約 374,337 件
https://w.atwiki.jp/sentakushi/pages/366.html
274 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日: 2006/10/25(水) 05 15 05 「衛宮、今夜のことだが、私達も一晩泊まっていって構わないかね?」 やはり実地観察は大事だ。 とはいえ、受け入れられることはあるまい。 故にここで夕食までご馳走になっていくというような形に持って行く交渉と言うことになろう。 「ああ、分かった」 ……忘れていたな、彼は『良い人』であった。 人から頼まれれば嫌とは言えぬ質なのだ、多分彼は『この大人数なら何人増えても手間は変わらない』とか考えているのだろう。 とはいえ、口を出てしまった物を引っ込めるというわけにも行くまい、これはこれで受け入れるべきだろう。 さて、昼食も終わり頭に栄養素は巡っていくだろう、ここで簡単に人物を整理しよう。 ……記憶力は決して悪い方ではないと自負してはいるが、さすがにこの人数を一気に把握する事は難しいのだ。 まず家主である衛宮こと衛宮士郎。 この家の家主であり、途方もない善人である。 人に好かれるような性格ではない、精々『良い人ね』で終わりなはずだが人に好かれる生活をしている。 この家にいる多くの人間が大小差はあれ、彼に惹かれているのは間違いなかろう。 遠坂嬢こと遠坂凛。 今回の妹大量増加以前よりこの家に通う状況であったらしいが、そこに至る経緯などは不明。 とはいえ、少なからず彼に好意を抱いていることは間違いないだろう。 そうでなければ何か事件が人知れずあったところでこの家に住んだり通ったりと言ったことはあるまい。 衛宮への好感度やや高し、但し公言はせずと言ったところか。 間桐嬢こと間桐桜。 現在知る限りに於いて衛宮氏の恋仲にありこの家で同棲中だという。 当然この状況は快くは思ってはおるまいが、衛宮氏が良いと言っているため文句は言えぬと言ったところか? もしくはこの状況を楽しんでいるとか? だとすれば随分な女傑である。 あるいは決して彼が裏切らぬと確信していると言うことが考えられる……夜が強いとか。 ……自分の想像で顔を赤らめてはいけない、好感度は最大としておくのが妥当だろう。 ライダー嬢はどうだろうか。 昼食の際も特に誰と何を話すでもなく事務的に食事をこなして部屋に戻ってしまった彼女である。 ……彼女の立場は間桐嬢の家庭教師や侍女の類と考えられる。 当然恋仲にある間桐嬢と衛宮氏の関係を継続させたいはずで、今現在作戦を考案中と言ったところだろうか。 ふと自分の思考で気付くが彼女も2年ほど前からこの家に住んでいる。 男手が衛宮氏一人である以上ある程度はそう言った感情もあるのではなかろうか。 とはいえ自分の立場もあってなかなか言い出せない……というのも面白いな。 好感度は中程度、但し遠坂嬢と同じく公言はしていないと言うところか。 藤村教諭…… この家に通う人物の中では最古参である。 勿論教師としての立場という物もあるだろうが、彼に恋心を抱く、という状況がどうにも想像ができない。 仮にあったとすればまず最初に、こういった状況になる前に手を出している事だろう。 もしやしたらと言うこともあり得るが…… 好感度は……大穴であって測定不能というところか。 続いて新たに増加したであろう妹達を含めた人物達への考察に移ろう。 275 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日: 2006/10/25(水) 05 16 30 イリヤスフィール嬢はどうだろうか。 ……考えるまでもない、昼食時も昼食後も抱きついて離れぬ様は見ていて清々しいほどの惚れ具合である。 衛宮は養子でイリヤ嬢は実子だという。 法律的には婚姻不可だったような気もするが、それ故に燃える恋というのも面白いかもしれぬ。 好感度は極めて高く、行動からも好意を振りまいているな。 続いて瞳嬢、本人は嬢と呼ばれることを拒否したがこの呼び方の方がしっくりする、公言はしないので許して貰うことにしよう。 ……彼女に関しては彼への惚れた腫れたはなさそうだ、極めて普通の兄と妹と言ったところか。 とはいえ、数日前からのことならばそれが普通だし、彼女自身が恋をしていないということはなさそうだ。 この場にいない誰か、それは不明だが誰かに恋をしているぞとどこぞの感覚が囁いている。 恐らくここに来る前の地元、東京らしいが……向こうにその人物は居るのだろう。 これは彼についての事が落ち着いたら話を聞いてみたい物だ。 なのは嬢、フェイト嬢については考えることも余りない。 と言うよりもイリヤスフィール嬢と同様に好意を抱いているのはほぼ間違いはないと思えるな。 先程も皿洗いやその他の片付けを半ば強引に引き受けて終わらせた。 ただの尊敬という感情からはああいった行動はとるまい。 二人とも衛宮への好感度は高い、そして隠そうとして失敗している。 それはただただ微笑ましい事だと思う。 では血縁関係のない人物についてだが…… ルヴィア嬢、遠坂嬢のロンドンでの学友についてだが…… なんというのだろうか、高慢に振る舞おうとして失敗しているように思える。 『日本なんて嫌いですもの』と言っているがその割に日本茶等は受け入れている、と言うよりもその他日本文化には総じて好意的だ。 それに、べったりというわけではないが『まったく仕方ないですわね』を枕詞にして様々な面で衛宮に尽くしているように見える。 そう、アレだ、嫌いと言っているが実は好きという……なんと言ったか。 ともかくそう言った人物であるということが理解できる。 そしてバゼット氏だ。 正直衛宮との接点がいまいち見えてこない。 『この家は駆け込み寺のようなものです』とは彼女の言葉だが、だからといって見ず知らずの人物まで泊めるような…… いや、あの衛宮なら有り得るが、それだけでは無かろう。 彼女がいわゆる『隙のない女性』であることは間違いないが…… 時折彼に見せる表情は、好意とは違うような気もするが悪意よりは好意に近い何かである事は間違いない。 さて、最後に男性陣だ。 遠坂嬢の親戚であり、なのは嬢、フェイト嬢の養父でもある六道氏だ。 来宅した際のあの組み手と言い相当な武術の達人であることは疑いない。 それ以上は基本的に謎のままか、とはいえ、養女二人を見る限り誠実な人物であることは間違いなさそうだが。 そしてルヴィア嬢の親戚であるカール氏か。 彼については紳士的であると言うこと以外分かることは殆どないな、男性である以上衛宮氏への興味がどうこうもありようがないし。 ……しかし、彼とは間違いなく初対面であるはずなのだが、どこかで見たことがあるような気がしてならない。 冬木市の観光に来ていると言うことだが、市内で見かけたというものではないような気がするが…… ふむ……こんなところか? しかし、これはどう考えようとハーレムに違いない、そうであるから見ていて飽きないものだが。 来訪:来客を知らせる玄関のベルが鳴る 敵襲:聞き慣れぬ異音が鳴り響く 視点変更:一方士郎も考えていた 舞台変更:一方その頃S市杜王町
https://w.atwiki.jp/ffwm/pages/167.html
黄金の悪魔はどうやって聖杯戦争に参加したのか◆DIOmGZNoiw ランサーは膝をついた。吐き出された血反吐が、眼下を赤く汚す。血まみれの手が、土色の地面に赤い手形をつける。スノーフィールドの北に位置する渓谷へと続く土色の道路は、やる前までは整然と舗装されていたが、今となっては至るところが抉れ、血に汚されている。この場所で敵のサーヴァントとの戦闘に入り、そして、先に折れたのは、ランサーの方だった。 両手を地面について体を支えながら、ランサーは顔を上げた。敵のサーヴァントが、傷ひとつ負わぬまま、悠然と歩を進める。敵は、その体を、淡い月明かりを反射させてきらめく黄金の装甲に包んでいた。街灯ひとつない夜の荒野に、禍々しく輝く赤の瞳が揺らめいている。 元来ランサーが所持しているべき槍の宝具は、ランサーの手元にはない。ランサーの眼前で、本来の持ち主から宝具を奪い取った敵が、片手で槍を大きく回転させ、腋に抱え込んだ。敵は、自らの武器を持たず、ランサーから奪い取った槍で戦っていた。クラスがわからない。 「きさまは、いったい」 「わたしのことはゴルドドライブと呼べ」 「ゴルド、ドライブ」 ゴルドドライブと呼ばれた男は、金の仮面の下で心地よさそうに笑った。 「くく……ふふふ。まあ、試運転としてはこんなところか」 「試運転……だと」 「そうさランサー。貴様は言わば、このわたしの性能をつまびらかにするための研究材料に過ぎん。そういう意味では、今回の目的は概ね果たしたと言えよう。