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☆このページでは、霧雨の野望における蓬莱山輝夜について詳細に解説しています。 東方Projectでの蓬莱山輝夜について詳しく知りたい方は東方wikiなどの蓬莱山輝夜を調べてください 蓬莱山輝夜 (ほうらいさんかぐや)(通称:ぐーや、てるよなど)(? - ) 初登場はAct37。最初は筒井家に居候していたが、筒井家が滅亡した時に八意永琳と共に八雲紫に救出され、そのまま足利家に加わった。 Act47,48における姉小路戦において永琳の反対を押し切って出陣。 地上の奇才竹中重治に全力で挑むも敗北する。 足利家滅亡後は竹中の客人として姉小路家に居候中。 Act22で筒井家を暴走させた張本人であるとされている。 ☆出生・家族構成 ☆官位・役職 ☆参加合戦 洛南会戦、石山御坊の戦い 革新能力 統率85+3 武勇76 知略77 政治34 義理55 足軽D 騎馬D 弓C 鉄砲C 計略A 兵器B 水軍D 築城D 内政C 戦法:罵声、鼓舞、威圧、混乱、火牛計 (Act51現在) うp主解説 永夜抄ラスボス。「かぐや姫」本人。戦争はこなせる物の、ラスボスとして もうひとつカリスマに欠ける数値を補うは堂々のゲーム最強技「火牛計」! 本人よりも弾幕もとい戦法の方にカリスマが偏るのいつもの通りか。 永琳との月人主従コンビは戦略兵器級の威力を発揮する。 緑の人解説 (火牛計は) 真田昌幸・黒田孝高・北条早雲(作中故人)・猿飛佐助(PK)のみ。 中国の田単(元祖)と木曽義仲に使用伝説あり。 東方風能力化解説 「永遠と須臾を操る程度の能力」 名の通り竹取物語の月人輝夜姫。不死となり月より追放後、俗世から隠れて生活。 永琳と同様同時代に二人居る事になるが・・・? 嘆く永琳を横目に籠って仕事もしない。誰が呼んだか「蓬莱NEET」なる不名誉な称号を戴く始末。 . \キリキリキリ/ \シュンッ/ \トスッ/
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輝夜8 新ろだ475 私が、蓬莱山 輝夜に出会ったのは、まだ輝夜が竹取の翁が許にいた時。 私は、大きくなってゆく竹取の家で初めての奉公人だった。 その当初は、まだ私も幼さの抜けていない頃で、輝夜もまだ幼い頃である。 大きくといってもまだ竹取の家は、一軒家を二つほど増やした程度の広さで私一人でも何とか手が行き届いた。 掃除や家事手伝い、時折輝夜の世話等を終えれば何とか半時ほどの自由時間が出来る状況。 その半時を利用して、私は竹取の翁から借りた彫刻刀一本と、薪拾いの時に拾ってきた木っ端を彫るのが趣味となっていた。 輝夜が、それに対して少々興味を持ったのは、唐突にお腹が空いたから何か作ってと 私の部屋……と、言うよりも納屋……に、尋ねてきた時だった。 既に私のやる事は、終えており木っ端を彫っていた時の来訪。 少々、私は、驚いたのものの直ぐに彫刻刀と彫り掛けの何かを片隅に置き立ち上がる。 今、簡単なモノをご用意します。と、私が告げようとする前に輝夜は「それ何?」と、尋ねてきた。 それに対して、私はタダの暇つぶしですよ。と、しか告げず台所へと向かう。 無論、輝夜をそのままにしては置けないので、私は、お部屋でお待ちください。と、告げた。 台所で簡単なものを作り、それをお盆に載せて輝夜の部屋に行く。 失礼します。と、襖をスッと静かに開ければ、何故かあの彫り掛けの何かを手にした輝夜。 とりあえず、私は簡単なモノ。丁度、餅があった為作った磯部焼きを輝夜の前に置く。 「ねぇ。これ、最後は何になるのかしら?」 磯部焼きを一瞥した後で、私の顔を見やり輝夜はそう言う。 「さぁ、分かりません。ただ、思ったままに彫っているだけですので」 「そう……じゃぁ、出来上がったら見せてもらえるかしら?」 「……何時、出来上がるかわかりません。もしくは、私が止めてしまうかもしれません」 「……まぁいいわ」 と、その何かを私に軽く投げて渡す輝夜。 そんな輝夜を尻目に私は、「失礼いたしました」と輝夜の部屋を後にする。 襖が閉じられ私が立ち上がった時、襖の向こうから声を掛けられ。 「ねぇ。そういえば、アナタの名前なんなの?」 「………○○です」 それ以後言葉が発せられる事は無く、私は自分の部屋へと向かった。 よくよく考えてみれば、この時初めて私は自分の名前を名乗った。 奉公人と来た時も、名前を言われる訳でもなく直ぐに仕事を与えられ…… こうやって輝夜に尋ねられるまで私は、名無しの奉公人として仕えていたと言う事に その時になってはじめて気づいて……ため息を一つ。 これが、輝夜と私の本当の意味での馴れ初めなのかもしれない。 ◇ 竹取の家が、更に大きくなり奉公人も更に増えた頃。 私が、輝夜と出会う事は殆ど無くなり……最初の奉公人と言う事で、他の奉公人の指示や買出し交渉等に忙しかった。 ただ、それでも自分の時間と言うのは有る為、相変わらず木っ端を彫る事を止めてはいない。 あの時、私は、止めるかもしれない。とは、告げたが結局は止めていなかった。 そして、彫るのも然してや木っ端だけでなく竹を彫るというよりも削る事もあった。 私が、竹取の家に奉公人として仕えてから早十年ばかり。ナニカの完成品は、増えに増えた。 そして、とある日。私の時間が時に、何時かの様に輝夜が私の部屋に現れた。 輝夜は、私の顔をジロジロと見る。そして部屋をぐるりと一瞥した後で 「○○。お腹すいたからなんかつくって」 そんな事を言い放つ。何故わざわざ、私のところまで来るのですか。と、疑問に思った。 輝夜付きの奉公人は、何十人といるはずなのだが……考えてもしょうがないと、心の中でため息。 いつかの様に、私は、彫り掛けのナニカと彫刻刀を置き立ち上がる。 「で? それ何?」 まるで、昔のやり取りをそのまま告げてるような……と、輝夜の顔を見れば楽しそうと言うか愉快そうな表情を浮かべていた。 「ただの暇つぶしです……が、少し前に出来上がったモノでよければ差し上げましょうか?」 「あら、この私にふさわしいモノかしら?」 つまり、私の美しさに引けをとらないモノか。と、言う事だろうが…… 「さぁ? どうでしょう?」 と、私は、木っ端から彫りだした小さな兎を輝夜の手のひらにポンッと乗せた。 「あら、可愛らしい兎ね」 「身近な動物を彫ってみようかと思いましてね。とりあえず、兎からです」 「ありがたく。もらっておくわ」 で、何か簡単なものをおつくりいたしますか? と、尋ねたら。 輝夜は、ニンマリとした笑顔を浮かべて磯部焼きと私に告げた。 その日の夜を最後に、私は、本当に輝夜と会う事は無くなった。 それは、偏に忙しくなったからである。奉公人が更に増え屋敷も大きくなった。 そして、輝夜に対して結婚してほしいと尋ねてくる男達が増えた事もその要因である。 ◇ 輝夜に結婚を申し込んだ男は、最終的に五人になった。 そんな五人に、輝夜は一人に一つの難題を出す。 一つ難題「仏の御石の鉢」 一つ難題「燕の子安貝」 一つ難題「火鼠の皮衣」 一つ難題「龍の頸の玉」 一つ難題「蓬莱の玉の枝」 その五つの難題は、誰も持ち帰る事は出来ず贋作を持ち寄るものばかりであった。 輝夜の話は、時の帝にも届き帝自らがこの屋敷に来た時は、忙しいと言う状況よりも更に激しい。 有る意味地獄とも取れる状況だった。 しかしながら、その帝も輝夜を諦めた様である。ただ、和歌のやり取りはしているとの事を噂で聞く。 そして、明くる日。 私が、三十になり輝夜が二十余年。 月からの使者来訪。 月の使者に対し帝は、屋敷を屈強な兵士で周囲を固めたのだが…… それは、無駄な事となってしまった。月の使者の得体の知れぬ技の前に屈強な兵士らは倒れてゆく。 私は、それをみている事しか出来ずただ輝夜は、無事なのだろうか? と、輝夜が居る部屋に向かって走り進んだ。 無礼も承知で、部屋の襖を勢い良くあけた。 其処には、輝夜と竹取の翁。そして見たことの無い女性が一人。 輝夜は、その女性となにやら話をした後で、竹取の翁に二つの壷を渡す。 その後、輝夜はその女性に連れられ私の横を通る。 通り過ぎた時、コロリと輝夜から何かが落ちる。 私が、それを拾えば、それは私が彫った小さな兎だった。 「○○。それ、届けに来て頂戴。待ってるわ」 その言葉を最後に、輝夜は、この屋敷を去った。 輝夜が、居なくなってからの屋敷は、静寂なモノだった。 奉公人もその殆どが暇を出された。いま、この屋敷に居るのは古参と言われる私を含めた古い時から奉公している者達だけ。 そして、私は、竹取の翁に呼ばれ一つの壷をはさんで対峙していた。 翁曰く、この壷に入りたるは、蓬莱の薬。飲めば不老不死になる薬だと言う。 しかし、翁はその薬を飲むつもりは無い。と、私に告げ私に処分してきて欲しいと告げた。 その後は、長らくこの屋敷に奉公してくれたお前に暇を出す。と、言ふ。 私は、頷く事で答えるとその壷を手に取った。 そういえば、壷は二つあったはず……と、私は翁に尋ねれば。 翁は、もう一つは帝へ届けられた。と、話してくれた。 ◇ 私は、自分の部屋で、蓬莱の薬を前にして腕を組んでいる。 さて、翁は処分して欲しいと言っていた。方法は決まっていない。 【それ、届けに来て頂戴。待ってるわ】 と、輝夜の言葉が思い出される。と、同時に私は懐にしまったやや汚れた木彫りの小さな兎を取り出す。 輝夜は、月に帰ったと言われている。人間が月までたどり着く事は、事実上無理とされている。 それこそ妖怪。それも強大な力を持った妖怪でなくては、月なぞにはたどり着けないだろう。 その強大な力を持った妖怪に助力を頼むとしても、ただの人間は食料にしかならないだろう。 寧ろ、それ以前の問題。どうやってその大妖怪を探し出せばいいのか…… 私が、死ぬ前にそれは成せるのか。それが一番の問題。 だが、その問題を解決する方法が目の前に存在した。 不老不死になる薬。 私は、木彫りの兎を壷の蓋が上にポンッと置く。 不老不死。老いもせず死にもしない。と、いう事は、どういうことなのかは分からない。 しなしながら、私は、蓋の上に置いた兎を手に取り再び懐にしまうと、壷の蓋をおもむろに開けた。 ◇ かくして、私は、人探しの旅を続ける事となる。 当て無きの旅。妖怪に襲われる事多々。人に襲われる事多々。 出会いと別れの繰り返しを続けながらに私は、旅をする。 時間は流れ、時代が流れ、歴史が紡がれる。 火の国を旅し探し人を尋ねる。されど、探し人は月の民。 幾程まで時代が進めば、人は月へと行けるだろうか? 旅を続ける私は、大陸へと渡る。 火の国を隅々まで探した。ならば、次は大陸を探そう。と、私は大陸を旅する。 やはり其処でも妖怪に襲われる。人にも襲われる。 だが、大陸で私は大妖怪に出会う。九尾の狐と呼ばれる大妖怪。 しかしながら、その九尾の狐は、大陸の帝と共に住まい唯の人間である私がお目通りする事はできなかった。 遠めに見て……旅する内に知り合った天狗から教えてもらった遠見の術……ただ、彼女は幸せそうであった。 更に私は、大陸を旅する。争いに巻き込まれる事幾千。 殺される事幾万。殺した事幾億。 人を助けた事数え切れず。妖怪を助けた事数え切れず。 探し人を訪ね歩いた歩数など覚えても居ない。 大陸を渡り天竺へ赴いた。しかし、其処にも尋ね人は居らず。 ふと、尋ね人の顔が思い出せなくなった事に気がつく。 女性ではあった。竹取の翁の娘であった。名前も覚えている。私に、届けに来いといったのは覚えている。 さすれば……別段問題は無い。私は、そうこの汚れてしまった木彫りの兎を届けなければいけないのだと改めて認識する。 天竺から更に向こう側へと大陸を旅する。 金色の髪を持ち肌が白い人種の大陸へとたどり着く。 その大陸もやはり争いはあった。その争いに参加した事もあれば眺めていただけの時もあった。 マーリンという老人に出会う。ただ、酒を飲み交わしただけだった。 旅を重ね私は、年を取らず死しても生きている。 氷の国で、氷の女王と出会う。彼女は、寂しげな表情をずっと浮かべていた。 尋ね人は、此処にも居ない。 時代が巡る。妖怪が居なくなってゆく。 人間は、科学と言う手段を手に入れその科学を手に時間を進んでゆく。 私は、再び最初の大陸へと戻る。 時代の流れか、風景の殆どはガラリと変わっていた。 あの九尾の気配すら感じない。彼女は、この大陸から去ったのだろうか? ◇ 尋ね人は、何処にいるのだろうか。 火の国へ舞い戻った私は、記憶を頼りに竹取の翁が屋敷へと向かう。 しかし、たどり着いた場所は、屋敷の姿なぞ無く。ただ竹林が広がる場所となってしまった。 其処ではじめて、あの頃を知る者達は皆死してしまったのだ。と、認識する。 無償に涙が流れた。しばらくの間、私はその竹林に住まう事にした。 竹で作った簡素な家をつくりそこで、私は彫刻刀片手に木っ端を彫る。 旅をして来た時に印象深く残った記憶を形にして残す。 私はその作業にいつまでも没頭した。 ◆ 幻想郷。迷いの竹林に存在する永遠亭。 其処には、二人の女性が住んでいた。 一人は、あらゆる薬を作る程度の能力を持つ八意 永琳。 一人は、永遠と須臾を操る程度の能力を持つ蓬莱山 輝夜。 輝夜は、ぼやっと幻想郷の空を眺めていた。 空には、夜が広がり満月がぽっかりと浮かんでいる。 そんな輝夜に、永琳が手元を動かし何かを作りながらに声を掛ける。 声を掛けられ、輝夜は永琳が方を向くわけでもなく相変わらず空を見上げている。 「昔を思い出した」 不意に輝夜はそう呟く。 「昔?」 「永琳が、私を迎えに来た時の事よ」 随分と昔の事ですね。と永琳は作っていた何かに黒い粉末を混ぜ込みながらに言う。 「あいつ。まだ、届けに来ないのね」 輝夜の言葉に永琳は、首をかしげる。あいつとは誰の事だろうか? あの時、あの場所にいたのは、私と輝夜。そして輝夜を育てた竹取の翁。 あぁ、そう。そして、唐突に現れた男が一人か。 つまり、あいつとはその男の事なんだろう。 しかし、あの男は普通の人間。もう寿命で死んでしまってもおかしくは無い。 それなのに、輝夜は、まだ届けに来ないと言う。 「死んでしまったのではありません?」 「そうかもね」 憂いの浮かんだ表情を浮かべる輝夜。 作る手を止めてそんな輝夜を見る永琳。 月明かりが二人を照らす。 そんなシンとした永遠亭に一つの大声が響き渡った。 「輝夜ぁああ!!!!」 「……空気読まない妹紅参上?」 「彼女に空気を読めと言う事は、姫との間柄を考えると不可能レベルです」 「はぁ……今日は、昔を思い出して月見酒としゃれ込みたかったのに」 「ご愁傷様」 ◆ 蓬莱山 輝夜は、あの時の事を考える。 何故、どう考えても無理だろう事をただの人間である○○に言ったのか? 蓬莱人でもない○○。もはや寿命で死んでしまっているだろう事は分かる。 気まぐれだったのかもしれない。 ちょっとした悪戯心だったかもしれない。 もしくは…… 「輝夜。てめぇ! なに考え事してんだよ!」 轟と膨大な熱量を誇る焔が、輝夜に向かって津波に様に襲い掛かる。 が、輝夜が拍手を打つと、その焔は霧散する。 「ねぇ。妹紅」 戦闘狂と言われかねないような表情を浮かべている妹紅に対し、輝夜は普通に声を掛ける。 そんな様子を怪訝に思う妹紅。 「アナタ、他にも蓬莱の薬を飲んだ存在をしらない?」 突然の尋ねに、妹紅は眉を顰めた。 寧ろ、己以外に蓬莱の薬を飲んだヤツが居たのか? と、思う。 「知らないようね。残念」 本当に残念そうな表情でため息を一つ。 「今日は、もう止めにしない? 月見酒したいの。昔を思い出して」 「親父の事でも馬鹿にしながらか?」 「違うわよ。懐かしい翁らを思い出しながらよ」 ふん。と、妹紅は鼻息荒くくるりと背を向けて去っていった。 薬を作り終えた永琳は、縁側に腰をかけてお茶を啜っていた。 そんな永琳の隣に腰を下ろし、お猪口に注いだ酒を呑む輝夜。 「そういえば、永琳。イナバは何処にいったのかしら?」 「さぁ。てゐは悪戯が大好きですからね……また竹林のどこかに落とし穴でも作ってるんじゃないでしょうか」 「そう」 空になったお猪口に徳利で酒を注ぐ。 注がれた酒に写るは、夜空の月。 「二つあった蓬莱の薬。一つは翁に、一つは帝に」 帝に送ったはずの一つは、妹紅が私に復讐したいが為に奪い使った。 なら、翁に渡した一つは? 「翁に渡した一つは、どうなったのかしらね?」 「さぁ。分かりかねます……が、可能性が高いとしたら処分だと思いますね」 「でしょうね」 「あと、その処分について確率的にほんの少しの可能性がありますが……聴きます?」 「言って頂戴」 「翁が、誰かに処分を任せた。が、その誰かが蓬莱の薬を使う事で【処分】した」 まぁ、本当に確立低いんですけどね。と、永琳は空になった茶碗を手に立ち上がる。 何か、肴でも持ってきます。と、茶碗を片手に永琳はその場を一旦後にする。 「……もし、あいつがそうやって処分したなら……」 あいつについて考える。あいつ。○○。顔は思い出せない。 竹取の家での初めての奉公人。私が、名前を尋ねるまで名前が無かった様な男。 手渡された今は持っていない小さな木彫り兎。 わざと木彫り兎を落として、あいつに言った言葉。 私は、あいつに何を期待しているのだろうか? 寧ろ、私はあいつをどう思っているんだろうか? わからない。好きか嫌いかでいうなれば、好きではある。 しかし、それは…… 「……生きてるなら早く来い。馬鹿」 あの頃の事を笑って話したい。あいつの磯部焼きが食べたい。そう思った。 ◇ ○○が、竹林に作った小屋とは言いがたい小屋には、もう○○は居なかった。 ただ、小屋には、大小様々な彫られた何かが、大量に存在した。 人、動物、妖怪等を模様して彫られたそれら。 それらには、一つの共通点があった。みな笑顔だという事であった。 ○○は、再び旅路へと出ていた。もう一度火の国を探しつくしてみようと考えた為だ。 月に尋ね人が居る。とは分かっている。寧ろ月に帰ったのだから月に居なければおかしい。 しかし、それでも、○○は火の国を探す事にした。 旅をして一つの神社へと足を運んだ。 その神社は、人の気が無い打ち捨てられた神社。 打ち捨てられてまだ新しいのだろうその神社の鳥居には【博麗】と言う板が存在した。 賽銭箱は、暴かれたのか捨てられたのか壊されたのか定かでないが、存在しなかった。 動物の気配も妖怪の気配もなんにもない神社。 ○○は、無駄足だったか……と、神社の縁側に腰をかけてため息を一つ。 しばらく休んだ後で、鳥居を潜り神社を後にしようとした時だった。 不意に、後ろから声を掛けられる。 「あら、博麗神社に何か用?」 その声に振り向けば、其処には箒を片手に巫女服……とは、言いがたいがきっと巫女服を着た少女が一人。 「……人が居る?」 「なに、その生えて出たような言葉」 見やれば、無かったはずの賽銭箱があった。 少女が、私の視線に気づいたのか、少女も賽銭箱を見る。 「賽銭箱が珍しい?」 空っぽだけど。と、少女は言う。 「……いや、私が居た場所。では、賽銭箱が無かったんだ。そして君も居なかった」 その言葉に、少女はポンッと手を打つ。 「あぁ、外来人。迷い込んだ訳ね……外に帰りたいなら帰すけど?」 唐突な物言いに、混乱する。 「説明を求めてもいいかい?」 「? あぁ、此処の事?」 私は、頷くと少女……博麗 靈夢……は、この幻想郷について説明してくれた。 世界から隔離された世界。幻想となったモノが生きる世界。要約するとこんな感じだろうか? 「すまないが……私は、人を探しているんだが……」 「人? 誰?」 「輝夜という女性なんだが……」 靈夢は、顎に手を添えて考え始める。 「他になんか情報ある?」 「昔、竹取の翁と言う人物に育てられた。月の民」 「ん~……わかんない。あぁ、でも迷いの竹林っていうのはあるわよ」 方角的に言うと、あっち。と、大雑把に指差してみせる靈夢。 「外へは、いつでも帰せるから帰りたくなったら来て頂戴。あと、この御札渡しておくわ」 妖怪やら亡霊やらを寄せ付けない御守りらしい。幻想郷は、外と違い妖怪らが多く居る為らしい。 そんな御守りも強大なモノには、効果は無いらしいが……私は、お礼に少ないが食料を奉納と言う形で手渡した。 ◆ 「あら、てゐ。どうしたの? 慌てて」 「あ、永琳様。いや、私の悪戯にかかっちゃった人間が居たんですがね?」 「あら、日常茶飯事の事じゃない」 そ、そうなんですが。と、困った様に頬をかくてゐ。 「ただ、引っかかったのが、ついうっかり、悪乗りして作って封印してたはずの対妖怪撲滅用落とし穴なんですよ」 「……やたら、物々しい落とし穴ね?」 「えぇ。普通人間だったら死ぬ程度の落とし穴なんですが」 それは、もう悪戯の範囲ではない。と、永琳は人事に思う。 寧ろ、その封印してたはずの落とし穴にかかってしまった人間の冥福を祈る。 「その人間……あの藤原 妹紅みたいに、生き返ったんです」 「なんですって?」 生き返った? 「その人間は、今何処にいるの?」 「えーっと……永遠亭前に運んで放置し……」 「直ぐ運んできなさい」 は、はいぃい! と、てゐは脱兎の如くその場から走り去った。 ◇ ○○は、目を覚ました。見慣れない場所だと、起きて直ぐにきょろきょろと辺りを見回す。 「目を覚ましたようね」 と、声を掛けられ声の主を見やる。 その声の主の姿を見て、あの時の記憶が、思い起こされる。 「貴女は……輝夜と一緒に居た……」 ○○の呟きに、声の主永琳は、やっぱり。と、ため息。 「今、姫を呼ぶからそのまま其処にいなさい」 そう告げると、永琳はその場を後にする。 そんな永琳の後姿を見送って、○○は考える。 月に居るはずだと思っていた。何より、あの女性は、輝夜を月から迎えに来た人物に違いない。 姫。と呼んだのは多分輝夜。月に居ると思っていた。 今までの旅路は、無駄で無駄じゃないモノだと思って今まで生きてきた。 旅路の目的は、これで果たせるのだろう。 部屋に、二人の女性が入ってくる。一人は先ほどの女性。もう一人は…… 「お久しぶりです。輝夜様」 「随分と遅かったわね? ○○」 「えぇ、随分と時間がかかってしまいました。何せ、輝夜様は月に居るものだと思って探しておりましたので」 それは、時間かかるわね。と、二人のやり取りを見ていた永琳は、小さく頷いた。 「ですが、結果的にコレを届ける事はできましたね」 と、懐から取り出すは、年月の経過が為にその殆どが朽ちてしまった小さな木彫り兎だったもの。 「随分、かわっちゃったわね。この兎」 「私と共に、輝夜様をずっと探し続けていたからでしょう」 ○○の輝夜探しの旅は、常に小さな木彫り兎と共にあった。 妖怪に襲われた時も、この小さな木彫り兎だけは、傷つけはさせなかった。 それでも、ただの彫っただけの小さな木彫り兎には、年月の経過と言う痛みを回避する事は出来なかった。 「ねぇ。○○。また、彫ってくれるかしら?」 「えぇ。ソレを届けた後の事を考えても居なかったので……喜んでやらせてもらいます」 「そう。じゃぁ……また、兎を彫ってもらえるかしら?」 えぇ。喜んで。と、○○は笑顔でそう答えた。 かくして、○○の旅は、終わりを迎え……幻想郷での生活が始まるのだった。 