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《蓬莱山 輝夜》 No.037 Character <第一弾> GRAZE(3)/NODE(6)/COST(2) 種族:人間 伝説 (自動α): あなたの場に「八意 永琳」がいる場合、以下の効果を使用することは出来ない。 (自分ターン)(1): 〔あなたのデッキ〕を全て見て、「八意 永琳」1枚を抜き出し、あなたの場にアクティブ状態で出しても良い。その後、デッキをシャッフルする。 攻撃力(3)/耐久力(6) 「永琳、私の力でもう一度だけチャンスをあげる。これで負けたらその時は・・・・・・」 (PR.056:「ふふ、我々月の民は、地上人を魔物に変えて、地上人の穢れを調整してきた。でも、もうそれもお終い」) Illustration:井村屋あゆか コメント 月のお姫様。 伝説を所持し、「八意 永琳」をデッキからサーチする能力を持つ。 伝説を持つキャラクターではノード・コスト共に低いが、蓬莱山 輝夜/5弾には一歩譲る。さらに「蓬莱山 輝夜」として見る場合、五つの難題を採用すると蓬莱山 輝夜/10弾が壁となる。 その為、やはり「八意 永琳」を呼び出すテキストこそがこのカードの真価と言える。 八意 永琳/1弾は高ノード高コストの大型キャラクターを手札を消費せず場に1コストで出せる為強力だが、通常は自動効果によりこのカードと同じ戦闘力になる為弱体化する。 ただ、逆に言えば、輝夜戦闘修正を受けている場合、事実上永琳側も強化され飛躍的に打点が増加する。結束で永琳を輝夜に「パートナー」としてセットしてやれば+8/+6の大幅な戦闘修正に加え、起動効果が使用可能になりカード2枚で11/12を二体並べられる。 近接戦闘などで輝夜の(自動)効果を無効にすることで、デッキの「八意 永琳」を全て場に出し、圧倒的な物量と火力で制圧することも可能。真実の光景とのコンボは非常に実用的。呼び出すカードを八意 永琳/1弾にすれば八意 永琳/1弾の(自動α)も無効になるので、8/6打点を一気に3体アクティブ状態で並べられる。 呼び出せるのはデッキの「八意 永琳」なので、いかに「八意 永琳」をデッキに残すかが重要になる。専用デッキを組むのであれば、転世『一条戻り橋』などの冥界のカードをデッキに戻す手段が欲しいところである。 公式Q Aより Q 162.No.037 蓬莱山 輝夜が場に2枚いる状態で、片方のNo.037 蓬莱山 輝夜が起動効果を使用した事に干渉し、もう片方のNo.037 蓬莱山 輝夜が起動効果を使用し解決した場合、デッキから「八意 永琳」を合計2枚場に出すことは出来ますか? A 162.はい、出来ます。コメント(自動α)は「使用できない」との記述しか無い。八意 永琳がいる場合「解決できない」との制限はないため、効果の解決時に八意 永琳が場にいても問題なく解決できる。手札からの八意 永琳プレイに干渉して効果を使用した場合も同様である。 関連 第一弾 Special Collection Vol.5 (PR.056) Based Starter プロモーションカード 蓬莱山 輝夜/5弾 蓬莱山 輝夜/10弾 蓬莱山 輝夜/13弾 永遠の月人チーム 不滅の敵愾チーム 難題『火鼠の皮衣 -焦れぬ心-』 難題『龍の頸の玉 -五色の弾丸-』 難題『仏の御石の鉢 -砕けぬ意思-』 難題『燕の子安貝 -永命線-』 難題『蓬莱の弾の枝 -虹色の弾幕-』 新難題『ミステリウム』 新難題『エイジャの赤石』 『永夜返し -夜明け-』 『永夜返し -世明け-』 新難題『月のイルメナイト』 新難題『金閣寺の一枚天井』 『蓬莱の樹海』 ※名称に「八意 永琳」を含むカード 八意 永琳/1弾 八意 永琳/5弾 八意 永琳/10弾 八意 永琳/13弾 ※「蓬莱山 輝夜」を参照するカード 八意 永琳/1弾 八意 永琳/10弾 悠久の月明 五つの難題
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眠い頭で書いた。所要時間30分くらい。 書き始めたころには無能氏が寝てしまって悲しみを背負っていた。やっつけ作業でもある。 「姫様、いつまでそうやってネトゲをやってるんです?」 永琳がいつものように輝夜にいつになれば働くのかと問う。 しかし、輝夜は決まって返事をしない。 「今回はもう姫様に動いて貰いますよ。必ず…」 いつものように、そう言って永琳は部屋を後にした。いつもならこの後部屋が水まみれになったり薬の失敗作が部屋に投げ込まれ爆発したりするのだが、今回はそのような様子が無い。おかしいと思ったが、永琳は輝夜では全く想定の出来ないものをよこしたのだった。 こんこん。 「失礼。八意永琳からの以来で説教をしにきた四季映姫・ヤマザナドゥだ。今日をもって貴方が仕事をするべきかどうか白黒つけようかと思います」 流石に、これは輝夜も面食らった。 死んでもいないのに閻魔がやってきた。しかも向こうから。これはどういうことだ。 頼みの綱である永琳がこの閻魔に依頼したとなると助けを求めることが出来ない。どうするべきか輝夜は悩んだ。 「で、具体的にどうやって白黒つけるわけ?」 「簡単です。貴方は黒です」 「………どういう規準なのよ」 「事前に永琳から事情を聞いています。貴方は誰よりも永く生きているのに働いたためしがないそうじゃないですか。そう、貴方はあまりにも働かなすぎる」 「ちょっと!少しは人の話を聞きなさいよ!別に私は永遠を生きるのだから別に今働かなくてもいいじゃない」 「そう言ってまた先送りにするのでしょう?貴方にとって永遠という言葉は何事からも言い逃れをすることが出来る。でも、それに貴方は頼りすぎた。その結果が今の貴方なのですから。」 「ぐ………」 「永遠という盾は貴方の力、蓬莱の力で無敵の盾となるでしょう。しかし、その力でいくつもの罪を重ねてきたのでしょう?まだ私が生きている間に、今ここで貴方を裁く必要がある!」 「上等じゃない。それなら力ずくでも従わせてみなさい!」 そう輝夜が言い放つと、伍つの難題が輝夜の回りを浮遊し始める。 「いいでしょう。貴方の怠惰を貪るこの地で、無限の休暇を断ち切る!」
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永遠と須臾の罪人、蓬莱山輝夜 永遠と須臾の罪人、蓬莱山輝夜 コスト:(3)(B)(B)(B) タイプ:クリーチャー - 人間・空民 P/T:2/2 キャラクター(蓬莱山輝夜)、刻符3 永遠と須臾の罪人、蓬莱山輝夜が場に出たとき、あなたのライブラリーのカードを上から7枚裏向きにゲームから取り除く。 あなたのドローステップを飛ばす。 あなたは手札のカードをプレイできない。 あなたは永遠と須臾の罪人、蓬莱山輝夜によってゲームから取り除かれたカードを見てプレイしてもよい。 コメント 関連 第三弾『随喜信仰』
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「○○ー、ダンスゲームで脚が疲れたから揉んでー」 「あいよー」 テレビとPS○とダンスマットの前で寝転んでいる輝夜の脚を揉む○○。 「○○ー、ご飯食べさせて~」 「あいよー」 あーんと口を開ける輝夜に、雛鳥の世話をする親鳥の如くご飯を入れる○○。 んまーいと口をモグモグさせている輝夜の口の周りを吹いてあげた。 「○○ー、背中流してー」 「あいよー」 隅々まで洗って性感帯を刺激させ、エッチな雰囲気になってしまった。 「○○ー、も、もっと激しくしてぇ」 「あ、あいよぉ!」 月夜が差す輝夜の部屋で激しくまぐわう2人。 覗き見る者も、嫉妬する者も、乱入する者も居ない、2人きりの時間。 「輝夜ー、そろそろ解除しないか?」 「嫌よー」 ○○に心身共々依存しきっている姫は、頬を胸板にすり寄せながら言った。 「永遠と須臾を操る程度の能力」によって、輝夜の依存生活を邪魔するものは居ない。 ○○も惚れた弱みでそれ以上強く言えず、彼女の髪を撫でながら困った面持ちで障子の間から見える満月を見上げる。 いつもならこちらを嫉妬と羨望に満ちた赤い瞳も、冷厳な智と狂気に満ちた目線も無く静かな月光が降り注いでいる。 永遠亭は、主の部屋を除いて静寂に満ちていた。 輝夜が○○のみに依存を望む限り、恐らく、ずっと。
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【為紀念獻上約束】 這是一個求婚的故事。 在前一段日子之前,交往邁入第三年的奏吵著想要結婚,出於無奈又或著是寵溺的心態下他們去挑了訂婚戒指作為暫時的補償。而那枚戒指,現在握在馬丁他手上。 這兩枚戒指是特別訂作的,今晚預約了一家氣氛很好的餐廳打算到時候拿出來慶祝用。他們雖然上班是同進同出,但是今天他特別先去領了戒指,想在晚餐上拿出來真正的求婚一次。 自從談戀愛後他就經歷了不少幾乎是人生第一次的,現在想想交往三年的時間也是很快的,就在不知不覺間他和奏的距離又更近了。奏喜歡甜的、不喜歡恐怖的事物、睡覺時總是抱著東西睡,雖然平時就很愛撒嬌了但私底下又更加像是小孩子一樣了總愛坐在他懷中等等......真的是非常、非常在交往後才知道的事情。 這些無形中成為重要事物的小碎片,這些事他平時都不會說出來但其實內心非常珍貴著。這些回憶他打算在今晚藉由求婚一次性的向從七年前、在廢棄堡壘見面後就逐漸改變他的女人說出,真正的表達一次他過去那些時間沒能說出來的情感。 老實說,他很久沒有那麼緊張了。之前聽金說他求婚時也非常緊張,很擔心伊莉絲會不會拒絕,甚至全身冒汗的程度,當時馬丁還笑他這種小事還緊張也太膽小了,等到現在輪到他時真的是緊張到連食慾都沒了。 應該不會吃螺絲吧......?他緊張的這樣想著,但是俗話說不怕一萬只怕萬一,就算在肯定也不是說沒有可能的。年齡差真可怕...... 無論如何,今晚都是決定性的一次約會,他想要盡全力讓這件事情完美落幕。 僅有頭上小燈照明著,周圍都變的黯淡,能清楚看見的只有對面那人仍顯年輕的臉但又略帶成熟的臉,馬丁認為沒有比現在更好的時候了,他輕咳將喉嚨裡的痰清掉,帶著緊張的語氣說 「可以......把妳的左手借給我嗎?」 奏有些不明所以,但還是將左手伸出置於桌上。看著他小心地將戒指取出才恍然大悟,一下子就臉紅起來呆呆地讓馬丁將他們去選的戒指套入指上。 「雖然現在才表達有些太晚,但我還是想要在這裡告訴妳,我已經徹底的敗給妳,打從心底、就連腦袋裡面都只有妳了。七年前的打賭,確實是我輸了。」越說他只覺得臉頰越像是火在燒,那熱度就好比三溫暖一樣......不,肯定更加熾熱吧,就連喉嚨都逐漸乾燥起來。吞了吞口水繼續將為了此刻他已經在腦中盤旋著好就,但現在卻已經無法組織的語詞一個一個重新連接起來,向她訴說著以前幾乎不怎麼表達的情意 「和妳在一起的時候都會變成珍貴的寶物,就算只是無聊的話、妳單純的撒嬌、無數次的惡作劇、有些生氣的臉蛋,我現在全部都喜歡著,並愛著。我......現在、不只現在,明天、後天、就連未來都想要和妳在一起,我想要在死之前都和妳在一起。」 所以...... 馬丁已經開始覺得暈厥了,過於緊張和害羞的原因所致,他可以感覺到全身的細胞都在滾盪的活躍著,腦袋也像是快要融化般產生暈眩感。但他還是想盡全力的把最重要最重要的話說出來 「所以......可以請妳跟我結婚嗎?」 奏呆愣的看著馬丁的臉,又看著手上的戒指,幾秒後「噗嗤」的笑出來。 「哈哈哈!馬丁先生,你的臉現在比番茄還紅耶!」面對如此慎重的場面,奏卻忍不處笑了出來,在笑了好就之後才停止,抹掉眼角的淚水。她將手覆蓋在因緊張而緊握的手上,露出微笑 「這不是當然的嗎。當然的,奏願意喔。奏......不,我從喜歡馬丁先生的那一刻開始就決定,『想要和妳在一起到很久以後』這樣喔。不管什麼時候、什麼地點、就算是臨死前,我都一直這麼想著的。」 「所以說......」奏的臉泛著紅潤,就算燈光照耀著也無法遮掩的紅潤。她有些害羞的側過臉 「未來也——請多多指教了?」 「......好。」回應完這句話,馬丁終於撐不住,過於用力思考的腦袋在放鬆下來後讓他暈厥,啪的一聲倒在桌上。 「馬丁先生!你還好嗎!」奏慌張的呼喊著,甚至起身蹲在他的身旁。 「沒事......我沒事,只是放鬆下來後感覺腦袋整個都好暈而已......」 「奏去向服務員拿毛巾,稍等一下喔!」 聽到腳步離開的聲音,馬丁不自覺笑了出來。這大概就是上了年紀吧,只是求個婚就緊張到貧血了。 看來他得多鍛鍊身體了......
