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何が起きている。 青年川内一輝は、一人支給されたハンバーガーを貪りながら状況を分析していた。 無気力を体現したような、言ってしまえば堕落した性格の一輝だが、流石に怠惰にはなれなかった。 自分は、このゲームと殆ど同じような殺し合いに参加させられた筈。 最初こそいつもの無気力さを発揮していたが、何人かの仲間たちを得て本格的な主催打倒を目指していた。死体だって見たし、殺人者に襲撃されたりもした。 しかし突然、全く以て意味不明と言う他ない『放送』が流れ、気が付けばあの『開幕の場』に居た。 何が起きたのか、全く理解できない。 殺し合い――既に『前回』となったゲームにて主催者を勤めていた富山という男も居なかったし、自分の仲間たちの名前は名簿には一つも載っていなかった。 幾名か記憶にある名前はあったが、確かその名前の人物は前回のゲームにて、放送で名を呼ばれていたと記憶している。同姓同名の別人かもしれないが、そんな偶然が果たして有り得るだろうか。 (偶然……じゃなかったら何なんだ、まさか死人が生き返ったとか言う気か?) 一輝が如何に堕落した性格だとはいえ、夢と現実をごっちゃにしてしまうような人間ではない。 わざわざ『脱落者』である死人を生き返らせるような真似をしても、あの富山からしてみれば興が削がれるだけに過ぎないだろう―――それに最後の放送、そんな事は語られていなかった。 思い返せば、『お前ら』とあの男は言った筈だ。 なのに、川内一輝ただ一人がこの新たな殺し合いに呼ばれていると言うのは不自然ではないか。 もしかして自分は、前回の主催者、富山由紀夫さえ予想だにしなかった事態に巻き込まれているのではないだろうか、と頭の中に一つの可能性が浮かんでくる。 思えば前回の時だって、何の脈絡もなく突然に全てが始まったのだ。 ならば今回だって、そんな風に『常識外れ』の始まりを迎えようと何らおかしくはない。 「あー……何か唐突にだるくなってきた」 事態が元々より更に、滅茶苦茶に拗れているかもしれないと思うと、面倒になってくる。 恐らくこのゲームの元だろうとある小説を読んだことがある一輝だったが、前回も今回も、主催者は国なんて大層なものではなくただの恐らくは『一個人』だと見える。 そんな人間の考えを理解しようとするだけで、凄く『だるい』気分になるのだった。 とはいえまさか易々と殺されてやる気はないし、殺し合いに乗る気も皆無である。 また前回のように仲間を集めて布陣を固め、少しずつ主催者打倒を進めていくしかないだろう。 だが、一輝とて前回のようにいく可能性が低いことくらいは重々承知していた。 ああも順調に毎回進められるほど、楽なゲームではない。 もしも最初に、重火器を所持した殺人者などに遭遇したならそこで殺されるかもしれない。 殺さなければ殺される、その覚悟を留めておくことができなければどちらにしろ生き残れない。 それら全てを考え、様々な可能性を加味して考えていくと尚更面倒な気分になる。 (しばらくはここでじっとしてるか……自分から動いて乗った奴と出会してもあれだしな) ハンバーガーを食べ終わるとその包みを傍らに放り投げ、デイパックから支給された武器を取り出す。 前回ほど恵まれたものではなかったが、こんな大きな鋏となれば立派な武器だ。 刺したとしても普通のナイフとさほど変わりはないだろう。 見た目が少し貧相だったが、そんなことを気にしている場合ではないしむしろ目立たない方が好都合だ。 わざわざ仰々しい武器を携えた相手に迫っていく人間などそうは居ないのだから。 そうして川内一輝は、ぼーっと、押し寄せる倦怠感に耐えながらも静かに座り込んだ。 其処は学生の教室のようだったが、つい最近まで使われていたかのような様子が不気味極まりなかった。 ■ 「……愚かだわ」 学校内部にて、まだ殺し合いが始まって然程時間が経っていないにも関わらず、女性はそれを見つけた。 大量の血液。 誰が見ても致死量と判断できただろう。 女―――土御門伊織は、その光景を眉をひそめながら見下ろしていた。 彼女が此処にやって来たのは偶然と言う訳ではなく、単純に走り去る一人の人影を目撃したからだ。 途方もない年数を生きる妖怪『白澤』である伊織には、その人物が何か、罪と呼べる何かを犯した人間だということはすぐに予測が付いた。 ましてや此は殺し合い、犯す罪など人殺し以外に何があると言うのか。 追い掛けても無駄だとは思ったが、何となく校内を徘徊して、これを発見した、と言うわけだ。 十中八九下手人は先の少女と見て間違いないだろう。 年端もいかぬ、伊織にとっては赤子よりもまだ幼いとさえいえる少女だったが、あんな少女さえも殺し合いに駆り立てるとは少しばかり予想の範疇を超えていた。 しかもあの『目』は、保身などという下らない三下の目ではなかった。 あれは何かを決め、それを遂げるためにならどんなことだって惜しまないという目。 (『賞品』……あれがもたらした恩恵はかなり大きかったようね) 誰にでも願いと言うものはある。 些細なことから絶対に譲れないものまで、およそ誰もが持つものだ。 そして人々は時にその願いにすがり、時に諦め―――時に願いを遂げる為に罪人とさえなる。 尤も伊織からしてみれば、あのような連中に願いを叶えてもらうなどまさに『愚か』という他なかったのだが、そうまでして叶えたい願いを持つ者が居ることは理解できる。 そしてその『願い』を賞品に設定すること―――何とまあ、悪辣な手口だろう、と伊織は思う。 死者の蘇生、大金。或いはもう少し特殊な何かを求める人物も居るのかもしれない。 土御門伊織は、努力なくして叶える願いなど何ももたらさないと思っている。 だから賞品などに興味はないし、とりあえず生き延びることを最終目標にはしていたが、よっぽどの事がない限り進んで他人を殺める気もなかった。 が、これで確信する。 この殺し合いは、既に始まっている。 更に、悪意の渦はどんどん広がっていき、時には人を変貌させる。 「これは……早い内、お仲間見つけた方がいいかもしれない」 伊織も妖怪、いわば人外の存在だ。 人間と乖離した、言ってしまえば『能力』と呼べる常識外れの力を有している。 だがしかし、窮鼠猫を噛む、なんて事態が起きないとも限らない。 大体伊織のような人物を呼びつけてくる主催のことだ、ゲームの公平性がどうとかで普段通りに能力が使えなくなっている可能性だって十分に有り得る。 故に、油断は禁物。 侮ってかかればいずれ痛い目を見かねない。 細心の注意を払って行動し、なるべく早急に同行者を獲得する。 伊織は当分の行動指針を固め、とりあえずこの学校の中を色々探索してみることにした。 土御門伊織は、手始めに教室をしらみ潰しに見ていこうと思い立った。 □ ………お兄ちゃん。 青木百合は、廊下をゆっくりと歩きながらそう呟き嘆息した。 まさか殺し合いなんて馬鹿げたものに『また』巻き込まれるとは、夢にも思っていなかった。 彼女とその兄、青木林は、此処に来る前に既に一度殺し合いを経験している。 前回のゲームで彼女たちは殺し合いへの反逆者として、慎ましくはあったが行動を共にしていた。 しかし、あの優しい兄は百合を『ゲーム』から脱出させて自らはゲームに残るという行動に出たのだ。 青木百合は少なくとも生還することが確定し、青木林の生死はゲームの結末次第――なんて状況。 もしも林が何者かに殺されて、死を遂げていたとしたなら。 自分がどうなってしまうのか、彼女自身にも分からなかった。 平静を保てずに暴走して、本来なら想像もつかないような行動を執ってしまうかもしれないし、もしかしたら自ら命を断ってしまったかもしれない。十分に有り得る。 百合の中で、林という存在は余りにも大きくかけがえのないものだったのだ。 しかし自分はこうして新たな殺し合いに参加させられ、名簿には『青木林』の名前がしっかりとある。 林は生きているのだ。 これがあのクマの思惑通りなのかどうかは知らないが、林が生きているだけで十分だった。 もしも林の名が無かったなら百合は殺し合いに乗っていただろうし、狂乱したっておかしくはない。 今この時間、この会場で最愛の兄は、自分と同じく殺し合いをさせられている。 不謹慎ではあったが、そんな当たり前のことが彼女を安心させた。 そうして百合は、冷静さを失わずに殺し合いでの方針を決めることが出来たのである。 まず一つに、青木林との合流。 もし仮に殺し合いに乗らないとしても、林との合流を最優先して行動する。 林の情報を集めて、一分一秒でも早く兄の無事を確認したかった。 第二に、殺し合いへの参加意思。 これに関してはとりあえず保留といったところだ。 前回こそ早急に林との合流が叶ったから殺し合いへ反旗を翻したものの、今回は分からない。 何せ、青木林という存在がどれだけ青木百合にとって大切なものか、今の彼女はしっかり理解している。 林を守る為になら何にだってなる、何だってする―――それくらいの覚悟は完了していた。 殺し合いに乗ってしまえば、林を優勝させるまで生きていられるかはともかくその可能性を上げることくらいは出来る。 あの優しい兄はきっと殺し合いには今回も乗らないのだろうし、危険人物の排除が先決かもしれない。 林の敵に回るような、殺人者共を殺していく。 それもかなり合理的で、更にゲームの解体にも繋がる良いポジションだ。 只の殺人鬼となってしまうよりかは、そちらの方が幾分かハードルも低いだろうし。 しかし、まだこれに関しては決めかねる。 迷いがあるのだ。 人殺しへの迷いではない、そのくらいの覚悟はある。 ゲームの解体、林の意思の尊重―――そんな悠長なことを言っていていいのか、という話だ。 二度目のゲームで流石に百合は悟っている、『このゲームの解体は余りにも困難だ』と。 首に巻かれた首輪、狭くなっていくエリア、集まる殺人鬼達、そして最後には主催との対決。 幾つ難題があるか分かったものではない。 まずこの首輪をどうにかしなければいけないし、主催にそれを感知されでもしたら御仕舞いだ。 それだけの技術がある参加者なんてものがこの殺し合いに果たして存在するのか? 主催者からすればそんな人物を参加させることにメリットがない。 細心の注意を払って、そういったことが可能な人物を参加させていなくとも全くおかしくはない。 (そうなったら、乗るしかない) 最優先すべきは『青木林の生還』なのだ、『ゲームの解体』などは所詮スペアプランに過ぎない。 もしも殺し合いの打倒が不可能と分かったなら、そうなったら自動的に林を優勝させるように行動することになる。 林が幾ら良心的な人物だったとしても、林が自分を止めたとしても―――― (――――――私は殺す) 愛しい兄の為に、全てを壊して全てを滅ぼして、最後は自らも壊して滅ぼそう。 歪んだ少女は、しかしまだ冷静さを保った心で決意する。 躊躇いはあった。 兄はきっと自分を嫌うだろうし、そうまでして生き残ればあの兄は自ら命を断つかもしれない。 けれども、遂げる。 今はまだ『危険人物の排除』を行っていくだけだが、万一その時が来たなら覚悟を決めよう。 静かに、まるで自分に言い聞かせるように首を振り、前を向いたその時だった。 「………話し声?」 そう遠くない場所から聞こえる、確かな人の声。 どうも危険人物のようではないが、一応接触しておくに越したことはない。 まさかとは思うが林の情報を持っている可能性だってあるし、無視してしまうのは少し惜しい。 「………行こう」 支給された一本の斧を持って、不審だとは自覚しながらも百合はその声に近付いていった。 ◇ 声の出所はすぐに見つけることが出来た。 『2年C組』の教室から、確かに男性と女性の会話が聞こえる。 話の内容まではこの距離だと聞き取れないが、声の調子などから考えるに乗ってはいないようだ。 (内容……聞いておきましょうか、一応) 盗み聞きとは誠に趣味が悪いと百合は一般常識として理解していたが、この状況がまず常識という言葉を背負い投げするレベルに非常識なのだ、躊躇ってはいられないだろう。 それに危険人物の殺害を主として行動しようなんて思っている人間だと万一勘づかれれば後々面倒なことになる、最悪拘束されたりするかもしれない。 むやみやたらに人と接触するのは避けた方が賢明だろう、と百合は決める。 少しずつ、さながら忍か何かのように教室に近付いていく―――ここだ。ここなら聞き取れる。 まずあちらからこちらの姿は確認できないだろう。 代わりにこちらからもあちらの姿は確認できないのだが、今は会話の内容を聞ければそれでいい。 林の情報を得たいというのはあったが、仕方ないというものだ。 「成る程。一輝はこの殺し合いは『二度目』なのですね」 「……ああ。突然放送で別な場所に飛ばすとか言われて、気が付いたら此処に」 心臓がどきり、とした。 『一輝』と呼ばれた男の境遇が、自分と似ていたのだ。 特に『この殺し合いは二度目』という箇所。 もしかすると確認していなかっただけで、自分と同じ殺し合いに参加していたのかもしれない。 だとすれば、青木林の情報を何か保有している可能性がある。 あの後林はどうなったのか、そして突然放送で告げられたこととは何か。 「けど、俺の仲間は居ない」 「……妙ですね、それ。その『富山』という男には貴方だけをこんな場所に飛ばす理由がない――それは確かに川内さんの言う通り、この殺し合いは異常事態なのかもしれません」 富山?百合の脳内に疑問符が浮かぶ。 前回の主催者のあのクマは確か、『モノクマ』とか名乗っていた筈だ。 富山なんて人物には心当たりがないが、放送を行ったのはどうもその『富山』らしい。 おかしい。 幾らなんでも自分の知っている殺し合いと話が違いすぎている。 あのモノクマが、他人に自分の楽しみを譲ってしまうような輩には見えなかった。 あれは心の底から人々が絶望し、殺し合いをする様を見て楽しんでいたのだ。 その点では今回の主催者――『人無』だったか、よりもよっぽど性質が悪いとさえ言えるだろう。 なら、川内の言っているものは自分の経験した殺し合いでない可能性が高い。 殺し合いのゲーム、そんな悪趣味なものがまさかそこかしこで行われていたと言うのか? (……狂ってる) 覚悟を決めた筈の百合でさえも、そう言わずにはいられなかった。 異常すぎる。 何もかもを踏みにじって破壊するこのゲームを行うような人間が、この世には蔓延しているという。 どこまでこの世界が狂っているのか、百合は一瞬吐き気のようなものさえ覚えた。 「土御門、アンタは何か知ってることあるか?」 