約 1,432,495 件
https://w.atwiki.jp/luckystar-ss/pages/1609.html
春休みの時期のある日。昼前の時間に目を覚ます。 リビングに出てみるとゆーちゃんがテーブルで一枚の書類を手にしていた。 おはよう、と挨拶をかわしあって。それからお互いに苦笑しあう。ぜんぜん早くない。家族がそろう朝ご飯の機会を潰したぐ~たらな大学生がここにひとり。 「お父さん、出かけたの?」 「うん、編集部のほうに用事があるからって出かけた」 「そっか。そのプリント、パトリシアさんの?」 「うん、今日だから、ちょっとドキドキする。あ、おじさんが帰ってくる時間聞いてない。遅くなるのかな」 「んー、朝のうちに用事を済ませに行ったとも言えるから、午後のうちには帰ってくると思うよ」 交換留学生のホストファミリーがうちの家に決まった。今日がそのひとが訪れる当日。到着は夕方ごろの予定と聞いている。 「迎える準備しなきゃね。せいいっぱい腕を振るうよ、期待してて」 ぐ~たらの失点を取り戻すべく意気込んでみる。 うなずいてゆーちゃんが微笑む。頼りにしてますというその素直な表情が心地よくもあり微妙なプレッシャーでもあった。ひとを迎えるための準備なんてじっさい私もほとんど経験がない。しかも相手は外国人。上手くもてなせるかけっこう不安だったりもするのだけれど。 「買い物行こう、すこし待ってて」 だけれど不安なのはゆーちゃんもきっと同じで。だから私は姉らしい見栄を張って平然を装う。部屋着を着替えて外出の用意をする。 近所のスーパーで食材巡り。 パトリシアさんの好みを探りつつ、家でふだん食べている食卓をいつもよりもめいいっぱいていねいに。私たちの現在のプランはそんなものだった。 「どっか日本の名物がある店に外食にいけば簡単なんだろうけどねえ」 「でも、外国のひとを迎えるのにぴったりなお店っていうのもあまり思いつかないなあ」 「値段の高い料亭とか」 「それ、ぜんぜん簡単じゃないよ」 てくてくとてきとうに歩きながらメニューを吟味。 「和食を受け入れられないなんてことは気にしすぎないほうがいいのかな」 「日本に来たいって思うくらいだから、そのへんはきっとだいじょうぶだよね」 「いざとなったらエビフライを醤油で食べてもらおう」 まだ会ったことのないひとへの想像をふくらませながら買い物を済ませてゆく。パトリシアさんに好みを聞かなきゃはじまらないのだし、いまはあれこれ考えすぎてもしょうがないのだと気を取りなおした。 「よ、っと」 作業がはじまるまえのまっさらな台所のうえにドサッと材料を乗せる。ゆーちゃんの携帯に着信音が鳴る。 「おじさんから。もうちょっとで帰るって。留学生のひとが来るまでには間に合うね」 「あ、そう? じゃあどっか和菓子屋でなんかお土産買ってきてって返事しといてくれる?」 とりあえずの下ごしらえが必要なだけを取りだしつつ、あとは冷蔵庫へ。メールの返事を済ませたゆーちゃんと視線を交わす。 「んじゃ、パトリシアさんが到着するまで待機、かな?」 ちょっと緊張してきた、とゆーちゃんは言った。私もだよ、自分が緊張していることを茶化す。 お父さんがちょっと高いお菓子を持って帰宅する。どうかなあ、パトリシアさんの口にあうかなあ、と三人でぐだぐだと雑談。 問題なく家に馴染んでくれたらいい。仲良くなれたらいい。そのためにできることを、私たちなりにこうしてやってみて。 不安とワクワクの両方が大きくなっていく胸のうち。それはきっと、お祭りそのものよりもお祭りの準備のほうが楽しいということに似ていた。ひとりでは持てあましてしまいそうなその気もちをこうしてみんなで共有することにどこか安らぎを感じる。 パトリシアさんは快活なひとだった。いろいろとダイナミックなところがアメリカっぽいと思う。 特定の日本文化を好むその趣味は今日の私たちにとって良いのか悪いのか。とりあえず食べ物の好みは心配しないでいいと彼女は言った。是非、この家の食事に合わせてくださいと。 ある意味、どんな希望よりも難易度の高い注文だ。これはちょっと気合いを入れねばと、いざ、腕まくりをして台所に立った。 手伝おうか? と後ろからお父さんが声をかけてくる。 「いや、いいよ。配膳のときだけ手を貸してくれればいいかな。ゆーちゃんがパトリシアさんの勢いに飲まれないようにフォローしててよ」 「あー……たしかに」 苦笑を浮かべる。手際よく手順を進める私に、良い娘を持ったなー、なんてつぶやきながらお父さんはその場を去ってゆく。 なにを言っているんだか、と肩をすくめながら、私は目の前の作業から目を離さない。 料理もお菓子も上々の評価をいただいて私は胸をなで下ろす。当初の私たちの心配なんてどこ吹く風で彼女は馴染みまくる。 この様子だとなにも問題なく、四月からゆーちゃんといっしょに通学していってもらえるだろうと思えた。 ゆーちゃんが自分の部屋へとパトリシアさんを案内していって、リビングでお父さんとふたりきり。どちらからともなく、ほっとした、と視線を交わす。 「じゃ、後片付けしてくるよ」 「うん」 急に静かになった空気。立ち上がる際の身体やけに軽くて、ちょっとだけ戸惑いを感じた。 食器洗いを終わらせて戻ると、ちょうどゆーちゃんたちも戻ってくる。そこで、パトリシアさんが真剣な表情でお父さんを見る。 「パパさん。この家のママさんにゴアイサツさせてくれませんカ」 ゆーちゃんの部屋で私の家の家族構成の話題になったらしく、そこでお母さんのことに触れたようだ。 べつに私たちとしてはそんなことを気にしてほしくはないわけで。そういうことを難しく考えなくてもいいよとお父さんは忠告する。 「イイエ。このファミリーのなかでオセワになるのですから、ちゃんと、この家のエライひとにお祈りをさせてほしいのでス」 自分なら、きっと気を遣ってそれには触れないようにするだろうけれど。そういう考え方もあるのかと思った。 これがアメリカと日本の違いなんだろうか。それともこの子が良い子だから、こうなんだろうか。パトリシアさんが到着してからここではじめて異文化交流というものを実感した。 父の私室。仏壇の前に私たちは集まる。正面のパトリシアさんの傍らで、ゆーちゃんが正座のしかた、手の合わせ方を教えている。 ゆーちゃんが、私のほうを振り向いた。私はうなずいた。 線香の煙の匂いがする。鈴の音が響く。静謐な、お祈りの静寂が訪れる。 私はパトリシアさんの背中に、口に出さずに胸の中で声をかける。 最初は、お父さんと、そこにいるお母さんの二人からはじまったこの家族。私が生まれて、ゆーちゃんがやってきて。 そして今日、こうして私たちのことも、お母さんのことも想ってくれるあなたが訪れました。 ようこそ、あたらしい家族。 パトリシアさんは今日はゆーちゃんの部屋でいっしょに寝ることになった。ベッドじゃなく床に敷く布団を体験することを楽しみにしていた。 彼女たちが就寝するころの時間に、夜更かしのぐ~たらが再発した私はリビングに出る。 そこではお父さんが、ちびちびとお酒をやっていた。 「珍しいじゃん、お酒なんて」 「いや、さっきのパトリシアさんについ感銘されちゃってなあ」 「うん、あれはすごかった。なんていうか、すごかった」 「……最初はさ、オレとかなたの二人だけだったんだ、この家は」 「うん」 「お前が生まれて、ゆーちゃんがきて、そしてパトリシアさんが来て」 「……増えたね、家族」 「うん」 最初は父と母の二人だった。泉の家の人数が増えた明日からは、またきっと楽しい。 コメント・感想フォーム 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/pokecharaneta/pages/1732.html
