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芝龍太郎の運勢を占う【姓名判断 芝幸太郎など】 芝龍太郎さんの総運は37画の大吉! 忠実 才能 努力 独立 現実的 異郷 順応 芝龍太郎さんの人運は23画の大吉! 成功 名誉 創造力 頭領 想像力 活力 太陽 活生 芝龍太郎さんの外運は21画の大吉! 独立 統率力 名誉 頭領 指導 征服 芝龍太郎さんの地運は30画の半凶! 苦境 浮沈 悲運 波乱 楽天 空想 芝龍太郎さんの天運は7画の吉! 権威 独立心 人気 孤立 強い意志 自立 直情 信念 芝龍太郎さんの陰陽は! 芝 龍 太 郎 画数 7 16 4 10 陽:○、陰:● ○ ● ● ● 「龍」または「竜」という漢字の意味を調べてみたら以下の通りになりました。 1 想像上の動物。たつ。 2 すぐれた人物。英雄。 3 天子に関する物事に冠する語。 4 恐竜のこと。 龍・竜と言えば一番に大きなドラゴンが浮かびますが、その他にも「すぐれた人物、英雄」という意味もあるんですね。 名前に龍・竜が付く名前の方は、若い世代にはあまり浮かばず年配の方に多いイメージです。まぁそれは勝手なイメージですが。 でも、この漢字が付く名前の方は、たしかに男らしい方が多い気がします。 人は、願われた名前のように育つのでしょうか? 姓名判断も当たってたりするんでしょうかね? そう思ったので自分の名前を入れて見てみたら、たしかに多少当たってましたよ。
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咲「うーん…3ピン」タンッ 優希「あ、それロンだじぇ!12000」 咲「あー、やっぱ東場じゃ優希には勝てないなー」 優希「フッフッフ…3マだろうが東場じゃ私の独壇場だじぇ」 京太郎「おい優希、ちったぁ手加減してくれよ…俺も参加くらいさせてくれっての!」 優希「犬は南場から頑張るんだな!」 咲「うーん、3年になってもなかなか東場じゃ優希には勝てないよー、はい」チャリ 優希「これでも結構必死だったりするんだじぇ、東場とはいえさすがに咲ちゃん相手に気を抜いたら勝てないじぇ、ほい3000バック」チャリ 俺達は3年生になった。 1年の時、俺達は全国優勝はできずにその年の冬に和は転校していった。 そして、春には部長が卒業した。 部員が4人になった。 俺達は2年になった。麻雀部には誰も入部しなかった。 次の年、染谷先輩は少し心残りじゃったが、ぬしらと麻雀ができて楽しかったと言って卒業して行った。 部員が3人になった。 今年、俺達が3年になった。今年も麻雀部には誰も入部しなかった。 部員は3人のままだ。 インターハイは個人戦では出るかもしれないが、3人ともそこまで乗り気ではない。 毎日、授業が終わったら部室でダベりながら3マをする毎日だった。 咲「あ、もうこんな時間か」 時計は17時を少し回っていた。 京太郎「じゃ、今日はこのへんでお開きにしますか」 優希「そうだな、あ、帰りにタコスでも食べていくじぇ!」 京太郎「太るぞ、そのぽんぽこのお腹がもっとぽんぽこりんになるぞ」 優希「うっ、そ、そうだな…」タジタジ 咲「ふふっ、さっ、帰ろっか二人共」 二人「おー」 外 京太郎「いやー、最近随分日が長くなったなー」 咲「だね、そろそろ夏が来るしね」 優希「だじぇ、また、あの熱い夏がっ!来るっ!!!」 京太郎「あー、そういえば二人共今年は個人戦どうすんの?」 咲「うーん、優希ちゃんはどうする?」 優希「私はみんなに合わせるつもりだじぇ」 京太郎「なんだよその人任せ」 優希「うーん、まぁ、もうそこまで魅力を感じていないからなインハイには…」 咲「うん…私もぶっちゃけ…」 京太郎「じゃ、今年は清澄高校はインハイ不参加ということでオーケー?」 二人「オーケー」 京太郎「どうしようもない麻雀部員達だなおい」 優希「そうか?まぁ、私は今のままで十分楽しいからそれでいいんだじぇ」 咲「私もそんな感じかな」 京太郎「そうだな、俺もそうだわ」 咲「だめだねー、私達」 京太郎「だな、ハハハッ」 こんなダラっとした日常が俺は結構好きだった。 毎日授業が終わったらグダグダ麻雀して。 笑っていられる。 咲と優希は特別な存在だった。 こうして毎日三人並んで帰る。 何も知らない俺は幸せだった。 数日後 部室 ガチャ 京太郎「おー、まだ優希だけか」 優希「おうっ、咲ちゃん先生に呼ばれて遅くなるだって」 京太郎「へー、そうなのか、よいしょ」カバン置く 優希「なんか飲むか?」パタパタ 京太郎「あー、麦茶ある?」 優希「麦茶?」ガチャ 優希「あー、ちょうど二人分くらいあるな」ヨイショ コポコポ 優希「ほい」差し出す 京太郎「あんがと」受け取る 優希「おう」イスに座る 京太郎「ゴクゴク、ぷはっ、あー、麦茶がうまい季節になってきたな」 優希「だな」ゴクゴク 京太郎「んー?そいやお前、少しふとっ」 優希「それ以上言ったらコロス」 京太郎「その発言だけで十分だ…お前、少しは気を使えよー、一応女の子だろ?」 優希「…。京太郎は…痩せてる子の方が好きか?そんでおっぱいが大きくて…」 京太郎「え?あー、まぁ、胸はある方が好きっちゃ好きだし、あんま太ってるのも痩せてるのも…」 京太郎「まぁ、丁度いいのが好きって、お前何を言わせる?」 優希「ほほう、じゃあ、私はその基準で言ったら恋愛対象外ってことか?」 京太郎「は?お前はー、まぁ、うーん…」 優希「悩みやがるのか」 京太郎「あー、って何でそんなこと聞く?」 優希「ん?あー、今後の参考までにな、他の男の好みもきっとそんなんだろーなーって思って」 京太郎「あー、まぁ、それは人によるからなんとも言えないと思うぞ?」 優希「そうか」 京太郎「そーゆーお前はどーゆー男が好みなんだ?」 優希「私か?そうだなー、優しくて料理が上手くて気が使えて身長が高くて一緒にいて楽しい奴が好きだな」 京太郎「ほー、そんな男なかなかいないと思うぞ。お前も結構理想高いな」 優希「そうか?案外いるもんだぞ?」 京太郎「そうなのか」 優希「そういえば京太郎、咲ちゃんとは幼なじみなんだよな?」 京太郎「ん、まぁ、そうだな、腐れ縁って感じだと思うが」 優希「京太郎は…咲ちゃんの事がその…好きだったりするか?女の子として…」 京太郎「は?突然何言い出すんだよ」 優希「どうなんだ?」ジトッ 京太郎「おいおい、何でそんな睨むようにこっち見るんだよ?」 京太郎「あいつとはただの幼なじみってだけだっつーの、それ以上でもそれ以下でもないよ」 優希「そうか…」 京太郎「そうだよ…」 優希「…」ジッ 京太郎「…。なんだよ…」 優希「なんでもなーい」スクッ 京太郎「変な奴だな…」 優希「はいはい、私は変な女だじぇ」ゴソゴソ 優希「あー、麦茶もうないじぇ、京太郎、後で買っておいてくれ」 京太郎「へいへい、いつまたっても俺が雑用ですかい」 優希「あー、じゃあ私が一緒に買いに行ってやるじぇ、ついでにタコスの材料を買って…」 京太郎「お前…痩せる気無いんだなマジで」 優希「っ…。分かったじぇ…ダイエットしてみるじぇ…」 京太郎「お?ホントにできるのか?」ニヤニヤ 優希「やってやるじぇ!そんで、京太郎を見返してやるじぇ!」 京太郎「ハハッ、頑張れよ!応援してるぞ」 優希「…。おう」 ガチャ 咲「やっほー、どうしたの二人共?随分楽しそうな声が外まで聞こえてきてたけど?」 京太郎「お、実は優希がダイエット始めるらしいぜ」 優希「ちょ!おまえっっ!!!」 咲「え?ホント優希ちゃん!?」 京太郎「これで後戻りできなくなったな?」 優希「うぅっ…今に見てろと…」 咲「あはは、優希ちゃん、無理しちゃだめだからね?」 1学期末 ガチャ 京太郎「あれ?優希一人か?」 優希「おう、咲ちゃん委員会の会議だって」 京太郎「そうか、あー、喉乾いた。」 優希「麦茶しか無いぞ?」 京太郎「むしろ麦茶がいい」 優希「だよな、やっぱ夏は麦茶だじぇ、ホレ」 京太郎「サンキュー」ゴクゴク 京太郎「ぷはっ、あー、生き返る」 優希「それにしても、暑いなー」うちわで京太郎扇いでやる 京太郎「あー、涼しいー」 優希「男って夏は大変だよなー、ズボンだし」 京太郎「やっぱスカートって涼しいのか?」 優希「そうだな、靴下も全部脱げばそれなりにな」スカートパタパタ 優希「うー、私は暑さに弱いんだじぇ…」上着パタパタ 京太郎「…。あれ?お前…痩せた?」 優希「お?そこに気づいたか犬よ」 京太郎「ああ、ぽんぽこのお腹が引っ込んでた」 優希「お?エッチだな京太郎、私の素肌を見て発情したか?」 京太郎「そういうのいいから」 優希「どうだ?私はやればできる女なんだぞ」エッヘン 京太郎「おみそれしました」ヘヘー 優希「どうだ?魅力倍増か?」ホレホレー 京太郎「ちょ、お前、やめろよ!」 優希「胸は…まぁ、あれだがかわいいだろー、どうだー?ほれほれ」 京太郎「おまっ、変なポーズやめろ」 優希「ふっ、犬は今日も私の魅力に釘付けか、私も罪な女だ」 京太郎「おい、いい加減にっ…見えるから…」あっち向き 咲「…。何やってるの?」 京太郎「うおっ!咲っ!?」 咲「何してんの二人共…」ジトー 優希「おっ、咲ちゃん。実はだな、私は見事に痩せたのだ!だから京太郎に見せびらかしてたのだ!」 咲「え?そうなの?」 優希「おう、ほれ」お腹見せる 京太郎「おまっ」横見る 咲「あっ、ホントだ引っ込んでる」 優希「私は血の滲むような努力をしたんだ…」遠い目 咲「すごいなー優希ちゃんはー有言実行しちゃうんだもん」 優希「だろー?」 京太郎「だから今見直してたところだ」 咲「そうなんだー」 京太郎「よし、じゃあ今日は優希のダイエット成功祝いとして東南戦10回な」 優希「おい、それは祝ってるのか?私を疲れさせたいのか?」 咲「身軽になった優希ちゃんに勝つのは難しそうだなー」棒 京太郎「ロン!9600」 優希「うへー」 咲「ロン!7700」 優希「あべしっ!」 京太郎「うーん、やっぱ10回戦くらいになると優希も弱っちくなるな…」 優希「うへー、8回戦くらいから東場も厳しくなってしまうじぇ…咲ちゃんはともかく、京太郎にも勝てないとは…」 咲「てゆうか京ちゃんも強くなったよねー」 京太郎「そうか?」 優希「たしかにそうだな、私だけじゃなく咲ちゃんからも何回か上がってるしな」 京太郎「まぁ、いつもこのメンバーでやってるからな、なんとなくわかるんだ癖とか」 咲「え、私、癖とかあるの?」 京太郎「あー、いや、決定的にあるってわけじゃなくてなんとなくわかるっていうか」 咲「へー」 優希「犬だから鼻が効くのか?」 京太郎「お前の場合は単純に打牌がヌルくなるだけだ」 京太郎「そしてそんな俺たちの熱血麻雀奮闘記は……」 京太郎「これからだ!!」 カン
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黒髪の女と金髪の男が歩いている。 夜空の下だ。月下に晒され、互いの姿が照らされている。 「じゃあ、東横さん、俺はここで」 「はい、さよならっす」 立ち止まったのは、バスの停留所の前だ。別れを告げ、ゆっくりと名残惜しげに女のほうが去っていく。 数度、振り返るたびに、寂しそうな笑みを男に向けて。 〇 炎天下だ。既に七月ともなれば太陽はその勢力を増し、勢いを強める。 汗が滴る。額の水滴を白のワイシャツの袖で拭い、男は一息をついた。金髪の男だ。 端整な顔立ちは軽い歪みを見せ、息は喘いでいる。 「ああ、くそ、何で俺はこんなところに来ているんだか」 男はぼやくかのごとく呟く。 理由はあった。男はとある部活動に所属していた。麻雀部という。 清澄高校麻雀部。今年県予選を突破し、インターハイに出場することになった。弱小――、否"元"弱小部だった。 男はそこに所属していたが、男性部員は男一人しかいないが故に、ある種雑用ともいえる立場に存在している。 男はそれをどうと思ったことはない。男自身、自身が弱いと理解しているし、女性に頼りにされるのは嫌いではない。 何より、女性に頼られるというのは男としてひとつのナルシチズムとでもいう何かをくすぐられるのは快感だ。 ――まあ、それが雑用という立場というわけだが。 努力をしていないわけではない、入部してすぐに役は覚えた。符計算もできる。戦術とその理論も理解した。 されど、結局のところ――、圧倒的に経験が足りない。 「まあ、俺は俺のペースでゆっくり行けばいいさ」 男は息を整え、歩みを続ける。 と、 「わ」 「きゃ」 衝撃がくる。鈍く感じたそれは人と接触したものだ。当たったそれは軽く此方に損傷はないが、 「あたた……」 男の目の前に、一人女が尻餅をついていた。 ああ、と男は呻いた。 ――少しボーっとしすぎたかな。 失敗したな、と思いつつ、男は手を差し伸べ、 「えっと、ごめん。立てる?」 声をかけた。 沈黙。 ――あれ、俺何か間違えたことしたか? 思考の波が来る。対応を間違えたとは思わない。少なくとも紳士的な行為に分類されるはず――、はずだ。 「あ、あの」 声。