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「さあ起きるのだアイスよ…今日も1日頑張るのだぞ」 「……むにゃ、はいDIO様…」 部屋に設置された目覚まし時計から響き渡るDIOの声を聴きヴァニラ・アイスは目を覚ました。 毎日DIOの声で起こされ始まる1日はなんとも心地が良く 穏やかで安心感を覚え元気を与えてくれるのだ。 ついでにこの目覚まし時計はにとりに金を払い DIOの声を盗聴し加工し繋ぎ合わせて作られた特注品だ。 まだ眠気はあるが遅刻をしたら大事なのでDIO型抱き枕から離れると早速着替える。 部屋から出る前に写真立てに写るDIOの写真に口付けをするのは日課である。 今日もDIOは紅魔館へ遊びに行く日でありヴァニラはその護衛として付いていくのである。 「あの小娘共がDIO様に色目を使わぬよう監視せねばならん」 ヴァニラにとってDIOと紅魔館の少女達が親密な関係になっているのが非常に不愉快であり 特にレミリア・スカーレットに対して深い嫉妬を感じている程である。 「今日は負けないわよDIO」 「フフフ、そう簡単に勝てるとは思わない事だ」 紅魔館に来てさっそくゲームで白熱するDIOとレミリア その傍では十六夜咲夜とヴァニラが主を見守る。 (うむ、今回は普通にゲームをしているだけでDIO様に何かふしだらな行為はする様子は無いな) ヴァニラは眼光を光らせしっかりと監視中である。 「ねえヴァニラそんなピリピリしないで紅茶でも飲んだら?」 「……そうだな、有り難く頂こう」 特に今の所は警戒する必要が無いと判断したヴァニラは一息付く事にする。 用意された紅茶のカップに手を付け匂いを嗅ぐと芳醇な香りが花の中に入り込んでくる。 ヴァニラにとって咲夜の淹れる紅茶は紅魔館で唯一評価出来るほど美味である。 香りを楽しみ紅茶を口に付けようとしたその時 ドタドタドタ、バタンッ! 廊下からこちらに走ってくる音が聞こえ扉が開かれた。 「DIO~!あーそーぼー♪」 元気な声が響き渡ると同時にDIOの背中に抱き付く少女がいた。 「ッッッ!?」 ヴァニラの嫉妬心上昇中しギロリと少女を睨み付ける。 その少女の名はフランドール・スカーレット、レミリア・スカーレットの妹である。 (落ち着け!落ち着くのだ私よ、まだキレる時では無い) ヴァニラは必死に自制心を保とうと怒りを耐える。 (とりあえず紅茶を飲んで落ち着こう) 「ね~ね~DIO~、お姉様とばかり遊ばないで私と遊んでよお」 「そうかそうか、ではフランもスマブラで勝負しようか」 「う~ん、私は体を動かす方が好きだから……Hしよ♪」 「ブブウウウゥ!!!」 ヴァニラの口から紅茶が噴水の様に噴射された。 「すまないがフラン、これからレミリアと大事な相談があるので今はあまり激しい行為は控えたんだよ」 「え~、最近お姉様ばかりで全然私と遊んでくれないよね…前はお姉様と三人でHしてたのに…」 「ぐはあッ!」 あまりのショックでヴァニラが血を吐いた! 「くぉの吸血鬼姉妹がァーッ!DIO様にそんな事をしていたのかッ!」 「だって弾幕ごっこよりHの方が激しくて気持ちいいし~」 「私はそんなにしないわよ、運動不足にならないように時々DIOに付き合ってもらってるけど」 「よくもそんなぬけぬけとォーッ!」 「少しは落ち着け、アイスよ」 「ですがしかし……分かりました」 過去にDIOによって頭を冷やされた経験があってか冷静になり引き下がる。 「ねえDIO、最近してなくて体がうずいて寂しいのお、お願い激しくしてえ!」 フランの顔は紅潮し息を荒くし空な目でDIOを見上げる。 「最後に顔にかけたDIOのアレ…驚いたけどとっても濃くて美味しかったから ……今度は私のお口の中で…直接ドピュドピュ出して欲しいのお……」 「おいおいフラン、私のズボンを引っ張らないでくれないか」 「もしかして私みたいなHな娘は嫌いになっちゃったの?」 フランは悲しげな目をDIOに向ける。 「そんな事は無いさフランよ、私にとって君はとても魅力的な娘さ」 「良かった…じゃあ私と」プッツン!ヴァニラの中で何かが切れた。 「いい加減にしろフラン!Hがしたければそこらの人間とヤっていろ!」 