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ラノで読む 異能力研究者の、ある夏の数日 その夜、私は仕事に一区切りつけ散歩に出かけた。 長時間のデスクワークに疲れたというのと、窓から吹き込む涼しい空気に誘われたという、二つの理由からだ。 ここ双葉区は、その創設理由から様々な結界が張り巡らせてあり、島内の環境を最適な状態に保つ役割をも担っている。 その効果からか、夏真っ盛りという今の時期でも、夜になると比較的すごしやすい気温になることが、研究棟周辺では多いようだ。 私のようなおじさんにはそれがとても有り難く、ほとんど日課になっているこの散歩を、今日もいつも通りのコースでゆっくりと行っていた。 研究棟東の小道を抜け、島の外縁に沿った通りにでる。しばらく歩くと、双葉島にいくつか設けられた人工の海岸へと続く階段がある。私はそこを下り、砂浜ではなく磯の方へと向かった。 岩礁では小さく、無害な水棲ラルヴァがまれに見られることがあり、なかば占いに興じる女学生のように「見れたらいいことがある」という願掛けにも似た行為を、私は散歩するごとに繰り返していた。 (さて、今日は何か見ることができるかな?) 少しの期待を抱きつつ、私は磯へと歩を進める。 と、その時、私の目に透き通る女の姿が飛び込んできた。 (まさか、夏だからって怪談の主役たる幽霊を見るというのか?) 一瞬、そんな馬鹿なことを考えた私だったが、それが間違いであることはわかりきっていた。 近年、ラルヴァと異能を知る者の間では、一般に心霊現象と呼ばれる事の多くはラルヴァ、もしくは異能力の残滓が引き起こすものだと考えられるようになっている。 強烈な魂源力を持つ個体の引き起こした事件、事故現場には、しばしば高濃度の魂源力が残留することがあり、それに異能を持たないものが影響されることで様々な理解しがたい超常現象を引き起こす、というものだ。 自然が起こした不思議な事象はまた別だが。 (となると彼女はラルヴァか異能者か、それともそれらの残した分身か) 私は足を止め、彼女を観察する。 足はあるし、死装束も着ていない。もちろん額に三角のアレもない。 (あの服装は学園のものだな) 彼女の着ている衣服は双葉学園指定の制服だった。夏服だからブレザーは着ておらず袖も短い。 (問題は彼女が生きているかどうかということだが……) その問題はすぐに解決した。 確認のために何歩か歩み寄った時、彼女は私に気づいて振り返り、そこに私の見覚えのある顔があったからだ。 「東くん……東明《あずまあきら》くんかな?」 「稲生《いのう》先生……」 彼女『東明《あずまあきら》』は私の講義を選択している者の一人だ。地味で目立たないが、一学期の小論文ではなかなかに面白い解釈を見せてくれた。 彼女は確かに、夏休みに入る前まできちんと受講していたし、何らかの事件、事故に巻き込まれて亡くなったという話も聞いていない。今日死んだというのならありえなくもないが、それはさすがに悪い意味でタイミングが良すぎるだろう。 つまり彼女は生きていて、彼女自身の意志、もしくは異能の暴走で、こういう姿で今ここにいると考えるのが自然だ。 「東くん、なぜ今時分にこんな所にいるのかね? まさか私と同じで夜の散歩でもしていたのかな」 翌日、私は一人の女子生徒に電話で連絡を取った。 本当はその女子生徒のパートナーに連絡を取りたかったのだが、その娘は座学を受講するタイプではなかったため、連絡先が手元の名簿からはわからなかったのだ。 「それで一体、ナオに何の用があるんですか?」 事情を説明しもせず、彼女のパートナーの連絡先を教えて欲しいといった私に、結城宮子《ゆうきみやこ》は疑念を含んだ声音でそう答えた。 実に当たり前の反応だ。友達でもなんでもない男、しかも講師が女子生徒の連絡先を知りたいなんて言えば誰でも怪しく思うだろう。 「失礼した、パートナーの君に事情を説明しないのはあまりにぶしつけだったな。 実は異能者がらみの事で彼女の力を借りたい……いや、借りずにすめばそれが一番いいのだが、最悪の事態を考えるとそれに備えておかないわけにはいかないというべきか……」 「……今ひとつ先生の仰りたいことがよくわからないんですが、危険なことなんですね?」 「そう、だな……力を借りることになれば、危険は確実にあるだろう。 ただ、事は急を要するし、私の知る限りでは彼女以外には対処できないと思う。 もちろん君からの伝聞に基づいた判断だから、実際に会って話してみないことには本当に力を借りられるかどうかはわからないのだが……」 私は彼女に謝罪し、事情をかいつまんで話したが、やはり詳しく話さなければ納得してもらえそうにない。 (できれば巻き込みたくないんだが……そうも言っていられないか) 「……わかりました。皆槻さんに連絡とってみます。 でも彼女どこにいるかわからないし、つかまらないこともありますから、あまり期待はしないでくださいね」 考え込み、押し黙っていた私に気を使ったのか、彼女は了解の意を告げた。 事の重大さを察してくれたということだろうか。 そう簡単に納得してはもらえないだろうと思っていた私は、あわてて彼女に礼を言った。 「すまない、恩に着るよ。」 「……一つだけ聞きますけど、先生って若い子が好きなんですか?」 「……私は基本的には成人女性が好きだ。 それではよろしく頼む」 最後の彼女の一言には、さすがにそこまで警戒しなくてもいいのではないかと思いながら、私は通話を終えた。 (もしかして私は女子生徒に警戒されるようなタイプなのだろうか……) 「つまり君の異能はゲートを開いて『肉体だけ』を亜空間に隔離することで、こちらの世界に『魂』とでも言うべきものを残す。それによって物質を通過したり物理法則にとらわれず宙を漂ったりすることを可能にする、ということだな。 うまく応用できれば他者にも同様の効果をもたらせるかもしれない。 どこかに潜入するにはとても便利だろうね。 君が男子でなくて良かったよ」 夜になり、私は東明と話すため再び海岸に来ていた。昨日、彼女に聞いた事情から、おそらくここから動くことはないだろうと考えたからだ。 事実、彼女は今夜もここにいた。 そして今は、彼女と私だけの異能力研究室特別開講中だ。 彼女がここにこうして『魂』のみの姿で漂っているのは、簡単に言うと失恋が原因らしい。付き合っていた男子に体を求められて拒んだらふられた、という若いころならよくある話だ。当事者にしてみればよくあるなんて言葉で済ませられるはずもないが。 彼女の場合、その心情をより面倒にしたのが彼氏のいわゆる『二股』だった。彼女がふられた後、その男子は別の女子と仲良く腕を組んで歩いていたそうだ。これもまたよくある話ではある。 ともあれそういった事情が重なって、彼女は『もうこの世から消えてしまいたい』と願った。そして実に間の悪いことに、彼女は『この世から消える』のに最適な異能を持っていたのだ。 彼女の異能について冗談を交えながら考察する私を、東明は微笑みながら見つめる。その表情は私が教室で見るものと変わりなく感じられた。場所は違うが、いつも講義を受けているのと同じ雰囲気が良かったのだろうか。 (しかし、ここから先の話はかなり厳しいものになる。上手く混乱させずに説明できればいいが……。 結局、彼女とも連絡がつかなかったし、東くんに自力で何とかしてもらうしかないのがなんとも心もとないな……。 ともあれ、まずは彼女に戻ってくる気を起こしてもらうことが先決だが、一体どんな説得をするべきか……) 「少し休憩にしよう。 どうだい?君もお茶でも」 私はそう言いつつ、持ってきていたコンビニ袋からペットボトルを取り出す。 「いえ、結構です。 わたし、異能使ってる時はお腹すいたりのど渇いたりしなくなるんで」 彼女は両手をぱたぱたと左右に振りつつ、私の申し出を辞する。そしてその言葉は私の予想通りのものだった。 『異能使用中は飢えも乾きもない』ということは肉体とは感覚が共有されない状態にあるということであり、『肉体は何のエネルギーも消費しない』状態であるか、逆に『エネルギーを消費していても術者が気づかない』状態であるか、この二つに一つだ。 さらに言うと、時間が止まっているのでもない限り前者はありえない。彼女の異能が『肉体を亜空間に隔離する』という以上のものでないなら、ほぼ確実に後者だろう。 つまり彼女は気づかぬうちに『体力と魂源力を消費し続けている』ということになる。これはすなわち、気付かぬまま『緩やかな自殺を行っている』状態であるということだ。 「そうか、じゃあ一人で寂しく飲むとするよ。 ……ところで東くん。どのくらいの間、異能を使い続けているんだい?」 私は努めて平静を装いつつ、彼女にそう質問した。 「ええと……もう4日目ですかね。 あは、今までで一番長い間使ってます。新記録ですね」 彼女は明るく私の質問に答える。 が、その答えは正直、笑って聞けるものではなかった。 『4日』ただ単純に断食するだけなら死ぬほどの期間ではない。しかし彼女は同時に『異能を使い続けている』わけで、どんなに強力な異能者でも4日間、休まず異能を使い続けるのは相当難しい。 いや、ほとんどの場合『不可能』だといって差し支えないだろう。 (つまり、彼女の魂源力はもう、いつ底を突いてもおかしくない状態だということだ。) 肉体が亜空間に隔離されたまま魂源力が尽きれば、魂源力を回復させることは二度とかなわない。魂源力はあくまで肉体をベースに存在するからだ。 これは、魂源力を他者に分け与えることのできる異能者も『魂』自体に魂源力を分け与えることはできない事を意味する。 (そうなれば亜空間に取り残された肉体を回収する手段はなくなり……肉体が死ぬまで魂のみで存在するか、魂に残された魂源力が消費された瞬間、魂が消滅することになる。どちらにしても……) ――死だ。―― 「ふふ……。先生、そんなに心配そうな顔しないで。 先生と話しててもう『消えたい』なんて気持ち、ほとんどなくなりましたから。」 知らぬ間に私はよほど渋い顔をしていたのか、彼女が気を使うように、そう声をかける。 「あ、ああ……失礼した。 少し考え込んでしまったようだね。 ……それにしてもいつもの君に戻ってくれたようで良かったよ」 「えー?先生、わたしのこと、そんなに知らないでしょう?」 「これは心外だな。私は教室に来る生徒のことは一人ひとり、ちゃあんと見ているんだよ。」 私は彼女の言葉に答え、いかにも安心したという顔をして見せた。そして続けて言った一言に彼女が軽く噛み付き、私は講義中に見せる態度そのままに、大げさにリアクションをとってみせる。 (あとは何事もなく彼女が戻って来られるかどうか……だが) 異能には、常時発動型を除くと『解除に魂源力を必要とする』ものと『ただ意識するだけで解除される』ものがある。細かく分類するともっと多くの条件を含むものもあるが、ほとんどの場合は後者だ。 超人系だと肉体を強化することを意識している間だけ異能が発揮されるし、超能力系も大体がそうだ。もちろん超科学系もしかり。 (例外としては、テレポートで召喚した対象を送り返す場合くらいだが、まずいことに彼女の異能はこれと同じタイプだ。 ゲートを開き、肉体を隔離しゲートを閉じる。そして解除するときはまったく逆の手順を踏む……となれば当然、解除にも魂源力が消費されることになる) 解除するために消費される魂源力がどの程度か、また異能を発揮していた期間にどれほどの魂源力が消費されていたか。それらが、彼女の肉体がこちら側に戻ってこれるかどうかの鍵を握っているのは明白だった。 「さてと……それじゃあそろそろ戻ることにしますね。 先生ちょっと離れててください」 彼女に促され、私は軽く頷いてからコンビニ袋を持って立ち上がり、数歩後退してから彼女の方に向き直った。 東明は瞑目し、魂源力を高めようと集中しているようだ。 (うまく行くのを祈ることしかできないのがもどかしい限りだな) しばらく静観するが、彼女の肉体が戻ってくる様子はない。彼女自身、今までにない経験に戸惑い、その表情に段々と焦燥の色が濃くなっていく。 「もど……れない……。 ……どうしよう……先生……戻れないよ!」 彼女は夜の闇に薄く透き通る顔をさらに青くし、私にすがり付こうとする。 だが、その手は無常にも私の手をすり抜け、触れることさえかなわなかった。 「いや……嫌ぁ……いやぁあああああ!!」 最悪の事実を突きつけられた彼女は半狂乱となり、両手で頭を強く抱えその場にうずくまった。目は限界まで見開かれ、生身であれば出血しそうなほどに激しく頭をかきむしる。 触れられないのはわかりきっているが、私は彼女をかばおうと腕を広げ、覆いかぶさる。 (やはりこうなるのか……!しかし、もう残された手段はない。せめて彼女と連絡がついていれば……) 「先生!どうしたんですか!?」 苦悩する私の耳に東明とは別の少女の声が飛び込んでくる。 声の方へ振り向くと、教え子の一人である結城宮子と、彼女のパートナーである皆槻直《みなつきなお》の姿があった。 女性の叫び声を聞いて異常事態だと感じたのだろう。彼女の声は緊迫感に満ちていた。 (連絡を受けてここまで来てくれたのか) 私は昼間に連絡した際、念のため結城宮子に教員証のパーソナルアドレスを伝えていた。生徒たちが持つ学生証のGPSで、私個人の現在地を知らせるためだ。 (しかし、素晴らしいタイミングで来てくれたものだ。幾多の戦闘を経た彼女たちの勘が、事態の危険さを報せたとでもいうのだろうか) 「二人ともよく来てくれた。簡単に状況を説明するからよく聞いてくれ。 これから皆槻くんには彼女、東明くんの異能発現をサポートしてもらう」 「え?東さん!?一体……なにがあったの?」 「結城さん……」 私が東明の名を口にすると結城宮子がすぐに反応を見せた。彼女たちは私の講義を通して面識があったのだ。 結城宮子は東明のそばまで駆け寄ると、彼女の肩に触れようとする。が、やはりその手は空をかく。 「これは……!? 稲生先生、もしかして彼女の異能が……?」 「暴走ではない、が危険な状態であるのは同じだ。 簡単に言うとガス欠だな。魂源力不足で彼女の肉体がこちら側に戻って来れない。 そこで皆槻くんには彼女が亜空間ゲートを開くのをサポートしてもらいたい。二人のゲート開閉は同じ仕組みだ。だから上手く同調すればゲートをこじ開けることができる」 私は結城宮子の問いかけに答え、一息に皆槻直に頼みたいことの概要を伝えた。 はっきりと可能であるという口調でだ。 (本当の所うまく行く可能性は低い。……だが少しでも成功の確率を高めるためには私が弱気な態度を見せるわけにはいかない。異能を上手く使うには何よりその可能性を『信じる』ことが重要なのだから……) 「ちょ、ちょっと待って先生!私の異能じゃ自分の体にしかゲートは開けないし、まして人の体を出し入れするなんて……」 私の発言を受けて皆槻直があわてて無理だと口にする。確かに彼女の異能では物質の出し入れはできないかもしれない、だが。 「だからこそ『サポート』なんだ。 一人では不可能なことも同種の能力を同調させてやれば可能になる。 皆槻くんは東くんの異能が、本来発揮するはずの効果の一部分を『肩代わり』するんだ。今回の場合は『ゲートを開くことに魂源力を使う』。この部分だ。」 「だけど……」 説明を聞いてもにわかには納得できないのだろう。皆槻直は眉根をひそめ、戸惑いの言葉を漏らす。 しかし今は悩んでいる時間すら惜しい。だから私は少しいやらしい手段を使うことにした。 「なんだ。怖いもの知らずの『ワールウィンド』ともあろう者が情けない顔をする。 君は相手が肉体を持つ人間か下級ラルヴァでなければ戦えないのか?実態を持たない他者の異能とは戦えないと?」 相手の自尊心を傷つけ、あおる。 まるで喧嘩を売る不良のごとき振る舞いだが、この際、方法の善し悪しは二の次。何よりも皆槻直の敵愾心をあおり、行動させなければならない。 「言ってくれるじゃないですか先生。 面白い……やってやりますよ!」 「ナオ!」 私の挑発に乗って前に出ようとする皆槻直を結城宮子が押しとどめ、私に強い視線を向ける。 「先生、まだ一つ言っていないことがありますよね? 昼間のお話では『危険』がある、と先生は仰いました。その危険って、上手くゲートが開けたとしても東さんの体が戻ってこられるとは限らない、悪くすれば『ナオも亜空間に飲み込まれかねない』って事なんじゃないですか?」 素晴らしいの一語だった。 彼女の指摘は完全に的中していて、だからこそ私は返す言葉を失う。 もし彼女の言葉で皆槻直の気が変われば、この状況を脱する手段は完全に失われる。そしてそれは東明への死刑宣告に等しい。 「ミヤ、いいんだ。私だってそこまで馬鹿じゃないし、危ないのはわかるよ。 でもここはあえて先生の挑発に乗ることにする。私自身、まだ知らない戦いができそうだしね。 だからミヤは、私が負けて亜空間に飲み込まれないように捕まえていて」 「ナオ……。 わかったわ……しっかり捕まえておく」 何とか翻意させまいと考えをめぐらせていた私だったが、幸いなことに皆槻直の決意は変わらなかった。しっかりと前を見据えるその瞳には一点の曇りもなく、必ず勝つという強い意志が漲っていた。 「じゃあ始めましょうか先生!」 「ありがとう皆槻くん、結城くん。 ……東くん、彼女たちが力を貸してくれる。もう一度、しっかりとこちら側に戻れると信じるんだ。いや、絶対に戻ると決意するんだ。 そうすることで成功の可能性は大きく高まる。 あとは君を助けるために来てくれた二人を信じるだけだ」 皆槻直が左手のひらに右拳を打ちつけ、戦いの開始を促す。 私はそれに頷くと、東明に強く、決意を促し、もう一言つけ加える。 「ああ、ついでに私のことも信じてくれて構わないよ。 講義で私が間違ったことを言ったことはないだろう?」 「……先生、わりとよく『前回のあれは間違っていた』って訂正している気がしますけど」 いつもの調子で言った私に、彼女は弱々しくも的確に反論する。 さっきまでのパニックはだいぶ落ち着いたようで、その顔にはほんのわずかながら笑みが浮かんでいる。 知った顔が増えたということと、学園でも有名な異能者がサポートに当たってくれるという事実がプラスに働いたのだろう。 「そうだったかな?これは失礼。 まあ、それはそれとして、早いところやってしまいますか。 東くん、立てるかい?」 「はい」 私は大げさに肩をすくめて見せながら右手を差し出し、彼女に立ち上がるように促す。東明はそれに応え、触れられないと解っていながらも私の手のひらに左手を重ねる。 そうして私と彼女は互いの手を重ね合わせたまま、ゆっくりと立ち上がった。 「よし、それでは皆槻くんと結城くんは東くんの背中側に回ってくれ。 私はこのままの位置で指示を出す」 私の指示を受けて二人は東明の背後に立ち、結城宮子は皆槻直の腰に両腕を回し、しっかりと抱きしめる。 これで我々4人の立ち位置は、東明を中心に一直線に並ぶ形となった。 「いくぞ!東くん、ゲートを開け!皆槻くんは両手の前方にゲートを開くイメージで東くんに同調!」 私は一息に号令を出し、皆槻直は両手のひらを東明の背にかざす。 そして東明は目を閉じ、私の右手に重ねた左手に力を込める。その左手の周辺がぼんやりとした青い光を帯び、そこをめがけ空気が少しずつ流れてゆく。 徐々に亜空間ゲートが開き始めたのだろう。 「いいぞ……東くん、しっかりと、まずは左手をこちらに戻すんだ。 少しずつ、ゆっくりでいい。指先から肩に向けてゲートを移動させることをイメージして」 「はい……!」 東明は私の指示に従い、さらに指先に力をこめる。 青い光が垂直に立つ小さな光の輪へと変化し、彼女の指先から胴体方向へと移動を始め、亜空間へと消える空気の流れも急激に速まる。 それと同時に背後に立つ皆槻直の体が大きく傾いた。 おそらくゲートが開いたことで一気に魂源力をもっていかれたのだろう。 (頑張ってくれ皆槻くん……君が倒れれば全てが終わってしまう) 声を上げることで東明の集中を乱すわけにはゆかず、祈るような気持ちで視線を送る私に気づいた彼女は、結城宮子に支えられながらもグッと口の端を吊り上げてみせる。 大丈夫だという意思表示だろうそれに、私は小さく頷く。 (これで東くんの手さえ戻ってくれば……) そう願う私の気持ちが届いたのか、それまで青く透けていた彼女の左手にゆらゆらと白い手の影が見え始める。 東明の『肉体』が戻りつつあるのだ。 (今だ!) その機を逃さず、私は両手でその白い手を全力でつかむ。そこにはしっかりと、やわらかな肌の感触と温かさがあった。 彼女もその感覚に目を見開く。その表情には戸惑いとともに喜びの色が浮かんだ。 「やったぞ東くん、もう一頑張りだ! 絶対に手を離すんじゃない!いいね?」 「はい!」 私の言葉に答えた彼女の顔にはすでに絶望はなく、若々しい生気があふれていた。 そして彼女の腕へと移動しつつあった亜空間ゲートは今までにないスピードで大きく広がってゆく。ここまでは全てが順調だ。 しかしゲートが広がるということは『亜空間に飲み込まれかねない』という危険を大きくするということでもあった。 「うっ!」 ゲートが直径1メートル近くまで広がった頃には空気の流れも激しく強まり、岩場に残る海水に足をとられた私は大きく体勢を崩してしまった。 そのままゲートに向かって引き寄せられる。 が、何とか踏みとどまる。 (しまった……!) これからという時に『危険』を再認識させてしまったら生徒たちは萎縮してしまうかもしれない。 顔を上げた私の目に映ったのは案の定、不安と恐怖が入り混じった彼女たちの顔だった。 が、東明の後ろで支えあう二人の表情は、見る間に怒りに変わっていく。 (……ばれたか) 私をにらみつける皆槻直と結城宮子の目は 『あれだけ皆槻直に危険があると言っておいて、一番危険な位置にいるのはお前じゃないか』 と言っているようだった。 (……これはこれで良かったのかもしれない。 後はしっかり彼女たちに頼るとしよう) そう思い直した私は、私をにらみつけている二人に笑顔でウィンクしてみせ、大きく宣言する。 「失礼、ちょっと油断したよ! あと一息だから君たちは気を抜かず頑張って欲しい! もちろん私も気をつけます!」 私の言葉を聞いた東明はクスリと噴出し、その背後の二人は怒りつつ苦笑いといった難しい表情を浮かべる。 なんとか上手く空気を変えることができた様だ。 そこからはまさに一進一退だった。 少し引いては少し戻される、を何度も繰り返し、その結果、東明の体は徐々に亜空間から出、今現在は右腕を除いて上半身がほとんどこちらに戻ってきていた。 しかし、同時に全員の表情に疲労がはっきりと見て取れるようになってもいて、このままでは間に合わないのではないかという焦りが沸いてくる。 (やはり何もかも都合よくは行かないか……) 「皆槻くん!これから東くんの体を一気に引き戻す! 私が合図したら1秒だけいい、全力でゲートを広げてくれ!」 「え!?1秒ってそれでどうにかなるんですか!?」 「ああ、大丈夫だ。すぐに彼女の体はこちらに戻る!」 少し考えてから私は皆槻直にそう指示を飛ばす。 その指示に疑問の声を上げたのは結城宮子だった。彼女の疑問は当然だが、私はきっぱり『戻る』と断言し会話を打ち切る。 「東くん、これから一気にこちらに戻ることになる。転んで怪我をしたりしないように注意しておきなさい」 「は、はい」 東明にそう言い聞かせ、私は彼女の体が亜空間に戻されないよう注意しながらに少しずつゲートに近づく。 「よし、皆槻くん!やってくれ!」 「はい!」 私の合図で一気にゲートが広げられ、その直径は2メートルにも及ぶほどになる。 既に東明の肉体が楽に通れるサイズだ。 それを確認した私は全力で東明を引っ張りながら反転し、一気に自分と彼女の位置を入れ替えた。 そして彼女が再び亜空間に飲まれることのないよう、力いっぱい突き飛ばす。 かくして東明は亜空間の牢獄からの脱出に成功した。 「先生!」 「ナオ!行って!」 東明の代わりに亜空間に飲まれそうになる私の耳に皆槻直と結城宮子の声が飛び込んでくる。 私が反射的に振り向いた瞬間、皆槻直が私の右腕を両手でつかんだ。 その体からは、亜空間に流れ込む空気に匹敵するほど多量の空気が噴射され、私と彼女を空中に留める。 それは皆槻直の異能『ワールウィンド』の効力だった。 「だめだ皆槻くん、離しなさい! 君まで引きずり込まれるぞ!」 「うるさい!いくらあんたが先生でも私たちをここまで利用しておいてどこかに行くなんて許さない! それに自分を犠牲にして人を救うなんてただの自己満足だ! 残される者の気持ちを考えろよ! それから言っておくけど……この勝負は私の勝ちだ!」 私の言葉を切って捨てると、彼女は高らかに勝利を宣言し、一気に空気の噴射量を増やす。その空気の奔流は、常識的に考えれば人一人の魂源力でどうにかできる範疇を超えているように見えた。 (なんてでたらめな容量だ……さながらジェットエンジンだな。 一体どうやってこれだけの量の空気を……まてよ。東くんの異能を基本に開いた亜空間ゲートは同時に皆槻くんの異能も用いていた……ということは) 「亜空間ゲートに流れ込む空気を、そのままワールウィンドの噴射能力に転用したのか!」 皆槻直の素晴らしい発想に私は思わず感嘆の声を上げ、彼女はその反応に満足げな笑顔を浮かべる。 「そういうこと!