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「……にわか雨の悪竜?」 「そうです。」 ダンスのレッスンの後、わたし達のダンスの師匠である「みのりママ」から、衝撃?の事実が伝えられました。 「にわか雨の悪竜。ここ最近頻発するにわか雨の原因です。危険度は『丁』……まあ現代風に言えば『Eランク』といったところでしょうか。駆け出しの貴女達に相応しい相手と言えるでしょう」 「もちろん油断はできません。負ければずぶ濡れどころでは済みませんよ」 「『儀式』はローカル局の放送が入ります。まず間違いなく大雨の中の『儀式』になるでしょうから観客に期待はできません。よってどこまで『信仰』が集められるかは未知数です」 「本番は1週間後、気合いで乗り切りなさい」 みのりママは、脅すような発破をかけるような感じで話を締められました。 ついに来た! わたし達の初ライブ! 「ここ最近のにわか雨って竜さんのせいだったんですね〜」 「1週間後かあ、ドキドキしてきた!」 「レッスンの成果が試されるってわけだなー!」 「舞踊と歌唱だけでなく『剣武』も大事になりそうだけど」 「「「うえ」」」 『剣武』。実際に刀を振り回して竜と戦う時の話です。みゆき以外は、3人ともちょっと苦手なんです。 京都の「皇座(すめらざ)」にいらっしゃる「巫女」さまなら剣武なしの歌と踊りだけで大悪龍すら鎮められるんですけど……わたし達はそんなに力がないから、どうしても「舞」だけじゃなくて「武」が必要になってくるんです。 ちゃんとこっちのレッスンもやってるんですけど、やっぱり歌とダンスの方が好きですね。 さて、「本番」の日付が決まったので、私たちのレッスンもさらに苛烈に……じゃなかった、実践的になってきました。 腕を、脚を、もっと強く伸ばして! 音楽に合わせたステップはもっと正確に!力強く! ボーカルは全身を使って響くように、届けるように! 剣武は舞の所作を取り入れつつ、相手から目を逸らさずに速く深く切り込む! 普段の勉強もあるし、毎日へとへとになりながら、みんなそれぞれ自分の家に帰るのでした。
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【巫女名】帯刀 いづな(たてわき いづな) 【出身地】日本 【身長】158cm 【体重】48kg 【年齢】17 【3size】78/57/81 【一人称】私 【血液型】A型 【好きな食べ物】栗羊羹 【イメージカラー】蘇芳 【アライメント】中立・悪 【所属組織・グループ】百鬼夜行→イリーガル・パニッシャーズ 【最大シンクロ率】74% 【私服】赤い着物を着流し、地下足袋、首に爆弾 【巫女装束】くたびれた地味な配色の着物の浪人風、編笠、草履 長い黒髪を総髪にした紅い瞳の少女。 物静かだが剣の道を極めようと鍛錬を重ねる愚直な性格。 そして、その胸の内には常に「何かを斬りたい」という衝動に囚われている。 これは降ろした鎌鼬からの影響であり、シンクロ率が上がるに連れて次第に強くなっていく難儀な宿業であった。 或いは使命と夢を放棄して巫女を辞するか。 或いは心の赴くままに剣を振るい人も龍も構わず切り捨てるか。 或いはそのような辻斬り紛いの剣鬼となる前に自ら命を断つか。 否、使命も夢も棄てずに剣を振るい続けたい。 その欲望を叶えるためにいづなは最終的に『イリーガル・パニッシャーズ』の門を叩いて管理される道を選ぶこととなった。 現在は組織が「心置き無く斬ってもいい相手」を指定してくれるので、自由は無いがそれなりに充実した日々を送っている。 【神名】鎌鼬 【権能】辻風一迅・木枯らし斬舞 疾風の如き剣捌きで敵を切り刻む。その太刀筋は速すぎて断面から出血がしない程。刀身からは常に風の鎌が放たれているため鍔迫り合いに強く、刺突すれば傷の内側からズタズタに引き裂く。 剣圧で真空の刃を飛ばせるのである程度の遠距離であってもカバーできる。 【信仰度】妖怪としての知名度は高い。一部地域では悪神に分類されている。
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神無月の巫女 ハアハアスレ投下もの 「もしも」一話で誕生日にオロチの襲撃が無く、二人だけの誕生日が行われていたら… 「もしも」一話で誕生日にオロチの襲撃が無く、二人だけの誕生日が行われていたら… を妄想してみた↓この千歌音ちゃんの言葉だけでもハァハア度の高さが伺えるw (明日は今までの誕生日とは違うの 明日のことを思っただけでこの胸の高鳴りが押さえられないくらい 本当に、特別な一日) 毎年、繰り返されるもはや義務的となった行事 姫宮邸の大広間に村や学校、姫宮の仕事関係の人々を招いての誕生会 代表者からの型どおりのお祝いのスピーチに始まり、粛々と進行されていく誕生会に少し飽き飽きしていた しかし…今年は違う 心がときめいていた 千歌音の視線は常に一人の人を追っていた 会場の隅っこで目立つ服装でいるわけもなく、静かに佇んでいる少女…来栖川姫子 そう、彼女の存在だけが今日の千歌音の心の全てを占めていた あと数時間の後、二人っきりの時間がもてる 千歌音は一刻も早くこの退屈な時間が過ぎることを願っていた 姫子といえば、そんな千歌音の心を知ってか知らずか、早乙女真琴と離れることなく時折、屈託の無い笑顔を見せていた (あの笑顔を自分だけのものにしてしまいたい…) 寮生活をしている生徒達の門限が9時である為、6時から始まったパーティーーは2時間を経過したところで終わりを告げる 千歌音は出席してくれた人々を見送った 姫子は今頃、乙羽の手引きにより千歌音の部屋に通されているはずだ 千歌音は最後の人を見送ると、急いで自室に向かった 「姫子!!」 部屋に入ると姫子は中央に置かれているソファに腰を掛けていた 千歌音の顔を見るとニコニコと太陽のような笑顔で迎えてくれた やっと二人だけの時間…千歌音は部屋の鍵を掛けると姫子の隣りに腰を降ろした テーブルの上には乙羽によって用意されたワインとグラス、幾つかのオードブルにケーキがある 「さぁ、二人だけの誕生会をはじめましょうか?」千歌音はグラスにワインを注いだ 「あの、千歌音ちゃん…私、ワインは無理だよ」姫子は手を振って断る 「一口ぐらいだったら大丈夫よ お祝いだもの、少しだけつきあって」 「う、うん…」 「せっかく蝋燭に火が灯ってるし…」千歌音は部屋の電気を消した ぼーっと蝋燭の明りが浮かび上がり、神秘的な雰囲気を醸し出す 「お誕生日おめでとう、姫子…」千歌音はグラスを掲げた 「お誕生日おめでとう、千歌音ちゃん…」グラスが交わった 「蝋燭の明り…凄く綺麗だね」うっとりとしてグラスに口をつける姫子 可愛い…その横顔を見ながら千歌音は思った 口に含んだワインも味もいつもよりは格別に美味しく感じられた 「あ、千歌音ちゃんの今日のドレス姿も凄く綺麗だよ 本当に見とれちゃったし…」 「そう…姫子だってそのワンピースとても似合ってるわよ…可愛いわ」薄いピンクが姫子の肌の色にピッタリだと千歌音は思った 姫子は照れくさそうにワインを口に含む 「私ね…本当に嬉しいの 千歌音ちゃんと同じ誕生日でこうして二人でお祝い出来るなんて」 「私もよ 姫子…」 「千歌音ちゃんの誕生日が凄すぎて、仲のいいマコちゃんでさえ私の誕生日忘れてるみたいだったし…あ、でも大神くんは覚えてくれてたな」 「大神さん…が?」 「うん…本当は今日二人で会えないかって誘われてたんだけど」そこで姫子はアッと口を手で押さえた (千歌音ちゃんと大神くんって…つきあってるっていう噂…) まずかったかな…千歌音の気を悪くさせたと思って姫子は慌てた 「あ、あの…特別な意味はないと思うよ 大神くんとは幼馴染で…それだけだから…その、千歌音ちゃんと大神くんが親しいのは知ってるし、 別に二人の仲を邪魔するつもりなんてないし…」 「姫子?私と大神さんって何でもないわよ ただのクラスメートだけれど?」 「でも…みんなが言ってるよ お似合いのゴールデンカップルだって…」 千歌音はクスクスと笑った 「そんなのただの噂でしょ 彼とは本当に何もないもの」 「それより…」千歌音はグラスを傾け少し目を伏せながら言った 「姫子と大神さんが幼馴染だなんて始めて知った…もしかして彼の事…好きなの?」 「えっ…そういうわけじゃないけれど…」姫子はあきらかに動揺している、と千歌音は思った 「小さい頃から…守ってくれたから 嫌な事があっても…大神くんがその後で楽しい時間を作ってくれたの…」 そう、そういうことなの…姫子の恋愛感情は大神ソウマに向けられている 千歌音の心は沈んでいく 二人の間に暫しの沈黙の時間が流れた 「あ、あの…」姫子は千歌音が急に黙り込んでしまったことに戸惑っていた 「ち、千歌音ちゃんは…好きな人いる?」千歌音はハッとして顔を上げた 「千歌音ちゃんは私と違ってみんなからモテモテだし、色んな人から告白されてるって聞いてるから…その、選ぶのも大変かなあって…えへへ」 千歌音はグラスのワインを飲み干すと姫子の方を見た 「好きな人…いるわよ 誰か知りたい?」その熱っぽく潤んだ瞳を見て、姫子はドキっとした 千歌音の顔が近づいてくる 気がつけば千歌音の艶やかな唇が目の前にあった (えっ…)姫子は瞬間的に目をつぶっていた 「姫子…」千歌音は姫子の耳元で囁く 「やっぱり…教えてあげない…」耳に直接かかる千歌音の熱い息…ゾクゾクとする 「大神ソウマに心を奪われているあなたなんかに…教えたくない」 「!?」(千歌音ちゃん…怒ってる)姫子は千歌音を見た (千歌音ちゃん、やっぱり大神くんの事が好きなんだ…だから、私の事怒ってる…どうしよう) 長い黒髪に隠れて千歌音の表情を知る事は出来ない 姫子はただ戸惑うばかりだった 「あの…千歌音ちゃん…ごめんね、私…」 「姫子…」千歌音の手が伸びてきて姫子の頬を触る 「私からの…誕生日プレゼント、受け取ってね」 返事をする間も無かった 千歌音の顔が目の前にきたかと思うと、生暖かく湿った感触が姫子の唇に重ねられていた 「!?」(うそ…キスしてる…千歌音ちゃんと…) 重ねられた唇は少しずつ動いていた やがてヌルッと千歌音の舌が姫子の唇を押し入ってきた時に姫子は体をビクリと震わせ、彼女から逃げていた 「そんなに…嫌…なの?」千歌音は酔っているのだろうか?瞳を潤ませ上気した顔つきで迫ってくる 「ど、どうして…何でこんな事するの?」姫子はたじろぎソファから立ち上がった 「ごめんね…」千歌音の手が伸びて姫子の手首を掴んだ 痛い程、強い力… 「こんな想い…絶対口にしてはいけないと思ってた でもね…」 千歌音は姫子を引き寄せると抱きしめた 「このままじゃあなたを誰かに盗られちゃう…」 「ち、千歌音ちゃん…」 「好き…あなたが好き…好きよ、大好き」耳元で何度も囁かれるその言葉に姫子の頭は混乱していた 千歌音は姫子から見たら仰ぎ見上げることしか出来なかった憧れの対象… 親しい友達になれただけでも信じられなかったのに、それが今は愛を囁かれてるなんて… 「嫌なら…嫌だったら言って…もう二度とこんな事しない あなたにはもう…近づかないから…」 「そんな…」もう近づかない?それって今までみたいな二人の関係が終わってしまうって事なの? 嫌だ…そんなのは絶対に でも言葉が上手く出てこない どうしよう… 姫子の目から涙が零れ落ちた 「姫子…」姫子が体を震わせ泣いているのに気がついた千歌音は体を離した 悲しげな目をして姫子の顔を覗き込む 「…そう…やっぱりあなたを苦しめてしまったのね…」 千歌音は扉に向かってゆっくりと歩き出した ガチャッと鍵が開けられる音がする 「まだ…寮の門限には間に合いそうね 車で送らせるから…行きましょう」 千歌音は振り向く事なく言う 「ごめんね…せっかくの誕生日だったのに 嫌な思いをさせてしまったわ…本当にごめんね」 (きっと千歌音ちゃんを怒らせてしまったんだ…) 昨日、玄関先で見送った千歌音の表情が頭から離れない 悲しげな、苦悶に満ちた表情…今まで見た事のない表情… 本当なら昨日は千歌音の家に泊まって楽しい時間を過ごすはずだった 今朝だって二人して仲良く登校していたかもしれないのに… 結局、あれだけ悩んで買い求めた誕生日プレゼントも渡せず、未だ姫子の鞄の中にあった 嫌なんかじゃない、ただ驚いただけ…自分にとってはファーストキスだったわけだし、そう、まだ自分の気持ちがハッキリとわかっていないだけ 頭が混乱してるだけ…だからもう一度ちゃんと向き合えば…姫子は思った (千歌音ちゃんと…ちゃんと話したい…誕生日の続きもちゃんとしたい) 姫子の背後で黄色い声が上がった 「宮様ーっ」 振り返ると千歌音が颯爽と登校してくるところだった (千歌音ちゃん…) 千歌音は周りの生徒たちに「ごきげんよう」と優雅に声を掛けながら真っ直ぐに歩いてくる 姫子は立ち止まり千歌音を待った 「あ、あの…」一瞬の風を感じた「えっ…」 千歌音は姫子の存在など全く眼中に入らないかのように足早に横を通り過ぎて行ってしまった (もう近づかないから…)千歌音の言葉が甦る 姫子はその時、初めて理解した 千歌音が自分から離れてしまう事が現実におこっているのだと 「姫子ーっ、どーしたボーッとして」 「マコちゃん…」 姫子は校庭のベンチに座っていた その視線の先にはテニスコートで打ち合っている千歌音と大神の姿があった 「いつ見てもあの二人はお似合いだなぁ」真琴のその言葉に心が痛む そう、誰だってあの二人を見ればお似合いだと思うだろう 自分だってあの二人はお互いに好意をもっているものだと誤解していたのだから 「おー、神さまがこっちに来るぞ」 テニスを中断した大神が足早に姫子たちの元にやってきた 「来栖川…ちょっといいか?」 「大神くん…」 真琴はニヤニヤ笑いながら手を振りその場を離れていく 「今度の日曜日、村の祭りがあるだろ?その…誕生日に渡せなかったものがあるから…一緒に行かないか?」 「え、でも…」 「五時に迎えに行く」大神は赤面しながらそう告げるとコートに戻っていった 姫子は次の瞬間、千歌音の姿を探していた 千歌音の姿はいつの間にかコートから消えていた (神さまに誘われたのに行かないって!?アホかアンタは…せっかくのチャンスなのに) 躊躇い、行かないと言った姫子に真琴は呆れていた (大事なものってのは失くしてからその大事さに気づくんだよ) 大事なもの…それは自分にとって本当は何なんだろうか? 午後から降り出した雨 傘を用意していなかった姫子は真琴をアテにしていたが、部活のミーティングがあるというので仕方なく一人で帰宅する 暫く玄関先で雨が弱まるのを待っていたが、変わらない様子に姫子は諦めて寮まで走った 10月の冷たい雨が体を濡らした ただでさえ走れば転ぶという特技を持っている姫子のこと、後ろから来た車を避けようとして案の定、足を滑らせた そして…かなり豪快に転んだ 「イッター…」鞄が飛び中の荷物が飛び出てしまった 「あっ…」水溜りに浸かってしまったそれは姫子のとても大切にしているもの 千歌音がくれたアルバム… あわてて拾い上げたが、泥まみれになってしまっている 「ヤダ…こんなに汚れちゃって」姫子は袖口を使って拭いたが、白い表紙なのでかえって汚れが広がってしまった 「どうしよう…どうしよう…」涙が溢れてきた 姫子はアルバムを抱きしめていた そう、本当に大切な大事なもの (大事なものってのは失くしてからその大事さに気づくんだよ)真琴の言葉が甦る 自分にとって大事なものはこのアルバムの中で笑顔を向けていてくれるこの人だったのに… 姫子は雨にうたれながら泣き続けた 「ごめんね、私やっぱり一緒には行けないから」 日曜日、大神の誘いを断った姫子はひとり祭りの会場へ向かった 普段は静かなこの村もこの日ばかりは一気に賑わう 近郊の街からも人が集まってくるので、祭り会場はかなりの人でごった返していた 姫子は人の波に揉まれながら、ただひとりの人の姿を探して彷徨っていた 手紙を読んでくれたらきっと来てくれる…姫子はそう信じた 昨日、姫子は姫宮邸を訪れた 千歌音は不在だったが、応対に出た乙羽にこの手紙を千歌音に渡して欲しいと頼んだ (千歌音ちゃん…) 篝火で囲まれた特設舞台では神楽が舞われていて観客が大勢集まっていた その中で人々の熱気と篝火の暑さで姫子の頭はのぼせそうだった なんだか頭がくらくらしてくる… (!?)