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34: 名前:HARU☆01/16(日) 11 45 12 毎日でも奏太くんに会いたい 「くるみ、顔」 「えぇ~?」 「…気持ち悪いほどにやけてんな」 もう満里奈とのりは呆れ顔 でも気にしなーい 私は今幸せだもん 「あの、相沢」 声をかけられて後ろを振り向くとクラスメイトの原くんがいた 「…ちょっと、今いいかな?」 「…あ、うん」 満里奈とのりに「行ってくるね」と言い、二人で教室を出る 私だって馬鹿じゃない 自慢する気も自意識過剰なわけでもないけど 相手の顔を見れば何の用かくらいもうさすがにわかる でも、みんな外見だけでしょう? 中身はただの年下大好きな萌え女子なんだから 「あのさ、か、…彼氏できたって本当…?」 「うん」 教室の外の廊下でそう質問される 周囲は「またくるみちゃんに告ってる人がいる」という目で見る 日常的な光景のように 「そっ、か…。俺じゃ駄目かな…」 「ごめんなさい」 余計な期待は与えない だって本当に好意がないのに希望や思わせ振りな態度は最低だから だから綺麗にシンプルに断るんだ もし自分だったらそうしてほしいから 35: 名前:HARU☆01/16(日) 11 59 19 「おかえり」 「お疲れさん」 教室に戻ると満里奈とのりが迎えてくれる たぶん言わなくても何があったかわかっている 「あっ!奏太くん!」 素早く窓に張りつく 外に見えるのはジャージ姿の奏太くん もっ、萌えぇぇーっ! 似合いすぎ!さすがスポーツマン! 体操服の下に黒い長袖を着て、下はジャージを無造作に捲り上げ足首が見えている あぁ……、触りたい 「くっるっみっ!恥ずかしいから窓から離れなさい!」 「いぃーやぁあぁー!」 満里奈が身体ごと離そうとするが意地で窓にへばりつく ……あ、 奏太くんがこっちに気付き目が合った 「……え」 目が合ったのにパッとそらされた 恥ずかしいから…、ってわけじゃないと思った だって一瞬だけど悲しそうな顔が見えたから 36: 名前:HARU☆01/16(日) 16 29 10 奏太くんの顔が頭から離れない ……会いたい、会って「何でもないですよ」って言って欲しい 「…はぁ」 軽くため息をつきながら学校を終えて帰宅する あれから奏太くんを見かけることもなく何も聞けないまま …電話、した方がいいのかな いや、なんでもないことかもしんないし私の早とちりかも 「くるみちゃん」 後ろを振り返ると青いネクタイのうちの学校の人 …三年の先輩 「はい?」 「聞いたよ、彼氏できたって。年下だって?」 「…はぁ」 知らない先輩、だけどどこか自信があり気で上目線 だから年上は嫌なの 「でも大丈夫?年下って頼りにならないし。ほら、あっちの方も上手くないでしょ?」 しっ、下ネタ…っ! てゆうか下心満載じゃないこの先輩! 後退りするが距離を詰めてくる 「くるみちゃんみたいな可愛い子、大人の男の方がいいと思うんだけどな」 「おっ、お断りします!それに年下にしか興味ないですから!」 ……あ、 先輩の後ろに赤いネクタイの……、ってか 「か、奏太くん!」 先輩を追い越して奏太くんの所へ走る そして腕を握って先輩に向かって、 「私の彼氏です!だからもう関わらないで下さい!」 すると先輩は頭をポリポリかき、呆れたように帰って行った ふぅっ、助かった 奏太くんにも会えて一石二鳥~、って… ……なんでまたそんな顔してるの? 37: 名前:HARU☆01/16(日) 16 56 23 「くるみ先輩、やっぱ人気なんですね」 「えっ、…あ、巻き込んじゃってごめんねっ」 口は笑ってる …でも目は悲しそう それにいつもなら腕に抱きついたりしたら 照れながら「離して下さい」って抵抗したりするのに 「奏太くん?」 「…先輩は俺が年下じゃなかったら……」 年下じゃなかったら…? なんでそんなこと聞くの? 「奏太くーん?奏太くんは年下じゃん」 「…そうなんですけど、その…」 何か言いたそうだ、けどわからない ただ何となく背伸びをして頭をぽんぽんと撫でる 「何?言いたいことは何でも言って?」 「…子供扱いしないで下さい」 「え?」 どきん、とした 声が一瞬怒ってるようなものに聞こえたから 今日の奏太くん…、変だよ 「か、奏太くん?」 「…年下でも中身まで子供じゃない…っ」 「何言って…っ、か、奏太くんっ?」 少し声色が変わったと思うと腕を思い切り引っ張られ入り組んだ道に率いられた 「ねぇっ?奏太く……んっ」 男の人だった 壁に押さえつけて強引に唇を重ねる奏太くんの姿は男の人だった も、萌え……とか言ってる場合じゃない! 状況理解と心臓の爆発で死んじゃいそうなんですけどっ…! 40: 名前:HARU☆01/17(月) 18 25 16 うきゃーっ! ここここんなに密着してるよ!? …って、萌えてる場合じゃない! 身長差のせいか、ずっと真上を向いたままの状態で そこに奏太くんのくくく唇がかぶさってる! 「んっ、…う」 強引に浸入してくる奏太くんの唇は男の人だ 正直キスなんてしたことないからどうすればいいかわかんない てゆか初キスがこれって難易度高すぎ! どこか乱暴に奏太くんの舌は口内を乱す 苦しくなり奏太くんの胸をどんどんと叩く 「……あっ、」 奏太くんは慌てたように唇を離し、目を大きく見開いた 「…っご、ごめんなさい!」 「ぷはあっ…、びっくりしたあ」 大きく呼吸をする 奏太くんを見ると顔が真っ赤だった …まあ、私も赤いし身体が火照ってるんだけども…… 「…今日の奏太くん、何かおかしいよ…? 気のせいじゃなかったら今日体育の時間 目合ったのに無視しちゃうし…、なんで?」 「…え、えっと…っ」 ずっと何か言いたそう なんで口ごもるの? 41: 名前:HARU☆01/17(月) 18 40 52 「せ、先輩が年下好きって…」 「へ?」 年下好き? いや、まあそうだけども… 「…そんなこと?ってゆうかそれが原因?」 「そ、そんなことじゃありません」 何やら必死な様子 こんな一面も萌え。 「年下が好きってことは…、俺にも当てはまってる…」 「うん」 「でも、逆を言えば俺が年下じゃなかったら…っ、 くるみ先輩は俺のことを好きになることすらなかった…」 ……あ、 ようやく奏太くんの言いたいことがわかった そっか、そうだったんだ 「不安…、だった?」 「………」 「私がそれだけの理由で告白したって…」 奏太くんは言葉を発しはしなかったけど、目で伝わってきた 奏太くんの頬に手をあてる 「私は年下好き。なんてゆうかきゅんってするし萌えちゃうんだ」 えへへ、と笑う 「でもね、奏太くんのことそれだけじゃないよ? 萌えるのは年下の魅力っ、奏太くんも該当者っ。 ……好きなのは奏太くんだけが該当者、なんだ」 奏太くんの顔から力が抜ける 言葉にすれば伝わる 「恋する気持ちは君にしかないんだぞ?なんてねっ」 指を差してキメると奏太くんは柔らかく笑ってくれた 42: 名前:HARU☆01/17(月) 18 55 58 「わっ、奏太くん?」 奏太くんはヘタヘタと力が抜けたかのように地面に座り込んだ どっ、どうしたのかな? 「大丈夫?体調悪い?」 「…や、違くて…ホッとしちゃって…」 「へ?」 口に手をあて顔を赤くしてそう言った かっ、可愛いっ…… 「あーっ、すみません!なんか勝手に落ちちゃって…。 …し、しかも、先輩に断りもなく……っ「キス?」 あ、顔が更に赤くなった 私も奏太くんの目線にしゃがむ 「なかなか萌えたよ?」 「…もー、嫌だぁ…」 「なんでー?だって私のこと好きだからしてくれたんでしょ?」 「……先輩ストレートすぎる」 いひっ、と笑って真っ赤な顔した奏太くんの髪をわしゃわしゃとかく 大きい犬みたい …や、犬より可愛い生き物かも 43: 名前:HARU☆01/17(月) 22 49 35 正直悲しくて、腹が立っていた 年下だから、 そんな簡単な理由から先輩が傍にいることに 先輩の無鉄砲なところとか真っ直ぐなところ 発言に問題がありつつも可愛いと思ってしまうところ なんで今まで知りもしなかった人のことでこんなに気持ちが動く? なんでこんなに傷ついたりする? 答えなんてとっくにわかってた ただ、くるみ先輩が好きだから 初めて会ったその瞬間から間違いなく惹かれてたんだ 「奏太くん、帰ろっ」 年下とか年上とか関係ない ただ俺が数日見てきた「相沢くるみ」が好きなんだ 「何?またちゅーしてくれるの?」 「っんな…!先輩!」 「半分冗談だよ~」 あなたに振り回されるのも嫌いじゃないんです 44: 名前:HARU☆01/18(火) 19 08 22 付き合って数週間立ったけど奏太くんとは順調! 相変わらず萌えさせてくれるし可愛いし なんてゆうかこんなに幸せでいいのかってくらいに 「でねっ、今日も一緒に帰るんだあ」 「うざー」 「満里奈」 満里奈が顔を歪めて暴言を吐く のりは相変わらず冷静で淡々としている 天気の良い午後の時間 お昼のこのいつもの時間が大好き 「で、そろそろ付き合って一ヶ月が経つわけだけど」 「うん?」 「その先の発展はないわけ?」 「…うん?」 満里奈は手に顎を乗せて紙パックのジュースをただ飲みながら言う その先って、…その先? 「えぇぇえぇえぇっ!」 「うっ、うるさ!」 「むむむ無理無理無理!ちゅーだけでもいっぱいいっぱいなのにっ!」 「ばっ、大声でそんなこと言うなっての!」 満里奈が私の口を焦って塞ぐ のりも困り顔の様子 「くるみ、あんた前さ襲われるのが萌えとか言ってなかった?」 「もご…、ぷはっ、……い、言ってたけど…」 のりの問いに答えようとすると満里奈が手を離してくれた …確かにそれは萌えって言ったけど…… でも今は幸せだけど前みたいな余裕はないってゆうか… ぶっちゃけ初めてのキスですら心臓破裂しそうだったのに その更に先…ってなると萌えとか言ってらんない状態になってしまいそうで 正直…進むのが少し怖い 45: 名前:HARU☆01/19(水) 20 28 30 「くるみ先輩?」 「えっ、何?」 奏太くんと放課後帰宅中 なのに、上の空 呼ばれて慌てて我に返る 「どこか体調悪いんですか?」 「ううん、何でもないよ」 あぁ~、昼に満里奈が変なこと言うから頭でエンドレスしちゃってる そもそもあの日以来、奏太くんは私にキスはしない 残念なようなホッとしたような …まあ構えちゃってる自分もいるんだけどね 「無理しないで下さいね」 心配そうに顔を覗き込んでくれる もうそれだけでキュンキュンです ご飯三杯いけちゃいます 「…あ、また萌えとか思いましたね…」 「えへ」 照れたような困ったような顔をする奏太くん 「もー」と、頭をぐしゃぐしゃとかく 「可愛いぞ?」 「…はいはい」 そうだよ、私だけありもしないことに悩んだって仕方ないよ 今は普通に幸せなんだから 先走らない先走らない 「ずっと傍にいてね?」 「また…、恥ずかしいこと言う…」 「約束っ」 小指をさしだすと奏太くんも恥ずかしそうに小指を絡ませた 私は知らなかったんだ この小指の約束に不安を感じる日が来るなんて 49: 名前:HARU☆01/20(木) 20 29 48 「奏太くんが告白されてる現場を見た」 「え」 昼休み、下の自販機に飲み物を買って行っていたのりが 帰ってくるなり普通にジュースを飲みながらそう告げた 「自販機裏の駐車場で、同い年の子に」 「う、そお」 「ショートの女の子。まあ普通に可愛い感じの子?」 ま、まじで? そんな話一度もしたことないしそんな感じもなかったし… 「くるみ、箸止まってる」 「のり、あんた淡々としすぎ」 満里奈がのりの話し方に突っ込みを入れる そこでハッと我に返る 「へっ、返事はっ?奏太くん断ってたっ?」 「そこまで聞こえなかったよ。まあ、普通に考えて断ってるっしょ」 「だ、だよね」 ホッとしたが内心焦りまくり いやいや、変な汗までかいてきたよ 「ま、可愛い顔してるもんね奏太くん」 「高校入って2ヶ月近く経つんだから奏太くんの内面知って いいな、好きだなって思ってる人はいてもおかしくないと思うよ」 ががががーんっ! 完全に安心しきってた… そりゃあんな萌え男子ほっておかないよね… ど、どうしよう! 52: 名前:HARU☆01/21(金) 19 44 25 不安になって一年生の教室に向かう 奏太くん…、ちゃんと断ってくれたよね? くるみが通ると一年の廊下がザワザワする 先輩? 何、あの可愛い人 二年の相沢先輩だよ あぁ、北條くんの 奏太くん大丈夫かな? あぁ~っ、不安だよう! 足を進めていると前から女の子が歩いて来る そのまま通りすぎるのが普通なはずなのに 何故だかその子の視線が私から外されない その女の子は前髪を七三に分けていて胸まである綺麗な黒髪が印象的だ 顔は綺麗めな顔をしてるんだけど…、眉間にしわがよっている てゆうか、ガン見されてる…? 「あんたが相沢くるみ?」 「へ?え、あ、…はい」 目の前で足を止め、腕組みしたままその子はそう言った 「本当に先輩?私より子供じゃん」 な、ななな何この子ーっ!? 54: 名前:HARU☆01/21(金) 20 01 40 ふんっ、とその子は馬鹿にしたように鼻を鳴らした 「二年の相沢くるみってそんなに大したことない女じゃん」 「たっ、大したことないとか周りの勝手な評価は知らないけど いきなりあなたにそんなこと言われる筋合いなんてないんだけどっ」 「自分のこと可愛いとか思ってんでしょ?」 んな…っ、話を聞けってのーっ! 身長のせいなのはわかってるけどこの子に見下されると嫌な感じ! 「初対面の人にその態度はなくない!?私あなたに何かしましたか!?」 「別に。ただ気に食わないだけ」 シレッと目も合わさずに言う 胸がムカムカしてくる 「あなたねえっ「くるみ先輩!?」 出そうな言葉がぐっと止まる 奥のクラスから出てきた奏太くんが驚いた様子でこっちに向かって来る 「…と、朱美っ?」 「あ、あけみ?」 奏太くんがその黒髪の子をそう呼んだ 知り合い…ってゆうか、朱美? 「これ、奏太の彼女気取りでしょ」 「…っ、こら!」 これ、と私を指差す しかも彼女気取りって…! 「彼女ですっ!」 「わぁあぁっ!くるみ先輩!」 奏太くんが顔を赤くして私の口を手で抑える 「みんないるのに大声でそんなこと言わないで下さい! …あと、朱美?先輩にこれとか失礼だろ。ちゃんと謝って」 「やなこった」 「朱美!」 …なんか、違う意味でムカムカしてきた なんでそんな親しげなの? 56: 名前:HARU☆01/21(金) 20 47 17 「と、とりあえずくるみ先輩は戻って下さい!」 「なんでっ?私奏太くんに話があって…」 「帰り聞きますから!今は目立っちゃうんで…、ね?」 ずきゅーんっ! その「ね?」の子首傾げは反則だよお… 「…わかった。帰り、ちゃんと聞いてね?」 「約束します」 奏太くんは頭を優しく撫でてくれた 朱美ちゃんに目を合わせると変わらずの見下した顔 むかつく…けど、奏太くんの言う通りに私は二年の教室に帰って行った 朱美ちゃんと仲良いのかな…、と不安を抱きながら 「で、くるみ先輩に何であんな態度とってんの?てか知り合いなの?」 「全然。ただどんなもんか知りたくてさ」 「なんでそんな上から目線…」 奏太は頭をポリポリとする 「本当にあのちびっこが彼女なわけ?」 「こらっ、先輩だっての!」 朱美は腕組みしたままチッと舌打ちをする 「好きなの?」 「え?」 「あの先輩のこと」 朱美は奏太を横目で見る ポケットに手を突っ込み、奏太は顔を赤くする 「……す、き」 少し途切れながら恥ずかしそうに言う 朱美はその顔を見て、視線を前に戻す 「…あっそ」 57: 名前:HARU☆01/22(土) 17 28 06 「ムカつく!」 「な、何が?」 教室に戻る早々、満里奈とのりにそう叫ぶ 二人は何が何だかできょとんとしている 「奏太くん何かしたの?」 「奏太くんは何もしてない!」 「じゃあ何なんだよ…」 思い出しただけでもムカッとする あの人を見下した態度 「子供とか気に食わないとか何で初対面、 しかも年下に言われなきゃなんないの!?」 「おぉ、珍しくキレてる」 「てか初対面?」 のりはキレてるくるみを見て少し面白そうにしている 満里奈の言葉に「そう!」と勢いよく返事を返す 「なんかその一年生に散々小馬鹿にされた!」 「肝が座ってんね、その子」 「しかも奏太くんと超親しげだった!」 怒ってる理由の一番はそれか、と二人はため息混じりに笑う 「名前で呼んでたし、奏太くんその子の扱いに慣れてそうだった…!」 ぐすっ、 と、涙が出そうになる クラスの男子はそんな半べそなくるみを見てきゅんきゅんしている 「落ち着きなって、ね?」 「うっ…、なんか悔しいーっ、嫌だあぁーっ」 「泣くなっての!」 奏太くん奏太くん 私、不安だよ? 萌えます。年下男子 続き2
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282: 名前:乃愛☆07/20(火) 14 47 16 でぃあ*プリンさま あげ×50000000000000000000← 有難う御座いますッ❤ ---------------------------------------------------- 啓斗Side この異様に低くなる女性の声。 「 ……か、母さん? 」 振り返ると、そこには普段とは違う 格好をした母さんがいた。 「 あら?あら、あら、あらぁ 」 結夏を見るなり、にや…と不敵な笑みを浮べて 俺を横目でちらり、とみる母さん。 「 可愛い女の子連れてきちゃって、もうっ! 」 「 ぎゃっ! 」 そう言って、微笑みながら 俺の背中をバチン、と叩く母さん。 母さん…、結構…いや、まじで叩いたな? 「 初めまして、鬼の母親ですっ 」 母さんは、そう言って、一瞬を俺を睨みつけながら 結夏に向かってにっこりと笑う。 うあ…、やっぱりさっきの“鬼”を引きずってやがる。 だから、母さんは苦手なんだよなあ…。 「 あ、えと…はいっ。宜しくお願いします 」 結夏は一瞬、戸惑った顔をしたが すぐに癒し系、天使の微笑みを浮べた。 ああ…、癒される。 「 ささっ、狭いところだけど上がって~ 」 母さんは、結夏の手を引っ張り 家の中へと連れ込んだ。 「 は、はいっ。お邪魔します 」 そう言って、玄関で靴を脱ぎ しっかりと揃えた結夏。 「 まぁ、お行儀の良いこと! 啓斗!ちゃんと、見習いなさいよ 」 「 へいへい… 」 俺はふう、と溜息をつくと 渋々靴を揃えた。 「 あ、じゃあ…先に啓斗の部屋にでも行く? 」 「 え、えと… 」 結夏は、ちらっ…と俺の顔を見て サインを出してきた。 俺は母さんにばれないように、こっそりと頷いた。 「 じゃあ、行かせて頂きます 」 「 それじゃあ、飲み物はそっちに運ぶわね 」 母さんは、そう言うと俺の前を通りキッチンへと向かった。 結夏が階段を登っていると、匂いを嗅ぎつけたのか イチロウがとことこ…と近づいてきた。 「 にゃあ… 」 「 猫っ!? 」 急に大きな声を出して、後ろを振り返った結夏。 足元にいたイチロウを見て、結夏の目がきらりと光る。 「 だ、だ、抱いてもいいっ? 」 興奮状態の結夏に少々驚きつつも、 俺はこくこく…と何度か頷く。 も、もしかして…結夏って。 「 あたし、猫ちゃん大好きなの! 」 …やっぱり。 283: 名前:乃愛☆07/21(水) 13 45 13 「 ちょっ…駄目だってばぁ…! 」 俺の部屋にあるベットの上で横になり、 小さく声を出す結夏。 結夏の上に乗っているのは… 「 にゃーあ… 」 イチロウだったりする。 「 啓斗くん、イチロウちゃん…可愛いね! 」 「 おー… 」 俺は雑誌を見ながら、適当に返事をした。 今の結夏の発言を… “啓斗くん…可愛いね!” …に変えてほしいんだけど。 ―コンコン。 扉を叩く音で、俺と結夏と…イチロウはぴた、と動きを止める。 「 結夏ちゃん、楽しんでるー? 」 入ってきたのは母さん。 手にはオレンジジュースやケーキ。 「 あ、はいっ。楽しませて頂いてます! 」 結夏はにっこりと微笑むと、 イチロウを太ももに乗せた。 「 そう。良かった! 残念だけど、私…仕事があるの。 帰ってくるの、夜だから…また今度会いましょう? 」 「 え…あ、はい。 お仕事頑張ってください! 」 結夏は一瞬、残念そうに肩をすくめたが また、にっこりと微笑んだ。 「 有難う! あ、啓斗っ! 」 急に名前が呼ばれて、 俺はびく、と体を揺らす。 「 うい 」 「 あんた…結夏ちゃんに、 指一本でも触れたら…どうなるか分かってんでしょうねえ… 」 いつもより、低いトーンで 俺を睨みつけて話しかけてくる母さん。 そ、それは無理っす。 「 決まってるだろう、俺は紳士だぜ? 」 …嘘付いちゃった。 て、言うか俺等… 結夏の前で何堂々と言ってるんだ? 結夏は、顔赤くして黙っちゃったし… これは、手ぇ出すしかないっしょ。 俺のドSモードに火ぃ付いちゃったしねえ。 286: 名前:乃愛☆07/21(水) 18 20 56 でぃあ*縷々さま はい、スイッチ入っちゃいましたねv OFFにするためには……… 生贄(結夏)を神(啓斗)に捧げなくてh((ry/ww ---------------------------------------------------- 結夏Side 「 ね、ねえ…啓斗くっ…んん!? 」 長い沈黙が耐え切れず、啓斗くんに声をかけた。 すると、待ってましたと言わんばかりに 啓斗くんの、生き物のような舌があたしの口に進入してきた。 「 ん…んふぅ… 」 最初は胸板を叩いたが、啓斗くんの甘いキスには勝てない。 あたしの力はどんどん抜けていく。 「 ふぁ…ん…っ… 」 啓斗くんはあたしの後頭部を押さえ、 頭を後ろに引くあたしを阻止した。 …って言うか、長い! 頭がぼーっとしてきたし、 もう何にも考えられない……。 「 …ふ…ん…… 」 やっと、2人の唇は離れた。 2人の間には、銀色の愛し合った糸が繋がれた。 「 はぁ…は……きゃあ! 」 肩で息をして、呼吸をゆっくりと整えるあたし。 そんな、あたしを軽々と持ち上げた啓斗くん。 「 は、離してっ! けいっ…んん! 」 「 ちょっと黙れって 」 あたしの口の中に舌を入れて、呼吸をしながら話す啓斗くん。 貴方の人の黙らせ方はキスなんですかー!? ベットに優しく降ろされ、あたしは閉じていた目を開く。 目の前には、天井と……ドSの顔をした啓斗くん。 「 なあ、結夏 」 あたしの上に馬乗りになって、 首元に顔を埋めた啓斗くん。 「 な、何…? 」 「 たまには反対バージョンやってみたい? 」 啓斗くんの意味の分からない言葉に目が点。 “反対バージョン”て何? 「 つまり、こうゆうこと 」 啓斗くんはあたしの隣に寝転がり、 あたしの腕を引っ張った。 な、何で……? 「 何であたしが、啓斗くんの上に馬乗りになってるの!? 」 「 だから、これが反対バージョン 」 にっこりと、素直な笑顔を浮べた啓斗くん。 「 む、無理無理無理っ! 」 ぶんぶん、と顔を何度も左右に動かしたあたしを見て 啓斗くんは“冗談だよ”と言った。 「 やっぱ、俺が上じゃねえとな 」 そう言って、あたしの上にまた乗り シャツの中に手を入れた啓斗くん。 てっきり、ブラを外されるかと思った。 啓斗くんは、あたしの背中に優しく触れるだけ。 「 ん…ひゃあ…… 」 くすぐったい…。 「 なあ、結夏 」 「 ん…? 」 あたしの背中をなぞりながら、 耳元で囁いてくる啓斗くん。 「 机の上で下着脱いで、M字開脚してよ 」 …えむじかいきゃく? …エムジカイキャク? ………M字開脚!? 289: 名前:乃愛☆07/23(金) 18 17 20 でぃあ*ルナ様 やばいですねえ← 今から書いていきますね♡ でぃあ*縷々様 馬路、気になっちゃいますか!? 嬉しいです゜*(◎ 凵`圉)★ 気になるところで切るのが好きなんです((笑♡ ---------------------------------------------------- 啓斗Side 俺はふ、と不敵な笑みを浮べて結夏を見つめた。 「 そ、んな…。で、出来るはず無いじゃんっ! 」 結夏は顔を赤くして、強く否定する。 「 いいじゃん 」 「 嫌っ! 」 結夏は首を左右に振り、全力で否定する。 そんなに嫌なら…… 「 きゃあっ! 」 俺は、結夏を軽々と持ち上げた。 そして、机の上に座らせて目線を合わせた。 「 さて、下着…脱げよ 」 にっこりと、満面の笑みを浮べて 結夏の頬にそっと触れる。 「 い…嫌って言ったじゃん! 」 結夏は、つん…とそっぽを向き 俺の言葉を耳に入れない。 「 じゃあ、2択 」 俺は人差し指と中指を立てて、結夏の目の前に手を出した。 「 その1、その場で全裸になり…俺の目の前でM字開脚 」 「 なぁっ…!? 」 顔を赤くして、今にも俺に何かを投げつけようとする結夏。 そこまで、恥ずかしいことなのか? 「 まぁまぁ、落ち着けって。 その2、そこの窓に胸を押し付けたまま…俺との行為を続ける 」 「 はぁ!? 」 窓を指差した俺を睨みつけて、反抗するかのように 大きな声を出した結夏。 「 ま、窓って…! だって、通行人いるじゃん! 」 結夏は外を指差して、否定するように言った。 「 うん。皆に、結夏の体を見せよう 」 当然、のような顔をして俺は言った。 結夏は“そんなの出来ない…”という顔をした。 「 さぁ、どっちにする? 」 司会者のように、俺は結夏に話を振る。 結夏は黙って、俯いている。 「 ……2 」 「 え? 」 小さく何かを呟いた結夏に問いかける。 「 その2の啓斗くんとの行為……! 」 顔を真っ赤にさせて、俺を睨みつけながら言った結夏。 「 ほう…、以外だな。 結夏なら一番を選ぶと思ったよ 」 「 な、何でよっ…! 」 閉じていたカーテンを、勢いよく開けて 外を眺めながら言う俺。 「 だって、その1なら…俺だけに見られて済むだろ? でも、その2は…間違えれば交通人に見られるじゃん 」 「 あっ…! 」 みるみる青ざめていく結夏の顔。 さっき、結夏が言ったじゃん。 “だって、通行人いるじゃん”って。 あーあ、自分の天然、鈍感…etcを恨みな。 290: 名前:乃愛☆07/23(金) 18 28 30 結夏Side 「 まぁ、決まっちゃったもんはドンマイだよ。 さて……始めようか……結夏ちゃん 」 にや…と悪魔のような、微笑みをして あたしを窓側に追い詰める啓斗くん。 背中にひやっ…と冷たい感触。 これは…窓だ。 「 結夏… 」 啓斗くんは、片手をあたしの頬に触れて 片手を窓につきながら、甘いキスをした。 