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----悪魔の囁きが消失してから、数日後 病室の前まで来て…翼は、一度立ち止まった すぅ…と、軽く深呼吸する こんこん、と、軽く病室の扉をノックした 「………誰だ?」 今まで聞いてきた声と、まったく変わらない、冷たさを含んだ声 その声に、反射的に萎縮しかけ、だが、首を左右に振って、顔をあげる 「親父、入るぞ?」 「……………」 返事はない だが、気にせず、翼は扉を開けた …窓を開けていたらしい そよそよと、5月に入ったばかりの、まだ少し冷たさを含んだ風が頬を撫でる 病室のベッドの上で、朝比奈 秀雄は、静かに窓の外を眺めていた 灰色になった髪が、かすかに風に揺れている 「…親父」 「………来たのか、翼」 ゆっくりと、朝比奈が振り返る 振り返った、その顔の……否、その目を見て、翼は小さく息を飲んだ 朝比奈の、典型的な日本人の黒い瞳の色が……金色に、変貌していたのだ それは、朝比奈がもう二度と、平凡な、普通の人間の生活には戻れぬと言う、その証のようで 翼の様子に気付いた朝比奈が、小さく呟く 「…この目が、あの化け物共との契約の代償の一つ、だそうだ。「黄金伝説」のドラゴン共の多数と契約してこの程度ですんだのなら、まだ軽いと言われた」 「……そう、か。でも、親父。あんた、それだけじゃなく…」 ……それ以上は言うな、とでも言うように、朝比奈が制す 自分の体の事は、自分が一番よくわかっているのだろう 多少、忌々しげな様子を見せながら、答えてくる 「………あの化け物の言葉に乗ったのだ。自業自得だろう…この身が朽ち果てなかっただけ、マシだ」 淡々と、そう告げてくる朝比奈 己の身に起きている変化を事実として受け止め、これからの事も覚悟している様子だった 「…それで、翼」 ゆっくりと 金色の双眸が、翼を真っ直ぐに、射抜いてくる 「お前は、私を殺しに来たのか?」 そう、問い掛けてきた朝比奈の表情は 翼の答えがどんなものであろうとも、受け入れる覚悟が出来ている表情だった …病院の、待合室にて 「「薔薇十字団」の保護下に?」 「えぇ、あの時、あの場には、先に「薔薇十字団」が駆けつけましたから」 あの日、朝比奈 秀雄との戦いが終わり、悪魔の囁きが消滅した直後 真っ先に、あの場に駆けつけてきた組織は「薔薇十字団」だった 恐らく、戦いが終われば、すぐにでも向かえるように準備していたのかもしれない 「組織」先んじてあの場に現れ、素早く、朝比奈 秀雄を確保してきたのだ ここの病院も、「薔薇十字団」の影響下にある病院だ よくよく気配を調べれば、スタッフの中に「薔薇十字団」のゴーレムが混じっているのがわかる 「「薔薇十字団」としましては、罪を断じて命を奪うのではなく、その償いをさせたいのでしょうね」 「……甘い考え方ね」 黒服が口にするその内容に、やや呆れた様子を見せる望 ちゅー、と他人事のようにジュースを飲んでいた詩織が、のんきに続ける 「ま、殺しちゃったらそこまでだけど、生かしておけば何かしらの役に立つかもしれなし、そう言う事なんでしょ?」 「……そうなのでしょうね、恐らくは」 小さく苦笑する黒服 彼としては、死を持ってしか償えぬ罪など、この世にはなく 死を持って制裁を加えるのは……他に、本当に、ただの一つも方法がなかった時だけだ、と考えている だが、もし、翼が、朝比奈を止める為の手段として殺害を選ぶのであったならば、自分が、翼の代わりに朝比奈の命を奪うという選択肢を持っていたのも、事実だ …翼の心は、肉親殺しには、耐えられないだろうから 幸いにして、結果的に、翼はその手段を選ばないでくれたが 「……黒服」 「どうしました?」 「…翼は、結局………あれだけのことを、されても、朝比奈 秀雄が他の連中にしたことは、ともかくとして…………自分にした事だけでも、許すのかしらね」 望の、そんな言葉に 黒服は、どこか複雑そうな表情を浮かべて見せた 「…そんなに、俺に殺されたいのかよ」 一歩 翼は、朝比奈に近づく 「お前には、その資格がある」 淡々と、そう告げる朝比奈 逃げる様子は見せない 今、翼がこの場において、朝比奈を殺害しようとする動きを見せたと、しても 朝比奈は、逃げようとしないだろう 一歩、一歩 ゆっくりと、翼は朝比奈に近づいて 手を伸ばせば、首にその手が届く その範囲まで、近づいて す…と、翼の手が、伸ばされた それを見て、朝比奈は静かに目を閉じ… ……ぺし 脳天に、軽く、チョップが落とされる 「……何をする」 「何をする、じゃねぇよ、馬鹿親父が」 「………お前に馬鹿、と呼ばれるのは、マドカにそう呼ばれる事の次には、異議を申し立てたいものだ」 「うっせぇ!………とにかく、俺は、あんたを殺す気はねぇよ」 はぁ、と呆れたように、翼はため息をつく そんな翼を、朝比奈は酷く不思議そうに見つめていた 「…言っただろう、お前には、私を殺す資格がある、と。お前とて、私を恨んでいるはずだ」 「………そりゃあ、恨みはたっぷりとあったけど。殺したいと思うほどじゃねぇよ」 それに、と 小さく、肩をすくめて、続ける 「…あの時、思いっきりぶん殴ったら……もう、どうでも良くなった。許すのか、って聞かれたら、それは、自分でもよくわかんねぇけど……ただ、あんたを殺す気はねぇ」 「……………そうか」 翼の答えに、今度は朝比奈がため息をついた 「マドカと、同じ事を言うのだな。やはり、あれが産んだ子供か。似ているらしい」 「心の底から嬉しくねぇぞ、その言葉は」 「そうか」 淡々と答え……そして、どこか自嘲気味に笑う朝比奈 翼に視線を向け直したときのその表情は、酷く真剣で 「……私に、こんな言葉をお前にかける資格がないことなど、わかっている…………だが、言わせて欲しい…………すまなかった」 謝罪の言葉 それが、翼の心を揺さぶる 「お前は、私を父として見なくとも、良い………父と呼ばれる資格など、私は持っていない」 「…………」 「…だが、それでも………私は、お前を息子だと、認識したい。お前は、マドカが命を賭して産み落とした……私と、彼女との、たった一人の、子供なのだから」 ………朝比奈の言葉に 翼は、どう答えたら良いのか、迷ったような表情を、浮かべて 「……父、さ」 翼が そう、口に出しかけたのと それは、ほぼ、同時だった 「あぁ、いたいた」 「…?あなたは、山田さん…どうかなさいましたか?」 ぱたぱたと、黒服の姿を見かけて駆け寄ってきた青年、山田 やや慌てた様子で、辺りを見回している 「あー、その…ここ、朝比奈 秀雄が入院してる病院だよな?」 「そうだけど、どうかしたの?」 望に問われ 山田は、心底嫌そうな表情で答える 「…マゾが、な」 「うん、わかった」 「………とりあえず、私たちは、彼女の姿は見かけていませんが…」 ……あぁ 大体、予測できた 黒服と望、ついでに詩織は、病室で起こっているであろう惨劇を軽く予想しつつ…黒服は同時に頭痛も感じつつ、立ち上がった 翼がいるはずの、朝比奈の病室に向かう 「…そう言えば、朝比奈 秀雄の容態、ってどんな感じなんだ?」 「……それが、ですね」 何気なく尋ねてきた、山田の言葉に 黒服は、やや難しそうな表情を浮かべ、答え始めた 「改めましてこんにちは、お義父様!!このエムナ=ド=サンタ=クロース、この翼様と結婚を前提にお付き合いさせて頂いて」 じゅうっ!!! 突如、現れたマゾが、寝言をほざいていた、その最中に マゾの体が、思いっきり、炎に包み込まれた …翼の「厨2病」との多重契約の炎が発動したのだ いきなり燃え始めたマゾを見て……朝比奈は翼に告げる 「…翼、女は選べ。この化け物だけはやめておけ。それと、その炎は多様は命に関ると聞いている。多様するな」 「こいつの寝言を真に受けんなっ!!妄想全開の妄言でしかねぇっつの!!……炎に関しては、俺だってよくわかってるよ」 今は、うっかりカっとなって使ったが 普段は、さほど多様してはいない この炎を使うとなると、それこそ、この父のような厄介な相手や強い相手だけだ 翼の言葉に、そうか、と頷く朝比奈 とりあえず、マゾと翼が付き合っていないという事実を知ってほっとしたようである ……がし 炭になったはずのマゾが、即時再生 翼の足を、掴んだ 「っふ、ふふふふふふ………翼様の燃えるような愛、しかと、受け取りました!!」 「愛じゃねぇええええ!!??こんなドメスティックバイオレンスな愛があってたまるか!?っつか、離れろど変態っ!!」 「あぁっ!?ツンデレさんな言葉の刃が心地いいっ!?」 げしげしげしげしげし!! わりと容赦なく、マゾを蹴っている翼 が、マゾはむしろ喜ぶだけである 「翼、ここは病院だ。騒ぐな」 「っつてもよ。親父…」 「……とりあえず、これは邪魔だな」 むんず、と 朝比奈が、マゾの首根っこを、掴んだ 片手で軽々と、その体を持ち上げる その様子は、とても、病室で安静にしているはずの男には見えない 「あら?お義父様?」 「……貴様に、義父などと呼ばれたくない」 冷たく、言い放ち 朝比奈は、少し空けていた窓を全開にすると………ぺいっ、と、その窓から、あっさりとマゾを放り投げた そして、軽く息を吸い込み…… 窓の外へ放り投げたマゾに、向かって 黒に近い紫色のブレスを、勢いよく、吹き付けた 「……遅かったか」 毒のブレスに蝕まれ、落下していったマゾの様子を見て…盛大に、ため息をついた山田 病室にいた翼と朝比奈に、頭を下げる 「…すみません、家の馬鹿が迷惑かけて」 「埋めとけ、あれは。コンクリ詰めにでもして海にでも沈めて置けよ」 「………多分、そうしても、帰って来る」 山田の言葉に、ほぼ同時に舌打ちした翼と朝比奈 …翼は喜ばないかもしれないが、やはり、親子なのである 妙な所で息があう 「毒のブレスも、まだ使えるのね」 「まぁ、炎のブレスと毒のブレスが、西洋竜の特徴のひとつですからね」 望の言葉に、苦笑しながら答える黒服 …朝比奈から、解き放たれた「黄金伝説」のドラゴン達 だが、一匹だけが…朝比奈の中に、残っていた あまり大きくない、人間より少し大きい程度の、小柄な竜が 恐らく、小柄な姿であるが故、巨大化した姿の時、その存在が表に出ていなかったのだろう そのせいで、「ロンギヌスの槍」の影響を受けず、よって、「刃物は縁を切る」によって、朝比奈との契約を切られる事もなく、朝比奈の中に残ったのだ …結果と、しては そのドラゴンが、朝比奈の命を護ったと言ってもいい 多数のドラゴンとの無茶な契約、悪魔の囁きの影響による、年齢を考えぬ無茶な身体能力強化 そのせいで、朝比奈の体はボロボロだった 通常ならば、寝たきりの状態や、植物人間状態になってもおかしくはない しかし、朝比奈の中に、その一匹のドラゴンが残っていた事で…朝比奈 秀雄は、奇跡的に、一生寝たきり、と言う症状を免れた とは言え、一匹のドラゴンとの契約が残っていたからこその、その状態 もし、そのドラゴンとの契約を切れば……今度こそ、命を落とすかもしれない ドラゴンによって辛うじて保たれている体の状態が、契約解除によって、一気に崩れかねないからだ …つまり 朝比奈は、ドラゴンと言う都市伝説なしには、生きられない体となったのだ いまだ、朝比奈は都市伝説を「化け物」と呼び、心の底から受け入れた訳ではない …そんな朝比奈が、都市伝説なしでは、生きられない状態となっている 都市伝説のお陰で、命を保っている ……本人にとっては、さぞや、屈辱的なことだろう もっとも、先ほどのように、便利に使ってもいるようだが 「…じゃあ、俺、痙攣してると思うマゾ連れて帰るわ、迷惑かけた」 疲れきった様子で、病室を後にした山田 その後ろ姿を見送って、黒服も望とそっと手を繋ぎ、翼に告げる 「では、翼。私達はまた、待合室で待ってますから…」 「あぁ、いや、いいよ。話は終わったし」 そう言って、からからと窓を閉めてから、黒服に駆け寄る翼 …病室を出る、直後 朝比奈に、振り返って 「……ちゃんと、迷惑かけた人達に、償えよ?」 「…………わかっている。それが、私がこれから生き続ける、理由の一つなのだから」 朝比奈の言葉に、翼は満足したように、笑って 「…それじゃあ、また今度な、糞親父」 そう、告げて、黒服達と共に病室を後にした 閉められた扉を見つめ……朝比奈は、小さく呟く 「……あのような呼び方でも、父親と認識されているだけマシ、か」 自嘲するように、朝比奈は笑って これからの己の人生に、静かに想いを馳せた 「…そう言えばさ、翼」 「何だよ、詩織」 病室を後にしながら 黒服の後をついていく翼に、詩織が尋ねる 「翼、悪魔の囁きに、願いを叶える手段があるなら~って囁かれてたよね?……やっぱ、そう言うのに叶えて欲しい願いとかって、あるの?」 「……まぁ、俺も人間だし、願いはあるっちゃあるけどよ」 「何、どんなの?」 「………どんなのだっていいだろ」 けーち、と言う詩織に、ほっとけ、と軽く頭を撫でる翼 どうしたの?と望に言われ、何でもない、と答える ………「小瓶の魔人」に願うとしたら それは、「望や大樹達、今の家族が、これからの人生を、命の危険に巻き込まれることなく平穏無事に過ごせる事」だ、と言う事を 口に出したならば、果たして彼女達は、どんな反応を返してくるのか 翼には、予想できないのだった to be … ? 前ページ次ページ連載 - 悪意が嘲う
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● ≪夢の国≫の中へと周囲の人々を招き入れた夢子は続いて操られている人々の保護を人々を櫓へと放り込んでいる住人たちに指示した。 「≪ホープダイヤ≫の暴走で皆操られているはずだから、関係者以外を……立ち入り禁止にっ、……して、皆にその後の対処はお願いするね」 確か浅井は最初の接触の時に空間を挟んでしまえば操作は解除されると言っていたはずだ。そう考え出した指示に、住人たちが一斉に彼女を振り返った。 マスコットが各々心配そうに夢子を見る。しかし「行って」と頼まれ、パレードごと人々と共にふっと消えた。それを見届けた夢子へと黒服が声をかける。 「大丈夫ですか? あまり無理はなさらない方が……」 「はい、大丈夫、です」 咳に詰まりながらの返答。夢子の顔色は最も呪いの効果が激しかった頃のそれであり、口の端には鮮やかな赤い血の色が伝っている。 「夢の国……」 さっちゃんは自分を庇った夢子を何か言いたげに見上げ、 「……」 しかしなにも言えず、顔を異形へと向けた。 切々と叫ぶ。 「お願い……返して!」 「待てって!」 黒服に動きを止められたままもがき、駆け寄ろうとするさっちゃんに黒服と少女は言う。 「あなたが行っても彼を飲み込んだ都市伝説にひどい目に遭わされるだけです」 「あれはもうおっちゃんじゃねえ、嬢ちゃんに殴りかかろうとしたんだ、わかるだろ!?」 二人の言い分は正論だ。それをさっちゃん自身、よくわかっている。 なぜならば彼女の契約者は、いや、彼女のおとーさんは、 さっちゃんをさっちゃんって呼ぶもん! ならば目の前に居るおとーさんの体はおとーさんではないのだろうか。 「そんなこと……ない」 さっちゃんは力なく首を振る。 「まだ、おとーさんはいるもん……」 根拠など無い。だがさっちゃんはその願望を叫ぶ。 また家族が目の前で居なくなってしまうのは嫌だから、 「おとーさんはまたさっちゃんの事をさっちゃんって呼んでくれるもんっ!」 泣き声のような必死の声の先では、青年と異形が睨み合っていた。 ● 異形はやはり笑顔で、そしてどこかひび割れたような声で青年へと声をかけつつ身体を前傾にする。まるでこれから獲物に飛びかからんとする野獣のように。 「邪魔をすんなラTさンから食ッてやろうかァ? お前モ上等な味がしソうだしナあ!」 「やってみるといい」 青年は答え、正面から異形の進路を邪魔するようにその身を前へと傾けた。 足に瞬間的な跳躍のための力を溜め、腕に続く激突の為の力が集まる。 そして―― 「ッ!」 跳んだ。 二つの影が、辺りを照らしだす電飾と天上にて輝きを主張し始めた月の光に浮かびあがり、交差する。鈍い打音が一つあり、影はすれ違い、互いに相手へと振り返った。 咆哮を上げる異形に対して青年は叫びで応える。 「破ぁ!!」 異形が纏う外殻に光弾が激突し、衝撃が石畳を削る。 異形はその身体を衝撃にのけぞらせながらも更に一歩を踏んだ。石畳を抉る力強い一歩だ。両者の距離は次の一歩の範囲内にある。 異形がその一歩を踏みこんだ。力も気迫も先程の一撃とはまるで違う重みの拳が青年めがけて放たれる。 青年は正面から受け止めることを避け、拳の外側を回るように左へとステップを踏み、拳を振り抜いた異形の肩へと光弾を掌ごとぶつけた。 炸音が響く。外殻を砕き飛ばされ、よろめく異形の体はしかし、手をつき距離を取るように背後へと跳躍、瞬時に立ち上がり追撃として放たれた光弾を腕の一振りで殴り消した。その動作によって弾け飛んだ外殻も即座に石畳を変異させて修正される。 ――堅い! ならば狙うは力の源か。 思い、青年が見据える先、異形の胸元では外殻越しに赤と青白の光が煌々と輝き、未だに力を与え続けていることを示していた。 「っ!」 標的を戦闘能力の無い者に変えられないよう青年は間を置かずに異形へと疾駆する。≪ケサランパサラン≫への祈りによって纏われる光は青年の体のほぼ全てを包んでいる。 光の加護によって上がった身体能力で距離を瞬の間に詰め、踏み込んだ右足を軸にした回し蹴りが打ち込まれた。 異形はそれを右の腕で防ぎ、逆の腕が横薙ぎに振るわれる。 腕の進行方向に合わせて跳躍しながら棘のついた丸太のような異形のそれを両の腕で受けた青年は腕と肩から来る骨のきしむ感覚に耐え、体勢を崩しながら着地。砕けたかのような違和感を発する肩を治るように祈祷しながら光弾を手に現し―― 眼前に大口を開けた異形の姿があった。 なにを―― 思考する寸前、その口内には光が溜まっていることに気付く。 まずい、という思いが頭に浮かぶよりも早く青年が反射的に光弾を障壁代わりに眼前に叩きこもうとした瞬間、 「食ラえッ!」 異形の口から光が放たれた。 異形と青年とをその光は即座に結ぶ。 熱線が突き抜け、青年ごとアトラクションの壁をぶち抜いた。 ● 光線が己の契約都市伝説を飲みこむ光景を見た少女は呆然と呟いた。 「なんだよ、あれ……」 答えは彼女が支える夢子からきた。 「以前、あれに≪夢の国≫を焼かれました」 そう言えば、と少女も思い出す。