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前ページ次ページゼロの騎士団 ゼロの騎士団-外伝 「使い魔 感謝の日」 トリステイン魔法学院 昼 季節も初夏を迎え、生徒達には春に比べ薄着した者もあらわれる。 その中の一席ルイズ達は昼食をとっていた。 その中で、弾む会話に一区切りがついた所で、少女が新しい話題を提供する。 「そういえば、もうそろそろ、感謝の日ですね」 黒髪のメイド服を着た少女――シエスタがその言葉を口にする。 彼女はメイド故に、一緒に食事する訳ではなく、デザートを運び終えた帰りであった。 「感謝の日、何だ、それは?」 ルイズの隣に座っているニューが、デザートに手をつけながら聞く。 彼にしてみれば、まだ、この学院――世界には解らないことだらけであり、 当たり前の様に話す事が理解できない事もある。 しかし、ニューと違い、1年間をここで生きてきたルイズはその言葉に思い当たるのか。 思い出したように会話に交る。 「ああ、そう言えばそろそろだったわね」 心なしか、嬉しそうでは無い声が、ニューにとってある事を思い出させる。 「まさか、また鉄鍋を持って走るような行事か?それとも、スイカ割りか?」 「なんで、感謝の日と言う単語から鉄鍋が出るのよ?そもそも、スイカ割りって何なのよ?」 ルイズが呆れながら、ニューを見る。 「夏と言ったらスイカ割りだろう、目隠しをして、スイカを割るんだよ」 「スイカなんて割ってどうするのよ」 キュルケが疑問を口にする。 スイカは知っているが、なぜ、いちいち目隠ししてスイカを割るのかは彼女には理解できなかった。 それを聞いた、ゼータが補足の意味で説明する。 「我々、モビルスーツ族は戦勝祈願の意味を込めて、戦の前にスイカを割ってその割れ方で吉兆を占うと言う習慣から来ているんだ。 今では祝い事にやる習慣が一般化している」 「そんな風習があるなんて……改めて、アンタ達って変わってるわよね」 ルイズからは理解できないと言った感情が浮かぶ。やはりどこか違うところがある物だ。 ここ数カ月は一緒に居るが、たまに、こう言った違いを聞くと改めて彼らが人とは違う事を認識する。 もっとも、そうでもしないと、既に人間とほぼ同じ様に認識する様な近い存在と言えた。 「……で、感謝の日とは?」 「感謝の日は、日頃使役している使い魔に感謝の意味を込めて、何かしらの奉仕をする行事」 本を読んでいたタバサが、ゼータの質問に答える。 「使い魔を召喚したメイジは、最初は喜ぶけどこの時期になると徐々に使い魔に飽きてくるのよ。 世話をしないならともかく、主の役割を放棄したり最悪なのは理由をつけて殺したりするのもいるのよ」 足を組みなおしたキュルケが由来を語る。 使い魔と言うのはある種のペットに近い、初めて召喚した喜びと一緒に居るから愛着を感じるが、 ある期間一定に居ると、段々とそれを疎ましく感じ始める者もいる。 特に、それまでそう言った、育てる、世話をする。 といった感覚がないメイジの子息たちにはより強く感じるだろう。 実際に数年前、そう言った理由で自身の使い魔を殺したメイジもいる。 オールド…オスマンはそれに激怒し、本来、社交辞令程度の意味合いの感謝の日を生徒の義務と課した。 「皆さんは何かして貰うのですか?」 シエスタの言葉に、ニュー達三人はそれぞれの主を見る。 真っ先に反応したのはルイズであった。 「な、何よ、何かしてほしい訳?言っとくけど、あんまり無茶な事は言わないでよ」 自身の行いに思い当たる節があるのだろうか、何か報復を恐れるような、そんな感じでルイズが睨みつける。 「自分のやっている事に自覚があるのだな……そうだな、ルイズの子守りから解放されたい」 目を細くしながら、ルイズを見る。 最近では余り煩くなくなったが、それでも小間使いの様な仕事に従事する事が多い。 また、日頃のルイズの制裁は既に二桁の大台すらも終えようとしている。 実際、コルベールが余りの状態にルイズを注意した事もある。 世界で一番苦労している使い魔――キュルケの冗談とも言える評価は否定したくはなかった。 「あははっ!確かにルイズの子守りは大変よね、私ならとっくに逃げ出すわ」 その言葉を聞いて、真っ先にキュルケが笑いだす。 傍から見ても、ルイズの相手は大変な事は彼女も知っていた。 「う、うるさいわよ、そう言うアンタの使い魔はどうなのよ」 話題の矛先を対して関心なさそうに食事の次の行動――睡眠の準備に入っていたダブルゼータは、話題を振られて気だるげに体を動かす。 「特に無いな……そう言えば、この間の賭け事で稼いだ金で飯食わせてくれるって言ってたな。 忘れてないだろうな?」 眠そうであったが、何かを思い出して徐々に意識を覚醒させる。 ダブルゼータを利用してキュルケが賭けで稼いだ対価は、ダブルゼータに豪華な食事を与える事であった。 「そう言えば言ったわね、けど、ここ以上の味となるとなかなか無いわよ」 「じゃあ、どうするんだよ?」 ダブルゼータが半眼で呻く。反応は解っていたのか、キュルケは慌てずに対処する。 「睨まないでよ、今度、王都の一番のレストランに連れていくわ。 けど、予約待ちで感謝の日よりだいぶ先の事になるの……ゼータは?タバサに何かして欲しい事ってある?」 キュルケの視線の先には、どこか気にした様子でタバサを見ているゼータが居る。 彼は要望を聞かれても、さほど嬉しそうとは言えない顔であった。 「武器……と言いたいところだが、剣や盾はもう有るからな。 特にないのだが……むしろ、タバサ私がする事はないのか? 自由にさせてもらえるのは有難いが」 要望を聞かれても青い紙の少女は本から目線を外す事は無かった。 「特にない」 短い拒絶の言葉だけで、彼女と会話は終わる。 いつもこれだ――ゼータは不満げな顔をする。 ゼータは二人に比べるとかなり自由である。 食事や寝るとき一緒に居る以外はやる事がなく。 タバサの横で一緒に本を読み、剣の訓練をしている事が多い。 そして、それはゼータにとって少し不満でもあった。 無口な所もあるが、基本的に人格的に問題があるとは思っていない。 少なくともタバサを嫌っておらず、むしろ、この世界では自分の主と言う事も認めている。 彼女の望みなら、可能な限りは叶えたい思う しかし、タバサはルイズの様に使役し、キュルケの様に金儲けや問題に首を入れるような事はしない。 以前の様な吸血鬼退治の様な仕事も、あれ以来ほとんどない。 初めてタバサと出会った時の言葉通り、ただ居るだけでいいらしい。 だが、それはお互いコミュニケーションが取れているとは言い難く、 ニューやダブルゼータの様に、主の事をうまく把握しているという感覚がない。 実際、何だかんだで、お互い上手くやっているニュー達に比べて、距離感がさほど縮まって無い タバサもルイズの様にむしろ我儘の一つも言ってもらいたい。 しかし、ゼータのその考えは少女に届いたと言う様子は見られなかった。 それぞれの思惑が飛び交った後、ルイズが会話を終わらせるべく動き出す。 「休みくらいあげるわよ、で、結局何がしてほしい訳?」 ルイズの言葉とは反対に苦々しげな表情に対して、ニューは不満な顔をする事は無かった。 むしろ、何か言いたい事を考えてその言葉に満足したかのような、少し嬉しそうな表情であった。 「何かして貰えるようだが、ルイズ、君は何が出来るのだ?」 鬼の首でも取ったような、表情がルイズを見据える。 最近ではお前呼ばわりのニューが、珍しく君と呼んだ事の意味が、ルイズにはすぐに理解できた。 「掃除や洗濯でもして貰おうかと考えたが、君はお嬢様だろう」 彼のうすら笑いが、ルイズの感情を逆撫でする。 “何も出来ない世間知らずな貴族のお嬢ちゃんが何言っているんだ。” ルイズの脳内ではそう言う様に翻訳された。 「ご、ご主人様に向かって、何て事を言うのよ馬鹿ゴーレム、私にできない事なんてないわよ!」 睨みつけながら、低い声で呻く。 後悔は後からやって来る。 「……それでは、フライの魔法で空を飛んでみたいですな、できますか?ご主人様」 詰み――ニューの顔はその一言で表される。 不味いと言う表情がルイズの顔に書かれる。 ニューは端からルイズに何も期待していなかった、ただ、罠にはまったのだ。 (コイツは私に恥をかかせる為――ゼロと言う為だったのね) 恐らく、このまま魔法で失敗して爆発しても、出来ないと言ってもニューの答えは決まっている。 ――ゼロのルイズ 自身にとって最もダメージを与える言葉を充分な根拠と共に自分に突き付けるのだろう。 ルイズは考え、そして、ある結論を出す。 「……わかったわ、そんな簡単な事でいいのね」 (なら、お望みどおりにしてあげるわ) 危険、動物がそう感じるであろうルイズの表情――その場の全員に警戒の鐘が響く。 「ちょっと、ルイズ!」 自身の身で体験しているキュルケが、真っ先に止めに入る。 「いいわよ、お望み通り飛ばしてあげるわ!」 (爆発でね) ルイズはスイッチを押す……筈だった。 「もしや、フライを唱えて爆発などと言う事はありませんな、“メイジのルイズ様”」 英雄現る――その一言がその場の全員の中で一致した。 「くっ!」 ルイズは動きを止める。 (やっ、やられた!) 自身の目論見をつぶされ、焦り出す。 この状況で爆発させれば、自分は“ゼロのルイズ”である事を認めるようなものである。 自身が気づかずに恥をかくのと、相手に踊らされそれを知った上で恥をかくのは訳が違う。 それは不味い、ルイズはかぶりを振る。 思考の時間は敵に攻撃の機会を与える。 「まさか、ルイズ様がそんな簡単な失敗するわけはありませんよね?何て言ったって立派な“メイジ”なのですから」 盤上の神は誰か?それは言わずとも分かる。 そう確信したかの様に、ニューはルイズを見る。 (どうしたらいいの?さすがに、この状況で魔法を使う訳にはいかない) そう心の中で考える。 相打ち覚悟で爆発させるか? それとも素直に出来ないと言うか? はたまた主人の権限を行使するか? 様々な考えが浮かぶが、どの道、ルイズの心にはダメージを提供されるであろう。 そして、最もダメージが少ない方法を考える。 しかし、ルイズにとって予想外の事態が起こる。 「おや、ルイズ様はもしかして体調が悪いのですか?」 ニューが途端にそんな事を言い出す。しかし、その言葉とは裏腹に全然心配した様子はない。 まさか!――ニューの事を睨みつける、その顔は予想していた通りであった。 その顔には表れていた“見逃してやる”。 確かに、ニューの言葉通りになれば、体面は恥をかく事は無い。 しかし、乗せられ、踊らされ、しかも、憐れみすらかけられる。 直接的ではないが、ルイズにとっては最も手痛い負けと言える。 「……そうね、今日は体調が悪いから、また今度飛ばしてあげるわ」 事実上の敗北宣言 「いえいえ、残念ですが仕方ありませんね」 (小娘、敗れたり!) 脳内でその言葉とこぶしを握る様子が、ニューの表情にはあった。 (悔しいぃぃ、あの馬鹿ゴーレム!) 表面には出さず、憎悪で心の中を燃やす。 一つの戦いは終わる。しかし、勝利の余韻に浸る事は許されない。 ニューは勝利に満足したのか、偉そうに咳を一つして、場の流れを仕切り出す。 「さて、冗談はこれ位にして……三人とも、特にないのなら、君達が我々三人にケーキを作ってくれないか」 その提案は何をもたらすのか? 少なくともこの時点で、気付いたのは一人であった。 (ニューさん、何言っているんですか!) それまで会話に入らなかった、シエスタが目をニューに向ける。 止めなくてはと思うが、彼女より早く反応する者が居た。 キュルケの瞳に、何かが宿る様にシエスタには見えた。 そして、それはいい予感がしなかった。 「ふーん、面白そうじゃない、特にやる事無いし、三人まとめてやった方が楽だしね、タバサもいいでしょ?」 キュルケがその案に賛成する。 なんとなくニューから挑戦を贈られたと受け取ったらしい。 特にやる事も思いつかなかっただけに、それでいいと言った適当な感覚が見受けられる。 そして、彼女に参加を求められたタバサも無言で首を縦に振る。 残りはルイズのみ、しかし、彼女はニューの提案を受け入れられる事は出来なかった。 (何考えているの?私を罠にかけようとしていない?) ルイズには、ニューの意図が読めないでいた。 また自分を謀るのか?――それを察したのか、ニューはやれやれと言った顔をする。 「別に、罠にかけようと言うのでは無い。 私の為に何かしてくれると言うのだ。たまには、そういった女の子みたいなところがあってもいいだろう?」 「女の子みたいの辺りが引っ掛かるんだけど?」 ルイズは、まだ何か納得行かないと言った眼でニューを見ている。 「気にするな、特に他意は無い。敢えて言えば、私達は女性に料理を作ってもらった事がないからね、 そう言った物に憧れの一つも持っているのだ」 何となく、ニューがそう言った事に縁がないのは理解できる。 そう思うと、ニューに何かしてやろうと言う気も起きなくはない。 少し寂しそうな顔で笑う顔を見てルイズは決めた。 「わかったわよ、アンタがそこまで言うのなら作ってやろうじゃないの、ご主人様の有難さが分かるような、とっても美味しいのを作ってやるんだから、待ってなさいよ!」 その言葉と共に、昼食の時間が終わりを告げる。 何となく、その場に居づらいのか、授業を理由にルイズは去っていく。 三人が席を立ち、シエスタとニュー達が残される。 彼女は遅いと思いながらも、動く事にした。 「ニューさん!何を言ってるんですか!?」 鏡は無いが自分の顔は蒼白かもしれない しかし、その顔を見ても、鏡の変わりのニューは何の変化も見せなかった。 「シエスタ、君の言いたい事は解っている……そして、大変な任務を、君にお願いしたい」 彼女の意図が解っているのか、ニューはシエスタを落ち着かせ席に着かせる。 「分かっているのならいいんですけど……何ですか、大変な任務って?」 自分の意図が解っているみたいだ、そう思い、シエスタは少し気持ちが落ち着いたのか、ニューの言葉を待つ。 大変な任務――おそらくそれは比喩では無いのだろう。 「実は……」 三人を見渡しながら、ニューは自分の考えを話し始めた。 数日後、感謝の日 生徒達がお茶の時間を迎え始めた頃、彼女達は表れた。 その様子は別段変る事は無かった。一つの皿を除いて。 「……待っていたわね」 少し疲労の色が見える表情でルイズがニューを指差す。 眼はいつもより大きく見開いており、いつ掴み掛かっても驚かない。 「……まるで決闘だな、で、どうなんだ、出来の方は?」 「最高よ!その一言で充分よ」 自分の目を貫くような鋭い目とは正反対に、ニューは落ち着きを払っていた。 (大変だったのだな……) 良く見ると彼女の指は包丁でつけたであろう傷と火傷をしており、他の二人も同様であった。 後で治そう。そう考えながら、その作品に目を移す。 「おっ、美味そうじゃん」 ニュー達が言おうと思った事をダブルゼータが代弁する。 作品自体はシンプルなフルーツのタルトであった。 カスタードクリームの上に、キウイとオレンジを乗っけた物であり、所々にミントが乗っている。 「……暑いから冷たいのにした」 タバサの言葉の通り、テーブルの上に置かれると、オレンジとミントの爽やかな匂いとひんやりとした冷気を顔に感じる。 「すごいな、初めてとは思えない」 「シエスタに手伝ってもらったのよ」 ゼータの呟きに、キュルケが答える。 三人の後ろに居るシエスタは何か気が重いのかうわの空で笑いを浮かべている。 八等分に切り分けられ、ニュー達の小皿に乗せられる。 「さぁ、食べて涙を流しなさい」 「ケーキ一つを食べる言葉とは思えんな」 かつて童話にあった貧乏な子供が、泣きながらケーキを食べるシーンを思い出しながら、 ルイズの言葉を受け、フォークをタルトに向ける。 ニュー達が口に運んだケーキを三人が我が子の様に見守っている。 (大丈夫よ、絶対美味しいんだから) 無言の時間が無限の様に感じられる。 一口目を終え、何かを言う前にニュー達はそれぞれの顔を見合わせる。 審判が下される。 「美味い!」 口調が違う三人の感想が同じなのも珍しい。 だが、それ程の大当たりであった。 「すごいな、ルイズ、本当に美味しい」 今まで見た中で、最も自分に敬意を持った視線を感じる。 「王都の一番のレストランとやらから取り寄せたんじゃないのか!?」 ともすれば失礼な発言だが、真っ先に食べ終えたダブルゼータらしい賛辞とも言える。 隣ではゼータが、二人と同様のリアクションを取っていた。 「美味い、タバサは料理の才能があるんじゃないか?」 初めて娘の手料理を食べた父親が言いそうな事をゼータが口にする。 タバサは何も言わないが、心なしか嬉しそうな顔をしている。 「ふん、私達が本気になればこんなものよ」 自身が大上段にでもいるかの振る舞いでルイズが自画自賛する。 それを見ながら、ニューは苦笑いを浮かべてそれを容認する。 その後、最後に余った一切れをルイズとダブルゼータとキュルケのジャンケン争いの途中に、 シルフィードが乱入して食べてしまい乱闘が起こる。 つまりはそれくらい好評であった。 ルイズは夜ふと目を覚ます。 本人は解らないが、時間はまだ夜の11時頃であった。 (そうか、疲れてすぐに寝ちゃったんだ) 初めての体験と言う事もあり、あの後、疲労から夕食も軽めに済ませ自身が寝てしまったのを思い出した。 暗い部屋をぼんやり見回すと、居る筈のニューが居ない事に気づく。 「あいつ、もしかして、まだ飲んでるの?」 今日の出来事が嬉しかったのか知らないが、ニュー達三人は厨房でシエスタと飲み会をやるらしい。 疲労もあり、それを認めてルイズはニューと食堂で別れた。 「さすがに遅いわよね、よっぽど嬉しかったのかしら」 困り顔と笑顔が混じったような顔のルイズが鏡に映る。 ――そろそろ迎えに行こう そう思い部屋を出た所で、タバサとキュルケが居る事に気づく。 「ニューも帰って来ないの」 その格好から、恐らく、迎えに行くであろうキュルケが声を掛ける ネグリジェの上に一枚だけの格好は室内をうろつくには少し問題に思える。 だが、そう言うのも億劫なのかルイズも無言で頷く。 「困った使い魔を持ったわね」 キュルケが苦笑いの表情をする。 言い返す必要はない、お互いの顔は多分同じだろう。 キュルケが起きたばかりの眠そうなタバサの手をつなぎ三人は厨房に向かった。 厨房はほのかな明かりと少数の気配に反して、声と笑い声が途絶える事は無かった。 入口の近くに来るとアルコールの匂いがはっきりと分かる。 「まったく、いつまで飲んでるのかしら」 そう呟き、厨房に入ろうとする。 だが、あと一歩で厨房に入る前に彼らの会話に自分やキュルケ達の名前が挙げられて足を止める。 「どうしたの?」 「私達の事を話しているみたいなの」 後ろに居たキュルケを、手で制止させ耳を澄ます。 声は、普段では聞かない位上機嫌なゼータの物であった。 「いや、さすがはアルガス一の策士だな」 ぶどう酒の入ったグラスを左手に持ち、ゼータが上機嫌ニューを讃える。 そのニューはシエスタに酌をして貰っている。 見ようによっては侍らせているという表現でも間違いはなかった。 「本当にそうですね、最初にケーキを作ってくれ何て言った時は、ニューさん達の国で使うとてつもなく口汚いスラングかと思いましたよ」 ニューに酌をしながら、酒で頬を赤くしたシエスタが上機嫌で言う。 「しかし、これもシエスタ先生が居たからこそできた作戦だよ」 酌をされた酒を飲みほし、ニューは愉悦に浸っている。 「まぁ、あの三人に作らせたら、食べるどころか近づく事も出来ない様な代物になるだろうな」 酒が完全に入った状態で笑いながらダブルゼータが同調する。 「けど、酷かったですよ、味も確かめずに塩と砂糖を間違えるわ、クリームを飛び散らして壁を汚すわ、 火の魔法で焼こうとして竈を壊そうとするし、後片付けの事を考えると憂鬱の一言を超越しちゃいますよ」 シエスタはその時の様子を思い出しながら、溜息をつく。 良く見ると、部屋の中にはつい先程掃除したような清潔感があるが、所々に焦げた跡と何かが張り付いたような染みが少し残っていた。 実際、お菓子作りの後シエスタは後片付けで仲間に大きな貸しを作っていた。 「すまないな、けど、こうやっておだててやらないとルイズがへそを曲げるからな」 酒をあおり、シエスタに感謝の気持ちを述べる。 「だから、今日は『アルガス騎士団とシエスタ 日頃ルイズ達のお世話お疲れ様飲み会』を開いたんじゃないか」 壁の上にはニュー達の言葉で先の言葉が書かれたであろう紙がはられていた。 大皿が置かれたつまみは殆ど無くなっており、飲み会の盛況を表している。 「けど、ニューさんの演技凄く良かったですよ 『そう言った物に憧れの一つも持っているのだ』の辺りは本当に信じちゃいましたよ」 シエスタがニューの真似をする。 その言葉は確かにルイズを動かした。 「別に嘘ではないさ、私はずっと騎士として生きて来たからね、年頃の女生と余り接点は無いのはホントだよ、もっとも、ルイズの子守りを世話するくらいなら、騎士の従者の方が十倍は楽だね」 その言葉に嘘はない。 ニューは騎士、つまり、男社会で育ってきた。訓練と遠征に明け暮れ、ルイズくらいの年の頃を余り女性と接す機会は無かった。 そして、ルイズの子守りは、ニューの世話した騎士が厳格な人物である事を差し引いても、 ずっと楽に感じられた。 「だいたい、本人が貴族の威厳を持ったつもり何でしょうけど、あれでは滑稽ですよ。 観客がいたら笑う所ですよね」 日頃から思う所があるのか、シエスタは笑いながら居ないルイズを詰る。 ニューは二人に目を向ける。 「しかし、お前達はいいよな、キュルケは何だかんだいって優しいし、タバサは特に厳しい事も言わないし、ゼータ、お前贅沢だぞ!」 二人を交互に指をさしながら絡む。 しかし、その言葉にゼータは不服を示す。 「そんな事を言うがな、俺だって不満はあるんだぞ、せっかく俺を召喚したと言うのに何もしようとしないし、何考えているのか解らないし、 普段もコミュニケーションを取ろうともしない。何考えているのか分からないし、 後、たまに変な物を食べさせるのも困っている。コミュニケーションのつもりなんだろうが、あれでは虐待だ!俺はもっと普通に主と従者で居たいのに……」 一人称が普段と違うゼータが最後の方は泣きの入った声をあげる。 どうやら、泣き上戸の素質があるみたいであった。 この間食べさせられた、ムラサキヨモギのサラダの味を思い出す。 最初、彼女を怒らせたのかと勘繰った程だ。 それを一通り見た後、泣きだしたゼータに飽きたのか、ニューはダブルゼータに絡む。 「ダブルゼータ、お前はどうなんだ、キュルケに対する不満はないのか?」 しかし、反応は鈍い。よく見ると目を細めている。 「……はぇ……キュルケの奴、この間、男に太ったなって言われていたな。 後、この間、男に色目使ったけど逃げられてたな」 明かりの無い所で、体を硬直させるわずかな音が聞こえたが、中の者は誰一人として気付かなかった。 シエスタがそれぞれの主に対する感想を聞いて、より一層笑いだす。 「あははっ、やっぱ皆さん大変ですね、では、大変な皆さんにお姉さんからプレゼントですよ」 そう言って、嬉しそうに物陰からある物を取り出す。 どうやら、余程プレゼントとやらに自信があるみたいだ。 「じゃーん」 「こっ、これは!」 酔いが醒めるかのように、目を見開きプレゼントを見やる。 シエスタの確信したように、やはり三人は驚いた。 しかし、外に居るルイズ達は、さほど驚かなかった。 なぜなら、それは口にはしないが、比較的見慣れたものであった。 「スッ、スイカ!」 ハルケギニアでも、ポピュラーでは無いが庶民の果物、緑色と黒のコントラストが眩しい 直径20サント程のスイカであった。 「ニューさん達が、スイカを欲しいと言っていたのを思い出して、マルトーさんに頼んでもらったんです」 そう言って、宴会場の中心にスイカを置く。樽の中に冷たい水で冷やしていたのか、表面を触るとひんやりとした感覚が三人の手を冷やす。 「でかした、シエスタ!よし、早速祝いのスイカ割りだ!」 「もはや、勝ったも同然!」 「スイカ割り、スイカ割り、俺の勝ち!」 ニューがどこからか取り出した白いハンカチで自分の目を隠し、 シエスタが戸棚にあった、肉を切る為の牛刀を取り出し手渡す。 ゼータは何故か持って来ていたギターでどこか懐かしいメロディを奏で出す。 「ニューさん、右ですよ、ああっ、違う今度は左」 「スイカ割り、スイカ割り、もう一つおまけにスイカ割り」 指示を出すシエスタと眠気が飛んだダブルゼータが、頻りに合いの手を入れステレオとなった音があたりに響く。 盛り上がる場の空気に押されるかの様に、ニューはスイカの元に近づいて行く。 そして、それは起こった。 「スイカ割り、スイカ割り、温室スイカもあるじゃない!」 ニューの掛け声と共に、閃光が縦に走る。そして、スイカは財宝の様な赤い輝きを露わにする。 剣の扱いが下手なニューとは思えない、見事な一撃であった。 手ごたえがあったのか、嬉しそうに目隠しを取り、成果を確認する。 「おおっ、久方ぶりとは思えない出来、これはいい事が起こる予感!」 自画自賛しながら、切り口に目を輝かせる。 宴が終わる雰囲気はまだ無かった。 「ふーん、私の子守りって、騎士の従者の十倍は大変なんだ……これは、もっと労わってあげないとね……私、本格的にお菓子作り始めようかしら」 ルイズの笑顔は優しかった。 「……ムラサキヨモギはおいしい、もっと知ってもらいたい」 タバサの顔は寂しそうであった。 「ダブルゼータって本当に良くできた使い魔だわ、ちゃんとお店に連れて行かなくっちゃ」 キュルケの微笑みは聖母か慈母の様な包容力を見せる。 顔を合わせず、それぞれは部屋に戻った。 その言葉と共に、明かりのある部屋以外、辺りは音のない闇に包まれることになる。 「ギーシュ、テメェしっかりしやがれ!」 ギーシュ&傭兵D(ダリー)ガンダム セカンド 凸凹コンビだが、いざと言う時は相性抜群 Extra 「モンモランシー、ご命令を」 モンモランシー&武者頑第刃(ガンダイバー) 水の力でサポートする Extra 前ページ次ページゼロの騎士団