…その時、暖かい手が指に絡みつくようにしっかりと姫子の手を握った 姫子は横に立つその人の顔を確かめると、寄り添い肩にもたれかかった 「千歌音ちゃん…来てくれてありがとう…」 あとは言葉にならなかった 千歌音に引っ張られるようにしてその場所から離れ、人気の無い場所へと移動する 「汗…すごいわよ 具合悪いの?」千歌音は姫子の額に浮かぶ汗を指先で拭った 「熱…あるみたい」千歌音は自分の額をつっくけた 「千歌音ちゃん…」心臓が高鳴る 熱っぽいのはきっと千歌音ちゃんのせいだよ、と姫子は思った 「風邪ひいたかもね…雨の中…濡れてたでしょ」千歌音は額をくっつけたまま言う 「知ってたの?…」 「姫子のことは…いつも見てるから いつも姫子の姿を探してしまうから」 熱い息がかかる 「ごめんね…あの時だってすぐに飛んでいって助けてあげたかったのだけれど もう…姫子に近づいちゃいけないって…」 「ヤダ…そんなの嫌だ」姫子は千歌音の背中に腕をまわした 「千歌音ちゃんが離れていってしまうなんて絶対に嫌っ…側に居て…お願い」 「姫子…」 「…すき…千歌音ちゃんのことが好き…大好き」 「姫子…でも」千歌音は姫子の頬に手をあてた 「姫子の好きと私の好きは…きっと違う 私の好きはね…友達としての好きじゃない あなたを抱きしめてキスしたいって…そういう欲望の塊の好きなのよ」 「違わないよ…私も…私も」姫子は目を閉じて顔を上向きに上げた 「姫子…」 「千歌音ちゃんの事考えただけでドキドキが止まらない…千歌音ちゃんに嫌われたら…私、たぶん生きていけないよ」 千歌音の指が姫子の唇をなぞる 「本当にいいの?」千歌音の言葉にそっと頷いた ほどなくして熱い唇が重なった ただ唇を合わせるだけのキスだったけれど、それでも二人の気持ちがひとつになれた瞬間だった 「誰かに…見られちゃうわね」千歌音は唇を離すと少し照れ笑いをした 見られても構わないと思って姫子はギュッと強く千歌音に抱きついた 「千歌音ちゃんと一緒に居られるのなら…どんな辛いことにだって立ち向かえるよ…例えね学校のみんなに虐められても平気…」 「あなたにもう辛い思いなんてさせないから…私が守ってあげる、絶対に」 少しだけ遠回りしたけれど、私達の気持ちは重なり合った 思えば私はあの最初に薔薇の園で出逢った頃から、彼女に恋をしていたんだと思う ただ…少しだけ自分の気持ちに自信が持てなかっただけ、確信が持てなかっただけ… 「ねぇ…千歌音ちゃん…誕生日の続き…ちゃんとしたい」 「ええ…姫子」二人はしっかりと手を握り合って、祭り会場を後にした
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神無月の巫女 ハアハアスレ投下もの 「夜景の中で…」 「神戸に…でございますか?」夕食後、千歌音の突然の申し出に乙羽は戸惑っていた 「急で悪いのだけれど、あさって出かけたいからホテルと切符の手配お願いできるかしら」 「は、はい…かしこまりました」すぐに手配をします、と告げて部屋を辞した乙羽の心は揺れていた お嬢様は変わられた…乙羽は思う この春に高校に進まれて、「特別に親しい」友人が出来たらしい 私はまだその相手の顔も知らなければ名も知らない… お嬢様に仕えて十余年あまり、これまで私は親しい友人の存在は確認したことがない お嬢様はより高みを目指す特別なお方、それ故、一般人の友人の存在など必要もなかったし、邪魔だとも考えていたから… そしてそれはお嬢様も同じ考えだと思っていた そう信じて疑わなかった私にとってお嬢様のこの「小さな革命」は大きな衝撃を与えた… しかし…命令だ メイドの立場である私がお嬢様の申し出に異を唱えることなんて出来はしない 乙羽は姫宮家のご令嬢が宿泊するに相応しいホテルに連絡を入れた 「車で送ってもらうのではなく、電車を乗り継いで行きたい」という千歌音の要望に応えて切符の手配も済ませる 友人と遠出して宿泊をする…それは初めての経験…千歌音をそんな行動に駆り立てたものは何なのか? 乙羽は深い溜息をついていた 千歌音は少し先走った事を後悔していた 数日前、何気なく姫子と交わした会話の中で彼女が神戸で開催されている写真展に行きたがっている事を知った それはたぶん姫子の独り言の類 「でも、神戸は遠いし、お小遣いも足りないから無理だな」と姫子は早々に諦めていた 独り言を言って自己解決し、納得してしまう姫子のよくやる事 …しかし、千歌音は聞き逃さなかった この子を神戸に連れ行ってあげたい、好きな写真展を見せてあげたい、喜ぶ笑顔が見たい 千歌音はすぐさま写真展の事について調べた そして展示期間がもうじき終わってしまう事をする 千歌音はすぐに心を決めた…行こう、二人で…と しかし、まだ姫子の了承を得たわけではない でも…この興奮にも似た逸る気持ちを抑える事は出来なかったのだった 「えっ…ダメだよ そんなに千歌音ちゃんに負担かけるわけにはいかないよ」 予想通りの答え 顔を赤くし、手を振り戸惑いの表情を見せる お金の心配はしなくていいから一緒に写真展に行こう、と誘った後の姫子のリアクション 可愛い…思わず抱きしめたくなる 「私と…一緒じゃ嫌?」少し意地悪な質問…姫子が嫌だと言うはずはないと千歌音にはわかっていたから 「嫌なんかじゃないよ…誘ってもらって凄く嬉しい でもね…」 「じゃあ行きましょう」千歌音は姫子の手をとった 「私が姫子と一緒に行きたいの 二人で…夏休みの楽しい思い出を作りましょう」 吸い込まれそうなその千歌音の瞳の輝きに姫子は思わず頷いてしまっていた 姫宮邸の広い食堂 大きなテーブルにひとり座して夕食を摂る千歌音は上機嫌そのものだった いつも使用人たちに囲まれてひとり味気ない食事を摂る千歌音だったが、今晩は違う 明日のことを考えるだけで胸が高鳴り、顔がほころんでくる 食後のお茶さえ、こんなにおいしく感じたことはあっただろうか?と千歌音は思っていた 乙羽はそんな千歌音の様子を複雑な思いで見つめていた (お嬢様…そんなに明日が楽しみなのですか 服まで仕立て直してそのお友達に渡してあげるなんて…それ程まで…) 乙羽は千歌音が見立てた一着のワンピースのサイズを直して欲しいと頼まれた お友達にホテルでディナーを摂る時に着てもらうのだという 千歌音には少し子供っぽいその可愛らしいワンピースを着るのは一体どんな子なのか? 乙羽は見えない相手に嫉妬を感じぜずにはいられなかった 「乙羽さん、服のサイズ直しは終わったかしら?」 「はい…既にお荷物の中に」 「そう、ありがとう」千歌音は穏やかな微笑みを見せた 「お天気…晴れるとよろしいですね」夕方から振り出していた雨… 「そうね、でもたぶん大丈夫よ」千歌音はフフと笑う 「てるてる坊主作っておいたから」 「…はあ…」お嬢様ったらいつの間にそんな事まで…乙羽は思わずエプロンの裾をギュッと掴んだ 「まるで遠足の前の小学生みたいでしょ 自分でもおかしいとは思ったのよ」 いいえ…お嬢様 乙羽は心の中で呟く お嬢様は遠足の前でもそんな事はしませんでしたよ…いつも冷静沈着なお嬢様がこんなに心を浮かされてる姿を見るのは初めてですよ…と 「お嬢様に…そんな事までさせるなんて…」乙羽の小さな呟き 「何?」 「そのお友達は…きっと素晴らしい方なんでしょうね」きっと自分はひきつった笑顔をしているだろうと、乙羽は思った 「ええ…」少し頬を染めて千歌音は言った「太陽のような子…きっと私を照らしてくれるお日様…そんな子よ」 翌日、願いが通じたかのような晴天 千歌音はまだ朝早い天火駅で姫子を待つ 実のところ、昨夜は興奮の為なかなか寝付けないでいた 浅い眠りを何回か繰り返し、そして結局夜明け前には目覚めてしまっていた 眠くないといったら嘘、でもそれでもこれからの事を考えると目は冴えるばかりだ 朝の弱い姫子のこと…始発電車に間に合うかどうか 千歌音がふと不安を過ぎらせた時、朝靄の中から走り寄ってくる影に気づいた 「千歌音ちゃーん」息を切らせて姫子が姿を現した 姫子、そんなに走ると転ぶわよ、と声を掛けようとしたその瞬間、やはり姫子は転んだ 「イタタタ…」「大丈夫?」駆け寄った千歌音に手をとられて立ち上がる姫子は恥ずかしそうに笑った 「千歌音ちゃんは時間に正確だから待たせてはいけないと思って走ってきたの ほら私って何やるのも遅いから」 「大丈夫よ 時間にはまだ余裕があるわ」 千歌音は姫子と手を繋ぎホームに向った 確かにこの辺境の地から神戸に出るまでには時間がかかる しかし何も無理をして始発の電車に乗る必要もなかった けれど…少しでも長く姫子と一緒に居る時間が欲しかったから… 「始発電車に乗るなんて初めて…神戸に行くのも初めて…」姫子は子供のようにはしゃいでいた 「友達と外泊するのも修学旅行以来だし…初めてがいっぱいだよ 千歌音ちゃんのおかげで初めてがいっぱい…ありがとう、千歌音ちゃん」 天使のような笑顔だと千歌音は思った 少し心配してしまう丈の白いミニスカートにタンクトップの上に羽織った白いパーカー…姫子らしい可愛らしい服装 そう、その姿は本当に千歌音には天使に見えた やがて電車がホームに滑り込んできてふたりは乗車した ふたり以外はだれもいない車内 ボックス席に向かい合わせで座る 「はい、どうぞ」千歌音は乙羽が用意してくれたサンドウィッチを渡した ありがとう、といって嬉しそうに頬張る姫子のその姿を見て千歌音はただ幸せな気持ちになれた ゆっくりと流れていく二人だけの時間 何気なく交わす言葉のひとつひとつが楽しい ぽつりぽつりと乗客も増えてきた頃、お腹もいっぱいになった姫子は軽く欠伸をした 「眠い?」千歌音のその言葉に姫子は少し顔を赤らめて言った 「実はね、昨夜は全然眠れなくて…今日のこと考えたらドキドキしちゃって色々と考えてたら結局朝になっちゃったから」 そう…私と同じだったのね 千歌音は嬉しかった 姫子が自分と同じ気持ちだった事が… 千歌音は姫子の隣りに移る 「乗換えの駅までまだまだだから…寝てていいわよ 肩貸してあげる」 千歌音の手が背中に廻り姫子を優しく引き寄せる 「…あ、ありがとう…」姫子は恥ずかしそうに言うと目を閉じた 千歌音の温もりと電車の揺れが姫子を眠りの世界へと誘う やがて聞こえてきた小さな寝息…千歌音はそれを確認すると紅茶色の髪にそっと口付けをした いくつかの電車を乗り継ぎ、神戸に着いたのはお昼前 「うわぁ…人が多いな」駅に降り立った姫子の感想 姫子は千歌音のようにずっと天火明村で育ったわけではない 高校に入るまでは地方都市ながらそれなりの都会で生活をしていたわけだから、こんな街並みに驚くのも変な話しだが… しかしまだ数ヶ月とはいえ、のんびりと時間が流れているあの村で生活を送っていたら何だか自分が浦島太郎になったような気がしてきておかしかった 千歌音は普段は田舎暮らしをしているとはいえ、そこは大富豪のお嬢様…色々と各地に出かけてもいるのであろう 何の迷いもなく都会の街を颯爽と歩くその姿を姫子は頼もしく思う 姫子はまるで散歩に連れ出された子犬のようにヒョコヒョコと千歌音について歩いた 人の波に幾度となくぶつかった姫子は思わず千歌音に手を繋いで欲しくて手を伸ばした …が慌てて引っ込める ここは天火明村のような田舎じゃない 小学生でもないのに女同士手を繋いで歩いていたらきっと変に思われるだろう 千歌音に恥をかかせるわけにはいかない 「姫子?大丈夫?」千歌音は振り向いて姫子を気遣ってくれる 「タクシー乗り場までもう少しよ でもその前にお昼を食べましょう」千歌音はそう言うとさりげなく姫子の手を握って歩き出した 嬉しかった…考えてみたら天火明村に居たって学校の皆がいたらこんなことは出来ない 今だけのほんの少しの時間…姫子は甘えることにした 昼食を摂った後、タクシーに乗り写真展の会場に向った ここも相変わらずの人の多さ…雑誌で紹介されていただけあって人気があるんだなと姫子は思った 「行くわよ 姫子」千歌音の長い指が姫子の手に絡んでくる 「あ、あの…」ふいに口から出た言葉 「千歌音ちゃんは…嫌じゃないの?」「何が?」 「こんな風に手を繋いで歩いてると…その…」 「嫌なはずないでしょ…それにね姫子が迷子になったら困るもの それとも姫子は嫌なの?」 「ううん、そんな事ない…嬉しい…」嫌なはずなんてあるわけない 姫子はギュッと千歌音の手を握った 「凄いなー…私もこんな風に撮れるようになりたいなぁ」 「あ、これも凄いよねー」「わぁー、綺麗な写真」姫子はとても上機嫌ではしゃいでいる 千歌音はそんな様子を見て、連れてきて本当に良かったと思った 姫子のこんな笑顔を側で見られるだけで幸せになれる…本当に欲しかったものはこの笑顔なのだから 時間の経過も忘れて、結局、閉展時間ギリギリまでそこにいた ポートタワーの近く、神戸市街の瞬くネオンを見下ろせる最上階の高級ホテルの一室 姫子はそこから見える素晴らしい夜景にただ見とれていた 「本当に…素敵…」 高速道路の流れがまるで光の帯のように見える 高校生の身分でこんなホテルに泊まるとは思っていなかった姫子はただ驚くばかりだった この部屋はいわゆるスイートルームと呼ばれる部屋 大富豪のお嬢様である千歌音にとっては、たいした事ではないのだろうけれど姫子にとっては軽い眩暈さえ感じるものだ 「姫子…」ふいに呼ばれて振り向くと千歌音は一着の服を持っていた 「もうじきディナーが運ばれてくるからこれに着替えて…」渡されたそれはいかにも高級品であろう、薄いピンクのワンピース 「私のお古だけれどサイズは直してあるから…あなたにプレゼントするわ」 「でも…」とてもお古なんて思えない…もしかして一度も袖を通してはいないのでは?と姫子は思った 「さぁ、早く着替えてらっしゃい」姫子は隣りの寝室へと押しやられた 「いいのかな…?」千歌音のありとあらゆる心遣い…無下に断ったらきっと千歌音を傷つけるだろう…姫子は着替えを始めた 「あの…」着替えを終えて部屋を出ると、いつの間にか千歌音も着替えを済ませていた 「良く似合ってるわ サイズもピッタリに仕上がってるわね」 良く似合っているのは千歌音の方だ、と姫子は思った 対照的な深いブルーのシンプルなデザインのイブニングドレス仕様… 出された肩が何とも色っぽい きっと千歌音が着るものを選んでいるのではなく、着られるものが千歌音を選んでいるのだと姫子は思った ルームサービスによる豪華なディナーが始まる 姫子にとっては勿論こんな経験は初めて…今日は寮の食事ではない 目の前には見た目も美しいフランス料理のコースが並ぶ 注がれたワインにさえも戸惑いを感じていた 「乾杯しましょう…」千歌音に促されてワイングラスを持つ 「今日の…良き日に…私達ふたりの素敵な夜に…乾杯」 千歌音の心をくすぐるような甘い言葉、窓の外に広がる美しい夜景、豪華で美味な食事、そして初めて口にするワイン…何もかもが姫子を酔わせていくようだった まるで魔法をかけられたような素敵な時間が過ぎてゆく シンデレラにかけられた魔法なら12時を過ぎたら消えてしまう 私にかけられた魔法はいつ消えてしまうのだろうか、と姫子は風呂上りで火照った体を涼めながら思っていた 千歌音から「広いお風呂だから一緒に入ろう」と誘われたが、どうにも恥ずかしくて辞退し先に入浴を済ませた 女同士なのだから別に意識する事も無かったのであろうけれど… 姫子は今日あった楽しい時間を思い出しながら、相変わらず絶景な夜景を眺めていた 「本当に…楽しかったな…千歌音ちゃんにちゃんと御礼言わなくちゃ…」 そこへ入浴を済ませた千歌音がやってくる 「そんなに…夜景が気に入った?」風呂上りの千歌音は艶々しく更に色っぽさを醸し出している 「う、うん…凄く素敵だよ…」それは夜景に対してかそれとも千歌音の妖艶に対して言ったのか…良くわからない 「あのね…ありがとう」姫子は言う 「こんなに素敵な時間を与えてくれて…今日一日、凄く楽しかった…ありがとう」 「…いいのよ 私だってとても楽しかったのだから…姫子がね楽しそうな笑顔を見せてくれたからそれでいいの」 優しい千歌音の微笑み…出逢ってから何度も姫子の前で見せてくれる表情 いつでも困っている時に手を差し伸べてくれる、誰よりも気遣ってくれる優しい人…もうずっと頼りっぱなしだ 「あの…千歌音ちゃん…」姫子は思い切って口に出してみる 「私…千歌音ちゃんにはしてもらってばかりでしょう?だから…御礼じゃないけれど…私に何か出来ることある? 