「人間じゃ駄目なのぉ…Hしたらすぐ壊れちゃうしDIOみたいにタフな人じゃなきゃつまらないよ…」 (どれだけ精力旺盛なんだこの小娘は…) 「だがDIO様とは「ツマラナイ」…?」 「ツマラナイ…ツマラナイ…人間相手ジャツマラナイクダラナイ ウバイアイコロシアイソウシテ自滅シロ自滅シロ、ツマラナイナラ自滅シロ!」 気がふれているのか目を赤くして何かを叫びながら泣くフラン。 「駄目よフランを泣かしたら、手が付けられないわよ」 「アイスよ…責任をとって私の代わりにフランとHをするのだ」 「え?ヴァニラが私としてくれるの?」 (なん……だと……?私がDIO様以外の奴に貞操を捧げるなど…しかしDIO様の顔に泥を塗るわけには) 「ああ……代わりに私が相手になろう…」 「本当!?嬉しい…それとね」 フランは喜びに目を見開いた! 「HはHでも『HELL』の方だけどねぇぇぇーッ!」 フランの手のひらから次々と繰り出される光弾がヴァニラを埋め尽くす。 「な…なんだとぉぉぉーッ!?」 反射的に体が動き間一髪で回避に成功し光弾が通り過ぎると爆音が鳴り響き壁に穴が開く。 「そう簡単に壊れないでねえーッ!もっともっと楽しませてよォーッ!」 フランは攻撃を止める事無く次々と光弾を撃ち続ける。 「ちぃッ!不意を突かれたが我が亜空間の前では無意味な攻撃よ」 ヴァニラはスタンドの中に入り込み光弾を次々と飲み込む。 「あれ?消え…痛ッ!」ガオン! ヴァニラの姿が消えたと思いきやフランの右足の一部が消滅しバランスを崩す。 「アハ、ハハハハ楽しい…楽しいよー!私に傷を付けられるなんてねえッ!」 「ちょっとフラン、ヤるなら外に出てから…」 「……駄目だ、フランもアイスも話を聞いていないようだ」 「仕方ないわね…咲夜、図書館に行ってパチェの避難をお願い」 「分かりましたお嬢様」 「さてレミリアよ私達も巻き添えを受けぬ内に避難するとしようか」 DIOとレミリアが避難している中、フランとヴァニラの激しい攻防は続く。 「ドッカンドッカンついてーるードッカンドッカンぱーらだいす!」 「糞ッ!手足を削りとっても片っ端から再生するとはッ!」 「五臓六腑がー弾け飛ぶよごーごーHELLだー!」 「歌いながら戦うとは余裕のつもりか?仕方ない紅魔館ごとばらまいてやるッ!」 ガオンガオンガオンガオンガオンガオンガオンーッ!!! 所変わり二人の激しい戦いの衝撃音が響き渡る大図書館では本がパタパタと落ちていた。 「騒がしいわ……レミィ達がまた何かやらかしたわね」 パチュリーは読んでいた本を置きレミリアの元へ様子を見ようと立ち上がる。 「パチュリー様危ない!」 小悪魔の声を聴き上を見上げると瓦礫がパチュリーに向かって崩れ落ちてくる事に気づく。 (詠唱が……間に合わない) 「無性にハッスル!」咲夜の能力によって時の流れを遅くし斬撃によって瓦礫が粉砕される。 「大丈夫ですかパチュリー様?早く避難を」 「ありがとう、助かったわ咲夜」 パチュリー達を救出した時にはヴァニラの念入りな亜空攻撃によって 紅魔館がまるでチーズのように穴だらけになっていた。 「どうだ?これなら流石に消滅した筈…「つーかまーえたー!そおいッ!」 ヴァニラがスタンドから顔を出した途端フランに捕まれ引きずり出される。 「ハアハア……今のは効いたよ……危うく消えかけたん……だから」 フランの下半身が消滅し上半身もあれこれ削られ息が絶え絶えになっている。 「だけど…私の勝ちよ、貴方とは視えてる物が違うんだから」 フランの目が妖しく光ると右手を上げ握り締める。 「ギュッとしてどか~ん!」 「コノメニウッ!?」 それだけの動作によってヴァニラの体内が爆発し吹き飛ぶ。 「理解した?これが物を壊すと言うことよ」「ぐ……まだだ……この程度の攻撃で……倒れる訳には……行かないッ!」 既にヴァニラは戦闘をする程の力は残っていない。 だがその圧倒的な執念のみで立ち上がりフランを見下ろす。 「アハハ!私の能力で壊されたのにまだ動けるんだ~」 (既に下半身が再生仕切ってるだと?ならば今度こそ全身を粉微塵にしてやるッ!) 「ザ・ワールド、時よ止まれッ!」 二人が再び衝突しようとするも気が付けばお互い離れた位置で立っていた。 