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華山一剣1 必要条件 必要名声 場所 報酬 草上飛習熟10 br;一流高手以上 名声501 華山東 br;華山一剣 柴虚神丹2個 華山一剣と会話し、狐皮10個と毒丹5個を持っていくと柴虚神丹2個貰えます。 柴虚神丹は金亀内丹と同様に魔境奥で凌空虚道習得の手助けとして使用できます。 名号が一代宗師の時、成功率が2倍になります。 凌空虚道を覚えている人は、気力上昇剤として使用しても問題ありません。 上へ 華山一剣2 必要条件 必要名声 場所 報酬 草上飛習熟10 br;絶世高手以上 br;華山一剣1終了 名声601 華山東 br;華山一剣 柴虚神丹3個 華山一剣と会話し、サソリのしっぽ10個と少林小丸丹1個を持っていくと柴虚神丹3個貰えます。 柴虚神丹は金亀内丹と同様に魔境奥で凌空虚道習得の手助けとして使用できます。 名号が一代宗師の時、成功率が2倍になります。 凌空虚道を覚えている人は、気力上昇剤として使用しても問題ありません。 上へ
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英名:The Hollow Providence Hououga レアリティ:M 絵師:藤井英俊 番号:BS15-027 収録:覇王編2弾-黄金の大地 コスト:11 軽減:6 シンボル:緑 系統:虚神・爪鳥 種類:スピリット 1-LV1: 8000 4-LV2:10000 7-LV3:16000 『手札常時』 自分のバーストをセットしている間、手札にあるこのスピリットカードをコスト7にする。 LV1-2-3:『自分のアタックステップ』 このスピリットと『暴風』を持つ自分のスピリットのアタックによって相手のライフを減らしたとき、 相手のライフのコア1個をボイドに置く。 LV2-3:『常時』 相手によって『暴風』を持つ自分のスピリットが破壊されたとき、相手のスピリット1体を手札に戻す。 フレーバー 虚神の嘴がロードの背中に突き刺さった! 備考/性能 コスト変更/コストカット/暴風サポート/コア除外/擬似ダブルシンボル/バウンス 再臨した6虚神の一つ。 他の11コス虚神と同様、暴風を失って暴風サポートを得ている。 公式Q&A/ルール エピソード/キャラクター 進化前:天帝ホウオウガ ここを編集 BS15-緑へ戻る
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―――北花壇警護騎士団はガリア王国の秘密部隊である。 騎士団であるからには、その団員は王国に忠誠を誓い、召集されれば必ずはせ参じなければならない。 忠誠など捧げる理由など何一つ無いタバサにとっても、その辺りの事情は同じだった。 アルビオン王党派の決戦が近い現在でも関係なく、任務は与えられる。 迎えの竜騎士に連れられて半日、タバサとグレンはヴェルサルテイル宮殿の一角、小宮殿プチ・トロワに来ていた。 タバサは今グレンを宮殿の外に待たせ、自分を呼び出したイザベル王女と会っている所だ。 王宮と言うよりも華麗な荘園といった趣のヴェルサルテイルは、今を盛りと花々が咲き乱れている。 手入れの行き届いた花壇に囲まれた焼きレンガの道を、黒いローブの男が歩く。 宮殿の様子を見回し、もし攻めるとすればどうするか、と考えるグレン・アザレイである。 尤も、本気で攻めるならそれほど苦労はすまい。 グレンはかつてこの世界とは魔法技術水準の違う魔法世界で、フラリと立ち寄った相似世界の『協会』支部、つまり相似世界最高最強の魔術機関に正面から単独で攻め入って、そこに詰めていた高位魔導師五十四大系・六百三名を殺害し、更に相似大系の文明そのものとも言える最高位魔導師を決闘で打ち破った男なのである。 宮殿に居る全ての貴族と兵士を相手に戦っても、なお無傷で居られるだけの実力をグレンは持っている。 その事実が、花を愛でる余裕さえもって闊歩するグレンに対し、誰一人誰何や制止をする事を許さない凄みとして伝わっていた。 悠々と歩むグレンが、旅をしてきた数多の世界では見ないハルケギニア独特の花を見かけて花壇へと顔を向ける。 万に達すると言われている既知魔法世界において、天体条件や動植物等は魔法による変異や改良を受けていない限り、どの世界でも同一になっている。 この世界で見るものは、旅人であったグレンにとっても新鮮な驚きで満ち溢れているのだ。 魔法世界でも特に発達した魔法文明である相似世界と比べて、人々の暮らしぶりは決して豊かだとは言えないが、動植物の相や風石、幻獣、亜人、先住魔法など、様々な資源についてはとても豊富な世界だと言える。 それに、ぶれの無い物理法則を持ちながら悪鬼の住まぬ環境。 魔法技術向上のための実験を望む魔法使いにとって、至上の環境がここにはある。 魔術師の理想郷をその花に凝縮して見た気がしてグレンは膝をつき、薔薇を飾るようにつつましく咲く可憐な花へと顔を寄せた。 その刹那。いずこかで見た顔を視界に捉えた気がして、神に似た男は顔をあげる。 あるのはただ美しく広がる花壇の花々だけ。 「―――気のせいか」 記憶の端にひっかかる、顔を包帯で隠した女の姿は何処にも見つけられなかった。 ……それから数時間後、タバサとグレンは車中の人となっていた。 地方領主であるアトワール伯の誕生日を祝う園遊会へと向かう、豪華な八頭立ての大きな馬車である。 幻獣であるユニコーンに引かれたゆうに10人は乗れるような馬車には、交差した杖と「更に先へ」と書かれた紋章が描かれている。 まぎれもない王家を表すその紋章。 父王ジョゼフから王女イザベラに与えられた御座車に、二人は同乗しているのだ。 それどころか、タバサは影武者として王女のドレスに冠までかぶって座っている。 そんな馬車の車中は―――実に奇妙な雰囲気で満たされていた。 女主人の席に座するのは『フェイス・チェンジ』の魔法で女王に化けたタバサ。 その隣には新任の侍女という触れ込みの、変装した従姉姫イザベラ女王。 向かいの席には東薔薇花壇警護騎士バッソ・カステルモール。タバサの顔に変身の魔法をかけた、二十代前半の美髯凛々しい騎士である。 そして彼の隣に、もう一人東薔薇花壇騎士の正装に身を包んだ人物が座っていた。 円形に四角形に菱形に三角形等、様々な図形を刻み込んだ、腕ほどの長さのワンドを傍らに立てかけている。 マントの色は鮮やかな青。 ガリアでは王族の警護を任された者だけに貸与される王家の髪色にちなんだそれは、隣に座るカステルモールと揃いの品。 マント留めには紅玉をあしらった薔薇の彫銀細工を使った、何処から見ても立派な東薔薇騎士団の貴族に見えるその人物は、整った、けれど美貌ではなく叡智の深さと苛烈さこそが感じられる顔の男性、グレン・アザレイその人であった。 海の底のように深く、けれど太陽のような灼熱を宿した灰色の双眸は、今は細められ、向かいに座る二人に静かに向けられている。 その視線の先で、いつもなら無作法に行儀悪く、意地悪な言葉と行動でタバサに絡むはずのイザベラは、カチンコチンに固まっていた。 傲慢さがなりを潜め、姿勢良く座り、握った小さなこぶしを軽くスカートの上に重ね、俯きがちに頬を染めて視線を彷徨わせる姿は、元々の美しい容姿とあいまって、まるで深窓の令嬢のようだった。 と言うか実際深窓の女王さまなのだが。 「あの、ミスタ・グレンは人ぎ……シャルロットの、使い魔、なのですね?」 「然り。わたしは雪風の娘によって召喚された者である」 「平民、だともうかがいましたけど、とてもそうは見えませんわ。 その、とても堂々となさっておいでですもの」 「遠い異邦の生まれゆえこの国の魔術とはいささか毛色が異なるが、わたしが使う魔術、相似大系における魔道の術理を極めつつあると自負している」 「そ、そうですか! そうでしょうとも! わたくしの従妹はとても優秀ですもの! 平民なんかを召喚するはずがありませんわ! ねぇ、シャルロット?」 「………………」 言葉遣いまでまるっきり変わっている従姉の様子に、毛虫でも噛んでしまったかのような表情のタバサ。 そうすると魔法でイザベラそっくりになっている容貌が、皮肉にも更にそっくりになった。 イザベラの異様な態度の理由は判っている。 騎士に変装したグレンを最初に合わせた瞬間にイザベラの目がハートになっていたから一目瞭然だ。 半分ほど飲んでいた紅茶を床に落としても気がつかないほどで、その時からイザベラはとても変だった。 「そうだわ! わたくし、とっても良い事を思いつきましたわ! ミスタ・グレンも強い魔法が使えるのなら、本当に我が国の騎士になられれば良いのよ! ああそれが良いわ! 私からお父さまに推薦して差し上げてもかまいませんのよ?」 「使える魔法の強さなど、なんら重要とする事柄ではない。 騎士して採り立てられるならば国を愛し、忠誠の心を持つ者を選ぶべきであろう。 異邦人であるわたしに、残念ではあるがそのような心など無いのだから、騎士に、などとは戯れにでも言うべきでは無い事だ、女王よ」 「ミスタ・グレン……」 ぽぉっと更に頬を染め、瞳を蕩けさせるイザベラ。 いつもなら自分の誘いを断ったグレンに怒り狂うような場面だったが、まるで気にならないらしい。 むしろ魔法の腕前に感じていた劣等感をグレンに気にする必要はないと言われた気がして、ますます想いに拍車がかかったようだ。 奇妙な生き物を見るようなタバサの目が、いっそう細められる。 「…………ちょっとキモい」 聞こえないほど小声で呟いたタバサの言葉に、給仕として同乗していた数人の侍女がコックリと頷いた。 もしも巷で言われる一目惚れが、神様の仕業だとしたら。 ルイズに一目惚れしたサイトといい、今回のイザベラといい、始祖ブリミルは実に罪深くて悪趣味で―――そして残酷に違いなのだった。 ……その夜。 予定の通り一泊する事なにった街の一番高級な宿で、タバサを一番豪華な客室に泊まらせて、イザベラは自分の部屋とした二番目に良い客室で計画の練り直しをしていた。 アルトーワ伯爵の誕生日を祝う園遊会に招待されたのを利用して、伯爵が謀反のために自分を誘拐しようとしていると言う陰謀をデッチ上げ、その護衛としてタバサを影武者にすることで、自分で用意した刺客とタバサを戦わせるというのが、そのたくらみだった。 刺客はガリア裏社会でも恐れられるメイジ『地下水』。その正体は手にした人間を操るインテリジェント・ナイフである。 もちろんアルトーワ伯に謀反を起こす気などまったく無い。ただのイザベラによる作り話だ。 だが、なぜかそんな計画を父王であるジョゼフがもちかけ、支援までしてくれたのだ。 イザベラは『雪風』などと呼ばれる、ちょっと魔法が得意だからと生意気な従妹の醜態をしっかり楽しむつもりだった。のだが…… 「と、言う訳でこのわたしが直々にグレンさまを人形娘から引き離す役をしてやるから、わたし達が夜の散歩でムーディーな感じに盛り上がってる間に、お前は生意気にもグレンさまを独占するにっくきチビを泣かせてやるんだよ?」 なんか目的が変わっていた。 そして目的が変わってもやることに変化が無いイザベラ様であった。 ともかく、イザベラは腹心の侍女を呼んで少し控えめな感じの化粧を施させ、派手では無いが品の良い服に着替えると、しずしずと階段を上り、タバサの部屋の前で警護の騎士然として立っていたグレンに話しかける。 「あの、ミスタ・グレン。今宵は二つの月が共に満ちてとても美しい夜ですわ。 わたくし夜歩きなどしようと思うですけれど、よろしければ、ご一緒していただけないかしら?」 モジモジと両手を合わせて恥ずかしそうな上目遣いながら、女王さま勇猛果敢に攻めています。攻め攻めです。 「誘いは嬉しく思うが、わたしは今王女の護衛をおこなっている。そなたは他の者を護衛に呼ぶが良かろう」 おっとグレンさん、華麗にスルー。 「おや、王女殿下のお誘いを断るなどなんと勿体無い事を。 騎士どの、ここは私が代わりますゆえ、どうぞお二人でお散歩へ」 「ふむ。それでは頼んだ」 ここで通りがかりの衛視Aを乗っ取ったインテリジェント・ナイフの『地下水』さんがナイスアシスト。 王女さま下向いて「計画通り!」って顔になってます。すっごい悪い顔です。 「あっ。この街、少し足元が悪いみたいだわ」 更に王女さま、宿を出たあたりで17歳にしては豊かな胸を押し付けるようにグレンさんの腕に抱きつきました。 