ふっふふ……貴様は、まあ、よぉく戦った方だよ」 頭上から降り注ぐゴルドドライブのあざけりを聞いても、今更ランサーが怒りで頭に血を上らせるということはなかった。いかに笑われようと、いかに侮蔑されようと、ゴルドドライブとの間に開いた戦力差はいかんともしがたい。 眼前の地面に、ランサーの槍の切っ先が突き立てられた。 「せめてもの情けだ。それを使って、わたしに一矢報いてみたまえ」 「き、さま」 振るえる手で槍の柄を握るが、自力で体を起こすだけの体力は最早残っていない。突き立てられた槍を杖代わりに身を起こすが、今度は黄金の装甲で覆われたゴルドドライブの脚が、救い上げるようにランサーの胴を蹴り上げた。胴体がくの字に折れ曲がる。蹴り飛ばされたランサーは、受け身すらまともに取れずその身を地べたに転がされた。 「さっさとしろこのグズがッ!」 低い声で、ゴルドドライブが怒鳴った。最前まで笑っていたことが嘘のようだった。 戦乱の世を生き抜いてきたランサーだが、このような屈辱を味わったことは、生前にはなかった。怒りよりも、自身の情けなさが先に立つ。背後に控える主人を守らねばならない、それは騎士としての使命だ。だというのに、現状はそれすらもままならない。 首を捻って、ちらと後方へ視線を送る。此度の聖杯戦争において、ランサーのマスターに選ばれた少女が、大きくぱっちりとした可愛らしい瞳を赤く充血させて、逃げずにランサーの戦いを見守っている。 早く逃げて欲しい。そう思うと同時に、少女の顔を見た時、ランサーは胸のうちを熱い感情に焦がされるのを感じた。最前まで敵との戦力差による絶望に満たされていた心に、守らねばならないという、熱い感情が再燃した。 もう一度、槍を地面に突き立てた。傷付いた体を無理矢理起こして、ランサーは構えを取った。過度な傷は、とうに感覚を一周させている。もはや痛みという痛みは感じない。その代わり、ただただ体が重い。だが、それだけだ。重いだけならば、まだまだ戦える。ランサーは自分にそう言い聞かせた。 「マス、ター……お逃げ、ください。あなたが逃げるだけの時間は、わたしが、稼ぎます」 「おォいおい、そんな体で、まだ自らの主人を護り抜くため戦おうというのか? まったく、これだから力量の差を理解できんバカは始末におえんのだ」 「なんとでも、言え……わたしは、主を守る騎士。この身を盾としてでも、主は……主だけは、護り抜く」 体が急に軽くなった。傷の痛みも、重さも感じなくなった。体の内側、四肢の末端まで、一斉に励起した魔力が行き届く。ランサーは察した。マスターが、令呪を使ったのだ。それも、一画どころではない、この分ならば、二画か、或いは三画一気に使われた可能性すらある。 「マスター」 愚かな判断だと、ランサーは思う。ここで令呪を残して離脱さえしてくれれば、あわよくばマスターを失ったはぐれサーヴァントと再契約するという選択肢もあったのに、おそらくあの少女は、その選択肢を思い浮かべてなお、ランサーのために令呪を使うという判断に至ったのだ。それだけ信頼されているということだ。騎士としての使命感よりも、嬉しい、という感情が上回った。応えないわけにはいかなかった。 「これが最後の勝負だ、ゴルドドライブとやら」 まなじりを決して、ランサーはゴルドドライブへと槍の切っ先を向ける。 宝具を解放し、槍へと魔力を循環させる。神秘の輝きを纏った槍が、大気を震わせる。膨大な魔力が槍に集中し、溢れ出した光輝がオーラとなってゆらめく。槍を振りかぶった。 「ああ、望むところだとも。わたしもこれを試してみたかった」 嘲りを含んだ半笑いの受け答えに次いで、ゴルドドライブが、己のベルトに備えられたキーを捻った。車のエンジン音を連想させる駆動音が鳴り響く。黄金の胸部装甲に袈裟懸けに装着されていた巨大な円環が、煌々と輝く金の波動を放出した。 「なっ……に」 宝具の発動条件を満たし、あとは投擲するのみという状態だったランサーの宝具が、敵の放った光に触れると同時、槍という存在そのものが掻き消された。最も慣れ親しんだ武器が、データ情報にまで分解され、ゴルドドライブの手元へと移動する。飽和状態の魔力を内包した槍が、ゴルドドライブの手に握られる形で、再構築された。 「ふ、ぁ、は、は、あっはっ、はっはぁ! 見ろランサぁああ、わたしはこのネットワーク世界の神にも等しい力を手に入れたぞ!」 「ば、か……な」 奪い取った槍を、ゴルドドライブは大きく振りかぶった。徒手空拳のランサーに、対抗する手段はない。敗北を悟ったランサーは、最後にちらと後方を振り返った。少女は、その大きな瞳から涙を零して、ランサーを見つめていた。 ――逃げて。 口元をそう動かして、最後のメッセージをマスターへと送る。ここでランサーが敗れることは必定だが、今ならばまだ、マスターだけでも逃げおおせる可能性は十分にある。マスターさえ生きていてくれるなら、騎士の役目は果たしたも同然だ。 ランサーは、迫り来る死を覚悟し、目を閉じた。だけれども、覚悟した瞬間が訪れることはなかった。瞳を閉じたランサーの脇を、膨大な魔力が擦過してゆく。その熱に焦がされて、ランサーは思わず瞳を開けた。ランサーが見たのは、膨大な魔力の輝きを迸らせた槍の一撃が、ランサーの脇を通過して、視界を通りすぎていく瞬間だった。 一瞬遅れて、魔力の輝き迸る槍の切っ先が、少女の上半身を消し飛ばした。断末魔の声すらあげることなく、少女の半分になった体は、はじめ膝から地面について、最後にはどさりとその場に倒れ付した。 「え」 今自分が見ているものが、理解できなかった。ランサーが命を懸けてでも守ろうと誓った少女は、その腰から上を消滅させている。傷口が此方に向けられている。瞬間的に迸った魔力の熱量によって、傷口は焼かれていた。一拍おいて、内側から内蔵が溢れだした。血液が、あとからあとからじわじわと流れでてゆく。 そこには、あの可愛らしい少女の面影は、もうなかった。透き通るようなブロンドの髪も、大きな青の瞳も、少しそばかすのある愛嬌のある顔も。少女を思い出させるものはすべて消し飛んでしまった。遺されたのは、腰から下の下半身だけだった。やがて、筋肉の支えを失った少女の股下から、透明の液体が溢れ出した。 ランサーの大切な人は、今や身体を半分失って、無残な姿で、血と、尿とにまみれている。あの少女は、もう、この世にはいない。遅ればせながら、ランサーはそれを理解してしまった。 「あ、ああ……そんな……嘘だ、なぜ……どう、して」 「あっは、ふふ、ンふふぁあは、ふはっ……ランサぁああ、心配するな。ただ、おまえのマスターが死んだだけじゃないか……、あぁ――」 あぁ、と。 心底から感動したとでも言わんばかりの恍惚とした声音で、ゴルドドライブは感に堪えぬ声を漏らした。事態に満足して、悦に入っていることが傍目にもわかる。やがて、ゴルドドライブのうっとりとした声が、笑い声へと変わった。 「――あぁあ、あァーっはっはっはっはっはぁ! あーっはっはっはっはッ! ふぅは、ふぅぁあはぁははは、ふひぁ、ふっ、ふふっ……ふひゃ、はァーーッはっはっはっはっへぇあっ、は、あへぁあはははははははァッ!!」 耳を聾する哄笑が、夜の荒野にこだまする。 なにがそんなにおかしいのか、なにがそんなに面白いのか、ランサーには、微塵も理解できない。ただ、難き仇敵は、その黄金の装甲で月光を一身に受け止めるように、大胆に両腕を広げて、狂ったように笑っている。 はじめはゴルドドライブの心理が心底から理解できない、と思っていた。だけれども、すぐにそんなことはどうでもいいと思えて来た。敵のサーヴァントがなにを考えているのかとか、どうしてランサーではなく、戦う力も持たぬ少女を殺したのかとか、そんなことはもう、どうでもいいのだ。もう、なにもかも、どうでもいいのだ。 あの優しい少女のことを思うと、胸に宿っていたあたたかな感情が一挙に沸騰して溢れ出し、激しい熱を持った感情が、ランサーのあらゆる思考を押しつぶしていった。理性が、意識が、押し寄せる感情の洪水に抗う術を持たず、水面下へと沈潜してゆく。代わりに浮き上がってきたのは、あれだけ侮蔑されてもついぞ抱かなかった、汲めども尽きぬ激しい怒りだった。 「おぉぉぉぉおぉあああああああッ、貴様ッ、貴様だけはァァーーーッ!」 「ははははは、怒ったかランサー! いいぞ、わたしはもう目的を果たした! 最後の仕上げだ、貴様にはこの場で消えてもらおう!」 怒りの熱に焦がされ駆け出したランサーを、ゴルドドライブの腕から放たれた黄金に輝く光弾が迎え撃つ。もはや、回避をしようという考えはなかった。腕を胴を、片口を、光弾に穿たれ、纏っていた鎧が弾けてなお、ランサーは止まらなかった。瞬く間にゴルドドライブとの距離を詰めたランサーは、再度手元に具現化させた槍でもって、その首を薙ぎ払わんと横一線に振りぬくが、ゴルドドライブは最小限の動きで身を屈めて回避した。飛び込んだ勢いも止まらぬうちに、ゴルドドライブの拳がランサーの顔面へと二連続で叩き込まれた。