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様子がおかしい事と気付くのふくのに時間がかかった。 最初は低血圧か、気に障る事でもあったかと思っていた。 季節衆目も問わず擦り寄ってくる輝夜、 最近は不機嫌そうに抱き着いてくる事。 鈴仙や永琳と話しているとそれを遮る様にだ。 「ごめん、嫉妬したの?」 と聞くと、 「んー……」 とお茶を濁す様に肯定していた。 機嫌が悪いんなら戻さないと、と、 適当に接待プレイすると気まずそうに、 「何か付き合わせたみたいで悪いね」 と言われる。 どうしたいんだ、全く。 「イナバや、永琳みたいな事言うけどね」 能力も、弾幕も何も無いまま、 ただ逃がさない様にぎゅっと抱きしめられる。 「○○を独占したい。 私の事だけ見て欲しい、考えて欲しい」 「はは、そんなの……」 「でも、駄目だよ。 強制なんかしたらそれは愛になるかもしれないけど、恋にはならないもん」 女心がわからない僕からすると、馬鹿な悩みだ。 頭をぽんぽんと叩く。 「ねぇ、どうすれば○○は私を好きになってくれるの?」 「今でも十分好きさ」 「駄目なの! 私しか見えないぐらいに悩殺しないと安心出来ないよ!」 「悩殺はちょっと違う気がするけどなあ」 じゃあ、次に会う時までに考えておこう。 そう言うと輝夜はしぶしぶ引き受け、 PS2の電源を入れてそっぽを向いた。 足をばたばたさせる辺り不満が見て取れる。 ……さてどうしたものか。 帰りがけに永琳を連れ出し聞いてみると。 「だったら家事でもやらせて頂戴」 ……だよなあ。 帰り道に行商を終えた玲仙に聞いてみれば、 「(家庭内で)自立した女性とか……ですか?」 やっぱなあ。 バカルテット一行でてゐを見つけて聞いてみると、 四人が割と真剣に考えてくれた。 「○○の好きな食べ物ってある?」 「え?ああまあ、オムライスとか?」 「じゃあそれを上手に作れる人って言えば良いよ?」 あー、まあ、オーソドックスだよなあ。 「じゃあそれで行くかな、ばいばいてゐ、また明日」 好きな食べ物か…… うーん、簡単過ぎると輝夜が不満かもしれんし、 かと言って難しい物だとあいつに作らせるのは怖いな。 ……よし、逆転の発想で行ってみるか。 「はぁ!?輝夜を好きになるには、って?」 妹紅に呆れた顔で聞き返された。 「いや、あれ程最低な奴はいないだろ……無理無理」 「いやさそこを逆転の発想でな……」 「はあ……死なないから殴り放題?」 「そろそろくじけそうだ」 過程をすっ飛ばして数日後、 解答が見つかるまで永遠亭に行かない様にしようと思っていたが、 輝夜に言われて鈴仙が拉致しに来た。 「勘弁して下さい大人しく付いて来て下さい……」 泣きながら袖ををめくって注射針の痕を見せてくる。 む、永琳が一枚噛んでいるのか? 永遠亭に引き込まれ、永琳もまたすまなそうに僕を引っ張る。 小声で、 「一服盛ってるから」 あぁ、眠くなるくらいあるよ、かな? 「味は大丈夫よ?」 そっちかよ。 そもそも何で好きな食べ物の下りが…… あぁ、てゐか。 あいつめ輝夜が料理出来ないのを見越してチクったな。 「さあ、出来たわよ!」 自信満々の輝夜に出されたオムライス……? 即座に永琳に耳打ちする。 「……薬の分量間違って無いか」 「……不思議ね、着色料も入って無いのに青くなるって」 この世には私の知らない事もたくさんあるのね、 とそのまま遠くを見つめ始めた。 ……苦労したんだな。 輝夜はというと、 (さあいっぱい食べてねきっとおいしいよおかわりあるからすぐに感想を聞かせてね!) といった顔でスプーンを見つめてる。 ここ最近で一番輝く笑顔だ。 「わ、わぁい……頂きます……」 シ゛ャリ 味は大丈夫よ…… 味は大丈夫…… 味は…… 体が即座に毒と判断して吐き出そうとするのを抑える。 大丈夫大丈夫、飲み込めば薬で楽になれる、 そうだあえて地雷を踏んで楽になるんだ…… 「美味しい!?」 聞くなよしんどいのに…… 「あ、あぁ……」あたま痛い。 そのまま床に倒れ込んで、 ひんやり気持ちいいと思った辺りでやっと薬が効いてくれた。 目が醒めると? 真っ暗な狭い空間。 まるで棺桶みたいだが…… 「あ……やん」 何これやーらけー。 「輝夜……?これは一体?」 「能力で作った棺桶みたいな部屋。 こうすれば二人っきりだよ」 すりすりしてくる、 しかしこの狭さで擦り寄るも何も無い気がするが。 「で、さ。 ○○はどうやったら私を好きになってくれるかな?」 「はぁ……もう十分だよ」 「こうしてずっと一緒にいてくれるのに、好きにならない訳無いだろ?」 輝夜がぶう、と息を吹き掛ける。 「そんなのいつでも出来るじゃない。 そんなんじゃ私だけを好きになったりしないよ!」 「ちーがーうーの」 抱きしめる。 「永琳や妹紅はここまでしないよ。 こんな所に監禁して……病んでるねえ」 「そ、それは○○の好みじゃない! 漫画とかラノベとか……エrg……とか」 最後の方コ゛ニョコ゛ニョ言って聞き取れなかったが。 「あのね……」 「それは知ってたから……私だってそうなろうと頑張ったんだよ? 監禁だって……永琳に頼らないで私一人で出来る様に考えたんだよ?」 「分からん子だな。 そこまでしてくれるから好きなの」 「え……?」 「自分を愛する人を愛さない訳が無いだろ?」 「うー……でもそれだと、永琳や妹紅も○○を気に入ったら、愛したりするんじゃない? そしたら○○は浮気するよね?」 「そしたら病んだ輝夜が何とかするだろ?」 「……! もう!ふざけないでよ!」 「あはは、ごめんごめん。 だって、人を好きになるのに理由なんて要らないだろ? だから理由なんて無意味だし、気も変わる時があるさ。 だから、心をここに繋ぎ止めようとする君が好きなのさ」 「理由なんか要らない……か……」 部屋がさらに狭まる。 体は上に乗った輝夜と完全に密着し…… 下手したら入りそうで怖い。 「か、輝夜?」 「そうね、○○の心を私に繋ぎ止める様に努力しなきゃね?」 「ま、待て、手段は選べ手段は!」 「ふふ、大好きよ、○○……」 部屋より先に体が潰れてry…… 今日も万年火燵でゲームをする日々。 逃げようとすると輝夜が足を絡まして来る。 大丈夫、君の事大好きだよ。 今はね。 君以外を向き続けて、 その努力が報われなかった時、 どんな壊れ方をするのかな。 今からが楽しみだ…… 「なあ輝夜、そろそれ俺達も……」
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書籍情報 あらすじ 既刊一覧 作者の他作品 関連リンク 書籍情報 タイトル 剣の求婚 著者 天都しずる イラスト 仁藤あかね 出版社 アルファポリス レーベル レジーナブックス Nコード N6972BI 連載開始 2012年 09月02日 備考 Web版一部ダイジェスト化済 あらすじ 〝普通の生活〟を何より愛する武器屋の娘フェイシア。そんな彼女のもとを、行方不明だった勇者が訪ねてきた。「どうか結婚してほしい。私ではなく……この魔剣と」。そう言って勇者が差し出したのは、魔王を倒したと言われる伝説の武器・魔剣イブリース。驚くフェイシアの前で、なんと魔剣がしゃべり出した! 「ようやくお前に会えた! この時をどれだけ待ちわびたことか」。わけがわからず困惑するフェイシアに、強引に結婚を迫る魔剣。しかも求婚を断ったら、世界が危機に陥ると言われて――? 既刊一覧 タイトル 発売日 分類 ISBN 値段 詳細ページ ストア ランキングデータ 剣の求婚 2015年 12月25日 一般書 978-4-434-21441-7 1,200円 アルファポリス Amazon honto 書籍データ 剣の求婚 2 2016年 04月28日 一般書 978-4-434-21895-8 1,200円 アルファポリス Amazon honto 書籍データ 作者の他作品 イミテーション・プリンセス 最果ての魔女 関連リンク Web版 「剣の求婚」
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月下紅夜 ~初めに~ 注意事項 竹取物語の舞台は奈良時代辺りとされていますが、奈良時代の文化など全然分かりません。 そこで奈良、平安、現代を適度にミックスした独自の文化を舞台に設定しました。 よって歴史的考証などは一切合財無視しています、御容赦下さい。 またヒロインの一人である妹紅のモデルのこともあり歴史上の人物を登場させています。 ぶっちゃけ藤原不比等です。 『俺の中の藤原不比等はこんなイメージじゃねぇ!』 という奇特な方がおりましたら、この機会にイメージを変えてみたらどうでしょうか? ~月下紅夜 〇〇編~ この俺、〇〇は藤原家の居候である。 何でも蘇我氏の事件の時にただの村人であった父が不比等さんの父である鎌足さんの手助けをし、そのお礼に藤原家でうちの一族の面倒を見てやるとかなんとか… 当時は生まれても無かったのだからその辺りは分からない。 とにかく俺は不比等さんのおかげで3食と寝床を確保できているのだ。 「そう思うのなら、少しくらい恩を返したらどうだ?」 「だったらやらせてくれる様に頼んでくれ、庭掃除でも飯の支度でも」 現れたのは5女の妹紅だった。 一番年が近い彼女とはまるで兄妹のようにすごしてきた。 他の不比等さんの子供が俺から距離を取っている中、妹紅だけは何の隔たりも無く接してくれている。 「お父様はお前に甘いところがあるからな、うちの中の誰かとくっつけようとも考えてるぞ」 「無理だ。他の連中が俺のことどういう目で見ているかくらい分かってる」 農民出身の自分は、貴族には当然見下される。 同時に農民からは貴族に取り入ったとして妬まれている。 不比等さん本人はいい人で感謝してもしたりない。 だが他の一族は、妹紅を除いて後姿も見たくない。 「そんなこと無い、お前の父のおかげで今の藤原家が存在することくらい皆知っている」 「親父は親父、俺は俺だ。俺はまだ藤原家に何も返してない」 「いつか返してくれればいいさ、どれくらいかかるか分からないけど、ずっと一緒にいればそのうち思いつくだろう」 それは遠まわしな告白。 藤原妹紅は俺に恋心を持っていだいている。 長い付き合いだし、そんなことが分からないほど鈍感じゃない。 だが応えるわけにはいかない。 元々身分が違う、名家である藤原家に自分のような農民の血を入れていいはずが無い。 それに俺にとって妹紅は文字通り『妹』として見てきた。 今更違うように見る事はできないのかもしれない。 「俺の好みは黒髪で色白、そして何よりも胸だ!胸が大きくないと」 「髪と肌はともかく、胸はそれなりにあるつもりだが…胸で女を判断するなんて変な奴だ」 「なぁに、あと千年もたてばきっと胸の大きさが女の魅力の一つになるはずだ」 「思いっきり死んでるじゃないか……」 妹紅は呆れかえった様だ。 彼女の中で俺は『乙女の気持ちに気が付かない鈍感な奴』として分類されているのだろう。 そのうち本当に愛想を尽かし、いつか妹紅に相応しい男が現れるはずだ。 そうなることを望んでいるのと同時に、いつまでも一緒にいたいと考えるのは明らかに矛盾している。 そしてこの難題に対する答えはまだ出ていない。 「最近お父様が女の所に通ってるんだ」 飯を食べていると妹紅がそんなことを言い出した。 別段珍しいことではない、この時代女が家で待ち男が通うのは当然のことだ。 不比等さんは貴族だし、待ってる女の2~3人いてもおかしくない。 「それが妙な噂のある女で、曰くこの世のものとは思えない美しさ、曰く竹から生まれた、曰く3ヶ月で成人した」 「どんな妖怪だ? 口から火を吹いたり睨んだ相手を石に変えたりもするんじゃないのか?」 「いいとこの娘なら私も気にしないんだが竹細工職人の娘らしくて、もしかしたら本当に妖怪かもしれない、そうだとしたらお父様を助けなくては!」 結局二人で噂の娘とやらを見に行くことになった。 急ぎなら馬、落ち着いて行くなら牛車だがどっちも気に入らない妹紅は歩きで行こうといいだした。 断る理由も無いので了承したら動きやすい服装に着替えるから待っていてくれと言われた。 しばらく待って現れた妹紅は世にも珍しい格好をしていた。 「どう? 似合うかな?」 そう聞かれて言葉につまってしまった。 素材は恐らく木綿、ゆったりした胴回りと足首の部分で絞った裾は動きやすさと安全性を追求した結果だろう。 が、まるで労働者のような服装をされて『似合う?』と聞かれたらどう答えたらいいのだろうか? 「似合う似合わないはともかく…すごい戦争が起きたら推奨されそうな服だな」 「頑丈で動きやすいんだ。千年もしたらきっと都中に流行るはずだよ」 「ぜってぇ流行らないと思う」 思えば妹紅は昔から変わった少女だった。 むしろ俺と居たからこうなったのだろうか? 一緒に庭を駆け回って虫取りをしたり、そんなことしちゃいけませんと起こられて飯を抜かれたり、ひもじい中隠し持っていた握り飯を二人で分け合ったり。 もっと女の子らしい遊びをしておけばよかった。 貝合わせとか和歌とか、今更言っても遅いか。 竹取の翁の家に辿り着くとすごい行列ができていた。 その9割9分が男、すべて噂のかぐや姫目当てなのだろう、残りの一分はもちろん妹紅だ。 長蛇の列にも関わらず意外と順調に前に進んでいるのは一人当たりに掛かっている時間が短いからだ。 牛車に満載の贈り物を用意した男たちが牛車を空にして帰って行く。 落ち込んだ顔、気合を入れている顔、呆けている顔、それを見ているだけで待っている時間は潰せそうだ。 「お父様!」 妹紅の声で不比等さんを見つけた。 気合を入れた顔で家に帰ろうとしている。 「おお、妹紅、それに〇〇君、君たちもかぐや姫に会いに?」 「まぁそうですけど、不比等さんは手ごたえあったんですか?いい顔してますけど」 「いや、だめだった。ぜ~んぜん相手にもされてない」 全然相手にされなかったら何で笑っていられるのだろうか? 周りの男達は訳が分からないといった顔をしているが俺と妹紅は知っている。 不比等さんは逆境に立てば立つほど燃える人なのだ。 妹紅のお母さんとの馴れ初めも数十回アタックして勝ち取ったらしい。 妹紅と一緒に軽く100通は超えている恋文の束をすべて焼いて季節外れの焼き芋を作り、飛び蹴りを喰らった記憶は今でも鮮明に覚えている。 拳骨くらいは覚悟していたが、まさか当時年齢一桁の子供に大の大人が飛び蹴りをするとは予想もしていなかった。 もっとも、垂直に跳んで足を伸ばしただけだったので見た目に反して衝撃はそれほどでもなかった。 派手なことをして他の者たちがそれ以上俺と妹紅をしからないようにすることを狙った行動だと後になって気がついた。 要するに豪快さ、計算高さ、やさしさを兼ね備えた立派な人なのだ。 「それじゃぁ私は新たな贈り物と恋文を用意する! 二人とも遅くならないうちに帰るんだぞ」 不比等さんはそう言って帰って行った。 と、思ったら走って戻ってきて妹紅の耳に口を近づけるとこちらをチラチラ見ながら喋りだした。 「かぐや姫は本当に美人だ。妹紅、〇〇君をしっかりと捕まえておくんだ。何なら夜にでも襲ってしまえ」 そういうのは小声で本人に聞かれないように話してください。 妹紅も顔を真っ赤にしちまって…… それから半刻と待たずに俺たちの番がやってきた。 途中庭を通ったが山のような贈り物があった。 すべて男たちが貢いだものなのだろう、今日分だけと仮定するとこの数十倍は宝が贈られた事になる。 竹細工職人と聞いていたけど貴族の物より大きい屋敷に住んでいるのはおかしいと思っていたが、なるほどこれならもう竹細工など作らなくても暮らしていける。 案内をする使用人は不思議そうな顔をしている。 これまで来たのはすべてかぐや姫に求婚する男ばかり、そこにいきなり手ぶらの女連れが来たら奇妙にも思うのだろう。 辿り着いた部屋には一人の少女が座っていた。 顔は幕に隠れて見えないが年齢は自分や妹紅と同じくらいだろう。 「ようこそいらっしゃいました。本日はどのような御用件で?」 かぐや姫の声は正に珠のような声と言ってよかった。 澄み切って何時までも耳から離れない、一度聞いたら逃れることはできない魔性の声だ。 だがどこと無く疲れているような気がするのは同じようなことを何十回も繰り返して言っているからだろうか? 「生憎私はどなたともお付き合いする気はありません、贈り物はありがたく頂戴しますが本日はどうかお引取り下さい」 こっちが用件を切り出す前に一気にまくし立てやがった。 こりゃ顔は分からないけど、かなりいい性格をしてるってことは分かった。 ならこっちも遠慮することは無い、存分に相手させてもらおう。 「なぁに、巷で噂の妖怪姫の毒牙にかかる恩人が忍びなくて、とりあえず様子見に顔だけでも拝んでおこうと思っただけです」 幕の向こうの影が動揺したことが分かった。 「妖怪とは結構な物言いですね、参考までにどんな噂なのか教えてもらえますか?」 「さぁ?どうだったけ妹紅、竹から生まれて3ヶ月で大人になって」 「口から強酸の霧を吹いて目から怪光線を発射するんだろ」 妹紅と二人で聞いたことも無いようなことを言い続ける。 幕の向こうの影は少しづつ震えが大きくなってきており、握った拳にかなりの力を込めているのが隙間から見えた。 やがて京都~大宰府を半刻で飛び、一晩で唐を火の海に変えるといったところでついにかぐや姫が切れた。 「あなた達! いったい人を何だと思って――」 目の前の幕を手で押しのけ、かぐや姫は大きく一歩を踏み出し……たところで着物の裾を踏んでしまったらしい、顔面から地面に倒れこんだ。 あまりのことで使用人たちも反応できないでいる、うつぶせのかぐや姫はピクリとも動かない。 