約 374,235 件
https://w.atwiki.jp/222seihaisensou/pages/171.html
この聖杯戦争の本戦が始まってよりずっと、その者は座して待っていた。 自らが動くタイミングを。自らがもっとも効果的に動けるタイミングを。 制約は厳しく情報は足りず人材にも問題がある。だがそれでも、いやそんな状況だからこそ、その願いの為に動く。この敗者なき戦争に幕を引く為に。 夜明けは近い。満願不成就の朝が来る。 その時まで後―― -1 00 00 決戦!!襲撃される遠坂凛!! 「ここ、って、貴女は知ってるんだっけ。」 「はい……そうだよね、私の家があるならリンさんの家もあるよね。」 その重厚な佇まいに相応しい大仰な門を潜ると、遠坂凛とイリヤスフィール・フォン・アインツベルンは遠坂邸へと足を踏み入れた。 間桐邸の同盟への宣戦布告から半時間ほど、彼女達は何事もなく目的地へと到達していた。頭の上を抑えていた飛行機の編隊は、いまやその機影を一つにまで減らしている。それが間桐邸のアリスのアーチャーのものだということを知る凛は、僅かに口角を上げながら庭園の脇の道を歩いた。 ここに来るまでの間に、編隊は皆東へと飛んでいった。凛が知る限り、そこには何もない。精々、冬木市立図書館とそれに併設するように建っている月海原学園程度だ。高度を落とし見えなくなった飛行機に引き続き今もイリヤのサーヴァント、カルナが見張るその建物は、特段の変わりもなくそこにある。また市の南西端の辺りにある柳洞寺という寺に逃げ込んだもう一人のイリヤ達の同盟も、特段の動きを見せてはいなかった。といっても、結界らしきものがあるその寺はサーヴァントの眼力を持ってしても内側を伺わせない。故にサーヴァントが発する魔力を目印にカルナは結界の端を油断なく見据えていた。その眼光から逃れるにはよほどのアサシンでもなければ不可能だろう――もっとも、既に唯一のアサシンは死に、その同盟にアサシンの真似事をできる者もいないのだが。 「……セイバー。」 「いえ、なんの気配もありません。ただ……」 「嫌な予感がする、でしょ。」 間桐も、もう一人のイリヤも、動きを見せない。また両者に集中するあまり優先順位が下になっているが、ナチスの吸血鬼達もだ。その事実を優位と考えず、これから起こる脅威と凛は判断した。 「イリヤ、カルナ、貴方達のわかる範囲で、サーヴァントやマスターに動きはある?」 屋敷に入ってそうそう、凛はそう問いかけた。と同時に、その周囲に光の板のようなものが現れる。ややあって屋敷全体に広がる魔力が強まったのを感じながら一同は柳洞寺を望める一室に移りつつ、それぞれに自分が知る情報を公開する。だがその中に凛が知らないものは無かった。 「気休めかもしれないけれど、この屋敷の結界は最大限まで強くしてる。まあ元からあった物に手を加えただけだけど、ある程度のセキュリティは保証するわ。で、全員本当にそれだけ?だとしたら、かなりマズイことになってるかも。」 「そもそも私達はずっとボッチだったんで情報とか言われましてもね〜。ぶっちゃけ私達が知ってることはランサーさんが全部知ってますし、というわけでランサーさんもう一度お願いします。」 「わかった。イリヤ、構わないか?」 「うん。でも、ランサーさんその格好のまま話すの?」 「ああ。」 窓の前で仁王立ちし、寺に睨みを利かせながら背中で答えるカルナに、イリヤは顔の作画を崩しながら「リンさん良いですか?」と問う。「そのままでいいから」という凛の言葉を受け取ってか、カルナは話し始めた。 「先に言ったことの繰り返しになるが、間桐邸も柳洞寺も変わりない。どちらも結界で内が伺えないが、そこから出たとは考えにくい。」 「間桐の方は屋敷が燃えてるんだし、火事に乗じて脱出した可能性は?」 「あの屋敷の周りには無関係な人間が集まっている。見つからずに突破するなら魔術を使わなければならないだろうが、その痕跡は無い。もちろん死角から逃げたとも考えられるが、それでもあの炎を魔術無しで凌ぐ必要がある。」 「たしかにあれだけ消防隊とかいたらキツそうですね。」 「ええ。そして私達が見た限りあの中で魔術に頼らずにあそこから脱出できる人間はいなかった。吸血鬼達なら可能かもしれないが、もう一人のイリヤ達からの攻撃で大尉と呼ばれていた男以外は全滅したはず。少なくともあの屋敷にいる人間に見つからずに外に出ることは不可能と考えて良いだろう。」 「あっちにいるのは慎二とキャスターにアリスとアーチャー、それに安藤って名乗ったアーチャーとのび太に吸血鬼の大尉。動けるこの七人じゃ確かに難しいか……わかった。じゃあランサー、柳洞寺からイ――偽イリヤ達が動けるかは?」 「あの森からマスターに逃げられれば我の目でも捉えることは難しい。サーヴァントならば結界から出れば捉えられるが、アサシンのような手合なら我も見落とす恐れはある。」 「向こうの言葉を信じるなら、あっちは偽イリヤとバーサーカーのヘラクレスに他二組。さっきの攻撃を考えるに、片方はほぼアーチャーね。ここにクロって名乗ったもう一人の偽イリヤがマスターとしても、あとの一組は完全に情報がないわ。それがアサシンってことも考えておくべきね。」 「この時間まで情報がないってあり得るんでしょうか?」 「ルビー、私たちがそれ言っても……」 「……仮に、不明な一組をXとするわ。本当はクロ×不明なサーヴァントと不明なマスター×不明なアーチャーってことも考えられるけど、考えを簡単にするためにね。で、セイバー。このXみたいなタイプの聖杯戦争の参加者ってどう思う?」 「……率直に言うのなら、何がしたいのかわかりませんね。伏せて身を隠すのも、あえて名乗りを挙げるのも、どちらもあり得るでしょう。だが、あのタイミングで自分達の存在を匂わせる意義が薄い。何より、それまで身を潜めていたそのXはなぜイリヤスフィール達――失礼、偽イリヤ達と行動を共にしているのか。これがわからない。」 「ありがとう。私もだいたいおんなじ考え。Xが隠れてたならなんで偽イリヤに接触したのか動機がわからないのよ。もしくは偽イリヤに見つかったにしても、なんで貴方みたいに索敵能力の高いサーヴァントではなくバーサーカーを従えた偽イリヤなのか。セイバーにランサー、それに何騎もいる目ざといサーヴァントを差し置いてね。」 いつしか話はまだ見ぬ一組の話に移り一同は頭をひねる。まさか相手がただ聖杯戦争を夏休みのように過ごしていた為に全く警戒に引っ掛からなかったなどとは夢にも思わない。というか殺し合いの場でそんなことをしている参加者がいるなどと真面目に考える人間はいないだろう。それが真面目に聖杯戦争をやっている彼女達ならばなおさらである。 ――なおそのバカンスのように過ごしていたルナとバーサーカーの名誉の為に言っておくが、彼女達は何も遊んでいたのではない。巡りあわせの結果レンタカーを(切嗣が)借りて、ファミレスに(切嗣の奢りで)行って、バッティングセンターで(切嗣の金で)遊んだだけだ―― 「あの」と小さく手を挙げイリヤが発言を求める。今までの話し合いで殆ど話していないこともあり何か言わねばというのが本音だ。凛から水を向けられると彼女は話し始めた。 「最初からそのX?が私のニセモノと一緒に聖杯戦争に参加してたらどうかなって……ないですかね?」 「そういえばクロって方もアインツベルンって名乗ってましたね。イリヤとクロと謎のマスターXが全て同じアインツベルン陣営である可能性も……?」 「それはないと思いたい。でないと今の状況はその三組が狙って作った可能性まで考えないといけなくなるわ。」 「美遊様とイリヤ様が共に巻き込まれたことを考えますと、親しい人間がまとめてマスターになっていることもあり得るかと。」 「しかし、それではイリヤスフィール。貴女に関わりのある人間ばかりこの聖杯戦争にマスターとして参戦していることになる。たしか、先程のルーラーの放送では残り十六組。その内の五組が貴女に近い人間というのは奇妙に過ぎる。」 そう言うとちらりとアルトリアと凛は視線を交した。自分で言っていてなんだが、もし本当にイリヤに関係のある人間ばかりマスターになったとしたら、この聖杯戦争そのものへの疑念がどうしても浮かんでしまう。二人ともイリヤが小聖杯の可能性を考えてはいるが、それでも全体の三分の一、生き残っている数で言えば今や過半数がイリヤという予測をすんなり受け入れることなどできなかった。 そしてそんな彼女達と同様に、二本のステッキの間で魔力が飛び交う。ややあって、イリヤの脇で浮いていたステッキ、ルビーが羽をパタつかせ喋った。 「そのあたりのことを考えるにはもう一度情報交換するしかないと思います。時間が許すなら改めて再確認したいんですけど、皆さんどうします?」 この話題は重要なことかもしれないが、あまり悠長に話している時間はない。そう言外に込めてルビーは問いかける。実際はイリヤに隠していることについてこれ以上ボロが出て刺激したくないということやイリヤの出生について勘ぐられたくないというのが本音だが、言っていることに間違いはない、はずだ。「四時過ぎか。ランサー、やれる?」との凛の言葉を最後に話題はいつ敵に仕掛けるかについてに移り、ルビーとサファイアは内心でホッと息をついた。 「いつでも問題ない。あらかた傷は癒えた」とのカルナの返事に、凛は無言で頷く。「コーヒーを入れてくる。最後の作戦会議よ。」と言って凛は部屋を出、サファイアが監視を名目にそれに続いた。 高価な茶器に合わないインスタントコーヒーをキッチンに並べると、凛はやかんを火にかけながら再び光の板を出す。ウィザードとしての能力の手の内を明かさぬためクロノやキャスターの前では控えてきたが、その為に情報収集は予定よりも遅れていた。無論その分のリターンとしては十分なものが得られてはいるが、だからといって慢心することはない。こちらは真名が割れているのに対し、他の五組中四騎は正体が不明だ。Xにいたっては外見すらわからない。裏切るタイミングは正解のはずだったが、優位には立てていても万全ではないと凛は自身の肝に銘じる。 そして凛は一体の人形に向けコンソールを叩いた。数体しかない人形だが、使い方によっては貴重な労働力である。彼女はそれがレインコートなどで最低限の変装をしたのを見ると、裏口から家を出させて東へと向かわせた。目的地は、月海原学園。新設校のため古い地図には載っていないが、そこに併設されている冬木市立図書館では真名の検索が可能である。これで少なくとも間桐邸のサーヴァント達の正体にあたりをつけたい。 音を立てて沸騰を知らせるやかんの火を止めながら、続いてここ数時間のニュースに目を通す。今自分にマスターとしてできるサーヴァントの情報収集はこれ以上なにもない。故にここからはレジスタンスらしく社会の情報収集だ。こんな都市でドンパチやっている以上、どうしたって情報は出回る。西欧財閥による検閲もない2014年のインターネットは、彼女にとって格好の狩場だ。 事前に粉末を入れておいたカップに少し慎重に熱湯を注ぎつつ警察庁のサイトをクラックする。国家を超える相手と渡り合ってきた彼女にとって、半世紀も前の一行政機関のセキュリティなど回線の遅さに比べればほんの些事だ。そのままめぼしい情報をダウンロードさせつつまずは冬木署の署長のPCをクラックする。この混乱では現場レベルで情報が止まっていることも考えられるし、自衛隊などの他の行政機関との伝達はこのレベルでも行われるという目星をつけての行動だ。そもそもネット上にまで情報が上がってないことも充分あり得るが、それはそれ。やれることからやっておく。 「サファイア、何人飲むか聞いてきて」と言いつつ二杯目のコーヒーに熱湯を注ぐ。そして慣れない旧式のインターフェイスにやや思考して、凛は署長のメールフォルダを開いた。「イリヤ様と、セイバー様、ルビーの三杯です」と言うサファイアの声に生返事を返しながらその件名に目を通す。どうやらかなり混乱しているようで、昨日今日でメールのやり取りは百倍以上に膨れ上がっていた。「あのステッキがコーヒーを……?」とこぼすも四杯目を注ぐ。そして注ぎ終わると、一つのメールを開き言った。「サファイア、これ持っていける?」 凛の開いたメール。『アインツベルン氏からの連絡について』という件名のそれの文面を見た途端、自身の再現された脳内シナプスに痛痒が走るのを彼女は覚えた。ウイルス、そう発想すると同時に対抗が始まる。数秒のめまいの後、彼女は眉間にシワを寄せながらも口元に笑みを浮かべてそれを読んだ。 (魔術的な暗示を画像としてメールに添付する……てとこね。古典的な手だけど作りが荒い。) 内容は、四時からアインツベルンのマスター達が記者会見を柳洞寺で行うというものだった。記者会見という言葉に引っ掛かったが、どうやら土着の魔術師やその関係者の政府の人間向けのものらしい。となると先の暗示は魔術師とそれ以外を選別するようなものか。凛はそう判断するとメールを読みすすめながら行っていた政府高官へのクラックに目を移す。予想通り、政治家、秘書、官僚と立場はバラバラなものの、数十人規模で同様のタイトルのメールが見て取れた。そして彼らの多くがそれに返信していることも。 (署長がこれに返信した形跡はない。消した可能性も見た限りゼロ。返信した人間は魔術師と見て間違いないかな。それよりこのURLって王立公園庁って書いてあるんだけど……胡散臭さ満点ね。) 更に続けてクラックを進める。彼らのPCの画面を表示すると、そのほとんどが動画を見ていた。ウィンドウの中では、いまいち日本の知識には乏しいがそれでも寺とわかる場所で、三人の銀髪の少女が机に置かれたマイクを前に話している。その真ん中の人物は彼女にも誰かわかった。 イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。今先程の部屋でコーヒーを飲んでいるであろうイリヤと同姓同名瓜ふたつの少女がそこにいた。 ご丁寧に、彼女の前のテーブルには折ったコピー用紙に安っぽいフォントで名前が印刷された名札がある。彼女の右にいる褐色のイリヤがクロエで、彼女の左にいる似てないイリヤがルナというらしい。あの念話を行っていたのはクロエということか。そして謎のマスターXはルナだろうか。コーヒーに口をつけながら思考を巡らす。そしてどうやら自分の危惧は現実のものだったと噛み締めていたところに、サファイアが戻ってきた。 怪しまれたか、そう凛は警戒する。だがサファイアから発せられたのは全く別の言葉だった。 「凛様、門の前に警官が来ているようです。」 凛は微かに指を動かしボリュームを上げた。彼女の脳内に直接響く音は、今はイリヤの声がハッキリ聞こえる程だ。そしてそうなると、彼女が何を言っているかもハッキリわかるようになった。 『――セカンドオーナーである遠坂家の暴挙を止められず神秘の暴露を許したこと、また彼女のサーヴァントであるセイバー、アルトリア・ペンドラゴンが第四次聖杯戦争に続いて冬木市へ被害を広げていること、謹んでお詫びいたします。』 (アイツ……) 苦い顔で凛はコーヒーを煽った。この発言にこのタイミングでの警官。そしてあのメール。三つ揃えばイリヤが警察を動かしたのは間違いない。御三家という立場(ロール)を利用してNPCを動かすなど邪道も良い所だが、こちらも立場上は御三家、やられた自分が甘かったと自戒する。どうやら無意識の内に彼女の幼いアバターに惑わされていたようだ。 「あの警官が操られてる可能性もある。イリヤ、暗示はできる?」 部屋に取って返すと凛は開口一番に言った。既に敵は仕掛けてきている。あちらが警察を動かしてきた以上、聖杯戦争が長引くのは不利だ。冬木市から出たらどうなるかわからないが市内に留まれば常に警察に追われ続けることとなる。その面倒臭さはテロリストとして国際指名手配された彼女には嫌というほど理解しているものだ。またキャスターが存在することも忘れてはならない。マスターがあの慎二であるのに一日でそれなりの陣地を作られたのだ、時間は彼らの味方である。 故に、ここで決戦を強いる。こちらの強みは対軍宝具による戦略爆撃と圧倒的な白兵戦能力。つまりは戦闘力の高さだ。それを押し付け押し切る。アインツベルンと間桐が手を組まないうちに各個撃破するのだ。また聖杯戦争はタッグ戦、相手のマスターさえ宝具で吹き飛ばしてしまえばたとえ神話の大英雄でもどうということはない。宝具を打ち込みマスターが倒せればそれで良し、出てきたところを殲滅しても良しだ。 (セイバーには令呪を使うことになるだろうから最後の手段だけど、ここまで来たら考えておいた方が良い。) 「はい。じゃあ私が話してきますね。サファイア、リンさんに着いてて。」 「この家の間取りは知ってるわね。もしものときは直ぐにダイニングに来て。私はセイバーとバリケードを作っておくから。セイバー!」 凛の言葉で柳洞寺を見張るランサーを除いた全員が動き出す。イリヤはいつでも転身できるようルビーを握りながら玄関へと移動した。インターホンがまた鳴る。サファイアの話では凛は一回目のインターホンの音に気づいていなかったという。それを凛の疲労によるものだと判断して自分が頑張らねばと気負うと、彼女は少し緊張した声で応えた。 「はい、もしもし。」 『あ、冬木警察署の尾留川と申します。発砲事件について注意喚起に参りました。』 「は、はあ……ルビー?」 「ありがちな口実だと思いますよ。理由は何でもいいんでとにかくこっちをおびき出そうっていうパターンですかね。とりあえず凛さんについて聞かれたらはいないって言っときましょう。」 「そっか……ええっと、オルミ?さん、発砲事件って何ですか?」 『ええっと、二件ありまして、一つはこの近くで男性が銃撃された事件と、もう一つは深山町の商店街で自動小銃が乱射された事件です。』 イリヤとルビーは視線を交した。なんだか思っていたのと話が違う。相手は普通に事件の話をしだした。というかそもそも凛について少しも聞かないどころかインターホン越しに話すことについてもなにも言わない。そもそも本当に警察なのだろうか?とイリヤは疑問に思うも、「凛さんから来ました。冬木警察署には尾留川っていう生活安全課の婦警がいるみたいです」と言われまた疑問が深まる。相手は警官だがなにか警官らしくない。 「尾留川さん、詳しく教えてもらえますか?」 「はい!まずこの近くであった発砲事件は、今から三十分程前に発生しました。コンビニから帰る途中に通話しながら歩いていた男性が何者かに撃たれたとのことで、その男性と通話していた方から通報がありました。事件現場はここから川の方に数百メートルほどの場所だと思われます。不審な物音などは聞きませんでしたか?」 「えー、寝てたんでわかんないです。今も何が起こってるのか全然わからなくて……」 「そうですよね……隕石が三回も落ちたり巨大な雹が降ったり。本当に……」 どうやら慎二も警察に頼ったようだと凛は推測する。この聖杯戦争の御三家はやけに警察と関係が深いようだ。 「ああ、ええっと、商店街での事件はどんな話ですか。」 「あ、すみません!で、はい、こっちの事件はさっきの事件とほぼ同時刻に起こりました。隕石で被害を受けた場所に自衛隊が展開していて、そこから被疑者が自動小銃を持ち出し、マウント深山で数十発乱射したようです。被疑者はその後駆けつけた警察官と銃撃戦になり車に乗り逃走、またその際に少女を人質にしました。被疑者は――」 「――衛宮切嗣、五十歳。」 イリヤは気づけば足を靴に入れていた。 「ダウト!衛宮切嗣は警察のデータベース上に存在しない!そもそもその男は十年以上前に死んでる!罠よ!」 「って凛さんも言ってますよってダメだこのパターン聞こえてない!斬捨御免!」 「グハッ!?」 ルビー越しに話された凛の言葉も耳に入らず、イリヤは玄関の鍵を開けようとする。それをルビーはどこからか取り出した怪しい薬剤を皮下注射することで押し留めた。イリヤの脳内がキマっていく。しかしその感覚も次の衝撃で消し飛んだ。 『柳洞寺に動きがあった。強い魔力が来る。』 「皆!間桐から何か来る!」 『青のBMWに乗って逃走中。ちょうどあんな感じにナンバーを隠した――ってあれだ!?』 寺から炎の波が飛んでくる。ランサーが迎撃に宝具を放つ。遠坂邸に宝具が突き刺さる。セイバーは素早く地下へと向かう。インターホンから婦警の悲鳴が上がる。なぜかBMWから発射されたカノン砲が門を吹き飛ばし遠坂邸の敷地に猛スピードで乗り込む。 「令呪を持って命ずる、来てくれクロエ!」 「令呪を持って命ずる、やっちゃえバーサーカー!」 「令呪を持って命ずる、ここに来てバーサーカーさん!」 「パパッ!?」 「イリヤッ!?」 「ニセモノ!」 「イリヤ!ルビー!」 「なんで私の名前を!?」 「イリヤが二人――来るぞルナ!」 「――急々如律令!」 「■■■■■■■■■■■■!!!」 マスターが、サーヴァントが、あるいは礼装が、それぞれに声を上げ動き出す。かくして4時9分30秒、この聖杯戦争最後の戦いが遠坂邸を舞台に始まった。 -1 23 45 埋没交渉・間桐慎二はサーヴァントを見つけられるのか? 「そうだ!孫悟空だよ!」 「は?」 アリス・マーガトロイドが「この磯臭い男は何を言っているんだ」と言わんばかりの目で慎二を見る。他の人間も大なり小なり似たようなものだ。だがそんな視線にはもちろん気づかず慎二は一人指を折っていく。「とうとう狂ったか」とアリスはそれを横目で見た後、天井を見上げた。 クロエ達から攻撃を受けて約一時間。間桐邸地上部をほぼ吹き飛ばした砲撃は甚大な火災を引き起こしていた。堅牢な地下に損害はないが、地上部の基盤にヒビを入れられたことで天井の一部が断裂している。そこから消防車からの放水でもたらされた水が止めどなく流れ、花々をしとどに濡らす。そんな花を踏み締めてウロウロと檻の中の熊のように歩き回っていた慎二はニヤリと笑いながら言った。 「ヘラクレスの方のイリヤと一緒にいるサーヴァントは知り合いなんだよ。」 一同――フドウは除く――に驚愕と困惑が走る。狂ったと思われていた男からもたらされた突然の情報。それは更に彼女らを振り回すこととなるのであった。 