控えめに女の声が来る。 「貴方は、私が見えるっすか?」 女の問いを不可思議に思いつつ、 「ああ」 肯定の意を示した。 「そ、それ本当っすよね? 実はからかったりしてるとかそういうオチじゃないっすよね!!!??」 「??? あ、ああ」 弾丸を髣髴とさせる勢いで女がまくし立てる。男は意図がわからない。 まあ、とりあえず――、 「と、とりあえずどこか座れるところでゆっくりしよう」 男は提案した。 都会というにはこじんまりしている。精々、市とでも呼ぶ規模の一意の片隅に小さくまとまった喫茶があった。 モダン調で明治を髣髴とさせる。外装は赤いレンガと目立つのに、意識せねば目立たないような喫茶だった。 店内は薄暗く、天井にはゆっくりと回転する三本の羽で構築されたオブジェが釣り下がっていた。 「いいところだね」 「そう思ってくれるっすか? それなら案内した甲斐があったっす」 既に汗は引いていた。 店内は薄く冷房が効いていて、快適だ。 男は、手を上げ、従業員を呼んだ。 「アイスコーヒー、二つ」 従業員は慣れた手つきで注文を書き込み、再度確認をとり厨房に戻った。 「え、と」 軽業、早業ともいえるそれにあっさりとおいていかれた女性の顔を見て、 「ああ、ここは奢り。気にしなくていいよ」 男は言った。 「でも」 女が声を続けようとするが、男は制止を促し、 「男はさ、格好つけたい生き物なのさ。ここは俺に格好つけさせておいてくれよ」 笑う。 「案外気障っすね」 女は釣られて笑った。 「褒め言葉さ」 そういえば、と、 「名前、聞いてなかったな。俺は須賀。須賀・京太郎。清澄高校の一年」 へえ、と女――桃子は声をもらす。 「結構、大人びてるのに一年っすか。ああ、私は桃子。東横・桃子。鶴賀学園の一年っす」 その言葉に、男――、京太郎は少し目を見開き、 「君、和と戦った子か」 「? しってるんっすか?」 知っているも何も、 「まあ、控えのほうで見てたからね」 「もしかして、やるんすか? 麻雀」 ま、ね、と、 「俺は弱いから、ただ見てただけだけどね」 情けないな、と思う。先ほど男は格好をつけたがる生き物と吐いた割にはまったく格好がつかない。 しかし、それを気にしてないかのように桃子は笑って、 「けど、続けてるんっすよね? 麻雀」 「ああ」 即答してみせた。 「なら、いいと思うっすよ。継続は力なりって言うっすしね」 そうだな、と男は思う反面、不安がよぎる。端的に言えば、怖い。 麻雀は今、はやっているというよりは世界的に認められた娯楽の一つだった。 多くの男女が職業のひとつとしてプロ麻雀師を目指すこともある意味普通だ。 規模は男性のほうが大きいはずだった。 ――焦り、だよな。 自分は自分のペースで、そんな思いの反面が京太郎の心を蝕む。 怖い。女性においていかれるということが怖い。 中学の三年を友人として過ごした女性においていかれている現在の状況が、 麻雀部の一人だというのにおいていかれているという状況が、否――、 ――怖い、か。 恐れている。自分が必要とされなくなる状況が。怖い。 県予選を突破し、インターハイに出場するとなれば知名度が上がる。 そうなれば来年の入部者が増えるのは明確で、しかし、だからこそ、 ――雑用としての立場すら失われていく、か。 もしも来年、入部者が現れれば雑用等の仕事も結果としてその入部者、来年の一年生に繰り越されることとなる。 だが、それは今の京太郎の立ち居地すら危うく――、 ――って、何考えてんだ、俺は!! 頭を振った。あまりにも嫌な未来予想図を振り払うかのように。 そもそも、来年まで雑用をやっているなんて考えている自分がみみっちい。 雑用しすぎて、犬根性が染み付いたのかもしれない。嫌なものだ。 「どうかしたっすか?」 桃子が不安そうに問うてきた。 なんでもない、と京太郎は言いつつ、 「そう言えば、東横さんは何であんなところに?」 京太郎は問う。 ありていに言えば京太郎は雑用で遠出をしていた。 清澄と鶴賀はほぼ反対の方向に位置し、用事がないならばあまり向かうこともない。 用事はひとつ、タコスだった。 部員の一人にタコスをこよなく愛する少女がおり、鶴賀のほうに新しくできたタコスの買出しを命じられたわけである。 本来ならば断るところだが、京太郎に断る意思はなかった。心理的な要因が閉めるのは確実で、 ――こういうのがだめなのだろうけど。 部活内部での立ち居地をどこか必死に守ろうと、断ることができない。 桃子は笑って、 「あ――、なんて言えば良いんっすかね。まあ、単純に言えば散歩なんっすけど」 何かを含んだような、笑み。 「ちょっと自分が分からなくなって」 顔に翳りが表れてくる。 「県予選でうちが負けて、三年の先輩たちが引退して」 あ、と桃子が笑って、 「そう言えば、前提が分からないっすよね」 私は、と桃子は、 「私は影が薄いんっすよ。須賀さん、カメラ越しだからわからなかったでしょうけど。普通の人に私は見えないんっすよ」 手を差し出され、 「握ってみてください」 京太郎は息を呑み、軽く桃子の手を握った。 熱がある。肉の感触が自身の手を包んだ。柔らかく、肉感的なそれは確かに生の鼓動を京太郎に穿つ。 「どうっすか」 「どうって、その、柔らかい、かな」 なんつーか、セクハラみたいなせりふだな、反省。と、思考し、 しかし、彼女は笑い、 「ありがとう」 手が離れていく。若干の名残惜しさを感じた。 「私は、私は確かにここにいる。だけど誰からも見えないほどに影が薄い」 「小さいころからね、私はこうだったんっすよ。ほら、出会ったとき、何度も確認しったっすよね? これが原因なんっす」 少しだけ楽しそうに、 「いつもいつもつまらない。一言で言えば灰色みたいな毎日は、先輩のおかげで終わった。終わったように見えたんっすよね」 しかし、寂しそうに、 「けど、やっぱり長くは続かないみたいで、ね」 「私をよく見てくれていた先輩も、大学に進学するとかで、特別補修だとかで顔を現すことが少なくなって」 「麻雀部での私の居場所が分からなくなったんっすよ」 それは、と、 「私はある意味、その先輩のために麻雀部に在籍していたから」 「そこに居続ける意味の支柱が抜け落ちたみたいで、なんというか空っぽみたいな――」 似ているな、と京太郎は思った。 彼女は自分に似ている。立ち居地に悩む。自分と。 まるで、空気みたいな――、 と、 「あはは、いや、すいません。急にこんな話振られても困るっすよねー」 彼女は笑う。無理をしたような、笑み、 京太郎は堪らず、 「良いなぁ」 そんな言葉を漏らしていた。 桃子は少し語りすぎたかな、と多少失敗したような感覚を思うが、唐突に来た声がそれをさえぎった。 「俺は、さ」 京太郎は、 「そんな風になれなかったから」 何かを搾り出すように、 「誰かのためになるほどの力がないから、雑用で甘んじて、それを仕方ないと思って」 告げてくる。 「分かってるんだ。努力が足りないってさ。身にしみてる。努力はしてても足りないってさ」 それは告解のようで、 「天性の才も、環境もなかったのに、努力しなきゃ追いつけないなんてとーぜんの理屈。なのに、俺はどこかで言い訳している」 懺悔のよう。 「"弱いから"そうやって逃げている」 あぁ、と京太郎は呻き、 「だから、羨ましい。嫉妬すら覚える。誰かのために、それだけの思いをもてる東横さんが羨ましい」 自嘲がくる。 「――悪い。今のも結局逃げだったよ。何よりも自分を思ってくれる何かを思う、なんて逃げだよな」 「東横さんとは状況が違うみたいだし、さ」 桃子は息を呑む。 その姿はどこか疲弊している。 そして似ていた。 ――本当に似ているっす。自分と彼は。 言葉にできないようなどこかが、自分と似ていた。 「悪い、今のオフレコ。気にしないでくれ」 京太郎が目元を手のひらで覆う。 それはまるで、見られたくないかのような仕草。しかし、桃子は見つめ続ける。 放っておけない。このままだと、どこかに消えてしまいそうな雰囲気があり、それは儚いような、きっとそんな感じ。 「失礼します。アイスコーヒー二つです」 割って入るように従業員の声がする。 テーブルに置かれたアイスコーヒーは既に水滴にまみれていた。 〇 帰りがけ、既に買い物を終えて、京太郎はバスに乗り込んだ。 そこそこ時間がたってしまった。 右手を見る。携帯を握る手はアドレス帳を開いており、 そこには新たに名前が加わっている。 『東横・桃子』 喫茶店で連絡先を交換して別れた。 帰り際に見せた笑顔は、どこか儚げだったことを覚えている。 『必ず、連絡くださいいっす』 そう言って、彼女は笑った。 消えてしまいそうだと思った。だが、 「暖かかったな」 握った手を思い返す。それは生の実感を感じさせるには十分だった。 ――さて、どうしようかね。 京太郎はメール画面を開き、文脈を思った。 そもそも、いつから京太郎は自らが、他者のために動くことを是としているのだろうか、と思考する。 ――ああ、そうだ。 あれは確かまだ、中学生のころか。 今だ、咲との仲が深くなっていない時期。接点が図書委員というだけの中だった時期。 放課後、一人、山積みとなった本に埋もれて読書をしている咲の隣に座った時だ。 京太郎もつられるように、何となく一冊の本を手に取った。 とったのは単純な自己啓発の本。タイトルはありきたり、内容は凡庸、ハードカバーで内容以上の値段。そんな本。 たまたまとったそれを、斜め読み、最初は捲る手もゆっくりだった。 しかし、捲るにつれてだんだんと速度は飛躍的に加速していく。 それを見つけたのは、いまだ自己形成段階の中学という時期だったからか、京太郎はあまりにもそれに影響を受けた。 否、受けてしまった。 『あなたは本当に必要な人間なのか』 『必要とされる人間になりなさい』 端的に言えば、そんな内容。 しかし、その言葉が嫌に響く。 金槌でたたかれたような、そんな気分。 それからだろうか、京太郎が他者のために自らをすり減らすようになったのは。 ○ まあ、それは、今となっては記憶の片隅にしまわれたモノ。 未だに夏の暑さは引くことを知らない。汗で張り付いたシャツが不快感をあおる。 涼しい場所で一服したいと、思うが、 ――"彼女"が来る前に移動もできるはずがないか。 吐息。 頬をかけば、水滴が指先につく。鬱陶しげに振り払う。 と、 「あ、須賀さーん、待ったっすか?」 声が来る。数日前に出会い、知り合った女の声だ。 「いや、待っていないさ」 京太郎は笑みを見せる。 しかし、女は目ざとく、 「須賀さん。汗でシャツ張り付いてますし、色も滲んでるっすよ? それ、十分二十分じゃならないっすから」 ばれてたか、と思うが、 「時間指定のミスのせいで待つことになったのは待つって言わないさ」 どちらかといえば地方に属する長野の地は、やはりバスの本数が少ない。 そのせいで適当に時間を指定した罰が当たったらしい。京太郎は炎天下の下で待つことになったわけである。 「むー、まあ、いいっすけどね」 どこか拗ねたような彼女が面白い。 「それじゃあ、行こうか」 京太郎は告げて、歩き出し、 「そうっすね」 その隣に沿うよう、彼女――、桃子も動き出した。 〇 出会いは三日ほど前。京太郎がいつものように雑用をしていたときだ。 どのような采配か桃子と出会った。 その後軽い連絡を取り続け、休日に会うことになったのだ。 「さて、どこに行こうか?」 京太郎は問う。 「さあ? っていうか、どこに行くか決めてなかったんすか?」 攻めるような視線を逸らしつつも、しかし、 「悪い」 素直に謝る。確かに、甲斐性としてはここは男性が動くプランを立てておくべきだった。 困った様子を見られたらしく、ほんの少しだけ笑顔を見せた東横は悪戯っぽく、 「うそっすよ」 笑って見せた。 不覚にもその笑顔は可愛い。 〇 「いやいや、面白いことになってますなー」 女の姿が見える。二人の影だ。 一人はどこか猫を髣髴とさせるトリックスター然とした女。一人は理知的に見える清廉とした女。 二つの影が追うのは一つの目標だった。 情報は理知的に見える女――加治木・ゆみからもたらされた。 東横・桃子の所属する部活の副部長、加治木が二日ほど前に携帯の前で挙動不審な後輩を見たことが原因だ。 最初は容貌が見えなかったが、だんだんと崩されていく断片的な情報が拾い集められ、 ・東横・桃子が男とであった。 ・その男は清澄高校の男である。 ・休日にデートする。 こういったことである。 「――情報を渡したのは正解だったのだろうか?」 加治木は頭を抱える。 興味があったのは事実だ。入れ込んでいる後輩が幸福を感受している姿は悪くない。 特にその後輩の桃子は自分に依存している節があった。 哲学的に言うのならば、永遠は存在しない。時に季節があるように、人も時を刻んで換わっていく。 だから、 ――これで、モモも変わることができればいいんだが。 分かれはある。必ずだ。望むも望まぬもかかわらず。 だから、後輩が良く変わっていくのを見届けたいと思う気持ちはある。 しかし、罪悪感はあった。 「なあ、今からでも遅くはない。