「それにしても輝夜様」 「なによ?」 「成長しておりませんね」 「…………それは、喧嘩を売ってると取っていいのかしら?」 「さぁ? それより、お顔をもっと近くで見せていただけませんか?」 「なんでよ?」 「正直な話。輝夜様のお顔……お会いするまで忘れてましたし」 「…………まぁ、私も人の事いえないわね」 チラシの裏。 私もイチャイチャなSSを描きたい。と、衝動的に描いた。 あれ? イチャイチャ成分がどこにもないよ。 寧ろ、この後からイチャイチャ成分が出てくる気がするんだ。 あと、霊夢が靈夢になってるのについて。霊異伝っていつだかわからんかった。 先代博麗の巫女だと思ってもらえると嬉しい。 一応、年代表モドキ。 竹取物語序盤 ○○が奉公人として竹取の家に来る。 竹取物語終盤少し前 ○○が、木彫りの小さな兎を輝夜に渡す。 竹取物語終盤 蓬莱の薬。竹取の翁と帝へと輝夜が残す。 ○○に落とした木彫りの小さな兎を届けに来てと頼む。 竹取物語終了 竹取の翁の命で、○○蓬莱の薬を使用という形で処分。(妹紅と同時期に不老不死に) 百年後 ○○。気まぐれな天狗に技を習うも遠見の術だけ覚えるという駄目っぷり。 三百年後 ○○。大陸へ。(妹紅は妖怪退治を始める) さらに数百年後。 てゐが永遠亭へ。(○○、天竺から欧米諸国に向かい旅を開始) 六百~七百年後 ○○。露西亜方面に旅を開始。(妹紅だらだらしはじめる) 九百~千年後 妹紅が輝夜と遭遇。(○○、露西亜から亜米利加へ旅を開始) 第零季より十年前 亜米利加から○○火の国(日本)へ舞い戻る。と、同時に引きこもり開始。 第零季 博麗大結界発動。(永遠亭。迷いの竹林に姿を現す) 第零季より十年後 引きこもり終了。再び火の国の旅を開始。 鈴仙来訪より五年前 ○○。外世界で博麗神社を発見後。幻想郷へ。 ここまでが、チラシの裏。 新ろだ488 ある日の永遠亭の庭。 健康のため、てゐは庭を散策していると、新聞を膝の上に置き、目を閉じてニヤニヤしている○○を見つけた。 てゐはげんなりと顔をしかめた。 男が一人、庭に向かって腕組みをしつつニヤニヤしている光景は、はっきりいって気色の悪い光景だった。 彼にツッコミを入れる人はいないのかしらんと、てゐは周囲を見回してみた。 実のところ、○○が一人きりでいることなど滅多になかった。 他の兎や輝夜と一緒に談笑している光景が、ここ永遠亭ではしばしば見られた。 なので、誰かいないのだろうかと考えたのだが、生憎ここには誰もいなかった。 てゐはならば自分が指摘してやるしかないかと考え、○○に近づいていった。 ちなみに彼女の裡には無視するとか、見なかったことにするという選択肢は存在していなかった。 どんなことが原因であれ、彼と二人きりなれる機会などそうそうあることではなかったので、この好機を逃すつもりはなかった。 「そんなところで一人でニヤニヤしちゃって、どうしたの? 何か変なものでも拾い食いした?」 「失敬な。ただ、最近、巷で合体ネタが流行ってると耳にしたもんでな」 「んー。そういえばそんな話が噂に上ってるわねー」 彼女が最近耳にした噂は、『合体』というネタを口実にして、恋人とイチャイチャする幻想郷の住人がいるというものだった。 そういうことで盛り上がれるというのは非常に、こう、馬鹿らしいというか、羨ましいというか。 「いやいやいや。羨ましくなんてないから。ないんだからね!」 「……お前さんは、いきなり何を言っとるんだ?」 ちなみにネタ元は○○の膝の上にある『おはようからおやすみまで、あなたを見つめる天狗』というキャッチコピーで有名な"文文。新聞"だ。 てゐはここ最近の記事の題を思い返した。 前々回…『人形遣いの合体模様』 前回…『八雲家の合体事故』 今回…『大合体オニぃさん』 思い返してみて、ちょっとゲンナリする。 おそらくその記事をこの男も読んだのだろうということは想像に難くない。 そして、合体ということから想像できるいやらしいことを妄想しているに違いないと思った。 「ごほん。ということは、合体っていう言葉から、エッチなこと考えてるのね」 「人聞きの悪いことを言うな」 てゐの胡乱な視線を受けて、すぐさま○○はその指摘が見当違いだと否定した。 さらに胸を張って続けて言う。 「ある種の言葉から態々連想なんぞぜずとも、スケベなことだったらいつも考えてるわい!」 「……余計に酷くなってる!」 ○○は自身の恥部を堂々とてゐにぶちまけた。 少なくとも胸を張って言う言葉ではない。 もちろんここが外ではない別の場所だったのなら、話は変わってくるだろうが。 突然のカミングアウトに頭痛がするのか、それを聞かされたてゐはしきりに眉間を揉んでいた。 しかし、てゐはまだ知らない。 ○○の裡にあるスケベ心など、彼の深遠なる思考のほんの一部にすぎないことを。 彼の頭の中を占めるモノを知ったとき、おそらく彼女は認識を新たにすることだろう。 「それとだ。そもそもから訂正させてもらうぞ、てゐ」 「うん?」 「俺が合体という言葉から連想したものを、教えてやろう――!」 右手を伸ばし、ばさぁっ! と横に空を切る。 「まずは永遠亭の寝殿から渡殿、東対を分離!」 「は?」 「分離する際、内装の御簾やら箪笥がどういう原理か壁の中に引き込まれ、埋まっていく! 寝殿はブラキオサウルス型―― 渡殿はプテラノドン型―― そして東対はステゴサウルス型のロボに変形する!」 「…………あのね」 「さらには竹林がまるでモーセの十戒のように割れていき、そこから三体のロボが出撃する! または三位一体の飛行機として出撃することも可能だ!」 ○○が熱く語るのに比例して、てゐの頭痛がひどくなってくる。 「そして! 三体の恐竜型ロボが変形して、凛々しい顔の人型ロボに合体だ! これが、これこそが――!」 「薬物合体ゴウドラッガーね!!」 突如現れた姫様こと蓬莱山輝夜。 太く艶やかな黒髪。 切れ長で少し垂れ気味の目、すらりとした鼻の下にぷっくりとした小さな唇。 相変わらずの神秘的な美しさを振りまいている永遠の少女が、そこにいた。 彼女は○○が発しようとした妄想ロボのネーミングに自身の発言を重ねた。 「うわ、姫様、そのネーミングやべぇ」 「あら、薬物合体ホウライサンの方がよかったかしら?」 「……そもそも、どこでそんなネタを仕入れてきてるのよ、姫は」 彼女の背後についてきていた永琳が呆れていた。 小さく胸を張って輝夜は永琳の問いに答えた。 「私のネタ的情報源は、そこにいる○○よ」 「俺の情報源は、外の世界にいたときに仕入れた知識と幻想郷の同人作家殿だ」 様々なネタ的な本を回し読みをする仲―― ○○と輝夜の仲は、実はこの程度のものだったりする。 「……同人作家? ああ、こないだ皆で見たエロ本を描いてる仙人モドキのことね」 「あら、エロ本も描いてる、よ。永琳」 「ぐはぁっ」 「ヤブヘビというか、自分で黒歴史を掘り起こして自爆してたら世話ないわねー」 ひょんなことから初春に起こった永遠亭春画事変を、この場にいる全員が思い出してしまった。 購入者である○○は恥ずかしさの余り、その場でのた打ち回っている。 輝夜はエロ本の内容を思い出したのか、頬をかすかに染め、照れ臭そうに○○から視線をそらした。 永琳は生温かい目で○○を見やった。 事変の原因たるてゐはのた打ち回っている○○を、呆れた様子で見下ろしていた。 今回のように自分が仕掛けた悪戯以外で発生した他人の狼狽は、てゐにとればあまり面白くないものだったりする。 てゐにとっての悪戯の楽しみとは、○○曰くの『孔明の罠』でなければならないのだから。 「は、話を戻そう」 しばらくして立ち直った○○。 そして話を戻すのかとてゐは内心ツッコんだ。 「そうね。ねえ、永琳……」 「言っておきますけど、私は合体ロボの知識なんて持っていませんからね」 『そ、そんなぁ!』 にべもない永琳の返答に二人は声を揃えて無念の声を上げた。 「そもそも。あれは鉄筋コンクリート造の校舎が変形合体するから燃えるんです! 寝殿造りの永遠亭が変形合体しても、燃えるものがないじゃないの!」 「言われてみれば、それもそうね」 「だったらまずは校舎か……」 てゐはひっくり返った。 そして彼女は思わずつぶやいていた。 「駄目だこいつら。早く何とかしないと……」 永遠亭は今日も平和です。 新ろだ578 「○○……起きてる?」 「……輝夜か」 ○○が永遠亭に住みついてから随分経つ。 だが、前々から仲を噂されていた永遠亭の主人、蓬莱山輝夜と晴れて恋仲になったのはごく最近である。 その美貌により数多の男から求婚を受けてきた輝夜だが、実際に男と付き合った経験がないためか、若干の初々しさが残っていた。 そんな輝夜がいかに恋人といえど、夜更けに○○の寝室を訪ねてきたことに○○は驚いた。 「どうしたんだ?こんな時間に」 「ええ、ちょっと話したいことがあって」 輝夜は自然な体で○○の布団に潜り込んだ。 いつもの輝夜らしくない積極性にドキリとしつつも、体をずらしスペースを空ける。 輝夜は○○と並んで枕に顔をのせると、仰向けに寝転んだ。 「たまにはこういう、地味な寝床もいいものね」 「……そんなことを言うために来たわけじゃないだろう」 輝夜が顔を○○の方へ向け、二人が向き合う。 「ねぇ……やっぱり蓬莱の薬、飲む気になれないの?」 飲んだ者を不老不死にする蓬莱の薬。 これのために輝夜は老いることも死ぬこともなく、永遠に生き続ける存在となった。 そして恋人である○○ともその時を過ごしたいと思い、今までも何度か打診している。 しかし、○○の返事はいつも同じだった。 「言ってるだろ。まだ踏ん切りがつかないって」 輝夜といつまでも共に過ごしたいと願っているのは○○も同じである。 だが、蓬莱の薬を飲むということは事実上人間をやめるようなもの。 絶対に死ぬこともなく、永遠の時を過ごさねばならないという重い枷を背負うこととなる。 ○○は輝夜の気持ちを知りつつも、未だ勇気が出せないでいた。 「……ごめんな」 「ううん、無理を言ってるのは私の方だから。永遠を強いるなんて、無茶なことだと分かっているもの」 「だが、それを言いに来たというわけでもなさそうだけど」 ○○がそう言うと、輝夜は目を伏せた。 しばしの沈黙の後、口を開く。 「……私ね、思うの。貴方と一緒になれて、今最高に幸せ。でも、この先はどこまでも不安と隣り合わせだって。 貴方と結ばれても、それで終わりじゃない。まだ物語は続くのだから」 不老不死である輝夜にとって、親しい者の死は何度も経験してきた。 その度に悲しみはあったものの、その一方で仕方のないことだと思ってもいた。 生ある者が死ぬのは自然の摂理であり、それを踏み外す蓬莱の薬の邪道性も認識している。 だから今までは誰にも、蓬莱の薬を飲むのを強いることは決してなかった。 だが、その摂理を踏み外してでも一緒にいたいと思える人が現れた。 「貴方は不老不死でもない、普通の人間。いつか不慮の事故で死んでしまうかもしれない。 そう思ったら急に怖くなって、少しでも貴方と一緒にいたいと思うようになったの。 あんなにも欲しかった日々がここにあるのに、私は明日を信じられない」 おかしい話よね、と輝夜は微笑む。 それを見て、○○は察した。寝る時など自分と別々な所にいる時、輝夜はいつも不安で押しつぶされそうだったのだと。 そう思うと、今○○に見せている輝夜の笑顔が、逆にひどくか弱いものに見えた。 ○○の右腕は、自然と輝夜を抱き寄せていた。 「え、○○!?」 「……ごめん、やっぱりまだ蓬莱の薬を飲む勇気はない」 でも、と輝夜の目をまっすぐに見据える。 「俺は輝夜を悲しませるようなことは絶対にしない。輝夜をおいて死んだり、いなくなったりなんてことはないさ。 だから、安心して。俺はいつでも輝夜と一緒にいるよ」 輝夜を抱き寄せたまま、左手を輝夜の右手に絡める。 輝夜は、頭を○○の胸へ埋めた後、その手を強く握り返した。 新ろだ792 「……」 「……」 ピコピコ ピコピコ 「……○○、お茶取って」 「はい、姫様。ポーズの間待っててくれたんですね。有難う御座います」 ピコピコ ピコピコ 「ぬーあーっ、負けたーっ」 「ふぅ……久しぶりにやったからキツかったー」 「なんでこんな間抜けそうな面した奴がこんなに上手いのよっ!」 「いやぁははは、あっちの世界でもこんな事ばっかりやってましたし」 「……さて、姫様。約束です」 「ゔ……な、何のことかしら」 「おや、姫様ともあろう御方が約束を反故になさると。 ……おししょうさm「わーわーわー!」」 「分かったわよ……それで、何をすればいいの?」 「そうですねぇ。折角"何でも言う事を聞かせる"権利を貰ったわけですし――」 「……スケベ」 「――失礼な。そんな低俗なものを願ったりはしませんよ。少々考える時間をいただけますか」 「決めるなら早くしてね」 「はいはい」 「はい、姫様。どうぞ」 「何コレ」 「見ての通りですが」 「……本気?」 「一応は。姫様の出したお題を突破したから……という事にはなりませんかね」 「それは、その……○○は」 「はい?」 「○○は……私なんかで、いいの?」 「……」 「……お願い、答えて」 「さて、姫様以外に"女性"というものを私は知りませんので」 「!」 「比較のしようが……おっと」 「ホント、馬鹿なんだから」 「姫様に言っていただけるならそれも褒め言葉です」 「バカ――だいすきよ、○○」 「私も大好きです」 「ちなみに姫s「かぐや」――輝夜」 「なーに?」 「もし買っていたら何を私に頼むつもりでした?」 「そうねぇ……ひみつ♪」 「残念。ちょっと興味があったのですが」 「大体貴方と似たようなものだから、ね?」 「成る程――むっ!?」 「――ふふっ。つまりはそういうことよ――んっ、あ――」 省略されました。全文を表示させるには東方キャラの誰かとフラグを立てた後、 その人物の目の前でフラグクラッシュしてください。
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かたち清らなること世になく、家の内は暗き處なく光滿ちたり。 輝くほどの美貌であった。腰より長い髪は鴉の濡れ羽色、眉は柳、目は鈴を張り、唇は濡れ艶の真紅、 そして肌は抜けるような白に白磁の手触り。 蓬莱山輝夜は自らの美しさを天蓋より降り注ぐ月の光に遍く照らし出し、それをひけらかす様にその場をくるりと回った。 「私、やりたい事が見つかったわ」 輝夜は嬉しそうに、口から鈴のような音を転がしていく。 「この異変を解決する。ようやく私の居場所となった幻想郷の一員として、私は皆を助けるの!」 敵は強大である。難題を出す暇もなく輝夜を連れ去り、彼女が絶対の信頼を寄せる八意永琳すらも拉致に成功している。 そしてあろうことか、不死である蓬莱人――蓬莱山輝夜に死を強要してきているのだ。 それは最早、月の叡智を越えたと言って等しい。そんな相手に一体どんな手が有効なのか皆目検討もつかない。 不死に胡坐をかいて馬齢を重ねた輝夜だからと言えばそれまでだが、 それでも彼女の永遠と須臾を操る能力を歯牙にもかけない敵の力の大きさは、明白な事実として残る。 だけど、それがどうしたことだろうか。かつて数多の人間が挑み、敗れ去った五つの難題。それは不可能の代名詞にすらなった。 だが、それを鮮やかに解き、輝夜の手を見事に取った者達がいたではないか。人間と妖怪。 彼ら種族が異なる者達が手を組み、輝夜を前にして奇跡を成し遂げたのだ。 それは輝夜にとって、眩しきものだった。思わず羨んでしまう程の輝かしい光景だった。だからこそ、輝夜の顔からは笑みを零れてしまう。 今度は自分がそれを体現する番だから、と。確かにこの異変を解決するというのは、とても不可能なことであろう。まさしくそれは難題だ。 でもあの日、永遠の夜が終わりを告げた時のように、不可能は可能となるのだ。難題は解かれるのだ。 それこそが人間と手を取り合うことによって成される奇跡。 輝夜はその煌くような未来を手に入れるため、今こそ人間達のいる地上へしっかりと足を下ろした。 「というわけで、その第一歩。いざ、支給品の確認~♪」 先の意気込みはどこへやら、輝夜は暢気にエニグマの紙を掲げた。 地図、コンパス、照明器具、筆記用具、水、食料、名簿、時計といった基本支給品を一通り確かめると、 いよいよお待ちかねのランダムアイテムの登場である。 「さて、取り出したるは~、アラビア・ファッツのマジック・ミラー号!」 エニグマの紙に書かれていた名前を高々と呼び上げ、紙を開く。 そこから出てきたのは、何ともおかしな改造車であった。二畳ほど広さの床に四輪を付けた車とも言えぬ車。 二辺にはカーテン、もう二辺には壁となるマジックミラーが取り付けられ、外側が鏡で内側からは外の景色が見れるようになっている。 面白いのは床の上にはリクライニングシート、冷蔵庫、オーブンレンジ、エアコンがあることだろうか。 更に冷蔵庫にはお菓子、ジュース、ピザがデブの飢えを満たす程に入っており、ちょっとした生活すら出来そうだ。 輝夜はそれらを確認すると、さも当然のように早速お菓子とジュースを口に運んでいった。 「って、美味しい」 もしかしたら毒が入っているかもと警戒していたが、舌に訴えかけるのは甘みと幸福感だけであった。 後々の不和の種にも成りかねない大切な食料に毒が入っていては、それこそ殺し合いを加速させかねない。 故に蓬莱人である自分が早急にその危険性を排除せねばと思っていたが、どうやら輝夜の心配は杞憂のようだった。 これ以上食料を漁る必要はないみたいだが、折角開封したのだからと、輝夜はポッキーを小さな口で啄ばみながら、最後の支給品を取り出す。 「続きましては~、黄金期の少年ジャンプ一年分!」 エニグマの紙を開いた途端、滝のように冊子が輝夜の足元に流れ込んできた。 慌てて紙を閉じた彼女は一冊のジャンプを取り上げ、それを仔細に検分する。 「これは漫画かしら? 殺し合いには不向きのように思えるけれど、わざわざこんなにも集めて配るものだし、何か意味があるのよね」 そう思った輝夜はリクライニングに深く腰掛け、時折コーラで喉を潤しながら、ぺらりぺらりとページをめくっていく。 「……ふむ」 ぺらり ぺらり 「特徴的な絵柄ね」 ぺらり ぺらり 「…………フフっ」 ぺらり ぺらり ―― ―――― ―――――――― ピザの最後の一切れを口にほうばった輝夜は油に塗れた口と手を備え付けのティッシュで拭き取ると、 次の号のジャンプを読むべく積み上げられた本の山に手を伸ばした。 「……って、ない! 何で次のジャンプがないのよ! これじゃあ生殺しじゃない! 荒木と太田の奴~~!! 配るのなら最後まで配りなさいよ!!」 思わず文句が口から出てしまう。折角、一から全てのジャンプを読んだのに、 それが途中で切れてしまっていては、あまりに無慈悲というものだ。 さて、荒木と太田の二人をどうしてやろうか。そんなことを考えていた輝夜は、ふとあることに気が付いた。 今はあの二人に嵌められて、バトルロワイアルの真っ最中である、と。 慌てて輝夜は警戒心を跳ね上げ、周囲を見渡す。そして愕然とした。 さっきまであったはずの月の光りが根こそぎ取り払われ、今は眩しいくらいの太陽の光が空から燦々と降り注いでいたのだ。 「えっ!? え、今何時!?」 時計を見ると、とうに六時を過ぎて回っていた。その馬鹿げた現実にさっきまで快活であった輝夜の顔から血の気が失せていく。 「え~と、確か六時間ごとにあいつらは放送をするって言っていたわよね。その時に死んだ人の名前や禁止エリアも発表するって……」 どれだけ記憶を掘り起こしても、そんなものを耳に入れた事実が湧いてこない。一体どれほど自分はジャンプに夢中になっていたのだろうか。 ジャンプを全て読破して、殺し合いについて得たものがゼロであったことを考えると、自らの情けなさが最早痛みとなって心を抉ってくる。 「永琳は……大丈夫よね? イナバたちは……分からない。いえ、きっと生きている筈。そうよね? っていうか、もうこの異変は解決されてたりとかしないわよね?」 情報量の少なさに疑問がひしめいて止まない。 しかし、ここで頭を抱え込んでも答えなど分かるはずもないということは、輝夜にはすぐに理解できた。 ならば、行動あるのみである。今までの遅れを取り戻そうと、 輝夜はアラビア・ファッツのマジック・ミラー号のアクセルを、一気に限界までに押し込んだ。 たちまちエンジンは唸り声を上げて、タイヤを高速に回転させる。 しかし悲しいかな、その疾風の如き疾走は僅か数メートルで終わってしまった。 そびえ立つ竹にマジック・ミラー号の車体が、鈍い音と共にぶつかってしまったのだ。 「ああ! もう何なのよッ!」 答えは簡単。輝夜がいる竹林ではマジック・ミラー号が走れるほどの広さがなかったのである。 先を急ぐ余り、そんな簡単なことに気がつけなかった自分が腹立たしくなる。車を降りた輝夜は怒りと共にマジック・ミラー号を蹴り上げた。 それによって先の事故で鏡の部分に出来たヒビが更に広がってしまったことに気が付いた輝夜は、いよいよ自分に嫌気が差してくる。 「落ち着いて。きっと皆はまだ生きている。この異変だって、ちゃんと私が解決する。うん、そして私は漫画家になるの」 負の連鎖を断つべく、輝夜は深呼吸をして自らの気持ちを整えた。 依然と焦燥とした気持ちがあるが、目的を見誤らない程度の冷静さは取り戻した。 輝夜はマジック・ミラー号をエニグマの紙に戻し、次なる行動に移す。 途中で山となったジャンプが目に付いたが、それを再び紙に戻すのはどう考えても手間だ。 確かにジャンプには夢中になるほどの面白さがあったが、この段になっては最早時間より貴重なものは存在しない。 輝夜は断腸の想いでジャンプと決別すると、他の参加者を求めて、その場を勢いよく駆け出した。 【C-5 竹林/朝】 【蓬莱山輝夜@東方永夜抄】 [状態]:健康、焦燥 [装備]:A.FのM.M号@第3部 [道具]:基本支給品 [思考・状況] 基本行動方針:皆と協力して異変を解決する 1:他の参加者を探す [備考] 参戦時期は東方儚月抄終了後です 第一回放送を聞き逃しました A.FのM.M号にあった食料の1/3は輝夜が消費しました A.FのM.M号の鏡の部分にヒビが入っています 支給された少年ジャンプは全て読破しました 黄金期の少年ジャンプ一年分はC-5 竹林に山積みとなっています <アラビア・ファッツのマジック・ミラー号> タロットの大アルカナ19番目のカード「太陽」を示すスタンド使い、アラビア・ファッツが乗っていた改造車。 二辺をカーテン、もう二辺を壁となるマジックミラーで覆った一つの部屋とも言うべき仕様。 その中にはリクライニングシート、冷蔵庫、オーブンレンジ、エアコン、そしてデブの飢えを満たす程の食料がある。 燃料や駆動方式は不明だが、砂漠を渡るだけの走破性と燃費の良さを併せもつ。 反面、その形状からして旋回性能は低く、スピードは出ないと思われる。 また原作でジョースター一行を欺いたように、魔窟と化した竹林で誰にも気づかれることのない脅威のステルス性能を持っている。 <黄金期の少年ジャンプ一年分> 一時代を築いた週刊少年漫画の一年分。 殺し合いの中で時間経過を忘れさせるほどの魅力を持った魔性の本。また輝夜に漫画家になろうと思わせるほどの面白さも秘めている。 黄金期のジャンプゆえ、当然あの漫画も連載されている。 035:清く、正しく 投下順 037:猫は屍生人が好き 085:第一回放送 時系列順 086:羽根亡キ少女ヲ謳ウ唄 遊戯開始 蓬莱山輝夜 099:幻葬事変/竹取幻葬