「やれやれ様子を見てみれば、このままでは本当にどちらかが死んでしまうぞ」 「お互いもう少し加減を覚えるべきね」 いつの間にかヴァニラとフランの間にDIOとレミリアが佇んでいた。 「だって~つい夢中になっちゃったんだもん」 フランは既に傷が完治しすっきりした顔を見せている。 「おいフラン!もしかしてDIO様とHをしたと言うのは……」 「うん!殺し合いをしてたんだよ」 「フランの破壊衝動を発散するには弾幕ごっこより効果的だからDIOに協力してもらったのよ」 (なんと紛らわしい事を……もしかして確信犯なのか?) 「DIOは凄い強くてとっても面白かったよ!お姉様と同時に戦えてたしね」 「いやいや流石に二人がかりでは私もどうしようも無かったよ」 「よく言うわね、貴方はスタンドを使うから実質二対二みたいなものじゃない」 「ではDIO様、フランの顔にかけたのは一体?」 「あれは血の目潰しだよフランの能力を妨害する為に使ったのだよ」 「DIOの血はとっても美味しかったよ~」 (だったら初めに血と言わんかい!フランめ…) 「……それより流石にこれはやり過ぎね」 レミリアは既に半壊状態の紅魔館を見つつDIOに視線を送る。 「私の館を壊した責任取ってもらうんだからね」 「フフフ、お安いご用さ、物なんていつか壊れる物だし直せば済む事だ、それよりも」 DIOが眺めた先にはフランは楽しそうにヴァニラとお話する姿があった。 「DIOだけじゃなくてヴァニラも凄い強かったんだね!」 「フンッ!まあな……」 「ねえヴァニラ、私とお友達にならない?私と本気で遊べるお友達があまりいないからさ……」 寂しそうな目で見つめるフラン、横をちらっと見ると 「構わん、友達になれ」と言わんばかりに見つめるDIOに 「私の妹を悲しませたら許さないわよ」と言わんばかりに見つめるレミリアがいる。 これは断る訳にはいかないだろう、そうヴァニラは判断する。 「ああ、良いだろう友達になろうフラン」 「わあ~い良かったあ!また新しいお友達が増えた~」 「こうやって君の妹が幸せな毎日を送っている事の方が私に取っては良い事なのだよ」 「そう…DIOは私達にとても親切にしてくれて感謝しているわ」 「なに、困った時はお互い様さレミリアよ、そうだ今回頼みたい事があってね」 「私に出来る事なら何でも協力するわよDIO」 「ではこの駄馬なんだが明日のレースで優勝に導く事は出来るか?」 「人間の家畜の運命ごとき操るのは容易い事よ」 「それは助かるよ、ではこれとこれとあとその馬もお願いするよ」 「いいわ全部優勝させれば良いのよね」 「フフフ助かるよ君みたいな親友を持った事をとても誇りに思うよ」 「それは私も同じよ、貴方にお菓子やゲームを毎日提供してくれて助かってるわ」 今回紅魔館はかなりの損傷を受けたがレミリアにとって本心では腹を立ててはいない。 何故ならばそれ以上に大切な物がより多く手に入ったからだ。 フランには新しい友達が出来てレミリアはよりDIOとより親密な関係を得られたのだ。 本当に大切な物は愛や友情や絆なのだと私は思う。 皆も友達は大切にしようね
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一 バァン! 「やべえよやべえよ……ライト点けてなかったから……」 「か、カッキーくん……」 「こ、これ、事故だよな? オレ、アクセル踏んでねえよ。」 「柿沼! しっかりしろ!」 「はい助けます!」 柿沼直樹は竜宮レナに一喝されて慌てて軽トラの運転席から転がり出た。車の前に行き死体を確かめに行く。無免許運転で人を跳ねる、中学生でもこれはヤバい。下手したら少年院だ。いや下手しなくてもだ。どう考えても死ぬスピードで跳ねてしまったが、一縷の望みをかけて車の前方を探す。 「な、無い……まさか……」 車で跳ねたなら死体は車の前方にあるはず。 なのに死体が車の前に無い。 ということは、死体は車の下に…… 「は、跳ねただけじゃなくて轢いちまったのか……? こ、これもう確実に……」 「柿沼、柿沼!」 「は、はい!」 「見て、あれ。」 車のライトを点けてから続けて出てきたレナに呼びかけながらビンタされ、柿沼は文字通り飛び上がった。着地と同時にレナの方を向く。そして彼女が指差す方を見る。それはつい今まで見ていた車、の下だ。 「浮いてる……竜宮、なんか車……」 「……たぶん、下に。」 