尾行などやめたほうが――」 ふう、とトリックスター然とした女――、竹井・久は分かっていないな、そんな笑みを浮かべて、 「あのねえ、ここまできたら引くことなんてできるのかしら?」 う、と加治木は唸る。興味がなければここには居ない。 「だが」 「あ、ほら、行っちゃうわよ? 行きましょう」 進むことを前提としているかのように動く竹井に加治木は頭を抱え、 ――妙なことにならなければ良いが……。 自身が原因であることを忘れ、そう思ってしまう。 桃子は踊ることが好きだ。踊っているときだけは誰もが自分を感知する。 今ではかつてほどではあるが、だからといって嫌いになったわけではない。 「ほ、よ」 鮮やかな足並み、ステップを、小刻みに、粋に、軽い足取りで、 「と」 回転を一つ、そして静止。 ダンスゲームの筐体から降り、点数を見る。高得点。 「凄いな」 桃子はそんな京太郎の呟きに心を良くし、自慢げに胸を張る。 「当然っす」 「いや、本当に凄いよ」 少なくとも俺には無理だ、と京太郎は言う。 ――無理、か。 桃子は、京太郎がその言葉を口に挟むとき、どこか暗いものを吐き出しているように感じる。 自分には無理だ。そういうことを言って、自己を正当化する感覚。 それは、味わったことのある感覚で、 ――そう、無理、っす。 かつてがいつかを侵食し、いまになる。 自分は今、かつてほど無理を思うことはなくなっていた。 ――助けたいっすよね。 傲慢かもしれないが、それはかつて敬愛する加治木から与えられたそれであり、 かつて背負い込んでいた無力感を感じている目の前の人を、 ――少しでも和らげたい、そう思うのは傲慢じゃないっすよね? 思う。 「須賀さん、無理、なんてそう簡単に言うもんじゃないっすよ」 だから、"私"は笑ってみせる。 〇 ――無理なんていうもんじゃない、か。 そうだよな、と分かっちゃいるんだけどね、と心に渦巻いた。 無理、そういった瞬間から、可能性は本当に無理に変化する。 ――分かっていても、実行できるかは別問題、か。 言うは易し行うは難し、詰まるところ単純にそう帰結する。努力"しよう"と"する"はまったくの別問題だ。 「ああ、そうだな」 だから、返したのは生返事だった。 ――こりゃ、相当やられてるみたいっすね……。 桃子は思う。 "かつて"の自分と同じだ。 否、症状としては京太郎のほうが酷いかもしれない。 自分は焦る必要がなかった。友人を望んだこともあったが、いつかそれすら止めた。 相手に合わせる必要を持たずとも良い状況だった。重責を必要とせず、ただ流されるままでも良かった。 しかし、京太郎の今は、違う。実力がないことへの苛み、危うい立場への焦燥感、 気持ちと肉体がすりあわない矛盾への怒り、それらが急激に合わさり濁流のように京太郎の今を飲み込んでいる。 桃子はそう理解する。息を吐き、 「じゃ、須賀さん、ほかのところもまわって見ましょ」 桃子は京太郎の手を取った。 〇 「ほうほう、なかなかに大胆な子ですな」 竹井はチェシャ猫を髣髴とさせる笑みを持って二人を見つめる。 「意外だな」 問う呟いたのは加治木だ。 「ふうん? 何が」 「モモがあそこまで彼に入れ込むことが」 そう? と、竹井の声に生返事で返す。 しかし竹井は、 「いやいや、ある意味当然なのかもね」 軽くそういってみせる。 「それは――」 「ま、ある意味私のせいでもあるんだけどね」 ばつが悪そうに竹井は後頭部を軽く掻いてみせる。 ああ、と、 ――きっと、こいつにはもう何もかもが――、 幾度か会う機会が設けられ、それなりの会話もしたが、話せば話すたびに、 ――あらゆるものを見定められているような……、 深い洞察力からくる、何もかもを見通すような魔眼に睨まれているような、そんな気分を思わせる。 「ま、良いわ、行きましょう」 だが、すぐに表情を切り替えて、 「あ、ちょっと待て……!!」 加治木は竹井を追いかける。 〇 楽しかった、と京太郎は素直に感じた。 振り回されるようだったが、幾分か気分は楽になった。 目の前でアイスコーヒーを飲む桃子を見て、そう思う。 手の中に納まるアイスコーヒーは冷たく、舌に落ちる液体は苦く、しかしそれが身を引き締めるようで逆に良い。 ねえ、と、声が突然来る。とっさに身構え、 「あはは、そんなに身構えなくても良いっすよ」 桃子の言葉にゆっくりと肉体を落ち着かせる。 ――ったく、俺はいったい何をやってるんだか。 「ねえ、須賀さん。今日は――楽しかったっすか?」 桃子の問いが来る。 「? ああ」 答えるが、 「本当に?」 再度の問いかけがくる。 「ああ」 告げる。 「……なら、よかったす」 意図が分からない。 「えっと、どうか、したのか?」 京太郎は問う。 「それは、っすね」 一瞬のいいよどみを経て、 「須賀さん。似てるんっすよ」 言った。 「かつての、私と」 これは切開だ。心をこじ開ける余計なお世話。かかわってほしくないところにかかわろうとするような――、 「今、須賀さんは思ってるはずっす。自分は無力、居場所はない、価値を見出せない」 うまい言葉が見つからない。ゆえに陳腐。しかし痛烈。オブラートはそこに存在せず、 「かつての私もそう。望んでほしい。望まれたい。だけど、それを思われない」 「必要とされず、気づけば孤独。ようやく見つけた陽だまりは、時が過ぎれば朧に消える」 「たとえまた会うことができるとしても、いつかは今と同じではない」 吐息、 「孤独だけではなく、不安まで押し寄せて一切合切を飲み込み、そしてなくしていくような感情がただもまれているような」 「不安定な感情を宙の間で吊り下げられているような不安とも言い切れない不定形な感情」 ねえ、と、 「須賀さん。貴方は望んでいるんっすよね? 望まれることを。確固とした立ち居地を。"自ら"にしか望まれない"何か"を」 何もかもを言い終えたように、口をつぐんだ。 京太郎を見る。 目に光はなかった。 それは何もかもを言い当てられたかのような顔。 「御見それしました、とでも言えばいいのかな、俺は」 絞り出された声は細く、 「まったくそのとおり、なんだよ」 頼りがない。 「雑用なんてさ、前にも言ったけど俺じゃなくてもできる。来期の一年生がどうにかする。少なくとも、今の麻雀部で、 咲は咲じゃないといけない。和は和じゃないといけない。優希は優希じゃないといけない。先輩は先輩じゃないといけない。 俺は――」 ああ、 「俺じゃなくても、良い」 涙がくる。押しとどめていた堤防を決裂させたように――、 「俺の価値は、俺がそこに立つ位置はどこにあるんだろう。部活に顔を出すたび思うんですよ」 流れていく。 「雑用を引き受けることで、部活動に専念してもらうことができる、そう思うことでやってきた。やってこれた」 「けど本当は思っていた。見ない振りをしていた。そもそも、俺は必要であるのだろうかって」 桃子にはそれが理解できた。同じだった。 自分の価値がどこにあるのかを理解できない。理解することを望めない。 ――ある意味、悲しいっすよね。 目の前に居る少年は本当に"普通"の少年なのだろう。 自身のように影が薄いわけでもない。しかし、 ――だからこそ、埋もれてしまう。 これは加治木との交流を経て気づいたことだ。 本当は、自分も、いわゆる"かつて"望んでいた"普通"となんら変わりないということに。 人は結局のところ普遍的に普通であり、テレビに出るような芸能人ですら拾われなければただの"人"と変わりがない。 自分はある種特殊な立場に存在しつつも、結局のところ何にも"普通"と変わりがなかったのだ。 ただそれが"他者"と違う視点から気づいただけの話で。 そしてそれゆえに、 ――やっぱり、同じなんすよね、私と彼は。 人はあやふやな存在故に、あやふやな状況であることに気付かない。 自らの立場がいかに砂上の楼閣のような物であろうとも、それが自分の立ち位置だと思い込む。 そこには他者が割り込むことができるというのに。 しかし、気づかない。気づけない。気づこうとしない。気づいてしまえば、 ――怖いっすもんね。 そこが立ち位置だと思っていた何もかもがただの夢幻のようであることを、理解することが。 しかし京太郎は気づいてしまったのだ。 もしも、周囲の人間が京太郎と同じような人間なのならば、きっと彼はそれに気づくことがなかった。 だが、周囲にいるのは全員がスペシャルというやつで、 ――そこに必要とされている人間っす。 その違いを対比し、自らの危うい立ち位置を認識し、 だからこそ飢えている。"望まれたい"その願望。 京太郎は今、その思いにとらわれている。 かつて加治木に出会う前、ひっそりと持っていたそれを目の前に居る彼も感じている。 「俺が俺である必要性を望んでほしい。俺じゃなければならない何かがほしい――なのに――」 言葉が終わる前に桃子は京太郎の手を取っていて、 「私が望んであげるっすよ」 そう告げていた。 「私が、貴方が貴方であることを――、"須賀・京太郎"が"須賀・京太郎"であることを望んであげるっすよ」 声が来る。 「私もかつてそうだったっす。私を望む誰かが居てくれることを望んで、そしてその望みはかなった」 「だから、かつての私の位置に居る須賀君を私はほっておけない」 ねえ、と、 「私は、私は望むっす。須賀君が須賀君であることを」 だから、と、 「だから須賀君にも一つお願いがあるっす」 それは、 「私が私であることを望んでください」 桃子は笑って、 「"東横・桃子"と言う存在を見つけることのできる貴方に"東横・桃子"と言う存在を望み、認めてほしい。そう望むっす」 〇 桃子は既に理解していた。 加治木との別れはいつか来る。必ず。必然を必然的に行うように。 このままではいけないということも、理解している。 ――だから、まずは一歩として、 「いかがっすか」 桃子は控えめに問う。 京太郎は告げた。 「喜んで」 まずはまた新しいいつかを構築する今を求めていこう。 それは依存ではなく、 それはただ傷をなめあうような関係ではなく、 それは平等という、 それは対等という、 そんな形で求めていこう。 桃子/京太郎はそう思えた。 〇 黒髪の女と金髪の男が歩いている。 夜空の下だ。月下に晒され、互いの姿が照らされている。 「じゃあ、東横さん、俺はここで」 「はい、さよならっす」 立ち止まったのは、バスの停留所の前だ。別れを告げ、ゆっくりと名残惜しげに女のほうが去っていく。 数度、振り返るたびに、寂しそうな笑みを男に向けて。 しかし、その寂しさにはどこか希望がある。 「二度と、会えないわけじゃないっすしね」 新たな関係を気づくことができた人と別れるのは名残惜しくも、 だが、それがまた楽しくもあった。 「さて、じゃ、来週はどんな内容で遊びに誘ってみるっすかね」 ―終― 既に幾度も逢瀬を重ねて、気づけば恋人という関係になるのに時間は必要としなかった。 ゆっくり、ゆっくりと時間をかけて互いの距離は縮められていき、 「桃子」 「京太郎さん」 既に互いの距離はゼロに等しい。 水音がする。淫靡さが溶け出したような水音だ。 それは口付けの音であった。 互いに求め貪り、そして必要であるということを確認しあうようにだ。 既に肌は上気している。目の前に居る桃子の肌はまさしく桃のようで、 ――綺麗、だな。 そう思った。 肉体を反転させる。ベッドの上に肉体を下ろす。自身が桃子を見下ろす形に持っていき、 「剥がす、ぞ?」 声の変わりに一度、頭部を立てに振るという挙動でその行為への許可がくる。 胸元のボタンからゆっくりとはがし、しかし、どこか獣のような挙動で手を動かす。 情けないことに男とは目の前に餌があればがっつかずにはいられない性分らしい。挙動はだんだんと早くなり、 「~~~~~!!」 上半身が裸体として晒される。 しかし手は止めず、自らのシャツをはずしていく。 京太郎が行ったのはまず互いの上半身を重ね合わせることからだった。 「――」 「――」 そしてそれ以上は動くことをせずただその行為だけを京太郎は求めた。 それは互いに"はじめて"であったこともあるだろうし、 かつて互いに"望む"互いであろうというその意思の表れでもあり、そして、体温を感じたいという京太郎の思いもあった。 東横・桃子は相変わらず影が薄かった。京太郎にはその姿を確認できるが、未だにその姿を見失う人間も多い。 否、そちらが大半で、京太郎がその唯一だった。 恐れているのだ。いつか自身の目の前からすら消えてしまうのではないかという心理が、 ただ抱くという行為に踏みとどまらせている。 それに気づいたのか、桃子も京太郎の肉体を握り返す。 互いの肉の隙間が埋まっていき、密着していく。服と服の境界はない。 「求めないんっすか?」 小さく声が来る。 ああ、と京太郎は答えた。 「もう、求めているからさ」 体温を感じるというのも、また一つの求めに他ならないと京太郎は感じる。 闇雲に繋がることは、 ――違うよ、な。 繋がることと互いを求め合うことは等号の関係とは当てはまらない。 繋がるのは原初、男女の概念が生まれたときにできたものだが、 ――求めあうのは、違うはずだ。 