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【作品名】日常 【ジャンル】アニメ 【名前】長野原みお 【属性】腐女子 【大きさ】小柄な女子高生並 【攻撃力】張り手一発で成人男性の警察官を気絶させる 【防御力】大きさ相応 【素早さ】 5mほど跳躍できる 電車より少し遅いくらいの速度で走行可能 だるま落としの上段が全く落ちない間に 「後方から飛んできて自分に当たった段をキャッチ→1m後方にいる人の頭に投げ返す」ことができる反応、戦闘速度 描写では中に浮いた状態の上段がほぼ全く落ちていないが、 時間が経過していないということはないので、上段が0.1mm落ちたと仮定し計算する →作中時間0.0045秒で上記「」内の行動ができる 【特殊能力】なし 【長所】普通とは思えない戦闘力 【短所】腐ってやがる。速すぎたんだ 【戦法】初手張り手 vol.4 555 名前:格無しさん[sage] 投稿日:2011/10/02(日) 20 01 56.55 ID byfJYbXv 長野原みお考察 素早さが凄いが、それに対して攻撃不足で防御は紙。 浦島可奈子より上は無理だろう。そこから下を見てみる。 △:飴谷千歳 当たらないが倒せない △:浦島可奈子 同上 ○:佐倉杏子 ひたすら張り手して気絶させ勝ち ○:園崎魅音 同上 △:音無小夜 当たらないが倒せない △:主人公(FB海の呼び声) 当たらないが倒せない ○:大島アリサ 張り手で気絶させ勝ち ○:ノヴィア・エルダーシャ 先手とって張り手勝ち △:花岡弥依 当たらないが倒せない ○:九鬼揚羽 防御は普通なので張り手勝ち ×:朱鷺宮神依 一発じゃ倒せない。時止め→斬殺負け △:藤堂晴香 当たらないが倒せない ○:イカ娘 張り手勝ち ○:ニセもん タイムマシンの上に飛び乗ってボコり続け勝ち ○:レン ジャンプして張り手勝ち ○:アマナ 張り手で気絶させ勝ち まあ、多分大丈夫だろう。 成瀬川なる>飴谷千歳=浦島可奈子=長野原みお
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「梅先生…もう我慢出来ない、俺はあなたの事が…!」 そう言いながら、俺は梅先生を無理やりソファへ押し倒す。 いきなりの事で梅先生は、なにが起こったのか分からないようだ。 しばらくの間、目を見開いて俺の顔をじっと見つめていた。 「○○君…」 やがて自分の侵されている状況を理解したのか、梅先生は静かに言葉を紡ぎ出していく。 「…見たいんだよね?私のからだ。 うん、男の子だもんね、 …うん、そうだね…見ても、いいんだよ?」 「な…!?」 この人は一体何を言っているんだ? 相変わらずこの人の考えは全く読めない。 これから自分が犯されると分かっていながら、こんなに平静を保てるなんて、どうかしてる。 「むー、人をそんなに痴女みたいに言うなー。」 「い、いや、俺は別に、そんなつもりでは…」 恥ずかしそうに少しはにかんで、先生は言った。 「私ね…○○君になら、その…アレ、してもいいかな…なんて、思ってね…。 ほら!○○君にはいつもお世話になってるし、本当に大好きだし… だから!あの、その…わっ、私で良ければ……えっち…して…下さい…」 やっとの事で言い切ると先生は、その真っ赤になってしまった顔をうつむかせて、そのまま黙りこくってしまった。かわいい。 俺…最低だ。 こんなに純情で、俺の事を思ってくれている先生を、無理やり襲おうとするなんて…最低だ… それでも…この欲望は抑えられないっ! 「先生…」 俺は先生の着ているブラウスをゆっくりと、だが、やさしく剥ぎ取っ この小説はうめてんてーによって削除されました。わっしょい。
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※俺設定注意 ゆっくりいじめ系1894 楽園~まりさの場合(3)から連続したSSです。続編を読むにあたって、当SSをご覧になる必要はありませんが、見た方が楽しめるかも知れません。 presented by [498] 「ありす、ゆ虐は好きかい?」 「ええ、だいすきよ。」 複数のモニターに映し出されたゆっくりの親子を眺める一人と一匹、一週間程前にあの惨劇を演出した男とゆっくりありすである。 この男、数年前に人間だった頃の名前を捨て、今は『虐待 鬼畏惨』と名乗っている。隣に鎮座するありすは今から二週間程前にこの鬼畏惨の下へ『楽園入り』したありすだ。 このありすは群でも評判の『とかいは』なありすだった。子守をすれば子は直ぐ笑い、知識は老ぱちゅりーの次に豊富で、身嗜みにはいつも気を遣い、群の勤めで得ていた俸給は一匹でゆっくり家族2世帯分はあった。 だがこのありすは『ゆっくりする』という事を知らなかった、体験した事がなかったのだ。生まれて直ぐに群の『えーさいきょーいく』コースの放り込まれ、そこで『とかいは』の何たるかを徹底的に叩き込まれた。結果は先にも述べた通りだ、ありすは名実共に『とかいは』になる事が出来たが、その生に充足する事は無かった。 そんなある日の事、ありすに『楽園入り』の吉報が届いた。ドスが宣言し、周囲が祝福する中、ありすは満面の笑みを浮かべ、醒めていた。 どうせ何処へ行っても変わりはしない、精々面倒な仕事が無くなるくらいだ……この頃のありすは生きるという事にさえ倦怠感を感じるようになっていた。 ありすが辿り着いたその日、『楽園』では鬼威惨による『優秀なゆっくりを論破し貶めながら破壊する』といった嗜好の虐待が繰り広げられていた。 理知的だったゆっくりがアイデンティティを否定され、理性を破壊され、みっともなく命乞いをしながら無残に殺されていく様を透明なケースの中で見ていたありす。その心は、迫った死の恐怖より、初めて見る世界への高揚感で満たされていた。 「にんげんさんっ!」 「ん、どうした?慌てなくても次は君の…」 「それ!なんていうの?」 「……これかい?これはアルコールランプといって主に…」 「そうじゃなくてっ、にんげんさんが『やってること』!」 「『やってる事』ぉ?……そうだな、これはね、 『ゆっくり虐待』 っていうんだよ。」 『ゆっくりぎゃくたい』……はじめて聞く言葉だが何故かしっくりくる。それに良い、とても良い…!これは最高の表現方法だ……っ!これこそが自分の求めていた『ゆっくりする』という事なんだ!! 「変な事を聞くありすだね、それがどうしたんだい?」 「わたしも……『ゆっくりぎゃくたい』がしたいのっ!!」 「…………………」 「…………………」 「……なん……だと………?」 我が耳を疑う鬼畏惨。それもその筈だ、結構な時間をゆっくり虐待に費やしてきたが…自分から同族を虐待したいなんて言い出すゆっくりは見た事が無かった、ゲスでもそんなこと言った奴は居ない。 ありすは初めて見つけたこの強烈な価値観を覆そうとは思えなかった。 両親から学ぶはずの『ゆっくりする』という、あたり前の事を、ありすは人間の男を通じて知ったのだ。 奇妙な事だが……虐待を働き、ゆっくりを殺す『虐待お兄さん』が、ありすの心をまっすぐにしてくれたのだ。 もう、醒めた目つきはしていない…彼女の心には、さわやかな風が吹いた……。 鬼畏惨はありすを『"こちら側"に引き込まない』という態度をとっていたが… ドスが変化をもたらさず、ゆっくり達もそれを教授するしか能の無い、ありすの住む環境では、ありすの気持ちを止める事はできない…。 彼女の中に、生きるための目的が見えたのだ… こうして『ゆっくりありす』は、クイーンありすに憧れるよりも…… 『虐待お兄さん』に、憧れるようになったのだ! 時は現在へ戻る。 「ところでおにいさん、なんであのこれいむはびょうじゃくなの?なにかしたんでしょ?」 「ああ、気づいたか。そうだ、あの子れいむには生まれる前から細工がしてあるんだ。」 「うまれるまえ?でもまりさにとうよしたのはそくしんざいとジュースだけでしょ?ほかはみてないけど……」 「ふむ、ならこれは覚えているかい?」 鬼畏惨は親指大のブロック菓子を取り出した。まりさがれいむの子を身篭った際、栄養剤として与えた物である。 「…なるほどね、で、どくでもしこんだの?」 「いや、だがまぁ似たようなもんだ。これはゆっくりの細胞を時間経過と共に破壊していくウィルスが入っているんだ。」 その名を『YUKKURI-DIE』 実験レポートを提出する事を条件に八意永琳から譲り受けた、対ゆっくり広域殺戮用細菌兵器。例によってゆっくりの遺伝情報のみに反応するという安心設計だ。 この『YUKKURI-DIE』は、特殊な装置を用いてゆっくりの遺伝情報を与える事で変異する。変異したウィルスは、宿主の体に刻まれているゆっくりの遺伝情報がおよそ5%まで合致する場合に、その細胞を破壊していく。感染経路は要検証だが、論理的には空気感染も可能。 ゲスによる人里への被害や、レイパーによるゆっくりの異常発生を防ぐのが主な開発目的である。 ちなみに今回変異させるのに使ったのは、摘出したれいむの陰茎だ。 「……と、言う訳さ、今のところれいむには『YUKKURI-DIE』の症状は現れてないみたいだね。」 「そうだったの…あら、そろそろ『おつとめ』のじかんね。」 「ん、もうそんな時間か。じゃあ僕はまりさを迎えに行ってくるから、ありすは先に行って待機しててくれ。」 「ええ、わかったわ。」 「わかってると思うが、『とかいは』に振舞うのを忘れずにな。」 そう言うと男はゆっくり一家が暮している部屋へ向かった。 「きょうもおつとめにいってくるよ!」 「いってらっしゃい、まりさ。ゆっくりがんばってきてね!」 「「す〜りす〜り♪」」 部屋に入ると、まりさが家族全員に出勤前のすーりすーりをしているところだった。 鬼畏惨の心臓が早鐘を打つ。嗚呼、今すぐこいつ等を切り、刺し、打ち、抉り、炙り、削り、剥ぎ、溶かし、潰したい!そんな感情を必死に押し殺す、強く握った拳には血が滲んでいた。 「ゆゆ、おにいさん、ゆっくりおはよう!」 「ん、おはよう、まりさ。今日もお勤めご苦労様。」 「かぞくのためだからね、とうぜんだよ!ゆっへん!」 「黙れ駄饅。」 「ゆうっ!?いまゆっくりできないこといわなかった!?」 「ははっ、きのせいだよ、僕がそんな事言う訳無いじゃないか。」 「ゆっ、それもそうだね、うたがってごめんね!」 「いいんだよ、それじゃあ行こうか ありすが待ってるよ。」 季節は秋。窓の外に紅葉を仰ぐ事が出来る部屋の真ん中で、ありすはクッションに身を沈め、まりさが来るのを待っていた。 憂鬱だ。必要な事とは理解しているが、あんなヌケサクをこれから数時間もの間相手にすると思うと在りもしない胃がキリキリと痛んでくる…しかもその後は『あのこたち』の調教もしなければならない……だが全ては唯一瞬、あのカタルシスを味わう為だ…文句は口に出すまい。 ありすが待機してから数分、部屋のベルが鳴り、ドアから鬼畏惨と抱えられたまりさが現れた。 その場に降ろしてもらい、ありすの下へ跳ねてくるまりさ。ありすも先程まで作っていた渋面を捨て、実に『とかいは』な笑みを湛え、まりさを迎える。 「あらこんにちは、まりさ、ゆっくりしていってね。」 「ゆ!きょうもゆっくりしていくよ、ありす♪」 と、まりさも笑顔で返す。これから夜になるまでまりさはここで過ごす事になる、それが鬼畏惨がまりさに与えた「おつとめ」だった。 最初は部屋の中央で待つありすを見て泣き叫んでいたまりさだったが、鬼畏惨が『このありすは本来は都会派だ』『あの時はたまたまレイパー化しただけだ』と言い、当のありすも、あの時と違ってとてもゆっくりとした佇まいだったので、まりさはその言葉を信じ、受け入れたのだ。これはまりさが『楽園』に来るまで、悪意や敵意、嘘といった事と無縁の環境で育った為である。 まりさにとって『おつとめ』とは、『よるまでありすのあいてをする』事だった。性的な意味ではない、これでもゆっくりは一部を除いて人間以上の貞操観念を持っており、愛した相手以外との『すっきりー』は苦痛以外の何物でもないのだ。その点、ありすはあの日以来レイパー化する事も無く、『おつとめ』の間はありすとのゆっくりとした時間を満喫していた。 今日で『おつとめ』も一週間、すっかりありすに心を開いたまりさを見て満足げな鬼畏惨。 「もう十分だな、よし。」 「…おにいさん、もうすぐなのねへぇ……?」 三脚にビデオカメラを取り付ける鬼畏惨と、それを見てにちゃあ、と汚い笑みを浮かべるありす。 「ゆ?おにいさん、それなあに?」 「これかい?これは君達がゆっくりとしている様子を他のゆっくりにも見て貰う為の道具さ、素敵だろ?」 「ゆゆぅ!?そんなのはずかしいよぉ///」 「だいじょうぶよ、まりさ。わたしたちのゆっくりとしたすがたをみて、ほかのこたちにもゆっくりしてもらいましょう?」 「んゆ…ありすがそういうなら……」 「ん、じゃあとりあえず朝の食事の風景から撮ろうか。まりさ、今日はなにが良い?」 「ゆ!まりさ『はにーとーすと』がいい!」 「じゃあわたしもおなじで。ふふっ、まりさとおそろいね。」 「ゆぅん///」 まりさの食事は三食全て『おつとめ』の時間に与えられていた。最初にまりさが好みそうな物を鬼畏惨が用意し、次の日からまりさに選ばせる、といった具合だ。まりさは初めて人間の甘味を口にしたとき、涙を流しながら『こんなすばらしいあまあまをもらえるまりさはきっととくべつなそんざいなんだとおもいました』と訳の分からない感想を口にする程感動していた。 「わかった、たっぷり甘くするから楽しみにしててね」 「ゆうん!そんなこといわれたらゆっくりまてないよぉ♪はやくもってきてね♪」 「はいはい黙れよ」 「……ゆ?いまなにかいt」 「何も言ってないよ。」 それから撮影を開始する鬼畏惨。朝の食事の風景から、その後まりさとありすがゆっくりと過ごす様子を撮影する。二回目の食事を持っていくときにテープを交換し、回収したテープは管制室へ持ち帰り早速編集作業に取り掛かる。 「しかし自分でそう仕向けたとはいえ、一家揃って思い通りに動いてくれる……姉妹達の仲があんなに良くなったのは予想外だったな、だが嬉しい誤算だ。まあ概ね…計算通り……っ!」 ぶつぶつと独り言を呟きながら編集途中のテープをそのままにモニタへ目を移す鬼畏惨。親子部屋では丁度姉妹達が昼食を終え、11匹固まって眠りに就いたところだった。 さてさて、あの饅頭共にはいつ種明かししてやろうか……邪な笑みを浮かべながらそんな事を考えていると、親子部屋を映したモニタから大音量の怒声が聞こえてきた。 『な に を し て い る の っ !』 一家の音声を余すとこなく拾う為、カメラにはそれぞれ指向性マイクを付けていた。そのそれぞれが拾った怒声がサラウンドで鬼畏惨の耳を襲う。 椅子から転げ落ちそうになるのを何とか持ち堪え、慌ててモニタを確認する鬼畏惨。モニタの向こうでは、寝床から這いながら、まりさがありすに犯されたとき以上の凄まじい形相で姉妹達を睨み付けるれいむの姿があった。 そこからの鬼畏惨の行動は速かった。編集途中のテープを上着のポケットに入れ、透明な箱を持ち、まりさとありすが居る『おつとめ』の部屋に乱入し、目を白黒させるまりさを透明な箱に押し込み、ありすに『行くぞ虐待者、ストレスの貯蔵は十分か?』と告げ、箱を抱えて親子部屋へと駆けて行った。 ありすは鬼畏惨の意図を理解し、これから起こる事を想像して絶頂しそうになりながら主の後を追う。 親子部屋のドアの前、抱えた透明な箱の中で、まりさがぷくー、と膨らんで怒りをあらわにしている。 「おにいさん!いきなりなにするの!せっかくありすとゆっくりしてたのにっ!」 「はあ、はあ、はあ……」 「はあはあいってないでありすのとこにかえしてね!そしてゆっくりあやまってね!ぷんぷんっ!」 「はあ、はあ……は、はははっ、そうかそうか、おまえはゆっくりしてたのか!」 「ゆ?あたりまえでしょ!?わかったらはやくもどしてね!いくらおにいさんでもゆるさないよ!ぷくー!」 「ぐっ…ぐふっ……えふっ、えふっ…!」 「ゆ、ゆゆ?どうしたの?おにいさん、なにかへんなかんじがするよ?」 「ふふふ、いやなに、次は僕の番だと思ってね……」 「ゆ?」 バンッ! 開け放たれるドア、そして 「次は僕がゆっくりする番だ。」 return to main story...⇒
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アナル表現有り しなないゆっくりがいます 一応元ネタあり 初投稿になります あれ?ゆっくりが妙に賢い・・・ まりさの馬鹿 「む~しゃ、む~しゃ!!しあわせぇぇぇぇ!!!!!」 とあるまりさは人間の畑に忍び込んで、野菜を食べていた。 とても幸せそうな笑顔だった。 だが幸せになれないのは野菜を育てていたお兄さんだった。 「またゆっくりかよ・・・・・・もう勘弁してくれよ・・・・・・」 趣味で作っていたとはいえ、何度も何度も畑に入っては野菜を食べられてはたまったものではない。 また今度もゆっくりを踏みつぶそうかと足を上げたその時、お兄さんはとあることを思い出した。 ゆっくりは思い込みが強いという事を。 ならば思いこみをさせればもう畑によりつかなくなるのではないかと思い、お兄さんは行動を起こした。 「だいこんさ~ん、まりさにた・・ゆぴぃぃぃぃぃ!!!!」 まりさは突然の痛みに悲鳴を上げた。振り返るとおしりの穴にお兄さんが指を突っ込んでいたのだ。 いわゆるカンチョーというやつだ まりさはケツを貫かれた痛みに悶絶していたが、痛みが引いたのかお兄さんの方を向いて 「なにするのおにいさん!!!まりさはごはんをたべていただけなのに!!!!」 またいうか・・・・とお兄さんはため息をつくが、気を取り直してまりさに魔法の言葉を言う さてさてうまくいくかな 「まりさ、今おにいさんはお前に三日殺しという幻想郷につたわるサンボという格闘技の裏ワザをかけた。 おまえは三日後のかけられた同じ時間に・・・・・永遠にゆっくりすることになる」 空白の時が流れた・・・・・ 空白の均衡をまりさが先に破った 「・・・おにいさん。うそはいけないよ・・・・。おしりになにかいれられたていどでゆっくりが」 「残念だがこれは事実だ。数年前にもおまえみたいなゆっくりにかけたらそいつはああなった。 というとお兄さんは大根の生えている土を指差した。 「この土はな、死んだゆっくりでできている。いわば死んだゆっくりの墓場だ。 ここにいる奴らの共通点はただ一つ。三日殺しをくらった奴らだ。 食らえば全身から餡子を吐きだし、永遠にゆっくりする。 ゆっくり理解したか?」 再び空白の時が流れた。 この均衡を再びまりさが破った。 「どぼじでぞんなごどをするのぉぉぉぉぉ!!!!!ばりざはなにぼばるいごとをじでないのにぃぃぃ!!! いやだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!じにだぐないぃぃぃぃ!!!!!」 まりさは絶叫した。 「まりさ、おまえはたった三日で死ぬ。おまえたちゆっくりにはとてもありがたい三日間なんだぞ!!」 「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!どうゆうごどがぜづめいじろぐぞじじいぃぃぃぃぃ!!!」 お兄さんはまりさにゆっくりと説明することにした。 なぜありがたい三日なのか。 説明するためにお兄さんはまりさを片手に移動を始めた。 まずお兄さんは都合良く他の畑に入ろうとしているゆっくりの近くへまりさと一緒に来た。 もちろん見つからないようにだ。 「いいか、あそこにゆっくりがいるだろ?」 「ぞれがどおじだんだぜぇぇぇぇぇぇ!!!!ごのゆっぐりごろじぃぃぃぃぃぃ!!!!」 「あのゆっくりはこれから永遠にゆっくりすることになる」 「うぞゆうんじゃないゆっぐりごろじがぁぁぁぁぁぁ!!!あんばにゆっぐりじでいるゆっぐりが えいえんにゆっぐりずるばずないんだぜぇぇぇぇぇぇ!!!!」 数分後 「おい五平!!