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前作『ふたば系ゆっくりいじめ 823 ゆっくりが残すもの』にたくさんのコメントありがとうございます。 濃厚なコメントさんもたくさんあって本当にうれしかったです。 コメントは、どんなに遅く付こうと全部読んでます。 あと、前作のコメント欄でのコメントにいくつかここでレスしたいと思います。 布団を押入れに残すことはあまり無いんじゃないかな? これはダムで水没したの? それともダムの放水で流されたの? 放水で沈没しました(苦笑) 布団はまあ、古い物を残していったということでご勘弁を(汗 ちょっとチグハグな印象 タイトルが、ダム放流が本流と認識させるのに それに反してお兄さんとしんぐるまざーの自己主張が大きいからだと思う ただ、ダムに流されただけじゃ話として弱いかなと思ったので。 チグハグに感じないように精進したいと思います。 長編は難しいですけど一緒に頑張っていきましょうねっ! ありがとうございます。一緒に頑張りましょう! 今回は短編ですが… これからも、ゆっくりできたよと言ってもらえるように頑張ります。 「ありすとぱちぇとおにいさん」 「おねがいじまずううううう!!!まりさをがいゆっぐりにじでぐだざいいいいいい!!!!!」 道を歩く青年に、野良のゆっくりまりさが声をかける。 「飼いゆっくり?」 青年が立ち止まる。普通は野良ゆっくりなんかの声に足を止める人はいないので珍しい青年だ。 「ぞうでずううううう!!!まりさは、もどがいゆっぐりだっだんでずううううう!!!!!」 よだれと涙を撒き散らし、傍目から見ても非常に不快感を残す光景だ。 これで、飼ってくれる奴なんているはずも無い。 「んん…?なるほど…飼いゆっくりか…いいな」 「ゆうう?!ほんとう!かってくれるの!これで、まりさもゆっくりできるよ!ゆっくりしていってね!おにいさん!」 まりさは大喜びだ。本当に青年はこんな醜い野良ゆっくりまりさを飼うつもりなのだろうか? 「ん?ああ、お前を飼うなんて一言も言ってないよ。飼いゆっくりは店で買うよ。お前、汚いし」 「ぞんなあああああああああ!!!ゆっぐり!ゆっぐり!がっでね!まりさを…うべっ!!!」 青年のケンカキックがまりさの顔面にめり込む。 「ゆぎゃああああああああああ!!!まりさのぷりちーで、きゅーとなおかおさんがあああああああ!!!!!」 目と目の間に青年の靴のサイズの穴が開き、そこから餡子が漏れる。ジタバタ痛みで暴れるので、もっと漏れる。 青年はまりさの帽子を取り上げると 「ゆあああああああ!!!!!まりさのずでぎなおぼうしいいいいい!!!!!ゆっくりかえしてねええええええ!!!!!」 穴が顔面に開いているのに元気なことだ。 青年は、自治体が設置したゆっくり用ゴミ箱に帽子を入れる。 「がえじでね!まりさの、ふぁっしょなぶるなおぼうしかえしてねえええええ!!」 そして、ゴミ箱の横に設置されているスコップ(持ち去り防止の為、鉄の鎖でゴミ箱と繋げている)を手に取る。 鎖の届く範囲内に、お帽子の為にまりさが自分からやってくる。 「おぼうじがないど、ゆっぐりでぎないいいいい!!!」 青年はスコップで、まりさを何度も叩く。 「ゆべっ!!ぐぎゅ!!いじゃいいい!!!つぶれりゅううう!!ゆっぐりでぎないいいいい!!!!!」 青年はスコップの一突きで、口を破壊する。歯は砕け、口の形が十字に裂ける。 そして、瀕死のまりさをスコップですくうとゴミ箱へ入れた。 (おみずざんは、ゆっぐりでぎないいいいいいいい!!!!!!) 中には水が入っており、まりさは傷口から餡子が溶けて、ゴミ箱に入れられて直ぐに絶命した。 その後、まわりを箒で掃き(これも備え付け)青年はその場を後にした。 「ゆっくりショップに寄っていくか」 ゆっくりショップには色々なゆっくりが置いてある。 青年は、店の中を物色する。 やはり基本4種が多い。そしてバレンタインセールとやらで、子ちぇんが特に大量に並べられていた。 その前には、女性客がいっぱいいる。 「バレンタインの贈り物に、甘くてスイーツなちぇんはいかがですかー。わかるよー」 店員さんの売り込みの声も聞こえる。 れいむとまりさが、青年の視界に入る。しかし 「れいむとまりさは、うーん…好みじゃないんだよね…」 ぱちゅりーとありすを見る、青年。 「どうしよう、まあまあかなあ。2匹だと財布の中身が、でも…」 ブツブツと思案した様子の青年。 「ん、奮発するか。すみませーん!この、ぱちゅりーとありすください!」 青年は、ゆきっつっあん一枚の値段で、銅ぱちゅりーと銅ありすを購入した。 「ここが、俺のおうちだ」 ボロアパートで、4畳の部屋がひとつのみ。風呂無し、トイレ共同。 この青年は、アルバイトで生計を立てているワーキングプアさんなのだ。 「ゆっくりしていってね!」 「むっきゅりしていってね!」 2匹が、おうちの中で改めて青年に挨拶をする。まあ、本能だ。 「いいか、このボロアパートは壁が薄い。ここは角部屋で、隣もいないがそれでも騒ぐな」 不満そうな残念そうな何とも言えない表情の2匹だが 「ゆっくりりかいしたわ…」 「ぱちぇは、けんじゃだからいいつけはまもるわ…」 一応、言うことは理解したようだ。 これで愚図りだされても面倒くさいので、青年はホッと一安心という表情だ。 「お前たちには、一万円もかかってるんだからな。俺の役に立ってくれよ」 「ええ、とかいはにゆっくりさせてあげるわ」 「むきゅ、ぱちぇのけんじゃなちしきで、おにいさんをせんのうするわ」 「洗脳てお前…まー、しかたねーか。森賢に期待してもな…」 覚えた言葉を意味も分からずに使いたがるのは、ぱちゅりーの悪い癖でもある。 ゆっくりショップに売られている透明な箱も購入済みだ。防音の為、騒いでほしくないときに重宝する。 「さて、とりあえずお前らは夫婦になれ」 「「ゆゆゆゆゆ?????」」 この青年は何を言ってるのだろう? 「それで、おにいさんがゆっくりできるなら…いいわ」 「むきゅ!ありすとふうふね!なりたりこんまちがいなしだわ!むきゃきゃきゃ!」 「成田離婚の意味知ってんのか?」 「むきゅ、とうぜんよ。ぱちぇにしらないことはないわ!あいしあうことに、きまってるでしょう!」 (馬鹿すぎる…何で、同じ値段だったんだろう…) 青年は気を取り直すと 「じゃあ、さっそく子供をつくってくれ」 「「ゆゆゆゆゆ?????」」 この青年は何を(ry ありすは、子供をつくるなと固く躾けられたので意味がわからない。 「ほんとうにいいの?」 「ああ、早い方がいい」 「おちびちゃんがいれば、むっきゅりできるものね!ありすのじーすぽっとさんをまんぐりがえしよ!むきゃきゃきゃ!」 2匹を透明な箱に入れると、揺すって発情させ、さっそくすっきりーをさせる。 (しかし、醜いなー) 野良ゆっくりが駆除される最大の理由は、PTAなどによる「ゆっくりのすっきりーが子供の教育に悪いから」だ。なまじ人語をしゃべるだけに。 「あ、あ、あ、ぱちゅりー…もっと、やさしく…」 「むへっへっへ…けんじゃなぺにぺにでよがりくるうといいわ!たかなみのてくでしょおおおおお!!!!!ちょこぼーるうううううううううう!!!!!」 「「すっきりいいいいいいいいいいい!!!!!」」 本当に醜い。気持ち悪い。 そして、ありすの頭に実ゆが4匹実った茎が生えた。 3日ほどすると、子供が生まれてくる。 「ようやくか」 青年は待ちくたびれたかのように呟く。 「かわいいかわいいありすのおちびちゃん、ゆっくりうまれてきてね」 「むきゅきゅ!けんじゃなぱちぇのおちびちゃん、ぱちぇのえいさいきょういくで、いんばいにしてあげるわ!」 青年は慣れたもので、ぱちゅりーの戯言にも眉ひとつ動かさない。 「ゆっきゅりちていっちぇにぇ!」 赤ありすが生まれ落ち、最初の挨拶をする。 「ゆっくりしていってね!ゆーん、ありすのおちびちゃんはとってもゆっくりしているわ~」 とろんと惚けた表情で我が子を見つめる、ありす。 「むっきゅりしていってね!きっとこのこは、りこーるがふきそしょぶんになるわ!」 テレビで垂れ流される文言を、ただ反復する森賢。 全ての子が産み落とされると、その赤ゆっくり共を青年は全て手に取るとタッパーに入れる。そして 「また、子供をつくれ」 「「ゆゆゆゆゆ?????」」 この青年(ry 「でも、もうおちびちゃんが…」 「むきゅきゅ!おちびちゃんはいればいるほどいいのよね!そうたいせいりろんが、げしゅたるとほうかいしてるわ!」 透明な箱に布をかぶせ、青年は2匹にすっきりーさせる。 そうして、2匹がすっきりーしている間に… 「いただきまーす」 (きょわいよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!みゃみゃあああああああああああああああああああああ!!!!!) 口を押さえて、騒がないようにすると口に放り込み子ありすを食べる。 「んー、物足りないなあ。やっぱり、もう少し成長しないとダメか…」 そう、青年は貧乏で、甘いお菓子は切り詰めた食費の為、ほとんど口にできない。 「俺は、餡子はあんまり好きじゃないんだよね。カスタードと生クリームは美味しいな」 残りも全て食べてしまう。赤ゆなんて直ぐに死ぬので、保存もあんまり効かない。 しかし、繁殖は容易なので時々は甘いお菓子を食べられる。青年にはそれで充分だった。 これから、2匹はシュークリーム製造機として生きていくことになるだろう。 「おにいさん?!おちびちゃんはどこおおおおおおお?????」 「けんじゃあああああああああああああああああああ?????」 シュークリーム食べてて思いついた話です。 挿絵:
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‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ それを見つけたのは、久しぶりに部屋の大掃除をしている時だった。 「おお、これは懐かしい……」 すっかりボロボロになった、小さめの箱。 表面には、満面の笑みを浮かべるゆっくりのイラストと、セリフが描かれている。 『ゆっくり採集セットだよ!』 『ゆっくり捕まえていってね!』 小さな頃に入手したは良いが、存在を忘れて適当に押し込んでいたのだろう。 箱を開けてみると、小さな注射器まで入っている。 最近は何かと物騒だし、この手の道具はご法度だ。 「もう、こういうものは流行らないのだろうなぁ」 野生ゆっくりは、かなり森の中まで行かないとお目にかかれなくなっている。 街の野良ゆっくりは一斉駆除ですっかり姿を消してしまったし、飼いゆっくりに手を出すと当然問題になる。 時代の流れというやつだ。 「明日は休みか……よし!」 休日の予定も特になく、街の喧噪にも飽いていたところだ。 これは、ちょうど良い暇つぶしになるかもしれない。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 「居ないものだなぁ……」 手持ちぶさたに、取り網をブラブラと振り回す。 気がつけば、かなり森の奥まで来てしまった。 既に人工物の類は、全く見当たらない。 耳に入るのは、木々の葉を揺らす風の音と、微かに聞こえる河のせせらぎぐらいだ。 入念に辺りを見回すが、ゆっくりのゆの字も見あたらない。 森の中でさえ、既に絶滅してしまっているのだろうか? ……少し、腹が減ってしまった。 取り網を足元に置き、傍らの岩に腰を下ろす。 私はひとまず小腹を満たすため、リュックからおにぎりを取り出した。 「もっと、森の奥まで行くべきか?」 おにぎりに口をつけた、その瞬間だった。 「ゆっくりしていってね!」 聞きなれた、しかし最近では珍しくなった声。 木陰から覗く、キリリとした眉毛に不敵な笑顔。 「お、ゆっくりしていってね」 「ゆゆ~ん!」 挨拶を返されたのが嬉しかったのか、笑顔が更に弾けてゆく。 黒髪に赤いリボンは、れいむ種というヤツだ。 大きさはバレーボール程だろうか。 「ゆ……」 よく見れば、口元からは涎が垂れている。 その視線は、私のおにぎりに釘付けだ。 「……これが欲しいのかい?」 「ゆ! ゆ!」 れいむは、その場でピョンピョンと跳ね始めた。 どうやら正解だったようだ。 私はおにぎりを少し千切ると、れいむの手前に投げてやった。 「ほら、食べろ」 「ゆわーい」 れいむは何の警戒もせず、おにぎりの欠片へ飛びつく。 まずは匂いをかぎ始めた。 鼻も無いのに匂いが感じられるのは、まったくもって不思議なことだ。 次に、おにぎりの欠片へ舌を伸ばす。 ひと舐めすると満足気にほほ笑み、やっともそもそと食べ始めた。 「むーしゃ、むーしゃ」 私は、おもむろに取り網へ手を伸ばす。 「しあわせー!」 れいむが、歓喜の声と同時に私を見上げてきた。 静かな森の中、ガッチリと目が合う私とれいむ。 「っ!」 目線を合わせたまま、私は取り網を振り下ろす。 「……ゆ?」 れいむは幸せそうな笑顔のまま、私を見続けていた。 私も、れいむを無言で見つめ直す。 そのままの体勢で、数秒は経っただろうか。 「ゆ!? ゆっくりできない!?」 やっと状況が把握できたらしく、れいむが網の中で暴れだす。 と言っても、片手で簡単に抑えきれる程度の抵抗ではあるが。 そのうち、暴れるれいむの足元から、まだ少し残っていたおにぎりの欠片が散らばってゆく。 「ゆ! むーしゃ、むーしゃ」 れいむも気がついたらしく、おにぎりの欠片を再び食べ始める。 一通り処分すると、また私を見上げて笑顔になった。 「しあわせー!」 「そうか、良かったな」 「……ゆ? ゆっくりできない!?」 状況を思い出したのか、れいむが再び網の中で暴れだす。 野良ゆっくりの駆除は、かなり短期間で大きな成果を上げたと聞く。 私は、その理由がよくわかったような気がした。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ こんな簡単に餌で釣られるのなら、準備をしておくべきだった。 手持ちの食料は、自分の昼食分ぐらいしかない。 「すーや、すーや」 リュックに取り付けた捕獲用の網に目をやると、れいむが眠りこけていた。 先を絞った網に納まっている様子は、まるでスイカのようだ。 閉じ込める時は、それなりに抵抗をしていたのだが……。 ものの数分もしないうちに、絶賛睡眠中のようだ。 「すーや、すーや」 「………………」 リュックと共にれいむを下ろし、拳を握り締める。 大きなキズは付けたくないので、れいむの底面を手前に向けた。 よく見ると、底面が軽く波を打っている。 このれいむは、あまり寝相がよろしくないようだ。 おしおきが必要だな。 「ふんっ!」 渾身の気合で、れいむの底面に拳を打ち込む。 適度に柔らかく、それでいて心地よい反発。 「ゆぎゅ!?」 素早くリュックを背負い直す。 当然、網に入ったれいむも背中へ戻る。 「……なんだか、いたいゆめだったよ。こんどはもっとよいゆめをみるよ!」 「ああ、ゆっくりしていってね」 「ゆっくりしていってね! ……すーや、すーや」 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 私は、れいむが出てきた木陰の奥へ足を進めていた。 ゆっくりは、少なからず群れるものだと聞く。 もしかしたら、仲間か……巣が見つかるかもしれない。 だが、いくらゆっくりとはいえ、野生のものだ。 さすがに巣となると、そう簡単には見つからないだろう。 「みゃみゃのけっかいっ! は、ゆっきゅりできるにぇ!」 「ゆっくち! ゆっくち!」 簡単に見つかったようだ。 木のうろに、不自然に立てかけられた小枝。 小枝の隙間からは、プチトマト大の丸いものがしっかりと見えていた。 1、2、3……たくさんの赤ゆっくりだ。 巣の目前に立ちふさがる私に、全く気がつく様子もない。 「みゃみゃは、まだかえってこにゃいの?」 「きっと、いっぱいかりをしてるんだよ!」 「あまあま、いっぱいだにぇ!」 「あまあま! あまあま!」 「ゆっくち! ゆっくち!」 もしかして、さっきのれいむの子たちなのだろうか。 そんな疑問も浮かんだが……。 熟睡中のれいむを起こすのも忍びないので、確認はしないでおく。 しかし、こんな小さな子だけを巣に残して、大丈夫なのだろうか。 赤ゆっくりを良く見ると、れいむ種の他にまりさ種も見える。 ということは、親の片方はまりさ種のはずだが……。 「でも、みゃみゃがいないと、れいみゅさびちぃよ」 「まりちゃ、ゆっくちしてにぇ!」 「ぴゃぴゃがいれば……ゆっぐ、ゆっぐ」 「ゆ……ゆわーん!」 ご丁寧な説明に、感謝する。 なるほど、親まりさは既に永遠にゆっくりしてしまったようだ。 可愛そうに。色々と辛いこともあっただろう。 「よっ、と」 私は汚物を避けるかのごとく、けっかいっ! を蹴り払った。 ついでに、足の裏で丹念に踏みにじる。 「ゆゆ!?」 赤ゆっくり達が、慌てて巣から飛び出してきた。 飛び出したといっても、歩みはゆっくりしたものだったが。 赤ゆっくりはどれもこれも、跡形も無くなったけっかいっ! ……が、あった筈の場所を見て驚愕している。 「けっかいっ! さん、ゆっくちちてにぇ!?」 「どこいっちゃの、けっかいっ! さん!?」 しばらくオロオロとしていた赤ゆっくり達だが、何匹かが私の存在に気が付いたようだ。 「……ゆ?」 「ゆわぁ!? にんげんしゃんだぁ!!」 私に気が付いたからなのか、単に錯乱しているのか。 赤ゆっくり達は、てんでバラバラな方向に散らばってゆく。 小さく細かく跳ねるもの、這いずり回るもの、と色々だ。 「ゆわーん! みゃみゃー!」 「たちゅけちぇね! たちゅけちぇね!」 赤ゆっくり達の移動スピードは、とてもゆっくりしている。 しかし、汗だか涙だかわからないが、妙に身体が湿っていて掴み辛かった。 「まりちゃ、ちゅかまりちゃくないよぉ!」 掴み辛かった赤まりさに、おもむろに足を振り下ろす。 「ゆぎゅぶっ!」 ついでに、足の裏で踏みにじる。 すり潰すように、丹念に丹念に。 「た、たちゅけちぇぶっ! ふぎゅ!」 処理を終えた私は、比較的掴みやすかった赤れいむを、母と同じ網へ放り込んだ。 親子水入らず、感動のご対面だ。 「みゃみゃ!?」 「すーや、すーや」 「ゆぅ、みゃみゃとってもゆっくちしてりゅにぇ!」 「すーや、すーや」 「れいみゅもゆっくちしゅるよ! ……ゆぴー、ゆぴー」 ああ、逃げるのに疲れて眠ってしまったんだね。 まだ赤ちゃんだもの、それは仕方がない。 私は、渾身の気合を込め、親れいむに拳を打ち込む。 「ゆぎゅ!?」 「ぴぎゅ!?」 押しつぶされるように、赤れいむが潰されてしまったようだ。 原型を全く留めず、ただの餡子の染みになっている。 「ゆぅ、またいたいゆめを……ゆゆっ!? あまあま!? ぺーろ、ぺーろ!」 「よかったな、れいむ」 「しあわせー! ……すーや、すーや」 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 結局、生きたまま捕まえられたのは、赤れいむ2匹、赤まりさ2匹だけだった。 他は全部、不可抗力により餡子の染みになってしまったようだ。 捕まえたゆっくり達は、網の中で親子仲むつまじく熟睡中だ。 「成体だと、あと1匹ぐらいか」 親れいむを捨てて、赤ゆっくりだけにすれば、もっと持ち運べそうではある。 しかし赤ゆっくりだけというのも、情緒が無い。なんの情緒かは知らないが。 「ゆゆっ!? れいむとおちびちゃんがぁ!?」 突然、背後からすっとんきょうな声。 慌てて振り向くと、金髪に黒帽子をかぶった丸い物体が鎮座していた。 網の中のゆっくりを見つめて、驚愕の顔で固まっている。 このゆっくり達と、顔見知りのまりさなのだろうか。 もしかしたら父親? しかし、父親は永遠にゆっくりしたはず……。 「れいむとおちびちゃん、まるでおそらをとんでるみたい!」 既にまりさから驚愕の顔は消え、恍惚とした表情に変化していた。 私は、ひとまず声をかけてみる。 「ゆっくりしていってね」 「ゆっ! ゆっくりしていってね!」 「お前、このゆっくりの知り合いか?」 「そんなことより、まりさもおそらをとびたいよ!」 まりさが頬を染めつつ、その場で何度も飛び跳ねる。 ポヨンポヨンと、自然界に相応しくない奇妙な音が響き渡る。 「これは飛んでいるのではなく、捕まっているだけなんだが」 「とばせてね! まりさとんじゃう!」 どうやら日本語が通じないようだ。 仕方がないので、網の中のれいむを地面に下ろし、拳を打ち込む。 「ゆぎゅ!?」 「おはよう、れいむ」 「ゆぅ……れいむ、いたいゆめを」 「このまりさは、お前の知り合いなのか?」 「ゆ? ま、まりさ!? れいむのまりさ!?」 親れいむの声に、やっと我に返ったのだろうか。 飛び跳ねるだけだったまりさが、反応を示し始める。 「そうだよ! れいむのまりさだよ! ゆっくりりかいしてね!」 「まりさ、あいたかったよー!」 「れいむ、あいたかったよー!」 まりさが、一直線に愛するれいむの元……つまり私の元へ向かってくる。 すかさず手を伸ばし、まりさの帽子を掴み上げる。 「ゆあぁ! すてきなまりさのおぼうしさんが!」 急ブレーキをかけて、れいむに向かうのを止めるまりさ。 頭上高く持ち上げられた帽子を取り戻そうと、一生懸命に身体を伸ばし始めた。 「まりさのおぼうしさん、ゆっくりもどってね! のーびのーび!」 「がんばってね、まりさ!」 まりさは何やら忙しそうなので、代わりにれいむへ疑問をぶつけてみる。 「なぁれいむ、お前のまりさは死んだんじゃなかったのか?」 「まりさはしんでないよ! れいむはしんじていたよ!」 「じゃあ今まで、まりさは何処に居たんだ?」 「かりにいって、かえってこなくなっただけだよ!」 なるほど、何か事故にでも遭っていたのだろうか。 見れば親まりさの身体は、あちこちキズだらけだ。 愛するものの元へと帰るべく、様々な苦難を乗り越えてきた証なのだろう。 暖かい家族の絆に、思わず目頭が熱くなってしまうのを禁じえない。 「のーびのーび! のーびのーび!」 親まりさの妙に伸びたドテっ腹に、私は尊敬の気持ちを込めた拳を打ち込んだ。 「のーびのーぶぎゅふぅっ!」 親まりさが、くの字になって吹っ飛んでゆく。 それを見て親れいむが絶叫する。 「ばでぃさー!?」 「こらこら、愛するものの名前を間違うなよ。バディサじゃなくてまりさだろ?」 「ばでぃさは、ばでぃさだよ! ゆっぐりりがいじでね!」 「……ふんっ!」 「ゆぶっ!」 親れいむも疲れているようなので、私の拳で眠らせてあげた。 寝言もなく横たわっている様子を見る限り、今度は幸せな夢でも見ているのかもしれない。 傍らに居た赤れいむが、今の衝撃で一匹潰れてしまったようだが致し方ない。 「まりさのおぼうし、かえして……ね」 か細い涙声が、私にかけられた。 お腹の辺りを真っ赤にした親まりさが、私に向かって這いずってきているようだ。 「どうした、お腹でも痛いのかい?」 「すてきな……まりさの……おぼうし……」 大事な帽子に、万が一のことがあってはいけない。 親れいむ達が眠る網の中へ、帽子をそっとしまいこむ。 「ゆんやー! かえしてね! かえしてね!」 それを見て、親まりさが一目散に網の中へ潜り込む。 やはり家族の絆は、私が思っていたよりも強かったようだ。 また生き別れになどならないよう、網の口をきつく締め上げる。 「まりさのおぼうしさん! ゆっくりおかえり!」 さっきまで涙目だった親まりさも、すっかり満面の笑顔だ。 「ふんっ!」 「ゆぎゅふっ!」」 長旅で疲れた身体を癒すには、睡眠が一番だ。 親まりさが安らかな眠りについたのを確認し、私は安堵する。 今の衝撃で更に赤まりさが一匹潰れてしまったことも、いつか良い思い出になるだろう。 これで後腐れなく、森を後にすることができそうだ。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 森から帰ってきた私は、早速、次の準備を始めた。 網の中から熟睡中のゆっくり達を取り出し、ちょうど空いていた大き目の水槽に並べてゆく。 この大きさなら、先刻のように不可抗力で赤ゆっくりが潰れることもないだろう。 結局、最終的に持ち帰ることができたのは……。 親れいむ&親まりさと、赤れいむ&赤まりさ、それぞれ一匹ずつ計4匹だけだった。 希少種までとは言わないが、もう少し色々な種類が欲しかったものだが……。 一斉駆除の影響が出ているのだろうか。 既に野生では、元々絶対数の多いれいむとまりさが大半なのかもしれない。 「ゆふぁ~、よくねちゃよ……」 「ゆ……おはようおちびちゃん」 「……まだねみゅいよ~」 「ゆふふ、おちびちゃんはおねぼうさんだね!」 「きゃわいくちぇ、ごめんにぇ!」 ゆっくりの生態について思いを巡らせているうちに、家族がお目覚めのようだ。 眠そうな目をもみあげやおさげで擦りつつ、ぼんやりと私の方へ視線を向けてくる。 「ゆゆっ!」 「ゆっくりしていってね!」 「しちぇいっちぇにぇ!」 「ああ、ゆっくりしていってね」 「ゆふ~ん」 挨拶を返すと、満足げに笑みを浮かべるゆっくり達。 「ゆゆ? ここはどきょ?」 「わからないよ!」 「ぴゃぴゃがいるよ!」 「おちびちゃん!」 「みゃみゃもいるよ!」 「おちびちゃん!」 親子が夢にまで見た、感動の再会だ。 どのゆっくりも涙が滝のように溢れている。 「ゆっくりできるね!」 「ゆっくりしようね!」 「ゆっくりしていってね!」 「しちぇいっちぇにぇ!」 家族の問題は無くなったようなので、私は準備の続きに戻る。 水槽から少し離れた場所に標本台を置き、採集セットの中身を広げてゆく。 「さて、まずは……」 私は腕を組み、最初のゆっくりをどれにするか考え始める。 「おちびちゃん、これからはずっといっしょだよ!」 「ぴゃぴゃ~!」 「ゆっくち、ゆっくち!」 まぁ、どれでも良いか。 「なにがあっても、まもってあげるからね!」 「れいむのまりさは、もりでいちばんつよいんだよ!」 「ゆゆ~ん! てれるよ、れいむぅ~」 たまたま目に止まった赤れいむを、水槽の中から摘み上げる。 「ゆっくち、ゆっく……ゆっ?」 涙で滑っているのか、掴み辛い。 もう少し指に力を込めて……。 「ゆ、ゆわぁ~! れいみゅ、おしょらを」 グシャッ! 「……あ」 「ゆ?」 「おちび……ちゃん?」 どうやら、力を込めすぎたようだ。 空中で餡子を撒き散らしながら、潰れてしまった。 「まりちゃの、きゃわいい、いもうちょがぁ~!?」 水槽の中に、赤れいむだったものの破片が降り注ぐ。 その様子は、まるで餡子のシャワーのようだ。 「れいむの、かわいいおちびちゃんがぁ~!?」 「かわいいまりさの、おちびちゃんがぁ~!?」 まぁいいか、赤ゆっくりならもう一匹いるし。 私は、あらためて慎重に赤まりさを摘み上げる。 「ゆゆっ! まりちゃ、おしょらをとんでりゅみちゃい!」 「ゆ、ゆわぁ~! れいむのかわいいおちびちゃん、とってもゆっくりしてるよ~」 「さすが、かわいいまりさのおちびちゃんだよ!」 家族の歓迎に包まれながら、赤まりさは標本台にセットされた。 標本台は、四方を浅く囲まれた箱のような形になっている。 赤まりさは、顔を天井に向けた状態だ。 「……ゆゆっ? なにしゅるの?」 キョロキョロとせわしなく周囲を伺う赤まりさを、片手で抑える。 暴れないことを確認すると、私は採集セットからピン針を何本か取り出した。 少々錆びついているようだが大丈夫だろうか? 「あしょんでくりぇりゅの? ゆわーい!」 「ねぇ、れいむ!」 「なぁに、まりさ?」 「おちびちゃんも、りっぱにゆっくりしていることだし、ひさしぶりに……!」 「ゆふふ……まりさったら、こんなあかるいうちから!」 「そういうれいむだって、まんざらじゃないんだよ!」 「まりさ……!」 「れいむ……!」 まずは……どこに刺せば良いんだろう? 赤まりさの身体を見渡し、適当な所を探す。 「はやくあしょんでにぇ! あしょんでにぇ!」 期待に満ち溢れた目で、赤まりさが私を見つめている。 ふと、ピコピコと激しく揺れるおさげが目についた。 「ここかな」 プスッ! 「……ゆ?」 赤まりさが、おさげと私の顔を交互に見つめる。 まん丸な目には、疑問の色が浮かんでいるようにも感じた。 「まりちゃのおしゃげさん……? うごきゃないよ?」 「そりゃ、ピン止めしたからな」 「どうちて?」 「どうして、って……」 返事の代わりに、ピン針を頬のあたりに差し込んでやる。 