求め合う概念は、きっともっと後、互いにかけたことを理解することができるようになってからの話だ。 強く思い。その思いはさらに比例して力になる。 「京太郎さん。痛いっすよ」 その言葉に、あ、と、 「悪い」 「気にしなくて良いっすよ」 だって、と、 「それだけ強く私を望んでくれているのは嬉しいっすから」 頬を染めている彼女は愛しく、 「なあ」 だから、 「求めていいか?」 京太郎はそう問うていた。 ――プラトニックは、ここで終了ってことっすか。 それは覚悟していたことであり、 ――望んでいたことでもあるっす。 それは一線だ。 互いが互いである一線。 この行為は意思を融け合わせる行為であり、互いの意思の交わりであり、だからこそ。 ――意思と意思の一線ってことでもあるっす。 身をもみ合うように動かしつつ、 「はがして良いっすか?」 これ、本当は男の側の言葉っすよね? などと思いつつも、腰にある金属片に手を伸ばし、 ――あ、あれ? ぎこちない動きで手を動かすが京太郎が状態にあるゆえに影となって視界が狭まっているということもあり、 なかなか先に進むことができない。 「ああ、俺、自分ではずそうか?」 いやいや、それはいけない。一度やり始めたことを途中で投げ出すのは許容してよいことではない。 故に、 「わ、私がはずしてみせるっすよ」 必死に手を動かす。 ――な、何でとれないんすか? 単純に下手? 否、そんなことはないはず。 と、 「あ」 一息でベルトが外れた。 得意げに、 「ふ、ふふん、どうっすか? 私にかかればこれくらい簡単っす」 桃子の言葉に京太郎から笑みがこぼれ。 「ああ」 ただその一言がくる。充足感だ。何か満たされたような気持ちが現れ、だから、 「京太郎さん。今度はこっちをお願いするっす」 言葉に、無言で手を伸ばすことで京太郎が肯定を示してくる。金属と金属が小さくすりあわされ、スカートがはずされた。 小さくと息が漏れた。呼吸が激しくなる。心臓が激しく高鳴り、 「いくぞ?」 「――っ!!??」 自身の湿りに、京太郎の下の湿りが這わされ、悲鳴にも似た、しかし悲鳴のような悲惨さはまるでなく、 どちらかといえば快感を思わせるような声が湧き出てくる。 ――ほ、本当に私がこんな声を? 桃子の未だに冷静な部分が無意識にそんなことを思うが、すぐにそれは胡散する。 さらに熱がきた。時間差や、うねりの大小を加え、動くからだ。 「~~~~~~~っ!!」 声にならないような声を上げ、力が急激に腰の部分に来る。そりあがりさらに京太郎に肉を押し付けるようにして、 ――!! 力が抜けた。鉄の棒で支えられていたような状況から急激にその支えを抜きはずされたように思える。 荒い吐息を整えるようにして、しかしどこか名残惜しげに、 「ぷ、は」 京太郎の湿りはそこから失われた。 酒など飲んでいないのに、すでに酔いが回ったかのような気分が桃子の中を駆け抜けていく。 しかし、 「いいか……?」 酔いなどすぐに引きはがされた。 "熱い"ものが桃子の下腹部にあたっている。 ――俺も、まだまだ"男の子"なんだな。 自身が男である象徴を隆起させ、思う。 飢えがある。求めていることを理解させられる。 熱が脳内をかすみがからせ、しかし小さく残った理性がいまだ踏みとどまらせている。 ここがレッドゾーンだ、と。 今、この先を行けば、確実に変化が来る。"求め"と"望み"に。 しかし、 ――"望んで"るんだよな、それを。 それだけは確実だ、と己の意志の所在を己に問いかけ、 そして、答えは来る。 それは両者互いの意志の交わりを意味する。 小さく、小刻みの動作で、ゆっくりと、頭が、――縦に振られた。 それが確認だった。 まずは一度離れた体からすり合わせる。互いの胸の隙間を埋めていくよう、力強く。 そこから腹を合わせ、そして、両者の境界を失わせていき、 ――!! まずは粘性の液体に自身の"男性"が包まれた。液体は熱く、しかしそれは不快ではない温度。 滑り落ちそうなのを必死にこらえ、ゆっくりと落とす。 静止が来た。侵入を阻む壁だ。ゆくぞ、と自分と相手に問いかけるように告げてから、さらに力を籠める。 力を感じた。肉を引き裂くような感触がまず伝えられ、そこからさらに、 ――痛っ……!! 背に痛みを感じた。固いものが突き刺さるような感触に神経が強張り、筋肉が震える。爪だ。 桃子が手に力を入れたと同時に、桃子の爪が背に深々と食い込んでいる。 ――これくらい。 いい。これは男の名誉だ、そう京太郎は意識することで痛みをさらに思う。痛みから目をそむけない。 これは"望み""望まれた"一つの証であると。 だから、京太郎はさらに"求め"た。 比喩的に言うのなら、貫かれたというのが正しい。 異物が無理に自分の中へ入ってくるような感覚を思い、しかしそれを望んだのは自分であるということを捉え、 それゆえにその異物の侵入を許した。 それは一線を越えた証でもあり、 ――互いの"望み"が変化する境界線、っすよね。 いまだに熱が肉体から取れない。そもそも自分の動きがどこにあるかする今だ理解できておらず、 ――けど、 それを心地よいと感じる自分が確かにあることを理解した。 「痛いか」 声がかかる。 「痛いっすね」 だからそれに対し、素直に答えを返し、 「そうか」 「そうっす」 「少し、休むか?」 いえ、と、 「休めば、覚めるっすよ」 そうか、と、言葉を聞き、 「なら、いく」 動きが来た。 痛みがある。それを感じ、しかし多幸感があり、 ――意志の、所在っすよね。 科学が進歩し、そしてさらに発展していけば、男が女を、女が男を必要としない時代が来るかもしれない。 しかし、きっとそれは訪れることはないと思う。 科学と技術の入りいれぬ隙間に、人間の"意志"があり、そしてその所在を男女互いに思い続ける限りは、 その時代が来ることはないだろう。 故に、桃子は求めた。京太郎も求めてくる。 喘ぎ、 貪り、 組み合い、 混じり、 喘ぎ、 語り、 それを繰り返す。 ――そして、 「あ、あああああああああああああ!?」 果てが来る。際限がないなどあり得ないから、その思いの落としどころ、終着点に両者がたつ。 それは、 「っ――、く」 一つの終わりであり、始まりでもあった。 交わったまま、布団の中に両者は存在した。 肉にこもる熱はいま冷めず、互いの熱を自身の熱と勘違いしそうになりながら、自身の意思を思い出す。 「京太郎さん」 声がくる。 「ん? どうした?」 「明日、休みっすね」 「ああ。休みだな」 力が込められた。背筋に腕が回され、 「どこか、行きましょうか」 それに呼応するように、自身も腕を背に回す。 「そうだな。天気予報じゃ晴れだったし、少しくらい遠出しても、良いか」 そうっすね、とゆっくりとした声が来て、 「とりあえず、寝よう。明日が来るなら、また朝にでも」 「ん、そうっすね」 闇が来る。 心地の良い闇が。 来る。
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芝虎太郎の運勢を占う【姓名判断 芝幸太郎など】 芝虎太郎さんの総運は29画の吉! 厳格 才能 完全主義 知謀 参謀 芝虎太郎さんの人運は15画の吉! 人徳 出世 順調 徳望 穏和 円満 芝虎太郎さんの外運は21画の大吉! 独立 統率力 名誉 頭領 指導 征服 芝虎太郎さんの地運は22画の凶! 努力不足 衰退 無力 薄弱 霊感 芸術 芝虎太郎さんの天運は7画の吉! 権威 独立心 人気 孤立 強い意志 自立 直情 信念 芝虎太郎さんの陰陽は! 芝 健 太 朗 画数 7 8 4 10 ○:陽、●:陰 ○ ● ● ● 芝虎太郎の「虎」で思い出したのが、アイスの「トラキチ君」。 写真の白い部分はバナナアイス、黒い部分がチョコレートで、虎の柄のようになっているのですが、このバナナとチョコレートが非常にマッチしていてとても美味しいんです! じつはこれ、九州にしか出回っていないのが残念なのですが、思い出したら食べたくなってしまいました(笑) 早く関東圏にも店頭で並ぶと嬉しいんですけどね~。 もし九州に旅行や出張で行く方、ぜひ食べてみてください。 コンビニやスーパーに売っています。 トラキチ君 http //takeshita-seika.jp/index.php?id=6
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次話 京太郎インタビュー 西田「うーん……原村和さんのインタビューに成功したのはいいけど、必要最低限って感じだからもうちょっと何か欲しいところね。 チャンプの妹である宮永咲さんに取材出来たら良かったのだけど……ってあれは」 咲「京ちゃーん。これから部活ー?」 京太郎「あー、いや先に購買でシャーペンの芯買ってくるわ。ついでになんかあるか?」 咲「んー。それじゃあ……」 西田「すみませーん!」 咲「ひぇっ!?」 京太郎「ん?」 西田「少しお話いいですかー!?」 咲「あわわ、き、記者の人だ! ごめん京ちゃん後でね!」ビュー 京太郎「あ、おい! ……行っちまった」 西田「あら、逃げられちゃった」 京太郎「すいません、何か咲に用ですか?」 西田「ええ。清澄高校麻雀部のインタビューとして、あの子にもお話聞きたかったのだけど……あの様子じゃ無理そうね」 京太郎「そうっすねー。あいつ結構人見知りなんで、そういうのは無理かなって」 西田「姉妹でも、似ない所は似ないのね……」 京太郎「はい?」 西田「こっちの話。申し遅れました。私、西田といいます。よろしくね」 京太郎「あ、須賀です。よろしくっす」 西田「須賀君。君は彼女と仲良いの?」 京太郎「? ええ、まぁ」 西田「もしかして、彼氏……だったり?」 京太郎「いやいや、そういうのじゃないっすよ」 西田「あらそう。仲良さそうだったからつい」 京太郎「よく言われますけどね。それじゃ、俺もそろそろ行きますね」 西田「……あ、ちょっと待って」 京太郎「?」 西田「さっき清澄高校麻雀部のインタビューをしたいって言ったじゃない?」 京太郎「ええ、はい。咲にも話聞きたいって」 西田「良ければ、君の話も聞かせてもらえないかな?」 京太郎「お、俺っすかぁ?」 西田「ええ。選手達と関わりある、選手でない人の意見っていうのも、結構ネタになるからね。一応撮影はさせてもらうけど、そんなに時間は取らせないし、退屈もさせないから」 京太郎「んー……。まいっか。部長に遅れる連絡だけさせてもらっていいですか?」 西田「ありがと」 それじゃあ改めて、お名前から。 京太郎「清澄高校一年、須賀京太郎です。よろしくお願いしまーす」 清澄高校麻雀部とは、どういう関係で? 京太郎「関係っつーか、一応部員です。俺も」 一応、と言うと? 京太郎「いやー、他のみんなは大会に出て全国へー、とかってレベルなんですけど、俺だけ初心者なんですよね。高校に入ってから初めたばっかで」 周りは経験者ばかり? 京太郎「そうですね。と言っても、部員は大会に出た5人と俺の合計6人なんす。ハーレムってやつですよハーレムははは」 あまり嬉しそうではありませんね。 京太郎「……いや、部活で他が女の子だけって、どーしたって異物感出ますよねって話です……」 部室にいると気まずい? 京太郎「気まずいかって言われるとそーでもないんですよ。やっぱり女子だから男子だからで気を遣わなきゃいけない事はあるんですけど、そういう壁をお構い無しに仲良くなる奴もいますし、みんな良い人ですしね」 特に仲のいい部員といえば? 京太郎「やっぱ咲とタコス……あー、優希ですね。片岡優希。さっき言ったお構い無しの奴です」 同学年ですと原村和さんもいらっしゃいますが、そちらとは? 京太郎「仲が悪い、って訳じゃないですよ? ただ、和は二人よか真面目なんで、男女は適切な距離感を保つべきって考えがあるんでしょうね。二人と比べたら距離はあるかなって」 ガードが堅いと。 京太郎「そう………いや、あれで無防備な所もあるんで、身持ちが固いって言うべきかな。うん」 片岡優希さんは男女垣根無い方だそうですね。 京太郎「良い言い方をすればそうですねー。お子ちゃまとも言えますけど」 宮永咲さんは、そうではない? 京太郎「男女どちらとも人見知りするって意味なら、垣根無いとも言えますけどね。学校の友達は部内にしかいないみたいですから」 宮永さんとは、どのように仲良くなったのでしょうか? 京太郎「どのように、かー……。えーとですね、咲とは中学の時に同じクラスだったんですよ」 高校の部活以前に交流があった? 京太郎「そうですね。で、クラス委員を男女一人ずつ出さなきゃいけないってなった時に、ほぼ押し付けられる形で俺と一緒にクラス委員になったのが咲だったんですよ。俺は面倒だけどまあいっかーってノリだったけど、あいつは多分嫌だけど嫌って言って話し合いにもつれ込む方が嫌って感じでしたね」 その頃の宮永さんは、どんな人でした? 京太郎「ぼっちなのは変わらないんですけど、あの頃は人見知りってより、誰とも関わりたくないって言いたげなぼっちでしたね。