それじゃあ一気に脱出しますよ!」 そう言うと彼女は空気の噴射を両足の裏に一点集中させ、亜空間へ流れ込む空気の束縛を振り切った。 私の足元から遠ざかる亜空間ゲートに目をやると、魂源力の供給を失い徐々に歪みながら縮んでいた。 それに比例して空気の流れも弱まり、やがてはそよ風程度にまで収まる。 それは亜空間ゲートが閉じたことも意味していた。 「う!?」 その時、皆槻直が驚きの声を上げ、同時に私と彼女は糸の切れた操り人形のように地面に投げ出される。 そして脱出の勢いそのままにごろごろと岩場を転がった。 「っつー……。 あっさりタネ切れだあ……」 地面に転がる私のすぐそばで皆槻直がそう一人ごちる。 空気の供給源だった亜空間ゲートが閉じたことで、噴射に使える空気が一瞬で消費されてしまった結果、姿勢制御もままならなかったということだろう。 しかし今はそれよりも東明のことだ。 亜空間から開放された彼女と私、そして皆槻直は同じ方向に転がっていたので、東明の姿もすぐそばにあった。 「東くん、大丈夫かね?どこにも怪我はないか?」 私は上半身を起こしながら彼女にそう声をかける。 ちょうど結城宮子が彼女に駆け寄り、東明を抱き起こそうとしているところだった。 抱き起こされた彼女は弱々しい笑顔を浮かべて私に答えた。 「大丈夫です……でも、体に全然力が入らなくて……」 そう言う彼女の声は今にも消えてしまいそうなほどか細い。 それも当然だ。なにせ4日間も飲まず食わずの上に異能を使いっぱなしだったのだから、精も魂も尽き果てているだろう。 「そうだろうね。こんなこともあろうかと、コンビニで買ってきておいたスポーツドリンクとゼリータイプの栄養補給食があるよ。 とりあえず飲み物からどうぞ」 私は上着のポケットから飲食物を取り出して見せた。 そしてペットボトルのキャップをひねって開けると、東明の口元に差し出す。 「ありがとうございます……」 彼女は礼を言って飲み物に口をつける。 「それにしても二人が来てくれなければどうなっていたことやら……。 改めて礼を言わせてもらおう。皆槻くん、結城くん、本当にありがとう。」 「いえ、結果的に上手くいったんですから気にしないでください」 「ダメよナオ。私たち先生に騙されていたのよ。 『ナオが危ないかも』なんて言っておいて自分だけ危ない目に遭う位置にいたんだから」 礼を言う私に、皆槻直はさばさばとした態度で応える。 が、結城宮子は納得いかないようだ。しかしそれは一人で危険を抱え込もうとした私への非難で、相手に対する思いやりから出た言葉だった。 「そうだね……。確かに私は皆槻くんに危険があるとは言ったが、誰が最も危険かは言っていなかったし、その事は申し訳なく思っている。 本当にすまなかった。」 「ダメですよ、そう簡単には許しませんから。この埋め合わせはキッチリしてもらいます。 まずは東さんをゆっくり休める所まで背負って行ってあげてください」 結城宮子は私の謝罪をばっさりと切って捨てると、ニッコリと笑って指示を出す。 (将来この娘の旦那になる男は、確実に尻にしかれるな……) 私はそんな失礼なことを考えながら東明を背負う。 その時、パシャリと小さな水音があがり、私は磯に目を向けた。 そこには海面のすぐ下を泳ぐ、細長い星のような姿をした小さなラルヴァがいた。 ここのところ散歩に出るごとに『無害で小さな水棲ラルヴァを見られたらいいことがある』という願掛けにも似た行為を、私は繰り返していた。 (今日は久しぶりに見ることができたな) 一人、満足し立ち上がると、私は東明を研究棟の医務室に運ぶべく、ゆっくりと歩き出した。 トップに戻る 作品投稿場所に戻る
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天地 響 「僕の目標は『最強の異能者』ではなくて『最高のパパ』になる事なんですよ」 基本情報 名前 天地 響(あまち ひびき) 学年・クラス 双葉大学理工学部助手(2009〜2016) 性別 男 年齢 30(2009年時点) 身長 179 体重 62 性格 丁寧な喋り方で温厚だが、目的の為には手段を選ばない冷酷さを持つ。息子を溺愛しているが、殆ど会った事はない 生い立ち 不明。息子が1人いる 基本口調・人称 一人称は僕、もしくはパパ。丁寧な喋り方で饒舌、話が長い。理屈的な話し方をする。相手によっては慇懃無礼に見える 特記事項 1999年以前から異能を認められ、裏の世界ではそこそこ有名な為に偽名を名乗っている。2019年現在の安否は不明。常にICレコーダーを持ち歩き、いつか子供に聞かせるべくメッセージを吹き込んでいる キャラデータ情報 総合ポイント 35 レベル EX 物理攻防(近) 7 物理攻防(遠) 6 精神攻防 4 体力 5 学力 5 魅力 3 運 2 能力 フラッシュエンド:自身の魂源力をプラズマとして放出する 特記事項 エキスパートキャラクター その他詳細な設定 長身痩躯、純粋な日本人 1999年以前から異能者として活動し、1999年の異変ではアメリカでラルヴァと戦闘していた。 その結果、裏の世界ではそこそこ名の知れた存在となる。当時は寡黙な人間だった。 2009年時点では『カオスヘッダー』という組織に息子を捕えられている為に、この組織を追っている。 その一環で『響・アマーティ』という偽名を名乗って双葉学園大学で助手として勤める事になった。 なお、双葉学園内では彼は魂源力があるものの能力未発現のカテゴリーEとして活動している。 2016年初頭に突如、職を辞して双葉学園を去る。その後の彼の行方は知られていない。 装備: 装備はプラズマを凝集し、指向性を与える為の手袋とプラズマの熱エネルギーを運動エネルギーに変換し、飛行するためのアークジェットスラスタを仕込んだ靴。 これによって響は遠距離攻撃、および飛行が可能となる。 登場作品 【X-link ハロウィン特別編 Side2009 part1】 【X-link ハロウィン特別編 Side2009 part2】 [ 作者のコメント なかなか俺tueeeなキャラですが2019年時点ではもうアレなんで勘弁してください
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幻の古代株の合成素材 アイテム名 必要数 入手場所 魔素Li 150 アンダー・フレイヴ アクアプリズム 1050 アンダー・フレイヴ 蒼の硬鉱 1050 アンダー・フレイヴ 蒼の杖星 240 アンダー・フレイヴ アルイエルの献花 20 アンダー・フレイヴ 黒氷 120 旧ビーシャイン大洞 崩れかけた武片 450 崩れかけたカタコンベ ファルファングの骨 320 崩れかけたカタコンベ 古文書の切れ端 256 グルッサス迷宮遺跡 邪鬼魂 630 地獄街道 鬼の首飾り 120 地獄街道 人灯 20 地獄街道 フライムパウダー 180 フレイムミルルの巣窟 ブレイズパウダー 1800 フレイムミルルの巣窟 グルッサス遺跡街鬼畜の合成 虹金 幻源石 虹金の手前の素材その1 蒼色に光る純正金 七色に光る邪蛇革 虹金の手前の素材その2 蒼火 古代の金 熱膨張を起こした蛇革 不純物が取り除かれた蛇革
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【名称】 :孔雀蜂・女王(くじゃくばち・じょおう) 【カテゴリー】:デミヒューマン 【ランク】 :上級A-4 【初出作品】 :【偽・手のひらを太陽に。―空の守護者―】 【他登場作品】: 【備考】 :孔雀蜂の群れを率いる女王 他の蜂と違い人間の女性に近い外見をしているためデミヒューマンに分類される 魂源力を吸い取り相手を灰にする能力を持つ またその吸収は針からも可能である トップに戻る 世界観設定に戻る ラルヴァに戻る 上に戻る
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イメージ マジックストーン、魔法石(魔宝石)とも。 魔力を宿した石、または持つ者の魔力を増幅させる効果を持った石の総称。 見た目は内部に淡い光を内包した透明感のある宝石。 色や種類も様々あり、火や水と言った属性を宿した物もある。 主に大量のマナを含有する鉱脈から採掘され、魔力の強さや質で1等から12等まで等級分けされており、魔法武器や魔道具の素材としても使用されている。 一般的な市場で扱われるのは概ね7等~12等級。 それ以上に強力な石は軍や専門のギルド等で厳重に保管・取引される。 特に3等から上は死に至る危険性を伴う程の魔力を増幅させるので取り扱いには注意が必要。 関連 バルナ国 カルト鉱山 バルナ魔石戦争 クロネコ魔石商会 魔石の流通を担っている商人ギルド マジックリング 魔包瓶 魔石ランプ 魔石炉 皇の大剣 クリスタル 黒妖石 三源石 赤熱水晶 ダイアビートフラム ダークジュエル 封魔石 魔晶 目次に戻る
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グルッサス遺跡街 アンダー・フレイヴ[520Lv]のエリアからいける他、スノー村地下の闇市を経由しても行ける。 敵の攻撃力が高いので、しっかりとレベルを上げて装備を整えてから行こう。 また、ここではハガラズ・ヴァイスと呼ばれる強力な武器を作ることができる。 アラグ村で作成したマナヴァイス(火)のタワー村での強化、ミラード・ヴァイスから、 ここグルッサスで正体不明のヴァイスに強化した後、それを素材にハガラズ・ヴァイスを作成できる。 ただし、その為にもうひとつ必要な幻源石は1つ作るのにここでの素材を千単位で集める必要がある代物。 基本的には高レベル帯になってから数日間かけて作る人が多いが、ここに訪れた直後に数ヶ月もの時間を費やして作る強者もいる。 ハガラズ自体はここでのレベル帯では強力だが、村を経るにつれてだんだんスペック不足になってくる。しかし、 砂漠の街ルシャディールにて現時点でIWA最強の武器に進化させることができるため、作る価値は十分にある。 街の様子 ショップリスト 合成屋 素材1 素材2 完成品 効果 備考 魔素Li アンダーウール 正体不明のウール 素材 正体不明のウール*2 カゲロウの霞糸 謎の火糸石 素材 崩れかけた武片*3 魔素Li 修復が施された武片 素材 修復が施された武片 古文書の切れ端*4 古代武具石 素材 正体不明のウール*8 黒氷*2 純正魔氷 素材 アクアプリズム*3 蒼の硬鉱*3 蒼の結晶 素材 蒼の杖星*2 黒氷 蒼の黒杖 素材 蒼の結晶*10 蒼の黒杖*6 双蒼 素材 邪鬼魂*3 鬼の首飾り*2 鬼の邪悪な首飾り 素材 人灯 アルイエルの献花 人灯化したアルイエル 素材 鬼の邪悪な首飾り*3 人灯化したアルイエル 無邪気で凶悪な首飾り 素材 フリーズロップ*2 遺跡蛇の皮*2 冷え切った蛇革 素材 謎の火糸石*4 ファルファングの骨*5 傷ついた火糸石 素材 ファルファングの骨*5 古文書の切れ端*4 古代の骨 素材 冷え切った蛇革*3 黒氷*3 黒光する蛇革 素材 修復が施された武片*5 蒼の結晶*5 装飾が施された蒼の武片 素材 邪鬼魂*5 フライムパウダー*2 燃え盛る球体 素材 ブレイズパウダー*60 燃え盛る球体*3 溶熱球 素材 双蒼*2 装飾が施された蒼の武片*3 重なり合った二つの蒼 素材 無邪気で凶悪な首飾り*2 溶熱球*3 重なり合った二つの邪炎 素材 重なり合った二つの蒼 重なり合った二つの邪炎 究幻;シキサイ 素材 冷え切った蛇革*40 謎の火糸石*40 熱膨張を起こした邪革 素材 溶熱球*30 古代武具石*35 古代の金 素材 純正魔氷*40 黒光する蛇革*20 不純物が取り除かれた蛇革 素材 傷ついた火糸石*45 装飾が施された蒼の武片*45 蒼火 素材 究幻;シキサイ*10 古代の骨*64 幻の古代珠 素材 熱膨張を起こした熱革 不純物が取り除かれた蛇革 七色に光る邪蛇革 素材 古代の金 蒼火 蒼色に光る純正金 素材 七色に光る邪蛇革 蒼色に光る純正金 虹金 素材 虹金 幻の古代球 幻源石 素材 レアドロップ強化 素材1 素材2 完成品 効果 備考 般若神道 般若神道 般若神道Ⅱ オフハンドに装備時 体力+15 般若神道Ⅱ 究幻;シキサイ 般若神道Ⅲ オフハンドに装備時 体力+20 スライミーサイス 双蒼*3 スライミーサイス ダイヤ製 耐久力Ⅲ 攻撃速度-1 攻撃力+117 スライムに対してダメージが増加 装備作成 素材1 素材2 完成品 効果 備考 ミラード・ヴァイス 謎の火糸石*5 正体不明のヴァイス 火属性 