「痛い……」 その一言で時が動き出した。 使用人達は右へ左への大騒ぎ、かぐや姫は打ちつけた鼻を押さえている。 皆が落ち着くまで半刻、俺と妹紅は完全に置いてきぼりになっていた。 「ごめんなさい、結婚の申し込みばかりで少しいらついてたの」 かぐや姫、もとい蓬莱山輝夜は饅頭を齧りながら謝った。 ひっきりなしの求婚のせいでかなり鬱憤が溜まっていたらしい。 「いや、私たちも調子に乗りすぎた」 「3割くらいは真実じゃないかと考えてるけど、実際のところどうなんだ?」 「竹林でおじいさんと会ったのは本当、でも竹の中で生まれたとか3ヶ月で大人になったとかはでたらめよ。なんでそんな話になっちゃったんだか」 冷静に考えたら当たり前の話だった。 本当にどこでどう噂が捻じ曲がったんだか。 まぁこれで不比等さんの相手が妖怪ではないと判明したわけだ。 「藤原不比等さんね~、悪い人じゃ無さそうだけど結婚相手としては見れないなぁ~」 その言葉で妹紅はほっとしたような残念そうな顔をした。 自分の父親のことだし、彼女も複雑なんだろう。 「けど――」 そう考えていると輝夜が身を乗り出してきて、息が吹きかかるくらい近くでじっと目と目を合わせてきた。 こうして間近で見ると輝夜は美人だ。 この世のものとは思えない美しさというのもあながち間違いでは無い。 墨染めのような黒い髪に雪のような白い肌、妹紅に対して言ったことはあながち間違いでは無い。 輝夜は自分の好みにズバリ当てはまっている、もしもこんな娘に告白されたら…… 「あなたみたいな人に求婚されたら『はい』って言っちゃうかも」 輝夜が擦り寄り肌を密着させてきた。 妹紅が顔を真っ赤にして口をパクパクさせているのを横目で確認できた。 しかし頭が働かない、輝夜から漂ってくる香りが鼻を刺激して頭の回転を鈍らせる。 やがて輝夜は後ろに回り、背中に胸を……胸を…… 「萎えた」 「ええ!」 くっついたままで輝夜は驚いた。 それほど自分の魅力に自信があったのだろう、信じられない者をみるような目つきをしている。 「その断崖絶壁じゃ俺の心は動かないな」 「胸!? あなた胸で判断してるの!?」 その一言で真っ赤になっていた妹紅は噴出した。 腹を押さえて転げまわり、笑い声は屋敷の外にまで響く。 「妹紅くらいあれば合格だ。だがお前ほど絶望的になるとむしろ情けなくて涙が出てくる」 「ひど! 千年くらいたったら貧乳には希少価値が出るわ!」 「あははははは、千年もたったら死んでるだろう」 「……残念だけどそうはならないの」 真剣な声に妹紅の笑いが止まった。 輝夜は軽い体を自分の背中に預けたままどこか遠いところを見ている。 その方向には出たばかりの月があることが目線を追うことで判明した。 「わたしね、死ねないの、ずっと生き続けるの、何百年でも何千年でも」 「そんなことあるわけ……」 「ホントよ? 首を切られても胸を刺されても、粉微塵なったって死ねない。どんなに人と仲良くなってもその人は先に死んでしまう。永遠に他人の死を見続ける、それが私に与えられた罰」 「それじゃぁ、出会わない方がよかったのか?」 妹紅の問いに輝夜はゆっくりと首を左右に振った。 「分かれるのは辛いけど出会わないのはもっと嫌、出会う人、一人一人が私の大切な思い出、それがあるからわたしは未来に絶望しないで生きていられる」 輝夜は俺から離れるとゆっくりもとの位置に戻った。 その瞳は俺たちもその例外では無いと語っている。 楽しい時間はいつか終わる、それが早いか遅いかだけの違いだ。 「でも、一人くらいはわたしと永遠を共にしてくれる人がいてもいいかな?って思ってるの」 妹紅と顔を合わせて互いに頷く。 輝夜はその行動がとても奇妙に見えたのだろう、頭に『?』を浮かべている。 妹紅と一緒に輝夜へ手を差し出した。 やはり輝夜はキョトンとしている、しばらく差し出された手を見ていたが恐る恐る二人の手を取った。 「手を取ったな?」 「手を取ったね?」 「手を取ったけど?」 俺と妹紅はにんまりとして輝夜を引っ張った。 二人の力に引かれて輝夜は倒れこみ俺と妹紅の間に輝夜が入り込む形になった。 「え? 何これ? 何しているの?」 「手を取り合ったら友達になるんだ」 「永遠は無理だけど、少しくらいなら一緒にいるよ。私も〇〇もそのくらいの余裕ならあるさ」 輝夜の目に涙が溜まった。 さらに顔を埋めて震えている輝夜を俺たちはずっと包み込んでいた。 「貝合わせをしましょう」 いきなり輝夜がそんなことを言ってきた。 ここは竹取の翁の屋敷、輝夜と友達になった俺と妹紅は割と頻繁にここを訪れていた。 特に珍しいことをするわけではない、ただお茶を飲みながら世間話をする程度だ。 ちなみに輝夜が俺たちと過ごしている間、求婚者達は使用人が身代わりになって相手をしている。 声色の似ている者の顔を幕で隠し 『私は結婚しません』 を連呼させる。 どんな拷問だと思ったが、その身代わりの本人がそれなりに楽しんでいるから問題ないのだろう。 ただ 『所詮男なんてこの程度、幻想の乙女に酔いしれるがいいわ』 という発言はどうかと思う。 まぁ、そんな裏の事情を知るくらい入り浸っているわけだ。 「貝合わせってアレだろ? 綺麗な貝殻見せ合ってどっちがいい貝殻かを比べるってやつ」 「あなた一応貴族の娘よね? 何でそんなに自信なさげなのよ」 貝合わせといったら貴族の間で大流行の遊びだ。 これを知らない者は貴族の中にはいない、と言っても過言ではない。 過言ではないのだが……妹紅は貝合わせ自体をしたことが無い。 「俺のせいだな、妹紅はずっと俺と過ごしてきたから考え方も男寄りになってるんだ」 「そんなモンより蹴鞠とかの方が好きだけどね」 「そんなんじゃダメよ、〇〇だっておしとやかな方が好みよね?」 輝夜が擦り寄ってきて腕に手を回してきた。 妹紅が慌てて逆の腕を引っ張り輝夜から引き離す。 「〇〇はやらないぞ! 〇〇は私……じゃない、藤原家のものだ」 「誰も貰うなんて言ってないわ、こういうのは奪うの」 「もっとたちが悪い!」 そんなことを言い合った次の日、俺と妹紅は海に来ていた。 目的は貝合わせに使用する貝を探すことなんだが…… 「さすがに今の時期に海に来るのは無謀じゃないのか?」 「うるさい! 引くに引けなくなったんだ」 現在、冬と春の境目、まだ海に入るには命がけの季節だ。 そもそも貝合わせの貝は漁師が取ってきた物を加工するのであって自分達で探すものではない。 第一そんなに綺麗な貝が砂浜に転がっているわけも無い。 「大人しく不比等さんから貰えばよかったじゃないか」 「お父様がニヤニヤしながら『妹紅もそんなことをするようになったか』とか言ってくるんだ……輝夜と勝負するためって言い出せなくて」 不比等さんは輝夜に求婚している一人だ。 いくら娘のためとはいえ求婚相手との勝負に使うとなれば快く渡すことはできないだろう。 貝の入手に当ての無い俺たちは、結局こうして砂浜を漁るくらいしかできないのだった。 3刻ほどたっただろうか? 貝を入れるために持ってきたタライはアサリで一杯になっていた。 味噌汁の具には困らないが当初の目的は達成できていない。 「やっぱり私に貝合わせなんて無理だったんだ」 「そんなこと言うなよ、きっといい貝が見つかるって」 「いいんだ、どうせ私は女の子らしくなんてできない、〇〇だって本当は輝夜の方が――」 その時、視界の端で光るものがあった。 妹紅もそれに気がついたらしく一緒に駆け寄る。 それは真っ白な貝、まるで溶け残った雪のようなそれは波に打たれながら夕日を反射して輝いていた。 「綺麗……」 「いい貝じゃないか、これなら輝夜にだって負けない」 「いや、この貝は使わない」 妹紅はそういって再び砂浜を漁り始めた。 なぜせっかく見つけた貝を使わないのか? そう尋ねたら意地悪そうな顔をして言った。 「この貝は今日の思い出にとっておく、輝夜の相手なんてアサリで十分だ。数をそろえて圧倒してやる!」 結局、完全に日が沈むまで二人でアサリを集め続けた。 3日ほどアサリ尽くしの食事が続き少し後悔するのを今はまだ知らない。 「輝夜様、御指示の通りに貝を置いてきました。よろしいのですか? 一番いい貝だったのでしょう」 「いいのよ、あの二人には仲良くしてもらいたいし」 外を見上げると満月が昇っていた。 きっと明日の夕食は〇〇と妹紅の持ってくるアサリでアサリ尽くしになるだろうと考える。 「うらやましいなぁ、人生を共にできる相手がいるって」 自分と共に永遠を過ごす相手は誰なのだろうか? 頭に浮かんだ顔は、なぜかアサリの味噌汁を飲んでいた。 「今日は祭りがあるんだ」 そう妹紅が言い出したのが昼をしばらくすぎたくらい。 「お祭りかぁ~行きたいけどわたしが外に出たら順番待ちの男たちが黙ってないだろうし」 「そこは考えてある、変装すればいいんだ」 取り出したるはもんぺ、そりゃ噂のかぐや姫がこんなモン着るなんてだれも想像しないだろう。 さすがの輝夜も少し顔が引きつっている。 「わたしにこれを着ろと?」 「まさか、着るだけで変装になりゃしないだろう」 妹紅はいつの間にか使用人を買収していたらしい、あっという間に輝夜はもみくちゃにされて着替えが完了した。 普段のきらびやかな着物とは比べ物にならないほど地味なもんぺ、長く黒い髪は後でまとめて歩くときの邪魔にならないようにしてある。 雪のように真っ白だった肌は少し薄めた眉墨で汚して庶民らしさをアピール。 この姿を見て何人もの男が求婚する相手だと考える人間はいないだろう。 「似合ってるじゃないか」 妹紅が笑いながら言う。 「似合ってるの?」 輝夜は俺に尋ねる。 妹紅の時もそうだがもんぺ姿に対して似合う似合わないを聞かれても困る。 これが浴衣とか着物ならまだ言葉が思いつくのだが、どう答えるべきなのか? 「没落貴族みたいだな」 10人以上の使用人を含めたその場の全員にフルボッコにされた。 うまく屋敷を抜け出して祭りが行われる神社までやってきた。 が、階段を上る前に輝夜の体力が尽きた。 地面にへたり込んでもう歩けないと泣き喚いている。 しょうがないのでおんぶして出店を回ることにした。 境内は人が一杯で油断したらはぐれてしまうかもしれない、そう心配した時には遅かった。 妹紅の姿が見えない、おまけに雨も降ってきてしまった。 輝夜を背負ったまま雨宿りできそうなところを探す、ちょうどいい木が見つかったのでそこで様子を見ることにした。 「ねぇ、以前言ったこと覚えてる?」 背中の輝夜が尋ねる。 辺りに人はいない、さすがに密着した少女と暗がりで二人きりと言うのは理性が耐え切れるか自信が無い。 唯一の救いは背中に感触が無いことだろうか? これが妹紅だったら危なかった。 「わたしは永遠を生き続ける。終わりの見えない孤独な旅、共に歩いてくれる人を待ち望んでいるの」 輝夜は力を込めてしがみついてきた。 力いっぱい掴んでいれば、この後の問いに 『はい』 と答えるとでも考えているのだろうか? だが、俺の答えは―― 「〇〇、私と共に旅をしてくれない?あなたと一緒なら永遠の地獄だって耐えることができるわ」 「出会ったのが輝夜だけだったらそれでもよかった。けど妹紅を置いて行くこともできない。優柔不断だけど、どうしたらいいか自分でも分からないんだ」 妹紅を含めた3人で思い出を作る、これが現状で選べる妥協点だった。 いつかは選ばないといけないけど、それはまた先の話、そう考えていた。 先延ばしにした挙句、道を選ぶ余裕さえなくなってしまうことに気がつくのはホンの数ヵ月後のことだが、今の俺には知る由も無かった。 「雨止んだね」 「妹紅もどこかで雨宿りしてただろうし、探そうか?」 「それもいいけど、もう少しだけ二人でいさせて……」 そのうち妹紅の方がこちらを見つけた。 輝夜と二人きりで何をしていたかを尋ねるが輝夜ははぐらかすだけ、何も無かったと信じてもらえるのに次の日の朝までかかった。 「最近お父様の様子がおかしいんだ」 今日も今日とて竹取の翁の屋敷で茶菓子をつまむ。 最近は求婚者の数が減ってきたのでつまらなくなったと身代わり使用人が言っていた。 少なくなったと言っても5人ほど残っている、何度断られても諦めない根性のある求婚者の中に妹紅の父である藤原不比等も含まれていた。 「おかしいって、どういう風におかしいの?」 「有名な宝石職人に片っ端から声をかけて何か作ってるらしい、単にお前への贈り物を作らせてるにしては金をかけすぎている」 「あちゃー、そうきちゃったか~」 輝夜は少し困ったような顔をした。 なんでも竹取の翁がそろそろ結婚したらどうかと言ってきたらしい、候補は当然5人の求婚者。 しかし当の本人は結婚する気など無い、何とか穏便に断る方法はないかと考えた結果思いついたのが5つの難題だった。 仏の御石の鉢、蓬莱の玉の枝、火鼠の裘、龍の首の珠、燕の子安貝のそれぞれを持ってくるように命じる。 その中で不比等さんは蓬莱の玉の枝担当なわけだが、どれも噂でしか聞くことが無いような宝物を持ってくることなど初めから期待していない。 何とかして誤魔化そうとするかも知れないが適当に難癖をつけて不合格にする。 「それって万が一本物を持ってこられたら結婚しなくちゃいけないんじゃないのか?」 「そうなったらほら、攫ってくれそうな人がここにいるし」 「俺は不比等さんに恩があるんだけどなぁ」 とにかく身内のせいで作戦がばれて失敗が確定してしまった。 これは気まずい、不比等さんに 『もうバレちゃってます』 何て言えるわけが無い。 かといって隠したままにしておくのも気が引ける。 ちゃんと謝っておかなければこれから先どういう顔で不比等さんに会えばいいんだろうか? 「しょうがないわねぇ、わたしが演出するから二人とも謝る言葉を考えておいて」 初めて輝夜を尊敬できそうな気がしてきた。 数日後、思いっきり金をかけた蓬莱の玉の枝を持って藤原不比等はやってきた。 本物と言い張ったら信じざるを得ないほど精巧に作られたそれは圧倒的な存在感を放っている。 「姫、約束の通り蓬莱の玉の枝を持ってきました」 「藤原殿、見事としかいいようがありません、ここまで精巧に作られた玉の枝、並大抵の努力ではなかったでしょう」 不比等さんは一瞬期待に満ちた顔をしたがすぐに違和感に気がついた。 輝夜は 『作った』 と言ったのだ。 「どういう意味ですかな?これは正真正銘、蓬莱の玉の枝ですが?」 「そのことについて謝らなくてはなりません。実は私の友人たちがあなたの計画を知ってしまいつい口を滑らせてしまったのです」 不比等さんは輝夜の言葉を黙って聞いている。 心中はどうなっているのか? 自信満々の計画が身内のせいで失敗して、怒りだろうか? 諦めだろうか? 「彼らはあなたのことを慕っており、このことで大変心を痛めています。どうか許してあげて下さい」 「やはり偽物で誤魔化そうとしてはいけないということでしょう。分かりました。この藤原不比等、その者達を許しましょう」 輝夜が合図をすると襖が開かれた。 そこにいるのは土下座をしている俺と妹紅、不比等さんもこれは予想していなかったらしく驚いた顔をしている。 「すいません不比等さん」「ごめんなさいお父様」 「いや、〇〇君、妹紅、責められるべきは偽物で女性の気を引こうとした私の卑しき心だ。どうか顔を上げて欲しい」 しばらくお互いに謝り続けるといった奇妙な光景が展開されたが、輝夜がその場をまとめて収まった。 収まった瞬間に不比等さんが雇っていた宝石職人が殺到して代金の請求をしてきた。 作った蓬莱の玉の枝をバラバラに分解して配るわけにもいかず困っていると、とりあえず枝は輝夜が引き取りその代金を支払うと言う形で収まった。 「お二人にはいつもお世話になってますから」 「なるほど、〇〇君に目をつけるとは姫もお目が高い、しかし〇〇君は妹紅がいます。正室は譲ってもらいますぞ」 「そこはほら、略奪愛って素敵じゃないですか?」 「するな!3人で思い出を作るって約束だろうが」 その日から不比等さんも翁の屋敷でお茶を飲むようになった。 もっとも、公人で仕事の多い不比等さんはたまにしかこれないし着ても本当にお茶を飲むだけで帰ってしまう。 求婚の活動にかまけすぎて仕事の方が結構溜まっていたらしい、自業自得と自分で言っていた。 結局5人の求婚者を振った話はとんでもない所まで届いていたらしい、なんと御門からの文が届いたのだ。 正に天の上の存在、どうするのかと聞いたら3人で交代で文の返事を書いて遊ぼうと言い出した。 そんなことを言い出す輝夜も輝夜だがそれに乗ってしまった俺と妹紅もかなり感覚が麻痺していたのだろう、なんだかんだで結構楽しんでしまった。 異変が起きたのは葉月に入ってすぐ―― 星も綺麗だし夜空の下でお茶を飲もうという話になり、庭にござを敷いて準備をしていた。 竹取の翁とその妻、そして不比等さんを加えた6人が集まった時、輝夜は空を見上げたままピクリとも動かなくなってしまった。 声をかけても反応しない、ただ月のある方向を見ている。 「輝夜、どうしたんだ?輝夜!」 「〇〇……」 輝夜は涙を浮かべて抱きついてきたかと思うと顔をぐしゃぐしゃにして泣き崩れてしまった。 他の者達もいったいどうしたのかと集まってきたが輝夜は泣くばかりで話もできず、その日は解散となってしまう。 「わたしはこの星の人間じゃない、月から来たの」 昨日は翁の屋敷に泊まった。 妹紅も輝夜の様子がおかしいことは分かっていたから何も言わず二人きりにしてくれたのだろう。 翌日、再び皆が集まったところで輝夜が語り始めた内容はとんでもないことだった。 「わたしは月で犯した罪を償うために地上に落された。だけど罰を受ける場所はわたしにとって楽園になってしまったから……わたしを月に連れて帰り罰を与えなおすつもりなの」 「そんな罰を与えるなんて、どんな罪を犯したんだ?」 「言ったでしょう?