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前ページ次ページ堕天召喚録カイジ 第六話「厨房」 ざわ…… ざわ…… (なぜだっ……! なぜっ……! なぜっ……! 俺は……貴族だぞっ……! 平民たちの支配者っ……! グラモン家っ……名門に生まれた男だぞっ……! こんなっ…… こんな平民ごときにっ……! くそっ…… くそっ……! くそっ……! なんでこんなことになったんだっ……!) ギーシュ・ド・グラモンは滝のように冷や汗を流しながら、目の前の男を見つめていた。 男はヴァリエールが呼び出した使い魔の平民である…… 「ククク……どうしたっ……貴族の坊ちゃんよっ……! そろそろ……覚悟を決めるんだなっ……!」 平民がニヤリと嗤った。 ルイズに昼食を抜きにされ、カイジは空腹に苦しんでいた。 帝愛の地下収容所で粗末な食事に慣れているとはいえ、20代のカイジにとって、一食を抜くのはやはり堪える。 (くっ……自分の無能をっ……俺に八つ当たりっ…… つくづく……許せねぇっ……! ガキがっ……! 本当の生死に直面したことのないガキの発想っ……!) カイジは唇を噛みながらも、学院の敷地を歩き出した。 空腹はつらいが、何よりもまずこの学院の地理を頭に入れておきたいと考えたからである。 貴族の部屋には入らないように注意しつつ、ゆっくりと教室や通路の間取りを頭に叩き込んでいく。 (こりゃあ……フレイムさんについてきて貰ったようが良かったかもな……) 一瞬そんな考えがよぎるが、カイジは頭を振って打ち消した。 フレイムはフレイムで使い魔として働いているだろう。安易に人に頼るべきではない。 自分から動かなければ、いざと言うときに人は動いてくれないものであることを、カイジは経験的に知っていた。 ぐぅ~…… ああ、それにしても空腹っ……!! 「ハァ……」 カイジは溜息をついた。粗末な朝食に昼食抜き……なんとかしなければと思う。 そんなカイジに、一人のメイドがおそるおそる声をかけた。 「あの……ひょっとして……おなかが空いているんでしょうか……?」 「げぇっ……!! 美心っ……!!」 ぐにゃ~ 振り向いたカイジの顔が、その少女を見てぐにゃりと歪む。 「え? いえ、私の名前はシエスタですが」 「そ、そうか……わるかった……」 ニコ…… ニコ…… メイドの笑顔に、ぞぞぞとカイジの全身に震えが走った。 (くっ……! 似てやがるっ……!! 笑い方もっ……声もっ……! 坂崎のおっちゃんの娘っ……! 美心そっくりっ……生き写しっ……! なんでっ……! どうしてついてまわるっ……! 畜生っ……この後の展開が読めるっ……バレバレっ……!) ボロ…… ボロ…… カイジは絶望の涙を流す。美心……いや、シエスタは、そんなカイジを心配そうに覗き込んだ。 「泣くほどお腹が減っているんですね……ぜひ、厨房にいらしてください!」 「ちょ、まって…… おろひて…… おろひてくらはい……!」 おろへませんっ……! 美心……いや、シエスタは、がっちりとカイジの腕を掴むと厨房に引き立てていった。 「さあさあっ……どんどん喰ってくれっ……! わしの自慢料理だっ……! もっとも、あまりモノで作ったんだがな……ガハハ……」 「こちら、料理長のマルトーさんです!」 マルトーの厚意で、カイジは暖かく美味い食事にありつくことができた。 なるべく笑顔の二人を見ないようにしながら、カイジは食事をがつがつと平らげる。 「ありがとう……すごく美味かったですっ……! ありがとう、マルトーさんっ……! ありがとう、シエスタさんっ……! 本当に、ありがとうっ……言葉にできないっ……!」 ニコ…… ニコ…… カイジの言葉に、やさしく笑顔を見せるマルトーとシエスタ。 使い魔たちと教室で出合ったときと同じように、カイジはここでも人間の優しさに触れた気がした。 がっ……顔は坂崎親子っ……! (どう見ても坂崎のおっちゃんっ……そして、その娘の美心っ…… くっ……それ以外にみえねぇっ……! こんなにいい人たちなのにっ……!) 顔はっ……坂崎親子なのだっ……! どうみてもっ…… 第六話「厨房」終わり 前ページ次ページ堕天召喚録カイジ
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前ページ次ページ魔導書が使い魔 「…………」 「…………」 重い、重い沈黙を横たえながら2人は黙々と教室を片づけていく。 あれから一時的に意識を取り戻したシュヴリーズはルイズに教室の片づけを命 じると、そのまま救護室へと運ばれていった。 今後あの中年教師にトラウマが刻み込まれるだろうが、今は関係ないことであ る。 「…………」 ルイズは煤と壊れた机の破片を掃き集め。 「…………」 アルは残った机の上で腕を組んで胡坐をかき。 「てけり・り」 どこからか聞きつけてきたのかダンセイニが壊れた机を移動させていた。 「って、なんであんたは働いてないのよ!」 今更ながら気が付いたようにルイズはアルに向かって叫ぶ。 アルはルイズを見て。 「なぜ汝の不始末を妾が拭わねばならん」 「――う」 鋭い指摘だった。 なにか反論する材料を探そうと、ルイズは言葉につまり。 「だ、だけど……」 考えられた思考は、取り繕う彼女からボロボロと錆のように落ちていき。 「だって……あんたは、わたしの……使い魔なの……よ」 今更通用しないと判っている理屈を取り出すしかなかった。 思い起こされるのは遠い過去から続く今までの日々。 国の中でも有数の家系、英雄視されることもある両親、あらゆる才を花開かせ る姉。 気がついたときから、自分はひたすらに努力を積み重ねてきた。 学を学び、才の方向を試し、礼を刻み込み、精神を叩き上げる。 経済、歴史、社会構造を覚え、理解できるまで噛み砕いた説明を父親から聞き だし。乗馬、剣術、弓術などを体験し、自分に合ったものを上の姉の指導の元 練習を重ね。テーブルマナーに家臣への接し方に王族謁見のマナーから隣国の 貴族との会食マナーを母さまに厳しく躾けられ、時折逃げることはあったが弱 音を吐くことはなく。心の強さ、優しさ、暖かさをちいねえさまから与えられ、 そしてそれに応えようと常に自身へと問いかけることは忘れない。 言葉にすることは簡単だが。自分にできることを、できないことを。できるよ うになるまで、またはできないとわかるまで、自分という土台を積み重ね、踏 み固めていった。 そう、やればやるだけ結果は応えてくれる。伸び悩むこともあるが、続ければ 必ず報われるのだと自分は、そう思っていたのだ。 誰もが――自分でさえ――その将来に大きな希望を持った。 だが―― 箒を痛いほど握り、掃き集めていたはずのゴミは無秩序に転がされる。砕けよ というかのごとく歯は噛み締められ、目に溜まった雫を零さないように更に力 をかけられる。 ――だがたった一つだけ。ある意味最も望み、あることが当然だと思われる物 ――魔法。 ただそれだけが、たったそれだけが、そんなことだけが……自分にはなかった。 熱心で出来るたびに褒めてくれた家庭教師は、魔法を見ると侮蔑のような目を 向けてきた。 どんなことがあっても優しく頭を撫でてくれる父さまの目は、魔法のことを言 うと痛ましく歪む。 はじめは修練が足らないと叱っていた母さまも、月日が経つうちにその頻度も 少なくなっていく。 なにかと魔法をネタにいじっていた姉さまも、そこには触れなくなった。 ただ、ちいねえさまだけはなにも変わらなかったが、逆にそれが辛かった。 そして己を変えるため、自分を脱ぎ捨てるために、父さまの反対を押し切りこ の学院に入った。 勉強した。家の蔵書数を遥かに超える学院の図書館を嘗め尽くす勢いで、魔法 関連の本を読み漁る。『火』『水』『土』『風』から『コモン』マジック。広 く使われる攻撃魔法から回復魔法、防御魔法、生活に根差す『錬金』や、誰も 知らないようなマイナーな魔法まで。 練習と勉強と復習と予習とを夜や朝、昼なども自由になる時間を、全てを費や し繰り返し、座学では学年で一番の成績を収めるまでになった。 それでも――魔法だけは、使えなかった。 泣きそうだった、だけど歯を食いしばって耐えた。必ず芽が出る、必ず報われ る。 そう……言い聞かせて……自分を騙し続けてきた。 「ふっ……く、くぅ……っ」 だけど胸の奥。いつも押さえ込んでいた突き崩すような衝動に耐えるには、 心はもう限界だった。 「てけり・り~……」 聞こえた声のほうを見ると、ダンセイニが手(?)を止め、こちらをうかがい。 気づけばアルもこちらを見ていた。 「そ、そうよね……っ。ど、どうせあんたも。わたしに失望したでしょ!」 「――」 たとえ心が折れそうでも、彼女は反射的に虚飾を取り繕うとする。 「言われてた、でしょ? ゼロの、ルイズって……」 顔に無理やり笑みを貼り付け、たとえそれが自分でも崩れそうだとわかってい ても、止める事はできない。 「……わたしはっ! 昔か、ら……こんな、のっ」 俯きそうになる顔を、わざと相手に向け。決して逃げることはしない。それが 悲しいまでの彼女の性。 「一度もっ……魔法が、成功しなっくて」 吐き出す言葉は刃。本来なら他人を切るはずの言葉は、その向かう方向が違う。 そして致命的な刃は。 「――もうっどう、や……てっも……魔法なんてっ!」 自らを深く突き刺さ―― 「――ある男の話だ」 アルが口を開く。 「その男はひどく貧乏人でな。ガスは止められる電気は止められる水道は止め られる家賃は払えず、日々の食う物さえもないありさまで。毎日教会に行って は食事をタカルしまつ」 「え――?」 突如始まった話に困惑していると、さらにアルは話を進めていく。 「探偵なんぞしていたが、とんだ三流。来る仕事は犬猫などのペット捜索。す ぐにへたれるし、あげく女には甘いと来る!」 話が進むごとにアルはなぜか興奮したみたいに鼻息を荒くする。 「なんだあれは! 巨乳か! あの脂肪の塊がいいのか!」 「ちょっ、ちょっとなに!?」 なぞの迫力にルイズが口を挟むが、アルは取り合わない。 「そんなのだから、いつもいつも。貧乏くじを引いて泥沼へと引きずりこまれ、 いつも痛い目を見るのだ。だがな――」 ふと、そこで口調が和らぎ、顔に笑みが浮かぶ。 「どんな苦境に立たされようとも、どんなに痛い目を見ようとも。たとえ、 今やっていることが無駄であろうとも」 それはまるで、子を見守る母のような微笑。伴侶を自慢する愛する者の喜び。 「そやつは、決して諦めなかった。決して膝を屈しなかった」 アルがルイズへと顔を向けた。 「千回。万回。億回。何度失敗しようとも、挫けそうになっても。その男は必 ず立ち上がり再び挑んだ」 そこで一度言葉を切り。 「それで、汝はどうだ?」 まるで試すような瞳が、ルイズを捕らえる。 「“たかが今まで成功しなかった程度”で全てを投げ出すのか?」 そしてアルは。 「たった千回の失敗で、たった万回の失敗で、億回にもいかぬ失敗で諦めるほ ど。汝の目指す道は軽いのか?」 負けを認めるのか、と聞いてきた。 「さあ、応えよ我が契約者――ルイズ」 「――」 それに彼女は――ルイズは硬く硬く手を握り締め、きつくきつく歯を食いしば り。 「全てを投げ出す? 諦める? 冗談じゃないわっ!」 アルへ顔を向けて、キっと睨み付けると。 「千回? 万回? 億回の失敗? 上等っ! その男ができたんなら、わたし に出来ない筈がないじゃない!」 その胸を焦がすは新たなる灯火。 「上等じゃないアル。わたしは決して諦めてなんてやらない!」 そう、他人から逃げを、負けを誘われて膝を屈するほど、ルイズの誇りは軽く はない。 「うむ、それでこそ妾の主にふさわしい」 「てけり・り~♪」 アルはそれに満足そうにうなずき、ポヨポヨとダンセイニが跳ねる。 「いや、それは止めて……」 うめくルイズの横。 「……早々簡単に壊れてもらっては困るからの」 なにか不穏な言葉も聞こえたが。 ともあれルイズは改めて、気合を入れ直すと箒を握る。 「よし! ちゃちゃっと済ませちゃいましょうアル!」 「てけり・りっ!」 拳を振り上げるルイズに倣い、触手を拳のようにして合わせる。 「待て」 そこでアルが異論を挟む。 「なによ」 アルは悩むように腕を組み。 「そのアルと言うのは、もしかせんでも妾のことか?」 「あんた以外に誰がいるのよ」 「な、汝もか!」 「あんたなんてアルで十分よ。それよりさっさと手伝いなさいよ!」 「ええい! 誰が手伝うか!」 そうして、騒がしくも教室の片付けは進んでいく。 「これも違う……」 コルベールはトリステイン学院本塔の図書館。教師のみ閲覧可能の『フェニア のライブラリー』で唸っていた。 30メイルもある巨大な本棚の上部。『レビテーション』で浮いている彼の手に は一冊の本。 タイトルは『始祖ブリミルの使い魔たち』。ハルケギニアにおいて、知らぬ者 はいない物を扱った書である。 彼が他にも抱える本は『ルーンの総称意義』『ハルゲギニアの伝記伝承』など がある。 書に目を通していたコルベールだが、一番大きな挿絵を見つける。 その絵には始祖ブリミルの使い魔たちのルーン描かれているのだが。 「……これは?」 コルベールは懐から紙を取り出す。 それは先日、気絶したルイズから写し取ったルーンが描かれている。 「まさかっ!」 彼の顔が驚きに歪む。 「おっとっとっ!」 抱えていた本が落ちそうになり、あたふたとしたあと。 「こうしておりません!」 本を乱雑に戻し、急いで図書館を後にした。 学院長室。おおよそ、このハルケギニアにおいて最高峰と呼ばれる魔法使いオ ールド・オスマン。 数々の功績と、群を抜く実力、膨大な知識量。300年も生きていると言われ、 白い口ひげと髪はその通り抜けた歴史を感じさせる。 そのハルケギニアの伝説の魔法使いは。 「ヒマじゃのー……」 とても時間を持て余していた。 前はそれなりに学院長として仕事があったのだが、最近は有能な秘書を雇った おかげでサインと判子だけで事足りる。 期限ぎりぎりまでやらない主義であるオスマンでも、それならすぐに済むのだ。 むろん、いつも余裕で書類や仕事の期限をぶっちぎることで困っていた関係者 は喜んだが、オスマン本人は大きくヒマを持て余すこととなる。 「ヒマじゃのーーーー…………」 そういって、大の大人が重厚なテーブルにベチャリと突っ伏す姿はいかにもア レな感じである。 ふとオスマンが視線を向けると、そこには黙々と書類と向き合っている秘書 ――ロングビルがいた。 眼鏡をかけてキリリとした表情で書類と向き合うその姿は、いかにも出来る女 といった感じである。 しばしその姿を眺めていたオスマンは、ふと悪戯を思いついたような顔をする と。 「モートソグニルや」 ちゅう、と可愛らしい声を上げてオスマンの肩に自身の使いまであるハツカネ ズミが現れた。 「ちいと頼みごとがあるんじゃが」 オスマンはゴニョゴニョと使い魔に頼みごとを伝えると。 モートソグニルはちゅう、と小さく鳴いた。 「よし、頼んだぞ」 彼は勇敢にもロングビルの机へと駆けていき―― ガシャン! ぢゅう!? 絨毯から現れたトラバサミに挟まれあえなく散っていった。 「モートソグニルぅぅぅううっ!?」 