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Non-hereditary SCD OPCA(MSA-OPCA type) OPCA=olivo pontine cerebellar atrophy MSA=multiple system atrophy SCDの1/3がMSA-OPCA type 1)S S 40~60歳 小脳症状から初発 歩行障害,失調性歩行 進行とともに上肢の失調,眼振,緩徐言語,断綴言語 2~5年後にSNDのパーキンソニズム(SND=striatonigral degeneration) 筋固縮,動作緩慢,立ち直り反射障害,振戦,自律神経系症状,仮性球麻痺 2)Dx,DDx 小脳失調あり,家族性なし,MRI,CTにて橋底部の著明な萎縮 晩発性小脳皮質萎縮症は橋底部の萎縮なし 症候性小脳萎縮症(アルコール,癌,フェニトイン,甲状腺機能低下)では画像や病歴や生化学検査で鑑別 遺伝性SCDで家族歴が不詳の場合は難しい.特にSCA3/MJD,DRPLA遅発成人型(不随意運動,橋被蓋萎縮)との鑑別 3)治療 著効するものなし. TRH注射がある程度有効. パーキンソニズムには抗パーキンソン薬→効果は期待できない 起立性低血圧→ShyDragerに準じて 晩発性小脳皮質萎縮症Late cortical cerebellar atrophy;LCCA 小脳失調が主症状,病理的に小脳皮質と下オリーブ核の変性,橋底部は保たれている(cf.MSA-OPCA type) 遺伝タイプはSCA5,6,10で」弧発型をLCCAと定義する. 1)S S 30~74歳 失調性歩行が初発症状,wide-based,体幹の動揺 進行すると上肢の失調症状,緩徐言語が出現.錐体外路徴候は(-) DTRは+から++ 2)Dx,DDx 上部虫部の萎縮あり,橋底部にはなし MSA-OPCA typeは橋底部の萎縮あり. 二次性cortical cerebellar atrophyとの鑑別はとくにアルコールが難しい.アルコール性は上肢の失調性症状なく指鼻試験は上手で飲酒歴がある. DTR亢進の時は大孔付近の腫瘍,Chiari奇形,頭蓋底陥入症,延髄腫瘍などと鑑別.これらではdown beat nystagmusが出ることも. adrenoleukodystrophyで小脳失調と錐体路徴候が出ることも.副腎機能,白血球極長鎖脂肪酸測定. 3)治療 MSA-OPCA typeに準じる 二次性cortical cerebellar atrophy 1 アルコール性小脳変性症 2 抗てんかん薬フェニトインなどによる薬剤性小脳変性症→他にリチウムや5-FU 3 内分泌疾患に伴う小脳失調→甲状腺機能低下症など 4 paraneoplastic cerebellar degeneration;PCD→抗Yo抗体など Hereditary SCD SCA1(spinocerebellar ataxia 1) 東北北海道に多く西日本に少ない. 6p22-23 SCA1gene→ataxin-1 CAG tripletで表現促進現象,父由来優位 1)S S 30~40歳 小脳失調,DTR亢進,害元金麻痺,嚥下障害 進行するとamyotrophy 錐体外路症状(動作緩慢,固縮,ジストニー) 2)Dx,DDx 家族歴で疑われれば遺伝子診断. 出身地も重要. SCA2,3と鑑別 SCA2 キューバHolguin地方,日本では少数 12q23-24.1→ataxin-2 CAG repeat 1)S S 成年期に小脳失調で発症 緩徐眼球運動とDTR低下あり,眼振はまれ,感覚優位の末梢障害も 進行期には痴呆,錐体路徴候・筋萎縮,顔面・舌の攣縮,舞踏様運動など 2)Dx,DDx SCA1,3との鑑別 SCA3/Machado-Joseph disease(MJD) アゾレス諸島だけでなく日本や欧米でも頻度の高い病型 14q24.3-32.1→MJD1 CAG repeat 病理的には小脳歯状核,赤核,GPi,ルイ体,SN,pontin nucleus,橋被蓋,gracile cuneate nucleus,motor cranial nerve nucleus,脊髄ではClark柱神経細胞,脊髄小脳路,脊髄前角運動神経細胞が障害される. 臨床型から4型に分類される(タイプⅠⅡⅢⅣ) 1)S S びっくり眼,外眼筋不全麻痺(眼球運動障害あり,瞳孔異常はない),全身の筋萎縮はあるがALSのような高度の筋力低下はない.開眼障害.舌と顔面にfasciculation-myokymia,手足と顔面にジストニー タイプⅠ 20~30歳で発症 錐体・錐体外路症状,びっくり眼,眼振あるが外眼筋麻痺なし タイプⅡ タイプⅠとⅢの中間で最も頻度が高い,眼振はないがslow saccadic タイプⅢ 40~60歳発症 緩徐進行性の小脳症状と末梢神経障害,眼振と外眼筋麻痺と複視 タイプⅣ 少ない レボドパ反応性のParkinsonismと末梢神経障害 2)DDx SCA1,2が鑑別. SCA4 ユタ州.日本では報告なし. 16q 病理では小脳と脊髄後索に病変. 1)S S 小脳失調,錐体外路徴候,感覚神経軸索変性, SCA5 リンカーンの従兄弟の家族 11c番染色体にSCA5geneがあるとされるが未同定. poly-Q 母親からの促進現象あり 1)S S 成年期,失調性歩行が初発.他に臨床症状は一般に認めない. MRIで小脳萎縮あるが脳幹萎縮なし 2)DDx SCA6と鑑別,SCA6は頻度が高く,遺伝子同定されている. SCA6 Hereditary cortical cerebellar atrophy(HCCA)の半数を占める. 西日本ではもっとも多いタイプ,東日本ではSCA3に次いで. Holms型皮質性小脳萎縮症と分類されていたもの. α1A電位依存性Caチャネル遺伝子(CACNA1A)のC末近くのCAGリピートの異常伸長だが比較的少ないリピート. 表現促進名ははっきりしない.purkinje細胞に特に発現. CACNA1遺伝子はリピート以外の変異では家族性片麻痺性片頭痛,反復発作性失調症の原因となっている. 1)S S 成人発症,平均45歳,純粋小脳変性症. 歩行失調が初発であることが多い.他に四肢の失調,構音障害,水平性注視眼振,書字障害, 2)Dx,DDx MRIで小脳に限局した萎縮.発症年齢.リピートは比較的少ない. 純粋小脳変性症を呈するSCA5,10,11,16が鑑別にあがる. SCA7 3p12-13にSCA7gene CAGリピート 表現促進 欧米に多くアジアに少ない 1)S S 乳児期から高齢まで。平均は20~30歳、緩徐進行性。 黄斑・網膜変性と小脳失調、緩徐眼球運動あるが、眼振少ない。まれに舞踏病様不随意運動、精神障害。 MRIでは小脳と脳幹の萎縮。 病理でPurkinje細胞、顆粒細胞、歯状核、橋核、下オリーブ核に神経脱落。 2)DDx 小脳失調と黄斑変性を進行性視力障害を認めた場合はSCA7を強く疑う。 有効な治療方法なし。 SCA8 13q21 SCA8gene,CTGrepeat? 1)S S 18歳~65歳 構音障害、不安定歩行、緩徐進行。 MRIで小脳虫部と皮質の萎縮、脳幹部intact SCA10 メキシコのみ。 22q13-qter,intron9 pentanucleotide repeat 1)S S 14~44歳、小脳症状と痙攣。血液、肝臓、心臓にも異常を認めることも。 SCA11 British 15q14-21.3 gene未単離 小脳症状、水平方向性眼振、四肢失調 SCA12 5q31-33,CAG repeat 5歳~55歳、小脳症状、上肢振戦、頸部振戦 進行例で痴呆やパーキンソニズム SCA13 フランス 19q13.3-13.4 gene未単離 4歳~61歳 幼児発症では焦点発作や知的障害 SCA14 日本 19q13.4-qter gene未単離 27歳以下で失調とミオクローヌス、39歳以上で純粋な小脳失調。 SCA16 8q22.1-24.1 gene未単離 20~66歳 純粋な小脳失調、頭部の振戦 SCA17 日本 TATA-binding protein遺伝子内のCAGリピートの異常伸長。 19~48歳 パーキンソニズム、体幹・四肢のジストニーあり、眼球運動障害なし MRIで小脳と大脳の萎縮 DRPLA
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地に足がついた今、大賢者からの見張りは届かない。 ならば、成すべきことは唯一つ。 ◆ 深夜。丑三つ時に差し掛かった頃。 冬木市の郊外から離れた一角にある煤けた西洋館を、禍々しき歌が震わせていた。 「……閉じよ(みたせ)……閉じよ(みたせ)……閉じよ(みたせ)……閉じよ(みたせ)……閉じよ(みたせ)」 歌うのもまた、禍々しき者。 幽霊屋敷と見間違う程に古惚けた館の一室にて詠唱を行うのは、『両腕が右手』の老婆であった。 黴た蝋燭を灯りとし、用途の知れぬ骨董品を周囲に並べられたその部屋では、 床には怪しげに光を放つ魔法陣が描かれ、その側には『ある“節足動物”の化石』が意味ありげに置かれている。 現実から乖離された空間。それはまるで魔女の部屋。 「繰り返すつどに五度……ただ、満たされる刻を破却する……」 老婆の名はエンヤ・ガイル。通称、エンヤ婆。 数十年前のパキスタンにて命を散らした彼女は、どういう訳か現代の日本ーー冬木市にいた。 「告げる……汝の身は我が下に……我が命運は汝の剣に……聖杯の寄るべに従い……この意……この理に従うならば応えよ……」 彼女が行うのは、願望器ーー『聖杯』を掛けて魔術師達が挑む『戦争』への下準備。そう、英霊(サーヴァント)の召喚の儀式である。 老婆が願望器を求む理由。 全ては彼女が嘗て絶対の忠誠を誓い、己の全てを捧げた『あの方』の為。 例え、『あの方』ーーDIOから己に投げかけられた信頼の言葉が全て偽りであったと知っても、老婆の忠義が涸れることはなかった。 寧ろ、突き離されたが故にエンヤ婆は、DIOの為に死力を尽くすことによって己の存在を認められることを渇望していた。 忠義を超えた、『狂信』である。 「誓いを……此処に!我は常世総ての善と成る者ッ!……我は常世総ての悪を敷く者ッ!」 嗄れた声は次第に怒声を浴びせるかの如く鋭くなり、儀式が最終段階(ラストスパート)に入ったことを知らせる。 「汝三大の言霊を纏う七天ッ!、抑止の輪より来たれッ!」 変化はその時から起こった。 鬼の形相で詠唱を続ける老婆の、その前方にある召喚陣。 それが、大宇宙の星々の光が一点に集束しかのように、輝きを増し始めたのである。 「天秤の守り手よォォォォ、クケェェェェェェエエエエエエエエーーーーーーッ!!!!!!!!!」 エンヤ婆が天を仰ぐように両右手を頭上へと伸ばし雄叫びを上げたのと、周囲が閃光に包まれたのは、ほぼ同時であった。 次に、爆破と見紛う衝撃が円陣を中心に広がり、辺りの埃巻き上げ、エンヤ婆の身体を揺らした。 眩い光に思わず目を背け、身体をふらつかせるエンヤ婆だが、儀式の結果を見定めんとすぐさま陣の方へと目を凝らす。 光の先には、一人の男の影があった。 「召喚の招きに従い参上した」 網膜を焼くような閃光は次第に弱まっていき、輪郭程度しか認識できなかった男の姿が鮮明になっていく。 そこにいたのは、肌の黒い男。 生物の一部を思わす毒々しき槍を携えた、一人の槍兵(ランサー)が佇んでいた。 その一級の人体彫刻を模したような引き締まった肉体は、偽りなく兵士の肉体。 だが、兵と呼ぶのは痴がましいという程に、男は気品にも満ちている。 眼光はこの世の全てを見定めるかの如くに鋭く、身に纏うものは骨董に目の肥えた老婆からしても一級品。 なにより彼の立ち姿からは、言葉とは裏腹に、何物であろうとも己を『従わせる』ことはないと、向かい合う者の脳髄に叩き込んでくるかの如き傲慢さが溢れ出ている。 「お前が私のマスターか」 正しく、『王』がそこに立っていたのである。 ◆ ランサーの存在を確認したエンヤ婆は儀式の成功に歓喜の声を挙げかけたが、すんでのところで衝動を抑え込む。 目の前の英霊に対し生半可な態度を取っては、命を落としかねないということをエンヤ婆は知っている。 そして、微風が吹けば倒れてしまいそうなヨボつく足取りで男の方へと近づくと、老婆は深々と頭を下げた。 「如何にも、名はエンヤ・ガイルと申します。そして『王』。よくぞわしの呼び声に応えてくださりました……」 「エンヤか。今宵から我々は同じを願望器を求む同士。そう一層に腰を折る必要はない。老体に悪いぞ」 対して『王』と呼ばれたランサーは頭を上げるよう、老婆に微笑み、穏やかに諭した。 その言葉に甘え、エンヤ婆は姿勢を崩して見せるーーーが、内心では依然として自らのサーヴァントへの警戒を解くことはない。 そしてランサーは、神の教えを説く神父のような微笑を浮かべながら、言葉を放つ。 「然し、英霊として召喚されたが為に格は堕ちたものの、この身は神と称われ崇められた身。……聞いておこうかエンヤ、まさか私を只で使ってやろうという気では或るまいな?」 直後、エンヤ婆に猛烈な悪寒が走った。 脊髄を抉り掴まれるのにも似た感覚に、老婆の顔から血の気が失せる。 