やる気です。本気で攻めに来ています。 「気をつけよ王女。この世界では夜闇を照らす明りも少ない。 されど夜空の美しさを愛でるときには、それもまた良いことであるな」 しかしグレンさん再びスルー。 余裕です。流石に年齢差二倍となると貫禄が違うぞグレンさん34歳独身。 腕に王女を絡みつかせたまま、悠々と夜空を見上げて目を細めます。 「王女よ。この世界に星座や星星の物語があるのなら教えてもらいたい。 悲しいかな、わたしはこの美しい夜空に、あまりに馴染みが無いのだ」 「ええ、ええ! 喜んで教えてさしあげますしてよ! まずあの真北にひときわ明るく輝く星が始祖ブリミルの御魂が昇天したと言う―――」 嬉々としてガリアに伝わる星座物語を語り始める、高揚して微妙に言葉のおかしくなったイザベラさま。 けれど彼女は、とても重要な事を忘れていた。 グレンはタバサの使い魔であり、通常使い魔は主人と視覚を共有できる。 つまり――― 「……全部、見えてる」 従姉姫の、普段は絶対見られない異常行動が、グレンの視点でバッチリ見えているタバサであった。 イザベラはタバサにとって父親の仇の娘ではあるが、なにもイザベラ自身が憎いわけではない。 性格的に色々と問題がある王女ではあるが、彼女なりのプライドをきちんと持っているし、魔法の勉強等も隠れて頑張っている事も知っている。 両親の事に触れられると流石に殺意を抑える事に苦労もするが、正直なところ憎悪の対象になるほど気にする相手では無かった。 母親の事。父の仇を倒す事。数は少ないが学校での友人の事。使い魔の事。後は本の世界だけが、タバサにとって興味のある全てだ。 けれどイザベラのあんな初々しい姿を見せられたら……いつかタバサの魔法が父親の胸を貫くのを見たとき、彼女がどんな苦しみを受けるかと想像すると胸が痛む。 だからこそ、タバサは多くのものに心を向けないようにしていたと言うのに。 溜め息を一つ。 タバサは身長より大きな自分の杖で『ライト』の魔法をかけ、光源と共に布団の下に潜り込んで扉が開くのを待った。 グレンと交代で見張りに立った衛視はイザベラを『王女』と呼んでいる。影武者の自分が居るこの部屋の前で。 つまりは始めからグルなのだ。通りがかりなワケが無い。 それが一目惚れした相手と一時の逢瀬を望む一心なら問題は無い。 けれど超常の魔力を持ったグレンという護衛を自分から引き離す意図を持ってなら、次は仕掛けてくるに決まっている。 案の定、ノックも無しに開かれた扉から仮面を付けた衛視が真っ暗な部屋へと入ってきた。 「お休み中ですか、姫殿下」 扉を閉めてゆっくりと、ベッドに横たわるタバサへと近づく男。 その足取りは豪華な分厚いカーテンに遮られて星明りすら入ってこない客室の暗さを気にした様子も無い確かさだ。 「お芝居は、いらない」 言って跳ね起きるタバサ。 布団を勢い良く捲り上げると、ランプとは比べ物にならない魔法の明りが客室に溢れた。 普通の人間なら眼が眩んで一瞬まともに動けなくなるはずだ。 その中で衛視――『地下水』は正確に魔法を唱えてタバサに向けて放つ。 空気の固まりが敵を撃つ『エア・ハンマー』は、素早く次の一手を撃とうとしていたタバサの魔法と偶然にも同じ。 二つの魔法がぶつかり合い、二人の中間ではじけて消える。 「お見事。さすがは北花壇騎士の『雪風』ですな。しかし何処で私の正体がばれたのやら」 「使い魔」 「なるほど。そう言えば使い魔の視覚は主人と共有される。 人の姿の使い魔など珍しいので、すっかり忘れていましたよ。 まぁ、あのマヌケな使い魔殿は幸いにも騙せたようですが」 「違う」 「―――!?」 背後の気配に気が付いて振り向けば、眠らされた女王を腕に抱いた相似の使い魔の姿。 闇の中にあってなお太陽の如き男は、両手の塞がったままで、視線のみを送って魔術を完成させた。 「―――ぐっ!」 「ふむ。これを耐えるとは、その身体はお前の物では無いか」 昏睡している王女の脳と相似にされた衛視の脳が、自ら睡眠状態に落ちようとするのを『地下水』はその支配力で耐え抜いた。 しかし抵抗したカラクリ自体を気取られれば自然と正体もばれよう。 慌てて逃げを打つ『地下水』だが、グレンの魔術がその足を止めた。 同一デザインで作られたガリア王軍衛視のブーツと騎士のブーツが、相似弦で結ばれているのだ。 戦闘を意識してしっかりと脱げ難く設計されているため、最早グレンが足を動かさぬ限り縫いとめられたように動く事は無い。 「降参する。武器は渡すから殺さないでくれ!」 言って、右手に握っていた衛視の杖を足元に捨て、左手のナイフは柄を前に向けて差し出す『地下水』。 両手の塞がっているグレンの代わりにそれを受け取ろうとタバサが一歩踏み出したその時。 窓ガラスを割って円環状の刃物が飛び込んで来た。 「避けよ、刺客」 「うわわっ!?」 言われて咄嗟に跳ぶ『地下水』。 既に間にか足を縛り付ける魔術は解除されていたため、素早い動きで飛来する凶器の軌道から我が身を逸らす。 けれど『地下水』の動きを追うように、刃物――チャクラムの軌道が曲り、襲い掛かった。 銀の弦に結ばれたそれが、窓の外から操作されているのだ。 「相似魔術」 銀弦に目ざとく気付いたタバサが珍しく驚きの声を上げた。 ほとんど同時に飛び込んで来た、銀弦によって結ばれる同じ形のチャクラムが5本。 同じ軌跡を描く武器は、部屋の中の人間を皆殺しにする目的で放たれたに違いない。 だが、その刃は猛威を振るう前に空中に停止する。 相似魔術による物体操作など、グレン・アザレイの前では容易く操作権を奪われるのだ。 間髪入れず窓から飛び込んで来たのは、灼熱した砂の嵐と、帯電した砂鉄を含んだ雷撃。 「精霊大系の魔術で加熱した砂を因果大系の空気ピストンで送り込んだか。 それに、相似大系で集めた砂鉄を加えた円環大系の放電魔術……四人か」 いずれも初歩的な、けれど破壊的な魔術を部屋に傷一つ付ける事無くに無効化して、グレンはその魔術大系を看破してのけた。 いずれも対熱・対電だけでは防御しきれない、物理属性を加えた複合攻撃魔術だったが、この程度で倒せるようなら『神に似た者』などと呼ばれはすまい。 そのままグレンは軽く手を握り込んで腕を引く動作を行ったが、手ごたえの無さにか首をかしげた。 「雪風の娘よ、この世界に肺から酸素を抜かれても平然としている生き物は居るか?」 「いない」 普通の生き物は酸素が無ければ生きていけないという事実は、このハルケギニアでも知られている。 低酸素下でも生存できる火トカゲや水陸両方で活動するスキュラ、酸素の薄い高空を高速で飛行する風竜なども居るが、それらの種族も魔法的な力や肺とエラの両方を持つなど、なんらかの方法で酸素を得ている。 中にはバグベアードのように呼吸しているのか不明な物や、ガーゴイルのように呼吸など最初から不要の物も存在してはいるものの、そもそもそんな連中は肺も存在していないのだ。 だが、グレンは魔術によって敵の呼吸する空気から数兆の数億乗個に及ぶ酸素分子だけを正確に掌握して抜き取った。 ならば敵は、肺が有って呼吸をしていながら酸素を必要としない奇妙な生物と云う事だ。 「そうか。面妖な事だな」 「下がる?」 「いや、もう逃げた」 主人の問いに使い魔は端的に答え、眠る女王をベッドへと横たえてから窓の外を覗く。 因果大系や精霊大系、円環大系にとっての転移は高等技術だが、 相似世界に生まれた魔導師にとってなら、きちんと教育を受けた者なら子供でも扱える初歩の魔術だ。 ただし、転移先に自分の似姿を強制的につくるようなマネは流石に段違いの高等技術で、それも一瞬で移動などグレン以外は簡単には行えない。 普通は転移先に自分や同行者と『似た』人形を置いておかなければならないし、転移先の様子を知っていなければ『跳べ』ないという制限がある。 だがこんな襲撃をする敵だ。相似魔術師が転移先を用意しない理由が無かった。 案の定、三階の窓から覗いた外には怪しい人間など居はしない。 それどころか大きな物音に気が付いて集まる野次馬の気配すら感じられなかった。 おそらく、因果魔術か精霊魔術を使って音と光を誤魔化していたのだろう。 「今の音はいったい!? 女王陛下はご無事であられるか……」 だが、宿の中には音が聞こえていたのだろう。 宿の外での警備を申し付けられてはいたが、王女とグレンが二人で出て行ったのを見て、これはタバサに会う好機だと、この部屋へと向かう途中だったカステルモール卿が、あわを喰って飛び込んできた。 なにせ影武者であるタバサは彼にとって真の王女であるべきシャルロット姫。 その身が危機にさらされたとなれば、慌てるのも無理は無い。 飛び込んできて、そのまま言葉を失う若き薔薇花壇騎士。 割れた窓と立ち尽くす衛視、油断無く窓の外を覗いていたタバサとグレンまでは良いとして、そこにベッドの上でスヤスヤと寝息を立てる本物の王女が加わっては、何が起こっているのか到底把握できなかったからだ。 「な、なにが起こっているのだ? グレン殿はいったい何時の間に部屋に戻られた?」 そんなカステルモールをおいてきぼりにして、グレンがタバサに告げる。 「少なくとも四人、多ければ六人以上の魔術師による襲撃であったようだな、それも本物の王女を巻き込んでもかまわぬという者達だ」 「…………」 コクリと無言で頷くタバサ。 イザベラや『地下水』とは別口の刺客。それもグレンと同じ異界の魔術の使い手による襲撃だ。 本当にイザベラが狙われているのなら、今の警備体制は十全では無いし、なにより刺客ごっこで遊んでいる場合では無い。 今から必要なのは真に厳重な警備を敷くための、イザベラ達との協力。 二人が視線を向けた先で、『地下水』はバンザイをするように降伏の意思を表していた。 目が覚めて見慣れない天井を見上げて居ると云う事は、イザベラにとって珍しい事では無い。 一国の王女たるもの、多忙な上に趣味人な父王に替わって式典や祝典に招待される事がよくあり、そのために今回のような小旅行に出る機会も自然と多くなるからだ。 今日はアルトーワ伯の誕生日を祝う園遊会に出席するために出立して二日目。 その途上で宿泊した宿の部屋だと、覚醒しつつある脳から思い出してゆくイザベラ。 いつも通りのつまらない公務だが、退屈を紛らわせるための楽しい遊びと、胸をドキドキさせる出会いがあった事も加えて思い出した。 その事を考えてニンマリと笑みを浮かべて、ふと何かに抱きつかれている事に気がついた。 重い。 まさかあの後グレン様とめくるめく一夜を過ごしたのかと、ドキドキしながら横を見て硬直する。 自分と少しだけ似た顔立ちの、青い髪をした小さな少女。 北花壇騎士七号タバサこと、従妹であるシャルロットがあどけない表情で眠っていたのだ。 「母さま……」 その小さな娘が、苦しそうに寝言を吐き出していた。 イザベラのドレスをギュッと掴んで、額に汗を浮かせて。 「母さま、それを食べちゃ……ダメ、母さま……」 ドレスを掴む手の力が更に強くなる。 どうしたものかと流石のイザベラも困ってしまった。 タバサの母親が謀反の咎で名誉と貴族の権利を剥奪されている事は知っている。 父親である、イザベラにとっては優しい伯父であったオレルアン公が事故で死んでいるという事もだ。 だが、どんな風に謀反を企んでいたなどの詳しい話は知らされていなかった。 女官や家庭教師に聞いても、なぜか話を逸らされるからだ。 だから元の所領だった王国直轄地の邸で、蟄居を命じられているというタバサの母親がどんな状態なのか、イザベラは知らない。 「フ……フン。寝ぼけて母親の名前を呼ぶなんて、人形娘も所詮子供よね」 だから普段無表情を通すこの従妹が、こんなに辛そうな、切なそうな顔を見せる事に驚いてしまう。 憎まれ口を叩きながら、自由になる頭を助けを求めるようにめぐらせるイザベラ。 そのせいで、自分の右手が握っている物に気がついてしまった。 白刃を輝かせる鋭利なナイフが、自分の手にしっかりと握られていたのだ。 「ひっ!?」 状況を考えるとこれはダメだった。ダメダメすぎだ。 自分が潜り込んだのか、相手がそうなのかは判然としないが、シャルロットと同衾している自分の手にナイフ。 いくらなんでも従妹を自分の手で刺し殺そうなどと考えるほど憎んでいるワケでは無いし、そんな度胸も無い。 しかし状況証拠が、まるで自分がタバサを殺そうとしているようにしか見えないのだ。 