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提供:pon(OMANKO/6GA)、HOYA クンコ(????年?月?日-)はピコ森、またチャット界のスーパースターである。 カリスマ性があり、その強烈な個性から敵対勢力も少なくない。 かねてから、ピコ森内の未成年者にふさわしくない コンテンツに対して適切な処置を取るように管理人に強烈な 抗議行動を起こしており、また、ピコ森内でクンコスペシャルと呼ばれる独自の スクリプトを使用した警告活動などを行っていたが、 これに手を焼いた管理人はクンコのアクセス制限などでは対処しきれず、 なんとクンコの名前そのものをNGワードにしてしまった。 (全角文字でカタカナのクンコは禁止ワードに設定されている) 個人の名前そのものがNGワードに設定されるなどは前代未聞 の出来事であり、これこそがまたクンコの偉大さを象徴する 出来事であったと言えるだろう。 過去に住人を脅迫し、通報されたが通報された側は何の対処もしなかった。 いや、出来なかったのだろう。 クンコという人物がどういう者だか分っていたから──… その他 人並み以上にエロイ側面も持ち合わせており、エロイ投稿も数多く 見受けられるが、エロこそがクンコのパワーの 源泉であるという見方もできるであろう。 またクンコ独自の掲示板の設立、クンコ独自の用語もある。 第1子誕生を掲示板で暴露したことがあるが定かではない。
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217: 名前:みるみる☆09/01(火) 00 47 31 気合いを入れるだけじゃ、何も起こらない。 具体的な行動を起こさなければならない。 私はお世辞にも性能が良いとは言えない脳をフルに稼働させる。 体力を使う仕事なら、多分やれる。 人が嫌がるような、臭くて汚いような仕事だってやれる。 但し、この髪。 『colored』を受け入れてくれる人が、いったいどのくらいいるのだろう。 「雇ってくれるかなぁ……」 はりきって家を出たものの、見切り発車だったようだ。 接客業は絶対に駄目だ。コートなんて着ていられないし、自分の素性がばれるに決まっている。 なるべく人目につかない職業、それでいて資格が要らないもの。 悶々と考え込んでいると、目の前をえらくレトロな自転車に乗った少年が横切った。 慌ててそれをかわすと、少年はそれを気にも留めない風で、家々の郵便受けに紙の束をつっこみながら走り去っていった。 「新聞配達!」 文句を言おうとした口が、ひらめきによって笑顔の形を作った。 そうだ、なんですぐに思いつかなかった! 224: 名前:みるみる☆09/07(月) 23 58 59 223高坂陽様 いつの間にこんな事に……。救ってくださってありがとうございます; ◆ 自転車の少年を、フードが脱げないようにしっかりと握りしめて全力で追いかけた。 「待ってよー!」 少年は聞いているのかいないのか、こちらには振り返らずにペダルをこぎ続けている。 自転車の後ろに付いている籠には、まだ朝刊が2,3部入っていた。 「もー! 話、聞きなさいよ! 少年よっ、先輩を、敬えっ!」 叫ぶと息が切れる。 最後の朝刊をすとんと郵便受けに入れたところで、少年は自転車を止めた。 「何?」 無愛想な声だった。 「何よ、聞こえてたんじゃない」 ぜえぜえと息を切らしながら、必死で言葉を紡ぐ。 コートを着ているせいか、随分と体が重かった。 「仕事、探してるのよ」 「あっそ。でも新聞配達とか人手は足りてるから、要らないっす」 「いや、そこを何とか」 「嫌だ、これ以上給料減ったらどうするんだよ」 そこで少年はハンドルを切り、自転車を発進させた。 あ、と声を漏らしたが、追いかける気にはなれなかった。 そんな余力はどこにもない。 230: 名前:みるみる☆09/16(水) 23 56 26 225伊月葵様 おお、これはもしや一般の方にもコメントを下さった方では! まちがっていたらごめんなさい。 更新がなかなかできなくて困っています。 陸上をやってるので、家に帰ったら課題やってくたばるだけなんですよね← 226夜様 ありがとうございます! 名前は…ちょっと洒落た名前にしたいと思いつつ、面倒くさいのでこのままにしていますw 229犀様 漢字、これで合ってますか? 自信ないです…。 嬉しすぎでハナヂが(え 最高って、高いがMAXってことですよね← そんな言葉は華やかすぎて貰えませんw そうなんです、地毛は確か… ◆ 「…… ああ、もう」 歩道と車道の間、ちょうど段差になっているところに、私はどすんと腰を下ろした。 衝撃が直に響いて、虚しく痛むお尻が情けない。 早朝だから車はあまり通らない。 地面がレンガ敷きなので、コートさえなければお洒落な風景になっただろう。 「どうしよう」 とうとうというか、早速行き詰まってしまった。 無意識のうちに、自分の頭は新聞配達をしようと決め込んでいたらしい。 だから、この先のことは何も考えていない。 困ったなあ。 いっそ盗みを―― 否、否。そんなことは断じて許されない。 段々、自分がいつかの現代文で習った羅生門の下で雨止みを待つ下人のように思われてきた。 目線をこのあたりで一番高い建物、少し遠くにある時計台に移した。 あの上には死体がたくさん転がっていて、老婆が死人髪の毛を抜いているんだろうか。 「そりゃないわ」 だってここはこんなにお洒落で豊かで幸せな街だもの。 236: 名前:みるみる☆09/27(日) 12 25 52 ◆ 段々と日差しが明るくなってきて、、通りも賑やかになってきた。 世界が目覚めて、動き出すのを緑色の瞳に映して、私は何度目かの溜息をついた。 座るというのも長時間になると疲れるものだ。 もうお尻が痺れたように痛い。 「あぁ、もう!」 両手を広げ、ばたぁん、と大きな音を響かせて、自分の背中を地面に激突させてみる。 割と痛かった。 「いったー!」 通りを歩いていた何人かがこちらを見下ろしてきたが、すぐに視線を他へ移して歩いていった。 その背中を思いっきり睨み付けて、それから正面を向いた。 目の前に大きな空が広がる。 ああもう、何やってるんだろう、私。 「仕事くださぁーい!」 大声に、何人かがびくっと方を振るわせた。 構わない。 自棄になっているのが、自分でも分かる。 この苛々を、声にして吐きだしているだけだ。 「何でもしますからぁー! トイレだって掃除しますからー! おむつだって替えますからぁ!」 寝たまま叫ぶのも相当疲れる。 はぁはぁ息を切らしていると、耳元でかつんと足音が響いた。 「きみ、仕事探してるの?」 若い男の声だった。 人を雇うような年齢の声ではない。 雇えない癖に、声を掛けないでよ。 「そうですよー?」 私が腹立だしげにそう答えると、男の笑ったような呼吸音が聞こえた。 何がそんなにおかしい。 「なんですか。雇ってくれないなら、構わないでくださいよ」 「雇わないなんて言ってないじゃないか。君を雇ってあげるよ」 「え、ほんと!?」 その言葉に、私は跳ね起きた。 ああ、この言葉を待っていた! でも、起き上がった拍子に、フードが半分、取れかかった。 前髪が露出する形になる。 「う、わ」 慌てて両手でフードを引っ張る。 体中から一斉に冷や汗が出る。 まずい。 ばれた……? ちらりとその男の方を見ると、男はまだ笑っていた。 「うん、好都合だ」 240: 名前:みるみる☆10/02(金) 14 50 54 ◆ からん、と氷が溶けてグラスが音を立てた。 その氷で少し薄くなったであろうアイスコーヒーを飲むべきか迷いながら、私を朝っぱらから喫茶店に連れてきた目の前にいる男に目をやった。 やはり茶色い瞳をした男である。 お洒落なのか何なのか、黒いハットを被っていて、部屋の中でも脱がない。 指輪のような形のピアスが左耳に付いていて、朝の光を反射している。 軽そうな男だ、と思った。 怪しむ私の視線を感じ取ったのか、男は口角を上げた。 「そんなにじろじろ見ないでくれない? 俺、そんなに怪しい奴じゃないから」 「……雇ってくれることには感謝します。でも、私未成年だし、夜のお仕事とかはちょっと……」 「きみさ、」 私の言葉を完全にスルーして、男は話す。 「『colored』だよね? さっき見ちゃった」 さっと全身に緊張が走る。 やっぱり、ばれていた。 いまにでも、ここを抜け出したい気持ちになる。 幸い、早朝の喫茶店、他に客はいない。 従業員は厨房にいるようで、今の話は聞かれていなかったようだ。 「今、逃げようとか考えてた?」 「っ……」 「大丈夫だって。俺はそんなに古い考え持ってないから、そんな酷い目に遭わせたりしないって」 ああそうだ、仕事の話になるけど、と男は指を顎に当てて話し出す。 「日給制ね。働きたくなったらここに来ればいい。俺多分ここにいるし。そんで、俺に指定されたところに派遣される。やれっていわれたことをこなす。仕事はそれだけ。OK?」 「……はい」 なんだか、随分適当な感じだった。 派遣社員、か。 さすがに安定は望めそうにもないけど。 でも、私がお金を集めて、みんなのお腹をいっぱいにするんだ。 そんな使命感に燃えた。 242: 名前:みるみる☆10/04(日) 14 18 24 241蓉子様 あげありがとうございます! テスト期間中なのに何やってるんだろう私 ← ◆ 「んじゃあ、今日は取り敢えず電車に乗ってここまで行ってくれる?」 そう言って男はポケットの中から携帯電話を取りだした。 多分この世界に来て初めて携帯電話を見ると思うが、その画面に片仮名の地名が表示されていた。 「駅はその辺にあると思うから、最初に来る電車ね。始発になると思うけど」 始発って、そんなに遅いんだろうか。 のんびりした街だこと。 終わったらここに戻ってくることを約束して、切符代と、依頼主に分かりやすいようにとペンダントを貰った。 「それ、ずっとつけておいてね。目印だから」 男がウインクしたが、それを無視するように「いってきます」と言って、結局アイスコーヒーには手をつけずに店を出た。 外はすっかり明るくなって、通りにいる人の数も増えていた。 幸いなことに、少し辺りを見渡すと駅らしい物が見えた。 人が次々と入口へ吸い込まれていく。 「よっし、頑張っちゃうもん!」 フードが脱げないように右手で押さえてから、私は駅へと走っていった。 246: 名前:みるみる☆10/18(日) 13 50 10 243夜様 張り切ってますねw 私も張り切らねば! 244棗様 ありがとうございました。本当にこれでいいのか迷っていたので助かりました! 245ruki様 ありがとうございます。すみません;時間がなくて更新停滞中です……。 ◆ 駅の構内は、人いきれでむっとした。 きっとこれからそれぞれの仕事場所へ向かうのだろう。 そして、私も自分の仕事のためにこの駅にいる。 ここでは誰も自分の正体に気付かない。 自分のことで精一杯、あるいは大勢の中の一人には目がいかないのだろう。 『孤独な群衆』――そんな、またも社会の授業で習った知識を引っ張り出しながら、構内の券売所で切符を買った。 どうやら通勤ラッシュのようなので、列車の発着時間など調べる必要もなさそうだった。 ただ、人の波に乗って列車に乗ればいい。 方向さえ間違えなければ、きちんと目的地に着くはずだ。 ベルが構内に鳴り響いて、黒い車体がレールを軋ませながらやってくる。 ドアが開き、列車からたくさんの人がはき出されるように出てきて、私は人に揉まれながら狭い車内へと入った。 女性客が少ないのが少しだけ不安だった。 私の後にもたくさんの人が列車に乗り込み、あっという間に私は車両の隅へ押し流された。 「っ苦し……」 ぎゅうぎゅうと押しくらまんじゅうされているように周りの客と密着して、ともすると足が浮いてしまうんじゃないかと思うほどだ。 隣の人の息が耳にかかる。 はっきり言って不快だ。 列車が重たそうな体をゆっくりと前進させ始めた。 251: 名前:みるみる☆11/26(木) 00 07 33 247奈央様 わわわ…更新遅くなって申し訳ないです(スライディング土下座 本当に放置としか思えないですよね、すみません。 最近1日を乗り切るので精一杯で、なかなか書く時間が見つかりません……。 248みお様 ありがとうございます! て言うか褒めすぎです; お待たせして申し訳ないです。これからもこんな感じの更新になると思いますが、たまに上がってるのを見つけたら生暖かいくらいの目で見守ってくだされば幸いです←日本語おかしいですね; 249夜様 本当に何回も上げてくださってるのにお待たせして申し訳ないです。情けない(号泣 時間を見つけて更新したいです! 250とーよ様 下がりまくったスレを見つけてくださって感謝感謝です! 一ヶ月も更新してませんでした……。 もう、私の馬鹿っ(びんた ◆ 慣性の法則に従って、中の乗客がぐっと体を傾かせる。 「ぐえ」 車両の端にいる私は、隣の客と壁でサンドウィッチにされてしまった。 もう、隣の身長の高いこの客(多分男だろう)とは半身がぴったり密着していて、だけど逃れるスペースはなかった。 女の人だったら、こんなに嫌じゃないのに。 この男の人が悪いわけではないのに、わざとしかめっ面をした。 そんなときだった。 ちゃり、と軽く金属音がして、首にかけていたネックレスが動いた。 私が動いたからではない。 電車が揺れたわけではない。 その、まさに私に密着している男が、鎖を握っていた。 どうしたんですか、と言おうとしたが、その前に男が呟いた。 「君で、あってるよね?」 列車の走行音に紛れそうなくらい小さく、そしてじっとりとくらい響きの声だった。 253: 名前:みるみる☆12/02(水) 15 13 57 252容子様 気付いてくださってなんて……!おぅ(卒倒 あげありがとうございます! ◆ 「えっ……」 嫌に煙草臭いその囁きに、私は何と言っていいかわからなかった。 もしかして、自分の雇い主だろうか。 そうだとしたら、なぜこの人も同じ列車に乗っているのだろう。自分が向かう必要なんて無いじゃないか。 私が何も応えないのを肯定の返事と受け取ったのか、男は鎖を持つ手を離した。 その手は、私の太腿へ移動した。 「な、えっ……?」 これじゃあまるで痴漢だ。 相手の顔を確認しようとするが、狭くて首さえも動かない。 「静かにしててね。金払ってるんだから、言うこと聞けるよね?」 じゃあ、よろしく。と、その男は笑った。 その手から逃れることなんて、出来そうもなかった。 ただ、体を強ばらせることが、ただ一つの防御。 冷たい指が太腿を這って、ただ、不快感に肌が粟立った。 嫌だ。 見ず知らずの男に、金を貰って公共の面前でこんなことをされている自分。 分厚いコートの中をうごめく指が、下着の上をなぞった。 「っ!」 気持ち悪い。 何か、得体の知れない生き物――ミミズのような感触。 本当は、今すぐ叫び声を上げて、この男を蹴り倒してやりたい。 それが出来ないのが、歯痒かった。状況的にも、立場的にも―― そう、ここで『仕事』をこなさなかったら、自分はそのうち飢え死にをしてしまう身なのだ。自分だけではない、3人の大切な人を巻き添えにして。 綺麗事なんて言える存在じゃない。 お前には、それがぴったりだよ。 さあ、頭を空っぽにして全てを流れに委ねればいいじゃないか。 相手が望むなら靴だって舐めてやればいい。 そしてその口で食べ物が食えるなら、それで良いじゃないか。 どこか遠くで、誰かが囁いているような気がした。 だから、私は心を、体から切り離すことにした。 255: 名前:みるみる☆01/05(火) 17 29 13 254とーよ様 更新遅くなって本当に申し訳ないです。 碧視点はなんだか書きづらいです……。あああ← ◆ それからどれくらい経っただろう。 ぷしゅう、と気の抜けた音を立てて鉄の扉が開いた。 人が雪崩れるようにして外へ吐き出されていく。 駅に着いたのだ。 ふらりとその流れを追うように扉へ向かった。 手は、それ以上追っては来なかった。 構内の喧噪も頭の中でぼんやりと響く。地に足が付いているのかさえ、はっきりとはわからない。 それでも迷わず真っ直ぐと公衆トイレへ向かった。 トイレ内に誰もいないのを確認してから、洋式トイレの個室に入った。 はっきり言って綺麗なトイレではない。 「うっ……」 私は便器に手をついて、胃の中にあるものを全て排出しようとした。 気持ち悪い。 気持ち悪い。 さっきのあの手の感触がまだ体に残っている。 体をミミズが這うような、あの感触。 吐いても吐いても、出るものは胃液ばかりだった。 当たり前だ。あまり満足な食事も取っていない。 でも嘔吐きだけは止まらない。 それが苦しいのか、辛いのか、それとも哀しいのか、だとしたら何が哀しいのか、わからない。 瞳の裏が猛烈に熱くなって、それ以上何も考えることが出来なくなった。 256: 名前:みるみる☆01/13(水) 17 41 09 しばらくして、ようやくトイレから出て、私は線路沿いを歩いて戻ることにした。これならば迷うことなく元の場所につける。 私の雇い主は相変わらず喫茶店で携帯電話をいじりながら待っていた。 「よぉ、ねーちゃん。お勤めどうだった?」 私が黙っていると、「はい、給料ね」と紙幣を何枚か渡された。 男によると、このお金で切り詰めれば1週間は暮らせるらしい。 「4人なら」 「ん?」 「4人なら、何日分ですか?」 「うーん、3日くらいじゃないの、知らないけど」 耳のピアスをいじりながら、男は答えた。 軽くお礼を言って、外に出た。 頭の中はぼうっとして、何を考えているのか、何も考えていないのか、自分でもわからなかった。 でも、確かに言えることは、瞳だけは目線の先をあちこちに移動させながら――探しながら歩いていた。 そして見つけた。 この古い洋風な町並みにはおおよそ不釣り合いなコンクリートの明るい建物。 ドラッグストア。 ドラッグとは言っても名ばかりで、その商品の多くは食料品、文房具、雑貨、生活必需品が占める。 店に入り、かごを手にとって、手当たり次第栄養になりそうなものを取っていく。 パン、卵、スープの素、それから野菜まで売っているとは意外だった。 そして最後にやって来たのは、化粧品が並ぶコーナー。 一応、一応なんだよ、と自分に言い聞かせて手に取ったのは――除光液と染髪剤。 当たり前といえば当たり前だが、染髪剤といっても売り場には白髪染め用のブラウンしか置いていなかった。 構わない。 一応、だから。 257: 名前:みるみる☆01/21(木) 23 05 58 「ただいま」 昼でも薄暗い路地に、自分の声が響いた。 赤音さんの、ピンヒールなのかよく分からないデザインの靴音が近づいてきた。特徴的な音だ。それも、かなり速く、強く。 少しだけ嫌な予感がする。 「てめえ、」 ほら、的中。 赤々と燃える様な瞳がきっと自分を見つめると、身が竦みそうなくらい迫力がある。 「朝起きたらなんで居ねぇんだよ、こら。小町のやつ、『どうしましょう、家出なんかしてたら』って半泣きで、もう空気しょっぱくなるんじゃねーかって思ったんだけど」 258: 名前:みるみる☆01/23(土) 00 42 59 圧倒的なその迫力にじりじりと後ずさりしながらも、私は答える。 「置き手紙とか、するべきだったって思うよ。ごめん、でもここ、ペンとか紙とか無いじゃん」 「あたしを起こせばいーんだよ。何しに行ってた?」 「ちょっと、働きに」 表情から少し険の抜けた赤音さんに、私はドラッグストアで買った食材の入っているビニール袋を差し出した。 もちろん、除光液と染髪剤は箱から抜き出して制服のスカートにあるポケットに入れた。 ほんの少しふくらんでいるようだが、見た目に問題ないだろう。 例によって笑顔の蒼太くんが間に割って入ってきた。 「わー、偉いね碧ちゃん。赤音が食料がないって言ってたの聞いて、気を利かせたんでしょ? 優しいね。うん、これだけあれば3日は大丈夫なんじゃないかな」 有色人種。続き7
