対湿度があ り、我々が普段目にするのは相対湿度である。 「相対湿度」はある気温(温度)の空気の飽和水蒸気量を100%としたとき、何%の水蒸気が 含まれているかを示したものであり、「絶対湿度」は空気1kg中に含まれている水蒸気の量 のことで「g/kg」という単位で表される。 南極は地球上でも最も絶対湿度の低い地域の一つなのだ。 子れいむは防寒服によって守られているものの、その寒さが体温を、その乾燥した空気 が水分を容赦なく奪っていく。子れいむ自慢のおはだは既にがさがさになり始めていた。 子れいむが外出したことがあるのは、まだ生まれたばかりの頃だ。そのときは季節は夏 であり、南極の周縁部にあたるこの観測基地では、気温が氷点下を上回ることも珍しく はなかった。そんな日は、飼育員はゆっくりたちを散歩に連れて行ってくれたり、観測 隊員お手製の即席露天風呂に入れてくれたりしたものだった。 子れいむの記憶にある「お外」とはその頃のものだったのである。 今は冬、日照時間はほんの数時間しかなく、日によっては秒速20メートル以上のブリザ ードが吹き荒れることもあった。 冬の南極といっても生命の影が皆無なわけではない。分厚い氷の下には不凍液を体内に 持った魚が海を泳いでおり、湖の底には藻類が、零下数十度の氷原にはコウテイペンギ ンが次の世代を育んでいた。 しかし、いずれもゆっくりが自力で獲得できる餌とは到底思えないものばかりであった。 「ゆぎぎぎぎぎぎ!!!かじぇしゃんはゆっぎぎでぎないいいいい゛!!!」 子れいむは知らなかったが、北東風が吹き始めていた。 この観測基地では、ブリザードは必ず北東風と共にやってくる。危険な兆候であった。 「ゆぎぃいいいいい!!!れいむは…ごはんさん…ひゃぶうううう!!!」 このときの子れいむの執念はゆっくりにしてみれば恐るべきものであった。這い回る ように移動し、なんとか建物の影に置かれている、雪上すぃーを見つけ出す。 「ど、ど、ど、どぼじっでででですぃーーーーーがゆぎさんのながにうばでででるのお おおお゛!!!」 ゆっくり得意の叫び声も寒さでうまく言うことができなかった。防寒服から微かに露出 している目や口の周辺はかさかさに乾燥し、氷が張り付き始めていた。 雪上すぃーは飼育員が南極の雪上移動用に作ってくれた特別仕様のすぃーである。まり さ、れいむ、ちぇん、ありすの4台が用意されており、それらは重心の移動によって操 作するタイプと、あにゃるにハンドルを差し込んで尻の動きで操作するタイプの2つに 分かれていた。飼育員お気に入りのまりさ専用機「ふぉるねうす」はもちろん、あにゃ るハンドル型である。 子れいむは一生懸命、積雪の中から雪上すぃーを掘り起こそうとした。 「すぃーざんゆっぐちじないででてきでね!!ゆんしょ!ゆんしょ!ひゃぶぶぶぶいい い!!!」 心なしか辺りが暗くなり、風が強くなってきたような気がする。子れいむは作業を急い だ。 「ゆう~…なんとかゆぎさんをどかじだよ!!ゆゆん!!ゆぎ!?」 子れいむはすぃーハンドルを口で持ち上げようとしてバランスを崩し、歯を何本か折っ てしまった。 「ゆぴいいいいいい!!!」 思わずしーしーをもらし、痛みに辺りをのたうち回る。しかし、南極の冷気はれいむの 漏らしたしーしーを凍らせてしまい、れいむは刺すような冷たさに、さらにのた打ち回 った。 「ゆぎいい!れいむの!れいむのべにべにがじべだいよおおおおおおお!!!」 だが、のた打ち回ったところで氷が解けるわけではない。 「じべだいいいい゛!!!べにべにがじべだぐでゆっぐじでぎないいいいいい゛!!!」 結局、子れいむはしばらくして泣き止んだが、それは刺すような冷たさが消えたからでは なく、子れいむのぺにぺにの感覚がなくなったからであった。 「ゆぎいいい…おなか…じゅいだよ…じゃぶいよ…」 ここに来て空腹を思い出し、なんとか雪上すぃーに乗る子れいむ。子れいむが掘り出した のは、ありす専用機「あらけす」だった。 ハンドルを防寒服の上からあにゃるに軽く差し込み、ゆんっと踏ん張ってグリップを固定 する。 子れいむに行くあてはなかった。ただ、お外に出れば何かしら食べ物にありつける。その 程度の考えしかなかったのである。 子れいむは盗んだすぃーで走り出した。 「ゆぎぎぎぎ!!ざぶびいいいいいい゛!!!」 雪の中を疾走するすぃー。 風を切って走ることで体感気温は更に下がり、子れいむの皮の弾力性は次第に失われてき た。そしてあにゃるに差し込んだハンドルから伝わる振動、 「んほほお!!!んほほほおおおおおおいいい゛!!!」 子れいむは寒さに震えながら、ぺにぺにをいきり立たせ、ノリノリで氷原を疾走していっ た。しかし、次第に視界は真っ白になっていき、横殴りの氷雪が強くなっていく。 「んほほほほ!んほ!やっほぅぅいいいいいい!!!」 何も考えずにすぃーを走らせる子れいむ、しかし次の瞬間、子れいむは宙に浮いていた。 「!?」 すぃーが新雪の下に隠れていたヒドゥンクレバス、氷の割れ目に引っかかったのである。 べし 「ゆべしっ!!!」 子れいむは顔面から雪に叩きつけられ、前歯は全てへしおれ、四散した。そして、いき り立ったままだったぺにぺには半分に叩き折られた。 「ゆい゛はrんぎあgはwばんフォアpjs8hgpわえぱのwじgないうんpgwな!!!!」 擦りむけた防寒服から、きれいに半分におれたぺにぺにの残りが顔を出していた。感覚 がなくなっていたぺにぺにに痛みだけが戻ってきた。 「ゆぴいいいいいいいいいい!!!れいぶのないすぺにがああああああああ゛!!!」 防寒服が破れたことで急激に体温が奪われる。辺りは地吹雪が吹き荒れ、もう一キロ先 は真っ白で何も見えない状況だった。 「ゆぎ…ゆぎいいい…しーしー…したくなってきたよ…」 一気に体温を奪われたせいか、子れいむは尿意を催した。 「しーしーするよ…」 へし折れたぺにぺにからあらぬ方向へしーしーが飛んでいく。しかし、しーしーは空中 に飛び出た瞬間凍っていき、最後にはぺにぺにから横に伸びるしーしーステッキが出来 上がった。 「どぼじでじーじーざんくっづいでるのおおお゛!!ゆっぐりでぎないよおおお゛!!」 凍ったしーしーを伝って、ぺにぺにから体の方へと冷たい痛みが浸透してくる。れいむ は溜まらずぺにぺにや尻をぶりぶりと振り回し、しーしーステッキを離そうとする。 「ゆぴぴぴ!!!しーしーさんはなれてね!!!れいむのぺにぺにがちべたいよ!!!」 次第にぺにぺにから感覚のなくなった部分が広がっていくように感じ、子れいむは恐怖 した。 「もうやじゃああああ゛!!!おぶじがえるうううう゛!!!」 しーしーステッキに邪魔されながらなんとか、すぃーに向けて跳ねる子れいむ。 しかし、着地の瞬間、しーしーステッキがへし折れ、ぺにぺにも一緒に付け根からなくな ってしまった。 「ゆぎゃああああああ゛!!!もうあがじゃんのおがおがみれないいいいい゛!!!」 もっとも痛みはなかった。もう子れいむの凍傷は下腹部へと少しずつ広がっていた。あ んよが動かなくなるのも時間の問題だろう。 だが、子れいむは最後の力を振り絞ってすぃーに飛び乗ろうとした。しかし、すぃーに 乗った瞬間、地面が消えた。 すぃーは辛うじてヒドゥンクレバスに引っかかっていたのだが、子れいむが乗ったことで ついに落下してしまったのである。 「ゆぴいいい!!!れいぶおじょらどんでべっ!!!」 子れいむは何度も氷の壁に叩きつけられ、最後には数十メートル下の冷たい氷塊の床に 叩きつけられた。 「ゆびゃ!!!」 吹雪で凍っていたもみあげは割れて四散し、両目は飛び出して破裂した。顔の半分は落 ちた衝撃で飛び散り、真っ青な雪の床に黒いペンキを一滴垂らしたかのようだった。 「ゆ゛…ゆ゛…ゆ゛…」 ほんの数分だけ痙攣が続き、そして止んだ。 餡子の中まで氷が発達し、子れいむは悲惨な死に顔のまま、腐ることも、吹き飛ばされ ることもなく、雪の下に保存された。 「おじびじゃああああああん!!!がえっでぎでえええええ!!!」 その頃、観測基地ではまりさや子まりさが泣き叫んでいた。 起きたら子れいむがおらず、れいむに、空腹に耐えかねてごはんさんを取りに行ったか らではないかと告げられたからだ。しかし、翌日になっても子れいむが帰ってくること はなかった。 外ではブリザードが吹き荒れ、ゆっくりできない風の音や、建物の軋む音が室内に響い てくる。 「まりさがごはんさんをせつやくするなんていうからだよ!!!このゆっくり殺し!」 れいむは怒りに任せてまりさに体当たりをした。 「ゆびゃああああ゛!!!」 まりさは壁にしたたかに壁に叩きつけられた。 実はれいむは子れいむが寝床を抜け出したとき、起きていたのである。そして、その様 子から食べるものを探しに行くのだと見て取った。れいむが寝たふりをしていたのは、 自分では盗み食いをしに行くつもりがなく、うまくまりさの監視をくぐって子れいむが 餌をとってきた場合、一緒に食べるためである。 そして、子れいむは帰ってこなかった。 「このゆっくり殺し!!!食べ物とおじびちゃんとどっちがだいじなの!!!くず!!」 れいむはまりさの上に乗り、何度も飛び跳ねる。 「ゆべ!ごべんなざ!ゆがああ!!!やべで!!じんっじゃう!!やべで!!!」 れいむの肥満体を何度も叩きつけられ、自慢のお帽子はぐちょぐちょに潰され、まりさ餡 子をかなり吐いてしまった。 「ゆふ~、れいむはえんじぇるだから、これぐらいでかんべんしてあげるよ!わかっだら さっさとごはんさんもっできでね!!せつやくなんてしないよ!!!いっぱいたべでゆっ ぐりずるよ!!!」 「ゆ…ゆっぐりりがいじだよ…」 なまじ頭がいいばかりに、子れいむを失った責任感に打ちのめされたまりさは、もう二度 とれいむに逆らうことができなくなった。 毎日、れいむは餌を好き放題に食い散らかし、食事の用意・後片付け・うんうんしーしー の掃除はまりさの仕事として固定された。 ちぇんとありすは、れいむの様子に嫌気が差し、今は使われていない観測隊員の部屋の一 つに引っ越した。 「ぢょどおおおおお゛!!!まだう゛ん゛う゛ん゛がそうじされていないよおおお゛!! はやぐそうじしなよ!!!おぢびちゃんがまたえいえんにゆっぐりじちゃうでしょおおお おおおおおお゛!?」 れいむがまりさを怒鳴り散らさないのはすっきりの時だけだった。 まりさは醜く太ったれいむとすっきりなどしたくなかったが、れいむは赤ちゃんを増やす ためにすっきりを強要し、もうまりさはれいむに何一つ逆らう気力はなくなっていた。 「ぱぱ~!元気出して!ゆっくりして!!」 子まりさだけがまりさを慰めたが、何もしてあげることができなかった。 「おとうさんは…ゆっくり…してるよ…」 ガラスのような無機質な瞳は何も見ていなかった。 つづけーね 神奈子さまの一信徒です。 次はどんな生態系を書こうかなと考えながら、昨夜の雪を見てむしゃくしゃして書きました。 短編SSにしようと思ったら二話完結となりそうです。 勢いで書いた結果がこれだよ。 お暇つぶしとなれば幸いです。 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る まさに、れいむ種は不幸の現況になるのは ほぼ確定なんだなぁ -- 2012-08-27 00 12 05 おお!めっちゃおもしれえ!!続きが楽しみ♪ -- 2011-11-14 07 56 53 でいぶは本当に最悪だな… まりさが可哀想だ -- 2010-11-15 18 23 33