地下カジノからマンションへと夢子を連れて行く道すがら、彼女の口から浅井とさっちゃんに≪夢の国≫で争った時の事を聞いた時、≪夢の国≫を焼かれたと言っていたが、 「かいじゅうさんみたいなの」 「ゴジラかよ……無茶苦茶な」 ここまで生体兵器じみたモノとは想像だにしておらず、ただ力なく異形を見つめるしかなかった。 「内臓を変化させたのではないでしょうか、あの光線が放てるように」 黒服がもがくさっちゃんを押さえながら口にする。 「おとーさんの切り札……」 さっちゃんが補足するように言った。 「切り札、ですか?」 黒服の言葉にうん、と答え、さっちゃんは続ける。 「あれの全力でなら光線が王様の身体を変異させるから王様を消せるって、当たれば復活はできないんじゃないか? って言ってた。でもすごくしんどいって……」 「全力なんザやっタらこの体なんかすグに壊れちまウ、人間焼くだケならそんな出力じゃやラネーよ」 さっちゃんの言葉に割り込むようにひび割れた声がした。 異形だ。異形が少女たちの方へと歩み、近づいて来ている。彼は威圧するようにゆっくり一歩一歩足を進めながら先程熱線が突き抜けた先へと顔を巡らせ、 「あーあー、こリャア肉はグチャグチャで食えンな。あれもアれで上等の肉っぽかったんダがナぁ……まア、それなラそっちの奴らの肉でモ食おウかねェ」 言われた言葉に少女がカッとなって叫ぶ。 「ざっけんな。Tさんがあんなのでやられるかよ!」 「そうカい」 異形は取り合わず、その歩みを進めてくる。少女は冷たい汗を浮かべ、しかし「そうだ!」と言い返した。 「まあなんデもいイからおとナしく喰われテくレ」 そう言って足に駆けだすために身を前に倒した異形の眼前に、 「させません」 呪いに冒され呼吸を乱した夢子が立った。 ● 「おいオい、お前ハ壊れたら縛りツけて永久食料にしテやるからドケよ」 それとモお前かラ食ってやろうウか? そう嘲弄交じりに言う異形に夢子は一つ咳き込み、しかし息を飲みこみ、言う。 「両方ともさせません……私は、何があっても生きて償うと決めたんですから!」 だから貴方を倒します。そう告げる。 異形は外殻に覆われた手を打ち鳴らし、 「いヤぁ、ご立派ゴ立派。契約者様にモ聞かせてあげたいオ言葉だ―― 一回死んドけ」 異形の拳が夢子の腹めがけて振り抜かれた。 しかしそこに彼女はいない。 ――王様は一人しか居ないけどね、世界中のどこにも居るんだよ。 声が≪夢の国≫のいずこかから響き、彼女の姿はいつの間にか異形の背後に在った。その手には王様の剣が振りかぶられていて。 振り下ろされた。 剣は異形の背後から左肩の外殻を砕き本体へと食い込もうとし――体調が最悪の状態で振りかぶられ、意識の揺れに乱されたその剣は異形の手に止められた。 「危ねェじゃアねえか」 不機嫌そうな声と共に肩から剣が持ち上げられた。砕かれた外殻はすぐさま彼の首にかけられたネックレスが補修してしまう。夢子は力を振り絞るが異形の膂力に今は抗う術を持たない。 「油断ナらねぇ王様ダ」 剣を抜き、振り返った異形の腕が引き絞られる。 「夢子ちゃん!」と少女の叫びが聞こえ、 鋭く尖った外殻が夢子を貫いた。 骨を砕き、肉を抉る音。呪いから来る虚脱感と苦しみに加えて自身を刺し貫かれる感触と壮絶な灼熱感を得ながら、それでも夢子は動いた。 「――ガッ……あ」 彼女は憶えている。 自身を救ってくれた青年が祟り神相手にしたことを。 「し、知って……る?」 己の身を使って相手の動きを封じる戦い方を。 「王様は、一人しか居ないけどね」 彼がそうしたように異形の手を強く掴み、 「世界中のどこにも居るんだよ?」 転移。 ひどく揺さぶられる彼女の意識が感じたのは高空の冷たい空気だった。 ≪夢の国≫にある火山よりも遥か高みへと転移したその身は異形の上に乗るようにして地面へと落下している。剣が首へと切っ先を向けて構えられ、後は落下の衝撃で首を切り落とすのを待つだけだ。 浅井さん、貴方の復讐をこのような形で幕引きしてしまうこと、本当にすみません……。 声を出そうにも口にはひどく鉄臭い熱が蔓延していて言葉にならない。 下の人たちに当たらないだろうか? Tさんは大丈夫だろうか? そう考えながら血を振り撒き落ちて行く夢子へと異形が囁いた。 「王様が罹っタ病の治療法は確立サレてねえンダよナァ!?」 ――――意識が一瞬途切れた。 瞬時、復帰した彼女の視界が捉えたのは異形の胸元でその光に指向性を持って呪いの力の増幅に大半の力をつぎ込んでいる死と呪いのペンダントの光だった。 ぁ……。 しまったと思った時にはその身体をさっちゃんの病が蝕み尽くしていた。 手に剣の感触がない。いつの間にか異形との体勢は入れ替わっており、いまや夢子が異形にその身体を叩きつけられようとしていた。 落ちる、落ちる、落ちていく―――― いけない……。 朦朧とし、消え失せてしまいそうな意識を焦りが繋ぎとめる。 このままじゃ、意識が途切れてしまう……。 しっかりしなくちゃ。 さもないと、 大事な人たちが守れな―――― 重力加速に従い二つの影が猛烈な勢いで地面に激突した。 ● 「危ない!」 「うわっ!」 黒服に襟を引っ張られ、庇われた少女の数メートル先の地面へといきなり姿が消えた二人が落ちて来た。 落下地点では石畳が砕けて土埃が立ち昇り、落下した者たちの姿は覆われてしまい、見えない。 「お……い?」 周囲に血が雨のように降ってきた。 その血の雨に濡れながら、少女は先程、夢子が転移する瞬間の光景を思い出す。 夢子ちゃん、確か刺されてたよな……? ではこの雨は彼女の血だろうか? そう思考が至り、身震いする少女の眼前、血の雨によって沈静化された土埃の中、何かが動く音がした。少女は思わず友人の無事を確かめるために声を出す。 「夢子――」 「王様なラそコら辺に飛び散っテんじゃネえの?」 答えたのは異形だった。彼は片手に細く白い、血が滴る腕を掴んでいる。 ――夢子の腕だ。 「さあて、王様が復活するまでに頂いていおこうかぁ、そうした方が早くあの王様が壊れてくれそうだしなァ」 あとは壊れたアレを縛りつけて食料ダ。そう言いながら異形は腕の一部を食いちぎった。 生肉を食む粘質な水音がし、聞く者に不快感を抱かせる。 「この肉、食うと力になるみてえだな。流石は上物」 腕を殊更見せつけるかのように食いちぎり、上機嫌に言いながら少女たちへと歩いて来る異形。 少女は気丈にそれを睨みつけて携帯を取り出し……と、その横を小柄な影が駆けていった。 さっちゃんだ。 「おとーさんを返して!」 黒服を振り切り異形へと走る彼女へと異形は嘲りおどけながら言う。 「俺がそのおとーさんダろうが」 「ちがうもん! さっちゃんはね――きゃっ!」 叫び、足を奪おうとしたさっちゃんが異形に掴みあげられた。 彼は危ねぇじゃねえかとぼやきながら、腕を握り潰さんばかりの力掴んで吊るし上げているさっちゃんへと告げる。 「アあまったくガキは面倒くセぇ、オ前も食ッて取り込んデやるよ」 そうして喰もう片方の腕に持つ夢子の腕をさっちゃんへと叩きつけようとした所で機械的な音と共に数条の光線が異形の頭部を撃った。 焦げ付いた頭部の外殻から細い煙を幾筋か立ち昇らせ、異形が光線が飛来した方向へと首を巡らす――寸前に声がなった。 『もしもし、わたしリカちゃん。今、お姉ちゃんをおそうかいじゅうさんの後ろにいるの』 言葉通りの位置へとリカちゃんが現れた。両手に先程砕けた石畳の破片を抱え上げ、力のままに振り下ろそうとする。 「どこにイるかわかっテんダよッ!」 異形は振り返ることなくリカちゃんをさっちゃんの体の一振りで殴打し、両者がアトラクションの石壁目掛けて宙を飛ぶ。 短い悲鳴と共に飛んで行く人形と童女を、地面から≪夢の国≫に通じる地下トンネルを通って湧き出るように現れた黒服が抱きとめた。 「黒服さん!」 ぐ、と呻きながらもしっかりと彼女たちを受け止めた黒服に異形が言う。 「……邪魔すんナよ」 「さっちゃんたちを、頼みます」 駆け寄る少女へと黒服がリカちゃんとさっちゃんを渡した。 「ああ、でも黒服さん……」 どうすんだ? と訊ねる少女に黒服が言う。 「私が彼を止めます」 「地下トンネルのお兄ちゃん……?」 さっちゃんが戸惑ったような声を上げる。彼の声は彼にしては珍しく怒気を帯びているように聞こえたのだ。 「お前と似たようなノ食ったケドまずかったゾ」 ダから喰イたクねえ。と異形が焦げた外殻を修復し、夢子の肉を食みながら言う。 「私も≪夢の国≫に縁ある者、子供たちを守ります」 あの子の腕を放しなさい。そう言って先程光線を発した銃を構える黒服。異形が呆れたように嗤う。 「職業ニ忠実なこっテ」 「これは私自らの意志ですよ。あなたのように自らの出自に縛られてはいません」 敢然と言い放つ黒服。 「アあそいつァ……立派ナことダなァッ!!」 異形が駆けだした。黒服が応えるように銃を撃つ。放たれた光線は異形の外殻の胸部、彼に力を与えている二つの石を正確に狙うが、 「撃ち抜くニゃあ足りねェなアアッ!」 そんなもの腕でいちいち弾くまでもないと言わんばかりに傲然と腕を広げて異形は迫る。 「撃ち抜こウってンならこれクらいシネえとなァ!」 そして口を開き、その口内に光を溜め、黒服が口惜しげに懐に手を入れた時、 異形の背中で光弾が弾け、異形がつんのめった。 彼らが振り返るとそこには異形が吐き出した熱線が突き抜けて破壊されたアトラクションがあり、 「――何を余所見している」 瓦礫を踏みしめる音と共に若い男の声が響いた。 現れたのは熱線に呑みこまれた筈の青年だ。 全身傷だらけで、しかしそれでも力強さを失わないその双眸をもって異形を捉え、彼は告げる。 「俺はまだ生きているぞ」 ● 「先程のは……夢子ちゃんの言っていた熱線だな……?」 傷だらけだがそれらをいちいち治している余裕は無い。戦闘に支障のある傷のみを癒していきながら青年は言う。 「なンだ、グチャグチャになってねェのか」 「幸せなことにな」 心底意外そうな異形の言葉に苦笑で青年は答える。 「まあ頭を強かに打ちつけて意識が飛んでいたわけだが」 「じゃあもっペン吹っ飛ばしてヤるから今度は死ネ。喰ってやるカら原型は止めておケよ?」 「断る」 青年が疾った。 異形が口を開く。集まるのは光。先程青年を撃ったモノよりもその光量は多く、同じように異形の胸元に輝く二色の光もその光量を上げている。 「食らエ」 みるみる距離を詰めてくる青年に対してそれを放とうとして――剣が上空から切っ先を下に向けて異形めがけて降って来ている事に気付いた。 それは確か先程異形が夢子を増幅させた呪いで殺した時に彼女の手を離れた筈のもので、 「――!?」 剣は咄嗟に身を躱す異形の足を串刺した。 声がする。 「≪夢の国≫の真似っ子は消されちゃうんだよ?」 同時、異形が手にしていた腕が消えた。入れ替わるように地面に膝を着いて現れた人影がある。 ≪夢の国≫の王だ。その顔色は悪いが五体は満足。故に異形が手にしていた腕は偽物の腕であるとされ、消失した。 「生きテ――」 異形が剣に手をかけ、いきなり現れた夢子に目を奪われながら言おうとする。 遮るように為された返答は当然のように告げられた言葉だ。 「≪夢の国≫では、人は死なないんですよ?」 そうだ、それを利用して王様を永久に無くならない食料にしようと自分は思ったのではないか! 何を慌てている! 理由に思い当った。 アいツ、あれダけの呪いを受ケてまだ―― 「夢子ちゃんがまだ動ける事がそんなにも意外か? ――己を過信したな、都市伝説」 気付けば足元に青年がいた。 低い体制から地を蹴りつけ、青年の身体が跳び上がる。その手が異形の顔面を握りこみ、 「食らえ」 零距離で燦然と輝く光が弾けた。 「――――ッ!?」 異形の外殻が散って素顔が、浅井の顔が覗いた。のけぞった体が勢いで掴んでいた剣が引き抜かれ、手を離れて明後日の方向へ飛んでいく。 そんな中、青年が異形のネックレスを砕こうと再度接近していた。その気配に気付き、異形上体を無理やり引き戻し、 「ガアアァッ!」 腕を薙ぎ払った。青年が受け流すようにそれを腕に受け、力に逆らわぬように飛ばされる。 「Tさん!」 「――――アアアアッ!」 異形の口がガパっと開き、青年を撃とうとする。 「させません!」 そこへ黒服が先程懐から取り出した≪パワーストーン≫が投げ込まれた。結界が張られ、光線が阻まれる。 と、彼は走る小さな影に気付いた。 「行っては駄目です!」 しかし、その言葉を無視してさっちゃんが異形へと走る。異形が気付き彼女を踏み潰そうとするが、 「チャンスは一度だ、試してみろ!」 青年の光弾に邪魔される。 さっちゃんは異形へと辿りつき、中途半端に振り上げられた足へと抱きついた。 唄う。 「さっちゃんはね、ふみきりで足をなくしたよ!」 彼女を彼女たらしめる歌が痛みも出血も無く異形の足をもぎ取る。 急にその身を支えるものがなくなった異形はバランスを崩し、倒れる。その顔へとさっちゃんがしがみついた。 「このガキッ!」 異形がさっちゃんを潰さんと腕を高く掲げる。さっちゃんは腕を素顔を露出した頭部へと回し、 「さっちゃんはね、おとーさんが大好き。ほんとだよ……」 彼の頭を抱いたまま、何の力も持たない詩が詠われた。 「だカらどうしたアアあァアっ!?」 異形が叫び、外殻の棘だらけの腕がさっちゃんへと迫り、しかしそれがさっちゃんに当たる寸前で、ピタリと止まった。 「何!? どうイうコトだ!?」 異形が自身の身体が動かないことに驚愕の声を発した直後、彼の口から言葉が紡がれた。 「娘からの万感籠もった歌のプレゼント。――効くなぁ……」 その声は奇妙なひび割れを含むことなく発され、 「で、〝お前〟はなに愛娘殴ろうとしてんだ?」 腕の動きが再開された。その一撃は、さっちゃんではなく、 「――ざけんなよ」 自らの胸部を打った。 重量のある硬質の物がぶつかり合う鈍い音がこだました。それを合図に異形の纏う外殻が剥離、または変異させられる前の物体へと立ち戻っていき、同時に戦場の動きが止まった。 前ページ次ページ連載 - Tさん
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天地に、「組織」の人達の事を徹にどう説明すればいいのか尋ねてみた紗奈。 考えている様子の天地に代わり、辰也が口を開く。 「「組織」の事を隠したままにするか、それとも、伝えるか。そこで変わるだろう」 天地以上に事務的な口調で続ける。 「天地、葬儀の手続きを行っているのは、どのナンバーだ?」 「…C-NoとD-Noだ」 「それなら、純粋な「組織」の黒服って事もないだろう。葬儀屋と言う事にしておけ。「組織」は警察とも一部協力関係にある。その従兄とやらに事情の説明を求められたら、そちらに任せる手もある」 「組織」の事を隠したままにするか…話すか。 …徹も都市伝説と関わっている以上、「組織」と無関係でいる、という訳にもいかないだろう。 ただ、徹が、従妹の両親の死に「組織」の一部の黒服が関わっていた、と知ったら…「組織」を嫌いかねない。 「組織」の中にも、自分達に警告してくれた黒服や、天地のように良い人もいるのに…誤解されたくはなかった。 折を見て、「組織」の事を話すべきだろう。 「…とりあえず、そう言う事にしておいてくれ。一応、俺も葬儀には立ち会うから、ある程度フォローする」 「…分かりました…ありがとう、ございます。「組織」の事は…今は無理でも、折を見て、話したいと思っています」 ――― 「…都市伝説も、人間も、命である事に代わりは無い」 「……?」 獄門寺の言葉に、紗江が立ち止まる。 「……あの時、俺が切ったのは元は人間だっただろう…だが、今は黒服と言う都市伝説だった」 「俺は、今までも都市伝説を殺してきている。「退治」と言う名目で」 「……っ」 「……初めに、都市伝説を斬ったのは、12歳の頃だ。その時点で、俺はとうに、命を奪うと言う行為を行っている」 「その時も……あの、黒服を切った時も。どちらも、俺の意志で行った事だ。天倉が謝罪する事ではない」 「……っでも」 「…どちらにせよ………俺は、役目をやり遂げる為にも。いつかは、この手を血で染める必要性がある。ただ、それが早いか遅いかそれだけだ」 12歳…そんな幼い頃に、初めて都市伝説の命を奪った、と獄門寺は言った。 昨日、人を殺した自分よりもずっと前から、彼は奪った命の重さを抱えて生きていた。 「……せめて、お前達が無事だったならば、良かった……………お前達の両親を助けられなくて、申し訳ない」 獄門寺が、紗江に頭を下げた。 「…引き止めてすまなかった。俺は、これで」 「ぁ………」 そう言って、獄門寺は歩き出した。 獄門寺の姿が視界から消え、一人その場に残された紗江。 獄門寺は、命を奪った事を忘れず…それでも前に進もうとしている。 だから、自分も逃げてはいけない。 紗奈を、護る為にも。その手を、血で汚させない為にも。 もう、戻れはしないのだから。 ただ、獄門寺と話していて……獄門寺が、背負った物を護ろうとして、戻れない、深い所へおちていくような…そんな錯覚を覚えた。 ――― 障子が開いて、紗江が戻ってきた。 ここに来た時と同じように紗奈の隣に座る紗江に、紗奈が尋ねる。 「おかえり、紗江ちゃん。獄門寺君と話、出来た?」 「…うん」 「そっか…なら、良かった。 あ、門条さん達に聞いたら、徹兄には「組織」の人達の事…「組織」の事を話すかどうかで変わるみたいなんだけど…今は、葬儀屋さんって説明しておく事になったよ。 徹兄も契約者な以上、「組織」と無関係でいるわけにも行かないだろうし… 「組織」の事は、折を見て、話したいなって思ってるの。 門条さんも、葬儀に立ち会ってくれるみたいで…フォロー、してくれるって」 「そうなんだ… 門条さん…色々と、ありがとうございます」 紗江が、天地に頭を下げる。 「いや…大したことじゃない」 しばらくして、紗江が、迷いながらも口を開く。 「………あの、門条さん…私達、本当に「組織」を抜けてもいいんですか…?」 自分達に色々としてくれた天地達に対して、申し訳ないと思う気持ちと、「組織」に居るのが怖いという気持ちがぶつかりあっていた。 「ああ。さっきも言った通り、お前達は被害者だ。それに、もう暗示も解けている。お前達の好きにすればいい。A-No.666の実験に協力していた残党共にも、邪魔はさせない」 はっきりと答える天地。 「―――ええと、それじゃあ……私達、「組織」を抜けたいです」 続く…?
