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第4話「魔槍Ⅰ」 ――三日目 AM4 00―― ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ。 手足に力が入らない。 ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ。 視界が霞む。 ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ。 耳鳴りは止むことがなく。 ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ。 頭が今にも割れそうだった。 もう数年は人が通っていないであろう裏路地。 男はここで、一人死に掛けている。 頭から被ったローブは薄汚れ、その下の衣服は傷だらけ。 まるで何日も絶え間なく這いずり回ったかのよう。 そんな見てくれなど気にする余裕もないのか、男は空を仰ぎ、無心に呼吸を繰り返している。 東の空が不気味に明らみ始める。 廃墟の街を焼き尽くさんばかりに、白い光が染み込んでくる。 男はビルの上に立つ影を、呆と見ていた。 何と形容すれば良いのだろうか。 ヒトの形をした、それ以外の何か。 狂気と殺意を泥人形のように固めれば、或いはあんなものが生まれるかもしれない。 それほどまでに禍々しい影。 髪が逆巻き、眼球は焦点を結んでいない。 口を動かせば、聞こえるのは意味の無い唸り。 ――狂っている。 男はずっと前から直感していた。 いずれ自分はこの狂人に殺される。 傷ついた身体を動かす。 壁伝いに、歩行と表現するのもおこがましいたどたどしさで、少しずつ動いていく。 このままでは生命を吸い尽くされてしまう。 干からびて朽ち果てるまで、解放されることはないだろう。 唯一の救いは、ヤツが自分を直接手に掛けることがないということだけだ。 『俺を殺すな』と告げた命令は、確かにヤツを縛っている。 しかしそれも一時の延命に過ぎない。 武器はとっくに奪われた。 抵抗する術など持ちえていない。 だからもっと――が必要だ。 もっと――があれば、ヤツも多少は満足するだろう。 ずり、ずり、と壁を擦りながら、進む。 ――を与えろ。 ――を探せ。 ――を食わせろ。 ――を ――を ――を ――ニンゲン――を。 男の爪が建造物の壁を削る。 右腕に刻まれた二画の刻印が、赤黒く瞬いていた。 ――三日目 AM8 55―― 『皆さん、配置に着きましたかー』 小さな軍曹の呼びかけがモニタ越しに響き渡る。 昨日の打ち合わせ通りに、新人達は廃棄都市区画の各所に待機していた。 班構成はツーマンセル。 スターズのスバルとティアナが第一班、ライトニングのエリオとキャロが第二班。 実戦におけるコンビネーションを想定した組み合わせだ。 「第一班、ティアナ=ランスター、準備できました」 ティアナは手にしていたクロスミラージュを収め、モニタに向き直った。 モニタの中のリインフォースは軽く頷いて、ティアナの後ろへ視線を向ける。 『スバルは準備いいですか?』 「はいっ、オーケーです!」 足回りの柔軟を繰り返しながら返答するスバル。 いつも準備運動を欠かさないが、今日はいつになく入念だ。 それだけ普段より気合が入っているということだろうか。 ティアナは青く澄んだ空を見上げた。 雲一つない背景に、無機質な廃ビルが建ち並んでいる。 しばらくそうしていると、騙し絵を見せられているような感覚に陥ってしまう。 青空とビルがあまりにも不釣合いで、ビルの輪郭が浮いて見えるのだ。 広大な空に崩れかけの建造物。 まるで不出来な合成写真のようだ。 あるいは青いパネルの前に置かれたミニチュアセット。 いや、それとも―― 『演習開始は五分後、きっかり九時からです。ルールは昨日説明した通りですよ』 リインが訓練の説明を開始する。 ティアナは思考を切り替えて、昨日受けていた事前説明の内容を反芻した。 前もって与えられた情報は演習エリアの地形データと、自分の班のスタート座標だけだ。 エリオとキャロの配置は、スバルとティアナには伝えられていない。 演習エリアはこの廃棄都市区画内の8km四方。 敵役を務める副隊長達の追撃から逃れ、エリアから脱出することが目的となる。 つまりは撤退演習だ。 戦場において最大の被害を出すのは、戦局が決して撤退するとき。 背を向けたところへ容赦のない攻撃が飛んでくるタイミングだ。 防御や味方への援護すら難しく、応戦すれば足を止めざるを得ない。 即ち全てが不利に働く戦況。 第二班の位置を教えられていないのも、部隊が分断された状況を想定しているからだ。 ティアナも知識としては理解しているが、幸か不幸かそんな窮地を体験したことはなかった。 だからこそ、この演習に手を抜くことはできないと考えていた。 練習は本番のように、本番は練習のように。 今日の経験はいつか必ず役に立つ筈だ。 しかし実戦ではなく演習であるため、幾つかの制限が設けられている。 一番大きな制限はタイムリミットの存在だろう。 開始からきっかり一時間。それが与えられた時間的猶予。 その間に脱出できなかった場合は問答無用で演習失敗となる。 敵役との交戦は自由だが、なるべく避けるべきだとティアナは考えていた。 そもそも副隊長二人と正面から戦って勝てるとは思えないのだが。 『そろそろ開始時間ですね……みんな、頑張って下さいね』 「はいっ!」 昨日、演習の概要を通達されてすぐに、ティアナはすぐに作戦を考え始めていた。 自分達の開始位置は、ビルの合間を縫うハイウェイ跡。 南北どちら向きに辿ってもエリア外まで一直線だ。 しかし余りにも見晴らしが良過ぎ、隠れる場所が殆どない。 こんなあからさまなルートなど、確実にマークされているに決まっている。 追っ手を戦って退けようなんてしたら、十中八九返り討ちにされて捕まってしまう。 ならば自ずと選択肢は決まってくる。 遮蔽物がそれなりに多く、尚且つ距離の短いルートを全力で駆け抜ける。 シンプルだが、下手に複雑な作戦を立てて失敗するよりはずっといい。 ティアナは横目で、ぐっと伸びをしている相方を見た。 「スバル。上手くやれるかはあんた次第なんだから、失敗しないでよ」 「大丈夫だって。今日はかなり調子良いから」 今回の演習とスバルのウィングロードは相性抜群だ。 なにせスバルの思うままに逃走経路を創り出せるのだから。 ティアナは大きく息を吸い込んで、ゆっくり吐き出した。 大丈夫、作戦通りにやればクリアできる。 シミュレーションも重ねたんだから。 何度もそう自分に言い聞かせる。 ……唯一未知数なのは、衛宮士郎の存在だった。 まだ出会ってから一日か二日。 どんなスキルを持っていて、どんな魔法を使えるのかすら、まだ知らない。 あの黒い剣を出現させたのは転送系の魔法だろうか。 剣そのものはデバイスではないとヴィータ副隊長も言っていた。 昨日のうちに暇を見つけて訊ねておけば良かったと、今更ながらに後悔する。 どんな魔法を使うんですか? その一言で充分だったのに。 一応仲間なのだから、渋って教えてくれない、なんてことはないだろう。 ――ああ、また思考が脇道に。 気持ちを切り替えないと。 ティアナはパンと両頬を叩いた。 「……よし、行くよ、スバル!」 「うん!」 カウントダウンがゼロを刻む。 二人は朽ちた道路を蹴って駆け出した。 ――三日目 AM9 00―― 撤退演習が始まった。 舞台は廃棄都市区画の一画を区切った急ごしらえの演習場。 ルールは単純。逃げるか、捕まえるか。 要は派手な鬼ごっこだ。 ヴィータは相変わらずのむすっとした表情で、刻々と移り変わるタイム表示を睨んでいる。 最初の3分間、追っ手役は初期位置から動くことができない決まりになっている。 この演習を企画した側である以上、新人達の開始地点を完全に把握しているからだ。 移動する猶予がなければ演習にならず終わってしまう。 「やっと1分……長いな」 ヴィータは小さな声で呟いた。 ヴィータ達の待機場所は大きなビルのエントランス前だった。 他のビルに遮られて数十メートル向こうも視認できない。 とんとん、と靴底でコンクリートの道を叩く。 赤いバリアジャケットに身を包み、グラーフアイゼンを担いだ姿はまさに臨戦態勢。 3分が経てば即座に飛び出していきそうな雰囲気だ。 だが、出動が待ち遠しいというのとは、少しばかり様子が違うようだった。 ヴィータはエントランス前で待機するもう一人の人間に向き直った。 「おいエミヤシロウ。お前も新入りなんだからな。ヘマしたらあいつ等と同じように怒るぞ」 「ああ、分かってる」 脅すようなヴィータの言葉に、衛宮士郎は至って真面目に返答した。 その格好は、ヴィータのそれとは見事に正反対だ。 着衣は明らかに普段着で、簡単な武装の一つも手にしていない。 待機モードのデバイスを携行している様子すら無かった。 まるで、うっかり危ないところへ迷い込んだ一般市民のようだった。 つまみ出したほうが良いかもしれない、なんてことまで思えてしまう。 ヴィータは周囲に聞こえるような溜息を吐いた。 心底、不可解だ。 どうしてこんな男が機動六課に加わっているのだろうか。 「なのは……何隠し事してんだよ」 ミッドチルダで何かが起ころうとしている気配がする。 先日の任務も、エミヤシロウの存在もそうだ。 自分が知らないところで、刻一刻と事態は動いているのではないか。 そんな気さえしてくる。 ふとタイム表示に視線を移す。 残り十秒ほどで追っ手側もスタートだ。 出発を促そうと、ヴィータは衛宮士郎に向き直った。 次の瞬間、けたたましい警報が鳴り響いた。 「なっ!?」 咄嗟に視線を巡らせる衛宮士郎。 ヴィータは反射的にリインフォースⅡとの通信を開いていた。 『大変ですっ! 演習場外部から侵入者が!』 「何だって……人数は! 目的は!?」 勢いに任せて問いかける。 警報は依然として鳴り止む気配がない。 耳障りな機械音に鼓膜がどうにかなってしまいそうだ。 『演習場周辺のセンサが、外側から内側へ侵入する反応2つを確認しました! 両方とも陸上を移動していて、片方は時速数百キロなんてスピードだったみたいです!』 「ヴィークルか何かに乗ってるのか……? こんなときにっ!」 小さく毒づいて、ヴィータは歯噛みした。 ここにいるのは新人達4人と追っ手約3人だけだ。 隊長達は別件でおらず、ロングアーチは演習場の外からモニタリングしている。 もし悪意ある侵入者だとしたら、現状は決して望ましいものではない。 バラバラに逃げ出した新人達を早くどうにかしなければ。 ヴィータは今後の対応を一気に組み上げる。 緊急通信で演習の中断を通告。 現在位置を教えさせ、副隊長が合流までその場で待機。 一秒の遅れが命取りだ。 視線だけ動かして、衛宮士郎を見る。 慌てたりパニックを起こしたりしている様子は無い。 状況が分かればすぐにでも対応できる面構えだ。 「リイン、新人達に通達頼む! 演習はすぐに中……」 ザ、とノイズが走る。 音声と映像が急激に乱れ、リインの顔が判別できなくなる。 よりにもよってこんなときにトラブルが発生してしまうとは―― 「――いや……通信妨害……?」 把握していた現状を、より悪いものへ書き換える。 報告された速度から考えて、速い方の侵入者は最悪1分程度で新人達と遭遇しかねない。 通信の復旧を待っている猶予はないだろう。 「あたしは空から探す! 陸は頼んだ!」 「分かった!」 衛宮士郎に振り返ることもせず、ヴィータは地を蹴った。 赤いドレスの騎士は、一陣の風となり空へ駆け登っていった。 ――三日目 AM9 10―― 不意に地面が揺れた。 「――え?」 最初に気が付いたのはティアナだった。 走るのを止めて、辺りを見渡す。 地震とは違う奇妙な振動。 風に混ざって、ゴゴゴ、という不気味な音が聞こえてくる。 「ティアナ、どうしたの?」 「シッ! 静かにして」 相方が立ち止まったことに気が付いたのか、スバルもブレーキを掛けた。 デバイスを使って移動していたために振動には気が付かなかったのだろう。 そもそも揺れ自体はそう大きくなかったのだ。 ティアナが感じたのは、鳴り響く音の奇妙さだった。 最初に大きな音が聞こえ、暫くそれが継続したかと思えば、あっさりと聞こえなくなっていた。 ここからでは、建ち並ぶビルに阻まれて視界は良くない。 二人は開始地点のハイウェイ跡を降りて、通常の道路を走っていた。 追っ手側に見つかりにくいようにとの判断だったが、こういう場合はマイナスだ。 しかも上空から隠れることを考えて、あえて高架下を選んでいる。 周囲の様子を把握するという点においては失敗だったかもしれない。 「ひょっとして、キャロとエリオ、見つかっちゃったのかな……」 心配そうにスバルが呟く。 もしそうだったとしても助けに行く余裕はない。 わざわざ発見されに向かうようなものだ。 「……行こう」 相方に促すティアナ。 急がないと追いつかれてしまう。 スバルもそれを理解しているようで、こくりと頷いて同意する。 前に向き直り、再び走り出そうとしたその矢先。 「待てっ!」 背後から男の声が飛んでくる。 思考は一瞬。 二人はすぐに現状を理解した。 「ティア、背中乗って!」 「うん!」 振り向くこともせず、ティアナはスバルの背中に飛び乗った。 ヴィータより先にエミヤシロウに見つかったことは予想外だった。 けれど予定通りに動くだけ。 今回は二人一緒に逃げ切ることが先決だ。 ティアナがしっかりと掴まったことを確認して、マッハキャリバーを駆動させる。 加速にそう時間は掛からない。 わずかな間に、二人乗りで可能な速度にまでたどり着く。 ティアナは後ろ向きに引っ張られる感覚に抵抗するように、スバルの身体をぎゅっと掴んだ。 砂煙を上げ、所々にある瓦礫を避けながら、無人の道路を疾走する。 流れる空気が髪を巻き上げ、肌に風圧を感じさせる。 速度は既に時速50kmに近付こうとしていた。 何かしらの乗り物に乗れば容易く出せる速度だが、生身に近い状態で体験すると凄まじい高速に感じる。 ティアナは息を呑んだ。 スバルはいつもこんな風に走っているのかという気持ちと、これなら上手くいくという手ごたえを同時に覚えていた。 振り落とされないように気をつけながら、後方に視線を送る。 遥か向こうにエミヤシロウの姿がある。 ティアナはそう信じて疑わなかった。 だからこそ、言葉を失った。 「え、嘘っ」 距離が開いていない。 エミヤシロウの姿は依然として十数メートル後方にあった。 生身の疾走で、デバイスを用いた移動に追いすがっているのだ。 いや、それどころか、徐々に間を詰めつつあった。 前傾姿勢で腕を振り抜き、幅広のストライドで道路を蹴って、風のように走っている。 「スバル! 追いつかれそう!」 「えええぇぇぇ!?」 驚くのも無理はない。 マッハキャリバーが出しているこの速度は、人間が生身で実現できるレベルではないのだ。 四脚走行の獣であれば或いは叩き出せるであろうスピード。 その領域を、あの男は二本の脚で駆け抜けていた。 「待てっ、止まれ!」 エミヤシロウが声を張り上げる。 だが、その言葉が聞き入れられる状況ではない。 ティアナはクロスミラージュを右手に取り、左手でスバルの肩を強く掴んだ。 「止まれって……」 素早く上体を捻る。 「……言われてもっ!」 大まかな狙いだけ付けて魔力弾を三連射する。 殺傷力は持たせてはいないが、当たれば充分な足止めになるはずだ。 魔力弾が凄まじい相対速度でエミヤシロウに迫る。 着弾に要する時は僅か一瞬。 その僅かの間に、エミヤシロウは短い言葉を紡ぎ上げていた。 右手の指が何かを握るような形に曲げられる。 ティアナは思わず目を見開いた。 光を放つ魔力が格子状に編み上げられ、瞬時に黒い片刃の剣を具現する。 それは紛れもなく、つい先日目の当たりにしたエミヤシロウの武装であった。 エミヤシロウが軽く身を屈める。 先頭を飛ぶ魔力弾がこめかみを掠めた。 残るは二発。 具現した剣を握る手に力が篭る。 直後、黒剣は初めから手中に収まっていたかのような自然さで、二つの魔力弾を切り捨てた。 まさか、とティアナは言葉を呑む。 あの剣がデバイスでないのなら、転送魔法で取り寄せているのだと思っていた。 しかし予想は大ハズレ。 この男はデバイスの補助すら受けず、ただ魔力のみで武装を物質化させていたのだ。 「スバル!」 「オッケー!」 マッハキャリバーの車輪を唸らせ、急停止。 同時に身体を反転させ、脚を突っ張って速度を殺す。 削れた舗装材が砂埃のように舞い上がる。 ティアナはスバルの背から飛び降りて、その隣に並び立った。 各々のデバイスを構え、臨戦態勢で追っ手と対峙する。 ただ走っているだけでは逃げ切れないと判断し、作戦を切り替えた。 副隊長がいないのなら数の上では2対1だ。 個人では実力差があったとしても、数の有利があれば突破できるかもしれない。 ところが。 「――ストップ。演習は中止だ」 からん、と黒い剣が路上に投げられる。 戦うつもりはないという明らかな意思表示。 スバルとティアナは顔を見合わせた。 演習が中止? どうして? 二人の顔には同じ疑問が浮かんでいた。 「あ、あの」 スバルが一歩前に出る。 「演習が中止って、どうして――」 そのとき、何の前触れも無く、視界を赤く鋭い光が横切った―― 前 目次 次
