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注意…ディケイド時空 少女は駆けていた 何かから逃げるように あるいは何かを追うように 自分自身の定まらない奇妙な浮遊感の中 ただ少女は駆けていた 階段を上り、非常灯に導かれ終に一枚の扉に行き着く 何に追いつくのか、あるいは何かから逃げ切るのか 少女は導かれるまま扉を開く、その先は吹雪く銀世界だった 邪悪なる者あらば――の霊石を身に付け―の如く邪悪を打ち倒す――あり どこかで聞いた昔話の言葉が頭にフラッシュバックする 吹雪の中、一対の怪人が相対する、虚ろな瞳の白き闇と紅光たる瞳の黒き闇 白が手を翳せば黒が燃え上がり、黒が手を翳せば白が燃え上がる 互いに炎を振り払った闇が拳を振りかざし交差する 生々しい音と共に銀世界が紅く汚れた 「もうやめて、――さん!!」 少女はその光景を見続ける事に耐え得るだけの強さを持たなかった 思わず叫び目を逸らすが生々しい音は絶えず現世界に響き続ける 風の音と、狂笑と、嗚咽と、打音だけが支配する空間 逃げ出すように元来た扉を開く その先は廃墟、それ以外に彼女はその光景を形容する言葉を知らない 重力を失ったように壊れた雑居ビルが漂う光景の中、円盤状の虹の中 『機械仕掛けの神』の如く逆しまの『舞台装置の魔女』が鎮座する 無数の少女たちがこの魔女に立ち向かい、そして墜とされる この光景がどれだけ繰り返されただろうか、 紫の服を身に纏う少女がビルに押し潰された時、隣に草臥れたコートの男が現われた 「世は正にカオス!これも全て貴様のせいだ―― ―、いや」 男の言葉に答えるように魔女の歯車の影から破壊者が姿を現す 「おのれ、おのれぇディケイドォォォォォッ!!」 「ディケイド……」 破壊者の翡翠の様な眼がこちらを見据える、底冷えするような悪寒と共に 少女は、鹿目 まどかは目を覚ました 「ま…ちゃん」 「う…ん?」 「まどかちゃん!」 「……夢オチ?」 うなされて眼が覚めた少女、鹿目 まどかを枕元に経つ青年が気遣う 「随分うなされていたけど」 「だ…大丈夫です五代さん」 青年に笑顔を向けサムズアップ、青年もそれを見て安心したのか同じく笑顔とサムズアップで返す 「うん、みんな笑顔が一番」 「はい!」 この青年は五代 雄介、まどかの両親によれば『大切な恩人』らしい 本人は冒険家であると語っており時々立ち寄っては彼女にその冒険譚を聞かせてくれていた 此処しばらくはその縁で鹿目家に居候と言う形を取っている 二人でリビングへと降り、家族を交え朝食を取る 「ほらたっくん、あーん」 「ぶぅ…」 「あれ、熱かったかな?」 「タツヤの面倒まで、ありがとう御座います」 「いえ、居させて貰っているんですから、何かあったらもっと手伝いますよ」 このような会話もほぼ日常と化した ふと、付けっ放しにしていたテレビがにわかに慌しい動きを見せる ――番組の途中ですが…………集団自殺…………警視庁では『未確認』の活動再開も視野に―― 『未確認』 その言葉を聴いた両親と五代の顔がかすかに曇ったことにまどかが気付くことはない 「……まどかちゃん学校の時間は大丈夫?」 五代が思い出したようにまどかに聞く、登校時間ぎりぎりの出来事だった 「えー、先生から今日は大事なお話が二つあります」 学校のホームルーム、担任の教師がやや仰々しく口を開く 「女子の皆さん!いいですか女子の皆さん、人の撮った記念写真にケチつけるような男とは絶対に! いいですか、絶対に交際してはいけませんよ!! 男子はそういった男には絶対にならないように!!」 この教師は往々にして私生活を教育の場に持ち込む、生徒の面々がそろって またフられたのか などの呆れと同情の入り混じった視線で『もう一つ』の話を聞こうと耳を傾ける 「それから今日は転校生を紹介します」 先ほどまでの熱版は何処へやら、おまけでも紹介するような軽さで転校生を招き入れる 「暁美さん入って来て下さい」 「暁美 ほむらです、よろしくお願いします」 「うわ、すっごい美人」 この時まどかは転校生の自己紹介も隣の席の親友の声も聞こえては居なかった 変わって脳内に映し出される今日見た夢の一場面 魔女に立ち向かい、最期に斃された紫服の少女 目の前の少女、暁美 ほむらは正にそれそのものだった 「うわ、転校生人気すぎ」 「人波に飲まれてしまってますね、聞けば病み上がりと言うのに皆さん少し配慮に欠けては……」 仁美とさやか、二人の親友が半ば呆然と転校生を眺める傍らで まどかもまた呆然と、しかし彼女らとはまた違った感情をもって暁美 ほむらを見つめていた 似ていると言う言葉では足りぬ、完全に夢で見た少女そのもの、その夢において彼女の最期は…… 「どうしました鹿目さん?話してこないのですか?」 「え?」 「気になるのでしょう彼女が、後悔しますよキチンと話さなかったことを」 「……どうして?」 「私の占いは当たります」 仁美の言葉に促されおずおずと前に出るまどか しかし彼女が口を開くより早く転校生のほうからこちらに話しかけてきた 「鹿目さん、確か保健委員よね?」 「あ、はい」 「久しぶりに人に囲まれたせいか少し気分が悪くて……保健室まで案内してくれないかしら?」 そしてそのまま二人で廊下に出る、なぜか案内される側のほむらを前にして 「保健室、こっちよね」 案内される側のほむらに導かれて保健室を目指すまどか (……普通は逆、だよね) 「ねぇ暁美さ」 「ほむらで良いわ」 「ほ、ほむらちゃんと私って、一度何処かで会っているかな?」 まどかの質問に対しほむらの眼が若干泳ぐ 気まずい沈黙があたりに流れる、余計なことを喋ったかと考えていると 「…鹿目 まどか」 「ハイィッ!!」 唐突に名前を呼ばれた 思わず反射的に妙なイントネーションで返事をしてしまう 「あなたは家族や友達って大事?」 「え?」 全くの想定外な質問、咄嗟のことに思考が進まず言葉に詰まる 「どうなの?」 「も、もちろん大事だよ!!家族も友達も、それにほむらちゃんだって!!」 その答えを聞いてほむらがまどかに抱きつく 「お願い、その気持ちが本当なら、絶対に『今』の貴女を捨てないで、貴女の大切なものが失われてしまうから」 「ほ、ほむらちゃん!?」 感極まったように涙するほむらに戸惑っていると何処からとも無く拍手が鳴り響く 「良い忠告だ、感動的だな、だいたいわかった」 「だれ!?」 警戒心も顕にほむらが問い返す、そこにはピンクのトイカメラを携えた白衣の男が立っていた 「通りすがりの保険医だ、覚えておけ」 彼女、暁美 ほむらは時間操作能力を持った『魔法少女』である 幾度と無く同一の時間軸を繰り返した彼女は経験則から発生する事象にある程度の予測を立てて行動することが出来る 故に滅多なことでは動揺もせず淡々と目的をこなす事が出来る そんな彼女が目を白黒させ言葉を発する事も出来ないほどに驚愕している 確かにこれまでも経験則から外れた出来事は度々起こった、彼女自身それを求めその積み重ねで運命に抗おうとしている しかし何の前触れも無く見知らぬ人物が登場するなど、ましてや学校の教員のひとりである校医が入れ変わっているなど今迄で一度も無かったことだった 「この人は門矢先生、先週転勤してきたんだよ」 観ると確かに『保険医・門矢 士』と書かれたプレートが白衣の胸元に張り付いている 「コイツが体調を崩した転校生だな鹿目」 「はい先生」 保健委員であるまどかは他の生徒と比べてこの男と接する機会が多いらしく既にある程度は馴染んでいる 「よし、あとは俺が見てやるからお前は教室に戻っておけ」 「わかりました、じゃあほむらちゃん無理しないでね」 まどかが行ってしまい、廊下に男とほむらだけになった時彼が口を開く 「じゃあ付いて来てもらおうか、この世界についても聞きたいしな」 この男だけは油断なら無い、暁美 ほむらの中でそう結論が下されるのに時間はかからなかった ――放課後 鹿目まどかは友人である美樹さやかとショッピングモールのCDショップに居た いつもの通りにパッケージを眺め、いつものように試聴をし、何時のもの楽しみ方で時間を潰している最中、いつもと違う声が聞こえた 『…けて』 「え?」 『たすけてまどか!!』 「まどか、どうかしたの?」 さやかが心配して声を掛けてくるがそれにも気付かずに『声』のした方へ駆け出す 気が付けば工事中ブロック立ち入り禁止エリアのど真ん中、その中央にかのくそ汚い淫zy……ゲフンゲフン、小動物が横たわっていた 「凄い怪我…でもこの子何処かで……」 「そいつから離れたまえ、君」 『アタックライド ブラスト』 小動物を抱えたまどかの足元に蒼い軌跡と共に無数の銃弾が打ち込まれる 「誰!?」 なんとも言えない姿をした人型が立っていた シアンの鎧を貫通するように配された無数の黒いプレート、どことなくバーコードを想起させるその姿の呼び名は 「『仮面ライダーディエンド』通りすがりのトレジャーハンターさ」 言うとディエンドはまどかから小動物を引ったくりまじまじと見つめる 「少女の願いを叶えるお宝と聞いたのに、コイツはたいしたお宝じゃなさそうだな、何処と無くあいつ等に似た雰囲気なのが特に駄目だ」 「どうしてこんなひどい事を!!」 「お宝が逃げようとしたら止めようとするだろ?」 突然白い煙が脇から噴出する 「まどか、こっち!!」 「さやかちゃん!」 消火器を構えたさやかの乱入に不意をつかれ小動物を取り落とすディエンド、それをすかさずまどかが受け止めるがディエンドもすぐに手を伸ばす 「警察呼びますよ!!」 まどかの叫びにディエンドの動きが止まった 「……警察…警察か、それは困った、なら呼べないように足止めしないといけないよね」 そう言って腰のホルダーから四枚のカードを取り出し銃に装てんする 撃たれる、そう思い咄嗟に身構える二人の予想に反し、引き金は銃口が天井に向いた状態で放たれた 「僕は帰るから君たちはこいつ等と遊んでいたまえ」 『カメンライド G-3 シザース アクセル G-電王』 三色の光が収束し四人の人影を形成するその隙にディエンドはいずこかへと消えてしまっていた