わたしは永遠を生き続ける、人間を不老不死にする蓬莱の秘薬を作らせたのがわたしの罪」 「不老不死自体が罰みたいなものじゃないか! 知り合った人間が先に死んでいく苦しみをずっと味わってきたんだろう」 「死んで分かれることは覚悟していた。けどこんな形で分かれたくない! 〇〇ともっと一緒にいたい!」 そこからの動きは迅速だった。 不比等さんはかつての求婚者達と御門に連絡を取り完全武装の軍を用意した。 翁の屋敷を中心に隊列を組んだそれは常に空を警戒している。 不比等さんはこれだけの準備をしているから大丈夫だと言うが輝夜の不安はぬぐえない。 何の権力も無い俺ができることは少しでも長く輝夜と過ごすことだった。 妹紅はあれから輝夜に会いに来ない。 今まで3人で過ごしてきてあやふやだったが、輝夜の叫びを聞いて妹紅も輝夜の気持ちを理解したらしい。 今生の別れになるかもしれないのだから、自分もいるよりは二人きりにしておこうと考えたのだろう。 満月の夜はもうすぐだ。 「来る」 そう口にしたのは自分だったか、輝夜だったか、とにかく空気が変わったのが分かった。 満月から徐々に大きくなってくるそれは人の影、何人かはウサギの耳をつけている。 ああ、月にはウサギが住んでいるって聞いたことがあるけど本当だったのか、もう二度と月見団子なんか用意するものか。 いらないことを考えるのは心に余裕があったからなのか? その幻想的な光景を見ていると逆に頭がすっきりしてきた。 奴らは輝夜を連れて行くためにやってきたのだ。 少しでも輝夜を守るために立ちふさがろうとして――体が動かなかった。 他の者達も同じようだ、誰も指一本動かせていない。 必死にもがいている俺たちの前に月の使者達は降り立った。 赤と青の服を着た女性が一歩前に出る。 「お迎えに上がりました」 「永琳、あなたが来たのね」 どうやら永琳という女性と輝夜は顔見知りらしい。 それもかなり親しい関係の、姫と呼んでいるが月での従者だったのだろうか? 「もし私が帰りたくないって言ったら……残してもらえる?」 「姫様の帰還は月の決定です。拒否すればこの屋敷が血の海になるでしょう」 「そう……」 輝夜は懐から小瓶を取り出すと翁の手の中にそっと包み込んだ。 「不老不死になる蓬莱の薬、二人分あります。おじいさん、おばあさん、どう使うかはお任せします。これくらいしか残せませんから」 次に俺の前に来てそっと口付けをする。 考えてみればこれが初めての口付けだ。 一人の男として望んではいたがこんな状況でしたくなかった。 「〇〇、思い出をありがとう。妹紅と幸せになってね」 そう言って俺から離れた。 輝夜の背中を見ながら出会ってから今日までの事が頭を駆け巡っていった。 いやだ、離れたくない、もっと一緒にいたい。 お前だっていたいって言っていたじゃないか、なんでそんなに簡単に諦められるんだ? 納得できない、お前が諦めても俺は納得できない! 「行くな! 輝夜!」 さっきまでの金縛りはすでに無かった。 出せる限りの声で叫び、輝夜の腕を取る。 輝夜が驚いたような、喜んでいるような顔をしている。 このまま腕を引っ張ってこの場から逃げ―― ドスッ 「え?」 輝夜の顔に紅いものがかかる。 ああ、せっかくの綺麗な肌が汚れちゃったじゃないか? 誰だよ、こんなことするの、俺か? 胸から剣が生えている、違う、月の使者の一人が俺に突き刺したんだ。 邪魔だな、抜いてくれよ、これから一旦藤原家に戻って妹紅を連れて、どこか遠くに行くんだ。 大陸に渡ってもいいな、さすがの月の連中もそこまで追ってこないだろう。 これからも、三人で―― 「嫌あああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 輝夜が叫ぶ、ここまで大きい声を聞いたのは初めてだ。 俺は大丈夫だから、このくらいたいしたことないって。 声を出そうとしても咳き込むだけで喋れない、口から溢れ出る血がすごい邪魔だ。 「永琳! 助けて、〇〇を助けて! お願い永琳!」 「無理です薬も無いのに! 心臓を一突き、一分と持ちませんよ!」 「薬!? 薬があればいいの? おじいさん御免なさい」 いまだに動けないでいる翁の手から蓬莱の薬をひったくる。 おいおい、それは一旦あげたものじゃないか? それに何で自分で飲んでるんだよ? あぁ、一気に眠くなってきた。 明日は蹴鞠でもしようか、妹紅は強いぞ、俺はいまだに勝てない。 それじゃぁ、お休み…… 夢の中で、俺と輝夜は二度目の口付けをしていた。 「ねぇ永琳、〇〇は助かったかしら?」 月に向かう途中、今まで黙っていた輝夜は永琳に話しかけた。 蓬莱の薬の結果は見ていない、月の使者に無理やり引っ張られ、離れさせられてしまった。 「9割9分9厘、無理でしょう。蓬莱の薬とて死者を生き返らせることはできません」 「残りの1厘は?」 「薬の調合には厳密な計算が必要なんです。奇跡なんて言葉、そう簡単に出せません」 「友達がいたの、二人を見ているだけで幸せだった。私にも幸せをくれるって言ってくれた。でも、わたしのせいで壊しちゃった」 輝夜の目に涙が浮かんだ。 永琳はそんな輝夜を優しく抱きしめて、まるで子供をあやすように頭を撫でながら語りかける。 「簡単には言葉に出せませんが、個人的には好きですよ、奇跡」 「待ってもいいのかな? 奇跡が起きるの」 「時間はたっぷりあるんです、待ちましょう、いつまでも」 「でも同じ待つんなら少しでも近い方がいいよね?」 「現在地上から80kmって所でしょうか? すごく 『痛い』 ですよ」 「大丈夫! この思いさえあればどんなに痛くったって耐えられるから!」 急に輝夜がうずくまったのを見た月の使者の一人は思わず駆け寄った。 輝夜が死なないのは知っているが万が一何かあったら大変だ。 近くにいた永琳に容態を聞こうと近づいたところで彼の意識は途絶える。 永琳の隠し持っていたナイフが彼の喉を切り裂いたからだ。 そこで他の使者達も気がついた、武器を手に二人を挟み込む。 ここは上空80km、少しでも移動担当の力が及ぶ範囲から外れたら地上へ真っ逆さま、ミンチ確定だ。 輝夜と永琳はお互いに手を取り合うと、迷い無く地上へ飛び降りる。 少しづつ近づいていた月は、再び小さくなっていった。 「分かっているのか!? 我々は御門の――」 「うるさい」 剣がきらめいた次の瞬間、男の首が胴体から離れた。 間欠泉のように血が噴出して体にかかるが妹紅はまったく気にしない。 辺りには数人の死体、この国で一番高い山で待ち伏せたかいがあった。 さすがの護衛も山の麓まで、実際に儀式をするのは数人だけという予想は見事に当たった。 戻ってくるのが遅いことを心配した護衛たちが様子を見に来るまでたっぷり時間はある。 辺りを見回すと目的の物はすぐそばに転がっていた。 厳重に封がされてある箱を乱暴に開いて中から小瓶を取り出す。 これにも封がしてあったが気にしない、破り捨てて中の液体を一気に飲み干す。 これで効果が出たのだろうか? 試しに指を少し傷つけてみるとあっという間に傷は無くなり、跡すら残らなかった。 「ふふ、ははは、あっははははははははははははははははははははは」 さあ、これで対等だ! 永遠に他人の死を見続ける? 生ぬるい、そんなもの罰でもなんでもない、その程度がどうした! 殺しても死なないなら何度でも殺してやる、何度でも何度でも何度でも何度でも! ずっと殺して、殺し続けて、彼に対して謝らせて、それでもまた殺して、泣こうがわめこうが何度謝ろうが絶対に許してやらない! 永遠に後悔させてやる、永遠の地獄を味わせてやる、だから―― 「待っていろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! かぁぁぁぁぁぁぐやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 地平線から出たばかりの月は、まるで血のように真っ赤に染まっていた。 目が覚めると見慣れた天井があった。 そこが藤原の屋敷だと気がつくまで少し時間がかかったが、何で俺は布団もかけずに寝ていたのだろうか? それに部屋中に置いてある花、花、花、綺麗だとは思うが生憎と花を愛でるほど豊かな感性は無い。 とりあえず腹が減っている、時刻は分からないが調理場に行けば食べ物くらいあるだろう。 途中何人かの使用人とすれ違ったが反応が妙だ。 俺の顔を見ると叫び声を上げて逃げて行く、何か付いているのだろうか? 顔でも洗おうかと考えていると不比等さんに呼び止められた。 重要な話があるから付いて来てほしいらしい。 「悪い知らせとさらに悪い知らせ、もっと悪い知らせがある」 悪い知らせしかないじゃないですか、聞かなきゃいけないなら順番に聞きます。 「かぐや姫は月に帰った。我々は止めることができなかった」 そうだ! 月からの使者が輝夜を連れて行こうとして、俺は、俺は…… 胸を見てみたが傷跡が無い、思いっきり貫かれたはずなんだが、それ自体が夢だったのか? 「それがさらに悪い知らせだ。かぐや姫は死んだ君に蓬莱の薬を飲ませた。君は起き上がらなかったが、私は僅かな希望を信じて葬儀をせずに待っていた」 一月近く死んだままだったらしい。 試しに指の先を噛み切ってみたが血が出る間も無く傷は塞がった。 不老不死、まさか自分がなるとは思わなかった。 「それで、最後のもっと悪い知らせは何ですか?」 「妹紅が……蓬莱の薬を処分しようとした御門の使者を殺したらしい」 「御門の!? 何でそんなことを!」 「妹紅は君の死に耐え切れなかったのだ。その怒りをぶつけるべき相手は空の彼方、普通の方法では辿り着けない。だから御門の使者を殺して蓬莱の薬を奪った」 相手も不老不死ならこっちも不老不死になればいい、どれだけ時間が掛かるか分からないが何時か辿り着くことができるだろう。 何せ時間は永遠にあるのだから。 「俺は……どうしたらいいんでしょうか?」 「どう答えて欲しい?」 「俺は藤原家に恩があります。どうか命じてください、永遠に続くこの命、その為に使います」 「そうか、ならば命じよう、〇〇よ! 自らの思うとおりに行動しろ!」 「それは!?」 完全に予想外だった。 てっきり妹紅を探しに行けと言われると思っていたからだ。 それでは恩を返すことなどできない、しかし不比等さんは俺に反論させてくれなかった。 「本音を言えば妹紅のことが気になるが、私は妹紅の父であると同時に君の父でもあるつもりだ。ならば息子が後悔の無いように生きれば、それは最高の恩返しだと考えている」 数日後の深夜、少ない荷物をまとめた俺は藤原家の門を出て行った。 はっきりとした計画は無い、とりあえず月に行く方法を探してみるつもりだ。 妹紅が輝夜を目指しているなら月に行く方法を探していたらどこかで出会うかも知れない。 月に辿り着いて輝夜と再会するのが先か、その途中で妹紅と再会するのが先か? 取り合えず遣唐使の船に忍び込んで大陸を目指そう、そこから天竺にでも行って見るか、そこなら月に行く方法が見つかるかもしれない。 「今までありがとうございました。どうかお元気で、お父さん。」 誰にも聞かれない別れの挨拶をする。 永遠を生きることになった今、そんなに急ぐ必要は無いはずだがいつの間にか駆け足になっていた。 少しでも早く二人と再会したい、駆け足はいつの間にか全速力になる。 「待っていろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!妹紅ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ、輝夜ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 深夜の都に声が響き渡る。 他人の迷惑なんか知ったことか、こっちは今最高に気が昂ってるんだ! 空にはあの時と同じような満月が浮かんでいた。 13スレ目 169 うpろだ956修正版 ───────────────────────────────────────────────────────────
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月下紅夜 ~初めに~ 注意事項 竹取物語の舞台は奈良時代辺りとされていますが、奈良時代の文化など全然分かりません。 そこで奈良、平安、現代を適度にミックスした独自の文化を舞台に設定しました。 よって歴史的考証などは一切合財無視しています、御容赦下さい。 またヒロインの一人である妹紅のモデルのこともあり歴史上の人物を登場させています。 ぶっちゃけ藤原不比等です。 『俺の中の藤原不比等はこんなイメージじゃねぇ!』 という奇特な方がおりましたら、この機会にイメージを変えてみたらどうでしょうか? ~月下紅夜 〇〇編~ この俺、〇〇は藤原家の居候である。 何でも蘇我氏の事件の時にただの村人であった父が不比等さんの父である鎌足さんの手助けをし、そのお礼に藤原家でうちの一族の面倒を見てやるとかなんとか… 当時は生まれても無かったのだからその辺りは分からない。 とにかく俺は不比等さんのおかげで3食と寝床を確保できているのだ。 「そう思うのなら、少しくらい恩を返したらどうだ?」 「だったらやらせてくれる様に頼んでくれ、庭掃除でも飯の支度でも」 現れたのは5女の妹紅だった。 一番年が近い彼女とはまるで兄妹のようにすごしてきた。 他の不比等さんの子供が俺から距離を取っている中、妹紅だけは何の隔たりも無く接してくれている。 「お父様はお前に甘いところがあるからな、うちの中の誰かとくっつけようとも考えてるぞ」 「無理だ。他の連中が俺のことどういう目で見ているかくらい分かってる」 農民出身の自分は、貴族には当然見下される。 同時に農民からは貴族に取り入ったとして妬まれている。 不比等さん本人はいい人で感謝してもしたりない。 だが他の一族は、妹紅を除いて後姿も見たくない。 「そんなこと無い、お前の父のおかげで今の藤原家が存在することくらい皆知っている」 「親父は親父、俺は俺だ。俺はまだ藤原家に何も返してない」 「いつか返してくれればいいさ、どれくらいかかるか分からないけど、ずっと一緒にいればそのうち思いつくだろう」 それは遠まわしな告白。 藤原妹紅は俺に恋心を持っていだいている。 長い付き合いだし、そんなことが分からないほど鈍感じゃない。 だが応えるわけにはいかない。 元々身分が違う、名家である藤原家に自分のような農民の血を入れていいはずが無い。 それに俺にとって妹紅は文字通り『妹』として見てきた。 今更違うように見る事はできないのかもしれない。 「俺の好みは黒髪で色白、そして何よりも胸だ!胸が大きくないと」 「髪と肌はともかく、胸はそれなりにあるつもりだが…胸で女を判断するなんて変な奴だ」 「なぁに、あと千年もたてばきっと胸の大きさが女の魅力の一つになるはずだ」 「思いっきり死んでるじゃないか……」 妹紅は呆れかえった様だ。 彼女の中で俺は『乙女の気持ちに気が付かない鈍感な奴』として分類されているのだろう。 そのうち本当に愛想を尽かし、いつか妹紅に相応しい男が現れるはずだ。 そうなることを望んでいるのと同時に、いつまでも一緒にいたいと考えるのは明らかに矛盾している。 そしてこの難題に対する答えはまだ出ていない。 「最近お父様が女の所に通ってるんだ」 飯を食べていると妹紅がそんなことを言い出した。 別段珍しいことではない、この時代女が家で待ち男が通うのは当然のことだ。 不比等さんは貴族だし、待ってる女の2~3人いてもおかしくない。 「それが妙な噂のある女で、曰くこの世のものとは思えない美しさ、曰く竹から生まれた、曰く3ヶ月で成人した」 「どんな妖怪だ? 口から火を吹いたり睨んだ相手を石に変えたりもするんじゃないのか?」 「いいとこの娘なら私も気にしないんだが竹細工職人の娘らしくて、もしかしたら本当に妖怪かもしれない、そうだとしたらお父様を助けなくては!」 結局二人で噂の娘とやらを見に行くことになった。 急ぎなら馬、落ち着いて行くなら牛車だがどっちも気に入らない妹紅は歩きで行こうといいだした。 断る理由も無いので了承したら動きやすい服装に着替えるから待っていてくれと言われた。 しばらく待って現れた妹紅は世にも珍しい格好をしていた。 「どう? 似合うかな?」 そう聞かれて言葉につまってしまった。 素材は恐らく木綿、ゆったりした胴回りと足首の部分で絞った裾は動きやすさと安全性を追求した結果だろう。 が、まるで労働者のような服装をされて『似合う?』と聞かれたらどう答えたらいいのだろうか? 「似合う似合わないはともかく…すごい戦争が起きたら推奨されそうな服だな」 「頑丈で動きやすいんだ。千年もしたらきっと都中に流行るはずだよ」 「ぜってぇ流行らないと思う」 思えば妹紅は昔から変わった少女だった。 むしろ俺と居たからこうなったのだろうか? 一緒に庭を駆け回って虫取りをしたり、そんなことしちゃいけませんと起こられて飯を抜かれたり、ひもじい中隠し持っていた握り飯を二人で分け合ったり。 もっと女の子らしい遊びをしておけばよかった。 貝合わせとか和歌とか、今更言っても遅いか。 竹取の翁の家に辿り着くとすごい行列ができていた。 その9割9分が男、すべて噂のかぐや姫目当てなのだろう、残りの一分はもちろん妹紅だ。 長蛇の列にも関わらず意外と順調に前に進んでいるのは一人当たりに掛かっている時間が短いからだ。 牛車に満載の贈り物を用意した男たちが牛車を空にして帰って行く。 落ち込んだ顔、気合を入れている顔、呆けている顔、それを見ているだけで待っている時間は潰せそうだ。 「お父様!」 妹紅の声で不比等さんを見つけた。 気合を入れた顔で家に帰ろうとしている。 