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← ◇ イリヤは、その光景から目を離せないでいた。 今しがた放送で呼ばれた名前。 クロ、ルヴィアさん、バゼット、藤村先生。 多すぎる、知った者達の名が呼ばれたことに衝撃を受けているイリヤの目の前で。 いきなり消滅したかのようにその手に込めた力がふわっと抜けたように見えた士郎が。 セイバーの一閃を受けて地に伏したのだから。 「え…」 舞い散る赤い何かを目にし、虚ろだった意識が一気に覚醒する。 何かの間違いではないか、もしかしたら夢なのではないかと心のどこかで否定しているのに。 その目の前で起きていることは、紛れも無く、あまりにも現実で。 「…嘘」 セイバーが士郎から視線を外してこちらを向くことも気にならない。 そのまま倒れて動かない士郎から、視線を離すことができない。 「嘘…でしょ…」 いくら頭の中で否定しても、現実は全く変わらない。 そのまま倒れたままでいると、本当に動くことが無くなってしまいそうな予感があって。 イリヤは、思わず声を張り上げて叫んでいた。 「――――お兄ちゃん!!!!!」 ◇ 「…クソッ」 「………」 一歩ずつ、ゆっくりと移動を続ける巧とL。 そんな彼らの元に放送が聞こえてきたのはつい今のこと。 Lは呼ばれた名の中に、夜神月やメロや夜神総一郎、草加雅人や鹿目まどかといった知った名がいないことにひとまず胸を撫で下ろし。 それとは対照的に、巧は悔しそうに顔を歪めていた。 佐倉杏子。 ほんの短い間だったがゼロと戦うために共闘した、気に食わなかったけど悲しい瞳をした魔法少女。 バゼット・フラガ・マクレミッツ。 バーサーカーとゼロから逃げる際、殿を務めた女。 クロエ・フォン・アインツベルン。 確かイリヤの姉妹で、自分に矢を仕掛けた少女の名だったと思う。士郎を助けるために一人あのバゼットの戦う場所近くに残っていた子だ。 呉キリカ。 あの時自分たちに襲いかかってきた黒い魔法少女。重傷を負っていたため長生きはできないだろうと思っていたが、実際に名前を呼ばれることとなった。 他にも幾つか人づてで聞き覚えのある名が聞こえた気がしたが、今はそれらに思考を裂くことはできなかった。 「辛い気持ちは分かります。しかし今は私達は立ち止まっているわけにはいかないのです」 「誰が…立ち止まってるってんだよ」 ゆっくりとだが一歩ずつ、北崎の去っていったであろう方向、士郎達も逃げただろう場所へと足を進めていく二人。 追いつくことができるかと言われたら、正直厳しいと言わざるを得ないほどにゆっくりとした歩みだ。 焦る気持ちとは裏腹に、蓄積したダメージで満足に動かない体に苛立ちを覚える。 そんな時だった。 ―――――――――お兄ちゃん!!!!! 周囲に響いたのは大きな叫び声。 その声の主を、巧は知っている。 そして、その声はそう遠くない場所から響いている。 「何かあったようですね。急ぎましょう」 「ぐ、おい、俺から一旦離れろ」 巧はそう言って、Lを密着した自分から引き離した。 よろめき、膝をつきながらも一人で起き上がった巧は、気合を入れるかのように吠えた。 その瞬間、体を灰色の肉体が包み、人ならざる姿へと変化させる。 その変化に若干驚いていたLに向かって巧が声をかける。 「掴まれ」 「巧さん、体の方は大丈夫なのですか?」 「ああ、大丈夫だ」 そうは言ったが、実際のところこうして変身しているだけでも意識が消し飛びそうな状態だ。 それでも変身できたのは、痛みに耐える精神力、そして仲間への想いがあってのものだろう。 Lはその全身に刃の生えた体の中で、それが少ない場所を掴み。 そのまま狼の脚力を持って走りだした。 生身で車にでも縛り付けられたかのような速さにしがみつくのが精一杯のL。 しかし巧はまた、肉体の疲労とダメージで想像以上の速度が出ないことに焦れていた。 風に髪をボサボサにされつつも、しがみついて移動すること数十秒。 たどり着くことができた目的の場所。 体が限界を迎えた巧は、人間の姿に戻って倒れこみ。 「へえ、追い付いてきたんだ。まさかL、君も一緒なんてね。 今おもしろいものやってるからちょっと見てみなよ」 「北崎さん…!」 それでも意識を保ったまま、前を見た巧の目に映ったもの。 北崎に抑えられたイリヤとルビー。 こちらを見据えた黒い騎士。 そして。 「士郎!!!!」 肩から胴にかけて袈裟懸けに斬られた士郎が、血を流しながらも立ち上がろうとしている姿だった。 ◇ 不思議と痛みはなかった。 それでも斬られたのだと気付いた時、俺はもう死んでしまったのだと感じた。 なのに、耳に聞こえてくるのはこちらから離れていくセイバーの足音。 それが知覚できるということは、まだ生きているということだろう。 あの挙動はセイバーにとっても予想外だったようで、それ故に剣筋がはっきりとしたものではなかったのが救いだったのかもしれない。 だというのに。 痛みを感じなかったのが不思議だった。 いや、一番不思議なのは、彼女の名が放送で呼ばれたことに対して、ここまで驚いていることだ。 藤村大河。 例えばの話、名が呼ばれたのがイリヤスフィールでも、間桐桜であったとしても、こうはならなかっただろう。 ここまで、傷の痛みすらも感じないほどに、彼女の死に動揺している自分がいた。 つまるところ、自分は藤村大河という存在が死ぬことを、完全に想定していなかったのだ。 彼女が殺しても死なない、のではない。 彼女が死ぬはずがない、という固定概念を、自分の中に持っていたのだ。 それほどに、藤村大河の存在は日常になくてはならないもので。 衛宮士郎という存在を支えていたものだったのだから。 そして、その衛宮士郎という存在を支えていた柱が無くなったと、そう認識してしまった今。 正義の味方、桜の味方という以前に。 衛宮士郎として、立ち上がることができなくなっていた。 そして、立ち上がることもしないこんな自分をしばらく見据えたセイバーは、そのままこちらから視線を外し。 イリヤを、そして彼女を捕まえ離さない北崎の方に向いた。 ああ、その判断は正解だろう。 きっと、衛宮士郎という男はここで死ぬ。 斬られた傷は深く、気を抜けば意識を落としてしまいそうになっている。 そして、ここで意識を落とせばもう二度と起き上がることはないだろう。 そのまま、漂白した状態から回復することもなく、士郎の意識は闇へと沈んでいくのを感じ。 何もない、深い無の中へ―――――――――――――― ―――――――――お兄ちゃん!!!!! 沈むはずだったのに。 そんな、イリヤの叫び声を聞いて、意識が浮かび上がるのを感じた。 (―――――――っ) それと同時に、自分の痛覚が痛みを訴えているのを感じ取り。 まだ生きている、という認識を覚まさせた。 ああ、そうだ。 俺には、まだやらなければいけないことがある。 もう、この命は俺一人のものではないのだ。 例え”衛宮士郎”としての支えがなくなったとしても。 今俺が背負っているのは、自分の理想だけではない。 今の俺には、衛宮士郎として守らなければいけないものがある。 桜が、そして、イリヤが。 だから。 「――――――ぉ」 体を無理やり起こす。 血が流れるのを気にもとめず、立ち上がる。 こんなところで。 「――――――――おおおおおおぉぉぉぉぉ!」 くたばってなど、いられないのだから。 ◇ 「別に君が戦うっていうんなら構わないけどさ、まだ後ろの彼やる気のようだよ?」 「何?」 「何か面白いものが見られそうな予感があるから、戻ってきなよ。今だけは待ってあげるからさ」 そう言ってニヤニヤと笑みを浮かべながらこちらを眺め続ける北崎。 思わず振り返り。 そこで士郎が起き上がっていたことに、最も驚いたのはセイバーだった。 あの一撃は、即死ではなくとも致命傷に間違いのないものだったのだから。 そして、振り返ったセイバーの目に映ったのは。 傷口から血を流しながらも、立ち上がろうとしている衛宮士郎の姿。 肉体は満身創痍のはずなのに、その目の戦意は衰えるどころか先よりも増している。 「士郎、今のあなたの傷は命に関わるものだ。しかしおとなしくしているのであれば、早急の手当で延命はできる可能性はある。 それなのに、まだあなたは起き上がるのですか、? まだ、私と戦おうというのですか?」 「―――――ああ、そうだ」 「イリヤスフィールを守るために?」 「ああ」 「…何があなたを、そうさせるのですか?」 セイバーには分からなかった。 今の衛宮士郎を、何がそこまで奮い立たせるのか。 彼には、あのイリヤを守る理由はないはずなのに。 何故そこまで傷ついてまで、守ろうとするのか。 「――――昔、世界の皆が幸せになってほしいって、そんな願いを持って戦った男がいた。 そいつは、自分の大切なものを全部切り捨てて、それでも一人でも多くの人が幸せになれるように戦ってた、らしい。 たくさんの人を救うために、少しの犠牲を切り捨てる、そんな、…正義の味方になろうとした男が」 それは、小さな少女と一人の男への追想。 まるでそれが自分のことのように。 遠い過去を思い出すかのように。 静かに語る。 「そのために、その男は自分の最も守りたかったものを、守ることができなくて。 今でもその子は、その男のことを恨んでる。自分を捨てた、と。 要するに、自分の信じた道を往くために、自分の大切なものを選ぶことができなかったんだ、その男は」 前を向く士郎。 その先にはセイバーがいる。しかし見ているのはさらにその先。 今にも泣き出しそうな顔をした、銀髪の少女。 「だけど、俺思ったことあるんだよ。もしそんな親と子が、幸せに暮らしてる世界があったら。 蟠りも何もなく、親は親として子供を愛して、その子供も親の愛情を受けて幸せに暮らしていけたら、それはどんなに幸福なことなのか、って」 「…………それは、キリツグとイリヤスフィールのことか?」 「ああ」 息子なのだから。父親の幸せを願うのは当然だろう、と。 そう言って、士郎は続ける。 「桜の笑顔も、俺が守らなきゃいけない。だけどイリヤも守る。 桜の味方としての俺、衛宮切嗣の息子としての俺、どちらかを取ることなんてできない。 ―――それなら俺は、両方を選ぶ。二人とも、死なせはしない」 だから、その理由さえあれば。エミヤシロウはまだ戦うことができる。 立ち上がることが、できる。 「………あなたの覚悟は分かりました。 これで本当に最後です。この戦いが終われば、共に立っている、ということは有り得ないでしょう」 「ああ」 「もしあなたの持っている、2つの”聖杯”を得る、という望みが本気であるのなら。 ―――――私の屍を越えて進むがいい」 士郎は思考する。 この体はあとどれくらい動けるか。 セイバーに打ち勝つには、何が必要か。 可能性はもはや絶望的なもの。 だが、そこにほんの僅かだが、光を見いだせるものがある。 「―――お兄ちゃん…っ!ダメ…!」 『士郎さん!いけません!』 「止めろ!士郎!」 そんな士郎を止めようとする声が3つ。 彼の耳に届く。 イリヤ、ルビー、そして巧。 (無事だったん、だな。巧) あの北崎が追い付いてきた時、巧がどうなったのか、気がかりではあった。 無論、肉体的には無事ではないだろう。しかし、まだ生きて自分の身を案じてくれている。 それが嬉しくて、同時に申し訳無さもあった。 ここから先は、もう彼らのことを考えることなどできないだろう。 だから、最後に彼らに会えて、良かった。 そんな感謝の気持ちを心の中で述べ、セイバーをまっすぐ見据えた士郎は。 肩に手をかけ。 ―――――――赤き聖骸布を、一気に剥ぎ取った。 ◇ これは2度目だった。 己の中で世界が崩壊するのは。 生命の存在を許さないだろうこの突風のような流れ。 ボロボロの肉体が、まるで高質量の液体の激流に揉まれていくかのような衝撃。 一度目は無意識であった。だからこそ、流されてしまった。 だが、今は。 耐える。この肉体を、精神を破壊するようなこの激流に。 前に進む。一歩ずつ。 今度は、耐えなければならない。 そうだ、例え他の誰に負けることがあっても、自分にだけは負けられない。 だから、決して屈しはしない。 無理にでも前に出ようと進み。 しかしその度に体をすり減らされ押し返され。 それでも、諦めることなく前進を続ける中で。 ふと、赤い外套が見えた気がして。 その瞬間、思考が完全にクリアになった。 俺では立っていられないような突風の中で。 ただ一人、じっと立ち続けるその男は。 こちらに目をくれることもなく。 こう問いかけてきたのだから。 ――――――――ついてこれるか? 静かに脳裏に響くその声に。 思わず叫び返していた。 「――――――――――――――――――――――ついてこれるか、じゃねえ」 「てめえの方こそ、ついてきやがれ――――――!!」 ◇ 地を踏みしめる。 風はもう途絶えた。 騎士王、アルトリア・ペンドラゴン。 今は黒きイングランドの王との距離は数メートル。 思考し、分析する。 今必要なものは何か。 今彼女の手にあるのは魔剣グラム。 アーサー・ペンドラゴンの宝具、約束された勝利の剣ではない。 しかしその技量は健在。 弓による攻撃は不可。隙があまりに大きすぎる。 今必要なものは、彼女の剣とまともに打ち合うことのできる剣。 いや、彼女に”隙”を作りうる攻撃。 構えるは、干将莫耶。 まだ投影する必要はない。 この宝具は、双剣は、まだ戦う力を残しているのだから。 こちらの武装を確認したセイバーもまた、片手に構えた剣を両手に持ち直す。 そのままの体勢で、ほんの数秒ほど時間も世界も止まったかのような静寂に包まれる。 ほんの数秒だった静止した時、しかしそれが永遠に近い時にも感じられた。 そして。 「「―――――――!」」 駆け出すのはほぼ同時だった。 ―――――! 激しい金属音を奏でながら全力で叩きつけられる魔剣。 正面から受け止めるにはあまりに大きすぎる一閃。 それを、この腕は防いでいた。 腕、正確にはこのアーチャーの持っていた記憶が、経験が受け継いだ中に存在したセイバーが。 それが俺の知るセイバーの技量と合わさり、彼女の攻撃のクセをかろうじて掴んだのだ。 しかし、そんなもの初撃の数度を受け止めることができれば幸いという程度のもの。 いくら相手の技量を知っていようと、その程度で対応できるならば彼女は剣の英霊などと呼ばれてはいない。 