一瞬怯んだランサーの胴に、強烈な前蹴りが叩き込まれた。血反吐を吐いて、ランサーの体は後方へと吹っ飛んでいった。 「ふぁっはっはっはっははははァ……これで終わりにしてやるぞ、ランサぁぁあぁぁ」 ゴルドドライブが、ベルトのエンジンキーを再度捻った。車の走行音にも似た駆動音を響かせて、敵の脚が黄金の光を放つ。仮面の大部分を締める赤の複眼が禍々しく発光する。足元から溢れ出る輝きに照らされて、黄金の装甲が煌めいているように見えた。 飛び上がったゴルドドライブの脚が、ランサーの胴体へと突き刺さった。それが本当に、最期の瞬間だった。 霊基ごと蹴り砕かれたランサーの体が、金の粒子となって消滅してゆく。ランサーは最期に、かすれるような小さな声で、短い時をともに過ごしてくれたマスターの名を呟いた。その声すらも、ゴルドドライブのエンジン音にかき消された。 ◆ ランサーの霊基が完全に消滅したのを見届けたゴルドドライブは、無残にも下半身のみの姿と化した少女の亡骸に、その赤い複眼を向ける。一応、聖杯戦争のルール上、サーヴァント同士の争いの痕跡は秘匿しておくに越したことはない。遺体は消しておいた方がよいのだろうとは思うが、今はどうにも気が向かなかった。初陣で自らの性能を危なげなく確かめたことで、ゴルドドライブは既に満足している。内から込み上げる多幸感が、煩わしい作業を拒否していた。 結局、ゴルドドライブは少女の遺体をその場に放置したまま、この場を立ち去ることにした。遺体が放置されていたからといって、それが直接サーヴァント戦によるものだという証拠にはならない。必要でないなら、面倒な作業をすすんでやる気は起きなかった。そういう不要な作業は、明日にでも適当な者がやっておけばよい。少なくとも、世界すら支配する器を持った男がする仕事ではない。 「フン、まったく、マスターなど所詮はただの駒に過ぎんというのに……不要なものを守ろうとするから不要な作業が増えるのだ。この世にはそれがわからんバカどもが多過ぎる」 ゴルドドライブに、あのランサーに追従していたような煩わしいマスターはいない。 正確には、いた。今はいない。名も知らぬ参加者が、この聖杯戦争における本来の記憶を取り戻して、ゴルドドライブの――蛮野天十郎の人格を宿したベルトを召喚したのは、昨日の話だ。キャスターのクラスをもって、ベルトの身体に自身の意識を内包した状態で限界した蛮野は、言葉巧みにマスターを誘導し、自らを装着させた。あとは、ゴルドドライブへの変身を遂げると同時に、蛮野の人格がマスターだった者の人格データを上書きすることで、蛮野は自らの身体と、マスターの権利の両方を手に入れた。 ゴルドドライブの金の手甲には、赤の令呪が浮かんでいる。令呪の使用権も、他者に委ねる必要はない。ゴルドドライブが、自分の意思で、自分のためだけに令呪を使うのだ。もしも令呪が尽きたなら、適当に他のマスターの身体を乗っ取って、この身体を捨てればよい。魔力が枯渇した場合も、同様に身体を乗り換えればよい。ゴルドドライブにとって、マスターなどその程度の存在でしかなかった。 宝具も武器も必要ない。必要なものは、持っているものから奪い取る。クリムの発明を奪い取って自らのものにしたように、持っているものから、なにもかも奪ってしまえばいい。それだけで、聖杯はゴルドドライブのものとなることは必定であると思われた。 「ふふ……ふふふふふぁはははははっ、月のムーンセルといえども所詮はデータ世界ッ! この世界においてわたしは神にも等しい力を手に入れたッ!」 蛮野天十郎は、ネットワーク世界の神だ。それがデータである限り、なんであろうと蛮野天十郎の思うままに操作することができる。これが月の電脳世界における戦争であるからこそ、ゴルドドライブは無敵なのだ。その特性を理解しているからこそ、ゴルドドライブは嗤う。 「もはや誰にもわたしは止められない! 世界がわたしの足元に跪くその日までッ!」 夜の荒野に、ゴルドドライブは吠えた。広大なスノーフィールドを覆う星空に、ゴルドドライブの高らかな哄笑が吸い込まれていった。 【出展】仮面ライダードライブ 【CLASS】キャスター 【真名】ゴルドドライブ=蛮野天十郎 【属性】混沌・悪 【ステータス】 筋力A 耐久B+ 敏捷B 魔力C 幸運D 宝具A (※変身後のステータス) 【クラス別スキル】 陣地作成 C 魔術師として自らに有利な陣地な陣地、小規模な「工房」を作成可能。 最低限の資材さえあれば、そこが何処であろうと研究所として扱うことができる。 道具作成 A 機械生命体『ロイミュード』ほか、様々な兵器を開発した才能。 資材さえ揃えばあらゆる兵器・道具を開発できる。ただし、新規の『ロイミュード』を作成することはできない。 【保有スキル】 単独行動 EX マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。 彼の場合、ベルトさえ無事ならばいつまでも現界していられる。 変身:A 自身を装着した対象の人格データを、自らの人格データで上書きし、邪悪なる戦士、ゴルドドライブへと変身させる。 ゴルドドライブへの変身後は、基本的には元の人格は消失するが、対魔力を持つものや、強靭な精神力を持つもの、強力な神秘の加護を受けているものには効力が薄く、仮に身体を乗っ取ったとしても、完全な支配下にはおけない。 超重加速:B ゴルドドライブは超進化態と等しい存在である。 ロイミュードが発生させる重加速現象の影響を受けず、その他の時間干渉能力に対しても同様の耐性を持ち、時間干渉空間の中でもある程度自由に活動できる。 ただし、低速化の度合いによって耐性効果は落ちるため、超重加速を越える低速化現象(時間停止など)の空間内では、それなりに動きも鈍る。 ネットワーク世界の神:A 蛮野天十郎は長年データの世界に潜み続けた。 対象のデータ・プログラムを任意に書き換えることができる。具体的には、ダメージを負った人間を一度データ情報にまで分解し、傷を負っているという情報、或いはバッドステータスに纏わる情報を削除して、健全な状態で再構築する。 また、対象が機械であれば、支配権を奪って操るだけでなく、任意の改造、または悪性プログラムの埋め込みなど、あらゆる面での操作を行うことができる。 【宝具】 『黄金の簒奪劇(ゴルドコンバージョン)』 ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1~10 最大補足:1~10 戦闘した仮面ライダーたちの武器や道具を分解し、自らの武器として再構築したという逸話を、ムーンセルによって再現された電脳世界専用宝具。 ベルトのイグニッションキーをひねることで、タイヤから特殊な波動を放ち、この波動に触れた武器・宝具をデータ情報レベルにまで分解し、自らのものとして再構築することで奪い取る。また、再構築時には、分解時の情報を参照するため、宝具の発動シークエンスに入っている状態で発動すれば、そのまま奪い取って自らの宝具として使用することも可能である。 ただし、この宝具は科学によって編み出された宝具である。神秘を伴う宝具を奪った場合、その神秘まで完全再現することはできず、本来得られる筈だった加護や威力は大きく低下する。 【Weapon】 『バンノドライバー』 クリム・スタインベルトが開発したドライブドライバーのデータを盗むことで開発したゴルドドライブへの変身ベルト。このベルトに宿った蛮野天十郎の意思が、キャスターとしてのサーヴァント本体。つまり、実質的にベルトが本体である。 ベルト単体でも光弾や触手で攻撃することができるほか、自らのスキルで機械を操作して攻撃に転用することも可能。劇中では、身体を持たぬベルト状態で複数体のロイミュードを撃破せしめている。 ただし、ゴルドドライブの本体がこのベルトである以上、ベルトが破壊されればその時点で蛮野天十郎の意識は消滅する。 【SKILL】 『重加速』 ロイミュードが持つ基本能力。自身を中心に重加速領域を形成する。 重加速の効果範囲内では、時間の流れが変わったかのように身体を動かすことが困難になる。ゴルドドライブは当然ながらこの影響を受けない。 『超重加速』 拳を地面に打ち付けることで、ゴルドドライブを中心に黄金のオーラを発生させる。効果範囲内では、通常のロイミュードが発生させる重加速よりも更に強力な重加速空間が展開され、タイプフォーミュラ並の超加速能力を持ったもの以外は活動できなくなる。 また、原作では、発動時に周囲の器物が宙に浮き上がり、跡形も無く吹き飛んで消滅するような描写も成されている。 【人物背景】 機械生命体『ロイミュード』を生み出した天才科学者でありながら、グローバルフリーズに始まるすべてのロイミュード事件の元凶たる黒幕。 