千歌音ちゃん、してもらいたい事とかあったら言って…私じゃ出来る事なんか限られてることわかっているけれど… それでも千歌音ちゃんが望むことがあるならしてあげたいの…」 千歌音は驚いたように暫く姫子の顔を見つめていたが、やがてゆっくりと近づいてきた 「…何でもいいの?」 「う、うん…私に出来る範囲のことでなら…お金のかかることとかは無理だけれど、何か欲しいものとかあるのなら言って…」 千歌音は姫子の顎に手をかけた 「えっ…」 「欲しいものは…あるの…」 「欲しいものはあるの…いつだって手の届く場所に」 「でもね…」千歌音の表情が寂しげに揺れた 「きっと触れてはいけないのよ…触れたらきっと…私の前から消えてしまうだろうから」 「千歌音ちゃん…」 「失いたくはないから…絶対にそんなのは嫌…でもね触れたくて、触れたくて… 心が壊れそうになる時もある…どっちも私の本当…」 「ごめんね…姫子…」千歌音の顔が近づいてくる 潤んだその瞳を見たら姫子は次に起こるであろう行為を拒否する事なんて出来なかった (千歌音ちゃんは苦しんでいる…きっとそれは私のせい…)姫子は目を閉じてその行為を受け入れた 生暖かく柔らかな感触が唇に重なった 体が少しだけ震える しかしそれは重なってすぐに離れた 「嫌じゃ…ない?」 千歌音の問いに姫子は首を振る (嫌じゃない…何故だろう、前にもこんな光景があったような気がする) これはデジャブーだろうか?それとも… 姫子の考えを遮るように二度目の口付けはふいに 「んっ…」 一度目とは比べ物にならない程の激しく情熱的なキス 唇を割って入ってきた舌はまるで口内を犯すがごとく動き回る (…この感触は…)姫子の手はいつしか千歌音の背中に廻されていた -----レースのカーテンの隙間からは光が瞬く神戸の夜景が見えていた 「あ、あっ…千歌音ちゃん…」切なく唇から漏れる声…私は今、ベットの上で千歌音ちゃんに抱かれている 何故こうなったのかは…上手く説明できそうにもない ただ…千歌音ちゃんが私を求めたから?千歌音ちゃんの涙を見たから?いいえ、多分違う 私達ふたりの間には「運命の絆」があるとわかったから… 唇を重ねる度に肌を触れ合わす度にそれは確信へと変わっていく 今はそれがどんな運命だったのか、これからまたどんな運命に導かれていくのかは知る由もない ただ私は知っている 私の肌の上を這う千歌音ちゃんのこの手が、遠い昔から私を護ってくれていたと、 そしてこれからも私を護ってくれるということを… 私はその白く美しい手を取り口付けをする 感謝と愛情を込めて… 私達の運命はまた廻り出す---------- おわり
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神無月の巫女 ハアハアスレ投下もの 「初めての夜に」 「お土産買ってくるからいい子にして待ってるんだよ」マコトはまるで子供をあやすが如く言って寮を去って行った 夏休みが始まり、大多数の寮生達は一時期帰省をする 部活や補習、家庭の事情等で夏休みでも寮に留まる生徒はいる…姫子もその中のひとりだ 天涯孤独な姫子には…帰る家は無い 寂しくないと言ったら嘘になるが、それでもここを離れたくない理由もあった 賑やかなマコトが去った後の部屋でひとり、山のように出された宿題と格闘していた 明日からは成績が不良だった数学と物理の補習も受けなければならない 姫子にとっては、夏休みは決して楽しいものではなかった 夕方になりようやく涼しい風が吹いてきた頃、姫子は勉強で使いすぎた頭を休める為散歩に出かけた 姫子の足は自然と「薔薇の園」へ向っていた …そう都合良く、自分の逢いたい人が待っているわけでもなく…姫子は少し苦笑して、大木の下に腰を降ろした (千歌音ちゃん…夏休みはどうしているんだろう?) 千歌音は自分と違う意味で忙しい人だから、きっと夏休みになったからとはいえ逢える機会なんてほとんど無いんだろうな、と思う でも…一日でもいいから大好きな千歌音と過ごすことが出来たら、どんなに楽しいことであろうか… 姫子はささやかな夢を抱いていた 「姫子、姫子…」ほんの一瞬だけ記憶が飛んだような気がしたのはどうやら寝てしまっていたから…らしい 軽く体を揺すられて瞼を上げると、目の前には千歌音の姿があった あまりにも極至近距離にその端正な顔があったので、姫子の目は一瞬にして醒めた 「わわ…千歌音ちゃん」 「こんなところで寝てるなんて」千歌音は笑った「夏だからといって風邪ひくわよ」 「う、うん…ここに座っていたら気持ちよくなっちゃってつい…それより千歌音ちゃんはどうしてここに?」 「生徒会の仕事があったから…少し休憩と思ってここに来てみたのだけれど」 それは半分本当で半分は嘘、千歌音は心の中で呟いていた 生徒会室の窓からあなたの姿を見つけたから追いかけてきたのよ、と 「そっか、やっぱり千歌音ちゃんは夏休みでも忙しいんだね」 「そうでもないわ…」千歌音は姫子に伝えたい言葉を躊躇っていた 「姫子は…夏休みの間は寮にいるの?」そんな事聞かなくても、とうに調べはついていた 姫子には帰る場所がない、ルームメイトの早乙女さんは帰省している、残っている寮生は極少数…そう、ふたりきりで過ごせるチャンスがいくらでもあることを でも、それも姫子が同意してくれたらの話しであるけれど… 「補習受けなくちゃいけないし…ほら、私、千歌音ちゃんと違ってデキ悪いし」 姫子は笑いながら言う 千歌音は思った この子はいつもこうだ 自分の前では決して、身の上の不幸とかは話さないし、悲しいとか寂しいとか口には出さない いつも笑っていてくれる…嬉しいけれど、切ない…とても切なくなる 「それにね…千歌音ちゃんもずっとこっちにいるんだし…えへへ」 「!?」千歌音はその言葉を聞いて覚悟を決めた 「姫子…私ね、一度寮に泊まってみたかったの 招待してくれないかしら?」 「本当に?」姫子は丸い目を更に丸くして信じられないといった表情を見せた 「本当に遊びに来てくれるの?」 「ええ、姫子が招待してくれるのなら」 「勿論だよ!!あっ…でも…」姫子は困惑した表情を見せる 「寮長に許可とか取らなきゃいけないし…他の人が知ったらきっと大騒ぎになっちゃうよ…千歌音ちゃん、落ち着いて過ごせないかも…」 「だからね…」千歌音は悪戯っぽく笑う「みんなには内緒で…こっそりと行くの これは私と姫子だけの秘密よ」 「大丈夫かな?」 「ええ、大丈夫よ」千歌音の妙に自信のある物言いに姫子は安心したようだ 「うん、それじゃいつにする?千歌音ちゃんの都合に合わせるから、いつが予定、空いているか言って」 すぐに、一日でも早く…今日でもいいのよ、千歌音は心の中で呟いていた 「そうね…明日なら…空いているんだけれど」逸る心を抑えて口に出した言葉 「えっ…明日」姫子は部屋が乱雑のままであることを思い出して焦っていた (掃除しなきゃ…明日までには片付くかな?ヤダなあのままじゃ千歌音ちゃんにだらしのない子だと思われちゃう) 「ダメ…なのかしら?」 「ううん」姫子は少し顔を赤くして言う「いいよ、明日ね…じゃあ、寮の裏門はわかるよね?裏の非常口の鍵は開けておくから、そこで9時に待ってるよ」 「ええ、わかったわ」 「じゃ、じゃあ…明日ね ごめんね、私ちょっと用事を思い出したから行くね」 姫子は手を振りそそくさと薔薇の園から出て行ってしまった 「姫子…」千歌音はそんな姫子の後姿を見送りながら、もしかして迷惑だったの?と心が沈んだ 姫子といえば一刻も早く乱雑なままの部屋を片付けて、千歌音を迎え入れる万全の態勢を整えておきたかっただけなのであったのだが… 普段は宮殿のような部屋で過ごしているであろう千歌音を一晩とはいえ、こんな寮に泊まらせるにはそれなりの気を遣う 千歌音に不快な思いをさせてはならないと姫子はそれなりに頑張って、部屋を飾った…とはいえ、出来ることは限られていたのだけれど 塵ひとつなく掃除を念入りにし、シーツを新しいものに替え、花を飾る あと数分でこの質素な部屋には千歌音という何よりも華やかな飾りが添えられるのだ 姫子は逸る気持ちを抑えて、約束の30分も前から裏門に出て千歌音を待った 誰かを待つというのは楽しいようでもあり、実は切ないものだ もし、来てくれなかったらどうしよう、出掛けに急に用事が出来たとか途中で事故に逢ってたりしないだろうか…ふと頭を過ぎる不安 何だかこんな気持ちって恋人を待つ気持ちに似てるのかな?姫子はそんな事を考えてひとり顔を赤らめていた (私ってやっぱり変なのかな?千歌音ちゃんにこんなにドキドキしてるなんて…) 時間の経過がこんなにももどかしいものだったなんて… 「姫子?」暗がりの中から足音が聞こえて千歌音が姿を現した 「千歌音ちゃんっ」姫子は時計を見て千歌音が約束の時間より早く来てくれたことに喜んだ 「顔…赤いみたいだけれど大丈夫?」 「う、うん平気」姫子は千歌音が持っていた荷物を取り上げると満面の笑みを見せた 「良かった…本当に来てくれて」 私があなたとの約束を破るはずなんてないでしょ、千歌音はその可愛らしい笑顔を見て心が昂ぶる 「さぁ、中に入ろう」 姫子に導かれて、非常口から入り二階へと上がる しんと静まり返った寮内…普段ならこの時間はまだ寮生の活気に満ち溢れているのだが、今寮内に残っている生徒は数人程度 おかげで千歌音は身を隠すことなく堂々と姫子の部屋まで辿り着くことが出来た 「ここだよ、入って」8畳程の広さに二段ベットと学習机がふたつ、本棚にクローゼット… 部屋の真ん中には花が飾られた小さなテーブル シンプル過ぎるほどの部屋だったが、姫子の努力の甲斐もあって小奇麗に整理整頓されていた 「可愛いお部屋ね」千歌音の反応を見て、姫子はホッと胸を撫で下ろした 千歌音が少なくとも不快な感じを抱かなかった事に安堵する 千歌音にしたら、例えどんな廃屋であったとしても姫子と一緒に過ごせる場所なら不平なんて言うはずも無いのだけれども… ふたりは千歌音が持参してくれたケーキやクッキーを食べて楽しい時間を過ごす 他愛も無い話しをして、笑いあう時間… 開け放たれた窓からは涼しい夜風が入り込んで来る 山間部なので夜になればかなり気温も下がるので、7月後半のこの頃はまだクーラーは必要としない でも姫子も体温は上がりっぱなしのようだった 何故なら千歌音が自分にピッタリと身を寄せるようにして座っているから… (千歌音ちゃん…どうしてこんなに近づいているんだろう?) お風呂を家で済ませてきたという千歌音からは、何とも良い香りが漂ってくる 姫子は自分の体が徐々に汗ばんでくることに気がついていた (千歌音ちゃんの胸…さっきから腕に当ってるんだけど)柔らかくて何ともいえない良い感触… 姫子は顔を赤くし頭を振る (何考えてるんだろ…私ったら これじゃ変な人だよ) 「姫子どうかした?」 「う、ううん…何でも無い」姫子はさりげなく千歌音から離れた 「も、もうこんな時間になっちゃったね」楽しい時間というのは、残酷な程に早く流れていく 「おしゃべりに夢中になってたから…千歌音ちゃん、そろそろ眠いでしょ」 時計の針はもう12時を指そうとしていた 「いつまでも明りついてたら見回りとかきちゃうかもしれないし」 「そうね…じゃあ寝ましょうか」 千歌音は持参したネグリジェに着替えた それはこんな部屋にはおかしいくらい不似合いなもの… (わぁ…凄く色っぽい)姫子はそんな千歌音の姿をマトモに見ることが出来なかった 自分はといえば、いつものパジャマの上だけの姿…あまりにも対照的な二人の格好だった しかし、姫子は気づいていなかった パジャマの上だけを羽織るという無防備なその格好は千歌音にとって刺激的すぎるものであったということを… 「千歌音ちゃんは私のベッド使ってね そんなベッドで悪いんだけれど」 本当に千歌音を二段ベッドの下に寝せるなんて忍びないのだけれど… 「姫子は?」 「私は床の上に布団敷いて寝るから」姫子はクローゼットの中から予備の布団を出して床の上に敷く 千歌音はいそいそと寝支度をする姫子の姿を目でじっと追っていた 姫子にとってはいつもマコトの前でしている格好、恥ずかしいとも変だとも思った事はない ただ楽な格好だったから…しかし千歌音にとっては屈む度に見える下着や露出している肌の多さ、明りに透けて見える体のライン等全てが刺激的だった 「こっちで一緒に寝ない?」ふいにかけられた言葉 「えっ…でも、それじゃ千歌音ちゃんが狭くて窮屈だよ」 「大丈夫よ…」千歌音は手招きをする「来て…」 「う、うん…」 千歌音にとっては慣れない場所だから仕方ないのかな、などと思いながら姫子は部屋を明りを消し千歌音とともにベットの中に入る 「狭くて寝づらかったらいつでも言ってね 私すぐにあっちに移るから…」 「平気よ…」千歌音の息遣いがすぐ側で感じられた 「ねぇ、姫子…姫子はいつもそんな格好で寝てるの?」 「う、うん…変かな?マコちゃんには何も言われないし…」 「変じゃないわ…」そう、早乙女さんにはいつもその無防備な格好を見せているのね… 変なんかじゃない…可愛いわよ、姫子…とても… 「お腹出して風邪ひかないようにね」千歌音はフフと笑った 「マコちゃんにも良く言われるんだ『姫子ー、腹出して寝てると風邪ひくぞー』って…それでね、マコちゃんが私のベッドの中に入ってきて『抱き枕』ってギューっとして暖めてくれるんだけれど」 「抱き枕?」 「うん…マコちゃん抱き枕すると気持ち良くて熟睡できるって言って、別に私も嫌じゃないんだけれど、でもそれって何か私が太ってるみたいで…」 無邪気に話す姫子に千歌音は微かな苛立ちを感じていた マコトに抱かれて眠る姫子の姿…想像するだけで心が軋みをあげてくる 姫子が私以外の人に向けている笑顔…姫子が私以外の人の腕の中で安らかな寝息を立ててるなんて… 千歌音はキュッと唇を噛んだ 嫉妬…そう完全に私は早乙女マコトに嫉妬している… 「姫子…」千歌音は手を伸ばし、やや乱暴に姫子を引き寄せた 「千歌音ちゃん?」 「抱き枕って…こんな感じかしら」 姫子を背後から抱きしめるようにして、足を絡めた 「ど、どうしたの?」 「私にも…姫子の抱き枕…ちょうだい」 密着した体からお互いの体温が伝わり合う マコトとは全然違う感触に姫子はドキドキした (千歌音ちゃんの体…熱い…)心臓の鼓動もハッキリと伝わってくる 「早乙女さんとは…いつもこうしてるんでしょう?」囁くように言う千歌音 なんだか体がゾクゾクしてくる 「い、いつもってわけじゃないよ…時々…」 「…そう…で、他には何をするの?」 「何って?」 「こうして抱きしめて、姫子の体温感じて…その後は…何もしないわけ?」 (千歌音ちゃん…何だか怖い…どうしちゃったんだろう) 姫子は体を捩って離れようとしたが、思いの外力強く抱きしめられていて上手く身動きがとれなかった 「ふ、ふざけてくすぐったりするだけ…それだけ…それだけだよ」 「そう…なら良かった…」何?姫子には千歌音の言った言葉の意味が理解出来ないでいた 次の瞬間、髪の毛を掻き揚げられて首筋に生暖かいものを押し付けられた 「!?」体に電流が走ったような衝撃を受けた 千歌音は姫子の首筋に唇を押し付けている それはゆっくりと場所を移動しながら何度も繰り返された 「ち、千歌音ちゃん…」暗闇に響くチュッチュという音、千歌音の荒くなった息遣い…姫子の体は硬直したかの如く動けなくなっている 「…こういうことはされてないのね…」 千歌音の手がパジャマの胸元から入り込んできて、姫子の胸を触る 「あっ…」最初は形をなぞるように優しタッチで… やがてキャミソールが少しずつたくし上げられて直に胸を触られた 千歌音の長い指が絡み付いてくる 最初はふざけてじゃれついている延長の事かと思った しかし違う…これはマコトとのじゃれ合いとは明らかに違うものだ 「だ、ダメだよ…」やっとのことで発した姫子の声は弱弱しかった しかし千歌音は止めることなく、掌全部を使って胸を揉みはじめた 「姫子…好き…好きよ」後ろから囁かれるその言葉に姫子の体は熱くなる 信じられなかった、でもこれは夢なんかじゃない…千歌音が自分に対して愛の言葉を囁いている 仰ぎ見る憧れの対象だった、親友であったはずの千歌音が… 「姫子…」千歌音は上半身を起こし、姫子の顎を掴んだ 「んっ…」ふいに塞がれた唇 重ねられた唇からは甘い薔薇のような香りがした その匂いに酔ってか気が一瞬遠くなりかけた時、ヌルッと千歌音の舌が口内に侵入してきた 拒否する事など出来ない一方的なディープキス それは遠慮なく姫子の舌と絡み合った 「あ、あ…」姫子の目から一筋の涙が零れ落ちた この涙は何?