約 1,857,966 件
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/42.html
総括所見:韓国(第1回・1996年) 第2回(2003年)/第3回・第4回(2011年)/第5回・第6回(2019年)OPAC(2008年)/OPSC(2008年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.51(1996年2月13日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページを参照。 1.委員会は、1996年1月18日および19日に開かれた第266回、第267回および第268回会合において大韓民国の第1回報告書を検討し、以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、同国に対し、ハイレベルかつ学際的な代表団を通じて委員会とのオープンかつ実りのある対話に携わってくれたことへの謝意を表する。委員会は、諸問題一覧表に記載された質問への回答として代表団が提出した文書による情報、および、委員会との対話の後に同国が提供した追加的情報を歓迎する。 B.積極的な側面 3.委員会は、条約が同国の国内法体系において直接適用可能であること、および、裁判所における援用も可能であることに、満足感とともに留意する。 4.委員会は、同国が子どものための国内行動計画を作成したこと、同行動計画を第7次社会経済開発5か年計画(1992年~1996年)に編入したこと、および、国内子どもの権利委員会を最近設置したことを歓迎する。 5.委員会は、政府が教育を「社会的および経済的発展の原動力」と考え、重要視していることに、満足感とともに留意する。 6.委員会は、また、文書回答に表れ、かつ、対話の過程で代表団によっても確認されたように、同国が条約に付した留保の撤回の可能性を検討することに関する開かれた態度も歓迎する。委員会は、民法の改正が、親の一方または双方から分離された子どもが定期的に親双方との個人的な関係および直接の接触を保つ権利を盛りこむ目的で進められていることに、心強い思いを感ずるものである。委員会は、また、代表団が述べたように、そのような措置によって同国が条約第9条3項に関する留保を撤回することができるようになることにも、心強い思いを感ずるものである。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 7.委員会は、現在の政治的および経済的移行期において韓国が直面している困難に留意する。急速な経済成長を確保しようという努力には、必ずしも、経済的、社会的および文化的権利を適切なレベルで実現することが伴ってこなかった。このことは、とくに、悪化する貧困によって影響を受ける、最も不利な立場にあるグループに属する子どもたちについて言える。同国が最近になってようやく軍事支配から脱したことも、子どもの基本的権利および自由の享受に否定的影響を与えてきた。 D.主要な懸念事項 8.委員会は、同国が第9条3項、第21条(a)および第40条2項(b)(v)に付した留保は、子どもの最善の利益の原則および子どもの意見の尊重の原則を始めとする条約の原則および規定と両立するかどうかという点について、疑念を生ぜしめるものだという見解をとるものである。 9.委員会は、恒久的かつ効果的な調整および監視のための仕組みを確保するために充分な措置がとられていないことに、懸念を表明する。委員会は、また、達成された進歩を評価し、かつ、政策が子どもたちに与える影響、とりわけ最も傷つきやすいグループの子どもたちに関する影響を評価するために、条約が対象とするすべての領域について、信頼できる量的かつ質的なデータを集めるために充分な措置がとられていないことにも留意する。 10.委員会は、条約の原則および規定が子どもおよび大人の間で広く知られるようにするために充分な措置がとられていないことに、懸念を表明する。教師、ソーシャルワーカー、裁判官、法執行官、心理学者および保健従事者を始めとする、子どもとともにおよび子どものために働くさまざまな専門職グループに対して、条約の内容に関する研修が行なわれていないことも、遺憾の意とともに留意されるところである。 11.条約第4条の実施に関して、委員会は、子どもの経済的、社会的および文化的権利が、利用可能な資源を最大限に用いることによって実施されるようにするために充分な措置がとられていないことに、懸念とともに留意する。これとの関連で、子どもの社会的および人間的発達の領域、および、最も傷つきやすいグループの子どもたちのニーズに対して、充分な関心が払われてこなかった。 12.委員会は、また、条約の基本的原則、とりわけ第2条、第3条および第12条の規定が、立法、政策および事業計画に充分に反映されてこなかったことも懸念する。報告が認めている通り、子どもを単に「小さな大人または未成熟な大人」とする考え方および取扱い方が同国では支配的であるが、そのような状態を変える目的でとられた、条約の基本的価値観に関する意識を創り出すための措置は、充分なものではない。委員会は、少女(最低婚姻年齢に関する態度を含む)、障害児および婚外子に影響を与える差別的な態度がいまだに存続していることに、懸念とともに留意する。 13.委員会は、家族が子どもの権利の保護に関する責任を引き受ける上で、充分な援助が提供されていないことに、懸念とともに留意する。 14.委員会は、国籍、表現、思想、良心および宗教への自由ならびに結社および平和的な集会の自由への権利など、子どもの市民的権利および基本的自由の効果的な実施を確保するために、法的措置を始めとする措置が充分にとられていないことに懸念を表明する。 15.委員会は、養子縁組の領域および養子縁組の解消の際に一般的にとられている方式に関する同国のアプローチは、子どもの最善の利益が最高の考慮事項となるべきであるという原則および21条の法的保護との関連を始めとして、条約との整合性に関して疑念を生ぜしめるものであるという見解をとるものである。これとの関連で、委員会は、養子縁組が、信頼のおけるあらゆる関連情報に基づき、かつ、子どもを含むあらゆる関係者が情報を得た上での同意を与えた上で、権限ある機関によって認可されるようにするための措置が不充分であることを、とりわけ懸念する。国際養子縁組が高い割合で行なわれていることも、委員会の懸念するところである。子ども虐待および家庭内暴力に関しては、委員会は、防止のための政策および充分な通報の仕組みがないことを懸念する。このほか、子どもが遺棄されていること、子どもが筆頭者である家族が高い割合で発生していること、および、親および教員によって広く教育的措置と見なされている体罰がいまだに存続していることも、委員会にとっての主要な懸念事項である。 16.委員会は、教育制度において、条約第29条に反映されている教育の目的が充分考慮されていないことを懸念する。教育制度が高度に競争主義的な性格を有していることは、子どもの能力および才能を最大限可能なまで発達させること、および、子どもが自由な社会において責任ある生活を送れるようにすることを阻害する危険がある。 17.子ども労働の状況を防止するために、法改正領域における措置も含めて充分な措置がとられていないことにも、懸念が表明されるところである。これとの関連で、義務教育修了年齢および最低雇用年齢との間に乖離があることが、とくに懸念されかつ留意されるところである。 18.委員会は、また、現行の少年司法制度に関して、かつ、その制度が第37条、39条および40条を始めとする条約との整合性を欠いていることについて、懸念する。 E.提案および勧告 19.委員会は、政府に対し、第9条3項、第21条(a)および第40条(b)(v)への留保を、撤回の方向で見直すことを検討するよう奨励する。 20.委員会は、政府が、第42条に照らし、条約の原則および規定に対する支持を促進し、かつ、それらに関する意識および理解を創り出すことを目的とした取組みを強化するよう、勧告する。委員会は、政府が、とくに少女、障害児および婚外子に対していまだに差別的な態度が存続しているという問題に効果的に取り組むために公的なキャンペーンを進展させること、および、こうしたグループに属する子どもたちの地位および保護を向上させるために積極的な措置をとることを提案する。 21.委員会は、また、同国が、教員、ソーシャルワーカー、裁判官、法執行官、保健関係者および条約によって対象とされている領域におけるデータ収集の確保を担当している職員を始めとして、子どもとともにおよび子どものために働いている専門家グループに対し、条約に関する研修活動を確保するよう奨励する。国連人権教育の10年の精神を踏まえ、委員会は、さらに、同国に対し、子どもの権利を学校のカリキュラムに盛りこむことを考慮するよう奨励する。 22.委員会は、政府に対し、国内法と、差別の禁止(第2条)、子どもの最善の利益(第3条)および子どもの意見の尊重(第12条)を始めとする条約の規定および原則が全面的に一致するようにするため、取組みを継続するよう奨励する。委員会は、とりわけ、以下のことを目的とする法的措置がとられるよう勧告する──第2条に照らし、女子と男子の最低婚姻年齢を同一にすること、第23条に照らし、すべての障害児の基本的権利、とくに教育への権利を確保すること、婚外子に対するいかなる差別も廃絶すること、韓国人の母親に生まれた子どもが無国籍になる危険性を、いかなる場合にも防止すること、いかなる形態の体罰をもはっきりと禁止すること、および、最低雇用年齢を、義務教育年齢に合わせる方向で引き上げること。国内外の養子縁組の分野については、委員会は、同国に対し、条約の原則および規定との全面的な整合性を確保するため包括的な法改正を行なうこと、および、国際養子縁組における子どもの保護および協力に関するハーグ条約の批准を検討することを、奨励する。 23.委員会は、全国レベルおよび地方レベルの双方において、かつ、都市部においても非都市部においても、条約の実施の調整および監視を行なうための恒久的かつ学際的な仕組みを発展させるよう勧告する。委員会は、同国に対し、子どものためのオンブズパーソンまたはそれに相当する苦情申立ておよび監視のための仕組みを設立することを、さらに検討するよう奨励する。委員会は、さらに、非政府組織とのより密接な協力を促進するよう奨励する。 24.委員会は、また、条約が対象としているすべての領域に取組み、かつ、達成された進歩を評価することを目的として、最も傷つきやすいグループに属する子どもたちの状況を正当に考慮しながら、データ収集システムを改善し、かつ、諸要素によって分解された適切な指標を特定するようにも勧告する。 25.委員会は、大韓民国政府が、条約第4条の全面的な実施に特別な関心を払い、かつ、子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施のために、利用可能な資源を最大限に用いてあらゆる適切な措置をとるよう強く勧告する。差別の禁止および子どもの最善の利益の原則に照らし、最も不利な立場に置かれたグループの子どもたちの状況に、特別な関心が払われるべきである。 26.委員会は、家族、学校および社会生活に対する子どもたちの参加、ならびに、意見、表現および結社の自由を始めとする基本的自由の効果的な享受を促進するため、さらなる努力が行なわれるべきだと考えるものである。基本的自由については、法律に規定されたものであって、民主的社会において必要な制限のみを課すことができる。 27.委員会は、同国に対し、とくに条約第18条および27条に照らし、家族が子どもの養育および発達に関する責任を果たせるようにするための援助を確保するため、さらなる措置をとるよう奨励する。子どもの遺棄の防止、ならびに、子どもを筆頭者とする家庭の発生の防止およびそのような家庭への適切な援助に、特別な関心が払われるべきである。 28.子ども虐待および家庭内暴力の領域について、委員会は、同国が、そのような状況を防止し、かつ、そのような暴力によって影響を受けた子どもを保護しかつ適切な身体的回復および社会復帰を確保するため、さらなる措置をとるよう勧告する。発見、実情の把握および照会が早期に行なわれるようにするための制度の設置が考慮されるべきである。 29.委員会は、同国に対し、条約第29条に掲げられた教育の目的を全面的に反映させることを目的として、教育政策を再検討するよう奨励する。 30.児童労働の領域について、委員会は、同国に対し、関連の立法および運用に条約、とくに第32条を全面的に反映させることを目的として、適切な措置をとるよう奨励する。委員会は、最低雇用年齢に関するILO第138号条約の批准を考慮するよう勧告し、かつ、同国が、ILOとの協議のもとでそのような活動の継続を考慮するよう奨励する。 31.委員会は、同国が、条約、とくに第37条、39条および40条、ならびに、「北京規則」、「リャド・ガイドライン」および自由を奪われた少年の保護のための国連規則のようなこの分野の他の国連基準の精神を踏まえて、少年司法制度の包括的な改革の実施を構想するよう勧告する。その際、自由の剥奪が最後の手段として、かつ、最も短い期間のみ用いられるべきものとして見なされること、自由を奪われた子どもの権利の保護、法の適正手続、および、司法の全面的独立および公正に、とくに関心が払われるべきである。関連の国際基準に関する研修プログラムが、少年司法制度に携わるすべての専門職向けに組織されるべきである。委員会は、大韓民国政府が、〔国連〕人権センターおよび犯罪防止刑事司法局に対し、少年司法の運用の領域に関して国際的援助を求めることを考慮するよう提案したい。 32.委員会は、同国が提出した報告、その審査の議事要録および委員会の総括所見を、同国内でできるだけ広く普及するよう勧告する。 更新履歴:ページ作成(2011年8月14日)。
https://w.atwiki.jp/akatonbo/pages/2955.html
福島の人 作詞/78スレ210 浜通り 中通り それから会津 天気予報は縦割り 会いに来いって気軽に言うけど あなた一体どこの人? 郡山や福島なら はやてに乗っていけるけど いわきだったら常磐線 会津だったらどうしよう エキソンパイに ままどおる 檸檬(れも)だって好きだけど かんのやゆべしも気になるし むぎせんべいは 外せない 果物王国福島 赤ベこがいる福島 喜多方ラーメン福島 会津の蕎麦福島 ららら 福島 広いぜ 福島 音源 福島の人(仮歌+オケ)
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/192.html
総括所見:モルディブ(OPSC・2009年) 第1回(1998年)/第2回・第3回(2007年)/第4回・第5回(2016年)OPAC(2009年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPSC/MDV/CO/1(2009年3月4日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2009年1月26日に開かれた第1390回会合(CRC/C/SR.1391) においてモルディブの第1回報告書(CRC/C/OPSC/MDV/1)を検討し、2009年1月30日に開かれた第1398回会合(CRC/C/SR.1398)において以下の総括所見を採択した。 序 2.委員会は、提出の遅れを遺憾に思いつつも、締約国の第1回報告書が提出されたことを歓迎する。委員会はさらに、事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/OPSC/MDV/Q/1/Add.1)を歓迎するとともに、ハイレベルなかつ多部門型の代表団との間に持たれた建設的対話を評価するものである。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、締約国の第2回・第3回定期報告書に関して2007年6月8日に採択された以前の総括所見(CRC/C/MDV/CO/3)、および、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく第1回報告書に関して2009年1月30日に採択された総括所見(CRC/C/OPSC/MDV/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 I.一般的所見 積極的側面 4.委員会は、2008年8月に採択された新憲法の第35条で子どもの特別な保護に言及されていることを歓迎する。 II.データ 5.委員会は、違反を登録する全国的データベースを発展させるための努力に留意する。しかしながら委員会は、売買、児童買春および児童ポルノに関する、年齢、性別、マイノリティ集団および出身ごとに細分化されたデータがないことを懸念するものである。具体的には、委員会は、被害者数、通報された事件、捜査、加害者の制裁ならびに被害者の回復および再統合のための措置についての情報がないことを遺憾に思う。 6.委員会は、選択議定書で対象とされている分野に関する、とくに年齢、性別、マイノリティ集団および出身ごとに細分化されたデータが体系的に収集されかつ分析されることを確保するため、締約国が、全国的データベースの設置を速やかに進めるよう勧告する。このようなデータは、政策の実施状況を数値により評価するための必須手段を提供してくれるからである。 III.実施に関する一般的措置 留保 7.