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西暦2020年7月16日 13:00 ゴルソン大陸 日本国西方管理地域 ゴルシアの街近郊 「ひーかるーうみ、ひーかるおおぞら、ひーかーるー」 「一尉殿、一体何処に海があるんですか?」 調子よく歌っている佐藤に、二曹は容赦なく突っ込みを入れた。 現在彼らは、完全武装の一個小隊と共にダークエルフの隠れ家に向けて移動していた。 夜遅くに本国から届いた命令は、彼の現在の行動を承認していた。 「いやねぇ、随分と久しぶりに外出した気がしてね。 ここの所城の外の事は若いのにまかせっきりだったし。 いやぁ空気が美味い」 本来ならば、彼がここに出てくることはありえない。 だが、一歩間違えれば虐殺を行いかねない三尉か、昨夜大チョンボをやらかしたばかりの新入りに、こういった任務を与える事は出来なかった。 それに、佐藤自身が、たまには外出したかったのだ。 そんなわけで、彼らは今、ここにいる。 「こっちです」 誘導する姉妹の姉が手を振る。 妹の方は、既に隠れ家へと帰り、こちらの事を伝える事になっている。 「しかしなぁ、まだ65歳です、という表現には驚いたな」 「ですね、私たちよりよほど年上とは」 ダーク“エルフ”というくらいなのだから当然予測すべきだったが、彼女たちは部隊の誰よりも高齢だった。 もちろん、彼女たちの時間の尺度から考えれば、まだまだ少女に過ぎないが。 「さてさて、風邪か肺炎か、はたまた恐ろしい伝染病か、伝染病は勘弁して欲しいな」 「防護服はありませんからね」 「そろそろ到着のようです」 上官たちの無駄話を聞き流していた陸士長が報告する。 見れば、手に剣や斧を持ったダークエルフたちが、緊張した表情でこちらへ接近していた。 部下たちに発砲は控えるように命じつつ、佐藤は一同の前に歩み出た。 「日本国陸上自衛隊ゴルソン大陸方面隊ゴルシア駐屯地司令の佐藤と申します」 敬礼し、名乗る。 「早速ですが、病人を見せていただけないでしょうか?」 「あ、ああ、こっちだ。来てくれ」 礼儀正しく名乗りを上げられるのは予想外だったらしく、相手は面食らった様子で隠れ家へと一同を案内した。 <こちらイブニングライナー01!本部応答せよ!!> パイロットが必死に叫ぶ。 しかし、無線機からは空電以外の何も帰ってこない。 何もかもから通信が途絶えたのが五分前。 燃料も弾薬も全てが十分にある。 だが、それは何の気休めにもならなかった。 <おい!後ろからついてくるぞ!発砲許可は!?> ガンナーから明らかに狼狽した声が入る。 レーダーには先ほどからしつこく追尾してくる敵機の反応がある。 「なんなんだありゃあ!!」 パイロットは罵りの声を挙げた。 次の瞬間、レーダー上の反応は加速を開始した。 <どうする!> <やるぞ!> 素早く決断した二人は、機体を分担して操作した。 一人は火器管制を蘇らせた。 全ての火器が待機状態になる。 続けて機体が空を向く。 速度計が見る見るうちに回り、何かが彼らを追い越す。 透き通った羽、巨大な眼球、細長い胴体。 それは、どう見てもトンボだった。 <撃つぞ!一緒に始末書書けよ!> 機関砲が滑らかに動く。 飛び越した相手を思考する。 安全装置解除、目標は前方。 発砲。 機体に振動が生じ、機関砲弾の発射が体感できる。 綺麗な光が前方へと放り出される。 <なんだぁ!畜生逃げやがった!!> レーダーは敵機が見事な回避機動を描いた事を知らせていた。 曳光弾の軌跡がガンナーの必死の努力を伝えるが、レーダーはそれが無駄な射撃である事を知らせている。 「なんなんだありゃあ」 <おい!AAM使うぞ!> 「しょうがねえ、やるぞ」 相手はこっちに向かってきている。 ヘッドオンで勝負かよ、上等だ。 陸上自衛隊最新鋭戦闘ヘリコプターと、異世界の同名のトンボは、互いに正面を向き合った。 「しかし、魂消たな」 <ロケットランチャー装備のトンボかよ> 勝負は、彼らの勝ちだった。 あくまでも偏差射撃に過ぎない相手とは違い、空対空誘導弾を使用した彼らは、発射するなり急旋回を実施。 機体側面を通過するロケット弾に肝を冷やしつつ、レーダーが知らせた敵機の撃墜に安堵していた。 <それで、通信は?> 「だめだな、相変わらずだ」 周囲は相変わらずの闇だった。 星明りと月が知らせるところによると、見渡す限りの野原のようだ。 「糞、天測しようにも、ここは地球じゃないか」 パイロットは罵りの声を漏らした。 異世界に慣れていた彼らにとっては忌々しい事に、ここは地球と思われる惑星だった。 もちろん、ロケットランチャーを装備した小型機サイズのトンボがいる事から、地球ではない事はわかっている。 <なんか暗くなってないか?> 「曇ってきたんじゃ・・・」 相方に答えつつ、パイロットは上を見た。 そして、声を失った。 「じょうだん、だろ」 彼らの頭上に、巨大なマンタがいた。 今すぐ教本に載せたくなるほどに見事な擬装が施された隠れ家の中は、意外なほどに綺麗だった。 隠れ家というと、散らばった酒瓶、疲れ果てた男たち、そして薄汚い室内といったイメージがあるんだが。 診察を行っている医官を横目で見つつ、佐藤は周囲を見回した。 隠れ家というより、別荘といった表現が正しいな。 良く整理された室内、栄養状態に余裕はなさそうだが、健康そうな男性たち。 それとも、俺の認識が偏っているのか? 「うーん」 診察を終えたらしい医官がこちらを見る。 「どうだ?」 「破傷風ですね」 「まずいのか?」 「なんとも言えません。 軽度の症状に加えて、傷口が酷く化膿しています。 痛みと発熱はこれが原因ですね。 手持ちの機材と医薬品で対処は出来ますが、完治できるかと言われると難しいです」 「そうか、気道切開は?」 「酷くなれば必要になります」 破傷風、それは誰もが感染の可能性がある病気である。 世界中の土壌に菌は存在しており、怪我から感染する。 口が開けにくい、首筋が張る、寝汗をかくといった症状が見られ、次第に症状が増し、呼吸困難、歩行困難に至る。 治療をしないと全身にけいれんがおこり、最終的に窒息などで死に至る可能性がある。 初期状態ならば簡単な外科手術と投薬で完治するが、重症になると非常に厄介な病気である。 ICUを備えた本格的な医療設備など、第三基地まで戻らないと存在しない。 ヘリや車で輸送すればなんとかならないこともないが、現地民のためにそこまでの便宜供与は認められない。 火をつけ、物を凍らせ、烈風を起こし、不死者を浄化する魔法も、病気だけはどうにもならないらしい。 「怪我は治るのに病気は治せないというのは、便利なんだか不便なんだかわからんな」 「あの」 腕を組んでわかったような事を言う佐藤に、姉妹が声をかけた。 「母上は、母上は大丈夫なのでしょうか」 「気休めはやめて下さいね」 小声で医官はそう言うと、部下たちの所へと歩いていった。 どうしろっていうんだよ。 厄介な事を言ってくれる。 「必ず治すという確約は出来ませんな。 ですが、皆さんが我々に協力してくれるというのならば、治るかもしれません」 「何を、しろと言うのだ」 一同の代表らしい男が、険しい表情で口を開いた。 「実に簡単なことですよ。 我々は百年以上の長きに渡って練り上げられた医療技術を持っています。 貴方方から見ると妙な事をしている様に見えるかもしれませんが、邪魔をせずに協力していただきたいのです」 「それだけか」 「それだけ、と言いますと?」 「だから、金とか女とか、そういうのは」 「そういうのちょっとねぇ、出来ればこの周辺の情報とかを欲しいんですが」 「情報?」 佐藤の回答は、男にとっては予想外だったらしい。 「そりゃあまあ、私も健康な男なので、女も金も欲しいですけどね。 我々に必要なのはそれよりも情報なんですよ。 資源だったり存在しているかもしれない敵軍のものですね。 そういったものは、皆さんにはないのですか?」 「あ、いや、あったとして、それだけでいいのか?」 「構いませんよ」 佐藤はそう答え、部下たちに直ちに治療を開始するように命じた。 場合によっては手足を吹き飛ばされた負傷者を助けなければいけないだけあり、彼らの行動は非常に素早い。 機材を展開し、医薬品を確認する。 「それでは始めます。関係がない人は退出してください」 「よーしお前ら、周辺の探索にかかれ、皆さんも申し訳ありませんが退出をお願いしますよ」 「佐藤一尉」 「ん?」 「あなたもですよ」 「お、おう」 かくして、一同は屋外へと追い出された。 西暦2020年7月16日 13:00 ゴルソン大陸 日本国西方管理地域 ダークエルフの隠れ家 「なかなかに快適そうな環境だな」 建物の周辺には、隠蔽された井戸やそれなりに作物が取れそうな畑などがあった。 「彼らが今まで生き残ってこれたのもわかりますね」 感心した様子で二曹が言う。 「うむ、これだけの拠点を周辺住民にばれないように維持していたとは。 しかも、一日二日じゃないぞ」 「はい、大したものです」 周辺を偵察している部隊からは、特に何の報告も入らない。 城に残してきた部隊からも同様である。 「平和が一番だな」 「そうですねぇ」 ほのぼのとしている佐藤たちの隣では、心配そうな表情を浮かべたダークエルフたちが、小声で何かを相談している。 頼むから、いきなり気が変わったりするのは勘弁してくれよ。 横目で見つつ、佐藤は内心で思った。 いわゆるライトノベルと呼ばれるものを好んでいるらしい二曹によると、医療行為はそれを知らない異世界住人に誤解を招く恐れがあるらしい。 動けないケガ人に接吻しているように見える人工呼吸。 あるいは死者を強姦している様に見える心臓マッサージ。 セクハラにしか見えない触診。 よくわからない薬を飲ませる投薬。 拷問に見える注射。 だからこそ、十分な同意を貰った上での治療実施が好ましい。 二曹は、佐藤にそう進言していた。 「我々も周囲を見回ってくる」 じっとしているのが落ち着かないらしいダークエルフたちは、佐藤にそう申し出た。 「申し訳ありませんが、周辺は部下たちが探索中です。 万が一にでも貴方方に攻撃を加えてしまっては申し訳ない。 今は、我慢してください」 「我らが黙ってやられるような者だと思われては困る」 「お互いにやりあってしまってはもっと困るんですよ」 「・・・わかった」 なんとか彼らを押し留め、佐藤はため息を漏らした。 今も治療が行われているであろう建物を見る。 「治ってくれるといいんだがな」 「今は、医官殿を信じるしかありませんね」 二人の心配は、手袋を外しつつ退出してきた医官の表情によって解決された。 「可能に関しては継続的な治療で大丈夫でしょう」 「破傷風は?」 「投薬の効果がなければ難しいでしょう。 さすがにここで気道切開はやりたくないですから。なんにせよ、今日出来るところはここまでです。 ドタバタしないのならば入って結構ですよ」 その言葉を待っていたダークエルフたちは、流星のような素早さで建物へと入っていった。
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587 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/07(木) 20 35 [ kHqoVL5Q ] 投下終了です。 青島「うお、長いなこりゃ。」 佐藤「隊長、なんかもうすでに座談会限定キャラになってません?」 (PAN!) 天野「佐藤!?佐藤ーーー!?」 青島「しかしそれにしてもむさい・・・。ああ、可愛い女の子達が溢れる息抜き編はまだかー!」 セフェティナ「なんか青島さんキャラ変わってるし・・・。」 天野「そもそも息抜き編と言っても女性が出てくるとは限らんしな。」 佐藤「そうそう、見た目女のエルフ男に囲まれたホモ天国とか!」 (PAN!) 天野「佐藤ーーー!?」 588 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日: 2004/10/07(木) 20 41 [ 0U77BVi2 ] 更新乙 これかも日刊でよろ!! 589 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日: 2004/10/07(木) 21 18 [ IQ6e.MSs ] おつかれー。こういう策謀場面はわくわくします♪ 590 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日: 2004/10/07(木) 21 18 [ Ksk.yJ.Y ] アルクアイ1ポイントゲット! しかもアルヴァールにも貸しを作ってます。 なによりこれで日本との交渉を自分の下に一元化できるのが大きい。 アルヴァールに気取られずに陰謀を進められるようになってます。 帝国に日本をけしかけるフリをして、こっそり両者の仲介とかやらかしそう。 最終的には日本の手を借りて、教会の腐敗と君側の奸を討つという名目で王権を狙うんでしょうか? 王女殿下の女婿を狙えば玉座も夢じゃない!でもそうなるとファンナたんが…… これから気になるのが第三の権力、宗教勢力の動きですね。 教会の権威、魔法を握るエルフ、いずれも日本とは対立しそうな要素ですがさて…… ところでアルヴァール、読者諸兄には絶大な不人気振りですね。 もしかして、オイラと皆さんではまったく別の小説を読んでるのか? ヴァール卿はまだ人物の裏が見えてこないからいまいち分析するには不安だなぁ (こう略称をつければアルクアイをアル君と愛称で呼べるな、うん) 591 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日: 2004/10/07(木) 21 33 [ 6SyshVH. ] 連日の投下GJ! しかしとことん「自衛隊がファンタジー世界に召還されますた」 で良かったなぁ 米だとこの設定でも勝つのが見えてる 592 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日: 2004/10/07(木) 22 40 [ dUQoWPWk ] ご苦労様、 ここで作者様がいずれ出すと約束してくれたもの一覧 ビキニ鎧といったセックスアピールの高い女性衣装 バルト帝国の硬式飛行船、通称ツェッペリン型飛行船 空母は・・・現在考えてます (私的に国産空母を我は希望) 593 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日: 2004/10/07(木) 23 00 [ dUQoWPWk ] 日本に不利な要素が多すぎる。 仮に大陸に上陸したとしても現地の協力者がいなしF世界に関する知識もあまりに不足してる。 よって最悪の場合旧軍が中国に敗れたように敗退する恐れが高い。 他に疑問としてバルトの最西端の国境はウラル山脈までかとふと思った。 594 名前:S・F (7jLusqrY) 投稿日: 2004/10/07(木) 23 32 [ MSZ8PKC. ] 早くて面白いなあ。ちっくしょう。こうなってくるとオズインが哀れですね・・・ しかし逆に言えば、他の連中と違って弱いながらもフリーとも考えられます。 バルトは潰す気満々、しかし王国には無視される状況で予測される行動としては 1南方国家群と手を組み、さらに日本を軍事主力として同盟に誘う。 2食料や鉱物資源と引き替えに日本勢力を国内に呼び込む。 オズインは前門の狼・後門の虎状態ですから、壁横の勝手口から「暴れ者」を 誘って、猛獣どもの気を引くくらいは絶対にやるでしょう。ただタイム リミットの問題がありますから、国主が無能ならダメでしょうけどね。 日本がどう取るかは兎も角、オズインがこの状況に絡むのは確実でしょうね。 