蛮野天十郎本人はロイミュードの反乱の際に死亡したとされていたが、実際には自らの人格をプログラムとしてコンピュータの中で生き続けていた。 非常に利己的で、家族ですら自分の駒としてしか見ていない。自分の思い通りにならないものはなんであろうと気に食わず、生前、蛮野への出資を断った実業家への鬱憤晴らしのため、自らの生み出したロイミュードに実業家の姿をコピーさせ、拷問にかけるなどといった陰湿さを秘めている。 さらに、自分以外のすべての人間を完全に見下しており、世界は自分のものだとまで言い切っている。その一方で前述の実業家やクリムが蛮野を見限ろうとした際には情けなく追いすがるなど、傲慢で身勝手ながら、その実矮小な人物であったことが伺える。 最終的な目的は、全人類をロイミュード同様にデータ化して自分が統制者として管理し、世界を自分の支配下に置くこと。 【サーヴァントとしての願い】 聖杯を獲り、今度こそ野望を成就させる。 【基本戦術、方針、運用法】 ゴルドドライブには、マスターが存在しない。その代わり、本来マスターが行使できるあらゆる権利を、自身が有していることが強みである。 マスター不在でもベルトが存在する限り限界し続けていられる特性を活かして、都合が悪くなったマスターからは早々に手を切り、他のNPC、またはマスター・サーヴァントの身体を奪い取ってゴルドドライブの姿を保ち続ける。 同様に、宝具とよべる武器も持たないが、それは対戦相手から奪い取ればいいだけである。敵の宝具を封じ、自らの武器と変える点は非常に悪質と言えよう。 たとえ戦闘が不利な状況に転んでも、離脱さえしてしまえば、自らの肉体となる参加者の傷を、自らのスキルで治療することができるため、非常にしぶといサーヴァントである。倒すには、チェイサーマッハがやったように一気に押し切って身体とベルトを分離し、離脱される前にベルトを破壊するという戦法が有効。 ただし、ベルト本体がそのまま弱点であることは、蛮野とて理解している。理解しているからこそ、ゴルドドライブ、またはバンノドライバーも、自らのベルトは必死に守ることだろう。 【出店】―― 【マスター】不明 【参加方法】不明 【人物背景】 不明。名もなきマスターだが、蛮野天十郎を召喚してしまったことが運の尽き。 今や自らの意識を蛮野天十郎によって上書きされ、ゴルドドライブの生体パーツとして利用されるのみである。 【能力・技能】 不明。ただし、常時変身状態であるため、実質的にはゴルドドライブの能力がそのままマスターの能力ともいえる。 【マスターとしての願い】 不明 【令呪】 左手の甲に三画。 【方針】 必要な物は奪い取る。 利用できるものは利用する。
https://w.atwiki.jp/sentakushi/pages/652.html
484 名前:隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM [sage 五日目・朝:サンクチュアリ] 投稿日: 2007/03/04(日) 04 50 01 なのは達と居間で話をしよう。 誰と話すにせよ三枝さんが戻ってくればノイン達と出掛けるのだ。 無理を言ってまで頼んだ以上それは決定事項。 どちらにせよあのままの格好では……あんまり構わない気もするが、女性陣が構うだろう。 なのは達は怪我人だから無理を言って連れて行くことは出来ないが、その前に同年代の女の子の服についての話くらいは聞いておいた方が良いかもしれない。 「とはいっても、なんと言って切り出せば良いことやら」 それが問題だ。 しかも途方もなく重要だ。 確かに買いに行くって言ったけど、どういう服が良いかなんて話題をどう切り出せと言うのだ。 話をすること自体は簡単だ。 直接言ってしまえばいい。 だが切り出し方はどうする? ファッションを教えてくれとか、そう言った話を切り出すということには、どうにも経験がない。 何のかんのと言ったところで衛宮邸に常駐する面々は服装に気を遣っている。 飾り気がどうこう、ではなく、服装にも自分なりのポリシーとかを貫くのは立派だと思う。 そう、話をすることそのものは大したことではないのだ。 だが、女性の服、という領域は男が触れて良い領域ではない気もする、デザイナーとかは例外としても。 ぐるぐると思考が回転してエンドレスに回っていく。 回る中でも足は進むわけで、縁側に出て、居間までもうすぐに距離になる。 ええぃ、考えても仕方がない。 真っ正面から堂々と話をしよう、別に疚しいことは何もないわけだし。 「……よし」 両手で頬を叩き、少しだけ気合を入れる。 「にゃー」 居間では、藤ねえが後ろ抱きで抱きついてノインの頬を突いている。 嫌がっているわけではないがそう言うことをされた経験がないのだろう、戸惑っているように見える。 「やっぱりこういう子供の頬のぷにぷにーって感覚が良いわよねー、ほらほらみんなもやってみてー……はうーん、やっぱり良いー」 藤ねえは恍惚としている。 眼は輝いてるし突いていない方の頬には自分の頬をすりすりしている。 「むー……確かにこれは、クセになりそう……」 蒔寺は蒔寺で、隣に座るフェイトの頬を突いている。 「で、でもほら、蒔寺さんもとっても柔らかいですよ」 フェイトは反撃とばかりにぷにぷにと二の腕を突く。 鍛えられたしなやかな筋肉の中にある柔らかな感触は指先に心地よいようだ。 「む……確かにコレは……」 溢れそうになる笑みを堪えつつ頬を突く。 「んー、そういうものですかねー? 突いてみてもいいですか?」 「構わないぞ、私の頬とかが楽しめるかどうかは保証しかねるが」 そう言われても氷室に頬を突かれるがままのなのは。 人差し指をくるくると回しているが、どの位で突くべきか迷っているようだ。 胸に目がいってるように見えるのは気のせいだろうか。 485 名前:隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM [sage 五日目・朝:勇気を出して一歩] 投稿日: 2007/03/04(日) 04 50 48 ……なんというか、男が踏み込んでは行けない領域に思い切り踏み込んだんではないでしょうか。 頭を抱える、割と本気で。 「あら? 士郎、どうしたの?」 頬をすりすりさせながら藤ねえが話しかけてきた。 「あー……えっと」 果たしてこの領域に踏み込んでしまって良いのだろうか。 頬を叩いて入れた気合が雲散霧消していくのをとことんまで感じる。 せめて桜でも居てくれれば良かったのだが……いや、それでもダメかな。 ……一度だけ深呼吸して気合を入れよう。 「あー、うん、その……今日ノインの服を買いに行くって言ってたのを覚えてるか?」 「えーっと……うん、言ってたわね、朝食の時に」 思い出したのか再び疑いの眼差しを向ける。 「うん、それでさ、どういう服が似合うかな、ってのをみんなに聞こうと思って、特に同年代の二人に」 「え? わ、私達ですか?」 明らかに狼狽える二人。 「うん、二人なら年も近いだろうから特に、でも俺は女の子のファッションなんてよく分からないから全員に意見を聞きたいな、と思って」 「確かに衛宮は疎そうだよな、そういうの」 にひひと歯を見せて笑いながら頬を突いている。 本格的に気に入ってしまったらしい。 フェイトは二の腕を突くのに飽きたのか、されるがままになっている。 「む、そっちだって似たようなもんなんじゃないのか、蒔寺」 確かに疎いってのは同意するけど。 「甘いぞえみやー、普段はともかく、キメる時はおしゃれさんなのだという展開が待っているのだ割と絶望的な確率で!」 「……ダメじゃん」 一瞬感心しかけたがあんまりアテになりそうもない。 黒豹の意見:それでも聞くだけは聞いてみようか 「それじゃあ、どんな服装が良いと思う?」」 本人の意見:本人の意見を聞いてみよう 「ノイン、どんな服が着てみたい?」 少女の意見:年が近い二人に聞いてみることにしよう 「なのは、フェイト、ノインにはどんな服が似合うと思う?」 冷静な意見:冷静な人の意見を聞いてみよう 「氷室、ノインに似合う服ってどういうのだと思う?」 大人の御意見:大人の意見を聞いてみよう 「藤ねえ、ノインに似合う服ってどんなと思う?」 投票結果 黒豹の意見 3 本人の意見 1 少女の意見 5 決定 冷静な意見 1 大人の御意見 1
https://w.atwiki.jp/sentakushi/pages/1018.html