またゆっくりが入っているぞ!!!」 「おいまたかよ・・・・・、ったくやってられないぜ・・・・」 そういうと五平と言われた男は侵入したゆっくりに近づいてきた。 「ゆ!!かとうなごみくず!!わざわざまりささまをこんなつちくさいところにいかせてなにもざいあくかんは ないのかだぜ!!!まいにちまりささまのごうていのまえにごはんをおくしかのうがないごみくずは おわびにまりささまのあんよをぺーろぺーろするん・・・・ゆびぃ!!!」 「あ~~~~、うっせ!!!」 畑に入ったまりさは五平のもっていた鍬によって一瞬にして永遠にゆっくりすることになった。 おとこは何もなかったのように畑に戻って仕事に戻った。 「どぼじでゆっぐりじでいだばりざをごろずのぉぉぉぉぉ!!!!」 一連の流れを見たまりさは叫んだ。 「どうして?そんなの簡単だ。あれがおまえの本来の姿だ」 「ぞんなごどないよぉぉぉ!!!!うぞゆうなまりざごろじぃぃぃぃ!!!!」 「わかってないなぁ。おまえは畑に入った瞬間から永遠にゆっくりする運命だったんだよ。 それを俺が温情で三日の猶予を与えたんだぞ。ついでだ、お前にゆっくりのたどるべき運命を見せてやる。」 そう言ってまりさを家へ連れて行きビデオを見せた。 見せたビデオはさまざまなゆっくりが自然の猛威や同族による殺ゆっくり、自分の業によって自滅していくもの をまとめたビデオだった。 なかには人間に逆らってゆっくりできなくなったゆっくりの虐待ムービーまであった。 「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!やべでよぉぉぉぉぉぉ!!!そのでいぶば いいおがあざんなんだよぉぉぉぉ!!!!どぼじでいじべるのぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」 「おねえざぁぁっぁぁぁん!!!!!!やざじいみょんぼいじべないでぇぇぇぇぇぇ!!!!」 「やべろぉぉぉぉぉぉ!!!!!!ぞのぢぇんはながまおぼいのいいぢぇんだよぉぉぉぉ!!!! どぼじでだべじゃうのぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」 ビデオが終わった後、まりさは肩で息をしていた。 あたりには甘ったるい液体が流れていた、おそらく涙と汗だろう。 お兄さんはまりさを森の入口まで運んでやった。 最後に男は言った。 「三日後、お前はどうあがこうが死ぬ。この三日はお前にとっての懺悔の時間だ。 むれに帰ったら、畑にちかづいたらどうなるか群れののゆっくりに教えてやるんだな」 お兄さんの計画はこうだ。 思い込みが強いのならただのカンチョーで本当に三日後に死ぬだろう。 その様を他のゆっくり達にみせ、人間の恐ろしさを教育してやる、というものだった。 森から帰ってきたお兄さんはうまくいっている事を豊作の神にお祈りした。 翌日、まりさは群れにかえってからため込んでいた食糧を食べていた。 ゆうぅ、まりさはもうすぐしんじゃうんだ。死んじゃうんならすきかってやっていいよね まりさは完全に自堕落になっていた。 そうやってお腹一杯になるまでご飯をたべてから今までの楽しかった思い出を振り返って ひとつ思い出したことがあった。 「ゆ・・そういえばゆきさんをみたことがなかったよ・・・・ しぬまえにみたいなぁ・・・・・・」 ゆっくりは冬の間ひたすら巣に籠って冬眠するため、雪を見ることになるゆっくりは たいがい越冬に失敗したゆっくりだ。 まりさはいままで噂に聞いたことしかなかった雪を無性に見たくなったのだ。 昼ごろ、まりさは残った食糧を帽子の中に入れ、群れのみんなに別れを告げることを決意した。 一番の親友のれいむには今までの経緯を話してから旅立とうと決めていた。 だが、れいむに経緯をはなしたら 「まりさのばか!!!!にんげんさんのいっていることははったりだよ!!! そんなこともしらないの!!!ばかなの?しぬの?」 と怒らせてしまった。 だがまりさはそんなれいむにごめんねと言うと、そのまま旅立っていった。 れいむは最後までまりさを馬鹿呼ばわりしていた。 まりさはいままで雪を見たことがなかったため、死ぬ前に雪がみたかった 群の知恵袋であったパチュリーが「雪が見たいならこの道をまっすぐ行きなさい」と教えてくれた。 まりさは教えてもらった道をそのまま進むことにした。 道中、まりさはゆっくりできなくなるキノコをたくさん集めた。 死の恐怖から一刻も早く解放されたいという思いからいつの間にかかき集め始めていたのだ。 三日後にはまりさは永遠にゆっくりしちゃうんだ・・・・・ このきのこさんよりもゆっくりできない苦しさを味わうのかな・・・・・・・ その前にこのきのこをたべて永遠にゆっくりしたほうが楽になるのかな・・・・・ と考えてきのこを食べようとした。 このきのこさんをたべれば・・・・このゆっくりできない気持ちから・・・・解放されるよ。 でも・・・・でも・・・まりさは・・・・・・じにだぐない!!!!!!! まりさはキノコをたべるのをやめて、帽子の中にしまった。 捨てきれない辺り、まだ諦めきってはいないのだろう。 それから歩くこと3時間・・・・・ 「おきゃあしゃ~~~ん、どこ~~~?おきゃあしゃ~~~~ん!!!!!!」 一匹の赤れいむが親を探して泣いていた。親とはぐれたのだろう。 そう思いまりさは赤れいむに話しかけた。 「そこのあかちゃん、どうしちゃったの?」 「おかあしゃんがいにゃの~~~!!!!うわ~~~~~ん!!!!!」 「おねえちゃんはこれからこのみちをまっすぐいくよ・・・・・とちゅうまでいっしょにいく? おかあさんがみつかるまでひとりでいたら・・・・あぶないよ」 まりさは親切心から赤まりさに申し出た。 「あぶにゃいのこわくちぇやだぁぁぁぁぁぁ!!!!!! おねえちゃんといっちょにくきゅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!」 赤まりさはまりさの申し出を受け入れ、一緒に行動することになった。 道中、まりさはいろんなゆっくりにあった。 親をれみりゃに食べられたり、動物に襲われたり、落盤などの事故で失って途方に暮れていた 赤まりさと子まりさ。親に捨てられたゆっくり。 みなまりさについてくるかと聞いたらついてくると答えた。 気づいたときにはまりさを先頭に赤ゆっくり・子ゆっくりの行列ができていた。 目指すは北、死ぬ前に雪さんをみるよ・・・・・ それから、まりさはきのこさんを食べて死ぬよ・・・・ まりさはそう考えていた。 二日後の朝 まりさは雪が降る大地に立っていた。 まりさの願いが神様にでも通じたのか、何十年に一度の異常気象が幻想郷を包み、 その異常気象が雪を降らせていたのだ。 ここまでまりさ一行は道にある食べ物を食べつつ進んでいった。 不平不満があったもののおかあさんを見つけてくれると勝手に思い込んだ子ゆっくりたちは 渋々まりさについていき、奇跡的にも誰一匹犠牲を出すことなく目的地にたどり着いた。 まりさは辺り一面に広がる雪に感動した。 死ぬまえにとてもゆっくりできる光景がみえたよ まりさはもう思い残すことはないよ、と 一方、赤ゆっくりと子ゆっくりは寒いと文句をいうものと初めて見る雪に興奮しているもののの半々だった。 「ゆう~~、まりさおねえちゃん!!!ここはゆっくりできないしさむいよ!!ゆっくりごはんをもってきてね!!」 「ゆわ~~、しろしろさん!!ゆっくりしていってね!!!」 まりさは雪を見れた感動の余韻に浸り、今なら楽になれると考え、ずっと帽子の中に入れていた 自決用のキノコを取り出し、食べようとしたが 「ゆ!!まりさおねあちゃん!!それはゆっくりできないキノコさんだよ!! はやくすててね!!」 賢い子ゆっくりに気づかれた 「ゆっくりとめないでね!!まりさはゆっくりできないきのこさんをたべていきるくるしさから かいほうされるんだよ!!!!」 とまりさは言うと子ゆっくりは 『どぼじでぞんなごどいうのぉぉぉ!!』 と叫んだ。 いままで苦楽を共にしたまりさが死ぬと言い出すのだから当然といえば当然だ。 だがまりさの方も早くこの苦しみから解放されたいという願望から口調がだんだん苛立ってきた。 「まりさははやくえいえんにゆっくりしたいんだよ!!ゆっくりじゃましないでね!!」 もちろんそんなことを許さない子ゆっくり達も 「だめだよ!!えいえんにゆっくりしちゃうなんていけないことなんだよ!!」 と必死にまりさのキノコを奪うなどして止めにかかる。 こんな問答が30分程延々と続き、ここでまりさの堪忍袋が切れた 「ゆぎゃぁぁ!!!ばやぐ!!ばやぐばりざをゆっぐりざぜでぇぇ!!」 そういうと、子ゆっくりたちは突如狂ったかのように叫んだまりさに驚いて静かになった。 「いい!!まりさははやくえいえんにゆっくりしてゆっくりしたいの!!! ”いきさつ”をせつめいするからじゃましないでね!!」 とここでここまでの経緯を赤裸々に語りだした。 特にお兄さんの三日殺しを受けた辺りから見せられたゆっくり関係の話、ビデオを これでもかというくらいに誇張しながら語りだした。 まだ純真な赤ゆっくりや、知識がまだ足りない子ゆっくりにはどれだけの衝撃だっただろうか。 どのゆっくりも涙としーしーを流しながらまりさの話を聞いていた。 話初めて1時間、ようやくまりさは話終えた。 まりさは非常にすっきりした顔になっていた。 いままでの苦労を全てぶちまけて、自分の邪魔をするゆっくり達に説明したことで もう邪魔しないだろうと考えたからだ。 話を聞いていたゆっくり達は全員涙を流しながら俯いていた。 中にはあまりの話に否定するために騒いだゆっくりもいたが、 まりさが根気よく教えていやいや理解した。 さて、ようやく永遠にゆっくりできるとまりさは近くに転がっていた毒キノコを食べようとしたが 「おねえちゃんのばか・・・・」 一匹の子ゆっくりが喋った。 どこか重みを感じる一言に、まりさはハッと子ゆっくりを振り返った。 「おねえちゃんのばか!!どぼじでつらいげんじつをびんなにじゃべっちゃうのぉぉ!!」 と叫んだ。 「おねえぢゃんのぜいでもうゆっぐりでぎなぐなっぢゃっだよぉぉぉ!!! おねえぢゃんのぜいだよ!!もうなにをやっだっでえいえいんにゆっぐりじじゃうぎょうふに びぐびぐじじゃうんよぉぉぉぉ!!!」 そう、まりさの話は子ゆっくりや赤ゆっくりの精神に深い傷を残す程深かった。あまりにも深かった。 もう少し成熟していればある程度は聞き流せただろうが、 親しかった者から突き付けられた現実は幼い精神力しか持たないゆっくり達には深すぎたのだ。 「おねえじゃんのばが!!でいぶはいぎるぎょうぶがらがいぼうざれるね!!!」 というと、辺りに転がっていた毒キノコを食べて死んだ。 これに続くように、他の赤ゆっくりや子ゆっくりは我先に毒キノコを食べ、死んでいった。 残ったのはまりさ一匹だけだった。 まりさはちびっこ達を死に追いやった自分の行動に深く後悔したが、 同時に自分の行動を邪魔するゆっくりがいなくなったことに喜んだ。 これで心おきなく永遠にゆっくりできるよ・・・ そう思い食いかけのキノコを食べようと口を開けたその時、偶然死んだゆっくりと目があった。 何も語りかけてこない筈の目が、まりさを恐怖に陥れた。 なんでまりさをみてるの・・ねえ、なんでみてるの!!そんな怖い顔でまりさを見ないで!! そんな絶望に染まりきった顔でまりさを見ないで!!!! こわい・・こわいよ・・やっぱり死ぬのはこわいよ!!! まりさは恐怖からキノコを置いてそのままいずこかへ走り去っていた。 死んだゆっくりたちは死してなおまりさを見つめていた。 まりさが走り去ったのはお兄さんに三日殺しをかけられてから73時間経過した頃だった。 所変わってお兄さんの家 「やっぱ思い込みが強いといっても限度があるか・・・」 お兄さんは野菜にかぶりついているゆっくり達を見ながらそう呟いた。 「やっぱり即潰すしかないかなぁ」 お兄さんは鍬を構え、ゆっくり達に近づいて行った。 それから、お兄さんの畑には黒色の肥料が混じるようになった。 このSSに感想をつける
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「けーねせんせー、さようならー!」 「またあしたねー!」 カァ、カァと群れなす烏が山へ戻る頃。 人里の寺子屋からも、授業から解き放たれた子供たちが喜び勇んで一斉に街中へと駆け出していく。 見送る先生は授業中とは打って変わった子らの笑顔が眩しくもあり、寂しくもあり。 「もう少し、楽しそうに勉強してくれたらな」 半年ほど前までいた、もう一匹のあの生徒みたいに。 今はもう見ることもないその生徒の存在を思い出してしまい、慧音の笑顔にさっと翳が差す。 「どうしたんだ、慧音?」 その表情の変遷を見ていたのか、見ていなかったか。 慧音の頭上に影が落ち、同時に気遣わしげな声が振ってきた。 聞きなれた声に顔を見上げれば、そこには違わず見慣れた姿が漂っている。 「妹紅、来たのか。いや、子供たちがきちんと家にまっすぐ帰るかどうか、見送っていたんだ」 まあ、考えごとに没頭していたにしてもそれ自体は嘘ではない。 慧音のことばに「そっか」と妹紅は頷いて、地上に降り立つと人気が消えて早くも空気が冷えてゆく寺子屋の中を見渡した。 以前なら、この頃を見計らって週に二度、三度と一匹の生徒がやってきた。 そのことを妹紅も覚えていたのだろう。「そういえば」と呟いて、教室へと向けていた視線を慧音へと向ける。 「前によく人目を忍んで来ていたゆっくりがいたよな。最近さっぱり見ないな」 「ああ。そのことなんだが……」 慧音は口ごもり、どこかが痛むような表情を作った。それはなんとも、説明しにくいことだ。 その反応に、妹紅の顔が曇る。不味いことを聞いたかと思いながら、沈黙を続かせるのもまた気まずいと思ったのだろう。 妹紅はとりあえず、そのまま会話を続けることを選んだらしい。一番可能性の高そうな不幸なできごとを口にした。 「……ここに通う途中に、事故か何かで死んでたのか?」 「いや。そういう訳じゃないんだ」 その問いには、慧音は違うと即答することが出来た。 というよりも、そうだったらまだよかった……と思わなくもない。慧音自身、不謹慎だと思う考えではあったが。 とはいえ、実際に起きたことはおそらくゆっくりにとってそれ以上に不幸な事態であったわけで。 「人……今回は人じゃなかったが、教えることは怖いなと。少し思っただけさ」 慧音の声に、少し自嘲の響きが混じった。 以前足しげく通っていたぱちゅりーは、実にいい生徒だった。 よく聞き、よく尋ね、よく考え、よく悩んだ。 ゆっくりの知性は、幼い子供によく似ている。成体でもそのレベルに留まるゆっくりは極めて多い。 だから慧音としても、子供たちを教える感覚で彼女にさまざまなことを教授することができた。 そして、一つだけ見落とした。 ぱちゅりーが何を求めて、人間――半獣半人の寺子屋の先生に、人間の歴史を簡単に教えて欲しいと頼み込んだのかを。 ぱちゅりーは、群れの指導者となることが多いゆっくりだ。 それが、人間の歴史――それも、途中からは幻想郷と枝分かれしてしまった、外の世界の歴史を学びたいなんて言い出したからには、 何かあると思ったほうが良かったのだろう。 とはいえ、まあ、しょせんゆっくりのやることだ。 何か裏があると気付いたとしても、それをいちいち気に留めたかどうかは、慧音自身にもわからないが。 今となっては、こう愚痴を零さざるを得ない。 「……なにも、一番の暗いところを模倣しなくても」 「……?」 戸惑いの目を向ける妹紅には敢えて応えることはなく、慧音は深々と白く煙る吐息を漏らすと共に、 もう群青に塗り替えられつつある東南の空を仰ぎ見た。 そして思う。 今から考えても、あのぱちゅりーは実にいい生徒だった。 慧音が噛み砕いて教えた外の世界の歴史を、ゆっくりなりに消化して結論と呼べるものを見出した。 ゆっくりがゆっくりするために、必要な方策を見つけたのだ。 ――ゆっくりがゆっくりするためには、てきとうなゆっくり種を他のみんなでゆっくりできないようにしたらいい。 そうしたら、少しごはんがたりなくても、少し暑かったり寒かったりしても。 そのゆっくり種を苛めている間は、みんな心はゆっくりできる。 それがぱちゅりーが慧音から教えてもらった人間の歴史の中に見つけた、ゆっくりが一番ゆっくりできる方法だった。 * * * やがて冬は既に北へと去り、生き物が待ち望んだ春が訪れたある日。 ぽいん、ぽゆん。ぽやん、ぽゆん。 聞きなれた奇怪な音がゆっくりと、リズミカルに、幾重にも重なって野山のあちこちに響いている。 冬篭りも終えて、冬を生き延びたゆっくりたちがまずは冬の節制でぎりぎりまで餓えた腹を一杯に満たすべく食料を求めて駆け巡る季節。 ただおうちの周りを散策するだけで好きなだけゆっくりできるはずの、ゆっくりたちにとって天国のような季節。 だというのに、この春はある一部の種のゆっくりにとっては、先の秋口に生まれた地獄の延長線に存在するものでしかなかった。 「こっちよ!」 「にげないでゆっくりしね!」 「レイパーは、どいつもこいつもおうじょうぎわわるいわね!」 地獄を演出するものたちは、初冬から変わらず青いリボンをつけたありす種と、月の帽子飾りをつけたまりさ種たちだった。 ゆーまにあの森の群れは、冬を越えて春に入っても平常運行だ。 それどころか、もとよりゆっくりたちに潜在化していたありす種への反感に乗って、同調する群れは各地にゆっくりと増えつつある。 つい先日も、ぶろんこが支配する群れがゆーまにあのドスの傘下に入ってありす種への迫害を強め出したという。 今、妖怪の山と正反対に位置する低山で行われている山狩りも、そうした動きの一貫に過ぎない。 それにしても、今随分前を逃げているありすは相当しぶといヤツだった。十数匹で追い回して、一向に追いつけないのだ。 というより、引っ張りまわされすぎて追っ手の方が今何処にいるのか自分の位置を失いつつある。 これでは相手を追い込むにも、適当な場所へ誘い込めない。 「……ゆゆっ。みんな、ちょっとまってね! このさきって、たしか」 この坂を上りきったら、そこに何が広がっていただろう。 追っ手――『ゆっくりたあて』の一匹が、めったに来ることのないこのあたりの知識を必死に引きずり出そうとする。 確か、追い込めそうな場所のはずだったのだが。 とはいえ、逃げる相手を追いかけている最中に「ちょっとまって」なんてできないわけで。 うろ覚えの記憶を探る間に急な斜面を必死にゆっくり登りきり、よれよれとへたりこみそうになる一同が見たものは。 「ゆひぃーっ、はぁーっ。ゆひぃーっ、ゆはぁー……あ?」 「ゆゆーっ!? ここはゆっくりできないよー!?」 見渡す限り一面に広がる、白く可憐な花の群生地。 小さな鈴を幾つも首にさげたようなその姿は、一見すればとてもかわいらしくて、ゆっくりできそうなものだった。 でも、それが絶対にゆっくりできないお花なのだということは、ろりすたちはとてもよく知っていた。 食べることどころか、触れることすらゆっくりにとっては命に関わる花畑。 その地を彩る花の名を、スズランという。 「……こっちにレイパーがきたはずなんだけど」 皆が一様に恐れて花畑に近づこうとはしないその中で。 リーダー格のろりすだけは、スズランに目を奪われることなく周囲の様子を探っていた。 この普通のゆっくりを拒むスズランの花畑の側に、姿が見えるゆっくりの数は二匹。 リーダーの言葉を耳にして、ようやくその存在に気付いたろりすとまりさたちが、今度は別の驚きでぎょっと身をすくませた。 「スー? ゆうか、しってる?」 「さあ、きにもしてないわ」 突然の闖入者を迎えて、だが先客の二匹は驚く様子も見せない。 ことに、めでぃすんの問いかけられたゆうかはろりすたちの方を見ようとする気配すらもなかった。 二匹とも、希少種である。ことに、ゆうかは多種のゆっくりと往々にして極めて関係が悪い。 