だからこそ、次の一手を思考する。 せめて一撃を入れる、決定的な隙さえ作れればいいのだから。 グラムを払い、軋みを上げる干将莫耶。 それを、セイバーの目の前で、投擲した。 不意打ち、というにはあまりにも雑なそれを、セイバーは難なく回避。 手に武器のなくなった俺に向かって容赦なく剣を振るい。 ――――――ガキィン その一撃を、俺は咄嗟に肩に未だ持ち続けていたバッグで防ぐ。 バッグの中身が散乱する中、グラムを受け止めたのはその中から姿を現した一本の黄金の西洋剣。 「―――!私の剣…!」 勝利すべき黄金の剣(カリバーン)。 かつてアーサー王が持っていたとされる、選定の剣。 何という皮肉だろうか。 かつてアーサー王が所持していた選定の剣を自分が振るい。 今セイバーが持っているのは、自身にとって天敵となる竜殺しの特性を備えた、そのカリバーンの原点でもある最強の魔剣。 本来であればこの戦いで互いに持つべきは逆であるべきだろうというはずの2本の剣が、こうして主を違えてぶつかり合っているのは。 だがしかし。例えカリバーンであっても、相手はその原典である魔剣。 加えて干将莫耶によって受けていた、僅かながらもステータスアップの効果も今はない。 だからこそ、セイバーの一閃を正面から受け止めきることなど、不可能。 だが逆に言えば。 この咄嗟に近い一撃だけは、受け止めることができる。 そしてそれだけの時間があれば十分。 「――――――!!」 セイバーはそれで俺の狙いに気付いたのか。 引くこともなく、思い切り剣を振るい、こちらを吹き飛ばす。 後退する体、隙だらけのその体勢に、セイバーは追い打ちをかけることもなく。 ―――――!! そのまま背後から迫った2本の剣を弾き飛ばす。 それは今しがた俺の投擲した、干将莫耶。 弧を描く軌道に放たれたそれは、互いを引き合う性質によって引き寄せられ、セイバーの立っていた場所へと旋回し舞い戻ったのだ。 だが、セイバーの直感もまた化け物。 剣の投擲とカリバーンで受け止めたという事実だけで、こちらの狙いに気付いたのだから。 弾き返された干将莫耶は砕け散り、精錬された双剣はただの鉄クズへと成り果てる。 しかし、それもまた予想範囲内。 この程度のこと、彼女ならば難なく対処してくれる。 振り返ったセイバーは、後退した士郎へと更なる追撃を駆けるために跳ぶ。 アーチャーの腕を持った自分が、距離を空ければ何をするか。分からないわけがないのだから。 だからこそ。 ここで弓を穿ちはしない。そんな暇は、今はない。 「投影――――開始(トレース、オン)」 使う魔力は最小限、かつ弓を射ずとも離れた相手に攻撃できる武器。 元より剣に特化した体。剣でなければ魔力の消費は上がる。 その中でも射ることなく瞬時に射出可能な、魔力消耗の少ない剣。 そう、俺は知っている。 相手の切り札に反応して因果を逆転させる、飛翔する魔剣の存在を。 それは、衛宮士郎が本来の歴史では決して会うことのなかった執行者の持つ、神代の魔剣。 その存在をこの目で見た。 そして、それを使う持ち主、バゼット・フラガ・マクレミッツの姿も、脳裏に焼き付いている。 ならば作れる。それが剣であるのならば。 使用法、効果、形、それら全てを模して、つくり上げることができる。 パキン その瞬間、何かが割れるような感覚が脳内に走った。 しかし、問題はない。 戦うことに、支障はない。壊れた箇所は、腕が補強する。 後より出て先に断つ者(アンサラー)の軌道詠唱。不要。 作り出しさえすれば、後は放つだけだ。 投影すると同時に浮遊した短剣に拳をつがえ。 「――――斬り抉る戦神の剣(フラガラック)!」 手が焼ける感覚と共にその名を開放、閃光となって飛翔する一本の短剣。 それは相手の切り札に反応して、相手を穿つ光線を放つ迎撃宝具。 エクスカリバーを持たぬ彼女に、因果を逆転させる効果を発動させることはできない。 しかしそれでも、セイバーに迫るその光線は低ランクとはいえ宝具の光。 例え高対魔力、高耐久力を持つ彼女であっても、受けていいものではない。 心臓を穿つ光を、セイバーは直進しつつ受け止める。狙いさえ分かっていれば受け止めることは容易い。因果逆転が発動しないならなおさらだ。 しかし、それでも受け止めた光は必殺の威力を持った宝具。その一撃はセイバーの前進を食い止める、のみならず衝撃で後ろへと跳ね飛ばす。 ピキッ、と。受け止めたグラムはその刀身に僅かに傷を作る。 そのまま目標を穿ちもしなかった短剣は、それだけで役目を終えるように消滅し。 その瞬間、士郎の次の一手の布石が揃った。 「―――――――投影、装填(トリガー・オフ)」 フラガラックの射出と同時に、その手に持った黄金の剣から全ての情報を読取る。 真名開放直後の、投影魔術。 魔術回路の酷使にも近い行為を、体内に眠る27の魔力回路を、そしてこの腕を総動員して成し遂げる。 セイバーはそのただならぬ様子に気付き、距離を詰めようと一気に駆け出そうとしたところで。 思い直すように彼女もまた剣を構える。 そして、この剣に蓄えられた全ての知識を、情報を読取ったこの体で。 この聖剣の真名を、開放する――――― 「全工程投影完了(セット)――――是・勝利すべき黄金の剣(カリバーンブレイドワークス)」 読み取るは聖剣の記憶。騎士王の戦いの記録。 基本骨子を、構造を、経験を、魔術構成を。その全てを読み取り、その真名を開放する。 聖剣に収束していく魔力が、カリバーンに黄金の光を纏わせ。 「―――はあっ!」 そのまま振り下ろした聖剣は、黄金の波を放ちながら、セイバーへと迫った。 対してセイバーも、その様子を目にしながら。 退くこともなく、素早い動きで剣に魔力の霧を渦巻かせる。 そう、距離を詰めれば逆に至近距離からあれを食らう可能性があった。 ならばそれよりも、士郎のあの一撃を今出せる全力を持って受け止めるべきだと、セイバーの中の何かは告げていた。 濃密に渦巻く魔力の刃は、エクスカリバーを、そして風王結界を喪失した彼女の持つ、切り札には届かずとも最大威力にして唯一である技。 そう、あの光は己の所持していた聖剣の光。 故に、ことあの聖剣のことであれば彼女以上に知っている者などいない。 だからこそ、あの剣にだけは、敗れるわけにはいかない。 それがあの剣の所有者としての誇りだ。 そう言わんばかりに魔力を魔剣につぎ込み。 渦巻く黒い魔力は、巨大な剣のように形作り。 黄金の光を迎え撃つ――― 「卑王鉄槌(ヴォーディガーン)――――!!」 巨大な波動の刃は一瞬、黄金の光を打ち止め。 しかし直後に光に押されて崩壊させる。 その光を前に、セイバーは再度瞬時に魔力を剣に集中させる。 纏っていた黒き鎧、その魔力を剣に集め。 「――――ハッ!」 振り下ろした剣を再度、同じ形で打ち上げた。 鎧を魔力へと変換し再度放った卑王鉄槌。 それをもってしてなお、黄金の光は止まらない。 今のセイバーが持ちうる最大の攻撃を持ってしても、その光を破ることはできない。 しかしセイバーは、その様子に動揺することもなく、振り上げた剣を流れるような動作で地面に突き立てた。 光が彼女を覆い尽くすと同時に、濃密な霧がセイバーの周囲を守るように防壁へと形を変える。 防壁ごと光に覆い込まれるセイバー。 ――――シュン 一瞬の後、閃光を一閃するかのように剣風が走り、光が消滅。 奥から現れたセイバーは、前進を魔力に焼かれ纏った服はボロボロに焼け焦げている。 2度の卑王鉄槌、そして魔力の霧による防御。それらは確かにカリバーンの光を打ち消すことはできなかったが、決して意味がなかったわけではない。 幾度の障害を通じ、その威力はセイバーの対魔力と耐久力を持ってすれば耐えられるほどまでに威力を相殺されていた。 そして、目の前の士郎を見据えたセイバーは、今度こそ目を見張ることとなった。 「なっ?!」 構えているその武器は弓。 アーチャーの持っていた黒弓。それはいい。 問題は、そこに矢として構えられている武器。 黒い弓とは対照的に、その手に構えられた一本の剣。 まさかと思ったその瞬間、その剣はこちらへ向けて射出。 矢から手が離れると同時に一歩前に出たセイバーは、射出されたそれを咄嗟に全力で弾き飛ばして。 その直前、目の前でそれを見て、セイバーの驚愕は決定的なものとなる。 士郎はこともあろうに、勝利すべき黄金の剣を、自分の宝具を使い捨ての矢として射出したのだから。 そう、あのカリバーンですらも、ただの一手にすぎない。 セイバーがカリバーンを耐えぬくことなど、想定していたのだから。 カリバーンを最も知っているのがセイバーであるなら、―――――セイバーを他の誰よりも知っているのは俺なのだから。 だからこそ。彼女の直感はこの攻撃を予知し得ない。 予知できたとしても、起こり得ることとして捉えることができない。この一撃は、英霊に対する一つの冒涜でもあるのだから。 ぶつかり合った衝撃で軋みをあげる魔剣グラム。奇しくも傷のついた部位がその一撃を受け止めたことで、刀身の傷は小さな罅へと変化する。 弾かれたカリバーンは、そのまま上空へと打ち上がり大爆発を引き起こす。 ランクにしてAクラスの宝具の、壊れた幻想(ブロークンファンタズム)。 そんなものが爆発すれば周囲に振りかかる熱は、爆風は計り知れない。 轟音と共に吹き荒れる爆風。 あまりに予想外の事態に、乱れるセイバーの直感。 そしてそんな現象の至近距離に近い場所に位置し、先のカリバーンに勝るとも劣らぬ強烈な爆風に覆われながらも、セイバーは笑っていた。 士郎は本気だと。 自分の武器を打ち捨ててなおも、自分と戦っているということに。 あの、鍛錬では自分に一本も入れることが出来なかった少年が、こうまで自分を越えようとしている事実に。 喜びと楽しみを感じている自分を、セイバーは感じ取っていた。 それこそ、今この時だけは現マスター、桜のことも、イリヤスフィールのことも忘れられるほどの。 ああ、だからこそ惜しい。 次の士郎の一手が、この戦いに決着をつけてしまうだろうことを、直感していたから。 魔力の混じった爆風で周囲の状況もロクに掴めぬ空間。 そんな中で、視界の端に何かが映る。 「来るか、士郎―――――」 視界の端に映った剣を、瞬時に受け止め。 (――――違う!) それは、干将莫耶の片割れ、陽剣・干将。 しかし、剣の担い手はそこにはいない。 これはあくまでも投擲されたものに過ぎない。 思考より先に体が動く。 これが投擲されたということは、もう一方も自分に食らい付こうと迫ることは火を見るより明らかなのだから。 それを知っていたからこそもう一方、逆側から飛来した陰剣・莫耶をギリギリのところで受け止めることができた。 迫った剣にグラムを振るい粉々に砕く。 爆風の中であってもその直感をもって的確に対処し、干将莫耶による一撃を完全に回避し。 「―――――!」 それ故に、目の前に迫ってきた彼の次なる手を、防ぐ機会を失うことになる。 目の前で光るその手を見据えながら、その一撃を避けることができない、と見たセイバーは。 「っ!はああああああああああああ!!」 それでも退くこともなく、その一撃を、正面から迎え撃ち。 「セイ、バー――――――――…………!!!!!!」 その衝撃は周囲に一陣の風を巻き起こし。 爆風が完全に晴れた先にあった光景は。 互いの体が交差し、背を向け合う二人。 セイバーの振り下ろした剣と、士郎の投影した武器が、共に互いの体を捉え。 全身から生えた刃だらけの体で、胸から腹にかけて深く斬られて血を流す士郎と。 胸に一本の刃を刺されたセイバー。 その二人が、共に倒れる姿だった。 ◇ 「――――――お兄ちゃんっ!」 イリヤ自身、どこにそんな力が残っていたのか分からない。 ボロボロでロクに力も入らないはずの体だったのに、その光景を見ただけで北崎の拘束を振りほどいて走りだしていた。 「お兄ちゃ…ゴホッ」 体の中で、治りかけていた傷が開きかけたのを感じ取る。 口の奥からせり上がってくる鉄の臭い。体の内側から走る、鋭い痛み。 なのに、その足は止まることなく士郎の元へと駆け出していた。 『い、イリヤさん!』 叫ぶルビーの声にも。 「あーあ、相打ちかぁ。面白くないなぁ」 あくびを出す北崎の声にも反応することなく。 「お兄ちゃん…、お兄ちゃん!」 よろめきながらも走るが、体は正直だった。 傷ついた内臓の発するは身体機能を大きく低下させ、たった数十メートルの距離を満足に走らせない。 やがて足がもつれ、地面に転がり込む。 「つっ…、お、お兄ちゃん…」 それでも、地を這うように動かぬ兄の元にたどり着くイリヤ。 「目を開けて!お願いだから!お兄ちゃん!お兄ちゃん!」 揺らそうと呼びかけようと、倒れた兄は反応しない。 「嫌…、嫌だよ…、こんなの…。嫌ああああああああああああ!!!」 絶叫するイリヤ。 そんな様子を見ながら、北崎はゆっくりと立ち上がる。 嫌な予感を感じたLは、咄嗟に北崎を静止する。 「北崎さん…!」 「……」 しかしそんなもの、彼にとって何の障害にも成り得ない。 腕の一振りで跳ね飛ばされるLの身体。 ゆっくりと、倒れた二人と泣き叫ぶイリヤの元に、オルフェノクの身体へと変化させながら近付く。 「士郎!おい士郎!しっかりしろ!」 未だ起き上がることができない巧は、必死で士郎の名前を呼び続ける。 それが、無駄なことだと分かっていながら。 「クソッ、動け、動けよ俺の脚!!」 起き上がろうとしても、脚に力が入らない。 ボロボロの身体でオルフェノクの力を酷使したこの身は、まだ一人で起き上がることもままならない。 「お前、そこから逃げろ!!速く!」 せめてもの行為として、イリヤにそこから逃げるように叫ぶ。 しかし、イリヤは士郎の傍を、離れることはなく。 やがてドラゴンオルフェノクは、3人の元へと辿り着く。 じっと二人の身体を見渡し。足で軽く揺さぶって。 何の反応もないことを確認した北崎は。 「相打ちかぁ…。このパターン正直イラつくんだよねぇ。僕の関われないところで楽しそうなことしてさ」 士郎の身体にすがりついたイリヤに目を向ける。 その視線に、そして今の状況にようやく気付いたイリヤは。 「ひっ…!」 小さく怯える声を上げ。 それを楽しそうに北崎は眺め。 「それじゃあ、この戦いは僕の勝利ってことで、この子を好きにしてもいいんだよね?」 そう言って、手をイリヤへと差し伸ばし。 「じゃあね。運が良ければ生き返れるかもしれないけど。さよなら、白いお人形さん」 その手から、細い触手を彼女の心臓めがけて打ち出した。 ―――――――ザクッ ◇ 投影するたびに大切なものが消えていった。 思い出が、記憶が、大切な人達への想いが。 何故戦っているのか、遠くで俺の名前を呼んでいるのは誰なのか。 俺がなりたかったもの、守りたかったもの。 それが、少しずつ零れていった。 傷口からは刃が擦れる音を鳴らし。 ああ、俺はもう人間じゃないんだな、と思いながら。 それでも死を迎えようとしている自分を、とても冷静に見直しているやつがいた。 確か、誰だったかな。さっき、自分の大切な誰かの名前が呼ばれたような気がする。 ダメだ、名前が出てこない。 だけど、とても大切な人だったんだとは思う。 (………---、ごめんな、俺、もうすぐそっちへ行くと思う) 誰なのかは分からないのに、きっと怒られるんだろうなって感じた。 だから、たぶん先に待っているその人に対して何て謝ろうかなんて、そんなことを考えていた。 俺の名前を必死で呼んでいる少女の声が聞こえる。 確か、名前は―――そうだ、イリヤだ。 何となく、その声に涙が混じっているようですごく申し訳ない気持ちになっていた。 妹を泣かせるなんて、兄として最低の行為じゃないかと思った。 だけど、この涙のあとは、きっと彼女はそれを埋めるような笑顔を浮かべられるだろうと。 今はその悲しみに泣くことがあっても、いずれきっと、その数十倍の笑顔を浮かべられるようになるから。そう信じてるから。 