さてもちろん孫悟空などというサーヴァントはいない。これは野良サーヴァントになっているだとか消滅したとかいう意味でなく、元からそんなサーヴァントはいないのだ。ではなぜそんなサーヴァントの存在を慎二が確信しているかというと別に彼が発狂したわけではない。彼には孫悟空という存在に心当たりがあるのだ。 ちょうど今から24時間前、彼はあるサーヴァントと出会い、そして警察に補導されるハメになった。そのサーヴァントこそ孫悟空。金髪で派手な服を着ていてクラスはライダーで筋力B耐久B敏捷B+魔力D幸運A、というのが慎二の見たそのサーヴァントだ。そして残る主従の数。日付が変わったタイミングでは残り十六組。うちホテルの八組とクロノ組の計九組がマスターかサーヴァント、またはその両方が死に主従を解消している。残りはオリジナルと同じく七組。内訳は間桐邸の慎二&キャスターにアリス&アーチャー、先程宣戦布告してきた凛&セイバーとイリヤ&ランサー、そしてイリヤ&バーサーカーとクロエ&不明なサーヴァントに、不明なマスターと不明なサーヴァントだ。この不明なサーヴァント二騎のうち一騎がライダーの孫悟空なのだ。となると残る一騎はアサシンか。慎二はそう考えるとどうクロエ達と話し合い孫悟空と話をつけるかを考え始める。 ――もちろんこの考えは何一つあっていない。そもそも孫悟空というのは今から半日以上前に脱落したキャスター・兵部京介のヒュプノによる幻覚であり、そもそも前日に脱落した可能性を何も考えていなく、更に言えばこれは七種七騎の聖杯戦争ではないので残る一騎がアサシンなどと言えるわけもない。だが彼はそんなことはお構いなしにイリヤへと電話をかけた。そして。 『――じゃあ停戦だ。』 「ああ。一緒に聖杯戦争を止めよう!」 なんか同盟を組めた。 「ちょっ、ちょっと待って下さい!展開が早くて何が起こってるからわからないです!」 (ついて行けない……私が!?) 「うるさい次は警察に通報だ!そうだよ補導されたときあの婦警から名刺貰ってたじゃないか!『あ、もしもし、警察ですか。間桐慎二です。はい昨日の。自分の友達の慎二が、電話してたら撃たれたんですよ。はい、はい、直ぐに捜査してください』よし行けるぞぉ!!」 「どういうことなの……?」 何やら電話を勢い良くかけ、名刺らしきものを握り締めてハイテンションで捲し立てる。完全にイカれているとしか思えない。だがこの場の誰もそれを止められる者はいない。最大の暴力装置であるキャスターを慎二が独占している以上、彼の行動を妨げることは致命的な事態を招く。故にこの場の人間には彼に気づかれることなく行動する必要がある。だがそれはこの場ではない。 3時45分45秒、燃える間桐邸の地下で慎二により聖杯戦争の展開を大きく変える狂行が行われる。そしてもう一つの動きが柳洞寺で起きていた。 -2 22 22 定石無視、クロエ・フォン・アインツベルンの憂鬱…… 「貴様ッ!図ったなッ!」 「……僕はただ事実を言っただけだ。」 「信用しない方がいいわ。ズルくて嘘つきだから。」 (僕はこんなに娘から恨まれていたのか……) 「……なにやってんの?」 2時47分8秒、クロノの発生させた氷塊を認め寺の建物に戻ってきた衛宮切嗣のアーチャー、クロエ・フォン・アインツベルンは、そのマスターが同盟を組んでいるルナのバーサーカーに鎌を突きつけられているところに出会した。 暗示を使ったのであろう、避難民に解放されていた一室を貸切状態にして集まる聖杯戦争の参加者達の間には険悪な空気が流れる。美遊のバーサーカーの襲撃で収まったと思ったらアーチャーがいない数分でこれである。いったいなにがあったのか、その原因を問うアーチャーに、バーサーカーは鎌をアーチャーに向け直して睨みながら言った。 「衛宮切嗣。お前が今言ったことをもう一度言え。」 「聖杯の悪についてか。悪いが、僕も第三次聖杯戦争で何かあったというレベルのことしかわからない。それとも反英霊についてか。」 「しらを切るか……イリヤスフィール!お前は御三家の一つ、アインツベルン家の人間だな?」 「ええ。」 「アーチャー、お前はイリヤスフィールと双子だな?」 「……そんなこと、はいそうです、って言うわけ無いでしょ(さすがにバレるよね)。」 「まあそうだろうな。それに言わずともお前とイリヤスフィールの魔力を感じ比べればわかる。そしてイリヤスフィール、お前は御三家の間桐、同じく御三家の遠坂としばらく行動を共にしていた、そうだな?」 「そのこと?そうだけど、それがどうしたの?」 「これで最後だ。この聖杯戦争は、『お前達が言う冬木の聖杯戦争とは違う』のだな?」 「ああ、別物だ。そもそも僕は十年以上前に死んでるし、イリヤは「イリヤって呼ばれたくない」……ミス・アインツベルンはこの聖杯戦争に来る前に冬木の聖杯戦争に参加していたという。嘘だと思うなら寺の裏を見ればいい。少なくとも、僕が死んでいたという事実は僕の墓を見ればわかるはずだ。」 「ああ、本当だろう。伝説上の英霊を呼び寄せられるのだ、墓を暴いて死者を呼び寄せるなど造作もないだろう。あの五魔将共のように!」 音を置き去りにして鎌が振るわれる。空気の断裂する音を響かせアーチャーの元から鎌を離すとバーサーカーは苦々しく言った。 「この聖杯戦争、お前が言う第六次聖杯戦争には、本来の聖杯戦争を行える御三家の人間が全員いる。特にアインツベルン、お前は聖杯はアインツベルンが生み出したと言ったが、そのアインツベルンの人間はここに三人、カルナのマスターも同じ声だったことを考えると都合四人も参加している。これがどういうことがわかるか?」 そして手の髑髏から炎を迸らせながらバーサーカーは順に一同の顔を見渡し続けた。 「まず間違いなくこの聖杯戦争は御三家の人間を確保することが真の目的だ。儀式を行える人間を幻に捕らえれば、本物の聖杯戦争を行うにあたって大きな財となる。こんな茶番に巻き込まれるとは……!」 バーサーカーの告げた仮説、それはこの聖杯戦争そのものが本物の聖杯戦争の為に御三家の人間を監禁する檻というものであった。なるほど、とイリヤはその仮説に一応の理を認める。檻自体を聖杯戦争にしてしまえば、御三家が連絡を取り合うことは難しい。それは他ならぬイリヤ自身がそうしようなどと全く思わないからだ。なにせ過去の聖杯戦争でもそれぞれに反則を行っていたのだ、仮に話し合ったとしても絶対に気を許すことも信用することも、ましてや協力することもあり得ない。他の二家が協力して自分達を嵌めようとしている可能性が絶対に残り続けるからだ。その脅威を無視して腹を割って話すほどそれぞれが協力できるのなら、初めから聖杯を御三家で順番に使っている。あり得るとすれば御三家が互いに互いを牽制し合う状態だが、それが膠着状態になってにっちもさっちもいかなくなることも、イリヤは半日前のこの寺での会談で理解していた。ただの情報交換ですらあれだけ時間がかかり結局あの六組で一塊になることはついぞ無かったのだ。ましてや聖杯戦争がまやかしであるなどと言えばその段階で宣戦布告されてもおかしくないだろう。 だがイリヤはその主張を認めた訳ではなかった。確かにバーサーカーの仮説ならば御三家は確実に協力できない。それだけでなく聖杯戦争を中途半端に知っている人間ほどこの聖杯戦争を『そういう聖杯戦争』と受け入れてしまうだろう。だがそれにしては些か杜遷なところがあるのだ。 「バーサーカー、貴女のお話は面白いけれど、それは考えにくいわ。」 「ふむ、なぜだ。」 「簡単よ。確かに御三家の人間はどこも参加しているけど、一人人質にならない人間がいるわ。」 「貴様の父親のことか。確かにコイツはアインツベルンとはある種距離があると言える。だが貴様や貴様の双子に影響を与えられるという意味では申し分無いだろう。それにコイツは聖杯戦争のリピーター、コイツの存在だけで御三家の協力は破綻する。墓があることを考えれば死霊として呼び出すのも簡単なはずだ。」 (僕は疫病神か何かなのか。) 「キリツグじゃなくて、シンジよ。間桐家の間桐慎二は魔術師じゃない。アレじゃ人質にもなんにもなりはしないわ。」 (間桐慎二……誰だっけ。なんか名前聞いたことあるんだけどなあ……) (間桐慎二……間桐鶴野の息子か……) (どうしよう……先から全然話について行けてない……) アーチャーが、切嗣が、ルナが、三者三葉に二人の会話を受け止め、話は更に続く。バーサーカーを鎌を消すと右手を顎に当てながら話した。 「その慎二という間桐の人間は、本当に魔術が使えないのか?それにたとえ全く使えなくとも、その身体を調べれば間桐が使う魔術の情報が得られる。そうでなくとも家のものが攫われたとなれば間桐家の人間には充分な抑止力となるだろう。」 「あれが演技だったらそれだけで英霊になれるってくらいに無様な男よ。私、アレより酷いのはキリツグしか知らない。」 「おい衛宮切嗣。お前はいったいコイツに何をしたんだ?いったい何をどうすればここまで嫌われる?」 「……子供のいる前で話すことじゃない。」 「……あっ。貴様、やはりそういう趣味の……」 「撃つぞ。それは断じて違う。」 「自分の娘にそんなわいせつな格好をさせて奴隷として従わせる男を信用するとでも?」 「わいせつな格好言うな。」 「サーヴァントの君がサーヴァントを奴隷と呼ぶとはね。」 「バーサーカー、キリツグは前回の聖杯戦争のとき、サーヴァントを道具みたいに使ったらしいわ。」 「イリヤアンタどっちの味方なの!」 「キリツグの敵。」 「え!?アーチャーさんって切嗣さんの子供なの!?」 「いまさら……あっ。」 やっちまったと言わんばかりの表情をするアーチャーの顔を見てほくそ笑みながらバーサーカーは考える。とりあえずこれでアーチャーが切嗣の娘でありイリヤと血の繋がりがあることは確定した。となると更に謎が深まる。英霊がサーヴァントになるという前提がある以上切嗣の娘は英霊ということだが、果たしてそんなことがあり得るのか。イリヤの魔力は確かに素晴らしいが、ここから成長すれば英霊になれるのかというと、微妙な線だろう。もっともアインツベルンは言わば聖杯戦争の主催者、この聖杯戦争でも裏技を使ったかあるいは真の主催が仕向けたか。考えられる仮説はいくつかある。だが今は、まずは先の問題からかたをつけるべきであろう。 「お前達が父娘だというのは置いておいてだな、その慎二には人質としての価値は無いのか?」 「家族からも嫌われてそうだし無いと思う。」 「……切嗣、お前は慎二という人間は知らないか?一般論としてどう思う。」 「無くはないが薄い。魔術の観点から見れば、大した痛手では無いだろう。間桐は使い魔の蟲を使うことに特化している都合上、本人の肉体に残る魔術的痕跡は一般的な魔術師に比べ限定的だ。なにより魔術は一子相伝が原則、十を超える頃までに魔道を修めていないのなら、後継者というわけでもない。」 「そうか……では、単純に家族として考えれば。」 「無いな。」 「断言するな。その根拠は?」 「間桐の当主を一言で言うと、人間の屑だからだ。」 「えぇ……」 バーサーカーの中で人間の屑である切嗣から人間の屑と呼ばれる程の人間。彼女にとっては想像の埒外の代物である。 「一回目の聖杯戦争から生き残っている怪物。それが間桐の当主だ。第四次聖杯戦争では魔道とは無関係な自分の息子をどういう理屈かはわからないが魔術師にして参加させた。僕が知る限り、そんなことをすればまず身体が保たない。どんな魔術を用いてもね。」 「その息子は何歳だった?」 「26だ。」 「まあ無謀な年齢だな。息子を道具として使い潰したか。待て、そうなるとこの聖杯戦争で一番得をするのは間桐では?」 「さっきと言っていることが違うぞ。」 「私は柔軟な人間でな。さて、こうなると間桐は後継者の跡目争いの可能性を減らし、更に最低でも遠坂一人にアインツベルン二人を抑えたことになる。特にイリヤスフィール、お前とお前のバーサーカーがいなくなれば、本物の聖杯戦争は大きく間桐が有利となるだろう。」 「それってもしもの話でしょ?」 「ああ。だがこのもしもで誰が得をするのかはハッキリとしたはずだ。」 「えっとつまり、これからどうするんですか?」 一人話から取り残されていた竜堂ルナが頭上にハテナマークを浮かべて問う。するとそれまで饒舌だったバーサーカーははたと黙った。 「こういった幻は内から強い力を加えればなんとかなるものだ。宝具か何かで……」 「サーヴァントを召喚して戦わせるような結界をサーヴァントの力で壊せるとは思えないんだけど。」 「……これは……打つ手が無い……いや!そんなはずは!」 詰んだ。 「あ、でも聖杯が溜めた英霊の魂が座に戻る時に孔が開くからそれを使えばここから出られるかも。」 「それだ!」 なんとかなった。 「そもそも孔が冬木の聖杯みたいに開くとは限らないんだけど。まあでも第二魔法ぐらい実現できるはずだわ。並行世界に行くのと同じ要領でここから出られると思う。」 「私としてはとりあえずは、その聖杯を確かめて見たいな。ところでその聖杯はどこにある。まさかこの世界の内側に無いなどと言うことはないだろうな。」 「……聖杯はサーヴァントが倒れるほど現れやすくなる。今回が第六次なら、御三家の遠坂の屋敷よ。」 言葉を濁すイリヤを無視してバーサーカーは顔をほころばす。イリヤがなにか言い淀んでいることはわかっているが、それを考えるのを後回しにしようとして、しかし彼女が悩む理由とは全く別のことでバーサーカーはイリヤが言い淀んだ理由を勝手に察した。 「遠坂は間桐と同盟を組んでいたのでは?」 「ええ。さっき飛び蹴りしてきた同盟。」 「……まさか、既に屋敷に奴らが……」 「それは違うわ。私が射ったのは遠坂邸とは明らかに違う。」 「となると、間桐の家か?なら遠坂邸は空いているということは考えられないだろうか。重要拠点を空にするのは危険も大きいが、御三家同士で同盟を組むのならそのぐらいのことは求められるもの、というのは願望が過ぎるだろうか。」 「そうだとしてもあっちは遠坂邸のすぐ近くよ、こっちが近づいていったらどうやってもバレるわ。」 「今だって私達の上にはアーチャーの使い魔が飛んでるもの。」 二人の切嗣の娘の言葉にバーサーカーは嘆息する。なんとか起死回生の可能性を見つけたが、気づけば彼女の危惧どおり他の御三家が障害となる展開になってしまっていた。だがここでヘタれるようでは魔王などと名乗っていない。 しばらくして、バーサーカーは唐突にニヤリと笑う。その顔はイタズラを思いついた子供のような顔であった。 「で、これ?」 「ああ。」 「説明して?」 「記者会見だ。」 「なんで?」 「決まっているだろう、嫌がらせだ。」 ある一人のマスターが凶弾に倒れたのとほぼ同じ時刻、柳洞寺のお堂はだいぶ様変わりしていた。避難民も住職もなぜか皆建物の外に出て、中にいるのは奇抜な服や奇妙な杖や珍妙な動物を有する者達ばかりだ。そう、彼らは魔術師であった。 ここで今回のバーサーカーの策略を説明しよう。バーサーカーの奇策、それは『他のサーヴァントの破壊工作への便乗』と『NPCの抱き込み』である。 まず『他のサーヴァントの破壊工作への便乗』、これはライダー、少佐の出した破壊工作の怪文書を自分が出したものとしてNPCの警察を脅迫するという手を取った。ライダーの怪文書にある夜15時という記述に想像がいくように夜の三時丁度に警察に電話をかけ、寺の森の一角をバーサーカーの魔術で燃やし盗んだ自衛隊の装備を写真で送れば、拍子抜けするほど非常に簡単に騙すことができた。爆破予告のあった七ヶ所中四ヶ所で爆破があり更にもう一ヶ所で爆弾が見つかったとなれば警察も動かざるを得ない、というNPCに残っていたライダーの破壊工作スキルの影響にも期せずして便乗する形になったのだ。 そして『NPCの抱き込み』、こちらはバーサーカーの原案に切嗣が手を加えることで記者会見という形となった。当初バーサーカーはそのカリスマでNPCを間桐邸にけしかけようと考えていたが、「お前では無理だ」と判断した切嗣により、彼の持つある情報で全く別のものとなる。それはNPCの魔術師の伝手であった。時計塔に聖杯戦争のマスターとして連絡をとると共にNPCの魔術師の名前を出せば、間もなく寺にいた避難民の中から魔術師と名乗る人間が名乗り出てくる。そしてそのまま魔術師達との情報交換という名の間桐遠坂同盟ネガティブキャンペーンへと移ろうというのだ。彼ら魔術師達を指揮することはできないが、流す情報を操作することでわかりやすい目標を与えることはできる。こうして今まで全く役に立たなかった軍略スキルと破壊工作スキルがついに日の目を見る時が来たのである。 「それだけではない。あの時計を見ろ。時間が十分早くなっている。これを利用すれば我々の動きを十分誤認させることができるのだ!」 「なるほど(単にライブではなく十分タイムシフトすれば良いだけだな)。」 「ふーん(ライブを遅らせれば良いんじゃないの)?」 「そう(意味あるのそれ)……」 「(それなんか意味あるのかな)……」 気がつけばだんだんと話が大きくなりいつの間にかマスター達皆で時計塔の回線で生放送をすることにになっていたりもしたが、概ね計画通りである。警察への脅迫も署内の人間の手引きで魔術師が侵入し更に効果を増す事ができそうだ。さすがに警察の装備を獲得するのは難しいが何かしら引き出せる物はあるだろう。 切嗣は缶コーヒーを飲み干すと一度境内に面する廊下へ出た。ドタバタとしている間に聞かされた氷塊というのはここからでもよく見える。ミサイルのようなものが氷漬けになっているのをなんとも言えない表情でしばし眺めていると、後ろからアーチャーの声が聞こえた。 「で、私はマスター役なわけ?」 「ああ。イリヤ、クロエ、ルナ、この三人でマスターとして会見する。僕が故人だと知っているNPCも多い。さっきの電話は暗示で一般人を喋らせたということにしておいてくれ。今何時かい?」 「今は、3時34分、違う、十分早いから3時24分。」 「ならあと6分で初めてくれ。魔術師達には20分遅らせて放送するように。」 「急ぎ過ぎてない?」 「時間が無いからね。この時差で釣り出されればそれで良しさ。僕達はまず大聖杯を抑えなくちゃならない。この聖杯戦争を調査するためにも、僕達が優勝したときのためにも。」 そして聖杯を破壊するためにも、とは言わずに言葉を切る。ここから先はあまりに変数が多すぎて予測など不可能だがなんとかしなくてはならない。 切嗣の元に警官が現れる。先の脅迫の結果、NPCからもう少し爆破予告犯らしく行動することが求めれていた。わざと警察を挑発するような行動が。 切嗣は最後に一度クロエを見ると参道ではなく森を降り始めた。 -58 01 のび太の聖杯戦争 「狂介さん!狂介さーん!!」 柳洞寺で記者会見が始まったのと同じ頃、のび太は深山町を走る。方角的にはこっちで合ってるはずだと信じ、人が隠れているであろう路地や物陰も丁寧に探す。声を上げ返事が帰ってくるのを待つ。無論それに答える声は無いが、彼はひみつ道具をライト代わりにして狂介を捜索していた。 彼の持つひみつ道具、テキオー灯は彼がドラえもんのポケットから引き当てた三つのひみつ道具のうちの一つだ。あとは銃型のイマイチ使い方が思い出せないものと、よりによってなんの役にも立たないものを引き当ててしまった。結果まともに役立っているのはこれだけ。直接戦闘に役立つものはゼロである。そのテキオー灯も使用経験が多いことが幸いして間桐邸の火災に使って切り抜けられたが、今は単純にライトとして使用しているに過ぎない。そしてそれももうすぐ電池切れになろうとしていた。 のび太が叫びながら走り回ること十数分。ついに息が続かなくなり公園の近くでへたり込む。深山町の南部は丘になっていて意外と体力を削られる。声を出して走ればなおさらだ。そして足を止めると思い出されるのは、狂介の最後の姿。凛の姿、美遊の姿と次々に出てくる。誰も彼もつい一時間前には共にこの聖杯戦争を止めようとする仲間だったはずだ。それなのになぜ…… 奮起して立ち上がろうとし、膝が上がらずまたへたり込む。もとより運動神経が悪いのび太ではひみつ道具の助けがあっても限界はある。そんな自分を情けなく思いながらも休むことしかできないと、自然頭だけ動いていた。 (美遊ちゃん……なんであんなことしたんだろう。) 頭に浮かぶのは、一番の疑問だ。凛の裏切りも、冷淡な慎二達も、彼の頭でだってなんとなく理屈だけはわかる。だが美遊だけは違う。全くわからない。故になによりも頭に残る。酸欠気味の脳でもそれを追い出すことはできない。 (うーん……なんか大事なことを思いついた気がしたんだけどなあ……) だがその答えを出すことなどのび太にはできなかった。美遊はなにかとても大事なことのためにあんなことをしたのだろう。それはわかるか、それだけだ。真相に辿りつくためのピースは、残念ながら彼の手元には無い。あの間桐邸に置いてきてしまったそれは、のび太を答えから遠ざけていた。いや、のび太から遠ざかったのだ。そして彼は近づいてしまった。この聖杯戦争で息を潜める仇敵に。 「スッゴい深刻そうだね。大丈夫?」 「うわあ!?」 公園の植え込みをひょいと飛び越すようにのび太の頭上に現れたのは、シュレーディンガー准尉だった。 どこにでもいてどこにでもいない、その特性を持つ彼は自在に場所を行き来できる。彼は間桐邸に伝令として戻ったところ慎二の発狂とのび太の不在を目撃し、こうして彼を『保護』しに来たのだ。 のび太からすればドラえもんとナノカを殺したことが濃厚な相手である。自然と身構えるが、しかしそれが無駄な抵抗だとはわかっていた。今の自分にはなんの武器もない。それでは吸血鬼どころか同い年の小学生とだって喧嘩にならないだろう。 だがそれでも負けてなるものかとのび太は立ち上がる。ドラえもんとナノカの意思は生きている。それを生かすも殺すものび太次第だ。止まらない限り道は続く。その道を歩くのは、誰でもないのび太だ。 勇気、蛮勇、熱意、決意、殺意。様々な感情がのび太の中で荒れ狂う。だがその行動は淀みない。准尉のホルスターから拳銃を抜きそのまま撃つ。それをワンアクションで実行せんとし、猛然と腕が伸び。