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5日目 あらぐむ 夜が明け、朝となりました。痛ましくも オペこさん の無残な死体が見つかったようです 2 (狼がぶがぶ) あらぐむ ------会話STOP------- 1 (もぐら村) あらぐむ -----------スタート-------------- あらぐむ chjoin 天界部屋 へどうぞお入りください あらぐむ 5日目の朝です 3 (天界部屋) ミクかわいい おぺこさんが 1 (もぐら村) ニキハウス すみません。自分でもわかりずらいと思ったので。昨日の発言はブロクターさんが怪しいという意見に同意という事です。 1 (もぐら村) いあん おはようございmす 3 (天界部屋) ラスフィーノ オペコさん噛むかー 3 (天界部屋) ブロクター おや、おぺこさんか オペこ ゲームだと熱くなっちゃうんだ すまん 1 (もぐら村) かこちん いあん○ orz●だせなかった 3 (天界部屋) yukomac あら 1 (もぐら村) ワルノス おはようさんで 3 (天界部屋) ラスフィーノ SGの位置だと思ったけど、他にもSG候補できたかな 1 (もぐら村) かこちん 同意の発言が多めに見えたので占った 3 (天界部屋) BBL 村としては疑い先が減るから助かるかな 1 (もぐら村) Mrチキン 一応かこちんさん●説 1 (もぐら村) Mrチキン 1.占いに真狂狐のパターンだと対抗占いが村の意見になってた場合にいきなり狂人込みのとこ噛みにいくと思えない 1 (もぐら村) いあん だったのかブロクターさん意見に同意かと思ってた 1 (もぐら村) Mrチキン 2.結果占いは真狼狐パターンとなるとかこちんさん●しかないと思う 1 (もぐら村) Mrチキン と考えています 3 (天界部屋) BBL というか経験者噛み? 1 (もぐら村) シエスタBC 説明してもらえると助かる>< 3 (天界部屋) ラスフィーノ あるね 1 (もぐら村) ワルノス 能力者考察多め→グレーから吊られたくない せんぷくにみえちゃったー 3 (天界部屋) ラスフィーノ それっぽい 1 (もぐら村) Linstant かこちんさんが●だとすると、グレーの中と合わせて狼2存命の可能性が 3 (天界部屋) オペこ おじゃまします ついゲームだと熱くなっちゃうんだ 強引だったね ごめんね 3 (天界部屋) ラスフィーノ リード者噛み 3 (天界部屋) yukomac いらっしゃい! 3 (天界部屋) BBL お疲れ様でした 3 (天界部屋) ミクかわいい いらしゃんせ~ 3 (天界部屋) ラスフィーノ おつかれさまー 3 (天界部屋) ブロクター 今のところ狼2だろうね 3 (天界部屋) BBL いえいえ 序盤まとめてくださったので助かりました 3 (天界部屋) ブロクター おつかれさまー 1 (もぐら村) かこちん まぁ、後吊りは2か3だ 3 (天界部屋) あらぐむ おつぽー 1 (もぐら村) Mrチキン ということでかこちんさんとその○と疑いの目 1 (もぐら村) ワルノス あと3本 3 (天界部屋) BBL 私だったら 3 (天界部屋) ラスフィーノ オペこさんさ!真なら、グレー占いが正解だとおもうぜよ 3 (天界部屋) オペこ え 1 (もぐら村) シエスタBC かこちん真の考え行っていい? 3 (天界部屋) オペこ ラスさんマジで真? 1 (もぐら村) Mrチキン どぞ 3 (天界部屋) ミクかわいい w 3 (天界部屋) ラスフィーノ いや今回はちがうけど 3 (天界部屋) BBL もういいじゃん霊媒適当にローラーしようよって投げやりに… 1 (もぐら村) シエスタBC 言っていい? 3 (天界部屋) オペこ ね・・・ねたばれ 1 (もぐら村) いあん あい 3 (天界部屋) オペこ まぁいいや ふむふむ それで 1 (もぐら村) シエスタBC 初日全役職でて 3 (天界部屋) ミクかわいい 今回に限っては霊ロラよくないと思います! 1 (もぐら村) ワルノス 白考察 cozyさん シエスタさんが白めー 潜伏狼の強弁って吊られやすくするだけじゃねとおもうー 1 (もぐら村) シエスタBC 狼サイドには役職に狐いるってわかるよね 3 (天界部屋) BBL まあラスさん真は厳しいですよね 3 (天界部屋) ラスフィーノ 対抗占いを押し付けられる時点で 3 (天界部屋) オペこ うん 1 (もぐら村) シエスタBC その状態で 3 (天界部屋) ラスフィーノ 狼は、真を噛むしかなくなる 3 (天界部屋) ブロクター だぬ 3 (天界部屋) BBL そうなんですか 3 (天界部屋) オペこ あの時点で大分真見えてたけど 狩人守れないかな? 1 (もぐら村) シエスタBC 占いにかみに行ったから 3 (天界部屋) ミクかわいい 真をかめる確率は5割ですね 3 (天界部屋) オペこ 狩人(で)まもれないかな? 3 (天界部屋) あらぐむ ん あらぐむ 夜が明け、朝となりました。痛ましくも あらぐむさん の無残な死体が見つかったようです 3 (天界部屋) あらぐむ あ あらぐむ chjoin 天界部屋 へどうぞお入りください あらぐむ 5日目の朝です 1 (もぐら村) あらぐむ -----------スタート-------------- 2 (狼がぶがぶ) あらぐむ ------会話STOP------- あらぐむ あ あらぐむ ごばく 3 (天界部屋) BBL だったら占い護衛させるように言っておいた方が良かったかもしれませんね 1 (もぐら村) シエスタBC え かこちん 吹いた 3 (天界部屋) オペこ うーん・・・ ニキハウス え ミクかわいい がんばーれ! 1 (もぐら村) いあん ごばくか Mrチキン びびった 3 (天界部屋) あらぐむ 別に真噛まなくても 3 (天界部屋) ラスフィーノ 5割以上だと思うけどな Linstant 自殺!? 3 (天界部屋) オペこ 狩人には守って欲しかったかなァ かこちん 村長居眠りしすぎ 1 (もぐら村) シエスタBC びびるわw 1 (もぐら村) cozy おやすみ。尊重 3 (天界部屋) ラスフィーノ 真じゃなくてもいいんだもの (T) BBL > もうこの墓地嫌だ…真予想中ってただけに嫌だ… 3 (天界部屋) あらぐむ 狐か護衛されると思われる人噛んで偽装でもいいような 3 (天界部屋) ラスフィーノ 死体1個でもいいんだ 3 (天界部屋) ミクかわいい 真狼狐で狐は噛めませんし 3 (天界部屋) ラスフィーノ 死体なしでもいいんだ 1 (もぐら村) かこちん で ニキハウス 普通に会話していいんですよね? 3 (天界部屋) ミクかわいい ふ、ふむふむ・・・? (T) BBL > 当たってただけに嫌だ… 1 (もぐら村) シエスタBC いじょうです 1 (もぐら村) かこちん ふむ 1 (もぐら村) Mrチキン ん~、ちょっと弱い気がするけど、ちなみに 3 (天界部屋) ラスフィーノ 結局占い確定する状況って 1 (もぐら村) Mrチキン 霊媒に狼いるっておもってるでOK? 3 (天界部屋) ラスフィーノ 真が噛まれずなおかつ、狩人も真をみきわめたとき 1 (もぐら村) シエスタBC そうっすね 1 (もぐら村) かこちん 私はそう思うね 3 (天界部屋) ラスフィーノ ダイブきついと思うよー オペこ こんにちは cozy 3 (天界部屋) オペこ ふーむ・・・ 3 (天界部屋) BBL なるほどなあ 1 (もぐら村) ニキハウス その可能性もありますね 3 (天界部屋) ラスフィーノ 死体0だって 1 (もぐら村) cozy かこちんさん、もう十分楽しんだでしょ。あとは潜伏狼に任せれば 1 (もぐら村) Linstant 白黒半々の占いを残しても情報で混乱するだけだったのかも… 3 (天界部屋) ラスフィーノ みんな占い師は●だすだろうし 1 (もぐら村) いあん なるほど~。確かにありげだな 1 (もぐら村) ワルノス 出遅れた狼説は あり得るとは思うけどその場合全潜伏のほうが効率よさげ 霊確定でびびったのかも?とちょっとおもう 1 (もぐら村) かこちん 私は思うに 3 (天界部屋) ラスフィーノ 何も見極められない 1 (もぐら村) かこちん 寡黙より 3 (天界部屋) オペこ ふむふむ 1 (もぐら村) シエスタBC まあかこちんつるに対して反対じゃないぜ 1 (もぐら村) かこちん 喋ってる人に狼いるのかなーとも 1 (もぐら村) シエスタBC そこだけ誤解しないでほしい cozy こんにちは オペこ 1 (もぐら村) Mrチキン 霊媒に狼出る可能性があまりに低いってのが前提ですかねぇ。私のかんがえ 1 (もぐら村) かこちん 寡黙にもいるのかなーとも あらぐむ 残り時間2分です 1 (もぐら村) かこちん 思えない 1 (もぐら村) ワルノス んだね ロラ前提だしね 3 (天界部屋) ラスフィーノ それだったら、占いは霊ロラの後にロラするとして 1 (もぐら村) ニキハウス 役職はローラーでいいと思います。で今日もグレー吊りたいです 1 (もぐら村) シエスタBC うむ 3 (天界部屋) オペこ では相互占いをせずグレーを占いで 3 (天界部屋) ラスフィーノ それまでに情報出し続けてもらうほうが村は有利かなぁと言われてる 3 (天界部屋) オペこ 情報が出ますかね 1 (もぐら村) いあん となると候補は何人だ 1 (もぐら村) かこちん とどのつまり 1 (もぐら村) ワルノス 今日グレー吊って 明日かこちんさんが●だすと 狼の思い通りになってしまうけど 3 (天界部屋) ラスフィーノ ロラはしますからね 1 (もぐら村) ワルノス 明日なの? 1 (もぐら村) cozy かこちんさんんは、yukomac狼と言ったのはずーーーっと後のほうです 3 (天界部屋) オペこ どんな情報が出ますかね?否定の意味ではなくて疑問です 1 (もぐら村) ワルノス あと3本よ 3 (天界部屋) BBL とりあえず相互するなら占い護衛鉄板? 1 (もぐら村) かこちん そうですね あらぐむ 残り時間あと1分です 1 (もぐら村) ワルノス かこちんさんつって かこちんさんの白吊りたいんだけど 1 (もぐら村) Mrチキン 私も同意 1 (もぐら村) cozy どうせ、 1 (もぐら村) ワルノス で これでミスリーだと僕は残されると 3 (天界部屋) BBL 多分真以外●出さなさそう 1 (もぐら村) ニキハウス 占吊り多いなら合わせます 3 (天界部屋) ラスフィーノ んー、多少はでますよね最低○が2個はでる 1 (もぐら村) Mrチキン かこちんさん吊りたい 3 (天界部屋) ラスフィーノ 各人からね あらぐむ 残り時間あと30秒です 1 (もぐら村) cozy みんなグレーなんだから、狼COしてもうちょっとかき回してよ 1 (もぐら村) かこちん かこちん吊っても良いよ? 3 (天界部屋) オペこ ふむふむ 1 (もぐら村) シエスタBC わかった 1 (もぐら村) いあん かこちん>グレーってこと? 3 (天界部屋) ラスフィーノ 霊ロラするから2個でるよね 3 (天界部屋) ラスフィーノ で、行動と○先で 1 (もぐら村) かこちん 実は狼は私で最後なのでしたわぉーん 1 (もぐら村) Linstant もしくは暫定○吊りですね 1 (もぐら村) ワルノス ●でないんだから 真要素ひくくなっちゃったんだ個人的思想です 3 (天界部屋) BBL cozyさん相変わらず凄いなあw 3 (天界部屋) ラスフィーノ 先に吊る占いを決めていけばいいよね 1 (もぐら村) かこちん ふふふ 1 (もぐら村) ワルノス 何故だ 1 (もぐら村) いあん !? あらぐむ 日は落ちて、村人たちは今日の処刑者を決めなくてはいけません。 1 (もぐら村) かこちん がんばったな村人よ あらぐむ 各人は処刑する人の名をTELLでお願いします 1 (もぐら村) あらぐむ ------STOP----------STOP------ 1 (もぐら村) あらぐむ ------STOP----------STOP------ 2 (狼がぶがぶ) あらぐむ ----会話可能時間です---- (T) ワルノス > んじゃかこちんさんで 3 (天界部屋) BBL 囲ってそうな○出した人の真を切るということですね (T) Mrチキン > かこちんさんでお願いします 2 (狼がぶがぶ) かこちん -~^ 2 (狼がぶがぶ) いあん w 3 (天界部屋) ラスフィーノ 早めに●出した人は (T) Linstant > かこちんさんに投票します (T) ニキハウス > かこちんさんに投票お願いします。狂人かも??? 3 (天界部屋) ラスフィーノ 視点でその人吊ればおわるから、先に連れますよね 2 (狼がぶがぶ) かこちん そして終わらない村 (T) シエスタBC > かこちん逝っていいよ 2 (狼がぶがぶ) いあん まあどうやったとこで吊りは免れなさそうだったし (T) cozy > かこちんさんに1票 3 (天界部屋) オペこ ふむふむ 3 (天界部屋) BBL ですね 2 (狼がぶがぶ) かこちん やっぱりかこちん○つりたいってのはいたねー 2 (狼がぶがぶ) いあん いいんでない?^^ 2 (狼がぶがぶ) かこちん うかつ 3 (天界部屋) ラスフィーノ 霊ロラ終わって、占いロラ終わって 3 (天界部屋) ラスフィーノ 残り6人かな (T) かこちん > こぐねえさまを吊ります(イナカッタ 3 (天界部屋) ラスフィーノ どうだろう、情報で五分五分よりかはよくないだろうかなぁ 2 (狼がぶがぶ) いあん まあでも今日明日だろうからおk 2 (狼がぶがぶ) かこちん よし 3 (天界部屋) BBL 気合で勝ってくれー 2 (狼がぶがぶ) かこちん 私を吊ってくれwww 3 (天界部屋) ラスフィーノ 途中で真はもう噛めないしね、噛んだら○が確定○になるし 2 (狼がぶがぶ) かこちん もう疲れたママン 3 (天界部屋) オペこ うーん ナルホドナァ 2 (狼がぶがぶ) いあん とりあえず投票はてきとうにしてくるw 3 (天界部屋) オペこ 僕がやっているのは俗にいう占いローラーで (T) かこちん > いあんさんを推奨します (T) いあん > Linstantさん吊りますー 2 (狼がぶがぶ) かこちん とりあえず後はがんばれ 3 (天界部屋) ラスフィーノ まぁ今回もう1こ怖いのは、占いに狐がいなかった場合 3 (天界部屋) オペこ 逆にラスさんの案は実際に占いローラーするけど 情報は確かに残るね 2 (狼がぶがぶ) いあん で、あとはどう噛んでいこうかな あらぐむ 残り時間あと1分です 2 (狼がぶがぶ) かこちん こじーかなー 3 (天界部屋) ラスフィーノ 銃殺もなにもでない、●ばっかりでる 2 (狼がぶがぶ) いあん fm (T) > かこちん 推奨? 3 (天界部屋) ラスフィーノ 占狼狼とかもあるよね、狼3のときとか 3 (天界部屋) BBL 確実に残るのは●出した人がいた場合のみでは? (T) シエスタBC > マジだったらはずかしいよぅ あらぐむ 残り時間あと30秒です 2 (狼がぶがぶ) いあん こじー>りんすさんでまずはいくね 3 (天界部屋) あらぐむ 投票がまだのかたはお願いします (T) かこちん > 投票でした (T) > かこちん 釣りでいいの? 3 (天界部屋) オペこ あらぐむさんに投票します (T) シエスタBC > 村でいてください! (T) > かこちん おk 3 (天界部屋) BBL あらぐむさんに投票します 2 (狼がぶがぶ) かこちん おk 2 (狼がぶがぶ) かこちん がんばれ あらぐむ 村人たちの話し合いにより かこちんさん は処刑されてしまいました 3 (天界部屋) ブロクター あらぐむさんに1票 あらぐむ まもなく夜となり狼たちの時間です。各々狼に怯えつつも推理し、明日の昼へと備えましょう あらぐむ 役職の方はTELLをお願いします あらぐむ /chjoin 天界部屋 へどうぞお入りください 2 (狼がぶがぶ) いあん 負けてもごめんw 1 (もぐら村) かこちん こんなところでドジ踏むとは う か つ ♪ 3 (天界部屋) ラスフィーノ しかもさ 3 (天界部屋) ラスフィーノ 真なら、●とか早めにみつけたら 3 (天界部屋) オペこ 村人たちの話し合いにより あらぐむさん は処刑されてしまいました 3 (天界部屋) オペこ ふむふむ 3 (天界部屋) ラスフィーノ 対抗占いしたら、銃殺もだせて詰みとか 3 (天界部屋) ラスフィーノ もうグレー占う理由もない 3 (天界部屋) かこちん ふぅ 3 (天界部屋) BBL 狼が来たぞー 3 (天界部屋) ミクかわいい がんばったな村人よがLW宣言に見える 3 (天界部屋) ミクかわいい いらしゃんせ~ 3 (天界部屋) ラスフィーノ おつかれー 3 (天界部屋) BBL お疲れ様でした 3 (天界部屋) ラスフィーノ 長生きしたねーw 3 (天界部屋) BBL なるほどなあ 3 (天界部屋) かこちん にゃほーい (T) いあん > かこちんの弔い合戦じゃ! cozyさんを一口でがぶりと^^b 3 (天界部屋) かこちん 長生きできたよー 3 (天界部屋) ブロクター おつかれさまー 3 (天界部屋) オペこ おつです ふむふむ 3 (天界部屋) BBL 呪殺は噛まれる前にできますもんね (T) > いあん 日本人なら味噌だよね! 3 (天界部屋) かこちん さぁ明日で最後よ 3 (天界部屋) かこちん 明日がくれば全てわかる 3 (天界部屋) ラスフィーノ 俺は狼の2騙りがあると 3 (天界部屋) ラスフィーノ 思ってる!w 3 (天界部屋) かこちん 残念だったな 3 (天界部屋) かこちん 私が狼と言うことは 3 (天界部屋) BBL それは違うよ! 3 (天界部屋) ラスフィーノ もう吊られてるかw 3 (天界部屋) ラスフィーノ そういうことかw 3 (天界部屋) かこちん 身内に○なんて出さないぜ 2 (狼がぶがぶ) いあん こじー噛んで来た>独り言 3 (天界部屋) ミクかわいい 2騙りなら狐生存? 3 (天界部屋) かこちん エモ誤爆・・・ 3 (天界部屋) ラスフィーノ それはない、銃殺は間違いなくでたw 3 (天界部屋) BBL 悪いけどもうかこちんさんの占い結果メモってないや 3 (天界部屋) かこちん 狐生存はない 3 (天界部屋) かこちん へへへ 3 (天界部屋) BBL えっ!? 3 (天界部屋) ミクかわいい 占いと霊で2騙りか! 3 (天界部屋) かこちん かこちん特攻するなんてすごいだろ 3 (天界部屋) ラスフィーノ 俺なんてたくさん、マクロ用意したけど 3 (天界部屋) ラスフィーノ どれも使えなかったw 3 (天界部屋) かこちん ラスさん狐透け透けでした 3 (天界部屋) BBL そう言えばなんで私噛んだんだろう? 3 (天界部屋) ラスフィーノ 真だったんだけどね 3 (天界部屋) BBL オペこさん先じゃない? 3 (天界部屋) オペこ ん? 3 (天界部屋) かこちん ログを見ればなー 3 (天界部屋) ラスフィーノ 僕、真でも あらぐむ 残り時間2分です 3 (天界部屋) ラスフィーノ 対抗占いしないですw 3 (天界部屋) オペこ 狩人と思ったんじゃないですか?>>BBLさん 3 (天界部屋) BBL そうかなあ 3 (天界部屋) オペこ 後序盤私を疑っている人もまぁまぁいましたし 3 (天界部屋) かこちん 狩人は別人だとおもたよ 3 (天界部屋) オペこ 私残せばSGに出来るとか考えててたのかも 3 (天界部屋) オペこ そうなのか 3 (天界部屋) ラスフィーノ でも後半 3 (天界部屋) かこちん そして私は狼と思ったか 3 (天界部屋) ラスフィーノ 別の人が 3 (天界部屋) BBL いあんさんあたりが狩人かなあと思ってたり 3 (天界部屋) ラスフィーノ SG候補になったので 3 (天界部屋) ラスフィーノ オペコさん噛んだとみる 3 (天界部屋) かこちん あそこでLW宣言をするのは狼じゃないんだなーっと あらぐむ 残り時間あと1分です 3 (天界部屋) ラスフィーノ 僕も、オペコさんはSG候補だと思ってた 3 (天界部屋) オペこ そうそう そんな感じですね>>ラスさん 3 (天界部屋) BBL 噛まれて安心はしました 3 (天界部屋) オペこ 対抗占いの指示自体が例え間違った物だったとしても 3 (天界部屋) BBL オペこさんが寝 あらぐむ 残り時間あと30秒です 3 (天界部屋) かこちん さて、皆様残った人で誰が狼なんでしょうね 3 (天界部屋) オペこ 村の多くが対抗占いを要求するなら 誰かが指示を出さなきゃいけない 3 (天界部屋) オペこ 指示を出したら疑われる これいかに 3 (天界部屋) BBL ログ追ってないからなあ 3 (天界部屋) ラスフィーノ 狼も対抗占いしませんとか言えば 3 (天界部屋) かこちん かこちんからすると 3 (天界部屋) ラスフィーノ 余計真噛みやすいんだけどなw 3 (天界部屋) かこちん おぺこ=狩人だとおもってました 4日目へ 6日目へ
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186 名前: 三年目(1) [sage] 投稿日: 2007/12/24(月) 13 33 37 ID T6dndavJ 歌を歌いながら帰省の荷物をまとめるシエスタにルイズは不機嫌な声をかけた。 「ずいぶん嫌な歌詞じゃない?それ」 シエスタは振り向くと、舌を出して答える。 「チキュウで、男女でデュエットする曲ではすごく有名らしいですよ、『三年目の浮気』」 「あああああんた!」 いきり立つルイズに、だがシエスタは逆に口を尖らせて反論する。 「このぐらいの厭味ぐらいは受けてほしいと思いますけど?ミス・ヴァリエール」 ルイズは頬を赤らめて部屋の奥に目を向けた。奥には雪を模した綿と星を飾り付けたモミの木が立てられてお り、天井にも旗や始祖ブリミルの聖具に似た飾りが取り付けられている。女王陛下からの仕事が並べられたカレ ンダーは、今日を中心に前後3日だけはすっぽりと白く空けられている。 「アニエスさんが文句を言っていましたよ。『よくわからん記念日で仕事を拒否しおって』とか」 「だって!きちんと陛下には休暇を年初めに申請してるのよ?」 シエスタはずっ、と一歩前に出ると、ルイズに顔を近づけて言った。 「だから、私だって今日から休暇いただくようにしたんですよ?お二人にしてあげようって」 「それは……」 「ありがとう、ぐらい言って欲しいですけど」 ルイズは口をますます口を尖らせ、だが誇らしげに言った。 「ありがと」 シエスタは小さく吹き出して答える。 「ま、私も骨休めしてきますよ。私もその……まあ内緒」 ん?とルイズは目を剥いたが、シエスタはわざとらしく舌を出して話を打ち切って何やら雑誌を眺める。そこ には指輪の絵が幾つも並んでいる。 「何それ」 「私たち平民の娘の間で、貰えたら嬉しい婚約指輪の人気商品なんです」 一位に輝いているのは雪の結晶をあしらった指輪だった。ルイズの目には安っぽく見えるが、ヴァリエール家 の財力と平民を比べるほどルイズも馬鹿ではない。 「もしかして、予定でもあるの?」 「これでも平民の給金じゃどれだけかかるか。シュヴァリエのサイトさんでもかなり大変だと思いますよ」 シエスタは笑って雑誌を鞄に押し込むと、荷物を背負ってドアを開けた。見送るルイズにシエスタは振り返っ て答える。 「メリー・クリスマス!サイトさんと二人の時間を大切に!」 187 名前: 三年目(2) [sage] 投稿日: 2007/12/24(月) 13 34 24 ID T6dndavJ ちょっとまずかったかな、と先週王宮であったやりとりを思い出す。例によって潜入調査で、詳細はわからな いがアニエス率いる騎士隊の苦手な分野だとのことでルイズに下命があったのだ。だが、ルイズは王宮に現れた 途端、即座に答えたのだ。 「お断りします」 マザリーニが渋い顔で唇を噛んでいた。アニエスが拳を握った。アンリエッタも目を見開いた。それでもルイ ズは臆することなく言い継いだのだ。 「陛下、今年に入ってすぐ、『24日だけはお休みを下さい』と言っていたのをお忘れですか?たとえ父の死に目 に会えないとしても、この日だけはお休みをいただきたいと言っていたことを」 アンリエッタははっ、としてうなずいた。クリスマス・イヴ。異世界から来た使い魔な恋人を持つルイズが、 その使い魔の寂しさを癒そうと決めている日。帰る道が見つからない使い魔のため、その日を全て彼のために捧 げるのだと聞いたではないか。親友と言いつつ彼女の大切な決心を忘れるとは。今日もそれが理由だからサイト を連れずに一人で断りに来たに違いない。 アンリエッタは大きくうなずいて言った。 「本当に私も気遣いが足りませんでした。私も甘えすぎていましたね。アニエス、これを機会にあなたの部隊も 苦手を克服してみようとは思いませんか?」 「しかし……」 「部隊外でもアニエスの確実に信頼出来る人がいれば後の報告で構いませんから手伝って貰っても良いですよ」 アニエスは溜息をついてうなずき、ルイズは正式に休暇の認可を受けて帰ったのだ。ルイズは料理の準備をし ながら苦笑する。自分は貴族だというのに、今日のために仕事を放り出してしまった。 でも仕方ないではないか。他の貴族だってパーティだ何だと公務を休む日もある。ルイズとサイトの二人で受 けている仕事の多くは、たった一つでも一人の貴族が一生のうちで一回もこなせないような、難しいという限度 すら超えて無茶苦茶と言った方が良い仕事だ。 今日のためにシエスタと、シエスタに紹介されたマルトーシェフに料理を教わった。ラ・ヴァリエールの名前 もどうでも良いと、周囲にメイドがいる中で平民のマルトーに頭を下げた。おかげで貴族嫌いと言っていたマル トーはまるでサイトの父親であるかのように、料理を覚えられるならサイトを婿にしていいと言ってくれた。 それも全て今日のため。そして、今日からまた、彼がチキュウに帰る日まで。 ふと、ルイズのまなじりに涙がにじむ。そう、彼が帰る日まで。帰せる日まで。私は約束を果たしていない。 彼をこの、遠い世界に繋いだままだ。このクリスマスだって自己満足がないとは言えない。 この三年間を思い出す。一年目。サイトが雪で氷菓子を作ってくれた。その日クリスマスを知った。二年目。 合コン紛いの怪しげな企画をしていたから吹っ飛ばした。でも結局みんなで同窓会を兼ねたパーティが出来た。 今年王位に就いたタバサは、この日にマリコルヌを護衛に使うことに決めたらしい。意気地無しの太っちょだと 思っていたけれど、向こうでは本当に忠臣で通っているみたい。一方でサイトは、合コン紛いを予定していたく せにずっと私のそばにいてくれた。 ずっと。気づくいたら本当に空気のように当たり前にいるサイト。そんな三年目。この二年間は結局、サイト に何かをしてもらうばかりだった。初めの頃お金の面倒は看ていたけれど、それもシュヴァリエになってからは 不要になった。だから今年。 今年の三年目は、私がサイトに尽くしてあげる年なのだ。 188 名前: 三年目(3) [sage] 投稿日: 2007/12/24(月) 13 35 06 ID T6dndavJ 窓の外で遊ぶ子供たちの声が遠くなった。純白に輝いていた雪が夕日で茜色に染まり、今は青く月光を反射し ている。空には二つの月が仲良く並んでいる。 テーブルにはサイトがチキュウでクリスマスによく食べていたという鶏の揚げ物や、一口大のご飯の上に新鮮 な生魚をあしらった軽食、シエスタがひいお爺さんから習ったというヨシェナヴェなど、街の料理店はもちろん 王宮でも見ることの出来ない異国の料理が所狭しと並んでいる。 でも、ルイズの隣りは空いたままだ。ルイズは自分の手を見つめる。指先の包丁の切り傷がうずく。部屋の向 こうにしまってあるプレゼントのセーターは力作だというのに。 サイトはまだ帰ってこない。コルベールから卒業祝いに貰った時計がこつこつと音を鳴らして時間の経過を感 じさせる。サイトの世界ではさらに精度の高い時計があるのだと言う。そんな精度の高い時計なんて。そんなも のがあったらどれだけ待つ時間は苦しいのだろう。 三年目の浮気。シエスタが意地悪に歌っていた歌を思い出してしまう。でもあの歌詞は結局、元の恋人の元に 戻ってきて喧嘩している歌だ。今の私は。 サイトが帰ってこない。 がたり、とドアが鳴った。ルイズは飛び上がるようにして玄関に駆け寄った。 「お久しぶり!……どうしたの?」 モンモランシーが怪訝な顔で訊く。ルイズは溜息をついて何の用?とつっけんどんな声を出すと、モンモラン シーは化粧水の入った箱をルイズに押し付けて言った。 「今日ね、私の商会が初の黒字決算だったの!で、大口顧客様と紹介者様に御礼して回ってるわけ」 ああ、とルイズは気のない声を出して思い出す。モンモランシーはギーシュと結婚したとき、普通の嫁入り道 具を全部断り、代わりにお金をもらって香水専門のギーシュ・モンモランシー商会を設立したんだっけ。夫が甲 斐性なしだから、ルイズの予定の相手とは違うから、と笑っていた。 「悔しいけどラ・ヴァリエール家の買い方は尋常じゃないわ。特級品のさらに特別調製品しか買わないなんてあ んたのお姉さんだけよ。あと、紹介してくれたアニエス。制汗剤系の香水を部隊でまとめて買ってくれるし」 モンモランシーは一通り喋ると、そういえば、と言って続けた。 「さっき、サイトが若い女の子と宝飾店にいたわ。たしかアニエスの部隊の新人ね。