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彼の、その姿を見て 「…見立ては完璧だったわ…!」 「ブラボー…おぉ、ブラボー…!!」 女子たちは、きゃいきゃいと騒ぎ出し 「これは…すげぇ…!」 「…男の子もいいよね!!」 新世界の扉を開けそうな男子、数名 「----てめぇら、そんなにジロジロ見るんじゃねぇ!!」 様々な意味の好奇の視線に晒されて 彼、日景 翼は、盛大に叫んだのだった 「よく似合っているではないか。何が不満なんだ?」 「直希、お前は抵抗もなく着てんじゃねぇよ…」 セーラー服を身に纏った友人の姿に、翼はがっくりと脱力する …翼も、同じようにセーラー服を着ていた、否、着せられていた 本日は学園祭 翼達のクラスの出し物は「女装喫茶」である 翼も直希も、店員として女装するハメになったのだ ほぼ、強制である 「いやいや、二人ともよく似合ってるぜ?」 「誠っ!てめぇ一人だけ女装逃れてんじゃねぇぞ!?」 女装などせず、エプロン姿の幼馴染相手に翼は盛大に突っ込んだ が、誠はくっく、と楽しげに笑ってくる 「俺、厨房の係だし」 「畜生……!」 俺もそっちが良かった 項垂れる翼だが、時既に遅し クラス会議の時に、あれよあれよと言う間に、厨房ではなくウェイトレス係を押し付けられてしまったのだ きゃいきゃいきゃい、女子たちは楽しげに騒いでいる 「さっすが清川君!日景君に女装が似合うなんて素敵な情報をありがとう!」 「これは永久保存ものだわ……あ、撮った写真、焼き増ししてあげるから」 「あぁ、ありがとうな」 …この野郎、やけに女子たちが張り切って厨房係に立候補していっていたのはこれが原因か 幼馴染に、怒気交じりの視線を送るのだが、誠は全く意に介した様子はない ぽん、とそんな翼の肩を、直希は慰めるように叩いてきた 「まぁ、いいじゃないか。どうせ僕たちは午前だけの係なのだから」 「……そうだけどよ」 …黒服が、来てくれると言っていた。何時になるかはわからない、とも言っていたが できれば、午後からきて欲しい 翼は、そう願わずにはいられなかった (…何、これ) その様子を……望は、半ば呆れた表情で見つめていた この一連の流れを、望はなぜか見せられていたのだ (…夢、かしらね?) 誰も、ここにいる望を気にしている様子はない まるで、この場にいないかのように きっと、これは夢なのだろう 彼女はそう理解する (翼が…高校生、だった頃?ヤケにリアルな夢ね…) 夢だと、なぜかわかる しかし、酷く現実感のある夢だ まるで、本当に起こった出来事を、見せ付けられているかのように 色々と抗議しながらも、翼はきちんとウェイトレスとしての仕事をやっていた 途中、クラスメイトの男子にスカート捲りされそうになって鉄拳が飛んだりもしていたが なんとも、穏かな光景だ 賑やかな学園祭の様子が伝わってくる 「…よし、そろそろ終わりだな」 「あぁ、そうだな」 ふぅ、と一息つこうとしている翼 黒服の姿はまだ、ない 黒服にこの姿を見られずにすみそうな事を、翼は喜んでいるようだった ……が 世の中、そんなに甘くない 「ナオ君ー、ごめーん!お姉ちゃん遅れちゃっ……った……」 「!!エ、エリカさん!?」 --ぴくり 翼の口から出たその名前に、望は思わず、翼の視線の先を見つめる そこにいたのは…あの、写真に写っていた、女性だ 教室の入り口に立ち、呆然と翼を見つめている 翼に視線を戻せば、羞恥のせいか、翼は真っ赤になっていて 「おや、姉さん…そう言えば、来ると言っていたな」 「っちょ、おま、そう言う事は早く……」 直希の、淡々としたその言葉に、翼は突っ込んだが 直後 翼の姿が、消えた (え?) 慌てて視線を彷徨わせ…すぐに、その姿は見付かった 「っつ、翼君、かかかかかかか、かぁいい~~~~~!!お持ち帰りぃいいい!!!!」 「~~~っちょ、エ、エリカさん!?お、落ち着いて……!」 自分よりも背丈のある翼の体を軽々担ぎ、爆走している女性…エリカ その表情は、至福そのもの 何、この変態 望はそんな真っ当かつ正直な感想を抱く と、そうしていると 「翼さん、すみません、遅れてしまい……………」 「っぎゃーーーーー!?」 あ、黒服も来た 何というか、色々と大変な現場を見られて、硬直している翼 誰にも姿を認識されていないのをいい事に、望はばしばし床をたたきながら笑ってしまう …この後も、穏かな光景が続いた エリカの暴走を黒服が何とか収め、エリカが翼に謝りたおし その間…翼は、どこか照れたように、ほんのりと頬を赤らめていて あぁ、本当に、好きだったのだな、とそれが伝わってくる 周囲も、それがわかっていて 翼の恋を、応援してやろうとしているような そんな、雰囲気が伝わって…… (--------っ!?) …が その、穏かな光景が…突然、一変した 周囲の風景が、ガラリと変わる 多分、夜の廃工場か、どこか 暗くて、赤い光景 赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い、赤い その、風景の、真ん中に 胸元を真っ赤に染め上げたエリカが、倒れていた ごほごほと血を吐き、口元も赤く染まっている 胸元を、何かで深く抉られたらしい傷 どう見ても…助かりそうに、ない 「---ッエリカさん!」 (翼……!) 翼が、そのエリカに駆け寄っている 翼も、体中所々、裂傷ができていた 何かの都市伝説と戦ったらしい事が、推察できる 「エリカさん……ッエリカさん!」 「……さ、くん」 …エリカが その血塗れの姿で、今にも、命の灯火を消してしまいそうな、その状態で だが、それでも、自分よりも翼を気遣うかのように…申し訳なさそうに、笑いかけている 「ごめん、ね……おねーさん…ちょっと、ドジ、踏んじゃったみたい……」 「…ッ黒服が!黒服が来たら、「蝦蟇の油」でその怪我、治せますから……だから、しっかり……!」 …泣いている ぼろぼろ、ぼろぼろと 大粒の涙をこぼして、翼は泣いていた 翼も、きっと理解しているのだ これだけの傷、最早手遅れだ、と それでも、その現実を信じたくないかのように 彼は、必死に彼女を助けようとしていた 「…だ、め…翼君、逃げて……あいつら、が……来る……」 「…………!」 何時の間にか、翼は包囲されていた 取り囲むのは、真っ赤な帽子を被った小人達 「…赤帽子(レッドキャップ)……!」 翼が、涙を乱暴にぬぐい、立ち上がる …能力が発動され、斧を手に飛び掛ろうとしていた小人が、体を焼かれ始めた たった一人で、死に行こうとしているエリカを庇いながら、翼が戦い始めた 体に、決して浅くない傷が増えていく それでも、翼は退こうとしない エリカの命を諦めきれず、まだ護ろうと、必死にもがいて…… 「…………っ!?」 …そこで 目が、覚めてしまった 全身、ぐっしょりと汗をかいていて、酷く気持ち悪い 夢の内容は、目覚めても消えることなく…ただ、重苦しい現実感と共に、望の記憶に残される 「何よ…あの、夢…」 汗をぬぐいつつ、呟く望 まるで、翼の記憶を見せ付けられたような、そんな錯覚 …いや 錯覚では、ない? 望と翼は、黒服と契約している 二人で、一つの都市伝説と契約しているのだ 都市伝説と契約者は、多かれ少なかれ、精神的なつながりが出来る 間接的に、翼ともつながりができて…記憶を、垣間見てしまったのか? 「…………」 血で染まり上がった光景 あの後、一体どうなったのか 少なくとも、翼は助かったのだろう 今、生きているのだから だが、あのエリカという女性は… 自分以外の人間のトラウマを覗いてしまった気まずさ それを感じながら、望はふと気づく 「…まさか、私の記憶を、翼が夢で見ていたりしないでしょうね…」 …そんな事、なければいい そう、願わずに入られなかった fin 前ページ次ページ連載 - 首塚
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登録日:2016/04/18 Mon 16 23 00 更新日:2024/06/02 Sun 01 03 58NEW! 所要時間:約 24 分で読めます ▽タグ一覧 18年夏アニメ 2015年 ざわ… どうしてこうなった どうしてこうならなかった もう少し自然な笑顔でお願いします アニメ カイジ カイジ外伝 ギャグ漫画 コミックDAYS サラリーマン スピンオフ ツッコミどころ満載 ハッシー橋本 ボウリング マッドハウス 三好智樹 中間管理職 中間管理録トネガワ 公式が病気シリーズ 兵藤和尊 利根川幸雄 川平慈英 帝愛グループ 愛すべきバカ達 月刊ヤングマガジン 橋本智広 漫画 福本伸行 萩原天晴 講談社 賭博黙示録カイジ 黒服 週刊で頑張っているカイジくんの労をねぎらってこの利根川がスピンオフをしようというのだ…… ククク‥‥ 面白かろう‥‥? 『中間管理録トネガワ』とは、月刊ヤングマガジンとコミックDAYSに連載されていた『賭博破戒録カイジ』のスピンオフ漫画である。カイジ外伝?知らんな。 原作:萩原天晴、漫画:橋本智広(ハッシー橋本)・三好智樹、協力:福本伸行と、作者クレジットがやけに長いのが特徴。 作画は『カイジ』の作者である福本氏本人ではないが、再現度は非常に高く、福本氏の筆だと思い込む人も多々。 単行本収録の書き下ろし編には、福本先生本人が執筆したエピソードもある。 タイトル通り、『カイジ』の人気キャラ・利根川幸雄を主人公にしたスピンオフ作品。 ……なのだが、完全にギャグ作品に徹しているのが大きな特徴。 本編では強敵としてカイジの前に立ちはだかった利根川が、本編では全くと言っていいほど見られない日常の勤務風景が描かれている。 兵藤会長と黒服たちの間でひたすら気を揉む姿が描かれており、兵藤会長のご機嫌を取るためには黒服たちの協力も不可欠という立場上、 一晩かけて黒服全員の顔と名前を覚えたり、自ら慰安旅行(神戸牛バーベキュー付き)を企画したり、会長の風呂上りを待ち構えたりと謎の暗躍を繰り広げる。 作風自体が福本作品のパロディとなっており、「ざわ……ざわ……」というおなじみの擬音はもちろん、 本編で出てきた名言のパロディが飛び出したり、勝負の決着がついて決め台詞が出た時のような演出でギャグのオチが描かれたりする。 単行本が即座に重版され、「このマンガがすごい2017」で1位になり、様々な企業とコラボするなど記録的なヒットを叩き出した。 本編では敵の組織と言う位置づけだった帝愛グループだが、この作品では「裏社会もの」というより「企業もの」として描かれていることも大きな特徴。 帝愛グループがわりとシステマティックな組織であることが分かる。 ちなみに、新入社員はエントリーシート→筆記試験→TPOチェック→役員面接を経て入社できるか否かが決まる。 単行本4巻では、利根川と愉快な黒服たちが限定ジャンケン大会の企画を立案し、実行に向けて奔走した結果、無事第2回の開催までこぎ着けている。 本編では早くも次の第3回にカイジが参加し、利根川が例の末路をたどるのだが…… 連載当初から大きな話題になり、単行本1巻は早々と増刷が決まった。 ただし内容が内容であるため、人によっては「流石にキャラ崩壊が酷過ぎて受け付けない」という人もいるので注意。 ちなみに時系列はカイジの参加(1996年)よりもさらに前の第1回限定ジャンケンが開かれる前のはずなのだが、Twitterが登場しているなど明らかに時代設定が2010年代後半あたりであるような描写がある。 一方で利根川の使用している携帯電話が本編の時代設定に合わせたものだったりグレーゾーン金利が「廃止されるわけがない」と言われていたりと、正確な時代設定は曖昧。 単行本2巻では、番外編として大槻班長の一日外出の様子が描かれている。 こちらも好評を得たため食べ歩き日常系漫画「1日外出録ハンチョウ」(作画:上原求、新井和也)として独立し、週刊ヤングマガジンにて連載中。 2018年には待望のアニメ版が2クールで放送された。ナレーションは川平慈英。 原作を補完したアニメオリジナルのシーンも盛り込まれており、かなり真っ当な出来となっている。 ただその反面、声優及びナレーションの変更を残念がる声も……。(*1) 第2クールでは番組をジャックする形で「1日外出録ハンチョウ」のストーリーも交えるようになっている。実質ニコイチ状態。 ざわボイスとして声優名に「ざわ」や「さわ」、あるいは「ハン」「チョー」が付く声優が、「ざわ…ざわ…」を言うためだけにキャスティングされている。 【一覧】 さわ…城みゆき(002) 芹ざわ…優(003) 小ざわ…亜李(004) 花ざわ…香菜(005) 黒さわ…ともよ(006) 井ざわ…詩織(007) ハン めぐみ(008) チョー(009) さわ…城千春(010) 野ざわ…雅子(001) 登場人物 帝愛グループ関係者 利根川幸雄 CV:森川智之 主人公。 本編の裏社会の大物然とした雰囲気は一応残しつつも、本作ではあくまで「中間管理職」としての苦悩が描かれている。(*2) また、原作での兵藤の「管理はできても勝負のできぬ男」「平常時の仕事は無難にこなしても緊急時にはクソの役にも立たぬ」の評価通り、 想定外の事態や大事な場面では、決断出来ず保身に走ってしまったり、ミスをやらかす欠点もある。 会長の要求に応えるため、および自分の出世のためには黒服たちの協力が不可欠であるため、部下の人心掌握と勤務管理に気を遣っている。 時には会長に取り入るため理不尽な仕打ちも見せるものの、基本的にはなかなかいい上司である。 というか、 徹夜で基本見た目が酷似した部下の顔と名前を覚える 何かというと自ら率先して動く 会議の度にコンペを開き、全員にアイデアを発表する機会を与える コンペでやらかした者もさし飲みに誘い、「次がんばれ」と発破をかける 失態を埋め合わすためとはいえ、慰安旅行を主催して神戸牛や高級酒をふるまう 部下の体調管理には細心の注意を払い、手の洗い方までレクチャー 勤務中に具合が悪くなった部下はすぐ病院に行かせる 会議で自分のアイディアをこき下ろされたり反駁されても一応素直に聞く。優れた対案が出たら自分の案を切ってまで採用 部下のほとんどが利根川よりも先に帰宅している描写すらある 挙句、部下全員に会議に遅刻されてもなんだかんだ許した(というか全員丸刈りになったせいでそれどころではなかった) 解雇してもう会社と出世にも無関係な元部下に対してもプライベートで会う。その後もなんだかんだで面倒見が良い 部下たちにスーツスタイルにおけるお洒落のなんたるかをレクチャー 部下の結婚式で誰かがやらかす事を見越して予備のネクタイを用意。同僚たちが余興を始めたら、その場のノリを理解して飛び入り参加、息もバッチリ合わせる ……と、部下にして見れば、非合法活動をやらされることを除けば理想的な上司と言えよう。 少なくとも兵藤会長とは雲泥の差だと思われる。 が、問題はこのような利根川の気遣いが悪い方向に作用してしまうのが多いことである。 部下からも慕われてはいるのだが、そのエネルギーがあらぬ方向に向かって利根川を窮地に陥れることも多々。 本編における末路も考えると、もはや切なさすら漂ってくる。 慰安旅行編では、帝愛の保養施設の備品の鉄板が錆びついて使い物にならなかったため自ら奔走。 なぜかその保養施設の倉庫に置かれていた将来自分が焼かれることになるあの装置を見つけ、それを特大バーベキュープレートだと勘違いし、その上で肉を焼いた。 カツ丼回では初めて入るカツ丼屋でメニューを見ずに大盛を注文するも、実はこの店では並盛が他店の大盛サイズで、その下に更にレディースサイズ(他店の並盛)などサイズ分けがされており、結果通常の3倍以上はある量のカツ丼を食べる羽目になる。 当人のプライドもあり引くに引けず何とか完食するも、アニメ版では帰社後に会長からカツサンドを勧められてしまう。 スピンオフ「1日外出録ハンチョウ」と共演した読み切り『トネガワvsハンチョウ』にて再来店。 既に常連としてかつ澤に通うようになっており、以前の教訓からレディースサイズを注文するも、 たまたま居合わせた大槻(後述)に完食時の写真を見られて煽られたことで再度大盛を注文してしまい、結果大槻共々完食できなかった。 またこのかつ澤のエピソード含め焼肉や揚げ物が好物のようで、さらに喫煙者でもあるためか健康診断で「判定C(要注意)」が並ぶ結果となってしまった。 これを機に生活習慣を改善して再検査に臨もうとするが、節制に努める利根川の姿がとある部下の心に火を付けてしまい‥‥ 兵藤会長に近い立場にいるため、20連勤で帰れなかったり、急な呼び出しでプライベートは皆無に等しい状態。 そんな彼にとって、地方への出張は数少ない癒やし。小旅行感覚で行きの新幹線で缶ビールを飲み、地方グルメを楽しみにしている。 優秀で知られる利根川だが過去には南波照間支社に異動(左遷)させられていたこともあるらしい。その理由は明かされていないが、いかんせん会長があんな性格なので…… なお、部下たちからは「先生」と呼ばれている。 兵藤和尊 CV:津嘉山正種 帝愛グループ総帥。おじいちゃん。 利根川と同じく、本編では見られない普段の姿がうかがえるが、利根川とは異なり本質は本編とほとんど変わらない。 というか本編の裏社会の支配者然とした姿よりも、本作の横暴な経営者としての姿の方が、人によっては生々しくてより嫌かもしれない。 鷲巣と違って王であるが故に黒服の顔は覚えず、「お前」で済ませている。 思い付きを即行動に移し、度々利根川を振り回す。 一方で夜遅くのコンペとなると寝入ってしまう、映画鑑賞の途中で眠ってしまうなど、普通の(?)おじいちゃんめいた姿も見せている。 また、福本伸行の読み切りでは、自家用ジェットでハワイに行こうとした際「自家用ジェットは息子の和也が同級生と共に使用中」と知らされると、 「アイツにそんな仲間が・・・・」と、どこか感慨深げに呟き「そういう理由なら仕方あるまい」と妥協するなど、人の親らしい一面も見せている。 徹底した上意下達組織のくせに、コンペを開かせたり企画書を提出させたりと変なところでちゃんとしている。 また、世俗の文化を「つまらん」「うんざり」と評するのは本編同様だが、 何だかんだ言ってTwitterの基本機能を把握していたり、某ユーチューバー恒例の挨拶を知っていたりと なぜか妙に俗世間の文化に詳しい一面もある。あんた幾つだ。 ちなみに利根川チームの目的は会長を満足させることなので、利根川チームの佐衛門からは「経営者」ではなく「顧客」と認識されている。 と、基本、傍若無人に利根川たちを振り回す側なのだがギャグ漫画だからか会長自身が碌な目にあわないこともあったりする。 黒崎義裕 CV:宮内敦士 No.2の座を競う利根川のライバル。でも、正直利根川に勝ち目がない気がする。 彼は「会長が怒るか怒らないかのギリギリのラインを見極められる」という人知を超越した超常能力を有しており、失礼一歩手前の気遣いをいとも容易く行ってくる。 そんな地雷原を平気な顔で突っ走れる能力には利根川も恐れを抱いており、「自分が似たようなことをやったら確実に怒られる」と語っている。 さらには、後追いで真似ようとしたらしくじって見事に兵藤クレイモアに被弾した(その時の表情から、黒崎は特に狙ったわけではない様子)。 一応利根川より年下であるためか、利根川に対して敬語を使い、さん付けで呼んでいる。 まさやんに対しては穏やかながらも強い態度で接し、完全に自分の方が上であることをわからせた。 遠藤勇次 CV:津田健次郎 帝愛傘下、遠藤金融の社長。 限定ジャンケンのリハーサル中、見学をしにやってくる。 新入社員の黒服たちが真面目すぎていまいちゲームが盛り上がらないことに危機感を抱いた利根川に、自分が黒服たちを教育すると持ち掛ける。 職業柄、多重債務者のクズの特徴を熟知しており、真面目な黒服たちを見事クズに仕立て上げて見せた。 ……が、肝心の限定ジャンケンの内容に関しては、いまいち理解が足りてなかった。 会長の影武者騒動では、用済みになってしまったまさやんを独断で山に捨てた。まるで犬のように。(*3) その後も限定ジャンケンの参加者達が電車内で傍若無人な立ち振る舞いをしているのを説教するために利根川が第一回からルール説明の時に使っているお決まりの演説「Fuck you…~」をパクり、その結果として、利根川はルール説明の時の演説のネタを潰されてしまい予想外の窮地に立たされることとなった。 木根崎 CV:山端零 帝愛大阪支社の中間管理職で、黒服を統括する立場という点では利根川と同様。 しかし、部下に対する態度は脅し付ける場面が多い上に空気も読めない。 視察に来た利根川がせっかくいい感じにした職場の雰囲気を恫喝でぶち壊し、おまけに利根川のあらぬイメージを大阪の黒服に吹聴した結果、場の雰囲気を余計硬化させた。 