決して、説明が面倒だったわけではない。 「ゆびゃあ~っ!」 ピン針に特に問題はないようだ。 もう片方の頬やお腹のあたりに、次々と刺してゆく。 「いちゃい! いちゃいよぉ!」 ここにきて、赤まりさが暴れだした。 帽子が外れて、標本台から落ちそうになる。 「まりちゃの、しゅてきなおぼうちがぁ~!」 「おっと」 赤まりさが大きく身体を捻ろうとした瞬間だった。 ピン針が、赤まりさに刺さったまま折れてしまったのだ。 「やっぱり錆びてたかぁ」 「ゆんやぁ~!? いちゃい、いちゃいよぉ~!」 赤まりさが、グニグニと身体を揺らす。 異物を排除しようとしているのだろうか。 「まりちゃのなかに、なにか、はいってくりゅ~!」 「仕方ない、もう一本刺すか」 折れたピン針の辺りを狙い、再度刺しこむ。 「ゆっぴいぃ~!?」 「お?」 赤まりさがあんまり暴れるものだから、ピン針で刺されている周辺が裂けてきたようだ。 じわりじわりと、裂けた肌から餡子が漏れ始めている。 「まずいな、補強しないと」 裂けている周辺に、次々にピン針を刺しこんでゆく。 「やめっ! いちゃ! ぴぃ! ゆ゙っ! ゆ゙っ!」 刺しこまれる度に、赤まりさはビクビクと痙攣を始めるようになってしまった。 「ん? どうした?」 「ゆ゙っ! ゆ゙っ! ゆ゙っ! ゆ゙っ!」 赤まりさが妙なリズムで鳴き始めた。 ピン針を刺されるのが嬉しいのだろうか? ゆっくり版の針治療みたいなものだろうか。 そういうことなら、期待に答えてやらねばなるまい。 今度は赤まりさの腹の真ん中あたりに、ピン針を一気に刺しこんでやった。 「ゆ゙っ!」 今まで以上に、赤まりさが大きく鳴いた。 ゆっくりのツボはよく分からないが、針が効いたんだろうか。 「……もっちょ……ゆっきゅり……したかっちゃ……」 「あれ?」 赤まりさは、身体の穴という穴から餡子を漏らし、動かなくなってしまった。 これでは標本とは呼べない。ただの生ゴミだ。 おかしい……何を間違った? 「……あ、そうか。先に殺さないと駄目だったっけ」 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 「んほおおおぉぉ!」 「……すっきりー!」 水槽の方から、何やら嬌声が聞こえた気がした。 元赤まりさだった生ゴミを処分した後、あらためて水槽へ向かう。 「なにしてんだ、お前ら?」 「ゆふぅ……」 「ひさしぶりだから、いちだんともえちゃったよ!」 「なやましくてごめんね!」 「よく分からないが、お前らの番だぞ」 どちらでも良かったのだが、とりあえず親れいむを両手で持ち上げる。 「ゆゆゆ!? れいむおそらをとんでるみたい!」 「ゆわー! さすがかわいいまりさのれいむ、ゆっくりしてるよー!」 「……あれ?」 気のせいか、捕まえた時よりサイズが大きくなっているような気がする。 特にお腹のあたりが大きく膨れているような……。 「まぁ、殺ることは一緒だから別にいいか」 ひとまず作業台へ親れいむを乗せる。 これだけ大きくなると、普通の標本台じゃうまく入らないかもしれない。 「ちょっと待ってろ」 「ゆゆ~。おちびちゃん、ゆっくりうまれ……」 親れいむの声を背にし、標本台の代わりにダンボール箱を持ってくる。 天井側のフタを切り取り、あらためて親れいむを上から入れ込んだ。 「ゆゆっ? ここどこ?」 「注射器は……よし」 笑顔のまま、ダンボールを気にしてキョロキョロしている親れいむに注射器を向ける。 そのまま躊躇なく一気に刺しこむ。 「チクっとしたよ!」 親れいむが、もみあげを使って注射部分をさすり始める。 まるで予防接種を受けた昔の子供のようだ。 そんなに揉んで欲しいのなら……私は手を伸ばす。 「ゆゆっ! もーみもーみ! もーみもーみ!」 私が揉むのに合わせて、親れいむがリズムを取り始めた。 だんだん頬が紅潮してきているような気がする。 「……ゆゆっ! う、うまれる!」 「え?」 膨らんだお腹に小さな穴が開き始め、小さな丸いものが顔を覗かせている。 目をこらして丸いものをよく見ると……。 「ゆっくちうまれりゅよ! きゃわいくてごめんにぇ!」 それは親れいむそっくりの目と口で、満面の笑みを浮かべていた。 外へ出るべく、丸いものがじりじりと蠢いている。 「おいおい、こんな時に……」 「れいむのかわいいおちびちゃん、ゆっくりうまれてね!」 「ゆっくち! ゆっく……ゆ?」 「……ゆぐっ!?」 赤ゆっくりは、既に半分ぐらい顔を出していた。 髪の毛や飾りはまだ見えないので、何の種類なのかは分からない。 親れいむが苦しそうな声を上げて、いきみ始める。 なぜか赤ゆっくりまで苦しそうだ。 「ゆっくりでも、お産は苦しいものなんだな」 「なんだきゃ、ゆっくちできにゃい……」 「く、くるしい……たす……け……」 私は、生命の神秘を静かに見守った。 やがて赤ゆっくりがボテッっと生れ落ちると……。 「れいみゅ……ゆっくちうまれちゃ……かった……」 そのまま、ピクリとも動かずに固まってしまった。 黒髪に赤リボン、どうやられいむ種だったようだ。 が、既に笑顔はどこにもなく、生気が全く感じられない。 「あれ? どうしたんだ、おい」 「お、おちび……ちゃん……?」 親れいむも気がついたようだが、動かしたのは視線だけだ。 身体は全く動かしていない。 大きな目からは涙が溢れ、苦しみを訴えるかのような口元からは涎が垂れている。 いつも無駄にキリリとつり上がっていた眉毛も、すっかり八の字型になっていた。 「どぼじで……」 ついに親れいむも、固まってしまった。 いくら突付いても、殴っても、反応が無い。 「……ああ、注射が効いただけか」 注射器に貼られた、イラスト付きラベルを見直す。 『ゆっくり固めていってね!』とフキダシ付きのゆっくりが、そこには描かれていた。 「こんなに苦しんじまうのか」 親子れいむの表情は、とてもじゃないか飾るに適したものではなかった。 目も口も眉毛も、恐怖と苦痛に満ち溢れている。 もっと良い表情で固めるには、どうすれば良いのだろう? 元親子れいむだった生ゴミを処分しながら、私は考えを巡らせた。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 「ゆゆっ? おそらをとんでるみたい!」 昼寝を始めようとウトウトしていた親まりさを、水槽から掴み上げる。 こいつも、捕まえた時より大きくなっているような……? 「まりさとんでる~!」 「なぁ、まりさ」 ダンボールに親まりさをセットして、私は問いかけた。 「お前も子供産むのか?」 「ゆゆ!? まりさとんでない! とびにくい!」 「このお腹の大きさは……」 「そんなことより、まりさをとばせてね!」 親まりさの帽子を掴み上げ、即バラバラに引き裂く。 「ゆあぁぁぁ!? すてきなまりさのおぼうしさんが!」 「質問に答えたら、おぼうし治してやるぞ」 「ほんとう!? ゆっくりありがとう!」 「で、子供産むのか?」 「れいむがはげしすぎて、まりさまでおしたおしたんだよ!」 「へー」 「だから、おぼうしなおしてね!」 「あれは嘘だ」 「ゆがーん!?」 とりあえず、この身体のキズを何とかしなければならない。 親まりさの身体は、長い放浪生活のせいか、かなり痛んでいる。 私は採集セットから、小さなチューブ型容器を取り出した。 イラスト付きラベルには『ゆっくり治していってね!』とフキダシ付きのゆっくり。 容器を絞ると、練った小麦粉のようなものがひり出てきた。 どうやら、これが修復薬のようだ。 「暴れるなよ?」 「ゆゆっ?」 両手を使って、修復薬を親まりさの身体に万遍なくすり込んでゆく。 「ゆ、ゆふっ! ゆふっ!」 見る見る間に、親まりさのキズが目立たなくなってゆく。 かなり古い薬なのだが、ちゃんと効くものなのだなぁ。 「き、きもちいいよ! もっとぬりぬりしてね!」 同時に親まりさの息も荒くなってきているようだ。 頬もほんのりと染まり、幸せ一杯の笑顔だ。 「ぬーりぬーり! ぬーりぬーり!」 「うん、この表情なら……」 注射器を手に取り、ほんの少しだけ薬剤を注入する。 「チクっとしたよ! ……ゆぐっ!?」 あっという間に表情が曇り、苦痛を訴える親まりさ。 これでは先程と同じ結果になってしまう。 私は、慌てて修復薬を塗り直した。 「ゆぐっ……ぬーりぬーり? ぬーりぬーり!」 ガッチリと私に視線を合わせ、もっと塗ってくれと訴えんばかりの親まりさ。 輝くような笑顔は、まさにゆっくりの標本に相応しい。 再び私は、注射器を刺しこむ。 「チクっとしたよ! ぬーりぬーり! チクっとしたよ! ぬーりぬーり!」 私は注射器と修復薬を交互に使い、親まりさの笑顔を絶やさないよう留意した。 これならば、良い標本が完成しそうだ。 そして、注射器を使い終わろうとした瞬間……。 「……ゆっ!? うまれる!」 先程の親れいむと同じように、親まりさのプックリ膨れたお腹に穴が開き始める。 そこから親まりさ同様の眩しい笑顔が、ゆっくりと覗き始めた。 「ゆっくちうまれりゅ……」 これも先程と同じく、顔部分だけが覗いているため種類はわからない。 違っていたのは、希望に満ち溢れた笑顔のまま動かなくなったことだ。 「かわいいまりさの、おちび……」 視線を親まりさの顔へ戻すと、こちらも笑顔のまま固まっている。 指で突付いても、何の反応も示さない。 どうやら、今度はうまくいったようだ。 しかも親子セットだ。 達磨の腹に、もう一つ小さな達磨の顔があるような外見になっている。 今度は安心して、ピン針を身体のあちこちに刺しこむことが出来た。 「苦労したが……これで完成だな!」 よくわからない達成感に、私は満たされていた。 親子まりさの輝くような笑顔も、祝福を送っているかのようだった。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ それを見つけたのは、久しぶりに部屋の大掃除をしている時だった。 「おお、これは懐かしい……って、あれ?」 すっかりボロボロになった、小さめの箱。 表面には、満面の笑みを浮かべるゆっくりのイラストと、セリフが描かれている。 『ゆっくり採集セットだよ!』 『ゆっくり捕まえていってね!』 「数ヶ月前にも、こんなことがあったような……あっ!」 採集セットの更に奥、押し入れの最深部に小汚いダンボールを見つける。 ゆっくりと戻ってくる記憶とともに、ダンボールの中を覗くと……。 「忘れてた」 そこには、親子まりさの標本が鎮座していた。 完成したは良いが、あっという間に飽きて、しまい込んでいたのだった。 いつかまた飾りたい気分になるかもしれない、と思っていたのだが……。 「もういいや。捨てよう」 ピン針は分別しないとな……。 処理を終えると、私は最寄りのゴミ置き場へ向かった。 見上げれば、今にも雨が降りそうな曇り空。 「思い出も、雨とともに過去へ流されてゆくのかな」 うまいこと言ったつもりだったが、全くそんなことはなかった。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ あれから、どのぐらい経ったのだろう。 ゆっくり採集のことも、親子まりさのことも忘れかけていた、ある日のことだった。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくちしちぇいってにぇ!」 突然の声に振り向けば、そこには見覚えあるゆっくりが居た。 「お前は……」 「おにいさん、ひさしぶり!」 「ゆっくち! ゆっくち!」 達磨の腹に、また小さな達磨の顔。 親子まりさの標本だったものが、ゆらゆらと身体を揺らしていた。 「なんで生きてるんだ?」 「よくわからないよ!」 「ゆっくちりかいしてにぇ!」 拳を何度か打ち込んで、平和的に事情を聞いてみる。 簡単に言うと、こういうことらしかった。 ゴミ捨て場に親子まりさを捨てた日、やはり雨が降ってきていた。 そこには他のゆっくりゴミも混じっており、餡子が雨に流れて親子まりさに降り注いだらしい。 「とってもおいしかったよ!」 「また、たべたいにぇ!」 採集セットの注射薬剤は、固めるだけで殺しはしないものだったのか。 親れいむを捨てたのが晴れの日で良かったよ。 それにしても、そんな簡単に復活できるものなのか? 「適当だな、お前ら」 「ゆゆっ! かわいくてごめんね!」 「ごめんにぇ!」 その時、複数の足音が近づいてくるのに気が付いた。 「通報があったのは、確かこの辺りだが……」 「お、居た居た」 声が聞こえた方へ、私も親子まりさも顔を向ける。 制服を着込んだ二人の大人が、こちらへ向かってきていた。 あの制服は確か……野良ゆっくり処理の……。 「失礼します。野良ゆっくり処理班なのですが……」 「これは、あなたのゆっくりですか?」 処理班の一人が、親子まりさを指差した。 「いえ、全く知りません」 「ゆ~?」 状況を把握していないだろう親子まりさが、間の抜けた声を上げる。 相変わらずの笑顔のまま、私と処理班を交互に見上げ続けていた。 「そうですか、では処理しますね」 「お疲れ様です」 処理班の一人が、ポケットから小さな注射器と飴玉を取り出した。 その場にしゃがみこんで、親子まりさに顔を向ける。 「あまあまあげるから、おいで」 「あまあま!」 「あみゃあみゃ!」 顔と腹から涎を撒き散らしつつ、親子まりさが処理班の元へ飛び跳ねてゆく。 すかさず注射器が親子まりさに刺しこまれた。 「ゆぐっ」 一瞬だった。 あっという間に親子まりさはその場に固まり、動かなくなってしまった。 やはり最新のものは効果が早いものなんだなぁ。 「またそんな……こんなものは適当に処理すれば良いんですよ」 もう一人の処理班が、固まった親子まりさに蹴りを入れた。 「ほら、こうやって……こう……ヘヘッ!」 蹴る。蹴る。殴る、蹴る。殴る、蹴る。 気が付けば親子まりさは、餡子と何かが混じった塊と化していた。 「……終わったか?」 「ハァ、ハァ、ハァ」 「じゃ、それお前が片付けろよ?」 「えっ。あっ……クソッ!」 最後にもう一度、親子まりさだったものに蹴りが入った。 ずっと親まりさと一緒だった子まりさ部分も既に分解され、飛び散っている。 しかし偶然か、顔の欠片部分だけが親子向かい合ったような形で、そこにはたたずんでいた。 「すみません。見苦しい所をお見せしました」 「し、失礼しました……」 処理班の二人が、私に向かって頭を下げる。 「いえいえ、気持ちはわかりますよ。では……」 処理班と親子まりさだったものを背にし、私はその場から立ち去った。 全てが終わったはずなのに、何か、心の中にこみ上げるものがあった。 「……あんまん食べたくなってきた」 ‐‐‐‐過去作‐‐‐‐ ふたば系ゆっくりいじめ 766 まりさがまりさだよ! ふたば系ゆっくりいじめ 761 ゆっくりした週末 ふたば系ゆっくりいじめ 755 まりさもみもみ ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
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『冬のゆっくりキリギリス』 54KB 観察 パロディ 自業自得 引越し 番い 野良ゆ 子ゆ 都会 よろしくお願いします。長いです [冬のゆっくりキリギリス] 秋が深まるにつれて、街もしだいに色彩豊かになってくる。緑一色だった街路樹も鮮やかに紅葉し、大通りを通る人々が思わず見上げたくなるほどだ。 どこかにぎやかな雰囲気を感じさせる、そんな季節だ。住宅地からやや離れた公園も、落ち葉やどんぐりで色とりどりになっていた。 そんな静かな公園の、切り整えられた植え込みから、一匹のゆっくりまりさが飛び出した。 ゆっくりぴょんぴょんするよ! と宣言して、落ち葉の絨毯の上を、ゆっ、ゆっ、と跳ねて進む。 「ゆわあぁ……ゆっくり……ゆっくりだよぉぉ! ゆっくりした、たいようさんだよぉぉっ!!」 涼しい秋風に吹かれ、暖かな陽射しに包まれたまりさは、じーんと感動したような顔になり、空を見上げて叫んだ。 よほど嬉しいのだろう。うっすらと目に涙さえためながら、ぽいんっぽいんっと飛び跳ね、喜びを全身で表現した。 昨日は雲さんが意地悪をして、ゆっくりした太陽さんをずっと隠してしまっていた。 そのうえ一昨日は怖い怖い雨さんがずっと降ってきて、狩りにさえ行けなかった。 ゆっくりは雨に打たれ続ると死んでしまう。まりさだけに限らずゆっくり全てにとって、雨の日にできることはあまりにも少ない。 結局その日は、寒さと溶けるかもしれない恐怖に震えながら、ゆんゆん泣くおちびちゃんたちを慰めつつ、ひたすら晴れ間を待つだけで一日が終わってしまった。 ゆっくりできなかった日々の反動で、餡子のなかが「ゆっくり」でいっぱいになったまりさ。よほど感極まったのだろう、ゆっくりしていってね! と天高らかに声をあげた。 「ゆーっ! ……ゆゆっ! れいむ、おちびちゃんたち、ゆっくりでてきてね! きょうはまりさと、『ぴくにっくさん』にいこうねっ!」 久しぶりのゆっくりできる日。ゆっくりはゆっくりするからゆっくりであり、こんな日に思う存分ゆっくりしないなんて有り得ない。 餡子の底から湧き上がるそんな考え。居ても立っても居られず、まりさは半ば衝動的に口を開いていた。 (ゆ? でも、まりさはかりにいかなくちゃ……ゆゆっ!? すごいよぉぉ!! ゆっくりしたごはんさんが、いーっぱいはえてきているよっ!) 思いつきで宣言をしてから、自分は狩りをしなくてはならない、と思い直しそうになったまりさ。 しかし秋は、実りの季節。公園には赤い木の実も、葉っぱさんもちらほらと見えて、そこらじゅうに生えている。 草さんもたくさん生えているし、大きな大きな木の下には、どんぐりも生えていた。 固い固いどんぐりさん。そのままではとても噛めたものではないが、割れて中身がとれるようになったものもたくさんあるはず。 これだけのごはんさんがあれば、ちょっと狩りに出ただけでおぼうしの中がいっぱいになるに違いない。 そう考えはじめると、まりさの餡子の中はあっという間に、先程思い描いた「ゆっくり」でもう埋め尽くされた。 「ゆっくり! まりさはきめたよ! きょうはかりにいかなくても、ゆっくりしたごはんさんがいっぱいあるよ! きょうは、みんなでゆっくりしようね!!」 振り返って呼びかけると、植え込みからゆっ? ゆゆっ?と声が上がり、やがてそれは嬉しそうな歓声に変わる。 少しすると、みかんサイズの子ゆっくりが二匹、植え込みのおうちから元気に姿を現した。 「ゆわぁぁい! ぴくにっく! ぴくにっくしゃん! ぴくにっくしゃんはゆっきゅりできりゅよ! ゆっきゅりしちぇっちぇにぇ!」 「ゆっくち! ゆっくち! まりちゃ、おしょとでゆっくちしゅるのじぇ! ゆんゆーん! ゆっくちしちぇいっちぇね!!」 笑顔でもみあげさんをぴこぴこさせている、れいむ似のきゅーとなおちびちゃん。ふっくらとしたほっぺに、くりくりのおめめが愛らしくて仕方がない。 得意そうに眉をキリッとさせる、まりさ似の凛々しいおちびちゃん。同じまりさとは思えないほど賢く、数だってたくさん! 以上に数えられる。 油断すれば卒倒しそうになるほどの、あまりにも可愛らしいえんじぇるたちだった。 ぽーかぽーかした陽射しの中、ずーりずーりと這ってくるその姿は、まりさの何よりも大切なたからものだ。 「ゆっ! ゆっ! れいむは、けっかいっをはったよ! れいむとまりさのおうちは、これであんっぜんっ! だよ!」 おちびちゃんたちに遅れて顔を出したのは、まりさの番のゆっくりれいむ。 まりさが狩りに出かけるときも安心して留守を任せられる、とてもゆっくりしたゆっくりだ。 背の低い植え込みに、ビニール袋と草の屋根を編みこんだまりさたちのおうちは、れいむのけっかいっにより、完璧に姿を隠している。 生まれた時から一緒に過ごしてきた、幼馴染みのれいむ。巣立ちと同時につがいになり、ちゅっちゅをし、らぶらぶすっきりーをした。 常にまりさと共にあった、かけがえのないパートナーだ。 最初の頃は失敗もあったけれど、いまはすっかり一人前の主婦ゆっくりだと言わざるを得ない。 そんなれいむの、いちばん得意なのがこの「けっかいっ」である。 枯れ葉や木の枝で作った見事なカモフラージュには、子ゆっくりの頃から大人ゆっくりがが舌を巻くほどだった。 まりさまで誇らしい気持ちになり、餡子さんがぽーかぽーかしてくるのだった。 「ゆゆっ、おきゃーしゃん、おとーしゃん! しゅーりしゅーりしちぇにぇ!」 「ゆぅっ! まりちゃも! まりちゃもしゅーりしゅーりしちゃいのじぇ!」 「ゆふふ、おちびちゃんたちはあまえんぼうだね! ぴくにっくさんのまえに、ゆっくりすーりすーりしようね!」 「まりさのおちびちゃん! おとーさんとおかーさんで、だぶるすーりすーりだよ! すーりすーりすーり!」 「「ゆわぁぁい! ゆわぁぁぁい!!」」 おでかけの前におねだりをして、思う存分のしあわせー!を堪能したおちびちゃんたち。 頃合いを見計らったまりさがうながすと、また元気に這いずりはじめた。 キラキラした目で前進する後ろの地面、うれしーしーの跡が点々と続いている。 まりさはれいむと顔を見合わせて、しょうがないね!と無言で笑いあうのだった。 「ゆっ、ゆっ……まりさ、ひさしぶりのぴくにっくさんだね! れいむ、とってもたのしみだよ!」 「まりさもだよ! さいきんはかりさんでいそがしかったからね! でもきょうは、ゆっくりしたごはんさんがいーっぱいだから、ゆっくりできるね!」 「ほんとうだね! きっとゆっくりしたおちびちゃんたちにたべてもらいたくて、はえてきてくれたんだね!」 そんなことを話しながら、可愛らしいおちびちゃんたちを見守りつつ進む。 餡子の底からぽーかぽーかする日差しを感じながら、ゆふふ、ゆっくり、とまりさとれいむは笑いあった。 向かう先には、短くてふさふさな芝が広がる大草原――人間の視点では、公園の広場がひろがっている。 通りに面したその広場で、まりさがゆっくりついたよ! と宣言をする。 待ちきれなかったと言わんばかりの活発さで、子まりさと子れいむははしゃぎはじめた。 「れいみゅ、ゆっくちきょーそうしゅるのじぇ! ゆぅぅぅ、ゆっくちー! ろけっとすたーとしゃんなのじぇー!!」 「ゆぅっ! おねーしゃん、しゅごいよ! れーみゅも! ろけっとしゃんで、ゆっきゅりおいかけりゅよ!」 さっそく競走をはじめて思い思いに駆け回るおちびちゃんたち。 見守るまりさの小麦粉の肌に、れいむが「ゆんっ♪」とほほを寄せた。 「ゆっくりだよ……まりさたち、ゆっくりしてるよ……!」 「まりさ……れいむ、しあわせーだよ。こんなにゆっくりしてて、いいのかな……?」 「ゆふふ……いいんだよ! だってまりさたちは、ゆっくりなんだからね……!」 すーりすーりをしてくるれいむに、まりさもすーりすーりを返す。 子供の頃から思い描いていた、ゆっくりした家庭がここにある。 そんな実感に包まれた、圧倒的な「しあわせー」の真っただ中にまりさたちはいた。 昨日や一昨日のように大変なときもあるけれど、それを乗り越えればゆっくりには、こんな最高のゆっくりが約束されているのだ。 こんな時が永遠に続けばいいと、まりさは餡子の底から思っていた。 れいむもきっとそれは同じだろう。まりさにはそんな確信があった。 しかしまりさやれいむがそうだったように、おちびちゃんたちはおちびちゃんのままではいられない。 いつかゆっくりしたゆっくりになるべく、日々ゆっくり成長しているのだ。 つい最近赤ゆっくりを卒業し、子ゆっくりと呼べるサイズになったところだ。これからは少しずつ、ゆっくりしたゆっくりになれるように教育していかなければならない。 ただゆっくりさせているだけでよい赤ゆっくりの時期とは、また違った子育てが求められるのだ。 ゆっくりはいつしか、変わっていってしまうものである。 しかしそれは悲しいことではないのだと、れいむとまりさはおちびちゃんたちを見つめながら思うのだった。 「ぴょーんぴょーんしゅるよ! …………ゆゆっ? これにゃーに?」 そんなゆっくりした、ぴくにっくさんの最中。ぴょんぴょんと跳ねていた子れいむがふと、体をかしげて声をあげた。 何かを見つけたらしい。子まりさも跳ねるのをやめて、子れいむの方にずーりずーりと這い、何事かと顔を突っ込む。 「おにぇーちゃん、みちぇ! ありさんが、ゆっくりわっしょいしちぇるよ!」 「ゆっ? ……ゆわぁぁぁ、ほんとーなのじぇ! ありしゃんが、ばったしゃんをわっしょいしてりゅのじぇ!」 ありさん。ばったさん。まりちゃとれーみゅ。 単純な思考のゆっくり、まして等しく自己中心的な子ゆっくりたちである。 状況を餡子脳に照らし合わせて、導き出された答えはひとつだった。 「ありしゃんが、ごはんしゃんをもってきてくれちゃよ! れーみゅたちが、ゆっきゅりしてりゅからだにぇ!」 「しょーなのじぇ! これは、れーみゅとまりちゃへの、みちゅぎものなのじぇ! ゆっくちー!」 それを聞いて肝を冷やしたのはまりさとれいむだ。 バッタさんはいい。バッタさんはゆっくりできる、ゆっくりのためのごはんさんだ。 しっかりした歯ごたえと柔らかさ、口の中に広がるジューシーな風味は、子れいむと子まりさの好物のひとつだ。 だがアリさんは駄目だ。アリさんは、ゆっくりできない。 まりさとれいむは小さい頃、おうちを抜けだして遊んだことがある。 そのとき一緒にアリさんを食べようとして、仲良く舌を噛まれてしまったのだ。 勝手におそとに出たことに大目玉をくらうわ、ひーりひーり、ずーきずーきとした痛みがなかなか引かないわ。その時の記憶は大変ゆっくりできないものとして残っている。 そんなことを思い出している間に、おちびちゃんたちは今にもバッタさんに、アリさんごと食らいつこうとしている。 まりさとれいむは肝を冷やして顔を見合わせ、慌てておちびちゃんたちのもとへ跳ねていった。 「おちびちゃんまってね! ありさんはちーくちーくしてゆっくりできないよっ! ゆっくりはなれてね!」 「ゆっ? しょーにゃの? ……よくみちゃら、ありしゃんはゆっきゅりちてないにぇ!」 「ちーくちーく……ゆううう? ありしゃん! まりちゃ、ばったしゃんたべちゃいのじぇ! どーちて、いじわるしゅるのじぇぇ!」 「おちびちゃん、あんしんしてね。ありさんがもってきてくれたごはんさんは、おとーさんがとってあげるよ!」 「「ゆゆっ!?」」 体をかしげたおちびちゃんたちの前に躍り出ると、まりさはバッタを運ぶアリの群れに向かって、おさげを勇ましく突き出した。 そうして器用にバッタを掴むと、ぱっぱっと何度も素振りをした。振り払われたたくさんのアリが、放物線を描いてどこかへ飛んでいく。 最後にバッタを地面に落として、おさげを箒のように使い、取りきれなかったアリを払いのける。 やがて綺麗になったバッタを、アリが残っていないか確かめてから、二つにちぎっておちびちゃんたちに差し出した。 「……ゆ、ゆわぁぁい! ばったしゃん! おちょーしゃん、ありがちょぉぉぉ!!」 「ゆうううう!? しゅごいのじぇぇ!! まりちゃのおとーしゃんは、ゆっくちさいっきょーなのじぇぇぇ!!」 鮮やかな手際を見せられてぽかーんと呆けていたおちびちゃんたちは、差し出されたバッタを見、まりさの顔を見て、大喜びで跳び上がった。 子れいむはしーしーをうれしゅっきり! し、子まりさは父親を尊敬のまなざしで見上げている。その様子にまりさも満足して、ゆっくりした笑顔で返した。 「ゆふふ、それほどでもあるよ! さあおちびちゃん、ゆっくりめしあがれ!」 「おちびちゃん、おとーさんにゆっくりかんしゃしようね!」 「「ゆわぁぁい!! おちょーしゃんありがちょー!! むーちゃ、むーちゃ! ……し、し、しあわしぇぇぇええ!!!」」 ゆっくりしたバッタさんをたべて、しあわせー! でいっぱいのおちびちゃんたち。 れいむが寄り添ってきて、一緒にその様子を見守るまりさ。何度かのむーしゃむーしゃを経て、バッタさんはおちびちゃんのぽんぽんにおさまった。 「ありしゃんはゆっくちしてにゃいけど、ありしゃんのごはんしゃんはゆっきゅりしちぇるにぇ! ……ゆゆ?」 「おちょーしゃん、おかーしゃん。どーちてありしゃんはゆっくちしてにゃいのじぇ?」 バッタさんを食べ終わった子まりさと子れいむは、体を左右に折り曲げてれいむとまりさを見た。 バッタさんは、美味しいごはんさんだ。それに比べて、アリさんはゆっくりしてない。 さっきのようにごはんさんをもってきてくれるアリさんは、ゆっくりできる存在のように思えた。