約 108,549 件
https://w.atwiki.jp/jojost/pages/309.html
第二十六話「キリング・ザ・ドラゴン③」 勝負は決した。Dioの勝利で。レースの興奮冷めやらぬ中、ぼくは言った。 「……これで全レースが終わった。もう帰ろう」 勝者インタビューなんて聞く気にはなれない。一刻も早く離れたかった。しかし、古泉が驚いた様子で言う。 「何を言ってるんですか。わざわざ譲ってくれたというのに、お礼も無しに帰るなんて。いくらご友人でも、礼儀がありますよ」 全くの正論だ。ぐうの音も出ない。ぼくは特に反論する気にもなれず、車椅子に体を預けた。 ……嫌な気分だ。単なる嫉妬だろうか。あるいは、奴への嫌悪感か。どちらとも言えなかった。 ここの所の騒がしい日々では感じる事の無かった思い。単純な気持ちではない。 光に影が射すような……。この前の夢といい、この頃の出来事は一体何なのだろう? 手足を縛られ、取り囲まれていくような……嫌な気分だ。 そんな事を考えていると、ふいにドアが音をたてる。ノック……にしては乱暴すぎる。体ごと体当たりしているような、鈍い音だ。 様子がおかしい。そう思ったが、些細な違和感はドアを開けようとするキョンを止めるには十分ではなかった。 それは模型のようにじっと立っていた。しかし、驚くべき事にそいつは生きている。 考えられない事だ。しかし、鱗の光沢といい、鋭い牙といい、作り物ではない。 本物だ。本物を見た事があるはずもないのに、そう確信させるだけのリアリティを放っていた。 恐竜。馬鹿馬鹿しいとしか言いようが無いが、それが目の前にいるのだ。 本物の恐竜が目の前にいる。余りの現実感の無さに、咄嗟に動く事が出来なかった。 「マッガーレ!」 静寂を古泉が破った。赤の光弾が恐竜を襲う。しかし、レーザーが焼いたのは後方の壁だった。 忽然と恐竜の姿が消えていたのだ。呆然としていると、空気を切り裂く音が耳を突く。 見ると、恐竜が天井近くまで飛び上がっていた。予備動作は無かった。その状態からあそこまで飛んだっていうのか!? この近距離で「マッガーレ」を見切った事といい、地球上の生物を遥かに超えている! 驚いているうちに、恐竜が落下を始める。その落下地点は……!間に合わない! 呻き声を上げながら古泉が倒れる。恐竜が飛び掛かったのだ。地上最強の生物が生み出す衝撃に耐えられるはずも無い。 くそっ、早すぎる!助ける暇も無い!後ろ足で体を抑えつけられた古泉に、大型のサバイバルナイフのような爪が迫る。 「あの距離で余裕でかわすとは、恐ろしい『動体視力』……僕の『マッガーレ』のスピードはトップクラスだと思っていたんですがね……自信無くしますよ。 ですが、僕の能力は体を『光弾』に変える能力でしてね……」 恐竜の動きが止まり、やがて蛮声を上げながら大きくのけぞった。 見ると、ちょうど恐竜が抑えていた部分がまるまる光弾に変わっていた。体を離した恐竜に、すかさず長門が蹴りを見舞う。 サッカーボールのように蹴り上げられた恐竜は、壁に叩きつけられると動かなくなった。 「ゼロ距離なら、避けるも何も無いという事です。長門さんナイスアシストでした」 「これは一体?」 長門は気を失ったらしい恐竜を見ながら言った。古泉も合点がいかない様子で首を捻る。 「恐竜が現代に復活したというニュースは聞いていませんね」 「じゃあ『スタンド』だって言うのか?だが、これは俺にも見えてるぞ」 キョンにも?とすれば、少なくともこれはスタンドの像ではない。 スタンド使いではないキョンにはスタンドの像は見えないのだ。はっと気が付き、ぼくは長門に言った。 「長門、君にも見えたようだし、触っていたよな?」 そうだ。長門も正確にはスタンド使いではない。情報操作の能力だ。 しかし、この前の億泰の「ザ・ハンド」の時、彼女はあたかもスタンドが見えたかのように行動していた。 「……私にもスタンドは見えない。でも、エネルギーの変化は読み取れる。それにより、疑似的にスタンドを見る事は出来る。 でも、触る事だけは出来ないはず。だからこれはスタンドじゃない」 驚きの長台詞だ。出来れば別の時に聞きたかったが。長門は恐竜にほんの少しの間触れると、驚いた様子も無く言った。 「骨や内臓など、各種機関の存在を確認。これは本物」 荒唐無稽だが、長門にそう言われては信じるしかない。と、ここで不意に疑問が沸く。 なぜ誰も来ない?ここはVIPルームだ。警備員が詰めているし、他の部屋にも要人のボディーガードがいるはずだ。 その中で恐竜の耳を突んざく咆哮と、格闘による騒音が鳴り響いたのだ。誰も様子を見に来ないなんて考えられない。 いや、それ以前に……静かすぎる。レースが終わって間も無いはずだ。それなのに、窓の向こうからは以前のような熱気が無い。 何が起こっている?窓の外を見て頭が凍り付く。ぼくは震える指で外を指差した。 「皆、見ろ……!」 そこはまるで出来の悪い合成映画だった。最新鋭のオーロラビジョン、電光掲示板、手入れの行き届いた芝生……。 そこを恐竜が闊歩している。それも、無数の。さっき目撃したばかりの圧倒的な強さを持つ生物が。 それらを認めた古泉が苦虫を噛み潰したような顔で言う。 「……奴ら、本気のようですね。これまでは涼宮さんへの悪影響を懸念してか、襲撃の対象は僕達だけでした。 こんな攻撃をするという事は、相手も手段を選べなくなってきたという事でしょうか」 ここで言葉を切り、思い出したように言う。 「そう言えば、涼宮さんですが」 視線の先にはこんな状況にも関わらず、ぐっすりと眠る少女。長門がそれに答える。 「少し眠ってもらう。心配は無い……多分」 多分か。かなり不安だが、古泉はぼくをよそに素晴らしいと言って微笑んだ。キョンが焦れたように言う。 「これもスタンドだとして、一体どんな能力なんだ?」 古泉は小孝した後に重苦しく口を開いた。 「材料が少ない今、断定は危険です。『少なくとも恐竜を出現させられるスタンド』程度に考えておきましょう」 断定は危険。その通りだ。「黄の節制」、「運命の輪」、「チューブラー・ベルズ」。 これまで戦ってきたスタンドの中には、一つの能力で多くの事をする物があった。 目の前の恐竜だけで襲撃者のスタンド能力を考えては、木を見て森を見ずという事になりかねない。 確かな事は少ない。しかし、ぼく達がすべき事は一つしかない。 「あの数じゃあ、いくら何でも勝ち目が無い。本体の位置もわからないんだ。ここは逃げるしかない」 三十六計逃げるに如かずってね。悪いけど一般市民の保護なんて到底無理だし、現状では最も優れた作戦だ。 古泉も同意見のようで、ニヤリと笑う。 「話が早くて助かります。そうと決まれば行きましょう。朝比奈さん、涼宮さんを運んで下さい。 あなたの『マドンナ』なら楽に---どうしました?」 返事が無いみくるさんに古泉が訝し気な視線を送る。みくるさんは聞いていたのかどうか、良くわからない返事をした。 「……すみません、何だか寒くて」 言いながら、七分ほどまで捲ったカーディガンを手首まで戻す。 落ち着いて振る舞ってはいるが、やはり本調子ではないのだろう。キョンはみくるさんを心配そうに見ながらおずおずと言った。 「朝比奈さんには悪いが、早く行こう。恐竜なんてスクリーンの中だけでたくさんだ」 「ちょっと待ってくれ」 止めたのはぼくだ。キョンがムッとした視線を向ける。 「ぐずぐずしてる暇は無いぜ。一匹来た以上ここもヤバい。早く行かないと」 「大事な事なんだ。奴ら……恐竜の事なんだよ」 ぼくは考えながら口を開いた。 「恐竜が出た時の事を思い出してくれ。一番近くにいたのはドアを開けたキョンだった。 でも、実際に襲い掛かったのは恐竜から遠い古泉。……なぜだ?」 ぼくにはその理由がわからなかった。怪物の思考を考えるなど馬鹿げているかもしれないが……。 もしかすると、この小さな疑問が突破口になるかもしれない。考えもしていなかったのか、キョンが眉を寄せながら言う。 「……さあ。古泉が攻撃したからか?」 その可能性はぼくも考えた。しかし。 「じゃあ、攻撃されるまでつっ立ってたのは?隙だらけの姿を晒した理由は?」 そうだ。あの時恐竜は凍り付いたぼく達に先手を取る事をしなかった。古泉の攻撃を受けて初めて反撃したのだ。 再び考え込むキョン。長門が独り言のように言う。 「……恐竜は動かない物を認識しない?」 微かに上げられた語尾は疑問形である事を示していたが、ぼく達を驚かせるには十分だった。 あの時、ぼく達の殆どは余りの出来事に動けなかった。例外は古泉だけ。状況はぴたりと当てはまる。 「そんな馬鹿な。あの動体視力ですよ。長門さん、あなたも見たでしょう?」 「あり得ない事ではない。ある種の生物は動く物しか認識出来ない。恐竜も生物なら、そのような習性を持つ事はあり得る」 「しかし……いや、失礼。さっき断定は危険と言ったのは僕でしたね。確かにそう考えれば納得出来ます。可能性としては高い」 落ち着いた声で言う古泉とは対照的に、キョンの口振りは明るい。 「おいおい、ジョニィ。本当なら、この発見は値千金だぞ」 断定は出来ない。試してみる必要があるが、その価値はある。 「次に会ったら確かめよう。……時間を取らせた、出発しよう。歩けるか?みくるさん」 とは言ったものの、どうやって逃げる?確か、ここは六階だったっけ。 エレベーターと階段。どっちを使っても恐竜と鉢合わせする可能性はあり、その狭い空間内で出くわしたら危険は数倍にも膨れ上がる。 悩むぼく達に長門が思い立ったように言った。 「逃走経路なら、考えがある」 「本当か?それはどういう……」 キョンの質問を待たずに長門は窓に歩み寄り、拳を一閃。騒々しい音と共に分厚いガラスが割れる。 「き、君ッ!何をしてるんだッ!?」 長門はぼくを無視して窓の端にあった布を広げ、階下に落とした。 あれにはぼくも見覚えがある。この手の施設には付き物の防災器具の一つだ。防災スライダーって言うんだっけ。 飛行機によく取り付けられている物で、地上に向けて広がった布が滑り台状になり、滑り降りる事が出来るという装置だ。 通常なら細かい調整が必要なのだろうが、情報操作のお陰か綺麗に広がった。なるほど、つまりこれで降りようと? 第三のルートって所だが、はっきり言って正気の沙汰ではない。ターフには恐竜が腐るほどいるのだ。 そこに飛び込むなんて自殺行為以外の何物でもない。ぼくは声を荒げて長門に抗議した。 「長門、君の狙いはわかった。でも、見てわからないのか!?あそこは危険すぎる!」 「心配無い」 長門は短く言うと、設置されていたテレビモニターをスライダーに置いた。手が離れたそれはころころと傾斜を転がっていく。 転がり落ちたそれに恐竜が集まる。わざわざ誘き寄せて、どういうつもりだ。 「長門、君は何を?」 「…………今」 長門が呟いた瞬間、場内に激しい爆発音が轟いた。スライダーの先に黒煙を上げる金属片と、 無惨にも倒れた恐竜達の姿があった。 「情報操作でモニターの回路を組み換えて爆弾にした。時間が無い。早く滑って」 「……貴方、案外派手好きなんですね」 全部わかればいい策だけどさ……先に説明してくれよ。首を捻りながらもぼく達は滑り降りた。 降りてみると、辺りの恐竜はすっかり気絶していた。生きてはいるようだが、この惨状からすると爆弾の威力は相当な物だったらしい。 「……少し、火力を強くしすぎたかも」 「爆弾とか、お前はセガールか」 キョンのぼやきを金属音のような鳴き声が遮る。これは……しまった!ぼく達は致命的なミスを犯したのかもしれない。 「みんな、このままだとまずい!恐竜が爆発を聞き付けたんだ!急いで逃げよう!」 「いえ、その必要はありません。なるほど、長門さんの策がわかってきましたよ」 古泉がのんびりとした口調で言う。この危機的状況で何を言っているんだ。 「……全員、そこで止まって」 長門がみんなを見据えながら言う。自己主張が少ない長門にしては強い口調だ。 「でも……」 食い下がるぼくを古泉が宥めた。 「まあまあ。長門さんを信用して下さいよ。第一、これはあなたの発見に基づいての物なんですから」 ぼくの発見?あの「恐竜は動かない物は見れない」って奴か。 「でも、あれはまだ確実な事じゃないだろ?」 「ですから、そこは長門さんを信じましょう。純粋な観察力なら長門さんがこの中で一番上です。彼女なりの勝算があるんでしょう」 それにしても説明をちゃんとしてほしい。抗議しようとする声をキョンが遮る。 「ヤバい、来るぞ!」 騒々しい足音と共に恐竜がなだれ込んで来た。くそ、これで動くわけにいかなくなった。 恐竜が群れをなしてこちらへとやって来る。あの数!気付かれたら勝ち目は無いぞ! 見えていないなら、助かるが……。そう思った矢先、恐竜たちが歩調を緩める。 (おい、動きが止まりそうだぞ!バレたんじゃないか!) (落ち着いて下さい!爆弾の残骸を見付けて用心深くなってるだけです!) 慌てそうになるキョンを古泉が宥める。ぼくはというと、それに加わる余裕すら無かった。 ゆっくりと歩く恐竜が、ついにぼく達の横に差し掛かる。キョロキョロ辺りを見回しながら。 その視線が合う。まさか、気付いたのか?背中を冷や汗が走る。 ぼくは動いていないはずだ。それこそ瞬きさえ。来るな……! 願いが通じたのか、恐竜が脇をすり抜けて行く。そのまま爆心地へと。キョンが安堵の息をつく。もちろん小声で。 (行った……) (でも、危機が去ったわけじゃないぞ。まだ奴らはあそこにいるんだから) 釘を刺すぼくをよそに、長門が指先だけを軽く曲げて爆心地を指す。 恐竜の群れの隙間に何か黒い物が見える。爆弾の残骸か?不思議に思っていると、長門が呟く。 「…………今」 爆発音。……もう一個仕掛けてたのか。動けなくなった恐竜を片目に古泉が言った。 「よし、行きましょう。……これで『恐竜は動かない物は見えない』という事が確信できました。 シートンではありませんが習性を知っただけ、優位に立てましたよ」 それにしたって、あんな「だるまさんが転んだ」はもう勘弁だ。一刻も早くここから離れたい。 ぼくは長門が直した車椅子に乗り込むと、連れ立って出口へと向かった。 まず目指す先は恐竜が出てきた場所。さっき奴らが出てきたぶん、手薄になっているだろうからだ。 改めて見ると、どうやら馬の入場口らしい。足を止めないまま、キョンが話し掛けてきた。 「なあ、ジョニィ。俺達ってまだ一人も人間と会ってないよな?死体も含めて」 「……食べられたのか?」 あまり想像したくはない。脳裏をよぎった陰惨な光景に顔を歪めながらぼくは言った。キョンが首を振る。 「骨の一本も残さずに?……人間はどこに行っちまったんだ?」 「…………」 ぼくが答えを見付けられずにいると、先頭を行く長門が足を止めた。 「待って。中に何かいる」 そして、警戒しながら足を踏み入れる。ぼくらは様子を見ていろという事だろうか。 それに応えて後方から内部の様子を窺う。すると、部屋の隅で影が揺らめいた! 「長門、柱の陰だ!そこにいるぞッ!」 長門がそこに注意を向ける。それと同時に、影がゆっくりと姿を現した。 「まだ人がいたのか……ジョニィ。しかも君か」 Dio……!生きていたのか!? ぼくの姿を認めると、Dioは笑顔を浮かべながら歩いて来た。古泉が安堵の息をつく。 「良かった、生存者がいましたか……」 そう言って、歩み寄ろうとする古泉の腕を掴んだ。 「待て、古泉。……君、まさか保護するつもりじゃあないだろうな?」 驚きの声をあげたのはキョンだった。 「おいおいっ!放置しとくって!?」 「……あなた、本気ですか」 古泉が非難と軽蔑の入り混じった視線を浴びせる。だが、怯んではいられない。 「彼は信用出来る人間じゃあない。……生まれで差別するわけじゃないけど、彼は貧民の出だ。そんな彼が競馬で成功したんだ。 とりわけ金がかかる乗馬ってスポーツで!しかも未だに身分制の残り香が根強い英国でだ! 才能や努力だけではこの歳でこんな成功は出来ない。……彼が何をしたかぐらいわかるだろ? 彼は『餓え』てる。それを癒すためなら何でもする。まして、この状況だ。そんな人間は信用出来ない」 「……なぁジョニィ、聞こえてるぞ」 ぼくの熱弁は唐突に遮られた。その「日本語」の声に全員の視線が引き付けられた。 「Dio、日本語が話せるのか?」 Dioはフンと鼻を鳴らしながら返事をした。 「あぁ、まあな。それより酷いんじゃあないか?下らないゴシップを信じるなんて。 俺の成功は幸運に恵まれただけだ。それを妬む連中の言葉なんて、でたらめもいい所さ」 子供のワガママを諫めるような口調。そして、白々しい笑顔を周りに向ける。 「恥知らずが!何と言おうと君を連れてく気は無い!通報ぐらいはしてやるから、このまま……」 「ジョニィ君、止めて下さい。……少し、失望しました。あなたが彼と過去に何があったか知りませんが、 この期に及んでそんな事を言っている場合ではないでしょう」 冷えきった古泉の視線にぼくは敗北を確信した。古泉はDioに向き直り、丁寧に言った。 「失礼しました。ここは危険です。僕達なら多少は保護が出来る。ついてきて下さい」 「保護?武器でも持ってるのか?」 「……ええ、そんな所です」 目の前でDioの同行が決定されていく。考えてみれば、受け入れられるはずが無い説得だった。 正義の味方になるつもりは無いが、助けられる人がいるなら助けたい。ぼくに限らず、みんなそう思ってるだろう。 見捨てるという行動がプラスに受け取られるわけが無い。感情的な口調で主張されたらなおさらだろう。 さっきから古泉は目を合わせようともしない。彼の目には嫉妬として映ったのか?影さえ踏めない場所に行ってしまったライバルへの。 奴が言う通り、黒い噂なんて事実無根なのかもしれない。……そうだとしても譲れない。 ぼくはDioに聞こえないように、小声で古泉に言った。 「……同行は認める。でも、今さら言うまでも無い事だが、スタンドやハルヒの力は絶対にバレたくない。 君が何と言おうとDioはそういう力には目が無い奴だ。絶対に欲しがる」 古泉の態度は素っ気ない物だった。 「当然です。一般人には教えません。……無駄話をしている暇は無い。行きましょう」 ……嫌われたもんだ。今となっては遅いが、部屋を譲られた時の不遜な態度もまずかったのかもしれない。 古泉ほど露骨ではないものの、キョンやみくるさんもどこかよそよそしい態度をとっている。 気まずい思いを抱えながら古泉についていっていると、長門がぼくに歩調を合わせている事に気付いた。 「……長門、君は反対しないのか?」 