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前へ 千聖は「んー」と短く呻くと、静止して私の顔をじっと見た。 おお、こう見るとやっぱりイケメンだね、岡井少年は。 一人乗り用ブランコに無理やり2人で座っている状態だから、体中の側面がぴったり密着している。 そんな体勢で見つめてくるもんだから、また少し胸がドキドキした。 「・・・絶対、なっきぃと千聖の結婚生活はハッピーだね」 「そ、そう?・・・キュフフ」 さっきから、無駄に男前度が増している岡井はんは、声のトーンまで低くして、私の手をギュッと握ってきた。 何これ?告白!?告白なの!?受け入れていいの? 千聖は結構誰にでもこういうことを言う。それはわかっている。 わかっているけど、こういう真剣な表情とか、唇をついてでるくすぐったい言葉にいちいち心を乱されてしまう。 「まず、家事分担が結構いい感じじゃない?なっきぃは定位置女子だから掃除、千聖は料理。洗濯は仕事の前に二人でやればいいじゃん?買い物も基本一緒かなー」 「いいねいいねー」 「セールスマンとか勧誘電話、なっきぃはうまく追っ払えないでしょ?千聖にまかせて!その代わり、いろんな支払いとか千聖絶対忘れちゃうから、お金の管理はよろしく!」 「・・・なんか、本当に上手くいく気がしてきたんだけど」 千聖の肩に頭を乗っけてみると、その私の頭に、千聖の頭が乗っかってきた。 こんなの、舞ちゃんがいたら絶対やらせてくれない。・・・否、できない。 私は千聖とはキュートの中でも特別仲がいいつもりだけど、千聖にとって私が特別なのかどうかはわからない。千聖には舞ちゃんがいるって思ってたから。 でも、もしかして私にも、千聖の一番手になるチャンスがあるんじゃないだろうか。 今みたいに舞ちゃんが他の人に夢中になっていて、千聖が私・・・というか“私を口説くこと”に夢中になっているのはいい傾向だ。 たらしでおおらかな千聖と、都合のいい女タイプの私。良くも悪くも、相性はバッチリなのだから。 「千聖!」 「うおっびっくりしたぁ」 いきなり顔を上げたことで、さっきより近い距離で千聖と目が合う。 「あのね、結婚はともかく、将来的に千聖ルームシェアならやってみたいかも」 「おっ、まじんがー!?」 「だって、うちらホテル同室になっても全然トラブルになんないし、なっきぃは千聖といると楽しいよ」 「ふがふがふが、でへへ、嬉しいんだけどぉ」 小麦色の肌がちょっとピンク色になって、バシバシ私を叩いてくる。 案外、ストレートに褒められたりするのは慣れてないらしい。シャイで自分に自信がない千聖らしくて、ちょっぴり母性本能をくすぐられる。 「前にね、ママが言ってたんだけど。結婚っていうのは、足りないものを補い合うことなんだって」 「足りないもの・・・」 「うん、だからね、やっぱりうちらは夫婦になれちゃうんじゃない? おおざっぱな千聖に、神経質な私。朝弱い千聖に、夜弱い私。決断の早い千聖に、優柔不断な私。・・・どう?よくない?これからはなきちさで行こうよっ!」 なるほど、女の子を口説くというのは結構面白いものなのかもしれない。 ボーッとあほの子みたいに口を開けて、私の話に聞き入る千聖を見ていると、テンションが上がってしまう。 「どう?なっきぃ基本ぼっちだし、だからこそ絶対千聖をひとりぼっちになんてしないよ?」 「基本ぼっちとか自分で言ってるし!てか、顔近いよ、もう。はずかしいだろっ」 千聖はひとしきりふがふが騒いだ後、またおもむろにブランコからポンッと降りて、私の目の前の柵に腰掛けた。 「でもさぁ、一つ大きな問題があるんだよね、千聖たちの間には」 「ん?何何?」 千聖は私をチラッと見て、なぜかグフフと小さく笑う。 「ちょっとー、はっきり言ってよー。なっきぃが悪いとこあるなら直すし」 「いや、悪いって言うかぁ悪くないけどぉグフフフフ」 「お願い、言って!もしかしたら千聖以外の誰かにも迷惑かけてるかもしんないし」 少々しつこく食い下がると、千聖はしょーがねえなあといった顔で、漸く口を開いた。 「いやぁ、なっきぃってさ、何か結構さあ・・・あれじゃん」 「あれって?」 「んーだから、・・・・・エロいことすんの好きじゃん。ドゥフフ」 「・・・・・・・・・・は?え?」 ――1.5秒、思考が停止した後、私は「ギャーッ!」と絶叫した。 「待って待って、落ち着いてって!叫ぶなすぐ!」 「あがががが」 そうだ、千聖には知られているんだった。 私が舞ちゃんとエグいDVDを鑑賞していた事。 ジャパネットうんたらかんたらの怪しい器具でハッスルハッスルしていたこと。 もももしかしたら、過去にベリキューでお○っきぃしてたこともどっかから漏れたのかもしれない。 (※これらのエピソードはまとめサイト参照ケロ!) 「別に、そーゆーこと一人ですんのはさぁなっきぃの自由だからいいんだけど、千聖そんなにエロいほうじゃないから付き合えないと思うんだよね。えーと、夫婦生活というやつ。グフフ」 「いや、待って!それは納得いかない!千聖だって前にほれあの何だ、えええりかちゃんと何かいろいろしてたじゃん!舞ちゃんとだって」 「あれは私じゃなくてお嬢様!あとね、舞とのことは、なっきぃが悪いんだからね!なっきぃにエロ知識を植えつけられて唆されたって舞言ってたし! ・・・待てよ。なっきぃが襲いかかってきたら、お嬢様に人格を戻せばいいのか。ん?そんなことできんのか? とにかくね、こっちの千聖がなっきぃとそーゆーことするなんて、あ・り・え・ないない♪」 「チャー・・・」 なんということでしょう。 直接的に言われた事はなかったけれど、千聖の中でとっくに私はエロキャラにされていたらしい。 でも、今の私はそんなことぐらいでへこたれない。 「ちさとっ!」 「はいっ!」 だって、チャンスじゃないか。舞ちゃんが浮気心を出している今なら、本当になきちさを公式カップルとして定着させることができるかもしれない。 「・・・大丈夫だよ。性の不一致なんて、大した問題じゃないケロ!ってか、食わず嫌いしないで一度チャレンジしてみたらええねん!そうだそうだ」 「ちょ、え」 「よーし、今夜ためしに私とエッ○しよう、千聖!!!」 nksk、真夏の大胆発言。 