耐久力50 防御力+5 攻撃速度-2.4 近接攻撃力+100 必要 500剣スキル ミラード・ヴァイス 謎の火糸石*5 正体不明のヴァイス 火属性 耐久力50 攻撃速度-3 近接攻撃力+170 必要 500斧スキル ミラード・ヴァイス 謎の火糸石*5 正体不明のヴァイス 火属性 耐久力10 パワー65 必要 500弓スキル ミラード・ヴァイス 謎の火糸石*5 正体不明のヴァイス 火属性 耐久力50 攻撃速度-3 近接攻撃力+120 必要 500大鎌スキル ミラード・ヴァイス 謎の火糸石*5 正体不明のヴァイス 火属性 耐久力50 攻撃速度-1 近接攻撃力+65 必要 500小鎌スキル 巫女の御劔 古代武具石*3 先代巫女の護身剣 光属性 耐久力6 防御力+6 攻撃速度-2.4 近接攻撃力+145 必要 565剣スキル 巫女の戦斧 古代武具石*3 先代巫女の戦斧 光属性 耐久力6 攻撃速度-3 近接攻撃力+215 必要 565斧スキル 巫女の御杖 古代武具石*3 先代巫女の護身杖 光属性 魔力+190 必要 565魔導書スキル 巫女の短杖 古代武具石*3 先代巫女の短杖 光属性 魔力+120 必要 565精霊木スキル フリーズロップ*35 魔素Li*60 フレイヴランス 氷属性 攻撃速度-3 近接攻撃力+155 必要 565大鎌スキル フリーズロップ*35 魔素Li*60 フレイヴショートランス 氷属性 攻撃速度-1 近接攻撃力+90 必要 565小鎌スキル 正体不明のウール*15 ファルファングの骨*10 ナイトゼーション 氷属性 耐久力10 パワー85 必要 565弓スキル 先代巫女の護身剣 無邪気で凶悪な首飾り*2 封じられた護身剣 耐久力不明 防御力+7 攻撃速度-2.4 近接攻撃力+182 必要 650剣スキル 先代巫女の戦斧 無邪気で凶悪な首飾り*2 封じられた戦斧 耐久力不明 攻撃速度-3 近接攻撃力+280 必要 650斧スキル ナイトゼーション 純正魔氷*2 穆浪ロードパラディン 氷属性 耐久力10 パワー110 必要 650弓スキル フレイヴショートランス 双蒼 雹樹 グローツショートランス 氷属性 耐久力2 攻撃速度-1 近接攻撃力+117 必要 650小鎌スキル フレイヴランス 双蒼 雹樹 グローツランス 氷属性 耐久力2 攻撃速度-3 近接攻撃力+200 必要 650大鎌スキル 先代巫女の護身杖 無邪気で凶悪な首飾り*2 封じられた巫女杖 魔力+245 必要 650魔導書スキル 先代巫女の短杖 無邪気で凶悪な首飾り*2 封じられた巫女短杖 魔力+156 必要 650精霊木スキル 正体不明のヴァイス 幻源石 ハガラス・ソードヴァイス 火属性 防御力+10 攻撃速度-2.4 近接攻撃力+330 耐久 必要 700剣スキル 正体不明のヴァイス 幻源石 ハガラス・アックスヴァイス 火属性 攻撃速度-3 近接攻撃力+650 耐久 必要 700斧スキル 正体不明のヴァイス 幻源石 ハガラス・ボウヴァイス 火属性 パワー150 耐久 必要 700弓スキル 正体不明のヴァイス 幻源石 ハガラス・サイスヴァイス 火属性 攻撃速度-3 近接攻撃力+440 耐久 必要 700大鎌スキル 正体不明のヴァイス 幻源石 ハガラス・ダガーヴァイス 火属性 攻撃速度-1 近接攻撃力+280 耐久 必要 700小鎌スキル 修復が施された武片*4 ヒデリグモの目*10 アルトリエ(頭) 耐久力40 耐久無限 体力+55 近接攻撃力+15 必要 500剣スキル 修復が施された武片*4 ヒデリグモの目*10 アルトリエ(胴) 耐久力40 耐久無限 体力+40 近接攻撃力+25 必要 500剣スキル 修復が施された武片*4 ヒデリグモの目*10 アルトリエ(脚) 耐久力40 耐久無限 体力+40 近接攻撃力+25 必要 500剣スキル 修復が施された武片*4 ヒデリグモの目*11 アルトリエ(靴) 耐久力40 耐久無限 体力+55 近接攻撃力+15 必要 500剣スキル 正体不明のウール*6 遺跡蛇の皮*10 メルトアーグス(頭) 耐久力40 耐久無限 体力+15 近接攻撃力+63 必要 500斧スキル 正体不明のウール*6 遺跡蛇の皮*10 メルトアーグス(胴) 耐久力40 耐久無限 体力+25 近接攻撃力+53 必要 500斧スキル 正体不明のウール*6 遺跡蛇の皮*10 メルトアーグス(脚) 耐久力40 耐久無限 体力+25 近接攻撃力+53 必要 500斧スキル 正体不明のウール*6 遺跡蛇の皮*10 メルトアーグス(靴) 耐久力40 耐久無限 体力+15 近接攻撃力+63 必要 500斧スキル 冷え切った蛇革*3 正体不明のウール*5 ラピットメイズ(頭) 耐久力40 耐久無限 体力+21 攻撃力+40 必要 500弓スキル 冷え切った蛇革*3 正体不明のウール*5 ラピットメイズ(胴) 耐久力40 耐久無限 体力+11 攻撃力+50 必要 500弓スキル 冷え切った蛇革*3 正体不明のウール*5 ラピットメイズ(脚) 耐久力40 耐久無限 体力+11 攻撃力+50 必要 500弓スキル 冷え切った蛇革*3 正体不明のウール*5 ラピットメイズ(靴) 耐久力40 耐久無限 体力+21 攻撃力+40 必要 500弓スキル 魔素Li*8 古代武具石*2 メイローム(頭) 耐久力40 耐久無限 体力+18 移動速度+0.01 近接攻撃力+17.01 必要 500小鎌スキル 魔素Li*8 古代武具石*2 メイローム(胴) 耐久力40 耐久無限 体力+18 移動速度+0.01 近接攻撃力+17.01 必要 500小鎌スキル 魔素Li*8 古代武具石*2 メイローム(脚) 耐久力40 耐久無限 体力+23 近接攻撃力+22 必要 500小鎌スキル 魔素Li*8 古代武具石*2 メイローム(靴) 耐久力40 耐久無限 体力+23 近接攻撃力+22 必要 500小鎌スキル 修復が施された武片*5 古文書の切れ端*5 アウレア(頭) 耐久力40 耐久無限 体力+40 近接攻撃力+40 必要 500大鎌スキル 修復が施された武片*5 古文書の切れ端*5 アウレア(胴) 耐久力40 耐久無限 体力+30 近接攻撃力+50 必要 500大鎌スキル 修復が施された武片*5 古文書の切れ端*5 アウレア(脚) 耐久力40 耐久無限 体力+40 近接攻撃力+40 必要 500大鎌スキル 修復が施された武片*5 古文書の切れ端*5 アウレア(靴) 耐久力40 耐久無限 体力+30 近接攻撃力+50 必要 500大鎌スキル 純正魔氷*3 ファルファングの骨*8 カルディア(頭) 耐久力43 耐久無限 体力+18 魔力+50 必要 500魔導書スキル 純正魔氷*3 ファルファングの骨*8 カルディア(胴) 耐久力43 耐久無限 体力+8 魔力+70 必要 500魔導書スキル 純正魔氷*3 ファルファングの骨*8 カルディア(脚) 耐久力43 耐久無限 体力+8 魔力+70 必要 500魔導書スキル 純正魔氷*3 ファルファングの骨*8 カルディア(靴) 耐久力43 耐久無限 体力+18 魔力+50 必要 500魔導書スキル 純正魔氷*3 ファルファングの骨*8 カルディアホワイト(頭) 耐久力43 耐久無限 体力+15 魔力+30 必要 500精霊木スキル 純正魔氷*3 ファルファングの骨*8 カルディアホワイト(胴) 耐久力43 耐久無限 体力+15 魔力+30 必要 500精霊木スキル 純正魔氷*3 ファルファングの骨*8 カルディアホワイト(脚) 耐久力43 耐久無限 体力+25 魔力+20 必要 500精霊木スキル 純正魔氷*3 ファルファングの骨*8 カルディアホワイト(靴) 耐久力43 耐久無限 体力+25 魔力+20 必要 500精霊木スキル 古代の骨*10 黒氷*10 ファンファルシーグ(頭) 耐久力80 耐久無限 体力-2 移動速度-0.01 攻撃力+85 必要 550弓スキル アルトリエ(胸) 傷ついた火糸石*2 開墾;カルティットバレット(胸) 耐久無限 体力+70 近接攻撃力+25 必要 575剣スキル アルトリエ(脚) 傷ついた火糸石*2 開墾;カルティットバレット(脚) 耐久無限 体力+70 近接攻撃力+25 必要 575剣スキル メルトアーグス(頭) 古代の骨*10 蝕媒;バイオドミネーター(頭) 耐久無限 体力+40 近接攻撃力+73 必要 575斧スキル メルトアーグス(靴) 古代の骨*10 蝕媒;バイオドミネーター(靴) 耐久無限 体力+40 近接攻撃力+73 必要 575斧スキル ラピッドメイズ(胸) 黒光する蛇革*2 靄染;クラーコノイド(胸) 耐久無限 体力+35 攻撃力+55 必要 575弓スキル ラピッドメイズ(脚) 黒光する蛇革*2 靄染;クラーコノイド(脚) 耐久無限 体力+35 攻撃力+55 必要 575弓スキル メイローム(脚) 純正魔氷*2 音形;メイローム(脚) 耐久無限 体力+30 移動速度+0.01 近接攻撃力+30 必要 575小鎌スキル メイローム(靴) 純正魔氷*2 音形;メイローム(靴) 耐久無限 体力+30 移動速度+0.01 近接攻撃力+30 必要 575小鎌スキル アウレア(頭) 装飾が施された蒼の武片*2 金武;アウレア)(頭) 耐久無限 体力+55 近接攻撃力+55 必要 575大鎌スキル アウレア(脚) 装飾が施された蒼の武片*2 金武;アウレア(脚) 耐久無限 体力+55 近接攻撃力+55 必要 575大鎌スキル カルディア(胸) 無邪気で凶悪な首飾り 吸魔;カルディア(胸) 耐久無限 体力+25 魔力+80 必要 575魔道書スキル カルディア(脚) 無邪気で凶悪な首飾り 吸魔;カルディア(脚) 耐久無限 体力+25 魔力+80 必要 575魔道書スキル カルディアホワイト(脚) 人灯化したアルイエル 純聖;カルディアホワイト(脚) 耐久無限 体力+25 魔力+35 必要 575精霊木スキル カルディアホワイト(靴) 人灯化したアルイエル 純聖;カルディアホワイト(靴) 耐久無限 体力+25 魔力+35 必要 575精霊木スキル アルトリエ(頭) 溶熱球*2 開墾;カルティットバレット(頭) 耐久無限 体力+80 近接攻撃力+35 必要 600剣スキル アルトリエ(靴) 溶熱球*2 開墾;カルティットバレット(靴) 耐久無限 体力+80 近接攻撃力+35 必要 600剣スキル メルトアーグス(胸) 古代の骨*10 蝕媒;バイオドミネーター(胸) 耐久無限 体力+50 近接攻撃力+85 必要 600斧スキル メルトアーグス(脚) 古代の骨*10 蝕媒;バイオドミネーター(脚) 耐久無限 体力+50 近接攻撃力+85 必要 600斧スキル ラピッドメイズ(頭) 人灯化したアルイエル*2 靄染;クラーコノイド(頭) 耐久無限 体力+45 攻撃力+65 必要 600弓スキル ラピッドメイズ(靴) 人灯化したアルイエル*2 靄染;クラーコノイド(靴) 耐久無限 体力+45 攻撃力+65 必要 600弓スキル メイローム(頭) 蒼の結晶*2 音形;メイローム(頭) 耐久無限 体力+40 移動速度+0.01 近接攻撃力+35 必要 600小鎌スキル メイローム(胸) 蒼の結晶*2 音形;メイローム(胸) 耐久無限 体力+40 移動速度+0.01 近接攻撃力+35 必要 600小鎌スキル アウレア(胸) 装飾が施された蒼の武片*4 金武;アウレア)(胸) 耐久無限 体力+65 近接攻撃力+65 必要 600大鎌スキル アウレア(脚) 装飾が施された蒼の武片*4 金武;アウレア)(脚) 耐久無限 体力+65 近接攻撃力+65 必要 600大鎌スキル カルディア(頭) 無邪気で凶悪な首飾り 吸魔;カルディア(頭) 耐久無限 体力+30 魔力+75 必要 600魔道書スキル カルディア(靴) 無邪気で凶悪な首飾り 吸魔;カルディア(靴) 耐久無限 体力+30 魔力+75 必要 600魔道書スキル カルディアホワイト(頭) 人灯化したアルイエル*2 純魔;カルディアホワイト(頭) 耐久無限 体力+30 魔力+40 必要 600精霊木スキル カルディアホワイト(胸) 人灯化したアルイエル*2 純魔;カルディアホワイト(胸) 耐久無限 体力+30 魔力+40 必要 600精霊木スキル 開墾;カルティットバレット(胸) 究幻;シキサイ 幻剣;シキサイ(頭) 耐久無限 体力+95 近接攻撃力+40 必要 650剣スキル 開墾;カルティットバレット(脚) 究幻;シキサイ 幻剣;シキサイ(脚) 