視察最終日でも彼が水を差したせいで、利根川の大阪グルメはパーになり、結局パックのたこ焼きで妥協する羽目になった。 一条聖也 CV:浪川大輔 「接待」に登場。 「人喰いパチンコ 沼」での接待&15億の貯玉回収にやってきた利根川に対し、優秀な利根川相手にはあえて手を抜かずに勝負すると宣言する。 ……が、実際の勝負内容は、物凄く甘い設定をされた沼による露骨な接待プレイ。何だよ、Y設定って。フェニックスシステムって。 沼も泣きたくなるというもんだ、本編とは別の意味で。 当初は挑発的な一条の態度から真剣勝負を期待していた利根川であったが、その残念すぎる内容から内心呆れ返っていた。この時のイメージ映像は心底滑稽である。 ちなみに読者からは「これじゃ会長に嫌われるのも無理はない」という辛辣な意見も。 のちに彼を主役としたスピンオフ『上京生活録イチジョウ』が連載開始。裏パチンコ店の店長になる前の一条のフリーター時代が描かれる。 黒服たち 本作におけるもう一方の主人公と言っても過言ではない。 本編ではごく一部を除いて、モブキャラ以下の舞台装置としての役割しかなかった彼らだが、本作では彼らの「組織の下っ端」としての悲哀が描かれている。 主に登場するのはほぼ全員が実直な性格であり、真面目で団結力もある。 ……のだが、いかんせん方向性がズレており、特に初期では利根川の舵取りがないと線路を外れた暴走機関車と化すことが多かった。 利根川が何かやれば悪い方向に作用してしまうことも多いのだが、かといって面倒をあまり見ないという選択肢も(人心掌握という目的を度外視しても)ない。 後述するがそれぞれ微妙に特徴が異なるので、上手く行動する黒服も居るのだが、その場合残りの黒服が台無しにしてしまったりする。 作品冒頭で全員利根川組に新しく配属されたようだが、基本的に服装が同じな上に顔も似たり寄ったり。 この個性に乏しい部下たちから自己紹介で顔と名前を覚えようとした利根川であったが、覚えにくい・紛らわしい名前ばかりであったため激昴してしまう。 それでもその翌日まで(*4)にはなんとか一人一人の顔と名前を記憶するが、後の回で飲み会の次の日に全員揃って会議に遅刻するという大ポカをやらかし、 お詫びのつもりでほぼ全員が頭を丸めてしまう。 判別の際に最も頼りにしていた髪形で区別が付けられなくなってしまったことで利根川はますます混乱。 遅刻を責めるどころではなくなってしまった。 結局、その後数話の間は何の説明もなく黒服は全員名札を付けていた。最初からそうしろは禁句。 なお、趣味は全員がボウリング。 利根川の苦心の結果もあってか、なんやかんやで上司を慕い一丸となって行動する良いチームであり、最終話直前には顧客(=兵藤会長)満足度No.1を達成するまでになる。 山崎健二 CV:羽多野渉 30歳。実直な性格の持ち主。趣味はボウリング。 何の変哲もない名前だが、他の黒服に「川崎」という男がいたため、「崎」被りに気づいてしまった利根川を混乱させる。 というかモノローグで「どっちだか忘れたが……」とか言われた。 顔もやや似ているが、顎が尖っているのが山崎で、四角いのが川崎。 というか山崎はチームの中でも出番が多いので自然に覚えられるかもしれない。 会議中に利根川が理不尽な保身に走りまくるのを目の当たりにし、少々わだかまりがあったようだが、 一心に会長に仕えつつ自分たちにも気を配る利根川を見て徐々に心を開いていく。 利根川が会長に弁明するため、福岡出張を楽しみにしながら名古屋でUターンせざるを得なかったときには、一生ついていくと誓うほどだった。 かつて兵藤会長の下で働いており、上記の「特大バーベキュープレート」の正体にも気付いていたが、楽しむ利根川と仲間たちを見て何も言い出せなかった。 彼の「ありえないんだよ・・・・・・・!部下が羽根を伸ばせる社員旅行なんて・・!」の言葉は多くの社会人の心を打った。 本当に実直な人柄で、メンバーのまとめ役、利根川との橋渡し役となることも多い。 影武者騒動の際にはまさやんを徹底的に人格改造する冷徹さを見せたが、行方不明になった後は我を忘れて捜索し、見つかると利根川に土下座してまで帝愛に居場所を作ってやった。 利根川から新入社員の合否判定を任されたりなど、中堅として信頼もされている様子。ちなみに、その際は的確に合否を判定した。理屈はあんまりだけど(後述)。 第2回限定ジャンケンでは喉をやられた利根川の代役として緊急登板。何とか大役を果たした。ウルトラクイズみたいなノリになってしまったけど。 同期の宮本一と同じ大学出身。 利根川チームの解散後も帝愛グループで働いている。 最近、黒服を卒業しサングラスを外す事が出来たらしく自分のチームを率いている。 佐衛門三郎二朗 CV:島﨑信長 23歳。実直な性格の持ち主。趣味はボウリング、アニメ鑑賞。 利根川組の黒服最年少。 「佐衛門三郎」が姓で名前が「二朗」。 聞き慣れない姓で、自己紹介させて顔と名前を憶えさせようとした利根川をいきなり混乱させた。 (ちなみに左衛門三郎の姓は日本に実在する) 長すぎるので「佐衛門」と呼ばれることが多い。 最年少ながら利根川組でも極めて優秀な人物で、 あの限定ジャンケンを提案し、会場をエスポワールに決め、ジャンケンカードのデザインまでこいつの案が採用されている。 利根川は彼の発想のスケールや意外性を高く評価し、チームを引っ張っていく存在になりうると考えている。 ただ、遅刻騒動の時にただ一人坊主にしなかったり(仕事の失敗は仕事で返す主義と主張)、 容儀規定をギリギリクリアするようにお洒落上級者(洒脱じゃないけど……)をしてみたりと、良くも悪くも自由奔放な面があるようだ。 若い世代ゆえか、ドライな個人主義の表れとも言える。 帝愛アンチのツイートから正体を割り出す(割れたタブレットの画像の明るさとコントラストを調整してタブレットに映り込んだアンチの正体を暴いた)、 利根川とのコンビ打ち麻雀で破竹の強さを見せるなど、気づきや圧倒的理はカイジ本編の猛者たちにも比肩し得る。 利根川チームの解散後は帝愛グループを退職し、イベント会社を起業した。 同僚の西口と結婚し現在1歳半の子供がいる。また西口家に婿入りしたため西口二郎になった。 海老谷卓 CV:八代拓 25歳。解雇。趣味はボウリング。 利根川組最大のトラブルメーカー。 熱意と行動力はあるのだが、かなりの天然で社会人としての常識に欠けており、方向性がまったくズレている上に空気が読めないという、まあどこにでも一人はいそうなタイプ。 佐衛門三郎とは同期で、有能な彼にどんどん差を付けられていくのに悩んでいた。 限定ジャンケンの会場を決めるコンペでは、非合法の集会だというのにオープンな有名料理店を推薦(しかも店主は曲がったことが嫌いなタイプ)するというズレっぷりを見せる。 その癖、店主のインタビュー記事まで掲載した長大な企画書を用意し、推薦する理由をその100までリストアップしていた。 三日でその仕事量は凄い。 利根川には「あさっての方向を向いている大砲」と評された。 その晩、さし飲みに誘った利根川に「次のジャンケンカードのプレゼンではワシを驚かせてみろ」と発破をかけられる。 ……のだが、何を勘違いしたのか、よりによって超絶機嫌の悪い会長に「手形を取らせてください」と頼みに行って即解雇された。 ……うん、何か向いてる仕事はあると思うからそっちに行った方がいいよ。 ちなみにカードのデザインは、次の話の冒頭であっさりと佐衛門の案に決まっていた。 なお、とばっちりで利根川も減俸に。大砲が最後に向いたのは自分自身だった。 教訓:こういうタイプには曖昧なアドバイスではなく明確な指示を出してあげましょう。というか、自由を与えたら駄目。 後に再登場し、解雇された事を怒る事無く利根川に謝罪していたのだが、減俸の遺恨と空気の読めない性格で相変わらず利根川を苛立たせている。 一応償いとして副業を紹介するものの、それは典型的な悪徳マルチ商法であり、利根川にやめるよう忠告を受けるも聞く耳を持たず、それどころか利根川を勧誘しようとする始末。 そもそも謝罪の意思が態度にも言葉にも格好にも感じられない上に、まともに謝罪している様子すらない(デラックスパフェを食いながら謝っただけ)。 止めに、真っ向からマルチ商法だと指摘した利根川に対して、内心「物わかりの悪い古い考えのおやじ」だと決めつけて明後日の弁明を繰り出した。 後に会社の実態に気付いて真の謝罪の手紙を送った。拘置所から。つまり、捕まってから悪徳だと気付いたのだった。 ついでに、アニメでは「参った参った」などとこぼすシーンが追加されており、悪びれてない印象がブーストされた。 無罪で釈放された後、今度は海老を使ったビジネスに傾倒。クビになったばかりの帝愛を訪れ、殻も剥かずに生地に巻いただけの海老ロールを試食させる。 当然ダメ出しを食らうが、単価が安くなるから海老を200kgも仕入れていたことが判明。 「エビが食べたくなった」などとややツンデレなセリフで利根川や元同僚がその場でカンパしてくれたことに号泣して感謝していた。 数日後、お礼の手紙が利根川に届く。そこには感謝と反省と…… 新たに海老を1トン仕入れたことが書かれていた。曰く、利根川たちの様子を見て海老の底力や魅力に気づいたという。 要は、温情で買ってくれたということを理解しておらず、海老を食べたくなったという建前を鵜呑みにしたのである。 その片鱗はこのエピソード最初でも表れており、かつて「謝罪するつもりならデラックスパフェは頼まない。百歩譲ってもコーヒーゼリー。」と言われたことから、コーヒーゼリーを頼んでいる。 「百歩譲って」なので普通はコーヒーゼリーも駄目なわけだが、そういう「言外の言葉」を一切把握せず、「コーヒーゼリーならOK」と記憶しただけなのである。 もちろんそこにかつての愚行に対する謝意などない。これは件のパフェの会計を謝罪相手にさせてしまっているのに今回も頼んでいることからも明白。 その後は事業に失敗したらしく無一文となる。 怨恨(というか逆恨み)から帝愛の悪口をTwitterに投稿して評判を下げようと目論む。 帝愛内部の人間しか知らない情報(帝愛社食のみそ汁の具がもやしだけという内容)をツイートし、 更に利根川チームの者しか知りえない情報(利根川が黒服の名前を覚えるのに苦労していること)をツイートしたことで利根川チームを疑心暗鬼に陥らせる。 しかし液晶の割れたタブレットの画像を帝愛のせいにしてアップしたところを佐衛門三郎の機転によって正体を突き止められ、 帝愛公式Twitterアカウントのフォロワーを10万人に増やすまで地下牢に幽閉される。 改心してフォロワー増加に励むが、相変わらずの空気の読めなさで帝愛公式アカウントを大炎上させてしまう。 結果的にフォロワー10万人を突破したため「ということで失礼します!」と立ち去ろうとするが、 利根川に「帰すか!こんな状態で‥‥‥‥!」と言われ認められなかった。残当。 結局、帝愛公式アカウントは停止することとなる。 第49話にてコンビニに行ったまま戻らなくなった(バックレた)津久井の代わりとして利根川チームに雑用係として復帰した。 ‥‥が、早速以前と同じ調子でプレゼンを発表しようと大量の資料を持ち出してくる。 その後は新卒の蟹江に凄まじい先輩風を吹かしつつもアドバイスし、彼の提案するゲームの内容を酷評しつつもプレゼンの背中を押す様子を見せEカードの考案に一役買った。 原作を見ている人間には分かりきったことだが、Eカードの案は他の黒服、利根川、兵藤の全員から大絶賛であり先輩風を吹かしすぎた海老谷は孤独な夜を過ごすこととなった。 チーム1利根川に恩を感じている。 利根川チームの解散後は帝愛グループを退職し海老ロールを改良して何とか食える様になったようで、練馬に小さな店を出している。 何か思うところでもあったのか、人が変わったように腰が低く謙虚になり、店もひとつひとつ堅実にやっている。 堂下浩次 CV:江口拓也 32歳。実直な性格の持ち主。趣味はボウリング。 元T京ラグビー部主将で体育会系のノリの熱血漢。 権田が利根川の代理を務めたときは「インフルエンザが何だ、リーダーとして頼りにしている」と激励したせいで全員インフルエンザ。 佐衛門のお洒落に真っ先に興味を示す一面も。 一方で長田からは「体育会系のノリが絡みづらい」と指摘されたり、健康診断に引っかかった利根川に対し、カロリーの高い弁当をゴミ箱に捨てるなど徹底的な食事管理をしたりと極端な行動を取り、利根川からは「要注意人物」と評された。まぁ、そのおかげで無事健康診断で問題無しになってるんだけど。 アニメ版ではイナゴの佃煮やカエルの腸詰も残さず食べる悪食という設定が追加され、海老ロールを却下する決め手となった。 この際、「すまん」と言ってゴミ箱に叩き込んでいるが、海老谷ではなく海老ロールへの謝罪である可能性がある。 利根川チームに配属される前は宣伝部に所属しており、要・忖度おじさんの元先輩から間に帝愛のCMが流れている深夜ドラマの話題をよく振られていた。 中学の時ファンクラブが一瞬できた。 利根川チームの解散後は宣伝部に戻って活躍しており黒服から幹部に昇格した。 帝愛にラグビー部を作り社会人の大会で優勝した。 権田平八 CV:小山力也 49歳。実直な性格の持ち主。趣味はボウリング、写真撮影。 帝愛勤続25年の古参で、利根川組最年長。年齢が近いせいか黒服の中で唯一利根川を「先生」ではなく「さん」付けで呼んでいる。 100を超える帝愛備品の場所を熟知、帝愛全社員の厄年データを網羅、帝愛近辺の最新ランチ情報もチェック済みという、縁の下の力持ちにして陰の立役者。でも要・忖度おじさんではない、とてもいい人。 幼い頃からの夢は古本屋の店長。 「この年まで黒服ってことはもう出世の見込みはない」とあきらめかけていたが、インフルエンザに倒れた利根川に「あとは頼んだ」と言われたことで一念発起。 それなりにリーダーシップを発揮して仕事を回していたが、自身もインフルエンザに罹患。 休んでくれという仲間たちに「利根川さんに頼まれたんだから最後までやり遂げたいんだ」「ここで諦めたら私は二度と自分を好きになれない」と訴え、仲間たちも同意した。 ……結果、利根川組は全員インフルエンザに倒れた。 そりゃそうだろう。 ちなみに、結果的に限定ジャンケン時の現金入れホルスターの仕様を決めたのはこの人である。 なお、「病気で倒れようが代わりの黒服などいくらでもいる」とはならないようだ。 やっぱりいい職場なんじゃないのか?まあ、利根川はブラック中のブラックとか漆黒とか評していたけど。 実は最近彼女が出来た。 利根川チームの解散後も帝愛グループで働いている。 趣味の写真で大きな賞を取り、出世せずとも自分を好きになれる道を見つけた。 ちなみに担当声優は『逆境無頼カイジ』で鉄骨渡りの参加者・中山を演じていた。 中田英寿 CV:濱野大輝 32歳。チームでも随一のボウリング好き。もちろん趣味はボウリング。 天然で、利根川に思ったことを何でも言ってしまう。 海老谷とはまた違った、細々としたドジの多い癒しキャラ。 というか作中の公私問わず数々のやらかし…空気を読まない「ボウリングしたい」発言で場を凍らせる、結婚式場にサングラス&黒いネクタイ着用で現れる、 帝愛公式Twitterアカウントを任されるが「何をつぶやいたらいいかわからない」とロクにツイートできずアンチにフォロワー数で負ける、 (それでいて西口のFBアカウントを佐衛門より早く発見して水着写真に「いいね!」をしているというのがまた何とも‥) 京都出張時に利根川の分の新幹線の切符を預かりながら寝坊し遅刻、会議用のデータを連日忘れるなど、海老谷とはまた別のベクトルでトラブルメーカー。というか忌憚なく言えば無能。 左遷三人組を差し置いてなぜ彼が飛ばされなかったのかは作中最大級の謎かもしれない。 西口に惚れているようだが、チームで唯一佐衛門と西口の恋愛問題を全く知らない。 Pixivに自作のイラストを投稿している。 家に美少女抱き枕がある。 利根川チームの解散後は帝愛を辞めてプロの漫画家になった。講冬舎で4コマ漫画を連載している。 かつて利根川に出版を持ち掛けコロコロ意見を変え散々振り回した小宮が担当編集者に付いたため、苦労が絶えない模様。 荻野(おぎの)圭一、萩尾(はぎお)純一 CV:石田彰(圭一)、河西健吾(萩尾) どちらも35歳。実直な性格の持ち主。趣味はボウリング。 自己紹介の時、荻野の段階では「よし、覚えやすい名前だ」と油断していた利根川に「萩尾」で不意打ちを食らわせ混乱させる。 2人の名字をよく見比べてみよう。似てるようでよく見るとちゃんと違うことにお気づきになるだろう。だから、ややこしいのである。 荻→「おぎ」 萩→「はぎ」と読むのが正しい。またアニメでは萩尾役の河西氏が荻野役の石田氏に似せて演技しているため、声も似ている。 「崎」コンビと同じく顎の形で見分けることが可能、荻野は四角く、萩尾は尖っている。 萩尾は大の猫好き。また幸一というそっくりな顔の弟がいる。就職活動でやってきたが、利根川の心中を察した山崎に「これ以上紛らわしい名前と顔は要らない」という理由で失格判定を喰らった。ちなみに、利根川はその理由を全肯定。 5巻にて利根川組から南波照間支社に移動になった。送別会の際には、萩尾は荻野に成り変わろうとしていた(アニメでは荻野が「声も似てるしー!」と前述の声質のことに突っ込んでいた)。 ジブリ作品を観たことがない。 最終回直前で利根川チームに復帰したものの、利根川チームの解散によって今度は北海道のサロベツ原野支社に移動になったが、なんだかんだで楽しくやっている。 荻野は作中で結婚式を挙げるも、その際に生誕地はザンビアだったり25歳の時にお笑いコンビを組んでいたりと次々と衝撃の事実が明かされ、利根川(と読者)の度肝を抜いた。 妻に内緒でFXをしている。 また、実写映画三作目の小説版ではドリームジャンプの責任者が荻野になっている。 利根川チームの解散後は元相方とお笑いコンビを再結成。 黒服をやりながらお笑いコンビをやりM1に出場するも2回戦でドン滑り。 しかし、めげることなく新たなネタを開発中。 川崎敏政 CV:西山宏太朗 30歳。実直な性格の持ち主。趣味はボウリング。 彼を中心としたエピソードが特にないため、チームの中ではやや影が薄く、利根川が一時的に記憶喪失(名前を忘れた)になった時は、『崎』被りと真っ先にインフルエンザで倒れた事ぐらいで、まったく思い出がなかった。 後はアニメで長田と堂下の喧嘩を仲裁したり、会議室(恐らく業務中)で写真集を見て興奮していたぐらいか。 両親に金沢旅行をプレゼントした。 利根川チームの解散後は帝愛を辞めて大手銀行に転職した。 長田雄一郎 CV:沢城千春 37歳。実直な性格の持ち主。趣味はボウリング。 マサチューセッツ工科大学卒。 5巻にて利根川組から南波照間支社に移動になった。 送別会で堂下の体育会系ノリに絡みづらいことをぶっちゃけ、取っ組み合いの喧嘩になる。 漢検一級。 最終回直前で利根川チームに復帰したものの、利根川チームの解散によって今度は北海道のサロベツ原野支社に異動になったが、なんだかんだで楽しくやっている。 菊地亮 CV:青柳尊哉 35歳。実直な性格の持ち主。趣味はボウリング。 遅刻騒動の際に「際の際‥‥五厘まで‥‥!」行くべきだったと的はずれなコメント。 5巻にて利根川組から南波照間支社に異動になった。 送別会で佐衛門にドライな対応をされ涙する。ドライな佐衛門‥‥ドラえもん‥‥‥‥! 最終回直前で利根川チームに復帰したものの、利根川チームの解散によって今度は北海道のサロベツ原野支社に移動になったが、野ウサギを捕まえたりする等なんだかんだで楽しくやっている。 単行本10巻の黒服紹介で「めちゃくちゃに喧嘩が強い」ことが明らかになった。 もしかしたら送別会で元ラグビー部主将の堂下と喧嘩になって組み伏せていた長田とごっちゃになっている可能性が‥‥ 西口冴子 CV:前田玲奈 22歳。利根川チームのヒロイン。趣味はボウリング。 3人が移動になった後にチームに加わった新人で、珍しい女性の黒服。というか、スピンオフとはいえ福本作品では非常に珍しい女性レギュラーキャラ。というか福本作品通してレギュラー・準レギュラーの女性キャラは美心だけ。 博多出身。兄がいる。他の黒服と違い原作最終盤まで目が描かれず、横からのアングルでも影になっていた。 アニメでは荻野の結婚式に出席していたが、そこでも眼鏡をかけており、やはり目は描かれていなかった。 アメやグミをよく差し入れする。 プライベートでは、自撮り写真をSNSにアップする、他のメンバーに手作りのケーキを渡す、法事と言っておきながら実際はジャニーズのライブに行くなど、女の子らしい一面を持っている。 また、利根川から女性視点の意見を求められることもある。 一時期佐衛門と交際するも、一度破局してしまうが…… 持たない暮らしに憧れている。 