嫌だとかいう感情ではない…遠い昔に記憶が引っ張り込まれるような、切ない感じ… 何故だろう?この感じは… 姫子はいつしか無意識のうちに千歌音の背中に手を廻していた 「姫子、姫子…起きて」朝の眩しい光と聞き慣れた声に姫子は目覚めた 「おはよう…さぁ、仕度して」いつもと変わらない千歌音の笑顔 「うちに行って一緒に朝食を摂りましょう 補習は9時からでしょ…十分に間に合うわ」 「千歌音ちゃん…?」まだ頭がぼんやりとしている のろのろと起き上がると、自分が半裸状態である事に気がつき慌ててシーツに包まった (昨夜…)顔から火が出そうになる(何で…あんな事になっちゃったんだろう…) 千歌音は背中を向け荷物をまとめ帰る準備をしていた 姫子はその様子を見て、慌てて下着をかき集め着替えを始める 何事もなかったかのように流れていく時間… 寮を出て姫宮邸に向う 二人は無言のままだった 姫子は恥ずかしくて千歌音の顔さえまともに見ることが出来ない 一歩下がるようにして歩いていた 「姫子…」ふいに千歌音が立ち止まった 「ごめんね…私の好きは…ああいう好きだから」振り向く事なく千歌音は言う 「千歌音ちゃん…」 「私の好きは欲情の塊…あなたが誰かのものになっちゃう前に自分のものにしたいって…そんな自分勝手な自己満足な愛情なのよ…最低だわ もう…嫌いになっちゃったでしょ?」 振り向いた千歌音の目にはうっすらと涙が光っていた (千歌音ちゃんが泣いている…千歌音ちゃんは苦しんでいるんだ…私のせいで) 姫子は胸が痛くなった 昨夜キスされた時の切ない思いがフラッシュバックされる 切ない…込み上げてくる切ないこの想い 姫子は千歌音の腕の中に飛び込んでいた 「…嫌いになんかなれるはずない…なれるはずないじゃないっ」 「姫子…」 「ごめんね…気がついてあげられなくて 私がずっと千歌音ちゃんのこと苦しませていたんだね…ごめんね」 「姫子…」二人は強く抱きしめてあった きっと…こんなふうになる事を望んでいたのは私自身だったのかもしれない、と姫子は思っていた 遠い遠い記憶の中に残されている想いを感じとった瞬間… 姫子は自ら唇を重ねていた ~end~ ~早乙女マコトの後日談~ お盆も終わって寮に戻ってみると、何だか姫子の様子が変わっていたんだ うーん、上手く言えないけれど「恋する乙女」みたいに輝いているんだよね…私が留守の間に何かあったのかな? 抱き枕も拒否されるようになっちゃったし(ノД`)シクシク 外泊届け出す回数も増えた あやしい…今度、とっちめて吐かせてみようと思う
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r―-、 __ ... -―, { .゚ . . __`´__. . . . . . 。. | !゚/ `´ `ヽ. . 。/ // イ__,ハノ,__」 i }. ノ、 めんどくさい! \!ル゚ ̄_ ゚̄ト! |_/ |ハ、|__〉 |」ノ/ 再投票するのも. (( ___>rュ<リノ__ めんどくさい! `ー―‐l . Y . . f――‐' | . .0 . . ト、_\ )). ぶわー | . . . o.o| `)ノ | . . o.○| ´ `lノ^"lノ´ 基本情報 陣営 村 役職系統 巫女系 実装バージョン Ver. 1.5.0 β9~ 特殊な判定 本人表記 巫女 特徴 本人視点はただの巫女、しかしその実態は 再投票が発生してしまうと自分から封印されに行ってしまう はた迷惑な劣化職。(巫女の能力は失われていないが。) とはいえ人馬を見れば分かるように 「自殺できる」というのはこれ以上無い真証明手段である。 だがこちらは自覚ができないため 狙って再投票にしてもらうのはほぼ不可能。 どう騙るか 騙り易い巫女と違いこちらはほぼ不可能。 そもそも自覚できないため騙るも何も無い。 なお、真巫女と対立したときに再投票が発生、 そして再投票で真巫女がショック死してしまった場合 間違いなく騙ったほうは吊られてしまうため要注意。 参考ログ タイトル モード 備考 ログ
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神無月の巫女 エロ総合投下もの 二人の夏旅行 ◆M2vRopp80w氏 真夏の日差しが降り注ぐ道を一台のリムジンが走る。 姫子が車の窓から外を見るとそこには、どこまでも続く澄みきった青く広い空と海が広がっていた。 「うわぁ…見て千歌音ちゃん!海だよ。」 久しぶりに見た海に感動する姫子。 (やっぱり誘ってよかった…) 嬉しそうな姫子の顔を見て千歌音は微笑む。 あのデートのお返しに、千歌音は姫子を姫宮家の別荘へ誘った。 別荘は天火明村から大分離れた県外にある。 長い車の旅も終えて、リムジンから降りると目の前にはまるでちょっとしたホテルのような建物がそびえ立っていた。 「さぁ、ついたわ。ここが姫宮家の別荘よ。」 (こ、これ別荘なの…まるでホテルみたい…) 姫宮邸ほどではないが、姫子が想像していた別荘をはるかに上回っていた。 姫子が呆然として別荘を見上げていると中から数人のメイド達が出迎えてくれた。 実は本当は乙羽も来る予定だったのだが、千歌音が離れた姫宮邸からメイド長である自分まで離れる訳には行かなかったらしい。 姫子も一緒に別荘へ行くと言った時は、殺気らしきものを感じたが…。 二人は中に入り広間のソファーに座り、一息つく事に。 冷たいアイスティーを飲みながら、今後の予定を話す。 「しばらく休んだら何しましょうか?ここはすぐ近くに海があるし、山までほんの少し歩けば滝とか川もあるのよ。」 「…う~ん。じゃあ、せっかくだし海へ行きたいな。」 「ふふっ…姫子、ずっと車の中で海を見ていたものね。」 「だって久しぶりなんだもん。」 クスクスと笑う千歌音に姫子は恥ずかしそうにそう言った。 「そうね、私も久しぶりにここの海が見たいし…海水浴でもしようかしら。」 「千歌音ちゃーん。早く早く!」 ピンクの水着の上に白いパーカーを着た姫子が、浜辺で千歌音を手招きする。 目の前に広がる真っ白な砂浜に青い海が姫子を興奮させた。 まるで子供の頃に戻ったように。 遠くから水色の水着をまとった千歌音が姫子の下に走って来る。 「姫子ったら早いんだもの。」 ちょっと置いていかれた千歌音は苦笑いしながらやって来た。 「あ…ご、ごめんね。つい…」 「ふふっ、いいのよ。姫子が喜んでくれたなら。」 「………」 「姫子?」 千歌音が姫子を見上げてると、なんだかぼうっとした顔で姫子が千歌音を見つめていた。 「どうしたの姫子?」 「えっ、あ…ううん、何でもないの!」 姫子は顔を赤らめ両手を振った。 (千歌音ちゃん、水着姿も素敵なんだもん…見とれちゃうよ) プライベートビーチで、2人きりの時間を満喫する姫子と千歌音。 海で泳いだり、パラソルの下で寝そべって日光浴も楽しんだ。 「千歌音ちゃん」 「?」 姫子の声に振り向くと、カシャッと姫子がカメラで千歌音を撮った。 「きっと綺麗に撮れてるよ」 「もう、さっきから姫子ったら私ばかり撮ってない?」 ぷくっと頬を膨らませ、反論する千歌音。 姫子はカメラを置いて千歌音の下へ駆けてくる。 「だって水着姿の千歌音ちゃんなんてめったに見れないもん。この際に撮って置かないとね。」 「も、もう…っ!」 恥ずかしげもなくそんな事を言ってくる姫子に、照れた千歌音は海水をピシャッとかけた。 「きゃっ…やったね、千歌音ちゃん!」 姫子も千歌音に負けずにかける。 二人ではしゃぎ、海水をかけ合っていると突然波が千歌音の足をさらった。 「きゃっ…!」 「千歌音ちゃん…危ない!」 バランスを崩した千歌音を姫子がとっさに抱きとめた。 「大丈夫?千歌音ちゃん!」 「え、ええ…ありがとう姫子。」 千歌音が姫子から離れようとすると、ギュッと姫子の腕に引き寄せられた。 「姫子…?」 顔を上げると姫子の顔が間近にあった。 「千歌音ちゃん…」 「ひ…め…」 唇が近づいてくる。 触れ合おうとしたその時…。 「お嬢様ー!」 「 …っ!! 」 遠くから千歌音を呼ぶメイドの声が聞こえた瞬間、二人は慌てて離れた。 「な、何?どうかしたの?」 少し戸惑ったように千歌音はメイドに尋ねる。 「お電話が入っております。メイド長の乙羽様からです。」 「乙羽さんから?ちょっと待っていて。すぐに行くから。」 「かしこまりました。」 一礼したメイドは別荘の中へ戻って行く。 「ごめんなさい、姫子。ちょっとだけ外すわね」 千歌音は申し訳なさそうに姫子に謝った。 「ううん、気にしないで…」 千歌音が別荘へ入って行ったのを確認すると、ひとり残された姫子は気まずくてもう少しで千歌音の唇に触れるはずだった自分の唇を指で押さえた。 (私ってば…) あの後、戻ってきた千歌音としばらく海水浴を楽しんだ姫子は夕食の時間までにシャワーを浴びる事にした。 数十人は入れるであろう広い浴室の中に入り、シャワーの栓をひねる。 突然浴室のドアの向こうから声がした。 「姫子?」 「…千歌音ちゃん?」 「私も入っていい?」 「えっ、ええと…うん。」 ここは千歌音の別荘なのに断りなんて聞く必要はないのだが。 そんな事を考えていたら、浴室のドアが開く音がした。 姫子の横にやって来た千歌音は隣のシャワーの前に立つ。 ちらっと千歌音を見ると、白い肌が姫子の視界に入った。 (やっぱり…綺麗だなぁ、千歌音ちゃんは…) 長く艶やかな黒髪、真っ白な肌、引き締まった腰、すらりと伸びた手足。 その千歌音の身体を熱いお湯が濡らしていく。 姫子がその様子をじっと見つめていると、千歌音が不意にこちらを見た。 「なぁに?」 「えっ…あ、えっと…海水浴楽しかったね。」 姫子は慌ててごまかすように話題を出す。 「ええ、明日はどこか行きたい所はある?」 「そ、そうだなぁ…そうだ、ここら辺にお土産なんて買うお店とかある?」「お土産?そうね、車に乗って町までいけばお店があるわ。行ってみる?」 千歌音が近づいて姫子の顔を覗く。 「…っ!う、うんっ。マコちゃんにもお土産買って行こうかなって思ってたから…」 姫子は千歌音の身体から顔を逸らした。 「…そう?確か町に、カフェもあったし…明日はそこでゆっくりして、明後日に山にでも行ってみましょうか?」 姫子の様子に小首を傾げながら千歌音は予定を立てていく。 姫子は適当に相槌を打ちながら頷いた。 「じゃあ先に上がるわね。」 「う、うん…」 千歌音は一通りシャワーを浴びると先に浴室を出て行った。 「はぁ…何やってるんだろう…私…」 姫子は溜め息をついた。 頭から離れないさっきの千歌音の裸体を、消そうとするようにシャワーのお湯をさらに熱くした。 夕食中、姫子は急にさっきの事を思い出して千歌音に尋ねた。 「そういえば、乙羽さんから何の用だったの?」 「ああ、無事にこちらに着いたか確認の電話よ。あと姫子にもよろしくって…」 「そっか…千歌音ちゃん?どうかしたの?」 何故か急に考え込む千歌音。 「そう言えば、乙羽さん…くれぐれも気をつけるように言ってたけど…何の事かしら?」 姫子は何故か悪寒を感じた気がした。 翌日、二人で車に乗り町へ出ると様々なお土産屋がならんでいた。 お菓子やその町の特産品、色んなお土産に目移りしながらどれにしようかと千歌音と相談し購入した。 観光客も多い為か、町には結構オシャレなカフェがあった。 その中の一軒のオープンカフェに入る。 「…じゃあお願いします。」 注文を済ませ、二人で過ごす貴重な時間。 天火明村では二人でこんなにゆっくり過ごす時間はあまりない。 姫子は大学やバイトに、千歌音は中学に通っていて、ましてや姫宮の一人娘なのだ。 暇なはずはない、お互い何かと忙しい。 「久しぶりだね。二人きりで過ごすの。」 「そうね、私も夏休みでも忙しいし…姫子も大学やバイトがあるものね。」 「千歌音ちゃんありがとう。こんな素敵な別荘へ誘ってくれて…こんな素敵な時間を作ってくれて…」 姫子は千歌音に感謝の気持ちを伝える。 千歌音とこうして過ごす時間は、姫子にとって最も幸せな時だ。 「…そんなこと…」 千歌音は姫子の手を取り、両手で包み込んだ。 「私が姫子と一緒に来たかったの。姫子と一緒だから。あの時、姫子が言ってくれたでしょう?私と一緒だから楽しいって…私も姫子と同じだから…姫子と一緒だから楽しいの。」 綺麗な瞳で見つめ返す千歌音に、姫子はドキドキしながら千歌音の手を空いた手で包む。 「千歌音ちゃん…」 気持ちいい風が吹く。 こんな穏やかで大切な人と幸せな時を過ごせて、姫子は世界一幸せ者だと思った。 その日の朝は天気が良かった。 山の中には滝と小川があるらしく、二人で見に行く約束だった。 帽子とお弁当なども忘れずに持って行く。 しばらく二人で手を繋いで森の中を歩いて行くと、どこからか水の流れる音が聞こえる。 「もうすぐ着くわ、ほら。」 千歌音が指を指した場所を見ると小川を見つけた。 その小川は澄みきっていて、中の魚や岩まで見えるほどだ。 「凄く綺麗な川だね。」 「そうでしょ。この先の上流に行くと滝があるの。さぁ、行きましょう。」 「うん。」 上流へ登って行くと辺りの空気が冷たく感じた。 滝の流れる大きな音が聞こえる。 「ほら、見えて来たわ。」 遠くの方にさほど大きな滝ではないが、確かに立派な滝があった。 「うわぁ…。」 近くまでいくと、寒いくらいに涼しく感じる。 「気持ちいいね、水も綺麗だし。こんな場所があるなんて。」 姫子はうーんと気持ち良さそうに背伸びをした。 「こうするともっと気持ちいいわよ。」 千歌音は靴を脱ぎ、岩場に座って川の水の中に足を入れる。 姫子も千歌音の隣に座って同じように足を入れた。 川の水は冷たくて、歩き疲れた足を癒やしてくれる。 二人は持ってきたお弁当を食べてのんびりと自然の中で過ごす。 いつもの慌ただしい日常を忘れ心も体も癒されていくのを感じた。 昼を過ぎたあたりだろうか。 空を見上げるとさっきよりも雲が増えている。 「もしかしたら雨が降るかも…残念だけれど、そろそろ帰りましょうか?」 「そうだね、じゃあ帰ろうか千歌音ちゃん。」 荷物を片付けて、二人で山を降りて行くと空はどんどん暗くなり、ポツリポツリと雨が振り出した。 二人は急ぐが、雨足はさらに強くなっていく。 服はもう既に濡れてしまっていた。 本当なら雨が収まるまで雨宿り出来ればいいのだが。 こんな山の中では…。 そんな事を考えながら急ぐ姫子の腕を、突然千歌音が掴んだ。 「どうしたの、千歌音ちゃん!?」 「まって姫子、こっち。」 千歌音は姫子の手を取り、帰りの道とは違う草むらの中を歩いて行く。 (どこに行くんだろう?) 「あ…」 さらに奥へ進むと、急に道が開けた。 「あそこでしばらく雨宿りしましょう。」 千歌音が指を指した先には、小さな小屋があった。 中に入ると農業に使うような道具が色々と並んでいる。 思った以上に中は広く、きちんと片付けられていて雨宿りするにはちょうど良かった。 「ここって…?」 「ここの近くに姫宮家の菜園があるの、そこの道具小屋よ。昔ここに来た事を思い出したの。まだあって良かったわ。」 「そうなんだ。」 「あ…姫子、髪が濡れてる。」 姫子の服と髪は雨で濡れてしまっていた。 千歌音が白いハンカチを取り出し、姫子の髪や頬を拭いてくれる。 「私はいいから、千歌音ちゃんだって濡れてるよ。風邪でもひいたら…」 そう言いかけて、姫子は言葉を詰まらせた。 背伸びをして姫子の髪を拭いてくれる千歌音の胸元に目を奪われた。 千歌音の服が濡れて下着が透けている。 姫子は息を飲み込んだ。 千歌音の髪は濡れ、艶やかな桜色の唇が色気を醸し出している。 「姫子?」 千歌音が姫子の視線を辿ると、服が透けている事に気づいた。 「…っ。」 千歌音は耳まで真っ赤にして、胸元を両腕で覆う。 「あ、えっと…その…ちゃんと拭いた方がいいよ。風邪…ひくといけないし…」 ハッと我に返った姫子は、慌てて詰まらせていた言葉を出す。 「え…ええ…」 気まずい雰囲気が流れる。 「あの…私、むこう向いてるから。」 姫子は千歌音から背を向けて壁の方に向かい合った。 しばらくすると衣擦れの音が聞こえた。 いま後ろで千歌音が服を脱いでいる。 (千歌音ちゃんの裸なんて何度も見てるじゃない…私ってば…) いまさら恥ずかしがる事なんて無いはずなのに、姫子の心臓は今までにないくらい高鳴っている。 「姫子…」 後ろから千歌音の声が聞こえる。 (もう済んだのかな…?) そう思って振り返ると千歌音が上半身の前をはだけ、瞳を潤ませて立っていた。 「千歌音ちゃん…!」 驚いた姫子は、前を向いて千歌音の裸から視界を遮った。 「……っ!」 だが、千歌音は姫子の背中に抱きついてくる。 背中に感じる千歌音の胸の感触。 (もしかして…私、誘われてる…?) 姫子の心臓がさらに高鳴った。 「ごめんなさい。でも、やっと…本当に…」 千歌音は姫子の服をギュッと掴み、小さな声を絞り出すように呟いた。 「二人きりになれた…」 千歌音が顔を背中にうずめる。 「千歌音ちゃん…っ。」 その瞬間、姫子はたまらず振り返り千歌音を抱きしめた。 「あっ…」 千歌音を引き寄せ、小さな唇を塞ぐ。 二人の唇が重なった。 はだけた胸に手を重ねると、下着越しに温かな体温が伝わってくる。 「千歌音ちゃん…千歌音ちゃん…」 唇を重ねながら千歌音の名前を呼ぶ。 「ひ…めこ…っ」 服に手をかけていくと、白い肩が露わになった。 そのまま一気に脱がしていく。 パサッと床に服が落ちた。 「ごめんね、千歌音ちゃん…もう私…っ」 姫子はそのまま千歌音を肩を抱きしめて囁く。 「我慢できない…」 「姫子…」 千歌音は姫子に応えるように首に手を回した。 激しい雨の音にかき消されないように、千歌音の声に耳を済ませながら首筋にキスをする。 「…ん…っ…」 耳を甘く噛みながら、ブラジャーのホックに手をかけた。 ブラジャーを外すと白くて豊かな胸が露わになる。 できるだけ優しく触れて、乳房を揉んでいると千歌音の呼吸が乱れていくのが分かった。 「綺麗な胸…白くて、大きくて、柔らかくて…」 「そんなこと…」 姫子が胸を褒め称えながら千歌音を見つめると、頬は赤らんで黒い瞳はキラキラと潤んでいた。 「本当だよ。千歌音ちゃんは全部綺麗だもん…」 指で胸の先端を撫でると、千歌音が切なそうに瞳を揺らした。 顔や肩にキスをしながら下へとさがっていく。 胸にたどり着いてその固くなった実を口へ含んだ。 「……っ…ぁ」 千歌音の腕が姫子の頭を引き寄せて抱きしめる。舌先でつついていると固さが増していくのが分かった。 立ったままの千歌音の脚が震えていた。 「千歌音ちゃん、肩に掴まって。」 姫子の肩に手を掴まらせて、身体の重心を安定させる。 唇で胸を愛撫しながら、指先はゆっくりとさらに下に降りていく。 「ぁ…っ!姫子…」 その指先を千歌音のスカートを捲って中にスッと忍びこませた。 脚を撫で上げながら、下着の上からその場所に優しく触れる。 「汚れちゃうから脱ごうね。」 そう言って、姫子は下着に手をかけると千歌音が息を飲む声が聞こえた。 指に下着をかけて下におろしていく。 「脚上げて。」 脚を上げさせて下着を脱がさせると、今度はスカートも脱がさせる。 これで千歌音は、何ひとつ身にまとっているものは無くなった。 その美しい裸体を姫子の前に晒している。 「綺麗だよ、千歌音ちゃん…」 その美しい裸体を姫子がうっとりと見つめている。 「…あんまり…見ないで…」 姫子は恥ずかしそうに俯いて、顔を真っ赤にしている千歌音の腕を掴んで引き寄せた。 「きゃっ‥!」 姫子のもとに倒れこんできた千歌音を床に押し倒す。 「あっ…やだっ…!」 いきなり膝に手をかけて脚を開かせた。 千歌音が驚きと非難の声を上げる。 目の前の姫子に全てをさらけ出した千歌音。 姫子の視線が一点を見つめている。 「やっ…」 恥ずかしさのあまり瞳をギュッと瞑った。 「あっ…!」 姫子がそこに顔をうずめた。 「だめっ…やめてっ!汚いから…っ」 千歌音が姫子の顔を引き離そうとするが、力の入らない手では抵抗すらできない。 姫子の手に手首を掴まれて、動きを封じられる。 「大丈夫だよ、千歌音ちゃん…」 「でもっ、汗とかかいているし…それに…」 「誘ったのは千歌音ちゃんだよ、いまさら止められないよっ…」 姫子はもう感情を抑えきれないとでも言うように、再び顔をうずめた。 「あ…姫子っ…!」 千歌音の視界が涙で歪んだ。 「んっ…はぁ…っ」 姫子の舌が触れてくる。 その場所を時には優しく、執拗に、我を忘れて。 「千歌音ちゃん…」 姫子は許しを請うように、こちらを見ながら舌で愛撫し続けている。 「全部もらってもいい?…千歌音ちゃんの…」 指が入り口に少し侵入した。 「あ…」 何を言ってるか分かっている。 まだ入れたことのないその奥は、姫子にすらまだ上げてはいない。 初めての経験に不安を感じたが、相手は大好きな人だ。 拒否する理由はどこにもなかった。 (姫子になら…私…) 千歌音がこくりと頷いたのを確認して、姫子の指が奥へ入る。 「っあ…‥」 千歌音はまだ幼い。 中も狭くて姫子の指はすぐにそこへ到達した。 それはその奥を守るように膜を作っている。 姫子は身を強張らせる千歌音を抱き寄せて、安心させるように額にキスした。 「少し痛いかもしれないけど‥ごめんね」 そう言った瞬間、姫子の指がさらに奥へと進む。 そして…。 「……あっ」 千歌音はその瞬間、姫子の手によって守られていたものが破られた事を感じた。 「いっ…‥」 すぐに痛みを感じた。 ギュッと姫子にすがりつく。 「千歌音ちゃん、痛かった?大丈夫?」 姫子が心配して千歌音の頭を優しく撫でる。 しばらく指を動かさずにじっとしていたら、千歌音が姫子の方へ顔を向けた。 「もう、いいから…」 「でも…まだ痛むでしょ?」 「大丈夫…まだ少し痛むけど…」 「いいの?」 千歌音が頷いた。 姫子はありがとうと言って唇を重ねる。 ゆっくりと優しく指を動かすと、千歌音が首を反らした。 「あっ…姫子…っ」 いままでは入り口までだったが、初めて入った千歌音のその奥は温かくて脳まで溶けてしまいそうだった。 雨の音がまだ微かに聞こえる。 きっとまだ降っているのだろう。 姫子はそんな事を考えながら千歌音を抱き続けた。 「お嬢様方!ご無事でしたか!」 別荘へ戻ると、帰って来ない二人を心配したメイド達が慌てて出迎えに来た。 「大丈夫よ、心配かけてごめんなさいね。少し雨宿りをしていたものだから…」 先ほどの雨が嘘のように、空は晴れている。 あの後、雨が止むまで二人で抱き合ったまま、あの小屋で過ごしていた。 ただの通り雨だったのだろう。 思ったよりもすぐに止んでしまった。 二人で着替える為に部屋に戻る途中、千歌音が姫子の腕に自分の腕を絡まてきた。 「ねぇ、姫子…今度はちゃんとお返しさせてね。」 「お返し?お返しならもうして貰ったよ。」 「そうじゃなくて…いつも姫子にばかりにしてもらってるから…その…」 顔を赤くして見上げてくる千歌音の顔を見て、姫子は自分の顔まで赤くなるのが分かった。 (そっか…だから千歌音ちゃん、私を誘ってたんだ…) 千歌音が言うお返しとはきっとそうゆう事なのだろう。 姫子は答える代わりに、千歌音の手をキュッと握った。 「千歌音ちゃん、花火やらない?」 別荘で過ごす最後の夜、姫子はこっそりと買って持って来た花火を取り出して千歌音を誘った。 浜辺で出て、波の音しか聞こえない静かな海の前で夏旅行最後の夜を過ごす。 花火もあっという間にほとんど終わり、最後の線香花火に火をつけた。 「楽しかったね。本当に来てよかったな。」 「来年も二人で来ましょうか?ここに…」 「本当?いいの?」 「ええ、もちろん。」 綺麗な千歌音の横顔を見て姫子は耳元で囁いた。 「…お返しもまだ貰ってないしね。」 「な…!もう、姫子っ…」 二人で笑い合って、寄り添い夜空を見上げた。 (私、きっと忘れない…千歌音ちゃんがくれた素敵な思い出…) だがこの時二人は思ってもみなかった。 この先に再び二人を引き裂く運転が待ち受けていたなんて…。 何も知らない二人をただ夜空に浮かぶ月が静かに見つめていた。 終わり。
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神無月の巫女 エロ総合投下もの 初めてのチョコ 初めて会ったのは雪の積もった道端。 倒れていた少女を姫子と下女数人が見つけた。 下女に囲まれながら姫子は倒れている少女へと手を差し伸べる。 それを見た下女の一人が、汚れたようなものを見るような目で倒れている少女を睨み付け姫子に囁く。 「姫様、汚れますわ」 「イズミ、バカなことを言わないの、それより…これは大変だわ、大丈夫?貴女、お名前は?」 その少女は長い黒髪に長襦袢を一枚着ており明らかに寒そうだった。 息を切らしながら声を吐き出してくる「ひ、姫宮…ち、千歌音です」 そして姫子と顔を合わした瞬間、両者は顔をピンク色に染めた。 一瞬だった、その顔にはお互いがなにかを感じ取った…まさに言う、一目惚れというものだ。 「っ!ああ…そ、そう…私、私は来栖川姫子よ、よろしくね、千歌音」 「は、はい…ひ、姫子」 微笑みかけてきた姫子に安心したのか千歌音も微笑んで名前を呼び返す。 それを見た下女数人が騒いだ、特に長い青髪でカール丈にしている少女が千歌音に掴みかからん勢いで騒ぎ出す。 「なあっ!?あ、貴女ねえ!姫様に対してなんですの!?」 「おやめなさい!」 「だ、だってこの子、私達の姫様に向かって――」 「聞こえなかったのイズミ?」 「…うう、は、はい」 「それよりこのままでは風邪を引いてしまうわ、屋敷へ連れて行きましょう」 その会話を聞きながら千歌音は意識が遠のいていった――。 気がつくと大きな広間にいた、下女数人と正面に姫子がいる。 「大丈夫?どこか痛むところはない?そうね…このままではいけないわ、なにか着たほうがいいわね」 「は~い、では私が準備します(はあ、どうしてこんな子をお屋敷に、それも姫様のお部屋に…)」 「いえ、私が用意するから結構よ」 と、姫子は立ち上がり後方へと向かうと引き出しを探り一枚の華やかな着物を取り出す。 「これを着るといいわ」 それを見たイズミが発狂する。 「なっ!?そ、それは姫様専用の!い、いけませんこのような子に姫様のものを――」 「いいのよ、いいの…私が着せたいもの、ね、千歌音もこれでいいわよね?」 お日様のような優しい微笑みでそう言われ、困惑していた千歌音も小さな口調で「……はい……」と答えた。 イズミがいきり立つ。 「あ、貴女ねえ!少しは遠慮ってものを――」 「イズミやめなさい!私の言うことが聞けないの?」 「う……わ、わかりました、お部屋へと案内します」 渋々従った表情で千歌音をキッと睨み付けると悔しそうな表情で着物を着せる。 そして、下女全員で姫子に頭を下げると千歌音を連れて部屋を出る、そして少したつと千歌音に向き直り、先ほどとは打って変わって まるで上から見下ろすような表情で軽く睨むと両腰にそれぞれ手を当てて話し始める。 「貴女、姫宮さん?少し姫様に優しくされたからっていい気になってるのではございません?」 「…ひめ…さま?」 「そうですわ、何百年とと続く来栖川の一人娘でらっしゃいますの、非の打ち所のないお方、私達のお姫様こと姫様 はっきり申し上げますけれど貴女とでは身分や立場が違いすぎますことよ、あまり勘違いなさらないよう、わかって頂けるかしら?」 「貴女なんか姫様と口を利けるような人間じゃないのよ」「まったくですわ」 イズミを含めた下女達にそれぞれ言われ千歌音が困惑する、すると――。 「はい、そこまで」 髪の短い少女が現れた、イズミ含めたお嬢様風の下女達とはまた雰囲気の違う女の子だ、この子も下女の一人だろう。 「さ、早乙女さん、な、なんですの?わ、私達は姫宮さんに――」 「いいから行け!」 怒鳴られひいっと退散していく下女達を尻目にその少女は千歌音に近づく。 「私は早乙女真琴、よろしく千歌音」 「どうして私の名前を」 「ああ、乙羽さんから聞いたから…ってあ、部屋に案内するから、こっちだよ」 身寄りのない千歌音はこうして男子禁制でもある来栖川のお屋敷で下女として働くことになった。 しかし、千歌音は病弱なためほとんどの日を一日布団で過ごした、下女としての時間はないに等しかった。 働いても少ない時間で仕事は簡単で楽な仕事だけ、決して厳しい仕事を与えられることはなかった。 そしてそういう千歌音に姫子はなにも言わない、それどころか微笑んで千歌音の身体を心配するだけだった。 通常は下女に厳しい如月乙羽も千歌音にだけはなぜか甘い、それでいて食事の量は他下女と同等で食事は部屋でとることを許され、千歌音に対しては身体を考えた食事を与えられる。 だから、その優遇を気に入らないと当然のごとく同じ下女からは嫉妬を買う。 掃除の最中に嫌味を聞こえるように言われる「いいご身分ですこと」とイズミ達からの嫌がらせは仕事時は常にあった。 そんな毎日が続いたある日、2月14日。 「ごほっ…ごほっ!」 その日の朝から咳が酷くて寝込んでいた。 「はあっ…ごほっ!」 隣では姫子が看病してくれている。 「千歌音…どこか他に苦しいところはない、大丈夫?」 「はい…ごほっ、大分よくなりました、いつもすみません姫様」 「私は私がしたいからしているのよ、それよりちゃんと寝てなさい」 「はい、すみません」 起き上がっていた千歌音が頭を下ろし再び横になる。 千歌音の頬が染まっているのは熱だけのせいではない、姫子が近くにいるからだ。 色んな仕草にドキドキしてしまう、シルクのような髪に触れる仕草。 そしてそれは姫子も同じ、千歌音といると胸がドキドキする、こんな気持ちはいままで感じたことがない。 あの日、千歌音と初めて出会ってから…こういう気持ちを抱くようになった。 「千歌音……好き」 眠っている千歌音の黒髪に軽く触れると額に唇を寄せていく…そして触れる寸前。 「お嬢様」 乙羽の声に我に返ると静かに離れた。 「なに」 「少しよろしいでしょうか」 「千歌音の傍にいまはいたいの、ごめんなさいね」 「姫宮さんには下女をつけます、そろそろ来栖川家一人娘としての自覚と立場をお持ちください」 少し強い口調でそう言われ姫子は黙る。そしてため息をつくと「わかったわ」の声と同時に部屋を出て行った。 千歌音は夕方に目を覚ました、気分がよくなったのか布団から起きて着替える。 そして部屋を出た、そうだ、今日はバレンタインデー、好きな人にチョコレートを上げるイベントの日だ。 千歌音は姫子の顔を浮かべながら調理場へと向かう。 が、皆同じ目的なのか調理場は下女でいっぱいだった、クッキーを焼く音などが聞こえる、下女は誰も千歌音と年のそう変わらない少女ばかりだ。 そして、チョコの材料、居場所などは大きくスペースをとったイズミ、ミサキ、キョウコの3人が占領していた、それに他の下女達までいるから千歌音が作る場所はない。 悲しそうな目でイズミを見つけていた千歌音…と後ろを振り返ったイズミと目が合う。 「あら姫宮さん…貴女今頃起きてきてなんですの?」「貴女いつまで寝てらしたの?」「いま何時だと思ってらっしゃいますの?」 それぞれの声に戸惑う。「わ、私はその…」 他の下女達も作業を止め千歌音を見つめていた。 「なにか私に言いたいことでもおありですの?なんだか材料を使いすぎですわ~とでも言いたい顔ですわね、チョコを作りたいと、貴女何様ですの?」 「い、いえそんな…私は」 「貴女、少しムシが良すぎると思いません?」 いつの間にか千歌音は下女達に囲まれていた。 「貴女…今日一日なにをなさってらしたの?なにかお仕事なさって?」 両腰にそれぞれ手を当てて訪ねてくるイズミに答えられない。 「なんとか言ってはいかが?」 ミサキ、キョウコも小さく「くすっ…」と微笑み見守る、事情を知っていて問い詰めているのだ。 「…ません」 「はあ?」 「なにもしてません、ね…寝てました」 その言葉に顎に手をやり呆れた表情のイズミ。 「まあ…寝てました?私達は朝早くから起きて、お仕事してるのに、貴女だけ寝てましたと…で、夕方に起きてチョコだけは作りたい… 貴女恥ずかしくありませんの?」 「……」 「それから姫宮さん、貴女、ずっと姫様に看病して頂いてたんですって?」 調理場がざわっと騒がしくなった。 「まあいくらなんでもそれはねえ、少し目をかけて頂いてるからって貴女だけ特別扱いされてるなんてね~」 イズミ達全員に責め立てられている千歌音は言い返せない、全て事実だからだ。 「貴女の食事代だってただではございませんのよ?」 そして次の非難が飛び出そうとしていた瞬間に声が聞こえた、短髪の女の子だ。 