だから、君は生きてほしいと。 彼女には届かないと思いながらも、そう願いを込めた。 あと、他に名前を呼ぶ男がいる気がする。 名前は―――――出てこない。 だけど、何となく覚えている。 ぶっきらぼうだけど本当は優しい心を持ったやつ。 人を傷つけるのを恐れて、人を自分から遠ざけようとする、自分と比べてまっすぐにみんなの笑顔を守れるだろう、そんなやつ。 俺の夢を守ってくれると言ってくれた時は本当に嬉しかった。 なのに肝心の俺がいなくなってしまうというのは、謝罪する言葉も見つからない。 それでも。あんたならきっと。 俺の夢を、守ると言ってくれた、桜の笑顔を含む、皆の笑顔を守ってくれるって、信じてる。 そして――――桜。 俺が守らなきゃいけない、大きな罪を背負った女の子。 彼女のことだけが、俺にとってほぼ唯一の心残りだった。 俺がいなくなって、---もいなくなって、--もいなくなって。 彼女は笑顔を浮かべられるようになるのか。 きっと、とても悲しむだろうなと思った。 だから、せめてあの子を一人にしないために。 もう生きていることができない俺の代わりに悲しむ彼女を、支えてやれるように。 だから、俺は 最も守りたかったものを。守るべきものを。その全てを。 最も信頼した存在に、託す。 だから桜を―――― 「頼んだぞ、セイバー」 もはや声も出ないはずの身体で、それだけはっきりと、口にできた気がした。 ◇ ―――――――ザクッ 鋭い音とともに、突き出されたそれはその肉体を貫いていた。 目を見開くイリヤ。 じっと動かないドラゴンオルフェノク。 いや、動かないのではない、動けなかった。 イリヤに伸ばした触手は、その数ミリ前で停止し。 触手の主の首からは、後ろから貫くように鋭い一本の剣が生えていたのだから。 北崎には、何が起こったのか理解することもできず。 もはや声を出すことも、身動き一つとることも叶わなかった。 ただ、自分のすぐ後ろに何者かの気配を感じ。 「――…その穢れた手で、彼女に触れるな。下郎」 その存在が震えるような声を、こう発したような気はした。 そしてその言葉を最後に。 首に刺さった刃が動かされ。 浮遊感に包まれて飛び上がったような感覚に包まれた北崎は。 何か大きな身体のようなものが青い炎で燃え上がっているのを見て。 それが、闇に落ちる北崎の意識が最後に見たものとなった。 ◇ イリヤの目の前で、ドラゴンオルフェノクの頭が飛んでいき。 青い炎に包まれてその身体が崩壊していくのを見届けたイリヤ。 それと共に、まるで竜を殺したことで役目を終えたかのように根本から折れ飛んでいく刃。 そんな彼女の視界に入ったのは。 胸に刃物を突き立てられた金髪の女剣士だった。 彼女は柄だけになった剣を投げ捨て。 胸に刺さった刃を引き抜く。 それは剣ではなく短剣程度の大きさの刃物。 なのに、その刃の部分はギザギザな線を描いた奇妙な形をしている。 そして、イリヤはそれを知っている。 「ルールブレイカー…?」 そう、ここに来たばかりの時、呪術刻印を消すために使った宝具。 それが、セイバーの胸に突き立っていた。 その歪な刃が抜き取られると同時、セイバーの肉体から発されていた黒い魔力が消失。 ボロボロな黒いドレスの色は青く変わっていき、真っ白だった肌は生きている人間のそれと大差ない色へと変わる。 その変化に驚くイリヤの目の前で。 セイバーは静かに士郎に近づき、その肉体を返して顔を上に向ける。 「……っ、あなたは…、どうしてこんなものを、私に…! あなたを殺した私に、生きろというのですか…!?」 あの最後の一撃。 あそこで投影していたのが干将莫耶だったなら、その双剣でもってこの身を切り裂いたのだったなら。 間違いなくこっちの刃は士郎に届かず、彼に勝利をもたらしただろう。 なのにこの刃を、彼はこの身に刺した。 結果、負けたはずの自分が生き、衛宮士郎はその生命を終えた。 例え届かなくても、何故そんな選択をしたのか。 問い詰めようと思う心がはやり士郎へと詰め寄った。 なのに。 士郎の顔は、まるで何かをやり遂げたような顔をしていた。 「何故あなたは…、悔いを残したはずなのにそんな顔で死ぬことができるのですか」 そんな顔を見せられたら、怒るに怒れなくなってしまうではないか。 「桜やイリヤスフィールを、あなたの代わりに私に守れ、というのですね…?」 もう、答える者のいないはずのない問いかけ。 なのに、その言葉に頷かれたような感覚を、どこからともなく感じ取っていて。 「あなたと、いう人は…」 今の自分に涙を流す資格などない。 だからこそ、そんな心を切り離すかのように、士郎を地面に横たえ。 「…分かりました。これより私は、あなたの剣として、イリヤスフィールを、桜を、必ず生きて連れ帰りましょう」 黒き泥の呪縛から解き放たれた騎士王は、かつての主へと一つの誓いを立て。 自分が離れると同時に士郎に近付くイリヤを見送りつつ、離れた場所で倒れた者達へ向けて、歩みを進めた。 ◇ 自分には何もできなかった。 何となくあの黒い騎士に従うことは間違いだと思っていながら、最後まで逆らうことができず。 なのに目の前では、ただの人間に見える少年が、あのとても強い騎士さんと戦って死んでいった。 勝てないはずの相手に、一歩も退かずに立ち向かって。 自分は、あのオルフェノクに立ち向かうことも、騎士に従わずに立ち向かうこともできなかったのに。 何となく、そんな自分の理想のために真っ直ぐ、強くあった少年の姿に。 一人の、心優しく強く、それでいて理想を願うオルフェノクを連想していた。 「ユカ、大丈夫ですか?」 「え、っと…、セイバーさん、ですよね…?」 セイバーからそんな優しい言葉をかけられたことのなかった結花は、戸惑いを隠し切れない。 「…はい。安心してください。今の私はあなたを力で縛ろうとは思いません」 そう言って手を差し伸ばし、結花を起き上がらせたセイバー。 そして周囲を見回し、二人の男を見つけた。 傷ついた一人を、もう一人が肩を貸して起こしているようだ。 「えっ、乾…さん?」 「知り合いですか?でしたら話は早い。一緒に来てくれませんか?」 『士郎さん…、あなたは…』 「な、何だ、どういうことだよ…?!」 何かを悟ったようにつぶやくルビーに対し、混乱する巧。 無理もないだろう。目の前で士郎と戦っていた剣士が、いきなり起き上がったと思ったら北崎の首を刎ね、そのままイリヤに何をすることもなく士郎の死体に問いかけていたのだから。 「…………」 そしてLもまた混乱こそしていたものの、頭は状況把握に努めようときわめて冷静だった。 咲世子の仇も取れず、一人の危険人物の手綱を握ることに失敗し、こうして死人まで出す事態になってしまった。 しかし、だからこそLは今するべきことをしなければならない、と。 そんな中、未だ状況の掴みきれない二人と一本の元についさっきまであの少年と剣を交えていた少女が、こちらへと向かって歩いてきた。 「大丈夫ですか?」 「ええ、私は大丈夫ですが、彼が重傷です。せめてどこか休める場所へ移動したい」 「…おい、待てよあんた。こいつのことを信用するのかよ」 信用するかのようにセイバーに話しかけるL。 そんな様子に意義を申し立てたのは巧だった。 「今の彼女からは敵意を感じません。それに、私の見立てでは彼女は騙して人に取り入り、闇討ちするような人にも見えません」 「信用できると思ってんのかよ」 『少なくとも彼女の言葉に嘘はないでしょうと私は思います』 「間違っていた時は私が責任を取りましょう。 …すみません、今は色々なことが立て続けに起きて私自身状況の整理ができていません。一旦どこかの施設に移動する、ということでよろしいでしょうか?」 そう言ったLの言葉に、巧は顔をしかめつつも反論はせず、セイバーもまた頷いていた。 問題は、士郎の傍から動こうとしないイリヤだったが。 「反論は、ありません。ただ、その前に一つだけお願いが」 「何でしょうか?」 と、セイバーはかすかに迷うように顔を伏せ。 その願いをLへと告げた。 「…シロウを、埋葬させてください」 【E-4/一日目 日中】 【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】 [状態]:疲労(大)、肋骨骨折、両腕両足の骨にヒビ、内臓にダメージ(中、優先的に治癒中)、悲しみ [装備]:カレイドステッキ(ルビー)@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ [道具]:クラスカード(キャスター)@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ [思考・状況] 基本:????? 1:お兄ちゃん…! [ルビー・思考] 基本:イリヤさんを手助けして、殺し合いを打破する 1:イリヤさんを落ち着かせつつ、まずは目の前の人達と話をする [備考] ※2wei!三巻終了後より参戦 ※カレイドステッキはマスター登録orゲスト登録した相手と10m以上離れられません ※ルビーは、衛宮士郎とアーチャーの英霊は同一存在である可能性があると推測しています。 [情報] ※衛宮士郎が平行世界の人物である ※黄色い魔法少女(マミ)は殺し合いに乗っている? ※マントの男が金色のロボットの操縦者、かつルルーシュという男と同じ顔? 【乾巧@仮面ライダー555】 [状態]:疲労(中)、ダメージ(特大)、肩から背中に掛けて切り傷、全身に重度の打撲+軽度の火傷 [装備]:なし [道具]:共通支給品、ファイズブラスター@仮面ライダー555 [思考・状況] 基本:木場を元の優しい奴に戻したい 0:マミの事が少し心配 1:士郎…、何でだよ… 2:二人の元から離れたいが、仕方がないので協力する 3:暁美ほむらを探して、魔法少女について訊く 4:マミは探さない 5:セイバーに対して警戒心 [備考] ※参戦時期は36話~38話の時期です [情報] ※ロロ・ヴィ・ブリタニアをルルーシュ・ランペルージと認識? ※マントの男が金色のロボットの操縦者 【L@デスノート(映画)】 [状態]:右の掌の表面が灰化、疲労(中) [装備]:ワルサーP38(5/8)@現実、 [道具]:基本支給品、スペツナズナイフ@現実、クナイ@コードギアス 反逆のルルーシュ、ブローニングハイパワー(13/13)@現実、 予備弾倉(9mmパラベラム×5)、シャルロッテ印のお菓子詰め合わせ袋。 [思考・状況] 基本:この事件を止めるべく、アカギを逮捕する 1:目の前の少女、セイバー達と情報を共有するために移動する 2:月がどんな状態であろうが組む。一時休戦 3:魔女の口付けについて、知っている人物を探す 4:3or4回目の放送時、病院または遊園地で草加たちと合流する [備考] ※参戦時期は、後編の月死亡直後からです。 ※北崎のフルネームを知りました。 ※北崎から村上、木場、巧の名前を聞きました。 ※メロからこれまでの経緯、そしてDEATH NOTE(漫画)世界の情報を得ました。しかしニア、メロがLの後継者であることは聞かされていません ※Fate/stay night世界における魔術、様々な概念について、大まかに把握しました。しかし詳細までは理解しきれていないかもしれません。 【セイバー@Fate/stay night】 [状態]:ダメージ(大)、疲労(大)、全身に切り傷と軽い火傷(回復中)、魔力消費(大) [装備]:無し [道具]:なし [思考・状況] 基本:シロウの願いを継ぎ、桜とイリヤスフィールを守る 1:まずは目の前の参加者と話す 2:シロウ… [備考] ※破戒すべき全ての符によりアンリマユの呪縛から開放されセイバーへと戻りました 【長田結花@仮面ライダー555】 [状態]:ダメージ(大)、疲労(中)、翼にダメージ(オルフェノク態のダメージ)、仮面ライダー(間桐桜)に対する重度の恐怖 [装備]:なし [道具]:基本支給品×3、ゴージャスボール@ポケットモンスター(ゲーム) 、穂群原学園の制服@Fate/stay night、お菓子数点(きのこの山他)、 スナッチボール×1@ポケットモンスター(ゲーム)、魔女細胞抑制剤×1@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー、ジグソーパズル×n、呉キリカのぬいぐるみ@魔法少女おりこ☆マギカ、不明支給品0~3 [思考・状況] 基本:??? 1:私は、どうしたら…? 2:え、乾さん…? [備考] ※参戦時期は第42話冒頭(警官を吹き飛ばして走り去った後)です 【衛宮士郎@Fate/stay night 死亡確認】 【北崎@仮面ライダー555 死亡確認】 ※干将莫耶、勝利すべき黄金の剣、グラムは破壊されました。 そこは、月が綺麗な夜の、静かな庭の縁側。 座った自分の隣には、一人の男が静かに佇んでいた。 「なあ、爺さん」 呼びかけても、隣の男は静かに目を閉じたまま動かない。 「俺さ、正義の味方にはなれなかった。それどころか、妹も、守るって決めた女の子も守れなかった。 優しくしろって言われてたのに、結局泣かせちまったんだ」 「………」 「まだ、やらなきゃいけないことも後悔も沢山あったけどさ。 それでも、やらなきゃいけないことは、俺なりにやり切ったと思うんだ」 父親の希望は、小さな妹に。 夢は、一人の男に。 そして、守りたい大切な存在は、最も信頼した少女に。 風が静かにそよぐ。 庭の草花がそれに揺らされ、小さく音を立てる。 しばらくの沈黙をもって、隣の男に問いかけた。 「爺さん、俺、間違ってなんてなかったよな?」 「………」 男は答えない。沈黙を保ったままだ。 小さな不安に包まれる心。 そんな時、微動だにしなかった男は、静かに俺の頭に手を乗せ、クシャクシャと乱雑に、しかし優しく撫でた。 その意味が分かった時、俺はなんとなく、心からの笑みを浮かべられたような気がした。 107 第二回定時放送 投下順に読む 109 わたしの世界を守るため(前編) 時系列順に読む 103 HORIZON-金色の奇跡 衛宮士郎 GAME OVER 乾巧 116 その手で守ったものは(前編) イリヤスフィール・フォン・アインツベルン 096 美国織莉子、私の全て セイバー 長田結花 104 無邪気な悪意 L 北崎 GAME OVER
