約 40,743 件
https://w.atwiki.jp/10000goku/pages/307.html
2011年1月24日〜 #ref error :ご指定のページがありません。ページ名を確認して再度指定してください。 座標 1 2 3 4 5 6 7 8 A B Happy*321 凸 C Orc*818-20 Happy*619-21 D Ghast*122 E Orc*819-21 Ghast*322-24 Orc*821-23 Orc*820-21 F Orc*821 Happy21-23 G Orc*822-23 Happy*322-23 H MAP固定ドロップ メタルダガー(Lv27短)、ハイディーラー(Lv27弓)、マインゴーシュ(Lv32短),ロウファー(Lv31弓) メモ [F 3]の群れは崖の上下に別れていたりします + 旧2011年1月24日まで #ref error :ご指定のページがありません。ページ名を確認して再度指定してください。 座標 1 2 3 4 5 6 7 8 A B Orc*819-21 Orc*820-22 Orc23-27 C Orc*818-20 Ghast*521-25 D Orc*822-24 Orc*821-23 E 凸 Orc*825-27 F Orc*827-29 Ghast*521-25 G Orc*823-25 Naepa26-28Oread29 H MAP固定ドロップ メタルダガー(Lv27短)、ハイディーラー(Lv27弓)、マインゴーシュ(Lv32短),ロウファー(Lv31弓) 編集者のぼやき [F 3]と[G 3]はLv28の群れとLv24の群れが混ざってます [B 6-7]と[C 6]にはLv24 Lv25 Lv26の3つの群れが混ざってます [D 2]と[C 3]と[D 5]と[E 7]の群れは通常より密集率が高めで狩り向き + 旧2010年4月26日まで #ref error :ご指定のページがありません。ページ名を確認して再度指定してください。 座標 1 2 3 4 5 6 7 8 A B [Fairy*3]20,21 凸 [Harpy*3]Harpy20,21Scout22,23 C [Orc*8]19-21 [Orc*8]22,23 D [Orc*8]24,25 [Orc*8]23-25 E [Orc*8]21,22 F [Fairy*3]25,26 [Orc*8]19,20 [Orc*8]22,23 G [Orc*8]25,26 H IP 58.93.210.219 TIME "2012-01-17 (火) 12 54 30" REFERER "http //fewiki.jp/index.php" USER_AGENT "Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 9.0; Windows NT 6.1; Trident/5.0)"
https://w.atwiki.jp/degi-mon/pages/1251.html
【名前】 ファンクンモン 【読み方】 ふぁんくんもん 【世代】 完全体 【種族】 水棲型 【タイプ】 ワクチン 【必殺技】 孤籠泡(ころうほう)冰乱結突(ひょうらんけっとつ)潮流旋禍(ちょうりゅうせんか) 【所属】 不明 【詳細】 完全体の水棲型デジモン。 クロンデジゾイドに匹敵する硬度を誇る鱗で全身を覆う。 温厚な性格で綺麗な水を好み、湖の周辺を環境汚染から守っている。 食事の時間になると湖から飛び出し、空中を泳ぐように移動、飛行中のデジモンを丸呑みにすることで腹を満たす。 更に大きい体格を狙われやすいため、シーチューモンの群れに交ざって移動することが多く、移動の際は身を守るために大量のシャボン玉で群れを覆う。 シャボン玉が光が屈折させることで自身を含めた群れ全体が透明化し、周囲から見えなくなる。 必殺技 孤籠泡(ころうほう) 鰭からシャボン玉を生成し、包み込んだ相手の動きを封じる。 冰乱結突(ひょうらんけっとつ) 無数の鋭い氷柱を口から吐き出す。 潮流旋禍(ちょうりゅうせんか) 何処からともなく渦潮を発生させ、作り出した水柱を相手に叩き付ける。
https://w.atwiki.jp/reiyonrakisutazuki/pages/217.html
和名:ウキワアミムシ 重さ1/2 誕生6 ウキカワムシ科 胴の一部を膨らまして川に浮いている小さなアリの様な生物。主に群れで固まっている。ピクミンが水に入ると群れで攻撃して捕食する。 膨らんだ部分にピクミンを投げつけるとすぐにしぼんで水底に落ちる。そうなると攻撃力は激減するのでピクミンで囲んで倒せる。
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/4656.html
『理不尽』 4KB いじめ 不運 飾り 群れ 野良ゆ あっさりした内容です おさげあき 悪い事してないまりさが酷い目に遭います。 テンプレです。 軽めの内容です。 おさげあき 36作目 「ど……どぼじでぇぇぇぇぇぇ!?どぼじでごんなごどずるんだぜぇぇぇぇぇぇ!?」 とある公園内で成体まりさが一人の男に蹴られまくっていた。 最初こそは強気の態度で男を威嚇していたが痛みに耐えられなくなると情けない悲鳴を上げるようになった。 「ゆ……ゆっぐりだっでいぎでるんだよぉぉぉぉぉぉ!がげがえのないいのぢなんだよぉぉぉぉぉぉ!?」 テンプレ台詞を吐くまりさだが男はまりさの叫びを完全に無視し蹴りまくるだけだ。 元々男にはゆ虐には興味がなくまりさを蹴っているのもただの暇つぶしでしかない。 「ぼうやべでぇぇぇぇぇぇ!ぼんどにじんじゃうよぉぉぉぉぉぉ!ざいっぎょう!のばでぃざがじんだらごのむれがほうっかい!しぢゃうよぉぉぉぉぉぉ!」 どうやらまりさは群れの長らしいがこんなゴミクズがいなくても群れは崩壊したりはしないだろう。 現に今も次の長を誰にするか群れの幹部達が隠れながら話し合っていた。 結局まりさはただ群れのゆっくりに利用されただけの哀れなゴミクズでしかないのだ。 「じぬ!ぼんどにじぬ!ばでぃざはまだじにだぐないぃぃぃぃぃぃ!いぎでゆっぐりじだいぃぃぃぃぃぃ!」 生きる事を諦めないまりさは自慢のおさげで男の足をぺちぺち叩く。 当然男にダメージなどなく逆におさげに興味を引かせてしまう結果になった。 ブチン 「ゆ?ゆゆ?ゆゆゆぅぅぅぅぅぅ!?ま……まりさのおさげさんがぁぁぁぁぁぁ!? しろいおりぼんがちゃーむぽいんとですべてのゆっくりをみりょうするうつくしさとかわいらしさをかねそなえたおさげさんがぁぁぁぁぁぁぁ!? それだけじゃなくしっこくのやみすらうちはらうかがやきをはなつすーぱーふぁいなるあるてぃめっとえきさいてぃんぐなおさげさんがぁぁぁぁぁぁ!?」 特に理由などない。 ただ目の前で動くおさげをなんとなく引き抜いただけだ。 引き抜いたはいいがこのゴミをどうするかまでは考えていなかった男は自分のおさげを自画自賛しまくるまりさの口におさげを放り込んだ。 「ゆぼえぇぇぇぇぇぇ!?げほっ!げほっ!ごくん!ゆゆぅぅぅぅぅぅ!?まりさおさげさんのみこんじゃったぁぁぁぁぁぁ!これじゃもうゆっくりできないぃぃぃぃぃぃ!」 喋ってる最中におさげを口に放り込まれたまりさはおさげを喉に詰まらせ苦しんだ挙句におさげを飲み込んでしまった。 自分の宝物を必死に吐き出そうとするが男が再び蹴りを入れると情けない悲鳴を上げて命乞いを始めた。 「だずげでぇぇぇぇぇぇ!ばでぃざをだずげでぐだざいぃぃぃぃぃぃ!ばでぃざはごみぐずでず!みどめまず!ぼんどはよわいゆっぐりなんでず! くぢだげはだっじゃでぞれいがいにじまんでぎるごどがないんでずぅぅぅぅぅぅ!だがら!だがらだずげでぇぇぇぇぇぇ!ごみぐずばでぃざをゆるじでぇぇぇぇぇぇ!」 生ゴミが何か叫んでいるが男には関係ない。 これはただの暇つぶしなのだ。 男はまりさの懇願を無視し蹴りまくっていたが…… 「よお、待たせたな」 「おう、来たか」 男の知り合いらしい人間がやってくると男はまりさを蹴るのを止めた。 どうやらここで待ち合わせをしていたらしい。 「ん?なにやってんの?」 「ただの暇つぶしだよ、それよりどこに行く?」 「そうだな……とりあえず腹減ったからなんか食いに行こうぜ」 「ああ」 男は用済みとなったまりさを隅っこに蹴り飛ばしそのまま友人と一緒に公園から去っていった。 「いだいよぉぉぉぉぉぉ……ぜんしんずぎずぎずるよぉぉぉぉぉぉ……でぼだずがっだ……ごれでばでぃざはゆっぐりでぎるよ……」 突然訪れた悪魔が去り安堵するまりさだが悪魔はまだ近くに沢山いる事を分かっていないようだ。 「ゆっくりできないやつだよ」 「おかざりがないなんてみじめなやつだね」 「こんなごみくずはせいっさい!しないとね!」 「おお、ぶざまぶざま!」 「ゆゆぅぅぅぅぅぅ!?」 いつの間にかまりさは群れのゆっくりに取り囲まれていた。 「な……なんなの……?まりさはむれのおさだよ?ゆっくりできないことはやめてね?おさにてをだしたらせいっさい!だよ?」 おそろしーしーを漏らしながら怯えるまりさ。 まだ自分が群れの長だと思っているようだが群れのゆっくりにとってまりさは既に長ではなくお飾りを失ったゴミクズという認識だ。 「おかざりのないくずがおさ?じょうだんはかおだけにしてね!」 「おさならぱちゅりーがなったよ!ごみくずよりもずっとゆうっしゅう!だからおまえはようずみだよ!」 「むきゅ!みんな!いくらごみくずでもゆっくりごろしはゆっくりできないからころさないようにてかげんしてね!」 「「「ゆっくりりかいしたよ!」」」 「まりさ、これからはどれいとしてみんなをゆっくりさせてね!それがごみくずのあなたにできるたったひとつのしごとよ!」 「ゆ……ゆんやぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」 こうしてまりさは命が尽きるまで奴隷としてゆっくり出来ないゆん生を送る事になった。 このまりさは特に悪い事をしたわけではなかったが理不尽な結末を迎えるのはまりさ種にはよくある事である。 それにまりさは自分の事をゴミクズと認めたのだ。 この結末はまさにゴミクズに相応しくある意味ハッピーエンドと言えるだろう。 「やべでぇぇぇぇぇぇ!ばでぃざのざらざらのぎんばづざんをぬがないでぇぇぇぇぇぇ!まむまむおがざないでぇぇぇぇぇぇ!あにゃるおがざないでぇぇぇぇぇぇ! ぼうやだぁぁぁぁぁぁ!ばでぃざおうぢがえるぅぅぅぅぅぅ!おうぢにがえじでぇぇぇぇぇぇ! じごぐでもでんごぐでもいいがらあのよのおうぢにがえじでぇぇぇぇぇぇ!このよはゆっぐりできないぃぃぃぃぃぃ!」 今日も公園は平常運転である。
https://w.atwiki.jp/r-type-tactics/pages/755.html
バイド地球降下阻止作戦 バイドは大気圏の外側で引き寄せあうように集まり、群れを大きくしている。 統合作戦本部の分析では、バイドは地球上空の数箇所に集結し、 群れが大きくなったところで降下を開始するものと見られている。 報告によると、バイドの群れの中には戦艦クラスの大型生命要塞の姿も見えるという。 「ボルド」タイプのようだが、これまで確認されているものより遥かに巨大とのこと。 なんとしてもバイドの侵攻をここで食い止めなければならない。 厳しい戦いになるのは間違いない。 私は、全艦に号令した。 + 地球を守るぞ!全軍、進め! 地球を守るぞ! 全軍、進め! と号令すると、隊員達は緊張した面持ちで口々に了解!と言った。 + 緊張しているな?いつも通り戦おう 緊張してるな? いつも通り戦おう と号令すると、(副官)が少し笑顔を見せた。 + 全力を尽くせ!そして生き延びろ! 全力を尽くせ! そして生き延びろ! と号令すると、隊員達は何も言わず、ただこくりとうなずいた。 + この戦いに負けたら全て終わりだぞ この戦いに負けたら全て終わりだぞ!負けるなよ! と号令すると、隊員達は自らを奮い立たせようと、ときの声を上げた。 そして艦隊は、ゆっくりと動き始めた。 ⇒はじめる 地球上空のバイドの群れに敗北 地球上空のバイドの群れに敗北した。 一旦後退して距離をとり、態勢を整えるしかない。 ⇒帰還する 凱旋 バイド地球降下阻止作戦が行われ、 我々は担当していた北半球エリアに集結していたバイドの群れを撃退した。 これより大気圏に入り、打ちもらしたバイドがいないか捜索する。 我々は高度を下げ、上空から地球の様子を見た。 地球は無事である。 その美しさが我々の働きを讃えてくれているように思えて感慨深かった。 さらに高度を下げ、街から離れた山あいにある戦没者墓地の上空を通った。 小さな墓標が無数に並んでいる。 墓地の一角に、喪服を着た母娘がいるのが小さく見えた。 娘は我々の艦隊に向けて小さな手を振っている。 母親はじっとこちらを見上げている。 その表情は分かるはずもないが、私には母親が… + 悲しくて泣いているように見えた 悲しくて泣いているように見えた。 私は申し訳ない気持ちになった。 + 怒りを押し堪えているように見えた 怒りを押し堪えているように見えた。 私は申し訳ない気持ちになった。 + 嬉しくて喜んでいるように見えた 嬉しくて喜んでいるように見えた。 私はしみじみと嬉しくなった。 + 艦隊に驚いているように見えた 艦隊に驚いているように見えた。 民間人がこんな艦隊を見るのは初めてだろうから、無理もない。 + どんな表情なのか想像できなかった どんな表情なのか想像できなかった。 私は自分が何か大切なものを失っているような気がした。 その時、(副官)から報告が入った。 他の集結ポイントを担当していた艦隊が撃破され、バイドの降下を許してしまったという! 降下したバイドは再び集結し、統合作戦本部のある基地に向かっているらしい。 統合作戦本部とその基地が壊滅することは、地球上の最も重要な防衛拠点を失うということだ。 そうなれば今以上にバイドから地球を守ることが難しくなるだろう。 私は戦力を増強するため、他の艦隊の残存勢力を集結させ、我々の艦隊に組み入れた。 そして、バイドが向かっている基地へと艦隊を進めた。 ⇒帰還する 前ミッション→No.13暴走兵器工房 次ミッション→No.15沈む夕陽 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/bazanoheya/pages/57.html
アプトノス 森や草木の生えたほとんどの地域で見かけられる草食モンスター。 常に数頭の群れを形成しており水辺などで餌である草や穀類を食べている 性格は非常に臆病で仲間が傷つけられたり肉食モンスターが襲来すると一目散に逃げ出す。 群れの中で一番大きい者は攻撃すると反撃してくる アプトノスの霜降りな肉は非常に美味でハンターの中でも大人気である
https://w.atwiki.jp/futabayukkuriss/pages/1012.html
おぼうしのなかにあったもの 37KB 「餡子ンペ09」 野生 群れ まりさ おぼうし ※餡子ンペ09出展作品です。 テーマ 4.群れ「ミニ社会化」……のつもり ※独自設定垂れ流し 「まりしゃも、もみもみしゃんほしいなあ……」 子まりさはぽつりとつぶやいた。 巣の中、四匹のゆっくりが身を寄せ合っていた。親まりさと親れいむのツガイと、その子 供の子まりさと子れいむだ。 子まりさと子れいむは、親れいむの二本のモミアゲそれぞれに優しく暖かに抱かれていた。 とてもとても、ゆっくりできる、家族の時間。 だが子まりさにはひとつだけ、ゆっくりできないことがあった。 それは自分にモミアゲがないことだ。 子れいむは親れいむのモミアゲが大好きだった。モミアゲで抱かれると、とてもとてもゆ っくりできた。 まりさ種にもおさげはあったが、れいむ種のモミアゲほど自由に動かせないし、一本しか ない。 自分が大人になったとしても親れいむのように子供を抱いてあげることができない。 それがなんだか、さびしかったのだ。 子まりさのそんなささやかな不満に、親れいむは困り顔だ。 そこに、親まりさが助け舟を出した。 「おちびちゃん。おちびちゃんにはもみもみがなくても、りっぱなおぼうしがあるよ!」 「ゆ? おぼうししゃん?」 「そうだよ! おちびちゃんのおぼうしは、とってもゆっくりできるよ!」 「もみもみさんよりゆっくりできる?」 「もみもみとおんなじくらいゆっくりできるよ! だっておぼうしには、たくさんの『ゆ っくりできること』をつめこめるんだからね!」 子まりさは親まりさのおぼうしを見上げた。 おぼうし。その中にはいつだって「ゆっくりできること」があった。 狩りから帰った親まりさのおぼうしの中には、いつだっていっぱいゆっくりできる食べ物 があった。おでかけのときにはおぼうしの中に入れてもらった。おぼうしの中はとっても ゆっくりできた。 子まりさは理解した。おぼうしは、ゆっくりできるものだ。 「おぼうしに『ゆっくりできること』をいっぱいつめこめば、みんなをゆっくりさせてあ げられる! もみもみはおちびちゃんをだきしめて、みんなをゆっくりさせてあげられる! おちびちゃんたちは、おとなになったらすっごくゆっくりできるんだよ!」 親まりさの言葉に、子供たちは大喜びだ。 「れーみゅ、おとなになっちゃらおかーしゃんみたいに、もみもみしゃんでおちびちゃん をだいてあげりゅんだ!」 子れいむはモミアゲをぴこぴこさせてはしゃいだ。 「まりしゃも! まりしゃも! おとなになっちゃら、おぼうしさんを『ゆっくちできる こと』でいっぱいにして、みんにゃをゆっくちしゃせてあげりゅんだ!」 子まりさはゆん、と胸をはり、おぼうしを誇らしげに掲げた。 そんな子供たちのほほえましい姿に、親ゆっくりは笑った。つられて子供たちも笑い出し た。 しあわせがあった。ゆっくりがあった。だから、みんなでいっせいに、元気よく叫んだ。 「ゆっくりしていってね!」 忘れやすい餡子脳だが、まりさはずっとこの日のことだけはわすれなかった。 おぼうしに「ゆっくりできること」をつめこんで、みんなをゆっくりさせてあげる。 その夢を見続け、ずっとがんばった。 そしてまりさは、その夢を実現させた。 おぼうしのなかにあったもの 「ゆ! ここがまりさがみつけたあたらしい『かりば』だよ!」 まりさの声が森の中に響いた。 おぼうしに「ゆっくりできること」をつめこみ、みんなをゆっくりさせることを夢みた子 まりさ。 今はすっかり成体ゆっくりまで成長し、独り立ちしていた。 そして今日、まりさは自分が見つけた狩場……すなわちきのこや木の実が豊富にある、と っておきの場所にみんなを連れてきたのだ。 「ゆゆ! いっぱいきのこさんがあるんだぜ!」 「わかるよー、きのみさんもいっぱいおちてるんだよー!」 「な、なかなかとかいはなかりばね! ありすもみとめてあげてもいいわ!」 一様に驚く群れのゆっくり達。