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前ページ次ページ爆炎の使い魔 教室に入るなり、ヒロはほう、と思わず声を出す。 学校といったものに行ったことがなかったヒロは、教室とはこういうものなのか。と部屋を見回した。 ヒロとルイズが入っていくと、先に教室にいた生徒が振り向くなり、くすくす笑い始める。 先ほどのキュルケもいた。男に囲まれている。 (まあ、ああやって色気を振りまいていれば男も寄ってくるだろうな) そう思い、ネバーランドにいた頃の自分を思い出す。 思えば自分は戦いの日々だった。しかも単なる戦いではなく戦争レベルのものがほとんどだった。 そんな中で周りにいた男と言えば、サトー、チク、ザキフォン、大蛇丸、シンバ、ソルティ、アキラ、スカーフェイス。 ザキフォンは筋肉の自慢をよくしてたし、チクはよく変わった発明をしては私に見せていた。大蛇丸にはよく尻を触られた。 シンバとソルティは何時も2人一緒だった。きっとホモだったに違いない。アキラとスカーフェイスはすでに相手がいたし、 サトーはどうだろうか、よく自分を見つめてたりしてた。実は自分に好意を持っていてくれたのではなかろうか? 少し頬を染めるヒロ。しかし現実は残酷だ。 そう考えると、自分ははすでに色んなものを逃してしまったんじゃなかろうか・・・ しかし、伴侶を見つけてキャッキャウフフしてる自分を想像してちょっと嫌になった。 自分もすでに100近い年齢まで達している。種族的に長寿なので見た目は若いままだが、実は中身はおばあちゃんと言われてもおかしくない。 彼氏いない暦100年。ちょっぴり切なくなってため息をつくヒロであった。 気を取り直して周りを見ると、なるほど、確かに周りの生徒は色々な使い魔を連れていた。 フクロウやカラス、ヘビといった普通の動物レベルのものからバジリスクやバグベアーといったモンスタークラスのものまでいた。 ルイズは1番後ろである自分の席に座る。椅子は1つしかなかったので、ヒロは立っていることを選んだ。といっても壁に背を預けている状態だが。 扉が開いて中年の女性が入ってくる。紫色のローブに身を包んでいる。見る限りでは人の良さそうな女性だ。 彼女は教室を見回すと、満足そうに微笑んで言った。 「皆さん、春の使い魔召喚は大成功のようですね。このシュヴルーズはこうやって春の新学期に、様々な使い魔を見るのがとても楽しみなのですよ。」 ルイズはバツが悪そうに俯く。 「おやおや、変わった使い魔を召喚したものですね。ミス・ヴァリエール」 シュヴルーズのその一声を皮切りに、教室がどっと笑いに包まれた。 「ゼロのルイズ!召喚できないからってその辺を歩いてた平民を連れてくるなよ!」 その声にルイズが立ち上がろうとするがヒロに肩をつかまれ立ち上がれない。 「ちょ、何するのよ!」 「わめくな。程度が知れるぞ。雑音など聞き流せばいいではないか」 「うぐ・・」 「ははは、使い魔に諭されるなんてとんだ主人だな」 そんな声もどこ吹く風か、なおも立ち上がろうとするルイズを押さえつけ、ヒロはシュヴルーズのほうを向く。 「おい、そこの女、ここは託児所か?たかだか小事ですぐ五月蝿くなる。私の知り合いの孤児院の子供たちのほ うがよっぽど躾がなっているぞ。教師なら教師らしく、さっさと静めて授業に入れ」 少し、殺気が滲み出るヒロ。 「そ、そうですね。さあさ、皆さん静かにしてください。授業を始めますよ!」 シュヴルーズの一声で静かになる教室。ルイズももう立ち上がるのを諦めたようだ。 シュヴルーズの授業が始まる。ここでヒロは1つ学ぶ、この世界の魔法には系統があり「火」「水」「土」「風」の4つと失われた 「虚無」という系統の魔法があるということだった。 ヒロはネバーランドの魔法を思い浮かべる。「火」「水」「土」「風」「雷」「光」「闇」に分かれていた。 「雷」はおそらく「風」に「光」と「闇」が「虚無」に該当するのだろう。 また、この世界では建築や鋳造なども魔法によって行うという。魔法が発達している代わりに科学の発達は遅いようだ。この辺もネバーランドとは違うようである。 (なるほど貴族だのメイジだのが、ここまで偉ぶっているのは技術のほとんどを握っているからか。それなら合点もいくな) シュヴルーズが杖を振ると机の上に石ころが現れる。 「さてみなさんには『土』系統の魔法の基本である『錬金』をやっていただきます。1年生のときにできるようになった人もいるかもしれませんが、おさらいということでもう1度やってみましょう」 シュヴルーズは短くルーンを唱え、杖を振る。すると石ころは光りだした。 光が収まると石ころがピカピカの光る石に変わっていた。 「ゴ、ゴールドですか?ミセス・シュヴルーズ!」 「いえ、これはただの真鍮ですわ。ゴールドを錬金できるのは『スクウェア』クラスのメイジだけです。私はただの『トライアングル』ですから。」 ゴールドを錬金できると聞いて呆れるヒロ。そんなことをすればこの世界のゴールドの価値や貨幣制度などは崩壊してしまうのではないか?と 思ったがどうやらゴールドを錬金するには相当の時間と技術が必要な上に大した量も作れないようだ。 「さっきからスクウェアやトライアングルとはなんのことだ?」 知らない単語が出てきたのでルイズに小声で聞くヒロ。 「系統を足せる数のことよ。それでメイジのレベルが決まるってわけ」 「なるほどな、『火』と『土』を足したりできる技術のことか」 ネバーランドではそこまで珍しい能力ではなかった。いや、単に自分の周りにそのクラスの連中ばかりがいただけなのかもしれない。 「ミス・ヴァリエール!授業中の私語は慎みなさい!」 「すいません」 「おしゃべりをする暇があるのなら、貴方にやっていただきましょう。この石ころを貴方の望む金属に変えて御覧なさい」 「わ、わたしが、ですか」 困ったようにもじもじするルイズ。 「ご指名だ」促すヒロ。 「あ、あんたのせいでしょうが!」 「ほら、ミス・ヴァリエール。