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「ねえ、お姉ちゃん。好きな人の写真を携帯の待ち受けにして、三週間隠し通せたら恋が叶うっていうおまじないの噂知ってる?」 「へえ、そんなのあるんだ。でもさ、そんなことで恋が叶うわけないのに、どうしてやろうと思うのかしら。それよりも、もっと現実味のあることをすればいいのに。仲良くするとか、告白するとか」 「お姉ちゃんは夢がないなあ。素敵な話じゃない。告白なんてする勇気がないから、待ち受けの画面にしてこっそり、恋が実りますようにってお祈りしてるんだよ」 「はいはい、私は夢がないわよ。にしても、三週間隠し通すなんて、部屋の押入れにでも入れてたら簡単なんじゃないの?」 「そんなのじゃ、恋は叶わないよ。いつものように使いながら、隠さないといけないんだよ」 「いや、だからどっちにしても叶わないって……。まあ、いいわ……」 それにしても、待ち受け画面を三週間隠せたら恋が実る、か……。 休み時間、こなたの教室の前に来た。 扉を開けようとして、しかし足が竦む。 一度深呼吸をする。胸に手を当て、緊張を和らげる。 大丈夫だ。大丈夫だ。 よし、と呟いてから扉を開けた。 「こなた、ちょっといい?」 「何? かがみ」 こなたはつかさとみゆきと話していたようだ。 移動はしないでこちらを向く。 「時間があるなら、来てくれない?」 私はこなたを屋上に連れて行った。 「それで、私に何か用?」 「え?」 落ち着け、私。昨日何度も練習したじゃない。何も恥ずかしがることはないんだ。 「あ、えー、と……。その、ちょ、ちょっと写メ撮らせてくれない?」 「え? どうして?」 どうしてだなんて、言えるわけがない。 だから、怪しまれないような言い訳も考えてきた。 「え、えと、私の友達に、こなたの話をしたら、顔を見たいって言い出して……」 これで、私は頼まれてやっているだけの人になれる。 「別に私に言ってくれれば実物を見せるんだけど。……この学校の人だよね」 まさか、ここまで聞いてくるとは思ってなかった。 でも、私だってここで嘘とばれるわけにはいかない。 嘘に嘘を重ねていく。 「い、いや、そうじゃなくて……む、昔の友達なのよ」 「ふ~ん。それで、どんなポーズになればいいの?」 「え?」 「だから、格好とか表情とか、そんなの。第一印象って大事じゃん」 そうか、こなたは疑っていないのか、私のことを。 そのでっち上げた友達に、会いたいと思ってるのか。 少し罪悪感を覚えた。こなた、ごめん。本当に、ごめん。 「か、可愛い表情がいいと思うわよ」 無意識のうちにそんなことが口から漏れていた。 何気なく大変なことを言ってしまった。 恥ずかしさに苛まれる。 いや、よく考えたら、これは私が望んでいるものではなくて、私の友達が望んでいるものだ。 私が私の意思で要求するのなら恥ずかしいけど、これは違う。あくまで私の友達の欲求だ。 「可愛い表情? う~ん、どんなだろ」 こなたは目を細めて頬に指を当て、考え始めた。 その姿に、一種の愛おしさのようなものを感じた。 私が望んだ、可愛いこなたそのものだ。 思わずカメラのシャッターを切った。 バシャッっという機会音に気づいたこなたが目を見開く。 「かがみ? 何勝手に撮ってるのさ~。まだ考えてる途中だったのに」 「ご、ごめん。じゃ、じゃあね。ありがと」 急いで屋上を飛び出した。 心臓が激しく脈打っている。走ってきたせいだ。 トイレの中で、撮った写真を確認する。 繭尻を下げて困ったように考え込むこなた。 ようやく、こなたの写真が手に入った。 胸が熱くなってくる。なんとも言えない気分になる。 待ち受け画面を変える。 あと三週間。 あの日から二日が経過した。まだまだ先は長い。 宿題をしていると、つかさが話しかけてきた。 「お姉ちゃん、明日こなちゃんが家に来るんだけど、いいよね」 どきりとした。一瞬体が動かなくなった。 「こ、こなたが? 何かあるの?」 あまりにもびっくりしたので、取り乱してしまった。恥ずかしい。 「うん。私がこなちゃんから借りてた漫画を取りに来るんだって」 「ふーん、べ、別にいいけど。わざわざその為に来るの? つかさが学校ででも渡せばいいのに」 「なんか、早く返して欲しいんだって」 そうか、こなたが家に来るのか。 こなたが。 明日。 待ち遠しいな。 「お姉ちゃんどうしたの? にやにやして」 「え? な、なんでもないわよ。気にしないで」 危なかった。表情が顔に出てしまっていた。落ち着け、私。ポーカーフェイスだ。 ベッドに入る。携帯をそっと開けた。 こなたの困った顔。 込み上げてくる何かを抑えるようにため息をつく。 忘れようと思って携帯を閉じる。 何やってるんだろうな、私は。 もやもやした思いを胸に秘めたまま、眠りに落ちた。 朝。 家の中ですることもないので、勉強を始めた。 つかさが起きてきてしばらく経ったころ、不意に携帯電話が鳴り始めた。 非通知だった。誰だろう。 「もしもし?」 「あ、かがみ。今かがみん家に行ってるんだけど、家にいるの?」 こなただった。 「な、なんだこなただったの。私はいるけど、どうしたのよ。つかさに漫画を返してもらうだけでしょ」 「いや、ちょっと確認しただけ。じゃあね」 確認しただけって、どういうことかしら。 また宿題見せてなんて言ってくるんじゃないでしょうね。 ため息を吐きつつ、携帯電話を机の上に置く。 宿題をやっているか確かめる。 昨日のうちに宿題は全て終わらしていたはずだ。 思ったとおり、全部出来ていた。 机の上に置いておく。 時計を眺める。途端に秒針の動きが鈍くなった。 こんなに一秒は遅かったのだろうか。 ピンポーン 玄関のチャイムが鳴る。秒針は四週もしていなかった。 もうこなたが来たらしい。一体どれくらいの近場から電話をしてきたのかと思いながら、急いでつかさと玄関に向かう。 「おはよー、つかさ、かがみ」 「おはよう、こなちゃん」 「こなた、おはよう」 こなたは軽めの格好だった。二学期が始まったとはいえまだまだ暑い。 それにしても、こなたはファッションというものには興味が無いのだろうか。 こんなだから彼氏も出来ないんだ。少し気を使えば顔も可愛いし、簡単に出来ると思うのに。 いや、それは困る。こなたに彼氏が出来るなんて……。 あれ、私は何を考えてるんだろう。こなたは大切な親友なんだから、恋を応援するのは当たり前だ。 「とりあえず上がって」 こなたを部屋へと先導することで思考を振り払う。 三人で勉強部屋に行く。 「はいこなちゃん、これ。ありがとう。面白かったよ」 つかさがこなたに二冊の漫画を渡した。 「いや~、布教活動の一種だからね。お礼なんていいよ」 「その割には早く返してもらいたいがるのね」 いつもの調子で、こなたにつっこむ。そう、いつも通りだ。 「ちょっと次の布教先を見つけたからね」 こなたもいつも通りさらりと受け流す。 「かがみも読みたかったら貸してあげるよ。ひよりんの後になるけど」 「いや、私はいいわよ……」 「あ、そうだ。返してもらったってひよりんに言っておかないと。ちょっと携帯の充電器貸して」 「え? そういえばあんたさっき公衆電話からかけてきてたけど、充電してなかったの?」 「全然使ってなかったからね。気づいたら充電が切れてたってことよくあるじゃない」 「普通ならないわよ」 ため息をつく。携帯電話が携帯電話としての機能を全く生かせていない。 あ、でも、普段使ってないってことは、私達以外とはあまり付き合いがないってことか。よかった。 よかった? なんで? 最近自分のことが分からなくなってくる。天井を見上げて気持ちを落ち着ける。 少し整理しよう。 「あ、ここに携帯あるじゃん。ちょっと貸して」 「え?」 こなたが私の机に目を向けている。 携帯を机の上に置いたままにしていたことを思い出した。 やばい、どうしよう……。 「ま、待って!」 「え、どうしたのかがみ。怪しいメールでもあるのかな~」 こなたは逆に興味津々といった感じで携帯を手に持った。 待って待って待って! おしまいだ。何もかも。 まだ見ていないこの後の様子が鮮明に浮かび上がる。 そしてそれは現実になった。 「どれどれ。……えっ?」 「どうしたのこなちゃん。あれ、これって、もしかして……」」 やめて、それ以上言わないで。こなたには知られたくないから。お願い。 やめてやめてやめてやめて。 テーブルの前に座ったまま体は動かない。 ただ、何も聞こえないように、必死で耳を塞いだ。 体が小刻みに震える。 「どういうこと? つかさ」 「えっと、あの……」 言葉は塞いだ手を突き破って耳に入ってくる。 「携帯の待ち受け画面をね……」 もう耐えられなかった。聞きたくない。ここにいたら、嫌でも耳に入ってしまう。 自分でやった事実だから、逃れようがない。 「好きな人の写真にしたら……」 全てを聞いてしまった。聞きたくなかったのに、知られたくなかったのに。 「やめてぇぇぇぇぇ!」 気づいたら、部屋を飛び出していた。 家を出て、走り続けた。どこまでも。現実から逃げられるまで。 でも、何処まで行っても、体は震えたままだ。 もう、終わりだな。 公園があった。 ベンチに座る。 必死に忘れようとしているのに、あの出来事が何度も蘇ってくる。 つかさは、攻められない。 あの状況なら、本当のことを言うしかない。それに、結局実践したのは私だ。 あんなこと、しなければ良かった。 何の意味もないのに。 でも、もしかしたらという淡い希望もあった。それは思い込みでしかなかったのだけど、私にはこんなことしか出来なかったんだ。 告白なんて、そんなに簡単に出来ない。だからこそ、こんな夢物語的なものを信じてしまった。いや、信じるほかなかったんだ。 だって、どうしようもないから。思いは強くても、行動には移せないから。そんな勇気無かったから。 ああ、どうしたらいいんだろう。 元々叶うわけないと分かってたはずだ。それなのに、万が一に賭けてしまった。 そのせいで、恋が叶うこともなくなった。その上友達としての関係もおかしくなってしまった。 私、こなたに嫌われたかな。 そこまで、考えて、ようやく心のもやもやが晴れた気がする。 そうか、私、こなたのことが――。 同性に好かれているなんて知ったら、いくらこなたでも引くに決まってる。 こんなのは普通じゃないから。 友達だったのに、いつからだろう。こんな風に思いだしたのは。 ベンチの背もたれに思いっきり背中を預けた。 ぼんやりと空を見つめ続けた。 雲ひとつ無い青い空。恨めしいほどに私とは全然違う。 真っ白になった頭の中、モザイクが薄れていくように何かの映像が広がっていく。 こなた……。 こなたの姿がいくつもいくつも現れては消えていく。 チョココロネを食べるこなた。 目を細めて思案するこなた。 アニメについて語るこなた。 嬉しそうに笑うこなた。 それは、心の奥底に隠した思い出の写真。 こんなにも沢山の写真を持っているのに、どうして私は携帯でこなたを撮ろうとしたんだろう。 こんな気持ちなんて、誰にも気づかれないように胸の中だけで抑えていたらよかったんだ。 こなたはいつまでも子供のように純粋だ。 自分の好きなことならどこまでも追い続け、自分の気持ちに嘘をつかないで、思ったとおりに行動する。 周りの目なんて一切気にしていない。 私にはないものを、こなたは持っている。 だからかな……。 空は何処までも突き抜けていく青。 どうしてこんなに晴れてるんだろう。雨でも降ってくれたほうがいいのに。 もう、今までの日常は帰ってこない。 これから、こなたとどう接すればいいんだろう。 そもそも、話しかけてくれないかも。 心にぽっかりと大きな穴が開いたような、そんな気がした。 空が、どんどんぼんやりとしたものに変わっていく。 自然と涙がこぼれていた。 ああ、私、泣いてるんだ。 こんな公園で、みっともないなあ。 でも、全然止まらないよ……。 パシャ 「かがみ、そんなに泣いて、かがみらしくないよ」 「え……?」 滲んでよく見えない目を凝らして、前を見る。 確かに、そこに、いる。 「こ……なた……?」 急いで服で涙を拭う。 こなたがいた。目の前に。 どうして? どうしてここにいるの? こなたは携帯をいじっていた。 「……何、してるの?」 「え? ……内緒、だよ」 こなたは私に笑いかけると、携帯をしまって隣に座った。 「……こなた、どうして、来てくれたの?」 「どうしてって、心配だからに決まってるじゃん」 「でも、あんなの見て、軽蔑したでしょ……」 「なんで? あれが、かがみの本当の気持ちなんでしょ。乙女チックで、おまじないも信じちゃうかがみんは可愛いなあ」 「な……」 顔が火照っていくのが自分でも分かる。 「かがみ、顔真っ赤だね~」 「い、いや、こ、これは……」 「私は、嬉しかったよ」 思わずこなたの方を向いた。 それを見たこなたは、小さく微笑んだ。 「かがみの気持ちが分かったから。同じだなって……」 「……え?」 同じ? それってどういう……。 「かがみ」 こなたが私の膝の上に寝そべった。 「泣いちゃってるかがみも可愛いよね。レアものだし」 そう言ってこなたは、自分の携帯を開いて見せてきた。 ああ、そうか。同じって、こういうことなんだ。 嬉しかったし、ほっとした。 私は軽蔑されても嫌われてもいなかったんだ。 心の穴が塞がっていく感じがする。 胸が熱くなってきた。 押さえ込んでいた涙がまた流れ出してくる。今度はいくら拭っても止まらなかった。 「あんたは、三週間隠し通したりしないの?」 「え~? だって、そんなに待たなくても、もう叶ってるよ、おまじない」 「こなた……」 そっと、こなたの顔に手を置く。 こなたが、その手にじゃれついてきた。 よかった。本当に、よかった。 感情がどうしようもなく溢れてくる。 これからはずっとこなたと一緒だ。絶対に。 言葉に出来ない思いに悩むことも無い。 自然と笑みがこぼれてくる。 自分の願いが叶ったことと、こなたの幸せそうな顔。 膝の上のこなたを、全身で優しく包み込んだ。 見上げると、雲ひとつない青空が広がっていた。 終 コメントフォーム 名前 コメント GJ! -- 名無しさん (2022-12-16 11 52 05) 泣きそう… -- 名無しさん (2021-01-07 04 12 20) とてもロマンチックで私もこんなロマンチックな事が起こって欲しいなぁと思いました(^_^;) -- 中西久子 (2014-01-09 17 41 45) 下のコメントの人気に嫉妬ww -- 名無しさん (2012-10-06 22 32 57) 一番下のコメント凄い感動 -- かがみんラブ (2012-09-23 22 38 49) いい話だった あと、誠死ね -- 名無しさん (2010-08-12 18 29 02) 一番下のコメントで泣いた -- 名無しさん (2010-01-28 23 45 55) つかさ「」 -- 名無しさん (2009-06-27 14 00 49) むしろ、下のコメントにちょっぴり感動した。 -- 名無し (2009-06-24 11 49 52) かがみもこなたも、お互いが心の中の待ち受けを3週間以上設定していたのかもしれませんね。 これからの二人は、何も悩むことなく、きっと幸せでいれる、そう信じてます。 -- 名無しさん (2008-12-18 11 44 26)