「年長者には敬語を使うものでしょうが……まあいいでしょう、私の知り合いが一人この殺し合いに参加しているようです――――そして」 次の瞬間、百合は本能的に目を瞑った。 教室の後ろのドアに、一本のナイフが突き刺さっている。 投擲に適したフォルム、俗に言う投げナイフというやつだろうか。 素人である百合には分からなかったが、とにかく『土御門』という女性に気付かれたということは分かった。既に一輝にも知れているだろうし、逃げられるかどうかは運といったところか。 どうするか。 今ここで斧を持って突入し、牽制したとしても相手の投げたナイフを打ち落とせる筈がない。 仮に逃げたとしても、後ろ姿だけでも見られてしまえば悪評を振り撒かれる可能性だってあるだろう。 「今なら、『話し合い』に応じましょう……しかし、出てこないようならそれなりの措置を執らせていただきますよ?……分かったなら早く出てきなさい」 仕方ないか、と百合は教室の、投げナイフが刺さったドアを開けて入室する。 中に居たのは二人の若い男女で、現在は情報交換の最中だったと見える。 『話し合い』に応じる、その言葉に偽りはないらしく両者共に行動を起こす様子はない。 このまま睨み合っていても仕方ないし、何よりあの土御門という女は相当、厄介そうだ。 相手のペースに飲まれてはいけない、こちらから話を振っていかなければ。 「私は青木百合と云います、殺し合いには『今のところ』乗っていません」 嘘をついたところでどうせこの女には見抜かれてしまいかねない。 そうなれば信用はがた落ち、少なくとも『真実』を言うよりも圧倒的に落ちてしまう。 「……私は危険人物、殺人者に対処していこうと思っています……場合によっては、殺すこともあるでしょう」 一輝―――川内一輝は眉間に皺を寄せ、土御門の様子を窺っている。 無理もないだろう、いきなり『危険人物限定でなら殺しもやる』と言われて警戒しないような人間はいない。 別に彼らと行動を共にする気は百合には無いのだ、情報を明かしてしまっても構わないだろう。 それに彼らとしても百合のような存在は害悪ではなく、むしろ助けられるとさえ言える。 危険人物が減ればそれだけ反逆の為の準備も楽になるのだから、当然の話ではあるが。 土御門―――土御門伊織は無言で、只何かを思案するように腕を組んでいた。 どうするか計りかねているのだろう、まさかここまで堂々と対応されるとは思うまい。 しかしそれを待つ百合ではない、速やかに自分の聞きたいことを質問することにする。 「一輝さん、土御門さん。私の兄――青木林という人物に心当たりはありませんか?」 黒い髪で学生服の少年。 余りこれと言って大きな特徴がある訳ではなかったし説明に多少困ったが、何とか特徴を説明した。 一輝は静かに首を横に振って知らない、という意思を示す。 伊織は難しそうな顔をして、只一つ百合に質問を投げ掛けた。 「百合――その方、貴女にとってどのくらい大切な方なので?」 考えるまでもなかった。 「世界を滅ぼしたって構わないくらいです」 刹那。 青木百合の視界が突如、白煙に覆われる。 伊織と一輝の慌てたような声を暫くぼうっと聞いていると、背中に何か衝撃を感じた。 その間ものの数秒。 たったそれだけの時間で、青木百合の意識は闇へと消えるのだった。 ◆ 土御門伊織と川内一輝、そして一輝に背負われている青木百合の三人は、学校を脱出していた。 誰にも出会さず―――そう、『誰にも出会すことなく』学校を脱出したのだ。 簡単に言うなら、あの時百合の視界を煙幕で遮り、あまつさえその意識を奪ったのは他ならぬ伊織である。 一輝からしてみれば余りに唐突すぎてパニックになってしまったし、今もまだ伊織に『何故青木百合を昏倒させたのか』の理由を聞けずにいる。何故だか学校から一刻も早く出なければならないと捲し立て、その勢いに反論できずこうして従っている、という訳なのだ。 「……この子は異常です」 厳かに伊織はそう切り出す。 どうにも嫌な胸騒ぎがする。 青木百合が青木林の死を知ったなら、彼女はきっと伊織達に牙を剥くだろう。 そして青木百合の青木林に対する感情は並大抵のそれではない、彼女が語った『世界を滅ぼしたって構わない』という言葉もまた、彼女にとっては誇張でも何でもなかったのかもしれない。 これは殺し合い。青木林が死亡する確率は決して低くはない。 どうするべきか―――土御門伊織は、その妖怪として生きてきた経験から思考する。 殺すか? そうすればとりあえず間近な脅威は消し去ることが出来るし、一輝も話せば反対はしないだろう。 しかし余りに早計すぎる気も否めない。 (―――なら) 単純明快。 非常に難しく面倒な手段ではあるのだが、これぐらいの愚策しか伊織にも思い付かなかった。 「……万一のことがあっても、決して青木百合に放送を聞かせないように……そういう偶然も、時としてはあり得るのですから」 無言で一輝は首を縦に振り、伊織もまた安堵する。 いずれボロは必ず出るだろうが、その時にまた対処していくしかない。 面倒だなあ、と伊織は安堵と打って変わって、深い溜め息を漏らした。 普段なら、こんなに乱暴なまねはしなかったろうが、経験が告げているのだ。 ―――――一波乱ある、と。 【F-5/学校 出口付近/一日目/朝】 【川内一輝@需要なし、むしろ-の自己満足ロワ3rd】 [状態]健康 [服装]特筆事項なし [装備]大鋏 [道具]基本支給品一式、ランダム支給品×1 [思考・行動] 基本 殺し合いには乗らないでおく。 1 土御門の行動指針に従う [備考] ※マイナー参加者ロワに飛ばされる瞬間からの参加です 【土御門伊織@オリキャラで俺得バトルロワイアル】 [状態]健康 [服装]特筆事項なし [装備]なし [道具]基本支給品一式、ランダム支給品×1、投げナイフ(残り七本) [思考・行動] 基本 生き残る。 1 とりあえずは殺し合いには乗らない。 [備考] ※俺得オリロワ参加前からの参加です 【青木百合@DOLバトルロワイアル2nd】 [状態]気絶中 [服装]特筆事項なし [装備]なし [道具]基本支給品一式、ランダム支給品×2、斧 [思考・行動] 基本 青木林の為に行動する 1 ………… [備考] ※DOLバトルロワイアル2nd、ゲーム離脱後からの参加です 支給品説明 【ハンバーガー】 川内一輝に支給。 某マクド○ルドの照り焼きバーガー、美味しい。 【大鋏】 川内一輝に支給。 園芸や調理に用いられる大型の鋏。刺しても使えるが、切れ味も相当のもの 【投げナイフ】 土御門伊織に支給。 狩猟から手品など様々な用途で用いられる投擲に特化したナイフ。八本セット。 素人でも簡単に投げられるように出来ていて、殺傷能力もそこそこ。 【煙幕弾】 土御門伊織に支給。 相手の目を眩ます為に用いられる軍用の煙幕弾。ガスは人体に無害なもの。 【斧】 青木百合に支給。 木を切ることに使われるものだが殺傷能力は十分で、軽いため簡単に振り回せる 時系列順で読む Back 咲物語-このSSは100%の悪意のみで書かれたSSです- Next 天使への昇華 投下順で読む Back 咲物語-このSSは100%の悪意のみで書かれたSSです- Next 天使への昇華 GAME START 青木百合 056 メカクシコード GAME START 川内一輝 056 メカクシコード GAME START 土御門伊織 056 メカクシコード
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「明日はバレンタインだけど、かみやんはどう過ごすつもりぜよ?」 昼休み、白雪にあーんされながら土御門が聞いてきた。 「いや、美琴からしかチョコもらえないと思うし、普通に美琴とデートするつもりだけど?」 「なん……だと?」 その言葉を聞いた瞬間。土御門、青髪ピアス等などの上条を中学から知ってる人間がゆらりと立ち上がった。 「「「「「「「「「「テメェは何ぬかしてるんだゴルァァァああああああああああああああああああああああ!!」」」」」」」」」」 「うぎゃぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」 クラスの半分の男子から殴られた。フルボッコに、そりゃもうボッコボコに。 「痛ぇじゃねぇか馬鹿野郎ども!! 何しやがる!!」 そこは上条と言うべきかすぐに起き上がる。 「かみやんは忘れたんか!?あの悲劇を、あのうらやましいを過ぎて恐ろしい悲劇を!!」 「そうだそうだ!!お前のせいでどれだけの被害を受けてると思ってんだ!!」 「お前が学校中のチョコ全部もらって、精神的にも肉体的にも死ぬところだったんだぞ!!」 「そんな中お前は『また義理チョコか……不幸だ』全部本命だっつーの!!」 「それでお前はバレンタインとホワイトデーは引きこもりになったろうが!!」 「かみやん……お前かわいい彼女がいるからって調子乗りすぎぜよ!!」 俺はどんな中学校生活送ってきたんだよ!! 上条は昔の自分に聞いてみたい。マジでそう思った。 「まっ、俺たちに被害が出なかったら何してもいいんやけど……」 「頼むから見せつけだけはやめてほしいにゃー。出ないと精神的にも肉体的にも死ぬからにゃー……」 そんな事言われても困る上条だったのだった……。 そんな当麻達の耳に入ってきたのはイチャイチャしてるわけではないが、自然にいい雰囲気を作ってる学園都市一の問題カップルである。 「じゃあ真昼さん、赤音さん。夕方までにリクエスト考えといてね」 「任せとけって♪」 「いや、あの、真昼ちゃんに真夜君。バレンタインのチョコを女性が男性にリクエストするってどうなのかな~って思うよ、私」 チョコを作る気満々な真夜、それを楽しみにしてる真昼、そんな二人に疑問を持つ赤音のトライアングルカップルである。 ちなみに赤音は現在、井ノ原家に住んでいるのだがここまで来るのに紆余曲折あったが割愛させてもらう。 上琴よりも問題が早く解決したのは『両親同居』というメリットがあったからだったりする。 「……あのな赤音。真夜の料理の腕はお前もよーく分かってるだろ? 自分の作るチョコとあいつの作るチョコ、どっちが美味いか分かるだろ?」 「確かに……。彼女のより彼氏のが美味しいって軽く凹むよね。……じゃあ仕方ないか♪」 真夜の料理の腕前は実は繚乱家政女学校の生徒レベルだったりするが、本人は全く自覚が無かったりするので、 (別に俺は真昼さんや赤音さんの作るチョコなら何でもいいんだけどなぁ……。でも二人が喜んでくれるなら何でもいっか) こんなことを思ってるのだが、それを口にしたら二人が落ち込むと直感で感じていたので口にしない。 そんな三人の会話を聞いていたクラスメート達は耳を疑い、代表してデルタフォースが真夜に尋ねる。 「な、なぁ井ノ原弟くん。上条さんは気のせいかもしれませんが、あなたがチョコを作るように聞こえましたが?」 「ん? そうだけど? 何かおかしい所でもあったのか?」 「おかしいだろ絶対! 普通バレンタインは女子がキャッキャウフフしながらチョコ作ったり選んだりするイベントぜよ!」 「ああ、まあそう言われればそうだな。でも俺、毎年真昼さんに手作りチョコ食べさせてたからなぁ。それに海外じゃ男子が女子にって珍しくないぞ?」 「せやけど今年は茜川はんがおるやろ! 巨乳の子から手作りチョコ貰うって何と羨ましいことか! 逆に井ノ原姉のようながさつな男っぽい子なんぞにガフッ!」 余計なことを言った青ピは真夜の蹴り(能力未使用状態)を喰らってその場に倒れ込むが、誰も真夜はおろかトライアングルカップルに手を出そうとしない。 伊達にほぼ毎日青ピ率いる『嫉妬ファミリー』を返り討ちにしてるわけではないが、何とか出来る二人がいるが手を出そうとはしなかったりする。 「バカだなァ青髪のやつ。弟の奴は普段は温厚だから余計なことさえ言わなきゃ無害だってのによォ」 「ていうかアクセラ君っていつも彼らのこと、応援してる風だよね? 私は赤音ちゃんが幸せだから口も手も出さないけど」 「苦難の道を歩くカップルだぜ? 応援しねェわけにはいかねェだろうが」 学園都市最強の一方通行は自分と同じ茨の道を歩くカップルとして、実力レベル5の月夜は親友の赤音が幸せそうにしてるので応援していたりする。 そこで何を思ったのか、真夜が当麻、土御門、浜面、一方通行にこんな提案をしてきたのだ(気絶中の青ピは無視)。 「なあ上条に土御門、それに一方通行、浜面。一度くらいは自分達でチョコ作って恋人にプレゼントしたらどうだ?」 「「バカかお前はッッッ!!」」 デルタフォースの土御門と青髪ピアスが力説。 「にゃー!!バレンタインってのはなあ!!女の子が男子に勇気だして、ラヴを伝える日なんだにゃー!!」 「それをお前は外道か!?男が女の子に渡しても、なんもトキメカナイんや!!」 そう言いながらボコボコにする。内容はくだらないのだが妙に迫力があったので真昼と赤音は迂闊に手を出せない。 「はいはーい、皆さんもう昼休みはそろそろ終わってしますよー?さっさと席に着いてくださーい」 小萌先生のお陰でこの場は収まったがまだ二人は何か迫力がある。 「はまづら、また放課後」 「では半蔵様、今日の放課後またお会いしましょう!!」 と言って滝壺と郭は自分の教室に帰っていった。 だが小萌先生はまだ何か疲れている。 「ふう、全く上条ちゃん達のせい……いや、これは喜ぶべき事です?」 などとぶつぶつ言っている。 「そういや最近先生達複雑な表情してるよな」 「それは……あれだ、新入生とかじゃねえのか?」 「ンなモン毎年の事だろうが、そンなちっとやそっとであンな表情しないだろォ?」 実は最近教師達全員そわそわとしているのだ。浜面の予想はあながち間違っていないのだが、それが上条、一方通行、浜面のせいだとは知らなかった。 (まあ、学園都市最強にその学園都市最強を倒したレベル0、第四位を倒したレベル0に憧れる中学生増えたからにゃー、入学希望者ワンサカぜよ) 最近、当麻の高校の知名度は上がっていて特に当麻、一方通行、浜面の知名度はかなりのもの。 性格や素行に問題あれど、強い者に憧れるのは世の常で当麻の高校に入学を希望する学生が去年の倍にまで膨れ上がってるのが現状である。 そんなこんなであっという間にHRも終了、放課後になって小萌が四人の生徒を呼び出す。 「はーい、じゃあ今日はこれで終わりですー。白雪ちゃん、茜川ちゃん、真昼ちゃん、真夜ちゃんは明日のシステムスキャンの件で話があるので職員室ですよー」 小萌の呼び出しに若干面倒くさそうにしながらも四人は職員室へ向かおうとする。 