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高三みずしほ 「だから、こんなところでするのやめとけって話なんじゃないの」 「つい……興味本位で」 「あんたにとっても私にとっても大事な場所なのに?」 「だからこそ、刻み付けておきたかったんだ」 「そう……」 良かった、とすらなかなか言ってやれない私の唇を、瑞生はそっと塞ぐ。外見だと薄い唇なのに、触れると肉厚に感じられる。さっきまでも散々していたのに、また、時が止まるかのようなキスを重ねた。 鍵は締めたし、見回り担当は私で、このご時世、電子の防犯センサーたちのほうがよっぽど優秀で。 入られたら困るので、鍵さえ締めて、あとは夜八時という、猶予ある下校時間さえ守れば。 後続の部員も入ってくることのなかった美術室は、私たちの城だった。 付き合いだして三年目。私たちは学校で不埒な行為に勤しむという、愚かな遊びも覚えた。 あと三十分、夜七時半。 今日は休憩日だから、と、瑞生に誘われ、二人きりの廊下になると手を繋いで部屋に入った。受験勉強で頭がだいぶヒートしてきている私たちは、憂さ晴らしのように相手を求めるようになっていた。 引退すると部が消えるから、瑞生は卒業までずっと美術部だ。三年になって、そういえば金より銀気味になった髪を撫でる。 ちゃっかり部費で買ったマットレスの上に寝転がれば、さっきまでのあれこれを思い出す。 「寂しくなるな。あっという間に季節は過ぎてゆく」 「そうね」 「私は背が伸びたし、紫歩も、可愛くなったよな」 着たばかりのセーラー服をめくられ、ブラを手慣れた手つきで、ずらされる。 正直ひりひりしてるというのに、目の前の猫は発情期だった。少しざらざらする舌が、再び触れる。 「もう、あんたあと三十分しかないのに……」 「だめだったら、家に泊まりに来たらいい。服も下着も全部置いてるだろ」 言い捨てて、瑞生は私の胸を愛撫するのに戻る。 スカートも捲り上げられ、下着の隙間から指を入れてくる。どうせまだまだ濡れっぱなしで、そして、感じやすい。 タイツは乱暴に破かれて、伝線用に持ってきているハイソックスで今日は帰る。というか、きっと、瑞生の家に泊めてもらうしかない。 指はあっという間に二本に増やされ、わざとらしく音を立てつつ、中を触ってくる。 胸にまた、新しく花を咲かせているのが目を閉じていてもわかった。 悔しいことに、真剣に私を愛する瑞生を見ると、もっと感じてしまうから、目はぎゅっと閉じ続ける。 シワになっても、明日は土曜日だ。補講も何もない。元から好きではないので塾に行っていない私は、何もない。 瑞生は画塾に行くと言っていたはずだ。 目が覚めたら、瑞生の残り香だけがあって、私はその匂いに包まれて、ぼんやりと帰りを待つしかない。 どういう関係だと思われているのか定かではないが、雑賀家は私を一人の娘として扱ってくれる。瑞生がそうやって出かけている間は、私が瑞生の代わりに家事を手伝ったり、お母さんと買い物に出かけたりする。 いよいよ一人の家に帰るのが嫌になると思いきや、間宮の家もあんまりさみしくなくなった。 「何のこと考えてる?」 一層強く中を揺さぶられ、腰が動く。 「あんたのことよ」 「どこか遠くに行ってた」 「……あんたの家庭は優しいわね。雑賀紫歩になりたいくらいよ」 その言葉に、瑞生の目は大きく開いた。角度によって青に見える不思議な目が、輝き出す。 「良かった……。お前がそう思ってくれているのなら」 「ずっと前から思ってたわよ? ひ、ちょっと、もう、ひりひりするんだってば……」 「紫歩のここが、咥えて離さないから」 「ばか」 「ありがとう。紫歩のことは、私のお嫁さん、だと思ってるから」 その言葉に、私の身体も心も跳ねた。一気に上り詰めて、高まって、いってしまった。 慣れた感覚ながら、荒く息を吐く。 私の中から取り出した指を、瑞生は満足そうに舐めていた。 「私も、瑞生のお嫁さんになら、なってあげる」 可愛くない言い方に、眩暈がする。もっと素直に言えたらいいのに。 私は可愛くなれないままだった。 着崩された制服を着直して、下着も戻して。美術室内の蛇口で、お互いの体液がついた手を洗う。 カーテンを開けると、外は真っ暗だった。 「帰ろう? 紫歩」 「ええ、瑞生」 後片付けをして、情事の雰囲気を残したままに部屋を後にする。 誰もいない、非常灯だけが照らす長い廊下。二人分の足音だけが、延々と響く。 言葉はなかった。 お互い、照れている。 瑞生がぐいぐいと手を引っ張るものだから、私の歩幅も広くなる。 「瑞生……腰が痛いの。もう少し、ゆっくり歩けない?」 「ああ……ごめん。やりすぎた」 「良いの。たぶん、おんなじ体勢で過ごしすぎたから」 「あれだと、紫歩の顔がよく見えて好きなんだ。だから、つい」 私は大きく咳き込んで、腰回りのじわじわ残った痛みも何もかも気にせず、走り出した。 瑞生はそうやって思いもよらない真っ直ぐな台詞を投げてくるから、たまらない。 結局追いつかれて、また手をつないで、家に帰るのだ。 「私たちが初めて、こういうことしてから二年経ったんだよな」 暗闇の中、街灯の下で瑞生はつぶやく。 「……そうね」 「後悔はないのか? 他の相手だとか、そういうの」 「あんた以上の人間がどこにいるって言うのよ。ふざけないで」 「大学に入ったら、もっと世界は広がるぞ。紫歩にとっても、私にとっても。私は、後悔しない自信がある。だけど、お前はどうかわからない」 「私のこと、いい加減に信用してくれる? 真剣な話よ? 星の数ほど人間はいるわ。きっと大学に入ったら、まったく違う人間がいっぱいいる。素敵な人もいると思う。だからって、瑞生と別れてどうこうしようなんて、思わない。私はあんたを信じてるし、だから、瑞生には私のことを信じてほしいの」 声は震えるばかりで、鼻の奥はつんとしてくる。 毎日会えなくなる日が、やってくる。 そんな私たちを繋ぐのは、きっと、思い出と、愛だから。 忘れないように言葉を重ねる。 熱を分け合う。 モラトリアムは、大事に大事に使われていっている。 つまらないことは、退屈だと旅立っていった先輩は教えてくれた。 その言葉を胸に、私の生活はこんなに、世界を彩る星のように、幸福に満ち溢れている。
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あいにくの雨模様だ。 片思いの相手に告白する天気じゃないかな…… 「小早川、おい小早川!」 「ふえっ!?」 「ボケーッとしてるんじゃない。もう高三なんだぞ?ほら、五行目から和訳しろ」 いけないいけない。英語の授業中だった文化祭が近いのに勉強も頑張らなきゃならないとは、受験生は大変だね。 ……あれ?この単語なんて意味だったっけ? 「ジョンは大変私を気に入り、そして…」 ああもうなんだっけ! これだからド忘れは困るなあ…… マリー?ってなんだ!? 「……『結婚』だよ…」 ヤバい。ヤバいヤバい大好きな成実きよたかくんの口からそんな言葉が出てくるなんて。 「け、けけけ結婚した!」 ドッとクラスに爆笑が広がった。恥ずかしい…穴があったら入りたい! 隣の席の成実くんも口を押さえて笑いを必死にこらえてる。 私多分顔真っ赤だよ… クラスが再び静かになったころ、 ちょうど終了のチャイムが教室のホコリをかぶったスピーカーから流れた。 「あー、今日の授業はここまでだ。文化祭の準備、頑張れよ」 今日は文化祭の前日、授業は四限で終了し、午後からはずっと準備となる。 手作りの弁当を持って友達の席へと向かった。 「…で、ゆいさ、成実くんに告白するの?」 らんらんとした目で私を見つめる親友。そんなに気になるの? 「うん!文化祭の伝説、知ってるからね!」 「ゆいはそれ信じてるんだ…いくらなんでもガセでしょ?」 「いーや、私は信じるね。準備で夜七時まで残ってから告白すると絶対成功するって伝説、私は信じるよ!」 「はいはい、口に食べ物入ってる時にしゃべらないでね。行儀悪いよ」 ノリわるいなあ… 「ほら、早く弁当食べて準備に参加しようよ!」 「せかさないでよ。ゆいは本当にいつも元気だね」 それが取り柄だからね。自分のことはちゃんとわかってるつもりだよ。 「ごちそうさま。さあ、準備に参加しようか」 彼女は衣装係なので家庭科室に向かっていった。私はぶきっちょだから衣装は無理なので教室の飾り付け。 もちろん成実くんも飾り付け係。 「小早川、そっちの端持って」 「ま、まかせてよ成実くん!」 初めての共同作業…なんちて。 だいたい成実くんとはまだ仲良いクラスメート止まりだよ。 結婚だなんて… 「なあ、小早川」 「ふわっ!なんだい?」 「きよたかでいいよ。友達はみんなそう呼ぶからさ」 ホワッツ?ホントに?そそそそんな仲良く呼んでよろしいの!? 「なんだかさ…小早川って友達みたいにとっつきやすいからさ」 友達。友達。素晴らしい響きだね。 友達。友達。友達止まり。 「……おい!小早川、小早川!」 「へ?」 間抜けな声が口から漏れた。何? 「絵の具…着いてる」 な…な…なんてこったい! 飾りの墓石に塗ってあった絵の具はまだ生乾きで、うっかりしていた私の制服に赤がべっとり。 「うわ、うわわわわ!」 「落ち着いて落ち着いて、乾く前に洗ってきなよ。一人でなんとかするからさ」 「ご、ごめん!よろしく!」 女子トイレの流しで制服をばちゃばちゃ洗いながらため息。 なにしてんだ私。 ぼやぼやして足引っ張っちゃったじゃないの。 だいたい制服はきれいになったけど私の心はすっきりしないな…… 廊下の雨具掛けにまだ濡れた制服をかけて教室に戻った。 やっぱジャージのほうが動きやすいね。 スカートめくれるの気にしなくていいし。男子はいいなー、制服もズボンで。 外はあいかわらずの雨降りだ。時間は五時を回っている。 教室に戻らなきゃね! 「ごめんお待たせ!何か手伝えることある?」 元気に振る舞わなきゃ私じゃないよ!元気出せ!小早川ゆいっ! 「もう準備はほとんど終わったよ」 へこむ。チャリのカゴが歪んだ時よりへこんだ。 「大丈夫、小早川は十分役に立ったよ!」 ああ、こうゆう優しいところが大好きだよきよたかくん。 でもあなたにとって私は友達止まりなんだよね…… 「それよりさ、これから打ち上げやるんだけど小早川も参加しないか?」 待ってました!ここからが正念場だよ! あれ?PHSが鳴ってる。 『もしもし、ゆい?ゆたかが熱出したの。ちょっと薬局で薬買ってきてくれない?ちょうど切れてるの』 妹のピーンチ!すぐ行くよ!ゆたか! 「えーっと…電話…終わった?どうするの、打ち上げ?」 あ、きよたかくん。 …どうしよう… きよたかくんは好きだけどさ…ゆたかも大事だよね…… どうしよう…どうしよう… 「ごめん、今日はすぐ帰らなきゃいけない用事があるんだ……」 きよたかくんの寂しそうな顔が頭から離れなかった。 ごめんね…付き合い悪くて。 告白は…無理だね。制服は乾いてないからジャージで下校だ。 雨は私のブルーな気持ちにお似合いだった。 行きつけの薬局で薬を買ってそそくさと帰宅しよう。濡れる雨だね…傘をさしていても靴とかぐしょぐしょだ。 「ただいま!ゆたか、薬買ってきたよー」 うーんやっぱりゆたかはかわいいね!きよたかくんなんかどうでもよくなりそうだよ。 そうだよ…どうでも…いいんだよ…… 「お姉ちゃんありがとう……お姉ちゃん?」 「なんでもないよーゆたか!ゆい姉さんはくよくよしないからね!」 「お姉ちゃん…泣きそうだよ…?」 見抜かれてるのか。まだまだだね私も…… 「お姉ちゃん…何か我慢してるんでしょ?私のせいで…」 「気にしなくていいよーゆたか。私はゆたかのお姉ちゃんなんだからね!」 「お姉ちゃん。私は大丈夫だよ。お薬もあるし、お母さんもいるし。お姉ちゃんのしたいことをして?私からのお願い」 お願いか。お願いね。 ゆたか。ほんっとにいい子だね。ごめんね。身勝手なお姉ちゃんで。 「ちょっと学校に制服とってくるね!」 降りしきる雨の中猛ダッシュだ!傘なんかいらないさ! 学校は灯りがほとんど消えていた。もうみんな帰っちゃったんだね…… どの教室も準備を終えて無人。光るのは緑の非常灯のみ。 だと思ってた。 「……びっくりだ」 私達の教室にだけ灯りが灯っている。蛍光灯の無機質な光が暗い廊下にまぶしい。 「よっ。遅かったな」 きよたかくん。 待っててくれたんだ。 「制服置いて帰ったからさ。戻ってくると思って」 すっかり乾いた制服を手渡された。そして、急にきよたかくんの目が真剣になる。 「それに、小早川に伝えたいことがある」 私は黙って次の言葉を待った。 その形のいい唇は、のど仏のあるのどは、 それなりに厚みのある男らしい胸は、 何を口にするのか。 「明日、よければ一緒にあちこち回らないか?」 「…友達として?」 「いや。友達としてじゃなくて……彼女として」 腕時計の針は、七時を指していた。 舞い上がったその晩は眠れなくて… 私にとって一番長い夜になった。
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『バトル・ロワイヤル』会場地下ーーーそこにはりめぐらされたトンネル内部を、一本の列車が疾走している。 永遠に続くかと思われるようなトンネルの暗闇を引き裂き、軽やかな金属音を立てて電車は駅に到着した。 『---サンタ・ルチア駅、サンタ・ルチア駅です~。お降りの際は足元に注意してお忘れ物のないように……』 無機質な音声が響き渡るなか、三つの人影がホームに降り立った。 「ちょッ……これ暗ッ!?つーか寒ッ!?」 人影の一つが大声をあげた。 そう、このサンタ・ルチア駅(地下鉄)非常灯の一つすら灯っていない真っ暗闇なのである、ついでに震えあがるほど寒い。 この状態は、つい先ほど川尻早人がヴァニラ・アイスと死闘を繰り広げたことが原因なのだが 大声を上げた人影ーーー音石明にそのような事がわかるはずもなかった。 「うるさいぞ、貴様。誰かがこの上に潜んでいたらどうする。」 自分のスタンドで、音石の口を塞ぎながら横に降り立ったディアボロが言う 彼が着ている、ペイズリー柄に編みあげられた網の様な服は、音石以上に露出が高かったが 体を寒さで震え上がらせている様子はない。これが帝王の貫録というものなのだろうか、………ちょっと違う気もする。 「ディアボロくん、ワシのスタンドなら調べられるぞい」 ディアボロに肩をかしてもらっていたジョセフが言う、カーズによって傷つけられた目と鼻はまだ回復していないようだ ジョセフはその場にしゃがみこむと地面に手を押し付け、炎症を起こしている瞳を閉じた。 その動きに答えるように、ジョセフの腕から紫色の茨が出現する 「『隠者の紫』!この上に生物がいるか調べろ!」 『隠者の紫』はザワリとその体をゆらめかせると、壁をつたって蔦を伸ばしてゆく 「どうだ?ジョセフ」 「ふむ・・・、階段の上で待ち伏せ。とかは、なさそうじゃのう」 ディアボロは「そうか」とうなずくと、いまだ口をふさがれたままジタバタしている音石の方を見る その視線に気づいた音石は、蛇に睨まれた蛙のようにビクッと動きを止める (こッ・・・怖えーーーーよ!!とりあえず俺の正体をばらさないでくれるとは約束してくれたけど・・・ お願いだから俺を危険にさらしたりしないでくれよオオオオオオオ!たのむぜ!!) 音石が期待を込めた目でディアボロの方を見つめなおすと 向こうもその視線の意味を悟ったのか、こちらに向かってうなずく。 音石がそれにほっとしたのもつかの間 「じゃあ、こいつを斥候としてこの上に行かせるか」 (ちょっとオオオオーーーーーッ!?) 全然、察していなかった。現実は非情である。 