耐久無限 体力+95 近接攻撃力+40 必要 650剣スキル 蝕媒;バイオドミネーター(頭) 究幻;シキサイ 幻斧;シキサイ(頭) 耐久無限 体力+60 近接攻撃力+100 必要 650斧スキル 蝕媒;バイオドミネーター(靴) 究幻;シキサイ 幻斧;シキサイ(靴) 耐久無限 体力+60 近接攻撃力+100 必要 650斧スキル 靄染;クラーコノイド(胸) 究幻;シキサイ 幻弓;シキサイ(胸) 耐久無限 体力+55 攻撃力+75 必要 650弓スキル 靄染;クラーコノイド(脚) 究幻;シキサイ 幻弓;シキサイ(脚) 耐久無限 体力+55 攻撃力+75 必要 650弓スキル 音形;メイローム(脚) 究幻;シキサイ 幻鎌;シキサイ(脚) 耐久無限 体力+50 移動速度+0.01 近接攻撃力+45 必要 650小鎌スキル 音形;メイローム(靴) 究幻;シキサイ 幻鎌;シキサイ(靴) 耐久無限 体力+50 移動速度+0.01 近接攻撃力+45 必要 650小鎌スキル 金武;アウレア)(頭) 究幻;シキサイ 幻双鎌;シキサイ(頭) 耐久無限 体力+80 近接攻撃力+75 必要 650大鎌スキル 金武;アウレア)(靴) 究幻;シキサイ 幻双鎌;シキサイ(靴) 耐久無限 体力+80 近接攻撃力+75 必要 650大鎌スキル 吸魔;カルディア(胸) 究幻;シキサイ 幻死魔;シキサイ(胸) 耐久無限 体力+45 魔力+100 必要 650魔導書スキル 吸魔;カルディア(脚) 究幻;シキサイ 幻死魔;シキサイ(脚) 耐久無限 体力+45 魔力+100 必要 650魔導書スキル 純聖;カルディアホワイト(脚) 究幻;シキサイ 幻聖魔;シキサイ(脚) 耐久無限 体力+40 魔力+60 必要 650精霊木スキル 純聖;カルディアホワイト(靴) 究幻;シキサイ 幻聖魔;シキサイ(靴) 耐久無限 体力+40 魔力+60 必要 650精霊木スキル ]]|[[ [[]]
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《魂葬の儀式》 儀式魔法 「魂源球体」の降臨に必要。 フィールドか手札から、レベルが8以上になるようカードをリリースしなければならない。 この効果でリリースしたカードが全て光属性・天使族モンスターで、 儀式モンスターの降臨に成功した場合、次の効果から1つを選択して発動する。 ●相手のデッキの上から5枚を墓地に送る。 ●相手の手札をランダムに1枚墓地に送る。
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ラノで読む 異能力研究室2 今日も始業のチャイムが鳴り『異能力研究室』が開講される。 「えー、今日の講義は『超科学の詳細』からだが、その前に前回の『召還』についての補足をしておこう。 みんな前回のページを開いて。」 講師の指示に従い受講生たちは各々、教室備え付けのPCを操作し『異能の分類と発現条件について』と題されたページの最終項目をモニターに表示させる。 「えー 『召還』能力のサイコキネシスによる物質再現に関してだが、これが『召還』能力で召還したモノを使役できるかどうか、という問題を解決してくれる。 どういうことかというと、まずテレポートによる『召還』の場合、任意のものを他の場所から呼び寄せることは出来てもその対象が従順なモノとは限らない。 これは呼ぶだけ呼んで後は何も出来ない可能性が高い、ということを意味する。 ところがサイコキネシスによる『物質再現』ならば術者の都合の良い性質にすることが出来る。 理由は言うまでもないかもしれないが、本物を呼ぶわけではなく術者が作り出しているからだな。 だからこそ『物質再現』型の『召還』は『召還した上に使役できる』という、一見複数能力に思える例外性を見せることになる」 「先生、私と同じクラスの男子に『架空の存在も召還できるけど何を召還しても使役できない』子がいるんですけど、これはどうなるんですか?」 講師の説明を聞き終えた後、一人の女子生徒が手を上げるとともに質問を発する。 「そうだな、それはおそらくは異能に対する熟練度の問題だろう。 その彼はただ漠然と『召還する』と考えているんだろうが、架空の存在を召還するのは『物質再現』なわけだから確実に使役できるはずだ。 テレポートとサイコキネシスの複合型の『召還』は『どっちが効率がいいか』によって本能的にテレポートとサイコキネシスを使い分けていると考えられるが、現実に存在するものであればまずテレポートを行使することになる。 するとそれは呼んでも使役できない場合がほとんどだ。 ここで術者は『呼べても使役は出来ない』と思い込むことがあり、その彼もこの落とし穴にはまっているんだろうな。 機会があればこのことを彼氏に教えてあげるといいと思うよ」 女子生徒は説明を頷きながら聞いていたが、最後の言葉には少し顔を赤らめて「あんな変態彼氏じゃありません!」と反論した。 講師は「これは失礼」と肩をすくめた。 「さて、では『超科学の詳細』に入ろうか。」 講師はPCを操作しつつ説明に入る。 「えー、他の系統もその中にさまざまな異能を内包するわけだが、この『超科学』も同様だ。 が、他の系統と異なり明確に3種に分けられている。 ひとつは設計図、構造図、組成図などを生み出す『デザイナー』 ひとつは設計図などを介さず、機器、合金などを作り出す『アセンブラー』 最後の一つは特定の機器の使い方を一瞬で理解、操作できる『ハンドラー』 『ハンドラー』を除いた2つは『天啓』を受けると同時にほぼ自動筆記のように作業に没頭する。 これは時と場所を選ばない上に、場合によっては何日も不眠不休で作業し続けてしまうため大変危険だ。 こういった事情から『超科学』系の異能者はその大半が、なかば『引きこもり』のように自室や研究室にこもりきりになっている。 決して彼ら自身、引きこもるのが好きなわけではないよ」 生徒たちの間から「ああ」とか「それでか」などと納得の言葉が漏れる。 身近な『超科学』系ひきこもり異能者を思い出しているのだろう。 「もちろん全員が全員『ひきこもり』なわけではないし『天啓』の頻度も個人個人で異なっている。 頻繁にさまざまな『天啓』を受けるものもいれば、何年かに一、二度しか『天啓』を受けないものもいる。 その内容や規模も『ちょっと便利な時計』レベルから使うことすらはばかられる『超兵器』まで多岐にわたる。 さて、ではここから3種それぞれの詳細を説明していこう」 講師の操作に従い、教室前面の大きなモニターに『デザイナー』の項目が映し出される。 「『デザイナー』は前述の通り、設計図、構造図、組成図などを生み出す異能なわけだが、これは現行の技術で作成可能なものからまったく不可能なものまでさまざまだ。 うまい具合に作りやすい機器、素材などの設計図であればいいが、そうでなければまさに『絵にかいた餅』となってしまう」 その言葉に対し「設計して自分で作ってる人もいますけど」と何人かの生徒が疑問を投げかける。 「それは本人が『デザイナー』でありながら、設計図などを元に努力して独力で組み上げているということだろう。 ただ、簡単な機械ならともかく『デザイナー』は設計図を作ることは出来ても理解はできないという場合も多々あり、一般の科学者に頼らざるを得ないことも多い。 このあたりの泣き所は『アセンブラー』とは逆だな。 では続けて説明に入ろう。 『アセンブラー』はいきなり機械などを作り出す『天啓』を受けるわけだが、これにはなかなか大きな障害がある。 一つは素材の問題。 いくら『異能』といえど、手元に必要な素材がなければどうにもならない。 もう一つは再現性の問題。 『デザイナー』と違い、設計図の類は一切形として残らないため、単純なものならともかく現行の技術を超えるような機器はどうにもならないし、そもそもどうやって分解するのかすらわからないものが出来上がったりもする。 壊れたらそこまでというわけだ。 『アセンブラー』の問題点で特徴的なのは以上の二つ、それとは逆にプラスになる点は『作った者には使い方もわかる』という所だ。 まあ、使い方がわからなかったらまったく意味がないが」 室内にクスクスという笑いがもれる中、講義は続く。 「さて『超科学』系3つめの『ハンドラー』だが、これは『デザイナー』『アセンブラー』とは随分と趣が異なる。 何が違うか?それは『超科学』に系統付けられながらも何かを作り出すわけではなく、機械を理解し操ることがその異能の全てであるという所だ。 機械のことを理解するだけなら『超人系』の異能者、その中の頭脳強化型であれば可能な場合もあるが、操る能力を得ることは出来ない。 そこをあっさり乗り越えてしまうのが『ハンドラー』の最大の特徴であり、長所だ。 ただ『ハンドラー』といっても全ての機械にその能力が対応できるわけではない。 つまり何らかの乗り物であったり、電子機器であったり……異能者によって使える物が異なる、というわけだ。 ここまでで何か質問がある者は?」 講師の言葉に反応を示す生徒が一人、手を上げて質問に移る。 「特定の機器をすぐ使えるというのはわかりましたが、それ以外には何も制限はないんですか? 他の系統だと魂源力が消費されると異能の効力が弱まったりすると思うんですけど」 「そうだな。異能を使うときは当然、魂源力が消費される。 これ自体は『ハンドラー』を含む『超科学系』も同様だ。 が、『ハンドラー』はその『魂源力を消費する』という場面が限られている。 つまり『機械を理解する』時のみ消費される、ということだ。 だからその後どんなに機械を使っても魂源力は消費されない。 まあ、体力を必要とする乗り物の運転などは個人のスタミナに大きく依存するのは間違いない。 すぐにバテる様ではただのドライブならいざ知らず、対ラルヴァ戦のサポートを任せるのは怖いよね」 講師は頷き答えた。 説明の最後に冗談を交えるのも忘れない。 ふたたび室内に忍び笑いが漏れ、講師は一人ほくそえむ。 「他に質問は――どうぞ」 講師が再び口を開くと同時に手を上げる者が一人いた。 『召還』の補足の時に質問をした女子生徒だ。 「同じクラスに『超科学系』の人に作ってもらったっていう電磁警棒を持ってる子がいるんですが、魂源力を動力源にして動作するものって現行の科学で再現可能なんですか? 『アセンブラー』が作ったものだと難しそうですけど」 「そうだね。確かにそういった『効果付与《エンチャント》』や『異能再現《エミュレート》』は君の推察どおり『アセンブラー』の手によるものが多い。 そしてそういった物は再現性が低いのは先に言ったとおりだ。 だが『アセンブラー』にはまれに『自ら天啓を引き出す』者がいて、ある程度自分の想定に近い物を作り出すことが出来る場合がある。 君の彼氏が持ってる電磁警棒はそういった『アセンブラー』が作ったものかもしれない。 ただこの種の『アセンブラー』は大体がささやかな『天啓』を引き出すにとどまる様だ。 まあ、超兵器を自分の意思でホイホイ作れたら危ないなんてものじゃないし、おそらくは『天啓を引き出し製作する』という二段構えの流れがそれぞれ魂源力を消費する事で、小さな結果を出すことしか出来ないという縛りの原因になっているのだろう」 再び「彼氏」と言われた女子生徒は「だから彼氏じゃありません!」と反論したが、講師はかまわず最後まで説明し続けた。 講師に「納得いったかな?」と問われ、彼女は憮然としながらも頷くと席に着く。 「君たちバックアップ役はその性質から、実務に就けば『超科学系』の異能者とも関わることが多くなると思う。 異能者の中でも特に変わり者の多い系統だが、根気よく付き合っていくことできっと前線の者たちを助けるのにプラスになることがあるだろう」 そう締めくくった講師の言葉に続くように就業のチャイムが鳴り響く。 「よし、今日の講義はここまで。来週は『魔術系』について話そう。 今どうしても聞いておきたい事がある者は?」 講師の言葉に一人の男子生徒が力強く手を挙げ質問の言葉を発する。 「風紀委員長のパンツの色は実際白なんですか?」 「本人に聞くといいよ。以上、解散」 講師の回答は実にそっけなかった。 このSSは筆者の勝手な解釈による創作であり、D設定の域を出るものではありません。 異能力研究室へ 異能力研究室3へ 異能力研究室4へ トップに戻る 作品投稿場所に戻る