「 んっ…ふぅ……っ… 」 そして、啓斗くんの手はあたしの服の中に入り、 器用にピンクのブラを外した。 「 ふぁ…んん……啓っ…ふ… 」 やっと唇が離れたかと思うと、 啓斗くんの唇は、あたしの胸へと向う。 気づけば、あたしの上半身は裸になっていた。 「 あっ…! 」 啓斗くんは、あたしの露になった胸の突起に、唇を近づけた。 「 あぁんっ…! 」 そして、口で包み込むと、 中で遊ぶように舌で突起した乳首を転がす。 「 あんっ!…駄目っ…んぁ…! 」 カーテンをぎゅ…と掴み、手に力を込める。 次第に全身から、うっすらと汗が滲んできた。 「 はぁんっ! 」 突起したピンク色の綺麗な乳首を甘噛みされて、 あたしは体を反らして、びくんっ…と絶頂した。 「 …そろそろか 」 啓斗くんはそう言って、 向かい合っていたあたし達の体制を変えた。 あたしの後ろに啓斗くんが周った。 外からはあたしが見えるはずだ。 突起している乳首がたまに窓に当たる。 「 っ…! 」 この体制、恥ずかしい…。 294: 名前:乃愛☆07/27(火) 17 49 34 でぃあ*縷々さま はい、2選んじゃいましたねえ((笑 今から更新しますv でぃあ*アグレッシブむとおさま 面白いですかッΣ 普通はエロ中心的に話を進めないと いけないんですよねえ-。゚(゚*´Д⊂グスン 乃愛、ど-してもエロ書けないんですよぉ← ほ、惚れましたかッ!?ありえませんねww でぃあ*留奈さま 隠れファン!?Σ、 堂々として下さいww 啓斗くんに惚れるということは…留奈さま、Mですか?← ---------------------------------------------------- 啓斗Side 俺に背を向けて、尻を突き出している結夏。 結夏は窓に手をつき、顔を逸らしている。 こんな格好…、外から見られてると思ったら 恥ずかしいだろうなぁ…。 俺は、にやっ…と不敵な笑みを浮べて、 結夏の綺麗な尻を両手で押さえた。 「 啓斗くぅ…んはああっ! 」 俺は、結夏の言葉を遮るように 自分のものを結夏の中に挿入した。 窓についている、胸が俺が腰を動かす度に動く。 俺は、そんな結夏の胸を腰を振りながら揉み始めた。 「 あんっ!…やっ、あっ…恥ずかしっ…あっ! 」 揺れている胸を窓に押し付けて、 乳首をこりっ…と動かす。 「 ふやぁあっ!…んぁあっ…あっ…あんっ! 」 すると、結夏の声は更に大きくなり 中はぎゅう…と締め付けられた。 「 くっ… 」 俺は、小さく声を漏らすと 腰の動きを早めた。 「 あんっ!イクッ…イっちゃう! 」 片手を窓に置いたまま、片手で俺の腕を掴む結夏。 俺は、結夏の両手を掴み後ろに引き、ずんっ…と奥に突いた。 「 …っひゃあああぁあ! 」 結夏の体は大きく後ろに反れた。 彼女の全身は窓に任されている。 俺は、ひょいっと彼女を持ち上げて 自分のベットに優しく降ろした。 「 啓斗くん?…はぁ…はぁ… 」 肩で息をしながら、首を傾げて俺を見る結夏。 俺は、結夏の足を上に上げて、寝た状態のまま M字開脚にさせた。 「 なっ…!? 」 結夏は、丸見えとなった自分の大切な場所を 両手で隠そうとした。 …だが、俺はそれを見事に阻止し、 結夏のそこに顔を埋めた。 ぺろ…と飴を舐めるようにすると、 結夏の体はびくんっ…と大きく反応した。 「 ひゃあっ! 」 結夏のそこからは、愛液が溢れるばかりに流れていた。 俺は、ゆっくりとその中に指を忍ばせた。 「 ああん… 」 ぬぷ…、と音を立てて俺の指、2本が一気に結夏の中に入った。 結夏の中は、温かくぬるぬるとしていた。 俺は、指をばらばらに動かした。 「 あっ!…やっ、らめっ…! 」 296: 名前:乃愛☆07/29(木) 14 41 54 でぃあ*少数さま 隠れファン有難う御座いますッΣ いやん、告白みたいですぅぅ///((照れるなよ← タメ語大丈夫ですよ-♥ お話、是非しましょうbb* ---------------------------------------------------- 結夏Side まだ、息が整っていないあたしをお構いなしに どんどん攻めてくる啓斗くん。 勢いよく、あたしの中に入れた指を 勢いよく、あたしの中から抜く。 「 っあ…! 」 そのときでさえ、あたしは小さく声を漏らす。 啓斗くんは、人差し指と中指についた、 あたしの愛液を見ながら不敵な笑みを浮べた。 「 随分、感じてるんだな… 」 啓斗くんは、そう言うと あたしの両足を掴み、顔の横まで持ち上げた。 お腹が……苦しい。 「 はぁああぅん! 」 そう考えていると、啓斗くんは 露になったあたし中に自分のものを入れた。 「 あッ! はぁ…ん! 」 啓斗くんは、腰を動かしながら あたしのクリをこねくり回した。 「 あひっ! な、中が壊れちゃっ…! 」 す、…すごい気持ちいいっ。 啓斗くんのものがあたしの奥を突付いてる。 いっちゃう! 「 らめえっ! …ひゃああぁあっ! 」 ベットが軋む音と共にあたしは絶頂に達した。 「 はぁ……はぁ… 」 肩で息をしているあたしを、 軽々と持ち上げた啓斗くん。 あたしを、お姫様抱っこして部屋を出て 向かった先はお風呂場―…? 「 啓斗くっ…? 」 297: 名前:乃愛☆07/29(木) 14 42 17 お風呂場の前であたしをおろし、 啓斗くんは、シャワーの温度調節をしている。 あ…、シャワー浴びさせてくれるんだ。 啓斗くんは、中に入ると あたしの手を引いて中に連れ込んだ。 「 足……開いて? 」 「 え? 」 「 いいから 」 突然の言葉に驚きながらも、 あたしはコクン、と頷き足を開いた。 啓斗くんは、シャワーを手に持ち 強さを“強”にした。 《 シャー!! 》 「 ひゃあぁんっ! 」 一瞬、何が起こったのか理解出来ない。 啓斗くんは、あたしのあそこにシャワーを向けたのだ。 「 ふうっ…あっ! 」 下唇を噛み締めて、声を我慢していると 啓斗くんは、あたしのクリにシャワーを当てて あたしのお尻の穴に指を入れた。 お尻はっ…! あたしの抵抗も虚しく、啓斗くんは 指の抜き差しを繰り返した。 お風呂の中だからかな…? 体がすぐに熱くなって、息が苦しくなってきた。 もう駄目っ…! 「 っああぁああ! 」 体を大きく反らし、シャワーを当てていた 啓斗くんの腕を掴んであたしはイッた。 「 啓…「 結夏、可愛い… 」 ふらふらのあたしをぎゅ、と抱きしめた啓斗くん。 用意されたかのようにある、湯船にあたし達は入った。 今、気づいたけど…。 まだ、夜じゃないんだし… 明るいから恥ずかしいな……。 啓斗くんの座っている上に、 あたしはちょこん、と座った。 「 結夏の体、綺麗…… 」 啓斗くんはあたしの耳元でそう囁いた。 あたしはぴくん、と小さく反応する。 「 やっ…! 」 啓斗くんは、イッたばかりのあたしの あそこを人差し指でちょこちょこ、といじってきた。 な…、今日の啓斗くん……エッチ過ぎるよぉ。 こんなんじゃ、体が持たない~っ。 「 あっ…ふ…ん……! 」 クリをなぞられたり、焦らされたり、 引っ張られたり、押されたり…………。 今日の啓斗くんは、本当にエッチ。 「 結夏… 」 啓斗くんは、何度もあたしの耳元で名前を囁いた。 片手でクリをいじり、片手で乳首をいじる。 そんなに一気に…!! 「 ひゃああぁあ! 」 今日……、何回目だろう? もう、頭が真っ白で何も考えられない。 「 俺だけのプリンセス 」 続き16
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1: 名前:あー汰☆12/14(日) 13 27 49 な、、 なんでっ、、、 なんでそんなに萌えるんだよー!!!! 【幼馴染は萌えるのです】 どもぉーあー汰と申します(・ω・) 題名からふざけた思考回路を披露して まことに申し訳ありませぬorz ← こんなやつが書く小説ですがどぞよろしくお願いします ・-・-キャスト-・-・- 高本 奈緒(タカモト ナオ) 矢崎 翔 (ヤザキ ショウ) 2: 名前:あー汰☆12/14(日) 13 37 49 「なぁーおー」 ごくごく普通の休日。 「ねぇ聞いてる?」 なのに、 「んだよ、無視してんの??」 なのにあたしの部屋には当たり前のように彼氏でもないのに男が入ってる。 さっきから人が頑張って課題をやってると邪魔をする。 机に黙って向かっているのが難しい状態。 後ろからあたしの髪の毛を触りながらしゃべりかけてくるのだ。 単に、あたしの邪魔をしに来たみたい。 「無視しないでよー」 「・・・あ゙ーもうっ、、なに?なに?なんか用ですか!!?」 グルッとあたしが振り返ると驚いたのかスグに手を離した。 「・・・ビックリしたー。てか・・・え?なんか怒ってる?」 「当り前でしょ?見て分からないかなぁ?」 「なにを?」 「あたしは課題やってんの!」 大きな声で言うとやれやれと言うかのように肩をすくめる。 むっかつくー!! 「でも・・・俺、奈緒と話したかっただけだし・・・」 あいつが上目づかいをしてこっちを見る。 う・・・罪悪感が、、。 「はぁ・・・ごめん。」 いつもこんな感じであたしの休日はあいつによって壊される。 3: 名前:あー汰☆12/14(日) 13 51 36 あたしの名前は高本奈緒。 高校2年。 彼氏は・・・いない。 で、邪魔な男が矢崎翔。 高校1年の年下で幼馴染。 家が隣だから困ってる。 こいつは窓越しにあたしの部屋に勝手に入ってくる不法侵入者だ。 「んー癒されるー」 ごろごろとあたしのベッドに寝ながら猫のように布団にくるまってる。 ・・・勝手な奴め。 友達から聞いただけだけど翔はモテるらしい。 もちろんずっと一緒にいたあたしもカッコいいとは思う。 カッコいいは違うかな。 翔には可愛いという形容詞が似合っている。 しかし、学年一のモテ男があたしの部屋でなにしてるんだか; こんなの見つかったらあたし全校の女子からイジメにあうって。 「奈緒の匂いがするー」 「はいはい」 「この布団持って帰っていーい??」 「ダメ。無理。やめて。」 いつもこんな会話のやり取りだ。 いつもこうなのに飽きがこないのが不思議だ。 「残念」 「・・・翔が寝るとさ、香水の匂いいっつもうつるんだけど」 「いいじゃん、俺が寝たって証拠だよ? あ、間違えた。俺とねたって証拠だねー」 「・・・バカ」 なんも考えないでそんなこと言うんだから天然度は半端じゃない。 しかも翔とねたことないでしょーが。 4: 名前:あー汰☆12/14(日) 14 07 52 「ふぁー・・・ぁ」 「あれ?奈緒もおねむ?」 「・・・違う」 「一緒寝る?俺はいいよ♪」 日本語が翔には通じないのかと思うほどあたしの言葉を無視する。 でもホントに眠い。 明日からはテストがある。 2年になって初めてのテストだ。 勿論、翔にとっても初めてのテストでもある。 「ほらおいでー?」 「いらない」 「遠慮はいいから」 「あたしのベッドだし」 「気にしない気にしない」 あたしの高校は偏差値も高くて成績を維持するのは大変だ。 だからあたしもこうやってテスト前には必死で課題に取り組む。 そのせいで寝不足なのに翔はどーなってんだか。 余裕。。。なのかな。 あたしと違って頭良さそうだし。 「おいでってっ」 「うわッ」 グイッと腕をひっぱられてバサッと布団の上に倒れこんだ。 それは翔の上に馬乗り状態になったってこと。 「わっ・・・ちょ・・放してよ//;」 「無理」 引っ張った腕をあたしの背中にまわして起き上がれない。 カーッと頬が紅潮する。 至近距離で翔の顔をみると恥ずかしくて いつものあいつに対する余裕なんか微塵も残っていない。 「もらうよ?」 "何を"と聞こうと思った時には唇は塞がれた。 6: 名前:あー汰☆12/14(日) 14 23 54 「んぅ・・・ぁしょっ・・・」 部屋にはさっきとは違う空気が流れてる。 音と言えば淫らな水音とあたしの異様に高い抵抗の声だけ。 唇を強く押し当てられてまともに息もできないと思い 口を開くとヌルっとしたのが入ってきた。 たぶん翔の舌だ。 恥ずかしくて目も開けられないこの状況。 あたしが女で翔が男だと実感されられる状況。 「ん・・・ぁ・・っ」 酸素が足りない。 息が苦しい。 でも頭はぼぉっとしていて心地いい感じがしてしまう。 くちゅっと大きなリップノイズをたてて唇が離れると 自分でも驚くほどに息が上がっていた。 「あら、やだー。奈緒ちゃん可愛い♪」 ニヤッと笑われると一層顔が赤くなる。 いつの間にかあたしは翔の上じゃなくて隣で寝る形になってた。 ・・・全然気づかなかった。 すぐに乱れた髪を整えて起き上がる。 翔がバカにするように笑ってる。 ゴシゴシと口を手の甲でさすっても意味がない気がする。 恥ずかしいもなにもあったもんじゃない。 「あれ?照れてんの?」 「ばっ・・・違うしっ!・・・でも」 「ん?」 「、、ファーストキスだったのに」 空気が重くなった気がした。 翔は「え?」的な顔してる。 お前と一緒にすんなって。 あたしいつかの王子様のためにとっといたんだから、ね。 14: 名前:あー汰☆12/14(日) 21 34 12 「・・・はぁ」 「おっはよー奈緒♪」 「、、はょ」 今日から学校だ。 しかもテスト。 昨日、翔にあんなことされたから全然集中できなかった。 ・・・最悪。 「あれ??元気ないね、どうかした?」 「別にー」 朝から元気なのは友達の未来(ミク)。 いちおう、一番の親友ってとこ。 可愛いし性格いいしで仲良しなわけ。 「ふーん。そっか」 「あんま気にしないでよ。未来が心配するほどのことじゃないしさ。」 「はーい」 うん? あれって心配してもらってもいいことじゃない? あ、でも話しづらいしなー・・・。 ・・・やっぱ現状維持だな。 「そういえばさ奈緒知ってる?1年の矢崎」 「へ?・・・あぁ、名前くらいは」 「あたし昨日彼氏と別れてさー、次年下もいいかなーって! どう?どう?いいと思う?」 あたしは学校では翔と幼馴染ということはふせてる。 いろいろと面倒だし。 だから未来もあたしと翔が幼馴染だって知らない。 てか、あんなのと好きで幼馴染やってるわけじゃないしね。 17: 名前:あー汰☆12/15(月) 19 00 42 「あ、ほらッあれが矢崎!」 「あれ・・・か」 昼休み。 あたしの高校はテストが午前中あっても午後は授業だ。 普通に家に帰してくれたらいいのに、、。 未来の指さすほうには確かに翔がいた。 人気者の顔をした翔が。 「どうかな?」 「あー・・・いんじゃない?カッコいいし」 「うんうん。あれは奈緒にも分かるカッコよさだよねー」 1年の教室に2年が来てるというのはあんまりないようで 下級生たちがあたし達をジロジロと見てくる。 流石に気まずい; 翔はあたし達には気づかずに女の子たちと楽しそうに話してる。 やっぱりあの噂はホントだよね? 「・・・ぁ」 「ん?どうした?」 「いや、何でもない」 ふと、翔と目があってしまった。 けど・・・すぐに逸らされた。 ズキッ― なんだろう、、 少しだけ胸のあたりが痛んだ。 18: 名前:あー汰☆12/15(月) 19 07 15 他人のような 初めて会ったかのような 翔の冷たかった瞳。 あたしがそこに存在していなかったかのように 誰も何もそこに見えなかったかのように 目を逸らされた。 「・・・もと・・かもと!・・・おい高本っ!!!」 「はっはい!!?」 「何ボーっとしてんだ?」 午後の数学の授業とはどうしてこうも眠くなるものか。 夢うつつだったあたしの頭は先生の一括で冷水を浴びたかのようにすっきりした。 あたしがボーっとするのは珍しいようで くすくすとクラスのどっかから笑い声がする。 こんな恥ずかしい思いをしたのは久しぶりだ。 ・・・くっそー。 「ノートもとってないじゃないか。体調でも悪いのか?」 「・・・いえ、大丈夫です。」 さっきから中身が抜けたようなあたしがいる。 何も考えたくない。 あ、考えてるか。 翔のことを。 ・・・ってなんであたしあいつのこと考えてんのよ。 19: 名前:あー汰☆12/15(月) 19 15 38 ―ガラッ 「なーおっ」 「うわっ・・・ビックリしたー」 「あはは、お邪魔しまーす」 「不法侵入」 「ちゃんと挨拶はしましたので」 夜、翔がまたあたしの部屋にきた。 昨日のキスされてから気まずいままだってのに忘れたのかな? しかも今日、目そらしたし。 どうやらあたしは根に持つタイプらしい。 我ながら嬉しくはないタイプだ。 翔は今帰ってきたのか片手にスゥェットを持ってあたしの部屋に来た。 「で、今日は何の用??」 「用がなきゃきちゃだめなの?」 ゔ・・・ 「そーゆーわけじゃないけど。」 「じゃあいいじゃん」 そう言いながら翔はダウンを脱いで長袖になる。 次にはその長袖すらも脱いで上半身裸。 ただ下にジーパンをはいているだけの格好だ。 「まっまさかここで着替えるつもりじゃ・・・ 「そうだけど?あ、あんま見ないでね恥ずかしいから♪」 なっ・・・ なんて奴だ。 人の部屋で、しかも乙女の部屋で勝手に着替えすんなー!!! 22: 名前:あー汰☆12/30(火) 14 04 52 「ひぁ・・・」 シャーペンが音を立てずに床のマットの上に落ちる。 そんなこと気にも留めずに翔はぎゅうっとあたしを後ろから抱く。 ・・・抱く? ・・・抱かれてる!!!? 「やッちょ、何してんの!」 「今日俺、汚れちゃってさー。奈緒で消毒。ね?」 耳元で甘い声で呟かれるだけで失神しそうになる。 キスされたのも大ダメージだったのに・・・ どういうともりだよっ・・・!!!! 「消毒とか意味分かんないし!」 「他の女の子で汚れちゃったのー」 「それ自業自得でしょ」 「ふーん・・・俺にたつこーっての?」 「ん」と声を漏らすと耳に違和感を感じた。 翔が、、 翔が、、、 あたしの耳を甘噛みしてるんだ。 もちろん冷静になんかなれるわけがなく・・・。 「やっ、、だぁ・・・んんぁッ」 昨日、あたしの口内を犯した舌が今日は優しく耳をなぞる。 ゾクゾクするその動きに合わせて身をよじってしまう。 脳内信号が混乱して正常を保てなくなってる。 翔のせいで。 29: 名前:あー汰☆12/31(水) 13 29 54 「ーっ・・・っはぁ」 「感じすぎだよ?奈緒」 「感じてないしッ」 唇が耳から離れるとすぐに後ろを振り返った。 そこに立ってるのはもちろん翔。 意地の悪い笑顔をあたしに向けている。 「だってーよがってたし??」 「よがってないっ」 「ふーん。そう」 あっさりと理解されると今度はそっと耳を触られた。 もちろん予想外で、抵抗する間もなく。 「ひっ・・・」 翔の細い指先があたしの耳をゆっくりとなぞる。 あいつの唇は今の行為を物語っているかのように唾液で濡れている。 あの唇にどれだけの唇が重ねられてきたんだろう。 そう思うと胸のどこかがいつも締め付けられてしまう。 「俺のがべったりだねー。」 ニコッと笑うとつられて笑いそうになる。 ・・・危ない危ない。 ゴシゴシと自分のスェットの袖で拭と独り言のように呟いた。 「ストップきいてよかった、ね」 覗き込むようなその仕草に胸が一段と大きく跳ね上がる。 独り言じゃなくて同意を求めた言葉だったみたい。 「あれ??最後までしたかった?」 「・・・んなわけないじゃん」 今日のあたし、なんかおかしい。 30: 名前:あー汰☆12/31(水) 13 49 09 「でさ、あたしが行くといっつも女と話してんの!!!」 「ふーん・・・誰だろうね」 「彼女かな!!?そうなのかな!!??」 未来の両手が机越しにあたしの両肩を掴んで前後にゆさぶる。 くっ苦しー・・・。 「しっ知らないよー。矢崎のことなんか」 「・・・だよね」 お昼ご飯の時間。 って言ってもみんな食べ終わったころ。 教室には女の子が残っておしゃべりを楽しんでいる。 あたしと未来もその中の女の子。 話はもちろん翔のこと。 「ショックー・・・」 「元気だしなよ。あ、あたしと放課後見に行こう?ね?」 「・・・いいの?」 「もちろんだよっ」 テンションがた落ちな未来を励ますのは意外に簡単だったりする。 翔のやつ、どこの女の子をカモにしてんだか。 あいつはよくお小遣い稼ぎとか言って女の子とエッチしてお金を貰ってる。 ただシたいだけだと思うけど。 そんな翔に貢ぐ子も少なくはないわけで、、。 たぶんそのうちの1人だろう。 「未来は・・・もう渉(ワタル)はいいの??」 「渉?あ、あーもういいよ。あんなバカ。」 渉は未来の元カレ。 クラスは違うけどあたし達と同い年。 現役空手部のさわやかタイプだ。 未来の浮気疑惑でけんか別れしたみたいだけど 今でも未来が好きでひきずってるとかいう噂がある。 「渉・・・可哀想」 そう呟くと未来は「デマでしょ」とため息をついて見せた。 あの噂があたしにはデマには思えない。 だって。。 だってさ。 ・・・人を好きでいることって難しいでしょ? 45: 名前:あー汰☆01/06(火) 12 51 19 「あれ?」 放課後、未来と翔の教室に来たのはいいんだけど 肝心の翔がいない。 もう帰っちゃったかな。 ・・・女の子と。 「いないみたいだね」 「はぁー・・・未来ちゃんショック」 「はいはい」 誰も残っていない教室にはいくつか鞄がある。 ただそれだけの空間はもの寂しそうな雰囲気を漂わせる。 ただそれだけなのに。 いつもの教室は人がいなくなるだけで そのものの存在の意味を忘れかけているかの様だった。 「最悪っ・・・。奈緒、あたしちょっと鞄とってくるから待ってて」 「あ、ありがと」 未来はガックリ肩を落として2年の教室のほうに歩いて行った。 残されたのはあたしだけ。 あたししかいない。 この間、翔の座っていた席に近づく。 ―ガタッ 椅子を引いて腰を下ろす。 別に座っても何かが変わるわけじゃない。 ぐるりと見回す教室はやっぱりどこか欠けている。 あたしの様に。 46: 名前:あー汰☆01/06(火) 13 21 13 「奈緒?」 「へ?・・・あ」 教室の出入り口のとこに立ってたのは翔だった。 汗をびっしょりかいている割には制服を着ている。 まだ残ってたんだ。 どっかの部活で遊んできたんだろう。 帰宅部のあたしと未来には部活なんて縁のないことだけど。 「何してんの?しかもそこ、俺の席だし。」 「えーっと・・・あー・・・」 「俺に会いに来たとか?」 「ちがーう」 「あはっ。相変わらずだね」 ニッコリ笑うと机の横にあった鞄を取る。 学校でこんな風に翔と話すなんて思ってもみなかった。 「じゃ、またな」 ―チュッ とわざと音をたてたようなキスをあたしの頬にすると 綺麗に口の端をあげて笑った。 彼氏でもないくせにっ・・・! でも。 翔も相変わらず、、カッコいいじゃん。 「バカ」と言うと「ありがとう」と会話にならない言葉を置いて翔は教室を出て行った。 49: 名前:あー汰☆01/06(火) 15 24 44 「ほんっとに矢崎に会ってない?」 「だーかーらー・・・会ってないって。」 「ふぅーん」 帰り道。 未来の尋問にあってます。 「あんなに顔の赤い奈緒、初めてだったんですよ??」 「きっ気のせいだよ!!気のせい気のせい」 「ふぅーん」 同じ台詞を2回言うと未来はなんとか解放してくれた。 いや、釈放かな。 未来の感は鋭すぎて困る。 未来を相手に浮気隠そうとしても無駄なんだろう。 「あーあ。あたしも会いたかったな、矢崎」 「会ってないって」 そんな会話をしてるとあたしの家についた。 今日は未来はあたしの家に泊まり。 だからあたしの家に一緒に帰宅。 けど、なんて運の悪さ。 ちょうどお隣の家から出てきたのは・・・ 「・・・れ?あれー?あれー!!!?矢崎じゃんッ」 「え?」 「んー?奈緒、何してんの??」 ・・・最悪だ。 幼馴染は萌えるのです 続き1