ランサーから放たれる強烈な“圧”(プレッシャー)に老婆は、嘗ての己の主君のそれを思い出した。 下手にこのサーヴァントの気を損なわせれば、命の保証はないだろう。 「め、滅相もないですじゃ!確かにわしが貴方様をお呼びしたのは私欲であり、この聖杯戦争の絶対的勝利の為。……しかし!貴方様からの恩に報うことを欠かすつもりは断じてありませぬ!」 そう言うとエンヤ婆は部屋の隅に無造作に置かれたふたつの物体へと顔を向けた。 そこにはーーーどういう事かだろうか。OL風の若い二人の女性が倒れ込んでいるではないか。 眠っているのか、気絶しているのか、はたまた、死んでいるのか、彼女達が起き上がる様子はない。 そして老婆は、何処か下劣な笑みを浮かべながら、ランサーへ何かを促すような視線を送る。 彼女達はいわば『贄』である。 罪無き人間を攫い、己のサーヴァントに献上する。百人の英霊の百人が顔を顰めるであろうその行為。 それに対し、ランサーはーーーー 「女が二人か。まぁ、魔力の足しにはなるだろう」 ーーー善しと見なした。 実の所それも当然であり、何故ならこの男にはとある残虐的逸話が残っている。 遥か昔のある文明では、人供犠牲の文化が根付いていたとされており、その文化の発端にはこの『王』が密接に関わっていたのではないか、と後世に伝えられている。 端的に言えば、ランサーはその時代、その国で、『王(神)』への貢物として、民に人命を捧げさせていたのだ。 嗚呼、だがこの男。人を人とも思わぬこの様を、悪魔以外に何と呼ぼうか。 「では、『王』の前に向かわすよう叩き起こしますので暫しお待ちを……」 「いや、それには及ばないよ。エンヤ」 女達へと歩き出そうとするエンヤ婆を、ランサーは右手を挙げて静止させる。 そして、合図でもするかのようにその手を目元まで持ち上げた。 ーーーカサカサ。 瞬間、風が落ち葉を転がすような音がエンヤ婆の耳をくすぐった。 音は、後方の扉の向こう側ーー館の廊下に位置する地点から。当然老婆は、音の発生源を確認する為に振り向く。 老婆の網膜が捉えたのは、影。半開きの扉の向こうで、確かに何かが潜んでいた。 すると下手糞なチェロのような音をたてて、扉が開いた。 ーーーカサカサカサカサ。 影は部屋の蝋燭の灯りに照らされる事で正体を現す。 それは、小さな死神の集合体。 その死神は鎌を持たない。 代わりに甲殻類を思わせる鋏を前に突き出し、 長い尾に毒針を仕込む。 その毒で数々の英雄を死に至らせたのは余りにも有名であり、 その功績を神々に讃えられ天にも昇った。 或らゆる国々で恐れられてきた、死と暴力の象徴。 その死神の名はーーー蠍(スコルピオン)。 軍隊蟻の如く蠢き、女二人へと集る無数の蠍。 エンヤ婆は、それがランサーの宝具または能力の一つであることも理解する。 『彼の名』を知る者であれば、誰もがそう判断するであろうことだった。 その刹那、彼女の鼓膜を湿り気のある音が震わせた。 人間が啄まれる音だった。蠍による魂喰いである。 女達の悲鳴はない。無数の蠍の毒によって叫ぶ間もなく命を絶ったのだろう。それだけが、彼女達の幸運である。 無数の蠍が群がり、肉を割き、血を啜り、肉を撒き散らす。 それは全身を鑢で削る感覚にも似ていたに違いない。 二つの死体は十も数えぬうちに人の形をした肉塊へと変貌していき、骨まで露わになっている。 昆虫類が群がる光景というのは唯でさえ嫌悪感に訴えかけて来るが、目の前の血味泥の肉塊を交えたそれは、年増のいかぬ娘が見れば発狂に至るでものであろう。 流石のエンヤ婆もその壮絶な光景には大いに面を喰らっていた。 その一方で、この状況を創り上げた張本人であるランサーは、見慣れた景色でも眺めるかのような表情でそれを見ている。 自らの私利私欲で人の命を奪った上で、その体が無残に破壊される様を見ようが、眉一つとして動じる様子はない。 その姿、老婆が慕った『帝王』と瓜二つ。 ある者は彼を『英雄(メネス)』と呼び、 ある者は彼を『荒れ狂う響神(ナルメル)』と呼び、 そしてある者は彼を、 『蠍王(スコルピオンキング)』 ーーーと、呼んだ。 ランサーの正体は、初代エジプト王朝にて民を束ねた、始原のファラオ。 そして王権の基盤を創り、贄の文化を築いた、始原の暴君である。 ◆ 「私の配下の蠍を、この街の全域に拡散させている」 暫くして、ランサーはエンヤ婆に顔を向け、呟くように言葉を溢した。 「しかし、これから幕を開けるのは万象の強豪が集う聖杯戦争。其の供えとしては、少々、心許ない。せめて人手が欲しい所だが……手立てはあるか、エンヤ?」 まるで自らのマスターを試すような問い掛けに、エンヤ婆はようやく我に返る。 そして先程までの動揺を取り繕うように、口角を吊り上げ、不気味な笑みを返した。 「心配はござりませぬ」 瞬間、シャンパンの栓を抜いたかのような小気味の良い音が部屋に響いた。 異変が起きたのは蠍の餌食となっている死体の一つ。その脛辺りに、突如としてゴルフボール程の穴が空いたのだ。 ぴくり、と死体が痙攣した。 ひとりでに、首が持ち上がる。 生命機能を失った筈の死体が、さながらゾンビの如く起き上がろうとし始めていたのだ。 その何とも不可思議な光景を、ランサーは興味深げに眺める。 肌という肌をズタボロの雑巾のようになるまで啄ばまれ、 筋肉という筋肉を痛々しく引き裂かれ、 所々白い骨を露出したリビングデッドは、 赤き血を滴らせながら、 今尚蠍に肉を喰われつつも、 立ち上がり、 膝をつき、 そして、 蠍王に向かってぎこちなく首(こうべ)を垂れた。 「わしのスタンドーー『正義(ジャスティス)』は、きっと貴方様を満足させる筈ですじゃ」 なんと趣味の悪い返答だろうか。 吐き気を催すような趣向に蠍王は思わず嗤った。 【クラス】ランサー 【真名】スコルピオン王(初代ファラオ) 【出典】エジプト第1王朝時代、(ギリシャ神話) 【マスター】エンヤ・ガイル 【性別】男性 【身長・体重】180cm・80kg 【属性】混沌・悪 【ステータス】 筋力C 耐久C 敏捷B+ 魔力A 幸運B 宝具A 【クラス別スキル】 対魔力:A A以下の魔術は全てキャンセル。 事実上、現代の魔術師ではランサーに傷をつけられない。 【固有スキル】 カリスマ:A 大軍団を指揮する天性の才能。 Aランクはおおよそ人間として獲得しうる最高峰の人望といえる。 古代エジプト王朝の創始者であるランサーは高いランクを有する。 女神の加護(蠍):A 蠍の女神であるセルケトからの加護。 これによりランサーは千をも超える蠍を自在に使役する事ができる。 皇帝特権:B 本来持ち得ないスキルも、本人が主張する事で短期間だけ獲得できる。 該当するスキルは騎乗、槍術、芸術、軍略、単独行動、気配遮断のみとする。 神性:E 神霊適性を持つかどうか。高いほどより物質的な神霊との混血とされる。 太陽神の化身にしてファラオの始祖たるランサーは、本来なら破格のランクを持つ。 しかしランサーとして呼び出された結果、蠍の王(スコルピオンキング)としての側面が強調された為、ランクが大幅に下がっている。 【宝具】 『万象が恐れた尾節の毒(シャウラ・アルマウト)』 ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1~3 最大補促:1人 神話、物語の中の“蠍の概念”が具現化した邪槍。見た目はぴんと張った蠍の尾の様な形状をしている。 この槍に突き刺された者は神秘の籠った毒に体を蝕まれ、最終的には毒が霊核に達する。 これはCランク以上の対魔力で対抗することができるが、ポセイドンの息子であるオリオンを毒殺したという逸話により、“神性スキルを持つ者”に対しては対魔力をスリーランクダウンさせる上に追加ダメージが加わる。 また、アポロンの息子であるパエートンが、乗馬中に馬を蠍に刺された事によって落馬して死亡したという逸話から、“馬などの哺乳類に騎乗する者”と対峙した時、騎乗元の生物に毒を食らわせた場合には高確率で即死させることができ、尚且つ乗り手が落馬した際のダメージも通常の倍となる。 『王もまた天に昇る(リジル・アルジャウザ)』 ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補促:- 古代エジプトでは、夜空に浮かぶオリオン座を「死せるオシリスが天空へと昇った姿」であると考え、重要視していた。 これが何を意味するのかと言うと、オシリスの生き写しとされるファラオは、「蠍の毒によって死に至りやがて天へと昇った英雄オリオン」の側面も持つという事であり、つまり、宝具『万象が恐れた尾節の毒』による冥府への導きはランサーもまた対象に加わっているのである。 故に、もしランサーが『万象が恐れた尾節の毒』によって毒に侵された場合、令呪による回毒でもしない限り3ターン後には霊核が毒に蝕まれ死亡する。 しかし、それは言わば英雄オリオンの逸話をその身で体現するということでもある為、毒に身体を蝕まれる間ランサーは神霊ーーオリオン/オシリスの力をその身に宿すことができる。 その場合、スキル「神性」のランクがA+にまで上昇し、スキル「戦闘続行」のA+を獲得、更に全てのステータスがA+となる。 当然だが、ランサーは令呪で強制でもしない限りこれを使おうとしない。 【Weapon】 『蠍』 ランサーが使役する蠍の軍団。 数は多いが単体の毒では人一人殺すのも厳しく、神秘の存在に対しては殆どダメージを与えることができない。 【解説】 紀元前32世紀にて上エジプトと下エジプトを統一し、エジプト第1王朝を創設した初代ファラオである。 その時代、統治の実権を王に委ねる君主制、王の贅沢な生活様式、といった王権の基盤を創り上げた。 一説には、エジプト王朝にて贄の風習を最初に始めた暴虐の王であるとの声も存在する。 武術においての逸話は明るくないものの、武器を片手に戦場を駆ける姿を描いたものがいくつか残されている。 この一人目のファラオについては蠍の王とは別に、ナルメル、メネスと幾つか候補が居るとの声もあるが、実の所それらは全て同じ人間を指した名称である。 普段の物腰は穏やかではあるが、腹の底のプライドの高さはやはり某英雄王、某神王並み。 それでいて、彼等が有する“王故の他者への慈悲”などは欠片もない生粋の暴君である。 弱点はカバ。 【特徴】 外見は二十後半の色黒の男。 端正な顔立ちに、長い黒髪を後ろで三つ編みっぽい感じで一房に束ねている。(烈海王みたいなアレ) 着飾るものは『王』の一文字に相応しい一級品のもの。 基本軽装という冬に入った日本ではミスマッチの格好だが、彼の鍛え抜かれた筋肉を見て肌寒さを感じる者はいないだろう。 【サーヴァントとしての願い】 もう一度エジプトを支配する。 【マスター】 エンヤ・ガイル@ジョジョの奇妙な冒険 Part3 スターダストクルセイダース 【能力・技能】 スタンド『ジャスティス』 破壊力D スピードE 射程距離A 持続力A 精密動作性E 成長性E 霧状のスタンド。傷口にスタンドを通すことで生物を自在に操る事ができる。 幻覚を見せることも可能。 執念 こと執念に関してはジョースター一族やDIOにも引けを取らないであろう。 復讐の怒りのままにジョースター一向抹殺に向かった際、町一つ分の地域をスタンドで覆い、陸上選手並みの脚力を見せた。 【人物背景】 両手が右手の老婆。 DIOの側近のスタンド使いであり、スタンドの矢の所持者でもあった。 殺された息子の復讐の為にジョースター一向の抹殺に向かったが、あえなく敗北。 最期は鋼入りのダンによって口封じの為に殺害される。 今回の聖杯戦争では死亡後からの参戦であるため肉の芽は埋め込まれていないが、未だDIOへの忠誠心は衰えていない模様。 【マスターとしての願い】 全てはDIO様の為。