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83: 名前:HARU☆04/02(土) 14 46 38 首筋に奏太くんの髪の毛があたり、くすぐったい そんなことよりもこの状態、沈黙 私には自分の心臓の音しか聞こえない 触れる身体が熱い 「か、なたくん…!寝てなくちゃ…っ、ね?」 「ん……」 返事はするもそんな気配は全くない奏太くん 後ろから抱き締めたまま、私の肩に顔を埋める ぴくっと身体が反応する 「…怖い?」 「へ?」 「や…。…やっぱ何でもない」 そう言うとぎゅう…っと少しだけ抱き締める力が強くなる "怖い?"…って聞いた、よね 「あの…怖い、って……」 「…だって先輩、触れるといつもびくびくしてる気がするから…。 俺のことそんな好きじゃないのかな…とか、触られんの嫌なのかなとか……」 「ち、違う!」 弱々しい奏太くんの声を聞き、くるっと振り返る 下を向いて俯いてる奏太くんの頬に手をあて、ゆっくりと起こすと 風邪の影響で弱っているせいなのか、すごく寂しそうな顔に見えた 違う、怖いとかそうじゃなくて… 「ど、きどきしちゃうから…どうしていいかわかんなくて…っ。 奏太くんに触られるの嫌じゃない…、むしろ…す、好きってゆうか…っ」 言いながらだんだん恥ずかしくなって顔が見れなくなる どっちが熱があるのかわからなくなるほど、私熱い 85: 名前:HARU☆04/02(土) 15 08 49 私がだんだん口籠もっていくと奏太くんが自分の頬をパチン!と叩く 「か、奏太くんっ?」 いきなりでびっくりして赤み掛かった奏太くんの頬に 触れようとすると、遮るようにその手をぎゅっと掴まれた 「な、何?」 「…俺、我慢する」 「へ?」 「先輩に触んの我慢する。…今のは、その気合い」 そう言うと手を離して「ごめんね」と私に笑った い、意味わかんない…… 「……一方的で困らせてるだけだしね」 誰もそんなこと言ってないのに何で勝手に決めんの 何で勝手に自己解決すんの 「ぶっ!……痛ぇ」 傍にあった枕を奏太くんの顔に投げつけた タオルも服も続けて無言で投げる 「ちょ…っ、くるみ先輩っ?」 病人にこんなことしてる私をひどいとか言えばいいよ でも…、胸が痛い ムカつく気持ちと悲しい気持ち 「くるみ先輩……?」 きっと今、眉間にしわ寄せて泣きそうな顔してる 可愛くない女 86: 名前:HARU☆04/02(土) 15 40 22 「嫌い……っ」 出た言葉がそれだった 「そうやって勝手に私の気持ちまで決めちゃう奏太くん…、嫌い……っ」 溢れそうな涙を抑えて、きっ、と奏太くんを睨む 言葉に迷っている表情をしている 「一方的じゃないもん、触れられて嫌なわけないじゃん! ―――なんでっ、…そんなこと言うの…!勝手すぎるよ…っ」 「で、も」 「でもじゃない!」 がらにもなく怒る私に戸惑ってる 私だって怒りたくないし困らせたくないもん 「奏太くんは余裕かもしんないけど私はわかんないの! いつもいっぱいいっぱいなのに奏太くんは平気なふりしちゃって…!」 「だっ、誰が平気だって言いました!?そっちこそ勝手に決めつけてるじゃん!」 「決めつけてないよ!見た感じでわかんの!」 「じゃあ俺のこと全然わかってないね!もう一回一からやり直しして下さい!」 「んな……っ!」 いつの間にか言い合いに変わってしまっていた 奏太くんが言い返すから…っ 「先輩が困ってると思ったから大人しくしてんのになんでわかんないの!」 「こ、困ってない!もっと好きにすればいいじゃん!」 そう言うと奏太くんが急にむせる な、何か変なこと言った…? 「熱上がる…っ、てか頭くらくらするからタイム」 「あ、う……、ごめん…なさい」 少しだけ自分の熱が冷める 病人相手に何やってんだ私 「だ、だから困ってもないし嫌とも思ってないから…。 私に触れるの我慢するとかやめる、とか言わないでよ…」 「嫌だ、この人もー……」 奏太くんは自分の顔を両手で覆う その手に触れて、ゆっくりとどける 「私にしか…、触れちゃ嫌だよ…」 頬にキスを落とす 87: 名前:HARU☆04/02(土) 16 04 23 「は……?」 そっと唇を離すと奏太くんが声を漏らした さすがに自分から口には出来ないってゆうか… 目が合うと急に恥ずかしくなってきた 「つ、つまり…今まで通りでいて下さい…て、こと」 奏太くんにそう伝えると、今度は真正面からぎゅっと抱き締められる あ…、どきどきいってる 奏太くんの音も、私と同じ…… 「か、奏太くん?」 「我慢、したいんだけど限界、です」 身体が離れると唇が重なる 心臓が壊れそうになるほど苦しくて愛しい深い口づけ 初めから奏太くんしか知らない これからも奏太くんだけでいい 「ひゃ……っ」 服の中に伸びてきた手に身体が反応して声を漏らしてしまう 唇が離れて奏太くんと目が合うと「駄目?」と甘い声で尋ねられる 「でも…っ、奏太くん熱…」 「そしたらまた看病してもらう」 「……は、い」 ぎこちない返事をするとこつんと額をあてて ちゅ、とリップ音をわざとさせるキスをくれた 奏太くんの男の子の手が私に触れていく 二度目の行為は初めてよりも、触れ合った身体が熱く感じた 91: 名前:HARU☆04/02(土) 19 42 52 * 「…んぅ………」 ゆっくり目が覚め、もぞもぞと身体を起こす 髪の毛を触るとポニーテールは崩れていて 結んでいたゴムを探すとベッドの上に落ちていた 奏太くんは隣で寝息をたててまだ眠っている 額を触るとまだ熱かった するとガチャ、と下で玄関の扉の鍵が外れる音がした だ、誰か帰ってきた…っ? 慌てて乱れた服装を直し、階段を降りる 「あ、くるみ」 「わ、八尋さんっ。おかえりなさいっ」 「夫婦みたいじゃない?」 「違います」 靴を脱ぎながらそんなやり取り 夫婦みたいってのりに失礼だよ、もう 「早かったですね」 「そう?もう6時だしそんなもんじゃない?」 「え…っ、あ」 確かに時計を見ると6時すぎだった それどころじゃなくてわかんなかった… 「髪ぐしゃぐしゃだけど寝てたの?」 「あ、わ…っ」 焦って手ぐしで直す すると八尋さんがじーっと私を見る な、なんだ…? 92: 名前:HARU☆04/02(土) 19 59 43 「な、なんですか…?」 「"寝てた"ことに間違いはなさそうだね」 クスッと笑うと私の頭をぽんと叩き、 「ボタン、掛け間違えてる」 と言い、リビングに入っていった 「………っ、」 さっき焦ってシャツのボタンを留めたから完全に掛け間違えていた は、恥ずかしい!ていうか八尋さん絶対わかってた! 一気に体温が上昇する あぁー…、駄目な奴だな私 階段を上がり部屋に入ると奏太くんも身体を起こしていた 「あ…、だ、大丈夫?」 「……ん」 そう奏太くんは返事をすると無言で両手を広げる お、おいで…ってこと、かな 一歩一歩足を進めてゆっくりと腕の中に収まる 「あ、あのねっ。八尋さんがもう帰って来てて…」 「ネックレス」 「へ?」 「してくれてたんだ…。あと指輪も…」 顔は見えないけど、伝わる言葉が優しい 喜んでくれてるの、かな 「俺のもんだー…って感じた。…すっごく嬉しい」 その言葉に胸の奥が熱くなる 95: 名前:HARU☆04/02(土) 22 39 22 心臓爆発しそうです 「や、八尋さん下にいるから…」 「帰るの?」 帰るの?…ってそんな可愛い問いかけ反則です 帰りたいわけじゃないけどこれ以上いたらあれかなー…と 「私いたら奏太くん休まないじゃん」 「……確かに」 「ほらぁっ、まだ熱だってあるんだし部活も頑張んなきゃだし。ね?」 渋々かのように身体を離すと、少し拗ねた顔 「ちゃんと電話もメールもする。あ、会いたいって言ったらすぐ行く…っ」 「先輩は言ってくれないの?」 うっ…、またその尋ね方…っ 可愛すぎるんだよ馬鹿 「わ、私からは言わない。奏太くん部活で忙しいし、言ったら無理するし…」 「何それ。ずるい、卑怯」 私の頬をびろーっと両手で引っ張る 子供だ、この人 「い、痛いって!もー…。 ………だって私は毎日会いたい、もん」 目を丸くして少し驚いた様子の奏太くん 頬を赤く染めて俯き、急にぎゅっと再び抱き締められた 「ありがと、大好き」 「わ、たしも…です」 風邪のせいか、関係ないかはわからないけど 昨日今日の奏太くんはいつもより素直で更に萌え男子でした 96: 名前:HARU☆04/02(土) 23 12 27 階段を下りてリビングにいる八尋さんの所に行く 「お、くるみ帰んの?」 「はい。まだ熱はあるみたいなんでよろしくお願いします」 「ははっ、妻みたい」 そう八尋さんに言われて顔が緩みそうになる 「よくあんな奴の彼女やってられるね。わがまま極まりなくない?」 「わがままなのは私も一緒ですから」 「器でっかいなー」 ははっ、と八尋さんはまた笑う 器なんてでかくないです、同じくらいわがままです でも好きなんです 「ま、あんな奴扱えんのくるみくらいじゃない?見捨てないでやってよ」 「…お兄さんみたい」 「一応あいつより早く生まれてっからね」 素直に、奏太くんを托された気がした 八尋さんに、奏太くんのお兄さんに 純粋に嬉しかったりします 「気をつけて帰りなね」 「はいっ。おじゃましましたっ」 ぺこっと頭を下げて、北條家から帰宅する 妙に帰り道は気分が良かった 101: 名前:HARU☆04/03(日) 18 41 39 8月に入り、夏の暑さも増してきた上旬 只今のりと喫茶店 「まじ気の毒だわ、奏太くん」 「えっ」 アイスティーを飲みながらのりが無表情で言う パーマのかかった長い髪を耳にかけながらため息も一つ 「あんたらあれから1回もしてなかったの? てゆうか奏太くん男なんだから、普通にヤりたい盛りでしょ」 「ちょ…!恥ずかしいこと言わないでよっ」 さらっと私にとってギリギリの発言をするのりに焦ってしまう ヤ、ヤりたい盛りとか…! 「奏太くんを褒めてあげたいね。くるみはもっと心許すべきだ」 「ゆ、許してるもんっ。ただ緊張ー…ってゆうか…、その……」 「いちいち確認や許可とかいらないから、雰囲気や流れでいけって」 あまりにも普通にのりがそう言うからそうなのかな、とか思うけど… のりは八尋さんが初めての彼氏じゃないけど 私は奏太くんが初めての彼氏なわけだし…、んー… 「ま、くるみ達はくるみ達のペースでいんじゃない? こればっかりは私がとやかく言えるもんじゃないしね」 「…が、頑張るっ」 さすがのり、恋愛に関してもサバサバしてる そもそものりと恋愛の話ができるなんて 奏太くんと出会うまで思ってもみなかったなあ… 「のりは八尋さんがその…、誘ってきたら…っ」 「全力で蹴飛ばす」 …あぁ、と妙に納得してしまった 「気分じゃない時はね」と笑いながら付け加えてきたけど なんだか八尋さんにほんの少しだけ同情をしてしまった 102: 名前:HARU☆04/03(日) 19 01 27 携帯がバイブ音を鳴らす 「くるみじゃない?」 「うん、千穂ちゃんだ」 隣のクラスでサッカー部のマネージャー高坂千穂ちゃん ショートボブの元気な女の子で、…八尾くんの幼なじみ?だっけ? 仲が良いって言ったらそうだけど、連絡くれるなんて初めてだ 電話なので通話ボタンを押す 「もしもし千穂ちゃん?今部活中じゃ」 『もうくるみしかいない!』 「はいっ?」 急に意気込んだ声が携帯の向こう側で聞こえる わ、私しかいない?ん? 「ち、千穂ちゃん?」 『来週から一週間暇!?』 「暇っていうか…」 『暇だよね!暇って言って!』 「ひっ、暇!」 あ、勢いで暇って言っちゃった 確かにバイトとかしてないから暇って言えば暇だけども… あ、課題はまだ残ってた 『ありがとーっ!愛してる!あ、もうすぐ 午後練始まるからまた連絡する!じゃねっ』 「あ、うんっ。……切れた」 ツーツーと切れた後に鳴る音を聴きながら頭には?マーク な、なんだったんだ? 103: 名前:HARU☆04/03(日) 19 43 37 「何だったの、用件」 「わ、かんない…」 のりも頭に同じく?マーク 「よくわかんないけどまた連絡するって言われた」 「ふーん。まぁ、何か手伝えることだったら協力するわ」 「ん、ありがと」 そのまま続けてお茶をし、街で買い物をして夕方に帰宅した 夕飯も食べ終わってすっかり夜になり、千穂ちゃんの電話のことなんて すっかり忘れていた頃に携帯がまたバイブ音を鳴らしたので着信画面を開く すぐに通話ボタンを押し、「もしもし?」と話す 『あ、くるみ?お昼はいきなりごめんねー』 陽気な声が聞こえる 『くるみって確か一年の北條くんの彼女だよね?』 「う、うん」 『北條くんの部活姿ずっと見たくないっ?それも泊まり込みでっ』 「え?あのっ、千穂ちゃん?話がよく見えないんだけど…っ」 『…単刀直入に言うとね、 サッカー部の合宿に参加して!』 ―――…んんん? 104: 名前:HARU☆04/03(日) 19 59 27 急すぎてよく状況理解ができない 『キツさに耐えらんなくなって一年のマネが二人ともやめちゃったの。 でも来週から合宿始まるし私一人じゃ正直キツいってゆうかさあ。 や、他もあたったんだよ?でもみんな暑い中合宿の手伝いは嫌って言うし』 携帯の向こうで千穂ちゃんがぺらぺら話を一方的に続ける 確かに来週から合宿だって奏太くんも言ってたけど… 『三年も引退しちゃったからマネ今私一人だし、心細いってゆうか。 ねっ、くるみお願いします!北條くんの部活姿生で見れる特典付き!』 その言葉に胸がきゅーんとなる 奏太くんの部活生姿…、ずっと一緒、泊まり込み… 良い条件だけがエンドレスされる 『お願いくるみーっ!』 必死に頼む声が聞こえる うん…、なんかやばい、いいかも…… 「手伝う!合宿参加します!」 『きゃーっ!ありがとくるみ!愛してる!大好き!』 顔がにやけそう 奏太くんと一緒にいれて特典付きなんて美味しすぎる! 「あっ、奏太くんには内緒にしててねっ。絶対拒否られるからっ」 『了解!また詳しいこと決まったら連絡するねっ』 そう言って通話を終了した 携帯をぎゅっと握り締めたまま、どきどきする胸にあてる 雑用手伝いとはいえ、奏太くんと毎日一緒にいられるんだ…っ 楽しみのどきどきが収まらない 110: 名前:HARU☆04/05(火) 00 05 15 * 月曜日、合宿当日 部員より先に荷物を持って学校に行き、ラフなジャージに着替える 「奏太くんに内緒にしてんの?」 「うんっ」 千穂ちゃんの話をのりにしたら「暇だし手伝うよ」と協力してくれた 私、のり、千穂ちゃんの三人でマネの仕事に取り組むことになったのだ 「紀子のことは部員にも言ったけど、くるみのことは本当に伝えてないよ?」 「いーのっ」 千穂ちゃんの質問にも上機嫌な私 早く奏太くんに会いたいなあ 校内にある宿泊棟の一室に荷物を置き、準備完了 そろそろサッカー部が来る時間になっていた為、夏休みの校内が賑わう 宿泊棟の三階が私達のいる場所 二階が部員の使う場所 一階が食事や入浴の場所だ 「じゃあ行こっか」という千穂ちゃんの言葉に従い、 階段を下りて行く 「え!相沢先輩!?」 「なんで相沢いんのっ?」 「倉重だけじゃなかったっけ!」 「うわっ、相沢くるみ先輩いるんだけど…っ」 くるみを見た一年、二年は口々に驚き、声を漏らす とりあえず手を振り、にこっと笑うくるみ みんなの驚く顔がほんの少し楽しいと感じる 111: 名前:HARU☆04/05(火) 00 17 09 「――――――…は?」 明らかに周りと違う声をあげた人物が一人 「あ、奏太くんっ」 サッカー部専用のジャージ姿をしてこっちを見ている あぁ…、萌える 奏太くんは完全に理解ができない表情をしていた 奏太くんがのりの顔を見ると、のりは無言で頷く これが現実です。とでも言うように 「私も今日から合宿のお手伝いしまーすっ」 「いやいやいやいや、なんで。帰りなさいって」 「やだ。千穂ちゃんのお手伝いするんだもんっ」 「…………」 はぁーっ、と長いため息をつく奏太くん やられた、とでも言うように 「最近妙に機嫌が良いと思ったら……」 「どう?びっくりした?嬉しい?」 「…びっくりした」 嬉しいについての感想はなしですか 気付くと周りが私と奏太くんのやりとりを見学していた 「羨ましい…」 「奏太のためかよー」 「でもラッキー」 「合宿の癒しだな、これ」 別に私はみんなのために来たんじゃありません 奏太くんのためだもーん 怒濤の一週間、サッカー部合宿スタートです! 121: 名前:HARU☆04/06(水) 22 21 56 全体で合宿の挨拶と日程の流れを確認 基本的な伝達を終えるとすぐに練習開始 私とのりは千穂ちゃんと一緒にマネージャーの仕事をする スポーツドリンクの補給、ユニフォームの確認、グランドに水撒き その他にも雑用はたくさん その上、この炎天下の中だ 正直……、 「きついー…」 「くるみが来たいって言ったんだろ」 バケツに水汲みに行った時に漏れた言葉 のりは思ったよりも平気そう 日焼けする、じりじり太陽が痛い、帰りたい そんなマイナス思考ばかり持ち合わせてグランドに戻ると 部員は二色のゼッケンでチームに分かれて練習試合を行っていた 「きゃんっ、奏太くんっ」 「立ち直り早…」 サッカーをする奏太くんの姿を見て、ピンッと元気になる 呆れ顔をしたのりはため息をつく あぁ…っ、かっこよすぎる…っ 「ありがとーっ、ベンチ座って休憩しといて」 ユニフォームの整理をしていた千穂ちゃんがそう言う お言葉に甘えてよいしょと腰を下ろす ただぽーっと奏太くんだけを目で追う 男の子らしい腕、足、普段は見せない部活姿 うん萌える、鼻血出そうだ 126: 名前:HARU☆04/07(木) 21 59 15 部長の号令で10分休憩に入る 暑い、が口癖のように部員達がベンチに戻る 「お疲れ様ですっ」 くるみは笑顔でドリンクとタオルを手渡す まるでキュンッという効果音が聞こえるかのような部員の表情 でれでれしながら受け取る 「癒されるー」と口走る部員も多々 「ふぅっ」 それにしても暑いなあ… 頭上に手をあて、真似だけでも太陽の光を防ぐ すると頭にぽすっとタオルが被せられた 「無理はしないで下さいね」 「奏太くん…」 奏太くんはドリンクを飲みながらそれだけ言うとベンチの方へ座りに行く ―――きゅんっ 反対してた割に優しい…っ 被せられたタオルを頬に寄せると顔が緩む 頑張ろう、と再び気合いを注入 単純だな、私 「いちゃつくな」 のりにぺしっと頭を叩かれる それでも顔の緩みはなかなかとれない 私、奏太くんのこと大好きすぎるんだもん 129: 名前:HARU☆04/08(金) 22 17 52 「正直腑に落ちないんじゃない?」 休憩の合間に一年の部員の佐々木が笑いながら奏太に話しかける 「相沢先輩、本当はここにいてほしくないんでしょ?」 「…どういう意味」 「さあ?あぁいう意味じゃない?」 奏太が嫌そうに尋ねると佐々木は顎でくいっと部員の溜りを示す そこにはくるみにでれでれしてる一年二年 奏太の表情が少しムッとなるのを見て佐々木が笑う 「彼女が極上に可愛い上に人当たりも良いと大変だね」 「別に…、もう慣れた」 ふいっと気にしていないように目をそらすが、顔は眉間にしわ 佐々木はタオルで首元の汗を拭きながらクスクスと笑う 「確かに可愛いからね、相沢先輩」 「別に…、顔を好きになったわけじゃないし」 「ほう。じゃあどこ?」 「…言うかあほ」 「残念」と佐々木は肩を下ろす すると再び集合の声がかかり、練習を再開する 時刻は12時になるため、太陽の光はより一層痛く熱く降り注ぐ その中、順調に1日目の合宿の内容を終え、 マネージャーは夕飯の支度に取りかかっていた 萌えます。年下男子 続き21
