約 3,996,852 件
https://w.atwiki.jp/stairs-okai/pages/30.html
お姉ちゃんが変わった。 あの日のことは、今でもはっきりと覚えている。 キュートの仕事の時に、お姉ちゃんが階段から落ちて頭を打ったという話を聞いて、パパママと一緒に病院へ行った。 受付には矢島さんたちキュートのメンバーとマネージャーがいて、検査が終わって異常がないので家に帰れるというような話をしていた。 「よかったぁ。」 でも、そのわりにみんな微妙な顔をしていた。暗いというわけじゃないけれど、何か言いたいような言いたくないような、おかしな雰囲気だった。 「えっと、お姉ちゃんは大丈夫なんですよね?」 近くにいた鈴木さんに聞いてみる。 「へえ?ああ、・・・・うん。大丈夫、だよね?」 「そう、だよね?」 「うーん?」 やっぱり反応が変だ。誰も私と目をあわそうとしない。 「何かひどい怪我とかあったならちゃんと教えてください!」 「怪我っていうか。」 うつむいたままの萩原さんが喋りだした。 「おかしくなったかも。頭が。」 え? 「それ、どういう」 「お待たせしました、ご家族の方、入ってください。」 もう少し詳しく聞こうとおもったら、看護師さんが呼びにきた。 頭おかしくなったって。 お姉ちゃんは時々幼稚園児みたいなこと言い出すから、私もバカとか言ったりすることはある。 でも何か、他の人が言うのはちょっとむかつくかもしれない。 別にたいしたことなかったら、お姉ちゃんに言いつけてやろうかな。 「岡井さん。入りますよ。」 検査室に入ると、おでこに大きい湿布を貼ったお姉ちゃんが振り向いた。 顔もぶつけていたみたいで、右のほっぺたもちょっと赤くなっている。 「ちょ、ちょっと平気?ここ打ったの?」 思わず湿布に触ると、お姉ちゃんが「キャァッ」と短い悲鳴を上げた。 「痛いわ、明日菜。たんこぶができているのよ。」 ―お姉ちゃん、今何て。 キャア?痛いわ?のよ? 「何でふざけてんの!みんな心配してるのに!」 「明日菜。」 文句を言おうとしたら、ママに肩を引かれた。少し顔が青ざめている。 「お父様、お母様、明日菜。心配をおかけして、ごめんなさい。特に異常は見当たらないとのことですから、一緒に帰れるみたいです。」 お姉ちゃんは真面目な顔で、私達に深々と頭を下げた。 お嬢様ごっこか。 よくお姉ちゃんが「愛理の真似ーぶはは」って笑いながらやるモノマネの声に似ていた。 パパもママもぽかーんと口を開けてお姉ちゃんを見ている。 お医者さんが、しっかりしたお嬢さんですねとか言っている。 違うのに。お姉ちゃんはこんなんじゃない。 こういう場合なら、ちょっと半泣きで「ごめんねごめんね」って謝ってくれるはずだ。 こんなに心配して駆けつけたのに、いつまでくだらない演技を続けるんだろう。 「ねーもう本当にそのキャラやめて。キモいから。」 「明日菜!いいから黙って。千聖、大丈夫なら家に帰ろう。」 もっといろいろ言いたかったのに、ママに遮られてしまう。 どうして?私たちだけじゃなくキュートのメンバーだって、お姉ちゃんを心配して病院まで来てくれてたのに、こうやってふざけるのはいけないんじゃないの? 「今日はお姉ちゃん、疲れてるんだよ。そんなにカリカリするな。」 そういいつつもパパは動揺しているみたいで、廊下で2回も転びかけた。 「ちっさー!」 病院の玄関のあたりで、矢島さんと萩原さんが待っていた。 「ちっさーのおじさん、おばさん、ごめんなさい、私が千聖ちゃんとふざけていてこんなことに」 「舞美さん、あれはただの事故ですから。私は大丈夫です。そんなふうにおっしゃらないでください。」 「ちっさー・・・」 もう遅い時間だから、他のキュートのメンバーは先に帰ったらしい。 2人は責任を感じて残っていたみたいだった。 お姉ちゃんに体の調子をしきりに聞いてる矢島さんとは裏腹に、萩原さんは少し離れたところから、黙ってお姉ちゃんの顔を見つめている。 とても厳しく、怖い顔をしていた。 相方って言われるぐらい仲良しだから、返って、責任を感じているのかもしれない。 別に、萩原さんのせいじゃないのに。そんなに気にすることはないのにな。 私の視線に気づくと、少し眉を寄せて、さっさと中庭の方へ歩いていってしまった。 「あ・・・・」 なぜか追いかけてはいけない気がした。みんなお姉ちゃんを構うのに夢中で、気づいてもくれない。 「お姉ちゃん、萩原さんが」 呟いた声は、誰にも届かなかった。 どうしても変なキャラをやめてくれないお姉ちゃん。 そのことについて何も言わないパパとママ。 お姉ちゃんに一言も声をかけないで、どこかへ言ってしまった萩原さん。 私にとって当たり前だったたくさんのものが、静かに壊れ始めているような気がした。 戻る TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