そして。 銃を先に抜いたのは、准尉だった。 「――どういうこと……」 「うーんとね、良い事考えたんだ!」 ホルスターごと銃をベルトから外し、准尉は笑いながらのび太へと差し出す。手の中に重たい感触と寒気が拡がる。その外見年齢相応な笑みにのび太は言い知れない不安を覚えた。そしてその不安を増す言葉が告げられる。 「僕と契約して、マスターになってよ!」 -54 59 ヘラクレス、侵攻 「■■■■■■■■■■■■!!!」 「……っ!」 遠坂邸周辺の民家をなぎ倒しながら進むバーサーカー・ヘラクレスの振るう斧剣がランサー・カルナへと迫る。純粋な筋力をフルに活かした暴力はランサーといえど防御ではなく回避を選択せねばならぬものだ。カルナは回避の勢いを利用してそのままバレルロールのように回転し、バーサーカーの背中を狙う。ヘラクレスの異様とも言える反応速度を魔力放出による更なるスピードと技巧で上回り槍が深々と突き刺さ――らない。深度ゼロ、1mmもその槍はヘラクレスの表皮を破らない。 「■■■■■■■■■■■■!!」 雄叫びと共にカルナへと迫るは、ヘラクレスのカウンター。それを後方に飛ぶことと民家を緩衝材にすることでやり過ごすとカルナは炎で高度をとる。一秒前まで自分がクッションにしていた家がきれいにヘラクレスに整地されたのを見ると、そのカルナの目に光が宿る。宝具だ。 「『梵天よ、地を覆え』!」 「■■■■■■■■■■■■!!!」 絶叫しながら上空へと跳躍するヘラクレスの眼球にブラフマーストラが直撃する。瞳に捉えたのならば外すことはない、光速のAランク宝具だ。それを受けたバーサーカーはその眼球から脳、頭部を須く焼かれ――ない。そのまま何事もなかったかのように突っ込む。そしてカルナの防御の上から殴り飛ばすと未遠川の水柱へと変えた。 ヘラクレスのマスター、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン達柳洞寺の三組のマスターの遠坂邸奇襲より五分。ヘラクレスは都合三度殺されていた。 3時30分に始め45分に終えた記者会見から今までの約三十分間、マスター達はそれぞれ柳洞寺の森から山を降り(イリヤはルナに抱えられてだ)、警察車両によって密やかに遠坂邸へと接近していた。途中切嗣がカバーストーリーへの協力として深山町商店街での銃乱射などもさせられたりしたが、このことで魔術師達は聖杯戦争の損害をなんとかテロと警察に記憶処理をできると希望的に考えていた。もちろんそうなるといったい犯人は誰だという事になり、それが死んだはずの衛宮切嗣となれば彼らも非常に困惑しているのだが、そんなことは聖杯戦争全体から見れば些事だ。あまりに被害が大きすぎてとてもではないが死人一人にかまっていられない。まるでドラゴンボールのセルゲームがごとく全世界に生中継される聖杯戦争の前では単なるワンイベントでしかないのだ。そんなこんなで魔術師達からの追及も逃げ切り、切嗣はやたらと武装が充実したBMWを暗示をかけられた警官から『強奪』していた。 さて、ここで彼らの作戦を再度見直そう。基本的には彼らの第一の目的は『遠坂邸の制圧』であり、そのために警官や魔術師のNPCを利用している。と言っても指揮を執れるわけではないのだが、地元の名士であり魔術師の顔役でもある御三家の周りに理由をつけて人を集めることは簡単なことだ。なにせ御三家はこの神秘の世界的暴露を招いた『容疑者』である。またその御三家のうちの二つが焼けた間桐邸の地下に潜んでいるというのも良い。消防隊に紛れてNPCが立ち入ることが容易であるからだ。 だがここで三つ、彼らに誤算があった。 一つは間桐と遠坂ともう一人のイリヤが同盟を組んでいるという誤算だ。会見が終わる直前という微妙なタイミングでかかってきた間桐慎二からの突然の電話、記者会見に臨むイリヤから携帯を預かっていた切嗣に告げられた「孫悟空に話がある」という開口一番のハイテンションな発言。「なるほど、コイツはイカれてる」と思わず言いそうになった切嗣だが、自分達の動きが露見した可能性や何らかの符号の可能性も考えて慎重に対応していたら、強引に停戦を締結させられた。もちろん切嗣としてはそんな停戦に応じる気はさらさら無い上に慎二が本当に停戦するなどと全く思っていないが、圧倒的に有利な彼らからの提案をむざむざ跳ね除けるメリットはない。先のライダーキック以来、カルナにアルトリアに他二騎も抱えるのが遠坂間桐の同盟だという認識のままでいたからだ。 そしてもう一つの誤算は、遠坂凛ともう一人のイリヤが遠坂邸にいたことだ。彼らの認識としてはまさか凛が裏切っているなどとは思わない。三対四をわざわざ三対二対二にするなどというのはレアケース中のレアケースだろう。だがそのレアケースが起きた。彼らが四と思っていたのは聖杯戦争に勝利しようとする者と聖杯戦争を破壊しようとする者との呉越同舟、一枚岩どころか不倶戴天の敵同士である。そして彼らは自分達は間桐や遠坂に追い詰められていると考えていた。だがそれは間桐も同様であったのだ。その両者の判断ミスと情報の非対称が、奇妙な誤解に繋がった。 そして今から五分前。無人の遠坂邸をどう制圧するか相談していたマスター達の前で最後の誤算が発生する。それは彼らが意図しないNPCの行動だった。間桐慎二が色丞狂介捜索のために通報した警察、それは彼がちょうど一日前に補導された尾留川という婦警のNPCであったが、彼女には二つの情報源があった。一つは彼女の名刺を頼りに通報してきた慎二からの色丞狂介捜索の通報。実は慎二は凛への嫌がらせとして彼女が狂介の動向を知っているように電話のあとメールで送っていた。そしてもう一つは警察からの情報。こちらも切嗣の銃乱射やそれに引っ掛けて凛の安否が不明であるという魔術師サイド、つまりは切嗣達の意思が介在した情報源だ。その二つが交ざった結果、彼女の中で『二つの銃撃事件で関係者として名前が上がった人物』と凛のことが立ち上がってくる。そしてたまたま深山町側にいたというのと新人の彼女が混乱する指揮系統からまたも放っておかれるという偶然が続けておき、彼女の遠坂邸訪問という更なる偶然が発生したのだ。マスター達の思惑と冬木警察署の組織のいい加減さ、そして単なる「近かったから」という偶然、それらが重なり切嗣達の前に彼女が現れる。 そして婦警がインターホン越しに会話を始めたことで、切嗣は遠坂邸襲撃を決断した。ここが天王山であると認め、NPCと柳洞寺に残るルナのバーサーカー、ヒロに連絡を取る。まずヒロの破壊工作で敵拠点の動きを鈍らせ、その隙に切嗣達マスターはBMWを頼りに敷地内に突撃、その後動きを察知させないために寺に残していたサーヴァントを令呪で呼び出し、電撃的に敵サーヴァントを襲撃する。その間にマスター達は敵マスターを抹殺あるいは拘束する。これがその作戦の要旨だ。というかこれ以外に相手の対軍宝具をやり過ごす術がないので突っ込むしかないというのが本音だ。相手の索敵能力を高く見積もっていたからこそ、切嗣達は死中に活を見出す危険な手を合理的な作戦と判断して進んで行おうとしていた。 「■■■■■■■■■■■■■!!」 そして今現在、切嗣達の賭けは正に正念場だった。ヘラクレスは『梵天よ、地を覆え』の一回とそれで死んでいる間にされた槍での死体蹴りの二回の合計三回死んでいる。これで残機は残り三。そして得た耐性はカルナの槍と一番使い勝手の良い宝具。こうなるとカルナは更なる宝具を切らねばヘラクレスにダメージを与えられず、またヘラクレスも更なる宝具を切られれば今度は殺しきられる。この状況、辛うじて不利なのはカルナだ。ヒロやクロエでは手出しが難しい高速戦闘をし続けねばならず、宝具を使おうとすれば二人から攻撃が飛んでくる。半人半魔のスキルを持つヒロの炎はカルナをしても無視できぬものであり、またクロエの矢もその爆発は侮れない。一方のヘラクレスはそんなものお構いなしに戦闘できる。流れ弾が当たらないわけではないがそれは彼に耐性を与えることにほかならない。結果カルナだけが彼女達の攻撃まで防御しなくてはならない分、最初は押していたがじわじわと拮抗状態へと持ち込まれていた。 カルナは横目でクロエ達を見る。彼女達がいるのは、遠坂邸の屋根。彼の宝具を警戒してのことだ。これでは炎を使うことも難しい。では直接槍を、となるとあのヘラクレスをマスターのイリヤに近づけることとなる。それは避けねばならない。 「■■■、■■■■■■■ッ!!」 「――ゥッ。」 ヘラクレスの黒く隆起した筋肉が躍動しカルナを強かに打ち据える。槍と鎧があるにもかかわらず単純に痛い。鎧で再生したばかりの半身の動きの鈍さが、かわせるはずの一撃まで受けてしまう。そのままヘラクレスは、カルナの左肘を極めながらのしかかった。生前の美しいレスリングとは似ても似つかぬ荒々しい技だが、単純な筋力でカルナを地に沈め、だからその違和感に気づかなかった。ヘラクレスからしてもタフと言えるカルナが、その時だけやけに貧弱だったことに。 「日輪よ(ヴァサヴィ)、――」 槍の穂先が変形する。カルナはそれを自由な右足の指で操る。ヘラクレスを楯にし迫る炎と矢を耐える。そしてそれはクロノが美遊にそうしたようにヘラクレスの腹へと突きつけられた。 「――死に随へ(シャクティ)」 カルナの目に炎が揺らぐ。一泊後、冬木に光が満ちた。 -51 02 航空参謀赤城 カルナの第四の宝具がヘラクレスを貫いたその頃、遠坂邸の地下でも戦況は変化していた。 単縦陣でのセイバー・アルトリアとの反航戦。狭い地下と足の遅さも相まってマスター達の壁にしかなれないアーチャー・赤城と、それを楯にして銃撃するアーチャー・まほろ、その二騎に攻撃がいかないように矢面に立つキャスター・フドウであったが、既に開戦より十分弱経っている。そうなると不利なのは、赤城達だ。 「――はっ!ガハッ!?なんだ、体中が……痛い……」 (よし、戻った。) アリスは慎二が意識を取り戻したことを認めると、かけていた回復魔術を身体全体から令呪のある腕に絞る。そこにあるべき赤い痣は、既に一画使われていた。 赤城達がなぜ今遠坂邸で戦っているかというと、それは同盟内での議論の結果だった。結局慎二の暴走後彼がしたことは、ヘラクレスの方のイリヤへの電話とNPCの警官の電話のみである。それ以外は何もしていない。会話らしき会話もゼロである。そうして十分近くに渡って沈黙が支配する無為な時間が流れたことで、赤城は独自の行動を求められることなった。まずはアリスからの念話による求めにより18機6編隊の零戦の内5編隊をアリスの家に向かわせ、彼女の家から人形を取ってくるという任務だ。実際には鞄の封印さえ外せば後は自立して大型の物はアリスの元目指して動き、小型の物はそれについて動いてくるのでこれだけの大編隊で行くことは意味が薄かったが、期せずしてそれはカルナの目に留まることとなった。そして残る3機は、それぞれ冬木上空を旋回しての情報収集である。撤退したヘラクレスの方のイリヤ達や裏切った凛、出て行ったのび太の捜索を行っていたのだが、その際に新都からの発光信号を認めた。最後の大隊の吸血鬼達からの合流を望む連絡だった。 ここでアリスは悩んだ。今のこの状況が続くのならば、アリスも離反してミレニアムと連携を深めるというのは悪くない選択肢だ。そうでなくとも彼らの戦力は魅力ではある。まず彼女はここで手札に一枚ワイルドカードを加えた。 また赤城は、まほろからのび太捜索を発光信号で頼まれていた。先の零戦の旋回ものび太捜索を一つの目的としていたが、こうなるとなおさらである。結果赤城はミレニアムにのび太捜索を依頼することとなった。独自の行動を模索せざるを得ないアリスによって、間桐邸での存在感が減っていた彼らは再び表舞台に登る機会を得た。 以上が赤城のここ最近の聖杯戦争の動きであったが、しかしこれらは赤城らが遠坂邸に殴り込みをかける直接的な理由ではないだろう。彼女がやったのは少しばかりの航空隊に指示を出しただけだ。ではなぜ彼女らは遠坂邸に殴り込みをかけたかというと、それはなんてことはないショボい理由、すなわち『間桐邸が火事だったから』に尽きた。 クロエの攻撃より一時間。起こった火災は既にかなりの大事になっている。残っていた家屋も大部分が倒壊し、今も消防隊の懸命な消火活動が行われている。もちろんそれには間桐邸の中に踏み込んでの住人の捜索も含まれた。 さてこうなると一番神経質になるのが慎二である。自宅を燃やされ、しかも外部の人間が踏み込んでくるなど今の彼にとっては看過できないものだ。また彼のキャスター・フドウが告げた「NPCに魔力を持つ者がいる」という報告も彼を追い詰めた。これは切嗣達がけしかけた魔術師達を察知してのものであるがもちろんそんなことは慎二は知らない。ただ彼としてはどうやってこの地下に踏み込ませないか、もし踏み込んだらどこに逃げるのかを考えるのみだ。 「風王(ストライク)――」 「カァァァン!!」 「――鉄槌(エア)!!」 「そこっ!」 「っ!やるな!」 フドウの妨害に体制を崩しながらもアルトリアが放った風王鉄槌が、まほろが放った輝ける闇に解けるように消える。高い直感と技量でその射線から逃れた彼女の後ろには、今赤城達がいるトンネルと同型の穴が開いていた。 これぞ赤城達が今ここにいる理由である。まほろの宝具『輝ける闇』は、その威力と操作性は折り紙つきだ。加えて魔力消費はゼロである。傷つき疲弊したまほろでも使うと決意さえすればどうということはない。彼女はこの宝具を交渉材料に慎二に持ちかけたのだ。「ここから誰にも見つからずに脱出する方法がある」と。その方法こそ「同じ町内にある遠坂邸まで宝具で岩盤を刳り貫いてトンネルを作る」というものである。新都で美遊と合流した凛より先にこっそり遠坂邸に行き乗っ取ってしまおうというのだ。この方法ならカルナの眼力もやり過ごしてとりあえず安全な場所を確保できるし、遠坂邸を使えなくすることもそこから別の場所に避難することもできなくはない。それに少なくとも救急隊員に付き添われてここから出ていくハメにはならないだろう。そして迷う慎二を後押しする理由もあった。カルナとヒロによる砲戦の発生である。ヒロの発した魔界粧・轟炎は遠坂邸だけでなく間桐邸まで巻き込んでいる。フドウの陣地により損害は軽微だが、慎二を脱出に向けてパニクらせることには成功していた。 そして現在、空き巣に入ったら居留守を使っていた住人と出会し戦闘となっていた。実はまほろが脱出案を提案した時には既に凛達が家に帰っていることを赤城は航空偵察により知っていたのだが、アリスからの命令により黙っていた。アリスとしては一戦闘で一令呪を切らねばサーヴァントを戦わせられない慎二に付き合うなどデメリットが大きい、もうそろそろ相手の一騎か二騎のサーヴァントと差し違えてほしいと思っていたからだ。適当に慎二組をぶつけて後は柳洞寺の同盟に乗り換える。劣勢でも彼女だけならば転移もできるのだ、最悪赤城を殿軍にして後で令呪で呼び出そうという腹積もりであった。だが、残念ながら彼女のあては外れた。こちらはサーヴァント三騎にマジックアイテムも有しているのに、相手のセイバー一騎落とせる目処も立たない。それどころかこの戦闘で間桐の同盟は全滅しそうですらある。そしてどうやら柳洞寺の同盟も遠坂邸を攻撃している。こうなった以上勝ち目のない相手に勝たねば各個撃破されて終わりだ。 『急ぎ過ぎてたかしら……アーチャー、この場から貴女の力で脱出することはできる?』 『……戦艦としての私になれば、建物を壊すことになりますが、可能です。』 『そう。考えておいて。』 そしてここで、アリスは聖杯戦争を自分の優勝で終わらせる決意をした。 赤城が空母としての真の姿を表せば、この屋敷のマスター達はその巨体に圧殺されるか瓦礫に埋もれるかでまず死ぬであろう。そしてもしこの屋敷に全てのマスターがいるならば、それだけで優勝の目処が立つ。そして今、この聖杯戦争でサーヴァントを従える七人のマスター全員がここにいる。もしこれを止めようとすれば赤城の高い耐久を抜くほどの一撃が必要だが、それを振るえるのはまほろのみだ。他のサーヴァントはその余りの威力に室内で撃てば建物を倒壊させ自らのマスターを殺しかねない。故にここはまほろをその行動に賛同させれば勝利である。 アリスは片手間に慎二を治癒しながら携帯を手に取る。慎二に更なる令呪を切らせる、吸血鬼達をこの鉄火場に呼び寄せる、赤城に宝具を使わせる、様々な手札がある。彼女はそのそれぞれのカードを吟味しながら戦況を見守った。 -46 06 イリヤのパパはパパじゃない アリスが四騎のサーヴァントが渡り合う遠坂邸の地下で方針の転換をその内心で行っていた頃、遠坂邸の地上部の玄関では四人のマスターが睨み合いを続けていた。 一人はイリヤスフィール・フォン・アインツベルン。 一人もイリヤスフィール・フォン・アインツベルン。 一人は彼女達の父親の衛宮切嗣。 そしてもう一人はイリヤ達と無関係な竜堂ルナ。 その四人は、切嗣を中心に三角形になって話し合うことになっていた。議題は切嗣の手に持たれる一丁の拳銃。そしてそれが向けられるのは、彼の顎。 「もう一度言う。」 緊迫の表情を浮かべるイリヤ達に向けて切嗣は言った。 「全員動くな。動けば僕は自殺する。」 玄関前で出会いそれぞれにサーヴァントを展開するイリヤと柳洞寺の三組は、サーヴァントがその屋外で戦う一方でマスター達は玄関内での戦闘になっていた。反射的に魔力弾をもう一人のイリヤへと撃ちながらイリヤは後方に下がる。それをもう一人のイリヤは髪から生み出した使い魔で防ぎ反撃し、ルナが一息でイリヤへと距離を詰める。そして切嗣が一人反応が遅れ、それを見たイリヤは切嗣への接近のために着地した足を前に向ける。亜音速でルナとすれ違うと、イリヤはもう一人のイリヤと切嗣を挟んで向かい合った。 「梵天よ、地を覆え」 「■■■■■■■■■■■!?」 「アーチャー!屋敷を背にしろ!」 「言われなくたって!」 開け放した玄関からはサーヴァントの激戦が音と土煙としてマスター達に届く。しかしそれを衛宮家の人々は感知しない。匂いも衝撃もヘラクレスの魂が削られていくのも無視して凍りついたように見つめ合う。一人ルナが困惑しながら「バーサーカーさん、頑張って!」と令呪を切り、とりあえず廊下の角で立って見守ることとした。 「イリヤ、なぜ君がここに?ここは遠坂の屋敷だろう?」 「■■■■■■■■■■■■■!!」 「どいてパパ、なんで私の偽者といるの……!」 「バーサーカー!街を火事にする気!」 「偽者はそっちでしょう、二次創作(クローニング)されたのか並行世界(スピンアウト)の私かは知らないけど、このキリツグは私のキリツグよ。」 「■■■■■■■■■■■■■!!」 「っ!!ルビー!!」 「そっちも矢の爆風をなんとかしろ!この屋敷を壊す気か!!」 「イリヤさんクールに!この偽イリヤは凛さんみたいに並行世「■■■■■■■■■■■■■!!」うるさいなサーヴァント!ちょっと黙らせてもらって言いですか!」 爆炎と爆風と咆哮が一同の鼓膜を揺らす。互いの声は殆ど聞こえない中、ルナが壁を走って玄関を閉める。気休めにしかならないが、一応会話できる体制が整うと、改めて二人のイリヤは睨み合う。違いがあるとすれば、互いの使い魔と武器が互いだけでなく切嗣に向いたことだ。 『姉さん、凛から事情の説明を求められています。』 『事情なんて私がわかるわけないじゃないですか!なんなんですかこれ!』 「パパ、パパも、並行世界のパパなの?」 「だからそう言ってるでしょ。」 「貴女には聞いてない!!」 「落ち着いてくれイリヤ。」 「「落ち着いてる!!」」 「うわあ息ピッタリ。」 「鏡に向かって話してるみたい……て杖が喋った!?」 「あそのリアクション今いいです。」 「リ、リアクションって――」 切嗣を挟んでのイリヤとイリヤの戦いはヒートアップする。それに合わせるように扉を挟んだ遠坂の庭園では、カルナが宝具でヘラクレスを蒸発させながら宇宙空間まで弾き飛ばしていた。余波で扉ごとルナが弾き飛ばされ、それに巻き込まれてイリヤ達三人もまとめて吹き飛ばされる。いち早く意識を取り戻したのは、イリヤだった。だが切嗣にイリヤと共に抱きしめられるようにのしかかられていて身動きが遅れる。その数秒の遅れのうちに意識を取り戻したのは、イリヤの次に殴られ慣れているルナだ。爆風で壁に突き刺さっていたルビーを魔法少女の杖のようなものと判断してとりあえず抑える。そして同様に飛び散った銃や手榴弾を暴発したら大変と片っ端から集め家の外に投げようとしたところで、彼女の体は再び吹き飛ばされた。 「な、また私の偽者……!」 「イリ、ガハッ、アンタタタ、折れてるなこれ……ルビー?治せる……」 「今度は私のことを知ってるイリヤさん?イリヤさんのバーゲンセールですかね。」 「バーサーカーさん!!起きて!!」 「うぅ……はっ!?バーサーカーとの魔力パスが、消えた……?」 「――マスター、これはどういう状況だ。」 遠坂邸の外壁をぶち抜き弾丸のように突っ込んできてルナにぶち当たったのは、ヒロとクロエだ。ヘラクレスを屠ったカルナに秒殺された彼女達は、引き続き建物を背にして戦うもクロエ一回のヒロ三回の合計四回のカルナのキックなどで戦闘不能に追い込まれていた。三発ももらったヒロなど気絶している。 カルナはイリヤの変身が解けているのを認めると、イリヤへと槍を向けた。状況が良く飲み込めないが、まずイリヤは間違いなくイリヤの敵だ。となれば、ひとまずイリヤの安全を確保しイリヤを攻撃すべきである。だがそこに更なる乱入者達がエントリーした。 「凛さん!!」 「今度はだ――のび太だ!?」 「のび太ってあのドラえもんの――のび太だ!?」 「のび太……のび太!?」 それは野比のび太だった。准尉の考えた良いこととは、鉄火場にのび太を特攻させるということだった。准尉の知る彼とはだいぶキャラが違うが、頭はそう良くないと踏んで「狂介の居場所を凛から直接聞けば良い」とそそのかしたら、何かに取り憑かれたように凛の元へと走り出したのである。 そして彼には戦鬼の徒に着けられている発信機が持たされている。