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ちいさな屋根の中ふたり。 割り切れない。 足したら駄目。 引いたら零。 掛け合わせるくらいで丁度良いじゃない。 ◆ 南極がどのくらい寒いのかなんて私の知ったことではないけれど、とにかく冬は朝起き上がるのに1日の頑張りを使い果たすことは確かだ。 兄の直が部屋に入ってくる音で、私は飴でくっついたような瞼をうっすらと開ける。 「おはようイモムシさん」 直兄さんは毎朝部屋のストーブを点けて、氷みたいに冷たくなったルームシューズをその前に置いてくれる。 そんな兄を私は「冬のかみさま」と呼んでいる。 マッチを擦る音がして、石油の燃え始める匂いがする。 「芋虫じゃないですよう。私にはまりあという聖母の神聖なる名前があるんだからねー」 段々開いてきた瞼越しに、直兄さんの赤毛の短髪が目に入った。ああやっと起きることができる。どうして人間は冬眠しないのか不思議だと思った。 もうお年頃なんだから自分で起きたらどうなんだいと言われた。それができるなら苦労はしない。 下の階でベーコンを焼く音がする。おばあちゃん、もう起きている。私と同じ芋虫族のくせに、今日はどうやらかみさま気取りのようだ。 カーテンを開けるとまだ空は陽も昇らない鉛色だった。 この朝さえなければ、冬はそんなに嫌いではない。 日溜まりのありがたさを知ることができるし、なによりおばあちゃんの作るスイートポテトは格別だ。 下に降りると、もう朝食の準備が整いつつあった。おばあちゃんがスクランブルエッグをつぎ分けているのを見て、私もその皿にケチャップ爆弾をお見舞いしてやった。 おばあちゃんはそのラベンダーみたいな紫色の瞳をきらめかせて“good morning!”と綺麗なキングダムイングリッシュで言った。 おばあちゃんは別に日本語が喋れないわけではない。ただ、たまに私にも分かる簡単な英語を口ずさむ。 白髪ではない、プラチナブロンドが素敵な、私のグランマ。 「世の中って不公平だと思わない? ねえ、直兄さん」 焼いたバケットのとなりにレタスとトマトを不器用に切って添えようとしている(明らかに包丁の持ち方が犯罪者の)兄は、え? と裏返った変な声を出した。 「私も銀髪が良かったなぁ。兄さんも私も赤毛の巻き髪なんてまじブルー。マリッジブルー」 「マリッジブルーは違うだろ」 どうやらこの家系では隔世遺伝なんてちょっとしたミラクルは起こらないようだ。 直兄さんは私との軽口を交わす間にも、バイオリンやら楽譜やらをまとめて、出掛ける準備をしている。 音大生は大変ですねぇと言うと、この時期は指がかじかむからねと意外と真面目な答えが返ってきた。 私自身といえば、今日は高校も開校記念日でお休みだし、こんなに朝早く起きる必要もなかったのだけれど。 1人で朝食っていうのも何だか切ない。 図書館の本を2週間も延滞してしまっているので、まずはそれを返しに行こうかと思った。 朝食を食べ終え、着替えて、歯磨きをして、それからこの癖毛をどうにかこうにか緩いツインテールにして。おばあちゃんにいってきますを言うと、彼女はミルクパンを熱して何か温めていた。 この匂いはショコラだ。1人だけなんて、ずるい。 唇を尖らせていると、おばあちゃんは年相応でない意地悪な微笑みでこちらを見た。たまに魔女みたいだ、この人は。 外に出ると、あまりの寒さに首が縮まった。 イヤーマフをしっかり付け直して、歩き出す。ブーツはお気に入りのラウンドトゥが持ち上がった形。寒いと足下ばかり見てしまうのは私だけだろうか。 こんなことでは背筋が曲がってあまりよろしくない。私はしゃっきり立ち直して、ねずみ色の空を見上げた。 なんだか一雨来そうな、どんより空だ。 傘は持ってきていないので、今降られても困る。 「いたっ」 こつん、と何かが頬に当たる。続いて、ぱちぱちとアスファルトで何かが弾ける音がした。 雨ではない、氷の粒が降ってきたのだ。しかもこの状況では雨でないことを喜べない。氷の粒は小指の爪くらいの大きさはある。 空を睨み付けると、さっきよりも大量に、ばらばらと音を立ててみぞれが降ってきた。 生け花の剣山をファンデーションパフに使ったみたいに、顔の皮膚が氷で撫でられる。 「いったー!」 私は走り出した。どこか雨宿り(この場合氷宿り)できる所を探して。図書館へ向かう道とは違う方へ出てしまう。頭皮にも粒は容赦なく打ち付ける。 仕方がないので延滞している本を傘代わりにした。よい子は真似をしないで欲しいけど。 少し走ったところで、電話ボックスを見つけた。 携帯電話の普及に伴い、町から急に、というかいつの間にか姿を消して、絶滅危惧種になっている存在。 そんな電話ボックスに、なんと先客がいた。 私はその男の身なりに絶句する。 肩に付くか付かないかくらいの黒々とした癖毛を掻きながら、受話器も持たないその男は、甚平を着ていた。 その色は夏の夕焼けのような朱で、その黒い髪とよく映えて綺麗だと思ったが、そんなことはどうでも良い。 甚平とは、夏の夕暮れによく似合う、半袖膝丈の日本の伝統的リラックスウエアだと私は認識している。 それが、こんなみぞれ降りしきる12月にお目にかかろうとは。 「寒そー!」 思わず大声を上げてしまった。すると男はこちらを振り向く。年齢は二十歳に少し足りないくらい。肌が白い。もう寒さで凍死寸前なのではないか。 しかしその男は震える様子もなく、私を墨汁を煮詰めたような瞳で見据えた。 その身が竦むような視線で、私はとっさに気をつけの姿勢を取ってしまう。なんだ、この絶対零度のまなざし。スナイパーにでも狙われているような背筋の寒さ。 でも、こんなところで1人気を付けをしていても氷にどうぞ私に降ってきてくださいと言っているようなものだ。 「あの、電話が終わったのなら、代わって貰えませんか?」 精一杯の笑顔で、私はその男に頼んでみる。こんな状況でなければ、絶対に声なんて掛けないけど。 男は近くで見ると私よりずっと背が高かった。生まれつき目つきが悪いのか、私を見下ろして、これでは何だか蔑まれている感じだ。 聞こえなかったのか、返事がない。 「あのう、今すぐにでも屋根の下に入らないと、痛くて痣ができそうなんです」 「…………」 「この本、図書館から借りてるので、濡らしちゃうとまずいんですよ。ただでさえ延滞してるし」 「…………」 「実は私、とってもか弱かったりして。ごほ、ごほごほ」 「…………」 「うなー!」 遂に私は我慢できなくなってしまった。私の五臓六腑のどこにも堪忍袋なんて無い。まず紐が存在してない。 「何なんですかあなたは! 3点リーダで喋るんですか、それが母国語なんですか? 女の子が雨どころか氷に打たれてるんですよ? 大体あんたその甚平――」 「いーよ」 合唱で言ったらバスくらいの低い声で、その男は初めて喋った。意地悪そうに笑っている。 なんとなく第一印象から幽霊っぽい印象を受けていたので、喋れと言ったのは自分なのに驚いてしまった。 「氷、痛いんでしょ。入ればいいじゃん」 女の人が浮かべたらさぞかし妖艶だろうと思われるその笑みは、この男には何か不釣り合いで不気味でさえある。 しかも、この男、私を入れてくれるのは良いが、自分が出て行く気はさらさら無いらしい。 つまり、電話ボックスの中に、2人。 見知らぬひととこんなに密着するのはただでさえ躊躇われるのに、なぜこんな変人と電話ボックスで寿司詰めにされないといけないのか。 当の本人はそんなことに全く構う素振りも見せず、硝子越しにドロップみたいな氷がアスファルトで弾けるのを見ている。早く止めばここから出られるのに。 男は唐突に、「あんた、名前は?」と聞いてきた。 「まりあよ。平仮名でまりあ」 男はわずかに目を見開いたようだった。あまりありふれた名前ではないけれど、そんなに驚く事だろうか。一応、礼儀として相手の名前を聞いてみる。 「小春」 そのなんとも穏やかな、この天気にもその格好にも合わない名前に、思わず笑ってしまいそうになった。 「あなたも、ここで雨宿りしているの?」 「いや、違う」 こんな狭い空間での沈黙には耐えられないので、私は何か話題を提案しようと思った。 「待ってるんだ」 電話ボックスで誰かと待ち合わせなんて変わっている。そもそも、この変な男に友人や恋人はいるのだろうか。 「待ってる、って誰を?」 「電話」 待っているのは人ではないようだ。でも、電話? 小春さん、21世紀にもなって携帯電話を持っていないらしい。特に、この少年期と青年期の間(だろうと思われる)の年代である人間にしては珍しい。 いや、その前に。電話ボックスで電話を待つって、そんなことがあるのだろうか。 「電話ボックスって、電話を受けたりできるっけ?」 「回線が繋がってるんだ。不可能では無いと思うけど」 「『思う』って……相手が決まってるわけじゃないの?」 そこで小春さんは悪戯っぽく笑った。秘密基地を自慢する子どものそれに似ている。 「決まってない。もし世界中の誰かが、試しにこの公衆電話に電話を掛けてみて、それに俺が応える、それはもう奇跡だろ? 確率なんてもう天文学的な数字にぶっ飛ぶ。俺は、その相手こそが、運命の人だと思う。男であっても、女であっても。死刑囚でも宇宙人でも」 話題を振らない方が良かったかもしれないと私は後悔した。 ふうん、あなたってとってもロマンチストみたいですねと適当に相槌をうって、いよいよ早くみぞれが止まないものかと私は空を睨んだ。 角砂糖ほどの大きさの氷が地面で砕け散る。事態は悪くなっているようだった。 「ときに、まりあ」 いきなり名字ではなく名前で、その低い声が私を呼んだので、私は身が竦む思いをした。一瞬遅れて、名字なんて教えていなかったと思い出す。 「交換ノートって流行ったよね」 あまりに唐突な話で、しかもその単語が久しく聞かない物だった。 しかももう成年していそうなこの小春さんには到底似合わない言葉だ。 「ああ、流行りましたね。私が小学校の時、しかも低学年くらい……いつも私で止まっちゃってましたね。あまり覚えていませんけど」 小春さんはそれを聞いて、何故か満足そうに笑った。気持ち悪い。いや、気味が悪いと言っておこう。本当に幽霊みたいだ。 そっか、そうだよなあと、小春さんは言葉を咀嚼するように頷く。 「覚えてるわけないよな」 そこからまた小春さんの運命的おはなしが始まるかと思いきや、会話はそこで途絶えた。全く持って予想が付けられない人だと思った。 帰ってきて手を洗うと、お湯がかじかんだ指先にじりじりと痛かった。 改めて、外の寒さを思い知る。 甚平なんて着ていたら、私なら3秒で凍死するような気がした。 「変なのに出会っちゃったなぁ」 私がぶつぶつと呟きながらリビングに向かうと、おばあちゃんが窓辺のちっちゃなサボテンから目を離して私を見た。 「おかえりなさい。ひどい雨ね」 「氷よ。ドロップくらいの」 おばあちゃんの紫の瞳は、いつにも増してきらきらと輝いている。 「あなた、なにか良いことがあったの? とてもわくわくしているわ」 「えっ?」 そんなことを言われるとは心外だ。 確かに、「何か」が起こったが、決して良い物ではなく、ましてわくわくなんてしない。 それを言うならおばあちゃんの方だ。 そのあとおばあちゃんに全てを事細かく話したのが悪かったのか、次の日の朝、私の学生鞄の上に見かけない毛糸の帽子とマフラーが置いてあった。 深緑色で、それはとても冬に映える素敵な色ではあるけれど、私はもっとカラフルな色が良かった。例えば、ビビットピンクとか。 「おばあちゃん、ありがとう」 一応、台所のおばあちゃんに聞こえるくらいの声でお礼を言った後、私は鏡の前に向かい、帽子を被ってみた。 被ってみると、私の赤毛によく似合う。こういうのは、やっぱり着てみるまで分からない。 「あら、まりあ。残念だけど、それは貴方のじゃないわよ」 おばあちゃんがルームシューズをぽすぽす鳴らしてやって来た。 瞳が良いことを思いついた少女のように輝いている。 「え? じゃあ、兄さんに?」 「違うわね。きのう話してた、あのお兄さんよ」 「げっ」 「甚平で冬は越せないわよ」 そうか。だからこんなにシックな色合いなのか。 おばあちゃんは自慢げにしているけれど、私はこれを届けに、またあの男に会いに行かなくてはならないのだ。 できればもう二度と再会したくないタイプの人間なのに。 私は決して勉強が得意ではないし好きでもない、でも友達と話すのは楽しいから、なんとか学校の8時間授業を乗り切った。 外に出ると、つんと鼻が痛い。 吸い込む空気も冬の匂いがする。土っぽくて、煙臭い。 思わずくしゃみが出て、その息さえも白くなるのに驚いた。 こんな寒い日、私ならイヤーマフとコート無しでは凍死する。 嫌でもあの甚平男の幽霊みたいな笑みが思い浮かんだ。 ひょっとしたら、小春さんって本当に凍死してて、アレは本物の幽霊なのかもしれない。 三叉路で友達と別れて、私は家とは違う方向に歩き出した。 勿論、公衆電話ボックスに向かうために。 心の奥で今日は居ませんように、と祈っていたけど、聖母ではない偽「まりあ」の願いは打ち砕かれた。 やっぱり、あの男は昨日と同じようにゆるりと立っていた。 「しかもやっぱり甚平だし……」 私の声に気付いたのか、小春さんはこちらを振り返り、にやりと笑った。 この不気味さが苦手なのだ。 何しに来たの、とでも言いそうだったので、私は紙袋を突き出した。小春さんって年齢不詳だからため口を聞いて良いのかどうかも分からない。でもこんな人は礼儀も何も気にするようには見えなかった。 「何これ」 「マフラーと帽子。私のおばあちゃんから」 小春さんは袋の中をしげしげと覗き込むばかりで、全く身につける気配はない。 仕方がないから、私はマフラーを手にとって首に巻いてあげた。 見てるだけでこっちが寒くなりそうだから。 背伸びをしても足りなかったので、結局小春さんに屈んでもらうかたちになる。 緑のマフラー自体はとても似合っているが、甚平と激しくアンバランスだ。 至近距離で目が合ったが、その新月の夜空みたいな黒目に吸い込まれそうな気がして、すぐに逸らしてしまった。 ありがとう、と耳の近くで低音が響く。小さいのにずしっとお腹に響く声だ。 「って言っておいて」 「え?」 「ありがとうって言っておいて、おばあちゃんに」 感謝の言葉は私にではなかった。 ちょっと自分が恥ずかしくなって、慌てた動きで帽子も被せる。 首から上が、何だか一般人になった。 いるいる、スキー場にこんな人。 「なに?」 まじまじ見ていたので、不思議に思われたらしい。 「ううん、似合ってるよ。風邪引かないでね」 早く電話のことは諦めなよ、とは何となく言えなかった。 まさか、小春さんがあんなに自然に感謝の言葉を口にする人だとは思わなかった。 どことなく冷たそうな顔をしているから、そんな風に思ったのかもしれない。 北風に背中を押されながら家路を急ぎ始めると、見慣れた赤毛が目に入った。向こう側から歩いてくる。パーマをかけたみたいに、くるくる。 向こうもこちらに気付いたようで掌を振っている。 「直にいさん!」 今日は何故か帰りが早い。きっと午後に講義が入っていなかったんだ。 そんな日は大抵、直兄さんはとびきり甘いエクレアや、ブリオッシュを買ってきて、おばあちゃんと3人でお茶にする。 今日も茶色い紙袋を抱えているから、何か買ってきているに違いない。 「エクレア?」 「今日はマカロン」 あの可愛らしい色と形を思い浮かべて、私の脳内で既にティータイムがシミュレーションされている。 ああ、早く家に帰りたい。 私は、本当にどうでも良い話だけれど、数学の先生がいかにねちっこくうるさいかを説明して、直兄さんはきちんと相槌を打ってくれた。 そうすれば、すぐに小さな上り坂は終わり、我が家の表札がお出迎えだ。 玄関を開けると、見慣れない靴が二足揃えてあった。 一つは、おばあちゃんが到底履きそうもない10㎝はヒールがある濃いピンクの靴。 もう一つは、直兄さんの趣味ではない、ごつごつした男物の黒いブーツ。髑髏(どくろ)のストラップも付いている。 「なんじゃこりゃ」 私がただいまも言わずに扉を開けたところで立ちつくしていると、直兄さんが横から覗いてきて「僕の趣味じゃない」と言った。 ほんのひととき、中にはいるのが躊躇われて、でも外から凍てつく風が吹き込んだので、私たちは急いで靴を脱いでストーブのあるリビングへ小走りした。 「ただいま!」 お帰りを言うおばあちゃんは居なかった。 代わりに、私と直兄さんを見つめる2人が居た。 30代後半の夫婦のようだけれど、でも、どうして? 年齢が離れているので、おばあちゃんの友達ではなさそうだけれど。 素早く気付いたのは直兄さんの方だった。 方に背負っていたヴァイオリンケースが、割と大きな音を立てて床に落ちる。 いつか、兄さんは、楽器は演奏家の魂だと言っていた。その魂が、無様に床に転がる。私は慌ててそれを拾う。 「え……?」 兄さんは楽器には目もくれず、ただ2人を見ていた。 男の銀髪と紫の瞳、女の縮れた赤毛をただ見ていた。 妙な胸騒ぎがした。だって、あまりにも、似ている―― 「おかえり、直。まりあ」 知らないはずのその2人は、確かに私たちの名を呼んだ。 一夜ひとよに 続き1へ
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218: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆12/08(火) 21 53 41 (ん……けど、あんまりそういう形跡(←)はないっていうか……。噂に聞く血、も出てない……?) 「っん!!」 響の身体に倒れこんだ状態のまま考えていると、かぷっと肩のあたりを噛まれた。 それと同時にようやく今の自分の体勢を理解する。 ばっと何とか身体を起こし、浴衣で胸が見えないように隠してきっと相手を睨みつける。 「……最低」 「あ?昨日善がってたのはどこのどいつだ?」 「誰が!!」 「いやいや、もっと触って欲しいって強請ったのは誰だ?」 (うっ……) 確かに、そんなことを言ってしまったような記憶が。 本当に最悪だ。自分自身の行動に腹が立つ。 「……図星か」 ニヤリと笑われて、悔しさに唇を噛みしめる。 「違うから」 「お前が気失わなかったら最後までヤってたと思うけどな」 「……!」 良かった、やっぱり最後までは……。 「なんなら今続きしてもいいけど」 「へ?っん――!!」 219: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆12/08(火) 22 02 34 「……ぷはぁっ!!」 口内に入ってくる熱い舌に逃れようとするが、何時ものようにあっさりと絡め取られたっぷり数十秒間は繋がっていたような気がする。 ようやく離れたと思った瞬間、ぐいと顔を近づけられる。 ドキン!!! (ち、近い!!) 咄嗟に顔を背けようとしたが、それも叶わず無理やり前を向かされ、嫌でも目が合ってしまう。いつも思うことだけど、何もかもを見透かしているみたいなこの人の瞳が苦手だったりする。 「……莉恵」 さっきまでとは裏腹に、柔らかい声音だ。 そっと頬に手が添えられた。 「さ、最悪だから。朝から……。昨日だって」 「未遂だろ」 私が失神しなかったらどうするつもりだったのか、考えた方が恐ろしい。 「怒んなよ、お前だって良かったくせに」 「怒るよそりゃあ。許さないから」 「可愛い」 …………はい? 220: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆12/08(火) 22 12 10 話の繋ぎ方がおかしかったと思うのは私だけでしょうか。怒ってるんだよ私は。許さないって言ったのに、何を…… 「……て言ったらどうする?」 「え」 「機嫌直ったか?」 (は、ハメられた!) クックッと喉の奥で笑われて私はプツンと切れた。 「どこまでも最低な男……!!そんなんで機嫌とれると思って」 「とか言って、さっきから顔赤いぞ」 「……!!」 思わずばっと離れて顔を両手で抑える。本当だ、確かに熱い。こんなやつの性質の悪い冗談を本気にとるなんて。可愛いなんてあんまり言われたことないから免疫ないってのに、本当に腸が煮えくりかえりそうだ。 「……」 「そう怒るな」 笑いが止まらないのか、響はひとしきり笑うだけ笑ってふと真顔に戻った。私と同じ目線に顔を合わせて、 「……可愛いよ。お前は」 (っ……最悪) 私が今現在理不尽に思うことは二つ。 一つ目は、目の前にいるこの人について。冗談のくせに真剣な顔でそんな言葉を言うのは反則だと思う。思ってもいないくせに、言わないでよ。 二つ目は、他でもない自分自身だ。不覚にも、最後のこの人の一言で心臓が変に高鳴ってしまった自分に。 225: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆12/09(水) 21 15 25 「莉恵」 「……っ」 再び頬に手を添えられ、名前を呼ばれる。 トクン……という胸の鼓動を感じた。 (また、だ) 昨日と同じ。こんなのって、まるで私が響を…… (な……ないない。それはないと思う。だって) そんなことを考えている間にゆっくりと、だが確実に響が顔を近づけてくる。抵抗しようと思えば出来るくらいゆっくりとしたスピードだったけど、なぜか私は動かなかった。否、動けなかった。 唇が、触れる。 そう思った、瞬間。 ガチャッ 漫画か!と突っ込まれそうな見事なタイミングで、部屋のドアが開いた。 「グッモーニン!相川さんちのひーびーきさーん…… ……って、えーっと……なんだこれは、俺はまだ夢の中に居るのか?」 「!!??」 (う……嘘!!駿んんん!?) 私たちはパッと弾かれた様にお互いから離れた。私はドアに背を向けた状態だった。恐る恐る後ろを振り向く。 「……おはようございます、朝からお熱いですね」 「……お、はよ……って」 シュルッ 振り返った反動で、私の肩から浴衣がずり落ちた。 そう、このとき私はまだちゃんと着直していなかった。 パラッ…… 「っうおっ!?」 「……い、嫌ぁああぁあ!!!み、見るな馬鹿!!」 それからのことはあんまり覚えてない。覚えてるのは、とりあえず枕を駿の顔面に投げつけてから、これでもかってくらい超特急で肌蹴た服装を直し、部屋から逃げた。これだけ。 226: 名前:葵 (Q7URc37si.)☆12/09(水) 21 22 53 ガッ 「(ひいいい)あ、朝から大層ご立腹な様ですねキャプテン。あの、この胸倉にある手は何でしょうか」 「てめぇ……何て事しやがる」 「(お、鬼の目!!) いや、そりゃあ、まあね?もう高校2年生だし?男女が一緒に一晩過ごして、そりゃあ何もないってことはないと思うよ、まあ俺だってまさか朝までこんなことしてるとは思わないし?」 「……失せろこの野郎」 「で、どうだったんだよ。感想は?莉恵の中に入った感想は」 「……入ってねぇぇ!!!最後どころか序の口で終わったんだよ!!ヤってねーよ!!」 「な、殴るな!!ま、マジでか……あ、そーいや莉恵ってかなり着やせするタイプ?まじでかかったよなあれは」 「……殺す」 「うおぉぉおお!!!」 びくっ (な、何か今ものすごい悲鳴が聞こえた気がするけど……まぁいいや) それにしても、駿ってば……どんなタイミングで入ってくるんだ、ノックもせずに。 うちのクラブはキャプテンといい駿といいノックをする習慣がない気がする。次までには徹底しておかないと。 (……それにしても) 「も、もうあの人と顔合わせられない……」 227: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆12/09(水) 21 30 16 さっきトリップ間違えましたがお気になさらず…。 * 「本当に、ありがとうございました!」 「「「ありがとうございました!!」」」 「どういたしまして。これからも頑張ってくださいね」 お昼ちょっと前、私たちはお世話になったホテルの方々に頭を下げた。もう帰路に着くのだ。懐かしいような思いでホテルを見上げる。色々あったなあ、本当に。 「莉恵ちゃん!」 「あ、美菜さん!!」 美菜さんが駆け寄ってきてくれた。 「昨晩辺りヤバかったんじゃない?」 「へ!?なななーに言ってんですか!!」 「動揺するところがまた怪しいわね。会えないけど、沖縄から応援してるから。じゃあね」 何を応援するのかよく分からないけど、 「あ、ありがとうございました……!」 深く頭を下げ、みんなが歩いていく列に加わった。 「莉恵、ばいばーい!」 「じゃあねー!頑張ろうね!」 瞳をはじめ、何人か仲良くなった子とも別れを告げる。寂しいけど、『一人じゃない』って思えるから怖くない。 (みんなが、居てくれるんだな……) 何となく心に温もりを感じて、全員の大きくて広い背中を眺めた。 228: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆12/09(水) 21 40 32 空港に向かうバス停に向かってぞろぞろと歩いていると、 「……おい」 「え?」 声をかけられたので、見てみるとそこにいたのは何と桐生だった。 「な、何「悪かったな」 「……へ?」 おしまいになぜか髪の毛をぐしゃっと撫でられ(?)、行ってしまった。一瞬すぎて目が点になる。 「な、何あいつ……嘘でしょ」 まさかあの桐生がこんなこと言うなんてね……。何という呆気ない結末。かなりびっくりしたけど、もちろんすごく嬉しかった。これでこれからは、真っ直ぐ向き合ってくれるかな、スポーツにも。 自然が顔がニヤけてくる。ヤバい、今の私かなり怪しいと思う。 「何笑ってんだぁ?」 「何でも~」 上機嫌でそう答え、空を見上げる。うわ、雲ひとつない晴天だ。 (来て良かったな、合宿) こうしてみんながたくさんの思いを背負って沖縄を後にした。もちろん私にとっても忘れることの出来ない思い出だ。 (さよなら、沖縄) 234: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆12/11(金) 21 46 35 「……え?あ、そっかお盆休み……ですよね」 「おう、そうだ」 さて、そろそろ合宿から帰ってきて一週間以上が経った。部員達はこれまでに増して練習に身を入れている。そんな中で莫大な量の学校の課題を終わらしているのだから、大したものだ。 しかし、あさってからはお盆休み。当然ながら我がバスケ部も束の間の休息。 久しぶりの休みだから、嬉しい。嬉しいんだけど……。 「……まじですか」 (うっわー!!すっかり忙しすぎて忘れてた……) どういうことか簡潔に説明すると、とりあえずお盆の期間のみ寮は閉まる。だから、生徒はその間一時の帰宅となる。 元々一般寮は遠いところから来ている生徒が居るし、バスケ部だって全国から集まっているのだから、みんながみんな家が近いというわけではない。 私は全然部活のことなんて考えてなかったから、学校から小一時間のところに住んでいるんだけれども。 「久しぶりにお母さんに会えるんだぞ、滅多にない休みなんだし」 (……そうですけど、監督!私喧嘩してから約2カ月、結局仲直りしてないんです。というより忘れてたし!!!) どんな顔して会えば良い?帰りたくない。 ――タイムリミットはあと二日 どうしよう。 235: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆12/11(金) 21 58 34 「あー、これも部屋まで持って行って」 自室のある廊下まで戻ると、色んな服やらタオルやらを運んでいる部員達を見かけた。大方帰る準備だろう。 私も身支度をしなくてはいけないんだけど、気が進まないなぁ……。 けど、寮からは完全に全員が出ないといけないし。 「ほんと最悪……」 パタンと部屋に入り、ベッドにどさっと座り込んだ。 沙耶に相談しようかと思ったけど、沙耶は確か今おばあちゃんの家に行っているとか行ってたし、邪魔するのも悪い。それに私の家の事情を知っているのは、実は響だけだった。 その響に相談するというのも一つ。だけど…… (“あの夜″以来、避けちゃってるんだよねぇ……) どうしても顔を合わせるのが恥ずかしく、部活中も必要最低限のことしか話していない。部活外の寮に居るときも、なるべく顔合わせないようにしてるし。 こんな時に限って、なんとタイミングの悪い。 (家に帰るしかないよなあ……でも、全然連絡とってない) 両親が離婚を決めた後、初めのうちは何度か着信やらメールが来ていたけど、しばらくしたらそれもなくなった。それが余計に腹立たしい。話がしたいのなら会いに来たら良いのに。だから結局もう離婚届を出したのか、それさえも知らないのだ。 (いきなり帰ったらどうなるかな……? お盆休みだから、想定はしてる気もする……。でも、突然玄関で顔合わせても気まずいし) やっぱり連絡はしよう。 そうは決めたけど、その勇気が出なかった。 237: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆12/11(金) 22 05 56 (あぁ、もうっ) イラッとして、枕をドアに向かって力任せに投げつけた(おい)。 「……あぁもう!!どーしたらいいの……」 ガチャッ 「……なんだ今の音?」 「あっ監督……す、すみません」 ちょうど部屋の前を通りかかったらしい、監督が枕を拾い上げてぽかんとしていた。 「荷物纏めたかー?」 「いやあ、それが全然……」 苦笑しながら言う私に、監督が不思議そうに首を傾げる。 「帰りたくない理由でもあるのか?