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どうしようか。 何も持たずに森に入ったら迷ってしまった。もう3日経ったろう。 俺はここでくたばるのか、そう思った途端力が入らなくなり仰向けに倒れてしまった。 それからしばらくして、「みぃみぃ」という鳴き声と共に目の前にタブンネが現れた。手にオボンの実を持っている。腹が減っている俺はすぐにタブンネの触覚に触る。 俺がどういう状況かわかったタブンネはオボンの実を俺に渡す。礼にやれる物が無いのでタブンネの頭を撫でてやると気持ち良さそうにしていた。 とりあえず俺は再び帰り道を探すことにした。するとタブンネがついてくる。本当に「やさしいポケモン」なんだな。 腰に手をかけた時、未使用のモンスターボールがあった。これでタブンネを捕獲。嬉しそうなタブンネを見て少しいじめたくなってきた。 あれから2日、まだ出れない。 腹の減った俺の目の前にはさいせいりょくのタブンネ。俺は食欲を抑えきれず、タブンネの両耳を引き千切った。 「みぃぃぃぃぃ!」と悲鳴をあげるタブンネ。逃げられる前にさっさとボールへ戻す。 頑張って火をおこして耳を焼く。こんがり焼けたところでタブンネをボールから出す。 出てきたタブンネは涙目で再生した耳を押さえていた。どうも嫌われたようだ。仕方ないのでタブンネを説得する。 「さっきはすまなかったな、タブンネ。でも仕方ないんだ。食料が無いのだから。だから、1日一回耳をくれ。飢えをしのぐにはこれぐらいしか無いんだ。」 タブンネは渋々承諾する。いい子だと頭を撫でてやり、焼けた耳を渡す。 タブンネはさっきまで自分の一部だった物を食べるのをためらっていたがこれしか食べ物が無いから仕方ないと食べ始めた。 それから毎日、タブンネの耳を千切ってボールに戻して耳を焼く。タブンネはこの気がおかしくなりそうな作業を必死で耐えていた。 やっと帰ってこれた。タブンネは自分の事のように喜んでいる。 家についた俺は命の恩獣とも言えるタブンネにオボンの実を沢山あげる。タブンネは美味しそうに食べている。 最後の食事おいしかった?と聞くとタブンネは首を傾げた。「最後の」とはどういう意味か気になるようだ。 俺はあるポケモンをボールから出す。腹を空かせたボーマンダ。俺はボーマンダに「できるだけゆっくり味わって食えよ」と言う。 ボーマンダはタブンネに襲いかかる。タブンネは逃げだす。しかしボーマンダは飛んで回り込む。タブンネは俺に助けを求めた。俺ならきっと助けてくれると思ったのだろう。 俺はタブンネの近くへ寄る。タブンネは安堵の表情を浮かべている。その顔を見た俺は頭を撫でるフリをしてタブンネをボーマンダに向けて突き飛ばす。 凄まじい絶望の顔でタブンネはボーマンダにかじられる。そこで俺はタブンネのボールを叩き壊す。さいせいりょくによる回復も出来なくなり、タブンネは更に絶望していた。 最期に「みいぃ…」と鳴いた時の表情をみたとき、勃った。
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その日、久しぶりに雨が降った。 天気予報によると記録的な大雨らしく、交通網の大半は麻痺しているらしい。 つまり、殆どの人間は撮影所に取り残される羽目になるのだ。 更に最悪な事に、この大雨は次の日の夜明け前まで続くと予報されている。 「参ったねぇ。まさかこんなに降るとは思わなかった」 流石の監督もこれには頭を抱えた。 普段から撮影所に寝泊まりする機会は何度もあるらしい。 しかし劇団の、それもほぼ全員が泊まる程の寝具は持ち合わせていなかった。 「取り敢えず帰れる人間だけでも帰した方が良いだろう。ここから家まで近い奴は俺が送って行く」 「あぁ頼む。だが、それでもまだ十分では無いぞ。この雨であちこちが通行止めになってるみたいだ。ケビン、セシル。あんた達の家の近くもな」 「げ、嘘」 「どうしよう…」 「どうするもこうするも、あんた達はもう居残り組確定なんだから。…と言う訳で、二人には手伝って貰うよ」 「手伝う?」 鸚鵡返しにケビンが疑問符をあげる。 セシルも同じように首を捻った。 「そ。あんた達二人には今日の晩飯作って貰うよ」 「へ?」 珍しく二人同時に思考がフリーズする。 外の雨音がより一層この空間の静けさを浮き彫りにしていた。 「ぼ、僕達二人だけ!?」 「ケビン、突っ込む所それだけじゃないよ…」 「いや折角だからさ、前に言っていたセシルの腕前とやらを味わってみたくてさ。おいお泊まり組、あんた達もそう思うだろ?」 『意義無~し!』 気味が悪い位に会場の意見が合致する。 もうこの時点で諦めていた事だが、その中には当然の如くケビンが紛れ込んでいた。 「何、流石にこの人数分全部を任せようなんて思って無いさ。皆にも手伝って貰うしな。だからあんたには全体の指示をして欲しい。残ったメンバーは寝具の確保。ちょっと近所まで借りに行かないと足りんから、あまりそっちにも人数割けないけどな」 結局少人数になる事に変わりは無いらしい。 しかし既に多数決で敗退しているセシルに最早拒否権は無い。 何より、ここに居る皆の期待を裏切りたくは無かった。 「分かったよ。こんなに大人数の料理を作るのは初めてだけど、やってみる」 「よし来た。そんじゃ、そっちは任せたよ。厨房に行けば多分材料も一式揃ってる筈だからさ。そんじゃ、こっちも漁りに行きますか」 等と冗談半分に洒落にならない言葉を残して監督組はホールを出て行った。 残ったのは、ケビンやセシルと同年代かそれ以下の少年少女数名のみ。 「と言っても…何を作ろうかな」 「う~ん…大人数で食べるんだから、基本的な所でカレーじゃないの?」 恐らく何も考え無しに発言したのだろう。 ケビンの側に居たこのメンバーの中で一番年長の少女が待ったを掛ける。 「はい、ここでそんなケビン君に質問。カレーは甘い派辛い派?」 「へ? 僕は甘い方が好きだけど…」 「それじゃあここに居る皆さんにも質問。はい、順番に?」 「甘口」「辛口」「中辛」「激辛」 「う…」 「じゃあ今度は…野菜の大きさはどれ位が良い?」 「大きいの」「小さいの」「柔らかいの」「ニンジン嫌い…」 「うぅ…」 見事なまでに意見の食い違いが発生している上に最後の方は答えですら無い。 考えてみれば、各家庭において最も違いの出る料理がカレーである。 一番小さな子が激辛が好みである事から十分に伺える。 「二択で済むならまだしも、辛さどころか具材にまで好みが分かれているんだから。そんな文句しか出なさそうな料理を大人数分作れる訳無いでしょう」 「あうぅ…」 流石年長の貫禄と言った所だろうか、ケビンは完全に自分の意見に負けていた。 この畳み掛ける様な圧し方は監督譲りだろうか。 「それよりも、シチューだったら好みが分かれなくて良いと思うけど」 「うん、それなら大丈夫かも。ケビンはどう…思う……」 セシルが振り替えると、ホールの隅の方でケビンが頭を抱えて座り込んでいた。 小さい声でぶつぶつと何か言っているのが聞こえる。 「ケビンおにーちゃんどーしたの?」 「放っておきなさい。ここ最近自分の意見が尽く否決されてるから拗ねてるだけよ」 「ボクには撃沈している様に見えるけど…」 「何れにせよ責任者はセシルなんだから、決定権は貴方にある。私達はそれに従うんだから」 「あ、うん。分かったよ。じゃあ作る物が決まった所で、早速厨房に行ってみようか」 『は~い!』 子供達の元気の良い返事がホールに響く。 そして、未だに傷心中のケビンを放ったらかしにしてぞろぞろとロビーに出て行った。 「ほら、ケビンもいつまでも拗ねてないで」 「だぁって、どうせ僕の話なんて皆聞いてくれないんだもん」 膝を組んで頬を膨らませているケビンを思わず抱き締めそうになるのをぐっと堪える。 今ここで誰かに見られると、また言い訳が面倒だ。 その上責任者である自分がこれ以上遅れる訳にもいかない。 ここは早くも最終手段に出る事にする。 「そんな事してると、もうボクご飯作ってあげないよ?」 「ふぇ!? や、やだよそんなの」 「だってケビンが来ないなら、ボクの作ったご飯はいらないって事だよね?」 「やだやだやだ! い、行くからそんな事言わないでよぉ!!」 脱兎の如くケビンは立上がり、セシルの手を取る。 「僕もちゃんと手伝うから、早く行こう!」 「はいはい分かったから。じゃあ、ケビンにはいっぱい手伝って貰うからね」 「うぅ…」 「返事は?」 「は、はい!」 少し前を駆けるケビンの後ろ姿を見て、最早イニシアチブと言う物が何よりも似合わなくなっているケビンに少し同情を覚えた。 (でも、こんな風に普通に笑ったり…出来無かったんだよね) そう思うからこそ、今のケビンが何よりも掛け替えの無く、愛しく思える。 (このままボク達ずっと―) 「じゃあ、これから役割を分けるよ。ボクのグループは野菜を大き目に、ケビンの方は逆にちょっと小さ目に切ってね」 「どうして? 野菜毎に分担した方が良くない?」 「さっきもあったけど、大きさにも好みがあるから。それに、毎回違う大きさに切ってたら感覚が分からなくなるでしょう?」 「あ、そっか」 どうやら先刻の経験が見事に生かされていない様で、セシルは少し先の未来に一抹の不安を覚えた。 今はまだ平気な様だが、またケビンが潰れてしまわない内に進めるのが賢明な様だ。 「俺達はどうすれば良いんだ?」 「じゃあ、君達は野菜の皮剥きお願い出来るかな」 「OK了解」 「ぼくたちは~?」 今になって思うと何故この様な場所に自分達よりもずっと年下の子まで居るのだろうか。 流石に彼達に包丁を持たせる訳にも火の前に置いておく事も下手な力仕事も任せられない。 「そうだね。お兄ちゃん達が野菜の皮を切っていくから、君達はその野菜を持って来て貰う係。そして、切り終わった野菜をボウルに入れて運んでくれるかな」 『はぁ~い!』 威勢の良い返事と共に手を上げる子供達を可愛らしく思いながら、セシルは小さく笑う。 「じゃあ始めるよ。何か分からない事があったら、ボクか近くのお兄ちゃんお姉ちゃんに聞くんだよ」 『はぁ~~い!!』 何処からこんなにパワーが溢れて来るのだろうか、先刻の倍以上の返事が返って来た。 これが若さだろうかと年と外見に似つかわしくない事を考えながら、セシルは彼達の元気に負けない様に立ち回らなければならない。 洗い方の分からない子供は次々とセシルの所に押し寄せ、簡単に実践して教える。 それ以外は比較的に早く済むと思っていたが、案外そうでもなかった。 ジャガイモの芽の取り方や、タマネギの切り方。 どれも一筋縄では教えられない部分が次々と浮き出て来た。 (これは、ちょっとキツい…かも) 兎に角、先刻抱いた不安を実証させてはいけない。 幸い野菜の積まれたボウルを見てもそれなりに形にはなっている。 要はあの監督を納得させる味付けを出せば良い訳だから、最終的な作業までに余計な事をしなければ大丈夫だろう。 寧ろ、そこまでの過程に行くまでに自分の指示に全てがかかっていると言えるだろう。 (それに、こう言うの…) 「何だか、楽しいね」 後ろからセシルに合わせる様にケビンが声を掛けた。 同じ事を考えていたと分かって、思わず顔が弛む。 「うん、そうだね。ボク、こんなにいっぱいの友達と一緒に料理するのは初めてだから。すごく、楽しい…」 「だね」 「ケビンも?」 「ほら、僕は家まで近いから。今日みたいに帰れなくなる方が珍しいよ」 「そっか」 (それは、ただ遠慮しているだけ) 今日の様な人数制限がある日には、いつも自分から身を引いていたのだろう。 それは決してケビンが遠慮深いだけでは無い筈だ。 (独りになるのが怖くなりたくなかったんだよね) 孤独に慣れようとしている最中に、皆と一緒に居るのが楽しいと思いたくなかったのだろう。 「順調…とはちょっと言い難いけど、形にはなってるかな。それじゃあセシル、この後はどうするの?」 「あ、うん。後は煮込むだけなんだけど、これだけじゃ味気無いから…」 「パンなんてどうかな。ほら、前に僕達も家でドーナツ作ったからさ」 傷を舐める様な提案ではあるが、生産性を考慮すると悪くは無い提案だろう。 何より、以前の楽しそうな表情を覚えている。 あの時の楽しさを、ケビンは今度はここに居る皆で味わいたいのだろう。 「うん、良いかも。シチューが出来るまでまだ時間が掛かるし、その間に皆で作るのも楽しいかもね」 「あら楽しそう。