これで砲撃を誘導する、などということも考えていた。マスターとしての使い道が薄く後一時間で夜明けがくる以上、最後に派手に盛り上げる素材になってもらおうというのだ。 遠坂邸に吸血鬼が迫る。これで正真正銘、全てのマスターとサーヴァントが遠坂邸に集まる。直径100メートル程のところに延べ500近い者共が集う。その踏みしめる瓦礫と拡がる火災が竹林へと変わっていくなかで。 「これは――」 「『三輪身――正法輪身』」 そしてついにキャスター・フドウの宝具が振るわれた。 -5 55 ビターピース キャスター・フドウがいつからこの聖杯戦争の幕の引き方を考えていたかというと、そのタイミングを正確に述べることは難しい。同盟が破綻した時か、『必勝法』を知った時か、本戦が始まった時か、予選の間でか、あるいは間桐慎二に召喚されたタイミングでか。 だが彼が動くタイミングを予想することは簡単であった。彼が自ずから動く時は、常に必要性に迫られてのものであった。その言葉も行動も、常に必要か否かが基準である。ではそんな彼が、聖杯戦争を止めえる方法と、それに従わせる方法の二つを有したらどうなるだろうか? 七人のマスターと七騎のサーヴァント。フドウがセブンセンシズで把握するその位置は、重なる偶然に導かれひと所になる。その運命を引き寄せたのは決戦を望むサーヴァントの意志と、聖杯戦争打破を望むサーヴァントの意志、そしてそれぞれの思惑で動いたマスターによるものに他ならない。加えてこれだけはフドウにはどうしようもなかった魔力の問題も、慎二の令呪によって解消される。運命からなされた必然的行為は、彼という男をマスターの魔力不足で動けぬ地蔵から必要とあらば剣を取れる明王へと変えていた。この聖杯戦争最後の重戦車にガソリンが注がれたのだ。 フドウには、一同に会したマスター達に『必勝法』を、すなわち『死者を出さない形での聖杯戦争からの脱落』を強いることは彼にはできない。だがそうせざるを得ない状況に追い込むことはできる。固有結界・三輪身が一つ、正法輪身。その竹林が拡がる世界では、全ての人間の心を鎮め闘争の意欲を無くさせる。まさしく聖杯戦争という儀式そのものを冒涜し叩き潰す、対聖杯戦争宝具とでも呼ぶべきそれ。そこに七組のマスターとサーヴァントを捉えることができれば、もはや聖杯戦争の続行など不可能であった。対軍宝具もここでは、振るわれる前にフドウに阻まれる。それ以前にまともに武具を持つことすら、ここでは許されない。唯一単独でこの世界を砕けるのは、マスターからの妨害も魔力不足による問題も無視できて宝具を放てるまほろだけだが――もちろん彼女にそんなことをする気は無かった。 「さてみんな……結論を出そうか。」 全身を激痛に苛まれながら目だけはギラついて、慎二は多幸感に満ちた手を広げてマスターとサーヴァントを見回した。既にその手に令呪は一画もない。この固有結界の発動とその効果によるリラックス作用で、彼の発狂はかなり低減している。ついに、ついに彼は勝利したのだ。試合には負けたがそんなことはどうだっていい。聖杯戦争そのものを聖杯戦争に則って不成立にさせたのだ。これは勝負に勝ったと言って良いだろう。全員をキャスターの支配下に置いた、という勘違いだけで彼はもはや満足している。そんな彼からすれば後は帰るだけであり、つまりは必勝法の実行だけが残る行動だ。 「私も必勝法には賛成です。」 魔力切れを起こしながらも、まほろもそう言って慎二に賛同する。この場でこの結界を魔力切れ以外で破壊できる彼女は、聖杯戦争打破の何よりの急先鋒だ。聖杯戦争続行の切り札が、聖杯戦争続行における大なる脅威だ。 「僕も必勝法に賛成。」 つづくのはのび太だ。まほろ同様聖杯戦争の参加者としては脱落しているが、それゆえに彼も聖杯戦争続行を希望するメリットが薄い。そして何より、彼の聖杯戦争打破の決意は、まほろに匹敵するほど硬いものだ。 「私も必勝法に賛成。」 「私もです。」 アリスと赤城も続く。一時は離反も考えたが、フドウがこんな切り札を持っていたとなれば話は別だ。全面的な協力もやぶさかではない。今もアリスはフドウへと魔力供給を引き受け、その令呪までをもこの結界の維持のために使って見せている。そして赤城もまた、アリスの願いが叶う瞬間が目前となった以上、固有結界の効果以上にリラックスして賛同していた。 「僕達も賛成だ。この聖杯戦争には異常な点が多い。僕達の脱出にのみに使うべきだろう。」 「もちろん私もね。これで、六組中三組が賛成ってことになるわ。」 間桐の同盟に続きアインツベルンの同盟からも賛成の声が上がる。彼らは必勝法の情報を入手すると、二三の要求をしたのみで全面的に協力すると表明した。もとより彼らの大聖杯出現地の確保という目的は形を変えて達成されている。そして他の組もこの聖杯戦争からの脱出を考えているのならば、協力しない手はない。ただ自分の娘のために、「イリヤスフィール・フォン・アインツベルンとクロエ・フォン・アインツベルンの組み合わせが小聖杯としての機能上良い」と眉唾ものの説明をしていたが、これを多くの対聖杯派に飲ませることにも成功していた。イリヤ以外のサーヴァントを有するマスターは全員令呪を使い切り、クロエは令呪によって叶える願いを「この聖杯戦争の参加者全員の原状復帰」へと強制され、またイリヤに強制することとなる。 「アインツベルンの代表として、私も必勝法を受け入れるわ。」 そしてその談合による優勝候補の一人、サーヴァントを召喚して行われる第四次聖杯戦争が起こった世界のイリヤも、若干難しい顔をしつつ賛意を示す。彼女としてはこのような聖杯戦争の幕引きに思わぬところは無いわけではないが、ヘラクレスを失った彼女に取り得る選択肢自体殆どない。そしてそうでなくとも、この聖杯戦争の異常は彼女が一番理解している。冬木の第五次聖杯戦争を優先しなくてはならないという義務感、を言い訳に彼女は賛意を表明していた。 「私達も賛成です。偽物の魔法のランプなんていりません。」 「そういうわけだ。さて……これで六組中四組、過半数がこの聖杯戦争を終わらせることに合意したわけだが……どうする?」 そして一人、この場でも変わらず動けるヒロはその大鎌、『ゲート・オブ・ヘブン』を遠坂凛の首筋に這わせて問いかけた。 彼女の持つスキル、戦の作法。対軍宝具の須くに高い耐性を持つそれを有する彼女は、この場ではまさしく死神だ。その性質上フドウ自身も攻撃が難しいこの静謐なる竹林で、彼女だけはなんの障害もなく行動できる。言うなれば、フドウが丸腰での話し合いを強い、ヒロが全員の殺生与奪を握っている状況だ。 つまるところ今行われているこれは、単なる儀式であった。フドウとヒロの共闘が成った時点で、他のサーヴァントの勝ち目は限りなくゼロである。もし仮に生き残っている者全てで二人を止めれば勝機もあるが、この場でそんなことをしようとするのは既に僅かに四人、つまりアルトリア達とカルナ達だけであった。 「……私達がYESって言ったら?」 「令呪を全て破棄、または譲渡し、サーヴァントとの契約を切ってもらう。そうすれば、聖杯によってこの聖杯戦争は無かったこととなるだろう。」 「NOって言ったら?」 「お前達の魂を冥界に送り私達で必勝法を実行する。私の鎌で斬られた魂がどうなるかは保証できないが、つまり結論は変わらない。」 「お前が殺した狂介も、カチコチになってるクロノも、まとめて無かったことにしてやるよ。」 慎二の言葉にピクリとカルナの横にいるイリヤが反応する。それを見て、凛は大きく息をついた。 自分はどこで失敗したのか。凛はこの空間に囚われてから幾度したかわからない自問自答をする。まさかこんな展開になるとは予想だにしなかった。というかこんなエンディングを予期できる人間がいたなら教えてほしい。世界そのものを塗り替えて理屈を押し付けてくる宝具に、その宝具の影響を受けないスキル。セイバーやカルナの宝具もなかなかのズルだと思うが、ここまで荒唐無稽ではもはや乾いた笑みしか出てこない。あの騎士王を引いても、施しの英雄を引き入れても負けるとは。そう自嘲する一方で、頭のどこかの部分では冷静に次の聖杯戦争について考え始める。聖杯というからには、原状復帰程度は当然にできるであろう。となれば、自分はまた聖杯戦争に参加する。きっとそうなる。なら、その時自分はどうするかだ。 「ごめん、セイバー。ここまでみたい。」 「いえ、リン。私の力不足です。どうやら自分がぬるま湯に浸かっていたと気づかぬほどに、私は弛んでいたのでしょう。」 凛の事実上の降伏宣言に、アルトリアは言外に追認した。その言葉通り、彼女はこの戦争を見誤ったと痛感していた。特に見誤ったのは、聖杯戦争を止めるというその意志だ。ただの妄言の域にあり実現性は無いと、どこかで判断してしまっていたのだと自戒する。自分が聖杯を手にしようとするのと同じ程にこの戦いを止めようとする人間の覚悟を、甘く見たのだと。 「キリツグ、またも私は、貴方にしてやられたわけか。」 「……セイバー、君は少し真面目すぎるんだ。そこのバーサーカーを見習えとは言わないがね。」 「……!?そうか、そうだったか……」 「……なーんか、セイバーから聞いてたのと人柄が違うわね。」 「僕は、こういう人間だよ。さて……イリヤ。」 「っ!!」 残るは、カレイドステッキを操るイリヤとカルナのみだ。 イリヤは切嗣からの視線を避けるようにカルナを見る。その目はこの世界の中でも静かに炎を湛え彼女を見つめ返す。彼はいつだって、彼女の行動を認めるだろう。 イリヤは手の中の二本のステッキを握る。わかっている。もはや選択肢は無い。そしてそれ以前に、戦う意味はない。この聖杯戦争での終わり方として、彼女が望む勝利の形として、理想の形は何か?それは、彼女の世界の凛や美遊と共に帰ることである。そして今、その願いを叶える一助への協力を求められている。ならば。 「――賛成します。私も、賛成します。」 「なら我もだ。」 「わかったわ、私も。私も賛成する。この聖杯戦争は、これでいいわ。セイバー!」 「……この聖杯では私の望みは叶えられないと判断します。よって、賛成です。」 ここに最後の賛同者が現れる。生き残った六組のマスターとサーヴァントの全てが、聖杯戦争の話し合いによる集結に合意した。 -00 00 00 2014年8月2日(土)5時9分30秒 「おっ、いらっしゃいませー。」 その人物ーー便宜的に彼と呼ぼうーーが最初に見たのは青い髪の少女が事務用らしいデスクの前でにこれまた事務用らしいイスに座って煎餅を食べている光景だった。 白一色の廊下。そこにデスクを挟んで立っている彼の顔を見ると「おぉっ!?もしかしてもしかすると‥‥」などといって少女は古めかしいMacを操作する。「とうとうあの世界から」とか「でも勝ち残れるかなー」とか「まあ予選次第かな」などと一人で呟いている。それに彼が困惑して声をかけようとしたとき、これまた古めかしいPHSが音を立てた。 「モッテイーケッサイゴニッワラッチャウーノワッアタシノハッ↑ズッ↑ピ。あ、もしもし?そっちもういれちゃっていい?うん、うん、なんかペース早くなってきたね。うん、そろそろルーラーさんにシフト代わるよ。んじゃねー。」 懐かしの着ウタならぬ着メロを響かせたPHSを切ると少女は彼に向き直りニッコリと笑う。 「おめでとうございます!こちらは第1回ムーンセル聖杯戦争受付です!詳しくはこの廊下の突き当たりにあります面接会場でご説明致します。あ、それとパンフレットどうぞ。」 そう言うと少女はデスクに山積みされた二つ折りの冊子を彼に渡した。 彼の困惑は深まったが別の場所で説明するといわれて素直に従おうとするのは彼の性格によるものかそれともこの異様な空間がそうさせたのか。 とにもかくにもデスクの横を通りすぎて彼は廊下を進み始める。少女の後ろにある段ボールーー中には手に持っているのと同じパンフレットがぎっしりと、恐らく百枚単位で入っている。それが何箱もあることを考えると千枚はおろか一万枚は下らないだろう。ーーに足を取られながらも進んでいく。 だが、いくら歩いても廊下には終わりが見えず同じ光景が続いている。 自然目線は彼の手にあるパンフレットへと向いた。 『第1回ムーンセル聖杯戦争~最強のマスターは俺だ!~』というタイトルの下で全身を金色の鎧で身を包んだ男がアルカイックスマイルで脚組みしている写真が表紙だ。タイトル以外には『七番目のサーヴァントクラス決定!バーサーカー対ビースト完全決着!!』とか『スキルエラッタ プロトタイプルールとどこが変わったの?』とか『不動明王の英霊問答 第一回ゲストは仮面ライダーディケイドさん』とか『ついにあのエピローグが投下!?』などの煽り文句が並ぶ。 ページをめくると、左のページは七かけ二の十四のブロックに分けられていた。左の列にセイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、アサシン、バーサーカー←NEW!と並びクラスなるものの簡単な紹介文が書かれている。右の列にはスキルなるものが存在し、それぞれがどういった効果を持つのかが書かれていた。なかでも対魔力は太字で書かれていて、『魔力の代わりとなるものを用いた攻撃にも対応しました!』などとアンダーラインまで引いて主張している。 そして右のページの英霊問答というやたらきらびやかでこころもち材質も違うページを読もうとしたとき。 ! 今までなかったはずの扉が目の前にあった。 振り返れば白い廊下が延々と続きその果ては見えない。どうやらこの扉を開けるしかないようだと彼は悟ると銀色のノブを廻して部屋へと入った。 「お待ちしておりました。」 部屋へと入った彼をイスに座って迎えたのは黒髪の青年だった。どうぞこちらへ、という言葉と共にパイプイスを指される。彼は先ほどと同じようにデスクを挟んで青年と向き直った。 「上級AIのルルーシュ・ヴィ・ブリタニアと申します。」 そう言って頭を下げるとルルーシュは「規則ですので 価値 の測定を」というとその目に謎の紋様が浮かびすぐ消える。 彼はここがどこか、聖杯戦争とはなにかを尋ねる。それを聞いた青年、ルルーシュは一つ一つ説明を始めた。 「聖杯戦争とは今回我々『第1回聖杯戦争実行委員会』が主催を勤めます『第1回ムーンセル聖杯戦争~最強のマスターは俺だ!~』の略称です。」 「聖杯戦争は聖杯、つまり願望器の所有権を奪い合う戦いです。参加者の皆様には聖杯が再現した英雄をサーヴァントというプログラムとして操り、そのマスターとして最後の一組になるまで戦っていただきます。そして最後の一組には我々『第一回聖杯戦争実行委員会』から聖杯の所有権を譲渡いたします。」 「次に聖杯について説明します。聖杯は量子コンピューターを魔術的概念によって運用している自動書記装置です。地球が誕生してから地球に関する情報を全て記録しつづけています。それによって過去の英雄を再現することができるのです。」 「英雄を再現する際、一定の書式に基づいて再現されます。お手元のパンフレットの2ページを御覧ください。当聖杯戦争ではその七種類の書式に基づきサーヴァントという形で再現いたします。」 「マスターはサーヴァントを令呪と呼ばれるプログラムを用いることで使役できますが通常サーヴァントは自由意思を持ちます。サーヴァントの行動を強制させる場合令呪を一画以上使用してください。なお、一人のマスターには三つの令呪を予選参加時に支給いたします。令呪を全て使いきる、またはサーヴァントを失う等した場合マスターのデータは失われます。」 「今回、記念すべき第一回目の聖杯戦争を行うにあたりまして広くマスターの参加を募りました。有形無形問わず様々な伝達手段を試した結果、我々の予想を大幅に越える参加希望者が現れました。ですが、一度に適正に管理できるサーヴァントの数には限りがあります。そこで当聖杯戦争では臨時に予選を開催することになりました。」 「予選会場は『札幌』『仙台』『東京』『名古屋』『大阪』『高松』『博多』の七つの臨時サーバーで行われます。会場はそれぞれサーバー名の都市を再現しており、現地に配置されたエネミーを撃破することなどで本選参加のマスター及びサーヴァントを決定いたします。」 「お手元のパンフレットの四ページを御覧ください。そこに書いてある番号が参加希望者のIDです。参加希望者は聖杯戦争に道具を持ち込むことができますが、公正を期すために一度だけ元の世界に帰ることができます。その際再び聖杯戦争に参加するためにはお手元のパンフレットが必要です。また元の世界での準備期間は二十四時間とし、それ以上時間が経過した場合パンフレットが自動で消滅しますので遅れることのないようお気をつけください。また持ち込む道具は手に持てる範囲でお願い致します。浮遊、飛行できる物は持ち込む際それらの機能を無効化して検査いたします。ご了承ください。」 「参加希望者は予選開始まで一時データを凍結させていただきます。その後解凍の際一時的な記憶障害を起こす可能性がありますがただちにデータに影響はないものと考えられます。ご了承ください。」 「聖杯戦争のルールは事前に参加者への予告なく変更する場合があります。ご了承ください。」 「当聖杯戦争における参加者間のトラブルに『聖杯戦争実行委員会』は一切責任を持ちません。ご了承ください。」 「それでは遠坂凛さん。一時元の世界に戻られますか?もしくはデータの凍結に移りますか?」
https://w.atwiki.jp/2jiseihaisennsou/pages/124.html
人物詳細 「ベルン動乱」と呼ばれる大陸全土を戦渦に巻き込んだ大戦争を引き起こし、 後世のエレブ大陸史において永劫にその比類なき悪名を轟かせる「反英雄」。 元々は誰よりも家族を思う心優しい少年であり、将来を嘱望されていた大器だったが、 保身と嫉妬により己を狙い続ける暗愚な父親の凶行に、常日頃から思い悩んでいた。 だが後に周囲の圧力に押され、和平を強いられた父王が今度は己に毒を盛り、 暗殺に失敗するな否や、更には己を匿った部下や母親の生命まで狙い出す。 その人間の醜悪さに絶望し、結局は毒に冒された身体をおして父王を暗殺する。 ――その日を契機に、彼は人を信じる事を放棄した。 即位後は封印を解いた「魔竜」が生み出す戦闘竜達を用いた武力によって、 人が人を支配する世を終わらせ“私”なき存在が世界を統制する 公正で静寂に満ちた世を作り出そうと目論んだ。 一度は大陸全土を制圧しかけるも、戦況はリキア公子ロイの活躍により大逆転。 本隊は壊滅し、ベルン王宮にまで攻めいられた所を聖杯の召喚を受けここに至る。 その所業だけを見れば狂王アシュナードとほぼ同一であるが、内面に渦巻くものは真逆。 そして聖杯に対する願いも真逆であるため、最終的には敵対せざるを得ない関係にある。 ――ゼフィールは他のマスター達とは違い一切の電脳を通じず、 聖杯に渇望が届きムーンセルの聖杯戦争にマスターとして召されている。 だが、それは決して無償で行わる程ご都合主義という訳ではない。 彼の渇望を聖杯にまで届かせ、ムーンセルへと送り込んだ存在は「世界」。 つまりは生前のアルトリアと同じく彼は世界と契約を交わし、「死後英霊となること」と引き換えに 本来死すべき運命を棚上げし、聖杯戦争に参加する事が出来たという訳である。 ただし、ゼフィールは純正の英雄であるアルトリアとは違い、その所業は酸鼻を極める凄惨なものでしかない。 故にこの契約は「世界が渇望を満たす道のりを示す事と引き換えに、死後(反英雄として)永劫呪われた存在へと堕す」 凄まじい代償を意味していた。当然、エレブの覇王はそれを承知した上で世界に魂を売り渡した。 ――すべては、世界を解放するために。 アシュナードが彼に詳しいのも道理で「英霊の座」からの知識で 「反英雄としての未来のゼフィール」を承知していたからである。 死後一つの世界で頂点の反英雄となるような逸材は、マスターとしてはこの上ない適任者であるが故に。 そして、近い世界観のものであれば、無知ゆえに寝首をかかれる危険性も減じるであろうから。 だがゼフィールは聖杯戦争において落命し、その魂は「英霊の座」なる永劫の牢獄へと囚われた。 彼は本来あるべき道とは違う道を歩み、死すべき運命と世界の変革を「周囲を踏みしだきながら」それを望んだ。 だが、その運命(Fate)を変えることはついに叶わなかったのである 特殊な能力 その巨大な体躯を活かした剣術の持ち主。 佩刀エッケザックスを振り回すのみならず、状況次第で封印の剣との二刀流をこなせる。 身体ごと回転して大剣を振り回しながら、突進して敵対者を蹂躙する彼の奥義 「王者の劫渦(バシリオス・ディーネー)」は、言うなれば対人魔剣に相当する。 ゼフィールはその特殊な背景ゆえ、マスターでありながら英霊を殺害可能な宝具を二つ所持している。 具体的な性能は下記を参照の事。 【宝具】 エッケザックス ランク:A→C 種別:対人宝具(対竜宝具) レンジ:1〜3 最大補足:1人 人竜戦役時、種の存亡を賭けて人類が竜に対抗する手段として 魔力により造り出した八つある『神将器』の内一つ。 エレブ大陸の『八神将』のリーダー『英雄』ハルトムートが所有していた可変型の大剣。 当然のごとく、最高ランクの宝具特性を持つ現存する聖遺物である。 竜退治の逸話を持つため、竜属性を持つ者に対しては追加ダメージを負わせられる。 本来の性能は濫用すれば天変地異を引き起こす可能性すらあったものだが、 蓄えた魔力を失われた『秩序』の回復の為に全て解放してしまったため、 現在ではランクが著しく低下している。 (逆を言えば魔力さえ与えれば本来の威力を取り戻す事は可能) 通常は杖のような形をしており、その場合の威力はC-。 エッケザックスが大剣の姿と戻った場合、ランクはCとなる。 封印の剣 ランク:A+ 種別:対人宝具(対竜宝具) レンジ:1〜3 最大補足:1人 人竜戦役時、『英雄』ハルトムートが所有していた『神将器を超える武器』。 エレブ大陸において著名な伝説を築き上げた最強の武器。現存する聖遺物である。 その柄には“ファイアーエムブレム”と呼ばれる大いなる力を 封印・解放する魔力を秘めた紅の宝珠がはめ込まれている。 本人の意思を剣に乗せ、攻撃力に反映させる長剣。 所有者の精神力次第ではその刀身に炎を纏わせ、斬り付けた相手を炎上させる。 『魔竜退治』というエレブ大陸における最上の逸話を持つため、 竜属性を持つ者に対しては追加ダメージを負わせられる上に、 所有者の意思で殺さずに半永久的に封印する事も可能。 なお、完全な封印には十ターンの時間を必要とする。