「もうやめなイズミ」 「さ、早乙女さん…な、なんですの?」 「あのさ、一人を皆で囲んで、そういうの私嫌いなんだ」 「なっ!?わ、私は事実を言ってるだけですわ」 「だから一対一で言いな、それともそこの2人がいないとなにも出来ないとか?」 とミサキ、キョウコを指差す。 「な、なんですって~!?」 「それからそこ占領しすぎ、千歌音にも少し分けてあげなよ、出ないと姫様に言う」 「な、なんで私が……はあっ」 と姫子を出されては弱いのか「す、少しだけですわ」と渋々従った様子だ。 「っ…あ、ありがとうイズミさん」 「ご、誤解なさってるようですが貴女のためにやったわけでは――」 「はい、わかってます…でも、ありがとう」 「っ…み、みやさ…?っ…わ、私は…さ、さあ続きを!」 千歌音が微笑むとイズミは顔を真っ赤にして慌てたように作業を続けた。 「はは照れてる、照れてる、さ、千歌音作るよ。私も手伝うからさ、好きなんだろ?姫様のこと」 「…っ!は、はい…」 真琴と意気投合した千歌音は一緒にチョコレートケーキ作りに取り組んだのだった――。 千歌音は夕方に目を覚ました、気分がよくなったのか布団から起きて着替える。 そして部屋を出た、そうだ、今日はバレンタインデー、好きな人にチョコレートを上げるイベントの日だ。 千歌音は姫子の顔を浮かべながら調理場へと向かう。 千歌音は姫子の顔を浮かべながら調理場へと向かう。 が、皆同じ目的なのか調理場は下女でいっぱいだった、クッキーを焼く音などが聞こえる、下女は誰も千歌音と年のそう変わらない少女ばかりだ。 そして、チョコの材料、居場所などは大きくスペースをとったイズミ、ミサキ、キョウコの3人が占領していた、それに他の下女達までいるから千歌音が作る場所はない。 悲しそうな目でイズミを見つけていた千歌音…と後ろを振り返ったイズミと目が合う。 「あら姫宮さん…貴女今頃起きてきてなんですの?」「貴女いつまで寝てらしたの?」「いま何時だと思ってらっしゃいますの?」 それぞれの声に戸惑う。「わ、私はその…」 他の下女達も作業を止め千歌音を見つめていた。 「なにか私に言いたいことでもおありですの?なんだか材料を使いすぎですわ~とでも言いたい顔ですわね、チョコを作りたいと、貴女何様ですの?」 「い、いえそんな…私は」 「貴女、少しムシが良すぎると思いません?」 いつの間にか千歌音は下女達に囲まれていた。 「貴女…今日一日なにをなさってらしたの?なにかお仕事なさって?」 両腰にそれぞれ手を当てて訪ねてくるイズミに答えられない。 「なんとか言ってはいかが?」 ミサキ、キョウコも小さく「くすっ…」と微笑み見守る、事情を知っていて問い詰めているのだ。 「…ません」 「はあ?」 「なにもしてません、ね…寝てました」 その言葉に顎に手をやり呆れた表情のイズミ。 「まあ…寝てました?私達は朝早くから起きて、お仕事してるのに、貴女だけ寝てましたと…で、夕方に起きてチョコだけは作りたい… 貴女恥ずかしくありませんの?」 「……」 「それから姫宮さん、貴女、ずっと姫様に看病して頂いてたんですって?」 調理場がざわっと騒がしくなった。 「まあいくらなんでもそれはねえ、少し目をかけて頂いてるからって貴女だけ特別扱いされてるなんてね~」 イズミ達全員に責め立てられている千歌音は言い返せない、全て事実だからだ。 「貴女の食事代だってただではございませんのよ?」 そして次の非難が飛び出そうとしていた瞬間に声が聞こえた、短髪の女の子だ。 「もうやめなイズミ」 「さ、早乙女さん…な、なんですの?」 「あのさ、一人を皆で囲んで、そういうの私嫌いなんだ」 「なっ!?わ、私は事実を言ってるだけですわ」 「だから一対一で言いな、それともそこの2人がいないとなにも出来ないとか?」 とミサキ、キョウコを指差す。 「な、なんですって~!?」 「それからそこ占領しすぎ、千歌音にも少し分けてあげなよ、出ないと姫様に言う」 「な、なんで私が……はあっ」 と姫子を出されては弱いのか「す、少しだけですわ」と渋々従った様子だ。 「っ…あ、ありがとうイズミさん」 「ご、誤解なさってるようですが貴女のためにやったわけでは――」 「はい、わかってます…でも、ありがとう」 「っ…み、みやさ…?っ…わ、私は…さ、さあ続きを!」 千歌音が微笑むとイズミは顔を真っ赤にして慌てたように作業を続けた。 「はは照れてる、照れてる、さ、千歌音作るよ。私も手伝うからさ、好きなんだろ?姫様のこと」 「…っ!は、はい…」真琴と意気投合した千歌音は一緒にチョコレートケーキ作りに取り組んだのだった――。 「っ…み、みやさ…?っ…わ、私は…さ、さあ続きを!」千歌音が微笑むとイズミは顔を真っ赤にして慌てたように作業を続けた。 「はは照れてる、照れてる、さ、千歌音作るよ。私も手伝うからさ、好きなんだろ?姫様のこと」 「…っ!は、はい…」真琴と意気投合した千歌音は一緒にチョコレートケーキ作りに取り組んだのだった――。 「っ…み、みやさ…?っ…わ、私は…さ、さあ続きを!」千歌音が微笑むとイズミは顔を真っ赤にして慌てたように作業を続けた。「はは照れてる、照れてる、さ、千歌音作るよ。私も手伝うからさ、好きなんだろ?姫様のこと」 「…っ!は、はい…」「…っ!は、はい…」真琴と意気投合した千歌音は一緒にチョコレートケーキ作りに取り組んだのだった――。 「っ…み、みやさ…?っ…わ、私は…さ、さあ続きを!」千歌音が微笑むとイズミは顔を真っ赤にして慌てたように作業を続けた。「はは照れてる、照れてる、さ、千歌音作るよ。私も手伝うからさ、好きなんだろ?姫様のこと」 「…っ!は、はい…」「…っ!は、はい…」 千歌音は夕方に目を覚ました、気分がよくなったのか布団から起きて着替える。 そして部屋を出た、そうだ、今日はバレンタインデー、好きな人にチョコレートを上げるイベントの日だ。 千歌音は姫子の顔を浮かべながら調理場へと向かう。 千歌音は姫子の顔を浮かべながら調理場へと向かう。 が、皆同じ目的なのか調理場は下女でいっぱいだった、クッキーを焼く音などが聞こえる、下女は誰も千歌音と年のそう変わらない少女ばかりだ。 そして、チョコの材料、居場所などは大きくスペースをとったイズミ、ミサキ、キョウコの3人が占領していた、それに他の下女達までいるから千歌音が作る場所はない。 悲しそうな目でイズミを見つけていた千歌音…と後ろを振り返ったイズミと目が合う。 「あら姫宮さん…貴女今頃起きてきてなんですの?」「貴女いつまで寝てらしたの?」「いま何時だと思ってらっしゃいますの?」 それぞれの声に戸惑う。「わ、私はその…」 他の下女達も作業を止め千歌音を見つめていた。 「なにか私に言いたいことでもおありですの?なんだか材料を使いすぎですわ~とでも言いたい顔ですわね、チョコを作りたいと、貴女何様ですの?」 「い、いえそんな…私は」 「貴女、少しムシが良すぎると思いません?」 いつの間にか千歌音は下女達に囲まれていた。 「貴女…今日一日なにをなさってらしたの?なにかお仕事なさって?」 両腰にそれぞれ手を当てて訪ねてくるイズミに答えられない。 「なんとか言ってはいかが?」 ミサキ、キョウコも小さく「くすっ…」と微笑み見守る、事情を知っていて問い詰めているのだ。 「…ません」 「はあ?」 「なにもしてません、ね…寝てました」 その言葉に顎に手をやり呆れた表情のイズミ。 「まあ…寝てました?私達は朝早くから起きて、お仕事してるのに、貴女だけ寝てましたと…で、夕方に起きてチョコだけは作りたい… 貴女恥ずかしくありませんの?」 「……」 「それから姫宮さん、貴女、ずっと姫様に看病して頂いてたんですって?」 調理場がざわっと騒がしくなった。 「まあいくらなんでもそれはねえ、少し目をかけて頂いてるからって貴女だけ特別扱いされてるなんてね~」 イズミ達全員に責め立てられている千歌音は言い返せない、全て事実だからだ。 「貴女の食事代だってただではございませんのよ?」 そして次の非難が飛び出そうとしていた瞬間に声が聞こえた、短髪の女の子だ。 「もうやめなイズミ」 「さ、早乙女さん…な、なんですの?」 「あのさ、一人を皆で囲んで、そういうの私嫌いなんだ」 「なっ!?わ、私は事実を言ってるだけですわ」 「だから一対一で言いな、それともそこの2人がいないとなにも出来ないとか?」 とミサキ、キョウコを指差す。 「な、なんですって~!?」 「それからそこ占領しすぎ、千歌音にも少し分けてあげなよ、出ないと姫様に言う」 「な、なんで私が……はあっ」 と姫子を出されては弱いのか「す、少しだけですわ」と渋々従った様子だ。 「っ…あ、ありがとうイズミさん」 「ご、誤解なさってるようですが貴女のためにやったわけでは――」 「はい、わかってます…でも、ありがとう」 「っ…み、みやさ…?っ…わ、私は…さ、さあ続きを!」 千歌音が微笑むとイズミは顔を真っ赤にして慌てたように作業を続けた。 「はは照れてる、照れてる、さ、千歌音作るよ。私も手伝うからさ、好きなんだろ?姫様のこと」 「…っ!は、はい…」真琴と意気投合した千歌音は一緒にチョコレートケーキ作りに取り組んだのだった――。 「っ…み、みやさ…?っ…わ、私は…さ、さあ続きを!」千歌音が微笑むとイズミは顔を真っ赤にして慌てたように作業を続けた。 「はは照れてる、照れてる、さ、千歌音作るよ。私も手伝うからさ、好きなんだろ?姫様のこと」 「…っ!は、はい…」真琴と意気投合した千歌音は一緒にチョコレートケーキ作りに取り組んだのだった――。 「っ…み、みやさ…?っ…わ、私は…さ、さあ続きを!」千歌音が微笑むとイズミは顔を真っ赤にして慌てたように作業を続けた。「はは照れてる、照れてる、さ、千歌音作るよ。私も手伝うからさ、好きなんだろ?姫様のこと」 「…っ!は、はい…」「…っ!は、はい…」真琴と意気投合した千歌音は一緒にチョコレートケーキ作りに取り組んだのだった――。 「っ…み、みやさ…?っ…わ、私は…さ、さあ続きを!」千歌音が微笑むとイズミは顔を真っ赤にして慌てたように作業を続けた。「はは照れてる、照れてる、さ、千歌音作るよ。私も手伝うからさ、好きなんだろ?姫様のこと」 「…っ!は、はい…」「…っ!は、はい…」
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神無月の巫女 ハアハアスレ投下もの もうひとつの神無月(仮題)その2 「お酒は飲める?」 演奏が終わると彼女はテーブルの上に用意されていたカクテルを勧めてくれた 「乙羽さんの…あのメイドさんの自信作なのよ おいしいから試してみて」 お酒は苦手だ 滅多な事がない限り口にはしない 体質に合わないらしくすぐに顔が真っ赤になってしまうから でも断る勇気もなく、この穏やかな雰囲気を壊したくない私はグラスに口をつけた 甘い、なんだか心地良い甘さ…ジュースのようだ 「わぁ、おいしい…」 私は無意識のうちに声を発していた 「良かった…やっと笑顔を見せてくれたわね」 彼女が微笑む 「昨日もそうだったけれど、泣いてばかりだったからあなた…」 「笑顔、ステキよ 笑ってる顔の方がずっと似合ってるわ」 顔が熱い…アルコールのせいか彼女の言葉のせいか 何を言葉にしていいかわからなくて一気にカクテルを飲み干した やけ酒ってこういうものなのかな…ぼんやりとそんな事を考えていた私の前に二杯目のカクテルが注がれた 「図書室でも…あなた、寝ながら泣いていたわ」 「千歌音ちゃんって、何度も寝言で言ってた…」 そうか、あの時に見られていたんだ また顔が熱くなる 「余計なお世話だとは思うけれど…きっと会えるわよ うん、会える だから元気出してね」 ああ…神様には恨み言は沢山あるけれど、この優しさを再び彼女に与えてくださった事は感謝しなければならない 私は二杯目のカクテルを飲み干した 「大丈夫?顔赤いわよ…ゆっくり飲まないと酔っ払っちゃうわよ」 「いいんです…幸せだったら…」震えて声にならない声 私は三杯目のカクテルを口にしていた 「え?何?」 「思い出して…また苦しむなら…忘れたままでいい…ひとりじゃないならそれでいい」 頭がグラグラしてきた 「もう泣いて欲しくない…から」 なんだか意識が遠のいていく 「もう…私たちを縛り付けてた鎖なんてないんだよ だから安心してね…」 その日の私の記憶はそこで途絶えた ここは…前世で姫宮家に居候していた時に私の部屋だった場所だ 天井の模様も照明器具も見覚えがある 私は天蓋付のベットの上で目覚めていた 頭が痛い…私は昨夜の記憶を辿る (そうか…あのまま酔っ払って意識を無くしてしまったんだ…) カーテンの隙間から差し込んでくる陽射しが眩しい 私はのろのろと起き上がると、カーテンを全開にした もう陽は高く昇っていた (何やってんだろう…私ったら また迷惑かけちゃった…) とりあえず急いで身支度を整え(とはいえ、昨日の格好のまま寝かされていたから着替えをしたわけでもなく) 階下に降りてみた 食堂で人の動く気配がしている 「あの…」躊躇いがちに声をかけてみる 「おはようございます来栖川様 ご気分はいかがですか?」 乙羽さんが振り向いた 「二日酔いのようでしたら、お薬を用意いたしますが…お食事はどうなされますか?」 「い、いえ…」 「あの、その、ご迷惑かけちゃったみたいで…本当にすみませんでした」 私は頭を下げた 「仕事もあるので、本当にもう失礼します…それで…」 私は彼女に姿を探した 「あの…」 「お嬢様ならお出かけになってます 午後までお戻りにはならないと思いますが」 乙羽さんは私の心を見透かしたかのように言う 「それまでお待ちになりますか?」 「い、いえ…とんでもない…あの、また改めて御礼に伺います よろしくお伝え下さい」 何度となく頭を下げた後、私は逃げるようにして姫宮邸を後にした 自分の記憶が無くなった後、どんな醜態を晒してしまったか知るのが怖かったという思いもあったからだ 「はぁ…本当に何やってんだろ、私」 深い溜息をついて見上げると、そこには10月の高い空が広がっていた 私はあの突然の来訪者、「来栖川姫子」の存在を本当は知っていた それはぽっかりと抜け落ちていた空白の記憶にゆっくりと浮き上がってくるように… 二週間前にお嬢様と対面した時から私の記憶は徐々に甦っていたような気がする 姫宮千歌音様…館で初めてお迎えした時に私の胸に小さな痛みが走った (初めてじゃない…このお方は…) この二週間余り、お嬢様の側にお仕えして私の疑念は確信へと変わっていった 前世でお嬢様の身に起こった哀しい出来事…何故そうなったのか私には解るわけもなかったが、あのお方が自らの存在を消し去っても何かを必死に守ろうとしていた事には気づいてしまっていた 来栖川姫子…そう、あの子の存在 お嬢様とあの子の間には、他の誰にも立ち入る事の出来ない強い絆がある 私はそれを知っている… おそらく来栖川姫子の記憶も覚醒しているのであろう あのお嬢様に接する態度を見ればすぐにわかる 愛しい主人に構ってもらいたくて必死になって尻尾をふり続ける子犬のようだ 取材というのは口実で、お嬢様に会いたくてここにやって来たのであろう しかし、お嬢様には…記憶がないようだ これは幸いな事なのであろうか? そう、幸いと思う事にしよう お嬢様の為にも、私の為にも… 私はお嬢様に忠義以上の好意を抱いていたから…それは愛情といっても差し支えない この現世ではお嬢様は姫宮家を継ぐ大事なお方 近い将来、婿養子をとりこの家を守っていかなければならない その為に今、お付き合いをしている良家の子息がいらっしゃる 私の役目は陰ながらお嬢様の支えになる事… どんな時にでも… 「来栖川さん…帰ってしまったの?」 午後、予定よりだいぶ早い時間に館に戻られたお嬢様は残念そうに言った 「ケーキ買ってきたのよ 一緒に食べようと思って…」 ケーキならわざわざ買ってこなくともいつでも用意できるのに…お嬢様はあの子を気にしている 無意識のうちに何かを感じているのか?私の心は揺れた 「仕事でお忙しいようで…一応、お引き留めはしたのですが」 私は嘘をついた 引き留めなんてしなかった むしろ早く帰ってくれと願っていたから 「それより…一条様とはいかがでしたか?