ろりすたちもそれを知るから、その態度はなおのこと硬く、高圧的なものになる。 「かくすと、ためにならないわよ」 「どう、ためにならないのかしら?」 売り言葉に、買い言葉。 ゆうかとリーダー格のろりすの間の空間にさっとゆっくりできない気配が漲った。 ……もっとも、リーダー格以外のろりすやまりさたちは、どことなく乗り気ではない雰囲気を表情に漂わせているのだが。 「スゥ……ここはスーサンでいっぱいだよ。さがすならゆっくりさがすといいよ!」 「ゆゎっ、ゆっくりよらないでね!」 険悪な空気を仲裁するつもりだろうか。 一緒に探そうか、と無防備に近づくめでぃすんに『ゆっくりたあて』のまりさは慌てて近づかれた分後ろへと飛び退いた。 リーダー以外のろりすたちが気乗りしない様子を見せている理由が、まさにこれだった。 なにしろ、このめでぃすん種は触るだけで毒に冒されるという噂のある蠢く危険物だ。 人間の虐待愛好家もドMで苛め甲斐がないと評判のてんことならんで忌避する代物に、好んでお近づきになりたいと思うゆっくりなど、 幻想郷全土を探しても数えるほどしかいないだろう。 だが、そんな誰からも愛されない危険物である分、この鈴蘭に満ちた無名の丘でも不都合なく暮らせるという利点もあった。 こんな場所に長居出来るのは、中身が毒入り餡子だというこのめでぃすん種と、植物との親和性が高いゆうか種ぐらいのものだ。 仮にありす種がこの中に逃げ込んで、この二匹が庇っているのだとしても。 この二種が耐えられる環境だからといって、ありす種が無事に生きて戻れる道理は何一つない。 「おいかけなくてもだいじょうぶそうね」 「おはなさんがえいえんにゆっくりさせてくれるね」 追っ手のありすとまりさが、顔をつき合わせてぶつぶつと相談している。方向性は、すでにほぼ固まっているようだった。 リーダー格のろりすがその最中に刺すような一瞥をゆうかに向けたが、 その眼差しに気付いたゆうかが怯むこともなく真っ向からじろりとにらみ返すと、忌々しげに舌打ちしてすぐに目線を反らした。 結論が出たのは、それからすぐあとのことだった。 「……いくわよ」 リーダー格の指示が出るや、ろりすと飾り付きまりさの群れは一斉にこのゆっくりできない無名の丘から立ち去っていく。 正直なところ、スズランどれだけ近づくと危ないのか具体的なことまではわからない彼女たちは、生きた心地がしなかったのだろう。 リーダーの指示が出てから、数十匹はいた彼女たちの姿が完全に視界から消え去るまで、ゆっくりにしては驚くほどの速さでことが進んだ。 周囲に、もう一匹も闖入者たちの姿は見えない。 闖入者がいてもいなくても、ゆうかとめでぃすんは変わらずスズランの畑でゆっくりしていた。 ゆうかは草花が身近にあればそれで十分ゆっくりできるし、めでぃすんはスーサンの毒があればそれで十分ゆっくりできた。 そんなとてもゆっくりできるゆっくりプレイスにいるから、二匹は場に存在する気配が三匹分あっても気にしない。 二匹のゆっくりプレイスに、迫る死に怯えて逃げてきた闖入者が飛び込んできて勝手に隠れても、そんなものは知ったことではなかった。 「どうして、だまっていてくれたの?」 群生するスズランよりやや手前、普通の草が覆い茂った一角がわずかにあった。 声の主は、その中にある窪みに半身を埋め、息を殺してことの成り行きを窺っていたらしい。 自分はレイパーよばわりされてるありすなのに。心底不思議そうに尋ねる声の主に、ゆうかは小さく笑ってこう応じる。 「よわいものいじめには、きょうみないもの」 なるほど、と声の主――逃げていたありすは納得した。 ゆうかにとっては、例えありすがレイパーであったとしても『よわいもの』なのだ。だから、恐れるには足りない。 そして同時に、恐らくはろりすたちも群れるだけの『よわいもの』として映っているのだろう。 よわいもの同士の、よわいもの苛め。ゆうかにとってはつまらないことこの上ない演目に違いない。 その余裕が、逃亡ありすに対して寛容さとして顕れたのだろう。 その強さが、流されることのないあり方が、ありすにはとても羨ましく思えた。 「めでぃすんはゆっくりをかいほうするの!」 一方で、めでぃすんのいっていることは、いまいちわかりにくいけれど。 どうも、よわいものの味方だということらしい。しかしゆっくり解放とは大きく出たものだとありすは小さく笑った。 現実には、同じゆっくりからも敬遠されやすいめでぃすんはゆっくり解放どころか自分の解放から始めなくてはならなさそうだったが。 きっと、めでぃすんにはたいした問題ではないのだろう。 その寂しさが少しありすには気がかりで、だがやはりどこか羨ましく感じるところがあった。 まあ、なんにしても。 ありすは暫くぶりに、ずっと張りっぱなしだった気を抜いた。 ここには、ずっとありすを流し続けた嫌な流れがなかった。ありすはありすでいられるようだった。 二匹は流れを生み出さない。自分たちの在り様だけで超然としている。 それは他者と交わらない生き方だったが、今のありすはそれが一番心地よかった。 「しばらく、ゆっくりしていってもいい?」 もし、本当にゆっくりしたいなら、いつまでもこのゆっくりプレイスにはいられない。 尋ねながらそう気付く。 このゆっくりプレイスは、スズランの毒があるだけではない。孤独という、心の毒も孕んでいるから。 だが、それでもいいかとも思えた。 流されるまま、奪われるがままのゆん生よりは、その方が幾らかマシだとも思えた。 外に出れば、自分は自分でいられない。ありすが何であるかは、ありすが決めることではなくなってしまう。 ありす自身が例えなんであっても、そのありようは周囲が望む形に囚われてしまう。 それは、絶対に、嫌だった。 「「ゆっくりしていってね」」 ――ほら、孤独という安らぎは、こんなにも暖かい。 この閉じた空間で、わずかな付き合いだけを世界の全てにして、時に寂しさを覚えつつ一人きりで暮らす以上の幸福は、 外の世界に出てしまえば決して望めないじゃないか。 幻想郷という世界は、ありす種を即ちレイパーだと定めたのだから。 * * * ありす種は、レイパーだ。 ありす種として生れ落ちたゆっくりは、ごく一部の例外を除いて先天的なレイパーだ。 そしてその残ったごく一部の例外は、優秀なありすハンターになるのだ。ゆーまにあのドスのもとで。 幻想郷に生まれた『常識』は、それまでのレイパー被害という実績に基き急速に人と、ゆっくりの間に根付いていった。 その『常識』を裏打ちする数字は、どこにも存在しない。 存在しないし、必要ともされなかった。 レイパーの源であるありすを排除してしまえば、多かれ少なかれその被害もなくなるのだ。 そのひどく乱暴で簡単な理屈は、頭のつくりが粗雑なゆっくりにはとても受け入れやすかった。 ありすは、ありすという種は、もういかなる形であれゆっくりを手に入れることは未来永劫できない。 ありすがゆっくりの社会の中で生まれ、暮らす限りにおいて、ゆっくりできることは絶対にない。 流れのレイパーか、他にゆっくりのいないどこかに隠れ住まない限り、孤独を貫かない限り、ゆっくりを手に入れることは出来ないのだ。 ――果たして、そうまでして手に入れたものが真にゆっくりと呼べるものになるのか。 ゆん生の終わりに、しあわせー♪を感じて全うすることが出来るものになるのか。 それは、相当に疑わしかったのだけれど。 _______________________________________________ ありすとまりさは金髪のザコだと気が付いたら、ぶろんこさんを出したくてたまらなくなった。 ゆっくりたあて他のゆーまにあネタはほぼ枢軸・共産時代のルーマニアが元ネタ。なので東のドスはソ連相当。 ちなみにゆっくりたあての元ネタは「セクリタアテ」という、孤児集めて作り上げた秘密警察だったり。
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「けーねせんせー、さようならー!」 「またあしたねー!」 カァ、カァと群れなす烏が山へ戻る頃。 人里の寺子屋からも、授業から解き放たれた子供たちが喜び勇んで一斉に街中へと駆け出していく。 見送る先生は授業中とは打って変わった子らの笑顔が眩しくもあり、寂しくもあり。 「もう少し、楽しそうに勉強してくれたらな」 半年ほど前までいた、もう一匹のあの生徒みたいに。 今はもう見ることもないその生徒の存在を思い出してしまい、慧音の笑顔にさっと翳が差す。 「どうしたんだ、慧音?」 その表情の変遷を見ていたのか、見ていなかったか。 慧音の頭上に影が落ち、同時に気遣わしげな声が振ってきた。 聞きなれた声に顔を見上げれば、そこには違わず見慣れた姿が漂っている。 「妹紅、来たのか。いや、子供たちがきちんと家にまっすぐ帰るかどうか、見送っていたんだ」 まあ、考えごとに没頭していたにしてもそれ自体は嘘ではない。 慧音のことばに「そっか」と妹紅は頷いて、地上に降り立つと人気が消えて早くも空気が冷えてゆく寺子屋の中を見渡した。 以前なら、この頃を見計らって週に二度、三度と一匹の生徒がやってきた。 そのことを妹紅も覚えていたのだろう。「そういえば」と呟いて、教室へと向けていた視線を慧音へと向ける。 「前によく人目を忍んで来ていたゆっくりがいたよな。最近さっぱり見ないな」 「ああ。そのことなんだが……」 慧音は口ごもり、どこかが痛むような表情を作った。それはなんとも、説明しにくいことだ。 その反応に、妹紅の顔が曇る。不味いことを聞いたかと思いながら、沈黙を続かせるのもまた気まずいと思ったのだろう。 妹紅はとりあえず、そのまま会話を続けることを選んだらしい。一番可能性の高そうな不幸なできごとを口にした。 「……ここに通う途中に、事故か何かで死んでたのか?」 「いや。そういう訳じゃないんだ」 その問いには、慧音は違うと即答することが出来た。 というよりも、そうだったらまだよかった……と思わなくもない。慧音自身、不謹慎だと思う考えではあったが。 とはいえ、実際に起きたことはおそらくゆっくりにとってそれ以上に不幸な事態であったわけで。 「人……今回は人じゃなかったが、教えることは怖いなと。少し思っただけさ」 慧音の声に、少し自嘲の響きが混じった。 以前足しげく通っていたぱちゅりーは、実にいい生徒だった。 よく聞き、よく尋ね、よく考え、よく悩んだ。 ゆっくりの知性は、幼い子供によく似ている。成体でもそのレベルに留まるゆっくりは極めて多い。 だから慧音としても、子供たちを教える感覚で彼女にさまざまなことを教授することができた。 そして、一つだけ見落とした。 ぱちゅりーが何を求めて、人間――半獣半人の寺子屋の先生に、人間の歴史を簡単に教えて欲しいと頼み込んだのかを。 ぱちゅりーは、群れの指導者となることが多いゆっくりだ。 それが、人間の歴史――それも、途中からは幻想郷と枝分かれしてしまった、外の世界の歴史を学びたいなんて言い出したからには、 何かあると思ったほうが良かったのだろう。 とはいえ、まあ、しょせんゆっくりのやることだ。 何か裏があると気付いたとしても、それをいちいち気に留めたかどうかは、慧音自身にもわからないが。 今となっては、こう愚痴を零さざるを得ない。 「……なにも、一番の暗いところを模倣しなくても」 「……?」 戸惑いの目を向ける妹紅には敢えて応えることはなく、慧音は深々と白く煙る吐息を漏らすと共に、 もう群青に塗り替えられつつある東南の空を仰ぎ見た。 そして思う。 今から考えても、あのぱちゅりーは実にいい生徒だった。 慧音が噛み砕いて教えた外の世界の歴史を、ゆっくりなりに消化して結論と呼べるものを見出した。 ゆっくりがゆっくりするために、必要な方策を見つけたのだ。 ――ゆっくりがゆっくりするためには、てきとうなゆっくり種を他のみんなでゆっくりできないようにしたらいい。 そうしたら、少しごはんがたりなくても、少し暑かったり寒かったりしても。 そのゆっくり種を苛めている間は、みんな心はゆっくりできる。 それがぱちゅりーが慧音から教えてもらった人間の歴史の中に見つけた、ゆっくりが一番ゆっくりできる方法だった。 * * * やがて冬は既に北へと去り、生き物が待ち望んだ春が訪れたある日。 ぽいん、ぽゆん。ぽやん、ぽゆん。 聞きなれた奇怪な音がゆっくりと、リズミカルに、幾重にも重なって野山のあちこちに響いている。 冬篭りも終えて、冬を生き延びたゆっくりたちがまずは冬の節制でぎりぎりまで餓えた腹を一杯に満たすべく食料を求めて駆け巡る季節。 ただおうちの周りを散策するだけで好きなだけゆっくりできるはずの、ゆっくりたちにとって天国のような季節。 だというのに、この春はある一部の種のゆっくりにとっては、先の秋口に生まれた地獄の延長線に存在するものでしかなかった。 「こっちよ!」 「にげないでゆっくりしね!」 「レイパーは、どいつもこいつもおうじょうぎわわるいわね!」 地獄を演出するものたちは、初冬から変わらず青いリボンをつけたありす種と、月の帽子飾りをつけたまりさ種たちだった。 ゆーまにあの森の群れは、冬を越えて春に入っても平常運行だ。 それどころか、もとよりゆっくりたちに潜在化していたありす種への反感に乗って、同調する群れは各地にゆっくりと増えつつある。 つい先日も、ぶろんこが支配する群れがゆーまにあのドスの傘下に入ってありす種への迫害を強め出したという。 今、妖怪の山と正反対に位置する低山で行われている山狩りも、そうした動きの一貫に過ぎない。 それにしても、今随分前を逃げているありすは相当しぶといヤツだった。十数匹で追い回して、一向に追いつけないのだ。 というより、引っ張りまわされすぎて追っ手の方が今何処にいるのか自分の位置を失いつつある。 これでは相手を追い込むにも、適当な場所へ誘い込めない。 「……ゆゆっ。みんな、ちょっとまってね! このさきって、たしか」 この坂を上りきったら、そこに何が広がっていただろう。 追っ手――『ゆっくりたあて』の一匹が、めったに来ることのないこのあたりの知識を必死に引きずり出そうとする。 確か、追い込めそうな場所のはずだったのだが。 とはいえ、逃げる相手を追いかけている最中に「ちょっとまって」なんてできないわけで。 うろ覚えの記憶を探る間に急な斜面を必死にゆっくり登りきり、よれよれとへたりこみそうになる一同が見たものは。 「ゆひぃーっ、はぁーっ。ゆひぃーっ、ゆはぁー……あ?」 「ゆゆーっ!? ここはゆっくりできないよー!?」 見渡す限り一面に広がる、白く可憐な花の群生地。 小さな鈴を幾つも首にさげたようなその姿は、一見すればとてもかわいらしくて、ゆっくりできそうなものだった。 でも、それが絶対にゆっくりできないお花なのだということは、ろりすたちはとてもよく知っていた。 食べることどころか、触れることすらゆっくりにとっては命に関わる花畑。 その地を彩る花の名を、スズランという。 「……こっちにレイパーがきたはずなんだけど」 皆が一様に恐れて花畑に近づこうとはしないその中で。 リーダー格のろりすだけは、スズランに目を奪われることなく周囲の様子を探っていた。 この普通のゆっくりを拒むスズランの花畑の側に、姿が見えるゆっくりの数は二匹。 リーダーの言葉を耳にして、ようやくその存在に気付いたろりすとまりさたちが、今度は別の驚きでぎょっと身をすくませた。 「スー? ゆうか、しってる?」 「さあ、きにもしてないわ」 突然の闖入者を迎えて、だが先客の二匹は驚く様子も見せない。 ことに、めでぃすんの問いかけられたゆうかはろりすたちの方を見ようとする気配すらもなかった。 二匹とも、希少種である。ことに、ゆうかは多種のゆっくりと往々にして極めて関係が悪い。 ろりすたちもそれを知るから、その態度はなおのこと硬く、高圧的なものになる。 「かくすと、ためにならないわよ」 「どう、ためにならないのかしら?」 売り言葉に、買い言葉。 ゆうかとリーダー格のろりすの間の空間にさっとゆっくりできない気配が漲った。 ……もっとも、リーダー格以外のろりすやまりさたちは、どことなく乗り気ではない雰囲気を表情に漂わせているのだが。 「スゥ……ここはスーサンでいっぱいだよ。さがすならゆっくりさがすといいよ!」 「ゆゎっ、ゆっくりよらないでね!」 険悪な空気を仲裁するつもりだろうか。 一緒に探そうか、と無防備に近づくめでぃすんに『ゆっくりたあて』のまりさは慌てて近づかれた分後ろへと飛び退いた。 リーダー以外のろりすたちが気乗りしない様子を見せている理由が、まさにこれだった。 なにしろ、このめでぃすん種は触るだけで毒に冒されるという噂のある蠢く危険物だ。 人間の虐待愛好家もドMで苛め甲斐がないと評判のてんことならんで忌避する代物に、好んでお近づきになりたいと思うゆっくりなど、 幻想郷全土を探しても数えるほどしかいないだろう。 だが、そんな誰からも愛されない危険物である分、この鈴蘭に満ちた無名の丘でも不都合なく暮らせるという利点もあった。 こんな場所に長居出来るのは、中身が毒入り餡子だというこのめでぃすん種と、植物との親和性が高いゆうか種ぐらいのものだ。 仮にありす種がこの中に逃げ込んで、この二匹が庇っているのだとしても。 この二種が耐えられる環境だからといって、ありす種が無事に生きて戻れる道理は何一つない。 「おいかけなくてもだいじょうぶそうね」 「おはなさんがえいえんにゆっくりさせてくれるね」 追っ手のありすとまりさが、顔をつき合わせてぶつぶつと相談している。方向性は、すでにほぼ固まっているようだった。 リーダー格のろりすがその最中に刺すような一瞥をゆうかに向けたが、 その眼差しに気付いたゆうかが怯むこともなく真っ向からじろりとにらみ返すと、忌々しげに舌打ちしてすぐに目線を反らした。 結論が出たのは、それからすぐあとのことだった。 「……いくわよ」 リーダー格の指示が出るや、ろりすと飾り付きまりさの群れは一斉にこのゆっくりできない無名の丘から立ち去っていく。 正直なところ、スズランどれだけ近づくと危ないのか具体的なことまではわからない彼女たちは、生きた心地がしなかったのだろう。 リーダーの指示が出てから、数十匹はいた彼女たちの姿が完全に視界から消え去るまで、ゆっくりにしては驚くほどの速さでことが進んだ。 周囲に、もう一匹も闖入者たちの姿は見えない。 闖入者がいてもいなくても、ゆうかとめでぃすんは変わらずスズランの畑でゆっくりしていた。 ゆうかは草花が身近にあればそれで十分ゆっくりできるし、めでぃすんはスーサンの毒があればそれで十分ゆっくりできた。 そんなとてもゆっくりできるゆっくりプレイスにいるから、二匹は場に存在する気配が三匹分あっても気にしない。 二匹のゆっくりプレイスに、迫る死に怯えて逃げてきた闖入者が飛び込んできて勝手に隠れても、そんなものは知ったことではなかった。 「どうして、だまっていてくれたの?」 群生するスズランよりやや手前、普通の草が覆い茂った一角がわずかにあった。 声の主は、その中にある窪みに半身を埋め、息を殺してことの成り行きを窺っていたらしい。 自分はレイパーよばわりされてるありすなのに。心底不思議そうに尋ねる声の主に、ゆうかは小さく笑ってこう応じる。 「よわいものいじめには、きょうみないもの」 なるほど、と声の主――逃げていたありすは納得した。 ゆうかにとっては、例えありすがレイパーであったとしても『よわいもの』なのだ。だから、恐れるには足りない。 そして同時に、恐らくはろりすたちも群れるだけの『よわいもの』として映っているのだろう。 よわいもの同士の、よわいもの苛め。ゆうかにとってはつまらないことこの上ない演目に違いない。 その余裕が、逃亡ありすに対して寛容さとして顕れたのだろう。 その強さが、流されることのないあり方が、ありすにはとても羨ましく思えた。 「めでぃすんはゆっくりをかいほうするの!」 一方で、めでぃすんのいっていることは、いまいちわかりにくいけれど。 どうも、よわいものの味方だということらしい。しかしゆっくり解放とは大きく出たものだとありすは小さく笑った。 