思い切って言ったその一言は、夕刻の公園に案外大きな声で響いた。千聖もかなり驚いたのだろう、目を見開いたままフリーズしてしまっている。 ――どどどうしよう。テンションの上げ方を間違えてしまった。 あんまり先陣切って大きい声ではしゃぐことがないから、加減を誤ってしまったみたいだ。 「う・・・うわー・・・」 「ごめん」 「うわー・・・」 「だから、ごめんってば」 でも、よく見ると千聖は相変わらずビックリした状態で止まったままだった。あれ、千聖の声じゃ・・・ない・・? まさか・・・ 「うわー・・・・・」 三度目のドン引きボイス。 よくよく目をこらせば、千聖の背後にある大きな木の陰から、レースのようなサテンのような不気味な白いふわふわが見え隠れしている。 「りーだー!!」 「あはは、乙カレーライス、なっきぃ!何か寄り道したらさー、2人が深刻そうな話してるからさー」 額に汗をかいた、さわやかキラキラ美人がひょっこり顔をのぞかせて微笑みかけてくる。ウエディングドレスと見紛うようなモサモサフリフリ白ワンピ。それから・・・ 「うわー・・・」 「うわー・・・」 「もー、しつこーい!」 わざとらしく手を握り合って、不審者を見る目つきで私を射抜く舞ちゃんと愛理。 ――しくじった。ここは事務所から程近い公園。偶然(かどうかわからないけど)メンバーが集っていたっておかしくないような場所だった。 「ちしゃと、怖かったねー?おいでおいで」 勝利の笑みを浮かべた舞ちゃんが、余裕を感じさせるたたずまいで千聖を手招きする。 「えーん、舞ちゃぁん!なっきぃがセクハラしてくるよぉ~」 「セクハラって!・・・いや間違ってないですけどケドそもそも千聖が」 「ケッケッケ、もう大丈夫だよ~千聖ぉ」 出た、ブラックキューティーガールズ。 悪ノリした愛理の背後に隠れて、千聖が非難の目を向けてきた。舞美ちゃんはにこにこ笑ってる。 当然のように千聖の腕に手を絡める舞ちゃんを見てると、まるで魔法が解けたシンデレラみたいに、スーッと幸せだった気持ちが引いていく。 「全く、舞が少し目を離すとこうなんだから」 「っ!そ、そうだよ!舞ちゃんが千聖を放っておくからいけないんじゃん!」 それでも、私は必死で舞ちゃんに反論を繰り出した。 なんてったって、私は・・・ 「私はね、千聖に“なっきぃとなら結婚できそう”とまで言われたんだよ!キューフッッフ!」 「ふーん」 ――あ、あれ? 私としては結構な切り札のつもりだったんだけど、舞様は表情一つ変えてくださらない。否、浮かんでる。口元に。微笑が。 「あのさーあ、一応言っとくけどぉ。ちしゃとはマジで誰にでもそういうこと言うから」 「あは、こないだ茉麻ちゃんにも“千聖のお嫁さんになって!”とか言ってたね。ケッケッケ」 「自分基本、ノリとフィーリングで生きてるんで。でへへ」 「で、でもでも!」 必死で舞ちゃんから千聖を奪い返そうとするも、「シャー!」とかヘビの威嚇みたいなことをされて、たじろいでしまう。 何、この圧倒的な存在感。そして威圧感。こ、これが本妻の迫力と言う奴か・・・! 「なっちゃん、いい?先日、千聖は舞にこう言いました。“千聖はいろんな人を好きになるけど、絶対に舞ちゃんに戻ってくるから”このハロプロDDが」 「・・・ああ、たしかに言ってたケロ」 「だから、思ったの。舞だって千聖一人に縛られる必要はないんだって。いろんな人と仲良くして、そんで最後は千聖を選ぶってわけ」 ね?と小首を傾げると、千聖は口を尖らせながら一応うなずいた。 「まー、本当はヤだけどぉ、しょうがないよねっ」 「じゃ、じゃあ私と結婚できるって言ったのは何だったの!ルームシェアは!嘘だったの!」 閑静な住宅街の一角の公園で、痴情のもつれから争いを勃発させてる少女たち。しかも同性! 曲がりなりにもアイドルだって言うのに、なんてみっともない! 理性ではそう思っていても、今回は譲る気になれず、私の声も知らずに上ずる。 「それは嘘じゃないよ」 すると、千聖が意外なほど冷静な声でそう返した。 「千聖はなっきぃが好き。でもあいりんも好きだし、舞美ちゃんも好き。もちろん舞ちゃんもどわい好き。 なっきぃが優しくしてくれるから、千聖は頑張れるんだよ。あいりんと一緒にいるだけで心が和むよ。舞美ちゃんとお喋りしてるだけで、肩の力が抜けてくよ。舞ちゃんは千聖の命そのものだよ。 なっきぃ。千聖の周りには、こんなに千聖のことを助けてくれて、愛してくれる素敵な人がいっぱいいるの。だから、その誰かを選ぶなんて千聖にはできないよ。ダメかな・・・?」 「千聖・・・ううん、いい!全然問題ない!千聖が思うとおりにすればいいよ!」 私は何だか感動してしまって、若干目に涙を浮かべながらぶんぶんうなずいた。 「ちっさー、大人になったね!舞美は嬉しいよ!」 ほら、このとおりリーダーも喜んで・・・と思ったら、ブラックキューティーガールズコンビは揃いも揃って「ハッ」と鼻で笑っていた。 「ケッケッケ。何かいい話にまとめようとしてるけどぉ」 「つまり、これからも一人に絞らずガンガン浮気し続けるけど、まあ黙って待ってろやってことでしゅね。 はいはい、別に舞はそれでいいけど?ちゃんと最後には舞を選ぶって宣言もらってるからね。どうぞどうぞって感じ。 なきちさルームシェア?したらいいじゃないでしゅか。どーぜ週に5回は舞のとこに来るに決まってんだから」 「舞ちゃんうけるー!それじゃシェアの意味ないし!」 ――あれ?あれ?どうしてこうなった? 私は確かに千聖に選ばれて、結婚できるとまで言われて・・・いつの間に寝取られた?いや、まさか最初から寝取ったのは私だったってオチ? 「ケッケッケ、どっちか1っこ選べないけど~」 「あなた(たち)がとてもた・い・せ・つってわけケロね・・・」 最後の最後、ちさまいコンビの鉄壁さを見せつけられてしまった気がしなくもないけど・・・いかんせん、私は執念深い。 引っ付き虫とかピクミンとか言われたって、しつこくしてると千聖は結構折れてくれるのを、私はよくわかっている。 2人だけの海外旅行とか、夢と魔法の国とか。まだまだチャンスはいくらでもあるし、作戦の立てようもあるというもの。 「ねーさん、シェアするお部屋をお探しならぁ~カッパ不動産が協力しますよぉ~ケッケッケ」 「へーい、あんがと」 面白がりな愛理の御提案を右から左に受け流しつつ、私はケータイをパカッと開いた。 どうやら今日のデスメールは、とってもとっても長くなりそうだ。 次へ TOP