https://w.atwiki.jp/stairs-okai/pages/13.html
これは一体どういうことだろう。 階段落下事件から3日後、ダンスレッスンに現れた千聖は何と日傘を差していた。 「ごきげんよう、愛理さん。」 「あ、はい、ごき、げんよう。」 えりかちゃんが視界の隅でマックシェイクを噴射した。 「私、もっとお肌のお手入れに気を使おうと思いまして。良いお化粧品に心当たりがあったら教えてくださいね。」 「あ、はい、よろ、こんで。」 千聖はにっこり笑うと、着替えのためにロッカー室に入っていった。 緊張の糸が解け、私は床に座り込んだ。 「愛理、大丈夫?」 「うん・・・えりかちゃんも口の周り拭いてね。」 正直、今までのやんちゃで明るい千聖のことは、同い年なのにちょっと子供っぽいと思っていた。 一緒にふざけたりすることはあっても、真面目に語り合ったりできるのかな?とそういう場面では千聖を遠ざけていたかもしれない。 でも今日の千聖ときたら、見慣れたショートパンツでもTシャツでもない。 淡いピンクのシフォンブラウスに細かいフリルのついたスカートという、ファッションまで変わっていた。 本当に、変わってしまったんだなぁ。思わずため息を漏らす。 「やっぱショックだよね。もうまるで別人じゃない?千聖。」 「う、うん。」 心底悲しそうに呟くメンバーを尻目に、私は少しわくわくしてきていた。 新しい千聖はどんな子なのだろう。 ファッションの話やお化粧の話にも乗ってきてくれるのだろうか。 もっといろんな話ができるようになるだろうか。 元に戻らなかったからっていつまでも嘆いていたくはない。 私は今の千聖を受け入れることに決めた。 男の子っぽくてもお嬢様になっちゃっても、私は結局千聖が好きだから。 「お待たせいたしました。」 「千聖、こっちでいっしょにストレッチいたしましょう?」 私は丁寧にお辞儀をしてレッスン室に戻ってきた千聖の手を取って、あっけにとられる皆の前を通り過ぎた。 戻る TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
https://w.atwiki.jp/chisato_ojosama/pages/755.html
■登場人物 リ*・一・リ 階段から落ちたはずみで、人格がお嬢様に。 えりかちゃんに恋して、やることやってた。現在は舞美ちゃんと・・・?でも舞ちゃんのアプローチにも・・・わりと多情。 気持ちいいこと大好き。えっちなことも大好き。 リ ・一・リ 通称“もとのばかちしゃと” お嬢様が勝手に恋をしたりなんだりで、何かと振り回されつつ日々をすごす。 都合の悪いことはすぐ忘れる。えっちなことは好きじゃないかもしれなくもないかもしれない。舞の純粋な思いにいろいろ思案中。 从・ゥ・从 常に全力。良くも悪くも全力。お嬢様の心を癒そうと全力奮闘するうちに、うっかり妙な関係に。ただしお互いにスポーツ○ッ○○感覚。舞様の悩みの種。 ノソ*^ o゚) お○っきぃ。 州 ´・ v ・) 舞と千聖がうまくいったらいいな、なんて思いつつ、でもうまくいかなかったらそれはそれでおもしろいな、とか考えているブラック ホワイトちゃん。 (o・ⅴ・) ちしゃとはあはあ。ちしゃとよ、舞のほうをむくでしゅ。 ばかちしゃともお嬢様ちしゃとも、最終的には俺の嫁にしたいと夢をみる。舞美ちゃんとのあれをやめさせたくてたまらない。
https://w.atwiki.jp/superfalconworld/pages/23.html