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577 :運命夜行 ◆ujszivMec6 :2007/11/15(木) 20 14 39 元々バゼットに聞きたかったのは、誰に襲われたのかということだ。 それが新都の教会のモジャ神父だとわかった以上、当初の目的は果たしたと言える。 バゼットのサーヴァントについては、ついでだから聞いとこうという程度のつもりだった。 「そういうワケだから、アンタが話せる範囲でいいぜ。話してくれ」 「話せる範囲ですか?」 「そ、要するに真名だの弱点がバレるのがマズいんだろ? ならさ、それがわからない程度の特徴……男か女か、とか髪型、とかそんなレベルでいいから」 「それくらいなら……そうですね、青髪短髪の野性的な感じのする男です」 「ふむ、青髪短髪の野性的な感じの男ね」 ……やっぱそれだけじゃまったく真名は思いあたらないな。 とりあえず青髪らしいから仮称「青いの」と呼んどくか。なんか他にもいろいろ青そうな気もするし。 「参考になった。そんじゃ今日はもうゆっくり休んどけ」 そう言って部屋を出ようとした途端、バゼットに呼び止められた。 「あ、待ってくださいアンリ。もし彼に出会って……襲われるようなことがあったら、彼を食事に誘ってみてください」 「食事?」 「はい、食事です。彼ならその誘いに応じるはずです」 ふむ、食事ね。……確かサーヴァントに食事は必要ないはずだったよな。オレみたいな例外はともかく。 それとも生前よっぽど食いしん坊なヤツだったのだろうか。 例えばはむはむこくこくとかもっきゅもっきゅとかそんな勢いで。 ……ん? 今なんかヘンなイメージが頭をよぎったような。 「……とりあえず、それらしいヤツに襲われたら試してみるな。 そんじゃお休み、バゼット」 「はい、お休みなさい、アンリ」 そう言って、今度こそバゼットの部屋を出た。 ※『青いのへの対策』 青いのとの戦闘の際、選択肢が増えることがあります 578 :運命夜行 ◆ujszivMec6 :2007/11/15(木) 20 15 39 ———さて、この辺でいいか。 母屋と離れを繋ぐ廊下で立ち止まって声をかけた。 「出てこいよ。今の話、聞いてたんだろ?」 その瞬間、オレの背後にいた赤いのが実体化した。 「……やはり貴様、見えていたか」 「まーな。ごまかしたって仕方ねぇし」 「では、やはり貴様はサーヴァントということなのだな?」 「あ、それは誤解。オレは今回の聖杯戦争とはなんの関わりもねーよ」 説得力ゼロなのは自分でもわかるが、事実だから仕方ない。 「……ふざけるな。この時期、この冬木市に存在する実体化できるほどの霊体が、サーヴァント以外のなんだというのだ?」 「たまたまこの時期、この冬木市に住んでる実体化した霊体だよ。まあ、全くサーヴァントと関係がないわけじゃねーけどな。 少なくとも、今のオレはサーヴァントじゃない」 まあ、言うなれば、元サーヴァントといったところか。 「ならば聞こう。貴様は一体何者だ」 「……何者だと聞かれてもな。強いて言うなら衛宮杏里。穂群原学園に通う学生で、この家に住んでる衛宮士郎の兄弟だよ」 「———そんな戯言を聞いているのではない。貴様、衛宮士郎の兄弟になりすまして何を企んでいる」 「何を企んでる、と言われてもな。たまたま親父に十年前に拾われて、たまたまこの家の養子になっただけだ。 士郎も同じよう養子になってな、兄弟になったのは本当に偶然なんだよ」 またしても我ながら説得力ゼロだが、これも事実だ。 「……そんなはずはない。衛宮切嗣が拾った子供は一人だけだ。衛宮士郎に兄弟などいるはずがない」 ———どういう意味だ? オレの言葉を疑ってるだけにしては、妙なところに食いついてくるな。 「こっちは実際に十年前からこの家に住んでるんだ。 そこを否定されてもな。どこで聞いた話かは知らねーけど、アンタの仕入れた情報が間違ってるんだろうさ」 「そんな、馬鹿な……いや、もしや……あの召喚が原因なのか?」 何か思い当たることでもあったのか、赤いのはブツブツ呟いて考え込んでいる。 「おい、何だ突然。今の説明で納得したのか?」 「……貴様の説明などで納得などできるはずがないだろう。 だが、一つ確かめなければならない事ができた。全ては、それからだ」 そういい残して、赤いのは霊体化してしまった。 「おーい、オレなんぞより、新都の教会のモジャ神父を探ったらどうだ? ヤツは間違いなくクロだぜ?」 霊体化した赤いのに声をかけたが、聞いているのかいないのか、返事は返ってこなかった。 579 :運命夜行 ◆ujszivMec6 :2007/11/15(木) 20 16 44 居間に戻ると、藤ねえと遠坂がちょっとした言い争いをしていた。 「ですから、衛宮くんたちへのお話というのは、すこし長くなりそうなんです。 わたしは少々遅くなっても大丈夫ですから、藤村先生はお気になさらないでください」 「ダメよ。遠坂さんも葛木先生から聞いたと思うけど、最近物騒なの。 長くなるんならお話は明日にして、今日はもう帰りなさい。わたしが送っていってあげるから」 どうしたもんかと居間の隅から二人の言い争いを眺めてると、士郎が話しかけてきた。 「どこ行ってたんだ、杏里。あのあと大変だったんだぞ」 「バゼットを部屋まで送っていったんだよ。一応ケガ人だからな」 まあ、本当はそれだけじゃねえんだけど。 「で、この状況はなんだ?」 「ああ、もう夜遅いからな。藤ねえがそろそろ遠坂に帰れって言い出したんだよ」 「なるほどな」 グッジョブだ、藤ねえ。 最近は物騒だという建前がある上に、今の藤ねえは教師モードだ。 さすがの遠坂も今回は旗色が悪いようである。 結局、遠坂は藤ねえが送って帰ることになった。 玄関で二人を見送る。 内心はどうだか知らないが、遠坂は表面上は極上の笑顔を浮かべている。 「今夜はご馳走様になりました。明日こそはちゃんと話をつけさせてもらいますね」 「行こっか、遠坂さん。それじゃまたね、士郎、杏里」 「おう、さっさと帰れ帰れ」 「それじゃお休み、藤ねえ、遠坂」 「ところで遠坂さんの話ってなんだったの?」 「ちょっとプライベートに関わることなので秘密です。大した話じゃないんですけどね」 「えー、気になるなぁ」 玄関の扉越しに聞こえる、遠坂と藤ねえの声が遠ざかる。 「大丈夫かな、俺も送っていくべきだったかも」 「大丈夫だろ。送り狼ならぬ送り虎がいるし。 藤ねえの腕っぷしはオレたちが身をもってよく知ってるだろ」 それに、遠坂は魔術師だし、赤いのもいるしな。 580 :運命夜行 ◆ujszivMec6 :2007/11/15(木) 20 17 34 客人のいなくなった居間で、テレビをぼーっと見ながらくつろいでいると、 台所で洗い物をしていた士郎が話しかけてきた。 「なあ杏里」 「ん? なんだ?」 「なんか遠坂や藤ねえが来たからうやむやになってたけどさ、バゼットさんって何者なんだ?」 あ、やっぱ気になるか。 「怪我していたところをたまたまオレがみつけて助けただけだから、オレも詳しいことは知らねーんだ」 「でも、弓道場ではたしか魔術師だって言ってたよな」 「ああ、どうもそうらしいな。左腕無くしたのもどうも魔術がらみらしいし」 「左腕を無くしてる?」 「え? オレ何かおかしい事言った?」 「……そうだ、そう言われてみれば確かにバゼットさんには左腕がなかった。でも、なんで気にならなかったんだ?」 あ、そういえば晩飯の時も誰も左腕にについては触れなかったな。 「そりゃアレだ、そういうのが気にならなくなる魔術とか使ってんたんだろ? 催眠術みたいなやつ」 「あ、そっか。魔術師ならそういうこともできるよな」 「おいおい、オマエの方が真っ先に魔術を思いつかないとダメだろうが、現役魔術師見習い」 「すまん、確かにそうだよな」 藤ねえも多分それでごまかされたんだろう。 遠坂と赤いのは気づいてて黙ってたのかも知れないが。 「でもそれじゃ、なんでバゼットさんは左腕を無くすようなことになったんだ?」 「そこらへんの事情は明日詳しく聞こうぜ。バゼットももう寝てるだろうし」 まあ、オレは一足先に聞いちゃったんだけどな。 「そうだな、遠坂も明日、何か話があるらしいし明日は忙しくなりそうだな」 ふと時計を見ると、もう零時近くだ。 「士郎は今から鍛錬だろ?」 「ああ、杏里はもう寝るのか?」 「おう、今日は色々ありすぎたからな。さっさと寝ることにする」 「そうか、それじゃお休み」 そう言って士郎は日課の鍛錬に向かった。 さて、オレももう寝るとしよう。 部屋に戻り、寝巻きに着替え、布団に潜り、さて、寝るかと目を閉じた途端——— 女帝の正位置:玄関のチャイムが鳴った 女教皇の正位置:廊下の電話が鳴った 吊るされた男の正位置:結界の鳴子が鳴った 塔の正位置:庭の方から破壊音がした
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長編(五十音順) ※作品タイトルのあいうえお順となっております 作品タイトル 元ネタ 召喚されたキャラ 更新日時 ありうるひとつの可能性 ゼロの使い魔 ルイズ、平賀才人 2009-01-18 00 07 47 (Sun) 虚無と愉快な仲間達 トラぶる花札道中記 神父と愉快な仲間達 2009-08-23 05 35 18 (Sun) 虚無の続き Fate/hollow atraxiaMELTY BLOOD Act Cadenza 葛木宗一郎、キャスター、セイバーネコアルクカオス 2008-03-17 09 22 16 (Mon) 幻影の夏 虚言の零 MELTY BLOOD 『ワラキアの夜』こと『ズェピア・エルトナム・オベローン』 2008-04-14 01 14 28 (Mon) the saber of zero servant Fate/stay night セイバー 2008-03-17 09 24 43 (Mon) シロウが使い魔 Fate/stay night 衛宮士郎 2011-11-06 23 01 44 (Sun) Zero/stay night Fate/stay night ランサー 2008-12-20 14 25 20 (Sat) ゼロの白猫 MELTY BLOOD Act Cadenza 白レン 2011-02-03 21 17 03 (Thu) ゼロの使い魔(サーヴァント) Fate/stay night セイバー 2012-06-30 01 10 59 (Sat) 双月の美酒 Fate/stay night 言峰綺礼、ギルガメッシュ 2008-03-17 09 26 26 (Mon) ゼロとさっちん 月姫・MELTY BLOOD Act Cadenza 弓塚さつき 2011-02-03 21 17 03 (Thu) マガツカオルタナティブ Fate/stay night ライダー 2009-08-23 06 14 58 (Sun) 魔眼の使い魔 Fate/stay night ライダー 2009-08-23 06 22 11 (Sun)
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Fate/stay night 概要 ストーリー 特徴 評価点 賛否両論点 問題点 総評 Fate/stay night [Réalta Nua] 概要(非18禁版) シリーズについて Fate/stay night 【ふぇいと すていないと】 ジャンル 伝奇活劇ヴィジュアルノベル ※DVD版 ※復刻版 対応機種 Windows 98~XP 発売・開発元 TYPE-MOON 発売日 CD版 2004年1月30日 / DVD版 2006年3月29日 定価 【Win】8,800円(CD・DVD共通) レーティング アダルトゲーム 備考 CD初回版に設定資料集「Fate/Side material」付属公式通販特典に小冊子「Fate/side side materiale」付属 ポイント 燃えとグロが交差するシナリオ以後一大ジャンルとなる歴史人物を利用した 聖杯戦争 判定 良作 Fateシリーズ 少年はその日、運命と出会う――― 概要 有限会社ノーツのゲームブランド「TYPE-MOON」の第1作。同名の同人サークルでビジュアルノベル『月姫』を製作したメンバーによる商業初進出作である。 『月姫』と同じ形式のビジュアルノベル作品であり、「18禁のアダルトゲーム」というカテゴリに属してはいるが性的描写は控えめで「ストーリー、設定面に比重を置いた伝奇活劇物」の色が濃い。 後年発売されたファンディスク『Fate/hollow ataraxia』も合わせた販売累計は約40万本にも及び、アダルトゲームの実販売数が集計されるようになってからは(2011年時点でも)最高の売上を誇っている(*1)。 そのヒットの余波は凄まじく、本作発売当時はコミケを筆頭とする同人誌即売会をFate一色で埋め尽くし、普段アダルトゲームをプレイしない層にも「名前くらいは聞いたことがある」ほどの知名度を獲得する有名作の1つとなった。 ストーリー 現代。我々の生きる世界の裏で、かつて歴史の表舞台から追放された「魔術」をはじめとする異能の術は、人々の目を逃れて今なお存続していた。 日本の冬木市に住む主人公の衛宮士郎は、穂群原学園に通いながら日常を過ごしていた。 世話焼きの後輩である間桐桜、テンション高めでおっちょこちょいな隣人にして教師の藤村大河、堅物気味だがよき友人である柳洞一成…そんな人々に囲まれ、士郎は「正義の味方になりたい」といういささか奇妙な志と、「強化」と呼ばれるちょっとした魔術を扱える点以外は、概ね日常の側にいる人間として学生生活を謳歌していた。 しかし、彼の日常は、ある日突然非日常へと転落する。 夜の学校で偶然目撃した、青い槍兵と赤い外套の男。尋常ならざる力で戦う二人の異形を目撃した士郎はその戦いに巻き込まれ、青い槍兵に刺殺されてしまう。しかし士郎は学園でその名を広く知られる優等生、遠坂凛によって蘇生され、一命を取り留めた。 士郎はワケも分からぬまま一度帰宅するものの、執拗に彼を追い続けた青い槍兵により再び命を狙われる。 必死に防戦するが力量の差はいかんともしがたく、止めを刺されようとしたまさにその時、彼の前に1人の美しい剣士が現れた。 「問おう 貴方が私のマスターか?」 それは「聖杯戦争」と呼ばれる、万能の願望機を巡る戦いの幕開け。 衛宮士郎は「剣の騎士」のサーヴァント・セイバーを偶然とはいえ召喚してしまったことで、否応なくこの戦いに身を投じる事となる。 7人のマスターと、7騎のサーヴァント。彼らの聖杯に込める願いをかけた戦いが始まる…。 特徴 プレイヤーは基本的に主人公「衛宮士郎」の視点を軸に物語を追体験していくことになり、途中で出現する選択肢によってストーリー及びエンディングは変わる。 ストーリールートは主に3つあり、それぞれサブタイトルと話の核になるヒロインが異なる。それらルートは初めから全て自由に選択できるわけではなく、一つのルートの正式なエンディングを発見するごとに順次解放されていく。 すなわちゲームの進行は多彩なBAD・DEADエンド行きを除けば、実質一本道といっても差し支えない。第2ルートと最終ルートでは正式エンディングがGOOD・TRUEの2通りずつあるので、エンディングは計5つとなる。 上記のとおり、ストーリーの骨子は、『仮面ライダー龍騎』『ローゼンメイデン』等に見られる「自分の願いを叶えるために、人間離れした能力を持つ者同士が命を賭して戦う」という、アニメ・ゲーム等の業界ではポピュラーな展開である。しかし、シナリオ担当の「奈須きのこ」氏による一癖も二癖もある文章と歴史伝承を多々交えた設定により、既存のそういった作品とはまた異なる趣になっている。 特に小説『魔界転生(*2)』をオマージュしており、各部分にリスペクトされている。 独特なファンタジー用語の解釈をちりばめたテキストと、重めで「厨二病テイスト(*3)」全開な表現が最大の特徴。全体的に複雑な傾向にある各キャラクターの心情もあいまって、「きのこ節」とも呼ばれる作風を世に知らしめた。 聖杯戦争 7人の魔術師と7騎のサーヴァントが争い、最後に一人になると万能の願望機が召喚され願いが叶うという物。要は バトルロワイヤル である。 本作の主人公「衛宮士郎」はこの戦争に巻き込まれることになる。 サーヴァント 世界に名を馳せた過去の人物達・英霊が サーヴァント (使い魔)として召喚されることになる(*4)。 キリスト教圏内に歴史的な知名度があれば史実での実在・非実在の有無は関係なく召喚されうる。また、「宝具」という生前の逸話や伝承からなる武装/必殺技を共通して持っている。また『セイバー』『ランサー』など得意戦術に応じたクラスと能力傾向を与えられ、生前の名前や宝具は隠し仮名としてクラスで呼ばれる事が多い。 基本的に「FATE(悲劇)」の生涯を送った英霊が召喚されるため、彼らの多くはその生前の悲劇を変えたくて参戦することが多い。 評価点 キャラクターの魅力 どのキャラクターも独自の個性を持ち、良い味付けがなされている。しかもルートによって大きく描かれ方が違い、3つのルートを用いてキャラの心情が深く掘り下げられている。そのためメインキャラといえる「7人のマスターと7騎のサーヴァント」は誰もが人気が高い。 