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VIP東方キャラスレ輝夜厨 【SS輝夜厨】[消滅] 08年頃、thスレにちょっとだけ表出して存在した名無し。 当時は即興でSSを書く名無しが多くあった為(中には都度リクエストに応える半固定や連載持ちもいた)、 SS書き自体は特に珍しいものではなかったし、俺×東方キャラSSも一般的なものであったが、 彼の場合は『やおい』に特化していたので取り上げた。 86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage]:2008/01/18(金) 06 49 37.90 ID WVLr7Nc50 ああコーヒーを飲むよ タバコも飲むよ飲むよ お酒も 飲むよ飲むよ 何だって飲むよ 人を物真似したさ後先とか考えちゃ駄目だよ だってそもそも今日の自分なんて初めから無いも同然だからね もういいかい そりゃそうだよ 例えばそれが無茶苦茶な要求だろうが例えばそれが傲慢な女のワガママだろうとさ 飲むよ飲ませてちょうだいよ いいね飲む達人になりたいね ある意味もうあこがれに近い感じだね 赤塚不二夫にキース・リチャードね 野坂昭如に藤原組長でしょ 粋だね下町情緒だよね はあ それはちょっと違うか 脱線しちゃったね 脱線だね でも僕はね脱線はいいけど惰性で生きちゃ駄目だね これ僕のポリシーだよ 惰性で生きちゃだめ これ僕のポリシー 上手い事言った 上手い事言った~! 164 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage]:2008/01/18(金) 10 06 40.83 ID wPgXXZ7e0 輝夜「今月末スマブラX出るねー」 俺「出るねー」 輝夜「欲しくない?」 俺「金が無いのよ」 輝夜「えーりん!えーりん!」 俺「助けてえーりん!」 えーりん「お年玉ちゃんとあげたじゃないですか」 俺「俺貰ってない」 えーりん「あなた、今年で二十歳でしょう」 俺「ですよねー」 輝夜「どうしよう」 俺「俺の誕生日29日なんだ」 輝夜「それよ!えーりん!」 えーりん「だからあなた今年で二十歳でしょう」 輝夜「どうしよう」 俺「どうすっかな」 【輝夜愛してるよ】 [消滅] 「輝夜愛してるよ」というコテを冠する。トリはなしありました→ ◆Teruyo/K.A 「姫様」と呼び、ややフォーマルなものより畏まった敬語を使う。 【輝夜さん】 朝方のみ出現。主におはようスレなどにおいて良い出席率で、輝夜によく挨拶している。 おはようを告げる妖精かなにか。 ですます口調で、輝夜を輝夜さんと呼び、句読点を用いる。文章の末尾には『。』を置く。 あまりひょうきんな事は言わない堅物系。 【かぐやああああああああ!!】[消滅] やたら語尾を伸ばすううううううううううううう!! かぐやかわいいようわあああああああああああああああああああああ!!!! 非常にやかましい。不破師範を彷彿とさせる勢いと喧しさだが、勢いそのままに速攻で消えた。 結局えーりんに頼むんかーい! -- まーちゃん (2019-06-19 21 24 02) 名前 コメント
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輝夜7 うpろだ1231 「輝夜、外に出ないのか? イナバたちとか、もう始めてるぞ」 七夕の夜。 ここ、俺がお世話になっている永遠亭では、七夕祭りの真っ盛り。 子イナバたちが、思い思いに願い事を短冊に結び付けている姿は、傍から見ていても微笑ましい。 ……時々の「世界征服」とか「百億万ドル」とかはどうかと思うが。 飾り付けも終わり、あとは主賓の到着を待つばかり。 ……だったのだが。 「私、行かない。 あなたも、ここにいてくれない?」 返事は、にべもないものだった。 残念ながら、俺の恋人たる輝夜は、お気に召さないようだ。 まあ、可愛らしい我侭はいつものことだし、なんだかんだ言って結局出てきてくれるのがいいところなのだが。 「おいおい。もうみんな待ってるんだぞ。 あんまり、困らせないでくれよ」 苦笑気味に言う。 彼女は、そっぽを向いたまま。 「……言ってくれたら」 「ん?」 「あなたが私と七夕を見たいって言うのなら、仕方ないから参加してあげる」 蚊の鳴くような声。 だが、こんなお願いもいつものこと。 「わかったわかった。 輝夜、お前と七夕を過ごしたいんだ。出てきて、くれないかな?」 「わかったわ」 二つ返事でOKすると、手元にあった手文庫から蒔絵の手鏡と鼈甲の櫛を取り出す輝夜。 ……すべて、計算ずく、か。 「じゃあ、先に行っているから」 「あ、ちょっと待って!」 急いで髪を整えると、俺の右腕に抱きつく。 碧の黒髪が、ふわりと肩を撫でた。 「さあ、行きましょう」 そして、皆の待つ中庭へと歩き出す。 「どうした、暇か?」 七夕祭りも一段落した頃。 俺は、一人でぽつんと縁側に座っている輝夜に声をかけた。 「ほれ、ジュース」 仏頂面をしている輝夜に、貰ってきたキャロットジュースの片割れを渡す。 もう一方は、俺のもの。 ぼうっと星空を眺めている輝夜に紙コップを持たせると、彼女の隣に座った。 「あら、来てたの?」 わずかにきしむ板の音が原因だろうか、今初めて気づきました、という顔の輝夜。 「酷いな、全然気づかなかったなんて」 「ええ、ごめんなさい。ちょっと考え事してたものだから」 それから、手に持った紙コップに気づくと、親の仇でも見つけたような顔で、一気に呷った。 沈黙。 俺も、いつもとは違う輝夜の様子に、何となく言葉が出ない。 気の早い松虫が、背中をかき鳴らし始めた。 時折の風が、七夕の笹を爪弾く。 向こうで星空の講義をする、永琳とイナバたちの声が、ひどく遠くにあるような錯覚を覚える。 そう、まるで、俺と輝夜だけ取り残されてしまったかのような。 「私、あの星、嫌いなのよ」 しばらくして、輝夜が口を開いた。 指差すのは、今日の主役、織姫星。 「織姫はね、いつも彦星を待っているだけ。 自分から会いに行こうとしないし、唯一会う機会だっていう七夕も、彦星が来るのを対岸で待っているのみ。 じれったいのよね。 どうして、自分から動かないのか。自分で運命を切り開こうとしないのか」 「でも、神様が決めたことなんだろう。どうしようもないんじゃないか?」 「じゃあ、あなたは私と離れ離れになったら、私が行くまでただ待ってる?」 「そんなことはない! 絶対に会う方法を見つけ出す!」 「でしょう。 私も同じ。あなたが傍にいない世界なんて、意味がないもの。 でも、彼女は違うのよ。ただ、待ってるだけ」 「だから、嫌いってか」 「そう。それに――」 コトン、と。 輝夜は、頭を俺の肩に乗せた。 「一年間も、会わないでいられるなんて信じられないわ。 この温もり。この優しさ。 私は、一日と耐えられない」 「だな。俺も同じだ」 俺は、彼女の頭に手を回すと、手櫛でさらさらと髪を梳く。 気持ちよさそうに眼を細める輝夜。 「ずっと、こうしていたいわ。 そして――。 いつか、この世が終わりになった時、あなたとの物語をハッピーエンドで迎えたいわ」 うpろだ1275 外を少し出歩くだけで氷精が蒸発しそうなほどの炎天下。 こんな日は大人しく部屋に引き篭もってのんびり過すに限る。 一人なら退屈でだらけきっていたのだけども、最近は○○がよく遊びに来てくれてるので退屈はしない。 春は仕事が忙しいとかで余り来てくれなかったけど、夏になってから毎日来てくれるようになった、夏だから開放的になって私を求めてくれてるのかしら。 その気なら私はいつでもALLOK、なんでもバッチ来いよ! なのに、○○は至って健全だった。 外界から持ち込んだというゲーム機を持ってきて一緒にプレイするだけなんてゲームは面白いけど……私のような美少女と二人っきりなのにそれはないわと思わず口に出しそうなほど自分に自信を無くしそうだ。 こうなったら、一度○○の本心を問い質しておいたほうがよさそうね。 「ねえ、○○」 「んー?」 私の膝を枕にしながらゲームをやっていた○○が気だるそうにこちらに顔を向ける。 あ、睫毛が意外に長い、くそぅやっぱりいい男だな……私の目に適うなんて光栄に思いなさいよ? 「何だー?」 おっとついつい見惚れちゃってた、いけないいけない。目的を果たさないと。 「○○は何で最近は毎日来てくれるのかしら?」 やっぱり、私に会いたいの? もしそうだったら凄く嬉しいわよ。 「てるよの部屋涼しいから」 は? それだけ? 思わず目が点になってしまった。 え? 何? それじゃ私に会いに来てるわけじゃなくて涼みに来てるだけってこと? …………何だろう、凄い敗北感。そして物凄く悔しい。 涼みに来てるだけとか悔しすぎるので覆い被さるように抱き着いてやる事にした。 「やめろー離せー暑いー」 「あはははは、乙女の純情を踏みにじりやがってこの野郎」 顔を真っ赤にして私の抱擁から逃れようと○○が暴れる。 ん? 顔を真っ赤に? そこまで暑いわけじゃないと思うのだけど。 暴れるのを抑えるために力を込めたら今度は大人しくなった、観念するのが早いのね。 「てるよ、当たってる」 大人しくなった○○が顔を赤くしながら小さく呟いた。 「あたってるって何が?」 「…………胸」 胸……あーそういえば私の薄い胸でもこれだけ密着すれば当たるわね。 でも、これで○○が私の魅力に少しでも気づけば。 「あの輝夜さん?」 「当ててるのよ」 蠱惑的な笑顔を浮かべ言い放ってやる、○○ったら照れちゃってかわいー。 その様子をニヤニヤしながら眺めていたら、不意にキスされた。 「据え膳食わぬなんとやらってね」 ちょっ……そのまま体を入れ替えられ床に寝かされる。 「ま、待ってこんな昼間から……んっ」 「いーや、待たないね。火をつけたのはそっちだからな」 抗議の声が○○の再度のキスで途切れさせられる、あ、舌入ってきた。 「っ……だめ、だって○○から私は」 そうだ、私は○○から何も聞いていない言われていない、女はいつだって証明が欲しいのだから。 「輝夜愛してる」 言った瞬間に間髪入れず○○が私の欲しい言葉をくれる。 もうずるいなぁ、○○はここぞという時には外さないんだから。 「私もよ」 返事を返しながら、○○を抱きしめて私は身を任せた。 「鈴仙、2~3時間はここに誰も近づけないようにしといてね」 「はい、師匠」 うpろだ1313 「家の傍で遭難するとは、海の人の目をもってしても見抜けないな」 我が家から目と鼻の先にある竹林へ、竹を取りに足を伸ばしたのだが、何故か見覚えがない場所に出てしまった。 靄が掛かっていて奥を見通すことはできそうにない。 必要になったとはいえ、伐る時期ではないものを取りにいくべきではなかったか。 今更言っても仕方がないことを呟きつつ、どうしたものかと近くにあった岩に腰を下ろした。 「まずは手持ちの確認といっとくか」 持っているものを岩の上に順番に並べていく。 素人にはお勧めできない鉈、軍手、スポーツタオル。 携帯を持ってきてなかった、これでは助けを呼ぼうにも呼べない。 「中々に諦めが襲ってくる装備だ……」 ため息を吐きつつ、確認した持ち物を装備していく。 とりあえず、竹には悪いが目印となる傷をつけさせてもらうか。 一定感覚で十字傷を竹の幹に刻んでいく、こうすれば同じ道を通った時に気づけるだろうしな。 人間まっすぐ歩いているつもりでも曲がっていたりするからな。 そんな事をしながら、かれこれ何時間歩いただろうか。 既に辺りは薄暗く、日没直前だ。 どうやら今夜は野宿せざるを得ないらしい、風邪を引く季節ではないのが不幸中の幸いか。 野宿を決意してから、僅か数十分ぐらいの感覚で日は没した。 丁度いい岩なども見つからなかったが、空が見える開けた場所があったのでそこで適当に腰を下ろす。 足が痛い、体をしっかりと鍛え上げていたが、一日中歩き続けるのは少々堪えたらしい。 ふくろはぎなどを揉みながら、足を伸ばして体をほぐしていく。 人の目では見通すことのできない闇の中で、帰れるのかねえと心に不安がわき始める。 遭難一日目だが中々に精神的に追い詰められてるみたいだ。 参っているのを自覚すると次々に弱音を吐きたくなってくる、欝だ……家に帰って酒飲んで寝たい。 ぐだぐだとしながら地面の上に横になり、空を見上げる。 見上げて気づいたが今夜は満月だったらしい、とするとあの月では今頃ウサギが餅をついてるのか。 腹が減ったから、餅をついているのならその餅を俺に寄越してほしい。 思わずそう叫びたい衝動にかられたが、叫んでもより腹が減るだけなので諦めた。 目を瞑って体を休めているが眠気は来ない、これはつらい。 それでもこのまま時間さえ経てば、自然に寝付けるだろう、それまで我慢だ、我慢。 寝るという決意を固めて、幾分か過ぎた後だろうか。 何かが爆発するような音が連続して聞こえてくる、人がいるのか? 身を起こし、暗闇に包まれた周囲を窺ってみるが、特に何かが見えるということはなかった。 「空耳か?」 空耳だとすれば落胆せざるを得ない、きっと夢だったのだろうと自分を納得させ、改めて横になる。 ……満月を後ろに背負い、人が飛んでいた。 思わず目を擦り、頬を叩いたりしたが夢ではないみたいだ。 「ありのままに起こったことを話すぜ……」 そんなフレーズがつい口から漏れる。 放心しながら浮かんでいる人を見ていると、どこからか光り輝く球体が無数に飛来してくる、まるで弾幕だ。 浮かんでいる人はそれらを軽やかに回避していく。 回避しながら向かう先には、炎の翼を背負った人影が狂ったかのように、大量の球体をばら撒いていた。 まるで御伽噺の世界だ、我を忘れて戦闘機のドッグファイトのような空中戦を観賞する。 何時間か経ったのだろうか、それとも数十分程度なのだろうか。 一際大きい爆音が響いた、どうやら決着がついたようだ。 炎の翼を背負った人影の一撃が直撃したらしい。 直撃をもらった人が煙を引きながら、落ちていく……こちらに向かって。 「こっちかよ!?」 どうするかと迷ったのがいけなかった、決断する前に受け止める羽目になった。 衝撃で地面に押し倒されつつも受け止めた人物――女の子を庇う様にしっかりと抱きしめる。 そして、筋肉痛で済めばいいなと、楽観的に考えながら地面を派手に転がり滑った。 10メートルは確実に転がったなと、自分の体が削った地面を見ながら、腕の中の女の子の安否を確かめる。 意識があるかどうかは分からないが、息はちゃんとしているようなので生きてはいる、ただし体の至る所に重度の火傷がある。 直にでも病院につれていかないと確実に死ぬだろう。 しかし、俺は遭難中……どうしようもない状態だ。 見知らぬ人物とはいえ、目の前にある命が失われていくのを見るのは流石に後味が悪い、なんとかしないと。 起き上がろうとしたところで思い出した、炎の翼をもった人影を。 空を見上げる、火球がこちらに飛んできていた。 追撃のようだ、御伽噺のようだからどこか安心していたのかも知れない。 だが、現実は非常である。 迫りくる火球から逃げようとして、足に力が入らず起き上がれなかった。 足を見ると関節が増えていた、さっきので折れていたようだ。 自覚すると同時に激痛が襲ってくる、そしてそれが決め手だった。 歯を食いしばり、少女を強く抱きしめ、火球に背中を向ける。 今の俺にできる事はこの程度だ。 熱いと自覚した時に宙を舞った感覚があった、それが俺が意識できた最後の感覚だった。 体中に走る痛みで目が覚めた、どうやら俺はまだ生きているようだ。 あの状態でどうやって助かったかは分からないが俺がこうして生きている以上、あの少女もきっと無事だろう。 体中に包帯か何かが巻かれている感触があることから、治療もされているらしい、誰だかは知らないがありがたいことだ。 目を開けようとして、目にも少しきつめに包帯が巻かれていることに気付く、これでは目が開けられない。 一瞬取ろうとしたが、取ると拙いだろうと思いなおし、腕を下ろす。 そして、治療されていることから、病院と判断してみて、手探りでナースコールを探してみるがそれらしい物は見つからない。 痛みに顔をしかめながら、体を起こし、どうしたものかなとため息を漏らす。 そんな時に扉が開くような音が聞こえてくる、誰かが来たらしい。 「あ、起きてる……てゐー、師匠呼んできて」 声の感じから若い女性の声だ、看護士の人かな。 彼女は体を起こしていた俺を寝かせると、色々と俺の体を触ってくる、検診してくれてるのだろう。 俺は丁度いいと思い、彼女に声をかけた。 「ところでどういう状況なのかを教えてもらえるとありがたい」 「ちょっと待ってね、そこらへんも含めて師匠が説明してくれるから」 看護士だろうと思われる彼女の師匠なら、きっと医者だな。 その言葉に納得した俺は師匠と呼ばれる人が来るまで大人しく待つ事にした。 その会話をしてから、幾分もしないうちに新しく扉が開く音が聞こえた。 「あら、本当にもう起きているなんて結構丈夫なのね」 「今軽く検診してみましたが脈等も安定しているので、もう大丈夫そうです」 声は柔らかく優しい感じだ、きっと綺麗な人なんだろう。 目が見えないのが非常に残念すぎる。 とりあえずは状況を説明してもらおう。 「そうね、何から聞きたいかしら?」 「俺と一緒に居た少女の安否から」 「あら、意外ね……彼女は無事よ、ピンピンしているわ」 「ならよかった、後は自身の状態とここがどこなのかを」 そして、師匠と呼ばれた医者――八意永琳の答えに俺は閉口することになった。 幻想郷、忘れられたものたちが流れ着く楽園。 まるで常世の国や桃源郷伝説だ、普段なら鼻で笑うところだが……意識を失う前に見た光景があるため否定できそうにない。 どうやら、俺はいつの間にか御伽噺の世界へ迷い込んでしまったようだ。 八意先生が言うには俺のように迷い込んだ外の人間を戻してくれる巫女がいるらしい。 怪我が治れば、その巫女に帰れるように頼んでくれるそうだ。 それまではゆっくり療養していいわよとのことだ。 治療代も払えない俺にそこまでしてくれる理由を尋ねたところ、俺が助けた少女は八意先生の主だそうで、そのお礼との事だ。 ただ全治三ヶ月以上はかかるそうだが……そこまで聞いたところで体力の限界が来たのだろう、妙に眠い。 そのことを八意先生に告げ、俺は起こしていた体を横たえる。 「何かあれば直に言って頂戴ね、それじゃおやすみ」 八意先生たちが部屋を退出する、俺はそれから直に眠りについた。 ふと目が覚める、傍に何かが居る気配がする。 気配は何をするわけでもなく、こちらを見ているだけのようだ、視線を感じる。 「誰だい?」 「あら、起きていたのね」 凛として透き通るような声だ、どことなく平伏したくなる。 「お礼を言いに来たわ」 「礼?」 礼ということは俺がかばったあの少女だろうか。 それを確認しようと俺が口を開く前に少女が答えてくれた。 「ええ、妹紅の攻撃を身を挺してかばってくれたお礼よ」 「巻き込まれて偶然そうなっただけだ、たいしたことはしてないよ」 「謙虚なのね、それでも助けてもらったことには変わらないわ……ありがとう」 本当に巻き込まれただけなんだがな。 「余り長居すると体に障るわね、今日はこれで帰るわ、おやすみなさい」 「ああ、おやすみ」 部屋から少女が居なくなり、部屋を静寂が支配する。 寝なおそうと思ったが目が冴えてしまっている、おかげで朝までのんびり考え事でもすることになりそうだ。 いつの間にか眠っていたのか、誰かに揺すられて目が覚めた。 どうやら、朝で朝食らしい。 目が見えない状態でどうやって食べようかと考えていたが杞憂だった。 「はい、あ~ん」 少女が粥をスプーンで掬って差し出しているようだ、口元に熱気が感じられる。 流石にこれは恥ずかしいので止めてくれるよう頼んだが、今の状態での介護を延々と語られた。 口を閉じて拒否の態度を示してみたが一向にスプーンが引くことはない、折れるしかないようだ。 大人しくされるがままにスプーンを受け入れた。 これが知人などに見られていたら、三日は部屋に閉じこもる自信がある。 「暇なんだな?」 「ええ、暇なのよ」 即答された、この少女は一筋縄ではいかない性格をしているようだ。 声を聞いたときに感じた印象は犬でも食わせておいたほうがいいみたいだなと思った。 することがないのかと思ったので聞いてみると。 「私は姫だから、何もしないのが仕事なのよ」 「そういうものなのか……」 「だから、暇つぶしに付き合って頂戴」 この日より少女――蓬莱山輝夜の暇つぶしに付き合うことが、俺の日課となった。 怪我人だから勘弁してほしいんだがな。 「○○、この間の続きを話して頂戴」 「この間というと……宇宙一かっこいいロリコン探偵の話か」 ここ永遠亭に来てから、かれこれ一週間は経った。 その間、暇つぶしに俺の部屋に姫さん――輝夜がよく顔を出してくる。 たまたま俺が知っているゲームや漫画の話をしたら、妙に気に入られて、強請られるようになった。 俺はさほど話上手ではないのだから、そうそう何度も強請られると困るのだが。 しかし、ベッドからまだ出れないので、話以外を強請られてもより一層困ることになるので、俺も強くは言えない。 ただ俺如きの話で一喜一憂してくれるのはとても嬉しいがね。 そして、話が佳境に入ったところで八意先生がやってきた。 「お楽しみのところ悪いわね、検診の時間よ、姫も後にしてくださいね」 「もう永琳ったら、もう少し待って欲しかったわ」 「検診が終わってから好きなだけ話せばいいじゃないですか」 「はーい、じゃあまた後でね、○○」 姫さんが渋々といった感じで話を諦めて、部屋から出て行った。 検診が終われば直に引き返してくるんだろうが。 「経過は良好……目はどうかしら? 痛みとか感じる?」 「いえ、特にはなにも」 「大丈夫そうね、じゃあ包帯を取るわよ」 目に巻かれていた包帯が取り除かれていく、徐々に感じられる光が強くなる。 しかし、右目にしかそれらが感じられない……どういうことだろうか。 包帯が完全に取り除かれた、ゆっくりと目蓋を開いていく、眩しい。 けれど、左目はやはり何も感じない。 「先生、左目が暗いままなんだが?」 「直に診るわ」 想像以上に綺麗な八意先生の手が、顔に触れる……柔らかい、思わずドキッとした。 頬が少し紅潮したが診断に集中しているようで気づかれていない、よかった。 「だめね、恐らく視神経が切れているわ……残念ながら失明よ」 「あー、ということは俺は今日から独眼鉄になるのか」 「意外と余裕あるわね」 実際は余裕などなく、かなりのショックを受けている。 茶々をいれたのは現実からの逃避だろう。 これで右目も死んでいたら、ショックで寝込んでいたのは間違いない。 