こんなに早く戻られるとは思っていなかったものですから」 私は自分の中に芽生えている醜い心を誤魔化すかのようにお嬢様に笑顔で話しかける 「別に…ただ会って、他愛も無い話ししてきただけよ」 お嬢様はティーカップを持ったまま窓辺に立った 「お父様の顔を潰さない為に…これも義務だから…」 「お嬢様…」 何でそんなに哀しい顔をされるのだろう やはりあなたの心の奥底には… 「暇ね…少し馬の遠乗りでもしてこようかしら」 「うーっ、どうしよう このままじゃ記事なんて書けないし」 姫宮邸を出てから私は村のあちこちを廻ってみた しかしこれといったネタにありつけるわけもなく、頭を悩ましていた ここ数ヶ月、休みもほとんど取らずに仕事をしてきたので編集長からは「遅い夏休みだと思っていいから一週間くらいゆっくりしてきていいよ」と言われていたけれど … でも仕事は仕事だ 何とか結果を残さなくてはせっかくの編集長の厚意を無にする事になる 「ハァ、お腹も空いたな…昨夜もほとんど食べてないし」 お店も見当たらないし、一度駅の方まで戻ろうかな? 幸いな事にすぐ近くにバス停があった 「嘘っ…あと30分もバス来ないの??」 私がこの村を出てから四年余り…街の暮らしにすっかり慣れていた私にとって、この村の相変わらずの不便さに戸惑うばかりだった 仕方なくベンチに腰を掛けてバスを待つ事にした ニャーニャー… 「?」足元から聞こえてくる小さな鳴き声 ベンチの下を見ると白い子猫が震えていた 「わぁ、可愛い…」 私はそっと抱き上げた 「捨てられちゃったの?可哀想に…」ふわふわとした暖かい感触 自然と笑みがこぼれてくる 「あなたもお腹空いてるの?私もだよ…待っててね 駅に着いたら何か食べさせてあげるから…一緒に行こう」 (バスに乗せて怒られないかな?鞄の中に暫く押し込んでおいて…) そんな事を考えていた矢先… 聞こえてくる馬の蹄の音 「何?馬??」 土煙を上げて疾風のように近づいてくる影 そのけたたましい音に驚いたのか、腕の中の子猫が道に飛び出してしまった 「駄目!!危ないっ」 私は無我夢中で子猫を後を追っていた けたたましい嘶き 黒い影が覆いかぶさって時、私は馬に踏み潰されたと思った… 「!!」 時が止まったように思われた 飛び込んだ自分の下で動く暖かな存在に気がついた時、子猫も私も無事である事を知った 「来栖川さん!?」馬から降りて私の元に駆け寄ったその人は、紛れもなく「私の愛しい彼女、姫宮千歌音」だった 「ち、ちかね…」似合いすぎる乗馬服に身を包んだ彼女は、私を抱き起こしてくれた 「びっくりしたわ…急に飛び出してくるから」 「ご、ごめんなさい…」 「血が…怪我してる」 子猫を庇って転んだ拍子に手を擦りむいたらしい 鮮血が流れ出ていた 彼女は白いハンカチを出すと傷口に巻いてくれる 「怪我をさせてしまったわ…ごめんなさいね」 「い、いいえ…悪いのはこっちだから…」 「早く手当てをしましょう バイキンが入ったら大変だわ さぁ…」 彼女は私に手を差し出す 「うちに行きましょう」 「でも…」私は手を伸ばす事が出来なかった また迷惑を掛けるし、彼女の側に居れば辛くなるだけだ 「こんなの大した怪我じゃないし…本当に大丈夫ですから」 「それに、その…この子もいるし…」 私は腕の中で震えている子猫を彼女に見せた 「じゃぁ尚更ね…ねこちゃんも一緒に行きましょう」 彼女の鼓動が伝わってくる…私は背後から抱きかかえられるようにして馬に乗っていた 体が上下に動く度に、豊かな胸の柔らかさも否応なしに感じられてしまう 確か前も…前世でもこんな記憶はあった (ソウマくんのところへ連れて行って!!)彼女の心も知らずに無神経なお願いをしたものだ あの時、彼女はどんな思いで馬を走らせていたのだろうか? (ごめんね…千歌音ちゃん…) 火照る頬に10月の風が心地良く感じられた午後だった アメノムラクモを復活させたあの日、私は手に怪我を負った 今、あの時と同じように優しく手当てしてくれる彼女がいる 自ら手当てをするという彼女の言葉に乙羽さんの表情は強張っていたように見えた 「痛くない?…ごめんなさいね、怪我させてしまって」 息がかかるほどの距離…長く美しく伸びる指が優しく私の手を包んでいた 何だかもうそれだけで怪我なんて治ってしまうように感じられる 「お詫びに夕食にご招待するからゆっくりしていって」 「そんな…これ以上迷惑はかけられないし…」 「迷惑なんかじゃないわ」彼女は救急箱の蓋を閉めて言う 「最初に会った日に言ったでしょう?私ね日本には知り合いなんてほとんどいないの だから友達もいないし…毎日が退屈…ひとりで摂る食事も寂しいわ」 (ひとり?寂しい?…千歌音ちゃんあなたは恵まれた生活の中で幸せに生きてるんじゃないの?) 長い睫毛を伏せて寂しそうに語る彼女を見て私の心は痛む あぁ、そんな顔を私に見せないで…今すぐにでもあなたを抱きしめてあげたくなる… ほんの少し手を伸ばすだけでその願いは叶うというのに… 「それにその子にも…ご飯食べさせてあげなきゃ」 彼女は私の隣で丸くなっている子猫に優しい眼差しを向けた 「ね、その子の為にもそうして」 私はただ小さく頷く事しか出来なかった 「本当に可愛いわね」 たっぷりとミルクと子猫用の餌を貰ったその猫は食事のお茶を飲む彼女の腕の中でじゃれついていた 「ねぇ、この子どうするの?あなたが飼う?」 そうか、拾ってきたのは良いがその後の事なんて全く考えていなかった 「どうしよう…うちのアパート、ペット禁止だったんだ…」迂闊だった 「いいわよ、うちで飼ってあげるから」 思いがけない彼女からの申し出 「但し条件つきよ」 「条件?」 「そう…時々はこの子の様子を見に来てあげて…それが条件」 (それってまたここに…来てもいいって事?猫の事を口実にして千歌音ちゃんに逢えるって事?) 「どう?」 「あ…はい…」混乱したままその言葉だけが先に出ていた 「良かった 契約成立ね」彼女は嬉しそうに子猫を抱き上げた 「良かったわねヒメコ…仲良くしましょうね」 「!?」 「フフ、名前…貰っちゃった ちょうど雌だし「ヒメコ」って名前、可愛いものね この子にピッタリだと思うの…嫌だったかしら?」 気のせいか彼女の頬が赤くなっている気がした 「い、いえ…嫌なんかじゃ…」それ以上に私の顔は茹で蛸のように赤くなっているはずだけど… 「その…ヒメコの事…宜しくお願いします」 「後でお風呂に入って綺麗にしましょうね…可愛いリボンもつけてあげるわ」 この猫のヒメコは幸せ者だと思った これから先ずっと、優しい彼女の元で愛情を注いでもらえるのだから そう思うと何だか嬉しいんだか哀しいんだかわからなくなってくる… コンコン… 「失礼します」ドアがノックされ乙羽さんが顔を出した 「来栖川様に…面会の方がいらっしゃっていますが、どうされますか?大神神社の「大神ソウマ」様だと申されてますが…」 「ソウマ君が?」何でここに居る事がわかったのだろうか? ともかく私は彼女に中座する非礼を詫び、玄関先まで出てみる事にした 「申し訳ないのですが、当館は旦那様がいらっしゃる時以外は男子禁制ですので、お知り合いの方でも中に入れる事は出来ませんのでご了承ください」 私はその乙羽さんの言葉に従い、玄関の外に出た 「よう、久しぶりだな」 少し照れ笑いをしてポーチに立つその人は、確かに大神ソウマくんであった 「神社に来てた近所のお婆さんが『姫宮の令嬢が街から来てる女の子と一緒に馬に乗ってた』って言ってたからさ… たぶん来栖川の事じゃないかなって思ってさ」 「それで逢いにきてくれたの?」 「昨日カズキ兄さんから来栖川が来たって聞いてさ、またうちに寄ってくれるんじゃないかと待ってたんだけど…」 「結局、おまえ来なかったし…その、少しは…心配してたんだぞ」 ソウマ君は咳払いした 「昨夜はどこに泊まったのかなって…兄さんの話じゃ暫くこっちに滞在するみたいだって言ってたし、こんな田舎じゃろくな宿泊施設なんてないだろう? まさか、野宿でも…なんてね」 「訳あってここに泊めてもらったの…ごめんね、心配させて」 ソウマくんも変わらず優しいな、と思ったら自然と笑みがこぼれてきた 「そうか…そうならいいんだ」 それから私たちは庭にある東屋でお互いの近況について語り合った ソウマくんは大学卒業後、大手企業に就職したものの、会社の体質に疑問を感じたった三ヵ月で退社してしまったと笑いながら言った 「俺、そもそも都会の暮らしなんて肌に合わなかったんだよなぁ 大学の時も何となく勉強して何となく恋愛して、いつしか目的も失っちゃってさ… 今は…こっちに戻ってきて良かったと思ってるんだ 教職に就きながら神社の手伝いして…いずれは神社を継ごうと思ってるんだ 俺…ここの村で生きていく事にしたんだ」 「そうなんだ…一流の大学出て一流の会社に就職して、もったいないような気もするけれど、でも…ソウマくんらしいかも ふふっ」 何だか学生の頃に戻ったような時間が流れていく 「来栖川…おまえ…」 「何?」 「その…逢えたのか?おまえを待っててくれる人ってのには」 ソウマくんは夜空を見上げて言った 「うん…逢えたよ」胸に痛みが走った 「そうか…逢えたのならいいんだ 良かったな」 「…」 「?幸せなんだろ」 「うん…その人が…大切なその人が幸せに生きてきてくれたから…私はそれで幸せ 例え…私の事を思い出してくれなくても…今はそれでいいと思えるようになったの…」 声が震えてくる 「来栖川…おまえ…」 「バカだって思うでしょ?でもいいの…その人は昔、大きな運命の流れに呑まれて、とても哀しい想いをして、ひとりで寂しい時期を過ごしてきた… だからもう二度と同じ事繰り返して欲しくないっ 幸せに笑って生きていて欲しいのっ…その為なら、私、我慢する、出来るって誓ったの… その人の幸せを想いながら大好きな気持ちを忘れずに、ひとりでも生きていく、生きていける… ごめんね、変な事言って…何言ってるのかわかんないよね…」 私はそっと目尻を拭った 「本当に…バカだよ おまえって…」 「そんな人生でいいのか?これから先の長い人生、そんな想いを抱いたままひとりで生きていくっていうのか?」 ソウマくんは突然、私の手を取り力強く握りしめた 「俺じゃ力になれないのか?やっぱり俺じゃ駄目なのかっ来栖川!!」 「ソウマくん…」 私はマコちゃんからも大神君を振るだなんてバカだと言われ続けた 本当にバカな話しだと自分でも思う でも…でもやっぱり駄目だ… 「来栖川さん…」 振り向くといつの間にかそこに彼女が立っていた 瞬間的に私はソウマくんの手を振り払う 何だかドキドキしてしまう 彼女は猫のヒメコを抱いたままゆっくりと私たちに近づいてきた 「お話し中に悪いのだけれど…あなたのお仕事のことで大事な話しがあるのを思い出したから」 「あっ…じゃあ、俺」ソウマくんはバツが悪そうに頭を掻いた 「悪かったな、来栖川…その…また神社の方にも顔を出してくれよな じゃあ、またな」 ソウマくんは彼女に軽く会釈した 「お邪魔しました」 「ごきげんよう…」 やっぱりソウマくんの記憶の中からも彼女の存在は消えていた 無表情に去っていくソウマくんの後姿を見送る彼女…何だか、怖い… 「あの…」 私は躊躇いがちに彼女に声をかける 「仕事のことって…」 「ごめんなさいね、お話し中だったのに…忘れるといけないと思ったから」 ニッコリと笑う彼女 「乙羽さんから聞いたのだけれど、うちの敷地内に古い祠があるらしいの そこには何やら古文書も奉られているらしいわ それってあなたの取材に役に立つのではないかと思うの…見てみる価値はあるかも」 「そうなんですか…」 「今日はもう暗くなってしまったから無理だけど、明日の朝、行ってみない?私もお供するわ」 「ありがとうございます…でも…」 「そうなさい…だから今晩も泊まっていってね 遠慮しなくていいから」 こういうのをなし崩し的に…とでも言うのであろうか? 正直、こんな状態のまま彼女の側にいるのは辛い…けれどもそれと同時に彼女の側にいられるだけで幸せだと感じてしまう自分がいる事も確かだ そんな心の葛藤があるまま、結局、私は彼女の言葉の通り、またその日を姫宮家で過ごす事になってしまった →もうひとつの神無月(仮題)その3
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神無月の巫女 エロ総合投下もの 転生後 夏のプレゼント ◆M2vRopp80w氏 人通りが多い街の通りを歩くと、うるさいくらいに鳴き響く蝉の声と日差しに照りつけられ熱されたアスファルトが、姫子に真夏の季節が訪れた事を感じさせる。 眩しいくらいの太陽の光に目を細めた。 今日は大学の授業が午前中までだったので、必要な物を買って帰ろうと街へ寄った。 しかしこの暑さでは日射病になりかねない。 姫子は早く買い物を済ませ、家に帰ろうと思った。 その時だった。 一瞬、通り過ぎた店に振り返りショーウィンドウを覗くと一着のワンピースに目を奪われる。 色は淡い水色で、デザインはシンプルだが清楚で爽やかな印象のワンピースだった。 姫子は真っ先にそのワンピースが似合うであろう人物を思い出す。 (素敵なワンピース…きっと千歌音ちゃんに似合うだろうな…そうだ!) 姫子は何かを思いつくと店の中に入って行った。ちょうど数日前にバイト先からボーナスを貰ったばかりだった。 値段は少しばかりしたが、どうしてもそのワンピースを手に入れたかった姫子は店の定員に声をかけた。 「すみません、あのワンピースを下さい。」 姫宮邸に帰りついたのは夕暮れ時だった。 姫子が門の前にあるインターホンを押して名前を言うと、大きな門が自動で開く。 邸に入ると大勢のメイド達が出迎えてくれた。 「お帰りなさいませ、来栖川さま。」 「ただいま帰りました、あの…」 先頭に立って出迎えてくれたメイド長の乙羽に、姫子が尋ねようとしたその時、ちょうど階段からその人物が降りて来た。 「お帰りなさい、来栖川さん。」 まだ帰って来たばかりだったのか、制服姿の長い黒髪の美少女が姫子に気づき、笑顔で階段を駆け降りてくる。 「ただいま、千歌音ちゃん。」 嬉しそうな少女に姫子も自然と笑顔になる。 姫宮千歌音。 この姫宮家の一人娘で、姫子の愛する想い人。 長い黒髪に、すらりとした細い身体、彫刻のように美しい顔立ち。 まだ幼いはずの千歌音はどこか大人の女性のような艶やかさと色気を感じさせた。 「もうすぐ夕食の時間だから一緒に食べましょう?」 「うん、分かった。じゃあ着替え来るね。」 姫子は自分の部屋に戻り服を着替える。 姫子には懐かしいこの部屋は、あの前世の頃と全く変わっていない。 千歌音と再会してまだ数ヶ月。 姫子が街の交差点で、同じ貝のネックレスをしている少女と出会ったあの日、姫子は全ての記憶を取り戻した。 抱きしめた少女は姫子の事を一切、覚えていなかった。 それが千歌音だった。 記憶は無かったが、千歌音も漠然とたった一人の想い人を待っていたらしい。 姫子が同じ貝を着けている事に、千歌音も何かを感じ取っていた。 そんな二人が惹かれ合うのには時間はかからなかった。 いまでは想いが通じ、再び恋人同士になった姫子と千歌音。 先月から居候し始めたのも、千歌音からの提案だった。 両親が居ないひとり暮らしの姫子に、良かったら姫宮邸に住まないかと言われ、一瞬躊躇したが千歌音とまた一緒に過ごせる事が嬉しくてお世話になる事にした。 姫宮邸は男子禁制だが姫子が女である事と、千歌音と顔見知りである事で何とか承知して貰えた。 あの時の千歌音の嬉しそうな顔は今でも覚えている。 コンコンとドアのノックがした。 「はい、どうぞ。」 「失礼致します。来栖川様、お食事の用意が出来ましたのでどうぞ一階の方へ。」 夕食の知らせを乙羽が告げにきた。 「ありがとうございます。すぐに行きますから。」 私服に着替え、一階に降りダイニングルームへ向かうと既に千歌音が座って待っていた。 「お待たせ千歌音ちゃん。」 「いいえ、じゃあ食事にしましょう。」 テーブルの上を見ると、最近何故だか椎茸が入った料理が多いような気もするが…。 (前にも椎茸が沢山入ってたような気がするんだけど…) 夕食を食べながら、姫子と千歌音の会話は楽しく弾んだ。 夕食もお風呂も済ませ部屋で過ごしていると、千歌音が姫子の部屋へやって来た。 千歌音を部屋に呼んだのは姫子だった。 「あ、千歌音ちゃん。ちょっとここに来てもらえるかな?」 「…なぁに?」 不思議そうに首を傾げる千歌音の前に、大きな紙袋を差し出す。 「はい。」 「…私に…開けてみていい?」 