あの部隊で初めて普通の香 水を買ったお客だからうちの商会でも話題になったんだけど。騎士の癖に結構かわいい子。貧乳だけど」 ルイズが顔をあげる。モンモランシーはやっと気付いて顔を青くする。 「帰って」 「……ルイズ、あのね」 「帰って。今すぐ帰らないと」 脇から杖を取り出す。呪文を一言唱えた途端、闇色の気配が雪に照り返した月光を急速に侵食していく。 「わかった帰りますではまたのご利用を」 ルイズは乱暴にドアを閉める。待っていたのに。ずっとずっと、陛下の命令まで拒否して。シエスタにも気を 使ってもらって。ずっとずっと待っていたのに。 でも、三年目の浮気。 ほろり、と涙がこぼれ落ちる。せっかく着飾ったドレスに涙がしみを作っていく。でも構わない。もう着飾る 必要もないのだから。このドレスを褒めて欲しかった人は帰ってこないのだから。 ドアの脇に崩れ落ちるように座る。膝を抱え込んで声も出せずに泣く。 もう、独りの時間には耐えられない。 189 名前: 三年目(4) [sage] 投稿日: 2007/12/24(月) 13 36 26 ID T6dndavJ がたり、とドアが鳴る。 「ルイズごめん!遅くなった……ルイズ?」 ドアの脇からルイズがゆらりと立ち上がった。もう一度信じてみよう。頑張って微笑んで寄ろうとする。と、 サイトの背中からぴょこん、と気丈そうな年下の少女が顔を出した。 「本日はサイト様にはお世話になりました!」 ルイズに敬礼する。だが服装はドレスだ。色白の頬は寒さで赤みが射し、若さの愛らしさが素晴らしい。体型 はルイズにかなり近く、だがどこか鍛えられたしなやかさが感じられる。 「今日、仕事でさ……」 「プレゼント買っていたんですって?二人で。今日の、この日に」 ルイズの言葉にサイトは気づく。 「ルイズ、お前何か……」 ルイズは言葉を遮って言う。 「待ってたのに。ずっとずっとずっと待ってたのに」 ルイズが杖を振り上げる。サイトは慌てて先ほどの少女を背中にかばった。するとルイズは杖を下ろした。 「サイトの背中の後ろは、私の場所だと思ってた」 からり、と杖が手から落ちて転がる。ルイズは叫んだ。 「どこでも、どこでも行けばいいじゃない!その子と二人でチキュウへの道を探せばいいじゃない!三年かけて も探せない私より、私なんかより!」 190 名前: 三年目(5) [sage] 投稿日: 2007/12/24(月) 13 37 05 ID T6dndavJ 「ルイズ!違います!」 遠くから叫び声が聞こえた。声の方を向くと、アニエスの駆る馬の背に掴まったアンリエッタだ。呆れたこと に王宮で着ている服の上にコートだけをはおった姿で息を切らせながら玄関まで駆け込んでくる。 「違うのです。本当にサイトは手違いで仕事だったのです!」 ぐっと乱暴に引き寄せられたアニエスが黙って頭を下げる。上げた両頬には赤くアンリエッタに平手打ちを受 けた跡が手の形に残っていた。 「最近、若いカップルの貴族を襲う変質者がいるのだ。それも女性が小柄で細身。その上、容疑者は大貴族とつ ながりがあるようで内密に調べる必要があったわけだ。以前に陛下が依頼した件だ」 小柄で細身。自分と、アニエスに首ったまを掴まれている先ほどの少女を見比べて納得する。アンリエッタは 額に手を当てて話す。 「私がアニエスに『手伝ってもらえば』とあの席で言いましたわね?そこでこの鈍い人は」 アニエスは肩を縮めて再び頭を下げて言った。 「カップル役の男をサイトに頼んだのだ。そして女役は私の隊で一番子供っぽいこいつを使った。女役は陛下が と仰ったのだが、陛下自らというわけにいかぬ上そもそも体型が役に向かぬ。それに私はまだ、どうも」 再びアンリエッタはアニエスを一睨みしてルイズの前に立った。 「本当に今回は何度も何度も、ごめんなさい」 「陛下!」 頭を下げるアンリエッタにルイズは慌てて頭を上げるよう手をかける。それでもアンリエッタはまだ顔を上げ ない。と、改めてルイズはサイトに目を向けた。サイトの戸惑った視線にルイズは応えた。 「信じて、いいの?」 「前から言ってただろ?ルイズのそばにいるって」 ルイズがうなずくと、ようやくアンリエッタは顔を上げて馬に戻りかけた。アニエスは少女を猫のようにぶら 下げてアンリエッタの後を追う。だがサイトは三人を呼び止めた。 「悪いんだけど、証人になってくれるか」 ルイズは怪訝な顔をするが、三人は真剣な表情でうなずいた。 「ルイズさ、俺が宝飾店にいたのって、クリスマスプレゼント買ってたんだよ。でも女物ってよくわかんないか ら参考に聞いてたんだよな」 言ってサイトはポケットから小箱を取り出す。ルイズが受け取るとサイトは開けるようにせかした。三人の見 守る中、ルイズは包みを解いた。中は指輪の小箱だ。 ゆっくりと開けると、そこにはどこかで見たデザインの指輪があった。ちょっと大貴族には安っぽい、雪の結 晶をあしらった指輪。サイトの給金ではかなり苦しいとシエスタが言っていた、平民の間では一番人気の。 「婚約指輪、なんだけど。俺の給金じゃこれが精一杯で」 「……馬鹿」 「犬、じゃないんだな」 「私と結婚する人は、犬じゃないから」 差し出したルイズの指に、サイトはゆっくりと指輪をはめてやる。ルイズはサイトの顔を見上げた。いつも乱暴 なことをしているけれど、こうしてみれば自分より背は高くて。背伸びしなきゃ遠くて届かない。 彼の唇には。 肩を抱かれる。つま先立ちをするように背を伸ばす。サイトの頭から雪解け水が零れて頬にかかる。でもそれは 先ほど流した沢山の涙よりはるかに暖かくて。 ゆっくりと唇を重ねる二人を背にしながらアニエスは部下の少女に囁いた。 「貯金しておけ。貴族の結婚式に呼ばれると何かと物入りだ」 双月がゆったりと二人を照らしていた。
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二人が次に向かったのは、服屋。 正直言うと、片手であのベルトだらけの服はちと厄介だ。 キュルケ達もそこに居たのだが、着せ替え人形よろしく服を次々と持ってこられた事にはさすがに辟易した。 動き回り剣を使うだけあってスカートは問題外だ。 (まったく…テレサが見たらなんと言うだろうかな…) 大体予想は付く。 あの人を食ったような変わる事の無い微笑を浮かべながら『よ、お前もヤキが回ったなイレーネ』というとこだろう。 結局、軽装のズボンと長袖のシャツに落ち着いた。 体温調節機能を備えているので、基本厚着をする必要は一切無いのだ。 だが、マント装備のため、外見上はあまり変わったようには見えない事にブーイングが起きていたのは割愛だ。 「相棒も大変だねー」 カタカタと音を出しながら背負った剣が言葉を吐いたが無視しておく。 夜頃、学院に戻りルイズの部屋に戻ると、イレーネがおもむろにデルフリンガーを抜いた。 「何で部屋の中で剣なんて抜いて…」 ルイズがそういい終える前に、手に持ったデルフイリンガーを…思いっきり!床に!突き刺したッ! そうすると、デルフリンガーに背を預け座る。 「相棒…抜いてくれるのは嬉しいんだけど、これ剣としての使い方間違えてねぇ?」 「私達はこう使っているんだがな」 床の上なので、硬さは大して野外と変わらない。という事はこのスタイルが一番楽なのだ。 毛布は、極寒の北の地でも普通に過ごせるため必要は無い。 「なななな、なにやってんのよ!床に穴が空いたじゃない!!」 「気にするな。次からはここに刺すから、これ以上穴は増えん」 「そういう問題じゃなーーーーーーい!!」 「もう寝ろ」 感情の起伏が恐ろしく激しいルイズ。方や起伏が恐ろしく一定で常に冷静なイレーネ。 この二人実に対照的である。 「嬢ちゃんは、もちっと落ち着いた方がいいし、相棒はもう少し、感情出してもいいと思うね。俺は」 「「ほっとけ」いて!」 ここだけは声が被った。 翌日、ギーシュと決闘してから、一部を除いて余計距離を開けられるようになっているため、例によって食堂には入っていない。 夕方頃になるとすっかり懐いたシエスタが寄ってくるのだが、今日は来ない。 まぁ、そんな時もあるのだろうとし、誰も居ない場所でデルフリンガーを振っていた。 「相棒ってさ、なんで右腕だけ異様に弱いんだ?いや、弱いっていうか、他が強すぎんだけど」 「今の私には必要無かったんでな。元の腕は弟子の餞別にくれやった」 「……へ?」 多分というか、絶対理解できてない。まぁそりゃそうだ。 「体の中に化物を入れていると言っただろ?その力を使えば、私達は四肢が切断された程度なら、元に戻せるんだよ」 「……いや、でもくれてやったってのは?」 「属性が同じなら、他人の腕も繋ぐ事ができる。まぁ私は攻撃型で完全な再生はできんから、常人程度の腕しか再生できん」 「……ほんと、何でもありだな。相棒は」 「…本来なら再生するにも数ヶ月かかるものだが… それにお前、使い手とか言っていたが、剣を持った時と、そうでない時。力とスピードが違うんだが、分かるか?」 「…忘れた」 「やれやれ…役に立たん」 「ひでぇ!でも許す、相棒だから」 そうしていると、一人誰かが近付いてきた。 「確か、マルトーとか言ったな。何か用か?」 現れたのは、学院における厨房責任者こと料理長マルトーだ。 「…頼みたい事がある」 「…その様子だと、ここの貴族連中には頼めん事と見たが」 「その通りさ…シエスタがモット伯って貴族に連れていかれちまったのさ」 「何者だ?」 「気に入った若い娘を連れて行って囲ってるってやつさ」 (本当に、大してどこも変わらんものだ) イレーネが居た場所でも『孤児は、少年は北の地へ、少女は北東の地へ送られる』と言われているぐらいだ。 組織に属する戦士は、ただ一例、クレアを除いて全てこれに当てはまる。 当然、イレーネも親を妖魔に殺されたクチだ。 「それで、私に頼みというのは?」 「…シエスタを助けてやって欲しい」 (さて、どうしたものかな) そう考える理由は、存在そのものにある。 これが妖魔、覚醒者絡みなら二つ返事で受けるのだが、相手は人だ。 基本的に組織は人間同士の争いに加担する事は無い。 離反してからも、隠遁して暮らしていたので、その思考は特に変わっていない。 「シエスタからよく聞かされてたんだよ。 『ハーフエルフかもしれないけど、怖い人じゃないし、わたし達の味方』だって」 ハーフエルフでもないし、味方云々に関しては対妖魔でなのだが。 「私はギーシュしか相手にしてないから分からんのだが、お前達にとってメイジというのはどういう存在だ?」 「平民は貴族相手だと何もできない。こういう事があっても天災だと思って諦めるしかないのさ」 (なるほど。平民にとってメイジというのは妖魔のようなものか) 潜み、いつ自分達に牙を向くか分からない。という点では似たようなものかもしれない。 ただ、脅威が妖魔並みとは言っても人だ。 「我々は、妖魔を狩る存在だという事は聞いているな?」 「あ、ああ」 「基本的に我々が妖魔を狩る時は、街や村から依頼があった時でな。依頼を受けるにあたって、必要な物が出てくる」 そこまで言うと、全てを話さなくても理解したようだ。 「…金って事か?」 「まぁそうなる」 マルトーが唸る。モット伯はトライアングルだと聞いているからだ。 命を賭けるかもしれないのに、ただで行ってくれというのは虫が良すぎるというものだろう。 シエスタからも魔法は使えないと聞いているから、なおさらだ。 「…どれぐらいなんだ?」 「相場が分からんから何とも言えんが…妖魔一匹なら大体…そうだな、あの袋ぐらいだ」 そう言って指差すのは、詰めれば両手からはみ出るかどうかというぐらいの大きさの袋。 そう言われてマルトーが言葉に詰まる。 それで金貨なら、平民一人が払える額ではない。 本来妖魔退治は、街や村などの集合体から依頼されるもので、個人からの依頼というのは滅多に無い。 だが、マルトーにも意地があった。 目の前の剣を持ったやつなら、貴族に一泡吹かせてやれるのではないかと。 なにより、今晩中にでも傷物にされかねない、シエスタの事が気にかかっているのだ。 「…後からでもいいのか?」 「ああ、妖魔相手でも、我々が死ねば渡す必要も無いからな」 「…金は他の連中にも頼んでみるから…シエスタを頼む」 「場所は?」 マルトーからモット伯の屋敷の場所を聞きだすとデルフリンガーを背負う。 「組織の元ナンバー2イレーネ、その依頼確かに承った」 そう言うと同時に、モット伯への屋敷へと歩き出した。 「お、相棒、いま少しだけ感情が動いたな」 デルフリンガーが小さく言ったが、それは本人には聞こえていない。 モット伯の館は妖力解放しなくても、走って10分程度の距離だ。 もちろん、人が出していい速度ではないし、森の中を突っ切り最短距離で向かった結果だ。 まだ、日は出ており、屋敷がよく見える。 正面には背中に翼が生えた犬を連れた衛兵が居た。 例によってフードとマントで姿を隠したまま近付くが、当然衛兵はそれに気付く。 「ここはモット伯の屋敷だ。何者か知らんが今すぐ引き返すんだな」 「モット伯に会わせてもらうぞ」 女の声だったので、またモット伯が女でも呼んだのかと思って、少し気が抜けたのだが、翼犬は唸り声を上げている。 「お、おい!大人しくしろ!」 衛兵の静止を振り切り、時間差を付け空中から襲い掛かる。 こうなれば、どうしようもない。死体の処理に頭を悩ませたが、聞こえたのは翼犬の悲鳴だった。 「…随分と手荒いな」 翼犬を見るが、無数に切り裂かれて倒れ伏せている。 残りの翼犬も、次々に襲い掛かるが、全て喰らい付く直前で何かに切り裂かれているのを見た。 「どうした?お前達が案内しないのなら…この犬と同じようになる事になるのだが」 そう言ってフードを外すと、当然ながら衛兵は固まる事になる。 「エ、エルフが…!」 「どうする?」 一歩近付くと、衛兵が大急ぎで門を開ける。 屋敷の中に駆け込んでいったあたり、取り次ぐ気にはなったようだ。 ちなみに、翼犬は斬ったが、人を斬る気は無い。相手が掟を知っていないからこそ言えるハッタリである。 今日手に入れ、今湯浴みをしているメイドの事を考え上機嫌だったモット伯だが、飛び込んできた衛兵を見て不機嫌になった。 「…なんだ?」 「エエ、エルフが…モット伯に会わせろと…」 「…なんだと!?」 「既に先住魔法と思われるもので、翼犬が何かに切り裂かれました…」 「相棒、使ってくれるのはいいんだけど、他のやつに見えないんじゃ、俺の活躍ってもんがさ…」 「そういう技だ」 「せめて使わない時も手に持つとか…」 愚痴るデルフリンガーだが、食われたり使われない連中よりマシだと自覚しろ。 「てか、腕がヤバそうだが、大丈夫かね?」 「使う度に妖力を使って修復に当てねばならんのがな…」 そう言うと、妖気を右腕の修復に当てる。5秒もすると元通りの腕になっていた。 「おでれーた、大したもんだな」 そうしていると、かなり遠巻きに呼ばれた。会う気にはなったという事だろう。 「これは、これは…我が屋敷にエルフの方が何の御用ですかな?」 「単刀直入に言う。学院から連れて行ったメイドを返してもらうぞ」 「何を馬鹿な…!あれは正式な手続きを踏み雇い入れたものだ!」 譲る気が無い。そう判断したが、ちと詰まる。掟がある以上殺すわけにもいかない。 基本的に自己申告なのだが、人であるという精神的意味合いが強いのだ。 人を殺せば、妖魔と同じになる。そういう観点から、No4オフィーリアを除いて進んで人を斬る戦士は少ない。 イレーネもモット伯そのものに手を出す事はできない。 少し膠着状態が続いたが、好色なモット伯ならではの言が出た。 「ならば、交換条件として、あなたが私と一晩付き合うというのはどうですかな?」 半分冗談だが半分本気だ。 基本的に戦士のほとんどは整った顔立ちで美形に入る。 イレーネも例外ではない。まぁそのあたりもエルフと思われてる理由の一つだろう。 それを受ければ、社交界での話しのタネにもなるし、受けなければメイドをそのまま手元に置くことができる。 エルフといえどトリステインの貴族を殺して、国を相手にできるはずがないという事から、そう言ったようだ。 「なるほどな…こんな体でよければくれてやるよ」 そう言って服に手をかけると、モット伯の顔が緩んだ。 だが、一瞬で恐怖面に変わる事になる。 「どうした?付き合ってくれるんじゃなかったのか?」 「うぁ…ば、化物!!」 そう叫ぶと杖を掲げ、その先から水流が竜のように渦を巻き、イレーネに襲い掛かる。 素早くその場から跳躍するが、その後を追うように水が追ってきている。 「確かに、これならばメイジが妖魔のように恐れられているというわけだ」 言いながら避けるが、上の方から二つに分かれた水流が襲ってきた。 体勢も、少しばかり悪いためかわしきれないはずだ。 「ある程度、分かれて攻撃する事ができるという事か。それなりの実力者なのだろう。だが…高速で奔る無数の剣の前には全ては無意味…」 高速剣は、攻撃力の高い技だが、防御力も高い。無数の剣によって接近する事もできないからだ。 攻防一体の技と言っていい。鋭敏な妖気探知能力を持ち先読みで防ぐ事のできるテレサかクレアや 上位No、それも深淵の者クラスの覚醒者ぐらいしか止められる者は居ない。 魔法で操られている水といえど、その圧倒的な剣の壁を抜くことなどできるはずはない。 全てイレーネに命中する手前で四散する事になった。 「さて…こうなってくると私としては…どうするべきなのだろうかな」 ちょっと壊れかかっているモット伯だが、まだ杖を離す様子は無い。生命線なのだろうから当然だろうが。 そこに一瞬間を空けて、何かが爆発するような音がした。 三割の妖力解放。目の色も変わり、顔つきが変わり妖魔に近くなる。 そのままイレーネがモット伯に近付く。 その途中にある、装飾品や壁などが無数に切り刻まれている光景を見て、杖を落とし崩れ落ちたモット伯が叫んだ。 「あ、あのメイドなぞくれてやる!だから…私のそばに…近寄るなァーーーーーーー!!」 四つん這いの姿勢で這いずり逃げながら、顔をこちらに向けながらそう叫ぶ。 それだけ聞くと、妖力を抑える。短い時間とは言えあまり使いたいものではないのだ。 「なら返して貰うが、次に同じような事があれば…そうだな、屋敷が細切れになると思え」 そこまで出来ないのだが、まぁハッタリは使えるうちに使っておくのが最善だろう。 完全に腰を抜かしたモット伯が頷くのを見ると、シエスタを連れてこさせた。 「話は付けた。帰るぞ」 「あ、あのモット伯とです…か…」 交渉で応じられるとはシエスタも思っていなかったのだろうが、ホールの惨状を見て納得したようだ。 「そういう事だ。行くぞ」 「は、はい!」 ちなみに、走ってきたため、シエスタを体に掴まらせて学園へと戻った。 学院に戻ると、マルトーが袋を手に待っていた。 「仕事は成した。任務完了だ」 「良かったな…シエスタ!本当に良かった…!」 今にも泣き出さんばかりだったが、シエスタが袋に気付いた。 「マルトーさん…この袋は?」 「ああ、お前さんのメイド仲間や、コック連中にワケを話して少しづつだが、出してもらったんだ」 中に入っているのは金貨だ。それを見てシエスタが目を丸くした。 「これって…!」 「メイジと戦ってもらったんだからな…これぐらいは当然だろうよ。どうだ、足りるか?」 「問題無い」 淡々と交わされる会話だったが、シエスタは少し残念そうだ。 イレーネが助けにきてくれた事は仕事としてだという事に。 「それは、後から黒い服を着た怪しいヤツが取りに来る。そいつに渡せ」 「後から来るって…これは、あんたが受け取るんじゃないのか?」 「報酬は組織が直接受け取る事になっている。…ああ、私とした事が迂闊だったよ。 組織の連中は私がここに居る事を知らないんだった。という事はそれを受け取るやつは来ないという事だ。参ったな、どうしたものか」 殊更わざとらしく言うと踵を返し、ルイズの部屋へと戻ろうとする。 「…もしかすっと最初からそのつもりで!?」 「さぁな。まぁ万が一来れば渡せばいいだろうが、それまで、そいつはお前達のものだ それより、明日にでも礼を言っておくんだな。私のみたところ相当な額だ。お前のためにそれを出してくれた仲間は、それよりも得がたい存在だという事を覚えておけ」 「は、はい!」 さっきまで、少し暗かったシエスタの顔が一気に明るくなった。 イレーネが去り、マルトーとシエスタの二人だけになったが、マルトーのテンションは最高峰といったとこだ。 「あいつは、魔法じゃなくて剣を使うんだよな!」 「わたし達が見えない程らしいんですけどね」 『高速剣』の他に、魔法学院の平民たちから呼ばれる『我らの剣』と言う新しい二つ名が誕生した瞬間でもあった。 ルイズの部屋に戻ると、少し時間を空けていた事に対してルイズが怒っていた。 「主人を放ってなにやってたのよ」 「少し用事をな」 そう言って床にデルフリンガーを突き刺し背を預ける。 使い切っていないとはいえ、回復は遅い。休める時に休んでおくにこした事はないのだ。 「あー、今、相棒少し笑ったね」 「ん、そうか?」 「嘘!?ちょっと見せなさい!」 ルイズがそう言って詰め寄るが、表情は何時もと変わり無い。 インテリジェンスソードであるデルフリンガーだからそこ、分かったようなものだ。 (もう少し、感情を表に出してくれると、俺も使われ甲斐があるってもんなんだが) まぁ少なくとも、感情が無いというわけではないと分かったので、よしとする事に決めた。
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380 名前:キュンキュン ◆4hcHBs40RQ [sage] 投稿日:2006/07/18(火) 01 30 24 ID 0obQkP+L では 355の予告通り、投下させていただく。 10レス消費。ルイズ×サイト。 381 名前:1/10 ◆4hcHBs40RQ [sage] 投稿日:2006/07/18(火) 01 31 26 ID 0obQkP+L 「ちっ、あのモンモンめ。 お蝶夫人のような髪型してるくせに、惚れ薬なんて余計なモン作りやがって……」 と、心の中で愚痴る平賀才人御年十七才。 好きな食べ物はテリヤキバーガー(もう食えない) 只今、自分のご主人様にして同居人であるルイズの部屋の前で右往左往しているのであります。 それというのも、ルイズが惚れ薬を飲んでしまったのだ。 もちろん、誰だって惚れ薬を好んで飲むわけがない。 先の言う、モンモラ……えーと……モンモンでいいや、モンモンが阿呆なギーシュが今後一切浮気をしないようにと、 惚れ薬を作り、それを飲まそうとしたところでうっかりルイズが飲んでしまったから、という、複雑な事情が絡みついた事故なのだ。 運が良かったのか悪かったのか、まず始めに見た人間が、ギーシュとかモンモンとかじゃなくて、俺だったわけでありまして、 あのルイズが、平気で人に下着を洗わせるルイズが、ちょっと粗相でもしようものなら鞭でぶったたいてくるルイズが、 ベタベタベタベタくっついて、好きだよ、サイト、好きだよ、と耳元で呟きまくってくれる姿は、男冥利として尽きる光景だけれども、 惚れ薬の勢いで、イケるところまでいっちゃうのは流石に、俺としてもどうかなあ、と思うところがあるのだ。 けど、あの、俺の惚れているルイズの誘惑を俺は耐えられるのか? 抱いて……と呟いて、潤んだ鳶色の瞳で見られたら、俺は耐えられるのか? いや、耐えられまい。 と、そういう背理にさいなまわれているのでござーます。 「……さ、さいとぉ……どこぉ……」 扉の向こうからルイズの声がした。 ルイズが惚れ薬を飲んだのは昨日。 飲んだ瞬間、めそめそ泣かれ、一体なんだどうした、と聞いても事情がわからない。 とにかく泣き疲れたルイズをベッドに寝かせ、今日起きてみたら「授業を休んで一緒にいる」と夜迷い事をのたまった。 結局午前中ずっとベタベタベタベタくっついて、昼頃にはまたコテッと寝てしまった。 昼食を、メイドのシエスタにもらいに行ったときに、初めて何かしらモンモンに盛られたということに気づき、 モンモンに犯行を自白させ、解除薬を作る確約を取って、今またルイズの部屋の前にいるわけです。 午前中、何することにもくっついて俺から離れなかったルイズが、起きたとき部屋に俺がいなかったらどうなるんだろう、 という疑問の答えが、多分、きっと、このドアの向こうにある。 「さいとぉ……さいとぉ……」 俺の名前を、オウムのように繰り返すルイズ。 どことなく、声に潤みがかかり、色っぽい。 むむむ、やっぱり入りづらい。 ルイズも、俺が部屋から出ていたということを本当の意味で怒ったりはしないだろう。 けど、一番おっかないのは、あのルイズの俺の気を引こうとする攻撃に、俺が耐えられなくなることだ。 下手をしたらだな……一番最後のステップを飛び越えて、大空にジャンプしちゃうことだってありうる、ぶっちゃけたところ。 俺だってお年頃だ、高校生だ、17才だ。 いくらルイズに胸も色気もないとはいえ、惚れている女の子に「何してもいいよ」なんて言われて理性を保てる保障はない。 むしろ、襲うな、という方が無理があるだろう。しかし、襲ってしまったら負けかな、と思うわけでもありまして。 「んっ……さいとぉ……どこぉ……あっ」 ……。 なんだかルイズの声が怪しげな……とてつもなく怪しげなうめき声のようなものが混じってきた。 耳に神経を集中させて、そっとドアに耳をつける。 ごくり、と喉をツバが通る音がした。 「こ、こんなところ……サイトに見られたら……んんっ。ううー、さいとの馬鹿ぁ、なんでご主人様の私をほうって置いて……」 382 名前:2/10 ◆4hcHBs40RQ [sage] 投稿日:2006/07/18(火) 01 32 25 ID 0obQkP+L いささか矛盾しているような言葉が聞こえてくる。何やってんだか……。 気付かれないようにそっとドアノブをひねり、音をたてないようにすっとドアを押す。 つんとした香りが鼻をついた。 お香を焚いているのか。 「んっ、はぅ……サイトの……さいとの、藁たばぁ……」 藁束。使わなくて久しいものだ。 以前は、床に寝ることを強いられ、シエスタに頼んで下に敷いて寝るために置いておいたものだ。 もうルイズと同じベッドに寝ているから使ってはいないが、ルイズの機嫌を損ねたときに備えて、取ってある。 中からは確かに、藁と藁がこすれる音がしている。 ……。 まあ、俺だって年頃だよ、高校生だよ、十七才だよ。 恋に溺れた十六才が、一人私室で苦しいような切ないような声をあげて行う『何か』がわからないわけじゃない。 あの高潔なルイズが、ハイパー自家発電(道具は俺の藁束)をしてしまうなんて……モンモンの惚れ薬、恐るべし。 さて、いよいよ進退窮まった状態でござい。 このドアノブに握る手を、どういった方向に向けたらいいのかわからない。 心の中の選択肢はこちら。ドンッ。 1.気にせず入る。後は野となれ山となれ。 2.そっとドアを閉めて逃げる。後は野となれ山となれ。 3.避けられない、現実は非情である。 1番はポジティブ。2番はネガティブ。3番に至っては意味不明。 我ながら自分の思考の突飛さに関しては右に並ぶモノはないような気がする。 機会が有れば、一度かち割って何色をしているのか見てみたい。 ていうか、どれも無計画。 これは2番だな。 自家発電中に顔見知りに部屋に入られたときの心痛は誰にも増して俺が良く知っている。 なぜ知っている、と言うツッコミしたら、デルフリンガーで串刺しな。 とは言え、逃げはしない。じっと息を潜めてドアの前で座っていることにしよう。 万が一、この部屋に誰かが入ってきたら、そしてそれが男だったら、更にその男がルイズに対して邪な思いを持っていたら、 はてさてどうなることか。 おい、そんな破廉恥なことしていることをみんなに言いふらされたくなかったら大人しくしろ、 いややめてはなして、さいと、さいとぉぉ! いやあああああ! 何その鬱展開。 残念ながら俺はそういった属性を持ち合わせていない。 そりゃあまあ、ルイズは惚れ薬の効能がなかったら、俺のことを見向きもしないんだろうけど、さ。 