約 1,476,050 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau9/pages/2179.html
これは、『育児放棄? そんな程度じゃないんだぜ!! 中編』の続きです。 それとすみません、終われませんでした。次回で完結します。 ゲスまりさ注意 そんなまりさを制裁もの 子ゆっくりは……今回お休みです お兄さんが前面に出すぎ ストレスマッハ注意 ストレスを解消しきれない可能性あり それでも構わないという方はどうぞ下へ 育児放棄? そんな程度じゃないんだぜ!! 後編1 『まりさサイド』 「みんにゃ! これきゃらはおにーしゃんとおねーしゃんのいうこちょをきかなきゃだみぇだよ!!」 「「「「「ゆっきゅりりきゃいしちゃよ!!」」」」」 姉まりさの言葉に返事を返す妹まりさたち。 本当に理解しているか怪しいが、それでも姉妹を引っ張れる存在がいるだけでだいぶ違う。 自分たちに勉強を教えてほしい。その姉まりさのお願いを快諾したお兄さんは、同居人であるゆっくりゆうかに視線を移す。 「……ゆうか、赤まりさたちを畑に連れて行ってあげてくれ」 「……いいの、おにいさん? きっとこいつらはたけをあらすよ」 今回の事はすべて聞いているものの、やはり野生のゆっくりを畑にいれることには抵抗があるらしいゆうか。 「庭の隅にクズ野菜を埋めてた畑があったから、そこなら荒らされても大丈夫だよ。それにもし言うことを聞かなかったら………」 一気にしゃべるトーンを落としたお兄さんは、ゆうかにだけ聞こえるように対策を伝える。 本当に大丈夫なのか。彼の話を聞いても半信半疑のゆうかだが、家主の願いを無碍にするわけにもいかない。 渋々ながらそれを了承すると、箱から出された赤まりさたちを率いて台所を後にする。 「じゃあ、おしえてあげる。ちゃんとおにいさんにおれいをいってね」 「「「「「おにーしゃん、ありがちょね!!!!」」」」」 ぺそぺそと気の抜ける音を立てて、ゆうかを追いかける赤まりさたち。 お兄さんに治療してもらった姉まりさもそれに追随するが、足が潰れたままなので跳ねることができず、一回分の這いずれる距離も妹たちの半分程度だ。 また片目も失明しているせいで、時折進行方向が姉妹たちとずれてしまい、追いかけることもままならない。 するとそれに気づいた何匹かの妹が、姉の体を気遣って時折振り向いたり立ち止まって追いつくのを待っている様がみられた。 (………姉含めて6個か。結構優秀な赤ゆだな) 一度も振り返ろうとしない個体と、姉を気遣う個体を見極めるお兄さん。 その二種の距離がはっきりと分かれたところを見計らうと、玄関に向かう途中のゆうかを止めて、姉まりさとくっついていた妹たちを持ち上げた。 「大丈夫かい?」 「ゆぅ……、あんよしゃんがうごいちぇくりぇにゃいの……それにおみぇみぇも」 「そりゃあねえ、どっちも君のお母さんにぺちゃんこに潰されていたからね。けれどそのうち治せるようにしてあげるから、少しだけ我慢しててね」 「「「おねーしゃんをなおしちゃげちぇね?」」」 「わかっているさ、そのためにはまだ準備がいるからね。お姉ちゃんはそれまで我慢してね」 「ゆっきゅりりきゃいしちゃよ! おにーしゃんありがちょね!!」 お兄さんの言葉に素直に返事する赤まりさ姉妹。 無論大ウソである。彼の技量なら一日で治すことも可能である。 ただ、彼は楽しみを一度に消費したくなかったのだ。 そもそも、出たらめを形にしたような存在がゆっくりだ。真面目に治すだけ損である。 その間に姉まりさと気遣っていた姉妹にだけ、お兄さんは識別できるようこっそりと印を付ける。 目的の赤ゆたちに印をつけ終わると、お兄さんはゆうかを左手に、赤まりさ達を右手に乗せた。 「じゃ、今日はお兄さんが運んであげよう。ゆうかと他のまりさはお兄さんの後に付いてきてね」 「「「「「ゆっきゅりりきゃいしちゃよ!!!」」」」」 「ゆー、おそらをとんでるみちゃい~♪」 いまはまだ、玄関から出る際に放置していたゲスまりさと赤まりさたちを会わせるわけにはいかない。 ならば別の出口を使えばいいと言われそうだが、あくまでも家への出入りは玄関を使うということを理解させる意味もあるからだ。 こうして母と娘たちは、同じ屋根の下にいながら互いの存在に気付かない生活を送ることとなる。それを親子が知るのは、もう少しだけ先のことだ。 「それじゃゆうか。後はよろしくね」 「「「おにーしゃん、ありがちょう!! ゆっきゅりしちぇいっちぇね!!」」」 「はいはい、ゆっくりしていってね」 畑についたお兄さんが全員を降ろしてゆうかにお願いすると、彼女は頷いた仕草を見せてくれた。 それを確認して赤まりさたちに適当な声をかけると、お兄さんはすぐに畑を後にした。 後はゆっくりゆうかのドS(スパルタ)授業が行われるだろう。 もし赤まりさ達にゲスが出れば、容赦なくお仕置きをしていいと伝えてある。 姉まりさを気遣える個体を選んだのは、この時点で仲間意識の強い個体を見極めるため。 特にまりさ種の場合、姉妹でも仲間意識が弱ければすぐに裏切ってしまう。 だが赤ゆっくりならば、まだ矯正が間に合うことも少なくない。 印を得られなかった個体への手本として、お兄さんは印のある姉たちを利用する考えであった。 その狙いが外れた場合、つまり印のない妹の矯正が不可能だと判断した時は、そいつらを徹底的に虐待して賢い個体への見せしめに使えばよい。 試せるものは何でも試す。このようなチャレンジ精神が、日々新たな虐待を生み出すのだ。そうお兄さんは信じていた。 「さて、それじゃいよいよ矯正の効かないゲスに移りますか……」 お兄さんは家に戻ると、今度はゲスまりさの箱を抱え、お馴染みの虐待部屋へと移動した。 そこに転がるは虐待お兄さんたちの必需品となる様々な道具たち。 かぴかぴになった餡子がいまだこびり付くスプーン。 たっぷりと砂糖水が染み込んだ釘バット。 何度も使用されて硬さを失ってしまったハリセン。 饅頭を焼くためだけに準備された鉄板。 赤ゆの足を痛めつけるための定規等など…。 お子様の文房具から本格的な拷問具まで、品ぞろえはばっちりだ。 ゆにゃゆにゃ、と幸せそうに居眠りしているまりさ。いつの間に気絶から睡眠へと移行したのだろうか。相も変わらず図太いナマモノである。 やれやれとお兄さんは苦笑した次の瞬間、彼は抱えていた箱を思い切り部屋の床へと叩き落とした。 ッッガァン!!!! 「ゆぎゃあああああああ!?」 完全な防音仕様の部屋の中にだけ響く衝撃音とまりさの悲鳴。 本気で落としたのにヒビ一つ入らない加工所特製の箱を見て、満足そうなお兄さん。 相変わらずいい仕事をしてくれる職員の皆様だ。 「ゆっ!? なに!? なんなんだぜ!?」 「やあ、ゲス饅頭。ゆっくりしていってね」 目が覚めたばかりで状況を把握していないまりさに対し、お兄さんは爽やかな笑顔で毒を吐いた。 「ゆ!? ゆっくりしていってね!! ……ゆ!? うごけないんだぜ!?」 「そりゃあね、箱の中にいるんだから仕方ないじゃない?」 「ゆ!! じじいがまりささまを………!」 そこまで言って、まりさはお兄さんの顔を見て凍りついた。 目の前の人間の顔を思い出したのか、次第に餡子の詰まった身体が震えだす。 「どうしたんだい?」 「な……なんでもないんだぜ……です」 ゆっくりが隠し事などできるはずもないが、お兄さんはあえて気付かないふりを続ける。 「まあ、別にいいよ。これからまりさには、罰を受けてもらうから」 「ゆ!?」 罰。その言葉に敏感に反応するまりさ。 餡子脳の饅頭でも、その言葉の意味はわかる。 「な、なんでまりさがそんなものをうけなきゃいけないんだぜ!?」 「だってまりさは野菜を食べたんでしょ? さっき言ったよね」 「ゆ……!? ゆ、そ、そうだよ!! まりさはしょうじきにはなしたよ!! だからおにいさんはおやさいさんをよこすんだぜ!!」 「ん? …………ああ。そういえば約束したっけ。ちょっと待ってな」 まりさが言った内容とは、彼の質問に対して正直に話せばお兄さんが野菜をあげるというものだった。 自分に都合の悪いこと以外は、わりと記憶力のいい餡子脳。 愛護派でもない限り、饅頭との約束なんて守る必要がないというのが、一般的である。 とはいえ、約束は約束だ。お兄さんは台所から約束のりんごと大根と人参を持って来る。 もちろん、彼がそのまま言うことを聞くつもりは全くないのだが……。 「おいしそうなやさいさんなんだぜ!! はやくここからだしてまりささまにおやさいをたべさせるんだぜ!!」 目の前の野菜に意識を持っていかれたまりさは、すぐにお兄さんへの恐怖を忘れて命令する。 だが、もはやその程度など些細なこと。 おにいさんは無言でまりさの髪を引っ張ると、言われたとおり箱の外へ放り投げる。 ゆべっ、と悲鳴をあげて転がるまりさだが、今はそれよりも目の前の食べ物だ。 すぐに起き上がると、お兄さんの持つ野菜へと飛び跳ねて食いつこうと飛び跳ねる。 だから、まりさは先ほど見たお兄さんの顔が、いまどんな表情をしているのか知ることができなかった。 もし気づいていたとしても、その未来は変わらなかったではあろうが……。 「はやく!! はやくまりささまにおやさいをよこすんだぜ!! たべさせるんだぜ!!」 「…………そう。それじゃ、お望みどおり食べさせてあげる………よ!」 めごりっ!! 合図も何もない。全くの不意打ちだった。 よ! の部分で、お兄さんはりんごをまりさの顔面へと投げつけたのだ。 「ゆべあぁぁぁぁぁっ!!」 りんごを与えられたまりさに待っていたのは、むーしゃむーしゃ♪ ではなく、しあわせー♪ でもなく、顔の潰れるような激痛。 食べ物といえど人間の力によって放たれた固形物は、ゆっくりにとって驚異の威力を発揮する。 瑞々しいリンゴは、音を立ててまりさの鼻に当たる部分にめり込んだ。 「ゆべあ!? ぶあああ!? ば、ばりざのおがお!? いだいいだいいだいいいいいいいい!!」 「あぁ、まりさ。ダメだよ、ちゃんと受け止めなきゃ………」 突然の痛みにのたうつまりさ。 対するお兄さんは、まるで子供の粗相を優しく咎めるような口調。 「な…、なにずるんだぜええ!! じじいはまりざざまにおやざいをよごぜえええ!!」 「あげてるじゃないか。まりさがちゃんと受け止めないからだよ」 手に抱えた人参と大根を持ち上げながら、お兄さんは当然とばかりに答える。 「『食べさせろ』って言われたからね。僕がしっかりお口に運んであげるよ」 お兄さんの回答に、ゲスまりさはそれがどういう意味を持つか理解した。 もともと狡賢い種族だ。言葉の裏に含まれる意図に気づくのにも時間はかからなかった。 「ゆ、ゆっぐりじねええええええ!!」 「あ、大根食べる?」 ばぢん!! 一杯食わされた。ハメられた。ゲスまりさはその事実に激怒し、彼に食ってかかる。 対するお兄さんは握っていた大根で、熱烈に飛び込んできたまりさの顔面をクリーンヒット。まりさの話なんて聞いちゃいない。 カウンターの衝撃に、身体全体を回転させて吹っ飛ぶまりさ。部屋の壁に顔をぶつけ、その際に小麦粉の皮膚が一部削れる。 「ゆべがああああああ!?」 「ほら、はやく食べなよ。ちゃんと口を開けるんだ」 「!? …ま……まっで! まっでええええ!!」 「はい、あーー……ん!」 文字通り身を削られる痛みに泣き叫ぶゲスまりさ。 このままではいけない。本能で一度態勢を整えようと身を捩じらせる。 だが、あくまでもお兄さんは自分のペースを崩さない。 頬を打たれた拍子にまりさの顔から転がり落ちたりんごを拾い、今度は悲鳴を上げる口に叩きつけた。 餡子脳では反応していたが、痛みに動きが鈍っていたゲスまりさは結局、為す術なくその直撃を受ける。 みぢりっ……! 歯茎の裂ける音とともに、ゲスまりさの口から液状餡子にまみれた前歯が何本か転がり落ちた。 「びゃぎゃ!? びゃりびゃにょびゃが!?」(歯が!? まりさの歯が!?) 「ああもう……、落としちゃダメだって……の!」 まりさの悲鳴は、一回ごとに大きくなるにつれて、意味が聞き取りづらくなっていく。 しかし、お兄さんはそんなことを気にしない。再び大根を食べさせようとまりさに近づいた。 「ゆひっ…!? ゆびぃぃぃあぁぁぁぁぁぁぁっ!! ぐるな!! ぐるなあああああああ!! ……ゆごびゅっ!?」 「来てほしくなかったら、逃げるんだ。でもそうなると野菜は食べられないよ?」 最初は野菜に気を取られていたまりさも、ここまで来るとそれどころではない。 いや、そもそもまりさが意識を食べ物に向けることを許されていた時間は一分も無かった。 ゆっくりにとっては広い部屋を、必死に這いずって逃げ回る。 しかし、人間にとってみれば本当に小部屋である。まりさがどんなに逃げたと思っても、五歩もかからず追いつける程度の。 また隠れて休もうにも、まりさが身をひそめるような隙間はどこにもなかった。そして追いつかれれば、また大根とリンゴ。 必死に距離を取ろうと逃げる間。ゲスまりさの脳裏に浮かんだのは、恐怖だった。 このゲスまりさは、人間というものが自分たちにとってゆっくりできない存在であることを知っていた。 知ってはいたが、それは鈍くさい他のゆっくりだからそんな目にあうのだと考えていた。 狩りに秀でて賢い自分がやれば、人間なんてすぐに倒してしまえる。いや、それよりも下僕にして利用しよう。そう企んでいた。 だが現実はどうだ。まんまと人間の罠にかかり、なまじ賢い分人間との実力差を理解してしまった。 こんなことになるなら、最初から自分の娘たちを交換道具として扱えばよかった。 元々春になれば捨てるつもりだった子供だ。夫のれいむもいない今、不要な子供をまりさが育てる理由もない。 そうだ、全てはあのガキどもが悪いんだ。あいつらがいたから人間の里へ来てしまったのだ。 あのゴミどもを自分が人間のための奴隷として躾ると提案すれば、喜んで受け入れてくれるだろう。 少しは自分の餡子を受け継いでいるのだから、物覚えはいいはずだ。 言うことを聞かないやつがいれば、人間に食べさせればいい。全部潰して逃げるということだってできる。 もしかすると、お礼に美味しいごはんを用意してくれるかもしれない。いや、きっとそうに決まってる。 そうと決まれば、早くこの素晴らしい提案を人間に伝えよう。自分は悪くない。被害者なんだって。 そうすれば、人間も同情してくれるに違いない。赤まりさたちは憎たらしい顔をしていたが、自分はこんなに美ゆっくりなんだから。 だから……だから早く止めてええええええええええ!!!! 叫びたくとも叫べない。うかつに声を出そうとすれば、先ほどのように口を痛めてしまうことに、ゲスまりさは気づいていた。 そんなまりさの懇願など知らず、お兄さんはまりさの顔に向けて野菜を向ける。 起き上がれば大根、倒れればリンゴの大盤振る舞いだ。 「ぼ、ぼうやべで……いだいのいやだぁぁぁぁ……」 この行動が5分ほど続いた頃、呆れるほど遅いながら全力で逃げていたまりさは体力の限界を迎えた。 限界まで動かした身体は痙攣気味に激しく上下し、時折少量の餡子が、口から濁った音と共に噴き出して床を汚す。 先ほどまでふてぶてしかったその顔は、りんごや大根によって何本も歯が抜けおち、顔の所々は内出餡で黒ずんでいる。 恐怖と激痛によって穴と言う穴から垂れ流した砂糖水が、フローリングの床に水たまりを作っていた。 まりさ種自慢の帽子も、初めの時より半分以上も潰れて縮んでいた。これでは鍋を逆さまにして被っているのと大差ない。 「じゃ、お野菜さんはもういらないんだね。……残念だな、すごく新鮮ですごくゆっくりできた大根さんたちだったのに……」 やれやれ…。とお兄さんはため息をついて首を振る。あざとい、さすが虐待お兄さん、あざとい。 そんな彼が握る大根とリンゴはいまだ無傷。野菜は食べるものであって、遊ぶものではない。それを忠実に守っているお兄さんであった。 「じ……じじいがだべざぜでぐれないがらでじょおおおおお!!」 「食べさせてあげようとしたのに、まりさが逃げたり口を閉じたりするからだよ。そんなこともわからないの? 馬鹿なの? 死ぬの? ……あ、それと」 何かを思い出したようにお兄さんは言葉を切ると、何の躊躇もなくゲスまりさのぐずぐずになった顔へ指先をぶち込んだ。 ずぶり。という音とともに、湿った感触がお兄さんの指の先端へ伝わってくる。 「ゆがああああああ!? いだい!! いだいいいいいいいい!!!」 「その薄汚い喋り方を今すぐ止めろ。このゲスが」 「おがおづぶれるうううううう!!」(お顔潰れるうううう!!) 「潰れたって死にはしないよ」 「やべでぬいでいだいいだいぬいでいだいやべでいだいいだいいいいい!!」 「黙れ」 「おべがいじまずごろざないでぐだざい!! おべがいじまずおべがいじばず!!!」 「動くな、死ぬぞ」 死ぬ。突如雰囲気を豹変させたお兄さんに、自分が最も恐れる単語を言われて、まりさは口をつぐむ。 危機管理能力が疎いゆっくりでも、さすがに自分の現状を理解できたようだ。 お兄さんが刺しこんだ箇所は、ゲスまりさの眉の部分であった。 指を全て頭へ埋めこむと、指先を僅かに動かして中枢餡付近に食いこませる。 「いいかい、ゲス饅頭。いまから僕の話をよく聞いてね?」 「ど、どぼじでごんなごど……」 「返事」 ぐずり…… 指を動かして、体内の餡子をかき混ぜる振動を直に伝える。 「わがりまじだ! なんでもぎぎばず! だがらごろざ…!」 「うるさい」 「ゆぐりいいいいい!!」 「もしまた生意気な口…。さっきのじじいとかね。ああいうことを言ったら、まりさの中身を全部出すからね。理解出来た?」 「ゆ……、ゆっぐりりがいじだよ…!!」 「敬語忘れてるよ」 「ゆゆゆゆゆっぐりりがいじまじだ!!!」 痛みと不快感の中で、まりさはお兄さんの言葉を待つしかなかった。 間近に見える死。まりさはそれを回避するために全意識を集中させる。 その反応に満足そうな表情のお兄さん。いつの間にか口調も元に戻っていた。 「話は簡単だ。まりさはどうしてこんな目にあってるのかな?」 「ゆ……、ば、ばりざのあがぢゃんがわるいんだよ!! わがままばがりいっで、ばりざをごばらぜるがら!!」 「答えになっていません。はいお仕置き」 お兄さんは手首を回すと、額に当たる部分の餡子をぐりぐりとかき回した。 「ゆぎゃ!? ゆびょ!? びょ! ゆっっぴょ!? ゆっぐ!?」 「次はこんなもんじゃないぞー? それとも、身体の中ぐちゃぐちゃにされたいの?」 ぐずりぐずりと体内から湧き上がる音にパニックを起こすまりさ。 それが治まるのを待って、再びおにいさんは声をかける。 体内をかき回されたことにショックを受けたまりさは、大人しくお兄さんの質問に答えるようになった。 自分たちはぎりぎりで冬を越せたが、量が足りないため人間の畑に餌を取りに来たこと。 番のれいむが死んだことで育児が面倒になり、赤ゆたちを最初から捨てる考えだったこと。 人間はゆっくりより弱いと考えていたこと。 一刻も早く手を抜いてもらいたい。そのためにまりさは偽りを騙る手間さえ惜しんでいた。 だがまりさは体験したことない責め苦に怯えながらも、自分が先ほど考えていた提案を口にする。 「じ、……おにいざん! ば、ばりざのおはなしをゆっぐりぎいでね!? ぎっどすごぐおどろぐよ!!」 「ん……お話?」 「ば、ばりざがあのおぢびじゃんだぢをどれいにぞだでであげるよ!!」(あのおちびちゃんたちを奴隷に育ててあげるよ) 餡子をこねくり回す手を止めて、お兄さんはまりさの顔を覗き込む。 かかった。ゲスまりさは心の中で笑みを浮かべながら、自分の提案を口にする。 その間お兄さんは空いていた手を顎に当て、何事か考えるそぶりを見せていた。 「…ど、どうおにいざん!? ごはんはうんうんだげだべざぜるじ、ずっぎりのあいでもできるようにざぜるよ!?」 お兄さんはずっと黙っているが、まりさには手ごたえがあったと根拠のない確信があった。 もしかすると、まりさの考えに驚いて声が出ないのかもしれない。 やがてお兄さんが口の端を釣り上げて自分を見下ろす。 そうして受け入れられる自分の未来を想像し…… 「お断りします」 「ゆ゛っ!?」 お兄さんから明確な拒絶を食らい、痛みも忘れて固まった。 ああ、よく似た親子だ。その様子を見て、お兄さんは苦笑する。 そもそも、子供を奴隷とする様なゆっくりと取引するつもりはなかった。 それにいつの間にか敬語も忘れている。だから早くお仕置きという名の虐待に移りたいのだ。 真面目に取り合うだけ時間の無駄だ。適当な嘘でお兄さんはこの話を切り上げることにした。 「あのゲス饅頭どもさ、全然使えなかったよ。ゴミだねゴミ」 「ゆ!?」 そんなはずはない。まりさは咄嗟にそう口に出そうとしたが、続くお兄さんに遮られる形となった。 「全く、言った話を聞きやしないし覚えもしない。ほとんど潰しちゃったよ」 「ど、どぼじでぞんなごどじだのおおおお!?」 「だって捨てたじゃないか。それをどう扱おうが僕の勝手だよ。もういないけど」 「じゃあばりざをゆるじでよおおおおお!!」 「ダメだよ、お野菜食べたんだし。それに、あの赤まりさたちは役に立たなかったし……もういないけど」 「ばりざのごどもがやぐにだだないわげないでじょおおおお!? ばがなの!? じぬの!?」 「まあ、そんなわけで穴埋めをゲスまりさにしてもらうことと相成りました。はい拍手」 「どぼじでぞんなごどいうのおおおおおおお!?」 「それにさ、ゲスの子供が何の役に立つの、ゴミでしょ。そんなこともわからないの? 馬鹿なの? 死ぬの?」 「ばりざばげすじゃないいいいいいいいいいい!!」 「全く。赤ん坊も言ってたよ。おかーさんを潰してまりさを助けてね、ってさ。もういないけど」 「ゆがあああああああ!! ぐぞばりざどもおおおおおおおお!!」 「いや、お前の子だし。役に立たないとことかそっくりだね。もういないけど」 「あんなのばりざのごどぼじゃないいいい!!」 「じゃあやっぱり好きにしていいんだよね。もういないけど」 「ゆっぐりじねえええええええ!!」 「一々煩いんだよこのゲス饅頭」 ここでようやくお兄さんはまりさの中に突っ込んでいた手を引いた。その手にわずかばかりのオマケを掴んでいる。 「ゆぎゃああああああ!! ば、ばりざのおべべえええええええええ!!」 「全く、敬語を使えと言っただろうに……あと、うるさい」 彼はまりさの顔から手を引き抜くと同時に手首のスナップを利かせ、掻き出す要領でまりさの眼から頬にかけて削ぎ落としていた。 ぽっかりと顔の左上半分が削られたまりさ。さぞかし甘くなったはずの餡子は、まりさが垂れ流した水分が多すぎて硬くなっていた。 お兄さんは掴んだ餡子を手の中でおにぎりの様に固めると、それを部屋の隅へ放り投げる。 「……あれは餡団子なのか、はたまた善哉の素になるのか……それが問題だ」 「ば、ばりざ! ばりざのおべべがえぜえええ!!」 その様子を見ていたまりさは餡子の転がった隅へ這いずると、どうにか自分の身体を取り返そうと舌を伸ばす。 だが、そんなことを許すほど虐待お兄さんは優しくない。 「はい、よく聞いてねゲスまりさ。じゃないと踏み潰すよ。この舌」 「ゆひぇ!?」 もう少しで届く、そう思って全神経を集中させた先端部分に、お兄さんは容赦なく足を置いた。 「まりさにはこれからしばらくの間、子供たちの分までお仕置きを受けてもらいます」 「ゆひぇひぇひぇ! ゆひゃんひゃにょほ!!」 「何言ってるかわかんないんで、こっちが勝手にしゃべるよ。それとも、踏みつぶしたらちゃんと喋れるかな?」 赤くなったり青くなったり忙しい饅頭だ。お兄さんは悪戯に足に力を込める。 残った片目が大きく見開かれた直後、すぐにまた力を抜く。安心したらまた力を込める。 お兄さんはこれを何度か繰り返し、お仕置きが嫌ならここで潰されるかと迫った。 その選択に、もはやまりさは目を伏せて諦めるしかなかった。 絶望を顔に張り付けた土饅頭を見て、ようやくお兄さんは舌から足を離す。 「じゃあ、まりさ。いよいよ本格的なお仕置きに行こうか?」 「あ、あれがおじおぎじゃないの!?」 当然です。 お兄さんはオレンジジュースを混ぜて練った小麦粉の塊をまりさの顔にくっつけて応急処置をすると、部屋を見渡して道具を探す。 「……そうだ。これにしよう」 「ゆ!? なにをずるの!? ぼうばりざをいじめないでね!? ゆっぐりざぜでね!!」 「ああ、終わったらゆっくりできるよ。……まあ、したくなくてもすることになるけど」 「おべがいだがらゆっぐりざぜでええええええええええ!!」 「はいはい、ゆっくりゆっくり」 適当に答えながら部屋の中を物色していると、ある物を発見して動きを止めた。 それは以前解体したゆっくりまりさの舌の長さを測るために使用した定規と、番いのありすの目の前で引き抜いた舌を輪切りにするために使った包丁。 そして輪切りにされた舌をありすに食べさせるために使用した爪楊枝だった。 結局ありすはまりさの舌を食べた直後に発狂し、自ら包丁を無理やり飲み込んで死んだ。 その二匹の亡骸は今、我が家のゆうかの畑の栄養としてゆっくりしていることだろう。 「そうだ、いい事を思いついた……」 お兄さんは早速それらをまとめて抱え上げると、すぐにまりさの方へ向き直る。 「ゆ!? なにずるの!? やべでね!! ゆっぐりできないがらやべでね!!」 「だから、終わったらさせてあげるって」 それだけ言うと、お兄さんは距離を取ろうとしていたまりさを髪を掴んでひっくり返す。 その拍子に帽子がとれたと騒がれても迷惑なので、素早く頭の下に敷いてやる。 潰れるとかゆっくりできないとか騒いだが、すでに直し様のない状態だったので、お兄さんは黙殺した。 「や、やべるんだぜ!! ゆっぐりできないんだぜ!! ゆっぐりじないでもどずんだぜ!?」 「うへぁ……気持ち悪」 少しの間だけとはいえ、休めたことで落ち着いたのだろうか。口調が「だぜ」に戻っていた。 それにしても、どうやらゆっくりは自分で起き上がることが難しいのは本当らしい。 横倒しならまだしも、逆さまにされると体を揺らすのも厳しいようだ。 うねうねうねうねうねうねうねうね……と、ゆっくりで言う『足』の部分が忙しなく動いている。 それはまるで、波打つ芋虫の背中のようだった。きもい、さすがゆっくり、きもい。 一瞬決意を挫かれそうになるお兄さんだが、そこは虐待魂。意を決して波打つ底辺に包丁を当てる。 残念だが、こんなにうねるようでは定規は役に立ちそうにないので放り投げる。 「なに!? なにをずるんだぜええええ!?」 自分で確認できない場所に何かをされる。その事実に、まりさは声を震わせた。 すでに片目付近がごっそりと失われているのだ。死角が増えている今、自分の状況を知ることは無理だろう。 さてと、これからは集中力が大事である。彼は素早く包丁を突き立てた。 失敗しても支障はないが、やはり自分なりに難易度を上げるのも一興だろう。 お兄さんは大きく息を吐くと、すっと深く長い一本線の切り込みをまりさの足に引いていく。 「ゆぎゃあああああ!? なに!? なにじでるんだぜええええええ!!」 「何って、足を切ってるんだよ……」 「やべでよおおお!! ばりざあるげなぐなっぢゃうでじょおおお!!」 あ、また「だぜ」口調じゃなくなった。 だがそんなことはどうでもいい。 「まりさ、これはお仕置きだ。もう二度と君が狩りをできない身体にするんだよ」 「ゆぎゃあああ!! おべがいでず! やべでぐだざい!! ばりざあるげなぐなっぢゃうううう!!」 「……当然じゃないか。その為にしているんだから」 何を言ってるんだい? お兄さんは呆れた声でまりさの足へ切り込みを入れていく。 「いやだあああああああ!! あるげなぐなるのいやだああああああ!!」 「そりゃ僕だって嫌だよ。でもまりさはお仕置きだからね。ゆっくり切られてね」 「ばりざなんいもじでないいいいい!! いだいいだいよおおおやべでくだざいいいいい!!」 「人の畑に入ったし、子供を見捨てた。それに何より饅頭風情が人間をバカにした。殺されないだけいいと思うんだね」 「ごべんなざい、もうじまぜん! にどとじまぜん!! いうごどだっでぎぎまずがらあああああ!!」 「じゃあ動くなよ。足を切り落とすのが面倒になるから」 「あじをぎらないでぐだざいいいいいいいいいい!!」 「相変わらず無茶を言う…。なら、加工所に行こうか?」 「かこうじょいやだああああああああああ!!」 「だったら、諦めるんだね」 まりさの意味のない声を聞き流して、お兄さんはさらに包丁を突き刺して切り込みを入れていく。 それは寺小屋で子供たちが画用紙を縦に切って短冊を作るのと、よく似ていた。 数分後、彼の目の前には、縦に何本もの切り込みを入れられたまりさがひっくり返っていた。 その顔は水分を出し切ったはずなのに、まだ砂糖水の涙でぐしょぐしょに濡れていた。 「ふう……」 「ゆぐっ……、こんなんじゃもうばりざゆっぐりでぎないいいいい……」 まりさは自分で見ることはできないが、どんな風にされてしまったのかは感覚でわかるのだろう。 縦に切られた足はまだ時折動くが、先ほどまでの様に元気よく波を立てることができなくなっていた。 うねる波が不規則になり、その隙間からは餡子が見え隠れする。 中身を傷をつけずに捌けたことに彼は少しばかりの達成感。 だが、これならまだ十分治癒できる程度だ。お兄さんはまりさに声をかける。 「まさか、これくらいならすぐに治るよ」 「ゆ!? ぼんど!? なおるの!?」 「もちろん。だから、もっと切らないとダメだね」 無論、絶望を与えるために。 「ごのおにいいいい!! あぐまああああ!! ゆっぐりじねえええええええええ!!」 「ははは、ありがとう。それなら、本当に悪魔みたいなことをしてあげようか?」 「ばなぜ!! もどぜ!! ばりざをだずげろおおおおおおお!!」 「さーて、次は横に細切れだー」 まりさの罵詈雑言など当然スルー。 むしろ、余計な事を言えば尚更痛い目を見ると教えてやる。 お兄さんは先ほど切り込みをを入れた傷に交わるように、今度は横に包丁の切っ先を走らせた。 縦で慣れたおかげもあり、横切りは実にスムーズに進む。 「やべでよおおおお!!! いだいよおおおおおお!!」 「止めろと言われてやめるわけないじゃないか、馬鹿なの? 死ぬの?」 「やべで!! やべでよ!! どぼじでごんばごどずるのおおおおお!?」 「何言ってるかわかんないよ。……ほい、半分」 「おにいざんだっで、いだいごどざれだらいやでじょおおおおお!!」(痛いことされたらいやでしょおおお) 「うん、嫌だね。だから人は悪い事をしないんだよ。でも、まりさは悪いゆっくりだから仕方無いの」 「おにいざんがゆるじでぐれればいいんだよおおおおおお!! ぞんなごどもわがらないの!? ばがなの!? じぬの!?」 「ええと……、………そうだあれだ。『絶対に許さない、絶対にだ』」 「どぼじでぞんなごどいうのおおおおお!? いだいいだいいだいだいいだい!!」 「ははは、そんな流れに運んだまりさが悪いんだよ。……よし、できた」 絶えず痛みを訴えるまりさを適当にあしらいつつ、お兄さんは順調に作業を進めていた。 そしてようやく完成したことに満足すると、額の汗をぬぐう仕草をする。 お兄さんの前にあるもの。それはいくつもの見事な正方形に区分けされたまりさの底面だった。 ちょうど、将棋盤のようなものだと思ってもらえればいいだろう。 そんな細かく切り分けられたまりさの小麦粉の皮膚は、辛うじて中身の餡子とくっついてる程度だ。 動かそうとしてもここまで(あるかわからない)神経を断裂されると、それは最早無理なこと。 人間で言うならば、足の指の根元を裂かれたようなものだ。 まりさの足も所々が個別に痙攣するだけで、底面が波打つことはもうできないだろう。 オレンジジュースでもかければ傷も塞がるだろうが、そんなことは死にそうになってからで十分である。 終わらない拷問に叫び、神経をすり減らしたことで、まりさは心身ともにズタボロになっていた。 「うーん、将棋の網目の数ってこれでよかったんだっけかな……。今度やる時はちゃんと調べておこう」 「ぼ、ぼうやべでぐだざい…。ばりざをおうぢにがえぢでぐだざい………」 「加工所に提案したら採用されないかな……。河童の棟梁とか……さすがに気に入ってくれないか……」 「おにいざん……、ばりざを……ばりざをだずげでぐざだざい」 先ほどまでは怒ったり泣いたりと忙しかったまりさも、足を刻まれたせいで抵抗する気を奪われてしまったようだった。 もう許してほしい。助けてほしい。ゲス特有の傲慢さすら、涙と共に体外へ出てしまっているような大人しさだ。 「………おいおい、何を言ってるんだ。まだまだこれからだろ?」 「ゆびぇぇぇえええええええええん!! おうぢがえるううううううう!!」 だが、それでもお兄さんは許してくれない。むしろ、ようやくギアが入ってきたところだ。 地獄は行った事がないが、生き地獄とは、もっともっと苦しいものだと思う。 そう、これからが本番である。 「さて、それじゃその足も役に立たないし、剥こうか」 「ゆ゛っっっっ!?」 剥く。それがどんな意味を持つかまりさにはわからなかったが、とにかくゆっくりできないことは間違いない。 一時は為すがままに諦めようとも考えたまりさは、必死に身体を揺らして態勢を整えようとする。 だが悲しいかな。立て続けの責め苦にまりさの体力は限界を超え、足を切られたせいで運動能力は元の半分以下。 さらには、潰れた帽子の中へ逆さまに入る形になっているせいで、妙な安定感がまりさに働いていた。 何一つ、まりさの味方になってくれる存在は無かった。 頼れるのは己のみ。その己すら、お兄さんには手も足も出ないという現実が、まりさをより追い詰める。 「おべがいだがらやべでよ!! ばりざをゆっぐりざぜでええええ!!」 「やれやれ……いい加減何度も騒がれると鬱陶しいな」 お兄さんは再びまりさの顔に手刀を打ち込むと、半ば叩きつけるようにして閉じ込めていた箱の中へと戻した。 続きの事も考えて、逆さまのままである。 箱の中でも騒ぎ続けるまりさだが、箱の中に声がたまるので幾分か聞こえてくる声は小さくなった。 相変わらず甲高いが、それでも先ほどに比べれば随分マシである。 「さ、まりさ。覚悟はできたかい?」 手を振り払って餡子を床にまき散らしながら、お兄さんは親しみをこめた三日月型の笑顔を向けた。 後編2 まりさ一家 へ続きます ============================================ あとがき 長すぎました……。 あまりにもやりたかったことを試して行ったら伸びる伸びる……。 お兄さんの独壇場で、まりさが頑丈すぎました……。 wikiなどで感想を下さった方、こうして目を通して下さった方、ありがとうございました。 次回で完結します。 正直長いうえにやり過ぎだとは思いますが、最後は簡潔に済ませたいと思っています。
https://w.atwiki.jp/ani3sisya/pages/818.html