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“「なっきぃ?寝てるの?なっきぃ」 ソファで転寝していると、頭の上から声が降ってきた。 んー・・・眠いから、ちょっと後で・・・ 「なっきぃ?」 うー・・・うるさーい・・・ ・・・? 「!!!うわあ!起きてます!」 何度も呼びかけられるうちに意識が覚醒して、寝ぼけ半分だった私の頭はその声の主を正確に認識した。慌てて飛び起きて、反射的に正座なんかしてしまう。 「起きちゃった?ごめんごめん。って私が起こしたのか」 独特なだはは、という笑い声を上げながら、彼女――みやびちゃん、は顔を近づけてきた。 「な、何?」 「んーん。・・なっきぃって、可愛いなって思って。」 何を言ってるんだろう。自分のほうが、よっぽど美人で可愛いくせに。 「そんなことない・・・よ」 なぜか掠れる声。そんな私の反応を見たみやびちゃんの目が、なぜだか怪しく光った。猫とか、虎とか、そういうシュッとした感じの動物みたい。綺麗なのに、何か怖い。 「何怯えてるの?」 そんな私の反応が面白かったのか、みやびちゃんはまただははと笑って、そっとうなじに手を回してきた。 「なっきぃって、昔から、何か私に弱いよね。」 「えっ・・・違・・・」 「違わないでしょ?」 「ひゃあ!」 みやびちゃんの目が、妖しく半月型に眇められるのに見とれていたら、指先で背骨をツーッと撫でられた。その指が、Tシャツの裾から中へ侵入してくる。 「だめ・・・」 「嬉しいくせに。」 胸に、アソコに、みやびちゃんの指が押し付けられる。わけのわからない涙がこぼれて、みやびちゃんの唇がそれを掬い取る。 「あ・・・あぁ・・・・」 「可愛いね、なっきぃ」 ぼんやり霞む頭の中で、私は1枚の写真のことを思い出した。腕組みをするみやびちゃんの傍らで、私も同じポーズをしているショット。まるで舎弟みたいだ、といろんな人から散々からかわれたけれど、私はこの写真が気に入っていた。 「なっきぃは、みやのだからね」 吐息混じりの声は、私の体を凍りつかせて支配する。 思えば、あの写真の頃から、私はもうみやびちゃんの虜だったのかもしれない。獲物を捕らえた獣みたいに支配されて、弄ばれて、ゆっくり捕食されていく。それは私にとって、恐怖ではなく快感だった。 「みやのもの。そうでしょ?なっきぃ」 「う・・・」 歯を食いしばったままがくがくうなずくと、みやびちゃんは満足そうにゆっくりうなずいた。私の体を這う指が、いっそう激しさを増す。 「あ・・・だめ、だ・・め」 「可愛いよ、なっきぃ」 長く伸ばした爪が、体の敏感なところをひっかくのが痛くて気持ちいい。 「あぅ・・」 みやびちゃんにとって、これはほんの暇つぶしなのかもしれない。ただ、そこにいたから構っただけなのかもしれない。 それでもいい。否、むしろ、そのほうが嬉しい。こうして遊ばれた後、冷たく捨てられることを考えたら、もっと興奮が高まる。 「なっきぃはエッチだね・・・」 「みや・・・ちゃん・・・」 数十分後、私が果てるまで、みやびちゃんの悪戯は続けられた。” 「・・・・ふぅ。」 所変わって、自室のベッドの上。 やることやり終わって、賢者タイムに突入した私は、妙に冴えた頭で枕元のペットボトルに手を伸ばした。 「みやニー・・・悪くないケロ。」 あの後ちさまいニーで第一回戦を終えて、何となくベリーズのDVDを見ていたら、どういうわけか再びムラムラしてきてしまったのだった。 そこで、厳正なる抽選の末、みやびちゃんを使わせていただくことになったわけで・・・だけどこんなに(自分の中で)盛り上がるとは思わなかった。 だがしかしBUT、多分、現実のみやびちゃんはMだと思う。残念だ。あんな素敵な眼力をお持ちだっていうのに。でもその辺を、自分好みにカスタマイズできるのが○○ニーの良いところだと思う。何を言ってるんだ私は。 今日はさすがに、3回戦に及ぶ元気はもうない。ベッドにもぐりこむと、私は枕に顔を押し付けて目を閉じた。 本当は、ずっと前から自覚はあった。私は多分、性欲が強い。でも、今のところ異性ではうまく妄想できない。それならそれでいいと思うけど。 とにかく、これは私のトップシークレットだ。みぃたん以外の人でもお世話になることができるとわかった今、私のひそやかな楽しみの幅は広がった。 「キュフフフ・・・」 乾いた笑い声が、喉の奥を震わせる。 明日は、誰にしようかな・・・・ まぶたが完全に下りる瞬間まで、私はそんなことを考えていた。 前へ TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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このページはこちらに移転しました いろんな場所 作詞/151スレ155 丑三つ時に帰宅して 僕は君の訪問を知る 寝る間も惜しんで遊んでた 今じゃ昔話だよね いろんな場所を読みながら 今日のおさらいしていると 君の届けた音たちが 今日も僕を温めていた もう少し ゆっくり歩いて このままじゃ 壊れてしまうよ 哀しいほど 張りつめてた 君の優しさ 予感していた過労時 君は急に走れなくなり 寝ても覚めても行き場無く 僕はとても驚いた いろんな場所に出かけるたび 空をたくさん撮り貯めて 君に届ける色だけが 明日の君を待ちつづけた もう今は しっかり歩いて これからは 壊れないように 離れていても 忘れないよ 君の優しさ