そっとノブを引き、ドアを閉める。 やれやれだ。手間のかかるご主人様だこと。 「あ、サイトさん」 「うぉあっ!」 あ、やばい。 目の前には、シエスタが。 料理を運んできたらしい。 そういや、頼んでたんだっけ。 しかし、最悪のタイミングだ。 383 名前:3/10 ◆4hcHBs40RQ [sage] 投稿日:2006/07/18(火) 01 33 15 ID 0obQkP+L 「どうしたんですか?」 「な、ななななな、なんでもないよ、ははははは!」 「そうですか? 顔色が一瞬真っ青になったと思ったら、今度は真っ白になりましたけど?」 「い、いや、だ、大丈夫、大丈夫。エーと……その、なんだ、と、とにかく、だ、大丈夫」 がたがたっと部屋の中で音がした。 やばい、全然大丈夫じゃない。 俺の見ていて憐れになるほどの慌てぶりに、シエスタは一瞬顔を傾けたが、にっこりと笑った。 「では、お料理を中にお運びしますね」 そしてドアノブに手をかけ……。 「だ、ダメ! い、い、い、今入ったらダメ!」 「なんでですか?」 「な、なんでって、そのー、そりゃ、なんだ……えーと、そうだっ、今ルイズ着替え中なの。 あは、あはは、だから、ね。もうちょっと待ってて……」 「……」 なんでだろう、シエスタの目が絶対零度の冷たさを放つのは。 「さっき、サイトさん、覗いてませんでした?」 ああー、見られてたのね、そうなのね。 ……部屋の中のごたごた言ってる音が尋常じゃなくなった。 あ、こら、あかん、もうだめ、ぼく、もう死ぬ……。 いくら惚れ薬を飲んでいるルイズといえ、きっと、俺に向かってエクスプロージョン(レキシントン号撃墜級) ガンダールヴの力を発揮することもなく、塵と化す。 いや、違うな、塵なんて甘いもんじゃない。 虚無なだけに虚無になるだろう。 「お、大きい方が好きだって言ってくれたのに……」 シエスタが懐から何かきらりと光るものを取り出してきた。 目が絶対零度の冷たさを脱却して、今度は、そう、キュルケもなんのそのな灼熱の炎が宿っている。 イッツ、修羅場。 一応、名誉のために言っておこう。 俺は確かに大きい方が好きだ。 視線がそっちの方向に行ったりはするものの、公言したことはない。 まあ、どっちでもいいよね、今に至っちゃったら、あはははは! 「ちょ、ちょっとまて、落ち着けシエスタ俺は大きい方が好きだぞ別に着替えなんて前はいつも俺が着替えさせてたんだから 今更ルイズの裸なんて見たところでどうってことないわけじゃないけどそれでもわざわざ覗いてみようと思うもんではなくて だからだなちょっと落ち着けシエスタまず刃物はしまえ刃物はあぶないやばい刺さったら死ぬからさおいやめてくれとにかく」 「……じゃ、部屋の中では何をしているんですか」 こぇーよ! シエスタ! ナイフが俺の心臓を狙ってるよ! 384 名前:4/10 ◆4hcHBs40RQ [sage] 投稿日:2006/07/18(火) 01 34 00 ID 0obQkP+L 「そ、それはだな……」 考える、俺は考える。 必死になって考える。 思わず目線が揺れる。 あっちいったりこっちいったり、左向いたり、右向いたり。 シエスタのおっかねぇ目を見たり、ナイフの矛先を見たり。 シエスタの、脱いだらすごい胸を見たり。 ああ、すごいな、シエスタ。 脱いだらすごいなシエスタ。 肘が当たったらすごいなシエスタ。 キュルケのおっぱい星人級おっぱいも素晴らしいが、こっちも負けてないぞすごいなシエスタ。 ああああ、何も考えられねぇぇええええええええええええ! 「何してたんですか?」 「そっ、それはだな……」 「もう『それはだな』は聞き飽きました。言ってください、サイトさん。 これ以上焦らしてくれましたら、あなたを殺して私も死にますよ?」 で、デルフリンガー……だめだ、ガンダールヴの力を発動する前に、デッドエンド確実。 こ、このまま部屋に逃げ込むのは……それもだめだ、部屋の中にルイズがいる。 エクスプロージョン(レキシントン号撃墜級)をお見舞いされる。 正直に言ってしまうか? 部屋でルイズがオナニーしてましたって。 それはルイズの名誉を著しく傷つけることだぞ? いや、言っちゃダメだな。むしろ、事態は悪化するぞ。 ルイズは更に怒るし、シエスタだってもっと怒る。 しかし、これといって素晴らしい言い訳が思いつかないような……。 俺の胸を、しびれをきらしたシエスタがちょんとナイフで突いた。 「ひっ、る、ルイズは部屋の中で大オナニー感謝祭を実施中であります!」 あ、いっちゃった。 しかもわけのわからない言い方で。 部屋の中からドッシーンと大きな音が聞こえるし、 シエスタはぽかーんと口をあけて、目の炎を消して俺を見上げてきている。 俺も正直、どんな顔していたのかわからない。 ああっ、やっべ。 レキシントン号撃墜級なんてレベルじゃねーよ。 国が一個消滅するよ。 ああっ、やっべ。 心臓一突きなんてレベルじゃねーよ。 全身滅多刺しだよ。 天災レベルでも人災レベルでもなんて酷い。 誰がこんな結果をもたらしたのか? モンモンだ。モンモンが悪い。 モンモンめ、許さん。 モンモン……モンモン……。 385 名前:5/10 ◆4hcHBs40RQ [sage] 投稿日:2006/07/18(火) 01 34 36 ID 0obQkP+L あんにゃろめ。 無理矢理惚れ薬飲ませて、まず一番最初に、阿呆のギーシュを見せてやる。 今まではずっとギーシュにへこへこさせてたけど、今度はギーシュにへこへこする立場に立たせてやる。 けっけっけ、どんなに屈辱だろう。 ……いや、俺も悪いんですけどシエスタと二人用マフラー被ったり一緒に風呂入ったり。 ていうか理不尽じゃね? 確かにルイズが独占欲強いっていうのはわかる。 ああ、痛いほど分かるさー。プライド高いし、ツンツンしてるし。 だけど、ちょっといちゃいちゃしたり風呂入ったり……いや、風呂はダメか、流石に。 とにかく、別にシエスタと一緒にいてもいいじゃん。 なんであんなに怒ったりしてるのさ。 と、現実逃避してみても、現実は変わらない。 「うわっ!」 いきなり首根っこ掴まれて引っ張られた。 シエスタの顔が遠ざかる。 あれ? ルイズさん、なんでドアを……。 「ロック」 ルイズさんが、杖を取り出し、ぱぱっとドアにカギをかけた。 な、なんですか? なんで俺部屋の中で尻餅ついているんですか? なんでルイズさん、裸なんで……いや、局所的に藁束がついているけど、何も衣類をつけていないんですか。 「ふふ、サイトぉ」 ルイズさんは……ルイズは杖をくりくり弄びながら、尻餅をついている俺を見下ろしている。 やばい、死ぬ、殺される、いや、『消滅』させられる。 ルイズは振り返り、その裸体を隠そうともしていない。 桃色の髪の毛が乱れ、わずかに胸の頭頂を分かりづらくしているが……下は何の処置も無し。 ど、どうすりゃいいんだ……。 シエスタがドアを叩きま……いや、蹴り……ナイフで突き立てまくってる音が聞こえる。 こ、こえぇよ、みんな、みんなこえぇよ。 ああもうっ、なんでこんなことにッ! モンモンが悪い! モンモンがぜーんぶ悪い! 「サイトぉ……覗いてたんでしょ? どうだった?」 「ひっ、ご、ごめんなさいごめんなさい、もうしませんから」 「む〜……別に怒ってないよ。ね、どうだった?」 「へ?」 ルイズは裸のまま、俺の側に寄る。 尻餅のついている俺の顔を、横からそっと抱きついてきた。 な、ななななななっ、なんですか、これは!? どういうシチュエーションですか、これは? 386 名前:6/10 ◆4hcHBs40RQ [sage] 投稿日:2006/07/18(火) 01 35 12 ID 0obQkP+L 「押し倒したくなった?」 お、おおおお、俺はどう返せばいいの? 誰か教えて! 「押し倒しちまえよ、相棒」 黙れ、デルフリンガー、無責任な発言をすんじゃねぇ。 ……。 なんだかんだ言って、そのまま膠着状態が三分ほど続いた。 デルフリンガーが俺にしか聞こえない小声で何か言っていたが、全部無視。 しかし、ルイズの方はと言うと。 「……いいもん、サイトが押し倒したくないなら、私が押し倒すもん」 「お、押し倒すって、おい、まて、何を……」 上体を突き飛ばされた。 ルイズは俺の上にのしかかるように寄り添い、手を俺のズボンに添える。 「ちょ、ちょっと待った! ルイズそれはちょっとお前には早いぞ! もうちょっと、な、落ち着いて、落ち着け、そ、そんなとこ、はぁうっ!」 「だめっ! サイトいっつも他の子ばっか見てるから、もう私しか見ないようにするの!」 「み、見ないようにするって、い、一体どうすんだよ」 「……きせいじじつ」 「だぁほぅ! そんな直接的手段に訴える奴がいるかっ! そ、そんなことしなくてもだな……なんだ、その、俺はちゃんとお前のことを見てるよ」 「……でも、私以外の子も見てるんでしょ」 「ま、まあ、そらまあ、そうだけど……」 「……きせいじじつ」 「ああっ、もうわぁーったよ! お前しか見ない。見ない、ああ、もう見ないって。 わ、わかったら、ふ、服を着ろ! か、風邪引くぞ」 「本当?」 「ああ、本当」 「本当に本当?」 「本当に本当」 「本当に本当に本当?」 「本当に本当に本当!」 「本当に本当に本当に本当?」 「本当に本当に本当に本当! もういいだろっ! は、はやく服着ろ! 目のやり場に困る」 「……信用できない」 「じゃあ、どうしろっつーんだよ!」 「……きせいじじつ」 「またそれかっ! いい加減にしろ!」 ついつい口調が厳しくなってしまった。 俺とてお年頃だ、高校生だ、十七才だ。 そろそろ、目のやり場に困るどころではなくなってきているんだ。 半ば怒鳴るように言ってしまったことがいけなかったのか、ルイズは目尻に大粒の涙を溜めた。 「あ、ちょ、ま……ご、ごめ……」 謝ろうとしたが、時既に遅し、ルイズは外見なんて自分の頭の中から蹴っ飛ばして、わんわん泣き始めてしまった。 あっちゃー、困った、困った。 387 名前:7/10 ◆4hcHBs40RQ [sage] 投稿日:2006/07/18(火) 01 35 46 ID 0obQkP+L 「っぐ……ごめ……んなさ……き、嫌いになら……ないで……」 ……。 もうちょっと、このままでいいかな。 こういう風に俺に首ったけなルイズもかわええなー。 ふぅ……モンモン、そういうところだけは感謝してやるぜ。 「何言ってんだよ、ルイズ。俺がお前のこと嫌いになるわけないだろう?」 「……本当?」 「本当だ、本当。な、今のはちょっと怒鳴っちゃったけど、それもお前のことが嫌いで言ったんじゃない。 お前の今抱いている感情は精神疾患の一つじゃなくて、モンモンが持った薬によるものだから……」 「モンモランシーがいいの?」 「いや、違うって、っていうか今の話の流れでなんでモンモンがいいとか出てくるんだよ」 「……ふぇ……」 ルイズが泣き出す寸前のエフェクトを出した。 くっ、またかっ! 「ああー、よしよしー、ルイズ、いい子だから泣くのはやめようねー」 あんまり大声で泣かれるのは好ましくない。 誰かが聞きつけて……ドアにはカギがかかっているので入ってくるようなことはないだろうが、 やってきたらいい結果になるとは思いがたい。 第一、ドアの外には今なおナイフを突き立てているシエスタが……あれ? シエスタの気配がしないな。 どこかに行ったんだろうか? ……なんとかルイズをどうにかできても、今度はシエスタをどうにかしないと……。 「……」 なんとか泣きそうになったルイズをなだめ、ベッドに寝るように指示する。 な、なんだよ、別にやましいことは考えてねーからな、と誰に言うことなく心の中で言い訳しながら、 ルイズに布団を掛けてやった。 「もう眠れ。明日には解除薬ができるって言ってたから……」 ぷんぷんと鼻につくお香を消して、窓を軽く開ける。 冷たく新鮮な空気が肺を満たすと、少し冷静さを取り戻すことができた。 椅子を窓際までひっぱっていって、そこに座る。 「……」 ふとルイズを見てみると、ルイズはベッドの中でじっとこちらを見ていた。 「何?」 窓枠に頬杖をつきながら、ややぶっきらぼうに言った。 ズボンの前が膨れているのは、もうとっくにルイズに知られていることなので今更隠すことはしない。 「……一緒に寝て」 「だから、そういうことはできないって……」 「寝てくれるだけでいいの。別に何もしないから」 「……信用できないな」 「……ふぇ……」 「ああ、わかったわかった! で、でもな、俺に指一本触れたら、即行で逃げるからな!」 388 名前:8/10 ◆4hcHBs40RQ [sage] 投稿日:2006/07/18(火) 01 36 31 ID 0obQkP+L かくして、理性の限界への挑戦は始まった。 ルイズから離れたベッドのすみで、ルイズに背を向けて寝る俺。 しかし、ルイズの切なげな息づかいの音が聞こえてきて、どうにも興奮してしまう。 いかんいかん、色即是空、空即是色。 このルイズは違うルイズ、だから手を出しちゃいけないんだ。 そうだっ、ルイズの怒った顔を思い浮かべろ、俺。 乗馬用鞭で、びしびし俺をぶん殴ってくるルイズを思い浮かべろ。 ……だめだ、ムスコがもっと元気になってしまった。 「……」 「……」 ルイズはずっと黙りっぱなしだ。 どんな表情をしているのかわからないが、とにかく。 この状況じゃ寝るに寝れない。 目がギンギンに冴えて……。 ……。 ……。 「サイト?」 「んにゃっ!? な、何? 何か用?」 「まだ起きてる?」 「お、起きてるよ。べ、別にうとうとなんかしてないぜ」 「そう? なんかいびきかいてたみたいだけど……」 「き、気のせいだよ」 しまった、なんて寝付きがいいんだ俺は。 さっきまで心臓バクバク言わせてたのに、布団に入って目をつぶったら三秒で眠ってたぞ。 まぶたをかっぴらけ、俺! ……。 ……。 「サイト、起きてる?」 「……」 「サイト? サイトぉ〜?」 ……なんかルイズが呼んでるような気がする。 まあ、いいかぁ……。 ……。 ……。 389 名前:9/10 ◆4hcHBs40RQ [sage] 投稿日:2006/07/18(火) 01 37 15 ID 0obQkP+L 「ッ……はぁ……かっ……さ、い、とぉ……ん……ッ」 ん……あ? あれ、俺、寝て……。 「あはっ……さいと、起きたぁ?」 「どぅわあああ! え? 何、何が、どうなって、ええっ!?」 目が覚めたら、全裸のルイズが目の前にいた。 桃色の前髪が、額の汗でくっついている。 「な、なに、やってんだよ、お前……」 ルイズが裸でいたのは、まだ百歩譲っていい。 けど……これは。 「ご、めんねぇ……さいと……。 最初は、ね……サイトの匂いを嗅ぎたかっただけなの…… でもね、なんだか我慢っ、できなくなっちゃって……気付いたら……サイトの、手を触ってたの…… けど、それでも我慢できなくて……ごめんね、嫌いにならないで、サイトぉ」 「き、嫌いに……って……や、やめろよ! ルイズ」 ルイズの右手の人差し指には血がついている。 その血を俺の頬になすりつけて……。 とにかく、ルイズは俺の上に乗っかっていた。 ただ乗っかっていただけじゃない。 男女の睦事、を、していた……。 ルイズの秘部からは、痛ましいほどの量の血が出て……更にそれ以上の粘液で満たされている。 「サイトの……赤ちゃん、欲しいの……」 ルイズの顔が近づいてくる。 避ける間もなく、キスされた。 唇を割り、中に舌が割り込んでくる。 口の中に小さい何かが蠢く。 ルイズの舌が、執拗に俺の舌を絡めようと、頑張っている。 技術不足なのか、それとも舌の長さが足りないのか、あまり満足のいかないようで、大きく食いついてきた。 しかし歯と歯がかち、と音を立ててぶつかり合う。 「……やめろよ……」 なんか、自分のアホさ加減に吐き気を催してきた。 こうなることはわかるはずだったのに。 ルイズが「手を出さない」って言ったから、なんて言い訳にもならんだろう。 「……なんで……わたしはサイトのこと好きなのに……」 「それは薬なんだよ。お前の本当の気持ちじゃない」 「ううん、前からサイトのこと好きだったよ。でも、私ああいう性格だから……言えなくて」 「……そか」 どうしよう。 ルイズがウソ言っているようにも見えないけど、かといってそういったもの含めて全部薬のせいじゃないとも言い切れない。 390 名前:10/10 ◆4hcHBs40RQ [sage] 投稿日:2006/07/18(火) 01 37 52 ID 0obQkP+L 「あの……ね、子ども……二人の名前からとって男の子ならルイト、女の子ならサイズっていうのはどう?」 気が早ッ! しかも、流石にそのネーミングセンスはどうかと思うが……。 ていうか、子どもなんて、ま、まだ早すぎ……いやだが、しかし、破瓜はしてしまってい……。 くああああー、そうだっ! 俺はなんて取り返しのつかないことを〜! 「そんな悲しそうな顔しないで。私が望んだことだもの……それとも、サイトは嫌だった?」 「い、嫌じゃないけど……な、もうちょっとちゃんとした形で……」 ルイズは、そっと俺の胸に耳を押しつけるような格好で寄りかかってきた。 なんだか心臓の音をルイズに聞かれているような気がする。 心拍数は間違いなく、通常時より跳ね上がった数になってるだろう。 「……お願い、サイト、今この瞬間だけでいいから……私を抱いて」 ぐ、ぐぅ……。 そ、そう言われちまったら、しわ寄せが後々俺の身に降りかかってくるとわかっていても、断れねーじゃねーか。 ルイズの頭に手を当て、桃色の髪を梳く。 随分余裕あるな、とおもわれているかもしれないが、事実は違う。 滅茶苦茶緊張してるし、動揺だってしている。 ただ、変なところで理性を持ってしまっていて……。 「……半分レイプされたもんだからなぁ」 寝ている最中やられるって、俺って間抜けだな。 「ご……ごめんなさい……」 「あ、ああ、もう別に過ぎたことはかまいやしないよ」 「き、嫌いにならない?」 「しつこいなルイズ。俺がお前のこと嫌いになるなんて、ありえねぇよ」 まだ何か言いたそうだったので、おでこにキスしてやった。 ルイズは顔を真っ赤に染めて……人が寝ているところをおかしている割には、恥ずかしがって目線を逸らしている。 「好きよ、サイト、元の世界にも戻っちゃ嫌。ずっと私のそばにいてね」 「ん……あぁ、わかったよ、ルイズ」 しばらくそのまま、互いの体温を確かめていた。 ……初体験なのに、俺ががっつかないのは、ルイズへの気遣いとルイズからの教育の賜物、かな。 まあ、その後、なんだかんだやってモンモンに惚れ薬を無理矢理飲ませたら、 ちょっとした手違いでモンモンが最初にギーシュの顔じゃなくて俺の顔を見てしまったり、 今まで忘れられていたシエスタが乱入したり、色々あったけど、それはまた別の話で。 391 名前:キュンキュン ◆4hcHBs40RQ [sage] 投稿日:2006/07/18(火) 01 39 26 ID 0obQkP+L 以上。 まあ、今後もまたぼちぼち遊ばせて貰いますので、その節はどうぞよろしく。
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前ページ次ページゼロの騎士団 ゼロの騎士団-外伝 「真・使い魔感謝の日」 もし、貴方の悩み事を相談して下さいと言われれば、こう答える――主がおかしいのです。 正確には仮の主だが、それでも、ここ最近の自分の主が変だと感じる。 それまで、自分にとっての主とは、主より遅く起きたら鞭で叩かれ、 魔法の失敗を笑うと吹き飛ばされ、少し主の身体的冗談を言っただけで拳が飛び、 身の回りの世話もどきをさせられる……。 言ってから悲しくなったが、それが自分にとってのこの世界の主と言う物だ。 異変は最初、この間の飲み会で遅くなり、部屋に帰って朝寝過した時だった。 「……起きて、ニュー」 少女の声でぼんやり目を開けると、見慣れた少女の顔――ルイズの顔が見える。 自分の顔を覗き込んでいるのだろう、彼女の髪の匂いが自分の嗅覚から脳へと伝達する。 ……しまった! 完全にでは無いが、かろうじて、そう思う事だけはできた。 とりあえず、体を強引に起こす、意識は地面にある気がするが、それを気にしている暇はない。 「おはよう、ルイズ、早起きだな、すまない水汲んでく……」 頭に手を当てて、その場にうずくまる。飲みすぎたのだ、突き刺すような頭痛でそれがすぐに理解できた。 ルイズの方を見ようと、顔を向けるが、視界がぼやける。目の前にあるのはコップに注がれた水であった。 「はい、お水よ、アンタ昨日は遅かったみたいじゃない、これでも飲みなさいよ」 どうやら、その水は飲んでいいものらしい。しかし、手が動かない訳ではないがそのコップを取れなかった。 「ルイズ……その……それはお前がくんできたのか?そして、それを飲んでいいと?」 理由が欲しかった、ただ、なんとなく。 「当たり前じゃない、私だってそのくらいは出来るわよ、それにお父様も良くこうやって母様が介抱してたわ」 呆れ顔のルイズがニューに水を更に前に差し出す。 「その、怒って無いのか?お前より遅く起きて?」 「そこまで、狭くはないわよ!飲み会で遅くなったんでしょ。 羽目を外す事くらい知っているわよ。私は先に行くから、それ飲んだら後から来なさい」 そう言って、ルイズは部屋を出る。 ニューは手の冷たい感触に目を移す。 (まぁ、病人に優しくするのと同じかな) その時は、そう考える事にした。 そして、一週間 相変わらず、違和感が消え無い。 「……おかしい」 目の前のスープが醒めるのも気にせず、思考する。 別段変りない日常と言える。 しかし、目に見えて分かる事――ルイズの制裁の数が激減した事である。 それまでは日に一度は何らかの理由(たまにニュー自身のせい)で振るわれた暴力的行為が、 ここ一週間全く無かった。 また、何かと理由をつけ連れまわされたが、最近はルイズが用事があるのか一緒に居る時間も減った。 それに、いろいろと世話係の真似事も減った気がする。 「どうしたの、ニュー?」 ルイズが聞いてくる、今日は珍しく二人だけの様である。 この世界に慣れたのもあるが、最近では六人が一緒の言うのも必ずしも不文律と言う訳では無くなってきた。しかし、見渡してもいるはずであろう、キュルケ達が居ない。 二人で居るのが、最初に会った時よりも苦痛に感じる。 苦痛から解放されたい、そう思いニューは踏み込む事にする。 「……ルイズ、もしかして、私はお払い箱なのか」 人は解らない事があると、最悪の事態を考える。それを極論と言う。 最悪なのは理由をつけて殺したりするのもいる…… 使い魔の日が出来た理由の一つが、何となくニューの心に響いてくる。 ありえないと思う、しかし、最近のルイズの様子は明らかにおかしく、正常な判断を奪いつつあった。 「何言ってるのよ、そんな事する訳ないじゃない、なんなのよ?」 「なら言わせてもらうが、この間からおかしいぞ、なにがあった?」 ニューは素直に疑問をぶつける。このままではこちらの身が持たない、怒っている事があるなら謝ろう。 そう考えるニューに対して、ルイズとの距離は縮まりそうにはなかった。 「……最近妙に優しいのが気になる、それに、何をしているんだ?」 「別に他意はないわよ、ただ、この間の感謝の日で思う所があったのよ」 「何だそれは?」 「アンタこの間、お菓子を喜んで食べてくれたじゃない? あの時、ほとんどシエスタに手伝ってもらったのよ」 それは知っている、宴会で彼女のルイズ達に対する愚痴は、 聞かれたら大事になりかねない様な内容であった。 ルイズは続ける。 「けど、アンタは喜んで食べてくれた、だから、今度は私一人の手で作りたいの」 ルイズの手にはよく見ると火傷の様な跡がある。 この間の傷かと思ったが、思えば、自分があの後、魔法で治したのだ。 「じゃあ、お前はお菓子作りを習っているのか!?」 「なによ、悪い!?」 「いや、悪くはないが……」 予想外の理由にニューは素直に感心する。 どうやら、シエスタに手伝ってもらった自覚はあるようだ、 「この間のやつが、私の本気だと思われるのは不本意なのよ。 アンタには私の有難さと凄さをもっと、もっと、思い知らせてやるんだから」 「色々と思い知らせれてはいるんだが……まぁ、ありがとう、ルイズ」 少し悪い事をしたかもしれない。ニューは少しそんな事を考えた。 「あっ、ニューさん、まだ生きていたんですね!」 そんな事を言われるのは、どちらかと言えば敵と対峙していた時だ。 しかし、振り返るとそこには敵では無く、自分にとっての味方であった。 「シエスタ、どうしたんだいきなり?」 メイドの中でも分り易い容姿の黒髪の少女を見ながら、彼女の言葉に少し驚く。 彼女が何か言う前に、さっきのやり取りを思い出し、ニューは、彼女の弟子の腕を聞こうと思った。 「そうだ、シエスタ、最近ルイズがお菓子を習っているようじゃないか? どうなんだ、出来の悪そうな弟子だが、私からも面倒見てやってくれ」 ニューの言葉を聞いて、シエスタは話題を提供する口を固くする。 何か禁忌に触れるかの様に辺りを見回しながら、ニューに顔を近づける。 「その事なんですけど、ニューさん……」 周りの音に聞こえないようにした訳では無い。 ただ、シエスタが止まっただけだった。 「ん、どうしたシエスタ?」 「なっ、何でもありません、ルイズ様はとっても筋がいいようです。 近いうちに、ご自分で出来るようになりますよ」 「そうか、しかし、忙しかったか?」 「はい、すいません。失礼します」 そう言って、足早にシエスタはその場を離れる。 (まぁ、暇な時に聞いてみるか) 忙しいらしいシエスタを引き留めたと感じて、ニューは少し後悔する。 その日、ニューは珍しい体験をする。 何時も、大体はルイズ達三人は何かしら、もしくは、どちらかと会う。 しかし、その日に限ってはキュルケやタバサ達と会う事は無かった。 もちろん、彼女達の使い魔とも…… 数日後 「ニューさん、ニューさん」 小声で自分の名を呼ぶ声は、自分と親しい者の声であった。 彼は振り向き、声を現すかのように、物陰に隠れた少女を見つける。 「シエスタ、どうしたんだ?」 ニューの声を聞いて、彼女は何かを警戒するように近づく。 「ニューさん、この間の件なんですけど」 「ん?ああ、ルイズのお菓子の件か、何かあったのかい?」 この間の件を思い出し、シエスタに聞きそびれていた事を思い出す。 「それなん……」 会話の途中で、シエスタが止まる。 「シエスタ、どうしたの?」 ニューの疑問を、彼の声では無い物が代弁する。 「ミス・ヴァリエール……」 彼女の顔から色が消える。 ニューが振り向くとそこには、昼食を終えたらしいルイズが居た。 「シエスタ、ちょうど良かった。午後からあなたに、お菓子作り手伝ってもらいたかったの」 どうやら、ルイズはシエスタにお菓子作りの手伝ってもらいに来たらしい。 シエスタの回答を待たず、ルイズはシエスタの手を掴み、厨房へと行こうとする。 「これから、お菓子作りの練習か?」 「そう、リハーサルも兼ねて……」 ニューの方に向きなおり、ルイズが笑顔で応じる。 初めて見た時の様な、ニューにあまり見せた事がない、華やかな笑顔であった。 そのまま、彼女達はニューの視界から消えて行った。 「随分、大袈裟だな……まぁ、シエスタが言ったからって、 ルイズが食べれる物を作るのは大変そうだよな」 結局、ニューは珍しく午後の時間をコルベールの所で過ごした。 意外な事に二人の会話は弾んだ。 少なくとも、ニューが日の暮れた事に気づかなければ、ずっと喋って居た。 夕食を取ろうと思い、食堂に向かう。しかし、ルイズは居らず。 たまたま、そこに居たケティとミリーナの近くの席に座る事にした。 しばらくすると、ニューが何かにぼんやりと気づく。 「そう言えば、最近、料理にハシバミ草出ないな」 付け合わせ等に使われる香草が、ここ数日無い事に気づく。 最初気付かずに食べてしまい、文字通り苦い思いをしただけに、食事の時に何気に注意を払う癖がニューには出来ていた。 「なんでも最近、仕入れたハシバミ草が無くなっているそうですよ」 ソテーにつけられたグリーンピースと格闘しながら、ミリーナは答える。 