委員会は、子どもの権利条約への署名時に第12条および第21条に付された留保を遺憾に思うとともに、対話の際に締約国が留保の撤回の意思を明らかにしたことは積極的対応として認知しながらも、締約国の第2回・第3回定期報告書の検討(CRC/C/MDV/CO/3、パラ10)以降、締約国の留保の撤回またはその範囲の限定についてまったく進展が見られないことを懸念する。 8.委員会は、締約国が、1993年6月25日に世界人権会議で採択されたウィーン宣言および行動計画(A/CONF.157/23)にしたがい、留保を撤回または限定の方向で見直すべきである旨の前回の勧告を、あらためて繰り返す。 選択議定書の実施の調整および評価 9.委員会は、最近省庁再編が行なわれ、かつ、子どもの権利に関する問題を調整する責任がジェンダー家族省から保健家族省に移管されたことに留意する。委員会は、このような変更によって子どもの権利に関する活動の継続性に影響が生じる可能性があることを懸念するものである。 10.委員会は、締約国が、子どもの権利およびとくに選択議定書の調整のあり方を可能なかぎり早期に見直すとともに、選択議定書の効果的実施を確保するため、担当機関に対して明確な権限ならびに十分な人的資源および財源が与えられることを確保するよう、勧告する。 国家的行動計画 11.委員会は、選択議定書が子どもに関する国家的行動計画で取り上げられているかどうかに関する情報がないことを遺憾に思う。 12.委員会は、締約国に対し、子どもに関する包括的な国家的行動計画を採択しかつ実施するとともに、当該計画において両選択議定書および子どもの権利条約の両方が考慮されることを確保するよう、勧告する。 普及および研修 13.委員会は、法執行官および司法関係者を対象として若干の研修活動が実施されてきたことに留意する。しかしながら委員会は、司法関係者を含む専門家を対象とした研修がいまなお不足していること、および、選択議定書の規定に関する公的意識啓発活動がいまのところきわめて限られていることを、遺憾に思うものである。 14.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに学校カリキュラムおよび長期的意識啓発キャンペーンを通じて、選択議定書の規定をとくに子ども、その家族およびコミュニティに対して広く知らせること。 (b) 選択議定書第9条2項にしたがい、あらゆる適当な手段による広報、教育および研修を通じて、防止措置および選択議定書に掲げられたすべての犯罪の有害な影響に関する公衆一般(子どもを含む)の意識を促進すること。そのための手段には、このような広報、教育および研修のためのプログラムへの、コミュニティならびにとくに子どもおよび被害を受けた子どもの参加を奨励することも含まれる。 (c) 選択議定書に関わる問題についての意識啓発活動および研修活動を支援するため、NGO、市民社会組織およびメディアとのさらなる協力を発展させること。 (d) すべての専門家集団、とくに、司法業務委員会を通じて司法関係者を対象とした、および、選択議定書が対象とする犯罪の被害を受けた子どもとともに働く法執行官を対象とした、選択議定書の規定に関する、ジェンダーに配慮した教育および研修を継続しかつ強化すること。 資源配分 15.委員会は、刑事捜査、法的援助ならびに被害者の身体的および心理的回復ならびに再統合のための人的資源および財源が用意されていないことを、遺憾に思う。 16.委員会は、締約国が、選択議定書の規定に関するプログラムの実施ならびにとくに刑事捜査、法的援助ならびに被害者の身体的および心理的回復のための人的資源および財源を使途指定の形で関連の公的機関および市民社会組織に提供する等の手段により、調整、防止、促進、保護、ケア、選択議定書で対象とされている行為の捜査および抑止のための予算配分を増額するよう、勧告する。 独立の監視 17.委員会は、モルディブ人権委員会の権限上、条約および選択議定書の違反に関する子どもからのまたは子どもに代わっての苦情を同委員会が受理できるとされていること、および、人権委員会が活動のなかで子どもの権利を重視してきたことを、歓迎する。委員会は、人権委員会が、予算および任命手続の面でその独立性を行使するにあたり課題に直面する可能性があることを、懸念するものである。 18.委員会は、モルディブ人権委員会が、人権の促進および保護のための国内機関に関する原則(パリ原則、国連総会決議48/134付属文書)にしたがい、権限を与えられた活動を余すところなく履行できるようにするため、締約国が、同委員会に対して十分な人的資源および財源が配分されることを確保するよう、勧告する。委員会は、締約国が人権委員会の独立性を尊重し、かつ予算配分および委員の任命に関して不当に干渉しないことの重要性を強調するものである。委員会は、人権委員会が子どもの悩みに正当な注意を払えるようにすること(そのための手段としては、たとえば、子どもが地方レベルで容易にアクセスできるようにし、かつ、子どもによるまたは子どもに代わっての苦情に、十分な訓練を受けた職員が子どもに配慮したやり方で対応することを促進する目的で子どもの権利部を設けることなどがある)、および、事案が公的機関に付託された場合に人権委員会によるフォローアップが行なわれることを確保する目的で、締約国が、子どもの権利の保護および促進における独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)を考慮するよう勧告する。 市民社会 19.委員会は、市民社会との継続的連携を歓迎するとともに、締約国に対し、とくに総括所見の実施および達成された進展の評価との関連で、かつ条約および両選択議定書に基づく次回の報告のプロセスを背景として、そのようなパートナーシップをさらに強化するよう奨励する。 IV.子どもの売買、児童買春および児童ポルノの防止(第9条1項および2項) 選択議定書に掲げられた犯罪を防止するためにとられた措置 20.委員会は、モルディブ警察内に子ども保護部が設けられていることに積極的対応として留意しつつも、これが子どもにとって十分にアクセスしやすいものとなっておらず、かつ十分な人的資源および財源を欠いていることを、懸念する。 21.委員会は、締約国が、モルディブ警察内の子ども保護部に子どもがアクセスでき、かつこれに十分な人的資源および財源が提供されることを確保するよう、勧告する。 22.委員会は、締約国が児童買春の防止のための十分な措置をとっていないことを懸念する。委員会は、薬物濫用と児童買春との結びつきに関する締約国報告書の情報について懸念を覚えるものである。委員会はさらに、対話の際に締約国が指摘したように、観光の割合が高まっており、かつそのことが児童買春と結びついている可能性があることを、懸念する。 23.委員会は、締約国が、薬物濫用と闘うために追加的な防止措置をとるよう勧告する。さらに委員会は、締約国が、地域における子どもセックス・ツーリズムの増加のような既存のリスク要因に特段の注意を払うとともに、旅行および観光における商業的性的搾取からの子どもの保護に関して世界観光機関が定めた行動規範の遵守を向上させる目的で、この点に関するモルディブ観光振興委員会(MTPB)および観光業者と引き続き連携するべきである旨の、2007年の勧告(CRC/C/MDV/CO/3、パラ93)をあらためて繰り返すものである。 V.子どもの売買、児童買春および児童ポルノならびに関連する事項の禁止(第3条、第4条2項および3項、第5条、第6条および第7条) 現行刑事法令 24.委員会は、選択議定書上のすべての犯罪が犯罪化されている、すなわち刑法に編入されているわけではないことを懸念する。さらに委員会は、選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもが、10歳という低い年齢から、シャリーア法にしたがって犯罪者とされる可能性があること(ジナ〔婚外性行為〕の罪を含む)を懸念するものである。委員会は、法人の責任に関する情報がないことを遺憾に思う。 25.委員会は、締約国が、現在行なわれている法改正を速やかに進め、刑法を選択議定書第2条および第3条に全面的に一致させるよう、勧告する。 26.さらに委員会は、締約国が、国連・国際組織犯罪防止条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための選択〔ママ〕議定書、最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関するILO第182号条約(1999年)、および、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ第33号条約を批准するよう、勧告する。 裁判権 27.委員会は、選択議定書上の犯罪が刑法に編入されていないことにより、選択議定書上の犯罪が他国でモルディブ国民に対して行なわれた場合の、当該犯罪に関する締約国の裁判権の設定が妨げられていることを、遺憾に思う。 28.委員会は、締約国が、選択議定書第4条にしたがって犯罪についての裁判権を効果的に設定できるようにするため、必要なあらゆる法律上および実務上の措置がとられることを確保するよう、勧告する。 VI.被害を受けた子どもの権利の保護(第8条ならびに第9条3項および4項) 選択議定書で禁じられた犯罪の被害を受けた子どもの権利および利益を保護するためにとられた措置 29.委員会は、さまざまな環礁に社会保護センターが設置されたことに積極的対応として留意する。しかしながら委員会は、選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもが犯罪者として扱われる可能性があることを懸念するものである。具体的に、委員会は、裁判手続において被害を受けた子どものニーズが考慮されていないこと、被害者に対する補償が利用可能とされていないこと、および、再統合および回復のための措置が不十分であることを、懸念する。委員会はさらに、子どもヘルプラインの設置が進められていることに留意しつつも、締約国の第2回・第3回定期報告書の検討(CRC/C/MDV/CO/3、パラ62)以降、この点に関する進展が見られないことを遺憾に思うものである。 30.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 選択議定書上のいかなる犯罪の被害を受けた子どもも犯罪者として扱われないことを確保するため、速やかな法改正を含むあらゆる必要な措置をとること。 (b) 性的搾取の被害を受けた若年者について、疑いがあるときは成人ではなく子どもと推定すること。 (c) 被害を受けた子どもの法的代理を向上させるため、権限のある公的機関に対して十分な財源および人的資源を配分すること。 (d) 選択議定書第9条4項にしたがい、選択議定書に掲げられた犯罪の被害を受けたすべての子どもが、法的に責任のある者に対して差別なく被害賠償を求める十分な手続にアクセスできることを確保すること。 (e) とくに被害者である子どもに対して分野横断的援助を提供することにより、選択議定書第9条3項にしたがって社会的再統合ならびに身体的および心理社会的回復のための措置を強化する目的で、使途指定をともなう資源の配分が行なわれることを確保すること。 (f) フリーダイヤルの子どもヘルプラインを設置するプロセスをいっそう速やかに進めること。 31.委員会は、選択議定書第8条にしたがい、被害を受けた子どもは刑事司法手続のあらゆる段階で保護されるべきであることに留意する。委員会は、締約国に対し、この点について子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての指針(経済社会理事会決議2005/20)を指針とするとともに、具体的に以下の措置をとるよう奨励する。 (a) 被害者である子どもの個人的利益に影響がある手続において、当該子どもの意見、ニーズおよび関心事が提示されかつ考慮されることを可能にすること。 (b) 裁判手続中の困難から子どもを保護するため、子ども向けに設計された特別事情聴取室および子どもに配慮した事情聴取法を用いることならびに事情聴取、陳述および聴聞の回数を減らすこと等の手段によって、子どもに配慮した手続を活用すること。 VII.国際的な援助および協力 国際的援助 32.委員会は、締約国が、被害者への援助の提供および専門家を対象とした研修を目的として、とくに選択議定書の規定の実施に関わる協力プロジェクトへの国際的支援を求めるよう、勧告する。 法執行 33.委員会は、選択議定書第3条1項に定められた犯罪に関する刑事手続のあらゆる段階で、すなわち摘発、捜査、訴追、処罰および犯罪人引渡しの手続において締約国が行なっている援助および協力について、不十分な情報しか提供されていないことに留意する。 34.委員会は、締約国に対し、この点に関するいっそう詳しい情報を次回の報告書で提供するよう、奨励する。 VIII.フォローアップおよび普及 フォローアップ 35.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を閣僚評議会および国民議会(マジリス)の構成員ならびに適用可能なときはすべての環礁に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 36.委員会は、条約〔ママ〕、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した報告書および文書回答ならびに採択された関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、メディア、若者グループ、専門家グループが広く入手できるようにすることを勧告する。さらに委員会は、締約国が、とくに学校カリキュラムおよび人権教育を通じ、選択議定書を子どもおよびその親に広く知らせるよう勧告するものである。 IX.次回報告書 37.第12条2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約に基づく第4回・第5回統合定期報告書(提出期限・2011年9月12日)に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2012年4月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/320.html
CRC個人通報 No.12/2017(ベルギー、条約違反を認定) CRC 個人通報決定一覧 子どもの権利委員会(第79会期) CRC/C/79/D/12/2017(2018年11月5日) 配布:一般 原文:フランス語(日本語訳は英語版に基づくが、必要に応じてフランス語原文も参照した) 日本語訳:平野裕二〔PDF〕 通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書に基づいて子どもの権利委員会が採択した見解 No.12/2017 [注†] [注††] † 委員会が第79会期(2018年9月17日~10月5日)に採択したもの。 †† 委員会の委員のうち本通報の検討に参加したのは、Suzanne Aho Assouma、Amal Salman Aldoseri、Jorge Cardona Llorens、Bernard Gastaud、Olga A. Khazova、Hatem Kotrane、Gehad Madi、Benyam Dawit Mezmur、Clarence Nelson、Mikiko Otani、Luis Pedernera Reyna、Jose Angel Rodriguez Reyes、Kirsten Sandberg、Ann Marie Skelton、Velina Todorova および Renate Winterである。 提出者 Y.B.および N.S.(代理人弁護士= Ms. Sylvie Sarolea) 被害者とされる者 C.E. 締約国 ベルギー 通報日 2017年3月22日 見解採択日 2018年9月27日 主題 カファラ(養育親の取決め)に基づいてベルギー国籍・モロッコ国籍のカップルによって引き取られた子どもに対する人道査証の発給の否定 手続上の論点 国内救済措置が尽くされたか否か;申立ての実証 実体上の論点 子どもの最善の利益;民族に基づく差別の禁止;意見の自由;子どもの発達;あらゆる形態の暴力またはネグレクトからの子どもの保護;家庭環境を奪われた子ども 条約の条項 第2条、第3条、第10条、第12条および第20条 選択議定書の条項 第7条(e)および(f) 1.通報の申立人は、ベルギー国籍を有するY.B.(1953年生まれ)およびモロッコとベルギーの国籍を有するN.S.(1963年生まれ)である。両名は、モロッコ国籍を有するC.E.(2011年生まれ)に代わって通報を提出している。申立人らの主張によれば、C.E.は条約第2条、第3条、第10条、第12条および第20条の違反の被害者である。申立人らは弁護士による代理を受けている。選択議定書は、2014年8月30日に締約国について効力を生じた。 申立人らが主張する事実関係 2.1 申立人らは相互に婚姻しており、ベルギーのベリュベル(Peruwelz)にあるラ・プドリエール(La Poudriere)・コミューンの構成員である [1]。申立人らは、カファラの取決めに基づき、2011年4月21日にモロッコのマラケシュで出生したC.E.(モロッコ国籍)を引き取った [2]。C.E.は、父が不詳であり、かつ出生時に母によって遺棄された。C.E.が遺棄された旨の決定は、2011年8月19日にマラケシュ第1審裁判所によって言い渡された。 [1] 申立人らが述べるところによれば、同コミューンは非営利団体であり、住民は「経済的自給自足」生活を選択している(すなわち、自分たち自身の活動で生計を立て、かつ資源を分け合っている)。