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「おーいいねいいね!岡井ちゃん萌えちゃんとかいってw」 「は、恥ずかしいです私」 白レースをふんだんにあしらったドレスに、ヘッドドレスをつけたちっさーを見て、私は手足両方を使って拍手をした。よく似合ってるのに、自信なさげにもじもじしてるのが可愛い。 「舞美さん・・・あの、私はいいので、何かお召しになっては?」 ああ、そうかあ。自分はキャミとパンツ一枚で、ちっさーをお人形にすることに夢中になっていた。 「あっじゃあさ、ちっさーが選んでよ。私に似合いそうなの。」 私がそうもちかけると、ちっさーは目を輝かせてクローゼットに張り付いた。 スカートやビスチェを私の前にいくつか並べて、なにやら独り言を言いながらクフフと楽しそうに笑っている。 「舞美さん、ちょっと御髪を。」 ちっさーが両手を私のうなじにまわして、髪をハーフアップになるように軽く持ち上げてきた。 ちょっとぷくっとふくらんだ小麦色の二の腕と、子犬みたいなキラキラ黒目を見ていたらふとイタズラを思いついた。 「ちっさー。」 名前を呼ぶと、ちっさーはキョトンと目を開いて動きを止めた。 私の髪を持ったまま固まった手首を捕まえて、思いっきり引き倒した。 「きゃっ!」 「うっひゃー助けてー!お嬢様におーそわーれるー!とかいってw」 あおむけに寝っころがった私の上に、ちっさーが倒れこんでいる。 「お、襲っ!?そんな、私」 赤くなったり青くなったりして、ちっさーはおろおろしだした。体を離せないように腕を掴んでいるから、あわててジタバタする可愛い姿を堪能できた。 この遊びは一部(栞菜とえり)には大好評だけれど、まだちっさーにやったことはなかった。(ちなみに残りの人たちにはマジ説教されたり気まずくなったり首絞められそうになったり) 期待通りのリアクションを見れて大満足だったので、体を開放してあげようとした。 「あはっもう冗談冗談、もういいよちっさー・・・・・ちっさー?」 手を緩めたけれど、ちっさーはそのまま仰向けの私の顔を真顔で覗き込んでいる。あ、こう見るとやっぱりイケメンだな岡井少年は。 と余計なことを考えていると、いきなりちっさーの手がキャミの肩紐をペロンと剥いだ。 「うおっ!」 「が、頑張ります私」 遠慮がちに私の手を押さえて、どうにかキャミを脱がそうとしているみたいだ。 「ちょ、ちっさー!」 そうだ、さっきちっさーは「珍しいことは何でも経験してみたい」とか言ってたんだった。 しかもお嬢様ちっさーはなっきぃ並みに何でも本気にしてしまうタイプだった。 ということは、今は一生懸命変質者になろうとしているのか。 「ちっさー冗談だってば!こら、聞いてるのかっ!」 私が体をひねると、バランスを崩したちっさーは短い悲鳴を上げて胸に飛び込んできた。 「そんな悪い子にはお仕置きだ!とかいってw」 「ま、舞美さん!あっあっそんな・・・」 カタン ドアの前で物音がして、振り向いたらお兄ちゃん(次男)が立っていた。 ―紅茶のおかわりを ―持って行くように言われ ―たの ―です、が あとずさりとともに徐々に声が遠くなって、静かに扉が閉まったと思ったら階段から人が落ちるすさまじい音がした。 ほぼ下着姿の妹がゴスロリ服の小さな美少女に押し倒されていて、反撃にスカートに手を突っ込んでいたらそれは驚くだろう。 ごめんね、お兄ちゃん。でも誰にも言いませんように。ていうかいつから見られてたんだろう。 「・・・さ、そろそろ服選びの続きしようか、ちっさー。」 「・・・そうですね。」 戻る TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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全・然・納・得・いかないな。 「愛理?どうしたの」 「ううん。」 私の知らない間に、この数日間いろいろなことがあったみたいだ。 舞ちゃんと千聖が楽屋を出た後、舞美ちゃんを中心に当事者それぞれが話をしてくれた。 「・・・だからね、みんな。悪いのはなっきぃだから。舞ちゃんのことは責めないで。」 「なっきぃ。これはみんなが悪いんだ。舞が出してたサインを誰も拾ってあげられなかったから、あんなことになったの。 舞も本当に反省してる。まだいろいろ整理できてないことはあるみたいだけど、ちゃんと今の千聖と舞なりに向き合ってみるって。今2人はその話してるんだよ。」 要は、千聖にひどいこと言った舞ちゃんを許せってこと?反省してるからって? そんなに単純な話なのかなぁ。 今日の千聖の、尋常じゃない真っ青な顔と目の下の隈を見ていたら、千聖がどれだけこの件で傷ついて悩まされたのかおのずと伝わってくる。 私は頭を打って変わった千聖のことを、それまで以上に大切に、そして慈しむ気持ちで見守ってきていたつもりだ。 活発で天真爛漫な千聖も大好きだったけれど、柔らかく優美で儚い心をもった今の千聖には、ある種の同調と羨望の念を抱いた。だからいつでもそばにいて、千聖をなるべく痛みから遠ざけてあげるようにしていた。 舞ちゃんが前の千聖を恋しく思っていて、その気持ちがよくない方向に傾いていたのはわかっていた。 それでも私や栞菜が守っている限り、直接手出しはしてこないと思っていた。 油断していた。 舞ちゃんに問い詰められて、どんなに怖かっただろう。 自分のせいじゃないことを責められて、どんなに苦しかっただろう。 そのことを考えるだけで、私の中に黒く凝った感情が湧き上がってくる。 どうも、舞ちゃんをはいそうですかと簡単に許せないみたいだ。 最年少?私や千聖とたった1歳違うだけじゃないか。そんなの舞ちゃんの振る舞いを許す理由になんてならない。 たまには私が我を張らせてもらったっていいだろう。 「舞美ちゃん。悪いけど私は、舞ちゃんとは少し距離を置かせてもらうから。・・・今舞ちゃんが千聖に見せてる、千聖が前の千聖に戻るためのマニュアルっていうのにも私は何にも書かない。私は今のままの千聖がいい。」 「え、な、愛理?」 全く想定してない答えだったらしく、舞美ちゃんは口をぱくぱくさせている。 「・・・愛理がそういうなら、私も。」 栞菜がおずおずと手をあげて、腕を絡めてきた。 「昨日、ちっさーにキュートを辞めるべきかって相談されたの。」 「「「「えっ!」」」」 それは知らないよ、栞菜。そういう大事なことは早く言おう。 「今すぐに決めるわけじゃないっていうから、一応黙っていようと思ってたんだけど。でも、私も愛理と同じ。舞美ちゃんの言うことはわかるんだけど、まだ納得しきれない。 