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episode15-1 《直人目線》 ――最近、愁ちゃんの様子が変だ。 良く誰かと電話してるみたいだし、聞いても教えてくれないし。 オレに対してはいつも通り優しいけど、なんだかここ最近何かに悩んでるみたいで心配になってくる。 休み時間、メール受信を知らせる携帯のバイブが震えた。 ポケットから取り出し携帯を開くと、画面には『桜井奈央』の文字。 桜だ。最近連絡を取っていなかったからすごく久しぶりな感じがする。 ――放課後会えないかな? 久しぶりに会って色々話したいし。拓也にも伝えて―― メールの文面に目を通すと、オレはすぐに返信をした。 ――いいよ。拓也は今日部活だから無理だと思うけど―― 小学校の頃いつも一緒に遊んだ公園で待ち合わせする事になって、了解の返信をした直後にもう一度携帯が震える。 桜、メール返すの早いなぁ……って愁ちゃん!? 画面に予想外の名前が映し出されていて、オレは慌てて受信メールを開いた。 ――今日、一緒に帰れる?―― なんだろう。愁ちゃんからメールなんて珍しい。 最近愁ちゃんが元気がない事と関係がありそうで気になるけど……今さっき桜と約束したばかりだし……。 暫く迷ったものの、どうせ家で会うんだし、と軽い気持ちで愁ちゃんに断りのメールを送って携帯をポケットにしまうと、オレは次の授業の準備に取りかかった。 × 予想通り部活で行けなかった拓也はとても残念がっていて、結局オレは一人で公園に向かった。 公園には滑り台やブランコなど、思い出深い遊具が並んでいて思わず笑みが零れる。 懐かしいなぁ。よくここで日が暮れるまで遊んでいたっけ。 周りを見渡すとベンチに桜が座っていて、オレに気付くと嬉しそうに手を振ってくれた。 髪が伸びてますます女の子らしくなっている桜の姿に、昔みたいに気軽に話せるか少しだけ緊張してしまう。 「桜、久しぶり」 「わ、直人また背伸びた? 制服よく似合ってるね」 「そう? 桜のセーラー服も可愛いよ」 だって制服で学校決めたようなもんだもん、と桜が嬉しそうに笑う。 明るい笑顔が小学校の時と全く変わっていなくて一気に緊張が解れた。 お互いに今まで合ってなかった分話す事が沢山あって、勉強や学校であった事について色々話していると、本当に小学校の時に戻った様な感覚になる。 拓也が授業中にしでかした数々の面白いエピソードを話すと、桜は楽しそうに声をあげて笑う。 ひとしきり笑ってから、桜はふと淋しそうに呟いた。 「……相変わらず拓也と直人は仲が良くて……羨ましいな」 「桜は学校で仲良い子できた?」 「んー……、今日メールしたのはその相談もあってなんだけど……」 言いにくそうに桜は俯くと、ゆっくりと話し始めた。 膝の上で固く握りしめられた拳からも桜が緊張しているのが伝わってくる。 「なんかさ、上手くクラスになじめなくて……どうしていいのか分かんなくて」 どうやら桜は、入学して早々クラスの中で派手なグループの子達に目を付けられてしまった様で、あからさまなイジメとはいかないものの陰で悪口を言われているらしくて。 小学校の時、沢山友達が居ていつも人気者だった桜がそんな事に巻き込まれていたなんて信じられない。 もしここに拓也が居てたら、怒り狂って桜の学校に乗り込むとか言い出しかねないだろう。 こんな時、当たり障りのない事しか言えない自分がもどかしい。 「……他の子達と仲良くしてれば、気にする事もないんじゃない?」 「気にしないようにする、け、ど…………っごめ……直人の顔見てたら、気が緩んで……」 「さ、桜? 大丈夫?」 話している内に涙声になって、ついには泣き出してしまった桜を見て動揺してしまう。 いつもしっかりしている桜が泣く所なんて今まで見たことが無くて、どうして良いのか判らない。 「直、人……」 桜が寄り添ってきて背中にギュッと手を回される。 女の子特有の甘い香りが鼻をくすぐる。 オレよりも小さくて細い身体。 突然の桜の行動にオレは何も考えることが出来なくて、ただ桜の背中を撫でて泣き止むのを待つしかなかった。 ――どのくらい、時間が経ったんだろう。 桜は小さく鼻をすすりながらオレから身体を離すと深呼吸をした。 そのまま暫く沈黙が続いたけれど、先に口を開いたのは桜だった。 「……ごめんね」 「少しは落ち着いた?」 うん、と小さく頷いた後、桜はまだ少し赤く潤んだ瞳を真っ直ぐオレに向ける。 その目は何かを決心したかのように真剣なもので、思わずオレも見詰め返してしまう程。 「本当は言うつもりじゃなかったんだけど……あのさ、私、ずっと直人に言いたかった事があるんだ」 多分だけど……桜の次に続く言葉は予想がついてしまう。 本音を言ってしまえば聞きたくない。 聞いてしまえばもう昔みたいには戻れない気がして。 そして、桜を傷つけてしまうかも知れないから。 それでも、オレは何も言わずに桜の次の言葉を待った。 「私……直人の事が好きだよ」 ああ、とうとうこの時が来てしまったんだ。 桜の声はさっきまでの涙で震えた声ではなくしっかりとしたもので、桜の真剣な気持ちが表れていた。 ……オレも正直に自分の気持ちを伝えないと。 断るのは、好きな人に告白するのと同じぐらい緊張する。 やっぱりこの瞬間だけはどうしても桜の顔が見れなくて目を逸らしてしまう。 「ごめん。オレも桜の事が好きだけど……オレにはもっと好きな人が居るんだ」 「……知ってるよ」 予想外の言葉に驚いて、え、と顔を上げて桜を見る。 そのまま目が合うと、桜はまるでオレの返答を予想していたかの様にニコリと淋しげに微笑んだ。 「愁ちゃん、でしょ?」 ドキリと心臓の音が跳ね上がって、反射的に頭の中でこの場をごまかそうとする言葉が浮かぶ。 だけど、桜が自分に向かって精一杯の気持ちを伝えてくれているのに嘘を吐く事なんて出来ないと思った。 ごめん愁ちゃん。二人だけの秘密……破る事になるよ。 オレは心の中で謝りながら、桜に向かって小さく頷いた。 「そうだよ。気持ち悪いと思われても構わない……オレは愁ちゃんの事が好きなんだ」 オレの言葉を受けて、桜は特に驚く素振りも見せずにやっぱりね、と小さく呟く。 「最初はまさかねって思ってた。でも直人を見てるうちにだんだん確信になってきて……気持ち悪いなんて、思う訳ないよ」 ――そう言えば……拓也も昔『好きな奴の事ぐらいわかるよ』って言ってたっけ。 知っててもずっと友達でいてくれて、そして好きでいてくれたなんて。 嬉しいような、申し訳ないような複雑な気持ちが入り混じってオレは何も答える事が出来なかった。 「よいしょっ、と!」 突然桜が勢いよく立ち上がり、ベンチのすぐ側にあった鉄棒に手を掛ける。 そのまま身体を乗り上げてくるりと身体を回転させたかと思えば、ストンと地面に着地して晴れ晴れとした笑顔をオレに向けた。 「ね、直人。一回だけでいいから私のこと、下の名前で読んでみて?」 ――オレと良く似た下の名前。 一緒のクラスになった時、紛らわしいからって皆で呼び名を決めて以来、桜を下の名前で呼んだ事なんて一度も無かった。 「奈央?」 「ふふっ。こんな風に二人で同じ名前を呼び合うのが夢だったんだよね」 「そうだったの? じゃあこれからは奈央って呼ぼうか?」 「ばか。そう言う事じゃないよー、直人はホントに鈍いなあ。次からはちゃんと桜でお願いしますー」 オレが首を傾げる姿を見て桜がケラケラと笑う。 楽しそうな桜の姿を見ているとついつられてオレも笑みが零れてしまった。 「さっ、そろそろ帰ろっかな! あー自分の気持ち言えてスッキリしたっ!」 桜は手を組んで大きく上に伸びをすると、パンパンとスカートの埃を払ってから鞄を持った。 「クラスの事は直人の言う通り気にしないようにするね。今度はさ、こんな湿っぽい話は抜きにして遊ぼう! ……拓也と三人で!」 「うん。そうだね」 さすがにこれは鈍感なオレでも解った。 多分、暗にこれからも友達の関係でいようって事を言ってくれてるんだろう。 桜の優しさが胸に染みる。 ごめんね。そしてありがとう桜。初めて、愁ちゃんとの関係を認められた気がするよ。 切ない気持ちを心に残して、オレは小さく手を振って去っていく桜を見送った、 × オレが家に着いた頃にはすっかり日も暮れてしまっていて、玄関を開けるとのふわりといい匂いが漂ってきた。 恐らくお母さんが夕食を作っているんだろう。 いつも遅いのにこんな時間に帰ってるなんて珍しいな。 靴を脱ぎ、リビングの扉を開ける。 「ただいまー」 「ナオ! あんたどこに行ってたのよ!? 携帯も繋がらないし!」 顔を見るなりいきなり大きな声で捲し立てられて驚いてしまった。 別に、怒られる程遅くないと思うんだけど……携帯? ポケットから携帯を取り出し画面を開くと家や愁ちゃんから何十件という不在着信。 ……桜と話していたから全く気付かなかった。 「え? 何かあったの?」 状況が良く飲み込めない。だけど、ただ事ではないと言うことはなんとなく解る。 恐る恐る訊ねると、今度は逆にお母さんの方が驚いたような顔をする。 「愁君から……何も聞いてないの? あんたを探しに出掛けて……てっきり会えたんだとばかり」 “愁ちゃん”と言う言葉に一気に心臓の音が跳ね上がる。 そう言えば、さっきから愁ちゃんの姿が見えない。 いつもだったらお母さんの夕食の手伝いを絶対にしてるはずなのに。 「愁ちゃんが……何? どうか、したの?」 何だかひどく嫌な予感がする。 俺の様子を伺っているのかお母さんはなかなか続きを言おうとしない。 しばらくの間が空き、ようやくお母さんは重い口を開いた。 「二時間程前に……姉さんと一緒に空港へ向かっちゃったわよ? これからは愁君も外国で暮らすみたいだけど」 「…………え?」 目の前の視界がグラリと揺れる。 突然の展開に頭がついていかない。 今日の朝普通に朝の挨拶したし、そんな事一言も聞いてない。 「何……な、に……言って? ……嘘で、しょ?」 義兄さんがどうとかお母さんは続けて話してるけど、もう何も耳に入らない。 オレは説明も聞かず背を向けリビングを飛び出ると、階段を駆け上がり愁ちゃんの部屋と向かった。 愁ちゃん、嘘だよね? この扉を開けたら、いつもの笑顔でおかえりって抱き締めてくれるんだよね? 愁ちゃんが俺に黙ってそんな事するはず無い。 ドアを開けて、オレの目に映ったもの。 それはいつも以上に物の無いガランとした部屋だった。 あまりの光景に足がよろめき、ドアに背が当たりそのまま力無くズルズルと崩れ落ちる。 「愁……ちゃ……何で?」 独り言のように呟いた問い掛けに答えるように、握り締めていた携帯から着信音が聞こえた。 episode15-2 《愁視点》 「何度掛けてきたって……俺は一緒に行くつもり無いよ」 「いいえ、そうはいかないわ。もう私だって充分待ってあげたつもりよ」 これで何度目のやり取りだろう。 ここ最近母さんからひっきりなしに電話が掛かってくる。 理由は勿論、俺を向こうに連れて行く説得をするため。 父さん達の会社の事なんて興味もないので詳しい事は聞いていないけど、今年度から海外事業に絞って経営を進めていくようで母さん達が向こうに永住すると言う事は前々から知っていた事だった。 だからって何で俺まで……。 高校三年で新学期が始まったばかりなのにどうしてこんな急な展開になるのか。 小さな頃から放任主義だったくせに今更何を保護者ぶっているんだろう。 俺は携帯を持つ手を替えると小さく溜息を吐いた。 ……これがただの母さんの我儘ならもっと強く抵抗をするところだけど、今回ばかりはそうもいかない理由がある。 「それで……父さんの体調はどうなの?」 「本人は大丈夫って言い張ってるけど、まだ顔色も良くないし心配なのよ」 数ヶ月前、会社の経営転換に向けて心血を注いでいた父さんが過労で倒れた。 幸い大事には至らなかったようで現在は自宅療養中。 向こうに行く程でも無いと思っていたのに、父さんべったりの母さんはそれからというものこうやって俺を連れて行こうと必死になっていて。 時差の関係もあり今まで適当にあしらっていた電話も、先週から母さんが会社の諸手続きの為に日本に一時帰国してから格段に頻度を増し、今日もこの電話で一日が始まった。 「愁、本当に何をそんなに嫌がってるの? せめて理由を言ってくれないとこっちだって納得できないわよ」 「……もうそろそろ用意しないと学校遅れるし切るよ」 「愁! 待ちなさ――」 一方的に電源を切り、もう一度小さく溜息を吐く。 ……俺だって、父さんの事は心配に決まっている。 母さん一人に全てを任せて申し訳ない気持ちだってあるし、たった一つの理由さえ無ければ今すぐにでもついて行ったって構わない。 「……愁ちゃん? いい?」 ノックの音が聞こえ慌ててドアの方に顔を向けると、ひょこっと直人が首だけ部屋に覗かせる。 俺は手に持っていた携帯を掌に隠しながら平静を装い挨拶をすると、直人は嬉しそうに微笑んだ。 「おはよ。オレ、今日は委員会の仕事あるから早めに行ってるね?」 「あ、ああ……いってらっしゃい」 小さく手招きをするのでドアの方に向かえば、直人から不意打ちで頬にキス。 行ってきます、ともう一度微笑んでから階段を下りていく直人の背中を見詰めながら、俺はますますどうしていいのか解らなくなってしまった。 このまま頑なに拒否を続ければ母さんももう暫くは許してくれるかも知れない。 それでも、残された期間はあと僅か。 ナオには……一体なんて言えば悲しませずに済むんだろう? 何を言っても直人の泣き顔しか想像できなくて胸が締め付けられる。 ……いつか言わないといけないのなら、なるべく早い方がいいのかも知れない。 本日三度目の溜息を吐きながら、俺はようやく支度に取りかかった。 × 授業中、俺はひたすら直人に切り出すタイミングについて考えを巡らせていた。 母さんの日本滞在が後一週間程。 下手したら母さんと共にそのまま連れて行かれる可能性だって高い。 高校の編入手続きや日本での手続き等、あの人のことだから決定さえすれば一瞬の内に完了させてしまうだろう。 ……突然ナオの前から消えてしまうのだけは阻止しないと。 今日言おう。 そう覚悟を決めた瞬間、授業終了の鐘が鳴る。 すぐに携帯を取り出し直人にメールを送ろうとして、はたと気付いた。 文字を打つ指が小刻みに震えていて、自分の動揺ぶりに思わず苦笑が零れる。 ……自分が一番取り乱してるな。 すぐに返信が帰ってきたけれど、どうやら直人は用事があるらしく帰り道に話すのは無理そうだった。 仕方がない。それなら家に帰ってから説明するしかない。 なんだかタイミングが悪くて不安な気持ちが一層高まる。 まるでこの機会を逃せば一生会えないような気がして、このまま直人のクラスまで直接行こうかと思った程。 しかしそんな短時間に終わらせられるような話でも無いとすぐに思い直す。 落ち着け。俺が落ち着かないとナオはもっと悲しむ事になる。 重い気持ちを抱えながら過ごす午後の授業は、いつもの何倍も長く感じられた。 × 長かった一日がようやく終わり、家に向かっていると門の前に見慣れた車が止まっていて愕然とする。 母さんの車……? まさか……。 ちょうど荷物を抱えてトランクに詰めていた叔母さんに慌てて駆け寄る。 いくら何でも急すぎる。母さんの滞在だって後一週間はあったはずだ。 「なっ……どう言う事ですか?」 「……愁君、良く聞いて。義兄さんがさっきまた倒れたって姉さんに連絡が入ったの」 その言葉を聞いた瞬間、自分の身体からサアッと血の気が引く音がした。 ああ……俺の予感が的中してしまった。 流石にこの状況ではもう一緒に行くとしか返答出来ない。 まだ、ナオに一言も状況を話せてないのに。 「愁、今からすぐに出発するわよ」 玄関から出てきた母さんに真剣な表情で詰め寄られる。 母さんの目は俺が来るまでに余程泣いたのだろう、真っ赤に潤んでいてとてもこれ以上引き延ばす事は出来そうも無かった。 「……わかった。……ただ、最後に一つだけお願いがあるんだ」 そのまま母さんから叔母さんの方に向き直り言葉を続ける。 「ナオに、最後の挨拶をしたいんです」 「でも……さっきから携帯に何度掛けても繋がらないのよ? 全く……こんな時にどこに遊びに行ったのかしら」 「見付からなければそれでもいいです。……母さん、一時間したら絶対戻って来るから」 俺は母さん達にそれだけ言うと目的地も解らず駆け出していた。 走りながら直人に電話を掛けても掛けても繋がらない。 ……もう無理にでも話をしていれば良かった。 まさかこんな形で離れる事になるなんて。 ナオに会いたい。 ただ、ナオに会いたい。 別に深い考えがあった訳じゃ無い。しかし、自然と俺の足は学校へと向かっていた。 もしかしたらまだ学校に居てるかも知れないし、本人が居なくても誰かは行き先を知っているかも知れない。 ちょうど通学路の途中辺りにある大きな公園に差し掛かった所で息が切れ、思わず膝に手を当てて立ち止まってしまう。 乱れる息を整えようと顔を上げると、公園のベンチに夕暮れに染まった人影が見えた。 「ナ……っ」 ナオ、と呼び掛けようとした声が詰まってしまう。 そこには桜ちゃんを抱き締めている直人が居て。 余りにも予想外の光景に心臓が止まりそうになる。 二人の表情までは見えないけれど、抱き合っている姿を見て俺の頭の中で何かが弾けた。 ……ああ、そうだ。 余りにも近くに居すぎていて俺は忘れていたんだ。 これが普通の光景で、ナオを抱き締めるのは俺では無いって事を。 暫く二人をぼんやりと眺めた後、次に何をすればいいのか理解した俺はゆっくりと携帯を取り出し番号を打つと耳に当てる。 すると、数コールの内に待ち構えていたかの様な母さんの声が聞こえた。 「もしもし、愁? 直人君には会えたの?」 「……会えたよ。もう大丈夫……今からそっちに戻るから」 俺は二人に気付かれないように背を向けると、ゆっくりと元来た道を引き返し始めた。 episode15-3 《愁目線》 本当は……このまま声も聞かずに出発するつもりだった。 でも搭乗時刻が刻々と近づき、俺は耐えきれず一人母さんから離れて携帯を取り出した。 直接伝えるよりも、声だけの方がお互いの傷ついた顔を見なくて済む。 ……これで最後。出なかったら、もうそれはそれでいい。 「は、い」 「……ナオ」 「…………愁、ちゃん」 耳に入った直人の声はか細く、それだけで直人が既に状況を知った後だと理解できた。 どこまで叔母さんが説明したのかはわからないけど、俺が直人を裏切った事に変わりはない。 「……ごめんね」 「なん、で? なんでオレになにも……」 直人の震える声を聞いて、最後に見た姿が脳裏に蘇る。 ベンチに座って抱き合う二人。 嘘が吐けない直人の性格上、もし二人が付き合っていたのならとっくに俺は気付いていただろうし、あれはなにか事情があったとしか思えない。 とにかく、どちらにしてもあの光景が俺の心を固めたのは事実だった。 「言おうとしたよ。でも、今日公園で二人を見てわかったんだ」 「!? あれは違う! 違うよ、愁ちゃん! オレが好きなのは愁ちゃんだけだよ!」 電話の向こうで息を呑む音がしたかと思えば、続けざまに慌てて否定する言葉。 こんな状況なのにその言葉に安心してしまう自分は酷く狡いと思う。 いっその事、俺を裏切って付き合ってくれていた方が続きの言葉も言い易かったのに。 「ありがとう。……でもそういう意味じゃないんだ」 「……どういうこと?」 「ナオはこれから新しい学校で、新しい生活を送って……普通の人生を送るなら、ちょうど良い時期だと思うんだ」 「……言ってる意味が全然わからないよ」 直人と結ばれてからずっと心の奥に隠していた感情。 幸せという感情にはいつも不安という闇が付きまとっていて。 今だけが幸せなら良いという訳にはいかない。 俺にはナオの将来を決めるほどの資格は無い。 そして――この関係を続けても先なんて見えない。 「だから、ちゃんと女の子と恋愛をして、結婚して……幸せな生活を過ごして欲しい」 「何それ……」 「俺が……ナオの人生を壊すわけにはいかないよ」 なるべく冷静に言おうと努めた。 自分の伝えようとしている気持ちを少しでもわかって貰えるように。 暫くの沈黙が流れ、突然直人が声を荒げた。 「……オレの……オレの幸せを愁ちゃんが勝手に決めないでよっ! 好きな人と一緒に居れるのが幸せだと思っちゃダメなの!?」 直人がそう言い切った後に小さく嗚咽が漏れ聞こえてきて、胸が締め付けられる。 グラリと決意が揺れそうになる心を必死で抑え、小さく息を吸うと俺は言葉を続けた。 「今までずっと俺と居てたから、そう思い込んでいるだけだよ。離れたらきっとナオも気持ちは変わるよ」 「さっきからオレのことばかりで……愁ちゃんは、オレのことがもう好きじゃないの? ……オレ……オレ、は…………」 涙声で最後の辺りはもう何を伝えようとしているのかも解らなかった。 ……好きに決まってる。 でも……性別や俺達の関係を考えると、二人の関係は一生許されないんだと俺を縛り付けていて、そこから逃れることは出来ないんだ。 携帯の向こうからはただ直人のすすり泣く声が続いていて、目線を上げれば母さんが向こうの方でそろそろだと俺に合図を送っていた。 「……愛してるよ。だから、ナオには俺のことを忘れて幸せになって欲しい。……そろそろ行かないと」 「待って、愁ちゃん! オレはまだーーーー」 堪えられなくなった涙が自分の頬を伝っていくのを感じながら、俺は直人の言葉を遮って最後の言葉を告げた。 「――――――もう二度と会わない。さよなら、ナオ」 × × × 続き × × ×