更に混戦が加速していきますねえ・・・ 595 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日: 2004/10/08(金) 00 09 [ K1U79z9M ] バルトの目的は別に世界征服じゃないから妥協のする割合はアジェントより高いかと。 他にはそろそろ萌え話も読みたいなと思う今日この頃。 596 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日: 2004/10/08(金) 00 54 [ xmrrYnYY ] 妥協って・・・・・・・・日本と同盟を組んだときの事を指してるのか? 597 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日: 2004/10/08(金) 02 23 [ xmrrYnYY ] 現状だと日本の置かれてる立場はあまりにも過酷過ぎる。 もし人魚族(陸に上がるときは下半身を人間にするタイプ)などが近海にいて味方 してくれるならまだましかもしれないが・・・・登場する気配はなし。 日本はやっぱりバルト帝国と同盟してほしい。 アジェント王国との同盟は交渉決裂で。 F猿様、どうかお願いいたします。 598 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日: 2004/10/08(金) 02 29 [ Io.4x1c6 ] 孤立したら孤立した戦いかたがあるだろ たしかに状況は厳しいが こういうのはピンチになればなるほど燃えていい だから今の状況はおいしい んで最後挽回して爽快感をだすと まぁF猿氏に任せようではないか 599 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日: 2004/10/08(金) 02 57 [ xmrrYnYY ] 孤立した戦いにも限度があると思いますが・・・。 教皇がバルトとの同盟の際に妨害工作を仕掛けそうな感じ。 それに典型的な妥協を許さない狂信者みたいである意味アルヴァールよりたちが悪そうですね。 前途多難ですな・・・。 600 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日: 2004/10/08(金) 07 28 [ EbT4fLtg ] オズインを助けるというのも本家の政府広報課とかこれまでの話で似たようなのばかり読んだ。 だからワンパターンっぽくって読み飽きてしまった。 一味違う展開を求む。 601 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日: 2004/10/08(金) 08 04 [ EbT4fLtg ] 敵国の侵略を受けてる国を日本が助けるという奴ね それじゃ日本がバルトとオズインの和平の仲介国になるというのはどうかな 602 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日: 2004/10/08(金) 15 38 [ 5cR4Mi3U ] 嘉手納基地にB-52が20機ぐらいほしい・・・長距離攻撃手段として だんだんと事態が収集できない方向に進んでいるような気がする もう少し絞って書かないと作者自身書ききれなくなるんじゃないか? 603 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日: 2004/10/08(金) 15 59 [ Ksk.yJ.Y ] あっさりバルトと日本講和したりして。でもって対アシェナ大同盟できたりして。でもってそのお膳立てをしたのがアル君だったりして。 日本のほうも赤羽がクーデター起こすとか、軍-政間癒着構造を作るとかしたりして。 アル君は日本に王国が勝ってると思ってないし、王国の政情が安定してもらっても困るわけだから、 どうしても謀反(革命という概念があるのかは謎)が起きて当然みたいに国内情勢を持っていきたいはずで、 それくらいのことはやりかねない。 ここは読者の大勢の期待を裏切って、ヴァール先生が本当に救国の英雄として 民衆に支持されるようになるとか言うパターン期待。 604 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日: 2004/10/08(金) 16 36 [ 0U77BVi2 ] ていうか、この時点でアルクアイは日本の国力を完全に見極めていないから、 少し、戦略を修正するかもよ。 605 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日: 2004/10/08(金) 20 04 [ jDoErIYI ] アジェントに召還されて、奴隷にされてる島の人々を開放するという名目で戦争するのは? まぁ、解放というか鞍替えさせて税として食料や資源を徴収するとか。 島を制圧したら守りに入ってアジェントの国力を削る。 相手は木造の帆船だし、索敵能力も自衛隊の方が優れてるだろうから制海権取るのは分けないだろう。 後は沿岸に偽装させた兵を配置させて上陸を防ぐというのはどうだろう。 606 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/08(金) 22 10 [ kHqoVL5Q ] すんません今日の投下は無理でした・・・orz 待っててくれる人が居ると悪いので言っておきます。 607 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日: 2004/10/08(金) 22 17 [ 0U77BVi2 ] GANBATTE 608 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日: 2004/10/08(金) 22 32 [ MSZ8PKC. ] 締め切りは自分で決めれば良いのですから、無理せずに創作してください。 自分も心待ちにしておりますよ。 600ならばオズインがバルト-アジェンド同盟を切る伏兵になるとか。 バルトとしても思想対立があるし、ダークエルフ勢力等が秘密裡に妨害工作を 行う可能性は高いでしょうから。 オズインの攻撃と言うことにして、何らかの妨害をアジェンドに仕掛けさせる。 そしてアジェンドがオズインに手を出したら、名目を付けてバルトが保護に回る などすれば、同盟もおシャカになるかも知れません。 609 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日: 2004/10/09(土) 01 15 [ Ksk.yJ.Y ] F猿さま それこそ戦争じゃないのだから、拙速よりも巧遅、です。 のんびり待ちます。 書かにゃならない局面も多いことですし、無理に急がず。 ここんところオズインが大人気なのは、まだ見ぬ国王陛下に期待してのことかな? ここで一発、マッチョな体育会系の暑苦しいアニキが国王となったら読者みんな大落胆? 610 名前:名無し三等兵@F世界 投稿日: 2004/10/09(土) 01 22 [ IjMEIWlQ ] オズインの王は亜人を希望。 国ごとになんらかの特色を出したほうが印象に残るから。 611 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/09(土) 23 25 [ kHqoVL5Q ] 大まかなプロットは最後まで作ってある分、 一番苦労してるのは投下前のコメントだったりして・・・。 しかもそれもあながち嘘じゃなかったり・・・。 それでは投下
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平成16年(ワ)第301号 自衛隊イラク派遣違憲確認等請求事件(甲事件) 平成17年(ワ)第205号 自衛隊イラク派遣違憲確認等請求事件(乙事件) 平成17年(ワ)第273号 自衛隊イラク派遣違憲確認等請求事件(丙事件) 主 文 1 甲事件原告A,B,C,D,E,F,G及びH,乙事件原告I並びに丙事件原告Jの請求の趣旨(1)ア,イ記載の各請求に係る訴え(本件派遣差止めの訴え及び本件違憲確認の訴え)をいずれも却下する。 2 上記甲,乙及び丙事件原告ら10名のその余の請求並びにその余の甲,乙及び丙事件原告らの請求(本件損害賠償請求)をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,甲,乙及び丙事件を通じ,甲,乙及び丙事件原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 請求の趣旨 (1) 甲事件原告A,B,C,D,E,F,G及びH,乙事件原告I並びに丙事件原告J(以下「原告Aほか9名」という。)の請求 ア 本件派遣差止請求 被告は,イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法(平成15年法律第137号,以下「イラク特措法」という。)及び同法4条に基づき定められたイラク特措法に基づく対応措置に関する基本計画(以下「基本計画」という。)により,自衛隊をイラク並びにその周辺地域及び海域に派遣してはならない(以下,この請求を「本件派遣差止請求」といい,同請求に係る訴えを「本件派遣差止めの訴え」いう。)。 イ 本件違憲確認請求 原告Aほか9名と被告との間において,被告が,イラク特措法及び基本計画により,自衛隊をイラク並びにその周辺地域及び海域に派遣し,同法及び同計画に基づく活動を行っていることが憲法前文,9条及び13条に反して違憲であることを確認する(以下,この請求を「本件違憲確認請求」といい,同請求に係る訴えを「本件違憲確認の訴え」という。)。 (2) 甲,乙及び丙事件原告ら(以下,単に「原告ら」という。)の請求(本件損害賠償請求) 被告は,原告ら各自に対し,金1万円並びにこれに対する甲事件原告らについては平成16年9月29日から,乙事件原告らについては平成17年5月3日から及び丙事件原告らについては平成17年6月28日から,いずれも支払済みまで年5分の割合による金員を支払え(以下,この請求を「本件損害賠償請求」という。)。 (3) 訴訟費用は,甲,乙及び丙事件を通じ,被告の負担とする。 (4) 上記(2)につき仮執行宣言 2 請求の趣旨に対する答弁 (1) 本案前の答弁 ア 原告Aほか9名の本件派遣差止めの訴え及び本件違憲確認の訴えをいずれも却下する。 イ 訴訟費用は,甲,乙及び丙事件を通じ,原告らの負担とする。 (2) 本案の答弁 ア 原告らの請求をいずれも棄却する。 イ 訴訟費用は,甲,乙及び丙事件を通じ,原告らの負担とする。 ウ 担保を条件とする仮執行免脱宣言及び執行開始時期を判決が被告に送達されてから14日経過後とする宣言 第2 事案の概要 1 事案の要旨 本件は,原告らが,「被告(国)は,イラク特措法及び基本計画に基づき,自衛隊をイラク並びにその周辺地域及び海域に派遣しているところ(以下,この派遣を「本件派遣」という。),原告らは,本件派遣によって,①憲法前文を根拠とする平和的生存権,②憲法前文及び13条を根拠とする平和追求権,③憲法前文の平和的生存権を制度的に具体化した憲法9条を根拠とする戦争や武力行使をしない日本に生きる権利並びに④人格権又は人格的利益を侵害され,多大な精神的苦痛を被った。」などと主張して,国家賠償法1条1項に基づき,前記精神的苦痛に対する慰謝料の一部として,各1万円の支払を求めるとともに(附帯請求は,甲,乙及び丙事件の各訴状送達の日の翌日からの民法所定年5分の割合による遅延損害金請求である。),原告Aほか9名が,前記①ないし④の各権利に基づき,被告に対し,本件派遣の差止めを求め,また,被告との間で,本件派遣が憲法前文,9条及び13条に反して違憲であることの確認を求めている事案である。 2 前提となる事実(当裁判所に顕著な事実) (1) イラク特措法は,平成15年7月26日,国会において可決され,同年8月1日,公布,施行された。 (2) 政府は,平成15年12月9日,同法4条に基づき,基本計画を閣議決定した。 (3) 防衛庁長官は,同法8条2項に基づき,基本計画に従い,対応措置として実施される業務としての役務の提供について実施要項を定め,平成15年12月18日,内閣総理大臣の承認を得た上,翌19日,陸上,海上及び航空自衛隊に対し,対応措置を実施するよう命じた。 (4) これを受け,同日以降,自衛隊は,順次部隊を現地に派遣し,医療,給水,公共施設の復旧・整備,物資などの輸送を中心とした活動(人道復興支援活動)や諸外国が行うイラクの国内の安全と安定を回復する活動の支援(安全確保支援活動)を行っている。 (5) 基本計画に示された派遣期間は1年間とされていたが,政府は,平成16年12月9日,基本計画の変更を閣議決定し,自衛隊による活動を継続することとし,同日,防衛庁長官は,実施要項を変更し,内閣総理大臣の承認を得た。 3 原告らの主張(請求原因及び被告の主張に対する反論等) (1) 本件訴訟の意義 本件訴訟は,原告らが,政府によって日本国憲法が決定的に侵害され,自衛隊のイラク派兵が強行されるのを目の当たりにして,これを黙認すれば,憲法の根幹が破壊され,立憲主義は崩壊し,再び戦争への道が開かれるのではないかという強い危機感を抱き,提訴したものである。 米英によるイラク戦争は紛れも無い侵略戦争であり,この戦争を支持すること自体が違憲行為である。ましてや自衛隊のイラク派兵は,国連憲章にも国際法にも違反する米英の侵略・占領への積極的加担であり,憲法秩序を根底から破壊するものといわざるを得ない。すなわち,自衛隊のイラク派兵は,以下に述べるとおり,明白に違憲である。 第1に,自衛隊のイラク派兵は,そもそもその根拠となるイラク特措法が憲法9条違反であるばかりでなく,重火器等を携行していること,占領軍の一員として占領支配の一翼を担うこと,国際法上違法な米英軍の侵略行為と占領に加担するものとして憲法前文及び9条に違反する。 第2に,現状での自衛隊のイラク派兵は,「現に戦闘行為が行われておらず,かつ,そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる」(イラク特措法2条3項)とはいえない地域で実施されており,明らかにイラク特措法に違反している。また,イラク南部のサマワで人道復興支援活動を展開する陸上自衛隊が始めからその正当防衛の限度を超えた重火器等を携行して他国の領土で活動していることは,自衛の範囲を超え,実施地域での武力行使を招くおそれがあり,自衛隊法3条1項にも違反している。 また,イラクに派兵されている自衛隊をイラク多国籍軍に参加させることも憲法違反である。 そこで,原告らは,下記(2)で述べる権利等に基づき,裁判所が違憲審査権を行使することを求め,提訴するものである。 (2) 本件派遣によって侵害される原告らの権利等について ア 平和的生存権 憲法前文は,「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意」したことを受けて,「全世界の国民が,ひとしく恐怖と欠乏から免かれ,平和のうちに生存する権利」を有することを確認している。