満足げにみんなを眺めると、まりさは再び声を張り上げる。 「ここにくるまえにもいったけど、かりをするだけじゃなくてまわりの『とくちょー』を しっかりみてね! おんなじ『とくちょー』のばしょがみつかれば、そこがあたらしいか りばになるかもしれないよ!」 まりさは満面の笑みを浮かべた。 「そうすれば、みんなでもっとゆっくりできるよ!」 まりさが自分の狩場にみんなを連れてきたのは、ご馳走をするためだけではない。 他のゆっくりにも自分と同じように狩場を見つけてもらうためだ。 狩場がたくさん見つかれば、たくさん食べ物が集まる。そうすればみんながもっともっと ゆっくりできる。 「ゆっくりりかいしたよ!」 みんなも理解してくれた。 まりさはうれしそうにうなずき、そして楽しい狩りが始まった。 子供の頃の夢。 おぼうしに「ゆっくりできること」をつめこんで、みんなをゆっくりさせてあげる。 そのためにまりさは努力し続けた。全力でがんばった。 そして気づけば群れの人気者になり、みんなに推され、群れの長にまでのぼりつめた。 まりさは喜んだ。権力を得たからではない。群れの長なら、みんなをもっといっぱいゆっ くりさせられると思ったからだ。 長になってからも、まりさは群れのみんなのゆっくりのために尽力し続けた。 「まりさ! さいきんれいむのまりさがけがをしちゃって、ごはんがたりないの。なんと かならない?」 「ゆ! むれのたくわえをわけてあげるよ! れいむのまりさがげんきになったら、いっ しょにかりをしてたくわえをふやそうね!」 「まりさ! さいきんありす、すごくむらむらするの……れいぱーになっちゃったらどう しよう!?」 「おおきなきのしたにすんでるおねえさんありすが、じょうずな『ひとりすっきりー』の やりかたをしってるよ! おしえてもらって、まいにち『ひとりすっきりー』をいっぱい すればだいじょうぶだよ!」 「わからないよー! わからないよー!」 「だいじょうぶだよ、ちぇん! わかるまでいっしょにゆっくりかんがえよう!」 こうして、まりさは群れで起きる様々な問題を解決し、よりみんなをゆっくりさせた。 だが、時には簡単に解決できない問題にもぶつかることがある。 「むきゅ、まりさ。ちぇんとみょんがまた……」 「まだふたりとも、なかなおりしてくれないの?」 「むきゅん……」 ぱちゅりーが持ちかけてきたのは、ちぇんとみょんのケンカだ。両方とも身体能力が高く、 狩りがうまい。それぞれ競い合うのはいいことだが、それが原因で次第にいがみ合うよう になってしまったのだ。 まりさもぱちゅりーも何度か二匹が仲直りするよう諭したが、どうにもうまくいかない。 二人とも、ゆっくりするためにがんばっているだけなのに、どうして仲良く出来ないのだ ろう。難問だった。 だが、まりさは胸を張って見せた。 「ゆ! まりさにまかせてね! ゆっくりかんがえて、ふたりをなかなおりさせるよ!」 まりさの自信には理由がある。こうした悩みを解決する、とっておきの方法があるのだ。 ・ ・ ・ 「おにいさん、ゆっくりしていってね!」 まりさがやってきたのは、群れから一時間ほどの位置にある小さな山小屋だ。 まりさが声をかけると、おにいさんが出てきた。 山の中にある小屋には似つかわしくない、メガネをかけた細身の男だ。どこか学者を思わ せる風貌だった。その柔和な顔は、いつもまりさをゆっくりさせてくれる。 「やあまりさ。また何かあったのかい?」 「そうだよ! おにいさんにそうだんしたいことがあるんだよ!」 家の前の木の切り株におにいさんが腰を下ろすと、まりさはぴょんとひと跳びしてそのひ ざの上にのっかった。一人と一匹、どちらもなれた様子だった。 そして、まりさはぱちゅりーから相談された困りごと……狩りの成果を競うあまり、仲良 くしてくれないちぇんとみょんのことをおにいさんに説明した。 「…それで、ちぇんとみょんがゆっくりしてくれないんだ」 「まりさ。いつも言っているように、迷ったときはまりさが一番ゆっくりできると思うこ とを選ぶんだ」 「ゆーん……」 まりさは考え込む。 望むことはみんながゆっくりできること。みんなで、みんなで……。 そして、まりさはひらめいた。 「そうだよ! ちぇんもみょんも『きょうそう』してるからいけないんだ! 『きょうり ょく』すればいいんだよ!」 「へえ、どうするんだい?」 「ふたりでいっしょにかりにいってもらうんだよ! ふたりのとってきたものをあわせて むれのものにすればいいんだよ! いっしょにかりをすれば、ちぇんもみょんもあいての いいところがわかって、けんかなんかしなくなるよ!」 「でも二人はケンカしているんだろう? いっしょに行ってくれるかな?」 「そうだね、ゆーん……」 「仲直りを手伝ってくれるゆっくりがいればいいのにね」 「ゆ! そうだね! さいしょはまりさがいっしょにいくよ!」 ゆっくりは単純なナマモノだ。つまらないことでケンカしたかと思えば、簡単に仲直りす る。だが、そのきっかけはやはり難しいことだ。それは人間と変わらない。 まりさの考えたことは、そのきっかけ作り。群れの長であり、みんなと仲良くしているま りさがうまく立ち回れば、確かに成功しそうだ。 おにいさんも賛成してくれた。 「まりさはとってもゆっくりしたいいこだね」 おにいさんはやさしくまりさの髪をなでた。まりさはゆゆーんとうれしさに身をくねらし た。 こうしてほめられるとまりさはうれしくてたまらなくなる。でも今は、それに浸ってはい られない。 「さっそくかえって、ちぇんとみょんにはなしてくるよ!」 「うまくいくことを祈ってるよ」 「おにいさんありがとう! ゆっくりしていってね!」 「はい。ゆっくりしていってね!」 おにいさんの柔和な顔に見送られ、まりさは群れへと急いだ。 まりさとおにいさんが出会ったのは偶然だった。たまたま冒険気分で、まりさは山小屋に やってきた。 そこで、いつの間にか暮らし始めていたおにいさんに見つかったのだ。 初めはまりさは警戒した。人間はゆっくりできないと親ゆっくりから聞いていたからだ。 人間はゆっくりよりずっと強い。いい人間もいるが、悪い人間もいる。悪い人間はあまあ まを餌にゆっくりを誘い込み、とてつもなくゆっくりできないことをする、などなど。 ゆっくりとしては賢い親に、人間に対するそれなりに正しい知識を与えられていたのだ。 ところがおにいさんは、その知識からまりさのイメージしていた「にんげんさん」とは違 っていた。 「まりさ。こんにちは。ゆっくりしていってね!」 「ゆ、ゆっくりしていってね!」 柔和な顔で、優しく挨拶してくれた。 それに、まりさのことを食べ物で手なずけようともしなかった。 「まりさ。少し君とお話したいんだけど、いいかな? ああ、おびえないで。怖いなら近 づかなくてもいいよ。どうしても嫌なら逃げてもいい。でも、できたら……僕とお話、し てくれないかな?」 「ゆうう……」 初めはおっかなびっくりだったが、話すうちにまりさはこのおにいさんが悪い人間ではな いことがわかった。言葉は丁寧、話題もゆっくりできることばかり。 まりさは思いつくままに自分の生活を話し、おにいさんはそれにゆっくりした感想を言っ てくれた。小一時間も話せば、一人と一匹はすっかり仲良くなった。 それからまりさは、時折山小屋にやってきてはおにいさんとお話しするようになった。 だが、このおにいさんのことを群れのみんなに話したことはない。 おにいさんにお願いされたからだ。 「まりさ、おにいさんのことは群れのみんなには話さないで欲しいんだ」 「どうして? おにいさんはとってもゆっくりできるひとだよ! きっとおともだちがた くさんできて、もっとゆっくりできるよ!」 おにいさんは悲しげに頭を振った。 「おにいさんはひとりで静かに暮らしたくてこんな山のなかで暮らしているんだ。まりさ だけならいいけど、たくさん来たら落ち着けない。それに、人間を怖がるゆっくりもきっ といる。怖がられるのは、おにいさんにも『ゆっくりできないこと』だから……」 「ゆゆ~、そうだね……」 「でも、まりさ。君は大切な友達だ。暇なときでいいから来てくれて、僕の話相手になっ てくれると嬉しい。いいかな?」 「もちろんだよ! おにいさん、ゆっくりしていってね!」 「うん。ゆっくりしていってね!」 おにいさんは一度もまりさに食べ物をふるまうことはせず、まりさから食べ物をねだるこ とをしなかった。利害関係抜きの関係。それは本当の意味での友達ということだ。それが なおさらまりさを安心させてくれた。 今はこうして、困ったときは相談するような仲にまでなったの。 そして、群れの長にまでなれたのは、おにいさんとのおかげも大きかった。 まりさにとって、おにいさんはなくてはならない大切なお友達だった。 ・ ・ ・ おにいさんとの相談、なによりまりさのがんばりによって、群れの内部事情はどんどん改 善されていった。 群れのみんなは仲良くなり、協力することで食糧事情も良くなった。 それによってゆっくりの数は急速に増えた。30匹あまりだった群れは、今では100を 超えている。それでありながら、まだまだ増えるだけの余裕があった。ゆっくりみんなが 協力すれば、いくら増えても大条文なのだ。 大きくなった群れ。その長であるまりさは、おぼうしが重たくなったと感じた。当然だ。 まりさの決断には100を超えるゆっくりの運命がかかっているのだ。 だがまりさはそれを負担だとは思わない。むしろ誇らしく思った。おぼうしの重さは、群 れのみんなの「ゆっくりできること」が、つまっているとことの証。それはまさしく、ま りさが夢みていたことだ。 そんなまりさだったが、まだツガイを見つけてはいなかった。ゆっくりにしては珍しく、 成体になっても積極的に相手を求めようと話しなかった。まりさにとって群れのみんなが 家族みたいに思えるからさびしくはなかったし、長の仕事が忙しすぎたこともある。 だが、そんなまりさにも春が訪れた。 「まりさ! れいむはまりさと、ずっといっしょにゆっくりしたいよ!」 告白してきたのは幼馴染のれいむだった。ずっと仲良しだった。長の仕事もよく手伝って くれた。 突然の出来事に、まりさは目をぱちくりさせるばかりだった。今までれいむのことを、そ ういう相手としてみたことはなかったのだ。 だが、告白された瞬間、まりさの餡子を衝撃が駆け抜けた。 それは「しあわせー」だった。 今までどんなにおいしいものを食べても、どれだけゆっくりしても感じたことのない、衝 撃的な「しあわせー」。 まりさは群れをゆっくりさせればしあわせになれると思っていた。 でも、まだしあわせがあった。家族を持つこと。大好きな親れいむや親まりさのように、 かわいいおちびちゃんと暮らすこと。今までぼんやり考えていたそれが目の前に来たとき、 その「しあわせー」の大きさにまりさは驚くばかりだった。 「ま、ま、ま! ままままりさも! れれれれいむとずっといっしょにゆっくりしたいよ!」 どもってしまったが、どうにか答えることが出来た。 れいむは恥ずかしげに、でも嬉しそうに頷いてくれた。 まりさはまさに、しあわせの絶頂にあった。 ・ ・ ・ 「ゆふー、つかれたー。まりさ、ちょっとがんばりすぎちゃったよ……」 告白を受けた後、早速まりさはれいむをおうちに呼んだ。そこで、ある問題にぶつかった。 まりさの住むおうちはひとりで住む分には十分だが、家族で暮らすには手狭であることに 気がついた。 「ま、ま、まりさは! おうちをおおきくしたら、れいむをむかえにいくよ!」 「ゆっくりまってるよ、まりさ!」 思わずそんなかっこつけたことを言ってしまった。ゆっくりは告白直後にすっきりーも珍 しくないものだが、みんなのゆっくりのために心身を砕いてきたまりさはそういう方面に は奥手なのだった。 ここ数日、まりさはおうち作りに励んでいた。だが決して長としての仕事もおろそかには していなかった。 家族ができるとゆっくりはゲス化するのはよくあることだ。家族を一番に考え、他の優先 順位を極端に下げてしまう。頭が悪く視野の狭いゆっくりでは仕方ないことといえる。 まりさもれいむの告白に舞い上がりはした。だが、決して群れについて考えることを忘れ はしなかった。群れがゆっくりしていれば、家族もまたゆっくりできる。当たり前の、し かし多くのゆっくりが忘れがちなこの理屈を、長としての経験が長いまりさは餡子の奥ま で刻み込んでいたのだ。 長の仕事とおうち作りの両立にまりさはおおいに疲れさせたが、その苦労も報われようと していた。おうちは大きくなった。家族を養うのに十分な広さまで、遂に拡張したのだ。 「あした、あさいちばんにれいむをむかえにいくよ!」 まりさはそう心に決め、まりさはゆっくり休もうと目を閉じた。だがドキドキして眠れそ うになかった。 そんなモンモンととしていた時だ。 突然、入り口がどん、と大きな音を立てた。 「ゆっ!?」 驚き、まりさは身構える。 誰か来たとしたら、どんなにあわてていても入り口の「ドア」を叩く前に声をかけてくる はずだ。 捕食種が襲ってきた、というのも考えにくい。まりさのおうちの入り口は、群れのみんな で考えた特別製の「ドア」がついている。れいむの「けっかい」が施されており、簡単に は見つからないはずだ。 まりさが思いをめぐらす中、二度、三度とドアは叩かれる。 「ゆゆうっ!?」 一度であきらめないということは、中にまりさがいることを確信しており、それを狙った 攻撃であるのは間違いない。だが、誰が何のためにそんなことをするのか、まりさには想 像がつかない。 固唾を呑んで見つめる。 「ドア」はまりさの経験とぱちゅりーの知識が合わさり、強固な作りになっている。内側 から枝で閂をかけられているため、外からではれみりゃであっても開けられないはずだ。 だが、何度目かの衝撃によってついに閂は折れ、「ドア」取り去られてしまった。 そして、一匹のゆっくりが入り込んでくる。 「うー!」 ピンクのないとキャップに青い髪。こうもりの翼にこの声は間違いない。 「れ、れ、れみりゃあだあああああ!」 れみりゃはすぐには襲い掛かってこず、じりじりとまりさに迫ってくる。入り口はひとつ、 れみりゃの後ろ。逃げ場はない。 まりさは恐怖をどうにか飲み込み、、おぼうしの中からとがった枝を取り出す。 順風満帆に見えるまりさのゆん生だが、危険なこともいくつも経験してきた。れみりゃに 襲われたこともある。もっとも、そのときは運よく逃げ延びただけだ。逃げ場のないおう ちで捕食種と一対一の対峙など、初めてのことだった。 「ゆ、ゆうう……」 「うー!」 まりさのくわえたとがった枝を警戒しながら、しかしひるむことなく、れみりゃはじわじ わと距離を詰めてくる。 まりさの中で恐怖が爆発しそうになった。泣き喚いて全てを投げ出したいという誘惑にと らわれた。 だが、そのときだ。 まりさはおぼうしの重みを思い出した。 おぼうしの中には、群れのみんなが「ゆっくりできること」が詰まっている。 もし、まりさがこのまままりさがやられたらどうなる? おぼうしの中の「ゆっくりでき ること」はどうなる? まりさは冷静さを取り戻し、餡子脳をフル稼働させ、思考を巡らせた。 もし、このまままりさがやられたらどうなるか? きっとれみりゃは、群れのみんなを襲 うに違いない。 特製の「ドア」は、ほとんどのおうちに備えられている。普通のれみりゃだったら安全だ ろう。だが、目の前のこのれみりゃは、それを開けてみせたのだ。 長の導きもないまま、こんな危険なれみりゃが群れを襲う……なんてゆっくりできないこ とだろう。そんなこと、まりさには許せなかった。 そう思った瞬間、体は動いていた。 「ゆー!」 叫び、口にくわえた枝を突き出し、まりさは突進した。 いかに考えをめぐらそうと、ゆっくりにできることなどこの程度だ。だが、この攻撃は悪 くない。 拡張され大きくなったおうちとはいえ、れみりゃが飛ぶのはとても無理。枝はともかく、 突進するまりさの体をかわすのは難しい。枝で傷つけられなくとも、体当たりでひるませ れば勝機も少しは見えてくる。 だが、れみりゃの動きは、まりさのまったく夢にも思わないことだった。 「ゆうう!?」 れみりゃは、翼を使った。 翼で木の枝を受け流し、するりとまりさの脇を抜け、まりさ決死の突撃をなんなくかわし たのだ。ゆっくりとは思えない見事な回避動作だった。 そして、二匹はすれ違い、お互いの位置を入れ換えた。 あわてて振り返ると、爛と輝くれみりゃの目が合い、まりさは凍りついた。攻撃をかわし たからといって、れみりゃはやみくもに攻めてこなかった。侮れない相手だと、慎重にま りさのことを品定めしているのだ。 ドアを破り、翼で枝を受け流し、そして今、油断がない。明らかに普通のれみりゃではな かった。 だが、まりさは幸運だった。その幸運はふたつ。 ひとつはれみりゃと位置が入れ替わったこと、もうひとつはそれにまりさが気が付いたこ とだ。 「ふっ!」 まりさは枝をれみりゃに向かって吹いて飛ばした。もちろんそんなものは通用しない。れ みりゃは翼で簡単に枝を払った。 だが、それでいい。少しの隙ができれば十分だった。 突進により、まりさとれみりゃの位置は入れ替わった。つまり、まりさの背後に入り口が あるのだ。 まりさは急いで外に出ると、「ドア」で入り口をふさぎ、全体重をかけた。閂は壊された ものの、幸い「ドア」そのものはほとんど破損していなかった。 「うー! うー!」 何度か内側からぶつかられたが、入り口は下向きだ。捕食種の身体能力が優れていると言 っても、上から押さえつけるまりさの方が有利だ。 まりさはほっとした。後はみんなを呼んで、この「ドア」の上に重い石でも置いてれみり ゃをとじこめてしまえばいい。時間を置いて、れみりゃが弱ったところでやっつけるなり、 餓死を待つなりすればいい。 まずは、みんなを呼ぼう。大声を出そうと、まりさが息を大きく吸い込んだときだ。 「うー! みんな、ちょっとてごわいまりさがいるんだどー! てつだってほしいどー!」 まりさより先に、れみりゃが助けを呼んだ。 みんな? れみりゃは、一匹じゃない? 戦慄するまりさは、そのときようやく、静かであるはずの夜の群れが騒がしいことに気が 付いた。 いくつもの声が聞こえる。そのいずれもが……悲鳴だ。 「どぼじでれみりゃあがいるのおおお!」 「おかーしゃああああん! ゆわあああ! たちゅけてええええ!」 「いぢゃいいぢゃいいぢゃいいいい! やべでええええ! ずわないでええええ!」 群れに大変なことが起きている。 もう、おぼうしの重みを感じなおすまでもない。まりさは長としてとっくに覚悟を決めて いる。 今、「ドア」から衝撃はない。れみりゃは仲間が来るのを待っているのだろう。 「そろーり、そろーり……」 まりさは気づかれないよう、出来る限り静かに離れる。幸い、れみりゃはまりさの行動に 気づいていないようだ。ある程度の距離を稼ぐと、まりさは群れの中心へと駆け出した。 ・ ・ ・ 平和な群れは凄惨な、とてつもなくゆっくりできない地獄と化していた。 