ちなみに土御門と青ピにやられたダメージは全く無いどころか、効いてもいない辺りは彼もそろそろ化け物じみて来ているのかも知れない。 「なあ真夜。今日はお前らの訓練に付き合わなくていいのか?」 「うん。明日が明日だからさ、訓練も調整程度しかしないし。バレンタイン前日までつき合わせるのも悪いからさ」 「分かった。じゃあ明日頑張れよ!」 半蔵と何気に仲良しな真夜、去り際の彼の励ましが少し嬉しかったりする。 気を取り直して真昼、赤音と職員室に行こうとしたが、赤音は月夜と一緒に行くとのことで真昼と一足先に向かうことに。 「良かったの赤音ちゃん? 二人と一緒に行ってもいいんだよ?」 「それもいいけどたまには親友と一緒がいいな~って。それより土御門君に話、あるんでしょ?」 「ありがと♪ じゃあ土御門くん、ちょーっと昼休みの件で話し合おうよ♪」 土御門は月夜が怒ってる時の呼び方で自分を呼んだのにゾッとするが、恐怖で動けずにいた。 月夜の豹変っぷりにクラスメートの殆どが退散し、残ったのは土白以外では当麻、青ピ、一方通行、赤音、浜滝(滝壺は浜面を迎えに来た)のみだ。 「昼休み、井ノ原くんに言ったこと、覚えてるよね?」 「あ、ああ、覚えてるけど、そ、それが何か問題あった……のかにゃー?」 「女の子が男の子に勇気だしてラヴを伝える日、それはいいよ。でもその言い方だと土御門くんは私以外の勇気を出した女の子にラブを伝えられたいのかな?」 「な、なんでそうなるにゃー! それはあくまで一般論であって別に俺はそんなこと思っても……いないぜい?」 土御門の否定に間があったこと、最後の疑問符に怒りがさらに膨れ上がった月夜の殺気に誰も口出し出来ないどころか逃げることも出来なかった。 そんな月夜が女性陣にこんな質問をしてきたのだ、怒りを一時的に抑えて。 「ねえ赤音ちゃんに滝壺さん。私はバレンタインに彼氏からチョコ貰ったら嬉しいと思うんだよ、実際。二人はどう思う?」 「私も嬉しいかな? 真夜くんがくれるのなら何でも嬉しいってのも理由だけど気持ちが籠もってるのなら男とか女って関係無いよ」 「あかねがわの言う通り。女性から男性というのは日本人男子の固定概念。私もはまづらが手作りでチョコ作ってくれたらすっごく嬉しい。どんなに不器用で不味かったとしても」 女性陣二人の答えに満足した月夜とは対照的に、土御門は最初は納得出来なかったが恋人同士という観点から考えてみることに。 (確かに男がチョコ持って告白ってのは夢が無いけど恋人同士だったらそれも……イカンイカン!) 「土御門くん、さっきの私の言ってたこと、聞いてなかったのかなー? 私はあなたの手作りチョコ食べたいなーって思ってるんだけど♪」 「…………マジ、ですか? で、でも俺としてはお前と恋人になった初めてのバレンタインだからウギャッ!」 土御門が言い終わる前に月夜は自分の恋人を全身氷漬けにしてしまうが、即答してくれなかったというのが大きな理由だったりする。 怒りモードを解いた月夜は赤音と一緒に職員室に向かう前に、氷の中の土御門に宿題(?)を残す。 「じゃあ私は職員室に行くけど、その間に私のお願いの返事、考えておくんだよ。答えはもう、分かってるよね? 行こう赤音ちゃん」 「う、うん。じゃあねみんな」 こうして月夜と赤音が職員室へ向かった後の教室では当麻、一方通行、浜面が先ほどの会話(主に女子の)の聞いて今年のバレンタインについて考えることに。 「確かに………美琴の事は愛してるし色々世話になってるからな……」 「アイツがチョコ作れンのも問題だしなァ……」 「結局お前チョコ欲しいのかよ」 「ウッセェ、黙らないとしばくぞォ?」 「スイマセンアクセラレータサマアナタニハカナイマセンノデドウカオユルシヲ」 「浜面、すぐに土下座するのは情けなくねーか?」 上条、お前は何人の女に土下座してるんだ?浜面とてお前だけには言われたくないだろう。 「うっせぇ!!小物には小物の道があるんだよ!!」 「んー……チョコ作ってみるかな」 「スルーかよ!?」 「よし、そうと決まったら浜面、お前ん家で作ろう」 「スルーしたのに図々しいわッ!!」 「頼むよ!!実は俺バレンタイン終わるまで冷凍室入っちゃダメって美琴から言われてるんだよ!! 打ち止めとか滝壺とか白雪とか白井とか郭の作ったチョコも作るみたいだし……勝手に見たら悪いだろ?」 「冷凍『庫』じゃなくて冷凍『室』かよ!?……でもまあ、確かに仕方ないな……お前には色々かりがあるし……」 「ありがとうございます!!よし、アクセラも今日行くよな?」 「何でオレもチョコ作ることになってンだよ!?」 「打ち止め喜ぶと思うぞ?でも俺達が作ってお前だけ作らなかったらションボリするぞ?」 一方通行は考えてみる。打ち止めがどうなるか……それを考えた瞬間速攻で決めた。 「チョコだろうとナンだろうと作ってやらァ!!」 「よし!!それでこそ男だアクセラ!!いや、一方通行!!」 「あのーうち最後までスルー?」 「悪いな青ピ、俺ん家台所も冷凍庫も小さいんだ。だからさすがに四人は無理だわ」 「そ、そんなー……そりゃないで!?うちはどこで作ればいいんや!?」 「「「それは知らん(ン)」」」 「ヒドッ!!即答ヒドッ!!」 そんなうなだれた青ピなどほっといて上条と一方通行は廊下に一足先に出ていった。 浜面は滝壺に断ってから上条と一方通行を家に連れていくつもりだ。 「つーことで滝壺、悪けど今すぐ家に来るの無理だ。本当にすまん」 「大丈夫、みさかの家に行って仕上げをするから気にしないで」 「本当にすまん!!今日の夜頃なら帰ってきても大丈夫だから!!」 「うん、また夜会おうね」 そう言ってその場を立ち去ろうとした浜面だったが…… 「はまづら」 「ん?なんだ?」 「がんばってね、私もがんばるから」 「おう!!任せとけ!!俺も楽しみにしてるからな!!」 「うん、わかった。」 そう言って今度こそ、氷ってる土御門と床でうなだれてる青髪ピアスをスルーして、廊下で一足先に待ってる上条と一方通行の元へ急ぐのだった。 「では皆さん。明日の学校終わりで昼食後、常盤台でシステムスキャンを行いますのでよろしくですー」 「あ~、何か緊張してきたよ~」 「大丈夫だよ赤音ちゃん。常盤台だからって固くなる必要なんて無いんだから」 こちらは職員室、無事に明日のシステムスキャンについての話も終了。 月夜と赤音はやる気を見せていたが、井ノ原ツインズはそれほどでも無かったりする。 「なーんか面倒くせーなー。真夜と赤音と白雪はともかく、俺のシステムスキャンなんて意味ねーって。つーかかなりどうでもいい」 「そんなこと無いよ真昼さん。だって真昼さん、相手の感情のベクトルも見えるようになったんだよ。俺の能力だって人よりちょっと動けるようになる程度だし。意味が無いのは俺の方」 (どうしてこの二人はここまで能力のレベル評価にこだわらないんだ? 強くなろうって意思は高いのに……。もう少し自分達の能力を評価してもいいものだが) 同席していた木山が井ノ原ツインズに対して抱いてる一番の悩み、それは自分達の能力の凄さに無頓着すぎる点だ。 真昼は力のベクトル視認だけでなく、相手や周囲の人間が他者に向けてる気持ちのベクトルまで見えるようになっているのだ。 真夜も人より少し動ける程度と言っているが、強化できる上限が日に日に増加、それどころか直感などのあやふやなものまで強化出来そうになりつつある。 「二人とも最初からそんなにやる気ない風でどうするですかーっ! 真昼ちゃんも真夜ちゃんも木山先生が認めた生徒なんですよ! もっと張り切って欲しいですよー!」 「まあ月詠先生の言う通りだ、二人とも。ここら辺で自分達がどれだけ強くなったのかを知るのも悪くないぞ。結果は気にするな、楽しむつもりでやればいい」 「小萌先生と木山先生がそう言うなら頑張らねーわけにはいかねーな。いっちょ頑張るぞ真夜!」 「そうだね。日頃鍛えてもらってるみんなへの恩返しと思って頑張るよ、俺」 ようやく四人全員がやる気になったのを見て、小萌と木山は安心すると四人を帰るように促す。 職員室を出る前に真夜が、またしても他意ゼロの言葉を教師二人にぶつける。 「じゃあ明日、二人の分のチョコも作って持って行きます。二人とも俺の恩人ですから」 「あ、ありがとうです……。お、男の子からチョコ貰うのはな、何とも不思議な気分ですねー……」 「そんなに身構える必要は無いですよ、月詠先生。最近分かったんですが真夜はああゆう生徒です。本当に日頃の感謝しか考えていませんよ」 小萌はさすがに驚くが、真夜のことをかなり知っている木山は全く驚いてはいなかった。 真昼と赤音も驚いてはいなかったが、月夜だけは呆然としながら真昼と赤音に尋ねる。 「ね、ねえ二人とも? 井ノ原くんあんなこと言ってるけどいいの?」 「いーのいーの♪ 真夜君ってああゆう人だから。それに私達以外の誰かに愛情を注ぐなんてこと有り得ないもん」 「俺ん家の家訓その二にあるんだ。『受けた恩は誰だろうと必ず報いろ』ってな。それに感情のベクトルを見るまでも無く、あいつに下心は無いって分かってっから心配ねーよ」 真夜を全く疑っていない真昼と赤音に、月夜は少しだけ羨ましいと思った。 職員室を出た後で真夜が漏らした言葉に月夜は彼に対し、あるフレーズが頭をよぎる。 「後は半蔵と郭さんにもお礼のチョコ渡さないとな。何か今年は恋人に両親に恩人、チョコ作りが大変そうだなー」 (ああ、井ノ原くんってマイペースっていうかちょっと天然さんなんだ……) トライアングルカップルが明日のシステムスキャン前の調整があるとのことで武道場に向かったので一人、教室へと戻る月夜なのだった。 月夜が教室に戻ってる頃、青ピは黒子にそれとなく彼氏が彼女にバレンタインにチョコを渡すことについて電話で会話していた。 『そうなんですの……ジュルリ……食べてみたいものですわ……』 「黒子はん?今うちがチョコを体に塗り捲ったビジョンがうかぶはずないわよなぁ?」 『なぜお分かりになったんですの!?……はっ!!黒子と○○様は一心同体ですのね!?』 「ホンマに考えてたんかい!!中学生なのに黒子はん過激すぎや!!」 『でもそんな過激な中学生がお好みではございませんの?』 「そ、そそそそそそそそそんなわけあるかい!!う、ううううううううちはな、い、いたって健全やで!?」 『そんな!?では○○様の落下型ヒロインのみならず、義姉義妹義母義娘双子未亡人先輩後輩同級生教師幼馴染みお嬢様金髪黒髪茶髪銀髪ロングヘアセミロングショートヘアボブ縦ロールストレートツインテールポニーテールお下げ三つ編み二つ縛りウェーブくせっ毛アホ毛セーラーブレザー体操服柔道着弓道着保母さん看護士さんメイドさん婦警さん巫女さんシスターさん軍人さん秘書さんロリショタツンデレチアガールスチュワーデスウェイトレス白ゴス黒ゴスチャイナドレス病弱アルビノ電波系妄想癖二重人格女王様お姫様二ーソックスガーターベルト男装の麗人メガネ目隠し眼帯包帯スクール水着ワンピース水着ビキニ水着スリングショット水着バカ水着人外幽霊獣耳娘まであらゆる女性を迎え入れる包容力をお持ちではないんですの!?』 「黒子はん!!全部覚えてたん!?ってそっちじゃなくて違うで!?うちは黒子はん一筋やで!?そして健全やで!?」 『そうですわよね、中学生にスクール水着着せて喜んでますものね~?』 「うっ!?」 『その他にも――――』 こっからはあだるてぃーなお話なしなので、お見せすることができません。 そしてそれを教室のドアの外で聞いてしまった白雪は…… 「青髪く~ん?」 「はっ!!」 「中学生の女の子にそんな事させてるのかな?」 「違う!!ちがうんやこれh」 「問答無用じゃこの変体スケベエロエロ魔神ぁぁぁああああああああああああああああああああああああ!!」 氷った。ケータイごと青ピは氷った。 「やれやれ、ほいっと」 やることをやると白雪は土御門を解放した。 「にゃー……この仕打ちはないぜい……」 「お疲れ様元春、それじゃ答えを聞かせてもらうよー?」 「俺もチョコレートを作る事にしたにゃー。」 「そうなの。それと、今日は美琴ちゃんの家でチョコレート作るから一緒に帰れないから。」 「分かったぜよ。」 「とりあえず校門まで一緒に行こう?」 土白は学校の校門まで一緒に帰る事にした。(青ピの氷を溶かすのを忘れて。) 「じゃあ明日は楽しみにしているから。」 「俺も楽しみにしているからにゃー。」 というと土白は校門で別れた。 月夜と別れて少しして、土御門はとてもシンプルかつ重要なことに気付く。 「あーーっ! チョコ作るっつても俺一人で出来るわけないですたい! 月夜に頼むなんて出来ねぇし……そうだ!」 土御門は何かを思いだすと、携帯を取り出しある人物と連絡を取った。 『もしもし兄貴かー? どうしたんだーバレンタイン前日に。言っとくけど兄貴のチョコならもう作ったから心配するなー』 「おおっ! さすがは舞夏ぜよ! ……っといかんいかん。実は折り入って頼みがあるんだにゃー」 土御門が頼った人物、それは義妹の舞夏で、彼は事情を手短に話した。 それを聞いた舞夏は土御門のお願いを了承するが、今すぐというわけにはいかない事情があった。 『兄貴の頼みだからすぐ駆けつけると言いたいけど少し待っててくれるかー? 学校の課題で研修先に渡すチョコ作っててなー。今から三十分後に兄貴の部屋にお邪魔するけどいいかー?』 「三十分くらいなら全然平気ぜよ。こっちでも食材とか準備しないとマズイだろ?」 『それはこっちで準備するぞー。なんてったって月夜に贈るチョコを作るんだからなー。兄貴のセンスに任せられないぞー』 『舞夏さん、完成を待つだけだからって電話に出ないで下さい。……ところで誰と話をしてるんです?』 舞夏と会話してるのに別の誰か、しかも聞き覚えのある声を聞いた土御門は嫌な予感しかしなかった。 『じゃあ兄貴、五和にバレたから切るぞー。また後でなー』 それで舞夏との電話は終了、土御門は五和が付いて来ることだけは無いようにと祈るのだった。 バレンタイン前日で忙しいのは恋する乙女や恋人のいる女性ばかりではない。 「あ、あのー黄泉川先輩。今日はわしはお休みだったような気がするのよな。何でまた急に?」 「悪いな建宮。バレンタイン前日と当日は基本、ジャッジメントの女子は休みなのを忘れててな。人手が足りないから急遽お前を呼んだってわけじゃんよ」 アンチスキルとして活動してるのは黄泉川、そして建宮だった。 ちなみにアンチスキルの女性はバレンタイン前日だろうと当日だろうとジャッジメントの女子のように、休みになることは無い。 