539 :名無しさんなんだじぇ:2010/08/30(月) 12 56 04 ID fUFqgzHU ◇第七競技 部長「さあついにメイン三種目のひとつチーム対抗ビーチバレーよ!」 小萌「円形のコートでの3チーム対抗戦ですぅ。コートに入れるのは1チーム6人ですぅ。選手交代は3回まで。デュースは無しで10点先取したら勝ちですぅ。ネットで相手にポイントを与える場合、相手チーム両方に入るので気を付けてくださーい。10ポイント先取したチームには200ポイント、その次にポイントを高く持っていたチームは100ポイント獲得ですぅ!」 ひたぎ「ついに来たわね。さぁ、戦争を始めましょう」 神原「ここでエロバレーの……」 真宵「さってこれはどう料理しましょうか」 ファサリナ「追い付かれましたし、ここはがんばらないと」 キャスター「さっきは欲望に負けたけど、今度はいいとこ見せるわよ」 あずにゃん「唯先輩だってがんばってるんだ。今度は私が……」 美琴「あたしたちは練習を積んだんだから怖いものなんてないわ!」 かじゅ「ああ、やるぞ!」 プリシラ「勝つよ~!」 セイバー「今度こそ約束された勝利をつかみます!」 とーか「目立ちますわぁぁぁぁぁ!」 アーニャ「がんばる」 イリヤ「さぁ行くわよ!」 首輪ちゃん「休養十分!そろそろ働かないと大将に怒られちまうぜ」 カマやん「負けてばかりというのは屈辱的ゆえ、ここは勝たせてもらおう」 和「咲さんがいい流れを作ったんですからそれに乗らないと」 インデックス「やるよ~」 妹E「うおおおおおお!とミサカは気合いを高ぶらせます」 540 :名無しさんなんだじぇ:2010/08/30(月) 14 03 39 ID TMVh4JMs 咲「ふあ…うくっ…あう…」ビクビクッ 部長「和ったら、久しぶりだからって咲を消耗させすぎよ」 美穂子「あの…宮永さん、大丈夫でしょうか」 部長「ビーチバレーが終わるころには回復するんじゃない?」 美穂子「はい…」 部長(まぁ放っておいたら迷子になりそうだし、これはこれでいいのかしら?) 541 :名無しさんなんだじぇ:2010/08/30(月) 17 20 27 ID Zpg5//JI D「さぁ始まりました、変態ビーチバレー!非常に分かりづらい競技なので、我々としても実況解説のやりがいがあります!」 K「まさかバレーボールを鼎戦にするとは…ブロックを掛けようにもタイミングを図るのがかなり難しくなってくる」 D「ここまで全てのスパイクをレシーブしている御坂選手の防御力は凄まじいですね」 K「そのかわり風紀委員はアタッカー不在なのが厳しいところだ。セイバーにはマークを付けられているからな」 D「そうなるとバランスの良い主催チームが有利、ということですか?」 K「それは既に点数に出ている。今のところ主催チームのみ3点先取。他チームは未だポイントが入っていない」 とーか「あっ…!」 ゴシュ! D「あー逝ったああああああああああああああ!戦場ヶ原選手の強烈なスパイクがついに龍門渕選手の顔面をクリーンヒットォ!」 K「真宵の執拗なフェイントに御坂が騙されたか。これは立てないな」 D「しかし!ボールは生きている!ボールは生きているぞー!」 アーニャ「トス」 セイバー「卑怯者め!騎士王が裁きを下してくれる!」 シュゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ! ひたぎ「ひっ!」 神原「戦場ヶ原先輩!」バッ ドシュ!プシュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ! D「決まったああああああああああああああ! 戦場ヶ原選手を狙ったスパイクは神原選手の土手っ腹を貫通!コートはスプラッタだああああああ!」 K「さすがだな、セイバー。しかし良くボールがもったものだ」 ひたぎ「神原!」 神原「戦場ヶ原先輩…どうか、ご無事で…」ガクッ ひたぎ「誰か!誰かあああ!」 カイジ「龍門渕!大丈夫か、龍門渕!」 とーか「はらほれひれはれ~」 D「コート内は騒然です!一時試合中断する模様です」 K「これで主催3:風紀1:特攻0、か。しかし、層が厚い風紀委員はいいとして、特攻野郎はかなり台所事情が厳しいのではないかな」 D「と、いいますと?」 K「いくら死者スレ内とはいえ達人の船井ですら復活に数時間はかかる。神原の大会中の復帰は望むべくもない」 D「あー」 K「主力の一人を失った特攻野郎はこの試合だけでなく、この先、大きなハンデを負ったな。あのままひたぎを見殺しにすればよかったものを」 542 :名無しさんなんだじぇ:2010/08/30(月) 17 38 53 ID fUFqgzHU 美琴「透華さんがやられちったからメンバーチェンジだけど……久さん大丈夫ですか?」 部長「オーケーよ、じゃいっちょやりますか」 美穂子「がんばってくださいね」 池田「ファイトだし!」 ひたぎ「こっちのメンバーチェンジはどうするの?」 真宵「とりあえず現状は……滅さんお願いします!」 律「わかったぜ」 真宵「後、やっておくべきことは……CDさん、CDさん」 C.C.「何か用か?」 真宵「こっちのメンバーに入ってもらえませんか?報酬は先ほどの限定ピザ5枚で」 C.C.「……10枚なら考えてやろう」 真宵「了解です。後、監獄さん、監獄さん」 撫子「何、真宵ちゃん?」 真宵「暇だったらウチのチームに加勢しませんか?」 撫子「あっ、うん、いいよ」 真宵「ありがとうございます」 D「おっと両陣営に動きが!負傷者に代え風紀委員は竹井久、特攻野郎は田井中律をそれぞれ投入!しかも特攻野郎のベンチにはC.C.と千石撫子が!」 K「先を見越して暇人をチームに取り込んだか。さてこの選択がどう転ぶか……」 543 :名無しさんなんだじぇ:2010/08/30(月) 18 10 59 ID dw8XzRdY キャスター(しかし先程からこちらの防御結界が弱められている… セイバーのスパイクも結界内ならばあれほどの殺人能力を発揮しないはずなのに… やはり…介入してきたか、荒耶宗蓮) カマやん(セイバーに対しマンマークを掛けてきたが、やはり対魔能力は高い ならばと思いキャスターの防御結界に干渉してみたが…結果は予想以上だったか。 このままあと三回特攻側をリタイアさせていけば彼等を負けさせることは容易。 出来ればあと一点取っておきたい所だが、それでなくとも以降の特攻側を大きく弱体化させることは出来るか…) 544 :名無しさんなんだじぇ:2010/08/30(月) 18 51 12 ID CKyFVGR6 カマやん(あれが噂の暴れ龍か…?ただの小娘ではないか。用心する必要もないな) 真宵(烈さんのスパイクはかなり強力ですが…ツッコミ補正等が加わるとその威力は格段に上がる。 ボケなくてもいい…誰か烈さんを刺激してくれれば…) 律(…久さんが出てきたか。セイバーと同様、スパイクの破壊力がやばそうだな…。 直撃したら……いや、大丈夫だ。キャスターさんの魔術を信じろ!) 部長(戦場ヶ原さんとかいう彼女のスパイクが厄介ね…。潰すべきかしら…。でも律も放っておけないわね) 545 :名無しさんなんだじぇ:2010/08/30(月) 19 29 16 ID dw8XzRdY ひたぎ「神原、あなたの仇は討つ!」 D「おーっと、戦場が原選手、セイバーに向けて殺人スパイク!」 K「無駄なことを。セイバーにその程度の攻撃が…な、なにぃ?!」 D「戦場が原選手、分身!分身です!さらにカーブぅ?御坂選手、大きくかく乱されたぁっ!」 御坂「くっ!セイバー!?」 セイバー「舐めた真似を!エクス、カリバー!」 カッ! D「セイバー選手、エクスカリバー!直線上にいたプリシラ、中野選手を直撃~っ!」 K「馬鹿な…」 D「ボールは真っ二つになって、風紀チームと特攻チームのコートに落ちたぁ!こ、これは?」 K「無論、主催チームの得点だ」 D「主催4:風紀1:特攻0となりました!なお、セイバー選手は当然退場。また、消滅したプリシラ選手、中野選手が交代となります」 K「風紀側は三回の交代権を使い切ったか」 D「コートの整備でまたも一時中断です!」 546 :名無しさんなんだじぇ:2010/08/30(月) 19 42 47 ID fUFqgzHU 唯「あ、あずにゃん生きてる!?」 あずにゃん「な、なんとか……死んでますけど」 キャスター「今度はどうするの真宵ちゃん?」 真宵「仕方ありません、この策は使いたくなかったのですが……」 かじゅ「ぷ、プリシラ……?」 プリシラ「えくすかりばーってこんなにえげつないんだ……」 部長「よし……ライダーさん、池田さん!」 ライダー「了解です」 池田「わかったし!」 美琴「で、向こうの交代選手は紬さんかなって……千石さん!?」 アーニャ「そうきたか、さすがゴーストね」 撫子「どうすればいいの?」 真宵「アタックはホチキスと骨さんに任せればいいのでトスをお願いします」 撫子「うん、わかった」 D「おっと特攻野郎、なんと先ほどスカウトした千石撫子を投入だ!」 K「なるほど、彼女がいれば少なくとも風紀委員は手加減をせざるを得ないからな。うまい策を使う」 547 :名無しさんなんだじぇ:2010/08/30(月) 20 08 32 ID 6NsK8rnE 部長「えいっ!」 撫子「よいしょっ」ポンッ ひたぎ「はっ!」ビシッ 部長(う~ん…撫子ちゃんに当たると可哀想だからあまり強烈なスパイクは撃てないわね…。これが狙いなのかしら) 首輪ちゃん(は~ん…なるほどな。手加減狙いってヤツか。だが――こっちにはそんなもの通用しない!)バンッ 妹「トスです。とミサカはボールを高く上げてアタックを催促します」 カマやん「その小娘を狙わなければ強烈なスパイクを撃っても構わんだろう!どりゃああ!!」ズバシッ D「これは強烈!特効野郎チームをボールが強襲します!」 K「また特効野郎チームは選手を狩られるな」 律(なっ…この人のスパイクもやばい!風紀委員しかマークしてなかった…!!) キャスター(くっ…やはり結界がうまく働かない!このままじゃ律ちゃんが――) ダッ ドガァッ!! キャスター「ぐっ!!」 律「キャ、キャスターさん!?」 キャスター「…」ドサッ D「おおっと!神原選手よろしく、キャスター選手も身を挺してメンバーを守りました!ボールもぎりぎり生きている!!」 K「しかしかなり強力な一撃だったからな。さすがのサーヴァントもアレを顔面にもらって意識を保っていられなかったか」 D「戦場ヶ原選手が滑り込んでボールを繋ぐ!」 K「だがもう特効野郎チームはメンバーをやられすぎて満身創痍だ。勝利は難しいだろう」 カマやん「その通り。これが狙いだ。これで要注意するべくは風紀委員のみ!」 部長(いや…これは――) 真宵「勝った…」 カマやん「ん…?」 律「…っ!!」ダンッ カマやん「な、何!?」 律「よくもキャスターさんをおおおおおおおおおおおお!!」 ズバアアアアアアアアン!!ドゴォッ!! カマやん「ぐあああああああああああぁ!?」 妹「ボールが隕石に見えました、とミサカはその場に凍りつきます」 D「おぉっと!ここで田井中選手突然の覚醒!吹っ飛んだカチューシャがまるで今まで彼女を押さえつけていた拘束具のように思えます」 K「あの前髪の下から覗く目…まるで鬼人のようだ」 D「これで主催4:風紀1:特攻1。ようやく特効野郎チームに得点が入りました」 K「ここからどうなるか。展開が予想できないな」 548 :名無しさんなんだじぇ:2010/08/30(月) 20 22 49 ID fUFqgzHU 真宵「しかしその代償でキャスターさんも交代ですか、こちらの戦力ならKCさん」 ムギ「ゴースト、私に行かせて」 真宵「オーナー!?貴女は球技が苦手なのでは!?」 ムギ「今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょ」 あずにゃん「ムギ先輩……」 キャスター「(気絶中)」 ムギ「梓ちゃん、キャスターさん。仇は必ずとるわ」 美琴「ついに来たわね、紬さん」 かじゅ「なんだあのオーラは……」 リリーナ「あれは怒り。何も含まないとても純粋な怒り……」 ムギ「あまり私を怒らせないほうがいいですよ」ゴゴゴゴゴゴ 唯「ムギちゃん、キャラが違うよ」 D「キャスターの戦闘不能に伴い、特攻野郎チームも交代権を使いきりオーナーを投入だぁ!」 K「彼女の纏う怒気も凄まじいな。これはいよいよわからなくなってきたな」 549 :名無しさんなんだじぇ:2010/08/30(月) 20 27 19 ID aen137BM イリヤ「やられたわ。でも、まだ大丈夫!ひとまず妹Aを投入!そして、サーシェス!妹E!アレで決着を付けるよ!!」 首輪「よっしゃー!!任せろ」 妹E「プランX、アレですね……とミサカはついに来たと思いつつ決死の覚悟を決めます」 D「おおっと、ここで主催チームの首輪選手と妹E選手が同時に動いた!」 K「あれは…まさか!必殺技・魔のX攻撃!!」 D「なんと、両サイドから飛び上がったミサカシリーズの二人が空中でクロスしたところで強烈なスパイク!」 K「あれではどっちが打ったかわからない!そして相手はボールの軌道が読めない!まさか科学的に禁断な技をここで拝められるとわ!!」 D「そこは何でもアリの死者スレですから。しかし、シンクロした二人のミサカが放つそれはまさに魔球!! 特攻野郎は誰一人動けず!またしても主催チームに1ポイントが入ったぁ!!もはや誰も彼らの勢いを止められないのだろうか!!!」 551 :名無しさんなんだじぇ:2010/08/30(月) 21 09 37 ID Vq/4Z5.. ミサカーシェス「よっしゃ、もう一発喰らいな!」 ムギ「まずい、撫子ちゃんの方に行ったわ!」 撫子「きゃ……」 パァン!! 律「……今、わざと撫子ちゃんを狙ったろ……」 ミサカーシェス「な、何だありゃ!? 素人の出せる殺気じゃねえぞ!!」 ガハラ「トス上がったわよ!」 律「よし、喰らえぇぇぇぇぇぇっ!!!」 ミサカーシェス「っと、危ねえ!!」 妹E「ぶべらっ!! とミサカは身代わりにされて吹き飛びます」 D「おーっと、ここで田井中選手本領発揮!! 妹E選手をコート外まで吹き飛ばしたー!!」 K「荒耶宋蓮を仕留めた事で醒めた頭が、千石撫子が危機に瀕した事で再び逆上したようだな。 サーシェスは迂闊としか言いようがあるまい」 D「あーっと!! 竹井選手、こぼれ球を田井中選手目掛けクイック!!」 K「主催チームに意識が向いている隙を狙ったか。 だが、甘いな」 D「な……田井中選手、これは凄い!! 竹井選手の放った殺人スパイクを片手でわし掴みだー!!」 部長「う、嘘でしょ!? 手加減無しで撃ったのに!」 律「……竹井さん」 部長「な、何かしら?」 「邪 魔 し な い で 貰 え ま す か ?」 部長「(コクコク)」ブルブルガクガク
https://w.atwiki.jp/ani3sisya/pages/605.html
87 :名無しさんなんだじぇ:2010/06/04(金) 13 36 16 ID ko.XWyD6 バーサーカー「今回は暴れないのですか?」 セイバー「見くびらないで欲しい。私とてそう狭い了見の人間ではないのだ」 バーサーカー「冗談はさておき、衛宮さんは貴女の殺害者を聞いてどう思うでしょうね」 セイバー「シロウはどうとも思いませんよ。…喧嘩別れしたままですから」 バーサーカー「いや、その、なんというか」 バーサーカー(なんでまだ別時空だっていうのが分からないんだろうか…)
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/580.html
http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1332249950/ 咲「どうしたの?京ちゃん」 京太郎「二人きりで話したいんだ。ちょっと放課後残ってくれないか?」 咲「うん、いいけど・・・」 優希「ちょっ、何事だじぇ!?・・・これってまさか」 和「そんなオカルトありえませんっ!」ドンッ 優希「和ちゃん、ちょっと怖いじぇ・・・大丈夫だじぇ、あの犬にそんな度胸は無いはずだじぇ」 久「・・・まこ」ヒソヒソ まこ「わかっとる。さぁさぁ、お邪魔虫は退散退散じゃー」ガッシ 和「染谷先輩、話して下さい!私は宮永さんとIPS細胞と将来の展望について話し合わないとーー」ジタバタ 優希「京太郎は私の犬だじぇー!」ジタバタ 久「じゃ、今日の部活はここまで。・・・宮永さんと須賀君、後片づけよろしくね」 京太郎「りょーかいっす。お疲れ様でーす」 咲「分かりました」 久(それにしても・・・随分突然ね) 優希「むがー!」 和「ふぬー!」 まこ「ハイハイ帰れー」ポイッ 久「それじゃあねー」ヒラヒラ バタン 京太郎「・・・」 咲「・・・」 京太郎「・・・」 咲「京ちゃん?話って」 京太郎「咲、俺と麻雀してくれないか」 咲「麻雀?いいけど・・・皆が一緒にいちゃダメだったの?」 京太郎「・・・ああ」 咲「それじゃあ、二人打ち用のルールでいいよね。ツモは減点される側は一人分、加点される側は三人分で」ピッピッ 京太郎「それでいいよ。・・・咲、本気で来てくれ」 咲「うん、分かった・・・」 東一局 京太郎「じゃ、俺が親だな」 パチッ 咲「京ちゃんが私を麻雀に誘うのって、なんだか久しぶりだね」 パチッ 京太郎「そうだな、最近はずっと雑用ばっかりだったから」 パチッ 咲「宅も4人掛けだしね。女子部員だけでも入りきらないし」 パチッ 京太郎「咲、麻雀楽しいか?」 パチッ 咲「うん、今はとっても楽しいよ」 パチッ 京太郎「そうか、そりゃ何よりだ」 パチッ 咲「京ちゃん、それロン」 パタタタタ・・・ 京太郎「くっ・・・」 咲「三色ドラ3。子の満貫で8000点だね」 京太郎「・・・じゃ、次は咲が親だな」 咲「うん。それじゃ、行くよ京ちゃん!」 東二局 咲「京ちゃん、今日はホントに突然だったね」 パチッ 京太郎「悪い。もしかして予定とかあったか?」 パチッ 咲「まぁ、無い事はないけど・・・そんなに大事な用でもないし」 パチッ 京太郎「こんなことは今日限りだからさ、勘弁してくれ」 パチッ 咲「・・・京ちゃん、何か嫌な事あったの?」 パチッ 京太郎「・・・っ」 咲「やっぱり。今日の京ちゃん、何だかおかしいもん」 バチッ! 京太郎「・・・さぁ、リーチだぜ咲。どうする?」 咲「京ちゃん・・・」 パチッ 京太郎「・・・」 パチッ 咲「・・・カン」 パチッ 京太郎「来たか・・・」 パチッ 咲「もいっこ、カン」 バシッ! 京太郎「・・・」ゾクッ パチッ 咲「もいっこ、カン!」 バシィッ! パタタタタ・・・ 咲「--ツモ。嶺上開花、三暗刻、三槓子、ドラ1。6000オールで、連荘だよ」 京太郎「・・・一本場か」 咲「それじゃ、また私からだね」 東二局一本場 咲「・・・」 パチッ 京太郎「強えなぁ、咲は」 パチッ 咲「そうかな?私よりも強い、例えば天江さんみたいな人。全国にはゾロゾロいると思うよ」 パチッ 京太郎「・・・そっか。頑張れよ、お前はもう一人じゃないんだ」 パチッ 咲「うん、頑張る」 パチッ 京太郎「・・・」 パチッ 咲「リーチだよ」 ピシッ! 京太郎「・・・」 パシッ 咲「それ、ロン!」 パタタタタ・・・ 咲「リーチ一発、一本場で平和と一盃口。ドラはないけど、裏ドラがーー乗った。これで満貫、12300点」 咲「これで合計26300点のマイナス。私の勝ちだね、京ちゃん」 京太郎「・・・」 咲「京ちゃん?」 京太郎「続行、させてくれないか」 咲「 え?うん、いいけど・・・」 東二局二本場 咲「京ちゃん、何があったの?私でよければ相談に乗るよ?」 パチッ 京太郎「何がって、何がだよ」 パチッ 咲「もう、それじゃ分かんないよ」 パチッ 京太郎「分かんなくていいんだよ。俺は、ただ咲と麻雀したいだけだ」 パチッ 咲「・・・嘘」 パチッ 京太郎「嘘なわけないだろ、現にこうして打ってるんだから」 パチッ 咲「だって京ちゃんの牌、勝つ気が無いもん」 パチッ 京太郎「何でそんなこと分かんだよっ」 パチッ 咲「染谷先輩とか原村さんみたいに分析はできないけど・・・牌に気持ちが乗ってるか乗ってないかくらいは私にもわかるよ」 パチッ 京太郎「なんだそりゃ。俺にはちっとも分かんねー世界だな」 パチッ 咲「ううん、京ちゃんが一番分かってるはずだよ。だって、京ちゃんの牌だもん」 パチッ 京太郎「俺はただ、麻雀をーー」 パチッ 咲「・・・麻雀を、やめる理由が欲しいの?」 ビシッ 京太郎「・・・んなこと言ってねーだろ!リーチだ!」 バンッ 咲「言ってるよ!京ちゃんの牌、自棄になってるもん!私もリーチ!」 バンッ 京太郎「うるせえ!お前に俺の何が分かるってんだ!」 バシッ! 咲「そんなこと分かんないよ!」 バシッ! 京太郎「だったら黙って打ってろ!」 バシッ! 咲「黙ってたら和了れないもん!」 バシッ! 京太郎「減らず口を・・・!」 バシッ! 咲「京ちゃんこそ、私を麻雀部を辞める言い訳にするつもりの癖に!」 バシッ! 京太郎「ああそうだよ!悪いかよ!大体強過ぎんだよ、お前ら!何がオカルトだ!・・・俺だって、練習してんのに!」 バシッ! 咲「悪いよ!勝手に努力を放棄して、戦う前から負けを認めてる京ちゃんなんて、とってもカッコ悪い!」 バシッ! 京太郎「だから今戦ってるじゃねえか!俺が、どうあがいても勝てない事の証明のために!」 バシンッ! 咲「こんなの戦いじゃない!こんな、楽しくないのは、絶対に麻雀じゃない!」 バシンッ! 京太郎「麻雀なんて、才能のゲームだ!結局牌に愛されてない奴は、負けるしかねえんだよ!」 バシンッ! 咲「そんなことない!絶対、絶対そんなことない!そんな事言う京ちゃん、私嫌いだよ!」 バシンッ! 京太郎「だったら早く和了れよ!このど真ん中の牌で、お得意のオカルトで、嫌いな俺にトドメを刺してくれよ!宮永咲ぃぃぃぃぃぃぃぃ!」 バシンッ! 咲「っ・・・!」 パシッ 京太郎「なっ・・・」 咲「・・・京ちゃんの番だよ」 京太郎「・・・」 咲「・・・引かないの?」 京太郎「和了れ、なかったのか・・・?」 咲「うん。だから次は、京ちゃんがツモる番」 京太郎「・・・っ」 咲「京ちゃん、引いて」 京太郎「俺、は・・・」 咲「・・・引かないんなら、私もう帰るよ?」ガタッ 京太郎「待てっ!」 ピッ 京太郎「・・・ツモだ」 パタタタタ・・・ 京太郎「二本場、メンタンピンドラ2。ハネ満で3200点オールだ」 咲「うん。この局は、京ちゃんの勝ちだね」 京太郎「咲、手牌見せてくれ!」ガタッ 咲「はい、こうだよ」 パタタタタ・・・ 京太郎「ホントに・・・和了れねぇのか」 咲「まだ、やるよね?」 京太郎「・・・ああ」 東三局 京太郎「じゃ、行くぜ・・・」 パシッ 咲「ねぇ、京ちゃん」 パシッ 京太郎「なんだよ?」 パシッ 咲「さっき和了った時、嬉しかった?」 パシッ 京太郎「そりゃ、嬉しかったよ。でもあれは・・・」 パシッ 咲「私は、手を抜いてないよ?」 パシッ 京太郎「・・・そりゃそうか。涙目で顔真っ赤にして牌打ちつけてたもんな。あれで手を抜けたら手品師だ」 パシッ 咲「むー。それはお互い様だし、そもそも京ちゃんが嫌な事言うから悪いんだよ」 パシッ 京太郎「悪かったよ。なんか奢るから、許してくれ」 パシッ 咲「それプラス麻雀部辞めないでくれたら、許したげる」 パシッ 京太郎「・・・随分と手厳しいお姫様だな」 パシッ 咲「京ちゃんが悪いんだもんっ」 パシッ 京太郎「分かってるよ、俺だってもう辞めたくなくなっちまった」 パシッ 咲「・・・京ちゃんならそう言ってくれると思ってたよ。だって、麻雀って」 パシッ 京太郎「楽しいんだもん、か?」 パシッ 咲「人のセリフを取らないでくださいー」 パシッ 京太郎「そうぶすくれなさんなって」 パシッ 咲「もう、京ちゃんのバカっ!・・・ロンだよっ」 パタタタタ 咲「一盃口のみドラ無し。1300点」 京太郎「おお、珍しく小さい和了りじゃないか」 咲「京ちゃんのがうつっちゃったかも?」 京太郎「なんだとこのー!」グリグリ 咲「いひゃいよきょうひゃん!ほっふぇはやめふぇー!」 京太郎「ありがとな、咲」 咲「ううん、私は何もしてないよ。京ちゃん自身が麻雀を辞めたくないって、心の底で思ってくれてたからこうなったんだと思う」 京太郎「かも、な」 咲「絶対そうだよ。京ちゃんは、いつだって頑張り屋さんだもん」 京太郎「なぁ、咲」 咲「なぁに?」 京太郎「俺さ、今よりもっと頑張って、いつか絶対お前を倒す!何年、何十年かかったって絶対倒すから!」 咲「ーーうん、待ってる。・・・だから、早く駅前のクレープ屋さんに行こっ」 京太郎「げっ、忘れてなかったのか」 咲「ちょっといい話になったからって奢りの約束を忘れるほど、私はロマンチストじゃないですよー?」 京太郎「こりゃ一本とられたな。・・・あんまり高いのはよしてくれよ?」 咲「キングクレープかなー、クイーンクレープかなー♪いっそ両方とか!」 京太郎「よせってば!」 咲「やーだもーんっ。ほらほら、早く来ないとどんどん注文増やしちゃうよ?」タタタ 京太郎「うおおおおおおおおおおお!?」ダダダダダ 駅前のクレープ屋さん 店員「ただ今カップル割というサービスを行っておりましてー」 咲「え、でも私達むぐっ!?」ジタバタ 京太郎「はい!じゃあそのカップル割でお願いします!」 店員「かしこまりましたー」 咲「ぷはっ。もう、嘘ついちゃ駄目だよ京ちゃん」 京太郎「バカ言え。カップルって言うだけで安くなるなら利用しない手は無いだろ」 咲「私は別に困らないけどなー」 京太郎「そりゃ奢られる立場だからな、気楽だよなぁ!?」 咲「へへーんだ」ベー 京太郎「ちなみに、何頼んだんだ?」 咲「二人用のキングクレープ。一度食べてみたかったんだー」 京太郎「ふっ、デブるぞ?」 咲「むっ!・・・ひ、否定しきれない」 京太郎「仕方ない、太らないように咲の分も俺が食べてやろう」 咲「それはダメーっ!」 遠巻きのグラサン「・・・こちらコードネームタコス。コードネームIPS、応答するじぇ」 『こちらIPSです。二人の様子はどうですか?』 遠巻きのグラサン「二人で一つのクレープを、恋人割で頼んだようだじぇ」 『殺して下さい、いえ殺しましょう』 遠巻きのグラサン「賛成だじぇ」ジャキッ 『待ちんさい!流石に性急すぎじゃて!』 『離して!離して下さい!』 『あー、こちら部長。君の行動は監視されている、変な気は起こさないよーに。とりあえず、引き続き尾行を続けてもらえるかしら』 遠巻きのグラサン「・・・了解だじぇ」ピッ 店員「お待たせいたしましたー」ドンッ 咲「うわ、おっきい・・・!」 京太郎「これは・・・マジでキングサイズだな」 咲「ここまで来ると最早クレープとしての原型がないね・・・」 京太郎「とりあえず、値段分はキッチリ食べるぞ!」 咲「おー!」 パクパクパクパク・・・ 咲「も、もうムリ」ゲプー 京太郎「デカ過ぎんだろこれ・・・」 咲「入りきらなくて残しちゃった・・・ごめんね、京ちゃん」 京太郎「いいって。お前が満足したんならそれで」 咲「うん、満足はしたよ。十分過ぎるほど」 京太郎「じゃ、帰るか」 遠巻きのグラサン「IPS,IPS応答するじぇ」 『あー、IPSならさっき体の穴という穴から細胞を飛び散らせて憤死したわ』 遠巻きのグラサン「なっ・・・同士IPS、お前のことは忘れないじぇ」 『死んでません!』 『惜しい奴を亡くしたもんじゃ・・・』 『だから死んでません!宮永さん!?宮永さーん!?』 遠巻きのグラサン「『うわ、おっきい・・・』『入りきらなくて・・・』等の発言が確認されたじぇ」 『?!?!??!?!?!!??!!??』ボフー 『あ、また憤死した』 『惜しい奴を亡くしたもんじゃ・・・』 遠巻きのグラサン「二人はもう帰るみたいだから、これで通信を終了するじぇ」 『はい、お疲れー』 遠巻きのグラサン「・・・」ピッ 遠巻きのグラサン「京太郎・・・」グスッ 咲「家まで送ってくれなくてもよかったのに」 京太郎「もう結構遅いからな、狼が潜んでないともいえないし」 咲「京ちゃんは心配性だなぁ。・・・大体、送り狼って言葉だってあるでしょ?」 京太郎「だったらどうする?」 咲「え?」 京太郎「俺が送り狼だったら、どうするんだ?」 咲「ど、どうするって・・・」アセアセ 京太郎「・・・ま、そんなことは100%あり得ないけどな」 咲「・・・だと思った。京ちゃんヘタレだもん」 京太郎「その割にはさっきマジで焦ってなかったかー?」ニヤニヤ 咲「違いますー、焦ってないですー!」プンスカ 京太郎「ま、咲は今の俺にとっちゃ目標でありライバルだ。夜道で襲うもんじゃねえわな」 咲「京ちゃんとまともに勝負できるのは何年後かなー」 京太郎「うるせえ、首洗って待ってろよー!じゃあなー!」ダダダダダ 咲「あ、京ちゃんまたねー!」 咲「ーー私、待ってるからね。何年だって・・・」 一ヶ月後 久「おいーっす」 優希「お、部長のご登場だじぇー」 京太郎「あ、部長。掃除終わりました!」 久「ん、御苦労。・・・最近妙に精力的ね」 まこ「守るべきもんでも出来たんかのう」 和「っ!?」ギリギリギリギリ まこ「じ、冗談じゃ!冗談じゃって!」 咲「こんにちはー」 優希「お、咲ちゃんも!これで清澄高校麻雀部勢ぞろいだじぇー!」 京太郎「おお咲、丁度良かった。昨日のネット対戦であったこの局面なんだけどよ・・・」ポチポチ 咲「んー?多分だけど、これはここをね・・・」ポチポチ 京太郎「おお、良い待ちになった!」 優希「・・・」ギリッ 和「・・・」ブチブチッ 咲「やっぱり京ちゃん、まだまだだね」 京太郎「うるせえ、いつかはカモにしてやるからな」 咲「ハイハイ。期待してますよー」 優希「・・・犬!タコス買ってくるじぇ!」 京太郎「うぇっ!?ちょっと今手が離せな」 優希「うるさいじぇ!いいから買ってくるじぇ!」 京太郎「・・・分かったよ」 咲「あ、なら私も」 和「宮永さんはこっちで私達と麻雀です。大会も近いんですから」 咲「そ、そうだね。・・・ごめんね京ちゃん」 京太郎「いいって、元々パシリは俺の役目なんだし。それより咲は大将なんだから、清澄のためにもしっかり勝ってくれないと困るぜ?」 咲「むー、京ちゃんってばまたそうやってプレッシャーかけるんだからー」 優希「・・・」メリッ 和「・・・」バキバキバキバキ 京太郎「部長、タコス以外に買ってくるものありますか?」 久「私は特にないけど・・・他の人は?」 まこ「ワシも特にないな」 優希「大理石100kg!」 和「拷問器具!」 京太郎「売ってねーよっ!」 咲「じゃあ私紅茶お願いしていいかな?アイスで」 京太郎「あいよっと」タタタ 咲「あ、廊下は走っちゃだめだってばー!・・・もう、京ちゃんたら」 久「部室暑いわね、なんか」 まこ「ああ、あっつあつじゃな」 優希「暑さの元はたった今追いだしたはずだじぇー」 和「暑さの元が永遠に冷たくなれば部室の温度が上がらずに済む可能性が微粒子レベルで存在している気がします・・・」 久「それじゃ、私達は練習しましょうか」 咲「はいっ!」 咲「よし、ロンっ!これで私の最終得点は33400点、一位ですね!」 まこ「あちゃー、振り込んでしもうた」 優希「あ、危なかったじぇ・・・9800点のマコがいなかったらドベだったじぇ」 久「宮永さんの仕上がりは上々みたいね」 咲「部の皆のお陰です!」 京太郎「お待たせしましたー・・・ほい、ホット」ピトッ 咲「熱ぅっ!?・・・くないし。もー、悪戯はダメだってば」 京太郎「咲はからかいがいがあるからな」 咲「むー」 京太郎「タコスのお客様ーっと。はいよ」 優希「・・・」ムスーッ 京太郎「な、なんだよ?」 優希「なんでもないじぇ。ふーんだ」ムシャムシャ 京太郎「・・・?」ポリポリ 咲「見て見て京ちゃん!嶺上開花和了ったよ!」 京太郎「おおー、やりますな姫様」 咲「ふふん、崇めるがよい」 京太郎「ははーっ。・・・じゃ、今日も部活終わった後頼んでいいか?」 和「あの、宮永さんは大会前で」 咲「うん、いいよ。部長、部活外ですしいいですよね?」 久「いいけど、お願いだから部活外でやってね」 優希「・・・」ミギミギミギミギ 和「・・・」ガガガガガガガ まこ「ま、お前らの気持ちもわからんでもないけどな」ヒョイヒョイッ 優希「うがー!大体ロンで嶺上開花が和了れるはずないじぇ!嘘はいけないじぇ!」 和「そうです、そんなオカルトあり得ません!それより宮永さんは私と素敵なIPS-!」 京太郎「・・・咲、虚偽申告はいけないなぁ?罰符ものだぞ?」 咲「あ、これは違っ・・・ついいつもの癖で嶺上開花って言っちゃったんであって」 咲「決して京ちゃんの前で格好付けようとかそういうのは・・・」 京太郎「・・・」ニヤニヤ 咲「き、京ちゃんだって大して確認もせずに崇めたんだから同罪だよ、同罪!」 京太郎「なんじゃそら!?」 まこ「仲がいいのう・・・」 久「ホントにね」 まこ「ワシらもそろそろ帰るか」 久「そうね。なーんかこの終わり方が板についてきちゃったなぁ・・・まぁいっか」 久「んじゃ、掃除戸締りその他はよろしくー」 バタン 京太郎「さて、それじゃあよろしくお願いします」ペコリ 咲「うん、今日も頑張ろうね京ちゃん!」 京太郎「よーし、今日の目標は狙って満貫!」 咲「じゃあ、私の目標は狙って役満かなー」 京太郎「言ってろ!」 パチッ 咲「ふふっ」 パチッ 京太郎「・・・なんだよ?」 パチッ 咲「京ちゃんとこうやって二人きりで麻雀出来るのが、嬉しいなあって」 パチッ 京太郎「おいおい、気を緩ませてたら俺勝っちまうぞ?」 パチッ 咲「やれるものならやってみなさーい」 パチッ 京太郎「言ったな・・・?そら、リーチ!」 バチィッ 咲「む、そのリーチは読みにくいかも」 パチッ 京太郎「とか言いつつ咲さん、ノータイムで打ってきますね」 パチッ 咲「まぁ、まだまだだねー」 パチッ 京太郎「どこぞのテニヌプレイヤーかよっ」 パチッ 咲「・・・でも、ちゃんと成長してるよ、京ちゃん」 パチッ 京太郎「そりゃ・・・」 パチッ 咲「それロン」 パタタタタ・・・ 咲「混老頭、トイトイドラ3。ハネ満で12000点頂戴しまーすっ」 京太郎「・・・こんな鬼教官がいりゃあな、嫌でも強くなるさ」 咲「えへへ・・・でも、前よりずっと牌に気持ちが乗ってるよ」 京太郎「そりゃ、いつでも寝首掻く気でいるからな!」 咲「うむ、その意気やよし!存分にかかってくるがいい!」 京太郎「咲、そのキャラ似合ってねーぞ」 咲「や、やっぱり?」 京太郎「どっちかってーとお姉さんの方がそんなキャラだな」 咲「かもねー」 アハハハハ・・・・・・ 京太郎「教官、今日もお疲れ様でしたっ!お家までお送りいたします」 咲「ん。よろしくね、しっかり満貫和了って役満和了られた京ちゃん」 京太郎「ぐ・・・さ、流石にあれは偶然だよな?」 咲「どうだろうねー」 京太郎「ぐおおおおお!自分の打ち筋によるものかもしれないと思うと猛烈に悔しくなってくる!」 咲「ふふ、まだまだだねー」 京太郎「お、覚えてろよおおおおおおおおおお!」ダダダダダ 咲「京ちゃん、またねー!」 京太郎の家 京太郎「ん、メール?」 【差出人:宮永咲 件名:きょうのまーじゃんについて】 京太郎「いい加減変換くらい覚えろよ・・・っと」ポチポチ 京太郎「お、もう一件」 【差出人:片岡優希 件名:明日の部活が終わったら、ちょっと残ってるじぇ】 京太郎「本文は空・・・なんだってんだ?」 翌日 久「おっすー・・・須賀君、精が出るわね」 京太郎「そりゃもう、雑用係ですから」 久「最近の牌譜見たけど・・・良くなってるよ。宮永さんの指導の賜物?」 京太郎「げ、バレてたんスか・・・いやぁ、ホント咲には頭が上がらないですよ」 久「その調子で、清澄高校男子麻雀部のために頑張ってね。期待してるわよ」ポンッ 京太郎「はい!」 久「雑用もね」クスッ 京太郎「ですよねー・・・」 まこ「・・・優希、どうしたんじゃその大量のタコス」 和「今日はまた一段と多いですね・・・」 優希「今日は決戦だじぇ、物資は多いに越したことはないじぇ」 まこ「・・・?」 咲「あ、京ちゃーん!」 京太郎「おう、咲。・・・今日は部活後に別の用事が入っちゃったから、先に帰っててくれるか?」 咲「うん、分かった。私も用事あったとこだから丁度よかったね」 京太郎「まさに息ピッタリ!」 咲「京ちゃんのツモ運まで移さないでね、負けちゃうから」 京太郎「なんだとー!」グリグリ 咲「ひひゃいひひゃいー!」 和「・・・」ゴゴゴゴゴ 優希「・・・」 和「・・・優希?」 優希「今日は決戦だじぇ・・・」ムシャムシャ 久「よし、それじゃ練習始めるわよー」 「「「「「おー!」」」」」 久「よし、今日はここまで。それじゃ須賀君、いつも通り掃除戸締り・・・って言わなくてもやってるわね」 京太郎「オラー!」フキフキ まこ「雑用の鏡じゃな」 久「いいえ、部員の鏡よ」 まこ「随分と奴さんを持ち上げるのう」 久「別に持ちあげてる訳じゃないわ。ただ、頑張ってる奴は相応に評価されて然るべき。これ、私の持論ね」 まこ「ほう・・・」 咲「部長さん、染谷さん、お疲れ様でしたー」 久「お、今日は特別特訓やらないんだ」 咲「はい、京ちゃん用事があるらしくて」 和「宮永さん、途中まで一緒に帰りましょう」 咲「うん!」 久「それじゃ、私達も帰りましょうか」 まこ「じゃな」 京太郎「ふいー、終わった終わった」 京太郎「・・・で、話ってなんだよ。