委員で最初話しかけた時も挨拶だったかをボソッと喋るくらいで、暗いなーとか冷たい奴だなーとか思いましたし」 そこからどうやって仲良くなったのでしょうか? 京太郎「それが聞いてくださいよ! クラス委員の最初の仕事で、誰々の席がどことかの掲示を作るんですけど、出来た紙を先生に見せてくるつってさっさと教室を出て、しばらくしても戻ってこなかったんですよね」 その間、須賀さんは待ってた? 京太郎「掲示を貼るまでが仕事なんで、先に帰られるとは思わなかったですしね。で、暇潰しに携帯弄ってたら、先生が教室に来て「まだ出来ないのか?」って言うんすよ。あいつが行った筈って言ったら、いや来てないって」 入れ違いになってた? 京太郎「どころか咲の奴、校舎内で迷子になってたんですよ!」 迷子。 京太郎「信じられます!? 入学して一週間足らずとはいえ、一緒に行くと言った俺に「別にいいです」と言っておきながら! その棟の一階にある職員室までに辿り着けず! 俺と先生が探しに行って見つけたのが別の棟の3階ですよ!? しかも見つけた時にはトイレが限界近くて、涙目でプルップルしてやがったんすよ!」 京太郎「目視出来る距離にあった女子トイレに案内され、駆け込んで行く姿を見て、俺は確信しましたね。「ああ、こいつはポンコツだな」と」 ポンコツ、ですか。 京太郎「ええ。それからというものの、日常のあらゆる所でそのポンコツぶりを遺憾なく発揮して、クラスでの立ち位置は「一人になりたいぼっち」から「クールぶりたいポンコツ」に変わっていきました」 いわゆるマスコット枠、みたいなものですか? 京太郎「そんな感じですねー。それで、そのポンコツをからかいつつ話してたらいつの間にやら、という風に」 宮永さんはその頃、麻雀では 京太郎「あ、中学の時には麻雀やってなかったですあいつ」 やっていない? 京太郎「ええ。どうやら小学生の頃までに家族麻雀でやってたぐらいで、中学の時にはそういう話全くしてなかったです。俺もその頃はハンド部で、麻雀とか全然でしたし」 それで、団体戦の大将を任されている? 京太郎「びっくら、ですよねー。俺もまさかカモだと思って麻雀部に連れてきたポンコツが、麻雀では魔王に変身するとは」 魔王ですか。 京太郎「俺が勝手に呼んでるだけですけどね。あいつ麻雀やってる時、時たまスゲー形相というか、黒いプレッシャーぽいのが出るんすよ。部長とかは俺が気付いてるより多めにそういうの感じてるみたいです。それがもう魔王! って感じで」 萎縮してしまう? 京太郎「んー。そうなった時には「うわ怖っ」ってなるんですけど、「でもこいつポンコツだしなぁ」って考えると冷めた目になりますね」 麻雀をしている時と、していない時のギャップをどう思う? 京太郎「ギャップと言われても、みんなそういうもんじゃないですか? 咲のは極端な方だと思いますけど、俺だって家族と接する時と友達と接する時で違いはありますし。なんならもっと変わる人もいますしね」 現在の宮永さんを見てどう思いますか? 京太郎「俺以外にも友達出来てるし、前より明るくなったし、熱中するものが出来たしで、良い変化だと思います」 では、最後に何か一言。 京太郎「清澄はレディースランチが美味いですよ」 咲「ちょっと京ちゃん! これどういうこと!?」 京太郎「ん? ああ、この記事この前のインタビューの」 咲「私の中学時代の黒歴史が暴露されてるし、「ポンコツ魔王」とか呼ばれてるんだけど!? これ京ちゃんの仕業でしょ!? なんでこんなことするの!?」 京太郎「だってお前がポンコツなのは今でも変わりないし、魔王っぽいのは事実だし」 咲「ひどい!」 京太郎「ひどくない!」 久「和のでっかい写真のページに、事細かに書いてあるわねー。大将、宮永咲の素顔って」 和「何故か須賀君の顔写真付きですね。目線に黒線が入ってますけど」 優希「京太郎、お前ついに……」 京太郎「ついにってなんだよ! 容疑者の供述とかじゃねーんだよ!」 咲「話終わってないよ! どうしてくれるの!? 私全国の場でこれ読んだ人に「あ、ポンコツの人だ」とか「魔王の人だ」って思われるんだよ!?」 京太郎「逆に聞くけどお前、麻雀してない時でポンコツじゃない時あるか?」 咲「あるよ! なんかこう……京ちゃんより国語の成績良いとか!」 久「語る所がそれの時点でもうポンコツよね」 優希「しかも理数系はのどちゃんの半分以下だじぇ」 和「体育だと何もないところでずっこける運動音痴ですし」 京太郎「な? 咲。お前は誰もが認めるポンコツなんだよ」 咲「むきー!」 久「けど須賀君。今回はいいけど、メディアの場であんまりうちの情報ベラベラと喋らないようにね。ただでさえノーマークだった清澄が県大会優勝して注目を浴びてるんだし」 京太郎「大丈夫ですって。俺相手にそう何回も取材なんて来ないですし」 ガチャ まこ「おーい京太郎ー。前回のインタビューが好評だったから、おんしにまた取材したいと記者の人が来とるんじゃが」 京太郎「あるぇ?」 カン 次話
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前話 次話 京太郎インタビューその4 全国大会へとやってきた清澄高校。そしてSK君。 今回から全国大会中の様子を高スパンでお送りする予定の為、インタビューの様子を動画で配信する事となった。 それに合わせて、以前より問い合わせの多かったSK君の素顔の公表についても交渉し、これを受諾。 彼の身内と取材陣しか知らなかったSK君の端正な顔立ちが、今明かされる。 まずは動画配信、並びに素顔の公表を受け入れてくださって、ありがとうございます。 京太郎「はい。といっても、そんなに需要があるとは思えませんけどね。このインタビューって、基本的にうちとかの女子選手達の裏側が知りたい人が見るものでしょうし」 ……需要しかないから問い合わせが殺到したのですが……まぁいいでしょう。 京太郎「それで、今回はどんな話をしましょうか」 それではまず気になった事なのですけど……気を悪くしないでくださいね? 京太郎「はい?」 良く来られましたね? 京太郎「? と言いますと?」 いえ、基本的に大会での遠征となると、選手や監督、コーチくらいのもので、それ以外の応援する部員となると、それこそ大手の学校になるのですよね。 京太郎「あ、あーそういう話ですか」 S君一人分にしても遠征費は馬鹿になりませんし、男子となるとまた別で部屋を押さえる必要があるので、それだけのお金を学校から出してもらえたということに……まさか自費ではありませんよね? 京太郎「それは無いですけど……うーんと。聞くところによると、どうやら学校としては元々俺も付いていかせるつもりは無かったそうです。理由はさっき言ってた通りで」 では、何故? 京太郎「俺ももっともな理由だと思ったんですが、部長がそれについて先生方に抗議したらしくて」 部長さんが、ですか? 京太郎「はい。なんでも「何言ってるんですか! S君がいなかったら咲は広い東京で迷子のまま帰って来なくなりますし、優希はエネルギー切れで行き倒れますし、和なんか道行くわるーいお兄さんに連れ去られて行方不明になるでしょーが!!」とか」 後輩達に対する信頼がまるでありませんね……。 京太郎「心配なんだと思いますよ。かくいう俺も同じ所で心配ですから。そんな訳で、応援兼ボディガード兼マネージャーという形で一緒に東京来る事になりました」 成程。 京太郎「咲は東京に着くまでの駅でも何度か迷子になりますし、優希は遠征に思ったより時間が掛かったせいでエネルギー切れて自分で歩かなくなりますし、和は俺と一緒にいる時にも遠目でジロジロ見られてたみたいで、付いてきて正解だったな……とは思いましたね……」 それはまた、予想を裏切らない方達ですね……。 東京に来た事はありますか? 京太郎「無いですねー。今の時代、電車やら新幹線やら飛行機やらでどこでも行けますけど、特別用が無いとそれだけの時間と金を掛けて出掛ける事無いですし」 長野から出た事も無い? 京太郎「いえ、家族旅行とか修学旅行とかではありますけど……、東京方面に行った事は無いかな」 どうですか? 東京に来てみて。 京太郎「圧巻、ですよね。色んな建物が所狭しと立ち並んでますし、何より人が多いのなんの」 初日にして東京の洗礼を浴びましたか。 京太郎「そうなりますかね。で、初日の昨日は遠征ってのもあってみんなは旅館で休んでました」 みんなは? 京太郎「俺も疲れてましたけど、みんな程じゃなかったし、ちょっと休んだらじっと落ち着けなくなって、周りの地理を把握する意味でもと思って散歩したんですよ」 迷子にはなりませんでしたか? 京太郎「旅館の名前やらはメモってたので、地図アプリを開けば場所は分かりましたから、特に問題ということは無かったですね。咲とは違うのだよ! 咲とは!」 それ以上は宮永さんに怒られそうですが。 京太郎「あいつ麻雀絡ませない限りは怒っても大して怖くないですしねー。で、テキトーにその辺をほっつき歩いてたら、「あ! え、S君だ!」って突然声掛けられまして」 目線を入れない素顔の公開は今回が初なのに、掛けられたんですか。 京太郎「ええ。誰だ? と思って見てみたら穏乃……阿知賀女子の高鴨穏乃でして」 阿知賀女子のというと、奈良県代表高校の? 京太郎「ええ。そういや雑誌でそんな高校もあったな、と」 穏乃……というと。 京太郎「あー。まぁ話してる内に思いの外仲良くなった、というか。その時は向こうも礼儀正しくして、「あ、あの! 私麻雀部で、奈良県から出場してる高鴨穏乃って言うんですけど! 長野で清澄高校のS君ですよね!?」って聞かれまして」 前から思ってましたが、物真似上手いですよね。 京太郎「そうですか? それで、そうだけどって返したら、どうやら和の昔の友達らしくて」 ほほう。意外な所に接点が。 京太郎「他にも和の友達がいて、今の和について聞きたいからっつって阿知賀の人達が泊まってる部屋に案内されまして」 ホイホイと連れ込まれてませんかそれ。 京太郎「まー普通なら警戒するとこでしょうけど、毒気が抜かれるというか危機感を持つだけアホらしいというか、これで騙されてたら俺の見る目を一生信用出来ないってくらい無邪気だったんで。大人しく連れていかれました」 それで、連れ込まれてからどうなりましたか? 京太郎「一応俺を連れてくるっていう連絡は事前に入れてたみたいで。部屋に入った時に紙袋を被った人に「ふっふっふ、良く来たのですSK君!」って出迎えられました」 紙袋。 京太郎「頭を覆い隠してた紙袋の穴から長い黒髪が伸びてましたし、他の特徴と阿知賀女子の人ってのと照らし合わせて正体は松実玄さんってのはすぐ分かったんで、指摘したら「はうっ!? な、なんで分かったの!?」って言った後にハッとして「ち、違うよ!? 私は謎の覆面女子高生MK! 奈良県代表阿知賀女子麻雀部先鋒で、旅館を経営してる松実家の次女で、ドラ保有率100%故に阿知賀のドラゴンロードと呼ばれている松実玄ちゃんではないのです!」なんて取り繕い始めまして。隣にいた鷺森さんに「玄。余計な事までバラしてる」ってツッコまれてました」 なんでそんな奇天烈な行動を……。 京太郎「さぁ……? ともかく正体バレバレなのが分かると松実玄さんは紙袋脱いで、阿知賀女子の四人の人と自己紹介しました」 四人、ですか? 五人ではなく? 京太郎「一人は男性慣れしてないとの事で布団に包まってました」 布団に包まって。 京太郎「……まぁ男慣れしてる人ってのは一人もいませんでしたが、特にって感じで。あと監督もいたそうなんですが、その時は席を外してましたね」 それで、その四人と原村さんについて? 京太郎「いえ、和の友達は五人の内三人で、内一人は包まってたので、穏乃と玄さんの二人と、ですね」 玄さん? 京太郎「あー。姉妹で一緒にいたんで、松実さんだと混ざるからって名前呼びするように、と」 阿知賀女子の方と仲良くなるスピードが尋常じゃないですね。 京太郎「俺も結構なものだと自負してますが、向こうも向こうでコミュ強でしたからねぇ……」 彼女等の部屋にいる間はその二人とずっと原村さんについて語ってたのでしょうか? 京太郎「それがそうでもなくて……しばらく話してる内に、話の流れで玄さんが「ええ!? S君、おもちに触った事無いの!?」とか言い出しまして」 おもち? 京太郎「直訳すると女の子の胸の事です」 何故そんな話の流れに……。 京太郎「なんだったかなぁ……。和は今あれだけ大きいけど、小学生の頃から凄かったんだよーって玄さんが語り始めたからだったような」 それで、それから松実玄さんが胸…………おもちについて語っていたんですか。 京太郎「いや、そこからは話すぐ終わったんですよね。……いや終わらせられたというか……」 というと? 京太郎「俺が触った事ないです、と返したら玄さんが「それは勿体無い! 大丈夫なのです! おもちは友達! 怖くないよ! ほら!」とか言って、俺の手を掴んで自分の胸を鷲掴ませまして……」 え。 