みんな、舞ちゃんに甘いよ。 それに・・・お嬢様ちっさー、すごく魅力的だし、無理に元に戻らなくてもいい気がする。」 さては様子見てたな、栞菜。コウモリめ。 でも私たちの気持ちは概ね一緒のようだから、ここは手を組ませてもらうことにした。 「というわけなので、私たちはこれまでどおり、お嬢様の千聖を支持します。仕事面でのキャラ作りのサポートはするけど、それ以上はしないから。」 「ちょ、ちょっと・・・えーどうしよう・・・」 「栞菜ぁ。愛理も、ワガママ言わないでよぅ。キュートのためじゃない。」 舞美ちゃんとなっきぃはかなり必死に舞ちゃんを擁護しているけど、えりかちゃんはさっきから何も言わない。 天然なようで重要なところは結構冷静なえりかちゃんのことだ。自分があんまり事態を把握していないことについては、必要以上に口を挟まないというスタンスなんだろう。 「これはワガママじゃないよ。キュートが団結するのはいいことだけど、皆が同じ意見を持たなきゃいけないなんて絶対間違ってる。よって、われわれはここに、お嬢様千聖を支持することを誓う!!」 カ゛チャ。 「・・・・・愛、理?」 ハイになった私が栞菜とともに椅子に上って高らかに宣言したのとほぼ同時に、舞ちゃんと千聖が楽屋に戻ってきた。 戻る TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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「えっ!!戻ったの?本当に!!!」 翌日のレッスン前、ロッカー室で会ったなっきぃに、私は昨日のことを話した(もちろん経緯は省いたけど)。 「うん、急になんだけど。私もびっくりしたよー」 「そっか・・・元に戻ったんだ・・・・」 なっきぃは感慨深そうに何度かそうつぶやくと、キュフフ♪と笑いながら着替えを再開した。 「嬉しそうだね。」 「うん、嬉しいよ。元気キャラの千聖に会うの久しぶりだもん。あっでもね別にお嬢様が嫌だったってわけじゃないんだよ?」 「わかってるよぅ」 なっきぃは前の千聖とすごく仲が良かったから、きっといろんな思いがあるんだろう。鼻歌なんて歌っちゃって、これは相当機嫌がいいぞ。 「おはよー。」 「あっ舞ちゃんお疲れ様。あのね、今愛理に聞いたんだけどぉ」 続いて入ってきた舞ちゃん、栞菜、舞美ちゃんへと、どんどん情報が流れていく。 「えーそうなんだ!ちっさー元通りかぁ」 「・・・そ、そう!それはそれは!おめでたい!」 「よ、よかったね?ん?良かったのかな?良かったんだよね?」 くったくのない舞美ちゃんと比べて、どことなく挙動不審な栞菜と舞ちゃん。これは、私も当事者だからわかる。 お嬢様の千聖とやらしーこと(栞菜は未遂、舞ちゃんはチューしたらしい)をした手前、元気キャラの千聖とどう接していいのか―あるいは、千聖がどこまで覚えているのかが気になるんだろう。 「大丈夫、そのへんの記憶はあいまいみたい。」 「・・・本当?」 私のエスパーな言付けに、2人はあからさまにほっとした顔になった。 「おはよう、遅くなっちゃった!」 最後に真打ち登場。えりかちゃんと千聖が、すこし急ぎ足でロッカー室に入ってきた。みんなの注目が千聖に集まる。千聖が口を開いた。 「おはようございます、みなさん。今日もよろしくお願いします。」 ――あ、れ? ポカーンとする私達をよそに、2人は急いでジャージに着替え始める。 「ちょっと、お嬢様のまんまじゃん!」 「え、だってだって、昨日は確かに」 見れば服装もお嬢様の時のまま、ふわふわファーの白いワンピースなんか着ちゃって、これはどうみても元気っ子千聖じゃない。 「ちょちょちょ、えりかちゃん。」 大方着替え終わったえりかちゃんの腕を掴んで、端っこに移動する。 「何でお嬢様に戻ってるの?」 「・・・あー、元気な方の千聖が良かった?ちょっと待ってて。」 「ええ?待っててって・・・えりかちゃーん?」 えりかちゃんは千聖のところに戻って二言三言交わした後、手をつないでロッカールームから出て行ってしまった。 「ほら行くよ、千聖。」 「はい。」 昨日の帰り際同様、えりかちゃんは完全に千聖を手中に収めている感じがした。「行こう」じゃなくて「行くよ」って。別にいいんだけどさ。 「愛理ぃー。」 2人の足音が消えると、待ち構えていたように、栞菜と舞ちゃんが詰め寄ってきた。 「普通にお嬢様じゃん!いや普通じゃないけど!」 「どういうこと?一時的に戻ったって事だったの?」 「いやぁ~・・・」 なっきぃにいたっては、私を問いつめる元気もないみたいだ。期待した分、へこむ度合いも大きかったらしい。舞美ちゃんに頭を撫でられてるその目は、かすかに潤んでいる。 「なんか、ごめんねなっきぃ。」 「・・・ううん、愛理は悪くないよ。一度元に戻ったなら、また何かの拍子に前の千聖になるのかもしれないし。」 そんな話をしていると、5分ぐらいで2人は戻ってきた。 「お待たせ。ふっふっふ」 「お、おはよー・・・あれ、なっきぃ泣いてる?大丈夫?」 えりかちゃんの後ろから顔をひょっこり出した千聖は、“なっきぃ”と言った。・・・前の千聖の、独特の口調で。 「ちっ・・・・・ちさとおおおおお!!」 「うわっどうしたの?なっきぃ泣かないでよぅ!」 飛びついてギューギュー抱きしめてくるなっきぃを、千聖は戸惑いながら抱き返してにっこり笑った。 もう口調からして全然違う。お嬢様の千聖のふわふわオーラはどこへやら、ちっちゃめな体中から元気オーラが出ている。 「ちっさー、久しぶりだね!」 「記憶とか大丈夫?」 「うん?うん、よくわかんないけど、別に大丈夫だよ。元気だよ。」 千聖を真ん中にして盛り上がる輪を尻目に、私は再びえりかちゃんを突っついて手招きした。 「よかった、みんな喜んでるね。」 「いや、うん。それはそうなんだけどさぁ」 ―えりかちゃん、いったい何をしたの? 私の表情から行間を読んだのか、えりかちゃんは人差し指を唇の前に立てて「愛理には後で言うから。」とウインクしてきた。 