利根川チームの解散後は佐衛門と復縁し結婚。1児の母親になった。 ちなみに「佐衛(サエ)門三郎冴(サエ)子」と「サエ」被りするのが嫌だったらしく佐衛門が西口家に婿入りした。 八乙女中 CV:寺島拓篤 27歳。中途入社の黒服。趣味はボウリング。 帝愛に入社する前は様々なセールス業を経験してきた営業のプロ。 それも単なるプロではなく、光回線のセールスを担当した時期にはあまりの契約成立の早さに「光」という異名がついたほど。 悪魔的おべっかで会長に気に入られ、入社して早々に会長秘書に出世した。 津久井 CV:不明 32歳。派遣の黒服。サングラスではわかりづらいが、細目。 社会人の基本である報・連・相が苦手であり、利根川に頼まれていた「鉄骨渡り」で使用する先に行くほど細くなる鉄骨の発注を忘れていた。 自分のミスを隠蔽するために製鉄所に電話するのだが、ことごとく失敗。(もし利根川に素直に相談していれば利根川のコネと交渉術で鉄骨発注の遅れを取り戻せたかもしれないが、報告するのを恐れてできなかった) 代わりに物干し竿を使用したのだが、偵務者が全員ギブアップで生還されてしまった。むしろよく持ったな物干し竿… 尚、この結果に激怒した会長によって利根川はフルボッコにされる羽目になった。 この大失態を責められるのを恐れたのか、その後コンビニに外出したまま出奔してしまった。その後の行方は不明。 アニメでは荻野の結婚式の司会を務めていたが、声優はクレジットされておらず不明のままである。 東さん CV:大河元気 「ひがしさん」や「あずまさん」ではなく「トンさん」。 利根川が発案したギャンブル「人間麻雀」の説明のために麻雀牌の「東」のシャツを着せられてきたため「東さん」の呼び名が定着した。 利根川チームのメンバーではないが、登場してからは会議のアシスタント役として定着する。無口。 津久井が出奔してしまった為、津久井の代わりに正式に利根川チーム入りした。 宮崎純一、大崎正也、、東御建田順三郎、山田正太、山田太一、山田正一、細山田、文殊四郎三郎、熊埜御堂京介 第54話から追加されたメンバーの一部。他にも数十名いたが、利根川は彼らの名前も四苦八苦しつつ覚えてみせた。その代わり山崎など既存メンバーを忘れてしまったが。 趣味がボウリングの初期メンバーと異なり、彼らの趣味はほぼ全員ゴルフ(一名だけ趣味はパターゴルフの者がいる)。 蟹江優作 第62話から登場した新卒の黒服。海老谷に気にいられ「カニ」「エビさん」と呼び合う仲になる。 電話を取るのにも緊張するなどまだまだ新人。しかしあのEカードを考案したのはこいつだったりする。 しかも利根川と黒服がEカードのリハをしている場面では腕時計について説明している描写があり、本編のあのイカサマ装置も彼の発案と思われる。悪魔的発想‥‥! T-AI君 帝愛のAI部が開発した自己学習型人工知能黒服。時代設定?いまさら 初期の頃は暴走が目立ったが、それからすぐAI特有の情報力と素早い対応を活かして利根川や黒服たちの業務も的確にサポートするようになった。占いもできる。 兵藤会長の要求にも的確に応えたことで気に入られ利根川や黒服たちの立場を脅かすことを危惧される等、近い将来シンギュラリティが起こることを予感させた。 後にAIの癖に人間的な反応を見せるようになり、黒服たちが打ち上げに向かった際に存在を忘れ去られて寂しがったり、利根川の過酷な未来を占った時にそれをどう告げるべきか悩んでいた。 宮本一 「ハンチョウ」からゲスト出演。手相占いを始めたT-AI君に占ってもらったところ、「仕事中に遊びすぎ」と鋭く見抜かれた。 そのほか、「ハンチョウ」の方で理想の上司として利根川の名前を挙げる場面がある。 その他の登場人物 渡辺(クズ)くん CV:萩原聖人 遠藤が黒服たちに『クズとは何たるか』を叩き込む為に連れてきた多重債務者。 想像を絶するクズであり、彼の言動は黒服たちや読者を唖然とさせ、見事にフレッシュな黒服たちをただのクズへと叩き落してしまった。 どのくらいクズかと言うと、雑誌掲載時のアオリ文で『渡辺くん』のルビが『クズ』だった程。 具体的には…… 1.会社の金をパチンコに使ったことがばれ、営業中に上司から「帰ってこい!」と電話が掛かってきた→「家に帰るのはさすがに悪い」「かと言って会社にも戻りたくない」との考えから終電まで山手線に乗っていた (要は怒られて責任をとるのも罪悪感を感じるのも両方嫌だということだろう) 2.自分の借金を返すために母親が集めた200万円を「嫌なこと(風邪を引いたり家の鍵をなくすなど)があったので自分へのご褒美」という名目で競馬につぎ込み全額をすってしまった この他、合計100のクズエピソードを有するという。 総じて「これが平均的なエスポワール参加者なら、帝愛側のあの態度もある意味納得」と言う意見も。 アニメでは一瞬本家のアイツではないかとミスリードさせるような間があった。ちなみに担当声優も同じ。 というか服装こそ同じであるがタレ目に丸い鼻とカイジと真逆の容姿をしている。 投資バカ木村、カスタム山口、バブル川上、CHC中根(*5) 渡辺くん同様、遠藤が限定ジャンケンリハーサルのために黒服への教育を行った多重債務者。 本作オリジナルキャラと思いきやどっこい、原作でカイジが参加した限定ジャンケンにも登場している(*6)。気になる人はチェック。 第53話「特急」で再登場。 エスポワール行きとなった債務者が乗り合わせる電車の中で再び渡辺くん共々一堂に会し、各々圧倒的なクズっぷりを見せていた。 電車での5人のクズ行為 渡辺くん → 優先席で寝転がる 投資バカ木村 → 混んでるのにデカいリュックを背負い続ける(現実でも誰もがやりがちな迷惑行為。この話で初めて知った読者も多いとか) カスタム山口 → 席で足を組んで隣の客に当ててる バブル川上 → 老人に譲るべく空いた席を横取り(体調が悪かったとかならまだ分かるが、この男は全然元気) CHC中根 → 帽子を隣の席に置いて占領(バカデカい荷物を置くよりかえって質が悪い) まさやん CV:大塚明夫 兵藤会長と顔が瓜二つの飲食店勤務の男。本名「本田正安(ほんだ まさやす)」。 会長の超絶被害妄想から影武者探しを命じられた利根川と山崎にスカウトされる。 困ってる人を放っておけない、という会長とは真逆の善良な性格だったが山崎の洗脳まがいの苛烈なスパルタ教育を施され内面までも変貌。 (ただ、まさやん本人も会長の仕草を徹夜でビデオ学習するなど自身も精力的に影武者になり切ろうとしていた模様) 特訓の成果なのかまさやん本人の運動神経なのか本物とは違い吊り輪体操も軽やかにこなす。山崎!意味あるか?それ のちに会長が影武者探しの件など忘却の彼方であったため一度は用済みと野に捨てられるもなんとボロボロになりながらも自力で帝愛本社まで帰還、その忠誠心と執念に感服した利根川らによってあらためて帝愛に迎え入れられる。と同時にすっかり山崎の飼い犬のような有り様に 27話でも再登場を果たしチーム利根川と共に『赤座エビロール』を試食、海老谷の無謀な計画を断念させる決め手となる。 (アニメ版ではこの役割は堂下になった。マルチと海老ロールの間でそれなりに期間が空いている海老谷のエピソードを、まさやんの登場に先駆けて一括で進めるためと思われる)。 その後、山崎が留守の際にチーム利根川から過度に甘やかされたことで一時期素行不良が目立ったが…… 帝愛で空前の麻雀ブームが起きた際、理外の打ち手の可能性を見せる。 利根川によって麻雀のイロハを教え込まされた後はその博才を開花。麻雀の理を徹底的に理解した佐衛門すらも下す。 しかし肝心の黒崎戦では‥‥ さらにその後会長が影武者の件を思い出した際には会長から直々に手ほどきを受け、振る舞いもさらに会長に近づいた……が、会長がハワイから戻った後も王の生活をやめようとせず、利根川たちからも完全に見分けがつかなくなっていた。 その後最終的に上記のことが原因で牢屋に入れられて騒ぎ立てるが、会話中に山崎が手をたたくと同時にそれまでの凶暴さが急に溶けて元のまさやんに戻り、その後役目を終えて元の居場所へ帰っていった。 ちなみに10巻のおまけページにて「広安」というこれまた兵藤会長そっくりな双子の弟がいる事が判明している。 声優のチョイスは影武者ネタを兼ねている説あり。 船井譲次 第二回限定ジャンケンに1コマだけ小さく登場。アニメでは北見共々第一回限定ジャンケンにも参加していた。また、でかでかと映っている。 田原歳彦(*7) CV:速水奨 帝愛の面接試験で面接官の利根川と山崎の前に現れた就活生。 すごい経歴の持ち主で、帝愛という企業を十分理解している完璧な受け答え、筆記試験も全教科満点という逸材。 なにより澄んだ瞳、丸い鼻、黒沢の様な角張ったしゃくれ顎と圧倒的特徴……!を持った人物。 山崎は他の黒服と見分けがつくことで採用を決めようとしていたが、利根川は「兵藤会長よりも目立つ」という理由で失格判定にして見送った。 アニメでもCVによって大物感が増しているが、なぜか顔を現した途端にしゃくれ声になった。 本名は「ハンチョウ」で判明し、意外な形で再登場した。 山川稔 帝愛の悪魔的事業融資相談会に参加した地下行き確定の債務者の一人。負債額は850万円。二人同時に音楽を聴ける「ペアホン」をプレゼンするも、会長からは「ゴミの出すアイディアはゴミ」と一蹴されあっさり地下送りに。まぁ実際ゴミなので仕方無い 相田さとし 上記の山川同様の参加者で、その日の最後の一人。負債額は1500万円。何を考えてか、お笑い芸人志望ということで自身が考えたネタを披露する。会長からは「己の現状を全く分かってないから焦りも絶望もない」「一番嫌いな正真正銘の馬鹿」と激しい怒りを買うが、よりによって利根川はドツボにはまってしまい(かといってブチ切れ寸前の会長の隣で大笑いなどできるわけがなく)、永遠にも思える10秒間3分間を必死に笑いを堪える羽目になる。地下送りになってからもネタを披露するものの、石和以外には全く受けていなかった。 ちなみに肝心のネタの内容はオヤジギャグとリアクション芸を組み合わせたものをただひたすら繰り返すだけの単純な物。『「ミーンミンミン」とセミの鳴き真似→「ミーン主主義大国日本!(キリッ)」』、『「ガタン・ゴトン」のリズムを「オカン・オトン」に変えて列車の真似をする「両親列車」』、『おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川で一本足打法』など、ジャンルもバラバラで法則性もなにもない。勿論利根川や石和のように人によっては面白いかもしれないが、芸人として食っていけるレベルなのかと言うと……(*8) 「ハンチョウ」でも時々登場している。 大槻太郎 CV:チョー 読み切り『1日外出録ハンチョウ』の主人公。 内容は一言で言うと「班長のグルメ」。 幾度もの1日外出券の利用により、限られた時間の中でも余裕をもって自由を楽しめるようになっており、その様は彼の一時解放に立ち会った黒服たちも感心するほど。 以前の1日外出時に目をつけていた小料理屋に来店。突き出しの「ほうれん草と蒸し鶏」と、注文した「なめろう」「シシトウの焼き浸し」「ゴボウ揚げ」「焼酎のロック」に舌鼓を打つ。 『トネガワ』の人気により、のちに週刊ヤンマガにて彼を主人公としたスピンオフ『1日外出録ハンチョウ』の隔週連載が決定した。 また、5巻には利根川と共演した読み切り『トネガワvsハンチョウ』が収録されている。 アニメでは上記のように第2クールから『1日外出録ハンチョウ』のエピソードも挿入されるようになっており、後期ED映像ではダブル主人公のような扱いになっている。 後に地下送りになった相田のネタを見た時は絶句していた。 沼川拓也 石和薫 第50話ラストに大槻と共に1コマだけ登場。地下送りになった相田のネタを見せられるが、沼川は絶句していたのに対し石和は腹を抱えて大笑いしていた。 森里ベルダンディー コラボ漫画で登場。 かつて月刊アフタヌーンで連載されていた漫画『ああっ女神さまっ』のヒロイン。 最終回にて主人公の森里螢一と結婚したため森里姓に変わっている。 不況のせいで螢一の経営するバイクショップの売り上げが思わしくないらしく、苦しい家計を支えるべく就職活動中。 帝愛ファイナンスで面接を受けるが、黒服特有の黒いスーツではなく、女神衣装のまま面接を受ける。 その姿に利根川と共に面接官を務める山崎が、「TPOも弁えられぬ」「クズ」「どうかしてるとしか……」と否定的な意見を述べるも、面接官の利根川は彼女の答えに釘付けとなる。 最後に利根川からの「あなたにとって債務者とは?」という質問に対し、彼女は「子羊」と答える。 「悪魔的っ……!債権者(クズ)共を人とも思わぬその発想……」 すっかりベルダンディーを気に入った利根川は彼女を採用するが、ベルダンディーは「私は女神ですから」と自ら内定を辞退してしまった。 登場するギャンブル 人間麻雀 利根川先生自らがプレゼンした企画。 要するに人間を牌に見立てた麻雀。絵面がえらいシュール。 最終的に役となった14人のみにボーナスが与えられるため、切られることが少ない順子・刻子となる人間同士でチームのようになる。 しかし、所詮口約束のようなものなので、より良い役にするための裏切りが発生する土壌は存在している。 ツモるたびに誰を切るかでチーム(牌譜)内でいさかいが起きるはず、それを見れば兵藤会長もご満悦…… と利根川は自信満々だったが、佐衛門三郎から 「麻雀牌とぴったり同じ人数を集めないとできない」(麻雀は花牌等の変則ルール採用時を除くと136枚以上でも以下でも出来ないため、参加者を136人ぴったりに集める必要がある。しかし、いくらチャンスとは言え、債務者が逃げたり病欠する可能性もある(*9)) 「麻雀のルールを知らない債務者も多いのでアンフェア」(実際その知名度の差でKOTYでも大賞は逸したし) という鋭い突っ込みを食らった上、それらの問題をクリアした代案「カードジャンケン」(後の限定ジャンケン)をプレゼンされる。 結果、カードジャンケンの完成度を認めた利根川がそちらを採用、自身の案である人間麻雀はあえなくボツとなった。 ちなみに、黒服たちにはこの様子を人間麻雀という企画そのものに例えて 「切ったっ‥‥!自分の案を‥‥!」「純チャン三色一杯口のために‥‥‥‥‥下したっ‥‥‥!大人の判断‥‥!」と評されている。 とはいえちゃっかり「限定ジャンケン」というタイトルだけ強引にねじ込んだ利根川は流石と言うべきか‥‥ アニメではその後、利根川はバーで他の客の「麻雀はルールがわからないからジャンケンで予定を決めよう」という会話を聞いた。 やはり佐衛門の意見は正しかったと言える。 限定ジャンケン 本編で最初に行うゲーム。考案者は佐衛門。 リハーサルが行われる寸前、実は用意したテーブルやカードといった小道具に何の細工もされておらず、電光掲示板の仕掛けと一切連動していないことが判明。 発注した黒服らに対して利根川は「中に入ってお前らがカウントしろ」と無茶ぶりをしたところ、精神面・健康面・食事面などを理由に無理と言われて利根川はキレてしまう。 利根川に報いるため、山崎の発案でゲームや漫画、果てには猫などを持ち込んで中を自分好みの空間に仕立てることで4時間もの密室に耐えられるようにするという斜め上な対策を繰り出す。...そういえば本編でカイジがテーブルを思いっ切り蹴り倒すシーンがあったようななかったような...。 結局利根川も、自分の言ったことが無茶だったと反省していたこともあって怒るに怒れず、そのままリハーサルは行われた。 が、リハの問題はまだ終わらなかった。まあ、終わるわけないよね。トネガワだし。 リハーサルのテストメンバーは教育を兼ねて新入社員が選ばれたのだが、失敗を恐れた彼らでは真面目に進行しすぎ、居合わせた遠藤に「債務者感0」などと言われてしまう。 結果、見かねた遠藤によって新入社員は「無責任・自堕落系クズ」「投資バカ」「車改造厨」「バブル世代」「無計画メーカー」といった様々なタイプの債務者を講師として洗脳教育され、見事そっちに染まった。 「ようこそ…『債務者の世界』へ…」 この時点で遠藤がゲームマスターであるかのような錯覚を覚えるが、肝心のルールをイマイチ理解していなかったためか、各クズ(とそれに染まった黒服)同士のチーム戦かのような様相を呈しており、利根川からは心の中でツッコまれていた。 人間競馬 兵藤会長が考案したゲーム。第41話で初登場。 初回のイベント管理等は他チームが担当することになったため、利根川チームは研修のため見学に向かう。 だが帝愛のコンプライアンスの都合上、詳細な内容は一切見せられなかった。 何が行われているのかは兵藤会長の悪魔的笑みと、チーム利根川のグループチャットの内容から察してほしい。 利根川「確かめろ‥!自らの目で‥!」 なお、単行本6巻ではこの41話の直後に「賭博黙示録カイジ全13巻‥‥‥‥‥発売中‥‥!」と宣伝が入っている。 圧倒的ダイマ‥! なおこの研修は一週間前から申請していた有休と偶然被ってしまった山崎は欠席となっており、当該エピソードは休日を満喫する山崎と時折差し込まれる不穏なコマで構成されている。どうやら帝愛は重要な研修でも有給が優先されるようである。ブラック中のブラック企業とは一体……? 第47話で再登場。またもや兵藤会長の悪魔的発案で「先にいくほど鉄骨を細くする」という改変が成される‥予定だったのだが‥‥ Eカード 新卒の黒服・蟹江が(海老谷のアドバイスも加えつつ)考案したギャンブル。海老谷からの受けはいまいちだったが、利根川や会長からの評価は上々だった。 追記・修正は黒服の顔と名前をすべて一致させてからお願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] コメント欄が長くなってきたのでリセットしました -- 名無しさん (2017-01-06 23 39 46) 最近山崎が第二主人公みたいに -- 名無しさん (2017-01-07 10 01 01) こんだけ振り回していた利根川をあっさり廃人にした当たり、会長のおっかなさがうかがえるな…… -- 名無しさん (2017-01-07 11 10 13) 渡辺君の山手線のエピソードは正直わかるわ -- 名無しさん (2017-01-26 03 21 57) 実は数は少ないが女の黒服もいるという事が判明した…因みにその女黒服はプライベート(親友とプール)でもグラサン着用。 -- 名無しさん (2017-03-09 13 41 46) ↑↑わかっちゃ駄目だよ! -- 名無しさん (2017-04-09 05 29 54) ハンチョウ、スピンオフのスピンオフとかもう意味わかんねえよ -- 名無しさん (2017-04-15 02 09 32) ↑天→アカギ→ワシズという前例があるんだなこれが -- 名無しさん (2017-04-19 15 45 15) ↑そういえばそっちもシリアスな笑いのギャグマンガだったっけか -- 名無しさん (2017-04-24 02 21 59) 風呂上り待ち伏せの回とか緊張と緩和のお手本のような話だ -- 名無しさん (2017-04-26 10 21 48) アンチ活動していた元社員にもチャンスを与える利根川、理想的すぎる。 -- 名無しさん (2017-05-29 11 52 04) 堂下は5巻でメインエピソードがあったよ -- 名無しさん (2017-06-08 22 08 51) 黒服達の個性がだんだんはっきりしてくるところが好き -- 名無しさん (2017-06-13 20 20 27) 「 会長が怒るか怒らないかのギリギリのラインを見極められる 」という人知を超越した超常能力を有しており← 盛大に笑ったWWW -- 名無しさん (2017-06-13 20 26 17) 萩尾が左遷された本当の理由って名前が紛らわしいからだったりしてw -- 名無しさん (2017-06-14 09 29 48) 影武者の回は腹抱えて笑った -- 名無しさん (2017-06-18 03 54 21) 最近読み始めたがめちゃくちゃ面白い。そして黒澤明の映画のくだりで思ったが、会長ってほんとにひたすら、気紛れで我侭な王様なんだな。本編でもそうだとは思うけど。帝愛を一代で築くほどの力量はあるんだろうけど、ほんと絶対部下になりたくないタイプだなあ。 -- 名無しさん (2017-06-18 17 37 25) 何でも萩尾が左遷された南波照間島は、八重山諸島に属する波照間島のさらに南にあるとされる伝説上の島らしい。 -- 名無しさん (2017-06-19 08 00 35) 新聞のコラムで、あの迷言を言っちゃったのかよw でも利根川に十年後はあるんだろうか -- 名無しさん (2017-06-28 09 15 19) あの世界の帝愛グループ、利根川先生離脱したら倒産しそうだよね。