英国王のスピーチ ジョージ6世 エリザベス妃(主人公の奥さん) ライオネル・ローグ ジョージ5世(主人公のお父さん) ウィンストン・チャーチル(イギリス首相) コメント 2010年に公開されたイギリスの歴史ドラマ映画。 ジョージ6世 エンペルト エリザベス妃(主人公の奥さん) ジャローダ ライオネル・ローグ フーディン ジョージ5世(主人公のお父さん) ニドキング ウィンストン・チャーチル(イギリス首相) グランブル コメント 名前 コメント すべてのコメントを見る 草案 ジョージ8世 ヤドキング 大司教コスモ・ラング フーディン メアリー王太后(主人公のお母さん) ニドクイン ウォリス・シンプソン ペルシアン -- (ユリス) 2016-10-09 10 01 40
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/544.html
「今日はクリスマスイブね。この前のペンダントのお礼を兼ねてクリスマスプレゼント」 私はラブに昨日の夜ラッピングをしたプレゼントを渡す。ラブ、喜んでくれるといいけど。 「ありがとう、せつな」 「中を見て、文句を言わないでね」 「ここで開けてもいい?・・・・アカルン使用券?」 「お父さんやお母さんにいつまでも迷惑を掛けられないから、お金をかけられなくて。 こんなものでごめんなさい」 「せつな、ありがとう。せつなから貰うものなら何でも嬉しい」 私の大好きないつものラブの笑顔。だけど、いつもより輝いて見える。 大好きな人が喜んでくれる。笑顔でいてくれる。それだけで、私も嬉しい。 お父さんもお母さんもクリスマスイブということで、早めに仕事を終わらせてくれたみたいで、4人でパーティの準備を始める。 「お母さん、刷毛で鳥肉に塗っているの、何」 「これは溶かしバターで最後に塗ると、皮がカリっと焼けて香ばしくなるの」 鳥の形そのままのお肉。お母さんが近くのお肉屋さんに特別に注文していたものらしい。 「ラブ、手に持っている緑の野菜、何」 「ピーマンだよ」 でも、今日はクリスマスパーティーなのにピーマン、どして? 「ベーコンが油が出るくらいまで焼いて、そこに適当に切ったピーマンを入れるっと。 あたしは焦げめがついたくらいいいかな。ピーマンに甘味が出て。 最後にちょっと多めに塩胡椒を入れる。お父さんのお酒のおつまみにもぴったりだよ」 「お父さんが作っているの、何」 「ホワイトシチュー。じゃがいも、人参、玉ねぎを煮込んで、ルーを入れて一煮立ちしてから火を止めて、最後に湯掻いたほうれんそうを入れる」 人参を煮ていた時点でラブは諦めていたみたいだけど、お母さんは不意をつかれたみたいで、なんとなく顔が青ざめているような気がする。 「二人とも、僕のシチュー食べられないって言うのかい」 「・・・・」 「私は精一杯、食べるわ」 「せつなは嫌いなものが入っていないかもしれないけど・・・・」 「せっちゃんはお皿出してくれる」 「はい」 「いただきます」 4人で囲む食卓。いつもの家族の団欒。 だけどいつもと違う、心が弾む感じがする。これがクリスマス? 「あたしの小さい頃なんだけどね。 サンタさんにプレゼントをくれたらお礼を言おうと思って、寝ないで待っていたことがあったんだ。 でもそこにお父さんが来たから驚いて・・・」 「そうかそれでラブは、お父さんが来たから、サンタさんが来なかったって泣いたんだね」 「なかなか泣きやまないラブをなだめるのに苦労したわよ」 私の知らないクリスマスの思い出。 でもいつか今夜のことも思い出となって、こうやって話題に出るのかもしれない。 今日はお父さんもお母さんも早く帰ってきたからか、いつもより後片付けに時間がかかったといっても、寝るというにはまだ早い時間。 自室に戻ろうとすると、 「後で、あたしの部屋に来てくれる?」 「まさか、今夜は何もしないから、多分、ねとか言っちゃったりする?」 「・・・・・・」 「そんな展開になったら、すっごく私が困るんですけど」 「せつな、もしかしてあたしの事嫌いになった?それとその口調、なんかいつものせつなじゃない。もしや、セレワターセ!!」 「違う、私だけど私じゃない」 「分かった確かに、せつなだね。今夜は何もしないから、おそらく」 「・・・・・・」 「冗談、冗談。さっきのコレ」 と言って、赤いカードを渡してくれる。私がラブに渡したプレゼント、アカルン使用券。 「コレ使ってもいい?あたし、せつなと行ってみたい所があるんだ」 「―――」 「そんな所でいいの?普段行けない所でもいいのに」 「うん、夜にせつなと行ってみたかったんだ。お母さん達が心配するから暗くなってから出かけられないし」 「じゃあ、せつな、お願い」 「分かった。アカルン、お願い」 ここは、クローバータウンストリートが見渡せる丘の上。 私が初めてお母さんと出逢った場所、そしてその夜、私に初めて家族ができた場所。 「ここは、せつなとお母さんが初めて会った所だったよね」 「そうね」 私とラブは寄り添いあって、丘の上から眼下に広がる街を眺める。 家々に明かりが灯り、街全体がまるでクリスマスツリーのよう。 あの光一つ一つに、幸せがあるのだろう。 家族でクリスマスパーティーをしていたり、 子供達がサンタさんのプレゼントを待ちながら眠っていたり、 恋人達が寄り添いながら愛を語ったりしているのだろう。 私がイースだった頃、壊していた幸せ。 私の寒さだけじゃない心の震えを感じたのか、ラブが私の肩に腕を回してくる。 「いつでも来れるのにわざわざここにしたのどして、とか思ってる? ここは、あたし達プリキュアが守ってきた街、そしてこれからも守っていく街が見える所。 あたしや美希たん、ブッキーだけじゃないよ。せつなも守ってきたんだよ、この街を。 だからこんなに幸せが満ち溢れている」 「それに、――――」 え、ラブ今何か言った? 「ううん、なんでもない。寒くなってきたね。もう帰ろう」 「うん」 私はラブの言葉に頷きながら、眼前の景色に意識を向ける。 月の光に照らされ、シロツメクサの緑の葉っぱは白い花のように、山の稜線は白く浮かび上がって見える。 山のあなたの空遠く、「幸」住むと人のいふ。 噫、われひとと尋めゆきて、涙さしぐみ、かへりきぬ。 山のあなたになほ遠く、「幸」住むと人のいふ。 山の遥かずっと向こうに幸せがあるという。 でも、私の幸せは山の向こうにあるのじゃない。 ここに、クローバータウンストリートに、そして、ラブのそばに在る。 了 本文中の詩「山のあなた」カール・ブッセ作 上田敏訳 メ-001へ
https://w.atwiki.jp/konashin/pages/1776.html
