約 1,954,481 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/493.html
戦うことを忘れた武装神姫・番外編 ちっちゃい物研・商品案内-7 ・・・武装神姫向けクレイドル・品薄のお詫び・・・ 先日の発売以降、大変にご好評を頂いております当社の各種武装神姫 向けクレイドルシリーズは、現在当社では全力を挙げて増産しており ます。しかしながら、当社の生産能力の関係上、皆様のご希望に添え ない市場在庫の状況となっており、御迷惑をおかけしております事、 深くお詫び申し上げます。 当社は品質を何よりも重視する方針でありますので、現在の生産数が 限界となっております。生産ライン等の見直しにより、来月後半には まとまった数の出荷が出来る見込みです。 何卒、今しばらくお待ち下さいますようお願い申し上げます。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ <東杜田技研・新製品のご案内-8> このたび、弊社の小型ロボット向け機器ブランド「HT-NEK」では、 ご要望が多く寄せられました「ぬくぬくこたつ」の4体用を、新たに ラインナップいたしました。 〜武装神姫簡易クレイドル・「おっきいぬくぬくこたつ」主な特徴〜 ■データ通信機能等を一切省き、「充電機能のみ」とした、簡易型の クレイドル。 ■電源には、USB3.1のみならず、ACアダプタ(付属)や、専用電池 ボックス(別売)、シガーソケットアダプタ(別売)を用いる事が 可能。いつでもどこでも、充電が出来ます。 ■デザインは、シンプルで、かつ飽きの来ない、ごく一般的な4人用 こたつ」そのもの。こたつ布団の柄は、5種類から選べます。 ■内部には遠赤外線装置が組み込まれており、実際に「暖かく」する ことができます。(寒がりの神姫に最適です。) ■本製品は、完全な充電専用クレイドルとすることで、よりお求め やすい価格に設定。 また、夏場には布団を取り外し、座卓型の クレイドルとしての使用も出来るようなデザインとしました。 ※本製品は完全な充電専用クレイドルです。オプションを用いても、 データ通信を行うことは出来ません。ご了承下さい。 ※初回生産分には、こたつ布団と同じ柄の「こたつ敷き布団」が付属 する予定です。 詳細は、下記を参照して下さい。また、新たな情報は随時公開いたし ますので、HPにてご確認下さい。 <武装神姫・簡易(充電専用)クレイドル「おっきいぬくぬくこたつ」> ・対応武装神姫 現在発売中の全武装神姫(純正クレイドルが使用可能である神姫に 限ります。) ・対応電源 USB3.1(同梱専用ケーブル)・ACアダプタ(同梱) 乾電池(別売専用電池ケース)・シガーソケット(別売専用ケーブル) ・対応オプションパーツ 弊社発売予定品 「神姫みかん」(食べられませんが、アロマ効果があります) 「おっきいこたつ布団」(色柄違い・各種) 「おっきいこたつ敷きふとん」(色柄違い・各種) 「おっきいこたつケース」(愛媛みかんの段ボール柄・1段仕様) (そのほかに付きましては、順次調査の上HPにて公開する予定です。) ・付属装置・付属品 マニュアル、USB3.1充電専用ケーブル、専用ACアダプタ、 おっきいこたつ布団(1枚) ・付属ソフトはありません。 ・動作条件(USB充電時) USB3.1を搭載し、Windows2037・MacOS12が動作可能なPC。 ・発売予定価格 (現在未定)13,820円(税込) ・発売予定時期 (来夏予定) 以上 <<トップ へ戻る<<
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/669.html
戦うことを忘れた武装神姫・番外編 ちっちゃい物研・商品案内-10 <東杜田技研・新製品のご案内-10> 注)当然ですが、以下の内容はすべて当方の脳内生成物であり、 現実には存在しませんので。。。 <東杜田技研・新製品のご案内> このたび、弊社の小型ロボット向け機器ブランド「HT-NEK」では、 ご好評頂いております「武装神姫」向けの機器に、新たに携帯型の 周辺機器を発売することになりました。 第一弾としまして、携帯型クレイドルを発売いたします。 〜武装神姫専用携帯クレイドル・「ポケットスタイル」の主な特徴〜 ■数多くの小型ロボット向け機器の開発で実績がる、弊社・小型機械 技術研究製作部が中心となり開発。抜群の安定性を誇ります。 ■ポケットの中に違和感無くすっぽり収まる超小型仕様。 ■バッテリーによる充電機能のみならず、携帯電話やPDAとの接続も できる、簡易通信機能も搭載。もちろん、PCとの連動も可能です。 ■種類は2種。 衝撃に強い「HS」(硬質外装仕様)と、ポケットに 入れても痛くない「SF」(軟質外装仕様)を設定。 目的、好みに 合わせてお選び下さい。(色柄には各5色を設定。) ■初心者には使いやすく、達人にも飽きが来ない、独自の専用ソフト 付属。(WindowsVista2037・MacOS12 両対応。) 詳細は、下記を参照して下さい。また、新たな情報は随時公開いたし ますので、HPにてご確認下さい。 <武装神姫専用クレイドル「ポケットスタイル」> ・カラーラインナップ ポケットスタイル-HS(硬質) >ホワイト、マットブラック、グリーン迷彩、カーボン、メッキ ポケットスタイル-SF(軟質) >ライトグレー、ブラック、サンタレッド、唐草、スカイブルー ・対応武装神姫 現在発売中の全武装神姫(純正クレイドルが使用可能である神姫に 限ります。) ・インターフェース 携帯機器接続時:別売の専用変換ケーブルを使用して接続 PC接続時:専用ケーブルによりUSB3.1にて接続 ・電源 Li-ionバッテリー、ACアダプタ、乾電池ボックス(別売) ほか ・対応オプションパーツ 大容量Li-ionバッテリー、アクセサリソケット用アダプター、 携帯電話用アダプタ(各社)、HS専用水中(潜水)対応化キット、 HS専用簡易防水フード ほか ・付属装置・付属品 マニュアル、ACアダプタ、ドライバDVD ・付属ソフト(ドライバDVDに同梱) 「神姫といっしょLite(機能限定版)」 ほか ・動作条件(ドライバ・付属ソフト) Windows2037・MacOS12が動作可能なPC。 ・発売予定価格 (現在未定) ・発売予定時期 (今夏予定) 以上 <<トップ へ戻る<<
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2721.html
『マッドサイエンキャット』-1/3 ※ 念のための注意書き ※ 第二章でも同じ注意書きをしましたが、インダストリアル・エデン社製神姫をご存知ない方はおりますまい。 ◆――――◆ バトルをするわけでも、他に用事があるわけでもなく、私はオンラインの茶室を借りることがあった。 月に一度か二度、お金はかからない。 静穏な雰囲気を壊さない程度の和風にしつらえられた四畳半で、ただ時間の過ぎるままにまかせる。 ちゃぶ台を部屋の隅によせて、部屋の中心に仰向けに寝転がって、小窓から、あるいは壁を伝って聞こえてくる自然の音に耳を澄ませる。 竹林を撫でるように流れる風に揺れる音。 絶え間なく水が溢れる池では時々、魚が跳ねた。 私の知る限りここは、最も贅沢に時間を使うことのできる場所だった。 勿論、ここはディジタル信号によって作られた場所であり、本物の自然とは真逆の存在であると言ってもいい。 小窓からは確かにあるがままの自然を見つけることができるが、簡素な戸を開いた先に通じているのは、銃弾飛び交うバトルステージか、もしくはクレイドルに横になっている自分の体だ。 それでも、私を含めたすべてを電子データで作られたこの場所を、私は独占したくなるくらいには気に入っていた。 だから、 「失礼する。我は『清水研究室 室長兼第一デスク長』ゴクラクだ。ふむ? セイブドマイスター殿は休養中であったか。邪魔をしてしまい申し訳ない」 招待した覚えのない奴が戸を開けて踏み込んできて、ましてそいつが顔見知りでなく、さらに清水研究室の関係者とあっては、安らかだったところから堪忍袋の緒が切れるところまで一瞬で到達するのも仕方のないことだった。 機関砲を具現化し(茶室を予約する際のアカウントがバトル用だから、武装も一緒に登録される)マズルの火花が直接当たる至近距離で一発ぶっ放した。 しかしこの侵入者は部屋に入ってきた姿勢のまま右に『ずれた』。 ずれた、という言葉が適切かどうなのか分からないが、少なくとも私には信号機の黄信号が赤信号に変わるように、一瞬の間にこいつの立ち位置が変わったように見えた。 腰まで届くほど長く、羊毛のような癖がある灰色の髪は戸から入ってきた時のまま、少しも揺れ動いていない。 髪は早く動けば動くほど頭に置いていかれるようになびくはずなのに。 弾丸とマズルから出た火花のどちらも侵入者の横を通り過ぎ、戸の向こうへと消えていった。 「そう邪険にされるな。今日は戦いに来たのではない」 しかも全然動揺してない。 見たこともない型式の神姫は戸を閉め、隅にあったちゃぶ台を部屋の真中に置いて、どっかりと胡座をかいた。 「これはつまらぬものだが」とちゃぶ台の上に出された草色の包を私は無視して、ふてぶてしい神姫を観察した。 切れ長の目の奥で、金色の瞳が私をサーチするように怪しく光っている。 無言のうちに試されているような不快感が肌にまとわりついた。 私にはその金色が、濁って濁って濁り切った果てにできた色のように思えてならなかった。 まだ出会って間もないにもかかわらず、こいつは私程度では手に負えないことを直感で理解してしまった。 油断すれば腰が抜けそうになるのを、相手には見えないように必死にこらえなければならなかった。 もし畳の上にへたり込んでしまったら、私は恐らく、この型式すら分からない神姫に屈服してしまう。 戦闘力は疑う余地もなく普通の神姫の枠で測れないレベルにあるだろう。 しかしこの神姫は強さ以上に危険な何かを隠している。 