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神無月の巫女 エロ総合投下もの 姫千歌   「千歌音ちゃん…!」 白昼堂々、交差点の真ん中で抱き合っているのに、人の目なんて気になりもしなかった。 姫子は千歌音の細い身体をぎゅっと力を込めて抱きしめなおした。 「姫子…ずっと、待っていたのよ」 耳元で千歌音の声が震える。ため息と同時に感情も吐き出してしまったような、そんな声に 背筋がゾクゾクした。 背中に千歌音の腕を強く感じる。 嬉しい。触れ合って居られる事が、ようやく巡り合えた事が、何よりも嬉しかった。 「千歌音ちゃん……おかえりなさい」 もう、姫子はすべてを思い出していた。 前世も、最愛の人の事も、どうしてそんな大切な事を忘れてしまったのかも。 肩に、こつんと千歌音の額を感じた。甘えるようなその仕草がなんだか可愛くて、嬉しかった。 「ええ、ただいま、姫子。…逢いたかったわ」 「千歌音ちゃ――あれ?」 姫子は千歌音の肩に手を置いて身体を離すと、千歌音を上から下までまじまじと見詰めた。 切れ長の瞳に、お人形さんのように整った綺麗な顔。柔らかそうな白い肌に、腰より長い 艶々の黒髪。 「姫子?」 「千歌音ちゃん――なんだか、縮んでない?」 くすり、と笑う千歌音は、確かに千歌音そのものだったのだけれど。 「同じ村に住んでたんだ…」 姫子は、千歌音に案内されて場所を移した豪邸の前で、呆然とため息をついた。 こんなに近くに住んでいたなんて。しかも、村で知らないものが居ないほど有名な姫宮家の お嬢様だったなんて。 「なのに、姫子ったら全然探し出してくれないのだものね」 千歌音が少し拗ねたように笑いながら、大きな門を開ける。しかしそれは千歌音にも同じ事が 言えるはずだった。 「千歌音ちゃんだって…」 私に気付かなかったんだから、おあいこじゃない。そう言おうと思ったけれど、千歌音の 楽しげな顔を見てやめた。それに、『探し出してみせる』と言ったのは紛れもなく姫子だったから。 「…でも、仕方ないわね。ちょっと遅れてしまって、同い年にはなれなかったのだもの」 「遅れてって――」 どういうこと?尋ねようとした言葉は、出迎えのメイドさんたちに遮られた。 「お帰りなさいませ、お嬢様。…そちらの方は?」 「ええ。こちらは来栖川姫子さん。私の大切なお客様よ。音羽さん、来栖川さんと大切な話が あるの。お茶は要らないわ」 言外に近寄らないように、と言い含めて千歌音は颯爽と屋敷の奥に歩き去っていく。音羽や メイドたちにぺこりと頭を下げると、姫子も千歌音に手を引かれて、その後に続いた。 カチャ、と部屋の鍵を回して、次の瞬間には姫子は千歌音を再び抱きしめていた。 「千歌音、ちゃん…!」 「あっ。姫子…」 首筋と腰に手を当てて、強く強く引き寄せる。艶々の黒髪に頬擦りして距離を詰めて、できる 事なら間に何も無い一つの存在になれたらいいのにと思った。 どんなに抱きしめあっても、触れ合っても、足りない。 再会できた喜びと、愛しさと、嬉しさが全身を満たしていく。同時に、想い人が近しい存在に なってはじめて、これまでの渇望が抑えきれないほどに表面に出てくるのを姫子は感じていた。 好き。 愛しい。 そんな言葉じゃ、全然足りない。 「姫……んっ」 少し身体を離してこちらを見上げてきた千歌音に、姫子は噛み付くようなキスをした。 再会した瞬間から、ずっとこうしたかった。 千歌音ちゃんとなら、誰になんて言われたって構わない。 そう思っていたのは――今でもそれは変わらないけれど――たしかに本当のこと。だけれど、 だからといって進んで見世物になる気も無かったし、そんな千歌音を誰にも見られたくないという 独占欲もあったから、ずっと我慢していたのだ。 触れ合った唇から、全身に喜びと感動が広がっていく。 ――本当に、確かに、千歌音ちゃんはここに居る。 唇を割って舌を差し入れると、熱い千歌音のそれがおずおずと応えて来た。 舌を絡めて、歯列をなぞって、歯茎の柔らかい部分を愛撫する。舌の付け根のあたりを くすぐると、姫子の服を掴む千歌音の手にぎゅっと力が入った。 甘い、唇。千歌音もそう感じてくれているのだろうか。 交換する唾液も甘くて、こくんと喉を鳴らして飲む千歌音に愛しさが募った。 唇の隙間から、角度を変えて口付けを交わすたびにいやらしい水音が部屋に響いて、 だんだんと気分が高まっていくのを感じていた。 目を開けて、唇を離す。 「んっ。…あ、は…ぁっ…。姫…子……」 千歌音がうっとりと姫子を見上げてくる。頬が上気していて、年下のはずなのに艶っぽかった。 こんな千歌音ちゃんを誰かに見せてあげるなんて、冗談じゃない。 念の為に、と姫子はカーテンを引いた。 「千歌音ちゃん…ずっと会いたかったよ。この四年間、ずっと待ってた。誰なのかも分からない けど、顔も覚えてなかったけど探してた。会えて、嬉しい…」 「私なんて、生まれてからずっと貴女を…姫子を待っていたのよ。月に居た時間も合わせたら、 二十年になってしまうわね」 待っていた時間が長いほうが想いが強い、なんて事はないと思うけど、なんだか得意気に 千歌音は言った。 「あっ、ずるい。それだったら私だって生まれたときから千歌音ちゃんを待ってたんだから、 二十年だよ」 そう言えば、千歌音ちゃんは今何歳なんだろう、と姫子は首を傾げた。 初めて会った時と同じくらいに見えて、だからかほとんど違和感が無い。最後に会ったあの 時のままだ。違和感を感じるとすれば、それは姫子が大人になってしまったからなのだろう。 「覚えていなかったくせに?」 「千歌音ちゃんだって、さっき全部思い出したはずでしょ?」 くすり、と笑いあう。 どうやって、千歌音がここに今存在しているのか。どうして今世でまた回り逢えたのか。 聞きたい事は、沢山あった。 言いたい事も沢山あった。会えなかった間の事、今の姫子のこと、千歌音への想い。 でも、そんな事より先に、今ここに千歌音が確かに存在しているという事を全身で確かめ たかった。 言葉より感覚で、確かな実感を得たかった。 「千歌音ちゃん…私、私ね…」 「姫子?」 「あの時言った事は、全部本当だよ。千歌音ちゃんが好きで、本当に愛してる」 「姫子…」 千歌音の瞳が濡れたように潤む。少し切ないような顔になって、眉根を寄せた。 「千歌音ちゃんをずっと待ってたの。もう、待てないの」 目を閉じて小さい声で姫子の名を呼ぶ千歌音の頬にそっと口付けて、唇で涙の筋を拭って いく。 「姫子…姫子…!」 まるであの別れの続きのように、千歌音が姫子の胸にしがみついて、涙を流す。 思い出した今となっては、その記憶は昨日の出来事よりも鮮明で近しいもので、だからこれは確かに、 あの離別の時の続きに他ならなかった。 「だから…良いよね?」 こくん、と頷く千歌音を確認すると同時に、姫子は千歌音の柔らかい唇を自身のそれで強く塞いだ。 夢中で唇を交わしているうちに、段々と脚に力が入らなくなってきたのを姫子は感じていた。 必死に口付けに応えてくれている少し年下の千歌音は、ぎゅっと姫子の服を掴んで、かろうじて 身体を支えている。 細くて今は姫子より少し小さい身体を抱え込んで、少し押すように歩いて移動すると、ベッドに ぶつかる。膝を折られた千歌音がポフ、と軽い音を立ててベッドに座り込んだ。 目を閉じていたから状況を把握できていなくて、びくっと身体を竦ませる千歌音が可愛いかった。 驚いて目を開けると唇を離して、立ち上がろうとする。 「ふぁ…っ?あ……姫子…っ」 「だめ」 その肩を軽く上から押さえて制止した。何事かを訴えようとした唇を姫子の唇で遮って、揉む ように啄んだ。 甘い。 さっきも思った事だけれど、唇が、ヒトの唾液が甘いなんて事が本当にあるなんて。 自分の唾液はいつも無味なのに、不思議だった。 「くぅ……ん、ん…んぅ…」 「千歌音ちゃん…」 そのまま肩に掛けていた手に力を込めて、ベッドの上に押し倒した。 「千歌音ちゃんの唇、すごく甘くて美味しいよ。千歌音ちゃん…」 形のいい紅い唇が唾液に濡れて艶っぽく輝いている。 「ぁっ…姫子…っ」 「ねぇ、千歌音ちゃん。千歌音ちゃんもそう思ってくれた?」 言って唇を啄む合間に、思い出していた。あの千歌音がオロチになったと告げてきた夜の事を。 千歌音もまた思い出したのだろう。苦しげに顔をしかめて、今にも泣き出してしまいそうだった。 「あ……そんな顔しないで、千歌音ちゃん。そんなつもりで言ったんじゃないの…ほんとだよ」 細い身体をぎゅっと抱きしめる。首筋に顔を埋めて、キスを散りばめていく。熱い吐息と切ない 喘ぎの合間に、千歌音の唇から言葉が漏れて、繰り返される。 『ごめんなさい』 どうして千歌音ちゃんは謝るんだろう。謝られる度に胸が切なく疼いた。 愛してる、って。 千歌音ちゃんとならこういう事したい、って。抱きしめて、キスしたいって。 あの時、ちゃんと伝えたはずなのに。 「ね…千歌音ちゃん。忘れちゃったの?」 「忘れてなんか…っ。私が姫子に何をしたか――」 「違うよ、千歌音ちゃん」 「えっ」 多分、勘違いしているだけなのだろうけど。もし、忘れているのなら。 ――もう一度、しっかり伝え直そう。今度は、疑う余地も無いくらいに。 「せっかくの綺麗なワンピースが、皺になっちゃうね」 胸のふくらみをワンピースの白い生地越しにそっと撫でる。 「んっ…!」 びくりと身体を強張らせて、千歌音が目を閉じた。凄く、初々しくて可愛い反応。 もっとそれを見ていたくて、手の平で柔らかく両胸を撫でさする。いちいち反応する千歌音が 可愛くて、ちょっと意地悪したい気分だった。 「くぅ…ん、はっ…あ、あぁっ…」 「千歌音ちゃん、やっぱり胸おっきい…」 二十歳になったというのに、結局姫子の胸はそれほどには育っていなかった。標準といえば 標準、ちょっと小ぶり。その程度だ。 それに対して千歌音は、記憶にあるのよりは若干小さいような気がしないでもなかったけれど、 やはり豊満な体つきをしていて、少し不公平だと思う。 と言っても、こうして触れてみたのは初めてだから、以前の正確な大きさなんて分からない のだけど。 指の腹で、胸の先端あたりを撫でてくすぐると、千歌音の唇から熱い吐息と甘い声が間断なく 漏れる。 服の上からもつんと硬くなってきているのが微かに感じ取れて、それを知ってしまえばもう 我慢できそうになかった。 千歌音の背を浮かせてワンピースの止め具を外していく。 「やぁ…、あん、姫…子…っ」 「優しくするから…任せて、千歌音ちゃん」 「姫子…っ、でも…私、私も」 「だめだよ、千歌音ちゃん。今は私のほうがお姉さんなんだから」 鎖骨にそって這わせていた唇で首筋にキスして回りながら、耳元で囁く。形のいい耳たぶを 甘く噛んで、舌先で耳の付け根をくすぐった。 お姉さん、って自分で言っていてもなんだか変な気分だった。確かに姫子のほうが年上だった けど、記憶が戻った今となっては、姫子も千歌音も精神的にはあの時のままなのに。 それでも、この四年間の経験と成長は姫子の中に確かに根付いている。 千歌音はどうなのだろう、と気になった。姫子は千歌音と出会ってからの日々をやり直した だけだったけれど、千歌音は生まれてからこの年頃になるまでを二回も繰り返したのだ。 やっぱり、両方とも記憶を持っているのだろうか。そうなると混じってしまって大変なんじゃ ないだろうか。 気になって尋ねると、意外にもあっさりと答えは返って来た。 「両方あるけど、変わらないわ。あ、んんっ…ちょっと、姫子…喋っている時くらい、やめっ…ぁ」 「変わらない?」 「くぅ…ん、……姫子と出会うまでは、どちらも同じような人生だったもの。…そうね、考えてみる と周囲の人たちの年齢とか、クラスメイトの顔ぶれとかは変わっているけれど…さして重要な事 ではないでしょう?」 以前の記憶はあるけど今世に比べてぼんやりしているから、気にも留めなかった、らしい。 というより、考える暇が無かっただけなんじゃないかな、と思った。なにしろ、記憶を取り戻した のはついさっきの事なのだから。 姫子も姫宮邸に来てようやく千歌音の家柄を思い出したところだった。 記憶が戻った今となっては、千歌音が姫宮のお嬢様である事なんて当然の事だと思えるのに、 知らされるまで思いつきもしなかったのだ。多分、そういうものなのだろう。言われないと、 何かがないと思い出さないような、そんな薄い記憶。 「ただ、姫子ともう学園生活を送れないのは、ちょっと寂しいわ。……姫子との日々だけは、 こんなにもはっきり覚えているのに」 「千歌音ちゃん…っ、私も寂しかったよ。千歌音ちゃんが居なくて、毎日寂しかった。 足りないのは分かるのに、何が足りないのか分からなくて、ずっと…」 「姫子…」 唇が重なる。深まるわけでもなく、ただ重ねあうだけ、触れ合うだけの柔らかいキス。 しばらくの後唇を離して、姫子は千歌音のスリップに手を掛けた。 「大好きだよ、千歌音ちゃん……だから、もっと、千歌音ちゃんをちょうだい」 目を閉じて微かに頷く千歌音に、愛情と感謝を込めてもう一度口付けた。 姫子の指が、千歌音の身体を柔らかく愛していく。 声を抑えきれない。まだ敏感な部分を触られたわけでもないのに、あられもない姿で いやらしい声を上げる自分の姿を頭の冷静な部分が見つめていて、恥ずかしかった。 しかし、それもすぐに考えられなくなっていく。 姫子の手はもどかしいくらいに優しくて、涙が出るくらい切ない。 ――どうして、こういう風にしてあげられなかったのだろう。 考えても仕方のない事。あの時はああするしか千歌音には残されていなかったし、 納得済みの行動だったはずなのに、そんな後悔が頭をもたげた。 こんな風に優しく愛して、姫子の『初めて』をもらって行きたかった。 泣かせることなく、苦しませる事なく。 それが、偽らざる千歌音の本音だった。 もしそうだったら、どんなに素敵だっただろう。 千歌音のしたことを姫子は許してくれたけれど、それで良いと言ってくれたけれど。 姫子は、ただただ優しく千歌音を感じさせようと頑張ってくれているのが分かる。 経験の無い千歌音が怖がらないように、辛くならないように。 安心させるように優しいキスと甘いキスを繰り返して、次第に千歌音の心と身体を柔らかく していく。開かせていく。 「ふぁ…あぁっ……!ひめ…こ…っ」 身悶える千歌音の腕を取って、姫子がワンピースとスリップとを身体から完全に取り去った。 近くにあった椅子に投げ掛けて、次は下着に取り掛かっていく。 何がなにやら分からないうちに下着もなくなってしまって、心許ない気分になった。 「恥ずかしい…」 「あっ、だめだよ、千歌音ちゃん。ちゃんと見せて」 姫子の手が、胸の前で組んだ千歌音の腕を取り払う。 うっとりと目を潤ませて、頬を紅潮させる姫子を見ていられなくて、恥ずかしくて、千歌音は 目を閉じて顔を背けた。 「千歌音ちゃん……すごく綺麗」 「や、やだ…っ」 耳も塞げればいいのだけど、姫子に両手を抑えられたままでそれは叶わなかった。 「いや?…でも、千歌音ちゃんのここ…」 姫子が千歌音の胸に顔を近づける。 「や…っ、み、見ないで…っ!」 姫子に、一糸纏わぬ姿を、まじまじと見られている。 生まれたままの姿を、素の千歌音を曝け出している。 それだけで、もう背筋を何か得体の知れない感覚が這い上がってくるのを感じていた。 以前は何度も一緒にお風呂に入ったりしていたのに、どうした事だろう。 姫子が胸の先に顔を近づけて、そこに頬擦りした。 「ゃん…っ!」 ピリピリとした何かが胸の先から伝わって、胸の奥に快感がわだかまる。お腹の下のほうが、 脈打っているのが分かる。 「ね?触ってみると分かるでしょ?…千歌音ちゃんのここ、固くなってる」 姫子が、嬉しそうに無邪気に笑う。 「そんなの、言わないで…っ」 「千歌音ちゃん…可愛い。千歌音ちゃん…」 熱に浮かされたように姫子が囁く。 「姫子のほうが…可愛――あっ、んっ」 胸の先に息を吹きかけられる。驚いて姫子を見ると、姫子はこっちを見ていなくて、ただ胸の 先をぼんやりと――頬を紅潮させて見詰めていた。 荒くなった吐息が千歌音のそれを刺激している事にも気付いていないのだろう。 唇を近づけて束の間逡巡すると、ちらりとこちらを見上げてきて、千歌音と目があうと慌てて 顔を離した。 「あっ、ち、千歌音ちゃん」 「姫子…。姫子の好きにして良いから」 ――私は貴女を好きにしたのだから。 触れるか触れないかの微妙な指遣いで、姫子の手が千歌音の全身を柔らかく愛撫していく。 もどかしいその刺激に集中して、感覚がより鋭くなっていく。 たまに敏感なところを指が通り過ぎると、ただ触れられただけなのにはしたない声を上げて しまって、でもそれを恥ずかしいと感じる余裕も既に無くて、千歌音はただ身悶えた。 姫子の唇が首筋から鎖骨、肩、脇腹と移って行って、キスの跡がそれに続く。時折舌で肌を 舐められて、その都度耳の奥がざわざわするような快感が起こった。 薄く紅い徴。 姫子に愛された、その証左が身体に散りばめられていく。 優しく付けられたそれはすぐに消えてしまいそうに薄くて、それが少し切ないような気もして、 でも季節柄誰かに見られるかもしれない事を考えると少し安堵していた。 優しい全身へのキスと、柔らかい指。愛撫の間にあるいは最中に、千歌音の名前を囁く甘い声。 そのどれもが千歌音に快感と感動を与えていく。 「っあ…あぁ…。んっ…姫子……」 「千歌音ちゃん……。…大好きだよ、千歌音ちゃん…」 姫子の舌が胸のふもとを舐めてくすぐる。 少し上につうっと舌を滑らせて、先端に到着する前にまた下りていった。 「んっ…」 新たな刺激への緊張と期待に強張っていた体から力が抜ける。姫子の唇はそんな事 お構いなしに胸から下りてお腹の方へと移っていった。 さりげなく内腿に這わされた手は、まるでまじないの文様を描くかのように膝の裏から 脚の付け根までを撫でさすっている。 反対側の内腿には、いつの間にか姫子の唇が移って、そこにもキスを散りばめ、愛していく。 「ん、…っふぁ、あっ…ぁん…!姫、子…っ」 「ん…。あ…千歌音ちゃんのここ……すごく綺麗」 唇を離した姫子がうっとりと言う。反射的に脚を閉じようとしたけれど、快感に腐抜けた身体には 力が入らなくて、姫子の手にあっさりと抑えられてしまった。反対に一層脚を広げられる。 何て格好をしているのだろう。 はしたないところを、姫子の眼前にいやらしく晒している。 息がかかるほどの距離で、姫子がじっと千歌音の女の子の部分を見詰めている。 羞恥と快楽に、そこがうごめいて震えているのが感じ取れた。 「――っ!」 姫子の指が、不意に敏感な突起に触れて、千歌音は高い声をかみ殺して喉を震わせた。 びくん、と身体が弓なりに反って背が浮く。お腹から膝くらいにかけてがじんわりと妙な感覚に 包まれていて、千歌音の女の子の部分がいやらしく脈動する。 これは―― 「あ…もしかして、千歌音ちゃん…軽くいっちゃった?」 言われて、悟った。 「くぅ、ふ…はぁ…んっ。