「ちょ、なによこんなナイフ、わたしは知らないわよ!」 『それはつれないお言葉ではありませんか、姫殿下』 「地下水!?」 心の中に直接響いた言葉にイザベラはナイフの招待に思い至った。 『万が一に備えて姫殿下を守れるようにこうして待機していたと言うのに、知らないなどとは心外です』 「万が一? 守る? なにをワケの判らない事を言ってるのよ?」 『昨夜正体不明の刺客に襲撃を受けたのですよ。 その場に居た私も影武者も殿下もまとめて吹き飛ばすような魔法を使って、ね』 「冗談じゃないわ! 刺客ですって!? アルトーワ伯の仕業なの!? それとも国内の反乱勢力の仕業? あるいはアルビオンで王制打倒を叫んでる連中が? ともかく誰だろうと王女を狙うなんて許されないわよ! 即刻捕縛して首を刎ねなさい!」 「正体不明」 イザベラの声が大きかったためか、ムクリと起き上がったタバサが短くそう告げた。 汗は既にぬぐったのか、いつもと変わらぬ氷の彫像のような無表情だった。 「敵はとても強力。もう刺客ごっこで遊んでいる余裕は無い」 「ししし刺客ごっこ? 言いがかりをつけるなんて、さすが謀反者の――」 「『地下水』から全部聞いた」 「うぐっ!?」 「でも改めて狙われている貴女から聞きたい。アルトーワ伯は本当に怪しいの?」 じっと自分を見つめてくる湖水のような透明な瞳。 その圧力に負けそうになるが、ここで素直になるにはイザベラのプライドは高すぎた。 「な、なによ。アンタはもう王族じゃないのよ。わかってるの? そのアンタが王女を詰問するなんて、許される事じゃないんだからね! ちょっと魔法ができるからって、調子に乗るなんて身の程知らずもいいところよ」 脅すようにそう言うが、湖水の瞳は小揺るぎもしなかった。 吐息が触れそうな距離で、タバサがポツリと付け加える。 「刺客の魔法は私なんかよりはるかに強い」 息を呑む王女。 普段散々貶してはいるが、この従妹の魔法の腕が本物だという事は十分に知っている。 「それも、場合によっては私達の人数より多い」 それが決定打だった。 タバサの言葉は、いざとなったら守り切れない恐れもあるという意味だ。 吸血鬼を難なく討伐してきたような北花壇騎士以上の魔法の使い手などに襲われたらひとたまりも無い。 相手の目的がイザベラの命なら、他の仲間にタバサ達が足止めされている間に簡単に殺されるだろう。 ならば少しでも犯人特定を早めなければいけない事ぐらい、ワガママ王女にだって判る事だ。 「アルトーワ伯は白よ。もう真っ白。 王都の動向も気にせずに田舎で平和に過ごしてる、ただの平凡な地方貴族よ」 「そう」 コクリと頷くタバサ。 その短い言葉に、咎も無く謀反人にでっち上げられた伯爵への憐憫と、イザベラへの静かな怒りが込められている事に気がついたか。 イザベラはふと思いついたようにタバサに聞く。 「ところで人形娘。私達って、誰から誰までの事なのよ?」 「私と『地下水』とグレンとカステルモール卿の4人」 「では、今後の警備をいかにするか考えるとしよう」 タバサが答えた途端、部屋の窓側にグレンが、入り口の前にはカステルモールが現われた。 自分の背後と前面の光を『相似』にする魔術で隠れていたのだ。 「ググググ、グレンさ……ミスタ・グレン!?」 「存外普段の態度は快活なのだな女王よ。そのような元気さも好ましい」 フォローを入れるグレンの言葉に、ボッと顔を赤くするイザベラ。 頭の中では「好ましい」の一言がグルグルと渦巻いていた。 そんなイザベラ様子を、わかっていながら余裕で流してグレンは告げる。 「敵はこの国のものとは別の魔法大系を操る魔導師複数人。 姿を変える魔術や人の心を改竄する魔術を操る者も居る。 わたしとて離れた場所に分かれた二人を同時には守りきれるとは言えぬゆえ、 これより我等5人、常に行動を共にするとしよう」 その言葉に3人がコクリと頷いた。 ただし、イザベラが頷いたのは『地下水』が同意を表したからだ。 肝心なイザベラ自身は「いつも一緒……いつも一緒だなんて……キャー」とうわごとのように呟くばかりだった。 同じ頃、ガリア王宮。 玉座に座した青い美髯の偉丈夫に、しなだれかかる女が一人。 「ホンマにワルいお人やなぁ。自分の娘に惚れ薬を盛るやなんて……しかも刺客まで送って「殺しても良い」やなんて、トンでもない悪党やぁ」 「なに、それで神の如き男を縛り付けられるのなら、安いものであろう?」 ガリア王ジョゼフは、笑いすらせずにそう言い切った。 自分の娘すら、謀略の駒でしか無いのだと。 「あの薬はアンドバリの指輪を使ってシェフィールドが調合した特別の薬。 まず数年は効果が切れたりはせぬ」 「そんでも、あの男はんは目的のために殺せる男や。たとえ自分に惚れてる相手でもなぁ」 大きく胸元の開いたガリア仕立のドレスを着たジェルヴェーヌ・ロッソが警告する。 彼の『地獄』でのおこないなど知らずとも関係ない。 一目でもあの太陽のような男をみれば、魔術師になら誰でも理解できる。 物質文明という名の寄り合い所帯を作り上げて、集団で情や愛を交わして社会を構築して、集団になる事で世界と相対して生き延びようとする地獄人やこの世界の住人とは違うのだ。 魔法使いとは、自身が身につけた奇跡によってのみ、ただ独り世界と相対する者。 情愛などで曲げられない、強く苛烈な意思持つ者の頂点に、グレン・アザレイは立っている。 「かまわぬとも。鎖になどならずとも、わずかに絡みつく糸となるのであればな。アルビオンで踊る道化どもが、もうしばらく拙い芸を見せる時間が稼げればそれでよい」 そんな事は重々承知しているとでも言うように、ジョゼフ王は答えた。 彼もまた、たった一人知略をもって世界の全てに戦いを挑んだ男なのだから。 全ての争いの糸を引く、瞳に狂気を浮かべた人形遣いは独白する。 「その結果お前が殺されたなら、我が謀略の駒として死んだとしたら、おれの心はどれほど痛むのであろうな? 血を分けた一人娘の死が、どんな痛みを与えてくれるのか。 おれは今から、それが楽しみでならないのだよ、我が愛するイザベラよ」 歓喜と悲哀に満ちた言葉が吐息のように零れ落ちた。 待ち望むように、忌避するように、狂える王は来るべき未来を見通すように目を上げる。 「ミューズよ、余のミューズよ、聞こえているだろう? 刺客を送るのだ。休ませるな。疑いを向けさせてはならん。 彼等が恐るべき悪意にイザベラと我が姪が狙われていると思うように、本当に殺すつもりで襲わせるがいい」 虚空に響く指令は、確かに誰かに届いたのか。 その場に居るジェルヴェーヌにはただウツロであるように聞こえる。 「ヒドイお人やなぁ。そうやって、なんもかんもワヤにしてまうおつもりかいな?」 「どうせ全てが造られたモノなら、全て滅んで何の差しさわりがあろうものか……なぁ、シャルル?」 今は居ない誰かに向けられた王の言葉も、宮殿の高い天井へと消えてゆくだけだ。 次へ 前に戻る 目次に戻る
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. 【作品名】五霊闘士オーキ伝 【名前】四華船 【属性】宇宙創生時の超爆発の余剰エネルギーを保存してる船 【大きさ】花びら一枚数億kmの花 花びら一枚の全長数億kmを3億kmとしても1000光秒≒2天文単位。 ちなみに太陽の直径が139.2万mなので太陽直径の216倍。 【攻撃力】宇宙戦艦1万4千隻を数分で残り1割にまで減らした。 惑星サイズの船を軽く沈められる。 宇宙創生時の余剰エネルギーを自由に使える。 【防御力】上記艦隊の攻撃で無傷。 虚神騎士の攻撃で中破 【素早さ】虚神騎士と闘えるくらい(反応は超光速)、移動速度は不明 【特殊能力】超回復 :虚神騎士の連続攻撃を受けても次々と再生。 四華船の回復速度≧虚神騎士の破壊力 スレイブ:倒した敵艦隊をゾンビーな下僕として再生&使役 吸収 :倒した艦隊のエネルギーを吸収 :宇宙のどこかで惑星が壊れたら、そのエネルギーを吸収 【長所】驚異的な回復力。戦闘力 【短所】虚神騎士とは、互いの攻撃が効かないので決着がつかない。 四華船=次々に回復、虚神騎士=相手の攻撃で無傷 .
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分岐 名前 Rank 基本防御 火 氷 雷 神 スキル(備考) ◇│ レインフォース 7 748 460 460 460 748 救命回復量↑ カリスマ 合成 28000fc 黒曜鉄x1 強工具鋼x1 魔狼筋装甲x2 虚神筋繊維x2 虚兵鉄x2 │◇│ レインフォース 改 8 832 513 513 513 832 救命回復量↑ カリスマ 強化 18000fc 超密度複合コアx1 │◇│ レインフォース 修 9 939 578 578 578 939 救命回復量↑ カリスマ 強化 18000fc 極密度複合コアx1 │◇│ レインフォース 新 10 1046 645 645 645 1046 救命回復量↑ カリスマ 強化 18000fc 極密度複合コアx1 │◆ ※最終段階レインフォース 極 11 1190 734 734 734 1190 【B】捕喰時獲得弾数↑ 救命回復量↑ カリスマ 強化 23000fc 虚兵機蝕脚甲x3 虚兵耐衝体x2 虚神強靭維x3 虚神魔装x2 虚神羅刹眼x1
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英名:The Hollow Dragon Emperor Catastrophedragon レアリティ:M 絵師:安達洋介 番号:BS15-009 収録:覇王編2弾-黄金の大地 コスト:11 軽減:6 シンボル:赤/赤 系統:虚神・古竜 種類:スピリット 1-LV1: 7000 4-LV2:10000 8-LV3:20000 『手札常時』 自分のバーストをセットしている間、手札にあるこのスピリットカードをコスト7にする。 LV1-2-3:『このスピリットのアタック時』 自分のデッキを上から2枚オープンできる。 その中の『激突】』を持つスピリットカードを好きなだけ、コストを支払わずに召喚する。 残ったカードは破棄する。 LV2-3:『自分のアタックステップ』 このスピリット以外の『激突』を持つ自分のスピリットがアタックしたとき、このスピリットは回復する。 フレーバー かつて世界を滅ぼしたという伝説の虚神……。 なんで復活したんだ?? 備考/性能 コスト変更/コストカット/激突サポート/召喚コスト踏み倒し/回復効果/非転召ダブルシンボル 再臨した6虚神の筆頭。 他の11コス虚神と同様、激突を失って激突サポートを得ている。 性能は大きく変化したが、戦力補充と連続攻撃が可能な点は共通している。 公式Q&A/ルール エピソード/キャラクター 進化前:激神皇カタストロフドラゴン 虚神撃破 神殺しの覇王マナカによって最初に討伐された虚神。 侵攻からわずか一ヶ月で撃破されたため、炎楯の損害は軽微だったという。 白の虚神のみ氷楯の軍勢によって討伐されたが、氷楯の受けた損害はその数倍だった。 ここを編集 BS15-赤へ戻る
https://w.atwiki.jp/ge2rb/pages/726.html
分岐 名前 Rank 基本防御 非物理 強化時[合成時]追加スキル ◇│ レインフォース 7 529 神◎◎ [セイヴィアーLv10{【B】捕喰時獲得弾数Lv10 救命回復量Lv10 カリスマLv10}] 合成 9700fc 黒曜鉄x1 強工具鋼x1 魔狼筋装甲x1 虚神筋繊維x2 虚兵鉄x2 │◇│ レインフォース 極 11 843 神◎◎ --- 強化 16000fc 虚兵機蝕脚甲x1 虚兵耐衝体x2 虚神強靭維x1 虚神魔装x1 虚神羅刹眼x1 │◆ レインフォース 醒 15 1270 神◎◎ --- 強化 169600fc 虚兵機真脚甲x1 虚兵斬戟刃x2 虚兵機真兜x2 虚神修羅眼x1 虚神真機核x1 付加スキル一覧 セイヴィアーLv10