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385: 名前:雷蓮☆2011/08/30(火) 20 35 11 ~放課後~ 私は日直の仕事を済ませ、変える準備をしていた。 「迷惑だった……?」 ふと前の方から女の子の声。 「舞ちゃん?」 「さっき、余計なことしちゃったかなって思って……」 「ううん、全然」 むしろ、嬉しかったし……。 自分でも何か分かんないけど……。 「私が見てる限り、しずほちゃん、恋してると思って」 「コイ?」 このアタシがコイ? 「あ、これ秘密。みーこには内緒ね」 「え……」 「みーこより、しずほの方が似合ってるって思ってね。んじゃ、また明日」 タタタッ…… それって……アタシが蔵間に恋してるってコト!? 「そうそう、そうだよー」 「うにゃっ!?」 突然、背後から聞き覚えのあるボイス。 胸がキュンと苦しくなる。 「なーに、その不審者扱い……」 「べ、別に……」 「ヤンキーのくせに、シャイなんだね」 「シャっ……!?」 「あ、この後暇?」 「は?」 「いいから、つきあってよ」 「何言って……」 「はい、しゅっぱーつ!」 「は!? おいっ、ちょっ……!!」 言われるがままに手を引っ張られる私。 無抵抗な自分に、少し違和感を覚えた。 386: 名前:雷蓮☆2011/08/30(火) 21 44 46 ~カフエ~ 「……ちょっと」 「ん~?」 ここは港にあるカフエ。 人が少なくて、落ち着いて休むことができる。 ってチガウ!!そーじゃない!! 「何でここにいるの!?」 ガタッ いきなり大声で立ったアタシにちょっと驚く蔵間。 「まぁまぁ、座って~」 昨日と全然態度がチガウじゃん。 ついてったらめっちゃ怒ったクセに……。 「気分屋」 「俺はそんくらいで怒んないよ~?」 ハハハッっと笑い、コーヒーを飲む。 蓮の言ったとおり、ブラックだ。 「しずちゃんがまた、ついてくるかなって思って」 「誰がしずちゃんじゃ。いっぺん地獄にご案内してやろうか?」 「それは楽しそうだね~」 えへへっとなぜか頬を染める彼。 まったく……。調子、狂いっぱなしだってば……。 てか、こんなとこみーこに見られたら…… 「もうあんたのコト、ストーカーしないから。それじゃ」 ガタッ 私は危機感を感じたため、即座にその場から去ろうとした。 ……が、 ガシッ 「っ……!?」 「食い逃げ厳禁~」 「は……?」 「俺の話、まだ途中なんだけど?」 いや、全部聞いてくとか言ってないからねーっ!! 「アタシ、用事あるんで帰ります」 「俺より大事な用事?」 「そうじゃない。ただ帰りたいか……あ」 「俺のコト、そんなに嫌いなんだ」 なえかウルウルな瞳になる彼。 まさかとは思うが……アタシが泣かせてしまった? 「い、いや!!別にそんなことはないぞ!!じょ、冗談に決まっている!」 「……本当?」 「あぁ!もちろんだ!」 何言ってんだよーーっ!! 自分で言っといてなんだけど、アタシバカなんじゃね!? 「んじゃ、今日から1習間俺の奴隷!」 「……すいません。何かすっごい幻聴聞こえたんでもう一回……」 「今日から俺の彼女!」 「いや、何か悪化してるんですけど!!?」 「ハハッ!ナイスリアクション!採用!」 「あ、ありがとうございますー。一生懸命勤めま……ってチガーウ!!」 こうして私はきょうから1週間、蔵間の奴隷(パシリ)になった。 「あ、変なコトしないから大丈夫!しずちゃんには期待しないようにしてるから」 「あーそうかい。つれない女で悪かったな、クソガキ」 「しずちゃんって言ってるとこ、ツッコまないんだ?」 「あ」 389: 名前:雷蓮☆2011/09/01(木) 18 11 55 ~3日後~ 土日の休日をはさみ、 またの学校日和がやってくる。 何よりも憂鬱だ---。 なぜなら、アタシが蔵間の奴隷になったこと知られたら 絶交の危機におちいる可能性が 大になるからである。 でも……なんか最近、そういう関係に疲れてきた。 正直、アタシって男気が強いから 女子との意見とはまったく違かったりする。 ようするに、アタシがあっさりしているから ねちねち付き合いの女子とは気が合わないということ。 それに最近のみーこの態度、冷たいし……。 きっと仲良いから嫉妬してるんだろう。 けど、アタシは嬉しくもなんともない。 蔵間への気持ちが変わってきていることに気づいたから……。 だって、会うたびに胸がキュンってなって 他の女の子と話してたりすると苦しくなっちゃう。 「これが……恋って病気……?」 そっと胸に手を当ててみる。 どんどん心臓が加速していくのが、すぐ分かった。 「心臓痛いの?」 「ぎゃっ!?」 「おはよ~」 教室にいつの間にか来ていた蔵間。 男の子の香水の匂いがする。 「お、おは、よ……」 「ん? 元気ないじゃん」 「い、いやー……」 ぎこちない私の態度に、彼はんー?っと首をかしげる。 ちょ、かわいいじゃんか!ばかやろー! 「あ!!」 「えっ!?」 「アロエじゅーす、買ってきて!」 「あ、あろえ?」 「奴隷でしょ? はい、買ってきて~」 「な、自費で買えっての!?」 「うん。何か問題でも?」 「すっごいある。とにかく、無理だか……」 「昨日、泣かせたのは誰……?」 「うっ……」 「しずちゃん、Bダーッシュ!!」 「チクショーーー!!」 こうして、私の奴隷生活24時(仮)は始まった。 391: 名前:雷蓮☆2011/09/01(木) 18 23 11 ~蔵間side~ あれっ? こんな朝早くに教室に誰かいる! 蓮とは今日、別々で来たから今はいないはず。 舞ちゃんは蓮と一緒だし。 鈴音と康介はラブラブだから、遅くくるだろうし。 ……とするとー……もしやしずちゃん? ガラッ 「おは……」 俺が教室にあいさつをしかけたとき、 しずちゃんが自分の胸に手を当てて、 何やら苦しい表情を浮かべていた。 一体どうしたというのだろう……。 「これが……恋って病気……?」 ドクンッ えっ……。 今、しずちゃん……何て言った……? これ以上のことを聞きたいと思う自分がいたけど、 その気持ちを何とか押し殺して、俺は声をかけた。 「心臓、痛いの?」 「ぎゃっ!?」 思ったより、いい反応。 これだから、しずちゃんいじりは楽しい。 素直に俺のお願い聞いて、アロエじゅーすを買ってきてくれるとことか! ……そういえば、さっき後に誰かいた気配がしたよーな……。 ……気のせい……かな? 393: 名前:雷蓮☆2011/09/01(木) 20 10 48 ~しずほside~ タタタッ くっそぉー!! アタシをいいようにパシリ扱いしやがってー!! ドンッ 「わっ、ごめんなさ……」 「はろろ~ん」 「げっ」 運悪くぶつかった相手は、宮前左端。 一応、男。 「その反応はないでしょ、しずぽん!」 「うるせぇ。しずぽんゆーな」 「しずぽっぽー!」 「ふざけてると受け取っていいんだな?」 「えへへ~っ。あ、どっか行くの?」 「え、あぁ……まぁ」 「なになに~? 運命の告白~?」 「宮前左端を半殺しにしても、罪にはならねぇよな……?」 「ちょっ、怖いよ~!殺られる前に逃げよっ」 タタタッ チッ……。道草くっちまったじゃねぇか。 おかげで、嫌なことが終わらねぇ。 「相変わらず、口のききかたが悪いな」 「うわっ!?」 ろうかの天井からぬるっと出てきた黒鉄颯斗。 「おっと、驚かせてしまったようだな。すまない」 「すまないじゃねぇよ!おまっ、どんだけ運動神経いいんだよ!」 「何をそんなに羨ましがっているのだ!そんな褒めてもおごらないわよっ!」 「一言も褒めたつもりないんですけど!? 大丈夫!? アタシの言ったこと聞こえてました!? てか、何でお母さん口調になってんだよ!!」 「あらまぁ、宮前さんじゃないのお~」 「あらま、颯斗さん!?」 「何でお前はこっちに戻ってきてんだよ!!」 颯斗にツッコミを入れている途中、 左端がまたこちらに戻ってきた。 もう疲れてきたんですけど……。 なかなか、自動販売機にたどり着けない昼下がり---。 396: 名前:雷蓮☆2011/09/02(金) 21 47 11 ~教室~ コンッ 「いてっ」 「買ってきたぞ、この野郎」 「この野郎って……」 疲れ果てて、不機嫌なアタシ。 「何か問題でも?」 「本当は朝に頼んだのに、 お昼になってから買いにいくから 猛スピードで行って当たり前だろ。 それに、寝たふりするからさー」 「だからって、アタシが実はストーカーとかいう変な噂たてんのヤメロ」 「えーっ」 「えーじゃない。もう、お前といると疲れる」 「どこに行くの?」 「疲れたから寝る。また明日ー」 スタスタ… 「……保健室?」 アタシは変な気持ちを引きずって、 常連の保健室へと向かった。 397: 名前:雷蓮☆2011/09/02(金) 22 01 41 ~保健室~ 「それじゃあ、そこのベットで休んでなさい」 「はい」 シャッ 保健室の女の先生は、 いつもアタシをベットに寝かせてくれる。 なんか常連で、いつもここにくるときは 大抵嫌なことがあったときか悩んでいるとき。 それを察しているのか、先生はあっさりと承諾する。 「……恋なんて……できないって思ってたのに」 ぽつり、口から零れたその言葉には少しの切なさも入り交じっていた。 「女はいずれ、自分の過ちに気づく。たとえどんな形であろうとも」 先生が記録のファイルを見返しながら言う。 「アイツのこと、嫌いだった」 ベットの上で、体育座りをして窓の外を見る。 「でも……最近、 アイツへの気持ちが変わってきた。 アイツとまだ一緒の時間を過ごしたいとか、 もっとアイツの事を知りたいって思う」 独り言のはずが、声がだんだん大きくなっていく。 398: 名前:雷蓮☆2011/09/03(土) 07 29 58 「しずほちゃんも恋するのね」 先生が面白いものでも見るような目でアタシを見る。 「別に……アタシは」 「も~、しずちゃんはツンデレなんだから~」 「しずちゃんゆーな!!お休み!!」 ボフッ お決まりの捨て台詞を吐いて、アタシは布団をかぶった。 恋……か。 きっとそうなんだろうな……。 アタシもいつの間にか、蔵間に恋しちゃってんだ。 いや、自分では薄々気づいてた。 なのに、気づこうとしなかっただけなのかもしれない。 「あら、みいこさんじゃない」 「すいません、ベット空いてますか? 腹痛がヒドくて……」 え……。みーこ!? 「えぇ、空いてるわよ。どーぞ」 「ありがとうございます」 どうしよう……今朝のこととか見られてたからヤバいよね……。 シャッ …… ………… 運良く、みーこは私の二つ隣で寝た。 ふぅー……。 やっと一安心したところだった。 「協力してくれるんじゃなかったの?」 ドキンッ! 大きく心臓が跳ねる。 じわじわと迫る恐怖を感じていた。 「知ってる? 嘘つきは泥棒の始まり」 ドクンッ!! 「しずほは嘘つきなのかな……?」 「やめて……」 やめてよ……。 「それとも……」 お願い、やめて……。 「泥棒かなぁ?」 「やめてよ!!」 シャッ 「しずほさん、人の傷を悪化させるなら教室に戻りなさい」 「っ……」 「ここは保健室よ。場をわきまえなさい」 「すいません」 シャッ アタシは布団の中でうずくまり、 早くみーこが出ていくのをただただ待っていた。 401: 名前:雷蓮☆2011/09/03(土) 10 26 18 ~放課後~ 「しずちゃん、下校時刻過ぎてるけど?」 「……」 「彼女なら、もう帰ったわ」 「……」 「なんかいじめられてたみたいだけど?」 「そんなんじゃないです」 「早く解決した方がいいんじゃない?」 「どうやって解決しろってんですか……。もう後戻りなんてできないのに」 「あら、恋のライバルだったの!?」 「……そーですよ」 「あらまぁ!あ、そうそう!さっき男の子があなたのカバン、持ってきてくれたわよ?」 「えっ……」 「たしかあなたの同じクラスの蔵間くん!あの子、イケメンよねぇ」 「っ……」 ダッ 「あ、ちょっと、しずちゃん!?」 アタシは蔵間に会いたくて、飛び出した。 どうしてもあの顔がみたくて、朝早くきて……。 いつも目をとじればアイツが浮かんで‥…。 アタシはアイツがいそうなところを全部探したが、見つからなかった。 来た形跡もない。 ……仕方ない、帰ろう。 下駄箱へ向かったその時だった。 「奴隷のくせに、待たせるって何様?」 「っ!!」 この声……!! 「しずちゃん、おかえりー」 「くら、ま……?」 会いたかった人にようやく会えた。 もう一度だけでいいから、あの顔が見たかった。 「ん? どうした?」 その誰にでも優しい言葉と、笑顔と、声……。 包み込んでくれるような眼差し‥…。 すべて、抱きしめたくなった……。 414: 名前:雷蓮☆2011/09/17(土) 10 22 30 「ん? どうした?」 「か、カバン……あり、がと」 少し照れくさくなって、 素直にありがとうと言えない。 「ん? あぁ、お礼はアメちゃんでいいよ」 アメちゃん……? 私が ? を頭に浮かべていると、 彼は呆れたように 「飴のことだよ」と教えてくれた。 妙に可愛げがある蔵間に、私は少し嫉妬した。 「何か元気ないね?」 ドキッ 「そんなこと、ないって」 ハハッと微笑して、下駄箱から自分の靴をとる。 「ふーん。めずらしいね、笑うなんて」 「え……」 「いっつも仏頂面なのに、こういうときだけ笑うんだ?」 な、何が言いたいのよ……。 「それとも、こういうときだけごまかしてんの?」 何……言ってんの……。 「しずちゃんってさ、八方美人?」 「やめてよ!!」 「っ……!」 蔵間がハッとした顔で私を見た。 「あ……ごめん。取り乱したかも」 何、謝ってんの? 「あんたはいいよね。誰にでも優しくできて、人気でさ」 心の中で思ってもない言葉が、嫌味となって口から零れる。 「おまけに顔も完璧じゃん。よかったね、生まれてきて」 違う。こんなことが言いたいんじゃない。 「こういうときだけ笑う? じゃあ、いつ笑えばいいんだよ」 黙れ、私の口。お願いだから、これ以上言うな。 「八方美人? あぁ、そうかもしれないな。 アタシなんて、人の気色うかがってばっかりの弱虫女だよ」 自分で自分を傷つけた。 残ったものは、涙と切なさと虚しさと……。 「しず……ちゃん?」 聞きたくない愛しい人の声。 「アタシがあんたに近づいたのは、みーこのため。 別にあんたに好意があったんじゃない。 プライベートに首突っ込んだのも、アタシの思いじゃない。 最初から、あんたにはうんざりしてたんだよね。 だから、もう奴隷とかやめてくんない?」 どうして、こんなにヒドい言葉しか出てこないんだろう。 本当は別れたくないのに。お願い、もう何も言わないで。 私に突き刺さった刃は、深い傷を残して床に落ちた。 「……じゃあさ、しずちゃんは俺が嫌だったから笑わなかったの?」 私は自分の口を制御しきれず、話すのを許してしまった。 「そうだよ? おかげで疲れちゃった。いいかげん、やめてよ」 蔵間はきっと傷ついた。なんてこと、してくれたんだ。 「そ……か。無理させて、ごめん……」 こんなこと聞きたかったんじゃない。 アタシが望んだ結末は、こんなんじゃないでしょ? 後悔はいつも、私をどん底へ突き落とす。 そして、その場から消えたくなる。 「っ……もう、しゃべりたくないんだよ、ばか」 ダッ…… 結局結末は、アタシの一人の暴走で終わった。 415: 名前:雷蓮☆2011/09/17(土) 10 27 15 ~蔵間side~ 「っ……もう、しゃべりたくないんだよ、ばか」 なぜかその言葉が、俺の心に刺激を与えた。 アイツはなんで、悲しそうな顔をした? 俺はどうして、追いかけないんだ? いつもの俺なら、女の子を傷つけないで終わらせるのに。 どうして、俺の心はこんなにも痛くなるんだ? 一人、床に転がったアイツの靴を見つめていた。 君を好きになる5秒前 続き13
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22: 名前:雷蓮☆2011/07/16(土) 23 24 14 ~教室~ 「おい、まーいー??」 心配そうに覗き込む康介。 「いいかげん、機嫌なおせよぉー」 ごめんね、康介。まだ、許せないんだよね。 「舞ちゃん」 声の主は、蔵間君。 「さっきは連が失礼な事言って、ごめんね」 「蔵間君が謝ることないよ」 「蓮は言われるまで気づかないから・・・」 「だからって、甘やかせちゃダメだよ!! 蔵間君も困ってるんならなおさらだよ!!?」 「う、うん・・・」 蔵間君はおどおどしてる。 オネエの時のあの自信は、どこへ・・・。 我慢の限界がきて、私はアイツの席に行く。 バァンッ!! 「っ!?」 突然、私が机を叩いたから驚いた蓮君。 「チビにもプライドがあるの!! ちょっと腕だして!!」 「はぁ・・・?」 訳が分からない蓮君、怒り狂ってる私。 「いいから!!腕、出してってば!!」 「は?え、ちょっ・・・!!」 グイッ!! 強引に蓮君の腕を引っ張って、 パシッ!! 思いっきりしっぺをした。 見ていた康介、鈴音、蔵間君、 そしてやられた蓮君は唖然・・・。 「もうチビって言わないでよ?」 「・・・・・・」 「ちょっと?」 「・・・・・・・・・」 「ねぇってば!!ちょっと!?」 「・・っく、ぷく、く、あっはははははは!! ダメだぁーーーー!!我慢できねぇーーーー!! あはははははははは!!」 私の開いた口がふさがらない・・・。 どうしてこんな状況で笑えるの・・・? 「おっ、お前っ・・・・くくくっ・・・。 お仕置きに“しっぺ”って・・・くく・・!! お笑いにもほどがあんだろ!!」 「なっ!?バカにしないでよ!! 暴力は嫌いなだけ!!」 「おっ、おい、・・・くくっ、早乙女! こういう奴なのか?・・・ぷっくく!」 「うん・・・まぁね。あんま笑わないであげて」 なぜか、笑いがどっとこみ上げてるみんな。 私だけ、その日の数時間は不機嫌でした。 24: 名前:雷蓮☆2011/07/16(土) 23 48 28 ~教室~ 私は久しぶりに朝早く登校。 まだクラスの中には誰もいないから、 教室の窓から一人で景色でも眺める。 こうやってゆっくり景色を見るのもいいよね・・・。 「何やってる、ストーカー女」 そう、こういった幻聴も聞こえるんです。 そう、聞こえるんです。 え?聞こえるんです?幻聴?ちょっと待って。 今、もんのすっごい聞いたことのある声が・・・。 「何スルーしてんだ、しっぺ女」 「な、何でいるんですか!?」 「何でっていて悪いのか?」 「いや、全然いいよー。ってチガウ! 何でこんなに早く来てるの?ってこと!!」 「あ?そりゃー、お前だって同じだろ?」 「私は気になるから質問してんです!」 「気になるも何も、俺ら日直じゃん」 「あ・・・」 何のために早く来たの・・・。 何のためにめざましを早くセットしたの・・・。 そう、日直だから・・・。 言われるまで全然気づかなかった。 学校にくるまで全然思い出せなかった・・・。 「お前、天然だよなー。ぜってぇー告られても分かんねーよ」 「失礼な!告白くらいは分かりますー」 「フン・・・。ま、鈍感女にゃそれぐらいがいいんじゃね?」 何、その言い方。また、頭にくる・・・。 でも・・・なんかこの時間が楽しく感じる。 蓮君といれるこの時間が・・・。 私のことは、チビとしか見てないだろうけど それでも会話で目が合ってるなら幸せだな・・・。 「おい?なに、ニヤけてんだ?」 「えへへっ!別にー」 「・・・変な奴」 「お互いさまにね」 不良を感じさせない蓮君の態度、 それになにげに優しくしてくれる。 そういうところがもっと愛しくなるんだよ。 ねぇ、天然なんかじゃないよ。 