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アナル表現有り しなないゆっくりがいます 一応元ネタあり 初投稿になります あれ?ゆっくりが妙に賢い・・・ まりさの馬鹿 「む~しゃ、む~しゃ!!しあわせぇぇぇぇ!!!!!」 とあるまりさは人間の畑に忍び込んで、野菜を食べていた。 とても幸せそうな笑顔だった。 だが幸せになれないのは野菜を育てていたお兄さんだった。 「またゆっくりかよ・・・・・・もう勘弁してくれよ・・・・・・」 趣味で作っていたとはいえ、何度も何度も畑に入っては野菜を食べられてはたまったものではない。 また今度もゆっくりを踏みつぶそうかと足を上げたその時、お兄さんはとあることを思い出した。 ゆっくりは思い込みが強いという事を。 ならば思いこみをさせればもう畑によりつかなくなるのではないかと思い、お兄さんは行動を起こした。 「だいこんさ~ん、まりさにた・・ゆぴぃぃぃぃぃ!!!!」 まりさは突然の痛みに悲鳴を上げた。振り返るとおしりの穴にお兄さんが指を突っ込んでいたのだ。 いわゆるカンチョーというやつだ まりさはケツを貫かれた痛みに悶絶していたが、痛みが引いたのかお兄さんの方を向いて 「なにするのおにいさん!!!まりさはごはんをたべていただけなのに!!!!」 またいうか・・・・とお兄さんはため息をつくが、気を取り直してまりさに魔法の言葉を言う さてさてうまくいくかな 「まりさ、今おにいさんはお前に三日殺しという幻想郷につたわるサンボという格闘技の裏ワザをかけた。 おまえは三日後のかけられた同じ時間に・・・・・永遠にゆっくりすることになる」 空白の時が流れた・・・・・ 空白の均衡をまりさが先に破った 「・・・おにいさん。うそはいけないよ・・・・。おしりになにかいれられたていどでゆっくりが」 「残念だがこれは事実だ。数年前にもおまえみたいなゆっくりにかけたらそいつはああなった。 というとお兄さんは大根の生えている土を指差した。 「この土はな、死んだゆっくりでできている。いわば死んだゆっくりの墓場だ。 ここにいる奴らの共通点はただ一つ。三日殺しをくらった奴らだ。 食らえば全身から餡子を吐きだし、永遠にゆっくりする。 ゆっくり理解したか?」 再び空白の時が流れた。 この均衡を再びまりさが破った。 「どぼじでぞんなごどをするのぉぉぉぉぉ!!!!!ばりざはなにぼばるいごとをじでないのにぃぃぃ!!! いやだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!じにだぐないぃぃぃぃ!!!!!」 まりさは絶叫した。 「まりさ、おまえはたった三日で死ぬ。おまえたちゆっくりにはとてもありがたい三日間なんだぞ!!」 「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!どうゆうごどがぜづめいじろぐぞじじいぃぃぃぃぃ!!!」 お兄さんはまりさにゆっくりと説明することにした。 なぜありがたい三日なのか。 説明するためにお兄さんはまりさを片手に移動を始めた。 まずお兄さんは都合良く他の畑に入ろうとしているゆっくりの近くへまりさと一緒に来た。 もちろん見つからないようにだ。 「いいか、あそこにゆっくりがいるだろ?」 「ぞれがどおじだんだぜぇぇぇぇぇぇ!!!!ごのゆっぐりごろじぃぃぃぃぃぃ!!!!」 「あのゆっくりはこれから永遠にゆっくりすることになる」 「うぞゆうんじゃないゆっぐりごろじがぁぁぁぁぁぁ!!!あんばにゆっぐりじでいるゆっぐりが えいえんにゆっぐりずるばずないんだぜぇぇぇぇぇぇ!!!!」 数分後 「おい五平!!またゆっくりが入っているぞ!!!」 「おいまたかよ・・・・・、ったくやってられないぜ・・・・」 そういうと五平と言われた男は侵入したゆっくりに近づいてきた。 「ゆ!!かとうなごみくず!!わざわざまりささまをこんなつちくさいところにいかせてなにもざいあくかんは ないのかだぜ!!!まいにちまりささまのごうていのまえにごはんをおくしかのうがないごみくずは おわびにまりささまのあんよをぺーろぺーろするん・・・・ゆびぃ!!!」 「あ~~~~、うっせ!!!」 畑に入ったまりさは五平のもっていた鍬によって一瞬にして永遠にゆっくりすることになった。 おとこは何もなかったのように畑に戻って仕事に戻った。 「どぼじでゆっぐりじでいだばりざをごろずのぉぉぉぉぉ!!!!」 一連の流れを見たまりさは叫んだ。 「どうして?そんなの簡単だ。あれがおまえの本来の姿だ」 「ぞんなごどないよぉぉぉ!!!!うぞゆうなまりざごろじぃぃぃぃ!!!!」 「わかってないなぁ。おまえは畑に入った瞬間から永遠にゆっくりする運命だったんだよ。 それを俺が温情で三日の猶予を与えたんだぞ。ついでだ、お前にゆっくりのたどるべき運命を見せてやる。」 そう言ってまりさを家へ連れて行きビデオを見せた。 見せたビデオはさまざまなゆっくりが自然の猛威や同族による殺ゆっくり、自分の業によって自滅していくもの をまとめたビデオだった。 なかには人間に逆らってゆっくりできなくなったゆっくりの虐待ムービーまであった。 「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!やべでよぉぉぉぉぉぉ!!!そのでいぶば いいおがあざんなんだよぉぉぉぉ!!!!どぼじでいじべるのぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」 「おねえざぁぁっぁぁぁん!!!!!!やざじいみょんぼいじべないでぇぇぇぇぇぇ!!!!」 「やべろぉぉぉぉぉぉ!!!!!!ぞのぢぇんはながまおぼいのいいぢぇんだよぉぉぉぉ!!!! どぼじでだべじゃうのぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」 ビデオが終わった後、まりさは肩で息をしていた。 あたりには甘ったるい液体が流れていた、おそらく涙と汗だろう。 お兄さんはまりさを森の入口まで運んでやった。 最後に男は言った。 「三日後、お前はどうあがこうが死ぬ。この三日はお前にとっての懺悔の時間だ。 むれに帰ったら、畑にちかづいたらどうなるか群れののゆっくりに教えてやるんだな」 お兄さんの計画はこうだ。 思い込みが強いのならただのカンチョーで本当に三日後に死ぬだろう。 その様を他のゆっくり達にみせ、人間の恐ろしさを教育してやる、というものだった。 森から帰ってきたお兄さんはうまくいっている事を豊作の神にお祈りした。 翌日、まりさは群れにかえってからため込んでいた食糧を食べていた。 ゆうぅ、まりさはもうすぐしんじゃうんだ。死んじゃうんならすきかってやっていいよね まりさは完全に自堕落になっていた。 そうやってお腹一杯になるまでご飯をたべてから今までの楽しかった思い出を振り返って ひとつ思い出したことがあった。 「ゆ・・そういえばゆきさんをみたことがなかったよ・・・・ しぬまえにみたいなぁ・・・・・・」 ゆっくりは冬の間ひたすら巣に籠って冬眠するため、雪を見ることになるゆっくりは たいがい越冬に失敗したゆっくりだ。 まりさはいままで噂に聞いたことしかなかった雪を無性に見たくなったのだ。 昼ごろ、まりさは残った食糧を帽子の中に入れ、群れのみんなに別れを告げることを決意した。 一番の親友のれいむには今までの経緯を話してから旅立とうと決めていた。 だが、れいむに経緯をはなしたら 「まりさのばか!!!!にんげんさんのいっていることははったりだよ!!! そんなこともしらないの!!!ばかなの?しぬの?」 と怒らせてしまった。 だがまりさはそんなれいむにごめんねと言うと、そのまま旅立っていった。 れいむは最後までまりさを馬鹿呼ばわりしていた。 まりさはいままで雪を見たことがなかったため、死ぬ前に雪がみたかった 群の知恵袋であったパチュリーが「雪が見たいならこの道をまっすぐ行きなさい」と教えてくれた。 まりさは教えてもらった道をそのまま進むことにした。 道中、まりさはゆっくりできなくなるキノコをたくさん集めた。 死の恐怖から一刻も早く解放されたいという思いからいつの間にかかき集め始めていたのだ。 三日後にはまりさは永遠にゆっくりしちゃうんだ・・・・・ このきのこさんよりもゆっくりできない苦しさを味わうのかな・・・・・・・ その前にこのきのこをたべて永遠にゆっくりしたほうが楽になるのかな・・・・・ と考えてきのこを食べようとした。 このきのこさんをたべれば・・・・このゆっくりできない気持ちから・・・・解放されるよ。 でも・・・・でも・・・まりさは・・・・・・じにだぐない!!!!!!! まりさはキノコをたべるのをやめて、帽子の中にしまった。 捨てきれない辺り、まだ諦めきってはいないのだろう。 それから歩くこと3時間・・・・・ 「おきゃあしゃ~~~ん、どこ~~~?おきゃあしゃ~~~~ん!!!!!!」 一匹の赤れいむが親を探して泣いていた。親とはぐれたのだろう。 そう思いまりさは赤れいむに話しかけた。 「そこのあかちゃん、どうしちゃったの?」 「おかあしゃんがいにゃの~~~!!!!うわ~~~~~ん!!!!!」 「おねえちゃんはこれからこのみちをまっすぐいくよ・・・・・とちゅうまでいっしょにいく? おかあさんがみつかるまでひとりでいたら・・・・あぶないよ」 まりさは親切心から赤まりさに申し出た。 「あぶにゃいのこわくちぇやだぁぁぁぁぁぁ!!!!!! おねえちゃんといっちょにくきゅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!」 赤まりさはまりさの申し出を受け入れ、一緒に行動することになった。 道中、まりさはいろんなゆっくりにあった。 親をれみりゃに食べられたり、動物に襲われたり、落盤などの事故で失って途方に暮れていた 赤まりさと子まりさ。親に捨てられたゆっくり。 みなまりさについてくるかと聞いたらついてくると答えた。 気づいたときにはまりさを先頭に赤ゆっくり・子ゆっくりの行列ができていた。 目指すは北、死ぬ前に雪さんをみるよ・・・・・ それから、まりさはきのこさんを食べて死ぬよ・・・・ まりさはそう考えていた。 二日後の朝 まりさは雪が降る大地に立っていた。 まりさの願いが神様にでも通じたのか、何十年に一度の異常気象が幻想郷を包み、 その異常気象が雪を降らせていたのだ。 ここまでまりさ一行は道にある食べ物を食べつつ進んでいった。 不平不満があったもののおかあさんを見つけてくれると勝手に思い込んだ子ゆっくりたちは 渋々まりさについていき、奇跡的にも誰一匹犠牲を出すことなく目的地にたどり着いた。 まりさは辺り一面に広がる雪に感動した。 死ぬまえにとてもゆっくりできる光景がみえたよ まりさはもう思い残すことはないよ、と 一方、赤ゆっくりと子ゆっくりは寒いと文句をいうものと初めて見る雪に興奮しているもののの半々だった。 「ゆう~~、まりさおねえちゃん!!!ここはゆっくりできないしさむいよ!!ゆっくりごはんをもってきてね!!」 「ゆわ~~、しろしろさん!!ゆっくりしていってね!!!」 まりさは雪を見れた感動の余韻に浸り、今なら楽になれると考え、ずっと帽子の中に入れていた 自決用のキノコを取り出し、食べようとしたが 「ゆ!!まりさおねあちゃん!!それはゆっくりできないキノコさんだよ!! はやくすててね!!」 賢い子ゆっくりに気づかれた 「ゆっくりとめないでね!!まりさはゆっくりできないきのこさんをたべていきるくるしさから かいほうされるんだよ!!!!」 とまりさは言うと子ゆっくりは 『どぼじでぞんなごどいうのぉぉぉ!!』 と叫んだ。 いままで苦楽を共にしたまりさが死ぬと言い出すのだから当然といえば当然だ。 だがまりさの方も早くこの苦しみから解放されたいという願望から口調がだんだん苛立ってきた。 「まりさははやくえいえんにゆっくりしたいんだよ!!ゆっくりじゃましないでね!!」 もちろんそんなことを許さない子ゆっくり達も 「だめだよ!!えいえんにゆっくりしちゃうなんていけないことなんだよ!!」 と必死にまりさのキノコを奪うなどして止めにかかる。 こんな問答が30分程延々と続き、ここでまりさの堪忍袋が切れた 「ゆぎゃぁぁ!!!ばやぐ!!ばやぐばりざをゆっぐりざぜでぇぇ!!」 そういうと、子ゆっくりたちは突如狂ったかのように叫んだまりさに驚いて静かになった。 「いい!!まりさははやくえいえんにゆっくりしてゆっくりしたいの!!! ”いきさつ”をせつめいするからじゃましないでね!!」 とここでここまでの経緯を赤裸々に語りだした。 特にお兄さんの三日殺しを受けた辺りから見せられたゆっくり関係の話、ビデオを これでもかというくらいに誇張しながら語りだした。 まだ純真な赤ゆっくりや、知識がまだ足りない子ゆっくりにはどれだけの衝撃だっただろうか。 どのゆっくりも涙としーしーを流しながらまりさの話を聞いていた。 話初めて1時間、ようやくまりさは話終えた。 まりさは非常にすっきりした顔になっていた。 いままでの苦労を全てぶちまけて、自分の邪魔をするゆっくり達に説明したことで もう邪魔しないだろうと考えたからだ。 