慌てて駆け寄るオスマン。 書類作業を止め、ロングビルは『錬金』を唱え終えた羽ペンを置く。 「ミス・ロングビル……なんと酷い事を……」 ピクピクと痙攣しているネズミを労わる様に手にするオスマンは、ロングビル へ言った。 「セクハラする時間があるなら仕事をしてください」 それにロングビルは勤めて冷静に返す。 「なんじゃいなんじゃい、そんなにもこの老体を苛めて楽しいのか!」 カッと目を見開き、詰め寄るオスマンにロングビルは動じず。 「そう言いながら胸の谷間を凝視しないでください」 ぐいっとオスマンの頭を押しのけた。 「かー! 見られるぐらいでガタガタ言うな! そんなのだから男がよりつか んのだ!」 吐き捨てるようにオスマンが言うと。 「…………」 「痛い痛い痛いっ! 止めてごめんなさい! 殴らないで蹴らないでっ!」 無言で殴る蹴るを繰り返すロングビル。 そんな日常的な行為を行っていると。 突如勢いよく扉が開け放たれた。 「大変です! オールド・オス……マン?」 慌てたように入ってきたコルベールが見た物は、地面にうずくまるオスマンと、 それとはなんの関わりもないように机で黙々と書類を整理するロングビルであ った。 一瞬なにをしているのかこの痴呆老人、と思った物のコルベールは本題を思い 出した。 「オールド・オスマン! そんな遊んでいる場合ではありません!」 「いや、遊んでいるわけでは……」 恨みがましい目を秘書に送るも、ロングビルはどこ吹く風と淡々と仕事をこな す。 オスマンはローブを叩きながら立ち上がるとコルベールと向き合い。 「で、どうしたんじゃ。ミスタ……コールベル」 「私は呼び鈴ではありません! コルベールです!」 「おお、そうじゃったそうじゃった。で、なにかの?」 飄々と笑うオスマンにコルベールは改めてその意を告げた。 「オールド・オスマン、これを」 手に持った書を掲げる。 「『始祖ブリミルの使い魔たち』じゃと? まーたカビ臭いものを」 「それはいいのです!」 そうして次にコルベールがその書の挿絵を開いた後。 「これは、6000年来の伝説が舞い降りたかもしれません!」 ルイズのルーンの写しを取り出した。 「…………」 オスマンの顔が一瞬にして引き締まり。 「ミス・ロングビル少し席を外してくれぬかの」 ロングビルは無言で席を立つと部屋から出て行った。 それを確認するとオスマンはコルベールへと問いかけた。 「それで、詳細を話してくれんか」 「むう……」 アルは唸りながら廊下を歩いていた。 「てけり・り」 その後ろをうねうねとダンセイニが続く。 ルイズの姿はそこにはなく、1人と1匹は当てもなく学院を歩く。 「あの小娘め……」 怨嗟の篭った声でアルが呟いた。 教室の片付けをなんとか終えた3人(2人と1匹?)は少し遅くなった昼食へと 行こうとしたのだが。 そこでルイズはアルに向かい。 「ああ、あんたは昼食抜きね」 と告げたのである。 当然のことながらアルは抗議したが。 「あんたは片づけを手伝わなかった上に、朝食では随分と恥をかかせてくれた わね。少しは反省しなさい!」 ルイズは聞く耳を持たず、これを覆すことはなかった。 そうして空腹な1人と1匹は飢えを満たすべく、こうして彷徨っているのである。 「うぬぬ……妾が餓死したらどうしてくれよう」 「てけり・り」 魔導書であるアルは実際なにも食べなくてもいいのだが、最近まで人間と同じ 生活をしていたため習慣となってしまった。 「……今頃、あやつはどうしておるかな」 ぽつりとアルが言葉を漏らす。 思い出すのは懐かしき日々、教会での騒がしくも賑やかな食事。 暴走するシスター、騒ぎ出す餓鬼たち、主を地獄へ叩き込む妾、おちょくられ る■■■―― 「あ――」 なぜか、重要なことが、思い出せない、気がした。 それは――愚か者で――うつけで――馬鹿で――未熟者で――暖かくて――大 切で――かけがえのない――その名は□●◎■○△ 「ああ――」 そのことを詳しく思い出そうとすると頭に奔るノイズノイズノイズ―― 「くぅ……っ」 「てけり・り?」 立ち止まったアルを心配そうにダンセイニが見上げるが、それどころではない。 バックヤードで疾走する術式を呼び出す。 現状記述損傷率は38.35――失礼これは違う――36.51844% 修復率は1.26548% どこかがおかしい、確実に修復が進んでいるはずなのに。前より深刻化してい る気がする。 なにか重要なことが検閲されているような―― 「――どうしました」 そんな時だった。声をかけられたのは。 「……?」 アルが見上げた先で、黒髪を揺らした少女がこちらを見て問いかけた。 「どこか具合でも悪いのですか?」 「もう、おかわりはいいですか?」 「うむ、もうよい」 「てけり・り」 空っぽになった皿を前にアルとダンセイニは満足そうな声を上げた。 シエスタと名乗った少女はこの学院のメイドらしく、ダンセイニの姿に一瞬驚 きはしたもののすぐに順応した。 そしてアルが空腹であると告げると快く厨房へと案内してくれたのだ。 腹が膨れて機嫌がいいのだろう、アルはほぼ空っぽになった鍋を持つシエスタ に言った。 「馳走になったな小娘」 どう見ても年下に小娘と言われてシエスタは。 「ふふ、どういたしまして」 背伸びをしている子供とでも見ているのだろう、優しい笑みを浮かべる。 そしてシエスタはアルへと話しかける。 「でも、大変ですね。平民なのに使い魔なんて」 「ん? 小娘なぜそれを?」 平民と呼ばれたことはこのさい無視して、アルは最も気になったことを聞いた。 シエスタは軽く笑い。 「だって、今日の朝食であんなに騒いだらすぐに噂は広まりますよ」 「ふむ」 それもそうかとアルが納得していると、奥から恰幅のいい男が現れると野太い 笑みを浮かべ話しかける。 「どうだい? 俺の料理は」 「うむ、美味であった」 「がははははっ! いいねぇ! あんな食べっぷりでそんなことを言われると 嬉しくなるねぇ!」 「ぬあっ! 汝っ! 頭をっ振り回すな!」 グシャグシャと髪をかき混ぜる手をアルは跳ね除けると。 威厳高々に口を開いた。 「妾はあらゆる外道の集大成。最強魔導書『アル・アジフ』なるぞ!」 その言葉に一瞬ぽかんとなる男。だが。 「がはははっ! それなら俺はこの厨房のコック長のマルトーだ!」 笑いながらアルの頭をまたかき混ぜる。 「だからするなとっ!」 「賄でよければいつでも食いにきな」 抗議するアルに、マルトーは男臭い笑みを浮かべ、笑いながら厨房の奥へと帰 っていく。 「よいしょっと」 それに連動するようにシエスタも鍋を置くと、近くにあった銀のトレイを掴む。 「ん? 汝どうした」 「今からデザートを運ぶんです」 そうか、とアルが呟くと。クイクイと袖が引っ張られる。下を見ると。 「てけり・り」 うにょうにょとダンセイニが動いていた。 「なんだ?」 「てけり・り」 「ふむ、確かに一宿はないが一飯の恩はあるな」 「てけり・り!」 「ふむふむ、それもよいか」 人外と人外が不思議な会話を繰り広げる中。 「あのー……」 置いて行かれるシエスタが声をかけようとした時。 「よし!」 アルが勢いよく立ち上がりシエスタへ振り返ると、偉そうに言い放つ。 「感謝せよ。汝の雑務を手伝ってやろう」 「てけり・り」 それにシエスタは、一瞬ぽかんとした後。 「はい、それじゃあお願いしますね」 微笑ましいと笑った。 ルイズは食後の紅茶を嗜みながら、ご満悦であった。 なにせあの生意気な使い魔に現在昼食抜きという罰を与えているのだ。 ああすれば、あいつも少しは懲りるに違いない。 「ふふ……ふふふふ」 薄暗くほくそ笑むルイズは、不気味な笑みを周囲に振りまき近寄りがたい雰囲 気となっているのだが。 (まあ、これで反省する態度を見せたら、夕食はまともに取らせてあげようか しら) ふふふふふ、とにやけながら紅茶を含んだルイズは。 「てけり・り~」 「ぶーっ!!」 「きゃあ!」 突如聞こえた聞き覚えのある声に口の中の物を噴出した。 不幸にも通りがかったモンモランシーが直撃を食らったが、それを気にしてい るどころではない。 口元を拭きつつ周囲を見渡すと。そこには。 「ほれ」 「はい」 「てけり・り~♪」 アルがケーキの乗った銀のトレイを差し出すと、シエスタがはさみでケーキを つまみ貴族へ配っていき。ダンセイニはその体を生かして運搬と配膳の両方を こなす。その異形の姿になぜか女性を中心に人気を集めている。 ダンセイニと目が合った。 ぷにょぷにょと体を少女たちに触られていたダンセイニはルイズに近づくと。 「てけり・り」 ケーキを皿に乗せる。 (あ、イチゴのショートケーキ。しかもほかのよりも少しイチゴが大きい) そんなことにルイズは少し幸福感を―― 「って、なにしてんのよあんたたちっ!!」 かみ締めるほど余裕はなかった。 叫び声に注目が集まり渦中にいるアルは、その声に振り返ると。 「なんだ、汝か」 疲れたように言った。 「なんだはないでしょう! なんだは!」 ルイズが歩み寄ると、アルと言い争いをはじめた。 シエスタはなにかを察したのか、静かにアルからトレイを受け取るとその場を 離れていった。 「ええい! 本当によくもまあさえずるな汝は!」 「なによ! 使い魔のくせに!」 少しその場を離れ、シエスタは言い争う2人を見た。 桃色の髪を揺らし理不尽とも取れることをまくし立てる少女と、それに対して 負けじと理不尽を理不尽かつ偉そうに拒否する銀髪の少女。 当人たちにとっては真剣なのだろうが、故郷に多くの兄弟を持つシエスタから 見ると姉妹喧嘩のようで微笑ましいことこの上なかった。 零れそうになる笑みを押さえ込み、1人でトレイからはさみでケーキを配って いく。 それを横目に見ていたせいだろうか。 「おい、ギーシュ! ほんとはどの子と付き合ってるんだよ!」 「誰が恋人なんだ?」 「ふ、僕は薔薇。薔薇というものは多くに愛でられるからこそ意味があるんだ」 目の前で複数の少年に囲まれ質問をはぐらかすキザな少年――ギーシュから転 がり落ちた小壜を思わず拾う。 「あの、貴族様。これを落としましたよ」 「うん?」 小壜を差し出されたギーシュは、一瞬だけ苦い顔をすると。 「そんな物は知らないな」 しれっとした顔で言った。 普段のシエスタならそこでなにかを察しただろう。だがルイズとアルのやり取 りを見てお節介な心が頭を擡げ、シエスタはギーシュへ言いすがる。 「ですが、確かに」 「しつこいな君は――」 それに早々に話を打ち切ろうとしたギーシュの声は。 「――おいこれ! まさかモンモランシーの香水か!」 先ほどから彼に質問をしていたマリコルヌによって遮られ、周囲の少年はその 声に敏感に反応した。 「この小瓶の形、間違いない!」 「しかもこの鮮やかな紫色は!」 「これってモンモランシーが自分自身のためにしか調合しない特別な香水じゃ ないか!」 こうなればもうギーシュにもシエスタにも止めることはできない。 「これをギーシュが持っていたということは」 「ギーシュ! お前はモンモランシーと付き合っているのか!」 「いや、それは――」 ギーシュはそれを必死に弁解しようと、口を開いたとき。 「ギーシュ様……」 気がつけば、ギーシュが振り向いた先に栗色の髪の可愛らしい少女が居た。マ ントの色からして1年生であるその少女を見たとき、ギーシュの顔に焦りが浮 かんだ。 「け、ケティ!」 ケティと呼ばれた少女はじっとギーシュの顔を見ると、急にボロボロと涙を流 し始める。 「ギーシュ様……やっぱりミス・モンモランシーと」 「違うケティ! これはなにかも間違いで! その小壜は僕がさっき落ちてい たのを拾ったんだ!」 「もういいですっ!」 あたふたと言い訳をするギーシュを少女は遮ると。大きく腕を振りかぶった。 踏み締められた足は地面を掴み。その踏み込みから生まれた剄を螺旋と捉え。 足から膝、膝から腰、腰から肩、肩から肘、肘から手へと伝達増幅する。鞭の ようにしなった腕は震脚と剄力を一切漏らさず、ギーシュの頬へとその衝撃を 解き放つ。 ――ドゴン!! 「ぐべらぼへっっ!!??」 おおよそ人体が発するとは思えないような打撃音と共に、カンフー映画の如く その場で4回転し墜落するギーシュ。 「さようなら!」 拳法の達人にも劣らぬ見事な平手を放った少女は、泣きながら走り去っていっ た。 ポカンと言い争うことも忘れ、お互いに見入っていたアルとルイズの傍。巻き 髪の少女がつかつかとギーシュの元へと一直線に歩いていく。 「お、お、お、お、お……」 首が直角に曲がったままゾンビの如く立ち上がったギーシュに巻き髪の少女が 話しかける。 「こんにちは、ギーシュ」 「も、モンモランシーっ! これはだね――」 一瞬にして復活したギーシュが弁解の言葉をつむぐ前に。 「うそつき!」 「べぶしゃっっ!!??」 どこから取り出したのか、四角い石塊に柄を付けただけハンマーでモンモラン シーはギーシュを殴打。 そして更に殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打――殴打! 生肉と硬い骨を無理やり鈍器で叩き潰すような生々しい音が暫し響いた。 周囲に鮮血と肉片とピンクのなにかが散らばる中、モンモランシーはハンマー を投げ捨てると、そのまま歩き去っていく。 「ふんっ!」 後に残されるは血塗れたハンマーと、R-18指定とモザイクがか かりそうなギーシュだった。 「「「「「…………」」」」」 乾いた……乾いた空気が場を駆け抜ける。 「……お、おい」 だが、ようやく様子を見ていた少年が、目の前の惨状に水のメイジを呼ぼうと 口を開いたが。 「――ふっ!」 「「「「「――ッッ!!??」」」」」 バネ仕掛けのごとくピョンッと立ち上がったギーシュに周囲はビクリと震えた。 「いやー、あのレディたちは薔薇の存在の意味というのを理解してなかったみ たいだね」 薔薇の造花を取り出し普段のキザを演じるギーシュ……頭が一部陥没し、頂点 から胸元まで血に濡れているが。 「薔薇というものは僕のシンボルリックマークであり、シンボルと言うことは 世界に掲げるもので……あれぇ? ということは薔薇である僕は世界に掲げら れる存在で、そんな僕はアイドルになるというのか! ああ、敬遠なる信徒達 よ……僕の愛は無限……神は皆の心に居る。そう僕は言い皆を信じた結果、十 字架に縫いつけられ小高い丘へ晒されるために運ばれていくのであった……裏 切り者はどこだぁぁぁあああっっ!!」 どうやら、かなり遠い場所へと頭が旅立ったらしい。 だが、この時に逃げていればよかったものの。 「そこなメイド」 あまりの情況と変貌についていけず立ち尽くすシエスタにギーシュが薔薇を突 きつける。 「君のおかげで僕の世界的な愛を受けるべき2人のレディが勘違いをしてしま ったじゃないか。どうしてくれる」 シエスタは困った。本来なら杖を意識して、それに恐れたことにしないといけ ないのに。目の前で思考がトンでしまっている少年を見たことで、怖がり方が 頭から吹き飛んでしまっていた。 「え、えーと……」 しどろもどろに声をだす。 これではいけないと判りつつ、謝罪の言葉すら思い浮かばない。謝らなければ いけない、怖がらなければいけない。