何とはなしに言ったぼくに、いつも通りの抑揚の無い声が答えた。 「彼を信用する材料は無いし、助ける義務も私達には無い。でも、ここで一番避けるべきは私達の分裂」 確かに、これ以上強硬に主張しては仲違いを起こしかねない。腹が立つが我慢するしかないようだ。 Dioの動向には目を光らせておかなくてはいけないが……幸い、出口は近い。 少しの間、見張っていればいい……ぼくは自分にそう言い聞かせ、ともすれば爆発しそうになる感情を抑えた。 ぼく達は警戒しながら出口へと続く廊下を進んでいった。が、その道のりは拍子抜けするような物だった。 なんせ、恐竜と一度も出くわさなかったのだから。全ての恐竜がターフ内に集まっていたのか?……そんなはずは無いな。 とてもそんな安易な考え方は出来ない。じゃあ、なぜだ? 考えているうちにかなりの距離を歩いていた。曲がり角に差し掛かったところで、Dioが興奮したように言う。 「……よし、ここまで来ればほぼ安全だ。この角を曲がればロビーだからな」 「静かに。気付かれます」 厳しい口調で古泉が注意する。Dioはそれを無視して角を曲がろうとする。古泉はその肩を引っ掴んで引き寄せた。 「何をする!?」 抗議するDioを無視して、古泉は注意深く角の先を覗き込んだ。その顔がみるみる曇っていく。 「やはり……。出口を固めていましたか」 苦々しく呟く。廊下に恐竜がいないわけだ。古泉はぼく達に目を向けた。 「駄目です。敵が多すぎる。長門さん、もう一度爆弾を作れますか?」 長門は首を振る。 「何も無い状態から作るのは負担が多すぎる。媒体となる物が要る。大規模なら尚更」 さっきのモニターのような物か。しかし、探している時間があるのか? ターフにいた恐竜もずっと寝てはいない。それでも見つかればいいが、もし見つからなかったら目も当てられない。沈黙を破ったのはキョンだった。 「別の出口を探したほうがいいんじゃないか?」 「そうですね。あの包囲網を突破するのは無理でしょう。他の出口があるはずです」 「……そうは思わない。敵の量にもよるが、これ以上歩き回るのはリスクがある。ここを突破するのがベスト」 ここに来て意見が割れた。しかし、長門と古泉のどちらの言い分が正しいとは言いきれない。 極力隠してはいるが、ぼく達の疲労はピークに達している。 みくるさんに至ってはかなり前から一言も言葉を発していないし、顔色も優れない。 体力的にも時間は無いのだ。早く脱出しなければならない。しかし、一歩間違えばこの強硬突破は蛮勇だ。よく考えなければならない。 長門と古泉は互いに意見を譲らない。当然だ。生死がかかっているのだから。 ぼくは議論を続ける二人を尻目に歩を進めた。出口を固めているという恐竜を確認するためだ。 見たからどうなる事ではないかもしれない。しかし、小さな発見が突破口になる可能性もある。 とにかく今は情報を集める事だ。ぼくは車椅子を壁際に止めると、上半身を傾けて覗き込んだ。 ……多い。十匹以上いる。ぼくはVIPルームで見た恐竜の身体能力を思い出した。 古泉の光弾ですら軽々とかわしたのだ。そんなやつらが十匹以上と考えるとぞっとする。とても勝負にならない。 まともに戦うのは無理。しかし、長引かせるのも危険か……。確かにここを突破できればベストなんだけど。 どうすれば……?脱出の間だけでも奴らの気をそらせないだろうか?そう思った瞬間だった。 目の前の景色が急に動き出していた。……違う。ぼくが動いているんだ。 顔だけを出していたはずなのに、今ではほぼ全身が角の先に出てしまっている。 つまり、恐竜に姿を晒しているのだ。恐竜の鈍く光る目がぼくを睨む。なぜだ?なぜ姿を晒している? 勝手に車椅子が動いた?あり得ない。床は傾いていないし、車椅子は固定していた。 ……まさか。気付いた時にはもう遅かった。 「……グッバイ、ジョニィ」 耳に嫌らしい声がまとわりつく。その次の瞬間、車椅子が猛烈なスピードで前に走りだした。 そうか。「気をそらすもの」。あいつの……Dioの考えそうな事だ。 恐竜が集団で飛び込んで来る。ぼくにはもう後悔する時間すら無いようだった。 --------------- 古泉と長門の議論は平行線だった。俺はそれには加わらず、横で見ていた。 もちろん、俺なりに考えはある。一刻も早くここから逃げるべきだ。 俺達は疲れている。肉体的にも精神的にも。前々から調子が悪かった朝比奈さんはもちろん、古泉もだ。 さっきのジョニィとの口論。……ま、俺もジョニィがあんな事を言ったのはショックだったが、普段なら古泉はあんな言い方はしないだろう。 その後の刺々しい態度もアイツらしくはない。ジョニィも冷静さを欠いている。このまま極限状態に晒され続けるのはヤバい。 しかし……それは本当に正しいんだろうか?ただ単に俺はビビってるだけなんじゃないか? すぐに逃げ出したいって気持ちをそれらしい理屈で誤魔化してるんじゃないか……。 そんな考えから俺は口を出せなかった。結局、俺は一般人だ。こういう決断は修羅場慣れしてる二人に任せたほうがいい。 そう思ったのだが、結論はなかなか出ない。これには少し不安になってきた。 ……そうだ、ジョニィはどうした?ジョニィも議論には加わっていない。 見ると、壁際に車椅子を止めて出口を覗き込んでいた。その後ろに……ええと、Dioだったか、がいる。 車椅子を押さえているのか。最初はそう思った。しかし、俺はすぐに異変に気付いた。 ジョニィの体が壁の陰から完全に外れている。あれじゃあ恐竜からは丸見えなんじゃないか? 注意しようとしたその時、それは起こった。ジョニィが乗った車椅子が走りだしたのだ。 悲鳴一つ無くジョニィの姿が消え、恐竜の鳴き声がそれに続いた。 「……あ……あ……」 自分の口から言葉にならない声が漏れ出ていた。通り過ぎる影。長門だ。助けに行ったのか。 数秒の間、恐竜の悲鳴が辺りに響いたが、それもすぐに無くなった。 「……何て事だ……。あれでは生きてはいない」 沈痛な表情でDioが言う。だが。だが、俺は見ていた。 ショートした思考回路が修復されるにしたがって、起こった事が頭にしみ込んでいく。 こんな状況だというのに、俺は声をあげずにはいられなかった。 「Dio!お前……!」 恐竜の事など頭から消えていた。頭に血が昇り、舌がうまく回らない。 気が付けば俺はDioに掴みかかっていた。落ち着いた表情を崩さずにDioが言う。 「おい、静かにするんだ。ショックなのはわかるが、彼らの犠牲を無駄にするなど」 「ふざけるなッ!……見たぞ……俺は……!」 「見た」という俺の言葉を聞いた瞬間に、Dioの表情から急速に温かみが失われた。 Dioはフンと鼻を鳴らすと吐き捨てるように言った。 「……何だ、そうか。だが、それが何だっていうんだ?あんな歩けもしない奴、足手纏いになる。 それなら、最期に役立ってもらったほうが」 言い終わるのを待たず、俺はDioに殴りかかった。しかし、その先にDioの姿は無く、代わりに綺麗なストレートが俺を迎えた。 頬に食らい、膝をつく俺をDioが怒鳴りつける。 「馬鹿が!俺は一流のアスリートだぞ!ただのガキが、不意を突いたからといって殴れるとでも思ったか?」 「……どういう、事ですか」 豹変したDio。呆然とした表情で古泉が言う。俺は呻きながらも懸命に訴えた。 「こいつが……ジョニィの車椅子を押した。こいつなんだ!ジョニィを殺したのは!」 口の上手そうなこいつなら誤魔化す事も出来ただろうが、俺にとっては幸いな事にDioは完全に開き直っていた。 「フン!君ならわかるだろ?脱出する時に歩けないジョニィは邪魔になる。処理しておこうってわけさ」 こいつ……!最初の紳士ぶった態度は仮面だ。今のこの姿が醜悪な素顔。 平和な人生を歩んできた俺でもわかる。これが悪ってヤツなんだ。俺は立ち上がりながら叫んだ。 「人の命を何だと思ってやがる!……長門も死んだ。お前は、お前の事だけは絶対に許せねえ!」 俺はDioに掴みかかろうと飛び掛かろうとした。が、その前に羽交い締めにされていた。 「こらえて下さい。ここで冷静さを失えば恐竜に気付かれてしまう。全員が死ぬわけにはいかないんです」 古泉が真剣な口調で訴えた。Dioが嘲笑の笑みを浮かべる。 「そうだ。静かにしていろ。俺は必ず社会の頂点に立つ。そのためなら他人の命など、取るに足らん」 俺は歯軋りしながら、羽交い締めにする古泉を振り払った。 朝比奈さんやハルヒもいるんだ、恐竜に気付かれるわけにはいかない。だが……睨む俺にDioは得意顔で言った。 「フフ、理解できたか。良かったな?お利口な友達を持って」 歯噛みする俺を制止しながら古泉が言う。 「言っておきますが、無事に出られると思わないで下さい。許しを乞う資格など、僕にはありませんが……。 この状況なら、人一人が消えても誰も気にかけないという事をお忘れなく」 口調は丁寧だが、目には激しい怒りが宿っている。そうだ、古泉だって腹が立たないはずが無い。 しかし、そんな古泉にもDioは高飛車な態度を崩さない。 「フン、この俺を?お前らごときが出来ると?いいか……ウザい態度はもうやめとけ。 本来ならお前らなど、俺の影も踏めない存在だ。さあ、行くぞ。恐竜が早めのディナーをすませる前にな」 言い放つと、Dioは歩き出そうとする。しかし、それを止める人間がいた。 「……?何だ、君も不満があるっていうのか?日本女性は男を立てるんじゃあないのか?」 俺ではない。朝比奈さんだ。Dioの腕を掴んでいる。Dioは振り払おうとするが、見た目よりずっと力が強いようだ。 衰弱しきっていると思っていたが……。始めは余裕を見せていたDioも、離そうとしない朝比奈さんについに業を煮やした。 罵倒の言葉と共に拳を振り上げたのだ。これ以上の乱暴は許せない。俺は声をあげた。 「おい、待て!」 が、止めるまでもなかった。次の瞬間、地面に伏していたのはDioだったのだ。 Dioの拳が到達するよりも、ずっと早く朝比奈さんの手がDioの首を捉え、そして力任せに床に叩きつけていた。 「な……!?こ、こいつ……!?」 Dioの呻き声ももはや頭に入らなかった。そうか。競馬場に人がいなかった理由。人は、「消えた」んじゃなかった。「変えられた」んだ。 愛らしい目は鋭さを帯び、白い肌には鱗が走り……朝比奈さんは、恐竜になっていた。 「こ、こいつ、恐竜になっているだとッ!」 俺にも敵のスタンドが少しずつわかりかけてきた。「人を恐竜に変える」。だから人と出会わなかったんだ。 「古泉ッ!ヤバいぞッ!俺達も恐竜に変えられちまう!」 叫びながら見る。青ざめた表情。 「……いえ。どうやら、『既に』なっているようです……!」 弱々しい声を出しながら腕を押さえている。その手の隙間からヒビのようなものが覗いていた。 あそこは……!確か、最初の恐竜に組み敷かれた時に傷がついた場所だ! 全容は、わかってきた。だが。だが、もう! 「……む、無念だ……」 古泉が崩れ落ちる。遅すぎた。もう、何もかも。ここには俺しかハルヒを守れる人間はいない。 でも、俺に何が出来る?ただの人間にすぎない俺に、何が。 「おいッ!何をしてる!恐竜が迫っているぞッ!助けろ!」 地面に押さえつけられたままのDioが叫ぶ。見ると、恐竜達は完全に俺達に気付いたらしい。とっくに包囲されていた。 「う、うう……」 口から情けない声が出た。どうすれば……!どうすればいい!? 俺がパニックに陥りかけたその時だった。 「……騒がしいな。今日は記念すべき日だ。飛び入りのゲストは歓迎出来ない。粗暴なら尚更だ」 落ち着き払った声が聞こえた。見ると、上等な服を着た男が恐竜の群れに囲まれて立っていた。 生存者……!?いや、そんなわけはないか。男は俺達が見えていないかのように歩を進め、朝比奈さんだった恐竜に話し掛けた。 「さて、朝比奈みくる君。良くやってくれた。やはり君を恐竜化させたのは正解だった」 そして、朝比奈さんが引き付けたままのハルヒに視線を向ける。 「この少女が……。今、目の前の少女がそうだとは。信じ難いが、同時に直感でわかる。ついに私達の悲願が果たされるのか」 こいつ、やはり「機関」が敵対してる奴らの人間か!?本体が現れたってのはチャンスかもしれない。 しかし、逆に考えれば絶対的な自信があるからこそ姿を現したとも考えられる。 そして、その自信の根拠も俺にはわかっている。この恐竜達だ。俺を八つ裂きにする事など容易いのだろう。 「……お前が本体なのか……!?皆をよくも……!」 もう大勢は決した。俺が言った言葉は恨み言にすぎない。しかし、意外にも男は反応した。 「君は……そう、『キョン』。そう呼ばれている少年だな?鍵の少年か」 俺をじっと見る。少し思案してから男は口を開いた。 「こんな状況とはいえ、私の方から礼節を欠くのもなんだな……。 自己紹介をさせて頂こう。私の名は『フェルディナンド』。地質学・古代生物学者だ。『フェルディナンド博士』と呼べ」 異様な態度だ。こんな事をしておいて……。 「三年前、我がスタンド、『スケアリー・モンスターズ』を身に付けた。 まず群集に紛れて朝比奈みくるを恐竜化。そして、虫なども利用しながら徐々に感染させたんだ」 「黙れ!そんな話、聞きたくねぇ!何人も殺しておいて……!」 我慢出来ずに叫んだ俺に、フェルディナンドがピクリと眉を上げた。 「殺す……?ああ、勘違いしているのか。安心しろ、誰も死んではいない。 恐竜化しているだけだ。解除すれば元に戻る。もっとも、君の仲間の解除はしばらく出来ないが」 何だと?じゃあ二人も生きているのか?そう思った時、恐竜の群れの中から呻き声が聞こえた。 ジョニィ!生きてたのか!?しかも、人間の姿のままで。フェルディナンドが感慨深そうに言った。 「君らの中でも二人は特別だ。鍵だからな。涼宮ハルヒの精神状態に少しでも悪影響を与えないため、 目的を遂げるまで生きていてもらう必要がある」 目的だと?それがすんだ後は?疑問を代わりにジョニィが言った。 「……ハルヒを使って何をする気だ。ハルヒがお前らの野望を叶えてくれるとでも思うのか?」 フェルディナンドが顔をしかめる。しかし、それも一瞬。すぐに不思議そうな顔になった。 「野望、か。古泉から教えられていないのか?……いや、古泉も知らないのか。 お前が涼宮ハルヒに近付いた理由は何だ?その脚か?私達のはそんなちっぽけな理由なんかじゃあないぞ……。 『理想の世界』だ!彼女の能力は!いいか、彼女の能力は正しく、崇高な目的に使われるべきなんだ!」 興奮しながら言うフェルディナンド。しかし、対するジョニィの態度は冷ややかだった。 「正しいだと……?イカれてる。お前らがやっているのはテロじゃあないか。それで正義を謳うなんて、テロそのものだ」 吐き捨てるジョニィに、フェルディナンドはみるみるうちに顔を赤くした。 「意気がるなよ、ジョースター……!お前が地上最強の生物に囲まれている事を忘れるな。鍵は一人でもいいんだ」 そうだ。もう勝負は決まった。残念だが、俺達二人ではどうしようもない……しかし、それがわかってない奴がいた。 「お、おい!待て!お前達、何を言っている!?『スタンド』……?それに、その女が何だっていうんだ!? いや、それよりだ。フェルディナンド、俺を助けろ!俺は政財界にも繋がりがある。 俺ならお前らの望みを叶えてやれる!助けるんだ!」高飛車な態度を崩さないまま命乞いをするDio。深い溜め息をつくフェルディナンド。 長い長い溜め息が終わると、汚物を見るような視線をDioに送った。 「……ふう。私は先程『殺さない』と言ったが、それには君は含まれていないんだよ。 つい、興奮してしまって話しすぎてしまったのでね。それに、君のようなゲス者にはヘドが出る」 そして、Dioに近付くと押さえつけたままの恐竜朝比奈さんに一声かけた。 「やれ」とでも言ったのだろうか。Dioの顔がみるみる紅潮していく。 「こ……こんな……!やめろ、俺に近寄るな……!この、このDioがこんな所で……!」 恐竜の朝比奈さんが手……今は前足か……をDioの首にかける。 「この光り輝く道への船出を汚さないでもらおう。さよならだ、ディエゴ・ブランドー」 地に這うDioを見下ろしながらフェルディナンドが言う。顔が紅潮しているのは息苦しさからだけではない。 僅かに残る息を使い、Dioが叫ぶ。 「俺が……!このDioが……!嫌だ……!勝つのは俺のはずなんだッ! WRYYYYYYYYYYY!!『世界』を掴むのは俺のはずなんだッ!」 辺りに絶叫が轟く。それが気分を害したのだろうか。フェルディナンドが軽く上げた手を下げた。 同時に恐竜の朝比奈さんが空いた手を頭に振り下ろす。う……!広がるであろう凄惨な光景に俺は目をそらす。静寂。 やがて、俺は視線を戻す。……!?何が起こった!?目の前に広がっているのは予想通りの凄惨な光景だ。 しかし、倒れているのはフェルディナンドだった。腹に刳り貫かれたように大きな穴が空いている。 目は虚ろで、もう残された時間は少ないという事は俺にも見て取れた。うわごとのようにフェルディナンドが言う。 「きょ、恐竜が……!ディエゴ・ブランドー、貴様……貴様まで……!」 恐竜?俺は立ち上がったDioの足元の人影に目を向けた。朝比奈さん!恐竜化が解けている! 朝比奈さんだけじゃない、周りの恐竜も人間に戻っている!フェルディナンドが死にかけてるからか? Dioが薄ら笑いを浮かべたままフェルディナンドを見る。……もう動かなくなった。 「Dioッ!き、君……。何をしたんだ!?まさか……今のはッ!?」 ジョニィが叫ぶ。……この顔……!?怯えている……!? フェルディナンドにも強気の態度でいたジョニィが!?対照的にDioは余裕たっぷりに言い放った。 「フフ……すまないが、今日はこれで失礼するよ。予定が詰まってるんでね。 特に、これからは忙しくなりそうだ。……何、すぐに会えるさ。また会おう、ジョニィ」 悠々と出口へ歩き出していく。俺は慌ててジョニィに言った。 「お、おいっ!行かせていいのか!?」 ジョニィは黙ったままだった。Dioの姿が見えなくなった時、ようやくジョニィは口を開いた。 「……止めるべきだったと思う。ただ、出来なかった。……手を出せなかった」 ジョニィはそれ以上何も言わなかった。すぐに呼ばれた救助が進んでからもずっと。 問いただす古泉にも曖昧な返事を返すだけだった。そして、俺も同じくロクな返事を返せなかった。 Dio……。あいつは何者なんだ?ジョニィが前に言ってたような奴なのか? ただ一つ……ヤバい事になったって事は違いないだろう。 スタンド名「スケアリー・モンスターズ」 本体名「フェルディナンド」……死亡 To Be Continued……