ねぇ、鈍感なんかじゃないよ。 ちゃんとこの気持ちが何なのか、分かってる。 蓮君の目に私が映るように頑張るよ・・・。 心の中でそう語りかけた。 君に夢中になるまであと5秒・・・。 25: 名前:雷蓮☆2011/07/17(日) 10 16 36 ~4時限目 数学 ~ 「ですから、ここにXを・・・」 先生は必死に黒板に板書。 それをもろともせずによそ見している、蓮君。 蔵間君はちゃんと集中してるのに・・・。 この差はなんだろうか・・・。 と、よそ見をしている蓮君に気づいた先生。 「じゃあ、亜久間君、ここの問題解いてください。 よそ見しているほど、この授業はつまらないようですからね」 先生がイヤミっぽく言う。 蔵間君が心配した顔で蓮君を見る。 「そうっすね。つまらなかったんで。 ここの問題解きゃいいんですね?」 「もちろんです。まぁ、難問ですからすぐには・・・」 「解けました」 「!?」 先生もクラス中もこれにびっくり。 何より先生の顔が、驚きと悔しさであふれてる。 蓮君はなにくわぬ顔で、席に戻る。 男子なのに、字が綺麗なのも驚き・・・。 それにクラスの女子(鈴音と舞を除く)は、 もろともしない蓮君を見て黄色い歓声・・・。 「先生、これで文句ないですか?」 「え、えぇ・・・」 先生も面目丸つぶれ・・・。 蔵間君は安心した顔で、私に微笑んだ。 蓮君、不良なのに頭良かったんだ・・・。 新たな発見に、少しドキッとした4時限目の数学---。 26: 名前:雷蓮☆2011/07/17(日) 10 48 39 ~お昼休み~ 「あぁーーーー!!やーーっと終わったぁ~!!」 康介が4時限目終了のチャイムと同時に叫ぶ。 蓮君は相変わらず、つまらなそうな顔。 蔵間君はお昼の準備・・・。 私と鈴音はいつも屋上でお昼を食べる。 「舞、屋上行こう」 「あ、うん。待ってね、今行く」 お弁当箱を出して、屋上に向かうその時・・・。 「しっぺ女」 呼び止められた・・・。 「な、なに?」 声をかけられたのに内心驚く。 「蔵間もいっしょだから、俺らと食え」 「何を?」 「昼に決まってんだろ。嫌か?」 嫌も何も・・・いきなり?? 「んと、鈴音も一緒でいいの?」 「俺が特別に許す。屋上で食べるぞ」 本当に俺様だなぁー・・・。 すると後ろから康介が「俺も!」ってねだるから 仕方なく康介も・・・。 ん?待ってよ。このメンツでお昼って・・・。大丈夫なの?? 27: 名前:雷蓮☆2011/07/17(日) 11 44 38 ~屋上~ 「へぇ~、鈴音ちゃん一人っ子かぁ~」 「まーね。寂しく感じる日、多いけど」 「じゃ、その時は俺、鈴音ちゃん家に行くよ」 「本当?ありがとう!そういや、蔵間くんオネエはどうしたの?」 「んー?あぁ、入学式限定のキャラ!」 「元は普通なんだね?安心したー」 「ありがとね。あ、鈴音ちゃんアド交換しようよ」 「全然いいよ~」 鈴音ちゃんは普通に蔵間君と仲良くなってる。 康介は蓮君に質問の嵐。 「なぁ、不良やって何年目?」 「知るか。いちいち数えてっほど暇じゃねぇんだよ」 ぶっきらぼうな蓮君。それでもめげない康介。 「じゃさ、何で頭いいの?」 「勉強もすんだよ。たまーにだけどな」 「へぇ~。んじゃさ、喧嘩したこと・・・」 「あるに決まってんだろ。じゃなきゃ不良じゃねぇよ」 「だよなー。過去に彼女は何人いた?」 え・・・。ちょっと、康介!? 気になってること何で康介が聞くの!? 「それ聞いてどうすんだよ」 蓮君が康介を睨む。 「どうもしねーよ。気になるんだ」 「女なんてつくらねぇよ、アホ」 「なんだ、てっきりいるんだと思ってた」 「いたらどうするつもりだったんだ」 「ん?紹介してもらうつもりで・・・」 「バーカ。誰がお前に言うかよ」 「なんだとぅ!?もっかい言ってみろ!!」 ギャーギャー 意外と息が合ってる二人。 漫才でもやっているように面白い。 なんだか蓮君が悪い人には見えない。 正義のヒーローじゃないのかなって思ったりもする。 「おい、何ニヤけてんだ?」 「わあっ!?」 「お前、今日の朝もニヤけてたよな?大丈夫か?」 「なっ!?病気じゃないから大丈夫です!」 慌てて手で顔をかくす。きっと顔真っ赤だよ・・・。 「舞・・・?」 後ろから声がした。 「ふぇ?あ、伊玖!」 驚いた顔で立っている伊玖。 「伊玖、はよ~」 康介がお昼なのに朝のあいさつ。 「伊玖、やほ~」 鈴音もにっこりあいさつ。 「鈴音、康介、新しい友達??」 「あぁ!蔵間じゅんに、亜久間蓮!」 「どーもー(ニコッ」 「フン・・・」 蔵間君は、愛想よく笑顔であいさつ。 蓮君は相変わらずぶっきらぼう、 「俺は蓮堂 伊玖」 珍しく伊玖が自分からあいさつする。 「伊玖くんってさ、無口なんだって?」 蔵間君が言う。 「人見知りだから・・・。みんなでお昼?」 「まぁね。伊玖くんもこない?」 「俺、先生に呼ばれてるんだ。じゃ」 タタタ・・・ 口数少ない伊玖は、仲良くないとたくさん話さない。 「伊玖くんて、モテるでしょ?」 ふと蔵間君が聞く。 「小学校、中学校ともに大人気。 自覚ないんだけどねー」 康介が羨ましそうに言う。 「舞と伊玖のウワサが流れたときは、 伊玖が怒ってさー。すごかったね、あれ」 康介が懐かしげに語る。その脇で鈴音もうなずく。 「お前らがか?」 予想外のことに、蓮君が聞く。 「そうそう。仲がいいから勘違いする女子が増えてねー」 鈴音が腕を組みながら思い出している。 「舞が伊玖とのウワサは嘘って言ったんだけど、 嘘じゃないんだろって言った女子一人がね、 舞の頬を平手打ち・・・」 「あの時は仕方なかったんだよ」 私は少し痛い思い出を思い出した。 「んでそれ聞いた伊玖が、 その女子にすっごく怒ったの。 その時の顔が、今まで見たことない顔でねー。 男らしいって言ったらいいのかなー。真剣だったね!」 康介がうなずく。 「そんなことがあったんだ」 蔵間君が意外そうに私を見る。 「お前でもそういうことあんだな」 驚いた顔する蓮君。 なんか言い方が引っかかる。 キーンコーンカーンコーン・・・ 「あ、そろそろ教室に戻らないと」 私が言うとみんなお弁当を片付け、 教室へ向かった。 その途中、蓮君の視線が私に向けられていたことは 知るよしもなかった・・・。 28: 名前:雷蓮☆2011/07/17(日) 12 18 38 ~放課後~ 放課後。 私と蓮君は日直で、 教室の窓が開いてないかとか 念入りにチェックしなければならなかった。 「チョークの本数、よしっと」 チェックシートに次々と書き込んでいく。 蓮君は何してるんだろう・・・。 さっきからずっと黙ってこっちを見てる。 気になるものでもあるのかな? 「あの、蓮君??」 「・・・。」 返事がない。私の顔をじっと見る。 「もぅ、なにしてるの!?早く終わらせて帰ろうよ!」 仕事してくれないと、帰るのが遅くなる。 「・・・お前・・・」 「なに?」 「・・・」 「蓮君??」 「近くで見ると、可愛いんだな」 「・・・・・・え?」 「聞こえなかったか?なら、・・・いい」 そう言うと、蓮君は教室のカーテンを結び始めた。 え・・・?ちょっと待って・・・。 今・・・なんて? 「勘違いすんなよ。ただ、可愛いって言っただけだからな・・・」 夕日のせいだろうか。みるみる顔が赤くなる。 「ん?なっ!?お、お前、何赤くなってんだよ!!?」 「へ!?な、なってないよ!!夕日の性だから!!」 慌てて後ろを向いて顔をかくす。 もう、何で“可愛い”なんて言うのー・・・。 ドキドキが止まらない。 と同時に、どんどん蓮君に惹かれていく。 この気持ち、言葉には表しきれないでしょう---。 29: 名前:雷蓮☆2011/07/17(日) 12 44 48 ~蓮side~ 「・・・お前・・・」 「なに?」 「・・・」 「蓮君??」 「近くで見ると、可愛いんだな」 あ・・・。心のなかで思ったことが、自然と口に出ていた。 舞は唖然としてこちらを見る。 これ以上、見つめられたらヤバい・・・。 「・・・え?」 「聞こえなかったか?なら、・・・いい」 俺は舞から視線を外し、 教室のカーテンを結びに窓の方へ行く。 「勘違いすんなよ。ただ、可愛いって言っただけだからな・・・」 夕日が俺たちのいる教室を、鮮やかに照らしだす。 ふと、気になって舞の方に視線を移すと舞の顔が超真っ赤。 「ん?なっ!?お、お前、何赤くなってんだよ!!?」 「へ!?な、なってないよ!!夕日の性だから!!」 慌てて後ろを向く舞。 舞に何赤くなってんだよって言っておいて、 自分の顔も赤いだなんて不覚・・・。 最初に逢ったときから思ってたが、 俺はコイツのこと好きなのかもしれない。 一目惚れだったのかもな。 チビで、訳も分からずしっぺしてくるコイツに。 ま、そーいうとこが可愛い。 女に「可愛い」なんて言ったのは初めてなんだからな。 佐藤舞、覚悟しておけよ? ぜってぇーに振り向かせてみせる。 だから、よそ見すんじゃねーぞ。 舞の後ろ姿に語りかけた・・・。 30: 名前:雷蓮☆2011/07/17(日) 13 27 53 ~舞side(普通視点)~ 私と蓮君は日直の仕事が終わり、 担任の武塔先生に提出しに職員室へ向かう。 「先生、これ」 「おぉー!待ってたぞ~!どれどれ・・・」 武塔先生はまだ二十歳ちょっと過ぎくらい。 女子からの人気は絶大で、ファンレターが毎日机に置いてあるという。 「よしっ!完璧だな!!お疲れさま!」 先生の元気な声とその姿には、さすがにキュンとする。 「あ・・・。おい、蓮!」 「何か用か、ロリコン」 ちょっ!?蓮君!!?先生に向かってその口は・・・ 「相変わらず、口の悪さと喧嘩ごしなのは健在だな」 え・・・?先生がニッと笑う。 「うっせーよ。早く用件言えや」 「カギ、忘れてったろ?ほい」 「フン。たまには役に立つんだな」 「お前の担任なんだから、ちょっとは敬え」 「誰が敬うかよ」 どういうことなのだろうか・・・。 先生と蓮君は、、、友達??? 「先生、蓮君とは・・・」 「あぁ、親戚なんだよ。よく小っさいころに遊んでた」 「こんなの親戚の覚えはねぇ」 そうなんだ!だからこんなに仲いいんだ! 「そうだったんですね!仲いいですね~」 「は?コイツと俺?冗談、冗談!もう可愛くないから!コイツ!」 「可愛くなくて悪かったな、武塔せんせー?」 「うわっ!!気持ち悪っ!!せんせー呼ぶな!!」 「はぁ!?おまえが敬えって言ったんだろーが!!」 蓮君の額に血管が浮き出る。 先生は冷静に対応する。 「ほら、すぐケンカ腰。だから女が逃げるの」 「うるせぇよ、フラれたくせに」 「ぶっ・・・!なっ、なんで知ってんだよ!?」 「やっぱマジだったのか・・・」 「おい!誰に教えてもらった!?」 「蔵間に決まってんだろ。 お前に相談されるなんて思ってなかったから ビビってたぞ、アイツ」 「蔵間ーーー!!」 兄弟のような会話にフッと笑みがこぼれる。 「何笑ってんだよ、舞」 「いや、何か面白くって」 「舞さんは天使だな~」 「お前が言うと汚れるから、もうしゃべんな」 「ひどい!!」 蓮君も楽しそうで、私も嬉しくなる。 蓮君にはたくさんいい人がいるんだね。 また一つ蓮君に近づいた気がして、嬉しかった。 32: 名前:雷蓮☆2011/07/17(日) 13 55 16 私がカバンに荷物をつめて、 帰ろうとしたとき蓮君に呼び止められた。 「おい、舞」 どきっ! 改めて名前を呼ばれると恥ずかしい・・・。 「なに?」 ここは普通にいこう。怪しまれないように・・・。 「どっか寄ってくぞ」 え!? 「ど、どっかってどこに?」 「逆に聞く。おまえはどこに行きたい?」 「え・・・?う、うーん・・・」 「特に決まってないなら、俺が決めるぞ?」 「あ、じゃあ蓮君が決めて」 「・・・分かった。じゃ、行くぞ」 「うん!」 前を行く蓮君の背中を、追いかける。 今、蓮君は何考えてるのかな・・・? 「・・・」 どんっ! 「わっ!?」 どすっ! 急に止まった蓮君にぶつかった。 「いたた・・・。ご、ごめんね、蓮く・・・」 「蓮・・・?」 蓮君の視線の先には、綺麗な女の子。 髪の毛はカールで、薔薇のいい匂いがする。 足も細くて、美人とはまるでこの人のことを言ってるよう。 「瑠菜・・・?」 私はこのときまで知らなかった。 この女の子が蓮君にとってどんな関係の人かを---。 34: 名前:雷蓮☆2011/07/17(日) 14 20 40 ~夜~ あの後私は、 「ごめん。ちょっと急用できたから、帰っていい」 って蓮君に言われたから帰ってきた…。 なんだけど……。 さっきから心がモヤモヤしてしょーがない…。 どうしたんだろう…?風邪かな…? 目を閉じれば、さっきの光景が浮かぶ。 ズキンッ! 「痛ッッ……!」 心臓が…痛い…。 今日は早く寝た方がいいのかな…? 明日、鈴音に相談しよう。 その夜、私はあまり寝付けなかった。 35: 名前:雷蓮☆2011/07/17(日) 14 52 25 ~翌日~ 学校に行く足取りが重い…。 やっぱり、風邪なのかなー…? 「舞ちゃん」 この声!! 「蔵間君!!」 「ちょーっと、時間もらえる?」 「え、あぁ、もちろん!」 「じゃ、屋上でもいいかな?」 「うん、全然いいよ!」 こうして二人、屋上へ向かった。 ~屋上~ 蔵間君は、 辺りに誰もいないかを確認してから言った。 「あのさ、昨日蓮と女の子に会わなかった?」 「え…」 「図星って…トコ?」 「っ……」 「そんなに蓮のこと、好きなんだ?」 「なっ…!?」 「やっぱりね~。舞ちゃん、素直だから分かるんだ~」 「いじわるしないで…」 「え?あぁー!!ご、ごめんね!ごめん!!だから、泣かないでーー!!」 -3分後- 「心臓が痛い??」 「うん…。ズキズキしてね、痛いの」 「そりゃー…」 「…?」 「ヤキモチ…じゃないかな?」 「やき餅?」 「ううん、ヤキモチ」 「それって、病気?」 「いいや。あー、でもある意味そうなのかな…」 「えぇ!?」 「あ、大丈夫!安心して!死にはしないから!」 「よ、よかったぁー…」 「舞ちゃん、蓮を好きな気持ちは今も同じ?」 「え?あ、そ、それはもちろん」 「じゃぁ、俺、協力したげる!」 「本当!?」 「うん、舞ちゃんには蓮と仲良くしてもらってるしね。 それと、今ちょーっとピンチなんだ」 「ピンチ? 誰が?」 「舞ちゃんの想い人だよ」 想い人って…蓮君!? 37: 名前:雷蓮☆2011/07/17(日) 15 56 25 「舞ちゃんの想い人だよ」 蔵間君がそう言った瞬間、 冷たい風が私をに吹き抜ける。 「ど、どういうこと…?」 「昨日会った女の子の名前は、鳳来 瑠菜 (ほうらい るな)。 有名な会社の社長のご令嬢。 この子に気に入られたのがやっかいだったんだ」 「気に入られた?」 「そ。父親に内緒で夜中に一人で出かけてたその子は、 街でガラの悪い不良たちに絡まれたんだ。 んで、そこをたまたま通った俺と蓮が、その子を助けたってわけ。 そーしたらさぁ、蓮に惚れたご令嬢が 婚約をせまったんだけど、みごとにフラれてねー。 んでね、その子、今度フランスに留学すんだって。 だから、まだあきらめられないお嬢様は、 無理やり海外に連れてって 誰にも邪魔されないところで結婚式を挙げようってわけ」 「ずいぶんと強引だね…」 「そーなんだよー。 それに蓮が海外に行ったら、 ここら辺をおさめてる大将がいなくなるってことだ。 そしたらここらは、不良の戦争場になる。 治安が安定しないのと同じくらい、ヤバい。 そこで、あのご令嬢を説得して、 何とかあきらめるようにしてほしいんだけど…」 パンッ! 蔵間君は、両手を合わせて頭を下げる。 「舞ちゃん!! 協力してください!!」 穏やかな朝に、冷たい風が吹き抜ける。 想い人をかけてのゲームスタートまで あと5秒---。 39: 名前:雷蓮☆2011/07/17(日) 16 30 27 ~蓮side~ 昨日、瑠菜に会って言われた言葉…。 まさかここまでつけこまれるとは…。 -昨日の回想シーン- 「さっき一緒にいた女の子、誰?」 「お前には関係ないだろ」 「関係ある!私の好きな人に女がいるなんて…」 「日常生活につけこまれるくらいお前とは仲良くねーんだけど?」 「っ……!!」 「分かったらさっさと行け」 「…嫌よ…。そんなの、絶対に許さないから!!」 「何を許さないんだ?お前の夫になったつもりはねぇんだけど」 「私にできないことはないわ!! あなたを無理やりにでもフランスに連れていく!!」 「できるわけねーだろ。現実見ろ」 「この私はお嬢様よ?私一人でとは言ってないわ」 「セコい奴だな…。女のくせによ」 「別にそう思われても気にしないわ!そばにいるだけでいいの…」 「そういうのはぬいぐるみだけにしとけ」 「必ず、あなたをフランスへ連れていく。 どんな手を使ってでも…ね」 「だから金持ちは嫌いなんだ。特に女はな」 「さっきの女があなたのタイプ?」 「お前よりは何倍もマシだ」 「私、ここにいられるのはあと2週間だけなの。 それまであなたの学校でお世話になるわ。 せいぜい、最後の学園生活楽しんで。 では、ごきげんよう」 コツコツ--- -現在- あぁー…。蔵間にバレたかな…。 瑠菜、本気の目だったしヤバいかもな…。 男だったらボコボコだが…。 さすがに女相手だと、それは無理だ。 ご令嬢だしな。 下手すれば舞に何かしかけるかもしれねぇ。 ったく…。どうすりゃいいんだ…。 2週間の間に何かいい方法でも探さねぇと…。 俺がここを離れるわけにはいかねぇし、 ロリコン(武塔)に相談すっか…? -その頃の武塔- 「ぶえっくしょん!! あー…。風邪かなー。 ちゃんとネギ食わねーとな…」 君を好きになる5秒前 続き1
