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「.hack//G.U.」のカイト(NPC) 蒼炎の使い魔-01 蒼炎の使い魔-02 蒼炎の使い魔-03 蒼炎の使い魔-04 蒼炎の使い魔-05 蒼炎の使い魔-06 蒼炎の使い魔-07 蒼炎の使い魔-08 蒼炎の使い魔-09 蒼炎の使い魔-10 蒼炎の使い魔-11 蒼炎の使い魔-12 蒼炎の使い魔-13 蒼炎の使い魔-14 蒼炎の使い魔-15 蒼炎の使い魔-16
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前ページ次ページ蒼炎の使い魔 カイトは急速な勢いで波に飲まれていた。 その激しさに自分のデータを改変することもできなく彼はなすがままにされていた。 そうしているうちに、 ズキッ カイトの身に変化がおきた。 「それ」は何かわからなかった。 しかし、 キモチワルイ 感じるはずのない不快感を彼は抱いていた。 そして、 「ツカマエタ…」 カイトは無機質な声を聞いた気がした。 流された先に突如光が出現し、 それに包まれ「蒼炎」のカイトはこのハルケギニアに召喚されたのだった。 「そいつほんとに平民?」 「さすが「ゼロ」が呼んだ使い魔だな」 彼らはカイトを見た後ルイズに皮肉を送った。 そう言われるのも無理はない。 ゾンビのような体、ギザギザの歯、何も写していないような瞳。 呼び出されても深いため息のような言葉しか話さない。 一瞬視線が合った生徒は軽くびびっていた。 「もう一度召喚させてください!」 ルイズはカイトが何も反応しない事に業を煮やし、 近くの教師、コルベールに再召喚の許可を求めた。 しかし、 「それはだめだ」 彼は言う、「伝統だ」「例外はない」と。 そして、「早く契約をしろ」と彼女の訴えを却下した。 「早くしろよー、ゼロのルイズー」 周りの生徒も彼女をせかす。 ルイズは彼らを睨んだが自分のせいで時間が押しているのも事実。 意を決してカイトの方を向き、 「あんた感謝しなさいよ。貴族にこんなことされるのは一生ないんだから」 そういって、辺りを見回していたカイトの顔をつかんでキスをした。 キス自体は一瞬だったが、 「!? ガアアアアアアア!」 次の瞬間カイトの左手に焼きつくような痛みが発生する。 カイトは跪き、左手を押さえていた。 「ルーンが焼きついているだけよ。すぐに終わるわ」 確かに痛みはすぐに治まった。 カイトは左手を見ると、何か記号が刻まれていた。 「ちゃんとコントラクトサーヴァントは成功したようだね」 コルベールがそう言い、珍しいルーンだと小さく呟いた。 召喚はルイズで最後だったので周りの者は自らに魔法をかけ、宙に浮いた。 「お前は歩いて来いよ」 「フライも使えないんだもんな、ゼロのルイズ」 彼らは笑いながら学校のほうに戻っていく。 ルイズは八つ当たり気味にカイトに怒鳴り散らした。 「あんた何なのよ!」 「ハアアアアアア…」 「何かほかにいえないの!?」 「ハアアアアアア…」 「もういいわ…。とにかく部屋に戻るわよ」 早歩きでその場を去ろうとするが彼はついて来ない。 「早く来なさい!!」 そう怒鳴られカイトは自分が呼ばれていることを知った。 少し間をおいた後彼女の元に向かう。 宙に浮いて。 「って、何であんた飛んでんのよーー!?」 こうして「ゼロ」と「蒼炎」の奇妙な主従関係が作られた。 前ページ次ページ蒼炎の使い魔
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前ページ次ページ蒼炎の使い魔 「大丈夫、大丈夫、必ず成功させる…」 ルイズは心を落ち着かせていた。 「サモンサーヴァント」 それはメイジにとって大切な儀式。 さまざまな幻獣を召喚させ、自分の使い魔にする。 出てきた使い魔によって自分の「質」が問われてしまう。 ある理由によって失敗を続けてしまう彼女は、 絶対に成功させると自分に気合を入れていた。 ルイズは深呼吸をして確かめるように、 それでいてゆっくりと術を唱えた。 しかし、出てきたものは幻獣でもなければただの動物ではなかった。 ポーン 始めに聞こえたのはハ長調ラ音の音 ルイズは音のなったほうをとっさに向く。 何かが一瞬燃えるような音がした後に「ソレ」は立っていた。 「ハアアアアアアアア…」 赤を基調とした服装。つぎはぎの体。 ギザギザの歯にギョロっとした目 彼はかつて英雄といわれた者の残留データを元に「世界」の「女神」に作られたものであった。 その名は「カイト」 「ルイズ『サモンサーヴァント』で平民を呼び出してどうするの?」 「さすがは『ゼロ』のルイズだ!」 周りのものが口々にルイズを笑う。 しかし彼らは遠巻きにルイズたちを見ているため、 カイトがどのような格好をしているのかが見えなかった。 だからルイズは何もわかってない彼らと目の前に出てきた「正体不明」に 理不尽な怒りを覚えた。 