京太郎「俺が呆気に取られて何秒かぐいぐいさせられたら、玄さんも自分のやってる事に気が付いたんでしょうね。一気に顔が真っ赤になって弁解らしき言葉を口にしようと」 かなりおばか…………勢いで生きてる方なんですね。 京太郎「あまり包めてませんよオブラート」 ちなみに鷲掴んだ感触は如何でしたか? 京太郎「………………………………ノーコメントで」 京太郎「で、なにか言葉になる前に新子さん……包まってた人ですね。が、「くーーーろーーー……?」って、笑顔で怒ってる感じで玄さんの後ろに立ってまして」 いつの間に出て来てたんですか。 京太郎「俺達が話してる内に顔だけはちょこっと布団から出してたのは見えてましたね。で、それ見て怯えた玄さんを「逆セクハラ娘は出ていきなさい!」つって部屋から蹴り出してました」 先輩に容赦がありませんね、新子さん。 京太郎「幼馴染みだと年の垣根ってあって無いものかもですね……。それで、閉め出された玄さんが部屋の外で「お、お゛ね゛え゛ぢゃああああん!!」って泣き叫びながら、何故か部屋から遠ざかっていって、その後で宥さん……姉の方の松実さんが「く、くろちゃー……」つって追いかけてって、まず松実さん二人が部屋から消えまして」 まず? 京太郎「その後、新子さんに助け舟出してくれた事にお礼を言ったら、聞いたことの無い悲鳴? を上げられまして」 悲鳴? ……具体的にはどのような? 京太郎「確か「ふきゅ!」だったかな?」 また新しい悲鳴ですね……。 京太郎「そんでまくし立てるように穏乃にあれこれ言った後、新子さんも部屋から出て行っちゃって、俺と穏乃と鷺森さんの三人が取り残されました」 それで、その場はもう解散となった? 京太郎「俺はそうかなと思ったんですが、穏乃的にはそうでなかったらしく、ちょっと言い辛そうな感じでもじもじしてたんですよ」 おや、面白そうな反応が……。 京太郎「俺がどうした? って聞いたら穏乃は意を決した感じで「あ、あのね!」つって」 これは、まさか……!? 京太郎「「S君ってドラゴン○ール読んでる!?」って」 ズコーッ! 京太郎「うわっびっくりした! なんですか急に顔面スライディングして!」 い、いえ……思ってた反応と違ってたもので……。 767名無しさん@お腹いっぱい。2021/07/01(木) 17 45 44.38ID PTFFyHFK0 京太郎「まぁ俺も唐突! とは思いましたけどね。どうやら穏乃ってドラゴ○ボールの大ファンなんですけど、周りにそういうの語れる人がいなかったらしくて。男で同年代で和の友達の俺ならもしかしたら、って思ったらしいです」 同年代の男の子ならともかく、原村さんの友達は関係あるんでしょうか……。 京太郎「ある程度信用出来る男って意味なら、あるかもですね」 それで、S君は読んでるんですか? ドラ○ンボール。 京太郎「そりゃあもう。漫画は読破してますし、アニメもDVDが全部家にありますし、ゲームも全部とはいきませんが古いのから新しいのまで揃ってます」 かなりのファン度ですね。 京太郎「穏乃はゲームこそ無いものの、数あるド○ゴンボール映画をコンプリートしてましたよ」 そうなると、とても話が合ったんじゃないですか? 京太郎「そうですね。俺は男友達にもファンはいますけど、穏乃はそうじゃなかったんで、今までに語れなかった分を語り尽くそうって勢いで話してました」 その流れで下の名前呼びになったんですか? 京太郎「ええ。そろそろ帰らないとって時間になって、語り足りないし連絡先交換しようっつって、その時に」 東京初日で女の子の連絡先ゲットしたんですね? 京太郎「言い方!」 では、最後になにか一言。 京太郎「東京でオススメの、テイクアウト出来るタコスが売っている店を知っている方がいらっしゃれば、どうかコメントの方お願いします」 晴絵「…………私がいない間に何やってんだあんたら」 穏乃「いやーごめんなさい! 初めての東京でテンション上がって、その辺をダッシュしてたら京太郎君ぽい人見掛けちゃって! 確認したら本物だったからそのまま連れ込んじゃいまして!」 晴絵「いやそれもだけどさぁ……見ず知らずの男を部屋に招くとかさぁ……」 穏乃「? 和の友達だし、見ず知らずじゃないですよ?」 晴絵「そーなんだけどさぁ……」 灼「ハルちゃん。穏乃には何言っても無駄……」 憧「しずもしずだけど、玄も玄よ。なんであんなに恥を晒したわけ?」 玄「言い方酷くない!?」 灼「須賀君が部屋にいる間、ほぼずっと布団に包まってた憧も大概だと思……」 憧「そ、それは仕方ないでしょーよ! 部屋でだらだら過ごしてたらいきなりしずから連絡来て「S君見つけた! 今そっちに一緒に向かってるー!」とか言うのよ!? 心の準備ってものがあるでしょ!?」 穏乃「でも憧、雑誌で京太郎君の写真とかコメントとか読んで、「ふーん。まぁ、悪い奴じゃないかもね」とか言ってたし、男の子苦手な憧でも大丈夫かなって思ったんだけど」 憧「……違うのよ……悪い奴どころか、本物見たら超タイプだったのが問題なのよ…………」 穏乃「へ?」 憧「と、とにかく! どーすんのよ玄。あの時の事が知られて、アンタこれから「初対面の男に胸触らせた痴女」って事になるんだけど?」 晴絵(動画のコメントだと「勢いで胸触らせちゃうおばか女子高生」って感じだけどな……) 玄「痴女!? ち、違うよぉ。私本当にそんなつもりなくて……」 憧「和だってそんなつもり無いけど、ネットじゃ「長野が生んだエロの化身」とか呼ばれてるわよ。そこ行くと玄は「奈良が生んだエロの化身」になるわね」 玄「うぇぇん! そんな渾名つけられたらもうお嫁に行けないぃぃぃ!!」 灼「そしてそんな化身と一緒に出場する私達……」 憧「言うな……言わないで…………」 玄「おねえちゃぁぁぁん!!」ビエー 宥「だ、大丈夫だよ玄ちゃん。その時は、ほら。責任を取ってもらう? って事で……」 晴絵「逆セクハラした立場でそれは難しくない……?」 穏乃(今度は和や清澄の人達とも一緒に話せたらいいなー) ちなみに、公表されたSKの素顔に注目が集まったので、阿知賀女子麻雀部の事柄はそれ程話題に挙げられなかったという。 カン 前話 次話
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前話 次話 京太郎インタビューその8 全国大会Bブロック準決勝を間近に控えた清澄高校。 二回戦で激戦を繰り広げた姫松高校だけでなく、シード校の臨海高校、瑞原はやりプロが注目する有珠山高校など、準決勝も波乱となるであろう。 SK君は次の試合、どうなると思いますか? 京太郎「清澄が絶対に勝つ! ……って言いたい所ですけど、正直分からないですね」 拮抗しててどう転ぶか分からないと? 京太郎「というか、次元が高過ぎて俺にはさっぱりって感じですね」 次元、ですか。 京太郎「部長とかは誰々にはこの牌が集まりやすいとか、この役で上がることが多いとか、こういう能力を持ってるとか当たり前に言うんですけど。和はそんなオカルトあり得ませんって言いますし、俺も懇切丁寧に説明されてもなんのこっちゃというか」 確かに超能力としか思えない打ち方をする選手は多く見受けられますからね。 京太郎「俺レベルだとテンパイ出来るだけで良く出来た方ですしね。ダブルリーチとか出した事もないっす」 宮永選手は良く嶺上開花で上がっていると思いますが? 京太郎「ええ。だからあいつもなんのこっちゃ枠ですね」 そう言えば、東京で知り合った選手達とは今でも連絡を取っているんですか? 京太郎「そうですね。頻度は個人差あるんですけど、大体全員と」 S君一人でそれ全部に応対するのは大変じゃありませんか? 京太郎「んー。まぁちょっと多いかもしれませんけど、元々空いた時間はダチと電話やらなんやらで駄弁って時間潰すタイプなんで、苦ではないですね」 リア充ですね。 京太郎「はは。これで彼女でもいたら完璧ですけどね」 いないんですか? 京太郎「出来たこともありません」 みなさん朗報です。S君は現在彼女募集中のようです。 京太郎「そういうのやめてくれませんかね!? 割と切実に!」 連絡頻度が一番高いのは誰ですか? 京太郎「やっぱ淡ですかねー。あいつ遠慮が無いですし、スマホ慣れしてるからかコメントが早い早い」 やはりドラゴ○ボールの話題ですか? 京太郎「電話では大体そうなんですけど、LINEだと他のしょーもない話が割合多めですね。お菓子送れーとか、構えー遊べーとか」 出来立ての彼女みたいですね。 京太郎「そんな甘い感じじゃ全く無いんですけどね。ナチュラルに人を傷付ける言葉も飛んてきますし」 連絡先を知った人とは直接会っていますか? 京太郎「いえ、この前誘われた一回だけです」 誘われた? 京太郎「あー……。昨日ですけど、宮守のみなさんがお礼も兼ねてということで、海に誘ってくれたんですよ」 海に、ですか。 京太郎「はい。なんでも、団体戦が終わってから個人戦までは東京で観光するという事になったらしくて。昨日は永水の人達と一緒に海にってなって、そこに俺もと」 永水というと、あの選手全員が巫女服を着ていて、シード校で清澄とも二回戦で戦った。 京太郎「その永水です」 いつの間にか宮守の方々と繋がりが出来ていたんですね。 京太郎「俺も経緯は知りませんが、何かきっかけがあったんでしょう」 男性も来る事に何か言われませんでしたか? 京太郎「いえ、事前に話は通してたみたいで、俺が誘われた時にはもうOK貰ってたみたいです」 とすると、宮守と永水の選手達と海に……。 京太郎「ええ、はい。流石に水着は無かったんで、自腹で買って行きました」 みなさんお美しいですから、水着姿は眩しかったのではないですか? 京太郎「そうですねー。目の保養になったのはいいんですが、それを見てナンパしようとするチャラい男もいましたから、追い払う為に何回も呼び出されましたよ」 もしかして彼氏のフリをして追い払ったんですか? 京太郎「あー……。そうですね。基本的にはそれで男連れと知って諦めてくれるんで。石戸さんなんかは傍に薄墨さんがいたからか「夫です」とか言ってて」 確かに身長差とか雰囲気諸々で親子に見えなくもないですね、あのお二方。 京太郎「薄墨さんはそらーまぁキレてましたね。ムキになって俺に「私の彼氏として振る舞いやがれですよー」って命令されてまして。何故か俺がしばらくそれっぽくすることに」 何回も「彼氏です」と呼び出されたということは、何人もの美少女を侍らせてる男の子と認識されていたのでは? 京太郎「周りから俺への視線が段々とキツくなってたので、多分そうかなって……」 基本的には諦めてもらえたとのことですが、諦めが悪い人もいたんてすか? 京太郎「ええ。ちょっと人数多くて、物陰に連れ込んで俺ぶちのめせば連れてけるんじゃね? って考えたのであろう乱暴者もいました」 大丈夫だったんですか? 京太郎「ええ。ハギヨシさんから護身術を学んでたお陰で」 護身術? 京太郎「カポエイラです」 カポエイラ。 京太郎「東京にボディガードも務めて行くなら、格闘技の一つでも身に着けた方がいいって言われまして。何がいいかと聞かれたら、じゃあカポエイラがいいと言ったんですよ」 何故カポエイラを? 京太郎「最近読んだマンガでバトゥ○キってのがあって、カッコイイなー強いなーと思って。まぁ影響受けてコッソリ動き真似してたんです」 中々マイナーな格闘技だと思いますが、教えてもらえたんですか? 京太郎「はい。ハギヨシさんって護身術として格闘技は大体修めてるとか」 護身術の域を超えていませんかそれ。 京太郎「しかもカポエイラ一つですらメストレ……道場で言う師範くらいのレベルは絶対にありましたからね……」 京太郎「まぁそんなこんなで、みんなが見てない所で応戦したんですけど、そんな人の教えもあって怪我なく撃退出来ました」 撃退ですか。 京太郎「と言っても向こうにも怪我はさせませんでしたし、ちょっとビビらせて帰らせただけなんで。喧嘩問題起こしたとか思わないでくださいね?」 分かりました。記事にする時は擁護の内容で書いておきます。 京太郎「喧嘩が起きた前提じゃないですかそれ」 そんなトラブルもあったそうですが、楽しく過ごせましたか? 京太郎「ええ。みなさん楽しくて良い人達でしたし、海でやるイベントは大体こなしてたので。スイカ割りとか、砂の城とか」 ラッキースケベとか。 京太郎「だからそういう方向に突っ走ろうとするの止めてくださいて」 起きたんですか? 京太郎「……ノーコメントで」 彼女達のナンパはS君が追い払っていたそうですが、S君は逆ナンとかされていませんでしたか? 京太郎「えー……? あったといえばあったような、無かったといえば無かったような……」 グレーな出来事があったんですか? 京太郎「えーと。年上の女性二人に「写真撮ってください」って声掛けられまして、海を背景に二人の写真を撮ったんですよ」 ナンパの常套手段の一つじゃないですか。 京太郎「やっぱそうなんですかね? それで、記念にとかで俺とも写真を撮ろうと言ってたんですが、撮る前に滝見がやってきて「……私の彼氏にちょっかいかけないでください」と言って引っ張られまして」 ヤキモチですか? ヤキモチですね? 