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番外編② 桜田くんと岸くんの話。 中学時代くらいと思ってくださいm(__)m あたし的にはこの二人、結構ラブラブだと思います(← お互い彼女いるんですけどねw ☆ヤンキーくんと眼鏡くん☆ 夏休みに入って一週間。 もう既に宿題を全部終わらせた岸悠樹は、クーラーの当たる部屋で悠々と本を読んでいた。 黒毛の短髪で眼鏡が彼の特徴といえる。 (ダメだ、これも外れ) 悠樹は本屋に通っては適当に小説を買い、読み漁っている。 だが彼に合う本は少なくて、大概が面白いと感じていないようだ。 外れと思いつつも読書が好きな彼はその本を全部読み終え、本棚にしまった。 「ゆーーーうーーーきーーーーっ」 窓の方から、お隣に住んでいる桜田隼人の声が聞こえた。 悠樹はちらっと窓の外を見る。 明るい茶髪。 校則で禁止されているというのに諸ともせずに普通に耳にはピアスを開け、前髪はピンで留めてある。 まさしく不良って感じだ。 「ま・ど・あ・け・て」 口パクでそういう隼人。いや、口パクでは無いが窓が閉まっているのでこもって聞こえる。 悠樹は窓を開けた。 「何か用か?」 部屋と部屋の間は、たったの50cm強しかない。 隼人は軽々とその間をまたいで、悠樹の部屋に入ってきた。 古典的なこの出入りの仕方は、二人にとっては当たり前のことである。 隼人は何かのDVDを持っていた。 「これ、一緒に見ようぜ!」 『呪怨』と書かれたそのDVDを、悠樹の目の前に突き出す。 「そんなことより、宿題やったのか?」 悠樹は隼人の持っているDVDを無視し、本の山からまた新たな本を取って読み出した。 「全然。でもまだ7月だしー、大丈夫だって」 にっこりと笑って隼人はそういった。 (そういっていっつも8月下旬に俺のところに泣きついて来るんだよな…) 心の中で呟いて悠樹は隼人に、 「ダメだ。見るなら一つでも宿題終わらせて来い」 と諫言した。 「えええッ!? …むぅ~、せっかく悠樹と一緒に見ようと思ったのになぁ~」 隼人は不満げに口を尖らせる。 それから餌を請う子犬のような目で悠樹を見た。 「なー頼むよ。一人では見たくねーんだよぉ」 「じゃあ見るなよ」 「でも見たいの! ホラーってそんなもんだろ」 「…見たら勉強する?」 「する! あ、でも悠樹に教えてもらう」 悠樹は溜め息をついた。そして小さい声で、わかったと告げる。 隼人の頼みは、いつも最終的に受け入れてしまうのであった。 約三十分後。 「うわあああッ! やべーこれマジやべぇ!! 男の子!! エレベーターのところッ!!!」 悠樹にしがみつきながら隼人はこれでもかというくらいに叫びまわる。 (うるさい…) 恐怖で慄いている隼人を横目に、悠樹は早く終わって本でも読みたいと思うのであった。 「ちょッ、悠樹!! どこいくんだよ!!」 少しでも動くと(別にどこかにいこうとはしていない)、隼人は必死で悠樹を止める。 「マジでっ、俺ホラー無理!!」 悠樹の腕を掴む力が秒を刻むごとに強くなっていく。 「じゃあ何で見るんだよ?」 そういったが、隼人の叫び声でかき消された。 「ゆ…悠樹、…トイレ」 終盤に差し掛かったとき、隼人は悠樹のシャツの裾を引っ張った。 「は?」 「トイレ、付いて来て」 「…まぁいいけど」 仕方ないな、という表情で悠樹は立ち上がった。 隼人も一緒に立ち上がる。裾は掴んだまま。 部屋を出、階段を駆け下りると、悠樹の母親がソファに座っていた。 「あ、隼人くん来てたんだ」 「うん、こんちは」 例え玄関から入って来てなくても、悠樹の母親は驚いたりしない。 家が隣で、小さい時からずっと一緒にいるから、お互いの家族は自分の家族みたいなものだ。 悠樹の家の構造を熟知している隼人は、トイレの中に駆け込んだ。 「ぜ、絶対そこにいろよ。先に上がったらダメだからな!」 「はいはい」 命令されたとおり、悠樹はトイレの前の壁にもたれ掛かって隼人が出てくるのを待った。 (ホントに) 悠樹の顔に、自然と笑顔がともる。 (昔っから全然変わらないなぁ) 人懐っこくて少し意地っ張りで、でも可愛げのある。 そんな隼人を、悠樹は腕を組んで微笑みながら待っていた。 番外編②終わりです☆ 今回こそほのぼので攻めてみましたww← 岸くんは桜田くんのおかーさんみたいですねw 番外編③ 葵くんの話。 高校一年生の時です。 ☆立花葵の憂鬱☆ 僕、立花葵。高校一年生です。 はぁ~…。また"朝"がやって来ちゃった。 朝は憂鬱すぎる。身体が重いなあ。 「行ってきます…」 制カバンを持つと僕は、蚊の鳴くような声で言って家を出た。 学校、行きたくないなぁ。 でもどこかで時間潰すわけにもいかない。 そんなことしたら、お父さんやお母さんに迷惑かけちゃうし。 仕方なく僕は校門をくぐる。 1年A組の教室へ向かう。 今日は…よし、黒板消しセットされてない。 扉の上を見上げてまずはホッとした。 教室に入る。くすくすと笑い声は聞こえるけど、今日は何もされない。 第二関門クリア。残りは机だ。 僕はくまなく机をチェックした。 落書きだけだ。菊の花も添えられて無いし、中にゴキブリとかの死体を入れられてもいない。 僕はカバンの中から消しゴムを取り出すと、机の上の落書きを消し始めた。 書いた相手も、見つかるとまずいと思っているのか、マジックや彫刻等での落書きはしていなかった。 「…はぁ」 今日は全然マシな方だった。 前を見ると他の生徒達が僕の方を見てずっと笑っている。 「よお、立花」 生徒の一人が僕の席へやって来た。 な…なんだろう。お金よこせ? それとも殴られるかな? その男子生徒は、机をガンっと蹴ると、 「立てよ」 って言って僕を睨んだ。 言われるがままに立つ。相手の言うことを聞いてしまうから、いじめられるんだって分かってはいるけど。 「な…何なの…?」 他にも3人、男子生徒が集まってきた。 僕はリーダー格の人に腕をつかまれ、廊下に連れて行かれた。 周りの人は見てるだけで、助けてくれることなんてない。 むしろいじめられている僕を見て笑っている。 僕は恐怖にまみえ、身体の震えが止まらなくなった。 「あ…あの…」 誰もいなく、シンとした踊り場。 4人の男子生徒は僕に、 「服脱げよ」 と言った。 「え…?」 すっごく戸惑う。今まで喝上げされたり殴られたりはしたけど、"服脱げ"なんて初めて言われた。 「何で…」 「立花くんのぉ、恥ずかし~ぃ写真をネットに載せるためだよん」 もう一人のクラスメートが言った。 残りの二人が僕の両腕を押さえつける。 「や…やだッ」 更にもう一人が脚を押さえ、無理矢理学ランを脱がされかけた。 抵抗しても、4人に敵う訳はない。 「や、やめてッ! お願い…」 学ランを剥ぎ取り、一人が携帯をカメラモードにする。 「誰か…ッ」 「誰もこねーよ。来たとしても~、立花くんなんて助けないでしょ」 誰か…助けて…。 このままだと僕、ホントにネットに写真ばら撒かれて…。 親に見つかったら何て言われるか。どうしよう…どうしよう…。 「なーにしてんの、そんなトコで」 僕が必死で抵抗していると、男子生徒達の後ろから、違う人の声が聞こえた。 学ランを脱がせようとしていた彼らの手がハタと止まる。 「面白そーなことしてんじゃん」 誰だろう。 めちゃくちゃカッコイイ人がそこに立っている。 薄い、栗色のサラサラの髪の毛に、淡い青色の瞳。 身長もスラッと高くて、モデル体型って感じ。 「な…ッ、中田慎也…」 リーダー格の一人がそう呟いた。たぶん、その人の名前だと思われる。 「こんなことしなくたって、俺が掘ってやるって」 中田くんは一人の男子生徒の耳たぶを舐めた。 「ぎゃあああッ」 そいつは中田くんを突き放し、叫び声を上げるとどこかに逃げて行ってしまった。 他の3人も慌てて後についていく。 「へえ」 僕と中田くん以外誰もいなくなると、中田くんは僕をじろじろ眺めた。 「随分可愛いねぇ、名前は?」 「え…あ、立花…葵です、けど」 「立花葵くん。早く学ラン着てくれないかな。俺襲っちゃいそうなんだけど」 中田くんにそう言われ、僕は服が肌蹴ていることに気付いた。 途端に恥ずかしくなって、慌てて着なおす。 「いつもこんなことされてるの?」 「えと…こんなことは初めて…だけど」 いじめられている、とはどうしても言えない。 すると中田くんは、わかったような顔つきをして、 「俺があいつらに言ってやるよ」 と言って笑った。 中田慎也くんって人は、かなりの有名人らしい。 知らない僕は相当変だってくらい。 男女問わず、生徒先生問わず、誰にもかれにも手を出してみんなから気持ち悪がられている。 中田くんに助けてもらった日以来、クラスのみんなは僕のことをいじめなくなった。 友達も出来た(女の子ばっかりだけど)し、もう"朝"は憂鬱じゃなくなっていた。 「行ってきます!!」 以前とは見違えるくらい明るい声で僕はそういう。 学校に行くのが楽しみで仕方ない。 中田くんを見ることが出来るから。 あの日以来、僕はずっと中田くんを見ていた。 すっごくカッコイイ。みんなは変態だって遠ざかっていくけど。 クラスは違うけど、移動教室で見かけるたびに幸せな気分になる。 中田くんはたぶん、他に好きな人がいるみたいだけど、僕はただ見てるだけでよかった。 雪代くんていう、中田くんといつも一緒にいる男の子。 彼には絶対敵わないけど、それでもいい。 僕は中田くんが好きだ。 いつか、気持ちを伝えられればいいけど、今はこの幸せに浸っていたかった。 番外編③終わりですッ!! 葵くん個人的に好きw 何か不憫だけど気にしないで下さいw← んでもってまとめ方下手くそすぐるorz 続き
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1: 名前:刻鎖 (4PE6.BwxWY)☆10/28(木) 20 25 08 彼女の好きな花。 彼の好きな花。 〝アルストロメリア〟 花言葉は、〝小悪魔的な思い〟 彼女も、彼も好きな花。 好きな花言葉。 (ねえ、) (浮気したら、ぶっコロスよ?) 10: 名前:刻鎖 (4PE6.BwxWY)☆10/31(日) 21 29 45 とある高校の教室で、奇妙なナレーションが流れていた。 「――〝氷雨、聖。年齢、高校3年生の18歳。性別、男子。サディスト〟×〝五十嵐、碧。年齢、高校3年生の17歳。性別、女子。サディスト。〟=〝恐ろしいほどイチャイチャしそうなカップル。〟――である。 つまりは、必要以上にイチャイチャしてるカップル……バカップルの一種である。 そして――……「何、このナレーション。」」 すると、美男美女(by.クラスメイト)が現れる。……妙にイチャイチャしながら。 謎の声の主、クラスメイトの友達の頭を鞄で思いっきり殴る2人。おそらく、この2人がさきほどのナレーションの五十嵐と氷雨なのだろう。 氷雨が、机に座って本を読み始めようとする五十嵐にダルそうに声をかけた。 「おい、碧。サボるぞ。今日は屋上。」 「はぁ? 今日もサボんの、よく赤点とらないね。」 まだ教師が入ってきていない教室は、生徒の楽園。……まだザワめいている教室で、2人は後頭部から出血している謎の声の主を友達に押し付けるといかにも不良、の会話が始まった。 と、いうか、本当に不良みたいだったりする。 不良まではいかない。そりゃ2人とも黒髪だし。ただ性格、雰囲気は滅茶苦茶だった。 「教えてやるって、べつのコト。」 「はっ、それに関してはわたしの方が上だね。」 ……聞いてるこっちとしては、滅茶苦茶恥ずかしい単語が揃っているのだが、2人は気にせず続ける。 「嘘つけ。前なんてお前、全然知らなかった癖に。」 「何、いつの話? 中1くらいかな。」 「ばーか、もうちょい前だよ。小6の最後。」 「うわっ、キモっ。何でそこまで憶えてんだよ。」 碧は読もうと思い鞄から出した本を、またわざわざ鞄に入れると聖と並んで教室を出た。クラスメイトの視線は、明らかに「うわーお……」というものだった。 屋上の扉を軽く蹴って開くと、スーっと冷たい風が体にあたった。 「うおっ?」と小さく呟くと、ぶるっと震える碧。 「聖、上着貸して。」 聖の着ている上着を引っ張り、手を出して上着を要求する碧に、聖はニィっと怪しい笑みを浮かべ、パシッと碧の手を振り払う。 「……着てるじゃん。」 絶対、「何かよからぬことを考えている」と普通の人間なら思うはずである。――だが、サディストはそんなことも気にしない。 だからァ、と振り払われた自分の手をさきほどと同じ、聖の羽織っている上着に伸ばす。 だが、甘かった。 ……聖は、さっきのように振り払うわけでもなく、ただ碧の手を握った。 普通、こんな美男(by.クラスメイト)に手を握られたら真っ赤になってしまうのだが。美女(by.クラスメイト)で、おまけにサディストにはやはり通用しない。 「これだけで我慢しろと?」 そう、しかも、もっと上を要求してきた。 「しろよ。」 意地の悪い笑みをみせると、聖は握ったままの碧の手を自分の上着のポケットに入れた。 ポケットの中にはカイロがあるようで、一瞬で、冷えてしまった情けない指は暖まった。 「……暖けェ……。」 聖と碧は、顔を見合わせてニッと笑うと、そのまま屋上の壁によりかかるように座った。そして、寄り添って瞳を閉じた。 ――スースーと寝息をたてはじめたのは、それから数秒後のこと。 「――……ん?」 碧の目が覚めたのは、授業が全て終わり、生徒たちが部活動をしているころだった。 しかも、瞳を開いてすぐ視界に入ったのは、聖。……なぜか滅茶苦茶ドアップ。 「あーあ、起きちゃった。」 舌を出してケラケラ笑う聖。 すぐに、碧は状況が把握できた。 「続き、どうぞ。」 「ん、いいんだ?」 「キスだけならねー。」 意味の分からない、やはり恥ずかしい会話。 それに、本当に恋する学生の夢のような行動も、この2人は〝ドキドキ〟としないのだろうか。 意味の分からない会話、意味の分からない行動、意味の分からない関係。 「――……。」 思ったより長い口付けは、本気なのだろうか。 11: 名前:刻鎖 (4PE6.BwxWY)☆10/31(日) 21 30 22 「……あり?」 すっかり暗くなった帰り道。賑やかな商店街を歩く2人。 すると、碧がある花屋の前で立ち止まる。つられて聖も立ち止まり、不機嫌そうに碧を見た。 「こんなところに花屋なんてあったっけ?」 いつも歩いているハズの商店街。碧は「はてな」と首を傾げる。 「あったけど。」 だが、返ってきた言葉は普通なもので。それでもサディストは強い。全く気にする様子がない。 ふーん、と納得したように呟き、「入ってみない?」と聖の上着の裾を引っ張った。 聖は「へーい」と答えると、碧に引っ張られた上着の裾を取り返し、その店に入る。 「……あり?」 先ほどと同じような(というか同じなのだけれど)台詞を呟く碧。 「あのー、店員さん?」 碧は調度2人の近くにいた店員に声をかけた。 笑顔で「はい、何でしょう」と答えてくれる店員に、奇妙な名の花を挙げる。 「アルストロメリアって花、ここで扱っていませんか?」 ――〝アルストロメリア〟。聖は「何だそれ」という風な顔をしていたが、店員は何のことかすぐわかったらしい。……だが、何故か困ったような顔を碧に向けた。 「申し訳ございません、アルストロメリアの季節は3月から7月ですので、当店ではただ今出しておりません。」 「――そうですか、残念です。3月になったら買いに来ますね。」 おそらく演技だろうと思われる口調、表情。 聖にはすぐに演技だとバレていたが、店員には結構効いた……っぽい。 「はっ、はい! 3月には仕入れられるようにしますっ!」 真っ赤になって言う始末。 しかも店を出るときなんて「またのご来店、お待ちしています」とかなんとか……。きっと聖はその店員が事実を知ったときのを想像して思わず吹いてしまった。 ……事実を知らない店員にムッと睨まれ、S心が出てしまったのか、碧の肩を押して早く店を出るよう急かした。 「――つーか」 「?」 花屋をでてから数秒後。聖は、さきほど訊こうと思って忘れていたある質問を思いだした。 「アルストロメリアって、何?」 ……そう、あまり有名な花であるわけではないから、分からない人もいるのである。 碧は「えっへん」とでもいうように歩きながらだが腰に手を当て、変な回答をした。 「わたしの好きな花なの」 答えになっていない、全く答えになっていない。 普通の人間ならツッコむはずである。 だが、サディストの頭の中は理解できない。……何故かそれで納得してしまっている聖。 「俺より好き?」 ――……あ。 「ん、聖の方が好きだけど」 「本当にー?」 「さ。どうかね」 ――……まただ。 「愛してるって言ってください」 「愛しています。心から」 ――……また始まりましたよ、 「よーしよし、よくできました」 「ばーか」 ――……恥ずかしい会話が。 しかも、人で賑わう商店街の中を。サディスト、恐るべき……周りの人が滅茶苦茶真っ赤になって2人をみている。 おまけに、それに見せ付けるかのように手を繋いぐ体勢から、碧が聖の腕に自分の腕を巻きつけるという体勢にいつの間にか変化していた。 そして、2人を真っ赤になりながらもチラ見している人々。 ……サディストは怖い。 〝五十嵐〟という表札の家。2階からはSの会話が。 ――まあ、内容はたいしたことないのだけれど。 「聖も絶対好きになるよー。この花」 〝植物の図鑑〟と書かれた分厚い本のさくいんを見ながら碧が言う。 「何でだよ」 碧のものだろうと思われるベットにゴロリと寝そべっている聖。その瞳は碧をぼやーっと眺めている。 碧はしばらくの間図鑑とにらめっこしていたが、「あった」と呟き、やっと聖のほうを向いた。 「ほら、この花」 薄い紫色の……桃色みたいな色の花だった。 こんなサディストとは一生無縁そうなこの花。 一体この花のどこら辺が好きなのだろう。聖も一旦ベットから体を起こし、面倒くさそうにその花の写真を眺めるが、すぐにまたベットに寝っ転がってしまった。 碧は、そんな聖の仕草も気にしない。 「アルストロメリアの花言葉は、〝小悪魔的な思い〟なんだってよ」 ――小悪魔的な思い。 サディストには調度いいのか、悪いのか。 「ど? 好きになりましたか、聖くん?」 「ん、好きになりましたよ。碧ちゃん」 ――……2人の好きな花、アルストロメリア。 「もし、大人になって、聖(碧)が死んだら、必ずこれをお供えします。――なんてね(な)」 小悪魔的な思い ……サディストしかできない会話。 12: 名前:刻鎖 (4PE6.BwxWY)☆10/31(日) 21 33 34 +あとがき+ ……色々と訂正が入りまして読みにくくなってしまったところもあったかもしれませんが、一応完結です。 何か書いていて楽しかったので続編考え中です(笑) 詩くらい短かったですね。
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143: 名前:乃愛☆02/07(日) 12 08 38 結夏Side 「 ただいま…… 」 静かな家に声をかけて、あたしは自分の部屋に向かう。 階段をのぼるとお姉ちゃんがいた。 「 お~、おかえりッ! デートはどうだった? 」 何も知らないお姉ちゃんのこのテンションの高さは苦しいよ…。 あたしは、お姉ちゃんの返事にも答えずに 足元だけを見つめて、目に涙を溜めていた。 「 …結夏? 」 やっとあたしのテンションがいつもと違うのに気づいた お姉ちゃんはあたしの顔を覗くように見てきた。 そして、何も聞かずに゛荷物置いて部屋においで゛と いつもより優しい口調で話しかけてきてくれた。 あたしはコクンと小さく頷き、 自分の部屋に入り荷物をベットの上に置いた。 ゛コンコン゛ 軽くノックをして、゛お姉ちゃん…゛と 弱々しく名前を呼ぶ。 「 どーぞ 」 ドア越しから聞こえるお姉ちゃんの声。 あたしはドアノブをゆっくりとひねり、 音を立てずにドアを開けて、 お姉ちゃんの部屋へと入った。 お姉ちゃんの部屋は黒とピンクで統一されていて、 いわゆる…ギャル系部屋だった。 「 好きなところに座って 」 ゛ジュースとってくるから゛、 そう言うとお姉ちゃんはあたしを部屋に残し 部屋から出て階段を降り、リビングに向かってしまった。 あたしは、目の前にあったベットに座った。 「 オレンジジュースでいいよね? 」 数分後、オレンジジュースが入ったグラスを2つと、 何故だかチョコやらスナック菓子を持ってきたお姉ちゃんが戻ってきた。 お姉ちゃんは折りたたみ式のもちろん黒の机を ベットの前に出し、そこに持ってきた物を置いた。 そして、黙っているあたしの隣に座った。 「 …どした? 」 お姉ちゃんを見ると、優しい顔をしている。 目が合うとにっこりと微笑んでくれた。 「 今日ね、服屋さんに行ったんだけど…… 」 あたしは今日起こったすべてのことを話した。 途中、お姉ちゃんは微笑んだり、頷いたり、 唸ったり、眉間に皺を寄せたり…。 色々な反応をしてくれたけど、 最後は何故かあたしの頭を撫でてくれた。 そして、何度か頷くと。 「 辛かったね 」 そう言ってくれた。 我慢していた糸がプチッと切れたように あたしは声を出して泣いてしまった。 「 うッ、ああああ…! 」 お姉ちゃんはあたしを抱きしめて、 背中をポンポンと一定のリズムで叩くように撫でてくれた。 「 ひっ…う……ッ… 」 少し経って、あたしが落ち着いたのに気づいた お姉ちゃんはあたしから体を離した。 「 結夏はどうしたい? 」 …どう、する…? 「 どうしたい…って? 」 あたしは潤んだ瞳でお姉ちゃんを見つめながら、首を傾げた。 「 その女の人と戦いたい、とか… 」 戦う…? そんなこと、考えてもなかった。 「 無理だよ「 どうして? 」 あたしの言葉を遮るようにお姉ちゃんは言う。 その目は誰よりも真っ直ぐで真剣な目―……。 「 まだその人が啓斗くんを好きだなんて分かんないじゃん 」 確かに……。 でも…。 「 でも、゛啓斗はあたしのものよ゛…って 」 お姉ちゃんはまたう~んと唸り声を出しながら 腕を組み眉間に皺を寄せた。 あたしは何故かその姿に安心してしまったんだ。 146: 名前:乃愛☆02/07(日) 20 26 22 でぃあ*ばにらさま わぁ!楽しいって…嬉しい★笑 文章力、そうです…ヤバいほど下手くそです;; 上手すぎって言葉を乃愛に渡すなんて罪ですょ← でぃあ*乃愛☆さま 啓「 いいの?じゃあ…食べてもいい? 」 あ~、もう啓斗その気になっちゃったじゃないですかぁ((汗 …あ、結夏が睨んでますよ。 本当にウザいですよねえ! 書いてても鬱陶しい!笑 結「 うん、頑張る!有難う、乃愛ちゃん。 …でも、啓斗くんはあたしのだよ? 」 ---------------------------------------------------- こんなに一生懸命考えてくれるお姉ちゃんなんて、存在するんだね……。 