おかしいぞ、なんか」 「はぁ……」 思わずしゅんと項垂れる。すると、監督の後ろから声がかかった。 「あー、監督。そいつは俺に任せて下さい」 「ん?あぁ、相川か」 「え……」 「すいません、俺からよく言っとくんで」 「おう、分かった」 (え、え、え、えええええ) 場の空気的に監督が出て行ってしまった。必然的に、部屋にいるのは私とその人の二人だけ。 239: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆12/11(金) 22 14 01 「……あのよー」 「は、はい」 「お前俺のこと避け過ぎだから」 少し呆れたように言われてしまう。 「別に避けては……」 「いや、完璧に避けてるから。部活中以外は、俺の姿見るなりどっか消えるし、俺がこの部屋の辺り通ったら鍵かけるし」 (お、お見通し……) だけど今、合宿の最後の夜のことを気にしている様子ではなかった。その証拠に、こう聞いてきたからだ。 「お前、家に戻る気は……ないみたいだな」 荷物を纏めた様子がない部屋の状態を見て、響が言う。 「だって……戻りたくない」 思わず本音を言うと、 「餓鬼か」 と突っ込まれてしまった。 「だ、だって!結局あれから一度も連絡取ってないんだよ?離婚したのかどうかだって分かんないし、すっごく怒ってたら……どうしよう……」 「……」 言っている間にどんどん不安になってきて、俯いてしまう。本当は気まずいとかそういう問題以上に、向こうがどんな風に私を思っているかの方が怖かった。 240: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆12/11(金) 22 21 05 「とりあえず、この期間は寮から出るってのが規則だ。分かるな?」 小さい子に諭すようにそう言ってきたので、少し私はムっとする。 「分かるよそのくらい。けど、親に何て連絡して帰ったら良いの?」 「いや、連絡する必要はないだろ」 「……え」 な、なんで?という顔をする私に響は言った。 「どうせ帰ることには変わりねぇだろ。連絡したくないんだろ、どうせ。だったら手っ取り早くさっさと帰って顔見せて来い」 「な……」 こ、この人は……。私がずっと悩んでいたことをすっぱりと切り捨ててしまった。 「でも、いきなり会うのもなんか」 「どうせ休みが終わったらすぐ部活も始まるしすぐ帰ってこれるだろ。 親子だろ、何遠慮してんだよ。大体今の状況で電話も結構気まずいと思うぞ」 (まぁ、確かにそうだけど……) さらに念押しするように響が続ける。 「お前はお前の家に帰るんだよ。心配することは何もねぇよ」 「そ……そんなもんでいいの?」 「あぁ、そんなもんだ」 納得したくないと思うけど、妙に説得力のある言葉だ。 244: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆12/13(日) 18 00 35 ―――二日後 ガタンゴトンと久しぶりの電車に揺られ、荷物を持って外の風景を眺める。主要なものは寮に置いていても平気だけど、一応それなりに荷物はある。 只今午前9時半。外から暑い朝の日差しが入ってきて、思わず顔を顰めた。こっち側に立つんじゃなかったな……。 頭の中で今朝の響との会話を思い出す。 『やっぱ行きたくない……どっか泊まるとこ探す』 『行け』 『うー……』 『もしどっか泊まったら見つけ出して今度こそ最後まで犯すから』 『行ってきます!!』 と、まぁそんなわけだけど。どうしてこんなにもあの人は私の背中を押して(押してるのか?)くれるんだろう。 人の家族の事情なんて放っておいたらいいのに。 【――駅、○○線はお乗り換えです……】 「あー、着いた」 近いからな、割と。すぐに着いてしまう。電車から降りて、重い荷物と身体を引きずるように家の方まで歩いた。 駅から10分も歩けば着く久しぶりの我が家。家の前まで着いてから、私はまだ迷っていた。 しかし、今朝の響の言葉を思いだす。 (あーもう、行けばいいんでしょ!すぐ帰ってやるんだから!) 半ばやけくそで呼び鈴を鳴らした。 249: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆12/17(木) 20 12 00 ピンポーン (き、緊張!!自分の家なのに……) 我が家なのになんでこんなに怖がらないといけないわけ?今になって自分がどれほど学校の寮に馴染んでいたのか実感した。 ガチャッ 「はーい…… ……!」 「た……ただいま」 「莉、莉恵……!?あんた、帰ってくるんなら電話の一本くらい入れたら良かったのに……!」 相当驚いたようだが、ドアを開けてくれる。一瞬躊躇したけどドアの向こうに広がった懐かしい空間に勇気づけられて、足を踏み出した。 (ほらね、響。やっぱり連絡したほうが良かったんだよ、びっくりさせたし) それに…… (お母さん、痩せたなあ) やつれたというべきなのだろうか、顔からも疲れが滲み出ている。 とりあえず家に入って、数か月ぶりに自分の部屋に行ってみる。 「……懐かしい」 ほんの数カ月ぶりなのに、とっても懐かしく感じる。荷物をそこに置いて、自分のベッドに倒れ込んだ。なんだかどっと疲れが押し寄せてきて、家に帰って来たばかりだというのにそのまま私は寝てしまった。 young leaf 続き11
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430: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆07/18(日) 21 28 04 どうしてそれを…… 「何で知ってんだって顔してるけど、さっきの話と同じ。今ちょっと本気出して調べたら一発なんだよ。 クラスの女子とか色々聞いてたら、お前結構気強いしマネージャーやってるくらいだから、絶対あんまり人に弱音はかねーだろ」 「っ……」 『少しは俺らを頼れよ』 よく響に言われていた言葉。 同じような事をこの男に言われているようで腹が立つ。 「人に弱音吐かない、おまけに両親は離婚。付け込むには都合良かったんだよ」 ……要するに、 「……私はただのあんたの性欲処理機だったわけ?」 「まぁそういうこと。 理由は他にもあるけど、そっちはあんま言えねーな……っと、あぶねーなっ……クソ女がっ!」 許さない許さない この男 気付いたらこの男に掴みかかっていた。 「最っ低!!!許さないっ……あんただけは絶対!!」 人の弱みに付け込んで、性格を利用して 他人を使って騙して玩具にしてた? それに気付かなかった自分にも腹が立つけど。 「許さないっ……返して、返してよ!!」 ここしばらくの生活を、返してよ 全部全部返して。 必死で拳を振り上げるもすべて軽々とかわされてしまう。手が駄目なら足で、と思い勢いよく振り上げたらその足を掴まれてしまった。 (やばいっ) 「やっ……離して!!離してよ!!!」 「怒りに身任せても全然迫力ねーぞ、狙い定まってないから。 はいはい、大人しくしてなー」 「んむっ……!?」 どのタイミングで取り出していたのか、口に飴玉のようなものを押しこまれる。何かと考える間もなく、口づけをされて舌を使って体に無理やり飲み込まされた。そのままベッドに放り投げられる。 逃げようとしたら上から馬乗りにされ動けなかった。 「っ嫌!!やめてっもう嫌……っ!!」 上に乗ってちっとも動かないこの男に、力の差を見せつけられているようでむかついた。 それでもしばらく抵抗を続ける。ところが少し経つと、何故か手足に力が入らなくなってきた。 (なに、これ……) 動けないよ 誰か、 (響……) 力が、入ん な い 431: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆07/18(日) 21 28 04 どうしてそれを…… 「何で知ってんだって顔してるけど、さっきの話と同じ。今ちょっと本気出して調べたら一発なんだよ。 クラスの女子とか色々聞いてたら、お前結構気強いしマネージャーやってるくらいだから、絶対あんまり人に弱音はかねーだろ」 「っ……」 『少しは俺らを頼れよ』 よく響に言われていた言葉。 同じような事をこの男に言われているようで腹が立つ。 「人に弱音吐かない、おまけに両親は離婚。付け込むには都合良かったんだよ」 ……要するに、 「……私はただのあんたの性欲処理機だったわけ?」 「まぁそういうこと。 理由は他にもあるけど、そっちはあんま言えねーな……っと、あぶねーなっ……クソ女がっ!」 許さない許さない この男 気付いたらこの男に掴みかかっていた。 「最っ低!!!許さないっ……あんただけは絶対!!」 人の弱みに付け込んで、性格を利用して 他人を使って騙して玩具にしてた? それに気付かなかった自分にも腹が立つけど。 「許さないっ……返して、返してよ!!」 ここしばらくの生活を、返してよ 全部全部返して。 必死で拳を振り上げるもすべて軽々とかわされてしまう。手が駄目なら足で、と思い勢いよく振り上げたらその足を掴まれてしまった。 (やばいっ) 「やっ……離して!!離してよ!!!」 「怒りに身任せても全然迫力ねーぞ、狙い定まってないから。 はいはい、大人しくしてなー」 「んむっ……!?」 どのタイミングで取り出していたのか、口に飴玉のようなものを押しこまれる。何かと考える間もなく、口づけをされて舌を使って体に無理やり飲み込まされた。そのままベッドに放り投げられる。 逃げようとしたら上から馬乗りにされ動けなかった。 「っ嫌!!やめてっもう嫌……っ!!」 上に乗ってちっとも動かないこの男に、力の差を見せつけられているようでむかついた。 それでもしばらく抵抗を続ける。ところが少し経つと、何故か手足に力が入らなくなってきた。 (なに、これ……) 動けないよ 誰か、 (響……) 力が、入ん な い 432: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆07/18(日) 21 43 29 「んー、後夜祭もう始まるのにまだ何人かいないねー」 「えーと、莉恵と佐久間くんは多分いちゃいちゃしてんじゃない?響とか優華ちゃんもいないねー」 「まーいっか、また後で来るでしょ!行こっ……沙耶?」 「……あたし、もうちょっと教室で待ってる」 「分かった、じゃあまたあとでね」 (莉恵……あんた何してるの?) 「ちょ……響、痛いってばぁ」 「吐け。あいつらの居場所はどこだっつってんだよ!!」 何時まで経ってもはっきりしないこの女にいい加減殴りたい衝動に駆られる。 「知らないってばぁ。優華だってずっと蓮と連絡とってるわけじゃないんだしー。 ていうか、最近蓮が何してるのかあんまりよく知らない。一人で何かしてるみたいだけど」 (畜生、この広い学校のどこに居るってんだ……) 図書室も理科室も資料室も、人がいなさそうなところはすべて見たはずだ。なのにどこにもいない。この女を頼れない以上、もう一度探すしかない。 「……お前と蓮、グルだろ」 「……響はそんなにあの子が良いの?」 「いい加減それ以上しゃべんな。女だってこと忘れて殴んぞ」 「はぁ……仕方ないなぁ。 あと、グルかって言われても困るもん。そりゃあ最初は、あの女が嫌だったし?だけど最近蓮は優華に何も言わないし。 ……優華もう帰るー」 (ふざけんな、この女) 「もう次から学校来ないし、寂しいなあ……。 じゃーね」 「……次会った時気をつけろ。容赦しねぇ」 「ふーん…… 優華、保健室寄ってこっかなぁ……。じゃあね」 (保健室?) いや、今日はもうこの時間は空いてないだろ……鍵も掛ってる。 (……) まさか、な 「あんなに必死になって、馬鹿みたい。 ……敵わないなぁ、もう」 438: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆07/20(火) 22 38 46 みちるさま あげありがとうございます! プリンさま はぁはぁだなんて、照れるじゃないですか//殴 ありがとうございます^^ あきさま 面白いですか!頑張りますね、ありがとうございます。 miniさま 珍しく最近更新頻度上がりました~ありがとうございます。 ライラさま 感謝感謝です( ;ω;`)あげありがとうございます! 今日手の指を怪我してしまい冷やしながらなので、多分更新少ない……と思います>< * 「っ……ん、はあ……も、やめ……」 完璧に力が抜けきったのを良い事に、服は全部はぎ取られて正に生まれたままの格好でベッドに横たわっている状態。おまけに足は大きくだらしなく開いて両手は頭の上で纏められていて、正直もう死んでしまいたい。 足の間のところに蓮が頭を埋めている。舌先がそこに触れるたびに一々反応してしまう体を呪う。 「んっや……ぁあ!!」 びくんと波打った体を見て蓮が満足げに笑った。 「まーたイった?何回目だよ……この淫乱」 (力、入らない……抵抗したいのに、出来ない) さっきの飴に多分痺れ薬みたいな効果があったんだと思う。動きたくても動けないもどかしさ、どうにかなってほしい。 「はあ、はぁ……も、や……」 もう良いから、全部どうでも良いから早く終わらせて。早く、早く。 「ひ、びき……っひっく……んぁあ……!!」 涙が止まらなくて、だけどその間にも指を一気に三本くらい入れられた。圧迫感に息がつまりそうだ。 「残念だったな、抱かれてる相手が大好きなあいつじゃなくて……簡単に終わらせねーよ」 「やだ、早く終わらせて……良いからも……っ!?」 突然、口の中に熱いモノが入ってきた 439: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆07/20(火) 22 54 02 (嘘……やだやだやだ!!) 「んーっ!!!」 苦しい、上手く息が出来ない、気持ち悪い気持ち悪い嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ 「さっさと終わらせたいんだろ?早く舐めろよ、聞いてんのかよ」 バシッ (痛っ……) 頬を結構強い力で殴られ、一瞬頭の中がちかちかした。 「これ以上殴られたくなかったら早くしろ……次はもっと強く殴んぞ」 死ぬほど嫌だったけど、仕方なく私はそれを泣く泣く口で奉仕し始めた。こんなのやったことない、分かんないよ気持ち悪いだけ。 (どうして、こんなことに……) 後悔先に立たずっていうけれど、この時ほどその言葉を痛感したことはなかった。 「んっ!ん、んうっ……」 突然蓮が腰を振るもんだから、それが喉について吐き気がする。 早く終わって。早く、早く 「っはっ……!?」 「っあぁ……」 「はぁ、は……っ!!や、ああぁぁぁんっ……!!!」 ようやく口から抜かれたと思ったら顔に飛び散った生温かいもの。拭きたくても上手く動けないから、思いっきり顔をしかめてやった。するとそれが気に入らなかったのか、一気に体の中に蓮のそれが勢いよく入った。 「も、無理……や、ぁ、あ、あ、あぁっやっあああ……!!」 気付いたら大声になっていた。その悲鳴みたいな声を上げることしか出来ない。ぎりぎりまで抜いては奥まで入り、をひたすら繰り返される。頭が朦朧としてきている。自分の身体が自分のものじゃないみたい、もう何も考えられない…… (……痛い、) 心が、痛いよ ――――――ガン!!! 「「!?」」 ドアを蹴るような、ものすごい音がした。思わず蓮まで動きを止めて、ドアの方をうかがっている。 (……誰かいるの……?) 不気味なほどにシーンとした部屋に、外から聞こえてきた大きな声。 「……い、おい、いんのかそこに!!!莉恵!!居るんなら返事しやがれ馬鹿野郎!!」 (!!) この、声。一人しかいない。 頬をつーっと涙が伝うのを感じた。 448: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆07/24(土) 22 23 19 みさま 応援のお言葉ありがとうございます! ライラさま 良い話でしょうか……泣けますか´ω`嬉しい限りです、ありがとうございます。 miniさま 最近ちょっと頑張ってますwなるべくたくさん出来るよう^^ ありがとうございます。 プリンさま そのままぼこぼこにしちゃってください私の分も^^(黒笑 ありがとうございます。 mimiさま ありがとうございます。 そろそろだいぶ終盤ですね……ですが私は話をまとめるのが下手なのでなんやかんやで文化祭後もちょっとぐだぐだと続きそうです。 話が完結したら番外編でも書いてみようかしら…… のッちさま 皆様の蓮への怒り最高潮ですね、感想が毎回楽しみです!(笑)ありがとうございます。 寧音 初めから読んで下さりありがとうございます! 期待に応えられるよう精いっぱい頑張ります。 夏海さま またまた全て読んでくださりありがたい限りです! 最高だなんて>< これからもがんばりますね。 * (これは……夢?本当に、そこにいるの?) 「ひ、びきっ……っんっぁ!?」 「邪魔が入る前にさっさと終わらそうぜ」 (やだっこの人まだ……!!) 息も絶え絶えに必死で名前を呼んだが、すぐに蓮によって行動が開始された。諦めると思ったのに。私の声は響に届いたのか分からない。 しかも、今こんな姿を響に見られるなんて……耐えられない。 「やっぁ……!!も、無「ガシャン!!!」……え」 物凄い大きな音に肩がびくっと反応した。と同時に、自分の身体の上から蓮の姿がなくなり、ヌルっと蓮のものが抜かれる感触。 「ぁ、はぁ……は、」 「この野郎っ……!!」 「っ!!」 バキっと殴るような嫌な音が部屋に響き渡った。するとベッドにいた私に何か柔らかいものがばさっと覆いかぶさった。よく見るとこれはバスケ部がよく使っている上着だ。 「手、出しやがって……っこの、糞男がっ」 「残念だったな……ちょっと遅かったじゃねえか」 「っ……!!」 蓮の言葉にもう一度響が拳を振り上げ体全体を使って殴りかかる。 我に返って状況を見て、私ははっとして声を上げた。 450: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆07/24(土) 22 40 41 「も、いいよ……!やめて響!!」 「良くねえっ……殴らねえと、殺さねえと気が済まねえよっ!!」 「駄目だって、ばっ……!!」 響がさっき咄嗟に貸してくれた大きめの上着で何とか身を包み、必死で後ろから彼を止める。 だって、これ以上したら停部……停学だって起きうるじゃない。 私の必死の思いが伝わったのか、一旦響は動きを止めた。 「いいから……今響が殴ってくれたので充分気は済んだよ」 「……」 経験の差というか生き方というか、こういう喧嘩では響の方が圧倒的に優勢だった。蓮も苦しそうに倒れてるし、もう……充分だ。 バキッ 「え……な、何また殴ってんのよ!!」 何て言うか、もう蓮はぼろぼろだ。 「今のはお前の分な」 「あー……」 (なるほどね) 「もう、顔も見たくない……さっさと早くどっか行って」 「あぁ……俺の気が変わらないうちにな」 私が響の背に半分隠れながらそう言うと、響がここぞとばかり足で蓮を外に追いやった。 さっきの衝撃で壊れたドアのところまでようやく辿り着いた蓮は、最後にこちらを一度振り返った。 「んとに、馬鹿な二人だなっ……」 「馬鹿で結構」 蓮の言葉に反応したのは私。 「あんた絶対、何か返ってくるわよ……人を守ろうとして必死になるどこが馬鹿なのよ。こんな、こんな私より……あんたの方がよっぽど、馬鹿で汚い」 「……」 結構キツイ口調で、一番言いたかったことを言えて少しだけすっきりした。悔しそうな顔で睨みつけた後、蓮は保健室を出て行った。 「……っ」 「……、莉恵?」 (助かった) 緊張の糸が切れたのと、全てが終わったんだと思ったのとで体から一気に力が抜けた。ついでにさっきまでの行為のせいで体のあちこちが痛い。 火事場の馬鹿力というやつで、痺れ薬のことをすっかり忘れて動いていたけど、まただるさを思い出してきた。次第に意識が朦朧として来て、目の前が真っ暗になっていく。 意識が飛ぶ直前に感じたのは、私を包む大きくて温かい腕。 (この温もり、知ってる……) 「……一人には、させねえよ。何があっても」 何か耳元で囁かれたけど、あまりよく覚えていない。だけど、ただ安心出来た。 462: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆07/27(火) 19 30 17 ムがない!さま、あやさま、夏海さま、ライラさま 温かいお言葉ありがとうございます。正直ハラハラしながら掲示板を開いたのですが、嬉しくて嬉しくてほっとしました……。 この小説が成り立っているのも皆さんのおかげなんです本当に!! どうしようかと少し迷いましたが、楽しみしてくださっている方を待たせたくはないし、夏海さんの言うとおりこのスレもあと少しなので書かないともったいないし、 実際真似をした話ではないので気ににする必要もないかと思い……せっかくの夏休みで、アイディアがある今の内に更新しないと書けなくなりそうなので、気にせずに普通に更新再開しようと思います。 今後気に食わないと思う人がいたら、読まずに無視してもらったらいいので……小説掲示板のルールに書かれているように。 いつも読んでくださっている方本当に本当にありがとうございます。今後ともよろしくお願いします! * 「――……っ」 ぱちっと目が開いた。最初に視界に入ったのは見慣れた天井だった。 (えーと……) 何で寝てるんだっけ、寝る前の記憶がない。少し上半身を動かすと腰に鈍い痛みが走った。 それに顔を顰めながらふと横を見ると、床に座って私が寝ているベッドにもたれかかるようにしてじっとしている(見えないけど多分寝てる)響が目に入った。 一瞬何でいるのかとかなりドキっとしたけど、そのおかげで思いだした。 「っ……、そっか、昨日……」 ――助けてくれたんだ。 それに気付いたと同時に、怖くなった。全部この人に知られてしまったということに気付いて。 どうしよう。何から話したらいいんだろう……全てが申し訳過ぎて、今何をすべきか分からない。 (そういえば私、今いつもの寝巻着てるし、体も全然綺麗だ……) どうしてだろう、と考えたそのとき、布団の擦れる音で響がビクッと反応した。 「……ぅ、莉恵……?」 「お……おは、よ、響」 と、とりあえず挨拶……かな。そう思い言ってみたら、寝起きとは思えない程の勢いで響がこっちを振り返った。 463: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆07/27(火) 19 45 29 「お前……!!」 「は、はいっ……!」 思わず何故か敬語になってしまった。ずっとさっきの体勢で寝てたのだろうか。絶対寝不足だ、隈出来てる……綺麗な顔が台無しだ。 「気分、どうだ……」 「ん……大丈夫、だと思う……」 少なくとも、昨日までに比べてはマシだろう。 でも、あんな姿を見られてしまった。またその事実を思い出して俯いてぎゅっと布団を握った。 (もう、みんなが知ってるみたいな私じゃない……綺麗なんかじゃない) 「……」 黙っている私に、響がたたみ掛けるように言う。 「……おい。何考えてんのか手に取るよーに分かんぞ。 お前が何と言おうと、俺は―― っ!!」 そう言って腰を上げて、私の方に手を伸ばした響。思わず咄嗟にその手を払ってしまった。 (……あ) 「ご、ごめ……」 何してんだろう。でも、でも……もうこの人の隣にいて良いような、体じゃない。 というよりも、単に嫌だった。あんなことをしていた自分を知られて、触れられることが。 「……ないで」 もう一度手を伸ばしかけた彼に向かって、喉の奥から声を絞り出して言った。 「あ?」 「触らないでっ……汚いよ……」 「!」 響の顔が強張った。 young leaf 続き19