「眼球そのものは無事だから、もう一度見えるようにこちらで何とかしてみせるわ」 「お願いします」 余り期待はしていない、見えるようになれば儲けものだ程度に思っておくのが適わなかった時にダメージも小さいだろう。 検診を終えた八意先生が部屋を出て行く、入れ替わるように姫さんが入ってきた、外で待っていたようだ。 「戻ってくるのが早いな」 苦笑しながら出迎える、そういえば姫さんの顔を見るのはこれが初めてか。 俺の目線に気づいた姫さんは、ぬばたまの黒髪を背中に流し、見る者を惹きつける笑みを浮かべた。 「目の包帯は取れたのね、よかったじゃない」 「ああ、おかげで姫さんの可愛い顔も見放題だ」 「ええ、じっくり見て頂戴、御代は後で頂くけどね」 「そいつは高そうだ、遠慮しておくよ」 ノリがいいお姫様もいるものだな、打てば響くのは話をしていて面白い。 この姫さんの暇つぶしに付き合っていれば、退屈しないでいられるだろう。 薄笑いを浮かべつつ、そんなことを考えていたら、姫さんが俺の左目を注視していた。 「ねえ、○○……その左目」 眼球が動いてなければ、そりゃ気にするか。 「大したことじゃないから気にしないでくれ」 視線から誤魔化すように俺は顔をそむける。 だが、そむけようとしたところを姫さんの手で顔を押えられてしまった。 「近い近い近い、姫さん顔が近い」 目と鼻の先に姫さんの美貌がある、これはまずい。 何が拙いかっていうと、俺の心臓がやばい、心臓がいってえ、緊張でキューっとしてきた。 「永琳は何と?」 「何とかして見せるだってさ」 「そう……なら安心ね」 姫さんが離れる。 ふぅ……心を落ち着けないと、流石に姫さんクラスの美少女のアップは緊張する。 姫さんは別に何も悪くないから気にしないでもらいたいんだがなぁ。 「どうせなら、いっそビームとか打てるようにしちゃわない?」 「そいつは名案だぁ……なんていうわけないだろ!」 「いいノリツッコミね、それでこそ○○……見込んだだけはあるわ」 杞憂でした、いい性格しすぎだな、おい。 こんな姫さんが主やってるから、八意先生も大変なんだろうなと思った。 しかし、そんな姫さんと付き合うのは中々に楽しい。 これなら幻想郷とやらの生活もずっと続いてもいいなと、その時の俺は思っていた。 新ろだ58 「地上も随分と変わったものね、風情がないわ」 「都心部だからな、仕方がないさ」 俺の隣で、高層ビルが立ち並ぶ風景を見回しながら、輝夜が不満を口にする。 服装も外界に合わせて、タートルカットソーの上に、ロングカーディガンを羽織り、靴はニーハイロングブーツだ。 流石は輝夜、何を着せても似合いすぎて、俺の理性が困る。 「まあ、いいわ……それより、○○のご実家はまだなのかしら?」 「ここから、2本電車を乗り継ぐから、後二時間ほどかかる」 「そう、じゃあ早く行きましょう、ここは不躾な輩が多いから」 「そうだな」 少しほど前、飲み物を買いに俺が数分いなかっただけで、輝夜の周りにはナンパの人だかりが出来ていた。 直、助けに駆け寄ろうとしたら、黙ってみてなさいと目で止められた。 その後は阿鼻叫喚だった。 最終的には、ナンパにきた男たちが「かぐや! かぐや!」と連呼する、調教された愚民になっていた。 数時間も放置していれば、集団デモ行動で通報されていたかもしれない、これがカリスマというものか……恐ろしい。 「永琳や鈴仙も今頃は、電車の中かしら」 「もう現地について、ホテルに入ってる頃じゃないかね」 緩やかに揺れる電車の中で、他愛もない会話を繰り広げる。 こういった何気ない時間が俺も輝夜も大好きだった。 「もしくは、どこぞでご休憩かもしれんよ」 「そこまでよ……と言いたいところだけど、それもいいわね、どう○○?」 「そいつは魅力的すぎる提案だが、時間はまだまだあるから、後の楽しみに取っておこう」 「そう残念ね」 艶やかに笑いやがって、人目がなければ確実に提案に乗っていた。 「それにしても、○○のご実家が楽しみだわ」 「ご期待に沿えればいいんだが、そんないいものじゃないぞ」 「それでもいいのよ、大事なのは○○……貴方の実家ということなのだから」 輝夜は本当に真綿で首を絞めるように、じっくり俺の心を溶かしていく。 もう抜け出せんな、抜け出す気など宇宙が滅ぼうともありえんが。 「着いたぞ」 「あら、至って普通ね」 輝夜の感想のようにどこにでもある一軒家だ、最後に見た時と何ら変わってない。 ちょっと感慨に耽りながら、鍵を取り出す。 鍵を開け、一足先に家に入り、輝夜に振り返る。 「ほら、いつまでも見てないで、とっとと入れ」 「はいはい、お邪魔いたします」 そのまま、輝夜を居間に案内する。 「きゃあっ」 そこで待ち受けていたのは何かが破裂するような音だった。 宙に紙のテープが舞う、パーティークラッカーだ。 「「おかえり~○○」」 「ただいま……つーか、輝夜をビビらせんな」 「「おお、熱い熱い」」 俺は音と同時に輝夜を抱きしめて、庇っていた。 そんな俺を見て、両親が茶々をいれてくる、これはうざい。 「さて、○○……その抱きしめてるお嬢さんはどちらさまかな?」 「初めまして、○○さんとお付き合いさせて頂いている蓬莱山輝夜と申します、宜しくお願いします」 俺の腕から逃れた輝夜が、居住いを正して、両親に挨拶をする。 「これはこれはご丁寧に、○○の父です」 「○○の母でございます」 そして、俺を見てニヤニヤするな。 でかしたとかいうな、親父。 もう「そこまでよ!」とか聞くな、お袋 輝夜もそれに乗るな! くそ、突込みがおいつかねえ。 「あははははははは、面白い面白いわ、貴方のご両親」 「ネタにされてる俺は面白くねーよ」 風呂を済ませて、寝巻きに着替えた輝夜が、俺の部屋のベッドで笑い転げていた。 俺はそれを憮然とした顔で愚痴っていた。 「あら、いいじゃない……ここは暖かいわ、ご両親の愛があふれているもの」 恥ずかしげもなく、そういうセリフをよくいえるものだ、これもカリスマか。 流石は姫様、そこに痺れる! 憧れる! ……なわけがない。 等と適当なことを考えていたら、輝夜の顔が少し翳った。 「だとしたら、私はその暖かさを壊そうとしていることになるのね……」 「それは違うだろ」 輝夜、それは大きな間違いだ。 子供は、いずれ親から離れて、巣立って行くものなんだぜ。 「今回は八雲紫がたまたまこういう企画を立てたけど、次があるとは限らないじゃない」 「そうなったら、そうなった時に考えりゃいーよ」 そういって、輝夜の隣に腰掛ける。 「何より、俺がお前と一緒に居たいんだ その子供の意思を尊重こそすれ、否定する親なんてものは早々いねえよ」 特に俺の両親だしな、幻想郷のことを話したら、移住しかねん。 俺が真摯な説得に納得したのか、輝夜は俺に抱きついてくる。 「その言葉……嘘だったら、永遠に殺し続けてあげる」 「上等だ、逆に俺の愛で、永遠に殺し尽くしてやるさ」 そのまま、俺は輝夜をベッドに押し倒し……「そこまでよ」 両親が気づいており、翌日ひたすらからかわれたのはいうまでもない。 新ろだ160 「ふぅ、流石に寒いねぇ」 俺こと○○は、一人渡り廊下に座り季節外れの月見をしていた 別に満月ですらなく、三日月とも半月とも呼べない中途半端な形をした月だけを肴にし、ちびちびと酒を呑む 場所は竹林の最奥、永遠亭 幻想郷に迷い込んだ際、妖怪におそわれその手当を受けたままなぁなぁで厄介になっている 本来ならば神社の巫女にあちら側へ送り返して貰うのが定石、というか普通一般にはみなそうするらしい のだが、別段あちらでしたいこともなし、流れに任せてみるのも一興かなぁと思ったのが運の尽きとでも言えばいいのか やたら俺に興味を持った人物が、そんな話をけしかけたのが事の発端ではあるのだが まぁそれが誰かといえば 「あら○○、今自分一人で月見?またずいぶんと酔狂ね」 そう、こいつである 黒く、床にまでつくほどに長い髪を持つ、日本人なら誰でも知っているであろう御伽草子のヒロイン かぐや姫こと蓬莱山輝夜その人である まさか当の本人だとは思わなかったが、話を聞く限りどうやら本物らしい 流石に御伽草子の登場人物とお知り合いになれるとは思っても見なかったわけで そんな人物から熱心にうちに住みなさいよ!とか言われたら承諾せざるをえないわけで 断れるわけ無いだろ、常識的に考えて いやほら、それ抜いても美人だしね輝夜って 男として、いや漢として断れないじゃない? 有り体に言えば惚れたのさ、一目惚れさ 「ん、輝夜か。何か用でも?」 ほろ酔いの顔を傾けて、輝夜の顔を視界に入れる 酔ってでもいないとまともに直視できない 初心だねぇ、とよく言われました 「用がなくては話しかけたらいけないのかしら?」 なんて言いながらにこりと笑う 畜生、卑怯だ可愛すぎるぞこいつ 「別にそうは言ってないけどね、一応こういうのはお約束だろう?」 「そういうものなのかしらねぇ。でもそれにしても時季がはずれ過ぎじゃない?十五夜にしても違うし、雪見というには時期尚早だし」 ふぅ、と軽くため息を一つ 「前にも言った気がするが、あんまり盛大に騒いで酒を呑むのは好きじゃないだけさ」 そういういかにも酒が合いそうなイベントでは必ず大騒ぎになる 酒は静かにちびちびと、が好きな俺にとっては以ての外 故に神社の宴会へも輝夜と永琳に、というか主に輝夜に行こうと言われているが断り続けている 酒を呑まなければ騒ぐのも構わないが、酒がその場にあるのに呑まない、というのもつまらない ふーんという声が聞こえたかと思うと、輝夜が横に腰掛けた 「…輝夜?」 「騒がなければ別に一人じゃなくとも呑めるわけね、だったら今ここで私と呑んでも問題はない、と」 ふふん、と得意げな顔をし上機嫌な輝夜 「ま、いいけどね」 言いつつちびちびと飲み続ける 酒の肴は今や微妙な月から輝夜との会話へと移行 やはり月などより美女の方が肴にはいい 先ほどより格段に酒が旨い 「ちなみにそのお酒何処から?」 「ああ、台所の奥にあったぞ。まったく、俺から酒を隠そうなんて百年早い」 「ああ、やっぱり」 なんか人を哀れむような目線を向ける 「やっぱりって何がさ」 聞きつつちびちびと、ではなく一度一気にあおる 「それ、永琳秘蔵のお酒よ?ばれて折檻で済めばいいわね」 ぶうぅー! 「げほっげほっそういうことは、もっとげほっはやくにだな…」 思わずあおった酒を吹き出す 酒が気管支に入るとろくな事が無い というか痛い 「あっはっはっはっはっは!まぁまぁ、ばれない程度に呑んで戻せばよし」 「戻せなかったら?」 「頑張ってね♪」 にこり、と殺人級の笑顔を向けて一言 ひでぇ、あんたひでぇよ 「冗談だって。そのときは一緒に怒られてあげるわよ」 からから、と一頻り笑ってふぅ、と息を整える 「はい」 ずいっと手を出すは輝夜 「…ん?」 「だから、はい」 ずずいっと 「いやだから何さ」 俺にお手でも求めているのかこのお姫様は 「何って、私の分の盃は?」 ああ、そういえば一人で呑むつもりだったので一つしか持ってきていない 今から取りに行くのは面倒だし、何より興が冷める さてどうするかと小考、一計を案じる 「輝夜、ちょっとこっちに」 こいこい、と手招き はいはいと応じる輝夜 それを見てから盃に酒を流し込み、それを更に自分の口へ含む 疑問符を浮かべる顔を掴み、状況を把握される前に素早く流し込む 当然のごとく口移しで 「ん~~~!」 数秒の口づけは口に含んだ酒を移し終わった刹那に終了 …………って 何をしてるんだ俺は 「あら、以外と大胆なのね」 された輝夜は、月明かりではわかりづらいながらも若干頬を赤らめる程度の反応 「酔いが冷めて猛省する姿が目に浮かぶわねー」 くすくすと笑う輝夜には口移しをされたことに対する反応は特に無い 「…冷める前から既に猛省してるわい。というか、されて嫌じゃなかったのか輝夜は」 んー、と思案をし 「そういう貴方は何で口移しなんてしたのかしら?」 質問を質問で返す輩は以下略 その質問に答えろと言うのですか貴方は 盃が無かったからと言うにも、その盃を輝夜に使わせればよかっただけであるし、何よりもそのようなことに及んだ最たる原因は 「好きだったから…かなぁ」 やっぱそれに尽きるんだと思う 何のかんの言っても一目惚れだしね、俺 「あらあら」 頬を赤らめるは輝夜 ん?今のもしかして声に出てた…? うわーい俺ってばだいたーん 今必殺の大暴露大会ですね 今まで一人でしか呑んでなかったから、自分がどう変わるかなんて把握し切れてなかったからかね 畜生、今日は厄日か 「それじゃあ答えね」 俺から一升瓶をひったくり、そのまま行儀悪くラッパ飲みの勢いで口に酒を含む 先ほどとは逆の関係で、酒を流し込む 酒を全て移し終わると、口づけは終了 「さぁ、私の答えは伝わったかしら?」 満面の笑み、恐らく自分が今まで見た中では最上級の笑顔を浮かべ 「これでも一目惚れだったんだからね?」 なんて、殺人的な一言まで発してきた くらり、と目が回る そのまま倒れそうになるのをこらえる 「さて、これでお互いの気持ちが確認できたわけだけど」 どうする?と蠱惑的な笑みを浮かべて誘ってくる 流石にこの輝夜なんて酒に溺れるのはまずい気がする が、それも一興である気がしないでもない いや、そうせざるをえない 輝夜から一升瓶をひったくり、同じように含みまた口移し 今度は口移し終わり、それを飲み終わっても続く長い口づけ 一分とも十分ともとれる口づけを終えると、その役割は交代する 酒が尽きるまでの無限ループ どちらが終えるともわからぬ行為を繰り返し、酔いは深くなる 「…んー」 昨夜はそのまま寝てしまったらしい 節々が痛いがそれよりも頭が痛い これは流石に 「おや、お早いお目覚めですね」 のみすぎた… 「え、永琳…お、おはよう」 ぎりぎりぎりとさび付いたように動かない首を動かして、ようやく顔が声の方向へと向く そこには鬼の笑みを浮かべた永琳が仁王立ち 鬼の笑みって何かって?殺気びんびんな笑みだよコンチクショウ 「昨夜はずいぶんとお楽しみだったようで。私秘蔵の日本酒を空にして姫様を籠絡してさぞ楽しかったでしょうね」 ろ…籠絡? 日本酒は勢いで空にしてしまった気がしないでもないが、と思いつつも辺りを見渡すと 明らかに着崩れして、この地獄の状況はなんのそのすっげぇ幸せそうな笑みを浮かべて爆睡中のお姫様 んふふー○○~そこはダメよ~は・ぁ・と じゃねぇですよ姫様 流石にその寝言は俺のデッドラインぶっちぎりですよ畜生 ぶっちぃんと 堪忍袋とか血管とかいろいろ混ぜて無いものも混ぜた物が一斉に切れた音 つまり俺の死亡フラグがたった音です わかれ 「さて、これから○○は私の実験…もとい説教に付き合って貰いますが異論はありませんね?」 あるとか言ったらこの場でバラすとでもいいそうな迫力 高速で首を縦に振りまくる むんずと首根っこをつかまれ、その場を引きずられて研究室へ連行 あわや実験体にされかけたところを遅れて起きた輝夜が気がつき事情を説明して平謝り ついで俺と輝夜の二人で平謝りして五時間正座で説教の後開放 事なきを得た 「流石に足が痛い…」 「私もよ…」 お互いに開放された後、研究室を出ながらお互いにぼやく うむ、流石にあの呑み方は危険すぎる 何より限度がない 今後はあんな呑み方は自重しよう なんて思った矢先 「ねぇ、また今度あれやりましょう?」 今度は怒られないように私の部屋でね なんて赤ら顔で言われたら、そんな豆腐の如き脆い決心はすぐに崩壊 嗚呼、もう抜けられそうにもない 新ろだ426 「暇ねえ・・・」 「暇ですねえ・・・」 と、ある竹林の奥の奥にある永遠亭で呟く二人 「○○ー、何か楽しいことないのー?」 「特にないですねえ・・・」 俺は○○。ごく普通の人間なのだが。 月から来た死なないお姫様に仕える人間。 ってだけで普通ではないかもしれない。 「もう・・・、なにか考えなさいよ。」 「そう言われましてもねえ。」 いつもなら永琳様や鈴仙がいるのだが、その二人は現在ほかの男たちと遊んでる。 従者で在りながら主と恋愛関係にあるというのは非常に失礼?なのかもしれないが、 姫様が望んできたことなので気にしないことにする。 「もう・・・、あなたは私のなんなのよ!」 この会話ももう何回したかも覚えていない。 それほど暇なのである。 「姫様の従者であり、輝夜の恋人ですよ。」 名前を言い換えてるのは自分なりのモットーである。 公私混合しない・・・ってのは違うか。 姫様は気にしていないようだが、やはりそれなりのケジメはつけておきたいし。 「暇ねえ・・・」 「暇ですねえ・・・」 っと、ここまでの流れはいつも通りだった。 「そういえば・・・」 姫様が口を開いた 「人間って本当に不便よねえ・・・」 「そうですかね?特に不便なことなんてないと思いますが・・・」 「不便よ。だって長くても100年・・・。赤子のときもあるから50年一緒に居れればいいほうなのよ? そんな短い時間で私を満足させれるのかしら?貴方は。」 確かにその通りかもしれない。 俺は普通の人間。 相手は死ぬことのない人間。 俺のほうが早く死ぬに決まってる。 「・・・俺が死んだら、姫様はどうしますか・・・?」 「そうねえ・・・、どうするかなんてわからないけど。 とりあえず泣くと思うわ。 泣いて泣いて、貴方のことを恨むわ。」 「恨まれちゃいますか。まぁ姫様を残して死ぬんだから当たり前ですよね・・・」 「貴方はどうするのかしら?私のために、何ができるのかしら?」 「俺は姫様の従者ですから・・・、命令されれば何でもしますよ。」 従者は命を懸けて主を満足させる。それが従者らしい。 「じゃあ私が貴方に死ぬな、って命令をすれば死なないのね?」 「勿論ですよ。まぁ永琳様の協力が必要になるでしょうが・・・」 「判ったわ。それだけで十分よ。 ただし、○○。」 「生きてる間は、私のために尽くしなさい。 私のために尽くし、死になさい。 これが命令よ。」 「難しい命令ですね。」 「そうかしら?これでも譲歩したつもりよ?」 「俺としては、生きてる間は姫様のために尽くし、 蓬莱人になっても尽くし続けたいんですがね。」 「ならばずっと生きてなさい。それでいいわ。」 主の満足気な顔。 それが恋人としての最高の笑顔である。 それを守るために俺は生き続けたい。
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輝夜3 うpろだ578 かなり面倒だったが里のじいさんからある事を頼まれどうせヒマでやることもなかったので永遠亭へ行く事になった。 しかし俺は当の永遠亭とやらへの行き方を知らない。 請け負ってしまった手前、簡単には帰れないのだが・・・・さてどうするか。 この竹林、一度迷えば抜け出すことができないほどの迷所らしい。 しかも入ればかなりの高確率で迷うときた。 「ここは意を決して入ってみるか・・・?」 「あ、○○。こんな所で何してんの?」 竹林の前で唸っていると妹紅がふいに現れた。 藤原妹紅。ひょんな事から(本当にひょんなことなのだ、話せば長いが)知り合いになった娘である。 よく竹林周辺で見かけるなと思ってはいたが、本当にここに縁があるな。 「ん?○○、その手に持ってるのは」 「言っとくけど食い物じゃないぞ」 「私が掠め取るような子に見える?」 いや、だって焼き鳥屋って自称してたし。 「いや、里のじいさんから頼まれ物。前に怪我したときに永遠亭って所で世話になったんだそうだ」 「それはお礼の品ってわけね。でも何でそのお爺さん、自分で行かないの」 「・・・それはまあ、アレだ。この竹林の怖さを身をもって知ったんだろうよ」 俺がヒマそうだったからどうせだし若いモンに押し付けとけ、みたいな感じでもあったが。 「ふーん・・・どうせ永遠亭への行き方なんて知らないんでしょ、私が案内してあげるよ」 「お、助かる。お前がいなけりゃ竹林の中で白骨死体になってたところだ」 「ま、この貸しは高くつくけどね」 慣れているのだろう、特に気負いする事もなく妹紅は竹林の中へ入っていった。 俺もそれに続く。 「なあ妹紅」 「なに?」 「輝夜さん、って知ってるか?なんか永遠亭に住んでる偉い人らしいんだが」 「・・・知らん。あんな悪女に用はない」 つまり知ってるのか。 このしかめっ面と無愛想な言葉からするとかなり嫌っていると見える。 「薬師さんだけじゃなくて、その人にも挨拶して来いって言われてさ。そこの主人なんだろ?その人」 「だから知らんと言ってる」 「仲悪いのか?」 びきり。 いや、比喩とかじゃなくて、本当にそんな音が聞こえたのだ。 …これは地雷を踏んだかな? 「・・・○○は本当にあのメス豚を知らないの!?」 「オイなんか急に変わったなオマエ!」 あとメス豚はいくらなんでも止めてやれ。 「はあ、嘘じゃねえよ・・・で、何だ?その輝夜さんとやらはそんなに悪名高いお人なのか?」 「悪名高いなんてものじゃない!あいつは私と殺しあう仲なんだっ!」 マジですか。 そこからの妹紅はすごかった。 まさかあんなに熱い一面を持ってるとは思わなかったよ。 今までのが彼女の双子の妹だった、って言われても信じられるくらいだ。 その輝夜さんのことについて一喜一憂しては顔を赤くしたり青くしたり拳を握り締めてそこいらの竹を張り倒したり。 …ちょっとイメージ変わったなー、俺。主にマイナス方向に。 妹紅の話によれば、その”輝夜さん”って人は世界中の悪女の頂点に立っていて、ただのぐーたらで、 千年間引きこもりしてて、人の話は聞かないわワガママ言うわ出したものは片付けないわ、おまけに一週間に一度しか風呂に入らないらしい。 顔だけはいいからそれを使って男を騙して貢がせて、彼女が通った後には男たちの屍累々・・・という感じだとか。 ―――なんかもうよくわからないよな。 なんだそりゃ。 わけわからん。 あとちょっとばかり嘘混じってないか?どこぞの姫様らしいが一週間風呂なしはキツイぞ。 「ちなみに輝夜と書いて”てるよ”と読むから気をつけて。もしかぐやなんて口にした日には何よりもむごい殺し方をされるから」 てるよ?お前さっきまでかぐやって呼んでなかったか? 「かぐやは愛称。 とにかく!私が言いたかったのはあの女には気をつけろ、ってこと。 本当は行かせたくもないけど・・・まあ、○○なら興味わかないよね多分」 …何気に失礼じゃないか? 「じゃ、ここで別れよう」 「ん?永遠亭なんてまだどこにもないぞ?」 「ここまで来れば大丈夫、真っ直ぐ行けば無駄にでかい建物が出てくるから。 ・・・それに今会ったら抑えきかなそうだし」 怖っ。 「じゃ、私は適当にこのあたりをうろついてるから・・・何かあったらすぐ呼ぶこと。いい?」 「何もないと思うけどな・・・」 「すぐ帰ってくるんだよ!」 そう何度も何度も忠告、もとい警告されて、俺はやっと永遠亭へと向かった。 「ごめんくださーい」 でかい建物の扉を叩いてみる。 だが一向に誰も出てくる気配がない。もう10分くらいこうしてるんだが。 …まさか誰もいないのか?確かに人気なんてまったくないが・・・・ …本当にてるよさんが怖い悪女だったらどうしようか。 俺は生きて帰れるんだろうか。 いまさら心配になってくる。 すると、扉がゆっくりと開き始めた。 「まったく、みんないないのかしら・・・・・はい、どちら様?」 中からは実に古風なお嬢さんが出てきた。 