戻る TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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「メイド喫茶に行きたい。」 「・・・・・・・・・・はぁ?」 私の発言に、メンバー全員があっけにとられた顔をした。 歌番組収録後の雑談で、また今度キュートのメンバーみんなで遊びに行こう!なんて話が出た。 7人もいるとなかなか全員そろうのが難しいから、この手の話は大抵盛り上がるだけ盛り上がってそのうちすぼんでしまう。 奇跡的に集まれたジェラートを囲む会は楽しかったな。 ああいう機会をもっとたくさん作って、キュートの団結力を強くしたい。 そう思って、私は今自分が一番関心のあるスポットをあげてみたのだけれど。 「みぃたん、メイド喫茶なんて行ってどうするの?」 「そうだよー。普通のカフェでよくない?」 いやいや、そうじゃないんだって。 数日前、私はお兄ちゃんの買い物に付き合うことになって、秋葉原へ行った。 DSのソフトやら最新のヘアアイロンやらいろいろ買ってもらってご満悦の私の目に、ティッシュを配る女の子の姿が飛び込んできた。 メイド服着てる。芸能界の仕事以外で、こういう格好をしている人を見るのは初めてだった。 何かかわいいな。ふりふりスカートは人が履いててもツボにはまる。 ということは、この近くにメイド喫茶が? 「舞美?」 あ、あった。みるきぃにゃんにゃん。 お兄ちゃんを放置して、私は好奇心の赴くまま、小さなビルの階段を駆けのぼった。 素敵な空間だった。 ネコ耳をつけたメイド服の美少女たちが、にっこり笑いながらクルクル忙しそうに働いている。 完璧な笑顔に完璧な接待。 こんなふうにおもてなしされたら、さぞかし心地よいだろうな。 日ごろのストレスも解消できるってもんだ。 さすがに女の子一人で入るのは憚られ、外にいたお兄ちゃんをしつこく誘ったらマジギレされてしまったけれど、私のこの空間への憧れは高まっていた。 「・・・・というわけ。だからキュートみんなでね、」 「ハッ。ないわ。」 舞ちゃんが天使の笑顔で吐き捨てるようにさえぎった。 「ちょっ待って待って。絶対楽しいよ。可愛い女の子に囲まれてお茶が飲めるなんて素敵じゃない?」 「・・・みぃたんの発想って、完璧男の発想だね。あれでしょ、ホスト行くならキャバクラ行きたいって思ってるタイプでしょ。」 え、みんな違うの? 「舞美ちゃーん。さすがに栞菜もついていけないよ。可愛い女の子っていうのはいいんだけど、メイド喫茶て。」 えりはお釈迦様のような表情で、私に構うな省エネモードに入っている。 えーいい考えだと思ったんだけどー。 「じゃあみんなでいつどこ行くかは、また今度決めよう。お疲れ!」 なっきぃが仕切って、みんな次々に楽屋を出て行ってしまった。 ちぇー。 「・・・男子校カフェなら付き合ったんだけどね。ケッケッケ」 「えー何それ!栞菜にもくわしく教えて愛理!」 なんだなんだ、キュートはみんなそういうアレの方がいいのか! こうなったら地元の友達でも誘うしかない。ちょっと落ち込んで荷物をまとめていると、後ろからそっと肩に手を置かれた。 「ちっさー。お疲れ様。どうしたの?」 「あの、さっきのお話なんですけど。」 さっきの? 「その、召使いの方がご奉仕を・・・」 「ああ、メイド喫茶ね!ご奉仕ってちっさーw」 「あの、えと、」 ちっさーはちょっと背伸びをして、私にだけ聞こえる声で囁いた。 “千聖のこと、連れて行ってもらえますか?” TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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「あはっ冗談だよ。噛まない噛まない。それより、・・・えりかちゃん、舞知ってるんだ。」 舞ちゃんは耳元でゴショゴショと内緒話を始めた。 「えっ?いだだだ・・・な、なにを知ってるって?ちょ、ちょっと舞美痛い!」 「だから、えりかちゃんは千聖にもっといろいろしてたの知ってるよ。なっきぃは千聖たちのベッドの真下だったけど、舞は隣だったからね。見ちゃった。」 げっ! 「そんな顔しないでよ。なっきぃには言ってないから。・・・でもびっくしりた。あんなとこ、触るんだ。千聖エッチな声出してたね。」 「ま、舞ちゃん!」 「ああいうのを、イクっていうの?お姉ちゃんの買ってる雑誌に書いてあったけど」 舞ちゃんは淡々と喋りながらも、表情に怒りがにじみ出てきている。私の耳を掴む手も万力みたいに力がこもり始めた。 「・・・・舞が、千聖より年上だったらえりかちゃんより先にイクをやってあげたのに。えりかちゃんなんて、別に千聖のこと好きなわけじゃないのに。」 「そう!それだよえりかちゃん!」 突然、なっきぃが口を挟んできた。 「えりかちゃんは、千聖のこと好きでもないのにあんなことして。そんなの、不真面目でチャラチャラした男とかと一緒じゃん!」 「え?えりはちっさーのこと嫌いなの?嘘だー」 「みぃたんはお口ミッフィー!・・・あんなの、普通じゃないよえりかちゃん。今はえりかちゃんだけだからいいけど、もし千聖が誰とでもああいうことするようになったらどうするの?えりかちゃん、責任取れるの?」 いたたたた!なっきぃの細くて白い指が胸に食い込む。 「じゃ、じゃあもし、ウチが千聖を好きだったら?それなら問題ないの?」 私が放った言葉に、なっきぃは目を見開いて硬直した。 「えりこちゃん・・・何言ってるの」 「遊びじゃなかったら、ウチが本気なら認めてくれる?」 私、何言ってるんだ。 無意識に口から出た言葉は、なっきぃだけじゃなく私自身も狼狽させるものだった。 千聖とこういうことするようになった一番最初の動機は、完全に悪ふざけと好奇心だった。 一緒に温泉に入って、照れて震えるお嬢様にエッチな刺激を与えた。それが始まり。 私たちの行為はどんどんエスカレートしていった。 事務所の空き部屋。 ツアーで泊まるホテル。 テレビ局のトイレ。 いろんなところで、誰にもみつからないように声を殺して千聖に触れた。 私から誘ったことは、最初の1度しかない。でも、無言で寄り添ってくる千聖を拒んだことは1度もない。そんなことは考えたこともなかった。 