話を聞いていたゆっくり達は全員涙を流しながら俯いていた。 中にはあまりの話に否定するために騒いだゆっくりもいたが、 まりさが根気よく教えていやいや理解した。 さて、ようやく永遠にゆっくりできるとまりさは近くに転がっていた毒キノコを食べようとしたが 「おねえちゃんのばか・・・・」 一匹の子ゆっくりが喋った。 どこか重みを感じる一言に、まりさはハッと子ゆっくりを振り返った。 「おねえちゃんのばか!!どぼじでつらいげんじつをびんなにじゃべっちゃうのぉぉ!!」 と叫んだ。 「おねえぢゃんのぜいでもうゆっぐりでぎなぐなっぢゃっだよぉぉぉ!!! おねえぢゃんのぜいだよ!!もうなにをやっだっでえいえいんにゆっぐりじじゃうぎょうふに びぐびぐじじゃうんよぉぉぉぉ!!!」 そう、まりさの話は子ゆっくりや赤ゆっくりの精神に深い傷を残す程深かった。あまりにも深かった。 もう少し成熟していればある程度は聞き流せただろうが、 親しかった者から突き付けられた現実は幼い精神力しか持たないゆっくり達には深すぎたのだ。 「おねえじゃんのばが!!でいぶはいぎるぎょうぶがらがいぼうざれるね!!!」 というと、辺りに転がっていた毒キノコを食べて死んだ。 これに続くように、他の赤ゆっくりや子ゆっくりは我先に毒キノコを食べ、死んでいった。 残ったのはまりさ一匹だけだった。 まりさはちびっこ達を死に追いやった自分の行動に深く後悔したが、 同時に自分の行動を邪魔するゆっくりがいなくなったことに喜んだ。 これで心おきなく永遠にゆっくりできるよ・・・ そう思い食いかけのキノコを食べようと口を開けたその時、偶然死んだゆっくりと目があった。 何も語りかけてこない筈の目が、まりさを恐怖に陥れた。 なんでまりさをみてるの・・ねえ、なんでみてるの!!そんな怖い顔でまりさを見ないで!! そんな絶望に染まりきった顔でまりさを見ないで!!!! こわい・・こわいよ・・やっぱり死ぬのはこわいよ!!! まりさは恐怖からキノコを置いてそのままいずこかへ走り去っていた。 死んだゆっくりたちは死してなおまりさを見つめていた。 まりさが走り去ったのはお兄さんに三日殺しをかけられてから73時間経過した頃だった。 所変わってお兄さんの家 「やっぱ思い込みが強いといっても限度があるか・・・」 お兄さんは野菜にかぶりついているゆっくり達を見ながらそう呟いた。 「やっぱり即潰すしかないかなぁ」 お兄さんは鍬を構え、ゆっくり達に近づいて行った。 それから、お兄さんの畑には黒色の肥料が混じるようになった。 このSSに感想をつける
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「あ、ありすのおにーさんはおにーさんだけよ!あんたなんて、おことわりよっ!?」 「おいおい、だからお前の飼い主はお前らなんていらないって言ってるって・・・」 「そんなのうそよっ!!!?」 ありすは今までのゆん生で一番大きな声で叫んだ。 あの優しいお兄さんがそんなこと言う訳がない。 ありすの大好きなお兄さんがありすを見捨てるはずがない。 「いやいや、嘘じゃないんだよなぁ。何せ・・・」 誰に話しかけるでもなく、あらぬ方向を向いてつぶやいた男はおもむろにお面を取り、地面に落とした。 その表情は溢れんばかりの悪意を孕み、赤ゆっくりなら見ただけで泣き出しそうなほど邪悪に歪んでいる。 しかし、ありすは彼の表情よりも顔立ちに気を取られていた。 「当の本人がそう言ってるんだからなぁ」 「お、おにーさん・・・?」 お面の下にはありすのよく知る、ありすの大好きな、ありすの家族の顔があった。 「おにーさん、どうちて・・・?」 「決まってるだろ? お前とチビ共を虐待するためさ」 「そ、そんなのうそよっ・・・!?」 予想外の事態に混乱し、状況の飲み込めないありすは右往左往しながらも男性の言葉を否定する。 しかし、彼女の目の前にいるのは確かにありすの飼い主の男性だった。 今まで見たこともないほどに邪悪な表情をしているが、どこからどう見ても見間違えるはずがない。 「で、でもぉ・・・ありすとおにーさんはかぞくなのよ!」 「家族に裏切られるのって辛いだろ?」 「それに・・・おにーさんが、ありすのおちびちゃんにひどいこと・・・」 「残念ながら俺がしたんだよ。なかなか面白かったよ」 一生懸命決して多くない語彙で男性から今の状況を否定する言葉を引き出そうとするありす。 が、男性の口から出てくる言葉に彼女の望むものはひとつとしてなかった。 「でも、おにーさんはつかまってるって・・・」 「そんなもん嘘に決まってるだろ? そもそもお前に言ったことの大半は嘘だよ、バーカ」 「ゆぐぅ・・・」 そろそろ言葉を思いつかなくなってきたらしく、ありすは俯いてしまった。 「なあ、チビ共。お前らからもこいつに何か言ってやってくれよ?」 「「「「・・・・・・」」」」 「なんだ、お前らもまったく状況が理解出来てないのか」 口を半開きにして呆然と自分を見つめる赤ありす達の姿を見て、男性はため息をついた。 が、すぐに気を取り直すと、再びありすの方を向く。 「ありす」 「ゆゆっ!?な、なあに、おにーさん?」 「お前・・・俺のペットにはなりたくないって言ってたよな?」 先ほどまでとは打って変わって、彼は柔和な笑みを浮かべている。 「ちがうわよ!ありすはおにーさんのぺっとだからおにーさんの・・・ゆぅ?」 「つまり俺のペットにはなりたくないんだよな。 それじゃ、そこでせいぜいのたれ死んでね」 「どほぢぢぇしょんなごぢょいうのおおおお!?」 今の彼の温厚な笑みは、先ほどとは打って変わってかつてのありすの大好きなお兄さんの笑顔そのもの。 それとじっと見つめていると、昔に戻ったかのような錯覚すら覚えそうになる。 「そりゃ、お前のことが大嫌いだからだ」 しかし、錯覚は錯覚に過ぎなかった。 優しい笑顔は徐々に悪意に染まって行き、攻撃的な恐ろしい笑みへと変貌してゆく。 ありすはその光景を見つめながら「器用なことが出来るもんだなぁ」と見当はずれなことを考えてしまった。 「本当にありすって奴らはよぉ・・・救いようのないクソレイパーばっかりなんだよ、わかるか?」 「あ、ありすは・・・ちがうわよ!?」 「猫被ってるだけだろ?薄皮一枚はげばすっきりの事しか考えてないクソレイパーだよ」 そんな事を口にしながら顔をしかめる男性。 彼の暗い輝きを放つ瞳の奥に、ありすは彼の悪意の根源を垣間見た。 それは・・・怒りだった。 「どうちでぞんなごどいうのおおお!?あでぃずなにもぢでないよおおお!?」 「ごちゃごちゃ五月蝿いんだよ!俺のまりさをレイプしたクソレイパーのガキが!!」 「ゆぐっ!?」 「みゃみゃああああああ!?」 「「「ふぁひゃー」」」 彼が叫び終えるのと同時に強い衝撃を受けてありすは宙を舞った。 宙を舞いながら、痛みと悲しみのせいで止まらない涙でぼやけた視界の向こうに男性の笑顔を見た。 ありすに蹴りを浴びせたと思われる右足を前に突き出した不自然な体勢で笑っていた。 「俺のまりさを犯し殺したクソッタレのガキなんだよ、お前は!」 「ゆぐぅ・・・いぢゃ、いぃ・・・」 「確かにお前が犯し殺した訳じゃない。でもな、そんなもん知ったこっちゃないんだよ!」 しかし、彼はありすを見ていなかった。 ありすの向こう側に全てのありす種の存在を見出し、彼女達を憎悪の眼差しで睨んでいた。 あくまでも狂気を孕んだ笑顔のままで。 「あの日までは俺もどこか対岸の火事のように思ってた・・・でもな、それが間違いだったんだよ」 「みゃmy・・・ゆびぃ!?」 「お、おぢびぢゃあああああん!!?」 ありすに向かって、いや世界中のありすに向かって語りかける男性は母の元に駆け寄ろうとした4つ目のありすを踏み潰した。 が、彼は彼女を潰した事に何の感慨も持っていないらしく、叫ぶありすのことなどお構いなしに語り続ける。 おかげで、ありすはようやく目の前の現実を受け入れることが出来た。 「ゆぐぅ・・・ゆっぐりりかいぢだわ・・・」 「何を?」 「おにー・・・ざんが、ゆっぐぢできだいひどだってごとよ!」 「ぶっぶー、不正解」 両手で大きなバツ印を作りながら、男は長女赤ありすに大きな足を叩きつける。 もっとも、彼自身は軽く踏んだ程度のつもりなのだが、彼女にとっては必殺の一撃以外の何者でもないだろう。 押し潰された長女赤ありすのカスタードが四方八方に飛び散った。 「おぢびぢゃああああああん!?」 「可哀想だよな。無能な馬鹿親が間違った理解をしたせいでこんな目に遭うなんて・・・」 「「おひぇーはーん」」 「お前のガキ共がどうなるかは俺の気分しだいだって事・・・理解出来たか?」 今度はピザのように薄く伸ばされた三女赤ありすの頭上に男性の足が掲げられている。 その行動の意図する所は流石にありすでも簡単に理解出来た。 勿論、彼女の力ではこの事態を打開するのは不可能であると言うことも。 「分かるよな? ありす種ってのは存在しているだけで恥ずかしいんだよ」 「・・・・・・・・・」 「そうか、分からないか。じゃあ、仕方ないな」 三女の真上にある男性の足がわずかに動く。 「や、やめでね!?ゆっぐりりがいぢだわ!りがいぢだがら、やべてね!?」 「じゃあ、言ってみろよ? 何を理解したんだ?」 「あ、あでぃずだぢは・・・いぎでるだけでゆっぐぢでぎないいながものよぉ・・・!」 これ以上子ども達を死なせないためにも、彼女は男性を下手に刺激しないようにその屈辱的な言葉を口にした。 プライドと子どもの命、どちらが大事かを見誤るほどありすは愚かではない。 全身をわなわなと震わせ、目にいっぱいの涙を溜めて、口をへの字に曲げて・・・それでもありすは子どもを優先した。 「はい、正解」 「お、おねがいよぉ・・・あぢずのおぢびぢゃ・・・」 「と言う訳で死ね」 「ゆぴぃ!?」 しかし、男性のありすに対する悪意の、憎悪の根深さを完全に見誤ってしまっていた。 もし人間ならば容易に想像出来たことだが、ありすにはそれを想像することが出来なかった。 憎い相手を、いつか裏切りの絶望を与えるためだけに慈しむという行為を可能にするほどの妄執を。 「どほぢでぞんなのごどずるのおおおおお!?」 「自分で言ったろ? 生きているだけでゆっくり出来ない田舎者だって」 「ゆひぇーん」 ありすの子どもは薄皮の次女赤ありすただ一匹。 そして今、男性の足が彼女の頭上に大きな影を作った。 彼女だけでも救いたい一心で痛む体を引きずってゆっくりと這いずるありす。 「焦るなよ。こいつは治療すれば元気になる見込みがあるし、生かしてやってもいいんだ」 「ゆゆっ!?ほ、ほんとうに・・・っ?」 「ああ、本当さ。もうお前の子どもはこいつ1匹しかいないしな」 「いっぴき・・・?ま、まりさの、まりさのおぢびぢゃ・・・」 一瞬、体を傾けて考えるような仕草をするありす。 その直後に目先の問題に気を取られて重要なことを忘れていたことに気づいた。 苦痛と屈辱と疲れきっていた表情が驚愕によってわずかに活力を取り戻す。 「ああ、あいつらならとっくに潰したよ。もういらないし」 「ど、どほぢでぇ!?あのごだちは!ありぢゅぢゃないでぢょぉ!?」 「ありすが親ってだけで同罪なんだよ」 そう呟くとポケットから子まりさ達のものと思しき帽子を取り出し、無造作に放り投げる。 破れ、ほころび、汚れ、解れた小さな山高帽はツヤのない安っぽい黒い布切れに成り果てていたが、間違いなく子ども達のものだった。 まりさ種の子どもなら生かしてもらえるかも知れない、そんな儚い期待は抱くと同時に打ち砕かれた。 「・・・・・・お、おに゛ぃざん・・・」 「何だ?」 「・・・おぢびぢゃ、だげは・・・ゆっぐぢざせであげで、ねぇ・・・!」 彼の憎悪がもはや常軌を逸していることを理解したありすは泣きながら笑う。 全てに絶望しきった果ての諦めの境地だった。 それでも無駄だろうと半ば諦めながらも最後の1匹になった子どものために命乞いをした。 「言われなくてもそのつもりさ」 「ゆっ・・・ゆっぐぢ、ありが・・・」 その一言で十分だとありすは思った。 その一言で彼が本当は優しい人なのだと信じることが出来た。 その一言で自分の子どもの無事を確信できた。 散々酷い目に遭わされ、裏切られたにもかかわらず。 「ただし・・・最低のクソレイパーとして、な」 「ゆぅ・・・ゆゆっ!?」 「お前の母親みたいなクソレイパーにしてやる、って言ったんだよ」 男性はまくし立てるように喋り続けた。 まりさを殺したありすやその子どもだけじゃもはや満たされない、と。 ただありす種を片っ端から潰すだけじゃ気がすまない、と。 ありすの子孫を命ある限り苦しめ、欺き、偽りの希望にすがりつかせて最後には絶望させてやる、と。 産まれたその瞬間にそれを後悔するするくらいの絶望をカスタードに刻み付けてやる、と。 「や、やめでぇ・・・おねがいよぉ・・・ありずのおぢびぢゃんを、でいばーにぢないでぇ!?」 「言っただろ? お前らを苦しめるのが俺の目的なんだよ。 死んだくらいでゆっくりできると思うなよ」 「お、おねがい、ぢまずぅ・・・おちびぢゃ、んをとかいはのゆっぐぢぃ・・・ゆぶぅ?!」 必死に懇願しながらありすは再び最後の1匹になってしまった我が子の元へと這いずっていく。 なんとか彼女を守ろうと、混乱と恐怖のあまりに言葉も発せず怯える彼女を慰めようと。 しかし、またしても男性に蹴り飛ばされ、ささやかな望みが叶うことは無かった。 