あたしは心の中が温かくなったのに気づきつつ、 さっきまであたしの背中を撫でていてくれたお姉ちゃんの手を優しく握り締めた。 「 お姉ちゃん 」 「 ん? 」 少しの沈黙。 ちょっと、言い出す勇気がないかな…? でも…、ここで言わなきゃいつ言うの? あたしは自分自身に問いかけて、 もう一度勇気を出した。 「 戦う… 」 「 え? 」 首を傾げるお姉ちゃんの目を見て、 あたしは誓うようにもう一度言った。 「 あの人と、戦う! 」 「 結夏… 」 思わずベットから立ち上がったあたしを 優しく微笑んで見てくれたお姉ちゃんのことは言うまでもない。 勇気を出した後って、こんなに清々しいんだね。 何だか、運動して汗をかいた後みたいだね……。 お姉ちゃんに誓った後、あたしは自分の部屋に戻った。 ベットに寝転がると、目を瞑り、布団の中にもぐった。 ― ピチチ…チチ… 「 ん… 」 あ…れ?気づけばもう朝。 あのまま、寝ちゃってたんだ。 昨日、色々と話して疲れたんだよね? 昨日……誓ったんだ、お姉ちゃんに。 だから変わるよ、あたし。 内気で何も言えないあたしから、 啓斗くんのために頑張るあたしに……。 150: 名前:乃愛☆02/09(火) 19 22 19 でぃあ*憂緋さま あげ有難うございますッ! 一気読みお疲れ様でした笑 啓「 俺も憂緋に惚れそう! …結夏の方が愛してるけどな 」 でぃあ*あげさま あげ有難うございます!! でぃあ*優さま 初コメ有難うございますッ! 切ないですか? これから一気にテンションを上げれるように頑張ります。 ---------------------------------------------------- 啓斗Side 結夏との貴重なデートが終わって次の日。 俺は携帯電話と格闘していた。 うーむ…。 結夏にメールした方がいいのか? 数十分後、色々考えた末…… 結夏にメールすることを決心した。 ………。 内容が思いつかねぇ! はぁ…、まじで俺大丈夫か? -------------------------- to 結夏 よ。俺だ。 昨日はさんきゅーな。 買った服、着てみたか? -------------------------- …これ、どうでも良い内容じゃね? 送信した後、気づいた俺。 ま、あの優しい結夏ならナイスフォローしてくれるだろ。 安心した俺は携帯をベットに軽く投げて、 そこに自分も飛び込むように乗った。 はぁ…、暇だな。 む。 携帯が点滅してる、結夏か!? 俺のテンションが一気に上がり、 投げた携帯をバッと両手で掴んだ。 携帯を急いで開き、宛先を見る。 そこには゛海優゛の二文字。 海優か……。 俺は少し残念な気持ちを抑えて内容を見た。 な、あいつ…。 内容を見た俺は声が出なかった。 そこには信じられない内容が書かれていた。 152: 名前:乃愛☆02/10(水) 19 33 11 でぃあ*みきさま 最高!!の2文字嬉しいです(☆* 3`b)b☆~゜☆ ---------------------------------------------------- 啓斗Side 俺は携帯を閉じて目を瞑り心を落ち着かせた。 そして、寝ていた体を起こし立ち上がった。 携帯と財布をジーパンのポッケに入れて、 俺は部屋から出て、母さんに「出かけてくる」と告げて家を後にした―… ― 数分後。 「 啓~斗ッ 」 甲高い女の声。 「 海優…… 」 そこにいたのは服屋の店員、海優だった。 結夏とあの服屋に行き、海優に会ったときは驚いた。 海優とは結夏と付き合う前に一時的に遊んだ女だから。 最後は微妙な感じで別れたけど、そこ後もちょくちょくメールとかはしていた。 そんな海優とあんなところで会うなんて―… 「 ん~、そんな顔しないでッ 」 キッと鋭く睨んだのも交わされて 俺の手を引いて歩き出す海優。 少し歩いて着いた先はラブホテル。 こんなところに何のようだ? ホテルの中に入ると、そこにはすでに いちゃついている男女の姿。 海優は慣れたようにホテルの鍵を受付から貰い エレベーターの中へと進んだ。 本当だったら逃げ出したい…。 でも、逃げ出したりしたら……。 逃げ出したい、という気持ちを抑えて 今は海優の指示通り動くことしか出来ないのか。 「 ここ 」 にっこりと微笑む海優が指差した場所に俺は黙って入る。 カチャ…とドアが閉まり鍵が閉まる音。 ふわっと甘い香りと同時に俺の腰周りに細く白い腕が絡みつく。 ただ抱きついてきたと思った俺が馬鹿だった。 海優の手は俺のジーパンのチャックを開けて なぞるようにジーパンの上から俺のものを触りだした。 「 っく… 」 いきなりの行動に俺の体はビクンッと動く。 「 ふふ…感じてる? 」 楽しんでいるような海優の声。 目的は、こうゆうことか…。 結夏のためなら俺は何でも出来る。 頭にはそれだけしか入っていない。 それを確信した俺は海優の手を強く握り、 ピンクのベットに放り投げるように乗せて、 乱暴に服を脱がせた。 これは感情も何もない。 ただ……ただの゛触れ合い゛だ。 153: 名前:乃愛☆02/11(木) 18 10 41 結夏Side ピピピピッ 「 ん? 」 部屋に1人でいると、携帯が鳴った。 携帯を開くとメールの表示。 あたしは受信箱を開き内容を見た。 ------------------------- to 結夏 よ。俺だ。 昨日はさんきゅーな。 買った服、着てみたか? ---------------------- あんまり長くない、啓斗くんからのメール。 それでもそこから愛を感じるよ……? あたしは携帯に、にっこりと笑みを見せると すぐに啓斗くん宛てにメールを送った。 --------------------- to 啓斗くん 結夏ですッ。 昨日はお洋服有難う! とっても気に入りました! 次のデートの時に着て行くね。 ---------------------------- メールを送った後、あたしの顔は真っ赤になった。 ……次のデートって何!? あたし、また啓斗くんとデートするって勝手に決め付けちゃってるし。 こんなんじゃ絶対、啓斗くんに引かれるよぅ…。 少しずつ上がったテンションが一気に下がる。 どうか啓斗くんに嫌われませんように。 何故だかあたしは目を閉じて誰かにお願いしていた。 154: 名前:乃愛☆02/11(木) 18 33 22 啓斗Side 「 んあッ、あ…ああッ!! 」 ビクンッと大きく跳ねた海優の体。 ただ胸を揉み、あそこを舐めているだけなのに。 俺の心は何故だか冷めていた。 海優が声を出すたびにどんどんと…。 「 はぁ…は…あン! 」 イッたばかりの体をいじり続ける俺に向かって 海優はにこっと微笑み、 「 昔よりッ…あん!上手くっ…なったじゃなぁッ! 」 正直、そうゆう上から目線がウザかった。 俺は゛喋る余裕があったんだ゛とでも言うような 目をして海優を見つめて、さらに動かしていたものを早めた。 それと同時に海優の声も大きくなる。 海優が何回かイクのを確認すると、 俺は休む暇なく自分のものを勢いよく突っ込んだ。 「 はああんッ! 」 あまり締まりがない海優の中。 体は満たされてるのかもしれないが、 俺の心は満たされてない。 結夏に触れてぇよ……。 結夏を考えたとたんに俺の体は熱くなった。 目の前にいる色っぽい声を出しているのが結夏に見えてきた。 その瞬間、俺はブッ壊れた。 海優の体も考えず奥へ奥へと自分のものを入れる。 次第に頭の中で感じている結夏の姿が思い浮かんできた。 海優の太ももを強いくらいにがっしりと掴み、 子宮に当たるまで突っ込む。 最初は気持ちがっていた海優の顔がだんだんと曇ってきた。 「 い、あッ!や…やあ! 」 苦しい顔をした海優。 俺の胸元をどんどんと強く叩いてくる。 どうやら抜いてほしいようだ。 俺は動きを止めて海優の顔を見た。 お腹を抱えて、目からは涙。 「 …たいよ… 」 聞き取れなかった海優の声。 「 痛いっつってんだよ!! 」 バンッと枕を投げつけてきた海優。 枕を退けて海優を見ると、鬼のような顔。 「 …お前だって結夏にこんぐれぇのことさせようとしただろ? 」 「 っ…! 」 海優の顔が曇る。 そう…。 こいつは男友達に頼んで、 結夏に゛痛いぐらいのSEXをしろ゛と命令したんだ。 海優は俺宛にこんなメールを送ってきた。 ゛啓斗へ 明日、午後5時にあなたの彼女を あたしの男友達に犯させようと思うの。 気持ちいって思わせるんじゃないわよ? 痛い…苦しいくらいの痛みを感じさせようと思うの。 もし、それが嫌って言うなら。 今から○×店の前に待ち合わせね。 海優゛ 「 結夏にこんなことしたら… 女だからって容赦しねぇ 」 今までに無いくらいの低い声を出し 俺は、ラブホテルを後にした―…。 155: 名前:乃愛☆02/13(土) 18 25 42 結夏Side 「 ん、んん…… 」 ゆがんでいる天井。 あたしは目を擦りあたりを見渡した。 あ…寝てたんだぁ。 あたしは寝ていたからだをゆっくりと起こして、 机の上に置いてあった携帯を何気なく見た。 光ってる―… もしかしてっ…! どんどんと期待が膨らむ中あたしは携帯を手に取った。 着信1件。 慌てて着信履歴を確かめて誰から来たのかを調べる。 ゛雄輔゛ …なんだ。 ヒドいよ、雄輔くん。 あたし…啓斗くんだと思ったのに。 ちょっと頬を膨らめたあたしは雄輔くんの 携帯電話に電話をした。 2回ほどのコールが続くと雄輔くんの声が聞こえた。 「 もしもし、雄輔くん? 」 《 おお、わりぃな電話して 》 「 ううん、全然大丈夫だよ! 」 嘘。 全然大丈夫なんかじゃないよ。 もう…啓斗くんに会いたい、会いたいよ―… 寂しい気持ちを堪えて、あたしは明るく振舞った。 《 お前、これから暇? 》 時計を見ると、PM5 00。 今日は特に予定はなかった。 「 うん、超暇してるよー 」 《 そか。…… 》 短い雄輔くんの返事。 そして、少しの沈黙。 この沈黙を破ったのは雄輔くんだった。 《 …じゃ、今から執事喫茶来れない? あの、俺のバイト先の 》 執事喫茶…? 「 うん、分かった!じゃ、今から行くね! 」 携帯を閉じたとたんに深い溜息が出た。 こうゆうとき、誰かに会いたいとき…みんなはどうしてるのかな? 我慢してるのかな? 他のことをして忘れるのかな? 色々なことを考えながらあたしは家を出た―… ― 「「「 お帰りなさいませ、お嬢様 」」」 きゃあああッ。 2回目になっても慣れない! この…゛お嬢様゛ってやつ。 「 もしかして、結夏お嬢様? 」 いきなり声をかけてきた金髪で王子様みたいな人。 な、な…なんであたしの名前を知ってるの? よし!何か怖いから嘘ついちゃおう! 「 え、あ…はい 」 馬鹿正直なあたしは違う選択も考えたのに、 正しい選択をしてしまった。 「 やっぱり!話どおり可愛い 」 にっこりと微笑む金髪男。 わぁ…本物の王子様みたい…。 「 あ、俺…空海! 」 すっと手を差し出してくる空海。 あ…握手かな? あたしは差し出している空海の手を握ろうと手を差し出した。 すると、空海は自分の手を下にして 何故だか立膝をついてあたしを見上げた。 え…? ちゅっ、と触れるだけの優しい唇の感触が手のひらに伝わった。 ええええ!? な、え、あ…ええ!? いきなりされたことに動揺しているあたし。 こ、言葉も何も出ませんっ! 「 いて 」 あたしを見上げていた空海の顔は曇った。 ふと、空海から目線を外すとそこには大きな男の人。 うわぁ…この人は大人っぽいなぁ。 「 このクソ執事がすみません、お嬢様 」 やけに゛クソ゛を強調させて、空海を睨みつける人。 空海から目線を外しあたしににっこりと綺麗な笑みを浮かべる。 「 え、や…あ… 」 せっかくにっこりと笑ってくれてるのに あたしは何が何だか分からないから笑えないっ! 「 私は、海斗と申します。以後お見知りおきを… 」 …本物の執事さんみたい。 いや、本物の執事を見たことはないけどね。 あたしの想像の中の執事と100%かぶってる! 158: 名前:乃愛☆02/17(水) 21 02 02 でぃあ*まこさま 面白いですかッ?有難う! 結「 そ、そんなことないですよぅ… 」 でぃあ*乃愛☆さま そですねー、啓斗めちゃくちゃ結夏のこと愛してますし。 さすが、乃愛☆さまッ!大人ですねぇ← ---------------------------------------------------- 「 あ、雄輔ならまだなので… 良かったらこちらのソファにお座りになってください 」 海斗はにっこりと微笑み、あたしの背中にそっと触れて ソファまで案内してくれた。 「 飲み物、何にする? 」 座ったあたしの背後から、首だけを出し にこっと子供のような笑みを見せたのは空海。 「 えとー… 」 恥ずかしくて言えない…。 お金を持ってきてない、だなんて。 色々と考えてたから…お財布何て頭では持っていたつもりだったんだけど。 お店の前に着いたら思い出したんだけどなぁ。 誤魔化すように引きつった笑みを2人に見せた。 2人はきょとんと目を丸くして首を傾げた。 「 大丈夫、サービスですから 」 どきっ…。 耳元でぼそっと囁く海斗。 低くて、でも…甘い声。 あたしは啓斗くん一筋だけど…思わずドキッとしてしまった。 「 そ、そかぁ… 」 多分赤くなった顔をあたしは俯かせた。 「 何々~? 」 「 何でもないよ 」 興味津々といった顔つきであたしと海斗をじぃと見つめる空海。 大人だなぁ…海斗さん。 サービスのオレンジジュースを飲みながら、 これもサービスなのか分からないお菓子も出てきて、 それを食べながらの海斗さんと空海さんとの他愛のないお喋り。 「 空ちゃ~ん、海くぅ~ん! 」 空ちゃん?海くん? ぶりっ子と言って良いくらいの声に反応してしまうあたし。 ふと空海さんと海斗さんを見ると、少し困った顔。 「 麗さん! 」 さっきとは違って作り笑顔に見える2人の顔。 ゛麗さん゛と呼ばれる女の人の方に視線を向けた。 「 え…… 」 「 あ…… 」 あまりの展開についていけない。 だって、目の前には…… 「 盤常さん!? 」 「 今村さん!? 」 盤常さんがいたのだから…。 え、ちょっと待って、本物? 「 2人はお知り合いなんですか? 」 状況についていけないあたしに問いかけてくる海斗。 ただ、あたしはこくんと頷く。 「 そう、クラスメート! 」 きゃははっと大きな声を出して笑いながら盤常さんはあたしが飲んでいたオレンジジュースを手に取り飲み干す。 「 へぇ…こんな偶然ってあるんだぁ 」 にへらっと緩く笑う空海。 そんな空海の笑みを見て盤常さんは頬を赤くして、 ぎゅっと空海に飛びついた。 「 …て言うかぁ、今村さんってこんなところくる人だっけ? 」 空海に抱きついたまま、ふふっと不敵な笑みを浮かべる盤常さん。 「 ち、違っ…! 」 こんなんじゃ、絶対勘違いされる! …って言うか、学校行けなくなっちゃう! 「 ち~がうよ、俺が呼んだの 」 ふわっと爽やかな香りと共に 覚えのある独特な声があたしを包む。 「 な?結夏 」 やっぱり…、雄輔くんだ。 何故だかほっと安心する。 「 えええええええ!? 」 お店中に広がる盤常さんの大きな声。 「 ちょ、え、ま…ええ!? 」 明らかに理解出来ていない様子。 まぁ、ね……。こんな言い方じゃ絶対勘違いされるよね。 「 え、だ…だって今村さんて啓斗と付き合ってるでしょ? 」 やっと落ち着いた盤常さんはあたしに疑いの目を向ける。 そんな盤常さんからあたしを守るように雄輔くんは後ろからあたしを抱きしめる。 「 そ。でも…俺の片思い 」 にこっと優しい笑みを浮かべる雄輔くん。 「 え~、今村さん…正直言ってそんなに可愛くないじゃん?それなのにぃ…何でそんなにモテるのぉ? 」 それって…嫌味ですか? っていうか…可愛くないとか知ってますけど!? 159: 名前:乃愛☆02/18(木) 18 18 02 「 そんなことないですよ、結夏様はとても可愛らしいです 」 隣にいた、海斗があたしを見てにこっと微笑むと 盤常さんにすぐに顔を向けた。 か、可愛らしい……。 「 そーそー。俺のタイプだもん、結夏ちゃん 」 にかっと子供のような笑みで話す空海を海斗はキッと睨みつけた。 「 ちゃんじゃないだろ、空海 」 「 …へい 」 しゅんと小さく縮こまる空海。 何だか…小さい子みたいで、可愛い。 「 ちょ、お前等っ…! 」 明らかに動揺している雄輔くん。 何でか分からないけど、大丈夫かな? 「 俺の結夏に手ぇ出すなよっ! 」 ぷう、と頬を膨らめて2人を睨む雄輔くん。 2人は申し訳無さそうに苦笑いをした。 ……はい? 俺の…? …………? 「 ね、今のどうゆう意味? 」 首を傾げて雄輔くんを見つめた。 雄輔くんの顔は真っ赤で、腕で顔を隠していた。 「 な、何でもねぇっ! 」 そう言われて突き放された。 あたし…何か怒らせるようなことしたかな? 「 ってゆーかぁ、今村さんって…SEX好きなの? 」 いきなり話に入ってきた盤常さん。 セ…セックスって…ちょ、ええ!? 「 な、え…?…何で!? 」 動揺と恥ずかしさで顔が真っ赤になっていくのが分かる。 「 え~?だって、SEX好きだから啓斗と付き合ってるんでしょお? 」 きょとんとした丸い目であたしを見つめる盤常さん。 何で普通の顔で゛SEX゛とか言える訳!? 「 ち、違っ…! 」 「 あ、いいよぉ?別に、無理に嘘つかなくっても 」 へらっと笑う盤常さん。 勝手に解釈しないで下さい! 「 だって、あたしもだもん 」 え……? いきなり放たれた言葉に何故だか体がピタッと止まった。 ゛あたし゛…も? 「 今村さんが見たあたしと啓斗とのSEXも… ただ、あたしがヤりたかっただ~け 」 ゛別に恋愛感情もないよ゛と真顔で付け加える盤常さん。 「 だってぇ、女だって欲求不満なときあってもおかしくないでしょ? 」 ペラペラと何か話す盤常さんの口。 あたしはその口をただ黙ってみていることしか出来なかった。 「 俺だけのプリンセス 」 続き9