「おお、妹紅、それに〇〇君、君たちもかぐや姫に会いに?」 「まぁそうですけど、不比等さんは手ごたえあったんですか?いい顔してますけど」 「いや、だめだった。ぜ~んぜん相手にもされてない」 全然相手にされなかったら何で笑っていられるのだろうか? 周りの男達は訳が分からないといった顔をしているが俺と妹紅は知っている。 不比等さんは逆境に立てば立つほど燃える人なのだ。 妹紅のお母さんとの馴れ初めも数十回アタックして勝ち取ったらしい。 妹紅と一緒に軽く100通は超えている恋文の束をすべて焼いて季節外れの焼き芋を作り、飛び蹴りを喰らった記憶は今でも鮮明に覚えている。 拳骨くらいは覚悟していたが、まさか当時年齢一桁の子供に大の大人が飛び蹴りをするとは予想もしていなかった。 もっとも、垂直に跳んで足を伸ばしただけだったので見た目に反して衝撃はそれほどでもなかった。 派手なことをして他の者たちがそれ以上俺と妹紅をしからないようにすることを狙った行動だと後になって気がついた。 要するに豪快さ、計算高さ、やさしさを兼ね備えた立派な人なのだ。 「それじゃぁ私は新たな贈り物と恋文を用意する! 二人とも遅くならないうちに帰るんだぞ」 不比等さんはそう言って帰って行った。 と、思ったら走って戻ってきて妹紅の耳に口を近づけるとこちらをチラチラ見ながら喋りだした。 「かぐや姫は本当に美人だ。妹紅、〇〇君をしっかりと捕まえておくんだ。何なら夜にでも襲ってしまえ」 そういうのは小声で本人に聞かれないように話してください。 妹紅も顔を真っ赤にしちまって…… それから半刻と待たずに俺たちの番がやってきた。 途中庭を通ったが山のような贈り物があった。 すべて男たちが貢いだものなのだろう、今日分だけと仮定するとこの数十倍は宝が贈られた事になる。 竹細工職人と聞いていたけど貴族の物より大きい屋敷に住んでいるのはおかしいと思っていたが、なるほどこれならもう竹細工など作らなくても暮らしていける。 案内をする使用人は不思議そうな顔をしている。 これまで来たのはすべてかぐや姫に求婚する男ばかり、そこにいきなり手ぶらの女連れが来たら奇妙にも思うのだろう。 辿り着いた部屋には一人の少女が座っていた。 顔は幕に隠れて見えないが年齢は自分や妹紅と同じくらいだろう。 「ようこそいらっしゃいました。本日はどのような御用件で?」 かぐや姫の声は正に珠のような声と言ってよかった。 澄み切って何時までも耳から離れない、一度聞いたら逃れることはできない魔性の声だ。 だがどこと無く疲れているような気がするのは同じようなことを何十回も繰り返して言っているからだろうか? 「生憎私はどなたともお付き合いする気はありません、贈り物はありがたく頂戴しますが本日はどうかお引取り下さい」 こっちが用件を切り出す前に一気にまくし立てやがった。 こりゃ顔は分からないけど、かなりいい性格をしてるってことは分かった。 ならこっちも遠慮することは無い、存分に相手させてもらおう。 「なぁに、巷で噂の妖怪姫の毒牙にかかる恩人が忍びなくて、とりあえず様子見に顔だけでも拝んでおこうと思っただけです」 幕の向こうの影が動揺したことが分かった。 「妖怪とは結構な物言いですね、参考までにどんな噂なのか教えてもらえますか?」 「さぁ?どうだったけ妹紅、竹から生まれて3ヶ月で大人になって」 「口から強酸の霧を吹いて目から怪光線を発射するんだろ」 妹紅と二人で聞いたことも無いようなことを言い続ける。 幕の向こうの影は少しづつ震えが大きくなってきており、握った拳にかなりの力を込めているのが隙間から見えた。 やがて京都~大宰府を半刻で飛び、一晩で唐を火の海に変えるといったところでついにかぐや姫が切れた。 「あなた達! いったい人を何だと思って――」 目の前の幕を手で押しのけ、かぐや姫は大きく一歩を踏み出し……たところで着物の裾を踏んでしまったらしい、顔面から地面に倒れこんだ。 あまりのことで使用人たちも反応できないでいる、うつぶせのかぐや姫はピクリとも動かない。 「痛い……」 その一言で時が動き出した。 使用人達は右へ左への大騒ぎ、かぐや姫は打ちつけた鼻を押さえている。 皆が落ち着くまで半刻、俺と妹紅は完全に置いてきぼりになっていた。 「ごめんなさい、結婚の申し込みばかりで少しいらついてたの」 かぐや姫、もとい蓬莱山輝夜は饅頭を齧りながら謝った。 ひっきりなしの求婚のせいでかなり鬱憤が溜まっていたらしい。 「いや、私たちも調子に乗りすぎた」 「3割くらいは真実じゃないかと考えてるけど、実際のところどうなんだ?」 「竹林でおじいさんと会ったのは本当、でも竹の中で生まれたとか3ヶ月で大人になったとかはでたらめよ。なんでそんな話になっちゃったんだか」 冷静に考えたら当たり前の話だった。 本当にどこでどう噂が捻じ曲がったんだか。 まぁこれで不比等さんの相手が妖怪ではないと判明したわけだ。 「藤原不比等さんね~、悪い人じゃ無さそうだけど結婚相手としては見れないなぁ~」 その言葉で妹紅はほっとしたような残念そうな顔をした。 自分の父親のことだし、彼女も複雑なんだろう。 「けど――」 そう考えていると輝夜が身を乗り出してきて、息が吹きかかるくらい近くでじっと目と目を合わせてきた。 こうして間近で見ると輝夜は美人だ。 この世のものとは思えない美しさというのもあながち間違いでは無い。 墨染めのような黒い髪に雪のような白い肌、妹紅に対して言ったことはあながち間違いでは無い。 輝夜は自分の好みにズバリ当てはまっている、もしもこんな娘に告白されたら…… 「あなたみたいな人に求婚されたら『はい』って言っちゃうかも」 輝夜が擦り寄り肌を密着させてきた。 妹紅が顔を真っ赤にして口をパクパクさせているのを横目で確認できた。 しかし頭が働かない、輝夜から漂ってくる香りが鼻を刺激して頭の回転を鈍らせる。 やがて輝夜は後ろに回り、背中に胸を……胸を…… 「萎えた」 「ええ!」 くっついたままで輝夜は驚いた。 それほど自分の魅力に自信があったのだろう、信じられない者をみるような目つきをしている。 「その断崖絶壁じゃ俺の心は動かないな」 「胸!? あなた胸で判断してるの!?」 その一言で真っ赤になっていた妹紅は噴出した。 腹を押さえて転げまわり、笑い声は屋敷の外にまで響く。 「妹紅くらいあれば合格だ。だがお前ほど絶望的になるとむしろ情けなくて涙が出てくる」 「ひど! 千年くらいたったら貧乳には希少価値が出るわ!」 「あははははは、千年もたったら死んでるだろう」 「……残念だけどそうはならないの」 真剣な声に妹紅の笑いが止まった。 輝夜は軽い体を自分の背中に預けたままどこか遠いところを見ている。 その方向には出たばかりの月があることが目線を追うことで判明した。 「わたしね、死ねないの、ずっと生き続けるの、何百年でも何千年でも」 「そんなことあるわけ……」 「ホントよ? 首を切られても胸を刺されても、粉微塵なったって死ねない。どんなに人と仲良くなってもその人は先に死んでしまう。永遠に他人の死を見続ける、それが私に与えられた罰」 「それじゃぁ、出会わない方がよかったのか?」 妹紅の問いに輝夜はゆっくりと首を左右に振った。 「分かれるのは辛いけど出会わないのはもっと嫌、出会う人、一人一人が私の大切な思い出、それがあるからわたしは未来に絶望しないで生きていられる」 輝夜は俺から離れるとゆっくりもとの位置に戻った。 その瞳は俺たちもその例外では無いと語っている。 楽しい時間はいつか終わる、それが早いか遅いかだけの違いだ。 「でも、一人くらいはわたしと永遠を共にしてくれる人がいてもいいかな?って思ってるの」 妹紅と顔を合わせて互いに頷く。 輝夜はその行動がとても奇妙に見えたのだろう、頭に『?』を浮かべている。 妹紅と一緒に輝夜へ手を差し出した。 やはり輝夜はキョトンとしている、しばらく差し出された手を見ていたが恐る恐る二人の手を取った。 「手を取ったな?」 「手を取ったね?」 「手を取ったけど?」 俺と妹紅はにんまりとして輝夜を引っ張った。 二人の力に引かれて輝夜は倒れこみ俺と妹紅の間に輝夜が入り込む形になった。 「え? 何これ? 何しているの?」 「手を取り合ったら友達になるんだ」 「永遠は無理だけど、少しくらいなら一緒にいるよ。私も〇〇もそのくらいの余裕ならあるさ」 輝夜の目に涙が溜まった。 さらに顔を埋めて震えている輝夜を俺たちはずっと包み込んでいた。 「貝合わせをしましょう」 いきなり輝夜がそんなことを言ってきた。 ここは竹取の翁の屋敷、輝夜と友達になった俺と妹紅は割と頻繁にここを訪れていた。 特に珍しいことをするわけではない、ただお茶を飲みながら世間話をする程度だ。 ちなみに輝夜が俺たちと過ごしている間、求婚者達は使用人が身代わりになって相手をしている。 声色の似ている者の顔を幕で隠し 『私は結婚しません』 を連呼させる。 どんな拷問だと思ったが、その身代わりの本人がそれなりに楽しんでいるから問題ないのだろう。 ただ 『所詮男なんてこの程度、幻想の乙女に酔いしれるがいいわ』 という発言はどうかと思う。 まぁ、そんな裏の事情を知るくらい入り浸っているわけだ。 「貝合わせってアレだろ? 綺麗な貝殻見せ合ってどっちがいい貝殻かを比べるってやつ」 「あなた一応貴族の娘よね? 何でそんなに自信なさげなのよ」 貝合わせといったら貴族の間で大流行の遊びだ。 これを知らない者は貴族の中にはいない、と言っても過言ではない。 過言ではないのだが……妹紅は貝合わせ自体をしたことが無い。 「俺のせいだな、妹紅はずっと俺と過ごしてきたから考え方も男寄りになってるんだ」 「そんなモンより蹴鞠とかの方が好きだけどね」 「そんなんじゃダメよ、〇〇だっておしとやかな方が好みよね?」 輝夜が擦り寄ってきて腕に手を回してきた。 妹紅が慌てて逆の腕を引っ張り輝夜から引き離す。 「〇〇はやらないぞ! 〇〇は私……じゃない、藤原家のものだ」 「誰も貰うなんて言ってないわ、こういうのは奪うの」 「もっとたちが悪い!」 そんなことを言い合った次の日、俺と妹紅は海に来ていた。 目的は貝合わせに使用する貝を探すことなんだが…… 「さすがに今の時期に海に来るのは無謀じゃないのか?」 「うるさい! 引くに引けなくなったんだ」 現在、冬と春の境目、まだ海に入るには命がけの季節だ。 そもそも貝合わせの貝は漁師が取ってきた物を加工するのであって自分達で探すものではない。 第一そんなに綺麗な貝が砂浜に転がっているわけも無い。 「大人しく不比等さんから貰えばよかったじゃないか」 「お父様がニヤニヤしながら『妹紅もそんなことをするようになったか』とか言ってくるんだ……輝夜と勝負するためって言い出せなくて」 不比等さんは輝夜に求婚している一人だ。 いくら娘のためとはいえ求婚相手との勝負に使うとなれば快く渡すことはできないだろう。 貝の入手に当ての無い俺たちは、結局こうして砂浜を漁るくらいしかできないのだった。 3刻ほどたっただろうか? 貝を入れるために持ってきたタライはアサリで一杯になっていた。 味噌汁の具には困らないが当初の目的は達成できていない。 「やっぱり私に貝合わせなんて無理だったんだ」 「そんなこと言うなよ、きっといい貝が見つかるって」 「いいんだ、どうせ私は女の子らしくなんてできない、〇〇だって本当は輝夜の方が――」 その時、視界の端で光るものがあった。 妹紅もそれに気がついたらしく一緒に駆け寄る。 それは真っ白な貝、まるで溶け残った雪のようなそれは波に打たれながら夕日を反射して輝いていた。 「綺麗……」 「いい貝じゃないか、これなら輝夜にだって負けない」 「いや、この貝は使わない」 妹紅はそういって再び砂浜を漁り始めた。 なぜせっかく見つけた貝を使わないのか? そう尋ねたら意地悪そうな顔をして言った。 「この貝は今日の思い出にとっておく、輝夜の相手なんてアサリで十分だ。数をそろえて圧倒してやる!」 結局、完全に日が沈むまで二人でアサリを集め続けた。 3日ほどアサリ尽くしの食事が続き少し後悔するのを今はまだ知らない。 「輝夜様、御指示の通りに貝を置いてきました。よろしいのですか? 一番いい貝だったのでしょう」 「いいのよ、あの二人には仲良くしてもらいたいし」 外を見上げると満月が昇っていた。 きっと明日の夕食は〇〇と妹紅の持ってくるアサリでアサリ尽くしになるだろうと考える。 「うらやましいなぁ、人生を共にできる相手がいるって」 自分と共に永遠を過ごす相手は誰なのだろうか? 頭に浮かんだ顔は、なぜかアサリの味噌汁を飲んでいた。 「今日は祭りがあるんだ」 そう妹紅が言い出したのが昼をしばらくすぎたくらい。 「お祭りかぁ~行きたいけどわたしが外に出たら順番待ちの男たちが黙ってないだろうし」 「そこは考えてある、変装すればいいんだ」 取り出したるはもんぺ、そりゃ噂のかぐや姫がこんなモン着るなんてだれも想像しないだろう。 さすがの輝夜も少し顔が引きつっている。 「わたしにこれを着ろと?」 「まさか、着るだけで変装になりゃしないだろう」 妹紅はいつの間にか使用人を買収していたらしい、あっという間に輝夜はもみくちゃにされて着替えが完了した。 普段のきらびやかな着物とは比べ物にならないほど地味なもんぺ、長く黒い髪は後でまとめて歩くときの邪魔にならないようにしてある。 雪のように真っ白だった肌は少し薄めた眉墨で汚して庶民らしさをアピール。 この姿を見て何人もの男が求婚する相手だと考える人間はいないだろう。 「似合ってるじゃないか」 妹紅が笑いながら言う。 「似合ってるの?」 輝夜は俺に尋ねる。 妹紅の時もそうだがもんぺ姿に対して似合う似合わないを聞かれても困る。 これが浴衣とか着物ならまだ言葉が思いつくのだが、どう答えるべきなのか? 「没落貴族みたいだな」 10人以上の使用人を含めたその場の全員にフルボッコにされた。 うまく屋敷を抜け出して祭りが行われる神社までやってきた。 が、階段を上る前に輝夜の体力が尽きた。 地面にへたり込んでもう歩けないと泣き喚いている。 しょうがないのでおんぶして出店を回ることにした。 境内は人が一杯で油断したらはぐれてしまうかもしれない、そう心配した時には遅かった。 妹紅の姿が見えない、おまけに雨も降ってきてしまった。 輝夜を背負ったまま雨宿りできそうなところを探す、ちょうどいい木が見つかったのでそこで様子を見ることにした。 「ねぇ、以前言ったこと覚えてる?」 背中の輝夜が尋ねる。 辺りに人はいない、さすがに密着した少女と暗がりで二人きりと言うのは理性が耐え切れるか自信が無い。 唯一の救いは背中に感触が無いことだろうか? これが妹紅だったら危なかった。 「わたしは永遠を生き続ける。終わりの見えない孤独な旅、共に歩いてくれる人を待ち望んでいるの」 輝夜は力を込めてしがみついてきた。 力いっぱい掴んでいれば、この後の問いに 『はい』 と答えるとでも考えているのだろうか? だが、俺の答えは―― 「〇〇、私と共に旅をしてくれない?あなたと一緒なら永遠の地獄だって耐えることができるわ」 「出会ったのが輝夜だけだったらそれでもよかった。けど妹紅を置いて行くこともできない。優柔不断だけど、どうしたらいいか自分でも分からないんだ」 妹紅を含めた3人で思い出を作る、これが現状で選べる妥協点だった。 いつかは選ばないといけないけど、それはまた先の話、そう考えていた。 先延ばしにした挙句、道を選ぶ余裕さえなくなってしまうことに気がつくのはホンの数ヵ月後のことだが、今の俺には知る由も無かった。 「雨止んだね」 「妹紅もどこかで雨宿りしてただろうし、探そうか?」 「それもいいけど、もう少しだけ二人でいさせて……」 そのうち妹紅の方がこちらを見つけた。 輝夜と二人きりで何をしていたかを尋ねるが輝夜ははぐらかすだけ、何も無かったと信じてもらえるのに次の日の朝までかかった。 「最近お父様の様子がおかしいんだ」 今日も今日とて竹取の翁の屋敷で茶菓子をつまむ。 最近は求婚者の数が減ってきたのでつまらなくなったと身代わり使用人が言っていた。 少なくなったと言っても5人ほど残っている、何度断られても諦めない根性のある求婚者の中に妹紅の父である藤原不比等も含まれていた。 「おかしいって、どういう風におかしいの?」 「有名な宝石職人に片っ端から声をかけて何か作ってるらしい、単にお前への贈り物を作らせてるにしては金をかけすぎている」 「あちゃー、そうきちゃったか~」 輝夜は少し困ったような顔をした。 なんでも竹取の翁がそろそろ結婚したらどうかと言ってきたらしい、候補は当然5人の求婚者。 しかし当の本人は結婚する気など無い、何とか穏便に断る方法はないかと考えた結果思いついたのが5つの難題だった。 仏の御石の鉢、蓬莱の玉の枝、火鼠の裘、龍の首の珠、燕の子安貝のそれぞれを持ってくるように命じる。 その中で不比等さんは蓬莱の玉の枝担当なわけだが、どれも噂でしか聞くことが無いような宝物を持ってくることなど初めから期待していない。 何とかして誤魔化そうとするかも知れないが適当に難癖をつけて不合格にする。 「それって万が一本物を持ってこられたら結婚しなくちゃいけないんじゃないのか?」 「そうなったらほら、攫ってくれそうな人がここにいるし」 「俺は不比等さんに恩があるんだけどなぁ」 とにかく身内のせいで作戦がばれて失敗が確定してしまった。 これは気まずい、不比等さんに 『もうバレちゃってます』 何て言えるわけが無い。 かといって隠したままにしておくのも気が引ける。 ちゃんと謝っておかなければこれから先どういう顔で不比等さんに会えばいいんだろうか? 「しょうがないわねぇ、わたしが演出するから二人とも謝る言葉を考えておいて」 初めて輝夜を尊敬できそうな気がしてきた。 