それって私達でも出来るの?」 「大丈夫だよ。道具を使って何かを切ったりする訳でも無いし、粘土遊びみたいで楽しいと思うよ」 「ぼくもやってみたい」 次々と興味が湧いたであろう子供達がセシルに寄る。 舞台に身を寄せているとは言え、やはりまだまだ遊びたい盛り真っ直中という事だろう。 「じゃあケビン、生地を作るからちょっと手伝ってくれる?」 「りょーかい」 「皆は生地が出来るまで少し待っててね。きっと監督達が返って来る頃には焼上がると思うから」 「そうね。じゃあ私達は手を洗って外で待ってましょう。二人も私達が見ていたら落ち着かないだろうから」 「そんな。そこまで気を遣ってくれなくても大丈夫だよ」 「ケビンは良くてもセシルはそうもいかない。監督に腕前を見せつけるんでしょう?」 「う、うん。そうなんだけど…」 「だったら尚更。監督の事だから、私達のせいで料理が失敗した所で譲歩なんてすると思えない。寧ろそれで監督に良い様に扱われ兼ねないでしょう?」 「あはは…仰る通りで」 流石年長と言った所か、監督と言う人物を良く理解している。 彼女が殿で厨房を出て行くと、途端に辺りは静まり返る。 思わず二人は顔を見合わせ、軽く吹き出した。 「皆とっても楽しみにしてるみたいだね」 「うん。その分ボク達が頑張らなきゃ」 「ほんとだね。人数分ちゃんと出来るかな?」 「それは多分…ボク達がどれだけあの子達を管理出来るかにかかってるんじゃないかな」 若干の気怠さがセシルの言葉に伸し掛かっていた。 それにはケビンも苦笑いを浮かべずにはいられない。 「それにしても、この厨房ってすごいね。監督の言ってた通り、本当に一通りの材料が揃ってる」 「それはね、いつもは料理を作ってくれる人が居るからなんだ。だけど今日は急に帰れなくなったから、事前に頼めなかったんだよ」 「なるほど。…よし、大体こんな感じかな?」 一通り生地を練ると、二人は一度手を休める。 悪い夢の様に膨れ上がったパン生地が、台の上でふてぶてしくその威圧感を醸し出していた。 「そろそろ出来た頃?」 「あ、もう皆入って大丈夫だよ。ごめんね、待たせちゃって」 「気にする必要は無いわ。込み入った話があると思ってたけど…」 「え?」 「何でも無い。気にしないで、ただの独り言だから」 後半の言葉が聞き取れなかったが、深く気にしない方が身の為の様な気がした。 この少女の背後に監督のあの不敵な笑みが見え隠れした様に見えたからだ。 決して怒っている訳では無い様だが、冷たい眼差しに一瞬身体が竦む。 「どうしたの?」 「う、ううん。何でも無いよ」 「あら、そう…」 それはケビンも気付いている様で、言葉の端々に恐怖とも不安とも取れる様子が表れていた。 「じ、じゃあ今から生地をひとり一個ずつくばるから。千切ったりしなければ好きな形にしていいよ。あ、年長組は悪いけど二人分作ってくれるかな。それと…出来れば小さい子達を見張ってて」 「大した物は無いけど、トッピングは一応冷蔵庫の中に入ってたから。でも、使いたい時はボクに言うんだよ」 『はぁ~~い!』 ここまで念を押しておけば、取り敢えず最悪の事態は免れるだろう。 一段落終えて、ようやく二人は盛大に溜め息を吐いた。 「セシルお兄ちゃ~ん」 「あぁ、はいはいどうしたの?」 等と余裕を置く暇がある訳が無く、様々な形の生地の残骸をオーブンに全て放り込むまで二人はテーブルを行ったり来たりするのだった。 「お~随分良い匂いがするじゃないか。これは…パンか?」 「監督、お帰りなさい」 食器をテーブルに配膳している最中に戻って来た監督一行を玄関先で迎えたのは、少女と年少の子供達だけだった。 その中に本来居る筈の二人が居ない事に監督は首を傾げる。 「あぁ、あの二人なら…」 食器で両手が塞がってるので彼女は目線で促す。 ロビーのソファーで溶けたアイスの様にぐったりしている二人がそこに居た。 「相当無理させちゃったみたい」 「人手よりも手間の方がずっと大きかったみたいだな」 「でも、監督の思惑通りだった」 「あ?」 「何でも…。それより、お兄さんが帰って来る前に皆テーブルに着いて。折角私達が作ったんだから」 「お、そうだな。じゃあお前達、荷物はここにまとめて置いて、手を洗って食堂に集合!」 その合図で、訓練を受けた何処かの兵隊の様な動きで食堂へと向かって行く。 彼女達にとってはいつもの事なので、小さく笑うと配膳の作業に戻る。 やがてロビーに誰も居なくなると、ようやくセシルから言葉が生まれる。 「ケビン…生きてる?」 「多分…」 実際、生きている心地と言う実感が無かった。 そこにある筈の地面に足が付いていない様な、現実離れした浮遊感に襲われていた。 「ボク達もそろそろ行かなきゃ…」 「そう、だよね…」 「きっと大丈夫だよ。皆とっても頑張ってくれたから。ほら、皆待ってるよ」 「うん」 手を取り合いながら立ち上がる。 繋がった部分が、暖かかった。 「セシル、少し冷たい…」 「ボクは暖かいから、これで良いかな」 「僕も、ひんやりして気持ち良い」 「うん」 そのまま二人は厨房の扉を開く。 当然の様に、既に中に居たメンバーのほぼ全員が一斉にこちらに振り向いた。 「遅いじゃないか。皆ハラ空かしてるのに、あんた達が居ないと始まらないだろう」 「だったら食べてればいいのに…」 「何言ってるの。貴方達が中心になって作ったのに、その貴方達が居なかったら意味が無いでしょう」 「ケビンお兄ちゃんもセシルお兄ちゃんも、おつかれさま」 「皆…」 思わずケビンと顔を見合わせた。 つい先刻まで疲労が表情に表れていたのが、自然と雪解けの様に柔らかくなった。 「ほら。監督の言う通り皆お腹が減ってるんだから、最後まで貴方が仕切り通してみなさい」 「分かったよ。じゃあ…いただきます」 『いただきま~す!』 全員が食べ始めた事を確認すると、二人分開いていた席に座る。 幸い監督の隣りや向かい合わせにはならなかったので、気取られない様に安堵する。 セシルが椅子に座ると、隣りの男の子から「おつかれさま」と言われた。 ごく自然な笑顔で対応すると、ようやくシチューを口にした。 近くの誰かが「おいしい…」と声を漏らしているのが聞こえた。 その為なのかシチューの温かさからか、この時初めて自分が落ち着いていると自覚出来た。 「おいしいね、セシル」 「うん。良かった…」 初めて大勢の為に作った料理で、しかも直接手を加えたのは僅かな部分でしかなかったが、それでも満足の出来栄えだった。 心の中で手伝ってくれた子供達にお礼を言いながら、セシルは食を進める。 追加のおかわりをする子供もかなり居て、それなりに評判だった様だ。 中には普段は余り多めの食事を取らない子供も含まれていた。 あっと言う間に二種類あった筈の鍋の中は空になり、不満の声もちらほら聞こえた。 「なんだあんた達、そんなにセシルの料理が美味かったのか。だったらまた今度機会を作らないとな。そうだろ?」 監督に合わせて目線が一斉にこちらを向く。 思わず二人はその雰囲気に一瞬気圧されてしまう。 子供達の期待に満たされた眼差しが、この上無く眩しく見えた。 「そ、そうだね…。今度は皆でやりたい、かな…?」 「ホント? やったぁ!」 「良かったなあんた達。料理長様から御許しが出たよ」 (…やっぱり早まったかなぁ) 皆に期待される事は悪い気はしない。 だがあの監督の眼下においての口約束は、最悪の言質を取られた気分だった。 「大変な事になっちゃったね…」 「良いんじゃないかな。初めて疲れて気持ち良いって思えたから」 「そう…かな。そうかも」 「だね」 頭の高さでタッチを交わす。 周りに居た小さな子供の数人が呆気にとられた表情を浮かべていたが、特に気にしない。 「じゃあ、次は何を作るか考えておかなきゃ。また頭を抱える羽目になるわよ」 「あぅ…」 容赦の無い少女の言葉に、ケビンはまた詰まってしまう。 尤もな指摘ではあるのだが、セシルには彼女の言葉に茨の様なものが見え隠れしている気がしてならない。 かと言って、その様子からケビンを嫌っているとも思えない。 (寧ろ―) 「何?」 「え? あ、別に…」 「あら、そう」 思わず少女の方に視線が固まってしまっていたらしい。 セシルの中で妙な気恥ずかしさが込み上げた。 「むぅ~」 ケビンが何故か頬を膨らませて不貞腐れていた。 丁度隣に居た年少の男の子がそれに気付いて、ケビンの顔を覗き込む。 「ケビンお兄ちゃんどうしたの?」 「何でも無いよ!」 「ケビン…?」 その様子を見ていた少女が、持っていたコーヒーカップをテーブルに置くと、クスリと笑った。 「心配しなくても、セシルはそういうのじゃ無いから安心なさい」 「なっ…。どう言う事だよ」 「そう言う事」 「むっ。あぅ…」 隙の無い返答に、またケビンは絶句してしまう。 実に楽しそうに微笑むので、他の子供達も珍しそうに少女の方を向いた。 「ねーねーお姉ちゃん。どう言うコト?」 「私に関するから秘密」 人差し指で男の子の唇に軽く触れて、少女はもう一度小さく笑う。 腑に落ちない表情で男の子は更に考え込む。 「何だあんた達。随分と仲が良いじゃないか」 「えぇ。お陰様でね」 監督にも興味を持たれた様だ。 テレビだか何かで一度見た天使と悪魔の絵画が頭に浮かんだ。 ただし、天使の方は頭に堕の字が付くが。 「どうやら私は歓迎されて無い様だねぇ」 「そう思うんだったら少し空気読んでくれる?」 「馬鹿ね。読んでるから引っ掻き回しに来たに決まってるじゃない」 御尤もな意見だが、冗談じゃない。 「今私がどんな人間だと思われているかよぉ~く分かったよ。だがな、私が用があるのはセシルだよ」 「ボク?」 「あぁ。お楽しみの所悪いけど、少し来てくれるか?」 「分かったよ」 自分には少し脚の高かった椅子から飛び下りると、先に出て行った監督を追いかける。 正に部屋を出る直前で、セシルは腕を掴まれて足を止めた。 「待ってよ。ねぇ、いつも監督と何を話してるの?」 「ケビン…? 何って、色々だよ。演技とか、舞台の話だとか。どうして?」 「だってセシル、監督に呼び出された時は必ず険しい顔をするから」 「あ、それは…」 表情には出さない様にしている筈だった。 だが余りにも自分が露骨だったのかケビンの洞察力が鋭かったのか。 何れにせよ、勘付かれた事には間違い無い。 だがそんなケビンの額を、コーヒーカップを持ったままの少女が軽く小突く。 「馬鹿ね。個人的に呼び出されたんだから、勝手に気も引き締まるでしょう。私が監督だったら、ヘラヘラした顔で話を聞かれたら殴っているわよ」 「あ、そっか…そうだよね」 言い訳でも無い事実の片々を上手い事抜き出した、尤もな理由だった。 それに自然に同意する様に頷くと、ケビンは納得した満足そうな表情を浮かべて戻って行った。 「ほら、貴方も。監督待たせたらまずいんじゃない?」 「そうだね。ありがとう」 「………いつまで」 「え?」 「何でも無いわ。急ぎなさい」 「うん…」 ひっそりと呟いた少女の言葉が、セシルの耳に張り付いて離れなかった。 言葉の続きに気付いたから。 ずっとセシルの中で渦巻いていたモノの、中心点にあったから。 「随分と遅かったじゃないか」 「ちょっと、色々あってね」 「ちょっと、色々か…」 言葉の矛盾を示唆された訳では無い。 