なぜなら、それが周囲も自分も傷つかな いための、彼女の処世術なのだから。 「さあ、どうしてくれるんだ」 さらに迫る薔薇。 「あ、あのっ」 「――まあ、なんとも情けない男だな」 シエスタはようやく謝罪の言葉を思い出したが。それは嘲るような声の前に出 ることは無かった。 周囲の注目が移った。 「なんだとっ!」 そこには銀髪を揺らしながら歩く1人の少女。 アルはシエスタの前に立つと腕を組み、胸を張って言った。 「汝が醜態を晒した原因は。元はといえば自身がまいたタネだ。なぜこやつが 攻められねばならぬ」 その言葉に周囲は爆笑した。 「確かにギーシュ! それはお門違いだ!」 そうだそうだ、と周りの野次が飛び交う中、ギーシュは自身の主張を曲げない。 「そこのメイドがもう少し気が利いていれば、レディたちが傷つくこともなか ったんだ!」 「やれやれ……」 それにアルはため息を吐くと。 「汝も人なら、人間の理解できる言葉を喋らんのか」 ギーシュの顔に朱がさした。 「平民ごときが貴族に口答えをするのか!」 発した言葉はこの世界にとって絶対にして当然のこと、貴族とは平民よりも上 位の存在であるという自負。 だがそれも。 「汝、それは身分が違えばどんな醜態を晒しても恥ずかしくないと言う事か? 随分立派な考えだな」 目の前の少女には関係が無かった。 もう怒りのあまり震える拳をギーシュはなんとか押さえ込む。溢れんばかりの 怒りは1周して逆に冷静にさせる。そしてギーシュは薔薇をアルに突きつける。 「よろしい、ならば貴族の礼節というものを教えてあげよう。決闘だ!」 「ふん、よかろう」 おお、と周囲が際限なく盛り上がり。目の前の出来事について行くだけで必死 のシエスタをよそに。 「なに勝手なことやってのよあんたはっ!」 さらなる闖入者が現れる。 野次馬の輪が広がる。そこから出てきたのは桃色の髪の少女。ルイズを見てギ ーシュはアルのことを思い出す。 「そうか、……君はルイズの使い魔だったな!」 一々セリフごとにポーズを取るギーシュをルイズは無視し、アルへと近づくと その腕を取ると引っ張った。 「さあ、行くわよ」 ぐいぐいと引っ張られそうになるのをなんとかアルは踏みとどまる。 「こ、こら! なにをする小娘!」 ルイズはアルに向き直ると。 「なに勝手に首を突っ込んで、勝手に喧嘩売って、勝手に決闘なんてしてるの よ!」 先ほどから溜めていた怒りを吐き出した。 シエスタを指差し。 「なんであんなメイドのことを庇ってるのよ!」 「うむ、あやつには恩義があるからな」 当然と返すアル。それにルイズはギーシュを指差し。 「なんで、あんなのの決闘なんて受けるのよ!」 「断る道理もなく、負ける道理もないからだな」 「だからなんであんたはそんなに偉そう――」 ギーシュをそっちのけで言い争いを始めようとする2人に。 「僕を無視して仲良くお喋りとはいい度胸だルイズっっ!!」 存在を無視されていた当人が切れた。 「使い魔の不始末は主人の不始末だ! 君にも決闘を申し込む!」 ざわりと先ほどとは違うざわめきと共に周囲は騒いだ。 いきなり決闘を申し込まれ戸惑うルイズは。 「ちょ、ちょっとちょっと! 貴族同士の決闘は――」 「――逃げる気か? まあ、魔法成功率“ゼロ”のルイズじゃしょうがないな」 その言葉に、周囲は一瞬昼の授業を思い出しルイズに注目するが。 「ふん、それがどうしたのよ」 彼女はあっさりとそれを跳ね除け、馬鹿馬鹿しいとばかり背中を向ける。 「ほら行くわよ」 「だから引っ張るな!」 いつもの彼女ならすぐに噛み付いただろう。だが少し前に、溜め込んでいた毒 を吐いていたルイズには普段には無い余裕があった。 ある種の覚悟を背負ったルイズに軽薄にもギーシュは。 「ふん、本当に怖気づいたのか。どうせその平民も、君みたいに口とプライド だけの存在なんだろうな!」 「――」 なにか触れてはならない物に触れてしまった。 ピタリとルイズが立ち止まる。 「ぴぃっ!?」 ルイズの近くにいたマリコルヌが恐怖から悲鳴を上げた。 ゆっくりとルイズが振り返る。 「――いいわ、ギーシュ」 その目には闘争の炎が燃えていた。 「その決闘、受けて立とうじゃないの」 騒ぎを遠巻きに見ていたキュルケは戸惑っていた。 食後ウニョウニョと可愛らしい生物がケーキを運んできて。そのケーキを堪能 しようとした時、馬鹿話をしていたギーシュたちが騒ぎ始める。 二股によって受けた裁き。まあ、過剰攻撃とも思えたが本人達の心の傷を思え ばそう攻める気も起こらず、元より首を突っ込む気もなかった。 その後、醜態を晒すようにメイドに喚き散らしていたが、それだけならなんて ことはない。 どうせ本当に処罰するほどの度胸などギーシュにはないのだ。 ここまでならキュルケも別に戸惑いはしない。 だが突如、メイドを庇うように現れたルイズの使い魔。 そしてそれに決闘を申し込むギーシュ。 ここまでは、ここまではいいとしよう。勝っても平民をいたぶる趣味の悪い男、 負けたら平民に負けた貴族の面汚しと、貴族が平民に対して決闘を申し込むな ど恥の上塗りにすぎないが。 だが、使い魔を止めようとしたルイズにもギーシュが決闘を申し込んだ時、キ ュルケは食べていたケーキを喉に詰まらせそうになった。 そして始めは断ったルイズが、ギーシュの言葉の何が原因か。決闘を受けたと き、思わず息が止まった。 「ちょっとルイズ!」 ヴェストリの広場で待つ、と先に出て行ったギーシュたちと入れ替わるように キュルケがルイズへ詰め寄る。 「なによキュルケ」 ぶすったれた表情でルイズは返す。 すぐ横ではルイズの使い魔――アルがメイドに何か言われている、がそんなこ とを気にしている余裕は無かった。 「なんであんな決闘受けたのよ!」 「あなたには関係ないわ」 「そんなこと言っている場合じゃないでしょっ!」 思わずキュルケは怒鳴った。 いつものギーシュなら女に怪我を負わせるようなことはしないだろう。だが、 いかんせんあのグラモン家は女癖と血の気が強いときている。 あの頭に血が上り、遠くに旅立ったギーシュに手加減など望むことは出来ない。 「ともかくっ。今すぐ決闘なんて止めなさい!」 我がことのように焦り声を上ずらせるキュルケ。 「いや」 他人事のように淡々と喋るルイズ。 普段の彼女たちからすれば、まるで立場が逆であった。 「いやって……そんな我侭言ってどうするの! あなたは魔法が使えないんだ から。こんなつまらないことで命を落とすかもしれないのよ!」 必死に引きとめようとするキュルケに、ルイズはポツリと言った。 「あいつは」 思わずルイズの顔を覗き込んだキュルケは息を呑む。 「――っ!」 「わたしの使い魔を侮辱した」 その目は、なにも譲らないと語っていた。 「あー、もう」 グシャグシャとキュルケは髪をかき混ぜ、背を向けた。 「好きになさい!」 「好きにするわよ」 ふん、とルイズはアルを連れそのまま広場へ歩いていく。 ルイズが食堂を抜けた頃になって、キュルケはため息をついた。 「はあー……」 これからどうするかを考え。 「このまま見て見ぬ振りってわけにもいかない、か……」 自分も広場に行こうとしたとき、背後から声がかかった。 「……心配性」 いつのまにかいた親友――タバサにそう言われ。 「違うっ」 キュルケは顔を赤くして怒鳴った。 事件の渦中にいたはずのシエスタは大いに戸惑っていた。 本来なら自分が咎を受ければ丸く収まるはずだったことが、いつの間にか自身 の手を離れ。貴族と平民の決闘騒ぎまで大きくなってしまったのだ。 途中、アルの主人であるルイズが止めようと入ったが。結局は彼女も決闘を受 けることになった。 たとえ貴族である彼女がいても、シエスタは噂で知っている。ルイズは魔法が 使えない貴族だということを。 魔法の使えない貴族は、立場以外は平民となんら変わりは無い。 平民が貴族と戦って勝てるわけはないのだ、普通は。 それを昔実感していたシエスタは、ここで初めて青くなった。 「アルさんっ!」 先に広場に行くギーシュと野次馬、まだこの場に残っているアルにシエスタは 向かった。 アルはシエスタに気がつくと笑いかける。 「汝、怪我はないな?」 まず自分の心配をする彼女にシエスタは言葉が詰まった。 「そ、そんなことより! 決闘なんて止めてください! 死んじゃいますよ!」 「だがな」 「だがじゃありません!」 シエスタは必死だった。貴族であるルイズはともかく、平民であるアルの命を あのギーシュが気にかけるとは思えない。 「――なんでこんなことをっ」 もはや懇願するかのように言うシエスタに、アルは酷くそっけなさそうに。 「いや……こういうのを見過ごすと、後味が悪くてな」 信じられなかった。本当に死ぬかもしれないのに、彼女はたったそれだけこと で自分を庇ったのだ。 「妾もどこぞのうつけに毒されただけだ」 そう恥じるように、誇るように、後悔するように言うアルに。 「――」 シエスタは言葉もない。 「それにな、負ける道理など一欠けらもない」 なにも言えないシエスタの横を、ルイズが通る。 ルイズはアルと2、3言い合うと、残った野次馬を連れてそのまま食堂を出て行く。 残されたシエスタは1人、拳を握った。 「……っ」 前ページ次ページ魔導書が使い魔
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シャオの朝は早い。 朝日も顔を出し始める頃に、まだルイズが眠っているベットから抜け出る。 「それじゃ離珠、なにか起こったら連絡をお願いね」 『はいでし、シャオしゃま』 シャオは、自身に伝心の能力でメッセージを送ることができる連絡用の星神『離珠』を部屋に残して、ある場所へ向かった。 「おはようございます。シャオさん」 朝食の準備で慌しくなっている厨房で、シャオは顔見知りのメイドにあいさつをされる。 「あ、おはようございます。シエスタさん」 ギーシュとの一悶着を切欠に親しくなれたシエスタに、嬉しそうな表情でシャオは返事を返した。 実はシエスタとは召喚された日の翌朝、厨房を借りに来たときにに会っていたのだが、その時のシエスタはシャオが月の精霊だということを知っていたのでやたらと恐れていた。 もちろん、そのことはこの厨房を取り仕切るマルトーも同じであった。 精霊は、たとえメイジであったとしても恐れと羨望の対象であり、魔法の使えない平民からしてみれば脅威その物だと言っても過言ではない。 それにトリステインでも有数の名門貴族の少女がその主だからという理由もあった。 だが、今ではシャオのほんわかとした雰囲気と性格、そしてなにより子供とは言え威張り腐った貴族をコテンパンに伸したことが効いたのか、かなり友好的になっている。 特にマルトーに関しては、彼女の作る『チュウカ料理』の教授を受ける程だし、友好の証と称して抱きつこうともする。 まぁ後者のほうは「マルトーさん、それはセクハラです!!」の言葉を合言葉に、他の連中が止めている。 そして、シャオはシエスタに手伝って貰いながら"ルイズたち"の朝食の準備を始めた。 「いつも思うんだけど、なんであんた達がわたしの部屋にいるの?」 今日も自分の部屋でシャオの作った料理を箸でつついているキュルケとタバサに、ルイズが訪ねる。 「彼女の料理が食べたいから」 目の前の料理を黙々と箸を進めていたタバサがぼそりと呟き、シャオに視線を向ける。 シャオは照れたように顔を少し赤らめている。 「うん、たしかにシャオの料理は美味しいから食べたくなるのも分かるけど・・・」 タバサの非常に共感できる答えにルイズが少し動揺していると、キュルケが追い討ちをかけるかのように一言だけ言う。 その一言はルイズにはまだ新しい記憶を呼び起こすには十分な威力を持っていた。 「ルイズ。あなた一人でこれ全部を食べきれるの?」 その一言にルイズは完全にノックアウトされる。 初日に食べきるのに少々辛い量をムリヤリ食べきるはめになり、その後しばらくの間は歩くのさえ辛かったことを思い出してしまったからだ。 しかも、全部食べてもらえたことに気を良くしたのか、次に出されたときには料理の量が増えていたのだから堪ったもんではない。 「それにいいじゃない。食事は大勢で賑やかに食べるものよ」 キュルケは実に楽しそうに笑いながらルイズを説得していると、そのセリフにシャオも頷く。 「そうですよ、ご主人様。それに大勢で楽しく食卓を囲むことが美味しく食事をする秘訣なんです」 えっへん。とシャオは胸を張って自信満々に言うのであった。 「ところで皆さん、授業に行かなくてもいいのですか?」 食事も終わり、普段なら授業の始まっている頃になってもくつろいでいるルイズたちにシャオが訪ねる。 そんなシャオに、『なにを言ってるの?この子は』という表情をしているルイズとキュルケの代わりにタバサが答える。 「今日は虚無の曜日」 タバサのその一言に頭の上に『?』を浮かべているシャオに、今度は思い出したかのようにルイズが説明をする。 「そういえばまだシャオには教えていなかったわね。今日は虚無の曜日って言ってお休みの日なのよ」 そう言いつつルイズがカバンを持って立ち上がる。 見るとキュルケのほうも化粧が終わったようで、タバサも窓から自分の使い魔を呼んでいる。 「それじゃ、休日を楽しむためにも街へ行くわよ」