数日後、思いっきり金をかけた蓬莱の玉の枝を持って藤原不比等はやってきた。 本物と言い張ったら信じざるを得ないほど精巧に作られたそれは圧倒的な存在感を放っている。 「姫、約束の通り蓬莱の玉の枝を持ってきました」 「藤原殿、見事としかいいようがありません、ここまで精巧に作られた玉の枝、並大抵の努力ではなかったでしょう」 不比等さんは一瞬期待に満ちた顔をしたがすぐに違和感に気がついた。 輝夜は 『作った』 と言ったのだ。 「どういう意味ですかな?これは正真正銘、蓬莱の玉の枝ですが?」 「そのことについて謝らなくてはなりません。実は私の友人たちがあなたの計画を知ってしまいつい口を滑らせてしまったのです」 不比等さんは輝夜の言葉を黙って聞いている。 心中はどうなっているのか? 自信満々の計画が身内のせいで失敗して、怒りだろうか? 諦めだろうか? 「彼らはあなたのことを慕っており、このことで大変心を痛めています。どうか許してあげて下さい」 「やはり偽物で誤魔化そうとしてはいけないということでしょう。分かりました。この藤原不比等、その者達を許しましょう」 輝夜が合図をすると襖が開かれた。 そこにいるのは土下座をしている俺と妹紅、不比等さんもこれは予想していなかったらしく驚いた顔をしている。 「すいません不比等さん」「ごめんなさいお父様」 「いや、〇〇君、妹紅、責められるべきは偽物で女性の気を引こうとした私の卑しき心だ。どうか顔を上げて欲しい」 しばらくお互いに謝り続けるといった奇妙な光景が展開されたが、輝夜がその場をまとめて収まった。 収まった瞬間に不比等さんが雇っていた宝石職人が殺到して代金の請求をしてきた。 作った蓬莱の玉の枝をバラバラに分解して配るわけにもいかず困っていると、とりあえず枝は輝夜が引き取りその代金を支払うと言う形で収まった。 「お二人にはいつもお世話になってますから」 「なるほど、〇〇君に目をつけるとは姫もお目が高い、しかし〇〇君は妹紅がいます。正室は譲ってもらいますぞ」 「そこはほら、略奪愛って素敵じゃないですか?」 「するな!3人で思い出を作るって約束だろうが」 その日から不比等さんも翁の屋敷でお茶を飲むようになった。 もっとも、公人で仕事の多い不比等さんはたまにしかこれないし着ても本当にお茶を飲むだけで帰ってしまう。 求婚の活動にかまけすぎて仕事の方が結構溜まっていたらしい、自業自得と自分で言っていた。 結局5人の求婚者を振った話はとんでもない所まで届いていたらしい、なんと御門からの文が届いたのだ。 正に天の上の存在、どうするのかと聞いたら3人で交代で文の返事を書いて遊ぼうと言い出した。 そんなことを言い出す輝夜も輝夜だがそれに乗ってしまった俺と妹紅もかなり感覚が麻痺していたのだろう、なんだかんだで結構楽しんでしまった。 異変が起きたのは葉月に入ってすぐ―― 星も綺麗だし夜空の下でお茶を飲もうという話になり、庭にござを敷いて準備をしていた。 竹取の翁とその妻、そして不比等さんを加えた6人が集まった時、輝夜は空を見上げたままピクリとも動かなくなってしまった。 声をかけても反応しない、ただ月のある方向を見ている。 「輝夜、どうしたんだ?輝夜!」 「〇〇……」 輝夜は涙を浮かべて抱きついてきたかと思うと顔をぐしゃぐしゃにして泣き崩れてしまった。 他の者達もいったいどうしたのかと集まってきたが輝夜は泣くばかりで話もできず、その日は解散となってしまう。 「わたしはこの星の人間じゃない、月から来たの」 昨日は翁の屋敷に泊まった。 妹紅も輝夜の様子がおかしいことは分かっていたから何も言わず二人きりにしてくれたのだろう。 翌日、再び皆が集まったところで輝夜が語り始めた内容はとんでもないことだった。 「わたしは月で犯した罪を償うために地上に落された。だけど罰を受ける場所はわたしにとって楽園になってしまったから……わたしを月に連れて帰り罰を与えなおすつもりなの」 「そんな罰を与えるなんて、どんな罪を犯したんだ?」 「言ったでしょう?わたしは永遠を生き続ける、人間を不老不死にする蓬莱の秘薬を作らせたのがわたしの罪」 「不老不死自体が罰みたいなものじゃないか! 知り合った人間が先に死んでいく苦しみをずっと味わってきたんだろう」 「死んで分かれることは覚悟していた。けどこんな形で分かれたくない! 〇〇ともっと一緒にいたい!」 そこからの動きは迅速だった。 不比等さんはかつての求婚者達と御門に連絡を取り完全武装の軍を用意した。 翁の屋敷を中心に隊列を組んだそれは常に空を警戒している。 不比等さんはこれだけの準備をしているから大丈夫だと言うが輝夜の不安はぬぐえない。 何の権力も無い俺ができることは少しでも長く輝夜と過ごすことだった。 妹紅はあれから輝夜に会いに来ない。 今まで3人で過ごしてきてあやふやだったが、輝夜の叫びを聞いて妹紅も輝夜の気持ちを理解したらしい。 今生の別れになるかもしれないのだから、自分もいるよりは二人きりにしておこうと考えたのだろう。 満月の夜はもうすぐだ。 「来る」 そう口にしたのは自分だったか、輝夜だったか、とにかく空気が変わったのが分かった。 満月から徐々に大きくなってくるそれは人の影、何人かはウサギの耳をつけている。 ああ、月にはウサギが住んでいるって聞いたことがあるけど本当だったのか、もう二度と月見団子なんか用意するものか。 いらないことを考えるのは心に余裕があったからなのか? その幻想的な光景を見ていると逆に頭がすっきりしてきた。 奴らは輝夜を連れて行くためにやってきたのだ。 少しでも輝夜を守るために立ちふさがろうとして――体が動かなかった。 他の者達も同じようだ、誰も指一本動かせていない。 必死にもがいている俺たちの前に月の使者達は降り立った。 赤と青の服を着た女性が一歩前に出る。 「お迎えに上がりました」 「永琳、あなたが来たのね」 どうやら永琳という女性と輝夜は顔見知りらしい。 それもかなり親しい関係の、姫と呼んでいるが月での従者だったのだろうか? 「もし私が帰りたくないって言ったら……残してもらえる?」 「姫様の帰還は月の決定です。拒否すればこの屋敷が血の海になるでしょう」 「そう……」 輝夜は懐から小瓶を取り出すと翁の手の中にそっと包み込んだ。 「不老不死になる蓬莱の薬、二人分あります。おじいさん、おばあさん、どう使うかはお任せします。これくらいしか残せませんから」 次に俺の前に来てそっと口付けをする。 考えてみればこれが初めての口付けだ。 一人の男として望んではいたがこんな状況でしたくなかった。 「〇〇、思い出をありがとう。妹紅と幸せになってね」 そう言って俺から離れた。 輝夜の背中を見ながら出会ってから今日までの事が頭を駆け巡っていった。 いやだ、離れたくない、もっと一緒にいたい。 お前だっていたいって言っていたじゃないか、なんでそんなに簡単に諦められるんだ? 納得できない、お前が諦めても俺は納得できない! 「行くな! 輝夜!」 さっきまでの金縛りはすでに無かった。 出せる限りの声で叫び、輝夜の腕を取る。 輝夜が驚いたような、喜んでいるような顔をしている。 このまま腕を引っ張ってこの場から逃げ―― ドスッ 「え?」 輝夜の顔に紅いものがかかる。 ああ、せっかくの綺麗な肌が汚れちゃったじゃないか? 誰だよ、こんなことするの、俺か? 胸から剣が生えている、違う、月の使者の一人が俺に突き刺したんだ。 邪魔だな、抜いてくれよ、これから一旦藤原家に戻って妹紅を連れて、どこか遠くに行くんだ。 大陸に渡ってもいいな、さすがの月の連中もそこまで追ってこないだろう。 これからも、三人で―― 「嫌あああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 輝夜が叫ぶ、ここまで大きい声を聞いたのは初めてだ。 俺は大丈夫だから、このくらいたいしたことないって。 声を出そうとしても咳き込むだけで喋れない、口から溢れ出る血がすごい邪魔だ。 「永琳! 助けて、〇〇を助けて! お願い永琳!」 「無理です薬も無いのに! 心臓を一突き、一分と持ちませんよ!」 「薬!? 薬があればいいの? おじいさん御免なさい」 いまだに動けないでいる翁の手から蓬莱の薬をひったくる。 おいおい、それは一旦あげたものじゃないか? それに何で自分で飲んでるんだよ? あぁ、一気に眠くなってきた。 明日は蹴鞠でもしようか、妹紅は強いぞ、俺はいまだに勝てない。 それじゃぁ、お休み…… 夢の中で、俺と輝夜は二度目の口付けをしていた。 「ねぇ永琳、〇〇は助かったかしら?」 月に向かう途中、今まで黙っていた輝夜は永琳に話しかけた。 蓬莱の薬の結果は見ていない、月の使者に無理やり引っ張られ、離れさせられてしまった。 「9割9分9厘、無理でしょう。蓬莱の薬とて死者を生き返らせることはできません」 「残りの1厘は?」 「薬の調合には厳密な計算が必要なんです。奇跡なんて言葉、そう簡単に出せません」 「友達がいたの、二人を見ているだけで幸せだった。私にも幸せをくれるって言ってくれた。でも、わたしのせいで壊しちゃった」 輝夜の目に涙が浮かんだ。 永琳はそんな輝夜を優しく抱きしめて、まるで子供をあやすように頭を撫でながら語りかける。 「簡単には言葉に出せませんが、個人的には好きですよ、奇跡」 「待ってもいいのかな? 奇跡が起きるの」 「時間はたっぷりあるんです、待ちましょう、いつまでも」 「でも同じ待つんなら少しでも近い方がいいよね?」 「現在地上から80kmって所でしょうか? すごく 『痛い』 ですよ」 「大丈夫! この思いさえあればどんなに痛くったって耐えられるから!」 急に輝夜がうずくまったのを見た月の使者の一人は思わず駆け寄った。 輝夜が死なないのは知っているが万が一何かあったら大変だ。 近くにいた永琳に容態を聞こうと近づいたところで彼の意識は途絶える。 永琳の隠し持っていたナイフが彼の喉を切り裂いたからだ。 そこで他の使者達も気がついた、武器を手に二人を挟み込む。 ここは上空80km、少しでも移動担当の力が及ぶ範囲から外れたら地上へ真っ逆さま、ミンチ確定だ。 輝夜と永琳はお互いに手を取り合うと、迷い無く地上へ飛び降りる。 少しづつ近づいていた月は、再び小さくなっていった。 「分かっているのか!? 我々は御門の――」 「うるさい」 剣がきらめいた次の瞬間、男の首が胴体から離れた。 間欠泉のように血が噴出して体にかかるが妹紅はまったく気にしない。 辺りには数人の死体、この国で一番高い山で待ち伏せたかいがあった。 さすがの護衛も山の麓まで、実際に儀式をするのは数人だけという予想は見事に当たった。 戻ってくるのが遅いことを心配した護衛たちが様子を見に来るまでたっぷり時間はある。 辺りを見回すと目的の物はすぐそばに転がっていた。 厳重に封がされてある箱を乱暴に開いて中から小瓶を取り出す。 これにも封がしてあったが気にしない、破り捨てて中の液体を一気に飲み干す。 これで効果が出たのだろうか? 試しに指を少し傷つけてみるとあっという間に傷は無くなり、跡すら残らなかった。 「ふふ、ははは、あっははははははははははははははははははははは」 さあ、これで対等だ! 永遠に他人の死を見続ける? 生ぬるい、そんなもの罰でもなんでもない、その程度がどうした! 殺しても死なないなら何度でも殺してやる、何度でも何度でも何度でも何度でも! ずっと殺して、殺し続けて、彼に対して謝らせて、それでもまた殺して、泣こうがわめこうが何度謝ろうが絶対に許してやらない! 永遠に後悔させてやる、永遠の地獄を味わせてやる、だから―― 「待っていろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! かぁぁぁぁぁぁぐやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 地平線から出たばかりの月は、まるで血のように真っ赤に染まっていた。 目が覚めると見慣れた天井があった。 そこが藤原の屋敷だと気がつくまで少し時間がかかったが、何で俺は布団もかけずに寝ていたのだろうか? それに部屋中に置いてある花、花、花、綺麗だとは思うが生憎と花を愛でるほど豊かな感性は無い。 とりあえず腹が減っている、時刻は分からないが調理場に行けば食べ物くらいあるだろう。 途中何人かの使用人とすれ違ったが反応が妙だ。 俺の顔を見ると叫び声を上げて逃げて行く、何か付いているのだろうか? 顔でも洗おうかと考えていると不比等さんに呼び止められた。 重要な話があるから付いて来てほしいらしい。 「悪い知らせとさらに悪い知らせ、もっと悪い知らせがある」 悪い知らせしかないじゃないですか、聞かなきゃいけないなら順番に聞きます。 「かぐや姫は月に帰った。我々は止めることができなかった」 そうだ! 月からの使者が輝夜を連れて行こうとして、俺は、俺は…… 胸を見てみたが傷跡が無い、思いっきり貫かれたはずなんだが、それ自体が夢だったのか? 「それがさらに悪い知らせだ。かぐや姫は死んだ君に蓬莱の薬を飲ませた。君は起き上がらなかったが、私は僅かな希望を信じて葬儀をせずに待っていた」 一月近く死んだままだったらしい。 試しに指の先を噛み切ってみたが血が出る間も無く傷は塞がった。 不老不死、まさか自分がなるとは思わなかった。 「それで、最後のもっと悪い知らせは何ですか?」 「妹紅が……蓬莱の薬を処分しようとした御門の使者を殺したらしい」 「御門の!? 何でそんなことを!」 「妹紅は君の死に耐え切れなかったのだ。その怒りをぶつけるべき相手は空の彼方、普通の方法では辿り着けない。だから御門の使者を殺して蓬莱の薬を奪った」 相手も不老不死ならこっちも不老不死になればいい、どれだけ時間が掛かるか分からないが何時か辿り着くことができるだろう。 何せ時間は永遠にあるのだから。 「俺は……どうしたらいいんでしょうか?」 「どう答えて欲しい?」 「俺は藤原家に恩があります。どうか命じてください、永遠に続くこの命、その為に使います」 「そうか、ならば命じよう、〇〇よ! 自らの思うとおりに行動しろ!」 「それは!?」 完全に予想外だった。 てっきり妹紅を探しに行けと言われると思っていたからだ。 それでは恩を返すことなどできない、しかし不比等さんは俺に反論させてくれなかった。 「本音を言えば妹紅のことが気になるが、私は妹紅の父であると同時に君の父でもあるつもりだ。ならば息子が後悔の無いように生きれば、それは最高の恩返しだと考えている」 数日後の深夜、少ない荷物をまとめた俺は藤原家の門を出て行った。 はっきりとした計画は無い、とりあえず月に行く方法を探してみるつもりだ。 妹紅が輝夜を目指しているなら月に行く方法を探していたらどこかで出会うかも知れない。 月に辿り着いて輝夜と再会するのが先か、その途中で妹紅と再会するのが先か? 取り合えず遣唐使の船に忍び込んで大陸を目指そう、そこから天竺にでも行って見るか、そこなら月に行く方法が見つかるかもしれない。 「今までありがとうございました。どうかお元気で、お父さん。」 誰にも聞かれない別れの挨拶をする。 永遠を生きることになった今、そんなに急ぐ必要は無いはずだがいつの間にか駆け足になっていた。 少しでも早く二人と再会したい、駆け足はいつの間にか全速力になる。 「待っていろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!妹紅ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ、輝夜ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 深夜の都に声が響き渡る。 他人の迷惑なんか知ったことか、こっちは今最高に気が昂ってるんだ! 空にはあの時と同じような満月が浮かんでいた。 13スレ目 169 うpろだ956修正版 ───────────────────────────────────────────────────────────