ありとあらゆる場所で、一方的な蹂躙が行われていた。一、二、三……ゆっくりの餡子脳 では数え切れないたくさんのれみりゃが、ゆっくり達を次々と狩っていた。 「どうして……れみりゃがこんなにいっぱいいるの……」 まりさが呆然とつぶやくのも無理はない。 れみりゃは普通、群れを作らない。基本的には一匹で行動する。複数でいたとしても、そ れは家族である場合がほとんどだ。その場合は、親ゆっくり二匹に子ゆっくり数匹という 構成だ。 だが、群れを襲っている無数のれみりゃは、見た限り全てが成体ゆっくりであり、たくさ んいた。 「ゆわあああああああ!」 お友達のまりさが追われている。後ろからはれみりゃに追いかけられているのだ。 ところが、逃げた先には、 「どぼじでれみりゃがいるのおおおお!?」 まるで待ち受けていたように別のれみりゃがいた。 「おめめがーっ! ありしゅのつぶらなおめめがー!」 「いぢゃあああいい! いぢゃいよおお! みえないいよおお!」 「くらいよおお! まっくらだよおおおおお! こわいよおおお!」 声に振り向けば、そこにはゆっくりの目を狙って襲うれみりゃがいた。異様なのは、目を 壊すだけでそれ以上のことはしないことだ。次々とゆっくり達の光を奪い、しかしかぶり ついて餡子を吸い出すということをしない。まるで、目をつぶすことが自分の役目だとい うように。 そして、それを待っていたかのように、今度は体は大きいものの動きは鈍そうなデブれみ りゃがやってきた。そして目が見えずろくに逃げることも出来ないゆっくり達を、次々と 吸い尽くしていく。 「れいむのおちびちゃんをかえせえええ!」 遠くでは、子供を取られたれいむがいる。 まるで見せ付けるように子ゆっくりを殺さず口にくわえるているれみりゃ。れいむの目は それに釘付けだ。 その後ろから、別のれみりゃが襲い掛かった。なすすべもなくれいむは吸い尽くされ、子 ゆっくりも同じ運命をたどった。 「なんなの……これ……なにがおきてるのおおおお!?」 群れをなしてれみりゃが襲い掛かってきた。しかも、連携して。 まりさはもう、この状況がなんであるかわからなかった。 だが、長としてできることは一つだけだ。 「みんなー! ここはもうだめだよー! 『ひなんばしょ』ににげてー!」 叫びながら、地獄となった群れを駆け抜ける。 あらかじめ緊急事態用の避難場所は決めていた。 そこへみんなを誘導すること。まりさにできることはそれだけだった。 声に気づいたれみりゃが襲い掛かってくる。 「! このれみりゃはおめめをねらってるんだね!」 さっき見ていたれみりゃだったことが幸いした。あらかじめわかっていた狙いをタイミン グを合わせてかわす。 「みんなー! にげてー!」 まりさは、叫び、走る。 絶望の中を、わずかな希望にすがりながら。 ・ ・ ・ 「ゆう、ゆう、ゆう……」 荒い息ばかりを吐き、まりさは必死に跳ねていた。あれからまりさは群れに避難を呼びか けながら走り回り、そしてどうにかれみりゃ達から逃げ切り、秘密の避難場所の入り口近 くまでたどり着いていた。 「みんなを……まもれなかったよ……」 まりさが逃げられたのは、れみりゃを無視してずっと走り続けたためだ。 れみりゃの多くは陽動やけん制をする役としとめる役に分かれていたようだった。陽動に もけん制にもかまわずただ駆け続けるまりさはそのコンビネーションにはまらず、標的に なりにくかったのだ。なにより、他のゆっくりがたくさんいたことが大きい。まりさは皮 肉にも、群れを守るどころか、群れに守られてしまったのだ。 「れいむ……だいじょうぶかな……」 群れを一旦離れて思うことは、ずっとゆっくりすることを約束したれいむのこと。 「きっとだいじょうぶだよ……! さきに『ひなんばしょ』でまってるにきまってるよ!」 まりさはそう自分に言い聞かせると、避難場所への入り口と向かう。 緊急用の秘密の避難場所とは、滝の裏の洞窟だった。 水に弱いゆっくりがいるとは誰だってなかなか思わない場所だ。捕食種はよりつきもしな い。 湿気が高いので長く暮らすのには向かないが、短期の避難場所としては絶好のゆっくりス ポットだった。 そして、その入り口近くまで来たところで、まりさはようやく気がついた。 洞窟の中から、悲鳴が聞こえる。 「ゆゆ!?」 驚きのあまり、飛び上がった。 それが、幸いした。 「うー!」 まりさの下をれみりゃが通り過ぎた。 れみりゃは口惜しそうにまりさを見ながら、しかし勢いはとまらず、そのまま洞窟の中へ と飛び込んで行った。 「そ、そんなああ!? どぼじでれみりゃがいるのおおおお!?」 まりさはつけられていたのだ。先に避難場所に着いたゆっくりもまた尾行され、既に避難 場所はれみりゃに蹂躙されている。洞窟からの悲鳴はその結果だ。 あえて逃がし、避難場所を知る。このれみりゃたちはゆっくりとは思えないほど狡猾だっ た。 「どうして……どうして……」 なんでこんなことに。 なにがいけなかったのか。 なにか間違えたのだろうか。 わからない、わからない、わからない。 餡子脳は過負荷に沸騰してしまいそうだった。まりさはもう、何をしていいのかわからな くなってしまい、動きを止めた。 そんなまりさを、現実に引き戻す声があった。 「まり……さ……?」 いつの間にかうつむいていた顔を跳ね上げた。声はあの、ずっとゆっくりすることを約束 したれいむのものだったのだ。 まりさの前に、れいむがいた。 れみりゃにかぶりつかれながら必死にはいずる、れいむがいた。 ひどいありさまだった。 あのふっくらしていた肌は、惨めにしなびてしまっている。しっとりとしてた髪も、恐怖 と痛みで色が薄くなっていた。目の光も弱い。明らかに、もう先は長くない。永遠にゆっ くりするのも時間の問題だろう。 れいむはまりさを見た。まりさは助けてやりたかった。どうにかして、れいむを救いたか った。 「まりさ……にげて……!」 だが、れいむは救いを望まなかった。自分が永遠にゆっくりしそうな状況にありながら… …いや、だからこそ、最愛のまりさが生き延びることを望んだのだ。 「れ、れいむっ……!」 「まりさ……だいすきだよ……まりさは、ずっと……ゆっくり……していっ……」 そして、れみりゃは餡子を吸い尽くされた。 自分のことを省みず、最後までまりさのことを想い、れいむは永遠にゆっくりした。 からっぽになったからだの中に、光を失った目がぼこり、と落ちた。餡子という支えを失 った皮はくしゃりと力なくつぶれた。 「ゆわああああああああああああああ!」 絶叫した。体中の餡子を吐き出さんばかりの勢いでまりさは絶叫した。 そんなまりさに、れみりゃはまるでひるむことなく、けぷ、とひとつゲップを吐くと、鋭 い視線を向けた。その目はふてぶてしく語っている。「次はお前だ」、と。 「ゆっがあああああああああああああ!」 武器となる木の枝はない。策も何もない。勝てる見込みなどひとつもない。何も考えず、 まりさは飛び掛った。 ただ全力で、憎しみの全てを叩きつけるように。 れみりゃの目が変わった。 目の前のまりさが、無力な餌ではなく注意すべき敵であると認識したのだ。 すばやく飛び上がる。かわしきれず、まりさのおぼうしの先っぽがかする。予想外の接触 に驚き、れみりゃの姿勢がわずかに崩れる。 「ゆうう!」 まりさはすぐさま着地し、振り返り追撃しようとした。 だが、出来なかった。着地すべき地面がなかった。 まりさが突っ込んだ先はガケだったのだ。滝が降り注ぐ先へと、まりさは頭からまっさか まさに落ちていった。 ・ ・ ・ 「……ゆ?」 気がつけば川に打ち上げられていた。 おちたとき、川におちた。頭からまっさかさまに落ちたのが幸いした。おぼうしからうま く着水し、まりさは水に浮くことができたのだ。そして流され一命を取り留めたのだ。 まりさはおぼうしをかぶりなおす。 水を吸ったおぼうしは重みを増していた。だが、まりさはそう感じなかった。 むしろ、軽いと思った。 昨日までは「ゆっくりできること」でいっぱいだった、誇らしい重みのおぼうし。 今はずぶぬれの水の重さだけ。そんなもの、惨めなだけだった。 暗い森の中、しんと月明かりだけが照らしている。あの惨劇が嘘のような、あまりに静か な夜の森だった。 まりさは歩き出した。 行かなきゃ、と思った。 どこへ、とは考えなかった。 歩けば、どこかにたどりつけると思ったから。 止まったら嫌な考えに囚われてしまいそうだったから。 だから、ただただ進み続けた。 そして、気づけばまりさはおにいさんの住む山小屋にたどり着いていた。 窓からは暖かな光が漏れていた。まりさの瞳から涙がこぼれた。 「おにいさん、おにいさん! でてきて! でてきてよおお! まりさのおはなしをきい てええ! まりさ、もう、もう、もう! どうしたらゆっくりできるのか、わからないん だよおおお!」 まりさが呼びかけると、小屋の中でどたばたと音がし、あわてた様子でおにいさんが現れ た。 「ま、まりさ!? いったいどうして……」 「お、おにいざーん!!」 まりさが飛びつくと、おにいさんはやさしく抱きとめてくれた。 あたたかい感触に、まりさは安堵を得る。だが今は、その暖かさに浸れなかった。群れの みんながゆっくりできない今、自分だけがゆっくりしたくはなかった。 おにいさんなら、なんとかしてくれるかもしれない。その思いにすがった。 「おにいざん、おにいざん! あのね、あのね……」 「驚いた、よくあのれみりゃの包囲から抜けられたものだね」 「……ゆ?」 まりさは人間が賢いことを知っている。いろんなことを知っているということを、知って いる。 でも、それでも納得できなかった。 「どうしておにいさん、れみりゃのことしってるの……?」 「まあ、中で話そうか」 そうして、まりさはおにいさんに抱かれたまま、中へと連れて行かれた。 まりさが山小屋の中へ招かれるのは初めてだった。 初めて見る部屋の中。 まりさは一目見て、 「なんなのこれええええええ!?」 絶叫した。 通された部屋の中には、無数のモニターが設置されていた。 そのいずれにも、襲われる群れのゆっくり達の様子が映し出されているのだ。 れいむが、ありすが、ぱちゅりーが、みょんが。 れみりゃに襲われ、噛み付かれて、吸い尽くされる。そんな様子が無数に映し出されてい るのだ。 「れみりゃにつけたカメラの映像さ」 「ゆ?」 「つまり、れみりゃ達が見てるものをここで全部見れるんだよ」 「ゆ? ゆゆ?」 まりさにはおにいさんが何を言っているのか理解できなかった。 ただ、予感があった。知ってはいけない、しかし知らずにいられない。そんな恐ろしい、 ゆっくりできないこと。それがここにはあるという、不吉な予感。 おにさんはまりさを机の上に置いた。全てのモニタが見渡せる特等席だ。 「モニターの1番は……技術はあるし発想もいいんだが、たまに止めを刺さず投げっぱな しにするのがよくない。36番は試験に二回落ちただけあって堅実だ。でも、ちょっとや りすぎな感じはあるな……」 ぶつぶつとつぶやくおにいさんの声もまりさにはゆっくりできない。 「お、おに、おにいさん……これはいったいどういうことなの……?」 「見てのとおり、れみりゃが君の群れを殲滅している。それだけのことさ」 おにいさんはいつもと変わらない様子で、さも当たり前のように語る。 まりさは本能的に悟った。目の前の惨劇。それを、このおにいさんが引き起こしたという ことに。 だから、叫んだ。 「ど、どぼじでごんなごどずるのおおおお!?」 それに対するおにいさんの答えはシンプルだった。 「通常種のゆっくりが邪魔だからさ」 まりさは絶句した。 そんなまりさを優しくなでながら、おにいさんは言葉を続けた。 「ゆっくりってやつは、やたらと山の自然を荒らすし人家にも被害を出すことがある。ゆ っくりは単体では脆いナマモノだけど、種としては強靭だ。あっという間に数を増やすか ら、殺すのは簡単なのに根絶となると異常に難しい。繁殖力がありすぎる。増えるたびに 駆除してたら、金も手間もいくらあっても足りやしない。そこで、れみりゃを使うことに したのさ」 おにいさんはモニターのひとつを指差した。 そこにはれいむを吸い尽くすれみりゃの姿があった。 「見てのとおり、れみりゃは邪魔な通常種のゆっくりを食べてくれる。ふらんでも良かっ たけど、あっちは性格にムラがあるし、数も増やしにくい。で、れみりゃを使うことにし たのはいいんだけど、あれもゆっくりには違いないから頭は良くないし、群れを壊滅させ るほど大食いでもない。実際に大量のれみりゃを山に放す実験が行われたらしいけど、あ まり効果は上がらなかったようだ。れみりゃの狩りの効率を、ゆっくりの繁殖力が圧倒的 に上回っているんだ。それなりに頭のいいゆっくりは、普通のれみりゃに襲われないよう に工夫するから、どうしても討ち漏らす、ってのも大きな原因のひとつ。れみりゃの狩り はぬるすぎるんだ」 おにいさんの説明はまりさには理解できなかった。 ただ、ただ、歯を食いしばり、食い入るようにモニタを凝視していた。 「でも人間はバカじゃない。すぐに新しい方法が考えられた。れみりゃが使い物にならな いなら、加工して強化し、訓練して役に立つレベルまで引き上げればいい。結果、通常よ り高い身体能力を持ち、複数で連携をとって確実に群れを殲滅する捕食種のできあがり、 というわけさ」 今度は別のモニターを映し出した。 口に枝をくわえるみょんとちぇんの二匹だ。れみりゃを、二匹で協力して倒すつもりらし い。 そこに、後ろから別のれみりゃ達が襲い掛かった。真後ろからの不意打ちに、二匹はあっ さりと倒されてしまった。 カメラを持ったれみりゃは、二匹の注意をひきつけるおとりだったのだ。 まりさも実際に現場でいくつも目にしていた。れみりゃたちは実に巧みに連携をとって、 群れのみんなを狩っていた。 まりさはただただ目を見開いていた。 だからその呟きはまりさも意識せず漏れた。 「どうして……? まりさたち、なんにもわるいことしてないのに……」 無意識の呟きに、おにいさんは聞きとった。 「悪いことをしない――つまり、善良な野生のゆっくり。それがいけないんだ」 「どう……して……?」 「ゲスが台頭した群れは大して増えない。圧制をしいて死ぬゆっくりが多くて適性数を保 ったり、あるいは勝手に自滅してくれる。でも、本当に善良なゆっくりはだめだ。増える。 際限なく増える。増えすぎて山を丸裸にしてしまった例だってあるくらいだ。山の生態系 にとって、なにもしない善良なゆっくりこそ最大の害悪なんだよ」 「そん……な……」 あまりにゆっくりできないことの連続に、まりさの餡子脳はまともな思考を手放そうとし ていた。だがそれを、お兄さんの言葉が引き止めた。 「それで、これからが君に関係する話だ」 「ゆ? ま、まりさに……?」 「そう。群れ殲滅用の捕食種は完成した。でも、実運用の前には実地試験が必要だ。その 対象はなるべく数が多くて賢い群れが望ましい。それも人間の手の加わっていない、野生 の群れが最適だ。人間の手が加わると、ゆっくりってやつはどうしてもゲスな面を出すか らね。さっきも言ったけどゲスなゆっくりは増えすぎないから駆除対象にならないから、 実地試験に向かない」 「わからないよ……」 「まりさにわかるように言えば、僕達が必要としたのは、そうだな……とってもゆっくり した大きな群れがだった、ってとこかな?」 「ゆっくりした……むれ……」 まりさの瞳からとめどなく涙が流れた。 ゆっくりした群れ。まりさはそこにいた。群れをゆっくりさせるために、全てを費やした。 夢だった。あの群れは、まりさの夢そのものだった。 しかし、夢は願うだけでは叶わない。夢を実現させてくれたのはなんだっただろうか? 「だから僕は君にアドバイスしたのさ」 そうだ。おにいさんがいたからだ。いつもまりさの相談にのってくれるおにいさんの存在 なくして、あれほどゆっくりとした群れはありえなかった。 「いや、ずいぶん気を使ったよ。実地試験には人間の手が加わっていない、という条件が あったから、ゆっくりの領分を越える知識を与えちゃいけない。なるべくゆっくり自身に 考えさせて、群れにゆっくりらしい発展を遂げてもらわなきゃならない。難題だったけど うまくいったよ。僕のアドバイスで、君はゆっくりできただろう? 群れをゆっくりさせ られただろう?」 そうだった。 まりさが悩んで相談を持ちかけたとき、おにいさんは回答を言うことはなかった。それと なく考える道を示してくれただけ。ほとんどの悩みを、まりさは自分なりの考えで解決し てきたのだ。 「いや、まりさに出会えてよかったよ。君は本当に性格のいいゆっくりだった。初めは君 一匹に働きかけるだけじゃうまくいかないだろうと他のゆっくりに声をかけることも考え ていたけど……いやいや、こんなにうまくいくとは思わなかったよ。まりさは最高の『群 れの長』だ。実にいい素材を用意してくれた。ほら、見てごらん。君の群れのゆっくり達 は実によくがんばってくれている」 モニターの向こうではゆっくりたちが奮戦していた。 子ゆっくりを逃がすため、自ら身を差し出すれいむがいた。 おぼうしを引き裂かれても、他のゆっくりをかばって戦うまりさがいた。 あきらめず、みんなを逃げ道に誘導しようと必死に声を張り上げるぱちゅりーがいた。 目をつぶされたのに、少しでもれみりゃを傷つけてやろうと木の枝をふりまわすみょんが いた。 誰かを見捨てるゲスゆっくりは一匹もいない。どのゆっくりも、みんながゆっくりするた めに、最後まであきらめずがんばっていた。 本当に、ゆっくりとした最高の群れだった。 それなのに……いや、それだからこそ。れみりゃ達の実地試験の素材として、最高のゆっ くりたちだと言えた。 群れのゆっくり達の決死の行動は、結局のところなにもかもが無駄だった。どんな抵抗も、 人間によって身体能力を強化され、連携を徹底的な訓練により教え込まれたれみりゃ達の 前には役に立たなかった。 モニターにはひとつとして、奇跡の逆転劇も幸運な脱出劇も映されない。ただただ、惨劇 ばかりが展開されていた。 「ゆっ、ゆっ、ゆっ!」 「まりさ?」 まりさは震えていた。恐ろしさに、なにより絶望に。 おにいさんの言葉はゆっくりであるまりさには難しく、まりさはおにいさんの話を理解し ていない。 「……まりさ、おにいさんがなにをいっているのかぜんぜんわからない。ぜんぜんわから ないよ……」 いや、本当のところは既にわかっていた。本質は、餡子脳の奥で理解していた。だが、わ かりたくなかった。認めたくなかった。 それなのに。 「ああ、つい熱が入ってしまった。ごめんね、まりさ。いつものように、まりさにもわか るように言ってあげるよ」 おにいさんは優しく、しかし残酷にまりさの逃げ道をふさぐ。 「まりさ。君は、れみりゃに滅ぼされるために、群れを大きくしたんだ」 「ゆ、ゆ、ゆああああああああああああああああああああああああああああ!」 まりさは絶叫した。 