ゴクラク(極楽)なんてものが本当あるとしたら、恐らくこいつが歩く道とは逆方向にあることだろう。 少しでも目をそらそうと、シルエットを全体的に眺め回した。 まず目に入ったのは額からそそり立つ、太くて硬そうな黒い角。 神姫が頭にとんがったものを立てるのは珍しいことではない。 カブトムシやらクワガタなどの神姫は当然のこと、私にだってうさぎのような耳がある。 でもこいつの角は私達の飾りやセンサー、アンテナとは違う、正しい意味での角だと感じた。 威嚇するため、あるいは貫くため。 ポケモンじゃあるまいし、まさか本当に主武装ではないのだろうけど、それだけの威圧感があった。 角の次に目に入ったのは、顎の先端から真っ直ぐ下に降りた先にある肌の谷間だった。 谷間に何かを差し込めば力を入れることなく挟めてしまいそうだった。 盛ってやがる。 ムカつく。 腕や足、首元、カーディガンはすべて緑の濃淡で描かれた迷彩柄で統一されている。 密林に飛び込む気満々であるようだが、ボリューム過剰の髪と誇張されまくっている胸元を見れば、どんな場所であっても小賢しく隠れることを良しとしない性分であることが分かる。 関わる気になれず、できることならゴクラクを無視して茶室から出ていきたかった。 しかしゴクラクには、有無を言わせない雰囲気があった。 「一躍有名になられたセイブドマイスター殿と話がしたかったのだ。唐突な訪問であったことはご容赦願いたい」 「私がこの場所にいることは誰も知らないはずよ。どうやって潜り込んだのかしら」 これには答えず、ゴクラクは話を続けた。 「先日の一戦はさすがだった。強者を相手取っても冷静に策を巡らせ勝利してしまうとは、凡百の神姫にできることではない。我が研究室の者共にも見習わせたいものだ」 「ふん、いくら褒めたって私が清水研究室に出すものなんて何もないわよ。あんた室長だって?」 「そうだ」 「なら部下のしつけくらいちゃんとしなさいよ。ギンが節操無く勧誘し回ってるのは研究室の方針?」 「失敗を表に晒してしまったのは研究室として手痛いことだ。ギンの武装がジョーカーのようなものであることはご存知であろう。『大魔法少女』を引き入れることができれば儲けもの、程度に考えていたのだがな」 芽のない欲を出してしまった、と言うゴクラク。 しかしこいつの表情から後悔する気持ちは欠片も読み取れなかった。 すべての感情が瞳の金色の中に混ぜられ、押し殺されているようだった。 「我が清水研究室は強い神姫を求めている。今は第七デスクまで【それなり】の神姫を揃えたつもりだが、まだ不足している。我に匹敵するレベルとまではいかずとも、そうだな、少なくともギン程度の神姫をあと数体は揃えたい」 ギン程度。 その言葉を聞いた私は心を揺らさずにはいられなかった。 「何と戦ってんのよアンタは。世界大会の賞金でも狙ってんの?」 ゴクラクは答えなかった。 まあ、こいつらの目的なんて興味無い。 本当に賞金目当てなら、私の知らないところでどうぞご自由に荒稼ぎしてくださいって感じだ(目の前の神姫がお金なんて俗なものに興味を持つとは思えないけど)。 気になったのは、清水研究室が第七デスクまであるということと、ゴクラクがギンをずいぶん格下に見ているってことだ。 ちゃぶ台を挟んでゴクラクと向かい合うように、私も座った。 セイブドマイスターは具現化したまま傍に置いた。 ゴクラクが持ってきた包の中身が少しだけ気になった。 「第七デスクまであるってことは、他のデスク長もギンみたいに勧誘して回ってんの?」 「そうだ。しかし我は『強い神姫を集めよ』としか命令していない。収集対象と手段は各々に任せてある」 七という数字にいや~な予感がする。 私が目下挑戦中の人間になるための勝利ノルマが七人。 清水研究室のデスク長も七人。 アリベは清水研とは無関係だし、次の対戦相手はマオチャオのリーダーともう決まっているらしいけど、残り四人の中に清水研の連中が含まれないとは限らない。 いや、あのひねくれた神様のことだし、絶対にあと一人くらいは入ってくる。 そのあと一人の最有力候補は今、目の前に座っている。 改めてゴクラクの姿を見た。 刺さると痛そうな額の角、肩幅よりも大きく膨らんだ灰色の髪、無駄にミリタリー仕様の服、そして金色の両眼。 この神姫を相手にして、私に勝つ可能性はあるのだろうか。 「もう一つ質問。あんたの型式は?」 「インダストリアル・エデン社製犀型MMSディアドラ。飛鳥型とは比較にもならないマイナー神姫だ。しかしその性能、特に我の強さはそこそこだと自負している。今日はセイブドマイスター殿に我の能力を伝えるために来た」 「なっ、何よいきなり。教えてって頼んだ覚えはないわよ」 「ディアドラは元来、重火器による制圧を得意としている」 ゴクラクは勝手に話しはじめた。 「しかし我は室長であるが故に雑務が多く、ペンより重い物を持たぬものでな、セイブドマイスター殿が愛用されるような重火器は勿論のこと、ハンドガンのような小型武器であっても携帯するのは億劫だ。武装は最小限まで減らしたい。ところでセイブドマイスター殿は【共振】という現象をご存知か?」 「共振? 共鳴みたいなもの?」 「そうだ。あるシステムにそのシステムの固有振動数で力を加えると、その振動は増幅される。振り子を想像するといい。一定の間隔で押してやれば振れ幅は増幅するだろう。その時の間隔が固有振動数であり、この現象を共振という」 さすが研究室にいるだけのことあって、小難しい理屈を出してきた。 たとえ話で分かりやすく説明しようとしてんのは分かるけど、私のような一般人は専門的な単語を出されるだけで思考回路をフリーズさせてしまうことをゴクラクは知るべきだ。 振り子とか言われても、それを思い浮かべるのに数秒かかってしまうわけで。 「乱暴な言い方をすれば共振とは力の乗法だ。物の思わぬ破損を招く厄介なものだが、我はそれを武器として扱う術を持っている」 「ふ、ふうん」 私はたぶん、すごく重要な情報を聞かされている。 自ら戦術の情報を公開するなんて「バトルでカモにしてください」って言ってるようなもので、そうでなければジャンケンで「私はチョキを出す」と宣言するくらい程度の低い揺さぶりだ。 でも私にはゴクラクの言っていることに嘘はないという確信があった。 にもかかわらず、ゴクラクの短い説明を半分以上聞き流してしまった。 だって難しいんだもん。 【共鳴】を武器にする(あれ? 共振だったけ?)ということは分かった。 でも共鳴を具体的にどうするのかサッパリ分からない。 他には……そう、振り子がどうとか言ってた。 じゃあゴクラクの武装は振り子なのか。 振り子でできることなんて、「あなたはだんだん眠くな~る」の催眠術しか思いつかない。 つまりゴクラクの技は催眠術――いやいや共鳴はどこ行った。 どうしよう、もう一度説明を頼んでみようか。 聞かぬは一生の恥って言うし、清水研の神姫を相手に恥かいたって別になんとも思わないし。 よし、聞こう。 見下されるかもしれないけど、それならそれで早々にお帰り願えばいいじゃない。 さあ聞けセイブドマイスターホノカ。 素直な心でお願いするんだ。 「……で、どうして私にあんたの情報を?」 だめだった。 飛鳥型ホノカさんはちっぽけなプライドと引き換えに重要な情報を逃した。 「ほう、ご理解頂けなかったようだがご質問は無しか。さすがはセイブドマイスター殿、潔くて助かる」 しかも理解してないことがバレてた。 自分の顔がみるみる赤くなっていくのを感じた。 魔法少女になった時くらいの恥ずかしさと自殺願望を抱えきれず、機関砲を再度手に取り弾の限りぶっ放した。 部屋中に何度も炸裂音が反響し、備え付けの調度品が被弾した箇所からひしゃげていく。 ちゃぶ台の上にあった包の中身は一口サイズのヂェリ缶詰合せだったらしく、弾が当たってヂェリ缶が弾け飛んだ。 破片が部屋中に舞って、トリガーを引いても弾が出なくなった頃にはあらかたの物を壊し尽くしていた。 全弾避けきったゴクラクを除いて。 「錯乱されるな。涙が出ているぞセイブドマイスター殿」 「じゃかあしいっ! さっさと答えなさいよ、なんで私に能力ばらしたっ! ええ!? 私を嘲笑うためか! 小難しいこと言いやがってインテリぶりやがってえっ!」 「違う。我が戦闘スタイルを開示したのは、セイブドマイスター殿の信頼を得るためだ。我はセイブドマイスター殿を我が研究室の第一デスク長に――」 「出てけ! 二度と来んな! 次そのツラ見せたら額の角と尻の穴を連結しちゃるかんね!」 「やれやれ、曲がりなりにも『大魔法少女』と肩を並べる御身であろうに。まあよい、一度の謁見で心が掴めるとは思っていない。今日のところは挨拶にとどめておこう」 そう言うとゴクラクは穴が空いて歪んだ戸を強引に、しかし力を込めた感じもなく開けて外に出た。 「そうだ、もう一つ」 いかにも【今思い出したという演技をした風に】ゴクラクは足を止めてこちらを向いた。 「我が研究室の第六、第七デスクの者らが近いうちにセイブドマイスター殿を訪ねると言っていた。その時はよろしくご相手願いたい」 返事の代わりに機関砲を投げつけた。 ゴクラクはここに来た時のように瞬きの間にその場から姿を消し、今度はどこにも現れることはなかった。 ◆――――◆ 「『清水研究室 第六デスク長』クロカゲ」「並びに『第七デスク長』シロカゲ参上!」 今ほど不愉快な気分で茶室から帰ってきたのは初めてだった。 癒しを求めたはずの茶室で、なぜこんなにも嫌な思いをせにゃならんのか。 難しい説明を一方的に聞かされた混乱、悶絶したくなるほどの羞恥、戦力差を忘れさせるほどの殺意、それらの感覚が、ネットワークから帰って目を覚ますことで頭痛に変換されたようだった。 頭痛薬、そうでなければニトロヂェリーが欲しい。 今更になってゴクラクの手土産が惜しくなった。 確か冷蔵庫にはヂェリーがまだ残ってた。 でもクレイドルから動く気になれず、目覚めた時の体勢のまま窓のほうを見た。 「今日は貴様の命」「を頂戴しに参った!」 開け放たれた窓の縁に黒と白の小人が立っていた。 