「言っとくがバレンタインが近づくとろくでもない連中が増えるからな。忙しさもいつも以上だと覚悟するじゃん。ま、お前さんなら心配無用だけどな」 「任せるのよ! 男、建宮斎字、乙女の一大イベントの邪魔する奴等など全て叩き潰してやるのよね!」 「おーっ頼もしいじゃんよ。じゃあ張り切って巡回するじゃん!」 こうして二人は巡回を始めるのだが、建宮は黄泉川にきわめてシンプルな質問をした。 「ところで黄泉川先輩は誰かにチョコをあげる予定は?」 「あー……一方通行くらいだな。でもま、あいつには打ち止めのチョコもあるしコンビニで適当にチロルチョコでも買って渡せばいいじゃん♪」 (この場合、黄泉川先輩の華の無い生活を悲しむべきか、白いのの扱いを哀れむべきか……難しい問題よな) ちなみに当日、偶然にも芳川もコンビニで購入したチロルチョコを一方通行に渡すという奇跡が起きることなど、当人達は知る由も無かった。 そのころ、初春と佐天はというと… 「ねぇ、明日飾利は建宮にチョコあげるつもりなの?」 「え!?あ、あげるつもりはないですけど、きゅ、急にどうしてですか?」 初春はいきなり佐天に聞かれたので明らかに動揺していた。 「だってこの前そんな事話したし、あれ以来建宮に会っていないでしょ。」 そうなのである。あれ以来、初春は建宮にどう接して良いのか分からなくなっていたので避けるように魔術絡みの事で動いていないのだ。 「せ、せっかく忘れていたのにそんな事思い出させないでください!!明日本当に建宮さんに会ったらどうすれば良いんですか!?」 「今まで避けられたから大丈夫でしょ、ってまた顔を赤くしているし。」 「涙子さんのせいですよ。もう本当に建宮さんに会えなくなってしまうでは無いですか!!」 「なんか前にもこんな話をした気がする…」 佐天はあの時もこんな話をしたな~っと思っていた。 「まあ、とりあえず渡さないなら良いんだけどさ。ところで、誰かにチョコあげるの?」 「一応、お兄ちゃんとお姉ちゃん、涙子と最愛にはあげようかなっと思ってますけど。」 「じゃあさ、一緒に作らない?」 「良いですね、じゃあこの後私の家に来てチョコ作りませんか?」 「良いですよ。じゃあ行きましょう。」 という事で初春と佐天は佐天の家に向かった。 その頃の柵川中学校門前、最近ではすっかり名物になった二人がぶつかり合っていた。 「神裂先生よぉ、飾利を呼んで来てくれよ。今からバレンタインのリクエストすんだからさ」 「ですから、何度も言ってるじゃないですか。飾利はすでに佐天と一緒に帰ったと」 神裂とシェリー、実はシェリーが正式に学園都市配属になって以来、ほぼ毎日この場所で喧嘩をしているのだ。 ちなみに神裂が教師として学校にいるのに初春のことを名前で呼んでるのは、シェリーが現れて二人(初春と神裂)が親しい間柄だとバレたから。 このせいで初春が今まで隠していた佐天、神裂との関係が暴露、一気に初春が柵川中学一の有名人になってしまったのだった。 「それにしても芸術家というのは暇なんですね。ここに飾利に会いに来る暇があるのなら作品の一つでも完成させてはどうですか?」 「はっ、分かってないねぇ。飾利と会うことで私はリフレッシュ、作品に取り組む意欲を上げてるのさ。つーわけでさっさと飾利呼べよ」 「……あなたは毎度毎度。そろそろ本気で体に教え込まないと分かりませんか?」 「上等だ、やれるもんならやってみろよ」 そうこうしている内に二人はヒートアップし、一触即発の事態になるが二人が怖いので誰も止められない。 唯一止められる初春がここにはいないので血を見る喧嘩が始まるかと思われたが、 「神裂さんとシェリーさん、一体何をやってるんですか? 周りの迷惑になると飾利が超怒るから止めた方がいいですよ」 用事があってやってきた絹旗から初春の名前を聞くと、喧嘩しそうな雰囲気は消え去った。 「絹旗、あなたも飾利に会いに来たのですか?」 「涙子にも超会いに来たんですけどね。ところで二人は今どこに?」 「今日は飾利はジャッジメントの仕事はお休みなので、佐天と一緒に帰りましたよ。もしかしたら佐天の家かもしれません」 「そうですか、おかげで超助かりました。じゃあ私はこれで……っと超忘れてました」 神裂から初春と佐天、二人の義理姉妹のことを聞き出した絹旗は佐天の部屋の方角へと進路を向ける。 しかし向かう前に絹旗は神裂とシェリーにバレンタインなら聞かれる当たり前のことを尋ねる。 「ところでお二人は誰かにチョコを超あげたりしないんですか? 飾利ならきっと二人に友チョコと妹チョコを超作ると思いますよ」 (飾利からの妹チョコですか……。ならば私はお姉ちゃんチョコをあの子にあげましょう♪ ついでに上条当麻にも恩返しの意味でチョコを……) (友チョコか。私は好きな男なんざ居ねぇしな。だったら飾利の為に友チョコならぬ朋友チョコを作るか!) 絹旗の質問に決意を固めた二人は全く予定していなかったバレンタインチョコを作る為にその場を後にした。 取り残された絹旗もまた、初春と佐天と合流すべく佐天の部屋の方角へと足を伸ばす。 その頃、佐天の部屋に向かってる初春と佐天、その途中で佐天が思い出したかのように初春に尋ねる。 「そういえば飾利、神裂さんとシェリーさんにチョコあげないの?」 「……ああっ! 忘れてました! 火織お姉ちゃんとシェリーさん、それにヴィリアン姉さまにも作ってあげないと!」 佐天が建宮のことばかり言うものだから初春は大事な姉(義理の)二人、親友一人の存在を忘れてしまっていた。 そのことを思い出し、今日は忙しくなりそうだと思った二人だが、そこに絹旗が合流する。 「何とか超追いつきましたよー。飾利に涙子、もしかしなくてもチョコ超作るんですか?」 「ええ。当麻お兄ちゃんと美琴お姉さん、涙子さん、最愛さん、火織お姉ちゃん、シェリーさん、ヴィリアン姉さまと多いですけど」 「建宮には超あげないんですね。いや、超いい傾向ですけど」 建宮の名前が出て焦った初春だが、顔には出ないまでには回復してるので何とか怪しまれることが無かった。 そんな中、佐天は今ここに居る上琴義妹トリオ(自分含め)を見て、妙案が思い浮かんだ。 「じゃあさ、今年はあたしたち三人で作ろうよ! 飾利がチョコ渡そうとした人達にさ♪ ついでで建宮さんにも、ホントついでだけど」 「それは超名案です! 浜面には麦チョコ一粒で超充分ですから作る気ありませんし。……でも建宮にもですか?」 「いやほら、建宮さんには何だかんだでお世話になってるしさ。飾利からチョコ貰えなかったら引きこもっちゃうかもしれないし。ボランティアだよ、ボランティア」 「それなら超納得です。でもあいつの場合、そこら辺に超転がってる石ころにチョコ塗ったのを渡せば充分ですね。飾利はどうですか?」 佐天のアイディアに救われた初春、心も落ち着き、建宮に対する『お父さんフィルター』も修復完了して絹旗に答える。 「私も賛成です。でも最愛さん、建宮さんにもきちんとしたチョコ作らないとダメですよ? 日頃からお世話になってるんですから」 「わ、分かってますよ? ちょっとした超軽いジョークですよ、ジョーク。……じゃあ気を取り直してバレンタインチョコ作り、超頑張りましょう!」 「「おーーーーーーっ♪」」 上琴義妹トリオ、気持ちを一つにし佐天の部屋へと向かうのだった。 こちらはインデックスとステイルが勤める教会、悩める少年ステイルは一人で悩んでいた。 (インデックスにチョコをそれとなく催促すべきか、それとも僕が彼女にチョコをプレゼントするか……。僕は一体どうすればいいんだ?) 見た目は老けてるが中身は立派は思春期の少年が本気で悩んでいると、彼の悩みの原因たるインデックスが陽気に帰って来た。 「ただいまー」 「や、やあおかえりインデックス。そういえばあの三毛猫は見つかったかい?」 「またどっかにふらっと出かけちゃったんだよ。まるでとうまみたい……ペットは飼い主によく似るっていうけど、スフィンクスの飼い主は私なんだよ」 「そうだね、全く飼い主に恩を返さないのはひどいね」 そんな会話をしながらも、ステイルはタバコを吸いながら考える。 (インデックスのチョコはほしい、だが!この子がチョコを作れるとは思えない。ましてや作る事さえ不可能かもしれない。 いや、ここはやはり僕から渡すべきなのか?僕ならインデックスの為に鉄人並みのチョコを作る事さえ惜しまない。 だが、しかし、でも、クソォォォおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!) そんな時、上条当麻の幻聴が聞こえた。 『馬鹿野郎!!お前はインデックスが好きなんだろうが!!好きなら好きっていっちまえばいいじゃねぇか!! 保護対象であって恋愛対象じゃない?ふざけんな!!そんな幻想考えてるから前へ踏み出せないんだ!! さっさと踏み出せよ魔術師!!お前なら言えるはずだ!!テメェの足枷(幻想)なんてぶち殺せ!!』 (全く……僕の思考回路の中まで説教するのか君は……君に言われなくてもわかってるんだよ!!) 勇気をだす。足を踏み出す。今こそ言うべきだ!! 「インデックス!!僕は君のチョコがほしい!!」 だがそこには、 「にゃあ?」 「何で猫なんだ!?」 インデックスはそこにいなかった。かわりに猫ってどういうことだ? 「はいスフィンクス、ちょっと遅いご飯なんだよ」 どうやらステイルが思考の泥沼に落ちてる間にスフィンクスが帰ってきてご飯を取りに行っていたらしい。 「な、なんて不幸なんだ……」 神様、この不条理な世界をどうにかして下さい。 ステイルはいつもの事だが、神に祈った。
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恋する者達はチョコを作り終え、物語は翌日の上琴の朝食を食べ終わったの場面から。 「うだー、上条さんも早く美琴たんチョコがの欲しいです!!」 「当麻、午後まで待てないの?」 「すいませんが待てません!!上条さんはそこまで大人じゃありません!!」 はぁ、と美琴はため息をつくと愛しの恋人にそっと(色っぽく)ささやく。 「こういうプレゼントを待ってる時間ってさ、どきどきしない?そのぶん当麻を喜ばせる自信があるから……待っててほしいな……ダメ?」 「……そこまで言われて待たないやつはいないぞ、よっし!!じゃあ上条さん待っちゃうぞ、待ってやるぞコンチキショー!!」 美琴の魅力に負けた上条は何年でも待つ決意を固める。 「それと当麻、そろそろ出掛けないと遅刻するわよ?」 「あっ、いけねっ!!美琴」 そしていつも通り熱い『行ってきますのちゅう』をする。 いつも美琴はキスをすると寄りかかってくるのが可愛くて上条は幸せすぎる。 「んじゃ行ってきまーす!!」 「行ってらっしゃーい!!」 上条は走る、今日はアンハッピーバレンタインになるとも知らずに…… 「で、みんなはチョコ作ったのかにゃ?」 とある高校へ登校中、バカップルの男性陣はチョコをどういうときに渡すのか話していた。 「俺はバレンタインの最後に渡すつもりだぜ。」 「俺もだなァ。デートして良いムードになったら渡そうと思うと、最後が一番良いからなァ。」 「俺も上条とアクセラと同じ意見だな。やっぱり最後渡すのが一番良いだろ。」 主人公三人はデートの最後に渡す事に決めていた。 また当麻は朝、美琴に早くチョコが欲しいと言っていたが、やっぱり良いムードの時にもらいたいと思った。 「で、四人はどういう時に渡すんだ?」 「俺は月夜のシステムスキャンとかあるからそんなにデートはできないかも知れないが、そのときになったら考えるつもりだにゃ。」 「俺も土御門と同じだな。ヘタするとシステムスキャンの時間が長引いてデートできないかもしれないから、そのときに考えるしかないな。」 土御門と真夜はいつチョコを渡すかそのときに考える事にしていた。 「俺もデートの最後に渡したいんやけど、黒子はんがジャッチメントの仕事あったりしたらどうしましょうかな。」 青ピはデートの最後に渡したいと思っているが、黒子がジャッチメントの仕事があったらどうしようか考えていた。 だが、青ピの勘はあたっている事はまだ知らない。 「今日、俺は真夜達の相手しなくていいから郭とデートして良いムードの時に渡すか。」 半蔵は良いムードになったら郭に渡す事にしていた。 「みんな大体は決まっているんだにゃ。決まっていないのは俺と真夜ぐらいらしいにゃ。」 「そうだな。まあしょうがないんだけどな。俺たちはシステムスキャンがあるんだからな。」 「俺は月夜の付き添いだけどにゃ。」 土御門と真夜は本当にどう渡すか考えていた。 「そういえばカミやん、お前はこのバレンタインどう切り抜けるつこりだぜよ?」 土御門は少し話を変える為に当麻にこのバレンタインをどう切り抜けるのか聞いてみた。 「切り……抜ける? 何の話だ? 土御門」 「何ってカミやん、寝惚けてるのか? バレンタインはカぐえっ!」 土御門の言葉を遮ったのは青ピだが、襟首を掴んで引っ張るというのはやり過ぎだが。 当麻はその頃の記憶も失っているので土御門の言ってることはチンプンカンプンだった。 咳き込んでる土御門の回復を待った青ピが小声で土御門に注意する。 「あかん! あかんでつっちー! カミやんにとってバレンタインはトラウマ、そのトラウマを自らの意思で封じ込めたんや!」 「なんと! つまり俺はカミやんの心の傷を抉り、思い出させるという友としてあるまじきことをしようとしてたのかにゃー!」 「ボクらとカミやんはデルタフォースや。今年はカミやんに幸せなバレンタインを過ごしてもらおうやないか!」 「よく言ったぜよ青ピ! 決して美琴ちゃんが怖いからじゃないですたい! カップル仲間として俺らもまとめてハッピーバレンタインを過ごすんだぜい!」 小声のはずがテンションが上がって大声になってることに気付かない土御門と青ピ、ついでに当麻達に置いて行かれたことにも気付いていない。 「何なんだ土御門と青ピのやつ……。お前ら、何か知ってるか?」 「てめェのバレンタインのことなンざ知ってるわけねェだろ。まともに学校通ってなかったンだぞ」 「「俺達は学校にすら通ってねぇ」」 「俺は上条達とは高校からだからその前のこととなると分かんないな」 当麻を含め、バレンタインに何が起こるのか、知らない者達はとても不思議でしょうがなかった。 しかし後に思い知る、当麻のフラグ体質の業の深さというものを。 男子達のやや後ろ、バカップルの女性陣、当麻の高校に通う女性達が歩いていた。 「元春との初めてのバレンタイン、そしてシステムスキャン。