https://w.atwiki.jp/keikenchi2/pages/494.html
俺はポケモンブリーダーだ。バトルは倒される前に倒す。つまり俺は馬鹿なのだ。高火力、そして紙耐久。 だから、よくポケモンセンターの世話になる。 ポケセンでの待合室でいつも見ていたあのポケモン―― タブンネ。 …そうだ!俺もタブンネを捕まえれば、片道1時間もかけてポケセンに通わなくてもいいのでは? 交通費とタブンネの食費を考えたら安いものだ。それにポケモンにとってもすぐ に治療出来るのはいいだろう。 そうと決まれば実行だ。ショップでモンスターボールを…。いや、タブンネに似 合いそうなヒールボールを購入し、草むらへ。 「タブンネ、タブンネ…っと。…居たっ!」 ガザガサと揺れる草むらに目立つピンク色のポケモンを見つけた。1m強、思ったよりでかいんだな。 「ミッミッミッミッミッミッミッミッ。」 俺は“ぽけじゃらし”を駆使してタブンネを誘導していく。 「ミィミィミィミッ!」 「んでもって次は…、餌で信頼を得ると…。」 ポケモンブリーダーを舐めないで頂きたい。野生のポケモンを手懐けるのもお手の物なのだ。 俺は自分の鞄から普段使っているポケモンフーズを取り出し、タブンネの前に差し出す。タブンネはポケモンフーズに鼻を近づけた…が、 「ミィッ!」 なんとポケモンフーズを引っくり返したのだ。タブンネの行動に俺は驚きを隠せなかった。 …確かにコレは対戦用ポケモンに作られた物であまり旨くない。一番安いから当たり前だが。 「ミィィィ!!」 他の食べ物を出せと?…仕方がないから、俺はきのみをタブンネにあげた。 「…全く。それはバトルで活躍してくれたメンバーにあげる奴なんだぞ?」 「ミィミィミィ。」 夢中で貪るタブンネ。食べ終わったのを確認し、ヒールボールを投げる。 デザインが気に入ったのかすんなりとボールに入ってくれた。 「…なになに、性格はおっとりで食べるのが好き…か。」 俺は7体目のポケモンを連れてアパートに帰った。 すっかり日が落ちて辺りが暗くなった頃、俺は家の前にある公園にいた。 「皆、出てこい!」 手持ちの顔が揃う。そして俺はヒールボールからタブンネを出した。 「今日から入ったタブンネだ。バトルはしないが皆を回復してくれる仲間だ。仲良くしろよ。」 「ミィミィミィ!」 「さて、飯にしようか。今日もお疲れ様。」 俺はバックからポケモンに大きさにあったエサ皿を取り出し、あのフーズを入れていく。 …おっと、タブンネの皿を買っていなかった。紙皿を二枚取り出す。1つは俺の分、もう1つはタブンネの分だ。 「ほらよ、タブンネ。」 「ミッ!!」 紙皿が中に飛んだ。ひっくり返った中身がコジョンドを襲う。ポケモンフーズをもろに浴びたコジョンドは俯いてワナワナしている。 一応♀だし、いつも綺麗にしている毛並みを茶色のベタベタで台無しにされたら怒るだろう…。 「キュォーン!!」 コジョンドがタブンネに飛び掛かる。 「コジョンド、stop!!…タブンネ。このフーズが嫌いなのはわかる。俺の家にはこれしかないから…。」 …やっぱコレは不味いのかと思いながら、フーズを口にする。 「ミィミィ!」 「…えっ?さっきのきのみが欲しいって?…ダメだよ。まず、俺の話を―― 「ミィィ!!」 タブンネは俺の分のフーズを放り投げた。俺のフーズはコジョンドを宥めているフライゴンに当たる。 「ミッミッミッww」 ケタケタと笑っているタブンネに怯え、フライゴンは逃げ出した。アイツは臆病な♀だ。なにがあるかわからない。 ペンドラーに連れ戻すように命じ、台無しになった夕食を片付けてアパートに戻った。 タブンネの入ったボールを玄関に置くと、俺はフライゴンを探しに暗闇へと走っていった。 公園に着くとペンドラーとフライゴンが待っていた。流石112、仕事が速い。 俺はフライゴンをボールに戻し、ボールの表面をそっと撫でた。 「…ごめんな、恐い思いさせて…。」 そして、ペンドラーに股がりR-9を目指した。 R-9フーズ売り場にて 「…高い。」 俺は財布の中身と値札を見比べ溜め息をつく。いつものフーズの1.35倍の値段がする…。 「…まぁ、いつものフーズとブレンドして使えばそこまで高くないかな…。」 ブツブツと呟いていると服の袖が引っ張られる。振り向くと、ルカリオがなにか言いたげな様子で立っていた。 「…平気だよ。アイツもすぐに慣れるさ。」 彼の頭に手を置いてそう言うと、一番安い愛玩用のフーズを購入した。 出口へと向かうと1人の女性が嬉しそうに近寄ってきた。…右手に新製品の試食品を持ちながら。 タブンネにやられたせいで晩飯を食えなかった俺にだろう。わざわざ♀に化けて…。…生活の知恵か? 「…あ、ありがと。…ゾロアーク?」 夜風に吹かれ、家に帰る。玄関にあったはずのボールが開いていた。俺はボールの開き方を教えた覚えはなかったが…。 台所は缶詰が散乱し、壁に投げつけた跡もあった。リビングにはお気に入りのボロ毛布にくるまって寝ているタブンネがいた。 タブンネをボールに戻して俺はソファーに横になった。 朝、公園で朝食としてタブンネには昨日買ったフーズをブレンドした物をあげた。 「ミィミィ…ミィ。」 タブンネは顔をしかめて、ちびちびと食べ始める。…なんなんだコイツ。 「あら、そのタブンネ…。」 朝食をとっていると、散歩中の近所のおばさんが声をかけてきた。 「…?コイツを知ってるんですか?」 「…あっ、なんでもないわ。その…可愛いなって思って…。」 「そうですか。…良かったな、タブンネ。」 「ミィ!」 飯を食い終え、バトルをしに出掛ける。俺たちの生活費を稼ぐ場所だ。 今日はなかなか好調だった。二回負けたが、四回も勝ちを拾った。 負けた二回もタブンネに回復して貰ってタイムロスなく、いつもより多く試合が出来た。 「ありがとな、ペンドラー。」 夕食の時間、俺は今日の撃墜王にオボンをあげる。 「ミッミッ!!」 タブンネが“私にも頂戴!”と、言っているように鳴いている。 「ダメだ。これは頑張ったヤツにあげるんだ。」 「……ミィ。」 あれ?やけに素直だな…。やっとこの生活に慣れたといったところか…。 翌日からタブンネも隣で応援してくれるようになったが、黒星が続いた。前半はリードしているのだが、後半で急に遅くなり負けてしまうのだ。 俺の心は財布の中身とともにすり減った。これ以上は負けられない…。そう思ってスタミナ不足を補うために、夕食前のランニングを始めた。 夕食。だが、その内容は以前より薄くなっていた。負ければ財産が減るのだから、フーズの量を少なくせざるを得ない。 「ミッ!ミィミィ。」 タブンネは俺の鞄を指差す。今日は四連敗したからタブンネだって回復させるのに疲れたのか。しょうがない…。 俺はタブンネにオボンを渡すと嬉しそうに鳴き、オボンにかぶりついた。 黙々と食べるタブンネを、目を細めたルカリオが睨み付けていた。 今日も惨敗。遅いシュバルコの動きさえ見切れずに負けてしまった。持ち金が尽きたので、最近は換金アイテムを売って生活していた。 手持ちのポケモンもピリピリし、俺への不信感もいだき始めたようだ。 俺の方も何かの違和感を感じていた。 バトルを止め、朝から晩まで特訓をするようになってからタブンネの姿を見ない。 昼間はどっかに行っているようだが、夕食には帰ってくるのでほっといていたが…、 「ミィミィ。」 ある日の夕食の時、タブンネは両手にタマゴを抱えてやって来た。最近はどっかに行っていると思ったらまさか…。 「タ…、タブンネ…?それは君のかい?」「ミィ!」 タブンネは勢いよく頷く。よりによって、この財政ピンチで首が回らないときに…。 捨ててこい!と、言おうとした時、俺の脳裏に、 “そんな言葉を言ったら俺のポケモンは、不要ならば捨てられると思うのか…。”という考えが浮かんだ。 「タブンネ…。」「ミィ?」 「俺は忙しい。ちゃんと自分で世話をするんだぞ?」 「ミミィミィ!」 元気よく返事するタブンネを見て、俺は溜め息をついた。 ポケモンは二週間の特訓し、その間俺はトレーナー用の本で勉強したはずだった…が、バトルの内容は以前より酷くなっていた。 ここのところは頑張りが空回りしていたのかもしれない。だから、しばらくはポケモンを自由に遊ばせることにした。 …これでダメなら、俺はブリーダーを引退する。そう決意していた。 一方でタブンネの方はオボンで肥え、背丈ではほとんどの変わらないルカリオよりも一回り大きく見えた。 母親になるのだから当たり前だが、極度な運動で痩せていく仲間と比べると、なんだか腹が立ってきた。 …怒っても現状は変わらない。気晴らしに明日はピカチュウを連れてミュージカルに行こうか…。 「今日はミュージカルに行くけど、お前らは来るか?」 朝飯の時に問う。ルカリオとコジョンド、ゾロアークは外で遊ぶらしく、タブンネはタマゴがあと少しで孵るらしいので行かない。 「…じゃあ、家に居るのはタブンネだけか。鍵はしめておくから、誰が来ても開けちゃ駄目だぞ。」 ミィミィと返事をしてタブンネはタマゴの置いてある部屋に行ってしまった。 「それじゃ、行ってくるから喧嘩はするなよ。」 三匹にそういうと、フライゴンに乗り、ライモンへと向かった。 公園の茂みにタブンネ―― ゾロアークがいた。ゾロアークは声マネをして、あのタブンネの夫を呼び出す。 「ミィミィミィ。」 夫ンネが飛び出してきた。木の上で待機していたルカリオが夫ンネの背後に回り羽交い締めにし、 素早くコジョンドが顎に跳び膝蹴りをお見舞いして失神させる。 “準備は整った。策は昨日話した通りだから…。” 『了解っと…。』 “……コジョンドは?” コジョンドは失神した夫ンネにマウントポジションをとり、腕を鞭のように振るっていた。 「ミギャァ!ミグッ!」 内出血を起こした顔は青紫に膨れ上がっていた。 「ミィィ!」 夫ンネがコジョンドに手をかざすと、コジョンドが仰け反った。タブンネのサイコキネシスだ!! 夫ンネはマウントポジションから脱出すると痛む顔を押さえて一目散に草むらに逃げ出した。 「キュォォーン!!」 コジョンドは響き渡る雄叫びをあげ、タブンネを追いかけた。 『あっちはオコジョに任せて、俺たちは本丸を潰しますか。』 “………。” 俺はミュージカルを終え、休憩室にいた。ファンからもらったものを物色していると、見覚えのある人が近付いてきた。 「あ、貴方は…!」 俺の前にいるのは、俺の大先輩でイッシュで名をあげたトウコさんだった。 「最近スランプね。…どうかした?」 俺はトウコさんに最近の事を一通り話した。 「…それはおかしいわね。」 「えっ?」 「バトルビデオは撮ってあるかしら?」 俺はバックからバトルビデオを取り出し、映像を流す。 「…やっぱり。この始めの部分で映像が乱れてるでしょ?」 ほんの一瞬、普通ならば気づかないが確かに乱れている。 「これは時空が歪んでいる証拠よ。」 「時空が…?それってまさか…!」 「そうよ…。」 「「トリックルーム!!」」 「…あのタブンネはね、前にね誰かに愛玩されてたから悪知恵がついて、他の人も被害に遭ってるの。」 「…そうか!だからあの時、おばさんがあんな…。…俺、帰らなきゃ…。帰って皆に謝らないと…。」 俺はトウコさんにお礼を言って立ち去った。…嫌な予感がする。フライゴンに乗って家を目指した。 タマゴを並べて嬉しそうに見守っているタブンネ。 『ミィミィ、ミィミィ!』 ドアの外から声がする。…あの人だ!そう思ってタブンネは玄関に行き、ドアを開ける。後からドアを閉めればバレないだろう。 「ミィミィ!ミッ!!」 夫ンネを部屋に招待する。タブンネはタマゴの前にしゃがみこみ、隣に夫ンネを誘う。 …幸せな時間。うっとりとしてタマゴを見つめている。 グシャッと音がして、生暖かい液がタブンネの顔を汚す。夫ンネの陰から伸びた黒い足が端にあるタマゴを踏み潰した。 “今までのよくも弄んでくれたな…。” ルカリオが声を低くして呟く。タブンネは夢から現実に引き戻された。 ‘…タ、タタタタマゴが!いきなりどうして!?’ タブンネはミィミィ叫びながら無事なタマゴを持って部屋の隅に逃げる。 ‘貴方!その野蛮な獣を倒して!!早く!!’ 夫ンネは気合い玉をため始める。普段なら当たらないが、狭い屋内なら…。 『ミィィ!!…クキュルルルww!!』 夫ンネはくるりと反転し、化けの皮を剥がした。放った気合い玉はタブンネに向かう。 ‘ミッ…、ミミィ!!’ タブンネは辛くも逃げ出すもタマゴを一つ落としてしまった。気合い玉はタマゴに当たり、砕け、蒸発した。 『あーあ、割れちゃったww。残りは三個だね。』 ‘…なんで!?アタシは何もして無いよ!ニ対一だなんて…。卑怯者!雑魚!!負けてばっかだからってアタシに当たるだなんて…’ 波導弾がタブンネの顔を掠めて壁に当たり爆発する。タブンネは、ヒュッと息を飲んだ。 “…反省してるなら痛め付けるくらいだったのに。” 『サシでやるんだろ?タマゴが潰れんのが嫌なら、そこに置いとけよww。』 ゾロアークの指示に従うのは癪だったが、タブンネは素直に従いボロ毛布にくるんで窓の側に置いた。 「ミィィィィ!!」 タマゴの恨みと言わんばかりにルカリオに捨て身タックルを繰り出す。 今では体格がタブンネの方が圧倒的に大きかったのでいけると踏んだのだが、あっさり回避される。 続けてタブンネは火炎放射を出そうと息を吸い込む。吐き出す瞬間に小型の波導弾が口に着弾した。 暴発した火炎放射はタブンネの口を焦がす。 ‘ミヒィィィ…’ 涙目でゲホゲホと咳込んでいる隙に、ルカリオはタブンネに接近。タブンネの腕は掴みかかるも空を斬り、 すれ違いざまに右腕を殴られ脱臼した。 ‘こんなはずじゃ…。ミィッ!!’ 背中に波導弾を撃ち込まれながら台所に逃げる。 ‘…形勢逆転だミィww!!’ タブンネは勝ち誇りながら、耳に力を集めてトリックルームを発動する。 ‘勝てる…!’その勢いで手を振りかざすもスルリと神速でかわされ、後ろをとられる。 ‘―― どうして!?’ “……痛いだろうけど、恨まないでね。” タブンネの背中を足で押しながら触角を引っ張る。 ブチブチと繊維が切れる音がして触角が千切れ、鮮血と共に中に舞う。 時空が元に戻る。タブンネはルカリオに蹴られ、シンク台に叩きつけられた。 “切り札はもう使えない。お前の負けだ!” ‘…ひどいミィ!たかがバトルでムキになるなんてガキだミィ!!’ ガチャ…と、ドアの開く音がした。タブンネは急に強気になる。 ‘こんな事をして怒られるのはお前たちだ!ミヒヒヒヒ…ww!!’ タブンネはゾロアークとルカリオが怯んだ隙に玄関に走る。 「ミィィィ、ミーン!」 三秒後、タブンネがぶっ飛んで壁にぶつかった。暗闇から純白の毛を血で染めたコジョンドが現れた。 ‘痛い痛いミィ!アタシみたいに可愛くない凶暴な雌なんて最低だミィ!!’ タブンネはそう言うと、側に落ちていたフルーツナイフを振るった。 ナイフはコジョンドの太股を切り裂き、腕の毛を裂いた。バランスを崩したコジョンドに刃を向けて突進する。 ゾロアークがタブンネをコジョンドいるの反対方向に蹴り飛ばした。タブンネがぶつかった窓には大きくヒビがはいった。 部屋の隅に追い詰められ、唯一の武器も天井に刺さっている。タブンネにはもう絶望しか無かった。 …いや、まだ希望ある。 タマゴを持って逃げ切れば夫と暮らせる。だから…!! トドメを刺そうと近づくルカリオにタマゴを投げつける。ドロドロしたものが彼の視界を覆う。 タブンネは隙を突いて、窓を突き破り逃げ出した。 散乱したガラスとタマゴの殻。だが、タマゴの殻の量とタマゴの数が合わない…。 夕暮れ。落ちかかった日に照らされながら目を閉じる。アレだけは幸せにさせない…。全ての元凶に…! 目に憎悪を宿し、彼もまた夕闇の中に飛び降りた。 アパートの前に着くと、俺はフライゴンから降りて自分の部屋を目指した。ドアノブに手をかけると鍵がかかってなかった。 ドアを開けると血の臭いが鼻についた。まさか…! 悲惨な状態になってあるリビングには、ぐったりしたコジョンドと、半泣きでコジョンドの怪我を圧迫しているゾロアークがいた。 コジョンドの最低限の処置をすると、他の二匹を探しに寝室に行った。 そこに在ったのは無残に砕けたタマゴの残骸と割れた窓。二人の姿は無かった。 コジョンドとゾロアークをボールに戻し、ヒールボールを掴むと、ドアを開けっ放しで飛び出した。 階段で大家さんの悲鳴が聞こえたが無視して、フライゴンに飛び乗った。 「間に合ってくれ…。」 呟いた言葉は風に掻き消された。 ‘ミィ…、ミィ…。’ 捕まえられてから一度も運動してないタブンネは既に息を切らしていた。 だが、早く夫を見つけて、逃げきるという思いがタブンネを動かしていた。 遠くでガラスが割れる音がした。背筋が凍る。左手に抱えたタマゴをぎゅっと抱き締め、タブンネは草むらを掻き分けて逃げた。 心臓が締め付けられるような不安から逃れるために早く夫に会いたい…。そんな事を考えて走っていると、足を掬われ転ぶ。 タマゴを庇って背中を打ち、苦しそうに咳をする。目を開けると、そこには既に死んでいる夫の姿があった。 ‘ミィッ!!’ 息を飲むように悲鳴をあげる。――― 殺気。唯一残っていた野生の勘で感じ取り反射で横に跳んだ。 全方位から夫ンネに尖った岩が刺さる。一瞬にして夫ンネは岩の塊となった。 岩の欠片は茂みの奥に戻っていく。夫ンネはただの肉片になっていた。気付くのが少しでも遅かったら…血の気が引く。 茂みの奥には、宙に浮く無数の岩に囲まれたルカリオがより鋭くなった目をタブンネに向けていた。 ―― 逃げなきゃ!そう思った時には岩が翔んできていた。耳を抉る痛みに耐え、反対側に走り出した。 岩は全方位からあらゆる軌跡でタブンネを襲う。火炎放射では焼石に水、タブンネにはただ逃げることしか出来なかった。 ‘ミィィ…、ミフゥ…。’ “どうだ!?一方的な暴力に為す術無く命磨り減らしてく気分はぁ!!” 岩は現在のタブンネの速さに合わせて襲ってくる。 彼なら簡単に串刺しに出来るはずだ。自分がいたぶられている事くらいタブンネでさえ理解出来た。 それでも迫りくる死のプレッシャーから逃げなければならなかった。 もう何メートル走ったかわからない。足の感覚は無くなってきた。最後の力を振り絞り、タブンネはルカリオにタックルする。 攻撃が届く前に、踵落としを喰らい地面に這いつくばった。コロコロとタマゴが転がる。タブンネがタマゴに伸ばした腕に岩が刺さる。 タブンネは虚ろな目でルカリオがタマゴを空に投げたのを見た。 “これでお前の希望は枯れ果てたな…。” 心の痛みも、体の痛みも感じない。小さくミィ…と鳴きルカリオの後ろに弾ける花火を見た。―― 花火? “…さよなら。” 流星群はタブンネに向かう岩を撃ち落とした。 俺は片腕にタマゴを抱え、フライゴンに乗りながらピカチュウの電撃でルカリオの動きを封じ、 ボールのレーザーポインタで狙いを定めて捕獲した。 フライゴンから降り、タブンネの前に立つ。 「…もう永くない。」 「ミ…、ミ……。」 「俺はポケモンブリーダーだから、最後は看取ってやるよ。…例えお前がどんなポケモンでもな。」 しばらくしてタブンネは息を引き取った。近くの茂みに埋め、墓前にオボンを供える。 「次はまともなポケモンに転生するんだな。…安心しろ、お前の子供は俺が責任持って育ててやるよ。」 そう言い残し、久し振りのポケモンセンターに向かう。 コジョンドの傷は浅く、すぐ治るようだ。ルカリオも溜まった精神的な疲れが暴発しただけらしい。 俺は、良く言えば気分をリフレッシュさせるべく新たな土地を目指すことにした。悪く言えば夜逃げだが。 ポケモンセンターで一晩過ごし、早朝にアパートを訪れて出発の準備をした。…タブンネのタマゴを持って。 「…あれ?」 荷物は全てペンドラーに積んだタマゴ用の保管器を置き忘れたようだ。 「ペンドラー、ちょっと待っててくれ。」 タマゴはバックから取り出した適当な代用品の中に置き、部屋に保管器を取りに返る。 階段の途中で他人に譲ってしまった事を思い出した。困ったな…と、思いながら踵を返すとその必要は無くなっていた。 「…ぺ、ペンドラー…さん?」 ペンドラーは寝惚け眼で、こくんと頷く。 「まさか…。」 こくん 「…おいしかった?」 こくん 『ペンドラァァァァ!!』 俺の雄叫びが早朝のイッシュの空を裂いた。 ―― end ―― Thank You for reading ルカリオの岩は、エッジ+キネシス。某アニメのファングやらのイメージで。 タブンネの事件は、ペンドラーだけ出番がなかったのです。