…いやっ…恥ずかしい…」 ベッドのシーツを強く掴んで引き寄せる。ベッドから半ば剥がれたそれに身体を包んで、 姫子の目から隠れてしまいたかった。 「……っ!…ごめんね、千歌音ちゃん。……もう、私…我慢できない、かも…」 シーツの隙間から千歌音を抱きしめて、姫子が耳元で熱っぽく囁く。荒い息が耳から首筋を 絶えず温めていて、冷房は効いているはずなのにあついと思った。 姫子の手が、先ほどまでとは違って、性急に千歌音の身体をまさぐっていく。擦り付ける ように身体をこすり付けてきて――布の感触が裸の胸になんとも言えない刺激を加えた。 「あっ…!…ん、…姫子も、脱いでくれない…?」 一人だけ裸で居るのが恥ずかしかった、と言うのもあったけれど。 姫子ともっと触れ合いたかった。間に何も挟まない、素の肌と肌で、二人自身で。 姫子の身体を、見たかった。白くて柔らかい身体をしっかり覚えていたかった。 「えっ。あ…うん…」 本当は自分の手で脱がせたかったけれど、力も入らなくて手を出しかねているうちに、 姫子はさっさと洋服を脱いでしまった。 下着姿になって、それも外そうと背中に手を回す姫子の頬は赤い。やはり恥ずかしいのだろう。 慌てているのか、ホックを外すのに四苦八苦している姫子を眺めながら、千歌音は手を 伸ばして布越しに姫子の胸に触れた。そっと包み込んで撫でる。 「ぁん…っ!やだっ、ち、千歌音ちゃん?」 「あなたの身体、やっぱりとても柔らかいのね」 ちょっと懐かしいと思ってしまう感触。二人の運命が回り始めたあの日、あるいは千歌音が 姫子を苛んだあの日に感じた感触と、それはいささかの変わりも無かった。 「ただ、ちょっと大きくなったかしら」 「それでも、千歌音ちゃんよりは小さいから…恥ずかしいんだけど」 「可愛いわ、姫子…」 「千歌音ちゃん…」 姫子のショーツに手を掛けて、少しずづ下にずらしていく。 「んっ…!」 姫子がぎゅっと目を閉じて、恥ずかしげに顔を背けた。 次第に露になっていく姫子の秘所。 ショーツを膝まで下ろすと、其処とショーツとをつぅっと繋いでいたいやらしい糸が切れた。 「姫子も…こんなにしていたの?何もしていないのに?」 「やぁっ…!やだっ…千歌音ちゃん、そんな事言わないで…」 「姫子……」 感動だった。千歌音から触れられてもいないのに、姫子も感じてくれていたなんて。 「もうっ。…続き、して良いよね?千歌音ちゃん…」 こく、と頷く。恥ずかしい。 いちいち、許可を求めなくても良いのに。何をされても、文句なんて言うはずは無いのに。 さっさと自分のショーツを脱ぎ捨てた姫子は性急に千歌音が包まるシーツを剥ぎ取ると、 打って変わって優しく身体を重ねてきた。 「はぁ……っ」 「く、ふ…ぅ」 身体を重ねると、まるで最初から対であつらえてお互いが存在しているかのように、 ぴったりと合わさった。 離れがたいほどに、ぴったりと、しっとりと合わさって違和感が無い。 かかる身体の重みさえ丁度良いと思えるほどに。 二人は、ぴったりと合わさっていた。 姫子の腕の中で、千歌音の身体が快感に震えている。 切ない吐息に堪え切れなくなった喘ぎを混ぜて、可愛い声で啼いている。 全身へのもどかしい愛撫で酷く鋭敏になっているらしい千歌音の身体は、ほんの少しの刺激 でも過剰と思えるくらいに反応を返すから、見ている姫子のほうが堪らなくなった。 「千歌音…ちゃ……!」 胸の先を口に含んで、強く吸って、軽く噛んで、舌先で回すように転がす。もう片方の胸にも 手を這わせて、先端をこね回すように弄る。 空いた手は、身体を支えるのに使われている。でもそれだけじゃ物足りなくて、もっと触れ 合いたくて、千歌音の背中に回してすべすべの肌を撫で回していた。 姫子と同様、千歌音の月の巫女の徴は、もう其処には無いのだろうか。 「はぁ…あっ、ん…!くぅ…んっ……!ぁあ…っ姫子…!」 ――優しくしようと思っているのに。優しくしてあげる、ってさっき言ったばかりなのに。 姫子は、千歌音の美しく乱れる様に激しく欲情していた。 初めての感覚だった。 自分で触っているわけでもないのに、姫子の女の子の部分は熱く溶けていて、じわり、と いやらしい液体が溢れ出す感覚がはっきりと感じ取れた。 身体の中で荒れ狂っている激しい感情の波に身を任せて、千歌音に叩きつけてしまいそうに なる。 でも。 でも―― 理性と身体とが、相反する主張を繰り返していて、気が変になってしまいそうだった。 「はぁ…ぁっ…!千歌音…ちゃぁん…!」 細い身体に遠慮しながらのしかかって、引き寄せて全身を密着させる。胸と胸、お腹とお腹を すり合わせて、お互いの脚を絡めあった。 それでもまだ触れ足りない様な、そんな焦燥感。 欲望に任せて千歌音のすべてを奪ってしまいたい、そんな危険な渇望を誤魔化すために 必死で肌を求めた。全身を撫で回して、口付けて、手と唇の愛撫が訪れていないところなんて、 もうないくらいに。 「くぅ…ぅん…っ!姫子……お願いだから…っ」 「えっ?」 姫子が愛撫に熱中していると、千歌音が切ない声を上げて姫子の頭を抱え込む。悲痛な 響きに顔を上げて千歌音を見ると、閉じた両目から涙を流して泣いていた。 「千歌音…ちゃん?…ご、ごめん。ごめんね…痛かった?何か気持ち悪かった?」 慌てて身体を離した姫子の声は、自分でも可笑しくなるくらい掠れて狼狽していた。 なのに千歌音は首を左右に振ると、姫子の身体を抱きしめて引き寄せる。 耳元で涙に濡れた声で、言葉を紡いだ。 「お願いだから……そんなに、優しくしないで…」 「えっ。どうして?」 「っ…だって、私は姫子に、あんな風にしかしてあげられなかったのに」 「千歌音ちゃん?」 「辛いの…姫子が優しくしてくれるのは嬉しいけど、その…感じる度に…気持ち良くなる度に、 姫子にしてしまった事と比べてしまって、辛いの…っ」 「千歌音ちゃん……」 もう気に病まなくても良いのに。 そう言ってあげたかったけれど、きっと千歌音はそう言ったところで自分を責める事を やめたりはしないのだろう。 千歌音の頬を伝う涙を、唇で拭って目元を舐める。まぶたの上に口付けると、そこが びくりと震えたのが分かった。 「っあ…、姫…子……」 「ね、千歌音ちゃん。…私言ったよね、千歌音ちゃんのハンカチになるって。涙は全部 私が吸い取るから。悲しいならそれも一緒に吐き出して」 「姫子…っ」 一層溢れてくる千歌音の涙を拭う合間に、言葉を続けた。 「それにね…千歌音ちゃん。後で、私の『初めて』もう一回千歌音ちゃんにあげる」 「……!だって…っ」 千歌音の唇に手を当てて、言葉を遮った。 「千歌音ちゃん、知ってた?私、まだ初めてなんだよ。だから、もう一度やり直そう? …私も、千歌音ちゃんの『初めて』貰っちゃうんだから」 悪戯っぽく言って、微笑む。 ちゃんと自分は笑えているだろうか。心配する姫子をよそに、千歌音はしばらく姫子を 見詰めると、泣きそうな顔で、それでもちょっと口元を引き攣らせて笑ってくれた。 切なく寄せられた眉に潤んだ瞳で、こくりと微かに頷く不器用な笑顔が堪らなく愛しかった。 「姫子…」 本当は、あの夜千歌音に奪われた『初めて』だって、姫子にとって間違いなく大切な ものだった。 あの時は驚いて、どうして千歌音がそんな事をしたのか分からなくて、辛くて、身体と 心が痛くて。 オロチになった、と言う千歌音にショックを受けて、感じなかったけれど。 後から思えば、『初めて』が千歌音で良かったと、嬉しかったと思う。 他の誰にああ言う事をされても、きっとイヤだった。千歌音だから良かったのだ。 ――あれだって、大切な千歌音ちゃんとの思い出の一つなのに。 「――大好きだよ、千歌音ちゃん。だから、もう何も心配しないで…我慢しないで。千歌音 ちゃんが辛いと思うことも、千歌音ちゃんの全部が欲しい。私、欲張りかな?千歌音ちゃん…」 「姫子…私、姫子が好きなの。あなたが欲しいの」 「ありがとう、千歌音ちゃん。嬉しい」 でも、その記憶が千歌音を傷つけるだけのものであるならば、今は伝えなくていいと思った。 姫子にとって大切な『初めて』の思い出である事は変わりないけれど、そんなの、千歌音の 心の傷を抉るより重要な事じゃない。 いつか、千歌音と姫子がもっと大人になって、二人とも落ち着いたら。 その時に、笑いながら話せれば良いな、と思う。 好きな人と二回も『初めて』を経験したのって私くらいだよね、って。 凄く、素敵な事だよね、って。 「――だから、ね。千歌音ちゃん…その、させて?」 今更、と思いながら頬に血が上るのを感じる。 話している間に少し落ち着いたけれど、姫子の身体の芯はまだ熱く疼いていて、このまま では居られなかった。もっと千歌音を感じたかった。 千歌音もきっと同様だろう。先ほどまでの熱がもう冷めているとは思えない――と言うより、 思いたくなかった。 千歌音も頬を染めて俯く。 熱く唇を交わしながら白い内腿に手を這わせてくすぐるように撫で回すと、白い脚がびくりと 跳ねた。 「あっ!……姫子…ぉ」 「…っは、あぁんっ!」 身悶えする千歌音の身体が、姫子の胸にぶつかって先端を刺激する。背中を走って全身に 広がるような快感が姫子を襲って、あられもない声を上げてしまった。 「はぁ…っ!もう駄目…私、もう我慢できないよ、千歌音ちゃぁん…」 「んん…っ、我慢なんて、しなくて良いから…!お願い、もう、私……っ」 お互い、これ以上焦らすのも焦らされるのも耐えられそうになかった。 姫子は千歌音の唇を深く奪って、千歌音が応えてくるのを待たずに舌を絡めた。 「あふ…っ、んっ、んん…」 「んぅ…んふっ、はぁ…っ」 唇の間からいやらしい水音と吐息が漏れる。角度を変えて口付ける度に口の端から唾液が 伝って、千歌音の頬を流れた。 合わさった胸と胸からの刺激に意識を持っていかれそうになりながら、姫子はまだほとんど 触れていなかった千歌音の女の子の部分に指を這わせた。 「んっ!!ん、んんぅ…っ!」 いきなりの秘所への刺激に千歌音の背筋が反る。一層押し付けられて、胸が擦れる。 その堪らない快感に姫子は唇を離してしまった。 「はぁっ…千歌音ちゃん…っ」 唾液の筋を伝って首筋までを舐め取ると、今度は胸に唇を這わせて、赤ん坊のように其処を ひたすらに刺激した。 千歌音が苦しげに息を漏らして、それでも合間に姫子の名を繰り返す。 それが、ものすごく嬉しい。 千歌音の熱く蕩けた秘所に這わせた中指全体を使って、割れ目をゆっくりと上下になぞって いく。指の付け根あたりに、大きくなった突起の感触。 くちゅくちゅと絡みつく千歌音の蜜を秘所全体に塗りつけて、塗りこむように愛撫していく。 「はっ…!はぁっ、…っ!……ふぅっ」 千歌音の口からは荒い息とかすれた音だけが漏れている。口を開けたままで閉じる事を 忘れて、ちゃんとした声にならないらしいその喘ぎは、酷く扇情的だった。 もっと感じて欲しい。 もっと気持ちよくなって欲しい。 もっと乱れて、可愛い声を聞かせて欲しい。 どうやったら優しさとそれを両立させる事ができるのだろう。 もう、姫子は感情のままに千歌音を愛し始めていた。 初めてだから、年下だから、あんまり激しくしちゃいけないと思っていたのだけれど。 千歌音が感じてくれているから、もうなんでも良いと思った。 そう開き直ってしまえるくらいに、姫子は千歌音に酔いしれていた。 「千歌音ちゃん…っ」 胸から口を離す。唾液に濡れた両胸の先端はいやらしく輝きを放っていた。 唇を滑らせて、通りすがりにおへそに舌を差し込んで、姫子は千歌音の女の子の部分に 唇を近づけた。 「ああっ…!姫子…駄目っ…!」 そこだけは、と抵抗する千歌音の脚を押し開いて、間に顔を埋めた。 恥ずかしいのは分かるけれど、ここまで来て止めるつもりはなかった。 甘美な女の子の匂い。千歌音の蜜の匂いに誘われて、もう自制がきかない。 「んむ……んっ…んふぅ…ちゅ」 舌で割れ目を舐め上げて、とろりとした蜜を口に含む。 実際的には少し苦味のあるそれは、心情的には蕩けてしまいそうな程甘くて、美味しかった。 少し露出している上部の突起にキスをして、舌先で唾液と混じったその蜜をその部分にまぶす。 「きゃんっ!」 その途端、千歌音の全身が大きく跳ねた。 「千歌音ちゃん…可愛い。我慢しないで、もっとたくさん声聞かせて」 「や、だ…恥ずかし…っ」 「――じゃあ、そんな余裕なくしてあげる」 赤く充血した突起に軽く唇を当てたまま、囁いた。 姫子が喋る度、唇が動いて千歌音の一番敏感なところを刺激する。 手の甲を口元に当てて声を抑えた千歌音の身体は、素直に反応してびくびくと震えていた。 「ね…して欲しい事、教えて?何も言ってくれないと分からないよ…。千歌音ちゃん…私、 どうしたらいいのかな?」 「そんなの…言えない…っ」 左右に首を振って、千歌音は頑迷に口元に当てた手の力を緩めない。 あの千歌音がこんなに乱れて恥ずかしがって、身体まで桜色に染めている。 刺激に乱れる姿態が艶かしくて、顔を背ける仕草が堪らなく可愛くて、そそられる。 もっと意地悪してみたくなる。 「ずるいよ、千歌音ちゃん…。私だって、初めてで良く分からないから不安なんだよ。だから、 どうしたら千歌音ちゃんが感じてくれるか、教えて」 指先を入り口に当てて、ゆっくりとかき回しながら言葉を続ける。こぷ、と音を立てて其処 から千歌音の蜜が溢れ出した。 「ふぁ、ぅんん…っ!」 「あ、千歌音ちゃん…すごい」 唇で触れる突起が微かに震えているのが分かる。 塞がれた唇から漏れる吐息も細かく途切れ途切れになっていて、唇のすぐ下にある媚肉は 刺激を求めてひくついていた。 少しだけ挿し入れた指から伝わってくる体内の熱と締め付け、脈動。 もう、限界が近いのだろう。 このまま絶頂を迎えさせてあげたいという気持ちと、長引かせてもっともっと乱れる千歌音を 見てみたいという欲望が姫子の中でせめぎあっていた。 迷って、唇と手を離す。 「…ぁっ。姫…子……?」 いきなり刺激がなくなって驚いたのだろう。とろんとした瞳を開けてこちらを見る千歌音の 緩んだ腕を取って、口元からはずした。 「あっ」 「ね…千歌音ちゃん。声、出して…そしたら、いかせてあげられるから」 こんな言い方は卑怯だろうか。意地悪だろうか。 それでも、姫子は千歌音の声を聴きたくて。千歌音に何かを与えている証を感じたくて 仕方が無かった。 首筋に強く吸い付いて、紅い跡を残す。それを舌で舐めながら囁く。 「私も、このままじゃ辛いの。千歌音ちゃん…千歌音ちゃんがもっと欲しい。声が聴きたいの」 「ふあっ…あぁっ、…っ!……分かったから、お願い…もう…っ」 「苦しい?」 「っくぅ……身体が変なの…。私の身体では無いみたいに、思い通りにならなくて…。こんな 感覚知らなくて、気が狂ってしまいそう」 「うん…ちゃんと、いかせてあげる。だから、任せて千歌音ちゃん…」 「姫子…!」 「ん……」 千歌音の腕が姫子の首に回って、唇が触れる。もう今日何度目になるか分からない ディープキスで、お互いの唾液を交換して舌を絡めた。 「ふぅ…んん…っ、ぅ…んっく」 「んんっ…ん、はぁ…っ。千歌音ちゃん…ね、分かった?千歌音ちゃんの蜜の味…」 「いや…っ!そんな事言わないで…」 顔を背けてぎゅっと目を閉じる千歌音にもう一度口付ける。そんな仕草が、ますます 姫子を煽って行為を助長させると千歌音は気付かないのだろうか。 姫子はまた秘所への愛撫を再開させようと唇を下ろしていった。 「千歌音ちゃん…いくよ」 さっきと同じように千歌音の秘所に顔を埋める。 舌先を挿し込んで、蜜を掻き出すように動かすと、千歌音の腰が動きにあわせて控えめに 揺れた。 「ふぁ、あ、あぁあっ…!ん…ぁん、あ、あぁ…んっ!」 舌が奥まで届かない事がもどかしい。精一杯伸ばして上壁を舐め上げて、媚肉自体を唇で 揉むように啄む。 唇を上にずらして舌を抜く代わりに、指を一本じわじわと差し入れていく。 鼻先で敏感な突起を探り当てて、その下のほうからゆっくりと舌で舐め上げて頂点を くすぐった。 「ふぇ…っ、っく、ぁあ…っん、あ、ああっ…!は…ぁん!」 千歌音の唇から漏れる艶声に背筋がゾクゾクする。身体の芯が熱くて痛いほどに疼いて、 でも自分では触れないもどかしさに姫子は身を捩じらせていた。 空いている手で左右に押し広げると、敏感な突起は完全に露出した。舌をすぼめてその 付け根をぐるりと舐めて回る。ぐい、と恥骨に押し付けるように舌で潰すと、千歌音の背が 浮いて身体を強張らせた。 「あ、あぁ…っ、ふぁ……ああぁっ!」 声が高まっていく。悲鳴のようにも聞こえるそれには、まったく余裕が感じられない切羽 詰った響きがあった。 中に入れていた指を一旦引き抜いて、浅く挿しいれ直す。上壁を揉むように擦りながら、 敏感な突起を愛撫する舌の動きを激しく早くしていく。 吸い上げて、先端を舌でつついて、軽く歯を当てる。 と、千歌音の身体が反る。白い喉を震わせながら千歌音が脚を突っ張ったまま硬直して、 「――っ!!」 音になりきらない声を上げると、びくん、と大きく跳ねて千歌音は今度こそ深い絶頂に 達した。 愛しさと感動がこみ上げてきて姫子が身体を重ねると、無意識にしがみついてくる。 それが、震える全身が、いっそう愛しさを募らせた。 「千歌音ちゃん…。千歌音ちゃん…っ」 「…はぁ、あ…。あ、ふぅ…」 少し落ち着いたのか、熱いため息をついて千歌音がベッドに身体を沈み込ませる。 「千歌音ちゃん…」 その少し汗ばんだ身体をぎゅっと抱きしめて肌を密着させると、姫子の女の子の部分が ドクン、と脈打って、全身に波のように広がるのを感じた。 「くぅ…ん、んんっ!」 軽く達してしまったらしい。身体から力が抜けて、千歌音の上に重なった。 力の入らない腕をのろのろと姫子の背中に回して撫でてくれながら千歌音が不思議そうに 首を傾げた。 「姫子…も?」 「えと…その、千歌音ちゃんほどじゃないけどね」 何もされてないのに逝ってしまうなんて、顔から火が出るほど恥ずかしい。 感じやすくて淫乱だとか思われたくないな、と思いながら姫子は千歌音の隣に身体を 横たえた。 「千歌音ちゃん…すごく、素敵だったよ」 「ひ、姫子……」 「ホントだよ、千歌音ちゃん」 千歌音の手を取って、キスを一つ落とす。すべすべの肌に頬擦りして、姫子はうっとりと 目を閉じた。 そこそこ体に力が戻ったらしい千歌音が足元にあった毛布を引き上げて、姫子に掛けて くれる。 ひとつの布団に二人で包まって温めあうのは、なんだか気恥ずかしくて、でもすごく幸せな 気分だった。 さっきまでのような激しい感情は薄れていって、柔らかな幸福感に胸が満たされる。 「姫子……」 「千歌音ちゃん…大好き。年は離れちゃったけど、私たちこれから普通にただの大学生と ――中学生…として、一緒に居られるんだよね?」 身体を重ねて欠乏感が満たされると、お互いにまだ何も知らない事に気がついた。 再会してからの時間、ほとんど何も言葉を交わしていない。 否定しなかったところを見ると、千歌音は今中学生なのだろう。 