優希?」 優希「・・・最近、部活が終わった後。咲ちゃんとずっと一緒にいるじょ」ムシャムシャ 京太郎「ああ、麻雀の特訓だよ。お前も知ってるだろ?」 優希「ちょーしのんな」ボリボリ 京太郎「は?」 優希「高々雑用係程度が、調子に乗るなって言ってるんだじぇ」 京太郎「・・・雑用係が強くなりたいと思っちゃいけねえのかよ」 優希「ダメだじぇ。雑用係は雑用係らしく、雑用だけやってればいいじぇ」 京太郎「言うじゃねえか、嫌な事でもあったか?」 優希「最近の犬は、見ててイラつくって言ってるんだじょ。だから・・・」 優希「今!ここで!!もう一度主従関係を一から叩きなおしてやるじぇ!!!」ドカッ 京太郎「上等だ、やってやるよ!」ドカッ 優希「・・・東場だけだじぇ」 京太郎「ああ、好きにしやがれ」 優希「・・・それじゃ、サイコロを振るじぇ」 コロコロコロ・・・ 京太郎「出たか・・・親はお前だ」 東一局 優希「・・・」バリボリ バシッ 京太郎「・・・」 ピシッ 優希「・・・」 バシッ 京太郎「それにしても、今日はまた随分と買い込んでるじゃねえか」 ピシッ 優希「・・・お前を、二度とこの卓に上がらせないためだじぇ」 バシッ 京太郎「上等、やれるもんならやってみやがれ」 ピシッ 優希「言われなくても、へし折ってやるじょ」 バシッ 京太郎「・・・」 ピシッ 優希「それ、ロンだじぇ」 京太郎「なっ・・・」 パタタタタ・・・ 優希「清一色、ドラ2。倍満で24000点だじょ」 優希「ヌル過ぎるじぇ・・・やっぱり、犬は犬だじぇ」 京太郎「クソッ、言ってろ!」 東一局一本場 優希「ロンだじぇ。平和のみ」 東一局二本場 優希「ロンだじぇ。一盃口のみ」 東一局三本場 優希「ツモだじょ。撥のみドラ1」 東一局四本場 京太郎「・・・っ」 ピシッ 優希「それも、ロンだじぇ。七対子」 京太郎「よお、点数がマイナスになっても続けてくれんのはハンデかい?」 優希「違うじぇ。お前がもう二度とこの卓に着けないように、徹底的に壊してるだけだじぇ」 京太郎「・・・そりゃ、ありがたい話だ」 優希「さ、五本場だじぇ」 東一局五本場 京太郎「通らばリーチ!」 優希「それ、ロンだじょ。」 東一局六本場 京太郎「リーチだ!」 ピシッ 咲「そういうことだよ、京ちゃん。天狗になるのは私を半荘でのしてからにした方がいいんじゃないかな?」 京太郎「畜生、いつか絶対ブッ倒してやるからなああああああああああああああああ!」メラメラ 咲「べーだ!後30年は絶対倒されてあげないもんね!」 優希「まだ!まだ足りないじぇ!もっともっと火力上げて強くなってやるじぇええええええええええ!」ゴウゴウ まこ「・・・なんか、また部室の気温が上がった気がするんじゃが」 久「熱源が一個増えちゃったからねー。部としてはいい事なんだけど」 久「よし、今日の部活はここまで!」 まこ「お疲れ様、じゃなー」 優希「まだだじぇ、まだやれるじぇ・・・」 和「でももう部活の時間終わりですし、帰りましょう?」 京太郎「優希、まだやれるんなら家でネット麻雀の○和って奴やってみたらどうだ?俺もやってるけど中々勉強になるぞ」 優希「ネト麻・・・その手があったじぇ!い・・・京太郎!お前ログインは何時くらいにやってるんだじょ!?」 京太郎「俺か?俺は22時くらいに南家サーバーに居るけど」 優希「よーし分かった!そうと決まればさっさと帰って麻雀だじぇ!お疲れ様だじぇえええええええええ!」ダダダダダ 和「優希、凄いやる気ですね・・・私も負けてられません」 まこ「あー、ワシはああいうのキツイなぁ、年齢的に」 久「アンタまだあの子らと一個違いでしょうが。須賀君達、今日も秘密特訓は」 咲・京太郎「「やります!」」 まこ「おーおー、燃えとる燃えとる」 久「・・・言うと思った。それじゃ、後よろしくー」 バタン 京太郎「さぁ、咲・・・やろうぜ!」 咲「うん、いつでもいいよ京ちゃん」 東一局 京太郎「それじゃ、俺の親からだ!」 ピシッ 咲「ね、京ちゃん」 ピシッ 京太郎「なんだよ?」 ピシッ 咲「・・・優希ちゃんと、何かあったの?」 ピシッ 京太郎「麻雀で泣かせちまった。んで、タコス貰った」 ピシッ 咲「全く脈絡がないよ・・・でも、なんとなく分かった」 ピシッ 京太郎「アイツ最近めちゃくちゃ頑張ってるからな、俺ももっと頑張らないと!」 ピシッ 咲「・・・私も、頑張らなきゃ」 ピシッ 京太郎「おいおい、清澄のキャプテンが部員に遅れをとってどうすんだよ?そら、リーチだ!」 バシッ! 咲「そう・・・だねっ!」 ピシッ 京太郎「流石に一発じゃ振り込んでくれないか・・・!」 ピシッ 咲「今日は私、京ちゃんに一回たりとも振り込む気はないよ!」 ピシッ 京太郎「ああそうかよ!だったら自分でツモるだけだ!」 ピシッ 咲「京ちゃんに出来るかな?」 ピシッ 京太郎「出来なくってもやるんだよ!」 ピシッ 咲「それ、ロンっ!」 京太郎「げっ!?」 パタタタタ・・・ 咲「三暗刻、ドラ2・・・満貫、8000点だよ!」 京太郎「うお、予想と全然違う?」 咲「まだまだだねー♪」 京太郎「くっ、咲の剛運を舐めてはいけないということか」 咲「さ、次は私が親だよ!」 京太郎「っしゃこい!」 東二局 咲「~♪」 ピシッ 京太郎「えらくご機嫌だな」 ピシッ 咲「あのね、今日駅前のクレープ屋さんに新しいメニューが出たんだよ!」 ピシッ 京太郎「ほうほう、それでこれが終わったら食べに行こうと胸を躍らせてる訳ですか」 ピシッ 咲「うん!とっても美味しそうだから、ホントは皆も誘いたかったんだけど・・・忙しそうだったし。リーチ!」 パシッ 京太郎「俺でよければお伴致しますよ、姫」 ピシッ 咲「うむ、苦しゅうない!・・・なんて、京ちゃんならそう言ってくれると思ってたんだけどね」テヘ ピシッ 京太郎「じゃあ俺は咲にまんまと振り込んじまった訳だ」 ピシッ 咲「ふっ、まだまだだねー」 ピシッ 京太郎「じゃあそろそろ俺も反撃かな・・・ツモ!」ピッ パタタタタ・・・ 京太郎「門前ツモ、平和タンヤオドラ1で親から2600、子から1300点だ!」 咲「むー、京ちゃんが私のリーチをかわすなんて」 京太郎「侮り過ぎだぜ、このまま寝首を掻き切ってやる!」 咲「・・・じゃあ、これで勝った方が新クレープ奢りってことで」 京太郎「ちょっ、それお前超有利じゃ」 咲「さ、次は京ちゃんの親だよっ!」 東三局 京太郎「・・・なぁ咲」 ピシッ 咲「んー?」 ピシッ 京太郎「その新クレープっての、どんな奴なんだ?」 ピシッ 咲「『サンクチュアリ大車輪クレープ』だよ。普通のよりちょっと大きめで、色んなクリームが43種類以上入ってるの」 ピシッ 京太郎「へー・・・体脂肪」ボソッ ピシッ 咲「う゛・・・」 パチッ 京太郎「糖分、脂質、炭水化物」ボソッ ピシッ 咲「は、原村さんみたいになる可能性だって」 パチッ 京太郎「無いな。まず無い」 ピシッ 咲「京ちゃんひどーい!」 ピシッ 京太郎「大体咲は元々インドア派なんだから、あんま喰い過ぎるもんじゃねーぞ?」 ピシッ 咲「私だって甘いものくらい好きに食べたいよー」 ピシッ 京太郎「慢性的運動不足・・・リーチだ!」 バシッ 咲「その分頭使ってるからいいの!」 ピシッ 京太郎「どうだかな!」 ピシッ 咲「もう、京ちゃんの意地悪!」 ピシッ 京太郎「そこ、ロン!」 咲「えー!?」 パタタタタ・・・ 京太郎「リーチ、タンヤオのみで3900点だ!」 咲「・・・って、ドヤ顔で言う役じゃないよそれ」 京太郎「うるせえ、咲から初めて2局連続で取ったんだ。今はこれが精一杯なんだよ!」 咲「む、確かに2局連続で和了られてるね・・・」 京太郎「さぁ、連荘だ・・・このまま抉り切ってやる!」 東場三局一本場 咲「それ、ロンだよ!」 京太郎「ぐぇ!?」 パタタタタ・・・ 咲「リーチ一発三色同順ドラ1、裏ドラまでーー乗ってハネ満!12300点!」 京太郎「ぐおお、俺のリードが一瞬にして消えた・・・!?」 咲「さ、次は私の親だよ京ちゃん」 京太郎「くそ、次で倍返しだ!」 東場四局 咲「・・・っ」 ピシッ 京太郎「・・・これか!」 ピシッ 咲「んー、半分当たりかな。リーチ!」 バシンッ 京太郎「このっ!」 ピシッ 咲「京ちゃん、甘い!」 ピシッ 京太郎「じゃあ・・・これならどうだ!通らばリーチ!」 バシンッ 咲「・・・残念!それ、ロンだよ」 パタタタタ・・・ 咲「メンタンピンドラ1。満貫で11600点頂戴しますっ!」 京太郎「クソっ・・・!当たりって言ったじゃねーかよ、ハメやがったなー!」 咲「当たり牌って意味だよ、まだまだだね、京ちゃん。満貫御馳走様ですー♪」 京太郎「く、ムカつく・・・!次で三倍返しだ!」 咲「さ、連荘だよ・・・麻雀って、楽しいよね!」 京太郎「ああ、最高だ!」 その頃、部長宅 『・・・本気か?』 久「うん、本気も本気よ」 『そんなことをすれば奴さんがどうなるか・・・』 久「あの子は強いよ、多分なんとかなるわ」 『それにしたって分が悪いじゃろう』 久「分の悪い賭けはお嫌いかしら?」 『好きじゃないのう・・・そもそも、実行するのはワシなんじゃし』 久「私は好き。・・・じゃ、そういう事でよろしく」 『へいへい・・・全く、とんだ横暴部長じゃ』 駅前のクレープ屋 咲「さて京ちゃん。辞世の句は読まなくていい?」 京太郎「四局目 どうしてあれが 当たり牌」ガックリ 咲「それ川柳だよー。あ、このサンクチュアリ大車輪クレープ2人分下さい!・・・恋人割で」 店員「かしこまりましたー」 京太郎「恋人割にしてくれるのは優しさでしょうか」 咲「勝者の余裕、だよっ」 店員「お会計はお連れの彼氏様でよろしいんですか?」 京太郎「・・・はい、そうです」 店員「はい。ではお釣りを・・・」 京太郎「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬ・・・予想外の出費だ」 咲「悔しいでしょう、そうでしょう」フフン 京太郎「ちなみに、あの手牌。咲だったらどうする?」 咲「今からじゃ何言っても結果論だけど・・・あの2手前にイーピン切ったので大体分かったかな」 京太郎「あー、そこか・・・くそっ」 咲「まぁまぁ、ミスをミスだと気付けることが上達への第一歩だよ」 京太郎「次は、次こそは勝ち越してやる!」 咲「京ちゃんはまずトバされないようにしないとねー」 京太郎「・・・ですねー」 店員「お待たせしましたー」 咲「あ、きたきた」 京太郎「oh、これまたジャイアントな・・・」 咲「それじゃ、いただきまーす」 京太郎「ん。ちゃんとスプーン使って、良く噛んで食えよ」 咲「そこまで子供じゃないよー・・・はい京ちゃん、あーん」スッ 京太郎「なっ!?」 咲「どうする?当たり牌だよー?」フリフリ 京太郎「ここは攻めるっ!」グワッ 咲「なんちゃって」パクッ 京太郎「ぐ・・・半分分かってたのに釣られてしまった・・・悔しい・・!」 咲「あまーい♪・・・やーい、京ちゃんのチョンボー責任払いー」ベー 京太郎「くそっ、それでも俺は自分のクレープを背筋伸ばして食べるだけだっ!」ガツガツ 咲「ちょ、行儀悪いよ」 京太郎「うるせぇ!男の期待を裏切られるより幾分マシだ!」ゲフッ 咲「あーもう、ほっぺにクリームついてるってば」フキフキ 京太郎「そこで普通に備え付けのペーパーナプキン使っちゃうあたりこの子分かってねぇなーと思います」 咲「京ちゃんの歪んだ常識なんて知りませんー」パクパク 京太郎「今日は完敗だな・・・」 咲「そうでもないよ、京ちゃん初めて2連続で和了ったんでしょ?」 京太郎「俺が完敗だと思ったら完敗なんだよ。・・・次は勝つ!」 咲「うん、その意気だよ京ちゃん!」グッ 京太郎「応援してくれる気持ちは嬉しいからクレープ持ったままガッツポーズはやめような、ちょっと飛んだぞ」ベチャ 咲「ごめんなさい」フキフキ 京太郎の家 京太郎「くそー、相変わらず強いなぁ咲の奴」 ヴーッ、ヴーッ 京太郎「メールか・・・」 【差出人:染谷まこ 件名:麻雀しようや】 【本文:自分が清澄のお荷物でないと思うなら、土曜日に駅前に来んさい・・・】 【別に逃げても責めんけんのう、安心せえよ(注:長丁場になるけぇ、親御さんには言っときんさい)】 京太郎「これは・・・・・・喧嘩売られたってことでいいんだよな?」 京太郎「長丁場?上等じゃねぇか・・・その喧嘩買ってやる!」 京太郎「よっし、グダってる暇なんかねぇ!麻雀だ!」 カチカチ 京太郎「○和、○和っと・・・ん?この【タコタコス】って・・・」 kyou おい、お前タコスか? タコタコス 見ればわかるじぇ。只今武者修行中だじぇ kyou だよな。ちょっとやろうぜ タコタコス かかってこいだじぇ 京太郎「よし、そんじゃいっちょやるか優希!」ギュッ 土曜日 京太郎「さて、駅前に来てみたはいいものの・・・」 まこ「おー来た来た。京太郎、こっちじゃぞー!」 京太郎「あ、染谷先輩。何ですかあのメール」 まこ「そりゃ、お前さんに喧嘩売っとるんじゃよ」 京太郎「・・・いいですよ、やりましょう」 まこ「ハッ、その意気やよし。さ、着いてきんさい」 京太郎「電車に乗るんですか?」 ゴォォォォォォォー 雀荘 支配人「・・・電子機器と貴重品はお預かりします」 まこ「ん」ポイッ 京太郎「は、はぁ」 まこ「さ、この奥じゃ」 ギィィィィィィィィ・・・ まこ「・・・ここじゃ」 京太郎「薄暗いとこですね」 まこ「まぁ、座れや」ドカッ 京太郎「・・・はい」ドカッ まこ「今からやる麻雀はちょいと特殊でな、先に説明しておかなきゃいかん事があるんじゃ」 京太郎「特殊?」 まこ「そう・・・耐久麻雀じゃ。簡単に言えば・・・サドンデスじゃな」 京太郎「てことは・・・」 まこ「そう、トぶまで続けるッちゅうことじゃな。場は東固定。流局は4人打ちの時と同じ、親が18枚ツモった時点で流局じゃ」 京太郎「いいですね、分かりやすいです」 まこ「4人用の卓を二人で使うからのう、ルールは基本二人のそれじゃが・・・ツモは禁止じゃ」 京太郎「・・・ツモでトぶのを防ぐ戦法を防止するためですか」 まこ「そういうこっちゃ。ま、要はワシとお前さんで25000点の奪い合いをするっちゅーわけじゃな」 京太郎「ノーガードで殴り合いッスか・・・面白そうですね!」 まこ「じゃ、始めよか」チャッ 京太郎「メガネ、外すんですか」 まこ「当然、最初からトップギアじゃ。・・・怖いか?」 京太郎「誰が!」 まこ「・・・」 ピシッ 京太郎「・・・」 ピシッ まこ「うん、よく鍛えられとる。咲ちゃんに感謝せんとな」 ピシッ 京太郎「・・・ありがとうございます」 ピシッ まこ「それじゃ、そろそろ行くけ・・・リーチ!」 バシンッ 京太郎(来たか・・・でも、絞れないリーチじゃない!) ピシッ まこ「・・・ほぉ」 ピシッ 京太郎「どうかしました?」 ピシッ まこ「随分とまぁ・・・怯えが無いのう」 ピシッ 京太郎「そりゃ、鍛えられてますから」 ピシッ まこ「だが、その勢いがどこまで続くかのう?」 ピシッ 京太郎「勝つまでですよ!・・・俺もリーチ!」 バシンッ まこ「ええ面構えじゃ!」 ピシッ 京太郎「染谷先輩こそ!こんな雀荘に入れるなんて知りませんでしたよ!」 ピシッ まこ「まぁな!」 ピシッ 京太郎「貰った!それロン!」 パタタタタ・・・ 京太郎「メンタンピン!3900点だ!」 まこ「おお、先手を取られてしもうた」 京太郎「このまま・・・一気に抉り取る!」 まこ「怖いのう・・・じゃが、お前さんにも存分にワシを怖がってもらうき・・・」ニタァ 京太郎「・・・・・・っ」ゾクッ 東二局 ピシッ 京太郎「くっ、違ったか」 ピシッ まこ「それ、ロンじゃ」 パタタタタ・・・ まこ「ピンフのみドラ1で2900点・・・ま、クソ役じゃな」 京太郎「それじゃ俺は倒せませんよ、染谷先輩!」 まこ「さて、どうかのう?」 東三局 ピシッ 京太郎「・・・」 ピシッ まこ「・・・」 ピシッ 京太郎「・・・くっ、リーチ!」 ピシッ まこ「ああ、言い忘れとったがワシはこの耐久麻雀、負けたことないんじゃ」 ピシッ 京太郎「じゃあ俺が一人目ですね・・・光栄です!」 ピシッ まこ「だといいがのう・・・さて、これは?」 ピシッ 京太郎「・・・」 ピシッ まこ「そうよなぁ、和了れんよなぁ・・・そして今打った牌、ロンじゃ」 京太郎「ぐっ!」 パタタタタ・・・ まこ「一盃口、ドラ1で3900。連荘じゃ」 京太郎「あの、染谷先輩」 まこ「なんじゃ?」 京太郎「ちょっと喉乾いたんで飲み物買って来たいんですけど・・・」ガタッ まこ「何を腕の皮の生っ白いこと言っとるんじゃ?」 京太郎「え?」 まこ「言ったろ、『この麻雀はどちらかがトぶまで終わらん』って」 京太郎「耐久麻雀って、まさか・・・」 まこ「そう。終わるまでは飯も外の空気を吸う事も喉を潤す事も寝る事も許されん麻雀じゃ!」 京太郎「・・・っ!」 まこ「ただ一つ、逃げる方法はある。・・・部屋の両隅にあるボタンの、自分側のを押せばええ。押した方の負けじゃ・・・」 まこ「尻尾巻いて無様に逃げればええ」 京太郎「誰が押すんですか、そんなボタン!」ドカッ まこ「言うと思ったわ・・・後悔するなよ?」 京太郎「しません!」 「ロンだ!」 「ロンじゃな」 「ロン!」 「それ、ロンじゃ」 「それロン!」 「ロンじゃ!」 ・ ・ ・ 10時間経過・・・東百十六局 京太郎「ハーッ、ハーッ・・・!」 まこ「・・・お前の親番じゃぞ」 京太郎(くそ、喉が渇いて死にそうだ!頭もクラクラする!しかも・・・染谷先輩が段々強くなってる!) 京太郎「俺の・・・ツモ、ですね?」 まこ「そうじゃ」 京太郎「・・・」 パシッ まこ「・・・」 ピシッ 京太郎「っ・・・」フラッ パシッ まこ「・・・」 ピシッ 京太郎「・・・」 パシッ まこ「ロンじゃ」 京太郎「ぐぅっ・・・!」 まこ「・・・」 ピシッ 京太郎「・・・」 パシッ まこ「ロンじゃ」 京太郎「ぐぅっ・・・!」 まこ「ピンフドラ1、2900点・・・これで、またほぼ振り出しに戻ったのう」 京太郎「畜生っ・・・!負けてたまるか・・・!」 まこ「最初の威勢はどうした、京太郎?」 京太郎「今からお見せしますよ、染谷先輩・・・!」 まこ「おお好きなだけ見せとくれ、お前さんの虚勢を!」 「ロン!」 「ロンじゃ」 「・・・ロン!」 「そこもロンじゃ」 「・・・・・・っロン!」 「おいおい、勝手にバテんでくれよ・・・?ロン」 ・ ・ ・ 18時間経過:東二百十六局 京太郎(ヤバい、意識が・・・!) 京太郎「・・・」カクン まこ「京太郎、お前のツモ番じゃぞ?ふむ、寝とるな・・・むしろ今まで持っただけ褒めるべきかのう」 まこ(実力は完全に伯仲・・・いや、若干奴さんのが上とさえいえるかの) まこ「・・・支配人、目覚まし持ってこい」 『ハッ・・・』 京太郎「Zzz・・・」 支配人「・・・」スッ バシャァァァァァァァァァァァァァァァッ! 京太郎「ぐああああああああああああああああああああああああっ!?」ビクッ まこ「いい目覚ましじゃろ?バケツ大盛り一杯、55℃の熱湯じゃ・・・さ、続けるぞ」 まこ「あぁそう、これを5回浴びても起きなかった場合は強制的に負けじゃ、精々気を付けぇよ」ニタァ 京太郎(熱い!クソッ、一体何がどうなって・・・あ、そうか、俺、まーじゃんしてたんだ) 京太郎「染谷・・・まこっ・・・!」ギリッ まこ「ハッ、まるで獣の目じゃな。それじゃあワシには勝てん」 京太郎「この野郎っ!」 「ロ、ン・・・」 「ロンじゃ」 「そこもロンじゃ!」 「甘いのう、それもロンじゃ!」 「ぐがっ・・・!ロン!」 「それもロンじゃなぁ!」 ・ ・ ・ 22時間経過:東二百五十九局 京太郎「・・・」フラフラ パタッ・・・ まこ「・・・」 ピシッ 京太郎「・・・」 パタッ・・・ まこ「京太郎、聞け。返事はせんでええ」 ピシッ 京太郎「・・・?」 パタッ・・・ まこ「今、大勢がワシにあるのは理解できるな?・・・そこで、提案じゃ」 まこ「今、あのボタンを押せばここから出してやる。あったかい飯も、冷たい水も、ふかふかの布団も好きなだけ使わせてやる」 ピシッ まこ「・・・どうじゃ?ワシとしても清澄高校唯一の男子麻雀部員のお前をこれ以上追い詰めたくない」 まこ「ここはひとつ、次に生かすための負けとして受け入れるのは」 京太郎(飯・・・水・・・布団・・・くそ、眠ぃ・・・あの、ボタンを押せば・・・) まこ「ここまでよく頑張った。お前は十分強い、もう頑張らんでもええ」 京太郎(頑張らなくても、いい・・・?)フラッ まこ(奴さん、ここまでじゃな・・・) 京太郎(ボタン・・・これを押せば、ああ、眠ぃ・・・)フラフラ 『京ちゃん!』 『悪いよ!勝手に努力を放棄して、戦う前から負けを認めてる京ちゃんなんて、とってもカッコ悪いよ!』 『京ちゃんは、いつだって頑張り屋さんだもん!』 京太郎「ふっーーーーーー」 『麻雀って……楽しいよね!』 京太郎「っっっっざけんなあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」ガァンッ まこ「!?」ビクッ 京太郎「あ゛ー、やっとスッキリした・・・染谷先輩、お待たせしました。続けましょう」フラフラ まこ「おまっ、壁に思いっきり頭打ち付けるなんて何考えとるんじゃ!血がドバドバ出とるぞ!?」 京太郎「目覚ましです・・・続けましょう」 まこ「お前さん・・・最悪死ぬぞ?」 京太郎「死んだっていい、構うもんか・・・座れよ、染谷まこ。俺は、俺はまだこの勝負を降りる訳にはいかねぇんだ!」 まこ(フッ、乗り越えたか・・・久の言った通りじゃのう) まこ「あー、お前さんの覚悟はよーく分かった。じゃから勝負はここでーー」 京太郎「怖いのか?」 まこ「・・・あ゛?」 京太郎「急に喋り出したから降参すんのかと思ったら、さっきからちっとも自分のボタンに手をつけようとしねぇじゃねぇか・・・」 京太郎「それってつまり、俺が押せってこったろ?」 京太郎「俺に負けるのが、不敗伝説を破られるのがそんなに怖いのかよ・・・染谷先輩!」 まこ「人の老婆心も知らんと、随分とズケズケ言ってくれるのぉ、若造が・・・!」ゴウッ 京太郎「口つぐむのは老人だけで十分だ!」 まこ「・・・もう本気で怒った。どうなっても知らんぞこんくそガキがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 京太郎「そのくらいなきゃ勝負にならねぇよ!」 「ロンッ!」 「ロンじゃっ!」 「甘ぇよ!そこロン!」 「それもロン!」 「ロン!」 「ロン!」 「ロンだっ!・・・さぁ、連荘だぜ!」 ・ ・ ・ 24時間経過:東二百七十六局 京太郎「あ゛ー・・・クソッ」フラフラ まこ「くぅ・・・」フラッ 京太郎「・・・染谷先輩の、親だな」 まこ「ワシの分析麻雀を掻い潜った上で更に攻め込み、ここまで追い込んだ・・・認めちゃる。お前さん、大した奴じゃ」 ピシッ 京太郎「だからどうした。まだ勝負はついてねーぞ・・・!」 バシッ まこ「だがな、人間心よりも体の支配が強いんじゃ」 ピシッ 京太郎「・・・」 バシッ まこ「血を流し過ぎたのう。早くワシにトドメをささにゃ、お前さんもうじき確実にぶっ倒れるぞ」 ピシッ 京太郎「だったらっ・・・この局で和了るだけだ!」 バシンッ まこ「ああそうじゃな、今のお前さんならその力もある。実力はワシより上じゃからな、まともに打ち合えば間違いなく和了れるじゃろう」 ピシッ 京太郎「まさか、アンタ・・・!」 バシッ まこ「あぁ、お前さんの想像どおりじゃ・・・悪いが、この局はベタ降りさせてもらうき」 まこ「この耐久麻雀、如何に点数で下回っていようと最後に立っていたほうの勝ちじゃからな」 ピシッ 京太郎「ぐっ・・・!」 バシッ まこ「勝つための手段じゃ・・・卑怯とは、言わんよな?」 ピシッ 京太郎「ったりめーだろ・・・それがアンタの戦法なら、俺は喜んで挑戦する!」 バシッ まこ「須賀、京太郎か・・・お前さんと打てて楽しかったよ」 ピシッ 京太郎「その言葉は俺が勝つまでとっといた方が良いですよ、先輩・・・!」 バシッ まこ「・・・さ、次はお前さんじゃ」 ピシッ 京太郎「・・・っ」 バシッ まこ「苦しそうじゃのう」 ピシッ 京太郎「リー・・・チッ!」 バシンッ! まこ「ハッ、予言してやる。そのリーチは不発に終わるけぇ」 ピシッ 京太郎「言ってろ・・・!」フラフラ バシッ まこ「本当に・・・アホじゃのう」 ピシッ 京太郎「俺は、和了る・・・!そこ、ポン頂き!」 バシッ まこ「いーや、和了らせん!」 ピシッ 京太郎「和了る!」 バシッ まこ「絶対に和了らせん!」 ピシッ 京太郎「絶対に、和了ってみせる!それポンだ!」 バシッ まこ「ワシの誇りにかけて、この局は流す!」 まこ(和了る和了ると急に元気を取り戻しおって・・・相当和了りやすい手を持ってると見たき) ピシッ 京太郎「っ・・・!」フラッ パタッ・・・ まこ「・・・!」 ピシッ 京太郎「くっ・・・!」 パタッ・・・ まこ「そろそろ、じゃな。せめてリーチせんどけばよかったものを」 ピシッ 京太郎「うるせぇ、俺の麻雀だ・・・!」 パタッ・・・ まこ「おー、今のうちに吠えろ吠えろ。後3分もせん内にお前さんは倒れ、ワシの不敗記録は更新されるからのう」 ピシッ 京太郎「させる、かっ・・・!」 パタッ・・・ 京太郎「ぐぅっ!?・・・ぁ・・・」ドサッ まこ「・・・ついに座っても居られんくなったか。後腐れないように、早めに引導渡しちゃるけーのお」 まこ「これで・・・死にさらせやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」 バシィィィィィン! 京太郎「・・・」 まこ「これで流局・・・終わりじゃな。京太郎、お前さんの負けじゃ」 ガシッ まこ「なっ!?」 京太郎「いいや・・・」 ズルッ・・・ まこ「馬鹿なっ、そんな事があるのけ!?」 京太郎「俺の・・・」 京太郎「俺の・・・勝ちだ・・・!」 バンッ 京太郎「ーーロン。混老頭、トイトイ・・・ドラ2、河底撈魚で・・・12000点、ハネ満」 京太郎「アンタの、トビ、だ・・・」ドシャッ まこ「・・・ハァ。もう呆れたわ・・・分かった分かったワシの負けじゃ」 まこ「しかしここに来て一番危なっかしい混老頭とは読めんかったな・・・」 まこ「深読みし過ぎたか、いや今回が偶然で元から読める手じゃなかったか・・・京太郎?」 京太郎「・・・・・・」ゲー まこ「うわ、こいつ寝ゲロしとる」 京太郎「・・・・・・」 まこ「ったく、締まらんなぁ・・・よいしょ」グィッ まこ「重っ・・・くそ、完全に気絶しとるなこれ」 まこ(ボタン・・・負けを認めた方が押すんじゃったな) カチッ ブーーーーーーーーーーーーーッ まこ(あ、これ、アイツとの勝負に夢中で気付かんかったけど、ワシもそろそろ・・・げん、か・・・)ドサッ ギィィィィィィィッ 支配人「・・・・・・終了いたしましたか」 支配人(ほとんど使ってない部屋とはいえ、出来れば店は汚してほしくなかったですね) 支配人(男のゲロとか一番嫌な類です) 支配人(いやマジで) とある公園 京太郎「・・・ぅおっ!?」ガバッ まこ「やーっと起きたか」 京太郎「し、勝負は!?ていうか今何時だ!?」 まこ「今は日曜の夜9時・・・勝負はお前さんの勝ちじゃ。本気で死ぬまで打つ気だったんか貴様」 京太郎「そう、か・・・俺、勝ったのか・・・ハハ」 まこ「ああ。店の中で寝ゲロした上で、かよわい女の子にゲロぶっかけよってな」 京太郎「あれ、頭の傷・・・」サスサス まこ「あれは切り傷。血が多く出ただけで、きちんと消毒すれば前髪で隠れる程度のもんじゃ」 まこ「まったく訳のわからん自傷行為に走りおって・・・」 京太郎「し、仕方ないでしょう!」 まこ「ああ、全く負けた方が何言っても遠吠えじゃあ。それじゃ、負け犬はそろそろ帰るとするけぇ」 京太郎「・・・」 まこ「・・・次は負けん」 京太郎「俺も、負ける気ないです」 まこ「勝手に言っとき。この麻雀狂いめ・・・それじゃーの」スタスタ 京太郎「ハハハ・・・って、日曜の夜9時ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」 まこ「・・・チッ」ビュンッ 京太郎「ちょっ、俺家からとんでもない数の電話とメールが来てるんですけど!?染谷先輩!?染谷まこ先輩ー!?」 京太郎の家 京太郎「あ゛ー、超絞られた・・・ただでさえ疲れてんのに」フラフラ ボフッ 京太郎「やべ、布団超気持ちいいー・・・ん?」 ピリリリリリリリリッ!ピリリリリリリリリッ! 京太郎「そうですか、後1イベント残ってましたか」 ピッ 『京ちゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!』 京太郎「ハーイ、こちら須賀京太郎。聞こえてるからなるべく小さな声で喋ってくれると嬉しいな」 『ふざけてる場合じゃないでしょ!』 『京ちゃんのお母さん「遅くなるとは言ってたけど、ここまで遅いなんて・・・」って本気で心配してたんだよ!?』 京太郎「あー、それについてはまた今度・・・てか普通にウチの親と会ってるんだな」 『また今度じゃないのっ!私だって・・・とっても、心配で・・・』グスッ 京太郎「・・・悪かったよ、だから泣くなって」 『・・・・・・だって、京ちゃんにメールしても全然返って来ないのなんて初めてだから、どうしたらいいかわかんなくて・・・』 京太郎「・・・咲、お前ひょっとして「京ちゃんからメールが返ってこないんです!」」 京太郎「とか言って涙目でド○モショップに駆けこんだりしてないよな?」 『・・・・・・』 京太郎「で、受付のお姉さんに苦笑されながら「ちゃんと届いてますから、安心してください」」 京太郎「とか言われて急に恥ずかしくなって赤面したりしてないよな?」 『・・・・・・京ちゃんの馬鹿っ!』 京太郎「なんだビンゴか・・・機械不信もここまで来ると特殊能力だな」 『う゛ー、人が折角心配してるのに・・・』 京太郎「咲・・・ありがとな」 『私にお礼言う前に自制心を持ってくれた方が私は嬉しいなー』 京太郎「ハイハイ、善処します。それじゃ、俺疲れてるから切るけど・・・暖かくして早めに寝ろよ」 『だから私そんなに子供じゃないってばー』 京太郎「へっ・・・それじゃー、また学校で」 『うん、また明日、学校でね!』 ピッ 京太郎「あー、疲れた」グッタリ 京太郎「・・・へっくし!」 京太郎「うわー、これ風邪引いちゃったかもなー」 京太郎「明日までに、直さねーと・・・部活に・・・」 京太郎「Zzz・・・」 翌日 ガチャッ 久「おいーっす」 京太郎「こんちはーっす」フキフキ 久「いやー、ホント須賀君が居てくれて助かるわ」 京太郎「雑用的な意味でですか?」 久「ううん。清澄高校麻雀部員的な意味よ・・・早く公式試合やってみたいでしょ?」 京太郎「そりゃそうですよ!」 久「うん、今の須賀君なら結構やれると思うわ・・・でも、一つ気になるのよねぇ」 京太郎「何ですか?」 久「いや、まだ推測の域を出ないんだけどね・・・」 咲「こんにちはー」 京太郎「お、来たなお姫様」 咲「京ちゃんこそ、今日もお掃除大義である!」 京太郎「へへーっ!」 優希「麻雀だじぇー!麻雀をさせるじぇー!」ガルルル 和「あら、今日は染谷先輩は?」 久「・・・体調不良で欠席。まぁ私の責任も多少あるけど・・・」チラッ 京太郎「!?」ドキッ 咲「?」 久「それじゃ、今日も部活始めましょうか!」 「「「「はいっ!」」」」 京太郎「今日だけ出れば、今週は明日から連休だなー」 ピシッ 咲「京ちゃん、連休中も部活来るよね?」 ピシッ 京太郎「おいおい、俺が来ないはずないだろ」 優希「・・・私も来るじぇ。京太郎だけには負けられんじぇ」 ピシッ 和「私も、というか麻雀部の皆さんは何も言わずとも全員来ると思いますが」 ピシッ 京太郎「だよなー。最近麻雀より楽しい事が見当たんねぇし」 ピシッ 咲「そうだね・・・ね、京ちゃん。『あの』アイスって言って分かる?」 ピシッ 京太郎「あのアイス?なんじゃそら」 優希「・・・!咲ちゃん、その事をどこで聞いたんだじぇ?」ピキーン パシッ 咲「噂話なんだけど、優希ちゃんも知ってるんだ?」 和「何のことです?」 ピシッ 久「ああ、アレね・・・都市伝説じゃないの?」 優希「いーや、そうとも言い切れないじぇ。手に入れるチャンスはきっとあるじぇ」 咲「あー、一回でいいから食べてみたいなぁ。ショフトクリーム」 ピシッ 京太郎「ソフトクリーム?その辺に売ってあるのを買えば・・・」 ピシッ 優希「ソフトクリームじゃないじぇ!ショフトクリームだじょ!」ドンッ バシッ 咲「それロン!三暗刻、嶺上開花、ドラ2!」 優希「ぬわーっ!京太郎のせいだじぇ!」 和「どうしてあんな低確率のものがこうポンポンと」 京太郎「ふぃー、危なかったぜ。振り込むところだった・・・そんで、そのソフトクリームは何が凄いんだ?」 優希・咲「「ショ・フ・ト!」」 京太郎「な、なんだよ・・・大して変わんねーだろ、ソフトだろうとショフトだろうと」 和「そこ、重要なとこなんですね?」 咲「うん、とっても重要だよ」 優希「ショフトクリームとソフトクリームは月とスッポン、天と地ほどの差があるじぇ」 京太郎「・・・で、そのショフトクリームは何が凄いんだ?」 久「ショフトクリームって言うのはここら辺一体で噂になってるソフトクリームでね・・・」 久「なんでもあらゆる味覚をカバー出来る極ウマアイスらしいわ」 京太郎「へー・・・」 和「まぁ、単なる噂ですね」 京太郎「だろうな。さ、次は俺の親だぜ!」 ピシッ 咲「京ちゃんには絶対振り込まないよ!」 ピシッ 優希「京太郎にだけは負けんじぇ・・・!」メラメラ ピシッ 和「全部搾り取った上でトバしてあげます・・・!」ガロロロロロ バシンッ 京太郎「お前ら・・・上等じゃねえかあああああああああああああああああああああっ!」 ・ ・ ・ 京太郎「ぶはーっ!やっと半荘終わりか」 優希「大激戦だったじぇ・・・」 和「宮永さん、流石です」 咲「えへへ・・・京ちゃんも頑張ってたと思うよ?」 京太郎「ま、タコスには勝ったからな!」 優希「ぐぅ・・・南場さえなければっ!マジで悔しいじぇ、京太郎め!・・・もう半荘やるじぇ!焼き鳥にしてやるじょ!」 京太郎「おう、上等だ!」 咲「二人とも、もう部活の時間終わりだよー」 久「んー・・・」 和「部長、どうかしました?」 久「須賀君、ちょっといい?」 京太郎「はい?」 久「例えば・・・」カチャカチャ 久「この局面だったら、どれ切る?」 京太郎「えーと、これですかね?」 ピシッ 久「・・・こりゃ重傷ね」 京太郎「へ?」 久「鴛鴦症候群とでも名付けるべきかしら・・・」 優希「重傷?京太郎の腕がアレなのは元からだじぇ、不治の病だじぇ」 京太郎「負けた奴に言われたくねーよ!」 優希「最後咲ちゃんに振り込まなけりゃ勝ってたじぇ!タイマンの成績なら私が上だじぇ!」 京太郎「あーそうかよ!なら次は文句のつけようがないようにトバしてやるよ!」 優希「こっちのセリフだじぇ!」ガルルルル 久「あー、そういうんじゃなくてね・・・須賀君、打ち方が対宮永さんに偏り過ぎなのよ」 咲「私に?」 久「ほら、部活後に宮永さんと二人っきりで麻雀の勉強してたでしょ?」 京太郎「そうですけど・・・」 和「・・・・・・」ギョリリリリリリリリ 優希「和、歯軋りでその音はヤバいじぇ、何かに目覚めてるじぇ」 久「確かに腕自体は格段に上がってるけど・・・癖がついちゃってるのよ」 咲「・・・あっ」 久「例えばさっきの局面、真っ先に槍槓狙いにいったでしょ?」 久「普通はあり得ないわ。あそこならもっと有効な手に出来たはず。でもそれをしなかったのは槍槓が一番有効だと思っているから」 優希「なんか納得できるような、出来ないようなだじぇ・・・」 久「つまり、宮永さんの相手をし過ぎたのが原因よ」 久「牌譜を見ても、ある程度宮永さんの打ち筋に似たような状況の時は全部同じような待ちをしてるわ」 咲「で、でも腕は上がってますし」 久「須賀君。これが原因で実戦に通用しなくても良いのかしら?」 京太郎「・・・っ!」 久「嫌よね。・・・でも、この癖はその可能性も考慮せざるをえないほど重度のものよ。