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前ページ次ページ黄金の使い魔 ようやく掃除が終わり二人は食道へ向かう 朝食時に言った通り、ルイズの隣にはもう1つ席が設けられ 他の貴族達と同じ食事が並んでいる 「いい!?これが当たり前だと思わないでよね!特例中の特例なんだから!!」 「そうか、感謝する」とわしわしとルイズの頭をなでるアイオリア 「わ、、わわ、、わかればいいのよ!」 なんという立場の逆転、これではどちらが使い魔かわからない でも嫌な気はしないので、今回は大目に見てあげるんだから!掃除の手伝いのご褒美をあげただけなんだから!と自分を納得させる 黙々と食事をする二人 ただ違う点があるとすれば落ち着いて食べているアイオリアと アイオリアの方をキョロキョロ見ながら食べているルイズ と言った点だろうか 実はアイオリアの方を見ている少女がもう一人居るのであるが、それは後ほど触れる事にしよう アイオリアの方が早く食べ終わったのでルイズを待っていると 何やら大きな音や、騒がしい声が聞こえてくる 何事か、と目を向けるとそこには平謝りするメイドの姿があった 大方、何かを配膳中に落として、かかってしまった とかその程度だろう 貴族の方の度が過ぎるようなら 仲裁に入るか と考え様子を見ようと思ったが「申し訳ありません!!貴族様、、、どうかお許しを!!」という 聞いた事のある声が聞こえてきた まさか・・・! 人を押しのけ騒ぎの中心へ向かうアイオリア そこには涙を流しながら必死に許しを乞うシエスタと 杖として使用している薔薇をチラつかせながら尊大且つ、傲慢に彼女を叱りつける金髪の男子生徒が一人 事の顛末はこうであった デザートの配膳をしていたシエスタは金髪の男子生徒 ギーシュ・ド・グラモン の近くに香水の瓶が落ちているのを発見した そこで彼女はビンを拾うとギーシュに差し出した、しかしギーシュはビンを受け取ろうとはしなかった この場で香水が自分の物だと認めると、その香水を作った女子生徒との関係を認めることになり 二股がばれ、彼的に非常によろしくなかったのだ、 結局ギーシュはその香水により二股がばれ、二股をかけていた少女二人からビンタというおまけ付きでフラれてしまったのだが ギーシュはその責任をシエスタに押し付けたのである 曰く「君が軽率に、香水の瓶なんかを拾い上げたおかげで、二人のレディの名誉が傷付いた!どうしてくれるんだね!」 との事である 「何があったか知らないが、ここは怒りを納めてもらえないだろか、このアイオリア、この女性には恩義がある」 「アイオリアさん!!」 突然割って入ったアイオリアにを縋るような眼でみるシエスタ 「人を許すのも男しての度量という物だ、ましてや女性が涙するまで甚振る等男のするべき事ではない」 「なんだい・・・?君も平民の癖に貴族に対する態度がなってないんじゃないか?ルイズの使い魔君」 「男である事に、貴族も平民も関係ないだろう」 「君には入院中のヴェルダンディの件もある事だし・・・、そうだ、君が彼女の代わりに罰を受けるかい?」 「この上更に彼女が罰を受けるというなら、このアイオリア、喜んで罰を変わって受けよう、だが言っておく、お前を俺は貴族として、上に立つ者として認めん!」 この言葉が決定的だった、ギーシュの貴族としての自尊心を傷つけるに十分すぎる一言だった 「貴族に向かってその不遜な態度!無礼者め!よかろう!貴族に対する礼儀を教えてやる!このギーシュ・ド・グラモンの名に賭けて君に決闘を申し込む!」 「俺も戦士である以上断る理由はない」 「ヴェストリ広場に来い! ここを平民の下賤な血で汚すわけにはいかないからな!」 そう言い捨てるとギーシュは食堂を出て行った その声を聞いたルイズが人ごみをかき分け駆け寄ってきた 「何あんた主人の断りもなく決闘なんか受けてるのよ!!」 「申し訳ありません!ミス・ヴァリエール!私のせいでご迷惑を!」 「いや、あなたには恩義がある、それを返す機会をくれたあの少年に礼を言いたい位さ」 と涙を流すシエスタの頭に手を置きながら笑顔で言うアイオリア 「それにギーシュとかいう生徒の為にもここは叩きなおしてやる方がよかろう」 「何バカな事言ってんのよ!あんたがどれだけ腕に自信があるか知らないけどね、平民は貴族には敵わないの!怪我で済めばいい方なんだから!!」 「そうです!!アイオリアさん!殺されちゃいます!!」顔面蒼白で訴えるシエスタ 「ルイズ、これは君の使い魔の力量を見るにもいい機会だ、ここは私の好きなようにさせてくれないだろうか、このアイオリア、決して死なない事を約束しよう」 二人の警告を事もなさ気に一蹴するこの使い魔の自信はどこから来るのだろう、でも何故かそれを信用してしまいたくなる それだけの何かがこの使い魔にはある 「しょうがないわね・・・着いてきなさい!でももうダメて思ったら止めるからね!!!」 ヴェストリ広場に向かう二人を、メイド服の少女は見送ることしかできなかった 前ページ次ページ黄金の使い魔
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「ミス・ロングビル、非常に言いにくいことなのじゃが……君はミス・ヴァリエールに利用されたかもしれん」 オールド・オスマンが机の上に小さな箱を置く、その中には小指の先ほどの石ころが、沢山詰まっていた。 ルイズの部屋から回収された『それ』は、元々は仮面の一部だったという。 オスマンが試しに血を一滴垂らしたところ『骨針』と呼ばれる針を飛び出させたが、その衝撃に耐えられず粉々に砕け散った。 『石仮面』と呼ばれるそれは、人間を吸血鬼へと変身させるそうだ。 リサリサは石仮面によって吸血鬼になった人間と、その吸血鬼を捕食する存在と戦い続けてきたらしい。 石仮面がルイズの部屋にあったという事は、ルイズは石仮面を被り吸血鬼になってしまった可能性が高い。 もしくは、何者かを呼び出して吸血鬼にされてしまったのか… どちらにせよ、ルイズはロングビルを目撃者に仕立て上げる事で、「ルイズは死んだ」と思わせたのだと言う。 「そんな突拍子もない話を言われても、俄には信じられません」 ロングビルが答えると、オスマンは疲れたようにため息をついてから、ロングビルに言った。 「ま、考えすぎならそれに超したことは無いがの。じゃが石仮面が現れたという事実は受け入れねばならん」 ここに来てロングビルは、石仮面というキーワードがどれだけ危険なのか認識した。 現在、ルイズは石仮面を名乗っているはずだ、オールド・オスマンの耳に石仮面の名が届けば、真っ先に吸血鬼だと疑うだろう。 オスマンの話を聞いて、ロングビルは心の中でルイズに毒づいた。 (あの娘ったら、石仮面なんて名乗るのはマズイわよ) 次に考えるべき事は、吸血鬼に対する対抗手段と、吸血鬼の能力をどの程度認識しているかを知ることだ。 ロングビルは、オールド・オスマンから可能な限り情報を引き出そうと、質問の内容を変える事にした。 「しかし、吸血鬼の討伐なら今までにもあったと思いますが、なぜ『石仮面』にだけ、神経質に?」 「………それはじゃな」 オールド・オスマンは机の引き出しから一冊の本を取り出す、それは、土くれのフーケが盗み出し、ロングビルが持ち帰った事になっている、あの本だった。 「ミス・ロングビル、この本の表紙が読めるかね?」 「いいえ、見たこともない文字ですわ」 「じゃろうな、この本に書かれた文字はシエスタの曾祖父の故郷の文字じゃ、ワシも全ては読めん、しかしいくつかの項目を抜粋する程度ならできる」 そう言ってオールド・オスマンは本を開く。 てきとうなページを見つけ、指でなぞりながらその部分を読んだ。 「ええと…”吸血鬼は自らの血液を用いることで白骨死体をも蘇生させ、グールとして使役する”」 「…白骨? 蘇生?」 ルイズの再生能力は見て知っているが、白骨をグールとして再生させると聞いて、ロングビルが驚く。 「他にもあるぞ。”ハルケギニアにおける吸血鬼と異なり先住の魔法を使うことはできないが、グールを際限なく作り出すことが可能である…”」 「さ、際限なく!?」 基本的にハルケギニアで吸血鬼と呼ばれる存在は、グールを一人一体しか持つことが出来ない。 牙を隠せばディティクト・マジックでも反応しないため、先住魔法とも違う能力ではないかと言われている。 そんな凶悪なものが、魔力とは関係なしに際限なく作り出せると言うのは尋常ではない。「ミス・ロングビル、肝心なのはここからじゃ、心して聞きなさい」 『波紋は、太陽の生み出すエネルギーと同一の波長を持ち、生命力そのものを司る。 しかしハルケギニアに於ける太陽光は、その波長が微弱であると考えられる。 石仮面により吸血鬼と化した者、ならびにグールは、太陽の元を堂々と歩き、人類を蹂躙する危険が…』 「…………」 ロングビルは、何も言えなかった。 ルイズが太陽光の下を堂々と歩けるのは、直接見て知っている、しかしグールまでもが日中堂々と活動し、しかもその数を無数に増やしていたら、途方もなく危険なことだ。 そうなれば、誰と会うにしても安心できなくなる。 何よりも疑心暗鬼による人間同士の戦乱に発展が勃発してしまうかもしれないのだから。 「…驚くのも無理はなかろ、ワシが危機感を持った理由を、分かってくれるかの?」 いつになく真剣な、どことなく疲れたような表情でオールド・オスマンが言う。 ロングビルは何も言えなかった。 ただ、ルイズが言っていた言葉を頭の中で反芻していた。 『人間から少し血を貰うかもしれないけれど、食屍鬼(グール)にはしない。奴隷なんて欲しくないし、人間とは仲良くしたいもの』 (信じて良いんでしょうね…本当に、本当に信じて良いんでしょうね…!) 「ミス・ロングビル」 「はっ、はい!」 「ミス・ヴァリエールが吸血鬼だというには、説得力に欠けるかもしれん。しかし万が一の可能性を考えて、今から対策を練らねばならんのじゃよ」 「………」 ロングビルは無言だった。 オスマンは、命の恩人が吸血鬼だったという説をロングビルに突きつけたのだ。 ショックを受けるのは仕方がないだろうと考えて、要点だけを説明することにした。 「君はワシに”土のライン”だと説明したが、実力は”トライアングル”じゃろう、家名を失った以上、実力を隠したいのも分かるが…波紋を効果的に活用するための”道具”を作りたい。そのために練金に長けた者が必要なんじゃ、分かってくれ」 トライアングルだと気づかれていたのは驚きだが、石仮面の話に比べれば、まだまだ些細なことだ。 「え…つ、つまり、ミス・シエスタに協力しろという事なのですか」 「その通りじゃ、表向きは『珍しい魔法の調査』で通してくれ。魔法が必要なときは彼女を手伝ってやって欲しいしのぉ」 ロングビルは顎に手を当てて、少しだけ考え込む素振りを見せた。 「…わかりました、私で役に立てるなら、やらせて頂きますわ」 「すまんの、本当に申し訳ない、君にとっても、シエスタにとっても、ヴァリエールは恩人じゃろうて。だが、その恩人がハルケギニアを危機に陥れかねんのじゃから…」 懐から杖を取り出したロングビルは、胸の前で杖を掲げた。 「もう、こんな形で誓うことは無いと思っていましたが…”杖にかけて”」 オールド・オスマンは、満足そうに頷いた。 タルブ村で昼食を取った三人は、日が沈む前に魔法学院に帰っていた。 「~♪」 「キュルケさん、すごく嬉しそうですね」 ワイン樽を抱きしめるように抱えて歩くキュルケは、鼻歌交じりでかなり機嫌のようだ。 タバサは考える。 キュルケが男の話をするときも、貴金属の話をするときも、サラマンダーを召喚した時も、あれほど楽しそうな姿は見せなかった。 つまり、今のキュルケの状態は一言で言うと… 「酔ってる」 「…やっぱり、そうですよね」 タルブ村で飲んだワインは極上とは言わないが、とても飲みやすく、そして軽い。 キュルケは昼間なのに何杯もお代わりし、このワインを買いたいと言い出した。 ベリッソンからプレゼントされた金貨300枚相当の指輪をシエスタの父に押しつけて、樽ごと酒を貰ってきたのだ。 タバサはキュルケに駆け寄ると、キュルケの代わりにレビテーションを唱えて樽を奪った。 そしてキュルケの手から杖を抜き取るが、キュルケはそれに気づいていない。 「泥酔……。介抱してくる」 レビテーションを唱え、タバサはキュルケと酒樽と部屋へと運んでいく。 「空を飛べるって、いいなあ」 シエスタは、メイジにとっては当然の技術を見て、心底羨ましそうに呟いた。 学院長室に行こうとしたシエスタは、廊下でミス・ロングビルとすれ違った。 「あ、ミス・ロングビル、ただいま戻りました」 「………あ、ミス・シエスタ、オールド・オスマンがお待ちですよ」 「はいっ」 ロングビルは、元気よく返事をしたシエスタの後ろ姿を見送った。 ふぅ、とため息をつく。 とりあえず『石仮面』という名前は危険だと、ルイズに忠告しなければならない。。 次に、シエスタがルイズを殺すために育てられようとしていると伝えなければならない。 でも、そんな残酷なことを、どうやって伝えればいいのだろう……… To Be Continued → 15< 目次
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前ページ次ページ異世界BASARA 「あんた正気!?本気でギーシュと闘うつもりなの!?」 「そのつもりでござる」 半ば動揺しながら問うルイズに幸村は静かに答える。 「あんた何も分かってない!平民は貴族に…メイジには絶対勝てないの!怪我で済む保証もないのよ!」 「心配しておられるのか?」 「んなっ!?!?」 「ルイズ殿は、優しき心を持っておるな」 「ち、ち、違うわよ!自分の使い魔がボコボコにされるのを見たくないだけよ!」 突然掛けられた幸村の言葉にルイズは少し戸惑う。 (大声で騒ぐ馬鹿だと思っていたのに…いきなり優しいだなんて…) 「シエスタ殿、ヴェストリの広場とは何処でござろうか?」 そんなルイズを他所に、幸村は広場の場所をシエスタに聞いていた。 が、それを教えれば彼がどうなるかぐらい想像していたのだろう。 「ダ、ダメです!ユキムラさん、謝りましょう?ミスタ・グラモンも逃げてもいいと仰っていたじゃないですか!」 彼女はこの世界の人間なのでメイジの恐ろしさを知っている。 だから何も知らない幸村が大怪我をする前に止めようとしたのだ。 しかし、そんなシエスタの願いに幸村は首を横に振った。 「ユキムラさん!!」 「もういいだろう?そいつを行かせてやれ」 と、今までケーキを貪っていた利家が口を開く。 「キュルケ殿、その広場の場所は?」 「…あっちよ、ずっと行けばギーシュがいる筈だから…」 利家の問いに、キュルケは少し考えたが場所を教えた。 「あっちらしいぞ~。あ、それと忠勝殿~!」 利家がそう言うと、今まで黙って様子を見ていた忠勝が立ちあがる。 そして背中の箱のような物から2本の槍を取り出し、幸村に差し出した。 幸村の愛用している二槍、「朱羅」である。 「これは拙者の…忠勝殿が預かってくれていたのか?」 「………………」…グオオォォォン… 「…かたじけない忠勝殿。真田幸村、行って参る!!」 幸村は二槍を手に、ヴェストリの広場へ向かった。 「…あ!こら待ちなさい!勝手な事しないの!」 ルイズも慌てて後を追う。 「トシイエさん!何でユキムラさんを行かせたんですか!?」 利家の取った行動に、シエスタは泣きそうになりながら抗議している。 当の本人はまだケーキを美味しそうに食べている最中だ。 「本当に…一応聞くけど、あなたメイジの強さを知ってて行かせたの?」 「んん~?それがしも幸村もこの世界の事は知らんからな~。メイジの強さは分からんぞぉ」 やっぱりこの男は…キュルケは思わずため息が出てしまった。 「無知って怖いわねぇ…あの使い魔、痛い思いをするわよ。」 「ほぉ~!メイジというのはそんなに強いのかぁ!それは知らなかった!」 能天気に答え、ケーキのおかわりに手を伸ばしている利家を見てキュルケはルイズの使い魔が哀れに思えてきた。 「だがな…」 と、そこで利家は顔を上げてこう言った。 「お前達も、あいつがどれだけ強いか知らないだろう?」 その顔はさっきまでと違い、真剣な顔つきになっていた。 前ページ次ページ異世界BASARA