あー、今年のバレンタインは楽しいことのオンパレードだよ♪」 「はまづら、どんなお菓子くれるのかな? 私のチョコも喜んでくれるといいんだけど……」 「大丈夫ですよ滝壺氏! 浜面氏なら間違いなく喜んでくれます! むしろ私のほうが不安ですよ、はぁ」 「大丈夫。くるわのチョコの方こそはんぞうは大喜び。だから不安に思うことなんて何も無い」 恋人持ちの女性らしい、乙女チックな悩みと楽しみを抱えている月夜、滝壺、郭。 それとは対照的なのはチョコを貰う側の真昼と赤音、恋人がいる身としてはどうなのかと思うが。 「システムスキャンをパパッと終らせて早く真夜君のフォンダンショコラ食べたいよー♪」 「俺はチョコフォンデューが待ち遠しいぜ♪ こんな気持ちでバレンタイン迎えるのって初めてだからワクワクするぜ」 (*1) ) チョコが貰えない真夜に同情する月夜、滝壺、郭だがその同情が無意味なものだとは三人が知る由も無い。 そこで何かを思い出した真昼が二つのカップケーキを鞄から取り出すと、それを郭へと差し出す。 「これ、真夜からな。郭と服部の分だってよ。お前らには俺たちの訓練に付き合ってもらってるからな。そのお礼だ」 「あ、ありがとうございます……。でも真昼氏、どうして真昼氏が真夜氏の作ったお菓子を私に? しかも半蔵様の分まで」 「男が男に渡したら変な噂立っちまうだろ……。まあ、そんな奴がいたらボコボコにしてっけどな」 最初は真夜自ら本人達にカップケーキを渡そうとしたが、自分のやろうとしてることの重大さを理解していない彼氏に真昼と赤音は猛反対。 本人に直接渡さないと誠意が伝わらないとごねた真夜だったが、二人の真剣な表情に押されて断念することに。 結局、半蔵と郭の分は真昼が、小萌と木山の分は赤音が渡すことで丸く収まることに。 「赤音ちゃんも大変だね。天然の彼氏を持つと」 「もう慣れたけどね~。それも真夜君のいい所でもあるからそんなに気にしてないよ♪ 私も真昼ちゃんも」 「ホントに心が広いよね、二人とも。私なんて元春が舞夏以外の女の子からチョコ貰ったら……考えただけでも元春殴りたくなってきたよ」 バカップル随一のやきもち焼きの月夜の発言にその場に居た月夜以外の面々はゾッとした。 そんな空気の中、五人は校門をくぐるのだった。 一方こちらは常盤台中学、バレンタインということもあって何やらいつも以上に活気付いていた。 (どうしよう、この状態じゃ当麻とのデートがうまくいかないじゃない!!) 「お姉様、大丈夫ですか?さっきから震えていますわよ。」 黒子は美琴がさっきから震えているので、どうしたのか気になった。 「大丈夫よ。ちょっと考え事していただけだから。」 「そうですか。でも、今日はおきよつけましてよ。なんかすごい事になりそうですから。」 「確かにきよつけるわ。(にしてもどうきよつければ良いのか…)」 美琴は本当に今日をどう切り抜けて良いのか分からなかった。 その頃、柵川中学校にいる初春、佐天はと言うと… 「飾利、今日は楽しみだね。」 「そうですね。で、学校が終わったらどういう風に行きますか?」 「う~ん、まず最愛と合流してからお兄ちゃんとお姉ちゃんに渡してそれから建宮に渡しましょう。」 「そうしましょう。その後、私は別々に動いて良いですか?」 「どうして?」 「だって火織お姉ちゃんとシェリーさんに渡さないといけませんから。」 「あ、そうか。そういえばヴィリアンさんはどう渡すの?」 「…………………………………………………………………………あ。」 初春はヴィリアンにそう渡すか考えていなかった。 「もしかして、どう渡すのか考えてなかった?」 「………………コクリ。」 「じゃあ、どう渡すの?だってヴィリアンさんはイギリスにいるんでしょうどう渡すの?」 「ど、どうしましょう…」 初春はヴィリアンにどうやってバレンタイン中にチョコを渡せば良いのかまったく持って検討ついていなかった。 その頃ヴィリアンも初春にどう渡せば良いのかと同じことを考えていた。 「すっかり飾利に渡す方法を考えていなかった…どうしましょう?」 ヴィリアンもチョコを初春に送ることを忘れてどうしようか考えていた。 「こうなったら私が学園都市に行くしかありませんね。」 という事でヴィリアンは学園都市に行くつもりは無かったのだが、仕方なく学園都市に向かうのだった。 だが、 「ヴィリアン様!!お止め下さい!!」 「騎士団長!!」 だが、独り言を騎士団長に聞かれてしまいあえなく捕まってしまった。 「ヴィリアン様……ただでさえキャーリサ様が出掛けているといらっしゃるのに貴方まで出掛けたらどうなんです?」 「そうですが…」 「チョコレートの話をしていましたが、飾利様にチョコレートを渡す気ですか?」 「……うっ」 「それにあの傭兵のごろつきがバレンタインまでには帰ってきてくるらしいですが……夫の帰りを待つのが妻の務めなのでは?」 「つ、妻!?」 「しょうがないのでメッセージカードを書いて下さい、私が届けますから」 「本当ですか!?」 「ええ、必ずバレンタインまでにはお届けしますよ?」 その頃、佐天に絹旗からのメールが入り、それは初春にとって渡りに船のものだった。 「ウソッ! 飾利、ラッキーだよ! レッサーが学園都市に来るんだって!」 「ホントですか? だったらレッサーさんに頼んでヴィリアン姉さまに渡してもらえば大丈夫ですね♪」 「良かったね飾利」 「はいっ(でもレッサーさんがどうしてまた? ……まあ、いいかな)」 裏モードの初春ならレッサーが学園都市に来る目的について深く考えているのだが、そうではないのでラッキーだと思うことにした。 彼女はおろか当麻達も驚くことになる、レッサーが第二王女キャーリサを連れて学園都市にやってくることに。 「ほらそこの二人とも。HR始めますよ」 「「はーい、神裂先生」」 そこに現れたのは神裂で、初春との関係がバレて以来、開き直って初春のクラスの副担任に。 本当なら担任になりたかったのだがそれはさすがにやり過ぎだと初春に窘められて今の地位にいる。 とはいえ担任がすべきことを殆ど行っているので副担任とは名ばかりなわけだが。 「ああそれと初春さん。今日の放課後、楽しみにしてて下さいね」 呼び方はそのままなれど、接し方が普段通りの神裂に、初春は恥ずかしさで顔を真っ赤にさせていた。 それを見て佐天は思う、飾利も飾利で不幸なのかも、と。 こちらはインデックスとステイルの勤める教会、そこにインデックスとステイル、学校が終るまで暇な打ち止めと絹旗がいた。 (どうする? どうすればいい? インデックスにチョコをそれとなく催促するか? それとも僕がインデックスにチョコを渡すか?) 「ねーねーあの人ずーっとウンウン唸って悩んでるけどどうしたのかなってミサカはミサカは不思議に思ってみたり」 「きっと叶う見込みの超低いことでも考えているんでしょう。インデックスさん相手ならやることは超決まりきってるというのに」 昨日からずーっと悩みに悩んでいた問題が今にもなって解決していないステイルは、神裂とシェリーが帰ってから独学でインデックスに渡すチョコを作ったのだ。 もちろんそのことをステイルは誰にも説明していないが、打ち止めのように小さな子や当麻のように鈍い人間以外には丸分かりだったりする。 「ねーねーステイルー。『喰わせ殺し』でバレンタインフェアってのやってるんだよ! 今日はぜーんぶチョコ尽くしでこれは是非行かないとダメなんだよ!」 そこにステイルにとってのヒロイン、インデックスが無邪気な笑顔で入ってきた。 インデックスからもたらされた情報を聞いたステイルは勇気を出してインデックスを誘う。 「よし! じゃあ僕も一緒に行ってあげるよ! お金なら気にしなくてもいい! インデックス、君が満足するまで食べてくれ! なんなら閉店まで居てもいい!」 そんなこんなで時間は進み、レッサーとキャーリサが第23学区の空港に着いていた。 「やっと着きましたね。さて、あの人を探しに行くよーね。」 「あの~キャーリサ様、一応聞きたいのですけど一体何をしに学園都市に来たのですか?」 「ちょ、ちょっと会いたい人がいてな。その人に渡したい物があってーな。」 「それって上条さんじゃないですよね?」 「な、なぜ分かったのーね!?」 「なんとなく分かってましたから。それに、渡したいものってバレンタインチョコなんじゃないんですか?」 「そうだとしたらなんなーの?」 「上条さんは一応高校生なので午前中は学校に居ますので午前中は会えませんよ。」 「そうなのか?」 「だから、午前中は協会に行きませんか?午前中はそこにいて、午後になったら上条さんに会いませんか?」 「分かったーの。」 という事でレッサーとキャーリサは協会に向かった。 その頃、上条は授業中なのだがにクラスメイトと小萌先生の視線で死にそうだ。冗談抜きでマジで包丁で刺されている感覚である。 それは何故か?答えは簡単で、机の横にある、サンタクロースがかついでいるような袋が原因である。 この袋には学校じゅうの女子から257個のチョコ(青髪ピアスが数えた)が入っているのである。 まず校門の前で一斉に女子からチョコを貰い、次にげた箱から何で入っていたんだ?と思うくらいのチョコが流れ出てきた。 それから先生方から大きな袋を十袋(先生方から強引に)貰い、机に教科書を入れようとしたらまたその中にもチョコが入っていて、次の瞬間チョコを渡そうとする女子に囲まれた。 上条はこれは何の嫌がらせだ……と泣きながら呟いたが、珍しく土御門と青髪ピアスが泣きながら同情してくれた。 そして後ろの白モヤシもげっそりしている。彼も上条程ではないがチョコを75個(これも青髪ピアスが数えた)をもらっていた。 一方通行は学園都市最強だし、成績も顔もいい。これが一方通行がチョコをもらった理由だ。 だがババァから貰ってもなァ……と呟いたらクラスメイトが襲ってきた。まあ一方通行が簡単に蹴散らしたが……。 主人公二人は呟く。 「「不幸だ(ァ)………」」 と。 だが、不幸なのは上条、アクセラだけじゃなかった。 それはこの授業が終わった次の休み時間のことだった。 「カミやんとアクセラ、さすがにこんなに貰ったら俺達も嫌ぜよ。」 「そうやで。これは俺達もこんなに貰ったら困るしな。」 「「不幸だ(ァ)………」」 最初はこんな話をしていたが!! 「あのーすみません。土御門さんはここに居ますか?」 上条のクラスに女子がやって来たのだ。 「にゃ?土御門は俺だけど、一体何のようだぜよ?」 「こ、これを受け取ってください!!」 その女子が持っていたものはどう見てもバレンタインチョコの入っているであろう箱であった。 「「「「「「「「「「「「ええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇェェェェェェェェェェェェ!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」 クラスに居たみんなが驚いていた。 「えっとこれは俺あてのバレンタインチョコかにゃ?」 「はい!!」 「じゃあ、貰っておくにゃ。」 土御門はとりあえず貰って置く事にした。 そして、その女子が教室から出た直後、大半の男性陣からの殺気とものすごい黒いオーラが出ていた月夜がいた。 その頃の教会、今現在いるのは絹旗と打ち止めのみである。 「二人とも行っちゃったねってミサカはミサカは留守番押し付けられたことに呆れつつもステイルの頑張りに同情を禁じ得なかったり」 「同情なんて超無用です。ステイルさんにとってはああすることが超幸せなんですから」 結局インデックスはステイルの誘いを承諾、意気揚々と『喰わせ殺し』へと出かけ教会の留守を絹旗と打ち止めに任せたのだ。 かといって盗むような物はここには無いし、出かけたくなったら出かけても構わないとステイルに言われているのだが。 「ん? 何だ絹旗とチビだけか。禁書目録とステイルは?」 「二人なら『喰わせ殺し』でデート……っぽいものの超真っ最中です。というかシェリーさん、起きるの超遅いですよ」 そこに現れたのはここの教会の寄宿舎に住んでいるシェリーで、両手で大きな包みを抱えている。 シェリーが起きてきたのは午前11時で、これには絹旗だけでなく打ち止めも呆れ気味だが彼女はそんなことは気にしない。 「ふーん。じゃあ私も出かけるから後は頼んだよ」 「どこ行くのってミサカはミサカは興味津々で尋ねてみたり!」 「とりあえず近くの喫茶店でブランチ摂って、そこから飾利の学校だ。早くあの子にこの傑作を堪能してもらいたいからね♪」 「飾利の学校ですか? だったら私と超一緒に行きませんか? 私もそちらに超用がありますし」 「悪いな、私は飾利に早く会いたいんだよ。だからこれくらいに出かけるのがベストなのさ。じゃあまたな」 こうしてシェリーも出かけてしまったが、最後に『じゃあまたな』と言ったのは彼女の変化の現われなのかもしれない。 再び二人っきりになった絹旗と打ち止めが暇を持て余しているとあの二人が教会の扉を開けて入ってきた。 「ほー、ここが学園都市でのネセサリウスの活動拠点か。そこそこ広いし内装もしっかりしてて悪くない。逃走ルートがいくつも用意されてるよーだな。うむ、いー場所だ」 「あ、あのキャーリサ様。そうゆう単語を学園都市であまり使われない方が」 「別にいーだろ、これくらい。まったくレッサー、お前は気にしすぎだってーの。それとも私のやることに何か文句でもあるのか?」 「いえ、文句などこれっぽっちもありません!」 教会に現れたキャーリサとレッサー、ここに来るまでこのようなやり取りの繰り返しで二人の人間関係もほぼ固まりつつあった。 「まったく……おや? 誰かと思ったらクリスマスパーティの時にいた三人のチビっ子メイドの一人と小さい花嫁じゃないか。久しぶりだなー、元気してたかー?」 キャーリサに声を掛けられた絹旗と打ち止め、絶対にここに来るはずの無い人間の登場に目が点になってしまうことに。 数秒後、絹旗と打ち止めは今状況を把握した。 そして、絹旗はキャーリサに聴いた。 「えっと…なんでキャーリサさんが学園都市に超いるんですか?」 「それは、ある人にちょっと渡したいものがあってーね、学園都市に来たのよー。」 キャーリサはレッサーには学園都市に来た理由を知られたが、一応他の人には秘密にしておくつもりでいた。 「はぁ…、誰に超渡すのかすぐに分かってしまった自分が超嫌になりました。」 だが、絹旗はキャーリサが来た理由がすぐに分かったのでため息がついた。 「な、何故あなたは誰に渡すのか分かったーの!?」 キャーリサはレッサーの時と同様に何故すぐにばれた事に気になっていた。 「それって答えなければ超いけませんか?」 「逆にどうして答えられないのー?」 (どうしてってって『あの人は超旗男だからですよ』って超言える分けないじゃないですか!!) 絹旗はどう答えて良いのか分からなかった。 「キャーリサ様、その答えは私でも答えられませんのでそこまでにしてくれませんか。」 レッサーは絹旗を見ていてかわいそうと思ったので話を終わらせる事にした。 「そうなのーか?じゃあその話はここまでとして、レッサーちょっと協会の案内してくれないーか?」 「分かりました。」 と言うとレッサーはキャーリサに協会の案内をしに行った。 また、絹旗はレッサーが絹旗達の方を向いた時に『超助かりました!!』とアイコンタクトでレッサーに言った。