https://w.atwiki.jp/lilia/pages/231.html
メーカー カプコン 機種 PS4PS3XBOX ONEXBOX360PC(Steam) ジャンル 3DACT キャラクター シェバジル シチュエーション 丸呑み噛みつき掴み・拘束 備考 PS4,XBOXONEはリマスター版 サバイバルホラーの代表作。 過去の作品では固定視点でのかみつきなどが好評だったが、全作のBIOHAZARD 4 からはFPSのような視点になってしまったので非常に残念だがこちらのシステムはかなり高評価な為仕方がない。 首ちょんなど一撃死もあるものの国内版では規制が厳しいため、ヘビーリョナラーには向かない 海外版では首チョン・上半身吹っ飛びなども表現されている 主な攻撃シチュ 一般マジニの掴み(羽交い絞めor寄生体の首裂き) 犬の飛び掛りかみつき 処刑マジニの首絞め、ダウン後の串刺し即死 チェーンソーは一撃死 飛行寄生体の首つかみ クモ型寄生体のつかみ 頭がクルミみたいになった敵のかみつき 上半身すっぽりかまれる。欧米版だと食いちぎられて即死。 触手の塊(ウロボロス)の取り込み 原住民槍マジニの串刺し リッカーの舌串刺し、押し倒し リーパーのわき腹連刺し即死 その他一撃死イベント リョナキャラ 自キャラ(もしくは仲間NPC)として、「シェバ」が使用可能 また全クリ後にプレイ可能なマーセナリーズで、「ジル」も使用可能 作中に登場した金髪ジルは出すのが難しい マーセナリーズは時間制限が短いので楽しむ余裕に難あり コスチュームも含めると シェバ三種(ノーマル・カジュアル・アマゾネス) ジル二種(ノーマル・STARS) の5種類になる http //www.nicovideo.jp/watch/sm6408445 タグ一覧 3DACT PC(Steam) PS3 PS4 Xbox360 XboxOne 丸呑み 噛みつき 掴み・拘束
https://w.atwiki.jp/quo_vadis/pages/426.html
【PERSONA -trinity soul-】【スタイリッシュ】【アニメ】【2008】【2】 公式 wiki ニコニコで検索 慎たちのクラスに、山咲まゆりと名乗る転校生が現れた。大人びていて口数少なく、ミステリアスなその美少女は、守本叶鳴と面識があるようだ。しかし叶鳴は再会にどことなく気まずそうである。そんな折、学園で夜な夜な不可思議な現象が起きるようになる。人の悪戯とは思えない異様なその状況を訝った慎たちは、謎を解明するため深夜の学内パトロールを決行する。 くそ、アフロが羨ましい、妬ましい。 僕だって、木の下でめーこりんに勘違いでも告白されたいんだからね! それにしても頬を染めるめーこりんカワユス。 かーこりん×アフロ、めーこりん×次男だな。 末っ子は一人で需要と供給を賄えるから便利だな(意味不 なんつうベタな転校生。 でも、稀人の時の格好より似合ってるよ!会長みたいで! しかし、僕の琴線に何故か触れない。 やはり髪の緑が浮きすぎだからか。 ちょ、ありえねーよwwwww こんな怪奇現象が起こっても平然と授業をやる学校、凄いです。 流石富山だなあ(羨望の眼差し アフロ、ちょっと僕と変われや。 僕だってかーこりんを羽交い絞めしたいんだからね……ッ! なんか稀人とかどーでも良くなってきた。 ペルソナ使って不思議な事件を解決するほのぼの系のペルソナが見たい。 具体的に言うと先々週みたいなの。 末っ子ペルソナ操りまくりんぐワロタ。 全部分かってて、皆にも地縛霊なんて言う末っ子萌えす。 そんな末っ子が危険に巻き込まれるなんて、考えたくないなあ。 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/animelonif/pages/69.html
023 涙の先に ◆H3I.PBF5M. 佐天涙子の目の前で、紅蓮の炎が踊る。 焔の錬金術師ロイ・マスタングの操る炎の勢いは凄まじいものだった。 「……威力は十分。しかし……」 パン、とマスタングが両手の平を打ち合わせる。 それが、彼の超能力……否、錬金術始動のサイン。 間髪入れず、マスタングが指を弾く。 空気中を伝う火花が目標に到達した瞬間、爆発。 まるで火炎放射のように奔る烈火の渦は、鋼鉄の扉さえアメのように溶かしてしまう。 「すごいなぁ……」 佐天は口を半開きにしたままその光景に見入る。 焔の錬金術師言うところの「練習・調整」を、佐天はぼんやりと眺めていた。 マスタングは先ほど、鉄パイプから簡単な剣を錬成した。それでさえ、学園都市ならばレベル4は確実だと思った。 だが今、彼が披露する炎を見ているとまだ甘かったと思い知らされる。 物質を別の形に変換する力。空気中に可燃ガスを錬成し、自由自在に炎を放つ力。 特に炎の方は、本気で放てばちょっとした建物ぐらいならまるごと焼き払えるほどだという。 それでいて、マスタングの錬金術は地脈……地殻変動に伴う莫大なエネルギーを地中から取り出すため、本人の消耗はさほどでもないらしい。 もしかしたらレベル5に……佐天が唯一知っているレベル5、御坂美琴の力にも決しても見劣りしない……匹敵するかもしれない。 「……いかんな。やはり、戦闘には不向きだ」 と、驚愕しきりの佐天をよそに、マスタングは不満気だった。 佐天がマスタングと出会ってから後、深夜に屋外を出歩くのは危険だと、日が昇るまでこの発電所で過ごすことを決めた。 マスタングは佐天に休んでおくように行って、自分は見張りがてら錬金術の練習をすると、発電所のエントランスで試行錯誤を繰り返していた。 休めと言われてもそこは無能力者かつほぼ一般人の佐天涙子。 一人でいる不安には勝てず、こうしてマスタングの傍で見学をしていたのだが。 「あのー、何がダメなんですか? 私にはもう無敵の能力にしか見えないんですけど」 「うむ。よく見ていてくれ、ルイコ」 マスタングは両手を合わせ、指を弾くあの一連の動作を繰り返す。 当然の帰結として炎が生まれ、奔る。もう何度目か、さすがに佐天も見慣れてきた。 「それの何が悪いんですか?」 「威力、規模は問題ない。狙い通りの場所にも撃てる。だが……」 手を合わせ、指を弾く。今度は炎は生まれなかった。 「この、ツーアクションだ。これは一秒を争う戦闘では致命的に遅い」 マスタングは本来、錬成陣を刻みつけた発火布を手袋にして用いている。 炎を生み出す錬成陣を「あらかじめ起動待機している」状態にしておき、指を弾いて火花を生み出すことで発動させる方式だ。 これならば、指を弾くワンアクションで炎は発動する。指を弾くイコール狙いをつけるであるので、必要なのは火花を生み出す過程だけだ。 しかしこれが手合わせ錬成となると話は異なる。 「鋼のが得意としていたやり方だが……私とは相性が悪いな。私は奴ほど体術が得意な訳でもないし」 手のひらを打ち合わせることで力を循環させ、錬成陣とする。 従来の錬金術師の常識を打ち破る革命的な手法だが、これは錬金術の真理を見た者にしか使用できない方法でもある。 エルリック兄弟、その父親ヴァン・ホーエンハイム、兄弟の師イズミ・カーティス、そしてロイ・マスタング。 かつてホムンクルスに「人柱」と称された、世界でも十指に入る練達の錬金術師のみが、その領域に触れた。 マスタングは「通行料」として両目の視力を置いてきてしまったが、それもティム・マルコーから提供された賢者の石によって回復。 結果、マスタングは万全の状態でさらに手合わせ錬成を可能となり、錬金術師としては更なる高みに至ったといえるのだが。 「力だけ手に入れても、それが必ずしも役に立つとは限らない……これもまた真理だな」 エドワード・エルリックは、手合わせ錬成に鍛え上げた体術を組み合わせることで錬金術発動後の隙をカバーしていた。 元々彼は錬金術なしでもホムンクルスと渡り合えるほどなのだ。だが、マスタングはそうではない。 軍人としてある程度は格闘の訓練を積んできているものの、「錬金術師殺し」スカーやキング・ブラッドレイといった本物の達人を前にしては赤子も同然。 つまり今のマスタングは、発火布なしでも焔の錬金術を扱えるが、そのポテンシャルを完全に引き出すことはできない……そんな状態だった。 「前衛がいるなら問題はないが、今は私と君の二人だけだ。まさか君に前に出て敵を食い止めてくれとは言えんしな」 「それは、あはは……ごめんなさい……」 冗談とわかっていても顔が引きつる。 佐天涙子の戦闘力は常人の粋を出ない。鍛えてもいないので、戦闘には何の期待もできないだろう。 しかしマスタングは、それを責めはしない。守ると決めたのだから、彼女にそれを求めることはそもそも筋違いだ。 申し訳なさそうにしている佐天に、マスタングは懐から銃を取り出し、差し出した。 「マスタングさん、これは?」 「銃は君が持っておけ。私は少なくとも戦うことはできる。自衛の手段がない君が持っていた方がいい」 「でも私、銃なんて撃ったこと無いですよ!」 「実際に撃てとは言わん。銃は示威目的にも有効だ。構えているだけでも他人を威圧するには十分な力がある。 その鉄パイプ剣だけではいくら何でも心もとないだろう」 佐天は納得しきれていないようだったが、マスタングは押し切った。 彼女を守ると言っても、いかにも無力な様子を曝け出していては好戦的な者には格好の獲物にしか見えないだろう。 だが銃を持っていれば、ある程度は警戒する。すぐには手を出さず、やり方を考えるだろう。 その一瞬の間があれば、マスタングは余裕を持って手合わせ錬成から指を弾くツーアクションを行える。 どのみちマスタングが銃を持っていたところで、手合わせ錬成の邪魔になる。 マスタングの副官であるリザ・ホークアイ中尉ならば、それこそ戦力の一つとして数えられるほど信頼できるのだが……苦笑し、頭を振って妄想を追いやった。 「私の方はもう用事は済んだ。欲を言えば何処かで手袋でも調達して発火布を作りたいところだが。 ……さてルイコ、そろそろ休もう。眠らなければ出発に差し支える」 「あ、はい。わかりました」 銃をためつすがめつしていた佐天はマスタングに促され、おっかなびっくり銃を腰の後ろのベルトに挟もうとし、思い直してデイバッグに突っ込んだ。 安全装置なるものが働いているため暴発はしないらしいが、それでも不安ではある。少なくとも休んでいる間くらいは不安から解放されたい。 マスタングは何か言おうとしたが、寸前で止めた。いらないストレスを掛けることもない。 そして、佐天がエントランスから安全な個室に移動しようとしたとき。 「……誰か、いないか!?」 発電所の入り口から飛び込んできたのは、佐天とさほど身長の変わらない少年だった。 金髪を三つ編みにし、赤いコートを着て……その赤いコートがところどころ引き裂かれ、血に塗れた表情は痛みに引き攣っていた。 彼は発電所内に入ってきた途端、崩れ落ちた。赤いコードの下から血溜まりが広がっていく。 遠目に見ても、何か大怪我をしているのだろうとわかる。 「鋼の!?」 マスタングが駆け寄ろうとし……寸前、急停止。佐天も思い出していた。 詳細名簿で見た顔だ。たしか、エドワード・エルリック。「焔の錬金術師」ロイ・マスタングの盟友である、「鋼の錬金術師」だ。 「ひ、ひどい怪我……! すぐ手当てしないと!」 「待て、ルイコ!」 駆け出そうとした佐天の肩を、マスタングが掴んだ。指先が肩に食い込む。 「痛っ……ロイさん!?」 「迂闊に近づくな。あれが本物の鋼のである証拠はどこにもない」 振り返った佐天が見たのは、鋭く眼を細めたマスタングの表情。 「私がかつて戦った敵の中には、エンヴィーというホムンクルスがいた。そいつは姿を自在に変えられるホムンクルスだ。 仲間や家族に姿を変えて敵を騙す、そのやり口に私は何度も辛酸を嘗めさせられた」 「じゃあ、あの人がそのエンヴィーだって言うんですか!?」 「否定はできない。少なくともこの名簿には、奴の名前があるのだから」 マスタングが自身の名簿を指して言う。確かに名簿にはエンヴィーという名がある。佐天の詳細名簿にも載っている。 しかし、エドワード・エルリックという名もまた、名簿には書かれているのだ。 「本物のエドワード君だったらどうするんですか! あのままだったら死んじゃいますよ!?」 「わかっている。だがまずが奴がエンヴィーでないかどうか確認してからだ」 「どうやって確認するんです?」 金髪の少年は俯せになり、痙攣している。とても遠くからの呼びかけに応えられるようには見えない。 マスタングは佐天を待たせ、ゆっくりと近づいていく。 「……鋼の、それともエンヴィーか?」 マスタングの問い。少年が緩慢に頭を動かす。 「大佐……か。何だ、あんたもいたのか……。って、それどころじゃねえ……早く逃げろ、あいつが……」 「答えろ。貴様は鋼のか、それともエンヴィーか」 「はっ……何言ってんだよ、大佐。エンヴィーは死んだろ……俺達の目の前で」 息も絶え絶えのエドワードらしき少年。血は留まることを知らず流れ出し続けている。 ホムンクルスならば怪我の内に入らないが、人間であるならばそろそろ危険だ。一刻も早く止血をしなければ命に関わる。 それでいて、マスタングはまだ決断できない。 「貴様が、自分が鋼のであると証明できるなら助けてやる」 「何だよそれ……どうやって証明しろってんだ……」 「錬金術をしてみろ。それですぐにわかる」 仮エドワードは出血のあまり眼が淀んでいる。マスタングの要求を実行するには厳しい状態だろう。 これで錬金術を成功させたのなら本物……ではない。錬金術を実行しようとした時点で、偽者だと確定する。 なぜならエドワード・エルリックはもう、錬金術を使えない。真理から弟を取り戻したとき、彼は自らの錬金術を放棄したのだから。 それを知ってか知らずか、仮エドワードは、のろのろと身体を持ち上げ、口を開こうとし……自らの血溜まりに沈んだ。意識が途切れたようだ。 その様子を、マスタングはじっと見つめている。 「ロイさん! 本当に死んじゃいますよ!?」 「…………」 「ロイさん!」 動かないマスタングにしびれを切らし、佐天が走る。 仮エドワードを仰向けにする。その腹部には、大きな刺し傷があった。 そういえば、こいつは最初呼びかけたとき「あいつが……」と言っていた。 仮エドワードをここまで傷つけた相手が存在し、その危険を伝えようとしていたのなら。 「本物の、鋼の……なのか?」 「ガハッ!」 仰向けにしたことで気管に血液が逆流したのか、仮エドワードの身体が大きく跳ねた。大きく痙攣し始める。 人間であるならば、これは間違いなく…… こいつが本物のエドワード・エルリックだとするなら…… 放っておけば、遠からず死ぬ。それはもう、避けられない事態だった。 マスタングは一度固く目を閉じる。流れ出た汗が額を滑り落ちる前に、彼は決断した。 「……ルイコ、鋼のの肩を抑えてくれ! 錬金術で治療を試みる!」 「ロイさん……はい!」 わかっていることは二つある。 エドワード・エルリックは生きている。エンヴィーは死んだ。 この誰が書いたとも知れない名簿を信じるか、それとも目の前の死にかけているエドワードらしき人物を信じるか。 マスタングは後者を取った。 もう二度と、大切な者を目の前で取りこぼさないために。 「賢者の石もない、専門でもないが、止血くらいは……!」 暴れるエドワードの身体を佐天に抑えさせ、マスタングは両手を打ち合わせる。 治療の錬成陣をイメージ。そのまま両手をエドワードの腹部へと叩きつけ…… 「まーた騙された。ダメだねえ大佐ァ、学習しないとさァ!」 投げ出されていたエドワードの左足。 機械鎧であるはずのその足が、クレーンのような重さを伴ってマスタングの胴体へ打ち付けられた。 「ガッ……!」 「ロイさん!?」 「おーっと、動かないでよお嬢さん。あんたは大切な命綱なんだからさァ!」 吹き飛ばされたマスタングが何とか顔を上げると、そこには佐天を羽交い締めにしたエンヴィーが……「嫉妬のホムンクルス」エンヴィーが、いた。 やはりあのエドワード・エルリックは、偽者だったのだ。 「エンヴィー……!」 「おお、怖い怖い。でも大佐、ご自慢の炎は使えないよ~?」 エンヴィーはピッタリと佐天に寄り添っている。 これでは炎を放てば確実に佐天も焼き殺してしまう。 「あの時はしてやられたからねえ。