再びジダバタし始めた音石を見やりながらディアボロは冷静に言う 「なにか言いたいことがありそうだから一つ言っておく、俺は手負いのジョセフを守りながら移動しなければならない それと俺はあまり自分の手の内は知られたくないのだが、これだけは言っておく。 俺のスタンドは近距離タイプだ。 俺が斥候に向かうより、遠距離まで移動できるお前のスタンドの方が向いている。 俺達が今一番にすべきことは、ジョセフが回復するまでの時間を確保できる場所を見つけることだ。 ここでゆっくりしていれば、あのカーズとかいう男も追いかけてくるだろう ぼやぼやしている暇なんて俺達にはない。わかったか?」 よどみなく話し終えると、ディアボロはジョセフに向かってこれでいいか、と尋ねる 「ああ、ワシはそれでかまわんよ」 答えるジョセフの声には覇気が無い、笑ってはいるが、無理をしているのがバレバレだ 妻に子供に友人に師の訃報は彼の心に相当なダメージを負わせたようだ。 普通の人間ならばこの様子に同情し、涙の一つでも浮かべるだろうが あいにくここにいるのはビビリのヘタレと、悪魔の名を持つ帝王だけであった。 「それと後もう一つ」 ディアボロがこちらに振り向く 「なッ・・・なんでしょうカ?」 まだ何かあるのかと、音石の声はおもわず声が裏返ってしまった その様子に頓着することなく帝王は言う 「逃げようとする素振りを少しでも見せてみろ・・・・・・・・・・・・・・・ちぎるぞ」 (どこをッ!?) とは怖くて聞けなかった、指とかじゃなくて股間に付いてるアレだったたらひどすぎる。 音石は頭をガクガクと縦に振ることで肯定の意を示した。 * * おばけ屋敷もダッシュで逃げ出す大惨状。 非常灯から非常灯へと『レッド・ホット・チリペッパー』を移動させる音石の頭をそのフレーズがよぎる。 もっとも本当のおばけ屋敷と違うのは、目に飛び込んでくる血の手形は血糊ではなく本物だし 転がってるのは人形ではなく、死体である。ついでに構内に漂う死臭もおばけ屋敷では体験出来ないものである (怖ぇーーよ!メチャ怖ぇーーーーーーーーーーよッ!!) 思わず涙目になる音石の傍に『キング・クリムゾン』が出現する 「何かわかったか」 「うおッ!?いきなり背後に立つなよ! 心臓に悪ッ・・・いや何でもないですその手を降ろして下さい千切らないデ」 荒れた息をととのえ、音石は報告する 「と・・・とりあえず、構内に人はいないぜ。廊下に一つ、北側出口の方の花の中に子供の死体が二つある 停電してたのは、ここのブレーカーが誰かさんに電圧掛けまくられたせいで、落ちてたみたいだ・・・です」 「花の中、だと?」 問い返してきたディアボロに音石はうなずくと続ける 「ああ、誰かは知らねえが子供の死体の周りに花を置いてったみてぇなんだ。手も組まされてたし。 後、その子供の死体の傍にデイパックが三つ置いてあった」 「デイパックが三つ・・・?どういうことだ、二つの死体ならバックも二つのはずだが。 よし、ジョセフが回復しだいそれを回収する。お前は引き続き構内の探索を行え、外には出るなよ。 ちょっとでも怪しいと思ったら、すぐ俺のいるトイレまで戻って来い。わかったな?」 音石が頷くのを確認すると、ディアボロは元来た道を引き返していった ジョセフが目を洗う場所を見つけたとはいえ、手負いの人間を一人残しているのは不安なのだろう もっとも、その不安はジョセフの体を気遣ったものではなく、自身の保身のためなのだが。 音石はディアボロが自分の目が届かない距離まで去ったのを確認すると、大きく息を吐いた。 きびきびと仕切ってくれるのは良いのだが、あの魚の死んだような眼は怖い。 人なんてダース単位で殺してそうな目だ。音石はぶるっと体を震わせた (あいつに付いてゆくのも怖い、かといって逃げれるとも思えない。だったら、いっそのこと殺すか?) 一端はステルスマーダーになろうと決めた身でもある 音石はちらりと『レッド・ホット・チリペッパー』を見る、体色はそろそろ黄色になろうかという所だった。 黄色になるまで回復できればディアボロとも対等に渡り合えるだろうか 天井の非常灯の電力だけでは足りないだろう、ディアボロからはやめろと言われたが やはり外に出るしか電力を供給するしかない。 (グダグダ悩んでてもしょうがねぇ、俺の『レッド・ホット・チリペッパー』は最強なんだ!やってやるぜ!!) 『レッド・ホット・チリペッパー』もその意思をくみ取ったのかこちらに向かって来る。 よしッ、と気合を入れると音石は出口に向かって歩き始めた (でも、やっぱ怖いからスタンドだけ外に出そう……) 音石明19歳。ビビリの彼のマーダー歴はまだ始まったばかりである。 * * えらくない、ぜぇ~んぜんえらくない。 俺はバイク(ハーレーだかベスパだかは知らねぇぜ?俺はバイクにくわしくないんだ)を走らせながら一人ごこちる いくら進んでも見えてくるのは木ばかりで、追いかけていたはずの女の姿は見あたらない。 どう考えても見失っています、本当にありがとうございました。 数時間前に、あの女を探すのに役に立つものはないかとバックをあさったら 地面に落ちた紙の中からいきなりバイクが飛び出してきやがったんだ、携帯電話もこんな風に入ってたのかねぇ~? あんとき、俺はまだ運に見放されていないと思ったんだがねぇ~現実は非情ってやつか。ちくしょう。 俺は木の影にバイクを止め、当たりを見回した。どうやら森を抜けきったらしい。 目線の先には駅らしき建造物と線路が見える、俺は鉄塔からずっと南下してきたはずだから ここは、H-3「サンタ・ルチア駅」か?ずいぶんと遠くまできちまったもんだぜぇ~ ん?なんか今電灯のあたりに何かいなかったか~?あれは……スタンド? 動きからして電灯から電気をねこばばしようって根胆かぁ~?わざわざえらいねぇ~ どうやら入口に立ってる髪がウザイ男が本体らしいな、俺の姿には気がついていないらしい こっちは女見失ってイライラしてんだ、お前には悪いが俺のストレス発散につきあってもらうぜぇ~ ミスタとエリナの時のようなヘマはしねぇからよぅ~、覚悟しろよ~? アレッシーの影はぐにゃりと歪むとその姿を音石に向かって伸ばしはじめた * * 「よし、こいこいこいこいこいこいこい・・・キターーーーーーーーーー!!」 音石は思わずガッツポーズをしてしまった、この「バトルロワイヤル」に放り込まれてからはや7時間。 ようやく『レッド・ホット・チリペッパー』は本来の姿を取り戻したのであった ひさしぶりに黄色に輝く自分のスタンドを見ると感慨深いものがある あ、涙出てきた。 「お喜びの所わざわざ悪いねぇ~」 「誰だ!?」 いきなり話しかけられて音石は飛び上がった、視線の先にはニヤニヤ笑いを浮かべた小男が立っていた 音石は警戒して『レッド・ホット・チリペッパー』を小男の近くの電灯に潜むように指示を飛ばす。 この距離ならば確実に電線の中に引きずり込めるだろう だが、その事を知ってか知らずか小男は話をやめない 「私……自分よりも弱い奴をを見ると………… なんとういか……その…………フフ、いじめてストレスを発散させたくなるんですよねぇ~ んでもって、ある女を追いかけてたんですけど見失っちまいましてねぇ~今すっごくイライラしてるんですよぉ これ以上イライラを我慢すると俺の精神衛生上とても悪いんで、あなたに付き合っていただきたいんですよぉ~」 「はぁ!?ふざけんな、なんで俺がお前のそんなアホな趣味に付き合わなきゃいけないんだ ってゆーか、お前は俺が弱いとでも言いたいのかよ、えぇ!?オイ! 『レッド・ホット・チリペッパー』めんどくせぇからコイツを電線に引きずり込め!!」 そう叫びながら人差し指を小男に突きつける いつもなら、指示を飛ばした時点で勝負はついているのだが。 「……なんで出てこない!?もう一度!『レッド・ホット・チリペッパー』!」 もう一度スタンドを召喚しようとして、音石明は自身の異変に気づいた。 体型が、子供になっている。 相手を指したままの己の手は、いつもの半分くらいのサイズになってしまっていた (こんな手じゃギターの弦を抑えることができねーじゃねぇか!大変なのはそっちじゃないだろ俺!! なんか知らない内に、こいつのスタンド攻撃をくらっちまってたのか ちくしょう、スタンドさえ使えりゃこんな男ボッコボコに出来んのによー! この状況じゃ戦況は不利だっ! 38計逃げるにしかずってやつで、いったんあいつらのいるトイレまで引き返す!) 音石はきびすを返すと、ディアボロ達の方へと走り出す 小さな子供の体格では自分の服がブカブカしすぎていて、走りにくいことこの上ない 「うわっ!?」 自分の喉から、まだ変声期を迎えていない声が飛び出したことにも驚いたが それよりも何も無いところから、足に殴られたような衝撃が走ったことのほうが重要だった 足に走る激痛に、子供の体格の音石はあっけなく転んでしまう。 足元を見れば自分の影の他に、棒を持った土偶のような影が目に映る。 「ミスタとエリナの時失敗したのはよぉ~近づき過ぎたからなんだよなぁ~ こうやって離れた所からいじめれば大丈夫ってわけだぁ、ん~俺ってえらいねぇ~~~」 アレッシーの持つ木の棒が何もない空間に振り下ろされた その動きと同じように土偶のような影が音石の影に向かって棒を振り下ろす どうやらアレッシーの影が自分の影に攻撃した箇所がダメージを受けるようだ 「ギャッ!?」 音石は痛みに体を歪めた、もう体は5歳児ほどの姿になってしまっている 子供の姿では、体を縮めて与えられる痛みに耐えるしか方法がなかった (もうだめだ……俺ここで死んじゃうんだ……! 死ぬ前に……もう一度ギターを……引きたかった……な……) 前にも一度同じことを思った気がしたが、思考も体の変化に引きずられているのか、上手く考えがまとまらない 再度振り上げられた棒に音石が観念して、ぎゅっと目をつぶったその時 「『隠者の紫』!」 ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ 紫色の茨が傷ついた音石の体を包み込むと、ジョセフ達の方へと引き寄せ、ディアボロが両手でキャッチする 小さな体を受け止めたディアボロは、あることに気づき目を見開いた 「この服……信じられんが、この少年は俺達と共に行動していた男のようだぞ。ジョセフ」 「フム、するとこの男のスタンドは『影で触れた相手を子供化する程度の能力』といったところかのぉ そういえば、どこかでそんな話を聞いた気が……」 傷ついた音石を挟み冷静に推理をくりひろげる男達に対し、音石を攻撃していた男はジョセフの顔を見ると驚愕する 「ゲェッ!?貴様はジョセフ・ジョースターッ!?」 音石の怪我の具合を見ていたディアボロはひょいとジョセフの方に顔を向けて尋ねる 「知り合いか?」 「いや……、でもワシの顔を知っとるスタンド使い……相手を子供にする能力………… もしかして君は、承太郎とポルナレフが戦ったという『アレッシー』かね?」 「わかってんなら話は早ぇ、手前ぇの孫にブッ飛ばされたこの恨みをここではらしてやるぜぇ~~~~ッ!!」 その宣言と共にアレッシーの影が大きく歪んだかと思うと、こちらに向かってその形を伸ばしてくる 「ディアボロくん、君はその子を連れて奥まで戻ってくれ。ここはワシが引き受ける」 「無茶だジョセフ、あんたはまだ目が治りきっていないんだぞ。 それに今のお前は、身内の死で冷静な判断がしづらくなっている。 今のあんたじゃ死に向かって突き進むようなものだ、俺がこいつの相手をする。」 「…………すまない、ディアボロ君」 「礼はいい、さっさと行ってくれ」 ジョセフはアレッシーに向かって拳をかまえるディアボロに背を向けると、 ぐったりとした音石を担ぎあげ駅の奥に向かって走り出す。 「させるかよォ~~~ッ!『セト神』こいつら全員子供に変えろッ!!」 アレッシーは『セト神』を操ると、ディアボロの方へと路線を変更する この距離なら確実に取れる、目の前の男から一つずつつぶしてゆける、はずだった。 「!?」 目の前からディアボロの姿が消えている。 どこに行ったと辺りを見回そうとするアレッシーの首を何者かが押さえつける (『キング・クリムゾン』、俺以外の時間を5秒だけすっとばした 俺がお前の背後に回り込んだという経過は無くなり、俺がお前の背後に立ったという結果だけが残る) ディアボロはアレッシーの首をしめあげながら話しかける、 「少しでも妙な動きをしてみろ、命はないと思え」 「ッ!?な何ッ!?お前、瞬間移動するスタンドか!?」 「答える必要はない、それに質問するのは俺の方だ」 だが、自分のペースで話を進めようとするディアボロを遮るようにアレッシーはニヤッと笑う 「いひひぃ~~~?そんな事言ってていいのかなぁ~~~~~ッ!?」 その声と共にぐぉっという、ジョセフの悲鳴が奥から聞こえてくる。 下を見れば自分の方に向かっていたはずの影から枝分かれするように、ジョセフの方へと影が伸びている ディアボロに向かって出した影はダミーで、ジョセフの方にさし向けたのが本命だったのだ アレッシーも、ディアボロがジョセフの声に気を取られた隙に『キング・クリムゾン』の腕から脱出している ディアボロも再び『キング・クリムゾン』を発動させ、時を飛ばそうとするが 一度「時飛ばし」を行ってから、まだ時間がたってないため発動できない。 『キング・クリムゾン』の腕は空を切ったのみに終わった。 ディアボロはチッと舌うちをする、『キング・クリムゾン』の能力を知られないためにジョセフを引き離したのに、これでは逆効果だ 『ブラックサバス』のような影に潜んで移動するスタンドを、なまじ知っていたがために、 このスタンドも似たようなものだろう、と知らず知らずの内に高をくくって油断していた、自分の完全なミスである。 ディアボロは額に意識を集中する、『キング・クリムゾン』が再発動できる時間が始まったのだ (だが、あせることは無い。いつも通り『エピタフ』で未来を見て 俺に都合の悪い未来だけを『キング・クリムゾン』で消し飛ばせ……ッ!?) ディアボロは目を見開いた。 『エピタフ』に映る映像にディアボロは愕然とする かつて栄光の座を欲しいままにしていた頃は、何千回いや何万回と見ていた姿だった。 自分が唯一心を許した参謀、可愛いい我が半身 (……ドッピオッ!?いや違う、あれはこいつのスタンドで子供化した俺の未来の姿だ この映像が実際に起こってしまう前に『キング・クリムゾン』を発動しないと!) さてここで一つ疑問を皆さんに投げかけてみよう、「スタンドは原則、一人一つまで」 だがここにいるディアボロは『エピタフ』と『キング・クリムゾン』二つの能力を扱うことができる、 それは一体どうしてなのか? 答えは簡単である。 『エピタフ』と『キング・クリムゾン』が同一のスタンドだからだ 『エピタフ』が拳を構える動作、『キング・クリムゾン』が拳をくりだす動作と書けば伝わりやすいだろうか だが、この状況においてディアボロの拳は止まったままである、 ひさしぶりに見たドッピオの姿は、 『キング・クリムゾン』を発動するのにタイムラグを生じさせるほどの衝撃を帝王に与えたのだった そう拳はそのままでは何も出来ない、振り下ろさねば意味を持たないのだからーーー 「ぐあッ!?」 次の瞬間、エピタフで見た姿と寸分たがわぬ形で横たわるディアボロがいた。 『キング・クリムゾン』に呼びかけても、内から消えてしまったように反応が無い 子供化は完全に自分の身におこっていしまったようだ 「ん~~~~、やっぱりというかその格好はそっちの姿の方が可愛いねぇ~~~」 大人のディアボロが着ていると、ただの痛いおっさんで終わるこの網のような服も 少年の姿の彼が着ると何だか、いかがわしい物に見えてくるのは何故だろう、露出度のせいか。 