監督はその言葉の奥に潜んでいる、セシルと言う人物を見ている。 「まあ良いさ。あんたも、呼び出されたからには何の話か気付いているんだろう?」 「分かってるよ。…ケビンだよね」 「まぁ、そう言う事だな。先週の練習に比べて吹っ切れた様に見えたからな。…何があった?」 僅かな間の変化に気付く。 獲物を捕らえた鳥の様に鋭い、ほんの少しの空気の変化すらも見逃さない。 つまり、自分には退却する術が何一つ無いのだ。 「もう、隠し通すのも辛くなって来たんだ」 廊下の非常灯の明かりが、静寂を引き立てる。 未だに嵐は過ぎ去っておらず、矢の様に打ち付ける雨音が微かに聞こえる。 「…話した、か?」 「まだ。だけど、自分に誤魔化しが効かなくなってるみたいなんだ。ボクが何かを抱え込む度、どうしてもそれをケビンが気付いてしまう。不安に思ってしまう。さっきだって…そうだった」 孤独に潰されそうだったケビンの表情が脳裏に甦る。 自分が側に居るのに、寂しい思いをさせてしまった夜。 「泣かせちゃったんだ。ケビン独りには広過ぎるあの家のホールで、両親の声を聞いてた」 「そうか。あいつが、ね…」 溜め息を一つ、零した。 頭の上に置かれた手が、温かかった。 「監…督?」 「もう、戻って良いぞ。ついでに寝具の準備をする様に言っておいてくれ」 「うん…」 廊下の奥に、小さな足音が消えて行く。 その音が完全に聞こえなくなると、彼女は廊下の手摺を椅子にして壁に凭れ掛かった。 額に手を置き、また一つ溜め息を零した。 「これ以上誤魔化すのは無理、か…」 「当然じゃない」 突然の第三者の存在に監督が驚いた様子は無かった。 その声の主がセシルが消えて行った方を一度確認した後、物陰から監督の前に姿を表した。 「何年も嘘の手紙で誤魔化し切れる訳が無い。貴女も今が潮時だと思っているんでしょう?」 「あんたは反対か?」 「さぁね。私にも何が正しいか分からないから。ただ言える事は、ケビンには『秘密』と言う鎖が幾つも絡まっていて、解錠も切断も難しいって事かしら?」 「幾つも、か…」 「分かっているでしょうけど、一番その要因を作っているのは…」 監督にも十分過ぎる程分かっていた。 その最たる理由が、セシルにある事を。 ケビンと似た境遇にある少女から見れば、セシルの存在は不審極まり無い。 「それでも貴女はセシルをこの場所に置いている。他の皆もセシルを受け入れている。そして、何故かそのセシルまでもケビンを気に掛けている。正直、分からない事だらけだわ。だけど…」 「あんたが気に食わないのはそっちじゃないだろ」 「当たり前でしょう。私は貴女“だけ”が知った顔をしているのが気に入らないの。今一番胡散臭いのは、紛れも無い貴女なのだから」 また一層と、雨の音が強くなった。 透き間風の唸り声が廊下に響き渡る。 やがて音が止み、再び静寂が訪れると、少女は踵を返す。 「私が言いたい事はこれで全て。後はどうするのかは貴女に任せるから」 「胡散臭いんじゃなかったか?」 「さぁ。私には分からないわ」 それだけを言い残し、少女もセシルの後を追う様に消えて行った。 「まいったね…」 鬱陶しい雨音を気晴らしに聴いてみた。 何処かの自然の中に自分が居る様な気がした。 「本当、どこまでもお人好しなんだな。あいつらは…」 寝具の準備が一通り整い、後は眠るだけとなった。 しかし好奇心旺盛な子供達は、嵐の夜に何かときめきを覚えたらしい。 余り認知したくない事実だが、体力がまだまだ有り余っているのは年少の子供達で、それよりも年上の者はほとんどが疲れ果てた表情をしていた。 「あ~あ、私も随分と年食ったもんだな」 「監督がそれを言わないでくれる?」 そう言えば彼女の年齢は幾つなんだろうと、女性に対して失礼な疑問を抱いてしまった。 外見はまだまだ二十代前半にしか見えないが、自分の父親を『愚弟』と言い捨てた時点で三十は既に超えているのは間違い無い。 「おい」 「あ痛っ!」 頭部に石の様な堅いものを落とされた。 見上げると、拳を握り締めた監督がそこに居た。 「あんた今失礼な事考えてたろ」 「う…」 「痛そう…」 「実際痛いんだよ」 「一体何を考えてたの?」 ケビンのその一言は言うまでも無く、辺り一帯の温度を下げた。 冷たく白けた視線を大量に浴びて、ようやく自分の置かれている状況を認識し始めた様だ。 「さぁて、程よく眠気が出て来た所でさっさと寝てしまうか」 「私、ちょっと身体が冷えたからシャワー浴びてきたいんだけど」 「あの、ボクも…」 「え?」 「許可」 「えぇ!? じ、じゃあ…僕も」 結局他にも数名の要望があり、男女別に分かれた大浴場を使う事になった。 どうやらまだまだ休息には有り着けないらしい。 そう言えば自分は大浴場が何処にあるのかは知らないのでケビンに引率を任せた。 雨音が囁く薄暗い廊下を歩く間に泣き出してしまいそうな子供が居ないか見張る為に、殿はセシルと少女が担う。 「なんかさ、ゲームのダンジョンにいるみたいだね」 「これでモンスターとかでてきたらおもしろいのにね」 等と余計な事を言う人物まで居る始末。 ちょっとした恐怖を体験出来る様な場所では、得てしてそれを煽る者が居るものである。 「ちょっと、こわいこといわないでよぉ!」 早くも涙目になる子供が現れ、慌ててセシルが制止に入る。 「ほ…ほら、こんなにいっぱい人が居るんだからさ。モンスターが出て来ても倒せるから。…ね?」 「セシル、それじゃ余りフォローにならない気が…」 「やっぱりでてくるんだ…」 「あ…」 子供達に合わせて冗談を交えたフォローのつもりが、予想通りの解釈をしてくれなかった。 (ケビンに突っ込まれちゃったよ…) いつもと逆の立場に追い込まれ、どう立ち回れば良いか分からなくなった。 それがケビンに伝わったのかは分からないが、その人物は列の一番前で苦笑していた。 「馬鹿ね貴方達。この御時世でモンスターなんて出て来る訳無いじゃない」 「ホント?」 「え~? つまんない…」 いや、実際出て来られたらそれ所じゃない。 寧ろ問題なのは、純粋な子供達の夢を玉砕させる様な発言の方だろう。 「早く行きましょう。幽霊なら兎も角、モンスターの話なんてしていても仕方無いから」 「そうだね…って、幽霊?」 思わず聞き返さずにはいられなかった。 前進しようと前に出した足の踏み場に迷い、注に浮いたままの子供も居た。 「知らないなら教えてあげる。少し前までこのホールはまだうちの劇団所属の物では無いシティホールだったの。出来たばかりだったから当然連日様々な劇団がここを使ってたみたい」 「そうか。今は専属だから撮影所として使えてるんだ」 「そう言う事。ある日私達みたいな少年少女劇団の公演が決まって、このホールにゲネプロに来たの。子供同士の恋愛を悲観的に捉えた、束縛的な劇のね」 束縛的と言う言葉がどの様な意味を指しているのかは分からないが、明るい内容では無いらしい。 子供達も分かる単語だけを掻い摘まんでそれぞれの解釈をしている様だった。 「だけど、その主役二人には問題があった。いいえ、そもそもキャスティングの時点で駄目だったのよね」 「駄目?」 今度はケビンが尋ねる。 いつの間にか列が崩れ、話を聞こうと彼女の周りを子供達が囲んでいた。 「実際その二人が恋仲同士だったのよ。と言っても、お互いがお互いを意識し合う程度で付き合っていた訳では無いみたい」 「こい…なか?」 やはり子供達には少し単語が難しいらしい。 「どちらも相手を好きだと思っていたって事ね。それだけじゃ無くて、その二人の片方が他の沢山のメンバーからも好かれていたの。当然そのメンバーは怒りを覚えた」 「偶然、なのかな…」 「さぁね。キャスティングを担当した人物が知ってか知らずか。状況をややこしくしてるのはそれだけじゃ無い」 「ま、まだあるの…?」 季節外れの怪談話には、まだまだ裏があるらしい。 子供達もそろそろ退屈し始めたかと思ったが、意外と彼女の話を聞き入ってる様だった。 「主役の二人は男同士だったのよ」 「ふぇっ!?」 露骨に奇妙な声を上げるケビンに注目が集まる。 かく言う自分も顔が熱くなるのが分かった。 「そんなに驚いてくれるとこの後も話し甲斐があるわね」 「あ、いや…。たはは…」 「脚本からもメンバーからも奇異の目で見られる。その重圧に耐え切れなくなって、周囲に妬まれていた子は風呂場にあった剃刀で手首を切って自殺…。結局その劇も公演されず終い。もう一人も同じ方法で後を追った」 雨音が何処か遠くに感じた。 まるでその二人の境遇が自分達の様に思えた。 「あんまりだよ。そんなの…」 「どうなのかしらね。周囲が悪かったのか脚本が悪かったのか。若しくは心弱かった二人か…。私には分からないわ」 不意にセシルは服を引っ張られる。 先刻まで自分のすぐ前に並んでいた男の子だった。 「ねぇ、おとこのひとがおとこのひとをすきになったらだめなの?」 「え?」 「だってぼく、みんなのことだいすきだよ? それってだめなことなの?」 成る程と思う。 この男の子の『すき』は… 「馬鹿ね。そう言う『すき』じゃ無いの。難しい言葉で言うと、お互いを愛し合う事を言うの」 儚くも哀しい程に純粋な、子供の疑問。 それに対して、少女は言い訳もせずに真っ直ぐ答える。 「覚えておきなさい。一つの言葉に対して意味は一つとは限らない。今は分からなくても少しずつ、その意味を考える様になれば良いから」 その少女の瞳は何処か淋しげで。 泣き出してしまうのではないかと思った。 「ここまで来れば後は在り来たりな話し。夜中に大浴場を使っていると、何故か湯船のお湯が真っ赤に染まるの。発現条件は分からないけどね」 「それが、その二人の血だって事?」 「まぁ、そうなるわね」 余りにも謂れの方が大き過ぎて、怪現象の方が霞んでしまう。 予想通り誰も怖がっている様子は無い。 「何か…うん」 「あら、拍子抜けしている余裕は無いわよ。成就出来無かった想いが怨念となって、仲睦まじい人が居ようものなら襲われるかも知れないんだから」 「え…?」 思い当たる節があり過ぎるだけに、その新情報は見逃せない。 怪現象を信じている訳では無いが。 「幽霊で無くても嫉妬って怖いものだもの」 「嫉妬、か…」 人間の負の感情の象徴。 溢れ過ぎると破裂してしまう、爆弾の様なもの。 人を人として見えなくしてしまう、快楽の無い麻薬。 「それって、好きな人同士が居たら…」 「想像の通り、引き裂こうとするわね。彼達にしてみれば、成就しなかった想いを当て付けられているんだもの」 それが本当だとしたら、その二人の傷は相当深くまで刻まれているだろう。 「そんなの…」 「ケビン?」 「あ、ううん。何でもない。それより、そろそろ行かないと遅くなっちゃうよ」 「そうね。私も随分と長話をしてしまったわ。お風呂を早めに切り上げるなんて愚行はしたくないし、もう行きましょう」 先刻の列を再び作り、一行は足を進める。 だが、その間に口を開く者は居なかった。 大浴場の前に着いても、時間を確認するだけだった。 ようやく口を開いたのは子供達だった。 「おねえちゃんのいってた『すき』って、なんなのかな」 脱衣所で服を脱いでいる最中、一番年下の子供が先陣を切った。 先刻言葉に疑問を問うた男の子だった。 「う~ん…。おれはよくわからなかった」 「セシルおにいちゃんは?」 