こなた「あー、もう雛祭りも終わったんだっけ」 シン「終わってから一日以上経ってるじゃないか…この雛人形って奴、片付けなくていいの か?」 こなた「そういやそうだね。でもコレ、一度出すと片付けるのが面倒臭いんだよねぇ…。 お父さんやシンの部屋にある美少女フィギュアで代用しちゃってもいい気がするね ー」 シン「雛祭りに美少女フィギュアなんて雅もへったくれも無さ過ぎだろうが! …って、そういや俺の方から言い出しといて何なんだが、どうして雛人形はすぐ片付 けちまうんだ? 一年に一度しか出さない物なら、もう一日や二日くらいは飾っていてもいいんじゃない か?」 こなた「あー、なんか前にみゆきさんから聞いたことがあるねー。確か、長く飾ってると婚期 が遅れるとか何とか――」 こなた「(って待てよ、私の婚期が遅れる…?私が結婚出来ないとなると、私がこの家を出 て暮らす可能性は低くなる。 今この家に住んでいるのはお父さんとシン、それに私だ。 つまり、私の婚期が遅れるってことは、それだけ長くお父さんや……シンと一緒に 暮らせるってことで…)」 シン「おい、こなた?」 こなた「……ねえ、シン。シンは今、私のことを家族だと思ってくれてる?」 シン「あ、ああ…まあな。お前やそうじろうさんには随分と長いこと世話になっちまってるし な…。 二人にはどれだけ感謝してもしきれないし、二人は俺にとって大切な人だと思ってる」 こなた「んじゃあさ、私やお父さんがシンはずーっとこの家に住んでもいいって言ったら、ど うする?」 シン「え、ええ?…まあ、これ以上俺はこの家に迷惑を掛けていたくないから 出来ることなら、将来的にはこの家を出て自活しようとは思っちゃいるけど…… でも、お前にそういうことを言われるっつーのは、その、なんだ、正直言ってとても嬉し い」 こなた「………そっか」 シン「こなた…それはそうと、この雛人形は片付けなくていいのか?」 こなた「いい」 シン「へっ?」 こなた「いーよ、別に。片付けなくたって。寧ろずーっと飾ったままにしておいてもいいくらい だよ」 シン「おいおい!ったく、お前って奴は本当に……ナマケモノっつーか、面倒臭がりっつー か……」 こなた「ふふーん、そんなんじゃないですよーだ」 こなた「(シンがずっとこの家で暮らしてくれるんなら、今すぐ結婚なんて出来なくてもいい。 私と一緒に、ずっとずーっと、シンが側にいてくれるんなら、私は何もいらないんだ から)」 前 戻る
https://w.atwiki.jp/kainokai/pages/78.html
餃子 元気な道産子 冬は大体試されている 某茶室ではお父さんキャラ 太刀厨らしい 立ち回りがアグレッシヴ パチンコに手をだし使用率があがっているが、 太刀厨であることに誇りを持っているため弓を使う気はないらしい。 matchに写真を見せてはコラを作られ続ける ギャラリー
https://w.atwiki.jp/chaos-blade/pages/568.html
かつての暗殺指令 二代目加藤段蔵 お父さんのかたきー! 馬場信春 おっと、危ない物を振り回すんじゃないよお譲ちゃん 二代目加藤段蔵 この動き、お前も忍者か! 馬場信春 まあ少し齧った程度だけど……って、かたき?別にあんたの親父なんて知らないけど 二代目加藤段蔵 お父さんが武田家に仕事を探しに行った時、お前に騙されたって聞いた! 馬場信春 武田家、忍者、騙す……ああ、加藤段蔵の事かい? 二代目加藤段蔵 やっぱりかたきだ!覚悟しろー、ああ、逃げるなこの卑怯者! 馬場信春 未遂に終わったんだから水に流しときなさいって、厠だけにね 次へ 一覧に戻る
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/115.html
「今日はクリスマスイブね。この前のペンダントのお礼を兼ねてクリスマスプレゼント」 私はラブに昨日の夜ラッピングをしたプレゼントを渡す。ラブ、喜んでくれるといいけど。 「ありがとう、せつな」 「中を見て、文句を言わないでね」 「ここで開けてもいい?・・・・アカルン使用券?」 「お父さんやお母さんにいつまでも迷惑を掛けられないから、お金をかけられなくて。 こんなものでごめんなさい」 「せつな、ありがとう。せつなから貰うものなら何でも嬉しい」 私の大好きないつものラブの笑顔。だけど、いつもより輝いて見える。 大好きな人が喜んでくれる。笑顔でいてくれる。それだけで、私も嬉しい。 お父さんもお母さんもクリスマスイブということで、早めに仕事を終わらせてくれたみたいで、4人でパーティの準備を始める。 「お母さん、刷毛で鳥肉に塗っているの、何」 「これは溶かしバターで最後に塗ると、皮がカリっと焼けて香ばしくなるの」 鳥の形そのままのお肉。お母さんが近くのお肉屋さんに特別に注文していたものらしい。 「ラブ、手に持っている緑の野菜、何」 「ピーマンだよ」 でも、今日はクリスマスパーティーなのにピーマン、どして? 「ベーコンが油が出るくらいまで焼いて、そこに適当に切ったピーマンを入れるっと。 あたしは焦げめがついたくらいいいかな。ピーマンに甘味が出て。 最後にちょっと多めに塩胡椒を入れる。お父さんのお酒のおつまみにもぴったりだよ」 「お父さんが作っているの、何」 「ホワイトシチュー。じゃがいも、人参、玉ねぎを煮込んで、ルーを入れて一煮立ちしてから火を止めて、最後に湯掻いたほうれんそうを入れる」 人参を煮ていた時点でラブは諦めていたみたいだけど、お母さんは不意をつかれたみたいで、なんとなく顔が青ざめているような気がする。 「二人とも、僕のシチュー食べられないって言うのかい」 「・・・・」 「私は精一杯、食べるわ」 「せつなは嫌いなものが入っていないかもしれないけど・・・・」 「せっちゃんはお皿出してくれる」 「はい」 「いただきます」 4人で囲む食卓。いつもの家族の団欒。 だけどいつもと違う、心が弾む感じがする。これがクリスマス? 「あたしの小さい頃なんだけどね。 サンタさんにプレゼントをくれたらお礼を言おうと思って、寝ないで待っていたことがあったんだ。 でもそこにお父さんが来たから驚いて・・・」 「そうかそれでラブは、お父さんが来たから、サンタさんが来なかったって泣いたんだね」 「なかなか泣きやまないラブをなだめるのに苦労したわよ」 私の知らないクリスマスの思い出。 でもいつか今夜のことも思い出となって、こうやって話題に出るのかもしれない。 今日はお父さんもお母さんも早く帰ってきたからか、いつもより後片付けに時間がかかったといっても、寝るというにはまだ早い時間。 自室に戻ろうとすると、 「後で、あたしの部屋に来てくれる?」 「まさか、今夜は何もしないから、多分、ねとか言っちゃったりする?」 「・・・・・・」 「そんな展開になったら、すっごく私が困るんですけど」 「せつな、もしかしてあたしの事嫌いになった?それとその口調、なんかいつものせつなじゃない。もしや、セレワターセ!!」 「違う、私だけど私じゃない」 「分かった確かに、せつなだね。今夜は何もしないから、おそらく」 「・・・・・・」 「冗談、冗談。さっきのコレ」 と言って、赤いカードを渡してくれる。私がラブに渡したプレゼント、アカルン使用券。 「コレ使ってもいい?あたし、せつなと行ってみたい所があるんだ」 「―――」 「そんな所でいいの?普段行けない所でもいいのに」 「うん、夜にせつなと行ってみたかったんだ。お母さん達が心配するから暗くなってから出かけられないし」 「じゃあ、せつな、お願い」 「分かった。アカルン、お願い」 ここは、クローバータウンストリートが見渡せる丘の上。 私が初めてお母さんと出逢った場所、そしてその夜、私に初めて家族ができた場所。 「ここは、せつなとお母さんが初めて会った所だったよね」 「そうね」 私とラブは寄り添いあって、丘の上から眼下に広がる街を眺める。 