「ちょっと」 「・・・・・?」 「聞こえてるの!?」 「ハアアアアアアア・・・」 「何言ってんのよ、あんたは!?」 「ハアアアアアアア・・・」 会話がつながらない、 というより言葉が話せないようだった。 ルイズは自分の召喚したモノを見て目の前が真っ暗になった気がした ココハドコダ 時間は少しさかのぼる。 とある世界の電子上の世界「The World」 世界中が大騒ぎした事件の発端となったオンラインゲーム AIDAと呼ばれる正体不明のバグ ソレを消滅させた際に生まれた反存在 「彼ら」は様々な事件に巻き込まれながらもそれを解決させた しかし 平和になった世界に再び事件が起きる。 「とっとと行くか」 「頑張りましょうね、ハセヲさん♪」 「・・・・・・・」 「死の恐怖」と呼ばれた錬装士ハセヲ リアルが不明なハッカー鎌闘士の欅 そしてリアルのプレイヤーがいない双剣士のカイト カイトたちはあるエリア「生まれし 異世界の 入り口」にきていた なくなったはずの正体不明のバグがこのエリアで反応したらしい。 ハセヲたちはこのエリアの調査に来ていた。 しかし、 「何もねえな…」 「おかしいですね」 「一回戻って八咫に報告しよう」 「わかりました」 ハセヲと欅の間で会話が交わされる。 カイトが仲間はずれなのは単に言葉が通じないからだ。 「よし、じゃあいったん戻るぞ」 ハセヲは2人にそういってタウンに戻った。 「あ、まってくださ~い」 欅も続く。 それに続いて戻ろうとした瞬間に、 ポーン 「!?」 仕様外の音が突然響いた。 そして先ほどまでなかったオブジェがその場に現れた。 そのオブジェは鏡のようなもので、AIDAでも反存在でも碑文の力でもなかった。 元々仕様外の存在を消すために生まれたカイトはそれに警戒して近づいていった。 たいした力は感じられない。そう感じて触れた瞬間に、 「!? ガアアアアアアア!!」 取り込まれるそう感じたときにはもう遅かった。 女神を守るために生まれた騎士はその瞬間「世界」から消えた。 前ページ次ページ蒼炎の使い魔
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前ページ次ページ蒼炎の使い魔 ルイズは夢を見ていた。 それは「世界」の記憶。周りは暗闇。 そのうち声だけが聞こえだす。 「トライエッジ#知って>か?」 「今日@つが3ってくる」 「てめ$ええ ええ!!」 「これだからPKは/・られないねえw」 「そ#でもPKなんて非生産的だと思うん¥す」 「無理、=界」 「全部%だの(ータなんだよ!」 「じゅばっち!」 「て0えは~ったい何者だ?」 「まさか、\バター!?」 「来&ぞ!」 「未W還者達を、返しやBれええええ!!」 それは彼が生まれた世界の記憶だった 所々に雑音が入ってよく聞き取れないが、これが彼の記憶なのだろう。 しばらく声が流れていたが彼女の夢は突然終わりを告げる 「ハアアアアアア…」 記憶を見ていた使い魔に唸られて、 「きゃああああああ!!」 叫びとともに目を覚ました。 いつもはすがすがしい目覚めなのに、一気に気分が沈んだ。 近い、そして怖い。 カイトは覗き込むようにしてルイズの顔を見ていた。 相変わらず、目は不気味に見開いている。 いくらなんでもこれはあんまりだ。 (そうよ、私が召喚したんだったわ…。 これからはこんなのと生活しなければならないのよ) 深呼吸をして気分を落ち着かせると、立ち上がりパジャマを脱いだ。 下着も脱いで裸になってもカイトは何も反応しない。 「下着取って」 だが、反応しない 「そこのクローゼットの右下」 でも、反応しない 「早く取りなさい!!」 それでも反応しない。 業を煮やしたルイズは結局自分で服を着替えた。 最初からこうすれば良かったと彼女はあきれ声で呟いた。 「あんた朝ごはん抜きだから」 使い魔に対する罰も忘れずに。 ルイズはいつもの制服を着るとカイトをつれて廊下へと出た。 そこには、まるでルイズとは正反対の色気を持った赤い髪の少女が立っていた。 朝の挨拶をしつつ、赤い髪の少女は馬鹿にしたような目つきでカイトを見る。 「あはは!ほんとに平民を使い魔にしたんだ」 「うるさい!!」 「使い魔って言うのはこういうのを言うのよ」 赤い髪の少女(キュルケというらしい)のもとに巨大なトカゲが出てくる。 キュルケの話ではサラマンダーというらしい。 確かに図体は立派だがあまり脅威には感じられない。 カイトはその火トカゲを見る。 サラマンダーが野生だったら今すぐこの場から逃げ出していただろう。 しかし今は使い魔。主人をおいて自分だけは逃げ出すことができなかった。 自然と体が震えだす。 本能が悟ったのだろう。絶対に勝てない、と。 「どうしたの?」 異変に気づいたキュルケが答える。 それでもサラマンダーは主人の言葉に答えない。 そのうちカイトに向かって頭を下げた。彼(?)なりの服従のポーズなのだろう。 犬だって勝てない相手には腹を向ける。 