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偽装観(疑想感)《後編》 ◆ ◆ ◆ 「中は、まともな研究所って感じだよな……いかにも研究所っていうか、研究所が研究所してる感じっていうか……」 意味が分からない、と自分でも思いながら、奇野は二階へと続く階段を上る。 廊下を端から移動しながら、右へ左へと懐中電灯を向けて歩く。あからさまにやっつけな感じの動作で、真面目に探索する気がないのが容易に窺い知れる。 面倒くさいとかいうよりも、興味が無いといった様子。 「動物実験とか、そういう研究だったら一応守備範囲だったんだけどなあ……」 研究所らしい、「それっぽい」感じがあるのは見てとれるが、それ以上のことはよく分からない。 分野が違うのだ。 「しかし、あのガキ……」 まさか、《十三階段》のことを切り出されるとは思わなかった。 奇野のことをよく知っている風の口ぶりからすると、あのなんとかいう女よりむしろ、《いーちゃん》の方の関係者か。 狐さんの――敵。 あまりにもあっさりと、手を組むことを承諾したときから不自然だとは思っていたが―― 最初っから、知っていて組んだってことか……。 どいつもこいつも、油断も隙もあったもんじゃない。 「その上に、哀川潤か……」 奇野たちと同じ世界の人間ならば、まず知らない者は皆無と言っていいくらい、あまりにも膨大な『存在』。 《死色の真紅》――哀川潤。 そんな化物まで連れてくる必要が、このゲームには有るっていうのか……? 『殺し名』、『呪い名』、『死色の真紅』、『魔法使い』、『真庭忍軍』。 水倉神檎。 殺し合い――バトルロワイアル。 ……まるで見当もつかない。 「本当、わっけわかんねえなあ……本当、本っ当によぉ……」 訳がわかる部分があるとしたら、これが冗談の類じゃないということくらいだ。 しかし一方で、奇野は当初と比べて格段に余裕を得ていることも自覚していた。 敵よりも先に味方に出会い、 機動力を獲得し、情報を確保し、 そして今は、根城としても使えそうな建物の中で、悠々と探索活動を行なっている。 アドバンテージの有効利用。 現状を見れば、限りなく順調と言っていい状態。 ただしその現状が与える余裕は、奇野の中のもうひとつの部分にも確実に影響を与えつつあった。 今こそ仲間として手を組んでいる二人。それがあくまで、いつかは殺さなければならない相手であるということ。 いつ寝首を掻かれるかも分からない、今現在最も身近に存在している敵であるということ。 最初にまみえた時には強固なまでに抱いていた、警戒という名の防衛意識。 それが希薄になりつつあるということに、奇野は気付いていない。 「三十分だっけか……」 時計を確認すると、探索開始からまだ十分も経っていなかった。全部の階確認したら、外に出て待ってるか、などと考えつつ、 四階へと続く階段に足をかける。エレベーターも備えてあるようだが、万が一「何か」あったらと思うと、どうにも乗る気にならない。 もはややる気も何もなく、ただ悪態をつくようにして部屋を検分していた奇野だったが、しかし。 それを見た途端、奇野は動きを止めた。 「……?」 他のごちゃごちゃした部屋に比べれば、いくらか殺風景に見える部屋。 その中に、一台のデスクトップパソコンが置かれていた。 いや、コンピュータの類ならば、他の部屋でもいくつか見かけた。奇野が見て動きを止めたのは、パソコンそのものでなく、その画面のほうだった。 ディスプレイが点灯している。 廃施設のような、まるで人気を感じさせないこの建物。すべてが沈黙したような、この研究所の内部で、唯一人工的な光を放つ、青白く切り取られたディスプレイ。 奇野は息を飲み、パソコンへと近づいていく。一歩一歩、気後れしそうになる自分を励行するようにして。 画面に顔を近づけ、そこに表示されている何かを見る。ディスプレイの中央に、青い背景に浮かび上がるようにして、一行の文字列が打ち込まれていた。 《Here is a 『Desert Fox』.》 「………………」 無機質な文字列。それ以外には何もない。 キーボードをいくつか叩いてみる。画面は何の反応も示さず、文字列も表示されたまま。 『Desert Fox』――『砂漠の狐〈デザート・フォックス〉』? 《『砂漠の狐』はここにいる》――? 「…………狐さん?」 奇野がその文章について、さらに思考を深めようとした、その時。 扉の外、廊下の方から、何か気配のようなものを感じた。 反射的に身体を緊張させ、神経を尖らせる。廊下の気配に集中する。……いや、これは気配というより―― ……かん……かん……かん…… 音だ。 微かではあるが、一定のリズムをもって、確かに聞こえてくる音。 足音のようにも聞こえる。 ……誰かいる? もしいるとするなら、誰だ? 子荻か石凪のどちらかが、奇野に会うためにこの建物の中に入ってきたのだろうか。 何のために? 何か緊急を要する事態でも発生した? いや、それならばなぜ、あの音の主は何も喋らない? 奇野に会う必要があるなら、子荻や石凪ならば単に大声で呼べばいいだけの話だ。 それならまさか、自分たち以外の人間がこの中に? 突然の敵襲、という石凪の言葉が頭をよぎる。 ……いや、それも考えがたい。奇野が子荻たちと別れ、この建物の中に入ってからまだ十分そこそこしか経っていない。 外で子荻が言っていたように、そんな短時間で他のエリアからこのエリアの中に侵入し、さらにこの施設にまでたどり着くというのは、やはり無理があるように思える。 自分たちのように、何らかの移動手段を手にいれていたとするなら、あり得ないことではないのかもしれないが……。 「……いや」 どちらにせよこのエリア内に入ってしまえば、それがこの忌々しい首輪をつけている「参加者」であるなら、萩原子荻の持つレーダーにかかってしまうことには変わりない。