672 :隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM:2007/07/20(金) 04 48 57 口中の水分はとうに乾ききり、心臓の鼓動は早鐘のように打ち続けている。 それに伴って体温は上がり続け、段々と目眩が激しくなり。 「きゅう」 目眩が三半規管で修正できる範囲を超え、足下の地面が喪失したかのように倒れ込んだのだ。 残った一同、音がして『まずい』と思うと同時に僅かに冷静さを取り戻し、倒れたなのはを抱えて即座にその場から離脱した。 その際に全員が足音一つ立てなかったのは驚きの一言であろう。 「とりあえず、水を飲ませて縁側で休ませましょう……それから私達も一回冷静にならないと危険ね」 「……うむ、確かに、このままでは二人の顔をまともに見られん」 その後、居間に直接戻ることも出来ず、赤い顔のまま言葉を交わした。 荒い呼吸を唐突に止めることは出来なかった。 「……ん?」 だが貪るように豊かな胸に貪りついた舌の動きが唐突に止まった。 腰の動きと共に漏れ出してしまう声も、その声に酔いしれるように動き続けていた腰も、その動きを止めていた。 「どう、したんですか?」 唐突な停止に、桜が僅かに不満と疑問を漏らす。 「いや、何か聞こえたような気がしたんだが、桜は何か聞こえなかったか?」 「……いえ、私は全然、それよりも、あと一回だけ、良いですか?」 結局、二人は物音に大した注意を払うことなく、ここ数日分の性欲を一気に解消した。 二人が後始末を終え居間に戻ろうとした頃には、夕食の予定時刻は疾うに過ぎていた。 「……ん?」 縁側に誰か居るな。 あれは…… 「フェイト、それになのはも、何してるんだ?」 風呂に入った様子もないから、涼んでいると言うわけでもないだろうが……なのはは縁側に寝ころんでいた。 「あ、し、し、士郎さん、こっ、こんばん、は……」 「こっ、こんばんはっ!」 二人とも明らかに動揺している。 なのはに至っては起き上がりこぼしの如くがばっと起き上がってがばっと頭を下げた。 何となくその姿は微笑ましいが、なんでそんなに動揺してるんだろ? 「あー、えっと、改めて言うけど、そんなに畏まらなくても良いからな? 遅れて悪かったけど、すぐ飯にするから」 とりあえずその原因を腹が減って苛々していたのだろうと当たりをつけて話をする。 二人の頭をわしわしと撫でる。 「はっ、はいぃ……お願いします……」 「それじゃ桜、ちゃちゃっと用意しちまおう、基本は鍋だけど他に何か必要かな?」 「うーん、そうですね……お野菜もきちんと鍋に入ってますから……」 「なんていうか、凄い、ね」 縁側で残された二人は、ぽつりと言葉を交わす。 「うん……あんなに、その、凄いこと、してたのに、今は普通だよね」 撫でられてから体が熱い。 撫でてくれた手で、さっきまで凄いことをしてたんだなあと考えると、こうして時間をおいても尚、体が熱くなってしまう。 「……私達も、大人になったら、ああいう風になれるのかな? ……なっちゃうのかな?」 「わ、わかんないよ……そう言う経験、無いもん……」 「そ、そうだよね、ははは……」 体の火照りは収まることなく、二人の心にモヤモヤした物を残した。 673 :隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM:2007/07/20(金) 04 49 46 居間のテレビは季節外れのホラー特集が写されている。 朝見た新聞のテレビ欄ではこの後に地上波初登場のホラー映画をやるらしい。 ……その前振りで7時から2時間もホラーものの特集を組むあたり、どうやら番組の構成者はホラー映画を見せる気満々のようだ。 丁度CMになったし、聞いてみる事にしよう。 「ノイン、ホラーとか好きなのか?」 三枝さんはノインと一緒になって見ているが明らかに腰が引けているし、ホリィの方も三枝さんに抱きついて震えていたりする。 先生とジェネラルが将棋をやっていて、ライダー二人はそれを観戦しているから、実質見ているのはノインだけだ。 「んー、好きってわけじゃないんだけど、なんだか馴染み深く思えてねー」 そう言って笑うその顔はどこか寂しそうで、少しでも昔の手掛かりが欲しいのかもしれないと思うと、ちょっとだけ心が痛んだが、番 組内容には満足しているようで、声そのものは弾んでいる。 「そっか、それじゃ三枝さん、悪いけど最後まで付き合ってあげて……夕飯の後は俺も付き合うから」 「は、はいいぃー……」 あ、ちょっと涙目だ。 朝と言い今と言い、ごめんなさいとしか言えない。 ふと思った。 「そういえば、遠坂達が居なかったな……」 「あ、そうでしたね……部屋に戻ってる、とか? 先輩のこと心配してたんですけどねー」 「ん……そうなのか?」 心配してくれたのなら付き添うとかしてくれても良さそうな物だが……いや、今回の場合付き添われてたらそれはそれで困った事態に なるんだけど。 実際、『アレ』を見られていたらと考えると恥ずかしすぎて身悶えしてしまいそうだ。 「あー……サラダとかはこの位で良いかな?」 「そうですね、この位で十分だと思います、柳洞先輩の持ってきてくれた鯛焼きの事もあるから多すぎるくらいかもしれませんよ?」 「そっか、それじゃ——」 シャイニングウィザード:「遠坂達を探してくる」 シャイニングフィンガー:「桜は遠坂達を探してきてくれるか?」
https://w.atwiki.jp/sentakushi/pages/680.html
540 名前:隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM [sage 五日目・朝:緊急搬送] 投稿日: 2007/03/08(木) 05 13 55 「た、ただいま、です……」 立っていることすら難しいはずなのに、それでも無理をして微笑んでくれた。 「うん、ありがとう、三枝さん」 「ふ、服は、妹のを、持ってきました」 ヘルメット姿のままバイクの座席下からゆっくりと服を取り出す。 明らかにふらふらしているのに、気遣わせまいとしているのが分かってしまった。 ……こんな状態で無理をさせるのはよろしくない。 実によろしくない。 朝まで五体満足だったのに今この瞬間はヘロヘロで。 そんな状態で普段通りさせるのは実に忍びない。 「三枝さん、ちょっと力抜いて」 言われるまでもなくふらふらで足にも力が殆どはいっていない。 「え、衛宮くん?」 足と首に手を回し、持ち上げる。 ……顔が赤い、少し熱が出ているようだ、それに目が踊っている。 どうやらかなりの無茶をしたらしい。 「無理はしなくていいよ、なんというか、俺のワガママでお願いしたわけだし」 「え、ええっと、でも、その……!」 このまま布団まで運んでしまおう。 ……そうそう、忘れるところだった。 「ライダー……シャリフさん、三枝さんは普通の女の子なんですから、緊急の時以外そんなに飛ばさないでください」 これは言っておかないとならない。 他にこうなってしまったりすると色々と問題はあるし。 昼間にスピード違反で逮捕されたら目も当てられない。 「わかったわ」 こくりと頷く。 意図が伝わったかはどうあれ、分かってくれたらしい。 庭を通って、昨日三枝さんが泊まった部屋……なのは達の部屋へ急ぐ。 とりあえず布団に寝かせて、水で冷やしたタオルとかで頭を冷やして、薬……はいらないな。 それから……全ての前にとりあえずは応援を頼もう。 「みんな、ちょっと手伝ってくれ」 「士郎、突然外に行ってどうし……!」 藤ねえ、絶句である。 他のみんなも似たような反応だ。 驚いたのは分かるけど、割と緊急事態なのです。 541 名前:隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM [sage 五日目・朝:緊急看護] 投稿日: 2007/03/08(木) 05 14 42 焦りが伝わったのか、藤ねえは何か言いたげな表情のまま居間を出る。 洗面器とタオルが必要だって事を察してくれたらしい。 「なのは、フェイト、布団まだ敷いてあるかな? 敷いてなかったら一回敷き直して欲しい」 「は、はいっ!」 二人が立ち上がって走り出す。 「二人はとりあえず、着替えとか持ってないかな? 汗とかが酷いようなら着替えさせないといけない」 氷室と蒔寺にそれだけ言ってなのは達の後ろに付いていく。 靴は庭に放置して縁側に上がる事にする。 「衛宮、一体何があったのだ」 後ろを付いてくる二人に事情を簡単に説明する。 「買い物に行くときにノインの服がないから三枝さんに借りようとして、シャリフさんのバイクに乗せてもらったんだけど…… ちょっと加減が分からなかったみたいで、多分重度の乗り物酔いとかだと思う」 乗り物酔いは重度になると危険だ。 冷や汗や頭痛程度ならばともかく、痺れや吐き気、それに伴う脱水症状なんて状態になれば点滴やらが必要になる。 「なるほど、そう言う状況を見たことはないが確かに由紀香はそういう面がありそうだ、サイズは少し違うが、私達の服ならあるぞ、取ってこよう」 納得してくれたらしい。 「……幾らアメリカ人でも大雑把すぎるんじゃないか、その……えーっと、シャリフって人」 「面目ない、俺の判断ミスだから責めるのは俺だけにしておいてくれ」 少し考えれば分かるだろうに。 