「ゆ゛っ・・・お゛にぃ、ざぁん。ひ゛とづだけ、ゆっぐぢ・・・おぢえでねぇ」 「何だ?」 「あ゛ぢずのまま゛は・・・ほんどうに、れい・・・ゆびぃ!?」 「クソレイパーのガキでもちょっとはマシだと思ったんだがな・・・所詮クズだな」 2度蹴り飛ばされ、かなりの量のカスタードを漏らしたありすにもはや動く力も残されていない。 そんな彼女が見出した最後の希望が男性の軽蔑に満ちた眼差しによってかき消された。 「ありすのままはほんとうにれいぱーだったの?」 結局、ありすがその言葉を言い終える前に男性は次女赤ありすを捕まえて立ち去ってしまった。 「ゆっぐ・・・ゆ゛びぃ・・・」 男性の徐々に小さくなって行く背中を見つめながら、ありすは呻いた。 もはや痛みすらも感じない体で、何とか男性に追いつこうと底部に力を込めた。 けれど、一歩も動くことが出来なかった。 「おぢびぢゃ、ごべんでぇ・・・」 ありすは謝った。 自分のせいで、もっとも忌むべき存在にされてしまう我が子に。 自分の無力で守れなかった小さな命に。 自分の子どもだったばかりに理不尽な憎しみに巻き込まれた子ども達に。 「まりぢゃぁ・・・ごべんねぇ・・・」 ありすは謝った。 自分のつがいになったせいで不幸に巻き込まれたまりさに。 もっとも、ありすに彼女の末路を知る術などないのだが。 「みゃみ゛ゃ、ごべんなさぃ・・・」 ありすは謝った。 男性に言われるがままに嫌悪してしまった母に。 果たして彼女がレイパーだったのか、真偽は定かではないが。 それでも謝らずにはいられなかった。 「お゛にぃさぁ・・・ごべ、ん・・・」 ありすは謝った。 理由は分からないけれど、飼い主の男性に。 最後の最後に酷い裏切りを受け、本来憎むべきはずの彼に。 その言葉を最後にありすは二度と動かなくなった。 家に帰った男は次女赤まりさの皮の厚みを戻す作業を行いながら、一人考え込んでいた。 あのありすの表情を、絶望を見たことで多少は大事なものを奪われた憎しみから解放された。 もう、この赤ありすを叩き潰して、唯一生き残っている親まりさも処分して、新しいゆっくりでも飼おうかと。 「おい、れいぱー」 「ゆえーん、ありしゅれいぴゃーぢゃ・・・」 「うるさい」 皮の厚みを取り戻したことで何とか喋れるようになった彼女にでこピンを食らわした。 痛みからいっそう激しく泣き喚き始めるが、彼は気にも留めずに思案を続ける。 しかし、今の自分はきっと普通にゆっくりを飼っても満たされることはないだろう、と。 ありすの子ども達を嬲ったときの、曰く形容しがたい暗い快感。 ありすを絶望させていくときに感じた得体の知れない幸福感。 それらが、彼を捕えて放さなかった。 「そうだな・・・せっかくだからありすに言った事を本当にやってみようか?」 「ちょうどレイパーと可哀想な被害者も居る事だしな」 ありすやその子どもだけじゃ満たされない。 ただ片っ端から潰すだけじゃつまらない。 ありすの子孫が苦しみ、欺かれ、偽りの希望にすがりついて最後には絶望する様をもっと見たい。 産まれたその瞬間にそれを後悔するするくらいの絶望をカスタードに刻み付けてみたい。 治療を終えた男性はいつか哀れな被害者になる黒帽子を被った饅頭の元に食事を持っていった。 →ありす虐待エンドレス1へ ‐‐‐あとがき‐‐‐ ありす虐待といえば今や引退してしまったあのお方 彼の作品は本当に素晴らしかった 落として落として更に落として、もはやそこより下はないと思えるところで更に落とす 最後には肯定の言葉をもって突き落としたりと、一片の尊厳すらも残さない驚愕の虐待でしたね 氏の影響がこの作品の随所にも見られます(悲しいほど劣化してるけどな!) というか、ビデオネタのことを思い出したのがすでに70kbほど書き終えてからと言う・・・ ああ言うガチ虐待を書ける人が妬ま羨ましい byゆっくりボールマン このSSに感想をつける
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※俺設定注意 ゆっくりいじめ系1894 楽園~まりさの場合(3)?から連続したSSです。続編を読むにあたって、当SSをご覧になる必要はありませんが、見た方が楽しめるかも知れません。 presented by [498] 「ありす、ゆ虐は好きかい?」 「ええ、だいすきよ。」 複数のモニターに映し出されたゆっくりの親子を眺める一人と一匹、一週間程前にあの惨劇を演出した男とゆっくりありすである。 この男、数年前に人間だった頃の名前を捨て、今は『虐待 鬼畏惨』と名乗っている。隣に鎮座するありすは今から二週間程前にこの鬼畏惨の下へ『楽園入り』したありすだ。 このありすは群でも評判の『とかいは』なありすだった。子守をすれば子は直ぐ笑い、知識は老ぱちゅりーの次に豊富で、身嗜みにはいつも気を遣い、群の勤めで得ていた俸給は一匹でゆっくり家族2世帯分はあった。 だがこのありすは『ゆっくりする』という事を知らなかった、体験した事がなかったのだ。生まれて直ぐに群の『えーさいきょーいく』コースの放り込まれ、そこで『とかいは』の何たるかを徹底的に叩き込まれた。結果は先にも述べた通りだ、ありすは名実共に『とかいは』になる事が出来たが、その生に充足する事は無かった。 そんなある日の事、ありすに『楽園入り』の吉報が届いた。ドスが宣言し、周囲が祝福する中、ありすは満面の笑みを浮かべ、醒めていた。 どうせ何処へ行っても変わりはしない、精々面倒な仕事が無くなるくらいだ……この頃のありすは生きるという事にさえ倦怠感を感じるようになっていた。 ありすが辿り着いたその日、『楽園』では鬼威惨による『優秀なゆっくりを論破し貶めながら破壊する』といった嗜好の虐待が繰り広げられていた。 理知的だったゆっくりがアイデンティティを否定され、理性を破壊され、みっともなく命乞いをしながら無残に殺されていく様を透明なケースの中で見ていたありす。その心は、迫った死の恐怖より、初めて見る世界への高揚感で満たされていた。 「にんげんさんっ!」 「ん、どうした?慌てなくても次は君の…」 「それ!なんていうの?」 「……これかい?これはアルコールランプといって主に…」 「そうじゃなくてっ、にんげんさんが『やってること』!」 「『やってる事』ぉ?……そうだな、これはね、 『ゆっくり虐待』 っていうんだよ。」 『ゆっくりぎゃくたい』……はじめて聞く言葉だが何故かしっくりくる。それに良い、とても良い…!これは最高の表現方法だ……っ!これこそが自分の求めていた『ゆっくりする』という事なんだ!! 「変な事を聞くありすだね、それがどうしたんだい?」 「わたしも……『ゆっくりぎゃくたい』がしたいのっ!!」 「…………………」 「…………………」 「……なん……だと………?」 我が耳を疑う鬼畏惨。それもその筈だ、結構な時間をゆっくり虐待に費やしてきたが…自分から同族を虐待したいなんて言い出すゆっくりは見た事が無かった、ゲスでもそんなこと言った奴は居ない。 ありすは初めて見つけたこの強烈な価値観を覆そうとは思えなかった。 両親から学ぶはずの『ゆっくりする』という、あたり前の事を、ありすは人間の男を通じて知ったのだ。 奇妙な事だが……虐待を働き、ゆっくりを殺す『虐待お兄さん』が、ありすの心をまっすぐにしてくれたのだ。 もう、醒めた目つきはしていない…彼女の心には、さわやかな風が吹いた……。 鬼畏惨はありすを『"こちら側"に引き込まない』という態度をとっていたが… ドスが変化をもたらさず、ゆっくり達もそれを教授するしか能の無い、ありすの住む環境では、ありすの気持ちを止める事はできない…。 彼女の中に、生きるための目的が見えたのだ… こうして『ゆっくりありす』は、クイーンありすに憧れるよりも…… 『虐待お兄さん』に、憧れるようになったのだ! 時は現在へ戻る。 「ところでおにいさん、なんであのこれいむはびょうじゃくなの?なにかしたんでしょ?」 「ああ、気づいたか。そうだ、あの子れいむには生まれる前から細工がしてあるんだ。」 「うまれるまえ?でもまりさにとうよしたのはそくしんざいとジュースだけでしょ?ほかはみてないけど……」 「ふむ、ならこれは覚えているかい?」 鬼畏惨は親指大のブロック菓子を取り出した。まりさがれいむの子を身篭った際、栄養剤として与えた物である。 「…なるほどね、で、どくでもしこんだの?」 「いや、だがまぁ似たようなもんだ。これはゆっくりの細胞を時間経過と共に破壊していくウィルスが入っているんだ。」 その名を『YUKKURI-DIE』 実験レポートを提出する事を条件に八意永琳から譲り受けた、対ゆっくり広域殺戮用細菌兵器。例によってゆっくりの遺伝情報のみに反応するという安心設計だ。 この『YUKKURI-DIE』は、特殊な装置を用いてゆっくりの遺伝情報を与える事で変異する。変異したウィルスは、宿主の体に刻まれているゆっくりの遺伝情報がおよそ5%まで合致する場合に、その細胞を破壊していく。感染経路は要検証だが、論理的には空気感染も可能。 ゲスによる人里への被害や、レイパーによるゆっくりの異常発生を防ぐのが主な開発目的である。 ちなみに今回変異させるのに使ったのは、摘出したれいむの陰茎だ。 「……と、言う訳さ、今のところれいむには『YUKKURI-DIE』の症状は現れてないみたいだね。」 「そうだったの…あら、そろそろ『おつとめ』のじかんね。」 「ん、もうそんな時間か。じゃあ僕はまりさを迎えに行ってくるから、ありすは先に行って待機しててくれ。」 「ええ、わかったわ。」 「わかってると思うが、『とかいは』に振舞うのを忘れずにな。」 そう言うと男はゆっくり一家が暮している部屋へ向かった。 「きょうもおつとめにいってくるよ!」 「いってらっしゃい、まりさ。ゆっくりがんばってきてね!」 「「す〜りす〜り♪」」 部屋に入ると、まりさが家族全員に出勤前のすーりすーりをしているところだった。 鬼畏惨の心臓が早鐘を打つ。嗚呼、今すぐこいつ等を切り、刺し、打ち、抉り、炙り、削り、剥ぎ、溶かし、潰したい!そんな感情を必死に押し殺す、強く握った拳には血が滲んでいた。 「ゆゆ、おにいさん、ゆっくりおはよう!」 「ん、おはよう、まりさ。今日もお勤めご苦労様。」 「かぞくのためだからね、とうぜんだよ!ゆっへん!」 「黙れ駄饅。」 「ゆうっ!?いまゆっくりできないこといわなかった!?」 「ははっ、きのせいだよ、僕がそんな事言う訳無いじゃないか。」 「ゆっ、それもそうだね、うたがってごめんね!」 「いいんだよ、それじゃあ行こうか ありすが待ってるよ。」 季節は秋。窓の外に紅葉を仰ぐ事が出来る部屋の真ん中で、ありすはクッションに身を沈め、まりさが来るのを待っていた。 憂鬱だ。必要な事とは理解しているが、あんなヌケサクをこれから数時間もの間相手にすると思うと在りもしない胃がキリキリと痛んでくる…しかもその後は『あのこたち』の調教もしなければならない……だが全ては唯一瞬、あのカタルシスを味わう為だ…文句は口に出すまい。 ありすが待機してから数分、部屋のベルが鳴り、ドアから鬼畏惨と抱えられたまりさが現れた。 その場に降ろしてもらい、ありすの下へ跳ねてくるまりさ。ありすも先程まで作っていた渋面を捨て、実に『とかいは』な笑みを湛え、まりさを迎える。 「あらこんにちは、まりさ、ゆっくりしていってね。」 「ゆ!きょうもゆっくりしていくよ、ありす♪」 と、まりさも笑顔で返す。これから夜になるまでまりさはここで過ごす事になる、それが鬼畏惨がまりさに与えた「おつとめ」だった。 最初は部屋の中央で待つありすを見て泣き叫んでいたまりさだったが、鬼畏惨が『このありすは本来は都会派だ』『あの時はたまたまレイパー化しただけだ』と言い、当のありすも、あの時と違ってとてもゆっくりとした佇まいだったので、まりさはその言葉を信じ、受け入れたのだ。これはまりさが『楽園』に来るまで、悪意や敵意、嘘といった事と無縁の環境で育った為である。 まりさにとって『おつとめ』とは、『よるまでありすのあいてをする』事だった。性的な意味ではない、これでもゆっくりは一部を除いて人間以上の貞操観念を持っており、愛した相手以外との『すっきりー』は苦痛以外の何物でもないのだ。その点、ありすはあの日以来レイパー化する事も無く、『おつとめ』の間はありすとのゆっくりとした時間を満喫していた。 今日で『おつとめ』も一週間、すっかりありすに心を開いたまりさを見て満足げな鬼畏惨。 「もう十分だな、よし。」 「…おにいさん、もうすぐなのねへぇ……?」 三脚にビデオカメラを取り付ける鬼畏惨と、それを見てにちゃあ、と汚い笑みを浮かべるありす。 「ゆ?おにいさん、それなあに?」 「これかい?これは君達がゆっくりとしている様子を他のゆっくりにも見て貰う為の道具さ、素敵だろ?」 「ゆゆぅ!?そんなのはずかしいよぉ///」 「だいじょうぶよ、まりさ。わたしたちのゆっくりとしたすがたをみて、ほかのこたちにもゆっくりしてもらいましょう?」 「んゆ…ありすがそういうなら……」 「ん、じゃあとりあえず朝の食事の風景から撮ろうか。まりさ、今日はなにが良い?」 「ゆ!まりさ『はにーとーすと』がいい!」 「じゃあわたしもおなじで。ふふっ、まりさとおそろいね。」 「ゆぅん///」 まりさの食事は三食全て『おつとめ』の時間に与えられていた。