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配置 飛べない翼(異端の石翼)聖石鬼ガーゴイルモア 聖岩神殿の異端者羽毛舞豚 チキンウィングバッファロー 地すべりハネイグアナ 紫帆の羽木船 ハダカホネドリ 光翼烏賊 低空飛魚カーペットフィッシュ フライトスーツ土偶 マンモスモスマン雑感 配置 羽毛舞豚 2 3 フライトスーツ土偶 チキンウィングバッファロー 6 光翼烏賊 マンモスモスマン 地すべりハネイグアナ 紫帆の羽木船 11 12 聖石鬼ガーゴイルモア(ボス) 13 ハダカホネドリ 低空飛魚カーペットフィッシュ 16 ※-:出現しないマス 飛べない翼(異端の石翼) 聖石鬼ガーゴイルモア 種族 無機 属性 光地 - 行動名 属性 攻種 射程 対象 効果 通常攻撃 - 地光+~ 突撃 1.5 鬼石聖角により属性付与 スキル 巨神鬼岩アンゴルモア 地光+~ 突撃 1.5 敵単 ダメージ スキル 虚神奇塊アルマゲドーン 地+~ 突撃 1.5 敵広 ダメージ ガード その他 鬼石聖角 自身 通常攻撃に地光属性を付与 ※(槍)所持 聖岩神殿の異端者 羽毛舞豚 種族 獣 属性 無 - 行動名 属性 攻種 射程 対象 効果 通常攻撃 - 無 斬撃 1.5 暗闇追加 スキル 羽毛打豚 無 斬撃 1.5 敵単 ダメージ ガード ブロッキング 直接 ダメージ軽減 その他 暗闇抵抗 自身 オープニング時、暗闇抵抗*4を付与 ※舞豚叩き(長剣/暗闇追加Lv12)所持 チキンウィングバッファロー 種族 獣 属性 無 - 行動名 属性 攻種 射程 対象 効果 通常攻撃 - 無 打撃 1.5 スキル チキンウィングデスロック 風闇+~ 打撃 1.5 敵単 ダメージスタン追加 ガード カウンタ 直接 確率で反撃 その他 ※骨付斧ウィングアックス(戦斧)所持 地すべりハネイグアナ 種族 爬虫 属性 地 - 行動名 属性 攻種 射程 対象 効果 通常攻撃 - 地+~ 打撃 1.0 スキル 地滑りロックライダー 地+~ 打撃 1.0 敵貫 ダメージ ガード サイドステップ 魔法 確率で回避 その他 ※スライダーナックル(ナックル/地/地21%)所持 紫帆の羽木船 種族 無機 属性 木 - 行動名 属性 攻種 射程 対象 効果 通常攻撃 - 木+~ 射撃 2.5 スキル カジキヘッドラム 木+~ 射撃 2.5 敵単 ダメージ ガード ディフレクト 直接 確率で回避 その他 ※心撃つバイオレットウッド(霊銃/木/木21%)所持 ハダカホネドリ 種族 不死 属性 無 - 行動名 属性 攻種 射程 対象 効果 通常攻撃 - 無 射撃 2.5 骨折追加 スキル ホネヌキブーメランスロー 無 射撃 2.5 敵円 ダメージ ガード サイドステップ 魔法 確率で回避 その他 骨折抵抗 自身 オープニング時、骨折抵抗*4を付与 ※(弩or銃)所持 光翼烏賊 種族 軟体 属性 光 - 行動名 属性 攻種 射程 対象 効果 通常攻撃 - 光+~ 魔撃 3.0 スキル 烏賊の光翼天揚 風光+~ 魔撃 3.0 敵単 ダメージ ガード サイドステップ 魔法 確率で回避 その他 ※頭骨蛍甲石(水晶/光/光21%)所持 低空飛魚カーペットフィッシュ 種族 魚 属性 無 - 行動名 属性 攻種 射程 対象 効果 通常攻撃 - 無 魔撃 3.0 スキル カーペットロール 無 魔撃 3.0 敵単 ダメージ必ずガードブレイク ガード ディフレクト 直接 確率で回避 その他 ※(水晶orカード)所持 フライトスーツ土偶 種族 精霊 属性 地 - 行動名 属性 攻種 射程 対象 効果 通常攻撃 - 地+~ 魔撃 3.5 スキル ミラーボールドグウビーム 地光星+~ 魔撃 3.5 敵十 ダメージ ガード マジックカウンタ 魔法 確率で反撃 その他 ※観光本『アースウォーカー』(本/地/破撃Lv7)所持 マンモスモスマン 種族 蟲 属性 無 - 行動名 属性 攻種 射程 対象 効果 通常攻撃 - 無 音撃 3.0 混乱追加 スキル 怪音シンバルウィング 無 音撃 3.0 敵貫 ダメージ ガード マジックバリア 魔法 ダメージ軽減 その他 ※マンモスシンバル(楽器/混乱追加Lv18)所持 ※共通所持品 重責の現場監督章(腕章/直接防御Lv4) 聖岩絵具の鳥紋服(着物/光/地光12%) 聖石飾りの鳥羽衣(法衣/光/地光12%) ストーンコサージュ(髪飾り/地/混乱頭痛抵抗*4) ストーンフレーム(眼鏡/地/混乱暗闇抵抗*4) タイプ:ダンジョン 属性:光&地(花に弱く星に強い)(命に弱く雷に強い) マップLv:269(273~) スキップLv:不可 クリアボーナス:SB+15、118000Ash、SP+1、1以上の地属性攻撃値を持つ対象への防御貫通/魔防浸透率が10%上昇 ボスLv:288~ ボス魂片 名称 種族 Lv 属性 ギフト 聖石鬼ガーゴイルモア 無機 92 無 神石の鬼角 神石の鬼角 武器専用 / 異常付与時、15%で攻撃に異常抵抗貫通を付与するさらに、1ターン間、対象の異常抵抗率と回避妨害成功率を10%ダウン / 効果中は再発動なし 重複× 雑感 石柱並ぶ聖岩神殿の侵入者に対処するための進行ルート。 神殿の屋根まで登ってから周囲を見渡すと気づく違和感。 四方の山頂にあった石像のひとつが「聖石鬼ガーゴイルモア」に転がり落とされている。 岩の怪物の処理が終わるとマップ及びミッションクリア。各種クリアボーナスと木船と鉄艦の船墓場のマップを獲得する。 また、鳥人の村『リビングストーン』に立ち寄れるようになる。 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2454.html
雪風は世界の全てを結ぶ魔術を手に入れる。 ゼロは世界の全てを解体する魔術を身につける。 混乱と困惑にかき乱されながら戻ったアルビオン王党派の城ニューカッスルで、ルイズは更に困惑させられる事になった。 子供達に朝食を食べさせ、必ず戻ってくるからと約束をしてテファとモード氏と共に帰ってきた城は、すでにもぬけのカラ。 死体を焼いて空に帰すアルビオン式の葬儀の跡があるだけで、子猫一匹残っていなかった。 後は「用事が有るので出かける」と書かれたタバサの無味乾燥な置手紙ぐらいか。 大砲や弾薬すら、ここには残っていない。 「どうやら、もう出陣しちゃったみたいね」 「おや、この穴はなんだい……?」 「なんでしょうねぇ……」 城の端で人が通れるほどの大穴を見つけたマチルダがティファニアと共に中を覗く。 どうやら城の外に向かっているようだ。 「こっ、これは!!」 「ギーシュ、何か知ってるのか?」 「僕には判る! これを掘ったのは間違いなく我が愛しの「もぐー!」ヴェルダンデー!!」 穴から飛び出してきた使い魔と感動の再会で抱き合うギーシュ。 「おお、そうかい。王党派の軍隊はここから武器を運び出して出陣したんだね。 たくさん働かされたんだね。えっ? 宝石やミミズもたくさん貰ったから良い? キミはとっても優しいねヴェルダンデ! さすが僕の自慢の使い魔だよ! うん、うん。もう昨日の昼にはここを出たのかい。そりゃ大変だ。追いかけなくちゃ!」 見事な異種族間意思疎通でモグラの言葉を通訳。 ルイズ達はテファを連れて王党派生き残りの軍を追う事となる。 穴を抜けた所から、各々がレビテーションの魔法を使って浮遊。 先頭をエア・ダイバーのスピッツ・モードが逞しい背中にルイズとテファを乗せ、ギーシュがモグラを、キュルケがサイトをそれぞれ浮かせて、モード氏の脚に一列で掴まった。 「わはははははははははは! うわははははははははは!」 全裸魔術師(今回はテファのお願いによりパンツのみ着用)の後ろに5人が繋がった姿は明らかに変態。 アルビオンの空を、音速に迫る勢いで笑い声を響かせながら変態飛行するモード氏は実に気持ち良さそうだった。 「うわぁ、変態だぁ!」 「変態が空を飛んでいるぞー!」 「大砲だっ、大砲を用意しろっ! 撃ち落とせっ!」 「待てっ! アレは大使殿の一行ではないのか?」 あやうく撃墜されそうになりながら、野営していたアルビオン王軍に追いつくルイズ達。 最初は馬や牛も居ないので、大砲などを貴族達が引いていたため移動距離がそれほどでも無かったのが幸いした。 『最初は』と言うのは、意外なことにわずか300人にも満たなかった王軍の数が増えていたからだ。 レコン・キスタから離反の意を示して合流してきた貴族と兵隊、その数200ほど。 彼等が連れて来た馬や牛が、夜のうちに馬車や牛車に仕立てられて進軍速度を速めていた。 司令官に話があると告げ、陣幕に案内されるルイズ達。 30人程の貴族が集まった司令部で、彼等は今の状況を聞いた。 新兵器、あるいは伝説の虚無と噂された大勝を聞きつけて集まってきた離反貴族は、最初1000に至るほどだったらしい。 だが、王党派貴族達はそんな秘密兵器など存在しない事、この戦いは死にに行くだけという事を説明した。 尻馬に乗って甘い汁を吸おうとしていただけの貴族はコソコソと帰っていった。 それでも残ったのは、レコン・キスタの横暴に耐えかねていた者達だ。 自分の領地で勝手な振る舞いをされた貴族と、それに仕える忠誠心篤い兵士。 友人や家族に無体を働かれた人々や、畑を焼かれた人々が鍬の代わりに剣をとった民兵。 どんな方法を使ったのか、亜人を兵力として操るレコン・キスタには、それだけに敵も有ったのだ。 そんな決死の覚悟をした人々だから、彼等を説得するのは大変だった。 まずテファの血筋を証明するだけでも一苦労。 エルフが来たと恐れる人々の前でマチルダがサウスゴーダの名前を明かし、 ルイズとキュルケ、ついでにギーシュは家名に賭けて保証する。 結局4年前の事件の顛末を司令官である大臣が知っていたため、なんとか説明出来たのだが、 今度は進軍を止める様に説得するのを聞き入れない。 「生き残るのがそんなに悪い事なんですか? 死んだらもう何も出来ないのに!」 「だが死ぬ事で残るものがあるのですよ。我々が戦い、決して屈しなかったという事実が」 そもそも命よりも名誉を尊ぶような貴族でなければ、こんな絶望的な戦いに参加しなかったはずだ。 「もう決めたのだ。我々は王を弔うために敵と戦って果てるのだと」 「それは王様がもう居ないからだって言ってたじゃないですか! ここにそれを継げるティファニアが居ます。王党派だって王国だって再建できるじゃないですか!」 ティファニアの元勢力を結集して生きるために戦えと主張するサイト達と、 王と皇太子の弔い合戦として最後の一人になるまで戦うと主張する王党派残党。 「一矢報いて死ぬことより、戦って勝つ事を考える方が建設的なんじゃないのかって話じゃない!」 「元より勝ち目など無いのですよ、お嬢さん。 貴女がたはティファニア殿下とサウスゴータ令嬢と共にここを離れてくだされ」 噛み合わない双方の理論はしかし、テファの一言によって動く。 「でも貴族の人って、領民を守るのがお仕事なんですよね?」 「そ、それは……」 「私はレコン・キスタの人がどういう方達なのか知りませんけど、貴方達がここで死んでしまったら、領民の人達はみんな、そのヒドイ人達に支配されてしまうんでしょう? 皆さんが死んでしまったら、誰が悪い人達から皆を守ってくれるんですか?」 素朴すぎるティファニアの問いに、貴族達は誰も答えられなかった。 己の誇り以上に、それは守るべき貴族としての勤め。 恥を知り誇りを知る古い貴族だからこそ、彼等は自分達が生きる必要があるかもしれないと、もう一度自問を始めた。 誰かが戦おうかとこぼす。 死ぬためではなく、生きるための戦いをしようかと。 誰かが故郷の土地の名を口の端に登らせる。 自分の名と同じ地名。豊かで穏やかだった所領の名を、その土地の思い出と共に。 「我等は、己の不甲斐無さゆえに戴くべき王を失った」 大臣の、臨時の司令官の言葉。 「だが、守るべきものはまだ残されている。レコン・キスタなどに蹂躙されるわけにはいかぬ、大切な宝が」 髪も髭も真っ白になった、ルイズの父よりも年上な大臣は拳を握り唇を噛み締める。 「生きる、べきだろうか諸君? 不甲斐無い我々に、まだ出来る事はあるのだろうか諸君? 生き恥を晒し、老醜を晒し、けれど民草のために一身を賭するべきだろうか諸君? 新たな王の下、新たなアルビオンのために、もう一度生きるための戦いを成すべきだろうか?」 彼の悔恨、彼の言葉は本物だ。 己を恥じ、死をも望んだ気持ち、自分自身を情けなく思っている事に嘘偽りは無い。 けれどもう一度立ち上がるべきだと。 