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細く、いびつなスリットから防弾ガラス越しに見える外は暗かった。 夜明け前の空は静寂を湛え、生体機関の低い唸りだけが低く響いている。 ゼクセルシエの砲塔は異常な程狭い。砲尾と即応弾を苦戦しながら潜り抜け、ようやくハッチから身を乗り出し、辺りを見回す。 明かりが全く無いにも拘らず、不思議と視界はクリアだった。 背後には隷下の戦車中隊8両、そして数キロ前方には今作戦の攻略目標、 街 が観える。 灯火管制すら敷かれていないようで、街灯、看板が煌々と輝きを放っていた。戦場と言うにはあまりに幻想的な艶光が、私から緊張感を奪い去った。軍営都市らしく、よく区画整理されているのがこの距離からでもよく分かる。 不思議…いや、不可解だ。 石畳の敷かれた中央道路と子路に細断された建物群は間違いなく連邦の軍営都市の物なのだが、建物自体は我が帝国のものに似ている。纏っている雰囲気はどちらでも無い。誰でもあって誰でもない、顔の無い街。それに戦時下だというのに、灯火管制も戦協節電も行われていないらしい。 そして我々の地図には、この 街 は存在しないことになっている。街自体はそう大きく無いが、道路の石畳は反尺ほど掘り下げられて敷設されているし、3階以上の建物も見えるというのに。 何故これ程の街が地図に無いのか。連中はどうやってバレずにこれ程の都市を拵えたのか。そもそも我々は地図に無い街にどうやって展開したのか。 生体機関の重い嘶きが私の意識を現実に引き戻した。私たちは戦争屋であり、建築家でも思想家でもない。無意味な思慮は関門外だ。 それに私には帰るべき場所がある。軍属の血族は2等人民でも純帝国人と対等の待遇が約束されている。被支配民の識別紋を焼き潰した痕を擦りながら、妻子の為にこの地獄に自分から飛び込んでいったことを思い出す。御守に、と出征前に妻が持たせてくれた写真膜を取り出そうとした。写真館に行ったのは何時頃だったろう。まだ娘が赤ん坊と幼子の間を闊歩していた時だ。複写網膜の値段に目を剥いたが、娘の笑顔を見た瞬間に金を惜しむ気など失せた。娘はどれくらい大きくなっただろう。私の顔、ちゃんと覚えてるだろうか? 胸ポケットのボタンを外そうとしたところで、重い砲声が鳴り響いた。別部隊のダック210の制圧砲撃。我々戦車隊8両が先鋒となり突破口を形成、その後は名も知らぬ歩兵大隊と共に突入し、敵を掃討する。大気を震わせる装薬の炸裂。幾度となく聴いた戦争の嚆矢。 作戦開始。全車、強速前進! 生体機関が鬨の声を上げてゼクエルシエを持ち上げ、加速させてゆく。地面は真っ平らなようで、予期された振動は訪れない。 街 側に動きはないが、我々にはわかる。長年戦場にいた者の勘、鋭敏な嗅覚が戦争の臭いを嗅ぎつけていた。 ペリスコープいっぱいに広がる 街 の輪郭が噴煙で歪み、甲高い音が空を埋め尽くす。それが砲弾の風切り音だと気がついた時には、連邦のカウンター砲撃は我々よりはるか後方に一直線のクレーターを穿っている。 不味い、後続の歩兵と分断される。 どうやら砲撃で歩兵を足止めして、孤立した戦車を叩く腹積もりらしい。砲弾が降りしきる中で歩兵は動けない。かといって戦車だけ街を制圧するなど不可能だ。このまま見通しの良い平野で停止し、歩兵を待てば対戦車砲の釣瓶撃ちを喰らうに違いない。正面装甲は敵の徹甲弾を受け止めてくれるだろうが、衝撃までは殺しきってくれない。砲弾を浴び続け、生体機関が沈黙した場合、死を待つしかなくなる。 私は一刻も早く 街 に肉薄しようと、操縦手と僚車に増速を命じた。敵の術中に落ちるくらいなら、自ら飛び込み食い破る方が幾らか 死ににくい ことを我々は知っている。 街 の外堀まで1500米という所で敵の対戦車砲が慌てて隠蔽布を解き、砲撃を始めた。敵の砲列まで約800米。進路を妨げる障害物も、射線を遮る遮蔽物も無い、ほぼ完全な平地だ。敵の反応は明らかに遅すぎる。敵は我々の行動を読み違えた焦りからか、砲撃は散発的で狙いも甘い。 正面の対戦車砲が有効射程に入った瞬間、私が命令するより早く、砲手は照準を定めていた。 停車は一瞬、許容できる被弾は1発。 浮遊しているゼクセルシエは塹壕も地雷も無視することができるが、砲を当てたければ接地し車体を安定させなければならない。その小さな砲塔に押し込んだ駐退器は、強装55粍砲の反動を抑え切るにはあまりに非力すぎた。 私の合図と共に生体機関の出力ベクトルが逆転し、車体が前につんのめる。全速状態から逆進を掛けての急停止。車内の固定されていない物が慣性の暴力を喰らい乱れ散る。装填装置が砲尾を閉鎖する前に、熟練の操縦手と老練の生体機関の連携が急停止の衝撃を殺しきっていた。 僅か数秒の接地から撃ち放たれた55粍榴弾が連邦軍75粍対戦車砲の防盾で起爆し、砲を陣地ごと吹き飛ばす。爆炎と粉塵が視界を埋め尽くし、1瓲はあろうかという重砲が紙切れのように舞い上がった。待ち伏せのカードを使い果たしても尚、砲から離れなかった勇敢なアーキル兵達はみな肉片となって辺りに飛び散っただろう。 次の獲物を求めてペリスコープを覗く。四方八方から砲火が瞬いていた。砂埃と粉塵が視界を塞ぎ、目標に達することなく落着した砲弾が地表に穴を穿っていく。 視界外から飛来した砲弾が正面装甲に突き刺さり、車体が鈍い衝撃と甲高い金属音に包まれた。被害状況を確認したが、ゼクセルシエの傾斜装甲は我々の信頼を裏切らなかったようだ。連邦軍の短砲身55粍砲は零距離だろうとゼクセルシエの正面装甲を貫徹できない。 筋繊維装填装置が榴弾を砲尾に押し込み、砲手はすかさず敵55粍砲に照準を合わせる。その瞬間、砲尾が天板にぶち当たり、砲昇降機が動きを止めた。背の低い対戦車砲を直接狙うには俯角が足りないのだ。操縦手に命じて車台を沈降させ、無理矢理俯角を稼いで射線を切り開く。 砲手は目標のやや手前を狙ったようだ。浅い角度で地表に命中した榴弾は弾かれ、空中で炸裂し破片の雨を降り注いだ。彼らの命を守るべき塹壕が、彼らの挽肉で満たされ墓穴となる。 火線の密度は狭まる一方だ。敵砲を叩き、機関銃を潰し、我々は這うように 街 の外郭に辿り着いた。見える砲陣地は粗方潰したハズだ。 砲身は熱を帯び、筋繊維装填装置も休息が必要だろう。ゼクセルシエの排煙装置は性能不足で、ゴーグル越しでも目が痛む。機関銃弾が絶え間なく装甲をノックするのでハッチを開けるわけにもいかず、こればかりはひたすら耐えるしかない。 車体を建物の陰に移動させ、車内を見回し損害を確認する。血圧計が危険値を示しているのを見て、生体機関に鎮痛剤を打とうと薬剤弁を開いた。定量の2倍、過剰な薬剤投与は徐々に、確実に生体を食い荒らしていく。 戦死 でなくとも廃棄になりうるし、実際オーバードーズによる血管破裂や壊死で死んだ個体を多く見てきた。 それでも、生体に数年後の後遺症を気にする贅沢はさせてやれない。 新兵だった頃、私は何度も生体機関の聲を聴こうとした。だが、私にその才は無く、生体は決して心を開かなかった。そもそもヒグラート戦線の生体の平均寿命は約2週間。対話の間もなく薬剤漬けになっていった。 許してくれ、俺もオマエも消耗品なんだ。傷と薬剤で摩耗していく生体に、最初はそう語りかけていた。戦車兵の平均寿命が1週間を下回るまでは。 死傷率で言えば、ここもそう変わらないかもしれない。敵が持ち込んだ75粍対戦車砲の数はこちらの予想より多く、8両いた我が中隊の内、2両が炎上、1両が失血により挫座、1両は弾薬に誘爆し、消し飛んでしまった。残りも無傷とは言えず、殆どの車両が裂傷や出血を負った。街に至るまでに、約半数が撃破されたのだ。敵の対戦車砲は大きな三角形状に配置され、複数の火線が目標に集中砲火を浴びせるように出来ていた。 崩れた外壁ごしに、先の準備砲撃で瓦礫の山と化した建物がいくつか見えた。砲撃による瓦礫の山や入り組んだ路地は彼らの狩場だ。塹壕に潜った連邦兵はタチが悪い。数時間も狭い穴蔵に潜み、コチラが隙を見せた瞬間に致命的な火力を叩き込んでくる。今の帝国軍に彼らの奇襲と待ち伏せを恐れない者など居ない。カノーシア(カノッサ)北西部ベルカルムに突入した第14師団は、地形を活用した遅滞戦闘に丸3ヶ月の足止めと多大な出血を喰らった。ボディカウントの結果、敵は2個大隊以下だったことが判明し、当時の師団長ガルメット少将は解任されている。 あの瓦礫の陰に、建物の中に、残骸の裏に、いったいどれ程の敵兵が潜んでいるのか想像もつかない。そこに突入するのにゼクセルシエ4両ではいささか荷が勝ちすぎる。 歩兵部隊の動きが気になり、外を見回した。何刻経っただろう。まだ日が上がっていない所をみると、2刻も経っていないのかもしれない。人間の体感時間など曖昧なものだ。とっくに朝になっているとばかり思っていた。異常に塩気の強い携帯栄養塊すら、全くの無味に感じる。疲れは感じないが、自覚以上に疲労が身体を蝕んでいるようだ。 ようやく歩兵部隊が追いついた。顔までは見えないが、隊列はよく整っており、士気はまずまずと言ったところか。 鎮痛剤、興奮抑制剤、血液凝集補助薬でがんじがらめにされて 生かされている ゼクセルシエが、ゆっくりと速度を取り戻し、 街 の大通りに向けて前進する。 私と生き残った4号車、7号車、8号車で鏃隊形を取り、後続に歩兵部隊を追随させる。最後尾には貴重な装甲兵員輸送車を配置した。負傷者は彼らに任せるつもりだった。 市街戦の基本は、こちらに射線が通りうる高所に徹底的な砲撃を加えて潰すことだ。視界は劣悪、仰角は貧弱、砲塔旋回は低速、敵を発見してからの対処では遅すぎる。 路地からの奇襲は歩兵に頼るしかない。歩兵の盾になるべき戦車が歩兵に頼らざるをえないとは、なんとも無様な話だ。 路地を一つ一つ警戒しながら大通りを前進していく。散発的だが強力な銃撃が加えられ、そのたびに戦力と神経が擦り減らされていった。キューポラから頭を出した瞬間に狙撃を受け、4号車の車長が即死したと無線が入った。同車の砲手が間髪入れずに狙撃兵を建物ごと破砕する。 前進を始めて数百メートルと進まない内に、隊列の最後尾にいた装甲兵員輸送車が吹き飛んだ。高所から前輪に1発、裏路地から側面に2発、計算され尽くしたラケーテ弾の同時弾着。これで退路が塞がり、正面の死地を抜く以外に我々が生き残る術は無くなった。 味方歩兵はあらゆる遮蔽物の陰に手榴弾を投げ込み、機関短銃を乱射する。擲弾の音が少ないところをみるに、擲弾兵は敵狙撃兵に集中して狙われ、殆ど残っていないようだ。 こちらと言えば、狙える場所に片端から榴弾を叩き込んでいる。これでも先制撃破できることは稀で、心理的な揺さぶりがせいぜいだろう。 そう思った矢先、僚車が砲撃を加えた建物が大きく爆炎を上げて崩れた。弾薬か対戦車ラケーテが誘爆したのだ。直後、我々の右後方にいた4号車が浮力を失い着底する。失血多量か脳震盪か、とにかく戦闘継続は不可能らしい。乗員の脱出は確認できなかった。見たところ大きく損傷しているわけでは無い。乗員が負傷したか、ハッチが歪んで開かないのだろう。とにかく、後で救出しなければならない。 アーキル兵達は巧みに後退と反撃を繰り返しているようで、アーキルグリーンの屍体を見つけることは出来なかった。彼らには散々辛酸を舐めさせられたが、ここまで姿が見えないのはなにか妙だ。不気味さすら感じた。なにか得体の知れない化物と戦っている気に陥っていく。 敵の火力は明らかに減衰している、我々は殺し、死なせていると自分に言い聞かせた。少なくとも敵の火力が低下しているのは事実なのだから。街の中心、十字路に到達した時には我々は疲弊し切っていた。味方歩兵は見える限り、半分程に減っている。どうやらこの 街 はやたらに広いらしい。信じられないことだが、外から見えた 街 は全体の極一部のようだ。そこまで巨大な都市には見えなかったのだが。 それぞれの支路に7号車、8号車を分散させ、我々は街の北端を目指す。 抵抗を一つ一つ潰しながら歩兵の道を切り開いていく。四方八方、銃声と爆音が鳴り止まない。8号車からの無線連絡が途絶えた。我が国の無線機は悲しいほどに信頼性を欠いていたが、無線の故障と都合良く思い込むには状況が悪すぎる。 砲撃を加えつつ前進する内に、高い建物がだんだんと少なくなり、街の端に近づいていることを示していた。 敵の火線は明らかに減っている。司令部を見つけ出し、組織的抵抗を終わらせれば、後は掃討戦に移るだけだ。犠牲は払ったが、ようやく勝利が見えてきた。 戦いの終幕を感じた瞬間、凄まじい衝撃と轟音に打ち倒された。 意識が身体から四散していく。思考は状況把握を放棄する。混乱が脳を埋め尽くし、あって然るべき激痛さえ感じることが出来ない。ようやく焦点を取り戻した目に飛び込んで来たのは、砲塔右正面に穿たれた大穴と吹き飛んだ砲手席だった。 右斜め前方の路地に砲煙が燻っている。偽装網と材木を崩砕しながら装甲車両が飛び出した。 デーヴァ突撃砲の待ち伏せ。 ランゲ・ナーゼルと呼ばれる長砲身の対戦車砲を装備したデーヴァは、ゼクセルシエにとって数少ない驚異の一つだった。この突撃砲は700米以内ならゼクセルシエの正面装甲を貫徹しうる。より脆弱な砲塔ならば900米以内と言ったところか。 そんなカタログスペックを無視できる程の至近距離から砲塔正面への一撃。砲塔の右半分がえぐり飛ばされ砲手は即死、屍体も残らない。ショックで生体機関が錯乱を起こし、砲塔旋回装置は完全に破壊された。 デーヴァの砲身はピタリとこちらを捉えている。第二射は確実に我々の息の根を止めるだろう。 その瞬間、戦車兵としての本能に突き動かされるように、意識より先に身体が動いた。右舷生体機関への酸素供給をカットする。浮力を失った車体は右に傾斜しながら倒れ込み、デーヴァと正対した。 デーヴァが射線に入った瞬間、私は緊急撃発レバーを蹴っていた。 凄まじい爆音、熱気、振動。 立っている感触が無い。傷の痛みも、流血の暖かさも、死への恐怖も忘れたまま、私は砲塔バスケットに倒れ込んだ。 意識を失う直前、最後に見たものは割れた照準器の中で爆発するデーヴァだった。 ふいに目が覚めた。急に光を差し込まれた網膜が痛みをもって抗議するが、無視して立ち上がろうと試みる。 何本か骨が折れているに違いないが、痛みは全く感じない。どれくらい昏倒していたのだろうか。重い体を引きずって、砲尾と捲れ上がった装甲板を潜り抜け、ようやくハッチから身を乗り出した。 静かだ。 砲声も、銃声も、爆音も、悲鳴も みな嘘のように黙っている。戦いが終わったのだ。高い建物の残骸に我が帝国の旗がはためいているのが見えた。 そして、私は恐怖に凍りつく。 夜が明けていない。 少なくとも、作戦開始から6刻は経っているはずなのに。 今、太陽は空に無ければならないはずだ。 今は朝で無ければならないはずだ。 今、セレネは南東に見えなければならないはずなんだ。 言葉に出来ない恐怖が私を包み込んだ。 慌ててあたりを見渡すと、味方の歩兵の隊列が近づいてきていた。声を掛けようとして、私は愕然とする。 ある者は顔を半分抉られ、ある者は肘から下と脇腹を失い、ある者は後頭部に穴をこさえ、顔が花弁のように捲れ上がっていた。負傷というにはあまりに甚大な欠損を抱えた屍体の戦列が、自動小銃や機関短銃を背負い、隊列を組んで行進している。 ああ、そうか。 どこの国の模式ともつかない顔の無い 街 。この街は地図に無かった。それもそのはず、この 街 は存在しない。どこにも存在しないんだ。作戦展開までの記憶がどうにもあやふやなことも、それが気にもならなかったことも、見えない敵も異形の味方も、感じるべき痛みも、もうどこにも存在しない。 胸ポケットをまさぐり、写真膜を探し出そうとした。 胸ポケットはからっぽだった。うすうす判っていたことだ。妻子の名が、あれだけ惹かれた妻の名が、あれだけ愛した娘の名が、全く思い出せない。死して尚、あの世にも逝けず、冥府と現世の間で殺し合いを繰り返す、戦いしか知らぬ狂人達の街。私には人を愛し、平穏な日常を送ることは赦されなかった。 戦争以外を失くしてしまった亡者達が行き着く先が、この街なのだろう。 思慮は疑問と共に掻き消えた。 戦車を移動させなければ。塹壕を堀り、機銃を据え、今度は我々が陣地を築かなければ。 敵は必ず反攻してくる。必ずこの街にやってくる。 戦争が終わらない限り、戦死が無くならない限り、敵も味方も必ずやってくる。 ここは最果ての街。救われることの無い、魂たちの終着点なのだから。