キュルケは愕然とした。 すばらしい使い魔なのに、「ただ」の「人間」にびびっているのだから。 「あなた、何者?」 「ハアアアアア…」 キュルケが問うが、カイトは呻き声を出すだけだ。 「ルイズ、この子は何なの?」 「私だって分からないわよ、でも…」 「何よ」 「カイトって言うらしいわ、彼の名前」 「ふーん」 キュルケは興味を覚えていた。 火トカゲをびびらせる正体不明。 周りの男はいつも自分の体を見るたびにいやらしい視線を向けるのだが、 彼はそんなことはしなかった。まるで興味が無いように。 「それじゃあね、ゼロのルイズ」 ルイズに対する皮肉も忘れない。 そういってサラマンダーを引きつれ歩いていく。 彼女の使い魔は安心したのだろう。元気に歩いていった。 そのうち彼女は一人呟く。 「面白いわね、彼」 キュルケの呟きは誰も聞くことは無かった。 ルイズは自分の使い魔を見て考え事をしていた。 何も話さない。 正体不明。 サラマンダーをおびえさせた。 それはまるで「ヒト」では無いようで。 (それを召喚した私は何?) メイジの実力は使い魔を見ろとこの世界では言われている。 自虐的になるが、自分の魔法は成功したことが無い。 それなのに、何もしていないカイトを見て本能のままにカイトに屈した。 (カイト、あんたは一体何なのよ…) その疑問に答える物は誰もいなかった… 前ページ次ページ蒼炎の使い魔
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前ページ次ページ蒼炎の使い魔 決闘の数分前 場所は学院長室 そこには一人考え込んでいた者がいた。 とても、真剣に今だけは誰からの言葉も受け付かないようだった。 なにを考えているのかというと、 (今日はどうやってミス・ロングビルの下着を覗こうかの~) まあロクでもない考えだったが。 彼の名はオールド・オスマン。 この学院で一番偉い立場にいる男である。…たぶん。 今日も平和にどうやってセクハラをしようかと考えているところに、 一人の男性が古い本を片手に入ってきた。 「なんじゃね、騒々しいぞ。コルベール」 作戦が決まりかかってきていた時に邪魔をされたのかオスマン氏は顔をしかめていた。 だが、それもかまわずコルベールは血相を変えて報告する。 「伝説が現れました…」 「なんじゃと?」 コルベールは先日ルイズが召喚した使い魔、カイトに刻まれたルーンについて調べていた。 自分が見たこともなく、使い魔についての教科書にも載っていなかったからだ。 彼は気になることは追求するタイプである。 色々な文献を見たが、人を使い魔にした例とそのルーンについては何も分からなかったのだ。 すでにあきらめ半分でひとつの本を手に取り、中を開いた。 それは伝説についての本だった。 そして彼が知りたかったものが見つかることになる。 「彼はガンダールヴです!」 それは始祖の伝説の使い魔の名前だった。 更に詳しく話を聞こうと、コルベールに質問をしていく。 数分立っただろうか。 更に一人の女性が入ってくる。 「ミス・ロングビル、どうしたのかね?」 彼女の名前はミス・ロングビル。二つの顔を持ち、恐らくあらゆる世界で2番目に可哀想な目にあっている女性である。 学院長からの質問に少し息を切らせながらも答える。 「広場で決闘が行われています」 その報告にオスマン氏はあきれたようにため息を吐いた。 「まったく、暇をもてあます貴族ほどタチがわるいわい。ああ『眠りの鐘』なんて使わなくていいぞ」 もったいないからのう、と続けた。 「で、誰と誰が暴れておるんじゃ?」 「はい。ギーシュ・ド・グラモンとミス・ヴァリエールの使い魔です」 オスマン氏にとってはグッドタイミングと言ったところだろうか。 今話していた話題の少年が決闘しているのだから。 そして、もう一人。ギーシュの調子が最近おかしい。 感情をもてあましているというか、切れやすくなっているというか。 性格が歪んでしまったのだと最初は片付けた。しかし、それだけじゃないようだ。 魔法の質が上がっているのだ。それを操る様は悪魔に魂を売った男のような目つきだった。 大方、調子に乗っているのだろう、いつかお灸を据えてやろう。 そう思っていたときにこの報告。 2人ともこの学院で今問題になっているため少しだけ興味を抱いた。 「ミスタ・コルベール、百聞は一見にしかずじゃ。ちょっと覗いてみようかの」 そういって杖を振り広場の様子が見える鏡を作り出した。 広場ではすでに決闘が始まっていた。 ギーシュはゴーレムを召喚し、使い魔の少年--カイトが武器を取り出している。 カイトが何か挑発でもしたのだろうか、ギーシュが怒声を上げながらゴーレムを走らせる。 「ほう…」 最初、オスマン氏は決闘の結果はギーシュの勝利だと思っていた。 しかし、目の前の現実はそれをはるかに凌駕していた。 使い魔の少年のほうが、そこから一歩も動いていないのだ。 数で攻めてくる連撃をいともたやすく片手で受け続けている。 