「ボク? ううん、どうだろうね…」 分からない訳では無い。 だがこれは、子供達が自分で気付いていくものだと思った。 それに、自分だってまだまだ子供なのだ。 自分の固定観念を純真無垢な彼達に植え付けたくは無い。 第一、説明出来る自信が無い。 (それよりも…) 黙々と服を丁寧に畳んでいるケビンを見やる。 女性陣と別れてから一度も口を開く様子は無く、何かを考えている様だった。 「ケビンおにいちゃんはどうおもう?」 「うん…」 「おにいちゃん…?」 「ケビン」 「え?」 セシルの呼び掛けでようやく振り返る。 「どうしたのさ。さっきからずっと何か考え込んでるみたいだったけど」 「そう…だった?」 「うん」 自分の代わりに男の子が返答してくれた。 それに軽く苦笑いした後、セシルは表情を戻す。 「さっきの話、ずっと考えてる?」 「うん…」 「入りながらで良いから、教えてくれる?」 黙って頷くと、ケビンは着ていた衣服を形を崩さない様に籠に放り込んだ。 入浴用のタオルを掴んで浴場に入ると、既に子供達は浴槽に入って思い思いに遊んでいた。 どこから持ち出したのか、中には玩具を浮かべて遊ぶ子供も居た。 「あんまり暴れると滑って転んじゃうよ」 「だいじょ~ぶだよ」 返事は良いが、危っかしくて仕方が無い。 大体本当に怪我をされてはホールに残って居る他のメンバーに合わせる顔が無い。 「ボク達も入ろう」 「そうだね」 適度に身体にお湯を掛け、二人も浴槽に入る。 先刻の話で皆気分が下がってしまったのだろうか。 それとも子供達なりに気遣いあっているのだろうか。 遊び方がそれぞれ違っていても、誰一人として孤立している子供は居なかった。 「皆、本当に良い子だよね」 「うん。きっと、監督のおかげなんだと思うよ。ここでは当たり前の様に皆で助け合ってるんだ。昔から、ずっと…」 「すごいね。当たり前の事を当たり前にするのって、実はすごく難しいから」 「僕だってそう思う。でも、それでも自然に出来ている。だから、皆が皆を好きになれる」 『好き』と言う言葉の意味を考える。 ケビンは果たしてどちらの意味で言ったのだろう。 先刻少女が否定したが、あの男の子の『すき』にはもう一つの意味も含まれている気がした。 「ねぇ、セシルはどんな風に思った?」 「どんな…って?」 「さっきの、付き合っていたって言う二人の話」 「…正直、ボクにも良く分からない。周りが悪かったのかも知れないし。自ら命を絶った二人が悪いのかも知れない」 「違う。そうじゃ無いんだ」 「え?」 「僕がずっと考えていたのは―」 「う、うわあぁぁ!?」 突然の悲鳴に二人は顔を見上げる。 それとほぼ同時に、この空間の照明が全て消えた。 「て、停電!?」 「皆そこから動かないで、じっとしてるんだ!」 「で、でも…」 不意に脱衣所に非常用の懐中電灯が掛かっていた事を思い出す。 出口に一番近い自分が取りに行くべきだろう。 「今明かりを持ってくるから、それまで我慢してるんだよ」 子供達の様子から、停電の直前に何かに驚いていたのは間違い無い。 出来るだけ早急に子供達を集める必要があるだろう。 浴槽から上がり、早足で脱衣所に戻る。 「確かこの辺…。あった!」 手探りで非常灯を見付け引き抜くと、暗闇には明る過ぎる程に点灯する。 吹き抜ける隙間風が一糸纏わない肌に突き刺さる。 (早く戻らないと風邪引いちゃうよ…) 行きと同じ様量で浴場に戻ると、その温度差がより実感出来た。 「セシル!」 「早くボクの所に集まって!」 冷めた身体に風呂の御湯は熱かったが、それを気にしている余裕は無い。 恐怖に震えている子供達に少しでも落ち着いてもらう為、雪山の遭難者の様に子供達を抱き寄せた。 幸い全員が集まったようだ。 「少し経てばまた明るくなるから、それまで我慢してるんだよ。ね?」 「う、うん…」 「だけど、ゆーれいがきちゃうよ!」 「ゆ、幽霊?」 非常灯で浴場全体を見渡す。 少なくとも、幽霊や人影らしきものは確認出来無かった。 「せ、セシル…」 「え?」 ケビンが震えながらある方向を指差す。 それと同時に照明が回復し、暗闇に慣れていた眼を腕で覆った。 僅かに見える風景だけを頼りに現状を把握する。 しかしそれより先に眼の方が慣れて来た為、腕から開放する。 「なっ…」 言葉に詰まる。 正にその表現が正しかった。 「何だ、これ…」 子供達を驚かせた正体が、眼前に姿を現していた。 彼達が驚き、怯えるのも無理は無い。 「これって…」 「血…?」 間仕切りされた浴槽の一角だけが、赤黒く染まっていた。 更にその浴槽の縁には、破裂したトマトの様な飛散痕も生まれていた。 「ゆ、ゆーれい…だ」 「まさか。だけど…」 「ぼくたち、ころされちゃうの?」 「やだ! やだやだやだ、やだぁ…」 要約程度に理解していただけあって、その怪現象の意味は分かるらしい。 セシルは恐怖に竦む子供達をより強く抱き締めた。 かく言う自分も目の前に広がる疑い様の無い怪奇現象に恐怖を覚えずにはいられなかった。 ただ一人だけ、輪から外れて俯いていたケビンを見やる。 「ケビン…?」 「違う…違うよ」 小さく呟いた後、ケビンはセシルの腕を掴む。 そして強引に腕を引っ張り、あの血溜まりの前に立った。 「ケビン、何をする…!」 「わっ」と言う子供達の驚愕の声が聞こえた。 本当は自分も同じ声を出していた筈だが、それは不可能だった。 口を完全に塞がれていたからだ。 それも、ケビンの唇で。 どれだけ時間が経っただろうか。 それともほんの一瞬の出来事だったのだろうか。 唇を開放されると、今度は身体を抱き寄せられる。 「なっ…」 開放された筈なのに、声を発する事が出来無かった。 思考回路の処理が全く追い付かず、身体中を駆け巡る血液が沸騰している様な感覚に陥る。 「け、ケビ…ン」 「驚かせて、ごめんね。だけど…」 震えていた身体がセシルから離れる。 だが、それでも鋭く顔を見上げた。 「本当に君達が居るのかも見てるのかも分から無い。だけど、僕達は…。僕は、 セシルをこんなにも大事に想ってる」 「だれと、はなして…」 「ゆー…れい?」 「しっ」 後ろの方で子供達のやり取りが聞こえていたが、セシルはケビンをただ見ている事しか出来無かった。 「君達がそうだった様に、僕だってセシルが大好きなんだ。だけど、だからってそれを邪魔したり引き裂いたりするのは間違ってるよ。だって…」 (あぁ、そうか。ケビンが言おうとしていたのは…) 「だって、好きな人同士を否定する事は…君達自身を否定するって事だから!」 居る筈の無い幽霊と言うものが存在している矛盾。 同時に、それの存在意義の矛盾。 だから存在するのだろう。 「やっぱりそう言う事、か…」 後方で扉の開く音が鳴り、この場に本来そぐわない人物の声が響き渡った。 誰もがその人物の方に振り向き、それぞれが色んな意味で驚いていた。 「何で…?」 「その前に、どうでも良いんだけど…」 「え?」 「見えてるわよ」 少女の言葉と指差された先の意味に気付き、セシルはその場にしゃがみ込む。 大分時間を掛けた後、ケビンも崩壊する勢いで同じ行動を取った。 クスリと小さく笑うと、彼女は足下の点灯したままの非常灯を拾い上げた。 「どう言う事だよ。何で君がここに居るのさ」 「見れば分かるでしょう。様子を見に来たに決まってるじゃない」 「それで、僕達が信じると思ってるの?」 「あら、間違いじゃ無いわよ。私が見に来たのは、その真っ赤な血の海と…貴方達だもの」 「ボク…達?」 ようやくセシルは彼女の言葉の意味を理解する。 「君は、まさか…!」 「セシル?」 血糊の痕に近付いて、セシルはそれを指で拭ってみる。 最近になって馴染み出した感触そのものだった。 「撮影用の、小道具…」 「なっ…。じゃあ、さっきの停電…」 「えぇ。ただこの場所の電気を消しただけ。暗がりの中でもすぐに仕掛けられる様にしていたの。廊下も元々暗かったから、セシルも気付かなかったみたいね」 撮影用だけあって見た目こそ本物に見えるが、感触はただの絵の具でしかない。 考えてみれば、飛散痕が波紋状に広がっている筈が無いのだ。 「ペイントボールは失敗したと思ったけど、なかなか様になってるでしょう?」 「何、で…」 「確証が欲しかった。ただそれだけ」 「確証…?」 「あれだけ見せ付けられたもの。諦めも付くと言うものでしょう?」 血溜りに近付くと、彼女は底の栓を一気に引き抜く。 その後に近くのホースで血糊に御湯をかけた。 当然その朱は流れ落ち、何事も無かったかの様に排水口へ消えて行った。 「さっきの話も、嘘…だったの?」 「さぁ、どうかしら。それはケビン、貴方が決めて良い事じゃないの? いいえ、貴方の気持ちが自ずと決めてくれる筈」 「僕の…」 それだけを言い残して踵を返すと、彼女は風呂場から出て行った。 辺りがしんと静まり返る。 何処かの水道の音すらも嫌に大きく聞こえた。 「そんなの、分かんない…分かんないよ……」 喉まで出掛かった言葉をぐっと飲み込む。 それはこの場に居る誰にも聞いて欲しく無かった。 「ケビンは知らなくて良い事だよ」 きっと自分は此所に居られなくなる。 何処か遠くへ、消えてしまいたくなる。 余計な優しさに、潰されてしまいそうになる。 (ごめん、ケビン。その理由はボクには教えてあげられない。教えたく、無いから…) 初めて、自分が父親と同じ血を引いている事を自覚する。 独占欲と言う底知れない嫉妬深さに、何処までも墜ちて行けそうな気がした。 「おにいちゃんたちもおねえちゃんも…どうしちゃったの?」 「さぁ…ぼくにはわからないよ」 「へんなの。すきならすきだっていえばいいのに」 「どういうこと?」 「だって、おねえちゃんはずっとケビンおにいちゃんが―」 風呂場に戻ると頭から一気に御湯をかぶった。 少女よりも小さな子供達は、彼女の言いつけ通り大人しく入浴していた。 生まれて初めて思い知る。 身を裂かれそうになる。 失恋。 「でもさーぼくたちがあかくなってるのをみたのって、まっくらになるまえだよね~」 「ん…?」