ちょっと研究されたらすぐにバレるわ」 京太郎「どうすれば、いいんですか?」 久「簡単。癖が治るまで宮永さんと麻雀しなければいい」 京太郎「!?」 咲「そんなっ!」 優希「でも、その二人が一緒に居て麻雀をしてない場面が想像できないじぇ」 和「確かに・・・暇さえあれば、麻雀してますもんね」ギリッ 久「そこなのよねー・・・よし!重大発表!」 「「「「!?」」」」 久「須賀京太郎君。連休期間中の部停&宮永さんとの面会禁止を言い渡します!」 咲「京ちゃんが」 京太郎「俺が」 咲・京太郎「「部停の上に面会禁止!?」」 和「部長、ナイス判断です!」グッ 咲「ぶ、部長!いくらなんでも・・・」 久「私としても二人を引き裂きたくは無いんだけどねー」ニヤニヤ 咲「そ、そういうのとは違います!でもやりすぎじゃないですか!?」 久「じゃあ宮永さんに聞くけど、一日中須賀君と一緒に居て麻雀しないでいる自信ある?」 咲「う゛・・・」 久「須賀君は?」 京太郎「・・・無いッス」 久「と、言うわけよ。少しの間宮永さんと離れて強くなる方を選ぶか、それとも宮永さんとずっとやり続けて強くなれない方を選ぶか」 久「どうする?」 京太郎「・・・・・・俺は、強くなる方を選びます」 久「よく言った、それでこそ清澄麻雀部よ。宮永さんも、須賀君が覚悟決めたんだから。妻として付き合ってやりなさい」 咲「京ちゃん・・・」 京太郎「咲・・・俺、強くなりたいんだ」 咲「うん、分かってる。だから、癖が治ったらーーまた、私と麻雀してくれる?」 京太郎「ーーああ、約束する」 久「・・・いや、何も今生の別れって訳じゃないのよ?」 和(ぁぁぁイライラする・・・!)ワギャンワギャン 優希「誰か!今すぐ私の相手するじぇ!早く!早く!」メラメラメラメラ 京太郎「それじゃあ部長。俺は部停期間の間はここに来ちゃいけないんですよね?」 久「ま、そうね。・・・ちょっと耳貸してくれるかしら」 京太郎「・・・?」スッ 久「・・・龍門渕に行きなさい。話は通しといてあげるわ」ヒソヒソ 京太郎「マジですか!?」 久「それが、癖を直しつつあなたを手っ取り早く強くするには最適の手段だからね」 久「・・・前にも言ったけど、私あなたには期待してるのよ?」 京太郎「ありがとうございますっ!」 久「お礼は強くなってから言ってくれた方が嬉しいわ。・・・頑張ってきなさい」 京太郎「はいっ!」 咲「京ちゃん、なんて言われたの?」 京太郎「秘密の特訓だとさ!帰ってくる頃には咲が相手にならないレベルになってるかもしれねぇぜ?」 優希「ないじぇ」 和「そんなオカルトあり得ません」 久「それは厳しいわね」 京太郎「なんか妙に辛辣ですね皆さん」 咲「うーん、期待薄かな」 京太郎「咲まで!そこは嘘でも期待してるって言ってくれよ!」ガーン 咲「アハハ、冗談冗談。・・・それじゃあ期待してるよ?京ちゃん」 京太郎「おう、任せとけ!」 久「では、話もまとまったところで今日の部活はここまで!・・・須賀君、今日は念入りに掃除してってね」 京太郎「了解しましたっ!」 久「それじゃ、私は帰るわねー」ヒラヒラ 優希「帰ってネト麻だじぇ!休んでる暇なんかないじぇ!」 和「宮永さん、一緒に帰りません?」 咲「あ、ごめん原村さん。私京ちゃんともうちょっと話したいから」 和「・・・」イラァ 和「まぁ、連休中はずっと私のターンですし・・・別にいいか」ボソッ 咲「?」 和「いえ。それじゃあ私、先に帰ってますねー」 ガチャッ 京太郎「・・・」ウズウズ 咲「・・・」ウズウズ 京太郎「あー、駄目だ!咲と二人で居ると麻雀したくて体がウズウズする!」 咲「私もー。早く京ちゃんと麻雀したい麻雀したいっ!・・・ってなっちゃうよー」 京太郎「こりゃ部長の言ってた癖もマジっぽいな」 咲「部長さんは、ちゃんと京ちゃんの事考えてくれてるんだよね」 京太郎「ああ、まさか俺の牌譜をずっと見ててくれたとは思わなかったよ」 咲「部長さんもとっても頑張り屋さんだよね」 京太郎「ああ。あの人、表には出さねーけどな」 咲「恥ずかしいのかも?」クスッ 京太郎「かもな!」 咲「・・・明日から、しばらく京ちゃんに会えないのかぁ」 京太郎「ま、そうなるな」 咲「仕方ないけど・・・ちょっと、寂しいかも」 京太郎「ん、寂しい?」 咲「え、京ちゃんは寂しくないの?」 京太郎「だって、咲の声はいつでも聞けるし」 咲「えええええっ!?それって、どうやって」 京太郎「ヒント。お前が身につけてる唯一の電子機器ってなーんだ」 咲「あ、携帯・・・」 京太郎「そーいう事だ。会えなくても、声は聞けんだろ?」 咲「・・・うんっ!」 咲「京ちゃん、私毎日電話するからね!」 京太郎「友達が転校するかのような言い方だな」 咲「やっぱり迷惑、かな・・・?」 京太郎「・・・んなわきゃねーだろ、嬉しいよ」 咲「よかった・・・私が寂しんぼなだけかなって、ちょっと心配になっちゃったよ」 京太郎「俺は俺が居ない間に咲が機械を壊さないかが心配だよ」 咲「む・・・京ちゃんそれは失礼だよー!」 京太郎「どうだかな、俺が電話に出ないからってド○モショップに駆けこんでる絵面が目に浮かぶぜ」 咲「あれはっ・・・初めてだったから混乱しただけで、もう二度としないもん!」 咲「京ちゃん。連休中に絶対、癖治してきてね」 京太郎「あったりめーよ。任せとけって!」 咲「うーん、京ちゃんの任せとけはあんまり信用できないんだよねー」 京太郎「なにおう!?」 咲「・・・頑張れ、京ちゃん!」 京太郎「おう、頑張るぜ・・・そろそろ帰るか。送っていきますよ、咲お姫様」 咲「うむ、苦しゅうない。それじゃ、今日もエスコートよろしくね京ちゃん!」 咲宅前 京太郎「・・・じゃあな、咲」 咲「うん。また、連休明けに・・・」 京太郎「ーーーー」 咲「ーーーーっ・・・」 咲「連休明けに、絶対、麻雀しようね・・・!」 京太郎「・・・よっし!んじゃその時には咲をちょちょいっとのしてやるとするか!」 咲「ほほー、いつもちょちょいっとのされてる京ちゃんが何か言ってますなぁ♪」 京太郎「うるせぇ!絶対倒してやるからなあああああああああああああああああああああ!」ダダダダダ 咲「頑張れ、京ちゃん。・・・・・・・・・頑張れ」 部長宅 ピッ 『けほっ、けほっ・・・』 久「おー、まこ。大丈夫?」 『う゛ー・・・まぁな、ただの風邪じゃから一日休めばなんとか治るき』 久「それは重畳。で、病み上がりのとこ悪いけどまこに聞きたいことがあるのよ」 『・・・なんじゃ?』 久「龍門渕に話を通す時って、どうすればいいのかしら?」 『んなもんワシが知るかっ!』 ガチャッ 久「あー・・・うん、まぁそうなるわよね」 久「須賀君なら多分なんとかなるでしょ!・・・多分」 『なっ、何故ですの!?龍門渕にアポ無し単独の無謀な挑戦者が現れるなど前代未聞』 『それを泊めたとなれば後世に語り継がれるレベルに目立てましてよ!?』 『お前は目立つ事ばかり考え過ぎだ!もう少し自重、警戒せんか!』 京太郎「親父さん、正論だな」 一「ていうか、普通の意見だよね」 『お父様!目立ってナンボ!目立ってナンボですのよ!?』 『どうしても泊めたいのなら厄介者同士、アイツのところにでも泊めておけ!』 『~~~~っお父様は衣の事をまだ・・・話になりませんわ!勝手にそうさせて頂きます!』 『勝手にしろ!・・・まったく、どうしてこう目立ちたがるのか』 バタンッ! 透華「まったく、これだから古い人間は困るのですわ!」 京太郎「いや、親父さん至極まっとうな意見だと思うぞ」 透華「目立てない意見がまっとうな意見な訳ありませんわー!」 一「それは透華がおかしいだけだと思うな・・・僕もコイツが泊まるのは反対だし」 透華「もう、一まで!・・・着いてらっしゃい、こちらなら使っていいと『許可』が出ましたわ!」プンプン 京太郎「あれでいいのか、龍門渕家」 一「まぁ、あれでいいんだよ。・・・多分」 龍門渕邸・別館 ギィィィィィィィィッ・・・ 透華「さ、ここでしてよ」 京太郎「ここも、でけぇな・・・」 一「んー、ここはちょっとあっちとは違う理由で大きいんだよね」 京太郎「違う理由・・・?」 ???「あ、とーかー!」タタタタッ 京太郎(アイツ・・・まさかっ!) 透華「衣・・・この男が少しの間ここで暮らしますのよ」 衣「・・・コイツが?衣と一緒に暮らすのか?」 透華「ええ、そうなりますわ」 京太郎「おい、あれってーー」ヒソヒソ 一「うん、龍門渕女子麻雀部が誇る我らが大将。天江衣だよ」 京太郎「やっぱりか・・・!」 衣「ふん・・・」スンスン 京太郎「な、なんでしょうか?」 衣「あの女の匂いがするな・・・面白い。透華、この男をここに泊めることを許すぞ!」 透華「・・・でしょうね」 衣「あぁ。今夜は久しぶりに・・・楽しめそうだ」ニタァ 京太郎「っ!?」ゾクッ 衣「清澄の。・・・衣の部屋は3階の北だ、待っているぞ」スタスタ 一「あーあ、衣に気に入られちゃったね」ニヤ 透華「さて、清澄の。あなたは今晩ここに泊まってもらいますわ・・・本当は、あまりしたくないのですが」 京太郎「だったら今からでも家に」 透華「そ・れ・は・わたくしのプライドが許さないと言ってますでしょうが!」 透華「・・・それともなんですか、あなたはウチに遊びに来たんですの?」 京太郎「・・・・・・そいつは聞き捨てならねぇな。俺は、強くならなきゃいけないんだ。俺は・・・ここに麻雀しに来てんだよ!」 透華「でしたら、相手の挑発には乗るものではなくって?」 京太郎「ああ上等だ!乗ってやる、乗ってやるともよ!」 一(沸点低いなー) 透華「ふっ、あなたならそういうと思ってましたわ。・・・人が本気かどうかは、目を見れば分かりますもの」 京太郎「俺ァ決めたよ。男子麻雀部を全員倒してーー龍門渕透華!アンタに直接麻雀を申し込む!」 透華「・・・くっ、くくくっ!最高ですわ!一!聞きました!?」 透華「ここを龍門渕と知って尚!わたくしを龍門渕透華だと知って尚!闘志を滾らせて挑んでくる男がまだいましたわ!」 京太郎「あぁ、最高だ!アンタ程さっぱりとした人間は見たことねぇ!・・・この手で抉り取ってやりてぇ位にな!」 透華「その勇気、蛮勇だったと思い知らせてあげますわ!オーッホッホッホッ!」 京太郎「蛮勇が空回りするとは限らねえぜ、龍門渕の女王様ぁ!」 透華「おっと、肝心な事を忘れてましたわ。ーーあなたの名前を聞いておきましょうか」 京太郎「須賀、京太郎だ!」 透華「須賀京太郎・・・気に入りましたわ。あなた、そういう目もできるんですわね」 京太郎「アンタもな、ただの目立ちたがり屋じゃないって訳だ!」 透華「では、京太郎。・・・ここには、牌に愛された者が住んでいます」 京太郎「天江、衣か」 透華「ええ。彼女の実力は知ってますわね?」 京太郎「県大会であれだけ暴れられりゃあな」 透華「・・・彼女と麻雀するもしないも、あなたの自由ですわ」 透華「ーーただ付け加えるなら、衣は決して挑まれた勝負を拒んだりしませんわ」 京太郎「へっ、流石に良い度胸じゃねえか・・・!燃えてきたぜ!」 透華「明日の朝日が昇るまでに、あなたが麻雀を嫌いになっていない事を祈ってますわ」 京太郎「そりゃ、世界が終わるまでありえねーから安心しやがれ」 透華「ふっ・・・では明日、この場所で」 京太郎「ああ、首洗って待ってろよ!」 一(なーんか、息ぴったりだなこの二人・・・一応『人体切断マジック』用の剣研いでおくかな) 龍門渕邸・別館内 バタン 京太郎「さて、まずは」 ハギヨシ「ハギヨシと申します。須賀京太郎様、以後よろしくお願いします」 京太郎「うおっ!?」 ハギヨシ「お風呂場と食堂は一階、寝室は2階~4階のお好きな部屋をどうぞ」 ハギヨシ「分からないことがあれば、いつでもお呼び下さい。では・・・」シュッ 京太郎「今のが、執事って奴か・・・すげー」 京太郎「んじゃ、まずは飯にすっか!」 龍門渕邸・別館 食堂 京太郎「でっか・・・!」 京太郎(毎度のことながらスケールが違い過ぎんだろ、龍門渕) ハギヨシ「こちらがメニューです。鈴を鳴らして給仕係をお呼び下さい」 京太郎「あ、あぁ。どうも」 ハギヨシ「それでは」シュッ 京太郎「あの人、どこにでも来んのか・・・?」ペラペラ 京太郎(それにしても・・・) 『はんばーぐ&えびふらい(たるたるおおもり、ころもあつめ)』『おむらいす』『かれー(あまくち)』 京太郎「どうにも子供向け過ぎるメニューだなおい!」 京太郎「えーと、この鈴鳴らせばいいのか?」チリンチリン 給仕係「はい、お呼びでしょうか」 京太郎「えーと、じゃあこのカレー下さい」 給仕係「承りました」パタタタタ 京太郎「うーん・・・」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 京太郎「やっぱりこう、広すぎると手に余るっつーか、間が持たねえな。この食堂、一人用ってことはねえよな?」 ハギヨシ「この食堂は基本的に衣様一人でご利用なされます」 京太郎「っ!・・・ってまたアンタか。ホントどこにでも現れるな」 ハギヨシ「執事ですから」 京太郎「てか、一人用でこれかよ・・・」 ハギヨシ「この館は衣様の館ですから」 給仕係「お待たせしましたー」 ハギヨシ「料理が到着したようですので、私はこれで」シュッ 京太郎「消えた・・・んじゃ、食べますか」 京太郎「あー、なんつーかこれアレだわ。ファミレスの味だ」パクパク ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 京太郎「・・・」パクパク 京太郎「・・・」モグモグ 京太郎「・・・」パクパク 京太郎「あれ、なんか泣けてきたぞ」モグモグ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 京太郎「ごちそうさまでした」パンッ 京太郎「よし、次は風呂だ!」 龍門渕邸・別館 風呂 カポーン 京太郎「ふぃー・・・」 京太郎「良い湯だ・・・」 京太郎「とてつもなく良い湯だ・・・」 京太郎「・・・」 カポーン 京太郎「だあああああもう!広過ぎんだろ!こんな広い風呂に一人で居られるか!俺は天江の部屋に行くぞ!」ザパッ そのころ、龍門渕邸 透華の部屋 一「ねぇ透華」 透華「なんですの?」 一「アイツさ、どうなると思う?」 透華「・・・さぁ、分かりかねますわね」 一「だって、相手はあの衣だよ?」 透華「そうですわね」 一「明日の朝になる頃には、どうなっちゃってるのかなぁ・・・」ニタァ 透華「一。そういう事を考えるならまだしも、口に出すのはおよしなさいな」 一「はーい」 透華(でも、確かに一の言う通り・・・まぁ潰れたらそこまでですけど) 龍門渕邸・別館 3F北側の部屋前 京太郎「この扉の先に・・・」 京太郎(あの、天江衣がいるのか) 衣『そこに居るんだろう、清澄の。・・・入らないのか?』 京太郎「っ!」ブルッ 京太郎「・・・それじゃあお言葉に甘えて、入らせてもらうぞ!」 ガチャッ 衣「ようこそ、衣の部屋へーー楽しませてくれよ?」 京太郎「言われなくても!」 衣「・・・ん?」 京太郎「何だよ、俺の顔に何か付いてるか?」 衣「いや、なんでもない。さぁ始めよう、清澄の・・・サイコロ回れ―!」 コロコロ・・・ 衣「わーい、衣の親番だぁ!」キャッキャッ 京太郎(こうして見ると子供にしか見えねえな・・・) 東一局 衣「~~♪」 パシッ 京太郎「・・・」 ピシッ 衣「時に清澄の。衣と相対した彼奴は息災か?」 バシッ 京太郎「咲か?ああ、元気だよ」 ピシッ 衣「そうか、それは良い。・・・まだ飽きずに遊べそうだ」 バシッ 京太郎「おいおい、今の遊び相手は俺だぜ?」 ピシッ 衣「・・・・・・」 バシッ 京太郎「・・・」 ピシッ 衣「なぁ、清澄の」 バシッ 京太郎「何だよ?」 ピシッ 衣「選べ。二度と麻雀出来なくなる方か、それともここで何も言わずに部屋から出るか」 バシッ 京太郎「お前に勝つ方を選ぶ!」 ピシッ 衣「・・・斎斎し。お前はあまりにも乏し過ぎる、凡夫にも劣る下臈だーー今までの打牌で、衣には分かる」 バシッ 京太郎「勝手に人をランク付けしてんじゃねえ!」 バシッ 衣「三流は三流。衣が決めているんじゃない、最初から決まってるんだ」 バシッ 京太郎「っ・・・!」 バシッ 衣「現にお前は和了れていない。今までも、そしてこれからも」 バシッ 京太郎「それは、どうかなっ!」 ピシッ 衣「己の力さえ見えずか・・・見下げ果てた。最早貴様に用は無い」ギラッ バシッ 京太郎(リーチさえできないのは、初めてだなっ!)ゾクッ ピシッ 衣「この世には二種類の人間がいる。牌に愛されたものとそうでないもの」 バシッ 京太郎「ああそうかよ、それでアンタの見立てなら俺はどっち側なんだ!?」 ピシッ 衣「言わなければわからないのか?下臈・・・リーチだ」 バシッ 京太郎「分からねえな!俺は俺の力で引き当てる!」 ピシッ 衣「ここまで分からぬ凡夫が居るとはーー片腹大激痛!」ピッ バンッ 衣「ーーツモ。リーチ一発、メンゼン清一色ドラ2!・・・12000オールだ」 京太郎「んなっ・・・!?」 衣「何をしている、連荘だぞ・・・早く用意しろ」 京太郎(何だ、天江の体が、大きく・・・!?) 東一局一本場 衣「宣言してやる、下臈。お前の親番は久遠に来ず」 バシッ 京太郎「そんな麻雀があってたまるかってんだ!」 ピシッ 衣「そう、これは麻雀じゃない、だから衣も楽しくない。・・・できれば早く終わらせたい」 バシッ 京太郎「そうツレない事言うなよ、なぁ!」 ピシッ 衣「牌に最低限の愛さえ貰えぬ輩になど、少しでも期待した衣が愚かだったか・・・」 バシッ 京太郎「それは俺が決めることだっ!」 ピシッ 衣「いいや、牌が決めることだ。・・・哀れだな」 バシッ 京太郎「憐憫の情でも寄せたいってか!?」 ピシッ 衣「最早その域にすらない。お前は虫だ。・・・リーチ」 バシッ 京太郎「虫は虫で色々怖いらしいぜ、気をつけろよ!」 バシッ 衣「お前の体に微かに薫る友の匂いに賭けてみたが・・・どうやらハズレだったらしい」 パタタタタ・・・ 衣「ロン。九連宝燈、役満。48300点だ」 京太郎「役満だとっ!?」 衣「・・・牌に愛されない者とやると、こうなる。だから衣は三流が嫌いなんだ」 京太郎「くっそ・・・!」 衣「お前は月に唾を吐いた。・・・この程度で済むと思うなよ?」 京太郎「そりゃ、こっちのセリフだ・・・!」 京太郎(大丈夫、こういうのは経験済みだ。ーーだから、だから怯えないでくれ・・・俺!) 衣「・・・」ゴオッ 京太郎「っ・・・!?」 京太郎(天江の体が、なんだよ、これ・・・そんな訳ねえだろ) 京太郎(俺の体が、天江の指一本より小さいなんて・・・) 衣「さぁ、二本場だ・・・微塵も残さん」 東一局二本場 衣「・・・」 バシッ 京太郎「・・・っ」 パシッ 衣「清澄の。もうお前は終わりだーー黄泉に眠れ」 バシッ 京太郎「んなこと、俺が・・・!」 パシッ 衣「ロンッッッッッッッッッ!」ゴオッ パタタタタ・・・ 衣「一気通貫、ドラ3ーー満貫、12600点だ」 京太郎「ぐぅっ・・・!?」 衣「早く次の局の準備をしろ、衣は待つのが嫌いなんだ」 衣「・・・特に、雑魚相手にはな」 京太郎「・・・ぁ・・・!」 京太郎(クソ、クソックソックソックソックソッ!) 東一局三本場 衣「・・・」 バシッ 京太郎「・・・」 パシッ 衣「人には、向き不向きというものがある」 バシッ 京太郎「・・・」 パシッ 衣「清澄の、お前に麻雀は無理だ」 バシッ 京太郎「・・・」 パシッ 衣「最早、話す事も能わずかーー失望したよ」 バシッ 京太郎「負けて、たまるか・・・!」 パシッ 衣「・・・」 バシッ 『連休中に絶対、癖治してきてね』 『頑張れ、京ちゃん!』 『連休明けに、絶対、麻雀しようね・・・!』 京太郎「ここで、お前に負けてたら、俺は・・・アイツに、咲に会えないんだあああああああああああああああああああ!」 バシンッッッ 京太郎(通るっ!) 衣「・・・ロン」 パタタタタ・・・ 京太郎「ーーーーぅっ!?」 衣「ダブ東三暗刻、ドラ2。ハネ満で18900だ」 京太郎「・・・・・・」 衣「無駄だよ。どれだけ猛ろうとお前は牌に愛されることは無い。果敢無い下臈は、ここで風塵と帰すがいい」 京太郎「俺、は・・・」 衣「さ、続きをしよう。ーーお前が、壊れるまで」 東一局四本場 ・ ・ ・ 衣「ーーツモだ。満貫4300オール」 東一局五本場 ・ ・ ・ 衣「ロンだ。ハネ満で19500」 東一局六本場 ・ ・ ・ 京太郎「・・・」 パタッ 衣「ほとほと呆れかえるな・・・ロンだ。7600」 東一局七本場 ・ ・ ・ 京太郎「・・・・・・・」 パタッ 京太郎(これも、また) 衣「ロンだ。11500」 東一局八本場 ・ ・ ・ 京太郎「・・・」 パタッ・・・ 衣「・・・」ピッ 衣「ツモ。5100オールだが、八連荘ーー役満。よって16800オールだ」 京太郎「ハ、ハハ・・・ハハハハハ」 衣「これでお前はー126500点・・・もう、聞こえていないか」 京太郎「ハッハハハハハハハ!ありえねえ!ありえねえよこんなの!何が牌に愛されているだよ!アイツだって、こんな、こんなっ!」 衣「・・・ハギヨシ!」 ハギヨシ「ハッ」シュッ 衣「そこの塵芥を、部屋から追い出せ。ーーとんだ時間の無駄だった」 ハギヨシ「では、失礼します」ガシッ 京太郎「クソ、離せ!離してくれ!俺は、俺はあああああああああああああああああああああああああああ!」 衣「・・・二度と衣の前に姿を見せるな、屑」 京太郎「嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だあああああああああああああああああああああああああああああ!」 京太郎「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」 龍門渕邸・別館 2F南の部屋 ハギヨシ「・・・落ち着かれましたか」 京太郎「・・・」 ハギヨシ「では、私はこれで」シュッ 京太郎(何をしても、駄目だった) 京太郎(技術とか、運とか、そういう奴の外の・・・もっと遠くの) 京太郎(アレはまるでどうしようもなく大きい月みたいな、そんな) 京太郎(絶望的過ぎる、存在そのものの違い・・・) 『お前は虫だ』 京太郎「俺は、虫なのか・・・?」 『どれだけ猛ろうと、お前は牌に愛されることは無い』 京太郎「・・・」 『お前に麻雀は無理だ』 京太郎「そう、なのか・・・」 京太郎「俺、もう、麻雀・・・しない方が、いいのか・・・?」 ピリリリリリリッ 『着信:宮永咲』 京太郎「さ、き・・・」 ピッ 『あ、京ちゃん!そっちはどう?こっちは原村さんがとってもやる気でね、いつもチラチラ私の方見てくるんだ。ライバル意識なのかな?』 京太郎「・・・」 『・・・京ちゃん?聞こえてないの?』 京太郎(何話せばいいってんだ・・・俺なんかが) 『京ちゃん!京ちゃんってば!』 京太郎「月が、大きくてさ・・・」 『・・・?』 京太郎「大きすぎて、俺、もう・・・・・・・・・駄目だ」 『月っ、て・・・京ちゃん急にどうしたの?』 京太郎「ごめんな、咲。・・・これからは、和と一緒に頑張ってくれ」 『ちょっと、きょ』 ブチッ 京太郎(・・・帰ろう。俺は、ここに居る資格なんてない) 京太郎「・・・」 龍門渕邸・別館 2F廊下 京太郎「・・・」 ピリリリリリリッ 京太郎「・・・」 ピリリリリリリッ 龍門渕邸・別館 1Fホール 京太郎「・・・」 ピリリリリリリッ 京太郎「・・・」 ピリリリリリリッ ピリリリリリリッ 京太郎(なんだよ、咲の奴・・・) 龍門渕邸・別館 玄関 ガチャッ 京太郎(ここから出て、清澄に帰って・・・それで、終わり) 京太郎「・・・っ」 ピリリリリリリッ ピリリリリリリッ 京太郎「クソッ、うるせえんだよ!電源切るぞ!」バッ 『着信:宮永咲』 京太郎(何で・・・!) ピッ 『・・・』 京太郎「何だよ、何か用か!?」 『・・・』 京太郎「用が無いんならかけてこないでくれよ!頼むから、もう俺に構わないでくれ!」 『・・・京ちゃんの、真似だもん』グスッ 京太郎「は?」 『京ちゃんだって、私が最初に電話した時にずっと無視したんじゃない!』 京太郎「・・・だから、俺は」 『京ちゃんの、バカあああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!』 京太郎「!?」ビクッ 『いいから、私の言う事を聞きなさい!!!』 京太郎(あの咲が、こんなに怒って・・・!?)バックンバックン 『返事っ!』 京太郎「は、はいっ!」 『まず、外に出て!』 京太郎「で、出ましたっ!」ダダッ 『月は出てる!?』 京太郎「そ、そりゃ満月だけど」 『月に向かって手を伸ばして!』 京太郎「・・・は?」 『いいから!早く月に向かって手を伸ばしてって言ってるんだよ!』 京太郎「何で俺が、俺はもう」 『須賀京太郎!手をっ、伸ばせーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!』 京太郎「わ、分かったよ!」ピシッ 『ハァーッ、ハァーッ・・・伸ばしたら、そのまま手を握って!』 京太郎「こ、こうか?」グッ 『ほら、掴んだ!』 京太郎「・・・?」 『京ちゃん。今、月はどこにある?』 京太郎「・・・」 京太郎「あ・・・」 『ーー京ちゃんの、手の中にあるでしょ?』 京太郎「・・・・・・」 『京ちゃん。月はとっても大きいけど、手の中に掴めるんだよ。ううん、月だけじゃない』 『この世の、どんなものだって。手を伸ばせばきっと掴める』 『大きさなんて関係ない。大事なのは掴みたいって思う心、手を伸ばす心だよ』 京太郎「・・・っ・・・」 『だからね、京ちゃん。手を伸ばす前に諦めちゃダメ。手を伸ばして届かなくても諦めちゃダメ』 『何かを掴もうとするときに、距離なんて関係ないよ』 『私が、私が好きなのはっ・・・・・・・・・・・・・・・・諦めないで手を伸ばす京ちゃんだよ!』 京太郎「・・・・・・・・!」 京太郎(俺、何やってんだ・・・!) 京太郎「咲っ・・・俺っ」 京太郎「ごめんっ・・・!ごめんな・・・!」ボロボロ 『・・・・・・ばか』 京太郎「・・・」 『京ちゃんの、ばかっ。勝手に、構わないでくれとか言わないでよ・・・!』 京太郎「・・・ごめん」 『私、ホントにつらかったんだからね・・・?』グスッ 京太郎「もう、二度としねぇ」グイッ 『・・・それだけじゃ許さない』 京太郎「癖、絶対治すーーそんで、俺が帰ったら。一番に麻雀しよう」 『それでも許さないもんっ』 京太郎「それと・・・お前に、ショフトクリーム奢ってやる」 『・・・え?』 京太郎「味は何が良い?44種類のフレーバーと豊富なトッピングが魅力。らしいぜ」 『で、でもショフトクリームって誰も手に入れたことが無いって』 京太郎「・・・絶対奢るからさ、教えてくれよ。何味が良いのか」 『じゃあ、バニラかいちご・・・?』 京太郎「了解、特訓が終わったら最速で届けさせてもらうぜ。舌洗って待ってろよ」 『もう、京ちゃんってば・・・』クスッ 京太郎「ごめんな、咲。ありがとう。ーーありがとう・・・!」 『うん。・・・京ちゃん』 京太郎「何だ?」 『ーーーー麻雀、好き?』 京太郎「ーー大好きさ」 『じゃ、そんな麻雀大好き京ちゃんは私くらいちょちょいっとのしてくれるんだよね?』 京太郎「当然だろ、抉り取ってやるよ」 『どうかなー♪・・・だって京ちゃん、誰かに麻雀でボコボコにされて落ち込んでたんでしょ?』 京太郎「な、何でお前がそれを」 『だって京ちゃんだもん。そんなことだろうと思った』ハァ 京太郎「京ちゃんだもんとは何だ京ちゃんだもんとは!?」 『・・・でも、もう大丈夫だよね?』 京太郎「ああ、もう大丈夫だ・・・咲のお陰だよ」 『おやおや、将来倒す相手に助けられてるようじゃまだまだだねー♪』 京太郎「ぐぬぬ・・・見てろよ、俺はこの特訓で絶対強くなってやる!」 『その意気だよ京ちゃん。・・・頑張れっ!』 京太郎「おう、頑張るぜ!・・・首洗って待ってやがれよ、宮永咲!」 『うん!・・・それじゃ、私もう寝るね。ふぁぁ・・・』 京太郎「おやすみ、咲」 『お休み、京ちゃん』 ピッ 京太郎「ありがとな、咲・・・」パタン 京太郎「・・・」スゥーッ 京太郎「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」 ビリビリビリビリッ・・・ 京太郎「よしっ、やるぞ!」パンッ ハギヨシ「・・・須賀京太郎様。もう夜ですので、あまり大声を出されると」シュッ 京太郎「あ、スンマセン・・・ハギヨシさん、でしたっけ。天江は・・・」 ハギヨシ「もうお休みになられています。須賀様ももう休まれた方がよろしいかと」 京太郎「だよな・・・ホントスンマセンでした」 ハギヨシ「いえ、では私はこれで」シュッ 京太郎「・・・よし、寝るかっ!」 京太郎(まずは、体力の回復。んでもって力付けて・・・アイツに、借りを返す!) 京太郎「待ってろよ、天江衣・・・!」 『フッ、そうか・・・ギリギリで踏みとどまったか』 ハギヨシ「はい。まだ衣様と麻雀したそうにしておりました」 『ようやく、遊び相手くらいにはなってくれるかな?』クスッ ハギヨシ「衣様、もしや」 『ああ。本当に歯牙に賭ける程の奴でもなければ、衣はあそこまで壊したりしないよ』 ハギヨシ「・・・悪い癖ですよ」 『自覚はあるよ。だが、そのおかげでようやくあの下臈・・・いや、やっと凡夫か。楽しめそうになってきたじゃないか』 ハギヨシ「衣様のお気に召す事を期待しております」 『男児三日会わざれば刮目して見よと言うしな。・・・衣もそうであってほしいと願う。さて、衣はもう寝る。切るぞ~』 ハギヨシ「はい、お休みなさいませ。衣様」 『うん、お休みハギヨシ』 翌日 龍門渕邸・別館 玄関 バンッ 透華「おはようございますわっ!」 京太郎「おう、おはよう!」 一「・・・?」 京太郎「なんだよ、俺の顔になんかついてるか?」 一「衣とやらなかったの?」 京太郎「やったよ。負けも負け、ー126500点の大負けだ!」 一(衣とやって、大負けして・・・まだ麻雀ができるだって?) 透華「あらあら、よくそこまでボコボコにされて麻雀が出来ますわね!」 京太郎「あったりめぇだろ、麻雀は楽しいんだからよ!」 京太郎「んでもってもう一つ目標が出来た。・・・俺は、天江衣に借りを返す!」ギラッ 京太郎「だからよ、龍門渕透華。アンタに頼む。もう少し・・・アイツに借りを返すまで。俺をここに泊めてくれないか!」 透華「クックククク・・・オーッホッホッホッ!その不遜!その傲慢!気に入りましたわ」 透華「やはりあなたはわたくしが見込んだ通りの人物ですわ!好きなだけ泊まっていきなさいな!」 京太郎「そりゃ何よりだ!そんじゃ、改めてよろしく頼むぜ・・・龍門渕の女王様!」スッ 透華「ええ、こちらこそよろしくお願いしますわ。須賀京太郎!」ガシッ 一「・・・」ムスーッ 透華「一?気分でも悪いのですか?」 一「ま、気分は悪いかな。・・・とーか、僕はちょっと野暮用があるから離れてるね」 透華「・・・?分かりましたわ。それでは、須賀京太郎。行きましょうか!」 京太郎「おうよ!」 男子麻雀部部室 バァンッ!! 男子部員「「「「「「「!?」」」」」」」 透華「道場破りでしてよっ!丁重におもてなしして差し上げなさい!」 京太郎「よろしくお願いしますっ!」 男子部員1「龍門渕さん!?」 透華「オーッホッホッホッ!この龍門渕に単騎で挑んできた愚か者に、洗礼をくれてやるのですわ!」 男子部員2「道場破りって・・・そこの清澄の奴がですか?」 透華「そうですわ!」 男子部員3「あの、勘弁してもらえませんか。俺らも暇じゃないんですよ」 透華「・・・は?」ピキッ 部長「そうです。男子の方もそろそろ大会が近いんです」 部長「清澄には悪いけど、弱小の、それも部員一人のところとやって得るものがあるとは思えません」 透華「・・・」ピキピキッ 京太郎「いや、ちょっ」 副部長「君。こんな無謀な事は止めた方がいい。実力の差は君自身が一番よく分かっているはずだ」 京太郎「はぁ!?」ビキッ 副部長「実力が開き過ぎている者同士がやったって、得るものは何もないよ」 透華「ーーーーーーーーーーーーーーーーーー見損ないましたわっ!」 京太郎「あぁ全くだ!天下の龍門渕男子がこの程度とはな!」 部長「・・・何が言いたい」イラッ 京太郎「調子くれてんじゃねえって言ってんだよ、名門校さんよ!」 透華「争いに意味を求めるなど・・・愚かにも程がありますわ!」 京太郎「やりたいからやる!売られた喧嘩は買う!」 京太郎「それ以上何かいるのかよ、なぁオイ!」 副部長「・・・帰ってくれ、不愉快だ」 透華「挑戦者を無傷で返す王者がどこに居ますかっっ!!!!!!!!」 部長「龍門渕さん、ですから」 透華「あなた方は強者で、ここに挑む者が居る!それ以外に戦う理由が必要でして!?」 部長「・・・・・・」 透華「あぁもう!埒が開きませんわ!・・・部長と副部長、卓に着きなさい!」 部長「・・・本気ですか?」 副部長「なぜこんなことを・・・」 透華「京太郎!わたくしの隣に座りなさい!」 京太郎「オッケー、任せとけ女王様!」ドスッ 透華「2対2ですわ。二人の点数の合計で勝負をつけましょう」 部長「ですが、それをやるメリットが」 透華「わたくしが負けたら、麻雀部に関する権限を全て譲渡いたしますわ」 透華「・・・これでよろしいかしら、理由がなければ戦えない現実主義者さん?」フッ 副部長「・・・舐めやがって!」ピキッ 部長「・・・この勝負、受けるぞ」 副部長「ええ!ここまで言われちゃ黙ってられませんよ!」 部長(点数の合計なら、間違いなくこちらに分がある) 副部長(あの清澄を集中的に狙えば良いだけだ!) 京太郎「ヘっ、やっとやる気になってくれたか!こっちはとっくの昔に暖まってんだよ!」ギュッ 副部長「・・・潰す!」 京太郎「やれるもんならやってみやがれってんだ!」 透華「それじゃ、始めますわよ!」 コロコロコロ・・・ 透華「オーッホッホッホッ!親番、頂きましたわ!」 東一局 透華「まずは、これですわね!」 ピシッ 京太郎「それじゃ、俺はこれだ!」 ピシッ 副部長「・・・」 ピシッ 部長(アイツさえ潰せば・・・!) ピシッ ・ ・ ・ 部長「そこ、ロンだ!」 パタタタタ・・・ 部長(やはり、大した事は) 京太郎「クッソ・・・さぁ、次の局だ!」 透華「ちょっと!わたくしの親番を勝手に流さないで貰えませんこと!?」 京太郎「振り込んだものは振り込んだんだ、しょうがねーだろ!」 透華「キーッ、何ですのその横暴さは!」 京太郎「まぁ、見てろって。・・・負けねえからさ!」 東二局 ・ ・ ・ 京太郎「・・・よっし、これだ!」ピッ バンッッ! 京太郎「ツモ!3200オール!」 部長(おいおい、お前は和了っちゃダメだろ) 副部長(やはり素人・・・龍門渕さんはどうしてこんな奴に?) 透華「ふっ、見事ですわね」 京太郎「だから言ったろ、負けねぇって」 透華「・・・勝負の相手には私も含まれているのですよね?」 京太郎「ったりめーだろ。俺は麻雀しに来たんだ」 京太郎「ーーーーーーーーーーここに居る全員ブッ倒して、俺が勝つ!」 透華「その心意気、上等でしてよ!私もまったく同感ですわ!」 部長「り、龍門渕さん!?これはコンビ麻雀ですよ!?」 透華「だからどうしたというのです?」 副部長「なっ・・・」 透華「コンビかどうかなど関係ありませんわ!」 京太郎「この卓に居る奴で誰が一番強いのか・・・それを決める為に打ってるんだろうが!」 透華「目立つためには!」 京太郎「強くなるためには!」 透華・京太郎「「俺(わたくし)がトップになる以外ねーだろ(ですわっ)!」」 副部長「馬鹿だ・・・どうしようもない、大バカだ」 部長「ああ。だが、何故か羨ましい・・・」 副部長「部長!?」 部長「俺達に、あの真似が出来るか?・・・俺達は今、あんなに楽しそうに麻雀を打ってるか?」 副部長「ですが、これはコンビ戦で」 部長「悪いな、副部長。・・・俺もあんなふうに麻雀を、やってみたくなった」メラッ 副部長「・・・」 部長「清澄の。さっきは侮って悪かったよ。・・・全力で叩き潰させてもらおう!」 京太郎「やっと火が付きやがったか!