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輝夜4 8スレ目 5 ホーホー ○「いい月夜だな」 輝「そうね、こんな夜にはこうして静かに飲むのが一番ね」 ある月の綺麗な晩、俺と輝夜は二人だけで月見酒をしていた 永琳さん達は神社の方で宴会をしているだろう ○「宴会もいいけどやっぱり俺はお前とこうやってサシで飲むのが一番だな」 輝「あら、嬉しい事言ってくれるじゃない、さあさ、もう一献どうぞ」 ○「ありがたく頂戴します」 そういいながら俺の杯に酒を注ぐ輝夜、月明かりの所為かその姿はまさに月の姫君であった トクトク ○「グッ……ぷはぁー!只でさえうまい酒が愛しい人に注いでもらうと更に美味くなるな」 輝「もう、上手い事言ってもっとお酒が欲しいんじゃないの?」 ○「いやいや、本当に美味いんだって、輝夜も一杯飲んでみろよ」 トクトク 輝「ックックック……ふぅ、確かにおいしいわね でも、もっとおいしいお酒の飲み方があるんだけど試してみる?」 ○「ああ、興味あるなやってみてくれよ」 輝「じゃあそのままでいてね……」 クピリ そういうと輝夜は酒を口に含みそのまま俺に口づけをした ○「f杖wfぼwrgぺrwgへうfgh4ほえw!!!??」 輝夜の唇の感触を味わう暇もなく俺の口の中に生暖かい酒が入ってきた ○「ん、ふぅん……ぷはっ!はあはあはあはあ……」 輝「ん……どう?おいしかったでしょ?」 ○「ああ、極上の酒だ、輝夜もどうだ?」 輝「勿論悦んでいただくわ」 そう言って笑う輝夜の唇にそっと口づけをした まだ、夜は長い 8スレ目 47 万年引きこもりの姫が最近よく外出するようになってきている 妹紅と殺し合いをしているのかと思っていたが、服が無事な所を見るとそうではない様だ むしろ最近は妹紅との殺し合いの回数は目に見えて減ってきている 姫にどのような心境の変化があったかは知らないがいいことだと思う そう思ってたのが昨日のことで今日の姫は朝から台所に入ってなにやら弁当を作っているようだ 「ねえ、永琳男の人ってどんなおかずなら喜ぶかしら」 「……もしかして最近外出するようになったのはその男性が原因ですか?」 「そうよ、もしかしたら近々ここに連れてくるかもしれないからその時はよろしくね」 「好き、なんですか?」 「ええ、好き、大好き、愛してるわ 長い時を生きてきたけどこんなにも男の人を愛したのは初めてだわ」 「その彼は姫のことを知っているんですか?」 「知ってるわよ、○○とは妹紅との殺し合いをした後で会ったのよ」 そういえば姫がよく外出するようになったのは最後に妹紅と殺し合いをした時だ おそらくその○○という男性に殺し合いの現場を見られてそこで姫が一目ぼれをした、といった所か それにしても殺し合いの現場を見て不死の人間を見たというのに ○○という男性は良く普通に姫と接せられるものだ 「○○さんは姫のことが好きなんですね」 「ええ、いい人よ永琳やイナバ達もきっと気に入るわそれじゃあ行ってくるわね」」 そうそう蓬莱の薬、必要になるかもしれないからその時はお願いね」 「分かりました、それではいってらっしゃいませ」 さて、ウドンゲや他のイナバの子達に一人増えることを伝えに行きましょうか それと蓬莱の薬も作らないと 8スレ目 70 「愉しいわ」 姫様の声は心底うれしそうだった。 「愉しいですか」 その時の自分の声色は、おそらく不機嫌を直に出したような そんなものであったはずだ。 姫は私がそんなとき、決まって、からかうように言うからだ。 「ええ、とても愉しいわ。貴方はそう思わないの?○○」 つまり、その言葉は私が心底滅入っているようなときに使われる。 例えば今、私の首には真新しい、赤い革製の首輪が装着されており 灯篭に照らされた銀色の金具の照り返しは、妙に妖しい雰囲気を醸し出し その首輪から伸びるリールが、姫様の手に握られているのだ。 場所は廊下、それも厨房と食卓を繋ぐ部分である。 姫様と私は、晩餐に出向くために歩みを進めているのだが、 よりにもよって、そんな時に、こんな場所を歩けばどうなるか 私も、おそらく姫様も、口に出しこそしないが、理解していたろう。 「私は不愉快です」 あまり姫様に、というよりも、女性に対して強くものを言うのが 得意な性分ではないのだが、そのとき私ははっきりと告げた。 「不愉快?」 姫様の歩行が停止した。その長く、美しい髪が揺れ、端正な御顔が こちらを向く。 私はこの時の姫様の表情をどう表現したものか迷う。 嘲っているようであり、同時に自らの不満に同意を求めるような そんな眼で、姫様は私を見つめていたのだ。 灯篭に照らされたその表情は妙に艶かしく、私は一瞬言葉を続けるのを 躊躇ったが、ようやく出た搾り出すような声に対して、姫様は 「・・ええ、私が恥ずかしいのも勿論ですが、姫様が―」 「それは」 姫様の右の人差し指が私の唇を封じた。左手はリールを掴んでいるからだが その右人差し指は、まるで蛇か蝸牛が這いずるがのごとく 「なぞる」というよりはもはや「なじる」というべきような積極性でもって 私の顎を、喉を、胸を伝い、そしてそこで右に回り、来た時よりもやや 横にずれた軌跡をとりながら、私の頬に戻った。 「いいの」 姫の細い指が私の首筋を伝うだけで、私は反論する気力、勇気、使命感 それらをすべて奪われた気がした。 姫様の手は冷たく、その接触はくすぐったかったが、同時に私に 何か後ろめたい悦楽を与えもした。 よくわからないが私は既にその虜であり、ものを考えるのも困難だった。 「・・・いい・・の、ですか?」 答えはすぐには返ってこない。姫様は私の頬で少しの間遊ばれていた。 あるいはそれだけであれば、死力を尽くして『もうおやめになってください』 の一言くらいはなんとかなったのかもしれない。 だが、腕一本の距離にある、姫様の、だが普段の姫様のものではない眼が 私を束縛していたのだ。 数分ほどもそうしていたように感じたころ、ようやく姫様の唇が開いた。 「そう。だから」 私の頬を撫でていた姫様の手は、あたかも名残惜しむかのようにゆっくりと 私の首筋、そして肩口を伝ってから、主の元へ帰っていった。 「○○、食事にいきましょう」 そしてその手が戻るのと時を同じくして、姫様の眼からも、あの不満の色は 消えうせ、からかうような、自分の玩具を弄り回すような、いつもの顔に 戻っていた。 私は姫様の曳くリールに抗うなど、もはや考えもしなかった。 8スレ目 309 「○○~、○○~」 はいはい、何ですか姫 「○○、ギュッてして」 ・・・さっきもしましたよね 「さっきのは前から、今度は後ろからギュッて抱きしめてほしいの」 いえ、まだ仕事が残って 「ダメ?」 ぐっ! しかし・・・ 「・・・この頃 仕事が増えたんじゃない?」 それは、出来ることが増えてきましたから 「うん、それは良い事だと思うの。でも、私は○○ともっと一緒にいたい」 姫・・・ 「○○にもっと甘えたいの。この長い時の中でただ一人愛した貴方だけに」 ・・・・・・ふぅ、今日はとてもいい天気だ 「え?」 こんな日は 一日縁側でのんびりとお茶を飲みたくなる 「・・・」 一緒にのんびりしようか、輝夜 「うん!」 8スレ目 370 しとしとしと。雨が落ちてくる。 「雨……止みませんね…」 「そうね」 ぽつぽつ。雨が笹の葉を揺らす。 「ねえ、○○知ってる? 七夕の夜に降る雨をね、洒涙雨っていうの」 「さい……るいう?」 「そう、洒涙雨。天の川が水で一杯になっちゃって、 会えない事に悲しんだ織姫と彦星が流した涙だって言われてるわ」 僕は輝夜さんの横顔を見る。蒼い横顔。 「輝夜さんは……悲しくないんですか?」 「悲しいって?」 「月に置き去りになった家族のこととか……」 「ふぅ……ん? 優しいのね」 輝夜さんが僕の方を向く。黒の瞳に、僕の顔が映っている。照れた顔をしている。 「そんな……優しいだなんて…」 「……んて、ないわ」 「え?」 「悲しくなんてないわ。って、言ったの」 ふ、と。輝夜さんが微笑んだ。妖艶な笑み。濡れた唇を盃につける。それを、僕に差し出す。 「――はい、○○も飲みなさい」 「え……と、輝夜さん…………?」 「嫌なら直接しましょうか?」 「あ……え…っと、……いただきます」 輝夜さんが注いでくれたお酒を、ぐいと飲んだ。慌てて飲んだから、僕は咳き込んだ。 それを見て、輝夜さんが笑う。輝夜さんが笑うと、僕も笑う。 「ささ、次も飲みなさい」 「酔っちゃいますよ……」 「そうしたら私が膝枕してあげるわ。…さ、盃を出して」 僕は盃を差し出す。透明な酒が、曇った空と、笑顔の輝夜さんを映す。 しとしとしと。空から涙が落ちてくる。 僕は来年織姫と彦星が会えることを祈りながら、盃をあおった。 夜はまだまだ長い。 8スレ目 593 永遠亭に迷い込んだ○○ 輝夜に気に入られて「ずっとここに居て良いのよ、守ってあげる」 しかしそれは相方を作ろうと目論むネトゲ廃人てるよの巧妙な罠だったのだ! なんか違うけどま、いいか。 8スレ目 607 ある日の永遠亭にて。 「なぁ、輝夜」 「何? ○○」 「結婚しないか?」 「……え!?」 「俺のキャラとお前のキャラ」 「………」 「うわっ、ちょ、何だよ、叩くな、っておま、スペカは洒落に(ry」 8スレ目 619 いとおしき 永遠(とわ)を生きたる おひめさま その我儘は あなたを求む 「うぅ~ん、平安のやりかたはこっ恥ずかしいな」 「あらそう?私は好きよ。今度は私が上の句を読む?」 「今度は俺が返歌かよ!難しいなぁ」 永遠の 果てまでおもふ 愛の夢 正夢となり あなたに届かん 「〇〇、もうちょっと捻ってよ」 「えー、いいじゃんか。俺なりに愛を全力投球してるんだぜ」 「……ばか//」 8スレ目 655 気がついたら おなじ 相手とばかり そして いつも おなじパターンで死ぬ あきらめずに 廃人TERUYOに 挑戦するけど すぐにPKKされるよ 激レアアイテムがあれば 戦わなくてもいいけど 何回やっても 何回やっても TERUYOがたおせないよ あの攻撃 何回やってもよけれない ギルメン使って うちつづけても いずれは各個撃破される ポット連打も ためしてみたけど 廃人相手じゃ 意味がない だから次は絶対勝つために 僕は結婚アイテムだけは最後まで取っておく 8スレ目 738 「久しぶりね」 「これは……姫様……お久しぶりでございます。相変わらず月よりもお美しい……」 「ありがとう。そういうあなたは少し老けたわね」 「少し……そうですな。はい、少々老けましたな」 「えぇ、ほんの少し」 「それにしても申し訳ありません、この有様では何のお構いも出来ません」 「気にしなくていいわよ」 「安心いたしました。また以前のように難題が降りかかってくるものかと」 「そんなこともあったわね」 「えぇ、ありましたとも。大変なことも多かったですが楽しい日々でございました」 「私もよ」 「有難きお言葉」 「で、どうするの?」 「そうですな、できればこのまま……」 「そう」 「わざわざ足をお運びいただいたというのに申し訳ありません」 「いえ、なんとなくわかっていたもの」 「流石でございます」 「褒めても何もでないわよ」 「存じておりますとも」 「それもなんだか癪に障るわね。私が吝いみたい」 「そんなこと……」 「いいのよ。あなたの気持ちに気がつきながら……自身の心に背いた報いだもの。安いくらいだわ」 「申し訳ありません」 「許すわ」 「有難き幸せ」 「では、また会いましょう」 「見つけてくださるので?」 「見つけなさい。何が何でも。 前世の記憶がなかろうとも。人でなかろうとも。それがあなたに課す最後の難題よ」 「難しそうですな」 「難題ですもの」 「ふふ……生きがいが出来そうです」 「ええ。いつまでも待っているわ。 それじゃあ、私の愛したあなた……お休みなさい」 「はい、私の可愛いかぐや姫。お休みなさいませ」 9スレ目 457 「輝夜さま、今晩はいきなりどうしたんですか?」 「ん? あぁ、晩酌?」 「そうです。普段はイナバに頼むのに」 そういいながら俺は輝夜様の差し出した杯に酒を注ぐ。 一息にそれを飲み干して、輝夜様はため息をついた。 「いい加減に気付いてくれないかしら……って思ったの」 「は? どういう……?」 「はぁ、鈍感ね。ヒントをあげるわ、考えなさい」 こほん、と咳払いを一つ輝夜様はした。 そして、朗々と歌を詠みあげる。 「"秋の夜の月の光はきよけれど 人の心の隈は照らさず"」 「……相変わらず美しいお声ですね」 「褒めてないで考えなさい。全く……鈍感なんだから」 また、ため息を一つ。乱暴に杯を俺に向ける。 俺は杯に酒を注ぎながら、言った。 「意味は……存じております」 「え?」 「だから、その和歌の意味は存じております」 「え……冗談おっしゃい、貴方が何で知ってるのよ!?」 「以前輝夜様が口ずさんでおられたのを聞きまして。意味を自分で調べたのです」 笑顔でそこまで言った。段々と輝夜様が赤くなっていって、終いには俯いてしまった。 「知ってるなら……分かるわよね」 「はい、それはもう十分に」 「じゃあ……返して」 「返すって……返歌ですか?」 「そう。きちんと返してちょうだい」 これはしまった。返歌なんて考えていなかった。 少ない知識をひっくり返して、歌を詠む。 「"いつとても恋しからずはあらねども 秋の夕べはあやしかりけり"」 「……………………」 「……どう…ですか…………?」 「…………へったくそ」 「勘弁して下さい……。勉強不足でして」 「じゃあ私のところで勉強なさい」 「それって、いつもと変わらないんじゃないですか?」 「確かにそうね」 小さな小さな俺たちの笑い声が真っ黒な空にとけていった。 9スレ目 826 「姫様? 何してるんですか?」 「ちょっとね。……ふふふ、これで良し。反応が楽しみだわ」 「まぁ~たネットですね? 夜更かしはいけませんよ」 「あら、肌が荒れたくらいじゃ○○は私のことを嫌いにはならないでしょ?」 「そんなことくらいじゃなりませんけど……。迷惑かけちゃいけませんよ」 「そうだけど……幻想郷で一番のカップルは私と○○だもの。それだけは譲れないわ」 「そうですね。…じゃ、もう寝ますんで。姫様はどうします?」 「私はもう少し反応見るわ」 「そうですか。じゃあ、お休み」 「あ、ねえ! 寝る前にキスしてあげる」 「あ゛~、いや、寝る前にそれはちょっと……」 「添い寝?」 「いや、ですから、そんなことをされたら悶々として寝れないじゃないですか」 「本望じゃない?」 「確かにそうですがっ!」 「分かったわよ、じゃあキスだけね」 「――んむ゛っ!? ……ぷはっ。いきなりは止めてくれよ…」 「悶々とする? ねえ、する?」 「ああ、するな」 「じゃあお布団へ行きましょ。めくるめく大人の世界よ」 「反応見なくていいのか?」 「○○の?」 「ちがうっ!」 10スレ目 484 永遠亭宝物殿 隠し部屋の奥には豪奢なベッドで眠る少年 その傍らに、蓬莱山輝夜は佇んでいた 「今晩は、○○……」 輝夜は穏やかに囁き、少年の頬を撫でて唇を重ねた。 満足げな笑みを浮かべると彼に覆い被さり 恍惚とした表情で彼の寝顔を見つめる。 「美しいわ○○ ……そう、貴方は美しいまま眠り続ける」 それは輝夜の永遠を操る能力 彼女の能力に囚われた彼は、年を取ることも死ぬこともなく ただ、眠り続ける 「愛おしいわ○○ ……貴方を誰にも渡しはしない」 彼の存在を知るものは居ない ただ一人、輝夜を除いては…… 「私のエンデュミオン……決して貴方を喪いはしない」 月明かりさえ届かない薄暗い部屋、輝夜は少年の衣服を丁寧に脱がせていく 永い年月、彼はずっとそうやって愛されてきた。 そして、彼女に愛され続ける限り、彼が目を覚ますことはない。 永遠に…… 11スレ目 364 輝夜、永遠を生きるお前にとって例え須臾の間であっても隣に居させてくれないか? 11スレ目 717 ○「輝夜、正月といえばなんだ!?」 輝「正月といえばお雑煮に凧揚げでしょう。今更何を…」 ○「ちっがーう! 正月といえば姫初めに決まってるじゃないか!」 輝「姫初m……///」 Who s Raw!? Who s Sick!?(12スレ目 807 うpろだ885 ) 【Who s Raw!? Who s Sick!?】 俺が幻想郷に迷い込んでそろそろ1年。 所謂“昔ながら”の生活にも大分慣れてきたところだ。 博麗の巫女やワーハクタクの慧音さんには帰る事を勧められたが、結局俺は幻想郷に残った。 今更外の世界には戻れない。 “落雷を操る程度の能力”の持ち主なんかが外の世界に居ても迷惑なだけだと自覚している。 (ちなみに“雷を呼ぶ”訳ではない。雷雨の時にしか仕えない微妙な能力だ) こっちに来たお陰で能力の制御も上達したというのもあるし、俺を受け入れてくれた幻想郷に恩返しもしたい。 それに。 「○○、遅いわよ。まったく、相変わらず時間にルーズね」 「この竹林って何回来ても迷うんですよ。そこまで言うなら目印でも立てて下さいよ、姫」 「自分で立てなさい」 「酷いな」 永遠亭のお姫様と仲良くなれた。 彼女に出会って“帰りたい”と思わなくなったし、彼女も帰らせてはくれないだろう。 まぁそれでも――いずれ別れは来る。 彼女は不老不死ではあるが、俺の死は流石に避けられないから。 ……その辺の話をしたら本気で泣かれてしまった事があった。 慰めるのに七時間を要したのも、今となっては良い思い出……だ。恐らく。 「さて、○○。貴方を今日呼んだのは他でも無いわ。もうすぐバレンタインデーね」 「あー、そうですね。俺が来たのは弥生の月でしたから、こっちでその行事が来るのは初めてですよ」 「流石“元”外界人ね。話が早いわ。あのね、バレンタインデーには……」 「俺にチョコをくれるから楽しみにしておけ、と?」 「惜しいわ。貴方が作るチョコを永遠亭一同楽しみにしてるわ。頑張ってね」 「惜しいどころの話じゃないですねぇ!!」 流石は輝夜姫。ワガママ具合も超一流だ。 かつて『五つの難題』を出された貴族達に同情する。菓子を用意するだけで済む俺は恵まれてるのだろうか。 とはいえ、目の前に座って楽しそうに笑う彼女を見ると、それくらいならいいかとも思ってしまう。 俺みたいな特に目立たない風貌の男と仲良くしてくれる礼というのも兼ねておこう。 バレンタインデーの本分を忘れてる気がするが、気にしない。 「私のは勿論、瑛琳やイナバ達の分も用意するようにね。ああ、私への本命チョコは手作りを希望するわ」 「…イナバ、って鈴仙やてゐ……だけ、じゃ、ないですよね?」 「ええ、この永遠亭に住む“全てのイナバ”に、よ」 「はいぃっ!?」 前言撤回。俺は今、『六つ目の難題』に直面している。 アレか?姫がこないだ語ってた『新難題』ってこれのことか? 「そんなわけで帰って作業に取り掛かりなさい。これは命令よ」 「……どんだけ重労働を俺に強いるんですか、アンタは」 「あら……不満そうね。だったら……」 当然のように俺は文句を言うのだが、姫がこちらへと座ったままジリジリと近寄る。 膝を突き合わせるような距離まで近付いたところで、彼女は俺の手を握り。 「……お返しは奮発するわよ?永遠亭を上げて、ね?」 「 頑 張 り ま す 」 気がつくと即答していた。 「そう、嬉しいわ」と微笑む輝夜の表情は、絶世の美女という言葉が相応しいと思った。 