仮に何者かがこの施設内に侵入していたとするなら、子荻はそれを感知できていながら、なんのアクションも起こさずに見過ごしたということになる。 あの女が裏切ったのか……? いや、しかし―― ……がしゃん……がしゃん……がしゃん…… 「……ん?」 考えがまとまらぬうちに、音はもう、耳を澄ますまでもなくはっきりと聞こえるほどに近くまで来ている。どうやら階段を上ってきていたらしい。同時に奇野は、それにようやく気づいた。 足音のように聞こえていた音。 それは、機械の動くような音だった。 金属の擦れあうような、歯車が規則的に噛み合うような音が、廊下からはっきりと聞こえてきていた。 奇野は意を決し、部屋の入口へと移動した。下駄を脱いで両手にぶら下げ、そっと物音を立てぬように移動し、扉の隙間から廊下を窺う。 階段のあるあたり。人影がひとつ、確かに佇んでいる。 ただしそれは、『普通の』人影ではなかった。 動きがどうとか、雰囲気がどうとか、そういう問題ではない。 見た目そのものが、人間のシルエットとしてあり得ないものだった。 「何だぁ……? ありゃ……」 腕が四本。 腕だけではない。脚も同じく四本。その身体が動くたび、軋むような金属音が響く。 さらに注目すべきは、四本の腕すべてからにょきりと伸びている、先端の鋭く尖った細長い物体。 刀――のようだ。 それも、時代錯誤なことに日本刀。 服装はよく見えないが、和服を着ているように見える。四本の手足をきっちりと通す、和服を。 日本刀と相まって、その格好はむしろ自然に感じる。 人の形、と言えなくもないが、人間としては、あまりにも不自然な形。 奇野は一点に目を凝らす。人影の頭部、その首元に。 首輪が掛けられている様子は――ない。 「!」 突然、人影の頭部が「ぐるん」と回転し、その双眸が奇野のいる部屋の入口へと向けられた――気がした。 その寸前に、奇野はほとんど反射的に扉を閉めていた。再び聴覚を研ぎ澄まし、扉の外の音を探る。 がしゃん――と、再び足音のような機械音が鳴り始める。音は、近づいてきているのか? もし見つかっていたら、この部屋に逃げ場はない。がしゃん……がしゃん……がしゃん……音をよく聴け。どっちだ。どっちに向かっている……。 ……がしゃん……がしゃん……しゃん……。 ……音は、 ……しゃん……ゃん……ん…… 音は、奇野のいる部屋とは反対の方向へと、徐々に遠ざかっていった。 「…………ふぅ」 音が聞こえなくなった所でようやく身体の力を抜く。ディスプレイの明かりと、パソコンのファンが回転するモーター音だけが静寂の中に残る。たっぷり十秒、その音を聞いてから、奇野は扉から身体を離した。 何だったんだ……? あの日本版スタンドみたいな物体は……や、あの漫画もともと日本のだけどさ。着物着たスタンドなんて聞いたことねーよ……いやいや、スタンドであることを前提にしてどうすんだ。 「人間――じゃねぇよな、あれ……ロボット?」 ロボット――機械。 和装。 和装の機械。 和装の動く人形。 からくり人形……とか? 「いや待てよ――まさか、あれは……」 そうだ。そう考えれば辻端が合う。 むしろ、それ以外に考えようがないと言ってもいい。 「なんてこったよ……そういうことか……」 奇野は呟いた。 思い当たったのだ。あの奇怪な人形の正体について。 そして、この研究施設の恐るべき正体について。 「一体、何の研究してる施設なのかと思っていたが――」 自然と、拳に力が入る。 自分の言葉を、じっくりと噛み締めるようにして―― 「まさか、メイドロボ作製のための施設だったとはな」 …………………………。 奇野は、薄ら笑いを浮かべながらそう言った。 いかにも合点がいったという風に。 「そういや狐さんも、一時期メイドロボの研究に噛んでたことがあるって言ってたっけな……は、まさか他にこんな研究してる所があったなんてな。正直恐れ入るぜ……ああ、あの女さっき『閉鎖的な研究』がどうとか言ってたな。成程ね……確かにあんな特殊すぎる趣味のもの作製してるなんてこと、とても公にできたもんじゃねえよな――」 手足四本の、日本刀付き和装戦闘メイドだぜ? 理解のしようがねえよ。 そう言って、もう一度拳を握る。 「まさか、こんな短時間の探索行だけでこの場所の正体を看破できるとはな……ふ、今日の俺は冴えに冴えてるぜ……」 奇野は満足げに頷く。 余裕があるというより、もはや調子に乗っていた。 通常ならばありえない程の勘違いが可能なくらいに倒錯していた。 やはりこの男、基本的には馬鹿である。 「しかしそうすっと、ここはあんまり居たくねえ場所になっちまったな……」 さっきまではここを根城にすることも選択肢のひとつとして考えていたが、それは当然、この場所がまだ誰にも陣取られていないと思っていたからこそだ。 蓋を開けてみれば、まるで予想外のものが巣を張っていた。 しかも、到底話の通じなさそうな相手が。 人間であるかどうか以前に、普通量以上の日本刀を構えた相手にのこのこと近づいていけるほどの余裕も度胸も、奇野は持ち合わせてはいない。 「中でウロウロして鉢合わせすんのも嫌だしな……いったん外出るかね。これも一応、緊急事態の内だろうし――」 勘違いはそのままだったが、行動としては正しいと言えるものだった。 「あ――これはどうすっかな……」 奇野はパソコンを一瞥する。今一番考えるべきはあのメイドロボのことだろうが、このパソコンの文章も気にかかる。自分にとって、心当たりがないでもない内容の文章でもあるし―― まあいいか。 まずは連中に話して、必要ならその後に考えればいい。 今は移動を最優先する。 ドアを開け、廊下の様子を再び窺ってから、床に落ち着けていた腰を上げる。念のため下駄は履かず裸足のまま。 廊下に出て改めて耳を澄ますと、機械的な音がまだ微かに聞こえてきている。下の階からのようだ。その音に近付かないようなルートを選択しながら、奇野は階下へと歩を進めていく。三階を過ぎる時に音がこちらへ向かってくるのに気付き一瞬焦ったが、戻るより進むほうが 安全と判断し、二階まで一気に駆け降りる。