忘れかけていた守るべき人々のために、死に向かって突き進むのではなく、 生きて立ち向かうべきなのだと、そう思いなおしかけていた。 じっと待つ大臣。 彼に言葉を返したのは、意外な人物―――マチルダ・オブ・サウスゴータだった。 「死ぬのは簡単なのさ大臣。反対に生きるのはその何倍も難しい。 生きて理不尽な今を変えようって思うならその何十倍もね。 だから生きるんだよ。 アンタ達は、この王国を守るためにあたし達を殺そうとしたんだろう? だったら今度はこの国を守るために命を賭けるべきに決まってるじゃないか。 わたし達が必死に生きてるのに、アンタ達がここでカッコ良く楽に死のうなんて、そんな事許しゃしないからね」 じっと、本物の憎しみを込めて、マチルダの視線が大臣を射抜く。 蓮っ葉な言葉の端々に、彼女が重ねてきた苦労が滲んでいるようだ。 本当なら貴族として、深窓の令嬢として、なに不自由無く暮らしていたはずのマチルダ。 その彼女をティファニア共々殺そうとしてまで存続したアルビオン王国の罪を認めるならば、 今がその罪を贖う時だと大臣は悟る。 命を捨てるのではなく、命を賭ける事によって。 「すまぬ。そして礼を言わせてくれ、マチルダ・オブ・サウスゴータ殿」 深々と頭を下げる大臣。 軍議の場にざわめきが起こり、そして1人の貴族が立ち上がって頭を下げた。 1人、また1人と立ち上がり、それにならう。 それは生きる事を決めた男達の決意表明でもある。 やがて、その場に居た全員が、マチルダに向かって帽子を脱いで頭を下げてみせたのだった。 こうして、サイト達の説得は成功した。 だが、困難は終わったわけでは無い。 事態の変化を告げたのは見回りの兵士。 血相を変えた兵士が告げたのは、周囲に奇妙な濃い霧が発生している事だった。 「……これはいったい?」 陣幕の外に出て、内陸方向から迫る濃霧に首を捻る大臣。 短めに刈ったヒゲを撫でながら、この土地でこんな霧を見るのは始めてだと言う。 ここはアルビオンの外周からそれほど離れていないため、風も強くそうそう濃い霧は発生しないのだと。 「大変ですぞ司令官殿! あの霧の中から、続々とレコン・キスタの兵が!!」 報告に来たのはカラスを使い魔にしている風属性のメイジ。 他にも何名かのメイジが、その怪現象を確認していた。 「何も無い空間に現われた『門』から、溢れるように兵士が吐き出されております」 「あの向こうにちらりと見えた城、あれは間違い無くロンディニウムのハヴィランド宮殿! 我等が王城にして、今はにっくき反乱軍の首魁が占拠する城に間違いありません!!」 「馬鹿な!? ならばやつらは空間を繋げたと言うのか?」 「そんな魔法など聞いた事も無い……」 「いや、先日グレン殿が使われたあの魔術と同じなのではないのか!?」 口々に騒ぐメイジ達の言葉に、サイト達は思い当たる。 空間を繋ぐ門を作り出す魔術は、ワルドと戦った時に現われた女魔術師が使えたはずだ。 「……確か、宣名大系だったっけ?」 「ふむ、宣名魔導師なら龍門を生み出す魔術を使えましょう。 ならばこの霧は、サイト殿に門を破壊されないための防備でしょうな」 こちらの世界の魔術を使って霧を発生させ、それに隠して異世界の魔術を発動させる。 たった一人の悪鬼に対してあまりに慎重な、けれど合理的な方法に感心するモード氏。 サイトは手の平に拳を叩きつけ、苛立ったように叫んだ。 「だったら俺が行ってその龍門とか言うのをブッ壊してきてやる!」 「待ちなさいよサイト。あの、今展開している敵はどれぐらいですか?」 「およそ4万と言った所ですよ大使殿。今の様子だと、その倍程度まで増えるかもしれませんな」 部下に命じて敵軍を調べさせていた将軍の1人が答える。 生きようと、そう決めた矢先にこの敵襲だ。 動揺を見せるような無様はしていないが、内心は穏やかではなかろう。 「聞いたでしょ、サイト。あんた一人で突撃して門までたどり着ける数じゃないし、今更門を壊しても手遅れよ」 「じゃあ、どうすりゃ良いんだよ!」 「落ち着きたまえサイト。なにも君だけで戦っているワケでは無いんだ。 ほら、将軍達もこうして話し合っているんだから……」 「こうなれば後退してもう一度篭城するしかありませんな」 「いや、篭城した所で援軍が無いのだから先延ばしでしか無い。 ならばバラバラに逃げて生き残った者が潜伏し、再起を図るべきだ」 「そんな方法で逃げられる敵兵の数ではありませんぞ! 後ろから撃たれて死ぬのがオチだ!」 「いや、逆に突撃してあの濃霧の中に飛び込めばあるいは……」 軍議はグダグタだった。 そもそも500対4万だか8万という時点でマトモな戦術など始めから無い。 それ以上にレコン・キスタの用兵は無茶苦茶だった。 普通万単位の兵隊を動かすとなれば食料や武器を運ぶだけでも大仕事だし、その動きを察知できる。 ロンディニウムからこの大陸の端まで来るのに日数もかかるはずだ。 そんな常識的な戦いなら、逃げるなりどこかに誘い込むなり考える余裕もあるが、全軍を一気に空間転送などされては太刀打ち出来なくて当然だった。 しかも、転送されたのは兵隊だけに留まらない。 霧を割って現われる戦艦が4隻。 こちらは門からではなく、それぞれが船ごと空間転移してきたと、監視していたメイジが報告している。 そこから飛び立つ竜騎士がそれぞれの船から6騎。合わせて24騎も飛び立っていた。 圧倒的な、絶望的な、戦力差だ。 そんな中で、マチルダは必死に頭を回転させていた。 この中で一番世慣れていて、一番自軍の戦力を理解しているのが自分だという確信があった。 ティファニアを逃がすにしろ戦うにしろ、彼女の保護者である自分が頑張らねばという矜持もある。 それに、彼等に生きろと言ったのだ。こんな所でいきなり死なれては困る。 「一つだけ、策がある。アンタ達、乗るかい?」 そして、彼女はゆっくりと自分の作戦を口に出し―――結局、全員がその策に賭ける事になった。 陣地を構築し隊列を組み始めたレコン・キスタの将兵8万5千。 彼等全員と戦って勝つなどそもそも不可能な事だ。 ならば、その戦列が完成するまえに突撃して中央突破。 敵の城へと突入して転移の門を破壊すれば、手薄な敵本陣に直接戦いを挑める。 戦う相手は前方の数千人だけ……とは言っても、それだけで十分絶望的な戦力差だが。 それでも、攻め込まれる事を想定していないであろうハヴィランド宮殿に飛び込めば、土地勘のある自分たちなら逃げるのも容易。 その前提で、王党派は動いた。 ひたすら迅速に、敵軍が陣形を完成させる前が勝負。 万単位の敵に対してこちらは百単位。速度で立ち向かえばまだ分があると言える。 そうして、圧倒的早さを求める奇妙な縦列楔形突撃陣形が構築された。 先陣を切るのは土メイジ達が生み出す大型のゴーレム。 サイトの発案によって四本足で造られたゴーレムは、巨大なサイのような姿になっている。 中央にはマチルダの生み出した一際大きなゴーレムがそびえ立ち、サウスゴータ太守の血筋の魔力を貴族達に見せ付けていた。 「全軍、突撃イィィィ!!」 「アルビオン万歳!」 「我等の誇りを見せつけよ!」 司令官の号令一下、7体のゴーレムを先頭に500の王党派貴族達が走り出した。 隊列中央には『錬金』で全体を鋼鉄に変えた馬車が走り、その周囲を若く戦闘に馴れた貴族達が乗騎して守る。 中に居るのはティファニアとルイズ、それに二人の護衛としてのキュルケの三人。 始祖のオルゴールを用意し、二人の指には風のルビーと水のルビーが着けられ、呪文を唱える準備は揃っていた。 マチルダは自分の生み出したゴーレムの背に、サイトとギーシュはその後ろで先陣となって馬を駆る。 もちろん、馬になど乗れないサイトはギーシュの後ろでその腰につかまって、だが。 「敵襲っ! 敵襲ぅぅぅ!」 「ばっ、馬鹿な早すぎ――うわぁぁぁぁ!」 数の多さを傘に相手を見くびって油断していたレコン・キスタは混乱した。 逃げ出す事はあっても突撃など、ましてこのような整然とした突撃などして来るとは思ってもいなかったのだ。 おかげで弓矢や銃が放たれるのが一拍遅れた事は王党派にとって僥倖だったと言えよう。 巨大な質量兵器であるゴーレムの突進は深々と敵陣に突き刺さり、同士討ちを恐れた兵士達の飛び道具を牽制できたのだから。 だが、命中率の高い魔法による攻撃までは手控えてくれない。 質量を伴った土系統の、あるいは爆発による破壊をもたらす火系統の魔法を何発も打ち込まれ、一体また一体とゴーレムが破壊されていった。 「あぶねぇ!!」 ついに中央を疾駆していたマチルダのゴーレムも破壊される。 砕けた土くれから投げ出された彼女を抱きとめたのは、ギーシュの後ろから飛び上がったサイトだ。 「ギーシュ、この人をルイズ達の所へ!」 「ああ、任せたまえ!」 そのままギーシュのワルキューレにマチルダをあずけて、サイトは駆け出した。 「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」 デルフリンガーを振りかざしてゴーレムだった土塊を跳び越し、視界を埋め尽くす兵士へと殴りこむ。 ガンダールヴのルーンは輝きを放ち、サイトの中には凶暴で力強い波動が溢れ始めていた。 「ふははははははははははははは! ふあっはあはははははははははははははは!」 同時に突撃するのは全裸飛行奇スピッツ・モード。 パンツすら脱いだ完全体の錬金大系魔導師が、上空からトンボ返りで敵軍の中に突っ込んだ。 触れた対象を切断するように設定された禿頭の魔導師の体表面が、完全武装の兵士達を鎧ごと切断する。 次々と敵を切り裂いて、再び上空へと飛び上がった。 あまりの攻撃力と変態に足並みを乱すレコン・キスタ兵士達。 その中に飛び込んだサイトが、数人の兵士をまとめて蹴り飛ばす。 「逃げるヤツは追わねぇ! 死にたいヤツだけかかってきやがれ!」 「おうおうおう、遠からん者は音に聞けぇ! 近くばよって目にも見ろい! 俺の相棒はガンダールヴ! 伝説をその身で知りたい命知らずには冥土の土産をくれてやるぜぃ!!」 嵐のような剣だった。 周囲を押し包むように向かっていった兵士が、まるで人形のように弾き飛ばされる。 熟練の戦士を当たるを幸いとなぎ倒し、その上で馬で駆ける仲間と同じ速度で走るのだ。 「ガンダールヴ!?」「伝説の?」「始祖の左手!」「無敵の盾?」 恐怖が流言となって伝播する。 人が多ければ多いほど、生み出された恐れは大きく増幅されるのは必定。 ましてやそこが戦場ならば余計に。 天には火竜以上のスピードで空飛ぶ変態。 地には馬よりも早い伝説の使い魔。 怯える平民を指揮する貴族達が馬上から魔法を放つが、殆どをデルフリンガーによって吸い込まれた。 何発かは死角から打ち込む事に成功するが、それは王党派貴族のスペルによって阻まれてサイトにまで届かない。 サイトとモード。 たった二人で百以上の兵士を倒す戦士に、恐怖にかられたレコン・キスタと、先陣の剣を援護する王党派、両軍の戦力が集中し始めた。 「ふははははははははは! 惜しいっ! 実に惜しいっ! お互いの立場さえ違わねば、空を飛ぶ者同士が戦う必要など無かったでしょうに!!」 集中しはじめる竜騎士の攻撃をたくみに回避し、手痛い反撃を加えるモード。 嘆きつつも、その羽の切れ味は変わらない。 天下無双を謳われたアルビオンの竜騎士が、翼を切り裂かれ胴を薙がれて次々と地に落ちてゆく。 「な、なんだよコイツは!?」 「ゴーレムだなぁ。こりゃあ剣士にゃあ荷が重いぜ相棒」 一方、サイトの前に立ち塞がったのは巨大な土人形。 その手には別のメイジが錬金したのか、巨大なハンマーが握られていた。 振り下ろされる鉄槌。 サイトは素早い動きでそれをかわすが、味方の1人が馬もろとも叩き潰される。 怒りをバネに反撃するサイトだったが、剣で殴ったぐらいでダメージを与えられるような敵ではない。 切り裂かれたはずのゴーレムの脚は、数瞬の後には元通りになっている。 「くそっ、どうすりゃ……」 焦るサイト。 その目の前で、ゴーレムが何かに躓いたようにバランスを崩した。 「もぐー!」 「ナイスだよボクの可愛いヴェルダンデ!」 歓声をあげるギーシュ。 それは敵の足元に穴を掘ったジャイアントモールの手柄だった。 瞬間、ゴーレムの肩にメイジを見つけたサイトの腕が動く。 「デルフリンガーミサイル・改っ!!」 「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! またかよ相棒うぅぅぅぅぅ!?」 