早くしなさい」 シュヴルーズが呼びかけるとキュルケが手を上げる。 「先生、危険です」 「どうしてですか?」 「先生はルイズを教えるのは初めてですよね?」 「ええ、でも彼女が努力家だという話は聞いています。さあ、ミス・ヴァリエール。気にしないでやって御覧なさい。失敗を恐れていてはなにもできませんよ。」 「ルイズ。やめて」 キュルケは顔を蒼白にしている。 なんだこれは?ルイズは今から魔法を使うというだけだ。まるで良くないことが起きるかのような雰囲気である。例えば、彼女の魔法の威力が大きすぎて周りにすごい被害でも起こしてしまうと言うのだろうか?だがそれならば恐れられることはあっても馬鹿にされることはないはずだ。 しかも、今から行うのは錬金、単に石ころを別の金属に変えるだけのはずだ。 「やります」 緊張した面持ちで石の前に立つルイズ、生徒のほとんどが机の下に隠れてしまった。 ルイズはシュヴルーズに教えられた通りに短くルーンを唱え、杖を振った。 すると石が光り、大爆発を起こした。 光った瞬間ヒロは舌打ちし、一瞬のうちに術式を完成。『トルネード』を自分の周りに発動させ、爆風を防いだ。 一瞬のことだったので周りはヒロが魔法を使ったことに気がついていない しかし、爆発の影響をモロに受けた教室は悲惨なものだった。 ルイズの1番近くにいたシュヴルーズは吹き飛ばされたのだろう、気絶していた。周りの使い魔たちもその爆発に驚き、暴れだす。 火を吹くトカゲ、窓ガラスをぶち破る怪鳥、他の使い魔に襲い掛かる使い魔、暴れる使い魔を抑えようとして逆に襲われてしまう生徒たち。 もはや教室は阿鼻叫喚の嵐と化していた。 そんな様子を見て、ヒロはため息をつく。 「者共、静まれ!!!!」 ヒロの怒鳴り声が教室に響き渡る。すると暴れていた使い魔たちだけでなく生徒たちもピタリと動きを止めヒロのほうを向いた。 ジロリとにらむと生徒たちは机に座りなおし、使い魔たちはのそのそ主人の下へ帰っていった。 シュヴルーズと同じように気絶していたルイズも目を覚ます。ルイズは起き上がると顔についた煤をハンカチで拭きながら淡々と言った。 「ちょっと、失敗したみたいね」 静かになっていた生徒たちもさすがに猛反撃をする。 「ちょっとじゃないだろ!なにしてくれるんだゼロのルイズ!」 「いつだって成功の確率、ほとんどゼロじゃないか!!」 (なるほどな。だから『ゼロ』のルイズか。) 特に気にしていたわけでもなかったが、どうしてルイズの前に『ゼロ』と付けられるのかヒロは理解したのだった。 前ページ次ページ爆炎の使い魔
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黄金の使い魔-01 黄金の使い魔-02
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前ページ次ページ爆炎の使い魔 ヴェストリの広場は魔法学院の西側にある広場である。西側にあるそこは、日中でも日があまり差さない場所のため、普段はあまり人もいない場所となっている。 しかし、本日はギーシュの決闘の噂を聞きつけた生徒たちで、広場は溢れ返っていた。 「諸君!決闘だ!」 ギーシュが薔薇の造花を掲げると周りから歓声が上がる。 「ギーシュが決闘をするぞ!相手はルイズが召喚した、あの平民だ!」 そんな声に対して、ギーシュは腕を振っている。 ひとしきり歓声に対して応えた後、ヒロのほうを振り向いた。 ギーシュはヒロのほうをぐっと睨む、しかしヒロは目を瞑ったままで立っている。 「とりあえず、逃げずに来たことは褒めてやろうじゃないか」 「・・・・」 何も言わないヒロ、その無言を怯えと受け取ったのだろう。ふふふ、と笑いながらと薔薇の花をいじっていた。 「さて、では始めるか」 「まて」 無言だったヒロが言葉を放つ。 「なにかね?」 「決闘だそうだが、何か明確なルールはあるのか?どうすれば勝ちになる?いや、違うな、どうすれば貴様は負けを認める?」 「何を言うのかと思えば・・そうだな。僕はメイジだ。メイジは杖がなければ魔法が使えないからね。僕の杖はこの薔薇だ。この薔薇を君が奪えたら勝ちにしよう。君が泣いて謝ればその時点で終了でもかまわないよ」 「わかった」 「こんなの見ようと思うなんて珍しいわね。タバサ」 「別に・・・」 広場にはあのキュルケもやってきていた。そしてその横には短い青髪の少女、名をタバサと言うようだ。 「まあ、なんとなく、普通の人間とは違う感じがするけど、所詮は平民でしょ?ギーシュには勝てないんじゃないかしら・・・」 「ただの平民ならそうかもしれない。けれど、何か変な感じがする」 「ふーん」 この戦いに、というよりヒロに何かを感じるタバサ。 キュルケはあまり興味がないようだった。 「よし、開始だ!」 ギーシュは言うないなや、薔薇の花を振った。 花びらが1枚宙に舞う。 すると甲冑を着た女戦士の人形が現れたのだった。 身長は人間と同じくらい、硬い金属製らしく陽の光を受けて、甲冑がきらめいていた。 (金属製のゴーレムか。サイズは人間とほぼ同等・・・さて・・・) 「僕はメイジだ。だから魔法で戦う。文句があるかい?」 「まさか」 「ふふん、いい覚悟だ。そうそう言い忘れていたね。僕の二つ名は『青銅』。青銅のギーシュだ。従って、青銅のゴーレム『ワルキューレ』がお相手するよ」 言うが早いか、女戦士の形をしたゴーレムがヒロに向かって突進してきた。 ゴーレムの右の拳がうなりをあげて、ヒロの腹に放たれる。 ヒロはそれをなんなくかわす。次々と拳を突き出すゴーレム。それを紙一重で避けるヒロ。 「くくく、どうした?青銅のゴーレム。発想は悪くはないが、動きが単調すぎるな。操る物体の動きは、そのまま使い手のセンスが問われるものだがな」 悠々とゴーレムの攻撃をかわしながら、そんなことを言うヒロ。 「くっ。平民が調子に乗るなよ!」 ゴーレムの攻撃は休むことなく続いていく。しかし、ヒロにとってはこの程度の攻撃、避けることは造作もないことであった。 