あんたと戦うなら、でかい図体よりこのボディのほうが都合がいい。 こうやって、人間の盾に隠れられるからねェ! あっはっはっは!」 エンヴィーはあの最後の戦いを教訓とし、対抗策を用意していた。 マスタングが守ろうとする人間を盾にする。 いかに精密に狙いが付けられる焔の錬金術とは言え、原理は空気中のチリや埃を伝うものだ。障害を自由に迂回して着火させることはできない。 こうして目標と護衛対象がピッタリくっつかれてしまえば、どちらかだけを灼くことは絶対に不可能なのだ。 「……ぁ、……!」 「暴れないでよお嬢さん。少なくとも今はあんたを殺すつもりはないよ」 エンヴィーに首を絞め上げられ、佐天はバタバタともがく。が、エンヴィーはびくともしない。 見た目こそ佐天とさほど身長が違わないとはいえ、その本性は巨大なキメラだ。質量が違いすぎるため、腕力では到底敵うはずもない。 エンヴィーは佐天のデイバッグをゴソゴソと漁る。 「お、いいもの持ってるじゃん」 取り出されたのは拳銃だった。 エンヴィーは佐天と違って拳銃の心得がある……ヒューズが殺害された時のことを思い出す。 「貴様ッ……!」 「ほんじゃまあ、あのとき散々灼いてくれちゃったお返しをさせてもらっちゃおうかなあ!」 バン、バン。続く二つの銃声。 放たれた弾丸は、マスタングの両足をそれぞれ通り抜けていった。 立っていられず、顔面から地面に叩きつけられる。 「ぐっ……」 「安心してよ、大佐。あんたは殺さない」 「私が、人柱……だからか?」 「いや、違う。なんつーのかなぁ……もうお父様の計画はどうでもいいんだ」 「な、に……?」 ごく軽く、自然な様子で放たれたエンヴィーの言葉にマスタングは耳を疑った。 「覚えてるよ、あんたに焼かれた時のこと。そんであのおチビさんに見透かされて、理解されて……このエンヴィーは死んだはずだった。 でもこうして、まだ生きている。これってどういうことだと思う?」 「私が、知るものか」 「だよね。それはこのエンヴィーが自分で確かめなきゃいけないことだからさ。 だから、このバトルロワイアルってイベントに乗る。そしてあんたたち人間と戦う。 もうお父様のことを気にしたりはしない。好き勝手にやらせてもらうよ」 「だがここには、貴様の仲間である他のホムンクルスもいるのだぞ」 「あー、ラースとプライドね。あいつらはまあ……あんま興味はないかな。会ったら手伝ってやってもいいけどさ。 そういやさっきのおチビさんの演技、あれこの剣を使ったんだ。ラースにやれば喜ぶかな」 自分の支給品らしい黒い剣を自慢気に見せびらかすエンヴィーは、どこか晴れ晴れとした様子だった。 一度経験した死が、エドワードによって理解されたことが、何をもたらしたというのか。 「最初はあんたらと手を組むってことも考えたんだけどさ、やっぱないわ。 だってさ、あんたらと仲良しこよしでいるより、バチバチやりあうほうが絶対に楽しいからね!」 「エンヴィー、貴様!」 「だからさ、大佐。あんたは殺さない。 追ってくるといいよ。その傷も錬金術なら治せるだろ? 特に今のあんたは真理を見たようだし。 早くしないとあんたの居場所、なくなっちゃうよ? 何せロイ・マスタングと同じ顔をした男が、人を殺して回ってるんだからさぁ!」 その言うところは明白だった。 エンヴィーはロイ・マスタングに成りすまし、このバトルロワイアルで人を殺すというのだ。 「ふざけるな、エンヴィー! 貴様は私が止める!」 「甘くなったねえ、大佐。止める、じゃなくて殺す、でしょ? 覚悟持たないとまた失くしちゃうよ? ヒューズ中佐のときみたいに……こんなふうにさ!」 エンヴィーが佐天を拘束していた腕を解く。 解放された佐天が膝をつき、酸素を求めて荒い呼吸を繰り返す。 エンヴィーはその背中に、佐天が落とした剣……マスタングが錬成した鉄パイプの剣を、心臓めがけて突き刺した。 「ぁ……」 「ルイコォォォォォォォ!」 「あっひゃっひゃっひゃっひゃ! さっき殺さないって言ったけどさぁ、ごめんあれ嘘だった! 「貴様ァァァァァァァァ――――!」 「それそれ、その顔が見たかったんだよ大佐ぁ! あんたの甘さがこの娘を殺したのさぁ!」 這いつくばったまま、あらん限りの力を振り絞って両手を叩き合わせ、指を弾く。 夜に生まれた太陽、そうとしか形容できないほどの業火が、エンヴィーへ向かって奔る。 しかし、ろくに狙いも着けられない状態で放った炎は、エンヴィーには届かない。 バック転を繰り返し回避したエンヴィーが、発電所の出口へと後退していく。 「じゃあね、大佐。急ぎなよ? あんまりボケてると鋼のおチビさんも殺しちゃうよ?」 「エンヴィィィィィィィィィィィィ!」 嫉妬が去って、残されたのは炎の燃えカスと、涙のように儚く散った一人の少女の遺体だけだった。 【佐天涙子@とある科学の超電磁砲 死亡】 【B-8 発電所 /1日目/深夜】 【ロイ・マスタング@鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST】 [状態]:両足に銃槍、出血中 [装備]:魚の燻製@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース [道具]:ディパック、基本支給品 [思考] 基本:この下らんゲームを破壊し、生還する。 1:エンヴィーを殺す。絶対に殺す。この手で殺す。 2:エドワードと佐天の知り合いを探す。 3:ホムンクルスを警戒。 4:火種となるものを探す。 5:ゲームに乗っていない人間を探す。 [備考] *参戦時期はアニメ終了後。 *学園都市や超能力についての知識を得ました。 *佐天のいた世界が自分のいた世界と別ではないかと疑っています。 【エンヴィー@鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST】 [状態]:切り傷多数(回復中) [装備]:ニューナンブ@PERSONA4 the Animation、ダークリパルサー@ソードアート・オンライン [道具]:ディパック、基本支給品×2、詳細名簿 [思考] 基本:好き勝手に楽しむ。 1:マスタングの姿になって、彼の悪評を広める。 2:エドワードには……? 3:ラース、プライドと戦うつもりはない、ラースに会ったらダークリパルサーを渡してやってもいい。 [備考] *参戦時期は死亡後。 時系列順で読む Back I see the fire ignite Next 黒色の殺意 投下順で読む Back I see the fire ignite Next 黒色の殺意 GAME START エンヴィー 027 偽りの悪評 008 無能力者 佐天涙子 GAME OVER 008 無能力者 ロイ・マスタング 041 悲しみの息の根を止めて
https://w.atwiki.jp/mohsoh/pages/587.html
強化妄想/新技/攻撃技/あく 書き込む際の注意 技の名前は8文字以内でお願いします。 出来る限り作った意図も記述してください ―新技テンプレ― タイプ/系統(※1)/威力/命中(※2)/PP/対象(※3)/優先度 効果 ※1:物理・特殊・変化のどれか。 ※2:補助技などの場合は成功率を意味する。 ※3:技の効果を受ける範囲。単体・全体・自分・相手2体・味方2体・天候など。 例:かみつく あく/物理/60/100/25/単体/±0 3割の確率で怯ませる。 強化妄想/新技/攻撃技/あく書き込む際の注意 あいのムチ あくしゅ イービルアイズ いちかばちか いちかばちか別版 うでひしぎ うらみばくはつ おとしあな おとしまえ きゅうそねこがみ クレイジービーム げこくじょう けりとばす コミットパワー しのびのひおうぎ ショウダウン ストンピング ダークアイ ダークマインド ダークラッシュ たたきのめす ついげき でばなくじき デビルアクセル デビルこうせん デーモンコア なめてかかる ねくびをかく はがいじめ バックアタック ハッタリ はんぎゃく ひっさつのキバ まちぶせ やみのかいほう ゆだんさせる 議論所 あいのムチ あく/物理/55/100/15/単体/±0 相手が異性の時、5割の確率でメロメロ状態にする。すでにメロメロ状態の相手には威力が2倍になる。 テクニシャンの補正をきっちり受けます ↑なんで愛の鞭が悪タイプなんだww ↑フェアリーのが似合う気もする。特にラブトロス あくしゅ あく/物理/130/90/10/単体/±0 悪意のこもった手で強烈な一撃を繰り出す技。 デメリットとして、エスパータイプとゴーストタイプに技を当ててしまうと握手のエフェクトが出て技が無効になり 以後、握手をした相手ポケモンに効果抜群となる技が放てなくなる。 つまり、この技はタイプ一致のノーマル技みたいなものである。 手を使える悪タイプポケモンのほとんどが覚えられる高火力一致技。 イービルアイズ あく/特殊/120/70/5/単体/±0 悪魔がごとき鋭い眼光による強烈な精神攻撃。3割で麻痺を付与する。 使えるのはアブソル、ヘルガー、ドンカラス、グラエナ、ダーテング、ヤミラミ、ノクタス、ブラッキー、レントラー等 ↑他にも特性が「するどいめ」のポケモンにも覚えさせるのはどうだろう。 ピジョットやヨルノズクにペラップ、オニドリルやオオタチともなると種族値的に難かもしれない いちかばちか あく/物理/―/100/10/相手1体/-3 技の威力は自分のHP下一桁×20。0の場合は技が失敗する。 アズマオウ、グラエナ、シザリガー、ノクタス、パッチールなどが覚える。 ↑先制技がない限り、スカーフ巻いた最大HP下一桁9調整のサメハダーなんかが 威力180(タイプ一致で270)をばら撒きまくるんですね、分かります。 ……優先度をマイナスにすれば問題ないのかな? ↑少し修正。 ↑この技を使うとき、最適な最大HPは169だと思う。 砂嵐、食べ残し等で1の位が変化せず、 毒等の8分の1ダメージでも1の位が1ずつしか減らず安定性がある。 不意打ちとの2択を迫ってうまく決めていきたいな。 ↑↑↑↑ところで、誰の救済なんだ?誰も求めてない気がするんだが…。 期待値90で後攻技か… 正直救済技に不安定なギャンブル技を発案するのはどうかと思う ↑もう少し威力をおとなしくして優先度0にしたらどうだろう。 いちかばちか別版 あく/たぶん物理/50/50/10/単体/±0 当たった場合、必ず急所に当たる みてのとおり、上にあるいちかばちかとは効果が違うので分離した ただ、救済対象がイメージがピンとこないグラエナやすでに後攻しっぺがあるヤミラミぐらい そしてカイリキーが覚えたりすると恐ろしいことになる ↑ちょっと弱すぎじゃないか?積み無視できるとはいえ爆裂パンチ煉獄と同じ威力命中で追加効果なしはおかしい 爆裂パンチだの煉獄だのは追加効果があって技として成立するわけで ↑↑必ず急所の技も出たことだし、もっと強くしても良いんじゃない?他の10割追加効果系と合わせて威力100にするとか うでひしぎ あく/物理/75/95/10/単体/±0 50%の確率で相手の攻撃か特攻(高い方。同じならランダムで片方)を一段階下げる。 格闘ポケがサブウェポンとして持ってることが多いが タイプ一致ならグラエナやマニューラが習得する。 元ネタはいぬまるだしっ第一巻から うらみばくはつ あく/物理/???/100/5/単体/±0 自分の最大HP-HP(つまり、喰らったぶん)-レベルの数×1.5が威力。 つまり HP350のレベル100のポケモンが 残りHP100の時の威力、 250(喰らった)-150(レベル)=100 HP種族値が101以上のポケモンは使うとやばいので覚えない。 ただものまねすると・・・ ↑「うっぷんばらし」の方が良くないか? ↑↑もっと単純に「うさばらし」とかでいい気が。 おとしあな あく/物理/60/95/10/単体/-6 悪版ダメージ有りの吹き飛ばし。ダメージを与えた相手をランダムに交代させる。飛行や浮遊には当たらない。 落とし穴で止めを指した場合もランダムに交代。そして、特性きゅうばんや技ねをはるで無効化されない。 悪タイプ全般とゴーストが少し、その他悪戯好きそうな奴ら全般が習得する。 具体的には恨みヨノワや恨みマニュなどの救済。苦手な奴を逃がして相手のプレイを滅茶苦茶に出来る。 ↑落とし穴は地面タイプだろ、という主観的な意見もあるがそもそも強ポケの変態型を強化する必要ない。ヨノワは割と普通の型だから尚更。 あと落とし穴にはまってどうして交代するのか分からん。むしろ束縛技じゃないのか? ↑↑威力60に上げて、PPも10に下げた。 エルフーンやボルトロスも覚えそうだな。 じめんのページに同名の技がある件 おとしまえ あく/物理/60+/100/5/単体/±0 自分のパーティ内で瀕死になったポケモンが多いほど威力が上がる。 具体的な威力計算は、 60×瀕死ポケモン/パーティ全体のポケモンの数+60。 例・パーティ5匹で倒れたポケモン3匹なら 60×3/5+60=96 一応、悪タイプの威力改善目的。 悪タイプのした理由?ゲームとかの敵キャラってよく仇討ちしようとするじゃん( ↑どちらかというとふくろだたきの逆バージョンみたいでいい気がする 「倒れた仲間の数だけ相手を攻撃する」みたいな。 威力もふくろだたきと同じ計算方式で。 ↑「おとしまえ」というのはどうだろうか。 ↑変えてみた。キリキザン辺りが覚えそうだな ↑まさかこれの特性版みたいなのをキザンの追加進化が持ってくるとは、誰も思わなかっただろうな きゅうそねこがみ あく/物理/ー/90/5/単体/-3 あくタイプの一撃必殺技。ラッタ、ライチュウなどのネズミポケモンの技で、HPが3分の1を切ったときに初めて技が成功する。タスキからの無双を避けて後攻技となっており、苦労して発動しても10%の確率で外れる。できて一体道連れ。あくタイプの理由はかみつくがあくタイプだったから。 クレイジービーム あく/特殊/65/100/10/単体/-1 自分がこんらん状態の時にだけ出せる技。 「〇〇はこんらんしている!」という表記が出ても、わけもわからず自分を攻撃する事はせず、必ず相手に命中するビームを放つ。 10%の確率で相手をこんらん状態にする。 げこくじょう あく/物理/-/15/5/相手2体/+5 つのドリル等と同様一撃技。 優先度+5あるが他の一撃技より命中率が半分。 また、命中すると特性がんじょうやきあいのタスキ、身代わりのや相手のなつき度を影響受けずに必ず瀕死状態にする。 他の一撃技と同じく相手の方がレベル高いと失敗し、低いとその文の命中率が上がる。 けりとばす あく/物理/特殊/100/20/単体/±0 「足を大きく振って下から蹴り上げる。体重が軽いほど威力が上がる」。 けたぐりの逆バージョン。イメージはヤクザキック。悪タイプ全般のほか、ギャロップやゼブライカ、ドードリオやサワムラーなど脚力に自信がある連中全般が習得。 主にこれで軽量級なエスパー&ゴーストをつぶしてください……と思って体重表見たら、結構最終進化するとあいつらも重くなるのね。 単純に威力をけたぐりの逆にしただけだと、「かみくだく」以下の威力しか出せない奴が意外と多い……どうすべか。 コミットパワー あく/特殊/10/100/15/単体/±0 上のいちかばちかの改良版。HPの下一桁の数字で威力が変わる。 下一桁が0の場合は威力の加算はなし、1~9までは数字が1上がる毎に威力が+10される。 最高威力は100。7以上の数字を維持できれば、悪特殊技として最高のダメージ源になる しのびのひおうぎ あく/物理/90/100/10/単体/±0 ゲッコウガがスマブラforで使う最後の切り札。勿論ゲッコウガ専用(ケロマツもタマゴ遺伝で覚える。進化による継続なら勿論ゲコガシラも覚えられる)。 あく版フリーフォール。ただしこちらは上空に連れ去らうあちらと違い、1ターン目で相手を上空に打ち上げ、2ターン目に自分が飛び上がって攻撃すると言う技。 つまり、自分の立ち場はそのままなので、普通に攻撃を受ける。また、ひこうタイプを持つポケモンや200kg以上のポケモンにも通用する。 ショウダウン あく/ぶつり/100/-/10/単体/±0 2ターンためた後、3ターン目ですさまじい連撃を浴びせる5回攻撃技。 物理なのに非接触技。 100×5HITなため、実質威力500。 更に1発辺りに急所に当たりやすい効果も付属しているため、運が悪いと高火力なのも合わさり無理矢理押し切られる。 命中も必中、守る無効、身代わりも連続攻撃なため、回避方法はあんまりない。 しかしながらパワフルハーブで3ターンタメが2ターンタメになる仕様は無いので、 発動される前に叩き潰すと良いだろう。 低耐久悪タイプに覚えさせてもそこまで脅威にはならないとは思うが、 悪タイプ+マジックミラー、もらいび、じゅうなん、マイペースとかの悪が覚えたら 結構とめられないんじゃね? メガアブソルとかメガヤミラミが始まるかも知れない技。 それ以外は主に面倒なまもみが耐久や受けループ、悠長な積み耐久をぶっ飛ばす技。 ストンピング あく/物理/15/100/10/単体/±0 連続で相手を踏みつける恐るべき攻撃。2~5回の連続攻撃。 この攻撃で相手のHPゲージを半分以下にする、または半分以下の相手に浴びせた場合、 相手に恐怖を植え付け特性を「よわき」に書き換える性質がある。 スキン特性を無効化して、火力を低下させたり、 メガガルーラに浴びせて親子愛の剥奪、その他単純に火力をダウンさせたいときなど色々使える。 書き換え判定は、連続攻撃がひと通り終了した後に行われる。 控えに戻られると特性は元に戻るため、よわきを嫌っての交代においうちを合わせる、 普通に居座ってくることを読んでのふいつちなど択ゲーが熱い 数多くのあくタイプが覚える他、ドクロッグとか悪っぽいポケモンもひと通り覚える。 後は恵まれない格闘タイプとかにも与えて欲しい。 尚、あくタイプが使った時のみ3~5回の連続攻撃になる仕様があるため、結構安定した火力で 特性書き換えを狙える。 個人的には特性に甘えた連中を暴力と恐怖でわからせるためにメガヘラクロスにも習得してもらいたい。 ダークアイ あく/特殊/70/100/15/相手単体/±0 この技を受けた相手は3ターンの間、技を使っても追加効果が発動しない。隠し効果として相手の特性ちからずくを無効化する。 塩漬けや聖炎など、追加効果が強い技をついでに弱体化させられる。 