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378: 名前:灰人 (L/G6UpmrlY)☆12/04(金) 20 25 21 まさかこんなに長くなるとは… ベタなネタですw ※※ 【ひとりになるくらいなら貴方といた方がマシ】 「ここって出るらしいぜ?」 同じ大学の友人五人と小旅行にやって来ていた柚希は、友人の一人の言葉に見ている方が心配してしまう程に顔を真っ青にさせた。 出るって何が? なんて事は怖くて聞けない。 ここは柚希を含めた六人が泊まる事になった旅館の大部屋。 夕食を終わらせてから、この旅館の目玉である大浴場にみんなで行こうという話になった。そして、その大浴場を満喫してから部屋に帰ってきた所で柚希はこの話を聞かされたのだ。 「な、なんで今更そんな事言うんだよ!」 幽霊やそういう類のものが苦手な柚希は真っ青になりながら必死な表情で自分に情報を与えた友人に掴み掛かる。 「だって一応教えておこうかな、ってさ。これから俺達肝試し行ってくるし」 「えぇっ!? オレ聞いてないぞ!」 「だから今言ってるんだよ」 柚希に激しく揺さぶられて真っ青になりかけている友人の代わりに他の友人が答えた。 柚希は揺さぶっていた友人を解放して、ついには頭を抱えてしまう。友人達は柚希が苦手なのを知っていて今まで言わないでいたのでそれぞれ苦笑を洩らした。 「やだやだ! オレ絶対行かない!」 「そう言うと思った。だから柚希待っててよ。一人で」 「ひ、とり、で……?」 柚希の身体から血の気が引く。 なにか出るかもしれないのに、そんな所に一人で居なくてはいけないなんて柚希には耐えられなかった。 「で、でも今風呂から帰って来たんだぞ? また外に出るのか?」 どうにかして友人を引き止めたい柚希はそれっぽい事を言って、縋るような視線を友人達に向ける。 恐怖から潤んだ大きな瞳は何かの小動物を思わせたが、友人達はやはり苦笑を洩らすだけだった。 「……だったら俺残ろうか」 そんな中、柚希にとっては神の声にも等しいそれに柚希が声の方を振り返る。当然喜ぶだろうと思った残りの友人達の予想は次の柚希の一言に見事裏切られた。 「お前なんか残んなくていい! むしろお化けに憑かれちまえ!」 先程までの殊勝な様子とは打って変わって目尻を吊り上げて叫んだ柚希。そんな柚希と、柚希に言われた本人以外の友人四人は揃って目を丸くさせた。 「おいおい柚希。どうしたんだよ。せっかく室町が残ってくれるって言ってんのに」 「柚希、室町にベッタリなくせに」 「喧嘩でもしてんの?」 「え、痴話喧嘩? 丁度良いから仲直りしちゃえば?」 面白がるように好き勝手言う友人達に柚希は真っ青だった顔を今度は真っ赤にさせる。 違う! と思わず叫べば、なら良いじゃないか、と友人四人は柚希と室町の二人を残してさっさと部屋を出て行ってしまった。 「人でなしー!」 そう言うものの、四人を追いかけることはしない。追いかけて行った先で怖い思いをしたくないからだ。 一通り柚希は四人に対しての暴言を吐いてから、ハタと自分とこの部屋に残っている男の存在を思い出す。 「ゆ、ゆゆ、幸哉! 変な事すんなよ!」 口調は強いものだったが動揺しているのが丸判りの柚希に室町は顔には出さずに苦笑した。 男にしては線が細く身長は百七十にギリギリ届くかどうか。顔も比較的可愛らしい部類に入る柚希と、それとは対称に百八十を優に超える長身。服の上からも見て取れる厚い胸板に精悍な顔つきの室町は、大学内でも凸凹コンビとして有名だった。 「変な事?」 回りからは柚希の方が室町にくっついている様に見えているらしいが、実際は室町の方が柚希を溺愛している。 「こ、この間みたいな事だ!」 今の柚希は言うなれば毛を逆立てた猫の様だった。 胡座をかいている室町に対して完全に立ち上がっている柚希。風呂上がりに着た旅館の浴衣の裾からは大きく開かれた柚希の生足が覗いている。 「あぁ、俺がお前キスした事か?」 「そうだ! お前がオレにキ、キ、キ--、ん? どこ見てるんだ?」 今思い出したと言わんばかりの、柚希にすれば不本意極まりない反応の室町。再度怒鳴ろうとしてふと、柚希が室町の視線が他に向いている事に気付いた。 柚希が室町の視線を辿る。そして行き着いたのは露になっていた自分の太腿。 「こんっの、変態!」 ゴンッ、と重く鈍い音がしたかと思えば浴衣の裾を手で合わせ握り拳を作っている柚希と、呻き声を洩らしながら頭を押さえる室町が。 さすがに我慢ならない柚希は赤くなってしまった拳を再び振り上げる。が、それは室町を殴り付ける前に呆気なく室町によって掴み止められてしまった。 「離せバカ! --っ!?」 しかもそのまま腕を引かれ、室町の胸に倒れ込んでしまう始末。柚希はワンテンポ遅れて状況を理解し、室町の腕の中から逃れようと室町の胸板に腕を突っ張った。 しかし体格の差もさる事ながら、柚希は力でも室町には到底及ばない。しっかりっ抱きすくめられてしまう。 「や、だ……っ。幸哉……!」 「大人しくしろ。それに、いい加減返事をしてくれないなら俺も強行手段にでる」 “返事”と言われ柚希は室町の腕の中で身を固くさせた。数日程前に、室町に好きだと告白され熱烈なキスを受けた事がまざまざと思い出された。 「や、だって、オレもお前も男だし……」 「お前は知らないみたいだけどな、あの四人それぞれ付き合ってるぞ」 「えぇっ!? 嘘だっ!」 「本当だ。今頃だって暗くて人気がないのを良い事に楽しんでるんじゃないか?」 開いた口が塞がらないとはこの事だ、と柚希は室町を見つめながら思っていた。あまりに衝撃的すぎて頭がついていかない。 友人達がゲイだったのもショックだったが、室町が知っていたのに自分だけが知らなかったのが柚希にとってはかなりショックだった。そりゃ初めは戸惑ったかも知れないが大切な友人達。応援してやろうと思う。 「な? だから俺達もさ--」 室町がポカンとした表情で柚希が固まっているのを良い事に顔を近付けていく。もう少しで唇同士が触れそうになった所で漸く柚希が我を取り戻した。ハッとして室町を渾身の力で押し返す。 「だ、だからってこれとは関係ないだろ! 本当はお前に四人の後を追って出て行って欲しいけどそーゆー事情があるなら仕方ない。ここに居ていいぞ! ただし、そこから動くなよ!」 「別に、今からでも外行って良いけど?」 どうにか室町の腕の中から逃れられた柚希。偉そうに踏ん反り返り言うが、室町が柚希を残して外へと出ようとして、思わず抱き付いて引き止めてしまった。 「こ、こんな所でひとりになるくらいならお前といた方がマシだ!」 ひとりになるくらいなら貴方といた方がマシ。 お願いなんで一緒に居て下さいっ! 379: 名前:灰人 (L/G6UpmrlY)☆12/05(土) 16 21 26 とりあえず乳首責め← ※※ 【二つの甘味】 服を着込んだままの状態でベッドに放られた真琴は、背後から抱きすくめられる形で、朔弥に上から三つか四つ程ボタンが外されたシャツの中に手を入れられていた。 「ちょっ、と……っ!」 真琴が己の身体をまさぐる腕を退かせようと両手で掴み離そうとするが朔弥の方が力が強く、びくともしない。 その間にも、朔弥の節の目立つ指が真琴の、男にしては肌理の細かい肌をまるで愛撫でもするかの様に滑る。 「っ……ん、ん--」 弱い刺激に小刻みに震える肩と時折洩れ聞こえる噛み殺した様な喘ぎに朔弥が楽しそうな笑みを口許に浮かべた。 控え目ながらも自己主張をしていた胸の尖りを朔弥の指が掠める。 「ふっ……く……、っん!?」 「なんだよ。もう乳首勃たせてるのか?」 身体を巡った甘い痺れに一際大きく真琴の肩が揺れた。 深みのある官能的な朔弥の声が真琴の耳朶をくすぐる。朔弥の指に、しこった乳嘴を胸の上で転がすように嬲られ、たまに思い出したように指で摘まれ引っ張られるのが真琴には堪らなかった。 背中が反り、朔弥が眼前に曝された真琴の白い首に吸い付く。 「あぁっ……! や、あ……っ」 ツキンとした痛みに真琴が眉を顰める。朔弥が吸い付いた部分には、赤く艶めかしい、朔弥の所有痕が刻まれていた。 「やあ、ぁ……離し、てっ……」 朔弥の拘束から逃れようと頭では思っていても身体の方が、朔弥から与えられる甘美な快楽を求めてしまう。無意識に腰を揺らせば背後で朔弥が笑う気配がした。 「離してとか言う割には、乳首だけでこんなに感じて。ここだけでイケるんじゃないのか?」 「や、むり……できな……っ」 真琴がいやいやをするように頭を振るが朔弥は胸の尖りを苛める手を止めようとはしない。 今まで朔弥の腕を掴んでいた真琴の手からも力が抜け、あまつさえ両足の狭間で張り詰め濡れている果実に伸びてしまう。 僅かに残っていた理性すらもかなぐり捨てて、真琴は己の解放を求めた。 その様子に朔弥も気付いたが、敢えて何も言わず胸の果実の方を嬲り続ける。 「ぁ、ぁあっ……ふ、ぅん」 震える指先で時間を掛けて漸くベルト抜き取りファスナーを下ろす。性急な動きで下着の中に手を入れた。 「あ……あっ、あ……」 「俺に乳首弄られて、自分で下も扱いてるのか?」 「ひ、っ……あ、あぁ……気持ち、い」 口の端から涎を垂れ流しながら自分の身体に巡る享楽に真琴は我を忘れて夢中になる。もはや自分がどんな事を口走ってしまっているのかすら分からなくなっていた。 「ヤらしいな? くちゅくちゅいってる」 言いながら朔弥が真琴のシャツの残りのボタンに指を掛けるが、ついには忌々しそうにシャツを左右に力づくで開く。ブチブチと糸が切れる音がして、留まっていたボタンが弾け飛んだ。 しかし真琴はそんな事を気にする余裕もなく、一心不乱に濡れそぼち、ぐずぐすに熟れる果実を扱き、更にその下の双果の方も空いていた手で揉み込む。 「いいっ……あ、あぁ……イク、っも」 「イク?」 ガクガクと真琴が頷き、雄を扱いていた手の早さを上げた。 朔弥の手は乳嘴から一時的に離れ、その付近の乳暈を柔く揉んでいる。 「乳首も真っ赤だ。引っ張ってやるよ」 「ひっ、! あ、あっ……」 ふと熱を含んだ声で囁かれたと思えば、両方の乳嘴を、取れてしまうんではと思ってしまう程にキツく引っ張られた。皮膚が引きつる痛みと、それを上回る快感に真琴は身体を強張らせ極みに達した。熟れた果実から潤沢の果汁を放出する。 はぁはぁ、と肩で息をして、徐々に冷めていく思考で己の放埒さを目の前にして真琴が消え入りたくなった。 「濃いな? 溜まってたのか?」 「も、なにも……言わないで……っ」 真琴の耳殻にぬるりとした感触。朔弥の濡れた舌が耳の形を確かめるように這う。 「いっそ、乳首を触らないとイケないようにするか?」 二つの甘味。 それは胸の上で男を誘う砂糖菓子。 384: 名前:灰人 (L/G6UpmrlY)☆12/06(日) 18 31 28 【君の知らない誓いのキス】 大人の男二人が寝てもまだ余裕のある我が家のベッドの上には今、あられもない姿の恭悟が一人寝息をたてている。 それはといえば、世間一般的に “情事”なんて呼ばれるソレで恭悟に無理をさせてしまったから。 ただでさえ受け入れる側に負担が大きい行為なのにも拘らずまたやってしまった。 「ごめんな……」 聞こえていないのを判っている上でシーツ一枚でベッドに寝る恭悟に謝罪。 少し皺になっているシーツに艶やかに散る長い髪を梳いてやれば僅かにだが眠っている筈の恭悟の口許が綻んだ。無防備そのものの柔らかい表情はいとも簡単に俺の理性をか細くする。 けどさすがにこれ以上は無理をさせられない。 腰の辺りでだまになってるシーツをしっかり肩まで引き上げてかけてやる。それから自分も隣りに入って、恭悟の頭を自分の腕に乗せた。 「恭悟。愛してるぞ」 「ん……」 サラサラの髪を梳く様に撫でれば恭悟が小さく呻いて俺の手に擦り寄ってくる。そんな様子は猫を思い起こさせて、勝手に頬が緩んだ。 俺は今きっと、見てられない顔をしているなと他人事の様に思った。 「何があっても俺が守ってやるから--」 薄く開く唇に触れるだけの接吻けを落とす。 恭悟が目を覚ます様子のない事に安堵して俺は恭悟の隣りで深い眠りについた。 これは俺自身への戒めだから、 オマエは知らなくて良い誓いのキス。 ※※ だれ^p^w 龍ですよ龍← これでもあの龍さんですよ← 龍でもシリアスにいけるんです← ちなみに 374 の前の夜だったりします。 とりあえず書いてて恥ずかしかったです← 387: 名前:灰人 (L/G6UpmrlY)☆12/07(月) 19 44 49 【こいつらの場合】 ただいま、龍、爽、涼、の兄弟三人の目の前にはなんやかんやで丸い形の缶に詰められたとある有名店の紅茶菓子が置いてあった。 綺麗な柄の缶の蓋を開けてみればそこには様々な種類のクッキーが。甘い物があまり得意ではない長男と三男は顔をしかめたものの、甘い物が好きな次男は目を輝かせた。 「うっわ! 美味しそう!」 「爽。コーヒー淹れてこい」 小さな子供の様にキラキラとした表情でクッキーを見つめていた爽に龍がさも当たり前の様に言い放ち、涼がついでに俺も、と便乗。今度は爽が顔をしかめたが、上と下の二人は見て見ぬ振り。 はぁー、と長い溜め息を吐いた爽が席から立ち上がる。 「コーヒーも良いけど、クッキーにはやっぱり紅茶でしょ?」 ねぇ? と首傾げに爽が言えば、あからさまに面倒臭そうな表情が向けられた。 「じゃあ、ストレート。砂糖も何も入れんな」 「俺、レモンな。砂糖は要らない」 「……で、俺が砂糖たっぷりのミルク。うわぁ、見事に分かれたよ」 口では大変だ、などと言いつつも素直に台所に向かっていった爽の背中を眺めながら、龍と涼は揃って同じ事を考えていた。 「アイツ、将来絶対相手の尻に敷かれる」 「だな。……つか、兄貴。これイケるぞ」 「マジ? ……ン。ホントだな」 好き勝手言ったかと思えばそれっきり。しかも爽が帰ってくる前にクッキーを食べ始めてしまう始末。 爽が帰ってきた頃には大きめの缶の三分の一が空になってしまっていた。 「ちょっ、えぇっ!?」 帰ってきた途端、明らかに食べられた形跡のあるクッキーの缶の中を覗いて奇声を発した爽。危うく手に持っていた三人分のティーカップとソーサーが乗ったトレーを落としそうになる。 それでもなんとか持ち直した爽は紅茶をそれぞれの前に並べてから文句を言い始めた。 「おかしくない!? 待っててくれたって良いじゃん!」 「別に待っててくれ、なんて言われた覚えねぇし」 「…… あ。これも美味い」 「お。どれだよ」 ベタに頬を膨らませて怒る爽に、偉そうに座っていた椅子に踏ん反り返る龍と、あからさまに無視をしてクッキーを摘む涼。 爽が怒った所で二人には痛くも痒くも無い。 それにこのままでは自分の分まで食べられてしまうと爽がさっさと自分の席に着いた。 「……オイ爽。なんだコレ」 「え? だって兄貴はストレートでしょ?」 カップに一口つけたかと思えばすぐさま渋い顔をした龍に爽が口の中にあったものを咀嚼しながら答える。そんな爽に「飲み込んでから喋れ」と涼までもが不愉快そうに眉を顰めた。 「薄くねぇか? コレ」 「兄貴。恭悟の淹れたモンと比べんなよ。これでも爽にしては上出来だ」 「悪かったね。紅茶の一つもまともに淹れられなくて」 本格的に拗ね始める爽だが、龍と涼は相変わらずそれぞれ紅茶の香りを確かめたりクッキーを摘んだりと、好き勝手やっている。 正直、そんな兄弟達に爽は泣きそうになったが、クッキーをザクッと噛み砕く事でぐっと耐えた。そのせいなのか爽の正面のテーブルにはボロボロと屑が零れている。 口許にももちろんクッキーの残骸が。 そして気付けば、クッキー缶の中にはチョコレート味のクッキーが残り一枚に。 しかも同じタイミングでその一枚に三人の手が伸びた。 部屋に微妙な空気が流れる。 「…… オマエら長男を敬え」 「兄貴は弟を可愛がってよ」 「大人気無いよな、二人共」 更に微妙な。加えて重苦しい空気が。 互いが互いを視線で牽制しあいながら、目の前の一枚を自分が手に入れる事を考えた。 「大体、この中で俺が一番食べた量少ないんだから譲ってくれたって良いじゃん!」 「自業自得だろ。つか、涼も大人気無いとか言って爽とは双子--」 ついには言い争いの様な事も始めてしまった龍と爽。不意に、涼の方を向いた龍が言葉を途切れさせる。 気付けばいつの間にか残り一枚だったクッキーが無くなっていて、明らかに何かを咀嚼している涼の顔。 涼が口の中の物を嚥下したのに合わせて喉仏が上下した。 「…… 末っ子は可愛がれよ。兄貴達」 こいつらの場合。 末っ子が一枚上手。 ※※ 龍+双子の兄弟の話でしたw そういえば名字出て来てませんが“速水”です。え? 理由? 語呂が良いでしょ?← この兄弟は末っ子が影の実力者だったり← とりあえず爽が一番立場弱いです。だって爽だもの← 次回は恭悟と恭介の“雅”(って名字なんです)の兄弟Ver.を上げたいと思います(笑)← ではでは、ここまで読んで下さってありがとうございました♪ 388: 名前:灰人 (L/G6UpmrlY)☆12/08(火) 20 49 11 【この子らの場合】 「兄さん。これどうしたの?」 久し振りに実家に帰ってきた大好きな兄にベッタリ引っ付いていた恭介は、その兄が帰ってきた時に持っていた紙袋の中身に首を傾げた。 「あぁ、お土産だって貰ったんだよ」 「仕事関係の人? これって結構高いやつだよね?」 有名な高級店のロゴの入ったそれに“お土産”という事はこれと同じものを他の人にも配ったりしたのだろうか、と首を傾げた恭介。なんとなく嫌な予感がした恭介はそれとなく聞いてみる。 「顔見知り程度なんだけどね。くれる、って言うから貰った」 「……これくれたの男の人?」 「そうだけど?」 どうして恭介がこんな質問をするのか判らない恭悟は首を傾げながらも、お土産の中身がクッキーだった事もあって台所の方へと二人分の飲み物を淹れに行った。 そんな兄の背中を見つめながら恭介は自分の嫌な予感が当たっていた事に小さく息を吐いた。 どこまでも龍の独裁政治に従順--ただ怖くて逆らえない--な恭介。 後で自分の幼馴染みでもあり、兄の恋人でもある龍に連絡しなくては、と心に決めていた。 そして二人分のティーカップとソーサーが乗ったトレーを持って戻ってきた恭悟が見たのは、クッキー缶の蓋を開けた状態で中身を凝視する弟の姿。 思わず恭悟が微苦笑を洩らす。 「先に食べても良かったのに」 「やだよ! 元々は兄さんが貰ったんだし、それに兄さんの淹れた紅茶と食べた方が美味しい!」 力説する恭介にありがとう、と柔らかく微笑んだ恭悟がティーカップの乗ったソーサーを並べた。 フルーツ系の爽やかな香りを肺一杯に吸い込んで、自分と良く似た顔を綻ばせた弟に恭悟もまた笑みを零し二人で笑い合う。 「ティータイムにしようか」 「あ……」 歓談をしながらクッキーを摘んだり紅茶に口を付けていた二人の声が不意に重なった。 最後の一枚を残したクッキー缶を覆うように重なった自分達の手に、それまでの談笑も止み、これまた二人同時に手を引いた時には顔を見合わせてぷっ、と噴き出してしまう。 「恭介が食べな?」 「兄さんが食べなよ」 再び辺りに笑い声が響く。 ふと恭悟が最後の一枚を手に取り、それを真ん中で半分に割った。そして割った半分を弟に差し出す。 「半分こしようか?」 「なんか小さい頃に戻ったみたいだね」 この子らの場合。 ほのぼのと兄弟二人で破顔。 ※※ こっちの兄弟の方が書いてて和んだのは言うまでもありませんねw← もう皆様判ってるかと思いますが、この二人は重度のブラ○ンです← 速水さん家とは真逆ですね(笑) 追記 387に書き忘れましたが、爽は料理等の家事が全く出来ない子です。紅茶だって後から台所に行ったらめちゃくちゃになってます← じゃあなんで行かせたのか? 二人共自分でするのが面倒だったからです← 396: 名前:灰人 (L/G6UpmrlY)☆12/09(水) 22 07 47 【探るような動きの指】 自分の一番恥ずかしい場所から洩れ聞こえる濡れた音に陸は林檎の様に真っ赤な顔を振る。 本当は両腕で隠してしまいたかったが、生憎と両腕は頭上で一纏めに括られて動かせないようにされていた。 「陸の中熱いな? それにくちゅくちゅ音がする」 「いうな、ぁ……っ」 揶揄するようにそう言われ、陸は裕人の視線から逃れようと顔を逸らす。一緒に足も閉じようとしたが、裕人が間に陣取っている為に閉じる事が出来ない。 裕人の眼前には陸の全てが曝されている状態だ。 「や、あ……みな、いで……」 陸の果実はすでに熟れ、豊潤な果汁を零し陰毛や腹を濡らしていた。その付け根にある重そうな双果も引きつり、中に溜まる種を吐き出すのを今か今かと待ちわびている。 「見ないと出来ないから我慢しろよ」 苦笑する裕人の指は陸の内壁を探るように蠢く。 陸の負担を出来る限り減らそうと配慮して塗り込められている潤滑油のお陰で、あるのは多少の違和感ともどかしい快感。 イケるにイケない快感に、陸は悩ましげな表情。 「陸。腰揺れてる」 そう裕人に揶揄するように言われ、陸は唸るような声を洩らす。 不意に、裕人の指が陸のもっとも感じる部分に触れた。 「あっ……!」 途端に強制的に射精を促される様な感覚に襲われる。 シーツを握り締め、頭を振って激しすぎる快感をやり過ごそうとするが、裕人の指は今までの探るような動きが嘘みたいに陸の感じる部分ばかりを苛めた。 「あ、あっ……や、ああっ」 きゅうきゅうと裕人の指を締め付ける陸の内壁は火傷しそうな程に熱く、裕人はこの中に己のを挿入るのを想像してゴクリと喉を鳴らす。 中に入った指はそのままに更に指を足せば、陸のそこは容易く受け入れた。 「あっ、ひあ…… あ、あ」 中の裕人の指がぐるん、と陸の内壁を擦りながら一周する。 「あぁっ! あ、や、あぁ……あ」 「陸のもうイキそうだな。イキたい?」 まだ後ろの刺激では極める事が出来ないのを知っている裕人は意地悪く聞いた。 腰の奥で滾り、燻る熱を持て余していた陸は間髪を入れず裕人の言葉に頷く。早くこの熱を、狂おしい程の欲望を放出してしまいたかった。 すぐさま頷いた陸に裕人は分かった、と一言告げてから陸の快楽の塊を指で弄び、先程から絶えず果汁を溢れさせていた果実へも手を伸ばす。 溢れて止まらない潤沢の果汁を指に絡め先程から解放を望んでいたそれを、果汁を絞り出すかのように扱きだした。 「あっ、あっ、ああ……あ、ああっ」 巧みに快楽のツボを二点同時に突いてくる裕人に陸は早くも陥落する。 爪先がピンと反り、足の指が開ききる。甲高い嬌声を辺りに響かせ陸は灼熱の種を迸らせた。 探るような動きの指。 狭隘な道を押し広げ進む。 397: 名前:灰人 (L/G6UpmrlY)☆12/10(木) 20 13 58 195の龍目線です。 もっと前に上げれば良かったσ(^◇^;) ※※ 【歩道側、少し不服気の君】 休日に恭悟と買い物に出て来た。 別にどこに行きたい、って言うのは二人共無くて適当に色々な場所を回る。 そして今、次の店へと歩いてるんだが、なんでか恭悟の機嫌が悪い。 「どうした? そんないかにも不服だ、って言わんばかりの顔して」 聞いた途端余計に恭悟の機嫌が悪くなった気がする。 端正な眉を寄せて何か思案してる様だった。 「別に。そんな顔してるつもりなんてないけど?」 嘘吐け。 そんなあからさまにソッポ向きやがって隠す気すら無いだろソレ。 第一恋人で幼馴染みの俺が判らない訳無いんだよ。 「嘘吐くなよ。『なんなんだこいつは』って顔してるぞ?」 因みに今は『なんで判るんだ』って顔してる。 「俺なんかしたか?」 「何でもない。少し気になっただけだ」 「何が?」 歩く歩調はそのままに会話を続ける。でもここまで来たら誤魔化そうなんてさせない。 さすがと言うべきか、恭悟もそれを判ってる様子だ。 「どっかの誰かはいつも車道側を歩くな、ってな」 「あぁ、そんな事か。言っとくけど意識してんのはオマエだけだぞ? てか、もう癖になってる」 「は?」 なんて言うか今更だな。 そんな滅多な事は無いだろうけど、少しでも危なくない方を歩かせようと俺が車道側を歩く様にしてたら、それがいつの間にか癖になってて、今じゃ当たり前になってる。 そう説明すれば恭悟がなんだか微妙な顔をした。 「そうか……」 「ン。やっぱそーゆーモンだろ。ソイツが大事な奴なら尚更」 恭悟の指先に一瞬だけ触れる。 傍から見れば偶然ぶつかった様にも見えるけど俺達にはそれだけで十分だ。 しっかり伝わったのか隣りで恭悟が小さく笑う気配がして、俺も笑う。 それから気が付けば辺りは暗くなってて恭悟と二人で家への帰路を歩く。 俺達以外には人の気配も無い。 ふと、隣りを歩く恭悟の手が俺の手に当たったと思ったら手を繋がれた。 「恭悟?」 「今日だけな。今までのご褒美だ」 普段なら絶対有り得ないだけに少し気恥ずかしそうなその声。きっと顔赤くしてんだろうな、なんて思いながら繋がれた手を握り返した。 取り敢えずこの癖は直さない方向で。 404: 名前:灰人 (L/G6UpmrlY)☆12/11(金) 19 48 59 400のお礼です(*^_^*) 少しでも楽しんで頂ければ幸いですw 赤頭巾パロ第二弾!! 今回は赤頭巾が攻めですww ※※ むかしむかし、あるところに赤頭巾ちゃんという、名前の通りいつも赤い頭巾を被っていたそれはそれは可愛いらしい女の子が居ました。 ……間違えました。 赤頭巾という、名前の通りいつも何やら茶色や黒色に近い赤で染まった頭巾を被っていたそれはそれは凛々しい青年が居ました。 【お花の代わりに猟銃を】 人里離れた森の中。そこでも、普通の人間ならば知らない様な入り組んだ場所に狼は居ました。物陰に身を潜め息を殺しながら目的の人物がやって来るのを待って居るようです。 「遅いですね……そろそろ来ても良い頃なのですが……」 待っても待ってもやって来る気配のない目的の人物に狼が首を傾げます。 狼は野蛮と言われている狼の中でも珍しく比較的紳士的でした。狼に紳士も何もないのでしょうが、それでも他の狼に比べると利口ではありました。 「誰かお探しですか?」 「えぇ。もうすぐ来る筈ですので、申し訳ありませんが静かにして下さい」 背後から声をかけられ、普段からの癖で丁寧に応対してからはたと気付きます。 声からして自分の背後に誰かが居るのは間違いありません。しかも狼の自分の背後に気付かれずに立つだなんて余程の手練れの可能性があり、狼が恐る恐る背後を振り返ります。するとそこには、茶色や黒に近い色の赤い頭巾を被った青年が居ました。 狼がその姿に瞠目するのと同時に狼の額に何か硬いものが当てられ、至近距離で焦点が合わない中でもそれが猟銃である事が自分を見下ろす青年の手元の引き金で判りました。 狼は思いました。これは殺される、と。 しかし青年は引き金をすぐに引く事はありませんでした。 「狼さん。誰かお探しですか?」 先程と同じ質問を繰り返したのです。狼は思案した挙げ句、額に擦り付けられた猟銃の銃口を動かされ慌てて早口に青年に答えます。 「あ、赤頭巾を探していますっ」 「そうですか。で、俺に何か用ですか?」 「は、?」 狼に向かってにこやかに微笑んだ青年。 狼は一瞬、目の前の青年に言われた言葉が理解出来ませんでしたが、さすがに利口と言われるだけにすぐに状況を理解しました。 一気に青ざめた顔で目の前の青年、もとい、赤頭巾らしき青年を凝視します。 「あ……赤頭巾、ですか?」 青年が頷きます。狼は心の中で話が違う事に憤りを通り越して呆然としました。 ついには自分を赤頭巾だと言う青年は、笑みを絶さないまま未だ呆然とする狼の首根っこを掴み引き摺りだしました。漸く我に返った狼が抵抗を試みますが、赤頭巾がそんな事を許す筈がありません。 結局狼は赤頭巾にずるずる引き摺られ、当初自分が赤頭巾を連れてくる筈であったお花畑に連れて来られてしまいました。 「は、離して下さい!」 「「離せ」なんて言われて「はい、そうですか」って離すとでも思ってんのか?」 赤頭巾の口調が先程の丁寧なものから一変しています。その口調にもまた、狼は呆然としてしまいました。 そしてお花畑の中心辺りに来たところで不意に赤頭巾が足を止めました。 「狼さん。もし逃げようなんて思ったら容赦なくその両足打ち抜くからな?」 その時狼は見たのです。赤頭巾の背後に闇よりも深い“黒”を。それは狼を本能的に恐れ慄かせました。 狼の身体が、寒い訳でも無いのに震えだし、歯同士がぶつかりガチガチと音を鳴らします。 赤頭巾の言葉は決して冗談などで無いのは見るからに明らかで、狼は「判ったから殺さないでくれ」と言わんばかりに何度も頷きました。 「逆らいさえしなきゃ殺しはしない。狼さん、俺の好みだし」 「は、い? ちょ……え?」 気付けば狼の目の前には、今の狼にとっては嫌味にしかならない程に澄んだ青空をバックにした赤頭巾の顔がありました。 そして狼の後ろには良い香りを漂わせる色とりどりの草花が。漸く狼が、自分が赤頭巾に押し倒された事に気付きます。 赤頭巾の名前には似合わない程に男らしい大きな手が狼の身体を這い、狼の抵抗も虚しく狼の身に着けているモノを全て脱がし去ってしまいました。 そして露にされた狼の素肌に赤頭巾は狼に見せつける様にして舌なめずり。それはまるで獲物を目の前にした捕食者そのままで、狼は先程自らが思った事を訂正しました。これは食われる、と。 「いや、あの、普通これは逆なのでは?」 「なに。狼さんは俺を犯してぇの?」 「犯っ……!?」 