「もうすぐ高等部に進級するのだけれどね」 「…千歌音ちゃんは、もう、どこにも行かないよね?巫女の運命なんて、オロチなんてもう 心配しなくていいんだよね?」 「……それは、私にも分からないわ。また今世で姫子と一緒に居られる、と言う事自体… それは、嬉しい事だけれど――イレギュラーなのだもの」 「そっか…千歌音ちゃんにも、分からないんだ…」 涙が一筋、頬を流れるのを感じた。 「姫子」 「ううん、大丈夫。先の事はまだ分からないけど――千歌音ちゃんと一緒なんだもん。 きっとまた頑張れるから」 首を振って、笑う。ちゃんと笑えていないのが、頬の引き攣り具合で自分でも分かった。 「姫子…」 千歌音の手が姫子の涙を拭って、優しく頬を撫でていく。 「分からない…けれどね、姫子…私、もうあなたと離れたりなんかしない。生まれ変わって、 来世でも、その次でも、ずっとよ」 「千歌音ちゃん…っ」 「姫子…。――久遠の時が流れても、二人の誓いは変わらない。あの空に輝く月のように、 二人の道を照らし続ける。いつまでも、どこまでも。世界が微塵の砂となっても、この愛だけは、 おわらない。愛してる。ずっと貴女を愛しているわ、姫子。 ――意志の力なくして、私は今ここに存在しえなかったのだと思うの」 言って、千歌音が柔らかく優しく微笑む。 「千歌音ちゃん、それって……」 ――『私のブレーメンラブ』 いつだったか千歌音にせがまれて何度か繰り返した、あの素敵な台詞。 その頃には千歌音が姫子を愛してくれていた事を考えると、あれは―― かあっ、と頬に血が上るのを感じた。それを誤魔化すように冗談っぽく笑って、姫子は頬を 撫でてくれる千歌音の手を取った。 「千歌音ちゃんったら、キザな台詞。…それに、気が早いよ」 「え?」 「来世も、その次も、の前にね…今の私たちのこれからは、まだずっと長いんだよ。 おばあちゃんになっても、千歌音ちゃんと一緒に居るんだから」 嬉しかった。 あの時は何の気なしに言った姫子の台詞を、千歌音が鮮明に覚えてくれている事が。 芋づる式に些細な出来事を思い出すにつれ、あんなにも愛されていたのだと知れて嬉し かった。 今頬を伝うのは、不安や悲しみの涙じゃない。 そんな気持ちが無いと言えば嘘になるけれど、それよりも喜びが大きかった。 千歌音が笑う。おかしそうに、嬉しそうに笑ってくれる。 「そうね…姫子の言う通りだわ。先のことばかり見ていては、足元に躓いてしまうわね」 それからは、二人の今の事と、これからの事を話し合った。 お互いの現在の生活、些末な日常の出来事、やりたい事。 一通り喋りつくして、お互いの『今』を知って、ほっと息をついた頃に千歌音が言った。 「それじゃ、姫子はうちに下宿なさい。姫子の――女の子の一人暮らしは、危ないわ」 「えっ、でも、だってそんな悪いよ…」 別に住んでいる家が壊れたわけでもないのに。下宿する理由なんて、何も無いのに。 ――それに、千歌音ちゃんのおうち…しいたけが…。 「あら、私と一緒に居てくれるのではなかったの?」 「千歌音ちゃん……」 いきなりの提案に戸惑う姫子に、千歌音が悪戯っぽく笑いかける。 「これからは、毎日一緒よ」 「ん…」 お互いの瞳にお互いを映しながら、言葉を交わす。 こんな距離に、ずっと居られるなら。他の事なんてどうでもいいと思えた。 「うん、千歌音ちゃん。うん。ずっと一緒に居ようね」 頷きながら、予感がしていた。 それは、決して悪いものではなかった。 ――愛と波乱としいたけに満ちた、幸せな日々の予感。
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神無月の巫女 ハアハアスレ投下もの 「夜景の中で…」 「神戸に…でございますか?」夕食後、千歌音の突然の申し出に乙羽は戸惑っていた 「急で悪いのだけれど、あさって出かけたいからホテルと切符の手配お願いできるかしら」 「は、はい…かしこまりました」すぐに手配をします、と告げて部屋を辞した乙羽の心は揺れていた お嬢様は変わられた…乙羽は思う この春に高校に進まれて、「特別に親しい」友人が出来たらしい 私はまだその相手の顔も知らなければ名も知らない… お嬢様に仕えて十余年あまり、これまで私は親しい友人の存在は確認したことがない お嬢様はより高みを目指す特別なお方、それ故、一般人の友人の存在など必要もなかったし、邪魔だとも考えていたから… そしてそれはお嬢様も同じ考えだと思っていた そう信じて疑わなかった私にとってお嬢様のこの「小さな革命」は大きな衝撃を与えた… しかし…命令だ メイドの立場である私がお嬢様の申し出に異を唱えることなんて出来はしない 乙羽は姫宮家のご令嬢が宿泊するに相応しいホテルに連絡を入れた 「車で送ってもらうのではなく、電車を乗り継いで行きたい」という千歌音の要望に応えて切符の手配も済ませる 友人と遠出して宿泊をする…それは初めての経験…千歌音をそんな行動に駆り立てたものは何なのか? 乙羽は深い溜息をついていた 千歌音は少し先走った事を後悔していた 数日前、何気なく姫子と交わした会話の中で彼女が神戸で開催されている写真展に行きたがっている事を知った それはたぶん姫子の独り言の類 「でも、神戸は遠いし、お小遣いも足りないから無理だな」と姫子は早々に諦めていた 独り言を言って自己解決し、納得してしまう姫子のよくやる事 …しかし、千歌音は聞き逃さなかった この子を神戸に連れ行ってあげたい、好きな写真展を見せてあげたい、喜ぶ笑顔が見たい 千歌音はすぐさま写真展の事について調べた そして展示期間がもうじき終わってしまう事をする 千歌音はすぐに心を決めた…行こう、二人で…と しかし、まだ姫子の了承を得たわけではない でも…この興奮にも似た逸る気持ちを抑える事は出来なかったのだった 「えっ…ダメだよ そんなに千歌音ちゃんに負担かけるわけにはいかないよ」 予想通りの答え 顔を赤くし、手を振り戸惑いの表情を見せる お金の心配はしなくていいから一緒に写真展に行こう、と誘った後の姫子のリアクション 可愛い…思わず抱きしめたくなる 「私と…一緒じゃ嫌?」少し意地悪な質問…姫子が嫌だと言うはずはないと千歌音にはわかっていたから 「嫌なんかじゃないよ…誘ってもらって凄く嬉しい でもね…」 「じゃあ行きましょう」千歌音は姫子の手をとった 「私が姫子と一緒に行きたいの 二人で…夏休みの楽しい思い出を作りましょう」 吸い込まれそうなその千歌音の瞳の輝きに姫子は思わず頷いてしまっていた 姫宮邸の広い食堂 大きなテーブルにひとり座して夕食を摂る千歌音は上機嫌そのものだった いつも使用人たちに囲まれてひとり味気ない食事を摂る千歌音だったが、今晩は違う 明日のことを考えるだけで胸が高鳴り、顔がほころんでくる 食後のお茶さえ、こんなにおいしく感じたことはあっただろうか?と千歌音は思っていた 乙羽はそんな千歌音の様子を複雑な思いで見つめていた (お嬢様…そんなに明日が楽しみなのですか 服まで仕立て直してそのお友達に渡してあげるなんて…それ程まで…) 乙羽は千歌音が見立てた一着のワンピースのサイズを直して欲しいと頼まれた お友達にホテルでディナーを摂る時に着てもらうのだという 千歌音には少し子供っぽいその可愛らしいワンピースを着るのは一体どんな子なのか? 乙羽は見えない相手に嫉妬を感じぜずにはいられなかった 「乙羽さん、服のサイズ直しは終わったかしら?」 「はい…既にお荷物の中に」 「そう、ありがとう」千歌音は穏やかな微笑みを見せた 「お天気…晴れるとよろしいですね」夕方から振り出していた雨… 「そうね、でもたぶん大丈夫よ」千歌音はフフと笑う 「てるてる坊主作っておいたから」 「…はあ…」お嬢様ったらいつの間にそんな事まで…乙羽は思わずエプロンの裾をギュッと掴んだ 「まるで遠足の前の小学生みたいでしょ 自分でもおかしいとは思ったのよ」 いいえ…お嬢様 乙羽は心の中で呟く お嬢様は遠足の前でもそんな事はしませんでしたよ…いつも冷静沈着なお嬢様がこんなに心を浮かされてる姿を見るのは初めてですよ…と 「お嬢様に…そんな事までさせるなんて…」乙羽の小さな呟き 「何?」 「そのお友達は…きっと素晴らしい方なんでしょうね」きっと自分はひきつった笑顔をしているだろうと、乙羽は思った 「ええ…」少し頬を染めて千歌音は言った「太陽のような子…きっと私を照らしてくれるお日様…そんな子よ」 翌日、願いが通じたかのような晴天 千歌音はまだ朝早い天火駅で姫子を待つ 実のところ、昨夜は興奮の為なかなか寝付けないでいた 浅い眠りを何回か繰り返し、そして結局夜明け前には目覚めてしまっていた 眠くないといったら嘘、でもそれでもこれからの事を考えると目は冴えるばかりだ 朝の弱い姫子のこと…始発電車に間に合うかどうか 千歌音がふと不安を過ぎらせた時、朝靄の中から走り寄ってくる影に気づいた 「千歌音ちゃーん」息を切らせて姫子が姿を現した 姫子、そんなに走ると転ぶわよ、と声を掛けようとしたその瞬間、やはり姫子は転んだ 「イタタタ…」「大丈夫?」駆け寄った千歌音に手をとられて立ち上がる姫子は恥ずかしそうに笑った 「千歌音ちゃんは時間に正確だから待たせてはいけないと思って走ってきたの ほら私って何やるのも遅いから」 「大丈夫よ 時間にはまだ余裕があるわ」 千歌音は姫子と手を繋ぎホームに向った 確かにこの辺境の地から神戸に出るまでには時間がかかる しかし何も無理をして始発の電車に乗る必要もなかった けれど…少しでも長く姫子と一緒に居る時間が欲しかったから… 「始発電車に乗るなんて初めて…神戸に行くのも初めて…」姫子は子供のようにはしゃいでいた 「友達と外泊するのも修学旅行以来だし…初めてがいっぱいだよ 千歌音ちゃんのおかげで初めてがいっぱい…ありがとう、千歌音ちゃん」 天使のような笑顔だと千歌音は思った 少し心配してしまう丈の白いミニスカートにタンクトップの上に羽織った白いパーカー…姫子らしい可愛らしい服装 そう、その姿は本当に千歌音には天使に見えた やがて電車がホームに滑り込んできてふたりは乗車した ふたり以外はだれもいない車内 ボックス席に向かい合わせで座る 「はい、どうぞ」千歌音は乙羽が用意してくれたサンドウィッチを渡した ありがとう、といって嬉しそうに頬張る姫子のその姿を見て千歌音はただ幸せな気持ちになれた ゆっくりと流れていく二人だけの時間 何気なく交わす言葉のひとつひとつが楽しい ぽつりぽつりと乗客も増えてきた頃、お腹もいっぱいになった姫子は軽く欠伸をした 「眠い?」千歌音のその言葉に姫子は少し顔を赤らめて言った 「実はね、昨夜は全然眠れなくて…今日のこと考えたらドキドキしちゃって色々と考えてたら結局朝になっちゃったから」 そう…私と同じだったのね 千歌音は嬉しかった 姫子が自分と同じ気持ちだった事が… 千歌音は姫子の隣りに移る 「乗換えの駅までまだまだだから…寝てていいわよ 肩貸してあげる」 千歌音の手が背中に廻り姫子を優しく引き寄せる 「…あ、ありがとう…」姫子は恥ずかしそうに言うと目を閉じた 千歌音の温もりと電車の揺れが姫子を眠りの世界へと誘う やがて聞こえてきた小さな寝息…千歌音はそれを確認すると紅茶色の髪にそっと口付けをした いくつかの電車を乗り継ぎ、神戸に着いたのはお昼前 「うわぁ…人が多いな」駅に降り立った姫子の感想 姫子は千歌音のようにずっと天火明村で育ったわけではない 高校に入るまでは地方都市ながらそれなりの都会で生活をしていたわけだから、こんな街並みに驚くのも変な話しだが… しかしまだ数ヶ月とはいえ、のんびりと時間が流れているあの村で生活を送っていたら何だか自分が浦島太郎になったような気がしてきておかしかった 千歌音は普段は田舎暮らしをしているとはいえ、そこは大富豪のお嬢様…色々と各地に出かけてもいるのであろう 何の迷いもなく都会の街を颯爽と歩くその姿を姫子は頼もしく思う 姫子はまるで散歩に連れ出された子犬のようにヒョコヒョコと千歌音について歩いた 人の波に幾度となくぶつかった姫子は思わず千歌音に手を繋いで欲しくて手を伸ばした …が慌てて引っ込める ここは天火明村のような田舎じゃない 小学生でもないのに女同士手を繋いで歩いていたらきっと変に思われるだろう 千歌音に恥をかかせるわけにはいかない 「姫子?大丈夫?」千歌音は振り向いて姫子を気遣ってくれる 「タクシー乗り場までもう少しよ でもその前にお昼を食べましょう」千歌音はそう言うとさりげなく姫子の手を握って歩き出した 嬉しかった…考えてみたら天火明村に居たって学校の皆がいたらこんなことは出来ない 今だけのほんの少しの時間…姫子は甘えることにした 昼食を摂った後、タクシーに乗り写真展の会場に向った ここも相変わらずの人の多さ…雑誌で紹介されていただけあって人気があるんだなと姫子は思った 「行くわよ 姫子」千歌音の長い指が姫子の手に絡んでくる 「あ、あの…」ふいに口から出た言葉 「千歌音ちゃんは…嫌じゃないの?」「何が?」 「こんな風に手を繋いで歩いてると…その…」 「嫌なはずないでしょ…それにね姫子が迷子になったら困るもの それとも姫子は嫌なの?」 「ううん、そんな事ない…嬉しい…」嫌なはずなんてあるわけない 姫子はギュッと千歌音の手を握った 「凄いなー…私もこんな風に撮れるようになりたいなぁ」 「あ、これも凄いよねー」「わぁー、綺麗な写真」姫子はとても上機嫌ではしゃいでいる 千歌音はそんな様子を見て、連れてきて本当に良かったと思った 姫子のこんな笑顔を側で見られるだけで幸せになれる…本当に欲しかったものはこの笑顔なのだから 時間の経過も忘れて、結局、閉展時間ギリギリまでそこにいた ポートタワーの近く、神戸市街の瞬くネオンを見下ろせる最上階の高級ホテルの一室 姫子はそこから見える素晴らしい夜景にただ見とれていた 「本当に…素敵…」 高速道路の流れがまるで光の帯のように見える 高校生の身分でこんなホテルに泊まるとは思っていなかった姫子はただ驚くばかりだった この部屋はいわゆるスイートルームと呼ばれる部屋 大富豪のお嬢様である千歌音にとっては、たいした事ではないのだろうけれど姫子にとっては軽い眩暈さえ感じるものだ 「姫子…」ふいに呼ばれて振り向くと千歌音は一着の服を持っていた 「もうじきディナーが運ばれてくるからこれに着替えて…」渡されたそれはいかにも高級品であろう、薄いピンクのワンピース 「私のお古だけれどサイズは直してあるから…あなたにプレゼントするわ」 「でも…」とてもお古なんて思えない…もしかして一度も袖を通してはいないのでは?と姫子は思った 「さぁ、早く着替えてらっしゃい」姫子は隣りの寝室へと押しやられた 「いいのかな…?」千歌音のありとあらゆる心遣い…無下に断ったらきっと千歌音を傷つけるだろう…姫子は着替えを始めた 「あの…」着替えを終えて部屋を出ると、いつの間にか千歌音も着替えを済ませていた 「良く似合ってるわ サイズもピッタリに仕上がってるわね」 良く似合っているのは千歌音の方だ、と姫子は思った 対照的な深いブルーのシンプルなデザインのイブニングドレス仕様… 出された肩が何とも色っぽい きっと千歌音が着るものを選んでいるのではなく、着られるものが千歌音を選んでいるのだと姫子は思った ルームサービスによる豪華なディナーが始まる 姫子にとっては勿論こんな経験は初めて…今日は寮の食事ではない 目の前には見た目も美しいフランス料理のコースが並ぶ 注がれたワインにさえも戸惑いを感じていた 「乾杯しましょう…」千歌音に促されてワイングラスを持つ 「今日の…良き日に…私達ふたりの素敵な夜に…乾杯」 千歌音の心をくすぐるような甘い言葉、窓の外に広がる美しい夜景、豪華で美味な食事、そして初めて口にするワイン…何もかもが姫子を酔わせていくようだった まるで魔法をかけられたような素敵な時間が過ぎてゆく シンデレラにかけられた魔法なら12時を過ぎたら消えてしまう 私にかけられた魔法はいつ消えてしまうのだろうか、と姫子は風呂上りで火照った体を涼めながら思っていた 千歌音から「広いお風呂だから一緒に入ろう」と誘われたが、どうにも恥ずかしくて辞退し先に入浴を済ませた 女同士なのだから別に意識する事も無かったのであろうけれど… 姫子は今日あった楽しい時間を思い出しながら、相変わらず絶景な夜景を眺めていた 「本当に…楽しかったな…千歌音ちゃんにちゃんと御礼言わなくちゃ…」 そこへ入浴を済ませた千歌音がやってくる 「そんなに…夜景が気に入った?」風呂上りの千歌音は艶々しく更に色っぽさを醸し出している 「う、うん…凄く素敵だよ…」それは夜景に対してかそれとも千歌音の妖艶に対して言ったのか…良くわからない 「あのね…ありがとう」姫子は言う 「こんなに素敵な時間を与えてくれて…今日一日、凄く楽しかった…ありがとう」 「…いいのよ 私だってとても楽しかったのだから…姫子がね楽しそうな笑顔を見せてくれたからそれでいいの」 優しい千歌音の微笑み…出逢ってから何度も姫子の前で見せてくれる表情 いつでも困っている時に手を差し伸べてくれる、誰よりも気遣ってくれる優しい人…もうずっと頼りっぱなしだ 「あの…千歌音ちゃん…」姫子は思い切って口に出してみる 「私…千歌音ちゃんにはしてもらってばかりでしょう?だから…御礼じゃないけれど…私に何か出来ることある? 千歌音ちゃん、してもらいたい事とかあったら言って…私じゃ出来る事なんか限られてることわかっているけれど… それでも千歌音ちゃんが望むことがあるならしてあげたいの…」 千歌音は驚いたように暫く姫子の顔を見つめていたが、やがてゆっくりと近づいてきた 「…何でもいいの?」 「う、うん…私に出来る範囲のことでなら…お金のかかることとかは無理だけれど、何か欲しいものとかあるのなら言って…」 千歌音は姫子の顎に手をかけた 「えっ…」 「欲しいものは…あるの…」 「欲しいものはあるの…いつだって手の届く場所に」 「でもね…」千歌音の表情が寂しげに揺れた 「きっと触れてはいけないのよ…触れたらきっと…私の前から消えてしまうだろうから」 「千歌音ちゃん…」 「失いたくはないから…絶対にそんなのは嫌…でもね触れたくて、触れたくて… 心が壊れそうになる時もある…どっちも私の本当…」 「ごめんね…姫子…」千歌音の顔が近づいてくる 潤んだその瞳を見たら姫子は次に起こるであろう行為を拒否する事なんて出来なかった (千歌音ちゃんは苦しんでいる…きっとそれは私のせい…)姫子は目を閉じてその行為を受け入れた 生暖かく柔らかな感触が唇に重なった 体が少しだけ震える しかしそれは重なってすぐに離れた 「嫌じゃ…ない?」 千歌音の問いに姫子は首を振る (嫌じゃない…何故だろう、前にもこんな光景があったような気がする) これはデジャブーだろうか?それとも… 姫子の考えを遮るように二度目の口付けはふいに 「んっ…」 一度目とは比べ物にならない程の激しく情熱的なキス 唇を割って入ってきた舌はまるで口内を犯すがごとく動き回る (…この感触は…)姫子の手はいつしか千歌音の背中に廻されていた -----レースのカーテンの隙間からは光が瞬く神戸の夜景が見えていた 「あ、あっ…千歌音ちゃん…」切なく唇から漏れる声…私は今、ベットの上で千歌音ちゃんに抱かれている 何故こうなったのかは…上手く説明できそうにもない ただ…千歌音ちゃんが私を求めたから?千歌音ちゃんの涙を見たから?いいえ、多分違う 私達ふたりの間には「運命の絆」があるとわかったから… 唇を重ねる度に肌を触れ合わす度にそれは確信へと変わっていく 今はそれがどんな運命だったのか、これからまたどんな運命に導かれていくのかは知る由もない ただ私は知っている 私の肌の上を這う千歌音ちゃんのこの手が、遠い昔から私を護ってくれていたと、 そしてこれからも私を護ってくれるということを… 私はその白く美しい手を取り口付けをする 感謝と愛情を込めて… 私達の運命はまた廻り出す---------- おわり