だが現実は、ゆっくりしてない。 ゆっくりしてるけど、ゆっくりしてない。そのことが不思議で、子まりさと子れいむはゆんゆん唸りはじめた。 「ゆぅ……」 まりさは感動と、一抹の寂しさを感じながら、おちびちゃんを見つめた。 ゆっくりしていればそれでよかった、純真そのものの赤ゆっくりだったおちびちゃん。 そのおちびちゃんたちが今、世界のいろんなことについて知ろうとしている。ゆっくりにとってゆっくりできる、ゆっくりした成長。その一端を窺わせる、わずかな変化であった。 だがそれは、おちびちゃんたちがおちびちゃんを卒業し、ゆっくりした大人になりはじめた証であり―― まりさは振り返る。嬉しそうな顔のどこかに、れいむもわびしいような、なんともいえない感情をにじませていた。 視線を交わして、まりさは向き直る。その隣に、れいむが跳ねてきた。 そうして、まりさたちは教えはじめた。いつかおとなになるおちびちゃんたちのために、ゆっくりできる世界の真実を。 「それはね、おちびちゃん。ありさんが、ゆっくりじゃないからなんだよ」 「「ゆゆっ?」」 「おちびちゃん、ゆっくりは、ゆっくりできるよね。でもありさんは、ゆっくりじゃないから……だから、ゆっくりできないんだよ」 「ありさんは、ひなたぼっこでぽーかぽーかもしないし、ぴくにっくさんもしないよね?」 「まいにち、いちにちじゅうはたらいてばかりだよね? ゆっくりできてないよね? ……かわいそうだけど、しかたないんだよ。ありさんたちは、ゆっくりじゃないから……」 子れいむと子まりさは、少ない餡子脳で、ゆんゆんと過去に思いをはせた。 この子ゆっくりたち、アリを見るのは初めてではない。 いつもせかせかと外をうろついて、ごはんさんを探しまわっているアリさん。 おとうさんとおかあさんの言う通り、とてもゆっくりできるとは言い難かった。 「だから、ゆっくりできないありさんのかわりに、まりさたちがゆっくりしてあげるんだよ! それがせかいの、せつりっ! なんだよ!」 「ありさんがどんなにゆっくりしてても、ゆっくりよりゆっくりはできないんだよ。ありさんは、ゆっくりがうらやましくてしかたないんだよ」 「さっきのありさんたちは、おちびちゃんたちがゆっくりしてるから、ちょっとだけゆっくりできるようになったんだね。おちびちゃんたちゆっくりりかいできるよね?」 ゆっくりしてるゆっくりを見れば、みんながゆっくりできる。 ゆっくりが世界でいちばんゆっくりできる。だからゆっくりはゆっくりしなければならない。 そうすればみんながゆっくりできて、しあわせー! になれる。 まりさとれいむが紡ぐ言葉は、古くからゆっくりの餡子に受け継がれてきた、世界の真実そのものだった。 「……ゆっくりりきゃいちゃよ! れーみゅ、ゆっくちしゅるにぇ!」 「ゆっくちりかいしちゃのじぇ! ゆっくち! まりちゃはゆっくちだから、ゆっくちできりゅのじぇ!」 そのゆっくりできる教えは、餡子脳にうっすらと残っている記憶に結びつきはじめた。 キリッとりりしく眉をつり上げた得意げな表情で、子まりさはぷるぷると震える。 子れいむはニコニコとした満面の笑顔で、ゆらゆらと体を振りはじめた。 その様子を、まりさとれいむは懐かしいものを見る目で見つめた。 かつての自分たちも、そうやって両親から真実を教わったのだ。あの時の自分たちはどうだったっけと、こっそり視線を交わして笑いあうのだった。 「ゆゆっ! おとーしゃん、あっちににんげんしゃんがいるのじぇ!」 ふと、体を振っていた子れいむが気付いた。 まりさたちのいる公園の広場は、比較的敷地のすみっこにある。見ようと思えば、通りから公園を、あるいは公園から通りを覗くことは容易だった。 それでも夏までは、植えられた低木の葉が遮って、子ゆっくりたちから通りの様子は窺えなかった。 だから公園の外の様子を眺めるのは、子まりさと子れいむにとって初めての経験であり。せかせかと通りを抜けて行く人の流れを見るのは、ゆん生初の経験であった。 「ゆぅぅ……なんだか、ゆっくちしてにゃいのじぇ……」 「おちょーしゃん、おかーしゃん。にんげんしゃんも、ゆっきゅりできにゃいの?」 子れいむと子まりさは、可哀想なものを見る目であわただしい人の波を見た。 れいむとまりさはそんな様子を見て、残念だけど、その通りなんだよ。という憐みさえ含んだ声色でゆっくりと答える。 「そうだよ。だからにんげんさんは、ゆっくりにしっとして、たまにいじわるをするんだよ。かわいそうだね……」 「ほんとうはゆっくりにうまれたかったのに、ゆっくりになれなかったから……みてごらん。ぜんぜんゆっくりできていないよね? むしさんより、ゆっくりしてないよね?」 「ゆぅ……」 「ゆっくち……」 子れいむと子まりさはもう一度、行き交う人の群れを眺めた。 時計を覗きながら速足で歩いて行くお兄さん。電話に向かってしきりに話しかけるお姉さん。落としてしまった通勤かばんに書類を詰め込んでいるおじさん。 誰もかれもが、みんなゆっくりしていなかった。今までにも見たことのないくらい、ゆっくりしていない生き物。それが人間なのだ。 人間はゆっくりしてない。ゆっくりはゆっくりしてる。両親からのその教えは目の前の光景と合わさり、自然なものとして受け止められた。 子れいむと子まりさの若い餡子にしっかりと刻み込まれ、自然の摂理として吸収されていく。 「「ゆっくりりかいちたよ!!」」 そうして高らかに、元気な声で宣言するのだ。 先ほどよりも自信に充ち溢れた声色に、れいむとまりさは、ゆんゆん! とうなずいた。 「ゆゆんっ! じゃあおちびちゃんたち、みんなでいっしょにゆっくりしようね!!」 「おなかがすいたら、おひるにしようね! おちびちゃん、ゆっくりしていってね!」 「ゆわぁぁい! おきゃーしゃん、しゅーりしゅーり!」 「ゆうぅっ! まりちゃも! まりちゃもぉぉ!! ちゅーりっ、ちゅーりっ!」 ほんの少しおとなになり始めた、可愛い可愛いおちびちゃんたち。 その成長に確かな「ゆっくり」を感じながら、まりさとれいむはすーりすーりを繰り返すのだった。 寒い寒い冬の休日、粉雪の舞う冷たい朝のこと。 久々に夜更かしをした俺は、乗る予定のバスを寝過ごした。ものの見事に寝過ごした。 念のために二つセットした目覚まし時計を、二つとも止めて二度寝をするという徹底振りであった。我ながら惚れ惚れするような寝過ごし方である。 旅行に出ている親がもし家に帰って来ていて、親切心を発揮して起こしてくれていたたとしても、それさえスルーして三度寝を決めていたかもしれない。 とはいえ用事は大したものではなく、後回しにしてもさして問題はない程度であった。なんといっても、今日は休日なのだ。 最近寝不足気味だった頭は、今はとてもすっきりしている。寝過ぎてしまったことにまったく後悔はなかった。休日さまさま、二度寝万歳と言えよう。 「……おに……じゃ……だじゅ…………げ……」 「ちゅぶ……れ…………じゅ…………びゅ…………びゅ……」 「あーあ。どうせ二度寝するなら、目覚ましなんてセットしなくてよかったか。まったく」 加工所のゆっくり新商品、アラームに最適な『目覚ましまりちゃ』。 時刻とともに針でつつかれて悲鳴を上げさせられたまりさ種の子ゆっくりは、寝ぼけた俺がボタンを押したときから今に至るまで、平べったく圧迫され続けている。 咽喉をうまく圧迫することにより発声をほとんど止められた量産品ゆっくりは、よくよく耳をすますとかすかに悲鳴を上げていた。 休日の油断と布団恋しさで、とうとう土をつけてしまったことになるか。しかし友人に勧められて、この時計を使い始めてから、平日の用事を寝過ごしてしまったことは一度もない。 無力、脆弱、馬鹿と三拍子揃った役立たずであるゆっくりを人間の役に立てることにかければ、加工所の右に出るものはまだまだ現れそうにない。 その知恵をもっと別の方向に……と思わなくもないけれど、こうしてその恩恵にあずかっている以上は何も言えないか。 さて昼食には微妙に早いが、俺にとっては朝食に遅すぎない時間である。 潰れたカエルのようになっている目覚ましは放っておいて、人気のない家の階段をとんとんと降りる。 冬の朝は寒くてしょうがない、と心の中で愚痴りながら、降りて歩いて、ガスストーブの前に立つ。ボタン一つで気持ち良い温風が吹きだした。一生ここにいたいと心から思う。 とまあそんなわけにもいかず、のそのそと歩いて歩いて、台所へ。 休日にまで仕事が入らないよう、全てきっちり片づけてやっと得られた休日だ。何にも邪魔されずに……と思うとなんだか気分もノってきて、食べものもいろいろ食べたくなった。 食パンを一切れ、オーブントースターに放り込む。ダイヤルを回して放っておき、その間に卵を割って溶いておく。 油を熱したフライパンに注いでかき回せば、あっという間にスクランブルエッグの出来上がりだ。 思わずケチャップで模様なんかを描いたりして、赤と黄色が目に映える。とんとん。 そういえばレンジでチンするだけで飲めるスープがあったな。癖でパチンと指を鳴らして、冷蔵庫を覗きこむ。 マグカップに注いで温めれば、あっという間にコーンスープの出来上がりだ。 横着者の俺には最適だ。こういう便利な商品は是非とも開発を進めていただきたい。とんとん。 白い湯気が立ち上るマグカップを傾け、とんとん、少しだけ味見をしてみる。温めすぎたかとも思ったが、このくらいでちょうどよかった。 あとは残りものの野菜サラダがある。とんとんとんっ。レタスをちぎってミニトマトを乗っけただけだが、とんとん。とんとん。ぽゆんっ。まあ朝にはこれでいいだろう。ぽいんっぽいんっ。 食卓の一番奥の席、ストーブのすぐ前に陣取ると、丁度トーストがいい具合に焼けていた。ぽゆん。ぽゆんっ。とんとん。 それをぽんぽん、並べぽいんぽいん、いただきまゆっゆっ、ゆっゆっぽゆんぽゆん!! うるっさいなあ。 さっきから華麗にスルーしていたが、いいかげん鬱陶しいので目線だけ向ける。 食卓から見える窓の向こう。はらはらと降る雪を背景に、4匹のゆっくりの姿があった。大まりさ、大れいむ、小まりさ、小れいむという組み合わせだ。 食卓のすぐわきにある窓は、ゆっくりが覗くこともできないような高さにつくられているのだが。 しかしよくよく思い返すと、そういえばあの位置にはエアコンの室外機があった。 そこらへんのものを踏み台にして室外機の上にのぼり、そこから覗きこんでいるのだろう。 野良ゆっくりの例にもれず、4匹は薄汚い饅頭そのものといった風貌をしている。 特に小さいまりさとれいむの方は、ひどく頬がこけていた。薄汚い饅頭がさらに惨めな汚饅頭になっているという有様だ。 こちらから向けた視線に気付いたのか、成ゆんらしき汚らしい饅頭たちがこちらを見て、汚らしく唾を飛ばしながら汚らしく何かを訴えている。 小さな方は、薄汚れて褐色になったリボン付きがなにやらぐったりしている。飢えのために弱っているのだろう。 また、ゴミのついた汚帽子の方は、汚らしい涎をだらだらと垂らしている。その目は食卓にくぎ付けだった。 先程からとんとん、とんとん、としていた音は、大まりさと大れいむが、おさげやもみあげを窓ガラスにぶつけている音だったらしい。 ぽんぽん、ぽゆんぽゆん、という間抜けな音は、こいつらの窓硝子への体当たりの音であった。 「めんどくさいなぁ。汚いし、外は寒いし、汚いし、汚いし……」 しきりに何かを訴えているらしい大饅頭たちから視線を外し、俺はふぅとため息を吐いた。 このゆっくりたちが人間の家を乗っ取ろうとやって来たのか、それとも単に通りがかった飢えゆっくりなのかは分からない。 だがいずれにせよ、同じことだった。日本の標準的な窓ガラスは、ゆっくりが絶対に割ることができないように出来ているからだ。 ゆっくりが出すことのできる力、使い得る道具。多くの検証で得られたデータを元に、ガラスの耐久度は法律により定められている。 もっともゆっくりたちがその数字に与えた影響も、本当は微々たるものらしい。 実際はそういう質の低いガラスを作る業者が自然と淘汰されただけだ、と聞いたことがある。 なるほど確かに、と思ったものだ。「ゆっくりに割られるガラスの製作所」という評判は、ガラス工場からすれば「悪質業者」の四文字に等しい。 なので問題は目下、外に出ること。その一点にある。 季節は冬。寒い寒い冬である。しかもゆっくりゴミの回収BOXまでは近くない。 億劫なのだ。ただそれだけ。 「……あ。ま、いいか」 すっかり面倒な気持ちで胸がいっぱいになった俺だが、そんな気持ちも十数秒で晴れた。 どうせ窓ガラスを汚す以外、何もできやしないのだ。加えて庭には、ゆっくりに汚せるものは何も無い。荒される心配もゼロだろう。 それに汚れた窓ガラスも、さして気にならない事に気付いた。 ゆっくりによる汚れにもよく聞くと評判のクリーナーを、先週買ってきたばかりだったのだ。 何ならこの際、窓ふきくらいやってしまってもいい。 午後には少しくらい暖かくなっているだろう。どうせ暇で、やることは無いのだ。ちょっと早めの大掃除も悪くない。 それに今、俺の目の前には、美味しい美味しい朝ごはんがある。 さらに窓の外には、いかにもお腹がすいていますと言わんばかりの害虫が4匹、寒い雪の中で踊っている。 空腹は最高のスパイスと、偉い人は言った。 しかしその空腹とは何も、食べる当人に限った話ではないのだ。 初冬。 秋にはしあわせー! で一杯だった、ゆっくりできるまりさたちの家庭。 それが今は、おちびちゃんの泣き声で一杯であった。 「ゆえええん!! しゃむいよおお!! おなかしゅいたよおおお!! ゆっくちできないよおおおお!!」 「ゆっぴぃぃぃ!! もういやなのじぇぇぇ!! ゆっくりしちゃいのじぇぇぇ!! ゆじぇぇええん!!」 「ゆぅぅ……! ごめんね、おちびちゃんたち……すーりすーり、すーりすーりだよ……」 「ごめんね……ごめんね……もう、ごはんさんがないんだよ……ほんどうにごべんね……!」 お腹がすいた。寒い。ゆっくりできない。 その三つを訴え続ける子れいむと子まりさに、両親であるれいむとまりさはすーりすーりをして慰めることしかできない。 「まりざぁ、どうしてごはんさんがないのぉ……?」 「ゆぅぅ……こうえんさんにもはえてないし、ゆきさんでそとにでられないんだよぉぉ……!」 まりさは目に涙さえ浮かべて、番いのれいむに答えるしかない。 まりさ一家の食事は、一家の大黒柱であるこのまりさの「かり」の成果に完全に依存している。 一家の主食は公園の植物、木の実。それに動きの遅い昆虫やその死骸、あとは人間が時おり捨てて行くゴミなんかであった。 秋までは豊富だったどんぐりや木の実、色とりどりの草花も、いつの間にかすっかり姿を消してしまっていた。おまけに、時折降って来る白くて怖い「雪」の恐怖。 日本人なら「ああ、今年も冬だなあ」という程度の、当然起こる季節の変化だ。 だがまりさには、どうして食べものがないか分からない。 まりさもれいむも、生粋の野良ゆっくりである。 野良れいむと野良まりさの間に初春に生まれ、夏に独立し、秋に子を作ってここまでやってきた。 だから寒い冬など知らない。分かるはずもないのだ。 『おちびちゃん。ふゆさんはゆっくりできないから、あきさんのうちに、ごはんさんをいっぱいためておくんだよ』 『ゆっくりりかいしたよ!』 実のところ、まりさの親であるゆっくりまりさは、若ゆっくりだったころのまりさに、しっかりそう教えていたはずなのだが。 ゆっくりできること以外は、三歩跳ねれば忘れるのがゆっくりである。おちびちゃんが出来る頃には、そんなものはすでに忘却の彼方だった。 秋に生えてきた、たくさんのごはんさん。これだけあれば大丈夫、と目先のゆっくりを優先して、狩りをおざなりにしてしまった結果がこれである。 現在、植え込みのおうちの中に食糧の備蓄は無い。ほんのわずかな苦い草と、捨ててあったポテトチップスのカスがひとつまみだけ。 おちびちゃんたちの成長も遅れており、まだ舌っ足らずな赤ゆっくり言葉が抜けきっていない。成長に必要な栄養が、餡子に足りていないのだ。 「ぴぃぃっ! しゃむいぃぃ! もうやぢゃああ! しゃむいのやぢゃやぢゃやぢゃああ!!」 「しゃむいのじぇぇぇ!! ゆじぇぇぇん! ゆじぇぇええん! ゆっぐちぃぃぃ!!」 枯れ葉で作ったベッドさんも、冬の寒さには敵わない。 冷たい風がびゅうびゅう吹くたびに、子れいむと子まりさは悲鳴を上げた。 いつもゆっくりできた植え込みのおうちは、風を遮るものが何もない。ひっきりなしに吹く北風に、子ゆっくりが耐えられるはずもなかった。 (ゆうっ……どうしてゆっくりさせてくれないの? このままだとまりさたちも、おちびちゃんも、ゆっくりできなくなっちゃうよ……) 公園で餌が取れないのなら、公園の外のゴミ捨て場に――という発想は、まりさには無い。 防鳥を兼ねたネットや、倉庫のように作られた堅いドア、コンクリートブロックの厚い壁。 つくりは様々だが、どれもゆっくりが荒すことは決してできない。ゆっくりに長年悩み続けた、この国の対策の一環である。 日本という国に、ゆっくりの狩り場となるゴミ捨て場は、もうほとんど残っていなかった。 過去ゴミあさりを繰り返すゆっくりたちがいた時期もあったが、現在ではそうした害は滅多にない。 餌の取れないゴミ捨て場に行く習慣は、野良ゆっくりたちからはとうの昔になくなっていた。 ただでさえ都合の悪い事を忘れやすいゆっくりである。食べものが生えて来なくなった狩り場のことを、いつまでも覚えている個体の方が少ない。 まりさもその例に漏れなかった。まりさにとっての狩り場は、この公園の敷地内だけなのだ。公園に餌が無いとなれば、その時点で完全に手詰まりなのであった。 「れいむ……おちびちゃん……ゆっくりしていってね……」 「ゆぅぅ……まりさぁ、このままだとおちびちゃんが、おちびちゃんがぁぁ……」 「ゆっくり……だいじょうぶだよ。きっと、たいようさんやごはんさんが、ちょっとつかれちゃっただけだよ。すぐにまた、もとどおりになるよ」 「ゆっ……そうだね。あしたはおちびちゃんも、ゆっくりできるよね……」 今日はゆっくりできなくても、きっと明日は必ずゆっくりできる。 根拠の欠片も無い希望的観測を口にするまりさに、れいむはゆっくりを感じて微笑んだ。 「ゆ……ぐ……おど、じゃ…………おにゃか……しゅいた……ゆっぐぢ……」 「おぢびぢゃんじっがりじでええ! おがあざんだよ! おがあざんがごごにいるよっ!!」 「ぺーろぺーろ! ぺーろぺーろぺーろおおお!!」 しかし現実はそう優しくなかった。 公園に捨てられたゴミと、わずかな苦い草でなんとか食いつないでいたまりさたち一家。一か月と経たず、まず子れいむが体調を崩した。 目を半分も開けていられず、ぐったりと枯れ葉の上に横たわっている。 「いもーちょ、ゆっくち……ゆぅぅ、しゃむいのじぇぇ……まりちゃ、おなか、ぺーこぺーこなのじぇ……」 「ゆっ! おちびちゃん! おがーさんがすーりすーりしてあげるよ!」 「ゆぅぅ? い、いやなのじぇ……おかーしゃんのほっぺしゃん、ちゅめたいのじぇ……ゆっくち……」 「ゆぐっ……ごべんね、ごべんねぇぇ……!」 まりさ種はれいむ種よりも、活動的であることが多い。そんなまりさ種であるおちびちゃんの方は、まだ子れいむよりもマシな状態だ。 だが、もう丸一日なにも食べていないのは、子まりさの方も同じことだ。頬はこけ、訴える声にも元気が無い。 まりさもれいむも食事を抜きはじめて二日になるが、子ゆっくりの餡子の貯蔵はそれ以上に少ないのだ。 「ゆぐっ……まりざぁ、どうじよう……」 れいむは悲しさと不安で、まりさを見上げた。 れいむには、何もわからない。 今までは子供たちを守っているだけで、他のことはすべてまりさに任せれば上手くやって来れた。これからもそうだと、ずっと信じてきていたのだ。 救いを求めるような番いの視線を受けて、まりさはぐっと唇を噛んだ。 「……れいむ、おちびちゃん、よくきいてね。ここはもう、ゆっくりできないよ。ごはんさんもないし、とってもさむいさむいだよ」 そして、ぐいっと帽子をかぶり直すと。潤んだ目をおさげで払って、静かにそう切り出した。 「ゆっ……」 「ゆっくち……」 「だから、ゆっくりおひっこしをしようね。あたらしいゆっくりぷれいすを、さがしにいこうね」 「ゆぅぅ……ゆっくり、りかいしたよっ……! おちびちゃん、がんばってね!」 「お、かー、しゃ……ゆっきゅり……」 「まりちゃ、ゆっくちできりゅのじぇ……? ゆっぐ……ゆっくちしちゃい、ゆっくちしちゃいのじぇ……」 そうしてまりさたちは、住み慣れた公園を後にした。まりさの帽子の中に子供たちを入れて、思い入れの深いゆっくりぷれいすを、とうとう後にしたのである。 公園の外に出たのは初めてだった。 敷地内からは見たこともない、びゅんびゅん走る巨大なすぃー。 思わずしーしーを漏らしそうになりながらも、れいむとまりさは公園のすぐ外を、外周にそってずーりずーりと這う。 帽子の中におちびちゃんたちを入れる、という選択は正解だった。寒い寒い北風も、帽子をひとつ隔てるだけでだいぶ楽だ。 それでもときおり、帽子からは「しゃむいよぉぉ」や「おにゃかしゅいたのじぇぇ」といった声が聞こえてくる。 ゆっくりできていないおちびちゃんのために、まりさとれいむはただひたすら、ゆっくりせずに進み続ける。 (ゆぅぅっ……にんげんさんは、どうしておなかがすいたり、さむそうにしてないの? ゆっくりしてないにんげんさんなのに……) 途中、まりさはふと思った。休日のため人通りはまばらだが、見上げればそこかしこに人影がある。 首におかざりを巻き付けた人間さんや、手を何かで覆った人間さん。 相変わらずゆっくりしないで行きかっているが、寒さで凍えたり、飢えで苦しんでいる人間など一人もいなかった。 (ずるいよ……どーして……まりさたちのほうが、ゆっくりしてるのに……ゆゆっ! そ、それどころじゃないよっ、いそがないと……!) 理不尽さを声に出して訴えたかったが、そんなことをしていればまりさのおちびちゃんたちが危ない。 ゆっくりせずに、まりさは跳ねた。跳ねて、跳ねて、すぃーに驚き、跳ねて跳ねて、跳ね続けた。 「ゆっ、ゆっ、ゆっ……ゆゆっ? なに、これ?」 「ゆっ……おっきなはこさんだよ……」 横断歩道を渡る事も知らないしできないゆっくりたち。通ることのできる道は少なく、たどり着く場所もほぼ限られていた。 見たこともない色の壁にかこまれた、大きな大きな、人間の家。 二階建ての一般的な家屋も、ゆっくりたちの目にはお城のように映る。 まりさとれいむはぽかんと口をあけて、しばらくその家を見上げていた。 お帽子がずれそうになり、慌ててまりさは顔を戻した。そしてれいむと顔を見合わせる。 「ゆぅっ! まりさ、このおうちなら……!」 「ゆぅ、れいむ……でも、こんなおっきなおうち、だれかがつかってるにきまってるよ……」 「ゆっ、で、でもぉ、でも、まりざぁ……」 そんな事は言っていられない、切羽詰まった状況なのはまりさにも分かっている。どうするべきか分からず、ゆんゆんと唸り始めた。 しかし事態に拍車をかけるものが現れた。 まりさとれいむの目の前に、白くて冷たいそれが、はらはらと降り始めたのだ。 「ゆゆっ! ……ゆきさんだああああ」 「ゆわぁぁっ! ゆきさんはこないでね! れいむ、ぷくーするよ!」 「ゆわぁっ……ゆきしゃん……いやなのじぇぇ……まりちゃ、きょわいきょわいなのじぇぇ……!!」 「ゆぴ……しゃむいの、やぢゃ…………もう、やぢゃぁぁ……っ」 雨で溶けてしまうように、雪もゆっくりにとっての数多い天敵のひとつだ。 公園でも雪の降る日はガタガタと震えるしかなかった。だがおうちでは幸いなことに、ビニール袋や落ち葉の屋根がほとんどを防いでくれていた。 だがここは公園の外、屋根などない。雨宿りできるような場所も、右にも左にも見当たらない。 「ゆきさん」という言葉に、帽子の中のおちびちゃんたちにも恐慌が走った。子まりさの悲鳴と、子れいむの嘆きの声が上がる。 可愛い可愛いおちびちゃんたちの声が、ようやくまりさの背中を押した。 「し、しかたないよ! れいむ、このおうちであまやどりしようね!」 「ゆっ! ゆっくりりかいしたよ! それがいいよ! だれもつかっていなかったら、ゆっくりおうちせんげんをしようね!」 「ゆん! だれかがすんでても、ゆっくりしたおちびちゃんをみせたら、いえのなかにいれてやすませてくれるよね!」 「そうだね! ゆっくり!」 怖い怖い雪が降る中、まりさとれいむはそんなことを言いながら、おちびちゃんとともに敷地内へと侵入する。 普段は門が堅く閉じられていて、入ることなど不可能なのだが。しかしこの家の持ち主は、息子を置いて旅行中。 要するに車庫が開いていたのだ。まりさとれいむにも運が残っていた。 しかしその幸運も、ここで売り切れ。店じまいになってしまったらしい。 「ゆーしょ! ゆーしょ! ……どーしてはいれないのおおお!!??」 「とうめいなかべさんがじゃまずるよぉぉ! ゆっぐりいれてね! ゆっくりさせてねえええ!!」 「ゆ……まぢゃなのじぇ? まりちゃ、おうちにはいりちゃいのじぇぇ……ゆじぇぇぇぇん……」 「ゆぴ……ゆっぐぢ……ゆっぐぢさせで……」 家に入ろうにも、透明な壁が立ちはだかる。家の中の光景は見えるものの、どんなに進んでも入ることができない。 雪は先程から、徐々に勢いを増し始めている。粉雪だった白い粒は、粒の大きいぼたん雪へと変わりつつあった。 こうしてはいられない、と慌てに慌てる。バケツからエアコンの室外機に昇り、そこでおちびちゃんを外に出した。 そしてまだ試していない窓から、先程以上に力を入れてぐいぐい進もうとする。しかし一向に状況は変わらなかった。そのための窓ガラスなのだ。 「ゆっぐ……どぼじで……まりざぁ、どぼじではいれないのぉぉ……?」 「ゆぅぅっ、いじわるなかべさん、ゆっくりどいてね、まりさたちを、おうちに…………ゆっ?」 「ゆゆっ?」 そこで、まりさたちは見つけた。 おうちのなかを不意に、人影が横切ったのだ。 「に、にんげんさん……」 「ゆぅぅ……ここはやっぱり、にんげんさんのおうちだったんだね……」 まりさが先程言った通りである。こんな立派なおうちに、誰も住んでいないわけがないのだ。 このおうちは人間が先に住んでしまっていた。まりさたちより先に、おうちせんげんを済ませていたのだろう。 もしかしたら……と思っていたれいむとまりさは、がっかりと落胆した。 しかし。少しすると、ふつふつと心が沸いてくる。 「ゆぅっ! ずるいよ! にんげんさん!! ゆっくりしてないくせに、こんなおうちにすんでるなんて!!」 「ゆゆっ! ……そうだよ! れいむたちのほうがゆっくりしてるのに! こんなのおうっぼうっだよ! ゆっくりぷんぷん!!」 まりさからすれば当然の主張であり、れいむもすぐに追従した。 中の人間には声が届いていないらしく反応が無かったが、それでもまりさたちは止まらなかった。 ゆっくりはゆっくりしている。人間はゆっくりしてない。それが世界の摂理であるはずなのに、どうして人間の方がゆっくりしているのだ。 人間からしたら失笑ものの主張である。いちいち耳を貸すのは暇人か、よほどの物好きくらいだろう。 しかしそんなまりさとれいむの叫びは、強制的に中断された。 家の奥から戻って来た人間が、いくつもの皿をテーブルにならべたのだ。 「ゆわっ……ゆわわわわ! なにあれ! なにあれ! なにあれええええっ!!」 「ゆわぁぁ!! にんげんさんのごはんさん、すっごくゆっくりしてるよおおおおお!! れいむ、あんなのみたこともないよおおお!!!」 「ゆゆっ! ……ごはんしゃんなのじぇ? ゆわあああっ! ごひゃんしゃん! ごひゃんしゃんがいっぴゃいありゅのじぇえええ!!!」 「ゆっ……ごひゃん…………れーみゅ、……むーちゃ……むーちゃ、しゅるよ…………」 トーストにスクランブルエッグ。鮮やかな黄緑のレタスのサラダ。湯気の立ち上る、暖かいスープ。 今までのゆん生で見たこともないもの。しかし本能で、それらが人間の食事だと、ゆっくりたちにはわかるのだ。 ゆっくりは、ゆっくりできることだけを餡子に受け継いでいる。空腹と目の前の光景が、餡子の中でピタリと結びついたのである。 「れいむ、おちびちゃんたち! きょうはにんげんさんに、ごはんさんをもらおうね!」 「ゆっくりりかいしたよ! おちびちゃん、もうすこしまっててね!! もうすぐだよ! よかったね!!」 異を唱える者がいるはずもない。子れいむに至っては空腹と寒さでぐったりしている。 