京太郎「いえ。俺が翻弄されてたから助け舟出してくれたんだと思いますよ」 ……そうですか。 巫女さん特有の神秘的体験とかありましたか? 京太郎「わざわざ聞くようなことですか? ……まぁあったといえばありましたが」 ほほう。何があったんでしょうか? 京太郎「神代さんって仲間内では姫様って呼ばれてて、なんか神様を降ろすことが出来るとかなんとか言うらしくて」 神様を降ろす? 京太郎「なんか神様に憑依される感じらしいです」 神秘的ではありますが、それは中々……。 京太郎「まぁ俺も眉唾物だと思ってたんですけどね。その神代さんは普段健気で天真爛漫って感じの人なんですけど、ある時急に人が変わったみたいに顔つきが変わっちゃいまして、あまり喋らなくなったんですよ」 変わった、と言いますが、神様憑依とか言われましても……。 京太郎「それだけならそうなんですが、その状態の神代さんと力比べした時に、ちょっと元の神代さんだと考えられないぐらいの力で押し負けてたんですよ」 力比べって、何をしたんですか? 京太郎「あー……まぁ、腕相撲的な? 俺も突然の事態でよくわからんかったので」 はぁ……。 京太郎「それで、その神代さんは駆けつけてきた他の永水の人達に連れて行かれた後、しばらくして戻ってきた時にはケロッと元に戻ってて。さっきまでにあった事は全く覚えてない様子だったんですよ」 なにそれこわい。 京太郎「あれで演技とかドッキリとかだったら大したもんですけど、それだと普段の腹芸とか全く出来なさそうな雰囲気も演技って事になるので。それだったらまだ神様憑依とかの方が信憑性あるかなって感じで」 神様憑依の方が信じられるとか相当ですよ。 京太郎「まぁそれだけ不思議な体験だったってことで。宮守のみなさんとも楽しく遊んでたんですが、その日の出来事としては永水の人達がインパクト強めだったかな、と」 成程。ちなみに連絡先交換はしたんですか? 京太郎「ええ。宮守の人達は臼沢さんだけと交換してたんですが、その時には永水のみなさんも含め全員と」 関わり合った人とは今の所みんな連絡先ゲットしてますね。 京太郎「まぁ普段住んでる所が違うから、一期一会の気持ちでってのもあるんでしょう」 そうでしょうかね……。 京太郎「俺もそんな気持ちですから、そうじゃないですかね」 では、最後に何か一言。 京太郎「この季節の海はあっという間に焼けるので、焼けたくない人は日焼け止めを持っていきましょう」 前話 次話
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前話 次話 京太郎インタビューその5 全国大会の開会式を終えた、各県代表の女子麻雀部、その精鋭達。 彼女等の青春を賭けた戦いが、始まろうとしていた。 これは、その裏で陰ながら彼女達を支える一人へのインタビューである。 京太郎「なんですかその漫画の紹介文みたいなの」 テコ入れは必要かと思いまして。 京太郎「はぁ……」 今回もよろしくお願いします。SK君。 京太郎「よろしくお願いしまーす」 本日は全国大会の開会式でしたが、どうでしたか? 京太郎「モニター越しですけど、錚々たる陣営って感じでしたね。雑誌や動画にも出てる人達が一堂に会してるって、なんか現実感が無いですよ」 SK君も雑誌や動画に出られてますが? 京太郎「あはは。俺なんか話の内容ばっかで写真は隅っこで小さくですし、動画だってほんの少しの一部の人にウケてるだけでしょう?」 ……ちなみに動画をご覧になった事は? 京太郎「まぁ、アップが始まってすぐにちょっとだけ。やっぱ自分の動画の全部を繰り返し見るとか精神的にキツイですしね」 ……成程。 開会式では、S君はどうしていました? 京太郎「例に漏れず、咲の奴が迷子になってたので迎えに行きました」 やはりですか。 京太郎「探してる時に穏乃から「京太郎君とこの宮永さん見た! すごいプレッシャーだったね!」ってLINE来て、大体どの辺で見たか教えてもらって、見つけたのはボイラー室ですよ」 何故そんな所に迷い込むんでしょうね……。 京太郎「あいつほんとは迷子になってるんじゃなくて、魔王オーラ撒き散らしに行ってるんじゃないですかね……」 魔王オーラ。 京太郎「って本人に言ったら「そんなわけないでしょ!」ですって。「じゃあただポンコツなだけか」つったらムキーしだしたんで、あいつ自身ポンコツなのは認めてきてるんでしょう」 それはただ怒ってるだけでは……? 京太郎「そういえば、開会式中でなんですけど」 はい。 京太郎「咲を送り届けた後、会場で調理出来る場所に行ったんですよ」 そんな所があるんですか? 京太郎「はい。もちろん無断では使えないんですけど、俺が会場内で調理出来るよう部長が許可をもらってきてくれて」 部長さんにも心境の変化が訪れたんですか。 京太郎「? さぁ。でもこの前「S君に雑用任せちゃうのは避けられないけど、せめてちゃんとした場を用意してあげないと」ってブツブツしてたのは聞こえちゃいましたね。部長もちゃんと俺の事気に掛けてくれてんだなーって思いましたよ」 成程……。それで、そこで何かあったんですか? 京太郎「えーと、そこでちゃんと調理出来るか確かめる為に、一度使ってみようとお菓子を作ってたんですよね」 作れるんですか? 京太郎「ええ。やっぱ女子の差し入れは甘い物が評判良いとの事で、一通りは。で、作ってたら突如部屋の扉がバーンと開かれて「なんか美味しそうな匂いがした!」と言って誰かが現れまして」 誰か、というと、誰だったんですか? 京太郎「それがなんと、開会式中の筈の淡……白糸台の大将の大星淡だったんですよ」 淡? 京太郎「あー。まぁまた話してる内に、ですね」 S君は他人と距離を詰めるのが上手いですね。 京太郎「どうでしょう。今回は向こうがぐいぐい詰めてきた感じだし」 それで、何故選手の一人が? 京太郎「あいつが言うところによると「他のとこのくじ引きなんてつまんなーい。うちはシードだし、どこと当たろうとうちらに勝てるのなんていやしないしー♪」つって、抜け出してきたそうで」 王者だけあって、自信に満ち溢れてますね。 京太郎「というか、あいつは普通に自信家なんだと思いますね。悪意は無いと思いますよ。多分ね」 それで、その大星さんが調理室にやってきたと。 京太郎「はい。んで、俺を見つけるなりあんにゃろう「あ! 長野のパシリのS!」とか抜かしやがりまして」 本当に悪意は無いんですよね……? 京太郎「誰がパシリだって返したら「えー。でもパソコン山に運ばせるとかありえなくない? パシリじゃないなら……先輩が鬼?」とか言うので、じゃあパシリでいいよと」 ああ、天然で人を傷付けるタイプですね。 京太郎「初対面がそんな感じだったんで、他校の選手といえどあんま礼儀正しくするのもアホらしくなってきたから、放っといてお菓子作りに集中しようとしたら、近付いてきて「ねーねー、何作ってるのー?」と」 お母さんの料理中に尋ねてくる子供ですか。 京太郎「印象はその通りでしたね。で、作ってるお菓子を答えたら「マジ!? 作れんの!?」って目ぇキラッキラさせてるんですよね」 尊敬の眼差しを向けられたんですね。 京太郎「いえ、あの目は「作れるんならこの可愛い淡ちゃんにも寄越せ!」っていうタカリの目でしたね」 キラキラした瞳で何を訴えてるんですか。 京太郎「あんまり嫌味を感じないのが不思議でしたねー……。とはいえ、部費で買った食材だったのもあり、そのままくれてやるのも癪だったので、欲しけりゃ食材買ってこいやって言ったんですよ」 乱暴な言い方ですけど、まぁ当たり前ですね。 京太郎「ところが予想に反して「わかった! 何買ってくればいい!?」と」 何故そこだけ素直なんですか。 京太郎「いや、多分あいついつも素直ですよ。自分の感情に」 京太郎「それで必要な食材と量を言ったら、スマホにキッチリメモってダッシュで買いに行きまして、近くに買える所があったので割とすぐ戻ってきました」 パシリ根性全開じゃないですか。 京太郎「どっちかと言うとお菓子買ってきていいとお小遣い渡されて駄菓子屋に向かう小学生のノリでしたね。まぁそこまでさせといて断る訳にもいかんので、追加でお菓子を作ってやったんですよ」 好評でしたか? 京太郎「そうですね。持ち帰る分とはまた別にその場で食べる分も作って食べたら、若干オーバー気味に美味い美味いってリアクションしてましたから」 それが切っ掛けで仲良くなったと。 京太郎「あー、いえ。それもですけどそれじゃなくて、ですね」 ? 京太郎「食べてる時に向こうが「ねーアンタさ、ドラゴ○ボール語れるってホント?」と」 大星さんもですか。 京太郎「まぁ世界的な漫画ですしね。ファン度が俺や穏乃と同じくらいだった淡なんで、同士と分かればそこから仲良くなるのに時間はいりませんでしたよ」 意外といえば意外な所で共通点が出来るものですね。高鴨さんと大星さんも相性が良いのかもしれません。 京太郎「うーん……。どうでしょうね」 ? 何か引っ掛かるものでも? 京太郎「いえ、同じ作品が大好きなのはそうなんですけど、その中でも違いってのはやっぱりありますから」 というと? 京太郎「ドラゴン○ールはですね、主人公とライバルが合体する時があるんですけど、その合体にもバージョンが2つあるんですよ」 合体元が同じならどちらも同じでは? 京太郎「それもそうなんですけど、やっぱり違うっていう意見もあります。俺もそうですし。で、この合体でどっちが好きかと言えば、穏乃は断然ベジ○トで、淡は絶対ゴ○ータって言ってるんですよ」 はぁ…………。 京太郎「というのもあくまで一例で、作品内でどういうカテゴリなら何が好きかってので、この二人ほぼほぼ噛み合ってないんですよ」 同じ作品が好きでも、そこで喧嘩は起こる可能性は有り得ると。 京太郎「まぁどっちとも俺と解釈違いなとこはありましたけど、それで楽しく語り合えたので、大丈夫だと思いますけどね」 S君から見て、大星さんはどういう方でしたか? 京太郎「まーアホで口悪いからあんまり理解されないかもしれませんが、話してみれば天然で純粋な奴なのは分かりますよ」 すっかり悪友みたいな口振りですね。 京太郎「それと、注目して見るとあいつ意外と女子力高いんですよ」 というと? 京太郎「家庭的とはまた違うんですけど、爪先が綺麗だったり髪の手入れが行き届いてたり。あと振る舞いですね。他の女子だったら意識してやってる事を無意識にやってる感じで」 S君が見てきた他の女子よりも、女子力が高いと? 京太郎「いや、女子力単体でなら和……はちゃっとズレてる所ありますけど、福路さんとかの方が高いと見てるんですがね。淡はギャップってのも相まって結構目につくんですよ」 ギャップですか。 京太郎「あとLINEのコメントやスタンプの使い方がいちいち可愛くて、逆に腹立つんですよね」 どういう感情なんですかそれ。 白糸台といえば……踏み込んだ質問になるんですけど。 京太郎「はい?」 女子高校生麻雀の王者、宮永照さんと、そちらの清澄におられる宮永咲さん。同じ苗字ですが、もしかして親戚なのでしょうか? 京太郎「ああー……。一応姉妹みたいですよ」 姉妹。 京太郎「と言っても、諸々込み入った事情があるみたいで、踏み込んだ事は出てこないですけどね」 宮永照さんの方とは面識があるのでしょうか? 京太郎「いえ。俺と咲が会ったのって中学だってのは言ったと思いますけど、その頃にはもう別居しちゃってたみたいで」 出会った頃の宮永咲さんが他人と関わりたくなさそうにしていたのも、そこに関係していると? 京太郎「さぁ? ただあいつ、昔から家族の事については父親の事しか話そうとしないんですよね。それでもあいつポンコツだから、話の節々から母親も姉もいるらしい事は伺えたんですけど」 その姉が宮永照さんだと知ったのは、いつ頃ですか? 京太郎「高校からですね。しかもあいつ、俺より先に和に話してたんですよ? 今では部活のみんなに知れ渡ってますし、中学からの腐れ縁相手に薄情だと思いません?」 S君だからこそ知られたくなかったのかもしれませんが……。 京太郎「まぁ今ここでこうして話してる俺が言えた義理じゃないけど、咲にしろお姉さんにしろ、家族の事情ですし話したくない理由もあるんだと思うので、あまり聞かない方がいいかと」 ですが、友人の家族関係が不仲に思えるのは気になりませんか? 京太郎「ならないといえば嘘になりますが、地雷踏むのもなと思いますし、咲自身もこの大会を通してお姉さんと向き合おうとしてるんで、余計な茶々は入れない方がいいかなって」 見守ろうと決めていると。 京太郎「ま、あいつが何か助けてほしい事があるなら、出来る限りはしてやろうとは思います」 では、最後になにか一言。 京太郎「俺の持ちキャラはバーダ○クです」 前話 次話