ライダーの騎乗スキルや人知を超えた反射神経をフルに使ったバイクのテクニックは並の人間が繰り出せる範疇を軽く凌駕しているだろう。 ましてあの大排気量バイク。 おっとりとした三枝さんをあんなのに乗せるなんて間違っていたかも知れない…… 部屋にはいると、二人が布団を敷き終えていた。 「二人とも、ありがとな」 それだけ言って、ヘルメットを外して横たえる。 「いえ、気にしないでください」 見た限り、汗はそう酷い物ではなさそうだ。 掻い巻きと毛布を掛け直し、藤ねえが持ってきてくれた、水の張られた洗面器にタオルを突っ込み、よく絞ってから三枝さんの頭にのせ、一息ついた。 「その、ごめんなさい……」 掻い巻きに口元を埋めながら三枝さんが謝った。 「いや、悪いのは俺だって、無理言って頼んじゃったし、それが原因でこうなっちゃったし……」 「よくわかんないけど、詳しい話は聞かせてもらうわよ、士郎」 詳しい事情を話したら藤ねえにしこたま怒られた、正座で。 「士郎ってば、目の前で困ってる人を助けるのは立派なんだけど、目の前じゃないところで起こる事に無頓着、と言うよりもちょっと想像力が足りないのが問題よね」 そうかもしれない。 考えればあんな大型バイクに三枝さんを乗せるってのはどうかしているってのは自分でも分かったはずだ。 「反省する……」 向き直って三枝さんに深々と頭を下げる。 「あの……私はもう大丈夫ですから……ノインちゃんと買い物に行ってあげてください」 「いや、そうは言っても……」 「本当に、大丈夫ですから」 む、押し問答になってしまった。 メルセデス:とは言っても、悪いのは自分であるわけで、せめて午前中くらいは看病しよう クライスラー:こっちが折れないと、余計に気を遣わせてしまうかな? 投票結果 メルセデス 2 クライスラー 5 決定
https://w.atwiki.jp/chaosdrama/pages/909.html
※前のページの続き デデデ「 (先まであっけにとられていた)・・・・はっ!そうゾイ!ワシも戦わなくては・・!」 ガヘリス「・・・。(まだお茶を飲んでいる)」 デデデ「喰らうゾイ!!(ガヘリスにハンマーで殴りかかる) 」 ガヘリス「・・・出番でござるか。(お茶を飲み干す)・・・・許せ、デデデ殿・・。(黒龍刀を持ち、デデデを一閃する) 」 デデデ「 ぐわっ!!・・・く、むん!!(ガヘリスを殴る) 」 ガヘリス「影分身の術!!(デデデの攻撃を避ける)暗黒一閃!!(闇をまとった黒刀でデデデを一閃する) 」 デデデ「 ぐぅ・・・!(シールドでガードする)く・・・これで・・・どうだ!!(ジャイアントスイングでガヘリスに攻撃) 」 ガヘリス「んな・・・・ぐぅ・・・!(もろ喰らう) 」 ガヘリス「(本当はこんな闘いは避けたいのだが・・・・シルヴィ殿の恩を返す為だ、許してくれでござる・・・。) 」 デデデ「 隙ありゾイ!!(ガヘリスを殴る) 」 ガヘリス「・・・・む・・!?(ギリギリ避ける)・・・そろそろ引き時のようでござるな。デデデ殿、さらばでござる!!(煙幕弾を地面に投げつけ、その場から去る) 」 デデデ「 ぐ・・・逃げられた・・・か・・・(その場に倒れ込む) 」 ――――――――END・・・?
https://w.atwiki.jp/sentakushi/pages/359.html
931 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日: 2006/10/16(月) 02 19 57 interlude—— 朝が近い。 戦争の一日の終わり、日常の一日の始まりが近い。 「マスター、そろそろ戻ろう、朝が近いぞ……車も動き出している」 「わかった、戻ろう」 ビルの上、空が白み始める。 見れば街を通る高速道路には朝のトラックが動き始めていた。 彼のアジトまでは近い。 警戒は怠らないが、様々な考えが巡り出す。 「ライダー、帰るまでに軽く情報を整理しておきたい、間違っていたら訂正してくれ」 ライダーと呼ばれた男が頷く。 「まず、俺達はこれまで合計8度、6騎のサーヴァントと戦った、撃退は4回、撃破は俺達と同じライダー一騎」 「間違ってはいない、だが、敗北1、全力逃亡2というのも認識しておいてくれ、敗北を認める勇気も必要だ」 「分かっている、それでな、俺達が敗北、逃亡した3騎について何か気づいたことはないかと思うのだが、何かあるか?」 「そうだな、まずランサーだが、基本的な能力ならば俺が上だと思う、だが宝具は危険すぎるだろうな」 「……あれは宝具だったのか? 確かに危険だが、俺は真名を聞いていないぞ」 「あのな、数十メートル離れた『俺とマスターを同時攻撃する』なんて途方もない代物が槍兵の切り札でなくてなんだ」 点滅し続けていた信号が青黄赤を刻み始めている。 日常へと意識が戻っているのか、次の赤信号で立ち止まった。 「だが身代わりの式神との交換は可能だったな、御陰で助かったが」 「そうだな、アレはあくまで『真名を解放しない上での能力』と見た方が良いだろう、恐らく解放すればその回避は不可能だろう」 「ふむ、そうか、で、基本能力が上というのは?」 「実際戦ってみた感想だ、何らかのリミットがついているならわからんがね」 退屈なのか、愛用のナイフを両手で弄ぶ。 「じゃあ次、バーサーカーについては? 3日連続戦った方じゃなく先週の奴だ」 「連日の方も結構強いがね、あの敵、あれは……マスターの言ってたとおり即死意外じゃ無理なんだろうね」 カチャカチャと金属音が鳴る。 「宝具の正体とか分からないか?」 「さてね、ま、敵としては親しみはあるよ、AK……カラシニコフなんて久々に見た……攻撃力的にはそれほど違いは無いと思うがな」 良いながらライダーが拳銃を取り出して笑ってみせる。 「そうか、ともあれ、その二騎には今度アイツで突撃するしかないだろうな」 「そうかもな、手を打ちきったらやるしかないか」 青信号に変わり、歩き出した。 「ではもう一人、セイバーについては?」 「正直まるで不明、あんなヤバイ代物は想定外だね、まさか宝具で全力逃亡する羽目になるとは思ってなかったよ」 「アイツに、全力でぶつけたらどうなってたと思う?」 「無駄、なんじゃねーかな? あっちは無敵状態でこっちの攻撃は全て無効、ルール無視もいいところだ」 「まあそうだな、音速を突破するなんてライダーの宝具位しか有り得んと思っていたよ」 「俺の宝具では音速を突破できない、それは分かってるだろ?」 「それは分かっている、可能だとすればという意味だよ」 「そうか……とにかく、セイバーに関してやれることは油断しているところを一撃って事だな」 「そうだな……」 こうして彼等はアジトへ到着する。 地上の道路の日の光で白み始めていた。 ——interlude out 932 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日: 2006/10/16(月) 04 10 00 少しだけ奇跡的なことだがその日。 藤村大河は朝日が昇る前に起床した。 「おなかすいたなぁ……」 そんなことを衛宮邸の客室で呟いた。 宴会の最中は騒いでばかりだったので料理は余り食べていない。 そのまま疲れ果てて部屋で眠ってしまったのだ。 うん、少し早いが、士郎にご飯を作ってもらおう。 そんな決心と共に部屋を出て、家主である士郎の部屋に向かう。 その途中でふとイタズラ心が頭をもたげた。 こっそりと! 布団の中に! 潜り込んで! エロス的な! 勘違いを! させる! こっそりと襖を開ける。 含み笑みが止まらない。 声は隠せているがこの顔を見たら怖がるかハッピーになるに違いない。 よほど疲れていたのだろうか、襖を開けて近づいているのに起きる様子はない。 朝食を作ってもらうという最初の目的としては不都合だが、イタズラとしては最良のシチュエーションだ。 布団に潜り込む。 目の前の浴衣は無防備に背中を向けている。 笑い声が漏れそうだ。 そして、そのまま目の前の浴衣に抱きついた。 「……あれ?」 いかにも事後という雰囲気を醸し出そうとして異常に気付く。 抱きついた体は妙に細い。 暗い中だったので気付かなかったが髪の色も、砂金のように輝いている。 そしてなんだか、身長も、縮んでいるような……? 掛け布団を持ち上げる。 そこには、浴衣姿の二人の少女の姿があった。 「し、士郎がロリコン変態誘拐魔にー!」 近所迷惑なほど凄まじい内容と音量の絶叫が邸内に響き渡る。 これは家主の提案であった。 布団を用意すれば音で迷惑がかかるということで、彼は土蔵の寝袋で寝ることとして少女二人に彼の布団を貸したのだ。 だが、そんな心遣いは、大河のイタズラ心で無に帰した。 当然のことだが、衛宮士郎も含めて全員が部屋に集結することになった。 