寒くて寒くて仕方のないのは他の三匹も同じだが、ゆっくりしたご飯さんをしっかりと目に焼き付けている。 俄然やる気を出しており、疲れも寒さもなんのそのだ。 「ちょうだいね! ちょうだいね! まりさたちに、ごはんさんちょうだいね!」 「人間さん! れいむたちはゆっくりしてるでしょ? ゆっくりしたゆっくりに、ごはんさんをちょうだいね!!」 「まりちゃ、むーちゃむーちゃできりゅのじぇぇ……! しあわしぇーなのじぇ……!」 「ゆっくち……ごひゃんしゃん……ゆっくち……」 おさげでとんとんと叩く。ぽんぽんと体をぶつける。一歩下がって反動をつけて、透明な壁さんに体当たりをする。 口の中いっぱいによだれを溜めながら、まりさとれいむのアピールはしだいにエスカレートしていく。 家のなかの人間さんはまだ気付いていないようで、こちらを見てもくれないのだ。もっと強く、もっと激しく、音を立てなければならないのが分かる。 子まりさは家の中の光景に目が釘付けだ。口からよだれをだらだらとたらして、キラキラしたおめめに涙さえ浮かべている。 丸一日何も食べていない状況は、子ゆっくりにはそれほど辛いのだ。こけてしまった頬も、にっこりとほほ笑みに吊りあがっていた。 そして子れいむはというと、ぐったりと横たわったままだ。だがごはんさんが目の前にあるのは、親や姉の会話からわかる。 うわごとのように食事を催促しながらも、心なし口元には笑みさえ浮かんでいた。 「ゆっ? ……にんげんさん?」 「ゆゆっ! にんげんさん! れいむたちにごはんさんをちょうだいね! ちょうだいねぇぇ!!」 「にんげんさん! おちびちゃんがおなかをすかせているよ!! はやく、ごはんさんをちょうだいね!!」 そこで、待ち望んだ人間からのリアクションがあった。 家の中から視線を向けて、たしかにまりさとれいむを、お腹をすかせたおちびちゃんを見たのだ。 ゆっくりしてない人間が、ゆっくりしているゆっくりにご飯を差し出すのは当然。 餡子の底から響くそんな考えに、アピールと繰り返していたまりさとれいむはますます色めき立った。 「…………ゆ?」 「…………ゆゆ?」 しかし人間は、ふとほほ笑んだかと思うと。 そのまま視線を外し、食卓に座ってしまった。 いっただっきまーす。 窓越しにでも聞こえるほど、元気よくそう言って、トーストをつかみ上げたのだ。 「ゆっ!? にんげんさん!? きこえてるんでしょっ!? にんげんさぁぁん!? はやくここをあけてねえええ!!」 「にんげんざん!? おちびちゃんがさきっででしょおおお!!? なにやっでるのおおおおぉぉ!?」 「ゆぅっ!? どーちて、くれにゃいのじぇ!? にんげんしゃん! まりちゃもむーちゃむーちゃしちゃいのじぇ!! ゆっくちちょうだいにぇ!!」 ぱりぱり。さくさく。もっちもっち。そんな音さえ聞こえてきそうな、ゆっくりとした食事風景が目の前で繰り広げられる。 バターとジャムを塗り、もぐもぐと頬張っていく人間さんは、ニコニコと幸せそうに笑っている。 美味しい美味しいごはんを食べているのだと、「しあわせー!」の一声がなくてもはっきりわかる。 「ゆうううっ!! にんげんざん!! どうしてあけてぐれないの!!? ゆっぐりざぜてね!! ゆっぐりざぜでよおおお!!」 「ちょうだいにぇ! ちょうだいにゃのじぇ! まりちゃにごひゃんしゃん! ……ゆじぇぇぇん! どーちてくれないのじぇええっ!!」 「おぢびぢゃんがおながをすかせてるでじょぉぉおお!? どうじでなのおおっ!! は……はやぐあげろおおおっ!!」 「まりざたちはゆっくりしたいんだよ!! ゆっくり……ゆううううっ! まりさ、ぷくーするよぉぉ!?」 サクサクのトーストも。しゃきしゃきのサラダも。ほかほかの卵やスープも。 起きぬけでお腹のすいている男の腹に、どんどんと消えて行く。 まりさたちが知る由もないが、目の前の人間は生まれてこの方、朝食だけは抜いたことがなかった。 おかげで朝から体はフル稼働。今年の秋も冬も、季節の変わりはじめの風邪とはとんと縁のない生活を送っていた。 「ゆ゛う゛う゛う゛っ!! ゆ゛う゛う゛う゛う゛う゛っ!! ……ゆ? …………ゆ゛ゆ゛う゛う゛う゛う゛うっ゛!?!?」 「ゆ゛っ……ゆ゛あ゛あ゛あ゛あああ!!! どぼじでごはんざんがないのお゛お゛お゛お゛おお!?!? どぼじでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え!!!!」 「ゆ……ぁ……ま、まりちゃの……まりちゃのぶんは……? ……ゆ、ゆじぇぇぇん!! ゆじぇえええええん!!!」 無駄な努力を尻目に、もくもくと朝食を平らげる男。終始笑顔であった。 ごちそうさま! の声を高らかに上げると、すっきり食べつくされた食卓を見て、三匹は嗄れんばかりの声で叫んだ。 「れー、みゅ……ごひゃん……しゃん…………もう……にゃい…………ゅっ………ゅ………」 「ゆっ!? ゆ、ゆわぁぁぁっ!!」 「おぢびじゃん!! じっがり! じっがりじでねえ゛え゛え゛ぇ!!」 「……にゃん、で……ごひゃん……しゃん…………だべ……ちゃ……ぃ…………………………………………」 「おぢびぢゃあ゛あ゛あああああ゛あ゛あん! おでぃびじゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん!!!」 「ゆあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ああああ!!! あ゛あ゛あ゛っ!! あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 目の前にあった食事が無くなったのを知ると、子れいむは絶望を顔に貼り付けて死んだ。 ごはんがたべたい。ごはんがたべたい。それだけを訴えて、訴え続けて死んだのだ。 大粒の雪が降りしきる。もう二度と動かなくなった我が子を前に、れいむとまりさは慟哭した。 「あっ、死んだ。片づけが一つ楽になったわ」 ゆっくりの視線をスルーしつつ食事を終えて、少しすると一際うるさい叫び声が聞こえてきた。 食事中に向けなかった目をそこでようやく向けてみると、子汚いリボン饅頭がころん、と完全に倒れていた。 こいつらの子供なのは一目で分かる。 子ゆっくりを失って叫んでいるあたり、子を見捨てるゲスではないようだが。それでもこちらにとっては、同じことだ。 さっきまで「ちょうだいね!」と叫んでいたのも、ちゃあんとこちらには聞こえていた。 寒い上に空腹で苦しんでいるのも、言われなくてもすぐに分かった。 だが俺は何もしなかった。 当たり前だ。害虫に施しなどあるはずもない。 庭に侵入し、厚かましくも食事を要求し、あまつさえ窓を汚すような存在に、くれてやるものなど何もないのだ。 こいつらの悲鳴をBGMにした朝食はいつも以上に、それはそれは美味しく感じられた。ああうまかった。 「おでぃびじゃあああああん!! な゛んでえ゛え゛え゛ええ!!!」 「どぼじでええええ! どぼじでどぼじでどぼじでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!!」 ふぅ満腹。と一息ついたところで、さすがにやかましくなってきた。 台所の流しに食器をおいて、ついでにゴム手袋と、大きなゴミ袋を取って来る。 車庫をしっかり締めておかなかった以上、この糞ゆっくりどもの害はうちの責任だ。自分でしっかり始末をつけねばならない。 そうして窓を開けた。すぐに網戸でゆっくりの侵入を防ぐ。 雪の降る冬の空気が、顔や腕に冷たく吹きつけた。つべたい。 「ゆう゛う゛う゛う゛う゛!!! ゆ゛う゛う゛……ゆ゛!! に、に゛ん゛げん゛ざん゛!!」 「ゆ゛ゆ゛う゛!! どぼじで!! どぼじであげでぐれながっだの゛!? おぞずぎるでじょお゛お゛!!」 「にゃんで……まりちゃに、ごはんしゃんくれにゃかったのじぇ……? どーちて、まりちゃをゆっくちさしぇてくれにゃいのじぇ……?」 「に゛ん゛げん゛ざん゛!! に゛ん゛げん゛ざん゛のぜいで! おぢびぢゃんが!! おでぃびぢゃんがぁぁおぢびぃぃ……!」 「れいぶにのおぢびぢゃん……どぼじでぇぇ……どぼじでぇぇぇぇえぇえぇ……」 「ゆ……? ま、まりちゃの、まりちゃのいもーちょがぁぁ!! どーちて、ゆっくちしちぇるのじぇぇぇ!!??」 害虫がなんか言ってら。 というか小さい黒帽子の方は、妹らしい子リボンの死体に今更驚いているのが何とも。 正直さっさと駆除して、ストーブの前に陣取りたいところだ。害虫とおしゃべりする趣味は無い。 だがこうまで俺のせいだ、お前が悪いと言われると、こちらとしても何となく気分が悪い。 「お前らにやるものなんて、この家には何もねーよ。何勝手なことほざいてんだか」 「ゆ゛っ……ゆ゛う゛う゛う゛!!?」 なんで。とかどうして。とか、そういうものを全部ひっくるめた顔をする親ゆっくり。 しかし野良ゆっくりって、本当に汚いな。臭いを嗅いだらキツそうだ。顔を近づけるのも遠慮したい。 「まりざだちのほうが、ゆっぐりしてるでじょおおお!??」 「ゆっぐりしてないにんげんは、ゆっぐりじてるゆっくりをゆっくりさせなきゃいけないんでしょおおおお!?」 はぁ。と俺はため息を吐いた。 ゆっくりとは話が通じない。だから絡まれたら、さっさと回収ボックスへ。加工所がお引き取りします。 そんなことは小学校でも教えているほどの常識だ。しかし俺は生まれてこの方、まともにゆっくりと話した事が無い。 ここまで絶望的に話が通じないとは。異文化コミュニケーションってレベルじゃぁねえぞ。 「知るか。どうせ冬になって、食い物が無くなって困ってたってクチだろ。なんで恵んでやらなきゃいけねーんだ」 「まりさたちはゆっくりだよ! ゆっくりはゆっくりしてるから、ゆっくりなんだよおっ!!」 「ゆっくりしてたら、ごはんさんがはえてこなくなったんだよ!! ゆっくりさせるのは、とうっぜんでしょおお!?」 のんびりしてたら飯が無くなるなんて、当たり前のコトだろう。 そう言ってやりたいのは山々だが、なにしろこいつらは話が通じない。 どうせ訳の分からんゆっくり語で、意味不明な言い訳をするのだろう。そう思うと自然と、ため息も出る。 どうにかして、こいつらの自業自得ぶりを分からせられないだろうか。 いつかこいつらの言語の翻訳機が出来たなら、試してみたい、と思わなくもない。 多分1回試して、すぐリサイクルショップ行きだろうが。 「ゆっくりしてる方がえらい、ってか。怠けてサボってるお前らの方がえらいのか? 飯も満足に集められないのに」 「ゆぐっ……で、でぼぉ! にんげんざんもさっき……」 「俺は集めてるぞ」 「ゆっ!」 「ゆ……ぇ……?」 「俺は毎朝休まず仕事に行って、夜は遅くまで働いてる。そうやって食いものにありついてんだ。お前らみたいなごく潰しと一緒にすんな」 理解できるかどうか分からないが言ってやった。 正直、社会に出て、仕事に就いた人間としては当たり前のことだ。誇ったり偉ぶったりするような話ではないのだが。 「ゆっくち……ゆっくち……」 「でも……にんげんさん。ま、まりさたちは、ゆっくりなんだよ……?」 「そ……そうだよっ。ゆっくりは、ゆ、ゆっくりするんだよ……? りかい、できる……?」 俺はため息を吐いて、窓に手をかけた。 ゆっくりは現実逃避が大好きな生き物と聞いたけど、ここにきてまで俺のせいにするその性根が理解できない。 世の中にはこいつらを好き好んで虐待する人もいる。物好きもいるものだと思っていたが、なんとなく理由がわかった気がした。 とにかくこいつらは厚かましく、あさましい。そして何より、絶望的なほど馬鹿だ。 もう会話をする気にはなれなかった。窓をするすると閉めながら、俺は言ってやった。 「そんなに言うなら、ゆっくり見てけよ」 「ゆっ?」 「ゆゆっ……?」 「今日は頑張って頑張って、ようやく取れたお休みなんだ。それに引き換え、お前らはただの、怠け者のキリギリスだ」 本当は日曜日だから家にいるだけなのだが。まあ嘘は言っちゃいまい。 親まりさはそれを聞くと、おずおずを俺を見上げて体をかしげた。きたねえ。 「まりさたちは、ゆっくりだよ……?」 「うるせえ。ただのたとえだ。働き者のアリの生活を見せてやるから比べてみな。ガキが死んだのも、自業自得だって分かるだろうよ」 子まりさに言われて気付いた。自分で自分を「働き者のアリさん」だなどと、子供っぽくてしょうがない。 自分のことを働き者だなんて、今までに思ったことは無いのだが。「そういやアリとキリギリスってこんな話だったな」と思って、気が付いたら口に出していたのだ。 「ゆっ……? ありしゃん……?」 「おう。アリくらいは見たことあるだろ?」 なんとも言えないむず痒さを覚えた俺は、子まりさにそう言ってから奥に引っ込んだ。 子まりさは何かが引っかかるのか、昔の記憶を思い出そうとしているように見えた。だがそれも、俺の知ったことではなかった。 人間が奥に引っ込んでから、少しするとまた食卓へと戻って来る。 そしてその言葉通り、三匹の観客の前で、「働き者のありさん」の生活ショーが始まった。 コーヒーを片手にチョコレートを食べる人間さん。 ふかふかのクッションに座り、流行りの携帯ゲーム機をいじる人間さん。 ストーブの前を占領し、胡坐をかいてのんびりする人間さん。 それらのコンビネーションが延々と繰り返されるだけのショーだ。だが自動リピートつきのその光景は、まりさ一家にとって衝撃的だったらしい。 「ゆぅぅ……まりざぁ……にんげんさん、どうして、あんなにゆっくりしてるの……」 「わ、わからないよぉ……ゆっくりのほうが、ゆっくりじでるのに……どぼじて……」 ゆっくりはゆっくりしてる。 人間はゆっくりしてない。 だが目の前の人間は、どう見てもまりさたちよりゆっくりしていた。 ゆっくりとしての根幹が、少しずつ揺らぎ始めている。それでも、目を離さずにはいられない。 ゆっくりするために生まれたゆっくりは、ゆっくりした光景から目を外すことなどできないのだ。 「ゆっくち……ゆっくち……」 特に子まりさは顕著だった。 窓の向こう側、人間さんのゆっくりした雰囲気から、まったく目が離せない。瞬きすら忘れるほどに、子まりさは見入っていた。 見たこともないあまあまさんやふかふかさん。ほかほかと湯気をたてる飲み物さん。 どこまでもゆっくりした様子の、人間さんのあの表情! あれが人間の生活なのか。人間の、ゆっくりした。自分を「ありさん」だと言った、人間の…… 「ゆっく、ち、ゆっ…………ゆ、ゆわぁぁぁっ!!!」 そのうち子まりさは、突然大きな声を上げた。 ぎょっとした目を向ける両親に向き直り、小さな口を限界まで開けて、大きな声で叫びたてる。 「うしょちゅきぃぃ! おちょーしゃんのうしょちゅきぃぃいい!!」 「ゆゆううううっ!!??」 突然の嘘つき呼ばわりに、何がなんだか分からないと言った顔で、まりさは飛びあがる。 そんなまりさに向かって、子まりさは叫んだ。 「ありしゃん!! ありしゃんなのじぇぇぇ!! どーちてぇぇ!! まりちゃ、どーちてありしゃんじゃないのじぇぇぇ!!」 「ゆぅっ!? おちびちゃん、おちついてね!」 「ゆっくりおちついてね! なかないでね、おちびちゃん……おちびちゃん?」 良く分からないことを喚き散らすおちびちゃんに、れいむも寄って来て慰める。 まりちゃ。ありしゃん。ゆっくち。どーして。そんな単語の羅列が続いて、まりさとれいむはほとほと困った。 人間が聞いても伝わるかどうか分からないゆっくり語だが、同じゆっくりであるまりさたちにも、その意図がつかめなかったのだ。 しばらく時間がかかったけれど、子まりさの言いたいことが概ね正しく伝わったのは、ほとんど偶然に近い確率であった。 「ありしゃんのほうがゆっくちしてるのじぇ! はたらきもののありしゃんは、とーってもゆっくちしてるのじぇぇ! ゆじぇええええん!!」 その叫び声が、まりさとれいむの餡子脳に結びついた。 働きもののアリの生活さん。ありさんのくらしは、ゆっくりしていた。 働き者のありさんは、ゆっくりしないで働いている。何故なら、ゆっくりすると、ゆっくりできなくなるから。 だからゆっくりは、ゆっくりできない。ゆっくりはゆっくりするから、ゆっくりなのだから。 そんな風に現実を正しく認識できた子まりさは、ゆっくりの中でもかなり賢い部類の餡子脳の持ち主だったのだろう。 ゆっくりはゆっくりしている。そんな理論に反する現実を、直視することは普通できない。 親であるまりさとれいむは、本来後者に属するゆっくりだった だが、それを口にしたのが子まりさであったことにより、二匹の餡子は冷たく硬直する。 「ゆっ……」 「ゆ……おちびちゃん……」 昔、まだ寒くなかった頃。おちびちゃんたちと出かけた、ゆっくり楽しかったぴくにっくさん。 その時教えた言葉を逆手に返されて、まりさとれいむは絶望の淵に叩きこまれた。 ゆっくりは、ゆっくりするもの。世界の真実だったその言葉は、何よりも大切な我が子によって、バラバラに砕かれた。 まずまりさの体から。続いてれいむの体から、ゆっくりとしての大切なものが消えて行く。代わりに得たのは、後悔ばかりだ。 「ゆっくちしてたら、ゆっくちできなくなるのじぇぇ! どーちてぇぇ! どーちてゆっくちしてちゃのじぇぇぇ!!!」 「ゆ…………おちびちゃ……」 「…………ごべ……んね…………ごべん、ね…………」 なおも叫び続ける子まりさに、すーりすーりをしようとするれいむ。しかしそんな力も抜けていき、寄せようとした体は動かなくなっていく。 そんなれいむを見て、まりさはぽろりと涙をこぼした。 流し始めると、もう止まらなかった。すぐにれいむも、ぼろぼろと泣きはじめる。 力の入らない体の代わりに、涙だけがとめどなく流れる。 (……おちびじゃん……ごべんね………………れいむは……) (まりさ、ありさんじゃなくて……ごめんね…………ゆっくりしたから……ごんなことに……) ゆっくりを奪われた体が、急速に力を失っていく。冷たい風が雪をまとって吹き付けると、二匹はあっという間に冷たくなった。 「……ゆっぐりじた……けっかが…………これだよ……」 最期に涙交じりにまりさが言うと、二匹そろって動かなくなった。 すっかり夢中になって読書に励んでおり、男は窓の外の様子を忘れてしまっていた。 ふと思い出して、もうずっと静かになっているそこを、男はそっと覗いてみた。すると新たに親ゆっくり二匹も動きを止め、声も完全に止まっている。 結局現実逃避から醒めたのかどうか、わからずじまいになってしまった。 だがそれも、男にとってはもうなんだかどうでもよかった。死んでくれたぶん、手間だけは省けた。この国に住む人間にとって、基本的にゆっくりとはその程度の存在なのだ。 死んでくれた。こいつぁラッキー。とばかりに、ゴミ袋を片手に窓を開ける男。 その顔に向かって、弱弱しい声がかけられた。 「ゆ……にんげんしゃん……」 「あ?」 子まりさが、カチカチになりかけた体を起こして見上げている。 親ゆっくりたちが動かなくなった後も、まだ生き残っていたのだ。 「ゆっくりはゆっくりしてない」という現実を知った子まりさが、何故絶望に死にゆかないのか? その理由は子まりさ自身の口から、目の前の人間に向けて語り始められた。 「ゆっ……きいちぇね。まりちゃ、まりちゃ……」 子まりさは話した。 昔連れて行ってもらったぴくにっくさんで、アリさんをみつけたこと。 そのアリがバッタの死骸を、わっしょいわっしょいと運んでいたこと。自分たちに、みつぎものをしてくれたこと。 そのみつぎもののバッタを、自分と妹で、仲良く分け合って食べあった、ゆっくりした思い出を。 「…………」 男の方は「なに言ってんだこいつ」から、徐々に険しさすら孕んだ視線で子まりさを見ていたのだが、語るのに夢中な子まりさはついぞ気付かなかった。 思い出を語り終えると、子まりさは続ける。 「ありしゃんは……ゆっくちしてるのじぇ……ゆっくちしてたから……みちゅぎものを、くれたんだじぇ……!」 これこそ、子まりさの餡子が、生きることを選んだ理由であった。 ありさんは、ゆっくりできる。その認識は子まりさの記憶と結びつき、子まりさの中に希望を見出したのだ。 「まりちゃに、みちゅぎものをくだしゃいっ……なのじぇ!」 ゆっくりできるありさんは、ゆっくりにみつぎものをしてくれるのだ。だからこの、ゆっくりしていた人間さんも! 子まりさは、そう確信したのだ。 「何が貢物だよずうずうしい。お前のそれはただの泥棒じゃねえか。蟻が『どうぞ、召し上がれ』だなんて言ったか? ああ?」 「ゆ…………?」 「自然ならまあその方が賢いのかもしれねーけどな。まあでも、ここは人間の家だから。薄汚ねーコソ泥にやるものはねえよ。そのまま苦しんで死ね」 ぺっ、と子まりさに唾を吐きかけてから、男はぴしゃっと窓を閉めた。 「ゆっ……ゆっくち…………ゆっくち…………」 冷たい雪風が吹いている。 子まりさの弱弱しい声以外に、庭には物音ひとつしていない。 雪は音を吸う。子まりさの声を聞くものは、何一つない。 家の中の人間も、子まりさに興味を無くしたのか。今は手の中にある携帯電話をいじるのに夢中だ。 声はおろか、視線さえ向けてくれない。 「にんげんしゃん…………たしゅけて……くだしゃい……おねがいしましゅ…………おねがい……しまちゅ…………」 子まりさは家の中を見つめながら、男の背中に向かって小さく助けを求め続けていた。 しかしそんな都合のよい救いの手など、男は持ち合わせてなどいない。 「ゆ…………ありしゃん…………ごめんにゃしゃい……ごめんにゃ…………しゃい……」 人間は助けてくれない。 そう悟った子まりさの餡子脳には、いつかのアリたちのことが思い浮かんだ。 目の前の光景が見えなくなり、アリたちで頭がいっぱいになる。バッタさんをわっしょいしていたアリさん。 そのアリさんがまりさの目の前にバッタさんをちらつかせる。かと思うと、そのまま遠い彼方に連れ去ってしまう。そんな光景が浮かんだ。 「もう、ばかにしましぇん……ごはんしゃん……もう、どろぼーしましぇん……たしゅけて……」 働き者のアリは、溜めた食糧で冬をゆっくりと生き延びる。 怠け者のキリギリスは、冬の寒さと飢えで死んだ。その子供も、例外ではない。 「しゃむいよぉ……おにゃかしゅいたよぉ……たしゅけて…………ありしゃん……どぼちて…………たしゅけ……たしゅ………………た…………」 最後にひとつ痙攣する。 そして子まりさの声は、永遠に止んだ。 その上に真っ白な雪が、風に吹かれて積もっていった。 ある冬の休日、静かな昼のことだった。 >おしまい< 半年ぶりくらいで新参がふらっと失礼しました。 最近寒いですね。みなさん体には気をつけて。 お読みいただき有難うございました。
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律「はあ、唯が風邪と」 梓「昨日の夜くらいから具合悪そうで、今朝にはバタンキューと。平沢の話いわく」 律「最近急に冷え込んでからな。あたしもこの前熱出したしさ」 澪「だな」 梓「あいつ世界の終わりみたいに心配してたんで、逆にこっちが心配になりましたよ」 紬「大丈夫かしら……唯ちゃん」 澪「帰りにお見舞い行くか?」 律「そうだな……」 紬「でも学祭三日前に風邪は痛いわ」 紬「この前にも律ちゃんが風邪やったし、合わせの練習は去年よりできてない」 澪「それよりも唯の風邪が長引いたら……」 梓「唯センパイが出られなくなる……」 梓「(全員出られなくなるのもあるが、リードギターが抜けたら大問題だ)」 梓「ムギセンパイ」 紬「どうしたの?梓くん」 梓「最悪、唯センパイが寝込んだままなら、俺が唯センパイのパートやりますわ」 梓「譜面はわかりますし、なんとかこの三日でモノにして……」 紬「梓くん」ズイ 梓「な、何すか?」 紬「余計なお世話」 梓「え?」 紬「私達は五人揃って軽音部なの」 紬「五人揃わなかったら、それは未完成品であって、そんなものを出すくらいなら辞退するわ」 梓「……」 紬「それに大丈夫よ。唯ちゃんは土壇場が強いんだから」 梓「……そう言うもんですかね」 紬「そう言うもんよ」ニコ 平沢家 唯「へろ~……」ゴホゴホ 澪「……思ったより大変そうだな」 梓「(……俺は思ってたより大丈夫そうだった)」 梓「(憂の慌てっぷり見てたら40度超える熱出てるかと思ったからなあ……)」 紬「はい、これ。お見舞いのゼリー」 唯「ありがと……ムギちゃん」ゴホゴホ 律「はやく風邪治せよな、待ってるぞ♪」 唯「うん……そうしたい」ゴホゴホ 唯「迷惑かけてごめんね、みんな……」ゴホゴホ 梓「別にいいっスよ。風邪なんていつかかるかわからないし」 澪「じゃあそろそろ御暇するか?」 律「だな」 梓「それじゃセンパイ、できれば文化祭の日に」 唯「あ、あずにゃん……」ゴホゴホ 梓「……何スか?」 唯「ギー太……とって?」ゴホゴホ 梓「ちゃんと休まないとダメっスよ。体に悪いし」 唯「……添い寝するの~」ゴホゴホ 梓「あ……そうですか。はい」ヒョイッ 唯「ギー太ぁ~ひんやりしてて気持ちいよ~♪」ゴホゴホ ガチャ 梓「ギター始めてもうそろ十年、いろんなミュージシャンを知ってきたつもりですが」 梓「ギターと添い寝する人は今日はじめて見ましたわ、俺」 紬「唯ちゃんの持ち味だからね♪かわいいよね♪」 梓「かわいいっちゃあ、かわいいですけど……」 律「じゃあ、唯にお大事にって」 憂「はい。伝えておきます」 梓「あ、俺少し残りますわ」 律「……どうしたんだぁ?梓ぁ?」 律「もしや憂ちゃんとラブラブタイムを演じるつもりで……」 梓「だあああああああああああああっっ!!違います違います違いますってばっ!!」ブンブンブン 律「(なんか否定が凄い必死だな)」 律「(聡もだけど、男って恋愛関係になるととたんに全力で否定するのかな?)」 澪「ラブラブ……タイム……」 澪「」プシュー 紬「(澪ちゃんが恥ずかしがり性でオーバーヒート起こしてるわね……)」 澪「」プシュー 紬律「じゃあ、お大事に」 ガチャ 憂「……お姉ちゃん大丈夫だった?」ウルウル 梓「大丈夫だよ。少なくともお前が心配するほどの病状でもねえから」 梓「ほんっと、お前は途端にセンパイの事になると大げさになるからな」 憂「……そうかなぁ?」 梓「そうだっての。お前二言目にはいっつもお姉ちゃん、お姉ちゃんだろ。お姉ちゃんかわいいよねとか」 憂「だって本当にかわいいもん。アイスおねだりしてるお姉ちゃんとか、よだれ垂らして幸せそうに寝てるお姉ちゃんとか……」 梓「確かにまあ、世間一般的には……かわいい部類なのかもしれないけどさ」 憂「だよね♪」ニッコリ 梓「(……そんな笑顔されてもさぁ)でもまあ。大げさになる程の事じゃないからさ」 憂「そう言えば、なんで梓くんはうちに残ったの?」 梓「この前代わりに買ったギー太用のポリッシュ渡しそびれたんだ」ヒョイッ 梓「ギー太ってよく脂でぐしゃぐしゃになってるから、ポリッシュ欠かせないんだよ。代金は後からでいいんだけど、文化祭に脂と汗まみれのギターで出られても困るし」 憂「あはは……お姉ちゃんよくギー太と添い寝とかしてるからね」 梓「その現場もさっき見てきたよ」 憂「それじゃあ今お姉ちゃんのお茶淹れるから、その時に一緒に行こうか?」 梓「だな。病人のいる部屋をあんまバタバタできないしな」 憂「っと」コポポ 梓「…………」 梓「なあ憂」 憂「なに?」 梓「生姜とおろし金あるか?」 憂「あるよ。今取るね」 憂「はい、梓くん」スッ 梓「サンキュ……っと」シュコシュコシュコ 梓「あとハチミツかなんかあるか?なけりゃ砂糖でもいいんだけどさ」 憂「それもあるよ」スッ カポッ カチャカチャ 梓「……よし」 憂「あ、これって……生姜紅茶?」 梓「ムギセンパイが律センパイが風邪から復帰した後に、みんなの風邪予防って淹れてたの見てさ。風邪の時にはこれがいいかなって思ったんだよな」 憂「……」 梓「……あれ?まずかった?もしかして唯センパイ生姜苦手とか?でもこの前飲んでたし……」 憂「ありがとっ!」ニコ 梓「(すげー眩しい笑顔……)」 文化祭当日 音楽室 梓「結局、唯センパイは来なかった……か」 紬「憂ちゃんはなんて言ってた?」 梓「それが……朝から見てないんっスよ」 澪「……出番まであと一時間切ったぞ」 律「……今から和に辞退入れてくるか?それとも……」 梓「……限界まで待ちましょう」 紬「梓くん……」 梓「……どうせあの人の事だから、いつもみたいにギリギリに来ると思いますよ」 律「そうだな」 バタンッ 唯「ごめんっ!みんなっっ!」 