下卑た笑みを浮かべ舌舐めづりをするアレッシーに、先ほどとは別の意味で身の危険を感じてディアボロは後ずさる いくら帝王とて人間である、この体中を舐めまわされるような視線に、生理的な嫌悪感で涙目になるのは仕方のないことであろう (また俺は死ぬ・・・のか?) 今回は死ぬまでの時間がいつもより長かった、それだけのことだったのだ。 この地獄から抜け出せると思わせておいて、ドン底まで落とし込む。今回はそういう趣向だったのだろう そう考えると体中から力が抜けてゆく 何回も殺されいれば、これから一体どんな死に方をするのか大体想像がついてくる。 どうせ何をやっても死ぬのだ、諦めという水たまりはディアボロの心を毒のようにじんわりと蝕んでゆく (嬲られて、殺される。か・・・『今回』は長い死に方ってわけか。『次』はもっと楽な死に方だといいーー) その時だった。 「波紋疾走!!」 メ メ タ ァ! 独特の効果音と共に、結構分厚いはずの駅の壁がクッキーでも砕くように吹き飛ぶ もうもうと立ち込める土煙の中、男の人影が浮かびあがった。 子供サイズの人影ではない、まぎれもなく大人の影だ。 「何ィ~~!?ジョセフ・ジョースター!?手前ぇ俺の攻撃をくらったはずだぞ~~!?」 一体どうしてなのか あの時確実に『セト神』をくらっていたはずなのにジョセフの姿が変わらないのは何故か? アレッシーはあることに、はっと気づき大声を上げた。 「しまった……ジジィだから一回影に触ったくらいじゃ餓鬼になんなかったのかァ~~~~~!?」 つまり、そういうことであった 今のジョセフの外見は白髪ではなく黒々とした髪をたくわえた筋骨逞しい波紋戦士の姿である。 限界まで鍛え抜かれたギリシャ彫刻を思わせる体からは、ディアボロでさえたじろぐほどのビリビリとした殺気をはなっている たびかさなる身内の死に、先ほどの攻撃にこの状況。温和な彼でもさすがにプッツンしたという所か 20代ほどに若返ったジョセフと10代まで若返ったディアボロ、3歳児くらいの音石 そしてこの事態の元凶であるアレッシーが対峙する ジョセフには二つの選択肢がある、スタンドが使えない今、波紋のみでアレッシーに挑むのか それともディアボロの保護を優先し、体制を立て直すのか 一方のアレッシーは距離を取って様子をうかがうのか、それとも勢いにまかせて攻撃をしかけるのか 彼らの選択とは? 「逃げるんだよォ~~~~~~ッ!!」 アレッシーは、あっけにとられるジョセフとディアボロを尻目に森に向かって全力疾走する えりまきトカゲも「まいりました」と頭をさげるような見事な逃げっぷりであった 一呼吸おいてドルンドルンとエンジンを噴かすような音が聞こえてくる、どうやら逃走用にバイクを隠していたらしい 「HolyShit!(なんてこった)あいつ足を持っていやがったのか、早く追いかけないと……ッ!」 森に向かって足を踏み出したジョセフだったが、3歩も歩かない内に地面に崩れ落ちる 劇薬とアレッシーによる怪我は三半規管にまでダメージを与えているようだ 地面に体がつかないようにジョセフの体を支えたディアボロは 体が若返った事により精神まで影響を受けているのか、若者のようにいきりたつジョセフをなだめる 「待てジョセフこっちは丸腰だ、今から走ってもあいつに追いつけるとは限らない お前と同行者の男の怪我もある、しばらくはこの駅にとどまって籠城したほうがいい」 「だが…………ウッ!糞ったれ、また目が痛みだしてきやがった……」 ジョセフの肩を支え直すとディアボロは構内へと歩き始める、10代まで縮んでしまった自分の身長では 2メートル近いジョセフの体を支えるには少しキツイものがある。 (今のスタンドが使えない状況で無理に追いかけるよりも あの男が自滅するこで俺達のスタンド効果が解けるのを待ったほうがいい、 あの様子なら誰彼かまわず襲いかかりそうだしな ジョセフも手負いとは言え妙な技は使えるようだし 無理に危険な場所に身を投じるより、ここに籠城したほうが危機は少ない) 確かに、ディアボロの読みどおり 今のアレッシーには、体になんらかの異常があると「セト神」の効果が消える制限がかかっている ここにとどまるという彼の判断は適切(ベター)だと言えるだろう、しかし 「………………。」 いまだこの『バトル・ロワイヤル』には60人ちかい参加者が残っているのだ 今後のことを考えると最良(ベスト)の選択であるとはいえないかもしれない ディアボロは駅のガラスに映る自分の顔を見つめる。 そばかすのういた顔、柔らかな瞳、柔和と呼ぶよりは臆病そうな顔立ち 「ドッピオ……。」 「うー?」 いつの間にかトコトコと傍にやってきた音石が、自分が呼ばれたのかとこちらの顔を見上げてきた お前のことじゃないよ、と頭をなでてやると安心したのか音石は甘えるようにジーンズにしがみついてきた そうやってると、まぎれもなく3歳児である。 音石の場合、子供に戻されすぎてスタンドどころか記憶まで失っているのかもしれない (ドッピオ、今お前が俺の中にいてくれたら、この選択に自信が持てるのか? 俺が絶頂に君臨していた頃は、何があっても二人で乗り越えてきた 「『光と影』『表と裏』『二重の人格』その秘密があるかぎり俺の栄華は廃れる事は無い」 サルディニアで会った占い師が言ったとうりになった 「私」はお前がいない限り絶頂に返り咲くことは出来ないという事なのか、ドッピオ?、 今の俺はこの選択で栄光をつかむよりも、お前が傍にいてくれることのほうがよっぽど嬉しいのだがな……) 朝の光に照らし出される構内に3人の男達が佇むーーーーーー実際には、気絶中の川尻早人を入れて4人なのだが。 おのおのの思惑をふくんだ彼らの顔を見つめるように、ガラスに映ったドッピオの顔が少しだけ微笑んだような気がした 【H-3サンタ・ルチア南側駅前広場/1日目 朝7時】 【チキン三羽~たまごクラブ、ひよこクラブ、こっこクラブ~】 【ディアボロ】 [時間軸]:レクイエムジョルノに殺された後 [状態]:外見が15歳(ドッピオ似)。目が死んでる。強い恐怖 。 セト神の効果によりスタンドが使えなくなってます [装備]:なし [道具]:支給品一式 [思考・状況] 基本行動方針:とにかく生き残り平穏な生活を送る。 0. とりあえず、サンタルチア駅で籠城する、ひきこもり乙とか言わないように 1.ジョルノには絶対殺されたくない。普通に死ねるならそれでもいいや。苦しまないように殺して欲しい。 2.自分の顔と過去の二つを知っている人物は始末する。ボロは絶対に出さない。 3.とりあえずはジョセフに協力。でもジョセフのへたれ具合によって対応を変える。捨て駒も視野に。 4.チョコラータ、電車内の謎の攻撃、謎の男(カーズ)怖いよ、キモイよ…… 5.ジョルノや暗殺チーム、チョコラータとジョセフ達を上手く敵対させたい。ぼろが出そうだから怖いけど…… 6. 早人の傍にあるデイパックを回収したい [備考] ※音石明の本名とスタンドを知りましたが、ジョセフに話すつもりはありません。それを取引に協力させたようです。 ※セト神のせいで『キング・クリムゾン』と『エピタフ』が使えなくなっています 【ジョセフ・ジョースター】 [時間軸]:DIO討伐後、日本に帰る飛行機の中。 [状態]:外見が2部終了時。胸に浅い傷(止血済) 目と鼻につらい炎症(失明はしない程度)。深い悲しみ [装備]:なし [道具]:支給品一式 [思考・状況] 深い悲しみ。立ち直れそうで立ち直れない 基本行動方針:必ず生きて脱出する。打倒アラキ! 0.怪我がなおるまで駅に籠城する 1.承太郎、花京院辺りと合流して自分の推測について話し合いたい。 2.ジョージ、ジョナサン、ツェペリ、エリナ、スピードワゴン、徐倫は見つけ次第保護する。 3.殺し合いに乗っていない参加者達も護る。或いは協力。機械に詳しい人間がいたら首輪の内部構造を依頼。 4.ディオや柱の男達は見逃せない。偽者の東方仗助を警戒?(攻撃したのは彼?ディアボロ君に任せるか)。 5.ディアボロに若干の信頼。でも自殺をしそうで怖い。 [備考] ※参加者達は時代を超えて集められたのでは?と推測しています(ディアボロにはまだ話していません) ※首輪を『隠者の紫』で調べましたが機械には疎く詳しい事がわかりません。分かった事といえば隙間がまったく無い事くらい。 ※1で挙げた面子はジョセフが聡明と判断した面子なだけで別にポルナレフが信用できないというわけではありません。 ※波紋の呼吸を絶えず行っています。その影響である程度の運動なら息ひとつ乱れません。 ディ・ス・コの薬品の負傷はいずれ治るようです。いつごろかはわかりません。 ※セト神のせいで『隠者の紫』が使えなくなっています、波紋は問題なく使えます 【音石明】 [時間軸] チリ・ペッパーが海に落ちた直後 [スタンド]:レッド・ホット・チリペッパー(黄色です) [状態] 幼児化(3歳程度)、体中に打撲の跡(中) [装備] なし [道具] 基本支給品、不明支給品 ×1 [思考・状況]基本行動方針:優勝狙い 0.うー? ↑現在幼児化しているため、このくらいのことしか考えられません 幼児化が解除された場合の思考は下になります 1.とりあえずスタンドが黄色になって良かった……! 2. とりあえず仲間(ディアボロ)ができたのは良かった。でも状況変わってない……。 3.もしできたら様子を見てディアボロ達をを殺……せるのかな……この俺に……。 4.サンタナ怖いよサンタナ 5.電線が所々繋がっていないのに電気が流れているこの町は何なんだッ!? あやしすぎて怖えー! [備考] ※バトルロワイアルの会場には電気は通っているようです。 しかし様々な時代の土地が無理やり合体しているために、電線がつながっていなかったりと不思議な状態になっているようです。 スタンドが電線に潜ったら、どうなるかわかりません。(音石は電線から放電された電気を吸収しただけです) ※ミセス・ロビンスンをスタンド使いだと思っています ※セト神のせいで『レッド・ホット・チリペッパー』が使えなくなってます 【アレッシー】 [スタンド] 『セト神』 [時間軸] はるかかなたにフッ飛ばされて再起不能した後 [状態] 顔面に殴られた痕(ミスタからとエリナからの分)、背中に刺された傷(浅い)、地面を転がり蹴られたのでドロドロ、 片腕に少女エリナの歯型、足のつま先に痛み、顔中鼻血の跡、貧血気味、 [装備] メローネのバイク [道具] カップラーメン(アレッシーは毒入りだと勘違いしています)、携帯電話、メローネのバイク、支給品一式。 [思考・状況] 基本行動方針 ゲームに乗るつもりは今のところないが、明らかに自分よりも弱い奴がいたら虐めてスカッとしたい 1. とりあえずなんかヤバそうだから逃げる! 2.ダービーを抱えた女と合流……できたらいいなぁ、信頼を得て保護を受ける。 鉄塔近くの奴らとヘリは無視だ! 3.その後、携帯電話を使わせる。 4.でも本当はいじめまくりたくて仕方が無い。 5.上手く不意を突ける機会があればミスタとエリナとジョセフとディアボロと音石に報復する [備考] ※セト神の持続力が弱体化しているようです。アレッシーが気絶しなくても、アレッシーに何らかの異常があれば子供化は解除されるようです。 ※その制限に薄々気がつきはじめています、そのためやや警戒気味 ちょっとでもヤバイと感じたら逃走するようです ※『名に棲む鬼』における鉄塔の戦いの一部を目撃しました。会話は聞き取れていません。 ダービーが投下された瞬間を見逃し、最初に目にしたのはF・Fに抱えられた治療後の姿だったため彼がカビに感染していたことを知りません。 また上空の戦いは見ておらず、プッチ神父とサーレーの姿もよく見えていませんでした。 ※ジョルノのスタンド能力を『触れたものを一定時間固定する』能力、F・Fのスタンド能力を『治療が可能な』能力 ディアボロのスタンド能力を『瞬間移動』する能力と認識しました。 エシディシに関してはスタンド能力がどういったものであるかイマイチ確信を持てていません。 ※ンドゥール、オインゴ、マライア、ダニエル・J・ダービー、ヴァニラ・アイスとはお互い面識がありますが、スタンド能力は把握していません。 ※アレッシーが何処に逃げていったかは次の作者様におまかせします ※川尻早人は北側出口入口にて気絶したままです ※サンタルチア駅は引き続き停電しています、あと寒い。 支給品説明* 【メローネのバイク】(燃料十分)(5部出典) 読んで字の如く、暗殺チーム所属のメローネ私物のバイク、アレッシーへの初期支給品 原作ではベイビィ・フェイスに乗り逃げされたり、ジョルノに燃やされたりと色々とついていない おい、メローネ。お前のバイク燃えてんぞ? 投下順で読む 前へ 戻る 次へ 時系列順で読む 前へ 戻る 次へ キャラを追って読む 104 イエスタディを聴きながら ジョセフ・ジョースター 131 今ここに生きる意味を(前編) 104 イエスタディを聴きながら ディアボロ 131 今ここに生きる意味を(前編) 104 イエスタディを聴きながら 音石明 131 今ここに生きる意味を(前編) 96 『ベスト』より『ベター』を アレッシー 131 今ここに生きる意味を(前編)