餡子が沸騰せんばかりの激情に身を焦がされ、その炎を吹き出すように叫んだ。 まりさのがんばってきたこと。しあわせなこと。ゆっくりできると思っていたこと。 いままで生きてきたゆん生で積み上げてきたありとあらゆるもの。なにもかもがこの惨劇 に向かうためのものでしかなかったなど、受け入れられるはずがなかった。 しかし、まりさがどう思おうと目の前の悲劇は終わらない。現実は変わらない。目の前の 無数のモニターではただ淡々と、今もゆっくり達がれみりゃによって滅ぼされる様を映し 出し続けている。 まりさは叫んで叫んで、声が尽きて……そして、叫びに口を広げたまま、動かなくなった。 そんなまりさを、おにいさんはただただいつものように柔和な顔で、しかし感情のない冷 静な目で眺めている。 おにいさんは学者だった。自分の研究を行い、それを発表することに無上の喜びを感じる、 純粋すぎるぐらいの学者だった。こうしてまりさに全てを話したのも、ただ自分の研究が うまく言ったことを話すのに熱中しただけに過ぎない。 そしておにいさんは、研究に情というものを持ち込まない人間だった。 「まりさ。君にはこれからも実験につき合ってもらうよ。あの包囲を抜けた君は研究対象 として興味深いし、れみりゃ達の訓練の相手にもちょうどいいだろう。これからも、ゆっ くりしていってね!」 まりさにはなんの反応も示さなかったが、おにいさんには関係なかった。 透明な箱にでも閉じ込めておくかと、おにいさんが机からまりさを持ち上げると、おぼう しがぱさりと落ちた。 「おや、珍しいな」 ゆっくりのお飾りは、人間の手で簡単に奪えるが、こんな風に自然に落ちてしまうなんて ことはまずない。不思議と落ちないようになっているのだ。 まりさの中にわずかに残った意識が、それを当然のことだと思った。 まりさはおぼうしのなかを凝視した。 何もない。空っぽだった。がらんどうのおぼうしだ。 あれだけたくさんつめこまれていたはずの「ゆっくりできること」。 それがみんなみんな、なくなってしまったのだ。 だから、まりさのおぼうしは、すっかり軽くなってしまい、ちょっとゆれただけで簡単に 落ちてしまったのだ。 おぼうしはおにいさんの手によってかぶらされた。 まりさはもう頭の上のおぼうしに、もうなんの重さも感じなかった。 了 by触発あき 挿絵 by触発あき 過去作品 ふたば系ゆっくりいじめ 172 とてもゆっくりした蛇口 ふたば系ゆっくりいじめ 180 ゆっくりばけてでるよ! ふたば系ゆっくりいじめ 181 ゆっくりばけてでるよ!後日談 ふたば系ゆっくりいじめ 199 ゆっくりたねをまいてね! ふたば系ゆっくりいじめ 201 ゆっくりはじけてね! ふたば系ゆっくりいじめ 204 餡小話の感想れいむ・その後 ふたば系ゆっくりいじめ 211 むかしなつかしゆーどろ遊び ふたば系ゆっくりいじめ 213 制裁は誰がために ふたば系ゆっくりいじめ 233 どすらりー ふたば系ゆっくりいじめ 465 おぼうしをおいかけて ふたば系ゆっくりいじめ 469 おぼうしをぶん投げて 上記以前の過去作品一覧は下記作品に収録 ふたば系ゆっくりいじめ 151 ゆっくりみわけてね! 触発あきの作品集 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る 報われない話、イイネ -- 2014-05-11 03 19 32 冒頭の「もみもみしゃん」がもう既にウザイ -- 2013-04-17 19 22 35 まりさは可哀想なゆっくりだね。 まぁ個人的に俺、れみりゃ大好きだし 満足~♪ 「うー☆れみりゃはまりさを食べたいんだどー☆」 -- 2012-10-31 22 38 30 まりさ………くそう… やっぱりこれが正しい行動だとは思えん……どうしてもクズ人間がっ……… と思ってしまう… -- 2012-07-18 03 24 18 ↓6 最も観たかった、とか、おめえの感想を全員が共有してるわけじゃねえんだよ。 ゆっくりりかいしてね? お前は毎回毎回なんでそう餡子脳なレスしかできないの? 馬鹿なの?死ぬの? -- 2012-05-16 02 27 29 研究お兄さん -- 2011-10-13 19 59 47 ↓×10 お前文章読んだのか? -- 2011-02-15 00 33 35 ↓↓↓なんか変な深読みしちゃってるけど、作者さんは続編書く気なんてさらさら無かったと思うよ。 -- 2011-01-12 01 28 23 ↓↓長まりさをこれ以上いじめても面白くならなそう。なにも残ってないお帽子を見て絶望するまりさをラストに据えることは、お帽子の中身が話の主題だから適切だし、しつこい虐待よりもSSがきれいに終わって読後感が良い。既に心の折れたまりさを執拗に虐待し殺しても、むしろSSの質を落とす結果になったと思う。だから無くて良かった。 ゆっくりは薄皮の一枚まで余すとこなく虐待しなきゃ許さん!物理的虐待以外はいらないんだ!って人には触発あきさんの作品は合わないかもね。 -- 2011-01-12 01 24 39 長まりさは十分な精神的虐待を受けてるしこれ以上の虐待は反応を示さなくて面白くないかと -- 2010-11-27 07 42 40 長まりさの無残で悲惨な死に様まできちんと見たかったですね 読者の感想次第で続編が作れるようにとの考えでそうしたのであれば 止めた方がいいですね 最も見たかった長まりさへの虐待が最後まで無かった事で フラストレーションが溜まってしまいゆっくり出来ませんでした -- 2010-11-12 05 54 12 すっきり制限で自制できる群れじゃない限り、害にしかならないのかー なにもしない善良なゆっくりこそ最大の害悪… 自制”しない”のが最大の悪という事か -- 2010-10-11 23 09 22 負荷が増えないよう配慮して自発的に個体数調整するとか 増えた負荷を穴埋めする活動をできる程度に賢くないと 中期的な山の環境維持って視点からは野放しにできないか -- 2010-10-08 02 29 26 協力して、拡大できるようになったからこそ、他の生物にとっての害になる。 だから、人間は害獣として駆除する、か。ゲスの方が幸せなのかも知れないな。 資源を考えず、際限なく増える人間のミニマライズと言った印象。 -- 2010-09-28 17 34 51 >頭悪すぎ。 自己紹介がうまいなぁ それとも話を読んでないのかな、もしかしたら日本語が読めないのかも知れないけど -- 2010-09-23 07 47 33 行動が悪なのか… -- 2010-09-23 01 52 05 人間はバカじゃないとか言ってるけど、バカだろ。 これだけ善良で賢い個体が居ることを知りながら絶滅させることしか考えられないなんて頭悪すぎ。 -- 2010-09-20 02 32 42 このお兄さんがゆっくりできなくなる話が読みたい -- 2010-03-07 02 24 42
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/4451.html
『ゆっくりの国3』 18KB 愛で パロディ 差別・格差 二次創作 戦闘 同族殺し 共食い 群れ 捕食種 希少種 自然界 人間なし 創作亜種 独自設定 久しぶりに続きを書きました。幼少期編終了です ああ、お腹が減ってしまったわ。腹の底が接ついてくる。どうしたものでしょう。 この辺りに食べ物はないし。土を食べるのは飽きてしまったし。他のものが恋しい。 最初は周りに草が生えていてモリモリ食べることが出来たけど、もう、私の周りにはない。 なぜなら、私が食いつぶしてしまったからだ。それだけ、私は大食いで。 ボディーラインに気を使い始めたのはいつの頃だろうか。やっと、泣き止むことが出来た頃だろう。 そうだ、私の両親は酷いゆっくりだった。私が他のゆっくりとは違うからといって私を捨てた酷い親だ。 それから、私は一匹になった。やることもなく、ただ生きていくだけの毎日。 時折やってくるゆっくりを食い殺してしまうのが楽しみの毎日。 本当は挨拶がしたい。お話がしたい。でも、私の本能はそいつを喰らえとささやくの。 ああ、つまらないゆん生だ。今日も今日とて私は目の前のゆっくりの群れに目をやる。 美味しそう。でも、何処か不思議な暖かさを感じる。まるで、あのゆっくりに会えば私が救われるような。 「ゆゆ!? もしかして、そこにおわすのはゆゆこさまではありませんか!!?」 「こぼね?」 ゆっくりの国3 嘘あき 秋もそろそろ終わる頃、肌を舐めとるような寒い風が颯爽と現れる近い冬。 れいむたちは苦虫を噛んだようにしていた。そんな群れのみんなとは一線を画すようにさとりはニコニコ、あかおには黙りしていた。 それもすべて、目の前にいるありすの群れが原因だ。若いありすたちはれいむの群れに在る野菜畑に興味津々で、群れの先導者たちはれいむたちを見やる。 れいむたちは恐れていたことが遂に来たとばかりに考えていたのだ。なぜなら、野菜畑の存在は秘匿だったからだ。 他のゆっくりは野菜が生えてくることを知らない。だから、生えている場所というのはゆっくりにとって好立地である。 そうなれば、テリトリーの奪い合いが始まり、中身で土地が汚れるのは自明の理である。 「ゆゆゆ、おはなしがつうじないとはなしにならないよ!」 そして、何よりも別の種類のゆっくり同士は言葉が通じないのだ。ただし、例外はある。 「ありすさんたち、ここがわたしたちのはたけです」 「とってもとかいはなばしょね!」 リーダー格のありすはこの群れの立派な畑に感動を覚えた。 「もももも、もしかして、さとりがありすたちにこのばしょをおしえたの!!??」 「そうですよ」 「な、なんてことを……」 長れいむはさとりにこの群れの存在を教えてはいけないということを教えそびれたのだ。 それに、さとりはありすたちと会話することが出来る。会話ができないのが常識だったことでさとりについては盲点だった。 「だいじょうぶです! ありすさんたちにはやさいのつくりかたをきちんとおしえましたから!!」 「どういうことなの?」 「ありすさんたちはわたしたちにおやさいのつくりかたをまなびにきたんです」 さとりは胸を張って言ってみせた。しかし、長れいむはそんなさとりの頭をもみあげで小突いた。 「このおばか! おやさいさんのそだてかたをだれがおしえるというの! それに、ありすたちがごうとうさんだったらどうしてたの!! ばかなの? しぬの!?」 「で、でも、ありすさんたちはわたしたちにおちちをくれるいいゆっくりですよ?」 「それでも、だめ! どうせ、おやさいさんをうばいにきたにきまってるでしょ!?」 「だから、ちがいますって。わたしがきちんとおやさいさんはそだてないとはえてこないことをおしえました!」 「たしかに、はたけをつくるとちはあまってるし、はたけをそだてるゆっくりのかずがほしいところだったよ!」 「それじゃあ!」 「でも、だめ!! えたいのしれないゆっくりをむれにはいれられないよ!!」 「じゃあ、わたしは!? あかおには!?」 そう言われると、少し言葉が詰まる長れいむ。なんだかんだで、群れに馴染んできたこの二匹を貶したいとは思っていない。 特に、あかおにのあつかいはデリケートだ。群れから追放すると仕返しで群れが全滅するかもしれない。 今のところは落ち着いているが、いつ牙を向けてくるかもわからない。 あんな爆弾をよく抱えているなと、長れいむはすこし冷や汗をかく。 「で、でもね、かってにそういうことをするのはいけないよ!!」 「ごめんなさい……」 「そろそろいいかしら?」 長れいむがさとりを叱っている所にリーダーありすが会話に割ってきた。 「だいたい、さとりがれいむにおこられたことはわかるは。おさとして、れいむのきもちはわかるもの」 「そ、そうですね……」 「でも、それでも、ありすたちにおやさいさんのつくりかたをおしえてくれるとうれしいわ!」 「まかせてください!! れいむ! いいでしょ?」 「ゆゆ~ん……」 長れいむは考えた。ありすたちが悪いゆっくりじゃなさそうなのはわかっている。元々、近場に群れを築いていたゆっくりで、互いに距離をおいてたからだ。 互いに交戦の意志はないのはよく分かる。それに、しんきの存在も気になる。噂では、ありすたちの群れがおとなしいのはしんきのお陰とか。 なんだかんだで、あかおにという爆弾をすでに持っている以上、爆弾をもう一個抱えても大丈夫なのかもしれない。 「……わかった、とりあえずありすたちをあんないしてあげて」 「ありがとうございます!」 こうして、れいむの群れに楽しい仲間が増えた。 冬の間、れいむたちは寒さに悶えながらも外で作業をしていた。冬ごもりの必要がないので外に出ても大丈夫だ。 なぜ、冬ごもりが必要ないかというと、天候が恵まれているから、食料が常に得られる状態だからである。 ありすたちもせっせと外にでて畑仕事をしていた。れいむを交えながら畝を作り、冬でも育つ種を埋めて野菜作りに励んでいた。 若いありすたちが野菜の芽を食べてしまったり失敗はあれど、さとりを仲介したありすとれいむたちは真剣に野菜作りをした。 「ふう、これがれいむたちのやさいのようにそだつなんて、ゆめのようだわ!」 ありすはれいむたちの好意で野菜を育て始めの冬の間には野菜を分け与えてもらえることになっている。 その時に出されたやさいはいつも食べている草の味とは違い、初めて食べる衝撃的なものだった。 それ以降、ありすたちのモチベーションが上がり、野菜作りにせいをだしているのだが、時間がかかることなのでイライラも募り始めている。 しかし、しんきの言葉で、ありすたちは頑張っている。 「みんな、おやさいさんができるまでがんばりましょうね!」 しんきは不思議なゆっくりである。違う種類なのにありすたちと言葉が通じる。すべてのゆっくりの言葉がわかるさとりをのぞいて、他のゆっくりとは話せない。 ありすとは話せるし、ありすたちにとって偉大な偶像でもある。 「わかったわ、まま!!」 ママと呼ばれるしんきはありすたちの働く姿に喜びを感じながら、ゆっくりと畑の近くに佇んだ。 「しんきさん!」 ぴょんぴょんとしんきの元へ跳ねてくるのはさとりであった。 「あら、またままのおっぱいがほしいのかしら?」 「いいえ、もうだいじょうぶです! いま、おしごとがおわったのであそびにきたのです!!」 「あら、またてつだいにきてくれたのね!」 「びりょくですが、おてつだいに!」 さとりは自分でありすを誘った以上、ありすたちには幸せになって欲しかった。 そもそも、なぜさとりはありすをれいむたちの群れに引き入れたのか。 少し話は遡る。 「へぇ、れいむたちはおやさいさんをたべているのね」 ある日、さとりが丘の上にあるありすたちの群れに行った時の話だった。 しんきにその話をしていたら、ありすたちが聞きつけたのだ。 「とってもとかいはなぷれいすなのね!!」 「ありすたちにもおしえて!!」 前述した通り、ゆっくりにとってお野菜が生えるプレイスは天国と同意義である。 そう、有りもしないものとして、ゆっくりの常識であった。 「ですが、みなさん。おやさいさんはそだてないとはえてこないんです」 「なにをいってるの!? おやさいさんはかってにはえてくるのよ!!」 「そうだそうだ!!」 「ちがいますよ!」 「うそつきさとりはだまりなさい! このいなかもの!!」 やんややんやとありすたちが口論しているとしんきが一喝した。 「こら! あなたたち! ままはかなしいわ!!」 騒いでいたありすたちは静かになった。さとりは辺りを見回すと、しんきが悲しそうな顔で怒っていた。 「さとりをいじめるのはままがゆるさないわ! それに、さとりがうそをつくひつようはないのよ。しんじなさい!!」 「……わかりました、とりあえずじゅんをおってせつめいさせていただきます」 さとりはありすたちに自分が経験した事を話した。 各々、ありすたちは色々な感じ方でありすの話を聞く。納得するもの、嘘だと思うもの。 しかし、最終的に一つの意見にまとまった。野菜が欲しいと。 「おねがいできるかしら?」 草が生える場所を転々と移動し続ける生きるより、自分の場所がほしい。 ありすたち、遊牧ゆっくりにとっては夢の様な話であった。 夢がかなったありすたちは家を作った。家を作り、道具を作り始める。花の飾りや木で作った籠。 農作業やファッション、日常生活に必要な物を作ってはそれをありすとれいむでシェアをした。 ありすたちは確実に群れには必要な存在となったのだ。言葉はわからなくても。 特に、あかおにがもたらした歌は特にれいむたちに人気だった。 あかおにが歌を歌うとそれを聞きにれいむたちが集まるのだ。終いにはれいむたちは歌を真似はじめた。 最近では、群れのなかでは歌が蔓延している。各々好きなリズムと歌詞で歌うのだ。 ありすたちも真似をしたりするが、れいむ程上手くはない。 というより、れいむは歌を歌うのが上手だった。あかおによりも上手だった。 「ゆ~ゆゆ~ん、おやさいさーん、ゆゆんゆゆーん!」 野菜に水をあげながられいむは歌う。その姿を木の上から眺めていた赤鬼はすこし幸せな気分だった。 赤鬼が空を飛びながらパトロールをしていた時だ。赤鬼はこの能力で群れの警備を任されている。 「あれは……」 草原を横切る軍団。みょんと呼ばれるゆっくりが中心に大きな群れが移動する。 その中心にはすぃーに乗った胴付きのみょんと見たことのないゆっくりがいた。 ニコニコと笑いながらすぃーにのる桃色の髪と水色の帽子、三角頭巾を被ったゆっくりが。 それだけなら、良かったのだが、あかおには警戒した。みょんたちとともに奴隷ゆっくりが居たからだ。 この世界には主に6の種族がいる。れいむ・まりさ・ありす・ぱちゅりー・ちぇん・みょん。 みょんは樹の枝を得意とした好戦的なゆっくりで、捕食種の場合が多い。この群れもそうである。 群れを襲って奴隷を確保して、群れを経営する遊牧ゆっくりの一種である。 ありすのように、草食系のゆっくりとは違うため、非常に危険だ。 あかおには奴隷を見る。各々、みょんたちに樹の枝で突かれながら盲目的に歩く。 奴隷の運命なんて決まっている。生きたまま食べられるか、繁殖用に生かされるか、おもちゃにされるかだ。 最悪なことに、ありすたちが元居たむれを嗅ぎまわっているらしい。草を食いつくされた丘の上なんて、誰かが住んでいたことが明白なものだ。 だから、みょんたちが斥候をだして、れいむたちの群れがバレる可能性が高い。 あかおには大いに焦った。このままでは、一網打尽だと。みょんたちの群れが50匹程度なら何とかできなくもない。 だが、200匹クラスの大きな群れではやられるのがオチだ。それに胴付と見たことのないゆっくりが気になる。 対して、れいむ300とありす100匹。数では勝っていたとしても、戦闘経験がない両方では話にならない。駆逐されて奴隷にされるのがオチだ。 とりあえず、あかおにはこの事態を伝えるために群れに戻ることにした。 