柄の方から一直線に飛んだデルフリンガーがゴーレム使いの頭と激突。 そのまま落下するデルフとメイジ。土に戻って崩れるゴーレム。 その巨大な手が落とした巨大なハンマーを、サイトはその手に掴んだ。 ガンダールヴはあらゆる武器を使いこなす。 本来なら、平和な日本で暮らしていたサイトには大剣のデルフでさえ手に余る重さのはずだ。 それを振れるのなら、より大きなものでも可能ではないのか? 可能だ、という自信がサイトにはあった。 自分の背後にはルイズとテファという二人の虚無の担い手。 その彼女達を守るためなら、多少の無茶は道理を蹴り飛ばしてども通す。 それが虚無の使い魔の使命なのだから。 「う…………おおおおおおおおおおおおおお―――」 歌うように唱和する、二人分の『虚無』のルーンがサイトに普段以上の力を与えた。 ゴーレムサイズの、長さ20メイル、重さは数トンに及ぶであろう鉄槌が持ち上がる。 そのまま竜巻のように高速回転するサイトの身体。 巻き込まれた兵士が次々と弾き飛ばされる。 「ばっ、ばけものだあぁぁぁ!」 「伝説だ! ガンダールヴだ! 勝てるワケ無いっ!」 その光景は、士気崩壊しかかっていたレコン・キスタ兵士達を恐慌に陥れるのに十分なものだ。 サイト達を叩くべく新たに生み出されていたゴーレムが2体、あまりの光景に竦んだ瞬間。 「―――おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおりゃあぁぁぁ!!」 2体のゴーレムの真ん中へ向けて投げられるハンマー。 回転しながら二つの岩の胴体を砕いたハンマーは、勢い余ってそのまま数十メイルに渡って軍馬も兵士も関係無しに牽き潰す。 「ギイィィィシュ!」 「任せろサイト!」 地面に突き刺さっていたデルフリンガーを引き抜きながら叫ぶサイトに以心伝心でギーシュが答えた。 ありったけの精神力を込めての『錬金』が、地面から鋼鉄の塊を生み出してゆく。 それは長大な槍。 長さ30メイルに及ぼうかという、美しい薔薇の装飾がされた銀色に輝くランスだった。 その柄に、サイトの五指がミシミシと音を立てて食い込む。 左手に剣、右手に槍。 まさに伝説のガンダールヴの姿そのままである。 「貫けえぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」 更に強く強く強く光り輝く左手のルーン。 渾身の力で放たれた巨大な槍は一直線に敵陣を突き破り、霧を引き裂いて『門』の側まで届く。 「進めっ! ガンダールヴ殿に遅れるなあぁぁ!」 喉も裂けよとばかりに大臣が叫んだ。 雪崩もかくやという勢いで前進、否、突進する王党派の貴族達。 馬上の者は鞭を入れ、牛車の者は暴走覚悟で、徒歩の貴族は供にもフライの魔法をかけて。 今この瞬間こそ正念場。 精神力も尽きよとばかりに乱れ飛ぶ炎と風と氷と水と土と雷。 8万5千の大軍を中央から切り裂いて、一直線に『門』へと向けてなだれ込む。 そんな彼等に向かって、もはや敵も味方も関係ないとばかりに砲弾がふりそそいだ。 4隻の軍艦が、自軍を巻き込んでの砲撃を開始したのだ。 次々に吹き飛ばされ、肉片となる地上の兵士達。 敵味方の区別無く風のメイジは風の障壁を張り、水のメイジは水の膜を作り出すが、それとて儚い抵抗でしかない。 「馬鹿な!? 止めろ、止め―――」 レコン・キスタの指揮官がまた1人砲弾の直撃を受けて消し飛んだ。 その様子を、怒りをもって見つめる少女が二人。 決して平坦では無い大地を、鞭を巧みに操って馬車を疾駆させるキュルケに守られた少女二人。 鋼鉄の馬車の車中、ルイズとティファニアは身を乗り出して呪文を唱えていた。 「「ジェラ・イサ・ウンジュー・ハガル・ベオークン・イル……!」」 唱和するそれは誰も聞いた事の無い、けれど本能的な敬意と畏怖を呼び起こさせる呪文。 「「エクスプロージョン!!」」 放たれる魔力と生み出される光。 右から迫っていた二隻と左から迫っていた二隻を、ルイズとテファがそれぞれ生み出した光が飲み込んだ。 それは抵抗不可能な破壊。純粋にして絶対の爆発。 瞬時にして風石と砲弾と火薬、そして帆布を失った軍艦は、成す術も無く地上に不時着する。 「な、なんだあの光は!」 「まるで太陽が3つになったみてぇな……」 怯えるレコン・キスタ将兵の上に降ってくるのは、アルビオン王党派の歓声だ。 「虚無の魔法だ!」 「伝説の復活だ!」 「女王陛下万歳! アルビオン王家万歳!」 叫びと共に、王党派残存兵士達は『門』へと駆け込んだ。 24騎の竜騎士を全滅させたモードもまた、門の中へと滑り込む。 それを確認して、サイトは両手から武器を手放した。 瞬間、魔炎となって燃え尽きる空間転移の『門』。 残されたレコン・キスタ将兵は千人近い兵士と4隻の軍艦、それに退路まで失ったまま、 ただ呆然とするしか無く、敵軍の消えた戦場に立ち尽くしていた。 満身創痍。 けれど奇跡的に致命傷は無くハヴィランド宮殿へとたどり着いたサイト達。 王軍もボロボロではあったが、400人近くが生きたまま門をくぐる事に成功していた。 しかし戦いはそこで終わるわけではない。 襲い掛かってきたのは本拠地の防御として残されていた死者の軍団だった。 宮殿前広場に布陣した、服装も年齢性別もバラバラな魔導師達がサイトを襲う。 雷撃、火炎、爆発、熱砂、エネルギー弾。 飛んで来る魔法をデルフリンガーで吸収し、疾風の速さで断ち切るが、敵は死んでもまた甦る。 「ちくしょう、キリがねぇ」 「娘っ子、嬢ちゃん、解呪だ! 虚無の魔法を使え!」 「はいっ、デルフさん!」 「わ、わかったわ!」 馬車の中でオルゴールを開き、同時にルーンを唱え始める二人。 その間にも敵の魔導師は殺到してくる。 吸い込む事が出来ない操作された飛来する剣を受け、疾風の速さで火炎を操る魔導師を斬る。 数人のメイジが協力して敵を倒した血路を走り、また1人刻印魔導師を殴り倒す。 馬車の側に空間転移して現われた魔導師に落ちていたナイフを拾って投げつけ、怯んだ瞬間に駆け戻り、間合いを詰めて切り掛かる。 本当にキリが無い。 相手の数は多く、不死身で、しかも一人一人が強力だ。 それでも、サイトはルイズ達の詠唱が終わるまで止まるつもりなど無かった。 「なんとか、もたせられる……か?」 「いいや相棒。そう簡単にはいかねぇみたいだぜ?」 空間がゆらぎ、大気の中から染み出すように新たな敵が現れる。 立ち塞がるのは半透明の人間に似た50メイルを超える巨体。 因果大系の高位魔導師フィリップ・エリゴルが大気を固めて作り出した因果巨兵は、メイジ達の魔法をやすやすと弾き返して迫って来た。 「まだだっ! 僕はまだやれるっ!!」 「そうよっ! ここまで来て負けるなんて、ツェルプストーの家名が泣くわよ!」 「ああまったくだね! 死人になんか殺されてたまるもんか!」 ギーシュが、キュルケが、マチルダが、最後の一滴まで精神力を振り絞って魔法を放つ。 それでも、半透明の巨兵を倒す事はできなかった。 「あっはっはっはっ! 無駄さ無駄さ! 僕の百手巨人四十号に、そんな豆鉄砲が通用するもんか!」 無暗と快活に笑う『百手巨人』フィリップを前に、ギリリと奥歯を鳴らすサイト。 相手が大系魔導師ならデルフを手放せばその魔法効果を消滅させられる。 けれど無数の魔弾だけでなく、操作された岩や武器が飛び交うこの場所でガンダールヴの力を消すのは危険すぎた。 『大気泳者』スピッツ・モードは先程から空を飛ぶ魔導師との戦いに集中していて援護は望めない。 ギーシュ達のみならず王党派のメイジ達も、もうほとんどが精神力を枯渇させていた。 ルイズ達が呪文を完成させるのにもまだ少し時間がかかるだろう。 「やっぱ、俺が守らなきゃならないって事か……」 「ああ、そうだぜ相棒。 虚無の担い手を守る事、それだけがガンダールヴに与えられた仕事だ。 お前さんも俺と同じなのさ。ただ一つの目的のために鍛えられた、一振りの剣なのさ」 「はっ、そりゃ簡単でいいな。ならあのヤロウはこの手で―――」 凶暴な野獣の笑みでサイトは笑う。 ルイズ達の詠唱を背に、巨大な敵を前に、サイトは不退転の決意で立ち塞がった。 湧き上がる戦意。燃え上がる闘志。 「―――ブッ倒す!」 純粋な、氷のような殺意。 切り掛かる。弾き返される。 殺意を高める。 打ち掛かる。反撃を辛くも回避する。更に突撃。 どこまでも殺意をたかめる。 「はーっはっ! 無駄だよ小僧! こんな貧相な魔法世界の、その魔法すら使えないようなヤツが僕に刃向かう事すら愚かしい。 さっさと諦めてゴミはゴミらしく踏み潰されるのがいいさ!」 「言ってろ馬鹿」 回避。攻撃。回避。攻撃。回避。攻撃。攻撃。回避。攻撃。攻撃。攻撃。回避攻撃撃撃撃撃!! サイトの腕が、脚が、人体の限界を軽々と超えて奔る。 一瞬に一撃の打ち込みが二度の打ち込みになり、三連撃に四連打に五連斬に。 「無駄だ! 無駄だと言っているのが――」 止まらない。止められない。 他の魔導師から放たれる妨害の魔術を、軽々とデルフリンガーによって吸収しながら、サイトは雷光のように剣を揮い続ける。 フィリップは気が付いているだろうか。嘲笑していたつもりの自分の声に、あきらかな怯えが混じっている事に。 倒せ殺せ守れ殺せ倒せ守れ守れ倒せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ――― 震える魂のその果てに、サイトの心はある一点を突破した。 あまりに激しく震えすぎた心はその震動を停止して、ガンダールヴの力が一瞬だけ停止した。 替わりに働くのは、サイトが生まれ持った世界の法則。 すなわち―――地獄の『悪鬼』に宿る魔法破壊の力である。 「な―――んだとぉ!?」 瞬間、あらゆる魔法が燃え上がった。 「ひいぃぃぃぃぃ!」 「悪鬼……沈黙する悪鬼だあぁぁぁ!?」 犯罪者の心の中に刻まれていた恐怖が掘り起こされる。 明滅するガンダールヴのルーン。 断続的に破壊され、間炎を吹き上げる魔法たちの中を、サイトは神速度で走り、敵を切り裂く。 不死であるはずの魔導師達は逃げ惑い、中には空間転移に失敗して自滅する者までいる。 「ひ……ひ……何だ! 何なんだお前は!? 『鬼火』のような身のこなし! 『沈黙』のような魔法消去! 寄るなっ! 僕に近寄るな! 忌まわしい殺し屋! スローターデーモン!!」 腰を抜かしてみっともなく這いつくばったフィリップが尻で地面を擦って後ずさる。 百手巨人四十号など、とうの昔に燃え尽きていた。 「違うな。俺は、そんな悪鬼だとか戦鬼だとか呼ばれるようなヤツじゃあない」 一歩、また一歩とフィリップに近づきながら、サイトは静かに言う。 「何だと? ならばお前は何者だと言うんだ!?」 「俺は―――虚無<ゼロ>の使い魔だ」 それがサイトの得た答え。 自分が何者であるかをしっかりと胸に刻んだ少年の歩みは、揺ぎ無く力強い。 目に涙を浮かべ、小刻みに震えて、誇りも力も無くして怯える因果魔導師。 その横をサイトはただ黙って通り過ぎて行った。 「えっ?」 呆然として振り返るフィリップ・エリゴル。 次の瞬間、彼は怒りに顔を歪める。 あの小僧は自分を無視したのだ。因果世界において、誰もが優秀と認め褒めそ讃えた自分を。 許せない。許せない。許せないから、その背中を魔法で狙う。 悪鬼といえど、視界の外から放たれた魔法までは消去できないのだ。 醜悪な笑みを浮かべてサイトの背中へ向かって魔法を放とうとした瞬間。 「「ディスペル・マジック!」」 完成した虚無の魔法が、フィリップを含む宮殿前広場に居た全ての魔導師を死者に戻していた。 かくして、再びハヴィランド宮殿に王党派の旗が掲げられる事になった。 貴族派首脳陣はその殆どが捕縛され、数日の内に処断される事になる。 本来なら絞首台は免れない所だが、新たに戴冠する女王の温情により、大半は財産没収の上で追放となる予定だ。 ただ1人。 会議室で、何者かに首を切断された姿で発見されたレコン・キスタ司令官、オリヴァー・クロムウェルを除いては。 次へ 前に戻る 目次に戻る