https://w.atwiki.jp/taka0604/pages/5.html
下1で性能、下で戦闘距離となります。 性能 1ほどザイードクラス 9ほど英雄王クラス 0はエクストラクラス 戦闘距離 1ほど近接 9ほど遠距離 0は全距離 早見表 1~2 セイバー アサシン バーサーカー 3~5 ランサー ライダー 6~9 アーチャー キャスター アサシン サーヴァント作成の為の逸話やスキルは安価で聖杯戦争戦記・外典様よりB案をお貸しいただきました。 1:何時の時代の何処に生き(時代と出身の決定) (1つ安価) 2:どのような存在であり(身分や称号などの固定) (1つ安価) 3:どのような人となりであり(性格や基本指針の決定) (3つ安価) 4:どのように戦い(武器・戦法の選択。非戦闘なら戦ってないと明記する) (武器と戦法で各1つ安価) 5:どのように生き(生き様、逸話の設定) (4つ安価) 6:その最期はどうであったか(死した瞬間を形成) (1つ安価)
https://w.atwiki.jp/girlwithlolipop/pages/37.html
橘ありす&エクストラクラス・ホルダー ◆GO82qGZUNE 「信じられませんね。そんなオカルトありえません」 街中の一角にあるファーストフード店。その奥まった席で、橘ありすは開口一番にそう断言した。 そこにいるのはありすと、もう一人。その人物は未だ成人していない少年であり、傍目から見れば二人は兄と妹にも見えるかもしれない。 対面に座る少年は困ったような表情を浮かべ、所在なさげにありすを見ている。どこか頼りないその所作に、ありすは「はぁ」と息をつくと言葉を続けた。 「……その聖杯戦争というのは、魔術師が英雄を呼び出して戦い合う、というものなんですよね」 「うん、そうなるね」 「そこからおかしいんですよ。わたしは魔術師なんてメルヘンの人間じゃありませんし、それになにより」 一呼吸置いて、ありすはその言葉を突きつけた。 「あなたが英雄のような大それた人には見えません」 どやぁと聞こえてきそうなしたり顔でそう言うと、ありすは論破完了とでも言いたげにこちらを見てくる。 確かにありすの言うことは当たっている。少年の格好はモスグリーンの制服ズボンにYシャツという、夏場の高校生そのままの姿だ。線の細い体格は戦いどころか運動系の部活すらやってなさそうなほどで、これで英雄と言われても信じる者はいないと断言できるだろう。 だが、それでも。少年がサーヴァントと呼ばれる超常の存在であることに変わりはない。 「それは僕も同じ意見だし、自分のことを英雄だなんて思っちゃいないけど。でも、君も見たでしょ?」 「うっ、それは……」 少年が言っているのはこの店に来る少し前のことだ。サーヴァントとして現界した少年は突然のことに驚くありすに、霊体化などを披露して自分が普通の人間ではないということを証明している。 ……普通の人間ではないという事実に、少年の気が少し重くなったのは内緒だ。 「だ、だったらあれはトリックか何かだとすれば!」 「それだと君の頭の中に聖杯戦争の記憶が入ってることには説明がつかないと思うけど」 「うぅ……」 言葉に詰まり目線を下げるありすを、なおも少年は困った表情で見つめる。少年としては現状を理解してもらいたいだけで、何もありすを言い負かして論破したいわけではないのだ。 と、ありすは気を取り直したのか、こほんと咳払いしつつ話を進める。 「……では、聖杯戦争というものが本当にあると仮定しましょう」 先ほどまでの軽い動揺はどこへやら、既にありすの表情は真剣そのものだ。少年もまた同様に真剣に耳を傾ける。 「わたしの頭の中の知識が正しいとすれば、ここから出るには聖杯を手に入れるしかない。そして聖杯は全てのマスターとサーヴァントを倒さないと現れない。そうですね?」 「厳密にはマスターは絶対に倒さなきゃいけないわけじゃないよ。でも、優勝を目指すならどこかで倒す必要が出てくるのは確かだね」 「はい、分かってます。そして倒すということは……殺す、ことになる……んですよね」 ありすはそこで言いよどむ。 マスターを殺す。それはつまり人殺しだ。幼い少女であるありすにとっては些か以上に堪えるものだろう。 「わたしは、人を殺したくありません。そうまでして叶えたい願いは持ってません」 「……」 「でも死にたくもありません。殺されたくないです。わたしは、どうしたらいいんでしょうか」 言葉を切る。ありすは唇を噛み、スカートの裾を掴んで項垂れている。 殺人。それは現代日本においては禁忌のようなものだ。する側でも、される側でも、それは全く変わらない。 だがそれはあくまで普通の世界での話だ。こと聖杯戦争においては他者を殺すことだけが唯一の常道であり、ここから脱落するのは聖杯を手にする以外では死ぬ他にない。 そして眼前の少年はサーヴァントだ。サーヴァントとは願いのために聖杯を欲する。そのために現れるのだと頭の中の知識にある。ならば戦いそのものを否定するありすは彼にとっては邪魔なだけで、何を言われるのか、何をされるのか分かったものではない。 しかし…… 「うん、良かった。安心したよ」 「…………は?」 少年の返答は、些か以上に予想外であった。 「え、あ、その、つまりわたしは聖杯を取るつもりはないって、そう言ったんですけど……」 「大丈夫、分かってる。死にたくないし殺したくないって気持ちは当然だし、人として普通だと思うよ。うん、君は何も間違ってない」 「……わたしが言うのもなんですけど、あなたはそれでいいんですか? サーヴァントは願いを叶えたいから喚ばれると記憶してるんですが」 その言葉に、少年はうーんと難しそうな顔を作る。纏う雰囲気は朴訥で、やはり英雄にはさっぱり見えない。 どこにでもいそうな風貌の、線の細い少年。少年は優しげな笑みを浮かべると、ありすに返答した。 「確かに願いがないと言ったら嘘になるけど、でも君と同じ考えだよ。殺したくないし、殺されたくない。まあ僕は一度死んでるから殺されたくないってほうの気持ちはそんなでもないけど」 それにね、と少年は付け加える。 「この聖杯戦争自体が、もしかしたら僕の知ってる《怪奇現象》だって可能性もあるんだ。もしそうだとすればなんでも願いの叶う聖杯なんて存在しない。 今はなんとも言えないけど、そういう推測もできる」 聖杯自体が、ない? 「それは、一体どういう……?」 「僕は生前、とある《怪奇現象》を解決する立場にいたんだ。その《怪奇現象》は人の持つ悪夢やトラウマを現実のものにしてしまう。そしてそれは、特に大きなものの場合は《童話》の形を取ることがあるんだ。 アーサー王物語にパルジファルに荒地、聖杯伝説は童話でこそないけど十分に物語としての特性を持ってる。僕の知る《怪奇現象》が今回は聖杯伝説をモチーフにしている可能性だってあり得るんじゃないかって僕は考えてるんだ」 少年の語ることの全てを、ありすは理解できたわけではない。ありすは同年代の中では頭の回るほうではあるが、しかし少々情報量が多く飲み込みきれない部分があることは確かなのだ。 しかし分かることがある。聖杯戦争それ自体への懐疑と、少年がそれに対抗する者であるということ。 「仮にこの聖杯戦争がその《怪奇現象》だったら、あなたはそれを解決するんですか?」 「そうだね。もしそうなら、僕は全力でこの《怪奇現象》を止める。今はもう《予言》も《女王》もないけど、それが僕の役目だから」 そう語る少年の目は真剣そのものだ。先ほどまでの頼りなさは感じられず、彼が真に《怪奇現象》に立ち向かってきたのだと否が応にも理解させられる。 「僕は剣も弓も槍も使えないし、魔術師でもない。でも、それでも僕がこの戦争に呼ばれた理由は分かる。 まず僕がしなくちゃいけないのはこの聖杯戦争を《理解》することだって、そう思う。それに聖杯を調べてるうちに安全に脱出できる方法も見つかるかもしれないしね」 僕の考えはこんな感じだけど、君はどう? そう尋ねられて、ありすは迷いなく頷く。 殺す必要のない選択、それは少女にとっては福音のようなものだから。 「……ええ、はい。私もその方針に異論はありません。これからよろしくお願いしますね、【ホルダー】さん」 「うん、こちらこそよろしく、マスター」 両者は手を取り合い、少女はぎこちなく、少年は屈託なく笑う。 それはやはり年相応の少女であったし、年相応の少年の姿でもあった。 【クラス】 ホルダー 【真名】 白野蒼衣@断章のグリム 【ステータス】 筋力E 耐久E 敏捷E 魔力A++ 幸運D 宝具EX 【属性】 中立・中庸 【クラススキル】 断章:A 精神に根ざす神の悪夢の欠片であり、ホルダー自身のトラウマと混ざり合ったもの。光景のみならず現象をも伴ったフラッシュバックとして具現する。 断章とは言わばアラヤの悪意とそれに伴う膨大な魔力そのものであり、ホルダーの魔力ステータスの高さはこれに由来する。 ホルダーの精神の大部分は神の悪夢の欠片によって占有されているため、他の要素がホルダーの精神に入り込むことができない。 同ランクの対魔力を内包し、またあらゆる精神干渉を9割シャットダウンする。 精神異常:A++ 精神を病んでいる。 "普通"という概念に固執し、それ故に異常な状況であっても平静を保っていられる。精神的なスーパーアーマー能力。 【保有スキル】 人間観察:B 人々を観察し、理解する技術。 他者の持つ悪夢を理解し、それに共感する類稀なる感受性・受容性を持つ。 受容体質:C 他者のあるがままを受け入れる。被虐体質とは似て非なるスキル。 第一印象において他者の信用を得やすい。しかしそれは逆に言えば舐められることにも近く、強い敵意や戦意を持つ者と相対した場合は優先的に狙われやすくなる。 直感:D つねに自身にとって有利な展開を”感じ取る”能力。 ホルダーのそれは戦闘よりも非戦闘時における危機察知、及び他者の精神性をうかがい知るためのものとなっている。 気配詐称:A ホルダー及びそのマスターの気配をNPCのものに偽装する。 ただし同ランク以上の気配察知や隠蔽無効化スキルには見破られる。また、そうでなくとも他マスターやサーヴァントにホルダーの半径5メートル以内に近づかれた場合は普通にばれる。 ホルダーのマスターはホルダーから1メートル離れた場合このスキルの効果の対象外となる。 ホルダーの持つ自身の普遍性に対する絶対の自負が形になったスキル。 【宝具】 『目醒めのアリス(フラグメント・オブ・ワンダーランド)』 ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:- ホルダーの精神に根ざす神の悪夢の欠片。抱えた悪夢の内容は「自分が見捨ててしまった人間が破滅する」。 他人が抱えた悪夢(トラウマに代表される精神的弱点)を理解・共有し、それを拒絶することで悪夢を保持者へと還す。 悪夢を還された者はその悪夢を維持することができず、異形化して最終的には消滅する。あらゆるスキルと宝具による軽減・無効化を受け付けず、復活等も決してできない。まさしく必殺の宝具。 しかし発動するためには相手の抱える悪夢を理解する必要があり、思想・性質といったかなり深い部分までをも知らなければならない。伝聞だけでそれらの条件を果たすことはまず不可能と言っていい。 また、仮にこの悪夢の欠片がホルダーの精神から溢れてしまった場合、泡禍と呼ばれる大災害を引き起こすだろう。 【Weapon】 なし 【人物背景】 自他共に認める"普通"の少年。常に目立たないことを信条とし、平凡というものを愛している。 幼少の頃、幼馴染が異形と化した泡禍に巻き込まれ「断章保持者」となっていたが、本人は高校生になるまでその記憶を無くしていた。その泡禍のトラウマから他人、特に精神を病んだ少女を見捨てることができないという強迫観念に囚われている。 再び巻き込まれた泡禍を通じて断章に目覚めた後は断章保持者として様々な泡禍の解決に奔走していったが、蒼衣の断章によって死ぬことを望む神狩屋の暴走によって全てが崩壊してしまう。 事件そのものは解決するも、後に残ったのは大量の死と不安定になったホルダーの断章のみ。ホルダーはいずれロッジを作ると宣言し、それを受けた仲間とも言うべき少女も了解する。 その後は特に語ることはないだろう。そう遠くない未来において、彼は均衡を崩した自身の断章に呑まれ最期を迎えている。 聖杯戦争においては全盛期、つまり断章が安定していた高校1年生の状態で現界している。 【サーヴァントとしての願い】 泡禍を根絶する、失われた日常を取り戻す、別れた人たちとの再会。 大小に関わらず願いはいくつも持っているが、それを聖杯に託すつもりはない。というか聖杯のことを根本的に信用していない。 【マスター】 橘ありす@アイドルマスターシンデレラガールズ 【マスターとしての願い】 ないわけではないが、人を殺して聖杯に願うほど大それたものではない。 【weapon】 ごく普通の携帯型タブレット。 【能力・技能】 同年代と比べて勉強はできるほう。アイドルなので身体能力はそれなりに高いか。 特技:論破(自称) 【人物背景】 12歳の小学6年生。自身の日本人らしくない名前にコンプレックスを抱いておりそのせいか無愛想だが、実のところは年相応の感性を持った少女。 大人びているというよりは背伸びしたがる子であり、時折冷めたことを言うことはあるが音楽には力があると信じるなど熱い一面もある。 そのコンプレックスにより知識で壁を作り自分を覆ってしまっているが、作中で自分らしさを考えていくうちに徐々に周りと打ち解けている。 【方針】 まず聖杯そのものについて調べる。その結果がどうあろうと誰かを殺すつもりはない。家に帰りたい。
https://w.atwiki.jp/planetkirby/pages/176.html
第三巻について おなじみデデププの三作目。総ページ数は186。 主にカービィ、デデデ、リック、クー、カイン、ポピーの六名によって話やギャグが進んでいく。 第二巻との変更点は特にない。 いつもとは違ってカービィ流の西部劇や昔話の話があるなど、一風変わった話もある。 目を惹く話は第八話で、デデデ大王がカービィたちと温泉旅行に行っている。 つい先ほどの話までデデデはカービィに殺意があるような描写もあるのでなんともシュールに思えるのであった。 登場するコピー能力 ニードル クーパラソル リックスパーク リックストーン スパーク+ニードル+トルネード ファイア バーニング ストーン カインスパーク ホイール フリーズ アイス 驚愕的歌唱力 カッター ソード ボール+無敵 UFO
https://w.atwiki.jp/yuetuwar/pages/37.html
'///////////////////////, /////////////////////////, //////////////// `ヽ,/////, {//////////}////_,,,/ヲ////} '{////////ヨ/// ニフ--/} }//// i///////ニ}//'}--rヒⅵァr'/'/// i//////{-r'/ニ}!--=‐-,/ニ}//' ' ' ///{ニニニニユ---ニニニニ7// ' '/\{⌒\}/ ̄7 // ' -{ゝ\  ̄ ` /ノユ-_ __-ニ7ニニ=_ヽ __ ∠‐ニニマニ-__ __7/ニニ7ニニニニ-⌒⌒.- ニニニマニニム-__ ____-‐ニニ7/ニニユム ニニ7 ‐ニニフ,}ニニニムニニニ‐-____ _-ニニニニニニ7/ニニニヨニムニ7 i i‐ニ/ニノ ニニニムニニニニニニニ-、 -ニ ニニニニニ7/ニニニニモニム7{ i i }/ニニ} ニニニニムニニニニニニニニ ニニニ ニニニニ7/ニニニニニ}ニニヨヽ,_∧_,/}ニニユ ニニニニニム ニニニニニニニ ニニニニニニニ=-  ̄‐‐ ̄ヨニニム{{ i i }}ム ニユ__ ̄‐‐ ̄-=ニニニニニニニ ニニニニニニ=‐ ̄-=ニニニニ三ニム i. ! ムニ ユニニニ=‐-__ ̄.‐ニニニニニニ┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫【名前】ヴィクトル【霊格】40【属性】中立/中庸【令呪】―――(0)【MP回復量】200【魔術回路・質】■■■■★:A+(100)【魔術回路・量】■■■■☆:A-(45)【魔術回路・編成】???【属性/起源】単一属性(水)/??(未覚醒)【筋力】■■■□□:C(30)【耐久】■■■□□:C(30)【敏捷】■■■□□:C(30)【魔力】■■■■□:B(40)【幸運】■□□□□:E(10)【宝具】□□□□□:-【戦闘データ】【HP】130/130【MP】190/190【A攻】6 【B攻】6 【C攻】6【防御】0 【魔攻】8 【魔防】0┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫【スキル】タイムファクター○時歪の因子: 第二、第五の使い手では無いが度重なる時間移動を行った結果、 極めて限定的に時間操作能力を得るに至った者。 時間流を操作して自らの都合が良いように因果関係を積み上げていき事象を改変できる。 その代償として彼の存在は世界から許容される事がなくなり、 存在を維持するだけで莫大なエネルギーが必要になってくる。 その為、仮面型の維持装置を着用しなければ、このスキルは使用できない。 [DATA] 『種別:異能(特殊) / タイミング:効果参照 / 代償:20MP、2MC』 1戦闘に1回、自陣の誰かがダメージを受けた際に使用を宣言できる。 そのダメージを「0」に変更する。○骸殻召喚: A++ 取り込んだ英霊達の魂から力の一部を写し取り、自身の肉体に上書きさせる異能。 今次聖杯戦争における聖杯の器であるヴィクトルの聖杯特性であり、 “夢幻召喚”と呼ばれる魔術の亜種。呪いを浴びる事で変異する彼の兄弟器に比べ 最初からとある存在を召喚する事に特化しており、この力で発現する能力は全て悪性に変質している。 [DATA] 『種別:特殊 / タイミング:戦闘ターン開始時 / 代償:なし(スキルの効果)』 脱落したサーヴァントから1体、選択して使用を宣言する。 あなたの【霊格】【敏捷】【幸運】を「対象の中の最大値」点に変更する。(戦闘ステータスは変更されない) さらに【MP】以外の戦闘ステータスに+「対象の合計データ÷2(端数切捨て)」点を加える。 この効果中、対象の中から宝具1つを選択し、使用する事ができる。 その戦闘ターンの間は、選択した宝具しか使用できない。(戦闘ターンごとに変更可能) マスターテリオン○是・[[黙示録の獣]]: EX 『骸殻召喚』の特性の一つ。取り込んだ英霊を獣貌として“七頭十角の獣”と化す。 戴く王冠の数だけ『皇帝特権』を使用できる、真性の魔。 ステータスも発現した英霊の数により飛躍的に上昇する反面、 『支配の錫杖』以外の宝具が使用不可能になってしまう。 [DATA] 『種別:特殊 / タイミング:効果参照 / 代償:対象の数×10MP』 『骸殻召喚』で『[[キャスター]]』、宝具に『支配の錫杖』を選択した場合、 さらに追加で「脱落したサーヴァント」を複数体、選択できる。 この時、対象の中からスキルをそれぞれ1つずつ、「対象の数」個まで選択し、使用できるようになる。 ただし『ビースト』のサーヴァントは3騎で1キャラクター分として扱うこと。○呪層界・末世波: A++ 黙示録の獣の魔力を周囲に放ち、存在レベルで汚染する。 この獣自体が聖杯でもあるがゆえ、聖杯の力で括られた英霊では防ぐ事が出来ない。 正純に近い英霊ほどこの能力には抗えず近づくだけでも影響が出る。 [DATA] 『種別:魔術(特殊) / タイミング:戦闘ターン開始時 / 代償:対象の数×10MP』 このスキルは『是・黙示録の獣』を使用した戦闘のみ使用できる。 敵陣に存在するサーヴァントを全て戦闘不能にできる。 この効果の対象が「属性:混沌/属性:悪/怪物/巨人/竜種」等の属性を1つ以上所持していた時、 戦闘不能の代わりに「対象の最大HP÷2(端数切捨て)」点の貫通ダメージを与え 1手番目~2手番目のコマンドを無効化する。(バッドステータス扱い) サーヴァントでない存在の場合、与えるダメージを「自陣の【魔】」点に変更する。(BSは与える)┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫【使い捨て礼装】○竜縛鎖 ×1 対竜兵装。対象の竜の因子に反応して硬度を増す鎖。 使用する事でCランク相当の「竜殺し」スキルを付与する――のだが、 対象が既に何かしらの封印を受けている場合、機能しない。 [DATA] 『種別:異能(礼装) / タイミング: 戦闘ターン開始時 / 代償:5MP』 敵陣に存在する「種別:竜種」のスキルを持つ者に使用を宣言する。 敵陣のコマンドを2手開示し、さらに対象の【攻撃】【防御】【魔攻】【魔防】に 「該当するスキル数×5(最大15)」点のペナルティ修正を与える。(バッドステータス扱い) この効果は「該当するスキル数」戦闘ターンの間、継続し1戦闘に1度までしか使用できない。┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫【MEMO】 情けないマスターですまない。 でも黒のキャスターなら現世観光を満喫しているから安心して欲しい。 黒幕の癖に一番書くことに困るなんてどういうことだ説明しろルドガー!┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫【設定】 西暦428899年の未来からやってきた時間移動者。 とある目的の為に21世紀の日本の地方都市で聖杯戦争を開催し、 聖杯を完聖させて未来へ送ろうと考えていた黒幕。 前作のとある人物と同一人物なのだが、本作と別に直接的なつながりは無い。 今作の黒幕連中が全員、何かしら序盤で落ちないように対策を施していたり、 ステータス値が全く同じだったりする程度で知らなくても特に問題ない。 未来の世界は世界が“神代”に逆行している世界。 神霊が闊歩し無数の終末神話が同時進行しているこの世の地獄。 その現状を変える為の力を求め、彼はこの時代にやって来たのだった。 ちなみに彼に使われていた聖杯は制作者が同じなだけで『聖者の血』は用いられていない。 かわりに光そのものを閉じ込め、記録媒体や回路とするフォトニック純結晶体で構築された無限機関を使用しており、 西暦428899年の技術力で「七天の聖杯」を再現しようとした贋作であり失敗作だったりする。 「月より来る竜を救世主が撃退する」逸話。アストワト・ウルタ┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫【聖杯への願い】 未来世界の救済。┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫ L時のステータス 戻る