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ラノで読む 物語は、現実になりたがっている。 そういう話を聞いたことは無いでしょうか。 それはこの学園でまことしやかに囁かれる、噂話。 グリムと呼ばれる、現象体ラルヴァ。螺子繰れた御伽噺。 ですが――本当に、ただ、それだけなのでございましょうか? 現実になりたがる物語があるのならば。 物語になりたがる現実もまた、在り得るのではないでしょうか? 無論これは、ただの可能性のお話でございます。 そして―― あらゆる可能性は、現実に成り得るのでございます。 つまり、人は望む物語になれる。 たとえるなら、役者が舞台の上で様々な仮面を被り、さまざまな登場人物に成り得るように。 それでは。 貴方は、何になりたいですか? 竜を打ち倒す英雄騎士? 白馬の王子を待ち続けるお姫様? 杖を振るだけで奇跡を可能とする魔法使い? 処女を襲い、その鮮血を啜る吸血鬼? 軍勢を指揮し、祖国に栄光をもたらす将校? 未開の地を切り開き、宝を探しあてる冒険者? 七つの海を制覇し、未知なる冒険に旅立つ海賊? なんでもいい。そう、なんでもいいのです。 望みさえすれば、貴方は何にでもなれる。 大切なのは、欲し、望み、願い、信じ、そして焦がれる事にございます。 ただ強く。 あるがままに強く。 夢と現、幻と実、在と虚の垣根を越え、境界を打ち砕くほどの強い願い。 それさえ出来るならば、 貴方は――物語の主人公になれる。 さあ、望んで御覧なさい。 さあ、思い描いて御覧なさい。 あなたは、どんな物語になりたいですか? 【case1 Doktor Faustus】 歯車が軋み、砕ける。 黒いクロームがひしゃげ、油が血のように飛び散る。 「ぐ……ぅああああっ!!」 その痛みをダイレクトに総身で感じ、時坂祥吾は絶叫を上げる。 永劫機メフィストフェレスを握り締めるのは、巨大な腕。 竜の姿を持つ、悪魔の巨大な腕だった。 双葉学園都市の森にラルヴァが出るという噂があるという。 間が悪く祥吾は、その森に足を踏み入れ―― それと、出会ってしまった。 黒いクロームの輝きを持つ鱗、それに包まれた10メートルはある体躯。 巨大な尻尾、翼、そしてねじくれた角。 黄金の輝きを持つ瞳。 それは、そうそれは――歯車であるか、肉であるかの違い。 「悪魔……」 「愛すべからざる光……」 そう、その銘は。 「メフィストフェレス……ッ!!」 戯曲ファウストに記される悪魔が、そこに在った。 『GRUAAAAAAAAAA!!』 魔竜メフィストフェレスが咆哮を上げ、永劫機メフィストフェレスを握り潰そうと力を入れる。 「ふふふ、弱い。弱すぎる、流石は紛い物、悪魔の模造品。 本物たる悪魔メフィストフェレスには敵いっこない!」 仮面の男が、大仰に手を広げる。 それは、双葉学園の生徒なのだろう。学生服を着た、年の頃も祥吾と変わらぬ少年。 ただ、その黒い仮面だけが違った。 悪意に歪んだおぞましい仮面。 それは、巨大な魔竜よりもよほど、悪魔という形容詞が似合っている。 「お前……っ、なに……もの、だっ……!」 祥吾が全身の苦痛に耐えながら、声を絞り出す。 これほどの悪魔を召喚するとは、何者なのか。 その問いに、彼は笑い、宣言する。 「我は……ドクトル・ファウスト。ファウストなり」 「ファウスト……? 馬鹿な、何を……」 「信じずともかまいません。人は恐ろしいもの、強きもの、美しきものから…… そして真実から目を逸らすもの。 お前がいくら否定しようと……この私がファウストである事は、変わらぬ」 仮面のファウストは、笑う。 『在り得ない。ファウスト博士は、すでに死した人物であり、そして――実在したヨハン・ゲオルグ・ファウストをモデルとした架空の登場人物! 今此処に存在するはずがありません、在るならばそれは名を騙る贋物!』 発条仕掛けの森の中から、メフィストが叫ぶ。 それに対し、ファウストは告げる。 「否。君も悪魔を名乗るならば聞いた事はないかね? とある魔術師の残した言葉である。 “悪魔が実在するか否かは問題ではない。そこに悪魔が居るかのように力が働く、それこそが大切なのだ”――と。 そう、悪魔、偉大なる魔龍、恐怖の大公メフィストフェレスを呼び出すことの出来る、偉大にして強大なこの力! それを操る私がここにいる。それで十分。 転じて言うならば! 私がここに在り、この力を操り、この名を名乗る以上―― 私こそが、ドクトル・ヨハン・ファウスト! 死した老人も、架空の博士も、過去の物語――否、贋物である!」 それはなんという傲慢なる宣言。 全ては偽者。自こそが、オリジナルだと、ファウストは宣言する。 「物語……まさか、お前は」 祥吾には心当たりがひとつだけあった。 かつて遭遇した、ピーターパン事件。 そう……現実を侵す夢、実存を望む物語。 「現象体ラルヴァ……グリム……!」 「否!」 だがファウストはそれを否定する。 確かに、ひとつだけ決定的な違いがある。 この森には、霧がなかった。あの、悪意を孕んだ霧が。現実と幻想の境界を曖昧にし、人の心の海から物語を呼び出す、あの霧が。 故に眼前の者は、よく似ているが、グリムではない。 では何だ。 ファウスト博士の物語を被り、名を語り、力を振るう眼前の者は、誰だ。何なのだ? 「がああああああああああああああああっ!!」 『きゃあああああああああああああああっ!!』 魔竜メフィストフェレスが力を込める。 永劫機メフィストフェレスのダメージが二人にフィードバックされる。 「脆い。脆い脆い脆すぎるッ! やはり君達では駄目だ、駄目にすぎるっ!」 笑い、そして叫ぶファウスト。 認めない、と。眼前のメフィストフェレスの名を持つ鉄屑を断固認めない、と叫ぶ。 そしてその否定の意思は力となり―― 「はあああああっ!!」 裂帛の気合と共に、魔竜メフィストフェレスの腕が寸断される。 「何……!?」 ファウストが予期せぬ攻撃に目を見張る。 それは当然、祥吾の攻撃ではない。永劫機メフィストフェレスからフィードバックされるダメージで、動ける状態ではなかった。 ならば誰だ。 その、魔竜の腕を切り裂いた、桃色の光の軌跡の使い手は誰だ。 戒めから開放された永劫機メフィストフェレスの機体がほつれ、歯車となって虚空に消える。 その場から、メフィストの体が投げ出されて地面に落ちる。 その弱々しい姿を守るように立つのは三人の少年少女。 「大丈夫ですか?」 「先客がいたとはな。助太刀する」 「後は、私達に任せて」 彼らは、ラルヴァ討伐パーティー……名を“ダイアンサス”。 森にラルヴァが出る、という噂を聞きつけ、討伐にやってきた異能者たちだ。 「……ていうか、でかいんですけど、撫子先輩」 「……だな」 腕を両断され絶叫する魔竜メフィストフェレスを見上げて、堂下大丞は冷や汗を流す。 でかい。 怪物というより、怪獣だ。 しかも先ほどは、3メートルはあるロボットを握り潰しかけていた。 ……勝てるのかなあ。そう、大丞は内心の不安を必死に表に出さないようにする。 「大丈夫。撫子の爪で切り裂けたという事は、あれの密度はそう強くないはずよ」 吉明ユリが言う。確かに、坂上撫子の能力である刃は、彼女よりも魂源力の「密度」が弱い者にしか通用しない。 故に、あの竜は撫子よりも「弱い」という話が成り立つのだ。 だが―― 「正直、そう単純な話でもないだろう。彼らの力――あの機体を握り潰すほどのラルヴァだ。 隙を作れればいい、と思ってはいたが」 腕を切り落とせるとは、撫子自身も思ってはいなかった。 攻撃を加えることで、脱出の手助けが出来ればいい、そう思って斬りかかったのが、こういう結果になるとは。 一撃が聞いたことの達成感や満足感より、むしろ違和感のほうが多い。 そして、仮面の男――ファウストの表情。 笑っている。 あの攻撃など、大して効果はない。無意味だ、と笑い飛ばすかのように。 「ふん――新手か? まったく、次から次へと沸いてくる――地獄の亡者のようだ。 だが―― メフィストフェレス!」 ファウストの声と共に、切り落とされた腕が再生する。 「っ、ダメージがない……?」 「気を抜くな、私の刃で切れる以上は――対処は出来る! いくぞ大、ユリ!」 三人が走る。 (どういうことだ……?) 違和感は、祥吾もまた同じだった。 永劫機メフィストフェレスが全力で引き剥がそうとしたあの指は、恐るべき強度と力を持っていた。 だが、あの彼女の爪の一撃は、腕をいとも簡単に切り裂いた。 何故だ? その差は一体―― 魂源力の刃に弱い? 物理攻撃への耐性? 違う。違うはずだ。違うと思える理由は特にない、勘のようなものだ。 「ぐ……っ」 祥吾の体は動かない。上半身を立てるぐらいが精々だ。 やれることなど何もない。 永劫機は、実体化させる事が出来ない。ダメージが大きく、残された時間ももはやない。 出来ることなど何もない。 もはや、祥吾に残された力はなく、一般人……それも傷つき動けない重傷者だ。 だから、なにも出来ない。 だがそれは――諦める理由にはならない。 せめて、見る。 敗北を受け入れない。三人と、敵の戦いを見る。 「……?」 そして気付く。 先ほど、永劫機と戦っていた魔竜の動きと違う。 そして―― 「今度は、刃が通じてない」 「ええ……でも、永劫機を絞めていた時ほどのパワーも……感じられません」 メフィストもまた、それを見る。 「おかしい……!」 撫子は焦る。 両断できたあの腕、確かに通じた攻撃。 それが通用しない。刃が立たないのだ。 その動きから察するに。 「おそらく……あれは魂源力によって作られた、映像のようなもの」 ユリが言う。 そう。 異能による「召喚」と呼ばれるものには、いくつかのパターンがある。 次元、時空に楔をいれ、こじ開け、文字通りに「呼び出す」もの。 そして、自らの魂源力により、対象を一時的に再現し作り出すもの。 永劫機メフィストフェレスの場合、黄金懐中時計を核として周囲の分子、粒子、そして魂源力で永劫機を組み上げる。 これは祥吾の異能ではなく、黄金懐中時計に仕組まれた機構。 そうやって「召喚」された永劫機を、祥吾とメフィストが操るのだ。 では、魔竜メフィストフェレスの場合は? 「再現された竜……じゃあさっき攻撃が通じて、今は通じないのは」 大丞もまた、その解にたどり着く。 「そうか……あいつ、魂源力の密度、出力、そういったものを……」 「ええ。調整しているんです、おそらく。それも恐るべき速度とタイミングで」 メフィストが言う。 「永劫機を捕らえた時、その全力、全密度を手に、指に集中させていた。 だから……力比べでは勝てなかった」 「なるほど。そしてその手に密度を集めていたからこそ……」 「撫子先輩の攻撃が当たった腕は、薄かったから」 「切り落とすことが出来た……不意打ちが功を奏したって事なのね!」 だが、転じて言えば。 不意打ちさえ喰らわなければ、その類稀なる魂源力の操作能力は三人を相手にして一歩も引かぬ。 撫子の爪の威力は既に把握している。 そして、それに釣り合うだけの力を、攻撃を受ける部分に集中し、はじき返す。 それだけで事足りる、ただそれだけの事――と言うには、あまりにも馬鹿げている。 最低の力で最大の効果。だが、言うは易しのそれを実際に行えるのがどれだけいるだろうか。 魂源力を操り、様々な幻覚を作り出し、質量、実像を与える、精妙にして緻密なるその技術。 それはまるで、楽器の調律――いや、交響楽団の指揮のごとく。 “指揮者《コンダクター》”ドクトル・ファウスト。 まさに、稀代の魔術師の名に相応しい――! 「それなら――」 撫子と大丞が目配せする。 今までの戦いで、思い知った。 相手は――この魔竜を繰る魔術師は、実に精妙で緻密。芸術といってもいい美しさと繊細さで竜を繰り出してくる。 まるで、楽しむかのように、弄ぶかのように。 それは余裕だ。紛い物のメフィストフェレスを容易く戦闘不能にまで追い込んだ。 そう、イレギュラーさえなければ、勝利は不動という認識から来る、圧倒的余裕、慢心。 そしてそれは事実である。 大丞達《イレギュラー》が現われなければ、永劫機は戦闘不能に留まらず、完璧に破壊され、時坂祥吾はその命を失っていただろう。 だが、奇跡は二度起きぬ。 戦いの最中、ファウストは魔竜を操りながらも、結界を敷いていた。 戦いの場をコントロールし、魔竜の外れた、否、敢えて外した攻撃に魂源力を乗せ、魔法陣の基点を築く。 舞台を闖入者に汚させぬための、基本にして単純なる人払いの結界。 それを既に敷き終えている以上――もはやいかなる者とて、この場に立ち入ることはならぬ。 恐るべきは、この場の誰にもそれを気付かれぬ技量。 そして仮に結界に気付き、破壊し乗り越えたとしても――その時点で、対処の術は組み上げられる。 故に、ファウストはただ、眼前の三匹の羽虫に対して絶妙なる技を繰り出し続ければよい。 そして、彼我の実力差を存分に思い知らせ、此処にいる者全員を打ち倒すのだ。 「くぁうっ!」 竜の丸太のような尻尾が横薙ぎに振るわれ、撫子を弾き飛ばす。 