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そんなドタバレンタインデーも終わった4月の始業式の日。 ホームルーム それは普通の高校ならどこにでもある朝の行事。 (まれに挨拶がすべて「ごきげんよう」だったりする事はあるが)。 「にしてもクラス一緒って変じゃね?」ただしこの一点が上条のところでは普通ではなかった 「ああ、それはだな。」 情報屋が仕入れてきた情報を開陳する。 「このクラスひとくせもふたくせもあり過ぎて他のクラスと混ぜたら他のクラスまで影響食らうってのと、 小萌先生くらいしか統制できないかららしい。」 「…反論の余地なしね。ん?ってことは担任はまた小萌先生なの?」吹寄が聞く。 「そうらしい」情報屋が言うと。 「「「「「「いやっほーい!!」」」」」」男子(特に青ピ)の歓声が。 しかし長くは続かない。 「でも副担はゴリラらしい。」 直後、絶叫が窓をふるわせた。 また ホームルームとは 特別な連絡や小さいイベントがなされる場。 むろん 上条たちのいる高校とて例外ではない。 そして 今日はそういうイベントがある日。 そういう日は 朝の教室はどっかの耳が早い奴が噂を聞きつけてざわめくところから始まる。 「それと転校生が来たらしいぞ。なんかスゲー奴らしい。」 ただし、上条のクラスでこの手の噂を持ってくる耳の早い奴は 「ホントか情報屋!?」 情報屋こと紫木 友であることが常なのだが。 さらに言うと情報屋はかならず吹寄の所へ行って報告をするのがいつの間にかデフォに成りつつある。この意味するところは……まだ、だれも知らない。 いや、想像すらできなかった……。そんな4月の朝であった。 ついでに言っておくと 「すごい奴ってどういう意味だ??」上条が至極もっともな疑問を述べれば 「今度こそ貧乳ウサギばんざいだにゃー!」土御門がばかなことを言って 「土御門…………頭冷やせやこの浮気者!!」カチン!と月夜に凍らされ 「何をバカなことっ!」「そげふっ」吹寄が何故か上条に渾身の回し蹴りを決め 「わてもそろそろロリっ子がこのクラスに来てもええ思うんや」「「「「「「「お前にはあのジャッジメントがいるだろうが!!!」」」」」」」青ピがクラスの男子にフルボッコされる。 と、いうのはもはやお約束に近い。 「はっ、くだらねェ。ロリだの何だの関係ねェだろォがよォ」「「「「「「貴様にだけは言われたくない!!!!!」」」」」」これまたほぼお約束。 「おまえら平和だなあ…」「お前もそう思うか浜面…」「はまづら、はまづらもだんだん平和ボケしてきてると思う」「半蔵様も。その体勢では不意打ちに抵抗できませんよ?」 「「そうかなー…って二人ともクラス違うよね!?」」 この二人は毎度呆れて見るポジションでありながら突っ込みもこなしている。意外とすごいお二人である。 そんなこんなしているうちにホームルームが始まる。 「はーい、ホームルームを始めるのですよー………って、なんで青ピちゃんは顔がはれてるんですかー?」「何もないでセンセ」 嘘つけっ! とクラス全員が心の中で突っ込むがさすがの小萌とて生徒の心の声まで聞きとることはできない。 「ならいいのですよー。では転校生のご紹介ですー。今度の子は男の子なのですよー。おめでとう子猫ちゃん残念でした野郎どもー。」 ああああーという男子の声が響く。 ついでに「男子ですごい奴って?」「一方通行より凄いのはいる訳ないよね?」「にゃー。別の意味でかもしれないぜい」「ん?土御門いつ氷から脱出した??」と言うささやきも聞こえる。実際土御門の予想は当たっていたのだが。 そして 「入ってくださいー。」 その瞬間、すべての生徒が『すごい奴』の意味を知った。 「「「「「「「「「「小学生!?」」」」」」」」」」「いえ、ちゃんと16ですが?」 このやり取りに慣れているらしく転校生は嫌そうな顔もせずニコニコと笑って答える。 「では、自己紹介よろしくなのですー。」 「はい、この度転校してまいりました月詠 翔太です。よろしくお願いいたします。」 どう聞いても小学生の転校のあいさつ という感じの声である。 小学生にしてははっきりと、よどみなく言うところがかろうじて16『かもしれない』くらいである。 クラスがざわめく。 「きゃーっ、かわいいー♪」「ホント小学生みたい♪」というのは女子生徒。 「月詠?」「小萌センセと同じやがな」「名字もだけど小学生に見えるってのも共通だよ」「うん、兄弟と言われても信じられる」「そういえば二人、似てるような……」冷静な生徒たち(男子の全員と吹寄、姫神以下数人だけの女子)はささやく。 これらのざわめきの幕引きはほかならぬ小萌によってなされる 「翔太君は私の甥っこなのですよー。」 するとざわめきは一瞬にして静まり、 「「「「「「「「「「なるほどー」」」」」」」」」」 普通担任の親せきであることが分かると大抵ざわめくが……。 上条たちのクラスは逆に納得してしまった。 「ん?ってことは小萌センセの親せきはみんな見ため小学生なんか?」青ピの目が輝く。 「んー?どうでしょう?」小萌が言う。 「つーか青ピ、てめえ『小萌先生の親戚の女の子は全員ロリっ子かも』って喜んでたろ?」 「ばれた?」 「「「「「「「「バレバレじゃボケぇええええ!!!!!」」」」」」」」」 ちなみにこのドタバタを翔太は若干、いや かなり引き気味に眺めていた(当然です。) しかし彼らは知らない。 この子供…ではなかった高校生には彼女がいて。 しかもそいつがに転校してくるとは。 土御門ですら知らなかった「同僚」の転校は悲劇を引き起こすのか喜劇を引き起こすのか、この時点ではまだ誰も知らない。 空気を代えようと浜面は思い、情報屋にある話題をふきかける。 「そう言えば情報屋、今年の一年はレベル高いって言ってたけど、明日来る一年はどうなの?」 「……名簿のコピーがあるが、その情報はかなり高額だぞ?」 「金を取るのか?」 「違う、それなりの情報をよこせってことだ」 情報屋のこの情報は法に触れるため、それなりの情報が無かったらただ損するだけだ。 浜面はうーんと考えると最近噂になっていることを思い出す。 「上条が引っ越した先は学舎の園前」 「すでに持っている」 「常盤台の大半は上条に惚れてる」 「解りきったこと」 「……一方通行は最近あの打ち止めと唇でキスしてた。俺がこの目で見た」 「持ってけ泥棒!!」 また後ろからギャーギャー言って一方通行を襲ってるが、一方通行は『反射』の代わりに、『スルー』と言う能力を使う。 これは反射の次に簡単な演算で、どんなものでも受け流す。これなら周りに被害が減るため、クラスメイトに教われたときはこれを使っているのだ。 だがこの光景を翔太は見馴れていないため、開いた口が塞がらない。 「翔太ちゃん、これがこのクラスの日常なのです」 「……いや、おばさん。あの白い人大丈夫なの!?集団リンチうけてるよ!?」 「一方通行ちゃんは学園都市最強なので大丈夫なのです」 「ええっ!?僕そんなの聞いてないよ!?」 「まあ、その内なれるのです」 慣れるのかな……?と、翔太は首を傾げたのだった。 すると、いきなり浜面が椅子から転げ落ち、 「な、なんじゃこりゃー!?」 叫んだ。 「どうした浜面!!」 「れ、レベルが、学歴が」 「何があった!?」 上条が名簿を見る、すると上条は目を丸くし、 「女子が全員常盤台だと……?」 そう呟いた。 「「「「「「「「「「「「何だとッ!?」」」」」」」」」」」」 男達の首がクルッと、上条の方に向き、ドタドタと上条の持ってる名簿を奪い取る。 「本当だ!!何故に常盤台のお嬢様がこんな高校に!?」「おいおい、男子もレベル4しかいないぞ!?」 「ぎゃー!!女子の中に常盤台のレベル5、心理掌握がいる!!」 「先輩としてのメンズが立たない!!」 「しかし、常盤台のお嬢様が後輩って悪い気しないな」 そんな騒いでるなか、情報屋はへらへらしながらその疑問らに答える。 「常盤台のお嬢様は上条、一方通行、浜面に惚れて来た。男子はこの三人を倒して学園都市最強の称号を手に入れる。と、俺は聞いている」 「「「「「「「「「「「「殺せェェェええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!」」」」」」」」」」」」 男達が怒りのあまり、学園都市最強の三人組に襲いかかろうとしたが、 「いい加減に授業始めますよ!!」 それ以上に怒っている小さい先生に止められたのだった。 しかし教師の説明なくして納得できないおでこがここに。 「先生!これはいったいどういう事ですか!?」 吹寄が聞く。ついでに上条をにらみながら。 「先生もこの間見て気絶しかけたのですよー。」 「そうじゃなくて何でこんなことになったんです!?」 すると小萌は上条と一方通行のほうを見て言う。 「上条ちゃんと一方通行ちゃんのせいなのですよー。」 「……でしょうね。具体的には??」 「調べたところこういうわけなのですー『今度中3になるわが常盤台のエースにすごい彼氏がいるらしいんですの。』 『私も聞きましたわ、その方学園都市最強を2度も倒したそうですの』『私は5回と聞きましたの』『しかも今では学園都市最強と机を並べるご学友だそうですわ』 『何ですって!?昨日の敵は今日の友 ですか?』『それでそのお二人はどんな学校に通われてるんですの??』」 小萌は見事にお嬢様口調を真似てやって見せた。 「と、言うわけで常盤台のお嬢様が大挙してうちを受験して全員合格してしまったのですよー。」 むろんその分普通の学力レベルの人が普通の学校を受けたのに落ちた!と絶句しているのだが。 「ちょっと待てェ!5回もやられた覚えはねェぞ上条!」周りは あー、倒されたことは否定しないんだ…と思った。 「俺に怒んな!噂に尾ひれがついたんだろうよ。」 「確かに学園都市最強とそれを倒した人間。……ある意味うちの学校は最強なのでは?」 「吹寄ちゃん、確かにそうかもしれませんが学力の面ではまだまだなのですー。 と、言うわけで今年からは学力でも最高になれるように全校生徒の夏季補修を長くする予定なのですよー。」 ええええええええ!!!!!! クラスが震えた。 「上条当麻……貴様のせいでっ!」吹寄が怒る。 むろんクラスのみんな同じようなもんで…… 「「ふ、不幸だッ!!」」 学園都市最強とそれを倒した男がレベル0~2のクラスメイトに追いかけられるという 不可思議な状態がここに現出することに。 「ううっ、僕、こんなクラスでやっていけるのかな……」 「そんな心配する必要は無いぜよ。確かにこのクラスは変わり者が多いが根はいい奴が殆どだぜい」 「えっと、君は?」 「俺は土御門元春、このクラスの唯一の良心と呼ばれてる男ぜよ♪」 弱気になっている翔太に声をかけた土御門だが、自分の名前を出した途端に考え込んでしまったのを見て不思議に思う。 土御門は知らない、翔太と結標が恋人同士で時々ではあるが結標から土御門に対する愚痴を言っているのを。 「月詠くん、元春の言うことは話半分で聞いた方がいいよ。こいつ、私の恋人だけどさらっと嘘吐くから♪」 「月夜ー、そいつは酷い言い草ぜよ……。あ、こいつは白雪月夜、俺の恋人なんだにゃー♪ 可愛いやつだがやきもち焼きなのが玉にゲフッ!」 「気にしないでねー♪ 今のは元春の戯言だから。ごめんね、ちょっと席外すね。今から元春にお仕置きしなくちゃいけないから♪」 席を外すと言いながら月夜は翔太から見える位置で土御門を『氷のグローブ・スパイク付き』でボコボコにしていた。 既にカオスと化した教室でさすがの小萌も手が付けられない状態の中、騒ぎを簡単に治められる赤音が立ち上がる。 赤音は真夜、真昼、小萌、翔太、姫神、半蔵の静かにしていた面々に特注耳栓を付けるように促して、 「うるっさーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーいっ!!!!!!」 【鼓膜破砕(ボイスシャット)】の大声で騒いでるクラスメートを大人しく、否、無理矢理黙らせた。 当麻は右手の使用が遅れ、一方通行は『反射』してなかったので他のクラスメート同様に赤音の大声に目を回していた。 ようやく静かになった教室で赤音は耳栓をしてる人達にオッケーサインを出して特注耳栓を外すように促す。 「毎度毎度感謝するですー♪ 赤音ちゃんの大声はクラスを大人しくさせるのに一番ですねー」 「いえいえ、それほどでも。初めまして月詠君、私は茜川赤音。この真夜君とは恋人同士なんだ、よろしくね♪」 「赤音さん、その紹介は恥ずかしいんだけど……。俺は井ノ原真夜、よろしく月詠」 「よ、よろしく……(良かった、この二人はまともそうだ)」 翔太は赤音と真夜にようやく常識人に出会えた喜びを感じていたが、次の真昼の自己紹介で大きく覆される。 「俺は井ノ原真昼、こう見えても立派な女だぜ。ちなみに真夜は双子の弟で世界一愛してる恋人だ」 「……えっ? だって井ノ原くんは茜川さんの恋人って……。こ、小萌おばさん、どうゆうこと?」 「えーっとですね、その三人は本人達も了承済みの恋人なんですよー。深く考えない方がいいですよ、付き合い自体は他のカップルよりも健全ですから」 初めて見たポリアモリーなカップルの混乱状態の翔太、そこに更なる混乱の種が舞い込む。 「真夜、いいのかよ、あんなこと言われて。さり気なく小萌先生、お前らのこと変わり者カップルって言ってんだぞ」 「まあ変だってのは自覚してるから気にしてないよ。でも半蔵だって人のこと言えないと思うぞ。恋人の郭さんに様付けで呼ばせてるだろ?」 「あ、あれはあいつが勝手にだな……!」 (恋人に様付けで呼ばせてるってことはアブノーマル? どこを見ても変人だらけだよ、このクラス……) この高校に転入して後悔し始めていた翔太、しかし姫神によって彼がクラスの騒ぎの中心になってしまう事態に。 