「誰がロリコン変態誘拐魔か」 「こんな若い子を! 二人も布団の中に連れ込んで! 何やってたのさ士郎のロリコン!」 うわーんと泣きながら詰め寄る。 なんというか、少しくらい理由を聞いてください。 というか話が一方通行過ぎます、藤ねえ。 「ま、まさか先輩、『普通の女の子』には興味が無くてこんな形で発散を!?」 普通の女の子とは少し違う、と考えている桜もまとめて詰め寄ってきた。 桜の言う普通と藤ねえの言う普通は多分違うが、凄く問題のある発言じゃなかろうか? その様子を、なのはとフェイトは呆然と見つめている。 「待て待て待て待て! この子達はだな!」 そこまで言って、どういう言い訳をすればいいかをまるで考えては居なかった。 キャスターについては一応切嗣の娘と言うことで無理矢理に納得させた。 だがこの子達まで一気にというのはもの凄く問題があるに違いない。 だからといってサーヴァントという説明は当然出来ない。 遠坂はずっと起きていたのか、朝だというのに不機嫌にもならず後ろで面白がって笑っている。 桜は桜で頭に血が上っているのか口裏を合わせるとかそう言うことはまるで考えてくれなさそうだ。 ライダーは、どうして良いか決めかねているようだ、協力は……桜次第だからしてくれそうもないな。 キャスターは混乱している、口裏は合わせてくれそうだが、急激な環境変化でさらに心労までかけるのはいかがな物か、却下だ。 先生は……屋根の上で出てくるタイミングを計っているようだ、これが一段落すれば出てくるだろう。 バゼットは……訝しげに屋根の上の方向を見ている、先生の気配を感じているようだ、協力してくれるだろうか? どうするどうする! どうするんだ! オゥノーゥ! 子種をブチ撒けろ!(切嗣編):やはりこれしかないか「切嗣の娘だよ」 子種をブチ撒けろ!(士郎編):切嗣ばかりに責任を押しつけていられない「俺の娘ですヨ」 遠坂に押しつけろ!(親戚編):ここはやはり頼りになる人に頼るしかない「と、遠坂の親戚なんだ、なぁ?」 超絶! 家族計画!(養女編):この家の特性を最大限に利用するんだ「急遽ウチで預かることになった養女二人です」 増殖! フラガ族!(来訪編):外国からの人ならば無碍には出来まい「バゼットさんの妹なんだよ、な?」
https://w.atwiki.jp/sentakushi/pages/573.html
548 名前:隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日:2006/12/07(木) 05 18 17 連続して薬莢が排出される。 「打ち砕け……ファイア!」 その瞬間、確かに彼女は恐怖した。 爆炎で視界から消えるまでの一瞬、弾幕の中セイバーが恐ろしい形相でフェイトを睨んでいる。 そこで攻撃の手を緩めることはしなかった。 逆に、攻撃の意志は固まったまま。 「おおおおっ!」 その叫びは双方の物。 消え去った視界の先で、連続して雷光が炸裂し、凄まじい衝撃波が駆け抜ける。 「フォトンスフィア、展開!」 彼女の周囲に展開していたスフィアを持続しつつ、更にスフィアを敵の周囲に展開した。 「斉射 サルヴォー !」 更に展開したスフィアからも雷光の槍が発射される。 炸裂する雷光は太陽と錯覚するほどだ。 カートリッジを用いた強化。 更に彼女自身の迷いのない全力全開。 その一撃は、 息が荒い。 「間違いなく直撃した……」 そう、もしバインドから逃れているのならあれだけの全力、無防備だった彼女の背中を取ることは容易いだろう。 だから間違いなく直撃している。 砂煙が収まった先、男が立っていた。 総身から白煙を上げ、息を切らしながらも、確実に己の足で立ち。 「やるではないか……」 そう言って壮絶な笑みを見せた。 「今この場で、『再起不能になって リタイアして 』もらいます!」 「お前にできるのか? このコスタス・バルギリオをなああっ!」 力強い宣言に応えたのは笑い声。 そして再び襲いかかるのは影そのもの。 その影に溶けながら、笑い声だけが響いていく。 「倒す! 誰かを犠牲にして叶える願いなんて間違ってるって、分からせてあげる! この私と! レイジングハートが!」 再び襲いかかる闇の獣に向けて光弾を放つ。 決断してさえしまえば、行動は早い。 「レイジングハート! バスターモード!」 Set up カートリッジの排出の直後にデバイスの形状を変化、砲撃戦モードへ変化する。 影に炸裂し、影が吹き飛ぶ。 「ハハハ! そんなんで影を消せるかよ!」 影の中から腕が飛び出す。 その手にはカラシニコフ。 射撃音が響き、銃弾が撒き散らされる。 「うわっ……影の中に隠れ……違う……本当に溶けてる……?」 回避しながら影を観察する。 Master! レイジングハートが警報を発する。 「えっ?」 続いて影から現れたのは身体の一部ではない。 巨大な複数の触手だ。 「うわわっ……!」 高度を上げる。 触手の先端から魔力弾が放たれる。 「こんのっ……スフィア展開!」 飛行しながら上空に複数のディバインスフィアを展開する。 「ディバイン……シュートッ!」 触手を叩き落とす。 「ちっち……火力では勝てないか……だが、負けぬわ!」 すぐ近くで起きた爆風と同時に影が『起き上がる』 「えっ」 起き上がったのはなのはの進路上。 一瞬だけ動きが空中で停止する。 その隙を狙い、影から獣と同時、コスタスが飛び出した。 「もおらったあ!」 手にはナイフが握られていた。 防勢突撃:バリアを展開し、そのまま体当たりを掛ける 砲撃回避:ディバインスフィアから砲撃を掛けつつ後方へ飛び去る 乱入する者:爆音と共に、乱入者が現れた
https://w.atwiki.jp/sentakushi/pages/1015.html
515 :隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM:2007/07/10(火) 05 03 08 「桜、名城、とりあえず体を冷やす前にマッサージしないと疲れが残るからよくないぞ」 「へー、そうなんだ……」 「あ、そういえばそうでしたね……それじゃ名城さんはフェイトちゃんをお願いしますね」 「うん、任されたわ」 とりあえずなのはとフェイトは二人に任せておいて良いだろう。 とりあえずルヴィアから揉む事にするか。 運動用なのか、ひらひらしたスカートではなく半ズボンのような代物なので足の様子を見るのに支障はない・ ……うわ、こりゃ凄い。 見ただけでわかるほどパンパンに膨れている。 こりゃーマッサージしてもどれだけ効果があるか怪しいが、やらなかったらもっと尾を引くだろうなー…… 「……ひゃうっ!?」 肌はきめ細かいし柔らかそうに見えるが触ってみると意外と固いが……この感触は筋繊維とは違う、これが乳酸の塊……しこりって奴かな。 「とっ、突然何をなさるの?」 動きは殆どなかったが、絞り出すように吐き出された驚きの声は動きを止めさせるのに十分なものであった。 「いや、足とか腕とか、疲れるまで使った部分はマッサージをしないと疲れが取れないからな、本当は歩いたりするのが良いんだけど、そういうことする元気はないんだろ?」 「ま、まあ……その通りですけど……一言だけでも言っておいてくださらない? びっくりしてしまいますわ」 「ああ……すまない、それじゃ、改めて」 それだけ言って、ルヴィアの足に視線と意識、それから力を集中する。 「は、はいっ……よろしく、お願いしますわ……」 太腿を揉み上げる。 「んっ……」 おお……なんだこれ、揉んでたらしこりが中で動くぞ。 こりこりした感触が段々柔らかな感触に変わってくのがはっきりとわかるな……で、さっきの塊はどうなったんだ? 「あんっ……」 おっ……関節裏の感触……これがさっきのか? 揉んでいくと、固さが薄れながらもしっかりと存在を残しながら移動していくのがはっきりとわかるな。 「はあんっ」 これを散らしてしまえば足の方は大丈夫……だよな? っと、結構移動するもんだな…… 「んうっ……そ、そこはもう足じゃなくて股! 股ですわよっ!」 おっ……? しこりの感触がなくなって、柔らかくなっていくのがわかる。 それじゃ、こんなものかな。 次は腕のマッサージでも…… 「おや?」 なんだろう、この周囲の冷たかったり熱かったりする視線は。 516 :隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM:2007/07/10(火) 05 03 58 「う、うわぁ……あ、あんな風にしてもらったら、どんなに……」 三枝さんはマッサージを止めて顔を赤くしてこっちを見ている。 一方のマッサージしてもらっている蒔寺は物凄く冷めた目でこっちを見ている。 それは卓袱台の近くに座る面々も同様に視線は冷たいが、なんだか達観したようにこっちを見ている。 