そんなことが10分ほど続いただろうか。 「おーい、ギーシュ。いつまで遊んでるんだ?」 「つまんないから早く終わらせろよ。ギーシュ」 攻撃する。かわす。の繰り返しに次第に退屈さを感じてきている生徒たちが野次を飛ばす。 (遊んでるんじゃない!本当に当たらないんだ。かすりすらしない!) 飛んでくる野次などどこ吹く風か、ギーシュは戦いに集中することで精一杯だった。 「あふ・・・粘るわねー・・・飽きてきちゃった。そりゃ平民にしちゃよくやるけど、避けるばっかりじゃねぇ」 退屈さが溜まってきたキュルケ。 「ねぇ、もう帰らない?」 「まだ、あの使い魔、全然疲れてない」 そして、突然動きを止めるヒロ。 「は、はははっ頑張ったようだが、避け続けるだけでは体力を消耗するだけだね。さすがにこれだけの時間動いていれば、そりゃ疲れもするだろう」 動きが止まったヒロを、ギーシュは疲労によるものだと判断したのだろう。ギーシュは笑い声を上げた。 その時、人ごみの中からルイズが飛び出してくる。 「ギーシュ!」 「ルイズじゃないか。悪いけど、君の使い魔をお借りしているよ」 「いい加減にして頂戴!大体、決闘は禁止されてるはずでしょ!?」 「決闘が禁止されているのは貴族同士の場合のみ、だけじゃないか。平民との決闘が禁止されてるなんて、そんな決まりごとはありはしないよ」 ルイズは言葉に詰まる。 「そ、それは・・・そんなこと、今までなかったからであって・・」 「ルイズ・・・」 ヒロがルイズの肩を掴む。 「ヒロ、決闘なんてやめなさいよ!貴方はせっかく呼び出した。初めての私の成功そのものなのよ!」 ヒロは困ったような笑みを浮かべる。 「おやおや、わが主人は心配性だな。だが、そこまで言われては、なおさらやめるわけにはいかぬな。不本意ではあるが、使い魔として呼び出された以上、期待に応えねば、私の名が廃ると言うものだ。そういうわけで少しは信用して下がっていろ」 「もう、知らないんだから!」 そう言って下がるルイズ。そんなルイズを見届けると、 「さて、ようやく体が温まってきたところだ。避けるのも飽きた」 「はっ減らず口もそこまでだ!行け!ワルキューレ!!」 ギーシュが杖を振ると、突進するワルキューレ。ヒロは動く気配がない。 (これで終わりだ!) ギーシュは勝利を確信した。 ワルキューレに対し、ヒロは着ていたローブを翻す。そして、ヒロの姿がローブに隠れた。しかし、ワルキューレはかまわずに突っ込んでいく。 その時、ローブを突き破り、巨大な腕がワルキューレの胴体を掴んでいた。 学園長室に舞台は移る。 ミスタ・コルベールは、唾が飛ぶ勢いでオスマン氏に説明している。 ルイズが呼び出した平民の少女のこと、ルイズがその少女と『契約』した際に現れたルーン文字が・・ 「始祖ブリミルの使い魔『ミョズニトニルン』に行き着いた。というわけじゃな?」 「そうなんです!あの少女の額に刻まれたルーンは、伝説の使い魔『ミョズニトニルン』に違いありません。従って、あの少女は契約したことによって『ミョズニトニルン』に覚醒した。と考えるべきです」 「ふむ、確かに同じルーンじゃな。しかし、それだけでその少女が『ミョズニトニルン』だと決め付けるのは、早計ではないかね?」 「そうかもしれません。ですが・・・」 すると、ドアがノックされた。 「誰じゃ?」 扉の向こうから、ミス・ロングビルの声が聞こえてきた。 「私です。オールド・オスマン」 「なんじゃ?」 「ヴェストリの広場で決闘をしている生徒がいるようです。一人はギーシュ・ド・グラモン」 「もう一人は?」 「それが、メイジではありません。ミス・ヴァリエールの使い魔の少女のようです」 オスマン氏とコルベールは、顔を見合わせ頷く。 「教師たちは『眠りの鐘』の使用許可を求めておりますが」 「アホか、たかが子供の喧嘩に秘宝を使うなんぞ、放っておきなさい」 「わかりました」 ミス・ロングビルの足音が遠ざかっていくのを確認すると、オスマン氏は杖を振る。 すると壁にかかった大きな鏡にヴェストリの広場の様子が映し出された。 「な、ななな、なんだそれは」 ギーシュはうめく。 「な、なによあの腕・・・」 ワルキューレの胴体を掴んでいた腕は、ルイズも初めて見る左手であった。 ワルキューレは空中に持ち上げられて、じたばたともがくが、ヒロの手は離そうとしない。 そして、ヒロは短く詠唱を終え、呟く。 「ファイア」 『ファイア』ネバーランドにおける火属性の魔法の1つである。ネバーランドでは、種族、職業にかかわらず魔法が使える。その中でも『ファイア』は火の属性の魔法の中でも初歩中の初歩。しかし、母親から火魔法の素質と父親から受け継いだ膨大な魔力。その2つを持ったヒロの左手か ら放たれたソレは、とてつもない威力をもってワルキューレに襲い掛かった。 ヒロの炎を受けたワルキューレは、燃えることなく、熔けて地面にどろりと落ちた。 そんなワルキューレを見て、ギーシュは戦慄する。 「な、何だ今の!?」 「ま、まさか先住魔法!?」 周りの生徒たちも、平民だと思っていた少女がいきなり魔法を、しかも杖を無しで行使したことに驚きを隠せないでいた。 「先住魔法?残念ながら私が使うのは『普通』の魔法だ」 そう言うと、ギーシュの方を向くヒロ。 ギーシュは慌てて薔薇の杖を振る。花びらが舞うと、新たなゴーレムが6体現れた。最初に出した1体とこの6体をあわせた7体がギーシュの最大の武器である。最初に1体しか出さなかったのは、単純に侮っていたからである。 「全員でかかれ!ワルキューレ!」 6体中5体のゴーレムがヒロに踊りかかる。6体現れたゴーレムを見ても、ヒロは動じない。またも詠唱をワルキューレたちが来る前に終える。 「クリムゾンエッジ」 ワルキューレたちがヒロに触れようとした瞬間、ヒロの周りを炎の竜巻が舞う。その衝撃で5体いたワルキューレはばらばらになり、吹き飛んだ。 そして、ヒロはギーシュに向かって駆け出す。 「ワルキューレ!!」 最後の一体を盾にするギーシュ。しかし、ヒロの炎をまとった右足の蹴りで粉砕。