もうおしまいだ、柿沼は膝をついた。 まだ跳ねただけならワンチャン助かるかもしれなかったが、軽トラの後輪が地面から浮いてるってことはこれもう完全に轢いている。これは助からない。 柿沼は落涙した。涙と共に溢れてくるのは、これまでの思い出だ。特に中学、思えばたくさん馬鹿をやった。中一の夏休みにはクラスの男子たちと解放区を作ろうとして一人だけ身代金目的で誘拐されたり、その後も捕まったり拉致られたり、なんかそういえば自分一人だけ割り食う話が多かった気がする。でも楽しい思い出だ。 だがそんな青春ももうおわ「か、柿沼! あれ!」ちょっと今回想シーンなんだけどうわあああなんだあっ!?」 「イッテえ……なあ!」 く、車が持ち上がってるっ!!! なにあれ! 白い道着なの? 背中に悪って、悪って書いてある道着の人が車持ち上げてるぅー!? ねえなにあれ! 竜宮なにあれ! 怖いよぉ! 「あれは……オヤシロ様!?」 「え、あれが!?」 どう見てもチンピラなんだけど! 死んだはずのチンピラがゾンビになって車持ち上げてんだけど! 「勝手に殺してんじゃねえ! てか誰がチンピラだ!」 「痛いッス!?」 げ、ゲンコツ!? 二 それからしばらくして。 「つまり、お前らもあのウサギモドキにはなんも心当たりがないってことか。」 跳ねて轢いたはずなのに超ピンピンしてる相楽左之助に、コンビニのイートインで柿沼とレナは尋問という名の情報交換をされていた。 元々スタート地点が開業医の産婦人科だった柿沼は、110番したり家にかけたりしたが繋がらなかったこと。しょうがないので医院内の『アイテム』を『ひろう』して警察署に逃げ込もうと考えていたところ、同じように警察署を目指していたレナに捕まったこと。捕まり馴れていたもあって下手な抵抗はしなかったためになんとかレナに同行を認めてもらったこと。警察署まで距離があるので医院の軽トラを使おうと言い出し、無免許運転で案の定左之助を跳ねたこと。全てを包み隠さず話した。 「お前全部話すな。ふつうごまかしたりするもんだぞ。」 「こういうのごまかしてもヤバイことになるだけなんでマジで全部話しますよ。」 あまりに何もかも話す柿沼に呆れる左之助に柿沼はヘコヘコしながら話す。なんなら揉み手でもしかねないほどだが、なぜ運転できないのに車を使おうなどと言い出したかというと仲間が同じように巻き込まれているかもしれないから法律など無視して急いで探したかったから、とまでは言わなかった。左之助もそのあたりは察しがついたが何も言わなかった。 そもそもさっきの事故は、一応信号は守っていた柿沼の運転する軽トラに赤信号などわからず左之助が突っ込んできて起こったものだ。というのも、左之助も柿沼と同じように仲間がこの街にいる可能性を考えてひたすらに走り回っていたからである。まさか緑になったから走り出して直ぐに人が猛スピードで横切るなどとは思わず柿沼はさっきのテンパリ具合になった、というわけである。 なので左之助としても少々バツの悪い部分がある。それもあって柿沼から話を聞き終えると直ぐ様に柱に預けていた背を離し、店から出ていこうとした。 「ちょっと、どこ行く気ですか?」 「もう聞きたいことは聞いた、お前らはどっかに隠れてろ。」 正気か?と柿沼は思った。たしかに、轢かれたとは思えないほど元気ではある。が、その頭はスピリタスをかけて消毒したあとに生理用ナプキンで止血という無茶苦茶な状態である。色んな意味で病院に行ったほうがいいだろう。 だがズンズンと歩きながら、悪一文字の背中から話された言葉に、柿沼は返す言葉が無かった。 ほんの僅かな間話しただけでも、漢としての格の差を感じて、とても止められる言葉など思いつかなかったのだ。それは彼の仲間である安永に感じるものを100倍にして更に100倍、つまり10000倍にしたような感じだ。強さ、というか、タフさ、というべきか、とにかくそういうものがある。背中で語る漢っぷりを前に、柿沼の足は竦んだ。 「ねえ、このまま相楽さんと離れちゃ駄目だよ。」 うっ、と柿沼は喉を鳴らした。レナの言うことはわかる。この殺し合いの場で出会った殺し合いを良しとしない人。仲間の為に何処とも知れない街を駆け回り、車に跳ねられてもへっちゃらの男は、二人にとって極めて頼りになる人間だ。