https://w.atwiki.jp/2jiseihaisennsou2nd/pages/408.html
夜の始まり ◆HB/kaleido 夜明けまでまだしばらくの猶予を残した薄暗がりの夜。 住宅街を歩くのは、本来であればこのような時間寝ているべき程の年齢だろう少女。 しかしそんな時間に出歩くことを怖いとは思わなかった。 これまで、こんな夜中に外を出歩くことなどよくあったことだ。 だが、今はそれだけではない。 もしかすれば何者かに襲われるのではないか、という思いもあったのだ。 『周囲の探知が終わりました。これといって怪しい者は見受けられません』 「ありがとう、サファイア」 襲う者がチンピラ程度ならばいい。 むしろこの場合はチンピラの方を心配した方がいいだろう。 問題は、それが特定の人間であった場合。 今の自分と同じ。サーヴァントを連れた魔術師、マスターであったならば。 思い起こすのは、先の戦いで襲ってきたあの槍を持った英霊。 ランサーとの戦闘経験がない美遊にも、あれが黒化英霊とは別格の存在であったことはすぐに分かった。 そして、それを倒した、今自分が連れている存在の強さも。 彼はあの戦い以降何も語ろうとはしない。 幾度か話しかけたものの、一向に口を開こうとはしなかった。 それも仕方のないことだろう。彼はただの英霊ではない。 バーサーカー、狂戦士。 強さを得ることと引き換えに理性、知性を奪われる戦士。 かつて戦ったあの大英雄の力がその強大さを表している。 理性を失う。それは言わば黒化英霊達も似たようなものなのかもしれない。いや、彼らは最初からなかった、というべきか。 だが、それでもその黒化英霊と今自分が連れている狂戦士。彼らを比べた時、強さ以外の決定的な違いを美遊は知っている。 たった一つ。自分を守ってくれたあの瞬間、美遊はこの狂戦士から強い意志のようなものがあることを感じていた。 (―――聖杯、戦争…) サファイアがアンテナのようなものを立てて周囲から受信した情報。 そこには、今何が起こっているのかが明確に記されていた。 英霊をサーヴァント(使い魔)として使役し覇を競わせる魔術師の殺し合い。 大まかに言ってしまえばそうであるが、詳細を聞くまでもなく聖杯戦争が何であるかなど美遊は理解していた。 サファイアはそれがかつてイリヤの母、アイリスフィールから聞いた情報故であるだろうと思ったようだが、実際はそれ以上の情報を知っている。 だって、それまで”聖杯”を奪い合うその戦いを幾度となく見てきたのだから。 「ここは…ルヴィアさんの…」 やがてたどり着いた住宅街の中にあった豪邸。 それは自分の義姉であるルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトの邸宅。 この一ヶ月ほどの間に、自分の家のようになっている場所だった。いや、実際自分の家と言ってもいいのかもしれないが。 『このようなところまで再現されているとは』 「ルヴィアさん、いるのかな…」 静かに門を開く。 特に門限が決まっているような生活は送っていないためこんな深夜に出歩いたとしてもそんなに厳しい罰が待っていることなどない。少し怒られるかもしれないとは思うが。 だが、それは別として今はルヴィアには会いたくなかった。 この空間がどういう場所なのかもサファイアのおかげで大体は把握できている。 聖杯戦争を争う魔術師が集まっている場所であるが、それ以外にもNPCなる存在がそれぞれ日常生活を送るように再現されている。 そんな日常の中から、誰が魔術師なのか探し出し戦わせるのがこの聖杯戦争なのだろう。 実際、今の自分には海月原学園小等部の生徒という立場が与えられているらしい。 つまりだ。この場所にいるのであればルヴィアもまたNPCである可能性が高く、もしそうでないならばあの人とも戦わなければならない。 NPCであったならば。この聖杯戦争で日常を演じるための存在として作られた存在であるということだ。そんな気遣いなど、不要どころか吐き気がした。 マスターであったならば。確かに彼女ならば自分を殺すことなどない、と思う。だが万が一にでも争わねばならなかった時、あるいはあの人が死ぬようなことがあった場合は――― ゆっくりと扉を開けるも、ルヴィアも執事のオーギュストも眠っているのか出迎える者はいなかった。 考えてみればそうだろう。この時間、”普通なら”皆眠っている時間だ。 「………」 可能な限り物音を立てぬように、しかしできるだけ急いで歩き。 自室の扉を開き、ベッドの上に身を投げ出す。 いつものベッドだ。何の代わりもない。 ここで眠って目が覚めれば、きっと全ては夢で。 朝になったらイリヤやクロと一緒に学校へ行って授業を受けて。 これまでと何の変わりもない日々に戻れそうな、そんな錯覚すらも感じてくる。 だが、これは夢ではない。 霊体化しているとはいえその気配だけは感じ取れる自分のサーヴァントの存在がそれを証明している。 ならば。 「サファイア、出発する。手伝って」 『出られるのですか?美遊様』 「この家を戦場にしたくはない」 聖杯戦争にかかる時間はどれくらいだろうか。 一週間か?二週間か?それよりももっとかかるか?あるいは早く終わるか? それ次第では必要なものをどれだけ持ち出すかが変わってくる。しかしそんなことは実際に戦わねば分からない。 幸いなことに、この家でメイドをしていた時にルヴィアさんからもらった給料、お小遣いはほとんど再現されている。小学生に持たせるには過ぎた金額だ。 しばらくここから離れて暮らすとしても生活費としては問題ないだろう。 それに最悪の手段として考えられる野宿にも慣れている。 ふと、服のポケットに入っていたものを取り出す。 海月原学園の学生であることを示す学生証。おそらくは学生の立場を与えられたものには配布されているものなのだろう。 しかし美遊はそれを部屋の隅に投げ捨てた。 『美遊様?』 「学校には、行かない」 『…よろしいのですか?もし学校に関わる者にマスターがいた場合は怪しまれることになりますが……』 「分かってる。でも、行きたくない」 もしかすれば学校にいけばイリヤやクロ達に会えるかもしれない。 マスターとしてか、あるいはNPCとしてか。 しかしどっちであったとしても、会いたいものではなかった。 マスターであったならば言わずもがな。NPCであったならばイリヤ達が巻き込まれていないことの証明になるが、ならばその顔を見るのは尚更辛い。 正直なところ、聖杯戦争の片手間に日常を送るなど、そこまで器用なことはできそうになかった。 かつて、自分を求めてクラスカードを用いて争う魔術師達の戦いを、別の聖杯戦争を見てきた自分には。 もし今の状態で学校に行っても平常心でいられるとも思えないし、そうなれば他者にマスターとばれるのも時間の問題だ。 ならば、いっそのこと学校行きを止めて、いずれ始まるだろう戦いに備えるべきだろう。 『それが美遊様の判断であるというのなら、私は止めませんが…。 美遊様はこの戦いでどうなさるおつもりなのですか?』 「私は……、できれば戦いは避けたい」 いずれ戦わねばならない時は来るだろう。たとえ時間稼ぎをしていたとしてもいつまでももつとは思えない。 聖杯にかけたい願い自体はないわけではない。 だが、――――――果たして自分が聖杯を求めていいのだろうか? 迷う理由は二つ。 もし聖杯を求めて戦い、他者の命を奪った自分がまたイリヤ達の元に戻ってこれまで通りの生活を送ることができるのかというもの。 他者の命を踏み躙った自分が、果たしてイリヤ達の元に戻る資格があるのだろうか? 割りきってしまえばいいことなのだろうが、それができるほど達観した精神など美遊は持っていなかった。 そして、ここで己の望みのために聖杯を求めて進んで戦うということは、かつて自分を救ってくれたあの人の願いに反するものではないかというもの。 多くの人が聖杯を求めて戦う姿を見てきて、そんな世界とは関わらずに暮らしてほしいと願った兄がいて。 なのにこの戦いで聖杯を求めてしまうことは、その願いを冒涜するものではないのか? 「………」 だが、それでも振りかかる火の粉は払わねばならないだろう。 聖杯戦争であるならば、戦いに積極的なマスター、魔術師は確実にいるのだから。 そう、聖杯を求める魔術師は、必ず。 バーサーカーからの反応はない。 ここでじっとしている間も、霊体化を解くことはなく、しかし自分の傍からも離れることはなかった。 本来ならば、己のサーヴァントといえども聖杯を求める者を手放して信用することはできなかっただろう。 聖杯を求めるのであれば、聖杯戦争をせずとも手に入れる手段があるとするなら間違いなく彼らもそっちを選ぶであろうことは当然考えられることなのだから。 だから、バーサーカーが呼ばれたという事実はむしろよかったのかもしれない。 ただ、そういった前提があったとしても、このサーヴァントのことは信じてもいいのではないか、と。そう思ってもいた。 クラスカードをチェックしたところ、今手元にあるのはセイバーだけ。果たしてこれでどこまでできるかは分からないが。 サファイアに問いかけてみたところ、夢幻召喚は可能だが宝具の解放までは魔力供給が追いつかないという。もし解放すれば命にも関わるらしい。 カードを使う事自体万が一という時にしておいた方がいいだろう。 部屋の中のものをバッグに詰める美遊。 持ち出すものは衣類や非常食。それも可能な限り量は減らす。足りなくなったら買い足せばいい。 と、ふと取り出したのはヘアピンと度の入っていない伊達メガネ。 ヘアピンはともかくメガネは置いた覚えがないものだが、今は使えるだろう。 『美遊様、何をなさっているのですか?』 「たぶん気休めだけど、念には念を入れて」 メガネをかけ、ヘアピンで髪をまとめあげる。 さらに後ろの髪も結び、特徴的なポニーテール状に。 これは昼間外に出ている間にマスターであることがバレた時の保険。 よく見れば見破られるだろうが、少なくとも通りすがりの外見から一目で判断することは難しくなるだろう。 「あとサファイア、外での会話は念話でお願い」 『分かりました。一応魔力で感付かれない程度には周囲の警戒も続けておきます』 これで大体の準備は整った。 外はだんだんと白み始めている。もう一時間もすれば学校に向かうNPCで道は溢れるだろう。 自分のために用意されたであろうこの家、しかしここにはもう帰ってくることはないだろう。 あくまでも自分の帰るべき家は本当のルヴィアさんやイリヤ達の待っているあの家。決してこの家ではないのだから。 そのまま静かに屋敷の玄関に向かう美遊。 「―――行ってきます」 返事をするものに期待をしていたわけもない。 ただ、これからの戦いに向けて、それだけは言っておかねばならないような気がした。 それはこの家に向かってではなく、おそらくは自分の本当に帰るべき場所に向けて。 【B-3/ルヴィア邸付近/一日目 未明】 【美遊・エーデルフェルト@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】 [状態]健康、ポニーテール [令呪]残り三画 [装備]普段着、カレイドサファイア、伊達メガネ他目立たないレベルの変装 [道具]バッグ(衣類、非常食一式) 、クラスカード・セイバー [所持金] 300万円程(現金少々、残りはクレジットカードで) [思考・状況] 基本行動方針:聖杯戦争から脱する方法を探る。 1.戦闘は可能な限り避けるが振りかかる火の粉は払う 。 2.昼はなるべく人通りの多い場所で戦いに向けての準備を整える。 3.ルヴィア邸、海月原学園には行かない。 4.自身が聖杯であるという事実は何としても隠し通す。 5.聖杯にかけるような願いならある。が、果たして求めることが正しいことなのだろうか…? 【バーサーカー(黒崎一護)@BLEACH】 [状態]健康、霊体化 [装備]斬魄刀 [道具]不明 [所持金]無し [思考・状況] 基本行動方針:美遊を守る 1.??????? BACK NEXT 050 主よ、我らを憐れみ給うな 投下順 052 国と力と栄えとは限りなく汝のものなればなり 043 アンダーナイトインヴァース 時系列順 052 国と力と栄えとは限りなく汝のものなればなり BACK 登場キャラ NEXT 026 美遊・エーデルフェルト&バーサーカー 美遊・エーデルフェルト&バーサーカー(黒崎一護) 069 あなたのお家はどこですか?
https://w.atwiki.jp/animefate/pages/14.html
選ばれし者たちよ。汝、自らを以て最強を証明せよ――― 聖杯戦争に参加する資格を持つ選ばれた者のこと。サーヴァントと契約を結んでマスターとなり、最後の一人になるまで戦うことを運命づけられている。マスターになる者には令呪が現れる。 阿良々木暦 高倉冠葉 上条当麻 岡部倫太郎 ダリアン デュフォー 仲村ゆり C.C.
https://w.atwiki.jp/tokyograil/pages/153.html
月が紅いワケ ◆B7YMyBDZCU 【月が紅い理由――教えてやるよ】 右腕は動く。 彼が意識を回復してから真っ先に行った行動。無言で右腕を掲げる。 頭が暗い闇の底に眠っているみたいだ、思考機能が現実に追い付いていない。 廃墟の空間、何も生物らしさを感じない其処で彼は腰を下ろし壁に背を。 聖杯戦争――聞いたこともなければ見たこともない。嘘か本当かのお伽話だ。 願いが叶うなんて迷信や伝説、過去に残された歴史だけに許されている褒美と来たもんだ。 どんな状況や境遇でも有り得ない摩訶不思議な現象を餌に人間を釣る存在の思考は理解出来ない。 「……」 人間を釣る。その人間には勿論自分も含まれている。 彼は人間だ、人間である。外野が騒ごうが彼は人間で在り続ける。 その脳は無傷。寄生などされておらず思考、意思、想いは彼だけのモノ。 右腕を揺らす。 その行動に別段意味は無く、問いかけるように右に左に揺らし続ける。 ……。 返答は無い。 そう――返答は無いのだ。 右腕を揺らすその行為に対する反射が返答。彼は何を求めているのか。 返答だなんて。まるで右腕を生物のように思っているのだろうか。 返答が無いならば仕方が無い。返ってこないならば、仕方が無い。 この状況を理解しようと本能が働き始める。 身体に傷はない。 最後に見た光景は夜空を不気味に飾る紅い月。 物珍しさに空を眺めていた、そんなある日に突然、意識が、彼が消えた。 その姿は世界から消え去り召されるは異形の地。聞くも見るも全てが初の感覚。 記憶の糸を辿るも出てくる情報は砕かれた欠片であり把握には繋がらない。 此処はどこだ、それは東京だ。之はなんだ、聖杯戦争だ。記憶に刷り込まれている。 だが重要なのは違う、何故、自分は此処にいるのか、何故、聖杯戦争に――。 ドクン。 ……? 突然跳ね上がる心臓。前触れもなく、息をするように。 それは分類するならば反射的な直感。本能が告げるのだ、考えるよりも早く。 此処はキケンだ、と。 辺りは夜だ。否定するなど不可能であり決定付けられている。 視界は朧げながらも目の前に立っている異質な存在を捉えているのだ。 背けたいその存在は視界に立っている、背けたくても引き寄せられてしまう。 悪の美学――とでも言えばいいのだろうか。目の前の存在は紛れも無く社会に必要ない存在に見えるのだ。 彼はその男を知っているわけでもなく、初対面。素性も何もかもが不明。 完全なる第一印象で判断をしているが感じ取れる空気は穏やかではない。 その空気は鋭い、それもシャープではなく暗く、己の満足のために他者を斬り裂くナイフのように。 男の髪は白、サングラスの奥に潜む瞳は獣のように餓えていた。 血生臭く、初対面でも解る。 この男は屑だ、人間を何人も殺している、と。 「なーに見てんだよガキ、状況も飲み込めねぇのか」 退屈そうに呟くと男は指を鳴らし始める。 その言葉を聞いた男、泉新一は吹き返したように息をした。 止まっていた、目の前の男に気付いてから彼の時は止まっていたのだ。 視界に捉えた瞬間から襲いかかったのは恐怖、その領域は生物が本能的に察知する。 この男から感じる恐怖はまるで寄生の――。 「おいおい、こっちはよぉ。ったく……有り得ねぇ」 泉新一が言葉を紡げない中、対する男は独り言のように言葉を吐く。 「なんだこの身体は? 水銀の糞野郎も満足して逝っちまったんじゃねぇのか、メルクリウス。 だったら俺は可怪しいよなぁ、【なんで俺はこんな事になってんだ】。しかもアサシン、何だコイツぁ」 水銀、メルクリウス。聞こえてくるのは恐らく固有名詞の類。 しかしそれらの断片は流れて行き、身体に刻まれる情報は無い。 鼓動が早い、本能が告げている、逃げろ、と。ならば――。 「お前は……誰だ」 不思議だ。 今は冷静になっている、心が、心臓が。危険な状況でも落ち着き始めた。 慣れた。 今は冷静になっている、心が、心臓が。危険な状況でも落ち着き始めた。 慣れてしまった。 今は冷静になっている、心が、心臓が。危険な状況でも落ち着き始めた。 「んなことも解んねぇのかよぉ、見れば解んだろ」 問に正答を送るワケでも無く、男は邪悪な笑みを一瞬浮かべると再度言葉を吐く。 「ガキ、俺はお前なんてどうでもいい。死んだって困らねぇんだよ。 マスターなんていらねぇ、俺に首輪を嵌めるたぁテメェ如きじゃ無理だ。 此処で遊ぶのも悪くはねぇけどよぉ。裏で語り部気取ってる奴が気に入らねえ」 男の表情から怒りを感じる。 しかしそれは野蛮な物ではなく、ある程度諦めているような、受け入れてる部類。 心当たりでもあるのだろうか。この男は何を言いたいんだ、全く解らない。 「お前は何なんだ……?」 「俺かぁ? 知りたいんなら黙って教科書でも読んで来いよ英霊様の御前だぞッてァ!」 世界は思ったよりも未知に溢れている。 その未知に触れると新しい道が広がる、迷惑な話だ。 現に目の前の男の蹴りを腹に受けた泉新一は後方に飛ばされ汚く転がった。 受け身も取れずに転がる泉新一は適当な所で立ち上がり男を見る。 不意を突かれた一撃は躱せなかった、不意じゃなくても躱せるか怪しい。 呼吸を整えながら男を見つめる、視界から外せば此方が死ぬ。 「これでちったぁ目、覚したか? 俺が目の前に立ってんのに黙ってたからよォ、目覚まし代わりの一発だ」 男の発言で気付く。【最初からこの男は近くに立っていた】のだ、と。 其れは突然の出来事で脳が働かなかったのか。本能が認識する事を避けた結果なのか。 何方にせよ気付かなかった方が幸せだったのだろう。出会い頭に蹴りを入れる男だ。 マトモな生物じゃあない、関われば関わる程自分の身が危険になっていく。 生物。 この男は同じ人間だろうか。その見た目は人間と変わらない。 だが見た目は同じでも中身が違えばそれは異形の怪物だ。 泉新一は知っている。 人間社会に潜む、器に寄生している生物を彼は知っている。 しかし目の前の男からは無機質を感じないのだ。彼が知っている闇とは違う。 男はまだ感情があるように振舞っている、ならば。 「――サーヴァント、か」 「気に喰わねぇんだ、ソレ」 聖杯戦争の情報が脳に響き始めた。そうだ、泉新一、彼は聖杯戦争に参加した。 それは真意か本意か不本意か。本人にしか解らない。 戦争は一人で行わず、従者が存在する。 「じゃあお前が俺の……」 「気に喰わねぇって言ってんだろガキィ」 サーヴァントなのか。言葉を言い終える前に泉新一は外に出ていた。 彼がいたのは廃墟の内部、気付けば男に胸倉を捕まれ放り投げられていた。 片手で青年を放り投げる腕力は人間の領域では不可能だ、これで決定だろう。 目の前の男は相棒【パートナー】だ。 望んで参加しているワケではない戦争に選ばれた相棒は社会に適合出来ない獣。 黙って檻に入るなり自然に帰るなり……愚痴を零したくなる。 泉新一は着地と共に迫ってくる男の拳を左腕を使い軌道を逸らす。 そのまま腹に膝蹴りを放つも男は軽々と掌で受け止めた。 「喧嘩はしたことあんのか、でもよ……退屈だぜ」 男は掌に少し力を加える。泉新一の顔には苦痛の表情が浮かび上がった。 粉砕だ。彼の膝が粉砕せんと壓力を掛けられている。 「ッあああああああああああああああああああ」 叫びと共に渾身の力を振るい足を大地に突き刺すように降ろす。之により男の掌から解放。 そのまま勢いに任せ右腕の一撃を男の顔面へ、動作に隙も無ければ迷いも誤差も無い。 本能から繰り出された一撃は相手に悟られること無く吸い込まれ――。 「もうちっと樂しませてくれやァ!」 待ち構えていたのは顔面ではなく繰り出された拳。 不意を突いた一撃と確信していたが、男は一撃に合せ拳を重ねてきた。 