家々に明かりが灯り、街全体がまるでクリスマスツリーのよう。 あの光一つ一つに、幸せがあるのだろう。 家族でクリスマスパーティーをしていたり、 子供達がサンタさんのプレゼントを待ちながら眠っていたり、 恋人達が寄り添いながら愛を語ったりしているのだろう。 私がイースだった頃、壊していた幸せ。 私の寒さだけじゃない心の震えを感じたのか、ラブが私の肩に腕を回してくる。 「いつでも来れるのにわざわざここにしたのどして、とか思ってる? ここは、あたし達プリキュアが守ってきた街、そしてこれからも守っていく街が見える所。 あたしや美希たん、ブッキーだけじゃないよ。せつなも守ってきたんだよ、この街を。 だからこんなに幸せが満ち溢れている」 「それに、――――」 え、ラブ今何か言った? 「ううん、なんでもない。寒くなってきたね。もう帰ろう」 「うん」 私はラブの言葉に頷きながら、眼前の景色に意識を向ける。 月の光に照らされ、シロツメクサの緑の葉っぱは白い花のように、山の稜線は白く浮かび上がって見える。 山のあなたの空遠く、「幸」住むと人のいふ。 噫、われひとと尋めゆきて、涙さしぐみ、かへりきぬ。 山のあなたになほ遠く、「幸」住むと人のいふ。 山の遥かずっと向こうに幸せがあるという。 でも、私の幸せは山の向こうにあるのじゃない。 ここに、クローバータウンストリートに、そして、ラブのそばに在る。 了 本文中の詩「山のあなた」カール・ブッセ作 上田敏訳 SABI11はラブ視点で
https://w.atwiki.jp/trpgbqv/pages/29.html
scene19~遺志を果たして~ シーンプレイヤー PC2「聖 あかり」 事件から数日後、N市某所の墓地 GM:PC2と昴は墓地の片隅にある、小さな墓石の前に立っていた。 GM:PC2の恩師であり、昴の父親とも生みの親とも言える男がその墓石の下には眠っている。 あかり:「…。」 昴:「…。」 GM:長い沈黙から、それぞれの深い想いが窺い知れる。 GM:そんな中、先に沈黙を破ったのはPC2の方だった。 あかり:「…ねぇ、昴。孝三先生の事、どう思ってる?」 昴:「私にとっては、かけがえのないお父さんだよ。」 昴:迷う素振りも見せず即答する。 昴:再び手を合わせ目を閉じ、墓石に向かう。 昴:「お父さん、私に命をくれてありがとう。」 昴:「…敵は取ったよ。」 昴:「…。」 昴:「…お父さんが私に永見 昴を求めていたことはずっとわかってた。」 昴:「けど、私は…。」 あかり:「…ねぇ、昴。」 昴:「…なに?」 あかり:「…『あなた』は最初、『永見 昴』のコピーとして生まれた。」 あかり:「だけど、『あなた』はコピーなんかじゃなくて、一人の『人間』として生きていくことを決めたじゃない?」 昴:「そうね。」 あかり:「じゃあ、そんな『あなた』を私は何て呼べばいいのかな?」 あかり:「『昴』って今まで通り呼べばいいのか、それとも、別の呼び名が必要なのか。」 昴:「『永見 昴』でいいよ。」 昴:「確かに私は…『永見 昴』とは違う。」 昴:「けど、『永見 昴』も背負って生きていく。」 PL1:まるで永見が殺ったみたい。 PL3:ちなみにもし勝手に名前をつけるなら、考えてた名前は『ひばり』(東北の方言での『昴』の呼び名)でした。 PL4:名付け親をめぐって熾烈な争いが…。 PL3:さすがに名付け親の争いなんてしてたら過労死しそう。 PL1:名前なんになってもPC1はたぶん永見って呼ぶわ。 昴:「だって、『永見 昴』を捨てたら、きっとお父さんは悲しむから。」 昴:「あの時…、『バンダースナッチ』を倒したとき、あかりが最後に言ってた『カルマ』…。」 昴:「思ったんだ、きっとお父さんの『カルマ』が私なんだって。」 昴:「本来、死んだ人を生き返らせる事は禁忌…。」 昴:「でも、その禁忌を破って生まれてしまったのが私。」 昴:「だからこそ、私はお父さん、そして永見 昴の思いも背負って生きていくって決めたの。」 昴:「ま、私の存在が禁忌だったら、いずれは地獄の業火に焼き尽くされちゃうかも、なんてね!」 昴:墓の前から立ち上がり悪戯っぽく笑みを浮かべる。 あかり:「そう、あなたは孝三先生の『カルマ』を背負うんだ…。」 あかり:「知ってる?昴。」 あかり:「『因果応報』って言葉があるの。」 あかり:「『カルマ』と同じような意味で、こっちの方が世間一般では使われている言葉ね。」 あかり:「いいことをし続ければ、いい方向に報われ、悪いことをすればどんどん悪い方向に堕ちてゆく。」 あかり:「日常を捨て、裏切り、罪の無い人を殺め、遂には自分自身も滅びた『バンダースナッチ』がその悪い方。」 あかり:「あなたはこれから自分自身の人生を送って、その中で色んな人と出会うはず。」 あかり:「その中にはあなたに良くしてくれる人達も必ずいるわ。」 あかり:「そんな人達にちゃんと報いてあげれば、きっともっといい事が帰ってくる。」 あかり:「そして、その人たちのためにも、『バンダースナッチ』の様にならないためにも『人間性』を保ち続けるのよ?いいわね?」 あかり:「人間は、一人じゃない。」 あかり:「世の中、思ってるほど優しくもないけど、冷たくもないから。」 昴:「ありがと。」 昴:「でも私だけじゃ不安だから、あかりが見ててくれたら、嬉しいかな。」 あかり:「ふふっ、もちろんいいよ。」 あかり:安心したように微笑む。 あかり:再び墓前に手を合わせる。 あかり:「孝三先生、昴から聞いたと思うけど、敵はちゃんと討ち取りました。」 あかり:「それから『昴』の事も、私と『味方となってくれる人物』の2人で見守っていきます。」 あかり:「彼はいろんな意味で不安なので、私がちゃんと守りますから。」 あかり:「どうか……安らかに…眠ってね…。」 あかり:目から一筋の涙を流す。 昴:墓前に向き直り、再び手を合わせる。 GM:その時吹いた一陣の風は、日常に戻れた事を祝福するように穏やかだった…。 GM:次、最後!PC1! →scene20へ
https://w.atwiki.jp/zgok0079/pages/383.html
夜の旅その他の旅 533 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2006/07/13(木) 09 43 40 チャールズ・ボーモント「夜の旅その他の旅」 6点 収録15作中SFは3つぐらい。 “お父さん、なつかしいお父さん”(どうみても田中啓文作品) “かりそめの客”(チャド・オリヴァーと共作の真正バカSF) “叫ぶ男”(壮大なバカホラー) あとは超自然じゃ無いけど“越してきた夫婦”が邪悪さ10倍の ウィークエンドシャッフルみたいな感じ。 “マエストロを殺せ”みたいな普通小説が大部分だけど、 話の作り方が面白いので「特別料理」より楽しめた。
https://w.atwiki.jp/kairakunoza/pages/1584.html