どう見ても不機嫌そうだ。 「あ、その・・・・てるよさん、っていらっしゃいますか?ここの主人て聞いてるんですけど。もしくはここの薬師さんとかでもいいんですけど」 「・・・・・・」 「悪い、あ、いや、すいません」 なんで俺は意味もなく謝ってるんだろうか。 地雷を踏んだという直感でもしたのか? 思わず目をそらしてしまったが、もう一度見るとやっぱり無言で俺を見ていた。 そしてようやっと、その子は口を開きかけたのだが・・・・・ 「・・・・・・・」 なんか、心なしか視線が怒りから驚きへ変わっていってる気がする。 お嬢さんはぽかんとしながら、何かを言いかけた口を丸くさせていた。 なんか、俺をじっと見て軽く目を見開いたような・・・ 何に驚いてるんだこの子は? 「・・・・・気にしなくていいわ。 それよりここに来れるなんて珍しい客人ね・・・・」 珍しい・・・やっぱり大抵の人はここに辿り着く以前に迷ってしまっていたようだ。 あのじいさん運が良かったんだな。 「いや、この前ウチの里のじいさんがお世話になったらしくて・・・ 俺が代わりにお礼の品を届けに来たんですけど。薬師さんと主人にも挨拶しとけって」 「薬師は今出払ってるわ、主人は私だけど・・・」 なんと、本人。 この人がてるよさんだったか。 …怖い人には見えないんだが、妹紅。 「なんだ、丁度よかった。じゃ、これ。多分美味しいものでも入ってると思うから」 そして箱を渡す。 「じゃ、用は済んだしこれで」 さっさと妹紅のところに帰るとするか。かなり心配してたし。 と、いきなり腕を掴まれた。 「ちょ、ちょっと待って!」 「・・・何ですか?」 「せっかくここまで来てくれたんだし、お茶くらい出すからゆっくりしていきなさい」 「はぁ・・・・」 曖昧な返事をすると、”てるよさん”とやらは俺の腕を掴んだままずんずんと進み始めた。 そして着いたのは綺麗な客間。 外から見ても壮大だったが、やっぱり中もかなり広い。 ぐーたらだとか言われていたが結構キレイだった。 「ここ座って」 てるよさんに言われ、椅子に座る。 「飲み物は何がいい?緑茶?紅茶?あ、お菓子もあるから食べていく?」 「・・・じゃ、緑茶で」 「それじゃ、ちょっと待ってなさい」 彼女はお茶をいれに行った。 …自分でいれるのか。姫だと聞いていたからそんなことしないと思ってた。 なんかどんどんイメージが変わっていく。 あれはいい人なんじゃないのか妹紅? そういえば俺なんでこんな事してるんだっけ。 「はい、いれてきたわよ」 「どうも・・・・」 湯飲みを受け取ると、てるよさんも椅子に座った。 てるよさんは一口、緑茶を飲むとまた口を開いた。 「名前」 「は?」 「・・・・貴方の名前。なんていうの?」 ああ、俺の名前ね。 「○○だけど」 「そう・・・・○○ね」 でも名前なんか知ってどうするんだ? まさか俺は気に入られてしまったのか?そして貢がされるのか? …ありえない、と思いたい。 俺は何かしたのか? 名前を知らなきゃいけないほど俺は重要人物なのか? 今の所、何もしていないと思うが・・・多分。 じゃあ、なんだ・・・・? 「○○」 考え事をしているとふいに名前を呼ばれた。 「な、なんでしょう・・・・てるよさん」 「なんで急に敬語になるのよ。あと、私の事は呼び捨てでも構わないから」 言葉遣いとかは関係ないみたいだ。 「じゃあ、てるよで」 「・・・てるよじゃなくて、かぐやよ」 「・・・やっぱり?」 「何それ。まあ、私の事はかぐやと呼びなさい」 「じゃあ、輝夜」 「ええ、それでいいわ。 ・・・・で、聞きたいことがあるんだけど○○。貴方は私の事知らなかったの?」 ……なんだ、この知ってて当たり前だろみたいな質問は。 「ああ、知らなかった。今日知り合いに聞いて初めて知ったよ」 「そ、その知り合いになんて聞いたの・・・・!?」 「!?」 今、ちょっとびっくりしたよ。俺。 一瞬だけど輝夜の目がカッと開いたぞ。 つか、なんか焦ってないか?何故? 「あー・・・・なんか男を騙して貢がせる悪女で ただの引きこもりで、お風呂には一週間に一度しか入らないようなぐーたら姫様だって聞いたけど・・・・って、聞いてるか?」 聞いてきたから説明したのにこの人自分の世界行ってるよ。 なんか、凹んでるような・・・? そんなオーラが出てる気がする。 え、この子自分が周りにどう思われてるか知って凹んでんのか? そりゃあ確かに最悪な人物像だけど、そう思われるのを覚悟の上で生きてきたんじゃないのか? それともアレは妹紅の言い過ぎか? 確かにそう思ったけどもさ! 「おーい、大丈夫デスカ・・・?」 「・・・・・・」 「えーと、輝夜?」 「・・・大丈夫。何もないわ」 あ、なんか復活したっぽい。 「それならいいが・・・じゃ、そろそろ俺おいとまするよ。ごちそうさまでした」 そう言い、立ち上がると輝夜は勢いよく止めてきた。 「え、もう帰っちゃうの!?まだここにいてくれても構わないのよ!」 「俺、知り合いのところ早く行かなくちゃいけないし・・・」 なんで引き止めるんだ? それにしても早く帰らねば。待たせては悪い。 「・・・そう。じゃあまた近いうちに遊びに来なさい」 「え・・・」 「来るわよね?来てくれるわよね?というか来てください」 お願いされたーーーーーーー! 「わ、わかった。それじゃ!」 そう言って俺は俊足でその場を離れ、竹林へ帰った。 俺が戻ったときの妹紅の表情はなんとも言えないものだった。 不安、心配、安心が入り交ざったような。 「すごい心配したんだよ!大丈夫!?何もされてない!?」 「ああ、まあ。でも、なんか引き止められて」 「引き止められた!?ひどいことされてないよね、あんな悪女のそばにいて・・・」 本当に無事!?と心底心配そうに俺を見上げる妹紅。 「いや、全くと言っていいほど怖くなかったけど」 「けど?」 「・・・・俺からの印象で言えば、」 かぐや姫は変な人。(怖い要素なんてひとつもありゃしない) ─────────────────────────────────────────────────────────── うpろだ580 退屈ね・・・・。 一通りネット巡回を終えた私は私室でぼーっとしていた。 と、何か音が鳴っているのが聞こえた。 どんどん、どんどん。 「あー・・・えーりん、出といて。また怪我したじいさんとかだろうから」 寝そべりながら言う。 …だが、いくら待っても返事はない。 その間にも扉を叩く音は大きくなっていく。 「うるさいわね・・・」 インターフォンがついているのに気付いていないのだろうか。しかも最新式カメラつき。 本当に誰もいないみたい・・・仕方ないけど出るか。 扉を開けるとそこには背の高い男がいた。 しかも出会い頭にてるよなんて言ってきやがった。いい度胸してるわねコイツ。 「悪い。あ、いや、すいません」 そんな謝り方で済むと思って・・・・・ ってちょっと待って。 よく考えてみればコイツかなり運のいい男ね・・・珍しい、迷わずに来れた者なんて。 …それを言ったらあのじいさんもだけど。 「・・・気にしなくていいわ。 それよりここに来れるなんて珍しい客人ね・・・・」 わ、私は何を言ってるの? あんな不躾な言葉を言われたんだからもうちょっと怒ってもいいはずなのに。 「薬師さんと主人にも挨拶しとけって」 しかも、私。 本人目の前にしてそんなこと聞くなんてこの人は私の事知らないのかしら。 彼に、私が主人だと言えば、箱を渡された。 お礼の品を渡すためにここまで来たのね。 「じゃ、用は済んだしこれで」 そう言って帰ろうとする彼を私は慌てて引き止めた。 「ちょ、ちょっと待って!」 私が止めると彼は少し驚いた顔をした。 私だって驚いてるわよ。 なんたって体の方が先に動いたんだから。 そして彼をお茶に誘い、客間まで連れてくることに成功。 彼に緑茶と紅茶どっちがいいか尋ね、二人分の緑茶を用意する。 入れ終わると片方を彼に渡し、私も椅子に座った。 そういえば私、この人の名前まだ知らないわね。 「名前」 そう一言言うと聞き返された。 言葉足らずだったかしら。 「・・・貴方の名前。なんていうの?」 そう聞けば分かってくれたみたいで答えてくれた。 「○○だけど」 ○○って言うのね。 ○○、○○、○○、○○○○○○○○・・・・・ よし!覚えた。もう忘れない。 もし忘れたりなんかしたら自分で自分を殺してやる。 「○○」 「な、なんでしょう・・・・てるよさん」 名前を呼べば敬語で返ってきた。 さっきは普通だったのに。 だから○○に敬語を止めてもらい、呼び捨てにするように言ってあの不名誉な名前も訂正した。 で、さっきから気になってたことを○○に聞く。 「○○、貴方は私の事知らなかったの?」 本当に知らなかったらこれから私のいい所をたくさん知ってもらおうっと。 「ああ、知らなかった。今日知り合いに聞いて初めて知ったよ」 なんですって!? 知り合いから私の事聞いたの!? ちょっと、その人○○に変なこと言ってないわよね!? 「そ、その知り合いになんて聞いたの・・・・!?」 「!?」 あ、今○○の表情が強張った。 びっくりしたわよね。 大丈夫、私自身もびっくりしたから安心して。 「あー・・・なんか男を騙して貢がせる悪女で ただの引きこもりで、お風呂には一週間に一度しか入らないようなぐーたら姫様だって聞いたけど・・・・って、聞いてるか?」 なんてことを! 貴方の知り合いはそんなこと言っていたの!? 私の印象絶対悪くなってるじゃないのよ!! というか絶対それあの下賎な女、詳しく言えば藤原妹紅よね!? ちょっと!殺すわよ!? ダメダメ・・・そんなことしたら○○に嫌われちゃう。 私が黙り込んでしまったのを心配してか、○○は声をかけてきてくれた。 「おーい、大丈夫デスカ・・・・?」 ダメよ・・・・○○・・・・。貴方の声がだんだん遠く・・・・ 「えーと、輝夜?」 ○○に名前を呼ばれて私ははっとした。 いけないいけない。自分の世界に入り込むところだったわ。 そう、てる・・・じゃなくて輝夜ワールドに。 でも、もう大丈夫よ。 ○○が名前を呼んでくれたから元気でたわ! 「・・・大丈夫。何もないわ」 「それならいいが・・・・ じゃ、そろそろ俺おいとまするよ。ごちそうさまでした」 「え、もう帰っちゃうの!?まだここにいてくれても構わないのよ!」 まだ○○とお話したいのに! 「俺、知り合いのところ早く行かなくちゃいけないし・・・」 私が止めると○○は少し困った顔をした。 それじゃあ、これ以上は止められないわね。 妹紅にはあとで仕返しするとして・・・・今は無理矢理しても○○に嫌われてしまうわよね。 そんなの嫌すぎる! 「・・・そう。じゃあまた近いうちに遊びに来なさい」 私がそう言うと○○は少し戸惑った。 だからまた来てくれるように頼んだら快く引き受けてくれた。 流石○○。優しいのね。 ○○はよほど大切な用事があったのか、さよならの挨拶をすると急いで帰っていった。 「○○、か・・・・」 次はどんなお話をしようかしら? 「あら、姫。今日は機嫌がいいですね。何かいいことでも?」 「ああ、永琳。私はね、今日恋をしてしまったのよ」 「そう、なるほど恋を・・・・は!?」 かぐや姫恋をする。(貴方のことが頭から離れないわ!) うpろだ582 「○○、今日の夜ちょっと時間あるかしら?」 「ああ、いたってヒマだが」 「じゃあ、今日の夜12時に私の部屋へ来て!」 某日。 月が綺麗な夜。 あの『ちょっと変な』輝夜に誘われ、永遠亭へ向かう。 最近は妹紅に頼まないでも一人で迷わずにここへ来れるようになった。 それもある意味必然というか、仕方ないのだが。 何故なら・・・・・ 「・・・・またか」 狭い竹林の中には所狭しとカラフルな標識が掲げられていた。 『永遠亭はこっち』『おいでませ永遠亭、主に○○』『ここを右に曲がって左へターンよ』『○○、絶対に迷っちゃダメよ!』 最後の一つは俺へのメッセージだろどう見ても。 ここはみんなの竹林じゃなかったのか。 何回も止めろと言ったのだが・・・聞き入れてはもらえなかったようだ。 はっきり言って恥ずかしいんだよ!個人名書くのは止めてくれ! 「そういえば妹紅最近見ないなあ・・・・・」 修行してます。打倒てるよ。 そして到着(せざるを得なかった)、永遠亭。 さすがにお誘いを無視はできないからな・・・したらしたであっちから来そうだし。 俺はここ数週間輝夜と交流を持っているが、相変わらずよく分からない。 とりあえず分かるのはただ一つ。 あいつのイメージがどんどん変わっていってる事だけだ。いろんな意味で。 そしていつの間にか仲良くなった薬師のえーりんやらペットのうどんげやらてゐやらと挨拶を交わして中へ入れてもらう。 あいつらは俺が来るたびに哀れみの視線を向けてくる。 言いたいことは分かってるよ。『ああ、またか』『あんたも頑張ってるね』『ま、どんまい』 俺もそんなあいつらに生温い視線でもって答え、そしてかの姫に会いに行くのだ。 …輝夜も、悪いやつではないんだけどなあ。 コンコン。 「輝夜、入るぞ」 「あ、○○来てくれたのね!ありがとう!さ、早く入って!ここ座って!」 部屋に入れば、待ってましたと言わんばかりに輝夜に歓迎された。 そして、いつものように椅子へ座る。 「○○!今日何の日か知ってる?」 「月曜日」 そう即答すると輝夜は一気に落ち込んだ。 バックが黒いんだが・・・・!! 何故だ!?今日は月曜日だろう? どうして凹む!? 「おい、輝夜・・・?」 「ふふ、そっかぁ・・・今日は何の日か知らないのね・・・まあ、月曜日ってのは合ってるけど・・・ボケにしても最悪よ・・・・ うん・・・・○○知らなかったのかぁ・・・・教えてないから仕方ないわよねぇ、ふ、ふふふ・・・・・」 怖いんだが・・・・・・!! 何か、ブツブツ言っている!! 「えーと、輝夜さんや。今日は一体何の日何ですかねぇ・・・・」 あまりにも凹んでるから今日は何の日か聞いてみた。 「え、知りたい!?○○知りたいの!?」 オイオイ。 今のは確実にウザいぞ、てるよ。 「あ、ああ」 「聞いて!今日はね!私の誕生日なのよ!」 誕生日? 「輝夜今日誕生日なのか!?」 「ええ!」 「そうだったのか・・・誕生日おめでとう」 「ありがとう○○!」 「でもなんで俺なんか誘ったんだ?しかもこんな夜中に」 ここにはたくさん輝夜の家族がいるっていうのに。 「それはやっぱり○○に一番に祝ってほしかったからよ。 もちろん永琳たちとも祝うけど、誕生日を迎える瞬間に○○にいてほしかったの! ・・・いつもは誕生日なんて重要じゃないから忘れてるんだけど、今年は、○○がいるから」 ……お。 こいつでもこんな、普通の女の子らしい顔、できるんだな・・・・ 「ま、付き合ってやるよ」 「ありがとう!今日はケーキとか色々用意してるのよ!食べていってね」 そう言って輝夜はケーキやら菓子類をこれでもかというくらい持ってきた。 おいおい、ちょっと待て。こんなに食べきれないぞ。 全部片付けようと思ったら朝までかかるんじゃなか? 「いっぱい食べてね」 「お、おう、ありがと・・・ってワンホール!?」 いっぱい食べてね、の言葉と一緒にホールケーキ丸々一個突き出されたぞ!? 「え、足りない?やっぱり男の人はよく食べるから一個は少なすぎよね」 「足ります足ります足りすぎます一個で十分です!」 こいつ一体何個ホールで持ってきてんだよ! さらに二つ出してきたぞ! 「そう?よかったらこれも食べて」 「いや、いい・・・そんなに食ったら太るしな」 「○○男にしては全然細いじゃない。むしろもっと太りなさい」 「余計なお世話だ」 つーかそんなに甘いモン食ったら病気になるんだよ!! 本当に世間知らずな姫様だなオマエは! それから色々あった。 輝夜がおもむろに蝋燭をどさっと袋で取り出して『年齢分飾るのよね』とか言って袋ひっくり返してケーキがロウまみれになったり。 クラッカーなるものを間違えて自分に向けて発射してしまい驚いて騒ぎまくったり。 何故か菓子袋の中にネズミ花火が紛れ込んでいてさらに何故か発火(お約束)、やっぱり大騒ぎになったり。 まあそんな感じで、ケーキを食べて(結局半分しか食べれなかった)、紅茶も飲んで、輝夜と色々話している間に数時間が過ぎた。 「あ、もうこんな時間ね。朝日が昇ってるじゃない」 「結局徹夜かよ・・・・・・」 「○○、もう帰る?それともこのまま残って一緒にみんなでお祝いする?」 「んー・・・今は寝たいんだが、まあ、いいか」 こんな日があってもいい。 というわけで残留コース決定。 「なあ輝夜、初めに祝ってもらう相手が俺で本当によかったのか?」 「もちろんよ!楽しかったわ、ありがとう。・・・これ、来てくれたお礼。よかったら貰ってくれる?」 輝夜に何か小さな包みを渡された。 開けてみると、そこには歪な形をした黒いクッキーが数枚、入っていた。 「・・・これは?」 「焼いてみたのよ、○○のために。 ・・・失敗したんだけどね、上手くいかなかったわ。 ―――こんなのじゃ、やっぱりお礼には釣り合わなかったわね。返しても、いいわよ」 …ったく、菓子なら最初に出しておけというに。 おかげでこんな雰囲気になっちまったじゃないか。 もう、菓子なんて食べ飽きて当分はゴメンだが――― 「・・・ん、美味いよ」 「!○○・・・・別に、お世辞はいいのに」 「そんなんじゃない・・・・ありがとな」 「あ・・・え、ええ・・・・・」 そんな顔されたら、こっちまでどうにかなってしまいそうじゃないか。 ったく・・・輝夜のやつ。 「今度何か礼するよ」 「じゃあ、今ちょっとお願いがあるんだけど・・・・」 「何だ?出来ることならするぞ?」 「・・・もう一度、おめでとうって言って」 「そんなのでいいのか?」 「うん」 「輝夜、誕生日おめでとう」 「ありがとう!」 かぐや姫の誕生日。(あれ?祝うつもりだったのに逆にプレゼントされたな・・・何故だ?) うpろだ586 「○○、遊ぼー!」 「お、てゐか」 いつものように永遠亭で過ごしていると悪戯兎のてゐが話しかけてきた。 …いつものように、か。 俺もここにいるのが普通になってきたな・・・ それにしてもてゐがこうも素直に真正面から話しかけてくるとは珍しい。 普段はもっとこう、後ろから不意をついて転ばせるくらいなのに。 …これは何かあるな? 「よし、受けて立とう。これでも昔は里髄一のトラップマスターと恐れられたもんだ」 「ふふ・・・何のことかウサ?」 「お前がウサウサ言ってるときは絶対何かあるんだよ」 ここ最近ずっとここにいてこいつらと付き合ってきたので大体の性質は理解できる。 売り言葉に買い言葉ってやつで、こいつの罠をどう潜り抜けようか楽しんでる俺も俺だけどな。 てゐもそれを分かって俺に罠をちょこちょこ仕掛けてるみたいだし。 「で、今日は何だ?もう縄系の罠にはひっかからないぞ、前回で極めた」 「さすが・・・・この私の認めた男○○! でも強気でいられるのも今のうち。なんたって今回はとっておきの――――「○○!」 構えていると急に輝夜が声をかけてきた。 「てゐと遊んでるの?」 「ああ」 「ふうん・・・・ま、てゐなら心配は要らない、わよね?ふふふふふ」 『心配は要らない』のところをやけに強調して、満面の笑みで輝夜が言う。 「!・・・・・そ、そうウサね・・・・ ・・・○○っ!私は罠を練り直してくるウサ。だからゆっくりしててね・・・ウサウササ~」 逃げるようにてゐはどこかへ走っていった。 「・・・いくらなんでもウサ使いすぎだぞ・・・」 「あら、どうしたのかしらてゐってば」 多分お前が怖くてこの場にいれないんだと思うぞ。 「○○、何して遊ぶの?」 「さあ・・・まあ、てゐの罠に付き合ってやるくらいだよ」 「そう。怪我しないようにね!突き指とか気をつけるのよ」 「今までそんなことなかっただろ?俺、運動神経いい方だからそんなヘマはしないって」 「今回はあるかもしれないじゃない。○○の手はキレイなんだから、怪我したら台無しよ!」 「はは、心配どうも。じゃ、俺そろそろ行くな。また後で!」 そう言っててゐの行った方へと走る。 まさか、輝夜があんな心配するとは思ってなかった。 手がキレイ、とか男に言う言葉ではないが・・・・ ちょっと変わってるけどやっぱりいい奴だな。 その後はてゐとの罠合戦も乗り越え、永琳から差し入れも貰い、実に穏やかに永遠亭での日常は過ぎていった。 そして今。 「わーい!○○、悔しかったら捕まえてみなさいよー!!」 「言ったなコノヤロウ!」 まさにてゐとの追いかけっこなわけである。 そのやり取りは実に和やかに見えるが侮るなかれ。 二人とも結構全速力(特に俺がかなり疲弊している)。 …あんな子供に俺が本気を出すのもかなりアレだが、そうでもしないと追いつけないのだ。 一体何なんだあの兎っ娘は。 いや普通ではないことは分かっているけれども。 「よし、追いつきそうだ・・・・!」 てゐの耳が俺の目の前で揺れている。 耳でも何でもいい掴んだモン勝ちだっ!! だが事態はそう甘くはなかった。 「てゐ、獲ったり・・・・っ、うお!?」 「うきゃあっ!」 後もう少しというところで直線上にいた誰かに激突してコケた。 「痛って・・・・」 「うわぁ!○○ごめんなさいっ!」 そこにいたのはうどんげだった。 彼女の方も尻もちをついてかなり慌てている。 「大丈夫、足痛くない!?」 「ああ、大丈夫」 「ほんとに!?真正面から当たっちゃったけど・・・・」 「ちょっと何そこで二人してコケてるの?」 てゐも様子を見にやってきた。 「うどんげこそ大丈夫か?」 「え!あ、私は平気。人間より丈夫だし・・・本当にごめんね」 「○○、念のために診てもらってきたら・・・?変に捻ってたりしたら大変よ」 てゐが指し示したのは永琳のいる治療室の方。 うどんげなんかもう泣きそうだ。 「うどんげは悪くないだろ、俺の前方不注意だ。それに足、痛くないから。気にするなよ」 「男らしいこと言うのね!ほら、うどんげも早く立って」 「うう・・・○○・・・!」 そんな会話を背にし、俺は永琳の所へと向かった。 「大丈夫、強く捻ったりしてないみたい。うまく転んだのね。これなら大丈夫よ。 あ、でも一応念のため足に負担のかかるようなことはしないようにね」 「ありがとう、永琳。それじゃ」 足に異常はないようだ。よかった。 それにしても、あんなところでコケるとは思ってなかったなあ・・・ うどんげが相手だったからだろうか。 あいつ、結構鈍くさいからな・・・ 「○○っ!」 「か、輝夜!?」 うわ、びっくりした。 「今永琳の所から出てきたけど怪我!?」 「ああ、ちょっとコケて。うどんげと正面衝突しちまったんだよ」 「コケたの!?うどんげと当たって!?待っててうどんげすぐシメてく「やめてください」 何もそこまでしなくても。 お願いだから永遠亭で殺人を起こさないでくれ。 「本当に平気だから。何も心配しなくていいから!じゃ、俺戻るな」 「む、無理はしないようにね!」 「分かってる」 今日はコケたのを理由に一日中輝夜に心配された。 自主的に何か手伝いをしようと永琳の薬瓶を運んでいたときも。 「○○!そんなに重いもの持って平気!?足に負担かからない?私が持ちましょうか?」 「大丈夫、俺一人で行けるから。それよりお前も何か自分の仕事しろよ」 昼飯を食いに二階へ上っていたときも。 