「まぁ、あまり好で食べる生徒が居ないですからね、ミス・タバサくらいじゃないですか?」 「タバサか……そう言えばここ数日、タバサ達やキュルケ達に会っていないな」 ここ最近、彼女達と会っていない事に気づく。 しかし、外国の留学生である彼女達なら、何かしらの理由で帰省する事くらいあるだろう。 「へぇ、珍しいですね、六人一緒のイメージが強いのに」 何かと目配せをしたケティが話に加わる。 ニュー達は六人で一つの認識らしい。 視線の先には、複数の男達がこちらを――主にケティの方を見ている。 「そう言えば、聞きました? ここ最近、夜になると女子寮の地下から悲鳴が聞こえてくるんですよ」 ミリーナが話題を変える。 どうやら、一番喋りたかった話題を切り出せて先程より勢いがある。 しかし、二人の反応は彼女の勢いに追随する者は無かった。 「まぁ有りがちだな、典型的な怪談話だろう」 「怖い話なんかしないでよ、だいたい、地下はただの物置じゃない、反省室は別の所で数十年前に無くなった筈よ」 ニューは心理的、ケティは知識と情報面でミリーナの話を一笑する。 「なんですか! 二人とも面白くないですね」 せっかくの話題をあっさりと終了させられミリーナが顔をふくらませる。 「まぁ、そう言わないでくれ。その手の話は何処にでも有るのだし。 私の居た所でも、夜になると異国の甲冑をきた騎士の霊が現れて、倒すと絶大な力を持った剣を与えられると言われるのがあるからな」 「怪談と言うよりも、それは辺境に居るドラゴンの類ですよ」 ニューの話を聞いて、ケティが感想を述べる。 結局、ルイズは現れなかった。 二人と別れ、ルイズの部屋に戻る途中、タバサの部屋から声が聞こえた。 二人が帰って来たのか?そう思い、ニューは部屋をノックする。 返事がない。しかし、ドアに近づくと声の原因は解った。 「おい、ニュー、そこにいるのか!? 生きているか?」 声の主は、普段、タバサの部屋に置かれているデルフリンガーの物であった。 「デルフかどうした?」 「誰も居ないか?居ないならすぐに入れ」 デルフが緊張した声で、指示する。 ドアノブを回すと小気味よい音がする。どうやら、開いているようだ。 部屋の片隅にデルフはいた。 「どうした、そんなに慌てて、二人に置いて行かれたのか」 ニューの軽口に対しても、デルフは緊張を解かなかった。 「そんなんじゃねぇ、いいかニュー! 相棒は……」 デルフの言葉は途切れる。 彼女はそこに居た。 「タバサ?」 青い髪の少女は、この部屋の主だった。 彼女は、いつも通りの無表情をニューに向ける。 「何しているの?」 おかしな言葉では無かった。 「デルフに呼ばれてな、そう言えばゼータを知らないか?」 「知っている、シルフィードと一緒」 タバサの無表情は変わらなかった。 その中で、一瞬、デルフが震えた気がするが、気にしない振りをする。 「そうか、ちゃんと授業に出た方がいいぞ、コルベール先生が君達の出席日数のことを気にしていたから」 「……わかった」 そう頷いたタバサの横を、ニューは通り抜けた。 そして、そのまま部屋を出て、ニューは一息ついた。 「……で、結局探検する事になったじゃないですか」 「気になったんだ」 さほど広くない、暗い空間に似合わない声が響く。 次の日、三人は女子寮の地下に居た。 “地下に行け” 昨晩、タバサの部屋を出る時、ニューにしか聞こえない声で得言った言葉が引っ掛かる。 地下――何となく、二人との会話で連想した場所を思い出す。 しかし、中は案外広く場所が分からないので、とりあえず、二人を探索に誘った。 「デルフがあんな態度を取るのが珍しかったんでね、何かあるんじゃないかって」 デルフが、何故そのような事を言ったのか解らなかったが、ここ数日の気になる気持ちを少しでもうやむやにしたかった。 「怖い事言わないでください、この地下はずっと物置だったんですよ」 ケティが辺りを見回しながら、歩く。 暗いと言っても、所々にランプがある為、視界がない訳では無い。 しかし、簡単に終了するすると思っていたが、思いのほか広く暗い空間に少し怯え気味だ。 実際には、物置と言うだけあり、部屋の中に備品が置いてあるだけで、変わったものは無かった。 「次はここですね」 ミリーナが、次の部屋のドアを発見する。 「他のドアより、綺麗だな」 そのドアは比較的新しくできたらしく、他のと比べて、暗い中でも真新しさを感じられた。 「地下は増築されていますからね、多分作られて、まだ、間もないんですよ」 そう言って、三人は中に入った。 部屋の中は、今まで見て来た部屋と何ら変わりなかった。 「……特に何にもないですね」 ケティがおっかなびっくりに応える。 部屋を見回すが、確かに変わったものがある訳では無い。 「そうだな……ん、これは?」 近くの机に手を置いた時、ニューは何かに気づく。 「どうかしました?」 「なにか、触った気がするんだ、ん、これは……」 「あ、ハシバミ草ですよ、これ!」 切れ端程度なので解らなかったが、ミリーナの指摘を受けそれに気が付く。 解りづらいが、それは、確かにハシバミ草であった。 「……なんでこんな所に?」 「あ、解りました、きっとハシバミ草を盗んだ犯人が、ここで1人ハシバミ草パーティーを開いていたんだわ」 「んなわけないでしょっ!けど、本当に何でこんな所にあるんですかね?」 ミリーナの指摘の後の、目的は確かに気になる。 「冗談よ、けど、確かに……ん、今そこ何か動きましたわ!」 ケティが、突然何かを感じたらしく、一歩後ずさる。 その方向の先には、ずた袋が数個あった。 (ネズミでもいるのか?) 非常食でもあるのか?そんな軽い気持ちでずた袋を開ける。 ニューはそこで固まった。 「何かありま……」 なにも反応のない、ニューを見て、ミリーナも中から覗き込み、そして、固まった。 ケティはそんな二人のリアクションを疑問に思い、遠くから聞き返す。 「な、なんですの?もしかして、ネズミ?もしくはアタッチメント式多脚間接ムカデ?」 指摘したくなるような長ったらしい名前も、二人の反応を呼び起こす事は出来ない。 しかし、彼は疑問に答えるように袋を開けた。 ……そして、ケティもすべて理解した。 袋の中には、シルフィードと一緒に居る筈のゼータの姿があった。 「きゃぁぁぁ!」 真っ先に反応するケティは感受性が豊かだった。 「な、何ですかこれは!?」 心中で叫び続けたミリーナの声にならない声が、やっと世界に届く。 ゼータはロープで縛られて、何か紙を張り付けられていた。 それはこう書かれていた“砥石 竜の爪等、ご自由におとぎ下さい” 良く見ると、ゼータの全身は爪跡で無数の傷が刻まれている。 そして、小声で何かを繰り返し呟いている。 「ハシバミ草おいしいハシバミ草おいしいハシバミ草おいしいハシバミ草おいしいハシバミ草 おいしいハシバミ草おいしいハシバミ草おいしいハシバミ草おいしい…………」 ゼータはこの世界に居なかった。 (そうか、そうだったのか……) ニューはある答えにたどり着こうとしていた。 気になって、他の袋にも手をかける。 「ダブルゼータさん!」 ミリーナの叫びが、更に自分の考えを真相に近づける。 そこには、ゼータ同様にダブルゼータが居た。 紙にはこう書いてあった“接待中 ご予約はお早めに” ダブルゼータはゼータとは逆に見た目的には異常はないように見えた。 しかし、ある事に気づく。 「……キスマーク?」 ダブルゼータには、かなり大きな唇の跡が無数に刻まれていた。 「もじゃもじゃ……顔に当たる……いや……やめて……」 震えている。何かからの恐怖で 何があったのか聞くべく二人にリカバーをかけてみるが、反応は薄い。 そして、二人に反応するかのように、最後の袋が動いた。 (まさか!!) そう思い、望みを託し袋を開ける。 だが、ニューの願いは届かなかった。 そこには、頬が痩せこけて、目の焦点が合わないシエスタが居た。 彼女にも紙が貼られていた“試食中 他の方も是非ご賞味ください” 彼女も震えていた。しかし、他の二人よりまだ日が浅いのだろう。 服の汚れ具合が、まだ汚れていなかった。 「シエスタ、しっかりしろ!リカバー」 まだ助かるんじゃないか? そう思い彼女を正気に戻すよう魔法をかける。 「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめはっ!ここは……あっ、ニューさん!」 正気に戻ったシエスタが、ニューを視線に入れる。 最初は嬉しそうであったが、直に顔を蒼白にする。 「ニューさん、逃げて下さい! 殺されちゃいます!」 「……ああ、解ってる」 もはや、何もかもが理解できた。 思えば、それは巧妙であった。 少なくとも沈みゆく船に居る事に、最後までニューは気付かなかった。 そして、鈍い衝撃で意識が消える。現実と別れを告げる。 「ニューさん!」 現実に居るミリーナは、地面に落ちたニューを直撃した石に目を移す。 そして、それはやって来た。 「……あら、こんな所に居るなんて駄目じゃない、ここは用が無い時以外は立ち入り禁止よ」 ……逃げ遅れた、無意識に旅立った彼に事実を伝える声は無情であった。 「……ミス・ヴァリエール……」 声の主はこの世界で最も慣れ親しんだ者であった。 ルイズは部屋の入口に居た。 そして、その脇には、燃える様な赤い髪と冷たい水の様な青い髪の少女達もいた。 「駄目よ、あなた達、ここは関係者以外は立ち入り禁止よ」 キュルケがここに似てはいけない事を促す。 「ミス・ヴァリエール、これは一体どういったことなんですか!なんで、三人がこんな目に!?」 ケティは残酷な殺人鬼を非難する様な悲鳴をあげる。 「あなた達、虐待か何か勘違いしていない? これは、使い魔に対する奉仕よ」 キュルケは事も無げに言う。 奉仕? この、何かに怯える事など、想像がつかないようなダブルゼータが? 二人には話が繋がらなかった。 しかし、ニューが直前に助けた少女はすべてを理解していた。 「聞かれていたんですよ、あの時から始まっていたんです」 説明と言うよりも、独白、まるで罪を懺悔する様に彼女の声が室内に響く。 それでも、二人には話がいまだ伝わらない。 「話が伝わりません、一体どういう事なんですか?」 それを聞いてルイズは笑顔を浮かべる。それは、見た事も無いほど綺麗な笑顔だった。 楽しいと言う感情も、何かを取りつく為に浮かべる物でも無い。 世界の醜悪すらも全てを祝福するかのような、優しい微笑みで有った。 「私ね、ニューが食べて美味しいって言ってくれた時、凄く嬉しかったの。 しかも、よっぽど嬉しかったのか三人とシエスタで宴を開く位だから。 そしたら、宴の中でニューが言ったの。 『ルイズの子守りを世話するくらいなら、騎士の従者の方が十倍は楽だね』って。 私は最初怒ろうと思ったんだけど、でもね、私思う事があったの。 多分罰を与えたとしてもニューは自分の事を認めてくれないだろうって。 だからね、私、ニューにちゃんと私の事を主と認めてもらいたくて、お菓子を作る事にしたの。 シエスタも喜んで協力してくれたわ、だって、私のお菓子をちゃんと食べてくれたんだもの」 ルイズが長い独白を終える。 このプライドの高い少女が怒り以外でここまで素直な感情を出す事など考えられなかったが、二人にはどうでも良かった。 ルイズの独白などよりも、お菓子と言う単語にシエスタが拒絶の表情を浮かべた事が全てを伝えてくれる。 今度はキュルケが前に出る。 女の艶を凝縮したこの美女が、慈母の様な暖かすら感じる。 「私もダブルゼータが使い魔になってから、殿方と交わる機会が少なくなってしまったわ。 彼といるとムードもあったもんじゃないし、それに、並の男に対して興味が無くなるの。 ダブルゼータってどんな男よりも面白いから、一緒に居ると男が嫉妬して寄り付かなくなるのよ」 学院の女王として恋愛事情を一手に引き受けたキュルケの事は、ミリーナも知っていた。 しかし、最近ではケティが恋愛事情の的になり、キュルケの事を時代が終わった等と揶揄する輩がいるのも解っていた。 その原因の一つが、彼女の艶を掻き消すかのような存在のダブルゼータであった。 キュルケは続ける。 「でもね、気が付いたの。 ダブルゼータって意外にさびしがり屋だから、私の事を取られたくないかも知れないんだって。 そう思うと愛おしくて、私も何かしてあげなくちゃって思って、知り合いに頼んで特別な接待をして貰ったの」 「やめてくれ、胸毛は嫌、胸毛は嫌、何で分身しているの? 従妹? いや、質量を持った残像なんてもっと嫌! 椅子にくくりつけないで、膝の上に座らないで。嫌、頬に当たる。 髭が、髭が当た……」 接待と言う単語に何やら、特殊な女性の言葉がダブルゼータの口から洩れる。 「『魅惑の妖精亭』って言うの。そこの店長のマドモアゼル・スカロンとマドモアゼル・マカロンに特別にお願いして接待して貰ったの。『もかもか、もじゃもじゃコース』って言うの」 キュルケの独白も終わり、今度はタバサが出る。 「ムラサキヨモギはおいしい、もっと知ってもらいたい」 先の二人と違い簡潔な言葉と共に、2本の瓶とグラスを取り出す。 「ハシバミ草も好き、食わず嫌いは駄目」 そう言って、タバサが二人の前に瓶の中身を注ぐ。 飲みたくは無かったが、話を円滑に進める上で、二人はそれを飲み干す。 喉に苦みを凝縮された様な味が気管を通り抜ける。 吐き出したら、何が起きるか分からない。 涙すら出す事も許されないような気がして、お互いが心の中で励まし合う。 「美味しさを解って貰う為に、ゼータの好きなお酒にしてみた」 その言葉を聞いて、グラスを見る。 匂いを嗅ぐと確かに、ハシバミ草の匂いがした。 「さて、私達これからニューに対して奉仕をしなくちゃいけないの。 後、シエスタにも日頃のお礼をしようとおもってるの」 そう言って、ルイズは手のトレイを開ける。 中にはシンプルなタルトが乗せられている。 ただ、二人は食べてみたいとは思わなかった。 「悪いけど、あなた達は出て行ってくれる? それとも、ニューの分も欲しいの?」 気が付いたら、ミリーナの部屋に居た。 駆け出した。 ただ、それすらも覚えていない位走ったのだろう。 ケティを見る。 彼女の顔も自分と同じ顔をしているのだろう。 その日、昔みたいに二人は一緒のベッドで寝た。 家庭教師に初恋した話も、将来の事を語り合った思い出も、今日の出来事で消えうせるだろう。 地下の音は聞こえない。 ニューとシエスタの声が聞こえるような気がした。 二人は忘れる事にした。 数日後、何やら誓約書らしき物を首に掲げたニュー達を見かけたが、何かやらかしたのだろうか? 原因を自分達は知っているような気がする。ケティに言ったが、彼女は知らないと笑っていた。 たぶん自分の気のせいだろう、ケーキを見て何故か恐怖感を覚えたが、日常は変わらない。 また数日後、今度は金髪の気障そうな少年が鎖をつけて巻き髪の少女に引っ張られている。 ケティはその少年につけられたキスマークをどこかで見たような気がした。 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは後世の子供達から、絶大な知名度を誇る。 偉大なるメイジ「虚無のルイズ」が異世界の使い魔に自身の手作りケーキを食べさせて、 絶対の忠誠を誓わせた事から、「感謝の日」はこう呼ばれている。 「制裁の日」と…… 日頃悪い事をしてきた子供は、感謝の日にお仕置きケーキを食べさせられる。 ルイズの名前は、ハルケギニアの子供達にとって恐怖の対象であった。 「仲間が欲しいのなら、やる事が違うだろ!」 キャプテンガンダムVS完全悪大将軍 ジョセフ 今、決着の時! 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前ページ次ページ虚無の魔術師と黒蟻の使い魔 魔法権利を身につける。そう決めたルイズは、夕食が終ったあとの時間を魔術審議のための時間として充てることとした。 毎晩魔術審議を欠かさず行い、そして魔法権利を行使し魔術審議の成果を確認する。 はじめ、ルイズは己が天才かもしれないと思っていた。 本来たった一回の魔術審議で魔法権利を獲得するということはまず無いことだ。故に一回で魔法権利を獲得した己を、すわ天才かと思ったのだ。 たった一回の魔術審議で一匹とはいえ蟻を生み出せるようになったルイズは、己に魔法権利を扱うための才能が多大に与えられているのだと思ったのだ。 だがそれがどうにも違うようだということが、2回目以降の魔術審議でわかった。 2度目の魔術審議。ルイズは黒蟻の魔法ではなく、他の魔法権利を獲得しようとした。次姉、カトレアを癒すための治癒の魔法を身につけようと思ったのだ。 だが、そう思い行った魔術審議は、前回とはまるで違う結果となった。 魔法権利を獲得できなかった、だけではない。茫洋として、権利獲得に近づいているという手ごたえがまるで無かった。 これはどういうことかと思い、ルイズは他の様々な魔法の魔術審議を試してみた。モッカニアの記憶にある、同僚の武装司書たちの魔法。 だが、そのどれもが同じ結果に終わる。 黒蟻の魔法以外で唯一成功したのは肉体強化のみ。 肉体強化は、武装司書なら程度の差はあれ誰でも使う。当然モッカニアも習得している。 どうやらモッカニアが習得した魔法のみ、並外れた速さで習得できるということらしい。 モッカニアと契約したからモッカニアの魔法権利を引き継いだ。ということだろうか。 一発で黒蟻を呼び出せるようになったのが、自分自身の才能によるものではなさそうだと判り、自分が天才なのかもしれないとぬか喜びしていたルイズは少し残念に思ったが、それほど落ち込みもしなかった。 本来、世界の公理に手を加えられるようになるには、1年程度かかるのが普通なのだ。 モッカニアの魔法限定とはいえ、いとも簡単に魔法権利を獲得できたのを僥倖と思うべきだろう。 ここでルイズに選択が迫られる。 このまま黒蟻の魔法を高めていくのか、それとも時間をかけて他の魔法権利を習得するか。 他の魔法とはすなわちカトレアを癒すための魔法。 ある程度時を必要とするだろうが、魔術審議を繰り返せば、モッカニアのもの以外の魔法も使えるようになるだろうとは思う。 だが、黒蟻の魔法と治癒。両方を身につけるのは不可能だろう。 モッカニアの記憶の中に、治癒の魔法を使う武装司書が一人いる。 ユーリ・ハムロー。 モッカニアの友人であり、モッカニアが心を病んだ後、最も次期館長代行に近いと言われたユキゾナ・ハムロー。その妹だ。 ユキゾナはその強大な力とは裏腹に、子供のころから病弱であった。武装司書になるまでの人生、そのほとんどをベッドの上で過ごしたらしい。 武装司書になってからも、ユーリがいなければその職務を果たすことはできないだろう。 そんなユキゾナがどうして武装司書になれたのか。 それはユキゾナとユーリの兄妹が、二人とも司書養成所に入る前から魔法権利を獲得していたためだ。 なぜ、養成所に入る前から魔法権利を習得していたのか。友人であるモッカニアにも、ユキゾナは語ろうとはしなかった。 とにかく、ユーリは兄を癒すための魔法を、ユキゾナは破壊のみを突き詰めたような魔法をすでに持っていた。 ベッドの上で過ごす人生で、ユキゾナがどうしてそんな力を手に入れたのかは分からないが、ユーリは間違いなく兄のためにその力を手に入れたのだろう。 そして司書養成所に入ってからも治癒の魔法を磨き続けた。 その才能のほとんどを治癒に費やしてしまったため、ユーリは肉体強化以外の戦闘向けの魔法は一切持たない。 あまり多くの魔法権利を手に入れることは、混沌に近づきすぎて命を落とすことにもなりかねない。ユーリにはこれ以上魔法権利を獲得する余裕がないのだ。 もっとも、さらに魔法権利を獲得する余裕があるとしても、ユーリの性格からしてそれも兄のために使うのだろうが……。 ルイズが治癒の魔法と黒蟻の魔法、両方を実用レベルで身につけようと思うなら、ユーリ以上の才能が必要となる。 さらに黒蟻の魔法にモッカニア自身のレベルを求めた場合、その上で治癒の魔法を使うにはモッカニア以上の才能が求められる。 それだけの才能があれば、文句なしで館長代行の地位に就けるだろう。 また、治癒の魔法一つに絞ったところで、やはりユーリ以上の才能は欲しい。 魔法の才能はあるが体の弱いユキゾナを、カトレアとどうしても重ねてしまう。 気になるのは、ユキゾナとカトレア、どちらの病が重いのだろうかということだ。 武装司書の激務をしていることを思えば、ユキゾナはカトレアに比べればよほど健康と思ってしまうが、ユキゾナには常にユーリが付いているのだ。 秘薬をもった水のメイジが常にサポートしているようなものだ。 やはり、どちらの病が重いというのは決め難い。 ユキゾナとカトレアの病が同程度のものと仮定した場合。 ユーリは常にユキゾナのそばにいながら、ユキゾナの病を完治させることはできないでいるのだ。 ならばルイズにはユーリを超える才能が必要だ。 侯爵家たるヴァリエールにとって、水のメイジと秘薬を確保するのは容易いことなのだ。その財力をもってトリステイン中から腕利きの水のメイジを招聘しているのだ。 カトレアの現状を改善しようと思うなら、潤沢な秘薬をもった水のスクウェア以上の力が必要になる。 ユーリの治癒の魔法も、秘薬が必要ないという点は称賛に値するが、水のスクウェアを超えるものとは思えない。 ルイズに果たしてユーリを超えるだけの才能があるのか? しかも、ルイズは16歳だ。 ユーリは司書養成所に入る前から魔法権利を持っていた。モッカニアの記憶によれば、ユキゾナが養成所に入ったのが15歳。ユーリは2つ年下で13。 つまりユーリは、どんなに遅くとも本来魔術審議を始めるはずの13歳以前に魔法権利を獲得しているということだ。そして13歳からは、養成所で正式な訓練を始めている。 現在16歳のルイズより3年以上早く治癒の魔法を習得し、磨いてきたことになる。 3年以上の遅れを追いつき、さらにそれを越えていくだけの才能。 そんなものが己に備わっていると思えるほど、ルイズは楽観的ではない。むしろ、今の今まで魔法の才能がないと言われて育ってきたのだ。 しかし、黒蟻の魔法。 こちらの魔法は、今すぐにでも使うことができる。 そして、モッカニアの魔法権利を引き継いだというのなら、最終的にモッカニアと同じレベルにまで到達できる可能性がある。 世界最強と言われるレベルにまで達することができるかもしれない。 結局、ルイズは黒蟻の魔法を選んだ。 己がユーリ以上の治癒の使い手になれるのかどうかという不安。 治癒を選んだ場合、やっと力を手に入れたと思ったのに、おそらく一年近くは魔法を使えないという点。 もし世界最強という力を手に入れることが叶えば、ヴァリエールの力をもってしてできないような「何か」ができるかもしれない。 そういったことを踏まえた上での決断だが、それらとは別にもう一つ思うところがあった。 ルイズが手に入れたのはモッカニアの才能だけではない。 モッカニアの『本』。モッカニアの記憶。すなわち情報。 『魔法権利を手に入れる方法』をルイズは知っているのだ。 軽はずみにできることではない。簡単にやっていいことでもない。 だが、この情報を誰かと共有するという選択肢が確かに存在する。 己はユーリを超える治癒の使い手になれないかもしれない。 だが、他の者は? もし百人が、皆、治癒の魔法を磨けば、一人ぐらいはユーリを超える存在が現れるのではないか? 貴族は駄目だろう。異端の力。しかも、治癒の魔法以外に手を出すなと言って従う者などいないだろう。 だが平民は? 系統魔法とは違う魔法権利。系統魔法は使えなくても、魔法権利は身につけることができるのではないか? 事実、自分がそうではないか。系統魔法はいまだ成功しない。 そしてモッカニアの世界では、魔法を使うのに血統など関係ない。才能は個人個人に与えられるのだ。 ルイズは、この考えはあくまで心の片隅にとどめておくこととした。 下手をすれば、貴族制の存続に関わりかねない危険な考えだ。 だが、心の片隅から、この考えが消えることもないだろう。 おそらくカトレアを癒すことを考えれば、有効な手であることに間違いないから。 召喚の儀式から5日が過ぎた。ルイズの日常はそれまでのものと微妙に変化していた。 だが、その変化はほんの些細なものであったため、周囲の誰も気づかない。 しかし、唯一人、キュルケだけはそのほんの些細な変化に気づいていた。 些細な変化。 ひとつは、食前の始祖への祈りを、今まで以上にまじめにするようになったこと。 二つ目。夕食の後すぐに部屋に戻るようになったこと。 そして最後に、メイドに何かを命じるとき、黒髪のメイドに優先的に声をかけるようになったこと。そして、そのメイドと短いが会話をするようになったこと。 どれも些細なこととは思うが、最後のメイドの件だけ、キュルケは少し気になった。 平民と仲良くするなど、今までのルイズからは考えられない。 「まさか魔法使うの諦めて、平民の仲間入りするなんて言わないわよね」 キュルケは呟く。 そんなことは認められない。私に断りもなく諦めるなど認めるものか。 この学院で唯一、キュルケだけがルイズの敵だ。 他の生徒は、幾らルイズをからかおうと腐そうと、彼らはルイズを敵とは思っていない。 彼らのそれは平民が貴族に対して陰口をするのと同じである。 彼らは既にヴァリエールという家名に敗北を認めている。 敵わないと認めているヴァリエールの、唯一の弱みといえるルイズで腹いせをしているだけである。 だがキュルケは違う。 ツェルプストーの者にとって、ヴァリエールの名は紛うことなき敵である。 入学したばかりの頃は、そういった理由から、とりあえずといった気持ちでルイズを敵としてみなしていた。 しかし今は違う。 ルイズの魔法の才能を知るにつれ、キュルケはルイズを敵ではないと認識した。敵に成りうるだけの力を持たないと認識した。 だが、ルイズはそうは思わなかった。 ルイズはキュルケの言葉の一つ一つに噛み付いた。ルイズは己がゼロでありながら、キュルケに対して真っ向から敵対した。 だからキュルケはルイズを敵として認めることにした。ルイズが敗北を認めない限り、ルイズには敵としての価値があると認めた。 「貴族としての意地だけで生きてるようなもんなのに、それすら捨てちゃったらあんたに何が残るっていうの?」 キュルケはルイズを睨む。 ルイズは今日も黒髪のメイドと話している。 別段楽しそうにしているわけではないが、会話はそこそこに弾んでいるみたいだ。 「…………」 キュルケの視線を友人のタバサも追うが、特に興味もないので、すぐに視線を本へと戻した。 「シエスタ。またあの貴族の娘か?」 厨房で、シエスタは料理長のマルトーに声をかけられた。 昼休み。とはいえ貴族たちはほとんど昼食を終え、それぞれが好き勝手に過ごしている時間である。 ゆえに、厨房で働く使用人たちも少しずつ暇ができる時間帯でもある。 マルトーは手の空いた者から昼食を済ませるようにと指示しており、厨房に戻ってきたシエスタにもそう命じようとした。 しかしシエスタは戻ってくるなり、ケーキと紅茶の用意を始めたため、そこで先ほどの言葉が出た。 「まったく。どういう風の吹きまわしだが知れねえが、貴族の気まぐれには困ったもんだ。シエスタも迷惑だろ? なんだったら、あの娘の目につかないような所の仕事に回してやるぞ?」 マルトーは不機嫌そうに言う。 「迷惑とかそういうのはないですよ」 シエスタは苦笑いする。 「ミス・ヴァリエールがどうして私に声をかけてくださるのかよく解らないですけど、何か無茶なこと言ってくるわけでもないですし、あまりに忙しい時は他の手の空いてるメイドに声かけるようにしてくれますし。逆に……」 逆に声をかけられたおかげで少しさぼることもできると言おうとしたが、それは上司の前で言う言葉ではないと思い、その言葉は呑み込む。 シエスタはケーキと紅茶を乗せたワゴンを押しながら厨房を後にする。 「まぁ、なんにせよ貴族のやることだ。用心しておけよ。いつ手のひら返して難癖つけてくるかもしれねえからな」 シエスタの背中に向けてマルトーは言った。 