揺れる感情、募る愛しさ。 私達は一度別れて、再び一つになった。 今だから分かったこの気持ちを、私は絶対に忘れない。 今が何よりも輝いて 先程までの集中的な豪雨は幻だったのだろうか。そんな事を思ってしまうぐらい今は澄みきった青空が果てしなく広がっている。 だが水をたっぷり染み込み、所々泥で汚れた形跡が見られる私達の衣服が現実だと再認識させる。 「かがみ、家来なよ。そのままじゃ気持ち悪いでしょ」 此処からかがみの家までは随分距離があるから、ずぶ濡れ泥んこ状態のかがみをこのまま帰すわけにはいかなかった。 少しでも長くかがみと一緒にいたいという私情もあったけど、口には出さない。かがみだって同じ事を思っているはずだ。 「悪いわね、お言葉に甘えるわ」 かがみは力なく微笑んで答える。 「じゃ、行こう……」 そう言って踵を返しかけた私だったが、ある事を思い出して再びかがみに向き直る。案の定かがみは私の行動の理由が分からないといった感じで、困惑した表情を見せた。 「どうしたの?」 私はかがみを追いかける際にポケットの中に捻じ込んだ指輪を取り出した。 「あ……」 かがみも思い出したように声を漏らす。 「私が……嵌めさせても良い?」 頷いて左手を差し出してくるかがみ。その前に少し手を払っていたが、付着した汚れが完全に取れるわけはなくまだ薄く残っていた。 あの悪天候の中、必死になって探してくれたという情報が私の中に流れ込んでくる。 それはかがみが私の事をずっと好きでいてくれたって示す、何よりの証拠。 嬉しくなった私はかがみの手に優しく自分の手を添えて引き寄せる。 細く綺麗な薬指に、愛し合う証が通された。 柔らかく手を包んだまま、かがみと見つめ合うと、自然と優しい笑みが零れた。 「……ふふっ、行こうか」 「うん」 笑顔を交わして、私達は歩き出した。 だが程なくして、かがみが不意にバランスを崩した。 「かがみっ!?」 私は慌てて倒れそうになるかがみの身体を抱き止める。 「あー、結構走ったからかな……力が入んないや」 情けないといった感じでかがみが現在の調子を呟く。自己嫌悪と申し訳なさが混同したかがみの顔を見て、私はかなり焦った。 大雨の中かなり無茶をしたのだろう。もしかしたら風邪を引いているのかもしれない。 「かがみ、しっかりして!」 しかし私の声には応答せず、苦しそうに呼吸を乱すかがみ。 「我ながら情けないわね……」 自らを皮肉るかがみに、私の頭が混乱し始めたその時――― 「こなた、こっちだ!」 私を呼ぶ聞きなれた男の人。その声の発信源を見ると、お父さんが公園の出入口に車を止めていた。 「お父さんグッジョッ!」 私は疲れきっているかがみを急いで背に乗せると、お父さんの元へと一心不乱に走り出した。 「熱は……ないみたい」 停車したままの車内で、自分の額とかがみの額を重ね合わせて体温の確認をする。伝わってくる感覚からして、私の心配は杞憂に終わったようだ。 かなりの時間戸外で雨に降られて冷えたはずだが、風邪と見られる症状は見当たらなかった。 「愛の力だな」 お父さんが笑って私の方を振り返った。 「かもね」 私が健康なのもかがみのその力のおかげなのかもしれない。 そうだったら良いなと思いながら、横たわって規則正しい寝息を立てているかがみを見た。 「疲れてるんだろうね、大分無理させちゃったから」 「取り敢えず濡れた身体を拭いてやれよ」 お父さんはもっともな事を言って助手席に積んでいた白色のタオルを差し出してきた。 「そうだね」 私はそれを受け取ってかがみに向き直り、思い立って再びお父さんの方を向く。 「こっち見ないでよ」 「こなた、車にはバックミラーというものがあってだな」 「こっち見んな」 「はい」 私に背を向けたお父さんとその目線の先に後写鏡がない事を確認して、私は手に持った木綿の布でかがみの髪を拭き始めた。 途中でやや癖のあるライトパープルの髪を結っていたリボンを外す。水に滴る長髪はとても綺麗で水滴が光を反射して煌いていた。 丁寧に水分を拭き取り再びお父さんの向きを確認、私はかがみの顔に作業の手を移した。自然と手つきが更に慎重になる。 露出している部分は全て終了した。さて次は……服を脱がさなければならない。 淡い黄色のブラウスに手を掛ける、その前に三度お父さんの動向をチェック。何かうんうん唸ってるけど、しっかり前を向いてくれている。 ちょっとは見直したんだけどな……私はそう思いつつボタンを一つ一つ外していく。 インナーウェアとして着用していたキャミソールの肩紐を解くと、既に透けて見えていたブラが形の整った乳房を支えている光景が目に飛び込んできた。 肌蹴た衣服、所々濡れている身体。私はごくりと喉を鳴らした。 「う、うーん……」 目の前に広がるかがみの妖艶な姿に目を奪われていると、かがみは小さく唸って眉を動かした。 「あれ、こなた……?」 目を開けて意識を取り戻したかがみは、まだ完全に開ききっていない目で私を見つめる。 「お目覚めかな?」 目を何度も瞬く、今一状況を理解出来ていない素振りを見せるかがみに私は簡潔に経緯を話した。 「そうだったの……おじさん、有り難う御座います」 「いやいや良いさ」 お父さんは片手を上げて応答する。私の目線を感じ取ったのか自分で抑制しているのか、取り敢えず此方を向きさえしなければどちらでも良かった。 事情を知らないかがみはお父さんの反応を不可思議に思ったのだろう、半ばきょとんとした顔で口を半開きにしている。眼前の相手に素っ気ない態度を取られたら、そういう反応をまずする人間が大半だろう。 「かがみ、取り敢えず身体拭いてあげるよ」 「へ……?っておわあああぁぁ!!」 ようやく自分の服装に気が回ったらしいかがみは素っ頓狂な叫び声を上げ顔を真っ赤にする。私はお父さんが『何事だ!?』とか言ってどさくさに紛れて私達を見ないように迎撃準備。 ―――どうやら取り越し苦労に終わったようだ。私は改めてかがみの方を向く。 「さ、かがみは寝てて良いよ」 「ねねね寝れるわけないでしょっ!ていうか自分でやるわよっ!」 面白いぐらい取り乱して私から強引に濡れかけのタオルを奪い取るかがみ。 「その前にあんたは自分の身体を拭きなさいよ」 顔が真っ赤なかがみに指摘されて、私はかがみを気遣うあまり自分の身体がびしょ濡れのままだという事に気づいた。 「ほら、そんな狭い場所に収まってないで」 かがみは右にずれて私が座れる分のスペースを確保してくれた。 私が出来た空白に腰を下ろすとかがみは目を逸らした。私が服を脱がした事が恥ずかしかったのか、一人で座席を占有していた事に責任を感じたのか。 そんなに気にしなくて良いのにね。そう思いながら私はお父さんの隣の席に置いてあるタオルを一枚取る。 「あ、お父さん、勝手に娘の箪笥漁ったんだ」 「着替えを持ってきた、と言ってくれないか?それに選んでくれたのはゆーちゃんだ」 その際近くに畳まれ置いてあった私の服に目がいって、そう聞くと不機嫌そうな声で返事が聞こえた。 まぁそれぐらいの配慮はするか。下着まである事だし、お父さんの言う事を信じよう。 「二着あるのは……」 「ああ、かがみちゃんの分だろうな」 入るかどうかは分からんが、とお父さんが苦笑した。私も少し笑ってそれに同意する。 「さて、男は外で待つとするかな」 おもむろに呟いてドアを開けて外に出るお父さん。さっきから度々送っていた私の目線が刺々しかったのかな。でもこの方が私達は気にする事なく着替えが出来る。あまりにも機嫌を損ねているようなら後で謝っておこう。 「かがみ、これ着替えと代えのタオル」 念の為ドアの鍵を閉め、私は二人分の衣服と新しい身体を拭く布地を手に取って後部座席に持ってくる。 「おお、さんきゅ……ってそれあんたのよね?」 上半身だけ下着姿になっていたかがみは、私のパンダがワンポイントでプリントされているトレーナーを見て言った。 「そうだよ。きついかもしんないけど我慢してね」 「分かった……何とか我慢するわ」 かがみの表情はまるで迫り来る何かに構えているようで、真剣そのものだった。 