ただしこの効果自体も追加効果である点には注意。 特殊寄りの悪タイプや、ヨノワール、シンボラー、ギルガルドなどが覚える。 ダークマインド あく/特殊/90/100/10/全体/±0 悪タイプの全体攻撃(味方を含む)技。デルビル系やヤミカラス系などが覚える。 あくのはどうよりも威力が高いが、こちらにはひるませる追加効果は無い。 ブルー系のびびりを役立ちやすくするための技でもある(ノコッチでも出来るかも知れないが、悪タイプの技であり、半減以下にはできない)。 ダークラッシュ あく/物理/90/100/10/単体/±0 通常攻撃。悪タイプの技では珍しく何の追加効果などもないが、イカサマ以外での威力90の物理技。 技マシン化。悪タイプ以外にも覚えられるポケモンは多く存在する。 元ネタは「ポケモンコロシアム」のダークポケモンの技(ただし効果は「ポケモンXD」のダーク技の一つのもの)。 そのため、「ポケモンコロシアム」でそれを使えたダークポケモンとして登場していたポケモンや、 「ポケモンXD」でダークポケモンとして登場していたポケモン(進化前も含む)は全て覚えられる。 ただし、カントー、ジョウト、ホウエン以外にも覚えられる非悪タイプはいくつか存在する(決してエテボースなどだけではない)。 たたきのめす あく/物理/75/必中/10/全体/±0 相手を徹底的に叩きのめす攻撃。 相手の防御、特防、回避ランクの上昇分攻撃回数が増える。 「かげぶんしん」1積み相手に撃てば75×2回攻撃。 「コスモパワー」1積み相手には75×3回攻撃。 「めいそう」1積み相手には75×2回攻撃。 「りゅうのまい」1積み相手には75×1回攻撃。 「かたくなる」6積み相手には75×7回攻撃。 ようは「上昇ランク+1」で攻撃回数が決まる。 また「ちいさくなる」を使った相手に対しては威力が2倍になる。単発威力が150に。 ゾロアークとかノクタスとかアブソルとか一線どころじゃない悪が覚える。 てか悪ポケ以外にもたくさん覚えてもらいたい。 ついげき あく/物理/40/必中/10/単体/±0 この技は既に相手が味方の攻撃でダメージを受けている場合、素早さに関係なく味方の攻撃の後に割り込んで攻撃できる。 でばなくじき あく/ぶつり/65/100/5/相手1体/+3 素早い攻撃で相手の出鼻をくじく攻撃。 100%相手を怯ませる効果を持つ。 発動できるタイミングが"相手が自分に対して効果が抜群な技を使っている時のみ"なので、 交代や変化技や、等倍で入る技、いま一つで入る技にはうまくきまらなかったとなり無防備で許すことになる。 ふいうちを覚えるポケモンとかは基本的に覚え、加えて危険予知を持つポケモンも皆覚える。 弱点の多くて素早さの低いポケモンや危険予知の救済。 デビルアクセル あく/物理/15/100/5/単体/±0 素早い動きで体当たりをする。 追加効果で必ずこうげきとすばやさがそれぞれ2段階ずつ上がり、ぼうぎょととくぼうがそれぞれ1段階ずつ下がる。 グラエナ、サメハダー、ヤミラミ、シザリガー、アブソル、ミカルゲ、レパルダス等が覚える。 デビルこうせん あく/特殊/70/100/10/単体/±0 悪魔の力を熱に変え、ビームとして発射する。 くさ・むし・こおりタイプにも効果が抜群になる。 デーモンコア あく/物理/----/30/5/単体/±0 爆発を起こして攻撃する。 相手を『ひんし』状態にする。相手のレベルが自分より高いと失敗する。(30+自分のレベル-相手のレベル)が命中率になる。 ノクタス、シザリガー、アブソル、ミカルゲ、デスカーンが覚える。 ↑バンギ・サザンは救済不要。 ↑↑アブソルが覚えるなら、グラエナ、ゾロアークも 絶対零度を見れば分かる通り、タイプによる無効が効かない一撃必殺系は非常に危険 しかもこの技一撃必殺扱いじゃないから頑丈も効かないし なめてかかる あく/物理/105/100/5/単体/±0 まずはダメージ計算。 その上で「与ダメ≧敵の残HP」だった場合はそのままダメージ処理。 そうでない場合、あるいはまもるなどで防がれてしまった場合はダメージを与えられず、逆に使用者がペナルティとして最大HPの半値のダメージを受ける。 タスキなど残りHP1で耐える効果はこの成功条件を邪魔しない。 ちなみに特性すてみで威力が上がる。 ねくびをかく あく/物理/100/-/5/単体/-1 相手の寝首をかいて攻撃する、急所にあたりやすい。 相手が起きていると技は不発に終わる、この技が命中すると相手は目覚める。 優先度が-1なのはこっちの攻撃を先に処理すると起きた後の攻撃を受けてしまうため。 威力が高いが実際は交換で外れることもあり、多少の読みも必要な為バランスは悪くないはず。 ただ決まった場合はあくタイプが使えば威力150で急所と強力。 特性スナイパーのドラピオンが使えばすさまじいことになる。 はがいじめ あく/物理/15/100/30/単体/±0 追加効果として、攻撃対象が次に行動するまで相手の回避率と素早さを最低ランクにする。 ダブルにおいて重力よりも低リスクで命中率を上げる手段。ダメージありなのでタスキ潰しを兼ねる。 相方の腹パン(ばくれつパンチ)にでも繋いでみるか?まさに外道!シングルでも後攻で出せば活用できないこともない。 ダーテング・ノクタス・ハブネークなど、悪そうなポケモンが習得。 ↑こころのめを強化したような技か? ↑↑威力無しで優先度の高いダブル専用技っぽいような。羽交い締めだけで攻撃できるようにはあんまり思えないし バックアタック あく/物理/120/100/10/単体/±0 技を出す前に相手から攻撃を受けていると威力半減 リベンジの逆 ハッタリ あく/特殊/95/100/10/単体/±0 イカサマの特殊版。相手の特攻を参照して攻撃する。 アブソル、グラエナなど叩き落とすが貰えない 4足悪ポケモンの特色要素として。 はんぎゃく あく/物理/----/20/単体/±0 自分のレベル×(60/自分の攻撃種族値)×(相手の合計種族値/自分の合計種族値)の固定ダメージを与える。 もちろん種族値が低いポケモンのみ使える。 ただし自分の攻撃種族値が30以下のときは相手が強すぎたということで自分の最大HPの1/2を自分が喰らう。 そうでないと、ものまねでハピやらツボツボが鬼のようになるので。 ↑種族値を技威力化するという点 趣旨がいい。攻撃種族値依存ではなく全体にわたって合計種族値依存にすれば救済技としては最高峰だと思う。 (相手の合計種族値-自分の合計種族値)÷2 が技威力とか。 ひっさつのキバ あく/ぶつり/40/95/10/単体/±0 さっきを こめた キバで かみつく。かならず きゅうしょに あたる。 まちぶせ あく/物理/60/100/10/単体/―4 相手を待ち伏せして攻撃する。 素早さに関係なく後攻になり、相手がそのターン交代した場合 交代先のポケモンに対して威力が2倍になる。 「おいうち」や「はたきおとす」との差別点は、交代先にも負担がかけられる火力が出ること。 覚えられるポケモンは、結構いそうだが技の性質上 紙耐久のポケモンが使う場合はある程度読みが必要かな? やみのかいほう あく/特殊/120/100/15/単体/±0 ヘルガーなど特殊悪アタッカーが習得。 2~3ターン続けて攻撃する。 その後は疲れ果てて混乱状態になる。 はなびらのまいの悪版 ゆだんさせる あく/物理/50/100/10/単体/±0 自分の体力が半分になると2倍になる マニューラ、グラエナ、ダーテング、サメハダー、ヤミラミが覚える 議論所 ショウダウン 2ターン溜める必要はあるとは言え、100×5回攻撃はやりすぎ。たたきのめすのように発動条件が相手のランク補正依るなど 相手によって変えるべき。いくら強化妄想の項目であると言ってもダメ。 そもそもメガヤミラミは対受けループにしても挑発でいいし受けループ側が使う場合が多い、メガアブゾルはれいとうビームを仕込む等でこの技を使わなくてもいい。
https://w.atwiki.jp/dholyland/pages/54.html
桂珪連 名前:桂珪連 性別:女 流派:喧嘩スタイル+恐山流対霊格闘術 武器:拳、凶器、ときどき奴霊 攻撃:12 防御:0 体力:3 精神:3 反応:7 FS(理不尽):5 必殺技:『おい、ちょっとそいつ押さえてろ』 精神消費:1 必殺技効果:先手を取れた場合のみ、相手を1ラウンド行動不能+弱攻撃 必殺技原理: 引き連れている奴霊達をけしかけて相手を羽交い絞めにし、 無抵抗になったところを凶器やら何やらでひたすらボコる。奴霊ごとボコる。 特殊能力:『反転霊体』(80%) 特殊能力効果:霊体の攻撃に限り全無効。霊体に勝負を仕掛ける事ができない。永続。 特殊能力原理: 幽霊と人間の関係を逆転させる、生まれつきの能力体質。 一方的に殴ったり蹴り飛ばしたりできるし、幽霊から姿が見えないようにもできる。 つまり幽霊に対してのみ、幽霊をさらに超える理不尽さで振舞う事ができる能力。 幽霊に対してはとにかく無敵だが、基本的に幽霊は珪連を見ると本気でビビって逃げ出すので、 逆にこちらから幽霊に襲い掛かる事が難しい。人間に対しては特に意味はない。 キャラ説: 桂一門末弟、珪人の長女。常に黒スーツに身を包む、狂犬のような少女。 内から湧き上がる怒りを全て暴力として発散させなければ気が済まず、 その気になれば凶器攻撃や奴霊を使ったリンチですら平気で実行するダーティーファイターである。 一門の他の人間とは異なり、霊能力も暴力以外の対霊技術も一切持たない変り種だが、 生まれつき霊体に対して無敵なので、霊はぶん殴って強引に従わせている。 同じ桂一門の亡霊が石松町で暴れていると聞き、「しょうがねーなー」と駆除に訪れた。
https://w.atwiki.jp/dai_zero/pages/152.html
24 虚無と婚約者 前ページ次ページ虚無と獣王 裏門から、静かにとは言い難い様子で旅立っていく一行を見つめる者たちがいた。 学院長室の壁にかけられた『遠見の鏡』に映し出されたルイズたちを見ているのは、この部屋の主であるオールド・オスマンとアンリエッタ姫である。 直接見送りに行きたいというアンリエッタを説き伏せる形でこの部屋に招待したオスマンだが、その判断はある意味大正解だった。 「姫、何故ミス・ヴァリエールたちにグリフォン隊の隊長が同行しているのか、ちとこの哀れな老人にも説明しては下さらんかの」 こんな質問、見送りの現場では到底出来ない。 「幾ら怪盗を捕えるほどの実力を持っているとはいえ、今回の任務は決して楽なものではありません。ですから、腕の立つ者を1人でも護衛につければと思ったのですが……」 マザリーニも目にかけているようですし、腹心と言うなら今回の任務内容を教えても、というアンリエッタの回答にオスマンは内心頭を抱えたが表情には出さず鼻毛を抜いて誤魔化した。 ジャン・ジャック・ワルドの事はオールド・オスマンも知らない訳ではない。 というか10年ほど前にはこの学院の生徒だったのだ。 オスマンは基本的に男子生徒の名前とかは卒業したら忘れてしまうのだが、彼は成績優秀だったのと、いつもちょっとした馬鹿騒ぎの中心近くに巻き込まれていたのでよく覚えていたのである。 王宮嫌いのオスマンだったが、それでも彼が魔法衛士隊に入隊してからは危険な任務などにも積極的に従事していたという噂は耳に届いていた。 弱冠二十代にしてグリフォン隊の隊長に抜擢された時には、あのヴァリエールの長女にパイ投げ合戦でワルドバリアーとして使われていたとは思えんなあと感慨を深くしたものである。 だが、オスマンが知っているのはあくまで学生時代のワルドでしかない。10年という歳月は人を変えるには充分な時間だ。 そして今マザリーニが目にかけているという事は、自分の後継として育てようとしているのか、もしくは手元に置いておかないと危険だと考えているのか。 確かめようにも当の宰相は昨夜の打ち合わせの後、予定を変更して王宮に帰ってしまっていた。 只でさえ忙しいのに今回の件でヴァリエール公爵やグラモン元帥に色々と話をしなければならなくなったので仕方ないのだが。 (若いうちの苦労は買ってでもしろというが、程があるじゃろ) 自分の様な老人ならともかく、まだ若い教え子たちは出来れば平穏に過ごして欲しい。オスマンは教育者として、1人の人間としてそう思う。 フーケの追跡時はまだフォローが効いたが、今回はそう言う訳にもいかないのだ。 コルベールは信頼に足る人物ではあるが、流石にアルビオンまでフォローはさせられない。授業の事もあるし、彼自身の個人的な事情もある。 何にせよ早急にマザリーニに連絡を取ろうと、オスマンは心配そうな王女の相手をしながら考えていた。 突然ではあるが、ルイズは今、少々混乱している。 フライもレビテーションも使えないルイズは、当然同年代のメイジに比べ空を飛ぶ機会は少なかった。 しかし最近では同級生の使い魔である風竜に乗ったり、自分の使い魔が説得した翼竜に乗ったりしていた訳だが、今回彼女はグリフォンに乗っている。 すぐ後ろにはワルド子爵、つまりは親同士が決めた婚約者が手綱を握り笑顔でルイズに話しかけていた。 昨日、実に10年振りにその姿を見た、かつてカトレアと並び自分を支えてくれた憧れの王子様。 未熟な自分との婚約の話など消えていたと思っていたのに、彼は自分を淑女として扱ってくれている。 その時点でかなり照れくさいやら嬉しいやらだったのだが、更にルイズは大人の男性との接触は極端に少なかった。 パーティーなどにはそれなりに出ていたが、何分公爵家の一員でありながら魔法成功率ゼロという微妙な立場のせいか、もしくはそのすっきりボディのせいか余りダンスに誘われたりする事もなかったからだ。 実際には父親であるヴァリエール公爵が凄い勢いで睨みを利かせまくっていたのが一番の理由なのだが。 学院入学後は夜会に出る機会も無く、教師達も年配者が多いので大人の男性との接触は更に減る事となった。 これがキュルケなら場数を踏みまくっている事もあり会話を楽しめていたのだろうが、いかんせんルイズには経験値が圧倒的に足りない。 というわけで彼女は頭の中で(ど、どど、どどどとうしよぅなななにを話したらいいの!?)と絶賛混乱中なのである。 幸か不幸か、外からは頬を赤らめてしおらしくしている様にしか見えなかったが。 「それにしても、凄い使い魔を召喚したものだね、ルイズ」 「はひ!?」 裏返った声の返答に苦笑しながらも、ワルドはグリフォンの後ろを飛ぶ翼竜を見ていた。 「僕もいろんな使い魔を見てきたつもりだけど、あれ程立派なモノにはお目にかかった事はなくてね」 使い魔を褒められた事を嬉しく思うと同時に、ルイズは(やっぱりわたしはクロコダインにもワルド様にも釣り合っていない)と、自分の実力不足を痛感していた。 クロコダインとギーシュを背に乗せ、後ろ足でジャイアント・モールを掴みながらもその重さを感じさせる事なく悠々と飛ぶワイバーン。 その横にグリフォンをつけながらワルド子爵は少し物思いに耽る。 『閃光』のワルドは魔法衛士隊の見習い時代から率先して戦いの場に身を置いてきた。 地方貴族の小規模な叛乱からオーク鬼やコボルト鬼の討伐など、本来王の近衛としての性格を持つ衛士隊の任務からは外れる様な事までしてきたのは一重に己の力を高める為だ。 場数を踏み、火竜やメイジ殺しと呼ばれる傭兵とも杖を合わせ、全ての戦いに勝利を収めてきた彼をもってしても、婚約者の召喚した使い魔は規格外だと感じざるを得なかった。 正直なところ、今回の任務を聞いた時には何故マザリーニやオールド・オスマンは止めなかったのかと思ったものだが、こんな使い魔が同行するならば話は別だ。 ただのスケベジジイにしか見えない様でいて実は生徒思いのオスマンが戦地に教え子を送り出すのを認めたと言うのだから、その実力は押して知るべしといった所であろう。 強いというのは自分にもよく分かる。伊達に場数を踏んでいる訳ではない。目の前の敵の実力を看破するのは生き残る為の基礎技能だ。 問題は、クロコダインと名乗った使い魔が『どれだけ強いか』である。 人語を解し、武器を使いこなす、獣の体躯を持った戦士。 正面からやりあった場合、自分が負けるとは少しも思わないワルドであったが、無傷で勝てると思うほど自惚れてもいなかった。 (何にせよ情報が少なすぎる。どんな戦い振りなのか、1度拝んでみたいものだな) 一介のメイジとして腕試ししてみたい気持ちがない訳ではないが、任務中にそんな事で消耗するなど以ての外だ。 (まあいいさ) 進行方向を手振りでクロコダインに指示しながらワルドは思う。 (僕が相手をしなくても、世の中には『相手の実力も判らない間抜けな盗賊』や『悪漢に雇われた命知らずの傭兵たち』がいるだろうから、な) 指示を受けて飛ぶ方向を修正しながら、クロコダインはワルドから目を離そうとはしなかった。 「どうしたんだい?」 後ろから疑問符を飛ばすギーシュに何でもないと答え、逆に気になっていた事を聞いてみる。 「なあギーシュ、魔法衛士隊というのはやはり腕の良い者たちが多いのか?」 「そりゃあそうさ。何と言っても近衛部隊だからね、国中のメイジの中でこれはという腕利きが集う、いわばエリート中のエリートだよ」 なるほどな、と呟きながらクロコダインは昨日の事を思い出していた。 王女の護衛たちは1人の例外もなく、少しの隙すら見せずに周囲を警戒していたが、その中でも別格だと感じたのがワルド子爵だったのだ。 聞けばルイズの婚約者でもあるという。 そんな関係ならば、行幸時にルイズが王女から目を離してしまっていても不自然ではない。 風系統のメイジという事だが、その実力はかなり高いとクロコダインは踏んでいる。少なくともギトーなどよりは。 そんな優秀なメイジが任務に同行しルイズを守ってくれるのだから有り難い。 そうクロコダインは考えようとしていたのだが、その一方でどこか違和感を感じていたのもまた事実である。 ワルドは王女の依頼を受けたというが、宝物庫での話は他言無用とマザリーニは念を押していた。 口が固いとは言い難いギーシュも事の重大性を理解し、ギムリやレイナールといった仲間たちにも黙ったままでこの旅に参加しているのだ。 (彼が裏切り者とは思いたくないが、な) とは言え、かつてロモス国王の側近として妖魔学士ザムザが潜入していたという事をクロコダインはダイやポップたちから聞いていた。 