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本項では『ザ・警察官 新宿24時』『ザ・警察官2 全国大追跡スペシャル』について解説します。 判定はどちらも「ゲームバランスが不安定」です。 ザ・警察官 新宿24時 【ざ けいさつかん しんじゅくにじゅうよじ】 ジャンル ガンシューティング ※PS2移植版 対応機種 アーケード 使用基板 VIPER 販売・開発元 コナミ 稼働開始日 1 2000年 2 2001年 判定 全作 ゲームバランスが不安定 ポイント 足腰のスタミナ必須厳しい時間制限と敵配置に「プレイヤー殉職!」 ザ・警察官 新宿24時 概要 特徴 評価点 問題点 総評 家庭用移植 余談 その後の展開 概要 俗に「警察24時」と言われる、日本全国の警察官の活動を描いたドキュメンタリー番組をモチーフにした、社会派ガンシューティングゲーム。 プレイヤーは警視庁新宿警察署特別捜査班の制服警察官となり、大量の拳銃の密輸を目論む(架空の)指定暴力団「極道会」の組員を射殺逮捕していく。 前半5面は東京都新宿が舞台に、後半4面は拳銃の輸入元であるアメリカが舞台となる。全9面。面の最後には特別指名手配犯(ボス敵)がいる事もある。 2001年には続編の『ザ・警察官2 全国大追跡スペシャル』が稼動開始。こちらは新宿を含めた全国6都市を舞台に、香港マフィア「龍頭」と復活した極道会の勢力抗争を鎮圧していく。 特徴 基本的な内容 筐体上部にプレイヤーの姿勢を感知するセンサーを備えており、プレイヤーの身体の動きに合わせてゲーム内の視点が変わる斬新なシステムが採用されている。 画面上にはプレイヤーが隠れるべき方向が矢印で指示される。例えば、「←」の場合なら身体を左に傾けて、「↓」の場合ならしゃがむと隠れる事が出来る。遮蔽物に隠れていると判定されている間は敵からの攻撃を一切受けず、同時に拳銃の残弾も1発ずつリロードされていく。 プレイヤーには「階級」が設定されており、最初は巡査からスタートする。 ミスせずにシーンをクリアすると徐々に階級(ランク)が上がる。特定の階級に到達すると、制限時間延長や残機増加といった恩恵が得られる。 ランクが最高の「警視総監」になると残機が100人追加されるという、ふざけたようなボーナスを獲得できる。 『2』での変更点 プレイヤーキャラクターを「制服警官」「婦人警官」(5発装填の回転式拳銃)、「私服警官(刑事)」(前作と同じ8発装填の拳銃)、「特殊急襲部隊」(12発装填の短機関銃)の4人から選択可能に。 隠しキャラも前作の舞台だったアメリカからの応援と言う設定の「ヤンキー刑事」や「金髪美女刑事」、某宇宙刑事風味な「メタル刑事」、更には「ピンク婦警」と豊富に。 ステージ構成も、プレイヤーの任意で二番目のステージをどこの都市にするか選べるようになった。 最初は極道会組事務所からスタートし、札幌・新宿・名古屋・大阪・神戸・博多の6都市をクリアしていく。最終ステージは難波駅前か梅田のどちらかに分岐するようになっている。 通常時の最終ステージは難波駅前だが、梅田に分岐できれば「一斉検挙作戦完了!!(=真のエンディング)」となる。分岐条件は「オレンジ色のマーカー」が付いた特殊な敵を3人倒…逮捕する事。出現するとすぐ逃走する上に、出現中に誤射や殉職をしてしまうと消滅してしまう為かなり難しい。 ナレーションが前作から変更されている。これについての詳細は後述する。 評価点 足腰を活用するゲーム性 実際にプレイヤーの体を動かして視点操作やリロード、敵弾回避を行うガンシューティングというのは中々に貴重。 これによって、あたかも自分が作中世界で極道会と戦っているかのような臨場感を味わえる。 運動量としても相当なものであり、特に太腿の筋肉を鍛えられる。近場に筐体があるか、或いは後述の家庭用移植版を持っているのであればダイエットに是非。 「警察24時」の雰囲気を再現 所謂「警察24時」の雰囲気はかなり再現できている。 ゲーム開始時などに流れるナレーションは、この手の番組でおなじみ田中信夫氏が担当。この時点でピンとくる人にとっては非常に納得のいくキャスティングだとも言えよう。 『2』のナレーションは小林清志氏に変更されている。氏のナレーションだとSASUKEや平成ゴジラシリーズ予告編の印象が強いか。最新情報は公開してくれないので悪しからず。 前半ステージでもある新宿の町並みも、多少のアレンジこそあるもののかなり丁寧に再現されている。野外の看板にはモザイクがかけられていたりと、その辺りもテレビ番組風になっている。 プレイ中には警察官の無線による会話や、組員への投降勧告・現場の一般人を銃撃戦に巻き込まないように引き留めるアナウンスが流れるが、此方の雰囲気も実にそれっぽい。 ステージボスとなる特別指名手配犯が登場した際には、なんと目に線が引かれたボスの手配写真が画面に表示され、ゲーム中でもボスの顔面にモザイクが掛かる。 雰囲気の再現としては完璧なのだが、ガンシューという割には非常にシュールな光景である。 BGMはBEMANIシリーズや『サイレントスコープ』でおなじみのJimmy Weckl氏が作曲。何れも元ネタ番組に用いられそうな曲調でゲームにもマッチしている。 特に通常ステージのBGMはプレイヤーの殉職数や誤射数に応じて、勇壮さのあるテーマ曲、緊張感を煽る曲と、曲調の全く違うBGMが流れるという拘りっぷりである。 意外とシュールな内容 思わず笑ってしまうようなシュールでバカゲー的な要素も散見される。 現実の警察では発砲はあくまで最終手段であり、厳に慎まなければならないのだが、本作プレイヤーは極道会の組員相手にガンガン拳銃をぶっ放して(ノーミスであれば、という前提は付くが)恐るべき速度で出世していく。上述通り後半面はアメリカが舞台となるのだが、その際の流れが「極道会メンバーが海外へ逃亡→国際捜査課に連絡→そのまま飛行機でアメリカへ渡り、現地警察と合流し極道会リトルトーキョー支部と銃撃戦」というもの。その為、「日米の現場で極道会組員相手に銃を連射する警視総監」「タイトルの新宿は何処行った」「国際捜査課に外国での逮捕権はあるのか」等、考えてみればツッコミ不可避なシュールな内容になってしまってもいる。 一般人や同僚を撃った場合はペナルティが科せられタイムロスとなるのだが、その際の演出が「一般市民誤射!」といったナレーションと共に不祥事を起こした内容の新聞記事が晒し上げられる。 また被弾した場合には「プレイヤー殉職!」のナレーションと共に殉職する演出まで用意されている。そこまでやるかと言わざるを得ない。 AC版では隠しコマンドの入力・PS2版では一定条件で使用できる「私服警官」は白スーツ・アフロヘア・グラサンと出るゲームを間違えたとしか思えない外見である。 『2』のキャラクター 『2』ではプレイヤーキャラの個性が異様に濃くなった。 デフォルトキャラの内、主人公格である「刑事(私服警官)」ですらアフロヘアーでスーツ姿というクサい見た目。因みに彼はその見た目とキャラ付けから、一部ファンの熱狂的な支持を集めたとか。 隠しキャラもアメリカンなルックスの刑事、いかにもな特撮ヒーロー風の刑事と、もはや「日本の実録警察番組をモチーフにしたゲーム」とはかけ離れた面子になってしまっている。 バカゲー要素が強化された、と見るのであれば立派な評価点であろう。多分。 問題点 異常なまでに高い難易度。 敵に撃たれれば一撃でミスとなり、殉職回避にはプレイヤーの身体を動かす必要がある為、体力が無いと後半戦はきついものがある。 敵の隙を突いて立って攻撃、危なくなったらしゃがんで隠れつつリロード、というやや特殊な操作方法が要求される。「攻撃を物陰などで回避し、隙があれば出て射撃」という流れはナムコの『タイムクライシス』に似ているが、こちらにはペダルは無く必然的にしゃがむ→立つという動作を身体全体で何度も繰り返す事になる。 本作でのゲームオーバー条件は「残機が全て無くなる」「制限時間がゼロ(タイムオーバー)」のいずれかであり、うち後者の条件が非常に厄介。 制限時間がやたら厳しく、シーンクリア時における残り時間の回復量が3秒程度と非常に少ない(*1)。更に新宿東口辺りからは、ボスを除いて全て1秒もしくは2秒しか回復しない。身体的な疲労も重なるとシーン間の経過時間も増えやすいため、焼け石に水も同然。なので効率良く敵を倒せなければすぐに時間切れとなり、ゲームオーバーとなってしまう。そうなれば警視総監となった際に得られる「残機100人」ボーナスも意味がなくなる為、意外と大した恩恵を得られない。 プレイヤーの移動=シーンクリアではないことに注意。シーンによっては長い物も多く、そもそも残り時間回復までが遠いと感じることさえある。 以上は『2』にて少し緩和されている。シーンクリアで2,3秒程度しか回復しないのは前作同様だが、代わりに1つ1つのシーンのスパンが短くなり、残り時間が減り続ける状況は減った。 ステージ中には組員の他に一般人や同僚の警官が存在し、誤って撃ってしまうと上述の演出付きペナルティが課せられる。この演出によるタイムロスが結構長い為、可能な限り誤射は避けたいところではあるのだが…。 敵組員と一般人・同僚警官を区別する手段としては、敵組員にのみ光る円のマーカーが付けられており、これで判断が可能。しかし前半の舞台である新宿ステージは全て夜間ステージとなっており、画面は常に薄暗い。マーカーがあったとしても薄暗い画面に加え、ステージ内をうろつく一般人が異常なほど多い為視認しづらい。組員の出現位置を暗記でもしない限り非常に誤射してしまいやすい。 ちなみに一般人を誤射した場合は階級が1段階落ちる。また被弾した場合は初期状態まで落とされてしまう。此方はタイムロスと比べるとそこまで痛くはないが。 しかし上述した難度も実はまだマシな方であり、AC版では隠しコマンド(*2)の入力・PS2版では一定条件でプレイできる『リアルモード』はまさに容赦の無い苛烈な難度になっている。 内容はというと「敵の存在を示す赤マーカーが消える」「敵の銃弾が実弾並の速さに固定、命中精度も格段に上昇し、しかも登場直後に発砲してくる」「殉職直後も敵の動きが止まらない」…と、文字通りに「リアル」な難易度となっている。本作…と言うよりむしろガンシューティングゲーム全般を極めた方向けの超高難易度モードなのである。 勿論『2』でもリアルモードが搭載されており、此方も一切の容赦が見られない難度となっている。また隠しコマンドも微妙に変更されている(*3)。 総評 警察密着ドキュメンタリー番組の雰囲気に加え、実際に身体を動かし敵弾を回避する事で得られる臨場感。 これでゲーム的な意味においても、体力的な意味においてもプレイヤー殉職!となりかねない難易度の問題さえ無ければガンシュー史、いやアーケードゲーム史に残る快作として評価可能であったのだが…。 体力については本作の臨場感を味わう為にも止むを得ない部分があるが、せめて異様なほど厳しい制限時間だけでも何とかならなかったのだろうか。 しかしながら、人によってはその欠点も気にならなくなる程度に「勢い」と「情熱」を込めて世に出された作品である事は確か。 プレイする機会を得られたならば、腰を据えて…もとい、太腿を鍛えて極道会検挙に挑戦してみてほしい。 ただし『2』は家庭用移植もなされておらず、プレイする為のハードルは『1』以上に高くなってしまっているのが残念な限りである。 家庭用移植 稼働から約1年後の2001年11月15日に、PS2に移植された。お値段は6,800円。「人工網膜センサーキャプチャーアイ」と「ハイパーブラスター」に対応。 「人工網膜センサーキャプチャーアイ」を使うことでAC版同様の操作ができる。全般的な移植度は概ね良好。但し「ハイパーブラスター」以外のガンコントローラーには非対応である点に注意。 