かがみが言った我慢と私が言った我慢は何か違う気がしたが、追及は止めておく。 「私も着替えよっと」 呟いて多量の水を吸い込んだ服を取り去る。その勢いに任せて同じくずぶ濡れの下着も外して、お父さんかゆーちゃんのどちらかが気を利かせて持ってきてくれた大きめの袋に放り込む。 「もう全裸かよ。早いわね」 そんな私の様子を見てかがみが呆れたように言ってくる。 「さっさと着替えた方が良いと思ってね」 風邪引いたら困るし、と私は付け加え身体の至る所で存在を主張する水滴を拭っていった。別に日常の一コマであってもでもとっとと着替えるわけだけど。 「もうちょっとファッションに気を遣ってみたら?」 スカートを両足から抜きながらかがみが提案してくる。 「うーん、でも私拘りとかないし良く分かんないしなぁ」 「私も手伝ってあげるわよ」 そういった会話を交わしながらタオルを持った手を動かす。お風呂に入ったり身体を重ねるわけでもないのに、お互い裸でいるのは何だか不思議な感覚だった。 「じゃあ……今度お願いしようかな」 「任せなさい」 力強く胸を張るかがみ。 頑張れば私も、もっと可愛くなれるかな。 かがみの為にも……少しでも可愛くなりたいな。 恋愛ってこんなにも人を変えるものなのだろうか――― そんな事を考えながら、私は長袖でニットのシャツに腕を通した。 「お父さん、もう良いよ」 私達が着替えている間、多分自主的に車外で待機していたお父さんに出発の準備が完了した事を告げる。 「おお、終わったか」 ドアが開き、お父さんと共に冷たい風が入り込んできた。呼んでもないのにやって来た寒風は私の身体を震わせる。 「さむ~い」 感じたままの感覚を小さくうずくまりながら呟く。言葉にしたからといって特に変化があるわけではないのだが、どうしても言ってしまうものなのだろう。 「かがみ、大丈夫?」 人間の性について考えていた思考を中断し、かがみに尋ねる。 しかしかがみは私の声が届いていないらしく、服を摘んで俯き何かをぼやいていた。 「ねぇこなた。私の服、今は着れない状態よね?」 何を言っているのだろうかと見ていると、不意にかがみが私の質問には答えずに聞き返してきた。 「へ?あ、うん、まだ濡れてるからね」 恐らく別の事に考えを巡らしていて耳に入ってこなかったのだろう、少し反応に遅れたが私は無視された事を気にせず、かがみの確認のような問い掛けに答えた。 「じゃあこれは私が着て帰って良いのね?」 グレーのトレーナーを指し示すかがみの目は何故かとても輝いていた。 「うん、良いけど……」 雰囲気に押されてか、ガッツポーズをしている理由は聞けなかった。 「でもそれ、小さくない?」 ぴちぴちの私の服が明らかにきつそうなかがみの装いから湧き上がった疑問をぶつける。 「平気よ、ちょっと寒いけど」 肌が露出する面積が普段より広いからだろう。かがみは正直に言って鼻を鳴らした。 「そうだ。家で風呂に入っていくか?」 お父さんがエンジンをかけ車を発進させると同時に提案した。 「お湯を張ってきてるからすぐ入れるぞ」 エネルギーが転換される音とお父さんの声が車内に響く。私達が濡れる事を予測して気を配ってくれていたようだ。 「だって。かがみ、どうする?」 「じゃあお言葉に甘えて……」 お父さんの好意を無駄にするわけにもいかないし、私達は見合った後に即決した。 「では我家へと一直線だな」 アクセルが深く踏み込まれ、ハンドルが切られた。お父さんの操作する自家用車は唸りを上げ、自宅への距離をどんどん縮めていく。 「ねぇかがみ……」 見覚えのある景色が絶え間なく動く中、私はかがみの名前を呼んだ。 「何?こなた」 呼び返された私の名はとても柔らかい響きを持っていた。 お互いに名前を呼び交わす――― 何気ない日常が、どんなに幸せな事か。 「一緒にお風呂入ろっか」 「うんっ」 かがみの満面の笑顔が、どんなに大切な事か。 私はもう、決して手放したりしない。 決して忘れない。 移りゆく情景の中、私は固く心に誓った。 車に揺られる事数十分。 「ほい、到着だ」 徐々に速度を落とし、門柱の手前で車は完全に停止した。 「有り難う御座いました」 律儀に重ね重ね感謝の意を伝えるかがみを横目に、私は使用済みの衣服等を纏めていた。 「ああ、早く温まると良い」 にこやかに返すお父さんに、かがみは何度も頭を下げてから外に出た。 「お父さん」 その一部始終を見届けてから、私は何処か遠くを眺めているような様子のお父さんに声を掛けた。 「お父さんは、全部……知ってたの?」 私達を優しく、時には厳しく、背中を押してくれたり色々な場面で助けてくれたお父さん。 「さぁな……」 そんな幾ら感謝しても足りないぐらいの、いざという時頼りになる肉親は、目を閉じて微かに白い歯を見せた。 真相は教えてくれなかったが、最初からそれを追求する気はなかった。 お父さんが私を助けてくれた事実は変わらないのだから。 「ありがとう、お父さん」 等身大の気持ちを父の横顔に送って、私は荷物を持ってドアを押し開けた。 とても優しげな表情が、私の脳裏に焼き付いていた。 車から出て、かがみが先に向かっているはずの家の扉を開く。 玄関にはかがみの後姿が、その奥にはゆーちゃんの後姿が見えた。 「ゆーちゃんと何話してたの?」 場の空気からして何か会話を交わしていた事は明白だった。佇むかがみに聞くと、かがみは私の方を振り返って答える。 「お姉ちゃんをよろしくお願いします。お姉ちゃんの笑顔を引き出せるのはあなただけですから……だって」 足音を立てて階段を上がっていく従姉妹の姿は、既に二階へと消えていた。 「ゆーちゃんにも……感謝しないとね」 私が忘れかけていた事を思い出させて後押ししてくれた、今は見えぬゆーちゃんを頭の中に思い描く。 今回の一件で、私達は身の回りの人に多大な迷惑を掛けてしまった。 だからこそ私は、かがみと一緒に幸せ者になろうと思う。 皆が優しく背中を押してくれたり、大事な事を教えてくれたり。 多くの人の支えがあったから、私達は今こうしていられる。 ―――だからその分、私達が幸せにならなくちゃ。 「こなた……」 かがみが物欲しそうに目を細めて、私の頬にそっと手を添えた。 早速かがみが幸せを分かち合おうとしている。 「良いよ、かがみ……」 私はそう囁いて、ゆっくりと目を瞑った。何も見えなくなった世界で、かがみだけを感じる。 私が微かに唇を開くと、熱を持ったかがみの舌が形成された空白を更に広げた。すぐに忍び込んでくる舌をすんなりと受け入れる。 かがみに応えようと私も舌を伸ばすと、すぐにそれらはお互いが必要とし合ったかのように存在を見つけ、唾液にまみれながら絡み合う。 かなり間が空いていたわけでもないのに、私を襲う感覚は久方振りのようであっという間に私を支配していった。 「んふぅ……」 もう少し目眩がしそうなほど熱い感覚に酔い痴れていたかったが、かがみはそっと唇を離す。 「続きは……お風呂の中でね」 代わりに額を重ねられた私は、顔を赤くするしかなかった。 「かがみ、身体の方は大丈夫?」 「うん、自分でも風邪引くかと思ったけど案外平気なものだわ」 私達は脱衣所でそんな会話をしながら、新しく着直したばかりの服と下着を籠に投げ入れた。素っ裸になった途端に寒気が到来し、私は急いで浴室へと続く扉を掴む。 浴槽にはお父さんの言った通り、冷えた身体を温めるのに十分な温度を保ったお湯が既に張られていた。 