追ってくる様子はないが、すぐに階下へと降りてくる可能性もあったので、入口のほうへと足を急がせる。 「こういう時に、携帯電話が無いと不便だとか思うのってどうなんだろうな……」 今更ではあるがこの男、考える内容がとても『呪い名』とは思えない。 完全に一般人の思考である。 何とか音に追い付かれることなく、一階の入口へと到着する。聴覚の緊張を解かぬままに、とりあえず両手にぶら下げておいたままの下駄を装着し直す。機械音は――近づいてはこない。改めて扉に向き直り、端の部分に右手をかけて引く。動かない。力が足りないのかと、両手をかけてもう一度引く。 開かない。 「……?」 もう一度、体重をのせるようにして思いきり扉を引く。しかし開かない。びくとも動かない。 おかしい。入るときには、片手の力だけで割合簡単に開いたはずだ。こんなに重かった記憶はない……いや、これは重いと言うより――。 「いや……待て……」 それ以前に、ここに入った後、扉を閉めていったのだったか――? 確か、どこが入口だったかすぐ分かるよう、開けっぱなしに―― 「――――!」 奇野はようやくそれに気づいた。扉の脇、住宅の玄関でいうならインターホンの位置にあたる場所に設置された、キーの付いたパネル。 それが、作動している。 入るときには、何の反応も示さなかったはずのそれが。 「……まさか」 もしかすると、それは予想しておくべき状況ではあったのかもしれない。得体の知れない無人の研究施設なぞに足を踏み入れた時点で、それは一人だろうと三人だろうと、それがあまりにお誂え向きの状況であることに変わりはなかったのだから。 ディスプレイに浮かんだ不可思議な文章。 建物内を徘徊する、奇怪な姿の機械人形。 開かない扉。作動したロック・システム。 あまりにも露骨な、あまりにも揃いすぎた状況。 「…………と、」 閉じ込められた――? 馬鹿な、とは思う。第一どうやってこの扉をロックしたというのか。何かの弾みで、停止していたシステムの一部が作動してロックがかかった? そんな偶然があり得るか? いやしかし、「偶然」で片付けられないとなると、必然的に「人為的」の可能性を疑わざるを得なくなる。 これほどに物々しいセキュリティ、おそらく別個での管理でなく、施設全体を統括するシステムか何かで管理されているはず。 例えばそのシステムをあらかじめジャックしておき、奇野が建物内部に侵入したのを見計らって、停止させていたセキュリティの一部を再起動させたのだとしたら――。 「…………有り得ねぇ……」 そんな非現実的な真似、仮に出来たとしたら――いや、実際にそれをやったのだとしたら―― そんなもの、変態どころか化物だ。 あらゆる意味で、理解の範疇を越えている。それが『外部』から仕掛けられたものだとするなら、尚更のことだ。 あの機械人形が自分でロックしたというほうがまだ現実的かもしれない。……いや、それもできれば想像したくない話だが―― ――『外部』? 「……!」 奇野は自らの脳裏に浮かんだ推測に戦慄した。そう考えれば辻褄は合う。辻褄は合うが、その可能性はまずい。いくら何でも――悪すぎる。 奇野たち以外、誰もいないはずのこの施設内に、あんなものが徘徊している理由。 もしあれが、誰かの所有する『武器』だったとしたら? ロボットのように自動操作の可能な、あるいは遠隔操作の可能な武器があったとしたら? それならば、レーダーも何もあったものではない。 武器がいくら動き回っていても、使用者が離れた場所にいれば何の意味もない。 「これは、まずいだろ……これは…………」 奇野が戦慄したのは、しかし子荻のレーダーに関する所だけではない。 今目と鼻の先にいる相手と、自分自身の『相性』に関わることである。 奇野の能力は、当然ながらその対象を人間に限定しない。犬でも猫でも昆虫でも魚介類でも、物によれば植物でさえ、その能力は容赦なく効果を発揮する。 相手が、『生きているもの』ならば。 ならば――である。 考察を挟む必要すらない。 子供でも分かる理屈である。 『機械』を相手に、『毒』など何の意味もありはしない――! 「くそ……畜生……」 奇野は歯噛みした。先手を取られたような、お株を奪われたような、そんな気分を味わっていた。 相手の土俵に立たず、どころか自分の土俵にすら立たず、外側からの攻撃に終始する姿勢。 それは完全に、『呪い名』のやり口と同様だった。 「武器は、あるにはあるけど……くっそ」 奇野がデイパックから取り出したのは、二本の鉄の棒だった。 いや、二本というよりは一対といったほうが正しいのかもしれない。 小刀ほどの長さの棒に、それと直角に付けられた短い持ち手部分。歪なL字型をした、凶器。 「トンファー……『匂宮』の連中なら、好き好んで使いそうな武器だな……」 当然だが、奇野にとっては扱ったこともない武器だ。 そもそも凶器が何であろうと、奇野が武闘派でないという事実は変わらない。あの等身大呪いの人形みたいな機械の戦闘能力は不明だが、左右二本ずつの両手に構えられたあの凶器を見てなお、楽観的な考え方ができるほどに奇野は危険意識を低く持ってはいない。 こちらは二本で、あちらは四本。凶器の数で単純に二倍と考えるのも安直過ぎるだろうが、あれと正面切って対峙するのは間違っても得策ではない。むしろ愚策だ。 「…………逃げよう」 武器まで出した割に、決断は早かった。 奇野の『病毒』と、子荻の持つ簡易レーダー、その両方が全くの無意味に貶められてしまう敵。 状況が、悪い方向に傾き過ぎている。 「……っと」 階上から再び音が近づいてくる。追いついてきたか、と思うより先に、奇野はエレベーターのボタンを押していた。相手は階段を使って降りてきている。このままここで待っていたら袋の鼠状態だ。まずはアイツから離れた場所に移動しないと――。 エレベーターに乗り込み、気配を探りながら扉を閉める。音の聞こえ具合から二階にいるとあたりをつけ、四階のボタンをプッシュする。