ここではいろいろなゲームのコンテンツを扱います。 (ガイドはまだ製作中) コンテンツ一覧 ウィンバック ストーリー用データ集 (説明は準備中) 大神 終盤のセリフ集(仮) (説明は準備中) ←「トップページ」に戻る ↑上に戻る Page Making 2015/07/07 Last Update 2021/10/25 23 32 40
https://w.atwiki.jp/chisato_ojosama/pages/59.html
前へ お姉ちゃんが変わった。 あの日のことは、今でもはっきりと覚えている。 キュートの仕事の時に、お姉ちゃんが階段から落ちて頭を打ったという話を聞いて、パパママと一緒に病院へ行った。 受付には矢島さんたちキュートのメンバーとマネージャーがいて、検査が終わって異常がないので家に帰れるというような話をしていた。 「よかったぁ。」 でも、そのわりにみんな微妙な顔をしていた。暗いというわけじゃないけれど、何か言いたいような言いたくないような、おかしな雰囲気だった。 「えっと、お姉ちゃんは大丈夫なんですよね?」 近くにいた鈴木さんに聞いてみる。 「へえ?ああ、・・・・うん。大丈夫、だよね?」 「そう、だよね?」 「うーん?」 やっぱり反応が変だ。誰も私と目をあわそうとしない。 「何かひどい怪我とかあったならちゃんと教えてください!」 「怪我っていうか。」 うつむいたままの萩原さんが喋りだした。 「おかしくなったかも。頭が。」 ・・・・・・・・・・・え? 「それ、どういう」 「お待たせしました、ご家族の方、入ってください。」 もう少し詳しく聞こうとおもったら、看護師さんが呼びにきた。 頭おかしくなったって。 お姉ちゃんは時々幼稚園児みたいなこと言い出すから、私もバカとか言ったりすることはある。 でも何か、他の人が言うのはちょっとむかつくかもしれない。 別にたいしたことなかったら、お姉ちゃんに言いつけてやろうかな。 「岡井さん。入りますよ。」 検査室に入ると、おでこに大きい湿布を貼ったお姉ちゃんが振り向いた。 顔もぶつけていたみたいで、右のほっぺたもちょっと赤くなっている。 「ちょ、ちょっと平気?ここ打ったの?」 思わず湿布に触ると、お姉ちゃんが「キャァッ」と短い悲鳴を上げた。 「痛いわ、明日菜。たんこぶができているのよ。」 ―お姉ちゃん、今何て。 キャア?痛いわ?のよ? 「何でふざけてんの!みんな心配してるのに!」 「明日菜。」 文句を言おうとしたら、ママに肩を引かれた。少し顔が青ざめている。 「お父様、お母様、明日菜。心配をおかけして、ごめんなさい。特に異常は見当たらないとのことですから、一緒に帰れるみたいです。」 お姉ちゃんは真面目な顔で、私達に深々と頭を下げた。 お嬢様ごっこか。 よくお姉ちゃんが「愛理の真似ーぶはは」って笑いながらやるモノマネの声に似ていた。 パパもママもぽかーんと口を開けてお姉ちゃんを見ている。 お医者さんが、しっかりしたお嬢さんですねとか言っている。 違うのに。お姉ちゃんはこんなんじゃない。 こういう場合なら、ちょっと半泣きで「ごめんねごめんね」って謝ってくれるはずだ。 こんなに心配して駆けつけたのに、いつまでくだらない演技を続けるんだろう。 「ねーもう本当にそのキャラやめて。キモいから。」 「明日菜!いいから黙って。千聖、大丈夫なら家に帰ろう。」 もっといろいろ言いたかったのに、ママに遮られてしまう。 どうして?私たちだけじゃなくキュートのメンバーだって、お姉ちゃんを心配して病院まで来てくれてたのに、こうやってふざけるのはいけないんじゃないの? 「今日はお姉ちゃん、疲れてるんだよ。そんなにカリカリするな。」 そういいつつもパパは動揺しているみたいで、廊下で2回も転びかけた。 「ちっさー!」 病院の玄関のあたりで、矢島さんと萩原さんが待っていた。 「ちっさーのおじさん、おばさん、ごめんなさい、私が千聖ちゃんとふざけていてこんなことに」 「舞美さん、あれはただの事故ですから。私は大丈夫です。そんなふうにおっしゃらないでください。」 「ちっさー・・・」 もう遅い時間だから、他のキュートのメンバーは先に帰ったらしい。 2人は責任を感じて残っていたみたいだった。 お姉ちゃんに体の調子をしきりに聞いてる矢島さんとは裏腹に、萩原さんは少し離れたところから、黙ってお姉ちゃんの顔を見つめている。 とても厳しく、怖い顔をしていた。 