この憲法前文は,近代憲法の下において,平和が人権保障の基本的な条件であるにもかかわらず,平和に関する問題が個々人の権利の問題ではなく,多数決によって運用される代表民主制の論理の支配する事項とされ,結局,人権は多数決原理によっても侵すことのできないものではあったが,その基本的な条件である平和に関する事項が多数決原理によって支配されていたため,絶対的に保障されるはずの人権が,「多数決原理によって決められる国の政策によって平和が達成されている限り」という留保付きで保障されるにすぎなかったことを克服した規定である。また,憲法前文には,裁判規範性が認められ,かつ,憲法前文には,「平和のうちに生存する権利」と明記してある。この憲法前文によれば,全世界の国民には,戦争などに起因する恐怖や欠乏に脅かされない権利,すなわち平和的生存権が保障されているというべきである。憲法前文,9条及び13条などを総合的に解釈すれば,平和的生存権は,「戦争などに起因する恐怖や欠乏に脅かされない権利」であり,極めて明快な内容を有し,決して抽象的な権利ではなく,明らかに裁判規範性を有する具体的な権利である。 被告は,平和的生存権は具体的権利ではない旨主張し,平和的生存権の具体的権利性を否定したこれまでの裁判例を指摘する。しかしながら,①本件派遣においては,自衛隊が専守防衛の範囲を明らかに超えて,武器を携帯して海外の戦闘地域に派遣されていること,②現代社会においては,国際紛争に武力介入することによって民間人に対する無差別テロ行為の危険性が非常に高まっていること,③海外で活動する日本人が増加していること,④アメリカ合衆国の国家安全保障戦略が先制攻撃を肯定するに至ったことなど,従前の平和的生存権の具体的権利性が争われた裁判時の社会情勢とは全く異なっており,仮に本件派遣以前の自衛隊の海外派遣時には平和的生存権の具体性が依然として顕在化していなかったとしても,本件派遣によって平和的生存権の具体性が明確に顕在化したというべきである。 イ 平和追求権 平和的生存権は,上記アで述べたとおり,それ自体具体的な権利であるが,それにとどまらず,憲法解釈の指針になると解すべきである。したがって,憲法の各条項の解釈に当たっても,憲法前文に定められている平和的生存権の理念を反映することが求められる。そして,憲法13条は,生命,自由及び幸福追求に対する権利を保障している。この生命,自由及び幸福追求に対する権利は,戦争のない社会が前提となって初めて認められる権利である。「生命」も「自由」も「幸福の追求」も,戦争をする,あるいは戦争をしようとする国家の下では保障されない。そこで,憲法13条を憲法前文の平和的生存権の理想と一体化してとらえた場合,生命,自由,幸福を追求する13条の核心部分として,平和な社会の実現を目指し,能動的に平和を追求する権利が保障されていると解すべきである。そもそも,平和な社会を実現する権限は,国家の専権であるはずがない。憲法13条及び憲法前文によって,原告ら各自に,日本国の内外を問わず,平和な社会を追求する権利(以下「平和追求権」という。)が保障されていると解すべきである。 ウ 戦争や武力行使をしない日本に生きる権利 憲法は,前文で確認された平和的生存権を制度面で具体的に実現すべく,9条により国が戦争や武力の行使,武力による威嚇をすることを禁止した。これにより,国は,戦争や武力行使をしない義務が課されているというべきである。この義務に違反する国の活動は,憲法の根本原理である平和主義に対する緊急かつ重大な憲法違反行為であり,国会の審理において民主的に違憲状態が回復されることを待つことのできない決定的な違憲状態にあるといえる。したがって,国が憲法9条の義務に反する違憲行為をした場合には,原告らは,直接「恐怖や欠乏」に陥ることがない時点においても,すなわち,憲法前文の「平和的生存権」の侵害に至らない時点においても,国が憲法9条に反する活動をしたこと自体によって,直ちに違憲行為の排除を請求する権利,すなわち戦争や武力行使をしない日本に生きる権利が保障されていると解すべきである。そして,国が「戦争や武力行使」に至る違憲な行為に及んだ場合には,戦争や武力行使をしない日本に生きる権利が侵害されたこととなり,憲法9条によって直ちに国に対してその違憲行為を差し止める権利が保障されていると解すべきである。 エ 人格権 本件派遣は,日本人や日本に生活する人々を実際に戦争状態に巻き込む危険性(テロ行為や人質事件に巻き込まれる危険性も含む。)の高い行為である。そして,原告らは,平和主義を原則として,戦争及び戦力の放棄を宣言している憲法の保護の下にあり,この憲法の平和主義の理念を支持している。したがって,原告らは,政府の行為によって,戦争や人殺しに加担しないことが法的に予定されるという一定の特殊な地位にあるというべきである。原告らは,本件派遣によって,戦争や人殺しに加担したくないという信念を踏みにじられ,イラクで子供を含む多数の市民が死亡していることや日本人が拉致,殺害されたことに深い悲しみを覚え,無差別テロ行為の被害に遭いたくないという恐怖感を抱くなど,本件派遣による不快感,不安感及び焦燥感などの精神的苦痛は深刻である。これらの感情は,通常の社会生活上生じ得ないような精神的苦痛であり,社会通念上受忍すべき限度を超える。したがって,本件派遣は,原告らの人格権又は国家賠償法上保護に値する人格的な利益を侵害するというべきである。 (3) 本件派遣差止めの訴えについて ア 本件派遣は,自衛隊を海外に派遣し,外国の軍隊と一体となって戦争遂行に加わる国家の行為であり,憲法9条に明白に違反し,原告Aほか9名の平和的生存権,平和追求権及び戦争や武力行使をしない日本に生きる権利並びに人格権又は人格的利益を重大かつ根本的に侵害するものである。この侵害行為に対して損害賠償が認められたとしても,その侵害行為である本件派遣の差止めが認められなければ,前記各権利に対する侵害が継続することになり,日本人や日本に生活する人々を実際に戦争状態に巻き込む危険性(テロ行為や人質事件に巻き込まれる危険性も含む。)は,極めて高くなる。また,自衛隊に対して攻撃が加えられれば,自衛隊は反撃せざるを得なくなり,報復と憎しみの連鎖により,武力衝突は拡大の一途をたどり,前記各権利への侵害は,もはや事後的な損害賠償では回復不可能となる。また,そもそも前記各権利は,戦争を事前に回避するという差止請求こそが正に権利の内実をなすというべきである。そうすると,前記各権利は,その権利の内容として,侵害の差止めを求めることができる権利であると解すべきであり,本件においては,民事上の請求として,被告である国に対し,本件派遣の差止めを求めることができる権利であると解すべきである。 イ よって,原告Aほか9名は,平和的生存権,平和追求権及び戦争や武力行使をしない日本に生きる権利並びに人格権による差止請求権に基づき,被告に対し,本件派遣の差止めを求める。 ウ 被告は,本件派遣差止めの訴えが法律上の争訟ではない旨主張する。しかしながら,法律上の争訟の要件は,①当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であること,②それが法令の適用により終局的に解決できるものであることの2点であり,平和的生存権,平和追求権及び戦争や武力行使をしない日本に生きる権利並びに人格権又は人格的利益は,上 記(2)で述べたとおり,具体的な権利であるから,上記①の要件を充足する。また,本件派遣の差止めが認められれば,原告Aほか9名の前記各権利に対する侵害が除去され,紛争を終局的に解決するから,上記②の要件も充足する。したがって,本件派遣差止めの訴えは,法律上の争訟であり,不適法ではない。 エ また,被告は,「本件訴訟は,一見,具体的な争訟事件のごとき形式を採っているものの,実際には,私人としての原告らと被告との間に利害の対立は存在せず,原告らは,司法的解決のために本件を提起したものではない。本件訴訟の目的は,日本国政府に政策の転換を迫る点にあることは明らかである。」と主張する。しかしながら,原告らは,本件派遣が違憲,違法であり,本件派遣によって原告らの具体的な権利が侵害されていると主張しているのであって,原告らの請求が認められた結果,日本国政府が政策転換を余儀なくされたとしても,それは立憲主義の帰結であって,憲法を頂点とする現行法体系の予定するところである。 (4) 本件違憲確認の訴えについて ア 上記のとおり,本件派遣は違憲であるので,原告Aほか9名は,被告に対し,本件派遣が憲法前文,9条及び13条に反して違憲であることの確認を求める。 イ 被告は,本件違憲確認の訴えは,法律上の争訟ではなく,また,確認の利益もないから不適法であると主張する。しかしながら,本件違憲確認の訴えは,本件派遣が原告らの平和的生存権,平和追求権及び戦争や武力行使をしない日本に生きる権利を侵害し,憲法前文,9条及び13条に反して違憲であることの確認を求める訴えであるから,法律上の争訟である。また,本件派遣は,単なる事実行為ではなく,専守防衛の範囲を超えた戦争行為であり,日本人や日本に生活する人々に必然的に戦争状態下での生活を強いるものである。戦争状態下では,生命,身体の安全が脅かされ,あらゆる人権が戦争遂行の目的のために制限を受けることになり,最大の人権侵害と具体的損害を与えるものであることは明白である。仮に,平和的生存権,平和追求権及び戦争や武力行使をしない日本に生きる権利並びに人格権又は人格的利益への侵害が認められたことによって本件損害賠償請求が認容されたとしても,本件派遣が違憲であることの確認がなされなければ,本件派遣が延長され,あるいは,いったん派遣が中止されても再開され,今後も違法行為が繰り返される危険がある。したがって,本件確認の訴えには,確認の利益が存在し,本件違憲確認の訴えは適法である。 (5) 本件損害賠償請求について ア 原告らは,本件派遣によって,平和的生存権,平和追求権及び戦争や武力行使をしない日本に生きる権利並びに人格権又は人格的利益を侵害され,多大な精神的苦痛を被った。 イ よって,原告らは,国家賠償法1条1項に基づき,被告に対し,本件派遣によって原告らが被った精神的苦痛に対する慰謝料の一部として,1万円及びこれに対する各事件の訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 4 被告の主張(本案前の主張及び原告の主張に対する反論等) (1) 原告らの主張する平和的生存権,平和追求権及び戦争や武力行使をしない日本に生きる権利について ア 平和的生存権 平和的生存権が憲法上保障された具体的権利であるか否かについては,最高裁平成元年6月20日第三小法廷判決(民集43巻6号385頁)が,「上告人らが平和主義ないし平和的生存権として主張する平和とは,理念ないし目的としての抽象概念であって,それ自体が独立して,具体的訴訟において私法上の行為の効力の判断基準になるものとはいえない。」と判示し,同様の判断が多数の裁判例によって繰り返されている。 また,平和的生存権が具体的権利ではないことは,学説の通説的見解である。すなわち,権利には極めて抽象的,一般的なものから,具体的,個別的なものまで各種,各段階のものがあるが,そのうち裁判上の救済が得られるのは具体的,個別的な権利に限られる。しかし,平和的生存権は,その概念そのものが抽象的かつ不明瞭であるばかりでなく,具体的な権利内容,根拠規定,主体,成立要件,法律効果など,どの点をとっても一義性に欠け,その外延を画することさえできない極めてあいまいなものであり,このような平和的生存権に具体的権利性を認めることはできない。憲法前文で確認されている「平和のうちに生存する権利」は,平和主義を人々の生存に結びつけて説明するものであり,その「権利」をもって直ちに基本的人権の一つとはいえず,裁判所の救済が得られる具体的権利であるということはできない。 イ 戦争や武力行使をしない日本に生きる権利 原告らは,平和的生存権のほかに,戦争や武力行使をしない日本に生きる権利の侵害を主張するが,このような権利が憲法9条によって保障されているという主張は,原告ら独自の見解であり,結局のところ,平和的生存権を若干具体的な表現を用いて言い換えたものにすぎず,その実質は,平和的生存権と同一であるから,上記アの平和的生存権に関する議論が当てはまり,その具体的権利性は否定される。 ウ 平和追求権 憲法13条については,憲法に列挙されていない道徳的権利ないし理念的権利ともいうべき抽象的な利益が一定の段階に達したとき,それを憲法上保護される法的権利とみなす根拠となる規範であり,同条後段にいう幸福追求権は,個別的基本権を包括する基本権であって,個人の人格的生存に不可欠な利益を内容とする権利の総体であるとする見解も有力である。しかしながら,そのような見解においても,その中身を構成する権利,自由として具体的にどのようなものが考えられるのかは明確でなく,その具体的権利性を安易に認めると「人権のインフレ化」を招いたり,裁判官の主観的な価値判断によって権利が創設されるおそれがあるから,幸福追求権の内容として具体的な権利と認めるためには,要件を厳格に解することが必要であるというべきである。 そして,原告らは,その請求の根拠として平和追求権なる権利を主張する。しかしながら,原告らは,平和追求権の具体的な内容を何ら主張しておらず,被告のいかなる行為によって,どのように原告らに保障された具体的な権利の侵害が生じるというのか全く判然としないことは明らかである。 結局のところ,原告らの主張する平和追求権は,その主張する平和的生存権及び戦争や武力行使をしない日本に生きる権利とその内実を同じくするものと解されるところ,前記各権利について具体的権利性が認められないことは上記のとおりであるから,平和追求権も具体的な権利ではないというべきである。 エ 人格権 原告らは,本件派遣によって原告らの人格権又は人格的利益が侵害された旨主張するが,そもそも人格権とは,各人の人格に本質的な生命,身体,健康のほか,名誉,氏名,肖像,プライバシー,自由及び生活等に関する諸権利の総称にすぎず,個別的,具体的権利として人格権という権利が存在するわけではないから,人格権に基づく請求をする場合には,まずもって,その具体的内容を特定して主張しなければならず,人格権の具体的内容が特定されていない請求は,法的根拠を欠き,主張自体失当というべきである。そして,原告らは,人格権の具体的内容を何ら特定していない。 また,仮に人格権の具体的内容を観念し得るとしても,原告らの主張する人格権の具体的内容は,結局,平和的生存権,平和追求権及び戦争や武力行使をしない日本に生きる権利にほかならず,原告らの主張するこれらの権利が憲法上保障された具体的権利でない以上,人格権としても観念し得ないというべきである。 (2) 本件違憲確認の訴え及び本件派遣差止めの訴えは,法律上の争訟とはいえないことについて(本案前の主張) ア 裁判所の審判の対象 裁判所は,一切の法律上の争訟について裁判する(裁判所法3条)。すなわち,我が国の裁判所が現行の制度上与えられているのは司法権を行う権限であり,そして司法権が発動するためには具体的な争訟事件が提起されることを必要とする。裁判所は具体的な争訟事件が提起されないのに将来を予想して憲法及びその他の法律命令等の解釈に対し存在する疑義論争に関し抽象的な判断を下すごとき権限を行い得るものではなく,特定の者の具体的な法律関係につき紛争の存する場合においてのみ裁判所にその判断を求めることができるのであり,裁判所がかような具体的事件を離れて抽象的に法律命令等の合憲性を判断する権限を有するとの見解には,憲法上及び法令上何等の根拠も存しない(最高裁昭和27年10月8日大法廷判決・民集6巻9号783頁)。