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非常食? ◆9L.gxDzakI 宵闇の中を、のっしのっしと歩く影があった。 2メートルにも及ぶかと思われるほどの巨体は、人間の男である。 男臭い厳つい顔立ちのてっぺんは、1本の髪の毛もない禿頭。 ぱっと見ただけでは肥満にすら見えるその身体は、全身是筋肉の塊。 地上本部特務部隊の一員にして、鋼鉄の巨人・ネオゲッターロボのパイロット――武蔵坊弁慶である。 「まぁったく、一体何がどうなってやがるんだぁ?」 不機嫌そうにぼやきながら、弁慶は市街地を進んでいく。 人っ子1人どころか、彼以外にはまるで生物の気配の存在しない、不気味なゴーストタウン。 しかしながら、弁慶はそれにも――突き詰めれば、この状況そのものにすら、おくびも恐怖を抱いていないようだった。 「いきなり殺し合いをしろなんて、馬鹿馬鹿しいこと言いやがって」 それが癖であるのか、はたまた単純に頭がいい方ではないからなのか、いちいち心の声を口に出す。 かつては名の知れた山賊として、暴力と欲望の限りを尽くしたといえど、今の弁慶はこれでも立派な僧侶だ。 喧嘩っぱやい性格がなりを潜めたとは到底言いがたいものの、不必要な殺生は好まない。 殺していいのは、例えば鬼などの自分達を脅かすものであり、こうした私欲のための殺人は、到底受け入れられるものではなかった。 「とりあえず、あのプレシアってぇ女は一発とっちめてやらねぇとな!」 人攫いをした上に、こんなふざけたデスゲームを自分達に強要した極悪人。 ばしん、と右拳で左の平手を音高く殴ると、弁慶は意気込んだ。 「……あれ?」 と、不意にその険しい表情が緩む。 さながら風船から空気が勢いよく抜けたような、劇的なまでの変化。 「でも……どうやってやりゃあいいんだ?」 思いっきり怪訝そうな表情を浮かべて、弁慶は首を傾げた。 人間離れした強靭な肉体を持つ破戒僧は、武器さえあれば魔導師とも渡り合えると自負している。 しかし、問題はどうやってプレシアの元へと到達するかだ。 あの椅子に座らされていた時、最後に見たのは転移魔法の光だった。 彼女が待ち受けている場所は、このフィールドとはまるきり別の場所と考えられる。 そんな場所へ、魔法に関してはまるで門外漢な弁慶は、一体どうやって行くことができると言うのだろう。 加えて言えば、首にかけられた爆弾の存在もある。たとえ相対できたとしても、立ち向かった瞬間に爆破されるかもしれない。 力ずくでもどうしても外すことができなかったこれを着けた状態で、一体どうやって戦えばいいのだろう。 考えれば考えるほど頭がこんがらがっていき、弁慶の表情が徐々に苦虫を噛み潰したようなものになっていく。 「……あーやめやめ! まぁ何とかなるだろ、うん!」 思いっきり頭を振ると、弁慶は脳内から思考を外に放り出した。この男、頭は思いっきり悪い部類に入るらしい。 そして、デイバックから名簿を取り出すと、そこに目を通す。 「しっかし、スバルやティアナがいるのは当然として……なんで隼人の奴はいねぇんだろうな」 名簿の中には、つい先ほどまで一緒にネオゲッターに乗っていた、2人の少女の名前がある。 それらのことから、彼はゲッターごとこの場所へと送られて、そこから下ろされてあの椅子に座らされていたのだと思っていた。 しかし、スバルの駆る一号機に同席していた盟友・隼人の名前はどこにもない。 ゲッターごと転送されたのならば、どこかにいるはずなのだが……と、弁慶は頭をひねっていた。 「まぁ、アイツならどうにか生き残ってるだろ」 心配することの方がおかしい、といった様子で呟く。 何だかんだいって、あの隼人が敵の手にかかった様子が、弁慶にはどうしても想像することができなかった。 旧ゲッターチームの中でも唯一頭が切れ、おまけに腕っ節もしぶとさも一級品ときた、あのパーフェクトな超人は、きっとどこかで生きている。 それに彼ならば、下手に心配をかけようものなら、「余計なお世話だ」と鼻で笑うだろう。 故に、この場は彼のことを、全面的に信頼することにした。 「それに、むしろ問題なのはこっちの方なんだよなぁ……」 言いながら、弁慶はデイバックの中を覗く。 目に入ったのは、いくつかの食料品。あらかじめプレシアから支給されていた命綱だ。 「……足りねぇよなぁ、これじゃ……」 大食漢の弁慶は、がっくりとした様子でため息をついた。 「あーもう、どうなってるんだよぉ!?」 少年のような声が、無人の街中に響き渡る。 しかし、その容貌は、人間の少年のそれとは大きく異なっていた。 まず、身体が黄色い。グローブのようにして腕につけた赤いベルト以外は、全身鮮やかな黄色だ。 続いて、顔が人間じゃない。長い顎と鋭い牙は、どこからどう見ても爬虫類の顔立ちである。 さらに、尻尾もある。そんなに長い方でもないが、尻の部分からひょっこりと尻尾が顔を出している。 どう考えても人間には見えず、むしろ恐竜の子供といった様子の外見だった。 この人語を話す奇妙な爬虫類もどきは、名をアグモンと言う。 ミッドチルダと繋がったサイバー世界・デジタルワールドに住む、データの塊のような存在。通称デジタルモンスター。 それがアグモンの正体だった。 「姉御ともはぐれちゃったし……ああ、心配だ……フリードはちゃんとついてるのかな?」 せわしなく早口で呟くのには、それなりのわけがある。 そもそもアグモンは、先ほどまで彼のパートナー――キャロ・ル・ルシエと共にジャングルを歩いている真っ最中だった。 しかしその道中で、長旅の疲れが祟ったキャロは、高熱を出して倒れてしまったのである。 そこからフリードに案内されて、彼女を休めさせることのできる洞窟へと向かっていたのだが、 不意に意識が途絶えてしまい、気付けばあの場所で椅子に座らされていたのだ。 つまり、アグモンからすれば、キャロは病気で倒れたまま、この広大な殺し合いのフィールドに放り出されたということになる。 「とにかく急いで姉御を捜さないと……あー、でもどこにいるんだろ?」 精神年齢の幼いアグモンにとっては、このデスゲームよりも、重要なのはパートナーの方らしい。 パニック寸前になりかけた彼には、この異常な状況にまで神経を向けることはできなかった。 「えーと……こっちだ! 何となくこっち!」 慌てていたアグモンだったが、ここでとりあえずの行く先を決めて、ゴーストタウンを走り出す。 根拠なんて特にない。ただ、どこへ行っていいのか分からないが故に、当てずっぽうに頼っていた。 そんな何となくで選んだ道を、アグモンはひたすらに走っていく。 そして。 「……お?」 野太い声を漏らした、その男と出くわした。 (何だぁ、コイツ?) (何だろ、この人?) 弁慶とアグモンがそれぞれに抱いた第一印象は、大体似通った感じだった。 (トカゲか何かか? にしても、二本足で立つなんざ、ずいぶんとまぁ器用な奴だな……) デジタルモンスターの存在など知る由もない弁慶にとっては、アグモンは完全に珍獣も同然である。 見たところワニのような顎を有していたが、その割には手足は妙に発達しているし、身体も黄色い。 首から下の構造は、むしろ鬼に近いと言っても過言ではなかった。 (すっごい筋肉……身体も大きいし、レオモンとかワーガルルモンみたいだ) 人間などキャロ以外にロクに見たことがないアグモンにとっては、弁慶はまさに異様な筋肉ダルマ。 華奢で小柄な彼女の姿形からは、大きくかけ離れた屈強な肉体。 それこそ、前述の強力な獣人デジモン達にすら匹敵するような、極めて強靭な印象を受けた。 (この人も参加者なんだ) そして、首輪に気付いたアグモンは、とりあえず弁慶と対話を行おうとし、 首輪に気付かないが故に、アグモンをそこらの動物か何かだと思っていた弁慶は、 (……食えるのかな、コイツ?) 【1日目 深夜】 【現在地 D-2】 【武蔵坊弁慶@ゲッターロボ昴】 【状況】健康 【装備】なし 【道具】支給品一式、ランダム支給品1~3個(確認済み) 【思考】 基本:殺し合いを止め、プレシアを打倒する(どうやって戦うかは考えていない) 1.スバル、ティアナと合流 2.このトカゲみたいな奴(=アグモン)を捕獲して、食料にする 3.隼人は多分大丈夫だろう 【備考】 ・5話終了後からの参戦です。 ・自分とスバル、ティアナ、隼人の4人は、ネオゲッターロボごとここに送り込まれたのだと思い込んでいます。 また、隼人がどうして参加者の中にいないのかという疑問を持っていました。 ・隼人がこのゲームに関わっていないことを知りません。 ・アグモンがゲーム参加者であるということに気付いていません。 【アグモン@デジモン・ザ・リリカルS F】 【状況】健康・焦燥 【装備】なし 【道具】支給品一式、ランダム支給品1~3個(未確認) 【思考】 基本:熱を出して倒れたキャロと合流する 1.目の前の男(=弁慶)と対話を行う 2.やっぱりフリードもここにいるのかな? 姉御を守ってくれているといいけど…… 【備考】 ・2話で、フリードと共にキャロを洞窟へと運んでいる最中からの参戦です。 ・キャロが病気で倒れていると思い込んでいます。 ・このゲームそのものに関しては、気が回っていないようです。 Back 狂奔する正義 時系列順で読む Next 勇気の選択 Back 狂奔する正義 投下順で読む Next 勇気の選択 GAME START 武蔵坊弁慶 Next クロノは大変な超人達を集めていきました GAME START アグモン Next クロノは大変な超人達を集めていきました
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「此度の作戦では作戦空域に存在する帝国の哨戒艦隊を誘引、あるいは撃破することで空挺強襲を敢行する陸軍の障害を排除し、地上支援を行う航空打撃艦隊の空路を確保する! 諸君らの活躍、大いに期待している!」 そう艦隊司令より訓示を受け、熱い激励を持って送り出されたことを思い返しつつ、私は主操舵輪を握り締めた。視界が完全に砂塵と漆黒に覆われる中、複雑に絡み合う気流の間を縫うようにフネを進ませているのは連邦の誇る空雷戦隊だった。 旗艦たる重巡空艦に加え、軽巡空艦1隻、駆逐艦4隻と旧式の改装空母1隻からなる典型的な航空遊撃戦隊である。しかし、相手取る帝国の哨戒艦隊は通常、旧式の戦艦を旗艦とした主力艦6隻余りと10隻近い補助艦で構成された大艦隊だ。正面から火蓋を切れば、数、火力共に劣る我々の潰走は必至。で、あるならば―― 「転舵右15、上2」 「ヨーソロー、右15、上2」 灯火管制された非常灯のみが赤く照らす艦橋内部。暗がりの中、艦長より指示された方向へ舵を取る。大丈夫、訓練通りに要求された量、操舵輪を回すだけだ。主操舵輪を握る両腕に力が入る。 「次の回廊変更座標まではまだ時間がある。そう緊張していてはイカンぞ」 「はっ、はい!」 「はは、まあ仕方ないでしょう閣下。前が見えんと言うのはやはり怖いものですからな」 艦橋に置かれた長机を挟んで、艦長と司令が私に声を掛けてくださった。振り返れば、嫌が応にも巨大な空図が目に入る。そう、空図の中、乱雑に書き込まれた矢印と数字の羅列こそが連邦が帝国に有する最大のアドバンテージだ。 「随伴する軽巡より管制発光信号を確認。風速諸元をそちらに回します。」 通信員が艦長へと紙の束を渡し、艦長はその情報を元に地図に次々と修正を加えていく。気流は変性するまで時間こそ長いものの、流動的であるため、観測情報を元にどの空間にどの程度の気流回廊が形成されているか予測を行うのだ。 「気流回廊は今回提供された情報からさほど変化はしていないようですな。相変わらず観測隊に予報局はいい仕事をしてくれている」 だからこそ、この芸当が我々には可能である。――夜間気流内艦隊行動。流れに上手く乗れなければ一瞬で空中分解する程の暴風が吹き荒れる中、夜の闇に紛れて大型艦が隊列を組み行動するのだ。 「しかし夜間強襲に、旧式とはいえ相手方には戦艦がいる、こちらも戦艦を引っ張り出せればよかったのですが…」 「仕方がなかろう。土竜共には艦隊戦のことなど頭から抜け落ちているに違いない。まあ陸さんの支援に1隻引っ張り出せただけ良しとしよう」 「ええ、そうですな。戦艦に華を持たせる為にも必ずや敵艦隊を発見してみせましょう」 「君の幸運に期待しているぞ。艦長」 「お任せ下さい――転舵用意!」 