腕を組んで背中合わせに立ち、景観が荘厳なわけでも雷鳴が轟いているわけでもない外をバックに、謎めいた登場を演出している。 黒と紫の忍装束、青いオカッパが少々幼く見えるフブキ。 白と赤の忍装束、赤い長髪を後ろで一本にまとめたフブキ。 二人とも首元にスカーフを巻いていて、外から室内に入り込んでくる湿っぽい風に僅かに揺れている。 忍者のくせに忍ぶ努力すら見られない。 ところで忍者型といえば、最近は『和』の心を捨ててしまった弐式とかいう神姫がいるけど、そういった意味であの二人は古き良きを守る正統派と言えた。 初代フブキとミズキの純正装備を身につけている。 私は和風神姫には、型式を超えた切り離し難いつながりがあると考えている。 紅緒に始まり、飛鳥、フブキ&ミズキ、こひる、蓮華、他少数。 『和』というコンセプトが武装の幅を狭めてしまうきらいがあるものの、単純な性能では語れないひとつの信念と少数精鋭であるというシンパシーは、私たち和風神姫にとって捨てがたいものとなっている。と思う。 それに、忍者型には個人的な思い入れもある。 なにせ忍者型は――唐突に告白するが――私のご先祖様なのだ。 詳しく知っているわけではないが、忍者だった私はホノカゲという爆弾魔で、尋常ならざる理由あって、かの有名な『ドールマスター』に弱者を装い近づいたそうな。 戦闘スタイルは爆弾魔の名に違わぬ卑怯卑劣なもので、バトル開始前からステージ全域に遠隔操作型の爆弾を仕掛けておくというものだ。 バトルの混戦の最中に誰も気付かないうちに仕掛けておいた風を装って、これで何人もの神姫を屠った。 同様の手口で『ドールマスター』を破壊しようとした、が、あっけなく撃退される恥さらしだったという。 せめてもの救いは、そんなご先祖様の噛ませ犬的な姿がWikiに晒される前に、歴史がデータの海に溶けて消えた(ボツになったとも言う)ことだった。 こんな情けないご先祖様でも、私のベースになっていることは間違いない。 そういったわけで私は、忍者には一目置くようにしている。 困っている忍者がいたら積極的に助けようとも思う。 私にできることであれば、漫画を読むことと天秤にかけたうえでお願いをされたっていい。 しかし今日ばかりはタイミングが悪かった。 寝そべったまま手を伸ばしてセイブドマイスターを掴み、セイフティを解除、ハンドルを引いてチャンバーに弾を送り込み、床と肘で大きな図体を固定してファイア。 「「あびゃあっ!?」」 命中したような悲鳴をあげる忍者二人。 しかしちゃんと狙わなかったため、弾は二人の頭上を通り過ぎて窓の外へ消えていった。 舌打ちして、もう一度構えた。 次は当てる。 「お、おい待て! いき」「なり何をするんだ貴様!」 忍者は二人で一つの文をしゃべるという、とても面倒なことをしていた。 黒い方が半分まで喋り、白い方が残り半分の文を引き継いている。 私に向けて手を付き出した「待て」のポーズは二人一緒だ。 焦った表情も一緒。 その芸風は私を馬鹿にしているように思えてならなかった。 いや、絶対馬鹿にしてる。 さっきのゴクラクといい、あいつらといい、どこまでもふざけた連中だこと。 清水研究室、死すべし。 「「ひえええっ!!」」 今度はしっかり狙ったのだが、忍者二人はそれぞれ両側へ跳んで回避した。 ゴクラクのような余裕綽々の避け方ではない、それはどちらかというと逃げる動作だった。 清水研のデスク長だからって、全員がゴクラクやギンのようにずば抜けて強い神姫とは限らないらしい。 まあ、そんなことは私にとっちゃ関係のない話なわけで、まずは黒いほうを屠る。 「ま、待てセイブドマイスター! 分かった、我ら」「が悪かった! だからまず話をしようではないか!」 「あんたらと話すことなんてないわ」 砕けろCSC。 「うっひょお!? だから待てというに! このままリアル戦闘行」「為を続ければ警察沙汰になるぞ! それは本意ではあるまい!」 「む」 それもそうだ。 こんなところで死なれちゃったらこの家が家宅捜索されてしまう。 それはちょっとマズい。 でもあいつらは私の命を取りに来たとか言ってたし、正当防衛じゃなかろうか。 ならば何も問題ない。 「爆ぜろCSC」 黒い方に銃口を向け直すと、とうとう両手を上げた。 黒い方だけでなく遠く離れた白い方まで同じく両手を上げた。 「分かった降参だ! 降参、マジで参りまし」「た! だからその銃を下ろしてください!」 ◆――――◆ 「自分らだって本当はこんな悪役」「みたいなことやりたくないんスよ」 とっちらかったマスターの机の上に忍者二人を呼んで正座させた。 私は二人の前に仁王立ちして、自分はいったい何をやっているんだろうと疑問に思った。 忍者達は、聞いてもいないのに勝手に身の上話を始めた。 「それなのに室長のヤツ、勝手に自分らを第六、第七」「デスク長にしといてこき使うんスよ。酷くないスか」 「知らないわよ」 私のご先祖様もそうだけど、忍者型ってこんなに情けない神姫だったっけ。 忍者のみんながみんな、こうじゃないはずだけど。 きっとフブッホとミズキッチョムの呪いとかそんな理由なんだろう。 「それに自分ら仲良しじゃないスか。だからせめて一緒のデスクに」「してくれって頼んだのに聞く耳持たないんスもん、あの迷彩巨乳」 「プッ、迷彩巨乳ね」 「あれ、姉さん知って」「るんスか、自分らの室長」 ついさっき会ったばかり、とは言わないでおいたほうがいいような気がした。 この二人は迷彩巨乳(的確な呼び名だ)の動きを知らないみたいだし、変に話を持ち出してややこしくなるのは避けたい。 「まあ、ちょっとね」 「マジっスか、すげぇな姉さん。室長って神姫センターと」「か普通の場所じゃ絶対にお目にかかれないレア神姫スよ」 「なんで?」 「そりゃあ強す」「ぎるんスもん!」 二人の眼の輝きが増して、表情に自慢の色が濃く表れた。 なんだかんだ言って自慢の室長なんだろう。 「ここらの地域って実は結」「構スゴいんスよ。知ってます?」 「さあ」 「日本代表レベルの神姫が五人も集まってるんスよ。五人とも公式戦みたいな表には出」「ないだけでガチっスもん。海外の筋肉ムキムキMMSとか一捻りスよ。スゴくないスか」 私のような平凡神姫が日本の頂点と聞くと、まず頭に思い浮かぶのは現日本一のアルテミスだ。 アルテミスは動画でしか見たことないけど、そのバトルは私の理解を超えた異次元にあった。 もし勝負したら十秒以内に撃墜される自信がある。 あんなのが身近に五人もいるんだ、恐ろしい。 海外の、特にアメリカのMMSも動画で見たことがあった。 ごくまれに神姫センターでも外国人マスターがバトルさせている。 一応同じMMSということで同じ筐体を使えるのだけれど、当然ながら彼らは武装神姫ではない何かで、普通の神姫バトルのようにはいかない。 アメコミヒーローみたいな筋肉塊が腕力にものを言わせて、比較的小さな建造物くらいなら軽々と放り投げたかと思うと、他のところではSWATみたいな装備のイカついMMSがプロの市街戦を見せつけていたり、文化の違いを感じさせた。 戦場は女子供が立ち入っていい場所ではない、それが彼らの言い分だった。 「あのイカついMMSとは関わりたくないわね。私達と同じ規格で作られてるってことが信じられないわ」 「あんなモンスターは室長みたいな」「バケモノに任せとけばいいんスよ」 「尊敬してるわりに薄情ねあんたら。――ちょっと待って。日本代表レベルってもしかして迷彩巨乳のことを言ってる?」 「そう」「っス」 あっさり頷く忍者。 私は急に気が遠くなり立っていられなくなって、クレイドルに座り込んだ。 「ど、どうした」「んスか姉さん」 「なんでもない。ちょっとめまいがしただけ」 忍者二人が来る前の出来事が、まるで映画のテープをめちゃくちゃに繋ぎ変えて再生したように次々と思い返されていく。 武装神姫の頂点に立つレベルの神姫と茶室で二人っきりになった。 武装神姫の頂点に立つレベルの神姫から土産を出されたのに無視した。 武装神姫の頂点に立つレベルの神姫に向けて機関砲を撃ちまくった。 武装神姫の頂点に立つレベルの神姫の強さの秘密を聞かされた。 【次そのツラ見せたら額の角と尻の穴を連結しちゃるかんね!】 人間で言うならば、おでん屋台で隣に居合わせた方が天皇陛下とは知らずに馴れ馴れしく愚痴ったり肩を組んだりしてしまうような感じだと思う。 手が震えてきた。 CSCが勝手にオーバークロックを始めて、思考が暴走しかかっている。 頭の中を迷彩巨乳の存在感あふれる姿が、最近お会いしていない【あの人】の姿と交互に走馬灯の影絵のように駆け巡った。 どうでもいいけど「死の直前に走馬灯が見えた」って言い方をすると、人生の最後に見たものが風流な灯籠だった、って意味になっちゃうから注意してねフフフ……。 「姉さん落ち着いて。走馬灯」「のたとえは大袈裟すぎっスよ」 「な、なななんで私の考えてること、分か、わか」 「姉さんの顔に書いてあるんスもん。室長と会った時に何やらかしたか知ら」「んスけど、気にしすぎっスよ。いくら強くても所詮は迷彩巨乳なんスから」 「そ、そうよね。あんな胸を見せびらかすようなヤツにわ、私、なに動揺してんのかしら」 慎ましい自分の胸に手を当てて、ゆっくりと落ち着きを取り戻していった。 そう、バトルの強さに関係なく迷彩巨乳は迷惑な清水研のリーダーで、それ以上でもそれ以下でもない。 クールになれ『セイブドマイスター』。 強さのインフレが止まってよかったと考えればいいじゃないか。 世界にはもう迷彩巨乳を超える神姫は出てこないんだ。 15cm程度の死闘の天井が見えたことは喜ぶべきことよね。 「ふう。もう大丈夫。そうよ、みんな同じ規格で作られた神姫なのよ。強い神姫、弱い神姫、そんなのマスターの勝手。大切なのは自分が武装神姫であることに誇りを持つことよ」 「うっは。さすが姉さん」「言うことがハンパないス」 「まぁね。それで? この地域にいる残り四人の強い神姫って誰なの?」 「一人は姉さんがよく知って」「るっスよ。『大魔法少女』ス」 「あばばばば……」 「うわあ姉さん」「が泡ふいたー!」 『マッドサイエンキャット』-2/3 トップへ戻る?