また,裁判所がその固有の権限に基づいて審判することのできる対象は,裁判所法3条にいう「法律上の争訟」,すなわち当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって,かつ,法令の適用により終局的に解決することができるものに限られ,したがって,具体的な権利義務ないし法律関係に関する紛争であっても,法令の適用により解決するに適しないものは,裁判所の審判の対象となり得ないというべきである(最高裁平成元年9月8日第二小法廷判決・民集43巻8号889頁)。このように,裁判所の審判の対象は「法律上の争訟」でなければならず,「法律上の争訟」といえるためには,①当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であること,②それが法令の適用により終局的に解決することのできるものであること,以上の2つの要件を満たすことが必要である。 イ 法律上の争訟性の具体的な判断事例 福岡高等裁判所那覇支部平成16年1月22日決定(乙2)は,自衛隊のイラク派遣執行停止申立事件の却下決定に対する即時抗告事件において,「抗告人は,本件本案訴訟は抗告訴訟であると主張するけれども,自衛官をイラク共和国に派遣するとの決定は,抗告人個人の権利ないし法律上の利益に直接の影響を及ぼす法的効果を有するものではないから,本件本案訴訟が抗告訴訟であるとすればその要件を満たさない不適法なものであることは明らかである。抗告人は,自衛官をイラク共和国に派遣することによって日本が戦争の惨禍に巻き込まれ,抗告人の生命や財産その他の諸権利が危殆に瀕することになると主張するけれども,このような理由をもって,自衛官をイラク共和国に派遣する行為が抗告人個人の権利ないし法律上の利益に直接の影響を及ぼす法的効果を有するということはできない。」と判示した上,「本件本案訴訟は法律上の根拠を欠く不適法な訴えである」としている。 同裁判例の判示するとおり,当該訴えが適法となるためには,その対象となる行為が,国民一般に抽象的な影響を及ぼすのみでは足りず,国民個々人の具体的権利ないし法律上の利益に直接の影響を及ぼすものでなければならないと解される。 そして,前記のとおり,原告らの主張する平和的生存権,戦争や武力行使をしない日本に生きる権利及び平和追求権が具体的権利として国民個々人に保障されたものではないことは明らかである。したがって,前記各権利を根拠とする本件違憲確認の訴え及び本件派遣差止めの訴えは,原告ら個人の具体的権利ないし法律上の利益に直接の影響を及ぼすことを根拠とするものではないから,不適法であるというべきである。 ウ まとめ 以上のとおり,原告らが主張する平和的生存権,平和追求権及び戦争や武力行使をしない日本に生きる権利は,いずれも憲法上保障された具体的権利ということはできず,また,原告らの主張する人格権も観念し得ないから,被告との間で具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争が起こり得ないことは明らかである。すなわち,本件派遣差止めの訴え及び本件違憲確認の訴えは,原告Aほか9名の具体的な権利義務ないし法律関係に直接かかわらないものであり,「当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であること」との要件を欠く。本件派遣差止めの訴え及び本件違憲確認の訴えは,原告Aほか9名が,国民(主権者)としての一般的な資格,地位に基づき日本国政府に政策の転換を迫る民衆訴訟の実質を有するものというべきであるから,裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」に当たらず,不適法というほかない。よって,本件派遣差止めの訴え及び本件違憲確認の訴えはいずれも却下されるべきである。 原告らは,原告ら自身の主観的利益に直接かかわらない事柄に関し,国民としての一般的な資格・地位をもって上記請求をするものであり,本件を民事訴訟として維持するため,一見,具体的な争訟事件のごとき形式を採ってはいるものの,実際には,私人としての原告らと被告との間に利害の対立紛争は現存しない。原告らは,司法的解決のために本件を提起したものではなく,本件訴訟の真の目的が日本国政府に政策の転換を迫る点にあることは明らかである。 (3) 本件違憲確認の訴えが確認の利益を欠くことについて(本案前の主張) ア 具体的紛争解決制度たる訴訟制度は,基本的に現在の争いを解決することを目的とするものであるから,端的に原告らの具体的な権利又は法律関係についての紛争の解決を求めるべきものであり,単なる事実ないし過去の法律関係の存否の確認は,原則として訴訟制度の目的に沿うものではなく,事実ないし過去の法律関係の存否を確認することが現在の紛争の直接的かつ抜本的な解決手段として最も有効かつ適切と認められる場合に限って許される。 イ ところで,原告Aほか9名が本件違憲確認請求の根拠として主張する平和的生存権,平和追求権及び戦争や武力行使をしない日本に生きる権利は,前記のとおり,憲法上保障された具体的権利ではなく,また,原告らの主張する人格権も観念し得ず,前記原告らの法的地位を基礎付けるものではないから,本件派遣は,原告らの有する法的地位に何らの影響を及ぼすものではなく,何らの法律効果も伴わない単なる事実行為にすぎないのであって,このような単なる事実行為が違憲であることの確認を求める訴えは,確認訴訟における対象適格性を欠くというべきである。 ウ また,本件派遣によって原告Aほか9名が具体的に権利を侵害されたというのであれば,端的にそれを理由として損害賠償を求めれば足りるのであり,現に,原告Aほか9名は,本件派遣が違憲・違法であるとして,本件損害賠償請求も行っている。したがって,本件損害賠償請求とは別個に本件派遣の違憲等確認判決を求めることは迂遠であって,原告らの主張する上記各権利の救済手段として有効かつ適切であるとはいえない。したがって,本件違憲確認の訴えは,確認の利益を欠き不適法である。 エ よって,本件違憲確認の訴えは,確認の利益を欠くから,却下されるべきである。 (4) 本件派遣差止請求について ア 前記のとおり,本件派遣差止請求は,本件派遣の差止めを民事上の請求として求めるものであるが,仮に,本件派遣差止請求に係る訴えの適法性の問題をおくとしても,係る請求が成り立ち得るためには,原告らが当該行為を差し止め得る私法上の権利,すなわち差止請求権を有していることが不可欠である。 しかしながら,上記のとおり,原告らが差止請求権の法的根拠として主張する平和的生存権,平和追求権及び戦争や武力行使をしない日本に生きる権利は,いずれも国民個々人に保障された具体的権利とはいえず,また,原告らの主張する人格権も観念し得ないことは明らかであり,原告Aほか9名が,前記各権利に基づく差止請求権を有しない。 イ したがって,本件派遣差止請求は,主張自体失当である。 (5) 本件損害賠償請求について ア 原告らは,平和的生存権,平和追求権及び戦争や武力行使をしない日本に生きる権利並びに人格権又は人格的利益を被侵害利益として,本件損害賠償請求をしている。しかしながら,前記のとおり,原告らが被侵害利益として主張する平和的生存権,平和追求権及び戦争や武力行使をしない日本に生きる権利及び人格権は,いずれも具体的な権利ではなく,また,国家賠償法上保護された利益とも認められない。 イ また,本件派遣は,原告らに向けられたものではなく,原告らの法的利益を侵害するということはおよそあり得ない。 ウ さらに,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求においては,原告らの国家賠償法上保護された利益が現実に侵害されたことが必要であり,侵害の危険性が発生しただけでは足りないところ,原告らは,現実に侵害が発生したことについては何ら主張していない。 エ したがって,本件損害賠償請求は,いずれにしても主張自体失当である。 第3 当裁判所の判断 1 平和的生存権,平和追求権及び戦争や武力行使をしない日本に生きる権利について (1) 原告らは,本件派遣によって,憲法前文を根拠とする平和的生存権,憲法前文及び13条を根拠とする平和追求権並びに憲法前文の平和的生存権を制度的に具体化した憲法9条を根拠とする戦争や武力行使をしない日本に生きる権利という憲法上保障された人権が侵害されたと主張する。そこで,以下,原告らの主張するこれらの権利が,憲法上保障された具体的権利ないし利益であるといえるか否かについて検討する。 (2) まず,平和的生存権について検討する。 確かに,憲法前文は,「日本国民は,恒久の平和を念願し,人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて,平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して,われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは,平和を維持し,専制と隷従,圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと務めてゐる国際社会において,名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは,全世界の国民が,ひとしく恐怖と欠乏から免かれ,平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」と宣言し,憲法9条は,戦争放棄,戦力不所持及び交戦権の否認を規定している。この平和主義が憲法上極めて重要な理念であることはいうまでもない。そして,全世界の国民が平和のうちに生存することは,その基本的人権の保障の基礎的な条件であって,憲法が全世界の国民について平和のうちに生存する権利を確認し,それが実現されることを希求していることも解釈上疑義がない。 しかしながら,憲法が上記のような理念を採用していることと,憲法前文に規定されている「平和のうちに生存する権利」がその侵害に対して裁判上の救済を求めることが憲法によって保障されている具体的権利ないし利益であることとは,解釈上別個の問題である。 確かに,いまだ主権国家間,民族,地域間の対立による武力紛争が地上から除去されていない国際社会においては,全世界の国民の「平和のうちに生存する権利」を確保するため,国家は,憲法の基本原理である平和主義に従って平和を維持するよう努め,国民の基本的人権が侵害,抑圧されるといった事態を生じさせることのないように努めるべき憲法上の責務を負っているというべきである。そして,国家がこの義務に反した結果,憲法上保障された基本的人権に対して違法な侵害,抑圧が具体的に生じた場合には,当該国家の行為によって基本的人権を侵害された個人は,当該基本的人権の侵害を理由として,裁判所に権利の救済を求めることは可能といえよう。 しかしながら,「平和」という概念は,万人によってその実現を希求されるべき究極の理想ではあるものの,あくまでも理念ないし目的としての抽象的概念であって,各人の思想,信条,世界観及び価値観などによって,多義的な解釈を余儀なくされるものである。それゆえ,各人の「平和」観も様々であるといわなければならない。また,「平和」とは,ひとり個人の内心において達成できるものではなく,常に他者との関係を含めて達成し得るものであり,「平和」を具体的に実現する手段や方法も,様々な考え方が成り立ち得る多様なものである。このことは,国民の負託を受けた国会が「我が国を含む国際社会の平和及び安全の確保に資することを目的」として立法したイラク特措法(同法1条参照)に対して,原告らが非常に否定的な評価を下し,同法に基づく本件派遣によって,かえって我が国の平和と安全が害されていると主張していることからも分かる。また,原告らは,憲法は一義的に「非武装平和」を「平和」の実現手段として採用していると主張するが,「非武装平和」の概念も,やはり多義的な解釈を余儀なくされるものである。 そして,憲法前文や9条など現行憲法の規定からも,「平和」の概念や「平和」を達成するための手段や方法のうち,いずれが正当であるか,また,いずれが優れているかを直ちに導き出すことはできない。したがって,なるほど憲法前文には,「平和のうちに生存する権利」という文言が存在するが,現行憲法の解釈によって「平和のうちに生存する権利」の個別具体的な内容を一義的に確定することは困難であり,結局,権利の個別具体的な内容を確定し得ない以上,憲法前文によって「平和のうちに生存する権利」という具体的権利ないし利益が保障されていると解することはできない。すなわち,原告らの主張する平和的生存権をもって,個々人が,同権利を侵害する国の行為について救済を求め得る裁判規範性を有する具体的権利ということはできないといわざるを得ない。 (3) そして,上記(2)で述べた「平和」概念の多義性やその達成手段の多様性によると,原告らが憲法13条を根拠として主張する平和追求権についても,同じく憲法上保障された具体的な権利ないし利益とはいえないと解さざる得ない。 (4) また,上記(2)に述べたところに加えて,憲法9条が国家の統治機構ないし統治活動について定めたものであって,国民の権利を直接保障したものとはいえないことにかんがみると,原告らが主張する戦争や武力行使をしない日本に生きる権利についても,憲法上保障された具体的権利ないし利益であるということは到底できない。 (5) なお,原告らは,平和的生存権,平和追求権及び戦争や武力行使をしない日本に生きる権利は,相互に重なり合い,関連し,補完し合って広義の平和的生存権を形作っていると主張する。この広義の平和的生存権という概念が,平和的生存権,平和追求権及び戦争や武力行使をしない日本に生きる権利とは別個の権利として存在する概念として主張されているとしても,上記(2)で述べた「平和」概念の多義性やその達成手段の多様性などによると,広義の平和的生存権なる権利が憲法上保障された具体的権利であるということはできない。 (6) 以上のとおり,原告らが主張する平和的生存権,平和追求権及び戦争や武力行使をしない日本に生きる権利は,いずれも憲法上保障された具体的権利又は利益ということはできない。 2 原告らの主張する人格権又は人格的利益について (1) 原告らは,本件派遣によって,戦争や人殺しに加担したくないという信念を踏みにじられ,イラクで子供を含む多数の市民が死亡していることや日本人が拉致,殺害されたことに深い悲しみを覚え,無差別テロ行為の被害に遭いたくないという恐怖感を抱くなど,本件派遣による不快感,不安感及び焦燥感などの精神的苦痛は深刻であると主張する。 (2) しかしながら,本件派遣によって,原告らの人格権又は保護に値する人格的な利益が侵害されたとはおよそ認められず,そもそも,本件派遣によって原告らの人格権又は保護に値する人格的な利益が侵害されるという事態は想定し得ないというべきである。その理由は,次のとおりである。 ア まず,本件派遣は,原告らに対して何らかの直接的な義務を課したり効果を及ぼしたりする性質のものではない。したがって,本件派遣によって,直接,原告らの生命,身体に対する侵害への恐怖と不安が発生するとはいえない。この点,原告らは,本件派遣によって,日本人又は日本で生活する者に対して無差別テロ行為の危険性が高まったと主張する。