ルイズはシエスタの戻ってくるのをぼんやりと待っていた。 今日はどんな話題を振ろうか、そんなことを考えながら。 シエスタに異端云々の話をしたのはやりすぎだった。今にして思う。 だからこそ、あれ以来毎日のように声をかけるようにした。そして他愛のない話題を振る。 『一万エキュー拾ったらどうするか』『青と水色、より涼しいのはどちらか』『レモンを生でかじれるか』『ハシバミ草のおいしい調理法』など、特に意味のない会話を繰り広げる。 ルイズがシエスタを捕まえて他愛のない会話をする。それを日常にすることで、あの会話も日常の一つに埋没させようという心算だ。 だがそれとは別に、シエスタとの会話を純粋に楽しいと思うルイズもいる。 クラスメイトとほとんど会話をしないルイズにとって、久しぶりに得た日常的に会話を交わす存在である。 例えそれが平民であろうと、シエスタとの会話は心休まる時間になりつつある。 ルイズは最近考え事をする時間が多い。 今までも、人と交わらない分いろいろと考え事をしていることが多かったが、それは考えているのではなかったと今は思う。 結局ルイズが考えていたのは、自分が魔法を使えないということと、それに付随するあれやこれや。そんなものは疾うに一通り考えつくしてしまっている。 考えているように見えて、過去の考えをなぞるだけの作業にすぎなかった。 結局、誰とも交わらず自分だけで完結しているくせに、その自分がいつまでも魔法を使えないまま変化をしなかったのだから、新しい思考を生み出すなどということはあり得なかったのだ。 今は、モッカニアの『本』、日々の魔術審議、そしてシエスタとの会話から新しい刺激を受け、そしてそれが新しい思考を生み出している。 貴族足らんという思いを常に抱いて生きてきたルイズが、最近特に思うのはその貴族というものについてである。 シエスタと何度か会話し、多少気心が知れてきたと思う。だが、どんなに会話が弾んでも、シエスタがきちんと身分の違いを弁えた言動からはずれることはない。 それは本来、至極当たり前のことではあるのだが、今のルイズはその当たり前にも少し疑問を持つようになった。 モッカニアの『本』には、世界最大の大国であるイスモをはじめ、貴族のいない国がいくつか存在する。 それらの国は民主主義というルイズにとって未知の政治形態をとり、貴族が政治を行うのではなく、国民の投票によって選ばれた者たちが代表して政治を執り行う。 つまり、投票という形ですべての国民が政治に対する一定の影響力を持っているのである。 ルイズにはいまいち理解できない制度であるが、民主主義こそが理想とする声も彼の世界では大きい。 ルイズの、ハルケギニアの価値観なら、魔法という軍事力を持ち、領地の統治のための教育を幼少から受けている貴族が政治を執り行うことが正しいとされている。 民主主義における、政治の知識のない者まで政治に対して影響力を持つという仕組みは、余計な混乱をもたらすだけではないかとルイズは思う。 一方、貴族が政治を執り行う国もある。 モッカニアの生まれ育ったロナ公国などがそれだ。 だが、こちらの貴族はハルケギニアのそれとは違い、魔法を使えるわけではない。 魔法権利は、貴族でも平民でも、魔術審議をしっかり行った者に与えられるのだ。そこに身分は関係ない。 むしろ、貴族は武装司書のような魔法を使う仕事を下賤な仕事とみている節がある。 これもルイズにはいまいち理解できない。 貴族は平民の使えない魔法を使うという絶対的な優秀性があるからこそ、そうではない平民たちを支配するに足るのではないか? もしそうでないのなら、貴族足らんとし、魔法の使えない己を恥じ、只管に魔法の練習を繰り返してきた自分は何なのだろうか? つまり貴族にとって肝要なのは、人の上に立つに足る優秀性であり、その優秀性が必ずしも魔法である必要はないということか。 それはゲルマニアの考えに近い。トリステインの貴族が野蛮と断ずるゲルマニア。彼の国では金を稼ぐことに優秀であればメイジでなくても貴族になれる。 ルイズは貴族として恥じない存在になりたいと常々思ってきた。それは、とにかく平民の上に立つだけの優秀性を手に入れればいいのか? いや違う。 それでは足りない。 ただ優秀ならば、強ければそれでいいというのなら、モッカニアはあんな死に方をしなかった。 モッカニアの父親は貴族だった。貴族として、統治者として優秀かどうかはモッカニアの視点からいまいちはかり知ることができない。 ただ、貴族としての権力という力を持った強い存在ではある。 対してモッカニアの母親、レナス・フルール。彼女は弱かった。 領主であるモッカニアの父の気まぐれによって孕まされ、女手ひとつでモッカニアを育てたが、終には貧しさの中で死んだ。 その後モッカニアは父に引き取られ、裕福な暮らしの中で貴人としての教育を受けた。だが、やがては家を飛び出し、そして武装司書になった。 モッカニアにとって母と過ごした時間は、貧しくとも大切な思い出である。 だが、父と過ごした時間は、ただただ苦痛でしかなかった。 モッカニアの『本』を通したルイズからは、モッカニアの父はモッカニアやレナスを苦しめるだけの存在にしか思えない。 領主の権力をかさにレナスを手篭めにし、そしてレナスは貧しさの中女手一つでモッカニアを育てることになる。 たとえどれほど為政者として優秀だったとしても、モッカニアの父を貴族として認めたくはない。 トリステインにも、モット伯という、権力をかさに平民の娘を手篭めにする貴族がいる。 彼らのしていることは下種そのものだとルイズは思う。貴族としての誇りを著しく傷つけるものだ。 つまり大切なのは誇りか。 貴族の誇りに恥じないような行いをすることこそが、真に貴族として必要な資質か。 貴族としての誇りを守るために行動し、そしてそれに足るだけの力を持つ。それが貴族ということ。 ルイズはひとまずそう結論した。 シエスタがケーキを持ってやって来た。 ルイズはそれを確認すると、自分の膝の上にハンカチを広げた。そして、こっそりと蟻を一匹呼び出し、ハンカチの上に置く。他の者からはテーブルの陰になって見えないだろう。 魔法権利を獲得してから、日常的に蟻を呼び出すようにしている。 魔術審議は己が魔法を使うことをより強く想像することが重要だ。そのため普段から魔法を使って、魔法を使う自分に慣れ親しんでおくことは、権利をより強くするのに役に立つ。 シエスタはケーキをルイズの前に置くと紅茶の用意をする。 ルイズはシエスタの視線が紅茶のほうに向いているうちに、ケーキをフォークで少し崩し、一かけらハンカチの上に置く。 そして、呼び出した蟻にそれを食べさせる。 食べさせるということ自体には意味はない。定期的に食料を与えなくては呼び出せなくなるということもない。呼び出すたびに新しい蟻が生まれ、以前呼び出した蟻の腹が満たされていようと、新しく呼び出した蟻には関係ない。 ただ、使い魔であるモッカニアの『本』が食事の世話も何も必要ないため、蟻に餌を与えることで、使い魔気分を味わっている。 そして、蟻を使い魔のように扱う代わりに、モッカニアの『本』は持ち歩かなくなった。何かの拍子に破損してしまうことを心配してということもあるし、『本』のことが誰かにばれてしまうのを防ぐためでもある。 モッカニアの『本』は柔らかな布に幾重にも包まれ、二重底になった宝石箱にしまわれている。 『本』は破損してしまうとその情報が大きく失われてしまう。全てのかけらを集めても、元の『本』一冊分の情報には到底届かないのだ。 普段は厳重に保管しておき、必要なときだけ取り出すようにするべきだろうと判断した。 「どうぞ」 シエスタがルイズの前に紅茶を置く。 「おいしい」 ルイズは一口啜ると呟いた。 話し相手云々を置いてもシエスタばかりに声をかけるというのは悪くないことだと、淹れられた紅茶の一口目を飲むたびに思う。 シエスタはルイズの好む温度、味を完全に把握している。 毎回、その時その時に目に付いたメイドに頼んでいたのではこうはいかないだろう。 メイドは一般的に理想とされる紅茶の入れ方を教育されてはいるのだろうが、必ずしもそれがルイズにとっての理想とは限らない。 「シエスタの入れてくれる紅茶が学院で一番おいしいわ」 「ありがとうございます」 シエスタはそう言うと、少し照れたようにはにかんだ。 貴族の令嬢のするような高貴さや品を湛えた笑みとは違うが、素直でかわいらしい笑みだとルイズは思う。 さて、どんな話題を振ったものか。 ルイズはきょろきょろとあたりを見渡す。 「香水……」 ふと頭によぎった単語をルイズはそのまま言葉にする。 「シエスタはどんな香りの香水が好き?」 ルイズはそれほど香水には拘らない性質だが、香水という単語がふと口をついてしまったため、そのまま質問することにした。 「香水……ですか? 私は普段使わないのでなんとも言えませんけれど……」 シエスタが少し困ったような顔で小首をかしげる。 「ただそうですね。薄荷とか、そういったさわやかな香りは好きですね」 「あぁ、そう……」 シエスタの答えを聞きながらも、ルイズはしまったなと内心で舌打ちする。 香水は高級品であり贅沢品だ。平民であるシエスタにとっては馴染みの薄いものである。 (どうしてこんな話振っちゃったのよ。自分もそれほど興味ないし、シエスタにも縁遠い物だってのに……) 会話の内容など他愛のないものでよいとはいえ、まるで広がりようのない話題を振ってしまったことに少しばつの悪さを覚えるルイズ。 それを誤魔化す様にまた周囲に目をやる。 そこではたと気づく。 「香水だわ……」 「香水ですか?」 ルイズの呟きに、シエスタは小首をかしげながら鸚鵡返しする。 「香水が落ちてるのよ、そこに。なんで香水のことが頭をよぎったのかと思ったら……」 シエスタがルイズの視線を追うと、確かにそこには紫色の香水壜が落ちていた。 「あれは……モンモランシーのかしら」 モンモランシーはルイズのクラスメイトで、その二つ名は『香水』。二つ名の通り香水の調合を得意とするメイジである。 (だけど……) モンモランシーを探すと、香水からは微妙に離れた位置にいる。 そして、 「ギーシュがすぐ近くにいるし、ギーシュが落としたのね」 そう結論付ける。 ギーシュとモンモランシーは何かと仲を噂される関係である。 大方、モンモランシーがギーシュに香水をプレゼントでもしたのだろう。 「仕様がないわね。あんなとこに落っことして、誰かが気づかずに香水ぶち撒けでもしたら大変だわ」 ルイズはそう言うと、立ち上がろうとする。 だが、それをシエスタが制する。 「ミス・ヴァリエール。私がミスタ・グラモンに渡しておきますので、どうぞごゆっくりしていてください」 シエスタはルイズに一礼すると、ギーシュの方へと歩いていった。 ルイズはその背中を見送る。その表情は少し寂しげだ。 シエスタはギーシュに香水を渡したら、そのまま厨房に戻ってしまうだろう。 まだろくに会話していない。何かもっと話をしたい、と思いはするが、話をしたいから戻って来いと言うのはルイズのプライドが許さない。 あくまでルイズは用を言付けるついでに話をするのだ。 (あーあ……) ルイズは心の中でため息を吐くと、目の前のケーキにフォークを刺した。 「オールド・オスマン。大変です!」 学院長室のドアがコルベールによって勢い良く開かれた。 「んが、ぐぐ」 院長のオスマンは、普段口うるさく注意してくる秘書のロングビルがいないのをいいことに水タバコをふかしていたが、突然勢い良く入ってきたコルベールに驚き、タバコにむせてしまった。 「げほっ……。なんじゃね、えーっと、ミスタ・コルトレーン」 「コルベールです! そんなことよりこれを見てください!」 「年寄りが咳き込んでるのも『そんなこと』かね。それはよっぽど大変なことなんだろうのぉ、ミスタ・コールター・オブ・ザ・ディーパーズ君」 咳き込みながらもコルベールに恨みがましい視線を送るオスマン。 その視線にたじろぎながらも、コルベールは一冊の本を差し出す。 「これを見てください、オールド・オスマン。そして私の名前はコルベールです」 その本を見て、オスマンの表情がにわかに真剣味を帯びる。 古今のさまざまな書物が魔法学院には収められているが、それらの中でも一際古いものであろうと一目で判る装丁。『始祖ブリミルの使い魔たち』とタイトルが振られている。 「2年生の使い魔召喚が終わって日も浅いこのタイミングで、そんな本を引っ張り出してくるということは、つまり、そういうことかのう」 「はい。生徒が呼び出した使い魔の中に、この書に記されている『ガンダールヴ』のルーンと同じルーンが刻まれたものがいまして……」 オスマンは背もたれに身を預け、「ふむ」と一つ嘆息する。 「『ガンダールヴ』のう……。確か、あらゆる武器を使いこなし、詠唱中のブリミルを守ったという……。本当だとしたら大事よの」 オスマンの言葉には多少の疑意が滲んでいる。コルベールの期待していた反応とはいささか異なる。 「本当ですよ! この書物に記されているルーンと同一のものに間違いありません!」 それに反論するコルベール。 「それでは聞かせて欲しいのじゃがの。その『ガンダールヴ』は誰の使い魔で、どういった生き物なんじゃ? 武器を使うというからには人に近い形をしていると思うんじゃが……」 オスマンが言う。 コルベールはその言葉からオスマンの反応がなぜ薄いのかを悟る。 もし生徒の中に、亜人のような人型に近い種族を呼び出したものがいれば、疾うに教員中に知れ渡っているだろう。亜人を呼び出した例は皆無ではないが、レアなケースなのである。 オスマンの反応は、今年呼び出された使い魔にそういった、武器を使えるような生き物がいないことを踏まえたうえでの反応だったのだ。 コルベールは苦々しい顔で口を開く。 「呼び出したのはルイズ・ヴァリエール。使い魔の種族は……石ころです」 コルベールの言葉にオスマンは目を丸くする。 「そうか。報告は受けておったが、その石ころか……。石ころがどう武器を使うのかという話じゃ。わしはそれこそ『ガンダールヴ』なら、亜人どころか人間でもいい思うのう。 武器というのは人間が使うように作られたものなのじゃから。なんにせよ、石ころじゃぁのう」 「しかし、この本には……」 なおも食い下がろうとするコルベール。 「始祖関連の書物は真贋の怪しいものばかりじゃ。まぁ、その本を疑うのが一番妥当じゃろ」 オスマンの言葉にコルベールはがくりと肩を落とす。 その様子を見てオスマンはやれやれといった調子でため息を吐く。 「じゃがの。そう結論するのもいささか早計での」 「はい?」 「考えなきゃならんのは、もしその本の記述が正しかったら、石ころに刻まれたルーンが『ガンダールヴ』のものに間違いなかったらということじゃ」 オスマンの言葉に、コルベールは何を言わんとしているのか理解できず呆けた顔をする。 「しかし、先程オールド・オスマン自身が仰ったように、石ころでは武器など扱いようもないではないですか」 「よおっく考えるんじゃぞ。使い魔はルーンを刻まれたのであって、刻むのはメイジのコントラクト・サーヴァントの魔法じゃろ。そして、そのヴァリエールの娘っ子は、魔法がまるで成功しないというんじゃろ」 オスマンの言葉を噛み砕くように考えるコルベール。 そして、その言わんとする意味を理解する。 「つまり、ミス・ヴァリエールにコントラクト・サーヴァントをされたものは『ガンダールブ』のルーンが刻まれるが、彼女はサモン・サーヴァントを失敗し、本来呼び出すべきものとは違うものを呼び出してしまった……」 「ま、そう考えることもできる、ということじゃ。本来呼び出すべきは人間かそれに類するものだったが、何の間違いか石ころが出てきてしまったと」 二人には知る由もないが、ルイズが召喚したのはモッカニアの『本』であり、それは人間の魂である。肉体こそ持たないものの人間を呼び出しているのである。 「しかしそうなるとミス・ヴァリエールは始祖と同じ使い魔をもつということになるわけで……つまり、始祖と同じ系統……」 「虚無の使い手……ということになるのう」 『虚無』という言葉に二人は口を噤み、しばし沈黙が流れる。 虚無系統の魔法の使い手は始祖ブリミル以来確認されておらず、もはや伝説である。軽はずみに言ってよいものではない。 「虚無だとしたら」 コルベールが口を開く。 「ミス・ヴァリエールは始祖の再来ということになります。王宮に報告するべきでは?」 「たわけ。まだ仮定の段階じゃ。それに虚無だとしてもそれを公表するかどうかはまた別じゃろ。それこそヴァリエール本人に対しても話すべきかどうか」 オスマンは苦い顔をする。 「なぜです?」 「ハルケギニアのどこに虚無の魔法を教えられる者がおる? 虚無だけど結局魔法は使えないなどと聞いても本人は虚しいだけじゃろ。 そして、アカデミーの連中。あやつらは虚無だけど魔法は使えない、で許すわけがなかろう。虚無を引き出すためなら人体実験でもなんでもするじゃろうな」 オスマンの言葉、特にアカデミーのくだりにコルベールの表情は露骨に歪む。 「なんにせよ、仮定の域をまるで出ない話じゃ。取り敢えずは裏付じゃな」 「そうですね。他の書物で『ガンダールヴ』のルーンが記載されてるものがないか調べて見ます」 「ふむ。それと、サモン・サーヴァントをやり直すというのも手じゃろ。もしガンダールヴなら、今度こそ人のようなものが呼び出されるかもしれん」 「確かに」 ここで、コルベールの表情が少し曇る。 「しかし、新しい使い魔を召喚するためには……。使い魔の召喚をしなおすために使い魔を殺す……いや、彼女の使い魔の場合は壊すですか? そんなことを生徒にさせるわけにはいきません」 「確かにの。じゃが、何も彼女自身にやらせることはなかろう。なぁに、ちょいと事故が起きればいいだけの話じゃ。別に生き物でもなし。石ころ一つ、壊したって罰は当たらんじゃろ」 「そうですね……。まぁ、彼女も石ころが使い魔では不満でしょうし……。多少のルール違反。そんなのもので彼女が気に病むことのないように、出来るだけ自然な事故が起こすようにしますか」 そう言って二人は苦笑いした。 「では、とりあえず私は時間を作って図書館でルーンについて調べてみます」 そう言ってコルベールは席を立とうとする。しかしその時院長室のドアがノックされる。 「失礼します」 入ってきたのはオスマンの秘書、ロングビルだった。 少しあせった様子のロングビルは部屋に入るなり口を開く。 「オールド・オスマン。生徒たちの間で決闘騒ぎが起きており、教師から眠りの鐘の使用許可が欲しいと……」 その言葉にオスマンは思わずため息を吐く。 つまるところ、喧嘩の仲裁のために宝物庫を開けて秘宝を使わせろというのだ。 「かーっ。全く、生徒の喧嘩なんぞに秘宝を使えるわけがなかろ。全く、情けない教師共じゃ。貴族の餓鬼共も、喧嘩する暇があったら魔法の修行でもしろというに。それで、どこのアホ貴族が喧嘩しとるんじゃ?」 「ギーシュ・ド・グラモンとルイズ・ヴァリエールです」 ロングビルの挙げた名前に、オスマンとコルベールは思わず顔を見合わせる。 「……まぁ、あれじゃ。放っておきなさい。あんまり大事になりそうだったら実力行使でとめりゃよい」 「かしこまりました」 ロングビルは深々と一礼すると部屋を出て行った。 「放っておいて良いのですか?」 コルベールの言葉をよそに、オスマンは学院の秘宝の一つ、遠見の鏡を取り出す。 「ヴァリエールの娘についてはこれから良く観察しとかなくちゃならんだろうからの。失敗魔法とやらに虚無のヒントがあるかもしれん」 「魔法を見るだけなら、決闘を止めて、また後で見ればよろしいのでは?」 「魔法を見るだけではない。場合によっては虚無なんていう得体の知れない力を持つようになる娘じゃ。どうして決闘なんぞするのか、性格的な部分。魔法が使えない、ほとんど無力とはいえ、なけなしの力をどう使うのか。そういったところも知っておくべきじゃろ」 オスマンはそう言うと、短くルーンを唱える。 すると鏡に生徒たちの輪が映し出される。その輪の中心には二人の生徒が向かい合っている。 「ほれ。お前さんも見ていきなさい」 コルベールは無言で鏡の見える位置へと移動する。 「ところで……。なぜ宝物庫にあるべき遠見の鏡がここにあるのですか?」 コルベールの言葉にオスマンはにやりと笑う。 「のう。経費削減のためにも女子寮や女子風呂にかけられておる魔法を妨害するあれやこれやはなくすべきだとは思わんかね」 「少しは悪びれたらどうです?」 前ページ次ページ虚無の魔術師と黒蟻の使い魔
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「・・・ギ・・・ギアッチョ・・・?」 何がなんだか分からなかった。どうして?どうしてギアッチョが?私を 笑いに来たんじゃないの?それなら何故?私との違いを見せ付けるため? それともただ暴れたいだけ・・・? ルイズの頭には疑問符が次から次へと浮かんでいた。ギアッチョの真意が 分からない。それを確かめようと、ルイズは恐る恐るギアッチョの顔を 見上げようと―― グイッ!! 「!?」 ルイズが顔を上げようとした瞬間、ギアッチョの手によってルイズの頭は 下に押し戻された。 「・・・出たんだろ?ルイズ このガキとぶつかった時に・・・『鼻血』がよォォ そんなみっともねーツラをこいつらに披露してやるこたぁねーぜ」 いつの間にか3人の周りには人だかりが出来ていた。そしてルイズは ハッと思い出した。自分の顔が、涙でぐしゃぐしゃだったことを。 本気だ。ギアッチョは、本気で私の為に行動してくれている。 ルイズはようやく気付いた。 ――ギアッチョは・・・私の味方なんだ・・・ こんなことになっても・・・ ギアッチョは味方でいてくれるんだ・・・! 我知らず起こる肩の震えを、ルイズは止めることが出来なかった。彼女の 宝石のような瞳から、今度こそ堰を切って溢れてきた涙と同様に。 「それで?そこのゼロのルイズの代わりに、平民の使い魔が僕の相手を 務めるっていうのかい?」 ギーシュはニヤニヤと笑ってギアッチョを見ている。 「さっきハッキリそう言ったはずだが・・・聞えなかったってワケか? え?マンモーニ ミミズを狩るのに獅子を使うのはちと贅沢だが・・・ 今回だけの特別サービスってことにしてやるぜ」 最初はヘラヘラ笑いながら聞いていたギーシュだが、次第に自分が 完全に下にみられていることに気付くと烈火の如く怒りだした。 「だッ・・・!誰がママっ子だって!?平民の分際でッ!よくも貴族に そんな口が利けたもんだね!!一つだけ言っておくが・・・決闘で 死んだとしてもそれは合法だ!!手加減してやるつもりだったが・・・ 無事にゼロの元へ戻れると思わないことだねッ!!」 ギーシュは忘れていた。昨日、自分達を縮み上がらせた彼の殺気を。 そしてルイズの爆発を恐れて遠巻きにサモン・サーヴァントを見ていた 彼には、ギアッチョがルイズを殺しかけたあの場面はせいぜい 「混乱した平民がゼロのルイズを押し倒した」程度にしか見えなかった のである。 ギアッチョが色をなくしたままの眼でギーシュを睨む。 「ならこっちも一つ聞くがよォォ~~ てめー『覚悟』はしてるん だろうなァ~~?オレを殺すつもりで来るってことはよォォ 逆に殺される『覚悟』は出来てるっつーワケだよなァァァ」 しかしギーシュは鼻で笑って答える。 「フン!覚悟だって?そんなものする必要はないね 何故なら 僕が負けるなんてことは万が一にも有り得ないからだ」 ギーシュの大見得にギャラリーがどっと笑う。 「そうだそうだ!」 「平民相手に遠慮するこたねーぞギーシュ!」 「身分の差ってものを教育してやれ!」 こいつらは――、とギアッチョは考えた。 ――こいつらの殆どは・・・昨日のことなんか見てもねぇし 覚えてもいねぇようだなァ~~・・・ 「ま、どっちだろーと関係ねーがな」 相手が化け物であろうと歩き始めたばかりの赤ん坊であろうと、 ギアッチョの「覚悟」に変わりはない。「覚悟」とは相手に合わせて コロコロ変えるものではない!ギアッチョはそう理解していた。 「今から5分後・・・ヴェストリの広場で待っている 言うまでもない 事だが――君が逃げれば君もゼロのルイズ同様直ちにこの 学院から退去してもらうよ せいぜい震えながらやってくるんだね」 ギーシュはそう言い放つと、ニヤニヤ笑いのまま去っていった。 ギーシュが去ると、3人を取り巻いていたギャラリーもギーシュと 一緒に広場へ向かっていった。 「ルイズ もういいぜ 頭を上げな」 ギアッチョが声をかけると、ルイズはごしごしと顔をこすって 立ち上がった。 「・・・ギアッチョ・・・」 ギアッチョは首をコキコキと鳴らしながら尋ねる。 「ルイズよォォ~ なんとかの広場ってのはどっちだ?」 「え・・・ あ、あっちよ ・・・あの、ギアッチョ・・・・・私」 ルイズが何か言おうとするが、 「話は後回しだ 5分後だからな・・・別にあいつをいくら待たせよーが 心は痛まねぇが 逃げたと思われるのも癪だからよォォ」 ギアッチョはそれを制して歩き出す。――逆の方向へと。 「・・・ギアッチョ?広場はあっち・・・」 「ルイズ おめーは先に行ってな オレはよォォ~ ちょっと 用事があるもんでな・・・ 待ってろ すぐにそっちに行く」 そうルイズに告げて、ギアッチョはどこかへ歩いていく。 「分かった ・・・待ってる」 もはやルイズは、万が一にもギアッチョの逃亡を疑わなかった。 私の為に戦ってくれるギアッチョの為に、自分に出来ることを しよう。ルイズはそう決意した。ギアッチョが戻ってくるまで、 逃げず、怯えず、うろたえず、ヴェストリの広場で待っていよう。 ルイズはスッと顔を上げると、広場に向かって駆け出した。 目的地に向かって歩くギアッチョの後ろから、「待ちなさい!」 という声がかかった。 「わりーが・・・後にしな 今は少々忙しいんでな」 しかし声の主はかまわず叫ぶ。 「あなたルイズをどうする気ッ!?」 その言葉を聞いて、ギアッチョはピタリと足を止めた。 「どうするつもりたぁ失礼なことを言うじゃあねーか ええ?おい」 肩越しに後ろを振り返ると、そこにいたのはあの赤髪の少女、 キュルケだった。 キュルケはさっきの騒ぎを最初から見ていた。二人の争いが いい加減ヤバくなってきたら仲裁に入るつもりだったのだが、 彼女の先を越して二人を仲裁したのは――更に酷いことになったが―― 意外にもギアッチョだったわけである。ルイズ共々殺されかけたキュルケが それを不審に思わぬはずはなかった。 「召喚されてそうそうあの子を殺しかけたと思ったら今度は 手のひら返したように責任を取るですって?」 キュルケは信じられないという風に首を振ると、キッとギアッチョを ねめつける。 「答えなさいッ!あなたは何者!?そしてルイズに何をする気!?」 ギアッチョはしばらくキュルケを見ていたが、やがて口を開いた。 「確か・・・てめーの家とルイズの家は・・・宿敵同士だと聞いたが」 「・・・あなた学校で習わなかったの?質問を質問で返すんじゃあ ないわッ!」 キュルケの眼は「マジ」だった。ギアッチョは小さく舌打ちをすると、 「オレが何者なのか・・・話してやってもいいが それには少々時間が 足りねーー 二つ目の質問にだけ答えてやる」 そう言うとギアッチョはキュルケに向き直る。 「答えは『別に何も』、だ ただし・・・これだけは言っておくぜ 命の恩人が侮辱されてるのを・・・黙って見ているバカはいねえ!」 「――!!」 昨日ルイズを殺そうとした男が、そして今日人目もはばからず 食堂で大暴れした男が、果たして本気で言っているのだろうか? キュルケには判断が出来なかった。ただ―― 「・・・今はその言葉で納得しておいてあげるわ」 もう少し様子を見てもいいか、とキュルケは思った。 「・・・あ、待って!」 再び背を向けて去ろうとするギアッチョに、キュルケは何かを 思い出したように声をかけた。ギアッチョは振り向かないが、 話を聞く意思だけはあるようだ。 「・・・用心なさい ギーシュはあんなのでもうちの学年じゃ かなりの上位に入る腕前よ」 ギアッチョがやられてしまえば、ルイズの人生はおしまいだ。 