澪「唯っ!?」 律「風邪治ったのかっ!?」 唯「うんっ!ごめんね!心配かけて!」 梓「(あれ?)」 律「よし!唯が揃ったし、最後の合わせ行くぞっ!」スチャッ 律「ワンツースリーフォー!」 ジャーーン!!! 律「凄い……今までと全く違うみたいだ……」 澪「確かに。なんて言うか新しい世界が見えてきたみたいだった!」 唯「ほんとだよ!凄いよ!」 紬「……その通りね」チラッ 梓「……ですね」チラッ 唯「え?どうして二人共こっち見てるの?」オロオロ 梓「もう芝居はいいぞ。憂」 唯?「えっ?な、何のこと!?」 紬「顔も声も唯ちゃんそっくりだけど、そのギター、唯ちゃんのギターの弾き方のクセと全く違うのよ」 紬「唯ちゃんは譜面にできるだけ沿って弾くけど、あなたの弾き方は違う。聞こえ方がいいように譜面をある程度アレンジして弾いてる」 紬「あなたのは梓くんの弾き方のクセそっくりなのよ」 梓「で、唯センパイに入れ替わることが出来て、俺と同じクセの出る弾き方する奴って言えば、俺がギターを教えてる憂しかいないってことだよ」 唯?「ちっ……違うよ梓くっ――」 梓「本物はあずにゃんって呼ぶぞ。常に」 憂「あっ……」 紬「(梓くん、調子に乗って色々喋っちゃってるわね)」 梓「ほら、わかったらとっとと髪直せ」 憂「うん……」 澪「憂ちゃん、本物の唯は?」 憂「家を出るときはまだちょっとだるそうに寝てて……枕元でたくあんがどうとか言ってましたけど……」 律「(たくあん?)」 梓「……しゃあねえな。この時間じゃもう辞退も無理か」 澪「だな。梓、リードギター頼む」 梓「……オーライっす」 紬「……仕方ないわね」 律「うん」コクリ 憂「……私じゃダメかな?」 梓「悪いけど、な」 憂「そう……」シュン アムバッキナユーエスエスアー ユーアラキユアー 澪「……誰の携帯だ?」 梓「……すんません。俺っす」 澪「(ビートルズ好きなのか?梓は)」 律「学校ではマナー入れとけよ。見つかったら一週間は没収されるぞ」 梓「昨日Youtubeで海外のヒットチャート曲聞いてて……」カチカチ 梓「は?」 律「どうした?」 梓「唯センパイから俺ら宛のメールっス。『家出たよ!』って」 澪律紬「え?」 澪律紬「……」ゴソッ カチカチカチカチ 紬「本当だわ……」 澪「『生姜紅茶で風邪治ったよ!今行くから待ってて(`・ω・´)!』だって……」 律「唯の家からなら……今からならギリギリ時間に間に合うかもな!」 憂「お姉ちゃん……」ウルッ 律「よし!じゃあ講堂に行くぞ!」 澪紬梓「了解!」 ブーブーブーブー 澪「ん?」カチカチカチ 澪「……はぁ」カチャン 律「どうした?」 澪「『家の鍵締め忘れちゃった。遅れるかも……(`;ω;´)』だって……」 律「……間に合うのか?」 澪「ボーカルは私がやって、リードギターは何曲かさわ子先生にヘルプ頼むか……」 講堂 ♪~~~ 澪「ふでぺーんふっふー ふるえーるふっふー」 さわ子「♪~」ギュイーン 梓「(あの人、意外に上手いんだな。何の躊躇もなく完璧に弾いてる)」 梓「(で、それはいいとしてだ)」 梓「(なんで俺以外はさわ子先生の持ってきた振袖みたいなの着て弾いてるんだ?)」 さわ子「♪~」チラッ さわ子「♪~」キラリーンッ 梓「(本当にようわからん。この部)」 澪「かなりほんきよーおー」 紬「(唯ちゃん、来るかしら……)」チラッ 律「(もうすぐで最後の曲だぞ……)」チラッ 梓「(これでまだ来ないなら……やるしかないっすね。あの作戦)」 澪「(梓……頼んだぞ)」 梓「(承知っス)」 憂「(お姉ちゃん……)」 ジャーーーン!!! 梓「(曲は終わった。しかし唯センパイは来ない)」 澪「……」 澪「……えー、では次の曲で最後の曲とさせて頂きます」 澪「ふわふわ時間、桜高祭ライブミックス!」 梓「……」スタスタスタ 梓「……」ペコッ チャラリーン 梓「…………」ジャララララーン 律「(よし、行くかっ!)」スッタンスッタン 梓「……」ジャラララッ! 澪「(和にあらかじめ時間を貰って、即興のイントロで時間を引き伸ばして、唯が来るまで待つ作戦……)」ボボーン さわ子「(ジャズに詳しい梓くんならではの作戦ね。ただ問題は……)」ジャララーン 梓「(唯先輩がタイムリミットまで来るかと、俺達の即興がどこまで通じるか……だな)」ギュイーン! 女生徒「ねえ、いつになったら歌始まるのかな?」 女生徒「そう言えばずーっとイントロだけねえ……」 女生徒「でもちょっとかっこいいかも。あのギター弾いてる男の子」 憂「梓くん……」 憂「やっぱ梓くんのギター、すごいね……」ホゥ ジャズ研「凄い……息のあった即興弾き……」 純「……本当に凄いですね。みんなぴったり合わせていってる」 ジャズ研「……やっぱり、ああ言うのが中野くんの性分なんでしょうね」 さわ子「(残り5分……ホッチキスを削ったとは言え結構ギリギリね)」ギャギャギャ 律「(と言うかイントロで3分以上持たせるとか奇跡じゃない?)」スッタンスッタン 紬「(ジャズやプログレじゃ10分越えるのも結構普通よ)」ピロピロピロピロ 梓「(間に合え……!)」ギャイイーーン バアアンッ 澪律紬梓さわ子「!?」 唯「はー……はー……」 憂「お姉ちゃんっ!」バッ 唯「お待たせっ!みんなっ!」 梓「真打ちは遅れて来るってか……」テケテケテケ ザワザワザワ ズダダダダダッ さわ子「あとは任せたわ!」シュバッ 唯「ありがと、さわちゃんっ!」シュバッ 梓「(前座もここで終了っと。俺には過ぎた大役だったけどな)」 ギュイイイイーーーン!! 梓「あとは主役の出番っスよ!」 唯「がってん!」 デケデデケデケデッデン デッデンデッデン 唯「きみをみてるとっいつもはーとどきどきっ」 憂「お姉ちゃんっ!がんばれーーっ!」 梓「(できれば俺も応援して欲しかったなぁ……)」ギャギャギャ 憂「梓くんもがんばれーーーっ!!」 梓「」ズガッ 律「(あ、梓が音外した)」 紬「(憂ちゃんの応援で動揺してるわね。梓くん)」 澪「(なんて解りやすいんだ)」 4
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――――――――――――――――――――――――― ある公園にゆっくりの姉妹が居りました。 その姉妹は幼い頃に両親を亡くし、何とか二匹で生活をしていました。 それはそれは仲の良い姉妹で、親が居なくても食事が少なくてもとてもゆっくりとした生活を送っていました。 ですがある日、姉であるれいむがゲスになってしまったのです。 「ゆふふ。れいむはとってもかわいいんだよ!!!!もうこんなせいかつしてるだなんてがまんできないよ!!!さなえはさっさとあまあまもってきてね!!!!」 あまりに突然のゲス化に近くに住んでいた他のゆっくり達はとても驚きました。 「お、おねーさま・・・・・・・あまあまなんてよういできないです・・・・・・」 妹であるさなえはれいむの無理難題を叶えようと狩りに出かけましたが、もちろん甘い物なんて手に入りません。 「ゆう?なにいってるの!?れいむはあまあまが食べたいんだよ!!!バカなの!?しぬの!?」 れいむの要望に応えられなかったさなえに、れいむは制裁と称したイジメを始めます。 「い、いたいです!おねーさま!」 「ゆぷぷ♪クズなさなえがいたがってるよ!!!たのしいね!!!」 イジメは毎日毎日続きました。 次第にさなえは弱っていき、餌を取ってくることができなくなりました。 「まったく!!!つかえないさなえだね!!!!こうなったられいむのびぼうでくそにんげんをどれいにしてさなえとはおさらばするよ!!!!!」 「お、おねーさま・・・・・・・」 こうしてれいむは餌を取れなくなってきたさなえに見限りをつけて、人間に養ってもらおうとし始めました。 「ゆゆーん♪れいむはとってもかわいいんだよ!!だからくそにんげんはれいむをかってね!!!ゆっくりさせてね!!!!ついでにびまりさちょうだいね!!!!かわいくってごめんね!!!!!」 ですがれいむの考えていた通りに事は運びません。 人間が居ることは居るのですが、誰も見向きもしないのです。 「ゆぅううううううう!!!???こんなびれいむがどれいにしてやるっていってるのに、なんでどれいにならないのおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!??????」 当たり前です。このれいむ、ぶくぶく太っていて汚れも目立つ、さらには喋ると口から液体をまき散らすのですから。 こんなのに近づきたがる人間は居ません。 「お、おねーさま・・・・・・さなえもてつだいます・・・・・」 息も絶え絶えだというのにさなえはれいむと一緒になって人間に飼ってもらおうと頑張ります。 「ゆゆ?しゅしょうなさなえだね!!!じゃあさっさとどれいをつかまえてきてね!!!!れいむはすーやすーやするよ!!!すーやすーや・・・・・」 れいむはそれだけ言うと直ぐに眠ってしまいました。 「ふぅ。・・・・人間さん!さなえを飼って下さい!お願いします!!さなえはしんこーもちゃんとしてるさなえなんです!!」 しんこーとは、ありすにとっての都会派と同じようなものです。 しんこーする事はさなえにとってのアイデンティティであり、全てでもでもあります。 と、ここで一人の男がさなえに気がつきました。 男はゆっくりについての興味がさほどない人間でした。 ですが『さなえ』の言う『しんこー』という言葉を聞いて、このさなえに興味が湧いたのです。 「なぁ、さなえ?『しんこー』って何なんだ?」 初めての人間との会話に少し緊張しているさなえですが、勇気を振り絞って答えます。 「はい。『しんこー』とはしんじることです。」 その答えに男は少し顔を歪めましたが、気を取り直して別の質問をしてみることにしました。 「あー。じゃあさ、その『しんこー』をするとどうなるんだ?」 「はい。『しんこー』すれば、かたこりがなおります。」 「へ?」 予想外なさなえの返答に男は素っ頓狂な声を上げます。 「そのほかにも、へんずつうがなおったり、やせたり、すごいときにはガンがなおります。」 男とさなえの間に沈黙が訪れます。 男はポカーンとした顔を、さなえは得意そうな顔をしています。 「ぷっ♪あははははは♪なんだよそれ♪お前ほんとに面白いな♪よし、俺が飼ってやろう!」 沈黙を破ったのは男の笑い声でした。 男は上機嫌になってさなえを飼うことを了承しました。 「あ、あの!それなら・・・おねーさまも・・・いっしょにおねがいできますか?」 「おねーさまって・・・・それ?」 「はい・・・・・・・」 さなえはれいむもいっしょに飼ってほしいと言うのです。 男は悩みます。 このさなえだけなら飼うことはやぶさかではありませんが、こんなれいむも一緒って言うとちょっと考えさせられます。 「うーん・・・・・・・・」 「やっぱりだめですか・・・・・・・?」 「いや、良いよ。ちょっと色々考えることはあるけど、まぁさなえの最初のわがままって事で。」 「あ、ありがとうございます!!」 「すーやすーや・・・・・・・・」 その後、男はビニール袋にれいむを入れ、ゆっくり専門の風呂屋に行きました。 「えっと・・・・このさなえと、こっちのれいむお願いします。」 「はい。かしこまりました。料金の方はこちらになっております。オプションでゆっくり用のエステなどもございますが、いかが致しましょう。」 「あ、いや。洗うだけで良いです。」 「かしこまりました。」 ――――――――――――――――――――――――― ~帰り道~ 「ゆふぅ。どれいたちにしてはなかなかきもちよかったよ!!!!このれいむさまのつーやつーやおはだにさわれたんだからかんしゃしてほしいよ!!!!かわいくってごめんねっ!!!!」 「お、おねーさま。そんなこといってたらおにいさんがゆっくりできませんよ。」 「なにさなえのぶんざいでれいむにもんくをいってるのおおおおおおおおおお!!!!ばかなのおおおおおおおおお!!!!!?????」 あの後男はゆっくり専門店に行き必要最低限な物を買って、さなえとれいむを脇に抱え家路についています。 「うるさいよ。ちょっと黙ってなって。」 男はれいむの大きな声を不快に思い注意しました。 「なにいってるのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!おまえはどれいでしょおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!どれいがれいむさまにくちごたえするんじゃないよおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」 れいむは男に更に大きな声を出してきたので男はちょっと躾てやろうと思いました。 れいむを地面に下ろし、おもいっきり蹴飛ばしました。 「ゆげえええええええええ!!!!!おぞらをどんでるみだいいいいいいいいいい!!!!!!」 それを見たさなえは男に抗議します。 「お、お兄さん!おねーさまがしんじゃいます!!」 「大丈夫。死なないように蹴ってるから、でも帰ったらもう一回風呂だな。ほい、ドリブルー。」 男は走ってれいむの着地地点に行き、れいむでドリブルし始めました。 「い、いだいいいいいいいいい!!!!!!お、おそらをtゆぎゃあ!!!」 「ボールは友達!!」 「でいぶばぼーるじゃないいいいいいいい!!!!!!」 男はれいむをドリブルしながら家に帰りました。 家に着く頃にはれいむはボコボコに凹んでよくわからない固まりになっていました。 「えーと・・・・オレンジジュースっと・・・・」 男は持っていたオレンジジュースをれいむにかけています。 その様子をみてさなえは心配するでも、男を非難するでもなく、誰にも見られないように黒い笑みを浮かべていました。 もちろんれいむはそのことに気づきません。 ですが、男はしっかりと気づいていました。 ――――――――――――――――――――――――― ~数日後~ れいむはちっともゆっくりしていませんでした。 おいしそうなあまあまは全てあのさなえの物になり、お家もさなえの方が大きいのですから。 れいむは考えました。 自分がゆっくりできないのは妹のせいだと。 さなえがいるからあの奴隷はれいむの世話をなかなかしないのだと。 もしかしたらさなえがあの奴隷にれいむをゆっくりさせないように脅しているのかもと。 れいむは決心しました。 妹を制裁してやろうと。 はっきり言います。 失敗しました。 れいむは現在男に殴られた傷が元で動けなくなっています。 「ゆぐぐ・・・・けいっかくはかんぺきだったはずだよ・・・・・」 計画は穴だらけも良いところでした。 とりあえずさなえを制裁する・・・・これが完璧な計画の全容です。 れいむがさなえにのしかかろうとした時、男がれいむをつまみ上げ、13コンボを決めたのです。 「あーはいはい。立派な計画ですねー。さなえーまだこいつ生かしておくのか?」 「わたしのたったひとりのあねですから・・・・・・・」 さなえは少し悲しそうな声で言いました。 「あ、そ。じゃあ、オレンジジュース切らしたから買ってくるよ。」 そういって男は家から出ていきました。 するとどうでしょう。今まで慈愛に満ちあふれ、まるで聖母のような笑顔をしていたさなえが一瞬で黒い笑顔に変わってしまいました。 「うふふ。ねぇ?おねーさま。このいえのなかであんまりでしゃばらないほうがいいですよ?」 「!・・・・・・・」 れいむはさなえのその余りに冷めた笑顔を見て言葉を失ってしまいました。 「ね?わかりますでしょ?わたしにきがいをくわえればしぬのは、おねーさまなんですよ?」 「ゆ・・・ゆ・・・・ゆううううううううううううううううう!!!!!!!!!」 れいむはさなえの言葉にとても怒りました。 「ふ、ふざけるなあああああああああああ!!!!!!!おまえはれいむのいもうとで!!どれいだよ!!!!!!なにれいむにめいれいしてるんだあああああああああああ!!!!このげすうううううううううううううううううう!!!!!!!!!」 さなえは冷たく、それでいて楽しそうな声でこう言いました。 「ゲスはどっちですかねー?こわいですぅ・・・」 「ゆっがあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!ころすぅ!!!ころしてやるぅ!!!!!!」 れいむは逆上してさなえに襲いかかりましたが、ちょうど帰ってきた男に蹴り飛ばされました。 「ゆっぎゃああああああ!!!!!!!!」 「はぁ、やっぱりこいつ危ないんじゃないかな?」 「お、おにーさん!こ、こわかったですぅ!!!」 さなえは先ほどの冷たい声や黒い笑顔など無かったかのように男に飛びつきました。 (ほんと、いい性格してるなぁ。) 「?なにかいいました?おにーさん。」 「いやぁ?何も言ってないよ。」 「ゆぎっ!・・・・・ゆっ!・・・・・ぎゃ!・・・・・」 痙攣を起こしているれいむを流し台に放り込みオレンジジュースをかけました。 「とりあえず・・・・・・そこで頭冷やせ。」 ――――――――――――――――――――――――― それから何日か経ちましたが、毎日毎日れいむは男にさなえはゲスだと言いました。 「さ、さなえはとんでもないゲスだよ!!!!!くそどれいはさっさとせいっさいしてね!!!!!」 ですが男はれいむの話には全く耳を貸しません。 「はいはい、ゆっくりゆっくり。」 テキトーに受け流すだけです。取り付く島もありません。 それを見る度にさなえはとてもゆっくりとした表情になっていきました。 ですがある時、れいむの命令を男が聞いてくれました。 内容は、ある時間に家に戻ってくることです。 さなえには知られないようにと、念を押して命令しました。 (ゆっふっふっふ♪これでさなえのてんかはおわりだよ!!!こんどはれいむがどれいをじゆうにしてさなえをせいっさいしてやるよ!!!!!) ――――――――――――――――――――――――― 「んじゃ、ちょっと行ってくるな。」 「はい。いってらっしゃい。おにーさん。」 男が家を出てからしばらく経ってからさなえは暇になってれいむに話しかけました。 「おねーさま。なにかおもしろいことしてください。さなえ、ひまです。」 その傍若無人な態度にれいむはグッと怒りの感情を堪えました。 「ゆふふ・・・・そんなこと言っていられるのも今日までだよ・・・・・・」 その反抗的な態度が気にさわったのかさなえは近くにあったペットボトルのキャップをれいむに投げつけます。 「ふざけないでくださよ・・・・おねーさまのいのちはわたしがまもってあげてるんですよ?わかりますよね?ゲスなおねーさま?」 キャップはれいむの頭に当たり、れいむの感情を逆撫でしますが今はまだ我慢だと己を律し、何とか平静を保ちます。 「ふざけてるのはそっちだよ・・・・・・・・れいむはえらいんだよ?れいむにさからっていいとおもってるの?バカなの?しぬの?」 「・・・・・・そうですか・・・・・」 さなえがしょんぼりとしたのを見てれいむは思いました。 もしかして!たちばのちがいがやっとわかったんだね!!!! 「そんなに・・・・しにたいんですか・・・・・・」 「ゆ?」 「そうですか・・・・・ねぇ?おねーさま。これ、なんだかわかりますか?」 そういってさなえが口にくわえたのは刃のでたカッターでした。 「ゆゆ!!ざ、ざーくざーくさんだよ・・・・・・・」 さなえはれいむの答えを鼻で笑いました。 「ふっ。ざーくざーくさん?バカなんじゃないですか?これはカッターですよ・・・・」 「そ、それで、れいむをころすの?・・・・・・・そ、そんなことしたら!!ゆっくりごろしはゆっくりできないよ!!!!」 れいむは刃物の恐ろしさを知っています。 なぜって? 前に男に切り刻まれた事があるからです。 「そんなことするわけないですよ?そんなことしたらさなえがすてられちゃいます。これできずつけるのはわたしじしんですよ」 そういって器用にカッターで自分の体にいくつかの切れ込みを入れていくさなえ。 「ゆ?ゆぷぷ!!!さなえはばかだね!!!!じぶんでじぶんのことをきずつけてるよ!!!!!!このままえいえんにゆっくりしちゃえばいいよ!!!!!ゆぷぷ!!!」 「はぁ・・・ばかですね・・・・・」 「ゆ?ばかはそっちだよ?」 「このきず・・・・・・・おねーさまにやられたっていったらどうなるんでしょうかね・・・・・・・・」 「ゆ?」 「きっとおねーさま・・・・・ころされちゃいますよ・・・・・・ふふ・・・・」 さなえは、れいむがそれを聞いて顔を青ざめるなり、傷を治そうとするなりを想像していたのですがれいむの反応は全く別のものでした。 「ゆ・・・ゆふ・・・・ゆふふふふふ!!!!れいむのかちだよ!!!!!ね!?だからいったでしょ!!!さなえはとんでもないげすだったんだよ!!!!!!!クソにんげん!!!!!!!」 さなえは驚いて背後を見ました。 そこには男が腕を組みながら立っていたのです。 「え・・・・お、おにーさん・・・・・・いつから・・・・・・」 「ん?えーと・・・・ペットボトルのキャップを投げたところあたりかな?」 さなえはこの世の終わりのような表情のまま固まってしまい、動けません。 れいむは勝ち誇り、得意げな顔をしています。 「ゆゆーん!!それじゃあいままでれいむのことばをしんじなかったクソにんげんはさっさとさなえをせいっさいしてね!!!!ついでにあまあまちょうだいね!!!!!」 そう言われた男はさなえを持ち上げ、流し台に乗せました。 「お、おにーさん・・・・・さなえを・・・どうするんですか・・・・・・」 男は冷蔵庫からペットボトルを取り出すと、その中身をさなえにかけ始めました。 「ゆゆー!!みずっぜめさんだね!!!!とってもゆっくりできるせいっさいだねぇ!!!」 かけ終わると男はさなえの頭を撫でながらこう言いました。 「まったく、カッターなんて危ないだろ。次から刃物類触っちゃだめだぞ?」 「「ゆ?」」 二匹とも意味が分からないといった様子です。 「ゆ・・・ゆっがあああああああああああああ!!!!!!!!なんでだああああああああああああああああ!!!!!!!れいむさまのいうとおりさなえはげすだっただろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」 「うん。そうだね。てか最初の頃から分かってたし。」 「ゆ?」 「まったく、何見せてくれるのかと思ったらこんな事かよ。」 「ゆゆゆゆゆゆゆゆゆ!!!!!!!!じゃあなんでれいむさまのいうことをきかないんだああああああああああああああああ!!!!!!!」 「なんでって・・・・・さなえは可愛いけどお前は薄汚いから・・・・・」 「ゆっがぁああああああああああああああ!!!!!!!!れいむさまはせかいでいちばんかわいいいんだあああああああああああああああああ!!!!!!!」 「あぁ、もううっさいな。もう分かれよ。いいか?さなえの場合普段は全然良いゆっくりだろ?でも本当はこんなに腹黒ちゃん。俺さ、腹黒い奴好きなんだよね。」 「ゆ?」 「それになによりこの外見だぞ?可愛いだろうがよ。な?」 「ふ、ふざけるなああああああああああ!!!!!」 「ふざけて無いって。それにあれだぞ?お前の外見がもし、さなえだったらお前の言うこともちゃんと聞いたんだぞ?」 「・・・・・・なに・・・・それ・・・・・・・・」 「うーん。簡単に言っちゃえばさ、お前がれいむだからいけないんだよ。お前の罪はれいむに生まれたこと。分かる?」 「れいむが・・・・・れいむだから・・・ゆっくりできない・・・・・・」 今まで全くしゃべらなかったさなえがここにきて男に話しかけました。 「あ、あの・・・・・わたし・・・・」 「ん?どうした?もう痛くないだろ?・・・・あ、なんかしたいこととか欲しい物とかあるのか?」 「い、いえ。その・・・・わたし、ここにいていいんですか・・・・?」 「?何言ってるんだよ。当たり前でしょ。俺が飼ってやるって言ったんだよ?」 「あ、あの・・・・それでは・・たのみたいことがあるんですけどいいですか?」 「ん?なんだ?」 ――――――――――――――――――――――――― 「おねーさま。もうおねーさまであそべそうにないので、おにーさんにしょぶんしてもらうことにしました。」 「れいむが・・・・・・れいむじゃなかったら・・・・」 「ですから、おわかれをいいたいんできいてください♪」 「れいむが・・・・・・さなえなら・・・・・・・・・・・」 「おねーさまっ!さなえ・・・かわいくってごめんねっ!!」 「ゆぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 ――――――――――――――――――――――――― 一匹のれいむの命、というよりも精神でしょうか? とにかく、それを引き替えに男とさなえの仲はとてもよくなりました。 愛でたし、愛でたし~