「はじめまして翔太くん。私は姫神秋沙。小萌先生とは。居候させてもらった仲。というわけで私と付き合って。キャラが立つには。これしかないから」 「(ま、また変な人が、しかも告白されたよ! でも僕には淡希がいるから……)ごめんなさい! ぼ、僕、付き合ってる女性がいるから」 そして常盤台では…… 「お姉様……」 「どしたの黒子。なんかやつれてない?」 御坂美琴と、疲れきった白井黒子が話をしている。 「ま!お姉様!!まさか『あのこと』を知らないのですか!!? あ、そうですわね。お姉さまはいつも上条様のことを考えていて気づかれなかったのでしょうに」 「し、失礼よ!否定はしないけども!!」 そこは常盤台のエースのメンツとして否定してくださいの、という言葉を飲み込み。 「常盤台の3年生の大半が、進学先を○○様がいる□□高校なんですの」 青ピがいる高校、必然的に自分の当麻がいる高校であると理解し、 「ちょい待ち。ってことは何?□□にお嬢様が大集合?……原因はもちろん」 「それだけではありません。上条当麻、一方通行、浜面仕上に惚れてしまわれた生徒に、 その3人を倒そうと、数々のレベル4の男子が□□に。偏差値がいきなり30ほど上がったと寮監が騒いでおりました」 さすがにここまでくると、怒ると言うよりただ呆れるしかない。 「ああ……。○○様がよからぬ生徒に誘惑されないか黒子は心配で胸が爆発しそうです」 「あの変態趣向を好きになるのは珍しいんじゃない?あとさりげなく最近胸が大きくなったの自慢しないで」 もろもろのことがあったりなかったりで白井の胸は成長している。といっても元々育ち盛りの中学生、美琴のも同じぐらい成長している。――5センチほど 「大丈夫かしら。入学初日に入院なんてしたら私あの高校、廃墟にしたくなっちゃう」 「……リアルすぎる冗談は欲しいですわ」 少しだけ静かになった学舎の園。何人かの教師が□□に教師指導のため移動していたためだ。 学園都市に震撼を及ぼしているあの学校は大覇星祭で長点上機学園を抜いて1位になるのはそう遠くない話だろう。 そしてその高校の一室では、転校生の衝撃発言に絶叫していた。 「「「「「「「「「「「「な、何ですとォォォおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」」」」」」」」」」」」 世界共通、転校生に彼女、それは話題になるだろう。そしてそれはこのクラスにも当てはまる事だった。 「どんな!!どんな女!?」 「えっと……」 「胸は!!巨乳!?貧乳!?」 「巨乳です」 「「「「「巨乳キタァァァああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」」」」」 「「「「「「貧乳じゃないのかちくしょォォォおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」」 ここだけは男共の趣味が女子にバレるのだが、今の男共にそんなもの関係なのだ。 土御門は最後の希望にかけ、もう一つ質問をする。 「あ、相手の年はやっぱり十歳くらいかにゃー?」 「何でそうなるんですか!?」 「いや、見た目的にだにゃー……」 「ちゃんと年上です!!」 「「「「「「お姉さんキャラキタァァァああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」」」」」」 「「「「「「妹キャラはいずこにィィィいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!」」」」」」 どっちかと言うと年下キャラが好きな男達は崩れ落ち、再起不能に陥る。 そんな崩れ落ちてる男達に、優しい翔太は声をかけてみる。 「お、女の子は胸でもないし、年は関係ないんじゃないでしょうか?」 今、火種はまかれた。 「何を言っているぅ!!巨乳何て邪道だ!!あんなデカイモノなど捨ててしまえ!!」 「何を!?貧乳など、包容力が無いんだよ!!包容力が!!愛と夢なんて詰めることができないだろ!?」 「何を言っている!?貧乳こそ神に与えられた究極の美っ!!それを侮辱するやつは人間などではないっ!!」 「貧乳が神だと?ふざけるな!!あんな固いもののどこがいい!?母性の塊は男を包んでこそ本領発揮できるのだっ!!」 男達は自分の信念のため、『胸対立戦争』のまく上げだった(ただのとっくみあいと能力の使用)。 「……赤音ちゃん、もう一度お願いします」 「……さっきからやってますが無理です。あっちが大きすぎです」 「ううっ、赤音ちゃんでも無理ですか……。なら翔太ちゃん、お願いします」 「えっ!?おばさん!!僕には無理だよ!!範囲が絞れなくて皆に当たっちゃうよ!!」 「大丈夫なのです。翔太ちゃんのデータはちゃーんと把握してますから。おもいっきりやっちゃってください」 「おばさん、僕はどうなっても知らないからね……」 次の瞬間、男達が物理的に燃えた。 「「「「「「「「「「「「アチイィィィいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」 追記しておくが、燃えなかった男は上条、一方通行、上条を利用した土御門と浜面である。 そんな物理的に燃えている男子はほっといて、小萌先生は教壇で翔太の能力解説をする。 「えー、翔太ちゃんの能力はただの発火能力(パイロキネシス)とは違いまして、 空気中の元素をプラズマ化し、あらゆるものを焼き尽くす能力なのですよ」 「それめちゃくちゃ便利な能力じゃないですか!!」 上条がすかさず突っ込むが、翔太はあまりよくない顔をし、 「攻撃にはいい能力ですけど、対象が絞れなくて全部焼き付くしちゃうんです」 事実上、現在進行形で物理的に燃えてる男達の炎を消してる上条と一方通行、後白雪である。 転校の理由の一つは、小萌に能力の制御の仕方を教えてもらうためである。 「……コイツラ全員病院行きだな、まァあのカエル医者なら1日で直せるだろォけどな」 「ううっ……ごめんなさい」 「別に翔太が悪い訳じゃないだろ?こんなことで言い争ってるコイツラが悪いんだ。 コイツラは一度痛い目にあわなきゃ反省もしないだろ」 上条の言葉に翔太は少しだけ励まされるが、上条に対する女子の視線が何故かキツかった。 「カミやん、それはお前も同じぜよ」 「「「「「「「「「「「そーだそーだ!!」」」」」」」」」」」 「何で女子からも非難をうけてるんでせう!?不幸だー!!」 女子が言いたいのはフラグを立て続ける事に怒っているのだが、上条は一生気付くことは無いのであった。 燃えなかったのは男子は当麻達以外にも居た、最初から『胸対立戦争』に参加していなかった真夜もその一人。 貧乳の真昼、巨乳の赤音の二人を恋人にしてる彼にとっては対立すべき理由も無く、それ以前に真昼と赤音以外の女性観で論ずる思考など持ち合わせていない。 まあ、仮に燃えたとしても【瞬間超人(リーンフォースセレクション)】を使えば火傷程度はあっという間に治ってしまうのだが。 (ふぅん、月詠か。自主練すれば能力の制御も出来るようになるかもな。試しに今度誘ってみるか♪) 真夜は思った、目の前の少年も自分達の自主練に参加してもらって強くなって欲しいと。 その一方で自分を盾にした土御門と浜面を責める当麻の姿があった。 「てめぇらさっきはよくも人を火避け代わりに使いやがったな! たまには自分達で切り抜けろ!」 「無茶言うなカミやん。カミやんはこうゆう時にこそ存在して輝くもんぜよ♪」 「土御門の言う通りだ上条。俺らに災害から自力で助かる力は無い! だからこそ親友を頼るってのが筋ってもんだろ!」 (親友なら半蔵のことは少しくらいは気にかけるもんだろ……) それぞれの自論を掲げる土御門と浜面に呆れた当麻、特に火傷した半蔵に気付いていない浜面に対して。 焼いてしまった男子を申し訳なさそうに見ている翔太を見て、真昼はバレンタインに見かけたあるものを思い出していた。 「やっぱりアレって月詠だったのか……? だとすると相手の女は……」 「どうした井ノ原姉? ははぁ、さては貧乳どころか無乳のことを嘆いゲフッ!」 「黙れバカ面、じゃなかった浜面。ただバレンタインの時に月詠らしい奴がすっげー露出してる茶髪の女と抱き合ってたのを見たような気がしただけだ」 真昼の発言を受けて嫌な予感を立てたしまった土御門と一方通行。 ちなみに真昼はセクハラ発言をした浜面を半蔵仕込の実戦テクニックを利用した膝蹴りを彼の顔面に叩き込んでいたりする。 「なあアクセラ。もしかしなくても翔太の恋人って」 「言うな。アイツの名前を口にしたら隣のクラスに転入してきたってふざけた展開になりかねねェ……」 その頃、三年の教室では結標が自己紹介していた。 ……………………………………もちろんさらしで。 「霧ヶ丘女学院から来ました、結標淡希ですよろしくお願いします」 ただただ、欲情期まっさかりの男達はその胸の谷間が見えないかと踏ん張っている。 そして女子たちはその男子たちに冷たい視線。 男達は現在進行形で何かささやきあっていた。 「俺のクラスにとうとう巨乳がッ!!」 「しかもさらしだぞ!?今年は俺の時代が来たのか!?」 「二年の郭と吹寄もいいが、あれはあれでたまらないィィィいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」 「おい落ち着け!!転校生に聞こえるぞ?」 もう全部聞こえてるんだけど……、と突っ込みたいのは我慢していい案を思いつく。 「ちなみに私、彼氏いるから」
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超能力開発カリキュラムにおいて、透視系の能力開発のための実験。 目隠しでポーカーするというもの。 土御門曰く「朝まで居残りだったにゃー」。
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イメージとしては・・・「土御門?」 お調子者だけどいいやつ やるときゃやる 皮肉を言うがイヤミに聞こえない 運動神経はいいほう ムードメーカー カレーパンが好き
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30回連続で戦うやつで土御門が敵になって戦うと必ず負けます。勝つにはどうしたらいいのでしょうか?? -- (神裂) 2011-08-03 14 52 39
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【種別】 人名 【初出】 五巻 【解説】 繚乱家政女学校の料理長。 また、土御門舞夏の上役であるらしい。 舞夏曰く 「野郎趣味は私じゃなくて料理長の源蔵さんだなー。」 性別は不明。
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神裂「??ステイル、あの子はどこに?」 ステイル「あれ?さっきまでここにいたんだが。…ん?何か置手紙が。」 そこにはこうあった。 インデックス『食べてくる★★』 神裂「ステイル…………。」 ステイル「神裂………。」 神ス「「えらいこっちゃぁああああ!!!!!!」」 そうとは知らぬバカップル。 美琴「あちゃー、門限過ぎちゃったなー♪」 当麻「そう言いつつ楽しげなのはなぜでしょう?」 美琴「いやー、毎度毎度黒子にごまかしてもらうのも悪いしさー……」 当麻「あー………(なんか見えてきたぞー。)」 美琴「明日って日曜だしー」 当麻「日曜ですねえー。」 美琴「泊・め・ろっ♪」 当麻「お願いじゃなくて命令!!??ちょちょ、ちょっと待て!!上条さん中学生を連れ込むのはさすがに気が引けるというかなんといいますかっ!!」 美琴「ど・う・な・の??」バチバチ 当麻「だぁーもう!!なるようになれだ!!泊まってけドロボーっ!!!」 美琴「いやっほー!!」 当麻「往来で言う事じゃありません!!!!」 すぐそばの物陰にて。 土御門「あっちゃーカミやん……」 青ピ「とうとう禁断のお持ち帰りタイムに突入やー……」 黒子「お、お、お姉さま…あぁああああぁああああ。」 白雪「うわーっ、美琴ちゃんって積極的ー。」 打ち止め「そりゃー今まで好きだったのに告れなくってヤキモキしてたからーってミサカはミサカはさらりと重大事実を発表したり!って痛たたたたっ!!!」 一方「ガキはちょろちょろすんじゃねえ!」 土御門「(おい、何でてめえがいんだよ?)」本日のグループの活動を知らなかった土御門が言う。 一方「(はン、テメエのリアルにゃーにゃーと振り回されっぷりを見るために決まってンだろーが。)」 土御門「(みっ、見てたのかっ!?)」 一方「(たっぷりとにゃーっ!)」 土御門「(人のしゃべり方まねんじゃねえ!!!ってかほかの連中は?)」 一方「(あのバカップルのデレっぷりに呆れて帰ったンだよ。海原は気絶してたけどよォ。)」 白雪「あら。一方通行さん今晩はっ!………ってか二人で何コソコソしてんの?」 一土「「何でもありません!」」この二人、女性にめっぽう弱い。 黒子「お、お姉さまがあのくそガキに懸想してたですと!?」 打ち止め「そうだよーってミサカはミサカは同室のあなたの鈍感さに呆れてみたり。」 黒子「くぅーっ!言われたぁあー!!かくなるうえはあ姉さまの懸想を守るための作戦オールナイトウォッチを発動しますのっ!!」 青土一打「「「それって???」」」 白雪「確か英語で『寝ずの番』だよね?」 黒子「その通りですの!土御門さんのお宅で皆であのケダモノが悪さをしないよう皆で寝ずの番をするのですっ!!!!」 青土「「な、な、なんですってぇえー!!!!?????」」 白雪「面白そうかも。」 土御門「えぇーっ!?月夜まで?」いつの間にかこの二人、下の名前で呼び合っている。 一方「くっだらねェ。帰るぞラストオーダー。ってン??」見ると打ち止めが目を爛々と輝かせている。(まさか…なァ) 打ち止め「面白そうだから一緒にしたいーってミサカはミサカはお願いしてみたりっ!!」 一方「ばっ、馬鹿言ってンじゃねェ!!」 黒子「ちょうどいいですわ。大人数なら交代で寝ることもできますわ。さあ行きますわよみなさん!!!!」 こういうことに積極的な女子とそれに振り回される男子という構図が出来上がっていた。 しかし彼らは知らなかった。 隣室でバトルが繰り広げられることを。 人肉食シスターと彼氏の女癖の悪さに怒る電撃姫との。 