その中でもやはりメインヒロインの1人であるセイバーの人気は抜きん出ており、人気投票となるとFate勢でまず1位に輝いていたほど。その人気ぶりは奈須氏に「そんなに金髪美人が好きか」と叫ばれたとか(*5)。 男性向けアダルトゲームであるにもかかわらず、男性キャラの人気も高いのも異色といえる。男性キャラの1人であるアーチャー(遠坂凛のサーヴァント)に至っては、人気投票の度にヒロインを差し置いて高順位にランクインしている(*6)。 それぞれのマスターの人間関係は姉妹、兄妹、クラスメイト、教師、片思いの思い人など、主人公衛宮士郎を中心に複雑で絡み合い、人間ドラマを演出している。 サーヴァントにはTRPGを意識したキャラステータス画面が用意されていて、能力解説などが記載されている。歴史上及び伝説上の人物ということで、背景や生い立ちもしっかりとしている。 ただ単に歴史上の人物をそのまま使っているわけではなく、あくまでも 『Fate』シリーズのキャラとして 、オリジナル要素や歴史的な解釈も混ぜながら巧みに仕上げている。それがまた本作/本シリーズの特徴となっている。 具体例を挙げれば本作のヒロインのセイバーはとある伝説上の人物を「女性」に変更しており、作中の世界ではそれに準じた伝説が残されていると変更されている。この女性化も伝承や史実を世襲しながら変化しており、ある程度違和感の無いようにしてある。その後、他作品のアニメやゲームで似たような歴史上の人物の女体化がブームとなったが、女体化の設定まで作りこまれているという点で他作品より一線を画す作品として一目置かれている。 上述通り、サーヴァントは生前に悲劇的な生涯を送った英霊が多く、前世の記憶を保ったまま現代に召喚される事が多い。その過去の背景を世襲しており、そこから戦う理由も個々に設定されている。 マスター・サーヴァント以外のキャラもしっかりキャラクターが練り込まれている。本編ではあまり出番のないキャラでもファンディスクなどでエピソードが与えられているため、埋没しているキャラは事実上いなくなった。 「燃え」と「グロ」が織りなすシナリオ 少年誌のような熱いバトル展開、そしてアダルトゲームという媒体をフルに使用して描写されたグロ要素。二つの要素はミスマッチしながら、"戦争"と題されるものの残酷を表現しつつ、他には無いオリジナリティを発揮している。 上記の作られた人間関係、二点三点する展開、驚嘆の真実などなど最後の最後まで引っ張れる脚本力は見事というほかない。 魅力的な聖杯戦争 『魔界転生』をオマージュして作られたという聖杯戦争の設定は非常に秀逸。 「過去の英雄達の霊を 使い魔 (サーヴァント)として共に戦い、最後一人の生き残りを賭けて争う」という主軸、そして緻密に練られた設定と世界観に多くのファンが熱中した。 その中でも好評を得ているのが、 サーヴァント (使い魔)の設定である。彼らのよく作られた設定は『Fate』シリーズの魅力の1つとなっている。 特に過去の英霊の真名は最初は隠されているが、伏線があり、物語を進めると彼らの「願い」「宝具」などが序々に明かされるという部分が、世界史マニアや歴史マニアなどを魅了。そこから「真名当て」という推理小説のような楽しみ方が行われる事となった。 多彩に設定された世界観 聖杯戦争以外の設定も秀逸であり、魔術や道具、技術などもそれぞれ練られた設定を与えられている。魔術に至っては非常に細かく、過去TYPE-MOON作品の世界観設定も交え何故魔術師が生まれたのか? というところから作られている。 また、本作の多くのキャラクターに多大な影響を残す10年前の事件(第4次聖杯戦争)の構想がすでに出来上がっていることもわかる。これを抽出した単独作品がその後のメディアミックス作品『Fate/Zero』である。 さらには少ししか出ないクラスメイトなどの名前や設定が作られている凝りようである。 戦闘シーンの演出 複数の攻撃エフェクトCGを連続して切り替える、立ち絵を躍動感ある動きで移動させる等して、アニメーションとビジュアルノベルの間に位置する臨場感の妙を生み出している。 意外にもそれまではカットイン、小コマ、ホワイトアウトなどの手法がほぼ全てだったADVにおいて、特に戦闘シーンを含む臨場感のある演出は頭打ちに近かった。そのような情勢で生み出された本作の演出は、ADVにおける新しい演出の形を示したと言える。 『Fate』発売以降、いわゆるバトルありのノベル作品において本作に倣った演出スタイルを取り入れた作品が増加したことから、その影響の大きさが窺える。 一服の清涼剤「タイガー道場」 本編では殺し合いをしているため全般的に雰囲気は重い。当然ながら生死を分ける場面で選択肢を間違えたら即アウトとなる。この正規エンディングに至らない打ち切りを経た場合、「タイガー道場」という本編と全くテンションの異なる救済コーナーが登場する。 名目上はバッドエンドの原因をプレイヤーに告知するコーナーなのだが、その真骨頂は明らかにタイガー&ブルマ(それぞれ本編に登場するキャラによく似た誰か)のはっちゃけたショートコントである。その内容はルートのネタばれ上等&メタ発言全開、おまけに他所のゲームのネタまでありとカオスの極み。それが全てのバッドエンドごとに作られているため種類もかなり多く、挙句の果てに全て発見すると特典映像・ストーリーのまとめまで解禁される。「(褒め言葉として)スタッフは力を入れる所を間違えてるだろう」と言われることも多い。 アダルトゲーム界隈では選択肢過多やバッドエンド過多は批判されがちなのだが、本作の場合はタイガー道場を緩衝材・兼隠し要素のトリガーにすることで好意的な評価へと昇華させているといえる。 ちなみにTYPE-MOONではこの類の要素は本作が初というわけでもなく、同スタッフ製作の同人ゲーム『月姫』の時点で存在していた。やけに凝った趣向も含めて。 賛否両論点 主人公の性格 先にも少し触れたが、プレイヤーは士郎と視点や心情を共有しつつ選択肢を選んで物語を進める。 それ自体は他のゲームでも見られる光景だが、彼は無個性型の主人公ではなく、作中のヒロインをして「歪んでいる」と言わしめる程に自己犠牲を厭わぬ"献身的な"性格の持ち主であり、そのような彼の歪みとそれの変化は実質的にこの物語の主題として、3ルートを通じて描かれる。 そんな彼に自己を投影できるプレイヤーや、彼をある程度容認して物語を進められるプレイヤーには問題ないが、馴染めない人には相当厳しい。個性派主人公のゲームは概ね人を選ぶものなので、好みの問題と割り切って考えられることもある。と言っても作中を見ればわかるが、基本は常識人であるためそこまで偏ってるわけでもない。 + ネタバレ 初めにプレイするルートでは「単独行動をして捕まる」を二度も繰り返すことになる(*7)が、そうしないと飽きた敵が殺しに来るDEAD ENDが組まれている。聖杯戦争の戦闘を経験した状況でのこの流れは非難されやすいポイントの一つになっている。 テキスト・シナリオに癖がある テキスト量が多く、全てのルートをクリアするのにかかる時間は平均でも60時間以上と言われており、ノベルゲーとしてはかなり長い方である。 後発の『Realta Nua』ではフルボイスが実現しているのだが、ボイススキップをしなかった場合プレイ時間はさらに膨れ上がる。 好意的に受け止めた人が多い一方、一見して厨二病(誤用)のようで、かつ回りくどい表現で構成されるテキストの連発に否定的な評価を下す人も多かった。 もっとも『幽☆遊☆白書』や『BLEACH』等の週刊少年ジャンプの大ヒット漫画でも使われていた手法であり、それを百も承知で作られた本作にとっては当然の結果である。ちなみにアンチが多い点も本作品と共通している。 そんなテキストで構成されているので当然と言えば当然だが、シナリオへの評価も毀誉褒貶が激しい。それとは別に「Heavens feel」と題された、とあるヒロインを主軸にした最後のルートに関しては、特にその展開から好みが分かれる傾向にあった。 + Heavens feel詳細: 超ネタバレ注意!! 簡単にまとめると、聖杯戦争の根底事情が今まで以上に明かされ、他ルートと全く毛色の異なる展開が目白押しのルート。 一見すると他の2ルートを否定してしまうような展開、全体的な雰囲気が暗い、また説明が他のルートと比べて多く時間が掛かる点などが主に評価を分けている。 Heavens feelの主な賛否両論点 遠坂凛の実妹、間桐桜に関わるグロテスクな要素 ルート中盤で、このルートのヒロインが抱えている重大な真実と絶望(加えて暗躍する黒幕の存在)が初めて明かされる(*8)。このHFルートでのみ判明するヒロイン周辺の設定は正にこのゲームで描かれた聖杯戦争の根幹をなす設定がある程度含まれている。詳細は伏せるが、その内容は18禁であること以上にインモラルかつグロテスクなものである。その時に見せる彼女の変貌/豹変ぶりも、このルート、いわんや奈須きのこ作品において外す事はできないほど有名であり、これについていけないプレイヤーも少なくなかった。それまでの2ルートにも殺し合いやエロはあったものの、それらと全く方向性の違うグロ要素が突然現れるため、18禁指定のゲームとはいえグロが無理な人は注意すべきであろう。なお、この部分に関しては外伝(全年齢作品)である『Fate/Zero』でも詳しく触れられている。 Fate及びUnlimited Blade Worksで間桐桜が救われてない可能性の示唆 ヒロインの隠された真実を知ると、他のルートで自分なりの答えや幸せを見出した主人公及びそのパートナーのエンディングでは、彼女は真実を秘めたまま救われずに終わる可能性を暗示させられてしまう。 要するに、今までのハッピーエンドに泥が塗られてしまう可能性が存在する。一応、関連書籍などでこの辺りの決着が数年後に着けられ、彼女が救済される事は示唆されているのだが、このように本作には事後発売された書籍などに解説を託した要素がこの時点でも多く存在する。 他ルートでの出番の少ない間桐桜 彼女は他の2ルートでスポットライトの当たる機会が少なく、中盤あたりで事実上フェードアウトしていた。彼女の事情もあるが他の2ルートのヒロインは自分のルート以外でも縦横無尽に活躍しているのに対して、最終ルートでしか彼女にスポットは当たらない。このことが彼女になかなか愛着を持てないプレイヤーが居る理由となっている。 他のルートとは異なる衛宮士郎の選択 以前のルートでメインヒロインを貼り続けていたセイバーが、「Heavens Feel」に限り主人公の敵に回る上に絶対に助けることが出来ず、自身で手を下す選択をせねばならないため、それまでのルートで彼女に強い愛着を持ったプレイヤーの中にはこの選択を受け入れがたいものとする人も少なくない(*9)。 またヒロイン以外にもこのルートでは前のルートで活躍していたキャラが次々に死滅していく展開でもあるため、そこで雰囲気が暗くなってしまって合わないという人もいるようである。 また、このルートの間桐桜の真実を知った衛宮士郎は彼女の為にこれまでの2ルートで見せたものとは異なる決断をする事になる(*10)のだが、それは これまでのシナリオの衛宮士郎の信念を一見否定するようなもの であった。 ルートごとに状況が独立している上、他のルートとはその様相や展開があまりに異なるので、選択が異なる事自体は自然では有るが、 プレイヤーだけはなまじ他ルートのことを覚えてしまっているがために ついていけなかった…という場合もありえる。 最終ルートらしからぬ展開 詳細なネタバレは省略するが、上記の展開故にグランドフィナーレが「全ての仲間、ヒロインが生き残るわけではない」ことに微妙な後味を残すプレイヤーも存在する。最終ルートであるがゆえにこれまでのルートで救済されていなかったキャラクターが救済されると期待したプレイヤーも居たようである。 このルートで全ての謎が解明されるため「本ルートのトゥルーエンディングが本作の真のエンディング」と思うプレイヤーも少なくないが、製作側は「あくまで全てのルートの可能性が等しく存在する」と言う旨の言葉を残していた(*11)。とはいえこれまでのルートでは前述のように本当の解決は数年後に持ち越される点、エンディングの演出(*12)が唯一異なる点などから、やはりこのトゥルーエンドが文字通りの正史だととられやすい。 最終ルートだからこそのどんでん返しの連続で、プレイヤーは意表をつかれ、実際にその点を評価し、好意的に受け止めているプレイヤーも存在する。しかし、HFルートまでに数十時間プレイしてきて愛着も沸いて来たキャラの急激な方向転換、そして前述したような別離に対して、「ついていけない」プレイヤーもまた少なくない。 問題点 一部キャラに関しては批判的な意見が多い 独自の個性を悪い方向で発揮しているキャラも多少いる。特に間桐家の人々はどいつもこいつもアクが強い。 その代表が間桐慎二。日常における彼は主人公の学友なのだが、弱者を見下したり乱暴する描写が目立つ上に、主人公に対して高圧的な態度をとってくる。唯我独尊が透けて見える一方で権威主義な傾向があり、作中で何度もサーヴァントの威を借りるシーンが存在すると、いわゆる小物キャラである。 「Heavens Feel」では、それまでのルートでは明かされなかったその悪辣な所業(DVまがいの苛め行為や 強姦 など)が明らかになる為、間桐桜が好きな人は勿論、そうではない層からも殊更に叩かれている。 こんな性格になった理由はルートの1つで明らかになるが、それでも「同情の余地はない(*13)」「死んで当然」という意見が大勢であった(*14)。しかしその小物ぶりが逆に愛嬌となっており、後日談や外伝では「ワカメ」の愛称で個性的な扱いを受けることになる。実際に劇場版『Heaven’s Feel』公開後は彼の境遇を理解し、哀れむ意見も増えてきている。 またゲームより数年後に出た漫画版およびファンディスク『Fate/hollow ataraxia』では「良さ」を感じさせるエピソードも導入されている。 + ネタバレ プレイヤーに嫌われる悪役というのは、物語などにとってはむしろ長所になりうる。にもかかわらず彼が何故これほどの批判に晒されるのかと言えば、 ルートの1つの最終決戦においてこの小悪党を主人公達がわざわざ助けねばならない ため。嫌いな人はもちろん、そうでない人にとってもカタルシスの大きな欠如が問題となる。もっとも、それ以外のルートでは外道な悪党の末路に相応しい死に様を見せる為、プレイヤーの溜飲を下げてくれる展開はきちんとある。 また、このルートでは救出された後に「まるで憑き物が落ちたようだ」と改心した事が示唆されているため、全く救いが無いわけでもない。 嫌われがちな理由の中でも特に大きな要素として、彼はほぼ完全な悪役の立ち位置であるにもかかわらず、主人公が自分の親友のように扱い続けるという不満もある。明らかな悪行や主人公自身への辛辣な態度を見せ続けるのに、「あいつにも良いところはあるんだ」と主人公は主張しかばい続ける。しかし彼が本編中で実際に「良いところ」を見せるシーンが一幕たりとも存在していない。良いことをした過去の回想だとか、主人公が彼を気に入ったきっかけだとかの描写すら皆無。 なまじ主人公が友人として擁護し続けている相手のため、悪党の末路にふさわしい最期を遂げるシーンですら、すっきり喜べないという難点まで持つ。 余談だが開発段階では慎二と主人公が同盟を組みヒロインのマスターと敵対するルートもあったらしいが「野郎のデレなんざ誰得」と言う理由でバッサリカットされたらしい。 因みに、慎二と桜の祖父である間桐臓硯(*15)や桜の実姉である遠坂凛(*16)も、慎二ほどではないがよく批判される。 