しかしながら,テロ行為の動機,原因が多様であることは公知の事実であり,本件派遣によって原告らの主張するような無差別テロ行為の具体的,現実的危険性が高まったか否かはそもそも確定できる性質のものではないから,原告らの主張は採用することができない。このことは,甲事件原告Fが主張するイラクにおけるボランティア活動がいわゆる反米武装勢力によるテロ行為などによる治安の悪化などによって困難になったという不利益についても同様である。 イ また,確かに,原告らの多くが本件派遣に対して激しい嫌悪感等を抱いていることは容易に推測でき,これを精神的苦痛と表現することができないわけではない。しかしながら,それは間接民主制の下において決定,実施された国家の措置,施策が自らの信条,信念,憲法解釈等に反することによる個人としての義憤の情,不快感,焦燥感,挫折感等の感情の領域の問題というべきであり,そのような精神的苦痛は,多数決原理を基礎とする決定に不可避的に伴うものである。そして,①本件派遣が原告らに何らかの直接的な義務を課したり効果を及ぼしたりする性質のものではないこと,また,②本件派遣が多数決原理によっても侵すことのできない原告らの人権を侵害するものではないことにかんがみると,本件派遣によって原告らに生じた精神的な苦痛は,間接民主制の下における政策批判や原告らの見解の正当性を広めるための活動等によって回復されるべきか,又は,間接民主制の下において不可避的に発生するものとして受忍されるべきである。したがって,本件派遣によって原告らの感じた精神的な苦痛が原告ら個々にとって主観的にはいかに深刻であろうとも,こうした個人の内心的感情が法的保護に値するものであるということはできず,本件派遣によって原告らの人格権が侵害されたとか,原告らの精神的な苦痛が社会通念上受忍すべき限度を超えたものであるということはできない。 3 本件派遣差止めの訴え及び本件違憲確認の訴えについて 以下,上記1,2で検討したところを前提に判断する。 (1) 原告Aほか9名は,本件派遣によって,平和的生存権,平和追求権及び戦争や武力行使をしない日本に生きる権利という憲法上保障された基本的人権並びに人格権を侵害されていると主張して,被告に対し,民事上の請求として,本件派遣の差止めを求め,また,本件派遣が憲法前文,9条及び13条に反して違憲であることの確認を求めているので,これらの訴えの適法性について検討する。 (2) 原告Aほか9名が本件派遣差止請求及び本件違憲確認請求の根拠として主張する平和的生存権,平和追求権及び戦争や武力行使をしない日本に生きる権利は,上記1で判示したとおり,憲法上保障された具体的権利ないし利益とはいえない。また,同原告らの主張する人格権又は人格的利益も,上記2で判示したとおり,本件においては法的保護に値するものではない。したがって,同原告ら自身は本件派遣差止めの訴え及び本件違憲確認の訴えについて民事上の請求であると主張するが,前記各訴えは,同原告らの固有の法律上の利益に基づき提起されたものと認めることはできず,その実質は,単に国民ないし市民一般の地位に基づき,本件派遣の差止め及びその違憲の確認を求めるものであるというべきである。すなわち,いずれの訴えも,「(国の)機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟」で,「自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起するもの」であり,行政事件訴訟法に規定された民衆訴訟(行政事件訴訟法5条)に該当し,民事訴訟としては不適法である。 そして,民衆訴訟は,「法律に定める場合において,法律に定める者に限り,提起することができる」(同法42条)が,本件派遣差止めの訴え及び本件違憲確認の訴えに類する訴訟は現行法上認められていないから,結局,いずれの訴えも法律に定めのない民衆訴訟であり,行政訴訟としても不適法というほかなく,却下を免れない。 (3)ア 仮に,原告Aほか9名が主張するように,本件派遣差止めの訴え及び本件違憲確認の訴えを同原告らの個人的な権利利益を目的とする主観訴訟と解するとしても,以下のとおり不適法というべきである。 イ イラク特措法は,同法に基づく人道復興支援活動又は安全確保支援活動(以下「対応措置」という。)の実施に関し,次のとおり規定し,本件派遣は,これらの法令に定められた手続に基づき実施されている。 a 内閣総理大臣は,対応措置のいずれかを実施することが必要であると認めるときは,当該対応措置を実施すること及び当該対応措置に関する基本計画の案につき閣議の決定を求めなければならない(同法4条1項)。 b 防衛庁長官は,基本計画に従い,対応措置として実施される業務としての役務の提供(自衛隊による役務の提供に限る。)について実施要項を定め,これについて内閣総理大臣の承認を得て,自衛隊の部隊等にその実施を命ずるものとする(同法8条2項)。 ウ 上記イによると,本件派遣は,政府が閣議決定した基本計画とこれに基づく防衛庁長官の実施命令を根拠とするものであるが,まず,閣議決定は,内閣の意思決定であり,それ自体が外部に効力を及ぼし国民の具体的な権利義務を形成し,又は確定する効力をもつものではない。次に,防衛庁長官の実施命令は,行政内部の指揮監督権の行使にすぎないから,これも国民の具体的な権利義務を形成し,又は確定する効力をもつものではない。したがって,いずれも行政処分には当たらず,本件派遣差止めの訴えは,行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟,すなわち抗告訴訟(行政事件訴訟法3条1項)には当たらない。 とはいえ,本件派遣差止めの訴えは,行政権の行使に直接介入することを目的とするものであるから,抗告訴訟と同様の規律に服すべきである。このような観点からみると,本件派遣差止めの訴えは,抗告訴訟でいえば,義務付けの訴え(行政事件訴訟法37条の2)又は差止めの訴え(同法37条の4)のいずれかに相当すると解される。そして,義務付けの訴え,差止めの訴えのいずれにおいても,訴えを提起しようとする者に「重大な損害を生ずるおそれ」のあることが訴訟要件となっているところ(同法37条の2第1項,37条の4第1項),本件において原告Aほか9名が主張する権利ないし利益は,上記1,2で詳論したとおり,具体的権利ないし法的保護に値する利益とはいえないから,同原告らについて「重大な損害を生ずるおそれ」を観念することができない。そうすると,本件派遣差止めの訴えは,抗告訴訟としての義務付けの訴えや差止めの訴えの場合と同様,その余の点について判断するまでもなく訴訟要件を欠き,不適法といわざるを得ないから,却下すべきである。 エ また,本件違憲確認の訴えは,確認の訴えであるから,まずもって原告Aほか9名の有する権利又は法律関係に現に存する不安ないし危険を除去すべき現実的必要性があって初めて訴えの利益が肯定される。しかし,これも上記1,2で詳論したとおり,同原告らの主張する権利ないし利益は,具体的権利ないし法的保護に値する利益とはいえないから,それらに対する不安ないし危険は存在せず,訴えの利益を認めることができない。したがって,その余の点について判断するまでもなく,本件違憲確認の訴えは不適法であり,却下すべきである。 (4) 以上のとおり,本件派遣差止めの訴え及び本件違憲確認の訴えは,いずれの見地から検討しても不適法であるから却下すべきである。 4 本件損害賠償請求について (1) 原告らは,本件派遣によって,平和的生存権,平和追求権及び戦争や武力行使をしない日本に生きる権利並びに人格権又は人格的利益を侵害され多大な精神的苦痛を被ったと主張する。 (2) 国家賠償法1条1項の損害賠償請求の対象となる国の不法行為は,確立された権利に対する侵害行為のみならず,いまだ権利としては明確に確立されていなくとも,法律上保護されるべき利益に対する侵害が違法であると認められれば成立するものというべきである。そして,個人の精神的苦痛が社会通念上受忍すべき限度を超えるような場合には,人格的な利益として法的に保護すべき場合があり,それに対する違法な侵害があれば,その侵害の態様,程度いかんによっては,不法行為が成立する余地があるものと解すべきである。 (3) しかし,まず,上記1で判示したとおり,原告らの主張する平和的生存権,平和追求権及び戦争や武力行使をしない日本に生きる権利は,具体的権利ないし利益とはいえないから,本件派遣によって,これらの権利が侵害されることはあり得ない。したがって,これらの権利ないし利益が侵害されたとして慰謝料を請求する本件損害賠償請求には理由がない。 (4) 次に,上記2で判示したとおり,本件派遣によって,原告らの人格権又は国家賠償法上保護に値する人格的利益が侵害されたとはおよそ認められず,そもそも,本件派遣によって原告らの人格権又は国家賠償法上保護に値する人格的な利益が侵害されるという事態は想定し得ないから,これらの権利ないし利益が侵害されたとして慰謝料を請求する本件損害賠償請求にも理由がない。 (5) そうすると,その余の点につき検討するまでもなく,原告らの本件損害賠償請求は,いずれも理由がないから,これを棄却すべきである。 5 結論 よって,主文のとおり判決する。 甲府地方裁判所民事部 裁判長裁判官 新 堀 亮 一 裁判官 倉 地 康 弘 裁判官 岩 井 一 真
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175 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/07/24(土) 22 39 [ qUq6iUEM ] 「具合はどうなんだ?」 「はい、出血等から見るに幸い臓器の損傷は無いみたいです。」 天野の応急処置を終え青島は答えた。 そして倒れている魔術師達のほうをチラと見る。 「あの・・・殺さないんですか?」 セフェティナがおずおずと青島に尋ねる。彼女の世界、いや青島たちの居た世界にとって敵は必ず殺すべき存在である、常識である。尋ねるまでも無い事なのだが、しかし、彼ら自衛隊はその点世界の非常識であった。 証拠に彼は明らかに殺さないように魔術師達を攻撃した。それもセフェティナの常識を揺るがすものであった。それに元々同じ国の民である、傷つくのは見ていて気分の良いものではない。 セフェティナの言葉に答える代わりに青島は叫んだ。 「出雲!止血と消毒だけでもしてやれ。」 「!」 セフェティナは息を呑み、その表情が少し明るくなる。 青島はその顔を見て少し口元を緩めるとまた真剣な表情になり狩野に向き直った。 176 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/07/24(土) 22 39 [ qUq6iUEM ] 「ヘリコプターは自動小銃があれば確保できるとは思いますが、天野二曹の怪我もあります。あまり時間はありません、甲板に急ぎましょう。」 「ああ。そうだな、大丈夫ですか福地さん。」 「・・・ああ。少なくとも船に戻るまでは君たちに従うとしようか。・・・船に戻るまでだがな。」 「十分です。」 笑って言う狩野に福地は渋い顔をした。 177 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/07/24(土) 22 40 [ qUq6iUEM ] 長い廊下を歩いていく、異様なまでに静かなその一本道。 「いったい、あの攻撃はなんだったんだ?あの黒い釘のような・・・。」 沈黙を紛らわすかのように青島がセフェティナに尋ねる。 「はい、ネイルと言います、呪文詠唱がほとんど必要ない上、マナの干渉波もほとんど無いから良く暗殺用に使われる魔法です。」 「へえ・・・。え?」 少しだけ感心して、止まる。聞きなれない言葉、いや子供のころには何度も聞いたが―――が当然のように出てきた。 「・・・今何て言ったの?」 「え、・・・ネイルと言って」 「いやそっちじゃなくて、魔法?」 「はい、魔法です。別におかしくともなんとも・・・あ。」 彼らの居た世界にはマナが無い、それに今更セフェティナは気づいた。 「話すと長くなるので、後でお話します。」 「ああ・・・頼むよ。」 魔法。魔法、子供のころ猿のようにハマったRPGに良く出てきていた。 まさかこの世界には月が紅いだけじゃ飽きたらず魔法まであると言うのか。 舐めていた、この世界を。 青島は自分が置かれた状況を改めて思い知らされた。 178 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/07/24(土) 22 41 [ qUq6iUEM ] 「・・・おかしいな。なぜこうも攻撃が無い?」 狩野は一人つぶやいた。 当然の疑問と言えば疑問である。ここで後ろからの追撃も無い、前からの攻撃も無いとなればいつわれわれに攻撃を仕掛けてくるのか。甲板で一網打尽にする気なのか。 「ジファンは・・・ここでみすみす私達を逃すような人間ではありません。」 ダダアンッ!!セフェティナが呟くのが早いか、何かが弾けるような音がして、だいぶ離れたところにおいてあった樽が木っ端微塵に弾ける。 「げうっ!」 と、同時に鈍い悲鳴が上がり、陰に隠れていたのか、バンダナに剣と言う海賊スタイルの男が血を流して倒れた。 179 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/07/24(土) 22 46 [ qUq6iUEM ] 「くそおっ!」 倒れた男の影から、もう一人、右手に篭手を付けている――魔術師である証拠――がヤケクソ気味に青島たちに手を向ける。 ダアンッ! 「があっ!」 しかしそれもまた足を撃ちぬかれ、地面に倒れる。 音のしたほうをセフェティナが恐る恐る見ると、青島の持っている自動小銃が煙をまるでタバコのようにふかしていた。 「天使・・・様?」 その悪――セフェティナの価値観で、だが――を容易くなぎ倒すにもかかわらず、不殺を貫く彼を、セフェティナはある種の憧れの視線で見つめていた。 「良い判断だ、青島二尉。」 「いえ、もし自分が敵ならここに間違いなく伏兵を配置する、そう思っただけです。」 「ほう・・・。」 狩野はなぜこの一見軟弱に見える男が何故将来の高級幹部に選ばれたか、それが分かった様に思えた。 一方青島は、セフェティナの自分に対する視線が変質してきているのに気づいていなかった