全員仲間を探しているし協力できることも多いだろう。 だが柿沼は言葉を持たない。 「カッキーくんの家はお医者さんなんだよね。最初にいた場所も病院って言ってたし、おわびに手当てをしたいって言うのはどうかな? かな?」 持たされた。これ言わなきゃまたレナパン喰らうやつじゃん…… 下手に手際よく左之助の止血をしたのが仇になったか、ナプキンを止血に使うという産婦人科医知識が仇になったか、ふだんほとんど活かされずたまに役立ったと思えば妊娠した先輩を周りに秘密で中絶させるのに自分が孕ませたと嘘をつくとか、そんなの感じてしか発揮されない医者の息子という立場が使い物になるタイミングが来てしまった。 柿沼は半ばヤケになって左之助を追いかけた。 三 「ねえ、この音なにかな? かな?」 「ああ、AEDの音だな。AEDの音じゃん!?」 「なんだそれ?」 なんとか左之助を説得し最終的にほとんど土下座までして元いた医院に行くことになった三人の元にそのアラートが聞こえてきたのは、医院の駐車場に車を停めようとしたあたりのことだった。 「ほら、あの……心臓止まった時に使う、アレです。」 「なんでそんなあやふやなんだよ。」 「説明難しいんですよ。ああいうのってあらためて話そうとすると困るよな? なあ竜宮。」 「えーと、そのAEDって、お医者さんが使う物だよね?」 「いや医者じゃなくても使えるよ。使い方音声ガイドで流れるから小学生でもできるらしいって。え、二人とも知らないの?」 「東京って進んでるんだね。」 「ま、諏訪には無かったな。」 「あ、長野とかあっちの方はあんま無いのか。まあこっちだと病院とかの入り口ら辺にはだいたいあるんですよ。」 なお、柿沼はレナが昭和で左之助が明治の人間だということに全く気がついていなかった。レナは可愛くていい匂いがするという所にしか目が行っていないし、左之助に関しては車ドンしてしまった以上それどころではない。 「心臓が、心室細動、えっと、とにかく止まりかけてる時に使うとなんかいい感じです。あの音が鳴ってるときはケースに入ってるAEDを開けたときなんで、たぶん誰かが使ってるか、じゃなきゃ間違えて開けちゃったんじゃないですか。」 「待って。」 駐車して降りながら柿沼がそういって降りようとしたところで、助手席のレナが手を伸ばしてシートベルトを外そうとした柿沼の手を止めた。同時に荷台に乗っていた左之助も地面に降り鋭い目つきを医院へと向ける。 「それってあの病院に誰かがいるってことだよね?」 「いつから鳴ってるかはわかんないから今いるかはわかんないけれど、まあ、そうなるな。」 レナは手を鍵へと向けた。エンジンをかける。その行動で柿沼は察した。 「もしかして、罠って思ってる?」 「可能性はあるよね。わざわざあんな音を立てる意味って、人を集めるのが目的なんじゃないかな。あの音って、そのAEDっていうのを出したら止めれないの?」 「えっと、どうだったかな。止めれた気も。」 「じゃあおかし――左之助さん、上!」 「死ねい!」 バックに入れ、レナは車を一気に後退させた。次の瞬間、それまで軽トラの運転席があったところを一筋の銀光がきらめく。 驚く柿沼の視界が揺れる。後退した軽トラを追って銀が走る。それをレナがハンドルを切って躱す。フロントガラスに横一文字の斬撃が刻まれたところで、左之助が何かを殴り飛ばす。車が何かにぶつかり、シートに押し付けられた。 「鎧武者だ。」 柿沼は驚きすぎて冷静に呟いた。鎧武者だ。本当に鎧武者がいる。なんかデカい鎧武者が、左之助にぶん投げられていた。鎧武者が降ってきたのださっき。そして鎧武者が刀を振るって、レナが躱して左之助が殴ったのだ。鎧武者は左之助にジャーマンスープレックスをかけられていた。 「なんで鎧武者!?」 「カッキー! 車が動かなくなった!」 レナは片手でハンドルを握り片手でフロントガラスを銃床で叩き割りつつ片脚でアクセルを踏みながら言った。そのまま銃口を鎧武者に向けようとして、左之助がマウントポジションで鎧武者を殴りだしたのを見て下ろす。コツン。金属質な音と微かな振動が伝わる。 その資格と聴覚と触覚が柿沼の最期の感覚だった。 