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神無月の巫女 ハアハアスレ投下もの 「初めての夜に」 「お土産買ってくるからいい子にして待ってるんだよ」マコトはまるで子供をあやすが如く言って寮を去って行った 夏休みが始まり、大多数の寮生達は一時期帰省をする 部活や補習、家庭の事情等で夏休みでも寮に留まる生徒はいる…姫子もその中のひとりだ 天涯孤独な姫子には…帰る家は無い 寂しくないと言ったら嘘になるが、それでもここを離れたくない理由もあった 賑やかなマコトが去った後の部屋でひとり、山のように出された宿題と格闘していた 明日からは成績が不良だった数学と物理の補習も受けなければならない 姫子にとっては、夏休みは決して楽しいものではなかった 夕方になりようやく涼しい風が吹いてきた頃、姫子は勉強で使いすぎた頭を休める為散歩に出かけた 姫子の足は自然と「薔薇の園」へ向っていた …そう都合良く、自分の逢いたい人が待っているわけでもなく…姫子は少し苦笑して、大木の下に腰を降ろした (千歌音ちゃん…夏休みはどうしているんだろう?) 千歌音は自分と違う意味で忙しい人だから、きっと夏休みになったからとはいえ逢える機会なんてほとんど無いんだろうな、と思う でも…一日でもいいから大好きな千歌音と過ごすことが出来たら、どんなに楽しいことであろうか… 姫子はささやかな夢を抱いていた 「姫子、姫子…」ほんの一瞬だけ記憶が飛んだような気がしたのはどうやら寝てしまっていたから…らしい 軽く体を揺すられて瞼を上げると、目の前には千歌音の姿があった あまりにも極至近距離にその端正な顔があったので、姫子の目は一瞬にして醒めた 「わわ…千歌音ちゃん」 「こんなところで寝てるなんて」千歌音は笑った「夏だからといって風邪ひくわよ」 「う、うん…ここに座っていたら気持ちよくなっちゃってつい…それより千歌音ちゃんはどうしてここに?」 「生徒会の仕事があったから…少し休憩と思ってここに来てみたのだけれど」 それは半分本当で半分は嘘、千歌音は心の中で呟いていた 生徒会室の窓からあなたの姿を見つけたから追いかけてきたのよ、と 「そっか、やっぱり千歌音ちゃんは夏休みでも忙しいんだね」 「そうでもないわ…」千歌音は姫子に伝えたい言葉を躊躇っていた 「姫子は…夏休みの間は寮にいるの?」そんな事聞かなくても、とうに調べはついていた 姫子には帰る場所がない、ルームメイトの早乙女さんは帰省している、残っている寮生は極少数…そう、ふたりきりで過ごせるチャンスがいくらでもあることを でも、それも姫子が同意してくれたらの話しであるけれど… 「補習受けなくちゃいけないし…ほら、私、千歌音ちゃんと違ってデキ悪いし」 姫子は笑いながら言う 千歌音は思った この子はいつもこうだ 自分の前では決して、身の上の不幸とかは話さないし、悲しいとか寂しいとか口には出さない いつも笑っていてくれる…嬉しいけれど、切ない…とても切なくなる 「それにね…千歌音ちゃんもずっとこっちにいるんだし…えへへ」 「!?」千歌音はその言葉を聞いて覚悟を決めた 「姫子…私ね、一度寮に泊まってみたかったの 招待してくれないかしら?」 「本当に?」姫子は丸い目を更に丸くして信じられないといった表情を見せた 「本当に遊びに来てくれるの?」 「ええ、姫子が招待してくれるのなら」 「勿論だよ!!あっ…でも…」姫子は困惑した表情を見せる 「寮長に許可とか取らなきゃいけないし…他の人が知ったらきっと大騒ぎになっちゃうよ…千歌音ちゃん、落ち着いて過ごせないかも…」 「だからね…」千歌音は悪戯っぽく笑う「みんなには内緒で…こっそりと行くの これは私と姫子だけの秘密よ」 「大丈夫かな?」 「ええ、大丈夫よ」千歌音の妙に自信のある物言いに姫子は安心したようだ 「うん、それじゃいつにする?千歌音ちゃんの都合に合わせるから、いつが予定、空いているか言って」 すぐに、一日でも早く…今日でもいいのよ、千歌音は心の中で呟いていた 「そうね…明日なら…空いているんだけれど」逸る心を抑えて口に出した言葉 「えっ…明日」姫子は部屋が乱雑のままであることを思い出して焦っていた (掃除しなきゃ…明日までには片付くかな?ヤダなあのままじゃ千歌音ちゃんにだらしのない子だと思われちゃう) 「ダメ…なのかしら?」 「ううん」姫子は少し顔を赤くして言う「いいよ、明日ね…じゃあ、寮の裏門はわかるよね?裏の非常口の鍵は開けておくから、そこで9時に待ってるよ」 「ええ、わかったわ」 「じゃ、じゃあ…明日ね ごめんね、私ちょっと用事を思い出したから行くね」 姫子は手を振りそそくさと薔薇の園から出て行ってしまった 「姫子…」千歌音はそんな姫子の後姿を見送りながら、もしかして迷惑だったの?と心が沈んだ 姫子といえば一刻も早く乱雑なままの部屋を片付けて、千歌音を迎え入れる万全の態勢を整えておきたかっただけなのであったのだが… 普段は宮殿のような部屋で過ごしているであろう千歌音を一晩とはいえ、こんな寮に泊まらせるにはそれなりの気を遣う 千歌音に不快な思いをさせてはならないと姫子はそれなりに頑張って、部屋を飾った…とはいえ、出来ることは限られていたのだけれど 塵ひとつなく掃除を念入りにし、シーツを新しいものに替え、花を飾る あと数分でこの質素な部屋には千歌音という何よりも華やかな飾りが添えられるのだ 姫子は逸る気持ちを抑えて、約束の30分も前から裏門に出て千歌音を待った 誰かを待つというのは楽しいようでもあり、実は切ないものだ もし、来てくれなかったらどうしよう、出掛けに急に用事が出来たとか途中で事故に逢ってたりしないだろうか…ふと頭を過ぎる不安 何だかこんな気持ちって恋人を待つ気持ちに似てるのかな?姫子はそんな事を考えてひとり顔を赤らめていた (私ってやっぱり変なのかな?千歌音ちゃんにこんなにドキドキしてるなんて…) 時間の経過がこんなにももどかしいものだったなんて… 「姫子?」暗がりの中から足音が聞こえて千歌音が姿を現した 「千歌音ちゃんっ」姫子は時計を見て千歌音が約束の時間より早く来てくれたことに喜んだ 「顔…赤いみたいだけれど大丈夫?」 「う、うん平気」姫子は千歌音が持っていた荷物を取り上げると満面の笑みを見せた 「良かった…本当に来てくれて」 私があなたとの約束を破るはずなんてないでしょ、千歌音はその可愛らしい笑顔を見て心が昂ぶる 「さぁ、中に入ろう」 姫子に導かれて、非常口から入り二階へと上がる しんと静まり返った寮内…普段ならこの時間はまだ寮生の活気に満ち溢れているのだが、今寮内に残っている生徒は数人程度 おかげで千歌音は身を隠すことなく堂々と姫子の部屋まで辿り着くことが出来た 「ここだよ、入って」8畳程の広さに二段ベットと学習机がふたつ、本棚にクローゼット… 部屋の真ん中には花が飾られた小さなテーブル シンプル過ぎるほどの部屋だったが、姫子の努力の甲斐もあって小奇麗に整理整頓されていた 「可愛いお部屋ね」千歌音の反応を見て、姫子はホッと胸を撫で下ろした 千歌音が少なくとも不快な感じを抱かなかった事に安堵する 千歌音にしたら、例えどんな廃屋であったとしても姫子と一緒に過ごせる場所なら不平なんて言うはずも無いのだけれども… ふたりは千歌音が持参してくれたケーキやクッキーを食べて楽しい時間を過ごす 他愛も無い話しをして、笑いあう時間… 開け放たれた窓からは涼しい夜風が入り込んで来る 山間部なので夜になればかなり気温も下がるので、7月後半のこの頃はまだクーラーは必要としない でも姫子も体温は上がりっぱなしのようだった 何故なら千歌音が自分にピッタリと身を寄せるようにして座っているから… (千歌音ちゃん…どうしてこんなに近づいているんだろう?) お風呂を家で済ませてきたという千歌音からは、何とも良い香りが漂ってくる 姫子は自分の体が徐々に汗ばんでくることに気がついていた (千歌音ちゃんの胸…さっきから腕に当ってるんだけど)柔らかくて何ともいえない良い感触… 姫子は顔を赤くし頭を振る (何考えてるんだろ…私ったら これじゃ変な人だよ) 「姫子どうかした?」 「う、ううん…何でも無い」姫子はさりげなく千歌音から離れた 「も、もうこんな時間になっちゃったね」楽しい時間というのは、残酷な程に早く流れていく 「おしゃべりに夢中になってたから…千歌音ちゃん、そろそろ眠いでしょ」 時計の針はもう12時を指そうとしていた 「いつまでも明りついてたら見回りとかきちゃうかもしれないし」 「そうね…じゃあ寝ましょうか」 千歌音は持参したネグリジェに着替えた それはこんな部屋にはおかしいくらい不似合いなもの… (わぁ…凄く色っぽい)姫子はそんな千歌音の姿をマトモに見ることが出来なかった 自分はといえば、いつものパジャマの上だけの姿…あまりにも対照的な二人の格好だった しかし、姫子は気づいていなかった パジャマの上だけを羽織るという無防備なその格好は千歌音にとって刺激的すぎるものであったということを… 「千歌音ちゃんは私のベッド使ってね そんなベッドで悪いんだけれど」 本当に千歌音を二段ベッドの下に寝せるなんて忍びないのだけれど… 「姫子は?」 「私は床の上に布団敷いて寝るから」姫子はクローゼットの中から予備の布団を出して床の上に敷く 千歌音はいそいそと寝支度をする姫子の姿を目でじっと追っていた 姫子にとってはいつもマコトの前でしている格好、恥ずかしいとも変だとも思った事はない ただ楽な格好だったから…しかし千歌音にとっては屈む度に見える下着や露出している肌の多さ、明りに透けて見える体のライン等全てが刺激的だった 「こっちで一緒に寝ない?」ふいにかけられた言葉 「えっ…でも、それじゃ千歌音ちゃんが狭くて窮屈だよ」 「大丈夫よ…」千歌音は手招きをする「来て…」 「う、うん…」 千歌音にとっては慣れない場所だから仕方ないのかな、などと思いながら姫子は部屋を明りを消し千歌音とともにベットの中に入る 「狭くて寝づらかったらいつでも言ってね 私すぐにあっちに移るから…」 「平気よ…」千歌音の息遣いがすぐ側で感じられた 「ねぇ、姫子…姫子はいつもそんな格好で寝てるの?」 「う、うん…変かな?マコちゃんには何も言われないし…」 「変じゃないわ…」そう、早乙女さんにはいつもその無防備な格好を見せているのね… 変なんかじゃない…可愛いわよ、姫子…とても… 「お腹出して風邪ひかないようにね」千歌音はフフと笑った 「マコちゃんにも良く言われるんだ『姫子ー、腹出して寝てると風邪ひくぞー』って…それでね、マコちゃんが私のベッドの中に入ってきて『抱き枕』ってギューっとして暖めてくれるんだけれど」 「抱き枕?」 「うん…マコちゃん抱き枕すると気持ち良くて熟睡できるって言って、別に私も嫌じゃないんだけれど、でもそれって何か私が太ってるみたいで…」 無邪気に話す姫子に千歌音は微かな苛立ちを感じていた マコトに抱かれて眠る姫子の姿…想像するだけで心が軋みをあげてくる 姫子が私以外の人に向けている笑顔…姫子が私以外の人の腕の中で安らかな寝息を立ててるなんて… 千歌音はキュッと唇を噛んだ 嫉妬…そう完全に私は早乙女マコトに嫉妬している… 「姫子…」千歌音は手を伸ばし、やや乱暴に姫子を引き寄せた 「千歌音ちゃん?」 「抱き枕って…こんな感じかしら」 姫子を背後から抱きしめるようにして、足を絡めた 「ど、どうしたの?」 「私にも…姫子の抱き枕…ちょうだい」 密着した体からお互いの体温が伝わり合う マコトとは全然違う感触に姫子はドキドキした (千歌音ちゃんの体…熱い…)心臓の鼓動もハッキリと伝わってくる 「早乙女さんとは…いつもこうしてるんでしょう?」囁くように言う千歌音 なんだか体がゾクゾクしてくる 「い、いつもってわけじゃないよ…時々…」 「…そう…で、他には何をするの?」 「何って?」 「こうして抱きしめて、姫子の体温感じて…その後は…何もしないわけ?」 (千歌音ちゃん…何だか怖い…どうしちゃったんだろう) 姫子は体を捩って離れようとしたが、思いの外力強く抱きしめられていて上手く身動きがとれなかった 「ふ、ふざけてくすぐったりするだけ…それだけ…それだけだよ」 「そう…なら良かった…」何?姫子には千歌音の言った言葉の意味が理解出来ないでいた 次の瞬間、髪の毛を掻き揚げられて首筋に生暖かいものを押し付けられた 「!?」体に電流が走ったような衝撃を受けた 千歌音は姫子の首筋に唇を押し付けている それはゆっくりと場所を移動しながら何度も繰り返された 「ち、千歌音ちゃん…」暗闇に響くチュッチュという音、千歌音の荒くなった息遣い…姫子の体は硬直したかの如く動けなくなっている 「…こういうことはされてないのね…」 千歌音の手がパジャマの胸元から入り込んできて、姫子の胸を触る 「あっ…」最初は形をなぞるように優しタッチで… やがてキャミソールが少しずつたくし上げられて直に胸を触られた 千歌音の長い指が絡み付いてくる 最初はふざけてじゃれついている延長の事かと思った しかし違う…これはマコトとのじゃれ合いとは明らかに違うものだ 「だ、ダメだよ…」やっとのことで発した姫子の声は弱弱しかった しかし千歌音は止めることなく、掌全部を使って胸を揉みはじめた 「姫子…好き…好きよ」後ろから囁かれるその言葉に姫子の体は熱くなる 信じられなかった、でもこれは夢なんかじゃない…千歌音が自分に対して愛の言葉を囁いている 仰ぎ見る憧れの対象だった、親友であったはずの千歌音が… 「姫子…」千歌音は上半身を起こし、姫子の顎を掴んだ 「んっ…」ふいに塞がれた唇 重ねられた唇からは甘い薔薇のような香りがした その匂いに酔ってか気が一瞬遠くなりかけた時、ヌルッと千歌音の舌が口内に侵入してきた 拒否する事など出来ない一方的なディープキス それは遠慮なく姫子の舌と絡み合った 「あ、あ…」姫子の目から一筋の涙が零れ落ちた この涙は何?嫌だとかいう感情ではない…遠い昔に記憶が引っ張り込まれるような、切ない感じ… 何故だろう?この感じは… 姫子はいつしか無意識のうちに千歌音の背中に手を廻していた 「姫子、姫子…起きて」朝の眩しい光と聞き慣れた声に姫子は目覚めた 「おはよう…さぁ、仕度して」いつもと変わらない千歌音の笑顔 「うちに行って一緒に朝食を摂りましょう 補習は9時からでしょ…十分に間に合うわ」 「千歌音ちゃん…?」まだ頭がぼんやりとしている のろのろと起き上がると、自分が半裸状態である事に気がつき慌ててシーツに包まった (昨夜…)顔から火が出そうになる(何で…あんな事になっちゃったんだろう…) 千歌音は背中を向け荷物をまとめ帰る準備をしていた 姫子はその様子を見て、慌てて下着をかき集め着替えを始める 何事もなかったかのように流れていく時間… 寮を出て姫宮邸に向う 二人は無言のままだった 姫子は恥ずかしくて千歌音の顔さえまともに見ることが出来ない 一歩下がるようにして歩いていた 「姫子…」ふいに千歌音が立ち止まった 「ごめんね…私の好きは…ああいう好きだから」振り向く事なく千歌音は言う 「千歌音ちゃん…」 「私の好きは欲情の塊…あなたが誰かのものになっちゃう前に自分のものにしたいって…そんな自分勝手な自己満足な愛情なのよ…最低だわ もう…嫌いになっちゃったでしょ?」 振り向いた千歌音の目にはうっすらと涙が光っていた (千歌音ちゃんが泣いている…千歌音ちゃんは苦しんでいるんだ…私のせいで) 姫子は胸が痛くなった 昨夜キスされた時の切ない思いがフラッシュバックされる 切ない…込み上げてくる切ないこの想い 姫子は千歌音の腕の中に飛び込んでいた 「…嫌いになんかなれるはずない…なれるはずないじゃないっ」 「姫子…」 「ごめんね…気がついてあげられなくて 私がずっと千歌音ちゃんのこと苦しませていたんだね…ごめんね」 「姫子…」二人は強く抱きしめてあった きっと…こんなふうになる事を望んでいたのは私自身だったのかもしれない、と姫子は思っていた 遠い遠い記憶の中に残されている想いを感じとった瞬間… 姫子は自ら唇を重ねていた ~end~ ~早乙女マコトの後日談~ お盆も終わって寮に戻ってみると、何だか姫子の様子が変わっていたんだ うーん、上手く言えないけれど「恋する乙女」みたいに輝いているんだよね…私が留守の間に何かあったのかな? 抱き枕も拒否されるようになっちゃったし(ノД`)シクシク 外泊届け出す回数も増えた あやしい…今度、とっちめて吐かせてみようと思う
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r―-、 __ ... -―, { .゚ . . __`´__. . . . . . 。. | !゚/ `´ `ヽ. . 。/ // イ__,ハノ,__」 i }. ノ、 めんどくさい! \!ル゚ ̄_ ゚̄ト! |_/ |ハ、|__〉 |」ノ/ 再投票するのも. (( ___>rュ<リノ__ めんどくさい! `ー―‐l . Y . . f――‐' | . .0 . . ト、_\ )). ぶわー | . . . o.o| `)ノ | . . o.○| ´ `lノ^"lノ´ 基本情報 陣営 村 役職系統 巫女系 実装バージョン Ver. 1.5.0 β9~ 特殊な判定 本人表記 巫女 特徴 本人視点はただの巫女、しかしその実態は 再投票が発生してしまうと自分から封印されに行ってしまう はた迷惑な劣化職。(巫女の能力は失われていないが。) とはいえ人馬を見れば分かるように 「自殺できる」というのはこれ以上無い真証明手段である。 だがこちらは自覚ができないため 狙って再投票にしてもらうのはほぼ不可能。 どう騙るか 騙り易い巫女と違いこちらはほぼ不可能。 そもそも自覚できないため騙るも何も無い。 なお、真巫女と対立したときに再投票が発生、 そして再投票で真巫女がショック死してしまった場合 間違いなく騙ったほうは吊られてしまうため要注意。 参考ログ タイトル モード 備考 ログ