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Fiat Lux 肌寒さに目を覚ました風谷真魚は、自分が随分と狭いベッドに寝ていることに気づいて身を起こした。 ぼんやりとした灯りに気づき、瞼をこすりながら辺りを見回す。 レンガ風のタイルの敷き詰められた遊歩道の両脇には間口の広い建物が並んでいた。濃い紅色の花の群れを抱えたアザレアの鉢が、所々に篝火のように腰を据えている。 その穏やかな風景を突き崩す電子音に気づき、彼女は自分の腰掛けた場所に目を落とした。ビリジアンに塗られたベンチの上で、携帯電話が不満げに振えて彼女を呼ぶ。 おそるおそるそれを拾って開くと、場違いに明るい声が流れ出した。 あまりにも無惨で非現実的な、処刑の実況中継だった。 一連の放送が終わった後、冷えきった少女の手の中には何も映っていない携帯電話だけが残された。いまだに何が起こったのか実感が湧かず、呆然とベンチに座り込む。 吹き抜ける風が身を凍えさせた。春とはいえ、まだ陽が落ちれば気温は下がる。真魚は側に落ちていたデイパックを拾い上げ、どこか風をよけられる場所を見つけようと立ち上がった。 左右に連なる建物はどうやら何かの店らしい。探せば薄手のコートくらいは見つかるかも知れない。 いくつか先の扉が開いているのに気づくと、彼女は急いでその隙間から中に滑り込んだ。誰かに襲われる恐怖といったものは、彼女の頭にはなかった。 営業時間を終えたショッピングセンターの広い通路には、非常灯だけがぽつぽつと連なっている。三階建ての吹き抜けに革靴が床を鳴らす音が遠く響き、真魚自身を怯えさせた。柱の影に置かれた棕櫚の葉が、空調から吹き出す生暖かい風にせわしなく揺れる。 彼女は置き去りにされた売り出しのハンガーから、太い毛糸で編まれた丈の長いカーディガンを取って羽織った。屋内に入ったせいで寒さは感じなくなったが、暖かさに安堵する気持ちは残っている。 側のショーウィンドウに自分の姿を映して確認すると、首元につけられた見慣れない銀の輪が淡い照明に光った。 そのままギャラリーの奥に向かって歩を進めた彼女の目に、倒れたベンジャミンの鉢が映る。 彼女は特に考えるでもなく、それを起こそうと歩み寄った。 床に当たったせいで枝がいくつか折れ、白い飾り砂が床にこぼれている。鉢を起こし、手で床の砂を掬おうとした時、彼女はそれを見つけて思わず悲鳴を上げた。 そこにはCDの外径よりも僅かに大きいほどの、銀の輪が落ちていた。 少女の手が、ゆっくりと首筋に伸びる。指に触れる冷たい感触に改めて怯え、床に視線を落とす。 白い飾り砂は、それよりさらに白い色の灰にまみれている。それを眺めているだけで先ほど見せつけられた光景がまざまざとよみがえって来た。 誰かがここで,主催者の手で始末されたのだろうか。 愕然と膝をついたまま延ばした彼女の手が残された首輪に触れ――――。 二つの影の相対する光景が、意識に直接流れ込んで来る。 二人のライダーはいずれも青い瞳を薄明かりに輝かせていた。 黒いスーツの片方は灰色の鎧に包まれ、もう一方には黄色のラインが配されている。 彼女の知っているアギトやギルスに比べると人工的、むしろ機械的な印象すら受ける。 それだけに、彼女は恐怖を抱かずにはいられない。 彼らは互いにつかみ合い、剣を振るい、互いを敵と見なして戦っていた。 * * * 澤田亜希は携帯電話をポケットにねじ込んだ。 彼は他の参加者たちとは違い、強制的にこの島に連れて来られたわけではない。抗いがたい誘いを受けて自ら応じたのだ。 このゲームに勝てば、改めて正式にラッキークローバーの一員として認める。それがスマートブレインの示した条件だった。 与えられた道具を見るに、多少は優遇してくれようという意思も感じる。少なからず自分の働きに期待している部分もあるのだろう。 望む所だ。自分がもはや人間ではないことを世界に知らしめ,自分で噛み締めるのに、殺戮以上の方法があるだろうか。 他の者たちが昏睡状態のまま運ばれている船のデッキで,彼は寂然と鶴を折っていた。湿気を帯びた海風のせいか、紙がしとって折りづらい。それでも折り続けるのはおそらく感傷でしかないだろう。 幼いころの思い出も、折られた紙に封じて燃やしてしまえば訣別出来るーーーーそう信じるかのように作業を続けることそのものが、ただの子供じみたまじないと言ってもいい。 少年は折り上がった鶴を指に挟み、マッチを取り出して火をつけた。頭から翼まで赤い色に包まれた紙切れから手を離すと、それは残像を残して海面へと落ちて行った。 水に落ちる前に燃え尽きたのか、それとも燃え尽きる前に水に落ちたのかは、この暗闇ではわからない。 * * * スマートブレインの職員達が参加者を車に乗せて島の各所へと運び去る。誰をどこに置き去りにするかまでは彼にも知らされていなかった。全員が去ってから、ようやく彼も港に降りて歩き出す。 空を爪で抉ったような三日月はとうに西の水平線に沈み、今は星だけが墨色の空に瑕を残していた。 車が走り去った道路の一つに歩を進めながら、彼は軽く思いを巡らせる。 殺すのは誰でもいい。手近な標的から潰して行けばいいのだ。時間を置けば皆仲間を見つけ、守りを固めるようになるだろう。その前に一人ずつ息の根を止め、装備を回収して自分の戦力を強化する必要がある。 変身アイテム、強力な武器,役に立つ道具……スマートレディの言った『便利グッズ』がおおよそどのようなものであるかも、彼は聞いていた。具体的な名前や効果までは知らないが、集めれば集めるほど有利になるということは既に頭に入っている。 リゾートと言うだけあって小奇麗だが生活感の薄い町並みに、人の姿はない。本当の戦場ならばいくらも人がいて、何の罪もないのに戦火に巻き込まれて死んで行く。それを鑑みれば、ここを戦場に選んだスマートブレインのやり方はある意味人道的とも言えた。 オルフェノクが今更人の命を顧みることなど必要ないはずなのに。 そんな感傷などむしろ捨てたかった。捨ててこそ真の意味でオルフェノクになれる。そう自分を言い聞かせてきたのだ。 室外機の並ぶ建物の裏を歩きながら、彼は携帯を取り出して時刻を確認した。鮮血の遊戯の始まりを知らせる放送まで、あと十五分以上ある。 照明に照らされた目の前のアスファルトには、よほど急いでいたのか車が残した黒い轍があった。 運が良ければ、目覚める前の参加者を見つけ、手っ取り早く始末できるかもしれない。彼は開け放された搬入口から、ショッピングモールの中へと入って行った。 * * * 恐怖のあまりその場に座り込んでしまった真魚の身体に、何か柔らかいものが触れる。 悲鳴を上げて振り返ると、せっかく起こしたばかりのベンジャミンの鉢があおりを食らってひっくり返ってしまった。その向うに、置き去りにされたデイパックが目に入る。蓋は開けっ放しで汚れており、中身は半分ほどしか残っていないようだ。 おそるおそるそれに近づいて、中を覗き込もうとして指が触れた時、再び彼女の脳裏に昏い光景が流れ込んで来る。 黒いジャケットとコーデュロイのパンツに身を包んだ青年が、ゆったりとギャラリーを闊歩する姿。 と、顔を上げたその目が何かを見つけ、鋭く光る。 男の前にたたずむのは、暗灰色の服を纏った少年だった。緩やかな衣服のラインはその体型を覆い隠し、帽子の下に見え隠れする瞳はどこか暗い影を宿している。 少年は無言のまま、手の中に握った紙に火をつけた。人の姿をした紙切れは濁った炎に黒く縮れてゆく。 * * * 人気のないショウウインドーを、暗い色の影が悠然と横切ってゆく。服の色とは裏腹に、青年の醸し出す雰囲気は煌々とし、その表情に陰りはない。 その足音は、まるで己の居場所を知らしめすかのように、吹き抜けの天井に高らかに響いていた。 それが止まったのは、柱の影から姿を現した少年に気づいたからだ。 「何者だ」 穏やかだが芯の強さを露にした視線が、もの問うように少年を貫く。 少年は答える代わりに手を動かし、何かを握った。 それが折り紙だと解ったのは、少年が点した火が僅かに辺りを照らしたからだった。 手から離れた火の固まりが床の上に落ちる。 「そうか」 天道は一言そう呟いて、手を高く空に掲げた。 彼は天の道を行くもの。その道を阻む者がいれば、退けるのみ。 太陽を背に負う甲虫が、羽を鳴らして彼の元へと駆けつける。 その光を汚すかのように、足下の火が消えた。あとには黒いゴミ屑が心細く震えるのみだ。 広場に据えられた時計は、十一時五十分を示している。 * * * 真魚は脳裏に映る光景に恐怖を覚えて唇を噛んだ。 二つの影が互いに向きあっている。 一つは瞳に太陽を宿した孤高の男。もう一つは憂いに染まった手のうちに黒と黄色の携帯電話を隠した少年。 互いの死を求めるその手が動き、二つの人影を二つの異形へと変貌させる。 その場に現れた二人のライダーの名を、彼女はまだ知らない。ただぼんやりと見えるその姿だけが嫌でも恐れをかき立てた。目を閉じたところで意識に直接流れ込んで来るイメージが消えるはずもなく、彼女は顔を両手で覆って震える他ない。 * * * かしゃり、と軽く機械的な音が、空調のせいで乾いた空気を脆くも突き崩す。 「変身」 青年の静かな言葉をベルトが復唱し、しなやかな身体を銀の鎧で包み始めた。 その様子から目を離さぬまま、澤田はカイザフォンにコードを打ち込んだ。低くコマンドを囁き、ベルトに挿す。 電子音が、夜の闇に静かに鳴った。 冥い身を包み込む人工的で冷たい光を、天道は醒めた視線で見つめた。 「たとえ満月であっても、太陽の前ではかすむ。ましてや電球など、俺の前で輝けるはずはない」 「だったら、世界を夜にすればいい」 澤田は冷たく返した。おそらくそれは、彼自身への言葉だったろう。 彼は人として陽の光を浴びることを望んではいなかった。むしろ人に取って許されざるもの、死の闇に生きる者となった今、光を捨てなければ苦悩しか残らない。 本来ならばカイザのベルトすらどうでもよかった。彼がベルトを手にしたのは、ゲームのルールを知っていたからに過ぎない。加えて彼に渡されたこのベルトが、主催者側の思惑をはっきりと語っていたからだ。 人ならざるものとして、他の参加者を、殺せ――――と。 光を掲げる青年と闇に沈んだ少年。ともに天を頂かざる者たちの戦いの火蓋は切って落とされた。 二人のライダーが握る剣は、冷たい光をその刃に乗せて夜にきらめく。と、互いに退いて距離を取るや、得物は銃と化して互いに光弾を放つ。 アトリウムの磨りガラスに淡く映り込む暖色の非常灯は、戦士たちが点す残虐な輝きの前では子供騙しに過ぎなかった。 再び駆け寄って剣を振り抜き、一閃を受け止める。その単純な動作が幾度か繰り返されるうち、天道は徐々にカイザを追いつめるようになっていた。 素質で言えば人の進化系である澤田がそうそう劣るわけもない。だが慣れないカイザのベルトに加え、迫力の点で彼は明らかに圧倒されていた。 世界のすべてを守り、己の光で照らす。天道の信念は揺るぐことなく、その覚悟は巌より堅い。一方澤田はと言えば、己が人としての生を失った後ろめたさを、八つ当たりのように己の過去にぶつけ、残った感情を卑下しているに過ぎない。 互いの思いの確かさはあえて比べるべくもない。ゆえにその剣が宿す力にも自ずから差は現れる。 屈辱だった。カイザフォンへの入力を鮮やかな蹴りで遮られ、体勢を立て直す間もなく刃に追われて澤田は陳列棚の裏に身を隠した。 ゆっくりとした足取りで近づいて来る天道の踵が、置き去りにされたアタッシュケースを無造作に踏みつぶす。そこに刻まれたスマートブレインの社章は、ただの一歩であっけなくひしゃげた。 「この空の下に太陽が照らさないものはない。俺から逃げられるとは思わないほうがいい」 嘲る類の浮ついた感情はない。ただ静かに、諭すように。その声すらも相手を怯ませるだけの迫力を持っている。 圧倒的な格の違いを思い知らされ、澤田のはらわたは怒りに焼け付いた。だがその屈辱を刃に込める暇も与えず、天道の声が響く。 「キャストオフ」 静かな宣言とともに、銀の鎧が弾け飛ぶ。カイザは陳列棚ともども吹き飛ばされて床に転がった。耳元で陶器の砕ける高らかな音が鳴り、白い欠片が雪のように舞い落ちる。 * * * 首輪とともに残された光景に、真魚は全身が怖気だつのを感じた。 それは紛れもなく戦いの記憶であり、誰かの死へのカウントダウンだった。断片的ではあっても、それだけは疑いようがない。 にらみ合う四つの瞳。日差しに似た色の光を纏ったライダーと、無機質な灰色のシルエット。露な戦意と、それ以上に明らかな結末に怯えながら、彼女はそれを目撃することを強いられた。 * * * 最後の猶予を告げるように、システムが数え上げる。 「ライダー……キック」 静かな宣言とともに放たれた回し蹴りは、纏った光とともにカイザを横殴りに吹き飛ばした。たまらず床に打ち付けられた澤田の身体からベルトが外れ、変身が解ける。 「こんな下らないゲームとやらにつきあう義理は、おれにはない。お前もライダーなら、もっとやるべきことがあるだろう」 ゆっくりと歩み寄る天道に対して身構えた澤田の輪郭が崩れる。その身は瞬き一つのうちに、辺りの薄闇にも似た灰色の異形と化した。 「……なるほど」 天道がひとりごちる。その姿と振る舞いから、青年の明朗な思考は一つの結論を導き出す。 すなわち、目の前の存在とは人と共に天を頂くこと能わない、と。 結論を出した後の行動は素早かった。瞬時に澤田につめより、立ち上がりしなにクナイガンの斬撃を浴びせる。 それまでの戦いが相手にとってはただの牽制に過ぎなかったことを、澤田は直ちに悟った。烈しい連打に押されながらも、日輪に似た得物を構えて振りかぶる。 カブトは素早く身を開いて交わすと、すぐに踏み込んで力強い蹴りを叩き込んだ。 スパイダーオルフェノクは自らの得物を掲げてそれを受け止める。 再び距離を取った二人がにらみ合う側で、携帯電話が鳴った。 音こそ違えど、それは真夜中を報せ、姿を変える魔法を解く非情な鐘でもある。カブトの鎧がはぎ取られ、ベルトから弾かれたゼクターが不満を訴えるように天道の回りを舞う。 さすがに驚いて自分の腕を見つめる青年に、オルフェノクは冷たく言い放った。 「そういう、ルールなんだよ」 それでも警戒を解かず、ゆっくりと歩み寄る。 相手に近づき、変身して一気にとどめを刺す。拳を握りしめ、そう念ずる澤田の目の前で――――。 天道が跳躍した。 予想だにせぬ動きに身を縮こめた澤田の傍らをすり抜けて、天道が床に身を投じる。その手は、先ほど澤田から外れて弾けとんだカイザのベルトが握られていた。 瞬時の判断とそれを行動に移す実行力は、さすがと言わざるを得ない。素早くベルトを身に着け、一度見ただけの変身を真似てみせる技もまた、天道がいかに手練かを思い知らせるものだった。 電子音とともに光のスーツを身にまとった天道は、足を止めた澤田に自分から近寄って剣を突きつけた。 「俺は、全人類の希望をこの背に負っている。おれが求めさえすれば、すべての光は俺の手に宿る。おれが望みさえすれば、運命は絶えずおれに味方する」 初めての変身でありながら堂々とした威風を漂わせるその言葉には、強い説得力があった。 「太陽の前に、他の光は輝かない。そういったのはあんただろう」 しかし答える澤田の声には、どこか侮蔑の色がある。 「覚悟を決めたか。殊勝なことだ」 光なす切っ先を突きつけられたまま、澤田は黙って構え直す。 嘲笑うように無造作に振り下ろされる剣。澤田はあえてそれを避けもせず、握った凶器を相手の腹に叩き付ける。下から、掬い上げるように。 引っ掛けられたカイザフォンが外れると、軽薄な音とともにベルトが弾け、天道の身体が吹き飛ばされた。 床に叩き付けられたものの、天道は動じもせずに立ち上がる。すかさず何かを取り出そうとデイパックを掴むと、触れた場所が黒く汚れた。 今度こそ驚いて掌を見つめる天道に、スパイダーオルフェノクは乾いた言葉を投げつけた。 「あんただって、死を超えられやしないんだ」 ゆっくりとカイザのベルトに歩み寄り、手を伸ばして拾い上げる。 それが友人たちにもたらした悲劇を、彼も聞いている。いや、あれは友人でもなんでもない。出来損ないが死のうがどうしようが、自分が嘆く筋合いはない。 彼が背を向けたむこう、感触が鈍くなってゆく自分の手を見つめたまま、天道が凍り付いている。澤田はその姿を振り返ろうとはしなかった。 縁もゆかりもない人間が死んでも胸は痛まない。 ――――それは、人間だってそうだろう。むしろ、人は愛するものの死を悼むからこそ、それ以外の人間に心を砕くことができないのだ。 胸に浮かんだ考えに愕然とし、彼は烈しい苛立ちに唇を噛み締めた。 感情を抱くことを。追憶に身を任せることを。あり得たかも知れない未来に思いを馳せることを。それらすべてを切り捨てようとするような息苦しい冷たさが、彼の影に渦巻いている。 その影こそが、彼の唯一のよりどころだった。 自分は成すべきことを知っている。怒りでも愉悦でもない、ただ自らの存在の証を立てるために成すべき行いを。 それは――――ヒトと言う種を塵に帰すこと。 灰の小山の中央に残された荷物を開け、中から使えそうな支給品を抜く。手持ちの道具をすべてまとめると、彼は近くのカフェのカウンターに身を潜めた。 時間制限がある以上、今すぐ次の獲物を狩るのは得策ではない。二時間が過ぎるまで待ち、改めて標的を探せばいい。 むろん、向うから子羊が迷い込んで来たならばその限りではないが。 彼は片膝を抱え、静寂の隙間を縫って響く時計の音に耳を傾けた。 * * * 嗚咽に似た喘ぎが思わず口をついたのは、恐怖と言うより苦痛を感じたからだった。真魚は取り落とした首輪を改めて拾い上げ、強く握りしめた。 ここで誰かが死んだ。憶測でも妄想でもなく、全身の感覚でそれが事実であることを彼女は理解した。 心細かった。帰るに帰れない、宛どころか目処もつかない状況に不安だけが募る。 