相方って言われるぐらい仲良しだから、返って、責任を感じているのかもしれない。 別に、萩原さんのせいじゃないのに。そんなに気にすることはないのにな。 私の視線に気づくと、少し眉を寄せて、さっさと中庭の方へ歩いていってしまった。 「あ・・・・」 なぜか追いかけてはいけない気がした。みんなお姉ちゃんを構うのに夢中で、気づいてもくれない。 「お姉ちゃん、萩原さんが」 呟いた声は、誰にも届かなかった。 どうしても変なキャラをやめてくれないお姉ちゃん。 そのことについて何も言わないパパとママ。 お姉ちゃんに一言も声をかけないで、どこかへ言ってしまった萩原さん。 私にとって当たり前だったたくさんのものが、静かに壊れ始めているような気がした。 次へ TOP
https://w.atwiki.jp/akatonbowiki/pages/4202.html
このページはこちらに移転しました いろんな虫 作詞/山副清志 蛞蝓(いろんな虫) 蜻蛉(いろんな虫) 水馬(いろんな虫) 甲虫(いろんな虫) 鍬形虫(いろんな虫) 蝉(いろんな虫) 蝶(いろんな虫) 蝸牛(いろんな虫) 蚊(いろんな虫) 蝿(いろんな虫) 蛆(いろんな虫) 蜘蛛(いろんな虫) 尺取虫(いろんな虫) 蟋蟀(いろんな虫) 鈴虫(いろんな虫) 蚯蚓(いろんな虫) いろんな虫がいるなぁ
https://w.atwiki.jp/chisato_ojosama/pages/72.html
前へ 「階段から落ちたちょっと前に、舞とケンカしたのは覚えてる?」 「喧嘩・・・ごめんなさい、わからないわ。」 千聖は右のこめかみを抑えた。ケガの前後の記憶があいまいになっているらしく、それを無理に思い出そうとすると、こめかみが痛むと前に愛理に話しているのを聞いたことがあった。 「ふーん。覚えてなければいいよ。謝らないで。・・・ようするにそれがなければ、こんなことにはならなかったって言いたかっただけ。 はっきり言うね。 私は、まだ前の千聖に戻ってほしいと思ってる。」 丸っこい膝の上で揃えられた両手に、グッと緊張が走った。 「おとといの夜と昨日一日、ずっと舞美ちゃんと話し合った。 舞美ちゃんは、千聖だけじゃなくてキュートの誰がどんな状況になったって、全員で受け止めていくべきだって言ってた。 舞もきっと、千聖のことじゃなければそう思えた。キュートは第2の家族だからね。 何があってもみんなで乗り越えていくのが当たり前だって。 でも、千聖だけは別だよ。受け止めきれない。舞にとっては特別すぎる。もう二度と前の千聖に会えないなんて、それじゃまるで千聖が死・・・」 言葉が喉の奥に詰まった。私は今恐ろしいことを言おうとした。 「舞さん大丈夫よ、最後まで聞かせて。」 千聖の指が、私の肩に触れた。 顔を覗き込む茶色い瞳は少し濡れて潤んでいたけれど、それでもしっかりと私を捉えていた。 「うん、でもごめん。最後言いかけたのは聞かなかったことにして。 ・・・だからね舞はこの先も、前の千聖に戻ってくれるのを待ちたい。 もう当り散らしたり無視したりしないから。あれはありえなかった。本当にごめん。 元に戻れるように協力するから。だからずっとキュートにいて。お願い。 ・・・・・・・・千聖。」 あの日の事件から初めて、私はお嬢様の千聖に「千聖」と名前で呼びかけた。 「舞さんっ」 「あーもー泣くなよ!瞼腫れたらよけいひどい顔になるんだからね!」 照れ隠しにタオルで千聖の顔をごしごしやると、痛いわといいながらも笑顔に戻ってくれた。 「それで、何でこの話するのに急いでたかっていうと、昨日雅ちゃんからメール来てね。ベリーズ今日、ここに来るんだって。」 「まぁ。」 今日はキュートの新曲の衣装合わせでスタジオに集まったのだけれど、どうやらベリーズもコメ撮りかなんかがあるらしい。℃-uteのみんなと会えるね★ワラ なんていうのんきなメールを見たときはちょっと冷や汗がでた。 まだベリーズは千聖のお嬢様化のこと知らないんでしょ?一応、舞美ちゃんがみんなに緘口令っていうの?出してたし。 ・・・別に、ベリーズの皆のことを信用してないわけじゃないんだけど、まだこのことはキュートの中の秘密にしておきたいって。そういってたから。」 「わかったわ。それで、私はどうしたら・・・」 「これ、読んで。」 