腕を振るったかと思えば、ワルキューレはバラバラになっている。 そして、 『ぎゃあああああああああ!!』 鏡の向こうの少年が悲鳴を上げ倒れた。気絶したらしい。 「オールド・オスマン、彼は…」 その光景を見て震えながらコルベールは声を出した。 「むう…」 オスマン氏も信じられないのだろう。 言葉が出せないでいた。 ミス・ロングビルにいたっては顔が青くなっている。 しばらくするとオスマン氏が口を開いた。 「2人とも、この件については一旦保留じゃ。」 「しかし…」 渋るコルベールに続けて言う。 「分かっておる。あの腕から出した光は危険じゃ。我々は彼のことを知る必要もある」 ルーンのことについてものう。 ミス・ロングビルがいたため、ルーンのことはあえて言わなかった。 だが、彼も察したのだろう。渋々だが学院長の提案に了承した。 2人を退室させ、彼は1人残った部屋でつぶやいた。 「近いうちに、彼と話さなければならんのう」 前ページ次ページ蒼炎の使い魔
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前ページ次ページ蒼炎の使い魔 夜 「やっとついたわね…」 ルイズが疲れた声を上げる。 2人が学校に戻ってきたときには、すでに辺りが暗くなっていた。 元々数十分で行けるような距離ではない。 更にカイトが馬に怯えてしまうため必然的に時間がかかってしまったのだ。 剣を買った後、彼女はもうひとつ物を買い与えようとしていた。 服である。 いくらなんでも同じボロボロの服だけというのは主人としてもいやだし、 カイトにひもじい思いをさせたくなかった。 だからルイズは自分の服と一緒にカイトの服も探しに行ったのだ。 カイトが服に関してはまったくの無関心だったため、かなり時間がかかってしまったが。 結局適当に平民の服を見繕って帰ろうとした時にはすでに日が暮れかけていた。 馬を元の場所に置いてきて、部屋の前に来たときに何かに気がついた。 「何かしら、これ」 それは封筒。 誰かが自分に手紙でも書いたのだろうか。 しかし彼女にはまったく心当たりがない。 部屋に入り中身を確認してみると… 先日の件のことで謝罪がしたい。 もし大丈夫だったら明日の夜、中庭に来てほしい。 …本当にすまなかった。 ギーシュ・ド・グラモン 追伸 使い魔君へ もう一度君に決闘を申し込みたい。 受けてほしい。 「ギーシュ!?」 それは先日、自分を散々に馬鹿にしてくれたギーシュだった。 あのギーシュが?私に謝罪? 何の冗談? ルイズとしては何かの冗談かと思っていた。 まるで人が違うではないか。 混乱してきたルイズにさっきから黙っていたカイトは デルフを背中から取り出し、 「ハアアアアア」 「何?」 「あー、『あいつはもう大丈夫』って言ってるぞ」 「?」 半ば投げやりにデルフが通訳をする。 ルイズとしては何が大丈夫なのか分からない。 (まあ、明日行ってみればわかるわよね) 夜ももう遅くなってきた。 今日はもう寝よう。 そう思った瞬間! 「ダーリン!!」 突如現れたキュルケによって眠気が吹っ飛んだ。 「何よいきなり!」 「あら、あなたに用事があるわけじゃないわ。 用があるのはダーリンのほうよ」 「ダーリン?」 「ね~、ダーリン」 いきなり入ってきて、カイトに抱きついたキュルケにルイズは当然怒った。 ライバルがいきなり自分の使い魔に色目を使い始めたのだ。 「ダ、ダーリンって何よ!?カイトにくっつかないで!!」 「あら、ダーリンはダーリンじゃない。それともなあに?嫉妬?」 「なっ!そ、そんなんじゃないわよ。わ、私はべつに…」 「なら、私が何をしても自由じゃない。ね、ダーリン。私プレゼントがあるの」 そう言ってキュルケは綺麗な剣を持ってきた。 デルフリンガーと見比べると天と地ほどの差がある。 キュルケはデルフを部屋に入ったときに見たので内心「勝った!」と思っていた。 そんなキュルケにカイトは一言。 「…ド#モ」 少しノイズが入ったが礼を言った。 そんなカイトを見てキュルケは満足そうに、 「それじゃ、今日のところは帰るわ。じゃあねダーリン。あとヴァリエールも」 取ってつけたかのようにルイズに挑発して帰っていった カイトとしては昼のようなデルフとの問答は面倒くさかったし、前の世界の仲間にも言われたのだ。 「いいか!?女性がプレゼントをしてきたときはどんなものでもお礼を言う!! そしてあわよくばデートに誘うんだ!!」 言わずもがな、女好きの銃戦士である。 デートとは何か分からなかったので、カイトはとりあえず受け取ったのだ。 キュルケが居なくなったことで部屋には沈黙の空気が流れている。 ルイズは黙っていた。 それはカイトの先ほどの応対。 今朝のことを彼女は覚えていた。 自分が何か買い与えようとしたときには『アリ@トウ』 キュルケが剣をプレゼントしたときには『ド#モ』 この差は大きいんじゃないだろうか。 ルイズもうすうす感づいていた。 カイトは生まれたばかりではないのだろうかと。 