現実には、同じゆっくりからも敬遠されやすいめでぃすんはゆっくり解放どころか自分の解放から始めなくてはならなさそうだったが。 きっと、めでぃすんにはたいした問題ではないのだろう。 その寂しさが少しありすには気がかりで、だがやはりどこか羨ましく感じるところがあった。 まあ、なんにしても。 ありすは暫くぶりに、ずっと張りっぱなしだった気を抜いた。 ここには、ずっとありすを流し続けた嫌な流れがなかった。ありすはありすでいられるようだった。 二匹は流れを生み出さない。自分たちの在り様だけで超然としている。 それは他者と交わらない生き方だったが、今のありすはそれが一番心地よかった。 「しばらく、ゆっくりしていってもいい?」 もし、本当にゆっくりしたいなら、いつまでもこのゆっくりプレイスにはいられない。 尋ねながらそう気付く。 このゆっくりプレイスは、スズランの毒があるだけではない。孤独という、心の毒も孕んでいるから。 だが、それでもいいかとも思えた。 流されるまま、奪われるがままのゆん生よりは、その方が幾らかマシだとも思えた。 外に出れば、自分は自分でいられない。ありすが何であるかは、ありすが決めることではなくなってしまう。 ありす自身が例えなんであっても、そのありようは周囲が望む形に囚われてしまう。 それは、絶対に、嫌だった。 「「ゆっくりしていってね」」 ――ほら、孤独という安らぎは、こんなにも暖かい。 この閉じた空間で、わずかな付き合いだけを世界の全てにして、時に寂しさを覚えつつ一人きりで暮らす以上の幸福は、 外の世界に出てしまえば決して望めないじゃないか。 幻想郷という世界は、ありす種を即ちレイパーだと定めたのだから。 * * * ありす種は、レイパーだ。 ありす種として生れ落ちたゆっくりは、ごく一部の例外を除いて先天的なレイパーだ。 そしてその残ったごく一部の例外は、優秀なありすハンターになるのだ。ゆーまにあのドスのもとで。 幻想郷に生まれた『常識』は、それまでのレイパー被害という実績に基き急速に人と、ゆっくりの間に根付いていった。 その『常識』を裏打ちする数字は、どこにも存在しない。 存在しないし、必要ともされなかった。 レイパーの源であるありすを排除してしまえば、多かれ少なかれその被害もなくなるのだ。 そのひどく乱暴で簡単な理屈は、頭のつくりが粗雑なゆっくりにはとても受け入れやすかった。 ありすは、ありすという種は、もういかなる形であれゆっくりを手に入れることは未来永劫できない。 ありすがゆっくりの社会の中で生まれ、暮らす限りにおいて、ゆっくりできることは絶対にない。 流れのレイパーか、他にゆっくりのいないどこかに隠れ住まない限り、孤独を貫かない限り、ゆっくりを手に入れることは出来ないのだ。 ――果たして、そうまでして手に入れたものが真にゆっくりと呼べるものになるのか。 ゆん生の終わりに、しあわせー♪を感じて全うすることが出来るものになるのか。 それは、相当に疑わしかったのだけれど。 _______________________________________________ ありすとまりさは金髪のザコだと気が付いたら、ぶろんこさんを出したくてたまらなくなった。 ゆっくりたあて他のゆーまにあネタはほぼ枢軸・共産時代のルーマニアが元ネタ。なので東のドスはソ連相当。 ちなみにゆっくりたあての元ネタは「セクリタアテ」という、孤児集めて作り上げた秘密警察だったり。
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「けーねせんせー、さようならー!」 「またあしたねー!」 カァ、カァと群れなす烏が山へ戻る頃。 人里の寺子屋からも、授業から解き放たれた子供たちが喜び勇んで一斉に街中へと駆け出していく。 見送る先生は授業中とは打って変わった子らの笑顔が眩しくもあり、寂しくもあり。 「もう少し、楽しそうに勉強してくれたらな」 半年ほど前までいた、もう一匹のあの生徒みたいに。 今はもう見ることもないその生徒の存在を思い出してしまい、慧音の笑顔にさっと翳が差す。 「どうしたんだ、慧音?」 その表情の変遷を見ていたのか、見ていなかったか。 慧音の頭上に影が落ち、同時に気遣わしげな声が振ってきた。 聞きなれた声に顔を見上げれば、そこには違わず見慣れた姿が漂っている。 「妹紅、来たのか。いや、子供たちがきちんと家にまっすぐ帰るかどうか、見送っていたんだ」 まあ、考えごとに没頭していたにしてもそれ自体は嘘ではない。 慧音のことばに「そっか」と妹紅は頷いて、地上に降り立つと人気が消えて早くも空気が冷えてゆく寺子屋の中を見渡した。 以前なら、この頃を見計らって週に二度、三度と一匹の生徒がやってきた。 そのことを妹紅も覚えていたのだろう。「そういえば」と呟いて、教室へと向けていた視線を慧音へと向ける。 「前によく人目を忍んで来ていたゆっくりがいたよな。最近さっぱり見ないな」 「ああ。そのことなんだが……」 慧音は口ごもり、どこかが痛むような表情を作った。それはなんとも、説明しにくいことだ。 その反応に、妹紅の顔が曇る。不味いことを聞いたかと思いながら、沈黙を続かせるのもまた気まずいと思ったのだろう。 妹紅はとりあえず、そのまま会話を続けることを選んだらしい。一番可能性の高そうな不幸なできごとを口にした。 「……ここに通う途中に、事故か何かで死んでたのか?」 「いや。そういう訳じゃないんだ」 その問いには、慧音は違うと即答することが出来た。 というよりも、そうだったらまだよかった……と思わなくもない。慧音自身、不謹慎だと思う考えではあったが。 とはいえ、実際に起きたことはおそらくゆっくりにとってそれ以上に不幸な事態であったわけで。 「人……今回は人じゃなかったが、教えることは怖いなと。少し思っただけさ」 慧音の声に、少し自嘲の響きが混じった。 以前足しげく通っていたぱちゅりーは、実にいい生徒だった。 よく聞き、よく尋ね、よく考え、よく悩んだ。 ゆっくりの知性は、幼い子供によく似ている。成体でもそのレベルに留まるゆっくりは極めて多い。 だから慧音としても、子供たちを教える感覚で彼女にさまざまなことを教授することができた。 そして、一つだけ見落とした。 ぱちゅりーが何を求めて、人間――半獣半人の寺子屋の先生に、人間の歴史を簡単に教えて欲しいと頼み込んだのかを。 ぱちゅりーは、群れの指導者となることが多いゆっくりだ。 それが、人間の歴史――それも、途中からは幻想郷と枝分かれしてしまった、外の世界の歴史を学びたいなんて言い出したからには、 何かあると思ったほうが良かったのだろう。 とはいえ、まあ、しょせんゆっくりのやることだ。 何か裏があると気付いたとしても、それをいちいち気に留めたかどうかは、慧音自身にもわからないが。 今となっては、こう愚痴を零さざるを得ない。 「……なにも、一番の暗いところを模倣しなくても」 「……?」 戸惑いの目を向ける妹紅には敢えて応えることはなく、慧音は深々と白く煙る吐息を漏らすと共に、 もう群青に塗り替えられつつある東南の空を仰ぎ見た。 そして思う。 今から考えても、あのぱちゅりーは実にいい生徒だった。 慧音が噛み砕いて教えた外の世界の歴史を、ゆっくりなりに消化して結論と呼べるものを見出した。 ゆっくりがゆっくりするために、必要な方策を見つけたのだ。 ――ゆっくりがゆっくりするためには、てきとうなゆっくり種を他のみんなでゆっくりできないようにしたらいい。 そうしたら、少しごはんがたりなくても、少し暑かったり寒かったりしても。 そのゆっくり種を苛めている間は、みんな心はゆっくりできる。 それがぱちゅりーが慧音から教えてもらった人間の歴史の中に見つけた、ゆっくりが一番ゆっくりできる方法だった。 * * * やがて冬は既に北へと去り、生き物が待ち望んだ春が訪れたある日。 ぽいん、ぽゆん。ぽやん、ぽゆん。 聞きなれた奇怪な音がゆっくりと、リズミカルに、幾重にも重なって野山のあちこちに響いている。 冬篭りも終えて、冬を生き延びたゆっくりたちがまずは冬の節制でぎりぎりまで餓えた腹を一杯に満たすべく食料を求めて駆け巡る季節。 ただおうちの周りを散策するだけで好きなだけゆっくりできるはずの、ゆっくりたちにとって天国のような季節。 だというのに、この春はある一部の種のゆっくりにとっては、先の秋口に生まれた地獄の延長線に存在するものでしかなかった。 「こっちよ!」 「にげないでゆっくりしね!」 「レイパーは、どいつもこいつもおうじょうぎわわるいわね!」 地獄を演出するものたちは、初冬から変わらず青いリボンをつけたありす種と、月の帽子飾りをつけたまりさ種たちだった。 ゆーまにあの森の群れは、冬を越えて春に入っても平常運行だ。 それどころか、もとよりゆっくりたちに潜在化していたありす種への反感に乗って、同調する群れは各地にゆっくりと増えつつある。 つい先日も、ぶろんこが支配する群れがゆーまにあのドスの傘下に入ってありす種への迫害を強め出したという。 今、妖怪の山と正反対に位置する低山で行われている山狩りも、そうした動きの一貫に過ぎない。 それにしても、今随分前を逃げているありすは相当しぶといヤツだった。十数匹で追い回して、一向に追いつけないのだ。 というより、引っ張りまわされすぎて追っ手の方が今何処にいるのか自分の位置を失いつつある。 これでは相手を追い込むにも、適当な場所へ誘い込めない。 「……ゆゆっ。みんな、ちょっとまってね! このさきって、たしか」 この坂を上りきったら、そこに何が広がっていただろう。 追っ手――『ゆっくりたあて』の一匹が、めったに来ることのないこのあたりの知識を必死に引きずり出そうとする。 確か、追い込めそうな場所のはずだったのだが。 とはいえ、逃げる相手を追いかけている最中に「ちょっとまって」なんてできないわけで。 うろ覚えの記憶を探る間に急な斜面を必死にゆっくり登りきり、よれよれとへたりこみそうになる一同が見たものは。 「ゆひぃーっ、はぁーっ。ゆひぃーっ、ゆはぁー……あ?」 「ゆゆーっ!? ここはゆっくりできないよー!?」 見渡す限り一面に広がる、白く可憐な花の群生地。 小さな鈴を幾つも首にさげたようなその姿は、一見すればとてもかわいらしくて、ゆっくりできそうなものだった。 でも、それが絶対にゆっくりできないお花なのだということは、ろりすたちはとてもよく知っていた。 食べることどころか、触れることすらゆっくりにとっては命に関わる花畑。 その地を彩る花の名を、スズランという。 「……こっちにレイパーがきたはずなんだけど」 皆が一様に恐れて花畑に近づこうとはしないその中で。 リーダー格のろりすだけは、スズランに目を奪われることなく周囲の様子を探っていた。 この普通のゆっくりを拒むスズランの花畑の側に、姿が見えるゆっくりの数は二匹。 リーダーの言葉を耳にして、ようやくその存在に気付いたろりすとまりさたちが、今度は別の驚きでぎょっと身をすくませた。 「スー? ゆうか、しってる?」 「さあ、きにもしてないわ」 突然の闖入者を迎えて、だが先客の二匹は驚く様子も見せない。 ことに、めでぃすんの問いかけられたゆうかはろりすたちの方を見ようとする気配すらもなかった。 二匹とも、希少種である。ことに、ゆうかは多種のゆっくりと往々にして極めて関係が悪い。 ろりすたちもそれを知るから、その態度はなおのこと硬く、高圧的なものになる。 「かくすと、ためにならないわよ」 「どう、ためにならないのかしら?」 売り言葉に、買い言葉。 ゆうかとリーダー格のろりすの間の空間にさっとゆっくりできない気配が漲った。 ……もっとも、リーダー格以外のろりすやまりさたちは、どことなく乗り気ではない雰囲気を表情に漂わせているのだが。 「スゥ……ここはスーサンでいっぱいだよ。さがすならゆっくりさがすといいよ!」 「ゆゎっ、ゆっくりよらないでね!」 険悪な空気を仲裁するつもりだろうか。 一緒に探そうか、と無防備に近づくめでぃすんに『ゆっくりたあて』のまりさは慌てて近づかれた分後ろへと飛び退いた。 リーダー以外のろりすたちが気乗りしない様子を見せている理由が、まさにこれだった。 なにしろ、このめでぃすん種は触るだけで毒に冒されるという噂のある蠢く危険物だ。 人間の虐待愛好家もドMで苛め甲斐がないと評判のてんことならんで忌避する代物に、好んでお近づきになりたいと思うゆっくりなど、 幻想郷全土を探しても数えるほどしかいないだろう。 だが、そんな誰からも愛されない危険物である分、この鈴蘭に満ちた無名の丘でも不都合なく暮らせるという利点もあった。 こんな場所に長居出来るのは、中身が毒入り餡子だというこのめでぃすん種と、植物との親和性が高いゆうか種ぐらいのものだ。 仮にありす種がこの中に逃げ込んで、この二匹が庇っているのだとしても。 この二種が耐えられる環境だからといって、ありす種が無事に生きて戻れる道理は何一つない。 「おいかけなくてもだいじょうぶそうね」 「おはなさんがえいえんにゆっくりさせてくれるね」 追っ手のありすとまりさが、顔をつき合わせてぶつぶつと相談している。方向性は、すでにほぼ固まっているようだった。 リーダー格のろりすがその最中に刺すような一瞥をゆうかに向けたが、 その眼差しに気付いたゆうかが怯むこともなく真っ向からじろりとにらみ返すと、忌々しげに舌打ちしてすぐに目線を反らした。 結論が出たのは、それからすぐあとのことだった。 「……いくわよ」 リーダー格の指示が出るや、ろりすと飾り付きまりさの群れは一斉にこのゆっくりできない無名の丘から立ち去っていく。 正直なところ、スズランどれだけ近づくと危ないのか具体的なことまではわからない彼女たちは、生きた心地がしなかったのだろう。 リーダーの指示が出てから、数十匹はいた彼女たちの姿が完全に視界から消え去るまで、ゆっくりにしては驚くほどの速さでことが進んだ。 周囲に、もう一匹も闖入者たちの姿は見えない。 闖入者がいてもいなくても、ゆうかとめでぃすんは変わらずスズランの畑でゆっくりしていた。 ゆうかは草花が身近にあればそれで十分ゆっくりできるし、めでぃすんはスーサンの毒があればそれで十分ゆっくりできた。 そんなとてもゆっくりできるゆっくりプレイスにいるから、二匹は場に存在する気配が三匹分あっても気にしない。 二匹のゆっくりプレイスに、迫る死に怯えて逃げてきた闖入者が飛び込んできて勝手に隠れても、そんなものは知ったことではなかった。 「どうして、だまっていてくれたの?」 群生するスズランよりやや手前、普通の草が覆い茂った一角がわずかにあった。 声の主は、その中にある窪みに半身を埋め、息を殺してことの成り行きを窺っていたらしい。 自分はレイパーよばわりされてるありすなのに。心底不思議そうに尋ねる声の主に、ゆうかは小さく笑ってこう応じる。 「よわいものいじめには、きょうみないもの」 なるほど、と声の主――逃げていたありすは納得した。 ゆうかにとっては、例えありすがレイパーであったとしても『よわいもの』なのだ。だから、恐れるには足りない。 そして同時に、恐らくはろりすたちも群れるだけの『よわいもの』として映っているのだろう。 よわいもの同士の、よわいもの苛め。ゆうかにとってはつまらないことこの上ない演目に違いない。 その余裕が、逃亡ありすに対して寛容さとして顕れたのだろう。 その強さが、流されることのないあり方が、ありすにはとても羨ましく思えた。 「めでぃすんはゆっくりをかいほうするの!」 一方で、めでぃすんのいっていることは、いまいちわかりにくいけれど。 どうも、よわいものの味方だということらしい。しかしゆっくり解放とは大きく出たものだとありすは小さく笑った。 現実には、同じゆっくりからも敬遠されやすいめでぃすんはゆっくり解放どころか自分の解放から始めなくてはならなさそうだったが。 きっと、めでぃすんにはたいした問題ではないのだろう。 その寂しさが少しありすには気がかりで、だがやはりどこか羨ましく感じるところがあった。 まあ、なんにしても。 ありすは暫くぶりに、ずっと張りっぱなしだった気を抜いた。 ここには、ずっとありすを流し続けた嫌な流れがなかった。ありすはありすでいられるようだった。 二匹は流れを生み出さない。自分たちの在り様だけで超然としている。 それは他者と交わらない生き方だったが、今のありすはそれが一番心地よかった。 「しばらく、ゆっくりしていってもいい?」 もし、本当にゆっくりしたいなら、いつまでもこのゆっくりプレイスにはいられない。 尋ねながらそう気付く。 このゆっくりプレイスは、スズランの毒があるだけではない。孤独という、心の毒も孕んでいるから。 だが、それでもいいかとも思えた。 流されるまま、奪われるがままのゆん生よりは、その方が幾らかマシだとも思えた。 外に出れば、自分は自分でいられない。ありすが何であるかは、ありすが決めることではなくなってしまう。 ありす自身が例えなんであっても、そのありようは周囲が望む形に囚われてしまう。 それは、絶対に、嫌だった。 「「ゆっくりしていってね」」 ――ほら、孤独という安らぎは、こんなにも暖かい。 この閉じた空間で、わずかな付き合いだけを世界の全てにして、時に寂しさを覚えつつ一人きりで暮らす以上の幸福は、 外の世界に出てしまえば決して望めないじゃないか。 幻想郷という世界は、ありす種を即ちレイパーだと定めたのだから。 * * * ありす種は、レイパーだ。 ありす種として生れ落ちたゆっくりは、ごく一部の例外を除いて先天的なレイパーだ。 そしてその残ったごく一部の例外は、優秀なありすハンターになるのだ。ゆーまにあのドスのもとで。 幻想郷に生まれた『常識』は、それまでのレイパー被害という実績に基き急速に人と、ゆっくりの間に根付いていった。 その『常識』を裏打ちする数字は、どこにも存在しない。 存在しないし、必要ともされなかった。 レイパーの源であるありすを排除してしまえば、多かれ少なかれその被害もなくなるのだ。 そのひどく乱暴で簡単な理屈は、頭のつくりが粗雑なゆっくりにはとても受け入れやすかった。 ありすは、ありすという種は、もういかなる形であれゆっくりを手に入れることは未来永劫できない。 ありすがゆっくりの社会の中で生まれ、暮らす限りにおいて、ゆっくりできることは絶対にない。 流れのレイパーか、他にゆっくりのいないどこかに隠れ住まない限り、孤独を貫かない限り、ゆっくりを手に入れることは出来ないのだ。 ――果たして、そうまでして手に入れたものが真にゆっくりと呼べるものになるのか。 ゆん生の終わりに、しあわせー♪を感じて全うすることが出来るものになるのか。 それは、相当に疑わしかったのだけれど。 _______________________________________________ ありすとまりさは金髪のザコだと気が付いたら、ぶろんこさんを出したくてたまらなくなった。 ゆっくりたあて他のゆーまにあネタはほぼ枢軸・共産時代のルーマニアが元ネタ。なので東のドスはソ連相当。 ちなみにゆっくりたあての元ネタは「セクリタアテ」という、孤児集めて作り上げた秘密警察だったり。