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1099.html
交差点の向こうに走り去る少年の背中を見て、男は静かに呟いた。 「……行っちまったか。峡次のヤツ」 腫れ上がった頬をさすりながら、ゆっくりと立ち上がる。全力で山ほど殴られた所為か、まだ頭にはわずかに揺れる感覚が残っていた。 「何とかなる……と思いたいですけれど。あの子も一緒ですし」 引き抜いた刃を白鞘に納めつつ、サイフォスタイプの少女は肩をすくめてみせる。 峡次がオーナーに向かって駆け出したとき、彼女は彼からしっかりと飛び離れていた。その代わり、鳥小に投げられて倒れ込んだ彼の元には、一番最初に駆け寄っていた。 「そうでないと、困るけどな」 辺りを見回しても姿が見えないから、今もきっと一緒にいるはずだ。 たぶん。 少々反応の鈍い娘だから、途中でふり落とされてなければいいけれど……と、少女は心の中で祈りを捧げた。 「……オーナー」 「俺もちょっとはしゃぎすぎたよ。悪かっ……」 オーナーと呼ばれた男は、自らの巨躯を腕一本であっさりと投げ飛ばした少女に笑いかけ。 「たね、じゃねえっ!」 その笑顔を貼り付けたまま、肩から来た衝撃に横殴りに吹き飛ばされた。 再び二転、三転して、容赦なくアスファルトに沈むオーナーの巨体。 「店の前でケンカするのが店長の仕事かっ!」 その前にそびえるのは、鉄塊を削りだしたかのような大剣を右手で突き、緑の髪を右側で結んだ、ツガルタイプだ。 その剣の如き視線。炎の如き怒り。十五センチの小さな体は、今は十五メートルに匹敵する威と圧を併せ持つ。 「ア、アキさん……」 鳥小はおろか、身長二メートル近いオーナーでさえ、彼女の前には言葉を失ったまま。 「なにやってんだお前ら! そこ座れ! そこ!」 「は、はいっ!」 鳥小、オーナー、サイフォスの娘。 それに加えて、騒動の成り行きを見守っていた客の少女とその神姫もがアスファルトに正座する。 「ウチが何の店か、忘れちゃいねえよなぁ? 鳥小」 「……ドールショップです」 背中にかかる『真直堂』の看板には、控えめだがしっかりと「ドール取り扱い」と記されていた。 「それから!」 「……神姫の仕事斡旋所です」 大きな体を縮こまらせて呟く、オーナー。 看板の上にある窓からは、二十を超える神姫達がひしめき合うように顔を出していた。 二階の縫製所で働いている、アルバイトの神姫たちだ。 「ウチで預かってるお嬢様がたが、変なこと覚えちまったらどう責任取るつもりだ? あぁ!?」 一番悪影響を与える存在は、目をつり上げているツガルだろう……とその場にいる誰もが思ったが。 それを口に出せるものは、誰一人としていなかった。 マイナスから始める初めての武装神姫 その7 後編 涙でにじんだ角を曲がり。 裏路地の段ボールを跳び越えて。 息を切らせた苦しさは、大通りの直線を加速して紛らわす。 人ごみで肩がぶつかって、後ろから罵声が聞こえてきたけど……吐き出す息の音で、無理やりにかき消した。 肺が痛い。 腕が痛い。 足が痛い。 喉が痛い。 目が痛い。 頬が痛い。 背中が痛い。 痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。 その痛みで、もっと痛いところの痛みと混乱を強引に上書きして。 俺は秋葉原の街を全力で駆けていく。 「…う……ぁ……」 また誰かにぶつかったのか、女の人の声。 ごめん、と心の中で謝って、俺は速度を緩めない。 「…じ、さぁ……ん」 また? 酸欠気味で頭がクラクラしてるから、体の感覚も怪しげだ。けど、それでも肩や腕にぶつかった感触くらいは残るはず。 そういえば、さっきの声がしたときもぶつかった感じはしなかった。 「きょ……さぁ……」 ……あれ? 罵声じゃない。 俺の名前を呼ぶ声だ。 「峡次……さぁん……」 ……まさかと思いながら歩を緩めてみる。 背中に伝わってくるのは、俺のシャツの裾から伝わる妙な重み。 手を伸ばせば、小さな体がぶら下がってる。 「……ノリ!?」 ちょっと待て! 俺は慌ててノリの体をすくい上げ、人の来ない歩道の隅へ移動する。 「や、やっと……気が付いてくれたぁ……」 俺の手の中にへたり込んで、息を切らせてる小さな体。 「ご、ごめん。大丈夫!?」 こいつ、全力で走る俺の裾にずっと掴まってたのか。 「は、はぁ……何とか」 バイザーを閉じたまま、ノリは力ない笑顔でそう答えてくれた。 ……バカ。俺のバカ! 広いお寺の境内で……お寺っていう建物を初めて見るので、ホントは広いのか狭いのかは良く分かりませんでしたが……峡次さんはベンチに腰を下ろして、膝の上にわたしを乗せてくれました。 肩の上だと横顔しか見えなかったけど、ここからだと峡次さんの顔がちゃんと見渡せます。 「ほい、ノリ」 元気のない様子の峡次さんが差し出してくれたそれは、さっき入口の売店で買っていた白いクリームの塊でした。そっと口を近付けてみたら、クリームの感触よりも先に、冷たい空気が唇に触れて。 「冷たぁい」 触れたクリームは、その空気よりも冷たいのに、今まで触った何よりも柔らかくて。 舌を出してみたら、そのまま舌先ですくえちゃいました。 「美味しい?」 甘くて、冷たくて。 「はいっ! とっても!」 確か、売店の看板には『ソフトクリーム』って書いてあったっけ。 「そっか」 峡次さんはわたしの口元に付いたクリームを指先で拭って、少しだけ笑顔。そのまま口を大きく開けて、クリームの山の半分をまとめて削り取りました。 あ……。 ソフトクリーム、もっと食べてみたかったけど……峡次さんのぶんを分けてもらったんだから、もう我慢です。峡次さんはわたしの何十倍も大きいから、何十倍も食べないと同じ『おいしい』にならないんですから。 「………?」 けど峡次さんは、そんなに美味しそうじゃないみたい。ソフトクリーム、嫌いなのかな? 「ごめんな。変なところ、見せちゃって」 それが、さっき店長さんと戦ってたことだって思いつくまで、少し時間がかかりました。 「いえ……。あの店長さんは?」 少なくとも、わたしの『一般常識』のライブラリには、初対面の人と殴り合うあいさつの仕方は載ってません。地方の風習まではフォローしてないから、峡次さんはそういう習慣のある所で生まれたのかもしれませんけど。 「……兄貴」 えーっと、兄貴=お兄さん。同じ親から生まれた年上の男……って。 「そ、そうなんですか?」 お兄さんとは、殴り合うのがあいさつの仕方なんでしょうか? わたしには姉妹はいないから、良く分かりません。 でも、ベルさんやプシュケさんとは殴り合わなかったです。それとも、さっきの戦闘は神姫バトルに相当するコミュニケーション行為なんでしょうか……? 途中で鳥小さんも参戦してましたし。 「ああ」 ソフトクリームの下の、茶色いところをパリパリと食べながら、峡次さん。 あ、あの……そのパリパリも、食べて……。でも、峡次さんのだから、ダメだよね……うん。我慢、我慢。 「結構、凄い人だったんだぜ? 大学の研究室で、CSCの開発に関わったとか、神姫の素体の研究をしてたとか……」 CSCはわたしの胸に入ってる『心』の部品。 素体は、この体のこと。 っていうことは、峡次さんのお兄さんは……。 「じゃあ、わたし達の生みの親……?」 「……どこまでがホントかは知らないけどな」 峡次さんは楽しく無さそうな笑い顔を浮かべると、手の中に残った三角の紙をくしゃりと丸めて、隣のゴミ箱へ。 さようなら、ソフトクリームさん。おいしい思い出をありがとう。また、会えます……よね? 「ただ、神姫や武器作りの腕は本物だった。兄貴のハウリン……クウガは、俺が知ってる中じゃ最強の神姫だったしな」 クウガさんっていうのが、お兄さんのハウリンタイプの名前みたい。 第二期モデルの犬型神姫・ハウリン。砲戦特化のわたしとは対照的なコンセプトを持つ、オールラウンダータイプの汎用神姫。 特化した能力はないけど、銃や砲撃だけじゃなくて、剣も格闘も何でもこなせるスゴい子です。 「なら、何でそんな人にキックを……?」 峡次さんは、そんなお兄さんのことが大好きなんでしょう。クウガさんの名前を出した時の峡次さん、ソフトクリームを食べた時より嬉しそうでしたし。 「……さっきの店、見ただろ?」 寂しそうな問いに、わたしは小さく頷きました。 真直堂、ですよね。ちょっとしか見えなかったけど、可愛い服が沢山あって、すごく楽しそうなお店でしたけど。 「何か、腹が立って来ちゃってな。神姫界最速の神姫のマスターが、技術屋どころか何でドールショップなんかやってるんだって……な」 「……峡次さん」 その言い方がすごく怖くて、わたしは思わずバイザーを閉じました。 ホントは、バイザーの内側に映像なんて映らないんです。機械仕掛けのわたしの瞳の、画像情報を得る元が少し切り替わるだけ。 「ん?」 もちろん切り替わった後のセンサーもわたしの物だから、それが気のせいなのは分かってるんですけど……。バイザーひとつ挟むだけで、怖い顔を直接見なくて済む気がするんです。 「ホントは、クウガさんみたいな……ハウリンが、欲しかったんですか?」 だから、本当は言いたくなんかないことも、ゆっくりとだけど言えました。 「んー……まあ、な。最初はそう思ってた」 やっぱり。 わたしの胸のCSCが。峡次さんのお兄さんが作ってくれた部品が、きしりと嫌な音を立てた気がしました。 「なら……なんでわたしを返品しなかったんですか?」 胸が、痛い。 でも、ちゃんと言わないと。 「……返品?」 峡次さんは、わたしの言葉に首を傾げるだけ。 「私、あのお店で買われた神姫なんですよね? でしたら……」 フォートブラッグの基本スタイルは、砲戦特化。どれだけカスタマイズしても、装備を変えても、万能型になるには限界があります。あくまでも近付けるだけで、本当に万能型にはなれないでしょう。 それに、素体は戦闘用のパターン素体を展開出来ない不良品。服を着て戦うなんてイロモノの戦い方をしないと、恥ずかしくって戦うのも難しいでしょう。……主に私が、ですけど。 「……お前、返品されたいワケ?」 そんな! 「そんなわけないじゃないですか!」 CSCがかっと熱くなって、言葉が思わず流れ出ました。 返品なんてされたいわけありません。 けど、けど……! 「わたし、はだかですよ? 服を着て戦うのだって、ホントはしたくないんですよね?」 「……まあ、そうだけど」 峡次さん、昨日寝る前に通帳とにらめっこしてたの、知ってるんですよ? お金ない、バイトしなきゃって言ってたのだって、ちゃんと聞いてるんですから。 「わたし、近接戦って苦手ですよ? 峡次さん、近接戦ベースで神姫を組み立てたかったんですよね?」 「……何でその事を」 さすがにそれには峡次さんも驚いたみたい。 「峡次さんの部屋にあったの、組み立てかけの剣とか、加速用のパワーユニットとか、近接装備ばっかりじゃないですか」 わたしだって武装神姫。基本的な装備運用のシミュレートパターンくらいは入ってます。 