当然外見を見れば、そんなことはないのだろうが。 どうしてもそう思ってしまうのだ。 カイトは純粋な子供。 だから感謝の言葉を使い分けたのはかなり差があるんじゃないだろうか。 そんなことを考えながらカイトのほうを見る。 やはりカイトは不安そうに見ていた。 ふう、と彼女は息を吐くと、 「別に怒っては居ないわ」 ツェルプストーには腹が立つけどね、と彼女は付け加えた。 それに、どうせキュルケが渡した剣はカイトでは使えないのだ。 とりあえずここは大人として我慢しないと。 ルイズは姉になった気分だった。 これからも分からないことがあれば教えていこう。 まずは、 「いい?カイト。ツェルプストーに近づいちゃだめ」 ライバルの色目にカイトが引っかからないようにしないと。 こうして夜は更けていった… 前ページ次ページ蒼炎の使い魔
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前ページ次ページ蒼炎の使い魔 ルイズたちが街に降りているころ。 一人の生徒が意識を取り戻した。 救護室 「はっ!!」 ギーシュは誰かに愛のボディープレスをされる夢に驚いて目を覚ました。 知らない天井、ではなく周りをよく見ると医療の道具が置いてあった。 救護室にでも運ばれたのだろう。 ギーシュは最近までの記憶をよく覚えていない。 決闘中にいたってはほとんど理性は残っていなかっただろう。 始まりは小さな種子だった。 朝何気なく散歩をしているとそばにいた使い魔が突然一点を見て異常におびえていた。 ギーシュが目を向けると、何か黒い点が泡のように蠢いている。 何となく「それ」近づいてしまったときにはもう遅かった。 「う、うわああああああ!!」 突然彼の体に入り込み、全身を何かに包まれた。 やがて苦痛が治まると彼は頭に鈍痛を覚えたが、代わりに異常な高揚感が湧き出ていた。 いやらしい笑みを浮かべると、その場でゴーレムを召喚した。 凄い。 詠唱も、威力も、何もかもレベルが上がっているのだ。 この時に誰か彼を助ける事が出来た者がいればこのようなことにはならなかっただろう。 しかしそれももう遅い。 彼はこのとき『黒点』の正体、『AIDA』によって感染してしまったのだ。 そのことを思い出すと次に決闘を思い出していた。 そうだ、あれは食堂で。 そこで1人の貴族を馬鹿にした。 思い出したくなくても頭に響く。 『おや、これは『ゼロ』のルイズ』 やめろ! 『平民の盾になろうとするのはどういう風の吹き回しだい?』 やめろやめろやめろ!! 『君は貴族の誇りもゼロのようだな』 嫌だ、嫌だ、嫌だ! 「僕は、なんて、ことを…!」 自分はなんてことを言ってしまったのだろう。 守るべき存在である女性に。 貴族の誇りを自分が言える資格などないのに。 そのときの光景がよみがえる。 なぜだ、なぜ周りも止めない。 その光景を頭から離そうと彼は壁に頭を打ち付ける。 血が流れたが、彼はそれに気づかない。 先ほどのギーシュの叫びによって一人部屋に入ってきたものがいた。 「ちょっと、何しているの!?」 「…モンモランシー」 入ってきたのは先日愛想をつかれたはずのモンモランシーであった。 自己嫌悪の渦に入っていた時に誰か来てくれたのは彼にとって救いだっただろう。 「ああ、モンモランシー。心配かけてすまない。」 「え?いや…その」 彼女は何か言いたげだったが、かまわず彼は続ける 「僕は何か夢から覚めた気分だよ。頭の中がすがすがしいんだ」 「その、頭…」 彼は何かを思い出したかのように声を出す。 「そうだ、ミス・ヴァリエールに謝らなければ」 そういって、立ち上がろうとする。 慌てて彼女はギーシュを止めようとする。 「ちょっ、ギーシュ!待って!」 「すまないが後にしてほしい」 気づいてないの? 「その前に頭の治療よ」 「へ?」 その後錯乱したギーシュを殴って気絶させると頭の治療を適当に始めた。 ふとモンモランシーは彼の頭に包帯を巻いているときに違和感に気づく。 ギーシュから魔力が感じられないのだ。 正確に言えば彼に異常が起きてから『急に上昇した力』であるが。 数分後 再び目を覚ましたギーシュに、質問する。 あの異常な力はどうしたのかと。 「え、何のことだい?」 彼の脳はAIDAによって侵食されていた。 だから彼の頭には感染直後の事はほとんどおぼろげだったのだ。 彼は続ける。別にいつもどおりだと。 異常が起きる代わりに力が手に入る。 どの世界でも大きな力には大きなリスクがある。 彼が『本当』に暴走する前に助かったのは正に奇跡といえた。 元に戻ったと思ったら力が消えたのではなく、 力が消えたおかげで彼は助かったと彼女はそう結論した。 最初は意識不明にさせた『ゼロの使い魔』を殺したいほど憎んだが、 今ではきっと感謝の言葉を言うだろう。 さあ、この問題はこれで終わり。 だが彼女にとってもうひとつ大きな問題がある。 それは、 「あなたに聴きたいことがあるんだけど」 「ん?」 「あなたが私に言ったあの言葉は嘘だったの?」 「え”」 彼には浮気癖がある。それは認めよう。 でも今回は我慢できたが、今度は許さない。 彼は延々とモンモランシーの説教を聴く羽目になった。 怒る彼女にギーシュは謝ることしか出来ない。 ギーシュにとっての平和はまだ遠いだろう…。 前ページ次ページ蒼炎の使い魔