「もちろん。」 千歌音が紙袋から箱を取り出し、中を開けると水色のワンピースが入っていた。 「これ…」 「あのね今日街に行った時、このワンピースを見かけて千歌音ちゃんに似合うんじゃないかって思って…気づいたら買っちゃった。」 「でも…私…誕生日でも、特別な日でも無いのに…いいの?」 「うん、千歌音ちゃん。着てくれる?」 「………うん。ありがとう姫子さん。」 照れくさそうに頬を赤らめ、はにかみながらお礼を言う千歌音。 まだ記憶を取り戻していない千歌音は、姫子の事をこう呼ぶ。 これでもやっと下の名前で呼んでくれるようにはなったのだが。 「それとね千歌音ちゃん、お願いがあるんだけど…」 「お願い…?」 「千歌音ちゃん、もうすぐ夏休みでしょ?あの、もし良かったら…デートに行かない?」 「デート?姫子さんと…」 それを聞いて、千歌音はさらに顔を赤く染めて下を俯く。 「あ…そっか、千歌音ちゃんは夏休みでも部活とか、お茶会とかあるよね。忙しいよね、ごめんね無理言って…」 少し気まずくて姫子が背を向けると、手をキュッと握られた。 「千歌音ちゃん…?」 「…行きたい。」 小さな声で呟いた千歌音は、今度は顔を上げて姫子を見つめる。 「姫子さんとデートに行きたい。」 「いいの…?」 「うん…。」 こくりと千歌音が頷いたのを確認した姫子は、嬉しくて頬を少し染めた。 「これ…デートに着て行ってもいいかしら?」 「うん…!きっと似合うよ。」 姫子は実はそのつもりで買って来たのだが、千歌音には秘密にして置いた。 きっと数日後に見るワンピースを着た千歌音は、誰よりも綺麗だろうなと姫子は思った。 その夜、千歌音がもうそろそろ眠りに就こうとした頃だった。 遠慮がちに小さくコンコンとノックする音がした。 (こんな時間に…?誰かしら…) 「どうぞ。」 声をかけるが返事が返ってこない。 一向にドアを開けてくる様子もないので、千歌音が不思議に思いながら静かにドアを開けると、そこには姫子が立っていた。 「姫子さん?」 「ちょっと…いいかな?」 とりあえず部屋の中に姫子を招き入れた。 「ごめんね、もう寝るところだったんでしょ?」 千歌音はもうネグリジェに着替えていた。 見れば就寝するところだったのがわかる。 「ええ…それよりどうしたの?こんな時間に…」 「……あのね、最近千歌音ちゃん…何か私に隠してない?」 姫子が尋ねると、千歌音の表情が一瞬だけ変わったのを見逃さなかった。 「あ…何か困った事とか、悩みがあるんだったら何でも話して欲しいの。ほら、千歌音ちゃん色々大変でしょ?」 「……何も。」 「え?」 「何もないわ…悩みも特にないし、毎日忙しいけれど…もう馴れているし。」 「そっか…」 (でも、千歌音ちゃん何か隠してる…私に言えない事なの…?それとも乙羽さんにだったら話せるの?) 姫子は不意に、あの時乙羽と一緒に楽しそうに笑っていた千歌音の笑顔を思い出した。 「そういえば、千歌音ちゃん最近乙羽さんと一緒に居る事…多いよね?」 「……っ!」 その時、千歌音の肩ビクッと揺れた。 明らかに狼狽したのがわかる。 「千歌音…ちゃん?」 「……」 何故かその場で、千歌音は黙り込んでしまった。(どうして?どうして何も言ってくれないの…?千歌音ちゃんやっぱり…乙羽さんと…) 姫子はきゅっと唇を噛み締める。 胸が痛い、苦しい、それは明らかに姫子の嫉妬だった。 乙羽の前で見せていた笑顔も、あのワンピースも姫子の隣で見せて欲しかったのに。 それなのに…。 姫子の心の奥に抑えきれない何かが破裂しそうだった。 「あ…あの、実はね…乙羽さんに…」 長い沈黙の後、ようやく千歌音が口を開くと後ろからドアのカギを閉めたような音がした。 「えっ…?」 そして今度は、部屋の照明まで消えて真っ暗になった。 暗くなった部屋を、わずかな月明かりだけが照らしてくれている。 「姫子さん…?」 千歌音が振り返ろうとすると、後ろからギュッと抱き締められた。 「あっ…」 「千歌音ちゃん…」 姫子は、千歌音が離れないように力を込めてさらに身体を密着させた。 「あのっ…姫子さ…ん」 突然の事に慌てた千歌音は姫子の方へ顔向けた。 「どうし…んっ…!」 不意に唇が塞がれて、千歌音は言葉を発せなかった。 姫子はキスをしながら千歌音を正面に抱き寄せてくる。 「ん……ぁ…っ」 何度も角度を変えながら口づけをする。 息継ぎも出来ないほどのキス。 姫子が舌で千歌音の唇を何度か舐めると力が抜けたのか、千歌音の唇がわずかに開いた。 躊躇うことなくそこに舌を入れる。 柔らかくて甘い口づけに酔ってしまいそうだった。 「…はぁ…ちゅ…んっ」 千歌音が姫子の背中に腕を回し、ギュッと服を握りしめる。 立っていられないのだろう。 姫子より少し小さな身体が腕の中で震えている。 「千歌…音ちゃ…ん…」 唇を離さないまま、姫子はすぐ側の窓際まで千歌音を抱きかかえ壁に押さえつけた。 「んっ…はぁ…っ」 ようやく解放された唇から、つうっと糸が引いた。 千歌音の肩が揺れている。 姫子の胸元に頭を寄せ、呼吸を整えているようだ。 「ひ…姫子さん…どうしたの…」 千歌音はいつもの姫子とは違う様子に、少し怯えているように見えたが頬は赤らんで上気している。 それがより一層、姫子の欲情を湧き上がらせた。 何も言わず姫子はネグリジェの上から千歌音の脚に触れてくる。 「あっ…やっ…!」 千歌音が姫子の手首を掴んで止めようとしたが、逆に姫子に掴まれ押さえられた。 「じっとしてて」 それだけ言うと、ネグリジェの裾を捲り上げ直に細い脚に触れてくる。 「……っ!!」 あまりにも急な求め方に、千歌音は怖くなって身体を固くした。 姫子はお構いなしに千歌音の耳にもキスをしてくる。 「んっ…や、くすぐった…い」 くすぐったくて身をすくめ抗議するが、姫子は止めてはくれなかった。 窓から差し込む月明かりが、千歌音の白い脚を照らした。 美しくてすらりと長い脚を姫子は優しく撫でる。 「姫子…さ…」 唇は首筋を這い、右手は脚を撫で、左手で腰を引き寄せる。 千歌音の深い湖のような瞳が、視点が合わず段々と虚ろになっていく。 脚を撫でていた手は千歌音の腰を撫で、いつの間にか胸元にたどり着いていた。 幼い千歌音の胸は前世の時までではないが、中学生にしては豊かだった。 姫子は、柔らかくて弾力があるそれをゆっくりと揉み始めた。 「やぁっ…」 姫子の耳元に千歌音の吐息がかかる。 おもわずゾクッとして千歌音の首筋を強く吸った。 唇を離すと紅い痕がついた。 「痕…残っちゃうね。」 姫子はそれを承知でつけたのだ。 肌の露出が多いこの季節にわざと見えるように、しかも一番見えやすい首筋につけた。 まるで千歌音は自分の恋人である証のように…。 「そんなの…誰かに見られたらっ…」 「見せてあげればいいよ、だって千歌音ちゃんは…私の恋人でしょ?」 「やん…っ!」 不意に姫子が、千歌音の胸の先端をネグリジェの上から指で摘んだ。 衣服の上からでも固くなっていくのがわかる。 「……んっ!」 千歌音は恥ずかしくて、じっと見つめてくる姫子の顔から自分の顔を逸らした。 だが、姫子の手が服の中に入り込んでくる。 千歌音はハッと息を飲んだ。 姫子の掌が直に胸に触れる。 「千歌音ちゃんの…大きい…胸って揉んでいると大きくなるんだって。」「え…っ?」 姫子が何故か唐突にそんな事を口にした。 「まさか…千歌音ちゃん、誰かに触らせたりとかしてないよね…?」 「なっ…そんな事、あるわけ…ないっ!」 ムキになって抗議する千歌音に姫子はさらに問いただす。 「本当に?例えば…乙羽さんとか…?」 「わ、私は…乙羽さんにだって、何でそんな事…」 千歌音の黒い瞳が滲む。 泣き出してしまいそうなか細い声。 姫子は千歌音をいじめたいわけではなかったが、あまりにもその姿が愛しくて、ついそんな事を言ってしまう。 「じゃあ、証明してくれる?」 「証明…?」 「千歌音ちゃん…私の事好き?」 千歌音は疑われたくないのか素直に頷く。 「それなら私を好きだって証明して」 姫宮邸の庭は広くて、周りの近所から屋敷の中はほとんど見える事はない。 その点では安心だった。 ましてや夜なんてほぼ見えないだろう。 まさか姫宮邸の窓から、一人の美少女が淫らな姿を晒しているなんて、きっと誰も思うはずがない。 「……っ」 曇りひとつも無い、大きな窓に手をついて涙を浮かべた千歌音の姿が窓に映る。 月明かりに照らされた千歌音の肌が、白く浮き上がりさらに美しく見えた。 姫子は後ろから千歌音を抱きしめ、千歌音の胸を愛撫している。 優しく、もどかしく、だが時々指で固く尖った先端を刺激してくる。 「千歌音ちゃん、綺麗…」 「やっ…もう、やめ…て」 潤んだ瞳で訴えられても、今の姫子には何の効果もない。 逆に姫子を燃え上がらせるだけだ。 「千歌音ちゃん…証明してくれるんじゃなかったの?」 「でもっ…こんなの…」 いくら何でもこんな体制は千歌音には恥ずかしかった。 もう深夜を回っている。 誰にも見られる心配は無いだろうが、千歌音は安心出来なかった。 「大丈夫…もうみんな寝てるよ…」 「あっ…駄目っ!やあぁ…っ」 姫子の指がショーツの中に侵入してきた。 熱を持ったように熱いそこに触れると、クチュッと濡れた音がした。 「感じてくれてるんだね、千歌音ちゃん…嬉しい。」 千歌音が窓に視線をやると、頬を染め嬉しそうに千歌音を見つめる姫子が映っている。 窓に映った二人の視線が合わさった。 まるでお日様のように優しい眼差しに、千歌音は視線を逸らす事が出来ない。 窓に映った姫子が目を細めた瞬間、千歌音の中に姫子の指が入ってきた。「…ぁ…」 「熱い…」 千歌音の身体が強張った。 姫子の指が千歌音の体温に包まれる。 そこは温かくて溶けてしまいそうなくらい心地良かった。 「はぁっ……姫子さ…ん?」 しばらく中に入れたまま、一向に動き出さない姫子の指。 わずかに不服を持ったような千歌音の声の呼びかけに、姫子はある提案をした。 「ね…千歌音ちゃん、自分で動いて見せて…」 「えっ…?」 「自分で腰を動かすの。千歌音ちゃんが、ね…」 姫子が空いている手で千歌音の腰を撫でた。 言葉の意味を理解した千歌音は、顔を真っ赤に染める。 「いやっ…!そんなの出来ないっ…」 子供のように嫌々と首を横に振る。 「じゃあずっとこのままだよ。」 声はこんなにも優しいのに、どうして姫子はこんな意地悪な事をするんだろう? 千歌音が姫子に抱かれたのはこれが初めてではない。 初めて抱いてくれた時は、あんなにも優しくしてくれたのに…。 自分自身に、いつもとは違う形で熱い想いをぶつけてくる姫子。 例えどんなに酷い事をされても千歌音は姫子を受け入れてしまう。 「千歌音ちゃんは私の事嫌い…?」 窓に映っている意地悪な姫子は、どこか悲しそうにも見えて千歌音の胸の奥を締めつけた。 「……っ」 姫子が嫌いなはずがない。 千歌音はそんな姫子を見たくなかった。 姫子が悲しむくらいなら、自分が耐えればいい。 そう思った。 千歌音は唇を噛みしめ、ゆっくりと腰を動かした。 「あ、っ…」 声を出すのが恥ずかしくて、さらに唇を噛む。 千歌音の耳にも聞こえるほど、クチュクチュと濡れた音がする。 窓はギシギシと軋み、千歌音の腰が淫らに動く。 「ひ…め…姫子さ…っ!」 千歌音は虚ろな瞳で姫子の名を呼ぶ。 千歌音に求められている事が、姫子は何より嬉しかった。 「千歌音ちゃん」 急に姫子が指を動かし始めた。 千歌音の奥まで突き上げるように。 「あっ…もう…っ…」 はらはらと大粒の涙を流す千歌音。 姫子の指が容赦なく千歌音を責めたてる。 そして…。 「――あっ!」 千歌音が身体を大きく震わせた。 膝の力が抜け、倒れそうになった千歌音を姫子が抱きとめる。 「千歌音ちゃん、千歌音ちゃん…」 姫子は千歌音を愛しそうにぎゅっと抱きしめ、何度も名前を呼ぶ。 「…姫…子、さん」 (私は…この人が好き…) 千歌音は姫子に応えるように、力が入らない腕で姫子をぎゅっと抱き返した。 「……っ…」 しばらくずっと二人で、その場に座り込んだまま抱き合っていると姫子の微かな泣き声が聞こえた。 「……姫子さん?」 千歌音が身体を離して姫子の顔を見上げると、姫子が泣いていた。 「どうして…どうして泣いてるの?」 姫子が泣いているのを見て、千歌音は胸が痛んだ。 「私、私のせい…?何か姫子さんを泣かせるような事した…?」 「違うの。千歌音ちゃんのせいじゃない。千歌音ちゃんは何も悪くないよ…悪いのは…」 そう、悪いのは自分だ。 千歌音の記憶が無いからと、勝手に不安になって嫉妬して、千歌音のせいではないのに…。 千歌音を無理やり抱いてみても、結局最後は虚しさが残るだけだ。 前世では千歌音を苦しめ、悲しませていたのは自分なのに。 きっと今では姫子の方がもっと千歌音の事を愛している。 姫子はこんな自分勝手な自分の気持ちに嫌悪したのだ。 姫子が黙って泣き続けていると、突然ふわりと柔らかな感触に包まれた。 「ち…千歌音ちゃん…!?」 姫子は千歌音に抱きしめられていた。 慰めるように姫子の頭を優しく撫でる千歌音。 「泣かないで…貴女が泣くと私も悲しくなる…。」 「千歌音ちゃん…」 千歌音は姫子の涙を細長い指で拭ってくれた。 千歌音の瞳には今にも溢れそうな涙が浮かんでいる。 「あのね、私…千歌音ちゃんと乙羽さんの仲に嫉妬してた。千歌音ちゃん、乙羽さんと一緒にいる時すごく楽しそうにしてたから…。それにずっと千歌音ちゃんに避けられてるような気がして…」 「それは…その…違うの。」 千歌音は少し口ごもり、姫子から視線を逸らした。 「……え?」 「…あのね」 千歌音は立ち上がり、クローゼットの中から箱を取り出してきて姫子の前に置いた。 「これ…何?」 「開けてみて…」 姫子が箱を開けてみると、中には淡いピンクのワンピースが入っていた。 「千歌音ちゃん…これ…」 「あのね、乙羽さんに頼んで用意してもらってたの…姫子さんのワンピース…」 「私の…?じゃあ…」 「その…姫子さんとお揃いにしたかったの。デートに着ていくワンピースを…だから、その…姫子さんには前日まで内緒にしていてって…乙羽さんに頼んでたの。」 千歌音はそう言うと顔を赤くして恥ずかしそうに俯いてしまった。 「それじゃあ…あの時避けられてた気がしたのは…」 「本当は早く渡したかったけれど、その…姫子さんを驚かせたくて…」 千歌音の声が段々と小さくなっていく。 「ほ、本当はお揃いなんて子供っぽいんじゃないかって不安で…だから乙羽さんに頼んでどういうのがいいか相談…してたの…」 最後の方は消え入るような小さな声で、真っ赤になりがながら千歌音は本当の事を話してくれた。 「だから…それ受け取ってくれる?」 姫子は不安そうに見つめてくる瞳を、真っ直ぐに見つめ返した。 「もちろん…だって、千歌音ちゃんが私のために用意してくれたんだもん。嬉しい…ありがとう千歌音ちゃん。」 にっこりと姫子が笑うと安心したのか、千歌音も笑顔になった。 (そういえば…あの別れの時、千歌音ちゃんと約束したっけ…) 姫子は思い出していた。 前世の別れの時、姫子と千歌音はわずかに残された時間の中で、お揃いの服を着てお出かけしようと約束をした事を。 (でも千歌音ちゃん、記憶は戻ってないみたいだし…) もしかして心の奥底で、覚えていてくれたのだろうか?あの時の約束を…。 「それと千歌音ちゃん…さっきはごめんね。酷い事をして…」 「ううん…もう気にしないで。」 千歌音は優しく微笑んでくれた。 姫子は嬉しくなって、千歌音を再び抱きしめる。 「大好き…千歌音ちゃん。」 「…私も、私も姫子が好き…」 「…?千歌音ちゃん、いま姫子って言った?」 「えっ…」 「私のこと、姫子って言ってくれたよね。」 喜んで嬉しそうな笑顔を向けてくる姫子に、千歌音は顔を赤くした。 「私そんなこと…」 「嘘、いまちゃんと言ったよ。」 「…し、しらないっ…!私そんなこと言ってない!」 千歌音は、嬉しそうな姫子になんだか少し悔しくてムキになる。 姫子はそんな千歌音も愛しく思った。 (でも…いまは記憶が無くてもいい…だっていまはこうして千歌音ちゃんと同じ気持ちだから…) もしかしたら千歌音がこの先、いつか思い出す時が来るかも知れない。 その時は、前世の思い出を二人で沢山話そう。 「お休み千歌音ちゃん…」 「お休みなさい姫子…」その夜、二人は同じベッドで寄り添って眠りについた。 あの前世の夜よりも、幸せな気持ちに包まれて。 終わり。