狼はここで初めて自分の貞操の危機を感じました。 そして、自分が食われるの意味をある意味履き違えていた事にも気付きます。しかし狼は気付くのが遅過ぎました。 すでに捕食者側は捕らえた獲物の調理に取り掛かろうとしていたのです。 「ひゃっ!? な、なに!?」 「ン? 味見」 味見、と首筋を舐められた狼。ペロリと自らの唇を舐めた赤頭巾のそのセクシャルな仕草にドクン、と自分の心臓が大きく脈打つのを感じます。 狼の頭の中はもう真っ白で、そんな狼を尻目に赤頭巾は着々と狼を犯す為の準備を進めました。 「ちょ、と……ほんとに、やめっ……ン」 「やめない。狼さんイイ顔するし、声もヤらしいからさ」 「そ、んな、っ……ひぁっ!」 赤頭巾の愛撫に緩く勃ち上がっていた狼のそれが握られ、狼から鋭い声があがります。ハッとした狼が自らの口を塞げば、狼が両手を使えないのを良い事に狼の身体を余すとこ無く、無遠慮に這い回る赤頭巾の手。 「ひっ!? や、なに……?」 「乳首気持ち良いの? 可愛い。それじゃ、頂きます--」 狼が赤頭巾に組み敷かれ、毒牙にかかってしまってから数時間。 未だ、狼は赤頭巾に良い様にされておりました。 「んぁ…… は、ぁふ……あ、あぁっ!」 狼の中を赤頭巾の硬い雄が容赦無く蹂躙していきます。それにも拘らず、狭く熱い狼の内壁は赤頭巾の熱り立っている雄をまるで離したくないとでも言う様に締め付けていました。 「狼さんの中、熱くて気持ち良いな?」 どこか揶揄いを含んだ赤頭巾の声色。しかし今の狼には自分の事が精一杯で、そんな事を気にする余裕がありません。今までに体験した事が無い程の快楽を一度に与えられ、自分はどうすれば良いのかさえも全く見当がつきませんでした。 「あっ、あぁ……あん、っ」 今や狼の身体は赤頭巾から与えられる快楽を享受するだけになっていました。閉じる事は忘れられた狼の口からは、苦しそうな喘ぎと涎だけが零れます。 「あ…… あ、あっ、だめ、また、出……」 「出る? ン。俺も。一緒に……イこうか」 「ひっ……ぁああっ!」 赤頭巾の雄が狼の最奥を抉ったのと同時に狼が欲望を放出。 「ッ、ン……!」 遅れて赤頭巾も狼の中へと己の種を植え付けました。 「狼さん、俺のモノになってよ。俺、狼さんの事気に入っちゃった」 極度の疲労感から意識を今にも手放そうとしていた狼は、最後に赤頭巾のそんな声を聞きながら堕ちていった-- お花の代わりに猟銃を。 狼なんて怖くない! 405: 名前:灰人 (L/G6UpmrlY)☆12/12(土) 18 57 40 ベタすぎるネタです^p^ そして短いw ※※ 【入門書通りにすれば問題ない】 「ひぁっ……あ、そこ、そこいいっ……」 「ここか?」 そっと宛てがわれていたのがぐっと押し込まれる。自分の望んでいた場所に与えられた刺激に、勝手に歓喜の声が洩れた。 ぴんっと伸ばされた爪先が宙をかく。 「そこ、そこもっと強く……っあぁ、いいっ……!」 「はいはい」 「んぅっ……! すご、気持ちいい……っ」 自分の身体の上に陣取る男から与えられるそれに背中が反り、快感の滲んだ声が洩れるのを止められない。 瞼が閉じられていてもその恍惚とした表情は隠せなくて、上からそれを見下ろす男も自分がこうさせていると思えば口許が自然に綻んだ。 「にしても、お前ばっかり良い思いするのはずるくないか?」 「あ、んんっ……ごめっ、でも……っん」 「“でも”じゃない」 “イイ”場所を突いていたそれが、更に強めにその場所を押し込む。 自分の体内でごりっ、と音がしたかと思った瞬間、全身に僅かな痛みと強い快感が走った--。 「いやー、本当に久徳のマッサージは気持ち良いねー」 「そらどうも。だからってあんあん言う必要は無いだろ」 「ムラムラした? なんなら今からソッチもシちゃう?」 入門書通りにすれば問題ない。 同時に二人、それぞれの初級をクリア。 413: 名前:灰人 (L/G6UpmrlY)☆12/13(日) 21 05 11 【猫二匹と駄犬が一匹】 「龍。見ろ、可愛いだろ?」 帰宅して早々、そんな事を言った恭悟の腕の中には黒い毛玉--もとい、黒い子猫が抱かれていた。 ふわふわの長毛種らしい子猫はピンッと立った耳を小刻みに動かせ、すんすんと鼻をひくつかせている。 龍は何故そんな物を抱いているのかと一瞬思考を停止させたがすぐに持ち直した。 「オマエが猫耳着けた方が可愛い--」 「知り合いが実家に不幸があって暫く預かる事になったんだが良いだろ?」 「無視か」 当たり前の様に龍の戯言を無視して、腕の中の子猫に嬉しそうに笑う恭悟のそれは幼い子供の様なもの。 元々恭悟が小さな生き物などに弱いのを知っている龍は、その笑みが自分に向けられてではない事に少々自棄になりながらも仕方ないな、とそっと息を吐いた。 「どれくらい預かるんだ?」 「一週間程だが……だめ、か……?」 龍が尋ねれば、子猫を更にしっかりと抱き抱えながら恭悟が上目遣い気味に龍に聞き返した。 ただでさえ恭悟に弱い龍が恭悟の上目遣いでの“おねだり”に反対が出来る筈もなく龍は呆気なく陥落。 こうして暫くの間住人--住猫が一人、いや一匹増える事となった。 一時的とはいえこの家に慣らす為に自由にさせていると、子猫は何故だかソファに座る龍の膝の上で必死に毛づくろいを始めた。 「…… ちっこいなオマエ」 恭悟が連れてきた手前、邪険にする事も出来ずにいた龍はふと膝に乗った子猫の首根っこを掴み目の前にぶら下げた。身体を縮こまらせぶら下げられる子猫。 程なくして部屋着に着替えた恭悟が戻ってきて、龍と龍にぶら下げられた子猫の姿に恭悟が思わず頭を押さえてしまう。 「なにをやってるんだ」 「コイツ雄だ」 子猫の抱き変え、両脇を持ちながら龍が恭悟の方へと子猫の腹を向ける。 子猫はといえば相変わらず大人しく抱かれていて、本当だ雄だな、と龍の手から取り上げられた恭悟の腕の中でもされるがままになっていた。 「猫が二匹……」 龍の隣りに腰掛け子猫と戯れる恭悟の姿を眺めながら龍がポツリと洩らす。 「誰が猫だ。駄犬」 「……ソレの飯とかトイレとかどうすんだよ」 恋人に駄犬呼ばわりされた龍は自分は何も言われて、聞いていないと、話を逸らせた。現実逃避である。 恭悟はそんな龍に内心苦笑しながら玄関近くに置きっ放しの荷物を指差す。そこにはキャリーバッグと大きめの紙袋があり、龍がアレか、とぽんっと手を打った。 「猫用の缶詰とかトイレシートとか必要な物はあれに全部入ってるらしい」 「とりあえず出すもん出しと--」 玄関の荷物から恭悟の方へと視線を移した龍は言葉を詰まらせる。 そこには先程みたいに腕の中の子猫をしっかりと抱き直した恭悟が上目遣い気味に龍を見遣っていた。 しかも子猫の方も何も知らないが故の無垢な瞳で恭悟と共に龍を見遣っている。 「っ……分かったよ。俺がすれば良いんだろ。ったく……」 「悪いな」 眉を寄せながらソファから腰を上げた龍だったが、上機嫌に笑いながら膝に乗せた子猫を撫でる恭悟に龍が毒気を抜かれた。 溜め息を吐きながらも柔らかい表情で玄関の方で荷物の整理を始める。 チラリと恭悟と子猫の様子を盗み見れば抱き上げた子猫の鼻と自分の鼻をくっつけている恭悟の横顔が。 たかが子猫相手に龍の中で嫉妬の炎が確かに揺らめいた。 そして更に不安も。 「一週間後、アイツが猫を欲しがるのが目に浮かぶな……」 大きな溜め息と共に龍の幸せが一つ、逃げていった--。 猫二匹と駄犬が一匹。 それから一週間後、恭悟の“おねだり”に必死に首を左右に振る龍が見られた。 ※※ 猫が黒いのはウチの猫が黒いからd(ry← 多分暫くお兄ちゃんズが続くと思います!! でも最近スラン…トランプ(←)気味だからなぁ…… ※短編だらけ※ 続き10
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5年前、小学六年生の頃のこと。 もうすぐ小学校最後の夏休み直後、俺のクラスに慎也は転校してきた。 なんというか、小学生の時からハテンコーであった。 「先生、感度いいですね」 自己紹介のとき、いきなり担任の胸を揉んで真顔でそういっていたのが印象的だ。 それまでキャーキャー言っていた女子陣からのえもいえぬ沈黙も。 転校してくる前は、アメリカのアーカンソー州ってところにいたらしい。 帰国子女で成績優秀、スポーツもそこそこでき、おまけに顔立ちが物凄く綺麗。 モテ男の三大要素をそなえているのに、慎也は転校三日目でからかう標的にされていた。 「きゃああああ!」 ある日の水泳授業の時のこと。 小学校はまだ男女合同で体育をする。 女子からの悲鳴。 俺はびっくりして後ろを振り返ると、全裸の少年が立っていた。 「中田の変態ーーっ!」 と叫んで、クラスのみんなは大騒ぎだった。 「何やってんの?」 俺は聞いた。すると慎也は真剣な顔で、 「水着が切れてたから」 という。全然意味が分からない。 慎也は周りの目なんて全く気にすることなくプールに入り、泳いでいた。 「中田くん、上がってきなさい。何でハダカなの?」 先生は慎也を無理矢理引き上げた。 そのまま保健室につれていかれ、(俺は慎也の制服を取りに行かされ)先生からの説教を受ける。 俺も少し興味があり、バスタオルに包まった慎也をじっと見ていた。 「どうして水着を着なかったの?」 「着れなかったからです」 俺が持ってきた制服に交えて慎也の水着があった。 確かにずたずたに切り裂かれて、とても着れる状態のものではない。 「じゃあ先生に言えばいいでしょう。なんでそれを思いつかないの?」 「思いつきましたけど」 「じゃあ、どうして?」 しつこく質問攻めされ、慎也は、 「僕はどちらかというと全裸で水泳したいからです」 とひょうひょうと答えていた。 であったときからあんなんだったな。 俺は回想に浸りながら帰っていた。 慎也の変態武勇伝はそれだけに留まらない。 中学生の時、同じクラスの男子生徒に体育倉庫内で襲ったっていって、学校中の噂になったなぁ。 噂というか、真実なんだけど。 そして第一発見者は不幸なことに俺だった。 当時は(半年だけだが)俺は陸上部に入っていた。 先輩にハードルを出すように言われた俺は体育倉庫に向うと、 誰もいないはずなのに中から変な声が聞こえた。 「な…なか…だ、こんなトコでしなくても…。誰か来たらどうすんだよ」 「そういうスリルを味わいたいんだよ、俺は」 …こういう場合、俺はどうしたらいいのだろう。 ハードル出せって言われているのに持っていかないわけにも行かないし、 第一いずれは誰かが来て、バレてしまうじゃねーか。 ならいっそ、俺が入って見つかった彼らは逃げていく、 イコール穏便に済ませられる、でいいんじゃね? コンマ5秒で以上のことを考え、俺は決心して中に入った。 「ゆ、雪代…」 跳び箱の上で、慎也に覆いかぶさられていたクラスメートの男子が困った顔でこちらを見る。 ある程度意識していたので、あまり驚きはしなかった。 「ごめん」 俺はそれだけ言ってハードルを取り出した。 いわゆる…受けの方の男子は顔面蒼白で逃げていく。 よし、思ったとおり。 だが慎也の方は、そこから動こうとしなかった。 「何で邪魔するかな」 「邪魔って…こんなトコであんなんしてるからだろ」 突然慎也は、嫌な感じで俺に迫ってきた。 「な…なんだよ」 「邪魔されたお返ししようかなって」 はぁ? ふざけんじゃねー!! お前が悪いんだろうが。こんなところでしかも男子をたぶらかしてるから!! 「ちょ…やめっ、放せよ!」 ハードルを持った手をつかまれ、壁側に押し付けられる。 怖い…何されるんだ? 俺はその時には既に、慎也はバイセクシャルであることを知っていた。 このままじゃ俺、初めてが男になる…汗。 「おい雪代ー、ハードル出すのに何時間かかってんだよ?」 部活の先輩がやって来た。 うわ…最悪。危機的状態だ。 すると慎也は、自分の顔で俺の顔が見えなくなるようにうずくまり、先輩の方をみた。 「何か用ですか?」 薄暗い体育倉庫とあって、慎也が隠したヤツが俺だと先輩は気付かなかったようだ。 「いや…。雪代来なかった?」 「来ましたけど、水筒忘れたって教室戻っていきました」 「そう…か。すまない」 先輩は気まずそうにその場を後にする。 「あ、ありが…とう」 自然にその言葉が出たけど、後から考えると変じゃねえ? そういう状態になったのは慎也のアホのせいなのに、俺が庇ってくれたことに対して礼言う必要ないじゃん。 慎也はにっこり笑って俺を放した。 「お返しなんて冗談だよ。旭がもっと可愛くなったら襲ってやる」 絶対に要らん。 と俺は言い、ハードルを抱えて体育倉庫を出て行った。 次の日。既にクラス内は慎也のキモさをみんなで噂していた。 どうやら噂の発端は受けのクラスメートのようだ。 自分が受け入れたことがバレたくなくて、"襲われた"と言ったらしかった。 「いいのかよ、何にも言わないで」 俺は何度も慎也に聞いた。 「いいよ別に。変態と思われていた方が、次から襲いやすくなるだろ?」 やっぱり昔から変なヤツだったなぁ。 家に帰ってからも、慎也のことばっかり思い出している自分がいた。 「旭くん、何かいいことあったの? すごく笑ってるね」 みぞれに笑顔でそういわれて初めて俺は我に帰った。 俺…学校から家まで考えたこと慎也のことばっかりだ…。 やばい、俺どうかしてる。 自分で自分のこと、心から気持ち悪いと思った。 「どうしたの旭くん? 変なのー」 変? 変なの俺って?? 嘘だああああああ!! 俺は変態じゃねえええ!! 慎也とは違うんだっ! あんな変態ヤローとは!! 「ねえ旭くーん、大丈夫ぅー?」 「大丈夫、大丈夫だ。みぞれ、俺は変態じゃない。 慎也のこと考えてドキドキなんてしてません。変態じゃありませんから!」 みぞれは分かったよう分からないようなといった表情でふうん、と頷く。 …ああ、俺ってますます慎也に毒されている気がする…。 待ちに待っていない合宿ーわーい! …はぁ。 5日後がまったく苦痛で仕方がない。 「母さん、合宿休むことって…できないよな」 その夜、俺はそう母親に聞いた。 答えは予想していた通り。 「何言ってるの。二泊で3万円もするのよ? 行ってくれないと困るわ」 合宿だぞ? たかが。 なのに何で一泊1万5千円もするんだよ。 5千円とかなら俺の小遣いでどうにかなるのに!! ああ、やっぱり慎也と相部屋は避けられないってか。 と俺は頭を抱える。 「そうだっ」 慎也が眠りに着くまで、俺が違う部屋にいればいいんじゃね? ていうかもういっそ、違う部屋で寝ればいいじゃん。 二人部屋って言ったって、三人寝るのに充分なスペースくらいあるはずだ。 よし、それで行こう。 慎也のバーカ。お前の言いなりになってたまるかっつの。 「おはよ」 朝から嫌な声による挨拶を聞いた。 俺と慎也は家が近い。 互いに遊びに行ったことは無いし、正確にどこにあるのか知らないけど。 というわけでたまに、登校時に出あう。 慎也は前に言っていたとおり、早朝に出かけるらしいから出あうのは本当にたまの出来事だ。 「無視するなよ、旭」 あーあ、せっかく気付かない振りしてやり過ごそうと思ったのに。 「なぜケツを触る!?」 というか揉んでる。 「触りたいから。挨拶代わりだろ」 何が挨拶代わりだよ。もういい、放っとこう。 …と思ったら、急にいなくなっていた。 「あれ? …何だアイツ」 辺りを見回す。絶対誰かにちょっかいかけているだろうから。 案の定、だ。 後ろの方にいる慎也の目の前には小学生くらいの男の子と、 俺らと同い年くらいの綺麗な青年が立っていた。 「何やってんだよおおおおっ!」 と、三人のところに走っていく。 青年の方は怪訝な表情をしていた。 男の子の方は、青年にぴったりとくっついている。 「あ、あの。本っっっ当に申し訳ありません」 状況なんて聞く必要、全くありません。 なぜなら100%慎也が悪いから。 俺は慎也の手を引っ張り、後ろを向きながら何度も二人に謝った。 「あ…いえ。そんなに誤っていただかなくても…」 と言われるくらいまで。 「お前、何やったんだよ」 「んー? いや、あの男の子がすっごく可愛かったから、ちょっと抱きしめさせてもらった」 アホだコイツ。究極のアホだ。 そりゃ、怒られるのも無理はない。 「旭も可愛いよ」 慎也は俺の前に立って、呟いた。 「きゅ、急になんだよ」 「抱きしめてもいいか?」 「は? 嫌に決まって…っ、!!」 だから嫌と言ってるであろうが。 俺に構わず、そして午前8時の、学校の校門前であることも構わず慎也は俺を抱きしめてきた。 「やめろっ! みんながいる前だぞ!? 放せーーっ!!」 ってじたばた手を動かしながら言ってるのに慎也はより強く抱きしめやがる。 俺の髪の毛に指を絡め、 「今日の放課後、旭ともう一回エッチしたいなー」 と耳打ちする。 もう一度言うけど、登校時の校門の前。 数多くの生徒が見ている。 俺は恥ずかしさで顔面が溶け出しそうだった。 「俺はしたくねえ! 俺は変態じゃないんだぁぁぁ!!」 周りの生徒に弁明するように俺は叫んだ。 じゃーっん!! 数学のテスト、23点でしたー! 先生から返却されてから、俺はずっと沈んでいた。 あー…、何でこの世の中に数学と言うものが存在するのだろう…。 二次関数って何だよ! 絶対社会人になっても使わないだろ。 少なくとも俺は使わない。加減積商以外は。 「へえ、23点…。欠点だから追試だな」 放課後になると慎也が俺の解答用紙を覗いて、哀れむような声で言った。 「…お前は何点なんだよ?」 見るな、という風に俺は用紙を伏せる。 慎也は俺に、自分の解答用紙を渡してきた。 俺には縁のない、三桁の数字が名前の横に書かれてある。 …ムカつく。 「何でそんなに数学できるわけ?」 国語英語ならまだしも、だ。 「数学は答えが一つだから」 うわー来やがったよ、数学出来るヤツの典型的な発言が。 答えが一つってなあ、その一つに辿り着くまでが何十通りもあるんだろうが。 俺はそれが理解できないんだよ!! 「じゃあ、俺が教えてあげようか? 追試滑ったらヤバイだろ」 ヤバイです。留年かもしれません。 放課後慎也と二人きりというのは結構警戒が必要だけど、 頭の良さはハンパないので、教えてもらうのはありがたかった。 「…だから、式をaとbとcで作って、xとyの数字を当てはめたらいいんだよ」 慎也は覚えの悪い俺に、懇切丁寧に教えてくれた。 だれもいない教室。クラスメートはみんな帰ったようだ。 俺は目の前の慎也をじっと見つめた。 はぁ…。黙ってたら本当に格好いいのにな。 なんか…ドンマイだよ、お前。 「聞いてる? 旭」 見られていることに気付いたのか慎也は顔を上げた。 「あ…ご、ごめん」 俺はびくっとして顔を背ける。 「で、えっと…解を持たないなら、判別式は0以下…だったよな」 俺がそういうと、慎也は不機嫌そうな顔をした。 「旭」 「何?」 ガタン、と音を立てて慎也は立ち、俺の横に来た。 「旭も立って」 「え?」 俺は戸惑いながらも言われたとおり、立つ。 すると慎也は俺を抱き寄せ、頚動脈を舌でなぞった。 「ひ…ぁ、ん」 「旭、俺の話聞いてなかっただろ」 慎也の声がぞくっと響いた。 「し、慎也。本気か?」 床に押し倒されて俺は不安になった。 だってここは教室だぞ。この前の屋上と違って、誰かが来る確率が高い。 いや、あの…それ以前にするのかよ。 「うん、するよ」 「ちょっ、見つかるかも…」 「誰かが来たら中学の時みたいに旭を守るから」 またもや耳元でそっと囁く。 俺は一瞬ドキっとした。 あんなこと…覚えていやがったんだ。 小学生時からのつきあいだが、高校に入るまで俺と慎也は仲がいいわけではなかった。 喋ったことがあるのも数えるくらい。 正直言うと近づきたくなかったし。 あれは、慎也にとっては"何人もの内の一人"としてしか見ていないと思ったから…。 だから…驚いた。 と同時に冷静に帰る。 別に覚えていたって普通だろ。 何をドキドキする必要があるか。俺、バカだ…。 「あ…ちょっと、慎也…」 慎也は俺を押し付けたまま学ランのボタンを外す。 数日前の記憶が蘇った。…悪夢再び。 「旭、可愛い。エロい。俺の手で無茶苦茶にイかせてやりたいな」 おいおいおいおい。 よくもまあそんな恥ずかしいセリフ言えるな。 学ランのボタンを外し終えると今度はシャツの番だ。 片手で器用に、慎也は俺のシャツのボタンを外す。 なんかその時間が…すごくもどかしい。 もう、抵抗する気力も無いし。っていうか抵抗してもどうせ負けるし。 「俺に犯されること、身体が覚えてるんじゃねえ? これ、ビンビンだけど」 と、慎也は俺のチクビに吸い付いた。 そうされることによってますますそれは凝り固まる。 「ぁ…っ」 不意打ちされ、俺は嬌声を漏らした。 声をもっとねだるように慎也は身体のいたるところを舐める。 「ん…あ、はぁッ」 段々気持ちよくなると共に、顔と身体が火照ってきた。 「今日はやめろとか言わないんだな。そんなに俺に愛撫して欲しかったのか?」 「ち、ちが…っ、んん」 断じてそれは無い! …とは言い切れない。 本音を言うと、マジで気持ちいいからな、慎也の愛撫は。 「や…ぁ、ん…ッ、は…」 恥ずかしくて声を出さないように努力してみるけど、無駄だ。 何で気持ちよかったらこんな女子みたいな声がでるんだろ。 「気持ちいいだろ」 得意げに慎也は言う。 「ズボン張ってるけど。処理してあげようか?」 「い、いらねえ」 ちょっと意地を張ってみる。 扱いてくださいなんて死んでも言いたくない…けど、やっぱりちょっとしてほしいかも。 あ、いや、ホントに慎也上手いから!! それだけのことだから!! って、何自分に言い訳してるんだろう俺。 「ふうん? じゃあしない。扱いてほしくなったらいつでも言っていいぞ」 慎也は俺の耳を甘噛した。 「ぁ…、や…ッ」 唾液のクチュクチュといった音が、鼓膜のそばなので鮮明に聞こえる。 というかくすぐったいだろうがー! いきなりするのやめろっ! 「旭って耳弱いんだな」 くすっと慎也は笑った。 くそー…、また馬鹿にされてるよ俺。 慎也に身体を触られるたび、俺の下半身はジンジンとうずく。 自分の手で触れようとしてみたが、慎也に阻止された。 「な…っ抜かせろよぉ…」 涙目になって言ってるのに慎也はその鬼畜振りを発揮し、 「旭の"してください"が聞きたいんだよ」 と言って笑う。 そして再びチクビに噛みつきだした。 「あ…あぁっ」 …え、何この拷問。 俺は落ちたほうがいいってか。 しかし慎也にねだるなんてプライド崩壊もはなはだしい。 そんでもって恥ずかしさで蒸発すると思う。 「いいのか? 旭がいわないと本当にやってやらないからな」 うわーお、向こうも意地ですよ。 慎也は尚も俺に攻撃を仕掛ける。 ピンク色の突起物を爪先でピン、と弾いた。 「ぁんッ」 喘ぎ声と共に俺の身体はぴくんと跳ねる。 「かーわいーな、旭は。"ツンデレなトコも魅力的"、だな」 可愛いっていうなー! 俺だってなぁ、女の子に、"きゃー!雪代くん格好いい!!" とか言われてみてーんだよっ。 なのに何で男に可愛いとか言われなくちゃなんないんだぁぁ! …あと誰がツンデレだよ。 "ツン"はあるよ、確かにな。 でも俺、慎也に"デレ"たことはないぞ! 慎也から最低な拷問を受け続けて早30分。 もうそろそろ限界かもしれない。 そして俺はずっと誰かが入ってくるかも、という不安で気が気でなかった。 慎也は見つかっても平気らしい。 カギもかかっていない教室の扉にまったく興味を示さない。 「あ…はぁッ、慎…也ぁ…」 慎也は上半身の愛撫をやめようとしない。 俺の腰から上は、慎也の唾液でべとべとになっていた。 かといって、ズボンのベルトに手を掛けたりもしない。 「早く諦めろよ…、俺つかれてきちゃったな。旭が言わないと俺、自分のモノ突っ込む部分がないんだけど」 知らねーよそんなの。 お前が勝手にしてるんじゃねーか。 「旭も…すごい勃起してるのに…」 慎也はズボンの上から俺の性器を指でなぞった。 「あ、んッ」 俺は生きのいい魚のように身体を跳ねさす。 「可愛い。…もっと苛めたくなった」 にこにこ笑いながら大きな手の平で慎也はその固まった物体をふわりと掴む。 「や…やぁ…、なに…すんだ…っ」 掴む力を込めたり緩めたり。 それでも刺激が足りないもどかしさに、俺は不覚にも涙を流してしまった。 「も…、負けを認めるからっ、お願い…慎也…、してくださ…」 悔し涙も交わる。 俺のプライド…ズッタズタのボロボロですよ。 まぁ俺が諦めたんだがな。 慎也はこの結果が分かっていたと言わんばかりに、 「わかった」 と笑顔で呟いた。 ためらい無く慎也はズボンのベルトを外す。 …なんか急に恥ずかしくなってきたなぁ。 だってさ、俺の見る限り下半身はあんなに膨らんでるんだぞ。 それを男に処理してもらうんだぞ。 しかも、俺は少しこの状況を望んでいる。 ほ、ほんの少しだけだが…汗 「旭、チンコ勃ちすぎ」 くすくすと彼は笑う。 お前はダイレクトに言いすぎだ。 オブラートっつーものを持ったほうがいいと思うぞ。 「や…っぁ」 慎也に触れられるとジンと電撃のようなものが走った。 「おまえなぁ、触っただけだぞ」 またもやにこにこ笑う。 自分のケツの穴らへんがぬるぬるしてるのが良く分かった。 股の辺りまでその体液が流れてきているのも。 条件反射…。パブロフの犬だっけ?? 今日、生物の時間にならった言葉が頭に浮かんだ。 俺は完璧パブロフの犬状態だ、現在。 「はぁ、んッ…んぅ」 男にこんなことされるって、あまり気持ちのいいものじゃない。 っていう考えが俺の中で覆されてきている。 慎也はもくもくと俺の突起物にしゃぶりついてきやがる。 俺はそれに、悔しいが快感を覚えずにはいられない。 「し、しん…やぁ…ッ、ん」 真冬で、暖房の効いていない室内は寒いはずなのに、額からは意味無く汗が出る。 慎也は腕を伸ばし、俺の口の中に長く綺麗な指を突っ込んだ。 「ふぁ…ッ、は…」 指を口内で2、3回かき混ぜて唾液を絡めると、その腕を下の方に持ってきた。 あ゛ー。 ホモでもないのに人生で男と二回もヤるとは。 目の前の光景が信じられないけど、なんか本気でどうでもよくなってきた。 慎也は蜜の滴った俺の下半身に指先を触れた。 「…ぁあ」 内部から何かがジンジンとうずく。 間違いなく、最高の快感を欲している。 中学の時、初めて自慰と言うものを経験した時、これ以上に気持ちのよいものは無いと思った。 しかし、今は慎也に施されている、以上に気持ちのよいものはない。 「んん…ッんぅ…」 クチュクチュ… 慎也は自身の指で、どんどん俺に快感を与えていった。 「はぁ…はぁ…っ、ぁ…んっ」 俺は声を我慢することが面倒くさくなって、なされるがままに喘いだ。 「旭…。知ってるか?」 うっとりするような低音の美声で慎也は俺に囁く。 