そうこなくっちゃなぁ、龍門渕!」 副部長「・・・クソッ、俺ばっかりのけものにすんなってんだよおおおおおおおおおお!」メラッ 透華「ふっ、今さら燃え始めてトップまでいけるのかしら、さらさら疑問ですわ!」 「ロンだ!」 「ロンでしてよ!」 「悪いな清澄、ツモだ!」 「龍門渕さん、甘いっ!」 「っっっしゃぁ!ツモ!」 「全員私より目立つんじゃありませんわー!」 南三局 透華「ゼーッ、ゼーッ・・・」 京太郎「ハーッ、ハーッ・・・」 副部長「まさか、こんな・・・」 部長「フハハハハ!俺とお前が、南三局で3位4位に甘んじることになるとはな!」 透華「京太郎!わたくしの一位は譲りませんわ!」 京太郎「譲ってもらう気なんざさらさらねぇよ!・・・真っ向から挑んで、奪い取ってやる!」 透華(なぜかしら、この男と麻雀をやっていると心が躍りますわ) 透華(純粋に、どこまでも純粋に勝利を追い求める。・・・前しか向かない獣のように) 透華(そんな相手が今、わたくしの前に立ちはだかろうとしている・・・なんて、幸せな事でしょう!) 京太郎(龍門渕の女王様か・・・いいな、コイツ) 京太郎(誇りと美しさを兼ね備えた上で最上の勝利を目指す、か・・・気に入ったよ) 京太郎(だからこの手でアンタを叩き潰して、俺がトップになる!) 透華「まるで・・・夢の中で打ってるようですわ!」 京太郎「ああ、終わってほしくねぇな、この時間!」 部長「勝手に俺達をフェードアウトさせるなよ、清澄!」 副部長「そうだ!まだ役満がある!」 京太郎「上等だ・・・いっくぜえええええええええええええええええええええええええええええええええええええっ!」 透華「わたくしがトップですわあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」 部長「これならっ!」 バシィィィィィィンッ! 京太郎・透華「「ロンっ!!」」 京太郎「リーチタンヤオドラ2ーー満貫だ!」 透華「一盃口、清一色ーーハネ満ですわ!」 副部長「ダブロン!?マジかよ・・・!」 部長「クッソ・・・まだだ、まだ終わらせない!」 少し離れたところ 一「ね、衣」 衣「なんだ?」 一「あの清澄と麻雀したんでしょ?」 衣「ああ。これ以上ないくらいには壊したつもりだ」 一「じゃあ、アイツなんで今打てるのさ?」 衣「それは衣にも分からない。ただ・・・」 衣「彼奴、少しはマシな匂いになった」ニヤッ 衣(次は"麻雀"が出来る事を期待しているよ、凡夫) 一「ていうか、アイツあんなに強かったっけ?」 衣「いーや。彼奴は凡夫だ。ただ・・・」 一「ただ?」 衣「透華との生まれついての相性が良すぎる」 衣「お互いに争い、貪り合う事でアイツは透華のツキを引き出し、透華はアイツのツキを引き出している状態」 一「それって・・・」 衣「切磋琢磨とも言うな。最早伴侶に等しいとさえ言える」 衣(あの凡夫・・・さて、これでどこまで伸びるか) 一(僕としては、その結論には至って欲しくなかったな。・・・・・とーか、僕は) 一(僕は、透華を・・・) 透華「オーッホッホッホッ!」 京太郎「これでぇっ、トドメだあああああああああああああああああっ!」 翌日 龍門渕邸・別館 1階ホール 京太郎「さて、飯も食ったし・・・そろそろだな!」 京太郎(女王様ともやりてぇが、まずはアイツに借りを返さねえとな) 京太郎(アポを取るには・・・ハギヨシさんを呼べばいいのか?) 一「・・・待った」 京太郎「ん?あぁ、お前か」 一「国広一だってば。・・・衣のところに行く気?」 京太郎「おうよ、借りはキッチリ返す主義でね」 一「・・・じゃ、これあげるよ。さっき注いできた」 京太郎「これは・・・アイスティーか。サンキュ」ゴックゴック 京太郎「って、ぁ・・・?」フラッ ドサッ 一「ここまでアッサリ引っかかるなんて・・・・・・バッカだなぁ」 龍門渕邸・別館 地下 京太郎「くぅ・・・ここは?」 ジャラッ 京太郎(手錠!?) 一「あ、起きた?・・・その手錠、いいでしょ。僕とおそろいだよ」 京太郎「・・・まさか」 一「うん、古典的にアイスティーに睡眠薬混ぜてみたんだ♪たまげたでしょ」 京太郎「へっ・・・ペアルックの上に部屋に連れ込みかよ、応援にしては随分と気合入ってんな」 一「知らなかった?ボク、君が大嫌いなんだよ?・・・この場で殺したいくらい」 京太郎「やれるもんならやってみやがれってんだ!」 一「・・・あー、イライラする。立場をわきまえない奴って陰で嫌われるもんだよ?」 京太郎「誰に好かれるとか嫌われるとか、一々気にして生きてんのか。ご苦労なこった」 一「そうしないと生きていけないんだって。・・・君みたいになっちゃうから」 京太郎「で、応援メッセージはそれで全部か?」 一「うぅん、まだまだーーとりあえず、僕と麻雀してくれない?」 京太郎「なんだ、そういう事か・・・だったら最初から」 一「違う!」 京太郎「!?」 一「ボクはお前みたいに単純な動機で麻雀をやってるんじゃない!ーー大切な人の隣を、守りきるためだ!」 一「だから!ボクは・・・お前を排除する!」 京太郎「そうかい、そりゃ重畳!丁度こちとら貴重な時間浪費させられてむかっ腹立ってたところだよ!さぁ、さっさとやろうぜ!」 一「・・・懸けろ」 京太郎「何を!」 一「透華の隣と・・・お前の、尊厳をだ!」 京太郎「上等!正面から抉り切ってやる!」 一(潰す・・・!) 一「・・・二人しかいないし、東場のみでいいよね?」 京太郎「おうとも!」 一「じゃ、サイコロ回すよ・・・!」 コロコロコロ・・・ 一(透華・・・ボクに、力を貸して!) 京太郎「・・・親は俺だな!」 東一局 京太郎「さーって、と」 バシッ 一「・・・」 バシッ 京太郎「国広、一だっけか。アンタは普通に良い人なんだと思ってたが・・・」 バシッ 一「"普段は"良い人だよ。・・・でも、賊に払う礼儀はない」 バシッ 京太郎「だろうな。・・・そんなに大事か、あの女王様が」 バシッ 一「透華になら、ボクの全てを懸けていい。いつだってそう思ってる」 バシッ 京太郎「ああそうかよ!なら・・・・・・リーチだ!」 バシンッ 一(早っ・・・それに、読めない!?) 一「くっ・・・」 ピシッ 京太郎「へっ、混乱してるな?」 バシッ 一「・・・」 ピシッ 京太郎「そこ、いっただきぃ!ロンだ!」 バンッ 京太郎「ーーリーチ、一気通貫!7700点だ!」 一「ぅ・・・」 京太郎「さ、連荘と行くか!」 東一局一本場 京太郎「・・・」 バシッ 一「・・・」 バシッ 京太郎「へっ・・・」 バシッ 一「・・・気持ち悪いな、急に笑わないでよ」 バシッ 京太郎「楽しいなぁ、全力でやるのは!」 バシッ 一「ボクは楽しくなんかない」 バシッ 京太郎「そりゃ、お前が本気じゃないからだよ」 バシッ 一「ボクはいつだって本気だ!」 バシッ 京太郎「どうだかな、今のお前は全然攻めてこないじゃないか」 一「・・・っ」 バシッ 京太郎「だんまりか。まぁいいけどよっ・・・っと。リーチ!」 バシンッ 一(どうする、アイツの攻め方が・・・分からない) 一(読み切れない・・・とりあえず、これで) 京太郎「・・・もし、これが倍満のアタリだったら」ボソッ 一「っ!」ゾクッ 京太郎「その時点でお前はトビだ」 一「・・・心理戦を仕掛けてるつもり?悪いけど」 京太郎「俺は嘘が苦手でね・・・馬鹿だからよ。まぁ、アレだ。その一手はよーく考えて打てよ?」 一「・・・」 一(ハッタリだ!ここで大きな当たりなんてそうそう出る訳がない!) 一(でも、何だろう・・・この牌を捨てると、胸の奥から何かが抜け出ていくような) 一(透華が離れて行っちゃうような・・・) 一(・・・怖い) 一(透華が離れていくのが、一人になるのが怖い・・・!)ブルブル 一(この牌を捨てなきゃ・・・!) 一「くっ・・!」プルプル 京太郎「・・・どうした?」 一(ダメだ、あいつの倍満がチラつく・・・負けの情景が鮮明に見える) 一(・・・打てない。ボクには打てないよ、とーか・・・) 一(今ならまだ、謝れば許して・・・) 京太郎「・・・言っとくが、謝っても許さねえぞ?」 一「っ!」 京太郎「本気の麻雀だろ?だったら、途中で降りるなんざ認めねぇよ。喧嘩と一緒さ」 京太郎「お前が売った、俺が買った!だからお前を叩き潰す!徹底的にだ!」 一「・・・・・・」 一(コイツ、本気だ・・・本気で、ボクを潰す気だ!) 京太郎「そうだな、この麻雀に勝ったら・・・女王様に進言して龍門渕の生徒にしてもらうかな」 一「なっ!」 京太郎「そんでもって部長まで登りつめて、最後にはあの女王様とタッグ麻雀で頂点取ってみるか・・・」 京太郎「あの人、俺との相性は良いみたいだからな」 一「お前・・・!」 京太郎「それが終わったら女王様はポイーだ。天江を倒しにいく。・・・言うなりゃあの人は通過点だな」 一「透華は通過点なんかじゃない!取り消せ!今すぐだ!」 京太郎「断る!・・・取り消してもらいたけりゃ、麻雀で俺を倒してみろよ!」 一「・・・!」 一(透華・・・ボクは、ボクは・・・!) 京太郎「ビビってんじゃねえぞ、国広一!」 一「お前にだけは、負けられないんだあああああああああああああああああああああああああああああああああ!」 京太郎「ヘッ、やっとお目覚めかよ」ゾクッ 一(透華、ボクは君のために戦う!ーーもう、迷わない!) バシッ 京太郎「・・・」 バシッ 一「・・・」 バシッ 京太郎「・・・」 バシッ 一「ーーロン。三色同順ドラ2、一本場で・・・8300、満貫」 京太郎「クッ・・・」 一「これでさっきの和了分は取り返させてもらったよ。さぁ、次はキミが追いつめられる番だ」 京太郎(気のせいか、アイツの声が急に冷え切ったようになったような・・・) 一(何だろう、さっきまであんなに恐ろしかったアイツが、今はただの置物にしか見えない) 一(河の流れが、見える・・・絶対に荒れることのない、ただ静かな流れが) 一(これってまるで・・・・・・そっか。ありがとう、透華) 一(透華の為に・・・この戦い、絶対に勝つから!) 東二局 一「・・・」 バシッ 京太郎(手が悪いな・・・) 京太郎「・・・」 バシッ 一「・・・」 バシッ 京太郎「・・・」 バシッ 一「・・・リーチ」 バシッ 京太郎「仕掛けてきたか!・・・っ」 バシッ 一「・・・」 バシッ 京太郎「・・・」 バシッ 一「・・・」 バシッ 京太郎(なんだ、来る牌が全部かみ合わない!?) 京太郎「・・・っ」 パシッ 一「・・・」 バシッ 京太郎(よし、やっとまともに手が進むーー) バシッ 一「・・・ロン」 京太郎「クッ・・・!」 パタタタタ・・・ 一「リーチ、タンヤオ一盃口。7700」 京太郎「クソッ・・・」 東二局一本場 一「・・・」 バシッ 京太郎(また、随分と悪い初手だなオイ!) 京太郎「・・・」 バシッ 一「・・・」 バシッ 京太郎(何だ、何かおかしい・・・) 京太郎「・・・」 バシッ 一「ポン!」 バシッ 京太郎(げ、役牌か・・・それにしても) 京太郎(自由に動けねぇな・・・河に引きずりこまれたみたいだ) 京太郎「・・・」 バシッ 一「・・・」 バシッ 京太郎「なぁ」 一「・・・何?」 京太郎「"コレ"は・・・アンタがやってるのか?」 一「だったらどうする?」 京太郎「・・・正面からブチ抜く!」 バシッ 一「ーーロンだよ」 パタタタタ・・・ 一「役牌のみ。1本場で1800だね」 京太郎「随分とセコイ和了するじゃねぇか」 一「何とでも言えばいい。僕はもう迷わない・・・!」 京太郎「あぁそうかよっ!」 東二局二本場 一「・・・」 バシッ 京太郎(あの時のタコスみたいに安手狙いか・・・?) バシッ 一「・・・」 バシッ 京太郎(いや、それにしては打ち筋が妙だ。まるでーー) 京太郎(今までの和了が全部フェイクみたいな・・・) バシッ 一「もう、キミは和了らせない」 バシッ 京太郎「お前が決めることじゃねぇな!」 バシッ 一「・・・リーチ」 バシンッ 京太郎「来やがったか・・・」 京太郎(今のアイツはヤバい。何としても避けなけりゃな・・・) バシッ 一「もう、誰にも・・・この流れは乱させない」 バシッ 京太郎「・・・」 バシッ 一「そして尚且つ・・・大手で和了って見せる」 バシッ 京太郎「お前も随分言うじゃねえか!」 バシッ 一「キミのはハッタリだけど、ボクのはハッタリじゃない。やると決めたんだ、絶対にやる」 バシッ 京太郎「・・・っ」 バシッ 一「絶対に・・・!」 バシッ 京太郎(それにしても・・・来ねえなあ畜生!) 京太郎「・・・」 バシッ 一「ロンだ!」 バンッ 京太郎「何っ!?」 一「ーーリーチタンヤオ一盃口、ドラ1二本場・・・満貫12600!」 京太郎「クッソ・・・!」 一「ハ、ハハッ・・・」 一(凄いや、負ける気がしない!透華、これが・・・これが治水なんだね!) 一「っと、いけないいけない・・・」 一(油断するな、国広一・・・お前は透華の隣に立つんだろ!)パシッ 一(油断は死を招く。いつだって本気で) 一(だから、今は・・・) 一(今は・・・目の前のこの男を倒すことだけをーー!) 京太郎「・・・・・・せ・・・・・・・せ」ブツブツ 一「・・・次の牌準備するけど、いいかな?」 京太郎「・・・ああ」 東二局三本場 一「・・・」 一(大丈夫、河の流れは見えてる) バシッ 京太郎「・・・・・・・せ、・・・・・・・せ」ブツブツ パシッ 一(相手は心ここにあらずって感じだけど・・・油断はできない) バシッ 京太郎「思い出せ・・・思い出せ・・・」ブツブツ 京太郎(俺はどこかで知ってる、こんな状況を・・・) バシッ 一「・・・」 一(熱くなってるのかな・・・?だとしたら、チャンスだ!) バシッ 京太郎(初手は最悪、引く牌も良いとは言えず、相手は絶好調の連荘中) 京太郎「あの時も、こんな感じだったな・・・」 パシッ 一「・・・何を言ってるのか分からないけど、キミの相手はボクだよ?」 バシッ 京太郎(凄まじい相手のプレッシャー、武者震い半分、怯え半分の俺・・・) 京太郎「ハハッ・・・雀荘の時も、そうだったな」 バシッ 一「・・・リーチだ!」 バシッ 京太郎(この沈んでいく感覚。これはまるで・・・) 京太郎「・・・そうか。俺、何だかんだ言って・・・アレも楽しんでたのか」 バシッ 一「・・・これが終わったら、腕利きの頭の医者呼んであげるよ!」 バシッ 京太郎(そして・・・全身からひしひしと伝わってくる力量の差。俺は、これも知ってる) 京太郎(俺に麻雀の楽しさを教えてくれた人) 京太郎(俺の、大切な人) 京太郎(ーーーー咲) 『ーーーー麻雀、好き?』 京太郎「・・・そうか」 京太郎「勝ちも負けも全部、全部の上に・・・俺が居るんだ」 京太郎「だから、俺は・・・・・・・・・・・もっと上に!」 京太郎「俺は強くなる!全部飲み込んで、全部貪って・・・アイツを倒して!!俺が頂点に立ってみせる!!!」 バシッ 一「どのみち、キミは和了れない!」 バシッ 京太郎「もっと、もっとだ・・・!」 バシンッ 一「・・・っ」 一(いや、そんな筈はない。河の流れは、透華の治水は、絶対だ・・・) バシッ 京太郎(俺は・・・俺はまだ戦える!戦いたい!だから!) 京太郎「こいつが、こいつだけが!俺の魂だあああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!」 京太郎「手前如きに、抉り切れるかああああああああああああああああああああああああああああ!」 ピッ・・・・・・ バシンッ!!!!! 一「・・・・・・」 京太郎「ツモ!ーーーーーーーー国士無双!ーー親16800、子8300!」 一「・・・やるじゃん」 京太郎「人の心配より、自分の心配をしたらどうだ?」 一(何でだろ、コイツと打ってると) 京太郎「俺はこのまま、お前を潰す気でいるぜ・・・!」ゴウッ 一(楽しいっ!) 一「そりゃ、ボクも負けてられないなぁ・・・!」ゴウッ 東三局 京太郎「・・・」 バシッ 一「・・・」 バシッ 京太郎(おそらく、この勝負) バシッ 一(この局で決まる・・・そんな気がする) バシッ 京太郎「・・・リーチだ!」 バシシッ! 京太郎「ボクもリーチ!」 バシンッ! 京太郎「・・・国広一。アンタはただの良い人だと思ってたが、実際は選民思想と独占欲の塊みたいな人間だった」 バシッ 一「須賀京太郎。キミはどこまでも立場をわきまえない、あの透華の前でさえ・・・無礼極まりない人間だった」 バシッ 京太郎「口を開けば二言目にはとーか、とーかか。従順なこった、あの女王様が幸せなら自分の事はどうでもいいんだろうな」 バシッ 一「キミは他人をないがしろにし過ぎだね。強さだけを求めて、キミを支えてくれる人達の事は眼中にないんだろうね」 バシッ 京太郎「だが・・・嫌いじゃない」 バシッ 一「・・・同感だよ。キミのその純粋過ぎる生き方は、ボクにとっては羨ましくさえある」 バシッ 京太郎「だが!譲れないもんがある!倒したい奴が居る!」 バシッ 一「でも!守りたい場所がある!傍に居たい人が居る!」 バシッ 京太郎・一「「そのためには!」」 京太郎・一「「戦わなくちゃならない時がある!」」 京太郎「・・・気に入った、恨みっこなしだぜ」 一「上等、そっちこそ吠え面かかないでよ」 京太郎「ーーーーーーーー来いっ!」 ピッ 京太郎「・・・チッ」 バシッ 一「ボクの番だね・・・」 一(お願い、透華・・・・・・ボクに力を!) ピッ 一「ーーーーーーーーーっ」 一「くっ!」 一(違う、これじゃない!) 一(・・・!?)ゾクッ 京太郎「・・・・・・」ニヤッ 一(あの反応は・・・) 一「・・・そっか」 一(これは、キミのーー) パタッ・・・・・・・ 京太郎「ーーーーーーーーーーロンだっ!!!!!!」 バンッ! 京太郎「リーチジュンチャン三色同順一盃口ドラ1、裏がーーーー乗って、倍満!24000でお前のトビだ!」 一「・・・」 京太郎「・・・っぷはー」 京太郎(今回は、ホントにギリギリだったな・・・) 一「・・・」 京太郎「俺の、勝ちだ」 一「・・・分かってるよ」 京太郎「なら、この卓に繋がれた手を外してほしんだが」 一「・・・はい」ガチャリ 京太郎「んじゃ、俺は上に上がりたいんだが・・・階段はどっちだ?」 一「・・・・・・あっちのドア開けたとこ」 京太郎「そうかい、それじゃーな」ギィィ 一「・・・・・・ぅ」 一(ごめん、とーか・・・・・・ごめん) 一「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・」ポロポロ 一(ボク、負けちゃったよ・・・) 『あー、そうだ!言い忘れてたわ!』 一「なっ、何だよ!まだ廊下に居たのか!?早くっ、いけよ!」グシグシ 『お前との麻雀、楽しかったよ』 一「ーーーーっ」 『また、やろうぜ』 一「やるに・・・決まってるだろ!首洗って待ってろよ!」 『ヘッ・・・それじゃーな、一』 一(そうだ、ボクはもう迷わない!立ち止まったりしない!) 一(誰が何と言ったって、ボクが透華の隣で支え続けてみせる!) 龍門渕邸・別館 3F北側の部屋前 京太郎「うへー、もう夕方かよ」 京太郎「だが、まだ時間はある・・・当初の目的通り、今日お前に借りを返しとかねぇとな」 京太郎「なぁ、聞いてるんだろ・・・天江衣!」 『・・・手負いで衣と雌雄を決そうなどと、片腹大激痛!』 京太郎「手負いじゃねぇ、修行してきたのさ!」 ガチャッ! 衣「フッ、ならば見せてみろ凡夫!貴様が掴んだものを!」 京太郎「言われなくても、見せつけてやるよ!俺の・・・魂を!」 衣「衣の勝ちだな、凡夫」 京太郎「・・・・・・・畜生!」ゴロン 衣「終わってみればマイナスにこそなっていないものの、まだまだ衣には程遠かったか」 京太郎「・・・しょうがねぇ、認めるよ。俺の負けだ」 衣「ああ、お前の負けだ。・・・だが、衣は楽しかったぞ。どんなに突き離されても喰らいつこうとする執念、それを可能にする気力と実力」 京太郎「えらく持ちあげるじゃねえか、憐憫か?」 衣「今回は"麻雀"が出来たからな。衣は、楽しかった・・・それだけだ」 京太郎「・・・そうかよ。俺も楽しかった・・・やっぱ全力でやり合うってのはいいな!」 衣「ま、力が違い過ぎるのはちょっともの足りないがな」クスッ 京太郎「この野郎・・・」 衣「・・・そうだ、名前を聞いてなかったな」 京太郎「あぁ、俺も丁度言っておこうと思ったところだよーー須賀、京太郎だ」 衣「須賀京太郎・・・うん、しかと刻んだぞ」 京太郎「こっちはとっくにお前の名前を刻んでるんだよ・・・」 衣「・・・なぁ、京太郎」 京太郎「なんだよ?」 衣「また、衣と麻雀してくれるか?」 京太郎「もちろん、お呼びとあらば365日24時間寝首を掻きにいってやるよ。首洗って待ってやがれ」 衣「・・・そうか、安心したよ。明日も付き合って貰いたいな」クスッ 京太郎「そりゃ重畳・・・と、もう夜か。さーて、明日は女王様に謁見でも」 ピリリリリリッ ピッ 京太郎「はい?」 『京ちゃん?まだ家に帰ってないの?』 京太郎「ああ、だって今日も泊まるし」 『・・・京ちゃん』 京太郎「何だ?」 『明日、平日だよ?』 京太郎「・・・え?」 『連休は今日で終わり。明日から普通に学校だよ?』 京太郎「あー、うん、分かった」 ピッ 京太郎「・・・なぁ、天江」 衣「?」 京太郎「明日って休みじゃないのか?」 衣「明日は学園の創立記念日だぞ?休みに決まっている」 京太郎「・・・・・・・」タラー 衣「ん?そうか、京太郎は清澄に居るんだったな」 京太郎「帰らねえと!」 衣「・・・随分せわしないな。一日位休んでもいいじゃないか」 京太郎「そうじゃねえんだ!咲と約束してるんだよ!連休終わったら一番に麻雀するって!」 衣「約束、か・・・」 京太郎「ああでもやべぇよもう夜遅すぎんよ・・・これバスあるかな」 衣「ハギヨシ!」パチン ハギヨシ「ここに」シュッ 衣「この愚か者を送ってやれ」 ハギヨシ「かしこまりました」 京太郎「・・・いいのか!?」 衣「かまわんよ。今見逃して、明日お前が死ぬわけでもないしな」 衣「だが、一つだけ約束しろ」 京太郎「・・・」 衣「次にこの龍門渕に来た時は、必ず衣とも打つと。どれだけ時間がなかろうと、だ」 京太郎「・・・あいよ」 衣「ハギヨシ!」 ハギヨシ「須賀京太郎様、行きましょう」 衣「京太郎!衣は、衣は待っているからな!・・・・・いつまでも、この海底で!」 京太郎「ああ・・・絶対、お前を倒しに行ってやる!だから、待ってろよな・・・天江衣!」ダダダダダ 衣「・・・須賀、京太郎か」クスッ ハギヨシの車の中 ハギヨシ「どこか、行っておくところはありますか?」 京太郎「あ、そうだ!あの女王様・・・じゃなくて龍門渕透華のところに行ってくれ!」 ハギヨシ「かしこまりました」 京太郎(咲・・・待ってろよ) 龍門渕邸 透華・一「「帰るぅ!?」」 京太郎「俺の連休は今日で終わりらしいからな・・・悪い、アンタとの決着はまた今度だ」 透華「キィーッ、納得いきません!いきませんが・・・約束があるなら仕方ありませんね」 一「どうしてもっていうならボク色々出来るけど・・・」ジャキン 京太郎「とりあえずその危なっかしいものをしまってくれ」 透華「・・・では、またしばらくお別れですわね」 京太郎「だな・・・」 透華「・・・・・・」ジーッ 京太郎「・・・・・・」ジーッ 一「帰るんならさっさと帰れーーーーーーーーーー!」フシャー 京太郎「っとと、すまねぇ。・・・それじゃそろそろ行くか」 透華「ええ、お気を付けて。思えばショフトクリームの時からの縁でしたわね・・・」 京太郎「・・・ん?」 一「どしたの?」 京太郎「そうだ、ショフトも買わないといけないんだった!ってもう学食開いてねー!?」 京太郎「やべぇよ・・・やべぇよ・・・」 透華「・・・ハァ。落ち着きなさい!」ピッポッパ プルルルル・・・ 『はいー?』ムニャムニャ 透華「私ですわ、今すぐ学食を開けなさい!」 『とっ、ととととと透華さま!?了解いたしました!』 ピッ 透華「これで大丈夫ですわ、さっさと買って帰りなさい」 一「わーお、透華ってば横暴ー」 京太郎「・・・悪いな、恩に着る」 透華「こんな目立てるチャンスはありませんから、行動したまでのことですわ」 一「・・・京太郎。早めにまた来てね?ボクの復讐心を満たすために」 京太郎「お前の挑戦なら大歓迎だ、また熱い麻雀やろうぜ!」 京太郎「それじゃ、女王様も・・・・・・また、いつかな」 透華「・・・・・・」 ハギヨシ「そろそろよろしいですか?」 京太郎「おう!」 ブロロロロロロロ・・・ 透華「・・・また、いつか」 一「・・・ねぇ透華、透華はアレの事どう思ってるの?」 透華「・・・?」 一「・・・」 透華「もう、一ったら・・・」クスッ 透華「・・・心配しなくても、私の付き人は一以外あり得ませんわ」ギュッ 一「ち、違うよ!嫉妬とかそういうのじゃなくて!」 透華「さ、帰りましょう・・・私達の家に」 一「う、うん!」 ハギヨシの車の中 京太郎「なんとか買えたが・・・クーラーボックスまでもらっちまって、店員さんには悪い事しちまったな」 京太郎「うわ、ちょっと溶けかけてきてる!ハギヨシさん、なるべく急いで」 ハギヨシ「既に全力で飛ばしています・・・心配なさらなくても、そろそろ着きますよ」 キキーッ 京太郎「うおっ・・・っと」 ハギヨシ「では、お気をつけて」 京太郎「ああ。ハギヨシさん、ありがとな!」 ブロロロロ・・・ 京太郎「さってと・・・」スウーッ 京太郎「咲ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」 咲「き、京ちゃん!?どうしたのこんな夜中に大声出して!」ゼイゼイ 京太郎「ほら、ショフト!」パカッ 咲「え、これが・・・?」ジトーッ 京太郎「まぁそういうなよ、土産話もいっぱいあるんだ!ショフトの秘密も教えてやるよ」 咲「・・・京ちゃん、頑張ったんだね」 京太郎「・・・何がだよ?」 咲「修行に行く前より、ずっと逞しくなってる・・・なんとなくだけど」 京太郎「そりゃ、お前を倒すために必死で修行してきたからな。もう癖も抜けてるぜ」 咲「ほうほう。今度こそ期待していいのかなー?」 京太郎「おう、任しとけ・・・とりあえず溶ける前にショフト食おう、味は保証するからよ」 咲「そうだね・・・はむっ」 咲「凄く・・・美味しい!でも・・・なんだかとっても普通だね、コレ」 京太郎「だろー?それが伝説になった理由が下らなくてさ・・・」 ・ ・ ・ 咲「あはははは!崩れたソフトでショフトって・・・なにそれ!」ゲラゲラ 京太郎「だろ?あんまり下らなくて、笑っちまうよな!」 咲「ひーっ、ひーっ・・・お腹痛い・・・」プルプル 京太郎「ハハハ・・・まったく下らねぇよな」 咲「ホントだよ、もう」プルプル 京太郎「・・・・・・」 咲「・・・・・・」 京太郎「咲。俺、今はまだお前には届かないかもしれないけど・・・」 咲「・・・うん」 京太郎「でも、俺はお前に勝ちたい」 咲「・・・うん」 京太郎「だからさ・・・・・・・・・これからもずっと、俺と麻雀してくれないか」 咲「えー・・・何それ京ちゃん、プロポーズー?ロマンチックさが足りない、33.4点かなー」クスクス 京太郎「なっ!評価低っ・・・ってちげーよ!別にそんなんじゃねーし!」 咲「でも、嬉しいよ。・・・とっても、嬉しい」 咲「うん。だから・・・これからも末永く京ちゃんをボコらせていただきます」ペコリ 京太郎「こんにゃろー・・・言ってろ、案外近日中に倒されるかもしれねーぞ?」 咲「そういうのは、取らぬ狸の皮算用って言うんですよー♪」 京太郎「・・・・・・なぁ、咲」 咲「・・・なに?京ちゃん」 京太郎「麻雀って、楽しいよな!」 カン
https://w.atwiki.jp/83452/pages/11926.html
唯「私だってあずにゃんのこと大嫌いだもん」 梓「じゃあ「あずにゃん」て呼ばないでくださいよ」 唯「……わかったよ、あずさ」 梓「……下の名前で呼ばないでください」 唯「……中野、ちゃん」 梓「はい、それでこっち見ないでください。話しかけないでください」 唯「……」 それから…… 唯「……りっちゃんたち、今日来ないんだってさ」 梓「そうですか、じゃあ私帰ります」 唯「……練習してきなさいよ」 梓「……唯先輩、私の事嫌いなんでしょ?だったら……」 唯「関係ないよ、先輩命令だよ。ちゃんと練習しなさい」 梓「……わかりました、先輩命令なら、仕方ないです」 唯「そう……」 梓「じゃあ、私音楽室の外で練習してますね。先輩は中でやっててください」 唯「……他の部活に迷惑だからここでしなさい」 梓「……先輩命令、ですか?」 唯「……そう、だよ」 梓「……わかりました、じゃあ私部室の隅で練習してますね。近づかないでくださいね」 唯「……わかってるよ」 梓「……私の事、大嫌いなんでしょ?」 唯「……だいっきらい……だよ……っ!」 梓「そうですか……」 唯「……」 梓「私も、唯先輩なんてだいっきらいです……」 唯「……」 唯「……中野さんも、私に話しかけないでよ」 梓「……!」 唯「……わたしのこと、だいっきらいなんでしょ?」 梓「……」 梓「わかりました、平沢先輩……」 唯「……!」 唯「……」 梓「……」 唯(……あっ、また間違えちゃった) 梓「……」 唯(……あやまれば、許してあげるのに) 梓「……平沢先輩」 唯「っ!……なに、中野さん」 梓「……へたくそなギター、耳障りだから帰っていいですか?」 唯「……!」 唯「……中野さん、さっきから全然練習してないでしょ。練習してから帰りなさいよ」 梓「……先輩命令、でしょ?」 唯「……当たり前だよ、ていうか常識だよ」 梓「……それはすいませんでした、平沢先輩」 唯「……!」 梓「……ていうかできないんだったらテンポ遅くして……」 スクッ 梓「……なんですか」 唯「……さっきから生意気だよ、中野さん」 梓「……だったらどうしたんですか」 唯「……いいかげんにしてよ」 梓「っ!」 ガタッ 梓「な、なにするんですか!離してください!」 唯「生意気な後輩だもん、これは指導だよ」ギュッ 梓「ふざけないでください!抱きついてるだけじゃないですか!」 唯「……違うよ」 梓「えっ……」 ガタン! 梓「……押し倒された……」 唯「お仕置き、だよ……」 梓「……なんなんですか」 唯「……」 梓「わたしのこと、大嫌いなんでしょ?」 唯「……うん、大嫌い」スッ 梓「っ!」ビクッ 唯「嫌いだよ、あずにゃんなんか大嫌いだよ。生意気だしすぐ怒るし」ポロ… 梓「……」 唯「きらい、きらいきらいきらいぎら゛いあずにゃんなんが!だいっぎら゛い!」ボロボロ 梓「……ったら……してよ……」 唯「ふぇ……?」グスッ 梓「きらいなんだったらはなじでよおぉぉぉ!」 ガタッ 唯「きゃあ!」ドタン! 梓「わだ…わだじだっでぇ……ゆいぜんぱいの事なんかだいっきらい!」ボロボロ 梓「わだし……わだしゆいぜんぱいの事だいすぎなのに゛ぃ……グスッ」ボロボロ 梓「ゆいぜんぱいわたしのこと……はぁ…ぎらいっでぇ…う゛うっ」 梓「う゛……う゛え゛えええええええん」ボロボロ 唯「あずにゃあん……グスッ」 梓「きらい!きらい!嫌いなんだからはなしてよ゛ぉ!」 唯「あずにゃあん……あずにゃあん……!」ギュッ 梓「はな゛じてぇ……はなしてよぉ……」 唯「あずにゃあん……」サスリサスリ 梓「うう゛っ……はぁ……ぐすっ……はぁ……」 唯「……あずにゃあん……ごめんねぇ……」サスリサスリ 梓「うぅっ……ひっく……」ギュッ 唯「あずにゃん……ごめんね、あずにゃん私のこと好きでいてくれたのに……」 唯「「嫌い」なんて言わせちゃって……」ギュッ 梓「うん……うん…」グスグス 唯「あずにゃん、好きでいてくれてありがとうね。ごめんね、嫌い、なんて言っちゃって」 唯「私も……あずにゃんのこと大好きだからね」ギューッ 梓「……」グスッ 梓「……唯先輩なんて、大嫌いだもん」 唯「あずにゃあん……そんなこと言わないでよぉ……」 チュッ 唯「ふえっ!?」 梓「……嫌いだから、いじめるもん」 唯「……///」 梓「いっぱい、いーっぱい、いじめるもん」 唯「……///」 チュッ 梓「ん!……っ」 唯「私も、あずにゃんなんか大嫌いだよ」 梓「ふぇ……?」ジワッ 唯「だからいっぱいいじめてやるっ」ギューッ 梓「ふわっ!?///」 チュッ チュッ チュッ チュッ チュッ 梓「んぁ……ふわぁ……///」ハァハァ 唯「きらい……」チュッ 唯「きらい……」チュッ 唯「だいっきらいっ」チュッ 梓「ん…んんっ///」 チュッ 唯「ふわぁっ!///」 梓「わ、わたしも」 梓「きらい」チュッ 梓「きらい」チュッ 梓「だいっきらいですっ///」チュッ 唯「む……むむむーっ///」 チュッ 唯「きらい///」チュッ 梓「だいっきらいっ///」チュッ 唯「だいだいだいっきらいっ///」チュッ 梓「すっごくすっごくだいっきらいっ///」チュッ 唯梓「むぅ……」 唯「だいだいだいだいだいだい!」 梓「だいだいだいだいだいだい!」 唯梓「だいっ!」 唯梓「//////」 「……すきっ!」 チュッ! お、わり だよん? 戻る あとがき 喧嘩の理由は各自で妄想しといてくらさい。 人生初SS。 こんなカス文章に付き合ってくれてありがとう。 今から自動車学校の仮免の試験だわ。 ノシ
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/2826.html