本能による一撃ならばより獣に近い相手の方が上手。珠戦闘における経験では泉新一よりも男が上回っているのだ。 泉新一と男の拳、互いに衝突し鬩ぎ合う、事もなく泉新一が押し負け数歩後退する。 弾かれたように鑪を踏みながらも体勢を整えようと踏ん張るが男は刹那も待つつもりはない。 踏み込み何て要らない、力任せに再度拳を放つ。 「――あァ?」 風が舞う、屋外に自然とは別の異質な風が男の白貌を掠り取る。 この場には泉新一と男しか存在しなく彼らを邪魔する者など本来登場することは有り得ない。 ありきたりの筋書きに現れるは役者だ、それも特殊で特異な右腕。 『何をしているんだシンイチ』 名をミギ―。 泉新一の右腕に寄生した虐殺器官《パラサイト》。 その姿を異形で鋭利な刃物に変貌させ男のサングラスを削ぎ落した。 「カハッ、クク、そうかい。人間じゃねぇってか? 俺を下僕にすんだ、隠してんモン全部吐きだせやァ!」 ミギ―に落とされたサングラスを自ら踏みつけ笑う男。 その笑い声に品など欠片も持ち併せず与える印象は不快そのもの。 『シンイチ、私にも聖杯戦争の概要の知識がある。つまりあの男が君のサーヴァントか』 「ああ……信じられないけど、な」 『解っているとは思うが君はあのサーヴァントには勝てない。規格外の存在だぞ』 「解っている、こんな状況でも心は落ち着く」 冷静さはある。だが全てが事態に追いついているかと言えば嘘になってしまう。 結果としてこの状況に対する打開策など見つからず、そもそも打開など出来るのか。 圧倒的自力の差、サーヴァントは人間に太刀打ち出来る存在では無いのだ。 無論、右腕に寄生生物を宿している泉新一でさえ目の前の男には遠く及ばない。 戦うだけ無駄だ、勝ち目など最初から存在していない。勝利へ辿り着く因子が不足している。 それに泉新一と男は主従の関係だ。命を殺り合う関係ではなく味方。 仲良しごっこで手を取り合う方がまだ好ましい。 「此処は城じゃねぇ、転生だの何だのあるだろうが俺にはどうでもいいんだ。 テメェの右腕がキモかろうと、テメェ自身が怪物でも関係ねえ。 でもよぉ……俺をこんな場所に招いたんなら樂しませろ。せめてもの、って奴だ」 男は言葉から察するに快楽を求めているらしい。その部類は自己満足、推定するに戦闘だろうか。 彼が言う城とは不明だがサーヴァントとして限界しているには不服があるようだ。 願いを叶える機会だと言うのに。 「……願いが、叶う?」 泉新一の脳内に齟齬が発生する。言葉と記憶と情報が反発しあう。 願いが叶う、紅い月、聖杯戦争。そうか、俺は参加していて権利を持っている。 『シンイチ、まさかとは思うが君は信じているのか?』 「い、いや。そんなワケ」 「目が泳いでるぞガキ、テメェの腹ン中にァ野心とか野望ってモンが無えのか?」 『耳を貸す必要は無いぞ、馬鹿な事は考えるな』 「俺は願いっつーか、まぁあるって事にしとくか。ソレを果たすのは俺自身だ、聖杯なんぞの出番何かありゃしねえ」 男は放つ。願いは己の手で掴み取る事象だと。 本来言葉に着飾らない彼だがその発言は英霊の志に近い。 多くの人間を殺してきた彼だが戦闘においては彼なりの美学と呼べばいいだろうか。 仲間意識も強く礼も辨えているのだ、之に関してならば彼は英霊の座に居座るだろう。 「シュライバー……テメェに言っても解ンねぇと思うけどよ、こうして存在してんだ。 ならさっさと終わらせて俺は俺のケリを付けて来る。もう一度何てくだらねぇ戯言じゃねぇ。 あの時俺は勝った、けどアイツは生きていて死んだ。だが、俺は英奴に、アイツも、だ。つまり」 男は紡ぐ。 彼は昔、シュライバーと呼ばれる気に喰わない奴が居た。 何処か似た匂いを発しその境遇も互いに血と狂気が漂う最終列車の塵箱。 底辺に溜まる社会の輪に馴染めない屍は互いを憎き殺すべき対象と見なしていた。 その狩りは他者の介入より中断、屍は黄金の獣に魅入りその忠誠を誓う。 しかし問題があった。 男の宿敵は白騎士《アルベド》の称号を手にした。男ではなく。 その力は男だって認めている、だが称号に釣り合うかは別の話であり、譲れない物がある。 幾つかの年月が過ぎた時、彼は黄金の獣に許しを受け、黒と赤の騎士から言葉を受けとり白騎士の座を争った。 その先に待っていたのは――なにも今此処で男の生前を解説しても意味は無いだろう。 泉新一に伝わるわけでもなく、彼には正直の所、男の過去などどうでもいいのだ。 事実ミギ―は男の背後から斬り掛かっていた。 「つまり、だ。俺は別に遊んでもいいけどよぉ、チンタラしてる暇は無いってワケだ。 だからよォ、テメェが俺のマスターなら足を引っ張んな。癪だがテメェが死ねば俺も消えンだよ」 『――ッ!』 背後の攻撃を振り向く事無く掴み取る男。 そのまま力を強め握り潰さんと威嚇地味た行為をする。 泉新一は走りだす。ミギ―が殺されてしまう。ならば。 廃墟の欠片を握り締め男に振るう、素手で殴るよりも数倍マシだろう。 「頭使うってのは評価してやるよ」 「う、あぁ!」 男は掴んだ右腕を振り回す。 右腕はミギ―である。しかしミギ―は泉新一の右腕である。 彼らは男の片手一つに振り回され宙を泳ぐ。止める術など無く――。 「ぐ――ッ!!」 大地に轟くは泉新一の着地音、着地の表現など生温く落下と言っても差し支えない。 痛みに表情を歪めるが黙って寝ている訳にもいかないため立ち上がる。 「俺は聖杯戦争なんて知らない、こんな所に居る必要はない!」 「だったらテメェはどうやって帰るつもりだ。 電車か? 徒歩か? 迎えでも呼ぶのか? あァ? 此処はテメェ等の東洋の島国だろ?」 『シンイチ、挑発に乗るな。今から私があの男に攻撃を加える。 その間君は少しずつ後退するんだ。そして私が合図をしたら全力で走れ、此処から離脱する』 「お前らみたいな寄生生物を俺は許さない……! お前は彼奴等と同じだ、人を殺す事に感情を持たない彼奴等とォ!!」 『シンイチ! 吠えても何も起きない』 「ガキ、テメェは思ったよりも早く死にてぇらしいな。少し眠ってろ」 その時泉新一は奇妙な事象を目撃した。 紅い月を見てから全てが奇妙だがこの瞬間は最大風速を更新する。 血だ。血の匂いが強烈に男から発せられる。 彼の身体の表面を塗り上げるように血生臭く、いや、之は血だろうか? 血に似た何かかも知れない。しかし重要な問題ではなく、男の行動事態が危険であることに変わりはない。 「ただの人間相手のタイマンにこれ使う何て普通は在り得ねえからな。 テメェの魂、俺が吸うに値したワケじゃねぇぞ。 聖杯戦争って奴を過ごす相棒になんだろ? だったら少しだけ見せてやる、涙流しとけよクソガキィッ!!」 血、血、血。 空気が軋む。 男から発せられる血の匂い、関わりたくない程の狂気。 滲み出る其れ等は生物の総てを嫌悪させ、黒い血が――爆裂するように跳ね上がった。 「これは……寄生生物?」 『いや違うぞ。私達の同類ではない。だが男の右腕の血は生きている、のか?』 人体から生えたソレは杭の形をした奇形の植物とでも呼ぼうか。 しかし葉もなければ花もなく、実もなければ樹木もなく、勿論根も存在しない。 その植物に必要なのは水でも養分でも日光でもない。 血だ。悍ましい程の狂気に彩られた黒い血、それが男の殺意の具現である牙。 「ミギ―、出来るか?」 『出来なければ死ぬ。私も君も此処で死ぬだけだ。それは望んでいないだろ?』 「お前……ごめん、な」 「どうよガキ、感想は?」 「最高に気分が悪い」 「そっちの右腕は」 『興味深いと思う。しかし近寄りたくはないな』 「そうかいそうかい、なら――」 男が何かを仕掛ける。 右腕に生えた杭を飛び道具のように泉新一へ放つ。 対処しようとするもどう防げばいいのか。しかしそんな事を考える刹那など無く。 「ッ!!」 【気付けば杭が足と大地を繋ぐように刺さっていた】 その動きを泉新一とミギ―は視界に捉えていたが反応するまでもなく攻撃を喰らった。 ミギ―は弾き返そうと行動をするも杭はその動作よりも速く泉新一の足を貫いた。 『大丈夫かシンイチ!』 安否の声に黙って首を振る。痛くないと言えば嘘になる。 だが弱音を吐いた所で目の前の男が収まることは無いだろう。 従者ならば主に従って欲しいのだが生憎野蛮な獣を引き当てたらしい。 愚痴の一つや二つ、零したくなるが言葉が出て来ない。気力が吸われるかの如く意識が遠のいて行く。 薄らと見える男の周りは更に異形と化していた。 男を中心に大地や廃棄物、コンクリート。総てが消えて行く。 その現象は枯渇。男に生えた杭は総てを吸い尽くす邪悪の樹。 名を闇の賜物《クリフォト・バチカル》英霊として派生された世界で語り継がれるヴラド三世の結晶化した血液。 吸血鬼伝説を語る代名詞の血はその性質も吸血鬼のように総てを吸い尽くす邪悪の樹。 泉新一の足に刺さっている杭も例外なく同一の存在であり彼の生気を吸い付くさんと吸収している。 「ミ、ミギ―……コイツを頼む」 気絶寸前にまで追い込まれている泉新一は右腕に声を掛ける。 この杭が犯人ならば。除外すれば彼は何一つ吸われないで済むだろう。 無論一度開いた穴。杭を除外すれば大量の血が流れることになるだろうが構っている場合ではない。 「カハッ! まだ意識あンのか、少しは骨見せてくれるじゃねぇか。 いいぜ、鞘替えは待ってやるよ。テメェが目を覚ましたらそっからはお樂しみの聖杯戦争だ。 お前が何を願うかは自由だけどよォ、俺の邪魔だけはするな。したらテメェの存在ごと消すぞ」 男は泉新一を生かすらしい。そもそも彼が死ねばサーヴァントである男も消えるためその行動を実行することは不可能に近い。 【しかし男には例外のルールがあるのは別の話】 認める段階まではいかないがそのタフさは少しだけ評価してやる。そう言い放った。 『今から杭を抜く、踏ん張れよシンイチ』 ミギ―は身体を延ばし杭を抜かんと触れる。 『私まで吸おうと言うのか……ッ』 杭が総てを吸い尽くすならば。寄生生物であるミギ―も例外ではない。 時間を掛ければ掛けるだけ泉新一とミギ―の生気は杭に吸われ尽くされ男の糧となる。 「お前は……何がしたいんだ」 「決まってんだろ、勝つんだよ」 「勝つ……? そのためなら人間を殺したっていいのかよ、なぁ!? 何が聖杯戦争だ、どうせお前らみたいな糞野郎共を満足させるためだけのくだらない宴なんだろ!」 泉新一の言葉は八つ当たりに近い。 何故自分だけ毎回面倒事に巻き込まれるのか。平穏な世界から離れるのか。 右腕も、クラスメイトも、母親も、あの子も、人間も、全部、全部、どうして離れていくのか。 自分が何をしたんだ、何がいけない、この状況を招いたのは自分じゃない。 見ているか聖杯。お前に願いを叶える力があるなら応えてみせろ。 「紅い月を見た奴は月に招かれて願いが叶うんだろ!? ならやってみろよ! 此処は月、あの時俺が目撃した紅い月なら! 今すぐ俺を開放して、総てを元に戻して帰ろせろォ!!」 魂の叫び。 何一つ飾っていない本心からの叫び。 聖杯が願いを叶える願望器ならば総てを元に戻せ。 この身体も、母親も、日常も、何もかも総てを。 ミギ―との別れに感情を抱かないと言ったら嘘になる、それでも。 「クク、ハハハハハハハハ!!」 聖杯は何一つ応えるこなく、変わりに答えるは男の笑い声。 面白い事があったのだろうか。泉新一の叫びにコメディなど欠片も無い筈だが。 男は笑う、これ程笑う必要が在るのか。そう思える程に。 「ガキ、テメェは今【紅い月】って言ったよな? 【紅い月】って言ったよな」 男は笑いを終えると挑発するように尋ねる、紅い月、と。 泉新一は何が面白いか理解出来ない、しかし紅い月は事実であり彼は月を見てからこの場に招かれた。 否定出来ない事実であり無言で首を縦に振る。この時ミギ―が足に刺さっていた杭を抜き彼らは平常に戻る。 「真ん丸輝く御月様が願いを叶えるってかァ! コイツは傑作だ、あぁ、やべぇな、おい。 いいねぇ、俺の夜はまだ終わらないってことか。こんなくだらねぇ場所に呼ばれた時はクソと思ったけどよォ。 その言い伝え……それに英霊ってのは考えりゃワケの解かんねえ奴もゴロゴロ居んだろ? ガキ、テメェの命は更に伸びた」 男は返答も待たずに勝手に独り、まるで歓喜に浸るように空を仰ぐ。 聖杯戦争を。彼の発言で表わすならば樂しむ事に決めたのだろうか。 しかし長引くことは泉新一にとっては迷惑以外の何者でも無く、願い下げである。 「いいぜ、だったら見せてやる。 出血大サービスって奴だガキ。涙流して感激しろよ、なぁ」 テメェが今から見る夜は俺だけの夜、カズィクル・ベイの――夜だ」 そう呟いた男――カズィクル・ベイから杭の時と同じように感じたくもない空気が発せられる。 その言葉の真意は不明、吐き終えると同時に静かになったのが印象に残る。まるで嵐の前兆だ。 「コイツ、狂ってる……何を言ってるんだ」 『今更かシンイチ、だがどうする。君の命は伸びたらしいがあのベイと名乗った男は何かするぞ』 命を伸ばす、この発言を捉えるならば死なない事と同意義だろうか。 少なくともベイが聖杯戦争を樂しむならば魔力の供給源となる泉新一を殺す事はないだろう。 「お前、何をするつもりだ」 「言ったろ、俺だけの夜を見せてやるって。ただの人間風情が俺の気まぐれとはいえ薔薇の夜を拝めるんだ、死ぬまで持ってけ」 『――! シンイチ、その男から離れろ!』 泉新一が答えを聞くよりも速く。 ミギ―が移動を促すよりも速く。 カズィクル・ベイはこの世界を己の夜に塗り潰す。 「遅え―― ――月が紅い理由―― ――教えてやるよ」 総てが遅く、総てが運悪く、総てが因果の元へ。 ベイから放たれる殺気は鬼の如く、泉新一がこれまで相手にしてきた総ての虐殺器官を凌駕する。 そしてこれから紡がれる言葉は夜に羽ばたく悪への階段。 「Wo war ich schon einmal und war so selig かつてどこかでこれほど幸福だったことがあるだろうか」 聞こえる言葉はドイツの物、泉新一には聞き慣れない言葉だ。 その意味を理解することは彼に出来ない、出来ることはただ聞くだけ。 気になるとすれば【月が紅いワケ】だ。ベイは今から何を行うと言うのか。 ミギ―は逃げろと言った。その言葉は解る。此処は危険だ。しかし。何故だろう――足が動かない。 「Wie du warst! Wie du bist! Das weis niemand,das ahnt keiner! あなたは素晴らしい 掛け値なしに素晴らしい しかしそれは誰も知らず また誰も気付かない」 気のせいだろうか。 疲れの影響からか一瞬だけ。ほんの一瞬だけ夜が暗く見えた。 夜だから暗いの当たり前だ、それを差し引いても泉新一の瞳には夜が深く見えた。 「Ich war ein Bub'. da hab'ich die noch nicht gekannt. 幼い私はまだあなたを知らなかった Wer bin denn ich? Wie komm'denn ich zu ihr? Wie kommt denn sie zu mir? いったい私は誰なのだろう いったいどうして 私はあなたの許に来たのだろう War'ich kein Mann,die Sinne mochten mir vergeh'n. もし私が騎士にあるまじき者ならば、このまま死んでしまいたい Das ist ein seliger Augenblick,den will ich nie vergessen bis an meinen Tod. 何よりも幸福なこの瞬間――私は死しても決して忘れはしないだろうから」 泉新一は黙ってカズィクル・ベイの謡を聞く。 思考を停止している訳ではない。 『シンイチ! 聞こえているのか、シンイチ!』 しかしミギ―の声は彼の耳には届かない。総てが遠く感じるのだ。 その答えは簡単だ。この夜はあの杭と同じく総てを吸い尽くす闇の夜だから。 この夜の主役はカズィクル・ベイだ。 聖杯戦争だろうがこの夜の時だけ、彼以外の存在は総て脇役に成り下がる。 之が世界、彼が望む深淵の闇、憧れ、己が法で世界を塗り潰さんと溢れ出る渇望。 「Sophie,Welken Sie ゆえに恋人よ 枯れ落ちろ Show a Corpse 死骸を晒せ」 更に夜が深くなる。 鼓動する夜気、揺らめく闇夜。 総てを包み込む夜から感じるのは暖かい光ではなく冷たい闇。 「Es ist was kommen und ist was g'schenn,ich mocht Sie fragen 何かが訪れ 何かが起こった 私はあなたに問いを投げたい Darf's denn sein? ich mocht'sie fragen warum zittert was in mir? 本当にこれでよいのか 私は何か過ちを犯していないか Sophie,und seh' nur dich und spur'nur dich 恋人よ 私はあなただけを見 あなただけを感じよう Sophie,und weis von nichts als nur dich hab' ich lieb 私の愛で朽ちるあなたを 私だけが知っているから」 言葉が進む度に夜が深くなる。 泉新一は思う、之はゲームや漫画で言う所の詠唱なのだろう。 ならば終わる前に止めたいが、既に彼の力は先程の杭に吸い尽くされている。 黙ってベイの夜が訪れるのを待つしか出来ないのだ。 だがミギ―はまだ動ける。 この状況でベイを放置するのは危険過ぎる。 その触手を刃物に変え彼の首を斬り落とさんと猛威に動き始める。 「Sophie, Welken Sie ゆえに恋人よ 枯れ落ちろ」 ――もう終わるから黙ってろや。 ベイは刃を掌で抑えこむと最後の言葉を紡ぐ。 「Briah――Der Rosenkavalier Schwarzwald 創造――死森の薔薇騎士」 紡がれた呪言は世界を奈落へと誘う彼の叫び。 夜に夜を重ねる世界で誰も感じたことのない深淵。 総てが軋む、歪み、吸い尽くされ主たるベイを祝福する。 『遅かったか……』 「ククク、ハハハハハハハハハハハ! どうだコイツが俺の世界、総てを吸い尽くす薔薇の夜だ」 之が世界、総てを吸い尽くすのが世界の理と成り果てたベイの渇望。 夜が主役、夜に英雄となる吸血鬼、その力を今此処に具現化した。 夜を更に夜で重ねた闇、不快の塊である世界が総てを包み込む。 呆気に取られる泉新一、総てが規格外過ぎる。 戦力も、理も、世界も。どれも人間や寄生生物にさえ出来ない技だ。 之がサーヴァント、カズィクル・ベイの能力だと言うのか。 「感激して声も出ねぇのか? なら上を見てみろよ、なぁ――アレ、何だか解るか?」 ベイに促されるまま泉新一は空を見上げる。そして世界の闇を垣間見るのだ。 之は何だ、何だ、何だ。何がどうなっている。 総てを吸い尽くす薔薇の夜。ならば空に浮かび上がるアレは何だ。誰か説明してくれ。 聖杯戦争――招かれた嘘か本当か解らない謎の宴。正直な話、信じる方が難しい。 それでも願いを叶える権利は魅力的であり、日常を懐かしむ泉新一にとっては唯一無二の機会だった。 他人を殺す事など、人間を殺す事など彼には出来ない。それでも夢を見るに値する。 「あ、あぁ……ああああああああああああああああああああああ」 叫ぶ泉新一、笑うカズィクル・ベイ。 この夜の主役は主である人間ではない。支配するカズィクル・ベイだ。 故に総てがベイのために動いており、この状況でさえ薔薇の夜は泉新一とミギ―の総てを吸っている。 其処に追い打ちを掛けるように空で笑う月が一つ。紅く染め上げ夜を彩る月が一つ。 「どうだ、ガキ。テメェが言ってた紅い月だぜ? 感動して叫ぶことしか出来ねえのか? ってああ、そうだそうだ。お前さっき言ったよな? 紅い月が願いを叶えてくれるって。 で、どうだ? 叶ったか? テメェの願いは叶ったか? なぁ教えてくれよォ。気になんだよ。 なァマスター、聞こえってっか? 紅い月は願いを叶えて――ハハッ、アハハハハハハハハハハハ!!」 空に浮かぶは紅い月。都市伝説の紅い月。総てを叶える紅い月。 この月は誰が用意した。男だ。この男だ。カズィクル・ベイだ。 ベイは願いを叶えるのか。到底思えない。なら誰が願いを叶えるのか。それが聖杯。 ならば聖杯とは何だ。誰か教えてくれ。俺の希望を砕かないでくれ。助けてくれミギ―。俺はどうしたらいい。 誰も泉新一の問に答える事は無く、ミギ―もただ無言で状況を受け入れるしかなかった。 闇に響くは主であるカズィクル・ベイの笑い声。 主以外の総ての存在が絶望する中、泉新一の聖杯戦争が始まった。 【マスター】 泉新一@寄生獣 【マスターとしての願い】 ―― 【weapon】 ―― 【能力・技能】 右腕にミギ―と呼ぶ寄生生物を宿している。姿を鋭利な刃物に変質させ総てを斬り裂く。 また寄生された影響からか泉新一の身体能力はオリンピック選手を遥かに凌駕する。 【人物背景】 普通の学生だった彼はある日寄生生物が自分の右腕に侵入したことに気付き必死で抵抗を行った。 夢だと思っていが現実であり彼の右腕は寄生生物と同一となり名をミギ―として不本意ながら相棒となった。 生活していく中で世の中に寄生生物が潜んでいる闇を体験していき彼自身もまた戦闘に巻き込まれる。 その中で人間が死んで行き彼の母親も寄生生物に殺され、彼の心は深く、深く閉ざされていくことになる。 【方針】 ―― 【クラス】 アサシン 【真名】 ヴィルヘルム・エーレンブルク@Dies irae -Acta est Fabula- 【パラメーター】 筋力B 耐久B 敏捷C 魔力C+ 幸運E- 宝具A+ 【属性】 混沌・悪 【クラススキル】 気配遮断:D サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。 ただし、自らが攻撃態勢に移ると気配遮断は解ける。 【保有スキル】 エイヴィヒカイト:A 人の魂を糧に強大な力を得る超人錬成法をその身に施した存在。 本来ならばこの存在を殺せるのは聖遺物の攻撃のみだが聖杯戦争では宝具となっており、彼を殺すには宝具の一撃が必要となる。 