「う~、温まるねぇ」 軽く掛け湯をしながらしみじみ呟く。自分でも親父みたいな発言だとは思ったが気にしない。 「あ、ちょっと待ってこなた」 溜められたお湯に浸かろうとする私をかがみが引き止めた。 「どしたの?」 「えっと、この前さ、私の足の間に収まるようにして一緒に入ったじゃない?」 大切な部分を手で隠して恥ずかしそうに呟くかがみの声を聞き取るのは結構大変だった。それでも私は神経を集中させ、かがみの台詞から前一緒にお風呂に入った時の事を思い出す。 「うん、そうだったね」 「それでその……今度は立場を逆にして貰えたらなぁ、なんて……」 ついにかがみは顔を真っ赤にして下を向いてしまった。 「なぁんだ、勿論良いよ」 「ほ、本当?」 軽い調子で手をパタパタと振る私の仕草と返答に、かがみは潤んだ瞳のまま明るい声を出して顔を上げた。 「当たり前だよ。私達付き合ってるんだから」 私はそう返して一足先に温まるべく身体をお湯に浸した。浴槽の中からかがみを手招きする。 「らしくないね。恋人同士なんだから遠慮しなくて良いって言ったのはかがみだよ?」 「……うん、そうだったね」 笑顔を取り戻したかがみは、喜び勇んで開いた足の間に身体を入り込ませた。 「ちょ、ちょっときついね……」 しかし流石に体格差を実感せざるを得ない。本来は大きい方が下になるべきなのだから、かがみより小柄な私がこのポジションに位置すれば当然こうなるだろう。 「だ、大丈夫?」 「うん……かがみこそちょっと狭そうだけど……」 身体を目一杯折り畳んでいるかがみは何処からどう見ても無理していた。 「良いの良いの。私がしたくてやってるんだから」 かがみはそう言って体重の一部を私にあずけてきた。此方からは窺えないが、安らぎの表情を浮かべている事だろう。 私もかがみの背中に顔を摺り寄せた。かがみの香りに包まれて非常に心地が良い。 かがみとくっついていると、色々な感情が私を満たしていく。 一緒にいれば楽しくなれるし、安心出来る。 「私さ、今日お風呂二回目なんだ」 夢心地に目を閉じてかがみに語りかける。 「一回目入った時ね、もうかがみと一緒に入れないって思っちゃったの」 かがみは何の反応も示さなかったが、沈黙は私の次の言葉を待っていると勝手に解釈し、気持ちを言葉にして紡いでいく。 「でもこんなに早くまた一緒に入れて……本当に嬉しい」 「私もあの雨の中、同じような事考えてたわ」 素直な気持ちを口にすると、かがみも私がいない時の事を話し始めた。 「もうこなたと会えないんじゃないか、みたいなね」 かがみが天井を見上げる。私もそれに倣うように目線を移した。 「こなたの言う通り、私はうさちゃんなのかもしれないわね」 いつの日か交わした、皆を動物に例えた時の会話。二人で物思いに耽りその情景を思い出す。 「寂しくされると死んじゃう。私も誰かに甘えたかったのかもしれないなぁ」 普段は真面目でしっかり者みたいな印象が強いかがみ。姉としての自覚を持っているから大っぴらに甘えたりするなんて、気づいたら出来なくなっていたのだろう。 本当はとても寂しがり屋で甘えん坊な女の子なのに。 そんな強気なかがみが、私の前ではこんなにも素の自分を見せてくれる。 それがとても愛しかった。 触れ合う肌、感じる息遣い、高まる鼓動。 「かがみ……」 私はとうとう我慢が出来なくなり、目の前の恋人の名前を呼んだ。 「こなた……」 かがみは広くない湯船の中で何とか向きを変えて、私と見つめ合う体勢になった。 そして、どちらからともなく引き合った唇が重なった。 唇、次いで口内に潜り込んできたかがみの舌に歯茎と堪能される。先程は存分に味わえなかった分を埋め合わせるかのように私を求めるそれに、物足りなさを感じていた私の心も次第に満たされていった。 奥で縮こまっていた自分の舌を引き出して、熱い感覚を弄っていたかがみの舌に触れ合わせる。 「んんっ……」 私から積極的に舌を伸ばした事に驚いたのだろうか。かがみは一瞬目を見開いて声を漏らし、静かに瞼を落とした。 「んむぅ……」 負けじと舌を絡ませてくるかがみの顔は仄かに赤らんでいた。 全身を駆け巡る甘美な痺れ。身体が火照っているのは、浴室の温度が高いからというわけだけではないだろう。 「んっ……」 快楽の呼び水となるように、淫らな水音が脳内に響いた。 かがみが開眼したのを機に接合部をゆっくりと離すと妖艶な無色の糸が、私達が口づけを交わした事を表すかのように光っていた。 「かがみ……今日は思いっきり私に甘えて良いよ」 かがみの耳元で囁くと、すっと手の平を胸部に宛がう。 「ん……」 柔らかな乳房が私の手の中で形を変える度にうっとりとした声が聞こえた。何処かに切なげな響きも持ち合わせたそれは、私の理性を急速に削っていく。 逸る気持ちを抑えて、硬直して頭をもたげている乳首を指でつついた。 「んはぁ……」 更に硬さを増す、薄いピンク色の突起に刺激を与えていく。 摘む、弾く、撫でる。ありとあらゆる愛情表現の方法を不定期に繰り返しながら、私は頃合いを見計らってなだらかな丘の頂点に顔を近づけた。 「ひゃっ!」 唾液をたっぷりと乗せて、己の存在を強く主張するように突き出た部分を舌で転がす。 「あふぅ……」 悩ましげに身体を反らすかがみ。 私が愛撫する側の立場に立つ事はそう多くない。いつもかがみが頑張って私を気持ち良くさせてくれていた。 本当はもっとこうしたかったし、かがみも口には出さないけれど望んでいたんじゃないかと思う。 だから折角のこの機会を生かしたい。 かがみにも存分に絶頂を感じて貰いたい。 「あぁ……こなたぁ……」 なおも愛撫の手を休めない、そんな私の思惑を知ってかかがみは脳が蕩けてしまいそうな声で私を呼ぶ。 「そろそろ、攻守交代よっ……」 かがみは乱れるかがみの様を見て私が興奮を覚えてきた事を見抜いているのだろうか。現に私の大切な箇所はお湯とは違う液体で濡れている。 でもまだかがみをイかせてないしな…… 「ほわっ!?」 私が渋っていると、かがみは待ちかねたのか湿った私の秘所に手を伸ばしてきた。 「遅いわよ」 かがみは笑いながらそう言うと、私の身体を横方向に回転させた。 狭い浴槽の中となると身体を重ねる体位は限られてくる。 「ん~、やっぱりこの体勢が一番好きかな?」 私のほぼ頭上で呟くかがみ。最終的に私達は、かがみの足の間に私が収まるといった状態に落ち着いていた。 私もこの体勢は好きだ。かがみに包まれているような感覚になれるから。 「かがみって意外と世話好きだからじゃない?」 細かい所まで気が配れて、色々と私の事を心配してくれる心優しいかがみ。 「相手がこなただからよ」 擁護するような感じなのかなと思いかがみに聞いてみると、嬉しい答えが返ってきた。 「ん……」 それと同時に、微小な電流が私に快感を伝える。 「こなただから触りたいって思えるんだから……」 かがみは囁くように言うと、私の長い髪を掻き分けうなじに唇をつけた。 左の手は私の盛り上がりの少ない裸体を胸の辺りを中心に、右の手はお湯の中でもはっきりと分かるほどぬるぬるした粘液が湧き出す割れ目を、激しい動きで刺激していく。 「んんっ……ふあっ……」 上向きの乳首を捻り上げられ、湿った秘裂を掻き回され、汗ばんだ首筋に舌が這わされる。 同時に三点を責められ、私は別に逃げたくもないのに迫り来る淫靡な感覚から逃れたいかのように身じろぎをした。 これではそう長く持たないかもしれない。 「んんっ!」 