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ゆっくり命令していってね!(後) 66KB 虐待-凄惨 観察 理不尽 実験・改造 共食い ツガイ 赤子・子供 現代 チート 『ゆっくり命令していってね!』 ※ただひたすら、ゆっくりにチートっぽいアイテムで実験をする話です 山の中腹にある見晴らしのいい場所に、使われなくなって久しいログハウスがある。その近くにゆっくりの家族がいた。 数は二つだ。まりさとれいむの家族が一つ。まりさとありすの家族が一つ。 二匹のまりさは実の姉妹である。ありすの番のまりさの方が、ほんの少しだけ年上だ。 この二組の家族は巣穴がお隣同士だったのもあって、とても仲良く付き合っている。 今日もこうして、子どもたちを連れて一緒にピクニックに来たくらいだ。 「ゆっ♪ゆっゆゆゆっゆっゆっ♪ゆっ♪ゆっゆゆゆ~♪」 「ゆっゆゆゆ~♪」 「ゆっゆっ~♪」 「ゆゆゆゆゆ~♪」 子ゆっくりと赤ゆっくりは元気いっぱいだ。子ゆっくりはれいむとまりさが四匹ずつ。赤ゆっくりはまりさとありすが二匹ずついる。 「ゆぁぁ……おちびちゃんたち、おうたがじょうずですごくゆっくりしてるよぉ……かわいいよぉ……」 「おちびちゃん…ほんとうにゆっくりしてておかあさんうれしいよお……。おちびちゃんはまりさのたからものだよぉ…」 さっきから声を揃えてお歌を歌っている子ゆっくりたちを見て、親のまりさとれいむは幸せそうにすりすりしている。 「ゆっふっふ。まりしゃはここをゆっくちぷれいしゅにしゅるんだじぇ。まりしゃがいちばんさいしょにみつけたんだじぇ」 「おねーしゃんしゅごーい!まりしゃもいっしょにいしゃしぇちぇにぇ!」 「ありしゅはときゃいはにゃたからもにょをみちゅけるよ。おかーしゃんにぷれじぇんとしてあげりゅの!」 「ありしゅもしゃがしゅ!おとーしゃんをゆっくちしゃしぇてあげりゅからにぇ!」 一方赤まりさたちは、ゆっくりプレイスを見つけようと、あちこちを探索している。 その近くで、赤ありすが両親を喜ばせようとして宝物を探していた。。 「ゆゆん♪ありすのおちびちゃんたち、まりさににてとかいはよ。おかあさんもうれしいわ」 「ありすのおちびちゃんもありすににてかわいいよ。まりさはこんなおちびちゃんたちにかこまれてとってもゆっくりできるよ」 ありすとまりさはは幸せそうに寄り添う。 「おかーしゃん!ありしゅ、きれいないししゃんみちゅけた!おかーしゃんにあげりゅね」 「ありしゅもきれいにゃはなしゃんみちゅけたよ!おとーしゃん、これあげりゅ!」 「うふふ、おちびちゃん。ありがとう。とってもとかいはないしさんね。おれいにぺろぺろしてあげる」 「ゆきゃきゃ♪おかーしゃんくちゅぐっちゃい。もっちょやっちぇにぇ」 「じゅりゅい。ありしゅにもおかーしゃんしちぇ~」 「ゆぅぅ…おちびちゃん、こんなにりっぱなゆっくりになってくれておとうさんはうれしいよお!」 「あちゃりまえだよ!まりしゃはおとーしゃんのゆっくちだよ。とってもゆっくちしたゆっくちになりゅんだからにぇ」 「はやくおおきくなっちぇ、おとーしゃんとおかーしゃんをゆっくちしゃしぇてあげるんだじぇ!」 二組の家族は、自分たちの宝物がすくすくと育ち、ゆっくりとしているのを幸福に満ちた目で見守っていた。 今日は既に狩りを終え、みんなで山の恵みを存分に味わった。 柔らかい木の実や香りのいい葉っぱ。みずみずしい芋虫さんに歯ごたえのあるコガネムシさん。 子どもたちがお腹いっぱいになるまで食べられ、自分たちも満腹になるまで食べることができた。 子ゆっくりと赤ゆっくりはお歌や探検に飽きたのか、いつの間にか両親の所に寄り添っていた。 「おかーしゃん、いっしょにぽかぽかしようにぇ」 「しゅーりしゅーりするよ、ゆゆ~ん。おかーしゃんのほっぺ、とってもゆっくちできるのじぇ」 「おとーさんといっしょにいるとれいむ、とってもゆっくりするよ」 「まりさもおとーさんとゆっくりするね。すーりすーり」 「ぺーろぺーろ。おかーしゃんのほっぺ、とってもおいしいのじぇ」 「ありしゅも。ありしゅもおかーしゃんのほっぺぺーろぺーろしゅりゅ!」 子どもたちに一番大事なのは、やっぱり両親だ。 あまりにも厳しすぎる自然の中で、こうして両親と子どもがどちらも欠けることなく暮らしているのは奇跡に近い。 両親は、自分たちの幸福が奇跡であることが分かっていた。 「これもれいむたちがゆっくりしているからだね。ゆっくりしたゆっくりだから、こうやってみんなでゆっくりできてるんだよ」 しょせんはゆっくり。その奇跡が自然の気まぐれであり、自分たちは常に注意を怠らなければならないとは思っていなかった。 むしろ、自分たちがゆっくりしているからこそ、こうやってしあわせーな時間を噛みしめていられるのだと勘違いしていた。 だからだろう。二組のゆっくりの家族は、山道を自動車が上ってきて近くで停車したのを見ても、逃げることはなかった。 自分たちはゆっくりだ。ゆっくりはゆっくりしていて当たり前なのだ。そう思っていた。 幸福を維持しようと努めないものたちが、ずっと幸福でいることなど不可能だろう。 事実、家族のゆっくりとした団らんは、これが最後となり永遠に回復することはなかった。 * * * 「主任、探す手間が省けましたね。ここにゆっくりたちがいますよ。しかも家族連れで二組も。運が良かったですね」 「まったくだねえ。せっかくコンビニで撒き餌を買ったのに。これじゃ損したよ」 A主任と助手は車から降りると、日当たりのいい草むらで並んでゆっくりしているゆっくりに近づいた。 普通、野生動物なら人間が近づいただけで即座に逃げるはずだ。 なのにゆっくりたちは、子連れでありながらAが近づいても身動き一つしない。警戒心がちっともないらしい。 ゆっくり特有の間抜けそうな顔で、Aと助手を交互に見比べているだけだ。 「ゆっ!おじさんはだれ?おじさんはゆっくりできるひとなの?」 真っ先に口を開いたのありすだった。 「あ~。まあそんなとこ」 「ゆっくりできるひとならいいわ。ここはありすたちのゆっくりぷれいすよ。ゆっくりしていってね」 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!」 反射らしく、ありすの「ゆっくりしていってね」に合わせて他の親と子どもたちも一斉に「ゆっくりしていってね」と言う。 「ゆーっ。おにいしゃん、おててにもっちぇるのはなに?もしかしちぇおいしいもにょ?」 「おいしいものまりさにちょうだいね。おれいにゆっくりさせてあげるよ」 「あまあまだったられいむほしいよ。いっぱいたべさせてね」 「あまあまほしいんだじぇ~」 早速助手の持つビニール袋の中身に関心が向いたのか、子どもたちが騒ぎ出す。 普通なら、無防備に人間に近寄る子どもたちを親がたしなめるはずだ。 「にんげんさん。おちびちゃんたちはおいしいものをほしがっているよ。ひとりじめはよくないよ。みんなでたべようね。いっぱいちょうだい!」 「ひとりじめなんていなかもののすることよ。ありすたちにもおすそわけしてほしいわ」 「れいむはおなかいっぱいだけどあまあまならまだいけるよ!あまあまあったらちょうだいね!」 とまあ、まったく警戒する様子がない。善良なのではなくただ単に阿呆だ。 「君たち、あまあまが食べたいんだね」 「たべたい!れいむあまあまがたべたいよ!」 「あまあまほしいよ!いっぱいむーしゃむーしゃしたいよ!」 「あまあまほしい!ありすもたべたいわ!」 「あみゃあみゃ~!」 「ほしいんだじぇ~!」 「あまあまだったらほら、そこにあるじゃないか」 「ゆ?」 「ゆゆ?」 「どこ?あまあまなんてないよ?」 Aの指摘に、ゆっくりたちは周囲をきょろきょろと見回す。 しかしそこにあるのは草ばかり。いるのは親と子どもと親戚だけだ。 食欲をそそられる、甘くておいしそうなあまあまなどどこにもない。 この人間さんは何を言ってるの?馬鹿なの? ゆっくりたちは、次第にそう思い始めた。 「ほら、そこにあるじゃないか。君たちの親、君たちの子ども。それがおいしいあまあまだよ」 「ゆゆゆっ?おじさん、なにをばかなこといっているの?はやくれいむたちにあまあ………」 「動くな」 「ゆぎっ!?」 「ゆゆうっ!?」 「ゆひぃ!?」 「ゆぴっ!?」 馬鹿な人間さんに抗議しようとしたれいむの体が、突然動かなくなった。 周りにいたゆっくりたちも、いっせいに体を硬直させて動きを止める。 A主任の手に握られていたのは、彼の発明品であるメガホン。 ドスまりさの体と口から出る超音波を再現&強化し、ゆっくりを洗脳するとんでもないアイテムだ。 ゆっくりたちは「動くな」という命令に従い、思い思いの格好で停止している。だるまさんがころんだをやっているかのようだ。 目だけが、「ゆゆ?なんでありしゅのからだがうごかないにょ?」と訴えている。 どうやら野生のゆっくりにも、メガホンの効果はあるようだ。 「さて、このれいむの番は誰かな。返事しなさい」 「まりさだよ!まりさ!」 「では子どもたちは誰かな。れいむの子どもたちはれいむの近くに、そうでない子どもたちは自分の親の近くに行きなさい」 「ゆっくりうごくよ!」 「ゆっくちおかーしゃんのしょばにいくにぇ!」 「黙って動くように」 Aの命令通りに、二組の家族は分かりやすく二つにはっきりと分かれた。 子ゆっくりと赤ゆっくりは一匹残らず、勝手に動く自分の体に驚いている。 だがいまだに、原因が人間さんにあるとは気付いていないようだ。 Aはきょとんとしたゆっくりたちに構わず、助手に指示する。 「では、実験を始めようか。コンロでお湯沸かしといて。それとあのトタン板持ってきてよ」 * * * 子れいむはわけが分からなかった。いきなり人間さんがやってきて、れいむたちにあまあまをくれるような気がした。 (やっぱりにんげんさんはゆっくりしているゆっくりがうらやましかったんだね。れいむたちがかわいかったんだね。かわいくってごめんね!) などと考えていた。 あまあまがいっぱいもらえるはずだったのに。 気付くと、体が勝手に動いておかーさんとおとーさんのいる方に近づいていた。 動くつもりはなかったのに、あんよさんが勝手にそうしていた。 (れいむのあんよさんどうなっちゃったの?なんでかってにうごくの?) 人間さんはれいむたちの家族と、ありすたちの家族とを二つに分けると、向こうに行って大きな乗物からいろいろ取り出し始めた。 地面に置いた何かからは、いきなり恐い火さんが燃え上がった。お兄さんはその上にお水が沢山入ったものを置いた。 何をしているんだろう。 れいむは、人間さんのしていることはあんまりゆっくりできないことだな、としか思っていなかった。 おじさんがこっちにやってきた。手に変なものを持っている。 右手には変な音が出るものを。左手にはお菓子と固そうな板だ。 表面はざらざらしていて、痛そうなとげとげがいっぱい突き出していて、全然ゆっくりできないものだ。 「まずはまりさからはじめようか。そこの子まりさ、こっちにでてきなさい。喋っていいよ」 「ゆっ!まりさになにかようなの?」 れいむの隣にいたまりさがぴょんぴょんと跳ねておじさんの方に近づいた。 「まずはこれをあげよう。食べていいよ」 「ゆゆっ!あまあまさんだ!ゆっくりたべるね!むーしゃむーしゃ。ちょっとにがいけどあまくてしあわせー!」 おじさんは、手に持っていた固くて茶色のあまあまを割ってまりさにあげた。まりさは一口で食べるとすごく嬉しそうな声を上げる。 (いいなあ、まりさ。れいむもあまあまさんほしいよ。おじさん、れいむにはもっとたくさんちょうだいね) 「おいしかったよ!もっとまりさにちょうだいね。いっぱいでいいよ!」 舌なめずりしながらおじさんに催促するまりさを、おじさんは全然ゆっくりしていない目で見ていた。 どうしてだろう。れいむたちが可愛いからおじさんはあまあまをくれるんでしょ?なんでゆっくりしていないの? おじさんが、口の所に変な音が出るものを当てた。 「まりさ。あのログハウスの丸太と地面の間に狭い隙間が見えるだろう。分かるかな」 「わかるよ。あそこだね。とってもせまいね!」 「あそこにまりさは入れるかな」 「むりだよ!あかちゃんでもはいれないよ。はいったらまりさつぶれちゃうよ。ぷんぷん!」 「あそこに入りなさい。潰れてもいいから入るんだよ」 「ゆっ!?ゆゆゆゆぅ!?」 「さあ、行きなさい」 おじさんの横を、まりさが信じられない顔をしながら這っていく。 「むり!むりだよ!まりさあんなところにはいったらつぶれちゃうから!つぶれちゃうよ!」 (そうだよ。あかちゃんだってあんなせまいところにはいれないんだから。まりさがはいったらつぶれちゃうよ。なのに……なのに…………) 「なんであんよさんとまってくれないのおおおおおおおお!?まりさむりだよおおおおおお!?」 れいむの心で思っていたことと、まりさの叫びとはまったく同じだった。 れいむの見ている目の前で、まりさは後ずさりする形でログハウスへと近づいていく。 ログハウスの玄関付近に、丸太と地面の隙間がある。 狭いところだ。赤ゆっくりならかろうじて入れるが、同時に潰れてしまうに違いない。 おじさんは、そこにまりさが入るように命じた。 絶対に無理な話だ。れいむは、当然まりさが断るものと思っていた。確かにまりさは断った。 それなのに、まりさはおじさんが何もしていないのに、ずりずりと這って隙間に近づいていく。 「あんよさん!!むりだから!まりさそんなのできないよ!とまって!とまってあんよさん!とまってえええええええ!!」 「静かなのも変だねえ。みんな、動いちゃ駄目だけど喋っていいよ」 おじさんがそう言うと、れいむたちは急に喋れるようになった。さっぱりわけが分からない。 分かるのは、まりさが絶対に無理なことに挑もうとしていることだけだ。 「まりさ!まりさああああ!やめてよ!そんなことしたらまりさしんじゃうよおおお!」 「おねーしゃんやめちぇええええ!しょんなことしちゃだめええええ!!」 「おちびちゃん!なにしてるの!おじさんのいうこときいちゃだめだからね!つぶれちゃうよ!!」 「やめてよおおお!まりさにはそんなことむりだってばああああ!」 みんなは口々にまりさを止めようとする。 実の家族ではないありすたちも、いつも仲良く遊んでくれたまりさを心配していた。 「わかってるよおお!わかってるのに…わかってるのに…あんよさんがかってにうごくのおおおお!まりさおかしくなっちゃったよおおおおお!!」 まりさ本人が一番困っている。今まで見たことがないほどまりさは焦っていた。 おじさんはまりさを、じっと見ているだけ。 まりさは必死で足を動かさないよう抵抗していたようだけど、ついに隙間にたどり着いた。 「むり!むりむりむりむりいいいいい!どうじで!どうじであんよさん……いだいいいいいいい!!」 まりさは、後ろ向きに隙間に体をねじ込んでいく。狭い隙間に体を無理矢理入れていくから、体が押し潰されて痛いのだろう。 それなのに、まりさの体は勝手に動いているみたいだ。 「いだいっ!いだいいだいいだいいいいい!やめでええ!ごんなにぜまいどごろ、はいれるわげないいいいいい!あいいい゙い゙い゙!!」 「おちびちゃんんんんんんんん!!!」 「やめてえええええええええええ!!」 「まりさあああああああああああ!!」 次第に、まりさの顔が膨れ上がり始めた。 「ゆぶううううううう!!ぐるじい!あんござんが!あんござんがばりざのがおに!がおにいいいいいい!うぐううううう!!」 狭い場所に入っていくまりさの体の中では、柔らかな餡子が下半身から顔の方へといっせいに移動を始めたらしい。 そうすることしか、隙間に体を入れる方法はないのだ。 結果的に、まりさの餡子はかき回され、押し潰され、ひどい激痛と共に顔面へと殺到する。 「ぢゅぶれるううううううう!ばりざづぶれぢゃううううううう!ぐるじいよおおおおおお!!!!」 「おちびちゃああああんん!!もうやべでええええええ!!」 「ばりざあああああああ!!やべでよおおおおおお!!」 頬が張り、顎が膨らみ、両目を見開いてまりさはどんどん奇怪なゆっくりに変わっていく。 れいむは気がつくと、涙を流しながら叫んでいた。 あんな苦しそうなゆっくりの顔なんて、初めて見た。 そしてきっと、絶対に忘れられないだろう。 「ゆぶっ!ゆぶうっ!ゆ゙……ゆ゙ぶゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔ!!!」 「ゆああああああ!!」 「まりざああああああ!!」 「おねえしゃああああああんん!!」 思いの外あっけなく、まりさの限界は訪れた。 体内の圧力に、まりさの目と口が耐えきれなかったのだ。 まりさの両目と口から、勢いよく目玉と歯を巻き添えにして、餡子が噴水となって噴き上げた。 それは小さなゆっくりの体から飛び出したとは思えない高度と勢いで、弧を描いて立ち尽くすれいむたちに吐きかけられた。 目玉がころころと草の間を転がり、歯はあちこちに散らばった。 「ゔわ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!」 れいむは自分でもぞっとするような声を上げて叫んだ。 餡子の噴水が終わると、そこには皮だけになったまりさが顔を隙間から覗かせて息絶えていた。 両目と口の所にぽっかりと穴が空いたそれは、とても忌まわしい仮面になっていた。 「れいぶのがわいいおぢびぢゃんがああああああ!!」 「まりざがああああああああああああ!!」 両親の声が、どこか遠いところから聞こえてくる気がした。 れいむは気を失いたかった。 実の姉妹がむごたらしく死んだショックから、意識を消して逃避したかった。 それなのに、意識は今もはっきりし、目は死んだまりさの顔から離れてくれない。 呆然としたれいむの目の前に、おじさんが立っていた。 ようやく分かった。このおじさんは、ゆっくりできない人「かも」しれないと。 * * * A主任は、手に持っていたトタン板を子れいむの前の地面に突き刺した。 「ゆっくり…おじさん……ゆっくりしていってね……。かわいいれいむにいたいことしないでね」 れいむは怯えた目をAに向ける。 Aが直接手でまりさを隙間に押し込んだならばもっと騒いでいるだろうが、ゆっくりの目にはまりさが自分から隙間に入ったとしか見えない。 因果関係くらいは感じているだろう。れいむはさっきまでの生意気そうな目付きをしていない。 「俺はまりさに何もしてないよ。まりさが自分から隙間に入っていったんじゃないか。どうしたんだろうね、まりさは」 「うん……。そうだよね。まりさがじぶんから……あんなことしたんだよね」 「親御さんはどう思う。まりさはどうしたあんなことしたんだろうね。俺は何もしてないよ。ただ、できるかどうか言っただけさ」 「ゆゆう……。まりさ…まりさ…。そうだよね…まりさがじぶんではいっていったんだよ」 「おちびちゃん……なんで…なんで…ゆあああぁぁぁ…………」 親のれいむとまりさも、子まりさの行動は全然理解できなかったらしい。 Aの手が触れていない以上、Aのせいにすることもできない。 「さっき俺が言ったこと覚えてる?みんなあまあまが欲しいって言ってたけど、あまあまはちゃんとあるんだよ。君たち自身があまあまだからね」 「ゆっ。おじさん、へんなこというのはやめてよね。れいむあまあまじゃないよ。おちびちゃんだってそうだよ」 「まりさもあまあまなんかじゃないよ。あまあまはやくちょうだいね」 「だからさあ、君たちそんなにあまあまが食べたかったら、共食いすればいいんだよ。君たちの中身は餡子なんだからさあ」 「ゆゆゆう!もうおこったよ!はなしのわからないおじさんはかえってよ!れいむたちのゆっくりぷれいすからでてって!!」 「では命令だ。この子れいむを除くれいむたち、親のれいむをゆっくり食べなさい。そして親のまりさは、子どものまりさを全部ゆっくり食べなさい」 「ゆゆぅ!?」 「ゆひっ!?」 信じられないことを聞いた、とれいむの家族はいっせいに固まった。 Aの言ったことは、最大のタブーとされる共食いをするようにとのすすめだった。 「な…なにいってるのおおおおお!まりさのかわいいおちびちゃんをまりさがたべられるわけないでしょおおおお!!」 「馬鹿なの?死ぬの?と言いたいわけかな」 「あたりまえでしょおおおおお!おちびちゃんをたべるわけ…たべるわけ…わけ……おぢびぢゃんにげでえええええええ!!」 真っ先に命令に従ったのは、親のまりさだった。 器用にも大口を開けたまま叫ぶという芸を披露しつつ、まりさは動けないでいる一匹の子まりさに噛み付いた。 「いぢゃいいいいい!おとーさんいぎなりなにずるのおおおお!!!まりざだよお!おどーざんのだいじなまりざだよおおおお!!」 「にげでえええ!おぢびぢゃんおねがいだがらにげでええええ!おどーざんがっでにおぐぢが!!だべだぐないいいいい!!」 