身体が浮く感覚。単調なモーター音がやけにうるさく感じる。 「……さて、どうするよ……」 探索終了予定時刻まで、あと十分弱。時間が過ぎても自分が外に出られなかった場合、外の二人が何らかの手段を行使してくれるかもしれないが、それまでは自力に頼るしかない。 扉がロックされている以上、外からならどうにかできるとかいう雰囲気ではないが。 まず警戒すべきは、あの人形だ。 あの人形さえ避けることができれば、命の危険だけは一応回避できる。 とりあえずは、他に出口がないかどうかを―― 「人間・認識」 「は?」 合成音のような、しかしはっきりと日本語を発したとわかる声とともに、めぎり、という鉄板のひしゃげたような音が上方から響く。その音の意味を察する暇もなく、奇野を乗せたエレベーター全体が、まるで地震でも来たかのようにぐらりと振動して―― 「即刻・斬殺」 「――――! うお!」 咄嗟の判断。 奇野がエレベーターの床に伏せると同時に、それは降ってきた。 エレベーターシャフトを障子紙のように貫き、天井から勢いよく飛び出してくる一本の鋭い刀身。 判断が一瞬遅かったら、奇野の頭蓋骨はその中身ごと無事では済んでいなかっただろう。 「う……上!?」 上に乗っている!? この刀身――間違いない! あの人形が持っていた日本刀! う、上から降ってきた――だと? 一体どうやって――いやそれ以前に、エレベーターで移動しようとしたのを察知された!? まさか、そこまで精密な機能を持ってるっていうのか……? 人間ならば、至近距離でエレベーターが動けばすぐに気づく。だが相手は機械だ。奇野としては精々「視界に入らなければ安全」程度に構えていた。 だが違う。 今の一刀目も、確実に奇野の立っている位置をピンポイントで狙った貫き方だった。 闇雲ではない。 仕掛けは分からないが、おそらくは視覚に類するもの以外の何かで、奇野の位置を―― がこん! 「うおぁ!」 考える暇も与えてはくれない。すぐさま二刀目が、一刀目のすぐ隣から降ってくる。 更に続けて三刀目、四刀目、五刀目。立て続けに振り降ろされる刃。がこんがこんがこんがこんがこんがこんがこんがこんがこん! 執拗に、執拗に、執拗に、重箱の底を貫くような執拗さで(あえて捻った表現をしてしまう余裕が逆に悲しい)、次々に天井が穿たれてゆく。 エレベーターは止まらない。ゆっくりと上昇を続けている。 その点は奇野にとっては幸運だった。もし途中で、この上に乗っているであろう人形が与える衝撃の影響によってエレベーターが停止してしまった場合、奇野の逃げ場は今度こそ皆無である。 袋の鼠。八方塞がり。 絵的にいえば六方塞がり、箱中の鼠といった所か。 階表示のランプが二階を過ぎ、三階を示す。 絶え間なく降ってくる刃の雨に、奇野は床に這ったまま動くことができない。ボタンに手を伸ばすことすらも困難。ただじっと、エレベーターが到着するのを待つしかない状態。 「ぐっ……ターミネーターに追われるってのは、こういう気分なんだろうなぁ――!」 無力。 『病毒』の通用しない相手の台頭。ただそれだけで、今の奇野は完全に無力と化していた。 雀の竹取山で石凪萌太を相手に勝利を収めることができたのは、子荻の弄した策が機能したからこそだということは奇野も認める所ではある。 それでもやはり、自分の能力があってこそ成功した策であるという意識は、矜持として捨てることができなかった。 だからこそ、奇野の感じる無力感は大きい。 一人になった途端にこのざまである。 嘲笑うかのように、尚も降り続ける刃。 がこんがこんがこんがこんがこんがこん! 執拗に、執拗に、執拗に、執拗に、執拗に―― ――こぉん。 電子音。 四階を示すランプが点灯し、重力の狂う感覚が消え失せる。 どうやら途中で停止することなく、最上階までたどり着くことができたらしい。 「……ん?」 一瞬の安堵。次いで不審。 いつの間にか、天井から執拗に降り注ぎ続けていた穿孔音が、ぴたりと止んでいた。 天井を見上げる奇野。 一撃目を除けば、無作為に打ち降ろされていたと思っていた刃の雨。 天井に穿たれた刺突の痕跡に、奇野はそれが無作為の結果ではないことを知る。 ずらぁりと、曲線を描きながら並べられた無数の傷跡。 その痕跡は、天井で歪な円を描いていた。 「…………あ、」 有り得ねぇ――。 その言葉は、目の前の現実によってかき消される。 がごぉん! と、一際大きな音を立て。 天井の一部が、クッキー生地の型抜きのように、大きく惰円形に切り抜かれ落ちた。 「人間・認識」 「――――――ひ」 ぽっかりと空いた天井の穴。その向こうに見える、深遠のような暗闇の中から―― 「即刻・斬殺」 機械仕掛けの死が、奇野を目がけて降ってきた。 【1日目 早朝 斜道卿壱郎研究施設 C-8】 【奇野頼知@戯言シリーズ】 [状態]健康 [装備] なし [道具]支給品一式、ランダム支給品(1~2)、トンファー@人間シリーズ [思考] 基本 とりあえず生きることが優先。そのためには誰でも殺す。 1 早いとここの建物から出ないとヤバい。 2 なんとかしてこの状況を連中に伝えたいところだが……無理か。 3 俺、死んだかも。 ※ジープは「人間ノック」で軋識たちが乗っていたもの。 奇野は自分に与えられた制限について(「毒」については)正確に把握できています。 021← 021 →022 ← 追跡表 → ― 奇野頼知 ― ― 萩原子荻 ― ― 石凪萌太 ―
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【名前】鑢七花 【出展】刀語 【種族】人間 【性別】男 【声優】 【年齢】 【外見】 【性格】 【口調】 一人称: 二人称: 【呼称】 [[]]→ [[]]→ 【特異能力】 【備考】