『ゆっくりとお正月を満喫しよう!』 6KB 小ネタ 飼いゆ 野良ゆ 赤ゆ 子ゆ 現代 愛護人間 虐待人間 小ネタ、駄文です。今年もよろしくお願いします。 正月を題材にした小ネタ集です。 くだらないネタばかりなので、時間のある方だけお楽しみください。 初詣 「ゆゆ……なんだかおしょとがうるしゃいね……おきゃーしゃん、どうちてこんなじか んに、にんげんしゃんがいっぱいいるにょ?」 「ゆふふ……おちびちゃん。あれは、はつもうでさんっていうんだよ! れいむも、お にいさんにかわれていたころは、いっしょにはつもうでさんにいったんだよ!」 れいむはお兄さんと初詣に言った事を思い出す。鐘を鳴らして、あまりの音におそろし ーしーをしてしまった事。一緒におみくじさんを引いて、見事だいきょうさんを引き当て た事。おみきさんをのんで、おそらがぐるんぐるんしてしまった事。 野良になってしまった今、こんな生活は二度と出来ないであろう。でも、今はおちびち ゃんがいる。お兄さんとの約束を破ってまで作った、かけがえの無いおちびちゃんが。ま りさは捨てられてから三日後、道で車に轢かれて永遠にゆっくりしてしまったが、れいむ は今、おちびちゃんと一緒に最高にゆっくりしているのだ。 「畜生、大凶かよ……新年から良い事ねーな……あ、あんな所にゆっくりがいるじゃね ーか。ヒャッハー! 憂さ晴らしに初ゆ虐と行くかぁ!」 (おちびちゃん。れいむと、ずっと、ずーっとゆっくりしようね……) カルタ 「おにーしゃん! なにをやっているの?」 若干赤ゆ言葉が残る、飼いゆっくりの子れいむが、飼い主のお兄さんに問いかける。 「おう、れいむ。これはカルタと言ってな。お正月にやる特別な遊びなんだ」 特別な遊びと聞いて、子れいむの好奇心が刺激される。 「ゆゆ! れいみゅもやりたい!」 「はは、れいむには、ちょっと無理かなあ? いい子だから、そこでお兄さん達がやる のを見てなさい」 ひらがなが読めないれいむには、無理と考えたのだろう。 (ゆううう……れいみゅもかるたさんがやりたいよ……) お兄さん達がカルタをするのを眺めるれいむ。しかし、カルタがやりたいという好奇心 を抑える事ができない。 「――犬も歩けば棒に当たる」 (いぬしゃん! れいみゅのまえのかるたさんに、いぬしゃんがいるよ!) そう、カルタにはお題のひらがなの他に、お題の絵もプリントされているのである。目 の前にあるカルタに、れいむが飛びつかないわけがなかった。 (れいみゅがとるよ! ゆぅーっ!) 端の方にあった為だろうか、人間のお兄さん達よりも若干速く、子ゆっくりらしくない 跳躍力で、カルタの上へと飛び乗るれいむ。 (ゆゆーん! れいみゅのかちだよっ!) 子れいむが最後に見たのは、眼前にすごい速度で迫り来る、お兄さんの大きな大きな手 であったとさ。 羽つき お正月。人間の大人達は、家の中で思う存分ゆっくりしていた。今日は、年に一度の人 間が最高にできる日だからである。 一方、家の外では、人間の子供達が、凧揚げ、羽つき、コマ、様々な遊びをして楽しん でいた。大人と違って、元気が有り余っている子供達は、家の中でゆっくりする事は出来 ないようである。 こんな日は、人間だけではなく、ゆっくりもゆっくりしていたい気分になる物なのだろ うか。ダンボールの中のお家では、事前に正月分の食料を確保した様々なゆっくりが、昼 間から寝息をたてておねんねをしていた。 「おちょーしゃんたちは、ゆっくりしすぎだよ!」 「むっきゅ! おしょうがつしゃんは、おそとにでてたのしむものなのよ、むっきゅ」 「そうなんだじぇ! まりちゃたちは、おしょとでたっくさんっあそぶんだじぇ!」 こんな事を言いながら街中を飛び跳ねているのは、近所の仲良しである、れいみゅ、ま りちゃ、ぱちゅりーの三ゆ組である。正月に家の中でゆっくりできないのは、ゆっくりも 同じようである。 「ゆゆ? あれはなにをやっているんだじぇ?」 まりちゃが何かを見つけたようだ。 「むっきゅ! あれははねつきしゃんといって、いたさんで、たまさんをぱこーんして あそぶのよ、むっきゅ」 自称街の賢者の卵のぱちゅりーが答える。 「ゆわぁぁぁ……れいみゅもやりたいよぅ……」 れいむが、うれしーしーを垂れ流がしながら言う。 「むきゅう……ぱちゅたちにはむりね」 「みてるだけでも、ゆっくりできるのじぇ! もっとちかくでみるんだじぇ!」 もっと近くで見ようと、近づいていく三匹。 「あっ、ゆっくりだ!!!」 人間に簡単に見つかってしまった。こうなったら、この後どうなるかは決まっている。 「やめるんだじぇ! まりちゃになにをするんだじぇ!」 捕らえられたのはまりちゃ。子供達はまりちゃだけで満足し、他は見逃してやったよう だ。 ちなみに、他の二匹はあっという間にお家に逃げ帰ってしまった。所詮ゆっくりの友情 なんてそんなもんである。 「それにしても、なんでまりさなの?」 子供の一人が問いかける。 「いや、羽つきにつかうなら、やっぱりまりさじゃない? なんか、そんな気がするん だよねー」 特に深い意味は無かったようだ。羽つきと聞いたら、なんとなくまりさが思い浮かぶ。 その程度の事である。 「なんとなくかよ! まぁ、これが一番やりやすそうだしね。あ、帽子は邪魔だから取 っておこうか」 まりちゃの帽子を取り上げる子供。 「おぼーち! まりちゃのおぼーち、ゆっくりかえしてねっ! それがないと、ゆっく りできないよ!!!」 体をのーびのびさせて、帽子へ少しでも近づこうとするまりちゃ。 「ちっ、うっせーな。帽子なんてどうでもいいだろが」 そう言って、子供はまりちゃの帽子をビリビリに破いてしまう。 「おぼーち……まりちゃのえれがんとなおぼーち……」 すっかりまりちゃは放心状態だ。 「よーし、いくぞっ。オラアアアアアアアア! ホームランだっ!」 パコーーーーーーン! 「おしょら……」 子供のフルスイングで、まりちゃは空の彼方まで飛んでいく。 「いや、それ遊び方違うから!」 もう一人の子供から、的確なツッコミが入ったのであった。 書初め(あとがき) 俺は新米虐待鬼意山。去年の十月から、ゆ虐にどっぷりとハマってしまって、今じゃゆ 虐無しの生活なんて、考えられないぐらいだ。 俺は毎年正月に遊び程度に書初めをしているんだが、今年のテーマは勿論ゆ虐関連にし ようと思ってる。今年のテーマはずばり…… 『日々精進』 である。まだまだ文章を書く能力は低いが、日々精進して、日本の虐待鬼意山達をヒャ ッハーさせられる文章を書きたいと思っている。 END anko2495 一番多いゆっくりは anko2498 日本を支える一大産業(本編) anko2501 胴付きになりたかったまりさ anko2503 新たなエネルギー源 anko2504 冷凍ゆっくり anko2514 新発見、ゆっくりの新しい移動法 anko2516 読書の秋 anko2561 すぃーはゆっくりできない anko2737 イヴの夜に anko2751 ゆっくり餅 anko2753 共生 anko2758 作ろう!ドスまりさ! anko2772 大人のゆっくり コンバートあき
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/2281.html
これは、『育児放棄? そんな程度じゃないんだぜ!! 中編』の続きです。 それとすみません、終われませんでした。次回で完結します。 ゲスまりさ注意 そんなまりさを制裁もの 子ゆっくりは……今回お休みです お兄さんが前面に出すぎ ストレスマッハ注意 ストレスを解消しきれない可能性あり それでも構わないという方はどうぞ下へ 育児放棄? そんな程度じゃないんだぜ!! 後編1 『まりさサイド』 「みんにゃ! これきゃらはおにーしゃんとおねーしゃんのいうこちょをきかなきゃだみぇだよ!!」 「「「「「ゆっきゅりりきゃいしちゃよ!!」」」」」 姉まりさの言葉に返事を返す妹まりさたち。 本当に理解しているか怪しいが、それでも姉妹を引っ張れる存在がいるだけでだいぶ違う。 自分たちに勉強を教えてほしい。その姉まりさのお願いを快諾したお兄さんは、同居人であるゆっくりゆうかに視線を移す。 「……ゆうか、赤まりさたちを畑に連れて行ってあげてくれ」 「……いいの、おにいさん? きっとこいつらはたけをあらすよ」 今回の事はすべて聞いているものの、やはり野生のゆっくりを畑にいれることには抵抗があるらしいゆうか。 「庭の隅にクズ野菜を埋めてた畑があったから、そこなら荒らされても大丈夫だよ。それにもし言うことを聞かなかったら………」 一気にしゃべるトーンを落としたお兄さんは、ゆうかにだけ聞こえるように対策を伝える。 本当に大丈夫なのか。彼の話を聞いても半信半疑のゆうかだが、家主の願いを無碍にするわけにもいかない。 渋々ながらそれを了承すると、箱から出された赤まりさたちを率いて台所を後にする。 「じゃあ、おしえてあげる。ちゃんとおにいさんにおれいをいってね」 「「「「「おにーしゃん、ありがちょね!!!!」」」」」 ぺそぺそと気の抜ける音を立てて、ゆうかを追いかける赤まりさたち。 お兄さんに治療してもらった姉まりさもそれに追随するが、足が潰れたままなので跳ねることができず、一回分の這いずれる距離も妹たちの半分程度だ。 また片目も失明しているせいで、時折進行方向が姉妹たちとずれてしまい、追いかけることもままならない。 するとそれに気づいた何匹かの妹が、姉の体を気遣って時折振り向いたり立ち止まって追いつくのを待っている様がみられた。 (………姉含めて6個か。結構優秀な赤ゆだな) 一度も振り返ろうとしない個体と、姉を気遣う個体を見極めるお兄さん。 その二種の距離がはっきりと分かれたところを見計らうと、玄関に向かう途中のゆうかを止めて、姉まりさとくっついていた妹たちを持ち上げた。 「大丈夫かい?」 「ゆぅ……、あんよしゃんがうごいちぇくりぇにゃいの……それにおみぇみぇも」 「そりゃあねえ、どっちも君のお母さんにぺちゃんこに潰されていたからね。けれどそのうち治せるようにしてあげるから、少しだけ我慢しててね」 「「「おねーしゃんをなおしちゃげちぇね?」」」 「わかっているさ、そのためにはまだ準備がいるからね。お姉ちゃんはそれまで我慢してね」 「ゆっきゅりりきゃいしちゃよ! おにーしゃんありがちょね!!」 お兄さんの言葉に素直に返事する赤まりさ姉妹。 無論大ウソである。彼の技量なら一日で治すことも可能である。 ただ、彼は楽しみを一度に消費したくなかったのだ。 そもそも、出たらめを形にしたような存在がゆっくりだ。真面目に治すだけ損である。 その間に姉まりさと気遣っていた姉妹にだけ、お兄さんは識別できるようこっそりと印を付ける。 目的の赤ゆたちに印をつけ終わると、お兄さんはゆうかを左手に、赤まりさ達を右手に乗せた。 「じゃ、今日はお兄さんが運んであげよう。ゆうかと他のまりさはお兄さんの後に付いてきてね」 「「「「「ゆっきゅりりきゃいしちゃよ!!!」」」」」 「ゆー、おそらをとんでるみちゃい~♪」 いまはまだ、玄関から出る際に放置していたゲスまりさと赤まりさたちを会わせるわけにはいかない。 ならば別の出口を使えばいいと言われそうだが、あくまでも家への出入りは玄関を使うということを理解させる意味もあるからだ。 こうして母と娘たちは、同じ屋根の下にいながら互いの存在に気付かない生活を送ることとなる。それを親子が知るのは、もう少しだけ先のことだ。 「それじゃゆうか。後はよろしくね」 「「「おにーしゃん、ありがちょう!! ゆっきゅりしちぇいっちぇね!!」」」 「はいはい、ゆっくりしていってね」 畑についたお兄さんが全員を降ろしてゆうかにお願いすると、彼女は頷いた仕草を見せてくれた。 それを確認して赤まりさたちに適当な声をかけると、お兄さんはすぐに畑を後にした。 後はゆっくりゆうかのドS(スパルタ)授業が行われるだろう。 もし赤まりさ達にゲスが出れば、容赦なくお仕置きをしていいと伝えてある。 姉まりさを気遣える個体を選んだのは、この時点で仲間意識の強い個体を見極めるため。 特にまりさ種の場合、姉妹でも仲間意識が弱ければすぐに裏切ってしまう。 だが赤ゆっくりならば、まだ矯正が間に合うことも少なくない。 印を得られなかった個体への手本として、お兄さんは印のある姉たちを利用する考えであった。 その狙いが外れた場合、つまり印のない妹の矯正が不可能だと判断した時は、そいつらを徹底的に虐待して賢い個体への見せしめに使えばよい。 試せるものは何でも試す。このようなチャレンジ精神が、日々新たな虐待を生み出すのだ。そうお兄さんは信じていた。 「さて、それじゃいよいよ矯正の効かないゲスに移りますか……」 お兄さんは家に戻ると、今度はゲスまりさの箱を抱え、お馴染みの虐待部屋へと移動した。 そこに転がるは虐待お兄さんたちの必需品となる様々な道具たち。 かぴかぴになった餡子がいまだこびり付くスプーン。 たっぷりと砂糖水が染み込んだ釘バット。 何度も使用されて硬さを失ってしまったハリセン。 饅頭を焼くためだけに準備された鉄板。 赤ゆの足を痛めつけるための定規等など…。 お子様の文房具から本格的な拷問具まで、品ぞろえはばっちりだ。 ゆにゃゆにゃ、と幸せそうに居眠りしているまりさ。いつの間に気絶から睡眠へと移行したのだろうか。相も変わらず図太いナマモノである。 やれやれとお兄さんは苦笑した次の瞬間、彼は抱えていた箱を思い切り部屋の床へと叩き落とした。 ッッガァン!!!! 「ゆぎゃあああああああ!?」 完全な防音仕様の部屋の中にだけ響く衝撃音とまりさの悲鳴。 本気で落としたのにヒビ一つ入らない加工所特製の箱を見て、満足そうなお兄さん。 相変わらずいい仕事をしてくれる職員の皆様だ。 「ゆっ!? なに!? なんなんだぜ!?」 「やあ、ゲス饅頭。ゆっくりしていってね」 目が覚めたばかりで状況を把握していないまりさに対し、お兄さんは爽やかな笑顔で毒を吐いた。 「ゆ!? ゆっくりしていってね!! ……ゆ!? うごけないんだぜ!?」 「そりゃあね、箱の中にいるんだから仕方ないじゃない?」 「ゆ!! じじいがまりささまを………!」 そこまで言って、まりさはお兄さんの顔を見て凍りついた。 目の前の人間の顔を思い出したのか、次第に餡子の詰まった身体が震えだす。 「どうしたんだい?」 「な……なんでもないんだぜ……です」 ゆっくりが隠し事などできるはずもないが、お兄さんはあえて気付かないふりを続ける。 「まあ、別にいいよ。これからまりさには、罰を受けてもらうから」 「ゆ!?」 罰。その言葉に敏感に反応するまりさ。 餡子脳の饅頭でも、その言葉の意味はわかる。 「な、なんでまりさがそんなものをうけなきゃいけないんだぜ!?」 「だってまりさは野菜を食べたんでしょ? さっき言ったよね」 「ゆ……!? ゆ、そ、そうだよ!! まりさはしょうじきにはなしたよ!! だからおにいさんはおやさいさんをよこすんだぜ!!」 「ん? …………ああ。そういえば約束したっけ。ちょっと待ってな」 まりさが言った内容とは、彼の質問に対して正直に話せばお兄さんが野菜をあげるというものだった。 自分に都合の悪いこと以外は、わりと記憶力のいい餡子脳。 愛護派でもない限り、饅頭との約束なんて守る必要がないというのが、一般的である。 とはいえ、約束は約束だ。お兄さんは台所から約束のりんごと大根と人参を持って来る。 もちろん、彼がそのまま言うことを聞くつもりは全くないのだが……。 「おいしそうなやさいさんなんだぜ!! はやくここからだしてまりささまにおやさいをたべさせるんだぜ!!」 目の前の野菜に意識を持っていかれたまりさは、すぐにお兄さんへの恐怖を忘れて命令する。 だが、もはやその程度など些細なこと。 おにいさんは無言でまりさの髪を引っ張ると、言われたとおり箱の外へ放り投げる。 ゆべっ、と悲鳴をあげて転がるまりさだが、今はそれよりも目の前の食べ物だ。 すぐに起き上がると、お兄さんの持つ野菜へと飛び跳ねて食いつこうと飛び跳ねる。 だから、まりさは先ほど見たお兄さんの顔が、いまどんな表情をしているのか知ることができなかった。 もし気づいていたとしても、その未来は変わらなかったではあろうが……。 「はやく!! はやくまりささまにおやさいをよこすんだぜ!! たべさせるんだぜ!!」 「…………そう。それじゃ、お望みどおり食べさせてあげる………よ!」 めごりっ!! 合図も何もない。全くの不意打ちだった。 よ! の部分で、お兄さんはりんごをまりさの顔面へと投げつけたのだ。 「ゆべあぁぁぁぁぁっ!!」 りんごを与えられたまりさに待っていたのは、むーしゃむーしゃ♪ ではなく、しあわせー♪ でもなく、顔の潰れるような激痛。 食べ物といえど人間の力によって放たれた固形物は、ゆっくりにとって驚異の威力を発揮する。 瑞々しいリンゴは、音を立ててまりさの鼻に当たる部分にめり込んだ。 「ゆべあ!? ぶあああ!? ば、ばりざのおがお!? いだいいだいいだいいいいいいいい!!」 「あぁ、まりさ。ダメだよ、ちゃんと受け止めなきゃ………」 突然の痛みにのたうつまりさ。 対するお兄さんは、まるで子供の粗相を優しく咎めるような口調。 「な…、なにずるんだぜええ!! じじいはまりざざまにおやざいをよごぜえええ!!」 「あげてるじゃないか。まりさがちゃんと受け止めないからだよ」 手に抱えた人参と大根を持ち上げながら、お兄さんは当然とばかりに答える。 「『食べさせろ』って言われたからね。僕がしっかりお口に運んであげるよ」 お兄さんの回答に、ゲスまりさはそれがどういう意味を持つか理解した。 もともと狡賢い種族だ。言葉の裏に含まれる意図に気づくのにも時間はかからなかった。 「ゆ、ゆっぐりじねええええええ!!」 「あ、大根食べる?」 ばぢん!! 一杯食わされた。ハメられた。ゲスまりさはその事実に激怒し、彼に食ってかかる。 対するお兄さんは握っていた大根で、熱烈に飛び込んできたまりさの顔面をクリーンヒット。まりさの話なんて聞いちゃいない。 カウンターの衝撃に、身体全体を回転させて吹っ飛ぶまりさ。部屋の壁に顔をぶつけ、その際に小麦粉の皮膚が一部削れる。 「ゆべがああああああ!?」 「ほら、はやく食べなよ。ちゃんと口を開けるんだ」 「!? …ま……まっで! まっでええええ!!」 「はい、あーー……ん!」 文字通り身を削られる痛みに泣き叫ぶゲスまりさ。 このままではいけない。本能で一度態勢を整えようと身を捩じらせる。 だが、あくまでもお兄さんは自分のペースを崩さない。 頬を打たれた拍子にまりさの顔から転がり落ちたりんごを拾い、今度は悲鳴を上げる口に叩きつけた。 餡子脳では反応していたが、痛みに動きが鈍っていたゲスまりさは結局、為す術なくその直撃を受ける。 みぢりっ……! 歯茎の裂ける音とともに、ゲスまりさの口から液状餡子にまみれた前歯が何本か転がり落ちた。 「びゃぎゃ!? びゃりびゃにょびゃが!?」(歯が!? まりさの歯が!?) 「ああもう……、落としちゃダメだって……の!」 まりさの悲鳴は、一回ごとに大きくなるにつれて、意味が聞き取りづらくなっていく。 しかし、お兄さんはそんなことを気にしない。再び大根を食べさせようとまりさに近づいた。 「ゆひっ…!? ゆびぃぃぃあぁぁぁぁぁぁぁっ!! ぐるな!! ぐるなあああああああ!! ……ゆごびゅっ!?」 「来てほしくなかったら、逃げるんだ。でもそうなると野菜は食べられないよ?」 最初は野菜に気を取られていたまりさも、ここまで来るとそれどころではない。 いや、そもそもまりさが意識を食べ物に向けることを許されていた時間は一分も無かった。 ゆっくりにとっては広い部屋を、必死に這いずって逃げ回る。 しかし、人間にとってみれば本当に小部屋である。まりさがどんなに逃げたと思っても、五歩もかからず追いつける程度の。 また隠れて休もうにも、まりさが身をひそめるような隙間はどこにもなかった。そして追いつかれれば、また大根とリンゴ。 必死に距離を取ろうと逃げる間。ゲスまりさの脳裏に浮かんだのは、恐怖だった。 このゲスまりさは、人間というものが自分たちにとってゆっくりできない存在であることを知っていた。 知ってはいたが、それは鈍くさい他のゆっくりだからそんな目にあうのだと考えていた。 狩りに秀でて賢い自分がやれば、人間なんてすぐに倒してしまえる。いや、それよりも下僕にして利用しよう。そう企んでいた。 だが現実はどうだ。まんまと人間の罠にかかり、なまじ賢い分人間との実力差を理解してしまった。 こんなことになるなら、最初から自分の娘たちを交換道具として扱えばよかった。 元々春になれば捨てるつもりだった子供だ。夫のれいむもいない今、不要な子供をまりさが育てる理由もない。 そうだ、全てはあのガキどもが悪いんだ。あいつらがいたから人間の里へ来てしまったのだ。 あのゴミどもを自分が人間のための奴隷として躾ると提案すれば、喜んで受け入れてくれるだろう。 少しは自分の餡子を受け継いでいるのだから、物覚えはいいはずだ。 言うことを聞かないやつがいれば、人間に食べさせればいい。全部潰して逃げるということだってできる。 もしかすると、お礼に美味しいごはんを用意してくれるかもしれない。いや、きっとそうに決まってる。 そうと決まれば、早くこの素晴らしい提案を人間に伝えよう。自分は悪くない。被害者なんだって。 そうすれば、人間も同情してくれるに違いない。赤まりさたちは憎たらしい顔をしていたが、自分はこんなに美ゆっくりなんだから。 だから……だから早く止めてええええええええええ!!!! 叫びたくとも叫べない。うかつに声を出そうとすれば、先ほどのように口を痛めてしまうことに、ゲスまりさは気づいていた。 そんなまりさの懇願など知らず、お兄さんはまりさの顔に向けて野菜を向ける。 起き上がれば大根、倒れればリンゴの大盤振る舞いだ。 「ぼ、ぼうやべで……いだいのいやだぁぁぁぁ……」 この行動が5分ほど続いた頃、呆れるほど遅いながら全力で逃げていたまりさは体力の限界を迎えた。 限界まで動かした身体は痙攣気味に激しく上下し、時折少量の餡子が、口から濁った音と共に噴き出して床を汚す。 先ほどまでふてぶてしかったその顔は、りんごや大根によって何本も歯が抜けおち、顔の所々は内出餡で黒ずんでいる。 恐怖と激痛によって穴と言う穴から垂れ流した砂糖水が、フローリングの床に水たまりを作っていた。 まりさ種自慢の帽子も、初めの時より半分以上も潰れて縮んでいた。これでは鍋を逆さまにして被っているのと大差ない。 「じゃ、お野菜さんはもういらないんだね。……残念だな、すごく新鮮ですごくゆっくりできた大根さんたちだったのに……」 やれやれ…。とお兄さんはため息をついて首を振る。あざとい、さすが虐待お兄さん、あざとい。 そんな彼が握る大根とリンゴはいまだ無傷。野菜は食べるものであって、遊ぶものではない。それを忠実に守っているお兄さんであった。 「じ……じじいがだべざぜでぐれないがらでじょおおおおお!!」 「食べさせてあげようとしたのに、まりさが逃げたり口を閉じたりするからだよ。そんなこともわからないの? 馬鹿なの? 死ぬの? ……あ、それと」 何かを思い出したようにお兄さんは言葉を切ると、何の躊躇もなくゲスまりさのぐずぐずになった顔へ指先をぶち込んだ。 ずぶり。という音とともに、湿った感触がお兄さんの指の先端へ伝わってくる。 「ゆがああああああ!? いだい!! いだいいいいいいいい!!!」 「その薄汚い喋り方を今すぐ止めろ。このゲスが」 「おがおづぶれるうううううう!!」(お顔潰れるうううう!!) 「潰れたって死にはしないよ」 「やべでぬいでいだいいだいぬいでいだいやべでいだいいだいいいいい!!」 「黙れ」 「おべがいじまずごろざないでぐだざい!! おべがいじまずおべがいじばず!!!」 「動くな、死ぬぞ」 死ぬ。突如雰囲気を豹変させたお兄さんに、自分が最も恐れる単語を言われて、まりさは口をつぐむ。 危機管理能力が疎いゆっくりでも、さすがに自分の現状を理解できたようだ。 お兄さんが刺しこんだ箇所は、ゲスまりさの眉の部分であった。 指を全て頭へ埋めこむと、指先を僅かに動かして中枢餡付近に食いこませる。 「いいかい、ゲス饅頭。いまから僕の話をよく聞いてね?」 「ど、どぼじでごんなごど……」 「返事」 ぐずり…… 指を動かして、体内の餡子をかき混ぜる振動を直に伝える。 「わがりまじだ! なんでもぎぎばず! だがらごろざ…!」 「うるさい」 「ゆぐりいいいいい!!」 「もしまた生意気な口…。さっきのじじいとかね。ああいうことを言ったら、まりさの中身を全部出すからね。理解出来た?」 「ゆ……、ゆっぐりりがいじだよ…!!」 「敬語忘れてるよ」 「ゆゆゆゆゆっぐりりがいじまじだ!!!」 痛みと不快感の中で、まりさはお兄さんの言葉を待つしかなかった。 間近に見える死。まりさはそれを回避するために全意識を集中させる。 その反応に満足そうな表情のお兄さん。いつの間にか口調も元に戻っていた。 「話は簡単だ。まりさはどうしてこんな目にあってるのかな?」 「ゆ……、ば、ばりざのあがぢゃんがわるいんだよ!! わがままばがりいっで、ばりざをごばらぜるがら!!」 「答えになっていません。はいお仕置き」 お兄さんは手首を回すと、額に当たる部分の餡子をぐりぐりとかき回した。 「ゆぎゃ!? ゆびょ!? びょ! ゆっっぴょ!? ゆっぐ!?」 「次はこんなもんじゃないぞー? それとも、身体の中ぐちゃぐちゃにされたいの?」 ぐずりぐずりと体内から湧き上がる音にパニックを起こすまりさ。 それが治まるのを待って、再びおにいさんは声をかける。 体内をかき回されたことにショックを受けたまりさは、大人しくお兄さんの質問に答えるようになった。 自分たちはぎりぎりで冬を越せたが、量が足りないため人間の畑に餌を取りに来たこと。 番のれいむが死んだことで育児が面倒になり、赤ゆたちを最初から捨てる考えだったこと。 人間はゆっくりより弱いと考えていたこと。 一刻も早く手を抜いてもらいたい。そのためにまりさは偽りを騙る手間さえ惜しんでいた。 だがまりさは体験したことない責め苦に怯えながらも、自分が先ほど考えていた提案を口にする。 「じ、……おにいざん! ば、ばりざのおはなしをゆっぐりぎいでね!? ぎっどすごぐおどろぐよ!!」 「ん……お話?」 「ば、ばりざがあのおぢびじゃんだぢをどれいにぞだでであげるよ!!」(あのおちびちゃんたちを奴隷に育ててあげるよ) 餡子をこねくり回す手を止めて、お兄さんはまりさの顔を覗き込む。 かかった。ゲスまりさは心の中で笑みを浮かべながら、自分の提案を口にする。 その間お兄さんは空いていた手を顎に当て、何事か考えるそぶりを見せていた。 「…ど、どうおにいざん!? ごはんはうんうんだげだべざぜるじ、ずっぎりのあいでもできるようにざぜるよ!?」 お兄さんはずっと黙っているが、まりさには手ごたえがあったと根拠のない確信があった。 もしかすると、まりさの考えに驚いて声が出ないのかもしれない。 やがてお兄さんが口の端を釣り上げて自分を見下ろす。 そうして受け入れられる自分の未来を想像し…… 「お断りします」 「ゆ゛っ!?」 お兄さんから明確な拒絶を食らい、痛みも忘れて固まった。 ああ、よく似た親子だ。その様子を見て、お兄さんは苦笑する。 そもそも、子供を奴隷とする様なゆっくりと取引するつもりはなかった。 それにいつの間にか敬語も忘れている。だから早くお仕置きという名の虐待に移りたいのだ。 真面目に取り合うだけ時間の無駄だ。適当な嘘でお兄さんはこの話を切り上げることにした。 「あのゲス饅頭どもさ、全然使えなかったよ。ゴミだねゴミ」 「ゆ!?」 そんなはずはない。まりさは咄嗟にそう口に出そうとしたが、続くお兄さんに遮られる形となった。 「全く、言った話を聞きやしないし覚えもしない。ほとんど潰しちゃったよ」 「ど、どぼじでぞんなごどじだのおおおお!?」 「だって捨てたじゃないか。それをどう扱おうが僕の勝手だよ。もういないけど」 「じゃあばりざをゆるじでよおおおおお!!」 「ダメだよ、お野菜食べたんだし。それに、あの赤まりさたちは役に立たなかったし……もういないけど」 「ばりざのごどもがやぐにだだないわげないでじょおおおお!? ばがなの!? じぬの!?」 「まあ、そんなわけで穴埋めをゲスまりさにしてもらうことと相成りました。はい拍手」 「どぼじでぞんなごどいうのおおおおおおお!?」 「それにさ、ゲスの子供が何の役に立つの、ゴミでしょ。そんなこともわからないの? 馬鹿なの? 死ぬの?」 「ばりざばげすじゃないいいいいいいいいいい!!」 「全く。赤ん坊も言ってたよ。おかーさんを潰してまりさを助けてね、ってさ。もういないけど」 「ゆがあああああああ!! ぐぞばりざどもおおおおおおおお!!」 「いや、お前の子だし。役に立たないとことかそっくりだね。もういないけど」 「あんなのばりざのごどぼじゃないいいい!!」 「じゃあやっぱり好きにしていいんだよね。もういないけど」 「ゆっぐりじねえええええええ!!」 「一々煩いんだよこのゲス饅頭」 ここでようやくお兄さんはまりさの中に突っ込んでいた手を引いた。その手にわずかばかりのオマケを掴んでいる。 「ゆぎゃああああああ!! ば、ばりざのおべべえええええええええ!!」 「全く、敬語を使えと言っただろうに……あと、うるさい」 彼はまりさの顔から手を引き抜くと同時に手首のスナップを利かせ、掻き出す要領でまりさの眼から頬にかけて削ぎ落としていた。 ぽっかりと顔の左上半分が削られたまりさ。さぞかし甘くなったはずの餡子は、まりさが垂れ流した水分が多すぎて硬くなっていた。 お兄さんは掴んだ餡子を手の中でおにぎりの様に固めると、それを部屋の隅へ放り投げる。 「……あれは餡団子なのか、はたまた善哉の素になるのか……それが問題だ」 「ば、ばりざ! ばりざのおべべがえぜえええ!!」 その様子を見ていたまりさは餡子の転がった隅へ這いずると、どうにか自分の身体を取り返そうと舌を伸ばす。 だが、そんなことを許すほど虐待お兄さんは優しくない。 「はい、よく聞いてねゲスまりさ。じゃないと踏み潰すよ。この舌」 「ゆひぇ!?」 もう少しで届く、そう思って全神経を集中させた先端部分に、お兄さんは容赦なく足を置いた。 「まりさにはこれからしばらくの間、子供たちの分までお仕置きを受けてもらいます」 「ゆひぇひぇひぇ! ゆひゃんひゃにょほ!!」 「何言ってるかわかんないんで、こっちが勝手にしゃべるよ。それとも、踏みつぶしたらちゃんと喋れるかな?」 赤くなったり青くなったり忙しい饅頭だ。お兄さんは悪戯に足に力を込める。 残った片目が大きく見開かれた直後、すぐにまた力を抜く。安心したらまた力を込める。 お兄さんはこれを何度か繰り返し、お仕置きが嫌ならここで潰されるかと迫った。 その選択に、もはやまりさは目を伏せて諦めるしかなかった。 絶望を顔に張り付けた土饅頭を見て、ようやくお兄さんは舌から足を離す。 「じゃあ、まりさ。いよいよ本格的なお仕置きに行こうか?」 「あ、あれがおじおぎじゃないの!?」 当然です。 お兄さんはオレンジジュースを混ぜて練った小麦粉の塊をまりさの顔にくっつけて応急処置をすると、部屋を見渡して道具を探す。 「……そうだ。これにしよう」 「ゆ!? なにをずるの!? ぼうばりざをいじめないでね!? ゆっぐりざぜでね!!」 「ああ、終わったらゆっくりできるよ。……まあ、したくなくてもすることになるけど」 「おべがいだがらゆっぐりざぜでええええええええええ!!」 「はいはい、ゆっくりゆっくり」 適当に答えながら部屋の中を物色していると、ある物を発見して動きを止めた。 それは以前解体したゆっくりまりさの舌の長さを測るために使用した定規と、番いのありすの目の前で引き抜いた舌を輪切りにするために使った包丁。 そして輪切りにされた舌をありすに食べさせるために使用した爪楊枝だった。 結局ありすはまりさの舌を食べた直後に発狂し、自ら包丁を無理やり飲み込んで死んだ。 その二匹の亡骸は今、我が家のゆうかの畑の栄養としてゆっくりしていることだろう。 「そうだ、いい事を思いついた……」 お兄さんは早速それらをまとめて抱え上げると、すぐにまりさの方へ向き直る。 「ゆ!? なにずるの!? やべでね!! ゆっぐりできないがらやべでね!!」 「だから、終わったらさせてあげるって」 それだけ言うと、お兄さんは距離を取ろうとしていたまりさを髪を掴んでひっくり返す。 その拍子に帽子がとれたと騒がれても迷惑なので、素早く頭の下に敷いてやる。 潰れるとかゆっくりできないとか騒いだが、すでに直し様のない状態だったので、お兄さんは黙殺した。 「や、やべるんだぜ!! ゆっぐりできないんだぜ!! ゆっぐりじないでもどずんだぜ!?」 「うへぁ……気持ち悪」 少しの間だけとはいえ、休めたことで落ち着いたのだろうか。口調が「だぜ」に戻っていた。 それにしても、どうやらゆっくりは自分で起き上がることが難しいのは本当らしい。 横倒しならまだしも、逆さまにされると体を揺らすのも厳しいようだ。 うねうねうねうねうねうねうねうね……と、ゆっくりで言う『足』の部分が忙しなく動いている。 それはまるで、波打つ芋虫の背中のようだった。きもい、さすがゆっくり、きもい。 一瞬決意を挫かれそうになるお兄さんだが、そこは虐待魂。意を決して波打つ底辺に包丁を当てる。 残念だが、こんなにうねるようでは定規は役に立ちそうにないので放り投げる。 「なに!? なにをずるんだぜええええ!?」 自分で確認できない場所に何かをされる。その事実に、まりさは声を震わせた。 すでに片目付近がごっそりと失われているのだ。死角が増えている今、自分の状況を知ることは無理だろう。 さてと、これからは集中力が大事である。彼は素早く包丁を突き立てた。 失敗しても支障はないが、やはり自分なりに難易度を上げるのも一興だろう。 お兄さんは大きく息を吐くと、すっと深く長い一本線の切り込みをまりさの足に引いていく。 「ゆぎゃあああああ!? なに!? なにじでるんだぜええええええ!!」 「何って、足を切ってるんだよ……」 「やべでよおおお!! ばりざあるげなぐなっぢゃうでじょおおお!!」 あ、また「だぜ」口調じゃなくなった。 だがそんなことはどうでもいい。 「まりさ、これはお仕置きだ。もう二度と君が狩りをできない身体にするんだよ」 「ゆぎゃあああ!! おべがいでず! やべでぐだざい!! ばりざあるげなぐなっぢゃうううう!!」 「……当然じゃないか。その為にしているんだから」 何を言ってるんだい? お兄さんは呆れた声でまりさの足へ切り込みを入れていく。 「いやだあああああああ!! あるげなぐなるのいやだああああああ!!」 「そりゃ僕だって嫌だよ。でもまりさはお仕置きだからね。ゆっくり切られてね」 「ばりざなんいもじでないいいいい!! いだいいだいよおおおやべでくだざいいいいい!!」 「人の畑に入ったし、子供を見捨てた。それに何より饅頭風情が人間をバカにした。殺されないだけいいと思うんだね」 「ごべんなざい、もうじまぜん! にどとじまぜん!! いうごどだっでぎぎまずがらあああああ!!」 「じゃあ動くなよ。足を切り落とすのが面倒になるから」 「あじをぎらないでぐだざいいいいいいいいいい!!」 「相変わらず無茶を言う…。なら、加工所に行こうか?」 「かこうじょいやだああああああああああ!!」 「だったら、諦めるんだね」 まりさの意味のない声を聞き流して、お兄さんはさらに包丁を突き刺して切り込みを入れていく。 それは寺小屋で子供たちが画用紙を縦に切って短冊を作るのと、よく似ていた。 数分後、彼の目の前には、縦に何本もの切り込みを入れられたまりさがひっくり返っていた。 その顔は水分を出し切ったはずなのに、まだ砂糖水の涙でぐしょぐしょに濡れていた。 「ふう……」 「ゆぐっ……、こんなんじゃもうばりざゆっぐりでぎないいいいい……」 まりさは自分で見ることはできないが、どんな風にされてしまったのかは感覚でわかるのだろう。 縦に切られた足はまだ時折動くが、先ほどまでの様に元気よく波を立てることができなくなっていた。 うねる波が不規則になり、その隙間からは餡子が見え隠れする。 中身を傷をつけずに捌けたことに彼は少しばかりの達成感。 だが、これならまだ十分治癒できる程度だ。お兄さんはまりさに声をかける。 「まさか、これくらいならすぐに治るよ」 「ゆ!? ぼんど!? なおるの!?」 「もちろん。だから、もっと切らないとダメだね」 無論、絶望を与えるために。 「ごのおにいいいい!! あぐまああああ!! ゆっぐりじねえええええええええ!!」 「ははは、ありがとう。それなら、本当に悪魔みたいなことをしてあげようか?」 「ばなぜ!! もどぜ!! ばりざをだずげろおおおおおおお!!」 「さーて、次は横に細切れだー」 まりさの罵詈雑言など当然スルー。 むしろ、余計な事を言えば尚更痛い目を見ると教えてやる。 お兄さんは先ほど切り込みをを入れた傷に交わるように、今度は横に包丁の切っ先を走らせた。 縦で慣れたおかげもあり、横切りは実にスムーズに進む。 「やべでよおおおお!!! いだいよおおおおおお!!」 「止めろと言われてやめるわけないじゃないか、馬鹿なの? 死ぬの?」 「やべで!! やべでよ!! どぼじでごんばごどずるのおおおおお!?」 「何言ってるかわかんないよ。……ほい、半分」 「おにいざんだっで、いだいごどざれだらいやでじょおおおおお!!」(痛いことされたらいやでしょおおお) 「うん、嫌だね。だから人は悪い事をしないんだよ。でも、まりさは悪いゆっくりだから仕方無いの」 「おにいざんがゆるじでぐれればいいんだよおおおおおお!! ぞんなごどもわがらないの!? ばがなの!? じぬの!?」 「ええと……、………そうだあれだ。『絶対に許さない、絶対にだ』」 「どぼじでぞんなごどいうのおおおおお!? いだいいだいいだいだいいだい!!」 「ははは、そんな流れに運んだまりさが悪いんだよ。……よし、できた」 絶えず痛みを訴えるまりさを適当にあしらいつつ、お兄さんは順調に作業を進めていた。 そしてようやく完成したことに満足すると、額の汗をぬぐう仕草をする。 お兄さんの前にあるもの。それはいくつもの見事な正方形に区分けされたまりさの底面だった。 ちょうど、将棋盤のようなものだと思ってもらえればいいだろう。 そんな細かく切り分けられたまりさの小麦粉の皮膚は、辛うじて中身の餡子とくっついてる程度だ。 動かそうとしてもここまで(あるかわからない)神経を断裂されると、それは最早無理なこと。 人間で言うならば、足の指の根元を裂かれたようなものだ。 まりさの足も所々が個別に痙攣するだけで、底面が波打つことはもうできないだろう。 オレンジジュースでもかければ傷も塞がるだろうが、そんなことは死にそうになってからで十分である。 終わらない拷問に叫び、神経をすり減らしたことで、まりさは心身ともにズタボロになっていた。 「うーん、将棋の網目の数ってこれでよかったんだっけかな……。今度やる時はちゃんと調べておこう」 「ぼ、ぼうやべでぐだざい…。ばりざをおうぢにがえぢでぐだざい………」 「加工所に提案したら採用されないかな……。河童の棟梁とか……さすがに気に入ってくれないか……」 「おにいざん……、ばりざを……ばりざをだずげでぐざだざい」 先ほどまでは怒ったり泣いたりと忙しかったまりさも、足を刻まれたせいで抵抗する気を奪われてしまったようだった。 もう許してほしい。助けてほしい。ゲス特有の傲慢さすら、涙と共に体外へ出てしまっているような大人しさだ。 「………おいおい、何を言ってるんだ。まだまだこれからだろ?」 「ゆびぇぇぇえええええええええん!! おうぢがえるううううううう!!」 だが、それでもお兄さんは許してくれない。むしろ、ようやくギアが入ってきたところだ。 地獄は行った事がないが、生き地獄とは、もっともっと苦しいものだと思う。 そう、これからが本番である。 「さて、それじゃその足も役に立たないし、剥こうか」 「ゆ゛っっっっ!?」 剥く。それがどんな意味を持つかまりさにはわからなかったが、とにかくゆっくりできないことは間違いない。 一時は為すがままに諦めようとも考えたまりさは、必死に身体を揺らして態勢を整えようとする。 だが悲しいかな。立て続けの責め苦にまりさの体力は限界を超え、足を切られたせいで運動能力は元の半分以下。 さらには、潰れた帽子の中へ逆さまに入る形になっているせいで、妙な安定感がまりさに働いていた。 何一つ、まりさの味方になってくれる存在は無かった。 頼れるのは己のみ。その己すら、お兄さんには手も足も出ないという現実が、まりさをより追い詰める。 「おべがいだがらやべでよ!! ばりざをゆっぐりざぜでええええ!!」 「やれやれ……いい加減何度も騒がれると鬱陶しいな」 お兄さんは再びまりさの顔に手刀を打ち込むと、半ば叩きつけるようにして閉じ込めていた箱の中へと戻した。 続きの事も考えて、逆さまのままである。 箱の中でも騒ぎ続けるまりさだが、箱の中に声がたまるので幾分か聞こえてくる声は小さくなった。 相変わらず甲高いが、それでも先ほどに比べれば随分マシである。 「さ、まりさ。覚悟はできたかい?」 手を振り払って餡子を床にまき散らしながら、お兄さんは親しみをこめた三日月型の笑顔を向けた。 後編2 まりさ一家 へ続きます ============================================ あとがき 長すぎました……。 あまりにもやりたかったことを試して行ったら伸びる伸びる……。 お兄さんの独壇場で、まりさが頑丈すぎました……。 wikiなどで感想を下さった方、こうして目を通して下さった方、ありがとうございました。 次回で完結します。 正直長いうえにやり過ぎだとは思いますが、最後は簡潔に済ませたいと思っています。