「えりかちゃん・・・本気で言ってるの?答えて。」 動揺して黙り込んだなっきぃに変わって、今度は舞ちゃんの真剣なまなざしと視線がぶつかった。 「ごめん、まだわかんない。例えば、って言ったでしょ。」 「えりかちゃん、わからないならそんなこと簡単に言わないで。・・・・舞は、本気なんだよ。」 「ごめん・・・」 私の心は、依然千聖への「好き」の意味を測りかねて揺れていた。 “えりかちゃんは、ちっさーが相手じゃなきゃエッチはしないと思うの。” カレー作りの時の栞菜の言葉を思い出す。 確かに、それはそうだ。 私はスキンシップが好きだから、しょっちゅうふざけてメンバーの体に触る。でも、それはその場かぎりのおふざけ。 千聖にするように、裸を抱いたりはできない。ありえない、そんなの。 「まあまあ、今日はこの辺で勘弁してあげようよ、なっきぃ。さ、部屋戻ってシャワー浴びよう!」 何が何だかわからない風だけど、この重たい雰囲気は変えたいと思ったのだろう、舞美が妙に明るい声を出した。 「・・うん」 最初の元気はどこへやら、なっきぃはうなだれてしまっていた。 「・・・えりこちゃん。」 それでも言うべきことははっきりさせたいとばかりに、もう一度私の目を見つめる。 「さっきの質問だけど・・・私はまだあんまり恋愛とかちゃんとわかってないから、えりこちゃんが千聖を好きならいいのか・・・っていうの、今は答えられない。 でもね、私は千聖のこともえりこちゃんのことも本当に大好きなの。だから、2人が変な方向に行ってほしくないの。それはわかって。」 「うん、わかった。ありがとう」 なっきぃは私の答えを聞くと、一度だけ目元をぐいっとぬぐってにっこり笑った。 「私もえりが好きだよ!えりは私と違ってしっかりしてるから、大丈夫だよ。私信じてるよ、えりのこと。何だかよくわかんないけど。じゃあね!」 最後まで意味もわからず参加していた舞美は、なっきぃの肩を抱いて出て行った。 「私も戻るね。・・・さっきは言いすぎてごめんなさい。 えりかちゃんの千聖への気持ちがはっきりしたら、私には言ってね。好きなら、ライバルになるから。敵じゃないよ、ライバル。」 それだけ言うとすぐに、舞ちゃんもコテージを出ていった。 一人取り残された私は、ヒリヒリ痛む腰をさすりながら、荒れ果てたベッドや濡れたままの床の掃除を始めた。 ――コン、コン 「えりかさん、いらっしゃいますか?あの、千聖です。入ってもいいですか。」 その時、控えめなノックとともに、鈴のような可憐な声が聞こえた。 私は返事をする前に、鍵を開けてドアを全開にした。薄い水色のナイトドレスを着た、儚い姿の美少女が立っている。 千聖が何か言い出す前に、私はその小さくて柔らかい体を抱きしめた。 「えりかさん、私言わなければいけないことがあって。」 「うん。」 背中に回された手が心なしか震えている。私は玄関を閉めて、2人きりの空間を作った。 「わ・・・私、あの、私・・・」 千聖はうつむいたまま、長いまつげの下の瞳をひどく揺らしていた。 「大丈夫、何でも言って?」 「ありがとうございます。私、」 ためらいがちに開かれた一度唇をキュッと噛み締めると、千聖は顔を上げてまっすぐに私を見た。 「私は、えりかさんのことが好きです」 ああ 私は目を閉じた。大きなため息が、口からこぼれ落ちた。 驚きはなかった。どこかで千聖の気持ちを感じ取っていたのかもしれない。そして、自分が答えるべき言葉も・・・ 「ありがとう、千聖。ウチも、千聖のこと大好き。だから」 千聖の顔に、明るい色が灯る。胸が痛い。私は言葉をつないだ。 「だから、もう終わりにしよう、千聖。」 戻る TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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「な、ななななっきぃ何いってんの」 テンパる私の手を掴んで、なっきぃは近くのビルの陰に体を隠した。そのままカバンをごそごそ探って、1枚のDVDを取り出す。 「これ・・・」 「これ?」 渡されたDVDのパッケージを見ると、綺麗な女の人が制服を着てにっこり笑っている。・・・が、しかし、タイトルは 「女子校生超特急痴漢電車でイ」 「ギャー!」 声に出して読み上げかけたところで、鼻息も荒いなっきぃに口を押さえられる。 「もがもが・・・なっきぃ、何これ!?何でこんなの持ってるわけ?」 「ち、違うの!な、なっきぃもよくわかんないんだよぅ!」 なっきぃはもう顔面蒼白といった感じで、くりんくりんのおめめに涙がいっぱい溜まっている。 ふと思いついてパッケージを裏返してみる。一瞬でよく見えなかったけど、裸の女の人がキモイ男に何かされてる風だった。 「おえっ」 すぐにまたひっくり返して、なっきぃの胸にDVDを押し付けた。 「・・・・買ったの?」 「ま、まさか!違うよぅ!」 なっきぃは両手をぶんぶん振って否定する。 「とりあえず、落ち着こう。」 私はそこから程近い小さな公園まで、なっきぃを連れて歩いていった。ベンチに腰掛けて、水筒の麦茶を差し出す。 「ありがとう。」 こく、こくと音を立てて、なっきぃの白い喉が動く。一息ついたあと、なっきぃはやっと少し落ち着いたのか、あいまいに笑った。 「あれね、あの、DVD。・・・なんか、知らないうちに机の中にあって。」 なっきぃの話を要約すると、こういうことらしい。 最近、なっきぃの高校のクラスで、誰が持ってきたかわからないエッチな本とかDVDが、授業中に回ってくることがあった。 友達は結構興味津々だったみたいだけど、なっきぃはそういうのは見たくないから、「私には回さないで!」とはっきり言っていた。なのに、放課後引き出しを覗いたら、見事にこのエロDVDが入れられていた、と。 「ゴミ箱に捨てちゃえばよかったのに。」 「でも・・・一瞬でも持ち歩いてるの見られたらどうしようって思って。とっさにカバンに突っ込んで持って帰っちゃった。」 なるほど、変なトコ生真面目ななっきぃらしい。私だったら、犯人とおぼしき人につき返すか、友達みんなに見せて笑ってやるところだ。 「・・・で、何でそこから舞がエッチなビデオ見たことがあるかって話になるの?」 