「な…んだ、よっ」 会話をするのも苦難なくらい感じている俺は、途切れ途切れに答えた。 「俺…さ、セックスはするけど、旭にまだ一度もキスしたことがないんだ」 …は? 真顔で聞き返したくなる言葉だ。 そんなこと言って、どうする気ですか。 「いきなり…何言ってんの??」 息は整いかけ、視線を上に向けて呟くようにそう言う。 慎也は微妙に切なそうな表情を浮かべ、 「キスは好きな人とするもんだろ。お前のキスは"好きな人"にしかやっちゃいけないからな」 とまぁ、答えにならない答えを提示した。 はぁ、そうですか…。 …て、何納得してるんだろ。 俺は仰向けになったまま辺りを見回した。 慎也も俺も、肌蹴た服を精液で濡らし、汗ばみ、紅潮している。 俺の下半身は外部にむき出しの状態で、それを慎也はソフトクリームを舐めるように扱き。 言いようのない快感を味わいつつ俺は喘ぎ声を漏らし…ってまあこれはどうでもいいや。 そんな状態でいるんだぞ。 それをキスは好きな人と云々。そんなこと問題になるか?? 本当に慎也の考えていることはわからん。 頭かち割って中身見てみたいよマジで。 「…旭」 慎也が耳元でそっと囁く。 「あっ…」 脳髄までに響く振動によって、俺は変な声を出してしまった。 「だ、だからっ…いきなりはやめろって…」 くすぐったいプラスびっくりするだろうが。 慎也はそんな俺の様子を横目でくすくす笑う。 「そろそろ挿れていいか?」 ゴムと軟膏を取り出す。 「そ…ゆこと、俺に聞くなよ。自分のタイミングでどーぞっ」 自分を客観的に見て言えること。 …完全に開き直っていますね。 でも開き直らせるほど慎也の扱いは気持ちがよくて。 男子だからな、うん。性的欲求があるのは当然だよ。そう。 だから別に慎也にやってもらいたいとかじゃないんだよ。 ええ、そりゃそうですとも。誰がこんな変態なんか…。 「あ…ぁあん…ん、んはッ」 ズブズブ…。 卑猥な音が広い教室全体に響き渡った。 「んぅ…ッ、し…んや…ぁ」 「…あ、さひ…っ、もっと…呼んっ…で、俺の…名、」 パツンパツンと肉壁にあたる音がよく聞こえる。 痛感も少しはあるけど、やっぱり気持ちがよかった。 「慎也…し…んやっ」 慎也の名を連呼する必要は全くないんだけど、何度も呼んでいた。 というか…自分でも不思議なくらい呼びたくなったのだ。 「旭…俺は…な、」 「ん…ぁっ、ああッ……な、に…?」 腰を振り、上がった息を交えた声で慎也は何かを言いかけたが、それ以上は何も言わなかった。 ま、いいか。今はそんなこと。 正直今は、この快感だけに溺れていたい。 と、俺は対して気にはしなかったが。 「はぁッ、…ん、慎也……イきそ…っ」 「俺、も…」 トピュッ 快感の絶頂に達したかと思うと、その証拠に俺の下半身の先端から白濁とした液が飛び出る。 「ぁぁあッ……はぁ、はぁ」 ほぼ同時にイッた慎也は俺の体内からびしょ濡れのそれを抜く。 「気持ちよかっただろ」 黙って俺は頷く。 「可愛い…旭」 くしゃっと慎也は俺の頭を撫でた。 だから可愛いとかいうなって。 「次は絶対拘束プレイしような」 「…はあぁ!?」 にこやかに問題発言する慎也に俺は呆れ果ててしまった。 寝言は寝ても言うな。お前の場合。 いつも通り、下校は途中まで慎也と一緒。 上を見上げると、帰路には見ることのない星が輝いている。 はぁっと溜め息をつくと、それは凍り付いて白くなった。 「いってーなボケが」 慎也を見ることなくそう吐き捨てる。 腰らへんが痛いんだよ。 「ん?」 「お前絶対わざとだろ。わざとあんな動かしまくってんだろ」 一回目と同様、セックス後の独特の痛みが腰を襲う。 「そーだよ。俺の抑え切れない性欲を旭に刻みこんでやりたかったん…げほッ」 俺はゲンコツを作り、慎也のみぞおちに食らわしてやった。 「それくらい痛いんだよ、こっちは!!」 いや、いやぁ…そんなことは無いか? ちょっとやりすぎたかな…。 ちらっと俺は慎也を見た。 両手を腹にうずくまらせているかと思うと、ゆっくり自分の目の前に持っていき、じっと見つめていた。 「今の…良い」 「は??」 「今の殴り方、燃えた。旭、もっと俺を殴ってください!」 「はぁ??」 さっきまで鬼畜キャラ貫き通していたヤツが言うセリフか!? 「切って、殴って、弄って! 撲殺天使のように!!」 慎也のきらきらした目がギャグではないことを物語っていた。 「旭ぃー苛めてーじゃないと俺が苛めるぞー」 ガシっと俺の腰にまとわり着く。 「や、や、やめろおおおお! 公ッ道ッだっつーの!!」 と、慎也の長い腕を必死で振りほどこうとする俺。 今日学んだこと。 慎也はやっぱり、どのジャンルも持ち合わせる真性の変態だった。 「ただいまー」 疲れきったような声で俺は玄関の扉を開けた。 ホント疲れたよ、色々。 「旭くんだー! おかえり!」 家に入るや否や、みぞれが出迎えてくれた。 「あのね、今からみぞれテレビに出るよ」 と、俺の手を取り早く早くといった様子で急かす。 『はい、雪代霙ちゃんです。どうぞー』 食卓のある部屋に入ると、テレビ画面がちかちか光っていた。 『今回のドラマですが、どんなところが見どころですか?』 インタビュアー的な人が、テレビの中で椅子に座っているみぞれに聞いた。 それに対し、みぞれは一昨日くらいに練習してた内容を答えていた。 『じゃあ、みぞれちゃん、テレビの前の誰かに向って一言!』 インタビュアーが自分(カメラ)に向って手を差し伸べる。 『えっとぉ、旭くん!』 画面越しのみぞれに名前を呼ばれて、俺はドキッとした。 『旭くんって誰ですか?』 『あたしのお兄ちゃんです。旭くん、あたし頑張ったから、ドラマ見てね!』 みぞれは手を振った。 その横で本物のみぞれはこちらを向いてにこっと笑っている。 悪い気はしないんだけど…。 俺は妹が子役タレントであることを学校の友達には言っていない。 知っているのは現在、おそらく慎也だけだ。 なぜ言わないかというと、まぁ自慢になるのがイヤだって言うこともあるんだが、 それにかこつけて他のタレントのサインとかをせがまれたりしたら、みぞれが困ると思ったからだ。 みぞれは本名で売っているが、芸能人と同じ名字なんてザラにあると思ったから大してバレる心配していなかった。 けど、自分の名も出たとなると…なぁ。 満面の笑顔で笑っているみぞれとは裏腹に、俺はフクザツな気分だった。 明日はとうとう合宿ですか。 着替えやタオルをキャリーに詰め込み、長いめの溜め息をついた。 点呼の時だけ自分の部屋戻ってーその後は隙を見て逃げてー、桜田の部屋にでも行っておこう。 着いてから彼に頼めば良いか。うん、よし。 明日の夜の俺の作戦が脳内を過ぎる。 「旭くん、お風呂空いたよ」 みぞれがドア越しに俺を呼んだ。 「あ、おう。わかった」 適当に返事をし詰め終わった荷物の仕上げにチャックを閉める。 二泊三日にしちゃちょっと少ないかな。まぁ、こんなもんか。 出来上がった荷物を前に俺は適当に自分を納得させた。 脱衣場で俺は服をするりと脱ぐと、目の前にある鏡を少し見た。 と、同時に腰にズキンと痛みが襲う。 (あのやろぉ…) そういえば、慎也はあんな性癖であるにも関わらず、キスマークっつーモノをつけたことが無い。 今日のは明日の入浴の時のためなのか、…いや、あいつはそんなことは構わずつけそうだし。 俺は、肌色のままの首筋にそっと指を当てた。 …ん? そこで我に返る。 待て、なんかおかしいぞ。 何で俺はキスマークがどうのこうのっていう心配してるんだ?? つけられなかったらそれでいいじゃねーか。 まさかつけてほしかったなんて、思うわけが無いし。 …俺マジで、マジで何考えてるんだ…ッ。 慎也の変態具合に毒されかけてきている自分に恐怖を感じ、頭を抱えた。 続き
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289: 名前:浅葱☆02/19(土) 22 51 10 「送る」 そう言った津田の顔は何処か晴れ晴れとしていたけど、複雑そうな顔でもあった。 家にもうお兄さんは居ない。 何処かへ行ってしまった。 「なんか、いろいろ巻き込んで悪かった、な」 「どうして津田が謝るの」 繋いだ手から、お互いの緊張が伝わる。 現状は打開できたものの、私たちの中には何とも言えないモヤモヤだけが残っていた。 これは、津田先生に対する罪悪感、だろうか。 「これで、良かったんだよね?」 「当たり前」 ギュッと手に力が入ったと思ったら、腕を引っ張られた。 ぽすっと、津田の腕の中に包まれる。 私が津田先生を気にしていると思ってそうしてくれているのだろう。 津田の優しさが、嬉しかった。 「どうしたら、諦めてくれますか」 二度目のその言葉を聞いた津田先生は、ふっと目を細めて微笑った。 「カッコイイね、憂ちゃん」 ……カッコイイ? 私が? 一体、今の私の何処を見てそう思ったのだろう。 言おうと思ったことを忘れてしまうほど私は驚いていた。 「勇ましい、の方がしっくりくるかな。はっきりしてて、分かり易くて、本当、惚れ直しちゃうよ」 「え……」 先生が俯きながら額に手を置いている所為で、顔が上手く見えない。 どうリアクションしていいのか分からなかった。 「憂ちゃんは、さ。擦り寄ってくるような女たちとは違ってて、初対面の知らない奴でもちゃんと接してくれたよね」 ちゃんと、ってどういうことだろう。 私どういう接し方してたっけ。 この人には初対面で襲われた記憶しかない。 立ち上がり、私に近寄ってくる。 私の直ぐ目の前に立ち、伸びきった私の髪に触れた。 目を細め、私を見下す。 テンパってんのもあんま可愛くてさ、と先生は付け足した。 “可愛い” 言われ慣れない言葉に、頬を赤らめ、照れた。 そんな私を見て先生は再び微笑んだ。 「好きだよ、憂ちゃん」 至近距離での、告白。 先生の津田に良く似た顔でそんなことを言われると、やっぱりちょっと心が揺れる。 でもこの人は“津田直昭さん”で、“津田千昭”じゃない。 私の好きな津田じゃない。 似てるけど違う。 私は、たった一人、あの人が好きだから。 たった一人、あの人の愛だけが欲しいから。 290: 名前:浅葱☆02/19(土) 23 14 30 後ろで津田が僅かに反応したのが分かった。 だけど仲介には入らない。 津田先生が巫山戯てなどないと気付いたのだろう。 そして、私に何もする気が無いと悟ったのだろう。 「本当に好きだから。からかってるわけでもなくて、冗談なんかでもない。信じて、欲しい」 真剣な瞳――。 目が逸らせなくて、心臓が大きく脈打ってる。 「わ、私……は」 どうしよう、言葉が出てこない。 即答しなくちゃ、御免なさいって。 さっきの決意が消えて行きそうだ。 どうしたら傷付けずに言えるの? 必死で頭で考えても、全く頭に浮かばない。 やっとのことで先生から目を逸らし、床に視線を向けた。 「……御免なさい」 掠れ気味の声。 語尾が小さすぎて先生に聞こえたかどうかさえ分からなかった。 多分、“傷付けずに”なんて無理だ。 どうしたって傷付けてしまう。 だったらせめて、私の正直な言葉で。 「貴方の気持ちには応えられません」 ペコ、と頭を下げる。 すると数秒後、「分かった」と言う小さな声が頭上から聞こえた。 下げた頭を上げると、そこには津田が私に良く見せる優しい顔を浮かべていた。 思わず、言葉に詰まる。 「そんな顔しないでよ。もう困らせたりしないから」 私の頭に手を置き、ぽんぽんと軽く叩く。 辛いのは津田先生の筈なのに心が痛い。 涙が、出そうになる。 私のすぐ横を通り過ぎ、津田に何も言わず、先生はリビングを出て行った。 そして数秒後、玄関の扉が開き、閉じた音が聞こえた。 「憂」 津田の声に答えられない。 振り向けない。 だって、凄く胸が苦しくて、痛い。 こんな気持ち、前にもあった。 蓮君や津田や文弥君や朋榎を傷付けた、あの時。 痛かった、辛かった。 どうしようもなく泣きたくなって、罪悪感に苛まれて。 誰を傷付けてでも自分の意見を押し通したくて。 もうあんな思いしたくなかった。 だけど。 「どうやったって傷付けちまうもんなんだよ。憂の所為じゃない」 「そう、だけど」 そんな簡単に割り切れない。 「あいつはそんなに柔じゃねぇって。なんせ俺の兄貴だからな」 先程の津田先生と同じ、優しい笑顔を浮かべ、私の頭をぽんぽんと叩き、私を慰める。 ――これで、良かったんだよね? 帰り道、そう言った私に津田は「当たり前」とだけ言って、私を抱き締めた。 293: 名前:浅葱☆02/21(月) 21 59 10 「あんたが、三島憂?」 少しハスキーな声に名を呼ばれ、朝、教室へ向かおうとしていた私の歩みはピタリと止まった。 聞き慣れないその声にゆっくりと振り向く。 そこに立っていたのは、背の高い女の子だった。 髪はミディアムで、黒髪ストレート。 私を見下ろすそのつり目は、何とも威圧的で、思わず戦いてしまいそうだ。 こんな子が、私に何の用なのだろう。 「何方、ですか」 取り敢えずその雰囲気、オーラに呑まれぬよう、出来るだけ低い声を意識して応戦。 「いやいや、聞いてるのこっちなんスけど。あんたが三島憂?」 ――なに、この人。 心の底から湧き上がる、上手く言葉で説明できない感情。 なんて言うか、……子供だ、この人は。 「人に名前を聞くときはまず自分から名乗れって、教わりませんでした?」 私は小さいころからそう教わったんですけど、と続ける。 思いの外、目の前の女には効果抜群だったよう。 してやったり。 「……織。青池織」 青池、織? 知らない名前……。 「先月、転校してきた。あんたが知らなくて当然」 わ、この人にも考えてること読まれた。 なんでだろ、顔に書いてあるのかな――と、顔に手を当て、確認。 うん。何にもついてないし書いてない筈。 「で、あんたが三島憂?」 三回目の質問。 流石に答えないと怒られそう。ってかなんか体育館裏に連れてかれそう。 「……そうですが」 怪訝そうな表情を浮かべ、青池さんを見上げた。 私に何の用なのだろう。 私に何を言いたいのだろう。 通り過ぎて行く生徒たちが私と同様、怪訝そうな目で私たちを見る。 確かに、朝の廊下で二人して突っ立ってればどう見ても変だろう。 「話があるんだけど」 一直線に私を見て、周りの目など気にしない。 あ、凄い、なんか格好良い。 「あの、此処じゃなんだから、何処か行きません?」 取り敢えずそう提案。 青池さんは私の言葉を素直に受け入れた。 さっきから出てくる不良みたいな言葉遣いとは裏腹に、なかなか素直な人だ、と思った。 294: 名前:浅葱☆02/21(月) 22 29 09 そして着いたのが、此処、屋上。 雪が解け、春になったからとはいえ、朝の屋上は未だ肌寒い。 腕組みをするように身体を抱き締め、出来るだけ熱を逃がさぬように試みる。 青池さんはというと平気そうな顔を浮かべて空を眺めていた。 「……で、話って?」 青池さんには申し訳ないが、私はこの寒さに耐えられそうにも無い。 早々に話を切り出し、屋上を出て行くことを決めた。 私がそう言うと青池さんは少しだけ俯き、そして振り返った。 その表情はやはり真剣そのもので、最初に私を呼び止めたときと全く同じ表情だった。 そして言った。 「津田千昭のことだよ」と。 何故、突然津田の名前が出たのだろう。 あれ、そう言えばさっき、青池さん「転校してきた」って言ってたよね? え、じゃあ津田が言ってた“ウザイ転校生”って、――この人? 「津田、に纏わりついてるって、聞きました。貴女のことですか」 「そうだけど、何だ、あたしのことは知ってるんだ」 少し、小馬鹿にしたような笑い。 あ、また感じた。 なんかもやもやするような、ドロドロするような、良く分かんない感情。 「あたし、アイツに一目惚れしたんだけど」 きっぱりした声でそう言った目の前の女。 思わず目が点になった。 だって、それを私に告げてどうするの? 別れろ、とでも言う気? 「だから、何?」 「だから、一応言っておこうと思って」 いぶかしむ目で見る私に怯むことなく、まるでそれが当然であるかの如くそう言った。 言っておこうって……それだけ? 「言っとかないと後々面倒そうじゃん? じゃあ先に宣戦布告しとこっかなーって」 楽しそうにそう言った青池さん。 黒い感情が心の中で渦巻く。 あぁ私、今凄く苛々してる。 295: 名前:浅葱☆02/21(月) 23 04 34 突然私の中である言葉が閃いた。 そうだ、これだ。 私がさっきから感じてる何とも言えない言い表せない感情。 やっと分かった。 ――“不愉快”だ。 この人は子供だ。 そして凄く失礼だ。 人の気持ちなど考えない、自己中心的考え。 自分だけが良ければそれでいいのだ。 こっちのことなど考えず、津田を振りまわし、追いかけまわし、挙句の果てには私のところまでやってきて、「宣戦布告」? 馬鹿にしないで。 私の頭の中で、何かが、プチ、と切れた。 「それにしても千昭がさー、いつも「巫山戯ないで」 割と声を張って言ったつもりだったのだが、聞こえなかったようだ。 青池さんは「は?」と聞き返して来た。 怒り、で声が震える。 だけどそんな声でもう一度言った。 「巫山戯ないで」と。 「津田の気持ち、考えたことあるの? 貴女が振りまわして津田がどれだけ迷惑してるか、私が今どんな気持ちでいるか、考えたこと、ある?」 青池さんが何かを言おうと口を開きかけたが、私の言葉で遮った。 声が自然に早口になって行く。 止まらない。 「“千昭”なんて名前で呼ばないで。貴女は津田の一体何なの? 彼女は私よ、貴女じゃない。履き違えないで!」 更に続ける。 追い打ちを掛けるように。 だって、私はこの人に知って貰いたい。 知って貰わなければならない。 私と津田の間に貴方が入る隙間などないのだと。 貴女が何と言おうと、私はもう津田を離したりしないと。 「一目惚れしたから、何? 宣戦布告してどうするの? そんなの貴女の自由よ、だけど人を巻き込むのと、内に秘めてるのとは訳が違う。貴女のやり方は、人を不愉快にさせる」 そして一言。 「これ以上、私たちに関わらないで」 296: 名前:浅葱☆02/22(火) 21 38 56 屋上に続く階段を下る。 先程まで苛々して、激情していた心が、今は不思議と落ち着いていた。 溜めこんでいた感情をすべて吐き出したからだろうか。 ――あの人に。 だけど、多分、あの人は諦めない。 きっともっと、私たちに関わってくるだろう。 あの子の目は、そういう目だった。 憂鬱になる。 津田先生のことが一段落して、やっと落ち着いたと思ったのに。 落ち着いた矢先にこれだ。 もう、本当に勘弁してほしい。 「憂」 名前を呼ばれ、自分が俯いていたことに気付く。 顔を上げて私の名を呼んだ声の主を探す。 きょろきょろと見渡す前に、その人を見つけた。 津田が直ぐ目の前に居たからだ。 「お早う津田」 「おはよ。どうしたの、なんかテンション低くね?」 突然核心を突かれ、一瞬だけ戸惑う。 笑顔を作り、言葉を返した。 「そんなことないよ」 「屋上、行ってたの?」 「あ、うん」 「朝から?」 ドキ。 なんでこの人はこういうとこだけ鋭いんだろう。 「ちょっとねっ、空、見たくて」 そう言って、津田の腕を引っ張り、教室まで歩く。 私の教室の前で別れ、昼にまた会おうと約束した。 青池さんと会ったことは、津田には言わなかった。 297: 名前:浅葱☆02/22(火) 22 25 39 「青池織?」 あー、知ってるよー。と朋榎が気の抜けた声を出す。 1限目が始まる前の、教室でのお喋り。 先生が未だ来ない教室は、生徒たちの雑談でざわついている。 それにしても知らなかった私は遅れているのだろうか。 「背高くて、こーんなつり目の子でしょ? 千昭君に惚れこんでるって噂の」 両目の端を斜め上へとつり上げる朋榎。 噂になるほど広まっているのか。 頬杖を付き、窓の外を見ながら同情するような声で朋榎は言った。 「家庭の問題で転校してきたらしいよ。噂では親が離婚して、引き取った母親に捨てられたとか」 リコン、ステラレタ。 感情の籠っていない声だった。 その言葉が私たちにはあまりに関わりのない言葉だからだろう。 親に捨てられる悲しみが、私には分からない。 そして朋榎にも。 「似たような境遇だったからじゃないかな、千昭君と。だからあんなに懐いちゃってるんだと思う」 ――……え? “似たような境遇”? 津田と、青池さんが? 「似たような境遇って、どういうこと? 津田のご両親は、確か、放任主義で海外に居るって」 私の言葉に、朋榎が驚いた顔を見せた。 「え、知らないの? 憂」 引き攣った笑みを浮かべて、問い返す。 「千昭君の両親、亡くなってるじゃん」 クラスメートたちのざわついた声が、聞こえない。 世界の全てが無になったような感覚。 朋榎の告げた言葉だけが、何度も耳の奥、頭の中で反響して行く。 “亡くなってる”? 「え、ちょっと、待って。どういう、こと?」 冗談でしょう? その言葉が喉に痞えて出て来ない。 じゃあ、あの時の津田の言葉は全部嘘? そうだ、あの時。 私が津田に両親のことを聞いた時、津田は驚いた顔をした。 そして次にこう言った。 「知らね、どっかで2人で幸せに暮らしてんじゃねぇの?」――と。 その言葉は嘘で、そのあとの説明も全部嘘なの? 「え、嘘。憂ホントに知らなかったの?」 ――彼女なのに。 ガタッ、と席を立ち、教室を飛び出した。 それと同時に教室に入ってきた先生。 あぁこの先生、規則に厳しくて、怒ると凄く怖くて、説教がとびきり長い先生だ。 「おい、どうした。待ちなさい、三島!」 先生を無視し、その忠告を背に、廊下をただ走った。 300: 名前:浅葱☆02/23(水) 22 55 04 昼休みに来る筈だった選択教室。 扉を閉めた途端、膝から崩れ落ちた。 津田のご両親が亡くなってた。 私はそれを知らなかった。 朋榎は知っていたのに。 中学校から一緒だったから? そんな筈ない。 私が噂とかに疎かったから? ……彼女なのに? 青池さんとも今日初めて会って話した。 それまでは存在しか知らなくて、どんな人なのかさえ知らなかった。 彼女なのに? 私、本当は津田のこと、何にも知らない。 彼女なのに。 彼女なのに。 彼女なのに。 「私、最低だ」 私、あの人に偉そうに言えるほど津田の彼女として相応しくない。 蹲り、顔を伏せる。 次の瞬間、私の背にあった扉ががらりと開いた。 「憂! って、うわっ」 「え、きゃっ」 ドスンという音と共に津田が崩れ落ちた。 っていうかこけた。 扉のすぐ近くに居た私に躓き、私を下敷きにして。 「いったぁ……」 「いってぇ……」 揃った二人の声。 私は津田の下で押し倒された形になっていた。 「津田、ちょっと!」 「あ、わり」 謝るくせに退こうとはしない。 それどころか両手首を掴まれ、身動きの取れない状態に。 予期していなかった状況に若干パニックに陥る。 「佐伯からメール来た。憂が突然出てったって。親のこと、聞いたんだろ」 どき。 「そ、そうだよ。もう、良いから退いてよっ」 「やだっての。お前どうせ逃げるだろ」 視線を逸らす。 どういう顔をしていいのか分からなかった。 301: 名前:浅葱☆02/23(水) 23 40 56 「嘘吐いて、悪かった」 私は答えなかった。 視線を逸らしたまま、津田の方を見ない。 「何れ、言うつもりだった。同情されたくないってのもあったけど……あの時は憂、いろいろ大変だったろ。だから憂が落ち着いたときにって「なんで?」 涙が頬を伝った。 言い訳とか、そういうの。 聞きたくなかった。 悔しかった、ただそれだけ。 何にも知らない自分が。 転校生の青池さんが知ってて、朋榎も知ってて、彼女なのに、私は知らなかった。 悔しかった。 ただ、それだけ。 「なんで信じてくれないの……?」 滲む視界の先で、津田の瞳を捉えた。 消え入りそうな声で言う。 「なんで嘘吐いたりするの?」 頬を伝う涙を手の甲で擦ると、津田の顔が徐々に迫ってきて、溢れる涙にキスを落とされた。 直ぐ近くに津田の切なそうな顔。 そして一言「ごめん」と言うと、二人の唇が繋がった。 優しいキスだった。 まるで猫みたいに、傷付いた箇所を舐めて癒そうとするかのように。 目を閉じて、キスだけに集中する。 ただ唇を重ねるだけの軽いキスなのに、凄く気持ちが良かった。 長いキスを終え、私は津田に青池さんのことを話した。 津田は悔しがってた。 私と青池さんを会わせたくなかったんだとか。 関わらせたくなかったんだとか。 「ごめんな、ホント、いろいろ。憂をあんまり面倒なことに巻き込みたくないんだよ」 顔を伏せ、呟くような声でそう言った。 ――津田は、私のことを考えて嘘吐いたんだよね。 信じてくれてないわけじゃないんだよね。 私、なんで津田のこと責めちゃったんだろう。 津田はこんなに私にことを考えて、悩んで、私が一番安全で、最善の道を示そうとしてくれていたのに。 後悔の念が波のように徐々に押し寄せる。 「津田、ごめ……んっ」 再び謝ろうとしたところ、不意打ちのキス。 唇に手を触れ、津田を見る。 津田が私のおでこにこつんとおでこを合わせ、言う。 「もう、いいから。謝んなくていいから」 そう言って、私を抱き締めた。 津田の温もりが温かくて、泣きそうになった。 304: 名前:浅葱☆02/25(金) 22 50 21 それから更に季節は移り変わっていった。 青池さんはと言うと、あれから特に何もなく。 津田にうざ絡みすることも無ければ私に話しかけてくることも無かった。 やっぱりあの去り際の一言が効いたのだろうか――と思ったが、きっと違う。 偶にすれ違う廊下で彼女は見る。 私を、食い入るような獣の目で。 そして、夏。 「あーつーい」 朋榎が叫ぶ。 暑さも大分収まってきた夕方、野球部やサッカー部、陸上部など様々な部活がグラウンドへと駆ける。 団扇をパタパタさせてみるものの、来るのは熱気のみ。 全開に開けた窓から風は入って来ない。 「もう、暑いとか言わないで。余計暑くなる」 そんな会話をもう何度しただろう。 「てゆーか、なんであたしたち残ってるんだっけぇ?」 暑さで頭がやられてるな。 ……それは私も同じか。 今一瞬だけなんで居残ってるのか忘れてたから。 「朋榎の彼氏さん、部活終わるの待ってるんでしょ? 朋榎が一人で待ってるの厭だって言うから」 なんで当の本人が忘れてるかな。 朋榎は「そうだったそうだった」と笑う。 全く。 「あれ、でも千昭君は?」 「……委員会」 さっきも言った、と付け足す。 すると朋榎はそうだっけ? と言って再び笑った。 それにしても津田って何の委員会だっけ? と、ふと思う。 考えることに没頭し、団扇を仰ぐ手が止まる。 思い出したかのように暑さが蘇ってきた。 ふう、と溜息を吐く。 「あ、譲くんだ」 私がそう口にすると、朋榎はそりゃあもう物凄い速さで廊下を振り返った。 