【脱落】 【柿沼直樹@ぼくらのデスゲーム(ぼくらシリーズ)@角川つばさ文庫】 【竜宮レナ@双葉社ジュニア文庫 ひぐらしのなく頃に 第一話 鬼隠し編 上(ひぐらしのなく頃にシリーズ)@双葉社ジュニア文庫】 【残り参加者 251/300】 四 「竜宮! 柿沼! うおっ!?」 突如爆発した軽トラに思わず左之助の拳が止まる。その隙を見逃さず鎧武者は左之助を殴り飛ばし、立ち上がりざまに大太刀を振るい、それを左之助は胸を浅く斬りつけられながらもなんとか躱した。 今のはおそらく、手投げ弾によるものだ。赤報隊で培った爆弾を使った戦法への理解が起こったことへの察しをつかせる。 左之助は車がどういうものかはいまいちわからないが、馬車や牛車に近いものということは理解していた。そしてそういうものを襲う時は足を止めるのが定石だとも。 (あの音、このデカ鎧が鳴らしたもんじゃなかったのか! 今のは下手したらコイツごと吹っ飛んでた。間違いねえ、もう一人はいる!) 「今度はこちらから行く!」 「コイツまだやる気かよこのバカ!」 左之助はこの場に少なくとも一人、あるいはそれ以上の敵がいることを察して離脱にかかろうとした。それを妨害する鎧武者に悪態をつきながら忙しなく周囲に視線をやる。この場に左之助しかいないと思っているのか他の者は眼中にないのか、執拗に左之助へと大太刀を振るう。今度は腹に赤い線が刻まれた。 あの音で参加者を集めて出会わせる。戦いになれば爆弾を投げ込んで漁夫の利を狙う。ならずとも爆弾を投げ込められれば効率的に多く殺せる。下衆だが狡猾な戦法だ。 そしてそんな戦法を取るからこそ、直接戦えば弱いと見切りをつけた。今まで左之助が戦ってきた相手は、基本的に強い奴ほど搦手に頼らず力でねじ伏せに来た。無論策を弄さないわけではないが、こういうことをやるのは強い奴の横にいる自分のことを賢いと思ってる奴と相場で決まっていると、左之助は信じている。そして――そんな奴にとって、今の自分は格好のエサだとも。 (このままじゃ、コイツごと吹っ飛ばされちまう! なら――) 「殺った!」 鎧武者の大太刀が左之助へと振るわれる。袈裟懸けの一撃を。 「しゃあっ!」 「なにっ!」 左之助は、受け止めた。鍛え上げられた筋肉と異様に頑丈な骨が、刃を止める。 鎧武者は大太刀を抜こうとした。が、抜けない。筋肉が収縮し、大太刀を締め付ける。まずい。そう思うももう遅い。 「ぐっ、おおおおおお!?」 「――二重の極み。」 逃れようのない衝撃が腹部を貫く。堪らずガクリと膝をついた鎧武者を見て、左之助は筋肉を緩めて大太刀を外すと、軽トラへと駆けた。中を見るまでもないが、それでも一応炎に包まれていく運転席を見る。まだ辛うじて人の形をしている死体に一瞬目を伏せ、駆ける速度を上げた。 ダダダダ。左之助が通り過ぎた後を銃弾が叩く。今ので敵の位置は割れた。が、そこまで行くまでの間に恐らく逃げられる。今まで撃ってこなかったのは手投げ弾を投げてから場所を変えていたのだろう。ならもう既に、また場所を変え始めているはず。逃げられる前に追いつくだけの余力は、今の左之助には無い。 「ぐっ、さすがに、やりすぎたか……」 肩の傷がかなりヤバい。いくら化け物のような頑丈さの左之助でも限界はある。 左之助は窓ガラスをぶち破って医院に入った。まずは傷の手当をしないとどうにもならない。 (この借りは倍返しじゃ済まさねえぞ。) 止まらぬ血を拭いながら、左之助は鳴り続けるAEDを拳で黙らせた。 五 鑑隼人はあらかじめ目をつけていた民家へと転がり込むとトイレへ向かい吐きに吐いた。 彼こそ柿沼直樹と竜宮レナの二名を爆殺した下手人であり、医院のAEDを使って人を呼び寄せた張本人である。その凶悪な動きとは裏腹に、抱えていた銃を取り落として便器に胃液をぶちまける姿は、柿沼と同じ年の少年にしか見えなかった。 (はぁ……はぁ……いまさら、見ず知らずの人間を殺したぐらいで、なんでこんなに……) 端正な顔立ちは歪み、口の端には吐瀉物がこびりついている。苛立ちげに水を流すと、トイレットペーパーで口を拭い便器に叩きつけるように流した。 流れる水が渦を巻き、吸い込まれていく。それを見てまた、怒りに燃える。今度は己ではなく、水の国――彼の祖国であり復讐対象へだ。 そもそも隼人が殺し合いに乗ったのも、水沢巴世里を生き残らせるためだ。