魔法が使えないまま使い魔を殺されて退学だなんて、ルイズで なくとも自殺を考えるほど最低最悪の事態である。しかし キュルケの忠告を、ギアッチョは鼻で笑って受け流す。 「フン・・・あのマンモーニが強かろーが弱かろーがよォォー オレには関係のないことだぜ」 「あなたフザけてるの!?ギーシュはナメてかかって勝てる 相手じゃ・・・」 「『覚悟』はッ!!」 ギアッチョはいきなり声を張り上げる。その大声にキュルケは 思わず身構えた。 「・・・オレの『覚悟』は・・・相手を選んだりはしねえーーッ! 相手がドラゴンだろーがウジ虫だろーがよォォ~~ オレは同じ 『覚悟』を持って戦いに挑むッ!!」 それだけ言うと、ギアッチョは圧倒されているキュルケを置いて 歩いていった。 「なんなの・・・あいつ・・・ 『覚悟』・・・・・・?」 「大丈夫」 突然聞えた声にキュルケが隣を見ると、いつの間に来ていたのか そこには透き通るような青い髪をした少女、タバサがいた。 「大丈夫・・・って?」 「昨日の戦闘」 タバサは短く言葉を繋ぐ。 「まだまだ力を隠してた」 「嘘でしょ・・・」 タバサの言葉は信頼出来る。キュルケは今更ながらギアッチョに 立ち向かった昨日の自分を思い出し、ゾクリと身震いした。 当たりをつけて覗いてみた食堂で、ギアッチョは目当ての 人物――シエスタを発見した。 「・・・あ、ギアッチョさん!ミス・ヴァリエールはご無事でしたか?」 メイド服の少女は食器を片付けながらギアッチョに声をかける。 デザートの配膳中にギーシュと言い争うルイズを発見し、いち早く ギアッチョに知らせたのはこのシエスタだった。 「ああ なーんにも問題はねえぜ」 「そうでしたか」 よかった、と答えて食器の片付けを続けるシエスタに、 「それはともかくよォォ~~ 一つ報告することがあってな」 ギアッチョは本題を切り出した。 「報告・・・ですか?」 「ああ まぁ大した話じゃないんだがよォォ~~~ 決闘することになった」 「・・・決闘・・・?」 ギアッチョの言った決闘の意味を量り切れないらしく、シエスタは オウム返しに同じ言葉を口にする。 「ええと・・・決闘って 誰と・・・誰がですか?」 「ああ? 誰ってオレに決まってるじゃあねーか 相手はルイズに 絡んでた・・・あー・・・そうだ、ギーシュとかいうマンモーニだ」 ・・・・・・。 どこかで見たような一瞬の沈黙の後、 ガッシャアアアアアアン!! シエスタの手から滑り落ちた3枚の皿が音を立てて砕けた。 「な、ななな何をやってるんですかギアッチョさんッ!! き、貴族と決闘だなんて 殺されてしまいます!!」 状況を理解した途端パニックに陥るシエスタをギアッチョは 片手で制して、 「落ち着けよシエスタよォォォ~~~ 死ぬのはギーシュの野郎 だぜ・・・それは決定してる オレが言いてーのはその話じゃあ ねーんだ」 口では軽く言っているが・・・ギアッチョは決して決闘を甘く見て いるわけではない。経過がどうなろうと、必ず「ギーシュを殺す」 という結果を出す。ギアッチョはそう「覚悟」しているのだ。 「シエスタ 今からよォーー 厨房の奴らを全員連れて・・・なんだ、 ヴ・・・ヴェ・・・ヴェラ・・・違うな、ヴォ・・・ヴァ・・・ヴァンダム・・・」 「・・・ヴェストリの・・・広場ですか・・・?」 「多分そいつだ そこまで来ちゃあくれねーか?咎められるよーなら 責任は全部オレが持つ」 シエスタはこの人なりの冗談なのだろうかと思った。しかしギアッチョの 眼は、悲しいほどに本気であった。 「決闘にゃあオレが勝つ・・・そいつは間違いねーんだが 別の意味で お前らを失望させちまうかも知れねえ・・・ しかしオレとお前らが同じ『平民』だと言うのならよォ・・・ こいつを 見せねーわけにゃあいかねーんだ」 さっきと同様、シエスタはギアッチョの言葉の意味を量りかねて いるようだった。しかしギアッチョはそんなシエスタの心中を忖度せず、 「頼んだぜ」とだけ言って食堂を出て行く。シエスタは一瞬逡巡したが、 「ま、待ってください!!」 やはりここでギアッチョを見送るのは、自分が殺すも同然だと思った。 「今日はよく後ろから呼び止められる日だなァァ~~ え?おい 決闘するなってんなら聞かねぇぜ 何度も言うがよォォーー オレの勝利、それだけは決定してるんだ」 「ギアッチョ・・・さん・・・」 そう言い放つギアッチョに妙なスゴ味を感じたシエスタは、それ以上 何も言うことが出来なくなった。 「おっと・・・もう決闘が始まる オレは先に行くぜ」 言うがはやいか、今にも泣き出しそうな顔のシエスタに目もくれず、 ギアッチョは食堂を飛び出して行ってしまった。 ルイズはギーシュと対峙していた。 「フフフ・・・あと大体30秒だが・・・君の使い魔はどこにいるのかな? ゼロのルイズ君」 ギーシュが心底哀れそうな声で――勿論演技だが――ルイズに語りかける。 「君の使い魔・・・随分とキレるのが早いようだが 逃げ足も速いようだねぇ プッ・・・ハハハハハ」 ギーシュはニヤニヤと笑う。それを聞いたギャラリー達もドッと笑っている。 「ギアッチョは来るわ」 ルイズはギーシュの眼を睨んだまま、短くそれだけを返す。例えどれだけ 笑われようが、どれだけなじられようが――ギアッチョは自分に待っていろと 言ったのだ。ならば自分は彼を信じて待つだけだ。 ――そうよ・・・、これが今の私があいつに返せる唯一の敬意 ならばどんな 侮辱だろうと罵倒だろうと・・・全て受け切ってみせるわッ! ルイズは知らず知らずのうちに『覚悟』していた。ギアッチョが来るまで、何が あろうと崩れないという『覚悟』を! ギーシュはなおも続ける。 「1分経過だ!おいおいゼロのルイズ!!いつまで僕らを待たせるつもりだい? 僕らだって暇じゃあないんだ!ほらほら、怖がらないで杖を取ってかかってきなよ! あの平民はもう森の中まで逃げてるかもなあ!ひょっとしたらもう森をうろつく 魔物に食われてしまっているかも!」 ギーシュの発言にギャラリーはまた爆笑する。キュルケは歯噛みしながらそれを 見ていたが、ルイズの眼に何の迷いも浮かんでいないのを知って飛び出したい 気持ちを抑えた。 ――あれが、あの平民が言っていた『覚悟』というやつなの・・・? キュルケのそんな疑問に答えるかのように、 「ギアッチョは・・・来るわ・・・!」 ルイズはただそれだけを繰り返した。そして・・・、 「やれやれ・・・ちょっとしたロスがあってよォォ~~~ ちぃとばかし遅れちまった みてーだなァァァ」 ざわつくギャラリーを掻き分けて、ギアッチョが姿を現した。 一秒たりともギーシュから眼をそむけなかったルイズは、そこでようやく全身の 力を抜いた。 「どーやら・・・頑張ってたみてーじゃあねーか え?ルイズ 後はオレに任せて そこで見てな」 またも意外なギアッチョのねぎらいである。 「お、遅いわよバカッ!」 などと照れ隠しに文句を言いながら、ルイズは非常な達成感と安心感を感じていた。 するとそこへ、 「ミス・ヴァリエール!!」 シエスタを先頭にマルトー達厨房の料理人や給仕達が駆けつけてきた。 「えーと・・・あなたは確かシエスタ・・・ こんなに大勢引き連れてどうしてここに?」 「分かりません・・・さっきギアッチョさんが食堂にやってきて 決闘をするから 見に来て欲しいと・・・」 「そう・・・ ・・・まさかあいつ・・・」 ルイズは理解した。ギアッチョはシエスタやマルトー達と対等に向き合う為に、敢えて スタンドを見せることを決意したのだ。メイジだと――貴族だと思われる危険を冒して。 今、ギアッチョはそれほどまでに仲間というものに惹かれていた。 「ようやく来たようだねぇ面白頭君 てっきりもうアルビオンあたりまで逃げ出してる んじゃあないかと思っていたよ」 ギーシュは心底愉快そうに言った。アルビオンとやらがどこにあるかは勿論知らな かったが、その挑発のあまりの陳腐さにギアッチョはキレる気にもならなかった。 「逃げる?今逃げるっつったかァ~てめー?こいつは傑作だな!ええ?おい!」 わざわざギーシュがルイズに使った言葉でギアッチョは罵倒を返す。 「このギアッチョがてめー如きに逃げる必要なんざ全宇宙を探したって見つかり そうにねーもんだがよォォォーーー 見つかるのはせいぜいてめー相手の決闘を 『やめてやる』理由ぐれーだぜ ええ?オイッ!」 ギャラリーから失笑が漏れた。ギアッチョはそのまま続けてギーシュを挑発する。 「今ここでよォォ~~~ 土下座をしてルイズに謝ってから学院を出て行きな! そうすりゃあ『命までは』とらないでおいてやるぜマンモーニ!!ええ!? やってみろよおい!!ああ!?」 ギーシュがルイズに言ったことをちょっとグレードアップさせただけのその挑発に、 ギーシュの怒りはいともたやすく爆発してしまった。 「きき、貴様ぁああーーーーッ!!!もう命乞いをしたって許さないぞッ!! 今ッ!!決闘を開始するッ!!!泣いて詫びろ平民がァーーーーーッ!!!」 「ハッ!てめーが言ったことを言い返されただけで面白いよーにキレてくれる じゃあねーかマンモーニッ!!少なくともてめーの薄っぺらくて小汚ェ精神 よりゃあよォォーー このルイズのほうがよっぽど上等な魂を持ってるぜッ!!」 ギーシュが懐から乱暴に造花の薔薇を取り出すと同時に、ギアッチョの双眸が スッと色をなくし――2人の決闘が始まった。
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PEPPERMINT 朝になりました。村の広場に甘噛みされたシエスタXXさんの死体が見つかったようです...。 PEPPERMINT /chjoin メイドイン PEPPERMINT 村人の皆様、今日も一日ゆっくりしていってね! 1 (ぺんぎん村) ミクかわいい おはようございます、昨晩 ILDANA さんが夢枕に立ったのですが、特に尻尾が生えてる風でもなく○村人○のようでしたよ[ニコッ] PEPPERMINT 昼の部スタート! 1 (ぺんぎん村) ラスフィーノ 占い理由:狩人に霊を守る指定をしてたのが少し気になりました。占い無くして霊はいらない考えです。 1 (ぺんぎん村) ラスフィーノ 占い師CO ヨロイモグラさんは、なんと●でした! シエスタXX すきやきなびこ! 1 (ぺんぎん村) ミクかわいい ぉー●が 3 (メイドイン) ILDANA 包帯屋がまさかの霊だった 1 (ぺんぎん村) せんこ 珍しく3パンデモスだったのに・・ 1 (ぺんぎん村) Lumiya ぐーてんもるげん 1 (ぺんぎん村) せんこ おぉ 1 (ぺんぎん村) jinjahime そこ噛むのか 1 (ぺんぎん村) こんぶて おは(ry 1 (ぺんぎん村) せんこ いきなり●・・・ 1 (ぺんぎん村) Lumiya あら、いきなり●が 1 (ぺんぎん村) うんちや おはろーございます 1 (ぺんぎん村) メルーファ 早速●かー 3 (メイドイン) マダム それは嘘だな! 1 (ぺんぎん村) ラスフィーノ おはようです 2 (おいぬさま) Jareky ●来た~~ (T) イチシキ > 占い結果 レリックさん白です 1 (ぺんぎん村) Akizuki 黒いきなり出たかぁ 1 (ぺんぎん村) ヨロイモグラ 俺ですねー 1 (ぺんぎん村) Jareky ●来た~~ 1 (ぺんぎん村) みくま 占いCO シエスタXXさん○ 理由は狩人の話してたので狩人をあぶりだしたいおおかみかとおもいました 1 (ぺんぎん村) せんこ でもFOだし狂人誤爆 狼の狐誤爆もあるよね 1 (ぺんぎん村) ラスフィーノ って他の方の結果は遅いねw 1 (ぺんぎん村) ミクかわいい すいぶん占い結果ためましたね 1 (ぺんぎん村) レリック かみ合わせおきたね 1 (ぺんぎん村) jinjahime ずいぶん遅いな 1 (ぺんぎん村) イチシキ 占い結果 レリックさん○です 1 (ぺんぎん村) うんちや あと1にん? 1 (ぺんぎん村) うんちや そろった 1 (ぺんぎん村) メルーファ 狼はまだ狐のこと、把握できてないはずだからラスさん狼はなさそうかな 1 (ぺんぎん村) イチシキ タイピング遅くてすみません 1 (ぺんぎん村) レリック 理由plz 1 (ぺんぎん村) ラスフィーノ 理由くらい書きましょう 1 (ぺんぎん村) シエスタXX めいどいん! 1 (ぺんぎん村) jinjahime 真狂狼かね 1 (ぺんぎん村) Jareky とりあえず、●吊りしかない気がする・・・ 1 (ぺんぎん村) イチシキ 目に映る巨体だったので 1 (ぺんぎん村) シエスタXX できてない! 1 (ぺんぎん村) jinjahime 狐はグレーと 3 (メイドイン) シエスタXX めいどいん! 1 (ぺんぎん村) MB 占った理由と一応遅くなった理由を知りたいです 3 (メイドイン) マダム シエスタ君 死んでしまうとは情けない 1 (ぺんぎん村) jinjahime とりあえず、今日は黒釣り 1 (ぺんぎん村) ヨロイモグラ おれしかないですなー 霊媒でみれますし 1 (ぺんぎん村) レリック そやね、パンダ釣るのは気が引けるけどしかたないね>ヨロイ釣り 1 (ぺんぎん村) みくま 占い先が噛まれてる・・・ 1 (ぺんぎん村) Lumiya とりあえず●吊ってみて真贋つけますかのう 1 (ぺんぎん村) Akizuki 黒つりですかね~ 3 (メイドイン) ILDANA いらっしゃーい 3 (メイドイン) シエスタXX マダムの近くにいきたくて・・・ 1 (ぺんぎん村) jinjahime 銃殺+GJもあるけど 3 (メイドイン) マダム お断り増す! 1 (ぺんぎん村) こんぶて おし、●吊りで話にくいけどとりあえず昨日の発言考察投下 3 (メイドイン) ILDANA マダム大人気 1 (ぺんぎん村) ラスフィーノ 噛みあわせも考えてくださいね 1 (ぺんぎん村) Lumiya あと占い結果は夜のうちにチャットでまとめとくといいかもしれないとかいってみる 1 (ぺんぎん村) こんぶて 個人的気になる発言ピックアップー 今日はLumiyaさんとレリックさんのお二方。この二人は占い3COでまず霊のスライドを気にしてます。3COは真狂狼か真狂狐が多く、割と一般的な内訳かと思います 1 (ぺんぎん村) こんぶて もちろん霊が語ってるパターンもあると思いますが、真狂狐の内訳をみた狼が気にしてるようにも見えます 1 (ぺんぎん村) メルーファ 銃殺+GJはありえそうだなぁ 1 (ぺんぎん村) Lumiya 誤爆注意 3 (メイドイン) PEPPERMINT いらはーい 1 (ぺんぎん村) jinjahime かみ合わせくさいなぁ。狐ありえる場所だったけど 1 (ぺんぎん村) みくま あー、狐いるのか、GMの言い方が後付けやん・・・ やめてほしい・・・ 3 (メイドイン) マダム つーか なぜぱんだになったの 1 (ぺんぎん村) イチシキ ああ、そういえば夜は発言できないだけでチャット欄に打つのは問題ないんですよね 1 (ぺんぎん村) レリック 3COなら逆にスライドは気にするべきだと思うんだが 3 (メイドイン) マダム あ。。とれたから・・おおきくなって・・ 1 (ぺんぎん村) こんぶて まぁ●吊ってから占い内訳考えればいいんじゃない 1 (ぺんぎん村) Jareky 呪殺GJはあるけど、頭にとどめておく手程度で 3 (メイドイン) PEPPERMINT しえすた3さい。ぱんだになりたい。おとしごろ。 3 (メイドイン) シエスタXX 気分かな 1 (ぺんぎん村) みくま 狐の可能性もあるねー、案外、狼が霊能噛んできたのかも 1 (ぺんぎん村) メルーファ 狼3、占い、霊媒、狂人、狩人、狐、共有2 ですね>役職 1 (ぺんぎん村) ミクかわいい ●吊ると占いか霊かどっちかかまれるだろうなあなんて思いつつ 1 (ぺんぎん村) ヨロイモグラ 別の場所にかいてコピペとか 1 (ぺんぎん村) Lumiya まぁいきなり銃殺+GJがでるのも考えづらいので一応ありうるかもって程度ですのう 1 (ぺんぎん村) Akizuki 独り言は大丈夫ですよ 3 (メイドイン) シエスタXX また変えるけどねw 1 (ぺんぎん村) ミクかわいい ラスティさんはあんま●吊り猛プッシュするわけではないのね 1 (ぺんぎん村) メルーファ でも今日は●吊るべきだと思うー 1 (ぺんぎん村) ラスフィーノ んー、吊ってくださいもちろんw 1 (ぺんぎん村) ヨロイモグラ まぁ今日は俺吊りとしてほかに話すべきことなど 1 (ぺんぎん村) Lumiya まぁ一応●は吊っておきましょう 1 (ぺんぎん村) ラスフィーノ ただね 1 (ぺんぎん村) Akizuki 霊媒は守ってくれるでしょう、、、多分 1 (ぺんぎん村) ラスフィーノ カウンターで噛まれそうだから 1 (ぺんぎん村) MB あぁ みくまさんはこれ以降死体1でもシエスタさん狐の可能性を主張できるのか 1 (ぺんぎん村) イチシキ 今日は●吊りですね 1 (ぺんぎん村) ラスフィーノ それが嫌ですねw 1 (ぺんぎん村) こんぶて このタイミングで吊らない選択肢はほぼないしね 1 (ぺんぎん村) jinjahime つり指定「ヨロイモグラ」 1 (ぺんぎん村) うんちや らじゃー 1 (ぺんぎん村) ミクかわいい 了解~ 1 (ぺんぎん村) Akizuki ●つり了解~ 3 (メイドイン) マダム つぎは 緑色になるのか。。 1 (ぺんぎん村) イチシキ 了解しました 1 (ぺんぎん村) メルーファ 吊り指定了解ですー 1 (ぺんぎん村) Lumiya ヨロイさん吊り了解 1 (ぺんぎん村) ラスフィーノ 正直僕が言うのは 1 (ぺんぎん村) ヨロイモグラ はいなー 俺デスガ! 1 (ぺんぎん村) jinjahime ヨロイさん的にはどう? 1 (ぺんぎん村) ラスフィーノ 霊結果も気になるとは思いますけど 1 (ぺんぎん村) レリック COあるなら飼う案もあると思うのだが 3 (メイドイン) シエスタXX うーん 3 (メイドイン) ILDANA パンダ成分が村から減っていく… 1 (ぺんぎん村) ラスフィーノ 占い生存のほうが、村には有利になりますから 1 (ぺんぎん村) ヨロイモグラ んー ラスさんは狼か狂としか・・・ 1 (ぺんぎん村) みくま 狂人の誤爆とか、狼の身内売りもありえますしねぇ、ヨロイモグラさんは吊っても問題ないですね 3 (メイドイン) PEPPERMINT せつない系よろいもぐら 1 (ぺんぎん村) jinjahime 一応、身内きりも考えています 1 (ぺんぎん村) ラスフィーノ 色々考えてくださいねw 1 (ぺんぎん村) Jareky この状況、狩人と狼の読みあいだのう 3 (メイドイン) シエスタXX 緑は・・・ちょっと・・ 1 (ぺんぎん村) せんこ しえすたさんそんな狩人気にしてたかなー ログ読み返したけど「狩人大変だな」としか言ってない気がする 1 (ぺんぎん村) ミクかわいい ラスティさんは飼ったりするのを提案したりはしないのですね 1 (ぺんぎん村) メルーファ あーそうか、身内切りもあるか・・・ 1 (ぺんぎん村) ラスフィーノ まだいらないですー 1 (ぺんぎん村) jinjahime 真●8、身内きり2ぐらいで 3 (メイドイン) PEPPERMINT COしちゃえYO! 1 (ぺんぎん村) jinjahime ラインみます 3 (メイドイン) シエスタXX せんこちゃんはやさしいなぁ 1 (ぺんぎん村) Jareky 身内きりか・・・ 1 (ぺんぎん村) ラスフィーノ 囲ってもいいけど、判断もつかないのもあんまり得策でないので 1 (ぺんぎん村) Lumiya 一応霊媒結果と一致しても妄信はしないように PEPPERMINT あと2分 1 (ぺんぎん村) みくま そんなものw言いがかり以上の理由はないですよwww 初日だもん そんな深くつっこまないでwww 1 (ぺんぎん村) PEPPERMINT あと2分。 2 (おいぬさま) PEPPERMINT あと2分。 3 (メイドイン) シエスタXX えぐえぐ 1 (ぺんぎん村) せんこ 一応突っ込んでおいたヽ(・w・。)ノ 1 (ぺんぎん村) こんぶて 身内切りあったとしても占い全部吊るんだから問題なし 1 (ぺんぎん村) jinjahime ただ、結果はりの速度的にラスさん狂目かなぁとは 1 (ぺんぎん村) ラスフィーノ 妄信はしなくてOKOK 1 (ぺんぎん村) ラスフィーノ 黒だして送れて報告なんて 3 (メイドイン) シエスタXX あーお尻いてー 1 (ぺんぎん村) イチシキ 駄目だ、流れについていけない 1 (ぺんぎん村) ヨロイモグラ あと イチツキさんの理由がちょっとほかの人に比べると薄い気が 1 (ぺんぎん村) ラスフィーノ 信用ないことしませんw 1 (ぺんぎん村) Jareky 狼の数を減らして、狐を盾に取るような、背水の陣とかか。身内斬りは 1 (ぺんぎん村) Akizuki 明日ラインが出きれば推理しやすくなるかな・・・ 1 (ぺんぎん村) ミクかわいい 真っ先に張ってるし信頼はしやすいですね 1 (ぺんぎん村) jinjahime あ、ごめん 1 (ぺんぎん村) jinjahime ミス> 3 (メイドイン) マダム 病院いったの?w 1 (ぺんぎん村) ミクかわいい ? PEPPERMINT あと1分。 2 (おいぬさま) PEPPERMINT あと1分。 1 (ぺんぎん村) PEPPERMINT あと1分。 1 (ぺんぎん村) せんこ LWCO前提ってこと?w<じゃれさん 3 (メイドイン) シエスタXX 行ったさ! 3 (メイドイン) シエスタXX とんだ恥かいたよ! 1 (ぺんぎん村) ミクかわいい 今日はヨロイさん?でいいのかな・・・? 1 (ぺんぎん村) Jareky LW 3 (メイドイン) マダム w 1 (ぺんぎん村) jinjahime ラスさんじゃなくて、イチシキさん狂目 Capriccioはマダムに手を振った 1 (ぺんぎん村) ラスフィーノ 次●引いたら、保護したいですね マダムは手を振った 1 (ぺんぎん村) MB ラスフィーノさんは確か昨日「初日昼は雑談か?」みたいな発言してましたよね 結構単独感があるので真狂ぽいですが 1 (ぺんぎん村) メルーファ ヨロイさん吊り指定ですね 1 (ぺんぎん村) ヨロイモグラ 俺ですね それでラスさんがどうかわかるはず 3 (メイドイン) PEPPERMINT かぷりっちょだ! 1 (ぺんぎん村) Jareky LWCOしなくてもいけるきがするかな>せんこ Capriccio CH教えて 1 (ぺんぎん村) うんちや んだ 1 (ぺんぎん村) せんこ ふむむ マダム メードイン シエスタXX メイドイン マダム あ マダム ちがうw 1 (ぺんぎん村) Lumiya 一応占い結果貼りの話は今日したので明日からタイミング考慮します ILDANA メイドインですね せんこ まだむ適当www 1 (ぺんぎん村) jinjahime 奇数なのでGJでてもつり増えないからな Capriccio 適当すぎる 1 (ぺんぎん村) PEPPERMINT -------------------- 1 (ぺんぎん村) PEPPERMINT 終了。会話ストップ。 1 (ぺんぎん村) PEPPERMINT -------------------- 1 (ぺんぎん村) ヨロイモグラ 信用えたいのは偽もそうだから結果張りの速さはどうなんでしょ 1 (ぺんぎん村) ラスフィーノ 明日からは結果わかるとおもうので PEPPERMINT 夜が近づいて参りました。皆様、今日の尊い犠牲者を投票にてお選びください。(会話ストップ) PEPPERMINT 投票は私にTellにてお伝えください。 (T) せんこ > ヨロイモグラさんでー (T) イチシキ > ヨロイモグラさんでお願いします (T) こんぶて > 投票 ヨロイモグラさん (T) メルーファ > ヨロイモグラさんに投票します (T) ミクかわいい > ヨロイモグラさんでお願いします~ (T) うんちや > ヨロイモグラさんでおねがいします (T) ラスフィーノ > ヨロイモグラさん (T) Akizuki > ヨロイモグラさん吊りでお願いします 2 (おいぬさま) ヨロイモグラ ひでぶ!! 2 (おいぬさま) Jareky (^^)きついことになった!!! (T) Lumiya > 投票 > ヨロイモグラ 2 (おいぬさま) ヨロイモグラ いきなりとは・・・ (T) MB > ヨロイモグラさんに投票します 2 (おいぬさま) みくま さて、Jarekyさんがんばってくださいねw 以前も狐勝利したこともあるんですし、Jarekyさんならできる!! 2 (おいぬさま) Jareky これは狐を盾にとるしかないかの 3 (メイドイン) Capriccio てすてす (T) jinjahime > つり投票>ヨロイモグラ 3 (メイドイン) ILDANA いらっしゃーい 3 (メイドイン) Capriccio jud. 3 (メイドイン) PEPPERMINT いらはい! 2 (おいぬさま) みくま 今日、噛めるかどうかだとおもう 3 (メイドイン) シエスタXX こばん 3 (メイドイン) Capriccio k 3 (メイドイン) Capriccio 会場は? 2 (おいぬさま) Jareky 占いかみ?霊媒噛み? 3 (メイドイン) PEPPERMINT ぺんぎん村 3 (メイドイン) マダム 会場は ぺんぎん村 2 (おいぬさま) みくま 占いか、霊能の2択 3 (メイドイン) Capriccio え、まさか 3 (メイドイン) Capriccio ぺぱーさんがGM>? 3 (メイドイン) PEPPERMINT ま、まさか 3 (メイドイン) PEPPERMINT マサカー 2 (おいぬさま) ヨロイモグラ 占いつぶすべきだと思いますが どうでっしゃろ 2 (おいぬさま) Jareky 投票は投票はムダだけどラスさんにいくwww (T) jinjahime > ログ読み間違えてた☆(ゝω・)vテヘペロ PEPPERMINT あと1分。 2 (おいぬさま) PEPPERMINT あと1分。 (T) レリック > ヨロイさんで 1 (ぺんぎん村) PEPPERMINT あと1分。 3 (メイドイン) Capriccio ペンギンが居る 2 (おいぬさま) ヨロイモグラ 俺そうするとみくまさんの信用がちょっと落ちるかな・・・ 2 (おいぬさま) ヨロイモグラ はいなw (T) Jareky > ラスフィーノさんに投票 (T) Akizuki > みくかわさんの護衛に就きますー 3 (メイドイン) Capriccio 動画になったら、それだけで騒ぎになりそうだ 3 (メイドイン) PEPPERMINT いるよ!がんばってるよ! (T) みくま > ラスフィーノさんに投票します (T) Akizuki > ごば (T) ヨロイモグラ > ラスフィーノさんでー 2 (おいぬさま) ヨロイモグラ では 健闘をいのります・・・ (T) > Akizuki いまのはなしね!あとで改めてね! (T) Akizuki > はいw 3 (メイドイン) Capriccio 色々くじけず頑張れっ! 投票内訳 ヨロイモグラ12 ラスフィーノ3 PEPPERMINT さらばヨロイモグラさん...あなたの勇姿は3秒くらい忘れない。 PEPPERMINT /chjoin メイドイン PEPPERMINT 日没です。おとなもこどももおねーさんも寝る時間です。 ヨロイモグラ はわあ!!うわぢゃ~!! PEPPERMINT 役職の方は私にTellにて役職行動をお伝えください。 (T) ミクかわいい > 霊媒です、亡くなられた ヨロイモグラ さんは生前どんな方だったでしょうか[ニコッ] 3 (メイドイン) PEPPERMINT まだくじけてない! 