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最近のシエスタは朝ブラック・サバスと一緒に洗濯をすることが日課となっていた。 ブラック・サバスは影の中しか移動できないため、誰かが水汲み場まで一緒に移動してやらないといけないのだ。 別にシエスタがやることではないし、誰に頼まれたわけではないのだが 決闘の日以来、ルイズとブラック・サバスには何かお礼をしなければならないと考えていたので シエスタは自分から進んでこの役目を買って出た。 それでも最初は緊張しっぱなしであったが、さすがに毎朝毎朝いっしょに肩を並べていると慣れてくる。 今では、軽い世間話などしながら作業を進めている。 と言ってもブラック・サバスは何も話さないし、相槌すら打たないのだが。 シエスタの話が一段落するまでその場を離れないところをみると、一応話は聞いてるらしかった。 そういうわけで、今日も日陰になる場所でブラック・サバスを待っていると、背後に気配を感じる。 後ろを向くと、いつも通りの格好で、いつも通り神出鬼没の使い魔がそこに立っていた。 「おはようございます。サバスさん。今日もいい天気ですね」 笑顔でまずは朝の挨拶。いつもならこのまま二人で水汲み場まで歩いていくのだが、その日は違った。 「おでれーた!相棒!おめー朝から人間の娘っ子とデートかよ!」 ……………………しゃべった!!! シエスタはまさに目が点状態でブラック・サバスを見つめる。 しゃべりましたよね!?今なにかフレンドリーに話しかけてきましたよね!? 混乱中のシエスタに助け舟を出したつもりかどうかは分からないが、ブラック・サバスは半開き気味だった口をさらに開ける。 暗闇の中から何か棒状のものが、にゅるにゅると伸びてきて、シエスタの顔の前で止まった。 「落ち着けって!しゃべったのは俺だよ!」 なるほどしゃべったのはブラック・サバスではなくて、剣だったのか。 ……………………剣がしゃべってるーー!!? さらなる混乱におちいるシエスタに、デルフが意気揚々と語りかける。 「誰だ?って聞きた……な表情してるんで自己……させてもらうがよ。俺ぁ……かい焼き……フリンガー 城下町の………からピンクの………の娘っこに買われて…………オーイ」 ブラック・サバスの口から、剣が出たり引っ込んだりしながら話しかけてくる。 剣が口の奥に行ったとき声がくぐもって聞き取りづらい。 …………シエスタはすでに逃げていたので関係なかったが。 「おかしいな相棒。掴みはばっちりだと思ってたんだが、何がいけなかったんだろうな」 デルフは相変わらずピストン運動をしながらブラック・サバスに尋ねた。 (ちくしょう!あのエロジジィ!) ミス・ロングビルはその清楚な顔を怒りで歪ませ、廊下を早歩きで歩いている。 彼女の怒りの理由はもはや常習的になっている、オールド・オスマンからのセクハラ行為に対してだ。 元々彼女がこの由緒正しい名門トリステイン魔法学院の院長秘書というポストに着けたのは、オスマンからのセクハラが原因だ。 学院の宝物庫にあるという「破壊の杖」を頂くために、まず色仕掛けを使ってでも院長に近づくことが先決と考えていが こっちが色仕掛けをする前に、向こうから尻を触ってきたのは誤算だった。 秘書になってからというもの、毎日毎日尻を触られ、胸を揉まれ、部屋を覗かれ、下着を覗かれetcetc…… さすがに我慢の限界だった。 すでに宝物庫の壁が物理的な衝撃に弱いという情報は、ハゲから得ている。 後は実行に移すだけだが、ここで焦っては元も子もない。 せっかくここまで屈辱に耐えてきたのだ、絶対に成功させなくてはならない……! そんなことを考えながら歩いていると、前方から声が聞こえてくる。 「どうした相棒?なんで止まるんだ?……あぁ影が途切れてんのか。 ……そうか、いつもはあのメイドの娘っ子に連れて行ってもらってたんだな」 最初ロングビルは前にいる存在を、黒いマントをしているので2年生のメイジかと思った。 しかし妙だ。マントの色が黒すぎる。似ているが正規のマントではないようだ。 それにさっきから誰としゃべっているのだろうか。それとも独り言か? どちらにしろロングビルは関わりにならないほうがいいと判断する。 遠回りになるが、行きたい場所へはこの道を通らなくても行ける。さっきまで歩いていた道を戻ろうときびすを返し…… 「きゃあ!!!」 悲鳴をあげ、尻餅をつく。 きびすを返した先。さっきまで誰もいなかったはずのそこには、人っぽいなにかが立っていた。 後ろを振り返ると、さっきまでいた黒マントが消えている。あの一瞬で回り込まれたとでもいうのか!? 「チャンスをやろう!」 そう言って手を伸ばしてくるこの存在を、ロングビルは変態だと認識した。 「いや!」 思わず後ずさる。それを見た変態の口が開き、中から棒状の物……正確には剣の柄の部分が出てくる。 「バカ!相棒!そんな言い方じゃあ変態と思われるだろーが!おいねーちゃん頼みがあんだけど…あれ?」 ロングビルは全てを聞く前に行動を開始していた。 盗賊『土くれ』のフーケの最後の切り札。それは『逃げる』!! ロングビルは窓を突き破り、外へと飛び出した。この廊下は2階だったのだが、メイジにとってそれは関係ない。 「レビテーション」を唱え安全に地面に着地するやいなや、一目散に走りだす。 どこでもいい、もうここにはいたくない。こんな学院からさっさと離れてやる! 『土くれ』は今日中にでも破壊の杖を盗み出すことを決意した。 ルイズは中庭で一人作業に没頭していた。 木の棒を十字に組んで、地面に刺す。 横棒の端にシエスタから借りたボロボロの作業用の手袋をはめ 縦棒の先には、布袋に藁を詰めて丸めた物を紐で縛って取り付ける。 そして布袋に簡単な似顔絵を描く。いわゆるカカシという奴だ。 少しマヌケ面になってしまったが、良しとしよう。初めて作った割にはなかなかいい出来だと自画自賛する。 後は使い魔とうるさい剣が来るのを待つだけだ。 ルイズは胸元にある『再点火装置』を握った。 紐を通す穴を錬金で作ってもらい、ネックレスのようにしたのだ。 ついでに固定化もしてもらったので強度も少しあがっている(ギーシュにやらせた)。 「まったく……主人を手伝わないで、またどこかほっつき歩いてんのかしら」 ブツブツと文句を呟く。 最近は言うこと聞くようになったと思ったら、このザマだ。最もあれらがいたとしても、この作業を手伝えると思えないが。 「いたいた。ルイズ!」 聞き覚えのある声。ルイズが後ろを振り向くとキュルケとタバサがこちらに近づいてくる。 「キュルケ……とタバサ……あんたたちなんでここにいるのよ」 心底嫌そうな顔で二人を見る。 この二人とは決闘以来よく会うようになっていた。といってもキュルケとはいつも口喧嘩だし、タバサは何もしゃべらずそこにいるだけだったが。 しかし今は会いたくなかった。というか見られたくなかった。 使い魔と一緒に秘密特訓をする所を見られるなんて誰だって嫌だろう。私だって嫌だ。 というわけでルイズはこの二人になんとか帰ってもらおうと考えていたのだが。 「秘密特訓するんだって?精が出るわね~」 「努力するのはいいこと」 「な!なんであんたたちがそのこと知ってんのよ!!」 思わず声が大きくなる。 キュルケは何でもないような顔をして答えた。 「聞いたの。あんたの使い魔の剣から」 それを聞いたルイズはしばらく固まった後、嘆息をひとつしてうめいた。 「サバス、デルフ……いるんでしょ……出てきなさい」 その言葉に従いキュルケの影からニュッとブラック・サバスが現れる。 「…………まずはあんたたちの言い分を聞きましょうか」 「ここまで来るのに手間取ってたらよー。このねーちゃんが影貸してくれるっていうからホイホイ付いてきてもらったんだわ」 デルフが口の中からカタカタと答える。 「なんでキュルケが特訓のこと知ってんの?」 「それは相棒が」 「サバスがしゃべるわけないでしょ!この馬鹿剣!やっぱあんたなんか買わなかったらよかった!」 剣に怒鳴りつけるルイズに、ブラック・サバスが手を上げる。 まるで、まぁまぁ落ち着いてというジェスチャーのように見えた。偶然だろうが。 「あんたもなんでよりによってキュルケの影に入るのよ!」 使い魔&魔剣のコンビをしかり付ける親友を見ながら、キュルケは苦笑する。 「言ったら手伝ってあげたのに。こんな不細工なカカシまで作っちゃって」 「不細工とはなによ!」 今度はキュルケと始める。タバサはまた長くなりそうだと空を見上げた。二つの月が綺麗に輝いている。 「!!」 経験が生きたのかどうかは分からないが、その気配に最初に気づいたのはタバサだった。 慌てて後ろを振り向く。 それに釣られた残りのメンバーも振り向き……巨大なゴーレムの姿を確認した。 唖然とするこちらの存在に気づかないゴーレムは、塔の壁を派手な音を出しながら殴り始めた。 「な、なにしてんの」 声の震えるルイズに対して、冷静にタバサが答える。 「宝物庫。あれだけ巨大なゴーレムを操れるのはトライアングルクラス」 「泥棒…………で巨大ゴーレムってもしかして………『土くれ』のフーケ!?」 「サバス!」 ルイズはブラック・サバスの口に手を突っ込み、デルフを引き抜いた。 そして鞘から抜き出し、また突っ込む。ただし今度は刃の方が口から飛び出すような向きで。 「特訓の成果を見せる時ね」 「まだなんにもやってねーと思うんだけど」 デルフのつっこみは口の中で空しく響いただけだった。 To Be Continued 。。。。?
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「虚無って……何、これ」 アンリエッタも、ウェールズも、ルイズの疑問に答えることは出来なかった。 ルイズが更にページをめくり『始祖の祈祷書』を読み進めようとすると、よりいっそう『風のルビー』が強く輝いた。 「風のルビーが、輝いている」 アンリエッタがルイズの手にはめられた『風のルビー』を見ると、ウェールズの言ったとおり、不自然なほど強く光を反射して輝いていた。 「本当…ねえ、ルイズ、『始祖の祈祷書』を私にも……」 アンリエッタが試そうとするが『始祖の祈祷書』には何の文字も現れない。 もしやと思い『風のルビー』をはめて試すが、やはり何の文字も現れなかった。 「ルイズ、私の『水のルビー』でも読めるか、試して?」 「…………」 ルイズは無言のまま、アンリエッタの差し出した指輪を受け取り指にはめた。 「読める……読めるわ……」 『始祖の祈祷書』には、『風のルビー』をはめた時と同じように文字が浮き出ていた。 「まさか……私が、そんな、そんな」 ルイズは顔を押さえ、狼狽えた。 この本に書かれていることが本当なら、私は虚無の使い手。 今までの魔法の失敗は、私が系統魔法ではなく虚無の魔法の使い手だったからだと考えれば納得がいく。 だが、納得できない。 『なぜ吸血鬼になる前に教えてくれなかったのか!』 と、怒りにも似た感情が『始祖の祈祷書』に向けられる。 だが、本はそのまま、本として無機質な顔を見せたままだった。 アンリエッタから水のルビーを借りて、始祖の祈祷書を読もうとしていたウェールズだったが、自分には読めないことが分かると、顎に手を当てて何かを考えていた。 「アンリエッタ、この本がニセモノである可能性は?」 「ウェールズ様が疑われるのも無理はありません、ですが、『始祖の祈祷書』は過去に魔法学院やアカデミーで研究されているはずです。この本には『固定化』以外になんの魔法も付加されていないはずですわ……」 アンリエッタの言葉は少し震えていた。 ルイズの言葉が本当なら、伝説だと思われていた『虚無』の手がかりが現れたことになる。 そして、ルイズを悩ませていた魔法失敗の原因が、今解明されるかもしれないのだ。 アンリエッタは王女として、一人の友人として、期待せずにはいられなかった。 「そうなのか……ならば、石仮……いや、ミス・ルイズ。虚無の魔法とはどんなものなのか、確かめられるような魔法は書かれていないのか?」 正直なところ、ウェールズはまだ『虚無』に対して懐疑的だった。 アンリエッタやルイズを信用してはいるが、虚無の魔法ともなれば、その内容を確かめてからではないと信用は出来ない。 『伝説の虚無系統を、この目で確かめてみたい』というのが本音かもしれないが…… 虚無の魔法に対して懐疑的なのは、ルイズも同じだった。 あまりにも突然の出来事で、頭が混乱しているのかも知れない。 だが、今は『これが虚無である』と確かめられるような呪文を探すのが先だ。 ルイズは一心不乱にページをめくり、文字を探した。 「……以下に、我が扱いし『虚無』の呪文を記す。初歩の初歩の初歩。『エクスプロージョン』……意味は、爆発?」 爆発と聞いて、ルイズとアンリエッタが「あっ」と声を上げた。 ルイズはいつも、呪文を唱えると、爆発を起こしていた。 あれは、ここに書かれている『虚無』ではないだろうかと、思い当たったのだ。 考えてみれば、爆発する理由は誰も答えられなかった、ラ・ヴァリエール家の教育係も、両親も、姉も、誰もその疑問には答えられなかった。 ただ、彼らの望む結果を出せなかったから、ルイズの魔法は『失敗』で片づけられていたのではないか。 ルイズは更にページをめくる。 こんな所で爆発を起こしてしまったら、それこそ大問題だ。 別の何かはないかと、必死になって探した。 ルイズは本を凝視し、精神を集中させた。 ふとページをめくる手が止まる。 光と共に文字が浮かび上がり、別の呪文が姿を現した。 「初歩の初歩……〝イリュージョン〟……描きたい、光景……強く心に思い描くべし、なんとなれば、詠唱者は、空をも作り出すであろう…………かしら」 ルイズは、静かに詠唱を始めた。 それはアンリエッタとウェールズも聞いたことがない、長い呪文。 だが、ルイズにとっては、なぜか懐かしく、そして心落ち着く呪文だった。 ルイズは思い描く。 アンリエッタとウェールズの姿を思い描く。 テーブルの上に、二人が並んで立っている姿を想像して、詠唱する。 詠唱する。 詠唱する。 詠唱する…… テーブルの上に雲のようなものが集まり、徐々に人間の形を成して、色が浮かび上がっていった。 テーブルの上に立つのは、高さ15サント(cm)程のウェールズ、アンリエッタの姿。 ……だけではない。 羨ましい程のスタイルを持つ赤毛の女性。背丈より高い杖を持ち眼鏡をかけた水色の頭髪の少女。薔薇の造花を持った金髪の少年。長い髪の毛を綺麗にロールさせた女性。 ぽっちゃりとした体型で肩に鳥を乗せた少年。黒い頭髪と瞳を持つメイドの少女。眼鏡をかけた緑色の頭髪を持つ女性。逞しい肉体と髭をたくわえ豪華な鎧を着た男。ルイズを金髪にして眼鏡をかけたような女性。ルイズと同じ髪の色で目つきの優しい女性。 ほかにも沢山の人の姿が、まるで人形を並べていくようにテーブルの上に形作られていった。 「すごいな……、少し、確かめさせて貰うよ」 テーブルの上に作られていく人形に向けて、ウェールズは『ディティクト・マジック』を唱える。 光り輝く粉のような物が舞い、その存在を調査していく。 「手で触れることはできないが、ディティクト・マジックにすら反応しない幻……これが虚無なのか…」 「水でも、風の系統でもありませんわ、これが『虚無』の初歩なのね、ルイズ…………ルイズ?」 ウェールズが感心する一方、アンリエッタはルイズの表情に影が差していたのを見逃さなかった。 コンコン と、応接室にノックの音が響く。 「姫さま、会議の時間が迫っておりますが……」 アンリエッタは、ウェールズの処遇と、ワルド子爵の裏切りについて会議があるのを思い出した。 「ルイズ、後でまたお話ししましょう。すぐに部屋を一つ準備させますから」 ルイズはうつむいていた顔を上げ、アンリエッタを見て言った。 