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前ページ次ページ蒼炎の使い魔 ギーシュからの(謝罪の為の)呼び出しを受けたルイズは、以前カイトが戦った広場に来ていた。 「遅いわねえ…」 ルイズが苛つきを隠せない表情でそういった。 ちなみにその頃カイトは何をしていたかというと… 「おいしいですか? カイトさん♪」 「…ハアアアアアアアア」 「それは良かったです」 すっかり慣れたシエスタから食事をご馳走してもらっていた。 ちなみにルイズはその事を知らない。 カイトがデルフを使い、「用事がある」と告げただけだったのだ。 ルイズもまさか女の所へいくとは考えなかったのだろう。 何せ、以前言いつけられた『キュルケに近づくな』をしっかりと守っているのだから。 …もっとも、キュルケから近づいてきた場合はどうしようもないのだが。 異性に関する認識などカイトはよく分からないように出来てある。 まあ、そういった理由でカイトはここには居なかった。 …何気にギーシュの約束を破ったカイトだった。 そんなこんなで数分後。 「やあ、待たせてごめんよ。」 ようやく待ち人であるギーシュがやって来た。 「遅いわよ。」 ルイズはやっと来たかと言わんばかりにギーシュのほうに顔を向けた。 「ゴメンゴメン。女性を待たせるのは悪かったね」 ギーシュは何時もの調子で謝ってくる。 「それで? 一体何のようなのよ。」 ルイズは本題に入る。 ギーシュもその言葉を聴いて、真剣に、それでいて何処か申し訳なさげな顔になった。 「以前の決闘の時…君を侮辱した発言をしてすまなかった。 本当に申し訳ないことをしたと思うよ。」 ルイズはその言葉を聴いて、少し驚いた。 まさかギーシュの口から、女性関係以外の場で本当に謝罪の言葉が出てくるとは。 驚くルイズを他所にギーシュは続ける。 「言い訳になるかもしれないが…、本当にあの時はどうにかしていたんだ。 心無い言葉をかけて本当にすまなかった…」 ギーシュは嘘を言っていないようだ。 「はあ、まあ別にいいわよ。 それより貴方に聞きたいことがあるんだけど。」 ルイズは頬を掻きながらもギーシュの謝罪を受け入れた。 心から謝られる事なんて今まで少なかったのかもしれない。 平民からも何度かあったのだが、その言葉の全ては殆どが自分への『保身』の為だ。 相手を傷つけてしまった、というよりも、相手を怒らせたとばっちりが自分に帰ってくるんじゃないかという恐怖。 何度もやられると、段々と分かって来る。 (いけないいけない) 暗くなってしまいそうな思考を無理やり別のことに変えた。 ルイズは聞きたいことがあったのだ。 それは… 「あの時、何か『黒い点』が見えたんだけど、心当たりは無い?」 ギーシュがビクリと体を振るわせた。 やはり心当たりがあるらしい。 ルイズもあの時のギーシュは異常だと思っていた。 それに核心を覚えたのはカイトが放った『データドレイン』という光をギーシュが受けた時。 「あ、ああ。君はアレがなんなのか知っているのか? 僕はアレに触れてしまった時に、ああなったと思うんだが。」 ギーシュは以前自身に起こった話をした。 それは完全に怯えた目だった。 「詳しい事は知らないけど… カイトが知ってたのよ。」 「君の使い魔が…? そういえば見当たらないけど…」 「それは…」 ルイズが言葉を話そうとした瞬間。 ドオン!! 何処からか轟音が聞こえた。 「な、なに!?」 二人は慌てて周りを見回す。 その時何かに気がついたのかギーシュが叫んだ。 「あれは…ゴーレムだ!」 彼の言うとおりそれは小山もあるんじゃないかと言うほどのゴーレムだった。 そして、その側には… 「あれは…宝物庫!?」 そう、ゴーレムは宝物庫の入り口を破壊していたのだ。 しかも、魔法が掛けられてある扉をだ。 離れた場所にいたため、よく見ることは出来なかったが黒い影が中に入っていくのが見えた。 「盗賊…か!?」 「早くとめないと!」 ルイズが掛けようとしたがそれはギーシュによって止められる。 「離して!」 「待つんだ! 僕達じゃあいつには勝てない!」 「だからって!」 「落ち着くんだ! 僕たちには今使い魔が側にいないんだぞ!」 その言葉にルイズは少し冷静さを取り戻した。 同時に自分の無力さにルイズは歯噛みする。 そうしてる間にゴーレムに乗った黒い影は学園の外へ逃げていった。 死神の大鎌 頂戴しました。 土くれのフーケ そう書かれたメモを置いて… 一方… 「おかわりですか?カイトさん」 「…ハアアアアアア」 こっちは平和な時間を過ごしていた…。 前ページ次ページ蒼炎の使い魔