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唯「らっしゃいらっしゃい!」 唯「唯ちゃんのミルク屋さんだよ~」 唯「美味しいよ~安いよ~」 唯「健康にもいいよ~」 澪「すみません」 唯「いらっしゃい!」 澪「ミルク欲しいんですけど」 唯「はいはいちょっと待っててねー」 ソソクサ 澪(あれ?奥に入ってっちゃった?) 唯「出番だよ憂!」 憂「お客さん?」 唯「うん。ほらほらおっぱい出して!」 憂「分かったよお姉ちゃん」 ぽろり 憂「いっぱい搾ってね」 唯「じゃ、行くよー」 モミモミモミモミ 憂「で、出る!出る出る…出るぅぅぅぅううん!」 プシャアアアアアアア 唯「おー!今日も大量だね憂」 憂「えへへ。お姉ちゃんのために頑張ったよ♪」 唯「じゃ、お客さんのところに持っていくからね」 澪(まだかなぁミルク) 唯「はいおまちどさま」 ゴトッ 澪「あ、来た」 唯「揉みたて、じゃなくて搾りたてほやほやの極上だよ」 澪「どうも。はいお金」 唯「ありがとうございました~」 唯「今日も大繁盛だったよ~」 憂「お疲れさま」 唯「憂がミルクたっぷり出してくれてるおかげだね!」 憂「明日はもっと頑張るよ!」 唯「頼もしいねぇ!さすが私の妹!」 憂「頑張って世界一のミルク屋を目指そうね!」 唯「うん!」 ──── 唯「らっしゃいらっしゃい!唯ちゃんのミルク屋だよー!」 唯「美容にも良い10代から30代の女性に大人気のミルクだよー!」 和「ミルク頂ける?」 唯「いらっしゃーい。ちょっと待っててね」 唯「うーいー!」 憂「お客さん来た?」 唯「うん、おっぱいお願いできるかな」 憂「もちろんだよ!」 唯「搾らせていただきます」 もみもみ くりくり 憂「ああぁっ出る!出るよお姉ちゃん!」 唯「出して憂!」 憂「はぁん!」 ぷしゅっ…ぷしゅううぅぅぅぅぅ! プッシュウウウウウウウウウウウウウウウ 唯「お待ちどーさま!」 ゴトッ 和「ありがとう、ここのミルクは本当に美味しいって評判よ」 唯「えへへへ」 和「いったいどこの牛なの?」 唯「うしじゃなくてういの……おっと、これは企業秘密ですよお客さん」 和「そうなの……」 ──── 憂「お姉ちゃん大変大変!」 唯「どうしたの憂?」 憂「今度私たちのお店がグルメ番組に出ることになっちゃったよ!」 唯「えっ本当に!?」 憂「なんでもすっごく味にうるさい食通さんを相手にするんだって」 憂「どうしようお姉ちゃんどうしよっ」 唯「大丈夫だよ!どんなに舌の肥えた人が相手でも、憂のミルクなら唸らせ られるはずだよ!」 憂「う、うん」 唯「だから自信持って!」 唯「私は憂と」 なでなで 唯「憂のおっぱいを信じてるよ」 もみもみ ──── 唯「憂~今日も頑張ろうねー」 憂「お姉ちゃんごめん、私…風邪ひいちゃったみたい……ごほごほ」 唯「う、憂?大丈夫?熱あるの?」 憂「うん、ちょっとだけ。お店どうしよう?」 唯「今日はお休みにしよう。ゆっくり休まないと」 憂「ごめんねお姉ちゃん」 唯「気にしなくていいんだよ」 憂「でもテレビの撮影明日だよ」 唯「あ、そうだった!憂のミルクが無きゃどうにもならないよ……」 憂「何とか頑張ってミルク出すよ。お姉ちゃん搾って」 唯「無理だよ……こんな辛そうにしてる憂のおっぱいを搾るなんて出来ない よ」 憂「でも、それじゃテレビは……」 唯「コンビニで牛乳買ってこよっか?」 憂「相手はプロだよ。そんなことしてもバレちゃうよ」 唯「あ、そうだね……」 憂「テレビは諦めようお姉ちゃん」 唯「でも…せっかく全国に私たちのミルク屋さんを宣伝するチャンスなのに ……」 憂「あ、じゃあお姉ちゃんのおっぱいを搾るのはどう?」 唯「私の!?」 憂「うん。お姉ちゃんの」 唯「ム、無理だよ!やったことないし!」 憂「大丈夫、お姉ちゃんならきっとできるから」 唯「うい~……」 憂「私は寝てるよ、お姉ちゃんに風邪うつしたら大変だし」 唯「分かったよ憂。後でお粥作って持っていくからね」 憂「ありがと……ごほごほ」 ――――― 唯「よし!憂の代わりにおっぱい出すぞー!」 唯「まずは服を脱いで……」 ぽろり 唯「おっぱいを揉みほぐす!」 もみもみもみもみ 唯「適度に揉んだら次にちくびを摘まむ!捻る!」 きゅっ くりくりくりくり 唯「引っ張ったり押し込んだりするのも気持ちいいけど今は関係無いからし ません」 唯「ん、出るかな?出るかなぁ」 唯「はっ……出そう」 唯「んんっ!」 ぴゅっ 唯「あ、出た」 唯「味見をしてみよう」 ペロリ 唯「……」 唯「マズイ」 唯「駄目だよ憂。ミルクは出たけど全然美味しくないよ」 唯「やっぱり私には無理だったんだぁ」 シクシク 唯「あ、そろそろ憂にお粥作ってあげなきゃ」 唯「憂ーお粥……」 憂「スゥー…スゥー…」 唯(寝ちゃってるや) 唯(そっか、ミルク搾ってるときはずっとおっぱい丸出しだもんね) 唯(風邪もひいちゃうよね。ごめんね、憂のことちっとも考えてあげられて なくて) キミがいないと何もできないよ キミのミルクが飲みたいよ もしキミが帰ってきたら とびっきりの手つきで揉みだすよ キミがいないと働けないよ キミの乳が恋しいよ キミの乳が搾れればそれだけでいいんだよ キミが中にいるだけでいつもお店回ってた いつまででも一緒にいたい この気持ちを伝えたいよ ──大丈夫、お姉ちゃんならきっとできるから 唯「憂、私頑張るよ!」 唯「よーし!もうひと搾りするぞー!」 もみもみ くりくり ぷししゃああーっ 唯「どれどれ」 ペロ 唯「あ!今出たミルクはとっても美味しい!なんで!?」 憂「それはね…ごほごほ」 唯「憂!?寝てないと駄目だよ!」 憂「今のはね、お姉ちゃんが私のことを一生懸命考えてくれてるときのミル クの味なんだよ。ごほごほ」 唯「そっか、憂のミルクが美味しかったのは毎日毎日私を想ってくれてたか らなんだね」 憂「今のお姉ちゃんになら、とっても美味しいミルクが出せるはずだよ。ご ほごほ」 憂「がん、ばって…おね……」 ばたんきゅー 唯「ういーーーー!!!」 ──── 純「さあ、本日は『唯ちゃんのミルク屋』の店主・平沢唯さんにお越しいた だいてまーす!」 純「こんにちは平沢さん!」 唯「ど、どうも」 ドキドキ 純「自信の程は?」 唯「えっと…まあまあです」 ドキドキ 純「はぁい、まあまあとのことです。では当番組お馴染みのグルメ3人の登 場です!」 律紬梓「よろしくお願いします」 唯(うわー、本当に味に厳しそうな人たち……) 純「『唯ちゃんのミルク屋』はまだ創業半年でありますが、地元では大人気 のミルク屋さんだそうです」 純「このミルクで食通3人を納得させることができるのでしょうかー!?そ れでは試飲スタート!」 唯「こちらです」 ゴトッ 律「…いただきます」 紬「…いただきます」 梓「…いただくです」 ごくっ 律「お……」 紬「美味しい!」 梓「こんな美味しいミルクがあったなんて」 純「おー、これはかなり好評のようですよ、平沢さん?」 唯「は、はいっ」 ドキドキ 純「それでは点数の方を!」 律「10点!」 紬「10点!」 梓「10点!」 純「出ましたぁ総得点30!」 律「いやぁこれは文句無しに満点だよ」 紬「おかわりくださーい!」 梓「最後の一滴まで舐めつくしてやるです!」 ペロペロ 純「おめでとうございまぁす!『唯ちゃんにミルク屋』のミルク、満点獲得 です!」 唯「やった!やったぁ!」 純「これからも頑張って美味しいミルクをみんなに飲ませてあげてください ね」 唯「うん!私頑張って出すよ!」 純「応援してますよ~(出す?)」 その後、憂ちゃんの風邪もすっかり治り 新メニュー(唯のお乳)開発とともに唯ちゃんのミルク屋は全国的に広まり ましたが ミルクの出所が露見してミルク屋は保健所に潰されちゃったので2人は普通 に暮らしました めでたしめでたし 5
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『はんせいしてますごめんなさい』 36KB 虐待 嫉妬 誤解 日常模様 同族殺し 共食い 飼いゆ 野良ゆ 赤ゆ 現代 独自設定 よろしくお願いします ッじめに 善良な個体の虐待です 通常種のみ登場します グロテスクな表現を含みます 以上の点に注意して読まれるようお願いします 1 「おにいざん!!! ごべんばざい!!! おでがいでずがらおうじにいれでぐだざい!!!」 街中の住宅街のとある家の玄関前 一匹のれいむが玄関のドアに向かって必死に呼びかけていた 「もうおにいざんどのやぐぞぐやぶっだりじまぜん! あやばりばず!!! はんぜいじばず!!! だがら、だがらでいぶをもういじどがっでぐだざい! おうじのながにいれでぐばさび!!! おにいいさあああああああああああああああん!!!」 必死の呼びかけが通じたのか、ドアが開き中から一人の中年男性が出てきた れいむは悲痛に歪めていた表情をパァっと明るくして中に入ろうとした 「だれもいれるなんていってねーよ」 男性はそう言うと右足を振りあげてれいむの腹を蹴りつける 「ゆぐぅ!!! ・・・・・・ゆ、ゆゆゆごおお・・・げ、げええええ ・・・・・お・・・おにい・・・・さん?」 完全に油断していたれいむは蹴りをまともに受けてしまい、その場にへたり込んでしまう 苦しそうにうねうねと芋虫のように蠢くれいむ 口からは泡だった泥のような餡子を吐きだしている 「ゆごっ! ゆごごっ・・・! でいぶ・・・あやばっだ・・・のに・・・」 「しらねーよ。 謝ったからなんだってんだよ。 謝ったらそれで全部終わりだとでも思ってんの?」 「でぼぉ・・・でぼおおおおお!」 「でもじゃねーよ。 言い訳してる時点で反省する気ゼロだっていってるようなもんじゃねーかよ」 「ゆ、ゆうううううううううう!!! どぼじでえええええ! どぼじでごんなごどにいいいいい!」 「あーうるせーうるせー。 うぜーからさっさと消えろや」 男性はそう言ってドアを閉めてしまった 後に残されたれいむはただただ泣き続け、そのままそこで一晩明かした 翌日、男性が仕事に出かけに中から出てくると、れいむは一目散に駆け寄って挨拶をした 「おにーさん! ゆっくりいってらっしゃい!」 とびっきりの笑顔で挨拶するれいむ れいむは頑張っていい子にしていればれいむの事を許してくれると考えていたのだ お兄さんはれいむに一目もくれずさっさと行ってしまった だがれいむはあきらめない あきらめてはそこで全てが終わってしまう お兄さんが許してくれるその日まで、頑張り続けるとれいむは心に誓った 「ゆううううう・・・・ おなかがぺーこぺこだよぉ・・・ べーこんごはんさんがたべたいよぉ・・・」 餌を与えられずに庭に放置されたままのれいむは、さっそく空腹に悩まされた 加工所で生まれ、ショップで育ち、外の世界を知る間もなくこの家にやって来たれいむは ゆっくりふーどや人間さんの食べ残しを食べていたので、野生のゆっくりがするような食事はしたことが無かった 背に腹は代えられずいやいやながらも庭にぼうぼうと生い茂った雑草を一口かじってみる 「・・・・・・・・・・・・・・・ゆげえええええええええええええええええええええええ!!!! にがにがでゆっぐりでぎないいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」 草を咀嚼していくうちに草の汁が口全体に広がってゆき、苦いという感覚がじわじわとしみ込むように舌へ伝わってくる 耐えられずに吐きだしたが舌や歯茎には味の感覚が残っていた お水でうがいをしようにも水の入った皿などどこにも見当たらない れいむは仕方なく、自分の唾液で口の中が満たされるのを待った とてもこんなものは食べられない しかし、お腹はすいてしまう 何か他に食べれるものはないか辺りを見渡してみる どこを見ても草、草、草・・・・・・ れいむはため息をついて後ろにコロンと倒れた なにも考えずに空に浮かぶ雲を見つめる 「・・・これかられいむはどうすればいいの? ・・・おにいさんはゆるしてくれるのかなぁ?」 白い雲に問いかけるように、れいむは頭の中で不安に思っていることを言葉にした その問いかけに答えるものはどこにもいない 空腹に耐えきれなくなったれいむは観念してもう一度草に挑戦する 一口むーしゃむしゃする度に溢れる汁を何とか飲み込んで、また新たに草を口に入れる 何度か戻しそうになったが、草を無理やり飲み込むことで何とか耐えきった 「むーしゃむーしゃ・・・・・しあわせええええ! このランチさんはとってもとかいはだわぁ!」 向かいの家で飼われているありすがしあわせーと叫んでいる それを聞くと大粒の涙がぽろぽろとおめめから流れ落ちてきた 「ゆぐっ・・・・・・ゆぐううううう! どぼじでええええええ・・・ おにいざあああああんんんんん・・・・・」 れいむは怒られた理由が全く分からなかった 普段のように言われたことを守り、きちんとルールを守って生活していた なのに、突然あんよをぺんぺんされ外に放り投げられたのだ 怒られた理由が分からないままのれいむはただただ悲しくて仕方なかった 2 「おにいざん!? はなじをぎいでね!? でいぶをむじじないでね!?」 固く閉ざされたドアに何度も身体を叩きつけて懇願するれいむ 帰って来たお兄さんと話そうとしたが完全に無視されてしまったのだ れいむがどんなに呼びかけても、聞こえてくるのはテレビさんの音ばかり 「どぼじでっ・・・ どぼじでなんにぼいっでぐれないの!? でいぶはずっどいいごにじでだよ!? どぼじで・・・どぼじでえええええええええ!!!」 「・・・るっせえっつってんだろ!!!」 「ゆぎゃん!」 突然開いたドアが顔面に衝突して吹っ飛ぶれいむ 顔は真っ赤になり歯が何本か折れたが、それでもお兄さんが出てきてくれたことがうれしくて笑顔になる 「おにいさんきいてね! れいむはがんばったんだよ! とってもつらかったけどあきらめなかったんだよ!」 「だから、なに?」 「ゆっ・・・ こ、これからももっともっとがんばっておにいさんをゆっくりさせるよ!」 「で? 反省はどうした?」 「・・・ゆぅ? はん・・・せい・・・?」 れいむはぽかんと口を開けたまま固まってしまった 怒られた理由を思い出すことをすっかり忘れていたのだ 「その様子じゃ反省してないみたいだな。 じゃ、そゆことで・・・」 「まっ! まっでね!? でいぶはんぜいじでいいごにじでだよ!?」 「へぇ、じゃあ何をどう反省したか言ってみろよ」 「ゆぅ・・・ それは・・・」 「やっぱり反省してねーじゃねーか。 口だけの反省ならそこらへんのゲスでもできるわ」 「で、でもぉ・・・でもぉ・・・」 「また『でも』か。 まぁいい、それより飯は食ったのか?」 「ゆん!? ごはんさん!? ごはんさんくれるの!?」 ご飯という単語にもみあげを即座に反応させてピコピコ動かすれいむ 目がキラキラと輝いて、涎がたらりと滴り落ちる 「まだやるとはいってねえよ。 そこに草沢山はえてるだろ?」 「ゆん? ・・・くささんはゆっくりできないよ」 「話は最後まで聞け。 そこに生えてる草を全部食べたら飯食わしてやるよ」 「ほ、ほんとにいいいい!? うそじゃない!?」 「本当だ、まぁせいぜい頑張れや」 「ゆわぁい! れいむ、がんばってむーしゃむしゃするよ!」 お兄さんはそう言ってドアを閉めた 「さっそくむーしゃむしゃするよ! くささんはゆっくりれいむにたべられてね!」 草に向かってそう宣言したれいむはおくちを大きく開けて草にかじりついた お口の中いっぱいに広がる青臭い臭いと、じわじわとにじみ出る苦い草 ゆっくりできない臭いと味を我慢して無理やり口の中へと押し込んで行く 「むうううううじゃあああああむうううううじゃあああああああ・・・・・じばばぜえええええええええええええ!!!」 しあわぜーは本当のしあわせーではなく、無理やりひねり出した言葉だった そうでもしないと、ゆっくりできなさすぎて餡子がおかしくなりそうだった 「げええええええっぷ! ゆぅ・・・まだまだたくさんあるよ。 でも、れいむあきらめないよ!」 草を全部飲み込むと、また次の草を引っこ抜いて口の中へと押し込む ようやくお腹がいっぱいになり、次第に眠くなっていくれいむ しかし、ゆっくりできるべっともふかふかもどこを探しても見当たらない 仕方ないので引っこ抜いた草をしいて、縁の下で眠ることにする 「ゆぅぅぅ・・・ はやくおうちのなかでゆっくりすーやすやしたいよぅ・・・」 冷たい地面に敷いた青臭い草の上へ倒れこむように横になるれいむ 口の中には草の苦い味がまだ残っている 「どぼじでおにいさんはあんなにぷんぷんしてるの? れいむはいったいなにをしたの? わからないよ・・・ おにいさんおしえてよ・・・れいむはいったいなんてあやまったらいいの?」 どんなに考えても、れいむは反省すべき理由がわからない 疲れ切ったれいむは考えがまとまらない内に眠ってしまった れいむは夢の中でべーこんごはんさんをおなかいっぱいむーしゃむしゃした 夢の中でお兄さんはいつものお兄さんに戻って、れいむを優しく介抱してくれる お兄さんはれいむにしていたことを謝って、れいむのことを許してくれた (ゆふふふふ・・・ れいむはおこってたけどゆるしてあげるよ・・・ またいっしょにたっくさーんゆっくりしようね・・・・・) そんな幸せな夢は、突然中断された もみあげを引っ張られて無理やり縁の下から引きづり出されたのだ 「ゆ・・・! ゆゆゆゆううううう!? おにいざん!? でいぶになにずるの?!」 混乱したれいむは身体をぐねぐねとうねらせて必死に抵抗した 外はまだ暗く、おひさまは顔を出していない 「まぁ落ち着け。 おまえにプレゼントしてやろうとおもってな」 「ゆぅ!? プレゼントさん!?」 「そうだ、今さっきジョギングしてたらゆっくりが因縁つけてきたんだよ んで、フルボッコにしてぶっ潰してやったんだわ。 それがこいつ等な」 お兄さんはそう言うと、ビニール袋から二体のゆっくりの死体を取り出してれいむの前へ放り投げた 恐らく番であろうまりさ種とれいむ種が一体ずつ 大きく目を見開いて、口をだらしなく広げたまま絶命している 「ゆげええええええええええええ!? なにごでええええええええええええ?!」 「だからプレゼントだって。 これ中身は餡子でできてるんだからお前食えるだろ? お前の為に持って来てやったんだから遠慮しないで食べていいんだぞ」 「ごんなのだべれるわげないでしょおおおおおおおおおおおおお!? ばがなのじぬのおおおおおおお!?」 「はぁ!? 食えないわけねーだろが! それ食い終わるまでここでみてやるから早く食え。 残さず食え」 「だがらむりだっでいっでるでしょ!? れいむのはなじをぎいでね!?」 「食わなかったらもう許してやらねーぞ。 それでもいいのか?」 「ゆぅ!? なんでそうなるの!?」 「反省してるならくえるよなぁ? なぁ? 反省する気ねえのか、こら」 「・・・はん・・・せい」 反省という言葉を出されたとたん黙ってしまうれいむ まるで魔法をかけられたように従順になってしまう 「早くしろ。 じゃねーともう許してやんねーぞ」 「・・・ゆっくりりかいしたよ」 一撃で踏みぬかれたのか、脳天を潰されてぺしゃんこになった二つの骸 目玉が飛び出て餡子がはみ出だして表情が読み取れないほど激しく損壊している はみ出たその餡子を恐る恐る口に含み、飲み下す 口の中には甘いゆっくりした味が広がってゆく しかし、れいむはまったくゆっくりできない 想像してみてほしい どんなにおいしそうに調理されていたとしても それが人間の肉だと知っていてあなたはそれを食べることができるだろうか 「全部残さずたべろよ。 できるだけ早くな」 お兄さんの声がこんなに恐く感じたのは初めてだった 3 「ゆ、ゆべえ・・・ ゆぎゅううう・・・ ごっくん!」 時刻は昼の十二時をまわり、れいむはようやくゲス番の死体を完食することができた 口の周りにべっとりと餡子をつけたれいむ その顔は大量のカロリーを摂取しているにもかかわらずげっそりとやつれている 「なんで・・・ でいぶが・・・ ごんなべに・・・・」 死臭が体中に染みつき、一秒たりともゆっくりできない お兄さんが打った精神強化剤が無ければとっくに餡子を吐いて永遠にゆっくりしてしまっていただろう 「よし、全部食べたな。 偉いぞ、れいむ」 「ゆぅ!? おにいさん!? れいむをゆるしてくれるの!?」 食べ終わるまでずっとそばにいたお兄さんが漸く口を開いた れいむは期待に腹を膨らませ、もみあげをピコピコさせてお兄さんにすり寄る しかしその淡い期待は一瞬で打ち砕かれた 「はぁ!? 偉いとは褒めたが許してやるとは一言も言ってねーけども」 「どぼじでぞんなごどいうのおおおお!? でいぶごんなにがんばっだんだよ!?」 「まぁ、頑張り次第では許してやらんこともねーけどよ。 まだまだ頑張りが足りないってこった」 「これいじょうなにをがんばればいいのおおお!? でいぶはもうげんっがい!なんだよおおおおおお!」 「それだけ喚ければ大丈夫だ、問題ない。 れいむ、お前に新しい課題をくれてやろう」 「あたらしいかだいさん!? まだなにかしなくじゃいげないのおおおおおお!?」 「なに、難しいことじゃねーよ。 家の壁を全部なめなめして綺麗にしろ それができたらお前を許してやる」 「・・・なめなめってぺーろぺろのこと?」 「そうだ、この家の壁の汚れをすべてぺーろぺろして綺麗にするんだ」 「ぞんだごぼでぎるばずないでじょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」 「それと引き続き庭の雑草毟りもやれよ。 ある程度綺麗になったらまた飯食わしてやるから」 れいむは途方もない課題に茫然自失になった このれいむにとってあまりに巨大なお家をぺーろぺろで綺麗にしなくてはならないのだ それに草も食べ続けなければならない 「誠意をみせろよ、れいむ」 そう言ってお家の中に入って言ってしまうお兄さん 今日はお兄さんの仕事が休みの日で、本来ならお兄さんと沢山遊んで好きなだけゆっくりできる筈だった それがどうだろう いまのれいむには、ゆっくりのゆのじもない 「ゆぅ・・・ とりあえずくささんをむーしゃむしゃするよ・・・」 それでもれいむはあきらめなかった 与えられた課題を一つ一つクリアすれば、れいむは許されてまたゆっくりした毎日が戻ってくる そんな一筋の希望にすがる様に、れいむは草をむーしゃむしゃしていった それから数日後 れいむは草をある程度食べ終えると壁の清掃へと取りかかった 白く塗られた壁は薄らと塵が被っており、れいむが舌で舐めるとそこだけぴかぴかになった 草と違って極端ににがにがな味がするわけではないが、ゆっくりできる味など当然するはずがない 「ゆっくりぺーろぺろするよ・・・ ぺーろぺろ・・・・・」 少しずつ壁の汚れをなめとっていくれいむ ふと、べーこんごはんさんを食べた後のお皿をぺーろぺろした時のことを思い出した ぺーろぺろする時はいつも幸せだったのに、今しているぺーろぺろはただただ虚しい 「みゃみゃ! みちぇみちぇ! あのれいみゅかべしゃんをぺーりょぺりょしてりゅわ!」 「しっ! みちゃだめよ! あのれいむはちょっとあんこがふじゆうなのよ、かわいそうなのよ」 「どうしちぇ? いにゃかもにょなにょ?」 「そんなこといったらとかいはになれないわよ! さ、もういきましょ。 かえったら、ままがぺーろぺろしてきれいにしてあげるわ」 「ゆん! みゃみゃのぺーろぺろはとっちぇもゆっくちできりゅわぁ!」 野良のありすの親子が通りかかって話しているのが聞こえた れいむは清掃をやめて、その親子をじっと見つめていた れいむは生まれてすぐに親から引き離され、金バッチをつけた他ゆんのありすやれいむに育てられた 育ての親の言うことを素直に聞いていたのでゆっくりショップの人間さんはやさしくしてくれた だから、れいむは人間さんの言うことをきちんと守ればゆっくりできると信じている 野良が庭にやってきても無視してやりすごしたし、一緒に遊ぶようなことはなかった 野良は自分勝手でルールをわきまえないとてもゆっくりしていないもの そういう認識を加工所で刷り込まれたれいむにとって野良とはそういう存在だった だが、ありすの親子はとってもゆっくりしていた その理由をれいむは理解できない 「ゆぅ? もしかしてのらはゆっくりできるの? みんなはれいむにうそをついてたの?」 子ゆっくりのころに去勢されたれいむはぼせい(笑)の形成に至らなかった ぼせい(笑)が存在しないため、おちびちゃんはゆっくりできるという感覚も存在しない そのため、ありすの親子がゆっくりしていたのは、親子が一緒だからではなく野良だからという認識にすり替わる 加工所やショップで言われ続けていた野良はゆっくりできない存在という認識が揺らぎ始めた 極度のストレスと疲労が伴ってれいむの判断能力は劣化していたこともあり、疑念が頭をもたげる 「こんなことなられいむものらになりたいよ。 のらがあんなにゆっくりできるなんてれいむしらなかったよ・・・」 あんよがずーりずりと外の世界へと向かって無意識に動いていく 門を出ればすぐに外の世界へと出て行けるのだ 後少し、もう少しでゆっくりできる・・・ 「なにかんがえてるんだろうね・・・ れいむはおにいさんにせいいさんをみせてゆっくりするんだよ・・・」 お兄さんの存在を思い出して足を止めるれいむ もしここで外の世界に出て行ってしまったら、お兄さんはもう二度と許してくれないだろう もう一度・・・もう一度お兄さんとゆっくりするんだ! れいむは確固たる決意の元、与えられた課題へと取りかかった 「お~頑張ってるじゃねーか。 正直ここまでやるとは思わなかったぞ」 「ゆん! おにいさんじゃましないでね! れいむはがんばってるんだよ! がんばってせいいさんをみせておうちにいれてもらうんだよ!」 「そーかそーかいい心がけだな。 そんなれいむにプレゼントをもってきてやったぞぉ」 「・・・ぷれ・・・ぜんと・・・さん?」 プレゼントという単語に凍りついてしまうれいむ お兄さんが抱えている、がさごそと動く段ボールに視線が釘づけになる 「お、その様子だとプレゼントがなんなのか大体察しがついてるようだな じゃあ早速御開帳といこうか。 今日のプレゼントは元気なおちびちゃんでーす!」 お兄さんはそう言って段ボールをひっくり返して中身をぶちまけた れいむ種とまりさ種が五匹ずつ計十匹の赤ゆっくり達が地面にぼとぼとと落ちてくる 「おとおしゃあああん!? おきゃあしゃああああん!?」 「ゆぴいいいいいいいいいいいいいい! いちゃいよおおおおおおおおおおお!」 「まりしゃのおぼうちかえちちぇえええええええ! ゆんやああああああああああ!」 「どびょじじぇごんにゃごじょしゅりゅにょおおおおおおおおおおおおおおお!?」 「ゆぅ・・・ いたいのはいやなんだじぇ・・・ こわいんだじぇ・・・」 「もうやじゃあああああ! れいみゅなんにもわるいこちょしちぇないのにいいいいい!」 「かわいいれいみゅがなんでこんにゃめに・・・・」 「おきゃあしゃん・・・・ おとうしゃん・・・・・」 「ゆっ・・・ゆっ・・・」 「ゆんやあああああああああ! ゆんやあああああああああああ!」 「おちびちゃんたち!? ゆっくりしていってね!? ゆっくりゆっくり!」 突然外に放り出された赤ゆっくり達は一斉に泣き出した 中には瀕死の者もおり、れいむはどうしていいか判らず狼狽する そんな光景を見てにっこりとほほ笑むお兄さん 「それ、食え」 「・・・・・ゆ ・・・・・お兄さん? いまなんて?」 「食え。 残さず全部食え」 「これ、ゆっくりだよね? おちびちゃんだよね?」 「だからなんだ。 食え」 「で、できないよ・・・ おちびちゃんなんかむーしゃむしゃしたら・・・」 「できぬともうすか。 いま、できぬともうしたか」 「ゆぅ?」 「食わないならお前はもう許さない。 お前はそこで乾いていけ」 「そ、そんな・・・」 「どうした、はやくしろ」 「ゆう・・・・ れいむは・・・」 泣き叫ぶおちびちゃん達 じっとれいむを見つめるお兄さん ゆっくりの中での最大の禁忌である同族食い そしてもう一つの禁忌、おちびちゃん殺し れいむはその片方を既に犯している もう片方も犯せば、れいむは立派なゲスゆっくりになってしまう 「・・・ゆっくりりかいしたよ」 れいむの中で、理性よりもお兄さんへの恐怖が勝った 「おちびちゃんはれいむにゆっくりたべられてね。 はーみゅはみゅ」 「ゆぴぃ!? ゆんやああああああああああ! はなしちぇええええええええ!」 れいむは一匹の赤まりさを咥える 咥えられた赤まりさはぶりんぶりんとあんよを左右に振って抵抗している なかなか踏ん切りがつかないのか咥えたまま動かないれいむ そんなれいむにお兄さんはあるものを注射器で注入した 「ゆひぃ!? ほひひはん?へいふひはひひはほ? ・・・はんはははははははふふはっへひはほ?」 注射器のラベルには『コンポストゆっくり用食欲増進剤 精神強化成分配合』と書かれている れいむは頭がぼーっとして身体が熱くなっていくのを感じると同時に今まで感じたことのない空腹感を感じた まるで三日三晩食事を取らなかったような飢え めがぐーるぐるして、舌がピクピクとひきつる 「はなしちぇええええええええ! まりしゃまじゃしにちゃく『ぐちゃ!』・・・!」 咥えていた赤まりさを噛み潰したれいむ その光景を見て、他の赤ゆっくり達は一斉に逃げ出した 「なんだかとってもおなかがすいたよ! れいむはたっくさんむーしゃむしゃするよ!」 「こっちにくりゅなあああああああ! このげすうううううううううううう!」 一匹の赤れいむに狙いをつけて飛び跳ねるれいむ すばやく回り込んで赤れいむをもみあげでつまみあげる 「はなしちぇえええええええええ! れいみゅをたべにゃ『げちょ!』・・・!」 「しあわせええええええええええええええ!」 光悦の表情を浮かべるれいむ 眼下で息を切らしてお腹に体当たりをくり返す赤まりさに気づく 「きょうぢゃいをこりょしちゃげしゅはまりしゃがせいっしゃい!しゅりゅのぜえええええ! ゆっくちしにゃいでしゃっしゃちょ・・・ゆわあああああああ! はなしちぇええええええ! ゆるしちぇええええ『げしょげしょ!』・・・!」 「しあわせええええええええええええええ!」 「ゆわあ、あ、あ、あ、あ・・・・ みんにゃてべられちゃうのじぇ・・・」 「きょわいよおおお・・・ れいみゅもうしんじゃうにょかなぁ・・・」 「ゆうううう・・・ おきゃあしゃん・・・ おちょうしゃん・・・」 「どびょじぢぇ・・・ どびょじぢぇごんにゃめに・・・」 壁の隅にひと塊りになって震える赤まりさと三匹の赤れいむ れいむは大きく広げた口でそれらを被うと、口を閉じて一気に噛み砕いた 「しあわせええええええええええええええ!」 「ゆっ・・・ゆげえええええええ!」 「ゆっ・・・ゆっ・・・ゆっ・・・」 「しあわせええええええええええええええ! しあわせええええええええええええええ!」 精神的に追い詰められて餡子を吐く赤まりさと既に瀕死になっていた赤れいむ それらを食べ終え、最後の一匹になった赤まりさににじり寄っていくれいむ 「ゆわぁあわわわ・・・・ まりしゃ・・・おいしくにゃいよ? たべちぇもおいちくにゃいよ? おねがいぢゃかりゃこっちにこにゃいでにぇ? まりしゃとゆっくちしてにぇ?」 「かわいいれいむはむーしゃむしゃするよ!」 「ゆんやあああああああああああ『ぷしゃああああああああ!』あああああああああああ!」 赤まりさの下腹部から、おそろしーしーが勢いよく噴出される がたがたと震える赤まりさを前に、れいむは笑顔で宣言した 「ゆっくりいただきます!」 「やめりょおおおおおおおお! しにちゃくにゃあ『ぎっちょん!』・・・!」 「しあわせええええええええええええええ!」 全ての赤ゆっくりを完食し終えたれいむ そんなれいむにお兄さんはこう言った 「見ろよ、あのれいむゆっくりしてないだろ?」 