身を起こす力もなくその場で膝をついたまま呆然とする彼女の耳に、何かを踏みしめる音が響いた。 顔を上げると、だぶついた服に身を包んだ少年がゆっくりとこちらへ近づいて来るのが見える。 非常灯の影になった相手の表情ははっきりとは伺い知れない。だが、そのシルエットを彼女は知っていた。 その身が光を纏って変身するのを、彼女ははっきりと『見た』のだから。 目の前の少年が光を纏ったライダーに変身し、灰色の戦士に姿を変えた残虐な怪物を灰にした――――戦いの断片しか見ることの出来なかった真魚は、今の状況をそう理解した。 真実を見抜いていたら、彼女は恐怖に耐えられただろうか。この誤解は不安定な力がもたらした醜くも優しい嘘だった。 と同時に、少年にとっては屈辱的な信頼でもある。見上げる瞳が宿した信頼を断ち切ってこそ、自分は完全になれる。 澤田はポケットに手を突っ込むと、そこから折り紙とマッチを取り出した。 指を弾くようにして火を点し、それを左に握った金魚に移した。 おもむろに手を離すと、焦げ始めた紙切れがゆるい残像を描きながら灰の上に落ちる。 真魚は反射的に手を伸ばしてその火を消した。 その瞬間、脳裏に一つの光景が浮かび上がる。 二つの人影が、何かに追われて逃げている。先を行くのは黒くだぶついた服を纏った少年だ。 埠頭の突端、ようやく逃げ仰せた少女が彼に向かって言葉をかける。 「ありがとう……」と。 黒い髪が、潮風に吹かれて明るく揺れる。 真魚は焼けこげた紙を握りしめた。顔を上げ、少年の顔を見つめる。 「澤田くん……?」 とっさにそう口にしてしまったのは、心に届いた光景の中で少女が彼のことをそう呼んでいたからにすぎない。 だが、その一言で澤田は完全に彼女を殺す機会を逸した。 手を伸ばして縊れば簡単に蹴りはつくのだ。別にオルフェノクの超人的な膂力などなくても、少女の息の根を止める事は容易い。それなのに、自分の中の何かがそれを止める。 決して感情ゆえのことではない。彼は自分にそう言い聞かせた。 黙って自分を射すくめる視線を、真魚は不満と受け取った。明らかに年上相手にくん付けはいけなかったと感じて言い直す。 「ごめんなさい。澤田さん、ですよね」 「『くん』でいい」 澤田は柔らかな笑顔を作った。その表情を作るのは容易い。ただ、胃の腑を抉るような苛立ちを感じるだけで。 「それ、あげるよ」 「あ……はい」 真魚は頷いて、黒く縮れた紙を丁寧にポケットにしまい込んだ。その様子を眺めながら、澤田は心に決める。 まずはこの少女ではなく、他の参加者を殺す。そして最後に村上の目の前で彼女を殺して見せれば、彼らも理解するだろう。自分が感情などにはとらわれていないと言うことを。 人間と言う種族に微塵も愛着を残していない、完全なオルフェノクだ、ということを。 ステータス表 【一日目・深夜】【G-5 ショッピングセンター】 【澤田亜希@仮面ライダー555】 【時間軸:34話・真理再生前】 状態:全身に軽微なダメージ カイザ、スパイダーオルフェノクに2時間変身不能 装備:カイザギア 道具:基本支給品一式 通話発信可能な携帯電話 不明支給品×4(澤田と天道の二人分・本人確認済み) ライダーベルト(カブト) 基本行動方針:参加者を皆殺しにして自分が完全なオルフェノクであることを証明する。 1:風谷真魚を殺すのは最後の仕上げ。先に他の参加者を殺す。 ※能力制限等のルールについて、あらかじめ大まかに知らされています。 ※第一回放送を聞き損ねたため、禁止エリアを知りません。 ※澤田の携帯電話は特別仕様のため、通話の発信機能が生きています。 現在の所、通話可能な相手は主催者(村上社長・スマートレディ)のみです。 【風谷真魚@仮面ライダーアギト】 【時間軸:31話・サイコキネシス発現後】 状態:健康、精神的ショック。激しく動揺。 装備:なし 道具:基本支給品一式x2(真魚・天道) 不明支給品x2(未確認) 首輪(天道) 基本行動方針:帰りたい。でも、どこに帰ればいい……? 1:澤田についていく。 ※サイコメトリーで見えた灰色のモンスターの正体は天道=カブトだと思っています。 ※制限もしくは心理的な理由で超能力が不完全にしか発揮できません。 現状では、サイコメトリーで読めるのは断片的なイメージだけです。 【天道総司@仮面ライダーカブト 死亡】 ※天道総司の遺体は灰化しました。 【残り 51名】 000 さくらの花の咲くころに 投下順に読む 002 『Chosen Soldier』 000 さくらの花の咲くころに 時系列順に読む 002 『Chosen Soldier』 澤田亜希 029 駆ける海堂 風谷真魚 029 駆ける海堂 天道総司
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「ねー、せんせい。せんせいがいちばんしあわせなときっていつ?」 「それはね、みんなと遊んでいるときよ。先生はみんなと一緒にいるだけで幸せなのよ」 「え?でもせんせい、いまはだかのおとこのひとのことかんがえてたよ?」 「ままー、このたいそうのおねえさん、おかねのことしかかんがえてないよ」 「あら、よく分かってるじゃない実花子。あなたのそういう鋭い所、私好きよ」 「わたしもおかあさんだいすき!」 @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 病院のとある一室で、一人の女子中学生が、名簿を読んでいる。 「双葉ちゃん、童貞、詩仁恵莉、斎藤輝幸、尾関夏実。私の知り合いは5人か」 殺し合いの場でいながら、割と冷静なこの少女の名は初山実花子。つまり私だ。 私の初期位置はこの部屋。意識が覚醒した私がやったことは、名簿と支給品の確認だった。 結局名簿に載っていた自分の知り合いは5人。 裏松双葉。クラスメイト。私のことを避けてる。 『男性恐怖症』という『嘘』をついている女の子。信用できない。 もし、この殺し合いの場で会ったらどうするか。 日常でも仲良くできない少女と非日常で仲良くできるわけがない。 殺し合いにこそ発展しないと思うがが、一緒に行動しないほうが賢明だろう。 尾関裕司。筋肉。こういう場ではあの体は頼りになるかもしれない。 でも、所詮中学生だからそこまで期待しない。 「ど、どどど童貞ちゃうわ!」ってこの前言ってたけど、あれ『嘘』だったから童貞は確定。 双葉ちゃんと比べて扱いやすそうだし、そこそこ仲は良いから合流するべきかもしれない。 詩仁恵莉。なんかやばい子。 よく電波みたいな独り言を呟いてるけど、全部『本当』だからたちが悪い。 できれば会いたくない相手。会ってもすぐ逃げる。 斎藤輝幸。違うクラスの男子。名前と顔は知ってるけど、喋ったことは一度もない。 あんまりいい噂は聞かない。 尾関夏美。童貞の姉。 童貞を半殺しにしたことがあるらしいが、あのマッチョマンをぼこるとはなかなかの剛の者だと思う。 そう、私にはある能力がある。 『他人の言葉の真偽がわかる程度の能力』 元々は言葉どころか心の内まで全てを読む読心能力だったのだけれど、年齢を重ねるにつれてだんだん劣化。 今ではただの人間嘘発見器だ。 まあ昔から周りの人間の心の声が聞こえた結果、私は周りの子供より冷めた性格になってしまったのだけれど。 幼稚園の頃から先生や友達のお母さんを通して大人の心の闇を見せられ続けられるのだ。 小学生高学年のころに能力が薄れてきた時は、逆に嬉しく思ったほど。 もちろん、学校や家では私は年相応の可愛らしい女の子を演じている。 親にも自分の能力は明かしていない。 名簿を確認した私は支給品の武器を構える。スパス12。それが私に支給された武器だった。 銃にはほとんど詳しくない私だけれど、一緒に配布されてた説明書を読むと、それが散弾銃だということがわかった。 なかなかの当たり武器。 他の支給品もわりと面白かったのだけれど、やっぱり他者にも脅威がわかるこの武器はつねに手元に置いておこう。 さて、私は今からどうやって行動するべきか。 せっかく散弾銃があるんだしこんなのはどうだろ。 とりあえず他者に会ったらこれを突きつける。 そして、『ゲームに乗っていますか?』と尋ねるのだ。 もちろん相手は『乗っていない』と答えるだろう。その状況で『乗ってる』なんて答える奴は馬鹿だ。 もしその言葉が本当なら、銃を下ろして一緒に行動。 私は可愛いから、正義感の強い人ならきっと守ってくれるだろう。 もしその言葉が嘘なら迷わず発泡。適当に足か腕に何発か当てて無力化して、支給品を奪って逃走。 「完璧ね」 まて、相手が銃でもどうしようもない化物だった場合。 さっきの大広間に居た鬼みたいな怪物なんかだ。 こういう相手はどうする。 決まってる、私の切り札を使えばいい。 「ワールドオーダーの言葉の真偽」 そう、それが私の切り札。 さっきの開会式でのワールドオーダーの言葉にはいくつか『嘘』が紛れ込んでいた。 この情報は他の参加者にとって貴重なはずだ。 上手く使えれば、大きなアドバンテージになる。 「よーし、なんか生き残れそうな気がしてきたよ」 クラスで普段使っている口調で喋りながら、私は鞄を肩に下げ、スパス12を両手で持つ。 この部屋から出て、行動を開始しよう。 そういえばこの部屋はなんなのだろう。 最初から何故か電気が点いていたので名簿の確認はスム-ズに出来た。 殺風景な部屋だが、なぜか大きな冷蔵庫のようなものがある。これってなんだったっけ。 誰かの心の中で見たことがあるのだけれど、どんな用途だったのか思い出せない。 まあ、たいして重要じゃないしいいか。 部屋の外は、私にとって馴染みが深いわけではないが、何なのかは理解できた。 「ここって病院じゃん」 僅かに灯った非常灯。 長い廊下に点々と続くそれは、ホラー映画のワンシーンのようでどこか不気味だ。 私は、さっきまで自分がいた部屋を見てみた。外に掲げられているプレートにはこう書いてあった。 『霊安室』 ということは、あの冷蔵庫のようなものの中に入っていたものは……。え、まじで。 「びびってないわよ。私は殺し合いの最中なんだから、死体の一つや二つでびびるわけないじゃん」 そりゃあさっきまで死体のあった部屋に一人っきりだったって考えたらちょっと怖いけど、それだけ。 リアクションするまでもない。しようとも思わない。 こんなのでいちいち驚いてたら、先が思いやられる……。 ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォン! 突如、霊安室の中から大きな音が聞こえた。 私は全力で駆け出した。 【C-5 病院/深夜】 【初山実花子】 状態:健康、現在動揺中 装備:スパス12(22/22) 道具:基本支給品一式、ランダムアイテム1~2 [思考・状況] 基本思考:生き残る。 1 きゃああああああああ!出たあああああああ!(霊安室から全力で遠ざかる) 2 誰かに会ったら銃を突きつけて質問する。 3 『ワールドオーダーの言葉の真偽』は上手く使う。 [備考] ※ワイルドオーダーの言葉にはいくつか嘘がありました。どの部分が嘘なのかは後続の書き手さんにお任せします。 ※霊安室に『何か』います。 ※霊安室は病院の地下2階にあります。 【フランキ・スパス12】 イタリアのフランキ社が設計した散弾銃。先端部のボタンを押しながらフォアグリップを切り替え位置にずらすことで、自動式(セミオート)から手動式(ポンプアクション)に切り替えることが可能。 020.人選ミス 投下順で読む 022.戸惑うドラゴモストロ 時系列順で読む GAME START 初山実花子 探偵がリレーを/矛盾る
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ハルヒと親父3−家族旅行プラス1 その4から 「は?」 と俺は聞き返す。 「なに言ってんだ、おまえ?」 受話器越しにハルヒは答えた。 「なにって……、修学旅行とかで、ほら、男子が女子の部屋に遊びに来たりするじゃない? いわば、ああいう奴よ。深い意味はないわ」 「悪いがハルヒ」 「な、なによ?」 「お前の方に深い意味がなくてもな」と俺は言った「俺にはある」 「ななな、い、意味ってなによ?」 「俺はおまえでなきゃ嫌だ」 「……」 ハルヒは黙った。それもいいだろう。どうせ全部言わなきゃ俺だって止まりそうにない。 「目の前にどえらい美人がいたとする。俺だって健康な男子高校生だし、抱きしめたいし、キスしたいし、押し倒したくなくないけどな、今はお前でないと嫌だ」 「い、今って?」 「お前に出会っちまって、お前を個体識別して、お前とお互いに話して、お互いに思ってることをぶつけあって、こうして一緒にいる今、ってことだ」 再び沈黙。波と波がぶつかり合う音が、えらく近く聞こえる。受話器から鳴っているみたいだ。 「わかったわ」 ハルヒは言った。 「あんたは、どうあってもこっちには来ないということね」 「ハルヒ、お前、いったい何を聞いて……」 「あたしがそっちへ行く。これで文句ないでしょ?」 二つのドアが同時に開く。そこにいるはずの相手を見つめ合う。 先に動いたのはハルヒだった。 さっと、俺の横をすり抜けたと思ったが、ハルヒは俺に左手首をしっかり捕まえていた。 ハルヒに引きずられ、ベランダから外へ、俺たちは夜の浜辺に駆け出た。 コテージの非常灯を除けば、辺りには明かりになるものは何もなかった。 他に明かりがないと、月の光はこんなにも青く明るいのか。 ハルヒに手を引かれて、コテージからの緩やかな坂を、夜の砂の上を走る。 波打ち際まであと数メートルというところに来て、ハルヒは止まって、俺の手首を離して、俺の方を見た。 「とりゃー!」 不意をつかれて、倒される。砂の上に上半身から落ちる。あごを砂にぶつける。痛い。 (辞書の意味で)砂を吐きながら、一応抗議してみる。 「ぺっ、ぺっ! 何すんだよ、ハルヒ!」 「カニばさみ。まずはあたしの一勝ね」 一勝? 勝負? ホワイ? えーい、こいつの思考回路はトレースし切れん。今わかるのは、「おほほ、つかまえてごらんなさい」的な展開はあり得ないってことだけだ。月の光よ、我に武運を! 「もういっちょ、いくわよ。どりゃー!!」 「のあ! いきなりか!」 「一瞬の隙は、戦場では死を意味するわ」 死かよ! そして戦場かよ! 言っててなさけないが、スピード、技の種類にキレ、それに知略(?)に上回るハルヒの絶対的優位が続いたが、ちぎっては投げちぎっては投げしているうちに(つまり俺が繰り返し砂の上に転がる度に)、未曾有にみえたハルヒの体力もいささかの陰りを見せた。やっぱり言ってて情けないが、勝ち続けるには、負け続けることを数倍する体力が必要なのだ。 言い換えれば、ハルヒの目的が「俺との当面の戦いを制すること」であるのに対し、俺の目標は「このもーよーわからん大相撲的シシフォスの労働を終わらせること」だった。つまりは、ハルヒは勝ち続けなければならず、俺はただの一回、こいつにもはっきりわかる形で勝てばいいのだ。それがものすごく難しいのだが。 「へっ、さすがに息があがってるじゃないか、ハルヒ?」 「膝に両手ついてるあんたに……言われたかはないわ」 ないなら作ってでも隙を突くしか、俺に勝ち目はないだろう。 「次で決めるぞ、ハルヒ!!」 「勝手に言ってなさい、キョン!!」 足をめがけてタックルする。むろんフェイクだ。 「ハルヒ、好きだ!!」 ちなみに言葉はフェイクじゃないぞ。 「こ、このバカキョン!!」 俺のタックルを読んでいたハルヒは、軽々と俺の上を飛び越えていく。ただし視野の端に写ったハルヒの顔は真っ赤なトマトだ。 着地するや否や、ハルヒは叫ぶ。 「卑怯者!あんた、そんな言葉まで使って!