もっとも、フォートブラッグのそれは自分で使うというよりも、相手の戦術を見極めるためのものだから……使いこなせるかどうかは別問題なんですけど。 「そう、なんだけどさ」 「たぶんわたし、クウガさんみたいな高機動戦は出来ないと思います」 わたしの脚は速度を叩き出すものじゃなく、確実に戦場を走破することと、砲撃の安定性を高めるためにある。 「だろうなぁ……」 「だろうなぁ……じゃなくて。わたし、砲撃しか出来ないんですよ?」 初期設定の戦術プログラムだって、弾道計算や弾種ごとのダメージシミュレートが主で、峡次さんがしたいような高速斬撃戦になんて対応してません。 その手の戦い方は、きっとベルさんやプシュケさんの方が得意なはず。 「何とかなるだろ」 何とかって……そんな、何とかなるなら……。 なるなら! 「わたしじゃ、マスターの期待に答えられないと思います! お役に立てないと思います!」 わたし、マスターのお役に立ちたいんです。 マスターの期待に応えて、喜んで欲しいんです。 嬉しい、ありがとう、って言って欲しいんです。 でも、バトルで一番の期待に応える方法は、これしか思いつかなくて……。 「……あのさ」 峡次さんは、わたしを向いてはぁとため息。 「はい」 嫌な音。 CSCが、何だかきしりと痛みます。 「バイザー、上げな」 「……はい?」 バイザー? 「バイザー。上げな」 「はぁ」 大きな手がいつ来るか怖かったけど、峡次さんの声に従って、バイザーを上げてみる。 バイザーモードから切り替えた視界は、ぼやけてよく見えなかった。喋りながら泣いてたんだと……わたしは、その時になって初めて気が付いた。 そして。 「ノリ……」 大きな手が、わたしに向かって延びてきて。 ああ、やっぱり……返品されるんだ。 でも、たぶんそれが一番いいんです。峡次さん。 次に来るハウリンには、わたしの分まで優しくしてあげて……。 「ん……っ」 思わず身を硬くしたわたしの目元を、峡次さんの太い指がそっと拭ってくれて……って、あれ? 「うん。ノリは、そっちのほうが可愛いよ」 峡次さんは、優しい笑顔。さっきまでの怖い感じは、もうしてません。 「……はい?」 このまま握られて、真直堂に返品に行くんじゃないんですか? 「ノリさ。今日、電車に乗っただろ」 ? 「はい」 話が良く分からなかったけど、とりあえず頷いておきました。 「すっごく喜んでたじゃない」 「……酔っちゃいましたけどね」 最初は景色がびゅんびゅん流れて、すっごく楽しかったんですけど……そのうち処理が追い付かなくなって、システムが落ちそうになっちゃいました。 「それでも、喜んでた」 「……はい」 頷くわたしに、峡次さんは笑顔。 「ソフトクリームも、美味しかった?」 「……はい、とっても」 もうちょっと食べたかったですけど。 でも……。 「後は……さっきの……」 「あぅう……」 あれはもっともっとしてほしかったですけど……。 「もちろんバトルもするよ? けどさ。そういうのも、なんかいいなーって思ったんだわ。今日」 「はぁ」 でも……。 「で、それが出来るのは、ノリだけなんだよな」 「……そんな、こと……。神姫なら、誰でも出来ることです」 ベルさんだって、プシュケさんだって。 お兄さんのタツキさんや、静香さんのココさんも……。起動したてのどんな神姫だって、さっきは怖かったもう一人のツガルさんだって、アイス食べたり、笑ったり、そんな事くらい簡単に出来るはず。 「うん。そりゃ、最初に起動させたのがハウリンだったら、そいつに同じ事を思ったかもしれないけどさ」 ですよ……ね。 だから、期待なんか……させないでください。 「でも、俺が最初に起動させたのは、ノリなんだよ」 だから……。 「砲撃しかできないなら、最高の砲撃が出来る武器を作ってみせるさ」 期待、なんか……。 「……峡次さん」 「それくらい出来なきゃ、神姫でバトルやっていきますなんて言えないしな」 バイザーを通さずに見た峡次さんの顔は、とっても優しくて。 「俺、頑張るよ。ノリが頑張れるように」 「……はい」 もぅ……。 この人は、なんで……。 「だから、ノリは……バイザーを上げて、笑っててくれ。多分、俺はそれで頑張れるから」 期待、しちゃいますよ? 「……いいん、ですか?」 「何が?」 「わたし、マスターのお側にいて」 ずっと、置いてくれるって。 返品なんか、しないって。 マスターの望んだ戦いの出来ない。砲撃しかできないダメな子でも、ずっと一緒に戦ってくれるって……望んじゃいますよ? 「ノリがいてくれなきゃ俺、どうやって神姫バトルすんのさ?」 ああ……っ! マスター! マスターっ! 「返品させる気がないなら、よろしくな。ノリ」 そう言って、マスターは手を差し出してくれて。 「……はい! はいっ!」 わたしはそう答えて、大きなその手に抱き付いていた。 マスターの手は、わたしを握り潰すことなんかしなくて……ただ、やさしく撫でてくれるだけだった。 戻る/トップ/続く
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1890.html
B.S.L(Busou Shinki Laboratory=武装神姫研究所) スバルの父親、長月元が勤めている神姫を「研究・開発」する施設。 ここでは、新たな神姫を開発し、それを各企業に提供する。 また、既存の神姫たちのデータを研究し、俊敏性の強化や耐久力の強化などを行っている。 CSCも貴重なこのご時世に、新たな低コスト・高性能CSC「CSP(コア・セットアップ・パッチ)」も開発中。 狼型MMS KTX01W1 狼襲(ロウシュウ) 予想CV:水橋かおり B.S.Lが、Kemotech社の新商品として開発・提供した神姫。 狼をモチーフにしており、他のKemotech製神姫よりもスピードが速い。 ただし、スピードを活かすために防御力が極端に削られている。 また、コストもかかることから試作機が三体までしか作られず、商品化は見送られた。 性格上はとても明るく、自分が商品化されない境遇でも「大丈夫だから」と笑っていられる。 三体は以下の通り。 狼襲(壱型) 一番初めに作られた試作機。 スピードの調節が設定されておらず、走る内にオーバーヒートを起こし炎上した。 狼襲(弐型) 壱型の後継機。 スピードの調節を行い、冷却性能を向上。 壱型よりは幾分マシだったが、AIの処理能力の低下で、廃棄処分される。 狼襲(参型) 狼襲の最終型。 スピード・冷却性能・AIの処理能力、どれをとっても神姫としての基本性能を凌駕している。 しかし、コストと製作時間が掛かるため、量産化(商品化)されなかった。 狼襲(参型)は、元が手掛けており、「この子を大事にしてやって欲しい」との理由で、 スバルに渡された。 武装 襲牙・雷砲(しゅうが・らいほう) 中~遠距離[ランチャー] 襲牙 近~中距離[ナックル] 襲牙・雷鉄(しゅうが・らいてつ) 近距離[特殊] 甲冑・狼牙(かっちゅう・ろうが) アーマー 翔燕・速脚(しょうえん・そくきゃく) 脚部 戦乙女型MMS TSFX01 ヘルムヒルデ 予想CV かわしま りの B.S.Lが、初期(2年前)に開発した神姫。 当初予定されていた新型CSC『ダークネス※1』と共に提案され、 実戦試験を行うが、先に騎士型サイフォスがロールアウトしてしまったため、 プロジェクトは破棄され、ヘルムヒルデ自体も機能停止された。 しかし、時を経てこのプロジェクト(CSCは除く)が復活し、一体のみだが試験体が再び構築されることとなった。 名前の由来は、北欧神話の「ヘルムヴィーケ」・「ブリュンヒルデ」から「ヘルム」と「ヒルデ」をもじった。 武装 魔槌・ミョルニル 近距離[両手・打撃] 魔銃・ラグナレク 中~遠距離[片手・両銃] スキル:神々の黄昏 魔楯・ヴァルハラ シールド[防御] ニーベルンゲンの指環 アクセサリー[特殊] スキル:オーディンの加護 タロットカード 中~遠距離[特殊] ルーンの刻まれたカードが展開され、出たルーンに応じて攻撃が下る。 フレイア 頭部 エインフェリア アーマー(1) ヨルムンガンド アーマー(2) フェンリル 脚部 ※1 CSCダークネス KARASUことレイヴン…『望まれぬもの達』の共通CSC。 効果は、 1.AIの無駄な動作の禁止 2.絶対服従(逆らうことは出来ない) 3.意思に関係なく、神姫を文字通り破壊するまで攻撃し続ける 1はプラン上あったものだが、2と3はKARASUのオーナーが勝手にプログラミングをしたもの。 別の名を「亡者の叫び声」。
https://w.atwiki.jp/rondoverification/pages/17.html
推定命中率 攻撃側:黒白子コア+黒白子2素体+ペリドット×3(命中△) 攻撃側:津軽コア+津軽素体+ペリドット×3(命中○) 攻撃側:兎子コア+兎子素体+ペリドット×3(命中◎) 攻撃側:砲子コア+砲子素体+ペリドット×3(命中★)攻撃側のメインウェポンはZel 0.76mm ガトリングキャノン又は体操マット(得意・不得意武器を避ける) 防御側:猫子コア+猫子素体+トパーズ×3 防御側:水犬コア+水犬素体+ジルコン×3防御側のメインウェポンは無し(素手) 攻撃側は重装性能以下の重量では命中率に影響は無い 攻撃側は暗闇で命中率が変わってしまう攻撃側は全てダークネスで暗闇◎であり、シティと命中率が変わらない事を確認済み。よって黒白子2・津軽・兎子・砲子には暗闇による影響が無いものとして扱う 防御側は機動に補正が入ると回避力が変わってしまう回避力を補正する武装は機動に補正が無いもののみを使用した 防御側は重量が1でもあると回避力が変わってしまう以下の表はアステロイドベルトで計測した為、重量による影響は無いものとして扱う 推定命中対照表 命中+補正 550 555 560 565 570 575 580 585 590 595 600 605 610 615 620 625 630 635 640 645 650 655 660 665 670 675 680 685 690 695 700 705 710 初期値 △ ○ ◎ ☆ 回避+補正 -50 -45 -40 -35 △ -30 -25 -20 69.0 70.6 72.2 73.6 75.0 76.4 77.7 79.0 80.2 81.4 82.5 83.6 84.7 85.7 86.7 87.7 88.7 89.6 90.5 91.3 92.2 93.0 93.8 94.5 95.3 96.0 -15 67.3 68.9 70.5 72.0 73.4 74.8 76.1 77.4 78.7 79.9 81.1 82.2 83.3 84.3 85.4 86.4 87.3 88.3 89.2 90.1 90.9 91.7 -10 65.5 67.2 68.8 70.3 71.8 73.2 74.6 75.9 77.2 78.4 79.6 80.8 81.9 83.0 84.0 85.0 86.0 87.0 87.9 88.8 89.7 90.5 -5 63.8 65.5 67.1 68.6 70.1 