親ゆっくりの口の大きさならば、子ゆっくりを丸呑みにできる。 しかし「ゆっくり食べるように」と命令されたまりさに、ひと思いに子どもを楽にする選択肢はない。 頬をかじる。 「いぎゃあああ!まりざのもぢもぢのほっぺがああああ!!」 髪の毛を引き抜く。 「びゃあああああ!まりじゃのがみのげ!おどーぢゃんひどいよおおおお!!」 両目に口を当て、目玉を吸引する。 「いぢゃいいいいい!おめめが!ぎれいなおめめええええ!おどーじゃんなんでぇ!なんでごんなひどいごどずるのおおお!!」 「ゆがああああああ!!だべだぐないよお!!おぢびぢゃんだべだぐないいいい!どうじでおぐちざん!おぐぢざあああああん!!」 帽子を飲み込み、後頭部を食いちぎり、傷口から子まりさの柔らかな餡子をすすり上げる。 「うばあああああ!ごべんねえ!ごべんねおぢびぢゃああああんん!おぐぢががっでにごんなひどいごどずるのおおおおお!」 「ゆ゙っ……ゆ゙っ……ゆ゙っ……ゆ゙っ……ゆ゙ゆ゙ゆ゙ゆ゙ゆ゙……」 子まりさは声も上げず、不規則な痙攣を始めた。 それでも両目のなくなったぼろぼろの顔は、お父さんにやめるよう懇願している。 願いは届かず、ついに親まりさは子まりさの体を引きちぎった。 「ゆ゙っ…………」 「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!!だべぢゃっだあああああ!!まりざ、おどおざんなのにおぢびぢゃんを!おぢびぢゃんをだべぢゃっだあああああああ!!!」 口から子ゆっくりの餡子をぼたぼたこぼしながら、まりさは子どもを食べた事実に泣き叫ぶ。 「おいしいかい。さぞかし甘いだろう。念願のあまあまだよ」 「あばぐないいいいいいい!!おいじぐなんがない!おぢびぢゃんがおいじいはずないいいいい!!!」 「おいしいって言いなさい。むーしゃむーしゃ、しあわせー、と言いなさい」 「おいじいいいいい!むーじゃむーじゃ!じじじあわぜええええええ!!」 「よく言えたね。ほら、まだ二匹残っている。それも食べなさい」 「おぢびぢゃあああああんん!にげでよおおおおお!おどーざんがらにげでええええ!」 「おどーざんやべでええええええ!まりざあんよがうごがないのおおおおおお!」 「いやじゃあああああああ!おどーざんにだべられでじぬのはやじゃああああああ!」 番のれいむと子れいむたちの方も、とんでもないことになっていた。 「ゆっ!いだっ!いだいっ!いだいよおぢび!!おぢびぢゃんやべで!いだい!おがーざんいだい!!」 「おかーしゃあああん!おぐぢががっでにうごくのおおおおおお!!」 「むーしゃ、むーしゃ、うげええええ!おがーしゃんだべぢゃっだああああ!!」 「やべでえええ!おぐぢざんどまっでよおおおおおお!おがーざんがじんじゃうううううう!!」 動けないでいる親れいむを、三方から子れいむが取り囲み、その体に歯を立てている。 ゆっくりと、子れいむの歯が親れいむの皮を食い破り、口が親の体を食べて飲み込んでいく。 れいむは体を食べられていくおぞましい感触と、それが自分の子どもであるという事実に涙を流して身をよじる。 「おがーしゃあああんん!ごめんねええええ!れいむごんなごどじだぐないのにいいいい!」 「まずいよおおおお!おがーしゃんなんてだべでもおいじぐない!ぎもじわるいいいいいい!」 「おげええええ!!れいむおかーざんをだべでる!だべでるよおおおお!うげえええええ!」 「どうじでえ!?どうじでおぢびぢゃん…いだいいいい!あんごだべないで!あんご!れいむのあんごが!ああああああいだいよおおおお!!」 一匹の子れいむが、ついに餡子に頭を突っ込んだ。腐肉にたかる蛆虫のように、体を傷口にねじ込んでいく。 「どうだい子どもたち。甘いだろう。うまいだろう。君たちが食べたかったあまあまだよ」 「ごんなのぢがううううう!おがーざんはあまあまじゃないよおおおお!だべだぐないいい!」 「やべでっ!やべざぜでぐだざいおじざん!ごのままだどれいぶが、れいぶがじんじゃいまず!れいぶがじんだらおぢびぢゃんががなじみまず!」 「おがーざんだべだくないいいいいい!おがーざんだべでもじあわぜじゃないよおおおおおお!」 「好き嫌い言わずに食べなさい。食べきれなくなったら吐いてでも食べなさい」 Aに助けを求めるれいむの顔は、苦痛で歪んでいる。 自分の体を生きたまま子どもたちに食べられるという体験は、さぞかし恐ろしいものだろう。 「あがぎい゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙!!ぎがあああああああ!あんごだべええええ!いだい!あんごが!おぢびぢゃん!おぢびぢゃああああああ!!!」 三匹がついに完全に親の体内に潜り込んだ。親れいむは発狂したかのように白目になって絶叫する。 尻を振ってバランスを取りながら子れいむたちは親れいむの体を貪っていたが、次第に全身を傷口に突っ込んでさらに食べようとする。 「だずげで!だずげでええええ!れいぶだべられぢゃう!れいぶのがらだがおぢびぢゃんにだべられぢゃうよおおお!いやだあ!ゆっぐり、ゆっぐりじだいいいい!!」 生きたまま食べられ苦しむれいむの体が、あちこちぼこぼこと盛り上がっては移動する。 あの中で、子れいむが親の餡子を食べているのだろう。 凄まじい光景が繰り広げられている。 ほんの少し前まであったはずのゆっくりプレイスは、今や地獄になっていた。 顎が外れるくらい大きく口を開けていたれいむが、急に異様な痙攣を始めた。 「ゆぎゃ!ゆぎゃぎゃぎゃぎゃ!ゆぎゅり!ゆっぎゅり!ゆぎゅぎゅぎゅぎゅ!ぎゅぎゅ……ぎゅ!!」 中枢餡を食べられてしまったようだ。 れいむは口を開けたまま、痛みと苦しみと絶望に顔を歪ませて死んだ。 子ゆっくりは、れいむにとって宝物だった。何よりも大切なおちびちゃんたちだった。 そのおちびちゃんが、れいむの体を食い荒らし、死に至らせたのだ。 どれほどの絶望を味わっただろうか。どれほどの苦痛を味わったのだろうか。 「よし。もう食べなくていいよ。出てきなさい」 ぽっかりと空いたれいむの口から、三匹の膨れ上がった子れいむが姿を現した。 どのれいむも、親の体をたっぷり食べたせいでまん丸に膨らんでいる。 表情はいずれも、ゆっくりとはかけ離れた陰惨なものだ。 自分たちが、親れいむを殺したのだ。 自分たちのせいで、親れいむは生きたまま食べられて死んだのだ。 ゆっくりたちの頭でも、それは重たい罪悪感となって三匹を打ちのめしている。 「おかーさん……ごめんね…ごめんね…ほんとにごめんね……」 「れいむたちのせいで、おかーさんが……しんじゃったよ……」 「れいむが、おかーさんをたべちゃった……。おかーさん、くるしがってたのに……いたがってたのに……」 一方まりさたちの方も、親子の役割が反転しただけで同じようになっていた。 「ごべんねえええ!おぢびちゃんだちごめんねえええ!わるいおどーざんでごめんねええええ!おちびぢゃんをだべるおどーざんでええええええ!!」 「いぢゃいいぢゃいいぢゃいいい!どぼじでええ?どぼぢでおどーざんごんなひどいごどずるのお!?」 「まりさのおかおおおおおお!!おかーさんにもうほめてもらえないよおおおおお」 何度も謝りながら、親まりさは子まりさたちをゆっくりとかじっている。 既に二匹は禿饅頭になり、目を失い、頬から餡子を垂れ流している。 ひと思いに殺して楽にしてあげることもできず、親まりさは子どもたちを食べては謝り、謝っては食べていた。 「おげえええええ!!あんごが!おぢびぢゃんのあんごがぐちにいいいい!だべだぐないよお!おぢびちゃんだぢとゆっぐりじだいよおおお!」 「おどーざんまりざとゆっぐりじでよお!いっしょにゆっくりじようよお!すーりすーりじでよおお!ぺーろぺーろもじでよおお!だべないでよおおお!!」 「やべでよおお!なんでごんなひどいごどずるのお!?ゆっぐりじでよお!いじわるじないでよおおお!やざじいおどーざんにもどっでよおおおお!!」 どんな惨劇にも、終わりはある。 二匹の子まりさは、少しずつ体をかじられながらも次第に命が尽きようとしていた。 親まりさは泣きながら自分の口を封じようとするが、無意味だ。 こんなことはしたくなかった。子どもを食べるなんて、考えるだけでもおぞましいことはすぐやめたかった。 できることなら、子どもたちを助けたかった。 傷をぺーろぺーろしてあげたかった。泣いているからすーりすーりして慰めたかった。 しかし、親まりさに許されたのは、二匹を口にくわえ、ゆっくりと奥歯で押し潰すことだった。 「ちゅぶれるよおおおお!おどーざん!おどおおおざあああああんん!だずげでええええ!おどおおおお゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙!!」 「ゆゆゆゆゆううううううう!!…ぢゅぶれる!もうまりざぢゅぶれるゔゔゔゔうううう!!」 「うわああああああ!!まりざが!ばりざが!ばでぃざが!ばでぃざが!だいじな!がわいい!おぢびぢゃんを!だべだんだああああああああ!!!!」 まりさは自分がしたことの罪の重さで、声が嗄れるほど泣き叫んだ。 両親を見て、まりさは親になることに憧れていた。 番のれいむとの間にできた、大事なおちびちゃんたち。 まりさのことを「おとーさん」と呼んで慕ってくれた、ゆっくりしたおちびちゃんたち。 親になれた誇りと幸福感は、まりさの餡子を温かくしていた。 守ろうと誓った。どんなことがあっても、たとえ自分が永遠にゆっくりすることになっても、おちびちゃんだけは守ろうと誓った。 それなのに実際はどうだ。 まりさは子どもを殺した。殺さないでと哀願する子どもを食べたのだ。 ゆっくりたちの最大のタブーである、子殺しと共食い。それを一緒に犯したのは親であるまりさ。 おちびちゃんたちの餡子の味が、舌から消えない。 その悲鳴が、耳から消えないのだ。 まりさはあまりの恐ろしさに、半狂乱になって慟哭する。 ゆん生すべてに絶望しきった顔でうつむく三匹の子れいむと、泣き叫ぶ親まりさ。 計四匹は、Aによって作り出された地獄の生き残りだった。 実験が終われば、解放される。 「ごくろうさま。後は好きにしていいよ」 Aのメガホンからの声は、そのまま四匹の死刑宣告だった。 「ゆげええええええええええ!!!」 「ゆげえええええええええ!」 「ゆげええええええ!」 「ゆげええええ!」 四匹はいっせいに、体内の餡子を口から猛烈な勢いで吐き出した。 親を食べた子れいむ。子を食べた親まりさ。 どちらも、自分の体の中に親や子の餡子が混じっていることが到底我慢できなかったらしい。 「「「「ゆげっ!ゆげっ!ゆげえええええ!ゆげがげごげえええええええ!!!」」」」 吐く。ひたすら吐く。食べた餡子だけでなく自分の餡子も一緒に吐く。 猛烈な吐き気に目を見開きつつ、子れいむと親まりさはそろって体の餡子を吐きつくして死んだ。 死ぬことによってしか、自分たちの罪を忘れる方法がなかったのだろう。 四匹の顔は、体の中身を吐く苦悶と、やっと死ねる安堵とが混ざった不気味な表情だった。 * * * れいむは、すべてを見届けた。 大事な家族が、一人残らず惨死する様子を残らず餡子に刻み付けた。 おねーさんのまりさは、向こうで狭い隙間に無理矢理体を押し込んで死んでしまった。 おとーさんに、まりさたちは食べられて死んだ。 おかーさんは、れいむたちに食べられて死んだ。 おとーさんとれいむの妹たちは、餡子を吐いて死んでしまった。 まだ体はぴくぴく動いているけど、もう死んでいるのくらいは分かる。 れいむは半時間足らずで、家族全員をむごたらしい仕方で失ったのだ。 「ゆぅ……ゆぅ……ゆーん…ゆーん…ゆぅぅぅん」 涙がぽろぽろこぼれて、れいむの足元を濡らしていく。 いまだに信じられない。 ゆっくりしたおとーさんとおかーさんが、無惨な仕方で死んだことが。 妹とおねーさんが、もうこの世にいないことが。 自分が、ひとりぼっちになってしまったことが。 れいむはもう、耐えられなかった。 「おじさん」 「ん?なにかな」 れいむはおじさんに声をかけた。 おじさんはこっちを見るけれど、何だかれいむを見ているような気がしない。 「おねがいがあるの。れいむも、おとーさんとおかーさんのいるおそらにいかせて」 「俺に自殺の手伝いをしろと?」 「れいむひとりじゃこわくてできないから。もう、れいむいきていたくないよ。おじさん、れいむをおそらにいかせてね」 れいむは生きることを放棄した。 死にたかった。もう、おとーさんもおかーさんも、妹もおねーさんもいないこんな世界に一人で生きていたくなかった。 もしかしたら、ありすたちがれいむを受け入れてくれるかもしれない。 でも、れいむの餡子には家族の死に様が焼き付いている。この先生きていても、ゆっくりすることはできないだろう。 れいむは死を願った。 「いいだろう。死なせてあげよう」 「ありがとう、おじさん。なるべくいたくないようにしてね」 れいむは目をつぶった。 人間さんはゆっくりよりもずっと強いとありすから聞いている。その人間さんに頼めば、楽に殺してくれるだろう。 れいむはすべてを諦め、自分を一撃で潰してくれるであろう人間の足か手を待った。 お空にいる家族の元に、一刻も早く自分も行きたかったのだ。 「れいむ、目を開けなさい」 おじさんの声は、なぜか絶対に従わなくてはならないものに感じた。 れいむは目を開けた。 「この板が見えるだろう」 「すごくゆっくりできていないいたさんだね。ざらざらしているし、とげとげがいっぱいあるし、すーりすーりしたらとってもいたいよ」 「れいむ、これに後頭部を擦りつけて死になさい」 「ゆ……ゆゆゆ?」 れいむは目を丸くした。 おじさんが言ったのは、さっきおじさんが地面に突き立てた痛そうな板に、体を擦りつけろという命令だった。 痛そうな板とは、錆びたトタン板のことだ。 表面はサビでざらつき、ゆっくりの柔らかい饅頭皮などすりすりすればたちまちぼろぼろになってしまいそうなものだ。 「や…やだよ。こんなのにすりすりしたら、ものすごくいたいよ。しんじゃうよ」 「れいむは死にたいんじゃなかったかな」 「ゆっ、ゆっ、でも、れいむいたいのいやだよ。おじさんれいむをおそらにいかせてくれるっていったでしょ!」 「俺は楽に死なせてあげるなんて約束してないけどな」 「ゆっ…!ゆっ!ゆっ!ゆゆゆゆゆゆ…………!」 れいむの頭は真っ白になった。 足が勝手に動き、トタン板に近づく。 後頭部が、トタン板に触れた。髪の毛ごしでも、そこが尖っていて危険だということが分かる。 「さあ、ゆっくりこすりなさい。たとえすごく痛くても、絶対に死ねるから」 れいむの体が、おじさんの言葉に意志に反して忠実に従った。 全身を使って、後頭部をトタン板に擦りつける。 「ゆっ!ゆっ!ゆっ!ゆっ!」 あっという間に髪の毛が全部根本から削れ、地肌が剥き出しになった。 れいむは恐怖した。この先に待っている、ゆっくりできない拷問に等しい時間を予想して。 あまりの恐ろしさに、れいむの思考は停止した。苦痛のみを感じる饅頭にれいむは退化したのだ。 「ゆっくり!ゆっくり!ゆっくり!ゆっくり!ゆっくり!!!」 れいむは言葉を失った。口から出る言葉は「ゆっくりしていってね」の中にある音だけになった。 地肌が削れていく。れいむは口を開けて叫ぶ。 「ゆっぐり!ゆっぐり!ゆっぐり!ゆっぐり!ゆっぐりいいいい!!!」 涙を流し、舌を口から飛び出させ、れいむは叫び続ける。 それしか苦痛から逃れる方法は思いつかなかったのだ。 だが、れいむの小さな抵抗は、圧倒的な苦痛の前に脆くも粉砕される。 「ゆっぐり!ゆっくり!ゆっくりして!ゆっくりして!ゆっくり!ゆっくりゆっくりゆっくり!!」 餡子が削られていく。 今まで一度も体験したことのない痛みが、れいむの後頭部から体全体をかき回している。 まだ、待ち望んでいる死が遠いことが分かる。 この痛みと苦しみが、当分の間続くのだと分かってしまい、れいむは滝のような涙を流した。 死んだらお空に行けるなんて嘘だ。死んで家族みんなとまたゆっくりできるはずがない。 だって、こんなに痛い。痛くて痛くてたまらない。 お空に行くなんてきれい事だ。死は、ものすごく恐い。 恐くて恐くてたまらないのに、もうほかになにもできない。れいむには死ぬしかできない。 「ゆっくりじで!ゆっぐりじで!ゆっぐりじで!ゆっぐり!ゆっぐり!ゆっぐり!ゆっ!ゆっ!ゆっ!」 餡子が削れる速度が遅くなった。 トタン板のざらざらした部分に、餡子がくっついて削れるスピードが落ちてしまったのだ。 もし人間がトタン板を移動させるか、餡子を拭き取ったらなら、比較的早くれいむは死ぬことができただろう。 人間の助けはなく、トタン板も動かない。 「ゆ゙っ!ゆ゙っ!ゆ゙っ!ゆ゙っ!ゆ゙っっ!ゆ゙っっ!ゆ゙っっ!」 れいむの口からは「ゆ゙っ」という濁った音しか聞こえなくなった。 それ以外のすべては、痛みに集中されている。 ひたすられいむは死ぬことだけを願った。早く死んで、こんな痛みだらけのゆん生から逃げたかった。 それなのに、一向に意識は途切れてくれない。 餡子でなまったトタン板の表面は、実に緩慢にれいむの餡子を削っていく。 「……ゆ゙っ!……ゆ゙っ!……ゆ゙っ!……ゆ゙っ!」 ただひたすら、れいむは何もかもが終わる瞬間を待っていた。 れいむの中枢餡が削れてしまうまで、あとどれくらいかかるのだろうか。 それまでれいむは、存分に絶望と苦痛と恐怖を味わい尽くすことだろう。 * * * 「ごの゙………あ゙ぐま゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!」 「ゆっぐりごろじはじねえええええええええええええ!!!」 ゆっくりと体を削っていくれいむを見ていたA主任に、残されたまりさとありすの家族から罵声が浴びせられた。 Aはそちらを向く。 実にゆっくりたちの心情に無関心に、Aはまりさとありすの家族を見る。 家族はメガホンからの命令である「動くな」に忠実に従い、さっきからそこを一歩も動いていない。 だが、まりさとありすの目は怒りと憎しみで燃え上がり、Aを殺さんばかりに殺気を振りまいている。 「よぐもまりざのいもうどのがぞぐをおおおおおお!よぐも!よぐも!よぐもごろじだなあああ!じねえ!おまえもざっざどじねえええ!」 「ごのゆっぐりごろじいいい!なんでごろじだ!あんなにゆっぐりじだがぞくをなんでごろじだんだ!ぜっだいゆるずものがああああ!」 「きょのゆっくちごろち!ゆっくちできないおじしゃんはおうちにきゃえるんだじぇ!」 「まりしゃぷくーしゅりゅよ!ぷくーっっ!!どう?きょわいでしょ!もっときょわがれ!」 「ありしゅもぷくーしゅりゅ!ぷくぅーっ!きょわい?ないちぇあやまっちゃらゆるしてあげりゅ!」 いくら頭の悪いゆっくりでも、Aが何かをしたせいで向こうの家族が惨死したことをようやく理解できたらしい。 家族揃って、Aに対してバッシングを行っている。 特に、親まりさと親ありすの怒りは半端ではない。 ずっとお隣同士で仲良くしていたれいむの家族を、目の前でめちゃくちゃにされたのだ。 思い出すだけで、餡子が凍り付くようなひどい死に方だった。 あんなのは、断じて許されるべきではない。 この人間は、ゆっくりたちのささやかな幸せとゆっくりを、土足で踏みにじったのだ。 そして、自分たちも同じようにされるかもしれないという恐怖。 二匹は唾を飛ばしてAを罵る。 対するAは、急に嬉しそうな顔をした。 「今日は運がいいな。こんなに元気なゆっくりたちに出会えるなんて俺もついてる。ちょうどよかった」 Aとしては、まりさとありすたちの反応はむしろ歓迎すべきものだった。 ゆっくりに行った実験で分かったことは、頭のいいゆっくりでない限り、自分たちの体に起こった異変が人間によるものだと理解できていないらしい。 「どうじでおぐぢざんどまっでぐれないのおおおおお!?」 「どうじであんよざんうごいでぐれないのおおおおお!?」 と叫ぶだけで、それが人間によって引き起こされたものだとは分からないのがほとんどだ。 あの帽子を奪われたまりさだけは、かろうじてそれが分かったようだ。 