ちなみにこの「キャプチャーアイ」なのだが、なんとこれだけで本ソフトが一本買えてしまうようなお値段だったりする。またキャプチャーアイの対応ソフトは本作1本のみ。後に発売されたEye Toyは非対応。 PS2コントローラーでプレイすると、『左スティックでカメラ操作』『右スティックで照準操作』を同時にやる必要があるので非常にプレイしにくい。また、カメラと照準どちらもスティックを離すと初期位置(照準は画面真ん中)に戻るので敵の位置によっては微調整もやる羽目に。 家庭用という事で自主規制したのか、刺青の入った敵組員がTシャツ姿に変更されている。一方で新宿の街の看板にあったモザイクが無くなっている。 「アナザーストーリーモード」という形で下記『POLICE 911』が収録されており、メインストーリーモードを1度クリアするとプレイ可能になる。 チャレンジモードやトレーニングモード、オリジナルのミニゲームも数種収録。ミニゲームの中には何故か巨大化した警官がリング弾を吐くモアイと戦うといったものも。 家庭用移植ならではの要素として、特定の条件を満たすとゲームオプション設定に様々な設定項目が追加される。 この追加された設定項目を有効活用すれば、メインストーリーやアナザーストーリーでのプレイが(多少は)楽になる…筈。(*4) 余談 インターネットランキングが開催されていた。『新宿24時』では全ステージクリアのタイムを、『2』では各ステージ毎のクリアタイムを競う。 本シリーズの北米版として『POLICE 911』という作品が発売されている。 プレイヤーもロサンゼルス市警の制服警察官で、無線やナレーションも全て英語に吹き替えられており、「警察と犯罪組織との銃撃戦」というリアルさではこちらが遥かに勝っていると言えるだろう。ステージ進行も「アメリカ→新宿」と日本版の逆走で、かつアメリカ側の最終ステージに倉庫街が追加された為に全10面構成(*5)となり、指名手配犯の出現場所やステージの順番も一部変更されている。当然、ゲーム後半は「極道会リトルトーキョー支部の犯人が日本へ逃亡→国際捜査課へ連絡→プレイヤーが来日」。場合によってはロス市警のコミッショナーが新宿で銃撃戦という映画顔負けの展開に。 海外版ではいきなり日本版での後半ステージに挑む形となるが、本作の難易度はステージ毎の差は殆ど無い(というか日本版でも最初から難しい)為、余り問題にはならない様子。 勿論続編も『POLICE911 2』として発売された。進行順は国内版のものと同一だが、一部ステージの名称が異なる等細かい変更点が存在している。 ゲーム中の残弾は「オートマチック拳銃のマガジン内にある弾丸」という形で表現されているが、実際にプレイヤーキャラが使用している拳銃は回転式のニューナンブ。 実は本シリーズの特別指名手配犯は、その写真や名前の大半が本作プロデューサーを始めとするゲームスタッフ本人やその身内から拝借されていたりする。 作曲担当のJimmy Weckl氏はその強面からニックネームで「親分」と称されただけあってか、『新宿24時』の犯人B(松岡圭介)として作中に登場している。 その後の展開 関連作品として2人同時での対戦プレイが可能な『セイギノヒーロー(海外版では『リーサル・エンフォーサーズ3』)』が2004年に稼働している。 警察24時の枠組から外れたためか、各ステージごとに警察官だけでなく海上保安官、刑事、空港機動隊、陸上自衛隊など(*6)がプレイヤーとなる。しかし、警察官が主役となる最初の秋葉原ステージ「ザ・警察官 真昼の大捜査線」は内容やBGM含め、この作品の続編を思わせるような作りになっている。 敵に関しても前半ステージは過去作で一斉検挙された筈の「極道会」「龍頭」が継続登場し、彼らの逮捕に当たるのだが、その武装はテロリスト同然に強化されており、過激な銃撃戦が繰り広げられる。その前半ステージの敵には非アジア系人種の敵も混じっており、後のステージでは名実ともに「国内外のテロ組織」の人員として登場し、もはやヒラの警察官では対応できかねる敵が主な相手となっていく。後半ステージの舞台も「テロ組織に占拠され爆破予告が出された原子力発電所」「『二・二六事件』を思わせる降雪の中、クーデターを目論む陸上自衛隊の連隊に占拠された国会議事堂」などかなり過激。 防御とリロードに関しては人感センサーは廃され、本シリーズと制作陣が共通する『ワールドコンバット』と同じ「銃を画面外に向けて盾を構えて防御」に変更され、プレイ感覚は大きく変化した。『ザ・警察官』と比較すると最初の被弾のみ無効化、被弾時の殉職の演出こそあるもののペナルティとしては階級が1つ下がるだけなど、(被弾に関しては)初心者に対して少しだけ優しくなっている。 一方で時間切れ=ゲームオーバーという仕様はそのままであった為、競合作の『タイムクライシス』やそのスピンオフ作品『クライシスゾーン』により似てしまった感もあった。 しかも此方はボスキャラクターの当たり判定が非常に小さい事もあって余計に戦闘が長引きやすく、制限時間という面においては難易度が更に上がってしまっている。 本作筐体を流用した『モーキャプボクシング』なる作品も存在している。 その名の通り、本作同様の人感センサーによる操作が特徴。プレイするときに装着する付属のグローブはとても重く、本作以上にプレイヤーのリアル体力が試される仕様となっている(*7)。
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「レスピンジェレ(断る)」 「……はぁ?」 「聞こえなかったか?レスピンジェレ(断る)と言ったんだ」 話は多少前に遡る 「――でアンタの名前グレイトフル・デッドでいいの?」 不意に己のスタンドの名を呼ばれ警戒態勢に入るプロシュートだが思い当たる節があったのでそれを解く。 「……プロシュートだ」 「?アンタさっき『名前は?』って聞いた時そう言ったじゃない」 「オメーには関係ねぇことだ」 ここが自分が居た世界とは別の場所だと頭では理解していたが心のどこかでまだ信じきれないでいたプロシュートであったが 夜空に浮かぶ2つの月を見てそれを認めざるをえなかった。 「ここが魔法の国でオメーがオレを召喚し、ここがメイジとかいう貴族に支配されてるって事も分かった」 魔法を使えるメイジが貴族としてこの国を治めているという話を聞いたプロシュートだったが 彼に言わせてみれば『学院とやらで学べる以上メイジが貴族なんじゃあなく貴族がメイジで魔法を使えるヤツを管理して平民とやらを支配してるっつー事か』である。 「それでオレが聞きたいのは元の場所に帰れるかって事だ」 「無理よ… サモン・サーヴァントであんたを呼び出したのは私。 だけど元の場所に帰す魔法なんて知らないし聞いたこともないわ…」 一瞬怒りの表情を露にするプロシュートだがブチャラティに列車から叩き落され地面に激突しそうになった事を思い出しそれを隠す。 (……認めたくはねぇがオレはこいつに命を救われた『借り』があるって事か) 「……それで使い魔ってのは何をすりゃあいいんだ?」 「平民を使い魔にしたなんて聞いた事無いもの…アンタでもできそうな掃除、洗濯ってところかしらね」 ここで時間が戻り冒頭の「レスピンジェレ(断る)」である。(ちなみにこの間僅か0.5秒) 「使い魔に拒否権なんてあると思ってるわけ?」 「そうなってくるとオレとしては脱走し資金・食料を得るためにどこかの貴族の館に押し入りそいつの家のベッドの上には見知らぬ老人の死体が転がってるって事になるな」 「……何が言いたいの?」 「使い魔の手柄は主人の手柄、使い魔の不祥事は主人の不祥事と言ったのはオメーのはずだぜ?」 「使い魔が貴族を脅迫する気!?」 昼間見せたこの男の不可解な能力を思い出しルイズが声を荒げる。 「交渉…と言ってもらいてぇな」 そう言い放ちプロシュートがルイズを見据える。 (こいつ…平民のくせして…でもこいつからはやるといったらやるという…スゴ味があるッ!) 「使い魔は主人を守ると言ったな、ならそれでいいじゃあねぇか。オレがオメーを『護衛』してやる」 「メイジやモンスター相手にそれがきるっていうの?」 「できねぇならできるなんて言いやしねぇ」 「……分かったわ、でも人が沢山居る場所であんな物騒な事しないでちょうだい」 何とか雑用という自分には全く向いてない仕事からは脱する事はできたが、護衛という任務に対し心の奥底で苦笑いをする。 (ボスの娘を奪おうとしていたオレがその娘と同じような歳の女を護衛する事になるたぁな) 「さて…いろいろあって疲れちゃったから寝るわ」 「それは構わねぇがオレは何処で寝りゃあいいんだ?」 ルイズが無言で床を指差し毛布を一枚投げつけてくる ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ ┣¨┣¨┣¨┣¨ 「な、何よぉー」 プロシュートから発せられる妙なプレッシャーにルイズが押される。 「フン」 それだけ言うとプロシュートが毛布を使い壁に背を預け目を閉じ眠りに入る。 プロシュートが眠りに入ったのを確認するとルイズも安心したのか眠っていった。 薄暗い闇が世界を覆う。 その闇の世界の中心にプロシュートが立つ。 (何処だ…?ここは) 辺りを探ろうとし体を動かそうとするが動けない。唯一動かせるのは首だけだ。 だが闇に目が慣れてくると自分の周りに何かある事に気付く。 (アレは…ソルベ、それにジェラードッ!?) ホルマリン漬けにされたソルベ、猿轡を喉に詰まらせ窒息して死んだジェラード、ボスに殺されたはずの二人の死体がそこにあった。 唯一動かせる首を動かし周囲を探るプロシュート、だがその行為も彼を驚愕させるに足る物を発見させるだけのことだった。 (ホルマジオ!イルーゾォか!?) つい先日ブチャラティ達に挑み敗北していった仲間達 そして彼の網膜に彼にとって信じたくないもの、認めたくないものが映る。 (バカなッ!?ペッシ…!メローネ…!ギアッチョ…!) バラバラに解体されたペッシ、舌を毒蛇に咬まれ絶命したメローネ、首に鉄棒を生やし倒れているギアッチョ。 そして彼の前にプロシュートが最も信頼していた人物が立つ。 (リゾットか!?これは一体どういう―――) だがリゾットも体中に銃弾を撃ち込まれ倒れていく。 (く…一体どういう事だッ!?) 周囲に散らばるチームの仲間達の死体、だがそのかつての仲間達の死体の目は全て等しくプロシュートに向けられている。 あまりともいえる光景に思わず後ろに下がろうと力を込める、だが体は動かない。 そうしている間に後ろから誰かに肩を掴まれる。 (何だとッ……!?) 首を向け後ろを見る、だがその目に映ったものは――――ボロ雑巾のように成り果てた己の姿だった。 この世界に入ってから唯一の音が聞こえる。それも自分の声でだ。 幽鬼のように立ち己の肩を掴むもう一人の自分から オメーハイッタイナニヲヤッテイル?――と もう一人の自分から滲み出るようにして現れる己の分身、無数の眼を持つ異形の悪魔―グレイトフル・デッドが自身の首を掴もうとその手を伸ばす。 己のスタンドが持つ最も威力がある攻撃『直触り』がプロシュートを襲おうとした。 「うおぁあああああああああッ!!」 飛び起き周りを確認する、異常は無い日が昇っている事以外は昨日と同じだ。 心臓の鼓動が早い、呼吸も荒い、立ち上がりスタンドを出す。 変わりない何時もと同じだ、何時もと同じように己の傍らに立つグレイトフル・デッド。 「夢……だと……?」 (あいつらがくたばる夢なんぞ見るなんて冗談じゃあねぇ!) あのしぶといヤツらがそう簡単にやれるとは思ってはいないが、あの夢はリアリティがありすぎた。 そのリアリティさがプロシュートの心に一抹の不安を残す。 「んふふふ……ざまぁみなさいキュルケぇ~」 不意に気の抜けた甘ったるい声がプロシュートの耳に届く。 その声の主に近付く。どんな幸せな夢を見ているのか知らないがモノスゲー笑顔で眠っているルイズがそこに居た。 「……起きろ」 一言声をかける、だが帰ってきた返事は 「そこに土下座すれば許してあげてもいいわ…zzz」 自分はこれ以上考えられないぐらいの悪夢、それに対しこいつはのん気に幸せそうな夢を見寝言までもたれている。 正直に言う「ムカついた」 近くにあった枕をルイズの顔に被せる、無論口と鼻が隠れるようにしてだ。 椅子に座り様子を見る。 5秒後―特に変わりなし 10秒後―少し動き始めた 15秒後―少し痙攣している 20秒後―「苦しいって…言ってるでしょうキュルケェーーーーーッ!!」 少しだけ笑いながらプロシュートが「起きたか」とルイズに言う。 「あれ……夢?」 (……キュルケを使い魔にしてたのに何で途中からアイツの胸に押し付けられて死にそうになんのよ!) 勿論、コンプレックス丸出しの夢を見た原因が枕で口と鼻を押さえられてたという事に気付く由も無い。 ボーっとした目でプロシュートを見ているが酸素が供給され脳も起きたのだろうが不意に 「服」 と言い出した。当然プロシュートには何の事かさっぱり分からない。 「何の事だ…?」 「着替えさせて」 「そのぐらいテメーでやりやがれ!」 「使い魔なんだから身の回りの世話もするのが当然でしょ?」 これ以上言っても無駄だと悟ったのか渋々着替えさせる。 ただ一つ、ほんの小さな声で 「マンモーニが」 という言葉を残して。 戻る< 目次 続く