「あんなにかわいいおちびちゃんをたべちゃうなんて・・・ このゆっくりごろし・・・」 「みゃみゃぁ・・・ ありしゅこわいわぁ・・・」 お兄さんの傍らには、先ほどのありすの親子がいた 4 「おにいさん! おにいさんにもらったぶろっくさんで ありすのおちびちゃんがとってもとかいはなこーでぃねいとをしたのよ!」 「みちぇみちぇ!おにいしゃん! ありしゅがんばっちゃわ!」 「すごいなぁ! ありすもありすのおちびちゃんもとっても都会はだな!」 お家の中からは楽しそうなお兄さんとありす親子の声 れいむはそれを聞くと惨めな気持ちになるので聞かないようにしていたが、嫌でも耳に入ってくる れいむが赤ゆっくりを食い殺したあの後、お兄さんはれいむではなくありすの親子を家に入れた お兄さんは新しくありす種が飼いたくなったのでつれてきたとのこと れいむにとってはあてつけにしか思えなかった 毎日のように聞こえるありす親子の生活音 それを聞くたびにいーらいらするれいむ れいむはただただ耐え続け、今日も壁を綺麗にする 「とってもとかいはならんちさんだわぁ! おにいさんゆっくりありがとう! ほら、とちびちゃんもおれいをいいなさい!」 「おにいしゃん! ゆっくちありがちょー!」 「いいんだぞー! いっぱいたべてゆっくり大きくなってね!」 れいむの大好きなべーこんごはんさんの臭いがする 臭いだけ嗅がされておなかが情けない音を立てた もうここ何日もまともなごはんを食べていないれいむにとっては拷問だ 「ゆうううぅぅぅぅ・・・ れいむのべーこんごはんさん・・・・」 空腹を紛らわすために、その辺に生えていた雑草を毟って口に入れるれいむ もう雑草の味には慣れたがちっともゆっくりできない 「みゃみゃ! ありしゅこーりょこりょすりゅからみちぇちぇにぇ! こーりょこりょ!」 「とってもとかいわなこーろころだわぁ! おにいさんもみてあげてぇ!」 「可愛いなぁありす! もっかいこーろころして見せてくれるか?」 「ゆっくちりかいしちゃわ! こーりょこりょ!」 楽しく遊ぶありす親子とおにいさん 前はれいむがお兄さんを一人占めして一緒に遊んでいた 「おにいしゃんしゅーりしゅりしちぇ! しゅーりしゅり!」 「だめよ、おちびちゃん! おにいさんはいまてれびさんをみてるのよ!」 「いや、かまわんぞ。 ほーらこっち来い、すーりすり」 「ゆわぁい! おにいしゃんのおちぇちぇとっちぇもあっちゃかいわぁ! ありしゅ、おにいしゃんのおちぇちぇだーいしゅき!」 お兄さんの手にすーりすりする赤ありす その手はれいむだけに優しくしてくれる温かい手だった 「ありしゅ、にゃんぢゃかにぇむいわぁ・・・」 「ちょっとおひるねにしましょうか・・・ おちびちゃんゆっくりおやすみなさい」 「ありしゅおにいしゃんとねむねむしちゃいわ・・・」 「ああ、いいぞ。 ありすもこっちに来いよ」 「ええ!? いいの!? おにいさんはほんっとう!にゆっくりしたにんげんさんね!」 「それほどでもあるよ。 さぁ、みんなでゆっくりお昼寝しようか」 「ゆぅ・・・ ありしゅ・・・ おおきくなっちゃらおにいしゃんのおよめしゃんになりゅ・・・ゆぴー」 お兄さんとお昼寝するのはれいむの特権の筈だった 今は別のゆっくりがおにいさんの手の中で眠っている 「ぺーろぺろ!ぺーろぺろ! ゆっくりしないでかべさんはきれいになってね! ぺーろぺろ!」 れいむは早くお兄さんを取り戻そうと躍起になった しかし、れいむの小さな舌では壁を綺麗にするのには時間がかかりすぎる まだ四分の一も終わっていないのだ 「ぺーろぺろ!ぺーろぺろ! ぺーろぺr・・・・ゆぐうううううううう!!! なんででいぶがごんなごぢじなぐじゃいげないのおおおおおおおおおおお!? おにいざんあんなにやざじがっだのにいいいいいいいいいいいいいいいい!!! なにがいげながっだの!? なにがわるがっだの!? でいぶはなにぼあやばればいいぼおおおおおおおおおおお?」 壁に額をつけて、ぽろぽろと零れ落ちる涙を見つめるれいむ 奪われてしまったしあわせ 終わらない課題 ゆっくりできない食事 変わってしまったお兄さん 何が問題で、何が悪かったのか れいむにはとうとう答えが分からなかった 永遠と続くと思われた絶望的な生活 だが、そんな日々は突如として終わりを告げる 「おにいしゃんはなしちぇええええええ! みゃみゃあああああああ! どぼしちぇたしゅけちぇくりぇにゃいにょおおおおおおおおおお!?」 「ごめんなばい! おでがいでぶがらおじびじゃんぼばなじでぐばばい!」 「うるせーよこの屑ども。 あんなに可愛がってやったのに恩をあだで返しやがって」 「どぼしちぇこんにゃこちょしゅりゅにょおおおおおおおおおおおおおおおお!? ありしゅなんにもわりゅいこちょしちぇないにょにいいいいいいいいいいい!!!」 「だべえええええええええええええ! ぞんなごどいっじゃだべええええええええ!! おでがいだがらおにいざんにあやばっでええええええええええええええええええ!!」 「はー・・・ どうしようもねえクソ餓鬼だな お前死刑確定だから。 ゆっくり苦しんで死んでいってね」 「ゆぴいいいいいいいいいいいいいいい!!! もうやじゃ! おうちかえりゅううううううううううううううう!」 お兄さんにつかまれている赤ありすと、顔をぐしゃぐしゃにして謝り続ける親ありす そんな二匹をお兄さんは汚物でも見るかのように見ていた れいむが外から家の中を覗くとカーペットの上にシミができている どうやら赤ありすが粗相をしてしまったようだ 「おい、れいむ! いるか?でてこい!」 「ゆぅ、れいむはここだよ。 おにいさん」 庭に出てれいむを呼ぶおにいさん れいむは一目散にお兄さんのところへ跳ね寄っていく 「これ、食え」 「ゆぴいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」 「おにいざああああああああああああああん! やべべええええええええええええええ!!!」 さも当然とでも言うかのように言い放ったお兄さん 赤ありすはこのお家に来た日に、れいむがおちびちゃんを食い殺しているのを見ていたので必死に抵抗する 親ありすの方は、泣きながら懇願しつづけていた 「おでがいでずがらおちびじゃんぼごろざないでぐだざいいいいいいいいいいいい!!!」 「言ったよなぁありす。 こいつがトイレで失敗しないようにちゃんと面倒見ろって」 「ありずはじゃんどおじえだわ! でぼじょっどめをはなじだずぎにいいいいいいいいいいいい!」 「阿呆が。 今回だけじゃねーだろーが。 こいつが何回失敗したか覚えてるか?」 「ええっと・・・ いち、にい、たくさん・・・ だぐざんでずうううううううううううう!!!」 「だろぉ? トイレの場所も覚えられないゴミ屑は死んだ方がいいよね! ゆっくりりかいしてね!」 「ぞんだあああああああああああ!!! もういっがいだげじゃんずぼぐばばいいいいいいいい!」 「嫌だよ、何度もチャンスやったのにそれを不意にしたお前が悪い」 「どぼじでえええええええええええええええええええええ!!!」 「ゆんやああああああああああああああ! みゃみゃあああああああああああああああ!」 れいむは呆れた トイレの場所も覚えられないなんて、なんてバカなんだろう れいむが同じくらいの大きさだったころはトイレの場所はおろか数や文字まで覚えさせられていた その程度もできないのにれいむのお家で暮らし、お兄さんを一人いじめしていたなんて・・・ 「おにいさん! はやくそのくずをちょうだいね! れいむはおなかがすいてるんだよ!」 「お、れいむはほんとにいい子だな~! 流石は加工所産だけあるな」 「なにいってりゅにょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」 「やべろおおおおおおおおおお! おじびじゃんぼだべるなああああああああ!」 れいむは子ありすを直ぐにむーしゃむしゃできるように身構えていた 憎きありす親子に自ら制裁をくわえることができるのだ 楽しくないはずがない 「いくぞ~! ほ~れ!」 「ゆぴいいいい! おしょらをとんじぇるみちゃいいいいいいいいいい!?」 「やべろおおおおおおおおおお! おじびじゃんぼだべるなあああああああ!」 放り投げられた子ありす、踏みつけられて身動きとれない親ありす れいむは落下予測地点に先回りして口を大きく開けた その中に子ありすがすぽりと入り、れいむは思いっきり口を閉じた 「ゆんやああああああ! ありしゅまだしにt『びちぃぐちゃ!』・・・!」 「むーしゃむーしゃ! むーしゃむーしゃ!」 子ありすが絶命しても執拗に噛み砕くれいむ まるで今までため込んできた不満を全てぶつけるかのように・・・ 「しあわせえええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!」 「あでぃずのおじびじゃんがあああああああああああああああああああああああ!!!!」 久々に心の底からゆっくりを感じたれいむ 絶望の真っ只中に叩きこまれたありす お兄さんはそんな二匹をみて満足そうにほほ笑むとお家の中に入って行った 5 「はやくしてね! れいむはおこってるんだよ!」 怒りの声を上げるれいむ 口には錆びた錆びた釘を咥えている 庭にはれいむのほかにありす、まりさ、ぱちゅりー、ちぇんがいる れいむ以外のゆっくりは総出で家の壁をなめて綺麗にしている 「ごべんなべい! あやばりばずがらゆるじでぐださい!」 「もうへとへとなんだぜええええ! おねがいだからゆっくりさせてほしいのぜええええ!」 「むきゅ・・・エレエレエレ。 もっど・・ゆっぐじ・・・」 「わぎゃらないよおおおおおお! ぱちゅりーしっかりしてねええええええ?!」 ぱちゅりーが中身のクリームを吐きだして、心配そうに駆け寄る一同 れいむはそんなゆっくり達に満面の笑みを浮かべて言い放った 「ぱちゅりーはきょうのごはんさんだよ! れいむがむーしゃむしゃするからね!」 「「「どぼじでぞんなごどいうのおおおおおおおおおおおおおおおお!?」」」 驚愕するゆっくり達を放っておいて、れいむはぱちゅりー近寄ってほっぺをガブリと食いちぎる 「むーしゃむーしゃ・・・・しあわせええええええええええええええ!」 ぱちゅりーを食べたれいむはとてもゆっくりした表情を浮かべた 他のゆっくりは寄り添ってがたがたと震え、恐ろしーしーを漏らす 「なにしてるの!? さっさとかべさんをぺーろぺろしてね! きょうののるまさんをたっせい!するまですーやすやもきんしだからね!」 れいむは咥えた釘を振りかざし、生き残ったゆっくりを仕事へと駆り立てた あれからお兄さんは野良を拾って来て、その野良に何か不都合なことがあるとお庭に放り出した 外に出されたゆっくり達は庭に住んでいるれいむに番や姉妹を食われ、以後奴隷としてれいむの課題を手伝わされている 「よぉ、れいむ。 今日も精が出るな」 「ゆゆ? おにいさん? あたりまえだよ! れいむはがんばってるんだよ!」 「そーかそーか。 で、結局怒られた理由は分かったのか?」 「ゆぅ? りゆうさん? なにそれおいしいの?」 「ふっ・・・そんなもんか。 まあいい、今日でお前のことをゆるしてやるよ」 「ゆーん!? ほんとうなの!? れいむ、もうがんばらなくてもいいの!?」 「ああ、もう頑張らなくていいんだぞ そうなるとそいつらはもういらないよな。 全部食って処分しとけよ」 「ゆっくりりかいしたよ!」 「「「どぼじでぞうなるのおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」」」 涙を流して嘆く野良達はれいむがにじり寄ると直ぐに身構え戦闘態勢に入った 沢山の野良を食らい体調良好なれいむ 僅かな食事しか与えられず貧弱な身体を酷使してきた野良 結果は比を見るより明らかだ 「いぢゃいいいいいいいい! までぃざにひど『ぶすり』ゆぎゃあああああああああああ!」 両目を刺された後まむまむに釘を突っ込まれたまりさ 「わぎゃらないよおおおお! どぼじでごんな『むしゃり』・・・!」 顔面を容赦なく噛みちぎられて断末魔も上げられず絶命するちぇん 「のろってやるううううう! ごのいながぼの『へしゃり』ごべええええええええええええ!」 身体を抑えつけられて不自然な方向へと無理やりへし折られたありす 「れいむのすーぱーむーしゃむしゃたいむはっじまっるよー☆」 物言わぬ饅頭になった四体の野良に、れいむはドヤ顔で言った 苦労の末に獲得したしあわせーな食事 れいむは夢中でむしゃぶりつき、作業着の人間さんがお兄さんのお家を尋ねてきたことに気づかない 「あ、どーもー! お待たせして申し訳ありませ~ん」 「別にいいんですよ。 あれを引き取ってもらえればいいだけなんで」 「はぁーい。 ではさっそく・・・ うわ!これはひどい・・・」 「もう手がつけられなくてどうしようもないんですよ・・・」 明るい声で挨拶をした作業着の人間さんは、れいむを見て絶句した おいしそうに同族を食べるれいむ 口の周りは餡子やカスタードでべたべた ゆっくりが饅頭とは言え見ていてあまり気持ちの良い物ではない 「ええっと・・・ じゃあ、連れて行きますね・・・」 「はい、助かります。 支払いはクレジットでも大丈夫ですか」 「あっ・・・ はい、大丈夫ですよ。 ちょっと待っててください」 「ゆーん! がんばったれいむへのごほうびさんだよ! むーしゃむーしゃ!」 「おい、れいむ!」 作業着のお兄さんが支払い用の端末を取りに行くとお兄さんはれいむを呼んだ れいむは食事を中断され不機嫌そうに膨れるが、お兄さんに呼ばれたので直ぐに笑顔になってすり寄っていく 「おにいさん! れいむがんばったよ!」 「ああ、頑張ったなれいむ。 そんなことより、れいむ。 今日でお前とはお別れだ」 「ゆーん! おうちにいれ・・・ゆぅ? おわ・・・かれ・・・?」 れいむはお兄さんの言っていることが理解できない お別れという言葉に思考がフリーズする 「そうだ、お前は加工所に連れて行って処分してもらう」 「しょ・・・ぶん・・・?」 「永遠にゆっくりさせるってことだ」 「ゆううううううううううううううう?! なんでえええええええええ!?」 「さあ、なんでだろうな。 そんなことよりれいむ、怒られた理由は分かったか?」 「ゆぅ!? ぞんなのわがらないよ!? でもでいぶがんばっだんだよ!? ぜいいざんをみぜでばんぜいじだんだよ!?」 「だろうな、お前は怒られた理由も分からないで俺に謝罪して反省したわけだ」 「ぞうでず!!! でいぶはおごられだりゆうばわがりばぜん! でぼいっじょうげんべいばんぜいじばじだ! あやばりばじだ! だがらでいぶを『・・・だよ』・・・ゆ?」 「もともと理由なんてなかったんだよ。 お前は俺のと言った通りずっといい子にしてた 勝手にむーしゃむしゃすることも、野良っとすっきりして子供を作ることもしなかった お前はゆっくりにしては聞き分けのいいやつだったよ」 「・・・じゃあ、どぼじで?」 「だから理由なんてないっていっただろ。 まぁ、早い話飽きたんだわ」 「・・・あきたさん?」 「そうだ、だからお前を家の中から閉め出した だけどお前は自分が何か悪いことをして追い出されたと勘違いした。 ただそれだけなんだわ」 「どぼじで・・・? どぼじでなのおおおおおおおおおおお!? でいぶがいいごにじでだらあんばにぼめでぐべばぼびいいいいいいいいいいい!!!」 「この数日間、理由も解らないで必死に反省してるお前を見てて十分楽しめたよ まぁ、お前の言葉を借りて言うならゆっくりできたってとこだな」 「じゃあ! じゃあ!!! でいぶをもういじどがっで『それはできない』どぼじでえええええ?!」 「言ったろ、飽きたって。 もうお前がどうなろうが知ったこっちゃない」 「ゆうううううううううううううううううううううう!!!! なまいぎなぐじをぎいでごべんばばい! ばんぜいじでばぶごべんばばい!!!」 「必死だな、おぃ」 泣いて額を地べたにこすりつけるれいむをニヤニヤと見下ろすお兄さん 「おまたせしました~」 作業着の人間さんが戻ってくるとお兄さんはニヤついた顔をキリっと引き締めた 支払いが済むと作業着の人間さんは透明な箱にれいむを入れた 加工所特性のゆっくり専用防音ケースである 「お゛に゛い゛ざあああああああああああああ『パタン』・・・・」 「じゃあ、お願いしますね」 「はい、でも本当にいいんですか? 銀バッチでとっても懐いてるみたいですけど」 「昔はいい子だったんですよ、でも今は・・・」 そう言って庭に目をやるお兄さん 庭にはれいむが食い散らかした野良の死体が散乱している 「・・・確かにこうなったら手放したくなるのも無理はないですよね」 「すみません、情が湧くといけないので・・・」 「あ、はい。 では、またご利用になる時はよろしくお願いします」 「はい。 ありがとうございました」 「いえいえ。 こちらこそ・・・では」 挨拶を終え、乗って来た軽トラックの荷台にれいむを放り込んで出発する作業着の人間さん お兄さんは無言でそれを見送った 「ばんぜいじでばずごべんばばい! でいぶばわるいごでじば! げずばゆっぐぢでじだ! あやばりばずがらゆるじでぐばばい!! おべがいじばず! だのみばず! ごでがらばごごぼをいべがべでいいごにじばず! だがらッ! だがらああああああ!!!!」 れいむは透明な箱の中で、誰に聞かれることもない謝罪を繰り返していた 終 あとがき 前回『anko2410さくのなかとそと』を投稿させていただいた者です どうやら沢山の方に読んでいただけたようで、大変ありがたいことです にとりあきさんには素敵な挿絵を書いていただき、本当にありがとうございます 皆さまにこの場を借りてお礼を申し上げさせていただきます 今回の作品はいかがでしたでしょうか 感想がございましたら感想板に書き込んでいただけると大変助かります 次回の作品の参考にさせていただきたいと考えているので 遠慮なく思ったことを書いて頂ければ幸いです では
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「そ~らたかいたかーい♪」 「おねーしゃんしゅごーい♪」 「おねーしゃんだいしゅきー♪」 「だすげでえええええ!」 一年で最も過ごしやすいと言われる秋の昼下がり。まりさが妹たちと遊んでいると、友達のれいむの助けを求める声がした。 「ゆゆ!れいむどうしたの!けがしてるよ!」 「れいむおねーしゃんだいじょうぶー?」 「いちゃいのいちゃいのとんでいけー!」 「むきゅん!まりさはおちびちゃんたちをさがらせてね!」 傷つき餡子が流れ出しているれいむを介抱していると、長のぱちゅりーの指示が飛んだ。 指示どおりに妹たちを遠ざけて、囲いとなりだした集団へと戻ると、驚くほど白くなったれいむが息絶えるところだった。 「れいむぅぅ!」 「もっとゆっくり……したかっ……た……」 「どうじてえええ!」 「むきゅー……、れいむはいいつけをやぶってにんげんのところへいったのよ」 ぱちゅりーによるとれいむが話した事情は以下の通りだった。 群れの中でも問題児のまりさが人里で野菜を食べようと誘った。自分ともう一人のれいむがそれに乗った。 野菜を食べていると人間がやってきていじめた。自分は、もう一人のれいむが手助けしてくれたおかげで逃げられた。 捕まっている二人を助けてほしい。 誘ったとみられるまりさは群れのルールを守らず、悪知恵が働き行動力旺盛な、ゲスと呼ばれる部類のまりさだった。 規律ある集団生活には有害だが、未踏の危険地帯を開拓していくことで、問題児ながらも若ゆっくりからは人気があった。 いいところもあったが、人間に捕まってはしょうがない。自業自得だ。群れのメンバーに諦めムードが漂う。 「れいむは?れいむはどうするの!?」 紛らわしいがここで問題にしているのは捕まっているほうのれいむである。まりさはそちらのれいむが好きだった。 「むきゅん。ざんねんだけどあきらめるしかないわ。せめて……このむれにどすがいたら……」 人間には同じように「れいむ」と聞こえるのだが、きちんと意図を汲み取って答えるぱちゅりー。 なにがしかのアクセントの違いがあるのかもしれない。 「そんな……みんながたすけないなら、まりさだけでもたすけにいくよ!」 「むきゅん!だめよまりさ!にんげんはおそろしいのよ!」 制止も聞かず、まりさはそう言って人里へと向かう。 『人里は餡外魔境』 (まっててねれいむ。まりさがだいすきなれいむをたすけてあげるからね!) 頭に広がるは成功のイメージ。人間は自分たちを食べたりいじめたりすると聞く。 だから食べられる前に、まりさたちが木の実を巣の奥に溜め込むようにして閉じ込められているれいむを、助け出すつもりだった。 捕まっているれいむをこっそり逃がして、頬ずりをして無事を喜び合う。 れいむもまりさのことを見直して、人気者のまりさよりも自分のことを好きになってくれる。 『れいむ!もうだいじょうぶだよ!』 『まりさ!』 『こっそりついてきてね!』 『ぶじににげられたよ!ありがとう!』 『れいむにはまりさがついてるからあんしんだよ!』 『まりさ……』 『れいむ……』 そこには根拠のない自信と、れいむをデートに誘いだせたゲスまりさへの嫉妬があった。 坂を下り茂みを越え、動き始めたれみりゃから隠れながら里についたのは、日が暮れようとする時分だった。 黒々と闇が落ちた村の外れに、赤々と灯る松明。その明りの下、男たちが丸い物を蹴りまわしている。 目を凝らしてもよく見えず、 「そろ~り、そろ~り」 と小声で言いながら近づくまりさ。 「ゆぎゃあああああああ!」 蹴りまわされるものの正体を見極める前に、身を引き裂くような絶叫を耳にしてそちらを向いた瞬間、視線が釘付けになった。 自分と同じ顔をしたものが足を焼かれている。ブスブス焦げる匂いが風に乗って流れてくる。 これはゲスまりさが 「ごめんなさい!ごめんなさい!にんげんさんのものだってしらなかったんですぅぅ!」 一度は殊勝に謝っておきながら、 「まりさはおいしくないんだぜ!たべるんならこっちのれいむにするんだぜ!」 許されないと知った瞬間に仲間を売ったことに対する、調理を兼ねた制裁である。 「ばりざがわるがっだでずうううう!あやばるがらばりざのあ゛んよ゛やがないでぐだざいいい!」 「何が悪かったのかなー?」 「にんげんざんのおやざいだべでごべんなざいいい!」 「分かってねえなあ」 「ばりざのおぼうしがああああああ!?」 相手をしていた男は、ゲスの帽子を取ると手にしている松明にかざした。優美なぐらい緩やかに燃え上がる。 悪知恵が働くとはいえ、知能の絶対値が低いので人間には即行でばれる。 「かえすよ」 「ゆぎゃああああああ!あづいいいいい!」 緋色に輝く帽子を頭にのせると、ゲスは大声をあげてとても喜んだ。 「こいつもこんなもんでいいよな?」 「おう、いいよ」 「何か」を蹴っていた男たちが蹴っていたものを鉄板の上に置く。赤々と照らし出されたのは変わり果てたれいむの顔で。 (あくまでもゆっくり視点で)整っていた顔は間断なくめり込んだ足で歪み、砂糖菓子で出来たリボンはところどころ欠けている。 「あづいいいいい!ゆっぐりでぎないいいい!」 「ん?そいつは?」 「あ?なんだお前」 男たちが気づいてまりさを掴み上げた。 「飼いゆっくり?」 「バッジないから違うだろ」 「まりざああ!ばりざとがわるんだぜええ!」 「ま……りさ?……!だずげでえええええ!」 「あ、知り合い?」 まりさは答えない。答えられない。 「みでないでざっざどだずげろおおおお!」 「だずげないならまりざなんがゆっぐりじねええええ」 男の一人が二匹の餡子を掬い取って、OKサインを出した。 「甘みは十分だから全体焼こうぜ」 「けど片方足で蹴ったからそのまんま食いたくねーよ」 「じゃあこいつらに子供産ませてそれ食おうぜ」 「折角手間かけたのにもったいなくないか?それ」 「ストレス解消になったからいーじゃん。それに赤ん坊のほうが旨いらしい」 「どうやって産ませるんだ?」 まりさは目の前の光景を受け入れられずにいた。 変わり果てた姿の人気者のまりさとれいむ。信じられないほど痛そうな仕打ちと嫌な臭い。 助けにきた自分を罵倒する、優しかったはずのれいむ。 「「せーのっ」」 鉄板から引きはがされた二匹が、人間の手で強制的に擦りつけられる。 「すっぎりじだぐないいい!」 「ずっぎりじだらしんじゃうううう!」 「あはは間抜け!」 「いっそこうしたほうが楽じゃね?」 「だはははは!」 男たちはゆっくりの悲鳴なぞ頓着せず、手に持って擦り合わせるのも面倒なので、股に挟んで腰使いの真似などをして笑い転げる。 「い゛や゛だあああ!もっどゆ゛っぐり、じだいいいい!……ゅっゅっ」 「もうゆるじでええええええ!……ゅっゆぅぅ」 「うわ汚ね!」 焦げた二匹の体が粘液で包まれ、今までの苦悶の声から甘く、押し殺したような声に変わる。 「れいむ……れいむ……」 まりさはそんな二人を呆然と見ている。嫌悪感が湧くのに、目を逸らせない。ぬるぬるのれいむ。聞いたことのない声。 「「んほおおおおおおおおおおお!すっきりー!」」 嬌声を上げて二匹は絶頂に達した。見る間に茎を生やし黒ずんでいく。 それを見た瞬間、まりさの何かが切れた。 「いやだああああ!おうぢがえるううう!」 「うおお!?」 おとなしかったゆっくりが突然暴れ出したので思わず取り落とす男。その隙にまりさは灯りの届かない闇へと消えて行った。 「もったいねー」 「うっせ」 「誰か醤油持ってない?」 男たちはあえて追わず、出来立ての赤ちゃんに舌鼓を打った。 まりさが逃げ去ったのは、帰るには見当違いである、村の方向だった。 「ゆ゛ぅぅ……、ゆっぐ……、ゆっぐ……」 泣きながら物音におびえ、目についた隠れられそうな物影に飛びこむ。 「あんなのれいむじゃないよ……あんなきたないのれいむじゃないよ……」 年長のれいむはまりさにとって憧れの存在だった。優しくてきれいだったのに。大好きだったのに。 「ゆー……だれかいるの?」 「ゆゆ!?」 声がしたほうを振り向くと、皮の張り、毛づや、その他どこをとっても素晴らしい、成体の美れいむがいた。 月明かりを浴びたその姿はたおやかで、まりさは一目で心を奪われてしまう。 「ここはおにいさんのおうちだよ。わるいこはゆっくりしないででていってね」 「まりさはわるいこじゃないよ!」 「じゃあゆっくりしていってね!」 「ゆ、ゆっくりしていってね!」 「ゆー、おねえさんはとってもきれいだね!」 「おにいさんがとってもかわいがってくれるからだよ!」 「ゆ!にんげんはこわいよ!れいむが……れいむがあああああ!」 「なかないでね、なくのやめてね。まりさがかなしいとれいむもかなしいよ」 そう言って美れいむは泣きだしたまりさの涙を舐めとる。その親愛の情がうれしくて、いい匂いにどきどきして。 「ゆー……くすぐったいよ」 「まりさはわらってるほうがかわいいよ!」 そう言って頬を擦り合わせる。まりさは先程の光景を思い出して体が強張るが、それも伝わってくる優しさがほぐしていく。 「れいむ……」 「なぁーに?」 「まりさはれいむのことがだいすきだよ」 このれいむこそがほんとうのれいむなんだ。まりさがすきだったやさしくてきれいなれいむはこのこなんだ。 このことおうちにかえろう。これからはふたりでおいかけっこしたり、ちびちゃんたちにおうたをうたったり、ひなたぼっこするんだ。 「れいむもまりさのことがすきだよ」 すりすりすりすり。 伝わってくる振動が、変わった。 「くすぐったいよれいむ~♪」 「……ゅ……ゅぅ……」 「……れいむ?なにか……へんだよ?」 さっきも聞いた声、れいむが出すとは思えなかった声。 「れいむにまかせてね。れいむがきもちいいことおしえてあげるね」 「やめて、やめてね。なにかまりさのからだおかしいよ?」 「れいむといっしょにすっきりー♪しようね」 「!」 実はこのれいむはHENTAIお兄さんに売り込むべく調教されていた、百戦錬磨のエロれいむだったのだ。 「いやだああああ!ずっぎり、ごわいいいい!」 「だいじょうぶだよ。とてもゆっくりしたきぶんになれるよ」 「どぼじでごんなごどするのおおお!?ぎれいなれいむがぞんなぎだないごどしちゃだめでしょおおお!?ごんなのゆっくりじゃないよおおおお!」 「すっきりをわるくいうこにはおしおきだよ!ちょっとほんきだすね!」 当然、その価値観も通常と違い、性行為に対して羞恥心がなく、ゆっくりできる最高の手段だと思い込んでいる。 「ゆふぅ……!」 駆け抜ける快感突き抜ける有頂天。れいむの愛撫で、急速に自分の中で何かが育っていく。 「じぬううう!すっぎりじだらしんじゃうううう!」 「こんなにおおきいのにまりさはなさけないね!」 れいむは取り合わない。人工的な環境で鍛えられたため、成体かどうかの微妙な差異は分からないのだ。 そのため、単なる快感への怯えと判断して更なる刺激を与えていく。 「ごわいよおおおおお!おがあざああああん!」 「「すっきりー!」」 茎を生やして黒ずんでいくまりさ。いくつかの実をつけるも熟しきるには至らない。 「あ゛あ゛あ゛あ゛まりざどおじてえええええええ」 変わり果てたまりさに号泣するれいむ。 「うー醤油醤油」 そこに飼い主である男が戻ってきた。 「おに゛いいざあああん!まりざが、まりざが、すっきりじだらじんじゃったあああ!」 「ん?そいつさっき入り込んだゆっくりか?仲間も黒ずんだし、まだ子供だったんだろ。 未熟なうちにすっきりしたら、産まれる子に餡子とられて死ぬよ」 「ながよぐゆっぐりじだがっただけなのにいい!」 れいむは声を張り上げて泣いた。 翌日。日差しの柔らかな草原で、子ゆっくりが保育役のゆっくりに問いかける。 「まりしゃおねーしゃんまだー?」 「おちびちゃんたちゆっくりきいてね。まりさとはもうあえないよ」 「そんなのうしょだよ!」 「うしょつかないでね!ぷんぷん!」 「ぷかぷかうかんであそぶーってやくしょくしたもん!」 「まりしゃおねーしゃんはいっちゅもやくしょくまもるよ!」 責任感が強く世話好きで、いつもニコニコしていたまりさ。そのまりさが約束を破るはずがない。 「ゆっくりりかいしてね……」 悲しげな説明も耳にせず、その日一日、子ゆっくりたちはまりさの帰りを待ち続けた。 このSSに感想を付ける