3 (きゃっきゃうふふ) jinjahime この黒は信頼かな。たぶんラインつながるし 3 (メイドイン) PEPPERMINT みどりより先にやらかすわけにはいかない 3 (メイドイン) ヨロイモグラ どうも~ 2 (おいぬさま) Jareky 自分が狩人なら占い護衛かな?だとすると霊媒が噛める気がする 3 (メイドイン) ILDANA いらっしゃいませー (T) > ミクかわいい ヨロイモグラちゃんは黒よ!狼よ! 3 (メイドイン) Capriccio どもー 3 (きゃっきゃうふふ) せんこ こりゃ銃殺前に食われるかのぉ (T) ミクかわいい > まあ!こわいわ! (T) ミクかわいい > いやな予感すらしない・・・ 2 (おいぬさま) PEPPERMINT あと2分。 1 (ぺんぎん村) PEPPERMINT あと2分。 PEPPERMINT あと2分 (T) ヨロイモグラ > 死んだら狼のchからもぬけたほうがいいですかね? 3 (きゃっきゃうふふ) jinjahime 占い噛みに着そうだな (T) Lumiya > 一応銃殺+GJの可能性の話がでたのをメモ。まぁそうじゃないけどな! 3 (メイドイン) PEPPERMINT いらはいー 3 (メイドイン) マダム いらっしゃい 3 (メイドイン) PEPPERMINT 初狼なのに・・・ホロリ 3 (きゃっきゃうふふ) せんこ もし真だとしたら、生き残る策は銃殺前に占い噛んで、狐盾にするしかないよね 2 (おいぬさま) Jareky みくまさんは占い先考えるの優先で (T) > ヨロイモグラ 狼chはそのままでおけよ 3 (メイドイン) PEPPERMINT あ! 3 (メイドイン) ILDANA え、何の暴露 3 (きゃっきゃうふふ) jinjahime シエスタ銃殺のパターンだと、霊媒チャレンジ→ラスフィーノ身内切りか 3 (メイドイン) PEPPERMINT ばらしちゃった?! (T) ヨロイモグラ > 了解しました~ 3 (メイドイン) Capriccio ああ、そういうことか (T) Lumiya > ここで狼が霊媒噛みに行くのはなさげかのう。一応身内きりもありうるのがアレなところ 3 (メイドイン) PEPPERMINT ごめんね!素でばらしちゃったよ!w 3 (メイドイン) ヨロイモグラ キャァァァ (T) Akizuki > 先ほどは失礼しましたw 改めて、ミクかわいいさんの護衛に就きます~ 3 (メイドイン) PEPPERMINT まだ少ないからイイカナ・・・ 2 (おいぬさま) Jareky 噛みは霊媒に行こうと思います。ダメ元です 3 (メイドイン) Capriccio 人狼ゲームが初なのかと思った 3 (きゃっきゃうふふ) せんこ そうだとしたら狐気にする発言多いのが怪しく見えるのう 2 (おいぬさま) みくま おk (T) > Akizuki らじゃ!まもってね!てんどんだけど! (T) Lumiya > でも狐ありで身内きりはグダるとアレかもしらん PEPPERMINT あと1分。 1 (ぺんぎん村) PEPPERMINT あと1分。 2 (おいぬさま) PEPPERMINT あと1分。 3 (きゃっきゃうふふ) jinjahime うむーJareさんあたりは狐くさいなぁ 3 (メイドイン) ILDANA ワタシハ ナニモ ミテイナイ 3 (メイドイン) Capriccio 大丈夫だ、動画にはならない 2 (おいぬさま) みくま 占いCO うんちやさん○ あんまりしゃべっていないので潜伏狼かなぁっと思い占いました 3 (メイドイン) PEPPERMINT 君たちの記憶は消させてもらう 3 (きゃっきゃうふふ) せんこ 中々珍しい発言だった気がする<背水の陣 (T) Jareky > ミクかわいいさんの天丼を頂きます。今日のミックスフライおいしかったです 3 (きゃっきゃうふふ) jinjahime 今日は被害なしが出たら、霊媒チャレンジだな 2 (おいぬさま) Jareky テル終了 (T) ラスフィーノ > みくまさん占います。狐ケアも考慮して 3 (きゃっきゃうふふ) せんこ でも霊媒以外守るか?wここw (T) ミクかわいい > どっちが噛まれるかな・・・ (T) > ラスフィーノ みくまさんは狼だったよ!よくあたるね! 3 (きゃっきゃうふふ) jinjahime イチシキさんは狂目だ (T) > Jareky らじゃ!てんどん! (T) ラスフィーノ > 残念、狐かなと思ったんだけどw 3 (きゃっきゃうふふ) せんこ うちもそう思っちゃうからチャレンジするかなぁ 3 (メイドイン) ヨロイモグラ MIB3くぁー 3 (きゃっきゃうふふ) せんこ ちょと怪しいね 動きが 3 (きゃっきゃうふふ) jinjahime みくま-ラスフィーノで真狼 2日目へ 4日目へ
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前ページ次ページゼロのミーディアム 王都トリステインの裏町にある、とある酒場。 時刻はちょうど日が西に沈んだ頃である。 酒場には仕事帰りの一杯を求めた者や、夕食を摂りに来た者、昼間っから今まで酒盛りをしているグータラ等、各々の理由で人に溢れていた。 テーブル席の客が木製のジョッキを片手に談笑している 「おい、聞いたか?あの土くれが捕まったって話」 「ああ聞いた聞いた。残念だよなぁ~。いけ好かない貴族どもを引っ掻き回す面白い奴だったのに…」 「まったくだぜ!ここだけの話。俺、密かに応援してたのに~」 国のお偉いさんが聞いたらしょっぴかれそうな事を大声で話す客達。 最悪その場で魔法で吹き飛ばされても文句は言えない。 平民にとって貴族はそう言う絶対者なのだ。 故にフーケ捕縛を惜しむ声と、周りの者の賛同具合からして、平民の貴族に対する不満はかなりの者とわかる。 威張り腐るボンクラ共にお灸を据えるフーケは彼等にとってはちょっとした憧れだった。 (その土くれが何故かここにいるのよねぇ……) そこにカウンターの席でワインを口にしながら、心中でそう呟く目深にフードを被った妙齢の女性が一人。 その言葉が示す通り、それは今の話題の渦中の人物。 引っ立てられてチェルノボーグ監獄送りになった筈の、土くれのフーケがそこにいた。 背後で自分が話題になっているのを無視し、フーケは昨日より監獄から脱獄した経緯を思い出す。 破壊の杖の一件で水銀燈以下、 その(愉快な)仲間達の活躍により捕らえられた土くれのフーケが送られたのがチェルノボーグ監獄。 凶悪犯と呼ばれる者が投獄される、厳しい監視と強固な防備を兼ね備えた事で有名な、 犯罪者にとっては恐怖の象徴と言ってもよい場所だ。 フーケはベッドに座り険しい顔つきで俯いている。 思い出すのは自分を捕らえた禍々しくも美しい黒翼を持つ、漆黒の天使の事。 「…私の完敗だったね」 小さな体に不釣り合いな錆びた大剣を携えゴーレムの剛腕を幾度と無く切り落とし、 最後は異形の翼より放たれる黒龍のブレスで、跡形も無くそれを消滅させた人形。 「大したもんだよ……。私だって『あの子』の為に戦ってたんだけどね。この気持ちはあの人形にだって負けてないつもりなのに……」 フーケは別に水銀燈を恨もうとは思わなかった。 寧ろそのひたむきな姿は今考えれば賞賛に値する。 身を挺して主人の剣となり盾となり必死で戦っていた強い意志の浮かんだ人形の顔を、フーケは思い出していた。 「ま、盗賊なんて外れたやり方してる時点で、私の負けは決まってたのかもしれないわ……」 フーケは俯いた顔で自嘲気味な笑いを浮かべる。 「気に入らない貴族の奴らをギャフンと言わせたかったからやってた盗賊家業だったのだけれど…。 あーあ、今度は真っ当な職にでもつこうかしらねぇ……」 もっともそのチャンスは来そうにないけど。と、フーケは付け加えた。 あれだけ散々、国中の貴族をコケにしたのだ。良くて遠島、悪けりゃ縛り首。 どの道彼女の言う『あの子』を養うことなど出来なくなるだろう。 「さてと、どうしたものやら……」 むざむざ刑を受け入れるつもりなど毛頭無い。自分の大事な妹をほっておけるものか。 しかし杖が無い以上、得意の錬金を使うのは不可能。 仮にあったとしても、強力な固定化がかけられた壁や鉄格子は錬金を受け付けない。 脱獄できる可能性は0に等しい。いや、断言してもいい。――0だ。 だが…… 「私は諦めないよ」 フーケは自分に言い聞かせるように呟き、爪を噛みながら脱獄の手段を模索した。 往生際が悪いと言うこと無かれ。フーケにもまた彼女を待つ人が、帰る場所があるのだから。 何か脱出に使える物が無いかと牢の中を見回していたその時。 フーケの収容された監獄の上の階から誰かが降りてくる足音がしてきた。 牢番の見回りか?と思い、急いでベッドに横たわる。脱獄の意志を見せるのは何かとまずい。 壁側を向いて目をつむり、聞き耳を立てながら狸寝入りを決め込んだ。 その足音がフーケの牢の前で止まった。どうやら彼女に用があるようだ。 「『土くれ』だな?」 年若く力強いその声。 牢番ならばそんな事は百も承知。つまり牢番ではない。 牢番以外で自分を訪ねてくるの可能性があるのはもう一つ考えられた。 「……刺客ね」 フーケは起き上がって鉄格子の向こうにいる声の主を睨む。 フーケに痛い目に合わされ貴族は数知れない。故に買った恨みも星の数。 裁判など待ってられるか。ましてや、判決で万が一生き長らえでもしたら納得いかないと思う者は少なくないだろう。 今死ね!すぐ死ね!骨まで砕けろ! アイテムなんざ盗んでんじゃねぇぇぇぇぇぇーーーー!ぶるァァァーーーーッ!! って事なのだろう。 「言っとくけど囚われの身と言えど、大人しくやられるつもりは無いの。最低限抵抗はさせてもらうわ」 身構えて刺客らしき、仮面を付けた長身の黒マントの男を見据えた。 それに対し男は両手を上げて敵意の無いことを示す。 「まあ待て。話をしにきた」 「話?」 フーケは怪訝な声で切れ長の瞳をさらに細める。 「弁護でもしてくれるっての?物好きね」 「なんなら弁護してやっても構わんが?」 フーケの冗談にくっくっくと含みのある笑いをもらし男は言葉を続けた。 「――マチルダ・オブ・サウスゴータよ」 「あんた…何物よ!?」 フーケは顔面蒼白になり声を荒げる。かつて捨てた…いや、捨てる事を強いられた貴族の名。それを知る者はもう、この世にいない筈なのに…。 「それを教えるのは私の話を聞いてからだ。……再びアルビオンに使える気は無いかね?マチルダ」 「……その名を知っててよくもそんな下らない事が言えたものね。家名を奪い、父を殺した王家の名前なんざ聞きたくもない!!」 「だから待てと言っている。無能な王家は間も無く滅ぶ。 有能な貴族が、ハルケギニアの将来を憂い、国境を超えて繋がった選ばれし我々が政(まつりごと)を行うのだ」 「その有能で選ばれた貴族様がこのこそ泥になんの用?」 フーケは薄ら笑いを浮かべそれを一笑に付したが、構わず男はその目的を語り出す。 「我々貴族の連盟はハルケギニアを統一するため、始祖ブリミルの光臨せし『聖地』奪還のため、 優秀なメイジが一人でも多く欲しいのだよ。協力してくれないかね?」 フーケの笑みが消えた。真剣に聞いてる訳ではなく、呆れて物も言えないといったひどく冷めた顔だ。 「馬鹿馬鹿しい事この上ないね。夢の絵は寝てから書く物よ」 時間の無駄だと言わんばかりにフーケは肩をすくめる。 「私は貴族が嫌いだし、ハルケギニアの統一なんかに興味は無い。聖地だってほっとけばいいじゃない」 フーケはそのまま、もう話す事など無いととれる仕草で男に背を向けた。 「土くれよ。お前は選択することができる」 すると男の声とともにフーケの背中に何かが突きつけられる。 背後から聞こえる呪文の詠唱、つまりこれは魔法の杖。 思わずフーケのその背に冷や汗が流れた。男は言葉を続ける。 「我々の同士となるか……」 もう一つの選択肢は背に当てた杖が物語る。フーケがあえて引き取った。 「さもなくば死…ね。そんな計画知った私を生かしてはおけないもの」 「理解が早くて助かる」 「ほんと、これだから貴族って好きになれないのよ。……他人の都合等お構いなし。何が選択できるよ、これはもう選択とは言えないわ」 「そうだ。これは…強制だ」 再び男は再びくっくっくと重い声で含み笑いをした。 (なんだか好かない奴だし、貴族の連盟なんざ興味は無い。だが…) フーケは思う。ここを脱出するチャンスは今しかないと。 そして盗賊をやってまで生きてきたのだ。自分に残されたのはアルビオンに残した妹分のみ。 (もはや落ちるとこまで落ちた。あの子が知れば好としないかもしれない。……でもこれもまたあの子のためさ) 今の自分が優先するのは故郷の妹を守る事だけだ。フーケは間をおいて男に向き直る。 「あんたらの貴族の連盟の名は?」 その言葉を肯定の意と受け止めたらしい。 仮面の下でニヤリとほくそ笑んでいるであろう黒マントの男は牢の鍵を開け、フーケの杖を投げてよこした。 眼前に投げられた杖を手慣れたように掴むフーケ。杖を取ったパシッという乾いた音が牢内に響いく。 杖を手にした事で、フーケが仲間となる事を明確に確認した男は、その連盟の名を口にした。 「我々はレコン・キスタ」 ――以上、これがフーケ脱獄の経緯にして彼女がこの酒場にいる理由である。 「我々の決起までにはまだ少し時間がある。それまではお前の好きにするがいい」 そう言って男はフーケを置いてどこへ行ってしまった。 「好きにしろって……えらく大ざっぱな貴族の連盟じゃないのよ……」 呆れたようにフーケは呟いた。 「まあいいさ。ちょうどやり残した事があったしね……。本当は破壊の杖をいただいた後にやるはずだったんだけど……」 そのフードと眼鏡の奥に光る双眸が、さらに危険な光に満ちる。 獲物を見据えた仕事人の顔。トリステインの貴族達を震え上がらせた、『土くれ』が再び動き出すのだ。 「楽しみに待っていなさい」 そして口の端が妖しくつり上がった。 「……ジュール・ド・モット伯爵殿」 それが彼女の、土くれのフーケの狙うターゲットの名前だった。 手元のワインを飲み干したグラスが、音も無く砂のようにサラサラと崩れていく。 いつの間にか彼女のもう片方の手に、杖が強く握り締められていた。 一夜あけてトリステイン魔法学院。 朝の清涼な空気の中、学院の中庭でバシャバシャと洗濯桶に手を突っ込んで洗濯物をするメイドの姿があった。 ――でもこのメイドさん、なんだか黒い、鳥みたいな翼が生えてるんですけど……。おまけに人にしてはえらく小さいような……。 「ふぅ、お洗濯完了よぉ~」 鼻の頭に付いた泡を拭って一息つくメイドさん。 ん~と腕を上げて背伸びをし、背中の翼も大きく広がる。 何を隠そう、このお方こそ我等が誇り高きローゼンメイデンの第1ドールにして、 ルイズ・フランソ(長いので以下略)の使い魔をしておられる我等が党首、水銀燈であらせられる!! 者共、頭が高い!頭が高ーい!! 彼女が着ているのはいつもおきまりの逆十字の刻まれたゴシックロリータではなく、メイド服。 メイドのシエスタが作業着としてくれた物だ。 本当はお父様のドレス以外のあまり着たくは無いのだが、 それ以上にお父様から頂いたドレスを汚す事を嫌い、水銀燈は使い魔の仕事はこれを着て行っていたりする。 しかし、なかなかこれが似合った物で。仕事も意外と順当にこなしているとこから、彼女にはメイドとしての資質がある。と、言ったっても良いかも知れないくらいだ。 もっとも、これに調子に乗って「銀ちゃん紅茶を入れて頂戴」なんてオーダーした日には、 ニッコリした水銀燈に、熱々の紅茶を頭から注がれ、お客様は熱さにのたうち回る羽目になる事間違い無しだろうが……。 「あ、水銀燈。いたいた!」 甲高い少女の声に呼ばれ水銀燈は振り返った。 その先には桃色の長いブロンドの髪揺らし走ってくる少女の姿。 「なぁに?ルイズ」 彼女こそが格式高きヴァリエール公爵家が息女にして、ツンデレ三闘神が一人、大平原の小さな胸!ツルペタオブツルペタ! 虚無の…ゲフン!ゲフン!口が滑った!今の無し!! とにかく水銀燈の主にしてミーディアム(契約者)、ル(長いので以下略)様であらせられる。 者共、頭が高い!頭が高ーい!! そのルイズが水銀燈を訪ねてきた理由はこれだ。 「時間が出来たから、以前お弁当作ってくれたメイドの子に一言お礼いいたくてね」 細かい説明は省かせてもらうが、ルイズは餓死寸前(少々大袈裟)のところを彼女のサンドイッチで命を繋ぎ、 破壊の杖奪還任務でも、これまたサンドイッチで空きっ腹のルイズ達の腹を満たしたと言う功績があるのだ。 「この任務が終わったらお礼に行かなきゃね?」 とはその時の馬車の中でのルイズの弁。 彼女はこれを実行すべくシエスタの居場所を知るであろう水銀燈を探していたのだ。 「貴族が平民にお礼を言うの?」 水銀燈はルイズに不思議そうに尋ねる 「そうよ。なんか悪い?」 「なんとなく貴族って「平民なら貴族に尽くして当然!」みたいなイメージがあったから珍しくって」 「大概のはそうでしょうね。間違ってるとは言わないけど、私は義理堅いのよ!」 平たい胸をえっへん!とはってルイズは言った。 良い心がけだ。貴族嫌いな平民もこういう貴族がいれば少しは変わってくるだろうに……。 だが先程言ったがこの世界、貴族は平民に対する絶対者だ。そんな考えを持つ者は極々一部いるかいないかだろう。 この時間シエスタが働いているのは厨房だと水銀燈は言う。二人は厨房へと足を運んだ。 お喋りしながら食堂の裏まで来た水銀燈とルイズだが、何やら様子がおかしい事に気づく。 「シエスタ…?」 シエスタが見知らぬメイジ達に連れられ厨房を出る所だった。 何事かと声をかけようとした矢先、水銀燈とルイズに気づいたシエスタが、こちらを向き人差し指を自分の口元に立てる。 お静かに。騒がないで下さい。と言ったジェスチャー。シエスタはどこか疲れたような表情を笑わせて目配せした。 二人はよくわからないが何か用事でもあるのだろうと勝手に判断しそれを見送る。 「なんだか忙しそうね…。仕方が無いわ。お礼を言うのはまた後にしましょ」 ルイズはそう言って来た道を引き返した。 水銀燈はせっかくここまで来たのだからと、料理長のマルトーに会いに行く。 …もしかしたら摘み食いでもさせてくれるかもしれないし。 「親父さぁん。いるかしらぁ?」 開いてあったドアをくぐり水銀燈は厨房に足を踏み入れた。 「……おう。我らの天使よぉ」 呼ばれたマルトーがずぅんと沈んだ様子でその顔を出す。 「らしくないわねぇ。なに浮かない顔してどうしたのぉ?」 日頃豪快に「ガハハハハ!!」と笑うマルトー親父らしからぬその元気のなさに水銀燈も小首を傾げる。 「ああ、シエスタがな…」 「そうそう。そのシエスタ、忙しそうだったけどいつ戻ってくるの?」 マルトーは溜め息を吐き忌々しそうに言った。 「シエスタは……もう戻らねぇよ……」 「なんですって?」 水銀燈も聞き捨てならねその物言いに剣呑な顔つきをマルトーに向けた。 「どういう事なの?説明して頂戴」 マルトーが言うにはシエスタは王宮の勅使であるジュール・ド・モット伯に仕えるためここを出て行ったらしい。 それも今朝突然、声をかけられて即決だったらしい。彼女らに面識など有るはずもない。 無論その横暴をマルトーは良く思わなかったが、残念ながら彼は平民。 文句を付ければそれは魔法で帰ってくるだろう。 自分は何もできずシエスタが連れ去られるのを黙って見てるしかなかった。と、マルトーは暗い顔で呟く。 「結局俺ら平民は貴族の言いなりになるしか無いんだよ。我らの天使……」 そう言ってマルトーは「さーて仕事仕事…」とやる気なさそうに呟き厨房の奥に引っ込んだ。 「シエスタも災難ねぇ……」 水銀燈もシエスタが居なくなったのを残念に思うも厨房を後にした。 理不尽とは思うも、それがメイジが支配するこの世界の理。異世界から来た自分がとやかく言う資格等無い。 水銀燈は勝手にそう納得した。 ……少なくともこの時点では。 「モット伯爵は王宮の勅使を務める有力な貴族なの。時々学院にも来るわ。 いっつも偉ぶってるから私はあまり好きじゃないけどね」 夕刻のルイズの自室。水銀燈がシエスタの事をルイズに伝えると彼女はそのモット伯の事を、顔をしかめてそうコメントした。 「王宮の勅使?」 「王宮で決まった達しを伝えたり、各地の行事に王族の代理で出席する貴族の事を勅使と言うの。 国のトップの伝達事項を伝える時なんか、その人相応の身分で扱われるから、位の高い貴族も迂闊に手を出せないくらいの役職よ」 「そんな人がなんでシエスタを連れていったのかしらぁ…」 自分の鞄の上に腰掛けた水銀燈は人差し指を頬に当てて、疑問の眼差しをルイズに向ける。 「…モット伯は勅使をこなす有能な貴族である反面、何かとよろしくない噂が絶えない男でね、」 ベッドに腰掛けたルイズは嫌悪感丸出しな顔を使い魔に向けて苛立つように言った。 「権力を傘に若い女性を囲っては手篭めにするって言われる黒い貴族なのよ」 「そんなのがなんで王宮の顔役みたいな大役を…… って待ちなさい!手篭めって何よ!?手篭めって!!」 水銀燈が慌て聞き、ルイズはそれに顔を少し赤くして困った顔つきになって答える。 「そりゃあ、なんと言うか……。あの人好色な貴族って噂もあるし…。あんな事やこんな事をやりたい放題……」 「おおおお乙女のピンチじゃないのよそれぇ!」 まさかそんな話になるとは思いもしなかった。 知人がそんな人間の所に連れて行かれたと知って気が気でないらしい。 男は狼なのーよー!気をつけなさーい! 「ねぇ、なんとかならないの?」 「……どうにもならないわね。あいつに口出しできるのは王族や枢機卿クラスの地位の貴族ぐらいだもの」 諦めの入ったミーディアムの答えに水銀燈は呆然と立ち尽くした。 「まさかこんな事になるなんて……」 水銀燈は今朝見せたシエスタの顔を思い出す。 そうだ、あれはもう、二度と会えないと言った諦めの入った寂しげな笑顔だったのだ。 ミーディアムであるルイズを除けばシエスタは、初めて水銀燈にできたこの世界の友人。 いや、あっちの世界でも一匹狼だった彼女にとっては生涯初めての友だったのかもしれない。 シエスタは飢えている彼女に手を差し伸べ、今着ているこの服を提供してくれた気の利くやさしい友人だった。 メイド姿の堕天使の内面に、何かフツフツと激しい感情が湧き上がる。 「そう…それじゃあ仕方ないわよね」 一言そう呟いて水銀燈はふぁさぁっと翼を翻し、窓辺に飛んで引き戸を開く。 「水銀燈?どこ行くのよ」 「気晴らしにちょっと散歩してくるわ」 そう言って水銀燈はオレンジ色の光の向こうへと飛び立った。 「前みたいに遅くなっちゃだめよー」 ベッドに腰掛けたままルイズはそれを見送る。 時刻は黄昏時、振り向いた使い魔の表情は逆光で暗く見えなかったためルイズは気づかなかった。 もしそれが見えていれば止めに入っていたかもしれない。 仕方ないと言っておきながら……水銀燈のその表情は何かの決意に満ちた険しい表情をだったのだ。 散歩と称して部屋を飛び出した彼女。その目的はただ一つ。 「まさかこの私が正義の味方の真似事をする羽目になるなんてね……」 自分の性格でやる事では無いと思う。似合ってもいないと思う。 だがこの湧き上がる感情を、否定は出来なかった。 「シエスタを連れ戻すわ」 水銀燈は小さく、しかし確かに力強く、そう呟いた。 でものっけから躓いた。 「そもそもモット伯ってどこにいるのよぉ?」 場所がわからないのに連れ去られた者を助けになど行ける筈もない。 どうしたものかと腕組みする天使がアウストリの広場に差し掛かかる。 ふと目を向けた木の下に人間がいるのを見つけた。 それは水銀燈の盟友ならぬ迷友、ギーシュ。 だが様子が変だ。彼は踏み台に乗り、木の枝にかかったロープの輪っかを首にかけ… 「早まっちゃだめぇぇぇーーーー!!」 「へぶーーっ!?」 それにびっくりして一目散にそっちに飛んでいく水銀燈。勢い余ってギーシュに体当たりをかまし、踏み台を吹き飛ばす。 ギーシュはブラーンと首だけでロープにぶら下がり、手足をばたつかせた はい!お約束その1。首を吊ろうとしてる人間を止めようとして裏目に出るケース。 「何やってるのよぉ!!」 背中から鋭い羽が風を切って飛び、ロープを切った。地面にぼてっと落ちて肩で息をするギーシュ。血走った眼で水銀燈を見る。 「死んだらどーするッ!?」 はい!お約束その2。首を吊ろうとしてたのにこの言いよう。通称『グッバイ デスペレイトティーチャー』 「貴方こそなんでこんな真似してるのよぉ!」 「ほっといてくれ!フリッグの舞踏会を寝過ごしてモンモランシーを誘えず、怒らせてしまった僕は死ぬべきなんだー!」 説明臭い台詞ご苦労様。どうやらあのまま起きる事無く、ヴェルダンデと一夜を共にしてしまったらしい。 「私なんかより使い魔のほうが大事なのね!最っ低!!」 と、渾身のアッパーカットを放ち、ギーシュを車田カットで天高く吹き飛ばすモンモンの様子が易々と想像できる。 「絶望した!舞踏会を寝過ごした自分に絶望した!!」 「そんな事より貴方、モット伯の館の場所を知らなぁい?」 「モット伯?ああ、知ってるには知ってるけど?」 そんな事扱いされたけど、ギーシュは丁寧にそれを教えてあげた。 聞いた話によると、少し遠いが彼女の翼でも行ける距離。 「そう、わかったわ。ありがと」 「いやいや、何を言うんだ。君は僕と同じ薔薇を愛でる同志じゃないか」 ギーシュはフッとニヒルに笑い薔薇の杖を掲げる。 「お取り込み中、邪魔したわね。さ、続けなさい」 自分に酔いしれるギーシュに構わず、彼にロープを手渡して水銀燈は飛び去っていった。 場所さえ聞ければもうどうでもいいらしい。 まさに外道!! ギーシュはポカーンと口を開けたまま黄昏の中、小さくなっていく黒翼の天使の後ろ姿を見つめた。 頑張れギーシュ!負けるなギーシュ!生きてれば必ず良いことあるからさ! 日が沈み始め、間も無く夜が落ちてくる。東の空から、闇夜が街を覆い始めるその景色。 空を駆ける水銀燈の瞳には、まるでシエスタにだんだんと危機が迫っているように映った。 羽で造った剣を片手に飛翔する翼の生えたメイド。 少しでも早く着くようにと、ガンダールヴのルーンを発動させ彼女はモット伯の屋敷に急いだ。 一方、こちらは水銀燈を探して外をウロウロしているルイズ。 辺りは暗くなったのにも関わらず戻ってこない使い魔に業を煮やし彼女自ら探し始めたのだ。 「まったく、前も散歩だなんて言ってなかなか戻ってこなかったのよね。あの子!」 ルイズは頬を膨らましブーブー文句を言いながら黒翼のメイド服を探す。「遅くなっちゃだめって言ったのに!」 そこに、ちょっと前まで広場でてるてる坊主の物真似をしていたギーシュが通りかかった。 結局、あの世でモンモランシーにわび続けるのはやめたらしい。 「やあルイズ。どうかしたのかい?」 先程の陰鬱な表情が嘘のようにギーシュは気さくに、キョロキョロしながら何かを探している桃色髪の少女に声をかけた。 「ねえ、水銀燈見なかった?」 「ああ、さっき会ったよ。何故かモット伯の屋敷の場所を聞かれたけど」 モット伯の屋敷…ルイズは青ざめた。何故そんな事を聞く必要があるのか? そう言えばあの時の水銀燈の口調はいつもの妖しい猫なで声では無かった。 日頃人を小馬鹿にした口調の彼女も、真剣になるとそれが無くなる。 とどのつまりは… 「あの子、シエスタを助けに言っちゃったの!?」 間違い無い。それ以外モット伯の館を尋ねる理由など考えられない。 時間も惜しいとばかりにギーシュに背を向け、ルイズは馬の納屋に駆け出す。 そこで出来るだけ速い馬を調達し、手綱を手に取るといきなり全速力でそれを走らせた。 限界まで弦を引き絞られて放たれた矢の如く、学院の門からルイズの馬が勢い良く飛び出す。 水銀燈が屋敷に討ち入りをかけるまでに止めなければならない。 「早まった真似するんじゃないわよ、水銀燈……!」 奥歯をぎりっと噛み締めミーディアムは使い魔を止めるべく、馬に鞭を打った。 前ページ次ページゼロのミーディアム