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神無月の巫女 ハアハアスレ投下もの 「もしも」一話で誕生日にオロチの襲撃が無く、二人だけの誕生日が行われていたら… 「もしも」一話で誕生日にオロチの襲撃が無く、二人だけの誕生日が行われていたら… を妄想してみた↓この千歌音ちゃんの言葉だけでもハァハア度の高さが伺えるw (明日は今までの誕生日とは違うの 明日のことを思っただけでこの胸の高鳴りが押さえられないくらい 本当に、特別な一日) 毎年、繰り返されるもはや義務的となった行事 姫宮邸の大広間に村や学校、姫宮の仕事関係の人々を招いての誕生会 代表者からの型どおりのお祝いのスピーチに始まり、粛々と進行されていく誕生会に少し飽き飽きしていた しかし…今年は違う 心がときめいていた 千歌音の視線は常に一人の人を追っていた 会場の隅っこで目立つ服装でいるわけもなく、静かに佇んでいる少女…来栖川姫子 そう、彼女の存在だけが今日の千歌音の心の全てを占めていた あと数時間の後、二人っきりの時間がもてる 千歌音は一刻も早くこの退屈な時間が過ぎることを願っていた 姫子といえば、そんな千歌音の心を知ってか知らずか、早乙女真琴と離れることなく時折、屈託の無い笑顔を見せていた (あの笑顔を自分だけのものにしてしまいたい…) 寮生活をしている生徒達の門限が9時である為、6時から始まったパーティーーは2時間を経過したところで終わりを告げる 千歌音は出席してくれた人々を見送った 姫子は今頃、乙羽の手引きにより千歌音の部屋に通されているはずだ 千歌音は最後の人を見送ると、急いで自室に向かった 「姫子!!」 部屋に入ると姫子は中央に置かれているソファに腰を掛けていた 千歌音の顔を見るとニコニコと太陽のような笑顔で迎えてくれた やっと二人だけの時間…千歌音は部屋の鍵を掛けると姫子の隣りに腰を降ろした テーブルの上には乙羽によって用意されたワインとグラス、幾つかのオードブルにケーキがある 「さぁ、二人だけの誕生会をはじめましょうか?」千歌音はグラスにワインを注いだ 「あの、千歌音ちゃん…私、ワインは無理だよ」姫子は手を振って断る 「一口ぐらいだったら大丈夫よ お祝いだもの、少しだけつきあって」 「う、うん…」 「せっかく蝋燭に火が灯ってるし…」千歌音は部屋の電気を消した ぼーっと蝋燭の明りが浮かび上がり、神秘的な雰囲気を醸し出す 「お誕生日おめでとう、姫子…」千歌音はグラスを掲げた 「お誕生日おめでとう、千歌音ちゃん…」グラスが交わった 「蝋燭の明り…凄く綺麗だね」うっとりとしてグラスに口をつける姫子 可愛い…その横顔を見ながら千歌音は思った 口に含んだワインも味もいつもよりは格別に美味しく感じられた 「あ、千歌音ちゃんの今日のドレス姿も凄く綺麗だよ 本当に見とれちゃったし…」 「そう…姫子だってそのワンピースとても似合ってるわよ…可愛いわ」薄いピンクが姫子の肌の色にピッタリだと千歌音は思った 姫子は照れくさそうにワインを口に含む 「私ね…本当に嬉しいの 千歌音ちゃんと同じ誕生日でこうして二人でお祝い出来るなんて」 「私もよ 姫子…」 「千歌音ちゃんの誕生日が凄すぎて、仲のいいマコちゃんでさえ私の誕生日忘れてるみたいだったし…あ、でも大神くんは覚えてくれてたな」 「大神さん…が?」 「うん…本当は今日二人で会えないかって誘われてたんだけど」そこで姫子はアッと口を手で押さえた (千歌音ちゃんと大神くんって…つきあってるっていう噂…) まずかったかな…千歌音の気を悪くさせたと思って姫子は慌てた 「あ、あの…特別な意味はないと思うよ 大神くんとは幼馴染で…それだけだから…その、千歌音ちゃんと大神くんが親しいのは知ってるし、 別に二人の仲を邪魔するつもりなんてないし…」 「姫子?私と大神さんって何でもないわよ ただのクラスメートだけれど?」 「でも…みんなが言ってるよ お似合いのゴールデンカップルだって…」 千歌音はクスクスと笑った 「そんなのただの噂でしょ 彼とは本当に何もないもの」 「それより…」千歌音はグラスを傾け少し目を伏せながら言った 「姫子と大神さんが幼馴染だなんて始めて知った…もしかして彼の事…好きなの?」 「えっ…そういうわけじゃないけれど…」姫子はあきらかに動揺している、と千歌音は思った 「小さい頃から…守ってくれたから 嫌な事があっても…大神くんがその後で楽しい時間を作ってくれたの…」 そう、そういうことなの…姫子の恋愛感情は大神ソウマに向けられている 千歌音の心は沈んでいく 二人の間に暫しの沈黙の時間が流れた 「あ、あの…」姫子は千歌音が急に黙り込んでしまったことに戸惑っていた 「ち、千歌音ちゃんは…好きな人いる?」千歌音はハッとして顔を上げた 「千歌音ちゃんは私と違ってみんなからモテモテだし、色んな人から告白されてるって聞いてるから…その、選ぶのも大変かなあって…えへへ」 千歌音はグラスのワインを飲み干すと姫子の方を見た 「好きな人…いるわよ 誰か知りたい?」その熱っぽく潤んだ瞳を見て、姫子はドキっとした 千歌音の顔が近づいてくる 気がつけば千歌音の艶やかな唇が目の前にあった (えっ…)姫子は瞬間的に目をつぶっていた 「姫子…」千歌音は姫子の耳元で囁く 「やっぱり…教えてあげない…」耳に直接かかる千歌音の熱い息…ゾクゾクとする 「大神ソウマに心を奪われているあなたなんかに…教えたくない」 「!?」(千歌音ちゃん…怒ってる)姫子は千歌音を見た (千歌音ちゃん、やっぱり大神くんの事が好きなんだ…だから、私の事怒ってる…どうしよう) 長い黒髪に隠れて千歌音の表情を知る事は出来ない 姫子はただ戸惑うばかりだった 「あの…千歌音ちゃん…ごめんね、私…」 「姫子…」千歌音の手が伸びてきて姫子の頬を触る 「私からの…誕生日プレゼント、受け取ってね」 返事をする間も無かった 千歌音の顔が目の前にきたかと思うと、生暖かく湿った感触が姫子の唇に重ねられていた 「!?」(うそ…キスしてる…千歌音ちゃんと…) 重ねられた唇は少しずつ動いていた やがてヌルッと千歌音の舌が姫子の唇を押し入ってきた時に姫子は体をビクリと震わせ、彼女から逃げていた 「そんなに…嫌…なの?」千歌音は酔っているのだろうか?瞳を潤ませ上気した顔つきで迫ってくる 「ど、どうして…何でこんな事するの?」姫子はたじろぎソファから立ち上がった 「ごめんね…」千歌音の手が伸びて姫子の手首を掴んだ 痛い程、強い力… 「こんな想い…絶対口にしてはいけないと思ってた でもね…」 千歌音は姫子を引き寄せると抱きしめた 「このままじゃあなたを誰かに盗られちゃう…」 「ち、千歌音ちゃん…」 「好き…あなたが好き…好きよ、大好き」耳元で何度も囁かれるその言葉に姫子の頭は混乱していた 千歌音は姫子から見たら仰ぎ見上げることしか出来なかった憧れの対象… 親しい友達になれただけでも信じられなかったのに、それが今は愛を囁かれてるなんて… 「嫌なら…嫌だったら言って…もう二度とこんな事しない あなたにはもう…近づかないから…」 「そんな…」もう近づかない?それって今までみたいな二人の関係が終わってしまうって事なの? 嫌だ…そんなのは絶対に でも言葉が上手く出てこない どうしよう… 姫子の目から涙が零れ落ちた 「姫子…」姫子が体を震わせ泣いているのに気がついた千歌音は体を離した 悲しげな目をして姫子の顔を覗き込む 「…そう…やっぱりあなたを苦しめてしまったのね…」 千歌音は扉に向かってゆっくりと歩き出した ガチャッと鍵が開けられる音がする 「まだ…寮の門限には間に合いそうね 車で送らせるから…行きましょう」 千歌音は振り向く事なく言う 「ごめんね…せっかくの誕生日だったのに 嫌な思いをさせてしまったわ…本当にごめんね」 (きっと千歌音ちゃんを怒らせてしまったんだ…) 昨日、玄関先で見送った千歌音の表情が頭から離れない 悲しげな、苦悶に満ちた表情…今まで見た事のない表情… 本当なら昨日は千歌音の家に泊まって楽しい時間を過ごすはずだった 今朝だって二人して仲良く登校していたかもしれないのに… 結局、あれだけ悩んで買い求めた誕生日プレゼントも渡せず、未だ姫子の鞄の中にあった 嫌なんかじゃない、ただ驚いただけ…自分にとってはファーストキスだったわけだし、そう、まだ自分の気持ちがハッキリとわかっていないだけ 頭が混乱してるだけ…だからもう一度ちゃんと向き合えば…姫子は思った (千歌音ちゃんと…ちゃんと話したい…誕生日の続きもちゃんとしたい) 姫子の背後で黄色い声が上がった 「宮様ーっ」 振り返ると千歌音が颯爽と登校してくるところだった (千歌音ちゃん…) 千歌音は周りの生徒たちに「ごきげんよう」と優雅に声を掛けながら真っ直ぐに歩いてくる 姫子は立ち止まり千歌音を待った 「あ、あの…」一瞬の風を感じた「えっ…」 千歌音は姫子の存在など全く眼中に入らないかのように足早に横を通り過ぎて行ってしまった (もう近づかないから…)千歌音の言葉が甦る 姫子はその時、初めて理解した 千歌音が自分から離れてしまう事が現実におこっているのだと 「姫子ーっ、どーしたボーッとして」 「マコちゃん…」 姫子は校庭のベンチに座っていた その視線の先にはテニスコートで打ち合っている千歌音と大神の姿があった 「いつ見てもあの二人はお似合いだなぁ」真琴のその言葉に心が痛む そう、誰だってあの二人を見ればお似合いだと思うだろう 自分だってあの二人はお互いに好意をもっているものだと誤解していたのだから 「おー、神さまがこっちに来るぞ」 テニスを中断した大神が足早に姫子たちの元にやってきた 「来栖川…ちょっといいか?」 「大神くん…」 真琴はニヤニヤ笑いながら手を振りその場を離れていく 「今度の日曜日、村の祭りがあるだろ?その…誕生日に渡せなかったものがあるから…一緒に行かないか?」 「え、でも…」 「五時に迎えに行く」大神は赤面しながらそう告げるとコートに戻っていった 姫子は次の瞬間、千歌音の姿を探していた 千歌音の姿はいつの間にかコートから消えていた (神さまに誘われたのに行かないって!?アホかアンタは…せっかくのチャンスなのに) 躊躇い、行かないと言った姫子に真琴は呆れていた (大事なものってのは失くしてからその大事さに気づくんだよ) 大事なもの…それは自分にとって本当は何なんだろうか? 午後から降り出した雨 傘を用意していなかった姫子は真琴をアテにしていたが、部活のミーティングがあるというので仕方なく一人で帰宅する 暫く玄関先で雨が弱まるのを待っていたが、変わらない様子に姫子は諦めて寮まで走った 10月の冷たい雨が体を濡らした ただでさえ走れば転ぶという特技を持っている姫子のこと、後ろから来た車を避けようとして案の定、足を滑らせた そして…かなり豪快に転んだ 「イッター…」鞄が飛び中の荷物が飛び出てしまった 「あっ…」水溜りに浸かってしまったそれは姫子のとても大切にしているもの 千歌音がくれたアルバム… あわてて拾い上げたが、泥まみれになってしまっている 「ヤダ…こんなに汚れちゃって」姫子は袖口を使って拭いたが、白い表紙なのでかえって汚れが広がってしまった 「どうしよう…どうしよう…」涙が溢れてきた 姫子はアルバムを抱きしめていた そう、本当に大切な大事なもの (大事なものってのは失くしてからその大事さに気づくんだよ)真琴の言葉が甦る 自分にとって大事なものはこのアルバムの中で笑顔を向けていてくれるこの人だったのに… 姫子は雨にうたれながら泣き続けた 「ごめんね、私やっぱり一緒には行けないから」 日曜日、大神の誘いを断った姫子はひとり祭りの会場へ向かった 普段は静かなこの村もこの日ばかりは一気に賑わう 近郊の街からも人が集まってくるので、祭り会場はかなりの人でごった返していた 姫子は人の波に揉まれながら、ただひとりの人の姿を探して彷徨っていた 手紙を読んでくれたらきっと来てくれる…姫子はそう信じた 昨日、姫子は姫宮邸を訪れた 千歌音は不在だったが、応対に出た乙羽にこの手紙を千歌音に渡して欲しいと頼んだ (千歌音ちゃん…) 篝火で囲まれた特設舞台では神楽が舞われていて観客が大勢集まっていた その中で人々の熱気と篝火の暑さで姫子の頭はのぼせそうだった なんだか頭がくらくらしてくる… (!?)…その時、暖かい手が指に絡みつくようにしっかりと姫子の手を握った 姫子は横に立つその人の顔を確かめると、寄り添い肩にもたれかかった 「千歌音ちゃん…来てくれてありがとう…」 あとは言葉にならなかった 千歌音に引っ張られるようにしてその場所から離れ、人気の無い場所へと移動する 「汗…すごいわよ 具合悪いの?」千歌音は姫子の額に浮かぶ汗を指先で拭った 「熱…あるみたい」千歌音は自分の額をつっくけた 「千歌音ちゃん…」心臓が高鳴る 熱っぽいのはきっと千歌音ちゃんのせいだよ、と姫子は思った 「風邪ひいたかもね…雨の中…濡れてたでしょ」千歌音は額をくっつけたまま言う 「知ってたの?…」 「姫子のことは…いつも見てるから いつも姫子の姿を探してしまうから」 熱い息がかかる 「ごめんね…あの時だってすぐに飛んでいって助けてあげたかったのだけれど もう…姫子に近づいちゃいけないって…」 「ヤダ…そんなの嫌だ」姫子は千歌音の背中に腕をまわした 「千歌音ちゃんが離れていってしまうなんて絶対に嫌っ…側に居て…お願い」 「姫子…」 「…すき…千歌音ちゃんのことが好き…大好き」 「姫子…でも」千歌音は姫子の頬に手をあてた 「姫子の好きと私の好きは…きっと違う 私の好きはね…友達としての好きじゃない あなたを抱きしめてキスしたいって…そういう欲望の塊の好きなのよ」 「違わないよ…私も…私も」姫子は目を閉じて顔を上向きに上げた 「姫子…」 「千歌音ちゃんの事考えただけでドキドキが止まらない…千歌音ちゃんに嫌われたら…私、たぶん生きていけないよ」 千歌音の指が姫子の唇をなぞる 「本当にいいの?」千歌音の言葉にそっと頷いた ほどなくして熱い唇が重なった ただ唇を合わせるだけのキスだったけれど、それでも二人の気持ちがひとつになれた瞬間だった 「誰かに…見られちゃうわね」千歌音は唇を離すと少し照れ笑いをした 見られても構わないと思って姫子はギュッと強く千歌音に抱きついた 「千歌音ちゃんと一緒に居られるのなら…どんな辛いことにだって立ち向かえるよ…例えね学校のみんなに虐められても平気…」 「あなたにもう辛い思いなんてさせないから…私が守ってあげる、絶対に」 少しだけ遠回りしたけれど、私達の気持ちは重なり合った 思えば私はあの最初に薔薇の園で出逢った頃から、彼女に恋をしていたんだと思う ただ…少しだけ自分の気持ちに自信が持てなかっただけ、確信が持てなかっただけ… 「ねぇ…千歌音ちゃん…誕生日の続き…ちゃんとしたい」 「ええ…姫子」二人はしっかりと手を握り合って、祭り会場を後にした
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神無月の巫女 エロ総合投下もの 二人の夏旅行 ◆M2vRopp80w氏 真夏の日差しが降り注ぐ道を一台のリムジンが走る。 姫子が車の窓から外を見るとそこには、どこまでも続く澄みきった青く広い空と海が広がっていた。 「うわぁ…見て千歌音ちゃん!海だよ。」 久しぶりに見た海に感動する姫子。 (やっぱり誘ってよかった…) 嬉しそうな姫子の顔を見て千歌音は微笑む。 あのデートのお返しに、千歌音は姫子を姫宮家の別荘へ誘った。 別荘は天火明村から大分離れた県外にある。 長い車の旅も終えて、リムジンから降りると目の前にはまるでちょっとしたホテルのような建物がそびえ立っていた。 「さぁ、ついたわ。ここが姫宮家の別荘よ。」 (こ、これ別荘なの…まるでホテルみたい…) 姫宮邸ほどではないが、姫子が想像していた別荘をはるかに上回っていた。 姫子が呆然として別荘を見上げていると中から数人のメイド達が出迎えてくれた。 実は本当は乙羽も来る予定だったのだが、千歌音が離れた姫宮邸からメイド長である自分まで離れる訳には行かなかったらしい。 姫子も一緒に別荘へ行くと言った時は、殺気らしきものを感じたが…。 二人は中に入り広間のソファーに座り、一息つく事に。 冷たいアイスティーを飲みながら、今後の予定を話す。 「しばらく休んだら何しましょうか?ここはすぐ近くに海があるし、山までほんの少し歩けば滝とか川もあるのよ。」 「…う~ん。じゃあ、せっかくだし海へ行きたいな。」 「ふふっ…姫子、ずっと車の中で海を見ていたものね。」 「だって久しぶりなんだもん。」 クスクスと笑う千歌音に姫子は恥ずかしそうにそう言った。 「そうね、私も久しぶりにここの海が見たいし…海水浴でもしようかしら。」 「千歌音ちゃーん。早く早く!」 ピンクの水着の上に白いパーカーを着た姫子が、浜辺で千歌音を手招きする。 目の前に広がる真っ白な砂浜に青い海が姫子を興奮させた。 まるで子供の頃に戻ったように。 遠くから水色の水着をまとった千歌音が姫子の下に走って来る。 「姫子ったら早いんだもの。」 ちょっと置いていかれた千歌音は苦笑いしながらやって来た。 「あ…ご、ごめんね。つい…」 「ふふっ、いいのよ。姫子が喜んでくれたなら。」 「………」 「姫子?」 千歌音が姫子を見上げてると、なんだかぼうっとした顔で姫子が千歌音を見つめていた。 「どうしたの姫子?」 「えっ、あ…ううん、何でもないの!」 姫子は顔を赤らめ両手を振った。 (千歌音ちゃん、水着姿も素敵なんだもん…見とれちゃうよ) プライベートビーチで、2人きりの時間を満喫する姫子と千歌音。 海で泳いだり、パラソルの下で寝そべって日光浴も楽しんだ。 「千歌音ちゃん」 「?」 姫子の声に振り向くと、カシャッと姫子がカメラで千歌音を撮った。 「きっと綺麗に撮れてるよ」 「もう、さっきから姫子ったら私ばかり撮ってない?」 ぷくっと頬を膨らませ、反論する千歌音。 姫子はカメラを置いて千歌音の下へ駆けてくる。 「だって水着姿の千歌音ちゃんなんてめったに見れないもん。この際に撮って置かないとね。」 「も、もう…っ!」 恥ずかしげもなくそんな事を言ってくる姫子に、照れた千歌音は海水をピシャッとかけた。 「きゃっ…やったね、千歌音ちゃん!」 姫子も千歌音に負けずにかける。 二人ではしゃぎ、海水をかけ合っていると突然波が千歌音の足をさらった。 「きゃっ…!」 「千歌音ちゃん…危ない!」 バランスを崩した千歌音を姫子がとっさに抱きとめた。 「大丈夫?千歌音ちゃん!」 「え、ええ…ありがとう姫子。」 千歌音が姫子から離れようとすると、ギュッと姫子の腕に引き寄せられた。 「姫子…?」 顔を上げると姫子の顔が間近にあった。 「千歌音ちゃん…」 「ひ…め…」 唇が近づいてくる。 触れ合おうとしたその時…。 「お嬢様ー!」 「 …っ!! 」 遠くから千歌音を呼ぶメイドの声が聞こえた瞬間、二人は慌てて離れた。 「な、何?どうかしたの?」 少し戸惑ったように千歌音はメイドに尋ねる。 