そうまでして勝ちたいの!?」 「真剣勝負で、自分に一番気合いが入る言葉を叫ぶのは当たり前だろ!」 俺にそんな難しい作戦が思いつける訳もなければ実行できる訳もない。だが、勝算は五分と見た。いくぞ、ハルヒ。 「愛してるわ、キョン!!」 怒声とともに張り手が飛ぶ。顔がよじれる、膝が崩れる。 「言われてみてわかった。すごい諸刃の剣だ」 愛の言葉って。 それを受けて、あの動きか。すごいな、ハルヒ。 「やっぱりバカだったのね、あんた。それに先に倒せば問題なし!」 「その言葉、もらっとくぞ」 「なっ、わ、わ」 膝をついた足も、足首を立てて、死んでいなかった。片膝立ての体勢から、もう一度ハルヒの腰に至近距離からアタック。腕を回して、抱え上げる。渾身の力で。 「こ、こら、離せ、アホキョン! エロキョン!」 「無理だとわかってるが一瞬だけ大人しくしろ。もうちょっとの力しか残ってないんだ。ハルヒ!」 「は、はい!」 「愛してるぞ! 絶対、離さないからな!!」 誓いは、たった2秒で膝から崩れた。体力の限界。緊張の中断。深手の影響。その他諸々。 それでもハルヒをなんとか砂の上に転がし、自分は少し離れたところに放り出した。 砂の上に並んで寝転ぶ二人。 「キョン……生きてるよね? あんなこと言って、死んだらひどいからね」 「……い、生きては……いる」 本当の意味で、砂を吐いたけど。 「……よかった……」 「はあはあ、一応聞いとくが、ハルヒ?」 「はあはあ、なによ?」 「煩悶とした青春はスポーツで昇華! なんて体育会的オチじゃあるまいな」 「バカじゃないの? そっちはもちろん別腹よ」 もちろんかよ! そして別腹かよ! ハルヒは寝転んだまま、右手をずいっと上に、夜空に向かって突き出した。その手の先には、ものすごい数の星の光。 「どう? これであんたとあたしは『ひとつ屋根の下』よ」 「やれやれ……そうだな」 二人はくすくすと笑った。ハルヒの、あまりにハルヒらしい自信たっぷりの言い方を、「いや、それだったら、ここまでしなくても」といった俺のかき消された愚痴のなさけなさを、いや多分その両方を、心のどこかで指差しながら。 相手の手は、すぐ届くところにあった。 指先がまず触れ、互いに絡み合う。手が重なる 腕が互いを引きつけ合う。身を起こす。 二人の顔が近づく。 「待って。キョン、一回つねらせなさい」 「いてて。もう、あちこち痛い! ……何すんだよ?」 「ふん。夢じゃないようね」 「そういうことはな、自分ので確かめろ」 「キスなんかで夢オチでした、なんてたまったもんじゃないわ」 「おい……」 だまってなさいと、ハルヒの口が、口をふさいだ。 「……なあ、母さん」 「なんですか、お父さん?」 「今度は人の多いところに宿とろうな。あいつらが、あまり自然に帰らんように」 その6へつづく
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音もなく潜航する潜水艦ノーチラス号。ブリッジのシーン 有希「敵艦隊の船影を捕捉。10時の方向。接触予定時刻は0023時」 みくる「映像、出ます」 古泉「Xタイプの駆逐艦ですね。全部で3隻です。艦長、どうされますか?」 ハルヒ「副長、現状を報告せよ」 キョン「魚雷管装填は完了しています。全装甲、異常無し」 ハルヒ「回頭35度、敵艦隊殲滅に向かう」 みくる「復唱します。回頭35度、敵艦隊を殲滅します」 海底すれすれを潜航するノーチラス号。上方に船影。 有希「上方に敵艦隊船影。こちらは気づかれていない」 ハルヒ「副長、魚雷管発射準備」 キョン「魚雷管照準あわせます。目標、上方敵艦隊」 ハルヒ「発射」 キョン「発射します」 ノーチラス号の側面の魚雷管から多数の魚雷が発射される。そのまま上方に 転回して画面から消える みくる「着弾まで、5、4、3、2、1。着弾しました」 ハルヒ「対ショック、対閃光防御」 轟音とともに衝撃波。激しくゆすぶられるノーチラス号。 ハルヒ「副長、状況報告」 キョン「全機能、復旧しました。本艦には損傷ありません」 ハルヒ「敵艦隊の状況を報告せよ」 有希「2隻は轟沈。1隻は健在です」 みくる「反撃第一波、来ます」 ハルヒ「回頭15度、全速離脱」 みくる「復唱します。回頭15度、全速離脱」 回頭して速度をあげ、攻撃をかわすノーチラス号。 上方からの魚雷は全弾、海底に激突する。衝撃波でゆすられるノーチラス号。 ハルヒ「副長、現況報告」 キョン「損傷率20%。エンジン出力70%。装甲板一部大破。 第34ブロックに浸水しましたが隔離壁が作動。浸水は止まりました」 ハルヒ「いけるわね。一気にかたをつけるわよ。再装填次第、全弾発射」 キョン「全弾発射します」 再び、ノーチラス号から発射された魚雷が回頭して上方に。轟音と閃光。 みくる「敵艦隊は消滅しました」 ハルヒ「よろしい。みんなよく頑張ったわね」 シーンは変わって、海上を航行するノーチラス号。 艦橋の上に立つ、ハルヒとキョン。 ハルヒ「今日は危なかったわね」キョン「ああ、そうだな」 ハルヒ「いつまでこんなことを続けて行けばいいのかしら」 キョン「それはおまえ次第だろう?」 ハルヒ「あんたはどう思ってるの?もう終わりにしたい、こんなこと?」 キョン「おまえの好きなようにすればいい」 ハルヒ「あんたらしくないわね、その言い方。いつもだったら、 あたしのやっていることがどれくらい馬鹿げているか力説するのに」 キョン「ハルヒ」 ハルヒ「何?」 キョン「あ、あ、愛してるぞ」 ハルヒ「へ?」 ハルヒの肩をつかまえてキスするキョン。 再び、別のシーン。潜水具を装着して海底散歩を満喫するSOS団の面々。 ハルヒ「キョン、みてよ、きれいな珊瑚礁」 キョン「ああ、そうだなあ」 ハルヒ「何よ、その気の無い返事は」 キョン「そういうわけじゃないが、おまえの想像力ってすごいな、って思ってさ」 ハルヒ「あたしのなんですって?」 キョン「なんでもないよ。こいつを持って帰っておまえの部屋にでも飾るか?」 ハルヒ「素敵ね」 再び、戦闘シーン。途中から 既にかなりの損傷を受けているらしく、艦体からはところどころ泡が洩れ出ている。 海上、海中には多数の敵艦隊。包囲されている。 ハルヒ「副長、状況報告」 キョン「損傷率50%。第二装甲板まで大破。エンジン出力60%」 ハルヒ「ずいぶんやられたわね」 有希「艦長、分艦隊の出撃許可を申請したし」 ハルヒ「許可する」 有希「分艦隊、出撃します」 ノーチラス号の艦隊から多数の小型潜水艇が離脱。敵艦隊に向かって 進撃して行く。 ブリッジ。目にも止まらない速度でキーボードを連射する有希。 不意に手が止まる。 有希「攻撃許可命令を」 キョンの方を見る キョン「やっちまえ」 有希「そう」 敵潜水艦艦隊を逆に包囲した小型潜水艇が一斉攻撃。 壊滅する敵潜水艦艦隊。 みくる「敵潜水艦艦隊は消滅しました」 ハルヒ「やったわ、さすが有希!」 海上の敵艦隊が魚雷を一斉に発射。 みくる「攻撃第三波来ます」 ハルヒ「回避行動。回頭20度、全力で後進」 みくる「復唱します。回頭20度、全力で後進」 旋回後バックして攻撃を避けようとするノーチラス号。 回避行動虚しく、上方からの魚雷一基がノーチラス号に命中。 艦長室のシーン。机の上には珊瑚と写真立て。魚雷命中に伴う衝撃で机から 珊瑚と写真立てが落下。床に落ちて粉々に砕け散る珊瑚。 写真立てのガラスカバーが割れて、中の写真がみえる。キョンの写真。 再び、ブリッジ。激しい振動と共に、照明が消え、オレンジ色の非常灯に切り替わる。 ハルヒ「副長!」 キョン「第三装甲板大破。浸水を止められません」 ハルヒ「...。これまでね。艦を放棄する。総員離脱準備」 みくる「艦内の全乗組員に告ぐ。総員離脱準備。艦を放棄する」 艦体から泡を吹き出しながら沈み行くノーチラス号。 多数の脱出カプセルが放出され、上方に浮かびあがって行く。 艦長室のシーン。家具が転倒し、いろいろなものが散乱している部屋の中で 何かを探しているハルヒ。手には割れた珊瑚礁のかけらをもっている。 ハルヒ「あった」 拾いあげたものはキョンの写真。扉が勢い良く開いてキョンが入って来る。 キョン「まだ退避してなかったのか」 ハルヒ「うるさいわね、あたしの勝手でしょ」 あわてて手にもっているものを後ろに隠すハルヒ。 キョン「脱出カプセルは一基しか残ってないぞ。一人しか脱出できない」 キョン独白(なんてベタな展開なんだ。いい趣味してるな、ハルヒ。) ハルヒ「副長、あなたが脱出しなさい。艦長は艦と運命を共にするものよ」 キョン「しかし...」 ハルヒ「これは艦長命令よ」 キョン「...解りました。それでは艦長」 最後の握手をするために前に進むキョン。ハルヒも手を前に出す。 一瞬の隙をついて、ハルヒに当て身を喰らわせるキョン。 ハルヒ「うっ」 気絶するハルヒをお姫様抱っこで運び、脱出カプセルの座席まで運び、 シートベルトを装着させてやるキョン。カプセルのハッチを閉め、 離脱ボタンをプッシュ。 海中シーン。ノーチラス号の側面から泡と共に脱出カプセルが放出され、 上方に登って行く。 カプセル内部。気絶しているハルヒ。 ブリッジ。キョンが艦長席に座っている。ミシミシという音と共に 漏水が始まる。壁から勢い良く吹き出す海水。 キョン独白(これで満足か、ハルヒ。こんなベタな展開がお前の望みか? 案外、通俗的だったな。それにしてもやっぱり、俺は溺れて死ぬのか? 古泉、お前のいってることと違うぞ。 それとも、これでもまだハルヒは何か不満なのか?) 沈み行くノーチラス号。深海の闇に飲み込まれる。しばらくして閃光。 音はしない....。 第九章
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被褐懐玉―JUDGE EYES― ◆7XQw1Mr6P. 眼を覚ましたリップが最初に見たのは、明りのついていない部屋の天井。 その部屋が病室だと気が付いた時、リップは夢に出た男の話が現実であり、奴が本物のクソ野郎であることを理解させられた。 自分を病院に放り込んだのはきっと意図的だろう。 そのことによって奴が得られる利益は思いつかない。 思いつきはしないが、このことが純粋な悪意でしかないという直感はある。 皮肉、当てつけ、児戯にも等しい嫌がらせ。 その直感は元の世界で度々感じた、下衆(神)の掌に足を乗せてしまった時の、あの不快感に近かった。 袈裟の男に対する怒りは沸いてくるが、ぶつける相手もいない今は静かに収めるしかない。 様々な薬品と清潔なシーツの匂いに懐かしさを感じつつ、リップは深いため息で少しだけ不満を吐き出し、残りの熱を抱えたまま行動を開始した。 ・・・ 病院の廊下は長く、広く、天井は高く、そして暗かった。 その闇に浮かび上がる非常灯の、そのわずかな明かりを頼りに進んでゆく。 どうやら建物に電気は来ているらしいが、他の参加者に見つからないよう、今は明かりをつけずに進む。 武器代わりのメスをはじめ、所持品はあらかた取り上げられていたが、幸い義足は残されていた。 足音をたてぬよう注意深く歩みを進めつつ、リップは現状を整理する。 リップには目的がある。 古代遺物「アーク」を手に入れ、ループする世界の"次"に進み、全てをやり直す。 そのためには他者を踏みつけ利用することも厭わない。そのための覚悟はすでに決めている。 だがこの異常な殺し合いの渦中において、覚悟を貫いてしまったがために自分の目的から遠ざかるようでは意味がない。 「……」 眼が覚めてからというもの、リップの中には常に"違和感"が渦巻いていた。 突然巻き込まれた殺し合い大会。 そのゴールに吊るされた餌は荒唐無稽な「願望の成就」。 平時であればとても手放しで鵜呑みに出来る話ではないが、夢で袈裟の男が宣ったことの概要については真実だろうという謎の実感がある。 ならばそれを信じてみるとして問題は、奴が話さなかったことのほうだ。 61人の参加者の内、10人殺して50ポイント獲得できるのは最大で5名。 だが実際にはルール追加のために25ポイント消費する者がいるかもしれないし、ポイントを貯めた状態で殺される奴もいるかもしれない。 そうしてポイントの浪費が起きた場合、最悪脱出者無しで会場内にあるポイントが50以下となり、そのまま会場内全てが禁止エリアになることも考えられる。 そういう事態が起こりうることについて、主催者はどう考えているのか。 主催者がそういった結果も受け入れるというのであれば、参加者に希望は無い。 夢に出た男の言った通り、自分たちはただ実験動物(モルモット)のように消費されるしかない状況だということ。 一方、主催者がそういった結果は避けたいならば、尚のこと参加者に希望は無い。 そうならないために状況に応じてなんらかの干渉があると考えるのが自然だ。 例えば脱出のための必要ポイントが引き下げられたり、追加の参加者が連れてこられたり。 これでは主催者側の一意によって状況が操作されかねない。 流動的に殺し合いの理(ルール)が変更されうる以上、理(ルール)に従う時機は慎重に見定めた方がいい。 結局、理(ルール)は上から押し付けられるもの。 下(アンダー)から手探りの反抗をしていくしかないのは、この場においても同様らしい。 「―――……ッ」 不意に、リップは小さく舌打ちをついた。 その苛立ちは現状に対するものではなく、明かりのついていない診察室から微かに聞こえる物音に対して。 何事か、などと考えるまでも無い。他の参加者が物色しているようだ。 扉は閉められているが、扉に嵌め込まれたすりガラス越しからは明かりをつけている様子はない。 相当注意していなければ物音にも気づけなかっただろうことからも、おそらく自分と同様、他者との遭遇を避けたいらしい。 ならば、一方的に相手の存在に気づいているリップには選択肢が生まれる。 回避か、接触か。 ―――接触ならば、対話か攻撃か。 ――――――攻撃ならば、堂々か暗殺か。 「……」 逡巡したと自覚する前に、あるいは自覚した事実から目を逸らすように、リップは決断する。 どんな不確定要素や懸念材料があろうと、目の前に現れたチャンスを見逃すことは出来ない。 日の当たる道に背を向ける覚悟は、すでに決まっている。 そうして己の覚悟を再確認した後、やはり自分にヒーローらしい振舞いは似合わないのだと自虐する。 相手を殺すという選択肢が自然と出てくる以上は。 わずかでも悩んだ、悩んでしまった以上は。 胸中に渦巻く"違和感"に蓋をして、リップは静かに部屋の入口まで近づき、義足に力を込めた。 身に着けている義足―――古代遺物『走刃脚(ブレードランナー)』を用いれば、人一人殺すなど容易だ。 だがこの武器は空気を取り込む予備動作が必要で、その際にはどうしても吸引音が発生する。 ほんの数秒の前兆であるが、それでも扉の向こうの相手に気取られては奇襲の意味が無い。 かといって音に気づかれないほど距離を取り、壁をぶち抜いて向こう側の相手を倒せるほどの威力を出そうとすれば、そのまま建物が倒壊しかねない。 自分の身も危険に晒されるうえ、外部からも目立ちすぎる。論外だ。 ならば正面から殴り込み、徒手空拳で先制しつつ走刃脚を"溜める"。 不意を突き、格闘戦で圧倒できればそれでよし。 即座に対応され肉弾戦では決め手に欠けるようであれば、その時は威力を絞った走刃脚の一撃につなげる。 あるいは手に負えないような相手だったならば走刃脚の機動力で逃げればいい。 プランは出来た。 リップは意を決し、診察室の扉に手をかけた。 「一つ問う」 扉の向こうから放たれた問いかけに、リップは全身の毛が逆立ったような強烈な悪寒を感じた。 