さらに返す左足の踵でギーシュの顔面を蹴る。 「ギャッ」 顔を蹴られたギーシュは、吹っ飛んだ後地面に転がる。 眼前にヒロの顔が見え、やられる!と思って顔を抱える。すると、先ほどのワルキューレと同じように、ヒロの左腕はギーシュの胴体を掴み空中に持ち上げていた。 「な、な、な」 「さて、次はとっておきだ」 ギーシュは自分を掴んでいる腕が熱を帯びてきたことを感じる。そして、先ほど熔けた自分のゴーレムが脳裏に浮かんだ。 「わ、わかった!降参だ!参った!ごめんなさい!!」 なりふり構わず喚くギーシュ。 そんなギーシュを見て白けるヒロ。手を離すとギーシュは地面に落ちた。 ヒロはギーシュから離れ、歩き出す。 周りで見物していた生徒たちは、驚愕と畏怖の表情でヒロを見る。ルイズも怯えたような目でヒロを見ていた。 (まあ、しょうがないな・・・私は所詮魔族、こいつらから見れば化け物のようなものだ。しかし、ルイズにもついに見せてしまったからな。さて、今日からどうやって寝床を確保するか) 異様な視線で見られる中、ヒロはヴェストリの広場から出て行こうとするヒロ。そんなヒロを見ていたルイズはヒロに向かって駆け出した。 「ヒロ!」 そのままヒロの背中に抱きつくルイズ。 「ルイズ・・・」 「あ、あんた、ちゃんとギーシュに勝ったわね。やるじゃない。さすがは私の使い魔ね」 「ああ、私はルイズの使い魔だからな」 抱きつきながらも偉そうなルイズ。そんなルイズを見て笑みを浮かべるヒロ 「ね、ねえ、アンタのその左手・・・」 ヒロの左手を指すルイズ。 「ああ、この左手は、ちゃんと自分の腕だ」 「あんた、以前平民でも人間でもないって言ってたわよね」 「ん・・そのことか。まあ、長い話になるし、いずれ話す時がくる」 「そう、じゃあ話してくれるまで私、待つわ・・・立ったまんまで疲れたし、帰りましょう」 「そうだな・・」 そう言うと、ルイズとヒロは話しながらヴェストリの広場から出て行ったのであった。集まっていた生徒とギーシュを置き去りにして。 腰が抜けているのか、1人では立てないギーシュを数人の生徒たちが支える。 「い、一体彼女は何者なんだ・・・?」 ギーシュの呟きはこの場にいる全員の思いを代弁していた。 「す、すごいわね・・あの炎、私より扱いうまいじゃない・・ねぇタバサ、あんたならあの使い魔に勝てると思う?」 タバサはヒロが去った方を見つめながら呟く。 「やってみないとわからない」 オスマン氏とコルベールは秘宝『遠見の鏡』で一部始終を見終えると顔を見合わせた。 「オールド・オスマン、ギーシュは1番レベルの低い『ドット』のメイジですが、それでも、ただの平民に後れを取るとは到底思えません。そしてあの動き、あの魔法、あんな平民は見たことがありません!」 「そりゃ、あんな腕しておる平民はおらんじゃろうな。魔法も使っておったし」 オスマン氏のもっともな突っ込みに思わずたじろぐコルベール。しかしくじけない。 「し、しかし、彼女はおそらく『ミョズニトニルン』に違いありません!」 「とはいえのう・・・『ミョズニトニルン』とは『神の頭脳』と言われる使い魔じゃ、なんでもあらゆるマジックアイテムを使いこなすとか・・ マジックアイテムを持っていないようじゃから確かめようがないがのう」 「ともかく、これは一大事ですぞ。早速王室に報告して、指示を仰がないことには」 「それには及ばん」 「な、なぜですか?これほどの事実、世紀の大発見ですよ?」 「確かにな、しかし王室のボンクラ共に『ミョズニトニルン』・・伝説クラスのオモチャなんぞ与えてしまっては、すぐにでも戦になるじゃろう。 宮廷で暇をもてあましてる貴族ほど厄介なものはおらぬからな」 「なるほど、私が浅はかでした」 「この件はワシが預かる、他言無用じゃぞミズタ・コルベール」 オスマン氏が目を光らせる。 「は、はい。かしこまりました」 そういうとコルベールは、では失礼します。と学園長室から出て行った。 オスマン氏は戦っていたヒロの姿を思い出す。 (ふーむ・・・っていうか、ぶっちゃけあの使い魔、ワシより強くね?) それぞれの思いが交錯する中、騒々しい1日は幕を閉じたのであった。 前ページ次ページ爆炎の使い魔
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「永遠の使い魔」 ○月×日 今日は待ちに待ったコントラクト・サーヴァントの儀式の日、 今日こそ魔法を成功させて私をゼロと呼ぶ奴らを見返してやろうと『思っていた』 『思っていた』という言葉の通り私の召還魔法は失敗した。 正しく言うと成功したのだけど召還したのは平民、それも変な格好をした訳の解らない奴だった… しかも変な格好だけならともかくとして私が…その…契約の為の…キ…キスを(ああもうなんであんな奴にしなければならなかったのよ!) しようとした時何かブツブツ言ってた、ハッキリ言って気持ち悪いし気味が悪かった、それに顔は無表情で何を考えてるかよく解らない。 でも見た目と言葉はともかくとして私が『使い魔になりなさい』と言った時にアイツはすぐに使い魔になることを了承した。 意外と根はまともなのかもしれない、きちんと敬語を使っていたし『洗濯も掃除もどんな雑用も、何でもやります、それに必ず貴女を護ってみせる』 なんて嬉しい事を言ってくれたし…(別に喜んでるわけじゃない、使い魔なら当然の事よ!!) アイツには床で寝させようと思ってたけど忠実な所に免じて学院の余ってるベッドを部屋に運んで(使い魔がやってくれた、結構力持ちみたいだ) そこで寝るように言ったら目を白黒していたけどすぐに喜んで礼を言った。 『必ず…今度こそ護って見せる』なんて訳のわからない事呟いてた、今度って何よ?やっぱり訳が解らない使い魔だ… ○月△日 アイツは結構…いやかなり忠実な使い魔だ。 昨日命令しておいた洗濯は完璧にこなしていたし、着替えも文句言わずにやったし、それに自分から掃除を進んでやってくれた。 かなり雑用はやり慣れてるみたいで、どこかで使用人でもやっていたのか?