同コミューンの構成員は健康保険に加入しており、かつ子どもたちは公立学校に通っている。 [2] 本見解のパラ2.3参照。 モロッコにおけるカファラ手続 2.2 マラケシュ第1審裁判所は、2011年9月22日、申立人らを、棄児であるC.E.の(カファラ制度上の)養育親および後見人に指定した。権限のあるモロッコ当局が検察庁の訓令にしたがって実施した調査の後、申立人らはカファラの取決めに基づいてC.E.を引き取るのに必要な物質的および社会的適格性を有している旨の結論が出された。同裁判所は、2011年10月13日、申立人らがC.E.を連れて国外に渡航することを認めた。 2.3 モロッコ法上、カファラについては、棄児のカファラ(養育)に関する法律第15-01号を布告する2002年6月13日の王令第1-02-172号によって規律されている。同法第2条によれば、カファラとは、棄児の保護、教育および扶養に関する責任を、父が自身の子について負うのと同じように負う旨の誓約である。カファラには、親子関係または相続権はともなわない。棄児は、公立の福祉センターまたは子どものための他の社会的保護施設に一時的に措置される。調査の後、子どもが遺棄された旨の宣言を行なうことができる。遺棄されたと宣言された子どもの監督については後見判事が責任を負う。これらの子どもは、その後、カファラの取決めに基づき、イスラム教徒である夫婦またはイスラム教徒である女性のもとに措置することができる。 ベルギーの長期滞在査証の申請 2.4 申立人らが指摘するところによれば、カファラには親子関係がともなわないため、家族再統合を理由とする査証を申請することはできなかった。そのため申立人らは、2011年12月21日、外国人の入国、一時滞在、永住および退去強制に関するベルギーの1980年12月15日の法律第9条に基づき、人道的理由による長期滞在査証を申請した。申立人らは、申請に際し、C.E.は棄児であって自分たちの養育下に置かれたと述べた。申立人らは、無犯罪証明書を提出するとともに、自分たちが、同女を養育しかつ対人的にも金銭的にも安定した家庭環境を提供できる状況にあることを確認した。 2.5 移民局は、2012年11月27日、申立人らが提出した査証申請を棄却した。その理由は、カファラは養子縁組ではなく、いかなる在留権も付与するものではないこと、申立人らは連邦司法公務機関(旧法務省)によるカファラの取決めの承認を求めなかったこと、人道的理由による在留許可の申請は養子縁組申請に取って代わりうるものではないこと、および、子どもが実際に申立人らの養育下にあることまたは申立人らが十分な生計手段を有していることを示す証拠がないことである。 2.6 査証が発給されなかったことについて、外国人争訟審議会に対して不服申立てが行なわれた。同審議会は、2015年9月29日、以下の理由で移民局の決定を覆した。すなわち、移民局は棄却の公式な正当化事由を示す義務を遵守しなかったこと、申立人らが連邦司法公務機関の承認を求めなかったことを理由としたのは誤りであること(カファラは養子縁組と同じものではないため)、および、カファラに基づく命令は、それが在留権を付与するものではないというだけの理由で、(当該命令の法律適合性について疑問は出されず、かつ、申立人らが必要な手段を有していることおよび子どもが申立人らの養育下にあることは当該命令に明記されているにもかかわらず)退けることはできないことである。 2.7 申立人らは、不服申立てが認容された後、新たな決定を求めて移民局に繰り返し申請を行なったが、まったく回答がなかった。移民局は2016年7月19日になってようやく新たな決定を行ない、以下の理由で査証の発給を行なわないとした。(a) 申立人らが2012年にすでに養子縁組手続を開始しており、その後に手続を取り下げ、これに代えて人道査証を申請した(養子縁組手続を迂回するために人道査証の申請手続を利用することはできない)。(b) たとえ申立人らの主たる住所はベルギーにあったとしても、カファラの取決めの許可を受ける際に申立人らが用いたのはモロッコの公式な住所であった。(c) カファラは関係被後見人との家族的紐帯を創設するものではないため、ベルギーにおける在留権を付与するものではない。(d) 人道上の理由が十分に立証されていない(母は子どもを遺棄したもののいまだ存命であり、また申立人らは子どもを養育することのできる他の家族構成員――三親等の親族を含む――が存在しないことを示せなかった)。(e) 申立人らは、子どもを同女の母国および母文化ならびに子ども自身の家族のもとに留めて置きつつ子どもの教育を確保することが可能である。(f) 申立人らは、ベルギーで子どものニーズを満たす手段を有していることを示さなかった。(g) 申立人らは、子どもがモロッコからの出国許可を得ていることを示さなかった(モロッコ当局は申立人らがモロッコ在住であると考えていた)。 2.8 申立人らは、2016年10月25日、この2度目の棄却決定についてふたたび外国人争訟審議会への不服申立てを行なった。申立人らが委員会にこの通報を提出した時点では、この申立てはまだ係属中であった [3]。申立人らが指摘するところによれば、同審議会は決定を無効とする限定的権限を有しているものの、無効とされた決定に代えて他の決定を行なうことはできない。 [3] 外国人争訟審議会は、2018年4月26日の判決で、2016年7月19日の査証不発給決定を無効とした(パラ6参照)。 ベルギーにおける短期滞在査証の申請 2.9 申立人らは、2014年および2015年に短期滞在査証の申請を2度行なったが、〔欧州〕共同体査証規則(査証規則)を定める2009年7月13日の欧州議会・欧州理事会規則(EC) No. 810/2009第32条を根拠として、移民局によってそれぞれ2014年10月29日および2015年4月2日に棄却された。人道的理由による査証の申請について、これらの棄却決定では、滞在の真の目的に関して深刻な疑義があることおよび帰国の保証がないことが挙げられていた。 申立ての内容 3.1 申立人らは、締約国が条約第2条、第3条、第10条、第12条および第20条に基づくC.E.の権利を侵害していると主張する。 3.2 申立人らは、条約第2条で子どもに対する差別(子どもの出生に基づく差別を含む)は禁じられていると主張する。申立人らの見解によれば、C.E.の国籍が養子縁組とは異なる制度(カファラ)を有している国のものであることが、実際のところ、同女がベルギーで家族と再結合することの障壁となっている。C.E.は、カファラの取決めに基づいて引き取られた(このことは、ベルギー法上、同女には法的保護を受ける資格がないことを意味する)ために、移民当局によって、養子縁組された子どもとは異なる取扱いを受けている。しかしカファラは、親責任および子の保護措置に関する管轄権、準拠法、承認、執行および協力に関する1996年10月19日のハーグ条約で、子どもの保護のための措置のひとつとして認められたものである [4]。C.E.は措置および保護に対する権利を有している。同女には、申立人らが国民である国で申立人らとともに暮らす権利もある。申立人らとしても、ベルギーで一緒に生活する権利を有している。 [4] 親責任および子の保護措置に関する管轄権、準拠法、承認、執行および協力に関する1996年10月19日のハーグ条約。 3.3 申立人らの主張によれば、養子縁組の場合、条約第3条に掲げられた子どもの最善の利益の原則の拘束力がいっそう強まるのであるから、きわめて明確な理由が示されなければならない。評価においては、子どもの権利がどのように正当に考慮されたか、どのような基準が用いられたか、決定はどのような理由に基づくものか、および、子どもの最善の利益とその他の考慮事項がどのように衡量されたのかが示されなければならない。このような評価は権限のある公的機関(職種横断的な機関が望ましい)によって実施されなければならず、また子どもの意見が考慮されなければならない。決定は迅速に行なわれ、かつ再審査に服さなければならない。本件においては、査証申請を棄却した4件の決定のうち子どもの最善の利益に言及したものは1件もなく、子どもの最善の利益は無視された。子どもの最善の利益の概念は締約国の所見において初めて登場したものであり、締約国は、カファラは養子縁組とは異なり、これらの利益が真に慎重に考慮されることを保証するものではないと主張している。しかしこのような主張は仮定に基づくものであり、C.E.の事案には当てはまらない。さらに、締約国は、自国の決定が子どもの最善の利益を指針として行なわれることを認めようとするのではなく、著しく制限的な要件(すなわち、生命、健康または不可侵性への脅威となる深刻な人道的緊急事態が存在しなければならないというもの)に固執している。 3.4 申立人らの主張によれば、申立人らは2011年からC.E.との再結合を追求してきているが、申請が2度にわたって棄却されたため、C.E.は、モロッコ法およびベルギー法のいずれにおいても、申立人らを唯一の保護者とする棄児のままとなっている。カファラは、ベルギー国際私法第20条および1996年10月19日のハーグ条約の適用により、ベルギー法上、後見のひとつの形態として認められている。カファラは、これらの法律文書において家族的紐帯のひとつと認められているのである。加えて、本件では非公式後見の取決めがベルギーにおいて作成されかつ承認されている。 3.5 欧州人権裁判所も、事実上の家族的紐帯は、たとえ生物学的関係または養親子関係がなくとも家族的紐帯に当たると判示してきた。同裁判所によれば、成人と子どもがともに生活していた期間、関係の質および子どもとの関係で成人が果たしている役割が考慮されなければならない。子どもとの家族的絆がある場合、国は、当該絆の強化を可能にするようなやり方で行動し、かつ、子どもが家族に統合することを促進するための法的保護を提供しなければならない [5]。 [5] 申立人らが参照しているのは、Wagner and J.M.W.L. v. Luxembourg事件(No. 76240/01、2011年10月6日)、Moretti and Benedetti v. Italy事件(No. 16318/07、2010年4月27日)、Harroudj v. France事件(No. 43631/09、2012年10月4日)およびChbihi Loudoudi et al. v. Belgium事件(No. 52265/10、2014年12月16日)における同裁判所の判決である。 3.6 申立人らの指摘によれば、C.E.はもはやモロッコにいかなる家族も有していないので、同女が生物学的家族によって養育されるべきであると提案することはまったく意味をなさない。加えて、同女はモロッコで出生し、ベルギー国籍の父およびモロッコ人の背景を有するベルギー国籍の母によって引き取られているので、混合された文化的背景を有する。「同女の母国および母文化」への言及はステレオタイプにほかならず、本件の事実関係とは何の関連性も有さない。 3.7 申立人らの主張によれば、意見を聴かれる子どもの権利についての委員会の一般的意見12号(2009年)は、各国に対し、自己の意見をまとめる力のあるすべての子どもが、自己に影響を与えるすべての事柄について、子どもの年齢および成熟度にしたがって自由に意見を表明する権利を有することを確保するよう求めている [6]。C.E.の年齢が低すぎて意見を聴くことができないとしても、国は、それでも何が同女の利益であるのかを考慮し、かつ当該利益が表現されることを確保しなければならない。 [6] 一般的意見12号、パラ1。 3.8 最後に、申立人らの主張によれば、条約第20条は、カファラにも適用される1996年10月19日の前掲ハーグ条約に照らして解釈されるべきである。 受理許容性および本案に関する締約国の所見 4.1 締約国は、2017年9月26日の所見において、利用可能なすべての救済措置が尽くされていないため通報は受理許容性を欠いていると主張している。移民局が2016年9月5日に行なった決定の取消しを求める申請は、外国人争訟審議会にいまなお継続中のように思われる。同審議会は行政決定の法律適合性を審査するだけであり、行政当局に代わって新たな決定を行なうことはできないものの、事案の事実関係の評価において当局がその裁量権限をどのように用いたかを検討する。したがってこの救済措置は効果的なものである。加えて、申立人らは執行停止効をともなう審査を申請しなかった(このような申請を行なっていれば、より迅速に審議会の決定を得られたはずである)。執行停止効が必ず滞在許可につながるというわけではないにせよ、当該事案で決定を行なった行政当局は、新たな決定を行なう正当な理由があるか否かを判断するため申請を再検討しなければならない。 4.2 締約国は、本案に関するコメントにおいて、カファラと養子縁組は2つの異なる制度であると指摘する。カファラは、ベルギー法では特別後見(tutelle officieuse)として知られる制度(親子関係を創設せず、取消し可能であり、かつ子どもが成年に達すると終了するもの)に類似していると考えられる。他方、養子縁組は、子どもが親子関係の利益を得られるようにし、かついっそうの保護を提供するものである。このような理由から、養子縁組は厳格に規制されており、多くの保護措置に服する。 4.3 養子縁組に関する法律が改正されるまで、カファラに基づいて引き取られた子どもは、養子縁組の準備のためにベルギーでの滞在許可を付与され、養子縁組が完了した段階で無期限に滞在できるものとされていた。養子縁組法は、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年5月29日のハーグ条約をベルギーで施行するための2003年4月24日の法律によって改正された。国際養子縁組が、子どもの最善の利益にのっとって、かつ子どもの基本的権利を尊重しながら行なわれることを確保する保護措置がベルギー法に編入された。この改正の結果、養子縁組または養子縁組のための措置が存在しない国(モロッコ等)が出身国である子どもを養子縁組の準備のためにベルギーに渡航させることは、現在ではできない。 4.4 ベルギー民法(第361~363条)も改正され、カファラの取決めに基づいて引き取られた子どもは、養子縁組のための以下の条件が満たされるかぎりで養子とすることが可能とされた。その条件とは、(a) 養親となる者は、養子縁組のための準備に関する講習を受け、かつ適格であると認められていなければならず、(b) 子どもの養子縁組の申請は、子どもの出身国によって、関連の共同体の中央当局に送達されていなければならず、(c) 養親となる者および子どもの監護権を有する者との間で、関連の中央当局および子どもの出身国の中央当局が当該マッチングに同意する前に事前の接触があってはならず、(d) 養子となる資格を認められる子どもは、母および父の双方を失いまたは遺棄されたと宣言され、かつ出身国の当局の保護下に置かれていなければならず、かつ、(e) 権限のある出身国の当局は、子どもを国による何らかの形態の保護下に置き、かつ子どもを外国で定住させる目的で国外に連れ出すことの許可を与えていなければならないというものである。2014年と2015年には、モロッコ出身の子ども25名がカファラに基づいてベルギーで養子となった。このように、モロッコからは、1か国を除く他のいかなる外国よりも、多くの子どもが国際的な家族外養子縁組の対象となっている [訳注]。 [訳注] 末文はフランス語原文に基づく。 4.5 締約国は、1996年10月19日のハーグ条約第33条にも言及している。同条によれば、いずれかの当局がカファラによる子どもの措置を考え、かつ当該措置が他の締約国で行なわれる場合、当該当局はまず後者の国の中央当局と協議し、かつ、提案されている措置の理由を示して当該子どもに関する報告書を送達しなければならない。カファラによる措置についての決定は、要請を受けた国の中央当局または他の権限のある当局が子どもの最善の利益に照らして当該措置に同意した後でなければ、行なうことができない。 4.6 締約国の指摘によれば、本件において、申立人らは民法第365-1条に掲げられた要件を満たしていない。とはいえ、養子縁組を計画するために必要な情報の取得はきわめて容易なはずである。共同体の中央当局は、さまざまな手続についての情報を掲載したウェブサイトおよびヘルプラインを開設している。しかし、申立人らが2012年12月27日に外国人争訟審議会に提出した決定取消しの申請では、申立人らの望みはC.E.を養子とすることではないと述べられている。締約国によれば、カファラによる措置によって子どもが他国に連れて行かれ、自己の地理的および文化的環境から離れさせられるのであれば、そのような取決めに基づいて子どもを引き取る者は、まず子どもの在留許可の取得の可能性を検討することが期待されよう。 4.7 申立人らはC.E.が母によって遺棄されて孤児院に措置されたと指摘するものの、C.E.を申立人らの養育下に置くためにモロッコでとられた手続に関する情報(当該孤児院と直接接触したことを示す何らかの情報またはC.E.が申立人らの養育下に置かれた理由を含む)がまったく提供されていない。C.E.を申立人らに委託する旨の決定が同女の最善の利益を真に精査して行なわれたことの――国際養子縁組の場合にはあってしかるべき――保証が存在しない。さらに、カファラによる措置命令および国外渡航の許可には、カファラの申請者はモロッコ在住であると書かれている。当該許可はC.E.の国外永住に関するものではない。 4.8 締約国が示すところによれば、特別後見とは後見の一形態であり、特別後見人は監護下にある未成年者を扶養し、養育し、かつ稼得生活を送れるよう準備させる役割を引き受ける。