いつの間にか部屋の中から聞こえる物音はやんでいて、辺りの静寂の中、自分の鼓動の音だけがはっきりと聞こえた。 動揺を抑え、息を殺す。 扉の向こうの男は言葉を続けている。 「殺し合いに乗らず、同意見の協力者が欲しいなら、あるいは……そういうスタンスを偽るなら。 おまえは扉をノックするか、先に声をかけてきたはずだ。だがおまえは今……扉に手をかけ、突入してこようとした。 ドアノブを握っているおまえはつまり、殺し合いに乗っているわけだが……ハァ」 リップは自分が掴んだ扉の取っ手が異常に冷たく感じた。 わざと物音を立て続け、まんまとこちらをおびき寄せ、あまつさえ観察までしていたのか。 動揺のためか、集中のためか、右の眼帯から垂れた血を舐めることも出来ないリップは、ひとまず相手の言葉を静聴する。 「殺し合いに乗っているなら、さっさと襲えばいい。だがおまえは、扉の前でしばし留まった。 ……殺そうとすることに、何故躊躇った?」 「……なんだと?」 予想外の言葉に、リップは声を漏らす。 俺が、殺しを躊躇った? 扉の向こうの男は別段気にした様子も無く、言葉を続ける。 「心を決めているから、扉の前がおまえの分水嶺だった。扉を開けたら、殺すしかないと。 ……息の根を止める最後の一手、トドメを躊躇うのとはわけが違う。 ……おまえは殺すことを躊躇ったんじゃない。殺そうとすることを、躊躇った。 同じ、殺意に迷いが生じた躊躇いでも……両者の間には大きな隔たりがある。 決断すればおまえは、相手を殺せる人間だろう。 ……ハァ……、おまえはすでに、"標的が現れた時、必ず殺す"と決めていたはずだ。 だがその決意が甘いから、おまえは俺を襲えなかった。満願成就の機会を前に、何がおまえの殺意を鈍らせた……?」 「……――――」 リップは、絶句していた。 リップが扉の前で立ち止まったのは、奇襲手順を確認したためだ。 扉の向こうの男の言葉は的が外れている。……だが。 診察室の男が語ったそれは、リップ自身が言語化できていなかった内面の一端を的確に言い当てていた。 それは眼が覚めてからずっと抱え続けていた"違和感"の正体。 開示されていない理(ルール)があったとして、今は探りようがないという結論がすでに出ている。 だがわずかでも希望がある以上、相手が誰であろうと、犠牲にする覚悟があると自分に言い聞かせた。 確かにあの時、自分は自分を言い聞かせていた。 「(俺は、殺しをせずに済む可能性が欲しかったのか……?)」 この場においては、人を殺してまで目的のために動くことが最善か判断できない状況であっても、いつものリップであれば、言い聞かせることも無く行動に移れたはずだ。 思えば奇襲の手順を考えた時も、手に負えない相手なら逃げるという発想自体が普段からは考えられないほど弱気な姿勢。 殺人以外の選択肢が自然と出てきた以上は。 わずかでも悩んだ、悩んでしまった以上は。 彼がどれだけ自分の本質から目を逸らそうと、簡単に殺人を実行はしても、簡単に殺人を思い立つような人間ではないのだから。 「信念無き殺意には、何の意味も……宿りはしない。 殺意を躊躇ったということは、己が殺意に込めた意義に疑問が生じたからだろう? おまえは、徒らに力を振りまく犯罪者とは違う。おまえの信念は……なんだ?」 扉の向こうの男は、重ねて問いを投げかける。 言葉が切れた時、ポタリ、と微かな水音がして、そこで初めてリップは自分の頬を流れる血に気づいた。 明かりのついていない、病院の廊下の闇の中で。 リップは頬の血をいつものように舐めとることもせず、足元に落ちた血の痕をしばし見つめ、やがて口を開いた。 「悩んだ以上、俺にヒーローじみた振舞いは似合わない」 「……なに?」 「お前が誰で、何が聞きたいのかは知らないが、俺の覚悟はたった一人に捧げてる。 ―――――そのためなら俺は、"俺自身の良心"も殺してやる」 リップは後ろに跳ね、扉から距離を取る。 同時に走刃脚の吸気を開始、病院の廊下に甲高い吸気音が響き渡った。 キ イ イ イ ィ ィ ィ ィ ィ ィ ィ ィ ィ ィ ィ 古代遺物『走刃脚』は空気を取り込むことで脛から実体化した斬撃を放つ。 扉ごと切り裂く。すでに相手に気付かれた以上、動作音を気にする必要もない。 ここまで近くの標的ならば、さほど威力もいらない。建物へのダメージも最小限で済むはずだ。 空気が溜まるのに一秒とかからない。 その刹那、リップの頭に一つの考えが浮かぶ。 考えてみれば、顔も知らないまま人を殺すのは初めてだろうか。 透明人間の腹を切り裂いたことはあったが、それはともかくとして。 俺は今、抵抗感を感じているか? いいや、抵抗感などありはしない。 リップの自問に、リップが自答する。 そうして得られた答えに、本人は安心したのか、それとも後悔したのか。 リップ自身もわからぬまま、死神の鎌と化す右脚を持ち上げ――――――。 その寸前、扉が内側から切り裂かれ、中から何かがリップ目掛けて飛び出してきた。 「ッ」 それが医療用のメスだとすぐわかったのは、彼自身愛用の得物でもあるため。 飛来するそれは都合三本。その全てを回避や迎撃するには、攻撃の予備動作で姿勢が崩れすぎている。 仕方なくリップは振るう直前の義足でメスを防ぎ、さらに廊下を数歩下がって距離を取る。 ガラガラと崩れる扉の残骸の向こう側から、男が現れた。 男の手に握られているのは、非常灯の微かな明かりを反射する二振りの日本刀。 二本とも異常なまでに刃こぼれしているが、あの得物でもって頑丈な病院の引き戸を両断したらしい。 包帯を顔に巻きつけ、幽鬼のように頼りなく立つ、怪人。 「一個人の為に、自分も他人も犠牲にする。……滅私の覚悟。おまえの眼を見れば、おまえの言葉に偽りは無いとわかる。 とはいえ、ハァ……何を成し遂げるにしても信念無き者、信念の弱い者は……淘汰されるのが世の常だ。あとは……」 個性社会のヒーロー殺し。ステインと仇名された男の視線が、リップを捉えていた。 「真意を試してやろう。死線を前に、おまえは信念を貫けるか……」 ・・・ 「……んがっ!?」 跳ねるように上半身を起こした虎杖は、そのまま車のダッシュボードに頭をしたたかに打ち付けた。 鈍い音が響き、今度は後ろへ勢いよく倒れ込む虎杖。 「ーーーっっっ痛ェ!」 などと頭を押さえているが、実際のところはさほど痛くはない。 呪力で強化していなくとも、そもそも異常なまでに頑強な恵体体質。 そんな彼がこんな反応をしているのは一重に、寝起き直後の思いもしない衝撃への驚きに因るものでしかない。 その証拠に、額を抑える手の間から上を見上げた虎杖はすぐに状況を理解する。 自分は車の中、それも軽自動車の中にいる。 今度はゆっくりと上体を起こす虎杖。 車から降りて周囲を見渡せば、すぐそばには大きな建造物がそびえたっていた。 夜の暗がりの中、一見した限りで建物の全容は見えないが、それでも屋上近くに掲げられた特徴的な十字のシンボルは見て取れる。 どうやらここは病院の駐車場らしい。 そこまで把握してようやく、虎杖は現状に混乱出来る程度に落ち着いたのだった。 「(……死滅回游の結界に飛び込んだと思ったら、死滅跳躍? 伏黒ともはぐれちまったし、俺に憑いてたコガネも消えてる。なにがどうなって――――いや)」 考えたところで、自分に呪術の知識が足りていないことを自覚している虎杖は思考を切り替える。 呪術的な話は別としても、状況は死滅回游より危急となっているのは間違いない。 死滅回游は儀式の永続を謳っていたが、この死滅跳躍は違う。 6時間ごとに64のエリアから3か所の禁止エリアが設定され、設定後1時間の猶予があるというから、タイムリミットは133時間。 5日と13時間で、この殺し合いの参加者は皆殺しにされる。 「(結界やらルールやらについては俺が一人でうだうだ考えてもわかるわけないし、日車のことは後回し。 とにかく伏黒との合流が最優先か。その後は外部との連絡手段を確保して、また天元様や九十九さんあたりに話を聞きたいところだな……)」 結界に入る前は伏黒と別行動するべきではと考えもしたが、やはり自分にはあいつの助けがいるのだと、改めて虎杖は痛感する。 伏黒には俺を助けろと言われたけど、やっぱ助けが必要なのは俺の方か。 そんな呟きは飲み込んで、とにかく今は自分に出来ることをするしかない。 ひとまず名簿と支給品を確認するため、虎杖は車に戻ることにした。 その時だった。 「……?」 虎杖は足を止め、再度病院の方へ振り返る。 なにか、聞こえる。 それは確かに病院の内部から聞こえてくる。 人や動物の声ではない。かといって自然な環境音という感じでもない。 虎杖は素早く病院の大きな入り口に駆け寄り、エントランスから院内へと足を踏み入れる。 病院内に、甲高い吸気音が響き渡っていた。 (→後編)
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停電時に自動点灯する保安灯 充電池を内蔵し、コンセントに刺しておくと自動充電。停電を検出すると自動点灯するライト。 コンセントから抜けばそのまま懐中電灯になり、夜間の避難や防災装備を探すまでの初動の助けに。 停電検出とは別に、地震の揺れを検出して点灯できるタイプもある。 内蔵充電池の寿命はどれも公称2年程度。ユーザーで交換可能かどうかでランニングコストが大きく変わる。 ナイトライト有無、電池交換可否、感震機能などいろいろ種類があるのでスペック要確認。 パナソニック ハンディホーム保安灯 WH1101WKP 希望小売価格3,885円(実売2800円前後)豆球。電池交換不可? (旧ページ)http //ctlg.panasonic.jp/product/info.do?pg=04 hb=WH1101WKP (新ページ)http //ctlg.panasonic.com/jp/night-light/night-lignt/WH1101WKP.html パナソニック ホーム保安灯 WTF4012WK 定価¥3780 実売¥2500~ 豆球&ニッケル水素電池。電池交換可(WH9905P ¥1200) http //denko.panasonic.biz/search/detail? dep= c=search item_no=WTF4012WK item_cd=WTF4012WK_35633 bh_cd=3 b_cd=301 style= パナソニックLEDホーム保安灯 WTF4087WK 定価5,198円 実売3600円前後 LED&ニッケル水素電池。非常灯技術基準「避難B-1型」適合。 ナイトライト機能付き。電池交換可(WH9905P \1200) http //ctlg.panasonic.jp/product/info.do?pg=04 =WTP4087WKP (ページは見つかりませんでした。) パナソニック LBJ70991 or LBJ70981 定価6,741円 実売2800円前後 WTF4087に専用壁埋め込みコンセントが付属。コンセントの取り付けは電気工事が必要だが、ライト部WTF4087WK単体より実売が安いのでコンセントは捨てても。型番の違いはコンセントのプレートの角が丸いか角ばっているかの違い。 http //denko.panasonic.biz/Ebox/catalog/web_catalog/juutaku/catalog.php?startpage=319 東芝 保安灯 DH9090 ナイトライト有り M希望価格 \4,725 実売\2700~ 東芝 保安灯 DH9080 ナイトライト無し M希望価格 \3,518 実売\2000~ ともに豆球&ニッカド。交換電池は1200円 http //www.tlt.co.jp/tlt/new/haisen/dh9090/dh9090.htm (ページは見つかりませんでした。) ニッタン 地震保安灯 ゆれタンちゃん JHA-1 ¥3000前後 LED&ニッケル水素電池 停電or震度4程度の揺れ感知でライトが自動点灯。ナイトライト有り。交換電池JHA-BT 2100円。 サイレン機能無しの ゆれタンちゃんmini JHB-1もあり。 http //www.nittan.com/main/seihin/JHA-1.html (ページは見つかりませんでした。) ツインバード 停電センサーLEDサーチライト ホワイト LS-8554W 希望小売価格2,625円 実売1600円~ LED&ニッカド 交換用電池840円 他にもナイトライト付きLS-8555Wやセンサーライト付きLS-8556Wもあり。 http //www.twinbird.jp/product/ls8554/ ピオマ ここだよライト 停電検出で点灯。震度4以上検出で10分点灯。 希望小売価格¥3990 http //www.pioma.jp/UGL1/ ELPA LEDセンサー付ライト+懐中電灯 TDH-300 実売¥1980程度 http //www.elpa.co.jp/product/li02/elpa158.html 無印良品 LED持ち運びできるあかり ハイパワー3WLED http //www.muji.net/store/cmdty/detail/4945247555264 ¥7900 LOモードなら約10時間、HIモードでは約3時間点灯するLEDランタンタイプ。停電検知あり。地震で台座から外れても点灯。 電池のみを電源とするモデル センチュリー 地震の見張り番ライト JC-L152 ¥1000前後 単四乾電池でどこでも設置可。震度3以上で自動点灯。停電感知は無し。5分間点灯後自動消灯してしまうのが微妙。 