「まさか、みょんたちがこのむれをねらっているなんて……」 長れいむはさとり越しからその報告を聞いて、困惑した。みょんやまりさの悪い噂はよく聞くからだ。 曰く、まりさは泥棒、みょんは野盗。二匹とも好戦的でおとなしいゆっくりを狙うと。 「みんなでたたかうにしても……むりだよ……」 「でも、たたかわないと、このむれが!」 弱腰のれいむにさとりは口を挟むが一蹴される。 「ばかいわないでね! れいむたちはゆっくりしてるんだよ! ゆっくりできないことはむいてないんだよ!!」 あかおにも長れいむが怒鳴った内容がなんとなく分かった。だから、あかおにはこうさとりに呟いた。 「にげるじかんをかせいでやる。おまえらはにげろ」 「な、なにをいっているのですか!? まだ、みょんたちがくるわけでもないのに」 「あいつらをなめちゃだめだ。むれをつくってかりをするやつはてごわい」 「でも!」 「まかせろとつたえろ」 「……わかりました」 「しににいくわけじゃない」 「はい」 長れいむはさとりから話を聞いた。そして、このプレイスを放棄する決断をした。 「おさあんまりだよ!! ここはれいむたちがつくったゆっくりぷれいすなんだよ!!」 「そうだよ!!」 「このぷれいすのためなられいむ、たたかえるよ!!」 「そうだよ!!」 群れのほとんどのゆっくりは反対していたが、長の決断に納得するゆっくりも居た。 「はっきりいって、かちめはないよ……ここはたねをもってにげようよ」 「そうだよ」 「びんじょうれいむはゆっくりしないでね!!」 「そうだよ」 「………」 れいむたちは諦めた。諦めて、この土地を明け渡そうと。だが、ありすはどうしようか。 ありすたちはさとりから話を聞いている。だが、逆にありすたちは戦おうとしているのだ。 「わたしたちはたたかうわ!!」 「そうよ、せっかくのこのとちをあけわたしてたまるものですか!!」 ありすたちは定住することがなかった。だから、土地を得られたことが誇りになっていた。 だから、戦う選択を選ぶゆっくりが大半であった。 「れいむたちはにげるのね、べつにかまわないわ!! わたしたちのばしょはわたしたちでまもる!!」 「わたしも、たたかいます!」 「さとり、おちびちゃんのあなたがたたかうひつようはないわ」 「でも!」 「あなたはにげなさい! ゆめをみせてくれてありがとう!!」 お腹がすいた。奴隷を食べるのもあきた。また、土を食うのはゴメンだが。そう思いながらゆゆこはすぃーのうえで退屈そうにあくびをした。 「ほうこくだみょん! このちかくのはやしにむれがあったみょん!!」 機会というものは向こうからやってくるものだ。今日は楽しいことになる。奴隷を殺して、おもちゃにして、その上で食べてやる。 「そうね、せっかくだし、あそびましょう!」 「わかりましたみょん! それではいまここにいるどれいはどうしましょう?」 「ころしなさい。じゃまになるから」 「わかったみょん!!」 みょんたちは次第に笑顔になっていく。獲物をいたぶられるチャンスはなかなか回ってこないからだ。 次の獲物を発見するまで節約して行かねばならない。荷物を減らすためにも、戦う前の前夜祭としての意味合いがある。 「いなかものぉおおお!!!」 「わわからないよぉおおおお!!!」 成体のありすとちぇんに樹の枝を刺していくみょんたち。何本目で死ぬか遊んでいるのだ。 「のぜ、のぜぇええええええ!!」 何回目でまりさが腹上死するか試すためにれいぽぅをしはじめるみょん。 「むきゅーむきゅー!!」 それを黙って待つのみの奴隷たち。 「みんなおいしそうねーうふふ」 「おねがいだからたべないでねー!!」 そして、ゆゆこの前には一匹のちぇんが差し出されていた。不思議な事にゆゆこはちぇんとしゃべることが出来た。さとりのように。 「だーめ!」 そういうと、ゆゆこは口を開いて息を吐いた。 「ゆぐ、ゆががががががあがががが!!」 その行きの臭いはゆっくりの死がこびりついた息だった。まるで、呪いが降り掛かってくるかのような苦しみに巻き込まれるちぇんは、悶え死んだ。 斥候に出たあかおにはありすたちに報告した。 「やつら、どれいをころしてくってる! いまがちゃんすだ!」 言葉は通じないが、今攻めたほうが良いということ先行して襲うことで体現した。 「て、てきしゅう!!」 奴隷を遊んで殺していたみょんたちは敵襲に驚かざるを得なかった。 暴力のままにあかおにが的確にみょんたちを殺していく。それに怯んで総崩れになった所を木を咥えたありすたちが襲撃する。 「おまえら、ころす!!」 一撃で中枢餡を潰す両手をクマのように振り回し、みょんたちを殺すあかおにに枝を差し向けてくる敵が来た。 「そこまでだみょん!」 リーダー格であるみょんだ。身長ほどの枝を振り回したみょんがあかおにに対峙する。 「なぜ、ありすたちといっしょにこうげきしてくるかわからんみょんが、やるならあいてになってやるみょん!!」 樹の枝を振り回してくるみょんにテクニックを感じなかったが、身体能力があかおに並にあることが厄介だった。 「みょん、このみょんさまのはくろーけんをよけるとはなかなかやるみょん!!」 そう言うと、腰に指していたもう一本の枝を取り出し二刀流の構えを見せる。 「みょんのにとうりゅうにたえられるかなだみょん!」 体を後ずさりし、捻りながら剣を交わしてきたあかおにだが、二刀流になると手数が増えるため傷が増え始めた。 「これはやばいかな」 「そらそら! どうしたみょん!! みょんはふらんやれみりゃをたおしたことがあるみょん! おまえもそのなかまにいれてやるみょん!!」 「くちかずがふえて!! ちょうしにのるなよ!!」 そう言うと、ふらんは一旦空に逃げた。 「ひきょうもの! せいせいどうどうたたかえだみょん!!」 挑発するみょんだが、それを無視して、ふらんは林に逃げ込んだ。 「おさ! あかおにがてったいしたわ!!」 戦場を引っ掻き回していたあかおにがいなくなったことで、みょんたちの体裁が整い始めていた。 「これはやばいわ!!」 今まで有利に事を進めていたが、みょんたちが次第に攻勢を始める。 「こっちのかずのほうがおおいみょん! かずでおすんだみょん!!」 胴付みょんがみょんたちに号令をかける。そうなると、規律が整い始めたみょんたちは得意な樹の枝でありすたちを圧倒し始めた。 「くっ、ここまでなの!?」 押され始めたありすに対抗策はなかった。ただ、滅ぶのを待つだけだった。 だが、奥のほうからみょんたちの悲鳴が聞こえてくる。新手の味方がやってきた。 「みなさんおまたせしました! いまからさとりとれいむたちではさみうちにします!!」 300匹で包囲網を展開するれいむたちは二匹で一匹を相手するように散らばった。 またもや奇襲を受けたみょんたちは再度、隊列を崩してパニックに陥る。 「し、しずまるんだみょん!!」 胴付みょんが鎮圧しようとしたところに、空から何かが降ってきたのである。 「な、なんだ――っ」 「しね」 気がついたら、みょんの腹に枝が刺さっていた。空から急降下したあかおにによる攻撃だった。 「ぐーんぐにるはおねえさまのぶきだからすきじゃないけど、つよい」 「はぐぅ……がっ……」 膝をついたみょんは腹に感じる激痛を抑えるので必死だった。れみりゃやふらんのように治癒能力がないため、致命傷である。 すぐに、甘いモノを食べたりして安静にしていないと回復しない。だが、この状況でそんなことが許されるだろうか。 「ゆゆこさま……おにげくださ……い」 リーダーを倒したことで逃げ出すみょんが出てきた。そうなると、この戦場はありすとれいむ連合の勝利である。 「こぼねーみんなにげちゃったのね」 ふらんの眼の前に居るゆゆこは呟いた。ずっと、戦いを見ていた傍観者であるゆゆこにあかおには言い捨てる。 「おまえはさとりといっしょだな」 「あら、わたしとおなじゆっくりがいるのかしら?」 言葉が通じるゆっくりに驚かなくなったあかおに。だが、さとりとは根本的にちがうこの相手に忌避感を感じていた。 「おまえとはちがう。あいつはほんとうにたすけあおうとしてる。おまえはどうだ?」 「ばかね。わたしたちにはおうになるけんりがあるのに」 「おう、だと?」 初めて聞く単語だが、あかおにには意味がわかる。 「そう。なにをしてもいいじゆうよ」 「ゆっくりはたすけあわないと、しあわせになれない」 ゆゆこやみょんのやっていることは助けあいだが、助けあいではない。 言葉によってありすとれいむが結びついたように、ゆゆこにも奴隷を解放し、別の生き方が出来たはずだ。 「おうはすべてをしはいするちからがあるのよ?」 「なら、さとりはやさしいおうさまだ」 「なら、わたしをここでころす?」 「にがしてやる。にどとこっちにくるな!」 「いいでしょう。だが、くにができたらまたおそうわ。つぎはまけない!!」 そう言うと、すぃーでゆゆこは逃げさって行った。殺してしまいたかったあかおにだが、すぃーには追いつけない。 「これでよし」 こうして、群れを守りきることが出来た。安心したあかおにはさとりの元へ帰っていった。 元の場所に戻れた喜びを噛み締めながられいむとありすたちは喜び合った。 そのどんちゃん騒ぎとは別の場所で、さとりとあかおには語り合う。 「さとり、おうになれ」 「はい?」 「……いまはいい。だが、おぼえておけ。くにをつくってみんなをしあわせにしよう」 「そうなるといいですね」 さとりはなんとなく、あかおにが見ている夢のことが分かる。きっと、その夢は叶うだろう。そう思いながら一部で固まっているゆっくりをみた。 みょんに囚われていた奴隷たちだ。彼らはこれからどうなるかビクビクしながられいむたちとありすたちの判断を待っている。 できれば、仲間にしたいなと思うさとりであった。そうすれば皆が幸せになれるなと。それに、畑がある。 畑は幸せを作る神様からの贈り物だ。確かに争いの種になるかもしれないが、さとりは希望を持っていた。 こうして、さとりは国を作ることになる。 それはまだ先の話。 ゆゆこはお腹がすいていた。でも、本当に心から欲しいのはコミュニティーである。 心を満たしたいゆゆこは一緒に逃げたみょんたちと合流し、今度こそ負けまいと考える。 「あのむれにおしえてもらったわ。わたしはほんとうのおうになる。そのためにはなかまがいるわ」 ゆゆこは宣言した。 「わたし、ゆゆこはじゃくにくきょうしょくのせかいをつくる。そのせかいではびょうどうに……しがあるの」 続く
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/2547.html
『神は饅頭の信徒を裏切るか?』 7KB 自業自得 駆除 現代 オチ、予測できますか? 春――それは目覚めと誕生の季節。 冬が終わり、雪が解けて訪れるその季節は実に生命に満ち溢れている。 ゆっくりはある意味、その季節の移ろいを象徴するようなナマモノだ。 下手な冬篭りでその数を大幅に減す一方で、春になったらその異常ともいえる繁殖力で数を増やす。 その被害を受けるのは、専ら自然と昆虫、そして人間だ。 だからこの季節は、ゆっくりの駆除活動が多くなる季節でもある。 冬が明ける直前のゆっくりが一番数が少ないのだから、合理的な考えと言えるだろう。 とある農村に面した、木が生い茂る山。 ここにも人間の駆除による全滅を待つだけの群れがある。 ドスがいるわけでもない。 希少種がいるわけでもない。 特に変わった風習を有しているわけでもない。 一見すると日本全国どこにでもある普通の群れ。 しかし、この群れは特別な群れなのだ。 この群れは―― 神様に守られた群れ。 ************************************* 【神は饅頭の信徒を裏切るか?】 ************************************* 「んー? ……またハズレかよ」 雪が未だ山に残る冬の終わりに、ゆっくりの群れがある辺りをあまり言葉遣いのよくない女性が歩いていた。 「なーんなんだぁ?」 山の中で一人首を傾げるこの女性。 加工所の中でも最悪の4Kで知られる駆除課に勤める女性だ。 4Kとは、いわゆる3Kに一つ追加された駆除課に対する悪口である。 キツイ (山や森を重装備で駆け回ることも珍しくない) 汚い (食品工場と野良仕事を比べれば当然) 危険 (時にはドスまりさなんかを駆除することも) キ○ガイ (こんなところで働こうと考えるのはゆっくり虐待趣味を持ってる人間ぐらい) とまあ、酷いものであるがそれを気にしているようでは働けない。 そもそも、殆ど事実だから言い返せないのである。 一応彼女を擁護すると、彼女はセクハラ上司を蹴り飛ばして病院送りにしたので左遷されたのであって、虐待お姉さんではない。 ゆっくりの悲鳴は大好きだが、多分それは別物だと彼女は考えている。 さて、その女性であるが勿論ここには仕事できている。 しかし、どうも様子がおかしい。 「冬を越せるゆっくりが少ないのはいつもの事だけどなぁ……これは普通じゃねーぞ」 去年の秋はなにやら畑に来るゆっくりが多かった。 今年の秋もその調子では堪らないから、山のゆっくりを駆除して欲しい。 ごくごく普通の仕事だった。 だが、ゆっくりの巣穴を片っ端から覗き、中を掻き出しても生きているゆっくりが一向に出てこない。 かれこれ半日近く作業をしているが、未だに一匹たりとて出てこないのは異常だ。 冬眠しているわけではない。 巣の中身を掻きだした時に、死骸が出てきているからだ。 流石にみんながみんな冬篭りに失敗したと考えるのは難しい。 去年の秋は別に草や木の実が少なかったということは無かったらしいからだ。 季節外れのれいぱーも考えたが、雪はまだ残っているし、野生のれいぱーではれいむ種の『けっかいっ』を破れないはず。 何より、入り口が崩された痕跡が一切無い。 「気味わりーなぁ…」 巣を埋め立てて、スコップを肩に担いで次の巣穴を探す。 ゆっくりが壊滅してる異常なシチュエーション。 理由がわからないことの気味の悪さ。 ゆっくりの悲鳴が聞けていない事の肩透かし。 様々な要素が加わって駆除お姉さんのテンションは最下層。 もう全滅してた事にして帰りたい気分ですらあったが、流石にそれは出来ない。 ただでさえ兄夫婦プラス娘一人と同居していて肩身の狭さを覚えているのに、 仕事まで無くなったら出て行かざるを得なくなるじゃないか。 「あーあ、やーだねー」 自分もどこぞの友人みたいに半分道楽の仕事をしながら他人の金で生きていけねーかなー。とか考えつつ歩く。 歩いてると、また不自然なバリケードが木の根元に盛られているのが目に付いた。 気負いも期待も一切無く、スコップをバリケードに突っ込む。 「「どぼじでげっがいざんがごわれでるのおおおおお!!!?」」 と、穴から心地よい絶叫が響いた。 うっせーな。雪崩が起きたらどーすんだよ。とは思わない。 「第一群れゆっくり発見でーすーかー?」 半日も森を歩かされて肩透かしを食らい続けていた女性の心が躍り始めた。 さてさて、このゆっくりはどう鳴いてくれるかね? と。 「ゆっ!? にんげんさんはゆっくりできるひと?」 巣穴から恐る恐る顔を覗かせたのは、成体のまりさだった。 「アタシか? アタシはゆっくり出来る人だよ。ゆっくりした……加工所の人間さ」 「かこうじょはゆっぐぢでぎないいいいいいい!!!」 「…っぷ。あっはははははは!」 とりあえず期待通りのリアクションに破顔一笑する女性。 「とりあえずでてこいやー♪」 スコップで器用にまりさを掻き出して、ひっくり返す。これでもう動けない。 「やべでえええええ! ざむぐでゆっぐぢでぎないいいいいい!!!」 「ばりざああああああ!!!」 番のまりさの身を案じたのだろうか。 巣穴からは今度はれいむが姿を見せていた。 悲鳴が聞こえたんだから、隠れてればいーのにとは思うけど、仕事がはかどるならそれに越した事は無い。 「ゆっ!? やめてね! れいむにひどいことしないdおそらをとんでるみtゆぎぃ!?」 「れいぶううううう!!!!」 れいむもまりさと同じようにひっくり返した。 「さーてさーて、お楽しみのおうちが台無しになるタイム!」 ややハイテンションで、巣穴の中を掻き出す。 本来は必要ない行動だが(そもそも後で埋めなくてはいけないし)、これをやるといい声でゆっくりが鳴いてくれるのである。 「やべでえええええ! おうぢにひどいごとじないでえええええ!!!」 「だべものがああああ!! まりざのゆっぐぢじだだがらものがあああ!!」 「んー?」 悲鳴をBGMにノリノリで掘り起こしていた女性の動きが止まった。 まりさの『ゆっくりしたたからもの』が目に留まったからだった。 「これは…お守りか?」 土で薄汚れた巾着袋は、よく神社で売っているお守りに見えた。 しゃがんで、手にとってみる。 「ゆっ! このむれには『かみさま』がいるんだよ!」 「れいぱーもげすもれみりゃもみーんなかみさまがせいっさい! してくれたんだよ!」 「おねえさんもかみさまにせいっさい! されちゃうよ!」 お守りを見て、逆さまになったままのまりさとれいむが調子付いてそう言い出した。 「あーあー、なーるほどねー」 まりさとれいむのわめきを聞いて、女性が一人で納得する。 この群れはまりさかれいむが拾ったこのお守りを信仰していたのだろう。 それで運良くれいぱーやゲスの群れや捕食種を退けられたから、自分達は神様に守られた特別な群れだと思い込んだ。 そうして神様を盲信した結果、畑に乗り込んで潰されて、冬篭りの準備を怠って飢え死んだ。 その結果が女性が半日かけて目撃した群れの壊滅だ。 神は自らを助ける物を助ける。 そういうなのだろう。と女性は結論付けて、お守りの汚れを拭った。 「…っ」 そしてそれが目に付いた瞬間。 彼女の感情が、爆発した。 「ぎゃははははははあはははあはははははははははははははははははははは!!! っはっは! あはははははははっははははは!! っひ~~!!」 木を全力で叩きながら、爆笑する。 「やめてね! きさんにひどいことしないでね!」 饅頭の戯言もなんのその。 女性の笑い声が止まる様子は無い。 お腹を押さえて、呼吸の苦しさを覚えながらも、それは三十秒ほど続いた。 「…っはぁ、はぁ。あー、おっかし」 笑いが収まっても表情筋が痙攣したように引き攣っている。 木を叩きすぎたのだろう。右手には擦り傷がついていた。 そして女性はもう十分戯れたと言わんばかりに、まりさの中枢餡めがけてスコップを差し込んだ。 「ゆぐっ!」 「ばりざああああああ! どうじでごんなひどいごどずるのおおおおお!!!??」 「んー? そうだな。強いて言うなら、神様の思し召し。かな?」 れいむも一撃で叩き潰した。随分笑わせてもらった例として、苦しめる事はしなかった。 未だ荒い呼吸を整えつつ、女性が呟く。 「コイツ等ほーんと、馬鹿ばっか」 ゆっくりの死骸を巣穴に詰め、お守りも中に入れてから土に被せた。 こんなものは自分には必要なかったからだ。 「さーてっと。お仕事お仕事。さっさと終わらせて、めーりん枕にして寝るぞーっと」 思い返したように時折笑いが漏れるようになってしまった女性は、再びスコップを担いで歩き出した。 ************************************* ここは神様に守られたゆっくり達の群れ。その夢の跡地。 まりさとれいむの死骸と共に埋められたお守りは、その約束を果たし続ける。 去年山に入った人間が落としたお守りは、とある神社の人気の品。 胴付きれみりゃとふらんが巫女を務める神社は去年、随分と話題になった。 そのお守りのご利益は『ゆっくり除け』。 それ以来。その山にゆっくりが住み着くことは二度と無かったそうだ。 ************************************* 某所で読んだSSをリスペクトしたお話。 ゆっくりの神様になったドスに対抗するためにふらんを神として祭り上げる話です。 ふたばのSSじゃないよ。 anko2458 どっちが本当? anko2461 街中の狩人 anko2480 たいせつにするということ