まぁトネガワワールドだと焼き土下座後もミイラみたいな恰好で病室からフリップで黒服に指示出しそうだけど -- 名無しさん (2017-08-08 07 30 36) 流石に鉄骨渡りはギャグに出来なかった模様 -- 名無しさん (2017-09-02 04 09 00) 左衛門は後々黒崎ポジにつけると思う -- 名無しさん (2017-09-17 22 34 17) ↑2凄い形でギャグになっちゃったね… -- 名無しさん (2017-11-12 21 23 56) 時代設定が曖昧というか、ハンチョウと同じくカイジがいない世界線の可能性。そう考えた方が末路を意識して悲しくなることもないし… -- 名無しさん (2017-11-12 21 57 01) 渡辺くん以外のクズ連中のクズエピソードがどんなもんだったのか未だに気になる… -- 名無しさん (2018-02-09 23 25 58) ついにアニメ化っ…!圧倒的僥倖っ…!中の人はアカギの鈴木さんか。 -- 名無しさん (2018-03-18 07 51 39) 頑張っているカイジくんの労をねぎらってこの利根川がアニメ化をしようというのだ…… -- 名無しさん (2018-03-18 08 02 19) 人間麻雀…確かに実現には無理があるだろうが見てみたい -- 名無しさん (2018-05-18 14 54 36) 黒服の声優陣、ノッブやら石田彰さんやら豪華すぎやせんか…w -- 名無しさん (2018-06-20 19 25 00) アニメ見たけどナレーションが・・・ -- 名無しさん (2018-07-04 02 46 30) トネガワ…白竜じゃないのか… -- 名無しさん (2018-07-04 16 48 14) アニメは海老谷がプロデュースしたとか言われてて笑う -- 名無しさん (2018-07-04 16 58 44) ナレーションはアレだが声付きのBBQ、まさやん、一条回は楽しみだ -- 名無しさん (2018-07-06 14 31 42) トネガワは白竜でやって言ってほしかったな。ギャグシーンとかシリアスっぽくやってくれそうw -- 名無しさん (2018-07-24 20 42 50) ジャグジャグ、ムルナウの配下やめてからはこっちに就職したんだな(違 -- 名無しさん (2018-07-24 22 21 12) 荻野と萩尾は声も似ている -- 名無しさん (2018-07-27 12 43 14) 「それがやりたかっただけだろ」と突っ込みたくなる女性声優による「ざわボイス」w -- 名無しさん (2018-07-27 14 25 02) 最新刊のラストは利根川が慕われる理由がよくわかった。冷静に見ると笑えないんだけど -- 名無しさん (2018-07-27 16 49 53) アニメ、まさやんの役割の一つが堂下に差し代わった関係でゲテモノ食い設定が追加されたな -- 名無しさん (2018-08-23 15 47 05) 41話の山崎のLINEで荻野のアイコンが赤ちゃん使われてるから、彼と奥さんの間に子供生まれてるっぽいね -- 名無しさん (2018-08-28 21 51 49) 中田×西口、ワンチャン有るか? -- 名無しさん (2018-08-29 01 58 56) モブのヘンテコ顔のエリート就活生のCVは意外なチョイスでしたは -- 名無しさん (2018-08-30 09 31 07) ハギーがまさかの配役ででるとはなw -- 名無しさん (2018-09-06 07 03 57) 渡辺くんの紹介で、顔以外の風貌がカイジにそっくりという一番肝心な事が書かれてないな。まさか声まで同じとは… -- 名無しさん (2018-09-08 11 21 21) 利根川の年齢決まってないの?公式で出してくれぇ?見た目は70にしか見えない。老け顔? -- にわか (2018-09-26 20 15 57) 利根川って本人がむちゃくちゃ努力してきた人間だからこそ、カイジみたいな適当な奴ら -- 名無しさん (2018-10-13 02 45 46) を見下していたのかもな。そういう意味では本編とそこまで矛盾しているようには思えない -- 名無しさん (2018-10-13 02 48 31) まさかハンチョウまでやるとは思わなかった。アニメ化して良かったね -- 名無しさん (2018-10-16 20 08 13) ↑2 何のかんの言われながらも大企業の重役にまで上り詰めてるわけだから、そりゃあカイジその他参加者のようなギャンブルクズは嫌いだと思うよ -- 名無しさん (2018-10-17 20 15 14) ↑3 本編でも鉄骨渡りの際に「あちらの”方々”は下にいる成金とは違って~」と本人の前じゃないのに敬意を払った呼び方だったし、地位と権力を持った人には敬意を持っているのだろう -- 名無しさん (2018-11-08 22 23 14) 荒らしコメントを削除しました -- 名無しさん (2018-11-27 21 59 36) 「すばらしいアニメだ、川平のナレーションがなければもっとすばらしい。」 「これからも見たいとおもう。ただし川平のナレーションをやめれば。」 「川平のナレーションをとりはずせるようにしてくれ。」 -- 名無しさん (2018-11-27 22 32 11) 自分がエスポワールで言うはずだった台詞を部下にとられてしまったときのこの人に鉄骨レースのときの凄みが消えてしまっていた・・・。(うう・・気の毒に) -- 名無しさん (2018-11-28 09 55 00) 立木さんに比べてってだけで、別に良いと思うけどな川平 -- 名無しさん (2018-11-28 20 55 41) ↑まぁ、確かにこれはこれで味があるとは思うのでちょっと叩かれ過ぎな気がしないでもない -- 名無しさん (2018-12-10 23 43 00) 芸能人声優ってだけで叩く馬鹿の多い事よ -- 名無しさん (2018-12-11 23 47 53) T-AIくんの話ではじめて「湿りもの」という言葉を知りました。(アイスの実かよ!?) -- 名無しさん (2019-01-15 09 30 49) ツイッターはあるけど、グレーゾーン金利がまだ撤廃されてない世界 -- 名無しさん (2019-02-17 01 26 40) 億兆荘取り壊されてたのか -- 名無しさん (2019-02-17 01 36 26) 今更だけど本編での活躍についてまとめた「利根川幸雄」の項目はまだないのね -- 名無しさん (2019-07-03 23 58 44) かつて自分が肉を焼いた鉄板で、自分が焼かれることになった本編の利根川先生の心情が知りたい -- 名無しさん (2019-08-18 22 33 46) 荒らしコメントを削除しました -- 名無しさん (2019-09-01 10 26 12) 最早カイジとは別世界線と化してしまった模様、まぁ面白いからいいか -- 名無しさん (2019-09-01 11 42 42) ↑本編の方もトネガワ化してきてるんだよな~、、、 -- 名無しさん (2019-10-31 14 53 32) ヤベエ… -- 名無しさん (2019-11-01 14 19 58) ↑ごめん誤爆 ヤベエ…一ヶ月以上前にネカフェで読んだだけなのにセリフでどいつかが分かってしまうww みんな似てる風貌なのにこれで分かるとか凄い作品だ… -- 名無しさん (2019-11-01 14 21 40) アニメ版の利根川の同窓生は、二次熟女的エロスはないんだけどいい年の取り方してんなぁって感じの美人さんだったな -- 名無しさん (2019-11-19 16 25 41) 9巻の最後で「10巻で終了」という宣言書かれてたけど、うせやろ?9巻の最後の漫画がドッキリをテーマにした内容だったから「10巻終了宣言は読者に対するドッキリでした」というオチであって欲しい -- 名無しさん (2019-12-08 14 39 00) ↑とうとうあの男が船に乗るときが来てしまうのか…… -- 名無しさん (2019-12-09 14 18 52) 正直もうパラレルワールドで良いんじゃないのか -- 名無しさん (2020-01-10 22 33 42) ツイッターをはじめとして原作との時代のすり合わせはとうに諦めてるしパラレルって扱いでいいと思うよ -- 名無しさん (2020-01-29 15 59 28) ギャグよりのスピンオフで時代考証は完全に手が詰まるだけだからな -- 名無しさん (2020-01-29 16 32 58) ↑5原作みたいに「中間忖度録トネガワ」とか「中間管理録トネガワ 黒服奔走編」とかになる方に賭けてる -- 名無しさん (2020-05-11 21 15 32) 残念ながら本編と同一世界説が濃厚になってきたな… 過去描写なのに現代と時系列矛盾はコナンなど長期連載ではよくあることだし -- 名無しさん (2020-05-18 21 18 06) 一応パラレルという扱いらしいけど、最新話で利根川に迫る避けられぬ破滅の未来が描かれてた……もしかしてもしかすると、この世界ってカイジに破れ廃人化した利根川が見ている「大変ながらもどこか楽しい幻」だったりして…… -- 名無しさん (2020-05-26 22 36 16) むしろ今際の時に見る走る馬の灯り的なあれなのでは -- 名無しさん (2020-05-27 00 23 01) これで、トネガワが終わるのと入れ替わりにカイジ本編に利根川再登場したら圧倒的愉悦なんだけどなぁ -- 名無しさん (2020-05-27 00 33 06) 占いのアドバイスがくじけないでってところに避けられない運命を感じる -- 名無しさん (2020-05-27 00 52 16) あとようやく西口の目が出てきた -- 名無しさん (2020-06-05 19 26 00) ついに終わった -- 名無しさん (2020-06-09 16 59 47) 再起を感じさせる終わりでよかった -- 名無しさん (2020-07-02 22 25 47) 海老谷は焼き土下座の現場に居合わせたんだろうなって感じする -- 名無しさん (2020-07-14 13 24 22) ↑辞めた連中は敗北の瞬間に立ち会ったんじゃないかという考察がありますね。帝愛に嫌気が刺してもおかしくないです。ただ山崎はあえて敬愛する利根川のため働き続けてもおかしくないかな。まぁ今回も人間競馬の時と同様にたまたま有給と重なった可能性が高いですが。 -- 名無しさん (2020-08-03 09 56 41) 最終巻表紙は満面の笑顔の利根川 -- 名無しさん (2020-08-11 19 59 32) 71.5話からすると「まさやんが兵藤会長に成り代わった」というわけではなかったんだな -- 名無しさん (2020-08-11 20 44 53) 廃人になったけど会長から解放されてオーロラ見に行けたんだね -- 名無しさん (2020-08-11 20 52 07) 兵藤会長の苗字を「兵頭」と表記していた編集者‥‥制裁‥‥!(修正しました) -- 名無しさん (2020-11-30 18 14 09) 相沢舞とよこざわけい子と富沢美智恵がいないっ‥‥! -- 名無しさん (2021-03-07 14 00 24) ↑焼き土下座の現場にはチーム利根川はたまたま一人も -- 名無しさん (2021-09-18 22 12 57) 訂正。 -- 名無しさん (2021-09-18 22 13 31) 人を率いないといけない中間管理職とはいえ、面倒見がいい。個人的には多重債務者を連れての講習の回が観ていて黒服のような反応になった -- 名無しさん (2021-12-01 21 59 11) 田原はあんなに優秀なのに何でハンチョウ時空では地下に転落したんだろ -- 名無しさん (2023-01-15 15 58 00) ↑優秀だからこそ、就職のレベルを下げられなかったのかも。あるいは債権者に紛れ込んだスパイとか。 -- 名無しさん (2023-02-21 21 22 25) 帝愛を完全に理解してるということは、当然そういうことにもにも抵抗感がないということで……沼みたいのに策略持って挑んで返り討ち、とかかも。 -- 名無しさん (2023-03-15 06 40 38) 田原は企業しようとして失敗の可能性もあるな ベンチャー企業に出資してくれる銀行は少ないし -- 名無しさん (2023-04-20 20 56 23) 利根川のCVがまさかの森川Voだけれどもふだんの美声から想像できない声でまるでわからなかった、採用試験回ではチョイ役にとんでもない人選するし全体的に豪華な声優陣 -- 名無しさん (2023-04-20 21 01 48) 名前 コメント
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岩佐真悠子 プロフィール(スリーサイズ、カップ情報) イワサ マユコ 生年月日:1987年02月24日(34歳) 身長:155 体重:42 B:83 W:58 H:86 カップ:E 備考:ミスマガジン2003受賞 Wikipedia: https //ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B2%A9%E4%BD%90%E7%9C%9F%E6%82%A0%E5%AD%90 関連URL: https //ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E5%B2%A9%E4%BD%90%E7%9C%9F%E6%82%A0%E5%AD%90 oldid=39057248 所属アイドルグループ コンテスト ミスマガジン2003 出演ドラマ 謎解きはディナーのあとで 遺留捜査(第3シリーズ) 黒服物語 貴族探偵 重要参考人探偵 関連タグ:ミスマガジン2003 岩佐真悠子 謎解きはディナーのあとで 貴族探偵 遺留捜査(第3シリーズ) 重要参考人探偵 黒服物語 View this post on Instagram A post shared by 岩佐真悠子 (@mayuko.iwasa)
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黒川智花 プロフィール(スリーサイズ、カップ情報) クロカワ トモカ 生年月日:1989年08月01日(32歳) 身長:161 体重: B:77 W:57 H:79 カップ:B 備考: Wikipedia: https //ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BB%92%E5%B7%9D%E6%99%BA%E8%8A%B1 関連URL: http //tomokakurokawa.seesaa.net/category/2135829-1.html 所属アイドルグループ コンテスト 出演ドラマ 遺留捜査 ブラッディ・マンデイ JIN-仁- 確証~警視庁捜査3課 黒服物語 ラストコップ あなたのことはそれほど 噂の女 大恋愛~僕を忘れる君と~ 相棒 Season16 Heaven 刑事7人 第5シリーズ ハル~総合商社の女~ 関連タグ:JIN-仁- あなたのことはそれほど ハル〜総合商社の女〜 ブラッディ・マンデイ ラストコップ 噂の女 大恋愛~僕を忘れる君と~ 相棒 Season16 確証~警視庁捜査3課 遺留捜査 黒川智花 黒服物語 View this post on Instagram A post shared by 黒川智花~Tomoka Kurokawa~ (@tomoka_kurokawa_official)
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真:「特に異議がないのなら、これでいくわよ?」 皆ゆっくり頷いた。 かくして、ドール達による蒼星石のマスター救出作戦が始まった。 まずのりとみっちゃんは警察に連絡するためその場を離れる。 ジュンと巴と雛苺は外部から待機、何かあればベリーベルを使って連絡・・・のはずだったが ジ:「やっぱり僕も行くよ。お前らばっかり危険な目に合わせられないからな。」 真:「ジュン・・・。」 しばし向かい合う二人。 金:「いいからさっさと行くかしら!」 大事の前にのろけだす二人に金糸雀がイライラした口調で促す。 翠星石と蒼星石はすでに建物の近くまで接近していた。 黒服の男が二人、入り口付近に居座っている。恐らく見張りだろう。 まずはこの見張りをなんとかしなくてはいけない。 蒼:「レンピカ。」 翠:「スィドリーム。」 見張りに気付かれないよう空から人工精霊を見張りの頭上に降下させる。 見張り二人は二体の人工精霊に無理やり夢の扉をこじ開けられ、あっけなく昏倒する。 翠:「ちょろいもんですぅ♪」 見張り二人を口元に笑みを浮かべ心底バカにした目で見下ろす翠星石。 蒼:「行くよ。」 蒼星石は倒れた二人に一瞥も与えず建物の扉の前まで進む。 すると扉を鋏でぶったぎり、一人でズカズカと進入してしまった。 翠:「ああ、待つですよ、蒼星石!」 金:「す、蒼星石、ちょっと・・・いえ、かなり、こ、怖いかしら・・・!」 真:「あの子、マスターが絡むと人が変わるのは相変わらずね。」 追いついた真紅が半ば呆れた表情で言う。 翠:「あの変わりようは半端ねぇですぅ。おじじの時だってあんな顔しなかったですぅ・・・!」 ジ:「そりゃ恋人のピンチだからなぁ。」 翠星石がジュンを睨む。 その目は『誰が蒼星石の恋人だぁ!? あのアホ人間がかぁ!? ゴラァ!』 という感じのものだった。 真:「さ、はやく蒼星石を追うわよ。」 ジュンと三体のドールも蒼星石の後に続く。 傷の男は俺に言う。 俺はくんくんの着ぐるみを着たままだ。 傷:「若、探しましたぜ・・・。」 ??? 若? 俺はとりあえずくんくんの頭を外した。 傷の男は俺の顔を見て感慨深そうに目を細める。 傷:「ご無事で何よりです。 久方ぶりの再会を喜びたいところですが時間がありません。 ご存知無いかと思いますが今、若の命が狙われてるのです。」 マ:「・・・・。」 傷:「突然のことでさぞ驚かれてると存じますが、本当です。 護衛を待機させてます。さ、組の方へ戻りましょう。」 マ:「・・・・。」 傷:「どうしました? さ、はやく。」 『若』に『組』ねぇ・・・しかもこの男のこの風体。 黒服達のことといい、どうやら俺はその筋の人らの抗争かなんかに巻き込まれてるっぽいな。 マ:「人違いだ。」 俺はもうバカバカしくなってゾンザイに返事をした。 どうやら一日に何回も他人と間違われると、自己のアイデンティティーを否定 されてるようで精神が荒んでくるようだ。 もうヤクザやら何やらが絡んでようが知ったことか。 それにいいかげん蒼星石達と合流したい。こんなとこで油を売ってる暇はない。 傷:「まさか、私の今の話、信じておられないのですか?」 マ:「人違いだ。」 俺は傷の男に目もくれず着ぐるみを脱ぎにかかる。 おや、チャックどこだっけ、これ。 傷:「若、もしや組に戻りたくないばかりに・・・人違いなどと嘘を・・・。」 マ:「知らんっつーの。」 背中のチャックを探す俺。くそ、どこだ。急がないと・・・! ああ、この着ぐるみ着る時はスタッフがほとんどやってくれたからなぁ。 傷:「若、三代目の気持ちも考えて下さいよ。大喧嘩の末あんな別れ方をしたのに・・・ それなのに若の危機を知った途端、私らに草の根を分けても若を探し出し、守ってくれと・・・。」 俺は背中のチャックが見つからず、イライラして声を荒げた。 マ:「知らんっつの! だから人違いだって!」 傷:「そうですか・・・それならしょうがありません。 私らも若にこんな乱暴なことはしたくはないんですか・・・。」 マ:「ん?」 傷:「お前ら! 入って来い!」 なんかヤバいパターンの予感・・・! ズカズカと屈強な紺色のスーツを着た男五人が室内に入ってきた。 傷:「若を丁重に送って差し上げろ。」 紺服の男達が俺の周囲を取り囲んだ。 マ:「わー! 待て待て待て! ここは冷静に話し合おう、な?」 傷:「時間がありません。ご無礼を許して下さい。」 紺服の男達が俺を捕らえようと襲い掛かってきた。 あああああ! ちくしょうめが! ああ、もういい・・我慢の限界だ。 俺を怒らせたことを後悔させてやるよ! 迎撃するためくんくんの頭を手放そうとした刹那、 また別の紺色のスーツの男が室内に飛び込んできた。 慌てた口調で傷の男に報告をする。 