私はずっと手に持っていた、小さなブルーのノートを手渡した。 「・・・・岡井千聖マニュアル?」 「これね、昨日舞美ちゃんと舞が作ったの。千聖、今一応仕事中も前のキャラに近い感じで頑張ってるでしょ? でも新曲出るしイベントも始まるし、そろそろ自己流じゃボロが出てくるかもしれないから、舞たちが思いつく限りの前の千聖のことを書き出してみたの。 ほら、ここのページに、千聖がベリーズのメンバーそれぞれをどう呼んでたか書いたから。参考にして。」 正直、結構自信作だ。イラスト入り(私の絵は・・・)でかわいいし、後ろのページにははりきりすぎた舞美ちゃんの作成した謎のグラフやらデータ解析まで載っている。 「千聖はがに股。笑い声はク゛フク゛フ、爆笑はキ゛ャヒヒヒヒ。食べ物を30秒に一回落っことす。お調子者。学校でサルって呼ばれる。・・・・舞さん、私心がくじけそうだわ。」 「しっかりして!まあ、今日は体調悪いってことであんまり喋らなければいいよ。そこらへんはキュートでフォローするから。とりあえず、名前の呼び方と言葉遣いだけ気をつけて。時間ギリギリまで練習しよう。」 その時の私は、ちゃんと今の千聖と向き合えた高揚感と興奮で、私達の会話をずっと聞いていた人物がいることに気がつかなかった。 次へ TOP
https://w.atwiki.jp/stairs-okai/pages/289.html
「ゲキハロが終わったら、千聖と2人で旅行に行って来るから。」 それは、ゲキハロのお稽古真っ最中のことだった。 レッスン終了後、着替え中にえりかちゃんが私に告げた言葉。 「は・・・」 突然の報告に、とっさに言葉が出なかった。 「何・・・で」 やっとしぼり出した声は、私らしくもない弱弱しいもので、ちょっと情けない気持ちになる。 「何でって、これのお礼にね。」 そう言ってえりかちゃんが指で弄んだのは、キュートのメンバー全員でえりかちゃんの誕生日に贈った、ハートのネックレスだった。 「だ・・・だってそれは、舞たち全員からっ」 「うん、もちろんわかってるよ。ウチが千聖にお礼したいのは、ウチと一緒にみんなへのお返しプレゼントを考えてくれたこと。」 えりかちゃんの話は続く。 「ま、旅行って言っても、横浜だけどね。観光して、中華街でご飯食べて、ちょっといいホテルに泊まる。」 「ま、待って。ホテ、ホ、ホテルじゃなくていいじゃん!えりかちゃんちでいいじゃん!」 「えー、いやいや、それはちょっと。ムフフフ」 私の背中を、イヤーな汗が滴り落ちる。 えりかちゃんは、私の千聖に対する気持ちを知っている。知っていて、こういうことをわざわざ言うというのは、つまり、その、なんだ、うん。 「ま、舞の方が、千聖のこと好きだもん」 「・・・だとしても、千聖はウチのお誘いに乗ってくれたよ。すごく嬉しそうに。舞ちゃんは、千聖が望んでいることでも認めたくないの?」 「でも、だって・・・」 こういう時のえりかちゃんは、いつもの天然で優しいお姉ちゃんじゃない。私の知らないことをたくさん知ってる、18歳の大人の顔をしている。ここで私が「嫌だ」といっても、絶対にその予定を白紙にはしてくれないだろう。 「一応、舞ちゃんには言っておいたほうがいいと思ったから。」 「そんな思いやり、嬉しくないよ・・・」 「黙って行ったら、その方が嫌だったんじゃないの?」 悔しい。悔しいけれど、えりかちゃんは舞の気持ちなんてお見通しなんだ。しかも、純粋に私を思いやってる気持ちだけじゃなくて、自慢っていうか、上手くいえないけれど、そういう気持ちも入ってる気がする。 ふと、千聖の方に視線を向ける。 千聖は上半身下着のまま、なっきぃと何か楽しそうに話している。なっきぃが千聖のブラのタグを見ていたから、下着の話でもしてるんだろう。そういえば、今日の2人の下着は色違いだ。仲良しだから、一緒に買いに行ったのかもしれない。 だからって、別になっきぃに嫉妬心は沸かない。2人の関係は信用できる。なっきぃは千聖にすごく優しいし、もちろん変なこともしない。 その点では、愛理はちょっと怪しい(性的な意味で)。舞美ちゃんも危ない(悪気のない暴力的な意味で)。もちろん、えりかちゃんなんて論外だ。もし千聖とえりかちゃんがオソロのブラなんてつけてたら、絶対に剥ぎ取る。 「何がそんなに気に入らないの?」 