隼人の復讐完遂のためには、パセリにこんなところで死なれては困る。だが今のパセリは記憶を失いその力も無力、その上性格的にこんな場所でも積極的に動き回りかねない。昔っから、それこそ三つ子の魂百までという諺通り、良い事も悪い事もとにかくなんでもやる行動力の塊のような少女だ。そんな少女が殺し合いの場でどう行動するか。想像するだけでも恐ろしい。 だから、危険人物は殺す。最初は明らかに乗っていそうな鎧武者が現れて強そうなので二の足を踏むが、そこに新たな人間が現れて爆殺を決意した。鎧武者を狙おうかとも考えたが、道着男が優勢だったので狙いは軽トラの方へと決めた。鎧武者の奇襲に気づいて躱すような奴はパセリの味方になれば心強いが、殺せる時に殺しておかないと殺せるタイミングが無くなる。普通の人間に負ける気はないが、ここは銃がやたらと落ちている。不確定要素は極力減らさなけらばならない。 (あと少し、あと少しで全て終わるんだ。) 少年は震える手を無理に動かして銃に弾を込めた。 【0100 市街地】 【相楽左之助@るろうに剣心 最終章 The Final映画ノベライズ みらい文庫版@集英社みらい文庫】 ●大目標 殺し合いをぶっ壊す ●中目標 柿沼と竜宮を殺った奴をぶちのめす ●小目標 傷を手当する 【大太刀@映画刀剣乱舞@小学館ジュニア文庫】 【目標】 ●大目標 皆殺し ●中目標 鱗滝とアキノリは、絶対に自分の手で殺す ●小目標 道着男(左之助)を追いかけて殺す 【鑑隼人@パセリ伝説 水の国の少女 memory(3)(パセリ伝説シリーズ)@講談社青い鳥文庫】 【目標】 ●大目標 復讐完遂のためにはパセリを生き残らせる
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「うぅ、想像以上に暗いなぁ~・・・こんな所来なきゃ良かった~・・・」 そう言って溜息をつく少女、レミリィ=ライフィルア。 首にくっ付き、全く離れない・・・否、離そうとすら出来ない首輪を指先で軽くつつく。 薪を組み、真ん中に自身が起こした炎で暖と明りを取る。 それでも、陽の光のなかなか届かない此処は、夜の様に暗い所もあった。 揺らめく炎に、見知らぬ少女が写った。 レミリィは立ち上がり、少女の見えた場所へ目を向けた。 「あっ、シーナ!」 警戒していた目は一瞬で緩み、ピョンピョンと体を跳ねさせた。 シーナと呼ばれた少女、シーナ=クレイルは、その姿を見て、少し安心した様だった。 「あぁ、良かった・・・知ってる人に会えて・・・」 大きく溜息をついた。 間もなく、木の葉と葉がこすれ合い、音を立てた。 「ひゃっ! だ、誰か居ます!」 「誰が来ても負けないよ!」 そう言い、レミリィは何処から取り出したのか、杖を右手に持ち、戦闘態勢に入る。 それにつられて、シーナもおどおどしながら、背中に背負った大きな鞘から、身長程の大剣を取り出した。 陽の光がなかなか届かない闇にコツコツというブーツの音が微かに響く。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「何これ・・・・・・」 まだレミリィ達に見えない場所で、少女が呟く。 手に持っていたのは、何故かミニ虫取り網。 「こんなん何に使えって・・・?」 ミニ虫取り網を取り出した袋を微かに漁る。 何も見つからない。 「・・・」 袋を放り投げて、ミニ虫取り網を周りと同化する様な真っ黒なマントの中に突っ込んだ。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 銀色の瞳が真っ暗な闇の中から見えた。 「なぁ~んだ、貴女達?」 つまらなさそうな顔をするシーナとレミリィよりほんの少し年上の少女、ソウル=クレイシア。 鎌を持ち、何時でもどうぞ と言ってるかの様だ。 「何? 戦いに来たの?」 杖をソウルに向けるレミリィ。 「そうね・・・戦いに来た・・・そう言えば、貴女はどうするの?」 クスッと意地悪い笑みを見せる。 レミリィは杖に炎を灯し、答えを行動で表す。 シーナも、えっ!?と呟き、慌てて、大剣を危うく落としそうになりつつ、ぐっと握りしめ、覚悟を決める。 