結果的に倒せたもののかなり苦戦したというその戦いに参加してはいなかったが、ザムザの最期の言葉は彼の心に強い印象を残している。 勿論この事だけで積極的に疑う理由にはならないのだが、警戒しない訳にもいかない。 まさか当の王女が本当に依頼したとは思わず、クロコダインはどこか気が引ける思いをしながらもワルドに対する少しの疑心をひとり抱える事になった。 港町、ラ・ロシェールは峡谷に挟まれた小さな町である。 魔法学院からは早馬で2日はかかるのだが、空を飛んでいる事もあり、途中で休憩を何度か取りながらも夕刻には町が見える所まで来ることが出来た。 アルビオンへの玄関口としての性質を持っている為、常に3千人以上の人間が闊歩する活気のある町だ。 その入口を遠くに見ながら、ルイズたちは顔を突き合わせて相談事をしていた。 「このまま入る訳にはいかないわよ、ね」 ルイズの言葉に一同は頷く。 ワイバーンやグリフォンは当然として、クロコダインも町中には入れない。 なにしろ3メイルの巨体を持つ獣人である。目立ち過ぎて極秘任務どころの話ではない。 そしてワルドもこのままではラ・ロシェールに入る事は出来なかった。 何故なら王女から依頼を受けたのが余りにも急だったため、魔法衛士隊の制服のままでここまで来てしまっていたからである。 元々ゲルマニアへの訪問は短期間ですむ予定であり、ワルドら護衛の者たちは制服と夜の休憩時などに着る平服や下着しか持ち合わせていなかった。 王を守る魔法衛士隊はトリステインの貴族の中でも花形で、当然の事ながらその制服姿は国民にも広く知られている。 今までは空を飛んできたので問題なかったが、この格好でラ・ロシェールに入ったら何事かと思われるのがオチだ。 残りの面子で問題ないのはルイズとギーシュだが、この2人を先行させるのもいささか不安が残る。 ワルドもクロコダインも口には出さなかったが、上記の2人は共に貴族の子女で世慣れていない為、情報収集や宿の選択などが上手くいくとは思えなかったのだ。 「まあ僕はこの帽子と上着を脱げば何とかなるとして、だ」 ワルドは外套を外しながらクロコダインらの方を見る。 「オレたちは町中に入ってはいけないだろう。外で待っているが、出来れば何かあった時にすぐ駆け付けられる場所がいいな」 ラ・ロシェールにはアルビオンから流れてきた者も多くいる。当然その中にはレコン・キスタ側の人間もいるだろうし、普段からあまり治安の良い土地柄でも無い。 出来る限り危険は避けなければならなかったが、少ない戦力を更に分断するのは得策ではなかった。 「それなら崖の上がいいだろう。僕のグリフォンも連れてはいけないし、一緒に待機させて貰おうか」 2人は同時に切り立った岩の壁を見上げた。山間だけあって日が沈むのも早い。 「そろそろ町に行きませんか? 細かい事は後で打ち合わせるとして」 確かに使い魔との感覚共有を利用すればそれも不可能ではない。 実際のところ、ルイズとクロコダインは未だ感覚の共有は出来ていなかったのだが、この場合はヴェルダンデやグリフォンに中継してもらえばさしあたって問題はないだろう。 では、とルイズたちがそれぞれ行動し始めた時、ふいに風を切る音がした。 「伏せろッ」 クロコダインは即座にルイズたちの前に出てデルフリンガーを横薙ぎに振るう。 「やあっと出番かよ相棒!」 デルフリンガーの声と共に、両断された数本の矢が地面に落ちた。 同時にワルドが唱えた呪文が発動し、彼らの周囲に強力な風の結界が発生し更に撃ち込まれた矢を逸らす。 「な、なんだ!?」 既に夕陽は山の向こうに落ちようとしており、急速に暗くなっていく山道でギーシュが混乱した声を上げた。 いいから伏せなさいよ、と素直に言う事を聞いて地面にうつ伏せになっているルイズが注意する。 こちらの位置を特定する為か、上から松明が降ってきた。いずれも結界に弾かれるが火は消えず、ルイズたちの姿を照らし出す。 「ここへきて襲撃か……。どう思われる?」 「矢を使うという事は貴族ではないのだろうな。目的が解せないが、まあそれは彼ら自身の口から聞こう」 油断なくデルフリンガーを構えるクロコダインの問いに答えながら、ワルドは傍らのグリフォンに跨った。 「僕が敵の注意を惹きつけながら上に上がる。こちらで結界を張り続ける事は出来ないが、その間ルイズを守って欲しい」 「分かった。伏兵がいないとも限らんし、この道の狭さではワイバーンはいい標的だからな」 そう言ってグレイトアックスをさらに抜くクロコダインである。真空系呪文を応用して攻撃を防ぐのは彼の十八番だった。 そんな2人を心配そうに見つめるルイズに、ワルドは笑みを見せて言う。 「そんな顔をしなくとも大丈夫さ、僕のかわいいルイズ。これくらいの敵で怯んでいてはグリフォン隊など勤まらないからね」 更に、ようやく状況を理解してワルキューレを作り出すギーシュにも声を掛ける。 「君の働きにも期待しているよ、ミスタ・グラモン。兄上からはよく話を聞いているからね」 「僕の兄をご存知なのですか!?」 驚くギーシュにワルドはあっさりと言った。 「武門の誉れ高きグラモン家の次男坊は僕の同級生でね。さあ、詳しい話は後でするとしよう!」 時間が惜しいとばかりにグリフォンに飛び乗って崖の上を目指そうとするワルドであったが、ふいにその動きを止める事になる。 ルイズやクロコダインにとっては聞きなれた羽ばたきが聞こえたからだ。 「風竜だと?」 「シルフィード! でもどうして!?」 それは間違いなく同級生が召喚した使い魔の姿だった。 猛スピードで飛んできた蒼い竜は一端上空をフライパスすると、その背から崖に目掛けて炎の塊と小型の竜巻が襲い掛かる。 それを見たルイズは竜の背に誰が乗っているか一瞬で把握し、そして思った。 どうやったら学院まで追い帰せるかしら、と。 シルフィードが降りてきたのはそれから5分ほど後だった。 ご丁寧に襲撃者たちを『浮遊』の魔法で一緒に降下させている。彼らは地面に降りた瞬間、ギーシュのワルキューレによって捕縛された。 「ハァイ、お待たせー」 至って軽い口調でシルフィードの背から降りてきたのはキュルケである。その後ろには当然と言うべきか、タバサの姿もあった。 シルフィードはかなりのスピードで飛んできたらしく疲労困憊しており、そんな彼女をサラマンダーのフレイムが心配そうに覗き込んでいる。 ルイズは自分の予想通りの結果に頭を抱えそうになったが、なんとか気力を奮い立たせた。 「待ってないわよっていうか、なんであんたたちがここに来るのよ!」 「珍しく早起きなんてしたらどこかの誰かさんたちが裏門から出ていくのが見えちゃってね。何か面白そうだからタバサ誘って追いかけてみたのよ」 しれっと答えるキュルケの後ろでは、我関せずといった風情のタバサが本を読んでいる。 「ねえ、色々と突っ込みたいのを無視して聞くけど、何でキュルケは普通の服着てるのにタバサは寝間着なのよ!?」 「朝早かったし、急がないと追いつけないでしょ」 火に水をかけたら消えるでしょ、と言うのと全く同じ口調で答えるキュルケにルイズは戦慄を覚えた。ていうかホントに友達なのこの2人、と。 当のタバサは全然気にしていない様子なのだが、かえってこっちが気にしてしまう。 せっかく目立たないように町に入る相談をしていたのに、パジャマ姿のメガネっ娘が一行の中にいては色んな意味で台無しだ。 「一応言っておくけど、わたしたちはお忍びで来てるのよ?」 「ふふふ、そんな事言われてないから分かる訳がないわね!」 正論だけど胸を張るな、とルイズは思った。 同時に行き先とか目的とか色々推測されそうだ、とも思う。目の前にいる女は家系的にも出身国的にも性格的にも体型的にも気に喰わないが、決して愚かでは無い。 まあ何か聞かれたらノーコメントで通すとして、先ずは目の前の問題を片づけなければならないと気持ちを切り替える。 「タバサ、ちょっとこっち来て。わたしの予備の服を貸すから」 サイズ的には問題ない筈だ。ただ2才年下の子とサイズがほぼ同じという現実からは断固として目を逸らす所存のルイズだが。 「感謝」 素直にタバサが従ったのは空気を読んだのか、それとも内心ではやはりパジャマはないと思っていたのか。 シルフィードの陰で生着替えを始めるつもりの親友を見送りつつ、キュルケはラ・ロシェールで服を奢らないとダメかしらなどと考えていた。 一方、男衆は襲撃者の尋問を始めていた。 「では、君たちはただの夜盗の類であり、我々が金を持ってそうだから襲ったと?」 青銅の戦乙女に羽交い絞めにされている賊を見ながら問い質したのはワルド子爵である。 ああそうだ、と頷く男たちに対し、クロコダインは解せないという表情を隠しもしなかった。 「どう思われる?」 そう聞かれたワルドもクロコダインとよく似た表情をしており、肩をすくめてあっさりと言った。 「まあ嘘でしょうな。商隊とかならまだしも、このメンツを見て襲いかかるほど夜盗というのは命知らずでも無い筈だ」 ルイズとギーシュだけならばともかく、まだ魔法衛士隊の制服を脱いでいなかったワルドや幻獣グリフォン、そしてクロコダイルの様な獣人がいるのだ。 まだ空には夕陽が出ていたのだから、服装や標的人数などを確認できなかったとは考えにくい。 いやそんな事はない、俺たちは盗賊だと主張する彼らに対し、ワルドは笑顔のままで言った。 「ミスタ・グラモン、すまないがそのゴーレムを少しジャンプさせて貰えるかね?」 ギーシュは言われた通り、男たちを羽交い締めにさせたままワルキューレを跳躍させる。 すると彼らの懐の辺りから、着地と同時に何故かチャラチャラと音がした。容赦も遠慮もなくワルドが服を探ると、エキュー金貨が入った小さな布袋が出てくる。 「最近の盗賊は、こんなに裕福でも人を襲うのかね?」 しばらくは遊んで暮らせるだけの金貨を片手にしての問いに、襲撃者は少し考えて言った。 「……いや、それはあんたらを襲う前に一仕事していてな?」 仲間たちも口々にそうそう、などと言うが、残念な事に説得力は欠片もない。 ワルドは彼らから目を離し、後ろにいたクロコダインに話しかけた。 「話は変わるが、随分立派な剣を持っておられるようですな」 「お、分かるかい兄ちゃん! いい眼をしているじゃねぇか」 しかし上機嫌で答えたのは、まだ鞘にしまわれていなかったデルフリンガーだった。任務中なので当然錆など浮いていない真剣モードである。 「おお、マサカインテリジェンス・ソードだったとは! ならばさぞ切れ味もいいのでしょう」 「おうよ! このデルフリンガー様と相棒なら人間なんぞ縦に両断できるぜ!」 「それは凄い。後学の為に是非見せていただきたいものだ」 子爵と剣のノリのいい会話にクロコダインは苦笑する事しきりであったが、反比例するように拘束された男たちの顔色は悪くなっていった。 「ああ、出来れば1人は残してもらえるかな? というか、素直な口はひとつあれば充分なのでね」 男たちの口が全て素直になったのは言うまでもない。 タバサが着替え終わるのを待って、ルイズたちはクロコダインたちのいる方へと向かった。 「何か分かった?」 「ああ、どうやらオレたちの行動は筒抜けになっているようだ」 渋い顔で答えるクロコダインに、ルイズらも緊張した面持ちになる。 襲撃者の話を総合すると、彼らはそもそも物盗りではなく傭兵であった。 アルビオンでは王党派に雇われていたが、旗色が悪くなってきた為さっさと逃げ出してきたらしい。 しかし命は拾ったがその分どうしても懐は寒く、どうするかと思っていた時に謎の男女から今回の仕事を持ち込まれたのだと言う。 素性が知れない上に前金でエキュー金貨を用意するなど、正直怪しい事この上も無かったが、まあいざとなれば逃げ出すだけの事だ。 「それで捕まってたら意味ないわね」 捕まえたキュルケが一刀両断する横で、ルイズは考え込んでいた。 謎の男女とやらの情報を聞くと、男の方は白い仮面をつけており、女の方はフードを深く被っていたが間違いなく若い美人であるという。 傭兵の観察眼はともかくとして、問題は依頼主の目的である。 狙いが自分たちなのは間違いないとして、その目的は一体何なのか。 アルビオン行きを知っているのは片手で足りるほどの人間しかいないのに、何故こちらの動向が知られているのか。 学院を出発したのは今日の早朝なのに、ラ・ロシェールへ到着する頃には傭兵を雇って襲わせるなど並の手腕では無い。 これまで以上に気を引き締めないと、などと考えていたルイズがふと前を見ると、隣にいた筈のキュルケがいつの間にかワルドにアプローチをかけていた。 ふふふ流石はツェルプストーね死にたいのかしら殺すわ、と何か暗黒闘気っぽいオーラを出しつつ2人の元へ向かう彼女だったが、想像に反してキュルケは少し話しただけで「つまんない」とばかりにワルドから離れて行く。 予想が外れて思わず拍子抜けするルイズの姿を認めたワルドは笑いながら言った。 「なかなか個性的な友人がいるみたいだね、ルイズ」 「あんなのは友達なんかじゃありません!」 まあまあ、と宥めながらワルドはちらりとキュルケらの方を見る。 「彼女たちがここまで追いかけてきたのは君を心配しているからだろう。しかしラ・ロシェールまでならともかく、その後はある程度事情を話して引き返して貰った方がいいと思うんだが」 ルイズもそのつもりではあったが、素直に言う事を聞いてくれるとも思えない。これまでの言動的に考えて。 「色々と予定外の事が起きたが、これからどうする?」 そこへ傭兵たちの見張りをギーシュに任せたクロコダインがやってきて尋ねた。 「基本的な方針は変わらない。あの傭兵たちはラ・ロシェールの衛士に引き渡すとして、途中合流の彼女たちが僕らと、あの風竜とサラマンダーが君たちと一緒に行動する位だね」 そうか、と頷くクロコダインにルイズは心配そうな顔をする。 「一緒には行けないけど、フネが確保出来たらすぐに連絡するからね。食べ物とかも用意するつもりだから、余りムチャしちゃダメよ」 どこに敵が潜んでいるか分からない状態で別行動をとるのは、未だクロコダインとの感覚共有が出来ていない事もあって気が乗らないのだが、目立ってはいけないのだから仕方がない。 もっともクロコダインの方も同じ様な心配をしていた。実に似た者同士の主従といえよう。 「ルイズも無茶はしてくれるなよ。何かあったらすぐ呼んでくれ」 ギーシュらと一緒にいれば、襲撃があっても使い魔経由で連絡がつく。町の付近に陣取っていればそれほど時間をかける事無く合流できるだろうとクロコダインは考えていた。 「さて諸君。そろそろ行動を開始しよう」 ワルドは手を打って注意を引き、全員の注目を集める。 メイジたちは揃って町へと向かい、使い魔一行はグリフォンとシルフィードに分乗して当初の予定通り崖の上へ飛び立った。 そんな彼らを見送りつつ、ワルドは小さく呟いた。 「今日の最終便に間に合わせるつもりだったが、時刻を考えるともう無理だろうな。明日の午前中にフネが来ればいいんだが……」 「あの襲撃がなければ乗れたかもしれないのに!」 悔しがるルイズの後ろでギーシュが肩をすくめる。 「仕方ないさ。それよりボクは少し休んで腹ごしらえがしたいよ」 「そうねぇ、料理は期待できるのかしら」 「そういえばあんたたち、旅費はあるんでしょうね!?」 そんな事を言いあいながら、若きメイジたちは峡谷に挟まれた街の光に近づいていくのだった。 前ページ次ページ虚無と獣王
https://w.atwiki.jp/virako/pages/22.html
強制TS(女体化)の上に半陵辱なのでダメな人はご注意 オチがひどいのは仕様です ≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡ 「何故です螺旋王、何故私をこのような体に!」 怒りと当惑、そして僅かな怯えを滲ませた青年士官――だった者の声を耳にし、玉座の前へ転がるように進み出たその姿を目にしても、王と呼ばれた男は眉ひとつ動かさず、深い穴の如き虚無を湛えた視線を揺らがせもせず。 ただ、無感動な声で哀れな道化の名を呼んだ。 「ヴィラル」 「…はっ」 片膝をついて跪く人影は調整槽から出てすぐに慌てて支度したのだろう、乱れた金髪と軍服、かつては一分の隙無く体を覆っていたが今は体型に合わずに大きく胸元を開けて着るしかなくなっているそれを時折気にするそぶりで、しかし臣下としての礼は最低限保ったままにいらえを返す。 「お前には眠らずとも死なぬ身体をくれてやった。何が不満だ」 「お、恐れながら、この身を不死とするのに…その、どうして、女のような………」 王の、絶対者のすることに逆らっては、疑問を抱いてはならない。獣人にとってのその不文律を重ねて破る事となっているのは自覚しつつも、ヴィラルの口は止まらなかった。 変わってしまった肉体が、胸の中でただただ五月蝿く心臓を鳴り響かせている。 怒りか、屈辱か、それとも恐怖ゆえにか―― 「余興だ、ただのな」 気怠げな声で呟いた王が犬でも追い払うかのように手を振れば、それまで王の傍らや足元に侍っていた女官たちが小鳥が囀るに似た声を上げて玉座から離れ、するすると水が引くように玉座の間からいなくなる。 途端にがらんと広さを増して見える部屋の中に、王の御前に、ただ一人取り残される。 「近くへ寄るがいい、ヴィラル。仕上がりを見せてみろ」 >>> 来いと言われ、王の足元までは膝行り寄ったがそれ以上どうすればいいのか判らない。 視線の先には、緩やかに重なり合った螺旋状のスロープがある。この頂に据えられた玉座に王が座し、今も自分を見下ろしているのだと思うと胃の腑を冷たい手で掴まれているような怖気に襲われる。 「どうした、上がって来い」 逡巡している間にこの戯れにも飽きて、下がって良いと言ってくれるのではないかと儚い期待を抱いていたのだがどうやら叶わないようだ。無情な声音に引きずり上げられるよう、のろのろと一段ずつ螺旋の階を登る。 下に落としたままの視線の先に、大きな爪先が目に入った。 白い、緩やかな衣を纏った王の足元はなんと裸足だ。意外さに驚いて上げた顔の正面で、虚無を湛えた目が自分をじっと見ていた。 「あ………」 あまりの恐ろしさに、舌が縺れて言葉を形作れない。気が付けば、至尊の王の間近に――そう、愛玩物として傍らに侍る女官たち以外では四天王ですら許された事はないだろう、手を伸ばせば触れられるほど近くに自分がいることに今更のように気付き、背筋に氷の棒を差し込まれたが如き緊張と、そして戦慄を覚える。 「見せてみろ」 重ねて要求する声。何を? ――この、身体を。 王の手により、戯れに作り変えられた、この歪な姿を。 