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/1779.html
※独自解釈だらけです。 ※虐待成分は頑張ってみましたが、もしかしたら薄目かも? ※馬鹿みたいに長いです。 ※前作『ふたば系ゆっくりいじめ 277 騙されゆっくり』と前々作『ふたば系ゆっくりいじめ 274 嘘つきゆっくり』をお読みいただいてからお読みください。 先代の長ぱちゅりーは、通常のぱちゅりー種と比べても非凡な才をもって群れに貢献して来た。 だが、どんなに頑張っても、母の偉業を超えたとは思えなかった。 危険な生物が居ない安全なゆっくりプレイスを発見して群れを作り、 見晴らしの良い場所に分散して巣を作らせる事で、お互いの巣を見張り、危険をいち早く察知する。 狩りの担当を分担する事で食糧の確保を容易にした上で、人口統制の為に『すっきりー!ははるだけにすること』と制限を設け、 生まれた赤ゆっくりがある程度育ったら『がっこう』に預ける事で子育ての負担を減らし、群れに教育を施して事故死を防ぎ、社会性を学ばせる。 物々交換の概念を持ち込み、狩りの成果を働きに応じて配分することで原始的な貨幣制度の先駆けを作り、 『おうた』や『おいしゃさん』のようなサービス業が成り立つように社会制度を整える。 お薬になる草の種を丘に蒔き、大量に生えさせておく事でいつでもお薬が使えるようにしておいたり、 悪い事をしたゆっくりを丘の上でお仕置きする事で、『なにがわるいことなのか』を群れに理解させたりする。 これらは全て、元飼いゆっくりだったという先々代の功績である。 年老いた飼い主さんが永遠にゆっくりしてしまった事で身寄りを無くした先々代は、 巷に溢れる野生のゆっくり達が全然ゆっくりしていない姿に一念発起し、ゆっくりを導く事を志したのだと言っていた。 多大な変革をゆっくり達にもたらした偉大な先々代は、自分の娘にもその志を継いで欲しいと願って非情に徹し、厳しく教育した。 生まれたときから長になるべく、帝王教育を受け続けた娘はその期待に見事応えてみせたのだった。 しかし幾ら非凡であったとしても、天才と秀才を比べれば前者に目が向くのが世の常である。 まして子供の頃からその天才を目の当たりにしていれば、いかに秀才とはいえ生まれる感情がある。 それは『劣等感』。 確かにこのぱちゅりーは優秀であった。否、優秀すぎた。 只でさえ人間の教育を受けたゆっくりでありながら、学者であった飼い主から様々な英知を授かり、 それでいてぱちゅりー種にありがちな、知性を鼻にかけた思い上がりの片鱗すら見せなかった。 完璧すぎる母に追い付こうとがむしゃらに突っ走った。 母の功績に縋るのではなく、それを超える何かを常に追い求めた。 気が付けば番を迎える事も無く、孫の姿を見せる事さえ出来ないまま、 偉大なる母は永遠にゆっくりしてしまった。 偉大なる先々代の死を悼み、涙に暮れる群れの嗚咽を背後にして、 母の死に顔を見ながら先代の長ぱちゅりーは思った。 ゆっくりなのに、ゆっくりする事を忘れて頑張った。 それなのに結局母には勝てなかった。 必死に頑張った日々は、徒労に終わってしまった。 ならば。 いつか生まれてくるであろう自分のおちびちゃんは、絶対ゆっくりさせてやろう。 後悔する事のない、幸せなゆん生を送らせてやろう、と。 こうして長ぱちゅりー親子の『勘違い』が始まってしまったのだ。 『勘違いゆっくり』 「……むきゅ………むきゅ……………」 山の裾野に広がる森の中心、ぽっかり開いた場所にある小高い丘を目指して一匹のぱちゅりーが這いずっていた。 何かに酷くぶつけたような打撲傷が顔中に広がる姿は痛々しい物であったが、その顔に浮かべた形相が哀れみを根こそぎ奪っていた。 (むっきゅうぅぅぅぅぅぅ!ぱちぇをゆっくりさせないむのうなむれはゆっくりしね!) 般若もかくやと言わさんばかりの憤怒の相。最も般若は嫉妬の怒りだが、このぱちゅりーが抱いていたのはもっと醜いもの。 『逆恨み』であった。 (あんなみえみえのわなにかかったむのうなまりさのせいで、ぱちぇがこんなおおけがをおったのよ! おかげでおかあさんがひとりじめしていたまりさからとりかえしたすぃーまでこわれちゃったじゃない!) 酷い責任転嫁もあったものだが、ぱちゅりー視点ではこれが事実であり、真実である。 そもそもあのスィーは、それを欲しがった娘の我侭を聞き入れた先代の長が群れの皆にある事無い事吹き込んで、 持ち主のまりさを無理矢理悪者に仕立て上げ、強引に追放する事で取り上げた物だ。 いかに長の言葉とはいえ、本来なら疑うゆっくりも現れておかしくない行為だが、この群れにおいては事情が異なる。 長の言う通りにしていれば、必ずゆっくり出来る。 先々代の優秀さが、群れのゆっくりから『長を疑う』事を忘れさせてしまったのだ。 如何に先々代が優秀であっても、その子孫まで優秀であるとは限らないのに。 (じぶんのてでしけいにできなかったのはくやしいけど、にんげんさんがかわりにまりさをおしおきしてくれるわ! にんげんさんなんかそれくらいしかやくにたたないんだから、しっかりまりさをころしておきなさい!むきゅ!) この半年間、ぱちゅりーの逆鱗に触れて殺されたゆっくりの数は両手の指に余る。 月に三人以上殺している計算だが、実際に悪事を働いたゆっくりはいない。 苛烈な恐怖政治が、皮肉にも秩序を保つ要因になったのだ。 その事が逆に長の権限を高め、更なる虐殺を呼んでしまった訳だが。 鬱蒼と茂っていた森の木々が途切れ、目の前が急に開ける。 群れが根城にしていた丘の天辺で、周囲を見張っていた子まりさが長の帰還に気付き、急いで駆け寄る。 「ゆっくりおかえりなさい、おさ!……そのけがはどうしたの!?……それに、おかーさんたちは……?」 ぱちゅりーの怪我を見て、何事かあった事を悟ったらしい。顔色を変え、詰め寄る子まりさ。 群れを見捨てた事がバレたらまずい、そう考えた長ぱちゅりーは咄嗟にひと芝居打つ事にした。 「むきゅっ!おちびちゃんたちをみんなあつめなさい!いますぐよ!」 「わ、わかったよ!ゆっくりしないで、みんなをあつめるよ!」 ぱちゅりーの血相に気圧されたのだろう、慌てて『がっこう』のある方角へ駆け去る子まりさを見送り、 ぱちゅりーは自身の身の安全を図る為の筋書きを検討し始めた。 しばらくして、丘の天辺に陣取ったぱちゅりーを囲むように沢山の赤ゆっくりと、子供達が集まっていた。 皆の不安そうな視線を浴びながら、ぱちゅりーは精一杯無念そうな表情を作り、告げた。 「……おちついて、よくきいてねみんな。……ぱちぇたちは、にんげんさんのひきょうなわなにつかまっちゃったの。 そして、…………みんな、にんげんさんにころされちゃったわ………」 長の言葉にぴたっと静まる子供達。 だが、泣き出すゆっくりはいない。余りに衝撃的な内容に、理解が追い付いていないのだ。 「……ま、まって!それじゃ、まりさのおかーさんや、おとーさんは……?」 恐る恐る長に問いかけるのは、見張りをしていた子まりさであった。 ぱちゅりーは子まりさを見やり、沈痛な面持ちで頷いた。 「……おちびちゃんたちの、おかーさんたちはね……ぱちぇだけでもにげてって…… のこされたおちびちゃんたちをおねがいって、ぱちぇをたすけてくれたの………」 その答えを聞き、血の気が引く子まりさ。 やがて長の言葉を理解したのだろう、子供達からざわめきが漏れ始め、それは段々と大きくなっていく。 「……うそだ。うそだうそだうそだ、うそだぁぁぁぁあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!」 「ゆ゛ぎゃ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!お゛ぎゃ゛あ゛じゃ゛ん゛がじん゛じゃ゛っ゛だぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」 「どぼぢでぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛え゛ぇ゛ぇ゛!!がな゛ら゛ずがえ゛っ゛でくでるっ゛でい゛っ゛でだの゛に゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!!!」 「みゃみゃぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!ありちゅいいこになりゅがら゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!み゛ょ゛どっ゛でぎでぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛え゛ぇ゛ぇ゛!!!!」 「ぱちぇの、ぱちぇのぴゃぴゃとみゃみゃがぁぁぁぁ!!げほっ、ごほっ……ゆげぇっ!!!」 現実をひたすら否定するもの、戻ってこない父や母を呼び続けるもの、ショックの余り餡子を吐き出すもの……。 森を揺るがす子供達の慟哭はその日の夕刻まで続いたと言う。 しかしぱちゅりーは気付かなかった。 彼女の言葉を聞き号泣する子供達の中に、凍えるような冷たい視線を向けるグループが混じっていた事に。 季節は巡り、春。 うららかな陽気に降り積もった雪が融け、丘の周りに分散する巣が姿を現す。 結局、大人の居ない群れの中で冬籠りを成功させたゆっくりは三分の二にも満たず、そこかしこで犠牲になったゆっくりを偲ぶすすり泣きが聞こえる中、 ぱちゅりーは再び長の地位に就く事になった。 この群れで唯一の大人であり、父や母から自分達の養育を任されたと主張した事もあるが、 涙に暮れる子供達に行った演説が決定打となったのである。 『かなしいのはわかるわ、ぱちぇもくやしいもの。 ……だったらつよくなりなさい!つよくなって、ふくしゅうしなさい!そのためのほうほうはおしえてあげるわ! おかあさんたちのかたきをとりたかったら、ぱちぇについてきなさい!!』 ぱちゅりーのこの言葉で、子供達の親を慕う悲哀はどす黒い復讐の念に変わった。 だがこの演説の本当の狙いはぱちゅりーの手足となる強力な兵隊を作り、自らの屈辱を果たすこと。 あくまでもぱちゅりーにとって都合のいい群れを作る為に、人間と言う敵を利用したのだ。 こうしてぱちゅりーの指導と言う名の独裁と、子供達の特訓と言う名の地獄は始まってしまった。 「むきゅ!にんげんさんははちさんよりつよいのよ!だからはちさんのおうちをもってこれるなら、にんげんさんにかてるわ!」 「そのあまあまはぱちぇのおかげでとれたのよ!だからぱちぇのものだわ!」 「……これはみんなががんばってとってきたんだよ。おさはなにもしてないよね」 「うるさい!ぱちぇのいうとおりにしてればつよくなれるのよ!これもしゅぎょうなのよ! くちごたえはゆるさないわ!こんどなまいきなくちをきいたら『おしおき』よ!」 「…………」 「むきゅう!にんげんさんはかずがおおいわ!だからどんどんすっきりー!してこどもをふやしましょう!」 「……むれにいるのはこどもだけだよ。すっきりー!したらしんじゃうよ?」 「だったらしなないようににんっしんっすればいいのよ!」 「……どうやって?」 「むきゅぅぅぅっ!!それくらいじぶんでかんがえなさい!!」 「「…………」」 「むきゅう、ごはんがすくないわね!かりにでるにんずうをふやしましょう!」 「……かりにでられるこはみんなでてるよ。あとはがっこうのこどもたちぐらいしかいないよ?」 「なら、そのこたちもかりにだしましょう!じゅぎょうのいっかんとしてこどもたちをかりばにだすのよ!」 「……こどもたちだけじゃ、かりはできないよ?どうするの?」 「まりさたちがめんどうみればいいじゃない!もちろん、かりののるまはまもりなさい!」 「「「…………」」」 「むっきゅ!おくすりがたりないわね!まったく、そんなにけがするなんて、なんてむのうなのかしら!!」 「……それは、おさがおくすりになるおはなをたべちゃったからだよね?みんなのけがも、おさのめいれいのせいだよね?」 「おかのおはなは、ぱちぇのおかあさんのおかあさんがあつめてきたのよ!だったらぱちぇのものでしょう!!」 「……とにかく、おくすりあつめてくるね。こんどはたべないでね?」 「そうよ、そうやってどんどんぱちぇにみつぎなさい!そうすればみんなゆっくりできるわ!!」 「「「「…………」」」」 やがて季節は一巡する。 山の裾野に広がる森の中心、ぽっかり開いた場所にある小高い丘が、再び冬枯れの木々に囲まれる。 群れの大部分を占めていた赤ちゃんがバレーボール大からバスケットボール程に成長した頃。 一年前と同じ早暁の空を背景に、長は再び人間の里を襲撃しようとしていた。 「みんな、ぱちぇはにんげんさんがきらいよ! れいむを、まりさを、ありすを、ぱちぇを、ちぇんを、みょんを! あらゆるゆっくりをごみのようにころすにんげんさんが、だいっきらいよ! みんな、ぱちぇはふくしゅうをのぞんでいるわ! ぱちぇのむれのみんな、みんなはどう!? にんげんさんにふくしゅうしたい? にんげんさんがひとりじめするおやさいをとりかえし、にんげんさんをぼっこぼっこにして、 にんげんさんをどれいにしてつぐなわせる、なさけようしゃないふくしゅうをしたい!?」 「「「「「「「「「「ふくしゅう!ふくしゅう!ふくしゅう!ふくしゅう!」」」」」」」」」」 「そうよ、ならばふくしゅうよ! ぱちぇたちのむれはいちどにんげんさんにやぶれたわ。いまやかつてのいきおいもない。 でも!にんずうこそすくないけれど、みんなはいっきとうせんのふるつわものよ! だったらみんなとぱちぇで、……ええと、たくさんのぐんしゅうだんになるわ!! ぱちぇたちをわすれようとするにんげんさんたちにおもいださせましょう! かみをくわえてひきずりたおし、おめめをあけさせておもいださせましょう! おひさまとじめんさんのあいだには、にんげんさんがおもいもよらないゆっくりがあることをおもいださせましょう! ごじゅうにんのゆっくりのぐんだんで、にんげんさんのゆっくりぷれいすをうばいつくしましょう! と、いうわけで、おひさまがのぼるまえにそうこうげきをかけるわ!! こんどこそにんげんさんをやっつけて、みんなのかたきをとりましょう!!」 「「「「「「「「「「えいえいゆーっ!!!」」」」」」」」」」 ぱちゅりーの演説に鬨の声で応える群れ。 当初の半分以下、五十をいくらか下回る程度にまで減ってしまったが、その分質は以前の群れを大きく上回る。 なにしろ一対一なられみりゃとさえ戦える個体がごろごろ居るのだ。 今度こそ勝てるに違いない!! ぱちゅりーはそう確信していた。 勝てるも何も実際には畑泥棒でしかないのだが、復讐に燃える悲劇のヒロイン気取りで自己陶酔しているぱちゅりーには気付かない。 「まりさ、まりさ!」 「……ここにいるよ、おさ」 ぱちゅりーの呼び掛けに応えたのは、あの見張り役の子まりさだった。 バスケットボール大にまで成長した子まりさは、機転が効く上に群れのゆっくり達に慕われており、 それを買ったぱちゅりーに抜擢され、補佐としてその烈腕を振るっていた。 ぱちゅりーにとっても自分の言うことに従順なまりさは非常に有用であった為、今回の遠征では重要な役目をさせるつもりであった、 「まりさ、あなたにとくべつにんむをあたえるわ! せんけんたいになって、わながあるかどうかたしかめるの! でも、わながなくてもそのままとつげきしちゃだめよ! ぱちぇたちがおいつくまで、しゅういのあんぜんをかくほするのよ! ……できるわね!?」 「……わかったよ。おさがおいつくまで、まってるよ」 勿論ぱちゅりーがまりさを押さえたのは、まりさの身を思ってのことではない。 自分より先に美味しいお野菜を独り占めさせないように、抜け駆けを防ぐ為である。 「それでいいわ。……じゃあまりさ、これをわたしておくわね」 そう言って取り出したのは、先を削って鋭く尖らせた木の枝。 口で銜えるしか物を持つことが出来ないゆっくり達が使う、標準的な武器であった。 「これはぱちぇがつくったぶきよ。ふいをうてばにんげんさんにもこうかはあるわ。 これをもっていきなさい。もしもにんげんさんにみつかったら、なかまをよばれるまえにこれでやっつけるのよ!」 「……うん、ありがとう、おさ」 素直に礼を言って受け取るまりさに満足したぱちゅりーは、群れを率いるべく身を翻した。 まりさの目の前に、ぱちゅりーの背中が現れる。 「……これで、ふくしゅうができるよ」 「…………ゆ゛っ゛!?」 一瞬、ぱちゅりーには何が起こったのか理解できなかった。 体を貫く衝撃、一拍遅れて届く激痛。 「ゆ゛ぎゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」 ぱちゅりーの背中に枝が生えていた。 それは先程、ぱちゅりー自身がまりさに与えた武器。 ぱちゅりーが無防備な背中を晒した瞬間、まりさが渾身の力を込めて突き立てたのである。 「いぢゃい!いぢゃいぃぃぃぃ!!なんでごどじゅるのぉぉぉぉ!!ばりざぁぁぁぁぁ!!」 「だまれ」 「ゆ゛っ゛!?」 普段の従順な態度を一変させ、ぱちゅりーを汚物でも見るかのように見下すまりさに気圧され、ぱちゅりーは思わず黙り込む。 「なにがおかあさんのかたきだ!むれのみんながにんげんさんにころされたのは、みんなおまえのせいじゃないか! おまえがついたうそにだまされたせいで、みんなゆっくりできなくされたんじゃないか! そのうえまりさたちにまでうそをついて、にんげんさんとたたかわせようとするなんて、どこまでみさげはてたげすなんだ! おまえはもうおさじゃない!おまえが!おまえこそがまりさたちのおかあさんたちのかたきだ! みんな!もうこいつのいうことなんてきかなくていいよ!みんなでこいつにふくしゅうするよ!」 そう言われて気付く。全てのゆっくりが、ぱちゅりーに憎悪を込めた視線を向けていた事に。 