後見人は、子どもが後見人と常時同居しているかぎりにおいて監護権を有する。この形態の後見においては、子どもの最善の利益が実効的かつ徹底的に考慮されることも保証されない。 4.9 カファラに基づいて子どもを養子とするための手続では、子どもがベルギーで受け入れられた状況をベルギー当局が精査した後に適格性宣言が発給されることになるが、この手続はとられなかったこと、モロッコ当局もこれらの状況を確認できなかったこと、および、カファラの取決めは子どもが国外で定住できるようにすることを意図したものではなかったことから、ベルギー当局は、C.E.に在留許可を与えることがその最善の利益にのっとったものであると考えなかった。 4.10 申立人らがC.E.との養子縁組を選択しなかったことまたは申立人らが法律を知らなかったことは、ベルギー国に対し、C.E.の利益および保護のために定められた規則に違反して同女に在留許可を与える義務を課すものではない。深刻な人道上の緊急事態である場合はこのかぎりでないが、同女の事案でこのような状況が存在することは示されていない。 4.11 欧州人権裁判所は、最初の入国許可の事案では私生活および家族生活に対する権利への干渉は存在しないとの見解をとっている [7]。C.E.は就学しており、またN.S.(申立人2名の1名)はモロッコでの仕事から所得を得ているが、N.S.およびその夫であるY.B.のいずれも、どちらかがベルギーで何らかの所得を得ていることを示していない。申立人らは、不利な立場に置かれた人々で構成される、それぞれが有しているものを分け合うコミューンで生活しているが、これらの資源の出所は不明である。また、モロッコでどのような人々がC.E.の周辺にいるのも明確ではない。 [7] Ahmut v. the Netherlands事件判決(1996年11月28日、No. 21702/93)。 4.12 締約国の指摘によれば、申立人らが引用する事件(Harroudj v. France事件、Wagner and J.M.W.L. v. Luxembourg事件およびChbihi Loudoudi et al. v. Belgium事件)における欧州人権裁判所の判決は参照対象とはならない。これらの事件では、子どもは関係国に合法的に入国した後、当該国で通常の家族生活を育んでいったためである。 4.13 締約国が条約第12条を参照しつつ指摘するところによれば、C.E.は最初の決定が行なわれた時点で1歳であり、かつ2番目の決定が行なわれた時点で5歳であったため、同女に自己の意見を形成する能力があると主張するのは困難である。加えて、子どもに影響を与える措置手続または養子縁組手続において子どもの意見を聴く必要性は明らかであるが、在留許可を付与するか否かを検討する際にはそのような必要性は存しない。 4.14 最後に、C.E.はモロッコ当局によって養育下に置かれ、かつモロッコにおいてカファラの取決めに基づき措置されたのであるから、条約第20条は尊重されている。在留許可の付与の問題は第20条と関連性を有しない。 締約国の所見に関する申立人らのコメント 5.1 申立人らは、2017年12月5日付のコメントにおいて、外国人争訟審議会に現在係属中の手続は効果的救済を保証するものではないと指摘する。同審議会は、締約国も認めるように決定を無効にすることしかできず、本件で明らかなように無効とされた決定に代えて他の決定を行なうことはできない。移民局は、査証申請を棄却するという最初の決定から4年後に、違法であることを理由に取り消された決定と実質的に同一の決定をふたたび行なった。さらに、在留許可を発給しない旨の決定の執行停止は、締約国も指摘するように執行停止の裨益者に対してベルギーへの入国資格を与えるものではないので、効果的救済措置ではない。 5.2 事実関係についての申立人らの説明によれば、N.S.はモロッコ国に雇われて公立学校で数学を教えており、またY.B.は、2005年以降、ベルギーのラ・プドリエール・コミューンに住み、庭師として働いている。Y.B.には、最初の婚姻中にできた2人の子どもと、3人の孫がいる。申立人らは2006年4月にモロッコのマラケシュで婚姻し、2007年9月まで中断することなく同地で生活していた。N.S.は2009年5月にベルギーの在留許可を取得し、ラ・プドリエールに引っ越すためモロッコの公務員としての職を早期に辞するための措置をとった [8]。N.S.は2017年8月にようやく公務員としての地位を辞すことを認められ、それ以降、早期退職給付を受けている。 [8] N.S.は2013年2月にベルギー国籍を取得した。 5.3 申立人らの指摘によれば、C.E.は孤児であり、かつモロッコ当局によって正式に棄児であることを承認されているので、モロッコで同女を養育する家族はいない。C.E.は、申立人らに引き取られて以降、マラケシュにあるN.S.の家で継続的に生活し、かつ近くの私立学校に通ってきた。時にはN.S.の母または姉妹の世話を受けることもある。C.E.は遺棄されたことで傷ついており、申立人らに深い愛着を感じている。あらゆる分離、とくにN.S.との分離は非常な苦痛をともなうものであった。2016年には、N.S.がベルギーを訪問している間に、1度入院を余儀なくされたこともあった。N.S.は主にモロッコに住み、年に1~3回、2週間ずつベルギーに渡航している。Y.B.はベルギー在住であり、年に2~3か月、モロッコでN.S.およびC.E.との時間を過ごしている。 5.4 申立人らは、モロッコで行なわれた司法手続に対して異議申立ては行なわれていないと指摘する。締約国は、モロッコに領事館および大使館のような調査手段を有しているにもかかわらず、この6年間いかなる調査も実施せず、権限のあるモロッコ当局から情報を得ようとすることもなかった。申立人らによれば、このような不作為は締約国の消極性を示すものであり、C.E.のために解決策を見出そうとする姿勢が締約国にないことを明らかにするものである。他方、申立人らは、諸手続全体を通じ、必要な対応をとる姿勢および積極的な姿勢を一貫して示してきた[訳注]。 [訳注] 末文はフランス語原文に基づく。 5.5 申立人らの指摘によれば、モロッコの裁判所はC.E.の出国を認可し、また裁判所はY.B.がベルギー国籍を有していることを十分に認識していた。たとえ申立人らがもっぱらモロッコに在住していたとしても、国籍国に定住することは可能であるべきである。 5.6 申立人らの適格性に関しては、申立人らの適格性およびベルギーでの生活条件を確認するための詳細な司法手続がモロッコで実施された。ベルギーの裁判官が承認した特別後見は、C.E.に対するもうひとつの保護措置となっている。さらに、申立人らがラ・プドリエール・コミューンのボランティアであることは、申立人らが金銭的に独立していることの証拠である。加えて、申立人らはベルギーとモロッコにそれぞれマンションを1戸ずつ所有している。 5.7 申立人らは、ベルギーでは申立人らが利用した手続――人道査証の申請および特別後見手続――しか利用することができなかった。申立人らと子どもが事前に接触していたために、カファラの取決めをベルギー法に基づく養子縁組へと転換する可能性は排除された。 5.8 申立人らが強調するところによれば、長期滞在または短期滞在のための査証を発給しないとする4件の決定のいずれにおいても、子どもの最善の利益にはまったく言及されていなかった。ベルギーがカファラ制度を承認していないことは、申立人らの家族のような国際的家族に対し、この家族が紐帯を有しているモロッコとベルギーとを行き来する自由を否定するものである。この家族は、関係をさらに育んでいく権利も有している。締約国の立場は、この家族がともに暮らすことを阻む効果をもたらすものである。C.E.がモロッコにひとりで取り残されないようにするため、N.S.は同国でC.E.とともに暮らしており、そのため自らが国民である国で暮らす権利およびY.B.とともに暮らす権利を放棄している。Y.B.は、自らが国民である国で暮らすことならびにベルギーにおける活動および家族を放棄しなければならない。このような態度のため、C.E.はベルギーに暮らす家族との紐帯を形成することも妨げられている。 申立人らからの追加情報 6.申立人らは、2018年5月3日付の書簡で、外国人争訟審議会が2018年4月26日に判決を言い渡し、2016年7月19日の査収不発給決定を無効にした旨、明らかにした。同審議会は、不服申立ての対象とされた決定において、申立人らがC.E.の特別後見人として行動することを承認したトゥルネー(Tournai)少年裁判所の判決にまったく触れていないと考えたものである。 委員会における争点および手続 受理許容性の検討 7.1 委員会は、通報に含まれるいかなる主張についても、その検討を行なう前に、委員会の手続規則の規則20にしたがい、当該主張を受理することが選択議定書に基づいて許容されるか否かを決定しなければならない。 7.2 委員会は、移民局が2016年7月19日に行なった2度目の棄却決定の無効を求める不服申立ては本件通報が提出された時点でまだ外国人争訟審議会に係属中であったこと、および、申立人らは不服申立てを行なった決定の執行停止を要請しなかったことを理由として、本件通報の受理は(国内救済措置が尽くされていないことを根拠として)許容されないという締約国の主張に留意する。しかしながら委員会は、申立人らが、外国人争訟審議会は決定を無効とする限定的権限を有しているものの、無効とされた決定に代えて他の決定を行なうことはできないことを指摘しつつ、同審議会が、2018年4月26日、査証不発給決定は無効であると判示したと主張していることにも留意するものである。その結果、移民局は何らかの新たな決定を行なうことが必要になる。しかしながら移民局は、申立人らの申請をすでに2度、すなわち2012年11月17日および2016年7月19日に棄却していた。したがって3度目の申請が認容される可能性は低い。不服申立ての対象となった決定の執行停止については、委員会は、執行停止は在留許可が与えられることを含意するものではなく、したがって効果的救済とは言えない旨の当事者の主張に留意する。以上のこと、ならびに、とくに申立人らが最初の査証申請を行なってから7年が経過していることおよび最初の2度の申請を棄却したのと同じ機関が3度目の申請も扱うことになることに照らし、委員会は、申立人らは利用可能かつ効果的なすべての救済措置を尽くしたとの見解に立つ。したがって委員会は、選択議定書第7条(e)に基づく、本件通報の受理を妨げる要因はないと判断するものである。 7.3 委員会は、申立人らは条約第20条に言及しているものの、その主張を立証していないことに留意する。したがって委員会は、この主張は明らかに根拠を欠いており、選択議定書第7条(f)に基づいて受理することができないと結論する。 7.4 にもかかわらず、委員会は、国籍を理由とするC.E.への差別(条約第2条)、ベルギー移民当局が実施した手続の際に示された子どもの最善の利益および意見を聴かれる子どもの権利の無視(条約第3条および第12条)ならびに最後に家族再統合(条約第10条)に関する申立人らの主張は十分に立証されていると認定し、したがってこれらの主張は受理できることを宣言して本案の検討に進むものとする。 本案の検討 8.1 委員会は、選択議定書第10条(1)にしたがい、当事者から提出されたすべての情報に照らして本件通報を検討した。 8.2 委員会は、ベルギー移民当局が4度にわたって査証の発給を拒否した際、子どもの最善の利益が無視されたという申立人らの訴えに留意する。委員会はまた、これらの決定は、1993年ハーグ条約に国内的効力を与えるために改正され、したがって国際養子縁組が子どもの最善の利益にかなう形で行なわれることを確保する現行法にのっとって行なわれたものである旨の、締約国の主張にも留意するものである。 8.3 委員会は、子どもに関わるすべての活動において子どもの最善の利益が第一次的に考慮されなければならないこと、および、この概念は「当事者である子ども(たち)が置かれた特定の状況にしたがって、その個人的な背景、状況およびニーズを考慮に入れながら個別に調節・定義されるべき」であって、かつ「個別の決定については、子どもの最善の利益は、その特定の子どもが有する特定の事情に照らして評価・判定されなければならない」こと [9] を想起する。 [9] 自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利(第3条第1項)についての一般的意見14号(2013年)、パラ32。 8.4 委員会はまた、事実関係および証拠の検討ならびに国内法の解釈および執行は国内当局の役割であるが、当該当局の評価が明らかに恣意的でありまたは正義の否定に相当するときはこのかぎりではないこと [10] も想起する。したがって、委員会の役割は、国内当局に代わって事案の事実関係および証拠を評価することではなく、当該当局の評価が恣意的でありまたは正義の否定に相当するものではないこと、および、当該評価において子どもの最善の利益が第一次的に考慮されたことを確保するところにある。 [10] U.A.I. v. Spain 事件決定(CRC/C/73/D/2/2015)、パラ4.2および A.Y. v. Denmark 事件決定(CRC/C/78/D/7/2016)、パラ8.8。 8.5 委員会の見るところ、本件においてベルギー移民当局が査証を発給しなかった主な理由は、カファラの取決めが在留権を付与するものではないこと、ならびに、申立人らが、(a) C.E.がモロッコで生物学的家族による養育を受けるのは不可能であること、(b) 同女をモロッコに残したままでは申立人らは同女の教育を確保できないこと、および、(c) 申立人らはC.E.を扶養する資力を有していることを実証できなかったことにある。しかしながら、委員会の見るところ、これらの理由は一般的なものであり、かつ、C.E.の置かれた特定の状況――とくに、父が不詳であり、かつ出生時に実母によって遺棄されたことから、生物学的家族による養育を受けられる可能性は低く、かついずれにせよ現に扶養されていないこと――を考慮しなかったことの表れである。申立人らが必要な資力を有していないとの主張は、カファラによる措置を許可したモロッコ当局の決定において、申立人らの社会的および経済的状況が考慮されていたことを顧慮していないように思われる。モロッコ当局は、申立人らに対してC.E.のカファラの取決めを承認することによって申立人らの状況が満足できるものであることを認めたのであり、一方でベルギー当局も、申立人らがC.E.の特別後見人として行動することを許可することによって同様の判断をしたのである。締約国は、カファラの取決めに至ったモロッコの手続について一般的な形で疑問を呈するものの、必要な保護措置が当該手続においてどのように確保されなかったのかは明らかにしていない。最後に、C.E.をモロッコに残したままにしておけばよいという考えは、子どもを孤児院に残したままその教育上のニーズに対応することと、子どもとともに生活しながら親さながらに子どもの情緒的、社会的および金銭的ニーズに対応することとの違いを無視しているように思われる。このような主張は、移民当局が、申立人らとC.E.とを2011年以来結びつけてきた情緒的紐帯をまったく考慮していないことを示唆するものである。移民当局は、カファラによって確立された法律上の関係に加えて、C.E.の出生以降N.S.が同女とともに生活してきたこと、または両名が何年もともに生活することによって事実上の家族的紐帯が自然に形成されてきたこともまったく顧慮していないように思われる [11]。 [11] この点について、Wagner and J.M.W.L. v. Luxembourg事件、Moretti and Benedetti v. Italy事件およびHarroudj v. France事件における欧州人権裁判所の判決を参照。 8.6 条約第12条に基づく申立人らの主張との関連で、委員会は、C.E.は最初の決定が行なわれた時点で1歳であり、かつ2番目の決定が行なわれた時点で5歳であったこと、同女に自己の意見を形成する能力はないこと、および、子どもの意見表明を認める必要性は、在留許可の付与に関する規定の適用上は正当と認められないことを述べる締約国の主張に留意する。 8.7 しかしながら委員会は、「第12条では子どもの意見表明権に何らの年齢制限も課されていない」のであって、〔委員会は〕「締約国に対し、法律または実務において、自己に影響を与えるすべての事柄について意見を聴かれる子どもの権利を制約するような年齢制限を導入しないよう奨励」していること、および、「自己に影響を与える事柄のあらゆる側面について子どもが包括的知識を有している必要はないが、その事柄に関する自己の意見を適切にまとめることができるのに十分な理解力は必要である」こと [12] を指摘する。委員会はまた、「子どもの意見を考慮に入れない、または子どもの年齢および成熟度にしたがってその意見を正当に重視しないいかなる決定も、子ども(たち)が自己の最善の利益の判定に影響を及ぼす可能性を尊重していないことになる」こと、および、「子どもが非常に幼く、または脆弱な状況に置かれている(たとえば障害を有している、マイノリティ集団に属している、移住者である等)からといって、子どもが自己の意見を表明する権利を剥奪され、または最善の利益の判定の際にその子どもの意見が重視される度合いが低くなるわけではない」のであって、「このような状況に置かれた子どもが権利を平等に行使できることを保障するための具体的措置が、意思決定プロセスにおける役割を子ども自身に対して保障する個別の評価が行なわれ……ることを条件として、採用されなければならない」こと [13] にも留意するものである。 [12] 一般的意見12号(2009年)、パラ21。 [13] 一般的意見14号(2013年)、パラ53および54。 8.8 委員会の見るところ、本件においては、申立人らによる人道査証申請についての2度目の決定が行なわれた時点でC.E.は5歳であったのであり、ベルギーで申立人らと永住する可能性について自己の意見を形成する能力を完全に有していたはずである。委員会は、子どもに対して在留許可が認められるべきか否かを判断するために実施される手続で子どもの意見を考慮する必要はないという締約国の見解を共有せず、むしろまったく逆であると考える。申立人らの事案における手続の帰結は、C.E.が申立人らの家族の一員として申立人らとともに暮らせる可能性と直接関連するかぎりにおいて、同女の人生および未来にとってこのうえなく重要である。 8.9 以上のことに照らし、委員会は、締約国が、C.E.のための査証申請を審査する際に子どもの最善の利益を具体的に考慮せず、かつ意見を聴かれる権利を同女に認めなかったことにより、条約第3条および第12条に違反したと結論する。 8.10 条約第10条に基づく申立人らの主張に関連して、委員会は、ある国への最初の入国許可の事案では私生活および家族生活に対する権利への干渉は存在せず、その結果、たとえ生物学的紐帯または養子縁組による紐帯が存在しなくとも、家族的紐帯に匹敵する事実上の紐帯が存在するので「家族再統合」の権利が付与されると主張するのは誤っている旨の締約国の主張に留意する。 8.11 委員会の見解では、条約第10条は、カファラの取決めの対象とされた子どもについて家族再統合の権利を認めるよう、締約国に一般的に義務づけるものではない。にもかかわらず、委員会は、C.E.に在留許可を与えるか否かを決定する目的で子どもの最善の利益の評価および認定を行なうにあたり、締約国には、カファラに基づいて育まれてきた、同女と申立人ら(とくにN.S.)との事実上の紐帯を考慮する義務があるとの見解に立つ。委員会は、子どもの最善の利益について検討する際に考慮しなければならない要素として家族環境の保全および紐帯の維持を評価する際には、「『家族』という文言は、生物学的親、養親もしくは里親、または適用可能なときは地方の慣習により定められている拡大家族もしくは共同体の構成員を含むものとして広義に解されなければならない(第5条)」こと [14] に留意するものである。 [14] 一般的意見14号(2013年)、パラ59。 8.12 本件で存在した事実上の家族的紐帯がまったく考慮されなかったことに照らし、かつ申立人らが査証を申請してから7年以上が経過しているので、委員会は、締約国が、家族再統合の申請に相当する申立人らの申請を積極的、人道的かつ迅速な方法で取り扱う義務を遵守しておらず、かつ、当該申請の提出が申請者およびその家族の構成員に悪影響を及ぼさないことを確保しなかったことによって、条約第10条に違反したと結論する。 8.13 条約第3条、第10条および第12条の違反を認定したので、委員会は、同じ事実関係が第2条違反に当たるか否かを検討する必要はないと考える。 8.14 委員会は、選択議定書第10条(5)に基づいて行動し、委員会に通告された諸事実は条約第3条、第10条および第12条の違反に相当するものであるとの見解をとる。 9.締約国は、子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることおよびC.E.の意見が聴取されることを確保しつつ、C.E.のための査証申請を積極的精神に基づいて緊急に再審査する義務を負う。子どもの最善の利益を考慮するにあたり、締約国は、C.E.と申立人らとの間に事実上形成されてきた家族的紐帯を考慮するべきである。締約国はまた、今後同様の違反が行なわれないようにするために必要なあらゆる措置をとる義務も負う。 10.委員会は、締約国が、選択議定書に加盟したことをもって、条約違反があったか否かを決定する委員会の権限を認めたことに留意する。 11.通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書第11条にしたがい、委員会は、委員会の見解を実施するためにとられた措置についての情報を180日以内に締約国から受領したいと考える。締約国はまた、条約第44条に基づいて委員会に提出する報告書にも、このような措置がとられた場合には当該措置についての情報を記載するよう要請される。最後に、締約国は、本見解を公表し、かつ締約国の公用語で広く普及するよう要請されるところである。 更新履歴:ページ作成(2019年5月8日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/290.html
子どもの権利委員会・一般的討議勧告:少年司法の運営 一般的討議勧告一覧 関連:少年司法における子どもの権利についての一般的意見10号(2007年) (第10会期、1995年) 原文:英語(PDF) 日本語訳:平野裕二 C.少年司法の運営に関する一般的討議 (略) 205.少年司法の運営の問題は、とくに締約国報告書との関連で委員会が採択した総括所見において、委員会による一貫した関心の対象となってきた(CRC/C/15 and addenda)。そのため、今回の一般的討議は、委員会が任務を開始するようになって最初の数年間の経験を評価する機会となった。 206.委員会の経験から明らかになってきたのは、少年司法の運営は、世界のあらゆる地域で、またあらゆる法体系との関連で実際上の関心の対象になっているということである。子どもの権利条約およびこの分野で採択されているその他の国連基準――少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護に関する国連規則――から派生する挑戦的かつ革新的な理念は、子どもを基本的権利および自由の主体として承認し、かつ子どもに関わるすべての行動において子どもの最善の利益が第一次的考慮事項として指針とされる、子ども志向の制度をもたらすものである。このような制度を達成するため、締約国は、自国の国内法および国内実務が子どもの権利条約と全面的に一致することを確保するために、とくに第4条に照らし、あらゆる必要な措置をとる必要がある。 207.(略) 208.委員会は、議論の際に検討すべき2つの主要な分野として、現行の基準を効果的に実施することの関連性、および、とくに技術的援助プログラムを通じた国際協力の有用性を挙げていた。委員会としては、これらのテーマについて討議することが、子どもの人権の保護および尊重に関して説明責任を果たしていくことの重要性を強調することに資し、かつこれらの権利の実現のための国際連帯を促進することの必要性を強調することにつながると考えたものである。 209~211.(略) 212.一般的討議への導入は、委員会の委員であるサンドラ・メイソン氏によって行なわれた。メイソン委員の発言では、子どもの権利に対する条約のホリスティック・アプローチと、少年司法の分野でとくに関連性を有する条約の一般原則の本質的有用性が強調された。子どもを権利の主体として捉えること、法律の前における平等の明確な承認および実施を確保すること、ならびに、人権と法的権利との間に存在する本質的つながりを承認することが、現行の基準、とくに子どもの権利条約の尊重を確保するために不可欠な手段として強調された。 213.委員会の委員および招請された参加者のさまざまな発言によって活発な議論が確保され、そのなかで、国連が定めている現行の規範および原則の重要性が強調され、国レベル・地域レベルで実施されているプロジェクトの具体例が紹介され、かつ、世界中で子どもの権利の実現を確保していく過程で成功裡に達成された成果および直面した困難について言及された。 214.このような枠組みのなかで、条約の普遍性が、特段の重要性を有するものとして取り上げられた。批准国が181か国にのぼることに鑑み、条約は、少年司法の運営の問題に対応していく際の共通の参照文書であり、かつ倫理的ビジョンを示すものである。条約の規定に拘束力があるということは、締約国が、そこに掲げられた諸権利をはっきりと承認したことを含意する。加えて、条約は、子どもの権利の実現にもっとも資する規定の実施を求めており、したがって、他の関連の国際基準(とくに北京規則、リャド・ガイドラインおよび自由を奪われた少年の保護に関する国連規則)とあわせて考慮されなければならない。これらの文書は、条約で認められている諸権利を補完し、かつその実施のための指針を示すとともに、人権と少年司法との間に抵触が生じる可能性はないことを確認するものである。 215.このようなアプローチは、委員会による締約国報告書の検討、事前質問事項の作成ならびに政府に宛てられた総括所見および勧告のとりまとめにおいて広くとられている。さらに、条約第44条を踏まえて提出されるべき将来の定期報告書に関するガイドラインの作成においても、このようなアプローチが指針とされることになろう。 216.より幅広い文脈で子どもの権利を実現していくための行動においても、このようなアプローチを参考にすることが求められる。少年司法を、刑事法への抵触が生じた状況に限定して考えることはできないためである。一例として、子どもの庇護希望者および難民ならびに保護者のいない子どもの分野に対して注意が払われた。実際のところ、このような子どもに対しては子どもの権利条約の多様な規定が適用されるのであり、また条約という法的文書は普遍的性質を有しているのであるから、このような子どもの基本的人権および法的保障の水準は、とくに自由の剥奪または家族からの分離の状況下にあっては拡大されるのである。このような状況では、子どもが尊厳および価値についての感覚を促進するのにふさわしい方法で取り扱われること、ならびに、決定が、自己の意見を形成する力のある子どもに対して自由に自己の意見を表明する権利を保障する適正手続のなかで、子どもの最善の利益に照らして明確な形で行なわれることを確保することが必要不可欠となる。 217.監視機能の履行に関わる委員会の経験を評価するなかで、報告書には少年司法に関する情報(逮捕、拘禁または収監によって自由を剥奪された子どもの人数に関するデータを含む)が記載されていない場合が非常に多いことが強調された。報告書は法的規定の一般的記述に留まっていることが通例であり、司法運営制度に少年が関わることにつながる社会的諸要因またはその過程で行なわれた決定の社会的影響について取り上げられていることはめったにない。同様に、子どもの権利の効果的実現に向けた進捗を阻害する要因または困難も特定されていないのが通例である。 218.とりわけ、条約の一般原則が国内法または国内実務に十分反映されていないことが感じられた。差別の禁止との関連で特段の懸念が表明されたのは、子どもの刑事責任の鑑別および子どもに適用される措置の決定において、(たとえば第二次性徴期への到達、事理弁識年齢または子どもの人格との関連で)主観的かつ恣意的な基準がいまなお広く用いられている場合があることである。地位が低いことから社会的排除およびスティグマ(警察官によるものを含む)に直面することが多い、路上で生活しかつ(または)働いている子どもの状況に対しても注意が払われた。このような状況は、頻繁に行なわれる極端な人権侵害が、ほとんど監視または処罰の対象とされず、そのため容認しえない不処罰の状況下で行なわれることにつながる。 219.条約は、少年司法の運営との関連でも子どもの最善の利益の原則を再確認している。このことは、条約が、子どもは尊厳および価値についての感覚を促進するのにふさわしい方法で取り扱われるべきであり、また当該方法は、子どもの人権および基本的自由の尊重を強化し、かつ子どもの年齢および特別なニーズを考慮に入れたものでなければならないと強調している点に、とくに表れているところである。しかし、複数の報告が明らかにしているところによれば、特別な少年司法制度が存在しないことも多く、裁判官、弁護士、ソーシャルワーカーまたは施設職員を対象とした特別な研修がまったく実施されておらず、かつ、基本的権利および法的保障についての情報が子どもに提供されていない。こうした理由から、かつ条約に反して、自由の剥奪が、条約で求められているように最後の手段としてかつもっとも短い可能な期間でのみ用いられることにはなっておらず、また家族との接触も原則とされていいない。法的その他の援助も提供されておらず、無償の法律扶助が提供されていないこともしばしばある。 220.同様に、自己に影響を与える手続に参加する子どもの権利との関連では、子どもが自己の権利(弁護人の援助を受ける権利を含む)について、または事案をとりまく状況もしくは決定された措置について、十分に認識している例はほとんどないことが、締約国報告書から明らかにされてきた。子どもはまた、基本的権利の侵害の被害を受けたとき(不当な取扱いおよび性的虐待の事案を含む)にも、苦情申立ての権利をしばしば否定されている。さらに、少年司法が社会的および感情的圧力の対象となる傾向が強まりつつあることは、子どもの最善の利益の尊重が損なわれる機会を生み出すことにつながるので、特段の懸念の対象である。 221.一部の国で死刑がいまなお18歳未満の者についても認められていること、むち打ちが教育的措置および懲罰措置として使用されていること、ならびに、子どもの健康、自尊心および尊厳を育む環境のなかで行なわれる身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための効果的制度を促進していく必要性に対して十分な注意が払われていないことに、深い遺憾の意とともに留意された。 222.この文脈において、条約第42条に照らし、かつ人権教育のための国際連合10年の精神にのっとり、子どもの権利に関する情報提供および意識啓発のための体系的キャンペーンを確保する明確な必要性があることが感じられた。子どもの基本的権利の侵害または基本的な法的保障の軽視の防止を強化する手段として、学校制度等も通じ、アクセスしやすい情報を子どもに提供するために特段の努力が行なわれるべきである。 223.同様に、この分野で子どもとともにおよび子どものために働いている関連の専門家集団を対象として体系的な研修活動が実施されることを確保するために、さらなる措置をとることが求められる。これとの関連で、子どもの権利条約を養成・研修カリキュラムに編入すること、および、関連の行動規範に条約の基本的価値観を反映させることの重要性が強調された。また、裁判官、弁護士、ソーシャルワーカー、法執行官、出入国管理官および子どものための施設で働く職員が果たす役割に対し、特段の言及がなされた。 224.条約およびこの分野で採択された他の関連の国際連合基準を含む少年司法基準についてのマニュアル(可能であればこれらの基準に関する評釈を付したもの)および法執行官研修マニュアルが出版されかつ広く普及されることを緊急に確保しなければならないことが強調された。委員会は、このような努力に参加していく積極的意思を表明しつつ、アドボカシーおよび研修活動のためのツールとしてのこのようなマニュアル(人権センターおよび犯罪防止・刑事司法部によって作成されたものを含む)の重要性を認めた。 225.これらの措置はいずれも、子どもの権利の効果的実現の確保にさらに資し、かつ、少年司法の分野で採択された国際基準に国内法が全面的に合致することを促進することにつながるはずである。 226.さらに、これまで述べてきたすべての措置は、子どもが常に人としての人間の尊厳に内在する権利の主体として捉えられること、および、子どもが主として被害者として捉えられること(性的搾取、児童買春および児童ポルノの状況に置かれている場合を含む)を確保するうえで役立つことになろう。子どもの刑事責任は、子どもが貧困および社会的排除に直面しなければならなかった状況を明確に除外した、客観的基準に基づいて判断されるべきである。 227.さらに、自由の剥奪、とくに未決拘禁は、けっして不法にまたは恣意的に用いられるべきではなく、かつ、他のすべての代替的解決策では不十分であることが証明された場合にのみ用いられるようにすることが求められる。すべての子どもは、自由を奪われた際、法的および他の適切な援助に速やかにアクセスする権利、および、その自由の剥奪の合法性を裁判所または他の公平なかつ独立の機関において争う権利が認められるべきである。子どものプライバシーを、犯罪記録およびメディアによって行なわれる可能性がある報道との関連も含めて、手続のあらゆる段階で全面的に尊重することが求められる。 228.同じ文脈で、福祉という名目のもと、子どもの最善の利益を正当に考慮することも条約で認められた基本的保障を確保することもなく行なわれる、子どもの施設措置についても懸念が表明された。このような基本的保障には、司法機関で措置決定について争う権利、子どもに対して行なわれる処遇および子どもの措置に関連する他のあらゆる事情について定期的に再審査される権利ならびに苦情申立ての権利が含まれる。 229.施設擁護に代わる措置の追求が促され、また子どものための施設で蔓延している透明性の欠如に終止符を打つために十分な措置をとることが求められた。これとの関連で、このような施設への定期的訪問およびこのような施設の効果的監視を(苦情が申し立てられている場合には当該苦情との関連も含めて)確保するための独立機構を国レベルおよび国際的レベルで発展させていくことを真剣に考慮するべきである旨、提案が行なわれた。とくに武力紛争の状況下で赤十字国際委員会が果たしている重要な役割、および、拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いおよび刑罰に関する条約の選択議定書の枠組みのなかで拘禁施設への定期訪問制度を導入すべく人権委員会が現在行なっている努力を想起しながら、参加者は、 国内独立機構が特段の関連性を有することを強調した。