「お電話が入っております。メイド長の乙羽様からです。」 「乙羽さんから?ちょっと待っていて。すぐに行くから。」 「かしこまりました。」 一礼したメイドは別荘の中へ戻って行く。 「ごめんなさい、姫子。ちょっとだけ外すわね」 千歌音は申し訳なさそうに姫子に謝った。 「ううん、気にしないで…」 千歌音が別荘へ入って行ったのを確認すると、ひとり残された姫子は気まずくてもう少しで千歌音の唇に触れるはずだった自分の唇を指で押さえた。 (私ってば…) あの後、戻ってきた千歌音としばらく海水浴を楽しんだ姫子は夕食の時間までにシャワーを浴びる事にした。 数十人は入れるであろう広い浴室の中に入り、シャワーの栓をひねる。 突然浴室のドアの向こうから声がした。 「姫子?」 「…千歌音ちゃん?」 「私も入っていい?」 「えっ、ええと…うん。」 ここは千歌音の別荘なのに断りなんて聞く必要はないのだが。 そんな事を考えていたら、浴室のドアが開く音がした。 姫子の横にやって来た千歌音は隣のシャワーの前に立つ。 ちらっと千歌音を見ると、白い肌が姫子の視界に入った。 (やっぱり…綺麗だなぁ、千歌音ちゃんは…) 長く艶やかな黒髪、真っ白な肌、引き締まった腰、すらりと伸びた手足。 その千歌音の身体を熱いお湯が濡らしていく。 姫子がその様子をじっと見つめていると、千歌音が不意にこちらを見た。 「なぁに?」 「えっ…あ、えっと…海水浴楽しかったね。」 姫子は慌ててごまかすように話題を出す。 「ええ、明日はどこか行きたい所はある?」 「そ、そうだなぁ…そうだ、ここら辺にお土産なんて買うお店とかある?」「お土産?そうね、車に乗って町までいけばお店があるわ。行ってみる?」 千歌音が近づいて姫子の顔を覗く。 「…っ!う、うんっ。マコちゃんにもお土産買って行こうかなって思ってたから…」 姫子は千歌音の身体から顔を逸らした。 「…そう?確か町に、カフェもあったし…明日はそこでゆっくりして、明後日に山にでも行ってみましょうか?」 姫子の様子に小首を傾げながら千歌音は予定を立てていく。 姫子は適当に相槌を打ちながら頷いた。 「じゃあ先に上がるわね。」 「う、うん…」 千歌音は一通りシャワーを浴びると先に浴室を出て行った。 「はぁ…何やってるんだろう…私…」 姫子は溜め息をついた。 頭から離れないさっきの千歌音の裸体を、消そうとするようにシャワーのお湯をさらに熱くした。 夕食中、姫子は急にさっきの事を思い出して千歌音に尋ねた。 「そういえば、乙羽さんから何の用だったの?」 「ああ、無事にこちらに着いたか確認の電話よ。あと姫子にもよろしくって…」 「そっか…千歌音ちゃん?どうかしたの?」 何故か急に考え込む千歌音。 「そう言えば、乙羽さん…くれぐれも気をつけるように言ってたけど…何の事かしら?」 姫子は何故か悪寒を感じた気がした。 翌日、二人で車に乗り町へ出ると様々なお土産屋がならんでいた。 お菓子やその町の特産品、色んなお土産に目移りしながらどれにしようかと千歌音と相談し購入した。 観光客も多い為か、町には結構オシャレなカフェがあった。 その中の一軒のオープンカフェに入る。 「…じゃあお願いします。」 注文を済ませ、二人で過ごす貴重な時間。 天火明村では二人でこんなにゆっくり過ごす時間はあまりない。 姫子は大学やバイトに、千歌音は中学に通っていて、ましてや姫宮の一人娘なのだ。 暇なはずはない、お互い何かと忙しい。 「久しぶりだね。二人きりで過ごすの。」 「そうね、私も夏休みでも忙しいし…姫子も大学やバイトがあるものね。」 「千歌音ちゃんありがとう。こんな素敵な別荘へ誘ってくれて…こんな素敵な時間を作ってくれて…」 姫子は千歌音に感謝の気持ちを伝える。 千歌音とこうして過ごす時間は、姫子にとって最も幸せな時だ。 「…そんなこと…」 千歌音は姫子の手を取り、両手で包み込んだ。 「私が姫子と一緒に来たかったの。姫子と一緒だから。あの時、姫子が言ってくれたでしょう?私と一緒だから楽しいって…私も姫子と同じだから…姫子と一緒だから楽しいの。」 綺麗な瞳で見つめ返す千歌音に、姫子はドキドキしながら千歌音の手を空いた手で包む。 「千歌音ちゃん…」 気持ちいい風が吹く。 こんな穏やかで大切な人と幸せな時を過ごせて、姫子は世界一幸せ者だと思った。 その日の朝は天気が良かった。 山の中には滝と小川があるらしく、二人で見に行く約束だった。 帽子とお弁当なども忘れずに持って行く。 しばらく二人で手を繋いで森の中を歩いて行くと、どこからか水の流れる音が聞こえる。 「もうすぐ着くわ、ほら。」 千歌音が指を指した場所を見ると小川を見つけた。 その小川は澄みきっていて、中の魚や岩まで見えるほどだ。 「凄く綺麗な川だね。」 「そうでしょ。この先の上流に行くと滝があるの。さぁ、行きましょう。」 「うん。」 上流へ登って行くと辺りの空気が冷たく感じた。 滝の流れる大きな音が聞こえる。 「ほら、見えて来たわ。」 遠くの方にさほど大きな滝ではないが、確かに立派な滝があった。 「うわぁ…。」 近くまでいくと、寒いくらいに涼しく感じる。 「気持ちいいね、水も綺麗だし。こんな場所があるなんて。」 姫子はうーんと気持ち良さそうに背伸びをした。 「こうするともっと気持ちいいわよ。」 千歌音は靴を脱ぎ、岩場に座って川の水の中に足を入れる。 姫子も千歌音の隣に座って同じように足を入れた。 川の水は冷たくて、歩き疲れた足を癒やしてくれる。 二人は持ってきたお弁当を食べてのんびりと自然の中で過ごす。 いつもの慌ただしい日常を忘れ心も体も癒されていくのを感じた。 昼を過ぎたあたりだろうか。 空を見上げるとさっきよりも雲が増えている。 「もしかしたら雨が降るかも…残念だけれど、そろそろ帰りましょうか?」 「そうだね、じゃあ帰ろうか千歌音ちゃん。」 荷物を片付けて、二人で山を降りて行くと空はどんどん暗くなり、ポツリポツリと雨が振り出した。 二人は急ぐが、雨足はさらに強くなっていく。 服はもう既に濡れてしまっていた。 本当なら雨が収まるまで雨宿り出来ればいいのだが。 こんな山の中では…。 そんな事を考えながら急ぐ姫子の腕を、突然千歌音が掴んだ。 「どうしたの、千歌音ちゃん!?」 「まって姫子、こっち。」 千歌音は姫子の手を取り、帰りの道とは違う草むらの中を歩いて行く。 (どこに行くんだろう?) 「あ…」 さらに奥へ進むと、急に道が開けた。 「あそこでしばらく雨宿りしましょう。」 千歌音が指を指した先には、小さな小屋があった。 中に入ると農業に使うような道具が色々と並んでいる。 思った以上に中は広く、きちんと片付けられていて雨宿りするにはちょうど良かった。 「ここって…?」 「ここの近くに姫宮家の菜園があるの、そこの道具小屋よ。昔ここに来た事を思い出したの。まだあって良かったわ。」 「そうなんだ。」 「あ…姫子、髪が濡れてる。」 姫子の服と髪は雨で濡れてしまっていた。 千歌音が白いハンカチを取り出し、姫子の髪や頬を拭いてくれる。 「私はいいから、千歌音ちゃんだって濡れてるよ。風邪でもひいたら…」 そう言いかけて、姫子は言葉を詰まらせた。 背伸びをして姫子の髪を拭いてくれる千歌音の胸元に目を奪われた。 千歌音の服が濡れて下着が透けている。 姫子は息を飲み込んだ。 千歌音の髪は濡れ、艶やかな桜色の唇が色気を醸し出している。 「姫子?」 千歌音が姫子の視線を辿ると、服が透けている事に気づいた。 「…っ。」 千歌音は耳まで真っ赤にして、胸元を両腕で覆う。 「あ、えっと…その…ちゃんと拭いた方がいいよ。風邪…ひくといけないし…」 ハッと我に返った姫子は、慌てて詰まらせていた言葉を出す。 「え…ええ…」 気まずい雰囲気が流れる。 「あの…私、むこう向いてるから。」 姫子は千歌音から背を向けて壁の方に向かい合った。 しばらくすると衣擦れの音が聞こえた。 いま後ろで千歌音が服を脱いでいる。 (千歌音ちゃんの裸なんて何度も見てるじゃない…私ってば…) いまさら恥ずかしがる事なんて無いはずなのに、姫子の心臓は今までにないくらい高鳴っている。 「姫子…」 後ろから千歌音の声が聞こえる。 (もう済んだのかな…?) そう思って振り返ると千歌音が上半身の前をはだけ、瞳を潤ませて立っていた。 「千歌音ちゃん…!」 驚いた姫子は、前を向いて千歌音の裸から視界を遮った。 「……っ!」 だが、千歌音は姫子の背中に抱きついてくる。 背中に感じる千歌音の胸の感触。 (もしかして…私、誘われてる…?) 姫子の心臓がさらに高鳴った。 「ごめんなさい。でも、やっと…本当に…」 千歌音は姫子の服をギュッと掴み、小さな声を絞り出すように呟いた。 「二人きりになれた…」 千歌音が顔を背中にうずめる。 「千歌音ちゃん…っ。」 その瞬間、姫子はたまらず振り返り千歌音を抱きしめた。 「あっ…」 千歌音を引き寄せ、小さな唇を塞ぐ。 二人の唇が重なった。 はだけた胸に手を重ねると、下着越しに温かな体温が伝わってくる。 「千歌音ちゃん…千歌音ちゃん…」 唇を重ねながら千歌音の名前を呼ぶ。 「ひ…めこ…っ」 服に手をかけていくと、白い肩が露わになった。 そのまま一気に脱がしていく。 パサッと床に服が落ちた。 「ごめんね、千歌音ちゃん…もう私…っ」 姫子はそのまま千歌音を肩を抱きしめて囁く。 「我慢できない…」 「姫子…」 千歌音は姫子に応えるように首に手を回した。 激しい雨の音にかき消されないように、千歌音の声に耳を済ませながら首筋にキスをする。 「…ん…っ…」 耳を甘く噛みながら、ブラジャーのホックに手をかけた。 ブラジャーを外すと白くて豊かな胸が露わになる。 できるだけ優しく触れて、乳房を揉んでいると千歌音の呼吸が乱れていくのが分かった。 「綺麗な胸…白くて、大きくて、柔らかくて…」 「そんなこと…」 姫子が胸を褒め称えながら千歌音を見つめると、頬は赤らんで黒い瞳はキラキラと潤んでいた。 「本当だよ。千歌音ちゃんは全部綺麗だもん…」 指で胸の先端を撫でると、千歌音が切なそうに瞳を揺らした。 顔や肩にキスをしながら下へとさがっていく。 胸にたどり着いてその固くなった実を口へ含んだ。 「……っ…ぁ」 千歌音の腕が姫子の頭を引き寄せて抱きしめる。舌先でつついていると固さが増していくのが分かった。 立ったままの千歌音の脚が震えていた。 「千歌音ちゃん、肩に掴まって。」 姫子の肩に手を掴まらせて、身体の重心を安定させる。 唇で胸を愛撫しながら、指先はゆっくりとさらに下に降りていく。 「ぁ…っ!姫子…」 その指先を千歌音のスカートを捲って中にスッと忍びこませた。 脚を撫で上げながら、下着の上からその場所に優しく触れる。 「汚れちゃうから脱ごうね。」 そう言って、姫子は下着に手をかけると千歌音が息を飲む声が聞こえた。 指に下着をかけて下におろしていく。 「脚上げて。」 脚を上げさせて下着を脱がさせると、今度はスカートも脱がさせる。 これで千歌音は、何ひとつ身にまとっているものは無くなった。 その美しい裸体を姫子の前に晒している。 「綺麗だよ、千歌音ちゃん…」 その美しい裸体を姫子がうっとりと見つめている。 「…あんまり…見ないで…」 姫子は恥ずかしそうに俯いて、顔を真っ赤にしている千歌音の腕を掴んで引き寄せた。 「きゃっ‥!」 姫子のもとに倒れこんできた千歌音を床に押し倒す。 「あっ…やだっ…!」 いきなり膝に手をかけて脚を開かせた。 千歌音が驚きと非難の声を上げる。 目の前の姫子に全てをさらけ出した千歌音。 姫子の視線が一点を見つめている。 「やっ…」 恥ずかしさのあまり瞳をギュッと瞑った。 「あっ…!」 姫子がそこに顔をうずめた。 「だめっ…やめてっ!汚いから…っ」 千歌音が姫子の顔を引き離そうとするが、力の入らない手では抵抗すらできない。 姫子の手に手首を掴まれて、動きを封じられる。 「大丈夫だよ、千歌音ちゃん…」 「でもっ、汗とかかいているし…それに…」 「誘ったのは千歌音ちゃんだよ、いまさら止められないよっ…」 姫子はもう感情を抑えきれないとでも言うように、再び顔をうずめた。 「あ…姫子っ…!」 千歌音の視界が涙で歪んだ。 「んっ…はぁ…っ」 姫子の舌が触れてくる。 その場所を時には優しく、執拗に、我を忘れて。 「千歌音ちゃん…」 姫子は許しを請うように、こちらを見ながら舌で愛撫し続けている。 「全部もらってもいい?…千歌音ちゃんの…」 指が入り口に少し侵入した。 「あ…」 何を言ってるか分かっている。 まだ入れたことのないその奥は、姫子にすらまだ上げてはいない。 初めての経験に不安を感じたが、相手は大好きな人だ。 拒否する理由はどこにもなかった。 (姫子になら…私…) 千歌音がこくりと頷いたのを確認して、姫子の指が奥へ入る。 「っあ…‥」 千歌音はまだ幼い。 中も狭くて姫子の指はすぐにそこへ到達した。 それはその奥を守るように膜を作っている。 姫子は身を強張らせる千歌音を抱き寄せて、安心させるように額にキスした。 「少し痛いかもしれないけど‥ごめんね」 そう言った瞬間、姫子の指がさらに奥へと進む。 そして…。 「……あっ」 千歌音はその瞬間、姫子の手によって守られていたものが破られた事を感じた。 「いっ…‥」 すぐに痛みを感じた。 ギュッと姫子にすがりつく。 「千歌音ちゃん、痛かった?大丈夫?」 姫子が心配して千歌音の頭を優しく撫でる。 しばらく指を動かさずにじっとしていたら、千歌音が姫子の方へ顔を向けた。 「もう、いいから…」 「でも…まだ痛むでしょ?」 「大丈夫…まだ少し痛むけど…」 「いいの?」 千歌音が頷いた。 姫子はありがとうと言って唇を重ねる。 ゆっくりと優しく指を動かすと、千歌音が首を反らした。 「あっ…姫子…っ」 いままでは入り口までだったが、初めて入った千歌音のその奥は温かくて脳まで溶けてしまいそうだった。 雨の音がまだ微かに聞こえる。 きっとまだ降っているのだろう。 姫子はそんな事を考えながら千歌音を抱き続けた。 「お嬢様方!ご無事でしたか!」 別荘へ戻ると、帰って来ない二人を心配したメイド達が慌てて出迎えに来た。 「大丈夫よ、心配かけてごめんなさいね。少し雨宿りをしていたものだから…」 先ほどの雨が嘘のように、空は晴れている。 あの後、雨が止むまで二人で抱き合ったまま、あの小屋で過ごしていた。 ただの通り雨だったのだろう。 思ったよりもすぐに止んでしまった。 二人で着替える為に部屋に戻る途中、千歌音が姫子の腕に自分の腕を絡まてきた。 「ねぇ、姫子…今度はちゃんとお返しさせてね。」 「お返し?お返しならもうして貰ったよ。」 「そうじゃなくて…いつも姫子にばかりにしてもらってるから…その…」 顔を赤くして見上げてくる千歌音の顔を見て、姫子は自分の顔まで赤くなるのが分かった。 (そっか…だから千歌音ちゃん、私を誘ってたんだ…) 千歌音が言うお返しとはきっとそうゆう事なのだろう。 姫子は答える代わりに、千歌音の手をキュッと握った。 「千歌音ちゃん、花火やらない?」 別荘で過ごす最後の夜、姫子はこっそりと買って持って来た花火を取り出して千歌音を誘った。 浜辺で出て、波の音しか聞こえない静かな海の前で夏旅行最後の夜を過ごす。 花火もあっという間にほとんど終わり、最後の線香花火に火をつけた。 「楽しかったね。本当に来てよかったな。」 「来年も二人で来ましょうか?ここに…」 「本当?いいの?」 「ええ、もちろん。」 綺麗な千歌音の横顔を見て姫子は耳元で囁いた。 「…お返しもまだ貰ってないしね。」 「な…!もう、姫子っ…」 二人で笑い合って、寄り添い夜空を見上げた。 (私、きっと忘れない…千歌音ちゃんがくれた素敵な思い出…) だがこの時二人は思ってもみなかった。 この先に再び二人を引き裂く運転が待ち受けていたなんて…。 何も知らない二人をただ夜空に浮かぶ月が静かに見つめていた。 終わり。
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神無月の巫女 エロ総合投下もの 初めてのチョコ 初めて会ったのは雪の積もった道端。 倒れていた少女を姫子と下女数人が見つけた。 下女に囲まれながら姫子は倒れている少女へと手を差し伸べる。 それを見た下女の一人が、汚れたようなものを見るような目で倒れている少女を睨み付け姫子に囁く。 「姫様、汚れますわ」 「イズミ、バカなことを言わないの、それより…これは大変だわ、大丈夫?貴女、お名前は?」 その少女は長い黒髪に長襦袢を一枚着ており明らかに寒そうだった。 息を切らしながら声を吐き出してくる「ひ、姫宮…ち、千歌音です」 そして姫子と顔を合わした瞬間、両者は顔をピンク色に染めた。 一瞬だった、その顔にはお互いがなにかを感じ取った…まさに言う、一目惚れというものだ。 「っ!ああ…そ、そう…私、私は来栖川姫子よ、よろしくね、千歌音」 「は、はい…ひ、姫子」 微笑みかけてきた姫子に安心したのか千歌音も微笑んで名前を呼び返す。 それを見た下女数人が騒いだ、特に長い青髪でカール丈にしている少女が千歌音に掴みかからん勢いで騒ぎ出す。 「なあっ!?あ、貴女ねえ!姫様に対してなんですの!?」 「おやめなさい!」 「だ、だってこの子、私達の姫様に向かって――」 「聞こえなかったのイズミ?」 「…うう、は、はい」 「それよりこのままでは風邪を引いてしまうわ、屋敷へ連れて行きましょう」 その会話を聞きながら千歌音は意識が遠のいていった――。 気がつくと大きな広間にいた、下女数人と正面に姫子がいる。 「大丈夫?どこか痛むところはない?そうね…このままではいけないわ、なにか着たほうがいいわね」 「は~い、では私が準備します(はあ、どうしてこんな子をお屋敷に、それも姫様のお部屋に…)」 「いえ、私が用意するから結構よ」 と、姫子は立ち上がり後方へと向かうと引き出しを探り一枚の華やかな着物を取り出す。 「これを着るといいわ」 それを見たイズミが発狂する。 「なっ!?そ、それは姫様専用の!い、いけませんこのような子に姫様のものを――」 「いいのよ、いいの…私が着せたいもの、ね、千歌音もこれでいいわよね?」 お日様のような優しい微笑みでそう言われ、困惑していた千歌音も小さな口調で「……はい……」と答えた。 イズミがいきり立つ。 「あ、貴女ねえ!少しは遠慮ってものを――」 「イズミやめなさい!私の言うことが聞けないの?」 「う……わ、わかりました、お部屋へと案内します」 渋々従った表情で千歌音をキッと睨み付けると悔しそうな表情で着物を着せる。 そして、下女全員で姫子に頭を下げると千歌音を連れて部屋を出る、そして少したつと千歌音に向き直り、先ほどとは打って変わって まるで上から見下ろすような表情で軽く睨むと両腰にそれぞれ手を当てて話し始める。 「貴女、姫宮さん?少し姫様に優しくされたからっていい気になってるのではございません?」 「…ひめ…さま?」 