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前話 次話 京太郎インタビューその2 前回のインタビューにて、清澄高校麻雀部の大将・宮永咲さんについてのコメントを頂けたSK君。 女子麻雀選手の関係者で希少な男子生徒ということもあり、今までに無かった需要が増えているとのデータが出ている。 今回は、彼自身についてインタビューを行う。 というわけで、今回もよろしくお願いします。 京太郎「よろしくお願いします……いや、まさか二回目があるとは」 とても面白いお話を聞けたのと、目線を隠しても分かる顔立ちの良さが人気を呼んだみたいで。 京太郎「話、はともかく、顔立ちですか?」 綺麗に整っているかと思います。 京太郎「あ、はは。あんまそっちで褒められた経験ないんで、反応に困るなぁ。でも、ありがとうございます」 それでは早速質問に入りますね。 京太郎「はい。あーでも、清澄の選手事情に関しては口止めされたんで、そこはちょっと……まぁ、聞かれても俺から有力な情報が出るとは思えませんけどね」 分かりました。それではまず、前回のインタビューで高校から麻雀を始めた初心者と言っていましたが、麻雀を始めたきっかけはなんだったのでしょうか? 京太郎「きっかけですか…….。ぶっちゃけちゃうと、麻雀そのものに興味が出て始めた訳じゃないんですよね」 と言いますと? 京太郎「入学式の日に新入生代表つって、麻雀で去年インターミドル王者になったっていう女の子、まぁ和なんですけど。その子が全校生徒の前で挨拶して、「高校でも麻雀を続けたいと思います」って言うんですよ。当時のうちは無名も良いとこだったんで、なんでうちに来たのかは謎でしたけど、部長も美人さんと噂だし、あの子が入るならやってみよーぜって男友達となってですね」 一目惚れした女の子が入った部活に、一緒に入ったということですか? 京太郎「そんな真剣な気持ちじゃないっすよ。青春に飢えた男子高校生が可愛い子とお近付きになりたいってあっさい考えで部活見学しただけです」 中学時代はハンド部だったそうですが、そちらを続ける気は? 京太郎「無かったですね。これでも結構良いとこまで行ったレギュラーだったんですけど、だからこそ情熱を費やしちゃったっていうか。なので、高校では何か違う部活をやろうって思ってまして」 入部希望者は他にもいた? 京太郎「いえ、俺と似たような事考えてた野郎共は結構いましたけど、他全員は部活見学の段階で辞めましたよ」 入部試験でもあったのですか? 京太郎「似たようなものですかねー。部室に入ってとりあえず打ってみようって事になったんですが、和はもちろんのこと、一緒にいたちんまいのに、元からいた部長や先輩が、これがまた強いわ強いわで。ちっとも歯が立たないし、全然上がれないし、そもそも麻雀自体がムズいしでどんどん来なくなって。部活見学期間が終わるまで残ってた男子は俺だけになりました」 何故そんなことに? 京太郎「後から聞いたんですけど。優希のやつが「のどちゃんに集ろうとする悪い虫は駆逐してるじぇ……! 一匹残らず!」って意気込んでたらしくて、未経験者相手に本気でやってたんですよね。こっちは役どころか牌の読み方も良くわからんのに、大人気ないったらありゃしない」 須……S君は悪い虫では無いと思ってもらえたと。 京太郎「そういうことになるんですかね。俺が入部届出した時に、したり顔で「お前中々根性あるな。よし、今日からはこのゆーき様の犬としてこき使ってやるじぇ!」とか言ってましたが」 犬。 京太郎「あいつなりの男友達って意味でしょう。俺もいつもタコス食ってるからタコスって呼んでますし」 他の子が辞めていく中、S君が残ったのは何故でしょうか? 京太郎「まぁ部活見学でひたすら打っていく内にですね。役の名前がオシャレーだとか、思ってたより奥が深いんだなーとかって、そういう所から麻雀の楽しさに目覚めたからってとこですね」 原村和さんの美貌に、他の男子達より惹かれてたのもあるのでは? 京太郎「いや、それは……まぁ……恥ずかしながら」 やはり彼女のスタイルは目を引かれるものですか? 京太郎「ぬぐっ!!」 恥ずかしがる事はありませんよ。うちの会社でも彼女はグラビア向きだともっぱらの噂で 京太郎「その分かってますよ感出すのやめてくれませんか!? そう言う人が本当に分かってくれてた試し無いですからね!? 男子高校生はみんなエロい事しか考えてないとかそういうのを理解するのも大人になるって事だとか言ってしょうがない生き物だって風に扱いますけど! そりゃあエロい事は考えますよ! 男の子ですもの! でもだからってそれしか考えてないとか言って、スタイル良い子が好みって言ったら女の子を身体しか見てないとか言うのはおかしいでしょ!? じゃあ言わせてもらいますけど! うちの麻雀部でも他の女子選手も好みのタイプは麻雀が強い人って大体答えてるけど、麻雀強ければ他はどうでもいいってのと麻雀が強い(ただしイケメンに限る)じゃ全然話変わってくるじゃないですか! ブサメンだろーが運動音痴だろーがクズであろーが麻雀が強ければそれでいいって人も中にはいるかもしれませんが、他にも前提や好みがあるのが普通でしょ!? 諸々考慮するけど麻雀強い人だとポイント高いよって話でしょうよ! だったら男も諸々考慮してスタイル良い子だとポイント高いよって女の子の好みを考えるのはそんなにいけないことですか!?」 落ち着いてください。 京太郎「ふー、ふー……、ふー…………。すいません、ヒートアップしました」 いえ、こちらも偏見を持ったまま深く考えずに発言しました。申し訳ありません。 京太郎「まぁ中には本当に女の子を身体しか見てない奴はいますからね。俺はそんなつもりないですし、男がみんなそうじゃないって分かってもらえれば」 原村さんが好みではあると。 京太郎「そうっすね。さっき言ったスタイルは置いといても、可愛いし、キリッとしてるし、最初見た時の印象はすごい良かったです」 現在の原村さんの印象はどうでしょうか? 京太郎「外見は変わらずなんですけど、中身の方。どういう女の子かってのは、結構見る目変わりましたね」 中身の印象、ですか? 京太郎「最初の頃はこんな完璧超人みたいな子が本当にいるんだなーって漠然と思ってたんですけど、世間知らずだったり結構抜けてる所があったりしてて。悪い意味じゃないんですけど、変な子だなって」 確かに。大会にぬいぐるみを持ち込むなど、目立つ部分はありましたね。 京太郎「一番驚いたのが私服ですね」 オシャレでない? 京太郎「そういうのじゃなくて、生地がやたら薄かったり、布面積がやたら小さかったりで……。それ夜のベッドで女が男を誘う勝負服だろってくらい扇情的だったんですよね」 原村さんにはそういう趣味が? 京太郎「普通に外で着る普段着の振る舞いをしてたので、本人的にはただのオシャレのつもりなんでしょうね……。真面目なんだけど肝心な所でガードガラ空きというか、無自覚無防備というか」 S君からそういう指摘はされたのでしょうか? 京太郎「俺じゃなくて優希の奴が「エロエロだじぇ」って感じで言ったんですけど、「いいじゃないですか。可愛いですし」と。いやそういう問題じゃねぇんだけどってツッコミ入れるのを必死にこらえてました」 S君は今年の大会には出られたのでしょうか? 京太郎「出ましたよ……一回戦で最下位でしたけど」 最下位。 京太郎「一度も上がれず箱割れです」 清澄で指導は受けているのでしょうか? 京太郎「んー。仲間内で人数足りない時とかに入るくらいで、指導とかは無いかな。一緒に打ってる相手にどうこう言われるのはありますが」 男子の育成に力を入れていない、と。 京太郎「うちは顧問やらコーチやらもいないですし、他のメンバーはみんな全国を目指すレギュラーですからね。入れようにも入れられないかなって」 悔しくはないでしょうか? 京太郎「悔しいといえば悔しいですよ。他のみんなはすごい人ばっかで県大会優勝までしてるのに、俺だけはって。 でもそれを指導してもらえなかったからとか、構ってもらえなかったからとか言って他人のせいにするのはカッコ悪いじゃないっすか。 第一、初心者の指導の為にレギュラーの少ない時間を削ってくれなんて言えませんし、言わずともしてくれたとして申し訳ないですよね」 大人ですね。 京太郎「いえ、そう考えるようになったのも割と最近で、それまではもう辞めちゃおうかなって思いもしましたよ」 何かあったのでしょうか? 京太郎「特別何かあった訳じゃないですけど、もう何やってんのか分かんないレベルの人等と一緒にいると、やっぱり劣等感っていうのですかね。俺麻雀向いてないのかなぁとか。俺が麻雀部にいる意味ってあるのかなぁとか。どころか俺がいても邪魔なんじゃないかって、一人で考えてると悪い方悪い方に想像しちゃって」 思い直せたのは何かきっかけが? 京太郎「部活の先輩がね、言ってくれたんですよ。俺も合わせて清澄麻雀部なんだって。実力あるのが集まっただけじゃチームとして成り立たない。清澄がチームになってるのは俺もそこにいるからって」 心に響く言葉ですね。 京太郎「ですよね。俺ちょっと泣きそうになりましたもん」 京太郎「まぁそんなこともあって、俺も実力が無いなりにチームとしてみんなに貢献しようと思ったんです」 成程。具体的にはどのような? 京太郎「一番変わったのはタコ……料理ですね」 タコ料理? 京太郎「あー……はい。他にも色々と、徐々にレパートリー増やしてる所です」 腕に自信の程は? 京太郎「いやいや、身近にお店で出してる人がいるので、自惚れるような腕じゃないのは身に沁みてますよ」 部内の人ですか? 京太郎「これがまた美味いのなんの。一度食べると病み付きです。料理での目標は、あの人くらいの味が出せる事ですね」 では、最後に何か一言。 京太郎「来年の大会でリベンジしてやりますよ。それこそ東○リベンジャーズのようにね!」 和「ちょっとそこに土下座してください」 京太郎「え? あの、和? 普通そういうのは正座とかでは」 和「顔を見てるとひっぱたきたくなります」 京太郎「…………」ドゲザ 和「はぁ……、須賀君。私が一体何に怒ってるかーーー」 咲「和ちゃん、顔真っ赤にして静かに怒ってるね」 優希「褒め殺しにされた上、好意をインタビューの場で赤裸々に語られて恥ずか爆死してるのと、えろえろ私服を暴露されて、ネットでキツめの呼び名がつけられた怒りとで錯綜してるじぇ」 まこ「『男を誘惑する魔性の乳』『淫乱ピンクのどっち』『天然痴女』……お、新たに『長野が生んだエロの化身』が追加されとるの」 久「ねぇ。同じ所で「こんな良い男の子を辞める寸前まで追い込むなんて信じられない!」「清澄麻雀部部長鬼畜説浮上」「鬼! 悪魔! 竹井!」とか書かれてるんだけど」 咲「京ちゃん……辞めようか迷うくらい思い悩んでたなんて……」 優希「染谷先輩の神フォローが無かったら、気付けないままだったじぇ……」 まこ「いや、わしも辞めようか迷ってたとまでは見抜けなんだな……。あの時のわし、ナイスじゃけえ」 久「聞いて」 和「大体なんですか辞めちゃおうかなって思いもしたって! そういう大事な事を何で一人で抱え込むんですか!?」 京太郎「い、いや、思ってただけで未遂だし、抱え込むって程深刻な段階でも無かったから」 和「思ってただけにしても深刻かどうかはあなただけで決めていい問題じゃありません! 私達の気持ちを勝手に決めつけないでください!」 京太郎「何故だか和に言われたくないんだけど」 和「私はいいんです! けど須賀君は駄目です!」 京太郎「理不尽じゃね!?」 和「顔を上げない!」 京太郎「はいぃ!」 一部反感を買ったものの、SKの主張は多くの共感を呼び、二度目のインタビューも好評となった。 あ、カン忘れてた。カン! 前話 次話
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サムネイル画像 タイトル 超時空太閤秀吉の嫡男で戦国サバイバル 作者名 ◆75LBJGs9C6 原作 オリジナル作品、史実 ジャンル 架空戦記、歴史系 主人公 やる夫 期間 2016/05/16~2016/06/04 掲示板 やる夫板のシェルター タグ 安価、あんこ、完結作品、ダイス まとめサイト 様 AAスレ自分用まとめ 様 スレッド一覧 スレッド名 タグ 備考 開始日時 最終レス 【雑談】◆75LBJGs9C6の雑談所兼実験場12【時々安価】 安価、あんこ #5160から「超時空太閤秀吉の嫡男で戦国サバイバル」シリーズ:スタート 2016/05/01 2016/05/22 【雑談】◆75LBJGs9C6の雑談所兼実験場13【時々安価】 安価、あんこ、ダイス 2016/05/21 2016/06/01 【雑談】◆75LBJGs9C6の雑談所兼実験場14【時々安価】 安価、あんこ、ダイス 「超時空太閤秀吉の嫡男で戦国サバイバル」シリーズ:完結 2016/06/01 2016/08/16 同作者の作品一覧 ヒャッハー世界で日本がこの先生きのこるには ポーランド英雄伝説 陸軍としては海軍の提案に反対である 超時空太閤秀吉の嫡男で戦国サバイバル わしヴィライゼーション それなら君が明治元勲 縄文人からやり直してこい