えりかちゃんの声は相変わらず笑っている。わかってて聞いてるんだ。もー、普段はドMのくせに、こういう時はとことんイジワルなんだから! 「・・・わかってるなら聞かないでよ。」 そういうとこに泊まるっていうのは、つまり、そういうことをするっていうことでしょ。 去年の夏、えりかちゃんと千聖がコテージでしていたことを思い出す。 千聖の上に覆いかぶさる、えりかちゃんの白い背中。 その背中に回された、千聖の小麦色の腕。 2人の唇がくっつく。おっぱいも、大事なとこもくっつく。 えりかちゃんの茶色い髪と、千聖の黒髪が混じる。 聞いたこともないような、甘ったるくて甲高い千聖の声。えりかちゃんの湿った声。 私は悔しくてたまらなかったのに、そのことを思い出すたびに、頭がボーッとして、体がおかしくなっていた。 恥ずかしながら、夜ベッドの中で、えりかちゃんを自分に置き換えて妄想したこともある。 そして、誕生日に、千聖に同じ事をして欲しいとねだった。果たしてその願いは聞き届けられたのだけれど、いろいろ不本意な形に終わった(そもそも失神したのでよく覚えていない件)。 こんなんじゃ、えりかちゃんに全然勝てない。おまけに、こうしてまた差をつけられてしまうのを、指をくわえて眺めているだけなんて。 「事後報告、いる?」 「いらないよっ」 もう聞いてられない。私はえりかちゃんの元を離れて、舞美ちゃんに頭を撫でてもらいにいった。 「お姉ちゃん・・・」 「ん?どうしたの?よしよし」 大きい手にわしわし頭を撫でられて、少し気分が良くなった。 「えりかちゃんにいじめられた。」 「ええ?えり、コラだめじゃないかー!とかいってw」 えりかちゃんは黙って肩をすくめて両手を挙げるジェスチャーをした。欧米か。 再び千聖の方をチラ見する。すると、視線がぶつかった。何となくピースサインを送ると、首をかしげながらピースを返してくれた。三日月目のスマイル付き。あぁ、やっぱり可愛いな・・・ そのまま2人して手遊びゲームをしていたら、ふいに後ろから肩を叩かれた。 「ん?」 そこにいたのはなっきぃ。いつのまに着替えを終えたのか、バッグまで持って、今にも帰れそうな感じだ。 「舞ちゃん・・・今日、一緒に帰れる?」 「?舞と?うん、大丈夫・・・」 突然のなっきぃからのお誘い。ちょっとびっくりしたけど、もちろん嬉しくないわけがない。ちゃきちゃき着替えを済ませて、私は一足先に、なっきぃと一緒にレッスン場を出ることにした。 「今日暑いねー。」 「うん・・・」 「稽古楽しいよねー」 「そうだね・・・」 外に出てからいろいろ話を振ってみるものの、なっきぃは上の空だ。 「ねぇ、なっき・・・」 何か悩んでるなら、と口を開きかけた時、ぴたりとなっきぃの足が止まった。 「舞ちゃん。あのさ、」 「うん。」 いつもの可愛らしい声より、少し低くて真剣な雰囲気。私の背筋も伸びる。けれど、次のなっきぃの一言によって、盛大に脱力させられることになるとは・・・ 「ま、ま、舞ちゃんて、・・・・・エッチビデオとか、み、み見たことある?」 「・・・・・・・・はああ!?」 TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
https://w.atwiki.jp/stairs-okai/pages/68.html
栞菜と喧嘩をした。 新曲の振りつけレッスン中に、悪ふざけを仕掛けてきたから注意をした。 自分で思ったよりもキツい口調になってしまったから、栞菜はかなりシュンとしてしまった。 謝った方がいいのかと一瞬思ったけれど、私は別におかしなことを言ったわけではないから黙っていた。 すると、口を尖らせて「なっきーはちょっと頭が固いよ・・・」なんて呟いた。 私はこういうのを聞かない振りができない性格だ。 「ちょっと待って。今は真面目にやらなきゃいけない時でしょ?真剣にやろうって言って何が悪いの?」 「だからそれはわかったって。でもさぁ」 「でもじゃないじゃん。」 「まぁまぁ、もう栞菜も反省してるし、いいじゃないか。ね?」 舞美ちゃんが体ごと割って入ってきた。 あーあ。いつもこのパターンだ。私はレッスン中の態度のことで、しばしば栞菜とぶつかる。 栞菜のことは好きだ。だけど、私はけじめをつけるところはちゃんとしておきたかった。 