「○○、どこ行ってたの?」 「え、二階。あそこで弁当食うと竹林が見えていい景色だし」 「あの二階までの長い階段上ったの!?ダメじゃないのよ!! 足に負担かかるでしょ!?無理しちゃダメだって言ったのに!」 無理なんてしてないんだがな・・・ 「ん、悪いな・・・」 「・・・私も言い過ぎたわ、ごめんなさい。 それより何で言ってくれなかったの、ご飯なら私が食べさせてあg「お前はまず自分の茶碗を片付けろ」 「○○、今日何か疲れてない?」 「あー、わかるかてゐ?今日やたらと輝夜に遭遇するんだよ」 「そ、そう・・・ウサウサ」 「・・・・・・・。 ちょっと俺トイレ行って来るよ」 「あ、うん、行ってらっしゃい」 そして廊下に出る。 「○○!」 「わっ!?お、驚いた・・・・」 急に現れるの止めてくれ・・・本気で驚く・・・・ 「○○どこか行くの?」 「あ、ああ。ちょっとな」 「どこに行くの!?私も行くわ!」 それは勘弁してください。 「トイレだからついてこなくていい!なんで俺にいちいちついてこようとするんだよ・・・・」 「私、○○のことが心配で心配で仕方がないのよ!」 かぐや姫は心配性。(だからっていたる所に現れないでください) うpろだ593 「そういえば、○○は薬師の端くれだって聞いたけど」 平和な永遠亭での昼下がり。 うどんげがいきなり口を開いたかと思えば、そんなことを言ってきた。 「ああ、そうだけど・・・お前知らなかったのか?」 「知ってるわけないでしょ、○○が言わなかったんだからっ」 この前里の方に薬を配りに行って、その時聞いたんだからね。 そんな感じにうどんげは頬をふくらませている。 …そこでなぜ怒るんだ? 「だって言うほどのことでもないと思ったしな」 「○○ってばここをどこだと思ってるの?天才と謳われる我らが師匠が居をかまえている所じゃない」 「ああ、永琳な。あの人はすごいと思う」 なんかこの時代の科学では作れないような薬とか持ってるし。 この前不老不死の薬とか言って変な薬持ち出してたけどあれ何だ。 「って、○○分かってるんじゃないの」 「あのな、俺も永琳の所行って色々見させてもらったりしてたんだっつの。 ・・・でも薬師になる気はないけどな」 少し興味があっただけで、更にうちの家系に薬師が多かっただけのことだ。 基本的に頭の悪い俺にはあれは向いていない。 「えー、もったいない。私が教えてあげるからがんばろーよー」 「いい。めんどい」 「がびん」 俺は今のままの生活でいいんだ。 働いてないわけではないし、高望みするほどの勇気も持ち合わせちゃいない。 「むー・・・・ま、今はそれはいっか。 薬師つながりでね、姫が呼んでたわよ」 どういう繋がりだ。 それなら普通永琳じゃないのか。 「ま、いいか・・・じゃ、行ってくる」 「健闘を祈っとくねー」 コンコン。 「入っていいわよ」 「失礼する。輝夜、俺に何か用か?」 「○○っ!?来てくれたのね!ありがとう、私はとても嬉しいわ!!」 そんなに喜ぶことなのか。 「そ、そうか。ところで用って」 「まあ、ここ座りなさいよ」 輝夜に言われて椅子に座る。 「あのね、大した用じゃないんだけど・・・・○○、永琳に弟子入りしない?」 「は?永琳に?」 なんかいきなり目の前に百万円を持ってこられた気分だった。 それくらい突拍子もない話だったのだ。 「なんで俺なんか誘うんだ?どうせうどんげから聞いたんだろうが、俺は薬師でもなんでもないぞ」 「じゃあこれから頑張ればいいじゃない!○○、私は応援してるわ」 「いやだから俺は薬師の家系なだけでなりたいとか全然そんなんじゃ」 「それは○○だからどうでもいいのよ!ほら、私の専属薬師にしてあげるから!」 意味が分かりません。 それにそれだと永琳の立場がなくなるぞ。 「いきなり弟子入りはちょっとな・・・」 「どうして!?誰か他の人に弟子入りしてるの!?」 「いや、してないが・・・」 「じゃあいいじゃない!何事もやってみなくちゃ始まらないって言うし。○○、案外才能あるかもよ」 生まれてこの方そんな希望を持ったことなど一度もないが。 「じゃ、これに名前書いてサインしてね」 俺はまだいいなんて一言も言っt「はい、○○!筆よ」 …え、これにサイン・・・・? 「・・・・これに?」 「ええ、それに」 いやいや、こんなのサイン出来ませんがな。 「この、婚姻届に?」 「え!?私そんなの出してた!?ごめんなさい、間違えちゃったわ!まだ早すぎるわよね」 早すぎるって何が。 というか何でそんなもの持ってるんだ・・・・? 「ごめんなさいね。そしたらこっちにサインお願い」 今度はちゃんとした契約書(?)みたいなのを渡してきた。 しかしなあ、俺は薬師になる気なんて微塵もないからなあ・・・・。 才能も本人のやる気もないんじゃ、どうなるにしたって上手くはいかないと思うのだが。 「輝夜、悪いが俺はやっぱり無理だ」 「え、どうして!?なってくれないの!?」 「俺、薬師なんて向いてないだろうし・・・薬師がもう一人欲しいなら別に俺じゃなくても」 「私は○○がいいのよ!○○が好きだから!」 好き?俺を? あ、なんか輝夜、言っちゃった・・・・!って顔してる。 別に人に好意を持たれるのは嫌じゃない。 でも輝夜に言われるとなんだかなあ・・・・ 確かに綺麗だがちょっと変わってるし・・・・・。 「それは嬉しいんだが・・・やっぱり薬師になるっていうのは」 「ねえ、お願いなってよ!!」 「いやでも重ね重ね言うが俺にはこういう仕事は向いてないだろうし・・・ それに俺が弟子入りしたことで永琳が余計に大変になるんじゃないのか?」 「それでもいいから!!永琳には私が言っておくし○○に不自由はさせないわ!!」 粘りますね、輝夜さん。 「あーもう、というかお前はなんでそんなに俺を永琳に弟子入りさせたがるんだ?」 「何でって・・・・それは勿論弟子入りという理由にかこつけて○○に居候してもらうためじゃない!」 「それが本音かよ!!」 かぐや姫の勧誘。(はっ!言っちゃった!!)(それ弟子入りとか全然関係ありませんから)
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/ `ヽ / ヽ / ', ,' ', | ヽ ', | ト、 \ l ', r、 l ,.-‐、 `ヽ、 ト、 ヽ l ヽソィ';.ソl  ̄ ̄`ヽ i l ヽ ヾ ヽ ´ ̄ | ヽ l \ ノ | ト、 l \ `ヽ ノ / | ヽ l \ `ヽ、__,/ |_/\ l \ i | \ l \ | / ,.-‐'. ´.ヽ、 | / /. . . . . . . . . . i ` .ー、 | /,/. . . . . . . . . . . . . | `"'ー‐ | /. . . . . . . . . . . . . . . . . .ヽ | /. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . i 『永遠の魔法使い』蓬莱山輝夜 彼女の厳密なルーツは不明であるが……少なくとも『竹取物語のかぐや姫本人』である事だけは間違いない。 お伽話と『現実』との違い、それは輝夜は月に帰らず、迎えの兵団を永琳と共に鏖殺、時代の闇へと消えていった。 現代に至るまでの長い時間、何をしていたかの詳細は不明ではあるが、世界各国の魔術結社に彼女達の痕跡は見て取れる。 曰く、『錬金術では無い、謎の術で石ころを黄金に変えた』、曰く、『本当に気にいった人間に、不死の秘密を分け与えた』 少なくとも真っ当な道を歩まなかった事だけは間違いなかった。 そんな彼女が表舞台に出始めたのは数十年前、MUTEとデュアルが一般認知を受けた時期である。 『自分達は一定の時期を過ぎると年を取らなくなるMUTEである』、そう世間に公表した上で『永遠製薬』を立ち上げた。 元から世界各国の権力者層と太いパイプを築いていた事や、『安い』、『よく聴く』、との評判もあり 『永遠製薬』は瞬く間に巨大化、(永琳の)努力もありシンジケートを始めとした裏組織との衝突も無く、順調な日々を送っている。 悩みの種が有るとすれば、最近自分達に『呪い』を送ってくる何者か、だけである。 輝夜は強力な魔法使いでもあり、数多の魔法を使いこなす達人であるが……その真髄は不死性。 断言しよう、『物理的手段で彼女を滅ぼし尽くす事は絶対に不可能だ』、過去彼女に挑んだ数多の存在がそれを証明している。 最も、『心』に付いてはその限りでは無い、輝夜自身もそれを自覚しており、『心の壊死』を防ぐべく、色々な楽しみを探している。 永遠を生きる彼女にとって最も恐るべきは『退屈』であり、『永遠製薬』を創り上げたのも暇潰しでしか無い。 輝夜にとっては今送られてくる『呪い』すらも、ちょうどいい暇潰しにしかなっていないのかも知れない
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■輝夜3 かなり面倒だったが里のじいさんからある事を頼まれどうせヒマでやることもなかったので永遠亭へ行く事になった。 しかし俺は当の永遠亭とやらへの行き方を知らない。 請け負ってしまった手前、簡単には帰れないのだが・・・・さてどうするか。 この竹林、一度迷えば抜け出すことができないほどの迷所らしい。 しかも入ればかなりの高確率で迷うときた。 「ここは意を決して入ってみるか・・・?」 「あ、○○。こんな所で何してんの?」 竹林の前で唸っていると妹紅がふいに現れた。 藤原妹紅。ひょんな事から(本当にひょんなことなのだ、話せば長いが)知り合いになった娘である。 よく竹林周辺で見かけるなと思ってはいたが、本当にここに縁があるな。 「ん?○○、その手に持ってるのは」 「言っとくけど食い物じゃないぞ」 「私が掠め取るような子に見える?」 いや、だって焼き鳥屋って自称してたし。 「いや、里のじいさんから頼まれ物。前に怪我したときに永遠亭って所で世話になったんだそうだ」 「それはお礼の品ってわけね。でも何でそのお爺さん、自分で行かないの」 「・・・それはまあ、アレだ。この竹林の怖さを身をもって知ったんだろうよ」 俺がヒマそうだったからどうせだし若いモンに押し付けとけ、みたいな感じでもあったが。 「ふーん・・・どうせ永遠亭への行き方なんて知らないんでしょ、私が案内してあげるよ」 「お、助かる。お前がいなけりゃ竹林の中で白骨死体になってたところだ」 「ま、この貸しは高くつくけどね」 慣れているのだろう、特に気負いする事もなく妹紅は竹林の中へ入っていった。 俺もそれに続く。 「なあ妹紅」 「なに?」 「輝夜さん、って知ってるか?なんか永遠亭に住んでる偉い人らしいんだが」 「・・・知らん。あんな悪女に用はない」 つまり知ってるのか。 このしかめっ面と無愛想な言葉からするとかなり嫌っていると見える。 「薬師さんだけじゃなくて、その人にも挨拶して来いって言われてさ。そこの主人なんだろ?その人」 「だから知らんと言ってる」 「仲悪いのか?」 びきり。 いや、比喩とかじゃなくて、本当にそんな音が聞こえたのだ。 ・・・これは地雷を踏んだかな? 「・・・○○は本当にあのメス豚を知らないの!?」 「オイなんか急に変わったなオマエ!」 あとメス豚はいくらなんでも止めてやれ。 「はあ、嘘じゃねえよ・・・で、何だ?その輝夜さんとやらはそんなに悪名高いお人なのか?」 「悪名高いなんてものじゃない!あいつは私と殺しあう仲なんだっ!」 マジですか。 そこからの妹紅はすごかった。 まさかあんなに熱い一面を持ってるとは思わなかったよ。 今までのが彼女の双子の妹だった、って言われても信じられるくらいだ。 その輝夜さんのことについて一喜一憂しては顔を赤くしたり青くしたり拳を握り締めてそこいらの竹を張り倒したり。 ・・・ちょっとイメージ変わったなー、俺。主にマイナス方向に。 妹紅の話によれば、その”輝夜さん”って人は世界中の悪女の頂点に立っていて、ただのぐーたらで、 千年間引きこもりしてて、人の話は聞かないわワガママ言うわ出したものは片付けないわ、おまけに一週間に一度しか風呂に入らないらしい。 顔だけはいいからそれを使って男を騙して貢がせて、彼女が通った後には男たちの屍累々・・・という感じだとか。 ―――なんかもうよくわからないよな。 なんだそりゃ。 わけわからん。 あとちょっとばかり嘘混じってないか?どこぞの姫様らしいが一週間風呂なしはキツイぞ。 「ちなみに輝夜と書いて”てるよ”と読むから気をつけて。もしかぐやなんて口にした日には何よりもむごい殺し方をされるから」 てるよ?お前さっきまでかぐやって呼んでなかったか? 「かぐやは愛称。 とにかく!私が言いたかったのはあの女には気をつけろ、ってこと。 本当は行かせたくもないけど・・・まあ、○○なら興味わかないよね多分」 ・・・何気に失礼じゃないか? 「じゃ、ここで別れよう」 「ん?永遠亭なんてまだどこにもないぞ?」 「ここまで来れば大丈夫、真っ直ぐ行けば無駄にでかい建物が出てくるから。 ・・・それに今会ったら抑えきかなそうだし」 怖っ。 「じゃ、私は適当にこのあたりをうろついてるから・・・何かあったらすぐ呼ぶこと。いい?」 「何もないと思うけどな・・・」 「すぐ帰ってくるんだよ!」 そう何度も何度も忠告、もとい警告されて、俺はやっと永遠亭へと向かった。 「ごめんくださーい」 でかい建物の扉を叩いてみる。 だが一向に誰も出てくる気配がない。もう10分くらいこうしてるんだが。 ・・・まさか誰もいないのか?確かに人気なんてまったくないが・・・・ ・・・本当にてるよさんが怖い悪女だったらどうしようか。 俺は生きて帰れるんだろうか。 いまさら心配になってくる。 すると、扉がゆっくりと開き始めた。 「まったく、みんないないのかしら・・・・・はい、どちら様?」 中からは実に古風なお嬢さんが出てきた。 どう見ても不機嫌そうだ。 「あ、その・・・・てるよさん、っていらっしゃいますか?ここの主人て聞いてるんですけど。もしくはここの薬師さんとかでもいいんですけど」 「・・・・・・」 「悪い、あ、いや、すいません」 なんで俺は意味もなく謝ってるんだろうか。 地雷を踏んだという直感でもしたのか? 思わず目をそらしてしまったが、もう一度見るとやっぱり無言で俺を見ていた。 そしてようやっと、その子は口を開きかけたのだが・・・・・ 「・・・・・・・」 なんか、心なしか視線が怒りから驚きへ変わっていってる気がする。 お嬢さんはぽかんとしながら、何かを言いかけた口を丸くさせていた。 なんか、俺をじっと見て軽く目を見開いたような・・・ 何に驚いてるんだこの子は? 「・・・・・気にしなくていいわ。 それよりここに来れるなんて珍しい客人ね・・・・」 珍しい・・・やっぱり大抵の人はここに辿り着く以前に迷ってしまっていたようだ。 あのじいさん運が良かったんだな。 「いや、この前ウチの里のじいさんがお世話になったらしくて・・・ 俺が代わりにお礼の品を届けに来たんですけど。薬師さんと主人にも挨拶しとけって」 「薬師は今出払ってるわ、主人は私だけど・・・」 なんと、本人。 この人がてるよさんだったか。 ・・・怖い人には見えないんだが、妹紅。 「なんだ、丁度よかった。じゃ、これ。多分美味しいものでも入ってると思うから」 そして箱を渡す。 「じゃ、用は済んだしこれで」 さっさと妹紅のところに帰るとするか。かなり心配してたし。 と、いきなり腕を掴まれた。 「ちょ、ちょっと待って!」 「・・・何ですか?」 「せっかくここまで来てくれたんだし、お茶くらい出すからゆっくりしていきなさい」 「はぁ・・・・」 曖昧な返事をすると、”てるよさん”とやらは俺の腕を掴んだままずんずんと進み始めた。 そして着いたのは綺麗な客間。 外から見ても壮大だったが、やっぱり中もかなり広い。 ぐーたらだとか言われていたが結構キレイだった。 「ここ座って」 てるよさんに言われ、椅子に座る。 「飲み物は何がいい?緑茶?紅茶?あ、お菓子もあるから食べていく?」 「・・・じゃ、緑茶で」 「それじゃ、ちょっと待ってなさい」 彼女はお茶をいれに行った。 ・・・自分でいれるのか。姫だと聞いていたからそんなことしないと思ってた。 なんかどんどんイメージが変わっていく。 あれはいい人なんじゃないのか妹紅? そういえば俺なんでこんな事してるんだっけ。 「はい、いれてきたわよ」 「どうも・・・・」 湯飲みを受け取ると、てるよさんも椅子に座った。 てるよさんは一口、緑茶を飲むとまた口を開いた。 「名前」 「は?」 「・・・・貴方の名前。なんていうの?」 ああ、俺の名前ね。 「○○だけど」 「そう・・・・○○ね」 でも名前なんか知ってどうするんだ? まさか俺は気に入られてしまったのか?そして貢がされるのか? ・・・ありえない、と思いたい。 俺は何かしたのか? 名前を知らなきゃいけないほど俺は重要人物なのか? 今の所、何もしていないと思うが・・・多分。 じゃあ、なんだ・・・・? 「○○」 考え事をしているとふいに名前を呼ばれた。 「な、なんでしょう・・・・てるよさん」 「なんで急に敬語になるのよ。あと、私の事は呼び捨てでも構わないから」 言葉遣いとかは関係ないみたいだ。 「じゃあ、てるよで」 「・・・てるよじゃなくて、かぐやよ」 「・・・やっぱり?」 「何それ。まあ、私の事はかぐやと呼びなさい」 「じゃあ、輝夜」 「ええ、それでいいわ。 ・・・・で、聞きたいことがあるんだけど○○。貴方は私の事知らなかったの?」 ・・・・なんだ、この知ってて当たり前だろみたいな質問は。 「ああ、知らなかった。今日知り合いに聞いて初めて知ったよ」 「そ、その知り合いになんて聞いたの・・・・!?」 「!?」 今、ちょっとびっくりしたよ。俺。 一瞬だけど輝夜の目がカッと開いたぞ。 つか、なんか焦ってないか?何故? 「あー・・・・なんか男を騙して貢がせる悪女で ただの引きこもりで、お風呂には一週間に一度しか入らないようなぐーたら姫様だって聞いたけど・・・・って、聞いてるか?」 聞いてきたから説明したのにこの人自分の世界行ってるよ。 なんか、凹んでるような・・・? そんなオーラが出てる気がする。 え、この子自分が周りにどう思われてるか知って凹んでんのか? そりゃあ確かに最悪な人物像だけど、そう思われるのを覚悟の上で生きてきたんじゃないのか? それともアレは妹紅の言い過ぎか? 確かにそう思ったけどもさ! 「おーい、大丈夫デスカ・・・?」 「・・・・・・」 「えーと、輝夜?」 「・・・大丈夫。何もないわ」 あ、なんか復活したっぽい。 「それならいいが・・・じゃ、そろそろ俺おいとまするよ。ごちそうさまでした」 そう言い、立ち上がると輝夜は勢いよく止めてきた。 「え、もう帰っちゃうの!?まだここにいてくれても構わないのよ!」 「俺、知り合いのところ早く行かなくちゃいけないし・・・」 なんで引き止めるんだ? それにしても早く帰らねば。待たせては悪い。 「・・・そう。じゃあまた近いうちに遊びに来なさい」 「え・・・」 「来るわよね?来てくれるわよね?というか来てください」 お願いされたーーーーーーー! 「わ、わかった。それじゃ!」 そう言って俺は俊足でその場を離れ、竹林へ帰った。 俺が戻ったときの妹紅の表情はなんとも言えないものだった。 不安、心配、安心が入り交ざったような。 「すごい心配したんだよ!大丈夫!?何もされてない!?」 「ああ、まあ。でも、なんか引き止められて」 「引き止められた!?ひどいことされてないよね、あんな悪女のそばにいて・・・」 本当に無事!?と心底心配そうに俺を見上げる妹紅。 「いや、全くと言っていいほど怖くなかったけど」 「けど?」 「・・・・俺からの印象で言えば、」 かぐや姫は変な人。(怖い要素なんてひとつもありゃしない) うpろだ578 ─────────────────────────────────────────────────────────── 退屈ね・・・・。 一通りネット巡回を終えた私は私室でぼーっとしていた。 と、何か音が鳴っているのが聞こえた。 どんどん、どんどん。 「あー・・・えーりん、出といて。また怪我したじいさんとかだろうから」 寝そべりながら言う。 ・・・だが、いくら待っても返事はない。 その間にも扉を叩く音は大きくなっていく。 「うるさいわね・・・」 インターフォンがついているのに気付いていないのだろうか。しかも最新式カメラつき。 本当に誰もいないみたい・・・仕方ないけど出るか。 扉を開けるとそこには背の高い男がいた。 しかも出会い頭にてるよなんて言ってきやがった。いい度胸してるわねコイツ。 「悪い。あ、いや、すいません」 そんな謝り方で済むと思って・・・・・ ってちょっと待って。 よく考えてみればコイツかなり運のいい男ね・・・珍しい、迷わずに来れた者なんて。 ・・・それを言ったらあのじいさんもだけど。 「・・・気にしなくていいわ。 それよりここに来れるなんて珍しい客人ね・・・・」 わ、私は何を言ってるの? あんな不躾な言葉を言われたんだからもうちょっと怒ってもいいはずなのに。 「薬師さんと主人にも挨拶しとけって」 しかも、私。 本人目の前にしてそんなこと聞くなんてこの人は私の事知らないのかしら。 彼に、私が主人だと言えば、箱を渡された。 お礼の品を渡すためにここまで来たのね。 「じゃ、用は済んだしこれで」 そう言って帰ろうとする彼を私は慌てて引き止めた。 「ちょ、ちょっと待って!」 私が止めると彼は少し驚いた顔をした。 私だって驚いてるわよ。 なんたって体の方が先に動いたんだから。 そして彼をお茶に誘い、客間まで連れてくることに成功。 彼に緑茶と紅茶どっちがいいか尋ね、二人分の緑茶を用意する。 入れ終わると片方を彼に渡し、私も椅子に座った。 そういえば私、この人の名前まだ知らないわね。 「名前」 そう一言言うと聞き返された。 言葉足らずだったかしら。 「・・・貴方の名前。なんていうの?」 そう聞けば分かってくれたみたいで答えてくれた。 「○○だけど」 ○○って言うのね。 ○○、○○、○○、○○○○○○○○・・・・・ よし!覚えた。もう忘れない。 もし忘れたりなんかしたら自分で自分を殺してやる。 「○○」 「な、なんでしょう・・・・てるよさん」 名前を呼べば敬語で返ってきた。 さっきは普通だったのに。 だから○○に敬語を止めてもらい、呼び捨てにするように言ってあの不名誉な名前も訂正した。 で、さっきから気になってたことを○○に聞く。 「○○、貴方は私の事知らなかったの?」 本当に知らなかったらこれから私のいい所をたくさん知ってもらおうっと。 「ああ、知らなかった。今日知り合いに聞いて初めて知ったよ」 なんですって!? 知り合いから私の事聞いたの!? ちょっと、その人○○に変なこと言ってないわよね!? 「そ、その知り合いになんて聞いたの・・・・!?」 「!?」 あ、今○○の表情が強張った。 びっくりしたわよね。 大丈夫、私自身もびっくりしたから安心して。 「あー・・・なんか男を騙して貢がせる悪女で ただの引きこもりで、お風呂には一週間に一度しか入らないようなぐーたら姫様だって聞いたけど・・・・って、聞いてるか?」 