当麻「(何だかんだ言って連れて来ちゃったよ…)はい、どうぞーっ。」 美琴「おっ邪魔しまーす!!」手にはなにやらボストンバック。途中のコインロッカーで取ってきたものである。………どうもこの電撃姫、最初から泊るつもりで準備してきてたらしい。…恐るべし。 当麻「っ!?(イ、インデックスの靴があるーっ!!!!いつの間にロンドンから!!??)」見ると靴箱の上にはカギが。彼がインデックスにあげた合いカギである。 どうもインデックス、帰ってきたあとご丁寧に鍵をまたかけたらしい。 当麻「(じゃ、じゃあ奥の部屋の方から出てるこのまがまがしい妖気は勘違いじゃなくて本当にっ!!!!???)」 「とーーーーーーーーーうーーーーーーーまーーーーーーー」やはりそうであった。 奥の方から恐ろしい声がする。 美琴「な、なに?今の??」 当麻「(やばい、やばすぎますよこの状況!ダァもう不幸だぁー!!!!!)」 ポッと明かりがともされた。 すると上条の目の前に恐ろしい人肉食シスターが。顔はうつ向けていて見えない。それがさらに怖い。すぐに噛みついてこないのはさらに恐ろしい。 美琴「なんだ、あの暴食シスターじゃない………って!!!」ガシッ彼女は彼氏の腕を思いっきり締め上げる。 美琴「あ・ん・た・ら・ど・う・きょ・し・て・た・ん・だ★」 当麻「いやっ!!あのそのこいつは単なる居候の大食いぐらいの手伝いしない野郎でしてっ!なんか取り決めとかで学園都市にいなきゃいけないんだけどおれしか知り合いが…………」 美琴「問答無用!!!」ビリビリバッチィインンンン!!!! 上条「だから電撃はよせえええええ!!」あっさり無効化。 美琴「インデックスだったわよねえ。いつからこうなの??」 インデックス「気が付いたときから。」 美琴「ふーん。」そして上条に向かってこう言う。 「アンタってやつは!!記憶を失うほど何かこの子にしたのかぁああああ!!!!!」 当麻「何でそうなんの!?違う違う濡れ衣だっ!!」 その時インデックスが近づいてきた。 インデックス「二人とも…………」 その声の恐ろしさに痴話喧嘩をしていた二人も凍りつく。そして インデックス「二人まとめて頂きます!!!!!!ごちそうさま!!!!」 美琴「ぎゃああああああああああ!!!!!!!」先にこちらが噛みつかれた。 当麻「みっ、美琴おぉおおおおおお!!!」その声にインデックスの租借が緩む。 その隙を逃す美琴ではない。 美琴「これでも喰らえええええええええええええ!!!!!!」ビリビリビリビリ!!!! 零距離からの電撃がシスターを襲う! インデックス「うぎゃああああああああ!!!!!!!!!!」バタン…シューシュー 当麻「何やら焦げたような音がしてますよ美琴さん?」 美琴「問題なしっ!じゃあそれでは……」 バタム!!鍵をあけっぱなしにしていたドアから神裂が駆け込んできた。そしてインデックスを見つけて絶句する。 美琴「神裂さんだっけ?良い所に来てくれたわ。その子(インデックス)を回収してくんない??さもないと…」彼女の周りに帯電し始めたのを見てさしもの神裂も恐怖に陥る。 それも無理はない。 公称1億ボルトの御坂美琴嬢の周りはこの時1億4千万ボルトに帯電していた。 神裂「わ、わかりました。」バタム。 当麻「(え?なんで?どうしてこんなにあっさり修羅場が終わった??……ていうか美琴いつもよりかなり帯電してる気がすんだけど…………)」 美琴「さて、と」グルン!彼女は上条当麻を見やる。 人を殺せそうな笑顔で。 美琴「どういう事か説明してもらおうじゃないの!!!!!!!!!」 当麻「………分かりません…。」 美琴「分からない?どういうことよ?」 当麻「記憶喪失になって家に来た時に普通に居座ってたんです…」 美琴「じゃあなんで追い出さなかったのよ!」 当麻「記憶喪失の前にどういう関係か知らなかったからその場に合わせるしかなかったんだよ…」 美琴「じゃあ、今あの子との関係は?」 当麻「ただの大食い野郎と時々魔術関係の事件の時、知識を借りたりしてます。」 美琴「じゃああの子とは何の関係も」 当麻「ありません。俺はもう美琴しか愛せません。」 美琴「(////)こんな時にそんな嬉しいこと言うな!!」 当麻「隠していてすいませんでした。」 美琴「い、いきなり土下座とかするな!!別にあの子となんの関係もないならいいわよ。」 当麻「ありがとうございます。」 美琴「こういう時当麻がマジメだとなんかな…でも…」 当麻「でも?」 美琴「あの子とこれからどうするかよね…」 当麻「イギリスに帰ってくれると助かるんだけどな…」 美琴「そうよね…。」 不意に家の電話が鳴った。 当麻「はい、上条です。」 神崎「上条当麻ですか!?」 当麻「そうだけど…どうした?またなんか事件か!?」 神崎「事件といえば事件ですが…」 当麻「?」 神崎「インデックスが御坂美琴嬢の電撃を浴びて結構重体なんです。 なのでしばらくこちらが預かります。」 当麻「良かったらずっとそちらが預かってもらえないでせうか?」 神崎「?ああ分かりました。こちらも不純性行為にでなければ応援しますので」 当麻「ありがとうございます!!」 神崎「それでは」ブチ 当麻「やったぞ美琴おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」 美琴「どうしたの!?」 当麻「インデックスがイギリスに帰ったあああああああああああああああああああああああああ!!」 美琴「マジ!?」 当麻「マジ!!」
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(1.) 上条当麻の日常を打ち壊したのは昼休みに姫神秋沙から掛けられた一言だった。 「上条君。これ食べてみて」 「え?姫神。どうしたんだ、この弁当?」 「味見して感想を教えてくれると嬉しい」 「ホントに?それじゃ、いただきまーす」 エビの天ぷらをほおばろうとした上条だったが、右手首をホールドした青髪と チョークスリーパーを極めた土御門に動きを止められてしまった。 「カミやん。一人だけ姫やんの愛妻弁当にありつこうなんて酷いんとちがう?」 「そうそう。 モテない俺達の前でイチャつこうなんて人の道を外れた所業とは思わないのかにゃー? それともカミやんは俺達の心の傷に塩を擦り込んで嬉しいのかな?」 「ホンマ。僕らを友達と思っているならお弁当の独り占めなんてありえへんよ」 「ゲホッ、テメーら俺を殺す気か?これは姫神が俺に味見してくれって言ったんだぞ」 「いいよ」 「「「え?」」」 「土御門君も青髪君も食べて感想を聞かせてくれると嬉しい」 「じゃあ、このエビ天は僕が頂きーっ。パクッ」 「こら!それは俺が今食べようとした……」 「カミやん、スキあり!」 「返せ!土御門、そのかき揚げはエビ天の次に食べようと……」 「カミやん。食事中によそ見するなんて行儀悪いなぁ。 あっ、このサツマイモもごっつぅ美味しいわぁ」 「こら!」 「そうそう。行儀が悪いと女の子に嫌われるぜよ。 おっと、このイカ天は頂きなんだにゃー」 「テメーら!俺の分が無くなるじゃねえか」 最後に残ったタマネギの天ぷらを巡る3匹の野獣の最終決戦(アルマゲドン)勃発を 防いだのは吹寄制理の鉄拳制裁であった。 「止めんか!この三バカども!」 「痛てっ!吹寄、何しやがる」 「貴様ら!秋沙にお弁当の感想を頼まれたのだろう? なら、じゃれ合ってないでさっさと感想を言いなさい」 「アー。姫やん、エビのプリプリ感は最高やったわぁ」 「それに、かき揚げのサクサク感もたまらんかったぜよ」 「このタマネギの甘みも申し分ないし。 姫神、また料理の腕を上げたんじゃないのか?」 上条達の絶賛の声とは裏腹に姫神秋沙は暗い表情して考え込んでしまった。 「上条君。今日のお弁当変じゃなかった?」 「いや、前に食べさせてもらった天ぷら以上の出来だったぞ。 しかしこんな手間掛けて弁当を作るんだったら姫神は一体いつ起きてるんだ?」 「…………」 「どうした?姫神」 「実は。今日寝坊した」 「へー。寝坊してもこんな弁当が作れるんだ。すごいな」 「だから今日のお弁当は私のじゃない」 「じゃあ、だれが?」 「わからない。寝坊して起きたときにはテーブルの上に何故かこの弁当があった」 「へっ?……っということはさっきのは味見じゃなくて……」 「そう、毒味よ!」 「吹寄、テメーの入れ知恵か!」 「良かったわね、秋沙。どうやらこのお弁当は秋沙への嫌がらせじゃ無かったようね」 「こらっ、吹寄!その前に実験台にされた俺達に何か言うことはないのか?」 「文句ある? さっきあんた達、美味しい美味しいって食べてたわよね。 それなのに私に文句があると言う訳?」 「うっ、……ありません」 「最近私の周りで変なことが起こるの」 「え?何だって?」 「今日のお弁当もだけど。 一昨日も寝ている間にハンカチにアイロンが掛けられてあった」 「だから私も最初は秋沙をストーカーする変質者がいるのかと思ったんだけど」 「子供達の蹴ったボールが私に飛んできた時も、当たる寸前何かに弾かれたり……」 「なんだか守護天使みたいだけど、正体が分からないと秋沙だって不安でしょ。 だから今日のお弁当はあなた達に協力してもらったわけ」 「おい、土御門」 「おうよ。カミやん」 「ちょっとトイレに付き合え」 「了解ぜよ」 守護天使の正体に心当たりのある二人は不審の目を向ける三人を無視して教室を出て行った。 「土御門、『癒之御使(エンゼルフェザー)』ってやつは家事もできるのか? それともお前、まだ俺に何か隠してるんじゃねえのか?」 「俺も知らねえぜよ」 「それに姫神は自分の能力をまだ自覚していないのか?」 「最初の時は姫神自身が気を失っていたから、まだ自覚してないかもな」 「それじゃ、守護天使の正体が『超機動少女カナミン』だってことも……」 「知らないだろうな」 「知ったらショックを受けるかな?」 「……多分」 「どうしよう」 「まあ、これはカミやんの問題だからな。俺っちは知らぬ存ぜぬで押し通すぜよ」 「こら!土御門。逃げるんじゃねえ!」 (2.) 土御門に逃げられ、一人で帰ってきた上条を心配顔の姫神秋沙が迎えた。 「上条君、大丈夫?私のせいで……」 「へ?何のこと?」 「だって、お腹を壊したんでしょ?」 「いや、さっきのトイレはそんな事じゃなくて……」 「安心しなさい。上条当麻。 そんな訳だから、今日の夕食は私と秋沙が作ってあげる」 「どっ、どういう理論展開したらそんな結論にたどり着くんだよ」 「それは私達の手料理なんか食べられないって意味?」 「いやそんな訳じゃ……」 「なら決定ね」 「…………はい」 「あのー、吹寄さん。僕も一緒に毒味をしたんやけど」 「うるさい!そんなものは気力で直しなさい」 「なんで……なんでいつもカミやんにだけ美味しい展開があるんや。 神様はそんなに僕が嫌いなんか? ちくしょーっ、夕日なんか大嫌いやーーーっ」 「あいつ、まだ昼だぞ。どこまで走っていく気だ?」 青髪ピアスを欠いたまま午後の授業も滞りなく終わり下校時刻がやって来た。 上条は姫神秋沙と吹寄制理に連れられてスーパーマーケットまでやって来た。 もうすぐ特売タイムらしく入り口付近は結構混雑していた。 「あの、上条さんの経済状態は芳しくないので高級な食材を買われると……」 「大丈夫!貴様は大船に乗った気でいなさい」 「えっ、吹寄。まさか奢ってくれるの?」 「足りない分は私が貸してあげる。利子は取らないから安心しなさい」 「…………」 特売タイムへの突撃体勢を整えつつあるクラスメイト二人の後ろで上条は大きなため息をついた。 そんな上条に聞き覚えのある声が掛けられた。 「あっ、いたいた!ちょっとアンタ」 「よっ、御坂か。どうした?」 「どうしたじゃないわよ? この前レストランで美味しい食事をしようて言ったのに。 それがなんでマク○ナ○ドのハンバーガーになったのよ!」 「バカ野郎、それでも俺がなけなしの金で奢ってやったんだろうが? お前だって『意外と美味しいかも』ってしっかり完食したじゃねえか」 「あれはアンタが奢ってくれたからつい嬉しくて……って、そんなことを言ってるんじゃない。 あんなんじゃ、私は全然納得しないからね。 埋め合わせはキッチリとしてもらうわよ」 「あのなーっ」 「どうしたの上条君?……あれ、貴女は?」 「うっ、あなたはこの前の……姫神秋沙さんでしたっけ?」 「嬉しい。名前を憶えていてくれてたんだ。 私達これから夕飯の買い出しなの。じゃあ上条君行きましょ」 姫神秋沙に右手を引っ張られる上条の左手を御坂美琴はムンズと掴んで引き留めた。 「ちょっとアンタ。その女(ひと)が右手なら私は左手だって前にも言ったでしょ。 なんで勝手に行ってんのよ。私も一緒に行くわよ」 「え?」 上条の疑問の声は無視して、目の前に現れた敵(姫神秋沙)に対して 美琴センサーが敵戦闘力のスキャンを開始した。 (この女(ひと)、美人よね。 肌は透き通るほど白いし、髪も黒くてツヤがあるし。 身長は同じぐらいか。 体形は…………くっ、私よりスリムかも。 それなのに胸は私より大きい…………でも 私だって後2年あればあの位には。そうよ、私には輝く未来があるもの) どうやら美琴センサーは敵戦闘力が自分以上ではあるものも逆転可能な差であると判断したようだった。 しかし、そんな御坂美琴の思考を遮るように新たな敵戦力が出現した。 人混みの中から顔を出した吹寄制理が上条に話しかけてきた。 「何をしている?上条当麻。 なんだその子は? 常盤台中学の制服……貴様は中学生にまで手を出しているのか?」 「バカ言うな。吹寄」 (また美人が……、一体コイツの周りには何人の強敵が……) 新たな敵戦力をスキャンし始めた美琴センサーは驚愕の戦闘力をはじき出してしまった。 「(くっ、この胸は……母さんより大きい。トップ93cmのFカップ……) ハハッ、いっ、いい気になってんじゃないわよ。 いっ、今に見てなさい。私だっていつか……、うわあぁぁーーん。」 御坂美琴は泣きながら走り去ってしまった。 どうやら吹寄の胸は御坂美琴の『輝く未来』という幻想すら打ち壊してしまったようだった。 「一体何があった?上条当麻」 「さあ?俺達何もしていないハズなんだけど……」 その夜、常盤台中学学生寮208号室にて 「おっ、お姉様。一体どうしたんですの? 牛乳パックを一気飲みなさるなんて。 しかもその買い物袋一杯に一体何パック買って帰られたのですの?」 「うるさい!黒子。 これは女と女の意地を掛けた戦いなの。絶対に負けるもんですかーっ」