だから毎回のように注意をするのだけれど、必ず舞美ちゃんが喧嘩両成敗のようにまとめてしまう。 「わかった。真面目にやろうとする私が悪いんだね。ごめんね。」 「なっきー誰もそんなこと」 「いい。時間もったいないから続きしよう。」 強引にさえぎると、誰も何にも言えなくなって、変な空気のままレッスンが再開になった。 ・・・どうしてこうなってしまうんだろう。 めぐが脱退してから、私はキュートの中間年齢として、かなり神経を張ってやってきた。 舞美ちゃんやえりかちゃんに年下組の状況をまめに報告して、年下組にはダメなことはダメと注意して、エッグから途中加入で不安そうだった栞菜には同い年としていろんな相談にのって。 でもいつしか私の行動は空回りになっていたみたいで、 「なっきーは頑張りすぎだよ。」 「もっと肩の力抜いていこうよ。」 なんて諭されるようになってしまっていた。 ひそかにため息をもらしながらチラッと横を見ると、千聖が真剣な顔で振りのチェックをしていた。 ・・・前の千聖にはよく怒ったっけな。今はまったく手のかからない子になったけど。 舞ちゃんの気持ちを聞いたせいだろうか。何だか無性に昔の千聖に会いたくなってしまった。 千聖はお調子に乗りやすい子で、ふざけだすと止まらなくなってしまうところがあった。 私はそれじゃダメだと思い、気になればビシッと言うようにしていた。 怒られると千聖はシュンとなってしまうけれど、気まずくなってしまうということはなく、今ははしゃいでいいという時間になれば、グフフッて笑いながら私のところにも遊びに来てくれた。 だから私も、千聖には遠慮なく思ったことを言えたし、千聖もそれを受け止めてくれていた。 一番の仲良しじゃないけれどそれなりにいい関係だった。人によって態度を変えない千聖が好きだった。 今の千聖が嫌いなわけじゃない。すごく優しくていい子だと思う。 レッスンも真剣に受けているし、誰にでも同じように素直なところは前と変わっていない。 でも彼女は千聖であって千聖でない。 私は年上だから舞ちゃんのようにあからさまなことはしなかったけれど、寂しかった。 キュートの中で私の気持ちを正面からうけとめてくれる子がいなくなってしまったから。 キュートのメンバーのことは大好きだ。家族のように温かい。 でも私はもっともっとキュートで上を狙っていきたいし、お互いをライバルと思う気持ちを忘れてはいけないとも思う。 私が悪者になってキュートが良くなるならそれでもいい。 多分そういう押し付けがましい考え方がだめなんだろうけど。 「じゃあ、今日はここまで。お疲れ様!」 振り付けの先生の声で、私の心は現実に戻った。 ダメだ。今日はまったく身が入っていない。 「なっきー帰らないの?」 鏡に向かっておさらいを始めた私に、舞美ちゃんが声をかけてくる。 「もうちょっとやってく。」 「そっか。」 何か言いたそうな顔をしながらも、舞美ちゃんはえりかちゃんと一緒にスタジオを出ていく。 栞菜は愛理と一緒にこっちを見てコソッと何か言っているみたいだ。 二人の表情からして別に悪口ではないんだろうけど、言いたいことははっきり言ったらいいんだ。私は見えないふりをしてダンスに没頭した。 戻る TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
https://w.atwiki.jp/chisato_ojosama/pages/168.html
前へ その日の夜、さっそく千聖から電話があった。 「明後日、レッスンが終わってからはどうかしら。次の日はCDイベントの打ち合わせがあるから、私の家から一緒に行けるわ。」 家族みんなが集まっているみたいで、電話の向こう側からテレビの音が聞こえてくる。大きい声で何か言い合ってるのは、弟くんとあっすーかな? やっぱり千聖の家って面白そう。すごくわくわくしてきた。 「あぁっ!ちょっと、ダメよ!そのイチゴはお姉ちゃんが食べるの。ダメだったら!返してちょうだい」 私と電話しながら、千聖もちょっかいを出されたらしい。デザートに、大好きなショートケーキでも食べてたのかな。 お嬢様言葉のまま、バタバタと走り回る音が聞こえる。 「ああ・・・ごめんなさい、愛理?」 「ケッケッケ、にぎやかだねー。