裂け目から奥へ奥へと突き進んでくるかがみの指が与える感覚に、私は直感的にそう思った。漏らす嬌声の音量も段々上がってきている。 ―――まだ私はかがみを満足させてあげられてない。 思い残す事がないように、あまりにも早く絶頂の時を迎えてしまわないように、私は自分を律してかがみの秘所に腕を滑り込ませた。 「そう言えばかがみのあそこ触ってなかったよね」 背中と胸板が完全に密着していないのが幸いだった。私は必死で平静を装いながら、手探りで愛液が溢れる場所を探る。 「ひあっ」 どうやら的中したらしい。かがみが短く声を上げた。 私はかがみの愛撫に対抗するように、見えないままでも懸命に指を動かす。割れ目に沿って移動するかがみの指は、それを感じ取って呼応するかのようだった。 「う……ん……」 「こなた、凄い濡れてるわよ」 かがみが手を止める事なく呟いた。少しいやらしく発せられた言葉通り私の秘所から溢れ出す愛液の量は格段に増えていた。 「かがみだってぇ……ほら」 事実を誇示するかのように、私はようやく慣れてきた手つきでかがみの秘裂を左右に割る。 「そ、そうね……」 朱に染まった顔で認めるかがみがとても可愛らしくて、もっと見たくなって私は膣内への侵入を試みる。割れ目は何の躊躇いもなく私の指を沈み込ませていった。 「んんっ!あっ!」 かがみは喘ぎながらも、私の大切な部分から指を抜き差しする。 「ああっ!あんっ!」 指が根元まで肉壁に包まれた。かがみの中はとても熱く、私を迎え入れるように収縮を始める。指を動かせば動かすほど、お湯の中に多量の愛液が滲み出てきた。 「んっ……かがみっ……!」 「こなたっ……最後は一緒にっ……!」 私達の高ぶりに順応するように、ゆっくりだったペースが加速する。 引き抜き押し戻した指が強烈な力で締めつけられた、その瞬間――― 「ああ……あぁん!あっ、ああっ!」 「んっ……あ……ふあああああっ!」 電撃が流れたかのように、私達は全身を震わせた。 心地良い脱力感と達成感、お互いを求め合った証が身体に残った。 「すっかり長湯しちゃったわね」 入浴を済ませた私達は、夕食までまだ暫く時間があるとの事で家の外を散歩していた。流れ的にかがみは家に泊まっていく事になるだろう。 「そだねぇ」 私が作るつもりだったのだが、今日はお父さんとゆーちゃんがやると言って聞かなかったので、素直に二人の好意に甘える事にした。 「もうすぐ卒業かぁ、早いもんよね」 一人ひそかに夜の出来事に期待を寄せていると、隣を歩くかがみが呟いた。私達三年生は今春、色々な思い出を作った母校を離れそれぞれの進路に向かわなければならないのだ。 「あんた将来の事考えてるの?」 「ぜーんぜん」 平坦な胸を張って言いきる。予想通りかがみは溜め息をついていた。 「あ」 ふと思って、足を止める。 「どうしたの?」 数歩先行した後にかがみが振り返る。 「一つだけ、決まってるよ。将来の事」 「何?」 首を傾げる少し前に位置するかがみに近寄って、精一杯の笑顔で教えてあげる。 「毎日かがみといるの」 頬が赤く染まるのは、寒さの所為ではないだろう。 「そうね、それだけ決めてれば十分ね」 かがみはにこりと笑って――― 「さ、そろそろ帰りましょ」 私の手を握った。 風が、吹き抜ける。 「誰かに見られるかもよ?」 以前、そういった理由で近所では恋人らしい素振りをしないと約束した事を思い出して、わざと言ってみた。 冷え込む夕空の下、温もりが心に染み渡る。 「良いのよ。これからは皆に認めてもらえるよう頑張るんだから」 かがみの諭すような口調に、分かってるよと心の中で呟きながら――― 「うん、そうだよねっ」 満面の笑顔で答える私は、きっと世界一の果報者だろう。 ~Fin~ コメントフォーム 名前 コメント かがみ大好きな私には、ハッピーエンドで 良かったです。ただ、ゆたかやそうじろう が同じ家に居るので、もう少し自重するべ きかと…(最終話の風呂のあたりと玄関で) -- チャムチロ (2012-10-20 10 35 08) 最初はかがみが暴走気味なエロSSだったのに、どんどんシリアスに… 最高でした -- FOAF (2012-06-29 09 33 11) 二年ぶりに読んだけどやっぱり癒された -- 名無しさん (2010-12-20 13 17 50) ↓作品を読ませてもらってる身の上で最後にこんなコメ入れるのって最低 -- 名無しさん (2010-07-01 21 32 23) 長い割につまらないオチだった。。。 -- 名無しさん (2009-12-02 02 46 42) 泣けました( ┰_┰) 2人とも幸せになってくれ!! -- オビ下チェックは基本 (2009-06-10 16 33 32) シリーズ前半からはまったく想像できない終わり方… だ が そ れ が い い この最後のタイトルを見ただけで目から涙が…。 -- 名無しさん (2009-03-30 08 46 25) こ れ は す ば ら し い 私の涙腺が刺激された・・ -- migu (2009-01-12 05 29 24) あえて言おう・・・GJ! ただ、かがみの病気の伏線が・・・。まさか続編で謎が明らかに!? -- 名無しさん (2008-12-08 12 39 27) GJ -- 名無しさん (2008-07-19 15 00 47) 作者さまお疲れ様です 不覚にもエロ描写のあるSSで目から汗が出そうになりました というか現在進行形で出ております。 ゆーちゃんは・・・あえて何もいわないことにするよ 最後に一言 お二人ともお幸せに・・・ -- 名無しさん (2008-06-08 00 35 15) この話のゆーちゃんはこの方がいいでしょ。 可哀想だとは思うけど、既に結ばれてる両想いの二人に割って入っても誰も幸せになるわけない。 -- 名無しさん (2008-06-05 23 32 58) ゆーちゃんの立場酷くね? -- 名無しさん (2008-06-05 23 09 35) 確かにゆーちゃんは辛い立場だったと思うがそれでも、 俺は、 二人ともお幸せにとコメントする!! -- 名無しさん (2008-06-01 23 36 13) ↓必死乙 ↓ ↓ -- 名無しさん (2008-05-08 23 41 55) いいお話でした・・・!! -- 百合 (2008-05-03 11 48 01) ↓人それぞれ感想は違うんだし強請しなくてもいいんじゃないか? 確かにゆーちゃんは辛い立場だったと思うが -- 名無しさん (2008-03-24 07 36 05) ↓おまえらゆーちゃんのきもちも考えてコメのこせ!! -- 猿神兵アッシュ (2008-03-16 16 27 18) 二人とも お幸せに・・・ -- 名無しさん (2008-02-29 22 45 13) こんなすばらしいシリーズがあったなんて とても感動いたしました -- 名無しさん (2008-02-23 11 18 17) お楽しみ日曜日後の不安感に侵食される様に心が凍えそうだったけど、 再び心が通じ合う展開に心から拍手を! メリハリの効いた物語を楽しませていただきました。 -- 名無しさん (2008-01-20 22 18 32) 幸せってこういうことなんだなぁ いいなぁ -- 名無しさん (2008-01-20 14 19 41) ぶくっ… 甘い、甘すぎる!!! 二人のこれからに幸あれ。 -- 名無しさん (2008-01-18 23 05 04)