「は、はい……あ、私のことは、どうか誰にも言わないで」 「大丈夫ですわ、貴方がウェールズ様を守って下さったように、わたくしも貴方を守りましょう」 「……ありがとう」 アンリエッタとウェールズの二人は応接室を出ると、外で待機していた侍女がアンリエッタの言付けを受けて、すぐに上等なゲストルームへとルイズを案内した。 侍女が恭しく一礼し、ゲストルームを出て行くと、ルイズは糸が切れたようにソファに倒れ込んだ。 『イリュージョン』を唱えた影響なのか、ルイズの精神は思ったよりも疲弊していた。 侍女が出て行った途端、緊張の糸がほぐれたのだ。 ルイズは目と口を半開きにしたまま、意識を手放した。 夢の中で、ルイズは魔法学院にいた。 『ツェルプストー!見てみなさい、ふふーん、アタシは虚無に選ばれたのよ!』 『へー、すごいじゃない。でもその胸なら納得よね』 『ああああアンタ!エクスプロージョンでぶっ飛ばしてやるわよ!』 『ミス・ヴァリエール……貴方にお願いがある』 『え?お願いって……』 『タバサがお願いだなんて珍しいじゃない』 『虚無なら、ハシバミ草を育てる魔法があるはず』 『そ、そんなもん、無いわよ』 『……ふぅ』 『何よその落胆したようなため息はー!虚無よ虚無!凄いのよ!伝説よ!』 『ハハハ、ミス・ヴァリエール、君が虚無に選ばれただなんて、なんの冗談だい?』 『えい、金的』 『ウッギャー!』 『ちょっとルイズ!あたしのギーシュに何するのよ!』 『あれぐらい当然の罰よ、罰』 『駄目なの!ギーシュを罰していいのは私だけなのよ!』 『モンモランシー…あんた本当にギーシュが好きなのね。ならプレゼントよ”イリュージョン”』 『えっ、あ、ギーシュが一人、二人、三人……や、そんな、そんな沢山のギーシュに見つめられるなんて、私…ぽっ』 『あら、ヴァリエールったら、本当に虚無の魔法を使えるのね』 『ふふん、やっとツェルプストーも私の力を認める気になったのね』 『でも私はもっと派手なのがいいわ、心の底から恋を焦がすような、熱と光は無いの?』 『あるわよ』 『ふーん、じゃあやって見せなさいよ、ゼロのルイズ』 『ほえ面かいても知らないわよっ!”エクスプロージョン!”』 洪水のような熱と光に、魔法学院と級友達、そして自分自身が焼かれ、ルイズは目を覚ました。 ソファから身体を起こして窓を見る。 外には見慣れた月が二つ浮かび、ゲストルームをうす明るく照らしていた。 「……夢?」 自分の身体を触り、焼けこげていないか確かめる。 服を確かめても、夢の中のように魔法学院の制服は着ていない。 ルイズは「ふぅ」とため息をついて、再度ソファで横になった。 「戻りたい」 学院に。 「戻りたい」 人間に。 ルイズの小さな呟きは、誰にも聞かれることなく、月明かりに消えていった。 その頃、会議を終えたアンリエッタは、ルイズの作り出した幻のを思い出していた。 あの幻で作られたのは、ルイズの父母、姉達、魔法学院の制服を着た人々。 「子供の頃から、強がってばかり……」 空に浮かぶ二つの月を見上げると、月は一つの球体が二つに分裂するかのように位置をずらしていた。 アンリエッタは『おともだち』を、どんな手を使ってでも守ろうと決心していた。 ウェールズと再会できたのも彼女のおかげなのだから。 アンリエッタの表情は、いつもよりも遙かに堂々としていた。 沸き上がる『自信』も『決意』も、『おともだち』がくれたものだと思っていた。 「アニエスなら……ルイズに協力してくださるかしら?」 会議では、ウェールズの亡命を受け入れるには至らなかったが、親衛隊の新設が決定された。 ワルド子爵の裏切りが、親衛隊の新設を後押しする形となり、『銃士隊』の結成が決定されたのだ。 その隊長として、アンリエッタが選んだのは「アニエス」という平民の女性。 元傭兵のアニエスは、今はトリステインに所属する軍人として並々ならぬ功績を上げている。 アンリエッタは彼女に『シュヴァリエ』の位を与えたかったが、まだ他の貴族からの反感も大きく、実行には移せていない。 だが、機会を見てアニエスを中心とした『女性だけで構成された近衛兵』を集めるつもりだった。 「私も、私のお友達も、ずっと子供のままなのかもしれませんわ……」 アンリエッタは、ルイズと同じ月夜を見上げていた。 そして、数日後。 トリステイン魔法学院では、ある変化が生徒達を驚かせていた。 『風が最強だ!』と耳にタコができそうな程繰り返していたギトーが、どこか大人しくなり、傲慢さがなりを潜めてしまった。 それどころか、属性の使い分けと、連携を中心として授業が進められていく。 その変化に驚いたある生徒は『魅了』で記憶を改ざんされたのではないか……と言い出す程だった。 もう一つの変化は、シエスタの変化だった。 いつもより堂々と、自信に満ちた笑顔を見せて、授業を受け、実技に挑戦し、キュルケ達との会話にも物怖じしない、それは女性としての自信と言うより、戦士としての自信だったのかもしれない。 もっとも、それに気づいているのはキュルケとタバサぐらいのものだが。 元は平民なので、シエスタはどの貴族に対しても丁寧に接していたが、そのせいかマリコルヌが何かを勘違いして得意げにしていたのは秘密だ。 だが、いかに治癒の力を持つとはいえ、シエスタは元平民。 平民と貴族が同じ授業を受けるなど、馬鹿馬鹿しいと言って、シエスタに敵意を向ける者も存在していた。 シエスタは空を飛べない。 そのため、魔法学院の外で規模の大きい風の魔法を実習する時など、走ってその場まで移動する。 他の生徒達は『フライ』の魔法を使って移動している。 単独で空を飛行する魔法、風の基礎中の基礎、『フライ』すら使えないシエスタを馬鹿にする者も多かった。 だが、キュルケ達は違う。 ルイズが死んだ罪悪感からか、それとも純粋にシエスタの『治癒』の力を認めているのか、『フライ』が使えないからといってシエスタを馬鹿にすることは無かった。 キュルケ達と仲の良いシエスタを見て、ある生徒がこんなことを呟いた。 『キュルケは、平民上がりのメイジを飼っている』 その噂は瞬く間に広がり、キュルケとシエスタは侮蔑と好奇の混じった視線に晒された。 だが、元々同姓から羨まれ、恨まれるキュルケは気にしていない。 シエスタもそれがどうしたと言わんばかりの、堂々とした態度でいつもの生活を繰り返している。 そうなると面白くないのは、噂を広めた当人達。 キュルケとシエスタへ向けられていた好奇の視線、それが少なくなるに従って、今度は二人の人気が高まっていった。 姉のように振る舞うキュルケ。 優しい妹のようなシエスタ。 二人の人気を妬む、一部の生徒の『危険な』嫌がらせが実行されるのも、時間の問題だった。 To Be Continued → 25< 目次
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四 奇跡の草原 前ページ次ページゼロの影 学院に戻ったルイズはオスマンから呼び出され、『始祖の祈祷書』を渡された。 王女とゲルマニア皇帝の結婚式の巫女に選ばれたため詔を考えなければならない。 意気込んだもののすぐさま挫折した彼女は使い魔に助けを求めかけて即座にやめた。どう考えても祝福の言葉など持っているとは思えない。 うー、あー、と妙な声を上げながら床やベッドを転げ回る彼女の奇行にも一切関せず読書に耽っている。その傍らには数冊の書物が置いてあり、扱っている内容はバラバラだ。 今読んでいるのは始祖ブリミルについての本らしい。 約六千年前に活躍したハルケギニアで神の如く崇拝される偉大なメイジであり、その生涯や魔法は謎に包まれている。 魔界の魔法と始祖が操ったとされるものには似た部分があるため興味をそそられるところだが、書物は伝説の偉人として扱っており、どこまで確実かわからない。 何しろ彼の魔法で天地までもが鳴動したというのだ。神格化され大げさに伝わっている部分もあるだろう。 天空を思わせる模様が刻まれた表紙の本を閉じ、新たな一冊を手に取る彼を見てルイズの血管は切れそうになった。 (ななな何よわたしがこんなに苦労してるってのに自分は優雅に読書なんていい身分じゃない。そんなに大魔王さまのお役に立ちたいってわけ!?) と憤ってみたところで真面目に肯定されるに決まっている。 ますます釈然としないものを感じたルイズはささやかな抵抗を試みた。彼を連れて中庭に出た後、質問攻めを始めたのである。 青空の下に連れ出して少しでも開放的な気分にさせ、情報を聞き出そうというのだ。 まずは返事する確率の高い戦闘に関する質問――特に呪文について尋ねた。 こちらが知識を提供するだけでは不公平だ。前々から彼の世界のことも知りたいと思っていた。 すると、ほとんど喋らない彼の代わりに大魔王が質問に答えた。 一般的な火球呪文や氷系呪文といったものから天候を操る呪文まで様々なものを説明され、ルイズの目が輝く。 ミストバーンへの質問の大半は沈黙に撃墜されたが、答えが返ってきたのは大魔王の偉大さについての質問だった。 「バーン様をお守りするのが、私の使命なのだ!」 という高らかな宣言にはじまり、数千年の間仕えてきたと誇らしげに語られたルイズは妙な疲労を覚えた。 ワルドは愛情を向けてくれるが、召喚した使い魔ではない。 普段傍にいる相手が全く心を許さないと面白くない。 気を取り直して情報を探るべく質問を続け、ずっと気になっていたことをぶつける。 「あんたがいた世界――魔界って太陽が無いんでしょ? どうして?」 答えたのはやはり大魔王だった。 かつて世界は一つであり、人間と魔族と竜族が血で血を洗う戦いを繰り広げていた。 延々と続く争い憂いた神々は世界を分け、別々に住まわせることにした。脆弱な人間は地上に。強靭な体を持つ魔族と竜族は魔界に。 魔界にはあらゆる生物の源である太陽がなく、荒れ果てた大地が広がっているだけである。 ならば魔界は真っ暗なのかと尋ねると否定された。 数千年前に作られた人工の太陽が光源となり魔界を照らしているが、昼間でもかすかな光しかなく生命を育むほどの暖かさは無いのだという。 地上で見るものと同じ太陽を作り出すことはできず、彼らは太陽を手に入れようとしている。 ルイズは話を聞いてうーん、と考え込んだ。 馬の遠乗りで丘に登り気持ちのいい風を感じることも、光を浴びながら美味しいお弁当を食べることもない世界。 花々の無数の色彩や木々の緑、空の青も雲の白もない世界。 頭で理解しても実感は湧かない。 もし魔界に太陽があって地上と同じ豊かな地であれば、大魔王は何を望むだろうか。 試しに尋ねてみると「花見酒というのもいいかもしれんな」と笑いながら言われたが、どこまで本気かわからない。 話に熱中していたルイズは声の大きさに気を遣うことを忘れていた。 そのため、メイドの一人――シエスタが聞き耳を立てていたことに気づかなかった。 謎が多いミストバーンについての情報は生徒だけでなく使用人も欲しがっている。 彼女は舞踏会の時に聞いた会話を厨房の料理人や仲間に知らせたが、一笑に付された。「見た目からして闇っぽいのに太陽を求める奴に従うわけないだろ」というのである。 嘘じゃないと言い張っても聞き入れられなかったシエスタは意気込んでさらなる情報を集めようとしていた。 そして―― 「きゃああっ!?」 気配を感じたミストバーンの爪に危うく刺されかけた。皮膚一枚を隔てたところで奇麗に止まっているのは見事としか言いようがない。 「すごい、加減がずいぶん上手くなったのね。レベルアップしたんじゃない?」 使い魔の影響を受けて感覚が麻痺してきたようだ。 「……私が?」 彼は意外そうに己を指差した。褒められて反応に困っているらしい。 間違った方向に心温まる会話を繰り広げる二人にシエスタがおずおずと詫びる。 「あ、あの、本当に申し訳ありませんでした! 太陽についてお話ししているのを聴いてしまいました……」 盗み聞きされたと知ってルイズは渋い表情になったが、そもそもこんな場所で大声で喋っていたのが悪い。 シエスタが再び丁寧に謝罪し、お詫びの気持ちとして故郷に行くことを提案した。 「すごくきれいな夕焼けの見える草原があるんですよ。おいしいシチューも」 その草原はあまりの美しさから『奇跡の草原』と呼ばれたこともあるらしい。 ルイズは迷ったが、素晴らしい光景を見ればインスピレーションが湧いて詔の文面が思い浮かぶかもしれない。 ミストバーンも主の目の保養になればと承諾し、ワルドも加えてシエスタの故郷――タルブの村に行くことに決めた。 だが、出発しようとしたその時、彼らの前に現れた人物がいた。 ずずっと地面から黒い首が生え、パチリとウィンクしてみせたのだ。 姿を現した人物は黒い衣に全身を包み、仮面を被っている。帽子にある輝くラインの数は不吉な十三だ。奇術師のような格好だが、手には鋭く光る鎌が握られている。 不気味な男にワルドとルイズが杖を向けたが、相手は敵意が無いことを示すように手を振ってみせた。 珍しいことに、ミストバーンがわずかに弾んだ口調で相手を呼ぶ。 「……キル!」 「久しぶりだねミスト。元気にしてる?」 「お前もハルケギニアにいたとは……!」 ルイズは事態についていけず口をあんぐりと開けている。 友好的な雰囲気が漂うなか、ワルドは警戒に満ちた目で尋ねた。 「何者だ」 キルと呼ばれた男は向き直り、深々と一礼した。 「初めまして。ボクはキルバーン。死神とも呼ばれているんだ。ミストの親友だよ」 ルイズがミストバーンの方を見ると、肯定するように頷いてみせた。 「嘘、あんた友達いたの?」 失礼な台詞も意に介さず、二人は喜んでいるようだ。 (こういうのを感動の再会って言うのかしら?) そんなことをぼんやり考えるルイズの前で会話が進んでいる。もっとも、口を動かすのはほとんどキルバーンの方だったが。 「キミがいなくなってしばらくしたらボクも召喚されたんだ。そこでバカンス気分で楽しんでたってわけ。バーン様に協力する義理はあっても義務はないからね」 キルバーンを召喚した人物はルイズと違って放任主義のようだ。 「戻れるかどうかもわからんのに気楽だな」 呆れたような声にキルバーンは目を瞬かせ、クスクス笑った。 「ボクはキミとは違うんだ。キミはバーン様のおそばにいられなくてストレスたまってるだろうけど、こっちはエンジョイしてるよ。ねえピロロ?」 キルバーンがそう言うとどこからともなく一つ目の小人が姿を現し、ぴょこんと肩に乗った。 ルイズが目を丸くして声を上げる。 「可愛い!」 「ピロロっていうんだ。よろしくね」 魔法使いの格好をしたつぶらな瞳の小人はキルバーンの使い魔であるらしい。明らかに怪しく物騒な得物を持つキルバーンと違い、実に心和む姿だ。 ワルドは心を動かされた様子も無く警戒を解かぬまま客人を見つめている。 「キル、魔界に戻る手がかりは見つかったか?」 キルバーンはやや大げさに肩をすくめてみせた。 「……さあ? 真面目なんだからミストは。ま、異世界で一人っきりじゃないってわかったわけだ……嬉しいかい?」 返事は沈黙だったが、眼の光が普段より明るく輝いているため喜んでいるようだ。 友人と言うのは嘘ではないのだろう。 敵に対して一切容赦のない彼だが、相手によっては人間のような感情を見せることもあるらしい。 「それより、これからお出かけするように見えるけど?」 タルブの村に夕焼けを見に行くと告げられ、ピロロもすっかり乗り気になったようだ。 