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―――薬草師のレオンはサビエラ村で随一の切れ者と尊敬されている青年である。 短い間だがガリアの首都リュティスまで行って薬草学の勉強もした秀才だし、貴族に水魔法を使ってもらえるだけの金が無い人々を癒すという仕事柄、貴族や魔法に対する尊敬と恐れも薄い。 だが、初めて見せられた攻撃魔術に、そんな余裕は吹っ飛んでいた。 吸血鬼騒ぎに怯える村の青年団を引き連れて、一番怪しい占い師の老婆マゼンダと、その息子のアレキサンドルを吊し上げにしようとしていた時、邪魔をしてきた男、王国から派遣されてきた花壇騎士だという子供連れのメイジに、偉そうな事を言うんなら魔法を見せてみろと迫ったのはレオン自身だ。 戦場どころかメイジ同士の決闘なども当然見たことの無いレオンは、どうせ貴族の魔法などと言っても猟師の弓か城の兵士が持っていた銃程度なのだろうとタカをくくっていた。 それが、完全に覆される。 タバサの杖を持ち、身振りを加えてもっともらしい呪文を唱えるグレン・アザレイ。 当然だが、そんな事で魔法は発動しない。 グレンは、この世界に来てから常に身につけている道具を取り出したのだ。 それは、空気を概念魔術で圧縮し固めた3ミリほどの粒。 悪鬼に観測されない透明な粒を、グレンは百個ほどマントの内側に入れて常備してある。 その粒を7つ、杖を突き出す動作で近くの木へ向けて飛ばした。 亜音速で突き刺さった空気の弾丸はしかし、3ミリの穴を開けるだけだが……圧縮の魔術を解除した途端、膨張した空気によって内側から幹を破裂させる。 村人達には、グレンが杖を向けた途端に樹木が粉々に爆発したようにしか見えない。 威勢の良かったレオンは、腰をぬかして地面にヘタリ込んでいた。 ……だが、もしこの魔術を『地球』で魔術師と戦う専任係官達が見ていたのなら、村人以上に怖気で背筋を凍らせていただろう。 視認できない透明な弾丸は、視覚による魔術消去を許さない。 弾丸の速度を亜音速に抑えたのも、音速を突破した時の音で聴覚により消去されるのを防ぐため。 そして、悪鬼の肌に触れた瞬間に触覚での消去が発動し、圧縮空気の爆発によってダメージを負う。 いや、わざわざ飛ばさなくても、空気中に浮かばせるか地面に転がしておくだけで触れた悪鬼を吹き飛ばす地雷になるだろう。 『鬼火』と呼ばれる達人剣士の専任係官ならば、飛んで来る飛翔音を聞き分けて避ける事もできようが、これは完全に対『悪鬼』用に考えて織り上げられた魔術に違いなかった。 死に瀕して「より強い魔法、より高度な魔法が勝負を決する決まりなど無い」と敗北の理由を語られた男は、それを糧として新たな戦法を生み出したのだ。 地球人が、そしてサイトが知れば戦慄するだろう。 グレンはまだ、地球人と戦う事を考えの外には捨てていないと。 そなん事は知らないレオンや村人達にとっても、その爆発だけで花壇騎士の実力を信じさせるには十分だったようだ。 タバサとグレンはそのまま占い師の老婆に会うため、息子のアレキサンドルに案内させて小屋へと入ってゆく。 部屋には病気で外に出られないという老婆が一人。 流れ者で、占い師という怪しげな商売で、外出も出来ないとなれば吸血鬼と疑われても仕方あるまい。 そんな、ベッドの上から起き上がれないマゼンダ婆さんを前にグレンは一言。 「ご老人、もう具合は良いはずだ」 そう告げた。 相似魔術の使い手であるグレンが『神に近き者』と呼ばれる理由はいくつも有るが、その一つは相似大系の奥儀である『原型の化身』である。 相似世界において人はすべて神の似姿とされる。ゆえに、人と人は同じ原型を持ち、お互いに『似て』いる。 『原型の化身』はその繋がりを利用し、人間同士を強制的に似せるのだ。 極めれば、人を生命を操る神の如き力。 事実それを極めたグレンは、脳さえ残って活動していれば、悪鬼の魔法消去下でなければ周囲の人間に『似せ』る事でどんな傷でも回復させる。 たとえ腕がもげ、脚が取れ、胴体を二つに割られていても、一瞬で健康体になれるのである。 同じ原理で、健康な人間と相似させる事で病人を一瞬で回復させる事すら可能だった。 「おおう、身体が軽いですじゃ!?」 なんかババアが元気になった。 「歯も生えてきたですじゃ!」 おまけに一本も無かった歯が全部生え揃っていた。 「お肌や髪もツヤツヤに!!」 見た感じ30代前半ぐらいに若返っていた。まだまだイけるぜゴーゴーな感じである。 グレンがやりすぎたらしい。 すっかり元気になった、若い姿はなかなか美人だった元老婆はシーツを豊満な身体に巻きつけて外に飛び出す。 ひゃっほーいとか言いながら、呆然とする村人を尻目に広場で跳び回ってた。 「マゼンダ」 騎士様の連れてきた子供が女を指差して言った一言に、村人のアゴがカコンと落ちる。 「魔法で元気になった。お日様の下に出たから吸血鬼じゃない」 子供ことタバサがボソっと言う言葉に、釈然としないながらも村人達は肯いていた。 魔法って凄い、と感心半分恐れ半分の肯きである。 自分が参照元にされてあの人が15歳の姿とかにならなくて良かったと、 キュルケクラスの巨乳を揺らせて踊る元ババァを見ながらタバサは考えていた。 ―――トリステイン王女アンリエッタはルイズの幼馴染である。 幼い頃の遊び友達であり、大人の汚い計算と関係なく自分の友であってくれるルイズ。 「とあーっ! 円月剣!!」 だが、王女であるからには公平を旨とせねばならない。 「うりゃー、ジャンプ切り!」 だから、王女として、目の前で親友の使い魔が繰り広げる『剣舞』と称する何かを、褒める事など出来なかった。 「必・殺! イナズマ雷鳴サンダー!!」 最初はいっぱいいっぱいだったサイトだが、何だか段々気持ちよくなってきたようだ。 野外に特設された使い魔品評会の会場に、予想に反して嘲笑の声は無い。 有るのは痛い沈黙だけだ。 ガンダールヴの能力まで発揮して、凄い速さでデルフリンガーをギザギサに振るサイトの努力は、しかし会場の誰にも伝わっていなかった。 もちろん、彼のご主人様にも。 「帰るわよ、犬」 「何でだよ? これから超必殺のエターナルフォースブリザードが炸裂するんだぜ!」 「いいから帰る!」 「いた、いたたたた! 耳、耳がとれるっ!」 耳を引っ張られて舞台の袖に引っ込まされるサイト。 彼は勇敢で優しい少年だが、残念な事にちょっとバカなのだった。 品評会の優勝は、順当にキュルケのサラマンダーに決定する。 サイトの芸を評価したのは、後で「サイトさんの剣舞、素敵でした」と言ってきたシエスタだけ。 恋は盲目なのだ。 ―――キュルケはゲルマニア生まれの恋に生きる女である。 屋外での晩餐会が終わり、寮の住人が部屋で静かに過ごす頃、キュルケはルイズの部屋を訪ねようとしていた。 別にルイズに用があったワケでは無い。 品評会優勝を話のネタに、ダーリンことサイトにかまってもらおうという魂胆だ。 だが、自室のドアを開けたその場所に、先客が居た。 ギーシュ・ド・グラモンが、まるで盗賊のように鍵穴を覗いているのである。 「アンタ、何してるのよ? ペッタンコのルイズの着替えでも覗いてるの?」 「しっ! 今この部屋に姫殿下がいらっしゃっているのだ」 「アンリエッタ王女が? 何で?」 「よく判らないが、ルイズは恐れ多くも姫殿下の幼馴染だったから尋ねて来られたらしいね。 そして何か困難な任務をルイズとあのサイトに御下命なされるとか……って、キュルケ、キミいつの間にボクの背後を!?」 「お約束のリアクションはどうでも良いから、ちゃんと聞き耳を続けなさいよ」 「あ、うん。そりゃ続けるがね……」 アレ? ボク今なんで命令されてるの? 的な不条理を感じつつ、ギーシュは鍵穴に目を押し付ける。 見れば許しがたい事に、王女が平民にお手を許されている場面。 「おのれサイトめ平民のクセに~ッ」 だが、真に許しがたいのはその先であった。 アンリエッタの手を取ったサイトは、絶妙のタイミングで姫殿下の腰を引き寄せ、その高貴な唇に下賎な唇を重ねたのだ。 「キスしやがったー!!」 「何ですって!?」 人生二度目のはずなのに、やけに手馴れたキスであった。 舌とか入ってたかもしれない。 気絶するアンリエッタにオロオロするサイトに、必殺のルイズ崩拳がズビシと大炸裂。 「ごぼはぁ!?」 「このエロ犬ーっっ!! 死になさいっ! 死んでアタシと殿下に侘びなさいよっ!!」 「ぐげぼぉ!!」 続けて放つはドロップキック・ゼロ。 危険な角度でサイトの顔面に食い込むルイズの両足。 「その通りだ! トリステインの可憐な花、我等の至宝を汚した罪、死んで償いたまえ!」 「ぶびゃらぁ!?」 更に扉が勢い良く開いたかと思うと、元帥家秘伝グラモン・ブリーカーが追い討ちを掛けた。 ボロボロになりつつも立ち上がったサイトがフラフラと倒れ込んだ先が偶然にもキュルケの胸の谷間だったのは、幸福なのか不幸なのか。 ぽよんと、サイトの顔を優しく包む弾力。 「うほっ♪」 「いやん、ダーリン♪」 ルイズの中で何かが切れる音がした。 こう、ブチブチっと。 ―――惨酷シーンにつき、しばらくお待ち下さい――― ルイズとギーシュによる折檻が続くこと約5分。 あまりの凄惨なリンチに、アンリエッタ女王は笑顔(営業用)を引き攣らせながらルイズに指輪を託して。 「それでは、お友達と一緒にアルビオンへ向かって下さいね」 と言って、そそくさと血の処刑場から退散していった。 後にはルイズと、いつの間にやら密命を託された形になったギーシュとキュルケ。 その足元に、ボロ雑巾と言うかグロ雑巾になったサイトが転がっていた。 ―――ミス・ロングビルはアルビオン出身の元貴族である。 「困難な任務」を任されてアルビオンに向かう事になったキュルケに脅されて、道案内として同行する事になったのは、不幸な必然だろう。 何日もあのシリを撫でられなくなると、オスマン氏は大変残念がりながら見送ってくれた。 多分、鞍の上でプリプリ揺れるシリを視姦するのが目的で。 そんなワケで、ルイズ達は馬上の人となる。 旅の仲間はルイズと使い魔サイト、それにギーシュとキュルケとミス・ロングビル。 更に、魔法騎士隊の隊長でルイズの婚約者であるワルド子爵がアンリエッタより同行せよとの指令を受けて参加した。合計6人の大所帯である。 後ついでに地下を掘り進むギーシュの使い魔の巨大モグラも来ているはず。 一行は馬で2日、馬車なら4日以上かかる道程を1日で走破するため、途中で二度馬を乗り換えて全力で駆けさせた。 馬は生き物である以上、疲労するから最高速度で走れるのは一瞬だ。 その速度を維持するため、発達した交通の要所には馬を用意した『駅』が有り、そこで元気な馬に乗り継いで行くシステムが有るのだ。 だが、その間もワルドとルイズを乗せたグリフォンは休憩もとらずに走り続けた。 それは幻獣のとんでもない体力と、騎手の技量の賜物に他ならない。 そうして、一日中馬上で揺すられてクタクタになったサイト達は目的地・ラ・ロシェールに到着。 キュルケもギーシュも流石にぐったりしている。 元気なのはワルドと、彼に運ばれていたルイズ。それに何気に平然としているミス・ロングビルだけだ。 「中々乗馬に通じておられるようですな、レディ」 「色々あって旅なれておりますので。お恥ずかしいですわ」 「いや、女性でなければ騎士隊にスカウトしたいぐらいですよ」 「まぁ、お上手ですわ、子爵さまったら」 ハッハッハホッホッホと笑い合う、実はけっこう負けず嫌いな大人二人。 双方目が笑ってないような気がして、背筋が震えるサイトであった。 ―――エルザは狡猾な吸血鬼である。 5歳程度にしか見えない外見の少女だが、その実30年以上もの間人間の生き血を吸って行き続けた妖魔なのだ。 村長の孫娘のような立場を手に入れたエルザは、その立場を隠れ蓑にして人の生き血を啜っていた。 自分より後から村にやってきた占い師の親子を疑わせるように仕向ける策まで使って。 村人は誰一人彼女を疑っていない。 吸血鬼退治に派遣されたメイジも、その外見と知略に簡単に騙されて罠にはまる。 そうして今夜も、彼女は愚かにも杖を手放したメイジ、グレン・アザレイを誘い出し、捕らえる事に成功したのだ。 そのはずだった。 「なんで!? なんでつかまらないのよ!?」 先住の魔法によって伸びた枝が、杖を持たない間抜けなメイジを捕まえたはず。 なのに、枝はグレンの周囲を包むだけで、その身体に届かない。 無数の空気の粒を固めて作った見えない壁が、グレンの周囲を守っているゆえに。 「これが『先住』か。精霊大系……いや、完全大系に似た魔術だな」 「くそおっ! 