これとの関連で、裁判官が果たしうる役割、および、若者の権利および利益の尊重を確保するためのオンブズマンによる介入の重要性への言及もあった。 230.議論の際には、子どもの権利の効果的享受、ならびに、自尊心および尊厳を育む環境における子どもの再統合を確保するうえで、家族の役割が根本的重要性を有することが認められた。条約およびリャド・ガイドラインの双方に照らし、家族に対し、施設に措置された子どもとの接触をいっそう緊密かつ頻繁なものとすることおよび子どもの処遇について発言することが奨励されるべきである。子どものプログラムに対する家族の関与の度合いを高め、かつ自宅滞在のための子どもの一時外出を促進することを通じて、子どもの社会化を促進することが求められる。これとの関連で、少年司法の心理社会的影響についての調査研究が勧告された。 231.これとの関連で興味深い点として留意されたのは、伝統的制度においては、子どもの社会的再統合および子どもの積極的な社会参加の促進を確保するプロセスで、拡大家族を含む家族およびコミュニティが重視されていることである。このような制度は、家族のプライバシーが尊重されることを可能にするとともに、身柄拘束または体刑に代わる手段としての癒しおよび和解の措置の検討を奨励することにつながる。 232.したがって、この分野における調査研究が、条約およびその基本的価値観と全面的に両立する伝統的解決策を特定するために重要であると考えられる。このような解決策が特定の社会で広く共有されれば、子どもの権利の効果的実現に有用となる可能性がある。 233.一般的意見では、国際連合システムにおいて明らかに優先課題と位置づけられるようになった、少年司法の分野における国際協力の大きな関連性が強調された。 234.したがって、子どもの権利委員会、犯罪防止・刑事司法委員会および国際連合社会開発・人道問題センターの犯罪防止・刑事司法部、人権委員会ならびに人権センターの助言サービス・技術的援助・情報部をはじめとする関連機関は、調査研究、研修、普及および情報交換、現行の基準の実施および監視の分野でならびに具体的な技術的援助プログラムにおいて、いっそうの協力を進めるべきである。そのようにして初めて、刑事司法と人権との間にある本質的結びつきを明確な形で再確認しつつ、資源を合理的に使用し、活動を適切に整理し、かつプログラムの効率性を高めることが可能になる。このような理由から、これらの機関の一部の代表がテーマ別討議に参加してくれたのは歓迎されるところである。 235.条約の報告制度(締約国との間で持たれる対話および委員会が採択する総括所見を含む)は、技術的援助プログラムの包括的枠組みを確保するうえで決定的に重要であることが認識された。報告制度は、いずれかの特定の国の状況を明確に理解するための、また国際協力を助長し、かつ国内の能力および社会基盤を強化するための基礎となるものである。 236.委員会が締約国に対して行なう勧告は、調査研究、法改正および専門家集団の研修の分野における技術的援助プログラムの実施において、または身柄拘束措置に代わる手段を検討する際に、かつニーズ評価作業および評価手続にとって、特別な有用性を持つものとなりうる。 237.以上のあらゆる理由から、かつ子どもの権利条約がほぼすべての国によって批准されていることを踏まえ、少年司法の領域における国際的な協力および援助の分野で委員会が結節点となるのは自然なことであり、委員会はこの分野で触媒としての役割を果たしている。 238.このような精神にのっとり、委員会は、技術的協力の戦略およびそのために考えられるネットワークの設置について検討するために考えられた取り組みを歓迎した。委員会はさらに、人権高等弁務官の行動計画を踏まえ、またはこの目的のための独立機関の設置を通じて委員会に対するいっそうの援助を確保するために行なわれている提案も歓迎した。 更新履歴:ページ作成(2017年2月17日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/156.html
総括所見:ニュージーランド(第1回・1997年) 第2回(2003年)/第3回・第4回(2011年)/第5回(2016年)OPAC(2003年)/OPSC(2016年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.71 (1997年1月24日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1997年1月20日および21日に開かれた第363回会合~第365回会合(CRC/C/SR.363-365) においてニュージーランドの第1回報告書(CRC/C/28/Add.3) を検討し、以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、委員会のガイドラインにしたがって詳細な報告書を作成したこと、および、ニュージーランド政府が事前質問票(CRC/C/Q/NZ.1) に対する文書回答を提出したことについて、締約国に評価の意を表する。委員会は、報告書の検討の過程およびその後に代表団が提供した補足情報および締約国の代表団との建設的対話に、満足感とともに留意するものである。 B.積極的な側面 3.委員会は、従来の家族間暴力関連法に基づいて利用可能だったもの以上に家族間暴力の犠牲者の保護を強化した1995年家族間保護法が採択されたこと、および、とくに家族間保護制度に基づく保護が子どもに拡大されたことを歓迎する。 4.委員会は、子どもに関わる法律および政策の提案が子どもに与える影響を監視しかつ評価することがますます強調されるようになっていることに、興味深く留意する。とりわけ、委員会は、内閣に提出される新たな政策提案について具体的な監視および評価の手続が導入されたことを歓迎するものである。 5.委員会は、障害のある子どもの発達を促進し、かつその能力を最大限に高めることを目的とした、障害児を援助するために利用可能な支援サービスが幅広く存在することを歓迎する。 6.委員会は、1993年人権法の年齢差別規定が16歳以上の青年も対象とする形で適用されていること、および、人権委員会が子どもからの苦情を受け付けられることを歓迎する。 7.委員会は、条約第12条の重要な側面を実現するための手段として「青年議会」を開催するという締約国の取組みを歓迎する。 C.主要な懸念事項 8.委員会は、締約国が条約に対して付した留保が幅広い性質のものであり、そのことが条約の趣旨および目的との両立性に関して疑問を生ぜしめるものであることを、懸念する。さらに、委員会は、現在は主権国家ではなくかつ重要な側面において依然として自治領ではないトケラウ領に関して、締約国が条約の適用を拡張していないことを遺憾に思うものである。 9.委員会は、条約が対象とするすべての領域を網羅し、かつ条約の原則および規定を盛りこんだ総合的政策または行動計画が存在しないために、子どもの権利に対する締約国のアプローチがやや断片的になっているように思えることを、遺憾に思う。 10.委員会は、とくに重罪に関して子どもの責任を問いうる最低年齢および最低雇用年齢に関わって、関連の国内法が条約に基づく子どもの定義と一致していないことに、懸念とともに留意する。委員会はさらに、政府による各種の支援の受給資格に関して、さまざまな政府機関によって運用される立法のもとで幅広い年齢制限──必ずしも一貫していないように思える──が存在するように思えることに、懸念とともに留意するものである。 11.子どもおよびその家族に対する支援サービスの一部の供給が相当程度非政府組織に委譲されていることを興味深く受けとめながらも、委員会は、政府の支援を受けるそのようなサービスの質に関する最終的な責任は締約国──中央レベルであれ地方レベルであれ──に属するものであり、かつ、委譲されたプログラムは慎重な監視および評価を必要とすると考えるものである。これとの関連で、委員会はまた、そのような非政府組織への公的資金供与は彼らの独立性に関して疑問を生ぜしめることにも留意する。 12.委員会は、条約が対象とする領域を所掌するさまざまな政府部局の間ならびに中央および地方の公的機関との間の効果的な調整を確保するためにとられた措置が不十分であることに、懸念とともに留意する。委員会は、このことが、政府の行動を調整する中央の窓口が存在しない結果をもたらすのみならず、政府の行動が矛盾することにつながるのではないかと懸念するものである。 13.委員会は、子ども、とくにもっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子どもの状況に関する、子どもからの苦情の登録に関わるものも含めた細分化された統計的データおよびその他の情報を収集するための措置が不十分であることを懸念する。子どもの地位に関する質的および量的情報が存在しないことは、条約の実施の評価を困難にするものである。 14.条約第4条の実施に関して、委員会は、1980年代中盤からニュージーランドで進められた大規模な経済改革の過程が子どもおよびその家族への支援サービスのために利用可能な財源に影響を与えてきたこと、および、締約国の資源を最大限に用いることにより子どもがその経済的、社会的および文化的権利を享受できるようにするためにあらゆる必要な措置がとられていないことを、懸念する。 15.委員会は、ひとり親家庭の数が増えていることを遺憾に思い、かつ、この傾向により影響を受ける子どものニーズに取り組むための一貫した戦略を締約国が有していないことを懸念する。 16.委員会は、犯罪法第59条により、家庭において子どもに有形力を用いることが、それがその状況下で合理的なものであるかぎり認められていることに、懸念を表明する。さらに、委員会は、性的虐待を含む、家庭における不当な取扱いおよび虐待の問題、ならびにそのような不当な取扱いまたは虐待の犠牲になった子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合の問題に取り組むためにとられた措置が不十分であることに留意するものである。 17.委員会は、ニュージーランドにおいて青年の自殺率が高いことに深刻な懸念を表明する。 18.委員会は、福祉に関するほとんどの統計においてマオリ人口が非マオリ人口よりも相当に遅れていることに、懸念とともに留意する。このような統計は、この人口集団、とくにマオリの子どもの権利の享受を保護しかつ促進するためにとられた措置が不十分であることを反映するものである。 19.委員会は、児童労働、基本的な最低雇用年齢またはさまざまなタイプの仕事および労働条件に応じた一連の最低年齢の問題に取り組むための包括的な政策を締約国が有していないことに、遺憾の意とともに留意する。 20.委員会は、子どもを含む難民および庇護希望者に政府が提供している支援サービスが、UNHCRとの協定に基づき難民として受け入れられているか、または個人的な庇護申請の結果として締約国に滞在しているかにより異なるように思えることに、重大な関心を表明する。 D.提案および勧告 21.1993年6月に世界人権会議が採択し、かつ子どもの権利条約への留保を撤回するよう各国に促したウィーン宣言および行動計画の精神にしたがい、委員会は、締約国に対し、条約に対する留保を撤回するための措置をとるよう奨励したい。さらに、委員会は、ニュージーランドに対し、トケラウ領に関して条約の適用を拡張するよう奨励するものである。 22.委員会は、締約国が、条約の原則および規定を盛りこみ、かつ、政府によって供給されまたは資金提供されている支援サービスに携わるすべての者に対して指導を提供しうるような、子どもの権利に関わる包括的な政策声明を作成しかつ採択するよう提案する。 23.委員会は、政府が、既存の立法を条約の原則および規定に一致させる過程を追求するよう勧告する。これとの関連で、委員会は、きわめて深刻な犯罪の責任を問いうる最低年齢および最低雇用年齢を、優先課題として見直すよう提案するものである。 24.あらゆる政府の政策、行政上の運用および立法の見直しが、それらが1993年人権法と一致しているかどうかを決定するために進められていることに心強い思いを感じながらも、委員会は、これとは別にまたはこれを補足する形で、子どもに影響を与える政府の政策、行政上の運用および立法のあらゆる側面を、条約の原則および規定を考慮に入れながら見直すよう提案する。さらに、委員会は、子どもコミッショナー事務所を強化すること、および、同事務所の独立性を強化しかつ同事務所が議会に直接責任を負うようにするための措置をさらに考慮することを、提案するものである。 25.委員会は、条約が対象とするあらゆる領域およびあらゆる子どもの集団、とくに最も不利な立場に置かれている集団を扱うことを目的として、細分化された適切な指標の特定に優先的な注意を払いながら、苦情の登録の分野におけるものも含めてデータ収集システムをさらに見直すよう勧告する。 26.委員会は、条約第4条の実施に関して、予算配分に当たっては締約国の利用可能な資源を最大限に用いるべきことおよび子どもの経済的、社会的および文化的権利の実現を優先すべきこと、ならびに、最も不利な立場に置かれた集団に属する子どもに特段の注意を払うことを、勧告する。委員会はまた、ここ数年進められてきた経済改革の過程が、支援サービスのために利用可能な政府の財源への影響という観点から子どもおよびその家族にどのような影響を与えたかについて、かつ、失業および雇用条件の変化が子ども、青年およびその家族に対してどのような影響を与えたかについて、締約国が研究を行なうようにも勧告する。そのような研究の結論は、将来の行動に関する包括的な戦略を発展させるに当たって有益な出発点となりうるものである。 27.委員会は、ひとり親家庭が増加しているという傾向に照らしてひとり親家庭の顕著なニーズについて研究を行ない、かつ、このような子どもおよびその親に対して今後悪影響が出ることを避けるために、すでにとられている措置を補完するような措置をとるよう提案する。 28.委員会は、締約国が、青年の自殺の原因として可能性がある要因および最も危険だと思われる青年の特質についての研究を引き続き優先し、かつ、この悲劇的現象を減少させうる追加的な支援プログラムおよび介入プログラムを、精神保健、教育、雇用またはその他の分野のいずれの分野であれ導入するための措置を、現実的に可能なかぎり早期にとるよう提案する。これとの関連で、締約国は、やはりこの問題に取り組んできた経験を有しているかもしれない他国の政府および専門家に協力を呼びかけてもよいかもしれない。 29.委員会は、締約国が、あらゆる形態の身体的または精神的暴力、傷害または虐待を効果的に禁ずるために、家庭における子どもの体罰に関わる立法を見直すよう勧告する。委員会はさらに、条約第39条に照らし、そのような不当な取扱いおよび虐待の犠牲になった子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を確保するために適切な機構を設置するよう勧告するものである。 30.マオリ人口に関わる保健、教育および福祉の領域で政府が行なってきた努力には留意しながらも、委員会は、当局に対し、マオリの子どもとマオリ以外の子どもとの間に残っている格差を埋めるためのプログラムおよび活動を継続しかつ強化するよう奨励する。 31.委員会は、児童労働に関する政策および法律を見直し、かつ、締約国が、最低雇用年齢に関するILO第138号条約の批准を検討するよう勧告する。 32.委員会は、UNHCRが組織したスキームの枠外でニュージーランドにやって来た庇護希望者も含めて、難民であるあらゆる子どもが初期滞在援助および政府が供給するまたは資金援助する支援サービスの利益を受けられるようにするよう勧告する。 33.最後に、条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国によって提出された第1回報告書および文書回答を、関連の議事要録および委員会がここに採択した総括所見とともに刊行することを検討するよう勧告する。そのような文書は、政府、議会および関心のある非政府組織を含む一般公衆の間で条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起することを目的として、広く普及されるべきである。 更新履歴:ページ作成(2012年2月12日)。
https://w.atwiki.jp/akatonbowiki/pages/355.html
このページはこちらに移転しました 福島の人 作詞/尽(78スレ210) 作曲/にられば(作曲/nirareva)(78スレ252) 浜通り 中通り それから会津 天気予報は縦割り 会いに来いって気軽に言うけど あなた一体どこの人? 郡山や福島なら はやてに乗っていけるけど いわきだったら常磐線 会津だったらどうしよう エキソンパイに ままどおる 檸檬(れも)だって好きだけど かんのやゆべしも気になるし むぎせんべいは 外せない 果物王国福島 赤ベこがいる福島 喜多方ラーメン福島 会津の蕎麦福島 ららら 福島 広いぜ 福島 音源 福島の人(仮歌+オケ) (このページは旧wikiから転載されました)
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/128.html