最初にまりさが好みそうな物を鬼畏惨が用意し、次の日からまりさに選ばせる、といった具合だ。まりさは初めて人間の甘味を口にしたとき、涙を流しながら『こんなすばらしいあまあまをもらえるまりさはきっととくべつなそんざいなんだとおもいました』と訳の分からない感想を口にする程感動していた。 「わかった、たっぷり甘くするから楽しみにしててね」 「ゆうん!そんなこといわれたらゆっくりまてないよぉ♪はやくもってきてね♪」 「はいはい黙れよ」 「……ゆ?いまなにかいt」 「何も言ってないよ。」 それから撮影を開始する鬼畏惨。朝の食事の風景から、その後まりさとありすがゆっくりと過ごす様子を撮影する。二回目の食事を持っていくときにテープを交換し、回収したテープは管制室へ持ち帰り早速編集作業に取り掛かる。 「しかし自分でそう仕向けたとはいえ、一家揃って思い通りに動いてくれる……姉妹達の仲があんなに良くなったのは予想外だったな、だが嬉しい誤算だ。まあ概ね…計算通り……っ!」 ぶつぶつと独り言を呟きながら編集途中のテープをそのままにモニタへ目を移す鬼畏惨。親子部屋では丁度姉妹達が昼食を終え、11匹固まって眠りに就いたところだった。 さてさて、あの饅頭共にはいつ種明かししてやろうか……邪な笑みを浮かべながらそんな事を考えていると、親子部屋を映したモニタから大音量の怒声が聞こえてきた。 『な に を し て い る の っ !』 一家の音声を余すとこなく拾う為、カメラにはそれぞれ指向性マイクを付けていた。そのそれぞれが拾った怒声がサラウンドで鬼畏惨の耳を襲う。 椅子から転げ落ちそうになるのを何とか持ち堪え、慌ててモニタを確認する鬼畏惨。モニタの向こうでは、寝床から這いながら、まりさがありすに犯されたとき以上の凄まじい形相で姉妹達を睨み付けるれいむの姿があった。 そこからの鬼畏惨の行動は速かった。編集途中のテープを上着のポケットに入れ、透明な箱を持ち、まりさとありすが居る『おつとめ』の部屋に乱入し、目を白黒させるまりさを透明な箱に押し込み、ありすに『行くぞ虐待者、ストレスの貯蔵は十分か?』と告げ、箱を抱えて親子部屋へと駆けて行った。 ありすは鬼畏惨の意図を理解し、これから起こる事を想像して絶頂しそうになりながら主の後を追う。 親子部屋のドアの前、抱えた透明な箱の中で、まりさがぷくー、と膨らんで怒りをあらわにしている。 「おにいさん!いきなりなにするの!せっかくありすとゆっくりしてたのにっ!」 「はあ、はあ、はあ……」 「はあはあいってないでありすのとこにかえしてね!そしてゆっくりあやまってね!ぷんぷんっ!」 「はあ、はあ……は、はははっ、そうかそうか、おまえはゆっくりしてたのか!」 「ゆ?あたりまえでしょ!?わかったらはやくもどしてね!いくらおにいさんでもゆるさないよ!ぷくー!」 「ぐっ…ぐふっ……えふっ、えふっ…!」 「ゆ、ゆゆ?どうしたの?おにいさん、なにかへんなかんじがするよ?」 「ふふふ、いやなに、次は僕の番だと思ってね……」 「ゆ?」 バンッ! 開け放たれるドア、そして 「次は僕がゆっくりする番だ。」 return to main story...⇒
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ドスまりさとその取り巻きは、我が物顔で群れの巣のまわりを闊歩していた。 事実、ほぼ全ての権利を自分自身が掌握している。この群れはドスまりさの物なのだ。 自分以上にゆっくりしているゆっくりなどいないであろう。 そんな自負が、ドスまりさの態度をさらに尊大にさせていた。 しかし、浮かれたドスまりさの前に3匹のゆっくりが現れた。 1匹はゆっくりありす。 1匹はゆっくりぱちゅりー。 いずれも知的で凛々しく、嫌味の無い美しさであった。 そして残る1匹。 圧倒的にでかく、何かほんわかしたオーラまで感じる。 さらに後ろ髪に多数結ってある、信頼の証のリボンの数々。 ……もう一匹のドスまりさがそこにいたのである。 「「「ゆ”っ!!!?? どすまりさがふたり……!!???」」」 周りの地元ゆっくり達は混乱する。 「そっちのドスまりさはにせものよ!」 「そのりぼんはしんだゆっくりたちのものだよ!」 後からきた方のありすとぱちゅりーが言い放つ。 元からいたドスまりさとありす、そしてぱちゅりーは激しくたじろいだ。 『まさか、まさか本物が……』 群れに管理体制を敷いてゆっくり達を苦しめていたのは、偽のドスまりさだったのだ。 髪に結われたリボンはどれも、ゆっくり達の遺品---人間の村落から盗みだされた物であった。 いずれも海に漂流しているうちに、その死臭が薄まり、磯の香りが染み付いていたのである。 そのほんの少しの死臭と磯の香りの混ざり合った臭気が、他のゆっくり達にはオーラのように感じられていたのだ。 実際のところ、この偽のドスまりさは ただ磯くさかっただけなのである。 「ほかのゆっくりたちをくるしめ、にんげんにけがまでさせるとは……だんじてゆるせないよ!」 真ドスまりさが怒りを込めて言い放つ。 偽ドスまりさのようなゆっくりがいるから、ゆっくり達はいつまでも本当の意味で人間達とゆっくりできないのだ。 偽ドスまりさと偽ありす、偽ぱちゅりーは思わず逃げ出した。 真ドスまりさのあまりの怒気に気圧されたのである。 取り巻き達もそれに続き、一向は群れから離れた、村落にほど近い平原に辿りついていた。 しかし、それを黙って見逃す真ドスまりさではない。 すかさず追いつき、偽ドスまりさの前に立ちはだかる。 自分の名を騙り、それを利用して暴政を行っていた偽ドスまりさ。 そのような愚かなゆっくりは、下手に力を持て余している分、決して反省したり、学習することなどは無いのだ。 真ドスまりさは、殺生を行う覚悟を決めていた。 「ゆゆゆゆ……!」たじろぐ偽ドスまりさ。 次の瞬間、偽ドスまりさは真ドスまりさに体当たりをかます。 「こっちがほんものだよ! かってしょうめいしてみせるよ!」 一か八か、タイマン勝負に持ち込もうとしたのである。 体当たりを食らった真ドスまりさだが、倒れることはなかった。 「いいでしょう、おあいてします。」 そういって体当たりを返す真ドスまりさ。 偽ドスまりさの方も、これになんとか堪える。 そして、互いの体当たりの応酬が始まった。 他のゆっくり達にとって、それはまさに山と山のぶつかり合いに見えた。 しかし、体当たり合戦だけでは雌雄を決するには至らなかった。 痺れをきらした2匹のドスまりさは、左右に散会し助走をとってお互いのスピードを乗せてのぶつかり合いを敢行した。 山と山がぶつかり合う衝撃、響き渡る重低音。 その激しい衝突音人間の村落にまで届くほどであった。 2回、3回…… 続けるうちに情勢に変化が起きた。 偽ドスまりさがよろけだしたのだ。 「これでとどめです!」 すがさず再度体当たりに向う真ドスまりさ。 しかし、猛烈なスピードで迫ってくるそれを、偽ドスまりさはさっとかわした。 ぶつかり合いを制するプライドよりも、勝利という実をとったのだ。 バランスを崩す真ドスまりさ。 偽ドスまりさは すかさずしゃがみこみ、そして身体全体を使ったアッパーカットを繰り出した。 必殺技・高い高いへの序曲である。 「「やった! これで勝つる!」」 歓喜の声を上げる偽ありすと偽ぱちゅりー。高い高いは本来ゆっくりには通用しない。 大きく息を吹き込みことで自身をゴム鞠のようにして着地の難を逃れることができるためだ。 しかしドスまりさほどの重量では勝手が違う。 たとえ膨らんだとしても、身体が衝撃に耐え切れないのだ。 勝ち誇り、ニヤニヤとした表情で突き上げ続ける偽ドスまりさ。 突き上げられる真ドスまりさは、無言のままその攻撃を受け続けていた。 その身は命を落とすのに充分な高度に達する。 偽ドスまりさはそれを確認すると、悠々と退く。 「どすまりさのじゃまをする、ばかなまりさはゆっくりしんでいってね!」 側近の偽ありす、偽ぱちゅりーとともに勝利を確信する偽ドスまりさ。 いや、この勝利により、偽ではなく真のドスまりさになろうとしていた。 上空に高々と打ち上げられた真ドスまりさ。 通常のサイズのゆっくりがそうするように、息を大きく吸い込み、その身を風船のように膨らませていた。 「ぎゃはは、むだだよ! じぶんのおろかさをのろっていってね!」 偽ドスまりさの取り巻きもはしゃぐ。 真ドスまりさに勝利されては、自分達の身も危ういかもしれないのだ。 よくても、群れの連中からは蔑まれるであろうことは簡単に予想できた。 健闘むなしく、勢いを殺すこともできず、ただただ落下する真ドスまりさ。 いよいよその身が地面に衝突しようという瞬間。 まわりのゆっくり達はその衝撃に耐えるべく身構えた。勝利の瞬間である。 しかし真ドスまりさの目は死んでいなかった。 身構えた 取り巻きゆっくり達を襲う強烈な突風。 瞬間、真ドスまりさの身がふわっと浮き始める。 大量に吸い込んだ空気を、着地直前に地面に向って吹き出し、逆噴射したのである。 偽ドスまりさの必殺技は、難なくかわされてしまった。 たじろぐ偽ドスまりさ。 すかさず懐に飛び込む真ドスまりさ。 今度は偽ドスまりさがアッパーカットを食らう番となった。 「ゆ”っ! ゆ”っ! ゆ”っ! ゆ”っ!」 突き上げられる偽ドスまりさ。しかし、その顔には冷静な笑みが戻っていた。 「おなじようにやればたすかるよ! やっぱりまりさはおろかものだぜ!」 攻撃を受けているにも関わらず、げらげらと笑いだす偽ドスまりさ。 しかし偽ドスまりさの高い高いとは決定的に違う点があった。 高い。本当に高い。 ただ巨体に任せて他のゆっくり達に無言の圧力をかけ、自分達だけでゆっくりした生活を送っていた偽ドスまりさ。 一方、常に他のゆっくり達のために働き続け、動き続け、戦い続けてきた真ドスまりさ。 その差がここにきてはっきりとあらわれていたのである。 真ドスまりさがその場から退く。 それを確認した偽ドスまりさは、少し嫌な予感を感じながらも、大きく息を吸い込み、口を閉じ、自らの身を風船状に ……できなかった。 落下の始まった偽ドスまりさの背後に、いつの間にか真ドスまりさが回りこんでいたのである。 偽ドスまりさの頬に噛み付き、引っ張り上げる真ドスまりさ。 「う”う”う”う”う”! ほっほほはなふんだぜ! ふふらめないんらぜ!」 (ゆ”ゆ”ゆ”ゆ”ゆ”! とっととはなすんだぜ! ふくらめないんだぜ!) 徐々に迫る大地。衝突の恐怖に涙目を浮かべはじめる偽ドスまりさ。 しかしその口調は未だに強気の物であった。 もちろん、真ドスまりさがこれを放すわけがない。 このまま落下すれば、自らの身もただでは済まない。だが、この偽ドスまりさの事を生かしておくことだけはできなかった。 怒りの対象は後ろ髪に結ばれたリボン。ゆっくり達の遺品の数々である。 ただでさえ、自分の名を騙り、それを利用して暴利を貪った偽ドスまりさ。 しかも、そのために数々のゆっくり達の遺品を利用したというのだ。 これは死んだゆっくり達への冒涜以外の何者でもない。 それを考えると、自然と頬を噛む力も強くなる。 「はめへへ! はなひへね!」 (やめてね! はなしてね!) 必死に懇願を始める偽ドスまりさ。 必死すぎて「だぜ」口調を忘れている。これもまたドスまりさを装うためのフェイクだったのである。 偽ドスまりさの懇願は続く。 「は、はふへへね! はひふほはふひーにほほのははへへ、ふひはひはらはれはんはほ! はひはははふふはひほ!」 (た、たすけてね! ありすとぱちゅりーにそそのかされて、むりやりやらされたんだよ! まりさはわるくないよ!) 噛む力が強くなったため、いよいよその言葉も何を言っているかわからない。 しかし真ドスまりさには伝わっていた。こういう時にこういう卑劣なゆっくりが発する言葉なんてわかりきっているのだ。 『いけないなぁ、とものことをわるくいっては』 頬から伝わる振動。 偽ドスまりさは恐怖であがくことすらできなかった。 激突。 2匹のドスまりさの体重が、偽ドスまりさの顔面上部に圧し掛かる。 偽ドスまりさの餡子が身体の底面方向に寄せられていき、異常に膨らみ、そして爆ぜた。 その両目はつぶされ、身体底面の破れた箇所からは餡子が滝のように噴出した。 とはいえ、真ドスまりさもただではすまない。 衝撃で頬に切り目がはいり、餡子が噴出す。 駆け寄るありすとぱちゅりーは、すかさず頬に薬草をはりつけ、餡子の流出を防ぐ。 薬草には小麦を水で溶いたものが塗ってあり、ゆっくりの外傷を塞ぐにはもってこいの物であった。 薬草は人間が作った物であり、人間との信頼の証でもあった。 どうにか傷は塞がり、よたよたと立ち上がる真ドスまりさ。 ありすとぱちゅりーが付き添い、ゆっくり達の群れに向っていく。 偽ドスまりさを倒した後も、やることはあるのだ。 ゆっくり達のためにならない間違った教育や生活。 その軌道修正を行い、群れを存続させるよう導くのが、真のドスまりさのお仕事なのである。 一方の偽ドスまりさの所にも偽ありすと偽ぱちゅりー、そして取り巻き達が集まっていた。 負けたとはいえ、自分達の指導者であった者。その身を案ずるのは当然のことである。 ……はずであったが、現実は違った。 我先にと偽ドスまりさの餡子を貪り食う取り巻きゆっくり達。 少しでも偽ドスまりさの力を自らの物にしようという、浅ましい考えがこの場を支配していた。 「むきゅ! まったくやくたたずね!」 口の周りに餡子をつけた偽ぱちゅりーが言う。 