「2VS1―――でも構わないわ、だって貴女達が組んだって勝てる訳ないわ・・・さぁ、闇のダンスを始めましょう♪」 【場所・時間帯】E―3・森・朝 【名前・出展者】レミリィ=ライフィルア@三つ巴の世界 【状態】戦闘態勢。正常。 【装備】杖 【所持品】杖 【思考】基本 とりあえず生き延びよー。 1. 仲間(シーナ)発見!・・・そーいえばこの子ヘタレ・・・いや・・・あーもうややこしいっ! 2. うわっ、嫌なの(ソウル)来た・・・生きる為に戦うしかないか。 【名前・出展者】シーナ=クレイル@三つ巴の世界 【状態】戦闘態勢。ちなみにヘタレモード・・・。正常。 【装備】大剣 【所持品】大剣 【思考】基本 怖い怖い怖い怖い怖い・・・・・・!! 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ・・・・・・!!! 1. あ、仲間(レミリィ)発見・・・ひとまず安心。 2.・・・嫌いな人(ソウル)・・・この人と戦うのかな・・・はぁ。 【名前・出展者】ソウル=クレイシア@三つ巴の世界 【状態】戦闘態勢。正常。 【装備】大鎌 【所持品】大鎌 ミニ虫取り網 【思考】基本 邪魔な子から消して行こうか♪・・・ん?それじゃあほぼ全員邪魔ね。 1. 第一被害者達(レミリィ シーナ)発見。じゃ、早速戦闘開始ね。 2. こんな虫取り網をどうしろって?・・・ストレス発散にこれを八つ裂き・・・でも小さすぎる。 前の話 015 シスコン弟、現る 次の話 017 二人はチジョキュア!
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無題(49スレ463) 作詞/49スレ463 誰か助けて どうにもできない自分が嫌いなの 悪いのは自分 誰のせいでもない 分かってる 分かってるの でもどうにもできないの 今日もまたこうやってむだな時間を過ごしていくの? 前に誰かが言ってた おまえが無駄に生きた今日は昨日死んだやつが生きたかった明日だ その誰かには悪いけど 私は今日この日をどう生きればいいのかわからない 未来が見えなくて 孤独に怯えて 漠然とした不安に飲み込まれる私 逃げ場はない 光は見えない 誰が手を差し延べてくれるの? 例えば私があの子だったら 例えば私に才能があれば 他人を羨むことばかり そんな人生悲しいでしょ どうにか自分を変えたくて ひとりでもがいてた私 一歩踏み出す勇気もなくて でももう後戻りはできない 誰か助けて 私を助けて 待ってるだけじゃだめって言うけど じゃあどこへ向かっていけばいいの? 光を見つけるには広すぎる世界で 生きていくのは難しすぎる 私はそんなに強くないし 誇れることもなにもない 誰もが当たり前のように生きてるけど あの人もあの人も みんなが自分の光を居場所を探し、見つけ、懸命に毎日を生きてる 私もそこに仲間入りさせて いつまでも子供ではいられない でももう少し もう少しだけ 神様待って お願い待って
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無題(69スレ414) 作詞/69スレ414 デスペラード,目を覚ましたらどうだい もう長い間フェンスの上に腰掛けてるね 頑固者だね,君は 自分なりの理由があるのはわかるけど 君が楽しいと思っていることが 本当は自分自身を傷つけているんだよ ダイヤのクイーンを引くだなんて 場合によっては君は負けちゃうんだよ ハートのクイーンが一番いい手なのを知っているくせに ボクにはいいカードと思うのが テーブルに並んでいるのに 君は手に入らないようなのしか狙わないんだね デスペラード, 君はもう若くないんだぜ 節々が痛くなって腹が減ると家に帰るんだね そして自由になりたいからだって, そう,そう言う人間もいるけどね 君ってこの世を一人ぼっちで歩いている囚人さ 冬になると足が冷えるだろ? 雪も降らないし太陽も輝かない 夜も昼も区別がつかなくなっている 気持ちの高ぶりも落ち込みもなくなっている 感情がなくなるっておかしなことじゃないか デスペラード,目を覚ましたらどうなんだい さあ,フェンスから降りてゲートを開けなよ 雨が降っているかもしれないけど虹だって頭の上にある 誰かが君を愛してくれるようにしなよ, 遅くならないうちに