枯れし葉は契約に基づき水に替わる力を得て刃とならん」 鉄のように硬くなって飛ぶ落ち葉。 それも、空気の壁に阻まれて尽く砕けて落ちる。 「ウソっ―――あいつをとめてなさい、アレキサンドル!」 恐怖に彩られる幼い顔。 エルザは勝てない事を悟り、グレンに背を向けて逃げ出した。 彼女が逃げ出すのを助けるのは占い師の息子アレキサンドル。 魔術師が使い魔を持つように吸血鬼が血を吸った者を一人だけ操るという、屍食鬼、グールである。 屍食鬼はグレンに飛び掛り、エルザが逃げるための捨石になった。 そして捨石らしく、一瞬でバラバラにされる。 外見からは想像もつかない運動能力で、そのわずかな時間で走って逃げるエルザ。 だが逃げ出した方向には、タバサに連れられた村人達が集まっていた。 「除けえぇぇぇぇ!!」 愛らしい顔のままに、子供に発する事が出来るとは思えない憎悪にあふれた絶叫がエルザの喉から吐き出される。 トロル鬼やオーク鬼には劣るが、吸血鬼の腕力は普通の人間を遥かに凌駕するのだ。 合わせて魔法も使えば、平民でしかない村人の集団などグレンが追いつく前に蹴散らせる。 そう思って、魔法を唱えようとした瞬間、エルザの胸に氷の矢が突き刺さった。 タバサのウィンディ・アイシクル。 放たれた無数の矢は、胸だけではなく全身をめった刺しにする。 「うそ……!?」 呆然と見開かれる少女の目。 凄惨な光景に、エルザを吸血鬼と知らず孫のようにかわいがっていた村長をはじめとする、幾人もの村人達が目を背けた。 「二人とも、メイジだなんて……ズルっこ、だわ……」 擦れたエルザの声が聞こえたのか聞こえなかったのか。 タバサはドットスペル『土』の『錬金』でエルザの周囲の土を油に変成。 同じくドットスペル『火』の『発火』を唱える。 言い訳も返答もせず、雪風の魔女は無慈悲に吸血鬼を燃やし尽くした。 ―――土くれのフーケは元盗賊である。 王女殿下の密命を受けたルイズ一行が宿泊する、ラ・ロシェールで一番高級な宿『女神の杵』亭への襲撃に一番に気がついたのも、職業柄研ぎ澄まされた感覚のおかげだったに違いない。 とは言っても気がついた時には宿の入り口は包囲されて矢を射掛けられていたから、あまり威張れる事でもないだろうが。 二階に居たサイトとルイズが物音に気付いて下りてきた頃には、キュルケとギーシュ、ミス・ロングビルとワルドが、突入を目論む傭兵相手に、つくりつけの机を盾として防衛線を張っている所だった。 他の客もメイジなのだろうが、机の下で震えているだけで役に立ちそうには無い。 「トリステイン貴族も不甲斐無いですわね」 「そりゃ同感だけど、相手は貴族と戦うのにも慣れてるみたいよ。どうするつもり?」 アルビオン出身のミス・ロングビルとゲルマニア貴族のキュルケがぼやいた。 ルイズ達トリステイン貴族の面々には反論の言葉も無く、憮然とその侮辱を受け入れる。 それはともかく、傭兵達は魔法の届かない距離から矢を放ち、こちらの消耗を待っていた。 だからといって反撃しなければ、屈強な重装甲の前衛が突撃してくるだろう。 呪文を唱える間も無いほど接近されれば、メイジに勝ち目は無い。 だからこそ、多くのメイジは従者や使い魔に詠唱中の自分を守らせるために連れ歩くのだから。 「しくじったわ。やっぱフレイムを連れて来るんだったわね……」 「こうなったら、サイトとギーシュのゴーレムを先頭に全員で突撃して撃てるだけの魔法を……」 「ちょ、おま、ルイズ! 俺を殺す気か? ついさっき、任務が終わったら俺が地球に帰る方法を探してやるとか言ったクセに」 「仕方ないでしょう! このままじゃどの道全滅だし、アンタは私の使い魔なんだから」 「いいかね、諸君」 ギャンギャン騒ぐ子供達をたしなめるように、ワルドの低い声が響く。 「このような任務は通常、半数が目的地に到達すれば成功となる」 「……囮作戦ってコトね?」 「そうですね。仕方ありませんわ」 ワケが判らないと言うなギーシュサイトルイズのお子様三人を尻目に、キュルケとミス・ロングビルはワルドの策を理解して頷いた。 ここで数人が大暴れして、その隙にルイズ達がアルビオンへの船に乗り込むのだ。 「ここは私とミス・ロングビルの二人で十分よ。あんたたちは行きなさい」 「いや、しかしレディだけを置いて行くなどとは、トリステイン貴族として許される事では無くてだね」 「アンタのゴーレムなら矢避けぐらいにはなるでしょう。いいから行きなさい!」 「……判った。ヴェルダンデ、後は任せたよ!!」 自分も残ろうとしたギーシュだったが、キュルケに諭されてルイズ達と共に裏口に走る。 飛び出した四人に何本もの矢が放たれるが、キュルケの予想通りギーシュが生み出したゴーレムが身を挺して矢を受け止めてくれる。 そのまま桟橋へ向けて四人は走り去った。 残されたのは美女二人。 机の影で、蓮っ葉な口調に戻ったミス・ロングビルが髪を下ろしながら聞く。 「良かったのかい? あのボウヤ二人でも残ってりゃ、多少の足しにはなったろうに」 「ダーリンは一応ルイズの使い魔ですもの。残ってもらうワケにはいかないわ。 それにギーシュに居られちゃ、貴女も全力が出せないじゃない『土くれ』のフーケ」 ニヤリと笑うキュルケとミス・ロングビル――もとい、フーケ。 その言葉の意味は「ゴーレムで蹴散らせ」だ。 「いいよ、やってやろうじゃないさ! 時間稼ぎは頼んだよ小娘!」 「あら、時間稼ぎはかまわないけど―――あまりノロマだと、あいつら全員消炭にしてしまいますわよ!」 興奮すると言葉が汚くなる美女と、興奮するほど言葉が丁寧になる美女が同時に立ち上がり呪文を詠唱する。 キュルケの前方に生まれるのは炎の渦。 『火』『火』『風』のトライアングルスペルによって生み出されたそれは、二人に向かって放たれた矢を尽く燃やし尽くす。 グルグルと回される杖に従って回転する炎輪は、呪文と共に徐々に巨大になっていた。 ダンと机を蹴り倒して走るキュルケ。 走りながら突き出した杖に従い、炎の渦が6つの炎条となって傭兵達に襲い掛かった。 悲鳴をあげて燃え上がる男達。 だが、呪文を放った瞬間のキュルケは無防備極まりない。 仲間の死にも恐れを抱かない勇猛な数人が武器を掲げてキュルケに殺到する―――寸前。 盛り上がった土がキュルケと傭兵達を隔てた。 完成したフーケの呪文により生み出される30メイルの巨大ゴーレム。 平民の剣や矢では相手にもならない破壊そのものの腕が、キュルケを仕留めようと迫っていた数人を横薙ぎに払い飛ばした。 「あ、あんなのが出てくるなんて聞いてねぇぞ!」 「だ、駄目だぁ、逃げろぉ!」 傭兵達は我先に逃げ出そうとする。 当然だ。傭兵にとって正義とは勝利ではなく生き延びる事。 金のために雇われて戦うのに、死んでは金がもらえないのだから。 だが、逃げ出す男達の前に立ち塞がった雇い主はそれを許しはしなかった。 「あかんたれやなぁ、ちょおデカブツが出た程度で、逃げ出したらあかんやろぉ。 傭兵1番から6番を【木偶の坊】と定義、定義済み概念【傀儡】を加算。 変数域に【人参果】を代入―――もうちょお、戦こうてや」 紅い加賀友禅を着た女がそう言った瞬間、6人の傭兵達の身体が変成された。 身につけていた鎧や武器がメキメキと音を立てて、巨大な蜘蛛の脚を思わせる節足に成ったのだ。 魔法生成された寄生生物である『脚』は宿主である傭兵の肉に食い込み、擬似神経を張り巡らせる。 「はぎゃ!? ギがごGAごごごおぉぉぉぉぉぉぉぉぉげヲけえぇぇぇぇ」 あまりの激痛に、正気を失った6人の悲鳴がラ・ロシェールの夜空に響く。 悲痛な声が途切れれば、そこには人間と蜘蛛を混ぜたような、奇怪な魔法生物が生み出されていた。 仲間を怪物にした犯人が目の前の雇い主だと本能的に理解した他の傭兵達は、瞬間の判断で女に剣を向ける。 「くそっ、死にさらせぇ!」 「タマ獲ったるわぁ! うおぉぉぉぉ!」 まさにメッタ刺し。突き刺さる槍と剣は総数13本。 その状態で、しかし女はニタリと笑う。 「あーあ、一張羅がダイナシや。こっちでは着物も手に入らへんのになぁ」 「な……馬鹿な……不死身だと!?」 「ほんまに、あかんたれや。死人を刺したかて、死ぬワケあらへんやないの」 女の名は『染血公主』ジェルヴェーヌ・ロッソ。 数ヶ月前、サイトの故郷『地球』で死んだはずの高位魔導師。 その恐るべき魔女が操るのは、名付ける事で対象を思うがままに変成する『宣名大系』の魔術である。 「傭兵7番から12番を名付けて【独活】。定義済み概念【傀儡】を加算。 変数域に【鈴虫】を代入―――変わりや」 「ひいぃぃぃ!?」 細い手足をもった外骨格の巨大昆虫に変えられる男達。 泡をくって逃げ出そうとする生き残りを、ジェルヴェーヌは許さない。 「傭兵ケインの血を名付けて【逃げ水】。定義済み概念【緋牡丹】を加算」 夜気が震える。 全身の血液をニトログリセリンに変成された傭兵は、周囲に破壊を撒き散らして爆発する。 約7リットルもの火薬が生み出す、圧倒的な爆発に巻き込まれて肉片に変えられた者、10名以上。 逃げられない。逃げた者から殺されると、傭兵達は悟る。 血と炎の臭いが濃くなった戦場に、不吉な風が吹いた。 ……戦いの風向きが変わった事に、ゴーレムの背後へ回り込んでくる傭兵を焼いていたキュルケが気付く。 ゴーレムに取り付く気味の悪い巨大昆虫。 職業意識以上の必死さの、決死の形相で向かってくる傭兵達。 次々に叩き潰されながら恐怖に錯乱して涙とヨダレを流しつつ、彼等の猛攻は止まらない。 「マズいねぇ。何があったか知らないけど、こりゃ支えきれないかも」 「なんなのよ。普通逃げ出すでしょうに……とは言え今更脱出も難しそうねぇ」 「自決でもするかい、お貴族様?」 「まさか。ツェルプストーの歴史に敗北主義者は一人も居ないわ」 お互いの背中を守りながら、美女二人が言葉を交わす。 フーケもキュルケも自分の美貌を自覚しているだけに、殺されるならともかく、生きて捕らえられればどんな目に遭うか理解している。 それでも自分から死を選ぶような二人では無いのだ。 ククッと喉の奥で笑うフーケ。 背中をあずけた女が、自分と同じ事を考えていると理解したからだ。 「ホント惜しいねぇ。アンタとは気が合いそうだったんだけど」 「同感だわ。一度ゆっくり盃を交わしたかったものね」 「ギュ」 共感と相互理解が、二人の女傑を結びつけた。 目と目で意思を確認して、乱戦の中に飛び出すタイミングを計る。 こうなったら中央突破を狙う以外に生き残る道は無い。 「ギュギュ」 とは言っても、おそらく二人とも生き残れないと覚悟を決めた突撃である。 この数相手の乱戦で、精神力を酷く消費した二人に、勝ち目はほとんど無いのだから。 「ギュギュギュ!」 死を覚悟して戦場に立つなら、背中をあずけるのは愛した男が最高だとキュルケは思う。 だが、死の瞬間まで恐れたりはしないであろうこの女となら、そう悪く無いとも考えた。 せいぜい派手に戦って、華々しく散ろうと決意する。 キュルケは何処までもツェルプストーの名に相応しい火のような女だった。 フーケは、ルイズやワルド達貴族を逃がすために死ぬのは業腹だと思う。 けれど、この女と共に戦って死ぬなら、破壊の杖を盗み損ねて縛り首にされるよりは上等かと考えた。 せいぜい派手に暴れて、足掻くだけ足掻いてから死のうと決意する。 朽ちた『土くれ』に『微熱』の炎が燃え移ったのかもしれなかった。 「ギュー!!」 「ん? ナニよこの鳴き声」 緊迫した雰囲気に水を差すコミカルな声にやっと気付くキュルケ。 見れば、宿屋の入り口の側から顔を出しているモグラが居る。 「ヴェルダンデ! ギーシュの使い魔じゃない!!」 「ギュイ」 つぶらな瞳の、小型の熊ほどもあるジャイアントモールが、ついて来いとでも言う様に鼻先を動かし、親指(?)を立てる。 ヴェルダンデがそこに掘ってあるモグラ穴は、キユルケ達以外には気付かれていないだろう。 つまり、安全度の高い脱出経路という事だ。 「凄いわヴェルダンデ! ギーシュはお馬鹿だけど使い魔は天才ね!」 「こりゃ、あのボウヤに感謝しなきゃねぇ」 大喜びで使い魔品評会優勝の賞品だった『小さな王冠』をヴェルダンデにかぶせるキュルケ。 光り物が大好きなヴェルダンデも嬉しそうだ。 こうして二人と一匹は、大暴れさせたゴーレムを囮に無事に逃げ出せた。 もちろん最後にゴーレムを土に戻して、穴を塞ぐ事も忘れずに。 次へ 前に戻る 目次に戻る