そして口々に鋭い枝や固そうな石をくわえ、ぱちゅりーににじり寄っていた事に。 蒼白になったぱちゅりーに、まりさの無慈悲な宣告が届いた。 「さあみんな!すぐにはころさないように、でもけっしてゆっくりできないように! いちねんぶんのうらみをこめて!おとうさんとおかあさんのうけたくるしみをなんばいにもして! ゆっくりできないぱちゅりーにぶつけてあげようね!」 「「「「「「「「「「ゆっくりできないぱちゅりーはゆっくりしね!!!!!」」」」」」」」」」 「ゆ゛ん゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」 ぱちぇりーは気付いていなかったのだ。 自分がこの群れの為にした事など何も無い事を。 群れのゆっくり達が従っていたのは、このまりさだという事を。 そして…… 今やこの群れの全てのゆっくり達が、ぱちゅりーを仇と恨み、敵を討とうと思っている事を。 必要とあらば仲間の命はおろか、自らの命さえ投げ出す覚悟を決めていた事を。 表面上はにこやかな表情の下で、仇敵に従う屈辱に心の中で血涙を流しながら、それを受け入れていた事を。 そして一年もの長い年月を掛け、用意周到に準備された復讐が、今まさに果たされようとしている事を。 自分の命令に従順な群れに満足し、堕落しきったが故に勘が鈍ったぱちゅりーには気付けなかったのだ。 話は去年の晩秋、群れが人里を目指して総出撃した朝まで遡る。 「おちびちゃんたちはここでまっててね!おやさいさんとりかえしたら、いっぱいむーしゃむーしゃしようね!」 「あかちゃんたちをよろしくなんだぜ!すぐもどってくるから、いいこにしてるんだぜ!」 「……ゆっくりわかったよ!あかちゃんたちはまりさたちがまもるよ!」 群れ全員での総攻撃を狙っていた長ぱちゅりーだが、副将のまりさから『あかちゃんたちはまだ、たくさんあるけないんだぜ!』 と進言され、赤ちゃんの同行を諦めざるを得なかった。 そうするとまた別の問題が浮上する。 赤ちゃんは基本的に手がかかるものだ。それこそ朝から晩まで親が面倒を見なければならないくらいに。 だが、赤ちゃんがいる親だけを残して行く事は出来ない。そんな事を認めたら群れの半数が脱落してしまう。 いくら長ぱちゅりーに秘策ありとはいえ、それだけの戦力を遊ばせておく訳にはいかない。 どうすれば、と頭を悩ませる長に、再び副将のまりさから進言があった。 『なら、せめてこどもたちだけはおいていくんだぜ!』と。 『がっこう』を卒業したゆっくりは親の監督の元で群れの仕事を覚えて行く。 要は半人前の扱いなのだが、今回の出征において全員動員されることが決定している。 現在『がっこう』に在籍しているゆっくりは現在六十人前後。 その内、半年間の義務教育を経て卒業寸前のゆっくりは九人いる。 片手で数えられる程度とはいえ、それだけいれば赤ちゃんの面倒くらいは見ていられるだろう。 まりさの進言にそう結論付けた長は、百人近い群れの赤ちゃんと『がっこう』の生徒達をおいて行く事を決定したのだ。 早暁の空に鬨の声を響かせながら出陣して行く親達を見送る子まりさ。 後に群れの帰還を最初に発見する事になる彼女は、明日『がっこう』を卒業する予定であった。 最年長であった為に子供達のまとめ役として抜擢され、出陣直前まで大人達からレクチャーを受けていたのだ。 遠ざかる大人と成人一歩手前の先輩達の姿を見届け、子まりさは踵を返して『がっこう』へ向かった。 『がっこう』への道すがら、思い返すのはまだ赤ちゃんだった頃に見た、丘の上で必死になって長を説得していたれいむの事。 母はれいむのことを「げす」呼ばわりしたが、子まりさにはそうは思えない。 ゲスとは、自分の為に他人をゆっくりさせない、自分本位なゆっくりの事である。 本当にゲスであるなら、あの時吐いた嘘で何の利益がれいむにあったと言うのだろう? いつも上手なお歌を聞かせてくれたれいむが、涙を浮かべて教えてくれた『おにーさん』のお話は、 まだ赤ちゃんだった子まりさにも解る程に説得力があった。 そしてれいむがぼろぼろの姿で組み敷かれ、群れの皆にゆっくりできなくされていた時、 全てを諦めたようなれいむの目に、寂しそうな、悲しそうな、そして何より悔しそうな無念の表情に、 そして最後の一瞬、痛みとは違う何かに流された涙に。 その死に様を嘲笑う姉妹達の中でただ一人、子まりさだけはれいむが正しいと直感した。 だからそれを嘘と断じ、あまつさえあんなに残酷な『おしおき』を実行した長ぱちゅりーを、子まりさは信じられなかった。 その後に繰り返された『おしおき』を目撃する度、子まりさの疑念は膨らんで行った。 食糧不足で赤ちゃんに食べさせる事が出来ず、やむなく食料庫から盗み出したれいむは殺される程悪かっただろうか? そのれいむの子供であり、親の復讐に燃えて長に襲いかかったちぇんは果たして反逆者の汚名に相応しかったのだろうか? 群れ中の狩りの名人を総動員しても捕る事が難しい蜂の巣を、たった一人で捕るように命じられたみょんは本当に臆病者だっただろうか? それらを指摘して、長を諌めようとして『おしおき』されたまりさ達はどうだろうか? そして今、群れの大人達を率いて人間の畑を襲いに行くぱちゅりーは、本当に正しいのだろうか? 先々代はおろか、先代の治世すら知らぬ子まりさには大人達が持つ長への盲信が無い。 そしてれいむの事件で群れの有り様に疑問を持った子まりさは、ゆっくりらしからぬ深い洞察力を獲得するに至ったのである。 「……やっぱり、おさのいうことはおかしいよ…………みんな、だいじょうぶかなぁ……」 とは言え、子まりさはまだ『がっこう』も卒業していない、半人前とも認められていない子供だ。 親の庇護を受け、授業以外では狩りにも同行できない子まりさが疑問を呈しても 「おちびちゃんにはまだむずかしいことだよ!それよりおへやのおかたづけしなさいね!」 「おちびがそんなむずかしいことかんがえてちゃだめだぜ!それよりみんなとあそんでくるんだぜ!」 などと返され、子まりさの疑問は大人に憧れる子供の背伸び程度にしか受け取られない。 子まりさが幾ら疑問を持ったとしても、子まりさに出来ることは無かった。 精々こうして群れの行く末を憂いることしか出来ないのである。 「……ゆっ!とにかくまわりをみはって、あかちゃんたちをまもらなきゃ!まりさ、がんばるよ!」 子まりさは気分を切り替え、丘の周囲を見回ってまわる。 この季節、越冬の準備をするのはゆっくりだけではない。 熊や猪、蛇などの森に棲息する生物も越冬のために食糧を集めているのだ。 そしてゆっくり達の中身は栄養価の高い餡子。 当然狙われる確率も高く、何時襲われるか解らないのでこうして見張りを立て、警戒しているのである。 そして半分程廻った時、子まりさは見慣れぬゆっくりが丘を見上げて佇んでいる事に気付いた。 「ゆっ!そこにいるのは、だれ!?」 「!?」 そこに居たのは黒いお帽子を被ったまりさであった。 しかし、子まりさには見覚えが無い。 群れの中のまりさのお帽子は皆ピンっと立っている。 あんなに縒れ縒れで、所々破けているようなお帽子を被っているまりさはいない。 髪の毛もあんなにボサボサで、くすんだ金髪をしたまりさもいない。 お肌もボロボロで、細かい傷だらけのまりさもいない。 大きさからすればもう大人なのだろう、この群れでこの大きさのゆっくりなら出征に参加していない筈が無い。 かなり不審ではあったが、とりあえずご挨拶しようと近付く子まりさに、見慣れぬまりさはゆっくりと振り向いた。 「ゆっ!?」 そのまりさには、片目が無かった。 左目の上からあんよに掛けて、大きく抉ったような傷跡があったのだ。 子まりさはその傷の事を知っている。 ゆっくり殺しなど、重罪を犯した罪ゆっくりに対してのみ行われていた刑罰。 『おめめえぐりのけい』。 片目を抉り、群れから永久追放する刑の痕であった。 子まりさも、実際に『おめめえぐりのけい』の受刑者に会うのは初めての事だ。 『がっこう』での授業でも教わったし、度々「わるいこはおめめをとられちゃうんだよ!」と親から叱られた事もあり、 その傷が悪いゆっくりの証である事は理解していたが、粛清の嵐が吹き荒れる今の群れではあまり意味が無い。 先代の長の頃は、この『おめめえぐりのけい』が最も重い処罰であった。 それは先々代が『たとえあいてがゆっくりごろしでも、ゆっくりがゆっくりをころしてはならない』と定めた為であったのだが、 今代の長はあっさりとその禁を破り、長を侮辱したれいむを皮切りに死に至る程過激な『おしおき』を何回も強行した。 反発もあったが、長は『ゆっくりできないゆっくりをおいだしたら、ほかのむれにめいわくがかかる』と反対派を丸め込み、 それでも反対するゆっくりを『こいつらはゆっくりできない』と無実の罪を着せ、『おしおき』で殺していったのだ。 最近生まれた赤ゆっくり達はその恐ろしい『おしおき』しか知らない。 今の群れにとって、悪いゆっくりとは死んだゆっくりの事である。 いくら知識として知っていても、経験の無い子供達にとっては実感の無い、遠い過去の出来事だ。 だから子まりさも、その傷を持ったまりさに平然と挨拶できたのだ。 「ゆっ!まりさおねーさん、ゆっくりしていってね!」 「ゆ゛っ゛!?……ゆっ、ゆっくじして……い゛っ゛……で…………ゆ゛わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん゛ん゛!!! ばりざぁ!!ゆ゛っ゛ぐじじでい゛っ゛でね゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛え゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛っ゛!!!!!」 子まりさの無邪気な挨拶に、傷まりさは感極まったように号泣しながら挨拶を返す。 「ゆっ!?」と驚く子まりさだが、それ程この傷まりさにとっては驚天動地の出来事だった。 この『おめめえぐりのけい』の事は、この辺り一帯の群れに広く知れ渡っている。 「かたほうのおめめのないゆっくりは、とてもゆっくりできないゆっくりだよ」 どんな小さな群れであっても、この話は必ず伝えられており、それ故にどの群れも傷まりさを受け入れる事は無かった。 『おめめえぐりのけい』の受刑者の末路は、孤独な野垂れ死にが定番だったのである。 そんな受刑者の中にあって、この傷まりさは二年もの間生き延びて来た希有な例であった。 元々狩りが得意だった事に加え、皮肉にも野山の危険物を見分ける群れでの教育が功を奏した結果である。 追放されたゆっくりが群れに近づき、それが発覚したら群れ総出でゆっくり出来なくされてしまう。 これまでにも何度か試し、その度に追い払われて来たから傷まりさにはそれがよく解っていた。 それが今日、世も明けない内に総出撃していく群れの姿を目にした時、押さえていた思いが爆発した。 (あのおかに、かえりたい!) ゆっくり出来なくされた身であっても、やはり故郷は恋しいもの。 あんなに大勢でどこへ行くのかは知らないが、今ならあの丘を一目見る事くらいは出来るだろう。 それでもう心残りは無い。後はこの苦しいゆん生に、いつ幕が下りても悔いなく逝ける筈だ。 そんな決意を胸に、傷まりさは丘を目指して近付き、子まりさに発見されたのだ。 (……ああ、みつかっちゃった。せめて、さいごにちょっとだけでも、おかでかけっこしたかったなぁ……) 傷まりさの脳裏を諦めが支配する。 覚悟を決めた傷まりさの耳に、子まりさのご挨拶が飛び込んで来たのはそんな時だった。 予想外の優しい言葉に感極まり、号泣する傷まりさが泣き止んだのは、朝日が半分程昇りかけた頃であった。 嗚咽の合間合間に、断片的に挟まれる壮絶なゆん生を聞かされた子まりさは、もらい泣きしながら傷まりさを慰めていたが、 どうしても気になったそれを尋ねずにはいられなかった。 「……ねぇ、おねーさん。おねーさんはどうしておめめをとられちゃったの?」 そう、片目が無いゆっくりは大悪人の証である以上、どんなに善良そうに見えても仲良くは出来ない。 仲良くする振りをして近付き、隙を見てご飯や宝物を奪い取ったり、無理矢理すっきりー!したりするのが目的かも知れない。 今のまりさの双肩には百匹以上の子供達の命が懸かっている。どんな小さな異常でも見逃すわけにはいかなかった。 だが、それを聞いた傷まりさが再び目を潤ませた。 何かを耐えるように唇を噛み締めて涙を堪え、ぽつりぽつりと語り出す。 「……おさがまりさをわるものにしたんだよ…………まりさが……すぃーをひとりじめしてるって………、 あのすぃーは……おかーさんのかたみだったのに…………だいじなだいじな……まりさのたからものだったのに……、 ………ゆっ、ゆえぇぇぇえぇぇん!!!」 そこまで語った所で堰を切ったように泣き崩れる傷まりさの姿に、子まりさは確信した。 (やっぱり、あのおさはうそつきなんだ!れいむおねーちゃんをいじめたのも、おかーさんたちをつれてったのも! みんなうそなんだ!……おさはけんじゃなんかじゃない!おさのほうが、くずだったんだ!) 子まりさと傷まりさの出会いは、双方にとって幸運であった。 子まりさにとって傷まりさは漠然でしかない長への疑いを証明する生きた証拠であり、 傷まりさにとって子まりさは自分の言葉が嘘偽り無い事を信じてくれた恩人である。 子まりさの不信感がピークに達していたこと、傷まりさのホームシックが再燃していたこと。 まさに奇跡の確率で絶好の機会がかち合った、幸運な出会いであったのだ。 子まりさは傷まりさを連れ、赤ちゃんと子供達が集められている『がっこう』に向かった。 そこは入り口を倒木で塞がれた洞窟で、子ゆっくりサイズなら通り抜けられる狭い隙間が倒木の端に開いており、 いざと言うときは、そこを塞いで外敵の侵入を防げるようになっている。 教師役の大人ゆっくりは倒木を乗り越えなければならないが、逆に言えばそうしなければ入れない安全な場所である。 「ゆっくりただいま!」 「……あいことばをいってね!……むしさんがいないなら、あまあまをたべればいいじゃない!」 「あまあまがないなら、むしさんをさがせばいいじゃない!」 「ゆっ!せいかいだよ!……おかえり、まりさ!」 入り口を封鎖している倒木の枝が動き、そこから一人の子れいむが出てきた。 見張りの交代要員である。本来あまり運動の得意でないれいむに任せるような仕事ではないが、 卒業を目前に控えた九人の子ゆっくりは子まりさを除き子れいむと子ありす、そして子ぱちゅりーで占められていた。 ひと月遅れて入学したちぇんやみょんはまだ一人で出すには不安だったし、何より赤ちゃんの面倒を見なければならない。 百匹近い赤ちゃんの世話をしながら危険な見回りなぞできない。 仕方なく、年長組が見張りを持ち回り、残りの生徒達と年長組の子ぱちゅりーが赤ちゃんのお世話をすることにしたのだ。 そして外から聞こえて来た合い言葉に、まりさと交代する為に出て来た子れいむが見たものは、見慣れた子まりさの顔と、 「ゆ゛っ゛!?……まりさ、そのおねーさんはだれなの?」 面識の無い、片目を無くしたまりさの顔であった。 「……れいむ、よくきいて。もしかしたら、いつもまりさがいってることがほんとうかもしれないよ」 「……どういうこと?まりさ、おさのことでなにかあったの?」 「それをせつめいするんだよ。みんなのところでおはなしするから、みはりはすこしまっててね」 そして子まりさは年長組の仲間達に自分の推理を打ち明けた。 それを聞いた子れいむ達の反応は様々であった 「そんなはずないわ!おさはいつでもただしいのよ!」と長の正当性を主張するありす、 「むきゅ!かためをなくしたゆっくりのおはなしなんて、しんじられるわけないでしょう!」と授業で得た知識を元に否定するぱちゅりー、 「でも、さいきんのおさがおかしいのはほんとうだよ?ゆっくりしてなかったよ?」と長への不信感を漏らすれいむ。 喧々諤々と続いた話し合いを収めたのは、子まりさの発言であった。 「おさがただしいのか、まりさがただしいのか、みんながかえってきたらたしかめてみようよ。 まりさおねーさんはもりにかくれていて。みんなにみつからないようにちゅういしてね」 そうしてしばし時が過ぎ。 二百匹を超えた大集団は、ぱちゅりーただ一人の生還を持って全滅したのである。 長ぱちゅりーから群れの顛末を聞かされ、森を揺るがす慟哭に泣き疲れた赤ちゃんと子供達を寝かしつけ、 年長組は再び長の正当性を議論し始めた。 ありすの論調は変わらず長の擁護、最も半数の二人程は半信半疑と言った所。 逆に意見を翻したのはぱちゅりー。こちらは一人が慎重派、もう一人が完全に疑い始めた様子。 れいむは長の涙に同情したのか、片方が長を擁護し始め、片方が長への不信感を露にするも、勢いは無い。 平行線を辿りつつある議論に、まりさはある提案をする。 「じゃあ、とりあえずおさのゆうとおりにしようよ。 おさがただしいならゆっくりできるはずだし、おさがまちがってるならゆっくりできなくなるから、 これからのおさがどういうふうにむれをゆっくりさせるのか、みとどけてからはんだんしよう」 この提案を年長組は全員受け入れた。 実際、幾ら考えても解決しないのならこれからの動向で判断するしかない。 ほぼ博打のような提案ではあったが、現時点ではそれ以外に方法は無かった。 そして彼女達は、いきなりその答えを突きつけられた。 今までの群れでの冬籠りは、それぞれの家庭ごとに行っていた。 しかし今回は話が違う。 何しろ大人が全滅している上、群れの殆どはまだ赤ちゃんなのである。 ならば一カ所に食べ物と群れを集め、全員で冬籠りすべきだと言う意見に、ぱちゅりーはこう返したのである。 「いままでどおりでいいでしょ!かえるひつようはないわ!むきゅ!」 この言葉に唖然となったのは年長組だけではない。 後輩のちぇんやみょんを含む『がっこう』の生徒達の大半が、長の台詞に度肝を抜かれた。 長ぱちゅりーにしてみれば、一カ所に集まるなど言語道断である。 何かの弾みで口を滑らせ、群れを見捨てたことがバレでもしたら、即座に殺されてしまう。 そうでなくても、暗殺の危険性を考えれば皆と一緒にいるより、一人でおうちに籠っている方が安全なのだ。 しかし子供達にとってこれは死刑宣告にも同等の命令である。 長の言葉である以上は従う義務が発生する。だが、素直に従えば待っているのは、死。 年長組においても意見は分かれ、結果ありす二人とぱちゅりーとれいむが一人ずつ年長組を離脱。 群れの三分の一を率いてそれぞれの巣に別れ、冬籠りを開始した。 残されたグループはおうちの貯蔵食糧を持ち寄り、『がっこう』にて共同生活を行うことにした。 そして、春。 分散して冬籠りをしていたゆっくりは物の見事に全滅した。 初めての越冬と、赤ちゃんの食欲を考えに入れず、食糧の計算を間違えて餓死したれいむのグループ。 黒ずんだ何かが大量に茎を生やし、あたかも小さな森のような様相を醸していたありすのグループ。 