じゃあ明後日にお邪魔するね。」 「ええ、それじゃ・・・あ、ちょっと待って。母が、愛理のお母様とお話ししたいって。」 「ほーい。」 私はリビングにいたお母さんにケータイを持って行った。あらあらとかまあまあとか言いながら、お母さんは受話器の向こうの千聖のママにぺこぺことお辞儀して何やら話し始めた。 私が千聖の家に泊まりに行くと言った時は、何だかすごく驚かれてしまった。そんなに仲がいい印象がなかったらしい。 確かに、インドアな私とアウトドアな千聖では遊びが合わないと思われるのは仕方がない。実際、前は私たち自身もお互いそう決め付けていたところはあったと思う。 心が通い合うようになったのは、千聖が頭打ってお嬢様になる少し前ぐらいだった。 千聖は私の考えてることが難しすぎて、わかりあえないと思って怖かったといい、私も千聖のものすごくストレートな性格にとまどっていたことを打ち明けあった。 でも実際、千聖は私が思っていたほど単純な性格じゃなかったし、私は千聖が思ってるほど難しい人間でもなかった。 それを認め合うことができて、昔よりずっといい関係になれそうだった。 階段から落ちたのはその矢先の出来事だった。私は平静を装っていたけれど、せっかく距離の縮まった千聖がまた別人になってしまったことを恐れた。 まあ、でもそれは杞憂というもので、お嬢様になった千聖とも、こうして打ち解けることができている。 キャラが変わっても、千聖は私の大好きな千聖に変わりはないのだ。 「・・・はい、はい。ええ、じゃあ愛理をお願いしますね。千聖ちゃんにもどうぞよろしく。」 大人たちのお話ももう終わったみたいで、お母さんは「何か手土産を考えないとね」なんて言いながら携帯を返してくれた。 「何かドキドキするよ~千聖んちってどんなんだろう~ケッケッケ」 「お母さんもドキドキ~ケッケッケ」 親子でクネクネする私たちを、男性陣が白い目で見ていたのはご愛嬌。 その日から2日、私は遠足の前日の小学生みたいに、興奮して眠れない日々を過ごした。 何を話そうかな、何て想像しただけで胸がドキドキする。たった一泊させてもらうだけなのに、私はものすごく浮き足立っていた。 そして、お泊り当日。 「愛理、それじゃ千聖ちゃんに迷惑かけないようにね。お土産持った?着替えは?」 「大丈夫だよぅ」 いつもよりだいぶ大荷物の私は、若干よろよろしながら、いつものレッスンスタジオの前でお母さんの車を降りた。 「おはよ、愛理。どうしたのー?荷物多くない?」 入り口でポンと肩を叩かれて、振り向くとえりかちゃんがいた。買い物でもしてから来たのか、たくさんショップバッグを抱えている。 「えりかちゃんこそ、バッグいっぱい。」 「なんかね、買い物してたら似合いそうな服があったからつい買ってきちゃった。・・・千聖に。」 そう言って軽くバッグを撫でるえりかちゃんは妙に優しい顔をしていて、私はどこか釈然としない気持ちになる。 「ふーん・・・そっか」 私の流し目に何かを察知したのか、えりかちゃんは「なっ何その顔は!」と言いながら、ドエームと戦うときみたいなポーズを取った。 「千聖といえば、今日ねえ、私千聖の家に泊まりに行くんだ。」 「へー・・・ってええ!そうなの?な、なぜ?」 なぜ?って。えりかちゃんはお母さんと同じ反応をした。そんなに珍しいことかな? 「だって私たち仲良しだもん。今日はいーっぱいいろんな話するんだーケッケッケ。」 「それは・・・お手柔らかにお願いします。」 今日のえりかちゃんは察しがいい。いろんな話、の中に、自分のことも含まれてるのはわかってくれたらしい。 「そうだ。・・・一個だけ聞かせて。えりかちゃんは、千聖を好き?」 「好きだよ。大好き」 「うん、そか、わかった。ありがとうね。」 えりかちゃんは私の問いかけに、迷いのない目で間髪いれずに答えてくれたから、私はとりあえずこの話を切り上げることにした。あとはラジオの時にでも。 「えり愛理おはよー!」 「おはようございますー」 後ろからご機嫌な舞美ちゃんと千聖の声が追いかけてくる。私たちは歩くのを止めて、犬の兄弟みたいにジャレあう2人を待った。 「うわあウケるー!愛理、家出?とかいってw」 千聖とお泊りまであと数時間。舞美ちゃんにまで大荷物を突っ込まれながら、私の胸のドキドキは高まっていった。 次へ TOP