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コ・パイロット 着用アイドレス:高位西国人+ベテランパイロット+猫先生+コ・パイロット 高位西国人を継承 猫先生を継承 ベテランパイロットを継承 L:コ・パイロット = { t:名称 = コ・パイロット(職業) t:要点 = 機械化,接続,バイザー t:周辺環境 = 機体の一部 t:評価 = 体格3,筋力3,耐久力5,外見2,敏捷5,器用6,感覚7,知識6,幸運3 t:特殊 = { *コ・パイロットの職業カテゴリ = ,,,派生職業アイドレスとして扱う。 *コ・パイロットの着用制限 = ,,,着用制限(根源力20万以上) *コ・パイロットのコパイロット資格 = ,,,搭乗可能({人型戦車,I=D,航空機,RB})。 *コパイロットの搭乗戦闘補正1 = ,,,({I=D,人型戦車,航空機}に搭乗して戦闘する場合での)全判定、評価+4、燃料-2万t。 } t:→次のアイドレス = うさガール(職業),日陰パイロット(職業),前身筋肉痛(強制イベント),最適な兵装選択(技術) } (高位西国人のHQBを継承:第2世代:継承元:感覚+1) (ベテランパイロットのHQBを継承:第1世代:継承元:感覚+1)) 設定文 まず事の始まりは、キノウツンにベテランパイロットと呼ばれる者達が誕生した頃だった。 幾多の戦いを越え、実戦により研磨された操縦技術は確かに、目を見張るものがあった。 しかし、ひとつの問題が発生した。 戦闘の激化に伴い、ベテランパイロットの反応速度だけではフォローしきれない可能性が出てきたのである。 また、猫妖精を基本としてきた共和国のコ・パイロット職では対応できない物理域の出現に伴い、更なる戦闘を予測した軍部はコ・パイロット職の強化・育成を進める事となった。 企画段階において真っ先に上がったのは”非機械化”である。 人機融合、確かに爆発的な能力の向上が臨めるが、その弊害も多い。 活動物理域が限られること、外部からのハッキング、暴走。 なにより、それ以上の成長、いや進化と言い換えても良い。 それらが見込めないと考えた。 -孤独は老人を、好奇心は猫を、諦めは可能性を、殺す- とある路上詩人の言葉より 故に、キノウツンは目指した、”生身の機械化”を行わずに上の領域を目指す事を 着用者の身体能力の強化・向上トレーニングは必須として、 次に考えられたのは、装備に寄る補助であった - キノウツン式コ・パイロット 正式配備装備 - ○コパイスーツ女性用全身図 モデル:クール=ライネン 男子の場合のスーツ配色は以下になります ピンク→水色 濃いピンク→青 灰色→白 濃い灰色→白 1・コパイスーツ(コ・パイロット用パイロットスーツ) ○ キノウツンが誇るパイロットスーツデザイナー・沢邑勝海氏のデザインを採用 添付資料を参照の事 ○ このフィット感・・・イイ バイタル数値のモニタリングの為インナーを廃止 素材・肌触りに拘って、ボディラインにバッチリフィット 大胆ながら上品、ワンランク上のライトなデザイン 長時間着用の状況も考え、内部装着のトイレパックは通常の物より回数大目に持ちます ○ 着心地も・・・イイ 動き易さはモチロン、通気性、吸汗速乾を実現 操縦の邪魔になりません 伸縮性を保ちながら強度も十分、急なサイズアップも安心 ///*/// ○男性用スーツ 着用の図 2・グルーヴィーグローブ(多機能グローブ型端末) ○ ナックルガード コブシを痛める事なくロッカーやシャワールームの壁を殴れます ○ 演算補助機能 気流、風速、砂粒流動、伝達関数、コリオリ偏差、接地圧、摩擦係数etc・・・各種演算をサポート ルーチン、パラメータのリアルタイム更新であらゆる戦場を駆け抜けろ! ○ モーショントレースサポート 火器管制モード時の反応速度、各種操作性、精度が大幅に向上 マニュピレータでの作業も楽々!これで君も、機体であやとりができるな! ○ マイナスイオン発生装置 マイナスイオンが出ます ///*/// ○テスト風景の図 3・キノウバイザー(高機能ゴーグル兼バイザー兼ディスプレイ) ○ 光学透過ヘッドマウントディスプレイ方式 モニター中も外部の様子を確認できる為、突発的な状況にも対応可能 網膜照射方式ではない為、眼球運動に左右されません 眼精疲労も低減、快適なパイロットライフを貴方に ○ レーダー・センサー類・ガンカメラとの連動 情報支援、ダメージリポート等、様々な応用が利きます 視点モード切替により俯瞰視点での操縦も可能 アイセンサーに接続すれば、貴方もロボット気分 ○ バイタルチェック パイロットスーツとの接続によって、各数値の確認ができます 心拍数、血圧、血糖値、A10神経信号、現在G値による血流異常etc・・・ 着用者及びメインパイロットの健康状態が一目瞭然 ○ オ○ティックブ○スト 出ませんよ? キノウツン装備部での一幕 「如何かな?このコ・パイロット装備は? 使用者は未だかつて無い機体とのシンクロに、驚きを隠せないだろう 機体の一部になったような錯覚に…否、機体そのもの!俺が機体で機体が俺で! だが神経接続なんかはしてないんだ!ウォードレス端子も必要ナシ! 驚きだね、どうだい?私の発明は?」 「なんか、こう、パっとしないスね、こう新技術とかロストテクノロジーとかないんスか?」 「っかヤロウ!TLOおっかねぇだろうが!今ある技術を上手い事転がせば良いんだよ!!ええ!?ゲーム機とかも そうだろうが、新世代機種とかより既存の技術使った携帯機のが売れたりすんだろ?そんなカンジだよ」 「そんなもんスか」 「私達は今できる事の精一杯でやるしかないんだ。今はこれが精一杯、限界が来たらまた、その時の精一杯を出 すんだ」 「でも・・・それで勝てるんスか」 「短絡的な考えと手段では駄目なんだ、近道など無いんだ、足掻くしかないんだ、消して諦めない事がキノウツンの 美徳だろう?」 「そんなもんスか」 コ・パイロットの採用を受けて、整備班も急ピッチで作業を進めていた。 コパイスーツの性能を100%活かす為に、機体との接続をより潤滑に行えるようコンソールの追加パネルを作成していたのである。 このパネルは最小限の整備で取り付けられるようになっており、共和国で作成・運用されているほとんどの機体で使用できるように工夫されていた。 何せ、どんな機体にいつ乗るか分からないのである。船舶・航空機・人型戦車・RB・I=D・・・ どの機体でもすぐ着装・運用できるように、との考えであった。 これによって、コ・パイロットはコクピットにおいてスーツを接続することで文字通り機体の一部となることが可能になったのだ。 これらの装備により、我がキノウツンのコパイロットは他の副操縦士等とは一線を画し、コパイロットの新時代へと足を踏み入れた。 そしてメインパイロットの負担は大幅に軽減されるだろう。 これでベテランパイロットの能力も存分に発揮できる。 パイロットの歴史に風穴を開けると思われるコ・パイロット装備だが やはり大きな力には代償が付き物である。 それは・・・ 筋 肉 痛 この装備一式バッテリーも含めると兎に角、重い。 バイザーにしろグローブにしろ、スーツにしろ、 多機能と安全性を両立させるには、軽量化を諦めざるを得なかった。 そして、高Gの下での複雑な操縦技術を要求される。 歴戦の経験者でもトライアル終了後は、コクピットから這い出るのがやっとで 機体の一部に掴まって立っている有様だったと言う。 元より専用装備。汎用性は求められていない装備であり 使用者には基本以上の、身体能力、根源力が要求されてはいたが、 これにより、着用基準がのハードルが上がった。 その後の度重なる改良により、多少軽減はされたものの、やはり筋肉痛との戦いは続いた。 厳しい訓練を積み、風呂に入るのも、(トイレパックがついているとはいえ)用を足すのも一苦労。 しかし、彼等は戦う。キノウツンの明日の為に戦う。 (文章:桜城キイチ イラスト:沢邑勝海)
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第036話 ONE FOR ALL ALL FOR ONE◆SzP3LHozsw 「恵ちゃん、大丈夫かな……」 樹の根元に蹲っていた八木塔子が、幼馴染の身を案じて独り言のように呟いた。 向かい合って座っている新庄慶はその声を耳にしたが何も言わず、ただ黙々と手元の作業に没頭している。 答えを求めたわけではなかったが、新庄が黙っていては会話にもならず、塔子は所在なげにその作業を眺めるしかなかった。 作業と言ってもそう大袈裟なものではない。 直径にして約10cm、長さにして1mちょっとの棒の先端を、塔子の支給品である『ダイバーズナイフ』で削るだけのことである。 新庄に言わせると支給武器が『碁石』だったためそれでは心許なく、万が一を考えての用心なのだそうだ。 だが塔子にすればそれはとりもなおさず殺人の凶器を作っている気がして、あまり良い気分はしなかった。 新庄もそれを察知してるからこそ余計な口は一切利かず、さっさと作業を終わらせてしまおうとしているのかもしれない。 「……少し寝るんだな。暗いうちは人目につきにくい。休むなら今だぞ」 非難めいた視線が気になったのだろうか。新庄はじっと見入っていた塔子に手短に言った。 朴訥とした口ぶりだが、そこに悪意のないことはニコガクのマネージャーを務める塔子にはよくわかる。 塔子は「うん」と返事をしたものの、とても眠れそうにないと思った。 とりあえず素直に身を横たえて眼をつぶる。 背中の下の枯れ枝や小石が気になったが、何度かもぞもぞ動くうちにそれも馴染んだ。 眠れるわけがなかった。 身も心も疲れてはいたが、二度も無理やり寝かされたあとでは眠気が兆すはずもない。 それでも新庄の言うとおり休めるのは今だけかもしれないから、申し訳ないとは思ったが、この際、お言葉に甘えてしまうべきなのであろう。 朝になって動けないのでは、それこそ新庄に迷惑を掛けてしまう。 「新庄くんとあえて本ト良かったよ」 塔子は目をつぶったまま率直な感想を述べた。 ――あれは小一時間ほど前のことだ。G-07の林道で新庄と偶然にも行きあうことができたのは。 知っている人間にあえたのは僥倖というやつだろう。 こうして山に分け入り、暗い森でじっとしていてなお安心できるのは、やはり新庄という心強い味方が居るからこそだった。 これが一人きりであれば、眠るどころか横になるのだって難しいのは明らかだった。 「ありがとね。一緒に居てくれて」 「いいんだ、気にするな」 無駄口を叩かないところはいかにも新庄らしかった。 「……恵ちゃん、大丈夫かな……?」 自分でも意識せず、塔子はさっきと全く同じ言葉を口にしていた。 「――――わからない」 少し間があったあと、今度は新庄も答えてくれた。 しかしその答えは塔子を満足させるものではなかった。 塔子が不満そうな顔をしていると、その気持ちを察したのか、新庄は短く言葉を継ぎ足した。 「心配しなくていい。あいつが死んだりするかよ」 そう言って、不器用そうに口角を僅かに持ち上げて微笑む。 そうした気遣いが、塔子の胸を締め付けた。 状況を掴めていないのは新庄だって同じなのだ。仲間を想う気持ちも塔子と変わりないだろう。 余計なことを言ってしまったと塔子は少し悔いた。 「……新庄くんって、変わったよね」 話題を転じる。 「…………?」 「昔はすごく恐くて近寄りがたかったから。今みたいに笑ってるところもあまり見なかった」 「フッ。きっとそれは川藤のせいだろうな。俺も他の奴らも、みんなあいつに変えられちまった」 「そうだね、みんな先生に変えられちゃったよね」 塔子はさも可笑しいという風にころころ笑った。 川藤という不思議な教師のことを改めて思い返した。語り尽くせないほど様々な思い出がある。 新庄にしても、安仁屋にしても、他のニコガクメンバーにしても、そしてまた塔子にしても、川藤という教師の存在は限りなく大きい。 それだけに、数時間前のあの川藤の姿が網膜に焼き付いてしまっていて消えてくれなかった。 「……その先生も……変わっちゃったね……。まさか先生があんなこと……」 死体を詰めた籠を押し運んでくる川藤の姿が残像のように浮かび上がった。 塔子は心底嫌なものを見たという風に激しく頭を振る。何かの間違いであって欲しかった。 「……何か事情があるはずだ。あいつは馬鹿だが、あんなことを平気でできる人間じゃない」 新庄は棒を削る手を止めて、きっぱりと言い切った。 「でも、でも……!」 先生は死体を運んできたんだよ、怯える私達を見て笑ってたんだよ。 そう言おうとしたが、言葉が喉に張り付いて声にならなかった。 「お前の気持ちはよくわかる……。――――だが、俺は川藤を信じてやりたい」 「……先生が助けてくれると思ってるの?」 「さあ……どうだろうな。助けてくれるかもしれないし、助けてくれないかもしれない。もしかしたらお前が心配してるように、 マジであいつは変わっちまったのかもしれないな。けど、それでも俺は川藤を信じたい。あいつを裏切るような真似はしたくないんだ」 「新庄くん……」 それは塔子とて同じだった。だからこそ新庄の気持ちが理解できた。 しかし、それは単なる願望であって、奇麗事に過ぎない。 川藤のあのような姿を見てしまったあとでは、信じたくても信じきる自信が塔子にはなかった。 