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23: 名前:カロン (83LTWsJLJQ)☆2011/11/11(金) 17 51 57 * 某所 そこには四人の覆面達がたむろしていた。 すると、その集団のリーダーらしき赤い覆面が「トウキョウエーチクヲツブス。ソノツギハシーク」と不気味な声で言った。 それを聞いた三人の覆面が「リョウカイシタ。デモ、ソノマエニ……ダーク・イーターをツブス」と声を揃えていった。 そう、これが……東京A地区の混沌の第一章とはまだ、誰も知らなかった。 〈第4話〉…おわり 26: 名前:カロン (83LTWsJLJQ)☆2011/11/12(土) 17 56 24 〈第5話〉 覆面集団 来襲 東京A地区 某所 ユラキはまだ、この辺りで何か起こる気がしてならなかった。 同様にラントもそんな気がしてならなかった。 この二人の予感は見事に的中する。数分後に。 * 通学路 秋太は学校に忘れ物を取りって帰っていたところだった。 そして、秋太は妙なものに遭遇する。数分後に。 27: 名前:カロン (83LTWsJLJQ)☆2011/11/13(日) 00 13 54 * 東京A地区 某所 ユラキとラントは未だに違和感を抱きつつ本部からの上を得ようと携帯のメールボックスを睨んでいる。 しかし、二人の違和感は解放される情報はなかった。 だが、二人の頭上から“覆面姿”の複数の人影が舞い降りてきた。 それに気づいたラントが「ユラキさん! 危ない!」と叫んだ。 それを聞いたユラキは鮮やかに複数の人影を交わした。 すると、複数の人影・覆面集団が鮮やかに着地する。 この時、ユラキとラントの違和感は完全に消え“驚愕”変わっていた。数分経ってから。 28: 名前:カロン (83LTWsJLJQ)☆2011/11/13(日) 14 53 54 そんなユラキとラントをさしおいて赤い覆面姿の人影が口を開き、「オマエラハダーク・イーターカンケイノモノダナ。シマツスル」と不気味な声で言った。 それを聞いたユラキは「けっ。上等だゴラッ! まとめて相手になってやんよ!」と強気な姿勢で言った。 ラントは「援護します!」と冷静さを保ちながら言った。 * 帰り道 “数分後” 秋太は驚愕していた。 突如、目の前に“ユラキと同じ服装をした”男に「お前は一度死んだ人間だ。でも、今は生きている。だから死ね」と言われたのだから。 秋太は(殺される!?)と悟ったのでこの場から離れようと必死になって走った。 しかし、それが無駄な抵抗だなと“数秒後”知ることになった。 29: 名前:カロン (83LTWsJLJQ)☆2011/11/14(月) 21 37 00 * 東京A地区 某所 ユラキは今にも覆面集団に正面突破しようという勢いを表情に浮かべ、やる気のオーラを纏わせている状態だった。 しかし、ラントは冷静。 ラントは相手が闇人なのか、それとも別の“異形”なのか、それとも“サラキの手下”なのかを考えた。 だが、その謎はすぐに判ることになった。 すると、赤い覆面姿の人影が「ワレワレヲタオスノハカンタンダ。ジョウケンヲタッシ、ミゴトニショウリスレバワレワレハキエテナクナル」と不気味な声で言った。 それを聞いたユラキが「その条件を教えろ!」と吠えた。 今、ダーク・イーターと覆面集団の戦いが幕を開けようとしていた。 〈第5話〉…おわり 32: 名前:カロン (83LTWsJLJQ)☆2011/11/15(火) 16 18 59 〈第6話〉 旋律は走り出す 帰り道 秋太は必死になって走る。目の前の驚異・ダーク・イーターから。 しかし、それは無駄な足掻きだとすぐにわかっ。 なぜなら、既に後ろから剣を突きつけられているのだから。 秋太はただ、圧倒的な恐怖に震え、おびえることしかできなかった。 それに気づいたダーク・イーターが「無駄な抵抗はしないで大人しく俺に斬られる方が楽だぜ」と爽やかな笑みを浮かべて言った。 秋太は言い返せなかった。言い返せるはずがなかった。 しかし、彼は救われる。すぐに。 すると、ダーク・イーターの後ろから「秋太!」と誰かが言ったを秋太は聞こえた。 そして、いつも自分のそばにいた掛け替えのない存在・比奈乃だとすぐに気づいたのだった。 33: 名前:カロン (83LTWsJLJQ)☆2011/11/18(金) 23 27 28 しかし、秋太は理解できなかった。 なぜ、比奈乃がここにいるのかが全く検討がつかなかった。 だが、今はそれ所ではないことは明確。 秋太は心を無にして目の前の強敵を倒すことだけに集中することを決める。 そして、比奈乃も同様に“日本刀”を構える。 そして、旋律は……走り出す。 * 東京A地区 某所 ユラキとラントは相手の行動を伺っている状態。 すると、それを見ていた緑色の覆面が「マズハオレガアイテダ。キサマラノショウリジョウケンハコノオレニカーレースデショウリスルコトダ」と言った。 それを聞いたユラキは「上等だ!」と余裕の表情を浮かべながら言った。 しかし、ユラキは気づいていなかった。この戦いの“穴”に。 39: 名前:カロン (83LTWsJLJQ)☆2011/12/02(金) 16 57 54 * 帰り道 秋太は驚愕し、何故、比奈乃が日本刀を構えているとう疑問で頭がいっぱいになっているが、今はダーク・イーターに集中しようと決めた。 だが、秋太にはもう一つの疑問が浮かび上がる。 人間がダーク・イーターに勝てるのかと。 * 東京A地区 某所 緑色の覆面が「ソレジャハジメルトシヨウ。ソノマエニルールヲセツメイシヨウ。ルールハタンジュンニ“クルマヲサイキフノウ”にシタホウガカチダ。ツマリ、コレハベツメイ“カークラッシュゲーム”トイウ。シュダンハトワナイ」と言った。 それを聞いたユラキは「で、どこがフィールドでゴールなんだ?」と訪ねた。 すると、「フィールドハエーチクイッタイ。ゴールハアノデカイビルダ」と緑色の覆面が言った。 そして、こちらも旋律が走り出した。 40: 名前:カロン (83LTWsJLJQ)☆2011/12/02(金) 20 15 51 * 某所 静かな空間を漂わせる一室。 ここには日本を動かしている議員、大臣、総理大臣、そして……サラキ。 彼らは部屋とは違う息苦しい空気で押し潰されそうな顔に浮かばせ、冷や汗を掻いている。その元凶・サラキをのぞいては。 そして、この一室にも旋律が走り出す。 ユラキ達と同じように旋律は華麗なメロディーのように走り出す。 〈第6話〉…おわり 41: 名前:カロン (83LTWsJLJQ)☆2011/12/03(土) 19 10 06 〈第7話〉 夜試合(ナイトゲーム) あるダーク・イーターが計算をし、有りとあらゆるデータから人間がダーク・イーターに勝てる確率は1%と解った。 しかし、100%ではないことは明確。 だから、彼は先手を打った。汚い手段で。 * 帰り道 比奈乃はダーク・イーターの間合いを詰めようとするが、殺気を放っており近づけば斬られることは明確だと彼女は解っていた。 しかし、これでは決着は何時まで経っても着かない。 だから、彼女は“殺される覚悟”でダーク・イーターに刀を突き出して、突進した。 しかし、その覚悟は誤字を修正テープで消すかの様に違う覚悟に上書きされる。それは悪い意味でも無く、良い意味でも無い別の何かに。 42: 名前:カロン@11時からテス勉強すっか… (83LTWsJLJQ)☆2011/12/04(日) 10 32 12 すると、プルルルルルルという携帯のブザーがその場に響きわたる。 その携帯の持ち主はダーク・イーターである。 ダーク・イーターは自分の右ポケットに手を突っ込み電話に出た。 「もしもし? 今良い所なんだけど」とキレ気味に頭に血管を浮かばせてダーク・イーターが言った。 そして、しばらく頷いて「わかった」と言って携帯の電話を切り、「またね。刀少女と悪しき少年」と言い残してその場を去った。 秋太と比奈乃はただ、呆然とダーク・イーターを見つめていた。 * 某所 人間とダーク・イーターの一つの戦いが終わり、二つ目が始まろうとしていた。 しかし、その戦いは結果はダーク・イーターの圧勝に終わるが人間がどこまで持ち堪えられるかがその戦いの肝。 夜はまだ、明けない。 46: 名前:カロン (83LTWsJLJQ)☆2011/12/11(日) 13 38 35 「それでは始めましょうか」とサラキがニヤっとしながら言った。 それを聞いた一人の議員が「貴様みたいな若造の言うことが聞けるか! 今日のことは音便に済ませてやる。だから帰れ!」と額に汗を垂らしながら言った。 しかし、サラキは「は? テメーは立場を弁えていねーようだな。いいか? この会談はテメーらに勝ち目はねーんだよ」と冷徹な目つきのまま言った。 それを聞き、見た議員は黙りこくった。 それは周りの者も同様に。 サラキはニッコリとした表情に変えて「さ。始めましょうか」と言った。 48: 名前:カロン (83LTWsJLJQ)☆2011/12/21(水) 02 15 21 * 東京A地区 某所 車と車との競争。 先行しているのはユラキ。 しかし、緑色の覆面は着々と罠を仕掛ける。それをたとえるのなら毒だ。 ユラキは気づかない。ただ、アクセルを踏むだけ。 そして、夜は未だ明けず。 49: 名前:カロン (83LTWsJLJQ)☆2011/12/23(金) 10 34 28 しばらくしてからユラキは気づく。 自分の目の前の建物が前を遮る障害物のような、まるで“ユラキを邪魔しているような”そんな感じだ。 しかし、ユラキは勝利の方程式を組立、アクセルを踏み、それらをすきま風の様に交わした。 それを見た緑色の覆面は自分が負けるのを悟った。 案の定、この戦いはユラキの勝利で幕を閉じた。 50: 名前:カロン@メリークリスマス(^_^)/ (83LTWsJLJQ)☆2011/12/24(土) 12 03 13 ユラキは笑みを浮かべながら緑の覆面を見た。 すると、ユラキの瞳に映ったのは緑の覆面の体が歪んでいき、「シニタクナイ……コンナトロデーーーーー」と言い終わると爆ぜて無くなった。 文字どおり、姿形が消え去ったのだ。 51: 名前:カロン@レールガンのゲームがムズい… (83LTWsJLJQ)☆2011/12/25(日) 11 01 12 しばらくしてから、赤い覆面が「ワレワレノショウリジョウケンヲタッセイスルト、ワレワレハハゼテナクナル」と言った。 それを聞いたユラキは「お前等、一体何者だ!」と眉を歪ませながら言った。 すると、赤い覆面が「ワレワレハサラキサマノテニヨッテツクラレタアシキシモベダ」と言った。 それを聞いたユラキは「上等だ!」と言った。 52: 名前:カロン@お姉様ーーーーー (83LTWsJLJQ)☆2011/12/29(木) 01 58 10 すると、赤い覆面が「デハ、ソロソロケッチャクヲツケヨウデハナイカ。ルールハデスマッチデサンタイニだ」と言った。 すると、ユラキが「そうか。言っとくがお前がルールを言った瞬間にお前等を斬ったが、それは無効か?」と訪ねた。 それを聞いた赤い覆面が「ナニッ!」と叫んだ。 すると、忽ち黄色い覆面が爆ぜ、次に青い覆面が爆ぜた。 そして、ユラキはニッと笑って「次はお前だ」と言った。 それを聞いた赤い覆面は「オノレーーーーーーーー」と叫びながら爆ぜた。 ラントは心の中で呟く。 (ユラキさんはダーク・イーターの中でSSSランクを称号している人物。ちなみにダーク・イーターの中でユラキさん、そして、ユラキさんの兄・サラキさんだけ)と。 最終決戦は近い。 〈第7話〉…おわり 53: 名前:カロン@超電磁砲クリア! 秋名制覇したい! (83LTWsJLJQ)☆2012/01/09(月) 16 24 08 〈第8話〉 奇襲 某所 そこには秋太を殺そうとしたダーク・イーターのシュラとその同僚が数人とそして、ユラキとラントが居るのだった。 余所から見れば一種の暴走族、もしくはヤクザにも見えるだろう。 しばらくしてからシュラが「それじゃー役者が揃ったことですしサラキを討伐しようじゃありませんか」とやる気なさそうに言った。 それを聞いたユラキが「で、作戦は正面突破でいいのか?」と訪ねた。 それを聞いたシュラが「ええ、そうですよ。こちらにはあなた様がいらっしゃるのだから」と答えた。 そして、「わかった。さっさとかたをつけようぜ」と言った。 ついに、最終決戦の幕が開けるのだった。 54: 名前:カロン☆2012/02/26(日) 15 43 34 * 某 部屋 そこには汗だくの議員とそれとは真逆の冷淡な表情浮かべるサラキの姿があった。 しばらく間が空き、「やはり無理だ! こんなの無茶苦茶だ! 治外法権を認可しろ? ふざけるな! 東京のC~F地区を寄越せ? おい! クソ餓鬼! テメー調子に乗るな!」と議員・野多が怒鳴り散らした。 すると、スクッとその場に立って「あんたさー次の選挙で総理大臣のイス狙ってんだって? 無理無理だよー今のままじゃ絶ッッッッ対無理っすね。でもでもー俺の提案を飲んでくれればならしてやるぜ。座っているだけで尊敬される総理大臣様によ」とニヤけながらサラキが言う。 それを聞いた野多は黙りこくることしかできなかった。 同様に周りにいる人物も。 55: 名前:カロン☆2012/03/16(金) 15 02 35 サラキが勝利を確信した次の瞬間……パリンっと窓ガラスが割れた。 サラキが窓ガラスの方を向いた。 そして、彼は気づく。自分の目の前に弟・ユラキが居ることに。 「久しぶりだな。サラキ。」 「久しぶりだね。ユラキ。」 二人の人生を賭けた死闘が始まる。 56: 名前:カロン☆2012/03/26(月) 09 39 37 * 某所 人生を賭けているのはユラキとサラキだけではない。 そのほかのダーク・イーターも二人の気持ちと同じ。 しかし、シュラだけは余裕の笑みを浮かべ「もーこーなったら余裕っしょ。」と言う始末。 なぜなら、彼は奇襲に成功した思い込んでいるからだ。 だが、彼らは確かに奇襲に成功した。 しかし、サラキは奇襲をして来る事を詠めていた。 だから、彼は“罠”を仕掛けた。 そして、シュラ達はまんまと引っかかった。 〈第8話〉…おわり 57: 名前:カロン☆2012/04/03(火) 08 50 43 〈第9話〉 ラストバトル! 開幕 闇人。それは2種類に分けられる悪しき存在。 一つ目はコアを破壊すれば一瞬で死ぬが、コア以外を攻撃しても効かないコア系。 二つ目は全体を同時に攻撃しないと死なない全体系。 そんな存在を喰らうのがダーク・イーターである。 しかし、今宵は喰らう者同士の喰うか喰らうかの壮絶な死闘が始まるのであった。 58: 名前:カロン☆2012/05/26(土) 16 55 30 * 某所 睨み合う両者。一方は笑み。もう一方は怒り。 同じタイミングで地面を蹴り、殴る蹴るの攻防を繰り広げるユラキとサラキ。 その攻防の速さは他者には残像すらも見えない。 そんな光速の世界で二人は笑みを浮かべ、睨み合っていた。 * 某所・場外 シュラの背後に迫る黒い影。 それに気づかない本人。 そして、彼は数秒で黒い影に飲み込まれ、数分後に遺体となって発見された。 しかし、その現象はシュラだけではなく、数名のダーク・イーターにも起こった。 59: 名前:カロン@受験生は辛いよ…☆2012/05/27(日) 00 25 21 それに気づいたのはダーク・イーターの補助役であるホルダーのラントだった。 ラントは自分の背後に迫る黒い影を何事も無かったかのように交わす。 しかし、それは他者からの客観論であり、当の本人は必死に交わし、頭の中で出来事を分析する。 (こいつ何者だ? 気配から察して闇人ではない。と言うことは……。) ラントは推測を立てる。 相手がダーク・イーターだと。 〈第9話〉…おわり 60: 名前:カロン@受験生は辛いよ…☆2012/05/27(日) 12 15 08 〈第10話〉 場外乱闘 某所・場外 向かい合うラントと黒い影。 すると、黒い影が笑みを浮かべ「よくワシの攻撃を避けたのー。」と言った。 それに答えるかのようにラントが「あなたはダーク・イーターか?」と訪ねた。 黒い影の笑みはさらに深くなった。 それを見たラントは気味が悪くなった。 しかし、ラントは怯むことなく構える。 それを見た黒い影が頷き「ワシはダーク・イーターであり指導者・モルコットじゃ。」と答えた。 61: 名前:カロン@受験生は辛いよ…☆2012/06/03(日) 01 23 45 ラントはニヤけながらもバックに入ってあるナイフを2本取り出して構える。 それに答えるかのようにモルコットも杖をラントに向けながらニヤけて構える。 そして、二人の表情は一瞬真剣な顔つきになり同時に地面を強く蹴り、前に飛び出した。 次の瞬間カキンっという金属音が場外に鳴り響いた。 それからも何度も何度もナイフと“金属性”の杖が合間見える。 しかし、死闘は一瞬で終わる。ラントがナイフを大きく降り降ろした瞬間に。 この時に不利なのはラントである。 なぜならば、大きな動きをし、スキができるからである。 それに気づいたモルコットは杖を力強く前に押した。 これで勝ったと思ってしまったモルコット。これが彼の敗因である。 モルコットが勝ち誇った瞬間、彼の体は縦に亀裂が入り、視界が徐々に非対照になっていき、体は地面に崩れ落ちた。 細くするとモルコットの杖も彼の体どうように縦に切れていた。 このことからラントはモルコットの攻撃より速くナイフを振り降ろしたのだった。 ラントは勝利の余韻に浸りながら「ギリギリの勝利でしたよ。おじいさん。」と呟いて額に垂れている汗を袖で拭った。 62: 名前:カロン@明日から修学旅行(^_^;)☆2012/06/05(火) 16 45 11 こうしてラントのラストバトルは終わった。 しかし、彼がホルダーである限り“この場”のラストバトル以上の困難が襲いかかるであろう。 しかし、それは神でさえも予想が付かないのであった。 〈第10話〉…おわり 63: 名前:カロン@明日から修学旅行(^_^;)☆2012/06/05(火) 17 04 34 〈第11話〉 史上最強対決……決着! 某所 狭い空間の一室で刀と刀が斬りあっており、周りには斬撃の竜巻が渦を巻いている状況であった。 しかし、この戦いに傍観者はいない。 この部屋いた議員達はとっくに避難していたが、場外にいたモルコットと彼の支配下に置かれたダーク・イーターによって殺された。 そんなことを気にしている余裕がないユラキはサラキに向けて蹴りを顔面に入れた。 すると、バゴンっといういびつな音がその場に広がった。 だが、それとは別の音がその音をかき消した。 その音の正体はサラキがユラキに放った斬撃の音であった。 しかし、ユラキもその音と匹敵する斬撃を放ちダメージを負うことはなかった。 だが、ユラキとは対照的にサラキは左頬にかすり傷を負った。 これが後にサラキの怒りにふれるとはユラキもこの時は思っていなかった。 64: 名前:カロン☆2012/06/10(日) 01 23 43 サラキの左頬に血が垂れた。 それを左手の甲で拭い、横目で血をじっと見ながら「血だ……。」と呟いた。 そして、全てが吹っ切れたかのようにサラキが「アッハハハハハハハハハハハハハハ……。」と大笑いしながらユラキを見る。 その視線を発する眼はユラキから見て死んでいた。 それに気づいたユラキが「やっとスイッチが入ったか。」と眉を顰めつつも口元を緩ませ呟いた。 ユラキが言った“スイッチ”は本気モードのスイッチではなく、“殺人機”というな危険な存在してはいけないスイッチのことだった。 65: 名前:カロン@今日は振り替え休日(^O^)☆2012/06/11(月) 09 38 06 笑いながら地面を蹴り、ミサイルのようにユラキに襲いかかるサラキ。 だが、そんな彼を見ても余裕のユラキはサラキ同様に地面を蹴る。 次の瞬間ガキンッという効果音がその場に響き渡った。 刀と刀が斬り合い、押し合い、殺し合う。 そんな攻防が繰り返されてきたが次の一瞬でケリが着いた。 その一瞬はユラキが右膝で跳び蹴りをする動作をしながら本命は左足で回し蹴りをサラキの顔面にクリーンヒットをさせることだった。 しかし、それは空しくも空振りし、サラキの左足がユラキの顔面を覆った。 が、それも空しく空振り結局は刀と刀が交わり、その後にお互いに後ろに下がって最後の一太刀を全力で振り合うのだった。 そして、シルエットがお互い斬られたような形になったのだが……サラキだけ斬られたのだった。 こうして兄弟対決は幕を閉じたのだった。 〈第11話〉…おわり 66: 名前:カロン☆2012/07/08(日) 03 43 21 〈第12話〉 決着の果てに ユラキは何事も無かったかのようにその場を立ち去ろうとするが実際は今まで以上の労力を使い、力は底を尽いていた。 彼を普通に見れば無傷だが、精神的にはそこに倒れているサラキよりもズタボロで少しでも触れたら粉々になって崩れてしまう皿の状態と同じなのだ。 ユラキが階段を降りようとした時「待ちやがれ……神々は全員……俺たちが殺した。だから……結局お前達がしたことは……全て無駄だったんだよ。アハハハハハハ……。」とサラキが言った。 その事を聞いたユラキは「んな事わかってんだよ。それでも俺達は神様達が生きていることを信じたかったんだ。」と俯きながら言い、その場を立ち去った。 その姿を見た後、サラキは目を瞑り永遠の眠りについた。 結局、何故サラキ達が犯罪を犯したのか。この戦いでユラキ達が何を得たのか。全てが明るみになることも無く、闇という名の迷宮に入っていった。 〈第12話〉…おわり 67: 名前:カロン☆2012/07/10(火) 17 08 49 〈最終話〉 それぞれの人生 誰もが己の道を行き、壁にぶつかり悩みんだり、挫折したりし諦めてしまう人達もいる。 しかし、彼は諦めるどころか立ちふさがる壁を壊していく。 それは最後の一人となったダーク・イーター、最強の称号を得たホルダー、一度死に蘇った少年、そんな少年を己の刀で守ると誓った少女。 そんな彼らの物語は終わらないが、やがて幕を閉じる。 しかし、そんないつかの日が来ることを知りつつも今日も彼らはイバラ道を歩むのだった。 〈最終話〉…おわり