「まったく、いなかものはこれだからこまるわね!」 同じく餡子をつけた偽ありすが言う。 嵐のごとく餡子を貪る取り巻きゆっくり達。その餡子は元の半分程度まで減少していた。 「……こ、…………ね」 「ん? ぱちゅりー、何か言った?」 どこからか聞こえた声に偽ありすが回りを見渡す。 「むきゅ?きのせいじゃないの?」 偽ぱちゅりーは気にせず餡子を食べ続ける。と言っても、そろそろ満腹なのではあるが。 「…んこ、………てね」 「むきゅ?」 今度は偽ぱちゅりーにも聞こえた。 満腹になった取り巻き達も気づき、周囲の警戒を行う。 突如、取り巻きゆっくり達の背後に立ち上がる、山のような影。 偽ドスまりさの躯。いや躯と思われていた物。 目から上はつぶれ、底面からは餡子が漏れ出していたが、なおも息は残っていた。 「あんこ、かえじでねええええええええ!!!!」 口だけとなった化け物が、取り巻きゆっくり達に噛み付き、咀嚼する。 飲み込まれたゆっくりは、バラバラにされて底面から放出されていく。 偽ドスまりさはいくら食べようとも、もはや栄養を吸収できる状態ではないのだ。しかし生への執着がさらに食を進める。 餡子を食べて満腹となったゆっくり達は逃げる術を持たなかった。 次々と化け物に食い尽くされる取り巻きゆっくり達。 「「いやあああああ!」」 「「た、たずげで……!」」 「「なんでこんなごどずるのおおおおおおお!?」 自らの行いも省みずに、断末魔を上げていく取り巻きゆっくり達。 口だけの化け物は最後に残った偽ありすと偽ぱちゅりーに噛み付いた。 「むぎゅ!」 「やめで、どがいはのありすはおいじぐないわよ!」 潰れながら言う2匹。 しかし咀嚼には至らない。 群れの中でのゆっくり生活が、2匹の皮をより強固な物にしていたのだ。 口だけの化け物は、2匹を噛み切ることができずに、ついに力尽きた。 瓢箪状に変形しながらも、バラバラにされることだけはどうにか避けられた2匹。 「むぎゅ、むぎゅ! はなじでっ!」 「ゆ! どれないっ! どっかいっで!」 しかし口だけの化け物の巨体。その歯に挟まれただけで、2匹のゆっくり達は動くことも適わなかったのである。 「ゆゆ!?」 偽ありすは頬に何かが通るのを感じる。 それは蟻の大群であった。気がつけば他の虫達が周囲に集り出していた。 偽ドスまりさの餡子の香りを嗅ぎつけてやってきたのである。 鳥肌の立つ偽ぱちゅりー。その虫の光景が気味悪かったからではない。 瓢箪状になった身体の後部に虫が大量に集っていたのだ。 頑丈な皮を、どうにか破ろうとつつき始める虫達。 気がつけば偽ありすも同じような状態になっていた。 偽ドスまりさが流出した大量の餡子があるとはいえ、それを上回る大量の虫が集っているのである。 せめて欲張って餡子を食べ過ぎなければ、もう少し時間が稼げていただろうに。 「や、やめてね! あっちいってね!」 必死に抵抗するありすだったが、後部からの攻撃になす術があるはずもない。 2匹は、ただただ、されるがままの状態に陥っていた。 「いいいやあああああ!」 「むぎゅうううううう!」 それから3日後、2匹の皮は破られた。 幸い、口だけの化け物の歯に押さえつけられているおかげで、餡子の流出により死に至ることは無かった。 しかし、もはや詰みである。脱出=餡子の流出による死が確定したいた。 2匹はその身体の丈夫さゆえに、生きたまま少しずつ食われていく地獄を延々と味わうこととなった。 1週間後、一件が起きた野原には大量のリボンだけが残されていた。 色とりどりのそれは、まるで太陽の花畑のような美しさを放っていた。
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女性生主杯の三戦目の一連の騒動のまとめ。 アレムを出会い厨扱い ↓ ルール無視で09で対戦しよう発言 ↓ アレムは関東オフ勢と聞き出会おうとする発言も ↓ とげにゃんどこいるのでとげを掘ろうとする発言 ↓ 遅延で勝利宣言。(ここは相手が悪い) ↓ シルチケアピール ↓ 相手がパーティを変えると疑い始めた。 ↓ 10分も完全に技とかアイテムとか変えてるとしか思えんとキレ始めた。 ↓ 中途半端なやつが嫌いだからね発言 ↓ 馬鹿男子大学生のくせに発言 ↓ 運営にチクっていいよ ↓ はーいこちらもユキノオーで守って29分お菓子食べますわーと問題発言も ↓ 名前をディスりはじめる。 ↓ どうせ坊ちゃんなんだろと発言。もはやおっさんである ↓ 暇人で夏休みで誰も構ってくれないヤツだろ発言 ↓ ヒロアキの顔までブサイク発言 ↓ 悔しかったら親ぶん殴って名前変えてこいや発言 ↓ 5分で殺すと殺人予告する ↓ ★家族がいるなら初手降参しろと脅す。 ↓ さらに通報やめてと悪行を推奨する。 ↓ 相手が選ばないならこちらが選ばない発言によりカンニングの不正行為の疑いがある ↓ れい軽を使って相手を棄権させる。 ↓ 相手泣いたとかwwwwww発言し、さらに塩を塗る。 ↓ これだから売名出会い厨はksなんだよ発言 ↓ 波乱の中試合が始まるが相手が初手降参する。 ↓ どや;) (タイムシフトで見たときも同じコメントするw) ↓ 相手はひらがな3つで表すと ゆとり 発言 (とげ曰く れいかを4文字で表すと おっさん) ↓ 本当の話、ここまで勝ち残ったことは二人倒したってことなので、 棄権することはその二人に失礼だろと喧嘩を売る。 ↓ どうせ19歳ぐれぇのガキだろ発言。 ↓ あれで社会人とかできまーせんと発言。 ↓ 女性って拘りでくくると あれがレするらしい。意味不明発言 ↓ そこで声とか顔を特定してほしくないらしいますます意味不明である。 ↓ 運営の人に迷惑かけたくない発言するが一戦目に注意されているにも関わらず また問題を起こしているので矛盾している。 ↓ アレムの枠見てるけどこいつはダメな上に相手するなとディスる アレムの枠でコメント書くとBANされるかられい軽を呼びもどす。 ↓ マイク持ってるのにマイク持ってないとリスナーを騙す発言も ↓ 相手の枠に行くなとれい軽をさらに煽る。 ↓ 相手のコミュが大きいと感じたのはれいかがぶるってしまったためである ↓ 後にアレムが謝罪することにより事は表面上終わった しかし4戦目で大会運営により相手の選択したパーティを晒すコメントがあったので不正行為が見られた。
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コピペしてマイ辞書を作るがよいぞ! おりヴぃあ たると とるて れもねーど みりむ りっか ろっか れいひ くれーる えりーぜ れヴぃえーる かちゅあ すぴか れいか のわーる りーぜろって りりー なかじま いその ひょうか かずえ ひばな れむ はなざわ みこ かおり ころな あねご てぃーる ときわ しゃくね うらべ みつなし はとば まきぎり ちくろ ざんのいお いなほ らいむぎ みろく さかがみ まりす しおん くれあ くあんた りねあ べあとりす がーねっと みすてぃ しるふぃー みるふぃー のいん さぎら せーじ くろえ あいら てぃふ ろーしゅか ききょう あやめ おっさん れん けいこ このは ゆうなぎ なもみ せんちゃ やなぎ こえとか いろり ちどり こたつ ちこっしー ちこ めーふぃ おでんくん くうか ぽかぶん ぽっか まろにー ゆんぎ かるき たりさ たばさ あうら かりーな ちる えんじゅ ゆきむら あるしん るり ふろーず るりまつり あるふぃな ひるど おかん かるーあ ふれいや ししおす ぶれあ さいねりあ ねいびー りんどう ろぜらいと りくらーた あるたいか あいぼりー まてぃろ おるとるーと れーげん しらたき むりょう あみだ ひとでーち おはぎ あやとき こだま つきかげ つくよ てらきさん ぱすか らざりす ちざくら みもざ へいろー かたな すごいなー こんとん れあ ぷれみあ しーくれっと はなび ふぁにー さざんか せんぎり びっきー さきもり くりすちゃん なんかれー ちくわまる つるぼ ふにふに おさ せんだん きんらん みーりえる らぎゅこ よこはま でぃおす めるてぃあ がお ひよ もも あーびぃー るーふぁす ますたー みかえる まるた ぴこ ぱいん うぇるち あらなみ ぎしゃぼるご ほたてさん あさりさん ぬまち ふぃあー ふらんめ かっせん らぱん とらすと ぱるち かるてる こんがーまりと どくせん かんぜい すぽーち へら かやらん れもん おーめん れんぴか ててと れーあ れいん ゆーら せりな れふぃとぅす さいりん みろわーる すぇる しぇろ しぃしぃ おさくら みんと すえつむはな てぃと あずき るりる めろ もなか よもぎ いまがわ みずぼたん れすてぃあ しなもん ひな まつかぜ みのぶ ろっぽう ささら こぎく こととい しおみ かいたん りん しょよ やつき こぼし からすみ こはく まるぼーろ すぐり れーちぇ せいろ やこ ゆきかぜ ばたーろーる すてびあ はづき すいか れんり るしあん やえ えるみーね そるべ ぷくぷく まーず あーべる ころね くじゅう てぃふぁーる きりえ ひじり ぱーむ すぴねる くろりあ さく おにきす てぃふろる るしゅふと ふらいちき うぃんくるむ とるえの がるふる さにー こいも ぐろんと みるか てっせん じゅりえった すーら でぼら へらてぃな おさき れーヴぁ ねる ぼんぼり なめっくじ ますたーばなな どむ つち きるる つるぎ まおー はっさむ あらっきー みるきー さわむらさん ちじょ かい きい らみ まよらー さヴぁ あかり ひだね みそら てっか さいが ひょうが やよい せんか しょうか たまね えくれーる ぷりまべら てお ぱるふぇ しょこら のわる ぐりまろん つくね そくらてす びっち はなちゃん わかさま きてれつ くりばな いえやす とよとみ のぶなが ばき きっこーまん おまる ひゃくれっが をきゅう ばるす すぴーかー かいばしら もさこ うさいん ちっぷ だめりあ すぷれ うーる ななころび くりーむ たらこ きゃんどる うなぎ でっかちん なんこつ はいじ かいきゅえす ぐあしえむ れきしえる ぎらいせす ゆい ゆう すぱさん おりす にゃびーさん ごーすとちゃん りーふぃあちゃん ぐれいしあちゃん えーふぃちゃん ぎらてぃなちゃん ざるにーつぁ てぃふぉーね みゅーす ふぃおれ ぽっちゃま どーどりお
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ごめざん 概要 名無しで活動している絵師(兼ツクラー?) やや個性的な絵柄だが顔グラが使用される頻度は高い ホームページ:「もしもが如く GOME☆ZAN」 http //sky.geocities.jp/nr9764/index.html コメント このコテに関する補足やコメントはこちらにどうぞ 名前 コメント
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「けーねせんせー、さようならー!」 「またあしたねー!」 カァ、カァと群れなす烏が山へ戻る頃。 人里の寺子屋からも、授業から解き放たれた子供たちが喜び勇んで一斉に街中へと駆け出していく。 見送る先生は授業中とは打って変わった子らの笑顔が眩しくもあり、寂しくもあり。 「もう少し、楽しそうに勉強してくれたらな」 半年ほど前までいた、もう一匹のあの生徒みたいに。 今はもう見ることもないその生徒の存在を思い出してしまい、慧音の笑顔にさっと翳が差す。 「どうしたんだ、慧音?」 その表情の変遷を見ていたのか、見ていなかったか。 慧音の頭上に影が落ち、同時に気遣わしげな声が振ってきた。 聞きなれた声に顔を見上げれば、そこには違わず見慣れた姿が漂っている。 「妹紅、来たのか。いや、子供たちがきちんと家にまっすぐ帰るかどうか、見送っていたんだ」 まあ、考えごとに没頭していたにしてもそれ自体は嘘ではない。 慧音のことばに「そっか」と妹紅は頷いて、地上に降り立つと人気が消えて早くも空気が冷えてゆく寺子屋の中を見渡した。 以前なら、この頃を見計らって週に二度、三度と一匹の生徒がやってきた。 そのことを妹紅も覚えていたのだろう。「そういえば」と呟いて、教室へと向けていた視線を慧音へと向ける。 「前によく人目を忍んで来ていたゆっくりがいたよな。最近さっぱり見ないな」 「ああ。そのことなんだが……」 慧音は口ごもり、どこかが痛むような表情を作った。それはなんとも、説明しにくいことだ。 その反応に、妹紅の顔が曇る。不味いことを聞いたかと思いながら、沈黙を続かせるのもまた気まずいと思ったのだろう。 妹紅はとりあえず、そのまま会話を続けることを選んだらしい。一番可能性の高そうな不幸なできごとを口にした。 「……ここに通う途中に、事故か何かで死んでたのか?」 「いや。そういう訳じゃないんだ」 その問いには、慧音は違うと即答することが出来た。 というよりも、そうだったらまだよかった……と思わなくもない。慧音自身、不謹慎だと思う考えではあったが。 とはいえ、実際に起きたことはおそらくゆっくりにとってそれ以上に不幸な事態であったわけで。 