「心配するな。もし本気で川藤の馬鹿がイカれちまってたら、そんときは俺があいつを見つけ出してブン殴ってやる。 昔、あいつが俺を変えてくれたように、今度は俺があいつを変えてみせる」 新庄が視線を上げた。まるで自分自身に言い聞かせてでもいるように、塔子に語って聞かせた。 それは新庄なりの決意にも感じられた。 「――明るくなったら安仁屋たちを捜しに行く。眠れなくてもいい、それまで休んどけよ」 新庄はダイバーズナイフをシースに収め塔子に放った。手の棒は見事に槍の形を成している。 「新庄くんは?」 投げられたナイフを胸元で受け取りながら塔子が訊いた。 「ここで見張ってる。お前に何かあったら安仁屋や平塚のアホがうるせーからな」 「ごめんね、迷惑掛けちゃうね」 「『ONE FOR ALL ALL FOR ONE』。一人はみんなのために、みんなは一人のために。それが俺たちニコガク精神だ。そうだろ?」 そうだった。それがニコガクだ。 忘れてはならない、仲間との絆。 「お前だって俺たちの仲間なんだ。遠慮なんてすんじゃねえよ」 「うん」 塔子は涙が出そうになるのを堪え、なんとか返事をした。 それから塔子は横になり直した。 早く朝になるよう願いながら、再び瞼を閉じる。 また野球はできるだろうか……。甲子園は目指せるのだろうか……。 不安なことは一杯あった。 それでも新庄と話して安心したからか、気分は少しだけ晴れていた。 なんだか少しだけ眠れそうな気がした。 【F-07/森/1日目・午前2時半ごろ】 【女子14番 八木塔子@ROOKIES】 状態:健康 装備:ダイバーズナイフ 道具:支給品一式 思考:1.朝になったらニコガクメンバーを捜しに行く(安仁屋優先) 【男子18番 新庄慶@ROOKIES】 状態:健康 装備:棒で作った槍 道具:支給品一式 碁石@ヒカルの碁 思考:1.塔子を守る 2.朝になったらニコガクメンバーを捜しに行く 3.川藤を信じる 4.川藤が本当にイカれてたら力づくで止める 投下順 Back 後悔先に立たず Next いま、会いにゆきます 時間順 Back 後悔先に立たず Next いま、会いにゆきます 初登場 八木塔子 ちょっと考えれば分かる事 初登場 新庄慶 ちょっと考えれば分かる事
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炎を、覚えている。 閃光を、覚えている。 叫ぶ声を、覚えている。 漸く抜けだした虚構の一学期の先。 僕は――何一つ叶えられず、『運命』に敗北した。 ■ 「――――ッ!」 ベッドから、跳ね起きる。 悪夢に魘された後特有の、まるで長距離走でも走ったような息切れと動悸が身体を苛んでいた。 シャツは汗でぐっしょりと濡れ、肌に張り付いて毛穴が震えるような冷たさを訴えている。 暫くそうした後に、取り敢えず着替えだけでも済ませようと思い立ち、上体を散らかった寝台より起こす。 思わず欠伸が出た。窓から差し込む日光が心地よく、胃袋は朝食を求めて情けなく鳴いている。 ぼうっと袖から腕を抜き、白い布地を身体から引き剥がす。 そこで――僕、直枝理樹はやっと、自分が〝何をしたのか〟を思い出すのだった。 男にしては細くて色の白い右手。 その手の甲に、刺青のような刻印が刻まれている。 一画、二画、――三画。ともすれば倒錯的な程赤々と煌めくそれは、僕にとって文字通り最後の望みに違いなかった。 「ああ……」 漏れる声は後悔ではない。 恐怖などとは断じて違い、しかし願いに向けて猛進する意気込みを秘めてもいない。 称すなら、空虚とでも形容するのが一番正しいだろうか。 別段何か深い感慨を抱くわけでもなく、ただ何処か客観的な目線から、火の灯された導火線を見つめている気分。 実感が沸かない。 昨夜、月の綺麗な真夜中に……自分は、地獄の釜の蓋を開け放ってしまったというのに。 想起する、想起する。 ――僕にとっての始まりは、酷く早急だった。 ■ 学園生活があった。 勉強道具を鞄に詰めて登校し、何となくで授業を受けてクラスメイトと談笑して、それから惰性で帰途に着く。 そんな当たり前をほんの一日行っただけで、違和感を抱いた。 既知感(デジャヴ)の反対、未知感(ジャメヴ)。 おかしい。 おかしいおかしいおかしい、僕はこんなものは知らない。 こんな、普通の学生みたいな毎日を、僕は知らないはずだ。 僕の周りには、毎日を惰性で過ごしているような人間は一人もいなかった。 誰もが馬鹿馬鹿しく必死に生きていて、その心に悩みを抱えていて、そんな人達が集まって―― 僕は、そんな日々を……長い人生の中では刹那程でしかない高校生活を、愛したのではなかったか? 瞬間、記憶にかけられたフィルタが決壊した。 雪崩れ込むのはあの虚構世界での記憶。 仲間との思い出、そして別れ。 自身の無謀が招いた破滅という結末――――、 その果てに、この手が掴み取った一個の石槫。 聖杯戦争。 魔術師達による血塗られた戦いの参加者に、僕は選ばれた。 そして僕自身も、願いを叶える権利へ手を伸ばすことの出来るその切符を拒みはしなかった。 叶えたい願いが――取り戻したい刹那があるから。 勝ち抜こう。 この戦争を、全身全霊を懸けて踏破しよう。 『あの子』を一人にしない為にも、僕らには『彼ら』が必要なんだ。 そこからは、あっという間だった。 無我夢中と言い換えてもいい。 気が付けば草木も眠る丑三つ時、僕は月の石を手に、自分のアパートの居間で佇んでいた。 聖杯戦争を勝ち抜く為には、己の武器となる英霊(サーヴァント)を召喚しなくては話にならない。 曰く、サーヴァントは英雄豪傑揃いと聞く。 人間の力で倒すなど到底不可能な力へ対抗するには、此方も同じだけの力をもって応戦するより他にあるまい。 手を、握る。 暗闇の中石を握り締め、祈る、祈る。 脳裏に過るは友の顔。 もういない、彼の顔。 泣き腫らした、彼女の顔。 僕らは、リトルバスターズだ。 遠い過去、直枝理樹にとっての『はじまり』の記憶が網膜の裏に再生された時―― 「グーテン・アーベント(こんばんは)」 目の前には、赤い魔女が居た。 背丈こそ小さいものの、その総身からは余すところなく色気が迸る。 纏っているのは――軍服だろうか? 腕章の徴には見覚えがあった。これは確か、ドイツ第三帝国の…… 「貴方が、わたしのマスター……でいいのよね?」 口元に指を一本当てて、いたずらっぽく微笑む魔女。 その姿を前に、僕は召喚の疲労からかぐらりと目眩に襲われ―― 「そう、だ」 どうにか、返事だけは紡ぎだし。 「そ。可愛い坊やに召喚されちゃったわね♪」 そんな緊張感のない声を聞きながら、意識を暗転させてしまった。 ■ 「あら、起きた? いきなり倒れちゃったもんだから、わたしがベッドまで運んであげたのよ?」 「そっか……ごめん、ありがとう。キャスター」 回想を終えた僕の前には、件の魔女――キャスターのサーヴァントが居る。 マスターとしての能力でそのステータスを見るが、実に魔術師らしいステータスだと感じた。 筋力や敏捷などの位こそ低いが、魔力だけはずば抜けている。 奇策や絡め手に訴えてこそ真価を発揮する……成程、これは一筋縄ではいかなそうだ。 「キャスターなんて仰々しく呼ばなくてもいいわよ。 人前じゃなければ、そうね……ルサルカ、はまんますぎるから……マレウスとでも呼んで。 わたしの仲間達は、みんなわたしをこう呼んでいたから」 ルサルカ・シュヴェ―ゲリン=マレウス・マレフィカルム。 彼女は自身のことをそう名乗った。 厳密には些か異なるらしいけれど、本人曰く気にするほどの事じゃないとのこと。 なんだか触れて欲しくないようなニュアンスだったので、僕はそれ以上踏み込むのをやめた。 「分かった。改めてよろしく、マレウス」 「此方こそ宜しく、理樹くん。――あ、そうそう。昨日は結局聞きそびれちゃったんだけどさ」 髪の毛をくるくると弄びながら、マレウスは僕へ一つの問いを投げた。 「理樹くんは結局、何の為に戦うの?」 「――――僕は」 何の為に戦うのか。 そんなことは、決まっている。 何の為に殺すのか。 そんなこと、とっくのとうに決まっている。 でも、これはきっと最後の一線だったのだろう。 この質問に対して、この答えを返してしまえば、その時は本当に戻れなくなってしまう。 ――嗚呼、何を今更、僕は女々しい迷いを抱いているんだ。 自分に嫌悪すら覚えつつ、――そんな自分と決別する意味合いも含めて。 直枝理樹は、水底の魔女へと真っ向から己の真を吐露した。 「僕は、取り戻したい」 ある筈だった青春(イマ)を。 約束されていた明日(ミライ)を。 「僕は大切なものを、理不尽な運命に奪い取られた。根こそぎ、何もかも――でも、なくなったものは仕方ない、なくしてしまったものは還らない……そんな言葉じゃ、絶対納得なんか出来っこない」 「……そう」 マレウスはそれを聞くと、その顔から表情を消した。 ――地雷。そんな単語が脳裏を過る。 恐る恐る顔色を窺っている僕を見て、マレウスはくすっと笑う。 「貴方、面白い人ね――」 何が、彼女の感情を動かしたのか。 それが『刹那』という単語であると、僕は遂に知らないまま。 寝台の上へ僕を押し倒す、赤い少女の姿をただぼうっと見つめていた。 思えばこの時、僕は彼女に催眠術か何かをかけられていたのかもしれない。 「――――聖槍十三騎士団第八位、ルサルカ・シュヴェーゲリン=マレウス・マレフィカルム。短い間だけど、貴方の為に戦ってあげる。だからその前に……ちょっとだけ、遊んであげる」 口許を、彼女の唇で塞がれた。 悪戯に微笑む顔は扇情的で、視線を逸らさせない魔力がある。 甘い唾液を流し込まれ、されるがままに口内を征服される。 ぷはっ――互いの口の間に唾液の橋をかけ、それを口端から妖しく糸引かせながら僕のサーヴァントは微笑んだ。 「ジークハイル・ヴィクトーリア(我に勝利を与え給え)」 その秘裂は、迷うこと無く僕の■■に宛てがわれ―― 意識が快楽に満たされる刹那、脳裏に浮かんだのは…… (ごめんね……鈴) 大好きだったはずの、茶髪の幼なじみの泣き顔だった。
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「8番テーブル、ドンペリはいりまーす」 「あーりがとーございまーす!!」 これ、たぁのしぃぃ!早く次の注文はいらないかな、入らないかな!!早く言いたい! 「おい!ご指名だ!」 「はい、行ってきます!」 こんにちわ、みなさーん!久住小春です。 今、ホストクラブに潜入してまーす。別にダークネスは関係ありませーん 最近、高橋さんの様子がおかしいんです。小春は思わないんですけどね。 どうも、夜遅くに帰ってきたり、ちょっとお酒臭かったりするらしくて。 みんな心配してるんですけど、 ほら、高橋さんって溜め込むタイプなんですよ。これ、新垣さんの言葉ですけど。 とりあえず、どこに行ってるかだけでも調べようって話になったんですが、 何せ高橋さんは消えますからね、消えてぴゅんです ぴゅんできゅいんです だから、足取りを追うのは田中さんでも無理なんです そこで、小春の出番ですよ。もうむっちゃくちゃ念写しまくりました。 今までの人生で一番、苦労しました。一番小春が頑張りました。 「ちょ、小春、これって…」 その中の一枚、それに驚愕の事実が… って、もう冒頭で言いましたからわかりますよね。 そう!高橋さんが人目を忍んでこのホストクラブに入ってくる写真でした もう、田中さんとミッツィと三人でとにかく焦っちゃってー 新垣さんに見られないように、いつものロフトでこしょこしょ話ですよ 何かの間違いであって欲しかったですけど、 小春が一番自分の力、わかってますからね ざんねんむねんです おしいひとをなくしました 「ど、どうします…」「どうしよ…」 慌てふためく2人のために、小春は宣言しました 「小春が、潜入します。高橋さんをー、説得しまーす」 反対2票賛成1票で見事に可決。 今小春は、顔の表面にナンバー2の人の顔をくっつけてます。 だいじょぶです、ホントのナンバー2の方も接客してると思います、幻覚の中で。 本当はそこ、おトイレです。 うーん、でも今日ナンバー1になっちゃうかもなー 小春こういう話術むちゃくちゃ得意ですからね、一番得意ですから でもさっきから、人の名前がわからなくて困ります やたら太ももに手をおかれてこしょばいです アルマジロ買ってあげるって言われるんですがなんですかね? ジャガーとかこの人はアニマル好き?アニマルって動物ですよ。 小春それよりチョコが良いんですけど… きゃー!!! 悲鳴が聞こえました。出撃?出撃?! そうワクワクしたのに、現実は残酷です。 ナンバー1の人の机で何人かのハートが打ち抜かれただけでした。 さっきからこんなのばっかりです。 あの人そんなカッコ良い人なんでしょうか? 小春のテーブルとちょうど背中合わせで、まだ顔見れてないんですよ。 よくわからない会話ばかりで、小春疲れてきました。はいはい、好きです、好きです あーもう、いつまでこんな調子でしょうか? ぎゃー!!! また、ナンバー1か……… 「我らはダークネス!地上に絶望を齎す至高の集団だ!」 さすがナンバー1は言う事がカッコいい…って、え!?敵襲!? 慌てて入り口を見ると、見知った制服の団員達が銃器を掲げています。 脇に転がる血まみれのボディーガード。縮み上がるおねーさんたち。 