なんてことを! 貴方の知り合いはそんなこと言っていたの!? 私の印象絶対悪くなってるじゃないのよ!! というか絶対それあの下賎な女、詳しく言えば藤原妹紅よね!? ちょっと!殺すわよ!? ダメダメ・・・そんなことしたら○○に嫌われちゃう。 私が黙り込んでしまったのを心配してか、○○は声をかけてきてくれた。 「おーい、大丈夫デスカ・・・・?」 ダメよ・・・・○○・・・・。貴方の声がだんだん遠く・・・・ 「えーと、輝夜?」 ○○に名前を呼ばれて私ははっとした。 いけないいけない。自分の世界に入り込むところだったわ。 そう、てる・・・じゃなくて輝夜ワールドに。 でも、もう大丈夫よ。 ○○が名前を呼んでくれたから元気でたわ! 「・・・大丈夫。何もないわ」 「それならいいが・・・・ じゃ、そろそろ俺おいとまするよ。ごちそうさまでした」 「え、もう帰っちゃうの!?まだここにいてくれても構わないのよ!」 まだ○○とお話したいのに! 「俺、知り合いのところ早く行かなくちゃいけないし・・・」 私が止めると○○は少し困った顔をした。 それじゃあ、これ以上は止められないわね。 妹紅にはあとで仕返しするとして・・・・今は無理矢理しても○○に嫌われてしまうわよね。 そんなの嫌すぎる! 「・・・そう。じゃあまた近いうちに遊びに来なさい」 私がそう言うと○○は少し戸惑った。 だからまた来てくれるように頼んだら快く引き受けてくれた。 流石○○。優しいのね。 ○○はよほど大切な用事があったのか、さよならの挨拶をすると急いで帰っていった。 「○○、か・・・・」 次はどんなお話をしようかしら? 「あら、姫。今日は機嫌がいいですね。何かいいことでも?」 「ああ、永琳。私はね、今日恋をしてしまったのよ」 「そう、なるほど恋を・・・・は!?」 かぐや姫恋をする。(貴方のことが頭から離れないわ!) うpろだ580 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「○○、今日の夜ちょっと時間あるかしら?」 「ああ、いたってヒマだが」 「じゃあ、今日の夜12時に私の部屋へ来て!」 某日。 月が綺麗な夜。 あの『ちょっと変な』輝夜に誘われ、永遠亭へ向かう。 最近は妹紅に頼まないでも一人で迷わずにここへ来れるようになった。 それもある意味必然というか、仕方ないのだが。 何故なら・・・・・ 「・・・・またか」 狭い竹林の中には所狭しとカラフルな標識が掲げられていた。 『永遠亭はこっち』『おいでませ永遠亭、主に○○』『ここを右に曲がって左へターンよ』『○○、絶対に迷っちゃダメよ!』 最後の一つは俺へのメッセージだろどう見ても。 ここはみんなの竹林じゃなかったのか。 何回も止めろと言ったのだが・・・聞き入れてはもらえなかったようだ。 はっきり言って恥ずかしいんだよ!個人名書くのは止めてくれ! 「そういえば妹紅最近見ないなあ・・・・・」 修行してます。打倒てるよ。 そして到着(せざるを得なかった)、永遠亭。 さすがにお誘いを無視はできないからな・・・したらしたであっちから来そうだし。 俺はここ数週間輝夜と交流を持っているが、相変わらずよく分からない。 とりあえず分かるのはただ一つ。 あいつのイメージがどんどん変わっていってる事だけだ。いろんな意味で。 そしていつの間にか仲良くなった薬師のえーりんやらペットのうどんげやらてゐやらと挨拶を交わして中へ入れてもらう。 あいつらは俺が来るたびに哀れみの視線を向けてくる。 言いたいことは分かってるよ。『ああ、またか』『あんたも頑張ってるね』『ま、どんまい』 俺もそんなあいつらに生温い視線でもって答え、そしてかの姫に会いに行くのだ。 ・・・輝夜も、悪いやつではないんだけどなあ。 コンコン。 「輝夜、入るぞ」 「あ、○○来てくれたのね!ありがとう!さ、早く入って!ここ座って!」 部屋に入れば、待ってましたと言わんばかりに輝夜に歓迎された。 そして、いつものように椅子へ座る。 「○○!今日何の日か知ってる?」 「月曜日」 そう即答すると輝夜は一気に落ち込んだ。 バックが黒いんだが・・・・!! 何故だ!?今日は月曜日だろう? どうして凹む!? 「おい、輝夜・・・?」 「ふふ、そっかぁ・・・今日は何の日か知らないのね・・・まあ、月曜日ってのは合ってるけど・・・ボケにしても最悪よ・・・・ うん・・・・○○知らなかったのかぁ・・・・教えてないから仕方ないわよねぇ、ふ、ふふふ・・・・・」 怖いんだが・・・・・・!! 何か、ブツブツ言っている!! 「えーと、輝夜さんや。今日は一体何の日何ですかねぇ・・・・」 あまりにも凹んでるから今日は何の日か聞いてみた。 「え、知りたい!?○○知りたいの!?」 オイオイ。 今のは確実にウザいぞ、てるよ。 「あ、ああ」 「聞いて!今日はね!私の誕生日なのよ!」 誕生日? 「輝夜今日誕生日なのか!?」 「ええ!」 「そうだったのか・・・誕生日おめでとう」 「ありがとう○○!」 「でもなんで俺なんか誘ったんだ?しかもこんな夜中に」 ここにはたくさん輝夜の家族がいるっていうのに。 「それはやっぱり○○に一番に祝ってほしかったからよ。 もちろん永琳たちとも祝うけど、誕生日を迎える瞬間に○○にいてほしかったの! ・・・いつもは誕生日なんて重要じゃないから忘れてるんだけど、今年は、○○がいるから」 ・・・・・お。 こいつでもこんな、普通の女の子らしい顔、できるんだな・・・・ 「ま、付き合ってやるよ」 「ありがとう!今日はケーキとか色々用意してるのよ!食べていってね」 そう言って輝夜はケーキやら菓子類をこれでもかというくらい持ってきた。 おいおい、ちょっと待て。こんなに食べきれないぞ。 全部片付けようと思ったら朝までかかるんじゃなか? 「いっぱい食べてね」 「お、おう、ありがと・・・ってワンホール!?」 いっぱい食べてね、の言葉と一緒にホールケーキ丸々一個突き出されたぞ!? 「え、足りない?やっぱり男の人はよく食べるから一個は少なすぎよね」 「足ります足ります足りすぎます一個で十分です!」 こいつ一体何個ホールで持ってきてんだよ! さらに二つ出してきたぞ! 「そう?よかったらこれも食べて」 「いや、いい・・・そんなに食ったら太るしな」 「○○男にしては全然細いじゃない。むしろもっと太りなさい」 「余計なお世話だ」 つーかそんなに甘いモン食ったら病気になるんだよ!! 本当に世間知らずな姫様だなオマエは! それから色々あった。 輝夜がおもむろに蝋燭をどさっと袋で取り出して『年齢分飾るのよね』とか言って袋ひっくり返してケーキがロウまみれになったり。 クラッカーなるものを間違えて自分に向けて発射してしまい驚いて騒ぎまくったり。 何故か菓子袋の中にネズミ花火が紛れ込んでいてさらに何故か発火(お約束)、やっぱり大騒ぎになったり。 まあそんな感じで、ケーキを食べて(結局半分しか食べれなかった)、紅茶も飲んで、輝夜と色々話している間に数時間が過ぎた。 「あ、もうこんな時間ね。朝日が昇ってるじゃない」 「結局徹夜かよ・・・・・・」 「○○、もう帰る?それともこのまま残って一緒にみんなでお祝いする?」 「んー・・・今は寝たいんだが、まあ、いいか」 こんな日があってもいい。 というわけで残留コース決定。 「なあ輝夜、初めに祝ってもらう相手が俺で本当によかったのか?」 「もちろんよ!楽しかったわ、ありがとう。・・・これ、来てくれたお礼。よかったら貰ってくれる?」 輝夜に何か小さな包みを渡された。 開けてみると、そこには歪な形をした黒いクッキーが数枚、入っていた。 「・・・これは?」 「焼いてみたのよ、○○のために。 ・・・失敗したんだけどね、上手くいかなかったわ。 ―――こんなのじゃ、やっぱりお礼には釣り合わなかったわね。返しても、いいわよ」 ・・・ったく、菓子なら最初に出しておけというに。 おかげでこんな雰囲気になっちまったじゃないか。 もう、菓子なんて食べ飽きて当分はゴメンだが――― 「・・・ん、美味いよ」 「!○○・・・・別に、お世辞はいいのに」 「そんなんじゃない・・・・ありがとな」 「あ・・・え、ええ・・・・・」 そんな顔されたら、こっちまでどうにかなってしまいそうじゃないか。 ったく・・・輝夜のやつ。 「今度何か礼するよ」 「じゃあ、今ちょっとお願いがあるんだけど・・・・」 「何だ?出来ることならするぞ?」 「・・・もう一度、おめでとうって言って」 「そんなのでいいのか?」 「うん」 「輝夜、誕生日おめでとう」 「ありがとう!」 かぐや姫の誕生日。(あれ?祝うつもりだったのに逆にプレゼントされたな・・・何故だ?) うpろだ582 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「○○、遊ぼー!」 「お、てゐか」 いつものように永遠亭で過ごしていると悪戯兎のてゐが話しかけてきた。 ・・・いつものように、か。 俺もここにいるのが普通になってきたな・・・ それにしてもてゐがこうも素直に真正面から話しかけてくるとは珍しい。 普段はもっとこう、後ろから不意をついて転ばせるくらいなのに。 ・・・これは何かあるな? 「よし、受けて立とう。これでも昔は里髄一のトラップマスターと恐れられたもんだ」 「ふふ・・・何のことかウサ?」 「お前がウサウサ言ってるときは絶対何かあるんだよ」 ここ最近ずっとここにいてこいつらと付き合ってきたので大体の性質は理解できる。 売り言葉に買い言葉ってやつで、こいつの罠をどう潜り抜けようか楽しんでる俺も俺だけどな。 てゐもそれを分かって俺に罠をちょこちょこ仕掛けてるみたいだし。 「で、今日は何だ?もう縄系の罠にはひっかからないぞ、前回で極めた」 「さすが・・・・この私の認めた男○○! でも強気でいられるのも今のうち。なんたって今回はとっておきの――――「○○!」 構えていると急に輝夜が声をかけてきた。 「てゐと遊んでるの?」 「ああ」 「ふうん・・・・ま、てゐなら心配は要らない、わよね?ふふふふふ」 『心配は要らない』のところをやけに強調して、満面の笑みで輝夜が言う。 「!・・・・・そ、そうウサね・・・・ ・・・○○っ!私は罠を練り直してくるウサ。だからゆっくりしててね・・・ウサウササ~」 逃げるようにてゐはどこかへ走っていった。 「・・・いくらなんでもウサ使いすぎだぞ・・・」 「あら、どうしたのかしらてゐってば」 多分お前が怖くてこの場にいれないんだと思うぞ。 「○○、何して遊ぶの?」 「さあ・・・まあ、てゐの罠に付き合ってやるくらいだよ」 「そう。怪我しないようにね!突き指とか気をつけるのよ」 「今までそんなことなかっただろ?俺、運動神経いい方だからそんなヘマはしないって」 「今回はあるかもしれないじゃない。○○の手はキレイなんだから、怪我したら台無しよ!」 「はは、心配どうも。じゃ、俺そろそろ行くな。また後で!」 そう言っててゐの行った方へと走る。 まさか、輝夜があんな心配するとは思ってなかった。 手がキレイ、とか男に言う言葉ではないが・・・・ ちょっと変わってるけどやっぱりいい奴だな。 その後はてゐとの罠合戦も乗り越え、永琳から差し入れも貰い、実に穏やかに永遠亭での日常は過ぎていった。 そして今。 「わーい!○○、悔しかったら捕まえてみなさいよー!!」 「言ったなコノヤロウ!」 まさにてゐとの追いかけっこなわけである。 そのやり取りは実に和やかに見えるが侮るなかれ。 二人とも結構全速力(特に俺がかなり疲弊している)。 ・・・あんな子供に俺が本気を出すのもかなりアレだが、そうでもしないと追いつけないのだ。 一体何なんだあの兎っ娘は。 いや普通ではないことは分かっているけれども。 「よし、追いつきそうだ・・・・!」 てゐの耳が俺の目の前で揺れている。 耳でも何でもいい掴んだモン勝ちだっ!! だが事態はそう甘くはなかった。 「てゐ、獲ったり・・・・っ、うお!?」 「うきゃあっ!」 後もう少しというところで直線上にいた誰かに激突してコケた。 「痛って・・・・」 「うわぁ!○○ごめんなさいっ!」 そこにいたのはうどんげだった。 彼女の方も尻もちをついてかなり慌てている。 「大丈夫、足痛くない!?」 「ああ、大丈夫」 「ほんとに!?真正面から当たっちゃったけど・・・・」 「ちょっと何そこで二人してコケてるの?」 てゐも様子を見にやってきた。 「うどんげこそ大丈夫か?」 「え!あ、私は平気。人間より丈夫だし・・・本当にごめんね」 「○○、念のために診てもらってきたら・・・?変に捻ってたりしたら大変よ」 てゐが指し示したのは永琳のいる治療室の方。 うどんげなんかもう泣きそうだ。 「うどんげは悪くないだろ、俺の前方不注意だ。それに足、痛くないから。気にするなよ」 「男らしいこと言うのね!ほら、うどんげも早く立って」 「うう・・・○○・・・!」 そんな会話を背にし、俺は永琳の所へと向かった。 「大丈夫、強く捻ったりしてないみたい。うまく転んだのね。これなら大丈夫よ。 あ、でも一応念のため足に負担のかかるようなことはしないようにね」 「ありがとう、永琳。それじゃ」 足に異常はないようだ。よかった。 それにしても、あんなところでコケるとは思ってなかったなあ・・・ うどんげが相手だったからだろうか。 あいつ、結構鈍くさいからな・・・ 「○○っ!」 「か、輝夜!?」 うわ、びっくりした。 「今永琳の所から出てきたけど怪我!?」 「ああ、ちょっとコケて。うどんげと正面衝突しちまったんだよ」 「コケたの!?うどんげと当たって!?待っててうどんげすぐシメてく「やめてください」 何もそこまでしなくても。 お願いだから永遠亭で殺人を起こさないでくれ。 「本当に平気だから。何も心配しなくていいから!じゃ、俺戻るな」 「む、無理はしないようにね!」 「分かってる」 今日はコケたのを理由に一日中輝夜に心配された。 自主的に何か手伝いをしようと永琳の薬瓶を運んでいたときも。 「○○!そんなに重いもの持って平気!?足に負担かからない?私が持ちましょうか?」 「大丈夫、俺一人で行けるから。それよりお前も何か自分の仕事しろよ」 昼飯を食いに二階へ上っていたときも。 「○○、どこ行ってたの?」 「え、二階。あそこで弁当食うと竹林が見えていい景色だし」 「あの二階までの長い階段上ったの!?ダメじゃないのよ!! 足に負担かかるでしょ!?無理しちゃダメだって言ったのに!」 無理なんてしてないんだがな・・・ 「ん、悪いな・・・」 「・・・私も言い過ぎたわ、ごめんなさい。 それより何で言ってくれなかったの、ご飯なら私が食べさせてあg「お前はまず自分の茶碗を片付けろ」 「○○、今日何か疲れてない?」 「あー、わかるかてゐ?今日やたらと輝夜に遭遇するんだよ」 「そ、そう・・・ウサウサ」 「・・・・・・・。 ちょっと俺トイレ行って来るよ」 「あ、うん、行ってらっしゃい」 そして廊下に出る。 「○○!」 「わっ!?お、驚いた・・・・」 急に現れるの止めてくれ・・・本気で驚く・・・・ 「○○どこか行くの?」 「あ、ああ。ちょっとな」 「どこに行くの!?私も行くわ!」 それは勘弁してください。 「トイレだからついてこなくていい!なんで俺にいちいちついてこようとするんだよ・・・・」 「私、○○のことが心配で心配で仕方がないのよ!」 かぐや姫は心配性。(だからっていたる所に現れないでください) うpろだ586 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「そういえば、○○は薬師の端くれだって聞いたけど」 平和な永遠亭での昼下がり。 うどんげがいきなり口を開いたかと思えば、そんなことを言ってきた。 「ああ、そうだけど・・・お前知らなかったのか?」 「知ってるわけないでしょ、○○が言わなかったんだからっ」 この前里の方に薬を配りに行って、その時聞いたんだからね。 そんな感じにうどんげは頬をふくらませている。 ・・・そこでなぜ怒るんだ? 「だって言うほどのことでもないと思ったしな」 「○○ってばここをどこだと思ってるの?天才と謳われる我らが師匠が居をかまえている所じゃない」 「ああ、永琳な。あの人はすごいと思う」 なんかこの時代の科学では作れないような薬とか持ってるし。 この前不老不死の薬とか言って変な薬持ち出してたけどあれ何だ。 「って、○○分かってるんじゃないの」 「あのな、俺も永琳の所行って色々見させてもらったりしてたんだっつの。 ・・・でも薬師になる気はないけどな」 少し興味があっただけで、更にうちの家系に薬師が多かっただけのことだ。 基本的に頭の悪い俺にはあれは向いていない。 「えー、もったいない。私が教えてあげるからがんばろーよー」 「いい。めんどい」 「がびん」 俺は今のままの生活でいいんだ。 働いてないわけではないし、高望みするほどの勇気も持ち合わせちゃいない。 「むー・・・・ま、今はそれはいっか。 薬師つながりでね、姫が呼んでたわよ」 どういう繋がりだ。 それなら普通永琳じゃないのか。 「ま、いいか・・・じゃ、行ってくる」 「健闘を祈っとくねー」 コンコン。 「入っていいわよ」 「失礼する。輝夜、俺に何か用か?」 「○○っ!?来てくれたのね!ありがとう、私はとても嬉しいわ!!」 そんなに喜ぶことなのか。 「そ、そうか。ところで用って」 「まあ、ここ座りなさいよ」 輝夜に言われて椅子に座る。 「あのね、大した用じゃないんだけど・・・・○○、永琳に弟子入りしない?」 「は?永琳に?」 なんかいきなり目の前に百万円を持ってこられた気分だった。 それくらい突拍子もない話だったのだ。 「なんで俺なんか誘うんだ?どうせうどんげから聞いたんだろうが、俺は薬師でもなんでもないぞ」 「じゃあこれから頑張ればいいじゃない!○○、私は応援してるわ」 「いやだから俺は薬師の家系なだけでなりたいとか全然そんなんじゃ」 「それは○○だからどうでもいいのよ!ほら、私の専属薬師にしてあげるから!」 意味が分かりません。 それにそれだと永琳の立場がなくなるぞ。 「いきなり弟子入りはちょっとな・・・」 「どうして!?誰か他の人に弟子入りしてるの!?」 「いや、してないが・・・」 「じゃあいいじゃない!何事もやってみなくちゃ始まらないって言うし。○○、案外才能あるかもよ」 生まれてこの方そんな希望を持ったことなど一度もないが。 「じゃ、これに名前書いてサインしてね」 俺はまだいいなんて一言も言っt「はい、○○!筆よ」 ・・・え、これにサイン・・・・? 「・・・・これに?」 「ええ、それに」 いやいや、こんなのサイン出来ませんがな。 「この、婚姻届に?」 「え!?私そんなの出してた!?ごめんなさい、間違えちゃったわ!まだ早すぎるわよね」 早すぎるって何が。 というか何でそんなもの持ってるんだ・・・・? 「ごめんなさいね。そしたらこっちにサインお願い」 今度はちゃんとした契約書(?)みたいなのを渡してきた。 しかしなあ、俺は薬師になる気なんて微塵もないからなあ・・・・。 才能も本人のやる気もないんじゃ、どうなるにしたって上手くはいかないと思うのだが。 「輝夜、悪いが俺はやっぱり無理だ」 「え、どうして!?なってくれないの!?」 「俺、薬師なんて向いてないだろうし・・・薬師がもう一人欲しいなら別に俺じゃなくても」 「私は○○がいいのよ!○○が好きだから!」 好き?俺を? あ、なんか輝夜、言っちゃった・・・・!って顔してる。 別に人に好意を持たれるのは嫌じゃない。 でも輝夜に言われるとなんだかなあ・・・・ 確かに綺麗だがちょっと変わってるし・・・・・。 「それは嬉しいんだが・・・やっぱり薬師になるっていうのは」 「ねえ、お願いなってよ!!」 「いやでも重ね重ね言うが俺にはこういう仕事は向いてないだろうし・・・ それに俺が弟子入りしたことで永琳が余計に大変になるんじゃないのか?」 「それでもいいから!!永琳には私が言っておくし○○に不自由はさせないわ!!」 粘りますね、輝夜さん。 「あーもう、というかお前はなんでそんなに俺を永琳に弟子入りさせたがるんだ?」 「何でって・・・・それは勿論弟子入りという理由にかこつけて○○に居候してもらうためじゃない!」 「それが本音かよ!!」 かぐや姫の勧誘。(はっ!言っちゃった!!)(それ弟子入りとか全然関係ありませんから) うpろだ593 ─────────────────────────────────────────────────────────── ホーホー ○「いい月夜だな」 輝「そうね、こんな夜にはこうして静かに飲むのが一番ね」 ある月の綺麗な晩、俺と輝夜は二人だけで月見酒をしていた 永琳さん達は神社の方で宴会をしているだろう ○「宴会もいいけどやっぱり俺はお前とこうやってサシで飲むのが一番だな」 輝「あら、嬉しい事言ってくれるじゃない、さあさ、もう一献どうぞ」 ○「ありがたく頂戴します」 そういいながら俺の杯に酒を注ぐ輝夜、月明かりの所為かその姿はまさに月の姫君であった トクトク ○「グッ……ぷはぁー!只でさえうまい酒が愛しい人に注いでもらうと更に美味くなるな」 輝「もう、上手い事言ってもっとお酒が欲しいんじゃないの?」 ○「いやいや、本当に美味いんだって、輝夜も一杯飲んでみろよ」 トクトク 輝「ックックック……ふぅ、確かにおいしいわね でも、もっとおいしいお酒の飲み方があるんだけど試してみる?」 ○「ああ、興味あるなやってみてくれよ」 輝「じゃあそのままでいてね……」 クピリ そういうと輝夜は酒を口に含みそのまま俺に口づけをした ○「f杖wfぼwrgぺrwgへうfgh4ほえw!!!??」 輝夜の唇の感触を味わう暇もなく俺の口の中に生暖かい酒が入ってきた ○「ん、ふぅん……ぷはっ!はあはあはあはあ……」 輝「ん……どう?おいしかったでしょ?」 ○「ああ、極上の酒だ、輝夜もどうだ?」 輝「勿論悦んでいただくわ」 そう言って笑う輝夜の唇にそっと口づけをした まだ、夜は長い 8スレ目 5 ─────────────────────────────────────────────────────────── 万年引きこもりの姫が最近よく外出するようになってきている 妹紅と殺し合いをしているのかと思っていたが、服が無事な所を見るとそうではない様だ むしろ最近は妹紅との殺し合いの回数は目に見えて減ってきている 姫にどのような心境の変化があったかは知らないがいいことだと思う そう思ってたのが昨日のことで今日の姫は朝から台所に入ってなにやら弁当を作っているようだ 「ねえ、永琳男の人ってどんなおかずなら喜ぶかしら」 「……もしかして最近外出するようになったのはその男性が原因ですか?」 「そうよ、もしかしたら近々ここに連れてくるかもしれないからその時はよろしくね」 「好き、なんですか?」 「ええ、好き、大好き、愛してるわ 長い時を生きてきたけどこんなにも男の人を愛したのは初めてだわ」 「その彼は姫のことを知っているんですか?」 