また、喰った魂の数だけ命の再生能力があるが制限されており、魔力消費を伴う超再生としてスキルに反映された。 A段階に達すると己の渇望で世界を創造する域となる。 直感:B つねに自身にとって最適な展開を“感じ取る”能力。 視覚・聴覚に干渉する妨害を半減させる。 戦闘続行:A 呪い:A ある人物から彼の二つ名である魔名と共に送られたもの。 その内容は「望んだ相手を取り逃がす」 本人が望めば望むほど、その相手は横槍などにより理不尽に奪われていく。 【宝具】 『闇の賜物(クリフォト・バチカル)』 ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~30 最大捕捉:1 エイヴィヒカイトの第二位階「形成」に届いた者にしか具現化出来ない物 彼の其れは『串刺公(カズィクル・ベイ)』の異名を持つワラキア領主、ヴラド三世の結晶化した血液が素体。 能力は 「血液にも似た赤黒い色の杭を全身から発生させる」。 この杭は、突き刺した対象の魂や血を吸収し、所有者に還元する効力を持っている。 飛び道具、武具、空中での移動など様々な用途に応用出来る。 この聖遺物との親和性は他のエイヴィヒカイトとは群を抜いている。 クリフォトとはカバラの『生命の樹』と対をなす『邪悪の樹』の名であり、バチカルはその最下層を示す。 『死森の薔薇騎士(ローゼンカヴァリエ・シュヴァルツヴァルド)』 ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000 エイヴィヒカイトの第三位階、自身の渇望の具現たる「創造」能力。 元となった渇望は 「夜に無敵となる吸血鬼になりたい 」 。発現した能力は「術者を吸血鬼に変えて、周囲の空間を夜へと染め上げ、効果範囲内に存在する人間から力を吸い取る」こと。 渇望通り、吸血鬼と化して人間から精気を吸い上げる能力である。 発動すると周囲一帯が固有結界に似た空間に取り込まれ、例え昼であっても強制的に夜へと変わる。もっとも、夜時間帯に重ねがけした方が効力は格段に上がる。 この「夜」に居る人間は全て例外なく生命力をはじめとした力を吸い取られ、奪われた力の分、 この空間の主である吸い尽くした力を己の糧とし、それを抜いても己のを強化する。また、夜空には紅い月が浮かび上がる。 相手を弱体化させ己を強化し続ける卑怯な理だが弱点として【吸血鬼の弱点ソノモノが彼の弱点となる】 『???』 ランク:? 種別:? レンジ:? 最大捕捉:? 彼の中に眠るナニカ。性別、数――総てが不明。 【人物背景】 聖槍十三騎士団第四位、ヴィルヘルム・エーレンブルグ=カズィクル・ベイ。白髪白面のアルビノの男。 その体は日光を始めとした光全般に弱く昼はほとんど出歩かないが、逆に夜の間には感覚が鋭敏になるという吸血鬼じみた体質を持ち、 それを自らのアイデンティティとしている。戦闘狂であり彼の歩んできた道には屍の山が築かれている。 元は貧困街の出身であり父と姉の近親相姦で生まれ、「自分のちが汚れているならば取り替えればいい」と感じる。 その後彼は親を殺しこれまでの人生とは別に暴力に溢れた生活を送るようになる。 其処で遭遇したのが白き狂犬、其処で出会ったのが黄金の獣。そして彼の人生は世界の因子に成り得る奇妙な物語に巻き込まれる。 なお、仲間意識は強く同じ騎士団の仲間を家族のように思っている。 【願い】 樂しんで城へ帰還する。
https://w.atwiki.jp/trpggamers/pages/66.html
□第二次gamers聖杯戦争 ちらほらと話が上がってきてるネタ消化のために第二回gamers聖杯戦争を開催します。 基本はマスター(新規キャラor既存の明らかに英霊クラスではないキャラ) + サーバント(既存キャラ)の1セットを1PLが担当する形になります。 データが集まってきたらO3テストプレイのモチベのためとか、時間作ってなんかのタイトルで遊んだりとか考えてます。あと、やにきく会の話のタネにも。 ここに集まったデータを使って卓立てる! ってのも超グッドだと思います。ぜひ。 詳細はプチプチ追加していきます。 このページに過去キャンペーンの知名度あるキャラクターを載せてありますので、ガシガシ皆さんで編集していってやってくだせえ。 参考文献→http //wiki.cre.jp/typemoon/%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%83%88 (記述例) 清水君麻呂 クラス セイバー 性別 男性 属性 秩序・善 ■ステータス 筋力 C 耐久 A 敏捷 C 魔力 E 幸運 C 宝具 C ■固有スキル ・練達兵/強靭な肉体A 致命傷を負っても戦闘続行できる能力。ボーキサイトや燃料などで傷を治すことができる。 ■宝具 ・「舞鶴鎮守府海陸戦隊」 種別:対軍宝具 ランク:C レンジ:? 最大補足:200人 ・概念霊装「約束されし勝利の稲妻(エレクトリック・サンダー)」 種別:対人宝具 ランク:B 最大捕捉:1人 ■武装 海軍軍刀 キャンペーン ◇Ragnarok(ARA) レキ・ヒワタリ クラス セイバー / バーサーカー 性別 男性 属性 混沌・善 / 混沌・悪 ■ステータス 筋力 B / S 耐久 A / EX 敏捷 D / E 魔力 D / E 幸運 EX+ / E- 宝具 C / B ■固有スキル ・忘却抵抗EX 記憶の忘却を受けない。 ・流転の刃C セイバー時。幸運C以下の生命存在を相手にする時、対象の幸運をEまで低下させる。 ・天目一個EX バーサーカー時。宝具の干渉の一切を無効化する。 令呪による特定の命令が無効になる。主に、能動的な攻撃を行わせることができない。 ・竜率EX 古代龍以下の竜種を無条件に従える。 ■宝具 ・「Ragnarok」 セイバー時 種別:対人宝具 ランク:C レンジ:1 最大補足:1人 傷を与えた対象の記憶をある程度消滅させる。記憶の消滅の程度はランクによる。 ・「ロイヤルガーデン」バーサーカー時 種別:対軍宝具 レンジ ? 最大捕捉:(国家1つ程度) 自身が治める竜の国、ロイヤルガーデンの扉を開く。 ■武装 「黄昏の刀剣(イクスヴェルン)」セイバー時 「東雲妖刀 血桜」バーサーカー時 「白桜」 カイト・キシシキ カルチェル・クラスロット アル・ミリアフィ ◇秘密教団FORCE(ARA) ヤマ・チャン(PC) ガンダルフ・ロックマウンテン エルク・ニルヴァーナ リン ◇空中庭園テニア(ARA) シェシュリン クラス セイバー 性別 女性 属性 秩序・中立 ■ステータス 筋力 B 耐久 A 敏捷 E 魔力 C 幸運 C 宝具 B ■固有スキル タリスマン EX 守護の意識が昇華した呪い耐性を表すスキル。呪いや洗脳といった類の影響を受けない。 戦闘続行 A 憧憬への執着 C ランクが高ければ記憶に強く残る場所や願いへの執着により生存本能を高めるスキル。C以下はそれらがない。 過去への嫌悪 A++ 過去の自身への嫌悪感を示すスキル。ランクが高いならそれらを指摘されること、想起するものが精神の平静を崩す。 ■宝具 「鎧は胸に、騎士道は我にあり(ハーツオブパラディン)」 大人へと成長する中で利己的な人格が剥がれ英霊としての格を得たことの証。 数々の経験から生み出された、彼女の心象を映し出すある種の固有結界である。 聖騎士とは守るものであり、それ以上を求めない。あらゆる魔術的、間接的攻撃の軌道を捻じ曲げる宝具。 ■武装 パラディンソード 愛流 エルリック・シャイニングロード レオン(NPC) ◇一周年記念セッション(ARA) ◇Ragnarok/Evil(ARA) レキ・ヒワタリ(天目一個ver) カルチェル・クラスロット(竜騎士ver) ◇LoveSickness(ARA) ギコウ スルト レント・セプター ◇秋葉原都市伝説(NW2) 三国翔 黒木流 リヴレス・セレスティオ ノラ レーヴェ 裁定者・ウィザードクラス ◇追送サンクチュアリィ(NW2) 篠原真琴 黒木流 クラス:キャスター 性別:男性 属性:混沌・悪 ■ステータス 筋力:D- 耐久:D+++ 敏捷:D- 魔力:EX+++ 幸運:D 宝具:EX+ ■クラス別スキル ・対魔力EX 魔術による干渉を受けない。 ■固有スキル ・規格外EX 一流の魔術師マスター程度の魔力量では使役はおろか召喚、現界ができない。 ・冥界? 死者の国の盟約により、一日に千より多くの生物を殺すことができない。 ■宝具 「追想サンクチュアリィ」 種別:結界宝具 ランク:A++ レンジ:1 最大補足:1人 紅い月と追想の森を顕現する。この結界内にいる時、流は絶対に破壊されない7層の防護壁を持つ。 「黒き流星(サンクチュアリィ・オブ・レミニセンス)」 種別:対界宝具 ランク:EX++ レンジ:? 最大補足:1000人 太陽系53億個分のサイズを持つ魔法陣10001個からそのサイズに等しい、星の力を収束した光線を放つ。 詠唱には10001人の流が必要。 ■武装 ヘイオスケイル サブマシンガン 三井あかね クラス アーチャー 性別:女性 属性:中立・中庸 ■ステータス 筋力:C 耐久:D 敏捷:A 魔力:B 幸運;D 宝具:E-~A++ ■クラス別スキル ・対魔力C 詠唱が5節以下の魔術行使を無効化する。この値は、彼女自身と装備する概念武装の合計である。 ・単独行動B マスター不在でも1日程度の現界を維持可能。 ■固有スキル ・魔眼C- 左目に継承した極短期の未来視の魔眼。Aランクの直観に等しい効果をもたらすものの、片目のみのためか発動が安定しない。 ・魔術B 一般的な魔術を扱えることを示すスキル。並みの魔術師に比べはるかに魔力効率がよい。 ・カリスマC++ 人を引き付ける天性の魅力。ただし、彼女の場合なぜか異界の魔王ばかり引き寄せる奇妙な縁がある。 ・複合霊核 EX 自身のサーヴァントとしての霊核が複数人から作られていることを示す特殊スキル。このスキルを持つサーヴァントは基となった霊核すべての技能、スキルをある程度保有できる。 ただし、霊核が多い分記憶が混ざってはっきりしなくなり、精神系スキルの成功率が大きく落ちるほか、魔力の消耗も激しくなる。 彼女の場合、春秋物語に語られる赤と、楚王のはじめとした複数人の霊核が複合しており、カリスマや剣技のほか、軍略、政治、鍛冶の技能も持ち合わせている。 通常時の魔力の消耗を抑えるため普段あえて出力を落としており、全力で戦うときのみ魔眼の効果とともに最大限に効果が発揮される。 ■宝具 「Sanctuary of Reminiscence(追憶の聖域)」 種別:結界宝具 ランク:E-~A++(具現化内容によって変化) レンジ:1 最大補足:1人 自身の深層記憶にある物体を任意に具現化できるようになる固有結界。具現化内容に制限はないが、生物は身体のみにとどまる。 また深層記憶に由来するため、表層の記憶とは若干のズレがある場合もある他、結界の容積(自分の体積)以上に大きいものも具現化できない。 世界を浸食する固有結界故に展開後世界の修正力が働くが、彼女は結界の範囲を自身の体のみ絞ることで大幅にその修正を和らげている。上記スペックにおける最大補足は自身のこと。 以下,詠唱 I am the bone of my Memory.(―――体は記憶で出来ている) Spilit is my body, and Soul is my blood.(血潮は魄で、心は魂) I have created over a thousand Stories.(幾たびの物語を越えて不敗) Unknown to Death. Nor known to Life.(ただの一度も敗走はなく ただの一度も理解されない) Have withstood pain to create many memories.(彼の者は常に独り追想の森で勝利に酔う) Yet, those hands will never hold anything.(故に、その生涯に意味はなく) So as I pray, SANCTUARY OF REMINISCENCE.(その体は、きっと記憶で出来ていた ) ファントム 黒木流歌(NPC/転生ver) ラテストリア(NPC) ◇暇人セッション 竹井佳織 クラス:セイバー/バーサーカー/ライダー 性別:女性 属性:混沌・悪 ■ステータス 筋力:B+ 耐久:B+ 敏捷:B 魔力:D++ 幸運:C 宝具:B ■クラス別スキル ・対魔力C 初級発動魔法程度の魔術干渉を無効化する ・騎乗B+/C/EX 乗り物に対する高い適性を持つ。 ■固有スキル 魔女王A ウィザードとの戦闘時ステータスが大幅に上昇(1~2ランク程度) ■宝具 「魔装"ケイオスサーキット"」 種別:対人宝具 ランク:D 交戦中の相手の敏捷をワンランク低下させる。 「魔剣・クラシオンブレード」(セイバー,バーサーカー時) 種別:対人宝具 ランク C 魔王に対して高い殺傷力を持つ魔剣。 「ダークヴァルキュリアス "熱病" "疫病"」(ライダー時) 種別:対人宝具 ランク B 耐久B以下のサーバントは罹病したら一日と経たずに死亡する致死毒を持つ魔剣。 藤堂塔夜 クラス ブレイバー 性別:男性 属性:秩序・善 ■ステータス 筋力:A++ 耐久:C++ 敏捷:B++ 魔力:E++ 幸運:A++ 宝具:EX ■クラス別スキル ・天運A 世界の加護を受けた勇者の証。不利な状況を打破しやすくなる。 ■固有スキル ・心眼(偽)B ・助言C 対象の行動を成功させやすくする。 ■宝具 「魔装"ケイオスサーキット"」 種別:対人宝具 ランク:D 交戦中の相手の敏捷をワンランク低下させる。 「隕鉄煌めく拡散の剣(メテオライトソード)」 種別:対軍宝具 ランク:B+ レンジ:1~99 最大捕捉:1000人 元は少し丈夫な普通の剣だったものが長年共に過ごした塔夜の存在力を練りこまれ宝具と化したモノ。光の波動を放つ。 「隕鉄煌めく極光の剣(メテオライトソード)」 種別:対人宝具 ランク:A レンジ:1 最大捕捉:1人 元は少し丈夫な普通の剣だったものが長年共に過ごした塔夜の存在力を練りこまれ宝具と化したモノ。光の波動を収束し斬りこむ。 「人類最後の──」 種別:対人宝具 ランク:EX レンジ:- 最大捕捉:1人 命尽きるまで──命尽きても戦い続けることを世界に義務付けられたことによる祝福。 倒れても倒れても立ち上がるその姿はまさに勇者である。 神奈真 伊藤園三百 パピヨン ◇暇人セッションⅡ 塩見学人 神奈真 クレス 黒桐玖 リモーネ ◇-永炎戦記- ▼第1部-永炎戦記- 永劫のセツナ(ARA2E) 間雪奈 クラス セイバー/ライダー/キャスター 性別 女性 属性 秩序・中立 ■ステータス 筋力 B 耐久 A 敏捷 E 魔力 B 幸運 C 宝具 EX ■固有スキル 夢使いの貌 ? 自身の姿を様々に作り替えるスキル。現在確認されているのは騎士、機械人形、魔女。 また名も3つ持ち、すべての真名を知られない限り能力は落ちない。 オーラ A 同じオーラを持つサーヴァントに対して有効な攻撃を行えることを表すスキル。 攻勢への躊躇 C キャスターとして召喚されなかった場合A+。ランクが高いほど能動的な攻撃を躊躇う。 揺るがぬ心 EX 精神攻撃に対する耐性を表すスキル。A+以上でネガティブな幻惑を無効化する。 ■宝具 「永久に灯せ我が希望の炎(エンドオブエタニティ)」 「刹那」ではない輝く炎を纏う剣を呼び出し薙ぎ払う。 剣閃から放たれる炎の真価は攻撃ではなく迫る脅威を焼き滅ぼすことにある。 ■武装 「刹那」複雑な形状の護拳を持つ長剣 「永劫」広げた翼のような形状の盾 「沈黙の兜」髪留め 黒木ナガレ クラス セイバー/アーチャー/アサシン 性別:男性 属性:混沌・中庸 ■ステータス 筋力:A 耐久:B 敏捷:A+ 魔力:E 幸運:B 宝具:A++ ■固有スキル ・黒木流刹断術A 黒木の家に伝わる武術。ありとあらゆる武具を使いこなすための技術であり、それを使うための肉体を作るためのスキル。 A以上であればどのような武具でも達人のように使いこなせる ・奈落もたらす天理の業(アビス)A 自身に有利な状況を作り出すスキル 心眼(真)A ■宝具 ・「未来」 種別:対界宝具 ランク:A++ レンジ:- 最大捕捉:- そこにはないがそこに在るもの。世界に干渉し現象を生み出すことができる。 本来の担い手ではないため、真の力は出せず限られた力しか発揮することができない。 ・「白木の鞘/黒木の鞘」 種別:対人宝具 ランク:C レンジ:- 最大捕捉:1人 持ち主の身体能力を向上させる宝具 ■武装 無銘の刀×5 バーストルビー 兜森公一 高橋 バルゴ ツェペルミ・リアブリーズ(NPC) ライミラク(NPC) 黒木流歌(NPC) 間瞬(無人PC) ▼第2部-永炎戦記- 永劫のセツナOrigin(O3) 一ノ宮朋久 クラス リライター(これが駄目ならキャスターで。アサシンの適正もあり) 性別 男性 属性 混沌・善 ■ステータス 筋力 B 耐久 A 敏捷 B 魔力 EX 幸運 E- 宝具 EX+ ■クラススキル なし ■固有スキル ・修正者 ? 史実の改変者であることを表すスキル。運命を書き換える者の証。幸運判定の結果にある程度干渉できるため,朋久本人の幸運の低さを補っている。 ・創造改変 EX 自らの肉体や周囲の物体を書き換えることが出来る。魔力消費は大きくなるが,敵の武器や技を模倣することも可能。 ・神殺し:C++ 神性を持つ敵に対して優位に立つことが出来る。 ・対魔力 A Aランク以下の魔術を完全に無効化する。事実上、現代の魔術師では、魔術で傷をつけることは出来ない。 ・戦闘続行 A+ 致命傷を負っても戦闘続行できる能力。致命傷を受けても,朋久の場合,霊核破壊寸前に踏みとどまることが可能。 ■宝具 ・「未来=永劫斬(フラットジャッジ)」 種別:対運命宝具 ランク:A++ レンジ:1~10 最大補足:1人 黒き時の流れより出でし先駆者から受け継いだ秘剣。硝子状の無形剣「原初」に紫光を纏わせ,時空をも含む遍く全てを断ち切る一閃を行う。 ・「10002番目の世界(ジ・オリジン)」 種別:対運命宝具 ランク:E-~A++(構築する世界によって変化) レンジ:? 最大補足:? 運命を否定し,新たに世界を構築する。世界からの修正力を無視して一から世界を構築するため,マスターと自身に大きな負担がかかる。 ■武装 ・「原初」定まった形のない硝子状の剣 ・OOO(トリプルオー)戦闘服 ■解説 書換の魔王。"Write braver"とも。魂の階梯を登り詰め,神と同等の位階へと至った永劫の先駆者。とある世界の守護者を己が願望の為に切り伏せたという。彼が宿す紫光は「死者を選別する独善の刃」と呼ばれる。 一条瑞季 安藤映次 長瀬理奈 藤宮輝 間雪奈 クラス セイバー/ライダー/キャスター 性別 女性 属性 秩序・中立 ■ステータス 筋力 B 耐久 A 敏捷 E 魔力 B 幸運 C 宝具 EX ■固有スキル 夢使いの貌 ? 自身の姿を様々に作り替えるスキル。現在確認されているのは騎士、機械人形、魔女。 また名も3つ持ち、すべての真名を知られない限り能力は落ちない。 オーラ A 同じオーラを持つサーヴァントに対して有効な攻撃を行えることを表すスキル。 攻勢への躊躇 C キャスターとして召喚されなかった場合A+。ランクが高いほど能動的な攻撃を躊躇う。 揺るがぬ心 EX 精神攻撃に対する耐性を表すスキル。A+以上でネガティブな幻惑を無効化する。 ■宝具 「永久に灯せ我が希望の炎(エンドオブエタニティ)」 「刹那」ではない輝く炎を纏う剣を呼び出し薙ぎ払う。 剣閃から放たれる炎の真価は攻撃ではなく迫る脅威を焼き滅ぼすことにある。 ■武装 「刹那」複雑な形状の護拳を持つ長剣 「永劫」広げた翼のような形状の盾 「沈黙の兜」髪留め ◇Angelic Roop(AG2E) 雫 フロワ アムリエート 利根川信也(シンヤ) 達也・アーレント ユータ ラキル クラン ◇Chros Over Horizon(MG) 輪島進(ヴァヴズアイン操縦者) ラキル クラン 利根川信也(シンヤ) 達也・アーレント フィン(NPC) 間雪奈 クラス セイバー/ライダー/キャスター 性別 女性 属性 秩序・善 ■ステータス 筋力 E 耐久 C 敏捷 C 魔力 EX 幸運 A+ 宝具 A++ ■固有スキル 天使 ? 『天使』であることを表すスキル。物理干渉を無効化する。 ケルン A+ 天使に付加されるスキル。 金の天使核 EX 無限機関とも呼べる霊素を生み続ける核。 人の身 EX 天使のランクをDまで制限する。 ■宝具 「天焦がす凛々の明星(ルキフェルハイロゥ)」 周囲の魔力、霊素を爆発的に増やし、自身を『完全天使化』させる。 「天使の王(バニッシュメント・カオス)」 セイバーとして召喚されたときのみ使用できる宝具。天使たちの剣を呼び出す。 ■武装 「小銃」陸軍支給品の自動小銃。 ◇仮想空間の断罪者(O3) 野村正行 高岡葵 城崎広樹 荒木旋 平野 ∀ マイク ◇零 鬼灯の夢幻(CoC) 竜ヶ崎啓一 加藤芳香 勇・シュトックハウゼン 丘留止 赤門魅華 サイランド・メイガス 因幡五丈 バン・バババン・馬場 嘉月朋梨 ◇異聞戦記 アヴィム=イグジール(MG) 闇乃様 不動善邦 ◇gamers鎮守府 塵神 華神 百火繚乱 山露 信濃 八千代 裕也 瑞星 浦和 ネブガドネザル 喪財苦 ◇アリアンロッドPE クロード アポリア・ツヴァイ アッバーラ・ドムドム チェルニィ・一魄・エクシタルテ クライス・フリューゲン ツクリヤマ ◇キャンペーン名不詳のキャラ ☆仮面ライダー雅セッション(NW2) 仮面ライダー雅 単発(プレイタイトル毎) ☆アリアンロッド アリアンロッド2E ◇忘年会セッション2009 カズヤ・アイゼン 龍玄 エルリック・フレイムロード ◇-永炎戦記- 悠久のギャラハッド 間瞬(ギャラハッド)