たいていのゆっくりは、自分をゆっくりできなくさせたAを恨むことなく死んでいった。 Aは今度は、人間を憎むゆっくりがどう行動するか、憎しみが中枢餡に刷り込まれた命令を上回るかどうか実験したかったのだ。 「ちょっとこのゆっくりをかまってくれない?」 「え?は、はい。分かりました。どのようにでしょうか」 「とにかく挑発して。徹底的に怒らせてほしい。一匹くらいなら殺してしまってもいいからさ」 急に妙なことを言いつけられた助手は、どうしていいのか分からず少しの間フリーズしていた。 「そんなに難しく考えなくていいから。いかにも虐待大好きな人間みたいに振る舞って」 何度か頭の中でテンプレなセリフを考え、助手は怒髪天を衝くゆっくりたちに近寄った。 「おい。そこの薄汚いクソ饅頭。お前だよお前。そこのでかいまりさ」 「ゆがあああああ!まりさはくそまんじゅうなんかじゃないいいい!しねえ!おまえなんかさっさとしんでしまええええ!」 「じゃあ殺してみろよ」 「ゆゆ?」 唾を飛ばして怒鳴る親まりさから少しだけ離れた場所で、助手は地面にあぐらをかいて座る。 「ほら。俺はここにいるからさ。逃げも隠れもしない。さっさとそこから動いて俺を殺してみろよ。できないのか?」 「いっだなああああああ!!そごにいろ!まっでろ!いまずぐに、まりざがおばえをごろじでやるがらなああああ!」 まりさは吠えた。 妹を殺された怒り。妹の家族を殺された悲しみ。人間に対する憎しみ。すべてを込めてまりさは地面を蹴った。 全身を使った体当たりが、座っていた助手に炸裂する。 助手の驚いた顔。まりさは生きた弾丸となって、助手の胸板に激突した。 吹き上がる血しぶき。肉片を周囲にばらまきつつ、まりさは助手の体を一撃で貫通した。 ……まりさ。れいむ。おちびちゃん。かたきはとってあげたよ。おそらでゆっくりしていってね。 まりさは倒れた助手にかまうことなく、A主任を睨み付けた。 Aは驚き、恐怖し、失禁しながら土下座してまりさに命乞いをする………… ………わけがない。 まりさはそこから動けない。 「動くな」という命令がキャンセルされない限り、まりさは見えない箱に閉じ込められているに等しい。 「じねええええええ!ごろず!ごろず!いまずぐごろず!いもうどの!いもうどのがぞぐのがだきだ!がだきだああああああ!!」 「まりさ!がんばって!ゆっくりごろしはうごかないでいるわよ!ちゃんすよ!」 「がんばりぇおとーしゃーん!」 「にんげんしゃん!おとーしゃんはしゅごくちゅよいのよ! 「あやまりゅならいまのうちにあやまっちぇにぇ!」 「あやまっちぇもにんげんしゃんはしにゅけどにぇ!もうおしょいよ!」 ありすと赤ゆっくりたちは声援を送るが、まりさはやはり動かない。 頭に血が上っているらしく、まりさは自分が動けないでいることが分からないでいるらしい。 「おーい。クソ饅頭さん。どうしたの?殺す殺すって言ってるけど、何で俺まだ生きてるのかな~」 「ゆがあああああ!だまれえええええ!おばえなんが!おばえなんがざっざとごろじでやるうううう!」 「期待しているよ~。頑張ってね、クソ饅頭さん。ほらほら、俺はここにいるぞ」 「だまれえええええ!いもうどのがぞくのがだきいいいいいいいいいい!!!」 このまりさは、ゆっくり同士ならばきっと上位にランクインするパワーの持ち主だろう。 しかし、やはりまりさは動かない。 大声で叫び、上半身をぐねぐねとちょっとだけ動かして体当たりしようとするが、一歩も動かない。 「まりさー。さっきから口だけでちっとも動かないけどさ。お前ホントに妹の家族の仇を取る気があるの?もしかして嘘?」 「ぢがう!ぢがう!ぢがうもん!ばりざほんぎだもん!にんげんなんが、まりざがやっづげでやるううう!」 「だったらなぜ何もしないんだよ。あ!分かった。お前恐いんだな。恐くて体が動かないんだ。まりさは臆病だったんだね」 「ぢがううううううう!ばりざはおどーざんだ!おどーざんはゆうがんで、つよぐで、りっばなゆっぐりなんだ!おぐびょうなんがじゃないいいいい!!」 「いや、俺は臆病でも別にいいと思うよ。生物界の最底辺にいる下等生物が、勇敢とか強いとか立派とか言っても笑えるだけだし。あはははははは!」 「わらうな!わらうな!わらうなあああああああ!」 「うるっせぇんだよこのクソがあああああああ!!!」 「ゆぎぃ!?」 いきなり助手はまりさをからかうのをやめ、手でまりさの顔をひっぱたいた。 「いだいいいいいいい!いだいいだいいだいいいいい!」 「ぎゃあぎゃあやかましいんだよゴミカス!てめえにできねえことばかりぬかしやがるんじゃねえ低能の青二才が!」 「ば、ばりざは!ばりざはぎゃびゆぎゃあ!」 「ばりざはなんだよ。え?言ってみろよ。さっさとご託並べてみせろよ出来損ないの饅頭よぉ!」 「うっ…ゆぐっ…ぐっ……ばりざは、ばりざはおどーざあぎゃいぎゃい!いぎゃああ!やべぢぇ!やべぢぇよおおお!」 「やめてってどの口でほざくんだよクソが!てめえはおとーさんじゃなかなったのかよ!強くて立派なおとーさんじゃねえのかよ!!」 「びぎっっ!ぶびっっ!びがっっ!!ばり!がばっ!ばりざはっ!ばでぃいがぁ!おどぉ!おどあがぁ!だがっ!だあゔぁ!」 「何言ってるのか分からねえなあ!もっとはきはきしゃべりやがれオラ!!」 「ばでぃざは…ばでぃざはおどーざんだ!ゆっぐりじだおどーざんだ!おどーざんだがらあああああっっ!あぁぁいだいいいいい!!」 まりさの口に平手がヒットした。 舌と歯茎を激しくぶたれ、まりさは目から涙を撒き散らして悶絶する。 餡子と一緒に、数本の白い歯が地面に落ち、きらきらと光っていた。 「いっ…いだい……いだいよ………まりざ…おどーざん…みんなの…がだき………ぶぎゅるううううっっ!!」 歯が折れた激痛に耐えるまりさを、助手は蹴飛ばした。転がるまりさをうつぶせの状態で踏みつける。 ぎゅっと力を込めると、「ぶびびっ!」と間抜けな音がしてあにゃるからうんうんが少し飛び出した。 「うぜえんだよ。そろそろぶっ殺すぞ」 「ぶぎゅ!びゅぐうう!じゅぶっ!じゅぶれる!ぢゅぶれるうううう!!」 「まりざああああああ!おねがいだがらやべでえええええ!!」 「おとーしゃああああん! 「おとーしゃんにいちゃいいちゃいしにゃいでえええええ!」 「やめちぇええええ!」 「おとーしゃあああん!ゆんやあああああ!」 今までは激痛だけだったのが、命の危険に代わったことでまりさは足の下でぶるぶる震え始めた。 いっせいに叫び出すありすと赤ゆっくりたち。 助手はそれを見ると、まりさの顔を靴で地面にこすりつけた。犬の糞を踏んでしまった人間が、靴を地面でこするのと同じ動きだ。 「べぎゅ!ぶぎゅ!ゆぎゅうう!」 丁寧にまりさの顔を地面で磨いてあげてから、手で持ち上げてありすの眼前に突き出す。 「ほらありす、見ろよ。感動の再会だ」 「ま、まままりさっ……まりざあああああああ!ひどいいいいいいいい!」 「あっ……あでぃ…ず……あでぃ…ず…………」 ありすから見ればとても美ゆっくりだったまりさの顔は、無惨にも傷だらけだった。 たっぷりハエタタキで叩かれたことにより、ほっぺたは黒く変色し中の餡子が滲んでいる。 顔は踏みつけられ、地面に擦りつけられたことによりいくつもの傷ができ、片方の目は腫れ上がって見えなくなっていた。 半開きになった口からは「ゆひゅー、ゆひゅー」と苦しそうな息が漏れ、舌と歯茎からは餡子が漏れている。 「ありず……ばり……ざ…は、おど……ざ…ん……だ、よ……。みん…なを…まも…る…がら……ね」 息も絶え絶えのまりさは、そんなひどい姿なのにありすに笑いかけた。 口から発せられたのは、力強い約束の言葉。まりさはみんなのおとーさんだ。おとーさんだから、絶対に人間なんかには負けない。 強い意志が言葉に込められていた。 「くだらね。カッコつけてんなよ生ゴミが。死に損ないの分際でよくそこまで言えるよなあ」 「ゆぎゅうっっ!」 まりさは、笑顔のまま地面に叩き付けられた。仰向けになったまりさと、助手と目が合う。 助手は口調とは裏腹に、ちっとも虐待を楽しんでいる様子はない。 だが、彼のすることは容赦がまったくない。 「おいクソまりさ。俺はこれからてめえを三回踏みつける。分かるか?てめえのお粗末な頭でも分かるように、三回で我慢してやる」 「ゆっ……ぐっ……ごろ…ず……おばえ…なんが……ごろじで……」 「分かんなくても別に構わねえけどな。三回だ。三回だけ耐えてみろ。そうすればてめえの勝ちだ。分かったな」 「ぐっ…ゆぐっ……」 「人間なんかに負けねえんだろ?せいぜい頑張って耐えろや。まずは一回!」 助手は足を持ち上げると、靴の裏の全面を使ってまりさの口の下、腹に当たる場所を踏みつけた。 「ゆぶぐぎゅうううう!!」 人間ならば自動車が衝突した破壊力だろう。内臓が引き千切れてもおかしくない状況だ。 しかしゆっくりに内臓はなく、中に詰まっているのは餡子だけ。内臓破裂で死ぬことはできず、苦痛のみが体を駆けめぐる。 「まりざああああああ!ひどいごどじないでええええ!」 ありすの叫びが聞こえる。 まりさの口からはもりもりと餡子が吐き出され、あにゃるからも餡子が飛び散ってありすと赤ゆっくりたちの顔にかかった。 「ゆっ!……ぶげっ!……ゆぶげっ!」 まりさは両目を血走らせ、顔を左右に振って激痛から逃れようとする。 助手の足が再び上げられた。 「二回目!」 「ぶげゆがっっっっ!!」 次は踵を使ってまりさを踏みつける。 圧力が限界に達したらしく、まりさの右目がすぽーんと飛び出した。 「ゆっぎゅ!ぎゅぐ!ぎゅぐうううう!」 まりさの顔はゆっくりとはかけ離れた顔になっている。あまりの苦痛に何も考えられないようだ。 「三回目!これでラストだ!」 「ゆぶぎゃああああああああああ!!」 * * * 三回目の踏みつけが、まりさの腹を直撃した。 靴の踵はまりさのまむまむを踏み抜き、皮と餡子のミンチに変えた。 凄まじい激痛に、まりさの視界が真っ白に染まる。 (まりさの…まむまむ…それとぺにぺにが……ごめん…ごめんねありす……もうまりさ…あかちゃんつくれないよ) 自分の生殖器が回復不可能なまでに破壊されたことが分かり、まりさの無事な左目から涙が流れた。 まむまむとぺにぺにを破壊されたゆっくりは、肌をすりあわせてすっきりすることもできない。EDになってしまうからだ。 まりさは、これで生涯子どもを作ることなく生きていかなければならない。 まりさの体を踏みつけていた足が、どけられた。 (かったよ…まりさ、にんげんにかったんだ……。さんかい、まりさはたえたんだよ) 全身の激痛を忘れ、まりさは勝利を味わっていた。 あの人間の攻撃に、まりさは耐え抜いたのだ。餡子と皮に力を入れ、破れないように力を入れて耐えたのが報われたのだ。 ざまあみろ、人間。おとーさんは強いんだ。恐れ入ったか。 「あ…でぃ……ず。あ…りず」 「まりさ!?まりさあああ!ぶじなの?ぶじなのねええええ!?」 「ゆへ…へ…まり……ざ、にんげん……に、がっだ……よ。ばり……ざの……がぢ…だ……よ」 「まりさあああ!すごいわ、まりさはすごいゆっくりよおおおお!」 「ぞう……だ、よ。ばりざは……づよい、おどーざ…ん……なんだよ」 ありすの賞賛の声が、痛みの中でも心地よい。 人間の自信を、まりさは打ち砕いたのだ。 まりさは、家族を守って生き抜いたのだ。 半殺しの状態で、なにをどう守ってどう生き抜いたのかは分からないが、とにかくまりさはそう信じて疑わなかった。 「ま…まげ……まけいぬ……の…にんげん、は…ど、とっとど…あや……ばっで、ね……」 まりさは、ぼろぼろの顔を上げて助手を睨み付ける。 だが、助手が言ったことは、まりさに対する謝罪でも賞賛でもなかった。 「ねえ主任。俺、何回こいつを踏みつけましたっけ?忘れちゃったんですよ」 助手のとんでもない発言に、まりさは驚愕した。 (さんかいだよ!さんかいまりさをふんだよ!そんなこともわからないの?さんかいもかぞえられないの?おおばかなの?) Aは答えた。 「二回だよ。後一回残ってる」 「ゆっ!?ゆぶっ!?……ざ!…ざんが……ざんがい!……ざんがい!………ざんがいぶんだ!ざんがいばりざをぶんだよ!」 「さんかいよ!もうさんかいまりさをふんだわ!だからもうやめて!ふまないでええええ!」 「ざんがい!ざんがい!ざんがい!ざんがい!ざん゙がい゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙!!」 「悪かったなクソ饅頭。後一回残ってたわ。じゃ、三回目だ」 「ざんが……ぎゅぶぐうううっっっ!!」 助手の足が、まりさの体を踏みつけ、貫通し、大きく引き裂いた。 * * * びしゃっ、と放射状に餡子が飛び散り、まりさの両目が白目になる。 もちろん、助手もAも数はカウントしていた。三回まりさを踏んだことは分かっていた。 だからどうした。 始めから、助手は三回踏む時はまりさが死なないよう手加減し、四回目で殺す計画だったのだ。 そんなことも知らないまりさは、断末魔の苦しみを全身で表現していた。 まりさの胴体をほぼ二つに裂いた傷口からは、致命的となる量の餡子が地面にだらだらと流れていく。 「…あ……あり…ず……ごべん……ね。だべな…おどーざ……で……んね…………」 何度も「ごべんね」と呟きながら、まりさは次第に弱々しく体を震わせ、動かなくなった。 最後の一撃に耐えられなかったことを、まりさは後悔していた。 家族を守れずに死んでしまうのを、まりさは悲しんでいた。 何よりも、平気で約束を破った人間たちを、まりさは憎んでいた。 いろいろな感情が沸き上がり、真っ暗闇に消えていく。 (じにだくない!まりざじにだくないよ!ありず!おぢびじゃん!いっじょにもっどゆっぐりじだい!いやだあああああああ!) 最後までありすに謝りながら、まりさは永遠にゆっくりした。 誰も守ることができず、仇を取ることもできず、無意味に死んだのだ。 「死ぬ時になってようやく駄目な父親って分かっても遅いんだよ」 「まり……さ。まりさ……。よ……よくも…よぐもおおおおおおおおおお!!!」 ありすは、まりさの心意気をあざ笑った助手に、体内のカスタードが煮え立つほどの怒りを感じた。 まりさとの約束を平気で破って、まりさを殺した人間が許せなかった。 「だまれええええええ!ごのいながものおおおおおおお!おばえなんがにばりざのなにがわがるうううううう!」 「分からねーよ。こんな薄汚いゴキブリ以下のゴミの塊の考えることなんて、分かるわけねえだろ」 「ゆるざないいいいいい!よぐも!よぐもばりざをばがにじだなあああああ!よぐもおおおお!」 ありすはいままで、「とかいはじゃないわ」と使わなかった悪口を使い、助手を罵る。 そうでもしなければ、発狂しそうだった。 「悔しい?そんなに悔しいの?だったらほら、こっち来いよ。俺に体当たりしてみろよ」 「ゆぐあああああ!ゆぐう、ゆぐうううううう!うごげえええええ!ありずのあんよざん、うごいでえええええ!」 「おおうぜえうぜえ。まりさがうざいからお前もうざくてお似合いだわ、やっぱ」 「ゆぐぎぐがあああああ!!!ゆるざない!おばえはぜっだいゆるざない!みんなをごろじで、ばりざもごろじだおばえはゆるずものがあああああ!!!」 ありすがどんなに怒りに身を焦がしても、足は一歩も憎い助手の方へと動くことはなかった。 * * * 「はい。もういいよ」 「……分かりました」 「なかなか演技派だね、君。ちょっと俺も驚いたよ」 「恐縮です。大学にいた頃、演劇をやっていたものでして」 A主任の静止に、助手はすぐに応じた。 助手は別に、まりさたちに本気で腹を立てたのではない。挑発の一環として、怒った振りをして見せただけだ。 徹底的にゆっくりを虐待し、蔑み、汚物のように扱う。怯えるのではなく、人間に怒りを抱くように助手はゆっくりを誘導したのだ。 努力のかいがあって、ゆっくりたちは二人を憎み、ぎりぎりと歯ぎしりまでしている。 「では命令だ。まずはそこの赤まりさ、あそこにある熱湯を入れた鍋の中に自分から飛び込みなさい」 「ゆゆっ!あ、あんよしゃんがかっちぇにうごくんだじぇええええ!?」 「おちびちゃんどうしたのおおおおお!?」 父親に似ずに「だじぇ」口調の赤まりさの顔が、驚きで歪んだ。 「あんよしゃん!?にゃんでうごきゅにょ?まりしゃ、おかーしゃんといっしょにいちゃいんだじぇ!」 両親の知能では、ゆっくりの体に起こった異変が人間によるものだと理解できた。 無垢に育った赤ゆっくりの頭では、人間によって自分たちの体が操られていることなど想像もできない。 「おちびちゃん!あんよにちからをいれて。こっちにはねるのよ!こっちにきて!」 「しちぇるのじぇえええ!しちぇるにょに、あんよしゃんにちからいれちぇるにょに、とまらにゃいんだじぇええええええ!!」 ぴょんぴょんと必死で抵抗しているようだが、少しずつ赤まりさは家族のいる場所から遠ざかっていく。 逆に赤まりさが近づくのは、助手がコンロで沸かしていた鍋だ。 既に長時間火にかけられたことにより、中の熱湯は沸騰寸前にまで熱せられている。 ご丁寧にも、鍋の横にはゆっくり用のプールに使われている階段が備え付けられていた。 赤まりさは少しずつ階段をのぼっていく。 「ゆんやあああ!ちょまっちぇ!あんよしゃんちょまっちぇえええ!あちゅあちゅしゃんはゆっくちできにゃいいいいい!」 どんなに赤まりさが抵抗しても、体は勝手に動いていく。 ついに、鍋の縁にたどり着いた。 吹き上がる高熱の湯気が、赤まりさの顔を撫でる。 「ゆひいいい………!いやじゃぁ……。あちゅあちゅしゃんにどぼんやいちゃじゃあああ……」 「おちびちゃんんんん!だめええええええ!」 ぽとん、と赤まりさは熱湯の中へとダイブした。 最後の最後まで、両親の方を見続けた赤まりさの顔は、「どうしちぇたしゅけちぇくれにゃいにょ?」と言わんばかりだった。 「あ…あぢゅいいいいいいいい!あぢゅ!ぢゅぴっ!あぢゅうううううううう!」 「おおおおぢびぢゃああああああん!い゙や゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!」 ありすの絶叫が上がる。 高温の湯は、ほぼ一瞬で赤まりさの体を溶かしてしまったようだ。 最後の言葉である「もっとゆっくちしちゃかっちゃ」の声さえ聞こえない。 「よぐもおおおおお!よぐもありずのごどもだぢをおおおおお!!」 ありすの怒りも、ありすの体と同じように二人には届かなかった。 * * * 「ゆんやあああああ!まりしゃしにちゃくないのじぇえええええ!」 「おきゃーしゃーん!たしゅけちぇよお!にゃんでしょこにいりゅにょおおおおお!」 「ありしゅがきゃわいくにゃいにょ?おかーしゃんありしゅをたしゅけちぇええええ!!」 「お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙!おぢびぢゃあああああんん!やべでえええええ!!」 あまりにも叫びすぎたのか、正気を失いかけているありすの目の前で、恐ろしい光景が繰り広げられていた。 熱湯が満たされた鍋の縁。そこに設置された階段の最上段。 後一歩足を踏み出せば命はない危険な場所に、かわいいおちびちゃんたちが横一列で立っている。 「さて、誰からまりさの後を追って飛び込んでもらおうかな」 メガホンを持ったAが、順繰りに三匹の赤ゆっくりたちを見ていく。 「ゆんやあああああ!まりしゃはやめるんだじぇええええ!」 「ありしゅもやじゃああああ!しにちゃくにゃいいいいいいい!」 「もうやめちぇえええ!ごめんなしゃい!なにがわりゅいのかわかりゃにゃいけどごめんなしゃい!」 途端に、Aの足が止まった。 「ごめんなさい?今君はごめんなさいって言ったね」 「そうでしゅ!ありしゅでしゅ!ごめんにゃしゃい!ありしゅたちがわるかったでしゅ!」 一匹のありすは、涙を流しながらひたすら謝っている。 謝れば、助けてもらえるかもしれない。そのはかない希望にありすはすがっていた。 