「知ってるわよ、○○とは妹紅との殺し合いをした後で会ったのよ」 そういえば姫がよく外出するようになったのは最後に妹紅と殺し合いをした時だ おそらくその○○という男性に殺し合いの現場を見られてそこで姫が一目ぼれをした、といった所か それにしても殺し合いの現場を見て不死の人間を見たというのに ○○という男性は良く普通に姫と接せられるものだ 「○○さんは姫のことが好きなんですね」 「ええ、いい人よ永琳やイナバ達もきっと気に入るわそれじゃあ行ってくるわね」」 そうそう蓬莱の薬、必要になるかもしれないからその時はお願いね」 「分かりました、それではいってらっしゃいませ」 さて、ウドンゲや他のイナバの子達に一人増えることを伝えに行きましょうか それと蓬莱の薬も作らないと 8スレ目 47 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「愉しいわ」 姫様の声は心底うれしそうだった。 「愉しいですか」 その時の自分の声色は、おそらく不機嫌を直に出したような そんなものであったはずだ。 姫は私がそんなとき、決まって、からかうように言うからだ。 「ええ、とても愉しいわ。貴方はそう思わないの?○○」 つまり、その言葉は私が心底滅入っているようなときに使われる。 例えば今、私の首には真新しい、赤い革製の首輪が装着されており 灯篭に照らされた銀色の金具の照り返しは、妙に妖しい雰囲気を醸し出し その首輪から伸びるリールが、姫様の手に握られているのだ。 場所は廊下、それも厨房と食卓を繋ぐ部分である。 姫様と私は、晩餐に出向くために歩みを進めているのだが、 よりにもよって、そんな時に、こんな場所を歩けばどうなるか 私も、おそらく姫様も、口に出しこそしないが、理解していたろう。 「私は不愉快です」 あまり姫様に、というよりも、女性に対して強くものを言うのが 得意な性分ではないのだが、そのとき私ははっきりと告げた。 「不愉快?」 姫様の歩行が停止した。その長く、美しい髪が揺れ、端正な御顔が こちらを向く。 私はこの時の姫様の表情をどう表現したものか迷う。 嘲っているようであり、同時に自らの不満に同意を求めるような そんな眼で、姫様は私を見つめていたのだ。 灯篭に照らされたその表情は妙に艶かしく、私は一瞬言葉を続けるのを 躊躇ったが、ようやく出た搾り出すような声に対して、姫様は 「・・ええ、私が恥ずかしいのも勿論ですが、姫様が―」 「それは」 姫様の右の人差し指が私の唇を封じた。左手はリールを掴んでいるからだが その右人差し指は、まるで蛇か蝸牛が這いずるがのごとく 「なぞる」というよりはもはや「なじる」というべきような積極性でもって 私の顎を、喉を、胸を伝い、そしてそこで右に回り、来た時よりもやや 横にずれた軌跡をとりながら、私の頬に戻った。 「いいの」 姫の細い指が私の首筋を伝うだけで、私は反論する気力、勇気、使命感 それらをすべて奪われた気がした。 姫様の手は冷たく、その接触はくすぐったかったが、同時に私に 何か後ろめたい悦楽を与えもした。 よくわからないが私は既にその虜であり、ものを考えるのも困難だった。 「・・・いい・・の、ですか?」 答えはすぐには返ってこない。姫様は私の頬で少しの間遊ばれていた。 あるいはそれだけであれば、死力を尽くして『もうおやめになってください』 の一言くらいはなんとかなったのかもしれない。 だが、腕一本の距離にある、姫様の、だが普段の姫様のものではない眼が 私を束縛していたのだ。 数分ほどもそうしていたように感じたころ、ようやく姫様の唇が開いた。 「そう。だから」 私の頬を撫でていた姫様の手は、あたかも名残惜しむかのようにゆっくりと 私の首筋、そして肩口を伝ってから、主の元へ帰っていった。 「○○、食事にいきましょう」 そしてその手が戻るのと時を同じくして、姫様の眼からも、あの不満の色は 消えうせ、からかうような、自分の玩具を弄り回すような、いつもの顔に 戻っていた。 私は姫様の曳くリールに抗うなど、もはや考えもしなかった。 8スレ目 70 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「○○~、○○~」 はいはい、何ですか姫 「○○、ギュッてして」 ・・・さっきもしましたよね 「さっきのは前から、今度は後ろからギュッて抱きしめてほしいの」 いえ、まだ仕事が残って 「ダメ?」 ぐっ! しかし・・・ 「・・・この頃 仕事が増えたんじゃない?」 それは、出来ることが増えてきましたから 「うん、それは良い事だと思うの。でも、私は○○ともっと一緒にいたい」 姫・・・ 「○○にもっと甘えたいの。この長い時の中でただ一人愛した貴方だけに」 ・・・・・・ふぅ、今日はとてもいい天気だ 「え?」 こんな日は 一日縁側でのんびりとお茶を飲みたくなる 「・・・」 一緒にのんびりしようか、輝夜 「うん!」 8スレ目 309 ─────────────────────────────────────────────────────────── しとしとしと。雨が落ちてくる。 「雨……止みませんね…」 「そうね」 ぽつぽつ。雨が笹の葉を揺らす。 「ねえ、○○知ってる? 七夕の夜に降る雨をね、洒涙雨っていうの」 「さい……るいう?」 「そう、洒涙雨。天の川が水で一杯になっちゃって、 会えない事に悲しんだ織姫と彦星が流した涙だって言われてるわ」 僕は輝夜さんの横顔を見る。蒼い横顔。 「輝夜さんは……悲しくないんですか?」 「悲しいって?」 「月に置き去りになった家族のこととか……」 「ふぅ……ん? 優しいのね」 輝夜さんが僕の方を向く。黒の瞳に、僕の顔が映っている。照れた顔をしている。 「そんな……優しいだなんて…」 「……んて、ないわ」 「え?」 「悲しくなんてないわ。って、言ったの」 ふ、と。輝夜さんが微笑んだ。妖艶な笑み。濡れた唇を盃につける。それを、僕に差し出す。 「――はい、○○も飲みなさい」 「え……と、輝夜さん…………?」 「嫌なら直接しましょうか?」 「あ……え…っと、……いただきます」 輝夜さんが注いでくれたお酒を、ぐいと飲んだ。慌てて飲んだから、僕は咳き込んだ。 それを見て、輝夜さんが笑う。輝夜さんが笑うと、僕も笑う。 「ささ、次も飲みなさい」 「酔っちゃいますよ……」 「そうしたら私が膝枕してあげるわ。…さ、盃を出して」 僕は盃を差し出す。透明な酒が、曇った空と、笑顔の輝夜さんを映す。 しとしとしと。空から涙が落ちてくる。 僕は来年織姫と彦星が会えることを祈りながら、盃をあおった。 夜はまだまだ長い。 8スレ目 370 ─────────────────────────────────────────────────────────── 永遠亭に迷い込んだ○○ 輝夜に気に入られて「ずっとここに居て良いのよ、守ってあげる」 しかしそれは相方を作ろうと目論むネトゲ廃人てるよの巧妙な罠だったのだ! なんか違うけどま、いいか。 8スレ目 593 ─────────────────────────────────────────────────────────── ある日の永遠亭にて。 「なぁ、輝夜」 「何? ○○」 「結婚しないか?」 「……え!?」 「俺のキャラとお前のキャラ」 「………」 「うわっ、ちょ、何だよ、叩くな、っておま、スペカは洒落に(ry」 8スレ目 607 ─────────────────────────────────────────────────────────── いとおしき 永遠(とわ)を生きたる おひめさま その我儘は あなたを求む 「うぅ~ん、平安のやりかたはこっ恥ずかしいな」 「あらそう?私は好きよ。今度は私が上の句を読む?」 「今度は俺が返歌かよ!難しいなぁ」 永遠の 果てまでおもふ 愛の夢 正夢となり あなたに届かん 「〇〇、もうちょっと捻ってよ」 「えー、いいじゃんか。俺なりに愛を全力投球してるんだぜ」 「……ばか//」 8スレ目 619 ─────────────────────────────────────────────────────────── 気がついたら おなじ 相手とばかり そして いつも おなじパターンで死ぬ あきらめずに 廃人TERUYOに 挑戦するけど すぐにPKKされるよ 激レアアイテムがあれば 戦わなくてもいいけど 何回やっても 何回やっても TERUYOがたおせないよ あの攻撃 何回やってもよけれない ギルメン使って うちつづけても いずれは各個撃破される ポット連打も ためしてみたけど 廃人相手じゃ 意味がない だから次は絶対勝つために 僕は結婚アイテムだけは最後まで取っておく 8スレ目 655 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「久しぶりね」 「これは……姫様……お久しぶりでございます。相変わらず月よりもお美しい……」 「ありがとう。そういうあなたは少し老けたわね」 「少し……そうですな。はい、少々老けましたな」 「えぇ、ほんの少し」 「それにしても申し訳ありません、この有様では何のお構いも出来ません」 「気にしなくていいわよ」 「安心いたしました。また以前のように難題が降りかかってくるものかと」 「そんなこともあったわね」 「えぇ、ありましたとも。大変なことも多かったですが楽しい日々でございました」 「私もよ」 「有難きお言葉」 「で、どうするの?」 「そうですな、できればこのまま……」 「そう」 「わざわざ足をお運びいただいたというのに申し訳ありません」 「いえ、なんとなくわかっていたもの」 「流石でございます」 「褒めても何もでないわよ」 「存じておりますとも」 「それもなんだか癪に障るわね。私が吝いみたい」 「そんなこと……」 「いいのよ。あなたの気持ちに気がつきながら……自身の心に背いた報いだもの。安いくらいだわ」 「申し訳ありません」 「許すわ」 「有難き幸せ」 「では、また会いましょう」 「見つけてくださるので?」 「見つけなさい。何が何でも。 前世の記憶がなかろうとも。人でなかろうとも。それがあなたに課す最後の難題よ」 「難しそうですな」 「難題ですもの」 「ふふ……生きがいが出来そうです」 「ええ。いつまでも待っているわ。 それじゃあ、私の愛したあなた……お休みなさい」 「はい、私の可愛いかぐや姫。お休みなさいませ」 8スレ目 738 ───────────────────────────────────────────────────────────
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基礎値 体力 840 移動 80 射角 5~95 基本ディレイ 530 弾1 判定 4 爆風 35 ダメージ 260 ディレイ 135 単発弾 弾2 判定 6 爆風 41 ダメージ 170 ディレイ 170 上方に魔方陣を飛ばし、そこからレーザーを撃ち出す 風・重力の影響を受ける 一定時間経過後加速し、それからさらに一定時間経過後着弾しなければ消滅 弾3 判定 3 爆風 17 ダメージ 50 ディレイ 160 若干ばらける6連弾。 弾4 判定 40 爆風 0 ダメージ 0 ディレイ 100 1発のみ弾幕を防ぐシールド アイテム・味方の弾幕にも反応 弾幕を防いだときに輝夜に30ダメージ ディレイ150増加される スペルカード スペル名 難題「蓬莱の弾の枝 ‐虹色の弾幕‐」 判定 3 爆風 35 ダメージ 105 ディレイ 200 EXP 300/600 約1.5秒後に15連弾に変化 スペルカード(変化後) スペル名 難題「蓬莱の弾の枝 ‐虹色の弾幕‐」 判定 3 爆風 17 ダメージ 30 ディレイ 200 EXP 300/600 若干ばらける15連弾 総評: どちらかといえば削岩寄りのキャラ。 単発弾の火力が控えめかつ大型削岩弾も持たないが、 全当てでダメージを取れる優秀な多段や、地形に隠れながら撃てる特殊な弾を持つ。 スペカの総削岩量は強力。できれば向かい風で使用したい。 2021/3/9修正 修正点 修正内容 弾1 威力240→260
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永遠亭に棲む蓬莱山輝夜にはよい暇つぶしがある。 巷に溢れるゆっくりと遊ぶことだ。 そのために無数の妖怪兎、通称イナバに言って特別の遊戯室を設けたほどに熱を上げている。 ゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙がイナバによって連れてこられた。 「ご所望のゆっくりを持ってまいりました」 「ご苦労様。下がりなさい」 ここは輝夜の部屋。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆゆ?ここはゆっくり?」 輝夜が目の前のゆっくり二匹にご馳走の並んだ皿を置いた。 その量はゆっくり二匹程度の腹などたやすく満たせるほどだった。 「っゆ~♪おいしそうなにおい!!」 「くれるの?くれるの!?」 輝夜は涎を垂らさんばかりにテンションの急上昇した二匹に、夜も照らされるような笑顔で頷いた。 「これらは貴方たちのために拵えられたのよ。存分に味わって頂戴」 「ゆ!ありがとう!きれーなおねーさん!!」 「きれーでゆっくりできるおねーさんだね!!」 がつがつと卑しさを丸出しにして食事に飛び掛り、むさぼる。 一口食べると、 「しあわへ~~~~」 と叫び、二口目には、 「うっめ!!めっさうんめぇ!!」 となり、さらに三口目には全てがなくなっていた。 あれだけあった食事が三口目には忽然と、煙のように消えてしまった。 ゆっくりたちは困惑している。 対して輝夜はころころと珠を転がすような笑い声を上げていた。 「ゆ!?あれ?」 「ど、どうしてなくなっちゃったの!?」 「きれーなおねーさん!ごはんがなくなっちゃったよ!!!」 「どこ!?まりさのごはんどこーーー!!」 泣き乱れながら輝夜に訴えかける二匹。 一口含んだだけでも天上の味わいを感じたのだ、それがたった三口でなくなってしまったのだ。 泣き叫ぶのも無理はない。 「あらあら、よく思い返して御覧なさいな。全部貴方たちが平らげてしまったわよ」 輝夜の言葉に疑問符を浮かべながらも、ゆっくりと思い返す二匹。 たしかに豪勢な食事を食べた記憶がある。それを証明するかのように、全身に満腹感がある。 ご馳走はとつぜん消え去ったのではなく、しっかりと食べ終わっていたのだ。 だが、それらの美味しさを味わった記憶だけがない。 がつがつと食べて、お腹が膨れていく記憶が確かにあるが、味を思い出せないために実感がない。 まるで、別人がうめぇもんを腹いっぱい食べているところを見せられているような、そんな感覚。 「ど、どぉして~~~!?」 「うめぇもんが、うめぇもんがぁ!!」 二匹が泣き叫ぶ。 輝夜はそれを見てにんまりと笑っていた。 種明かしをすると、これは蓬莱山輝夜の持つ能力に起因する。 永遠と須臾を操る程度の能力。 それを用いて、二匹がご馳走を味わっている時間を、須臾に変えてしまったのだ。 須臾とはとても短い時間のことを指す。 刹那ほど短くないが、それでも一瞬と呼ぶにはふさわしい。 ゆっくりたちの食事をするという経過を吹ッ飛ばし、食べ終わったという結果だけを認識させたのだ。 「どう、美味しかったでしょう?」 「ゆ、ゆっくり~」 「ゆぅ~」 答えられない二匹。気が付けば食べ終わっていて、味わった覚えがないのだ。返答のしようがない。 しっかりと食べてしまったのだから、輝夜に文句をつけることも出来ない。 「あら?美味しくなかったかしら?それとも、貴方たちにはわからない味だったのかしらね?」 「ゆ!そんなことないよ!ゆっくりおいしかったよ!!」 「そうだよ!まりさたちはゆっくりとあじがわかるんだよ!!」 「それは良かったわ」 そういうと、輝夜は二匹を抱えて部屋を出た。 「ゆ?きれーなおねーさんどこいくの?おへやでゆっくりしないの?」 「しょくごはゆっくりしたいよ!」 「食後にゆっくりすると、牛になっちゃうわよ」 「うし?」 「うしってなぁに?ゆっくりおしえてね」 「角が生えてる生き物よ。牛がゆっくりしてると、人間に殺されて食べられてしまうの」 「ゆ゛!たべられる!?ゆっくりできないよ!」 「いやぁ!!しょくごにゆっくりしない!!」 とたんに怯えすくむ二匹。 とても愉快そうな輝夜。 「大丈夫よ。これから、貴方たちをゆっくりさせないための遊戯室へ行くのだから」 「しょくごはゆっくりしたくない!ゆっくりさせないでね!!」 「ゆっくりさせないでね!」 「ふふふ」 道中通りかかった赤い目のイナバに、部屋の片付けを命じて、輝夜はその部屋に着いた。 『ゆっくり遊戯室』 と達筆なんだかそうでないんだか判別のつかない字で書かれた看板が掲げられている。 毛筆のそれは、墨痕淋漓として力を感じるが、幽かなたおやかさも持っているというよく分からない一筆だ。 輝夜が戯れに書いたものであった。 中に入るとすでに一匹がトランポリンで遊んでいた。 仲間の元に駆け寄っていく二匹。 その一匹はサクラだった。いや、サクラとはいえないかもしれない。それもここで死ぬのだから。 ぽよんぽよんと跳ねる三匹。 このトランポリンは円形のもので、表面にゆっくりの顔を模した模様が描かれている。 材質は永琳謹製の特殊素材。どれだけの衝撃をも吸収し、跳ね返すと豪語していた逸品だ。 だからどれだけ高さを伸ばそうとも、優しく受け止め、かつまた飛ばすことが可能だった。 きゃっきゃっと楽しそうに遊ぶ三匹。 その高さはすでに25メートルをゆうに超えていた。 サクラが動いた。 そのゆっくりは、輝夜の連れてくる二匹と遊び、しばらくしたらトランポリンから外れるように飛べと命じられていた。 報酬はご馳走と美人なゆっくりだ。 食欲と色欲に支配されたそれは躊躇うことなく命じられたとおりに動いた。 「ゆ!?どこいくの?」 「ゆっくりしていってね!」 上下に跳ねている二匹はあらぬ方向へ跳び出した一匹を見守っていた。 ぐしゃり。 「あ」 「え」 潰れた。やたらと平べったくなっている。 それを見て震えながら跳ねる二匹。 落下し、トランポリンに弾かれ跳びたった瞬間、輝夜は備え付けのボタンを操作し、トランポリンを床下に収納した。 30メートルの高みに到達したゆっくりが見たものは、トランポリンが無くなった硬い床だった。 視界にはべったりと張り付いているゆっくりの姿が見える。 末路を悟った二匹は顔面をゆがめた。涙が溢れる。 数秒後の未来を思うと叫びが止まらない。 「じにだぐないっ!!ゆっぐりじだいっ!!!あああああああ」 「ぎれーなおねーざん!!たずげてっ!!まぢざだぢをたづげで!」 輝夜は哂っていた。口を三日月のように歪めて。 「もっどゆっぐりぢだがっだよぉぅぅうううぶぎゅぅっ!」 「ゆっぐりぢだげっががごれぇええぇぇぇっぶりりっ!!」 二匹は全てをブチ撒けて死んだ。 10秒、20秒、30秒、1分が経過したが、いまだに床に叩きつけられないことに二匹は気づいた。 断末魔の叫びは口から出続けているし、視界には潰れた同胞と、きれーなおねーさん。さらに隣にはおともだちがいる。 だがその体は固定されたように宙に捕らわれていた。 いや、わずかだが、ほんとうに微々たるものだが、ゆっくりと、じつにゆっくりと落下しているのが分かる。 なにが起こったのかはわからないが、自分たちはゆっくりと落ちていくらしいと悟った。 口は叫び続けているから喋れないが、意識はいつもどおりだ。ゆっくり落ちるのならばゆっくりできるだろう。 勢いがないのならば、潰れはしないだろう。そう思った。誤りであった。 そして1時間が経ち、1日が経ち、1年が経ち、100年が経った。 やっと、地面についた。これでゆっくりできる。二匹は老いさらばえた精神で安心した。 体が接地した。 瞬間、走る激痛。叩きつけられ、皮膚が裂けて行き、中身にまで被害をもたらしていく様をゆっくりと味わっていく。 二匹はその苦痛に声を出すことすら出来ない。 いや、痛みを訴えようとしても、この100年間ずっと叫び続けていた断末魔がまだ続いていたのだ。 「ゆげっ!いだいゅ!ゆっぐりいだい!!いだいいだいいだいいだい!!だじげでっ!!おねーざぁん」 「ゆぎゅうっ!!いやだよ!いたいよぉ!!ゆっぐりでぎないよぅ!!!ぎれーなおねーざん!!!たじげでぇぇぇ」 意識の声が痛みをうったえ叫ぶ。ゆっくりと痛みが広がっていく。 「ごろじでぇっ!!ゆっぐりざぜないで!ごろぢでぇっ!!!い゛ぎぃい゛い゛ぃぃぃ!!」 「ゆっぐりじだぐない!!ばやぐじにだいぃいっ!!!あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 衝撃がゆっくりと侵食し、皮は潰れ、割け、飛び散りながら中身がぐしゃぐしゃに揺れる。 その苦痛を10年味わって二匹はやっと潰れた。やっと死ねたのだった。 輝夜はその様子を、顔を紅潮させて見守っていた。 二匹が落下し、潰れて死ぬまでの数秒を永遠にまで引き伸ばしていたのだ。 傍目にはただゆっくりが激突死したとしか見えないだろうが、輝夜と二匹にはそれが110年に及ぶものであった。 「あは、あはは♪あはははっはは!あははははは!あははははははは♪」 愉快痛快だと言わんばかりに腹を抱えて笑っている輝夜。 ただの暇つぶしに100年以上も浪費するという贅沢な娯楽。 実質数秒だから、本当に暇つぶし。 蓬莱山輝夜にだけ許された暇つぶしであった。 おまけ。 永遠亭の地下に巨大な施設がある。 ゆっくり生産場だ。その敷地には、あらゆる種類のゆっくりが並んでいる。 れいむ、まりさ、みょん、ちぇん、れみりゃ、ふらん、などなどだ。 みな一様に3メートルになんなんとする巨大ゆっくりだが、それらは壁にがっちりと固定されている。 これでは、いかな超重量級と言えど身動きひとつ出来ない。 さらに体中には無数のチューブがくくりつけられている。スパゲティ症候群もかくやという様相。 それらは栄養剤の点滴であったり、睡眠導入剤であったり、覚醒剤であったりした。 この施設の肝は産卵誘発剤だ。 それにより、定期的に一定数のゆっくりたちを生み出している。 産道には柔らかく、かつ丈夫なカテーテルが挿入されており、人工的に臨月を迎えた赤子たちはそこを伝って出産される。 そこを転がって出た子ゆっくりは産声を上げる間もなくベルトコンベアで輸送され、イナバたちによって選別される。 基準は健康状態だ。 劣悪なものは即座に潰し、栄養剤の点滴の材料に回される。 優良なものはそのまま育成されて輝夜の玩具となる運命だ。 巨大ゆっくりはたまに夢うつつに喋ることがある。覚醒剤の効果が起因しているかもしれないとは、永琳の言。 「ゆっくりできるいいこにそだってね」 終わり。 前半は 『空の雲はちぎれ飛んだ事に気づかず!消えた炎は消えた瞬間を炎自身さえ認識しない!』 『結果』だけだ!!この世には『結果』だけが残る!! で、後半は 「い…痛ぇ!鋭い痛みがゆっくりやってくるッ!うおあああああああああ」 って感じ。 著:Hey!胡乱 このSSに感想を付ける