衛宮士郎の義父の実娘、イリヤスフィールが非攻略キャラであること 彼女はシナリオ全体でも重要な位置 (あっさり殺されたUBWと違い) を占めると同時にファンの人気も高い。そのため、彼女が非"攻略"対象であることには首を傾げる者も少なくない。 ただ実は、当初イリヤルートは「4番目のルート」として存在していたが、製作の長期化・同人から商業への作品仕様変更(*17)に伴ってボツになってしまい、展開の一部がHeavens Feelルートに統合されたという経緯がある。このこともHFルートが賛否両論となる原因の一つである。TYPE-MOONは大手ブランドの割に人員がそれほど多くないため、マンパワー的に取りうる選択肢は限られていただろう。 その後DVDリマスター版や全年齢版(PS2)、分割DL版が出された際も結局追加されることはなかったが、これもまた、前述のマンパワーの問題に加えて一度HFルートに統合してしまったため新ルートとしての独立化が難しいという事情もある。 個別ルートの有無とは関係なく、HFルートにおいてもイリヤはすでに重要な役目を果たすキャラとして完成されている。衛宮士郎の恩人である衛宮切嗣とイリヤの繋がりもここで明かされるため、当ルートの士郎にとってもイリヤの存在は大きい。 そういった事情を鑑みてもなお、ファンにとっては「エロシーンが無くてもいいから、イリヤのルートを追加して欲しい」と言う意見が絶えなかった人気キャラではある。ファンの希望もTYPE-MOONの事情も、どちらも納得がいくものなので難しいところであるが…。 キャラクターの見せ場 各キャラクターの見せ場はルートごとに分散されているため、ルートによってはほとんど活躍せずにフェードアウトすることがある。全ルートで例外なく活躍するといえるのは主人公と遠坂凛だけ。 加えてその遠坂凛のルート「Unlimited Blade Works」は「主人公ルート」とも言えるほど衛宮士郎にスポットが当てられたルートであるため、彼女の「ヒロインとしての出番」は少ない。「仲間としての出番」なら十分なので、決してキャラとして冷遇されている訳ではないが、その辺りが後述の「実用性」面での批判に繋がっているとも言える。 本来の意味での実用性 エロ要素はほとんどないに等しいため、「実用性」を期待した層からはあまり良い評価は得られなかった。 とはいえこれは発売前から予想されていたことであり、本作発売前に「エロゲだがエロの比重が重くない」作品もチラホラ現れていたため仕方の無いことだと言えるか。…それどころか「燃える」「感動する」という部分にシナリオの力点が置かれているため、「半端なエロ要素のせいで燃えに浸れない」とエロ要素が邪魔扱いされることすらある。 それを抜きにしても、第1ルート最初のエロシーンは場違い感があり「もう少し何とかならなかったのか」と言う意見も強い。作中でも随一の燃えシーンの後に挿入され、エロシーンを挟んで再び燃えシーンに突入するため、明確な理由があるとはいえかなり浮いてしまっている。 + アダルトゲームとして発売された理由 同人サークル時代に『月姫』を発売した際、「とりあえず手に取ってもらうにはエロがある方がいいだろう」と判断したから。つまりハナからエロスはオマケ扱いである。 なぜこうなったかというと、当時の日本のPCゲーム業界は「アダルトゲームでなければ商業流通に乗せづらかった」というとんでもない事態に陥っていたため。当時の実店舗は(マルチプラットフォームや洋ゲーを除くと)一般向けPCゲームは「日本ファルコム」「工画堂スタジオ」他社数点程度しか扱っていなかったのだ。そのファルコムでさえ2007年の『空の軌跡the3rd』をラストに販路を失い、「零の軌跡」以降はプラットフォームをPSPに移行せざるを得なかったほど。有名メーカーでさえこの有様だった時代、(同人時代の名声があったとはいえ)新規ブランドに過ぎなかったTYPE-MOONの作品は、エロが無ければ「客が手に取ってくれない」どころか「売り場に置いてさえもらえない」状況だったのだ。 「選択肢」のシステム面 本作における選択肢は基本的に「話が続く」か「バッドエンド直行」がほぼ全て。 戦闘中の生死を分ける決断ならばその構造もやむをえないが、これから戦いに赴く準備段階で二択・三択があり正解以外はすべて詰み、といったこともままある。 さらにその選択肢も選択すればどうなるか、といった点が予想しづらく、タイガー道場でヒントをもらっても「じゃあどれを選べばそうなるのか」はわかりにくい。結果として二択なら選択しなかった方、三択なら総当りで進むしかない。 タイガー道場自体もファンサービスやコントの面では高評価だがテンポが悪くなる、という批評もある。 スキップもできるが、コンプリート時の隠し要素があるので埋めざるをえない。 単独の作品として見た場合、設定の整合性が取れていない点が多い(*18) 分かりやすい例では「士郎の日常生活に関する独白」「心臓に必中するという設定の攻撃が回避されその理由が説明されない(*19)」「ある属性に特化しているから何とか実現出来た能力という説明がされたと思ったら他の属性でも使用可能」「一回(一瞬)の攻撃で何回も殺す(*20)」「ランクが1つ落ちると説明されていた偽物が本物と遜色ない上に最高ランクでないと突破できない肉体を貫く」「最優のサーヴァント且つ経験豊富であるセイバーの迂闊な行動の数々」「基本音速以上の速度且つセイバーの剣戟もしのげるキャラに対して一般人程度の強さ(それも一般人の中でも平凡程度とされる)の士郎が接近戦で勝利」など。 他にも多岐に渡り過ぎて書ききれないが、1つ設定が出てきたら後にそれに反する設定が出てくるなんてことが多い……というのを超えて矛盾が出ていない方が珍しいレベル。 総評 本作品はビジュアルノベルとしては高い評価がなされていることが多く、同ジャンルにおいての一つの重要ポイントとなった作品であることに疑いの余地はない。 それは後述する関連作品の多さにも現れているが、FD、PS2移植版、アニメ版、前日譚、設定資料集、そして外伝及び非常に多岐にわたる関連系列作品(≠続編)などが出ており、そしてそのうちのどれからFateに関わったかによってプレイヤーの感情が左右されることもあり、賛否両論点になりうる要素が非常に多い作品となっている。 めくるめくシビアな奈須ワールドに魅せられた方や、テンプレ通りのファンタジーな作品に飽きた方にこそ本作は読了されるべきだろう。 Fate/stay night [Réalta Nua] 【ふぇいと すていないと れあるたぬあ】 対応機種 プレイステーション2Windows XP~7プレイステーション・ヴィータ 発売元 【PS2】角川書店【Win】ノーツ(TYPE-MOON)【PSV】角川ゲームス 開発元 【PS2/PSV】ヒューネックス【Win】ノーツ(TYPE-MOON) 発売日 【PS2】2007年4月19日【Win】Fateルート 2011年12月23日UBWルート 2012年1月HFルート 2012年2月【PSV】2012年11月29日 定価 【PS2】通常版 7,140円 / 限定版 9,240円【Win】各ルート2,940円【PSV】パッケージ 6,300円 / ダウンロード 5,250円(いずれも当時税5%込) レーティング CERO C(15才以上対象) 廉価版 PlayStation 2 the Best 2009年6月1日/2,940円PlayStation Vita the Best 2014年9月18日パッケージ3,800円(税別)/ダウンロード3,500円(税8%込) 備考 PS2限定版はPSP『トラぶる道中記』が付属Win版はAmazon専売PSV版は『トラぶる道中記』『トラぶる花札大作戦』のDLコード付属 判定 良作 概要(非18禁版) レーティングがCERO C(15歳以上対象)に相当する一般向け版。 なお、[Réalta Nua]とはアイルランド語で「新しい星」を意味する。 一部のキャラを除きTVアニメ版準拠でフルボイス化が実現している他、CGやBGM、タイガー道場のパターン等が追加されている。 ストーリーもヤバめの表現がマイルド調整されている点とラストエピソードの追加以外は目立った改変は行われておらず、致命的な不具合や改悪点も無いため、総じて良移植に分類されるだろう。 余談だが、PC版の時点で圧倒的なボリュームと台詞数なので、主要キャラを演じた声優が 「タウンページ並みに分厚い台本を数冊渡された(要約)」 という旨のエピソードを雑誌のインタビューで答えていたとか。 + ネタバレ なお、本作のパラレル設定のスピンオフ小説『Fate/Apocrypha』のラストシーンは本作のラストエピソードのオマージュとなっている。 PS2限定版にはPCファンディスク『Fate/hollow ataraxia』のミニゲーム『トラぶる花札道中記』の移植であるPSPソフト『とびだせ!トラぶる花札道中記』がオマケとしてついてくる。 2011年12月23日から『[Réalta Nua]』をルートごとに分割、再編集したものがAmazonにてダウンロード販売されていたが、2016年現在は(それ以前から?)配信停止中。 2012年に発売されたPSVita版はタッチ操作・トロフィー機能に対応している他、オーケストラ調にアレンジされた新規BGMも収録され原作BGMと切り替え可能で楽しめるように。各ルートのオープニングアニメムービーを『Fate/Zero』のアニメ版を手がけた「ufotable」が制作、曲を「earthmind」が担当。その出来の良さは評判となった。 中でも好評となったのが上記で述べた桜ルートのオープニング「Another Heaven」。本ルートの雰囲気に非常にマッチしており、また「ufotable」による(劇場版を除き)桜ルート初にして唯一のハイクオリティなアニメーションムービーということもあって、再移植作でありながらファンの間で再び大きな話題を呼んだ。 2015年に『Unlimited Blade Works』のTVアニメ化に合わせてスマートフォンでも本作が配信決定。「Fate (セイバールート)」は当初期間限定で無料配信という予定であったが、現在は無料期間が無期限延長となっており無料でFateルートをプレイ出来る。「Unlimited Blade Works (凛ルート)」「Heaven s feel (桜ルート)」は有料分割配信されている。 また、廉価版以前のPSV版にはミニゲーム『とびたて! 超時空トラぶる花札大作戦』がプレイできるコードが同梱。PSV版『hollow ataraxia』にも同梱されているので、最後まで追うつもりなら廉価版の購入で問題ない。 こちらは登場チームが『Fate/Zero』を主としたスピンオフ作品のキャラクターに一新された完全新作となっている。 原作PC版を除き特にこだわりが無ければ、携帯機で手軽に遊べ、廉価版も発売されているPSV版か、セイバールートが無料となったスマートフォン版を選ぶのが現在もっともオススメ。 シリーズについて ルートへの賛否がヒロイン人気にも影響したのか、HFルートのヒロインにはメインヒロインなのに初期の人気投票でアーチャー(男)や自身のサーヴァントにすら負けたことがあるというネタがある。 それでも6位なので、人気が全く無いと言う訳ではない。そしてアーチャーも素で非常に人気の高いキャラである(*21)ため仕方ないと言えば仕方ない。何より人気が上位に及ばなかった背景にはそもそも全体的に出番が少ないからと言う、ルート賛否や彼女のキャラクター性と全く関係ない理由もある。 実際、その後の人気投票では大きく票を伸ばしている(*22)。 なお、こうした人気投票の結果とHFルートの賛否なども相まってか、長らく「ラスボス系ヒロイン」という半分ネタに近い扱いを公式からも受けられておりしばらくの間、派生作品では腹黒キャラとして登場する事も多かった。 言うまでもなく、ファンからはこうした扱いに賛否が上がっており、この扱いに引いた新規ファンも見られている。現在はシリーズの展開に伴いキャラクターの見直しが大分進んだこともあってか、度を越したキャラいじりは控えめになっている。 ちなみに、後に連載が始まった『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』シリーズは、当時からイリヤの熱狂的ファンだったひろやまひろし氏が事情を受けて打ち出したパラレルワールドのスピンオフである。 + ... 平凡な女子小学生として暮らしていたイリヤが魔法少女として戦いに身を投じるスピンアウト。公式シリーズとは設定が違うと明言されているが、イリヤの背負った背景やシリーズ全体の設定を踏まえた上での脚色がなされており、謎の少女「美遊」やもう1人のイリヤ「クロエ」などのオリジナルキャラも現在はFateファンから概ね受け入れられており、今や連載9年以上、アニメも4シリーズ+劇場化が決まっているなどの長期シリーズとなった。 『プリズマ☆イリヤ』はスマホゲーム『Fate/Grand order』でコラボを果たしており、あちら側準拠でのキャラの参戦も実現している。他、ニンテンドー3DSでゲーム化されたが結果は…。 主人公の姉代わりの女性もまたイリヤと同様攻略不可能となっている。もっともそのキャラは非日常のシーンにほぼ絡まない上、ゲーム中のおまけで「お前のルートなんぞプロット段階からない(意訳)」ときっぱりと否定されているが…。 現代で最も有名なエロゲとして『Fate』が挙げられることがある。 スマホゲーム『Fate/Grand Order』やアニメで新規のファンが増えたこともあり、「エロゲかどうかは知らないがタイトルは聞いたことがある」という人も多い。 また、それらの影響から本作及びFDの中古相場は変動しやすく、一時は定価を超えていた。18禁版はダウンロード版がないのも一因だろう。なおパッケージの売上はFDと合わせて40万本であるため、流通量はそれなりにあると思われる。 2019年6月28日に『Fate/stay night+hollow ataraxia 復刻版』が発売された。こちらはダウンロードカードであり、Windows10まで対応している。 2019年12月8日にNHN PlayArtとドワンゴが共同開発したゲームアプリ「#コンパス【戦闘摂理解析システム】」で後述に折りたたんでいる『Fate/stay night [Heaven s Feel]』枠からセイバーオルタとギルガメッシュが衝撃参戦。TYPE-MOON、又は原作がエロゲ作品の初参戦は衝撃を生んだ。これは第三章の映画宣伝も兼ねていたと思われる。 世界観 前作である『月姫』及び同作者による小説『空の境界』とは世界観が繋がっている…とされていたが、後の作品内で明かされた限りでも、一部キャラの立ち位置や世界全体の歴史などが大なり小なり異なる、いわゆる「パラレルワールド」という関係にあることが明かされた。つまり共通する設定もあるが、基本的には別のルートの話と思った方が良い。 この世界観、特にいわゆる「正史問題」にまつわる事柄は、後に型月なりの解釈を加えて『Fate/EXTELLA』『Fate/Grand Order』で重要ファクターの1つとして取り上げられることになる。 その後の展開 公式には「ファンディスクである『Fate/hollow ataraxia』をもってFate関係の展開を終了し、新作に取りかかる」とアナウンスしていた。しかし、その後もTVアニメ、家庭用移植、漫画、派生ゲームとFate関係の展開ばかりが続き、新作『魔法使いの夜』は2012年まで発売延期を繰り返したため、「Fateばかり作ってないで新作を出せ」とTYPE-MOONファンから度々言われていた。 