http //www.century.co.jp/products/zak/bousai/jcl152.html 防災用として話題になったライト類 【停電対策】LEDランタン 6灯目【販売情報】 http //toki.2ch.net/test/read.cgi/kaden/1304006260/ 懐中電灯】ホムセン最強フラッシュライト No.68 http //toki.2ch.net/test/read.cgi/kaden/1303402564/l50 懐中電灯・フラッシュライト総合スレ 40lumens http //toki.2ch.net/test/read.cgi/kaden/1302592554/l50 等々、家電製品板ライト系スレより 株式会社サンジェルマン|GENTOS [Flashlight]|Explorer http //www.saint-gentleman.co.jp/list/?id=3_20 (404not found) EX-700RC(280ルーメン、単1×3本、リモコン(単4×2本)つき) http //www.saint-gentleman.co.jp/list/?id=3_20 pid=317 (404not found) EX-777XP(280ルーメン、単1×3本) http //www.saint-gentleman.co.jp/list/?id=3_20 pid=67 (404not found) EX-757MS(150ルーメン、単3×4本) http //www.saint-gentleman.co.jp/list/?id=3_20 pid=264 (404not found) EX-837NX(80ルーメン、単3×3本) http //www.saint-gentleman.co.jp/list/?id=3_20 pid=319 (404not found) EX-800RC(360ルーメン、単1×6本、リモコン(単4×2本)つき) http //www.saint-gentleman.co.jp/list/?id=3_20 pid=318 (404not found) EX-888TF(360ルーメン、単1×6本) http //www.saint-gentleman.co.jp/list/?id=3_20 pid=214 (404not found) エボルタ付きLED常備灯 BF-BE01K-W (旧ページ) http //ctlg.panasonic.jp/product/info.do?pg=04 hb=BF-BE01K-W (新ページ) http //ctlg.panasonic.com/jp/light/flashlight/BF-BE01K-W.html エボルタ付きLEDランタン BF-AL01K-W http //ctlg.panasonic.jp/product/info.do?pg=04 hb=BF-AL01K-W (ページは見つかりませんでした。) LED強力ライト BF-BS01P-W エボルタ付きLED強力ライト F-KJWBS01-W (旧ページ) http //ctlg.panasonic.jp/product/info.do?pg=04 hb=BF-BS01P-W (新ページ) http //ctlg.panasonic.com/jp/light/flashlight/BF-BS01P-W.html (旧ページ) http //ctlg.panasonic.jp/product/info.do?pg=04 hb=F-KJWBS01-W (新ページ) http //ctlg.panasonic.com/jp/light/flashlight/F-KJWBS01-W.html LED懐中電灯(単1電池2個用) BF-158BF エボルタ付きLEDライト(単1電池2個用) BF-158BK-W (旧ページ) http //ctlg.panasonic.jp/product/info.do?pg=04 hb=BF-158BF (新ページ) http //ctlg.panasonic.com/jp/light/flashlight/BF-158BF.html (旧ページ) http //ctlg.panasonic.jp/product/info.do?pg=04 hb=BF-158BK-W (新ページ) http //ctlg.panasonic.com/jp/light/flashlight/BF-158BK-W.html エボルタ付きLED懐中電灯(単3電池3個用) BF-BG01K-W (旧ページ) http //ctlg.panasonic.jp/product/info.do?pg=04 hb=BF-BG01K-W (新ページ) http //ctlg.panasonic.com/jp/light/flashlight/BF-BG01K-W.html Fenix TK50 XP-G R5 http //www.douguya.biz/SHOP/TK50-XP-G-R5.html (ご指定のページは見つかりませんでした。) Fenix LD20 XP-G R5 http //www.douguya.biz/SHOP/LD20-XP-G-R5.html (ご指定のページは見つかりませんでした。) Fenix LD25 XP-G R4 Neutral White http //www.douguya.biz/SHOP/LD25-XP-G-R4.html (ご指定のページは見つかりませんでした。) (リンク先は商品説明が見易いサイトを選んだだけw) GENTOS GTR-931H GTR http //www.akaricenter.com/led_light/gentos/gtr-931h.htm モンベル コンパクト ヘッドランプ(実店鋪ではまだ買えるか?) http //webshop.montbell.jp/goods/disp.php?product_id=1124431 ライト類は人それぞれに考え方も有るので無益な議論は各ライト系スレで 入手し易かった単三、ランタイムが長い、万人に扱いやすいパナ、調光機能付きの高性能高価格、が人気 単三1本仕様のヘッドランプ ヘッドランプは単三、単四を3本使うモデルが主流だが、有事の際は電池の調達や他の機器との電池の融通などで不便も。 単三1本のヘッドランプも検討の価値あり。 ジェントスGTR-931H http //www.saint-gentleman.co.jp/list/?id=3_21 pid=442 (404not found) ¥1200前後? 45ルーメン(8h) Low(24h) 3.11以降の発売なので実売価格ははっきりしないが、ナチュラムで売り出し¥1200だったのですぐその程度に収まるはず。 家族一人に1本ずつ買えちゃう価格が最大の魅力。 エネループ可。 モンベル コンパクト ヘッドランプ http //webshop.montbell.jp/goods/disp.php?product_id=1124431 ¥2000 26ルーメン(15h) 11ルーメン(59h) 5ルーメン(75h) MAX26ルーメンは暗めだが、夜道を歩く程度には十分。 電球色のサブライト装備で屋内使用でのランタイムは良。 明るいライトを持っている人も、予備やろうそく代わりの低照度長時間用に一つあってもいいかも。 リチウム電池使用不可。エネループ可。 防滴IPX4 FENIX HL20 http //www.amazon.co.jp/dp/B0032C4HBG (この商品は現在お取り扱いできません。H25.12確認) ¥4000ちょい 105ルーメン(1.8h) 48ルーメン(5.5h) 4ルーメン(56h) 明るさ調整の幅が広く、単三1本で105ルーメンは特筆。 105ルーメンなら夜間に走って避難するときも心強く、4ルーメンは屋内退避後のろうそく代わりに。 IPX8の防水。 エナジャイザー エクストリームヘッドライト http //www.schick-jp.com/energizer/light/headlight_03.html ¥3500~4000 MAX60ルーメン(3h)~連続調光~MIN(20h) 赤色LED(50h) お試し用として単三リチウム電池が入っているので、単三リチウム使用可のお墨付き。 ランタイムは単三リチウム使用の場合。 IPX7の防水。 単三2本仕様のヘッドランプ 単三2本のヘッドランプはほとんど無し。どれも高い。 ペツル PIXA1~3 http //www.alteria.co.jp/headlamp/pixa.html ¥5000~¥10000 工事現場や工場など、そういう作業向けのラインナップらしい。 シルバ トレイルランナー http //www.amazon.co.jp/dp/B003DKK7SY ¥8000 トレイルランという、山道を走るスポーツ向けに設計されたモデル。 番外編 ナイトアイズ ヘッドバンド http //www.holkin.com/nh-ni-hb.html ¥1000 ヘッドバンドのループに懐中電灯を差して、簡易ヘッドランプとして使うグッズ。 単三、単四マグライト用のオプションだが太さ、重さが同程度なら、他メーカーのライトでも使用可。 どうしても単三2本というなら、これと細めのLEDライトの組合せが一番現実的かも。 補助的光源 ケミカルライト(商品名:サイリューム、ルミカ) ポリチューブをポキッと折り曲げると化学反応で発光するライト。1本100~300円ほど。 様々な発光色があり、防水、防曝、使い捨て。保存期間は3~5年程度。 通常タイプは6~10時間程度発光し、マーカーとして使用するのが一般的。 安い防災セットには懐中電灯の代わりに入っていることがあるが、通常タイプは照明として使うには暗すぎ、LEDライトなどを代替する性質のものではない。 高輝度タイプも存在するが、発光時間が5~20分程度であり、通常の懐中電灯でカバーできない特殊な状況で使用するためのものである。 ろうそく 防水で長期保存でも劣化せず、安価。防災備品の定番であるが、火を使うため引火・火災の危険がつきまとう。 大規模災害時は消防機能もマヒしているため、普段ならボヤですむものも全焼・延焼に至るリスクが高い。 避難所でもろうそくの使用は禁止されることが多いため、LEDで代替できないか一度検討してみたほうがいい。 特に安全ろうそくとしてガラスホヤが付くタイプや液体パラフィン使用のタイプは価格的にもLEDライトと競合する。 ろうそくの危険性と有用性はループしやすい話題。
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占い師と少女 マッドガッサー決戦編 12 ※金さん、女装少年の方、合流後の占い師一行視点 ○月×日 22:07 二階廊下 ドクターさん達が合流し、その後に金さんと女装少年さんが合流して……いつの間にか、私たちのグループは10人を超える程のものになっていた。 幅の広い廊下を目一杯使っても、何列かにならないといけない程の人数。多分、かなり目立っている事だろう。 「……大体、何であんたも来てるんだ。さっきの『お願い』は嘘か?」 占い師さんが言った対象は、私たちの少し後ろを歩いている黒服Hさんだった。 「なに、どんな大怪我してる最中でも、美少女のピンチは救わねばならないだろう、常識で考えて」 「それが生物の本能、それが『漢』と言うものだよ」 黒服Hさんの隣にいたドクターさんも賛同する。 ちなみに、ドクターさんは既に化学準備室で借りた白衣を着ていた。 その横には、軽い応急手当を終えた女装少年さんと、ザクロさんもいる。 「……お前は男じゃないだろう」 「兄さん、愛は性別を超えるんだよ」 私たちの斜め前では、不良教師さんと「骨を溶かすコーラ」の契約者さんが何かを言いあいながら、皆を先導するように歩いていた。 不良教師さんの向かう先は、美術準備室。…………そこに、階段を使わずに3階へと上がる抜け道があるのだという。 『いやー、そやけどほんま懐かしいわー』 『今は、どちらに?』 「あ、はい。『うわさの産物』というレストランで――――」 不良教師さん達の少し後ろでは、金さん達が互いの意近況報告に咲かせていた。 女体化によってフィギュア化されているのが、何というか……原型を留めてなくて、普通に可愛いと思ってしまった。 ……そういえば、もし白骨標本さんがガスを浴びたら、女性の骨格になるのだろうか。 「……っと、着いたぞ。ここだ」 数分が経ち、幾つかあるうちの一つのドアの前に、不良教師さんが立ち止まった。 暗がりで見づらいプレートには「美術準備室」の文字。 「……さて、どの鍵だったか……」 化学準備室と同様、懐から取りだした鍵を一つ一つ合せていく。 非常灯の灯りを頼りが、銀色の鍵を緑色に照らし出した。 かちゃり 少しして、その内の一つが当たり、辺りに錠の空く乾いた音が響いた。 不良教師さんによって扉が開かれ、中から空気が漏れてくる。 「…………あれ?」 その空気に、私は違和感を覚えた。 化学準備室を開けた時の空気は籠っていて、少しの固さと湿っぽさがあった。 しかし、この空気は……非常に冷たい上、どこかが空いているのか、解放後も風が出入りしていた。 「……ほう……」 さきに中に入った不良教師さんが、軽いため息を漏らす。 「誰か先に来た人間がいたみたいだな……」 その視線の先には、大量の鼠の死骸と、ある点を中心とした爆風の後。 その中心には、椅子が一脚、ぽつんと置いてあった。 「……ハーメルンの笛吹き、か」 鼠を見た占い師さんが呟く。 ハーメルンの笛吹きと言えば、購買で私たちを襲った鼠を操っていた人だけれど……。 『大丈夫だったんでしょうか……?』 「爆発した跡に足場として椅子が置かれてるんだ。まず平気だろう」 白骨標本さんの言葉に、不良教師さんが周囲を見聞して答えた。 「さて…………」 占い師さんが、天井の一部空いている所を中心に、室内を見回す。 能力を使っているのか、その目に映っているのは室内の情景ではない。 「……特に罠らしい罠もない。これなら行けそうだが……」 占い師さんの視線が、ふと一角に止まる。 「何だね?」 その先にはドクターさんと、 「……ワタクシには、ちょっと通るのが無理だと思いますわ」 その巨躯に気絶した少女を乗せた、ザクロさんだった。 「ああ……確かにザクロさんには……」 「俺の髪で天井までなら、押し上げる事は出来るが……」 女装少年さんの言葉を受けた形で言った黒服Hさんに、不良教師さんが首を振った。 「その後も少し歩かなくちゃならない。入るだけじゃ駄目だな」 「ふむ……なら、ここで一旦別行動、という事かね」 「別行動、ですか……?」 私の疑問に、ドクターさんが答えてくれる。 「ザクロ君が階段を使うしかない以上、ここから3階へあがる班と、階段を通る班に分かれた方がいいという事だよ、お嬢さん」 「え? でも、全員で行動した方がいいんじゃないんですか?」 「階段を渡るとなると、あいつを説得しなくちゃならないな。下手に大勢で行くと身構えられるさ」 「あいつ……? ……ああ、『13階段』か」 占い師さんの言葉に、黒服Hさんは手を軽く振った 「もしあいつを説得する気なら、その名前であいつを呼ばないほうがいい。嫌がるからな」 占い師さんは軽く首を振って 「……いや、俺たちは説得には回らない。ここから3階へ行くつもりだ」 「案内人としては、俺も3階までは付き添わなければ、な」 「兄さんが行くなら、もちろん僕も」 『わても行きまっせ―』 占い師さんの言葉に反応して、意向を示し始める不良教師さん達。 「あ、えっと……」 そこに、おずおずとした声がかかった。 「私も、白骨さん達と一緒に行きたいんですけど……いいですか?」 『もちろん大歓迎やでー!』 「ここから行けるなら、その人数が多いのに越したことはない」 人体模型さんがばしばしと金さんを叩き、占い師さんもそれに同意した。 …………えっと、不良教師さん達にドクターさんたち、黒服Hさんに、金さんと、私たちが決まった事になるから、後は……。 「あ、えっと、元々説得予定だったし、ザクロさん達に付いていこうと思ってるんだけど……」 そう言って、女装少年さんはドクターさンたちの方を伺った。 「ふむ……お嬢さんが加わるのはボク的には全く構わないよ」 「もちろん、美少女はウェルカムだ」 それに答えたのは、何とも純粋な男性陣の言葉だった。 ……女装少年さんが少し心配になってきた。 「……さて、これで組み分けは終わりか?」 占い師さんの言葉に、面々が頷いた。 「よし、じゃ、取りあえずの目的は3階で合流。俺たちはここから、あんた達は『13階段』を説得で3階まで上る」 「ワタクシ達が説得に失敗した場合は?」 「それなら、天井を壊してでも来ればいい。主戦力のあんたらがいないままでマッドガッサーには挑めんさ。最低限、あんたらかTさん達と合流するまで、戦闘を始めるつもりはない」 そこまで言って、占い師さんは天井を見上げ 「……まぁ、罠を解除したり、スパニッシュフライに操られた奴がいたら気絶させる位はするかもしれんが」 「……ふむ、では、ここで」 そう言って私に差し出されたドクターの手を パシッ 占い師さんが取った。 「…………ふむ」 残念そうな顔をするドクターさん。 こんな状況下でも自分の欲求を通そうとするドクターさんに、私は少し感心してしまった……。 前ページ次ページ連載 - 占い師と少女