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125: 弥次郎 :2021/04/24(土) 12 00 15 HOST p2938249-ipngn19601hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp 憂鬱SRW GATE 自衛隊(ry編SS「あるいは、現実という名の嵐」 人々の恐怖が沸き上がったのは、百脚龍虫が都市部に接近してからのことであった。 それこそ、暢気に巨大なムカデの撮影を行っていた民間人やテレビ中継をしていたマスコミの人間もいて、言い方はあれだが物見遊山だったのだ。 だが、それが徐々に変わったのは人の生活圏に近づいてからであった。百脚龍虫はどうあがいても巨体であり、動くだけで破壊をまき散らす。 木々をなぎ倒し、舗装された道路を砕き、電線や送電塔をなぎ倒し、山を走るというより蹂躙しながら進撃する。 それは極めて現実感の薄いもので、だからこそ、人は見入ってしまうというのもあるだろう。 人はキャパシティーを超えたものを見ると、自己防衛のために思考が「飛ぶ」。現実逃避と言ってもよい。 数十万年という進化の過程で獲得した、パニックや混乱、あるいは狂乱を避けるための防衛機構は正しく機能していたのだ。 しかし、一周回って衝撃が抜け、興奮が収まり、現実を認識できるようになってくると冷静さが顔を出す。 確かにパニックなどを抑えるための防衛機構とは言えども、それはあくまでも一時的なものにすぎないのだ。 再起動を果たした脳は冷静に事態を観測し、分析し、結果をはじき出すようになる。 (あれは動くだけで危ないのではないか?) (特別何かをしたわけでもないのに山がいきなり破壊されて行っているのではないか?) (このままの速度で動き続ければ、山を抜け、人が住む地域にまで突っ込んでしまうのではないか?) (すでにとてつもない被害がおこっているのでは?) そして、そんな理性の冷静な分析は、これから起こりうることを、巻き起こされたものから推測した。 否、推測できてしまった、というべきであろうか。あるいは、取れ高を期待して正面に陣取っていた民間人などは、それをようやく認識した。 「------」 だが、今度は、現実を認識してしまったことのショックを彼らが襲った。 あまりにも突飛で、現実感のない想像。あるいは、予測。それは、彼らの人生においてもトップクラスの衝撃を伴っていた。 故にこそ、それの受容と認知に極めて時間がかかってしまったのだ。 「----逃げろ!」 そして、今度こそ彼らの脳は生得的な機能とプログラムに基づいて、極めて原始的な対応と反応を見せた。 すなわち、その場からの逃避とパニックの発露の二つである。 しかして、彼らの反応と行動とは遅きに失したといわざるを得ない。 全長1㎞という巨体を動かす100対の足の運動は、たかだか全高が2mもない人間が必死に走ったところでどうしようもないほどにすさまじい。 あるいは、文明の利器たる車に人間は頼ることもできるであろうが、問題なのはその車が不整地を走ることに向いていないことか。 尚且つ、百脚龍虫に関しては不整地だろうが何だろうが文字通り踏破できるという強みを持っている。 そして、悲劇は連鎖する。 百脚龍虫を間近で観測していた彼らが文字通りごみのように蹴散らされ、百脚龍虫が進撃を開始したことを一般市民が知ったのはそれからであったのだ。 政府の発表で人は襲わない、あるいはおとなしい性格だ、などと言われていたとしても、目の前にある現実の方をいやでも信じてしまう。 それに、百脚龍虫の通った跡をみれば、その巨体だけでどれだけの被害がまき散らされるのか理解できてしまう。 例えば、おとなしい性格だといわれても、熊に抱き着かれれば控えめに言って複雑骨折であるように、だ。 人間の想像力はそれを想像できないほど弱いわけではない。まして、間接的あるいは直接的に見ている人間が多数いるのだ。 その中の誰か一人がそれにたどり着き、理解した時何が起こるのかは語るまい。パニック、などという軽いものではない。 生物としての根源的な恐怖。生存本能の発露。あるいは、脅威を感じ取った時に起こるごく自然な反応であった。 126: 弥次郎 :2021/04/24(土) 12 02 15 HOST p2938249-ipngn19601hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp それゆえに、一般市井の人々は恐怖を理解できた人から避難を開始した。とるものもとりあえず、ひたすらに離れる方向へと。 だが、半ばパニック状態であったのと、不特定多数が一斉に動き出したことが悲劇を生み出した。 一つ目に、冷静さを欠いたことによる避難の迷走。 二つ目に、渋滞や事故の発生による避難の停滞であった。 総じて言えば、人はインフラというモノに縛られてしまう生物であり、尚且つ、早く逃げなくてはと同じような「車」という手段に依存してしまうのだ。 そして、車にありがちな交通事故---車同士のものであれ、人と車によるものであれ、物と車のものであれ、発生してしまうのだ。 上乗せするかの如く、それが避難の停滞と迷走をさらに招き、人と情報の混乱をさらに拡大させる。 とどめとばかりに、それが発達してきたSNSやネットワーク上の情報網を通じて拡散する。 負の連鎖が、どうしようもなく止まらないし、止められない。恐怖は伝染し、パニックは広まり、正しさも誤りもカオスの中に飲み込まれてしまう。 人々を、人の世を、電子の世界を、嵐が通り抜けていった。 では、これらを見ていた政府は、行政は、いったい何をしていたのか? はっきり言ってしまおう、通常通りに業務を行っていた。 連合からせっつかれていたし、自衛隊からも出動の許可を求める要請があった。それらに関しては認知していた。 それを受けて何か特別行動をしたかと言えば、していなかったのだ。所詮は大きなムカデとしか認識していなかった。 そう、ムカデ。連合の認識するところの百脚龍虫と、平成世界日本の認識するムカデには大きな差異というモノが存在した。 多足亜門・ムカデ綱に属する節足動物というのは、よくいる害虫だ。一般には外見もあって嫌われるものであり、脅威とは言えない虫にすぎない。 積極的に人を襲うだとか、何かしらの害をもたらすものであるかと言われればNoと答える方が正しい部類の虫。 それがいかに大きいからと言って、脅威とはなりえないだろうし、駆除もたやすいだろうと平成世界日本は過去の経験則を基に判断したのだ。 だが、それはあくまでも平成世界の認識。C.E.世界におけるムカデ、ましてアフリカの命の壁の向こう側の世界における百脚龍虫となれば話は別だ。 命の壁の向こうという、最早独自の生態系どころか、別世界から現れた生物なのであるから、推して測るべし。 平成世界の技術を軽く超越し、宇宙進出国家となっている連合をして、AFやハイエンドMSや特機を持ち出して対処するような動く生物災害。 そんなものが壁に近づいて雇用ものならば、連合はその力の限り撃退を選ぶだろう。内側でおとなしくしているならともかく、外に出せば悲劇が繰り返されるから。 もとより連合に対して一方的に敵対心というか猜疑心などを募らせている平成世界の政権なのだ、情報をダミーとして受け取ってもおかしくなかった。 そして事実、その情報をまともに受け取ることはせず、連合の救援についても拒否し、あくまで自力での対処に乗り出した。 その結果、余りにも無為な時間が2日間も発生してしまい、平成世界の日本、その九州において多くのものが失われた。 推定死傷者数およそ70万人超。被害総額推定不能。被害範囲北九州一帯。 酸により死体も何も残らず死亡した人間が多く、また、文字通り消失したものが多く、もはや推測でしか語れないほどの被害。 二次災害や三次災害までも含めた場合、それがさらに膨れ上がることは間違いのないことであった。考えたくもないほどであるのも事実だろう。 余談であるが、その被害報告を受け取った政府首脳部は機能停止にまで陥ったことをここに記す。 ありえない。それが、彼らの認識だった。高々ムカデにそんなことができるはずがないのだと。 フェイクの情報、あるいは介入してきた連合による害虫駆除にかこつけた攻撃ではないかとさえ疑った。 それは政府だけでなく、民間レベルでも同じことがいえた。何かの間違いではないか、フィクションではないかと。 しかし、それは紛れもない現実。どうしようもないほどに残酷で、無慈悲であった。 さながら、宙に浮かぶ月の如く。 127: 弥次郎 :2021/04/24(土) 12 02 48 HOST p2938249-ipngn19601hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp 以上、wiki転載はご自由に。 現実ほど無慈悲な女王は存在しない。 彼女を手懐けるなど、自ら死にに行くようなものである。
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【スレ31】陸上自衛官 このページのタグ:ファッション 警察・自衛隊・軍事 521 :陸自の中の人:2008/01/03(木) 01 22 50 ID q0bipaK8 お久しぶりです。 ちょっくら自衛官の服とか靴の話題などを。 と言っても私服ネタは個人の問題ですので、演習時のインナーとかのお話。 1 演習・訓練時の服 夏は暑く、冬は寒いと言う天然エアコンの効いてる中で訓練する我々ですが、その暑さ/寒さに耐えるために使っているものがあります。 (1) 暑い時 自衛隊の売店で販売している迷彩シャツ(メッシュ・ポリエステル地) ミズノやらナイキやらで売ってる、スポーツ用サラサラのものと同等品で、ただ単にOD/迷彩色になっているものです。 汗っかきの人はこれじゃないと汗が引かずえらい事になります。 (2) 寒い時 官品で防寒シャツ・ズボン等インナー着用の服が配給されてはいるのですが、セーターのような素材で静電気が溜まりやすいわ、 破ってしまったら補給陸曹に大目玉を食らうわで人気がありません。 ということで、大多数の人がユニクロとかで売っているシャツ・パンツ等を愛用しています。なんたって安いし暖かいし。 そんなこともあり、駐屯地周辺のユニクロでは、オリーブ色のシャツは妙なまでに品切れになりやすくなります。 ちなみに自分が『このオリーブのシャツのMサイズないですかー?』と店員さんに聞いたら、『今日で3件目なんですよね。 もうないんです』と返されorzとなったこと多数。 2 体力練成時の服・靴 体力練成と言えば聞こえはいいですが、要は駆け足です。 毎日10kmとか走ったりする都合上、どうしてもジャージやウィンドブレーカー、ランニングシューズは増えていくようになります。 (1) ジャージ・ウィンドブレーカー 自分みたいに 入校→部隊配属→入校→部隊配属 を繰り返している人だと、ジャージ・ウィンドブレーカーは増えていく傾向にあります。 何でかと言うと、(何かの教育練成課程に)入校する度に、記念として仲間内でネームとかを縫い付けたジャージを自費で購入するのです。 ○○期 △△会(適当) ××××(名前) といった感じで。……正直、これでコンビニとかに買い物は行きたくないです。 あまり入校しない人でも、駆け足するときに必要になるので、最低3枚くらいは持っています。 522 :陸自の中の人:2008/01/03(木) 01 23 14 ID q0bipaK8 続き。 (2) ランニングシューズ 毎日10km走っていると、3〜6ヶ月で大体ボロボロになります。 なのでスペアも兼ねて、2〜3足持っている人が多いです。 そうじゃない人でも持続走競技会/体力検定3000m走用に専用レーシングシューズを持っていたりとか。 ちなみに自分は自宅・駐屯地にそれぞれ2足、レース用に1足常備しています。 して、ここでひとつ問題が。 こういったものは全て自費でまかなわなければならないため、結構に財布を圧迫することになります。 特にジャージ・ウィンドブレーカー・ランニングシューズは1足10000円くらいはするため、いつも店で散々悩んでいます。 買ってしまった週の晩飯は、非常食の買置きカップラーメン+卵で耐えたりとか。 自分は偉くなってしまったので、給料もちびっと増えてるし、ヤフオクとか楽天とかで安く手に入れられるだけまだマシですが、 たぶん妻帯の陸曹さんやら新隊員とかは非常に辛いかとも思います。 こんなところでしょうか。 質問があれば暫く受付いたします。 523 :おさかなくわえた名無しさん:2008/01/03(木) 01 30 10 ID q5EXSQem 自衛隊さん、こんばんは。 角刈りが基本だと思いますが、基地内の所定床屋で散髪なんですか? 美容院でちょっと「オサレ目に〜」とはアリですか? 524 :おさかなくわえた名無しさん:2008/01/03(木) 01 33 44 ID p7dWHoaV ええ?何度も入校ってどういうこと?中退繰り返すの? 525 :陸自の中の人:2008/01/03(木) 01 47 41 ID q0bipaK8 523 別に角刈りってわけでもないのですが、所定の床屋でやる場合も、民間の床屋でやる場合も両方あります。 美容院でやってる人もたまにいます。 用は見苦しくない(グレーな表現ですね)髪型をしていればいい訳で。 自分は髪を長くしても似合わない&仕事や駆け足のときにうざったい、という理由から短めにしています。 524 一回の入校が3ヶ月〜1年だったりするのです。 たとえば、基礎動作=新隊員教育=3ヶ月入校、その後戦車操縦課程=3ヶ月入校、幹部候補生課程=6〜12ヶ月入校 といった具合に。 なので中退というものではありません。 ……まあ、空挺とかレンジャーみたいに、途中で適性や体力、能力、根性(これが一番)が足りなかった場合は中退というのもありますが……。 526 :おさかなくわえた名無しさん:2008/01/03(木) 01 53 02 ID q5EXSQem そうなんですか。ありがとうございます。髪型散髪場所は自由なようですね。自衛隊さんは、今は寮ではないのですか? カプ麺+卵 では栄養が>< 536 :おさかなくわえた名無しさん:2008/01/03(木) 16 16 06 ID tj0VxS7L 陸自さんお久しぶりです。 駐屯地の近くのユニクロの話、面白かったですw うちも近所に駐屯地があるのですが、なるほど〜!といった感じです。
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// 自動構文でテンプレの表示が調整できないので、次善策としてテキストのみを別離。 // 誰か元ページを直せたら直して(-人-) *文字数制限、行数制限に注意!* 最終更新:2009/03/26 7 45 (このまとめWikiへのリンク) 今回の規制関連のまとめWiki 【絞り込み】「航空自衛隊熊谷基地F1曹」荒らし問題による制限まとめwiki【興味ないから】 (仮) http //www36.atwiki.jp/kumagaya2ch/ ───────────────────────────────── YahooBB (softbank) 規制 No. 6 http //qb5.2ch.net/test/read.cgi/sec2ch/1225459007/137 137 名前:削ジェンヌ▲ ★[] 投稿日:2009/03/14(土) 13 28 23 softbank126112121074.bbtec.netを全サーバで規制。 誹謗中傷個人情報コピペの大量投稿による、2ちゃんねるに対する迷惑行為。 参照 http //qb5.2ch.net/test/read.cgi/sec2ch/1235883921/3 規制人より 突撃はダメよ∩( ・ω・)∩ 焼け焼け 芋60本目 http //qb5.2ch.net/test/read.cgi/sec2chd/1236300574/675-691 675 名前:削ジェンヌ▲ ★[] 投稿日:2009/03/14(土) 13 29 41 ID ???0 おつですおつです。絞り込みなしで全サーバ規制お願い致します。 softbank126112121074.bbtec.net http //qb5.2ch.net/test/read.cgi/sec2ch/1225459007/137 677 名前:ちきちーた ★[sage] 投稿日:2009/03/14(土) 13 46 53 ID ???0 675-676 softbank126112 規制 678 名前:削ジェンヌ▲ ★[sage] 投稿日:2009/03/14(土) 13 55 08 ID ???0 おいちゃんすまん、、絞り込みなしでお願い。 