https://w.atwiki.jp/animerowa-3rd/pages/1535.html
539 :名無しさんなんだじぇ:2010/08/30(月) 12 56 04 ID fUFqgzHU ◇第七競技 部長「さあついにメイン三種目のひとつチーム対抗ビーチバレーよ!」 小萌「円形のコートでの3チーム対抗戦ですぅ。コートに入れるのは1チーム6人ですぅ。選手交代は3回まで。デュースは無しで10点先取したら勝ちですぅ。ネットで相手にポイントを与える場合、相手チーム両方に入るので気を付けてくださーい。10ポイント先取したチームには200ポイント、その次にポイントを高く持っていたチームは100ポイント獲得ですぅ!」 ひたぎ「ついに来たわね。さぁ、戦争を始めましょう」 神原「ここでエロバレーの……」 真宵「さってこれはどう料理しましょうか」 ファサリナ「追い付かれましたし、ここはがんばらないと」 キャスター「さっきは欲望に負けたけど、今度はいいとこ見せるわよ」 あずにゃん「唯先輩だってがんばってるんだ。今度は私が……」 美琴「あたしたちは練習を積んだんだから怖いものなんてないわ!」 かじゅ「ああ、やるぞ!」 プリシラ「勝つよ~!」 セイバー「今度こそ約束された勝利をつかみます!」 とーか「目立ちますわぁぁぁぁぁ!」 アーニャ「がんばる」 イリヤ「さぁ行くわよ!」 首輪ちゃん「休養十分!そろそろ働かないと大将に怒られちまうぜ」 カマやん「負けてばかりというのは屈辱的ゆえ、ここは勝たせてもらおう」 和「咲さんがいい流れを作ったんですからそれに乗らないと」 インデックス「やるよ~」 妹E「うおおおおおお!とミサカは気合いを高ぶらせます」 540 :名無しさんなんだじぇ:2010/08/30(月) 14 03 39 ID TMVh4JMs 咲「ふあ…うくっ…あう…」ビクビクッ 部長「和ったら、久しぶりだからって咲を消耗させすぎよ」 美穂子「あの…宮永さん、大丈夫でしょうか」 部長「ビーチバレーが終わるころには回復するんじゃない?」 美穂子「はい…」 部長(まぁ放っておいたら迷子になりそうだし、これはこれでいいのかしら?) 541 :名無しさんなんだじぇ:2010/08/30(月) 17 20 27 ID Zpg5//JI D「さぁ始まりました、変態ビーチバレー!非常に分かりづらい競技なので、我々としても実況解説のやりがいがあります!」 K「まさかバレーボールを鼎戦にするとは…ブロックを掛けようにもタイミングを図るのがかなり難しくなってくる」 D「ここまで全てのスパイクをレシーブしている御坂選手の防御力は凄まじいですね」 K「そのかわり風紀委員はアタッカー不在なのが厳しいところだ。セイバーにはマークを付けられているからな」 D「そうなるとバランスの良い主催チームが有利、ということですか?」 K「それは既に点数に出ている。今のところ主催チームのみ3点先取。他チームは未だポイントが入っていない」 とーか「あっ…!」 ゴシュ! D「あー逝ったああああああああああああああ!戦場ヶ原選手の強烈なスパイクがついに龍門渕選手の顔面をクリーンヒットォ!」 K「真宵の執拗なフェイントに御坂が騙されたか。これは立てないな」 D「しかし!ボールは生きている!ボールは生きているぞー!」 アーニャ「トス」 セイバー「卑怯者め!騎士王が裁きを下してくれる!」 シュゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ! ひたぎ「ひっ!」 神原「戦場ヶ原先輩!」バッ ドシュ!プシュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ! D「決まったああああああああああああああ! 戦場ヶ原選手を狙ったスパイクは神原選手の土手っ腹を貫通!コートはスプラッタだああああああ!」 K「さすがだな、セイバー。しかし良くボールがもったものだ」 ひたぎ「神原!」 神原「戦場ヶ原先輩…どうか、ご無事で…」ガクッ ひたぎ「誰か!誰かあああ!」 カイジ「龍門渕!大丈夫か、龍門渕!」 とーか「はらほれひれはれ~」 D「コート内は騒然です!一時試合中断する模様です」 K「これで主催3:風紀1:特攻0、か。しかし、層が厚い風紀委員はいいとして、特攻野郎はかなり台所事情が厳しいのではないかな」 D「と、いいますと?」 K「いくら死者スレ内とはいえ達人の船井ですら復活に数時間はかかる。神原の大会中の復帰は望むべくもない」 D「あー」 K「主力の一人を失った特攻野郎はこの試合だけでなく、この先、大きなハンデを負ったな。あのままひたぎを見殺しにすればよかったものを」 542 :名無しさんなんだじぇ:2010/08/30(月) 17 38 53 ID fUFqgzHU 美琴「透華さんがやられちったからメンバーチェンジだけど……久さん大丈夫ですか?」 部長「オーケーよ、じゃいっちょやりますか」 美穂子「がんばってくださいね」 池田「ファイトだし!」 ひたぎ「こっちのメンバーチェンジはどうするの?」 真宵「とりあえず現状は……滅さんお願いします!」 律「わかったぜ」 真宵「後、やっておくべきことは……CDさん、CDさん」 C.C.「何か用か?」 真宵「こっちのメンバーに入ってもらえませんか?報酬は先ほどの限定ピザ5枚で」 C.C.「……10枚なら考えてやろう」 真宵「了解です。後、監獄さん、監獄さん」 撫子「何、真宵ちゃん?」 真宵「暇だったらウチのチームに加勢しませんか?」 撫子「あっ、うん、いいよ」 真宵「ありがとうございます」 D「おっと両陣営に動きが!負傷者に代え風紀委員は竹井久、特攻野郎は田井中律をそれぞれ投入!しかも特攻野郎のベンチにはC.C.と千石撫子が!」 K「先を見越して暇人をチームに取り込んだか。さてこの選択がどう転ぶか……」 543 :名無しさんなんだじぇ:2010/08/30(月) 18 10 59 ID dw8XzRdY キャスター(しかし先程からこちらの防御結界が弱められている… セイバーのスパイクも結界内ならばあれほどの殺人能力を発揮しないはずなのに… やはり…介入してきたか、荒耶宗蓮) カマやん(セイバーに対しマンマークを掛けてきたが、やはり対魔能力は高い ならばと思いキャスターの防御結界に干渉してみたが…結果は予想以上だったか。 このままあと三回特攻側をリタイアさせていけば彼等を負けさせることは容易。 出来ればあと一点取っておきたい所だが、それでなくとも以降の特攻側を大きく弱体化させることは出来るか…) 544 :名無しさんなんだじぇ:2010/08/30(月) 18 51 12 ID CKyFVGR6 カマやん(あれが噂の暴れ龍か…?ただの小娘ではないか。用心する必要もないな) 真宵(烈さんのスパイクはかなり強力ですが…ツッコミ補正等が加わるとその威力は格段に上がる。 ボケなくてもいい…誰か烈さんを刺激してくれれば…) 律(…久さんが出てきたか。セイバーと同様、スパイクの破壊力がやばそうだな…。 直撃したら……いや、大丈夫だ。キャスターさんの魔術を信じろ!) 部長(戦場ヶ原さんとかいう彼女のスパイクが厄介ね…。潰すべきかしら…。でも律も放っておけないわね) 545 :名無しさんなんだじぇ:2010/08/30(月) 19 29 16 ID dw8XzRdY ひたぎ「神原、あなたの仇は討つ!」 D「おーっと、戦場が原選手、セイバーに向けて殺人スパイク!」 K「無駄なことを。セイバーにその程度の攻撃が…な、なにぃ?!」 D「戦場が原選手、分身!分身です!さらにカーブぅ?御坂選手、大きくかく乱されたぁっ!」 御坂「くっ!セイバー!?」 セイバー「舐めた真似を!エクス、カリバー!」 カッ! D「セイバー選手、エクスカリバー!直線上にいたプリシラ、中野選手を直撃~っ!」 K「馬鹿な…」 D「ボールは真っ二つになって、風紀チームと特攻チームのコートに落ちたぁ!こ、これは?」 K「無論、主催チームの得点だ」 D「主催4:風紀1:特攻0となりました!なお、セイバー選手は当然退場。また、消滅したプリシラ選手、中野選手が交代となります」 K「風紀側は三回の交代権を使い切ったか」 D「コートの整備でまたも一時中断です!」 546 :名無しさんなんだじぇ:2010/08/30(月) 19 42 47 ID fUFqgzHU 唯「あ、あずにゃん生きてる!?」 あずにゃん「な、なんとか……死んでますけど」 キャスター「今度はどうするの真宵ちゃん?」 真宵「仕方ありません、この策は使いたくなかったのですが……」 かじゅ「ぷ、プリシラ……?」 プリシラ「えくすかりばーってこんなにえげつないんだ……」 部長「よし……ライダーさん、池田さん!」 ライダー「了解です」 池田「わかったし!」 美琴「で、向こうの交代選手は紬さんかなって……千石さん!?」 アーニャ「そうきたか、さすがゴーストね」 撫子「どうすればいいの?」 真宵「アタックはホチキスと骨さんに任せればいいのでトスをお願いします」 撫子「うん、わかった」 D「おっと特攻野郎、なんと先ほどスカウトした千石撫子を投入だ!」 K「なるほど、彼女がいれば少なくとも風紀委員は手加減をせざるを得ないからな。うまい策を使う」 547 :名無しさんなんだじぇ:2010/08/30(月) 20 08 32 ID 6NsK8rnE 部長「えいっ!」 撫子「よいしょっ」ポンッ ひたぎ「はっ!」ビシッ 部長(う~ん…撫子ちゃんに当たると可哀想だからあまり強烈なスパイクは撃てないわね…。これが狙いなのかしら) 首輪ちゃん(は~ん…なるほどな。手加減狙いってヤツか。だが――こっちにはそんなもの通用しない!)バンッ 妹「トスです。とミサカはボールを高く上げてアタックを催促します」 カマやん「その小娘を狙わなければ強烈なスパイクを撃っても構わんだろう!どりゃああ!!」ズバシッ D「これは強烈!特効野郎チームをボールが強襲します!」 K「また特効野郎チームは選手を狩られるな」 律(なっ…この人のスパイクもやばい!風紀委員しかマークしてなかった…!!) キャスター(くっ…やはり結界がうまく働かない!このままじゃ律ちゃんが――) ダッ ドガァッ!! キャスター「ぐっ!!」 律「キャ、キャスターさん!?」 キャスター「…」ドサッ D「おおっと!神原選手よろしく、キャスター選手も身を挺してメンバーを守りました!ボールもぎりぎり生きている!!」 K「しかしかなり強力な一撃だったからな。さすがのサーヴァントもアレを顔面にもらって意識を保っていられなかったか」 D「戦場ヶ原選手が滑り込んでボールを繋ぐ!」 K「だがもう特効野郎チームはメンバーをやられすぎて満身創痍だ。勝利は難しいだろう」 カマやん「その通り。これが狙いだ。これで要注意するべくは風紀委員のみ!」 部長(いや…これは――) 真宵「勝った…」 カマやん「ん…?」 律「…っ!!」ダンッ カマやん「な、何!?」 律「よくもキャスターさんをおおおおおおおおおおおお!!」 ズバアアアアアアアアン!!ドゴォッ!! カマやん「ぐあああああああああああぁ!?」 妹「ボールが隕石に見えました、とミサカはその場に凍りつきます」 D「おぉっと!ここで田井中選手突然の覚醒!吹っ飛んだカチューシャがまるで今まで彼女を押さえつけていた拘束具のように思えます」 K「あの前髪の下から覗く目…まるで鬼人のようだ」 D「これで主催4:風紀1:特攻1。ようやく特効野郎チームに得点が入りました」 K「ここからどうなるか。展開が予想できないな」 548 :名無しさんなんだじぇ:2010/08/30(月) 20 22 49 ID fUFqgzHU 真宵「しかしその代償でキャスターさんも交代ですか、こちらの戦力ならKCさん」 ムギ「ゴースト、私に行かせて」 真宵「オーナー!?貴女は球技が苦手なのでは!?」 ムギ「今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょ」 あずにゃん「ムギ先輩……」 キャスター「(気絶中)」 ムギ「梓ちゃん、キャスターさん。仇は必ずとるわ」 美琴「ついに来たわね、紬さん」 かじゅ「なんだあのオーラは……」 リリーナ「あれは怒り。何も含まないとても純粋な怒り……」 ムギ「あまり私を怒らせないほうがいいですよ」ゴゴゴゴゴゴ 唯「ムギちゃん、キャラが違うよ」 D「キャスターの戦闘不能に伴い、特攻野郎チームも交代権を使いきりオーナーを投入だぁ!」 K「彼女の纏う怒気も凄まじいな。これはいよいよわからなくなってきたな」 549 :名無しさんなんだじぇ:2010/08/30(月) 20 27 19 ID aen137BM イリヤ「やられたわ。でも、まだ大丈夫!ひとまず妹Aを投入!そして、サーシェス!妹E!アレで決着を付けるよ!!」 首輪「よっしゃー!!任せろ」 妹E「プランX、アレですね……とミサカはついに来たと思いつつ決死の覚悟を決めます」 D「おおっと、ここで主催チームの首輪選手と妹E選手が同時に動いた!」 K「あれは…まさか!必殺技・魔のX攻撃!!」 D「なんと、両サイドから飛び上がったミサカシリーズの二人が空中でクロスしたところで強烈なスパイク!」 K「あれではどっちが打ったかわからない!そして相手はボールの軌道が読めない!まさか科学的に禁断な技をここで拝められるとわ!!」 D「そこは何でもアリの死者スレですから。しかし、シンクロした二人のミサカが放つそれはまさに魔球!! 特攻野郎は誰一人動けず!またしても主催チームに1ポイントが入ったぁ!!もはや誰も彼らの勢いを止められないのだろうか!!!」 551 :名無しさんなんだじぇ:2010/08/30(月) 21 09 37 ID Vq/4Z5.. ミサカーシェス「よっしゃ、もう一発喰らいな!」 ムギ「まずい、撫子ちゃんの方に行ったわ!」 撫子「きゃ……」 パァン!! 律「……今、わざと撫子ちゃんを狙ったろ……」 ミサカーシェス「な、何だありゃ!? 素人の出せる殺気じゃねえぞ!!」 ガハラ「トス上がったわよ!」 律「よし、喰らえぇぇぇぇぇぇっ!!!」 ミサカーシェス「っと、危ねえ!!」 妹E「ぶべらっ!! とミサカは身代わりにされて吹き飛びます」 D「おーっと、ここで田井中選手本領発揮!! 妹E選手をコート外まで吹き飛ばしたー!!」 K「荒耶宋蓮を仕留めた事で醒めた頭が、千石撫子が危機に瀕した事で再び逆上したようだな。 サーシェスは迂闊としか言いようがあるまい」 D「あーっと!! 竹井選手、こぼれ球を田井中選手目掛けクイック!!」 K「主催チームに意識が向いている隙を狙ったか。 だが、甘いな」 D「な……田井中選手、これは凄い!! 竹井選手の放った殺人スパイクを片手でわし掴みだー!!」 部長「う、嘘でしょ!? 手加減無しで撃ったのに!」 律「……竹井さん」 部長「な、何かしら?」 「邪 魔 し な い で 貰 え ま す か ?」 部長「(コクコク)」ブルブルガクガク
https://w.atwiki.jp/futabayukkuriss/pages/1735.html
ゆっくりを地獄に叩き落す鬼のような人間さん(嘘) 31KB 現代 作者はマ・あきです 作者はマ・あきです 一話完結 これまでの作品とは一切関係なし 今年はなかなか寒い。 数年ぶりに大雪だ。 庭にも雪がどっさりと積もり、今もしずしずと雪が降り積もる。 とても静かな雪の夜だ。 石油ストーブをがんがんに焚いていたが、 寒いからといって、窓をしめきっていては空気が悪くなる。 窓を全開にして換気してみよう。 この季節、虫が入ってくることもない。 僅かに雪が入り込んでくるが、それくらいは構うまい。 窓を開けっ放しにしてしばらく放置。 自分はその間、別の部屋に退散するとしよう。 ゆっくりを地獄に叩き落す鬼のような人間さん(嘘) さて、そろそろいいかと部屋に戻ってくると、 見慣れない物体が部屋の隅に固まっている。 なんとゆっくり。 窓を開けていたとはいえ、この季節、雪が降り積もる中でゆっくりとは。 「ゆ・・・、ゆぅ・・・?」 成体と見えるまりさがこちらを見上げて弱弱しく鳴く。 寒さのせいか、他の要因か随分と衰弱しているようだ。 「にんげんさん・・・、みんなをたすけてあげてね・・・。」 成体まりさの他には、成体のれいむ一匹と 子まりさ一匹、子れいむ一匹。 どいつもこいつも酷く衰弱しているようだ。 特に子ゆっくりは死に掛けているように見える。 「・・・・・。」 どうしたものかなと思案しながら、 まずは窓を閉める。 流石に寒い。 改めて暖房を入れる。 「にんげんさん・・・。」 まりさが、再び弱弱しく呼びかけてくる。 どうするか考えているうちに、ゆっくりたちが全部死んでしまいそうなので、 とりあえずゆっくりたちを暖房の前に運んでやる。 「ゆ、ゆああああああ!あったかいにぇ!」 「れいみゅ、さむくにゃいよ!ぽーかぽーかだよ!」 「ゆうううううう!よかったよー! れいむのおちびちゃんたちが、げんきになったよー!」 「ゆっ、ゆっ、ゆっ・・・!よがっだー!ほんどーによがっだよおおおおお! にんげんざああああん!ありがどうだよおおおおおぅ!」 あれから一時間。 ゆっくりたちはすっかり元気だ。 なんと言うか、瀕死の状態から全快までに時間が掛からなくて大変よろしい。 「ゆん!にんげんさんのおかげで、みんなげんきになったよ! ほんとうにありがとうだよ!」 お礼を言ってきたのは、父まりさ。 この四匹は家族で、まりさが父、れいむが母だそうだ。 「にんげんさんのくれたごはんで、みんなげんきになったよ! おちびちゃんたちも、にんげんさんにおれいをいおうね!」 「ゆー!にんげんしゃん、ゆっくちありがとうにゃんだじぇ!」 「ゆっゆっ!にんげんしゃん、れーみゅ、げんきににゃったよ! ゆっくちしていってにぇ!」 母れいむに促されて子ゆっくり共もお礼を言ってきた。 「おー、ゆっくり、ゆっくり。」 こいつら、結局暖房の前に連れてきてやっただけじゃ回復しなかった。 寒さだけでなく空腹、正確には危険なレベルの栄養失調でも死に掛けてた。 仕方ないから買い置きの大袋入りのチョコとかビスケット、 それに俺の人生でも初のホットオレンジジュースを作って出してやった。 それを最初はもそもそと、そして食べながら体力が回復したのだろう、 次第に勢いよく、結構な量を食べきった。 その頃には体も十分温まったのだろう。 見ての通り煩いくらいに元気になってくれた。 「ゆっくりー」 「ゆっくりー」 「ゆっくちー」 「ゆっくちー」 「お前らうるさい。」 煩いゆっくり共に静かにするように注意してから、こいつらに話を聞いてみる。 何で人間の家に入ってきたのかとか、なんであんなに弱ってたのかとか。 大体想像はつくけど聞いてみる。 「ゆ・・・。まりさたちのおうちは、あめさんとかぜさんにこわされちゃったんだよ・・・。」 「れいむたち、もうなんにちもむーしゃむーしゃしてなかったんだよ・・・。」 「おにゃかへってたんだじぇ・・・。でも、ごはんさんどこにもなかったんだじぇ・・・。」 「れいみゅたち、しゃむいしゃむいで、がーたがーたぶーりゅぶーりゅだったよ・・・。」 早い話が家の造りが悪くて、餌の備蓄が十分でなかったらしいな。 あんまり出来のいい連中ではないようだ。 「で、俺の家に入ってきたのは?」 「まりさたち、おなかすいてたし、さむくてしにそうだったんだよ。 そしたら、にんげんさんのおうちがあいてたんだよ。」 「にんげんさんのおうちはぽーかぽーかで、ごはんもいっぱいあるってきいたよ。」 「にんげんしゃんのごはん、おいしかったのじぇ!」 「れいみゅ、しあわちぇー!!だよっ!!」 まあ、死に掛けてる状況で緊急避難的に入ってきたんだろうけど、 それにしても考えなしというか厚かましいというか。 「まあ、お前らも大変だったのは分かるけど、 勝手に人の家に入ってくるってのは良くないぞ。」 人間の理屈がこいつらに理解できるか分からんが、一応は注意しておかないとな。 「ゆ、ゆゆっ!?まりさたち、ほんとにこまってたんですぅ・・・。」 「そうだよぉ・・・。おちびちゃんたちも、しにそうだったんだよ・・・。」 ゆっくりの言い分なんてそんなもんだろうな。 「ゆぐ・・・。にんげんしゃん、こんにゃにりっぱなおうちをもってるにょに、 ひとりじめはずるいんだじぇ・・・! まりちゃたち、おそとでしゃむいしゃむいだったんだじぇ!」 「そうだよ!れいみゅたち、おにゃかぺーこぺーこでこまってたんだよ! あんにゃにごはんさんあるんにゃら、ちょっとぐらいわけてくれてもいいでしょ!」 まあ野良饅頭に人間の習慣や、モラルを求めるほど俺も馬鹿じゃない。 こいつらは、所詮人間ではないし、頭の程度も知れたものだ。 気分は良くないが、別段怒るまい。 「まあいいや。今日は俺の家においてやるよ。 明日は天気も良くなるらしいし、そうしたら出てってくれよ。」 「ゆー・・・。」 「そんなぁ・・・。」 「まりちゃ、しゃむいしゃむいはいやなのじぇ!」 「れいみゅ、おいしいごはんがたべたいよ・・・。」 やっぱり、一度美味しい目にあわせると味を占めるもんだな。 この分だと、家に居座る気まんまんだったな。 「駄目だぞ。飼ったりはしないからな。」 いくらなんでもそこまでは責任を持てない。 ここだけは、はっきりさせとかないとな。 「まりさたち、にんげんさんのいうことしっかりききます! どうかまりさたちを飼いゆっくりにしてください!」 「おねがいだよ! もうさむいさむいも、おなかぺーこぺーこもいやだよ! なんでもしますから、れいむたちをここにおいてください!」 うーむ、食い下がるな。 と言うか、何気に飼いゆっくりにしてくれってはっきり言ってるし。 なんか更にハードルが上がっている。 交渉術としては、ありかもな。 最初に飼いゆっくり要求をする。 次に、飼いゆっくりは諦めます、その代わり、しばらくお家に置いて下さい!ってな。 まあ絶対そんなこと考えてないだろうけど。 「なんと言われても駄目。飼わない。」 でも、断る。 これだけは、こっちも譲れない。 「にゃんでー!?れいみゅたちだって、あったかいおうちがほしいにょにー!?」 「まりちゃ、ここにすみたいよ!もう、おそとはいやだよ!」 子ゆっくりたちも、野良生活の不満を口にする。 「はいはい。ゆっくりゆっくり。」 でも、そんなの相手にしない。 人間として、饅頭の言うことを真に受けたりしない。 「ゆ!?ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 「「ゆっくちー!!」」 こちらの“ゆっくり”に反応してゆっくり返しをしてくる一家。 「ゆゆゆゆゆ!?にんげんさん、ごまかさないでね!」 「そうだよ!れいむたち、にんげんさんが飼ってくれるまで、ここをうごかないよ!」 「まりちゃ、飼いゆっくちににゃるのじぇ!」 「れいみゅは飼いゆっくちだよ!」 大した決意だな。 付き合わないけど。 「よーし。お前ら折角だから風呂にでも入ってさっぱりしとけ。」 こいつら野良だけあって汚いしな。 一晩家に置いとくにもこのままじゃ、あちこち汚れる。 それに、薄汚い野良共には本来なら生涯経縁のない、 風呂という極楽を経験させてやるのも一興だ。 「ゆゆ?お風呂?」 「れいむたち、こんなにさむい日にみずあびなんかしたくないよ!」 「そうだじぇ!おみずはゆっくちできないんだじぇ!」 「れいみゅたちきれいだから、おふろはいらにゃいよ!」 ふふふふふ。 こいつら、やはり知らないな。 風呂という桃源郷。 限りなく天国に近いゆートピアを。 「ゆゆゆゆゆゆ!!!ゆっくちー!ゆっくちだじぇ!」 「れいみゅ、ちゃーぷちゃーぷするよ!」 「おちびちゃん!ぴゅー、だよ!ぴゅー!」 「ゆあぁぁぁ!きもちいいよぉ!おとーしゃん、もっとやってほしいのじぇ!」 「れいみゅも!れいみゅも、ぴゅー、やってほしいよ!」 「まっててね!じゅんばんだよ!つぎは、おちびちゃんのばんだからね!」 「ゆーん!れいむのおちびちゃんたち、とってもゆっくりしてるよー!」 嫌がるゆっくりを宥めすかして風呂場まで連れてきた。 最初はお湯や風呂場といったものに、 興味半分、警戒半分といったとこだっだが、今はこの通り。 この一家もすっかり風呂の虜だ。 それぞれ用意してやった風呂桶でお湯に浸かって極楽気分を味わっている。 「おーい。お前らあんまり長風呂すると体が溶けるぞ。気をつけろよ。」 この分だと体が溶けるまで風呂に浸かりかねない。 一応注意はしておいてやろう。 まあ面倒臭いから、危なくなるまでは放っておけばいいか。 俺も自分の体を洗ったり、湯船に浸かったりとのんびりしていたら、 子ゆっくりたちの様子がおかしい。 「ゆゆ!まりちゃのあんよがへんにゃのじぇ!」 「ゆ!?れいみゅ、もうゆっくちできにゃいよ!だしてにぇ!だしてにぇ!」 「ぽーかぽーか!きもちいいよー・・・。」 「まりさ・・・。なんだかとってもゆっくりしてるね・・・。」 「ほんとうだね・・・。おふろはとってもゆっくりできるね・・・。」 「ゆわーん!おとーしゃ!おかーしゃ!まりちゃ、もうでたいのじぇ!」 「みゃみゃー!れいみゅ、ゆっくちできにゃいー!みゃみゃー!みゃみゃー!」 「ゆふー・・・。ねえれいむ、なんだかゆめをみてるみたいだね・・・。」 「ゆ・・・。ほんとうだよ。 こんなにゆっくりできるなんて、ゆめみたいだね・・・。」 「でも、ゆめじゃないよね・・・。」 「そうだよ。おちびちゃんたちも、とってもゆっくりできてるよ・・・。 にんげんさんのおうちにいれば、これからもずっとゆっくりできるよ・・・。」 「「ゆっふー・・・。」」 「ゆああ!?まりちゃのあんよ!?あんこさんがぁぁぁぁ!?」 「たちゅけてー!ぴゃぴゃー!みゃみゃー!かわいいれいみゅをたしゅけてー!!」 なんだか子ゆっくりたちが阿鼻叫喚の地獄絵図を描きつつある。 いい加減助けてやるか。 「よいしょっと。」 二匹ともお湯でふやけて、体がグズグズになりかけている。 これ以上体が崩れないように、素早くそっと掬い出してやる。 「ゆ?まりちゃ、おそらをとんでるのじぇー!」 いきなり持ち上げられてパニックでも起こすかと思いきや、 なんとも暢気な反応の子ゆっくり共。 そのまま、風呂場から出て用意してあったタオルの上にそっと載せる。 軽くタオルで余計な水分を吸い取って、後は大人しくしてれば問題なし。 「ゆ!にんげんしゃん!ゆっくちありがとうだよ!」 「お前ら、しばらくそこから動くなよ。体が崩れても知らないからな。」 「ゆゆ!?おちびちゃん!だいじょうぶなの!?」 もう一度風呂に浸かり直そうかと踵を返すと、 今頃になって親ゆっくりが出てきた。 「ぷっきゅー!れいみゅ、ゆっくちできにゃくなりそうだったよ!」 「そうだじぇ!まりちゃ、あんよがゆっくちできにゃくなるとこだったのじぇ!」 流石に、子ゆっくりも怒っているようだ。 まあ、あれだけ助けを求めて大騒ぎしていたのに、 親共ときたらゆっくりしすぎて、気づきもしなかったからな。 「ごめんね、おちびちゃん!まりさたちがわるかったよ!」 「ゆゆぅ・・・。あとで、あまあまいっぱいあげるからゆるしてほしいよ!」 「ゆ!あまあま!あまあま、たべちゃいのじぇ!」 「れいみゅも!れいみゅ、またオレンジジュースさんほしいよ!」 うーむ。 ゆっくりだからか、子供だからかあっさりと食べ物に釣られたな。 それにしても、あまあまあげるって・・・。 「ゆーん!おちびちゃんたち、ごきげんなおったね!よかったよー!」 「ゆんゆん!人間さん! おちびちゃんのために、あまあまいっぱい用意してほしいよ!」 ばきっ どかっ やっぱり俺に頼るのか。 本当に厚かましい奴らだ。 まあ、どの道何か餌は用意するつもりだったからいいだろう。 「だったら、どうしてけるのーー!!?」 「ゆぅぅぅーーー!!?れいむのおかおがーーーー!!!」 「ふー・・・。いいお湯だった。」 あれから、もう一度風呂に浸かってリビングに戻ってきた。 ゆっくり共は、仕方ないので先にまとめてリビングに運んでやった。 その際に子ゆっくりには、 ある程度体が乾くまで動かないように強く言っておいた。 親ゆっくりには、子ゆっくりをしっかり見ているように伝えておいた。 まあ、子ゆっくりも自分の体がふやけてることぐらい理解出来るだろうし、 親ゆっくりも一緒なんだから大丈夫だろう。 「おーい、お前ら。体乾いたかー?」 「ゆぐぐぐぐ・・・!ゆぴっ!ゆぴぃぃぃぃぃぃ!いたい、いたいぃぃぃ! まりさのおかおがいたいよぉぉぉぉ!!」 「だれひゃぁぁぁ!れいひゅをひゃしゅけひぇぇぇぇぇ!! れいひゅのひひゃはんがいひゃいいいいい!!!」 「おとーしゃ!おかーしゃ!しっかりするのじぇぇぇ!」 「ゆっくちー!!ゆっくちしてにぇ!ゆっくちだよぉぉぉぉ!!」 ってどうなっている? 大饅頭二匹はリビングの床でのた打ち回ってるし、 子饅頭は涙で体中べとべとになりながら泣き叫んでやがる。 一体何があったんだ・・・? ん・・?あれは・・・。 俺の大事にしていた壷があああああああ!!? 飾っておいた壷が床で粉々に砕けている! 子ゆっくりは最初にいたタオルの上から動いていない。 どうやらちゃんと言いつけを守ったようだ。 親ゆっくりたちは・・・。 まりさは、ほおの辺りから餡子が漏れている。 何かで切ったような傷跡だ。 れいむのほうは、舌だな。 舌から餡子が漏れている。 傷の様子はまりさと似ている。 おそらくは、まりさの傷を舐めてやろうとして、 自分も破片で舌を切ったというところか。 状況が飲み込めてくると、腹立たしくはあるが、 幾分冷静さを取り戻してきた。 「ゆぎゃああああああ!まりさ、しぬ!しんじゃうぅぅぅぅぅ!!」 「ひひゃ!ひひゃがぁぁぁぁぁ!! まりひゃぁぁぁぁ、ひゃしゅけえひぇよぉぉ!!」 ごろごろごろ ごろごろごろ ずどん ずどん 「「ゆぐうぅぅぅぅぅぅぅ!!!?」」 とりあえず、動きを止めるのが先決。 ごろごろと無意味に転がる二匹を、 上から押さえつけるようにぶん殴った。 呻き声をあげながら、動きが止まる二匹。 「ゆはー、ゆぜー・・・。にんげんさん、ありがとうだよ・・・。」 「れいむ、しぬかとおもったよ・・・。」 とりあえず、オレンジジュースを患部に塗布してやった。 すぐに完治。 便利でいいですね、本当に。 それはさておき。 「おい、お前ら。あれはどういうことだ。」 砕けた壷を指差し問い詰める。 「ゆっ!きれいなたからものがあったから、 まりさ、おうちにかざろうとおもったんだよ!」 「まりさが、あそこにのぼってしたにおとしたら、こわれちゃたったんだよ!」 「ゆんゆん!にんげんさんは、あんなあぶないもの、おいとかないでほしいよ!」 「そうだよ!れいむとまりさは、いたいいたいだったんだよ!ぷんぷん!」 「「ぴゅんぴゅん!!」」 親ゆっくりが交互に口を開く。 最後には子ゆっくりまで口を出してきた。 それにしても、今回は突っ込みどころが満載だ。 どこから突っ込むべきか・・・。 「ゆっ!そうだよ!」 何だ、一体? 「にんげんさん!あまあまよういしてね! おちびちゃんたちにあげるやくそくだよ!」 「そうだったね!すっかりわすれてたよ! まりさも、けががいたいいたいで、またおなかぺーこぺーこになったよ!」 「にんげんしゃん!まりちゃに、あまあまちょーらいにぇ!」 「ゆー!!あまあまいっぱいだにぇ!あまあま!あまあま!あまあま!」 うーん、本当ににどこから話をすればいいやら。 ぼこっ げしっ ぴしっ ぴしっ 一先ず、蹴り二発とデコピン二発でゆっくりを黙らせる。 「ゆぴぃぃぃぃぃ!」 「いじゃいいいぃぃぃ!」 「「ゆんやあああぁぁぁぁぁぁ!!」」 と思ったら今度は泣き声がうるさい。 「お前ら、黙らないともう一発いくぞ。」 「「「「ゆっ!」」」」 ピタッ よろしい。 「お前ら、ここは俺の家だ。それは分かるよな。」 「ゆ!ここはにんげんさんのおうちだよ!」 まりさが代表して答える。 他の連中も頷くような仕草をしているし、理解できているようだ。 「俺の家の中にあるものは、俺のものだ。分かるよな。」 「ゆん!にんげんさんのおうちのなかのものは、にんげんさんのものだよ!」 一同頷く。 「あの壷。おまえらの壊した宝物も俺のものだ。分かるよな。」 「ゆんゆん!まりさは、ゆっくりりかいしてるよ!」 一同頷く。 「人の物を壊すのは悪いことです。分かるか?」 「ゆ?ゆゆゆゆゆゆゆ!?」 一同、動揺。 「あれは、俺が大事にしてた宝物なの。それを壊して何か言うことはないか?」 ゆーんゆーん・・・ ゆーんゆーん・・・ 饅頭思考中。 たっぷり五分ほど経過。 「ゆ!でもまりさたち、あれのせいでけがしたんだよ! にんげんさんのせきにんだよ!だからおあいこだよ!」 「だから、れいむたちにあまあまいっぱいちょうだいね!」 「「ちょうだいにぇ!!」」 どかっ ばきっ ぴしっ ぴしっ 「ゆ・・・。まりさがわるかったでず・・・。」 「れいむ、ゆっくりあやまります・・・。ごべんなざい・・・。」 「「ごめんにゃさい・・・。」」 絶対何が悪いか理解できていないが、 ゆっくりにこれ以上反省を求めるのは無駄というもんだな。 それより話を先に進めるのを優先。 「ところで、お前らあの壷を家に飾るってどこに飾るつもりだったんだ。 