震えるホスト。 銃なんて見せかけです。わからない人たちにわかりやすくするため。 本当の凶器は彼ら自身です。かなり、強い。 さすがにこの顔でやるのはマズいので、一度おトイレに戻ろうとしました でも、隣のおねーさんに腕を掴まれそれが叶いません 「行かないでー、あたしと一緒にいてー」 逃げるんじゃないよー小春闘いたいよー はーなーしーてー 店のパニックは留まるところを知りません。 どうしよう、落ち着け小春、おーちつけーーー 「おいおい、無粋だな。」 喧騒の中で、凛と場を静まり返らせた、その一言。 それは、ナンバー1さん。 まだ後頭部しか見えてないけど、別におかしくなったわけじゃないみたいです あ、ああ、あぶないですよー 「なんだと、テメー、死にたいのか!?」 「ここは終わりなき、宴の場。それを邪魔する権利は、誰にも無い…ハズだぜ。」 それともなにかい? お嬢さんたちのエスコートに慣れていないが故の過ちかい? 「そんな野蛮な出で立ちじゃ、レディのハートは射止められないよ」 うわーお!かっこいい! でもでも、相手は能力者…このままじゃナンバー1さんが、危ない! 「死にたい奴が一人増えたぞ!」 ナンバーワンさんの米神に銃が突き付けられました。 「いいだろう!まずお前みたいな綺麗なにーちゃんを見せし…ぐふ!」 でも、言い切る前に、そいつは床に倒れこみました。 「悪い悪い、捨て台詞は最後まで言わせてやるべきだったね、雑魚サン」 首筋に埋め込まれたのは、彼の手刀。 「でもキミはボクに銃を向けた、それは重罪だ。何故かわかるかい?」 -ボクを失う悲しみを、彼女たちから誰が奪ってくれるんだい?- 「タカァァァァァ!!!」「きぃゃぁぁぁぁぁ!!!!」 耳をつんざく様な、おねーさんたちの黄色い声 一斉に彼を取り囲む、狂気の黒い筒 戦況は圧倒的不利なのに、その人はむしろ、この状況を楽しむかのようです 「そうか、生き急ぐのか。どうしても、というのならお相手しよう。 お代はそうだな、キミたちが大切にしない、その命で」 ダダダダダ… 拳銃の弾は全て、彼をすり抜けます。 彼は涼しげにステップを踏みます。ショーです。まるで、ダンスショー 「グッバイ、ブラザー。良い夢を。」 彼は小春にウインクすると、目にも止まらぬ速さで、ダークネスをなぎ倒しました いえ。 実際、目に止まるはずは無いのです。人の眼は見得るものしか映さないから 彼…いや、彼女は、元いた場所からどこも経由することなくうごいた。ふつーの人は瞬間移動と呼ぶ、あれです。 そう、ナンバーワン、それはうちのリーダー高橋さんでした。 どうも、背の低い人だとは思ってたんですよー にしても「タカ」って高橋の「タカ」ですか?なんにせよ、大事に至らず良かったです。 と、言うのもー、彼女の動きが滑らかに、 また人としての許容範囲に見えるように細工をしたのはこの小春です。 残像を作って貼り付けました、店にいる全員の網膜に。小春やっるー! その後オーナーが警察に電話して、変な強盗事件として処理されることになりました 「高橋さん、どうしてあんなことを…」 聞くに、一ヶ月前に高橋さん、おじさんと道でぶつかって、骨折させて、 慰謝料1億用意しろって言われて、泣く泣くホストクラブで働くことになったと言うではありませんか むむむ、高橋さん、それ絶対なんか騙されてます。 小春、こう見えてニュースよく見てますから、ピンときました 「よくあんなにスラっと男のフリできましたね…」 「…宝塚名場面集より抜粋やよ…」 あー道理でなんか楽しそうだった… 「帰りましょ、高橋さん。タカは今日の事件を機に悪を打ち倒す旅に出たんです!」 「なんやの、そんなどっかの戦隊ものみたいな…あ、あーしリゾナンターやったわ」 けらけら笑う高橋さん。でも、1億…なんてまだ心配そうにしています 大丈夫、事務所の住所わかってるんですもんね。コハハハハハ… 「行ってくるっちゃ!」「晩御飯までには、戻る」 やる気まんまんの田中さんと 驚くほど無表情の新垣さんがアップ始めました 「ごめんなー。あーしが行くと話し合いがこじれるんやろ? お相手に悪いから、これ、渡しといて?」 それは喫茶リゾナント永年無料コーヒー券 「にしし…飲みにくる勇気あるっちゃろか?」 「一生忘れるなって意味になって良いんじゃない?」 田中さんと新垣さんは、不敵な笑みを配りながら、戦地に赴いていきました。 「久住さん…」 そう呼ばれて、横を見るとミッツィが一筋の涙をその頬に流しています 「あかん…今までいろんな闘いを視てきたけど、 こんなに一方的で容赦のないもんは、初めて視ました…」 詐欺、ダメ、絶対
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さて、とうとう私はサンフランシスコ発成田行きノースウエスト航空27便エコノミークラスの人となった。 飛行機は何度乗っても苦手である。特に離陸の際の加速がいやだ。これから長時間、空飛ぶ密室に閉じ込められ自由を奪われるという拷問が始まるのだということを嫌が上でも認識させられる。圧迫感で息が詰まりそうである。 飛行機はそろそろ安定高度に入り、シートベルトを外してもよいというサインが出た。乗客はやれやれという素振りでシートベルトを外し、三々五々伸びをしたり、トイレに立ったり、雑誌を取り出したり、ヘッドフォンを取り出して装着したり、ニンテンドーDSや、PSPに没頭しだしたり、いきなりイビキをかきだしたりしている。 中には嫌う人もいるけれども、私は窓際が好きである。この飛行機は落ちずにしっかり飛んでいるのだということを常に確認しておかないと不安だからだ。 千切れて取れそうなぐらいガクンガクンと揺れている翼を見て気分が悪くなる人もいるらしいが、私などは飛行機がけなげににちょこちょこと羽ばたいているようで、微笑ましくも感じる。だいたい、あれぐらい遊びがないと、空気の抵抗でポッキリ折れてしまうのである。 また、窓からどんどん小さくなっていく街並みを見るのがちょっと好きだったりもする。地上はすっかり見えなくなり、視界に入るものといえば雲ばかりという状態になったが、千変万化する雲の形を見ていると面白く、暫くぼんやりと眺め続ける。 隣のでっぷり太った初老の紳士が、しきりに自家製と思われるフライドチキンを勧めてきたが、表面に脂がドクドクと付着していたので、見ただけでムネが悪くなり、丁重に辞退させていただいた。初老の紳士は『オーゥ』などと大袈裟に歎息している。フライドチキンぐらい黙って一人で食え。大体そのベタベタの指はどこで拭くつもりか。 真紅たちのことが気になり、ごそごそとパソコンを取り出して自作のVAIOハッキングプログラムを起動してみたが、さすがにこの機内からではノルゴリズム世界にアクセスできないようだ。仕方なく空港で買った雑誌をパラパラとめくってみたが、真紅たちのことや洋子のことが気になって全く頭に入ってこず、文字情報が網膜を通じて脳の一部に投影されるものの、意味をさっぱり理解しない人間OCRと化してしまった。 そんなことをしていても仕方ないので、雑誌をクルクルと丸め、カバンに放り込んで瞑目する。すると、また隣の紳士がつんつんと二の腕を突っつくので、何事かと思ってみてみると、今度は自家製ハンバーガーを勧めてきた。なんと、ハンバーグが五段重ねになっている。見ただけで酸っぱい胃液がこみ上げてきた私は、また丁重にお断りする。紳士はまた、『オオーゥ』などと大袈裟に歎息した。だからメタボリックシンドロームで命を落とすのは自分だけにしておけ。他人を巻き込むな。ほら、そんな角度で頬張るから、肉汁やらドレッシングやらがこぼれまくっているではないか。またそれをどこで拭くつもりだ? 瞑目していろいろなことに思いを馳せていると、今度は大きないびきが聞こえてきた。初老の紳士は満腹になった人間の常として、居眠りを始めたのだ。『ガー』と大きないびきの後、十数秒間無音状態が続くので安心していると、いきなり『ッグゴゴォー』っときてびっくりしてしまう。これは完全な『睡眠時無呼吸症候群』だ。頼むから隣で還らぬ人にならないでくれよ。 うるさくてゆっくり考え事もできないので、ヘッドフォンを装着して、ボリューム最大で音楽を聴く。 さて、することもないから、空港ではRubyにおける『クラスライブラリ』の概要を考えてみたので、今回はもう少し突っ込んだところまで考えてみよう。 しかし、あまり突っ込みすぎるとズルズルと深みにはまり込んで生還できなくなるので、Rubyにおける『組み込みクラス』について考えてみたい。 『組み込みクラス』というのはなんぞやというと、Rubyインタプリタプログラムに既に組み込まれているクラスのことである。 Rubyの組み込みクラスには以下のものがある。これは、Rubyリファレンスマニュアルから抜粋したもので、細かく解説しても、結局マニュアルを書き写すことになるだけだから、詳細は各自ご確認いただきたい。 Object 全てのクラスのスーパークラス。オブジェクトの一般的な振る舞いを定義する Array 配列クラス。要素は任意のRubyオブジェクト。すなわち何でも格納できるということである Binding ローカル変数のテーブルと self、モジュールのネストなどの情報を保持するオブジェクトのクラス。組み込み関数 binding によってのみ生成され、eval の第 2 引数に使用する Continuation 直前の状態(ローカル変数の定義、スタックフレーム)を格納するクラス Data 拡張ライブラリを書く時に new が定義されているとまずい場合があるため、Object から new だけを undef したクラス Exception 全ての例外クラスのスーパークラス Dir ディレクトリ内の要素を順に返すディレクトリストリーム操作のためのクラス File Stat ファイルの情報を格納したオブジェクトのクラス Hash ハッシュテーブル(連想配列とも呼ぶ)のクラス IO 基本的な入出力機能を実装する File IOクラスのサブクラス。ファイルアクセスを行う MatchData 正規表現のマッチに関する情報を扱うためのクラス Method クラスのインスタンスからメソッドのみを抽出する Module モジュールのクラス Class クラスのクラス Numeric 数値を扱う抽象クラス Integer Numericクラスより派生。整数の抽象クラス Bignum Integerクラスより派生。多倍長整数のクラス Fixnum Integerクラスより派生。マシンのポインタのサイズに収まる長さの固定長整数。ほとんどのマシンでは 31 ビット幅である Float Numericより派生。浮動小数点のクラス。Float の実装は C 言語の double で、その精度は環境に依存する Proc ブロックをコンテキスト(ローカル変数のスコープやスタックフレーム)とともにオブジェクト化した手続きオブジェクト Process Status Process.wait などで生成されるオブジェクト。プロセスの終了ステータスを表現する Range 範囲オブジェクトのクラス Regexp 正規表現のクラス String 文字列のクラス Struct 構造体クラス Symbol シンボルを表すクラス Thread Ruby のスレッドを表現するクラス ThreadGroup Thread はグループを持ち、必ずいずれかのグループに属する。 ThreadGroup クラスによりグループに属する Thread をまとめて操作することができる Time 時刻オブジェクト UnboundMethod レシーバを持たないメソッドオブジェクトのクラス TrueClass trueのクラス。trueは、TrueClassの唯一のインスタンスである FasleClass falseのクラス。falseは、FalseClassの唯一のインスタンスである NilClass nilのクラス。nilは、NilClassの唯一のインスタンスである さて、リファレンスマニュアルからごそっと組み込みクラスを抜き出してきたわけであるが、これらを眺めていて何かを感じないだろうか。 それは、これら組み込みクラスが、Rubyでプログラミングを行うにあたって、クラスであることを意識せずに使用できる、核となる要素が、実はクラスだったんだと再認識するだけのものが多いのである。 例えば、Arrayクラスだ。 Arrayクラスのオブジェクトは、Arrayがクラスであるということを意識すれば次のように生成する。 a=Array.new([1,2,3,4]) ところが、次のように生成しても立派なArrayクラスのオブジェクトになるのである。 a=[1,2,3,4] Rubyでは、[1,2,3,4]と記述したとたん、それがArrayのオブジェクトとして認識されるわけだ。これは、Hash、Bignum、Fixnum、Float、Range、RegExp、String、TureClass、FalseClass、NilClassなど、多くのクラスに当てはまるのである。 if a==true; ~ end などと記述する場合のtrueが、実はTrueClassのオブジェクトであったのだということなのだ。 さすがは、全てのものがオブジェクトであるRubyならではの組み込みクラスライブラリであるといえよう。