空雷戦隊奮闘記 「転舵左20、下4」 「ヨーソロー、左20、下4」 「第110043気流回廊へ進入するぞ。立っている者は何かに掴まれ!」 ――いつ味わってもこの感覚だけは慣れないものだな。船体が大きく揺らぎ、軋みを上げる。緊張の一瞬だ。情報が正しくなければそのまま気流に浮かぶ残骸の一部となるだろう。 「各区画点検急げ! 後続はどうか!」 副長が状況を確認する。船体に損傷があれば次の回廊進入はそれを考慮しなければならないからだ。怠って得る結末は誰だって歓迎出来得るわけがない。 「艦長、特に異常は見当たらないとのことです。後続も問題なく随伴してきています」 「それは良かった。コイツも船渠から出たばかりだからな。そう安々とボロが出てしまっても困る」 風の波に乗りつつ、機を見て次の波へと飛び移る。大陸のほとんどに広がる大気流回廊群は連邦の縄張りだ。凄まじい勢いで流れる空気の波間を利用することで艦に備え付けられた推進機関の最高速力以上を叩き出す。航続距離は無尽蔵。『神出鬼没の空雷戦隊』と連邦の空中艦隊が各国から評価されるのはその為だ。 「見張り所より敵艦隊見ユとの打電が入りました! 」 ――来た。遂に捉えたか。風速計と風向計、そして空図だけが頼りの夜間航行は遂に、帝国艦隊を捉えたことで事態は慌ただしく動き出す。 「それは本当なんだろうな! 味方も対地支援でかなりの数の艦隊を出している。これで味方でしたなどとなればお笑いじゃすまないぞ?」 「右舷遠方に発光する物体多数発見とのことです。帝国特有の熱源パターンも確認しました。それに現在我々は作戦中の全艦隊に灯火管制が指示されていますから味方である可能性は限りなく低いかと」 副長の報告を聞いて、私はすぐさま航路図へ目を巡らせた。ひとしきり見回した後、ある一点で目を留める。ちょうどいい所に低空へ出る回廊があった。今にも舌なめずりせんと獰猛な狩猟者の表情を浮かべる。 「閣下。次の第110482気流回廊から気流より離脱、その速度で持って敵艦へ肉薄砲撃、そして航空隊による雷撃をかけるのはいかがでしょうか」 「そうするしかあるまい。真っ向から平行砲撃戦と言うのは戦艦相手なら自殺志願者と思われても仕方ない。次の回廊で飛行隊も上げるぞ。比較的ゆるい風速だから艦載機も抜けられるはずだ。」 「了解です。直ちに準備にかかります。――転舵用意! 右15! 下2!」 「ヨーソロー! 右15! 下2!」 取り付けられた大中小3つの操舵輪が素早く回わされ、それに数瞬遅れて船体もゆっくりと進路を取る。先頭の重巡空艦に合わせて続々と単縦陣を取りつつ後に続く航空遊撃戦隊。 「第110482気流回廊へ進入する! 衝撃に備えろ! 進入した後『飛行隊発進用意セヨ』と空母へ打電! 本艦も戦闘態勢に入る!」 「了解!」 通信兵が自分の持ち場へと慌しく戻っていく。その直後、ぐわんと艦が揺れた。金属が歪み、悲鳴を上げる。艦が体勢を取り戻す間もなく私は叫ぶ。 「点検はどうか!」 ははは。怯えたら負けだ。戦争とは笑顔でやらねば勝てないものだと我々は本能的に知っている。 「異常なしとのことです!」 「よし、よし! よし! 駆逐艦2隻と飛行隊を1部隊残す! 残りは敵艦隊に吶喊するぞ!空母に飛行隊発進を打電しろ!」 「了解!直ちに!」 熱に浮かされた様に騒がしくなった旗艦とは裏腹に、改装空母では粛々と艦載機を気流回廊へと浮かべていた。 「こちら第4飛行隊。雷装にて出撃用意が整った。発艦許可をくれ」 『了解、第4飛行隊発艦せよ』 暗色迷彩を施された機体に、指示灯によって鈍く金属色に輝く航空魚雷を一本腹に抱えた艦載攻撃機達が続々と留められていた甲板より浮かび上がり、気流回廊へとその姿を並べてゆく。 その機影は大きく分けて三つに分かれた。 対小型機戦闘を主眼に開発された、小口径の連発銃を艦首に揃えた制空戦闘機。 対艦戦闘も考慮に入れ、無誘導の中型爆弾を搭載し大口径の連発銃を構えた戦闘攻撃機。 そして機体の全長ほどもある大型の対主力艦航空魚雷を抱え、自衛用に小口径の連発銃を少々積んだ対艦雷撃機。 『第1飛行隊は我々に直轄だ。他の飛行隊は旗艦に指揮権を移譲する』 『Gel Da“了解”』 いずれも旧式推進機関によって航行する、浮遊機関のみで航行可能な今世代機より遅れた存在ではあったが、軒を連ねる飛行士達は幾戦を戦い抜いてきた猛者揃いだった。 誰かが呟く。回転羽根で飛ぶ快感を味わった者は回転羽根無しには飛ぶことはできないのだと。誰かが頷く。空気を押し分けて進むこの醍醐味に引かれてここまで来たと。 『やれやれ、後は対空哨戒でもしつつ余生を過ごそうと思っていたのだが』 『若造共は陸さんの対地支援の艦隊防空に当たるんだと。で、俺たちの出番と言うわけだ』 翼端に灯る航空灯と旗艦からの発光信号を頼りに続々と飛行隊は空中艦隊の後ろに列を成してゆく。夜間で、さらに気流内で推力の小さい艦載機で持って編隊を組めるのは彼らの技量あってのものである。 一方、先頭をひた進む旗艦、重巡空艦では着々と突撃準備が済みつつあった。 「不要危険物投棄! 一会戦分でいい! 後は全部廃棄だ!」 「主砲は再度点検を行え! 魚雷発射管も行うように!」 「艦長。見張り所より敵艦隊の詳細です。こちらを」 次々と指示を与える艦長に、縦横無尽に艦内を走り回る通信兵より幾枚かの資料を手渡された。艦長はそれを一瞥し、顔を歪めた。その顔色に気づいた司令が疑問を投げかける。 「艦長、どうかしたかね? 何か不測の事態でも?」 苦虫を噛み潰した表情でもって司令へ振り返った艦長は、先刻手渡された資料を司令へ回した。それは連邦軍に広く配布されている帝国艦種一覧だった。その中より抜き出された数種の艦影の横に現像された写真が貼り付けてある。 艦長がひどく気分を害したのはその中の一情報、帝国の比較的新しく就役した戦艦、その戦闘力と航行速度から『巡空戦艦』と呼ばれ恐れられる高性能艦が、何故かこんな偏狭地の哨戒任務についていると言う事実であった。 「……巡空戦艦が哨戒についていたのか」 「……まさかこちらの情報が漏れているのでは。でなければこんな処に運用費用の嵩むデカブツを送り込んでくる筈がない!」 「情報漏洩があったとしても増援が間に合う距離ではない! 慌てるな艦長。君が怯えてしまっては兵に影響する。誤算と言うものは誰にでもある」 「しかし……ッ!」 ――ああ、何故何故何故! 何故こんな処に新型戦艦がいる! 母なるパルエは我等を見放したもうたか! こちらにはまともに戦艦と撃ち合える数も攻撃力も防御力もない。通常通り、旧式の戦艦ならば対抗出来たものをこれでは......。錯乱しかける艦長の脳内に、冷水が一粒降りかかった。――いや、少し待て……そうか! まだアレがあった! 「副長。艦首魚雷は何を用意している」 「艦首魚雷ですか?通常通り時限信管の榴散弾頭装備高速魚雷を装填しておりますが」 「大型魚雷に切り替えだ。発射管8門全てに徹鋼弾頭装備大型魚雷を装填しろ」 「はっ……は? 大型魚雷は威力こそ高いですが低速の上、一斉射分しか用意されていませんが」 一瞬呆けた副長の声に艦長は凄惨な笑みで持って答えた。 「――雷撃だよ。本艦は敵巡空戦艦に近接雷撃戦を仕掛ける!」
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占い師と少女 マッドガッサー決戦編 15 ○月×日 22:26 「煙ったいなぁ……」 空き教室の半分を、黒い煙が覆っている。 幸い教室と廊下とを繋ぐ扉の近くにまで煙は来ていないけれど、それでも室内は少し煙っぽかった。 扉を開ければもう少しマシになるんだろうけど、不用意に出口を開け放つわけにもいかないし……。 「……完璧に壁、張られちゃったのかな」 先程から何度かゴム弾をその中へ打ち込んでいるが、どこへ打ち込んでも返ってくるのはゴムの焼ける音と臭いだけだった。 持ってきた弾数はそこまで多くはない。撃った後回収ができない以上、無駄撃ちは避けたいのだけれど……。 「めんどくさいなぁ……よりにもよって『骨を溶かすコーラ』の契約者と当たるなんて」 普通の壁なら壊したり、弾を床に当てて回り込ませることも出来る。 けれど、それが可動な上にいくら弾を当てても削られない壁だとなると……。 「……どう考えても不利だよね、僕」 銃口は下げず、両手で構えたまま肩をすくめる。 ゴスロリの服がポケットに入った弾の重量分だけ動作を遅れさせながら、それに合せて動いた。 「オリカルクム入りの弾も溶かされちゃったし……」 ついさっきまでポケットに入っていたそれら二発の事を考え、もったいなかったなぁ、と首を振った。 残弾数は62発。もし本格的な銃撃戦になれば、その程度の量はすぐに無くなってしまうだろう。 一応、その他に普通のゴム弾と、硝酸銀を含んだ弾丸も持ってはいるけれど……。 「多分、硝酸銀も簡単に溶かしちゃうんだろうな……」 運よく奇襲をかけて相手を追い込めはしたけれど、これ以上相手を追い詰める手立てはない。 一見すれば扉を抑えている自分が有利なように見える状況なのだろうが、個人的な心情を言えば完全な八方塞がりだった。 しかも、「骨を溶かすコーラ」の契約者が自分を殺す気になったら、こちらに対抗する手立てはない。 「まぁ多分、面識あるし殺さないだろうとは思うけど……」 ……「覚えてないかもしれない」なんて考えは、その時全く持っていなかった。 ついでに、「覚えてても殺されるかもしれない」なんて考えも。 「うーん…………」 ちらりと壁にかけられた時計を見る。 幸いなことに黒煙から逃れたそれが指している時刻は、夜の10時28分。 もう既に、黒煙が充満してから7、8分が経過していた。 しかし特別な煙なのか、一向に晴れる気配はない。 しかもコーラの壁が音を吸収してしまっているのか、この数分間、向こうの声は全く聞こえていなかった。 つまり、無音で、視界も悪く、改良したとはいえまだまだ重いハンドガンをずっと持ち上げた状態で数分間を過ごしていたのだ。 …………正直、退屈だし、かなり疲れていた。 「結構頑張ったし、僕が今ここから逃げても誰も責めないんじゃないかな?」 だって、この後何分待たなきゃいけないかも分からないし、もし相手が疲れるのを待っていたらこの後ずっとここでハンドガンを構えてなくちゃいけないし……。 大体、どう考えても勝てない相手とずっと向かい合うのにも精神的な疲弊が重なるんだよねー。 あの真面目な黒服みたいに胃を悪くしたくないし、僕が倒れたら困る人がいると思うし……多分。 そんな言い訳を心の中でしつつ、少しずつ扉の方へと向かっていると―――― かさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさ………… 「……うん?」 ――何か嫌な音が、黒煙の中から聞こえてきた。 そういえば、ここへ来る前にも数百匹見かけたな。 結構綺麗な印象があったけれど、もしかして見えない所は汚いのかな、この校舎。 鼠もいたし、蜘蛛もいたし……。 あれ? でも蜘蛛はいた方がいいんだっけ? かさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさ………… 「……っと、そんな事を考えてる場合じゃなかった……」 思考が飛んだ一瞬の間にも、その足音はこちらに迫ってきていた。 