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【名前】想影真心 【出展】戯言シリーズ 【種族】人間 【性別】? 【声優】 【年齢】 【外見】 【性格】 【口調】 一人称: 二人称: 【呼称】 [[]]→ [[]]→ 【特異能力】 【備考】
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【名前】串中弔士 【出展】世界シリーズ 【種族】人間 【性別】男 【声優】 【年齢】 【外見】 【性格】 【口調】 一人称: 二人称: 【呼称】 [[]]→ [[]]→ 【特異能力】 【備考】
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所在地愛知県西尾市米津町 開業日1926/07/01 接続路線名鉄西尾線 隣接駅南桜井?(名鉄西尾線:新安城方面) 桜町前(名鉄西尾線:吉良吉田?方面) 訪問日2008/4/13 戻る
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ナnoラvsやさぐれぱんだ 西尾ナノラとやさぐれぱんだのバトル。 ROUND1 [2009/04/05 18 27 07] marllboro_menthol_hi-liteの発言 下乳がないのがきにくわん! [2009/04/05 18 27 15] marllboro_menthol_hi-liteの発言 男なら、下乳だろ! [2009/04/05 18 27 23] 西尾ナノラの発言 これに描いたらどんだけ下に乳があるんだよ [2009/04/05 18 27 26] 西尾ナノラの発言 化け物だろ [2009/04/05 18 27 35] marllboro_menthol_hi-liteの発言 ちょろっとみえててもいいだろ [2009/04/05 18 27 38] marllboro_menthol_hi-liteの発言 位置的に [2009/04/05 18 27 59] 西尾ナノラの発言 この角度からは奇乳でもないかぎりみえない [2009/04/05 18 28 02] marllboro_menthol_hi-liteの発言 えろい乳ってのはな! [2009/04/05 18 28 09] marllboro_menthol_hi-liteの発言 大きくて少し垂れてるんだよ! [2009/04/05 18 28 17] 西尾ナノラの発言 へえ [2009/04/05 18 28 25] 2のひと/メロンズゥの発言 マンチラに描き直してこい [2009/04/05 18 28 34] 西尾ナノラの発言 ことわりんぐ [2009/04/05 18 28 36] 桑石(ちゃんこ)の発言 マンチラなら土下座するわ [2009/04/05 18 28 38] marllboro_menthol_hi-liteの発言 肌色に塗りつぶしてモザイクにするわ [2009/04/05 18 28 49] 西尾ナノラの発言 かってに^^; [2009/04/05 18 28 58] marllboro_menthol_hi-liteの発言 よし、許可が下りた! [2009/04/05 18 29 03] marllboro_menthol_hi-liteの発言 ではやる! [2009/04/05 18 29 08] 西尾ナノラの発言 頭でもわいてんのか [2009/04/05 18 29 09] 2のひと/メロンズゥの発言 ファイト [2009/04/05 18 29 13] 桑石(ちゃんこ)の発言 ファイト [2009/04/05 18 29 17] 西尾ナノラの発言 やめろおおおおああ [2009/04/05 18 29 28] marllboro_menthol_hi-liteの発言 バカ野郎!エロっていえば、絵の上達の原動力だろうが!! [2009/04/05 18 29 32] 桑石(ちゃんこ)の発言 次なんのアニメみようかな [2009/04/05 18 29 42] 西尾ナノラの発言 そんな不純な動機だからのびないんだよ [2009/04/05 18 29 43] 2のひと/メロンズゥの発言 クイーンズブレイドでも見てろ [2009/04/05 18 29 47] 有末さんの発言 ただいま [2009/04/05 18 29 49] 西尾ナノラの発言 乳爆発 [2009/04/05 18 29 53] marllboro_mentmenthol_hi-liteの発言 ナノラの絵の魔改造だから [2009/04/05 18 46 00] 桑石(ちゃんこ)の発言 うん [2009/04/05 18 46 05] 桑石(ちゃんこ)の発言 ぽっ//// [2009/04/05 18 46 18] 名華の発言 めいかにも送りつけてね//// [2009/04/05 18 46 27] marllboro_menthol_hi-liteの発言 ダメwwww [2009/04/05 18 46 31] marllboro_menthol_hi-liteの発言 絶対送り付けれないwwww [2009/04/05 18 46 34] 桑石(ちゃんこ)の発言 リアルにナノラの改変絵じゃないか!! [2009/04/05 18 46 37] 名華の発言 だめって・・ [2009/04/05 18 47 09] marllboro_menthol_hi-liteの発言 さすがに恥ずかしいです>< [2009/04/05 18 47 12] 桑石(ちゃんこ)の発言 これは確かに18禁 [2009/04/05 18 47 25] 名華の発言 いいよ全然!! [2009/04/05 18 47 31] marllboro_menthol_hi-liteの発言 じゃあ、送りつける [2009/04/05 18 47 44] marllboro_menthol_hi-liteの発言 まずは元ネタから [2009/04/05 18 47 57] 西尾ナノラの発言 え [2009/04/05 18 48 00] 西尾ナノラの発言 おい [2009/04/05 18 48 06] 西尾ナノラの発言 ほんとに改変したのかよ [2009/04/05 18 48 12] 西尾ナノラの発言 許可だしてねーぞ [2009/04/05 18 48 35] 桑石(ちゃんこ)の発言 >< [2009/04/05 18 48 37] marllboro_menthol_hi-liteの発言 おーっと、ここで原作者の抗議が 解説 他人の絵を無断で改変し、無断で配布するやさぐれぱんだ ログと日付から推測するに、この記事の女の子のパンツを肌色に塗り、モザイク処理したと思われます。 