お前ら確か、家が壊れたっていってなかったか。」 「ゆ!そうだよ!まりさたちのおうち、こわれちゃったんだよ!」 「たからものをかざるのは、あたらしいおうちだよ!」 「新しいお家ってどこだよ。」 いつの間に新しい巣なんか見つけたんだ。 「ゆん!ここだよ!」 まりさが、指し示すのは部屋の隅の机の下。 「ゆー。すてきなばしょだよ!れいむたちのゆっくりプレイスだよ!」キリッ 「ゆんゆん!あとで、だんぼーるさんもってきておうちをつくるんだよ!」キリッ ズドーン ズドーン ずっしりと重い拳がゆっくりの顔面に突き刺さる。 「ゆぴいぃぃぃぃ!なにするの、にんげんさん!まりさのおかおがいたいよ!」 「そうだよ!れいむに、ひどいことするにんげんさんは、ゆっくりあやまってね!」 「「しょーだ、しょーだ!あやみゃれー!」」 ゆっくりに背を向け、大きく息を吸い込み、大きく吐き出す。 それを何度も繰り返す。 すーはー すーはー すーはー すーはー すーはー すーはー すーはー すーはー すーはー すーはー すーはー すーはー すーはー すーはー すーはー すーはー 深呼吸で気分を落ち着ける。 その間もゆっくり共が何か騒ぎ立てているが、極力耳に入れない。 何とか冷静さを取り戻したところで、向き直る。 「ゆっ!にんげんさん!やっと、まりさたちの話をきく気になったんだね!」 「ぷんぷん!ちゃんと、れいむたちにあやまってね!」 ズドン ズドン どかっ 再び振るわれる重量感にあふれる拳。 吹き飛び壁に叩きつけられるゆっくり。 ・・・いかん。 どうやら、まだ深呼吸が足りなかったらしい。 取り乱すとは、我ながら恥ずかしい。 「ゆげげ・・・。」 「ゆ・・・。ゆぅ・・・。」 「おちょーしゃん!」 「みゃみゃー!」 流石に親ゆっくりもダメージの蓄積が堪えてきたらしい。 ちょっとインターバルをいれよう。 それにしても。話が全く先に進まないな。 やれやれ・・・。 またまた、ホットオレンジジュースを用意してやった。 寒い日にはいいんじゃないでしょうか。 「ゆっぷー!おいしいよー!まりさ、しあわせーっ!だよ!」 「れいむもだよ!でも、のみものだけじゃなくて、たべものもほしいよ!」チラッチラッ 「「あまあまたべちゃいよ!!」」 だんだん俺の理性も春の氷のように頼りなくなってきたな・・・。 ゆっくりブリーダーって凄い職業なんだな・・・。 「それより先に話すことがある。 お前らあそこを新しい家にするって言ってるけど、ここは俺の家だ。 お前らも理解したんじゃないのか。」 まさか、人間さんから奪うよとか、 俺のいない間にお家宣言したからここはまりさたちのおうちだよ、 とか言ったらすぐに追い出そう。 そうしよう。 「ゆ!ここはにんげんさんのおうちだよ! でも、まりさたちのおうちでもあるんだよ!」 「そうだよ!れいむたちと、にんげんさんのおうちだよ!」 え? 良く分かんない。 どんな理屈だろう。 「なんで俺の家でもあり、お前らの家でもあるわけ?」 「ゆっふーん! ここはにんげんさんのおうちでもあるけど、まりさたちのおうちでもあるんだよ! だって、まりさたちはにんげんさんの飼いゆっくりだよ!」キリッ 「よろしくね、にんげんさん!」キリッ 「「よろしくにぇ!!」」キリッ 「いやいや。俺、お前ら飼ったりしないから。 明日になったら出てってもらうから。 そう言ったよな。」 わざとだろうか。 それとも本当に都合のいいほうへと記憶が改竄されているのだろうか。 「ゆ?なにいってるの?まりさたち、飼いゆっくりだよ?」 「れいむたち、にんげんさんの飼いゆっくりなんだよ?」 「そうだじぇ!まりちゃたち、きょうからここにすむのじぇ?」 「にんげんさん、ゆっくちりかいできりゅ?」 ふはは。 もういい。 良く分かった。 今はお前らの好きにさせてやる。 だが俺は一度もお前らを飼うとは言ってないぞ。 明日までは家においてやるといっただけだ。 明日になったら、見てろよ。 それまでは、せいぜい、いい夢見させてやる。 そういや、こいつらあまあまが欲しいって言ってたっけ。 「よーし、お前ら甘いものが欲しいって言ってたな。 ちょっと待ってろよー!」 家にあった甘いものをかき集めてきた。 これだけあれば足りるだろ。 もし足りなけりゃ、近所のコンビニまで買いに走ってやる、畜生。 「ゆ!ゆわああああああ!すごい!すごいよ、にんげんさん!」 「ゆうぅぅぅぅ!れいむ、ゆめをみてるみたいだよー!」 「たべていいにょ!?これほんとにまりちゃがたべてもいいにょじぇ!?」 「れいみゅ、こんにゃごちそうはじめてだよ! どれからたべていいかわかんにゃいよ!」 ぴこぴこ だじぇだじぇ ぴこぴこ だじぇだじぇ あらん限りに喜びを表すゆっくり共。 「それじゃ、あまあまたべようね! ・・・にんげんさん、ゆっくりいただきます!」 「いただくよ!」 「「ゆっくちいただくよ!!」」 むーしゃむーしゃ、しあわせー むーちゃむーちゃ、しあわちぇー あーもー。 本当に食べ方汚いな、こいつら。 新聞の上に餌皿載っけたけど、その外にまで食べこぼしそうな勢いだな。 まあ、野良でちょっと前まで餓死寸前だったことを思えば納得できるけどな。 こんなご馳走今まで見たこともなかったろうし、 こんなに山のような食べ物を見るのも初めてだろう・・・。 ゆっくり共の、すーぱーむしゃむしゃタイムがやっと終わったが、 お菓子はまだ結構残ってる。 流石に一回で食べきれる量じゃないか。 「ゆっぷっぷー・・・。まりさ、おなかいっぱいだよー!」 「れいむも、もうたべられないよ!」 「ゆぅ・・・。まりちゃ、もうたべれにゃいよ・・・。」うとうと 「ゆぴー・・・。れいみゅの・・・、あみゃあみゃさん・・・。ゆぴー・・・。」 どいつも食いすぎで体がパンパンだな。 全身胃袋みたいなものだからか。 それに、子ゆっくりは満腹になって眠たそうだな。 特に子れいむはもう、半分夢のなかだな。 あれだけ食べて、まだあまあまの寝言ってのが凄い。 「おい、これがお前ら寝床だぞ。」 用意しておいたのはダンボール。 一家がまとめて入れそうな大きいサイズ。 「ゆぅぅぅ!!これが、まりさたちのおうちなんだね!」 「すごいよ!こんなにりっぱな、だんぼーるさんがおうちなんだね!」 「ゆぅ・・・。ゆっ!おうち! これがまりちゃたちのあたらしいおうちなんだじぇ!」 「すぴー・・・。ゆぴー・・・。 むーちゃむーちゃ、ゆふふ・・・。ゆぴー・・・。」 大喜びの一家と一匹就寝中。 「さっそくはこぶよ!」 「まりさ、がんばってね!」 「おとーしゃん、がばるのじぇ!」 ずーりずーり まりさが、ダンボールを銜えて例の机の下へ運んでいく。 子まりさはともかく、れいむは手伝ってやれよ。 「やった!おうちが、かんっせいっ!したよ!」 「やったね、まりさ!」 「さすが、おとーしゃんにゃのじぇ!」 どうにかダンボールを運び終えたな。 じゃあ、次はこれをやるか。 「おい、じゃあこれ、家の中に敷いとけよ。」 用意してあったのは、新聞紙とタオル。 新聞を下にして、その上にタオルを敷いとけば温かいだろう。 「ゆゆ!!ありがとうだよ、にんげんさん!」 「おうちをこーでぃねーとしようね!」 「ゆぅ・・・。どきどきするのじぇ!」 「ゆぴー・・・。ゆぴー・・・。」 ダンボールの中に新聞紙とタオルを敷いて、具合を確認するゆっくり共。 「ゆ!?ゆゆ!?」 「な、なんなの、これ!?」 「ゆぴぴぴぴぴ!?」 タオルの感触を確かめ、固まる。 「「「すごくあったかいよ!!!!」」」 「ゆぴー・・・。ゆごー・・・。」 驚きのあったか宣言と、しつこく就寝中の一匹。 「ゆぐっ・・・、ぐすっ、ゆえぇぇぇん!」 突然泣き出す子まりさ。 どうしたんだ。 「どうしたの、おちびちゃん!?」 「どこかいたいの!?にんげんさん、おちびちゃんをみてあげてね!」 診てあげてね、って言われてもな。 オレンジジュース用意するぐらいしかできないんだが・・・。 どうしたもんか。 「ゆぐ、ぐすっ・・・。ちがうのじぇ・・・。 まりちゃたち、もうしゃむいしゃむいしなくていいのじぇ? おにゃか、ぺーこぺーこしなくていいのじぇ?」 「ゆ!?ぐすん・・・。そうだよ! まりさたちは、飼いゆっくりだからさむいさむいも、ぺーこぺーこもないんだよ! ね、にんげんさん!」 「おちびちゃんはほんとに、しんぱいしょうだね・・・。 だいじょうぶだよ・・・。 おかあさんが、ぺーろぺーろしてあげるからね・・・。」ぺーろぺーろ ・・・・・・。 いや。 ね、にんげんさん!なんて言われても、 本当にお前らの面倒見るとかいってないんだけど・・・。 明日には出て行ってもらうし。 とかやってるうちに、れいむに舐められて落ち着いたらしい子まりさが、 こっちにやって来た。 「にんげんしゃん!」 んん? なんだ。 「まりちゃたちを飼いゆっくりしてくれて、ありがとうなんだじぇ! これからもよろしくなんだじぇ!」 ・・・・・・。 まあ、いい。 明日だ。 明日になったら見てろよ・・・。 「それじゃ、おちびちゃんはもう、すーやすーやしようね! おかあさんがいっしょにねてあげるからね!」 「まりさは、おちびちゃんをおうちまではこぶよ!」 どうやらもう、寝るらしい。 そうしろ。 静かになって丁度いい。 子まりさは先に親れいむと一緒に巣の中。 子れいむは親まりさが口に入れて運んでやるようだ。 「おちびちゃんをゆっくりはこぶよ!」ぱくっ いちいち宣言が必要ですか、貴方達は。 ずーりずーり 子れいむを起こさない為だろう、言葉通りゆっくりと這って巣に移動する。 そこで、子れいむも親れいむの傍らにそっと下ろすと、 親まりさがこっちにやって来る。 「にんげんさん!まりさたちを飼いゆっくりにしてくれてありがとうだよ! あらためておれいをゆうよ!」 ・・・・・・。 最早何も言うまい。 「ゆ・・・・。 それじゃ、またあした・・・・、ゆっくりしていってね!!」 そう、明日だ。 明日で終わりだ・・・。 そして次の日。 起きて窓の外を見ると猛吹雪。 天気予報を見てみると今日は一日、こんな天気らしい。 昨日は晴れるって言ってたくせに。 嘘つき。 だが予定に変更はない。 今日で終わりだ。 あのゆっくり共の面倒を見るのもこれまで。 昨日の予定では、昼頃には出て行ってもらうつもりだったし、 それでいいだろう。 そんなことを考えていると、ゆっくりも起きだしたらしい。 「ゆぅぅ・・・。ここどこだじぇ・・・?」 「にゃんだか、あったかいにぇ・・・。」 子ゆっくりか・・・。 寝惚けているな。 「ゆゆぅぅぅ・・・。どうしたの、おちびちゃんたち・・・。」 「ここどこにゃの・・・?おうちじゃないのじぇ・・・。」 「ゆふふ!ここはおうちだよ・・・。あたらしいおうちだよ。」 「ゆ!?わかってるのじぇ!ここはまりちゃのおうちじぇ!」 「ゆゆ!?おうち?」 子まりさは、慌てて誤魔化したな。 子れいむは、昨日は一匹だけ早く寝たから巣のことは知らないんだな。 親ゆっくりが子れいむにも巣のことを説明する。 「すごいよ!れいみゅのおうちはとっちぇもゆっくちできるにぇ!」 親に巣のことを教えられて大喜びだな。 「おい、朝飯は昨日の残りでいいよな。」 「ゆん!じゅうぶんだよ!」 昨日食べ切れなかった餌は、あの後まりさがせっせと巣の中に運び込んだ。 一応飼いゆっくりとしての躾を受けていないゆっくりの習性として、 巣の中に食料を備蓄したいらしい。 別にどうでもいいので、まりさの好きにさせた。 「それじゃ、あさむーしゃむーしゃしようね!」 「ゆっくちいただくのじぇ!」 「ゆっくちいただくよ!」 むーちゃむーちゃ、しあわちぇー うんうん。 幸せそうでいいね。 この後には地獄が待っている。 もう何時間かあとには、猛吹雪のなかに放り出す。 今の内に、しあわせーしとこうね。 「まりちゃ、ゆっくちこーろこーろするのじぇ!」 「れいみゅも、こーろこーろするよ!」 「まりちゃ、のーびのーびするのじぇ!」 「れいみゅも、のーびのーびするよ!」 「ゆううーん!おちびちゃんたち、とってもゆっくりしてるよー!!」 「ほんとだね!とってもゆっくりしてるね!」 子ゆっくりは暖かい部屋の中で、存分に跳ね回ってる。 親ゆっくりも、そんな幸せそうな子ゆっくりの姿を見てとても幸せそうだ。 今、時計は11時30分。 そろそろ昼飯にして、1時頃に落ち着いたらこいつらを追い出そう。 まずは飯の仕度だ。 自分の飯の仕度を済ませたので、次はゆっくり共の番だ。 こちらは簡単。 また、甘いお菓子を餌皿に入れてやるだけ。 ホットオレンジジュース付き。 「ゆわーい!いっぱいたべりゅよ!」 「むーちゃむーちゃ、しあわせー!!」 がつがつと貪るゆっくり。 早々に食べ終わったな、あいつら。 「ゆー。まりさ、ごーろごーろするよ・・・。」 「れいむも、ごーろごーろ・・・。」 「ゆゆぅ!まりちゃもだじぇ!」 「れいみゅも!」 「それじゃ、みんなでごーろごーろしようね!」 「「「「ごーろごーろ、しあわせー!!」」」」 もぐもぐ。 幸せそうでいいね。 本当にさ・・・。 時計は1時丁度。 ゆっくり共は、あれから速やかにすーやすーやモードに移行した。 今も夢の中だ。 外の様子は・・・・。 猛吹雪だ。 ・・・・・・・。 寒そうだな・・・。 ・・・・・・・。 とにかく、ゆっくり共を起こそう。 どかっ どかっ ぴしっ ぴしっ 蹴りとデコピンがゆっくり共に突き刺さる。 「ゆぴぃぃぃぃぃ!!?」 「なんにゃのじぇ!?まりちゃのおかおがいたいのじぇぇぇぇ!!!」 「ゆぅぅぅぅぅ!!?なんなのぉぉぉぉ!!」 「ゆげっ、ゆげぇっ・・・。ぱぴぷぴぱぺ・・・・。」びくんびくん しまった。 当たり所が悪かったのか、親れいむが餡子吐きながら痙攣してる。 こんな時はオレンジジュースだ。 ゆっくり共は熟睡しているところに、突然の暴力と、 親れいむの惨状にパニックを起こしかけた。 しかし、俺の素早い処置で親れいむはすぐに回復。 ゆっくり共には、侵入してきたれみりゃが一家を襲ったが、 俺が追い払って事なきを得たと説明。 パニックを鎮めるどころか、更に感謝までされた。 馬鹿でよかった。 それはともかく、本題だ。 「お前らには俺の家から出てってもらう。」 「ゆ?」 「なにいってるの、にんげんさん?」 「「????????」」 予想通りの反応だ。 「俺は昨日から一度もお前らを飼うとは言ってない。 一日だけ家に置いてやるといっただけだ。 出ていってもらう。」 「ゆゆ!?まりさたちは、にんげんさんの飼いゆっくりだよ!!」 「違う。飼いゆっくりじゃない。」 「でも、にんげんさんは、おうちをよういしてくれたよ!?」 「一夜の宿だ。」 「まりちゃ、いやなのじぇ!ここがいいのじぇ!」 「駄目だ。」 「れいみゅ、もうおそとはいやだよ! しゃむいしゃむいも、ぺーこぺーこもいやだよ!」 「それをどうにかするのは、お前の親だ。俺じゃない。」 口々に言い立てるゆっくりに静かに答える俺。 こいつらがなんと言おうと、どう勘違いしていようと、 俺はこいつらを飼うとは一言も言ってない。 ここは一夜の宿なのだ。 ゆっくり共が泣き喚き、じたばたと暴れるが全く問題にならない。 嫌がるゆっくりを窓辺まで引きずる。 ガラッ 窓を開けると途端に寒気が肌に突き刺さる。 昨日よりも雪が多い上、風が強く更に寒く感じる。 ・・・・・・・。 昨日の天気予報では晴だったんだけどな・・・。 まあ、仕方ないか・・・。 「ゆぶぅ・・・。」ガタガタ 「しゃ、しゃむいのじぇ・・・。」ガタガタ 「い、いやだよ。もう、しゃむいしゃむいはいやだよぉぉぉぉぉ・・・。」ガタガタ 「にんげんさん、おねがいします! れいむたちはどうなってもいいですから、 おちびちゃんたちだけでもぉぉぉぉ・・・。」ガタガタ ゆっくり共もすぐにガタガタと震えだした。 この天気じゃ、子ゆっくりなんかすぐに死んでしまうんじゃないか。 昨日の時点で、半分死に掛けてたぐらいだし・・・。 「にんげんさん、おねがいです!まりさたちを飼いゆ・・・・ゆわああああ!!?」 むんず まりさの頭から帽子を剥ぎ取る。 「まりさのすてきなおぼうしさん!!?かえしてぇぇぇ!!」 ばらばら 帽子の中に、用意しておいた菓子を入れて戻してやる。 「ゆゆ!?まりさのおぼうし、かえってきてくれたんだね!!」 「帽子のなかに、食い物入れといたからな。」 「ゆゆ!?にんげんさん・・・。」 ぽーい ぽーい ぽいっ ぽいっ 「ゆゆ!?おそらをとんでるみたー・・・ゆびゅ!!」 「れいむ、おそらをとんで・・・、ふごっ」 ゆっくり共を全部窓から外に放り投げる。 「ゆ・・・!!にんげんさん、まってね!? まりさたちをおうちにいれてね!!」 「まりちゃを、おうちにいれてほしんだじぇ!!」 「れいみゅ、飼いゆっくりにゃんだよ!!? れいみゅ、飼いゆっくりにゃんだよにぇ!?にんげんしゃん!?」 「もごもごっ・・・!」 一匹着地に失敗して顔から雪に突っ込んでいるのがいるけれど無視。 ガラガラッ 窓を閉める。 「にんげんさん!?にんげんさんんんんんんん!!?」 「ゆぴぇぇぇぇぇぇぇん!!しゃむいよぉぉぉぉぉぉ!!!」 「まりちゃをおうちにいれてほしんだじぇ!!おねがいだじぇぇぇぇぇぇ!!!!」 「もがもが、むぐっもげぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」ぷりんぷりん ピシャッ ゆっくりが騒いでいるが、窓越しなのとしんしんと降る雪のせいで、 窓を閉じてしまうとその声もほとんど聞えなくなる。 ・・・・・・・・・・・。 後は、自分達で勝手にしろ。 30分後。 まだゆっくりが窓の下にいる。 子ゆっくりの姿は見えない。 どうやら親の口のなかのようだ。 そうしなければ、すぐに死んでしまうだろう。 ゆっくりの上にも既に5センチは雪が積もっている。 1時間後。 まだいる。 もう、騒ぐことはやめてしまったようだ。 その元気もないといったところだろうか。 二匹寄り添ってガタガタと震える以外の動きは見えない。 10センチ以上は雪が積もっている。 更に1時間。 ゆっくりの体の半分以上が雪に埋もれている。 もう意識が朦朧としているのだろうか。 うつらうつらと眠そうにさえ見える。 更に1時間。 もうゆっくりの姿は見えない。 雪の下だ。 「ゆっくちのーびのーびするのじぇ!」 「ゆっくちこーろこーろするよ!」 子ゆっくりが幸せそうに遊びまわっている。 のーびのーびに、こーろこーろ。 それに、ゆっくり用の玩具まであるからな。 「ゆゆぅ!!おちびちゃんたち、とってもゆっくりしてるよー!!」 「ほんとうだよ! それに、こんなにすてきなおうちがあってれいむ、とってもしあわせーだよ!!」 楽しそうな子ゆっくりを見て、親ゆっくりもしあわせそうだ。 「れいむ・・・。」 「まりさ・・・。」 すーりすーり 「ゆっ!?だめだよ!まりさ!おちびちゃんたちにみられちゃうよ!」 「ゆ!れいむ、まりさもうがまんできないよ!!」 「まりさー!!」 「れいむー!!」 今度は何が始まったんだ・・・。 俺の家にには相変わらず、ゆっくり共がいる。 子ゆっくりは所構わず騒ぎまわるし、親ゆっくりも碌な事をしない。 「ゆっくちー!!こんどはあっちなのじぇ!」 「まってにぇ!れいみゅも、いくよ!!」 どかーん がしゃーん 「れ、れいむ・・・!!」 「まりさーーーーっ!!!」 すっきりーーー!!! ・・・・・・・・・・。 一体どうしてこうなってしまったのだろうか。 ・・・・・・・・・・。 ・・・・・・・・・・。 ・・・・・・・・・・。 まあ、仕方ない。 だが春になったら今度こそ絶対に出て行ってもらう。 絶対にだ。 ・・・・・・・・・・。 ・・・・・・・・・・。 そう言えば、俺の友人が口癖の様に言ってた台詞があったな。 たしか・・・。 俺は鬼にはなりきれないのだ・・・。 「ゆ!このつぼは、いいものなのじぇ!まりちゃのたからものにするのじぇ!」 どん ガチャーン! 「ゆぴぃぃぃぃぃぃぃ!!?れいみゅの、きゃわいいおかおがーーーーーーー!!!!」 挿絵 by嘆きあき トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る 壺w -- 2019-03-29 20 54 45 (嘘)って付いてるなら仕方ないwww じゃなかったら、絶対ゆっくりさせない! あんよ焼きして、虐めて、非ゆ症にして、オレンジジュース掛けて、 虐めて、非ゆ症にして、オレンジジュース掛けて、虐めて、非ゆ症にして、 オレンジジュース掛けて、豪雪の外に放り投げて、死ぬのをじっくり待つ。 (自分は炬燵にアイスかな?それともうどんかな?) -- 2018-02-08 01 15 03 宝物を壊す汚物はさっさと死ね。とでも書いておく。 それなりですな -- 2016-09-12 20 44 15 下の方で描いてる人もいるけどイライラさせる気満々なクソSSだな -- 2016-07-09 13 32 49 お家に入れてもらったくせしてゆっくりプレイスとかほざくところは流石。ピキィしたわ。俺だったらサーチアンドデストロイするな。マジで。 -- 2016-06-05 16 06 13 このお兄さん優しいなぁ -- 2016-02-16 00 56 58 このお兄さんにピキィってなった -- 2016-01-09 15 08 27 オチワロスwww この非情になりきれなさは嫌いじゃないぜ -- 2013-12-20 03 41 58 ↓から9番目 アナタノアタマダイジョウブデスカ?(嘘)ッテイウノヲツケタリユウハアッテルケドソンナコトヨクココデイエルヨネーユックリデキテナイw -- 2013-08-04 08 20 20 ↓から9番目 アナタノアタマダイジョウブデスカ?(嘘)ッテイウノヲツケタリユウハアッテルケドソンナコトヨクココデイエルヨネーユックリデキテナイw -- 2013-08-04 08 19 52 ピキィ! なにこの残尿感。むかつく。 -- 2013-03-26 01 32 09 絵のまりさwwギoンに乗っている奴www -- 2013-01-24 18 47 04 ↓注意 ゆっくりに対してイライラしただけです 脱字しました -- 2012-10-08 00 57 08 タイトルに(嘘)ってあったし詐欺ではなくね 何にせよ死ねとか糞みたいな他人が不快になるコメは書くべきでない まぁ個人的には最後八つ裂きにしてほしかったけどなwwwww しかし素晴らしい作品だった こんなにイライラしたのは久しぶりだ -- 2012-10-08 00 54 13 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! -- 2012-08-28 14 03 00 れみりゃを虐待するように見せかけた愛でSSは評価されていたのに、通常種になるとこの有様だよ -- 2012-08-24 17 21 14 デコピンで餡子吐く親れいむって… -- 2012-07-26 16 07 44 おまえらもちつけ。よく考えるんだ。つまんねーとか作者死ねとか言ったところでなんになる。作者がゲスで、読んだ奴を不快にさせたいっていうなら批判したって意味ねーし、かえって作者喜ぶんじゃないか?こんなに釣られてるしwwってなかんじに。逆にただ作りたかったから作ったっていう普通の作者なら作者可愛そうじゃん。そんなさあ、自分で選んだSSは全部自分の思い通りのストーリーになってるー、なんてわけねーだろ。例えば、本を買ったとする。んで、自分としては全然おもしろくなかった。そしてそれを著者のせいにするっておかしくね?買ったのも読んだのも自分の責任だろうが。それにさぁ、自分が書いたSSがつまんねぇとか批判されて、あまつさえ「作者は悪意をもってこれを書いた」とか書かれたら、おまえら傷つかねぇ?自分は別にー、って奴も、気を使えよ。 -- 2012-04-14 20 57 03 虐待目的で読んだけどこれはこれで好き。 (嘘)って書いてあるし、そんなに批判したり吐くほどじゃない。 批判してるやつは馬鹿なの?しぬの?餡子脳なの? -- 2012-04-13 00 21 00 わざわざタイトルに嘘って注意書きがあるのに批判するとかばかなの?しねよ ↓の批判コメは日本語が理解出来ない在日だったんだね!ゆっくりりかいできたよ -- 2012-04-08 23 46 43
https://w.atwiki.jp/ani3sisya/pages/1218.html
318 :名無しさんなんだじぇ:2012/02/02(木) 22 55 48 ID 4UXGULHY 【たまり場某所】 黒桐「えぇー、豆まき大会の参加はこちらで受け付けてまーす」 小萌「普通の豆まき大会は右、豆まきロワイアルは左の受付でお願いしますぅ」 衣「とーか、あれは一体何をやっているんだ?」 とーか「普通の豆まきをする方たちと、本気の潰し合いをする方たちを分けているんですわ」 美穂子「場所もちゃんと区分するそうですね」 部長「一応ロワイアル側にはカメラも付いてて、その状況をリアルタイムで観れるそうだけどね」 律「ロワイアルで!」 ムギ「同じく!」 かじゅ「さっそく参加してる奴もいるな」 あずにゃん「あの2人は決着を着けたがってますから」 唯「どうなるんだろうね~」 池田「華菜ちゃんもロワイアル参加だし!」 美琴「また無謀なことを…」 荒耶「私もロワイアル参加だ」 黒子「堂々と参加表明してますの…」 士郎「思いっきりみんなに睨まれてるぞ…」 セイバー「他の皆さんはどうするのでしょうか?」 319 :名無しさんなんだじぇ:2012/02/03(金) 18 05 45 ID eJTha/Hg 刹那「俺はバトルロワイアルに参加するつもりだが……お前逹はどうする」 ヒイロ「リリーナの付き添いで通常の節分煮えた参加する事になった。 残念だがそっちは無理だ」 ゼクス「私も同じ理由で遠慮させて貰おう」 トレーズ「私は参加する つもりだが……五飛、君はどうする」 五飛「無論、貴様が参加するのならば俺も出る!」 デュオ「俺はパス。 あんな命懸けの豆まきなんかやってられっかって」 刹那「承知した。 エントリーしておこう」 320 :名無しさんなんだじぇ:2012/02/03(金) 18 09 48 ID eJTha/Hg 319 携帯の変換ミスった…… orz ヒイロ「リリーナの付き添いで普通の節分に参加する事になった。 残念だがそっちは無理だ」 が正しい文です 321 :名無しさんなんだじぇ:2012/02/03(金) 22 58 28 ID kGY3LjRc 筆頭「Ha!何事もPartyは楽しまねぇとな小十郎!!」 小十郎「勿論です正宗様!」 幸村「正宗殿が参加するのなら、某も参加する所存!!」 光秀「ふふふ…何やら面白くなりそうですねぇふなちゃん」 船井「参加せんぞ!!俺は参加せぇへんからな!!」 光秀「まぁまぁよいではないですか、これも1つの余興ですよ」 船井「嫌やあああぁぁぁーーーッッッ!!!!!」ズルズル レイ「ロワイアルに参加で頼む」 黒桐「はい」 ヴァン「あん?お前参加するのか?」 レイ「当然だ、そろそろあの娘と決着を着けなければならないからな」 ヴァン「この前ボロ負けしてたじゃねぇか」 レイ「あれはあの魔術師のせいだ!!俺自身の実力ではない!!」 ヴァン「はいはい…」 レイ「それに…何の為にヴォルケインの修復を間に合わせたと思っている…」 ヴァン「おいちょっと待て、お前ヨロイを何に使う気だ?」 322 :名無しさんなんだじぇ:2012/02/04(土) 00 16 36 ID .baBu3KI 律「クソーッ!なんで勝てない!」 ムギ「届きそうで届かないわね…」 ことみー「わたしとしても残念だよ。さて、ここでお暇しよう」 フッ 律「あーっ!」 ムギ「また逃げられちゃったわね…」 ビリビリ「あ!遅かったかー!また逃げられちゃったわね…」 荒耶「仕方あるまい。我がペンフレンドは抑止力に守られているのだから」 律「ん?どういうことだ?」 ムギ「りっちゃん、気を付けて!絶対なんか企んでるわよ、この人!」 荒耶「そう、彼は守られている…。『抑止力』…言葉を変えさせてもらえば『本編の都合』に」 ビリビリ「またメタね。あんたそういうキャラだっけ?」 荒耶「真実だ。ここで彼が倒されてしまっては色々と不都合が出る人間もいようというものだからな」 律「…まぁ都合じゃしょうがないか」 ムギ「納得しちゃうのね」 荒耶「さて、わたしとて目的があってここに来ている。何か分かるかな?」 律「知りたくも無いけどなー」 ムギ「どうせ碌でもない事よね」 荒耶「わたしとて現世での無念が無かったわけではない。 それは根源でもあるし、また…君たちとの決着にもある」 ビリビリ「そういえばあんたにレールガン止められたまんまだったわね」ビリビリッ ムギ「わたしも無惨に扇動されてそのまんまだわ」 律「わたしはー?」 荒耶「そう、二人とも未練を残したまま消えるわけにもいかないであろう こちらとて同じ事だ」 ビリビリ「なーんかちょっと引っかかるけど、不満が残ってるのは確かね。 全力でイかせてもらうわよーっ!」 ムギ「りっちゃん!」 律「おう!コンビネーションアーツ行くぞ!」 荒耶「ふむ…なかなか統制のとれた散開行動だ。これでは一人一人を相手にすることなど出来ない」 律「本来なら一人でも十分いけるけどなー!」 荒耶「三角形の頂点に一人ずつが配置、その中心に私を置く事で撤退不可能の結界を築く。 いい作戦行動だ。ならばこれはどうだ」 ざわっ 律「なんだ、この生理的嫌悪感?!」 ビリビリ「なんかヤバイ!」 ムギ「りっちゃん、御坂さん!気を付けて!なんか出すわよ!?」 荒耶「なに、単なる豆まきの大豆だ。ただ…一つ一つに文字通り魂を込めた」 サカサカサカサカ ビリビリ「うひぃ?!」 律「だ、大豆なのに!動いた?!」 ムギ「しかもこの動きって…!?」 荒耶「そう、以前この場で殲滅されたG達の魂だ。 豆まきの豆は年齢分食べるのであったな。 それにならって1000匹分の魂を豆1000個に込めた」 ガサガサガサガサ! 荒耶「行け」 ビリビリ・律・ムギ「うわああああああああああああああ?!」 323 :名無しさんなんだじぇ:2012/02/04(土) 01 42 31 ID NAOVAWyc 【普通の豆まき会場】 バサカ「ガオーガオー」←鬼役 衣「鬼は外~♪福は内~♪」バラバラ 唯「鬼は外~♪福は内~♪」バラバラ ふじのん「鬼は外~♪福は内~♪」バラバラ ひたぎ「こっちは平和でいいわね」 C.C.「全くだ…観てみろひーちゃん、あっちは豆ゴキが大暴れしているぞ」 ひたぎ「あら本当…みんな大慌てで逃げてるわね…」 C.C.「参加しなくてよかったな…」 上条「ていうか何で参加しなかったんだ?」 士郎「こういうイベント好きそうだけどな」 ひたぎ「特にメリットもないしね」 C.C.「私はコロちゃんと一緒にいたかっただけだ」 黒子「どれだけ天江さんが好きなんですの…」 ひたぎ「それより、今年の恵方は北北西の方だったわね」 C.C.「そっちを向いて、黙って願いを頭で唱えながら食べるんだったか?」 アーチャー「お前が持ってるのはピザだから関係ない」 真宵「それにそういった文化は、近年できたものらしいですしね」 撫子「ふーんそうなんだ」 神原「みんな知っているか!?恵方巻きは、元は○ェ○○オが元になっているという説があr」 セイバー「エクスカリバー!!!」 ドカーン!!! セイバー「……すみません…少々出すのが遅れました…」 あずにゃん「いえ、中々の手際の良さでした…」 ライダー「でも…そういった説があるのは事実なんですよね…」 上条「……何だか食べる気が失せてきた…」 324 :名無しさんなんだじぇ:2012/02/05(日) 01 17 41 ID fN69b8Dk ドガガガガガガ 美琴「な、何!?」 ムギ「豆ゴキが次々撃ち落とされていく!?」 律「あれは…!」 レイ『女、貴様は俺との決着も着けずに何を遊んでいる?』 律「レイ…!」 レイ『さっさとこいつらを片付けて決着を着けるぞ!』 律「いやいや何言ってんの!?まさかヴォルケインに乗ったまま戦ろうとしてないよな!?」 筆頭「Let's Partyだ!!俺たちも行くぜ小十郎!!」 小十郎「は!!」 幸村「某も行くでござる!!」 トレーズ「我々も行こうかゴキ」 五飛「貴様今俺をゴキと呼んだな!?」 光秀「あぁ…実に楽しそうだ…では我々も」 船井「離せー!!俺はまた死にたくない!!」 刹那「行くぞホンダム!!」 ホンダム「応!相棒!!」 荒耶「ふむ…やや形勢が悪くなってきたか…しかし…来い同志たちよ」 ???C「ようやくわしらの出番じゃの!!」 ???B「行きましょう会長!!この特性GN豆鉄砲マシンガンなら勝てます!!」 【まだこのリレー続いてますよね?】 325 :名無しさんなんだじぇ:2012/02/06(月) 22 57 06 ID 1eEyjJw2 【普通の豆まき会場】 ヒイロ「………」 デュオ「どうしたヒイロ?何かずっと考え込んでるな?」 ヒイロ「……実は…今朝からGNバスターランチャーが見当たらないんだ…」 デュオ「なっ!?それってヤバいんじゃねーのか!?」 【ロワイアル会場】 池田「ししし…みんな1ヶ所に集まってるようだし!ここであのヒイロとかいう奴からパチってきたこのGNバスターランチャーで豆を吹っ飛ばせば華菜ちゃんの1人勝ちだし!!」 荒耶「行くぞ、わが同志たちよ」 ???B「うむ!!」 ???C「これでわしらの勝ちじゃあぁッ!!」 美琴「そう簡単に行くかって―の!!」 律「その通りだぜ!!」 ムギ「終わるのは貴男たちの方よ」 レイ『俺の邪魔をする者は、全てデリートする!!』 船井「俺はこれ以上死にたくないぃーーー!!」 光秀「ヒャッハァーーーッッ!!!」 【普通の豆まき会場】 ヒイロ「問題ない。あのGNバスターランチャーには仕掛けをしてある」 デュオ「仕掛け?」 【ロワイアル会場】 池田「貰ったし!!!」カチッ 【普通の豆まき会場】 ヒイロ「あれは使う前に正しい手順で仕掛けを解除しなければ…」 デュオ「いやもういい、何となくわかった」 【ロワイアル会場】 池田「な、何なんだし!!?急に光出して…」 筆頭「What!?ありゃあ一体何だ!!?」 小十郎「光が…!!」 幸村「ま、眩しいでござるー!!」 トレーズ「ふむ…これは…」 五飛「まさか…!!」 【普通の豆まき会場】 ドカーーーーー プツンッ 黒桐「あれ?映像が途切れちゃったね」 撫子「何があったんだろう…」 士郎「……何か直前に爆発が起こったような…」 黒子「お姉様…ご無事でしょうか…」 ひたぎ「問題ないわ、どうせ御坂さんたち3人はかすり傷程度しか負ってないわ」 美穂子「そうね、きっとキャスターさんが影で結界とか張ってそうだし」 部長「いや貴女はもっと後輩の心配しなさいよ…」 衣「他の者たちは無事なのか?」 とーか「さぁ…そこまでは保障しかねますわ…」 C.C.「少なくともふなちゃんと池田と覆面2人は間違いなく死んでるな」 ふじのん「他の人たちも運が良ければ生きてるんじゃないですか?」 ライダー「……あの魔術師はちゃっかり逃げているんでしょうね…」 上条「……参加しなくてよかった…」 ヒイロ「……さて、ランチャーの部品を回収して修理しなければ」 デュオ「他に言うことねぇのかよ!!?」 326 :名無しさんなんだじぇ:2012/02/07(火) 12 17 50 ID WfXK72ak 律「ふー、助かった。いつもすいません、キャスターさん」 キャスター「いいのよ律ちゃん。私も好きでやっているんだし。それに、お礼は身体で払ってくれるんでしょう?」 律「あ、あはは」 ビリビリ「なんか、私たちもついでに助けられちゃったんだけど……」 ムギ「じゃあ、私たちもお礼しないと」 キャスター「そうね。何して貰おうかしら?」 律「あー! キャスターさん! そっちの二人の分も、私がお礼しますから!!」 キャスター「本当!? じゃあ、三人分で三日間、律ちゃんを好きにしていいのね!?」 律「は、はい!」 キャスター「フフッ、それじゃあ結構汚れちゃってるし、まずはお風呂に行きましょう!」 ビリビリ「……大丈夫かしら」 ムギ「アーニャちゃん! モンキー! 機材持ってきてー! 早く!!」