「人……今回は人じゃなかったが、教えることは怖いなと。少し思っただけさ」 慧音の声に、少し自嘲の響きが混じった。 以前足しげく通っていたぱちゅりーは、実にいい生徒だった。 よく聞き、よく尋ね、よく考え、よく悩んだ。 ゆっくりの知性は、幼い子供によく似ている。成体でもそのレベルに留まるゆっくりは極めて多い。 だから慧音としても、子供たちを教える感覚で彼女にさまざまなことを教授することができた。 そして、一つだけ見落とした。 ぱちゅりーが何を求めて、人間――半獣半人の寺子屋の先生に、人間の歴史を簡単に教えて欲しいと頼み込んだのかを。 ぱちゅりーは、群れの指導者となることが多いゆっくりだ。 それが、人間の歴史――それも、途中からは幻想郷と枝分かれしてしまった、外の世界の歴史を学びたいなんて言い出したからには、 何かあると思ったほうが良かったのだろう。 とはいえ、まあ、しょせんゆっくりのやることだ。 何か裏があると気付いたとしても、それをいちいち気に留めたかどうかは、慧音自身にもわからないが。 今となっては、こう愚痴を零さざるを得ない。 「……なにも、一番の暗いところを模倣しなくても」 「……?」 戸惑いの目を向ける妹紅には敢えて応えることはなく、慧音は深々と白く煙る吐息を漏らすと共に、 もう群青に塗り替えられつつある東南の空を仰ぎ見た。 そして思う。 今から考えても、あのぱちゅりーは実にいい生徒だった。 慧音が噛み砕いて教えた外の世界の歴史を、ゆっくりなりに消化して結論と呼べるものを見出した。 ゆっくりがゆっくりするために、必要な方策を見つけたのだ。 ――ゆっくりがゆっくりするためには、てきとうなゆっくり種を他のみんなでゆっくりできないようにしたらいい。 そうしたら、少しごはんがたりなくても、少し暑かったり寒かったりしても。 そのゆっくり種を苛めている間は、みんな心はゆっくりできる。 それがぱちゅりーが慧音から教えてもらった人間の歴史の中に見つけた、ゆっくりが一番ゆっくりできる方法だった。 * * * やがて冬は既に北へと去り、生き物が待ち望んだ春が訪れたある日。 ぽいん、ぽゆん。ぽやん、ぽゆん。 聞きなれた奇怪な音がゆっくりと、リズミカルに、幾重にも重なって野山のあちこちに響いている。 冬篭りも終えて、冬を生き延びたゆっくりたちがまずは冬の節制でぎりぎりまで餓えた腹を一杯に満たすべく食料を求めて駆け巡る季節。 ただおうちの周りを散策するだけで好きなだけゆっくりできるはずの、ゆっくりたちにとって天国のような季節。 だというのに、この春はある一部の種のゆっくりにとっては、先の秋口に生まれた地獄の延長線に存在するものでしかなかった。 「こっちよ!」 「にげないでゆっくりしね!」 「レイパーは、どいつもこいつもおうじょうぎわわるいわね!」 地獄を演出するものたちは、初冬から変わらず青いリボンをつけたありす種と、月の帽子飾りをつけたまりさ種たちだった。 ゆーまにあの森の群れは、冬を越えて春に入っても平常運行だ。 それどころか、もとよりゆっくりたちに潜在化していたありす種への反感に乗って、同調する群れは各地にゆっくりと増えつつある。 つい先日も、ぶろんこが支配する群れがゆーまにあのドスの傘下に入ってありす種への迫害を強め出したという。 今、妖怪の山と正反対に位置する低山で行われている山狩りも、そうした動きの一貫に過ぎない。 それにしても、今随分前を逃げているありすは相当しぶといヤツだった。十数匹で追い回して、一向に追いつけないのだ。 というより、引っ張りまわされすぎて追っ手の方が今何処にいるのか自分の位置を失いつつある。 これでは相手を追い込むにも、適当な場所へ誘い込めない。 「……ゆゆっ。みんな、ちょっとまってね! このさきって、たしか」 この坂を上りきったら、そこに何が広がっていただろう。 追っ手――『ゆっくりたあて』の一匹が、めったに来ることのないこのあたりの知識を必死に引きずり出そうとする。 確か、追い込めそうな場所のはずだったのだが。 とはいえ、逃げる相手を追いかけている最中に「ちょっとまって」なんてできないわけで。 うろ覚えの記憶を探る間に急な斜面を必死にゆっくり登りきり、よれよれとへたりこみそうになる一同が見たものは。 「ゆひぃーっ、はぁーっ。ゆひぃーっ、ゆはぁー……あ?」 「ゆゆーっ!? ここはゆっくりできないよー!?」 見渡す限り一面に広がる、白く可憐な花の群生地。 小さな鈴を幾つも首にさげたようなその姿は、一見すればとてもかわいらしくて、ゆっくりできそうなものだった。 でも、それが絶対にゆっくりできないお花なのだということは、ろりすたちはとてもよく知っていた。 食べることどころか、触れることすらゆっくりにとっては命に関わる花畑。 その地を彩る花の名を、スズランという。 「……こっちにレイパーがきたはずなんだけど」 皆が一様に恐れて花畑に近づこうとはしないその中で。 リーダー格のろりすだけは、スズランに目を奪われることなく周囲の様子を探っていた。 この普通のゆっくりを拒むスズランの花畑の側に、姿が見えるゆっくりの数は二匹。 リーダーの言葉を耳にして、ようやくその存在に気付いたろりすとまりさたちが、今度は別の驚きでぎょっと身をすくませた。 「スー? ゆうか、しってる?」 「さあ、きにもしてないわ」 突然の闖入者を迎えて、だが先客の二匹は驚く様子も見せない。 ことに、めでぃすんの問いかけられたゆうかはろりすたちの方を見ようとする気配すらもなかった。 二匹とも、希少種である。ことに、ゆうかは多種のゆっくりと往々にして極めて関係が悪い。 ろりすたちもそれを知るから、その態度はなおのこと硬く、高圧的なものになる。 「かくすと、ためにならないわよ」 「どう、ためにならないのかしら?」 売り言葉に、買い言葉。 ゆうかとリーダー格のろりすの間の空間にさっとゆっくりできない気配が漲った。 ……もっとも、リーダー格以外のろりすやまりさたちは、どことなく乗り気ではない雰囲気を表情に漂わせているのだが。 「スゥ……ここはスーサンでいっぱいだよ。さがすならゆっくりさがすといいよ!」 「ゆゎっ、ゆっくりよらないでね!」 険悪な空気を仲裁するつもりだろうか。 一緒に探そうか、と無防備に近づくめでぃすんに『ゆっくりたあて』のまりさは慌てて近づかれた分後ろへと飛び退いた。 リーダー以外のろりすたちが気乗りしない様子を見せている理由が、まさにこれだった。 なにしろ、このめでぃすん種は触るだけで毒に冒されるという噂のある蠢く危険物だ。 人間の虐待愛好家もドMで苛め甲斐がないと評判のてんことならんで忌避する代物に、好んでお近づきになりたいと思うゆっくりなど、 幻想郷全土を探しても数えるほどしかいないだろう。 だが、そんな誰からも愛されない危険物である分、この鈴蘭に満ちた無名の丘でも不都合なく暮らせるという利点もあった。 こんな場所に長居出来るのは、中身が毒入り餡子だというこのめでぃすん種と、植物との親和性が高いゆうか種ぐらいのものだ。 仮にありす種がこの中に逃げ込んで、この二匹が庇っているのだとしても。 この二種が耐えられる環境だからといって、ありす種が無事に生きて戻れる道理は何一つない。 「おいかけなくてもだいじょうぶそうね」 「おはなさんがえいえんにゆっくりさせてくれるね」 追っ手のありすとまりさが、顔をつき合わせてぶつぶつと相談している。方向性は、すでにほぼ固まっているようだった。 リーダー格のろりすがその最中に刺すような一瞥をゆうかに向けたが、 その眼差しに気付いたゆうかが怯むこともなく真っ向からじろりとにらみ返すと、忌々しげに舌打ちしてすぐに目線を反らした。 結論が出たのは、それからすぐあとのことだった。 「……いくわよ」 リーダー格の指示が出るや、ろりすと飾り付きまりさの群れは一斉にこのゆっくりできない無名の丘から立ち去っていく。 正直なところ、スズランどれだけ近づくと危ないのか具体的なことまではわからない彼女たちは、生きた心地がしなかったのだろう。 リーダーの指示が出てから、数十匹はいた彼女たちの姿が完全に視界から消え去るまで、ゆっくりにしては驚くほどの速さでことが進んだ。 周囲に、もう一匹も闖入者たちの姿は見えない。 闖入者がいてもいなくても、ゆうかとめでぃすんは変わらずスズランの畑でゆっくりしていた。 ゆうかは草花が身近にあればそれで十分ゆっくりできるし、めでぃすんはスーサンの毒があればそれで十分ゆっくりできた。 そんなとてもゆっくりできるゆっくりプレイスにいるから、二匹は場に存在する気配が三匹分あっても気にしない。 二匹のゆっくりプレイスに、迫る死に怯えて逃げてきた闖入者が飛び込んできて勝手に隠れても、そんなものは知ったことではなかった。 「どうして、だまっていてくれたの?」 群生するスズランよりやや手前、普通の草が覆い茂った一角がわずかにあった。 声の主は、その中にある窪みに半身を埋め、息を殺してことの成り行きを窺っていたらしい。 自分はレイパーよばわりされてるありすなのに。心底不思議そうに尋ねる声の主に、ゆうかは小さく笑ってこう応じる。 「よわいものいじめには、きょうみないもの」 なるほど、と声の主――逃げていたありすは納得した。 ゆうかにとっては、例えありすがレイパーであったとしても『よわいもの』なのだ。だから、恐れるには足りない。 そして同時に、恐らくはろりすたちも群れるだけの『よわいもの』として映っているのだろう。 よわいもの同士の、よわいもの苛め。ゆうかにとってはつまらないことこの上ない演目に違いない。 その余裕が、逃亡ありすに対して寛容さとして顕れたのだろう。 その強さが、流されることのないあり方が、ありすにはとても羨ましく思えた。 「めでぃすんはゆっくりをかいほうするの!」 一方で、めでぃすんのいっていることは、いまいちわかりにくいけれど。 どうも、よわいものの味方だということらしい。しかしゆっくり解放とは大きく出たものだとありすは小さく笑った。 現実には、同じゆっくりからも敬遠されやすいめでぃすんはゆっくり解放どころか自分の解放から始めなくてはならなさそうだったが。 きっと、めでぃすんにはたいした問題ではないのだろう。 その寂しさが少しありすには気がかりで、だがやはりどこか羨ましく感じるところがあった。 まあ、なんにしても。 ありすは暫くぶりに、ずっと張りっぱなしだった気を抜いた。 ここには、ずっとありすを流し続けた嫌な流れがなかった。ありすはありすでいられるようだった。 二匹は流れを生み出さない。自分たちの在り様だけで超然としている。 それは他者と交わらない生き方だったが、今のありすはそれが一番心地よかった。 「しばらく、ゆっくりしていってもいい?」 もし、本当にゆっくりしたいなら、いつまでもこのゆっくりプレイスにはいられない。 尋ねながらそう気付く。 このゆっくりプレイスは、スズランの毒があるだけではない。孤独という、心の毒も孕んでいるから。 だが、それでもいいかとも思えた。 流されるまま、奪われるがままのゆん生よりは、その方が幾らかマシだとも思えた。 外に出れば、自分は自分でいられない。ありすが何であるかは、ありすが決めることではなくなってしまう。 ありす自身が例えなんであっても、そのありようは周囲が望む形に囚われてしまう。 それは、絶対に、嫌だった。 「「ゆっくりしていってね」」 ――ほら、孤独という安らぎは、こんなにも暖かい。 この閉じた空間で、わずかな付き合いだけを世界の全てにして、時に寂しさを覚えつつ一人きりで暮らす以上の幸福は、 外の世界に出てしまえば決して望めないじゃないか。 幻想郷という世界は、ありす種を即ちレイパーだと定めたのだから。 * * * ありす種は、レイパーだ。 ありす種として生れ落ちたゆっくりは、ごく一部の例外を除いて先天的なレイパーだ。 そしてその残ったごく一部の例外は、優秀なありすハンターになるのだ。ゆーまにあのドスのもとで。 幻想郷に生まれた『常識』は、それまでのレイパー被害という実績に基き急速に人と、ゆっくりの間に根付いていった。 その『常識』を裏打ちする数字は、どこにも存在しない。 存在しないし、必要ともされなかった。 レイパーの源であるありすを排除してしまえば、多かれ少なかれその被害もなくなるのだ。 そのひどく乱暴で簡単な理屈は、頭のつくりが粗雑なゆっくりにはとても受け入れやすかった。 ありすは、ありすという種は、もういかなる形であれゆっくりを手に入れることは未来永劫できない。 ありすがゆっくりの社会の中で生まれ、暮らす限りにおいて、ゆっくりできることは絶対にない。 流れのレイパーか、他にゆっくりのいないどこかに隠れ住まない限り、孤独を貫かない限り、ゆっくりを手に入れることは出来ないのだ。 ――果たして、そうまでして手に入れたものが真にゆっくりと呼べるものになるのか。 ゆん生の終わりに、しあわせー♪を感じて全うすることが出来るものになるのか。 それは、相当に疑わしかったのだけれど。 _______________________________________________ ありすとまりさは金髪のザコだと気が付いたら、ぶろんこさんを出したくてたまらなくなった。 ゆっくりたあて他のゆーまにあネタはほぼ枢軸・共産時代のルーマニアが元ネタ。なので東のドスはソ連相当。 ちなみにゆっくりたあての元ネタは「セクリタアテ」という、孤児集めて作り上げた秘密警察だったり。