総括所見:ナミビア(第1回・1994年) 第2回・第3回(2012年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.14(1994年2月7日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1994年1月13日に開かれた第109回および第110回会合(CRC/C/SR.109-110) においてナミビアの第1回報告書(CRC/C/3/Add.12) を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。 (注)1994年1月28日に開かれた第130回会合において。 A.序 2.委員会は、ナミビア政府が条約を批准したことを歓迎する。委員会はまた、締約国に対し、作成された報告書がとくに詳しくかつ包括的であること、および、代表団との対話が率直かつ建設的なものであったことに、評価の意を表したい。 B.積極的な側面 3.委員会は、同国に、子どもの状況を改善しようという政治的決意が存在することを歓迎する。委員会はまた、自己批判的な姿勢をとり、かつ、社会において子どもが直面する問題に対応するための創造的かつ革新的なアプローチを模索することに対して政府が前向きな姿勢を見せていることにも評価の意を表したい。委員会は以下の取り組みにとくに留意する。子ども自身も含めて、子どもの権利に関する公衆の意識をさらに促進するために行なわれた活動、子どもの権利を促進しかつ保護する努力における、地域、国および国際的コミュニティとの協力を奨励していること、「幼児期保護発達プログラム」、「ストリート・チルドレン」プログラム、学校における「内部からの規律プログラム」、および、青年評議会の発展である。最後の2つのプログラムに関して、委員会は、条約のさまざまな規定、とくに第12条を現実のものとするためにとりうる措置として、これらのプログラムの重要性を強調する。 4.委員会はまた、学校中退の水準を低下させる試みとしてより多く職業訓練校が設置されるべきであるとの提案に、関心を持って留意する。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 5.委員会は、ナミビアが、植民地支配、アパルトヘイトおよび戦争の結果に苦しんだすえに1990年に独立国となったことに留意する。委員会は、これらの要因が、貧困の問題とあいまって、条約の規定の実施を抑制する影響を与えてきたことを認識するものである。とくに、委員会は、国際文書およびナミビア憲法の規定に矛盾する独立前の期間の法律が残っていることに注意を促す。 D.主要な懸念事項 6.委員会は、ナミビアがまだすべての主要国際人権文書の締約国になっていないことを認め、かつ、子どもの権利条約の規定と一致させるために多くの国内法が依然として改正されなければならないことを懸念する。これとの関連で、委員会は、子どもの定義に関して国内法に矛盾があることに留意するものである。 7.委員会は、ジェンダーにもとづく差別、および婚外子およびとくに困難な状況にある子どもへの差別が相当に行なわれていることを懸念する。委員会はまた、障害児に対して行なわれている差別に懸念を表明するものである。 8.10代の妊娠、生計維持者がひとりの世帯の発生件数の多さ、および、親の共同責任に対する幅広い理解が親のあいだに欠けているように思えることなど、子どもの状況に否定的な影響または結果を及ぼす可能性のある一部の現象は、委員会の懸念するところである。 9.委員会はまた、教育の質の向上に関わる問題に留意する。 10.同様に、委員会は、児童労働、とくに農場およびインフォーマル部門における児童労働の発生件数、および、学校を中退する子どもの数の多さを含む、とくに困難な状況にある子どもの状況を懸念する。 11.ナミビアに現在設置されている少年司法制度に関して、委員会は、それが子どもの権利条約、とくに第37条および第40条、ならびに北京規則、リャド・ガイドラインおよび自由を奪われた少年の保護のための国際連合規則などの関連国際文書に一致しているかどうか、懸念する。 E.提案および勧告 12.委員会は、ナミビアがすべての主要国際人権文書の締約国になる可能性を考慮するよう勧告し、かつ、この点に関して国際連合人権センターに援助を要請してはどうかと提案する。 13.同様に、委員会は、締約国が、子どもの権利の実施のための国内法の枠組みおよび国内行動計画に子どもの権利条約を全面的に統合するよう提案する。さらに、委員会は、子どもの権利条約の原則および規定ならびに締約国との対話の過程で委員会が提示した所見を全面的に考慮にいれた新たな「子ども法」を早期に採択するよう勧告するものである。 14.子どもに関するものも含む人権侵害の苦情申立てを取り扱う権限を持ったオンブズマン事務所が設置されたことに満足感とともに留意しながらも、委員会は、締約国が、子どもの権利の実施に貢献する同事務所の努力を支援するために何らかのさらなる措置が必要とされているかどうかを判断する目的で、現在のオンブズマン事務所が子どもの権利を保護するために行なっている活動の評価を行なうよう提案する。 15.委員会は、子どもの権利の実施を向上させるための努力、とくに、女子、障害児および婚外子に対する差別を助長する可能性のある一部の伝統および慣習の悪影響を克服するための努力において、地域共同体の指導者が果たす重要な役割に留意する。委員会はまた、締約国に対し、子どもの権利を促進しかつ保護するための活動に市民社会および非政府組織を引き続き全面的に関与させるよう奨励するものである。 16.子どもの参加権および意見表明権の実施に関して、委員会は、締約国の次の報告書において、青年評議会および学校評議会の機能、および、子どもおよび青年が直面する問題に対応するための取り組みへのこのような機関の参加に関して、さらなる情報を受領したいと考えるものである。 17.委員会は、家庭状況において子どもが直面している問題、および、これらの問題に対応するためにソーシャルワーカーの訓練、家族計画に関する教育およびアルコール・薬物濫用センターの設置のようなプログラムを発展させる必要があることを、締約国がはっきりと認識していることに留意する。委員会はまた、家庭を背景として行なわれる性的虐待の問題に関して調査を行なうよう提案するものである。 18.教育問題に関して、委員会は、教育の質を向上させ、かつ、教員の間で子どもの権利に関する意識を高める機会を与えるために、学校教員にさらなる訓練を提供するための取り組みを発展させるよう奨励する。 19.委員会は、周縁化されたグループの子どもに関する研究を優先事項として行なうよう勧告する。 20.委員会は、締約国の少年司法制度は、子どもの権利条約第37条および第40条、ならびに北京規則、リャド・ガイドラインおよび自由を奪われた少年の保護のための国際連合規則を含むこの分野における関連の国際基準の規定にしたがって運営されるべきであるとの見解に立つものである。さらに、少年司法の運営に関する国際基準に関して、法執行官、裁判官、拘禁センターで働く職員および罪を犯した少年のカウンセラーを訓練するための措置をとることが提案される。委員会は、これらの勧告に照らして技術的援助プログラムの必要性を強調し、かつ、締約国に対し、これとの関連で〔国際連合〕人権センター、国際連合事務局犯罪防止刑事司法部およびユニセフとの協力を継続するよう奨励するものである。 21.委員会はまた、締約国が、児童労働の問題に関する政策および立法が子どもの権利条約および関連のILO条約の規定に一致することを確保するよう勧告する。 22.さらに、委員会は、締約国が、親の責任に関して公衆一般を教育し、かつ、これとの関連でカウンセリングを提供する可能性を検討するための措置およびプログラムを行なうよう提案する。加えて、委員会は、締約国が、子どもの権利条約についての意識をさらに普及する努力のなかで、締約国報告書、議事要録および委員会の総括所見を適切な手段により広く入手可能にするよう勧告するものである。 更新履歴:ページ作成(2011年12月19日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/142.html
総括所見:ロシア(第1回・1993年) 第2回(1999年)/第3回(2005年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.4(1993年2月18日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1993年1月21日および22日に開かれた第62回、第63回および第64回会合(CRC/C/SR.62-64)においてロシア連邦の第1回報告書(CRC/C/3/Add.5)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。 (注)1993年1月28日に開かれた第73回会合において。 A.序 2.委員会は、ロシア連邦の第1回報告書が時宜を得た形で提出されたこと、および、同報告書が率直に、自己批判的にかつ包括的に作成されたことに満足感を表明する。委員会は、報告書について議論するために高級レベルの代表団が派遣されてきたことに評価の意とともに留意するものである。このことは、ロシア連邦政府が条約上の義務を重視していることを示すものであり、かつ、代表団との対話の特徴であった開かれた、包括的なかつ建設的なアプローチにとって役立つものとなった。 B.積極的な側面 3.委員会は、条約で規定された権利の実施を阻害する問題を定義しかつ識別すること、およびそれらの問題に立ち向かう充分な解決策を模索することに対する政府の前向きな姿勢を心強く感ずる。この点に関して、委員会は、条約の適用を改善するための立法措置をにおける進展、および少年裁判所および家庭裁判所の設置の提案に、満足感とともに留意するものである。同様に、委員会は、子どもの権利の実施に責任を負うことへの地方および地域の公的機関の関与、子どもの権利を実施するためのプログラムへの非政府組織の参加、ソーシャルワーカーおよび子どもおよび家族に関連する問題に直接対応しているその他の職員の訓練、家族および両親の平等責任に関する重要性についての意識、および子どもの権利に関する情報の普及を発展させるためにとられた措置の重要性を認める。 4.委員会はまた、条約第4条に照らし、軍縮の経済効果の結果として子どものためにさらなる資源が配分されるようになったことに、満足感とともに留意する。 5.締約国が決定的な変革の時期にあること、および代表団によって提供された情報にかんがみ、委員会は、締約国が、子どものために積極的な変化を導入すること、および構造調整の時期にあって子どものニーズを考慮に入れた政策を引き続き追求することを重視していることを認識する。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 6.委員会は、社会変革および経済危機の情勢下で政治的移行期にあるロシア連邦が直面している困難を認識する。同様に、委員会は、子どもの権利の実施を妨げる一定の態度の残滓があることも認識するものである。その態度とは、とくに、子どものケアの施設中心主義、障害者および家族的責任の問題に関連している。 7.委員会は、代表団が挙げたさまざまな改革の重要性は認めながらも、新たな立法上のその他の変革およびその提案が子どもの状況に与える影響を現段階で評価することはできないことに留意する。 D.主要な懸念事項 8.委員会は、経済危機が子どもに与える影響を懸念する。これとの関連で、委員会は、条約第3条および第4条に照らし、経済改革の犠牲になることから子どもを保護するために充分かつ適切な措置がとられているかどうかをとくに懸念するものである。 9.委員会は、条約第2条に照らし、障害児のようなとくに傷つきやすくかつ不利な立場に置かれたグループの子どものニーズおよび状況に対して社会が充分に敏感ではないことを懸念する。 10.委員会は、ロシア連邦において家族生活に深刻な問題が生じていることが優先的な懸念領域であると考える。委員会は、子どもの遺棄、中絶、離婚率、養子縁組の件数、婚外子の数および扶養義務の回復との関連で家族文化の崩壊に向かう傾向があることに、特段の懸念をもって留意するものである。 11.同様に、委員会は、家庭環境を奪われた子どもが、とくに子どもが遺棄された場合および孤児となった場合に寄宿学校に施設措置される慣行を懸念する。 12.委員会は、予防接種プログラム、妊娠期間中のケアの水準、家族計画プログラムおよび地域のコミュニティ・ヘルスワーカーの訓練に関して締約国が直面している問題に懸念を表明する。委員会はまた、中絶が家族計画のひとつの方法であるかのように頻繁に利用されていることにも懸念を表明するものである。 13.条約第28条の実施に関して、委員会は、農村部における女子の状況に懸念を表明する。 14.委員会は、少年司法および刑務施設の状況が条約第37条と両立するかどうか、および、そのような状況下で、余暇および家族との接触に対する子どもの権利および子どもの最善の利益がどのように保護されるのかについて、懸念を表明する。委員会はまた、少年司法の運営の制度の現行の組織形態、および条約第37条および少年司法に関するその他の基準と両立しているかどうかについても懸念を表明するものである。 15.委員会は、子どもの間で犯罪率が高まっていること、および、子どもが性的搾取、薬物濫用およびアルコール嗜癖に関してとくに被害を受けやすい立場に置かれていることに、懸念とともに留意する。 E.提案および勧告 16.委員会は、構造調整の時期にあっては経済的変化が子どもに与える影響を定期的に監視することがとりわけ重要であることを勧告する。委員会はまた、子どもの権利のための立法上その他の措置の実施における政府の進展を追跡するための指標の特定および活用が適切であることを強調するものである。 17.委員会は、政府が、条約の実施およびその監視を調整する目的で国内委員会または類似の体制の設置を検討するよう提案する。委員会は、子どもの権利に関する活動の動員のため、地方その他の非政府組織に支援が与えられるべきことを勧告するものである。委員会はまた、子どもの権利の実施の改善のために態度を変えかつ態度に影響を与えるにあたり、非政府組織ならびに子どもグループおよび青少年グループの積極的な参加も勧告する。 18.委員会は、家族生活に関する教育を提供し、社会における家族の役割についての議論を組織し、かつ両親の平等責任についての意識を発展させるために、さらなる努力が行なわれるべきであると考える。 19.委員会は、里親託置のような、寄宿学校への施設措置に代わる手段を積極的に模索するよう勧告する。委員会はまた、社会援助、法律問題および教育を担当するワーカーのような、すべての施設の職員にさらなる訓練を行なうよう勧告するものである。そのような研修においては、子どもの尊厳の意識の促進および保護、ならびに子どもの放任および不当な取扱いの問題が強調されるべきである。子どもに対応する職員の継続的訓練を評価するための機構も必要とされる。 20.委員会は、とくに妊娠期間中のケア、性教育を含む保健教育、家族計画および予防接種プログラムの効果との関係で、プライマリー・ヘルスケアの制度を改善するよう勧告する。とくに予防接種プログラムに関わる問題に関して、委員会は、ワクチンの調達および製造への支援に関してめ国際協力を求めるよう提案するものである。 21.委員会は、家庭の内外で子どもに対して行なわれる不当な取扱いおよび残酷な行為の発生を懸念し、かつ、自己に対して行なわれた不当な取扱いまたは残酷な行為に関する子どもの苦情に対応する手続および機構を発展させるよう提案する。 22.刑法およびこの分野の立法を改正するためにとられている積極的な措置を考慮にいれ、委員会は、締約国が、少年司法の運営に関して包括的な司法改革を行ない、かつ、その改正にあたって「北京規則」、「リャド・ガイドライン」および自由を奪われた少年の保護に関する〔国際連合〕規則のようなこの分野の国際基準を指針とするよう勧告する。施設措置に代わるアプローチに関しては、条約第39条に沿って、社会復帰のための措置、心理的回復および社会的再統合に特段の注意が払われるべきである。 23.委員会はまた、法執行官、裁判官その他の司法運営に携わる職員の訓練の一部が少年司法に関する国際基準の理解に充てられるようにも提案する。 24.委員会は、子ども売買春と闘うためにより断固たる措置がとられなければならないことを強調する。たとえば警察は、そのような事件の捜査、および条約第39条に掲げられた規定を実施するためのプログラムの発展に高い優先順位を与えるべきである。 更新履歴:ページ作成(2011年1月12日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/197.html