少しして、黒い煙の中から、それと同じくらい色の濃いGがわらわらと這い出てくる。 煙が覆う前は全然いなかったのに、どこから出てきたんだろう? 数十匹単位のGが、黒煙からどんどん排出されている。その数、目視しただけで50匹以上。 しかし、こちらが攻撃を仕掛けたり、驚かしたりしなければ襲われない事を知っているので、慌てはしない。 「自然体、自然体……」 そう自分に言い聞かせながら、壁と同化するように動きを止める。 銃口がプルプルと震えているが、多分見逃してくれるだろう。 かさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさ………… Gはどんどん増えて行き、黒い波を形成していく。 動かない人間なんかは無視をして、それらは進む……はずだった。 「自然体、しぜんた…………うわっ!?」 しかし、呟きながら動いきを止めていた身体にGがわさわさと登ってくる。 ただ壁だと思って上って来たのならいいのだけれど、上ってきているGは布の薄いゴスロリの服から出た足に、その牙を突き立てた。 「ちょっ、うわっ、痛い痛いっ!」 こうなったらもう、自然体何て言っていられない。 左手をハンドガンから離し、身体に這い上がってきているGを払った。 払われ、地面へと落ちたGを、右手のハンドガンで撃っていく。 「何か恨まれるような事したかなぁ、僕」 Gに浸食されていない、扉の方へと向かいながら呟く。 その間に足を上ってきたGは手で払い、先に上ってきたそれらと同じように撃ち落とした。 ……でも、どうやら撃っても再生するみたいだ。急所を打たれたはずのGは、それでもすぐに他のGと共に後を追おうと走ってくる。 「早く逃げよ……」 小走りと言うよりは殆ど全力疾走で扉へと走る。 この部屋の扉は一つ。Gを部屋に閉じ込めた後、扉さえ見張っていれば彼らに逃げられることもないと思う。多分。 …………そして、扉まであと少しと言う距離で カランッ 何かが、目の前に落ちてきた。 「え…………?」 それは、見た事のある形。 表面を濃い茶色とグリーンのような模様で覆われた、瓢箪のような形。 そういえば、閃光弾や手榴弾はこんな形や色をしていたような。 「………………あれ?」 ……と言うか、さっき投げたはずの閃光弾だった。 「うわ、何で爆発してないの……」 そう言えば爆発音とかしてなかったなぁ、なんて今さらながらに気付く。 あの中の誰かが、一時的に閃光弾の爆発を凍結したのだろうか。 「…………しかも爆発寸前じゃないかっ」 それが炸裂する前に、顔をそむけ、目を閉じた。 目を閉じ切った瞬間、昼間のような光量が瞼を通して目に入り、小規模な爆発音が耳をつく。 「危ないなぁ、もう」 元々自分の所持物であった事は棚に上げ、閃光弾を投げた誰かに向けて呟いた。 そむけていた顔を上げ、身体にまた登ってきたいたGを払う。 そして再び顔を扉へと向けようとして―――― 「…………っ!?」 ――――煙の中から、一人の青年が出てきていた。 白衣を着たその青年は、そのまま走りの勢いを殺さず、まっすぐに自分の所へと走ってくる。 風になびく白い白衣が、黒煙を背景に映えている。 距離の関係か、顔までは見えなかった。 「……直接僕を気絶させるつもりなのかな?」 右手のハンドガンを、彼へと向ける。 白衣の青年との間には、何の障害物もない。オートポインターの能力もあるし、まず外れる事はないと思う。 「取りあえず足を狙って、と……」 この距離だと下手に頭を狙ったら気絶だけでは済まないかもしれないしね。 両手で狙いをつけ、引き金に手をかける。 それを、そのまま引き絞ろうとして―――― ブンブンブンブンブンブンブンブンッ!!! 「…………うぇっ!?」 ――――先程まで床を這っていたGが、一斉に飛び上がった。 視界を覆うように飛び上がったGを前に、動揺が走る。 青年の姿は見えるには見える。けれど、これでは撃ってもGに防がれてしまうだろう。 ……しかし、それでも、射撃で鍛えられた目には、Gの合間を縫うように青年の足にまで届く隙間を一点、見つけていた。 青年との距離は近い。早く撃たないと、ハンドガンでは対処しきれない距離にまで近づかれてしまうだろう。 接近戦に銃は向かない。その為に一応格闘技も少しなら出来るようにはしているけれど……わざわざ前線に出てきた青年だし、多分自分なんかよりずっと強いんだろうな。 「だから、ごめんね」 そう呟き、引き金に再び手をかける。 それを振り絞り、発砲しようとした瞬間……非常灯が、青年の顔を照らした。 「…………え?」 その顔は、「骨を溶かすコーラ」の契約者と瓜二つで、 「骨を溶かすコーラ」とは、面識があって、 面識のある人間を撃つ…………そんな錯覚を、その顔は引き起こさせた。 一瞬、青年を撃つ事にためらいが生まれる。 その躊躇した一瞬で、青年と自分を結んでいた線上にGが入り込んだ。 「やば…………」 そう呟くと同時に、Gをかき分けて青年がやってくる。 ハンドガンがギリギリ届く範囲……青年の周囲のGの壁は、薄くなっていた。 ……これなら、撃てる。 「…………よし」 再度降って湧いた、そして恐らく最後のチャンス。3度目の正直だ。 狙いを付け、引き金に指をかける。 「足を撃つだけだ……殺すわけじゃない」 自分に言い聞かせるように、一言呟いた。 パンッ それと同時に、引き金を振り絞る。 銃口から放たれた銃弾は、狙い通りの線を描き、青年の足へと向かう。 (当たった…………) そう確信した、その時だった。 ゴポポポポポポポポポポポポポポポポポ………… ――青年の足元から、コーラが立ち上った。 「……足と一緒にコーラを移動させるなんて、反則じゃないのかな……」 じゅう、と音を立ててコーラに阻まれるゴム弾。 その一発を交わした青年は、ハンドガンの射程圏内であり射程圏外である、そんな境界にまで既に入り込んでいた。 咄嗟に受けの体勢を整えたけれど、やっぱり遅すぎた。 「……ふっ」 言葉と共に放たれた青年の拳が、鳩尾を直撃する。 膝を折り、倒れそうになるも、意識はまだあった。 反撃を試みようとしたその時―――― ストン ――――青年の手刀が、首に入った。 「……悪いな」 その言葉が聞こえるか、聞こえないか。 そんな一瞬の後に、意識は暗転した……。 ○月×日 22:31 黒服Y、失神 前ページ次ページ連載 - 占い師と少女
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藩国内における騒乱とその対応策について 藩国民の皆様に緊急のお知らせです。 現在、法官組織の乱れからくる一連の騒乱により、 藩国内で事件を起こす者の数が増えています。 藩国政府はこれに対処すべく、 藩国内安全保障特別法ならびにキノウツン国軍非常事態時行動規則に基づき非常事態宣言を発令。 藩国軍の動員をもって騒乱の鎮静化を図っています。 藩国民の皆様におかれましては、 騒乱が鎮静化するまでは一時的に外出等を極力控え、 食料供給その他の生活継続手段につき、藩国軍及び藩国警察の誘導に従っていただきますよう、 よろしくお願い申し上げます。 また、現在NW全域において帝國・共和国の区別なく、 法官組織の立て直しのための各種施策が行われております。 法権力の濫用から藩国民の皆様をお守りすべく、 キノウツン藩国においても、 有志法官による法秩序維持、及び増発された粗製法の無効化を図るべく、 新組織の結集を急ぎ進めております。 行動を規制し、自由を制限する法は確かに社会を形成する上である程度は必要です。 しかし、行き過ぎた規制は自由の持つ優れた部分をも殺してしまい、 やはり正常な社会を成立させないということを、 世界管理機構・管理番長に国権を奪われた経験を持つ私たちキノウツン藩国は、 他のどの国よりもよく存じております。 それゆえに、一刻も早い法秩序の回復を目指して精勤して参ります。 藩国民の皆様におかれましては、乱発される情報に踊らされることなく、 家族や友人、近所の人々とよく話し合い、落ち着いた行動を心がけるようにしてください。 藩国内の一部では、隣国であり、 私たちキノウツン藩国のかけがえのない友邦国であるフィーブル藩国に対し 犯罪行為を計画していることが囁かれています。 繰り返しますが、フィーブル藩国は私たちのかけがえのない友です。 皆様も、夢の剣騒動から復興をする際に、 フィーブル藩国民の方々にどれほど助けられたか、良く覚えていることと思います。 そして、私たちキノウツン藩国においては、 受けた恩義を仇で返すような不義は決して許されることではありません。 生活の困窮から、やむをえず犯罪に走ってしまう考えが生まれることもあるかもしれません。 しかしそれは私たち藩国政府の不徳のなすところであり、 その矛先を友人に向けるのは、やはり間違っています。 手を取り合える存在に対し、憎しみをぶつけ争うことがどのような悲劇を生むか、 ムラマサの悲劇を経験した皆様なら、きっと分かって下さると私たちは信じています。 そして何よりも、友人同士、話せば必ず分かりあえます。 今回の非常事態にあって、フィーブル藩国摂政戯言屋氏から 政府首脳部に「今回の危機を乗り切り、今後もより良い関係を築くために」 と、真っ先に打電をいただきました。 今後は政府レベルだけでなく、藩国民一人一人の対話・交流を進めていくことで、 北海島全体を両藩国民の皆様にとって住みよくしていけるよう、 両政府共に尽力して参りますので、ご理解とご協力をよろしくお願いいたします。 (草稿:キノウツン藩国政府一同) (認可:藩王・キノウ=ツン、摂政・アシタスナオ、摂政・浅田)
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各府省が個別に実施する非常勤職員採用試験 各府省のホームページ、またはハローワークにて募集中。 非常勤職員からのステップアップ採用 現在人事院、各府省で検討中 チャレンジ雇用って何? 知的障害者をターゲットにした制度で、身体や精神でも利用できる。 職歴のない障害者を中央省庁や地方自治体が採用し、1~3年非常勤職員として雇用する制度。要はこの1~3年の職歴で民間に行け!というお話。 ハローワークで紹介してもらえる。 名前 コメント
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非常識食 速攻魔法 自分フィールド上に存在するモンスターを任意の枚数墓地へ送って発動する。 墓地へ送ったカード1枚につき、自分はカードを1枚ドローする。 絵師:○○様 モララーのビデオ棚に投下された作品に登場。 自分フィールド上のモンスターをドローに変える。 最大で5枚ものカードをドローできる可能性があるカード。 ただ普通に使うと1枚のアド損である。 効果的な利用方法としては、 攻撃対象となったモンスターを墓地に送り、攻撃対象を変更させる。 モンスター全体除去効果にチェーンしてさきに墓地へ送る。 などが考えられる。 モンスターを大量展開しやすいデッキに入れておくと、重宝するかもしれない。 原作において モララーのビデオ棚に投稿された、「おれのよめ」の一コマ 関連カード