とはいえ氷室なんかは胸元で抱いていたノインとホリィの目を塞いで見せないようにしているようだが。 「凄いわね……ああいうこと、してもらったりするの?」 「はい、時々ですけど……」 名城は顔を赤くして、桜に何事か耳打ちしている。 聞かれた桜もかなり顔が赤い。 「ふ、ふわー……」 「……凄い」 二人にマッサージしてもらっていたなのはとフェイトも、体温とは違うところで顔を赤くしているように見えた。 「衛宮君?」 遠坂の声が背後から聞こえた。 底冷えするその声は脊髄に氷を叩き込まれたような気分にさせられる。 「な、なんだろうか?」 「自分が何をやっているか、わかるかしら?」 「何って、マッサージだけど」 途端、頭をがっちりとホールドされる。 動いたら死ぬと、理由もなく思った。 「それじゃ自分が手を置いた場所を改めて見てみなさい」 恐る恐る、視線を自分の手がある位置へ移す。 「……なるほど」 思い切り足の付け根、いわゆる鼠径部を揉んでいる。 1センチも動けば思い切り局部であった。 ルヴィアの顔はこれ以上なく赤く、息はさっき以上に荒れている。 こんな所を異性に刺激されたらこうもなるか。 そう認識する。 同時に首が遠坂の方に向かって捻られ。 ぐきりと、嫌な音がした。 「遠坂っ!? く、首っ……首がっ!」 折れるッ……! 「このっ……変態っ! 桜に手を出したんだから操を立てなさいっ! ここはアンタの家だけどアンタの後宮じゃないのよ!」 捻り上げられたまま、さらに首が上下左右に激しく揺らされる。 死ぬ! 死ぬから! 本当にヤバイって! あ、ヤバイ、意識が、飛ぶ。 「お待ちなさい」 首を捻る動きが止まる。 「ルヴィア?」 遠坂の力が緩む。 元々無理な体勢だったから、緩むと同時に弾けるように元の体勢に戻ろうとして勢い余って床に倒れ込む。 捻られた首筋がとんでもなく痛くて、思考が安定しない。 その痛みすらも、既に夢のようで、意識はとうに飛んでいた。 「ふふふ、ミスタ・エミヤ……いえ、シェロと呼びましょう、そう言うことがしたいのでしたら言ってくだされば良いのに、もっともっと凄いことをさせてあげてもよろしくてよ?」 妖艶な声が聞こえる。 温かい感触、抱きしめられているようだ。 「ちょ、ちょっと……突然どうしたのよルヴィア」 「ミストオサカ、シェロは休み明けにでもフィンランドに連れて帰る事にしましたから」 「な、そんなの——」 「そんなのダメー!」 桜の声が響いたような気がした。 意識が戻るとそこには—— ドゥープ:桜が座っていた ザーフトラ:ルヴィアが座っていた ブイストルイ:桜とルヴィアの二人が座っていた スヴァボドヌイ:みんなが集まっていた
https://w.atwiki.jp/sentakushi/pages/641.html
333 名前:隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM [sage 四日目・夜:境目] 投稿日: 2007/02/08(木) 05 30 50 時間は僅かに戻る。 S市内の二カ所で、全く同時に、同じ声が発せられた。 『はあ……』 それぞれに意味は違う。 一方は呆れ、一方は沈んでいた。 「どうしたんだい? キャスター君」 室内で、姿の消えた少年に声を掛ける。 暫くの間は彼が霊体状態で偵察を行い情報収集を行うと昨日決めた。 「ああ、いえ、ちょっと問題が起きましたのでその説明を」 「どうしたんだい?」 机に座り、来週提出の宿題に取りかかるのを止めて、声の方向に顔を向ける。 キャスターが実体化する。 「どうやら、霊体化で姿を消す事は出来ても消耗は抑えられない、それどころか、消耗が抑えられるとかそう言ったこともないようです」 キャスターはこの一日の経験を語る。 「そっか、つまり消えてるだけって事になるのか……それで、大丈夫なのかい?」 軽く笑みを見せる。 「……怒ったり、原因を聞いたりしないのですか?」 「別に怒る理由にはならないでしょ? 僕はどれが普通かなんて事は知らないというよりも、そっちの方が普通だと思ってるし、君の方に不都合がないなら気にはしないよ」 ああ、でも理由は聞きたいかなと、康一が続ける。 「昨日も話したとおり、僕はまだ生きている存在なんです、でも僕と言う存在は『座』を捏造して現れた存在ですから、それが不完全に動作してって事だと……」 「ふうん……」 その言葉を聞いて少し考え始めた。 宿題のことはそれで吹っ飛んでしまった。 「一般人も多く住む住んでるのか、君のところは」 神父に簡単に事情を話すと、呆れられてしまった。 「それならばそれだけの傷を見せたまま帰宅というのは問題があろう? ブラック、この人達を頼む、私はハンヴィーの人に」 「はい、わかりました」 神父達以外の頭に疑問符が浮かぶ。 ブラック神父が小さく何事か呟くと、傷が急速に塞がった。 「え?」 「白魔術……それもかなりのものね」 治療系の魔術がそれほど得意でなく、専攻もしていない凛も、この異常なほどの回復には目を剥いた。 「言っておきますが基本的に表面の回復くらいですからね、ある程度の無茶は出来るでしょうけど、それだって完治じゃないんですから。 他の人に気付かれない程度の回復だと言うことは、頭に止めておいてください」 少年はきっちりと釘を刺す事を忘れなかった。 「それにしても、この速度は凄いわね……十分に一線級じゃない」 心から感心していると良く分かる言葉だった。 士郎の銃創がみるみる内に回復していく姿は、かつての回復を思い起こす。 「はは、その分他の系統は使えませんけどね……さ、次は君だ、怪我の方は大丈夫かい?」 「ええ、普通に動く分にはなんとか」 フェイトに微笑みかける少年は、慈愛に満ちていた。 334 名前:隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM [sage 四日目・夜:迎えの歌] 投稿日: 2007/02/08(木) 05 31 56 一時間後 「……歌?」 歌声が玄関から聞こえてきた。 「あ、シロウ、おかえりなさい!」 イリヤが気付いて走り寄ってくる。 「良かった、シロウ無事だったのね」 「ああ、大丈夫だ、ありがとう、イリヤ」 抱きつこうとしたイリヤの動きが止まる。 「シロウ……その子はどうしたの?」 見覚えのない少女を指差す。 「ああ、この子はノインって言って……ウチで預かることになったんだ」 「ふぅん」 言われて少女を見るイリヤの目は露骨に細くなる。 見られるノインは士郎の後ろにサッと隠れる。 「……いいわ、シロウの決めたことだから」 そう言って一度くるりと回る。 再び顔を見せたときには笑顔になっていた。 そのまま士郎の手を取る。 「さ、入りましょ? サクラ達も待っているわ」 非日常のままだったことが幸いしたと言えるだろう。 最大のトラブルメーカーが眠りについている今、身の潔白を証明するのにそれほど時間はかからなかった。 何しろ記憶喪失である。 何しろ衛宮士郎である。 彼の性格をよく知る家族なればこそ、反対をすることはなかった。 「……詳しい話は明日にしない?」 「そうですね、先輩達もお疲れのようですし」 「それじゃ桜、ノインを頼めるか?」 「え? はい、先輩がそう言うなら……でも良いんですか? ノインちゃん、先輩の事しか信頼してないように見えるんですが」 見れば、ノインは背中に張り付いておどおどと周囲を見回している。 その明らかな怯えはある程度仕方がないが、諭しておかねばならない。 「ノイン、俺を信頼してくれてるんだったら桜を、みんなを信頼してくれ、怖がったりする必要はないし、みんないい人なんだから」 目を見て諭す。 ノインも目を見てじっとしていたが、 「……うん、士郎がそう言うなら」 決意するように、こくりと頷いて見せた。 「決まりだな、それじゃあ桜、ノインを頼むな」 「はい、頼まれました、おやすみなさい、先輩」 桜が手を差し出さすと、ノインもおずおずと手を伸ばして手を握った。 自室の布団を敷き、ごろりと横になる。 「あ……」 そういえば一度出掛けたし、汗もかなり流した。 風呂にはいるべきだったと思い出すが、一度横になってしまえば睡魔の誘惑に勝つことは出来なかった。 肉体的にも、精神的にも、魔力的にも疲れ切っている。 一度心の手綱が緩んでしまえば、あっさりと捕らえられ、眠りへと落ちて行った。 この流れは恐らく、トラブルメーカーの彼女が居たとしてもそう変わることはないだろう。 そう、ここ数日続く朝のトラブルさえなければ。 I love trouble:朝の目覚めは絶叫によってもたらされた I love peaceful time:朝の目覚めは心地よい重みによってもたらされた 投票結果 I love trouble 1 I love peaceful time 5 決定