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前ページ次ページ蒼炎の使い魔 夜 厨房を出たときはすっかり日も沈んでいた。 カイトは上機嫌で廊下を進んでいる。 もちろん主人の部屋に戻るためだ。 彼はご飯を食べただけですっかり厨房が好きになっていた。 シエスタも笑顔で、「また来てくださいね」と言ってくれた。 餌付けに近い行為だったが。 廊下を進み部屋に近づいたときにふとあるものを見つけた。 以前見たサラマンダーだ。 相変わらずこちらを見て震えている。 サラマンダー、フレイムはとあるクエストを受けている。 依頼者『主人』 クエスト名『ある人物をつれて来い』 対象レベル『(本人にとって)∞』 報酬『無し』 ※ちなみに拒否権も無し。 強制されていた。 また主人が病気にかかったらしい。 そしてターゲットも彼(?)にとっては最悪の相手である。 命令されたらやらなければならないのが、使い魔の辛いところだ。 フレイムは覚悟を決めてこちらに向かってくるカイトの前に立つ。 そして、 「キュル…」 「…ハアアアアアア」 「キュルル」 「…ハアアアアアア」 「キュル?」 「ハアアアアアア」 本人達にしか分からない会話を繰り広げる。 やがて会話が通じたのだろうか。 部屋に戻るフレイムの後をカイトがついて行く。 中は薄暗くカイトは辺りを見回した。 突然ドアが独りでに閉まると、前方に薄暗い明かりがつく。 そこにいたのは、ベッドの上で男が見たら羨ましがる格好をしたキュルケの姿だった。 「ようこそ、そんなとこに立ってないでこちらにいらして?」 彼女は色っぽい声でカイトを誘惑する。 言われたとおりカイトは彼女の元へ近づいていく。 それを見てキュルケは続ける。 「私をはしたない女と… …私は病…あなたの… 微熱…だから…」 黙る彼にキュルケはどんどん話していく。 これが彼女の病気である。 ようは惚れっぽいのだ。恋愛をゲームのように楽しんでいる。 だがカイトとしては意味が分からない。 今日食事を知ったばかりなのだ。 異性間のやり取りなど知るはずもない。 女好きの銃戦士なら喜んで誘いに乗るだろうが。 寒くないのか。 これがキュルケに対して思ったカイトの気持ちだった。 彼女の気分が最高潮に達したのだろうか立ち上がりカイトを抱きしめようとする…が。 突然来た窓からの来訪者に中断される。 どうやら彼女に用事があるようだ。 「キュルケ!その男は誰だ!」 「ペリッソン、えっと後2時間後に」 「話がちが…うわあああ!!」 最後まで話せずに彼は落ちていく。 キュルケが魔法を使ったのだ。 続けてまた一人の男が来る。 「キュルケ!s…!!」 問答無用で彼女は魔法を使いその男を落とした。 ちなみにここは3階だ。 落ちたときの怪我が心配だ。 まだまだ来訪者はどんどん来る。 もうカイトは置いてけぼりだ。 結局用事はなんだったのだろうか。 あまり遅すぎてもルイズに怒られるだろう。 忙しそうに問答無用で窓から男達を落していく彼女を見て静かに退室する。 「はあ、はあ。これで終わったわ…。あれ?」 キュルケは来た男を全員叩き落すと不思議そうに周りを見る。 先ほどまでいた愛しの彼が見当たらないのだ。 「フレイム、彼は?」 キュルと一声なく。フレイムもいつ居なくなったのか分からないようだ。 慌てて上着を着て廊下に出る。 それと同時に隣の部屋のドアが閉まる音がした。 「あら、お帰りカイト。遅かったわね」 「…ハアアアアアア」 中でルイズとカイトの声が聞こえる。 どうやら邪魔者を退治していたときに部屋に戻ってしまったようだ。 キュルケは無言で部屋に戻り、突然叫んだ。 「ふ、ふふふ…。見てなさい「微熱」の称号は伊達じゃないわ!!」 相手にされなかったのがよほど悔しかったのだろう。 ルイズの部屋 『伊達じゃないわ!!』 隣でキュルケが叫んでいるのが聞こえる。 「まったく、うるさいわね」 彼女は勉強の途中だったのだろう、顔をしかめていた。 「ところでカイト。部屋に戻るときはノックをして返事が来たら開けなさい」 「…ハアアアアア」 カイトはコクリと頷いた。 それに満足そうな顔をしてから勉強を続ける。 今日の復習をしているらしい。 カイトは邪魔にならないように後ろに立って黙っている。 誰かの邪魔をすることはやってはいけないとカイトは知っていた。 以前、緑の服を着た斬刀士と一緒に行動していたとき、 突然性質の悪いPCに付きまとわれたことがある。 ダンジョンで探索をしているときも話しかけてきた。 それを見て彼は一言笑顔で、 「人の嫌がることはやめなよ…」 と言って耳元で何かをボソボソ話しかけたのだ。 すると、まるで別人のように血相を変えて逃げてしまったのだ。 ルイズは知らない。 厨房でメイドに必要以上に気に入られてしまったこと。 ついさっきまでキュルケに誘惑されていたこと。 何も知らないほうが幸せなこともある。 彼女にとって今日はとても平和な1日だったそうな… 前ページ次ページ蒼炎の使い魔