実際に俺の顔は真っ赤だったし、心臓も破裂するんじゃないかという勢いで鼓動を繰り返していた。 100mを全力疾走したような勢いだ。 お返し云々はともかくとして、だ。(0.3倍返しウサ、とかあり得なくも無い) 何はともあれ、俺が彼女達の為にチョコをプレゼントするのは決まってしまった。 ……かつて彼女の難題に挑んだ貴族の気持ちが良くわかる。 こんな可愛いお姫様に頼まれたら、断れない。 「それじゃあ楽しみにしてて下さいよ。俺もお返しを楽しみにしますから」 「ええ、頑張ってね?」 頑張りますとも、お姫様。 ……頑張れ、俺。 ※ 「……姫、無茶を言うのも程ほどにしなさいな」 「いいのよ、永琳。これが私と○○の付き合い方なんだから」 「随分と○○が気に入っているのね」 「そりゃあ、ね。助けられちゃったし」 彼女は思い出す。 彼が永遠亭に運び込まれたのは、夏頃のことだった。 雷混じりの夕立が降り出した頃――○○は落雷を至近距離で受けて永琳の元へ運び込まれた。 そこで交えた会話が、輝夜と○○の出会いだった。 『自分の能力なのに制御を失敗したの?未熟者ね』 『誰が未熟者ですか?……ああ、俺ですね』 『すぐ自覚できない辺り重症ね。病気なんじゃないの?頭が残念になる病気』 『誰が病気ですって?……頭が残念なのは、昔からですよ』 今でも思い出せるほどだ。 運び込まれたのが“外界人”だと聞いて、興味本意で話し掛けたのがキッカケだった。 ○○のような「普通の青年」と接点が少なかった輝夜には、久しぶりの新鮮な刺激だった。 その後も何度か交流があり、今ではすっかりいい仲である。 「そこでね、永琳。……○○へのお返しにお菓子を作ってあげようと思うんだけど」 「はいはい、教えればいいんでしょ?」 「流石ね、永琳。それじゃあ早速始めるわよ」 「……本当に、手の掛るお姫様ね」 勝手知ったる仲、という具合で二人は台所へと消えて行った。 ――輝夜と○○の二人が、慣れないお菓子作りに苦しむ姿を射命丸文に撮られてたとか。 ――「永遠亭の姫、熱愛発覚!?お相手は○○かっ?!」という記事を作られたりとか。 ――○○に輝夜ファンである村の男達からカミソリレターを送り付けられたりするのだが。 それは別の話。 13スレ目 370 うpろだ980 どうして私がネトゲに熱上げてる時に後ろで(・∀・)ニヤニヤと笑ってやがりますか(゚Д゚)ゴルァ! どうして私が悪いのにケンカになると先に謝りますか(゚Д゚)ゴルァ! どうしてお小遣かっぱらったのに文句一つ言いませんか(゚Д゚)ゴルァ! どうして部屋の掃除を嘘ついてあんたに押し付けたのに怒りませんか(゚Д゚)ゴルァ! どうして子供が出来ないのは私のせいなのに謝りますか(゚Д゚)ゴルァ! どうして自分が体調悪い時は大丈夫だと私を突き放して私が倒れるとつきっきりで看病してくれますか(゚Д゚)ゴルァ! どうして妻の私に心配掛けたくなかったからって病気の事を隠しますか(゚Д゚)ゴルァ! おまけにもって半年とはどう言う事ですか(゚Д゚)ゴルァ! 妻の私には何も言わないで医者の永琳に相談するなんてどういうことですか(゚Д゚)ゴルァ! 申し訳なさそうな顔で俺の事は忘れていい男見つけろとはどう言う事ですか(゚Д゚)ゴルァ! こっちの気持ちは無視ですか(゚Д゚)ゴルァ! 正直、あんた以上のお人よしで優しい男なんかググっても絶対見つかりませんよ(゚Д゚)ゴルァ! 私みたいなニート嫁にすんのはあんた位ですよ(゚Д゚)ゴルァ! 言い忘れてましたが私、赤ちゃん出来たんですよ(゚Д゚)ゴルァ! 親子でモンハンするって約束が叶いそうなのに何で生きられないのですか(゚Д゚)ゴルァ! そんな状態じゃ言い出せ無いじゃないですか(゚Д゚)ゴルァ! それでも言わない訳にはいかないから思い切って言ったら大泣きしながら私を抱きしめますか(゚Д゚)ゴルァ! 泣きたいのはこっちですよ(゚Д゚)ゴルァ! 生まれる頃にはあんたはこの世にいないんですよ(゚Д゚)ゴルァ! 元気な子だといいなぁってあんた自分の事は蔑ろですか(゚Д゚)ゴルァ! 見舞いに来た黒白とか紅白に何自慢してやがりますか(゚Д゚)ゴルァ! 病気で苦しいはずなのに何で姓名判断のサイト覗いてやがりますか(゚Д゚)ゴルァ! どうして側に居てあげたいのに一人の身体じゃ無いんだからと私を部屋に帰そうとしますか(゚Д゚)ゴルァ! どうしていつも自分の事は二の次何ですか(゚Д゚)ゴルァ! 永琳にいよいよダメだと言われ泣いてる私に大丈夫だよとバレバレの慰めを言いますか(゚Д゚)ゴルァ! こっちはあんたと幻想郷なくなっても生きて行きたいんですよ(゚Д゚)ゴルァ! それがもうすぐ終わってしまうんですよ(゚Д゚)ゴルァ! 私からあんたを取ったらネトゲしかなくなるんですよ(゚Д゚)ゴルァ! 忘れろと言われても忘れられる訳ないでしょ(゚Д゚)ゴルァ! 死ぬ一週間前に俺みたいな奴と一緒になってくれてありがとなですか、そうですか(゚Д゚)ゴルァ! こっちがお礼を言わないといけないのに何も言えず泣いちまったじゃないですか(゚Д゚)ゴルァ! あんなに苦しそうだったのに最後は私の手を握りしめて逝きやがりましたね(゚Д゚)ゴルァ! 何で死に顔まで(・∀・)ニヤニヤしてやがりますか(゚Д゚)ゴルァ! (゚Д゚)ゴルァ! (゚Д゚)ゴルァ! そんなのは良いから起きて下さい(゚Д゚)ゴルァ! 生まれてくる子どもを抱いて下さい(゚Д゚)ゴルァ! 子どもに微笑みかけて下さい(゚Д゚)ゴルァ! ちゃんと働くから永琳○○を助けてやって下さい(゚Д゚)ゴルァ! 家事一つ出来ない私に子供を育てろと言いやがりますか(゚Д゚)ゴルァ! 私はアンタがいないとだめなんですよ(゚Д゚)ゴルァ! そんなあんたが死んで5ヶ月... 子どもが生まれましたよ(゚Д゚)ゴルァ! 私に似て元気な女の子ですよ(゚Д゚)ゴルァ! 目元はあんたにそっくりですよ(゚Д゚)ゴルァ! どこかでやっぱり(・∀・)ニヤニヤしてますか(゚Д゚)ゴルァ! 私はこの子と何とか生きてますよ(゚Д゚)ゴルァ! あんたも遠くから見守って居てください。 -----------------------------チラシ裏 ------------------------------------- 2chの有名なコピペ改変。 改変っていえるほど変わってはいないけど。 364を見ていたらどうしても。つまんなくてごめんなさい。 イチャってなくてごめんなさい。 改変前はこれです⇒ttp //ameblo.jp/waros/entry-10005755860.html --------------------------------------------------------------------------- 13スレ目 459 うpろだ995 月の姫が彼を拾った理由。それは気まぐれ以外の何者でもなかった。 強いて言うなら、永遠亭が男手不足だったから、という理由になるのだろうか。 「今日から私に仕えなさい。力仕事を貴方に任せるわ」 彼は月の姫の言葉に従った。 幻想郷という右も左もわからない見知らぬ土地で、縋るものは彼女しか居なかった。 「素直なのは美徳よ。私の名は蓬莱山輝夜。貴方の名は?」 「その……私には名がありません。あったかもしれませんが、もう忘れてしまいました」 「そうね、ならば今日から貴方は○○と名乗りなさい。良い名だと思わない?」 「はい…光栄です、輝夜様」 「姫でいいわ。私の力になりなさいね、○○」 こうして、幻想郷で一つの新たな主従関係が結ばれた。 彼は彼女に対して深い敬意と絶対の忠誠を露わにし、その内心にある想いを隠した。 主従である以上、主に恋心を抱くなど不忠にも程がある。 そう考えた彼は想いを心の奥底に沈みこませ、蓬莱山輝夜の配下として、新しい人生をスタートさせた。 が、一日、一週間、一ヶ月、一年と過ぎていくうちに。 「姫ー、朝ですよー。鈴仙が朝飯作って準備してくれてますよー」 「ん……ぅ……あと少し待って、○○……」 時間は容赦なく“慣れ”を産み、固い誓いも石が川を流れた後のように丸くなっていく。 二人は主従でありながら、世話焼き気質な兄と手間の掛かる妹のような関係になっていた。 勿論、彼は一年前と変わらぬ思いを抱いているし、輝夜もまた彼を従者として信頼していた。 とはいえ、ここは幻想郷である。従者が主にツッコミを入れるなど日常茶飯事。 程よいヌルさが二人の関係を少しずつ軟化させていたのもまた事実であった。 「ほら、布団被ってないで起きなさい。いい天気ですよ……っ?!」 「う……ん?」 無理矢理○○が布団を引っぺがすと、寝巻きをはだけさせた輝夜の肢体が露わにされた。 ○○はそのまま凍り付いたように動かない。主であり、想い人である人物の半裸を直視してしまったのだから、仕方ないとも言える。 一方の輝夜はというと、○○を意に介する事もなく枕もとの着替えに手を伸ばす。 「○○、おはよう。…どうしたの?そんなところで石化して」 「……誰のせいだと思ってるんですか、姫」 「勿論、乙女の布団を引っぺがした○○の責任よ」 「でしょうね!」 朝から全責任を擦り付けられながらも(実際、布団を捲ったのは他でもない○○だったのだが)、輝夜を起こすという仕事を終えた彼は部屋の外に出た。 着替えが終わると、二人で下へと降りていく。居間には食卓を囲んで輝夜の到着を待っている永遠亭の面々。 上座にあたる位置に腰を下ろすのを見届けると○○は一礼して、 「それじゃ、行って来ますんで。姫、あんまり永琳さんに迷惑掛けないようにお願いしますよ」 「あまり遅くならないようにね。それに、そんな心配されるほど子供じゃないわ」 「永琳さん、姫をお願いします。鈴仙とてゐも、頼んだぞ」 「わかってるわよ」「はい、○○さんも気をつけて」「んー、いってらっしゃーい。モグモグ…」 彼の仕事は永遠亭における雑務全般だ。主に力仕事を一手に引き受けている為、永遠亭で一番忙しい人物だとも言える。 今日は先日襲撃してきた藤原妹紅と主・蓬莱山輝夜の激闘の爪痕を修復しなければならない。 主な被害は屋根の一角の瓦が全部吹き飛んでいる点に尽きる。 これを修繕する為、人間の里まで瓦を調達に行く。○○が朝食も取らずに出かけたのはこの為だ。 「さーて、瓦は何枚要るんだろうな。…ま、3往復もすればなんとかなるか」 「相変わらず働き者ですねー」 「ん?その声は…文サンか。おはよう」 「どーも、おはようございます」 丁度竹林を出たところで上空からの声に前を向いたまま返事をした。 上を向かないのは「男としての礼儀(by○○」らしい。まぁ、文の服装に理由があるわけだが。 文は降りてくると同時にペンをメモ帖に走らせつつ、満面の営業スマイルで○○に問い掛けた。 「で、昨日の名勝負数え歌の結果はどうだったんですか?」 「俺乱入でノーコンテストだ。というより、取っ組み合いになったところで後ろからゲンコツをこう…」 ぶん、と振り下ろすような仕草を交えて答える。文の取材に対し当然のように答えるのは、最近では○○と山の上の神様くらいである。 「お陰で被害を最小限に抑えられたんだけど、結局瓦が酷い事になって……やれやれ」 「……なんていうか、貴方も変わりましたね。昔はもっとこう、ガチガチの頑固者、って感じだったのに。輝夜さんに手を上げるなんて、 一年前の貴方からは想像も出来ませんよ?」 「幻想郷(ここ)じゃ肩肘張るだけ無駄って気付いただけさ。あの新しい神社の巫女さんにもそう伝えておいて欲しかったんだけどね。 あと、俺が姫を殴るのは永琳さんが怒る前に止める為だ。永琳さんを怒らせると姫がゲンコツより酷い目に合うからな」 「あはは、そうかもしれませんね。そうそう、件の新しい巫女さんなら霊夢さんに倒されて少しは落ち着いたみたいですよ?」 「そりゃ何よりだ。それじゃ、俺は里まで出かけるんで長い取材はまた今度にしてくれるかい?」 「ええ。あ、最後に一つだけ」 「ん?」 「輝夜さんとの仲は進展しました?」 「っ!……はっはっは、何の事だかな?」 「いえ、別に~?それじゃ失礼しまーす!」 ニヤニヤ笑いを浮かべながら高速で飛び去る文を○○は忸怩たる思いで見送るしかなく。 溜め息を一つ付くと、里に向かってトボトボと歩き出した。 ※ 大工の棟梁、石材店の主と相談する事、数十分。 なんとか瓦を確保する事はできた。しかも大きな荷台まで用意して貰い、○○としては嬉しい誤算だった。 「いやー、日頃の行いが良かったのかな。これで往復しないで済みそうだ」 しかしそんな浮かれ気分も永遠亭到着と同時に打ち砕かれることになる。 「…あ、○○おかえりー」「おかえりなさい……」 永遠亭の外で○○を出迎えたのは呆れ顔のてゐと憔悴しきった鈴仙の二人。 輝夜と永琳の姿は見えないが、屋敷の置くから爆発音やら何やらが響いているのが聞こえ、○○は暫し茫然となった。 「……魔理沙がね。実験に使うから私が死ぬまで薬を借りてくぜー、って」 「今、姫と師匠が止めようとしてるんですけど……」 「……もうやだ」 ○○が弱弱しくその場に座り込むのと同時に白黒の影が玄関から超高速で駆け抜けて行った。 それを追うように輝夜と永琳が飛び出してきて、一旦着地する。 立ち止まった二人を見て空中に静止した魔理沙は息を切らせながらも、罪悪感を全く感じていない声で言い放つ。 「ケチケチしなくてもいいだろ?死んだら返すぜ」 「うちを紅色の屋敷の図書館と一緒にしないで頂戴。いいから止まりなさい!」 「永琳、こうなったら実力行使よ!」 輝夜の合図で二人が再び魔理沙を捕まえるべく飛び立とうとしたその刹那…… 「おっと、そうはいかないぜ。恋符―――!」 魔理沙が何の迷いもなくミニ八卦炉を、玄関前に並んでいた面々に構えた。 彼女からすれば、紅魔館の門を強行突破する時と何一つ変わらない気分だったのだろう。 しかし魔理沙の行動に慣れていない永遠亭の面々は完全に不意を突かれた格好になり―― 「―――『マスタースパーク』!!」 「姫!!みんな!!伏せろー!!」 事実上、永遠亭の門番も兼任している○○が真っ先に飛び出して、懐から符を取り出して―― 「石符――『マーブル・タイタン』!!」 輝夜や永琳、てゐ、鈴仙を庇うように両手を広げて、マスタースパークの直撃をその身で受けた。 「…………」 「なっ……アイツ……」 魔理沙はミニ八卦炉を構えたまま、驚愕の表情で立ち尽くしていた。 マスタースパークの直撃を受けた相手が微動だにせず、その場に両手を広げて立ち尽くしている。 それだけでも十分、驚くべき事だ。 相手がスペルカードを使ったも、予想外といえば予想外だ。 とはいえ、永夜異変の時には居なかった相手なので単なるリサーチ不足とも言える。 魔理沙が驚いた最大の理由、それは。 「…………」 人間だと思っていた○○が、物言わぬ大理石の像と化していたことだった。 「人間じゃなくて妖怪――だったのか?」 「そうよ。彼は外の世界で幻想と化したガーゴイル」 魔理沙の背後から、永琳の冷静な声が。 「能力は確か、“硬と軟を操る程度の能力”ね。自分の体限定らしいけど」 右手側からは、てゐの妙に楽しそうな声が。 「一年前、姫に仕えてから…ずっと私達の手伝いをしてくれてる人よ」 左手側からは、目を赤く染めた鈴仙の声が。 「――そして、私の大事な人。石の妖怪であるが故に、共に永遠を生きてくれるかも知れない人」 そして、眼前から静かな怒りに満ちた輝夜の声が響く。 「まて、話せばわかる」 「「「「 問 答 無 用 」」」」 顔面蒼白の魔理沙に四者四様のスペルカードが放たれ、本日最大の爆発が起きた。 その爆音の壮絶さは、遠くはなれた博麗神社の巫女がうたた寝から目を覚まし、すぐ二度寝するほどのものだったという。 ※ 「痛いぜ痛いぜ痛くて死ぬぜ……」 「それだけ軽口叩ければ十分よ。今度から、紅魔館気分で永遠亭を襲撃しない事ね」 「そうした方が利口だな……うう、こんな目にあったのは何時以来だ……」 四者の猛攻を受けた魔理沙は、そのまま永遠亭にUターンして永琳の治療を受ける事となった。 鈴仙とてゐは荒れた部屋の片付けに奔走していた。 そして、 「アレが噂のマスタースパークですか……マジで死ぬかと思いました」 「もう無茶しちゃ駄目よ。貴方は魔力さえあれば永遠に生き続ける。でも、体が砕けてしまったら修復できないのだから」 「だから“切り札”まで切ったじゃないですか」 「弾幕を飛ばさないスペルカードのどこが切り札よ。それに大理石ってモース硬度3の柔らかい物質じゃない」 「……クリスタライザー加工済みってことで一つ」 玄関でまだ下半身が石像化していた○○の前に輝夜は立っていた。 彼の能力は一つの硬度に安定させる事を目的としている。 故に、一度石化すると少なくとも半日は完全に戻ることは出来ない。 戻るにしても頭から順にゆっくりと人間の体と同程度の硬度に戻さないといけない、という制約があった。 無理に硬化と軟化を繰り返せば、体が耐え切れずにコナゴナに砕けてしまうだろう。 「でも、助けてくれてありがとう。私だけでなく、永琳やイナバ達も庇ってくれたのが嬉しいわ」 「お褒めに預かり光栄ですよ、姫」 「これは褒美よ、取っておきなさい」 「え……?あ、ちょっと待っ……!」 動けない○○の体に身を寄せ、彼に短い口付けを交わす。 「……どう取っておけばいいんですか」 「そのまま再び石化すればいいんじゃないかしら?」 「……勘弁してくださいよ……」 先程まで白い大理石の像だった○○の顔は真っ赤に染まり、輝夜は静かな笑みを浮かべる。 赤い頬に手を添えて、輝夜は静かに尋ねる。 「貴方は私と永遠を共にしてくれるかしら?」 「石像風情でよろしければ、いつまでも」 -END- -ここからチルノの裏- ガーゴイルって普通永遠に生きるわけじゃないと思うんだけど、気にしないでください。 -ここまでチルノの裏-