ROUND2 [2009/04/12 23 01 05] やさぐれぱんだ準備中 空気先生はネット開通まであと2ヶ月だし [2009/04/12 23 01 14] やさぐれぱんだ準備中 文藝をばかにすんじゃないわよ [2009/04/12 23 02 01] やさぐれぱんだ準備中 正直、いい表現しようと思うとライトノベル読むだけじゃ全然たりないってわかっちゃったから余計に。 [2009/04/12 23 02 10] やさぐれぱんだ準備中 漫画とは違った意味で苦労するのよ [2009/04/12 23 02 28] マシモさん@新都 文藝読んでないけど文藝の作家さんは個性豊かでいいですよね [2009/04/12 23 02 30] 西尾ナノラ ラノベと小説はちがうくね [2009/04/12 23 02 34] 西尾ナノラ 俺も読まないわ [2009/04/12 23 02 53] やさぐれぱんだ準備中 バカ野郎、ノベルって英語を日本語訳しろよ [2009/04/12 23 03 04] 西尾ナノラ ラノベっつってんだろ [2009/04/12 23 03 05] マシモさん@新都 軽い小説? [2009/04/12 23 03 12] 名華 ラノベはなんか・・ [2009/04/12 23 03 14] やさぐれぱんだ準備中 あと、純文学にラノベ出身の人もいるんだよ [2009/04/12 23 03 14] マシモさん@新都 軽薄な小説? [2009/04/12 23 03 35] やさぐれぱんだ準備中 いや、正確にはジュブナイル(青少年向け小説)のことを言うんだよ [2009/04/12 23 03 48] やさぐれぱんだ準備中 漫画小説だけがラノベじゃない [2009/04/12 23 04 03] 西尾ナノラ へえ [2009/04/12 23 04 17] 名華 でもラノベっていわれると電撃文庫とかを想像しちゃうわ [2009/04/12 23 04 46] 西尾ナノラ 文芸とラノベなんで別れてんの [2009/04/12 23 05 12] やさぐれぱんだ準備中 まぁ、キャラクターに頼りすぎてる作品は確かに蔑視されてる部分あるけどさ [2009/04/12 23 05 17] 西尾ナノラ 挿絵描ける人がラノベ? [2009/04/12 23 05 32] やさぐれぱんだ準備中 規約読めばわかるよ [2009/04/12 23 05 43] 西尾ナノラ 合併合併 [2009/04/12 23 05 55] 西尾ナノラ あれは読んでたわ [2009/04/12 23 05 57] 西尾ナノラ なんだっけ [2009/04/12 23 06 01] やさぐれぱんだ準備中 そういう態度やめろよ。文藝バカにしすぎだろ。 [2009/04/12 23 06 23] 西尾ナノラ 他人の絵を勝手に改悪するような人にいわれたくないね [2009/04/12 23 06 44] やさぐれぱんだ準備中 ハァ? それと今の話に何か関係あるのかよ [2009/04/12 23 06 51] マシモさん@新都 文藝、ラノベ、それぞれの代表的なイメージの作品って何? [2009/04/12 23 06 57] マシモさん@新都 喧嘩は別窓で [2009/04/12 23 07 08] 西尾ナノラ どっちもカツラさん描いてるやつだわ [2009/04/12 23 07 48] 有末さん ごめんね いらんもんつくって。 そもそも新都を去ったカス文藝はどうでもいい。 糞記事あげんな。 ↑ 女作家にちょっかい出したりオフに出たりしてる しなびたちくびの登録は外したけど名前変えて別作品連載してるだろ どうでもいい奴を叩きまくる場所、それが裏サイトです! ナノラって、ほんとゴミだな… 絵チャで暴れてそれまでの住人追い出してるし 今は漫画も描かずにオナニーイラストでブログあげてるし ほんとカス ↑ やさぐれぱんだ先生おかえりなさい。待ってました!! なお、消えた今でも過剰な自意識は健在なようで たくす先生のコメント欄に彼らしきコメントが見受けられる。 [8] 一度お会いしたこともある故、たくす先生にはとても頑張ってもらいたいとです。ということで、基本的な文章作法をここに。http //www.raitonoveru.jp/howto/c1.html オーシャンまなぶの作者も、いい迷惑である。 現在はインギーさんとして活躍中 Pixiv http //www.pixiv.net/member.php?id=798851 Twitter http //twitter.com/yingwie3_takana 作品 作品名 URL かーみら! http //book.geocities.jp/neet_bookshelf/carmilla/ 名前 コメント すべてのコメントを見る
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【名前】誰でもない彼女 【出展】戯言シリーズ 【種族】人間 【性別】女 【声優】 【年齢】 【外見】 【性格】 【口調】 一人称: 二人称: 【呼称】 [[]]→ [[]]→ 【特異能力】 【備考】