誤解されがちだが厳密にはいわゆる「曲芸商法」ではなく、あくまで同一ではない派生作品やメディアミックスを主力展開にしたに過ぎない。要するに終了したのは『Fate/stay night』の公式直系作のみと言っていい。 また、他の『Fate』シリーズ関連作品も延期を繰り返していたため、新作の延期は一概にこのせいとは言い難い。それよりも、前述したTYPE-MOONの人員不足とライターの遅筆が原因であろうという見解の方が有力である。 2024年に『Fate/stay night REMASTERED』がSteam/Switchで発売予定。 『Fate/stay night [Réalta Nua]』がベースのリマスター版であり、英語・簡体字に対応している。 ネタバレの是非 長期シリーズ化された作品の常だが、本作品単体ではネタバレ警戒がなされている要素でも、後発の派生作品などであっさり公然化してしまっているケースが多い。特に引き合いにされるのは衛宮士郎とアーチャーの繋がりだろう。 + ネタバレの一例 本作におけるアーチャーの正体及び衛宮士郎との繋がりは『Fate』界隈では一般常識となっている場合が多い。今から本作に興味を持つ人なら、まず間違いなく彼の正体を知っていた上でプレイを始める事になるだろう。 実際にTVアニメ『Unlimited Blade Works』の時は、アーチャーの真名を知らない新規ファンと既存ファンの間でネタバレの是非による摩擦を生む事となった。 そしてスマホゲーム『Fate/Grand Order』においては本作に登場する全サーヴァントの真名がナチュラルに明かされている。『Grand Order』から本作に興味を持った人にアーチャーのネタバレを伏せても、効果は全くないだろう。一方で同作ではこの真名公開を逆手に取ったギミックも存在しており、ストーリー上の演出に一役買っている。 他にも遠坂凛と間桐桜の繋がり、イリヤと衛宮切嗣・衛宮士郎の繋がりなど『Zero』や『プリズマ☆イリヤ』などで公然化されている設定も多い。 アニメ版 本作はアニメも複数作成されている。 + 詳細 第1作(Fateルート) 2006年1月から同年6月にかけてスタジオディーンによって製作された。全24話。ファンからは「ディーン版」と呼称される事がある。 『Fateルート(セイバールート)』を主体に、原作では描写されなかったとあるサーヴァント同士の戦闘や、Fateルートでは出番がほとんど存在しない陣営との交戦などのオリジナルパートが追加されている。当時としては作画水準は高いものの、オリジナル要素の影響もあってかファンからは多少賛否はあるが、新規層の取り込みには成功した。 Fateシリーズで初めて声優がついた作品でもあり、本作の主要登場人物(サーヴァントとマスター含む)のCVは本作から10年以上変わっていない(*23)。 現在Fateシリーズのメディアミックスを担当しているアニプレックスとは関わりのないアニメなので、公式の場で語られる事は少ないが、後述の『ufo版UBW』と並んで『Fate』シリーズに触れる初心者向け作品として挙げられている。 劇場アニメ第1作(UBWルート) 2010年1月23日に劇場公開された。『UNLIMITED BLADE WORKS』ルートの劇場化だが、映画1作(約2時間)で終わる故にカットされた展開も多くファンからの評判はいまいち芳しくない。 しかし本作のメインビジュアルを担当した山中虎鉄氏は後に『Fate/Grand Order』に参加し、前半期ラスボスのデザインを担当することになる。 流石に映画作品だけあって作画は高レベルで纏まってはいる。 テレビアニメ第2作(UBWルート) 『劇場版 空の境界』『Fate/Zero』を担当したufotableによって、分割2クールのテレビシリーズとして放送。1stシーズンは2014年10月4日から12月27日まで、2ndシーズンは2015年4月5日から6月28日まで放送された。合計25話。 発売から10年経ったが故のオリジナル描写も多いが、ボリューム不足は改善され概ね好評。エピローグとして、原作では語られなかった「時計塔」での士郎と凛の日常が語られており、『Zero』に出たとある人物も成長した姿で登場。ブルーレイ特典ではアナザーエンディングも映像化されている。 劇場アニメ第2作(HFルート) 引き続きufotableにより、今まで表沙汰にされてこなかったHeavens Feelルートの初映像化が成されている。全三章。 全年齢である『[Réalta Nua]』準拠ではなく18禁版準拠のストーリー描写となっており、アニメシリーズでは初となる濡れ場も描かれ話題を呼んだ(*24)。 第一章『presage flower』は2017年10月14日に公開。第二章『lost butterfly』は2019年1月12日に公開。第三章『spring song』は2020年8月15日(*25)に公開された。 原作版『Fate』 本作の原案になった未完・未公開の小説。『Fate/Prototype』は、この原案の要素をより多く反映させた別個の派生作にすぎない。 高校生時代の奈須きのこ氏が、『ゲッターロボ』等の作者である石川賢氏の漫画版『魔界転生』に触発されて、友達に見せるために書いていたものである。他には氷室冴子氏の小説に憧れていたとも。タイトルは「Fate/○○」の形式で恥ずかしい単語が並んでいたとのこと。 こちらの主人公は女性で、サーヴァントのアーサー王は男性。ランサーが仲間になったりアーチャー(ギルガメッシュ)に言い寄られたりと、女性向け作品としても違和感ない程の構成。 『Fate/EXTRA』に登場するサーヴァントクラス「セイヴァー」(剣士のセイバーではなく救世主)も、大本はこの原案から存在していたアイデアである。
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カレン・オルテンシア CV:小清水亜美 虎力 6 コスチューム1:法衣 出現条件 デフォルト コスチューム2:戦闘服 出現方法 リアルオールクリア時に出るコマンドを入力 必殺技 自爆 前方に攻撃後、死亡 ※敵にポイントは加算されない 超必殺技 なし 出現条件 藤村大河でシナリオモードをクリア 結果的に自爆はHP全回復の効果があると同じなので、むしろ他の必殺技よりも性能がいいと言える。(ただし、アイテムの効果も消えるので注意) バトルロイヤルで自爆を使うと敗北決定。(全員を巻き込めば勝利) 登場キャラ ステージ 設定ルール 第1話『ゲット』 VSランサー&ギルガメッシュ 教会(昼) タイムバトル:90 第2話『フィッシュ』 VS衛宮士郎(私服)&セイバー 衛宮邸(昼) タイムバトル:90 第3話『キャッチ』 VS遠坂凛&アーチャー 新都ビル(昼) タイムバトル:90 第4話『ロール』 VSキャスター&アサシン 山門前(昼) タイムバトル:120 第5話『チョップ』 VSイリヤ&バーサーカー アインツベルン城(昼) タイムバトル:120 第6話『サイクル』 VS間桐慎二&ライダー 大橋(昼) タイムバトル:120 第7話『リリース』 VS言峰綺礼 コロシアム(夜) タイムバトル:180 ※EDはバラードver 戦闘ボイス 内容 ボイス 攻撃 このっ!(□1&2段目)それ!(□1&2段目)ふふふっ・・・(□3段目)アン!(△)ドレ!(△)アル!(△) ダメージ あっ!きゃあっ! ダッシュ、ジャンプ やっ!えい!ふっ! ダウン復帰 ひどいです・・・!遺憾ですね・・・ふんっ! 特殊技 壊しますよ?この愚図・・・この駄犬・・・ 戦闘不能 主よ・・・やられた・・・ 必殺技 やめて・・・こないで!ノリ・メ・タンゲレ 戦闘勝利 ・・・はいてますよ?こんなものですか呆気ないですね・・・ お知らせ 内容 台詞 新規参入 ……見つかってしまいました。
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, -―- . / `ヽ _,i \ / , __ハ / \. i ヽ 7 | i , |、 \>r< } | レヘ| / 呼ばれて飛び出て参上! 私が証人の藤村大河! | | | L\ }\!_ヽ| rヘ / / 乂{イiトrt‐、 ̄` " ̄ リム!}| /|/ 私が今日証言したい事…それは↓1~10! `ヾ いcj ,.-、 rO { / . ヽ.` } /| |ト、| __ ` 、.`' ´ / |从} | ∨,二Y'',二 }´ 乂 | Z,r-、「 /仁jワに _/圧ニ>、. 〈 rくr'^' | / | / { /,イ / | } r '´ __|\ jナベ.二ニイ/厶| /ス. ri/ / ノ! |.\ソ´\ __... -'〈 | / / ム |_\__/\ / ヽリ |  ̄ ヽ|//--'⊥! ヽ- .二フ 人.\ ト、. | i ヽ' //|_\ / / .\\ У! '、 /./Y,/_{ ヽ 二_/ 〈‐冖<_ ri' r' ヽ. / ,/ \| 厂ト、 / ヽ ̄ ̄二._入〉| _,r' \. |!ヽ二/ \'__,r--'/ | 丿厂 ̄¨>┐ \__/ \ ,.イ | \  ̄ ノ ヽ/ ! \ __,/_ ,' ', \__  ̄¨ヽ i ', \ \ \ . | ', 、 \ \__/ | ', ヽ \ | ', 丶 \ 名前 藤村大河 原作 Fate/stay night 出演物語数 2 辛・逆転裁判 弁護側の証人として登場、吉良の隣人 +しかし・・・ 裁判長衛宮士郎に愛を叫んだだけで終わり、結果何の役にも立たなかった・・・ 冠を持つ神の手外伝~信じる心と愛~ 間桐桜の母親として登場、故人 +ネタバレ注意 ネタバレはここに書く
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和尚 禰豆子 マチ 渋谷凛(長男秘剣録) 織斑一夏 東郷美森 脇山珠美 虎子 あさぎ ミコチとハクメイ(長男秘剣録) やばたにえん 白道八宵 佐原 犬山の親戚 トウカ シルヴィ(長男秘剣録) サシャ・ブラウス 殺(シャア) エリカの部隊 シモン(長男秘剣録) 善逸 古菲 オリヴィア 横島忠夫 伊藤誠(長男秘剣録) 衛宮士郎 ジャンボ アストルフォ 吾郎 清水薫 風香 しぐれ シャナ 釜瀬 タオレン 美綴綾子 時告げ傭兵団 剣術関係者 億泰とその関係者 平戸の会合衆 本田華子 エリカ ホロ 氷室 藤村大河 間桐 王留美 桔梗屋利兵衛 喪黒 張維新 東方:虹村兄弟と親しい会合衆の雄 社長:自分が雇っていた武芸者に暗殺された。実は正規軍の武将並みに戦争が強かった。政治・商業:67 武力・統率:57 政治なら他の会合衆も劣らないが、軍人としては唯一無二。大名家の一手の大将も務められる 兵士を集められる自治都市に社長並みの手腕の持ち主がいると、安定度が全然違ってくる 軍人 虹村形兆 カン・ユー 芹沢達也 その他の要人 清少納言 古田:織田幕府の代官。融和派 秋山小兵衛:奉行 黒崎:二階堂流の月島を破った剣士 武丸:公家一条家の悪ガキ。強者にも弱者にも喧嘩を売る暴れ者。素手なら炭治郎以上の腕 シンジ:長屋の住人。文筆業で身を立てている。禰豆子と仲が良い。音楽の才能があるが、本人は気付いてない アストルフォ:魔性を討つテンプル騎士 鋼鐵塚蛍::研ぎ師。経済観念のない鍛冶職人。大金を持って会わない方がいい 炭治郎と同年代の手練れ 【タイ捨流】蛙吹梅雨 【虎眼流】贄殿遮那 【大陸のよくわからない流派を使う】道蓮 【示現流】東郷美森 関東の羽咲綾乃:東国無双
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第七回放送までの死亡者リスト 死亡者0人【残り八人】 殺害数 順位 該当者 人数 このキャラに殺された人 生存状況 スタンス 1位 一方通行 8人 ライダー、ゼクス・マーキス、C.C.、ファサリナ、戦場ヶ原ひたぎ、ユーフェミア・リ・ブリタニア、上条当麻、東横桃子 生存 対主催→無差別 2位 バーサーカー 7人 刹那・F・セイエイ、本多忠勝、アーニャ・アールストレイム、ヴァン、伊達政宗、張五飛、平沢唯 死亡 無差別 3位 明智光秀 6人 プリシラ、キャスター、黒桐幹也、田井中律、琴吹紬、トレーズ・クシュリナーダ 死亡 無差別 4位 織田信長 4人 リリーナ・ドーリアン、神原駿河、アーチャー、浅上藤乃 死亡 無差別 平沢憂 4人 池田華菜、安藤守、織田信長、ルルーシュ・ランペルージ 生存 奉仕→? 6位 浅上藤乃 3人 加治木ゆみ、月詠小萌、真田幸村 死亡 無差別→対主催 両儀式 3人 バーサーカー、衛宮士郎、荒耶宗蓮 生存 対主催 8位 琴吹紬 2人 千石撫子、船井譲次 死亡 対主催→無差別 ヒイロ・ユイ 2人 海原光貴、ヒイロ・ユイ 死亡 対主催 レイ・ラングレン 2人 玄霧皐月、レイ・ラングレン 死亡 無差別→対主催 秋山澪 2人 明智光秀、福路美穂子 生存 対主催→特殊 アリー・アル・サーシェス 2人 御坂美琴、デュオ・マックスウェル 生存 無差別 東横桃子 2人 セイバー、天江衣 死亡 奉仕 14位 カギ爪の男 1人 カギ爪の男 死亡 自殺 中野梓 1人 竹井久 死亡 無差別 ライダー 1人 片倉小十郎 死亡 無差別 トレーズ・クシュリナーダ 1人 兵藤和尊 死亡 特殊 荒耶宗蓮 1人 中野梓 死亡 特殊 利根川幸雄 1人 八九寺真宵 死亡 脱出 伊藤開司 1人 利根川幸雄 死亡 対主催 ユーフェミア・リ・ブリタニア 1人 伊藤開司 死亡 特殊 白井黒子 1人 白井黒子 死亡 対主催
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第六回放送までの死亡者リスト 時間 名前 殺害者 死亡作品 死因 凶器 ]]|[[ [[]] 以上 人【残り十二人】 おまけ 名前 最期の言葉 [[]] 殺害数 順位 該当者 人数 このキャラに殺された人 生存状況 スタンス 1位 バーサーカー 7人 刹那・F・セイエイ、本多忠勝、アーニャ・アールストレイム、ヴァン、伊達政宗、張五飛、平沢唯 死亡 無差別 一方通行 7人 ライダー、ゼクス・マーキス、C.C.、ファサリナ、戦場ヶ原ひたぎ、ユーフェミア・リ・ブリタニア、上条当麻 生存 対主催→無差別 3位 明智光秀 6人 プリシラ、キャスター、黒桐幹也、田井中律、琴吹紬、トレーズ・クシュリナーダ 死亡 無差別 4位 織田信長 4人 リリーナ・ドーリアン、神原駿河、アーチャー、浅上藤乃 生存 無差別 5位 浅上藤乃 3人 加治木ゆみ、月詠小萌、真田幸村 死亡 無差別→対主催 両儀式 3人 バーサーカー、衛宮士郎、荒耶宗蓮 生存 対主催 7位 平沢憂 2人 池田華菜、安藤守 生存 奉仕 琴吹紬 2人 千石撫子、船井譲次 死亡 対主催→無差別 ヒイロ・ユイ 2人 海原光貴、ヒイロ・ユイ 死亡 対主催 レイ・ラングレン 2人 玄霧皐月、レイ・ラングレン 死亡 無差別→対主催 秋山澪 2人 明智光秀、福路美穂子 生存 対主催→特殊 アリー・アル・サーシェス 2人 御坂美琴、デュオ・マックスウェル 生存 無差別 13位 カギ爪の男 1人 カギ爪の男 死亡 自殺 中野梓 1人 竹井久 死亡 無差別 ライダー 1人 片倉小十郎 死亡 無差別 トレーズ・クシュリナーダ 1人 兵藤和尊 死亡 特殊 荒耶宗蓮 1人 中野梓 死亡 特殊 利根川幸雄 1人 八九寺真宵 死亡 脱出 伊藤開司 1人 利根川幸雄 死亡 対主催 東横桃子 1人 セイバー 生存 奉仕 ユーフェミア・リ・ブリタニア 1人 伊藤開司 死亡 特殊 白井黒子 1人 白井黒子 死亡 対主催