紺:「若の行方がわかりました! D地区エリアにて監禁されているそうです!」 室内の男達の動きが止まる。 俺のそっくりさん、何やら大変なことになってんじゃねーの? 傷:「何を言ってる? 若ならあそこだ。」 傷の男は俺を指し示す。だから違うっつーの。 どうしたら信じてくれるもんかな。なんか悲しくなってきた。 紺:「えぇ・・?」 今飛び込んできたやつも俺を見て驚いてるし。 傷:「む。」 傷の男に電話がきたようだ。携帯電話に出る傷の男。 傷:『三代目! とうとう若を見つけましたよ!』 だから違うっつーの。 傷:『え・・・、えぇ!? ほ、本当ですか!?』 ん? 傷:『いえ、私の目の前に若が・・・』 傷の男が顔に汗を滲ませながら恐る恐る俺の顔を見ている。 傷:『うぅ! すみません! わかりました。し、至急向かいます!』 慌てて電話を切る傷の男。何かあったんだろうか。 気付いたら俺を取り囲んでる男達がじりじりと間合いを詰めていた。あ、こいつらのこと忘れてた。 傷:「お前達! やめろ!」 おや、どしたんでしょ。傷の男は俺を見据える。 傷:「もしかして本当に人違い・・・なのか?」 マ:「だからそう言ってるだろが!」 紺色のスーツの男達も 『そう言えば声が違うような・・・』『ホクロがない・・』『雰囲気が違う・・・』 などと言い始めた。 おお、わかってくれそうな雰囲気! ここで一押しだ。 マ:「俺はあんたらの言う若とかいう奴に間違われて迷惑してんの! 黒服に追い掛け回されたり、くんくんショーの主役やらされたり!」 そのせいで蒼星石と離れ離れになって・・・ちくしょう・・・ 握手会の時の蒼星石の悲しそうな顔を思い出した。俺の顔が歪む。体がわなわな震える。 傷の男が俺の尋常じゃない様子を見て信じてくれたんだろうか、先ほど飛び込んできた男に言う。 傷:「若が監禁されてるD地区エリアに早く案内しろ。」 紺:「へい。 あと一つ報告したいことが。」 傷:「なんだ?」 紺:「若の監禁場所なんですが、そこに子供が数人入っていったそうです。」 傷:「子供だとぉ?」 子供ぉ・・・? 紺:「へい、金髪の子や緑色の子が・・・。一人はでかい鋏を持っていたとか。 あまりに奇妙なんで報告しときやす。」 おいィ!? それって蒼星石達じゃないの!? なに勝手に突入してるわけ? まさか若とかいう人物と俺を間違えて・・・!? いや、きっとそうに違いない・・・! ぐぐぐぐ・・・! 俺はくんくんの着ぐるみを脱ぐのも忘れ、楽屋から飛び出した。紺色の男達も続く。 俺と紺色のスーツの男達はD地区の監禁場所へ向けて全速力で走る。 はやまんな~~! ドール達~! そこにいるのは俺じゃねぇええええ! 建物に侵入し、出会った黒服は全て片っ端から蒼星石と翠星石が眠らせてしまった。 やがて通路の突き当たりの扉に辿り着く。 真:「どうやらこの扉の向こうの部屋に、蒼星石のマスターが捕らわれてるようね。」 扉の先の部屋から複数の人間の気配と、男の声がする。 すかさず扉に切りかかろうと身構える蒼星石を皆が慌てて止める。 ジ:(待て、待てって蒼星石! 闇雲に突っ込んじゃ駄目だ!) 扉の先の人間達に気付かれないよう、ジュンがなるべく押し殺した声で蒼星石に言う。 蒼:「マスター! マスター!」 聞いちゃいない。 金:(蒼星石を置いて雛苺を連れてきたほうが良かったかしら。) さすがに金糸雀も蒼星石のこの有様には呆れ気味だ。 真:(まぁいいわ。金糸雀、準備はいいわね?) 金:(まかせてかしら!) 真:(ではジュン、扉を開けて頂戴。翠星石は蒼星石を頼むわよ。) ジ:(わかった。) 翠:(わかったですぅ。) ジュンが扉を開けると間髪入れず金糸雀のヴァイオリンによる暴風攻撃。 暴風に真紅の薔薇の花弁も乗せて威力倍増。 部屋にいた黒服達は堪らず壁に叩きつけられ昏倒、気絶する。 それでも起き上がってくる者はスィドリームが寝かしつけた。 もう室内に立っている人間はいない。あっという間の出来事だった。 真:「制圧完了なのだわ。」 ジ:(すげぇ・・・。) ゴクリと喉を鳴らすジュン。 ジ:(こいつら本気になったら、銀行強盗でも簡単にやってのけるんじゃないか?) 目隠しに猿ぐつわをされている金髪の男が、ピクピク体を痙攣させながら倒れている。 暴風攻撃は敵味方関係なく威力を及ぼすようだ。 金糸雀曰く「しょうがないことかしらー。」 蒼:「マスタァー!」 暴走しないよう翠星石に抑えられていた蒼星石が、翠星石の手を振り解き、 床に倒れてる金髪の男に駆け寄る。 蒼星石は男から目隠しと猿ぐつわを取ってやる。 蒼:「マスター、しっかりして!」 翠:「ほら、さっさと起きやがるです!」 金髪の男はしこたま頭を打ったのか、うーんと唸るばかりで一向に目覚めない。 翠:「しょうがない奴ですぅ。」 翠星石が男の頬に平手を振りかぶろうとした瞬間 蒼:「あ・・ち、違う! この人、マスターじゃない!」 蒼星石はそう叫ぶと金髪の男から後退る。 翠:「へ?」 翠星石を始め他のドールやジュンも蒼星石の様子にポカンとする。 翠:「なに言ってるですか? 蒼星石。このアホ人間がどうかしたですか?」 蒼:「違うよ! 全然違う! この人はマスターじゃない!」 真:「ちょっと落ち着きなさい。蒼星石。」 ジ:「どうやら・・蒼星石の言っていることは本当みたいだな。」 ジュンが金髪の男の手を指し示す。 蒼星石を除くドール三体があっと息を呑む。その手の指には『契約の指輪』が無かった。 真:「じゃあ、この人はいったい・・・?」 金:「蒼星石、別人だってよく見抜けたかしら。」 蒼:「そ、それは・・・!」 蒼星石の頬にうっすらと紅が刺す。 それは日頃の付き合いに加え、昨晩たくさんマスターと チュッチュッチュッチュしたからである。(遊園地へ行こう3参照) 特にマスターの唇の形は鮮明に覚えていた。 蒼:(そ、それにマスターはもっとかっこいいし・・・。) 翠:「なに赤くなってるですか、蒼星石?」 蒼:「な、なんでもないよ!」 ジ:「? これは。」 ジュンが床に転がっている機械に気付いた。 それは先ほどまで黒服側と紺服側との間の交渉に使われていた テレビ電話であったがジュンは知るよしもなかった。 機械に近づくジュン。だが、気絶して倒れていたと思われた黒服の男にいきなり足を掴まれた。 ジ:「!?」 そのまま引っ張られる。 ジ:「わ、うわぁああ。」 ジュンの足を捕らえた黒服の男はそのままジュンを引き込みながら起き上がり、叫ぶ 黒:「う、動くなテメェら! 動いたらコイツの命はねぇ!」 黒服の男はひどく錯乱状態のようだった。 ジュンを助けようと駆け寄ろうとしたドール達を真紅が制した。 ジュンのこめかみに拳銃が突きつけられたのである。 黒:「て、てめぇら何者だぁ!? いったい何したんだ!?」 男が錯乱するのも無理はなかった。 いきなり突風が室内に巻き起こったかと思うと薔薇の花弁で視界を奪われ そのまま壁にしこたま打ち付けられ、そして目を覚ますと子供が五人。内一人は中学生だが。 真:(まずいわね、はやくここから脱出しないと他の男達も目を覚ましてしまうのだわ。) ジュンを片手で拘束しつつ部屋の隅に後退る黒服の男。 夢の扉をこじ開けようとレンピカを忍び寄らせていた蒼星石だったが 黒:「な、なんだこの光ってるのは!?」 室内が仇になり気付かれた。黒服の男が人工精霊に発砲する。発砲音があたりに響く。 黒:「ち、近寄るな! 近寄るとコイツを殺す!」 口から泡を撒きちらしながら人工精霊を恫喝する黒服の男。 そしてジュンのこめかみに銃を突きつけなおす。 これ以上人工精霊を近づけると本当にジュンを撃ち殺してしまいそうだ。 黒:「手に持ってるものを捨てろ!」 錯乱している割には的確に指示を飛ばす黒服の男。 各々手に持っている武器を捨てるドール達。 真:(まずいわ、時間がない・・・!) そんなとき、部屋全体が激しく揺れた。 全員が何が起きたかと驚く。 それと同時に部屋に飛び込んでくる者がいた。その者は・・・ ドール達が一斉に叫ぶ。 ド:「くんくん!」 はい、くんくんですよ! なんて言ってる暇はねぇな。 俺は間髪入れずジュン君を拘束してる黒服の男にドタドタと特攻をしかけた。 突然の『建物の揺れ』と『くんくんの着ぐるみ』の登場で黒服の男は完全にパニック状態だ。 それでもなんとか俺に向けて銃を撃とうとする。が、ジュン君が男の腕に噛み付いた。 男はたまらずジュン君を突き飛ばす。ベタだがナイスだぞ、ジュン君! 俺はそのまま黒服に体当たりする。吹っ飛ぶ黒服。 マ:(ジュン君、逃げるぞ。) 俺はジュン君にだけ聞こえるよう着ぐるみの中から小声で脱出を促す。 ジ:「え?」 俺の声に驚いてるようだ。無理もないが、今は急いでいる。 マ:(ドール達にも脱出するよう言ってくれ。) ジ:「みんな、脱出するぞ!」 俺は鋏を拾っている蒼星石と如雨露を拾っている翠星石をそれぞれ片手で抱え込む。 ジュン君も俺に倣って金糸雀と真紅を抱え込む。が、真紅が抵抗する。 真:「もっと丁寧に抱きなさい! あ、くんくん・・・。」 俺がジィっと睨むとしおらしくなった。 部屋の扉に向かうと雛苺が待機してる。俺が屈むと雛苺は背中にピョンと飛び乗る。いい子だ。 そのまま俺とジュン君は建物の外へダッシュする。 入れ替わりに紺色の男達がズカズカと入ってきた。 外に出ても俺は止まらない。 ジ:「どこへ!?」 ジュン君が走りながら訊いてきたが俺は構わず走り続ける。 ドール達も訳が分からずといった感じだ。 そのまま少し進むとのりちゃんみっちゃん巴ちゃんが見えてきた。 三人の元に辿り着くと俺は抱えていた蒼星石と翠星石を降ろし、背中の雛苺を巴ちゃんに託す。 真:「あ、くんくん、お待ちになって・・・!」 俺は真紅の言葉に耳を貸さず再び走り出す。 さて、あの絶妙なタイミングだった『建物の揺れ』と俺の登場を説明しとこうか。 まず俺は蒼星石達が侵入した建物に向かっている際に、巴ちゃんと雛苺を発見した。 くんくんの格好した俺を、始めは警戒していた巴ちゃんだったが、雛苺にバレないよう (『あ、あそこからうにゅーの匂いが、くんくん!』と言って雛苺の気を逸らした。) 顔を一瞬明かすと巴ちゃんは驚きながらも俺と認めてくれた。 そして巴ちゃんから事情を手短に聞き、建物の中を様子を知るため、雛苺と人工精霊のベリーベルについて来て もらうことにした。 俺は次に傷の男とその部下の紺のスーツの男達に、俺が突入するから隙を作ってくれと頼んだ。 さすがに戸惑う傷の男だったが「そこらの重機で建物に体当たりしろ。 タイミングは携帯電話で知らせる。」 と言い、携帯の番号を教えてもらう。ヤクザと番号交換したわけだな俺は。 また、ここは工事中のエリアだったので重機には事欠かなかった。 キーも刺さったままだったし。無用心だが助かった。 そして俺は雛苺とベリーベルとともに建物に侵入。 蒼星石達がいると思われる部屋の様子をベリーベルを介して雛苺に教えてもらう。 雛苺と喋っている間俺はずっとくんくんの声色を使って正体をバレないようにした。 こんな非常事態でもドールの純真な心を砕くまいと努力する俺は正直どうなんだろう?と思ったが、 まぁ、気にしないでおこう。 雛苺のベリーベルの報告から、どうやら黒服一人を除いてドール達が皆 やっつけてしまったことがわかった。 しかしジュン君が人質になっていると・・・ そして銃声がした。俺は間髪入れず電話で傷の男に合図する。 重機による『建物の揺れ』を確認し、俺は特攻を仕掛けたというわけだ。 しかし、上手くいったものだ。二、三発の被弾は覚悟したんだが。 よほど『建物の揺れ』と『着ぐるみ』 に驚いたんだろう、虚を突かれた黒服の男は銃を撃つタイミングを完全に失ったわけだ。 俺は蒼星石達から離れた場所でくんくんの着ぐるみを脱ぐ。 背中のファスナーが相変わらず見つからない。ええい、めんどくさい。 俺はビリビリとファスナーを無視して両手で着ぐるみを破いた。遊園地の美術スタッフの人ごめんね。 くんくんの着ぐるみを脱ぎ捨て、俺は蒼星石達の元に急ぐ。 突入前に、ちゃんと巴ちゃんに先ほどの場所で待っててもらうよう頼んである。 ん、携帯がブルっている。傷の男からだった。 マ:『おいすー。』 傷:『おかげで若を無事救出できた。礼を言う。』 マ:『それはいいが、俺達のことはくれぐれも外部に漏らすなよ?』 傷:『ああ、分かっているよ。だが・・・あんたは一体何者なんだ?』 マ:『わかんね。』 俺はそう言うと電話を切った。 マ:「おーい!」 蒼:「マスター!」 蒼星石が駆け寄ってくる。俺はしゃがんで駆け寄ってきた蒼星石を抱き締める。 蒼:「あぁ、マスター! 偽者なんかじゃない、僕の本当のマスター・・・!」 マ:「心配掛けてごめんなぁ。なんか黒服の男に変なとこに閉じ込められてなぁ。 たった今くんくんに助け出してもらったんだよ。」 我ながら嘘をつくのが下手だなぁ。 蒼星石が俺の顔を見つめる。 蒼:「マスター、なんかやつれてない・・? それに上着は・・・?」 そりゃ昼食からハードスケジュールだったからなぁ。 黒服と鬼ごっこしたり、着ぐるみ着たまま動き回ったり。 マ:「あーー、気にしない気にしない。」 咄嗟の嘘が思いつかん。 翠:「よくもまぁ、ノコノコと戻ってこれるもんですぅ。」 真:「くんくんは私達の危機に駆けつけてくれたのに・・それにひきかえあなたは・・。」 金:「絶対ヒーローにはなれないタイプかしらー。」 雛:「くんくんかっこよかったけど、蒼星石のマスターは駄目駄目なの~。」 俺はドール達の手厚い迎えの言葉に泣きそうになった。 ジュン君や巴ちゃんは苦笑いしてる。 蒼:「僕は、マスターが無事に戻ってきてくれたのなら、僕はそれだけで・・・。」 蒼星石が俺の胸に顔をうずめる。 ? もしかして、泣いているのか。 蒼:「すごく、怖かったんだ。こんなに人がいっぱいいて、 こんなに広いところでマスターだけがいなくなって・・・。」 マ:「・・・・。」 蒼:「マスターは知らないかもしれないけど、僕たち、マスターのために頑張ったんだよ? だけど僕たちの勘違いで、マスターだと思った人がマスターじゃなくて・・・。」 蒼星石の体が震える。 知っている。俺のために蒼星石達が危ない目にあったのも、全部知っている。 俺は本当に、さっきのドール達が言ったとおりの男だ。俺は蒼星石を泣かせてばかりだ。 マ:「ごめんな。」 俺は蒼星石の涙を拭い去り、優しく頭を撫でてやる。 蒼:「あ・・。」 この埋め合わせは、必ずする。 のりちゃんとみっちゃんが通報して駆けつけた警官に事情を話している間、 遊園地の休憩所にて俺は弁当の残りをつつきながら溜息つきっぱなしだった。 ちなみに弁当の残りは真紅の作ったものしか残ってなかった。うううう。 おそらく今日はもう遊園地は閉鎖されてしまうだろう。 はぁ~~~、俺の完璧な計画が・・・今日はもう散々だ。 のりちゃんとみっちゃんが戻ってきた。事情聴取とかはもういいらしい。 マ:「んじゃ、そろそろ帰るぞ~。」 もう夕方近くだしな。 蒼:「マスター。」 マ:「なんじゃらほい。」 蒼:「あの、僕、最後にあれに乗りたい。」 蒼星石が指し示したのは観覧車だった。 観覧車か、遊園地が閉鎖するまで時間もあるだろうし、ゆったりまったり回るか。 マ:「よし、乗ろう。」 観覧車乗り場に着いた我ら一行。 まず、みっちゃん&金糸雀ペアがゴンドラに乗り込む。 次に巴ちゃん&雛苺ペアが乗り込む。 ジュン君&真紅&翠星石&のりちゃんグループもゴンドラに乗り込んだ。 俺と蒼星石は最後に乗り込む。 席に着く俺。蒼星石は俺の隣に寄り添うように座った。 蒼:「やっと二人っきりになれたね、マスター。」 マ:「あ、ああ。」 蒼:「ねぇ、マスター。」 マ:「ん?」 蒼:「僕、今までくんくんを見てきた中で、今日のくんくんが一番好きだよ。」 マ:「あ、そ、そうか! やはり生のくんくんは一味違うか! あ、あはあはあは。」 ま、まさかバレてないよな? 蒼:「うん、全然違うよ・・・。」 マ:「それは良かったなぁ。あはあはは。」 蒼:「ふふ。」 そんなやり取りをしてるとゴンドラが頂上近くまできた。 けっこう高い高度なのに、蒼星石のテンションはあまり変わっていない。 マ:「あ。もしかして普段から鞄で空飛んでるから、そんなに新鮮な眺めじゃなかったりするか?」 蒼:「ううん、とっても新鮮だよ。マスターと一緒に見てるから。」 下界を見下ろす蒼星石。俺は蒼星石の横から同じ場所を眺める。 夕日がゴンドラ内に差し込んできた。 ふと、蒼星石の横顔を見ると、夕日に包まれた蒼星石の顔がそこにあった。 あまりにも綺麗でドキっとしてしまう俺。 少しの間見とれてしまった。 蒼星石は下界を見下ろしたまま不意に俺に話しかける。 蒼:「ねぇ、マスター。」 マ:「な、なに!?」 なにをドギマギしてんだ、俺は! 蒼:「僕たち、恋人同士なんだよね。」 マ:「あ、ああ・・!」 昨晩、そうなったはずだ。うん、間違いない! 蒼星石がこちらを向き、瞳を閉じた。 え? これはあの、KISS・・・の催促ですか? あう、あうう。こんなに俺をドギマギさせておいて・・・! だが、乙女に恥をかかせてはいけないよな。すぐ実行に移らねば。 やわらかな夕日に包まれながら、俺と蒼星石はキスをする・・・。 蒼:「ん・・・。」 蒼星石が俺の腕をぎゅっと掴む。 時の感覚がおかしくなる、それは何時間にも、一瞬にも感じられるようなキスだった。 蒼:「はぁ・・ますたぁ・・・。もう離さないから。」 むむむ、蒼星石の声が熱っぽい。 蒼:「昼食の時にマスターが僕に言ったこと、忘れてないよね・・・?」 ん? あ・・・。あああああ! 蒼:「僕を『食べたい』だなんて・・・、いけないマスター・・・。」 誤解だよぉ! 俺は慌てふためく。 マ:「あ、あれは違う! 俺はただ蒼星石のお弁当を・・・!」 蒼:「クスクスクス、言い間違えたんでしょ、わかってるよ、マスター♪」 蒼星石はしてやったりと言った顔だ。ぐぐぐ、この子は~! なんか蒼星石には全てを見透かされてる気がするぞ。 まさか、蒼星石、あの時俺が蒼星石の弁当を食べたいのをわかった上で わざと俺にのりちゃんやみっちゃんの作ったものを勧め・・・ 蒼:「でも、いつか・・・・。」 ん、うまく聞き取れなかった。 マ:「なんだ?」 蒼:「ふふ、なんでもないよ。僕のマスター♪」 う~~~ん、なんか色々と腑に落ちないが・・ま、いっか。 遊園地へ行こう 終わり