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【名前】病院坂迷路 【出展】世界シリーズ 【種族】人間 【性別】女 【声優】 【年齢】 【外見】 【性格】 【口調】 一人称: 二人称: 【呼称】 [[]]→ [[]]→ 【特異能力】 【備考】
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最強の激昂 ぼくとひたぎちゃんは、とりあえず骨董アパートに到着した。 「ふむ。崩れないのが不思議なくらいのゴミのようなアパートね。」 ぼくの住居に対して凄い物言いだな。 「ていうかいい加減足が痛いわ。家があることだし、いい加減休ませてくれないかしら?」 ぼくだっていい加減疲れているんだよ。 そのままぼくとひたぎちゃんは階段を上り、とりあえずぼくの部屋へ向かうことにした。 そして、扉をあけ――子供の死体と、『哀川潤』という血文字を発見した。 哀川潤は歩む。 浪白公園で阿良々木暦を気絶させたのはいいが(全くよくない)、中々目覚めないので、とりあえずおぶって骨董アパートへ向かっていた。 「いーたんと合流すればいーたんに見張りを任せて眠れるんだがよー。あーも、眠ぃ。」 個人的には死活問題である。 「早く寝ねぇとまともに行動できねえからな。つーか、本当にあの女、どこの殺し名だよ。」 潤は未だに神原のことを根に持っていた。 それはさておき。 「いい加減に起きろやこの野郎!」 殴って起こそうかと思ったが、また殺しそうなので止めた。 やはり面倒見がいい。何だかんだ言っても。 零崎人識も骨董アパートを目指して歩む。 背中に背負った友は、今は昏睡状態だ。 まだ死んではいない。だから、人識は急ぐ。 「やっぱり俺らしくねーよな。傑作だぜ。あーあ。これ見たらあいつ、何て言うかなー。」 人識らしくなく、最高に人識らしい状態で、骨董アパートへ急ぐ。 ぼくが見張っているからひたぎちゃんは休んでて、と言うとひたぎちゃんは素直に寝入った。 まあ勿論死体のある部屋で寝入るわけにもいかず、一階の姫ちゃんが住んでいた部屋にあるベッドで眠っている。 で、ぼくは一階の外で、景色を眺めていた。 まだ世界は星が支配していた。 そんな中、闇の向こうから誰かが歩んでくる。 「誰だ………?」 目を凝らす。しかし一般人のぼくの視力は、小柄な影と、それがどうやら誰かをおぶっているらしいということしか認識できなかった。 まあいい。後少しで、ぼくにもその姿が見えてくるだろう。 その人影は、小走りになってぼくの方へ駆け寄ってきた。 そして、闇の中から浮かび上がるその影は―――― 「零崎?参加していたのか?」 「よう欠陥製品。元気にしていたか?」 「ああ。それは勿――――――――――論………………………。」 ぼくが沈黙した理由は、相手が零崎だからでも、零崎が血濡れだったからでもなければ、その背中に友を背負っていたからでもない。 単に、友が血だらけだったからだ。 「と、友…………?お前まで、参加していたのか……………………………?」 いや、参加云々の問題じゃなくて…………もっと、大切なことが……………………。 「あ、いーちゃん。へへ……………やっほー……………………。」 息も絶え絶えの友が、やっとの思いで口を開く。 「やっほーじゃねえよ!何があったんだ!友!お前どうしてそんな怪我を負っているんだ!」 「別に、いーちゃんの…………所為じゃ…………ない…………………よ。」 「とりあえず、零崎。部屋へ運んでくれ。」 「ああ。」 ぼくたちはそのまま二階の、みいこさんの部屋へ。 「あん?お前の部屋じゃねーのか?」 「ぼくの部屋は死体が転がっててね。おい友!大丈夫か!」 「いー…………ちゃん……………………。今から、僕様ちゃんが言うことを………………よく聞いて……………潤……………ちゃんに………………………伝えて……………。」 「喋るな!いいから黙ってろ!今、手当て―――――――」 「この世界はね―――――――」 友が死んだら。 友が死んだら、自分は、どうなるのだろうと思った。 泣き叫ぶのか、狂うのか、後を追うのか。 想像できなかった。 しかし、夢にも思わなかった現実が、ここにはある。 そして、どうにも出来ず、ただ、立ちすくむぼくの姿も。 友が死んだら。 それは、ぼくにとって、終わりを意味する言葉だ。 はっきり言って、ぼくには、生きる意味が今、ない。 辛うじてあるとすれば、友の言葉を、ぼくの口から潤さんに伝えることだ。 友が、ぼくに頼んだ。 ぼくの頭では、友の言葉は理解できなかった。 しかし、潤さんなら、この状況を打開できるかもしれない。 それに、友の最期の言葉を、忘れるわけがなかった。 忘れられるわけが―――なかった。 一言一句、間違いなく、覚えている。 友は、ぼくに、最期の一言を告げ、事切れた。 『いーちゃん………………………。大好き。』 最期まで、そう言って。 そして、ぼくは――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 【玖渚友 死亡】 【残り 38名】 夜が明けるころ。 「よっす。やっぱここにいたか、いーたん。」 がば、と。 反射的に振り返る。 そこには、一人の男の子を背負った、赤い請負人が立っていた。 「潤さん……………。」 「やっぱりいたか、最強。」 「んあ?零崎くんじゃねーか。こんなばかげたイベントにお前が参加してるたぁ、驚きだな。」 男の子を床(畳)に寝かせて、胡坐をかく。 「潤さん…………………。」 「ん?何だ?」 「友が…………………………………………。」 「玖渚ちんがどうした?アイツも来てたのか?」 「…………………死にました。」 潤さんの表情が、空気が、固まる。 そのまま数分、沈黙が流れる。 「――――――――――――――何があった?」 