71.6 73.0 74.4 75.7 76.9 78.1 79.3 80.5 81.6 82.6 83.7 84.7 85.6 86.6 87.5 88.4 89.3 ○ ±0 62.0 63.7 65.4 67.0 68.5 70.0 71.4 72.8 74.1 75.4 76.7 77.9 79.0 80.2 81.2 82.3 83.3 84.3 85.3 86.2 87.1 88.0 +5 60.2 62.0 63.7 65.3 66.9 68.4 69.9 71.3 72.6 73.9 75.2 76.4 77.6 78.8 79.9 81.0 82.0 83.0 84.0 85.0 85.9 86.8 +10 58.5 60.3 62.0 63.7 65.3 66.8 68.3 69.7 71.1 72.4 73.7 75.0 76.2 77.4 78.5 79.6 80.7 81.7 82.7 83.7 84.6 85.5 +15 56.7 58.5 60.3 62.0 63.6 65.2 66.7 68.2 69.6 70.9 72.3 73.5 74.8 76.0 77.1 78.2 79.3 80.4 81.4 82.4 83.4 84.3 +20 55.0 56.8 58.6 60.3 62.0 63.6 65.1 66.6 68.1 69.5 70.8 72.1 73.4 74.6 75.7 76.9 78.0 79.1 +25 53.2 55.1 56.9 58.7 60.4 62.0 63.6 65.1 66.6 68.0 69.3 70.7 71.9 73.2 74.4 75.5 76.7 77.8 +30 51.4 53.4 55.2 57.0 58.7 60.4 62.0 63.5 65.0 66.5 67.9 69.2 70.5 71.8 73.0 74.2 75.3 76.4 +35 49.7 51.6 53.5 55.4 57.1 58.8 60.4 62.0 63.5 65.0 66.4 67.8 69.1 70.4 71.6 72.8 74.0 75.1 +40 47.9 49.9 51.8 53.7 +45 +50 +55 防御・回避行動は関係ない?←推定命中率には関係なさそう 相手が回り込み中に構えると、明らかに推定命中率自体が下がった。 黒白子2は津軽に対し命中-30 兎子は津軽に対し命中+20 砲子は津軽に対し命中+40補正後の推定命中率に差が見られない為、表を合体させた。 水犬子は猫子に対し回避-30同じく表を合体した。 命中550・回避○±0(62.0%)の所が特異点ぽい? 検証候補メモ攻撃側白黒子2:命中△暗視◎ 防御側黒鳥子:回避◎機動○(100) 飛 鳥:回避◎機動○(100) 夢魔子:回避◎機動○(100) ミズキ:回避☆機動◎(120)※要機動-20 機動力の影響 命中550・回避○±0で計測 機動力 25 80 100 110 120 130 132 135 140 150 推定命中率 80.0 66.8 62.0 59.6 57.2 54.8 54.3 54.0 54.0 54.0 重量0で回避力のある武装 チャイナソックス(黒) L/R [フット] +10 bk.リプス・サイドテイルパーツ /L [アセンブル] +5 bk.リプス・サイドテイルパーツ /R [アセンブル] +5 ナース腕章 [エトセトラ] +10 命中0のメインウェポン Zel 0.76mm ガトリングキャノン “ジャマダハル”サブマシンガン 野太刀 スクラマサクス モーニングスター ヴァレリーM49ショットガン サツマイモ・ボム バトルアックス 手榴弾 金ダライ ラブラブボンバー バースプーン “ギガンテス”ロボアーム みかん 方天戟 ハンディクリーナー ダーツ クリスタルソード パンプキンヘッド 怒りのブドウ 体操マット その他 バトルログに表示される推定命中率は以下の条件に影響される。 自神姫(命中率)使用武器の命中率 ← 命中0の武器で影響0に 命中性能(装備、素体性能) ← 素体はとりあえず命中○、命中系CSCを入れない 命中率UPスキルによる命中性能への補正 ← 特殊スキル?影響ない武器を使う 得意/不得意武器の武器命中率への補正 ← コアを見て影響ない武器を使う 距離適正による命中性能への補正 ← セットアップ直後(距離適正フラット) コーディネートによる武器命中率への補正 ← コーディネート・ディゾナンスにしない 重量による補正 ← 重装性能を超えない限り、攻撃側には影響が無い模様 ステージ(暗闇)による命中性能への補正 ← 暗闇が得意な素体にペリドットを入れ、ダークネスで暗闇◎を確認 相手神姫(回避率)回避性能(装備、素体性能) ← 素体はとりあえず回避○、回避系CSCを入れない 機動性能(装備、素体性能) ← 素体はとりあえず機動○、機動系CSCを入れない 距離適正による補正 ← セットアップ直後(距離適正フラット) 重量による補正 ← アステロイドで計測(重量0) 回り込みによる回避率の向上 ← その場で攻撃できる武装を持たせない その他最高命中率(推定命中率は100%以上にならない) 最低命中率(推定命中率は10%以下にならない) 備考相手神姫の回避動作による命中率の低下は推定命中率を求める段階で相手神姫のリアクションが決定されていないため、反映されない。 相手神姫が回り込みをした後で自神姫が準備動作に入った場合、回り込みの分命中率は低下して表示される。ただし、その後の相手神姫の回避動作による低下分は反映されていない。 ファストオーガ激走 ファストオーガ激走のダメージで素体・CSCの命中を推定する 素体 命中 命中センス BMダメージ [忍者型]GK06N1 ◎(3) 600 [天使型]bk.FL012 △(1) 550 [天使型]bk tr2.FL012 △(1) 550 [悪魔型]FL013 △(1) 550 [悪魔型]wh.FL013 △(1) 550 [悪魔型]wh bis.FL013 △(1) 550 [兎型]VLBNY1 ◎(3) 600 [犬型]KT36D1 ○(2) 580 [犬型]Re.KT36D1 ○(2) 580 [猫型]KT36C1 ○(2) 580 [猫型]Re.KT36C1 ○(2) 580 [騎士型]T6FK45 △(1) 550 [侍型]T6FS60 ◎(3) 600 [サンタ型]SRX03 ○(2) 580 [花型]P23701 ○(2) 580 [種型]P23702 ○(2) 580 [砲台型]AIP021 ◎(?) 620 [セイレーン型]MM08SR ◎(3) 600 [セイレーン型]bk.MM08SR △(1) 550 [マーメイド型]MM09MR ○(2) 580 [マーメイド型]bk.MM09MR ○(2) 580 [イルカ型]VLDLP1 ○(2) 580 [寅型]US4TI ○(2) 580 [丑型]US4CA ◎(3) 600 [建機型]CTMP04 △(1) 550 [HST型]OSA111 ◎(3) 600 [HST型]st.OSA111 △(1) 550 [HMT型]OSY010 △(1) 550 [HMT型]st.OSY010 ○(2) 580 [蝶型]PF07B ○(2) 580 [戦車型]FL802 △(1) 550 [戦車型]dw.FL802 △(1) 550 [戦闘機型]FL801 ○(2) 580 [戦闘機型]nf.FL801 ○(2) 580 [火器型]AIP305 ◎(3) 600 [天使コマンド型]FLO14 ○(2) 580 [悪魔夢魔型]FLO15 △(1) 550 [エレガンスホワイト]GK011EW △(1) 550 [エレガンスブラック]GK012EB ★(4) 620 [バンテージブラック]GK021B ○(2) 580 丑バトルモードの威力には上限がある。短銃に命中補正がかかる神姫は2817 短銃の補正がかからない神姫は2348 素体 トレーニング回数 0 1 2 [忍者型]GK06N1 600 600 600 トレーニングによる実戦感覚の低下は、マイ神姫バトルではファストオーガ激走のダメージに影響しない事がわかる (マイ神姫バトルには実戦感覚の低下は影響しない事になっている) 素体 トレーニング 通常 通常 通常 通常 通常 通常 [忍者型]GK06N1 607 616 609 608 615 616 吹雪素体にペリドット×3を、トレーニングで1レベル上げて計測、リセットを繰り返した
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/192.html
前へ 先頭ページ 次へ 第四話 それぞれの正義 夜はまだ明けない。それどころかさらに深まる時刻だった。 ぼたん雪のかすかな音を、サーッ、というサルーンの――車にしては静寂な――エンジン音がかき消している。つまりそこだけはサルーンが支配しているということになる。 サルーンの周囲はサルーンの世界であり、雪の入り込む余地は無かった。サルーンの所有者は誰かといえば鶴畑であり、つまり車の周囲は鶴畑の支配する世界であり、その世界はある一定の範囲の空間を持ち、サルーンを中心に同等の速度で動いているといえた。 サルーンが去ってしまえば追いやられた雪の世界がふたたび戻ってくるが、サルーンの周りは雪などその辺の石ころと同等であり、言い換えれば絶対的に鶴畑の支配が及んでいるのだった。 鶴畑家、ひいては鶴畑コンツェルンとはそういう組織だった。自らの支配できる範囲を、絶対的な権力で押さえつけるやり方である。範囲を少しでも外れるものに対しては途端に興味を失ってしまうが、手の届くところに一ミリでも入り込んでしまえばそれは否応無しに、たちどころに鶴畑の支配を受けることになるのだった。 独裁者、絶対王政、などという言葉が似合った。武装神姫に関して形容するなら、鶴畑は裏の世界の表の帝王だった。 被支配者に対し、支配していると強固に分からせるやり方。 それは支配という概念に関して、夢卯理音の持っている、「支配していることを被支配者に絶対に気付かせない」支配論とまったく相対する理論だった。 非効率的だ。と、理音は思った。 相手に自分が支配していることを分からせるやり方はたしかに方法としては強力だが、オープンであるがゆえに穴が出来ざるを得ない。加えて被支配層との無駄な対立、そしてそこから派生する紛争が確実に勃発するのだ。被支配層は支配から逃れるために真っ向から対抗しつつ支配の穴を突こうとし、支配者は自らの軍で反乱を鎮圧しつつ見つかった穴を塞ぐ。穴は無数にあり簡単には見つからないから、結局戦いはいつまでも続くのだ。どちらかの戦力が疲弊するか、穴を突かれて支配者が暗殺や処刑されるかするまで、である。 そして単純に考えれば、純粋戦力が打破される懸念に加えて、支配者側には穴を突かれてトップから瓦解する懸念があるわけだから、ウィークポイント比率は支配者対被支配者で二対一、ゆうに半分もの差がそこにある。