684 名前:ちきちーた ★[sage] 投稿日:2009/03/14(土) 14 02 49 ID ???0 ん? どういう意味だ? softbank126112121074.bbtec.net 規制ってことだろか? 685 名前:削ジェンヌ▲ ★[] 投稿日:2009/03/14(土) 14 03 24 ID ???0 うん。bbtec.netって感じで。 688 名前:ちきちーた ★[sage] 投稿日:2009/03/14(土) 14 04 52 ID ???0 おーおー 了解 \.bbtec.net 規制 ───────────────────────────────── 現在までの流れ 3月14日 14時過ぎ 熊谷自衛隊私怨荒らしに対処すべく、\.bbtec.net全板規制が発動。 ↓ 約半日 ネットカフェからの荒らし、さらに4(5?)度目の再発と言う事実から、SBへの要請内容が複雑化。 対応する報告メールの作成・添削も難航、4日程の期間を要する。 ↓ 約半日 3月19日 15時頃 報告メールが送られない事に焦れる者たちの中から、◆ydjii33OUcが立ち上がる。 2時間弱後、周りの支援と共に諸報告を済ませ、メール送信まで漕ぎつける。 ↓ 約30分 Softbank側から最初の返信あり。 対応終了メールではなかったものの、事態が一歩前進した瞬間だった。 ↓ 3連休の後 3月23日 14 30頃 http //qb5.2ch.net/test/read.cgi/sec2chd/1237753730/9 にて、◆ydjii33OUcから支部に報告あり。 ソフトバンク側は対応をしたらしい…が… ↓ 3月24日 8時過ぎ http //qb5.2ch.net/test/read.cgi/sec2chd/1237753730/24 支部は納得して無く、より特化した対応を取ってもらわないと駄目な模様。 同日21時過ぎ、◆ydjii33OUcからソフトバンク側へメール再送。 ↓ ソフトバンク側の返事を待つ間、各種議論などがみられる。 そんな中、規制人の爆弾発言的な見解もあり、不穏な空気に… しかしそんな中でも更なる添削作業なども進んでいる、みんながんばれ! ←── 今ここ ───────────────────────────────── 今後の対応 ◆ydjii33OUcとソフトバンク側とでメールのやり取り。 http //qb5.2ch.net/test/read.cgi/sec2chd/1237753730/3 通報した方は規制がかかっているものに限り適宜その後の経過報告をお願いします。 返信が遅い場合(およそ1週間を目安に)は進捗状況をISPに問い合わせてください。 避難スレには報告義務無し、非公開要請がSB側からあれば詳しく書くこと自体禁止 (だが「メール来た、対応中」とか、「終わりまでの時間の目処が立ちそう」とか、 おぼろげな報告でもあれば、待ってる皆が嬉しいです。) .↑ ↓ メールの行ったり来たりの果てに… .| .| ソフトバンク側からの、対応完了メールが◆ydjii33OUcの元に (cc 2ch運営) | ↓ | ◆ydjii33OUcが然るべき報告を済ます(下記参照) | ↓ | 2ch運営側が対応が十分かを判断 .────不十分とみなされたら─────┘ ↓ OKなら 規制解除? ───────────────────────────────── ソフトバンク側からの対応完了の回答に対する報告は… 報告人作戦支部19 (犯罪予告や重要削除対象案件) http //qb5.2ch.net/test/read.cgi/sec2chd/1237753730/4 4 名前: 名無しの報告 [sage] 投稿日: 2009/03/23(月) 05 30 25 ID DzabyrhD0 ■プロバイダから回答が来たら(規制がかかっているもの) 回答が来たら、できる限り早めにそのことをこのスレッドで報告してください。 報告が遅れると、規制解除もその分遅くなってしまいます。 その際には必ず非公開トリップをつけて報告してください。 ・メールの内容は公開が基本ですが、プロバイダさんから非公開の申し入れ があればそれに従ってください。 ・メール公開の際は担当者名・該当ISPや該当店舗名等は公開は控えてください。 ・受信したメールのCCにsecurity@2ch.netが付いていない場合は、プロバイダさんに security@2ch.net宛てにもメールを再送信して頂くよう要請してください。 ・回答が来たら、対処していただいた担当者へ感謝とお礼の返信を忘れずに。 (この時、CCにsecurity@2ch.netは不要です。) なお、解除判断は支部報告人 ★さんが行います。 (支部報告人 ★さんだけでは判断出来ない件は管理人裁定となります) ** なお、支部の判断が優先の様子なので、本部に直談判しても無駄なようです。 ** 報告人作戦返答処理スレッド★7 http //qb5.2ch.net/test/read.cgi/sec2chd/1235993277/379 379 名前: reffi@報告人 ★ 投稿日: 2009/03/24(火) 01 55 53 ID ???0 376 支部案件については向こうの人の解除宣言が出なければ解除手続きに 入れません。 判断が出るまでお待ちください。 ───────────────────────────────── 前スレで話題になった一レス http //qb5.2ch.net/test/read.cgi/sec2chd/1237624021/312 312 名前:削ジェンヌ▲ ★[] 投稿日:2009/03/25(水) 20 11 10 ID ???0 276 >この規制範囲が、なぜsoftbank126112でなくbbtec.netなのか 絞り込みとか興味ないから >規制範囲を狭めてもらう事はできないのか しません >その条件は何なのか教えていただきたいので ありません ─────────────────────────────────
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953 :創る名無しに見る名無し:2014/09/22(月) 01 06 08.37 ID Z4qM0RFl 人魚で盛り上がっている所ですが、イクウビト・・・投下しますっ! 東京都の、とある大学研究所の図書室に、二人の異邦人が訪れ居ていた。 大森林奥地に住居を構えるトワビトの代表として海の国の有力者と会うべく、海を渡り、遠路遥々やって来たのであった。 「物凄い量の書籍だな・・・これと同じくらいの規模の図書館がこの国には無数に存在するらしいが、俄かに信じ難い事だ。」 「アドル魔術長、やっぱり職業柄こういうの物には興味がるのかい?」 「そう言うお前も子供みたいに目を輝かせているじゃないか、アルティシア、まぁ、文字が読めなければ意味がないのだがね、まずは翻訳から始めるか・・・。」 「待たせましたね、アドル魔術長、アルティシア嬢、海の国のポール戦士長が丁度この大学に訪れているみたいです、さ、彼らの下へ行きましょう!」 「手間をかけさせたな、ヤナギダ殿、すまない。」 「さて、私もトワビトの長の娘として、やるべき事はやらないとね。」 「では、そこのエレベーターに乗って、4階まで上がりましょうか。」 「「エレベーター?」」 機械仕掛けの鉄の箱が、強靭なワイヤーで吊り上げられ、上の階まで登ってゆく、二人のトワビトは、小さな小部屋がそのまま動く事に驚嘆していた。 「はぁ、こりゃ驚いた、小部屋が勝手に動いて上の階まで引き上げられるのかい?」 「何とも言えない感覚だな、やはり魔力は感じぬか、一体どのような仕組なのやら・・・。」 「大陸からくる人たちは皆驚きますね、日本ではまだまだ、貴方達にとって見た事が無い物で溢れていますよ。」 「それは楽しみだ。」 「では、こちらへ」 その頃、西本教授とポール戦士長は食堂で少し遅めの昼食をとっていた。 「このホットドッグと言う食べ物は、少し塩気が強いけど美味しいね。」 「へぇ、海で生活しているから、海水で塩味に慣れていると思っていたけど、塩辛く感じるんですか?」 「面白い着眼点だね、一応、リクビトと同じくらいには塩気を感じるよ。」 「意外ですねぇ、ウミビトは、海水を飲んで脱水症状にはならないのですか?」 「あぁ、リクビトはそういう症状があるみたいだけど、私たちは体表から塩気を排出できるからね。食事も海中でする事が多いよ。」 「そう言えば、海の国の食事事情と言うのは気になるところですね、どういう物を食べていましたか?」 「うーん、基本的に魚を丸かじりと言った所だけど、高熱魔法で海水を煮立てて、茹でる事もあるね。」 「ほうほう」 「海藻で包んだ水竜の肉と巻貝を凹型に削った岩に閉じ込めて熱する料理もあるね。ただ、海中だからリクビトみたいなスープ料理は楽しめないけどね、素材の味と言う奴だよ。」 「海に住もうが、陸に住もうが、食の欲求と言うのはあるのですねぇ。」 と その時、食堂の扉が開かれ、3人の人物が西本教授とポール戦士長が居るテーブルにやって来た。 「こんにちは、陸上自衛隊の柳田です。大陸の方から海の国の民に会いたいと言う方々がいらっしゃいました。」 「おっと、こんにちは、そのお二人は?」 「初めまして、大陸の大森林に住まうトワビトの長の娘で、アルティシアと申します。」 「お初にお目にかかる、同じく大森林のトワビトの魔術長、アドルだ、宜しく。」 「トワビト?大陸に大森林がある事は知っているが、そこに人が住んでいるなど聞いた事も無いが・・・。」 「英雄たちの子孫・・・と言ったら、驚きますかね?」 「!!」 「ポール戦士長、彼らはかつての大戦で生き延びた英雄たちの末裔らしいです。」 「柳田さん、どういう事ですかな?」 「西本教授、大森林の地形調査を行った時に、集落らしきものを発見したと言うニュースはご存知ですかな?」 「え・・えぇ、確かグローバルホークが大森林に大きな集落らしき構造物を捉えたと・・・それが、彼らですか。」 「英雄たちの子孫・・・と、仰いましたね、それを証明するものは?」 「アルティシア、あれを・・・。」 「えぇ、英雄たちの末裔にして、トワビトを束ねる族長の娘として、海の民にお返しする物が御座います。」 アルティシアが懐から幾何学模様の金属の小箱を取り出すと、呪文を唱え、金属の箱に光の筋が走り、箱の上部に画鋲ほどの長さの針の様な物が飛び出す。 「トワビトの長の血をもって、封印を解かん!」 箱から飛び出た針に指を押し付けると、血に濡れた小箱は赤い光を血管の様に走らせ、変形した。 スライド、回転、分解、再結合、小箱だった金属の外装は、中から現れた青い宝石をはめ込む装飾の様な物に変形していた。 「馬鹿な・・・これは・・・。」 「美しい・・・でも、これは・・・?」 「海王の魂・・・伝承通りの形をしている。」 「伝承って、決別の書の・・・?」 「貴方達が英雄達の子孫・・・我々を見捨てて大陸の何処かへ去った戦士たちの末裔か。」 「見捨ててなどいません!私たちは、荒野の民に裏切られ、死者の丘陵まで追いやられたのです!」 「リクビト達が、裏切ったのは知っております。しかし、何故今の今まで、我々から姿を消し続けていたのですか?」 「我らもまた、リクビトに追いやられていたのだ、海の国の戦士長よ、奴らは、この癒しの秘宝が目的だった様だが・・。」 「私たちは、命を懸けて、この癒しの秘宝を・・・海王の魂を守るため、多くの犠牲を出しながらも大陸各地を逃げ続けていたのです。」 ポール戦士長は、腕を組み暫く俯くと、首を振り、腕組みを解いた。 「癒しの秘宝・・・それは、かつて存在した、海の国を治めていた王の魔石、命と引き換えに不死と癒しの力を英雄たちに与えた海王の残滓」 「「・・・。」」 「魔族とも言われた人食いの鬼人を不死と癒しの力をもって打ち滅ぼした超人の力の源・・・。」 「まず最初に、よく海王の魂を守り通してくれました、感謝致します。」 「!」 「そして、次に、我々は遥か昔に、荒野の民とは決別したとお伝えします。」 「っ!」 「わ・・・私たちは、ただ、謝りたかったのです!海の国の王の命に!海の民に!・・・かつての友に・・・。」 「この通りだ、戦士長殿!我々は償いきれない罪を背負ってきた。許されない事も分かっている、だが、我々の意思を伝えたかったのだ!」 「何も許さないとは言っておりません、この問題は、海の国の代表達と話し合わなければ解決は出来ないのです。」 「で・・・ではっ!?」 「えぇ、これから海の国の代表を集めなければなりません、貴方達もその時に来て頂きたいのですが、宜しいですか?」 「元よりそのつもりでした、感謝致します!」 「・・・・何か、私達置いてけぼりになってしまっていますね。」 「柳田さん、随分な大物を連れて来たね。こりゃ、日本政府も動かなきゃならなそうだ。」 後日、日本政府の仲介の元で、海の国と森の民の代表者同士の会談を行い、ウミビト・トワビト・日本の3国の国交が正式に結ばれる事になる。 今日はここまで、スレも残りわずか・・・1か月もかかってしまいましたが、これからも続けられるだけ続けたいと思います。
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609 名前:UNNAMED 360[sage] 投稿日:2014/11/17(月) 22 53 45.20 ID wGsG8NgK [1/4] 日本が空中大陸に拠点を設けてから暫くして、ソラビトが修理できなかった遺跡都市の修繕が大分進み、空の民の活気が満ちていた。 「それにしても、このジュウキと言う物は凄まじいな。」 「本当に凄いです、これ程大きく力強い魔道具は、私たちがリクビトだった頃ですら作れませんでしたよ!」 「いやぁ、むしろ、人力でこれ程の建造物を作り上げた事に私たちは驚嘆しておりますね。」 「あいや、我々がリクビトの姿を維持していても、この工事は年単位を要したであろうな、それをたった数か月で成し遂げるとは、何たる偉業!」 「はははっ、大げさ過ぎますよ。」 「ご謙遜なさらずに、私たちはニフォンに心の底から感謝しております。」 「どういたしまして、さて、これから如何なさいますか?」 「ふむ、悩みの種だった気候制御装置の修復が完了したので、諦めかけていた農地の拡大をしようと思っていてな。」 「作物の種は、保存庫にそのままの状態で保存されております、恐らく植えれば直ぐに発芽し、根を伸ばすかと・・・。」 「ほほう、空の民の作物ですか、それは興味深いですね。」 「では、そろそろ昼食の時間なので、食後に保存庫へ向かいましょうか。」 空の国に設けられた、日本大使館で、昼食をとると、遺跡都市の中心部にある保存庫へ向かった。 「いやぁ、ニフォンの料理は素晴らしいですね、パスタなる穀物を糸状にした料理など思いつきませんでしたよ?」 「あぁ、あれは正確にいうと日本料理じゃないんですけど・・・ナポリタンは日本生まれだけどね。」 「ふむ、よくわかりませんが、原型は元の世界と交流していた国の物・・・なんでしょうか?それにしても、あの味は素晴らしい物でしたが・・・。」 「いや、私も本場のイタリアンは食べた事ないんですけどね。」 「さてさて、話をしているうちに目的地につきましたぞ?」 話をしながら歩いていると、石でできた建物と更に重厚な分厚い石の門が、見えて来た。 「これが保存庫・・・しかし、これだけ重そうだと、扉を開くだけでも一苦労ですね。」 「ふふふっ、そう思いますでしょう・・・。」 魔術師の少女がそう呟くと、爪で石の門をカリカリと擦る様な動作をした後、青白い光の線が脈打つように門の表面を走り抜けると 門は、細かいキューブに分解し、パズルの様にスライドしながら入口の壁と同化する。 