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おんもでゆっくりしよう!2 22KB 『おんもでゆっくりしよう!2』中編 オレはイライラしていた。 前回、編集ミスでナレーターであるこのオレ『観察お兄さん(神気取り)』の説明文が無くなっていた事に。 ではなく、今回絶賛観察中のこのゆっくり家族達に、である。とにかくウザイ。 観察一直線のオレが虐待鬼意三に宗旨替えしてしまいそうなウザさだ。 特にれいむ種のウザさに拍車がかかっている気がする。 かなりの数が死んだとはいえ、それでも溜飲が下がらないとは。 つーか、なんで全滅しなかったんですか? そんな運はイラナイよ! 今回(元々は1話形式でした。)はれいむ種のウザさにも焦点を当てて観察してみよう。 「それじゃあれいむ、おちびちゃん、ゆっくりおうちにかえっておみずさんご~くご~くするのぜ…」 「つかれたよ! もうあんようごかないよ!」 「おみじゅ! おみじゅ!」 「まりさ! れいむもかわいいおちびちゃんたちも、つかれちゃってもううごけないよ! ゆっくりしないでおみずさんさがしてきてね!」 「ゆぅぅぅ…」 でた、れいむ! なんなんですかね、コレ(笑) 身体機能に差が皆無なら、れいむの無能っぷりはその『向上心』の無さに尽きる。 ゆっくりは種毎に性格が違う。同種個体でも臆病・活発等の差異はあれど、 基本的な種の行動原理のようなものがあったりなかったり 観察対象のゆっくりについて考察するなら まりさ:活発、蒐集癖。これはエサを集めるのに適したものだ。 ありす:活発、とかいは。まりさほどではないが、ガラクタ蒐集もする。 れいむ:(笑) 現状に甘んじることなく、よりゆっくりするためにアクティブに行動するのが今回のまりさ、ありす。 餌場の開拓、食料の選別(毒など)、とかいはなコーディネート(資材集め)、すっきりてくにっく…枚挙に暇が無い。 一方、れいむは漠然とした『ゆっくり』を求める傾向にある。 『おうた』等は他のゆっくりだって歌うし、れいむ種は狭い自分の引き出しからしか旋律を生み出せない。 特に練習らしい練習もしない。どちらかというと、ゆっくりしたおうたを聴くことの方がゆっくりできる。 あったかいおうちでゆっくりしたい。 おちびちゃんがいればゆっくりできる。 おいしいごはんがあればゆっくりできる。等など そのどれもが受動的であり、現状の『ゆっくり』に甘んじてしまう傾向が強いのが『ゆっくりれいむ』だ。 例えば、ここに一本のアイスの棒(はずれ)が落ちていたとしよう。 例1)まりさ:「ゆゆゆっ! これはすごくゆっくりしたぼうさんだよ! まりさのだんびらにするよ!」 例2)ありす:「ゆゆっ! なかなかとかいはなぼうさんね! おうちのこーでぃねーとにつかえるわ!」 例3)れいむ:「(ぴょーん、ぴょーん、ぴょーん、ぴょーん…)」 …。たとえが悪かったかもしれない。おっと、またまた観察が疎かに。 この癖なんとしないといかんな。 「だめなんだぜ、ここはあぶないんだぜ、おうちのちかくにごーくごーくできるかわさんがあるから そこまでがんばってほしいんだぜ…」 「ゆっ! …しかたないね。れいむはおちびちゃんたちにしんじゃったおちびちゃんたちのぶんまで ゆっくりしてほしいよ。…おちびちゃん、れいむのおくちにはいってね! おうちかえろうね!」 「ゆっくりりかいしたよ!」 「ゆっきゅち!」 「やじゃぁぁっ! おみじゅ! おみじゅごーきゅごーきゅちたぃぃぃいいっ!」 「ゆっくりしないではやくしないとまたゆっくりできなくなっちゃうんだぜ! ゆっくりしないでおうちかえるんだぜ!」 どうやら、まりさ一家は帰宅することで話が纏ったようだ。 れいむも意外と聞き分けが良いのがオドロキである。 さて、赤れいむが1匹ダダこねているがどうするのかな? 「おおきなおちびちゃんたちは、まりさのおくちにゆっくりはいるんだぜ!」 「ゆびいいいいいぃぃっ! おみじゅぅぅぅ! ゆびぃぃぃい!!」(ころころ) ※饅頭格納中… 「ゆびぃぃぃぃっ! びゃぁぁぁっ!! みじゅもっでごぃぃぃっ!!」(ころんころん) 「ふうう、おひひひゃん、ふぁふぁうひへね…」 「へいふ…ひはんははいんはへ、ほうはへふぁふぁいふぉ…」 「ふうううう! ほへんふぇぇぇ! ほひひふぁんほへんふぇぇぇ!!」 あらあら、生き残った子ゆっくり達を格納した親達はわがまま赤れいむをおいて ずーりずーりと帰途についてしまった。 ころころ転がりながら泣き叫んでいる赤れいむはソレに気付いていない様子。 一家は、蚊に刺され苦しみぬいた末に死んでいった子達、泣き叫んでいるあかちゃん、 そして未だ毒に苦しんでいる瀕死の我が子を順に見やり、 『ふっふり…』 ぽつり、と涙と共に零し、背(?)を向けた。 すぐ傍には当然ありす一家もいたのだが、子ありすの惨状に嘆くのに忙しく、 まりさ達が去ったことには気が付いていない。 ありす達もまりさ達も、他の家族を気遣っている余裕など既に無くなっていた。 「ありしゅおみじゅごーきゅごーきゅちたいよ!」 「れいむものどさんからからだよぉ! おみずさんご~くご~くしたいよ!」 「ゆうう、れいむ、どうしよう…?」 「ゆっ! ゆっ! あがれないよ!」 ありす一家もノドの渇きに苦しんでいるようだ。 だが、帰ろうにも一家の大黒饅頭ゆっくりれいむが側溝から抜け出せない。 親れいむは側溝から抜け出そうと必死で、親ありすの問いかけにも気が付かない。 「ゆはぁ、ゆはぁああ、れいむのどさんからからになっちゃったよ! かべさんはいじわるしないでれいむをここからだしてね! ゆっ? これはおみずさんだよ! れいむがごーくごーくするよ!」 「ゆゆっ!? おと~さん! れいむにもごーくごーくさせてね!」 「ありしゅも! ありしゅも!」 どうやら、目の前のゆっくり皿に溜まった黒い雨水に気が付いたようだ。 ボウフラがうじゃうじゃ湧いているんだが、ゆっくり的にはお構いなしらしい。 蚊柱と同じ位、ゆっくりしていない挙動で蠢いているのだが…、水の中は良く見えないのだろうか。 側溝は成体1匹分の深さ。子ゆっくりどもはゆっくりしないでご~くご~くしたいのか 親れいむの頭を経由してコロリンと側溝の底に降り立った。 成体でも恐れをなした高さだというのに、なんとも無謀・無知・無垢… そこは風の通り道になっているからか、子れいむたちはヒヤリとした空気に包まれる。 コンクリートの外壁はどこまでも続いており、フタの抜けたこの場所から少し先は キチンと天蓋があり、『ュゥゥゥゥゥ』と暗い音を黒い洞から発していた。 ゆっくりの目線からすれば、天井が暗くざわめく灰色の異空間に迷い込んだような感覚だ。 そして目の前にはなんだか不気味な雰囲気の肌色のオブジェ。この中で子ありすは…。 「ゆううううっ! なんだかこわいよ! ゆっくりできないよ!」 「ゆぇぇぇぇえん!」 降りた子ゆっくり達は、その強烈な違和感に怯えはじめた。 「ゆっ! おちびちゃんたちもおりてきちゃったの? ゆふふ、しかたないね。いっしょにご~くご~くしようね!」 子ゆっくりでは皿の縁に届かないので、親れいむは口移しで子ゆっくり達を潤す。 大量のボウフラと共に… 「ごーくごーく! ごーくごーく! しあわせー!」 「とかいはなおあじね!」 「れいみゅも! れいみゅもぉぉぉっ!」 「れいむ、こっちにもとかいはなおあじのおみずさんちょうだいね!」 側溝の縁で待機していた親ありすと赤ゆっくり達もおみずの催促。 「ゆっ! わかったよ! ご~くご~く! ご~くご~く!」 「ゆゆっ! いじわるしないでおみずさんちょうだいね!」 「ちょ~らいにぇ!」 「ひゅっひゅひ、ひひゅほ! ぴゅ~~~~~~っ!」 「ゆわぁ~~~! あめしゃんだぁぁ!」 「ゆゆっ! これはおみずさんだよ! とかいはなしゃわ~さんね! さすがありすのだ~りんだわ!」 「ぴゅ~~~~~~~っ!」 「ゆきゃっ! ゆきゃっ!」 親れいむは口に含んだおみずを、上段の家族に向けて緩やかに噴出した。 蚊に刺された蔓の処理といい、今のしゃわ~といい、このれいむは何かと気転が利くようだ。 父ゆっくりになると、れいむ種でも少しは変わるのだろうか 渇きを潤す黒いしゃわ~(ボウフラ入り)にご満悦の一家。 黒い虹が一家の行く末を暗示するかのように架かっていた。 「ゆぅぅぅ~~~… でられないよ…」 一通り水遊びを楽しんだ一家はようやく、もう帰ろうという結論に辿り着く。 しかし、未だ親れいむの側溝脱出は成らず、残された一家は困り果てていた。 子れいむたちは親れいむのおつむに取り付いてず~りず~りと登頂し、なんとか脱出できた。 「れいむぅぅぅ、だいじょうぶなのぉぉ!?」 「ゆゆゆ! …しんぱいごむようだよ! きっとべつのばしょさんからでられるよ! ありすたちはゆっくりしないでさきにおうちにかえってね!」 「ゆ~~~ん… わかったわ、れいむ。ゆっくりしていってね!!!」 『ゆっくりしていってね!!!』 『ゆっきゅちちちぇいっちぇにぇ!!!』 子ゆっくり達を連れてその場からず~りず~りと去る親ありす達。 「ゆっ、おか~さん! あかちゃんがないているよ!」 「ゆっ!? ……いきましょう、おちびちゃんたち。ゆっくりしないでおうちにかえりましょうね…」 「ゆぅぅぅ…」 置いていかれた赤れいむを捨て置き、帰路に着く。 自然は厳しい。ゆっくりだって生きている。 時折見せる、こうした野生動物然としたドライな反応もゆっくりの魅力のひとつだ。 おうちにかえろう。おうちにかえってゆっくりしよう。 きょうはおちびちゃんたちがいっぱいゆっくりできなくなってしまった。 しんでしまったおちびちゃんのぶんまでいっぱいゆっくりしよう。 おいしいごはんさんをぽんぽんいっぱいむ~しゃむ~しゃしよう。 まいにちいっぱいす~やす~やしてす~くす~くおおきくなろう。 ゆっくりしよう。 おんもはこわいこわいだったけれどあしたもがんばってゆっくりしよう。 「ゆっ! ゆっくりしないででぐちさんをさがすよ!」 ゆっくり皿のあった場所は格子があり、『下流』の方に行くしかない。 意を決したれいむは暗闇の洞に吸い込まれるように消えていった。 遊歩道には呻き声と赤れいむの嘆きだけが残っていたが、 元々小さな体から発せられる声は、少し強くなってきた風に容易く掻き消される。 「か゛ゆ゛…う゛ま゛。゛」 「ゅ゛っ…ゅ゛っ…ゅ゛っ…ゅ゛っ…ゅ゛っ…ゅ゛っ…。 ……。 …。 ゅ゛っ…。 ……。 …。」 「ゆびいいいいい!! ゆっ!? おきゃーしゃんどきょぉ? どきょぉぉぉ!?」 今まで宥めてくれていた親れいむの声が無くなっていることにようやく気付いた赤れいむ。 不信に思い、辺りをキョロキョロ見渡すが、そこにはゆっくり出来ないオブジェと化した家族達、おともだち。 「ゆ、ゆ、ゆ、ゆぁぁぁぁ! うわあああああああ!!」 (○)(○) あれだけ喧騒に包まれた遊歩道も静かになった。 散らばったゴミクズを足で寄せ集め、遊歩道のベンチの脇にあるクズ篭に放り込みながら これからの観察プランを練ることにする。 『ュゥゥゥゥゥ… ュゥゥゥゥゥ…』 …側溝から時折聞こえるこの音。大体見当はつくが、中はどうなっているのだろうか。 それにさっきまでは静かだったのにまた聞こえてきた。 次の観察プランはコイツでいくか。 「ず~り、ず~り! ゆっ! ゆっ!」 暗闇の側溝の中、親れいむは窮屈そうに這っていた。 天蓋はバスケットボール大の体の頭頂部分にピッタリで跳ねることが出来ないのだ。 じまんのかわいいおりぼんが擦れて汚れてしまっているのも知覚出来ていたが、 今は一刻も早くここから脱出して、ありすたちに合流しなければならない。 くきさんを生やした身重のありすひとりとおちびちゃんでは、帰り道は不安である。 生き残ったおちびちゃんもまだいっぱいいるのに、おと~さんのれいむが守らねば! 「まっててね! ありす! おちびちゃん! れいむはゆっくりはやくだっしゅつするよ!」 『ュゥゥゥゥゥ… ュゥゥゥゥゥ…』 「ゆ! ゆぅぅぅ… またきこえてきたよ」 この音。いや、声。 どれくらい進んだのか判らないが、だんだん近づいてきているような? 既に風の音ではないというのは、れいむでも判った。 こころなしか、ゆっくりの声に似ている? 「ゆ~~ん! だれかいるのぉ~? いるならおへんじしてねぇ~! ず~り、ず~り!」 呼びかけながらまた暫しのず~りず~り。 「ユウウウウウ… ユウウウウウ…」 「ゆゆゆ!?」 いた。 ゆっくりだ。 天蓋ブロック端に刻まれた取っ手が明り取りの窓の役割を果たし、ボンヤリと照らす。 そこにはボロボロのれいむがいた。 おりぼんも、おはだも、かみさんも、きっとおくちのなかのは(歯)やしたさんもボロボロだろう。 (なんだかゆっくりしてないれいむがいるよ…) 観察お兄さん的に側溝の中の状態も看破できるのだが、 観察お兄さん的好奇心で、れいむに姿を見られないよう留意しながら蓋を外してみる。 差し込んだ外の明かりにボロれいむ&親れいむがそれぞれ別な反応を示す。 いや、根底は同じなのかもしれない。 「ゆぴぴるっ… おんもぉ? …ゆぴるぱっ!」 「ゆゆゆ!? あかるくなったよ! でぐちだよ! れいむのるーとせんたくはただしかったよ!」 側溝の1ブロックを外すと、れいむとボロれいむが丁度露出した。 光を浴びたボロれいむの様子が何かおかしいと感じたれいむは、ボロれいむがかなり衰弱しているということに気が付いた。 「ゆゆっ! だいじょうぶ!? だいじょうぶ!? ゆっくりしてる!?」 「ゆぴぴる! ぴぴるんぱ! ぱぴゅるぴゅん!」 「ゆっくりしてね! ゆっくりしてね!」 「ぴぴゃらっぷ! ぴゃぁん! ぴゃぁん!」 ボロれいむがどんな状態か、簡単にいえば、体内で大量のボウフラが暴れているのだ。 天蓋を外したおかげで半透明の眼球から体内に光が差し込み、負の走光性だか走地性よろしく ボウフラが一斉に活動したのだ。その眼球内にもギッシリとボウフラが詰まっていたが。 それにしても、いったい、体内でどうやって呼吸しているのだろうか。 ボロれいむは一昨日、側溝に迷い込んだ若れいむだった。 はるさんを迎えひとりだちした矢先、同じく巣立ちをしたかっこいい若れいむ2・若ありす1姉妹に出会い、 一緒に遊んでいるうちに遊歩道に近づいてしまった。 針金に引っ掛って落下し、その時出来た傷口に卵を産み付けられ、体内でボウフラが孵化してしまったのだ。 傷の痛みと、一緒に落ちて分断されたおともだちのあまりにゆっくり出来ない最後に 散々泣き叫び衰弱していたため、あちこち刺されても大した反応も出来ず、 ゆっくりできないなにかから逃れるように這いずりながらココまで辿り着いた。 オレはゆっくりと蓋を元に戻した。 「ぱぴぷぺっ… ユウウウウ…」 「ゆっくりしてね! ゆっくり! (ゴゴゴ…)ゆゆっ?! おんもさんまってね! ゆっくりしててね! ゆぅぅぅぅ…」 予想通りってのも、案外つまらない。 くぐもっていく2匹の声を聞きながらオレは考える。 この親れいむも直接ボウフラ入りの水を飲んだし、ボウフラ自体もあんこに耐性があるようだ。 頭頂部も擦れて禿げ上がり、もうしばらく這いずれば中身が露出するだろう。 それにこの先には… 「ゆぐぅぅぅ?! でぐちさんがなくなっちゃたよぉぉお!? でぐちさんやめてね!! れいむをおんもにださせてね! それからしまってね!!」 「ゆううう… れいむは、いきるよ… いきて、ありすとおちびちゃんとしあわせ~にくらすんだよ… ず~り、ず~り」 「ュゥゥゥゥゥ… ュゥゥゥゥゥ…」 「ュゥゥ…」 「ゆっゆっ!? すすめないよ! どおして!?」 側溝には要所毎に格子が設えてあった。 格子の向こうからもあの声が渦巻いて聞こえてくる。 そして、ゆっくり出来ない羽音も… オレはありすを追いながら携帯で蚊について調べていた。 展望台は電波塔の役割も果しており、自然豊かなこの公園内でも感度は良好だ。 どうやら『ゆ擦り蚊』とかいうのがいるみたいだが、ソレと今回のは少し体色が違う。 コイツの口吻は赤く、翅はステンドグラスのように七色に煌いているのだ。 『紅魔蚊(ん)』ゆっくりの死体を媒介に繁殖する蚊だそうだ。 ゆっくりに含まれるれみりゃ・ふらん等の因子が起因して発生するらしい。 吸血するもの同士、気が合ったってことなのか? ゆっくりのあんこしか吸わず、日の光が苦手。 繁殖力・成長速度はゆっくり並み。etc. ちなみにボウフラは『ぼうふりゃ』とも『ぼうふらん』ともいわれるそうだ。 正直、どうでもいい。 ゆっくりが介入したことで、残念ながら全てにおいて元の蚊よりグレードダウンした生物である。 歴史的にみても、ゆっくりなんぞよりも蚊が優れた生命であることは知れたことなのだが ゆっくり同士でもこのようなグレードダウンは往々にして起こりうる。 例えば、れいむの場合 ゆっくりの基本的な身体差は無いが、れいむ種は小柄な個体が多い。 これはエサ集めを幼少期や成熟期に他の個体に依存した結果、最終的な摂取量がまりさ種やありす種に及ばないためだ。 もし、れいむ種が父役を果たした場合でも、拾得量や栄養面での問題。 少ないエサを子(特にれいむ種の仔にだが)に優先的に分け与えるため似たような結果になる。 アクティブに動く個体は『かり』の際にも少なからず食料を摂取し、運動の作用で健康なものが多い。 経験を積み重ね、それに基づいた野生ならではの知性と閃きも見せる。 小柄な個体が産む仔は、比例して小さく貧弱であり、餡容量も少ない。 ゆっくりの特徴として、劣性の遺伝情報も色濃く受け継がれてしまう。 野生で生きるものの母体としては、れいむ種などではなく、まりさ・ありす・ようむ等、 とにかくれいむ以外のゆっくりが望ましいのだ。 これは、現代で言うところのラバ・ケッティの関係に当てはめると判りやすいかもしれない。 ♀ウマに♂ロバを掛け合わせると、体の大きな♀ウマからは 馬の力強さ、ロバの頑丈さ、粗食に耐える素晴らしい能力を持った 『ラバ』という動物が生まれる。寿命も比較的長い。 ♀ロバに♂ウマを掛け合わせると、体の小さな♀ロバからは 馬の臆病さ、ロバの矮小さ、粗食に任せた大食らいの役立たず 『ケッティ』という動物が生まれる。体が小さいので労役には耐えられない。 これらは一代雑種と呼ばれ、子孫を、仔を成せない個体として生まれる。 だがこれがゆっくり同士、母体がれいむ、もしくはでいぶならどうだろう。 どんな個体でも大量に仔を成すし、れいむ同士(苦笑)の『つがい』も珍しくない。 上記の例をゆっくりに当てはめて鑑みれば、現在のゆっくりを取り巻く状況も少しは改善されるのかもしれない。 そんな事を考えながら散策していると、丘の手前の草むらでなにやら騒いでいるありす一家に追いついた。 「ゆぷりぴゅん!」 「ぷりんぱ!」 「おぢびぢゃんどおじぢゃっだのぉぉぉおおおっ!!」 ぼうふりゃ水を浴び、飲んだチビどもが悉く奇声を上げて転がっていた。 時刻はまだ14時。絶好のぴくにっく日和の丘の草原なのだ。 子ゆっくりのおめめから入った光は小さな体内を蹂躙し、ソレを受けたぼうふりゃもあんこを蹂躙する。 その苦痛は想像を絶するだろう。 わずかに生き残ったチビども(それでも『いっぱい』いたのだが)は、総てが正常に立つことが出来ず その丸っこい身体を弓なりに反らせ、ぬるぬるの気味の悪いアーチを形作っていた。 「あぎゃぢゃぁっ!! あぎゃぢゃっ! じっがりじでぇ!! おうぢがえろーね゛っ! もうずぐそごだよぉ!!」 「ぴぴゃらぁぁぁっ!! ぴゅん! ぴゅん!」 べぇろべぇろと子を舐めてあやす親ありす。 赤れいむ・赤ありすは、アーチのバランスが崩れ横倒しになるとコメツキムシの如くパチンと跳ねる。 普段の跳躍の倍以上の高度から粘液濡れの地面に叩きつけられ、またゆっくりとブリッジの態勢をとる。繰り返しだ。 よく見ると体表面がボコボコと不規則に波打っていて、体内でぼうふりゃが暴れていることがわかる。 体内のところどころから小さな突起が飛び出て、手を振るようにピンピンと動く。 コレも逃げ場を求めて体外に出ようともがくぼうふりゃだった。 幼体の場合、半透明の眼球を経由せずとも、その体全体で光を受けるだけで十分だ。 手を陽にかざすと光が透過するように、皮の薄い子ゆ・赤ゆも同様に体内を光が通る。 紫外線の影響もその身体内部全域に受けるので、成体近くになるまでの日光浴は程ほどにするのがゆっくり飼育の常識。 因果関係は不明だが短時間でも効果が出るので、それでも楽観視は出来ない。 野生の個体が良くする、実ゆっくりといっしょにひなたぼっこ→いねむり等は、高確率で先天的な障害を招くのである。 ちなみにれいむ種の多くは日光浴を好む傾向にある。 そう、れいむ種はその行動規範の悉くが実利を成さない。それはゆっくり全般に云えることでもあるのだが… れいむ…(笑) 「ぴぴりぎぃぃぃいっ! ぎぴぎぎぃいいぃぃぃっき!」 子ありすはよほど苦しいのか、アーチが捻れ、まるで固絞りの雑巾の様になっている。 絞られて出てくるのは水とは形容しがたいヌルヌルの黄ばんだ粘液だけだ。 そして、ギリギリと音立てるかのごとく捻れた子ありすが瞬時に弛緩し、 カラカラの体がぺしゃん!と粘液溜まりに沈む。 苦しみにもがき捻れすぎて水分を絞りきってしまったらしい。 おまけにゆっくりゲージ残量もほぼゼロ。えんぷてぃっ!だ まあ、ぼうふりゃに殺されたようなもんだから脱水赤れいむよりはマシかな。 なかなかとかいはな死に方だし、やったね! 雑巾ありす!! パサパサ雑巾ありすはその体全体を使い水分を吸い上げるが、既に意思の宿らない身体に給水される液体は その皮をグズグズに変化させてしまう。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!! だんでだのぉぉぉおお!!」 「ぴききぃいぃっ! ぴぃぃいいぃいっ!」(ぱぴゅ!) こちらは子れいむ。全身を捻った結果、眼球が破裂してかわいい音を奏でる。 破裂と共に飛び出た大量のぼうふりゃが日の光に晒され、粘液ダレと子れいむの亡骸の上でピンピン跳ね回る。 欲張って他の子よりも大量に黒水を飲んだ結果であった。 「ゆひっ! ゆひっ! …ゲッ!! ォゲェェェ!!! ゲェッ! ォァゲッ!! ウェォォォオッ! …ッオ!」 その光景に親ありすも堪らず嘔吐してしまう。 水っぽいソレはパシャパシャと親ありすの前を流れ、のた打ち回る仔ゆっくり溜まりにまで到達する。 既に赤ゆっくり達も捻れており、その姿は一手間施したパスタ、もしくは何かの幼虫を髣髴させた。 どちらか一方の先端にはモッサリと毛が生え、鮮やかな飾りのようなものがヒラリと揺れていたが 親ありすの消化液も兼ねた吐瀉物が触れると、雪解けの如く消えてしまった。 「でいむぅぅぅ… ありず、どうじだらいいのぉぉぉぉ… ぽうやだよぼほぉぉ… ゆっぐりじだいよぉぉぉ…」 (*1))))) 「ゆうう?」 今度は頭上の蔓に成った実ゆっくりが高速で振動し始めた。 3つの実のうち、本体側の2個の実(ありす・れいむ)がカッと目を見開き、苦悶の声をあげる。 子を宿したゆっくりが何か摂取すると、まずはその孕み子を経由する。 親ありすが飲んだ水、そのぼうふりゃが実ゆっくりまで到達し、徐々にその中身と摩り替わっていったのだ。 (*2) 「おぎびぎゃん! やべで! おぢびぎゃんぼゆっぐりさぜて! ありずのおぢびじゃっ!」 (*3))))) (ぷつん! ぽとり) 「ゆゆゆっ! あ゛りずのおぢびぢゃん! うばれだよ! ゆっぐり゛! ゆっぐりじでいっでねぇぇ!!」 振動実れいむが蔓を離れ、地面に落ちた。 振動具合がしゅっっさんの前兆とは程遠いものだったとはいえ、ありすは無事におちびちゃんが生まれてくれたのだと思った。 こんな状況なのに、こんな状況だからこそ生まれてくれた。流石ありす。自分はゆっくりしているとかいはなありすなのだ。 おちびちゃんがうまれたよっ!! れいむ! ゆっくりしないではやくきていっしょにおちびちゃんとす~りす~りしようね! かっこいいれいむにそっくりなかわいいかわいいおちびちゃんだよ! (*4) (パカッ) 「ゆ゛っ?」 実れいむの上半身がパックリと縦に割れ、体内から白い虫が2匹、のっそりと出てきた。 6本の脚で逆さにおりぼんに掴まって身体を支え、重力の力を借りて翅を下方に垂らす。 体が黒ずみ、翅が本来の七色を放ちはじめた。 ワァ、こうまかの羽化だぁ。 「う~☆」(羽音) 2匹の蚊はその場で翅を振るわせアイドリングを済ませると、 示し合わせたように同時に飛び立ち、日の光を避けるために近くの草むらに消えていく。 イソイソとした所作だったが、その姿は中睦まじい姉妹に見えなくもなかった。 「お、おぢびぢゃっ! だんでおぢびぢゃんがわれじゃうのぉぉぉぉ???!!!」 残骸はぐるりと白目を剥き、割れていない下半身はだらりを舌を出して弛緩している。 やがて上半身が徐々に左右に垂れ下がり、無事だった下半身もキレイに真っ二つになってしまう。 水分もトンでしまっているようで、割れた惰力でボソリ…と崩れる。 羽化の最中に実ありすも地面に落ちていたが、こちらは何の反応もなくただただ、黒ずんでいくだけ。 親ありすは割れた赤れいむが衝撃的で、実ありすが生まれ落ちたことにも気付かなかったし 実ありすも消化液と残骸たちに紛れて融けてしまった。 「おうち… かえらなきゃ… れいむがまってるよ…」 ぼろぼろの蔓に残ったのは実れいむ(1)だけ。 辺り一面ヌルヌルした粘液とピンピン跳ねるぼうふりゃまみれ。 先ほどまで蠢いていたチビどもも、ありすの消化液の影響で全て体が半壊状態。 生き残ったおちびちゃんは実れいむを残してひとりもいなくなってしまった。 「どぼじでこんなことに…」 ず~り、ず~り。ありすは振り返らない。 残った実れいむが落ちないよう、ゆっくり、ゆっくり、あいするれいむのまつおうちへと這う。 「このおぢびぢゃんは… ごのおぢびぢゃんだげでも… ありずはぜっだいまもっでみぜるよ…」 本日、太陽の光を一身に浴びた実れいむ。 おひさまさんのひかりがあたると、きらきらすけてきれいなおちびちゃん。 きょうはいっぱいひなたぼっこしたね! あとはおうちでゆっくりしようね! おいしいごはんでゆっくりしようね! ありすのつくったきれいなあくせさりーさんでおしゃしようね! おとーさんれいむからぶゆーでんをいっぱいきこうね! ゆっくりしようね! ゆっくり! 展望台横の茂みに消えていく親ありすを見定め、巣の場所に中りをつける。 さて、次はまりさ一家だ。 帰宅済みなのか、枝葉で施錠された『おうち』の横にオレは腰を下ろした。 続きます。次回は後編。 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る ぼうふりゃキモいなw ってゆーか、飲み込んだのに餡子変換されないのか? -- 2018-01-03 11 49 12