いつも、いけないことをしておかーさんやおとーさんに怒られても、きちんと「ごめんなしゃい」って謝れば許してくれた。 だから、このこわいおじさんも、謝れば許してくれるに違いない。 何が悪いのか分からないけど、とにかく死ぬのは嫌だった。 「そうか。ちゃんと君は謝れるんだね。ほかの子たちはどうかな?」 「ゆああああああ!ごめんなしゃい!ごめんなしゃい!まりしゃもあやまるんだじぇええええ!」 「ありしゅも!ごめんなしゃい!おじしゃんごめんなしゃい!ごめんなしゃい!ごめんなしゃああああい!」 たちまち残りの二匹も、「謝れば許してくれるかも」という希望に飛びつき、矢継ぎ早に謝る。 三匹とも必死だ。ここを先途と涙と涎を振りまき、Aの気を引こうと声を張り上げる。 「よくできたね。じゃあ、罰として死んでもらおうか」 「「「なんじぇえええええええ???ちゃんとあやまっちゃのにいいいいいいいい!!!」」」 「謝ったってことは、自分が悪いと認めたんだろう?なら罰を受けなくちゃね。そして罰は死刑。はい、みんなそこに飛び込んでね」 「「「いやじゃああああああ!!おがーじゃあああああああああ!!!ゆびぎゃびいいいいいいいい!!!」」」 三匹は揃って、親ありすに救いを求めながら鍋の中に飛び込んでいった。 「あぢゅいいいいいい!まりじゃ、まりじゃじんじゃううううううう!!」 「びびびびいいいいいいい!あびい!あびいいいいいいい!」 「もっ…ぢょ……ゆっく…………ぢ……!」 親ありすには、赤ゆっくりたちの最後は見えなかった。 だが、代わりに恐ろしい断末魔の絶叫がしっかりと届いていた。 「あ……あ……ああ……あがあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!あ゙があ゙あ゙あ゙あ゙!あああああああ!!!」 目を剥いたありすに、Aが近寄る。 ありすはAが近づいても、気が違ったかのように叫び続けるだけだ。 「命令だよ、ありす。今までのことは全部忘れて、ゆっくりしなさい」 メガホンを使って、Aはありすに命令した。 「ゆ゙っ……ゆ゙っ……ゆ゙ゆ…………」 ありすは一瞬、俯いて目を閉じた。顔がほんの少し、いつものゆっくりしたものになる。 しかし、すぐに顔を上げた。 顎が外れるほど大きく開かれた口から聞こえてきた言葉は、初めての否定だった。 「なにいっでるのおおおおおお!?まりざと!おちびぢゃんが!じんだのにどうじでゆっぐりでぎるのおおおおおおお!!!」 「命令だよ。全部忘れなさい。そしてゆっくりするんだ」 「ゆっ……ゆゆう………でぎるわげないいいいい!まりざああああああ!おぢびぢゃああああん!ゆがあああああああ!!」 「忘れるんだ。早くゆっくりしなさい」 「ゆっぐり……ゆっぐり……でぎるがああああああ!!ごのゆっぐりごろじ!ゆっぐりごろじ!おばえもじねえええええ!!」 「うん。やはりそうか。これがメガホンの限界だ。これが見たかったんだよ」 Aは、初めて命令に反抗したありすに満面の笑みを浮かべた。 これが、Aが今まで散々にありすの家族を痛めつけ、地獄を味わわせた理由だった。 「主任、どうしてです?なんでこのありすは命令に従わないんですか」 側で助手が驚きを隠せないでいる。 今まで、Aが製作したメガホンから発せられる命令に、逆らったゆっくりはいない。 中枢餡に刻み付けられた命令は、たとえ「死ね」と命令しても実行される。 「この音波は中枢餡に影響を与えるよね。どうも、中枢餡の機能はゆっくりの行動を制御するものらしいんだよ。だから逆に言えば、情緒は操れない。 それが確かめたかったんだ。ありすを見れば分かるだろう。ゆっくりしろ、と命令して体はゆっくりしているけど、それを上回る憎しみと怒りがある。 動かないでいることはできるけど、今まで体験したことを忘れたり、感情を消すことはできないんだ。そっちは普通の餡子に記録されているらしい。 これがメガホンの限界だ。ゆっくりの体は操れても、感情は操れない」 「でも、あの時主任が『笑え』って言ってまりさは笑いましたよね。あれはどうなんです?」 「ただの反射だよ。顔面の皮が中枢餡からの刺激で笑みの形になっただけ。意志とは無関係に笑わせただけだよ。そんなもん。 でもいいよね。こっちもゆっくりの意志とか感情とか関係ないし。とりあえず、ゆっくりの行動だけ操れればそれでどうでもいいや。 じゃあ、ありす捕まえて。それ、帰ったら解体して中枢餡の変化とか見るから」 「分かりました」 助手の手がありすを掴み、トランクの中にあった頑丈なケースに放り投げる。 「ゆっ…ゆぐ……がえじで!まりさをかえじで!おちびちゃんをがえじで!みんなをがえじで!ありずのゆっぐりをぜんぶがえじでよおおおおおお!」 ありすは泣いた。 すべてが奪われ、踏みにじられたことに涙を流した。 憎しみも怒りも、平和的なゆっくりの頭では長続きさせることができない。 残るのは、悲しみだけ。 ありすは泣き続けた。 研究所で生きたまま解体され、中枢餡にメスが入れられる待ち焦がれた死の時まで、ありすの涙は絶えなかった。 挿絵 byM1 02へ続く
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「あ、ありすのおにーさんはおにーさんだけよ!あんたなんて、おことわりよっ!?」 「おいおい、だからお前の飼い主はお前らなんていらないって言ってるって・・・」 「そんなのうそよっ!!!?」 ありすは今までのゆん生で一番大きな声で叫んだ。 あの優しいお兄さんがそんなこと言う訳がない。 ありすの大好きなお兄さんがありすを見捨てるはずがない。 「いやいや、嘘じゃないんだよなぁ。何せ・・・」 誰に話しかけるでもなく、あらぬ方向を向いてつぶやいた男はおもむろにお面を取り、地面に落とした。 その表情は溢れんばかりの悪意を孕み、赤ゆっくりなら見ただけで泣き出しそうなほど邪悪に歪んでいる。 しかし、ありすは彼の表情よりも顔立ちに気を取られていた。 「当の本人がそう言ってるんだからなぁ」 「お、おにーさん・・・?」 お面の下にはありすのよく知る、ありすの大好きな、ありすの家族の顔があった。 「おにーさん、どうちて・・・?」 「決まってるだろ? お前とチビ共を虐待するためさ」 「そ、そんなのうそよっ・・・!?」 予想外の事態に混乱し、状況の飲み込めないありすは右往左往しながらも男性の言葉を否定する。 しかし、彼女の目の前にいるのは確かにありすの飼い主の男性だった。 今まで見たこともないほどに邪悪な表情をしているが、どこからどう見ても見間違えるはずがない。 「で、でもぉ・・・ありすとおにーさんはかぞくなのよ!」 「家族に裏切られるのって辛いだろ?」 「それに・・・おにーさんが、ありすのおちびちゃんにひどいこと・・・」 「残念ながら俺がしたんだよ。なかなか面白かったよ」 一生懸命決して多くない語彙で男性から今の状況を否定する言葉を引き出そうとするありす。 が、男性の口から出てくる言葉に彼女の望むものはひとつとしてなかった。 「でも、おにーさんはつかまってるって・・・」 「そんなもん嘘に決まってるだろ? そもそもお前に言ったことの大半は嘘だよ、バーカ」 「ゆぐぅ・・・」 そろそろ言葉を思いつかなくなってきたらしく、ありすは俯いてしまった。 「なあ、チビ共。お前らからもこいつに何か言ってやってくれよ?」 「「「「・・・・・・」」」」 「なんだ、お前らもまったく状況が理解出来てないのか」 口を半開きにして呆然と自分を見つめる赤ありす達の姿を見て、男性はため息をついた。 が、すぐに気を取り直すと、再びありすの方を向く。 「ありす」 「ゆゆっ!?な、なあに、おにーさん?」 「お前・・・俺のペットにはなりたくないって言ってたよな?」 先ほどまでとは打って変わって、彼は柔和な笑みを浮かべている。 「ちがうわよ!ありすはおにーさんのぺっとだからおにーさんの・・・ゆぅ?」 「つまり俺のペットにはなりたくないんだよな。 それじゃ、そこでせいぜいのたれ死んでね」 「どほぢぢぇしょんなごぢょいうのおおおお!?」 今の彼の温厚な笑みは、先ほどとは打って変わってかつてのありすの大好きなお兄さんの笑顔そのもの。 それとじっと見つめていると、昔に戻ったかのような錯覚すら覚えそうになる。 「そりゃ、お前のことが大嫌いだからだ」 しかし、錯覚は錯覚に過ぎなかった。 優しい笑顔は徐々に悪意に染まって行き、攻撃的な恐ろしい笑みへと変貌してゆく。 ありすはその光景を見つめながら「器用なことが出来るもんだなぁ」と見当はずれなことを考えてしまった。 「本当にありすって奴らはよぉ・・・救いようのないクソレイパーばっかりなんだよ、わかるか?」 「あ、ありすは・・・ちがうわよ!?」 「猫被ってるだけだろ?薄皮一枚はげばすっきりの事しか考えてないクソレイパーだよ」 そんな事を口にしながら顔をしかめる男性。 彼の暗い輝きを放つ瞳の奥に、ありすは彼の悪意の根源を垣間見た。 それは・・・怒りだった。 「どうちでぞんなごどいうのおおお!?あでぃずなにもぢでないよおおお!?」 「ごちゃごちゃ五月蝿いんだよ!俺のまりさをレイプしたクソレイパーのガキが!!」 「ゆぐっ!?」 「みゃみゃああああああ!?」 「「「ふぁひゃー」」」 彼が叫び終えるのと同時に強い衝撃を受けてありすは宙を舞った。 宙を舞いながら、痛みと悲しみのせいで止まらない涙でぼやけた視界の向こうに男性の笑顔を見た。 ありすに蹴りを浴びせたと思われる右足を前に突き出した不自然な体勢で笑っていた。 「俺のまりさを犯し殺したクソッタレのガキなんだよ、お前は!」 「ゆぐぅ・・・いぢゃ、いぃ・・・」 「確かにお前が犯し殺した訳じゃない。でもな、そんなもん知ったこっちゃないんだよ!」 しかし、彼はありすを見ていなかった。 ありすの向こう側に全てのありす種の存在を見出し、彼女達を憎悪の眼差しで睨んでいた。 あくまでも狂気を孕んだ笑顔のままで。 「あの日までは俺もどこか対岸の火事のように思ってた・・・でもな、それが間違いだったんだよ」 「みゃmy・・・ゆびぃ!?」 「お、おぢびぢゃあああああん!!?」 ありすに向かって、いや世界中のありすに向かって語りかける男性は母の元に駆け寄ろうとした4つ目のありすを踏み潰した。 が、彼は彼女を潰した事に何の感慨も持っていないらしく、叫ぶありすのことなどお構いなしに語り続ける。 おかげで、ありすはようやく目の前の現実を受け入れることが出来た。 「ゆぐぅ・・・ゆっぐりりかいぢだわ・・・」 「何を?」 「おにー・・・ざんが、ゆっぐぢできだいひどだってごとよ!」 「ぶっぶー、不正解」 両手で大きなバツ印を作りながら、男は長女赤ありすに大きな足を叩きつける。 もっとも、彼自身は軽く踏んだ程度のつもりなのだが、彼女にとっては必殺の一撃以外の何者でもないだろう。 押し潰された長女赤ありすのカスタードが四方八方に飛び散った。 「おぢびぢゃああああああん!?」 「可哀想だよな。無能な馬鹿親が間違った理解をしたせいでこんな目に遭うなんて・・・」 「「おひぇーはーん」」 「お前のガキ共がどうなるかは俺の気分しだいだって事・・・理解出来たか?」 今度はピザのように薄く伸ばされた三女赤ありすの頭上に男性の足が掲げられている。 その行動の意図する所は流石にありすでも簡単に理解出来た。 勿論、彼女の力ではこの事態を打開するのは不可能であると言うことも。 「分かるよな? ありす種ってのは存在しているだけで恥ずかしいんだよ」 「・・・・・・・・・」 「そうか、分からないか。じゃあ、仕方ないな」 三女の真上にある男性の足がわずかに動く。 「や、やめでね!?ゆっぐりりがいぢだわ!りがいぢだがら、やべてね!?」 「じゃあ、言ってみろよ? 何を理解したんだ?」 「あ、あでぃずだぢは・・・いぎでるだけでゆっぐぢでぎないいながものよぉ・・・!」 これ以上子ども達を死なせないためにも、彼女は男性を下手に刺激しないようにその屈辱的な言葉を口にした。 プライドと子どもの命、どちらが大事かを見誤るほどありすは愚かではない。 全身をわなわなと震わせ、目にいっぱいの涙を溜めて、口をへの字に曲げて・・・それでもありすは子どもを優先した。 「はい、正解」 「お、おねがいよぉ・・・あぢずのおぢびぢゃ・・・」 「と言う訳で死ね」 「ゆぴぃ!?」 しかし、男性のありすに対する悪意の、憎悪の根深さを完全に見誤ってしまっていた。 もし人間ならば容易に想像出来たことだが、ありすにはそれを想像することが出来なかった。 憎い相手を、いつか裏切りの絶望を与えるためだけに慈しむという行為を可能にするほどの妄執を。 「どほぢでぞんなのごどずるのおおおおお!?」 「自分で言ったろ? 生きているだけでゆっくり出来ない田舎者だって」 「ゆひぇーん」 ありすの子どもは薄皮の次女赤ありすただ一匹。 そして今、男性の足が彼女の頭上に大きな影を作った。 彼女だけでも救いたい一心で痛む体を引きずってゆっくりと這いずるありす。 「焦るなよ。こいつは治療すれば元気になる見込みがあるし、生かしてやってもいいんだ」 「ゆゆっ!?ほ、ほんとうに・・・っ?」 「ああ、本当さ。もうお前の子どもはこいつ1匹しかいないしな」 「いっぴき・・・?ま、まりさの、まりさのおぢびぢゃ・・・」 一瞬、体を傾けて考えるような仕草をするありす。 その直後に目先の問題に気を取られて重要なことを忘れていたことに気づいた。 苦痛と屈辱と疲れきっていた表情が驚愕によってわずかに活力を取り戻す。 「ああ、あいつらならとっくに潰したよ。もういらないし」 「ど、どほぢでぇ!?あのごだちは!ありぢゅぢゃないでぢょぉ!?」 「ありすが親ってだけで同罪なんだよ」 そう呟くとポケットから子まりさ達のものと思しき帽子を取り出し、無造作に放り投げる。 破れ、ほころび、汚れ、解れた小さな山高帽はツヤのない安っぽい黒い布切れに成り果てていたが、間違いなく子ども達のものだった。 まりさ種の子どもなら生かしてもらえるかも知れない、そんな儚い期待は抱くと同時に打ち砕かれた。 「・・・・・・お、おに゛ぃざん・・・」 「何だ?」 「・・・おぢびぢゃ、だげは・・・ゆっぐぢざせであげで、ねぇ・・・!」 彼の憎悪がもはや常軌を逸していることを理解したありすは泣きながら笑う。 全てに絶望しきった果ての諦めの境地だった。 それでも無駄だろうと半ば諦めながらも最後の1匹になった子どものために命乞いをした。 「言われなくてもそのつもりさ」 「ゆっ・・・ゆっぐぢ、ありが・・・」 その一言で十分だとありすは思った。 その一言で彼が本当は優しい人なのだと信じることが出来た。 その一言で自分の子どもの無事を確信できた。 散々酷い目に遭わされ、裏切られたにもかかわらず。 「ただし・・・最低のクソレイパーとして、な」 「ゆぅ・・・ゆゆっ!?」 「お前の母親みたいなクソレイパーにしてやる、って言ったんだよ」 男性はまくし立てるように喋り続けた。 まりさを殺したありすやその子どもだけじゃもはや満たされない、と。 ただありす種を片っ端から潰すだけじゃ気がすまない、と。 ありすの子孫を命ある限り苦しめ、欺き、偽りの希望にすがりつかせて最後には絶望させてやる、と。 産まれたその瞬間にそれを後悔するするくらいの絶望をカスタードに刻み付けてやる、と。 「や、やめでぇ・・・おねがいよぉ・・・ありずのおぢびぢゃんを、でいばーにぢないでぇ!?」 「言っただろ? お前らを苦しめるのが俺の目的なんだよ。 死んだくらいでゆっくりできると思うなよ」 「お、おねがい、ぢまずぅ・・・おちびぢゃ、んをとかいはのゆっぐぢぃ・・・ゆぶぅ?!」 必死に懇願しながらありすは再び最後の1匹になってしまった我が子の元へと這いずっていく。 なんとか彼女を守ろうと、混乱と恐怖のあまりに言葉も発せず怯える彼女を慰めようと。 しかし、またしても男性に蹴り飛ばされ、ささやかな望みが叶うことは無かった。 「ゆ゛っ・・・お゛にぃ、ざぁん。ひ゛とづだけ、ゆっぐぢ・・・おぢえでねぇ」 「何だ?」 「あ゛ぢずのまま゛は・・・ほんどうに、れい・・・ゆびぃ!?」 「クソレイパーのガキでもちょっとはマシだと思ったんだがな・・・所詮クズだな」 2度蹴り飛ばされ、かなりの量のカスタードを漏らしたありすにもはや動く力も残されていない。 そんな彼女が見出した最後の希望が男性の軽蔑に満ちた眼差しによってかき消された。 「ありすのままはほんとうにれいぱーだったの?」 結局、ありすがその言葉を言い終える前に男性は次女赤ありすを捕まえて立ち去ってしまった。 「ゆっぐ・・・ゆ゛びぃ・・・」 男性の徐々に小さくなって行く背中を見つめながら、ありすは呻いた。 もはや痛みすらも感じない体で、何とか男性に追いつこうと底部に力を込めた。 けれど、一歩も動くことが出来なかった。 「おぢびぢゃ、ごべんでぇ・・・」 ありすは謝った。 自分のせいで、もっとも忌むべき存在にされてしまう我が子に。 自分の無力で守れなかった小さな命に。 自分の子どもだったばかりに理不尽な憎しみに巻き込まれた子ども達に。 「まりぢゃぁ・・・ごべんねぇ・・・」 ありすは謝った。 自分のつがいになったせいで不幸に巻き込まれたまりさに。 もっとも、ありすに彼女の末路を知る術などないのだが。 「みゃみ゛ゃ、ごべんなさぃ・・・」 ありすは謝った。 男性に言われるがままに嫌悪してしまった母に。 果たして彼女がレイパーだったのか、真偽は定かではないが。 それでも謝らずにはいられなかった。 「お゛にぃさぁ・・・ごべ、ん・・・」 ありすは謝った。 理由は分からないけれど、飼い主の男性に。 最後の最後に酷い裏切りを受け、本来憎むべきはずの彼に。 その言葉を最後にありすは二度と動かなくなった。 家に帰った男は次女赤まりさの皮の厚みを戻す作業を行いながら、一人考え込んでいた。 あのありすの表情を、絶望を見たことで多少は大事なものを奪われた憎しみから解放された。 もう、この赤ありすを叩き潰して、唯一生き残っている親まりさも処分して、新しいゆっくりでも飼おうかと。 「おい、れいぱー」 「ゆえーん、ありしゅれいぴゃーぢゃ・・・」 「うるさい」 皮の厚みを取り戻したことで何とか喋れるようになった彼女にでこピンを食らわした。 痛みからいっそう激しく泣き喚き始めるが、彼は気にも留めずに思案を続ける。 しかし、今の自分はきっと普通にゆっくりを飼っても満たされることはないだろう、と。 ありすの子ども達を嬲ったときの、曰く形容しがたい暗い快感。 ありすを絶望させていくときに感じた得体の知れない幸福感。 それらが、彼を捕えて放さなかった。 「そうだな・・・せっかくだからありすに言った事を本当にやってみようか?」 「ちょうどレイパーと可哀想な被害者も居る事だしな」 ありすやその子どもだけじゃ満たされない。 ただ片っ端から潰すだけじゃつまらない。 ありすの子孫が苦しみ、欺かれ、偽りの希望にすがりついて最後には絶望する様をもっと見たい。 産まれたその瞬間にそれを後悔するするくらいの絶望をカスタードに刻み付けてみたい。 治療を終えた男性はいつか哀れな被害者になる黒帽子を被った饅頭の元に食事を持っていった。 →ありす虐待エンドレス1へ ‐‐‐あとがき‐‐‐ ありす虐待といえば今や引退してしまったあのお方 彼の作品は本当に素晴らしかった 落として落として更に落として、もはやそこより下はないと思えるところで更に落とす 最後には肯定の言葉をもって突き落としたりと、一片の尊厳すらも残さない驚愕の虐待でしたね 氏の影響がこの作品の随所にも見られます(悲しいほど劣化してるけどな!) というか、ビデオネタのことを思い出したのがすでに70kbほど書き終えてからと言う・・・ ああ言うガチ虐待を書ける人が妬ま羨ましい byゆっくりボールマン このSSに感想をつける
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あすと ご存じ、ないのですか?! 彼こそが口笛からチャンスをつかみ 愛されDJの道を駆け上がっている 超時空カレーマニア あすとくんです! 正直すまんかった