と聞いたけど違うと言っていた。 ご褒美にメイドに頼んで人間用の食事を用意させてそれを食べさせた(本当は別の物を食べさせようとしたのは内緒だ) アイツは嬉しそうに(と言っても顔は無表情だったが)礼を何度も言った、実に忠実な使い魔だ。 しかも忠実なだけじゃない、頭も良いのだ! 只の平民と思っていたが、魔法の属性といった基礎知識やそれぞれの役割、得意不得意についてそこらのメイジ並み、いや私以上に理解してたのだ。 実はメイジなんじゃないのか?と言ったが違うといっていた、まあ使い魔が賢ければ賢いに越した事はないので良しと思う事にした。 それに優しい使い魔だ… 私がちょっと錬金を失敗させたせいで教室が壊れてその罰として掃除を命じられたのだが、アイツは命令もしていないのに掃除を手伝ってくれた。 それを私は喜ぶべきだったろう…だけどその時私は無性に惨めな気持ちになった。 こんなに忠実で賢い使い魔に対して私は「ゼロ」…思わず八つ当たりしてしまった、でもアイツはこう言ってくれたのだ。 『失敗があってもそれをいつか乗り越えていけば良いんです、私はそれを手助けするための存在ですから。 それに貴女はゼロなんかじゃありませんし、きっと立派なメイジになれます。 貴女は私を絶望から救ってくれた、希望を与えてくれた、かならずその恩を返して見せます。』 嬉しかった…あんなに優しい事を言われたのは生まれて初めてだったからだ… 私が失敗するたびに皆私を蔑む、見下す。家族だってどこか哀れんでいる様な気がしていた。私に味方なんていなかった。 でもあいつは私の味方でいてくれると言ってくれた。 私はきっとアイツの気持ちに応えてみせる。 でも『地獄から救った』というのはどういう意味だろう?私が召還する前の環境はそんなに酷い場所だったのだろうか? ○月◇日 今日は事件が起きた。 起こした原因はギーシュと私自身、それと私の使い魔。 食堂でアイツと昼食を取っていた時ギーシュが小瓶を落とした。 親切にも私がそれを拾って渡してやったがギーシュは『自分の物じゃない』と言い張った、こいつ頭脳がマヌケになったのか? と思ったが『理由』があったようだ、何故解ったかというと私の目の前でその『理由』があっという間にギーシュをフルボッコにしたからだ。 何でも二股してたらしい、やっぱり頭脳はマヌケの様だ。 でも事件はそれで終わらなかった、マヌケは私に文句を付けて来たのだ。 『少しは気を利かせろ』だの『ちょっと話を合わせてくれたっていいだろ』とか実にマヌケらしい事を言ってた。 それだけならまだしもあいつは逆切れしてこう言おうとした。 『そういえば君は「ゼロ」だったね?そんな魔法だけでなく脳味噌も「ゼロ」の君にそんな事期待した僕が…』 マヌケがその続きを言おうとした瞬間アイツが助けてくれた。 あっという間の出来事だった、いきなりマヌケの顔を殴ったかと思うと、 『彼女に「ゼロ」などと言う者は許しはしない』とさらに続けてこう言った、『決闘を申し込む』マヌケは一人じゃなくて二人だった… 私が止めようとしたがアイツはそれを聞かずに『ギーシュ如きに負けはしない』なんて事を言ったのだ… 無論ギーシュはブチ切れて『ヴェストリの広場で待つ!!!!』と言い残して、去っていった。 アイツも直ぐに広場に向かった…どうしよう…このままじゃ…なーんて杞憂も決闘が始まって一瞬で消えた、決闘も一瞬で終わった。 ギーシュが青銅で錬成した「ワルキューレ」を出し決闘を始める宣言をする。 その次の瞬間にアイツがあっという間にギーシュの目の前に現れ、薔薇を模した杖を折って決闘を終わらせた。 凄い速さだった、本当に見えないくらいの速さだった。 アイツは賢くて忠実で優しいだけじゃない。とっても強い最高の使い魔。私の大切な使い魔… ○月◎日 今日は虚無の日、アイツに何か武器を買ってやろうと思った。(別に昨日や一昨日の事を嬉しく思ったからじゃないわよ!!単にいくら力が強くても丸腰だったら危ないからよ!!) でもツェルスプトー(コイツは私の天敵でいつもつっかかって来る!書き忘れていたが一昨日も使い魔を自慢してきたのだ!何がサラマンダーよ!!!こっちは平民でも世界で一番の使い魔よ!!!!) とその友達のタバサ(この子はキュルケと違って静かでおとなしい子、よく解んない所があるけどね…)が 私達の買い物に着いて来たのが気に入らなかった。(タバサは無理やり連れて来られたみたいだからそんなに腹は立たなかったけど) せっかく二人っきり…じゃなくて!とにかく鬱陶しいのよ!色情狂のエロスプトーめ!! 街の武器屋に着くとアイツは直ぐに変な武器を取りそれを買ってくれと言った、折角『もっと良い武器を買ってやる』と言ったのにアイツは、 『この剣に似た剣を使ったことがあります、だから慣れてて丁度良いんです』と言っていたのでその剣を買ってやる事にした。 インテリジェンスソード、しかもボロボロで口の悪い剣なんかに似た剣なんて…アイツはちょっと武器の趣味が悪いのかもしれない… でも散々口喧しかったボロ剣、「デルフ」はアイツが持った時に「使い手」だのなんだの言って結局素直に買われた。 そういえば武器屋の店主が最近「土くれのフーケ」という怪盗が国中を騒がせていると言ったが、その話を聞いた時アイツが険しい顔をしていた。いったいどうしたのだろうか? それよりもあのスケベプトーめ!!何しに付いて来たかと思ったら私の使い魔にアプローチする為に付いて来たのだ!! 『決闘での強さに惚れた』ですって!?冗談じゃない!私の方が先に…じゃなくて!!あれは私の使い魔よ!!誰にも渡すもんですか!!!絶対によ!!!! 別にアイツの事なんか好きでもなんでもないわよ!?単にあんなエロ女にアイツが騙されるのを哀れに思っただけよ!! あのビッチプトーめ…武器屋で私が買おうとした一番高い剣を買ってアイツにプレゼントしようとしたのだ!! まあアイツは『そんな鈍らなんか必要ない』って断ったんだけどね。でも見ただけであの剣が鈍らなんて解るなんて… きっと魔法だけでなく剣の事も詳しいのね。 ○月☆日 今日事件が起きた、それも大事件、決闘なんて比べられないほどの。 最近国中を騒がせている「土くれのフーケ」がこの学院に来たのだ! 巨大なゴーレムがいきなり現れて塔を殴り始め大騒ぎ、何でも学院の宝である「破壊の杖」を狙っていたそうだ。 私はフーケを捕まえる為にゴーレムを魔法で攻撃した、丁度その時にキュルケとタバサが居て私を止めようとしたけど私はそれを無視した。 本当に馬鹿だったと思うわ…二人は私を心配してくれてたのに… でもあの時はそんな事考えられなかった。きっとフーケを捕まえたら立派なメイジとして皆に認められると思ったから… でもゴーレムは何度も再生して倒す事が出来ず私を邪魔者と認識したのか私に向かってその巨大な腕で攻撃してきた。 あの時は本当に死ぬかと思ったわ。 でもアイツが助けてくれた、あっという間の速さでデルフを使いゴーレムの腕を切って、そして決闘の時のように一瞬でゴーレムに飛び乗ってフーケを捕まえちゃったのよ!! アイツの早業にも驚いたけどフーケの正体がミス・ロングビルだったのにはもっと驚いたわ!! (後でオスマンのエロ爺が『セクハラしても怒らなかった、自分に惚れてると思った』などとふざけた理由でロングビルを雇った事を聞いたときには驚きを通り越し呆れたが…) それでも今日一番驚いたのはアイツが私を怒った事、アイツが私を怒るなんて初めての事だった。 でもアイツは本気で私の事を心配してくれた、それにキュルケやタバサも私の事を心配してくれた。 私の事を心配してくれるのはアイツだけじゃない…それがとっても嬉しかったわ… ◆月★日 日記を書くのも久しぶりね…あれから色んなことがあったから… あれからアンリエッタ姫様に頼まれてワルドとアルビオンにウェールズ様に送った手紙を取りに行く任務を任せられたのよ(何故かギーシュも着いて来た)。 その途中で盗賊に襲われてピンチになった時偶然私と姫様の話を聞いてたらしいキュルケとタバサが助けてくれて。 思えばあの時から、私は彼女たちの事を「友達」と思っていた、友情は今も、そしてこれからもずっと続くと思う。 (もっともあの頃は素直になれなくて何度か喧嘩してけど、それも今となっては良い思い出ね) ラ・ロシェールでは捕まった筈のフーケが白い仮面の男と一緒に襲ってきてキュルケ達が囮になってくれたのよ。 目的地のアルビオンに向かう途中の船で海賊に襲われたと思ったらその海賊達が変装したウェールズ様達だったのよね。 それからアルビオンではワルドが急に結婚式を挙げようとして(正直性急ってレベルじゃないわよって思ったわ) 結婚を断ったら急に自分の目的とか明かしてウェールズ様と私を亡き者にしようとして危うく殺されるとこだったわ。 まあアイツが私たちを護ってくれたんだけどね。 その後私が虚無の使い手だって解ったり、レコン・キスタと戦ったり、タバサのお母様を助けたり、 本当に色々あったわ…でもいつだってアイツは私の傍に居て、どんな時も護ってくれた。 貴方は強くて、賢くて、優しくて、私の…私の大好きな使い魔よ… 本当にいつもありがとうね、ディアボロ…私の一番大切な人。 これからもずっと一緒に居てね… 「永遠の使い魔」完 永遠の使い魔―プロローグ― 『私は…私は…いったい何度死ぬのだろうか?次はどこから死が襲ってくるのだろうか?』 そう思っていた、完全に絶望していた。 あの少女に出会うまでは… 最初にあの少女に出会ったとき訳が解らなかった。 いきなり『使い魔になれ』だの、『平民なんて最悪だ』だの『メイジ』や『二つある月』だの訳が解らなかった。 唯一つ暫く時間が経って解った事は、『死が襲ってこない事』だけであった。 始めはいつもより時間が掛かって死ぬだけだと思っていたが何時間も経っても、一日が過ぎても結局死が訪れなかった。 この目の前に居る『ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール』という名の少女は私を無限の地獄から救ってくれたのだ。 私は嬉しかった、苦しみから解放されたことに。 そして私は決意した、あの地獄から救ってくれたこの主人を護ろうと。 彼女は私に雑用を命じた、初めての事に戸惑いながらも少しずつこなしていった。 彼女の恩に報いる為に、自分を救ってくれた主人に幸せに成ってもらうために… だがその決意も虚しく彼女を護る事が出来なかった。 殺されてしまったのだ…『土くれのフーケ』と名乗る怪盗をルイズが捕らえようと戦いを挑み、返り討ちに遭ったのだ… あっけなかった…キング・クリムゾンでも間に合わなかった… そして次の瞬間私は当たり前のように自分の首をキング・クリムゾンで切っていた。 『恩人を護れなかった自分は死がお似合いだ』そう考えたのだろうか?何にせよ、私は死を選んだ。 そして私は久しぶりにあの暗く、どこまでも深く、絶望的な死の闇に飲まれた。 だが私は目を覚ました、私はまたあの『地獄』が始まるのだろう、 そう思いながら次に目を覚ました瞬間信じられない光景を見たのだ!!!! ルイズが居るではないか!?死んだはずのルイズが生き返っているではないか!! あの光景は悪い夢だったのか?そう思って喜び彼女に話しかけたその時、彼女は信じられない言葉を口にした。 『あんた、私の事知ってるの?』 彼女は私の事など「知らなかった」それも当然だ。 戻っていたのだ、あの日に。 ルイズに絶望から救ってもらったあの日に… これは奇跡か?悪夢か?そう考えた時ふっとある事を思い出した、私を地獄に堕とした『奴』の言う「終わりのない終わり」の事を… 何故そんな事を考えたのかは解らない、だが一つだけ解った事がある。 私はまた『護ることが出来る』のだ、と… あれから何度も戻った、彼女が殺されるのみならず事故や病気でも、彼女が死ぬ度に私は自ら命を絶ち時を戻したのだ。 いったい何度死ぬのだろう?いったい何度目で彼女を最後まで護り通す事が出来るのだろう? だが何度死のうと私は護ってみせる、今度こそ最後まで護ってみせる。 そして私は今も自ら命を絶つ、今度こそ護り抜く為に。 彼女は私の主人なのだから、私は彼女の使い魔なのだから… 『我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ』 『…今度こそ…護ってみせる…』 プロローグ 「終わりのない使い魔」 完