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「いいえ、あの人はみんなが思っているような傲慢な人でもなければ、 死と破壊に取り付かれたような怪物でもありません。 ただ、ちょっと怒りっぽくて、世界のあり方と自分の違いに苦しんで、でもそれをなんとかしようとしている。 ──そんな、どこにでもいるような男の子です。わたしの、大切なお兄ちゃんです」 横浜──。 日本でも有数の港町であり、世界でも有数の中華街、その街並みを一人の少年が歩いていた。 真夏だというのに長袖のシャツを着込んでいるが、暑そうに感じている様子はない。 かといって涼しそうな顔をしているわけでもなく、ただ暑さも寒さもどうでもいい、そんな風情だった。 「あ、ねえねえ、あの子可愛くない? 外国人?」 「モデルとかじゃない?」 そんな声が少年の耳に聞こえてきた。それが自分を指していることは、周囲から発せられる視線と 気配でなんとなく知れた。 (……くだらねえ。なにをじろじろ見てやがるんだ) 少年はかすかに眉をひそめた。そのせいで、もともと険しかった目つきがいっそう厳しいものになる。 無造作に伸ばされた金髪をかきあげると、青い瞳が苛立たしげに光を放った。 アーリア人種としての特徴を完璧にそなえたその相貌は、確かに人目を引くものではあった。 外国人を珍しがる日本人の性格についても知識の上では把握している。 なにかの明確な悪意がある訳ではないことは理解していた。 だが、それでも、少年の心に湧き上がるささくれた気持ちを抑えることは出来なかった。 唾でも吐いてやろうかと思ったが、それだと自分が今苛立っていることを認めているようで、 少年の気にはいらなかった。その代わりにがさがさとポケットから一枚の紙を取り出し、眺める。 「『卵ヨリ鵺ヘ──飼イ葉ヲ食ム黒イ羊ヲ屠殺セヨ』、か。ふん、何様のつもりだ」 誰にも聞こえぬように毒づき、 「まあいい。あんたらのお望みどおりに仕事をしてやるよ。オレは誰にも負けない」 ぐしゃりと紙を握りつぶす少年の瞳は、ぎらぎらと不穏に輝いていた。 横浜港から少し離れたところにある、倉庫街の一つ、古ぼけて打ち捨てられたその廃倉庫に、彼らは集っていた。 幾つもの木箱が山と積まれた真ん中で、二つの集団が微妙な緊張感を漂わせながら対峙している。 「それで、ブツはこれか?」 そう言ったのは二つの集団の片方側のリーダー格、明らかに日本のヤクザと分かる出で立ちの男だ。 「そうだ、確認してくれ」 それに答えるもう片方の──そいつらは、一目にはどういうやつらなのか計りかねる雰囲気を纏っている。 そいつらの身なりは黒のスーツで統一されているが、その着こなしはマフィアやギャングというには上品すぎた。 ただの武器商人というには染み付いた血の匂いがきつ過ぎる。どこかの諜報機関といわれればそんな気もするが、 やはり違和感はぬぐえない、そんな集団だった。 「しかし、これだけの銃器をどうやって──?」 「あんたたちが知る必要はない。契約の内容に不満が?」 言葉をさえぎる口調に、ヤクザたちは思わず息を呑む。そこにはおよそ人間らしい響きが欠落していた。 まるで人を人と思わない、自分たちをここに居並ぶ箱と同列の物として扱っているような──。 「い、いや、そんなつもりじゃないんだ。……お、おい」 「へい」 あたふたと、ジュラルミンのアタッシュケースが差し出される。 黒服がそれを受け取ろうとしたときだった。 「おいおい、火遊びが過ぎるんじゃねーのか」 そんな場違いな声が倉庫に響き渡った。 その場の全員が身構えるのへ、さらにどこか投げやりな言葉が降ってくる。 「ま、あんたらがどうやって小遣い稼ぎしようがオレには知ったこっちゃねーんだけど、よ──」 「上か!」 黒服の一人が懐から拳銃を抜く。それが示す先、うずたかく積み上げられた木箱の上に、一人の少年が座っていた。 「ただな、ボスの命令なんだ。ウチの物資を横流ししてる馬鹿の息の根を止めて来い、ってな」 その言葉に、黒服たちが真っ先に反応する。 「貴様、まさか──!」 少年は木箱を蹴って宙に踊る。数秒後にはだん、とコンクリートの床に着地した。 端正な顔立ち、無造作に伸ばされた金髪、その奥に光る青い瞳。 「で、ま、こうしてオレみてーなエージェントが派遣されたわけだ。 ……ああ、ヤクザのおっさん、あんたらは大人しくしてりゃ殺さない。命令に入っていないんでな」 冗談っぽく言う口の端は、きゅう、と吊上がっていた。 「ふざけるな!」 激昂したヤクザの一人が、少年に向けて発砲する。 だが、少年はそれをするりと避けた。まるで当然のように。歩くような速度で。 「ふん、相手の実力も見極められない馬鹿だってんならしょーがねえ」 少年はひらひらと両手を振り、今や黒服もヤクザたちもいっせいに銃を構え、 「全員、死にな」 その両手が背後に回された次の瞬間には、少年は両手に二丁拳銃を握り横に跳んでいた。 それは、信じられないような光景だった。 幾重もの銃口が向けられているにも関わらず、それらが放つ銃弾は一発たりとも少年に命中しないのだ。 その一方で、少年が吐き出す弾は確実にこちらの人数を減らしてゆく。 最初はヤクザから、そしてそれが全滅してから、黒服へと。 弱いものから戦力を削る──。 冷静に、かつ容赦のないその動きは、明らかに特殊な戦闘訓練を積んでいる者のそれだったが、 それを踏まえても、この圧倒的な人数差を覆す理由にはならない。 こいつは、人間なのか? 少年が発砲してから数分後、累々と重なる死体と、不敵な笑みを貼り付けてこちらを睨む少年とを眺めながら、 もはや最後の一人となった黒服はそんなことを思った。 「お前は……何者なんだ? 本当に人間なのか?」 そう問いながら、黒服は一歩後ろに下がった。 「さーな。オレが教えて欲しいくらいだ」 と、馬鹿にしたような答と共に少年が足を踏み出そうとするのを見て、黒服は内心でほくそ笑む。 そして、二人の間に隔たる六メートルほどの距離を、一歩で詰めた。 「なに──」 少年の口からそんなつぶやきが漏れるのにかまわず、黒服は己の右腕の内部から 特殊鋼のブレードを突き出し、それで少年の胴を斬りつけた。 がき、と鈍い金属音がする。少年が咄嗟にに交差させた拳銃が両断された音だ。 だが、手応えはあった。その障害物すら物ともせず、少年の胸と肋骨を切り裂いた感触が。 どさりと少年がうつぶせに倒れる。それを見下ろしながら、破れたスーツの袖を押さえる。 「悪いな、こっちもただの人間ではない。自分はサイボーグだ。湾岸戦争で右腕と両足を失い、そして新たな手足を得た」 もう聞こえてないだろうがな、と男が心の中で付け加えた。 だが。 「あんた、サイボーグだったのか」 確かに致命傷を負わせたはずの少年が、けろりとした表情で起き上がるではないか。 「しかもその異常な速度……最近、試験的に配備されてる高機動型か?」 血に染まった長袖を脱ぎ捨て、Tシャツ一枚になる。 「くそ、あいつ、そんなこと一言も言ってなかったぞ。情報を出し惜しみしやがって。 オレの戦闘能力でも計るつもりだったのか? ったく、マジで何様のつもりだ」 そして、少年はやっと男のほうを見た。その双眸は、怒りに燃えていた。 歯を剥き出しにして、身体全体から憤怒の感情を放射していた。 「チンケな裏切り者にこいつを使うつもりは無かったが……最新型のサイボーグだってんなら話は別だ」 少年は両腕を真横に伸ばした。引き締まった、よく鍛えられた腕だった。 「な……」 男は、今度こそ驚愕と恐怖に襲われた。 少年の両腕が、異様な音を立て、その形を変えていく。人間の、いや、生物のものとは思えぬ異形の腕へ。 そして、それは鋭角状の……まるで二本の刃のような形へと変貌した。 「貴様……何者だ!?」 再び発せられたその問いに、少年は苛立ちを隠せない、棘のある口調で答えた。 「ああ? 見て分からねーか? あんたと同じだよ。エグリゴリの生み出した怪物さ」 そう言い、少年はその大型のブレードを振るった。 男は無駄だと半ば悟りながら、それでも機械化された俺の腕でそれを防ごうとする。 だが、やはり、少年の刃は男の鋼鉄の腕を難なく断ち、もう片方の刃が男の胴体を真っ二つにしてしまった。 自分で作った血の海にぐちゃりと落ちる。消え行く意識の中、男は最後の力を振り絞って再三の問いをぶつけた。 「貴様は、いったい……」 男の思考が闇に溶けるその直前、少年の声が耳に届いた。 「レッド。オレは……キース・レッドだ」 夕暮れの横浜中華街を歩きながら、少年──レッドは、心の内でぶつぶつ呟いていた。 (ムカつくぜ……どいつもこいつも) 血染めの服は早々に着替えたが、肌に染みた血の匂いはまだこびりついているような感じであった。 問題なく仕事を終えたのだから、こんなにカリカリすることもないだろうと自分に言い聞かせてみるが、効果はない。 手傷を負わせられる不覚を取ったこと、その原因である情報の隠蔽、そしてそれを命令した──。 「キース・ブラック」 その言葉が口から漏れるとき、レッドはいつも叫び出したくなる。 胸に渦巻くあらゆる悪感情のすべてが、そこに起因しているような気がして。 「見てやがれ……オレはもっと強くなって、そして、あんたら全てを、あんたらの信じている全てを覆してやる」 ふと、振り返る。 真っ赤な夕日が街の向こうに沈もうとしていた。それを美しいと思うだけの心の余裕はあった。 キース・レッドの苛立ちは、まだ収まらない。 第一話『赤』 了
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何故諦めてしまうのですか まだ、抗えるでしょう 何故諦めてしまうのですか まだ、方法はあるでしょう そんなに簡単に諦めてしまっているようでは 私たちの世界になど、踏み込むことはできません Red Cape …嫌な天気だ、と思う じわり、纏わりつくような暑さ 空は分厚い雲に覆われ、星明りも月明かりも届かない 「…それで。今回のターゲットは、どんな奴だっけ?」 コーラのペットボトルを弄びつつ、青年が尋ねてくる …いつもの、仕事だ あんな事があった後でも、組織の仕事は容赦なく舞い込んでくる 組織の歯車に過ぎない自分は、その仕事をこなすしかないのだ 「マッド・ガッサーです。どんな都市伝説かご存知ですか?」 「家に無断侵入してガス撒き散らすテロリストだっけ?」 「………大方、間違っていないので良しとしましょう」 ジェラルミンの鞄から、それを取り出す 蓋を開けると…独特の、あのにおいが漂い 青年は、若干嫌そうに距離をとる 「逃げないでください。不意打ちで毒ガスを受けたら大変でしょう」 「そうだけど……それ、正露丸?」 「はい。正露丸と言うか、征露丸ですが」 先に飲んでおきなさい、と一粒取り出すと 青年は息を止め、一気に飲み込んだ きゅぽ!とコーラの蓋をあけ、飲み込む 「…実際の正露丸はコーラと一緒に飲んではいけませんよ」 「わかっているよ」 むぅ、と青年は子供のような、少し拗ねたような表情を浮かべた ペットボトルのコーラの中身は…減っていない 既に、能力は発動中なのかもしれない 「さっさと見つけて、片付けちゃおうね」 一度ペットボトルに蓋をして、青年はまたペットボトルを弄びはじめた それは、同感ではある 次の犠牲者が現れる前に、早く始末するべきだ 暗い夜道、二人はマッドガッサーの出現ポイントを探り 「………?」 …ふと 不快な匂いが漂ってきた 青年が、微かに眉をひそめる 「…何、この匂い?肉を焼く匂いにしては、嫌な匂いだけど…」 「……確かに、肉を焼く匂いではありますね」 そう、それは間違っていない ただし 「焼かれているのは、食用に適さない、人間に似た者を焼いている匂いと思われますが」 よろりっ 前方の十字路から、ぶすぶすと煙をあげながら、人影が姿を現した 黒い服と、唾のない黒いピッタリとした帽子…を、纏っていたのだろう ただし、どこからが服でどこからが帽子なのかわからないほどに、それは黒くこげていた 背中には、安っぽい映画の小道具のような小さなタンクを背負っている …マッドガッサー 自分たちのターゲット、そのものだ ばたり、マッドガッサーだったものは倒れこみ…そのまま、静かに消えていく 存在していた証すら残さずに、この世に存在していた事すら、拒絶するように 「…仕事、終わっちゃった?」 「本来の仕事は…ですが」 …嫌な予感がする こんな死体を作り上げられる者が、一人知り合いにいるから 「…おぉ?」 ……あぁ 嫌な予感は、何故当たる 「いよぉ、また会ったなぁ」 マッドガッサーが出てきた道 そこから現れたのは…つい最近も顔を合わせたばかりの、日焼けマシンの契約者だった 「知り合い?」 「まぁ、知り合いではありますね」 首を傾げてきた青年に、黒服は頷いた こちらの様子に、日焼けマシンの契約者は笑いながら言ってくる 「何だよ、嫌そうな顔して。そんな仲でもねぇだろぉ?」 「どんな仲だと言うのですか。ただの知り合い以外の何者でもないでしょう」 「んっだよ!冷てぇな。俺らは、もっとふか~~~い縁で繋がってるだろ?」 ニヤニヤと笑っている日焼けマシンの契約者 …青年は、黒服と日焼けマシンの契約者の会話を聞いて にっこり、黒服に告げる 「もうちょっと、知り合いは選んだ方がいいんじゃないかな?」 「私もそう思います」 「何だよ!!俺なんかより、そっちの優男の方がいいってのか!」 がっ!と不満そうに怒鳴ってきた日焼けマシンの契約者 にこりと、青年は日焼けマシンの契約者にも告げる 「え~、僕、兄さん以外どうでもいいんだけど」 「相手にするんじゃありません。若干頭が足りないところが移ります」 軽い頭痛を覚える まったく、どうして自分が関わるこの位の年頃の青年には、性格その他に若干の問題を抱えた者が多いのだ 「それよりも…お尋ねして、よろしいですか?」 「おぉ、何だ?」 話題を振られ、日焼けマシンの契約者は嬉しそうに笑った …あまり、嬉しそうに答えられても困る話題なのだが 「マッドガッサーを倒したのは、あなたですね?」 「おぅよ!!」 自慢げに、胸を張ってくる日焼けマシンの契約者 少し、誇らしげですらある 「マッドガッサーで、悪党野郎だろ?女や子供のいる家ばっかり狙う外道だぜ?そんな外道は容赦なく殺していいって、将門様も言ってたからな!」 「…正義感で動いたとでも言うのですか」 そうだ、と日焼けマシンの契約者は笑う 一変の迷いもない、清々しい笑顔だ 「そっちの組織みたく、世界のバランスとか、んなこたぁどうでもいいんだよ!悪い奴は退治する!当たり前だろ?」 「君たち組織は、悪人じゃないのかな?」 小首を傾げる青年 …何時の間にか、コーラのペットボトルの蓋は空いている いつでも、攻撃できる態勢か 「あ~ん?将門様は悪人なんかじゃないぜ?当時の傲慢な貴族野郎ともに反抗した英雄様さ!首塚の呪いとか言うけどよ、無差別に呪ってるわけでもないんだぜ?」 …それは、一理ないとも言い切れない 平将門は、当時の権力者たちに反抗し、しかし、部下の裏切りより倒れた悲劇の英雄と言う見かたもある 呪いの話などは、元々は当時の権力者たちの将門への恐怖から生まれたようなものだ しかし、噂され、信じられたために、将門の呪いは生まれた その呪いは生き続け、現代では首塚の呪いとなっている 己の安らかな眠りを乱す者を祟る、かつての英雄の呪い すなわち、手を出さなければ無害そのもの ……それが、首塚の呪いの本質なのだ 「将門が悪人であるとは、言っていませんよ…その将門の部下。すなわち、あなたの同僚に悪人がいないか、ということです」 「……うん?」 黒服に、指摘され 若干、日焼けマシンの契約者は悩んでいるようだ …心当たりでもあるのだろうか 「あ~、確かにな。縛り緩いのがいい事に、好き勝手やってんのもいるかもな。将門様の望みは、あくまでも組織をぶっつぶす、って事だけなのに…まぁ、将門様が直接スカウトした中には、そんな野郎いないはずだがな。将門様が、そんな奴を仲間に選ぶはずがねぇ」 「………でしたら」 鋭く、日焼けマシンの青年を睨みつける …彼でなければいい、と思いながら 「ルーモアという喫茶を、あなたは知っていますか?」 「……るーもあ?」 何だ、それ?と言うように、日焼けマシンの契約者は首をかしげる ちらり、青年が、こちらの表情を窺うように視線を向けてくる 嘘、ではないだろう 日焼けマシンの契約者は、嘘をつくようなタイプではない …嘘をつけるだけの頭がない、とは言わないでおいてやろう、今は 「我々組織の人間、及び、無関係の都市伝説が多数利用していた喫茶店です…首塚組織に所属していると思わしき何者かが、タチの悪い都市伝説の契約者に場所を教えました………結果として、そこを経営していた人間が、殺害されました」 「な……!?」 日焼けマシンの契約者の顔色が変わる こちらが言わんとしている事が、わかったのだろう 「少なくとも、俺じゃないぜ!?」 「わかっていますよ。先程の反応で」 ほ、と息を吐く日焼けマシンの契約者 しかし、その表情に、嫌悪の色が浮かぶ 「ったく、誰だよ、んなタチの悪ぃ契約者に、そんな居心地よさそうな場所を教えたのは…!」 「まったくですね。かなり、タチの悪い契約者ですよ。我々の組織のブラックリストにも名を連ねています。言い表すならば、都市伝説相手の強制わいせつ罪及び殺人罪が存在するならば、確実に有罪です」 黒服が連ねたその言葉に、日焼けマシンの契約者はますます嫌悪の表情を浮かべる 「…おい、そいつ、まだ生きてんのか?」 「死亡は確認されていません」 「見付かったら、確実にデストローイ、だろうけどね」 軽い調子で、青年がそう言う その通りである 恐らく、彼は見付かり次第、始末されるだろう もっとも…多数方面から恨みを買っていそうな男である 組織が見つけなくても…他の誰かに、殺されるかもしれないが 「おい、そいつ見つけたら、俺にも教えろ。そんな外道殺すこと、きっと将門様も奨励してくれるだろうよ」 はっきりとした敵意、嫌悪感 恐らく、日焼けマシンの契約者がそれを抱いているのは、ルーモアのマスターを殺害した契約者に対してだけではなく……ルーモアを、その契約者に教えた誰かに対しても、抱いている 自分の所属している組織にそんな者が存在する事が、許せないのかもしれない …妙な所で、正義感のある若者である むしろ、正義感で言ったら、この青年よりずっと上かもしれない 「どうかしたの?」 「……いえ」 にこにこ微笑んでくる青年に、頭痛を覚える …本当に、やっかいな者のお守を任せられたものだ 日焼けマシンの契約者に向き直り、黒服は尋ねる 「…信用しても、よろしいので?」 「あぁ、もちろん!水臭い事言うなよ。俺とお前の仲だろ?」 「……ただの知り合い以外の何者でもないのですが。あなたに人を騙す脳がないと信じましょうか」 一応、日焼けマシンの契約者の正義感を信じるとしようか ……相手は、強敵である事は事実 戦力は多いに越したことはないのだ 「よし!んじゃあ、携帯の番号を」 「あ、教えていただく必要はありません。その場合は、黒服の権限により、あなたの携帯番号を把握させていただきます」 嬉しそうに携帯電話を取り出してきた日焼けマシンの契約者に、ばっさりと言い切る 黒服組織に所属する都市伝説黒服には、都市伝説の契約者との接触をスムーズにする為、その携帯番号や現住所を調べ上げる能力が備わっている 個人差はあれど、この黒服はその能力はそれなりに高いつもりではあった …もっとも、その能力をもってしても、夢の国の所在など、把握できない事が多いのも事実だが 「よって、携帯番号を交換する必要性はありません」 「………っち」 舌打ちして、携帯をしまう日焼けマシンの契約者 …どさくさに紛れて、こちらの携帯番号を手に入れるつもりだったな 「やっぱり、知り合いは選んだ方がいいと思うな」 「……まったくです」 はぁ、とため息をつく …青年は、自分自身も、その選んだ方がいいといわれる知り合いの類である自覚がないようである 「あ、そうだ、君」 「んだよ」 にこにこと、青年が日焼けマシンの契約者に向き直る …若干の、嫌な予感が 「あのね、面倒な敵を始末してくれたのは、とっても嬉しいな…でもね。僕、それに対抗する為に、すごく嫌な物を飲まされたんだよね」 ぼこ、と 蓋が開けられたままのコーラのペットボトルから、コーラが湧き出す 「つまり、そのすっごく嫌な物を飲まされたのが、無駄になったんだけど。どうしてくれるのかな?」 「へ?」 ぼこぼこぼこぼこぼこっ!! 溢れ出すコーラは止まらない!! 「ちょっと、僕の気晴らしになってね」 「んなっ!?」 ばしゃぁん!!と 襲い掛かるコーラの渦を、日焼けマシンの青年は慌てて避けた …っじゅ!!と、コーラのかかった標識が溶ける!! 「お、おいこらっ!?お前、組織の人間なんだろ!?んな勝手な事していいのかよ!?」 「いいよね?」 にっこり、と 青年は、まるで、子供が母親に伺いをたてるように、笑いながら首を傾げてきた …これで全てが許されるとでも思っているのだろうか 「構いませんよ。ただし、殺さないように」 「うん、ありがとう」 「っちょ、おま!?」 ごぽごぽごぽごぽごぽっ!! コーラはまるで生き物のように、日焼けマシンの契約者に襲い掛かる 慌てて避ける日焼けマシンの契約者を追いかけ、くすくすと青年は笑っている 殺気の篭った攻撃ではない 本気で殺すつもりはないのだ あくまで、相手を怖がらせて楽しんでいるだけ だから、許したのだ 殺したり危害を加えるつもりであったならば、許可はしない 「っちょ、助けてくれよ!?俺、あんたに見捨てられたら生きていけねぇよ!?」 「見捨ててはいません。ただ、手を差し伸べないだけです」 「っちょ!!??」 深夜の住宅街に、悲鳴があがる …どちらにせよ、道路標識やら塀やら道が溶けている後始末は自分がしなければいけないな、と 黒服は、胃痛と頭痛を同時に覚えたのだった ……一時間程後 「…あ~、ちっくしょぉ」 よれっ 疲れきってよれよれになりながら、日焼けマシンの契約者は帰路に付いていた …何だ、あの溶けるコーラらしきものとの契約者 何だ、あの鬼畜どSは なんであんな野郎があの黒服の傍にいて、自分はいられないのだ 生まれて初めて、自分を心配してくれたあの黒服 どうしても、首塚組織に引き込みたい その為に、色々と努力していると言うのに …どこのどいつだ! 喫茶ルーモアとやらの場所を、タチの悪い都市伝説の契約者に教えやがったのは!? 「ちっくしょう。必ず見つけ出してやる…!」 そんな奴、きっと将門様も許さない 将門様の現在の目標は、あくまでも組織なのだ 組織以外に危害を加えるなど…首塚に危害を、害を与えた者以外に危害を与えるようなことなど許さないだろう 首塚組織の規律は緩い その数少ない規律は……首塚の、平将門の信念は、絶対である ならば、その信念に反する事をした奴がどうなろうと、将門様は気にしないだろう できれば自分で始末したいと思うかもしれないが、いっそ、組織に始末されても構わないかもしれない さぁ、忙しくなるぞ チャラチャラと身につけているシルバーアクセサリーを鳴らしながら、日焼けマシンの契約者は深夜の住宅街に消えていったのだった 貴方の目的は何ですか? 貴方の信念は何ですか? 貴方の意味は何ですか? 目的もなく 信念もなく 意味もないのだとしたら 貴方は、何の為に都市伝説に関わるのですか? Black Suit D 前ページ次ページ連載 - とある組織の構成員の憂鬱