だん、だん……と軽快な音を立てて、ボールのように転がる。 「先輩っ!」 大丞が駆け寄る。撫子は、ごほっ、と咳き込む。 血を吐き出したりしないことは僥倖だ。打ち所が悪ければ、あの一撃は内臓を破裂させていてもおかしくない。 だが、動かない。あの攻撃をくらい、撫子は顔をしかめ、その場で大きく息を吐くのみ。 それは、魔竜とその操り手にとって絶好の好機。 「まずは、二匹。――殺せ。チェックメイトだ」 ファウストの指に従い、魔竜メフィストフェレスが咆哮をあげ、巨大な顎を開く。 迫るは牙。 精妙に緻密に、撫子と大丞の攻撃に耐え弾く硬度、そして彼らを噛み砕く強度を備えた、一撃必殺の牙。 迫る。 迫る。 迫る―― だが、その刹那の後に死を迎える運命にありながら。 生贄達《かれら》は、笑っていた。 「――大」 「はい、先輩」 仕込みは上々。 相手の特性に感づいた以上、ならばとるべき手段はひとつ。 そして、とるべき手もまたひとつ。 手を繋ぐ。 大丞の他者強化の異能。その力が、撫子に流れ込み、そして―― 本来の力を超越した、刃を生成する。 「な――」 驚愕は、ファウストの口から。そして、彼らの死を直感し、再び永劫機を織り成そうとした祥吾の口から。 一刀――いや、一刃両断。 魔竜が絶叫する。断末魔の唸りを残して、その幻が消滅する。 幻想によって編まれたソレは、確かに実体ではない。 だが、その想像力が精密にして強固であるからこそ―― 腕を切り落とされてたところで、竜ならば生えてきてもおかしくは無い。 だが、真っ二つに両断されて死なぬ生物など、怪物であっても在りはしない。 少なくとも、それが創造主であるファウストの中での常識。 現像を実体として結んだ時点で、そのルールすらも適応されたのだ。 無敵の異形など創れない。 故に―― 魔竜メフィストフェレスは、ここに滅びた。 「――」 ファウストは瞠目する。 まさか、魔竜メフィストフェレスが斃されるとは―― 「勝負あったわね。さあ、諦めて……」 ユリが言う。だがる、ファウストの驚愕も一瞬限り。 そもそも―― 幻影をただ一度掻き消されただけの事。その事実に戸惑うものの、恐れる必要が何処にある? 「!?」 揺らぐ。 揺らぐ。 空間が揺らぎ、更なる幻が現われる。 巨大な爪持つ悪魔。 百の女の腕を持つ悪魔。 五つの山羊の足を持つ目玉。 腐臭を放つ猫頭の蜘蛛。 幾多もの悪魔の幻が現われる。そしてそれは、実体を持つ幻、魂源力で編まれた怪物。 「な、こんなに――!?」 その、緊張の声を上げる撫子たちに向かい、ファウストは恭しく一礼をする。 「先ほどのメフィストフェレスのみが我が力と思ってもらっては――困る。 だが――正直驚いたよ。まさか、倒されるとは思わなかった。 故に――」 腕を振る。 次々と悪魔達がその実体をほどけさせる。 「今回のワルツは此処まで、としよう。 誇れ。貴様達がこの私を、ヨハン・ゲオルグ・ファウストを退けたのだ。 私の、敗北である」 それは嘘だ。ファウストは微塵も自身が負けたなどとは思っていない。 これは、相手を尊重し、勝者として称える――その皮を被った、欺瞞。冒涜であった。 お前たちは、勝ちを拾わせてもらったのだ、と。 その譲ってもらった勝利に甘く酔うがいい、と。 「……っ」 その事実に歯軋りをする。 この男は、強い。 その撫子達の苦悩を堪能し、そしてファウストは深くお辞儀をひとつ。 「待て――!」 立ち去るファウストにむかい、体を起こした祥吾が問う。 「お前は、何者だ――?」 トップに戻る 作品投稿場所に戻る
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ラノで読む 改造仁間―カイゾウニンゲン― 『彼の怒りが頂点に達したとき、その力は悪を打ち砕く一筋の赤い流星となるのだ!』 「おーい、来たぞ改造魔ー。 今日は何の用だー?」 「あっ、仁ちゃん!待ってたよー」 振り返った少女の背後のモニターから爆発音と「総統バンザーイ!」という断末魔の声が響く。 テレビ画面に映っているのは70年代から連綿と続く人気特撮ヒーロー「仮面バイター」だ。 俺、『木山 仁《きやま じん》』が研究棟の一角にある部屋に顔を出したのは、同級生の『造間 改《つくま あらた》』にケータイで(正確に言うとモバイルやらGPSやら携帯電話やらの機能が盛り込まれた生徒手帳だが)呼び出されたからだ。 この女との出会いは高等部入学式の日のことだ。 あの日は、めったにないはずの構内への上級ラルヴァ侵入で大混乱だった。 あちこちで悲鳴やら怒声やらが上がり、火の玉やら閃光やらも飛び交い、さながら戦場のようだった。 そんな喧騒の中でこの女はおびえる様子もなく周囲の異能者たちに熱い視線を送っていた。 妙なやつだなあと思ったのを鮮明に覚えている。 そんな風に無防備をさらしていれば当然、戦場からあぶれたラルヴァに狙われるわけで、たまたまそばにいた俺が異能を使って助けた。 助けたといっても最初の攻撃を防いだだけで、撃退したのは他の先輩だったが……。 とにかく俺が助けたことがきっかけで、この常に白衣を着て背は低いくせに乳だけはやけにでかい女に気に入られてしまったのだ。 この女は特に俺の異能が気に入ったらしく、事あるごとに俺を呼び出しては「異能対応機器の実験」と称してナゾのキカイを装着させては暴走させるという、とてつもなくはた迷惑な行為を繰り返すようになった。 (俺がこの女の名前をもじり『改造魔《かいぞうま》』と呼ぶのは、こういった迷惑行為を皮肉ったものだ) 普通ならこんなことになればあっさり関わりを断つところだが、俺にはそれが出来ない事情があった。 それもまた入学式での出来事の一つなのだが、簡単に言うとこの女はあの日何を血迷ったのか、いきなり俺の両手をつかむと 「あたしと付き合って!」 と言い放ったのだ。 いくらピンチを救われたといっても唐突過ぎるだろ実際。 なんてことは当時の俺の頭には浮かんで来もしなかったというか、青春真っ盛りの男子たる俺が目の前においしそうなおっぱいを差し出されて断ることなどできるはずもなく、 「はい」 と、あっさり了承してしまったのだ。 もう本当に、あの時の俺の目にはおっぱいしか映っていなかった。 だっておっぱいだよ?おっぱい。 ああ、おっぱいおっぱい……。 ということで俺はわけのわからない実験につき合わされながらも、虎視眈々とおっぱいをむしゃぶる機会をうかがっているのだ。 おっぱい万歳。 おっぱいのためならどんな酷い仕打ちにも耐えられる。 「なにボーっとしてるの仁ちゃん?早くはじめようよ!」 改造魔の声でハッと我に返る俺。 いかん、またおっぱいを凝視して妄想にふけってしまった。 「あ、ああ、悪い。ちょっと実技がきつくて疲れてんだ。 で、今日はどんな実験なんだ?」 あわてて取り繕いつつ、話を進める。 「今日はねー、実験というか完成したツールのお披露目って感じかなー」 改造魔は俺のおっぱい目線に気づいた様子もなく答え、いつもの実験室に向かう。 この女の占有するそこは小ぢんまりとしているが妙にしっかりした造りの実験室だ。 今まで何度もキカイが暴走し爆発しても特に目立った傷も残っていない。 もしかしたら改造魔の異能、『超科学』の力で作り出した素材でも使っているのかもしれない。 特に興味はないからどうでもいいが。 「はい!服脱いでこれ全部つけて!」 実験室に入るやいなや、改造魔はそう言うと大量のキカイが詰まったキャスターつきプラケースを俺の足元に押しやり、さらに俺の服を脱がしにかかる。 「あ、やっちょっ、やめ、脱ぐ脱ぐ!自分で脱ぐからパンツを引っ張るな!!ていうかパンツまで脱がなきゃダメなのか!?」 「あ、パンツは脱がなくていいよ」 俺の言葉にあっさり引き下がる改造魔。 何だよびっくりさせるなよまったく……ちょっとエロい期待しちまったじゃねえかよ。 俺はそんな感じにブツブツ文句を言いながらも服を脱ぎ、プラケースの中からキカイを拾い出しては身に着けていく。 「……なんで俺どこに着けるかわかるんだ? ってこれ今まで実験してさんざん暴走したキカイばっかじゃねえか!! こんなの全部身に着けたら即、死ぬぞ!!」 「大丈夫だよー。 ちゃんと完成したんだからー! 今までのは全部で一つにするための前段階だったんだよー。 だからまるっと着ければキレイに動くの!」 改造魔は俺の文句を受け付ける気は一切ないようだ。 いつもの事だけどこいつ自分勝手というかはわがままが過ぎる。 わがままなのはおっぱいだけにしろってんだ。 「……この右手のパーツは起動したら魂源力吸出しまくって俺、死にかけたよな?」 「平気へいき!」 「両足のは起動したらジェット噴射みたいに俺の異能噴出して、伸身後方三回宙返りのあと壁にたたきつけられたよな?」 「大丈夫だいじょうぶ!」 他にも大小さまざまな痛みの記憶を列挙するが、改造魔にはまったく取り付く島もない。 これはもう覚悟を決めて全部身に着けるしかない……。 「おい、全部つけたぞ。 ……これ全然動けねえんだけど。」 プラケースに詰め込まれていたキカイを全て身に着けた俺は、さながら肩と首しか動かないおもちゃのロボットのような状態になっていた。 「オッケー!じゃあ早速、起動するよ!」 「待て待て待て!」 いきなり俺の命を無為に散らそうとする改造魔を何とか押しとどめる。 当然、改造魔は不満げな表情を浮かべるがそんなこと気にしていられるか。 「もー、なにー?」 「お前ちょっとは俺に心の準備させろよ! もし暴走したらあの世逝きかもしれんのだぞ!!」 「もー大丈夫だってばー。 仁ちゃんあたしのつくる物が信じられないの?」 「さっぱり信じられん」 俺の文句もこいつにはまったく効果がない。 しかし言わずにはいられない。 大体、今まで一度もまともに動いたことのないキカイしか作れないやつの作ったものほど信じられないものはないだろうに。 「もー、じゃあどうしたら信じてくれるのー?」 という改造魔の一言で、俺に電流走る……っ! これはもしかして千載一遇のチャンスなんじゃないか? 具体的に言うとおっぱいをどうにかしちゃうチャンスなんじゃないか? さあ今こそ決戦の時。 俺は覚悟を決めて言葉を搾り出す。 「……乳もませろ」 「へっ!?」 「もし暴走して俺が怪我でもしたら、お前のそのけしからんおっぱいを揉ませろと言っているのだ!!」 ふははは、言ってやった、言ってやったぞ。 これでどっちに転んでも俺に損はない。 「……」 あ、やっぱり不味かったかな……あの傍若無人な改造魔が見たこともない顔して黙り込んでる。 めちゃくちゃ困ってるって感じだ。 「あー……ええと」 「……いいよ。」 俺は気まずくなった空気を何とかすべく、改造魔に声をかけようとしたが、彼女の言葉にさえぎられた。 「へ?」 「それで仁ちゃんが信じてくれるなら……おっぱい揉んでもいいよ」 ……マジですか? これは……やるしかない! 「よっしゃああああああ!! 約束だぞ?絶対だぞ?後でやっぱやめたはなしだぞ? よおおし!!何でもやってやるぜ!! さあ、起動しろおおおおお!!」 「はーい!ポチっとな」 俺の気合に応え、満面の笑みでベルト部にある起動スイッチを押す改造魔。 今の時点ですでに騙された感じがひしひしとするが、もう脱出は不可能だ。 あとは何とか暴走しないことを神か悪魔にでも祈るしかない。 と、その時真っ赤な閃光が身に着けた機械全体からあふれ出した。 ああ……やっぱり俺の人生ここで終わるんだ……やっぱ先にもませろって言うべきだった。 などと考えている俺の予想を裏切り、キカイは暴走することなく稼動し続けていた。 全身のパーツが少しずつぼやけ、赤い粒子になって両手の甲、両足首、そして胸にある宝石のようなパーツに吸い込まれていく。 それと同時に全身が激しい脱力感に襲われた。 「あれ?これヤバくね?なんかメチャクチャ魂源力、吸い出されてる感じなんですけど!」 あわてる俺を、いつの間にか遠く離れて物陰からニコニコと眺める改造魔。 自分だけ安全圏に逃げるとか、他人に命懸けさせておいてそれはないんじゃないの。 「大丈夫だよ!魂源力を極限まで吸収してるだけだから死んだりしないよ!」 「極限までってどのくらいだよ!?」 「えーと、今の仁ちゃんの魂源力総量の95%くらいかな? 大丈夫!多分、死なないから!」 おいいいいいいいいいいいいいいいい!!多分って言ったか!?今たぶん死なないって言ったのか!? なんて改造魔の言葉に突っ込む余力も既にない俺。 ああ、もうだめだ……だんだん気が遠くなる…… ――俺の人生はそこで幕を閉じた。木山仁15歳、短すぎる一生であった。―― 気づくと俺の意識は暗闇の中にあった。 「ん……」 あれ?なんだか頭にやわらかい感触が。 