「行きたいなあ。お願い、キルバーン」 「わかったよピロロ。観光しようじゃないか」 ルイズは心底嫌そうな顔をした。 白と黒で対になっている、バーンの名を冠する二人は目立ちすぎる。村人たちもさぞかし反応に困るだろう。 だが、承諾しなければ大変なことになる予感がしたため渋々頷いた。 ワルドはルイズよりもいっそう渋い表情になっている。愛する少女との甘美なる一時を邪魔されそうな予感がするためだ。 シエスタは不審人物に疑いの目を向けたが、ミストバーンの友人だと告げられると「ああ、道理で」と納得して頷いていた。 類は友を呼ぶのですね、と呟く彼女にルイズは複雑な心境だった。 さらに、形式的とはいえ二人が夫婦と知らされたキルバーンから 「あまり褒められた趣味じゃないねェ」 と呟かれたためいっそう心が沈んだ。 変な人物から遠まわしに趣味が悪いと言われるのは相当堪える。 (明らかに怪しい奴に言われたくないわよ……) 心の中で力無く呟いたルイズは、肺の奥底から溜息を絞り出した。 実際の夕焼けを目にしたルイズは言葉を失い、ただ見とれていた。 常に飄々としているキルバーンも感嘆したように口笛を吹く。 草原は燃える炎の色に染まり、沈みゆく太陽は普段見るものの何倍も美しかった。 その輝きは暖かく優しく照らすだけではなく、弱い者を容赦なく焼き尽くすようにも見えた。 奇跡の名に恥じぬ凄絶な光景を大魔王も気に入ったようだ。 さらに、反対側の山から昇る朝日も別の美しさがあるのだと言う。 「この光景こそが宝物だって思うわ」 食事を告げに来たシエスタがしみじみとしたルイズの言葉に嬉しそうに頷く。 いつものように沈黙しているミストバーンは主と地上に来た時のことを思い出していた。 『何千年後になるかはわからぬが……あの太陽は魔界を照らすために昇る』 偉大なる主は手で太陽を掴み取る仕草をしながらそう語った。 さらに思考は過去をたどり、主との出会いまでさかのぼる。 『お前は余に仕える天命をもって生まれてきた』 全てはそこから始まった。 どれほど永い時を生きても、何があっても、その言葉を忘れることはないだろう。 彼らは夕陽を見る間、確かに同じ思いを共有していた。 ただ、キルバーンだけはそこまで心を打たれた様子は無く、草原をあちこち歩き回っていた。 興奮も冷めやらぬままシエスタの家で名物のシチューを食べたルイズは目を輝かせながら舌鼓を打った。素朴ながらも貴族のぜいたくな舌を満足させるほどの味らしい。 ワルドは喜ぶ彼女を実に幸せそうな顔で眺めているが、キルバーンがいなければいいのにと思っている。 案内してくれたシエスタや二人の仲を邪魔する真似はしないミストバーンは仕方ないが、キルバーンは明らかに異分子である。 ワルドの内心も知らず、シエスタが恐る恐る二人にも食事を薦めた。 あっさり断られた彼女が落ち込んでいると、なんと大魔王その人が語りかけてきた。 「数千年生きればいくら贅を尽くした食事でも飽きもする……そのような料理を味わってみたいものだ」 たちまちシエスタの顔が明るく輝いた。 「じゃあ作り方教えますね! 実際に作る所を見た方がいいですよね……ミストバーンさんも一緒に作りませんか?」 ルイズとワルドがシチューを噴き出しそうになり、かろうじてこらえる。ルイズは慌てて飲みこんで必死の形相でシエスタを止めた。 「何言ってんの!? こいつが料理なんてドラゴンが裁縫する方がまだマシだわ!」 ワルドも激しく頷いて心から同意を示した。 彼は暴言にも動じず主からの指示を待っている。 「作り方だけ教えればよい……と言いたいところだがあえてお前に作らせるのも面白いかもしれんな」 (よっぽど退屈してるのかしら) 腹心の部下がやり遂げると信じているのか、奮闘する様を見て楽しもうと思っているのか――ルイズにはどうも後者に思えてならなかった。 「じゃ、決まりですね。最高の一品を作りましょう!」 「たまには逆らいなさいよ……」 その忠誠心の十分の一でいいから自分に向けてほしいと思いながら、ルイズはテーブルに突っ伏した。 一方、キルバーンは真剣な光を目に浮かべ、親友に顔を近づけた。 「ねえミスト、キミに訊きたいことがあるんだ。とっても重要なことだから、よく考えて答えてほしい」 重々しい口調にシエスタが唾を呑み、ミストバーンが目を光らせる。 キルバーンは真面目そのものの声で尋ねた。 「どんな柄のエプロンを着るつもりだい?」 「そんなの着るわけないでしょおおおっ!?」 即座に叫んだのはルイズ、こらえきれずシチューを噴き出したのはワルド、興味津々の顔をしているのはシエスタだ。 胸に手を当てて発言する。 「わたくしのものでよろしければ――」 「何を言ってるんだ!」 立ち直ったワルドが勢いよくテーブルを叩いた。食器が跳ね、真剣な語調にルイズが息を呑む。 「彼がエプロンを着たって嬉しくとも何ともない! ここは僕の可愛いルイズが着るべきだろうどう考えても!」 「ワルド様……」 早まったことをしたかもしれない。ルイズは頭痛を覚えこめかみをおさえた。 一同から注目されたミストバーンは、考え込んでから逆に質問した。 「エプロンとは何だ。私にも装備できるのか?」 防具の一種か何かだと思っているらしい。 試しに想像してみたルイズは身震いした。 記すことも憚られる。 「何も知らないんだねェ……。悪魔の目玉で魔界中に映像流して適当な情報バラ撒いても面白いかも? ククッ」 ほくそ笑んだキルバーンにルイズの忍耐力は限界に達し、 「あんたたち今すぐ魔界に帰りなさい! 帰ってくださいお願いだから!!」 と絶叫した。 前ページ次ページゼロの影
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3 (ベンチ裏) シエスタXX 本物じゃないかな BBL は言った さわやかな朝がやってきました 村の川辺に無残に引きちぎられたせんこさんの死体が見つかったようです… BBL は言った さわやかな朝がやってきました 村の川辺に無残に引きちぎられたシキワロスさんの死体が見つかったようです… せんこ は言った せんコロリンッ =□○~゚ 3 (ベンチ裏) デジュー いやー、さすがに偽はないでしょ BBL は言った /chjoin ベンチ裏 3 (ベンチ裏) ミクかわいい 偽者なら対抗も出るでしょうし、本物かな~ BBL は言った 村人の皆様、今日もがんばってください シキワロス は言った 俺は人間だ!人間でたくさんだ! BBL は言った 昼の部スタートです 1 (BBL村) エルレイナ 霊媒CO!ソラモニーさんは○です~ 1 (BBL村) オペこ 占いCO せんこ○ 「じんじゃさんに合わせてミーブさんも村っぽい」 ここが気になったので占いましたが、○でした。銃殺来てくれ頼む[ムッ] 1 (BBL村) Mrチキン 【占いCO】せんこさん○でした。目立たなさそうなとこを選んだつもり 3 (ベンチ裏) クバリャーナ ここで狼2が共有騙ってたら尊敬するw 1 (BBL村) エルレイナ ちょww 3 (ベンチ裏) ミクかわいい またかぶったw 1 (BBL村) MB 何なんだこの噛みは 1 (BBL村) Jareky !GJ溶けた!! 1 (BBL村) Mrチキン え・・・ 1 (BBL村) すねすき おおー 1 (BBL村) MB あれw 1 (BBL村) エルレイナ なんなのそのしんくろwww 1 (BBL村) KT うぇw 1 (BBL村) jinjahime 銃殺ね 3 (ベンチ裏) シエスタXX そこ疑うとちょっとキリないかも 1 (BBL村) エルレイナ 君たちは共有か!! 3 (ベンチ裏) ミクかわいい と、占いビームか 1 (BBL村) ROWLEYS うおー 1 (BBL村) Mrチキン しくんでないよ! 1 (BBL村) エルレイナ せんちゃん狐かくてーい 3 (ベンチ裏) ミクかわいい GJ~ 3 (ベンチ裏) デジュー 占いは屋上行きですな 1 (BBL村) オペこ チキンさんあとで素敵なディナーにご案内しよう 3 (ベンチ裏) シキワロス お邪魔します 1 (BBL村) すねすき 狐はせんこさんでしたクマ 3 (ベンチ裏) シエスタXX 結果はほぼ同時だったかな 1 (BBL村) Jareky 破綻しないな 3 (ベンチ裏) ミクかわいい いらしゃんせ~ 1 (BBL村) Mrチキン ちょっと怖くなってきた・・・ 3 (ベンチ裏) デジュー あ、狐かww 1 (BBL村) エルレイナ 昨日じんじゃさんに擦り寄ってたりしたところとかが微妙に臭いとは感じていた 3 (ベンチ裏) シエスタXX いらしゃ~ 1 (BBL村) MB あれ 狐確定なんですか? 1 (BBL村) jinjahime うむーロラするの? 1 (BBL村) オペこ で、どうですかね これ見ても信じてもらえませんか 3 (ベンチ裏) せんこ わふー 3 (ベンチ裏) ソラモニー だって共有二人ぐみは片方の共有の一人がでたっておもうじゃん 3 (ベンチ裏) クバリャーナ おつかれさま~ 3 (ベンチ裏) せんこ いやーこれは無理だと思ったわw 3 (ベンチ裏) こるくびん おちかれー 1 (BBL村) オペこ まだ無理か 偶然の可能性もあるか 3 (ベンチ裏) せんこ グレー多すぎで逃げれんw 1 (BBL村) jinjahime すりより多かったから人外だとはおもった>せんこさん 1 (BBL村) すねすき クマー 1 (BBL村) MB うぉよく見たら死体2つあるのかw 1 (BBL村) Jareky グレーは 3人 Jare jinja KT 敬称略 3 (ベンチ裏) クバリャーナ ほとんど統一占い状態だねこれ・・・w 1 (BBL村) エルレイナ うん 3 (ベンチ裏) シキワロス 確定○とか禿げるwww 3 (ベンチ裏) ソラモニー 二つのほんとの共有がどっちもどっちかがでたっておもったら 1 (BBL村) エルレイナ せんちゃんの狐は確定 3 (ベンチ裏) せんこ くぅー 1 (BBL村) オペこ んで まぁ 狐は吊れました 後は狼ですが 3 (ベンチ裏) ソラモニー ・ω・ 1 (BBL村) Mrチキン ん?あ、しきさん死んだのきづいてなかった 3 (ベンチ裏) せんこ 昨日の段階で無理だと思ったw 1 (BBL村) MB ごめんなさいシキワロスさんが死んでいることに気づきませんでした 1 (BBL村) jinjahime 9>7>5でロラするなら今日からじゃないと 3 (ベンチ裏) デジュー 狐さん感想ドゾー 1 (BBL村) エルレイナ かわいそうにwww 1 (BBL村) オペこ 私視点エルレイナさん● しか見つけられていません 3 (ベンチ裏) シキワロス 俺の存在感ェ 3 (ベンチ裏) ミクかわいい 共有は相方をしってるのでその譲り合いはなさそうかも? 3 (ベンチ裏) せんこ 狐には厳しい村だったね! 3 (ベンチ裏) シエスタXX エルさんを吊る流れにならないかなー 1 (BBL村) MB というかせんこさんが死んでいるから狼床噛んでるんだとか思ってしまった 1 (BBL村) KT 狼残り2? 1 (BBL村) Mrチキン かな? 1 (BBL村) エルレイナ 占いはわたし視点チキンさん真、○ばかりなのは占いに狼が出てる可能性がある 1 (BBL村) エルレイナ 2だね~ 1 (BBL村) すねすき うーむ 1 (BBL村) エルレイナ でも狂人どこいったの?にもなる 1 (BBL村) ROWLEYS 1しか吊れてない可能性が高いですね 3 (ベンチ裏) せんこ 何で偽はうちを囲わないんだよ!全く! 1 (BBL村) エルレイナ まさかのデジュー君が狂人ってオチだったら面白いがw 1 (BBL村) すねすき 情報出せる人はなるべくとっておきたくある 1 (BBL村) Mrチキン 潜伏狂人だと先導で目立つとこになる? 3 (ベンチ裏) イクさん 囲おうとした途端しんでしまった! 3 (ベンチ裏) シキワロス 囲ったけど真占いも占ってたでござるの巻 1 (BBL村) Mrチキン 初日狂人噛みですかw 3 (ベンチ裏) デジュー なんか狂人とか言われた 3 (ベンチ裏) クバリャーナ こんなユニゾン占いされたら囲いと同時に生きていられないわねw 1 (BBL村) KT エルさん狂って可能性もなくはないか。。。 3 (ベンチ裏) リュファ あ、エルさんにせもの確定。 1 (BBL村) jinjahime あー今日は共有出していい 3 (ベンチ裏) せんこ うんうん 1 (BBL村) エルレイナ それ=オペこくん偽だけどねw 1 (BBL村) Jareky 個人的意見で狼っぽくない人は、JinjaさんとMBさん 1 (BBL村) jinjahime むしろ、今じゃないとタイミングがない 1 (BBL村) Mrチキン ですね、おねがいします 3 (ベンチ裏) シキワロス まじで・・・ 1 (BBL村) すねすき 出すクマ? 3 (ベンチ裏) シエスタXX デジューさんはいつも狂って・・ゲフンゲフン 1 (BBL村) ROWLEYS お願いします 1 (BBL村) エルレイナ 出しましょう 1 (BBL村) Jareky いやまって 3 (ベンチ裏) デジュー おいそこ屋上 1 (BBL村) jinjahime ん 1 (BBL村) Jareky そろそろ占いが●出したいころじゃないの? 1 (BBL村) すねすき クマー 1 (BBL村) KT 共有がグレーだったら出た方がよくないかな 3 (ベンチ裏) シエスタXX 告白? 1 (BBL村) KT グレー残り2になるし・・・ 1 (BBL村) ROWLEYS グレー狭めたいかな 3 (ベンチ裏) デジュー しばき倒してあ・げ・る 1 (BBL村) Mrチキン 私いい加減でないとおかしいかな 3 (ベンチ裏) イクさん ごめんなさい 1 (BBL村) MB 私はJinjahimeさんの色が分からないのでJinjahimeさんが村だっていう人は一応理由を聞きたいです… 1 (BBL村) jinjahime あ、じゃあ、城にいないなら共有だしてのほうがいい 1 (BBL村) オペこ 私は真ですから 問題なく●を出せますよ 共有に隠れてもらっても大丈夫です 3 (ベンチ裏) シエスタXX んー罵られるほうが・・・ 1 (BBL村) ROWLEYS あ、そか。まだトラップ生きてんのかな 1 (BBL村) オペこ まぁここは任せますがね BBL は言った 5分経過 1 (BBL村) Mrチキン 共有完全潜伏ってありなんですか 1 (BBL村) Jareky jinjaヒメさん村視の理由は、 3 (ベンチ裏) デジュー 勘弁してくれww 1 (BBL村) エルレイナ まだトラップ成功の可能性はあるからね 1 (BBL村) Mrチキン ふむー 3 (ベンチ裏) シエスタXX いつでもおーけーだぜ 1 (BBL村) すねすき 今日の吊りどうしよう 1 (BBL村) エルレイナ ただ個人的にはあまり共有トラップは効果ないと思ってる 3 (ベンチ裏) ミクかわいい チキンさん劣勢? 3 (ベンチ裏) クバリャーナ エルさん偽者確定? 