「そうですわ、何百年とと続く来栖川の一人娘でらっしゃいますの、非の打ち所のないお方、私達のお姫様こと姫様 はっきり申し上げますけれど貴女とでは身分や立場が違いすぎますことよ、あまり勘違いなさらないよう、わかって頂けるかしら?」 「貴女なんか姫様と口を利けるような人間じゃないのよ」「まったくですわ」 イズミを含めた下女達にそれぞれ言われ千歌音が困惑する、すると――。 「はい、そこまで」 髪の短い少女が現れた、イズミ含めたお嬢様風の下女達とはまた雰囲気の違う女の子だ、この子も下女の一人だろう。 「さ、早乙女さん、な、なんですの?わ、私達は姫宮さんに――」 「いいから行け!」 怒鳴られひいっと退散していく下女達を尻目にその少女は千歌音に近づく。 「私は早乙女真琴、よろしく千歌音」 「どうして私の名前を」 「ああ、乙羽さんから聞いたから…ってあ、部屋に案内するから、こっちだよ」 身寄りのない千歌音はこうして男子禁制でもある来栖川のお屋敷で下女として働くことになった。 しかし、千歌音は病弱なためほとんどの日を一日布団で過ごした、下女としての時間はないに等しかった。 働いても少ない時間で仕事は簡単で楽な仕事だけ、決して厳しい仕事を与えられることはなかった。 そしてそういう千歌音に姫子はなにも言わない、それどころか微笑んで千歌音の身体を心配するだけだった。 通常は下女に厳しい如月乙羽も千歌音にだけはなぜか甘い、それでいて食事の量は他下女と同等で食事は部屋でとることを許され、千歌音に対しては身体を考えた食事を与えられる。 だから、その優遇を気に入らないと当然のごとく同じ下女からは嫉妬を買う。 掃除の最中に嫌味を聞こえるように言われる「いいご身分ですこと」とイズミ達からの嫌がらせは仕事時は常にあった。 そんな毎日が続いたある日、2月14日。 「ごほっ…ごほっ!」 その日の朝から咳が酷くて寝込んでいた。 「はあっ…ごほっ!」 隣では姫子が看病してくれている。 「千歌音…どこか他に苦しいところはない、大丈夫?」 「はい…ごほっ、大分よくなりました、いつもすみません姫様」 「私は私がしたいからしているのよ、それよりちゃんと寝てなさい」 「はい、すみません」 起き上がっていた千歌音が頭を下ろし再び横になる。 千歌音の頬が染まっているのは熱だけのせいではない、姫子が近くにいるからだ。 色んな仕草にドキドキしてしまう、シルクのような髪に触れる仕草。 そしてそれは姫子も同じ、千歌音といると胸がドキドキする、こんな気持ちはいままで感じたことがない。 あの日、千歌音と初めて出会ってから…こういう気持ちを抱くようになった。 「千歌音……好き」 眠っている千歌音の黒髪に軽く触れると額に唇を寄せていく…そして触れる寸前。 「お嬢様」 乙羽の声に我に返ると静かに離れた。 「なに」 「少しよろしいでしょうか」 「千歌音の傍にいまはいたいの、ごめんなさいね」 「姫宮さんには下女をつけます、そろそろ来栖川家一人娘としての自覚と立場をお持ちください」 少し強い口調でそう言われ姫子は黙る。そしてため息をつくと「わかったわ」の声と同時に部屋を出て行った。 千歌音は夕方に目を覚ました、気分がよくなったのか布団から起きて着替える。 そして部屋を出た、そうだ、今日はバレンタインデー、好きな人にチョコレートを上げるイベントの日だ。 千歌音は姫子の顔を浮かべながら調理場へと向かう。 が、皆同じ目的なのか調理場は下女でいっぱいだった、クッキーを焼く音などが聞こえる、下女は誰も千歌音と年のそう変わらない少女ばかりだ。 そして、チョコの材料、居場所などは大きくスペースをとったイズミ、ミサキ、キョウコの3人が占領していた、それに他の下女達までいるから千歌音が作る場所はない。 悲しそうな目でイズミを見つけていた千歌音…と後ろを振り返ったイズミと目が合う。 「あら姫宮さん…貴女今頃起きてきてなんですの?」「貴女いつまで寝てらしたの?」「いま何時だと思ってらっしゃいますの?」 それぞれの声に戸惑う。「わ、私はその…」 他の下女達も作業を止め千歌音を見つめていた。 「なにか私に言いたいことでもおありですの?なんだか材料を使いすぎですわ~とでも言いたい顔ですわね、チョコを作りたいと、貴女何様ですの?」 「い、いえそんな…私は」 「貴女、少しムシが良すぎると思いません?」 いつの間にか千歌音は下女達に囲まれていた。 「貴女…今日一日なにをなさってらしたの?なにかお仕事なさって?」 両腰にそれぞれ手を当てて訪ねてくるイズミに答えられない。 「なんとか言ってはいかが?」 ミサキ、キョウコも小さく「くすっ…」と微笑み見守る、事情を知っていて問い詰めているのだ。 「…ません」 「はあ?」 「なにもしてません、ね…寝てました」 その言葉に顎に手をやり呆れた表情のイズミ。 「まあ…寝てました?私達は朝早くから起きて、お仕事してるのに、貴女だけ寝てましたと…で、夕方に起きてチョコだけは作りたい… 貴女恥ずかしくありませんの?」 「……」 「それから姫宮さん、貴女、ずっと姫様に看病して頂いてたんですって?」 調理場がざわっと騒がしくなった。 「まあいくらなんでもそれはねえ、少し目をかけて頂いてるからって貴女だけ特別扱いされてるなんてね~」 イズミ達全員に責め立てられている千歌音は言い返せない、全て事実だからだ。 「貴女の食事代だってただではございませんのよ?」 そして次の非難が飛び出そうとしていた瞬間に声が聞こえた、短髪の女の子だ。 「もうやめなイズミ」 「さ、早乙女さん…な、なんですの?」 「あのさ、一人を皆で囲んで、そういうの私嫌いなんだ」 「なっ!?わ、私は事実を言ってるだけですわ」 「だから一対一で言いな、それともそこの2人がいないとなにも出来ないとか?」 とミサキ、キョウコを指差す。 「な、なんですって~!?」 「それからそこ占領しすぎ、千歌音にも少し分けてあげなよ、出ないと姫様に言う」 「な、なんで私が……はあっ」 と姫子を出されては弱いのか「す、少しだけですわ」と渋々従った様子だ。 「っ…あ、ありがとうイズミさん」 「ご、誤解なさってるようですが貴女のためにやったわけでは――」 「はい、わかってます…でも、ありがとう」 「っ…み、みやさ…?っ…わ、私は…さ、さあ続きを!」 千歌音が微笑むとイズミは顔を真っ赤にして慌てたように作業を続けた。 「はは照れてる、照れてる、さ、千歌音作るよ。私も手伝うからさ、好きなんだろ?姫様のこと」 「…っ!は、はい…」 真琴と意気投合した千歌音は一緒にチョコレートケーキ作りに取り組んだのだった――。 千歌音は夕方に目を覚ました、気分がよくなったのか布団から起きて着替える。 そして部屋を出た、そうだ、今日はバレンタインデー、好きな人にチョコレートを上げるイベントの日だ。 千歌音は姫子の顔を浮かべながら調理場へと向かう。 千歌音は姫子の顔を浮かべながら調理場へと向かう。 が、皆同じ目的なのか調理場は下女でいっぱいだった、クッキーを焼く音などが聞こえる、下女は誰も千歌音と年のそう変わらない少女ばかりだ。 そして、チョコの材料、居場所などは大きくスペースをとったイズミ、ミサキ、キョウコの3人が占領していた、それに他の下女達までいるから千歌音が作る場所はない。 悲しそうな目でイズミを見つけていた千歌音…と後ろを振り返ったイズミと目が合う。 「あら姫宮さん…貴女今頃起きてきてなんですの?」「貴女いつまで寝てらしたの?」「いま何時だと思ってらっしゃいますの?」 それぞれの声に戸惑う。「わ、私はその…」 他の下女達も作業を止め千歌音を見つめていた。 「なにか私に言いたいことでもおありですの?なんだか材料を使いすぎですわ~とでも言いたい顔ですわね、チョコを作りたいと、貴女何様ですの?」 「い、いえそんな…私は」 「貴女、少しムシが良すぎると思いません?」 いつの間にか千歌音は下女達に囲まれていた。 「貴女…今日一日なにをなさってらしたの?なにかお仕事なさって?」 両腰にそれぞれ手を当てて訪ねてくるイズミに答えられない。 「なんとか言ってはいかが?」 ミサキ、キョウコも小さく「くすっ…」と微笑み見守る、事情を知っていて問い詰めているのだ。 「…ません」 「はあ?」 「なにもしてません、ね…寝てました」 その言葉に顎に手をやり呆れた表情のイズミ。 「まあ…寝てました?私達は朝早くから起きて、お仕事してるのに、貴女だけ寝てましたと…で、夕方に起きてチョコだけは作りたい… 貴女恥ずかしくありませんの?」 「……」 「それから姫宮さん、貴女、ずっと姫様に看病して頂いてたんですって?」 調理場がざわっと騒がしくなった。 「まあいくらなんでもそれはねえ、少し目をかけて頂いてるからって貴女だけ特別扱いされてるなんてね~」 イズミ達全員に責め立てられている千歌音は言い返せない、全て事実だからだ。 「貴女の食事代だってただではございませんのよ?」 そして次の非難が飛び出そうとしていた瞬間に声が聞こえた、短髪の女の子だ。 「もうやめなイズミ」 「さ、早乙女さん…な、なんですの?」 「あのさ、一人を皆で囲んで、そういうの私嫌いなんだ」 「なっ!?わ、私は事実を言ってるだけですわ」 「だから一対一で言いな、それともそこの2人がいないとなにも出来ないとか?」 とミサキ、キョウコを指差す。 「な、なんですって~!?」 「それからそこ占領しすぎ、千歌音にも少し分けてあげなよ、出ないと姫様に言う」 「な、なんで私が……はあっ」 と姫子を出されては弱いのか「す、少しだけですわ」と渋々従った様子だ。 「っ…あ、ありがとうイズミさん」 「ご、誤解なさってるようですが貴女のためにやったわけでは――」 「はい、わかってます…でも、ありがとう」 「っ…み、みやさ…?っ…わ、私は…さ、さあ続きを!」 千歌音が微笑むとイズミは顔を真っ赤にして慌てたように作業を続けた。 「はは照れてる、照れてる、さ、千歌音作るよ。私も手伝うからさ、好きなんだろ?姫様のこと」 「…っ!は、はい…」真琴と意気投合した千歌音は一緒にチョコレートケーキ作りに取り組んだのだった――。 「っ…み、みやさ…?っ…わ、私は…さ、さあ続きを!」千歌音が微笑むとイズミは顔を真っ赤にして慌てたように作業を続けた。 「はは照れてる、照れてる、さ、千歌音作るよ。私も手伝うからさ、好きなんだろ?姫様のこと」 「…っ!は、はい…」真琴と意気投合した千歌音は一緒にチョコレートケーキ作りに取り組んだのだった――。 「っ…み、みやさ…?っ…わ、私は…さ、さあ続きを!」千歌音が微笑むとイズミは顔を真っ赤にして慌てたように作業を続けた。「はは照れてる、照れてる、さ、千歌音作るよ。私も手伝うからさ、好きなんだろ?姫様のこと」 「…っ!は、はい…」「…っ!は、はい…」真琴と意気投合した千歌音は一緒にチョコレートケーキ作りに取り組んだのだった――。 「っ…み、みやさ…?っ…わ、私は…さ、さあ続きを!」千歌音が微笑むとイズミは顔を真っ赤にして慌てたように作業を続けた。「はは照れてる、照れてる、さ、千歌音作るよ。私も手伝うからさ、好きなんだろ?姫様のこと」 「…っ!は、はい…」「…っ!は、はい…」 千歌音は夕方に目を覚ました、気分がよくなったのか布団から起きて着替える。 そして部屋を出た、そうだ、今日はバレンタインデー、好きな人にチョコレートを上げるイベントの日だ。 千歌音は姫子の顔を浮かべながら調理場へと向かう。 千歌音は姫子の顔を浮かべながら調理場へと向かう。 が、皆同じ目的なのか調理場は下女でいっぱいだった、クッキーを焼く音などが聞こえる、下女は誰も千歌音と年のそう変わらない少女ばかりだ。 そして、チョコの材料、居場所などは大きくスペースをとったイズミ、ミサキ、キョウコの3人が占領していた、それに他の下女達までいるから千歌音が作る場所はない。 悲しそうな目でイズミを見つけていた千歌音…と後ろを振り返ったイズミと目が合う。 「あら姫宮さん…貴女今頃起きてきてなんですの?」「貴女いつまで寝てらしたの?」「いま何時だと思ってらっしゃいますの?」 それぞれの声に戸惑う。「わ、私はその…」 他の下女達も作業を止め千歌音を見つめていた。 「なにか私に言いたいことでもおありですの?なんだか材料を使いすぎですわ~とでも言いたい顔ですわね、チョコを作りたいと、貴女何様ですの?」 「い、いえそんな…私は」 「貴女、少しムシが良すぎると思いません?」 いつの間にか千歌音は下女達に囲まれていた。 「貴女…今日一日なにをなさってらしたの?なにかお仕事なさって?」 両腰にそれぞれ手を当てて訪ねてくるイズミに答えられない。 「なんとか言ってはいかが?」 ミサキ、キョウコも小さく「くすっ…」と微笑み見守る、事情を知っていて問い詰めているのだ。 「…ません」 「はあ?」 「なにもしてません、ね…寝てました」 その言葉に顎に手をやり呆れた表情のイズミ。 「まあ…寝てました?私達は朝早くから起きて、お仕事してるのに、貴女だけ寝てましたと…で、夕方に起きてチョコだけは作りたい… 貴女恥ずかしくありませんの?」 「……」 「それから姫宮さん、貴女、ずっと姫様に看病して頂いてたんですって?」 調理場がざわっと騒がしくなった。 「まあいくらなんでもそれはねえ、少し目をかけて頂いてるからって貴女だけ特別扱いされてるなんてね~」 イズミ達全員に責め立てられている千歌音は言い返せない、全て事実だからだ。 「貴女の食事代だってただではございませんのよ?」 そして次の非難が飛び出そうとしていた瞬間に声が聞こえた、短髪の女の子だ。 「もうやめなイズミ」 「さ、早乙女さん…な、なんですの?」 「あのさ、一人を皆で囲んで、そういうの私嫌いなんだ」 「なっ!?わ、私は事実を言ってるだけですわ」 「だから一対一で言いな、それともそこの2人がいないとなにも出来ないとか?」 とミサキ、キョウコを指差す。 「な、なんですって~!?」 「それからそこ占領しすぎ、千歌音にも少し分けてあげなよ、出ないと姫様に言う」 「な、なんで私が……はあっ」 と姫子を出されては弱いのか「す、少しだけですわ」と渋々従った様子だ。 「っ…あ、ありがとうイズミさん」 「ご、誤解なさってるようですが貴女のためにやったわけでは――」 「はい、わかってます…でも、ありがとう」 「っ…み、みやさ…?っ…わ、私は…さ、さあ続きを!」 千歌音が微笑むとイズミは顔を真っ赤にして慌てたように作業を続けた。 「はは照れてる、照れてる、さ、千歌音作るよ。私も手伝うからさ、好きなんだろ?姫様のこと」 「…っ!は、はい…」真琴と意気投合した千歌音は一緒にチョコレートケーキ作りに取り組んだのだった――。 「っ…み、みやさ…?っ…わ、私は…さ、さあ続きを!」千歌音が微笑むとイズミは顔を真っ赤にして慌てたように作業を続けた。 「はは照れてる、照れてる、さ、千歌音作るよ。私も手伝うからさ、好きなんだろ?姫様のこと」 「…っ!は、はい…」真琴と意気投合した千歌音は一緒にチョコレートケーキ作りに取り組んだのだった――。 「っ…み、みやさ…?っ…わ、私は…さ、さあ続きを!」千歌音が微笑むとイズミは顔を真っ赤にして慌てたように作業を続けた。「はは照れてる、照れてる、さ、千歌音作るよ。私も手伝うからさ、好きなんだろ?姫様のこと」 「…っ!は、はい…」「…っ!は、はい…」真琴と意気投合した千歌音は一緒にチョコレートケーキ作りに取り組んだのだった――。 「っ…み、みやさ…?っ…わ、私は…さ、さあ続きを!」千歌音が微笑むとイズミは顔を真っ赤にして慌てたように作業を続けた。「はは照れてる、照れてる、さ、千歌音作るよ。私も手伝うからさ、好きなんだろ?姫様のこと」 「…っ!は、はい…」「…っ!は、はい…」
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【巫女名】レメディオス=アリサバラガ 【出身地】メキシコ 【身長】172cm 【体重】68kg 【年齢】19 【3size】92/62/95 【一人称】ワタシ 【血液型】A型 【好きな食べ物】タコス 【イメージカラー】ライトゴールド 【アライメント】秩序・善 【所属組織・グループ】『第六の太陽(ネクスト・サン・シバルバー)』 【最大シンクロ率】92% 【私服】赤いチューブトップ、デニム生地のホットパンツ、金の円盤の耳飾り、ビーチサンダル 【巫女装束】アステカの戦士風の民族衣装、黒曜石のアクセサリー多数 クセの強い黒髪とネコ科の肉食獣のように筋肉質で無駄なく引き締まった肉体が特徴の女性。 ラテン系らしく陽気な性格であり、眩しい笑顔が印象的。 一方で正義感が強く、麻薬カルテルとの抗争で殉職した警察官だった父親の遺志を継いでドラゴンとの戦いがない時は犯罪者を取り締まる日々を送っている。 【神名】トラウィスカルパンテクートリ 【権能】厄災よ振り注げ、曙の主の命ずるまま(ヴェヌス・デル・ルスルビア) 手持ちのアトラトル(投矢器)から空に向かって光の矢を撃つと、放たれた矢が満点の星空のように無数に枝分かれして降り注ぎ対象を殲滅する。 一本一本が病、老い、死、不幸などの「災い」が込められており、初撃で生き残れたとしても周囲のフィールドには呪いが充満し敵対者には絶え間なく不利が強いられ続ける。 尚、破壊神故か権能を用いない素の肉弾戦でも結構強い。 【信仰度】中南米を中心に高い人気を博している
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【巫女名】ミスト=ウーデゴール 【出身地】ノルウェー 【身長】154cm 【体重】45kg 【年齢】15 【3size】85/57/81 【一人称】ワタクシ 【血液型】O型 【好きな食べ物】アップルパイ 【イメージカラー】赤 【アライメント】秩序・中庸 【所属組織・グループ】@sGarls 【最大シンクロ率】69% 【私服】クマの頭を模したフードのついた白コート、清楚なモスグリーンの厚手ワンピース 【巫女装束】よく熟した林檎のように鮮やかな赤のステージドレス、林檎を入れたバスケット、首から下げた銀の胡桃のネックレス 抜けるような空のように青い瞳と明るい茶髪が特徴のぽやぽやとした雰囲気の少女。 お人好しかつ無邪気に加えて世間知らずなので騙されやすい性格。のんびりとしたお嬢様言葉で喋る。 元貴族の資産家階級出身だったが地元がドラゴンに襲われた際、両親は元領主の務めを果たすべく私財を投げ売って復興に尽力したため資産が底をつき家は完全に没落。裕福な生活を失いながらも周囲の人々から感謝されて満足そうに笑う二人を見て、彼らのような優しく気高い人間なりたいと思い巫女に志願した。 【神名】イドゥン 【権能】停老の果実(ジ・イモータリティ・トゥー・トワイライト) フレイヤに並ぶとされる美貌を誇った女神。アース神族に不老を齎す黄金の林檎を管理していたとされる。 そのため神話に違わず黄金の林檎を生み出す能力を持つ。食した者に不老不死を与え、如何なる傷を負ったとしても即座に再生して命を繋ぐ。しかし所詮は仮初めの効果であり、一定時間が経つと因果の巻き戻しによって不老不死状態の内に受けたダメージがそっくりそのままフィードバックされる。勿論死亡するほどのものであったならば解けた瞬間に絶命してしまう。そのため都合の良い無敵モードではなく、ダメージを一時的に無視できるだけの無茶を通す手段でしか無い。 また、製造するのに時間がかかる。具体的には1人分を捻出するのに丸2週間を要する貴重品なので迂闊に乱用はできない。因みに味は無駄に強い渋味と酸味で甘味が死んでおり、不快なシャバシャバとした食感が喉越しを悪くする。つまりはとても不味い。 武に纏わる伝承に乏しいので直接的な戦闘能力は低い。精々ソールヴァイが手解きした初歩的なルーン魔術を駆使する程度。そのため今のところはグループ内では純粋な後方支援要員に徹している。 【信仰度】北欧を中心に人気を博している