総括所見:イラク(第1回・1998年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.94(1998年10月26日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1998年9月23日および24日に開かれた第482回~第484回会合(CRC/C/SR.482-484) においてイラクの第1回報告書(CRC/C/41/Add.3) を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。 (注)1998年10月9日に開かれた第505回会合において。 A.序 2.委員会は、締約国の第1回報告書および事前質問事項(CRC/C/Q/IRAQ/1) への文書回答の提出を歓迎する。委員会は、にもかかわらず、報告書が委員会によって定められたガイドラインにしたがっていないことを遺憾に思うものである。委員会は、締約国代表団との間に持った建設的対話および議論の過程で代表団から受け取った回答に留意する。 B.積極的な側面 3.委員会は、条約が締約国において自動執行力を有しており、かつその規定が裁判所において援用できることに留意する。 4.委員会は、子どものための国家的行動計画が作成されたことに留意するとともに、家族計画連盟および保健省によってリプロダクティブヘルスのためのプログラムが実施されていること、および、中央統計局内に母子部が設置されたことを歓迎する。委員会はまた、締約国において義務教育が導入されていることおよび非識字と闘うプログラムが開発されたことも歓迎するものである。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 5.経済的、社会的および文化的権利に関する委員会が採択した一般的意見8号(1997年)および差別防止および少数者保護に関する小委員会の決定1998/114に照らし、委員会は、安全保障理事会が科している禁輸措置によって経済および日常生活の多くの側面に悪影響が生じており、したがって締約国の住民、とくに子どもによる、生存、保健および教育に対する権利の全面的享受が阻害されていることに留意する。委員会はまた、現在、北部の領域が締約国当局の統治下にないことにも留意するものである。その結果、当該地域における子どもの権利条約の実施についての情報が存在しないことは、委員会の懸念の対象である。 D.主要な懸念事項および委員会の勧告 6.委員会は、締約国が条約の批准時に第14条1項に留保を付したことに、懸念とともに留意する。ウィーン宣言および行動計画(1993年)に照らし、委員会は、締約国に対し、留保を撤回の方向で見直す可能性を検討するよう奨励するものである。 7.締約国が立法上の枠組みを相当に発展させてきていることには留意しながらも、委員会は、条約の規定および原則が全面的に法律に反映されていないことをなお懸念する。委員会は、締約国が、たとえば条約との全面的両立性を確保する目的で子ども法を制定することにより、必要な場合に法改正プロセスに携わるためのあらゆる適切な措置をとるよう勧告するものである。 8.委員会は、条約が対象とするあらゆる領域において法執行を強化する必要があることを懸念する。委員会は、締約国が、十分なサービス、救済およびリハビリテーション・プログラムを通じて現行法の執行および実施を保障するような多くの政策およびプログラムを、適切な場合には国際協力の枠組みにおいて導入することを検討するよう、提案するものである。 9.条約の実施を担当する機関である子ども福祉庁が政府の最高レベルで支持を得ておりかつ大統領府に設置されていることには留意しながらも、委員会は、その権限が限られていることを依然として懸念する。委員会は、締約国が、同庁の予算配分額ならびに条約を実施するためのその権限および権威を増大させることにより、子ども福祉庁の強化に努めるよう勧告するものである。 10.プログラムおよび政策の調整に関して、委員会は、子どもとともにおよび子どものために活動しているさまざまな機関のあいだの調整が不十分であることを懸念する。委員会は、国および地域のレベルの双方で子どもの権利に関与しているさまざまな政府機関間の調整を強化するため締約国がさらなる措置をとること、および、子どもの権利の分野で活動している非政府組織とのより緊密な協力を確保するためさらなる努力を行なうことを、勧告するものである。 11.委員会は、条約に基づく権利の侵害に関する子どもからの苦情を登録しかつそれに対応する独立した機構が存在しないことに懸念を証明する。委員会は、その権利の侵害の苦情を処理しかつそのような侵害に対する救済を提供する独立した機構に子どもがアクセスできるようにすることを勧告するものである。 12.中央統計局内に母子部が設置されかつ拡大されたことには留意しながらも、委員会は、子どもに関わって達成された進展を監視しおよび評価しならびに子どもに関わってとられた政策の影響を評価することを目的として、あらゆる集団の子どもとの関連で、条約が対象とする領域に関する指標を発展させかつ細分化された量的および質的データを体系的に収集するための十分な措置がとられていないことを、なお懸念する。委員会は、条約が対象とするすべての領域を編入することを目的として、データ収集システムを見直すよう勧告するものである。そのようなシステムは、あらゆる子どもをその対象としつつ、虐待または不当な取扱いの被害を受けた子ども、働いている子ども、少年司法の運営の対象となった子ども、女子、ひとり親家庭の子どもおよび婚外子、遺棄されかつ(または)施設措置された子どもならびに障害のある子どもを含む、脆弱な立場に置かれた子どもをとくに重視するようなものであるべきである。委員会は、締約国が、そのようなデータ収集システムの発展に際してとくにユニセフの技術的援助を求めることを検討するよう、勧告する。 13.条約第4条に照らし、委員会は、子どものための予算資源を「利用可能な資源を最大限に用いて、かつ必要な場合には国際協力の枠組みのなかで」配分することに対して向けられた注意が不十分であることを懸念する。委員会は、締約国に対し、とくに条約第2条、第3条および第4条を考慮にいれて、子どもの経済的、社会的および文化的権利の保護を確保するための予算配分を優先するよう勧告するものである。これとの関連で、委員会はまた、締約国が都市部と農村部との間および諸県間の格差を解消するよう努めることも勧告する。 14.委員会は、専門家集団、子どもおよび公衆一般が条約およびその原則について十分に認識していないことに留意する。委員会は、条約の原則および規定がおとなおよび子どもの間で同様に広く知られかつ理解されることを確保するため、さらなる努力を行なうよう勧告するものである。これとの関連で、条約をあらゆるマイノリティの言語に翻訳するよう努力を行なうことが勧告される。委員会はまた、裁判官、弁護士、法執行官、軍の士官および兵員、教職員、学校管理者、心理学者を含む保健従事者、ソーシャルワーカー、中央または地方の行政職員ならびに子どもをケアする施設の職員のような、子どもとともにおよび子どものために働く専門家集団を対象として、子どもの権利に関する、かつ国際人権法および国際人道法の領域における、体系的な研修および再研修プログラムを組織することも勧告するものである。非政府組織、マスメディアおよび子ども自身を含む公衆一般を対象とした条約の原則および規定の体系的普及が強化されるべきである。委員会は、締約国が条約を学校および大学のカリキュラムに編入するよう提案する。これとの関連で、委員会はまた、締約国が、とくに国連人権高等弁務官事務所、国際赤十字委員会およびユニセフの技術的援助を求めることを検討するようにも、提案するものである。 15.条約の規定および原則、とくに子どもの最善の利益(第3条)ならびに生命、生存および発達に対する権利(第6条)の両原則に照らし、委員会は、軍隊への志願入隊に関する法定最低年齢が低いことを深く懸念する。委員会は、締約国が、国際人権法および国際人道法に照らし、軍隊への志願入隊に関する法定最低年齢を引き上げるよう勧告するものである。 16.委員会は、締約国が、子どもに関わる立法、行政上および司法上の決定または政策およびプログラムにおいて、条約の規定、とくに第2条(差別の禁止)、第3条(子どもの最善の利益)、第6条(生命、生存および発達への権利)および第12条(子どもの意見の尊重)に反映された一般原則を全面的に考慮にいれていないように思えることに、懸念を表明したい。条約の一般原則が、政策および意思決定の指針となり、かつ、あらゆる法改正ならびに司法上および行政上の決定、ならびに、子どもに影響を与えるあらゆる事業およびプログラムの開発および実施において適切に反映されることを確保するため、さらなる努力が行なわれなければならないというのが委員会の見解である。 17.委員会は、締約国で主流となっている福祉政策および福祉実務が、条約に掲げられた権利基盤アプローチを十分に反映していないことを懸念する。これとの関連で、委員会はまた、差別の禁止の原則(第2条)が憲法その他の国内法に反映されていることに留意するものである。しかしながら委員会は、国民的または民族的出身、政治的その他の意見および障害に基づく差別が国内法において明示的に禁じられていないことを懸念する。イラクの立法は性別に基づく差別を禁じているが、委員会は、実際には、とくに相続権および教育への権利に関して男女間になお格差があることを懸念するものである。委員会は、締約国に対し、社会のあらゆるレベルで差別の禁止を確保しかつ男女平等を奨励するため、立法措置を含むあらゆる適切な措置をとるよう奨励する。これとの関連で、委員会はさらに、とくに農村部における女子の就学を確保し、かつとくに義務教育期間における女子の脱落率を減少させるため、追加的な措置をとるよう勧告するものである。 18.委員会は、子どもの参加権に関して懸念を表明する。委員会は、締約国に対し、条約の促進および実施において積極的な役割を果たすことを子どもに奨励するよう、促すものである。委員会は、イラク学生青年全国連盟のような非政府組織が条約の促進においてより重要な役割を与えられるよう提案する。 19.委員会はさらに、市民権に関する締約国の立法に照らし、子どもは父が知れない場合または無国籍である場合を除いてイラク人である父の国籍しか取得できないことを、懸念する。委員会は、イラク国籍の取得が条約の規定および原則、とくに第2条、第3条および第7条に照らして決定されることを保障するため、国内法を改正するよう勧告するものである。 20.条約第19条に照らし、委員会は、体罰が国内法で明示的に禁じられていないことに懸念を表明する。委員会は、締約国が、社会のあらゆるレベルで体罰を禁止することを目的として、立法措置も含むあらゆる適切な措置をとるよう勧告するものである。委員会はまた、代替的形態のしつけおよび規律の維持が、子どもの人間の尊厳に一致する方法で、かつ条約、とくに第28条2項にしたがって行なわれることを確保するため、意識啓発キャンペーンを行なうことも提案する。 21.委員会は、家庭の内外における不当な取扱いおよび虐待(性的虐待を含む)について意識が不十分であり、情報が欠如しておりかつ社会の態度に問題があること、法的保護措置が不十分であること、適切な資源が財政的にも人的にも不十分であること、および、そのような虐待を防止しかつそれと闘うための十分な訓練を受けた人材が存在しないことを、懸念する。条約第19条に照らし、委員会は、締約国が、不当な取扱いおよび虐待に関する研究を行ない、かつ、とくに伝統的な態度を変えることを目的として十分な措置および政策を採択するよう勧告するものである。また、家庭内の性的虐待を含む子どもの虐待および不当な取扱いの事件が適切に調査され、加害者に対して制裁が科され、かつ、子どものプライバシーへの権利の保護を正当に考慮しつつそのような事件において行なわれた決定を広報することも、勧告されるところである。法的手続において子どもに支援サービスを提供すること、条約第39条にしたがい、強姦、虐待、ネグレクト、不当な取扱い、暴力または搾取の被害者が身体的および心理的に回復しかつ社会的に再統合できるようにすること、および、被害者が犯罪者として取り扱われかつスティグマ(烙印)を付与されることを防止することを確保するため、さらなる措置がとられるべきである。 22.委員会は、子どもの健康状況が悪化していること、とくに乳幼児死亡率が高くかつ上昇していることおよび栄養不良が長期的かつ深刻であることに、重大な懸念とともに留意する。このような状況は、母乳育児の貧弱な実践および共通小児疾病によってさらに悪化している。委員会は、締約国に対し、母乳育児の実践を促進しかつ向上させるための包括的政策およびプログラムを発展させること、とくに脆弱なおよび不利な立場に置かれた子どもの栄養不良を防止しかつこれと闘うこと、ならびに、小児疾病統合管理および子どもの健康の向上のためのその他の措置に関してとくにユニセフおよびWHOから技術的援助を受けることを検討するよう、奨励するものである。 23.委員会は、10代の妊娠、中絶、自殺、暴力および有害物質の濫用に関するものも含め、青少年の健康に関するデータが存在しないことをとくに懸念する。委員会は、締約国が、青少年の健康に関する政策ならびにリプロダクティブヘルスに関する教育およびカウンセリング・サービスの強化を促進するよう勧告するものである。委員会はさらに、青少年の健康上の問題に関して包括的かつ学際的な研究を行なうよう提案する。委員会はまた、青少年のための、子どもにやさしい予防、ケアおよびリハビリテーションの便益を発展させるため、財政的にも人的にもさらなる努力を行なうようにも勧告するものである。 24.委員会は、子どもも含む障害者のための施設およびサービスの利用可能性に関して懸念を表明する。障害者の機会均等化に関する基準規則(総会決議48/96)に照らし、委員会は、締約国が、障害を予防するための早期発見プログラムを発展させ、障害児の施設措置に代わる措置を実施し、障害児に対する差別を減少させるための意識啓発キャンペーンを構想し、障害児のための特別教育プログラムを確立し、かつ、普通学校制度および社会へのそのインクルージョンを奨励するよう、勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、親ならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門職員の訓練のための技術的協力を求めるよう勧告する。この目的のため、とくにユニセフおよびWHOからの国際協力を求めることも可能である。 25.締約国における最近の経済状況に照らし、委員会はまた、労働に従事するため時期尚早にも関わらず退学する子ども、とくに女子の人数が多いことも懸念する。委員会は、教育へのアクセスを平等にし、子ども、とくに女子に対して学校に留まるよう奨励し、かつ早期に労働力に加わることを抑制するため、あらゆる適切な措置をとるよう勧告するものである。 26.委員会は、子どもの経済的搾取がここ数年で劇的に増加したこと、および、自分自身および家族を支える目的で働くためにときには幼くして退学する子どもの数が増えていることに、懸念とともに留意する。これとの関連で、委員会はまた、義務教育が修了する年齢(12歳)と就業に関する法定最低年齢(15歳)との間に乖離が存在することも懸念するものである。委員会は、問題の原因および規模を特定するため、締約国における児童労働(危険な労働への子どもの参加も含む)に関わる状況について調査を行なうよう勧告する。子どもを経済的搾取から保護する立法は、インフォーマル労働部門も対象とすべきである。委員会はさらに、締約国が、義務教育が修了する年齢を引き上げて法定最低就業年齢と一致させることを検討するよう提案する。 27.委員会は、路上で暮らしかつ(または)働いている子どもの状況に、とくにそれが経済的および性的搾取に関わるがゆえに、懸念とともに留意する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、防止措置ならびにこのような子どものリハビリテーションおよび再統合を確保するための努力を増大させるよう奨励するものである。 28.締約国が行なっている努力は考慮にいれながらも、委員会は、地雷に関わる状況および地雷が子どもの生存および発達に対してもたらしている脅威に、懸念とともに留意する。委員会は、地雷の危険性について親、子どもおよび公衆一般を教育すること、および、地雷の被害者のためのリハビリテーション・プログラムを実施することの重要性を強調するものである。委員会は、締約国が、国連諸機関からのものも含む国際協力の枠組みのなかで、地雷に関わる状況を再検討するよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、対人地雷の使用、貯蔵、生産および移譲の禁止ならびに廃棄に関する条約(1997年)に加盟するよう提案するものである。 29.委員会は、少年司法の運営に関わる状況について、かつ、とくにそれが条約および他の関連の国連基準と両立しないことについて、懸念する。委員会は、締約国が、条約、とくに第37条、第40条および第39条、ならびに少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護のための国連規則のようなこの分野の他の国連基準の精神にのっとり、少年司法制度を改革するために追加的な措置をとることを検討するよう勧告するものである。自由の剥奪は最後の手段としてかつ可能なもっとも短い期間でのみ考慮すること、自由を奪われた子どもの権利を保護すること、法の適正手続ならびに司法の完全な独立および公平性に対し、特段の注意を払うことが求められる。少年司法制度に関与する専門家を対象として、関連の国際基準に関する研修プログラムが組織されるべきである。委員会は、締約国が、少年司法における技術的助言および援助に関する調整委員会を通じ、とくに国連人権高等弁務官事務所、国際犯罪防止センター、少年司法国際ネットワークおよびユニセフの技術的援助を求めることを検討するよう、提案する。 30.最後に、委員会は、条約第44条6項に照らし、締約国が提出した第1回報告書および文書回答を公衆一般が広く利用できるようにし、かつ、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう勧告する。そのような文書は、政府および関心のある非政府組織を含む公衆一般のあいだで条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。 更新履歴:ページ作成(2012年5月28日)。