やっぱり俺、死んだのかなあ。 だってこんなに気持ちいい物がこの世にあるなんて考えられないよ。 きっとここは天国なんだ。 俺はやわらかい感触を確かめようと体をひねり、自分の頭のそばに手を伸ばす。 するとすぐに手がふんわりとした物をつかむ。 「やん」 ん?なに今の声。 俺は確認のために手がつかんでいるものを二度三度と揉んでみる。 やわらかいのに張りがあって、すばらしい感触だ。 例えるならばつきたての餅というか、大きなマシュマロというか……。 「やっ、もぉ仁ちゃん……そんなに揉んじゃダメぇ……」 え?なんですって?もみもみ。 ちょっとまって、もしかしてこれって……もみもみ。 「もうっ!!」 ゴンッという音とともに頭に受けた衝撃で俺は我に返る。 見上げた先には顔を真っ赤にして頬を膨らませた改造魔の顔があった。 明らかに怒っている。 もみもみ。 そしてこの手が揉んでいるのは間違いなくおっぱい。 「仁ちゃんが倒れちゃったからせっかく抱っこしてあげてたのに……。 そんなに激しくするなんて……!」 「え、あ、ごめ、そのなんというかですね、もう死んだと思っててですね。 正直すでに天国だとばかり……」 目に涙を浮かべて怒りに震えながらにらみつける改造魔に、しどろもどろになりながら弁解する俺。 もみも……もうもんでないですハイ。 「もう……やさしくしてくれないと嫌いになっちゃうよ?」 「はい……すみません」 胸に抱きかかえられた状態で泣き顔の女の子にそんなこといわれたら謝るしかない。 俺の謝罪を聞き入れたのか改造魔はニッコリと微笑むと 「じゃあ……続き、しよっか?」 と切り出した。 「え?続き?」 続きってまさか……いよいよアレですか。恋人同士がいたすアレですか。 男女がいたすドッキング的なアレですか。 「もちろんツールの稼動試験の続きだよー!」 ですよねーーーーーーーーーーーーーー。 再び俺は実験場の中央に陣取っていた。 さっき気を失う前に見た「全身のパーツが少しずつぼやけ、赤い粒子になって両手の甲、両足首、胸にある宝石のようなパーツに吸い込まれていく」という情景は幻ではなかったらしく、現在は宝石のようなパーツのみが体の表面にくっついてる状態だった。 なんだかキレイに体と一体化していて、何とか爪を立ててはがそうとしてみたがまったく取れそうにない。 というかそもそも爪が入るような隙間はない。 「なあ、これ全然取れねえんだけど、どうやったら外れるんだ?」 「うん?ああ、『ガナル・コア』ね。 取れないよ?」 何言ってるの?とでも言いたげな顔で、改造魔は俺の問いかけに答える。 ……とれない? 「え、ちょっ、取れないってどういうことだよ? キカイが体にくっついてるとか改造人間みたいじゃねえか!」 「そうだよ? だってこのツールは仁ちゃんを改造人間にするツールだもん」 またしても何当たり前のこと言ってるの?と言わんばかりの顔でさらりと言ってのける改造魔。 ちょっとまて。 「なん……だと?改造人間にするツール……?」 ダメだ、もうわけわからん。 「そうだよー。 仁ちゃんの『カーネリアンを肉体上に発生させる』異能を増幅、コントロールして変身出来るようにするのがこのツールの肝だよ」 俺の異能はパワーストーンの一種である『カーネリアン』という鉱石を自身の任意の場所に発生させるというものだ。 これを上手くコントロールすれば確かに全身をモース硬度7に迫る高硬度鉱石で覆うことも可能だ、が 「いやいやいや、そんな無茶な使い方したらあっという間に魂源力尽きるから」 改造魔の無茶な説明に速やかに突っ込む俺。 中等部から慣れ親しんだ自分の異能だ。 当然、その長所も短所も俺にはわかっているし、なにをすればどの程度の魂源力が消費されるかも大体、把握している。 だから改造魔の言うことはとても現実的だとは思えなかった。 「その辺は事前に魂源力をチャージしておくことで解決してるんだよー。 それにこのツールの魂源力制御能力は並みの異能者とは比べものにならないくらい繊細なコントロールが可能だから、極めて少ないロスで最適な状態を瞬時に構成、維持することが出来るんだよ!」 なんだその厨性能。 「……まあ出来るかどうかは試してみればわかるとして……変身してなんかメリットはあるのか?」 「もちろんだよー! まずはパワーストーンの肉体活性効果で身体能力がなんと1.2倍に!」 「微妙な増幅率だな……」 「び、微妙じゃないよ!走り幅跳び5mが6mになるんだよ!」 「微妙だろ……ていうかそれ異能じゃないのか?」 「異能じゃないよー。あくまでカーネリアンの持つ効能だよー!」 改造魔とのやり取りで、なんとも微妙な効果な上に異能でもなんでもないとはまた変身する意味がわからないと改めて思う俺。 こいつもしかして単に俺を改造したかっただけなんじゃないか……? そんなことを考えていた俺の顔にはありありと彼女に対する不信感がにじみ出ていたのだろう。 そんな俺の顔を見て、改造魔があわてて補足を加える。 「も、もちろんそれだけじゃないよ! 変身した後は色んな必殺技や格闘武器が使えるようになるんだよー! と、とにかくまずは変身してみてよ!」 「……わかったよ。 で、どうやって変身するんだ?なんかポーズでもとるのか?」 「EXACTLY(その通りでございます)!」 俺の冗談に、我が意を得たりと言わんばかりにどこかで見たような肯定の仕方をする改造魔。 ていうかマジで変身ポーズかよ。 「それで……? どういう手順なんだ」 「まずは両手を腰溜めに構えてー」 ふむ 「胸の前で両腕をクロス!」 ふむふむ 「腕を交差させたまま手首を返しつつ前に突き出す!」 ふーむ 「そして叫べ!『ガナル・チェンジ!!』」 ああ、やっぱり発声もあるのね。 「ガナル・チェンジ!」 ていうか、ガナルってなんだ。 「てのひらを開きつつ、両腕を胸元に引き戻してから斜め下に向けて開く!」 はいはい。 と、それで変身ポーズがで完了したのか『ガナル・コア』から真っ赤な光があふれる。 最初にパーツをつけて起動した時と同じ状態のようだ。 ……ってちょっとまて。 また魂源力吸われるんじゃないだろうな。 いくらなんでも今そんな事されたら確実に死ぬぞ。 「あ、大丈夫っぽい?」 一瞬、心の準備をしかけた俺だったが、今回は特に脱力感もない。 どうやら死ななくてよさそうだ。 とか言ってる間にも変身プロセスは進んでいた。 『ガナル・コア』から発せられた光は俺を中心にドーム状に広がり、つむじ風のようにくるくると回転する。 やがて赤い光は俺の体を薄く覆う様に集束していき、プロテクターを形成していく。 ふと右てのひらを見るとレンズのようなものが現れていた。 左手を確認するとやはり同じものがある。 よく見るとそのパーツは肘やかかとにも発生している。 武器か何かか? そんな事を考えていると赤かった光は真っ白に変色し、一層まぶしく輝いた。 閃光に目を焼かれ、俺は思わず目を閉じる。 そして実験室内を静寂が包む。 「成功だー!」 という嬌声が上がり、俺の胸に何かがぶつかってきた。 驚いて目を開けると目の前に改造魔の顔がある。 そして俺の全身は真っ赤な鎧にすっかり覆われていた。 「やったよ仁ちゃん!変身ヒーロー『ガナリオン』の誕生だよー!」 「ガナリオン?」 「そうだよー!カーネリアンだとパンチが弱いから、ちょっともじって『ガナリオン』にしたんだよー! やっぱりヒーローの名前には濁点がなきゃ!」 俺に抱きついたまま一気にまくし立てる改造魔。 うれしくて仕方ないのか小刻みに飛び跳ねまくっている。 当然おっぱいが押し付けられて気持ちいい……。 と思いきやまったく感触がない。 ああ、プロテクターに覆われてれば感触なんかあるわけないよね。 まあでもおっぱいが変形しまくるのは見れるからよしとするか。 あ、いかん。 マイサンが暴れ始めた。 っていててて、やばいこれやばい。 プロテクターに押さえつけられてるから巨大化できない。 とにかく気をそらさねば。 「へ、変身はできたみてーだけど、さっき言ってた技とか武器とかはどうやって使うんだ?」 前かがみになりつつ改造魔を引き剥がし、話をふる俺。 「あ、そうだね。じゃあまずは『ガナル・クロー』から説明するねー」 改造魔の口からは、いかにも近接格闘武器と言った感じの名前が飛び出した。 「右腕を曲げて拳が左肩の前に来るように構えてー。 左手は腰溜めにー」 ふむ。 「そして『ガナル・クロー』と叫ぶのだ!」 はい。 「ガナル・クロー!」 俺の声に反応して右拳から赤く透き通った爪が3本、シャキンといういかにもそれらしい音を立てて飛び出す。 クローといっても10cmほどで、引っかいたりするのには向いてなさそうだ。 パンチするときの補助武装と言ったところか。 普段、異能を使うときに攻撃力を高めるためによくやる、拳をカーネリアンでコーティングするのと似た様なものだな。 「左右反対にやれば左手にも出せるし、両腕を交差させてやれば一度に両手に出すことも出来るよー」 なるほど、わかりやすい。 「他は?」 「じゃあ次は『ガナル・パンチ』ね」 これまたわかりやすい技名だね、改造魔。 「まずは腰を落として半身に構えてー」 うい。 「右手は拳を握って腰溜めにして、左手は右拳の前にかざしてー」 うす。 「『ガナル・パンチ』と叫んで拳を繰り出すのだ! あ、左手はしっかり腰にひきつけてねー」 よし。 「ガナル・パンチ!」 右ストレートを放つと同時に右ひじのレンズのような部分から真っ赤に輝く粒子が噴き出す。 と同時に俺の右腕がものすごい勢いで押し出され、空気が引き裂かれる「ボッ」という低く短い音が室内に響く。 その直後、拳の通り道から突風が起こり、床一面にたまった埃を根こそぎ引き飛ばした。 数秒後、風の残響とともに舞い散る粉塵が収まると、俺は自分が数メートル前進していることに気づく。 振り返ると足元からさっき立っていた辺りまで、赤いレールが敷かれたような跡が残っていた。 なにこれ、ちょっと凄すぎない? 「どうー?すごい威力でしょー」 改造魔がこちらに駆け寄ってきながら大声で言う。 「確かにすごいなコレは……ってなんだ? なんかプロテクターがぼやけて……」 これって起動したときと同じ状態? そう思うが早いか、真紅の鎧は赤い光の粒になって『ガナル・コア』に吸い込まれ、俺は変身する前のボクサーブリーフ一丁の姿に戻っていた。 「え?……どういうこと? 変身して一つ武器出して一回技出したら変身が解けたってことは……。 もしかしてもうガス欠!? 俺の魂源力丸々使って!?」 うろたえる俺に向かって、改造魔は事もなげに 「あー、やっぱり一日分程度の魂源力じゃ足りないかー。 大丈夫!二・三日チャージしておけば3回くらいは技出せるようになるよー」 と、そう言い放つ。 二・三日チャージして一回変身+技3回……だと? 「いくらなんでも燃費悪すぎるだろう…… やっぱ完全に趣味の世界だな」 これにはさすがの俺もあきれ果てた。 確かに技の威力は、俺程度の異能者には普通じゃ出せないほど強力なものだが、それを加味しても自由に異能が使えないのはマイナスが大きすぎるだろ実際。 「……まあいいや。 普段は別に変身とかせずに自前の異能使ってりゃ問題ないだろう。 ……あれ?」 妙だ。いつも通り異能を使おうと右手に意識を集中させているのに、まったく魂源力が高まる感じがない。 もう一度右手に力を込める。 が、さっぱり異能が発現しない。 もう一度。 だめ。 もう一度。 あっれええええええええ? ちょっとどういうこと? 何で異能使えないの? 「おい、改造魔!!なんか異能使えねえんだけど!?」 あわてて改造魔に問いただす。 「うん?使えないよー? だって変身解除中は強制的に『ガナル・コア』チャージしてるから異能使えるほど魂源力たまらないもん」 またしてもとんでもないことをサラリと言ってのける改造魔。 ちょっとまって。 それって変身しなきゃ異能使えないってことだよね? ってことは変身してないとき俺は無能力者って事? ってことは異能使うカリキュラムとか三日に一回とかしか受けれないって事じゃん? ってことはラルヴァ倒して日銭を稼いでる(この学園にはラルヴァを倒すと退魔ポイントがたまり、それを様々な特典と引き換えられると言うシステムがある)俺は生活が苦しくなるって事だよね? 「大丈夫!変身すれば異能使えるんだから!問題ないよー!」 呆然と思考のループに陥っている俺に、改造魔は気楽にそう言う。 「…………問題ないわけ……」 「あるかぁああああああああああああああああい!!」 実験室中に『ガナル・パンチ』以上の衝撃をともなった俺の絶叫が響き渡った。 つづく? 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