支配者は権力と戦力をふんだんに利用したパワープレイで、多くは純粋戦力面を増強するが、反乱を早期に鎮圧できるならまだしも、対立が長引けば穴を突かれて一撃必殺される危険性は加速度的に増大してゆく。 リーダーを失った組織は、例外なくもろい。すぐに後継者が現れるならいいが、後継者は後継者として完成するための育成機関があるわけで、育成が完了していれば問題ないがだいたい間に合わない。 鶴畑の支配体制は鶴畑が経済的に強大すぎるほどの力を持っているそれゆえに、資本主義社会の上においてのみ成立する体制なのだった。 これに対する理音の支配論の有効性は、さらに著しく行を割いてしまうため詳しく述べない。前述の懸念がほぼ綺麗に無くなるのだから、それだけ有効なやり方だとだけ述べるにとどめておく。 非効率すぎてやる気が失せる。理音はドアにひじをついて、真っ暗な夜の街を見ながらため息をついた。 窓に、車内灯に照らされた鶴畑興紀の横顔が写っている。彼は腕組みをしながら背もたれに長躯を預け、目を閉じていた。眠っているのだろうか。 彼は支配者としての優越感を味わいたいだけなのかもしれない。オープンな支配の、支配者に対するリターンのほとんどはまさにそこにある。支配していることを手に取るように実感させてくれるのだ。 その面白さは、理音にも、分かる。 胸元がもぞもぞと動き出した。 「ねえ、もう出てもいい?」 そうだ。あれからずっと胸元にクエンティンを押し込んでいたのだ。 「ごめん、いま出すね」 入れるときは首元からだったが皮膚に装甲の突起が当たって痛かったため、理音は裾をまくって下から手を入れ、クエンティンを取り出した。 彼女の姿は変わったままだった。おそらくあのアイスバーンの下から出てきた神姫の仕業だろう。原理は分からないが合体してしまったらしかった。そのおかげで私は助けられたのだから、文句は言えない。 「なるほど、それが例のプロトタイプか」 いつの間にか鶴畑興紀が目を覚まして、クエンティンを見つめていた。もともと眠っていなかったのかもしれない。冷たさは幾分感じられるが、獲物を狙うような、残忍な目、では無かった。能ある鷹は爪を隠すというように、彼も本性を隠しているのだろう。 「違うわ、融合しちゃったのよ」 クエンティンはことの顛末を話した。 「フムン、やはり単なる強化パーツではなかったか。一体まるごと新型の神姫を作って、対称の神姫に合体、いや、融合させる方がもっとも強力だろうからな。名前は?」 「アタシはクエンティン」 「お前じゃない。知っている。私のルシフェルに傷をつけた神姫は忘れん。お前の中にいるその試作型だ」 『独立型武装神姫総合戦闘支援システムプロトタイプ、エイダです』 「やはり独立したAIを備えていたか」 表情をまったく変えずに、興紀は言った。 「ねえ、いま、やはり、って言ったわね。『やはり単なる強化パーツではなかったか』って」 理音は言葉尻をとらえて訊いた。 「鶴畑はこれと何か関係しているの?」 「鶴畑はこのプロジェクトの筆頭出資者だ」 興紀はなんら隠すそぶりも見せずに答えた。 「プロジェクト?」 「次世代強化パーツ開発計画、メタトロン・プロジェクト」 大仰な名前だな、と、理音は思った。 「だがこれで分かった。次世代強化パーツ開発計画などというのは表向きで、実際は次世代の武装神姫開発計画、あるいはそれと同等の計画と呼ぶのが正しいようだ」 「もしかして、それを確かめるためにあそこに来たの?」 「筆頭出資者としてプロジェクトの詳細は把握するのは当たり前だ。だがプロジェクトチームはチーム以外の関係各所に対して微塵も情報開示しなかった。だからこの機に確かめに来て、可能なら回収するつもりだった。そこにたまたま貴方が居合わせ、さらに回収目的にあの新型どもが現れ、危機を察した試作型は貴方の神姫に融合した」 さっきは貴様、って言ったくせに。と理音は思った。 「私達は巻き込まれたわけか。で、そのプロジェクトの存在も教えた以上、帰すわけにも行かないってことね」 「可能なら神姫だけを持って行きたいが、それはあなたが許さないだろう、それにもうあなたにも危険が及ぶ可能性がある」 「私を助けるのは鶴畑のイメージ戦略? 私はお荷物なわけか」 「どうとってもらっても構わないが、お荷物だとは思わん。あなたのシステムに対する挑戦能力は、正直言うと私も見習いたいくらいだ。例の瞬間移動はあなたが発祥だ。もう使えなくなったのが気の毒だが」 「……それは、どうも、ありがとう」 理音は驚いた。お世辞だとしてもあの鶴畑の、しかも長男からそんな言葉が聞けるなんて。 「ともかく、ということはあなたも詳しくは知らないわけね」 「試作型があそこにいた理由だけだ。プロジェクトチームの一部が造反を起こし、二機の試作型を奪って他社に情報を売ろうとしたと聞いている。一機は奪取に成功したがもう一機は自ら逃走。後はあなたが体験したとおりだ」 「あの一つ目の神姫みたいなのは?」 「新型神姫の量産試験型だろう。素体のみで大したAIも積んでない。だが、拳銃を弾いたのが気になる」 理音は先ほどのことを思い出した。拳銃弾が命中したにもかかわらず、それだけでは壊れず、電柱に激突してやっと爆散したのだ。それもいままでクエンティンがダメージを与えていたからそうなったのであって、あれがもし無傷であったらと考えると……。 理音は武者震いを禁じえなかった。 「融合する前のクエンティンが戦ったとき、あんなに細い骨格に切り込むことすらできなかった。それに、神姫のパワーじゃないって言ったわ」 「うん、あれは下手すると素手で人を殺せるわね。レーザーカッターみたいなのを使えば、鉄板なんて紙きれだと思う」 クエンティンが答えた。 「もうただの趣味のための道具ではないな」 興紀は再び背もたれに身体を預け、ふう、と息を吐いた。 「これからどこへ?」 「ひとまず私の屋敷だ。そこで今後の対策を練る。あなたとその神姫にも協力してもらう。どうせあなたの神姫から、プロトタイプはもう引っぺがせないだろう」 『機密ロックが掛かっています。責任者が許可するか死亡しない限り、融合は解除できません』 「ご丁寧にありがとう」 『どういたしまして』 「その責任者って?」 「最悪なことに、造反組のリーダーだ。たしか、ノウマン、とかいうEU人」 「そう……」 それでひとまず会話は中断した。 ぼたん雪が降りしきる暗い夜道を、真っ黒なサルーンが高級車特有の静かなエンジン音を立てて走る。ヘッドライトが照らす道は轍の出来た雪道だけで、周囲がどうなっているかは分からない。 この道はまっすぐ行けば、郊外の鶴畑邸へ続いている。 到着までまだ二十分少々掛かるとのことだった。 車内は沈黙が支配してしまう。 が、理音は落ち着かなかった。 会話をしていなければ不安なのだ。相手が鶴畑だというのが気に食わないが、この際どうでもいい。まあ、性格はともかく、顔だけ見れば良い男だからそれでチャラにしてやろう。などと思いつつ、理音はかねてから聞きたかったことを切り出そうとした。 が、先に切り出したのはクエンティンの方だった。 「ねえ」 「なんだ」 「アンタ、自分の神姫が負けたら片っ端から廃棄処分にしてるってホント?」 あからさまに侮蔑と敵意を込めた口調であった。 これにはさすがの理音も肝を冷やした。 だが興紀は悪びれた様子も無く、いつもどおりの淡々とした表情で、 「そうだが、それがどうした」 と答えた。 この返答の仕方がクエンティンの堪忍袋の尾をぶち切ったらしかった。 「やめなさい、クエンティン!」 とっさに理音が静止していなければ、クエンティンはブレードを展開して興紀に襲い掛かっていたかもしれなかった。人工知能基本三原則を無視できる一つ目どもと同じ出自の神姫と融合しているのだから、その可能性はあったのだ。 一歩間違えれば殺されていたにもかかわらず、興紀は動揺するそぶりすら見せなかった。 「出来れば理由を聞きたいわ。よろしいかしら?」 いまだブツブツくすぶり続けるクエンティンを押さえつけながら理音は言った。 興紀はしばらく目をつぶっていたが、一度深呼吸をした後、話し始めた。 「武装神姫は道具だ」 その一言目だけでクエンティンがびくりと動くのを理音は感じた。 「神姫とは趣味のための道具、ツールでしかない。釣竿やゴルフクラブ、あるいはゲーム機。それらと同等だ」 「使えない道具は棄てるというわけ?」 「単純に言えばそうだが、ただ棄てるだけでは意味が無い。神姫という道具は蓄積された戦闘データを受け継がせ、必要な装備を移行させ、より洗練されたボディに移し変えるものだ。より自分に合った洗練された道具を作り出す」 自分とはもちろんオーナー自身のことだろう。 「棄てられた神姫のことは考えないのね」 「何の意味がある? いちいち道具に思い入れていたらキリが無い」 「神姫は意思を持っているわ。私たちと同じ意思が」 「下らんな。人工物に意思があるなどというのは幻想だ。有ったとしても邪魔なだけだ。必要ない。神姫に人権を与えようとする運動が盛んなようだが、反吐が出る。モノに権利など要らん。面倒くさくなるだけだ。理解が出来ん」 会話している最中、何度もクエンティンがもがくのを理音は押さえつけていなければならなかった。 ここまで話しただけで、理音は彼とは武装神姫、ひいては人工知能に対する見識まで決定的な乖離があることを思い知った。 彼は武装神姫を知性体とは見なしていなかった。彼にとって、武装神姫とは自分の趣味を行うために必要な道具であり、それ以上でも以下でもないのである。 おそらく彼の持論に対して、過半数の神姫とそのオーナーは反発を示すだろう。なぜならば彼の持論を一かけらでも認めたが最後、いままで築き上げてきた自身と神姫との蓄積の全てが、無意味なものになってしまうからだ。 だがその点で言うなら、幻想だとするのも間違ってはいない。そもそも、どれが現実でどれが幻想だと区別するのはもはやこの時代においては意味をなさない。目には見えない実体の無いものが多すぎるからだ。コンピュータデータ然り、人工知能の意思然りである。だが、難しい理屈を抜いても、人々にとってそれは「ある」ように感じられる。ならば「ある」とした方が後々落ち着くのは道理だろう。人は幻想がなくては生きて行けないのだ。 たとえ武装神姫に意思があるというのが幻想だとしても、「ある」と感じられるのが重要で、多くの人々はそれを認めているからこそ、神姫の人権運動が起こるのである。 だが彼は、違う。鶴畑興紀という人間は、武装神姫の意思が「ある」とは感じられないのだ。理屈のあとさきは問題ではない。どうであれ彼が武装神姫に意思はないと感じたならば、周囲がどんなに「ある」とまくし立てたところで、彼にとってはどうあがいても「ない」のである。 それが鶴畑興紀の正義なのだ。話し合いの余地の無い、正義。 私が武装神姫でシステムの裏をかこうとするように。あいつが公式装備以外を絶対に使わないように。 だから彼がたとえこの先神姫を棄てても、批判することは出来ても糾弾したり弾劾したりすることは決して出来ないのだ。 「……あなたの思想は認めるわ」 「お姉さま!?」 