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神無月の巫女 ハアハアスレ投下もの もうひとつの神無月(仮題)その2 「お酒は飲める?」 演奏が終わると彼女はテーブルの上に用意されていたカクテルを勧めてくれた 「乙羽さんの…あのメイドさんの自信作なのよ おいしいから試してみて」 お酒は苦手だ 滅多な事がない限り口にはしない 体質に合わないらしくすぐに顔が真っ赤になってしまうから でも断る勇気もなく、この穏やかな雰囲気を壊したくない私はグラスに口をつけた 甘い、なんだか心地良い甘さ…ジュースのようだ 「わぁ、おいしい…」 私は無意識のうちに声を発していた 「良かった…やっと笑顔を見せてくれたわね」 彼女が微笑む 「昨日もそうだったけれど、泣いてばかりだったからあなた…」 「笑顔、ステキよ 笑ってる顔の方がずっと似合ってるわ」 顔が熱い…アルコールのせいか彼女の言葉のせいか 何を言葉にしていいかわからなくて一気にカクテルを飲み干した やけ酒ってこういうものなのかな…ぼんやりとそんな事を考えていた私の前に二杯目のカクテルが注がれた 「図書室でも…あなた、寝ながら泣いていたわ」 「千歌音ちゃんって、何度も寝言で言ってた…」 そうか、あの時に見られていたんだ また顔が熱くなる 「余計なお世話だとは思うけれど…きっと会えるわよ うん、会える だから元気出してね」 ああ…神様には恨み言は沢山あるけれど、この優しさを再び彼女に与えてくださった事は感謝しなければならない 私は二杯目のカクテルを飲み干した 「大丈夫?顔赤いわよ…ゆっくり飲まないと酔っ払っちゃうわよ」 「いいんです…幸せだったら…」震えて声にならない声 私は三杯目のカクテルを口にしていた 「え?何?」 「思い出して…また苦しむなら…忘れたままでいい…ひとりじゃないならそれでいい」 頭がグラグラしてきた 「もう泣いて欲しくない…から」 なんだか意識が遠のいていく 「もう…私たちを縛り付けてた鎖なんてないんだよ だから安心してね…」 その日の私の記憶はそこで途絶えた ここは…前世で姫宮家に居候していた時に私の部屋だった場所だ 天井の模様も照明器具も見覚えがある 私は天蓋付のベットの上で目覚めていた 頭が痛い…私は昨夜の記憶を辿る (そうか…あのまま酔っ払って意識を無くしてしまったんだ…) カーテンの隙間から差し込んでくる陽射しが眩しい 私はのろのろと起き上がると、カーテンを全開にした もう陽は高く昇っていた (何やってんだろう…私ったら また迷惑かけちゃった…) とりあえず急いで身支度を整え(とはいえ、昨日の格好のまま寝かされていたから着替えをしたわけでもなく) 階下に降りてみた 食堂で人の動く気配がしている 「あの…」躊躇いがちに声をかけてみる 「おはようございます来栖川様 ご気分はいかがですか?」 乙羽さんが振り向いた 「二日酔いのようでしたら、お薬を用意いたしますが…お食事はどうなされますか?」 「い、いえ…」 「あの、その、ご迷惑かけちゃったみたいで…本当にすみませんでした」 私は頭を下げた 「仕事もあるので、本当にもう失礼します…それで…」 私は彼女に姿を探した 「あの…」 「お嬢様ならお出かけになってます 午後までお戻りにはならないと思いますが」 乙羽さんは私の心を見透かしたかのように言う 「それまでお待ちになりますか?」 「い、いえ…とんでもない…あの、また改めて御礼に伺います よろしくお伝え下さい」 何度となく頭を下げた後、私は逃げるようにして姫宮邸を後にした 自分の記憶が無くなった後、どんな醜態を晒してしまったか知るのが怖かったという思いもあったからだ 「はぁ…本当に何やってんだろ、私」 深い溜息をついて見上げると、そこには10月の高い空が広がっていた 私はあの突然の来訪者、「来栖川姫子」の存在を本当は知っていた それはぽっかりと抜け落ちていた空白の記憶にゆっくりと浮き上がってくるように… 二週間前にお嬢様と対面した時から私の記憶は徐々に甦っていたような気がする 姫宮千歌音様…館で初めてお迎えした時に私の胸に小さな痛みが走った (初めてじゃない…このお方は…) この二週間余り、お嬢様の側にお仕えして私の疑念は確信へと変わっていった 前世でお嬢様の身に起こった哀しい出来事…何故そうなったのか私には解るわけもなかったが、あのお方が自らの存在を消し去っても何かを必死に守ろうとしていた事には気づいてしまっていた 来栖川姫子…そう、あの子の存在 お嬢様とあの子の間には、他の誰にも立ち入る事の出来ない強い絆がある 私はそれを知っている… おそらく来栖川姫子の記憶も覚醒しているのであろう あのお嬢様に接する態度を見ればすぐにわかる 愛しい主人に構ってもらいたくて必死になって尻尾をふり続ける子犬のようだ 取材というのは口実で、お嬢様に会いたくてここにやって来たのであろう しかし、お嬢様には…記憶がないようだ これは幸いな事なのであろうか? そう、幸いと思う事にしよう お嬢様の為にも、私の為にも… 私はお嬢様に忠義以上の好意を抱いていたから…それは愛情といっても差し支えない この現世ではお嬢様は姫宮家を継ぐ大事なお方 近い将来、婿養子をとりこの家を守っていかなければならない その為に今、お付き合いをしている良家の子息がいらっしゃる 私の役目は陰ながらお嬢様の支えになる事… どんな時にでも… 「来栖川さん…帰ってしまったの?」 午後、予定よりだいぶ早い時間に館に戻られたお嬢様は残念そうに言った 「ケーキ買ってきたのよ 一緒に食べようと思って…」 ケーキならわざわざ買ってこなくともいつでも用意できるのに…お嬢様はあの子を気にしている 無意識のうちに何かを感じているのか?私の心は揺れた 「仕事でお忙しいようで…一応、お引き留めはしたのですが」 私は嘘をついた 引き留めなんてしなかった むしろ早く帰ってくれと願っていたから 「それより…一条様とはいかがでしたか?こんなに早く戻られるとは思っていなかったものですから」 私は自分の中に芽生えている醜い心を誤魔化すかのようにお嬢様に笑顔で話しかける 「別に…ただ会って、他愛も無い話ししてきただけよ」 お嬢様はティーカップを持ったまま窓辺に立った 「お父様の顔を潰さない為に…これも義務だから…」 「お嬢様…」 何でそんなに哀しい顔をされるのだろう やはりあなたの心の奥底には… 「暇ね…少し馬の遠乗りでもしてこようかしら」 「うーっ、どうしよう このままじゃ記事なんて書けないし」 姫宮邸を出てから私は村のあちこちを廻ってみた しかしこれといったネタにありつけるわけもなく、頭を悩ましていた ここ数ヶ月、休みもほとんど取らずに仕事をしてきたので編集長からは「遅い夏休みだと思っていいから一週間くらいゆっくりしてきていいよ」と言われていたけれど … でも仕事は仕事だ 何とか結果を残さなくてはせっかくの編集長の厚意を無にする事になる 「ハァ、お腹も空いたな…昨夜もほとんど食べてないし」 お店も見当たらないし、一度駅の方まで戻ろうかな? 幸いな事にすぐ近くにバス停があった 「嘘っ…あと30分もバス来ないの??」 私がこの村を出てから四年余り…街の暮らしにすっかり慣れていた私にとって、この村の相変わらずの不便さに戸惑うばかりだった 仕方なくベンチに腰を掛けてバスを待つ事にした ニャーニャー… 「?」足元から聞こえてくる小さな鳴き声 ベンチの下を見ると白い子猫が震えていた 「わぁ、可愛い…」 私はそっと抱き上げた 「捨てられちゃったの?可哀想に…」ふわふわとした暖かい感触 自然と笑みがこぼれてくる 「あなたもお腹空いてるの?私もだよ…待っててね 駅に着いたら何か食べさせてあげるから…一緒に行こう」 (バスに乗せて怒られないかな?鞄の中に暫く押し込んでおいて…) そんな事を考えていた矢先… 聞こえてくる馬の蹄の音 「何?馬??」 土煙を上げて疾風のように近づいてくる影 そのけたたましい音に驚いたのか、腕の中の子猫が道に飛び出してしまった 「駄目!!危ないっ」 私は無我夢中で子猫を後を追っていた けたたましい嘶き 黒い影が覆いかぶさって時、私は馬に踏み潰されたと思った… 「!!」 時が止まったように思われた 飛び込んだ自分の下で動く暖かな存在に気がついた時、子猫も私も無事である事を知った 「来栖川さん!?」馬から降りて私の元に駆け寄ったその人は、紛れもなく「私の愛しい彼女、姫宮千歌音」だった 「ち、ちかね…」似合いすぎる乗馬服に身を包んだ彼女は、私を抱き起こしてくれた 「びっくりしたわ…急に飛び出してくるから」 「ご、ごめんなさい…」 「血が…怪我してる」 子猫を庇って転んだ拍子に手を擦りむいたらしい 鮮血が流れ出ていた 彼女は白いハンカチを出すと傷口に巻いてくれる 「怪我をさせてしまったわ…ごめんなさいね」 「い、いいえ…悪いのはこっちだから…」 「早く手当てをしましょう バイキンが入ったら大変だわ さぁ…」 彼女は私に手を差し出す 「うちに行きましょう」 「でも…」私は手を伸ばす事が出来なかった また迷惑を掛けるし、彼女の側に居れば辛くなるだけだ 「こんなの大した怪我じゃないし…本当に大丈夫ですから」 「それに、その…この子もいるし…」 私は腕の中で震えている子猫を彼女に見せた 「じゃぁ尚更ね…ねこちゃんも一緒に行きましょう」 彼女の鼓動が伝わってくる…私は背後から抱きかかえられるようにして馬に乗っていた 体が上下に動く度に、豊かな胸の柔らかさも否応なしに感じられてしまう 確か前も…前世でもこんな記憶はあった (ソウマくんのところへ連れて行って!!)彼女の心も知らずに無神経なお願いをしたものだ あの時、彼女はどんな思いで馬を走らせていたのだろうか? (ごめんね…千歌音ちゃん…) 火照る頬に10月の風が心地良く感じられた午後だった アメノムラクモを復活させたあの日、私は手に怪我を負った 今、あの時と同じように優しく手当てしてくれる彼女がいる 自ら手当てをするという彼女の言葉に乙羽さんの表情は強張っていたように見えた 「痛くない?…ごめんなさいね、怪我させてしまって」 息がかかるほどの距離…長く美しく伸びる指が優しく私の手を包んでいた 何だかもうそれだけで怪我なんて治ってしまうように感じられる 「お詫びに夕食にご招待するからゆっくりしていって」 「そんな…これ以上迷惑はかけられないし…」 「迷惑なんかじゃないわ」彼女は救急箱の蓋を閉めて言う 「最初に会った日に言ったでしょう?私ね日本には知り合いなんてほとんどいないの だから友達もいないし…毎日が退屈…ひとりで摂る食事も寂しいわ」 (ひとり?寂しい?…千歌音ちゃんあなたは恵まれた生活の中で幸せに生きてるんじゃないの?) 長い睫毛を伏せて寂しそうに語る彼女を見て私の心は痛む あぁ、そんな顔を私に見せないで…今すぐにでもあなたを抱きしめてあげたくなる… ほんの少し手を伸ばすだけでその願いは叶うというのに… 「それにその子にも…ご飯食べさせてあげなきゃ」 彼女は私の隣で丸くなっている子猫に優しい眼差しを向けた 「ね、その子の為にもそうして」 私はただ小さく頷く事しか出来なかった 「本当に可愛いわね」 たっぷりとミルクと子猫用の餌を貰ったその猫は食事のお茶を飲む彼女の腕の中でじゃれついていた 「ねぇ、この子どうするの?あなたが飼う?」 そうか、拾ってきたのは良いがその後の事なんて全く考えていなかった 「どうしよう…うちのアパート、ペット禁止だったんだ…」迂闊だった 「いいわよ、うちで飼ってあげるから」 思いがけない彼女からの申し出 「但し条件つきよ」 「条件?」 「そう…時々はこの子の様子を見に来てあげて…それが条件」 (それってまたここに…来てもいいって事?猫の事を口実にして千歌音ちゃんに逢えるって事?) 「どう?」 「あ…はい…」混乱したままその言葉だけが先に出ていた 「良かった 契約成立ね」彼女は嬉しそうに子猫を抱き上げた 「良かったわねヒメコ…仲良くしましょうね」 「!?」 「フフ、名前…貰っちゃった ちょうど雌だし「ヒメコ」って名前、可愛いものね この子にピッタリだと思うの…嫌だったかしら?」 気のせいか彼女の頬が赤くなっている気がした 「い、いえ…嫌なんかじゃ…」それ以上に私の顔は茹で蛸のように赤くなっているはずだけど… 「その…ヒメコの事…宜しくお願いします」 「後でお風呂に入って綺麗にしましょうね…可愛いリボンもつけてあげるわ」 この猫のヒメコは幸せ者だと思った これから先ずっと、優しい彼女の元で愛情を注いでもらえるのだから そう思うと何だか嬉しいんだか哀しいんだかわからなくなってくる… コンコン… 「失礼します」ドアがノックされ乙羽さんが顔を出した 「来栖川様に…面会の方がいらっしゃっていますが、どうされますか?大神神社の「大神ソウマ」様だと申されてますが…」 「ソウマ君が?」何でここに居る事がわかったのだろうか? ともかく私は彼女に中座する非礼を詫び、玄関先まで出てみる事にした 「申し訳ないのですが、当館は旦那様がいらっしゃる時以外は男子禁制ですので、お知り合いの方でも中に入れる事は出来ませんのでご了承ください」 私はその乙羽さんの言葉に従い、玄関の外に出た 「よう、久しぶりだな」 少し照れ笑いをしてポーチに立つその人は、確かに大神ソウマくんであった 「神社に来てた近所のお婆さんが『姫宮の令嬢が街から来てる女の子と一緒に馬に乗ってた』って言ってたからさ… たぶん来栖川の事じゃないかなって思ってさ」 「それで逢いにきてくれたの?」 「昨日カズキ兄さんから来栖川が来たって聞いてさ、またうちに寄ってくれるんじゃないかと待ってたんだけど…」 「結局、おまえ来なかったし…その、少しは…心配してたんだぞ」 ソウマ君は咳払いした 「昨夜はどこに泊まったのかなって…兄さんの話じゃ暫くこっちに滞在するみたいだって言ってたし、こんな田舎じゃろくな宿泊施設なんてないだろう? まさか、野宿でも…なんてね」 「訳あってここに泊めてもらったの…ごめんね、心配させて」 ソウマくんも変わらず優しいな、と思ったら自然と笑みがこぼれてきた 「そうか…そうならいいんだ」 それから私たちは庭にある東屋でお互いの近況について語り合った ソウマくんは大学卒業後、大手企業に就職したものの、会社の体質に疑問を感じたった三ヵ月で退社してしまったと笑いながら言った 「俺、そもそも都会の暮らしなんて肌に合わなかったんだよなぁ 大学の時も何となく勉強して何となく恋愛して、いつしか目的も失っちゃってさ… 今は…こっちに戻ってきて良かったと思ってるんだ 教職に就きながら神社の手伝いして…いずれは神社を継ごうと思ってるんだ 俺…ここの村で生きていく事にしたんだ」 「そうなんだ…一流の大学出て一流の会社に就職して、もったいないような気もするけれど、でも…ソウマくんらしいかも ふふっ」 何だか学生の頃に戻ったような時間が流れていく 「来栖川…おまえ…」 「何?」 「その…逢えたのか?おまえを待っててくれる人ってのには」 ソウマくんは夜空を見上げて言った 「うん…逢えたよ」胸に痛みが走った 「そうか…逢えたのならいいんだ 良かったな」 「…」 「?幸せなんだろ」 「うん…その人が…大切なその人が幸せに生きてきてくれたから…私はそれで幸せ 例え…私の事を思い出してくれなくても…今はそれでいいと思えるようになったの…」 声が震えてくる 「来栖川…おまえ…」 「バカだって思うでしょ?でもいいの…その人は昔、大きな運命の流れに呑まれて、とても哀しい想いをして、ひとりで寂しい時期を過ごしてきた… だからもう二度と同じ事繰り返して欲しくないっ 幸せに笑って生きていて欲しいのっ…その為なら、私、我慢する、出来るって誓ったの… その人の幸せを想いながら大好きな気持ちを忘れずに、ひとりでも生きていく、生きていける… ごめんね、変な事言って…何言ってるのかわかんないよね…」 私はそっと目尻を拭った 「本当に…バカだよ おまえって…」 「そんな人生でいいのか?これから先の長い人生、そんな想いを抱いたままひとりで生きていくっていうのか?」 ソウマくんは突然、私の手を取り力強く握りしめた 「俺じゃ力になれないのか?やっぱり俺じゃ駄目なのかっ来栖川!!」 「ソウマくん…」 私はマコちゃんからも大神君を振るだなんてバカだと言われ続けた 本当にバカな話しだと自分でも思う でも…でもやっぱり駄目だ… 「来栖川さん…」 振り向くといつの間にかそこに彼女が立っていた 瞬間的に私はソウマくんの手を振り払う 何だかドキドキしてしまう 彼女は猫のヒメコを抱いたままゆっくりと私たちに近づいてきた 「お話し中に悪いのだけれど…あなたのお仕事のことで大事な話しがあるのを思い出したから」 「あっ…じゃあ、俺」ソウマくんはバツが悪そうに頭を掻いた 「悪かったな、来栖川…その…また神社の方にも顔を出してくれよな じゃあ、またな」 ソウマくんは彼女に軽く会釈した 「お邪魔しました」 「ごきげんよう…」 やっぱりソウマくんの記憶の中からも彼女の存在は消えていた 無表情に去っていくソウマくんの後姿を見送る彼女…何だか、怖い… 「あの…」 私は躊躇いがちに彼女に声をかける 「仕事のことって…」 「ごめんなさいね、お話し中だったのに…忘れるといけないと思ったから」 ニッコリと笑う彼女 「乙羽さんから聞いたのだけれど、うちの敷地内に古い祠があるらしいの そこには何やら古文書も奉られているらしいわ それってあなたの取材に役に立つのではないかと思うの…見てみる価値はあるかも」 「そうなんですか…」 「今日はもう暗くなってしまったから無理だけど、明日の朝、行ってみない?私もお供するわ」 「ありがとうございます…でも…」 「そうなさい…だから今晩も泊まっていってね 遠慮しなくていいから」 こういうのをなし崩し的に…とでも言うのであろうか? 正直、こんな状態のまま彼女の側にいるのは辛い…けれどもそれと同時に彼女の側にいられるだけで幸せだと感じてしまう自分がいる事も確かだ そんな心の葛藤があるまま、結局、私は彼女の言葉の通り、またその日を姫宮家で過ごす事になってしまった →もうひとつの神無月(仮題)その3