「す・・・凄い・・・。」 「いや、取っ手がありますから、普通の扉みたいに開く事が出来るんですけどね?私達は非力ですから、魔法で開く手段も残していたのですよ。」 「うむ、リクビト時代は、そのまま開いていたが、今の姿ではあの方法でしか開閉しておらんのだ。」 「何というか、無駄なところに無駄に拘っていますね。」 「ニフォン風に言えば、無駄に洗練された無駄のない無駄な動きと言うのだろう?」 「先人たちは、こういう遊び心も持ち合わせていたんでしょう、魔法でそのまま横にスライドさせた方が簡単なのに。」 「ささっ、作物の種が保存されている部屋は、この奥ですよ、行きましょう!」 ソラビトに案内されるまま、保存庫を歩いていると植物を思わせるデザインの紋章が描かれた石の扉の間にたどり着いた。 「この部屋です、扉を開きますよ。」 保存庫の入り口と同じく、細かく分解しながら開く作物の種子が収められている部屋の扉、そこには沢山の壺が並んでおり、その壺には空の民の文字で品種名が書かれている。 「今度植えようとしている作物の種子なんですが、これを植えようと思います。」 少女の両手に掬い取られた黒く楕円形の種子、どことなく小さな柿の種を思わせる形状をしている。 「ほうほう、どの様な物が育つのですか?」 「根菜類ですね、パルル・トテポチカといいます。」 「か・・・変わった名前ですね・・。」 「外側は、ニフォンでいうダイコンみたいに固いんですが、中心部はプルプルして甘いんですよ!」 「は・・・はぁ・・・。」 「こっちは、ニュニュポ・ポニュチカと言います、こちらはニフォンでいうジャガイモみたいな形状で・・・。」 「あぁ、えっと・・・。」 「表面は、意外とふにゃふにゃしていて、一対の塊根があって、中身はつるりと白い球があって、取り出すとにゅるん とでんぷん質の・・・。」 「なんだろ・・・名前もさることながら見た目も卑猥そうな・・・。」 「ん?何か言いましたか?」 「い・・・いえ、何でも・・・。」 「顔が赤いですよ?大丈夫ですか?」 「お・・・お気になさらず・・・。」 「そうですか?・・・とりあえずニフォンが直してくれた気候制御装置があって初めて育てられる作物なので、とても楽しみです。」 「お望みならば、ニフォンにも種子をお分けしますぞ?ニフォンは農業も発達していると聞きますからな。」 「本当ですか!?こちらの世界の作物の調査が進んで居なかったので、試料提供は助かります。」 しかし、内心は、日本で卑猥な形状の作物が育てられるのは嫌だなぁ・・・と思いつつ、作物の種子が収められた壺を眺めるのであった・・・・。 パルル・トテポチカ 通称:甘汁根 和名:ウナギダイコン 先端が丸く膨らんだ白く太い主根とダイコンの様な葉を持つ根菜。 空の民の保存庫で保存されているが、原始的ながら品種改良がされており、大陸で育てられている原種よりもも巨大。 表面の皮は渋く、食用に適さないが、内部はゼリー状で、味は米を噛み続けたときに感じる甘味に似る。 アロエの様に食物繊維の塊であるが、糖分を多く含み、ビタミン・ミネラルなども豊富で栄養価も高い。 ある程度温かい気候でないと、育たないが、日本の気候では普通に育てられるので、新種の作物として注目が集まっている。 見た目的な意味でも。 ニュニュポ・ポニュチカ 通称:双球芋 和名:フタタマフクロイモ ジャガイモの様な外見の塊根を二つ作るイモ類で中心部はヌルヌルした粘膜で覆われたデンプン質の部分がある。 表面は稲荷ずしの皮の様な触感で、引っ張ると容易く破け、粘液と共に可食部が転がり落ちる。 生のままでは、無味に近くドロドロして食べられたものではないが、茹でると、モンブランの様に甘くてふわりとした食感になる。 ビタミン類は左程でもないが、糖分を多く含み、珍味として大陸でもごく少数育てられている。 ある程度の温かさと、大量の水を要するので、育てるのが難しいが、水源さえ確保できれば量産が出来るかもしれないと注目が集まっている。 見た目的な意味でも。 あとがき 日本に友好的な国 そこら辺も、いつか書いてみたいですねー。 あんまり深く考えず、自由気ままに書きたいと思いますー。 元々は、他の方の作品の繋ぎになれば、と言う感じで書いたものですし。 異世界に時空災害で吹き飛ばされた日本ですが、異世界人(異星人)と交流を深めて大陸に大きな影響を与えつつあります。 最近では、ウミビトとの協力で、海図を描いたり、イワシみたいな群れを作る小魚の生息地の情報を得たりと海の民の力も借りて資源集めしていますね。 自衛隊の活躍により、危険な魔物の討伐などの依頼をこなし大陸各地の領主から恩賞として、土地を貰ったりしながら少しずつ大陸での生産拠点を増やしております。
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西暦2020年8月2日 22:40 ゴルソン大陸 日本国西方管理地域 森の中 エルフ第二氏族の村 「これ以上は、まずいな」 かなりの長時間に渡って偵察活動を行っていたアドルフは、そう呟くと撤収を命じた。 新人冒険者であるグロックたちにとって、それは神の御言葉に等しく、一同は静かに森を去った。 「しかし、どうしてニホンの連中は見つかったんでしょうか?」 静かに、かつ足早に森を進みつつ、グロックが言う。 「確かに、連中は少なくとも長距離偵察に出るような奴らは非常に有能だ。 それがいとも簡単に捕まるなんてさすがにおかしい」 ガーランドが周囲に視線を向けつつ続ける。 「ああ、そりゃあ匂いだろ」 「匂い?」 二人ともよくわからないようだ。 「いいか?ニホンの連中は鉄や鉛の臭いを大量に出している。 それに加えて、戦った後にはいつも火山のような臭いもしている。 そんな状態でエルフの森に入ってみろ。見つからない方がどうかしている」 「なるほど」 知識を記憶する表情でグロックが頷く。 確かに、硝煙の独特な臭いは、この世界では珍しいに違いない。 「それで、助けますか?」 後ろを振り返りつつ、バーレットが言う。 彼はどうにも気になることがあるようだ。 もちろん、それは彼だけではない。 「囲まれたな」 アドルフが言う。 「全員動くな」 木々がざわめき、命令を発する。 そして一堂の前に、一人のエルフが現れた。 もちろん、それだけではない事は全員が了解している。 「名前は?」 「エルフ第二氏族、サトゥーニア、お前は?」 「アドルフ、アドルフ・ヒトラー。この近辺では名の通った冒険者さ」 第二氏族の命運を握る事になる二人が、出会った。 西暦2020年8月2日 22:41 ゴルソン大陸 日本国西方管理地域 森の中 エルフ第二氏族の村 「エルフの皆さんの村に近づいてしまった事は謝罪します。 ですが、我々に皆さんを傷つけようという意思は全くありません。 このまま通していただくわけにはいきませんか?」 丁寧にアドルフが言う。 しかし、サトゥーニアは面白そうな表情を浮かべて答えた。 「ならば、こんな夜更けにここで何をしていた? ただの散歩にしては随分と森の中まで入っているようだが。 まさか、道をまっすぐと歩く事すらできないわけではあるまい?」 「どうやらそのまさかのようでして、冒険者としては恥ずかしい限りです」 苦笑しつつアドルフは応じる。 このような程度の低い嫌味で腹を立てるようでは、冒険者は務まらない。 「恥かきついでに、最寄の街道を教えていただけるとなんとか廃業を免れられるんですが、なんとかなりませんかね?」 「その前に、我らの質問に答えてもらいたい」 サトゥーニアの答えに、アドルフは内心で舌打ちしそうになった。 どうやら、無傷で帰宅するわけにはいかないようだ。 俺だけならば何とでもなるが、新入りどもを見捨てて帰ることはできない。 「どういったご用件でしょうかね?もしかして、私たちが探している薬草の場所を教えていただけるのでしょうか?」 「やくそう?」 彼の質問に、サトゥーニアは怪訝そうな表情を浮かべる。 「ああ、まだ言っていませんでしたね。 私たちはこの森でかつて見られたというニューク草を探しているんですよ。 雇い主が緊急で必要と言う話でして、出来るだけ早く持ち帰る必要があるのです」 ニューク草とは、神聖魔法との組み合わせでいかなる病魔も発見できるという薬草である。 もちろん、港町にして城塞都市であるダルコニアならば、そういった薬草の類は、きちんと金を出せば直ぐに見つかる。 しかし、人の街に出てくる事が皆無に近いエルフには、その事実を知る由もない。のが通常である。 「妙な事を言うな? つい二日前に、まとまった数を売ったばかりだぞ? それがもう売り切れたとでも言うのか?」 再びアドルフは舌打ちを抑えた。 俺とした事が、直ぐバレる様なウソをつくとは。 第二氏族は人間と交易をしている事を、彼は今まで忘れていた。 とはいえ、いやぁすいません、実はギルドの依頼でここに来ていまして。と素直に自白するわけにもいかない。 「それは金を持っている人間の場合、ですよ」 彼は表情を完全に制御して続けた。 「一般市民には、気軽に手が出せない値がついています。 ましてや、神聖魔法の代金まで必要とあれば、なおの事です」 彼の説明はこうだった。 まだまだ彼が駆け出しだった頃、一夜の宿を与えてくれた一家があった。 体力気力の限界にあった彼は、その一夜のおかげで生き延びる事ができ、そして今がある。 その一家の長が倒れた。 刻々と本人の体力と蓄えは失われており、試しにといくつもの薬草を購入するわけにはいかない。 そこで、一家は恥を忍んで彼に依頼をした。 治ったら、きっと代金を支払う。 だが、今はその余裕がない。 なんとかしてもらえないだろうか?と。 アドルフに否応はなかった。 「と、いうわけなのですよ」 「なるほどな、冒険者は自分の利益にならない事はしないと聞いているが。 随分と変わった奴もいるようだな」 「まあ、普通なだけでは冒険者は務まらないわけで」 「世話になった家族への恩返し、か。ふむ、まあいい、それで探し物はニューク草だったな」 「ええ」 「それならば足元にあるぞ」 サトゥーニアの指摘に、一同は足元を見た。 そこには、夜の闇の中、青い光を放つ、美しい花があった。 「いやいやいやいや、感謝いたしますよエルフのお嬢さん! これで私も昔の恩を返せるというものです」 「礼はいい、早々にこの森を立ち去るがいい」 「ありがとうございます、それではこれにて失礼致しますよ」 手早くニューク草を採取すると、アドルフたちは愛想笑いを浮かべつつその場を立ち去った。 「サトゥーニア様?あんな連中を逃がしてよかったんですか?」 ナーカには今のやり取りが不満らしい。 「逃がさないで、どうするのよ?」 仕方がない、という態度を崩さずに彼女は尋ねた。 だが、視線を向けられたナーカは、途端にオドオドとし始める。 「そ、それは、連中を捕らえて・・・」 「本当の狙いが何なのかを尋ねる?」 「そうっ!そうです!」 彼女の言葉に、ナーカは笑顔を浮かべて言った。 そして、表情を青ざめさせた。 見るからに失望した表情を、サトゥーニアは浮かべたからである。 「いいかしらナーカ」 「は、はい」 「五人組の見るからにひよっこの奴らも含めて、彼らの装具を見た?」 「い、いえ」 「プレートアーマーなどは一切なし、それでいて食料は沢山もてるようになっていた」 「つまり?」 「せいぜいが物見、もしくは本当にニューク草狩り。 街のギルドが何を考えているかはわからないけれど、警戒すべき事は何もないわ。 それに、彼らを捕らえたら、いよいよ私たちは引っ込みがつかなくなるわよ」 街の方角を見つつ、彼女は憂鬱そうに言った。 「と、いいますと?」 不思議そうにナーカが尋ねる。 「新興のニホン国の兵士を捕らえ、今度はグレザール帝国の支配下にあるギルド員を捕らえる。 何かの手違いで拷問や処刑でもして御覧なさい。 三日と持たずにこの森は消え去るわ」 絶句したナーカを無視し、サトゥーニアは部下たちに撤収を命じた。 もちろん、三人ほどアドルフたちが森を出るまで追跡するようにも命じる。 開放された安心感で、うっかり目的を喋ってくれるかもしれないからだ。 西暦2020年8月3日 01:00 ゴルソン大陸 グレザール帝国領 城塞都市ダルコニア 「はい、そうです。 恐らくは行方不明の自衛隊の偵察です。 はい、数は彼らの単位で一個班。 そうです、ええ、ええ、はい。 私たちの任務は終了で? 了解、物資を受け取り、行動を開始します」 ここまでなんとか守り通していた衛星通信機をしまい込み、グロックは言った。 「軍曹」 「はっ」 今までの態度とは大きく変わり、明らかに上位者に対して接する態度で彼は応じた。 「我々の冒険者生活は終わりを迎えた。 三十分後、我々のための物資が投下される。 目的は、陸上自衛隊と合同での捕虜奪還だ。 何か質問はあるか?」 「はい、いいえ少尉殿。何も質問はありません。 貴様らもそうだな?」 彼の後ろに立っていた三人組に、軍曹は尋ねた。 もちろん、厳しい訓練の果てに選ばれた、合衆国海兵隊の精鋭たる彼らに、今の説明で理解できない事など何もなかった。 そう、彼らは合衆国海兵隊の人間だった。 この世界の人間に酷似しており、英日両方の言語を操れ、戦闘能力にもサバイバル技術にも問題がない彼らは、諜報員としてうってつけだった。 旧連合王国捕虜と共に暮らし、この世界での生活習慣を叩き込まれた彼らは、少数で各地の都市へと潜伏していた。 グロック少尉たちもその一グループである。 彼らの目的は三つ。 この世界の『標準の生活』を探し出し、市民の目からその最善を見出す事。 この世界の他の国家の情報を収集し、今後の外交方針や戦争計画の材料とする事。 そして、自分たちの名前に反応し、投降に応じないものを抹殺する事。 一つ目と二つ目は、日本が支配地域と外交に優位を確保するための活動である。 当事者たちが喜ばないのであれば、いかなるインフラも教育も医療も物資も、援助するだけ無駄になってしまう。 そして、よく知らない相手との外交では、思わぬトラブルが起こりかねない。 日本人たちは、多少の人名の損失には目をつぶり、それでも情報の収集に打って出たのである。 それでは最後の一つはというと、これは救国防衛会議の強い要請で採用された方針である。 技術情報やさまざまな概念が持ち込まれれば、日本の持つ技術的優位というアドバンテージは、物量の前に失われてしまう。 国家に害をなす者は、憲法で規定されている日本国民の定義から外して構わない。 そういうことだった。 「アドルフさんはどうしますか?」 軍曹が不安そうに尋ねる。 親しくはしていたが、こちらの正体に疑問符を抱いているようならば殺さねばならない。 「私には親切な異世界人にしか見えんがな」 だが、少尉の回答は、アドルフの殺害を否定するものだった。 「少尉殿がそう仰るのであれば問題はありません。 それでは回収に出発しましょう」 軍曹は内心で安堵し、答えた。 軍人と殺人鬼はイコールではない。 無意味な殺人など誰もやりたくないのだから当然の反応である。 彼らは互いに頷き、装具をまとめると、夜の闇の中へと消えて行った。 西暦2020年8月3日 02:59 ゴルソン大陸 日本国西方管理地域 森の中 エルフ第二氏族の村近郊 「俺のターンだ!」 「静かにしてください」 浮かれた様子で叫んだ佐藤一尉を、二曹は素早く小銃で殴りつけて黙らせた。 現在、彼らはエルフ第二氏族の村周辺に展開している。 エルフ第一氏族およびダークエルフの協力により、現在のところ発見された様子はない。 今回の救出作戦は、救国防衛会議の要請により過大な戦力が集められていた。 にもかかわらず、今まで発見されていないのには、当然ながらわけがある。 それは、兵力の大多数が空にいたからである。 「はじまりましたね」 時計の針が0300時を示したのを確認し、二曹が言う。 空の彼方から、爆音の連鎖が響いてきた。