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聖戦が発動されたガリアとの戦争。 ルイズは虎街道で、虚無すら効かなくなったヨルムンガントに追い詰められていた。 杖を失ったルイズに最早為す術はなく、その場に蹲る。 「苦しめて殺してやろうと思ったけど、興ざめだ。一思いに殺してやるよ」 ミョズニトニルンが笑っているのが聞こえる。 ルイズは立ち上がろうとするも、腰が抜けて立つことはできない。 二十五メイルもあるヨルムンガントは恐怖そのもの。 ヨルムンガントの足がゆっくりを持ち上がる。 きっとあれで自分を蟻みたいに踏み潰すのだろうと、ルイズは冷静に思っていた。 これが走馬灯なのかなと思いながら、刹那の間にルイズは過去の記憶を振り返る。 自分の使い魔、ドクター・ギー。 インガノックという都市からやってきたという、現象数式を用いて体を治すお医者様。 でももうここにはいない。 元の世界に帰してあげた。 向こうにはギーの帰りを待つ人がいるから。 自分達の戦争に、これ以上巻き込めない。 そう・・・・・・もう、この世界にいないのだ。 ルイズの鳶色の瞳から、雫が零れ落ちる。 呼んだって来る筈はないのに、それでも・・・・・・ルイズは口を開いた。 「・・・・・・たすけて・・・・・・ギー!!」 ルイズは叫ぶ。 それとヨルムンガントの足が、ルイズを踏み潰すのは同時。 しかし、衝撃は僅かだけ。破片が飛び散っていた。 巨人の足を止める“手”があった。 巨人の破壊を止める“手”があった。 ――――――――――――――――――。 ――――遮る“手”が伸ばされる。 破壊から、少女を庇うように。 「・・・・・・大丈夫かい、ルイズ」 ――――聞き覚えのある声。 ――――とても、とてもやさしく。 「遅かったね、色男。間一髪だ」 ミョズニトニルンが言う。 運良く避けられたのだと、思っている。 ルイズの顔が晴れる。 頬に一筋の軌跡を残し、ルイズはその使い魔の名を呼んだ。 「ギー!!」 ――――声に応えて―――― ――――その“手”は前へ―――― ――――彼の“右手”が伸ばされる。 ――――前へ。 ギーの右手だけではなかった。背後から。 別の“右手”が伸ばされて。 ――――鋼でできた手。 ――――それは、ギーの手と確かに重なって。 蠢くように伸ばされていく。自由に。 手は巨人の“顔”へと伸びていく。 鋼色が、5本の指を蠢かせて現出する。 指関節が、擦れて、音を、鳴らしている。 それはリュートの弦をかき鳴らすように、金属音を生み出す。 これは――――何だ―――― 何かがいる。誰かがいる。 それはギーの手ではなく、その背後から。 誰かが―――― ギーの背後から、鋼の手を――――! 得体の知れぬ畏怖に駆られたミョズニトニルンは、ヨルムンガントと共に飛び退く。 視界にギーを捉えたまま。 ――――鋼が軋む音が響く。 ――――何かが、ギーの背後に、いた。 誰だ。何だ。 鋼を纏った何かが、背後に在る。 ミョズニトニルンには、それは影にも見えた。 背後から右手を伸ばす、鋼の何かがいると。 正体はわからない。何者か。 人間。いいや、これは違う。 わからない。誰が。何が、そこにいるのか。 鋼の体躯を持つ者、まさか、そんなことはあり得ない。 鋼の影が“かたち”を得ていく。 鋼の手が動く、言葉に応えるように! 鋼の“手”を・・・・・・! ただ、ただ前へと――――伸ばす――――! ――――鋼色の手が―――― ――――ギーの“右手”に重なって―――― ――――鋼の右手が―――― ――――暗闇を裂く―――― ――――鋼の兜に包まれて―――― ――――鋭く輝く、光がひとつ―――― 静かに右手を前へと伸ばす。 なぞるように、鋼の右手も前へと伸びた。 ――――動く。そう、これは動くのだ。 ――――自在に、ギーの思った通りに。 視界の違和感はない。 道化師はいない。 かわりに、異形の影が背後にあるとわかる。 鋼の腕を伸ばして“同じもの”ものを視ている。 覗き込む、大きな大きな騎士人形。 ミョズニトニルンの操る10体の死と破壊をもたらす者、そのひとつが。 数式を起動せずともギーには視えている。 恐慌をもたらす“威圧”を掻き消して、 ギーと“彼”は歪んだ鉄鎧の巨人の目を睨む。 ――――右手を向ける。 ――――己の手であるかのような、鋼の手を。 ――――現象数式ではない。 ――――けれど、ある種の実感が在るのだ。 背後の“彼”にできることが、何か。 ギーと“彼”がすべきことは、何か。 ――――この“手”で何を為すべきか。 ――――わかる。これまでの時と同じように。 「何をしようとしたって、このヨルムンガントの前ではッッ!!!」 ミョズニトニルンの額のルーンが光る。 それに呼応するように、ヨルムンガントの四肢が動く。 ギーの“右目”は既に捉えている。 ヨルムンガントのすべてを。 ヨルムンガントのその巨大な腕が振り上げられる! 同時に手に持った大剣が、天高く掲げられる。 微塵の容赦もなく、振り下ろされる白刃。 矛先を向けられるのはギーと“彼”! 生身の体では避けきれまい。 鋭い反射神経を供えた《猫虎》の兵や、神経改造を行った重機関人間以外には。 しかし、生きている。 ギーはまだ。 傷ひとつなく、立っている。 鉄鎧に覆われた巨大な騎士人形の剣が切り裂くのは虚空のみ。 「・・・・・・遅い」 ギーは呟く。 「なんで・・・・・・!何で死んでいない・・・・・・!?間違いなく当たった筈なのに!!」 ミョズニトニルンが絶叫する。 ヨルムンガントの剣は、確かにギーを捉えた筈だった。 その巨大過ぎる剣は生身の人間を造作もなく、粉々に吹き飛ばす。 