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前ページ次ページ蒼炎の使い魔 午後 彼女は授業を終え自室に戻る最中だった。 当然カイトも一緒だ。 今日は何もなく、いい気分だった。 周りのものがあからさまに彼女に皮肉を言わなかったのである。 また、昨夜つっかえたものを吐き出したこともあるだろう。 いつもと変わらない世界が新しく見えた。 そんな感じで廊下を歩いているとメイドが突然声をかけてきた。 ルイズはその声に振り返るとそこには自分よりはるかにスタイルのよい少女がいた。 この生意気な体の女は誰? 「えと、あなた誰だったっけ?」 その問いに慌ててメイドは答える。 「え、あ!す、すいません。私はこの学院のメイドをさせてもらっているシエスタといいます。 昨日のギーシュ様の件についてのお礼をしたいのですが…」 そこまでいわれルイズは思い出した。 そうだ、あのときギーシュにひたすら謝ってた…。 話を聞くとどうやら自分の不手際を助けてくれた2人にお礼がしたいらしい。 どうか厨房まで来てくれないか、と彼女は頼んだ。 だがその誘いをルイズは断った。 「別にいいわよ。あれは勝手にやっただけの事だから」 「で、でも」 食い下がるシエスタを見てルイズはカイトを見る。 「私は休んでいるから、あんただけでも行って来なさいよ」 「…ハアアアアア」 それじゃ、と言ってルイズはその場を去った。 残されたのはシエスタとカイトの2人だけ。 彼女はルイズを誘うのを諦めたのかカイトの方を見て微笑む。 「それでは、こちらにいらしてください」 そういってカイトを連れ出そうとする。 了解したのかカイトは声を出した。 「…ハアアアアア」 ビクッ! 彼女の反応は分かりやすかった。 普通なら、「わかった」とか言う所をいきなり唸るともため息とも取れない声を出したのだ。 ルイズだって未だに慣れていない。 震えながらも彼女は声を出す。 「あ、あの。あなたは平民の使い魔なんですよね?」 「…ハアアアアア」 こればかりははっきりいって相手が悪い。 少し涙目になりながらシエスタはカイトを厨房へと連れて行った。 何度か勇気を振り絞って話しかけてみたがすべて撃沈だったと言う…。 場所は変わり厨房 待っていたのはコックとその料理長である。 「『我等の剣』が来たぞ!」 彼はうれしそうに大声で言う。 どうやら歓迎しているようだ。 「よくシエスタを助けてくれた。あの生意気な貴族がお前にコテンパンにやられた時はスカッとしたぜ」 「…ドウモ」 彼は豪快に笑う。 マルトーはカイトを無理やり椅子に座らせご馳走を持ってくる。 それを見て彼は不思議そうにそれを見る コレハナニ? 「The World」では食料などない。 仮想の世界なのだから当然だ。 だからカイトにとってそれは未知のアイテムにしか映らなかった。 ご馳走を出しても何も反応しないカイトにマルトーは不思議そうな顔をする。 (もしかしてこいつロクなもの食わされてねえんじゃないのか?) 彼はカイトが作られたモノだとは知らない。 だからカイトのことをこう曲解した。 ご馳走に反応しない→今までロクな物を食わされたことがない →主人がそうするようにした→その主人→貴族=敵! ぜんぜん違う。というか論点がずれている。 「けっ!これだから貴族ってやつは!」 だがカイトはそれを否定する言葉を出すことは出来ない。 彼がヒートアップしていくのにシエスタは気づいた。 この悪くなってきた空気をかえようとカイトに声をかける。 「あの、カイトさんって言うんですよね?これはシチューって言って…」 そういってスプーンを持たせシチューをすくわせる。 一から教えていくシエスタはまるで出来の悪い弟を見る姉のようだった。 カイトは難しそうにスプーンでシチューをすくい口に入れる。 瞬間、彼は満たされていく感じがした。 なるほど、ルイズが厨房に行けとあの日言われたのはこのことだったのだろう。 口の中の料理が彼の舌を刺激する。 以前グルメのカードを送られたときは「ナイ」と返した。 だが今なら彼は「シチュー」と返すだろう。 普通の人間なら当たり前の事が彼にとっては革命に近かっただろう。 シエスタは一心不乱にシチューを食べるカイト見て不憫に思っていた。 それほどまでにひどい物しか食べてこなかったのだろうか、と。 そして、無邪気な子供を見ているようで、かわいいとも思ってしまった。 最初は怖かった。何者も寄せ付けない雰囲気に。 でも、助けてくれた。 決闘のときは怪我をすると思った。 自分のせいで。 だけど、彼は勝った。 シエスタは微笑んだ。 いつの間にか周りはにやついている。 いつもなら顔を赤くさせ、逃げてしまうところだが、 今日ぐらいは良いだろう。 (もっと、あなたのことが知りたいです。カイトさん…) 次に来たときは自分の料理をご馳走させようと誓ったシエスタだった。 前ページ次ページ蒼炎の使い魔