3 (ベンチ裏) せんこ 共有に隠れてもらっても って それでいいのかなぁ 1 (BBL村) Jareky 指定がシキワロスさんに移りそうな時に共有吊る可能性があると止めたことです 3 (ベンチ裏) ミクかわいい 確定してましたっけ 1 (BBL村) Jareky 狼ならそんなこと言わないと思う 3 (ベンチ裏) せんこ 共有占ったら占い数もったいない 3 (ベンチ裏) デジュー なんで確定なん? 1 (BBL村) jinjahime 役職なら今日からロラしないと間に合わない 1 (BBL村) KT 占ロラ? BBL は言った あと1分 1 (BBL村) オペこ エルレイナさん 私視点●です しつこいようですがお忘れなく 1 (BBL村) KT 狐溶けたし占いからでいいと思ったのだが 3 (ベンチ裏) クバリャーナ いや、リュファさんがそういってたから、 1 (BBL村) Mrチキン ロラするばあいまにあうの? 3 (ベンチ裏) クバリャーナ なんかあったのかなって 1 (BBL村) エルレイナ 狐とけたから個人的にはオペこさんつってほしい 1 (BBL村) Jareky 狐いないからもうエルさんもいらなくないか? 1 (BBL村) オペこ それでエルレイナさん霊媒つり逃れですからね 1 (BBL村) オペこ ん? 1 (BBL村) MB んー 個人的にそれは一般論だと思うのであんまり白では見れないですね…私は、 ですが でも一応理由は了解です 1 (BBL村) すねすき 役職?グレーから? 1 (BBL村) オペこ 何でですか? BBL は言った ---------STOP--------- BBL は言った ---------STOP--------- 1 (BBL村) BBL ---------STOP--------- 1 (BBL村) BBL ---------STOP--------- 1 (BBL村) エルレイナ 占いきめうつならわたしでもいいけど 2 (狼打線) BBL ---------STOP--------- 2 (狼打線) BBL ---------STOP--------- BBL は言った 20秒前 3 (ベンチ裏) イクさん 霊吊っといて良いですよね 1 (BBL村) エルレイナ 残り4つりだっけ? 3 (ベンチ裏) リュファ だって、オペさん本物だったじゃないですか。 BBL は言った 誤爆しました 1 (BBL村) Jareky まだ会話OKだよね 3 (ベンチ裏) せんこ なんで確定? 3 (ベンチ裏) ソラモニー 3回もかぶったらー吊ってーっていってみたいー 1 (BBL村) すねすき ひぃ 1 (BBL村) KT 占いからがいいかなとおもいました 1 (BBL村) オペこ んん OKか 1 (BBL村) Jareky 指定お願い 1 (BBL村) ROWLEYS びっくりしたw 1 (BBL村) オペこ 狐連れたなら私からって 1 (BBL村) Mrチキン ほえ? 3 (ベンチ裏) シエスタXX 霊はもうお役ゴメンじゃない 1 (BBL村) すねすき 役職からかな? 1 (BBL村) jinjahime あ、いいのか。指定お願い 1 (BBL村) オペこ それは私を真視しているんですか? 3 (ベンチ裏) シエスタXX だから吊ろうよ BBL は言った ---------STOP--------- BBL は言った ---------STOP--------- 1 (BBL村) BBL ---------STOP--------- 1 (BBL村) BBL ---------STOP--------- 2 (狼打線) BBL ---------STOP--------- 2 (狼打線) BBL ---------STOP--------- 1 (BBL村) エルレイナ わたしの扱いでもめるくらいなら今ならまだ吊られてもいいよ BBL は言った 夜まで時間がありません 皆様今日の尊い犠牲をお選びください(会話はストップです) 3 (ベンチ裏) リュファ 今夜はエルさん、次の日はチキさんですね。 BBL は言った 投票は私に直接Tellでお願いします 2 (狼打線) BBL -------------------- 2 (狼打線) BBL 会話可能時間スタートです 1 (BBL村) BBL -------------------- 1 (BBL村) BBL 6日目終了 1 (BBL村) BBL -------------------- KT は BBL に言った オペ子さんでお願いします MB は BBL に言った エルレイナさんに投票します Mrチキン は BBL に言った オペこさんでお願いします 2 (狼打線) jinjahime パンダことチキンで 2 (狼打線) エルレイナ だれしてい?w 2 (狼打線) jinjahime チキンさん入れようか 3 (ベンチ裏) シキワロス これエルさん真だったらまずいきもする 2 (狼打線) エルレイナ チキンさん狂人じゃないの? 3 (ベンチ裏) デジュー しかし、そろそろ狼あてないと辛いよなー 3 (ベンチ裏) ミクかわいい 確定はしてないと思うかも。個人的にはおぺこさん真でみたいですけれど 2 (狼打線) jinjahime 霊信頼勝負になってる 2 (狼打線) エルレイナ ロラさせたほうがよくない? すねすき は BBL に言った エルレイナさんに投票で オペこ は BBL に言った エルレイナさんでお願いします。主に言葉攻めしているのは私のような気がしてきた・・・。 2 (狼打線) jinjahime ロラさせるよー ROWLEYS は BBL に言った うーん…オペこさんでお願いします。ここでの霊吊りが良いのかがわからないので。 2 (狼打線) jinjahime おぺこさんいくか 2 (狼打線) エルレイナ おぺこさんいれてみよう 2 (狼打線) jinjahime おぺこ了解 3 (ベンチ裏) デジュー エルレイナ真ならシエスタ狼は確定で・・・ 3 (ベンチ裏) せんこ おぺこさん真だろうなー 3 (ベンチ裏) シエスタXX エルさんの吊られていい発言がなー エルレイナ は BBL に言った おぺこさんで~ jinjahime は BBL に言った 投票>おぺこ 3 (ベンチ裏) せんこ えるりんが人外騙りしてるとなんか結構よくわかる 3 (ベンチ裏) シキワロス まさかの狂人かも 2 (狼打線) エルレイナ なにげにわたし吊られそうなんだよね 3 (ベンチ裏) クバリャーナ なるほどねぇー BBL は言った あと1分 2 (狼打線) jinjahime うむー 3 (ベンチ裏) せんこ 最終的に狼と思われて吊られるよりも Jareky は BBL に言った エルレイナさんに投票 3 (ベンチ裏) せんこ 途中で真霊と思われて吊られるほうが狼に有利かと ましてや真霊でてこないしw<その場合なら 3 (ベンチ裏) デジュー 狂人はない気がする。オペこさん囲いまったくないし BBL は言った 20秒前 投票結果 オペこ 5 エルレイナ 4 2 (狼打線) エルレイナ どきどきじゃの 2 (狼打線) jinjahime 噛みはRowさんかな 2 (狼打線) エルレイナ りょかい BBL は言った さよならオペこさん…あなたの勇姿は忘れない BBL は言った /chjoin ベンチ裏 BBL は言った 日が沈み始めました よい子も悪い子も寝る時間です 3 (ベンチ裏) シキワロス かなり微妙 3 (ベンチ裏) ミクかわいい ホロリ・・・ BBL は言った 役職の方は私にTellお願いします オペこはこの前農夫になりました。おめでとうございます。ありがとうございます。 2 (狼打線) エルレイナ おおおおおおおお 3 (ベンチ裏) シキワロス え! 3 (ベンチ裏) せんこ おぺこさん・・・? 3 (ベンチ裏) ソラモニー ぇーー 3 (ベンチ裏) シエスタXX 占いロラか 3 (ベンチ裏) ソラモニー つられちゃった 3 (ベンチ裏) せんこ うーん 2 (狼打線) jinjahime おっけーーー 3 (ベンチ裏) デジュー あれ?オペこさん吊りなんだ 3 (ベンチ裏) リュファ 狼票ですね・・・ 2 (バッテリー) すねすき うおうおお申し訳ない 3 (ベンチ裏) クバリャーナ んー 3 (ベンチ裏) せんこ まぁどのみち狐だったからどっちでもいいんだけどwwww 3 (ベンチ裏) シキワロス まあ自分もなんだかんだでチキンさん真目だった 3 (ベンチ裏) クバリャーナ せんこさんぇw 2 (狼打線) jinjahime 噛みはRowさんで送ります 3 (ベンチ裏) デジュー CO乙 2 (バッテリー) Jareky いやいや自分も熱くなってた 3 (ベンチ裏) せんこ だってーーーー 2 (狼打線) エルレイナ は~い 3 (ベンチ裏) こるくびん えーwww 3 (ベンチ裏) ソラモニー ・ω・ 3 (ベンチ裏) リュファ ねたばれきんし。ばれててもきんし。 3 (ベンチ裏) オペこ お邪魔します 3 (ベンチ裏) せんこ ごめんなさい! 3 (ベンチ裏) ミクかわいい いらしゃんせ~ 3 (ベンチ裏) クバリャーナ おつかれさま~ 3 (ベンチ裏) デジュー いらっさいー 3 (ベンチ裏) せんこ いらしゃんせー 3 (ベンチ裏) シキワロス おつかれさまー 3 (ベンチ裏) シエスタXX おつおつー 3 (ベンチ裏) オペこ お疲れ様です。うーん悔しいなー 2 (バッテリー) Jareky なんだろ、オペこ対エルレイナの構造。Mrチキンさん空気www 3 (ベンチ裏) シキワロス 死体が2つ並んだおかげで俺の存在感がなかった。 3 (ベンチ裏) リュファ おつかれさまでした。疑っててすみません。 3 (ベンチ裏) ソラモニー おつさまー 3 (ベンチ裏) せんこ うひ 3 (ベンチ裏) オペこ あぁ・・・確かにw 3 (ベンチ裏) シエスタXX まあまあせんこさんの気持ちもくもうじゃないか jinjahime は BBL に言った 役職行動>Rowleysさんを捕食します。 3 (ベンチ裏) せんこ 狐で勝ちたいなぁw 2 (狼打線) エルレイナ おぺこくん白だすね 3 (ベンチ裏) オペこ チキンさんとは運命的なものを感じる BBL は jinjahime に言った 噛み先了解しました 2 (バッテリー) すねすき 割と忘れかけそうになった緑な人 3 (ベンチ裏) シエスタXX 悔しかったんだろ?んー? 2 (狼打線) jinjahime ふむー 3 (ベンチ裏) シキワロス 理論勝率・・・8%! 3 (ベンチ裏) せんこ キー 2 (狼打線) エルレイナ 黒のほうがいい? 3 (ベンチ裏) こるくびん 告発されたときは心臓止まりそうになった 3 (ベンチ裏) せんこ 今回は狐にハードモードすぎたん・・・ 2 (狼打線) エルレイナ チキンさんで吊り消費させたい 3 (ベンチ裏) オペこ 敵対者とはいえこれは好敵手と書いてライバルと読むあれだ 2 (狼打線) jinjahime 白で 2 (バッテリー) Jareky すねさん噛まれそうだな、朝一COのじゅんびだけでもしておこう 2 (狼打線) エルレイナ k 3 (ベンチ裏) オペこ しかし 3 (ベンチ裏) BBL ナビさんみたいに気の利いたコメントする余裕内野 3 (ベンチ裏) シエスタXX こるくびんさんの心情はきついよねww 3 (ベンチ裏) デジュー GMお疲れ~ 2 (狼打線) jinjahime 黒だと狂人誤爆で積む可能性がある 3 (ベンチ裏) シエスタXX 告発はへこむw 3 (ベンチ裏) シキワロス あれはひどいww 3 (ベンチ裏) オペこ エルレイナさんの最後の発言 あれどうなんですか 3 (ベンチ裏) せんこ 告発はしたことあるけどされたことはないなー 3 (ベンチ裏) せんこ 銃殺は何回かあるけどな!!!!!!!!!1 3 (ベンチ裏) オペこ 「狐解けたから、おぺこさんから先に吊って欲しい」 3 (ベンチ裏) デジュー 狐なったことねーや 3 (ベンチ裏) シキワロス 初日呪殺で煽られる。 2 (狼打線) エルレイナ うん 2 (バッテリー) すねすき んーどうだろ、日を追うごとに共有としての統率力がが・・・w 3 (ベンチ裏) オペこ これ村視点だとどう解釈しますか? 3 (ベンチ裏) ミクかわいい じぶんに●だした方だからわからないでもない、かな 2 (狼打線) エルレイナ まぁせんちゃん狐は当たってた[ニコッ] 3 (ベンチ裏) せんこ みくさんと同意見 2 (狼打線) jinjahime うむ。かったらまた叫んでいいよね 3 (ベンチ裏) シエスタXX まあオペこ狂人乙wwwwじゃね?w 2 (狼打線) エルレイナ イイノヨ 3 (ベンチ裏) ミクかわいい 狐溶かすだけが占いの仕事ではないかとは思いますけれど。 3 (ベンチ裏) せんこ 敵対相手だから当然じゃないかなー 3 (ベンチ裏) シキワロス 占いロラしましょう。んでチキンさんのほうを信用してますってことかな 2 (狼打線) jinjahime (*´ω`*) 3 (ベンチ裏) オペこ んんん? 2 (バッテリー) すねすき 役職吊るなら霊媒からかなーと思っていたのだけど・・・うーむ・・・ 3 (ベンチ裏) オペこ あーそういうことか 狼と思ってるのか BBL は言った あと1分 2 (バッテリー) Jareky オペこ エルレイナ どっちかわかんない 2 (狼打線) エルレイナ ch切り替え 3 (ベンチ裏) ミクかわいい 真ではない、かな 3 (ベンチ裏) せんこ そうそう 村視点でならそれだけだと判別つきづらいけど 2 (バッテリー) Jareky 最後の望み共有トラップ!! 2 (バッテリー) Jareky でも透けてそうかもwww 3 (ベンチ裏) クバリャーナ うん、ダメだ混乱してきたw BBL は言った 20秒前 3 (ベンチ裏) せんこ それでも、狐吊ったらお役御免 と言わんばかりの発言内容は怪しいよね 3 (ベンチ裏) ミクかわいい おぺこさん信じてるよ! 3 (ベンチ裏) ソラモニー ぐるんぐるんー 3 (ベンチ裏) オペこ これで役職全部つぶさない村ならもうどうにでもな~れ(^q^ 3 (ベンチ裏) シエスタXX まあ俺視点じゃオペこさん真だけどね 役職行動 噛み ROWLEYS BBL は言った ---------STOP--------- BBL は言った ---------STOP--------- 1 (BBL村) BBL ---------STOP--------- 1 (BBL村) BBL ---------STOP--------- 2 (狼打線) BBL ---------STOP--------- 2 (狼打線) BBL ---------STOP--------- [[5日目へ 2012-3-17 BBL村 Part5]] [[7日目へ 2012-3-17 BBL村 Part7]]