それでも取り乱さないのは流石、人類最強といったところだ。 「ああ、俺が、玖渚と会って一緒に行動してたんだけどよ、そん時に、変な奴に襲われて、…………やられた。」 「潤さん、友は、最期に、これを、潤さんに伝えてと、言ってました。」 ぼくは、友の言葉を、潤さんに、一言一句間違わずに、伝える。 目を閉じて、ぼくの話を聞いていた潤さんは、ぼくの話が終わると、目を開く。 「零崎くん、玖渚ちんを殺したのは、誰だ?」 「左右田右門左衛門っていう、変な奴だよ。」 「特徴は?」 「不忍って書いてある変な仮面をつけてた。」 「そうか。」 潤さんはもう一度目を閉じて、そして、目を開く。 空気が、ざわりと、動く。 潤さんの周りの空気が、燃え上がる。 怒りに。 「いーたん、これは、あたしからの一生のお願いだ。」 「はい。」 「今、あたしに、『全力で友の敵を討ってくれ』と依頼してくれ。」 「でも、それは。」 「いいから!報酬はとらねぇから!早く!」 ぼくが、潤さんの思いに、逆らうことなんか出来るはずもなく。 「分かりました。潤さん、ぼくからもお願いします。全力で、友の敵を、討ってください。」 「ありがとう。」 その時、潤さんの頬を、一筋、何かが伝ったように見えた。 血の如く、燃え上がるように紅く、緋く、そして何よりも赤い――――――請負人は、姿を消した。 請負人がアパートから姿を消した、その直後。 正確には三秒後。 左右田右門左衛門は、新・真庭の里を捜索していた。 「『不見』」 中心に一人佇み、そう呟く。 「やはり簡単には見つからないな、鳳凰よ。しかし、なんとしても見つけて見せるぞ。私の任務を、遂行させてもらう。」 そして、次の場所へ移動しようとした、その刹那。 「ッ!」 ソレに気付いた右門左衛門は、瞬時に真庭の里の外周部まで避難する。 刹那。 先ほどまで右門左衛門が立っていた真庭の里の中心に、核弾頭でも打ち込んだかのような窪みが発生し、真庭の里の建物は、というか存在するもの全てが全て、根こそぎに、跡形もなく影も形もなく、消滅した。 そして、その中心に、赤い、紅い、緋い、一人の女が、立っていた。 「『不禁』驚きを禁じえないな。誰だ、貴様は?」 潤は、ゆらりと立ち上がる。 「あたしの名は哀川潤だ。お前が、玖渚ちんを殺したのか?」 「玖渚?あの青い小娘のことか。ああそうだ。私がこ―――――――」 最後まで言えなかった。 腹部に大砲でも打ち込まれたかの衝撃を感じ、背後にあった大木に叩きつけられた。 大木が折れなかったのが不思議なくらいの衝撃だった。 背中全域に致命傷を負い、腹部が消失していた。 「か……………………は……………………………?」 何が起こったのか認識できない。 そして目の前に、赤い女が、先ほどと変わらず立っていた。 「お……………………………前………………………………………………は……………………。」 「普段ならあたしは目一杯手加減してやる余裕があるんだけどよ、あたし今、最高にブチキレテルからよ、手加減無しだ。」 そして、潤は動く。 「死ね。」 周囲半径十キロが跡形もなく消し飛び、塵に回帰し、ただの荒野となった。 【左右田右門左衛門 死亡】 【残り 37名】 【一日目 早朝 骨董アパート】 【戯言遣い@戯言シリーズ】 [状態]頭部に軽症、頬に軽症、体の数箇所に打撲(行動にそれほどの影響なし) [装備]バタフライナイフ@人間シリーズ(零崎人識が試用していたナイフの一つ) 王刀『鋸』@刀語シリーズ 手裏剣×@刀語シリーズ(手裏剣砲のやつ) [道具]支給品一式、ランダム支給品(1~2) [思考] 基本 友が死んだ……………。 1 友が死んだ……………。 2 友が死んだ……………。 3 友が死んだ……………。 4 友が死んだ……………。 5 友が死んだ……………。 【戦場ヶ原ひたぎ@物語シリーズ】 [状態]右手甲負傷(物がうまく掴めない程度)、右足首捻挫(単独での移動不可能)睡眠中 [装備]スタンガン@戯言シリーズ(哀川潤が使用していた物) [道具]支給品一式(懐中電灯の乾電池を除く)、ランダム支給品(1~2) [思考] 基本 阿良々木君と一緒に生きてここから出たい 1 zzz......... ※ 二人とも王刀『鋸』がただの木刀だと思っています。 ※ 玖渚友死亡のため、いーちゃんは論理的思考が出来ません。 【阿良々木暦@物語シリーズ】 [状態]健康、睡眠中 [装備]なし [道具]なし [思考] 基本 戦場ヶ原と生き残る。人を殺したくない 1 zzz....... ※神原駿河が殺し合いに乗ったことに気付いていません ※忍野忍の不在に気がついていません 【哀川潤@戯言シリーズ】 [状態]健康 [装備]なし [思考] 基本 主催者をぶちのめす 1 本気でキレた。もう完全にキレた。主催者殺す 2 主催者を友の敵として認識 ※身体能力の制限に気付いていません。というか制限なかったらMAP全域が消し飛んでいた可能性さえあります。 ※友を殺された怒りで眠気が消し飛びました。 ※主催者を友の敵として認識しているため、これより常時本気です。 ※新・真庭の里の周囲、半径十キロメートルが甚大な被害を受けました。早朝時このエリアにいたプレイヤーは全滅している可能性があります。詳細は後の書き手さんに任せます。
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【戯言シリーズ】からの出典 エリミネイター00 神原駿河に支給。 西条玉藻が持っていた大きなナイフ。作者曰く「滅茶苦茶格好いい」。 ジェリコ941 式岸軋騎に支給。 旧チェコ・スロバキア製のCz−75のクローン拳銃。戯言遣いが宇瀬美幸から入手した物。曰く「カウボーイ・ビバップ」のキャラ・スパイクが使っていたものらしい。 グリフォン・ハードカスタム 玖渚友に支給。 西条玉藻が持っていた大きなナイフ。作者曰く「滅茶苦茶格好いい」。 ボウガン 左右田右衛門左衛門に支給。