それと同時に扉が開く。 「譲、どうしたの? 早くない?」 朋榎が駆け寄りながらそう言う。 「部活、早めに終わった。顧問がさ、急用で帰んなきゃいけなくなったらしくて自主練になったから抜けて来た」 譲君の説明を聞いた朋榎は嬉しそうな顔をして、そして帰り支度を始めた。 ふと気付き、手を止める。 「あ、憂」 帰りたいけど、私がいるから。 今まで一緒に待たせてたのに、私だけ先に帰るのは。 そんな顔。 気遣っているのが良く分かった。 「大丈夫だよ、津田のこと待ってるのなんて慣れてるし。折角部活が早く終わったんだから私に気 遣ったりしないでよ」 私の声を聞き、ホッとしたのか朋榎は笑顔で――だけど少しだけ申し訳なさそうに、私を残し教室を後にした。 ああは言ったけどこうやって一人取り残されるとやっぱり寂しい、なぁ。 再び溜息を吐き、開け放たれた窓の外を眺める。 まっさらな空の青が眩しかった。 305: 名前:浅葱☆02/25(金) 23 19 28 ……ん? なんか、風を感じる。 一定間隔での、風。 薄らと目を開け焦点を合わせる。 誰かが――そこに居る。 「お、起きた」 その言葉を聞き、勢い良く顔を上げた。 私、寝てた? 声の方を向くと、津田が団扇を持ち、机に腰を掛けて、此方に笑顔を向けていた。 何時からそこに居たのだ。 「津田、え、いつから……」 「あー、ちょっと前から」 頭を掻き、少しだけ苦笑い。 時計を確認すると朋榎が帰った30分後の時刻を指していた。 「津田、此処に来たの何時?」 「えー、4時40分、かな」 朋榎と別れたのが確か4時30分くらいで、今の時刻が5時過ぎ。 ……ちょっとどころではない。 「起こしてくれてよかったのに!」 「やー、気持ち良さそうに寝てたし? っていうかお前、良くこの暑さで寝られるな」 暢気にそう言う津田をシカトし、急いで鞄に物を詰め、持ち上げる。 「もう、ほら、帰ろ」 306: 名前:浅葱☆02/27(日) 18 45 36 そして帰り道。 私のタイムロスを後悔しながらも、今日あった出来事を津田に語る――が、やはり後悔の気持ちは拭いきれず、先程からその話題ばかりを口にする。 「あー、もう馬鹿。私の馬鹿」 「もう良いだろ過ぎたことは」 こういうとき、津田ってやけにあっさりしてる。 ただでさえ最近の津田は委員会、委員会と何かと遅くて一緒に居られる時間が減ってきているというのに。 「良いじゃん、俺たちはこれからもずっと一緒――なんだろ?」 津田の言葉と笑顔に強引に頷かされる。 本当は未だ心残りがあるけど。 すると反対の歩道に見覚えのあるカップル。 「文弥君と優奈ちゃんだ」 「え、何処」 ほらあそこ、と私が指を指す。 津田もどうやら気付いたらしい、が、文弥君と優奈ちゃんは話に没頭しているらしくこちらには気付かない。 そう言えば、最近全然話してないなぁ。 ――久し振りに話したいかも。 そう思い、車道に一歩足を踏み入れた。 ――その瞬間。 津田の、焦ったような、怒ったような声。 それと同時に私の耳に届いた、車の高いブレーキ音。 「憂!!」 再び、津田の叫び声が聞こえた。 制服を強引に引っ張られ、後ろに倒れ込む。 受け身を取らなかったため尻もちをついた。 車のブレーキ音はまだしている。 そして大きな、爆発音のようなもの。 ――あれ、こんなこと、前にも無かった? 突然起きた出来事に頭が機能せず、放心状態のまま歩道に座っていた。 何があったの? あれ、そう言えば津田は? さっきまで私の隣に居て、……隣に居たのに。 「チアキ!」 「千昭!」 重なる――聞き慣れた声たち。 そうだ、優奈ちゃんと文弥君の声。 なんで今津田の名前を呼んだのだろう。 ――津田は、何処に居るのだろう。 308: 名前:浅葱☆02/27(日) 19 26 06 辺りを見回す。 道路に人だかり。 何かを囲んでいるかのように。 皆、焦ったように辺りを見渡し、叫んでいる。 その言葉たちが断片的に私の耳に届いた。 「救急車」 「誰か」 「息はあるぞ」 「千昭」 「チアキ」 千昭……? どうして津田の名前を呼ぶの? 津田は何処に居るの? ……状況が、理解できない。 一先ず立ち上がり、その人混みへと私も駆け寄った。 人が多くて人だかりの中心に何があるのか見えない。 だけど隙間から確認出来たもの。 真っ赤、な、……血。 そこに横たわり、蹲っている、 ……津田。 「いやぁ――――っっ!!」 絶叫。 私の声に肩をビクつかせ、驚いた人々の隙間から割って中へ潜って行く。 厭だ。 嘘だ。 そう確信して疑わなかった。 310: 名前:浅葱☆02/27(日) 20 01 59 人の波を抜け、津田へ駆け寄る。 覗き込んだ津田の顔は真っ青だった。 「津田、津田、厭、津田、津田ぁ――っ!」 目から止めどなく涙が溢れる。 そう言えば、私は何時から泣いていたのだろうと疑問に思う。 ……そんなこと、どうでも良かった。 「津田、津田っ、津田……っ」 泣きじゃくり、津田の肩を揺らす。 津田はビクともしなかった。 ……これじゃあ、蓮君のときと同じ。 私は何にも変わっていない。変わっていなかった。 どうしよう、津田が、死んじゃったら。 蓮君と同じ目に、遭わせてしまったら。 私の、私の所為で。 私の所為で津田が。 「憂ちゃん!!」 文弥君の声でハッと我に返る。 「ふ、みや、くん……」 「落ち着け、あんたがそんなんでどうすんだ。大丈夫だ。こいつは死んだりなんかしない。 あんたのことなんか置いてったりしねぇよ」 ピーポーピーポー 救急車のサイレン音。 皆がホッとした表情を浮かべ、音のする方を一斉に見る。 私だけは津田を眺めていた。 回転灯の鮮やかな赤色が私の瞳に映る。 津田の血、と同化した色だった。 救急隊員が救急車から下りてきて、津田を取り囲む。 隊員の着ている白い服が酷く違和感を感じた。 担架に津田を乗せ、急いで救急車へ運ぶ。 文弥君が私の名を呼び、私の腕を引っ張った。 「憂ちゃんも来い」と。 言われるがまま、されるがまま、救急車に乗せられる。 こいつは死んだりなんかしない。 先程聞いた文弥君の言葉が何度も頭の中で反響していた。 311: 名前:浅葱☆02/28(月) 22 03 17 手術中のランプが点灯している。 廊下でランプの灯りが消えるのを待つ者たちは、何も言葉を挟まなかった。 私、文弥君、優奈ちゃん、津田のお兄さん。 静寂の中、私はただ恐怖を感じていた。 腕の肉に爪が食い込むほど強くそれを握り、震えそうになる身体を必死で抑えつけた。 私の所為だ。 私が。 あの時。 車道なんかに飛び出さなければ。 どうして周りを確認しなかったの。 交通事故で一度蓮君を失ったくせに、懲りずに同じことを繰り返してしまった。 どうして、私は。 何度も悔いるがそんなこと、今更何の意味も無かった。 結果として私は津田を傷付けた。 学習もせず、また。 ――私は、どうして此処に居るんだろう。 津田の「彼女」として此処に居るの、おかしい。 津田をこんな風に事故に遭わせて、平然と「彼女」面。 青池さんの方が、よっぽど相応しい。 泣くことすら私には許されない。 静かに椅子から立ち上がり、長々と続く廊下を当ても無く彷徨うように歩き始めた。 「憂ちゃん」 文弥君の声が聞こえた気がしたけど、振り向く気になれなかった。 leave 続き12
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139: 名前:まりあ☆2011/06/03(金) 17 19 45 時間はあと少し。気づけば約束の時間まで後10分。 短いって思うけど1ッぷん1っぷん待ってたら結構長いもの。 私はすっかりと準備をし、神埼桃子が来るのを待った。 「ピンポーン」 キチガイで寂しい電子音がなる。 「あのぉ…先生?神埼です。」 「はいはいはーい イラッシャイ!」 私が笑顔で答え。 「ちょ…ちょっとなんであんたがここにいるの?」 「なに……って?フフ…あんたを殺すためよ」 「なっ…そんな馬鹿げた…こ…と…」 私はフッとハンカチについた薬品をしみこませ神埼桃子に近づけた。 あーあ…10秒で意識なくなっちゃうとは。 私は台所まで神埼桃子をひぱって行った。 30分後あいつはうなり声を上げながら目を覚ました。 「う…ここ…? せん…せ…い?」 「やぁやぁ。桃子ちゃん。今から勉強しましょうね~」 「なっ…ふざけないで!私はあんたみたいな低脳は違うんだからさっさと家に帰してよ! あんた…頭狂ってるわ。死んじゃえばいいのに」 私は一瞬頭が真っ白になった。 そして、制御が利かなくなる・ 「はぁ?私のいうこと聞かないわけ? ぶっ殺すわよ」 「じゃあ殺してみなさい?」 私はナイフを神崎桃子のクビ元に近づけて軽く切った 「っ…痛…本気でする馬鹿が…「まだヤッテ欲しい?」 「いーえ…けっこう…で…す」 「そうよね。じゃあ勉強しようか?」 「何の勉強?」 「理科と家庭科の勉強だよ」 「フフン。私の得意科目だわ」 そう…じゃあ…この勉強は解けるのかな? じゃあ…はじめよう。 リタイアは…… 禁止だよ。 最後までやり遂げてね。 141: 名前:まりあ☆2011/06/03(金) 22 55 10 「で?なにすんの?テスト?過去問?」 フフ…そんなわけないじゃない。 「うーんと…しいて言うなら実技、かな?」 「実技は私、得意中の得意よ!」 「そう。ならまず理科…しようか。 範囲は…生物の体の仕組み、について」 「うっ…まぁぁいいわ!かかってらっしゃい」 言ったよね? リタイアは…できないよって。 私はカエルの死体を取り出して見せ付けた。 「じゃあ、ココはどこでしょう?」 私は腐って黒くなったカエルの腹部分を突き刺していった。 「気持ち悪い…ごめ…ちょっと…トイレ」 だめだよ。何回言わせるの?リタイアはだめなんだって。 「だめ…殺しちゃうよ?いいの…?」 「ひっ…すいません、すいません」 「わかったらいいの。ココはどこ?」 「し…しんぞうで…す」 「あっ!正解!すごいねェ」 「まっこんなもんよ」 フフンと鼻息を鳴らしているものの体は震えている。 「じゃあ、食べてくれる?」 「えっ?」 桃子の顔が一気に曇った。 「私がこの心臓をおいしく料理するから、さ」 「えっ…ちょっと…こんなのもう死んでるし…食べれっこないよ…」 「殺されたい?」 「いえ…めっそうもっ…」 「じゃぁ、今からは私の特別授業の… 家庭科 だよ。 家庭科はちょっとしたことでも命にかかわることが多いから 気をつけてね。 せいぜい… 死なないようにね 143: 名前:まりあ☆2011/06/04(土) 12 10 32 「あの…さ、私、帰っていい?」 たぶん今から本当の家庭科をするとは思っていないだろう。 私のキチガイがおかしいと思ったんだろう。 「だめ…。大丈夫。あと1時間ぐらいで…終わるから、ね」 終わるよ? あなたの命が、ね 「だっ…だったらはや…くっ…してよぉ…」 「じゃあ今から料理するからちょっと待っててね 逃げたら…許さないよ」 「は…はい。待っときます」 私はカエルの心臓と腐った肉をゴム手袋でつかんでボウルへ入れた。 そして、賞味期限が2ヶ月も切れている牛乳と絵里を殺したときのまだ生き残っていたネズミを殺したのを混ぜ ミキサーにかけた。 ギュウゥゥゥゥゥゥン ギュウゥゥゥゥゥゥゥン 出来上がったのは灰みたいな色をしたドリンク。 はっきり言ってまずそう。 「さ、できたよ。飲んでよ。特製ドリンクよ?」 「な…何がはいっているの?」 露骨に嫌な顔をしている桃子ちゃん 「カエルと牛乳と…チョコだよ」 さすがにネズミというと気絶しそうな感じだったのでそれはいわなかった。 「飲んでね?」 ズズズズズズズッ 早く飲みたかったのだろう。 一気に飲んでいる。 でも 「うぉええェェェェ……ゴホッ…うっ」 あーあ…吐いちゃった。汚いなぁ。 「吐いた分もきちんと…飲みなさいね」 「あんたっ…ゴホッ…本当に…何いれたっの?」 「秘密 あはハハハハハハハハハ」 笑が止まらないよー。 だって、あんなツンツンしているクラスメイトが恐怖におびえしかもゲロってんだよ? 「あはハハハハハハハ…… 「あんたなんか死んじゃえばいいのに」 思いがけない言葉に私は… 145: 名前:まりあ☆2011/06/06(月) 15 15 38 なんで?なんで?何で…? あんたは殺されるかもしれない恐怖におびえているはず… なのにこんな状況で…何言ってんのぉぉぉぉぉ? 「何で…そんなこと言うの?あんたは殺されてもおかしくない状況なんだよ?」 すると桃子は笑ってこういった。 「だってさ、どっちみち殺されるんだよ? だったらあんたにいいたいこというほうがマシじゃん あんたなんて消えろ。」 「やめて…」 「お前は人間のクズ」 「やめろ…」 「お前は人間のクズより…ゴキブリ以下だな」 甲高く笑い私を見下した目でみる…桃子 「うるせェ! 黙れよ!」 「うるせェ! 黙れよ!……だってー思えのほうがうるさいし」 クソ…揚げ足とってんじゃねーよー。 もう許さない。 絶対殺してやる! 「あんたなんか…「だからなぁに?」 私はもう、反抗するのはやめて平常心でいようと思った。 喧嘩したときに一番相手が嫌がるのは平常心なんだって。 どこかの本で読んだ。 「お前はきえ…「あっそう」 すると 「何なのよ!!なんであんたもシカトするのよ!!」 ・ ん……あんた…も? まぁいい。 殺したらすべてが無になるのどから。 146: 名前:まりあ☆2011/06/06(月) 15 23 43 私は市販のよりは少し大き目なミキサーを持ってきて ハアハア言ってる桃子の下へと突き出した。 「…何すんのよ」 「ねェ?本当の血の色…ってどんなのか知ってる?」 「??赤でしょ」 「見たい?」 「見たくない」 「私は、見たいの」 「一人で見てたら?」 「ワカッタ。あなたの血の色を見るわ」 「え…ちょ…」 桃子が言っている間にミキサーの電源を入れた。 グウイイイイイイインン 耳障りな鉄の音がする。 クルクル回転している刃に桃子の手をかざした ギュシュュュュュュュュ 鈍い音がしたのと同時にミキサーは少しだけ赤く… 桃子は目を見開いていた。 そうして沈黙の30秒後、桃子の悲痛な叫び声が台所に響いた。 「さぁ…次は足だよ?」 笑いながらこんなことを言っている私はくるっているのかもしれない。 149: 名前:まりあ☆2011/06/18(土) 10 36 45 「っ…あ…え…」 もう声を出すのが限界なんだろう。 下手に体力消耗したら死もんね 「足は…ミキサーにかけないで…もっと違うことにしてあげる…」 私は腕がなくなった桃子を見ながら…笑っていた だってさ、腕がサ剥けたトマトみたいなんだもん! まあ…それはおいとくとして… 私には別面白方があるもんね。 私はふらふらになった桃子の腕を引っ張りながら 誰もいないバッティングセンターへ向った。 「あぁ…こんなことでお金が少なくなっちゃうなんて…」 「あ、あんたは球打たないよ。打たれるほうだから」 私は持ってきた縄とガムテープで玉があたりそうなところに桃子を縛りつけた。 もちろん、口にはガムテープ… 「時速は…一番早くていいよね んで、2時間コースでいいっか」 私はおかねを入れてスイッチを押した 153: 名前:まりあ (LDyAzSF1Ww)☆2011/07/05(火) 17 46 46 ゥィィィィィィィン… 機械の音が次第に大きくなってゆく。 そして、一瞬止まったと思った瞬間に勢いよく茶色っぽいボールが目で追いかけていくのがやっとの速さで桃子にぶつかった。 バシィィィィィィィ…………ン ポト……ン 落ちたボールは赤くこすれていて、桃子の腕は黄色くなったり赤くなったりしていた。 「っつ…う…ぁ…」 苦しみに耐えて泣き声をこらえている様子。 でも、コレはまだ序の口。 まだまだ……続くよ・・・。 パシィィィィィィィィーーーーーーーーーン スパぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーン ボコッ…ボカンッ… 玉があたるたびに小さく喘ぐ。 切り落とされた腕は紅に近い色で、小バエが寄り添うくらい悪臭が漂っていた。 だんだん壊死していってる…。 でも、 私は悪くない。 悪いのは私じゃなくて ミンナなんだから。 裏切り者には当然の報いでしょう? 155: 名前:まりあ☆2011/07/27(水) 23 30 21 「ぐすっ……ひっく…おね、がい、謝るから、もーやめ…て」 「許すわけないでしょう?」 「お願いします…っ」 私は聞かなかった。 もうーいいかい? やっっちゃっていいかーい? 私は桃子を引っ張りながら人目のつかないように貸し出しボックスへと連れて行った。 私はひょいと投げ入れてそこからの記憶はない。 あぁ、2週間ぐらい7放置したっけ? 学校はいま、しばらくの閉鎖中。 先生がね新しい子を連れてくるんだって。 ごめんね。先生。私が消しちゃったんだよね。 でも、私は悪くは悪くないんだよ。 私は「正義」なの。 悪い人を消す。 でね、その消すのが私の役目。 すばらしいと思わない? あ、そういえば今日のお空、曇っているわ… 萌、元気にやっているかしら? 156: 名前:まりあ☆2011/07/27(水) 23 51 20 ~萌目線~ あの後パパとママに会ってから私は寝ていた…んだよね? でも、パパとママいないし…。 ここ、どこ? 一応ここは天国。 何か生前の行いがよかったらしくって天国なんだってーっ すると天国の偉い人の声がした。 「峻(パパの名前)実夏(ママの名前)顔を上げなさい」 「……はい」 「二人は萌の償いをする気か?」 「……はい」 私の償い…? あぁ私本当は天国から出ちゃだめなのに出たからかな? 罰金するの? 「萌 柊は 1 天国から世間への無許可外出 2 人の心を動かし行動させるとり憑き 3 自分の都合の殺人 罪は大きいぞ?」 「覚悟はしているおつもりですが」 「たいしたものじゃ」 「どのような刑罰で?」 「……………。」 「なぜいわないのです?」 「本当に覚悟はできているんじゃな?今ならやめておくことができる…「いえ、いいんです」 「そうか…終身刑じゃ」 「……も、「萌には会えないがな」 嘘…パパ、ママ…私のために…っ 「そこでこっそりいる萌、これが答えじゃ」 「パパ!ママ!やめて!」 「いいのよ。全部今まで私たちが悪かったんだから」 「でも、もうパパ ママに会えないのはーーーーーーーー」 「心はつながっているわ。」 そういい残すと消えていった。 何日も何日もずっとないていた。 ごめんなさい。 そんなこといっても何も起こらないけど1%でも期待している自分が愚か。 そう思った 158: 名前:まりあ☆2011/07/28(木) 03 18 30 優奈目線 萌…? 珍しいなぁ、私が友人の心配をするなんて。 ま、友達は萌しかいなかったんだけど。 「………来たわよ…」 「嫌ぁ~ね……」 「…あっちいってほしいわ……」 私を見ながらこそこそ陰口を言うおばさん。 あ、あれ薫の母親の友達ジャン。 変なの。昔クッキーご馳走してくれたから仲いいと思ったんだけど薫と喧嘩したら急に冷たい態度になって。 なんで?なんで? 私は「正義」なのよ!? 間違っていないのよ!? -------------------------- 優奈は気がついていなかった。 「正義」ではなくてただの殺人だということを。 そして信頼されているとは裏腹に 彼女の見方は誰一人いなかった ということを --------------------------- 「あ…そうだ久しぶりにあのチャット行こうかなー?」 私は小走りで家までかけて行った。 自分の部屋までハァハァいいながらも着きパソコンの電源を入れる。 起動する時間が待ちどうしい。 あー皆私のことなんていってくれるかなー? 楽しくお話したいなァ…。 お気に入りのリストからチャットのところをクリックする。 相変わらず背景は真っ黒で文字色は赤色だった。 この殺風景な感じが私は大好きだ。 入る前にどれくらいの人がいるのかチェックする ~○○チャット~ ロゼット:やっぱあいつむかつくんだよなー 甚平 :俺も!俺も! ミゾレ :なんでなんで?詳しく教えて! 倉敷 :勉強めんど モモチ ;乙。 はァァこんな感じが大好きなんだよねーーーー 私は入室ボタンをクリックした。 優奈 が入室したよ☆ さァ皆話しかけて! モモチ :だよねーーーー 倉敷 :俺は理科が嫌い ………えっ? 無視?? 159: 名前:まりあ☆2011/07/28(木) 03 29 54 えっ?普通「こん」とか「やっほ」とかいうじゃない? 私から離しかけてみよう 優奈:こん☆ パイン: キモ ロゼット:なんか変なやつきたんですけどーっ は?なにこれ? 優奈 ;何いってるんですかァ? ミゾレ:お前のことじゃね?うけるー パイン:空気汚れるんで退室してくれません? は?これ最近のチャットいじめ?ってやつ? 私はいったん退室して名前を変えて入室してみた。 「狐」という名前に 狐 が入室したよ☆ 狐:こん ミゾレ:プッ 倉敷:受けるんですけどー 狐:なにが? ロゼット;狐 ホスト優奈ってやつと一緒ww 自演自作乙。 ーーーーーー何これ? 私なにかした? なんで?今すぐナイフを突き立てたいけど… だってあれってチャットいじめをしている 「悪」 じゃない? あ、 テト が入室したよ☆ テトさんだ~♪ 狐:テトさんおひさです! 優奈です!あの時はお世話になりました! 返ってきたのは信じられない言葉だった テト:あァこの前の殺人女か。 お前とはもうかかわりもちたくねェわww ロゼット:狐!テト様に向かってなんて失礼な! パイン:なれなれしいにもほどがあると思います。 倉敷:帰れ!殺人女! なんで?なんで私が人を殺したって知っているの? 狐:>秘密メッセージ ミゾレ いったん出て255へきて ミゾレからこんなメッセージが来た。 とにかくいったん出るしかない。 160: 名前:まりあ☆2011/07/28(木) 03 37 26 255 ミゾレ:ロックをかけた。 優奈 :で、話って何? ミゾレ:皆が言っているとうり、テト様は皆から慕われている。 優奈 ;だからってなんで私がヒトコロしたことしってんの? ミゾレ:学習しないやつ。、もう世界的にしてわたっているよ。 え? ミゾレ;お前のホストナンバー 11・336485・06 テト様はどんなやつでもハッキングできる。 優奈 ;そんなのパソコン変えたらいい話じゃん ミゾレ:いや、世界の大手メーカはお前を重要視しておる。 無駄なだけだ。 優奈 :ぞんな ミゾレ:警察も動いている。お前はきっと死刑。 優奈 :そう。 ミゾレ:落ち着いているな。なぜだ? 優奈 ;テトって何者? ミゾレ: 綺羅関 小生 (きらぜき しょうせい) え?綺羅関? ----------------芽衣の祖父? 161: 名前:まりあ☆2011/07/28(木) 03 44 52 なんで? 警察が動いている? 私はいい人善人なのよ? この世の悪党を始末しているだけよ! 落ち着いている? 馬鹿じゃないの? 落ち着いているわけないじゃない! しかもテトの正体が芽衣の祖父だなんて! 目をパソコンへと向けた ミゾレ:そうだ。芽衣の死後テト…いや小生様は悔やみに悔やんだよ。 大切な孫だからね。 それで小生様は根から調べ上げ優奈 お前という結論にたどり着いた。 優奈:警察が来るのはいつ? ミゾレ:逃げても無駄だぞ。 私はパソコンを床に投げつけた がしゃああああああああああああああああああァん いろんな音がする。 あ、壊しちゃった。 でね私わかったんだ。 私って正義になっていないんだ------------------------------------------------------------------- って言うこと。 あァァァァァァァァ 疲れた。 162: 名前:まりあ☆2011/07/28(木) 03 53 13 思い出したらいろいろあったなァ 中学最初の入学式。 芽衣と絵里と楽しく遊んだな チャットだけど。 いじめもあったけど全部絆だったんだよね。 萌とも誤解解けたし、遊べたし。 お金持ちになってやりたいこといっぱいできたし。 私はヒーローになったんだ。 でも、それは悪ヒーローだったんだね。 私は中学生にして何十人もの人を殺した。 自分にとって都合が悪い感情はすべて捨てた。 それってさ いいことなんじゃないの? だって 悪いことして つかまって何年かして刑務所から出ても悪いことする人っているじゃん? 悪禁になった人だって解除されたら荒らす人っていっぱいいるんじゃないの? それとおんなじで一回悪いことしたんだったら殺したほうがいいじゃない? 私のこのすばらしい考えは皆認めてくれないんだ。 皆の脳みそのレベルが低いのね。 私は自分の考えを突っ走る。 でも、ここで警察が来て私死刑になってしんじゃうんだろうな どうしてだろ? 本当に 変なの。 163: 名前:まりあ☆2011/07/28(木) 03 56 46 あーあ あんなチャットさえしなければ私はいつもどうり楽しい学校生活を送っていたんだ。 私はそこにあった教科書を開く Xとかyとかうようよしている きっと皆もうわかったんだろう あはは ぜんぜんわかんない。 つらいよ。 どうせ死ぬんだ。 自分で死んだほうがいいよね 164: 名前:まりあ☆2011/07/28(木) 04 01 12 私は台所で大きな包丁を取り出し 遺書を書いた。 自分の手を薄く切って指でこう書いた。 『皆 皆 わかってないね。私の考え方を。 なんておろかな人間たち。 悪い人が絶対に善人に成るわけないでしょう だから私は殺すの、この手で。 すばらしいでしょう? 私はね ヒーローなの』 書いた後あたしはしばらく笑い続けた そして 心臓にめがけて 突き刺した。 165: 名前:まりあ☆2011/07/28(木) 04 08 37 翌朝 大きなお屋敷で見つかったのは笑いながら冷たく赤くなっていた少女だった。 世界にこのニュースは報道された。 でも、優奈のすべてを反対したわけじゃなかった。 だってそのとうりだから 再逮捕 悪い人がまた繰り返すからこんな名前がつくんでしょ? 悪いことしたら絶対に善人になる? そこが問題なの。 だからそんなことがおきないように私がこの手で止める。 優奈 13歳。 ここに死す。 「あの子も所詮変わらない悪人じゃ」 小生は熱いアールグレイを一口飲んでいった。 「殺しでどうにかなる問題じゃないんじゃ 悪いやつは自分でわかっているんじゃ 自分の心にうそはつけないからのー なァミゾレ?」 「そうですね、小生様」 優奈の事件で犯罪はなくなったという。 でも、完全ではないが------------