「…あ、あの……」 震える唇を、合わぬ歯の根を強いて動かし何を言おうとしたのか。 非礼を詫び、二度と疑わぬと忠誠を誓い、許しを請えばこの場から解放してくれはしないか、そんな甘い考えはしかし、王の次の言葉で半ば予想通り、粉々に砕かれた。 「どうした?」 「は、はい……」 何もかもを諦めて、上衣の前を閉じるファスナーに指を掛ける。引き下ろすべく力を込めようとして、そこで急に己の今の姿、王の目前で自ら衣を脱ぎ裸身を晒そうとしているこの状況をまざと自覚し、途端に顔へ、ざあっと血が上った。 ああ。 恥辱で死んでしまいそうだ。 >>> ジジッ、とファスナーの滑る音が静寂の中で耳を刺した。 一番下まで引き下ろされた金具は服の前を閉じる役目を完全に放棄し、暗赤色の上衣は内側からの圧力に屈して敢え無くはだけられる。 露わにされた白く柔らかな丸みが目に入り、仮にも己の身体だというのに慌てて目を背けてしまいそうになった。 かつて、一時期の上官だった流麗のアディーネの、その豊満なプロポーションを見せ付けるよう際どい衣服を纏っていた姿を見るたび、何とも形容できない、背筋がそわそわして落ち着かない気持ちになっていたものだが、今こうして自分の体に具わっているそれを見たところで、ただ忌まわしさがいや増すばかりで微塵もああいった浮き足立つような心境には到底なれない。 (身体の変化した様子さえご覧になれれば、王も納得して下さるだろうか) そう考えて袖は抜かず、上衣は肩に羽織ったままズボンのウエストに指を掛ける。一瞬の躊躇いの後、震える指先で緩められた衣服はするりと下肢を滑り降りて膝の辺りでわだかまった。 残り一枚、腰部を包むのは頼りなく薄い、伸縮性を持つ布地。 もはや恐ろしくて顔を上げる事も出来ないが、全身の感覚は自分の頭頂から足元までを這い回る気配を手に取るように知覚する。 見られている。 皮一枚の表面だけではない、この身の内に渦巻く羞恥も、怯懦も、何もかも。 小さく息を呑み、奥歯を噛み締めながら下着を落とす。 どんなに目を凝らしてもかつてあった雄の象徴の影も形も見出せない股間には、ただ髪と同じ色の繁みだけが淡くけぶっていた。 「…ふむ、完全に変わっているな」 突如、眼下に伸ばされてきた指先が動くのが見えた。 王の大きな手が、指先が胸元に触れ、つうっと肌の上を滑る。その動きに、指の冷たさに背筋には寒気にも似た嫌悪感が走り、知らず全身がびくりとわなないた。 「螺…旋、王……、もう……」 もうこれで許してくれと、解放して欲しいと願う心はだがしかし、無情にも押し拉がれる。 「近くへ来い」 絶望が身体の内側を蝕んで、ばらばらに自壊してしまうのではないかと思いながらも足は操られるよう一歩を踏み出した。膝に絡んだ衣服が邪魔で、半ば無意識のうちに足を引き抜いて払い落とす。 今、自分の立っている場所が信じられない。手を伸ばせば触れられそう、どころではなくあと僅か身動きすれば己の脚が王の膝に触れてしまいそうな近さ。 今、自分の姿が信じられない。身に着けているものといえば辛うじて腕が通っているだけの軍服の上一枚で、残りは隠しようもなく素肌を晒した不様な格好。 頭を押さえつけられたように上げられない視線の先で、再び大きな手が軽く脇腹を撫で、そこに醜く残る深い傷の痕へと指先が触れた。 「お……王……」 戦士として生を享けた以上、戦いで負った傷を恥じはしない。そう思っていたのに、今こうして指先で確認するようその痕をなぞられると、言葉ではない言葉で、下等な裸猿如きに深手を負わされた自分の無能を詰られているような気がする。 耐えかねて両腕で顔を覆ってしまうのと、上衣の下を滑り上がってきた手が胸の膨らみに触れるのとはほとんど同時だった。 「な……ッ…!?」 大きな手が、指が、胸部に盛り上がる柔い肉の塊を圧し、その弾性を確かめるようゆっくりと揉み、丸みの頂で先程よりも大きさを増したような気がする突起を周りの肉へ押し込むよう捏ね回す。 生命活動の上で必要なわけでもなく、戦いの役にも立たないこんなものが何故備わっているのかいっこうに理由の解らない膨らみが、そうやって触れられただけで突如全身の血と神経を集めたように重くなり、過敏さを増す。 そこを柔らかく、時に強く撫でられ、突付かれ圧迫されるだけで全身をがくがくと震えが貫いて膝が崩れそうになる。腰の辺りが、何故かじんわりと熱く鈍く疼くような感覚。 思わず腕の隙間から自分の身体を見下ろしてしまった目は、更に信じられない光景を捉えた。 「あ………、そ…んなっ、何を……!?」 胸に触れていない方の王の手が、両脚の間へ滑り込んだのだ。 自分の認識では、ただ排泄孔があるだけの不浄の場所へ、王が。 「お、お止め下さい………!!」 「儂に指図をするのか?」 獣人の意識を縛る、それ以上の反論を許さぬ言葉。 もはや抵う意思すら殺され、されるがままの身体のかしこを大きな手が、太い指が這い回る。 「ひっ!」 両脚の間を割った手が、何か粘膜のような場所に触れたことを感じてびくりと背が引き攣った。 しかも皮膚からの刺激は、その手指がぬるりとした液体に濡らされていくのを感じ取る。 己が遂に粗相をしてしまったのではないかと怯え、絶望しかける獣人の心など知ったことではないとばかりにその場所を弄る指はどんどんその動きを激しく、複雑にしていく。 おかしな声を出してしまわないよう口を塞いだ自分の手の間から、それでも熱く湿った呼吸と低い、獣が唸るような声ばかりがただただ漏れる。 「……ぅ、んんっ、……く……」 「すっかりと雌の身体だな」 耳の内側で鼓動の音が、血管を流れる血の音がひどく煩くて、外からの音は膜を一枚通したかのように遠く、不鮮明に聴こえた。 (俺の…体……いったい…何、が……?) 脳裏にぼんやりと浮かんだ疑問に答える言葉はなく、ただ、ぬるぬるとした液体を絡めた指がずぷりと体の中に侵入する感触が。 他の全感覚をマスキングして、ただひとつの強烈な衝撃となって体の中を荒れ狂った。 「あ……っ、ぁ………あ、あああああああァっ!!」 手で塞ごうにも抑えきれない叫びを喉から漏らす。 王の御前にいることも、不敬ではないかという思いも全て意識から抜け落ち、体の内側まで侵された感触に何度も何度も体を跳ねさせる。 片手で人の頭くらいは掴んでしまえそうなほど大きな手の、太く節くれた中指に押し入られたその場所は内側の固く閉じた襞を強引に開かれ、ぽたり、ぽたりと鮮血混じりの淫水を両脚の間に滴らせた。 「うぁ…あ……ぁ…」 信じられない。 そんな場所に、それだけの異物を受け入れられる隙間が存在するという事が。 そんな場所に、指を入れられ動かされるだけで、引き裂かれた痛みすらいつしか脇へ押しやってしまうほどの得体の知れない感覚が下半身を満たしはじめた事が。 がくがくと震えた膝から完全に力が抜け、崩れ落ちそうになった体躯は引き寄せられるままに倒れ込んで王に縋る形になる。 もはやこの場所から、この身を蹂躙する手の中から、逃げ出す事も叶わない。 ぬち、ぬち、と湿った音が自分の脚の間から響く。 そこから体の中に侵入しているものが内側の敏感な粘膜を擦り、掻き回すごとに音は大きくなってゆく。 音の源から流れ出したものでしとどに濡れた内腿は緊張に震え、無意識のうちに必死に脚を閉じようと試みているが大きな手を差し込まれているせいで果たせない。 腰砕けになった体を預けるようにして縋り付いてしまっているものが王の腕だと頭の片隅で理解はしているのに、一刻も早く姿勢を正せという頭からの命令を体が受け付けようとしなかった。 この、何もかもがままならない、訳の解らない状態が全て、雌性体と化したこの身からもたらされているというのか。 一体何故、こんな事に。 (──余興だ、ただのな) 脳裏に先程の王の言葉が再生される。 余興、だと──? 兵士たるこの身を戯れに造り替え、玉座の周りに侍らせた女官のように玩ぶことが? 何故だ──何故です、螺旋王。 この様な仕打ちで思い知らせずとも、獣人としてこの世に生み出された時からこの身体は血の一滴、髪の一筋に至るまであなたの所有物だと言うのに。我々の生も死も、全てはあなたの手中にあるというのに。 「螺、旋………王……」 喉から押し出される掠れた声は、既に自分のものとは思えない。 全ての気力を振り絞って上げた顔は、正面から無感動に見返してくる昏い視線に射すくめられて凍り付いたように、それ以上の言葉を紡ぐ事は出来なかった。 「…どうした、何か納得が行かぬ事があるなら囀ってみせるがいい」 顎を捉えて上向かせた指先は優しげに見えて、籠められた力は万力の如くに哀れな獣人の頤を押さえ付け、視線すらも逃げることは許さないのだと無言の内に宣告している。 ただ空しく動かされるだけで用を為さない口の代わりに、見開かれた金色の眼から涙の筋が滴って王の指を僅かに濡らした。 >>> ぎしぎしと肉の軋む音がする。 いや、それは己の気のせいに過ぎず、実際に音として聞こえるものといえばこの泥濘を掻き混ぜるような湿った音と、忙しく荒げられた呼吸の合間に織り交ぜられる獣の鳴き声だけだ。 「……ひっ、あ、あぁ……っ、く、ぅっ……」 意味の通る言葉など到底発せられない。身を裂くような痛みと質量に腹の奥を突き上げられて、内臓が押し潰されんばかりに圧迫される。吸い込む息は喉の辺りに一旦引っかかってから肺腑を吹き荒れ、再び喉に絡まってはぜいぜいと息咳く音、死に瀕した獣が吠えるような声を伴って口から出て行く。 何故だ、何故こんな事に。 大きな手に掬い上げられるよう跨がされた膝の上で、限界いっぱいにまで開かれた脚の間を太逞しく熱い塊に貫かれ、僅かに自由になる上体を捩ってはなんとかこの責め苦から逃れようと必死に抗う。しかし背後から這わされる冷たい手はがっちりと腰を掴んでそれを許さず、それどころか手荒く揺すり立てる事で更なる苦痛を与えてくる。 足腰の関節が外れるのではないかと思う程に押し拡げられた場所が容赦なく擦られ、掻き回され、奥の奥まで突き抉られ、もはや自分の意志ではどうにも出来ないほどに重く痺れているというのにどういう訳かそこから感覚を受け取る神経だけは一向に鈍麻もせず、荒れ狂う苦痛とほんの少しの快楽が休みなく意識を苛んだ。 涙で歪む視界には自分が突っ伏している王の膝を覆う白い衣と、石のような色合いの玉座の間の床、そして揺れる体に合わせてばらばらと踊る、己の金の髪ばかりが映る。貫かれている場所から滴った血や体液、全身をじっとりと濡らす汗、そしてだらしなく開け放したままの口から垂れ落ちる涎がその衣や床を汚していることを意識の端ではおぼろげに捉えてはいるが、だからといってどうすることも出来ず、ただされるがままに獣じみた声を上げ続ける。 「…ぁ…おぉ……お、ゆる…し…くだ…さ……っ…」 喘ぎと鳴き声の合間に辛うじて言葉らしきものが形作られる。ようやく口にすることの出来たそれを縋るような思いで、壊れた玩具のようにただひたすらに繰り返し容赦を請う。 「お許しを……お許し、ください……王よ………!」 「…許せとは、何をだ」 これだけの激しい動きを加えながら、変わらず淡々と乾いた無感動な声。 ──何を? 王に世界の真実を問うた事をか。人間とは、獣人とは何なのかと。 王の道具に過ぎぬ身に、己の意思を通そうとした事をか。あの人間達と関わり合い、戦う内に育っていった心を。 答えを出せないままに、それでも何かを言おうとして開いた口を、体に篭もる熱を吐き出そうとした呼吸を、不意に唇を割って差し入れられたもので塞がれる。 反射的に歯を立ててしまいそうになり、半瞬ののちにそれが王の指だと気が付いて、閉じようとする顎を懸命に堪えた。 「……っ、ウ……」 口中を犯しているのと反対側の手は未だ上半身にまとわりついたままの軍服の裾をたくし上げて胸を弄る。腹の奥を突き上げられながら太い指に乳房を掴まれ、すっかりと硬く勃ち上がった先端を押し潰されると形容もできない感覚が腰から脳天までを貫いて、下腹が壊れてしまいそうなほどに痙攣した。 思わず上げそうになった悲鳴は口を塞ぐ指に阻まれて鼻へと抜け、どこか甘い、媚びて強請るような響きを帯びる。 いつ終わるとも知れない苦痛と絶望に塗り潰されて行く意識の中で、何故なのか、遠い光へ指先を伸ばすように一人の人間のことを思い浮かべた。 (……カミ、ナ) >>> >>> 『────というような顛末だった訳だが、まああの頃は無聊にまかせて色々と要らん事をした』 「はぁ、なるほど」 巨大宇宙戦艦型ダイガン・超銀河ダイグレンの文字通り頭脳であるブレインルームで、強化ガラス容器の中に入った生首がそう言って長話を締めくくったのに対し、取り敢えず現在はこの艦の主であるシモンはひどく気の抜けた返事をした。 流石にそこまでしといて要らん事で片付けるのってどうなんだろうなあー、とか思いつつ周囲を見渡せば、すぐ隣ではまさか自分が「そういやアイツ、なんで途中から女になってたんだ?」とか質問したせいでこんな事になるとは予想だにしていなかっただろうキタンが下腹の辺りを押さえてしゃがみ込んでいる。 その向こうにいるリーロンは「ホーント、男ってしょうがないわねえ」とか言いつつその態度はいつも通り超然としていて実際のところを窺い取るのは難しい。ヨーコはやっぱり女性なだけあって無茶苦茶イヤそうな顔をしていた。 で、当事者であるところのヴィラルはと言えば──すぐ側のコンソールデスクの下に入り込んでしまったのだろうか、姿は見えないがデスクの足の陰からちょろっとはみ出した赤いマフラーと、何やらぐすぐすと嗚咽するような声が籠もった反響を伴って聞こえる辺りで見当が付く。 「……ええと……まあ、ほら、犬に噛まれたと思って……」 デスクの脇にしゃがみ込み、被害者への配慮に欠けること甚だしい慰めの言葉の見本のようなものを口にしたシモンを、デスク下の薄暗がりからギラリと眼底反射で光る金色の眼がきっと睨んだ。 「……シモン、ドリルを貸せ」 「? これ?」 紐から首を抜いて差し出したコアドリルを受け取った手が、次の瞬間その持ち主の額目がけてすこーんと小さな突起物を投げつける。 「いてっ!」 幸いにしてドリルの尖った先端でなく、紐のついた握り部分が当たった額をさすりながら目を瞬くシモンのコートの襟元を、デスクの下からにゅっと伸びた手が掴んでがくがくと前後に揺さぶった。 「貴様じゃあるまいしそんな小さなドリルで役に立つか! ええい何でもいい、硬くて重量のある鈍器のような物を貸せッ!!」 「……貸したらアレを叩き割るつもりなんだろー」 当たり前だ、いいからそこをどけそいつ殺せないなどと叫んで暴れ出した獣人を羽交い締めにしたままずるずると引きずりつつ、「じゃ、ちょっと頭冷やさせて来るから」とシモンがブレインルームを辞す。 それを見送ったヨーコもだいぶげんなりとした表情で「あたしも持ち場に帰るわ…」と踵を返し、キタンもそれを追いかけるように心なしかひょこひょことした足取りで部屋を出ていった。 「…それで、本当に退屈しのぎの余興だったワケ?」 最後に残ったリーロンが、ロージェノム・ヘッドの収まったガラス容器をぺちぺちと叩きながら顔を近付ければ、透明なドームの中で生命維持用の溶液に漬かった禿頭が「うむ」としかつめらしい表情を作る。 『螺旋王ロージェノム本人ではないため当時の精細な心理を全て追体験するのは不可能だが、おそらくは直前に娘であるニアを捨てる契機となったものと同じ言葉を、これもまた自己の被造物である獣人が発したことに対して何らかの心理的葛藤を感じ、そのストレスを解消するために前述の行為に出た――つまりは一種の代償行動であると推定する』 「それはそれでサイテーねぇ。自分の子供に八つ当たりする親なんてロクなものじゃないわよ」 『うむ、螺旋王ロージェノム本人ではないが今は反省している』 ≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡ ねこみみ幼女だったら小さい分もっと大変だったよ! とかフォローにもならない事をとりあえず言ってみる。 オマケ:もっとダメ人間バージョン __________________________________________ 「何故です螺旋王、何故私をこのような体に!」 怒りと当惑、そして僅かな怯えを滲ませた青年士官――だった者の声を耳にし、 玉座の前へ転がるように進み出たその姿を目にしても、王と呼ばれた男は眉ひとつ動かさず 深い穴の如き虚無を湛えた視線を揺らがせもせず、ただ一言答えを返した。 「単に趣味だ」 「はぁ!?」 「ちなみに鏡を見れば解る事だが、外見年齢も少々下げておいた上に猫耳と尻尾も生やしてある」 「あっ、あんたの血は何色だァァァァァァァァァアアアア!!!?」
https://w.atwiki.jp/zatchbell/pages/1723.html
S-272 アイアン・グラビレイ 術 中級 MP3 +4000 ダメージ2 重力 バトル攻撃 相手の魔本にダメージ。 この術のダメージを「かばわれた」とき、このゲーム中、相手は、「かばう」のに使った魔物の 「魔物の効果」を使えない(【ステイ】)。 ブラゴ第4の術 強力な重力で魔物は押しつぶされ、行動不能になる。 LEVEL 8 破壊力抜群の術で、かばった魔物の効果を封じることができる。 中盤戦の主な術として使おう。 Ex-047 ナオミちゃんとセットで使うことにより、こちらの意図で、相手の魔物を使えなくすることができる。 単体で使う場合、魔本にダメージを受けるか相手の意図でかばわれる魔物を選ばれることにより、回避される可能性がある。 例えば、相手の魔物構成が「ガッシュ・ベル」「レイラ ビクトリーム《ベリーメロン!》」の場合。 魔物の効果を封じようにも《ベリーメロン!》で効果がかき消されてしまう。 そのため、相手は意図的に「ガッシュ・ベル」でかばうことにより、効果を回避することができる。 Ex-047 ナオミちゃんを使いレイラ ビクトリーム《ベリーメロン!》を指定すれば、そういった行動を防ぐことができる。 Ex-047 ナオミちゃんより確実性は落ちるが、E-042 光と闇・E-079 最強×最凶で相手の魔物を1体にして使う。 ルーパー《羽交い絞め》で相手の魔物を選んで使うことにより、狙った魔物にダメージを与えやすくなる。 どちらも魔本でダメージを受ける選択をされる可能性は、あるものの相手にプレッシャーをかけることができる。 収録パック LEVEL:8 琥珀の頂上決戦 タグ:MP3 ダメージ2 バトル攻撃 ブラゴ 中級 術 重力 +4000