メイジでもない人間に避けられる筈はない。いや、メイジでも避けられる筈はない! 「喚くな」 ギーは淡々と、通告する。 狼狽するミョズニトニルンを“右目”で睨む。 ミョズニトルニルンは再度ヨルムンガントを動かし、二度目の攻撃を加える。 しかし生きている。 ギーはまだ死んでいない。 以前の自分なら死んでいたのだろうと思う。 しかし、今なら、鋼の“彼”がギーを守る。 死にはしない。まだ。 睨む“右目”へ意識を傾ける。 暴れまわる巨人のすべてを“右目”が視る! ――――ヨルムンガントの装甲は強固―――― ――――カウンターで物理破壊は不可能―――― ――――唯一の破壊方法は―――― ――――反射許容量と装甲限界を越える攻撃―――― ――――全身の、同時圧壊―――― 「・・・・・・なるほど、確かに。人はきみに何もできないだろう」 系統と先住の結晶、ヨルムンガント。 すべてを弾くカウンターと分厚い鉄に覆われた鎧の体。 故に、確かに人間はこれを破壊できない。 唯一の破壊方法はカウンターが想定する反射限界を突破して尚装甲を貫く破壊。 故に、絶対に人間はこれを壊せない。 魔法も砲弾も炸薬も体へと届くも弾かれ消える。 けれど、けれど。 ――――けれど。 「けれど、どうやら。鋼の“彼”は人ではない」 ――――“右目”が視ている! ――――“右手”と連動するかのように! 「鋼のきみ。我が《奇械》ポルシオン。僕は、きみにこう言おう」 一拍置いて、ギーは呟くようにその言葉を紡ぐ。 「“王の巨腕よ、打ち砕け”」 ――――――――――――――――――! ――――打ち砕き、粉々に消し飛ばす。 ――――鋼鉄を纏う王の手。 ――――それは、怪物を破壊する巨大な塊。 ――――おとぎ話の、鉄の王の手。 押し開いた鋼の胸から導き出された鋼の“右手”は、 高密度の質量を伴って巨人の全身を叩いて砕く。瞬時に破壊する。 ミョズニトニルンが叫び声を上げる暇もなく、 超質量に圧されたヨルムンガントは崩壊した。 体のあらゆる部位を。 ばらばらに、粉々に、打ち砕かれて。 凄まじい振動を、爆砕するように残して。 切り立った崖に挟まれた虎街道一帯を揺らして―――― ミョズニトニルンは残った9体のヨルムンガントを動かす。 左右の逃げ場を失った鉄砲水のように、ヨルムンガントが押し寄せる。 しかしそれが到達するよりも早く、ギーは言葉を続けた。 「“太陽の如く、融かせ”」 ――――――――――――――――――! ――――切り裂き、融かして消し飛ばす。 ――――炎を纏う刃の右手。 ――――それは、怪物を焼き尽くす炎の右手。 押し開いた鋼の胸から導き出された刃の“右手”は、 超々高熱の火炎を伴って、前衛の3体のヨルムンガントを包み、瞬時に焼却する。 燃え尽きる暇もなく、高熱刃に包まれたヨルムンガントは一瞬で蒸発した。 凄まじい炎の滓を、爆砕するように残して。 切り立った崖に挟まれた虎街道一帯を揺らして―――― “彼”の“かたち”が変わる。 それまでの“彼”のものではない。 だが確かに“彼”の“手”だ。 ギーの背後から伸ばされるその色は、真紅。 ――――赤色の―――― ――――赫の炎にも似た、鋼の手―――― その姿は真紅に充ちて。 鋼を纏った“彼”は、姿を変えていた。 鋼の体躯は真紅に染まり、瞳は二つに。 姿は違う。けれど“彼”に違いはない。 その手は今や、尋常な人間の手ではない。 真紅の鋼を纏った“右手”。 《悪なる右手》がそこに在る。 ギーは残った6体のヨルムンガントを睨みつける。 「“光の如く、引き裂け”」 ――――――――――――――――――! ――――真紅の右手が疾って。 ――――残ったヨルムンガントのすべてが切断される! ――――真紅の右手はすべてを奪う。 ――――ヨルムンガントのすべてを完全に取り込み奪う。 ――――巨体は程なく消え去るのみ。 ――――それまでに消滅したヨルムンガントと同じく。 ――――何の痕跡も残さずに。 ◇ 「おかえり、ギー」 「ただいま、ルイズ」 笑顔を浮かべていたルイズが、一転して心配そうな顔へと変わる。 「・・・・・・帰らなくて、良かったの?」 「ああ、大丈夫。少しだけ会えたから。会って話をしてきたから」 ギーは続ける。 「キーアは待ってくれてる。というか、叱られてしまった。『そんなのあたしの知ってるギーじゃない』って」 そう・・・・・・、だから・・・・・・、もう少しだけ・・・・・・。 「だから・・・・・・もう少しだけ、こっちで君といることにした」 周囲が勝ち鬨を上げているようだったが、二人の耳には入らない。 ギーとルイズは、澄み渡る蒼天の空の下で、静かに微笑みあった。
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究極の使い魔-1
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風の使い魔 Summon 1(風) / 400f ファミリアーの召喚 Atk=0 HP=1 風の使い魔が対戦相手にダメージを与えた際、風の使い魔は(+1 / +0)の修正を得る。 -- http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/27456/1135510382/826 参照:炎の使い魔, 水の使い魔, 光の使い魔, 闇の使い魔 コメント欄 名前 コメント
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闇の使い魔 Summon 1(闇) / 400f ファミリアーの召喚 Atk=0 HP=1 闇の使い魔が対戦相手にダメージを与えた際、対戦相手の手札を1枚捨てる。 -- http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/27456/1135510382/826 参照:炎の使い魔, 水の使い魔, 風の使い魔, 光の使い魔 コメント欄 名前 コメント