つながってるようでつながっていない、なっきぃの話。続きを催促すると、なっきぃは真っ赤な顔でまたぼそぼそしゃべりだした。 「本当は、すぐに処分しようと思ったのね。コンビニとか駅のゴミ箱なら、絶対ばれないだろうし。でも・・・何か・・・」 「何か?」 「何か、1回ぐらい、見てみたいかなって・・・」 ――ほほう。なるほど? 「そ、それで、舞ちゃんは大人っぽいし、お姉ちゃんいるし、こういうのちょっとだけなら見たことあるのかな?って思ったの。もしあったら、な、ななっきぃが見るのに付き合ってくれないかなあなんて思ったり・・・。 だって、みぃたんは乙女だから見せちゃだめでしょ。愛理も何かだめ。えりかちゃんは生々しいからだめ。千聖はこういうの本当だめだと思う。お嬢様にしても、明るいほうにしても。」 「うーん。」 言ってることはわかるけど、だからって、たかだか中2の私に、いきなり痴漢電車はキツいんじゃなかろうか。なっきぃは時々判断がおかしくなることがある。でも、 「・・・・一緒に見ても、いいよ。」 私は視線を外しながらそう答えた。 「えっ!本当に!でもまだ舞ちゃんには早いんじゃないかなあ!」 どっちやねん。 「・・・舞、そんなすごいのは見たことないけど、お姉ちゃんの買ってる雑誌についてたDVDなら見たことある。」 それは「☆初めてのパーフェクトHOW TO エッチ☆」とかいう脱力しちゃいそうなタイトルの、しょぼいアニメーションのDVDだった。保健体育の授業で見るようなのを、もう少しだけ過激にしたような。とはいえもちろんそこは、男を舞、女を千聖に置き換えて(以下自主規制)。 「でもなっきぃ、痴漢モノとかどうなの?途中で怒ったりしない?」 「・・・こういうのは、現実とは違うと思うから。どうしても無理だったらやめる。」 そんなわけで、私は急遽なっきぃのおうちにお呼ばれすることになった。 部屋に通されて、おしゃべりもそこそこに「ま・・・舞ちゃん、いくよ。」となっきぃがものすごく緊張した面持ちでDVDを取り出した。 ウイーン 機械の音が、静かな部屋に反響する。 私の手を握り締める、なっきぃの手が妙に汗ばんでいた。 約1時間後。 「・・・終わったみたいだよ、なっきぃ」 声をかけると、なっきぃがヒッと息を呑んだ。気まずそうに私の顔を覗き込んだ後、無言でDVDをデッキから取り出した。 私の感想。 キモイ。グロい。女優さんがうるさい。男もうるさい。ストーリーがおかしい。 隣のなっきぃが明らかに緊張しまくっていたせいか、妙に冷静に見ることができたかもしれない。 ていうか痴漢モノとかどうなの。犯罪じゃん。って思ってたけど、いろいろあって最後に痴漢と両思いになってハッピーエンドとか、とにかくありえなすぎてむしろ笑いがこみあげてきた。 肝心のエロシーンよりも、女優さんがパッケージほど若くなかったとか、「ぐへへ、ここは痴漢専用車両だぜ」という痴漢の台詞に噴き出しそうになったり、どっちかというとそういうくだらないことに気をとられてしまった。 「ま・・舞ちゃん。」 「ん?」 でもなっきぃはそうでもなったみたいで、熱いため息をつきながら、すごく潤んだ瞳を私に向けてきた。同性だけど、ちょっとドキッとした。 「ど、どうだった?」 間が持たなくなって、とりあえずそう聞いてみる。 「な・・・何か、よくわかんない、けど。想像してたのとは、違ったかも。」 「そうだね、舞もそう思う。」 「オ、オチもおかしかったし。キュフフ」 「だよねーあはは。」 「・・・・」 「・・・・」 沈黙。 別に、嘘の感想を言ったわけじゃないけど・・・お互いに、思ってることを上手く言えてないから、妙にぽわーっとした変な会話になっている。 「あ・・・、じゃ、じゃあ舞そろそろ帰るね。また明日!」 「あ、え、と、うん。ご、ごめんね何か。キュフフ・・」 何かきまずい雰囲気のまま、とりあえずその場はお別れすることにした。 帰りの電車に揺られながら、私はぼんやりとさっきのエロDVDのことを考えていた。 なっきぃ、ああいうの絶対怒ると思ったんだけどな。あんまりありえなすぎて、そんな感情も沸きあがらなかったのかなあ。 だって、あんな・・・・あれ?あれ? さっきまでは笑いの対象にすらなっていたその内容を思い起こすたび、頭にピンクのもやもやがかかってきた。 吊り革に手を縛られて、変なことされてあんあん言ってる女優さんの顔が、千聖に変換されてしまう。 “舞さん、やめて。アンアン” 「なああ!」 その妄想を断ち切るために、私は大声をだして座席から立ち上がった。周りの人が何事かと視線を集めてくる。 恥ずかしい。まだ降りる駅は先だけど、とりあえずドアが開いたところでホームに下りた。 だめだ、それはだめだよ舞。千聖でそんなこと考えたら・・・ 「ていうか私、痴漢目線かよ・・・・」 いろんな意味でぐったりして、私は人気のないベンチにもたれて天を仰いだ。 前へ TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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まずそもそもシリアスゲームとはどのようなものなのだろうか。 一言でいうと楽しむことのみが目的となっていないゲームのことである。 例としては一昔前に流行った「脳トレ」や「英語漬け」などが該当するものとしては有名である。 一般的なゲーム(「ドラクエ」や「FF」など)では基本的にゲームのクリアが目的とされる。 しかしシリアスゲームではゲームのクリアよりもクリアを目指す過程の中でプレイヤーが知識や力をつけることがより重要な目的とされる。 (このように書くと「ポップン」などの音ゲーや「ストリートファイター」のような格ゲーも技術を身につけるために行われるという点では同じように思う人がいるかもしれないがその技術がそのゲーム外でも役に立つかという点でこれらのゲームは異なり、シリアスゲームと呼ぶことはできない) 藤本徹(2009)は「教育をはじめとする社会の諸領域の問題解決のために利用されるデジタルゲーム」と定義している。 参考文献 藤本徹『シリアスゲーム 教育・社会に役立つデジタルゲーム』2009