強度の足りない巣が大崩落を起こし、全員生き埋めとなったぱちゅりーのクループ。 その他にも赤ちゃんだけで越冬しようとして失敗したり、食糧不足の果てに凄惨な殺し合いが起きた巣もあった。 まりさ達、共同生活グループは多少の犠牲者を出したものの、初めての越冬を成功させた。 それはまりさ達だけではなく、あの傷まりさの協力あってのものであり、傷まりさへの偏見は大幅に薄れていた。 また共同生活を提案し、そのリーターシップをとったまりさに対する信頼も大きくなり、 実質まりさは生き残ったグループの長といっても過言ではない立場に就いていた。 同時にそれは、まりさが持っていた現状の長であるぱちゅりーへの不信感を、群れが共有することを意味していた。 しかしまりさはそれを表に出すことを硬く禁じた。 「おさがどんなにあやしくても、おさはまだおさなんだよ。いま、おさにきづかれたら『おしおき』されちゃうかもしれないよ」 こう説得して廻り、はっきり長ぱちゅりーを疑っているゆっくりにも、未だ半信半疑のゆっくりにも、 とりあえず長の命令に従うよう頼み込んでいたのである。 そして長の就任演説を経て、一年間に及ぶ独裁政治が始まり。 長ぱちゅりーは己の態度で持って、まりさ達の不信感を確信に変えてしまったのである。 そして舞台は再び現在に戻る。 ぱちゅりーは今、自分が育てた屈強な兵士達に暴行されていた。 「これでもくらえ!」 「ぴぎゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 硬い小石を四方八方から吹き付けられ、 「に゛ゃ゛ぎゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 「……また、つまらないものをきってしまったみょん」 尖った枝で何度も何度も斬りつけられ。 「こんなやつにおかざりなんてもったいないんだねー!!わかるよー!!」 「や゛べて゛え゛え゛え゛え゛え゛!お゛がじゃ゛り゛や゛ぶがな゛びでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!!」 お飾りを目の前で細切れにされ、 「こんないなかもののあかちゃんなんて、ぜったいうまれないようにしましょう!」 「ゆ゛ぎゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!ぼう゛ゆ゛る゛ぢでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!!!」 ぺにぺにを切り取られ、それを押し込んだ上で棒切れを突き込んでまむまむを潰し、 「こんなやつがぱちぇのどうるいだなんて、なのれないようにするわ!」 「ばぢぇ゛の゛ずでぎな゛がみ゛の゛げがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!! 少しずつ髪を力づくで引き抜かれて、禿げ饅頭にされ、 「ぱちゅりーのきたないおかおをきれいにするね!」 「q゛あ゛w゛せ゛d゛r゛f゛t゛g゛y゛ぶじごl゛p゛!!!!!!」 砂を撒いた木の皮に顔を押し付け、そのままおろし金のように動かしてぱちゅりーの皮を削る。 おおよそ考えつく全ての苦痛を、ぱちゅりーは味わっていた。 たまに「ゆげぇっ!!」と生クリームを吐いても「まだまだおわらないよ!」と強引に押し戻されて、死ぬことも叶わない。 最初に宣言された通り、死なないギリギリを見極めた絶妙な手加減を加えられた生き地獄が延々と続けられていた。 その様子を離れた場所で窺うゆっくりがいた。 傷まりさである。 便利な道具でしかなかった自らの群れに、ゆっくりできなくされているぱちゅりーを無表情で見つめ続ける傷まりさの元に、 クーデターに成功し、今やこの群れの長になったまりさが歩み寄る。 「……まりさおねーさんはやらないの?」 長まりさの疑問に、無表情を崩して苦笑を浮かべて答える。 「まりさのぶんはもうおわってるよ。あのすぃーが、まりさのぶんまでぱちゅりーにしかえししたんだよ。 だからまりさはもういいんだよ。いま、あいつがうけるべきはまりさたちのふくしゅう、なんだからね」 母の形見であったスィーごと罠に掛かった顛末はすでに聞いていた。 傷まりさにはそれがスィーの意志であったように思えたのだ。 ならばその意志を汚す真似はすまい。傷まりさは自然にそう思えたのである。 「……うん、わかった。じゃあ、そろそろしあげにはいるね」 その言葉に感じ入るものがあったのだろう。 一つ頷き、踵を返した長まりさは未だ醜い悲鳴を上げ続けるぱちゅりーの元へ向かう。 「みんな!いっぺんやめてね!まりさとおはなしさせてね!」 その言葉に群れが静まる。先程までの喧噪が嘘のような静寂の中、 「……ゆ゛っ゛……ゆ゛っ゛……」と痙攣するぱちゅりーの耳元へ長まりさが囁く。 「……なんでこんなめにあっているのか、わかってる?ぱちゅりー?」 その言葉に反応したのか、白目を剥いていたぱちゅりーの口から断末魔以外の言葉が漏れる。 「……ぱ……ちぇを……ゆっ………く……り………させ………な……い……げすは………し……ね………」 反省の色の欠片も無い、醜い性根を表したかのような呪詛を聞き、まりさは落胆した。 こいつは、自分が何故こんな目に遭っているのか理解できていない。 これでは、自分達の復讐が成ったとは言い難い。 自分のせいで、自分が無能だったせいで殺されることを自覚させて、より深い絶望にたたき落とさねば、 死んで行った親兄弟達に申し訳が立たないだろう。 しかし長まりさにはこれ以上のアイデアは無かった。 こいつに自分の罪を認めさせる方法が、この拷問以外に思い付かなかったのである。 (……しかたないね。そろそろれみりゃがおきるころだし、ざんねんだけど、とどめをさそう) 心の中でため息をつき、ほぼ一日中続いた拷問を終わらせる決意を固める。 「みんな、このぱちゅりーをもりのそとにたたきだすよ!」 「「「「「「「「「「わかったよ、おさ!」」」」」」」」」」 群れはもうまりさを長と認めていた。 あの過酷な一年の間、このまりさに従っていれば生き残ることが出来た。 それだけでなく、優れた洞察力からくる統率力、計画性、全てにおいて突出していたまりさは群れの憧れでもあった。 その長の言うことをどうして疑うことが出来るだろう? 「それじゃあ、ぱちゅりーをもりのそとまではこぶよ!ゆっくりてつだってね!」 「「「「「「「「「「まかせてよ、おさ!」」」」」」」」」」 虫の息のぱちゅりーを長まりさが跳ね飛ばす。 「ゆ゛っ゛!?」と転がって行く先にいたちぇんが勢いをつけて蹴り上げる。 「ゆ゛ぎっ゛!?」と跳ね飛ばされた先にいたみょんが銜えていた枝で打ち返す。 「ゆ゛びぃ゛っ゛!?」と飛んで行く先にいたれいむがぷくーっ!して跳ね返す。 「ゆ゛がぁ゛っ゛!?」とパウンドする先にあったぱちゅりー達が作った壁にぶつかり、転げ回る。 「ゆ゛ぶっ゛!?」と蹲ったぱちゅりーを、走り寄ったありすが跳ね飛ばした。 ピンボールの玉よろしく、森の木々の合間を跳ね回ったぱちゅりーが森と人里を分ける平原に放り出されたのは、すっかり夜も更けた頃であった。 ……ふああ。あー、さむっ。 また急に冷え込んできやがったな。 いくら夜明け前だっていっても、まだ秋の範疇だろうに。 これは今年の冬も厳しくなりそうだな……。 ……ん?なんだありゃ。 饅頭?……いや、ゆっくりか? あんな飾りも髪も無いゆっくりなんて見たこと無いぞ。 ……うわ、なんだこりゃ? こんなに全身ボロボロになるなんて、何があったんだ一体? ……お、意識はあるようだな。 ってか、この様で生きてるって、ゆっくりってのは随分頑丈に出来てんだな。 前に燃やした奴らはあんなにあっさり死んじまったのに。 ……『ぱちぇの群れを知ってるの?』? お前ぱちゅりーだったのか?いや、あの群れに居たって事は…… ……そうか、お前さんあの時逃げ出したぱちゅりーだな? せっかく逃げ出したってのに、何でそんな重傷負ってんだよ? ……『ゲスなまりさに追い出された』だって? いや、お前さん確か長だったんじゃないのか? ……『ゲスまりさに騙されたゲス達に乗っ取られた』ぁ? よく解らんが、世代交代でもあったのか……? しかしよく無事だったな、この辺りはれみりゃの縄張りだぞ? ……『ぱちぇの群れは、れみりゃを倒せるくらいに強いのよ』って…… なあ、それって強いのは群れであって、お前さんじゃないよな? なのに何でお前さんがれみりゃに襲われない理由になるんだよ。 ……『ぱちぇのお陰で強くなれたんだから、ぱちぇが強いに決まってるでしょう』? おいおい、何なんだそりゃ。三段論法にもなってないぞ。 ……ああ、わかった。 お前、群れでいつもそんなこと言ってたんだろ? そりゃ追い出されるわな。 あのまりさが言ってた通りだわ。とんでもない無能だな、お前。 ……『ぱちぇは長なのよ!何でも知ってる森の賢者なのよ!』って言われてもな。 実際長としては無能だぞ?お前。 そもそも長に必要なのは『古い知識を生かして、新しい何かを創り出す程度の能力』なんだよ。 知ってるだけじゃ役に立たないのさ。 古い掟の問題点を見つけてそれを改善した掟を決めたり、今までの狩りで餌が獲れないなら原因を探って狩り方を見直す。 それが出来るから、長ってのは慕われるんだよ。 何を勘違いしているんだか知らないが、お前が長の器じゃないってのはそのゆっくり達にも解ってたんだろうな。 ……なあ、ぱちゅりー。 お前は、群れの為に何か新しいことをしたのか? ……暴れんなよ。全然痛くないけどな。 ああもう、生クリームが飛び散って汚れちまったじゃねえか。 ……ああ、鬱陶しい! おらよ!どこにでも飛んで行きやがれ! ……結構飛んだな。 ……おや、三軒隣の御仁井さん。こんな所でどうされました? ……れみりゃの調達ですか。そりゃご苦労様です。 ……いえ、ちょっとね…… 無能なぱちゅりーに絡まれて、野良着を汚されちまったもんで。 あんまりムカついたんで、森の方へ思いっきりぶん投げてやったんです。 ……ははは、止してくださいよ。 俺に虐待は向いてませんって。 ……それよりも例の研究は進んでるんですか? 確か、ゆっくりを使った画期的な農法だとか何とか…… 山の裾野に広がる森の中、人間に捕まって投げ飛ばされたぱちゅりーは、奇跡的に生きていた。 しかしその姿は到底無事とは言えなかった。 お飾りも髪も無くし、所々薄くなった皮からはじくじくと生クリームが滲み出している。 それでも尚、残された目には執念の炎が燃えていた。 「……ぱちぇは……おさなのよ………いだいな……もりのけんじゃなのよ………… ……ぱちぇをゆっくりさせるのは…………すべてのゆっくりの……………ぎむなのに……………」 ぱちゅりーに帰る場所なぞどこにもない。 あの丘に向かうのは論外だ。 忌々しいゲスまりさに騙された無能な群れが襲いかかってくる。 人間の里に留まれば今度こそ殺されるだろう。 他の群れに匿ってもらおうにも、お飾りはおろか、髪さえ無くした自分を迎え入れてくれる筈が無い。 行きずりのぱちゅりーを襲ってお飾りを奪おうにも、満身創痍のこの身では到底実行できまい。 まさに八方塞がりの状況。 先程から妙に体がだるい。 悪寒は治まるどころかどんどん悪化してゆく。 あんよの感覚が殆ど無い。 (……そういえば、さっきからぜんぜんいたくないわね……?) 嫌な予感が彼女の脳裏をよぎる。 強ばってなかなか言う事を聞かない体を無理矢理動かして、後ろを振り返ったぱちゅりーの目に、 「……む゛ぎゅ゛う゛ぅ゛う゛う゛ぅ゛う゛う゛っ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛っ゛!?!?!?!?!?」 見えては行けない筈の光景が見えてしまった。 ぱちゅりーが這いずった後を追うように、白いナニカが線を描いている。 それは、ぱちゅりーの生クリーム。 彼薄皮一枚を残して剥ぎ取られた皮から滲み出した生クリームが、少しずつ、少しずつ、 ぱちゅりーのあんよと言う絵筆によって、冬の森というキャンバスを汚していたのだ。 痛みが治まったのではなかった。最早痛みすら感じない程に、感覚が鈍り切っていたのである。 「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!じに゛だぐな゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!! だれ゛があ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!だれ゛がだずげろ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!」 一体どこにそれだけの底力があったのか。 誰もいない森の中に、ぱちゅりーの叫び声が谺する。 そしてその谺は、届いてはいけないものに届いてしまった。 突然響き渡る羽音に、ぱちゅりーがピタっと黙る。 恐る恐る目を向けた先にいたのは、 「う~☆あまあまみつけたど~☆」 「どぼじであ゛がる゛い゛の゛に゛れ゛み゛り゛ゃ゛がい゛る゛の゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!!!!」 そう、昼間は眠っている筈のれみりゃであった。 このれみりゃが特別だった訳ではない。 森の奥地は木々が密集しており、昼間であっても尚薄暗い。 木漏れ日に気をつけさえすれば、昼間でもれみりゃが活動するには充分な暗さがある場所なのだ。 その為、ここに足を踏み入れるゆっくりは相当訳ありでもなければ存在しない。 こうしてたまに迷い込んでくるゆっくりは、れみりゃ達にとって最大のご馳走であった。 「う~☆つかまえるど~☆ふゆのでなーにするんだど~☆」 「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!ばな゛ぜえ゛え゛え゛え゛え゛え゛!!お゛う゛ぢがえ゛る゛う゛う゛う゛う゛う゛!!」 帰るべきお家なぞ何処にも無いことを忘れ、ぱちゅりーは泣き叫ぶ。 「うるさいんだど~☆しゃべれないようにするんだど~☆えいっ☆」 「ゆ゛ぶっ゛…………!!!!」 舌を引っこ抜かれ、お口に石を詰められて、ぱちゅりーは喋れなくなる。 ぱちゅりーが静かになったのを確認すると、れみりゃは満足そうに巣のある老木へ飛んで行った。 それからおよそひと月。 ぱちゅりーはまだ生きていた。 老木のうろを利用したれみりゃの巣には、同じように捕まったゆっくり達が沢山並んでいた。 れみりゃはその日の気分で啜る餡子を変えているようで、様々な種類のゆっくりが用意されている。 しかもこのれみりゃは、死ぬまで餡子を啜ろうとはしない。 死にそうなギリギリまで吸い上げ、痙攣を始める直前で止める。 その加減はまさに職人技と言えよう。 そして餡子を吸い上げたゆっくりの口に、うろに自生していたキノコを詰め込むのだ。 そんな怪しげなキノコなぞ食べたくもないが、それ以外に食糧は無いし、どのみち食べても食べなくてもれみりゃに詰め込まれる事に変わりはない。 どうやら毒キノコの一種らしいそれは、口に含んだ途端に気分が悪くなり、悪寒や幻聴が聞こえ始める。 そして酷い時には幻覚を見るようになる。それも、自分が最もトラウマにしている幻覚をだ。 (だまれえええええええ!!ぱちぇはむのうじゃないいいいい!!) ぱちゅりーを襲う幻覚、それはあのまりさでも罠に掛かったことでもない。 あの人間に言われた一言、それがいつまでもリフレインするのだ。 ………お前は、群れの為に何か新しいことをしたのか?……… (なんで……なんでぱちぇが……もりのけんじゃがこんなめに……) 本当にそうだったか? 本当に自分は森の賢者として相応しかっただろうか? 母の死は本当に母が無能だった所為なのだろうか? あの時、冬籠りの食糧が尽き、実の母を無茶苦茶になじったあの時。 『ごはんもまんぞくにあつめられない、むのうなおかーさんはゆっくりしないでしね!』 『……ごめんなさい、むのうなおかーさんで。せめておかーさんをたべてゆっくりしていってね! …………さぁ、おたべなさい!』 目の前でもの言わぬ饅頭になってしまった母を見て、自分は何を思っていただろうか? 『むのうなおかーさんは、ぱちぇのごはんぐらいにしかやくにたたないわね!』 そんなことしか思ってなかった気がする。 あの時、本当に賢者と呼ばれる程賢かったのなら、食糧を得る手段を思い付けたのではないか? いや、そもそも食糧不足に陥ること自体無かったに違いない。 (……そんな……そんなはずないわ…………ぱちぇはわるくない………わるいのはみんなげすのせいにちがいないわ……) あのまりさ達は本当にゲスだったろうか? むしろ自分より有能だったのではないだろうか? (……ちがう……ぱちぇは…………いだいな……もりのけんじゃなのよ…………) 疑問が浮かぶ度に脳裏で必死に否定するぱちゅりーに、またあの声が聞こえてくる。 ………お前は、群れの為に何か新しいことをしたのか?……… (うるさい!うるさい!うるさい!うるさぁああああいいいい゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!!) 春はまだ遠い。 れみりゃが冬籠りを終えて、ぱちゅりーを全部食べ尽くすまで。 幻聴は毎日、ぱちゅりーを責め立て続けた。 ぱちゅりーは最後まで気付けなかった。 自分が賢者でも長でもなく、只の無能なゲスでしかない事を。 ……それを心のどこかで認めてしまっていた事を。 ※気付けば連休中盤だよ!時間懸かり過ぎだろコノヤロー!! お待ちいただいた方々には大変お待たせいたしました! 前作に感想を付けてくださった皆様のご期待に、 「(ハードルを上げるのは)もうやめて!作者の(チキンハートな)ライフはもうゼロよ!!」 状態で悶えながら書いては直し、書いては直し。 気付けば前作を遥かに超える長文になっておりました。 皆様のご期待に応えるべく、作者の筆力の限界まで絞り出しました、 本当にこれで応えられているか不安でいっぱいですが、これ以上お待たせできないだろうとうp決行。 ……どうか皆様のご期待に応えられてますように。 ※まりさについて(補足) 前作『騙されゆっくり』のまりさについて、感想にてさんざん指摘されておりました通り、 あれはまりさの脳内補完によるものです。 実際にれいむを襲っていたときはんなこと一切考えておりません。 何も知らずに死ぬよりも、罪を自覚してから死んだ方がより絶望感は凄いだろうと思い、最後に反省させる描写を入れましたが、 良い奴で終わらせるのは許すまじ!と前々作のまりさの行動を脳内補完させたのですが、 思ったより解りづらかったみたいで、反省しております。 本来作者が作品に解説を入れるのは反則だと思っているのですが、今回は作者の筆力不足によるものですので、 急遽解説を入れさせていただきました。