「でもやっぱり私は、個人的感情として納得することは出来ない」 「それでいい。個人の思想や正義は誰にも侵害されない。同時に自分の正義で他人を押しつぶしてもならない。最近私たちの思想に対して正義の味方気取りで向かってくる馬鹿がいるが、そんなものは正義の味方でもなんでもない。ただの押し売りだ」 もっともだ、と理音は思う。 彼の正義は、他人の正義を侵犯したことは少しもない。 武装神姫のバトルは認められた戦いであって、対戦者相互の個人的な事情でないかぎり正義がぶつかることはまず、無い。 正義の味方というのは、強者の正義で弱者の正義が侵犯されたときに現れるのであり、それ以外で現れたのなら正義の味方は転じて悪の権化と化すのである。 自分を含む過半数のオーナーと神姫に対して鶴畑三兄弟とは悪に違いないが、彼らは経営レベルはともかく直接関係のあるユーザーレベルにおいてはよくよく見ればただバトルをしているだけであって、正義を振りかざして他人を貶めることは何一つやっていないのである。 この先武装神姫の人権が認められてからもまた、彼が神姫を棄て続けるとすれば、それは明らかに人権侵害であり犯罪であるが、神姫に人権が出来るなら彼はたちどころに武装神姫から手を引くことは容易に予想できる。 彼のような人間は決して一人や少数ではないのもまた事実なのである。神姫に人権を認めたなら彼らの思想を侵害してしまうのであり、また経済的に見れば甚大な損失が計上されるのは間違いない。 長い間、「神姫には意思はあるが人権は無い」とする矛盾した体制になっている理由はここにあるのだ。 漫画の神様がロボットは友達だと教えてくれたこの日本においても、だからこのさきしばらくは、人工知能や武装神姫に人権が認められることは無いだろう。 ◆ ◆ ◆ 車の心地よい振動が眠気を誘う。考えてみれば今は寝る時間だ。 仕事明けで、しかもあんな体験の後だったから、理音はひどく疲れていた。 仕事のことは鶴畑がなんとかしてくれるだろうという甘い考えに浸りつつ、まどろみの中へ沈んでゆく。 が、睡眠への埋没はすんでのところで叶わなかった。 『警告、後方より脅威、高速接近中。数、一』 唐突にクエンティン、いや、彼女の中のエイダが言った。 「追っ手だと? じい」 「申し訳ありません、撒いたはずなのですが……」 「車じゃないわ」 理音が後ろを見て叫ぶ。 青白い交点が、サルーンを追っているのが見えた。 「神姫か……!?」 『脅威詳細確認。警告。敵はMMSタイプ・アヌビスです』 「アヌビス?」クエンティンが訊ねる。 『私と同じプロトタイプです。私の開発コードはMMSタイプ・ジェフティです』 「片割れというわけか。虎の子をまさか実戦投入してくるとはな。じい、屋敷まではあとどれくらいだ?」 「あと五分少々です」 「追いつかれるぞ」 「アタシが出る」 「何?」 クエンティンが手を上げた。 「だって、片割れなんでしょ? だったらこの子と融合してるアタシが相手するしかないじゃない」 『現状ではアヌビスに勝てません』 「……うそ?」 『サブウェポン、その他各機能を駆動するためのデバイスドライバがインストールされていません。手動でプログラムを組むことは出来ますが、本来の性能を発揮できず、また大きな負荷がかかります。現状の戦力比は本機を一として、アヌビス、三二七です』 「冗談みたいな戦力比だな」 『事実です』 「あなたが出て捕まったら意味が無いわ」 「このままでも一緒よ!」 「ねえ、あなた、あのルシフェルとかいう神姫は持ってきてないの?」 「バトル以外で持ち出すわけが無い」 「役立たずね」 「なんだと!?」 「お二方、けんかをしている暇はございません」 運転席の執事がいさめる。 「屋敷まで着けば対空ファランクス砲があります」 「何でそんなもの日本の屋敷に付いてるのよ」理音が突っ込む。 「鶴畑の敵は多いんだ」興紀が答えた。 「ですからそれまで、クエンティン様が足止めしていただければ、追い払うことは出来ます。これしか方法がありませんぞ」 一瞬の沈黙。 「止むを得んな」 興紀が言った。 「クエンティン……」 心配そうに理音が見つめる。 「だいじょーぶよ。足止めするくらいなら、出来るわよ」 『目的地に到着するまでならば、可能です』 「ほら、エイダも言ってるんだしさ」 「…………」 理音はうつむく。 彼女をサポートできないのがこんなに辛いとは。 だが、いまは頼るしかない。 ややあって意を決したように顔を上げた。 「頼んだわよ、クエンティン」 「まっかせなさーい」 窓が開けられる。高速の風が雪ごと車内に吹き込み、一気に寒くなる。 「車からできるだけ離れないように。では、頼みましたぞ」 「ラジャー!」 クエンティンの背中の羽からエメラルド色の粒子がほとばしる。 出撃。 つづく 前へ 先頭ページ 次へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2652.html
休日。 昼の中頃。ゲームセンター前。 「ついにこの時か」 「そうですね、ここまでの日がものすごく長く感じられたような気がします」 目の前には入口、僕たちはいつものゲームセンターの扉前に立つ。 今日は宮本さんイスカたちとの戦いの日だ。 家出していたシオンを拾ってから今日まで色々なことがあったが、今日でどのような結果であろうとも決着がつく。 もちろん勝つつもりでいくつもりだ。 だが、イスカは淳平の神姫ミスズを簡単にあしらった神姫だ。 実力差が当然ある。 負ける可能性のほうが多い。 (あー! 駄目だ駄目だ! こんなネガティブになってちゃダメだ) パンッ! 「よっし、行くぞ!」 「きゃ、螢斗さん? どうしたんですか」 「な、なんでもない。行くよ」 両頬を思いっきり痛いほど叩いて気合いを入れた。 暗い思考を追いだすように。 頬を叩いた音にシオンがビックリしてしまったが、今は……存外自分でやった頬が痛かったので説明はなし。 見渡せばいつもの通り、学生ぐらいの人たちがちらほらといる店内。 今日は誰も仲間を呼んではいない。僕らは自分たちでケリをつけなくてはいけないからだ。 僕たちはただ単に今日バトルをするだけの客。それだけだ。 そして、奥を見れば、異彩な雰囲気を放っているオーナーと悪魔型神姫がいる。 凛とした態度の宮本さんと、赤い大剣を持ったバイザー姿のイスカだ。 「こんばんわ、長倉君とシオン」 「こんばんわ」 僕と宮本さんはいつもの挨拶を済まし、視線を合わせる。 あちらはどう思っているのだろうか。 元々持っていた自分の神姫と戦う事。様々な思惑が渦巻くこの戦い。 本当に僕はあの日から奇妙なことに首を突っ込んでしまったなと思った。 でも後悔はしてない。 「ステージは廃墟街でもいいかしら?」 「はい、大丈夫です」 好都合だ。この前にアリエと戦った場所なら有利に働くかもしれない。 でも、指定してくるという事はあちらとしてもメリットがあるのかもな。 「…………」 そう思ってからイスカの方を見ると、イスカはもう宮本さんの元を離れ筐体のオーナーブース前に一人で行ってしまった。 本当に何も言わないんだな。 前口上とかシオンに対しての挨拶とかはないのか。 宮本さんはイスカを横目で見るとシオンに話しかける。 「ごめんね、シオン。イスカは認めたくないのよ。あなたが私たちから離れてバトルできるようになった事実がね」 宮本さんは悲しそうな顔でそう言う。 「でも……」 シオンは言葉に詰まりながらも、なにかを言おうとするが。 宮本さんはそれを制して首を横に振る。 「私ももう少し真剣にあなたを大事にしていれば、長倉君みたいにバトル恐怖症を治せたのかもしれなかったわ」 「もう取り返しがつかないのにね」と最後にフフっと自傷的につぶやく。 それは悲しすぎます、宮本さん。 あなたは存分に大事にしていた。ただ、みんなの中で行き違いがあっただけでイスカだってシオンの事をわかってくれれば……。 僕はありのまま考えたことを言おうとした。 でも、先にシオンが宮本さんを見上げて話していた。 「私は逃げてしまいした。それは確かに変わらない事実です。……でも、私はマスター宮本 凛奈さんの武装神姫であったことを後悔していません。もちろん拾ってくれた螢斗さんのことを誇りに思っていますが、私は今も凛奈さんを大事に思っています。お姉ちゃんにも私から全部話します……だから、そんな悲しそうな声を出さないでください」 穏やかに優しく、恨みなどまったくないことを示すシオン。 「……ありがとう、シオン。いいバトルをしましょう」 清らかなシオンの瞳から底が見えたのか、顔をそむけてから礼を言う宮本さん。そして宮本さんも台について行った。 僕が言う前にシオンが全てを言った。 シオンの方がよっぽど宮本さんがわかっている。 いや、それは当り前なんだよな。元々あちらの神姫なんだ。 僕が説教臭いことを言っても、シオンの言葉の方が何倍も説得力があることだろう。 と、僕が深く考え込んでしまったのをシオンは見ると、何を勘違いしたのか慌てて言い訳をしだした。 「いや、大事に思っていただけですよ! けど、今の私には螢斗さんが一番というか、私自身にも言い聞かせる為にあんなこと言っただけでして、他意はないんですよ!?凛奈さんにも悲しい顔をしてほしくなかっただけでして……あうー、なんて説明すれば良いんでしょうか……」 「ふふふ」 そんな必死に言い繕うシオンを見てたら、なんだかおかしくなり笑ってしまった。 「あ、なんで笑うんですかー。私は本気で螢斗さんのことを――」 「わかったって、ありがとうな。シオン」 「もう、……うふふ」 シオンを可愛く思い頭を撫でる。 シオンのこんな姿を見てたら嫉妬とか馬鹿らしくなった。 今は思いっきりイスカとバトルすることを考えよう。 “壁”を乗り越えるための戦いをするために。 「じゃあ、いくよ。シオンの為の最後の戦いに」 「あ、はい。螢斗さん、頑張ります」 ―――― 廃墟街のビルの上。 シオンは廃ビルの間を飛び飛びでブースターを使い疾走していく。 索敵中だ。センサーで大まかな場所すらわからない。イスカはジャマーの装置でも積まれているのか、いまいち居所がつかめないらしい。 だからこちらは高い場所から探しているのだけど、なかなか見つからない。 あの大剣を持っているか、持っていないか、で速度が違うのだろうか。 「イスカはこういう時どんな行動するかわかるか?」 「お姉ちゃんのバトルでは……こういう時奇襲をして一発で決めていることが多かった気が……」 「うそ!? それを先に言ってよ。止まって、シオン!」 「は、はい。すいません」 ビルからビルへ移動していたシオンは身体を急停止させる。 現実であれば、地上10階ぐらいのビルの屋上。縦幅横幅共に人間サイズでいう30メートルぐらいのそこにシオンは立ち止まった。 奇襲なら、広いこの場所だったら、どこから来ても大丈夫だ。 「使い物にならないけどセンサー、共に感覚を研ぎ澄ませて探ってみて」 「はい……………」 どちらから来るだろうか。横からか上からか。 はたまたそのまま、登ってくるのか。 階段使って登ってくるなんてシュールな。普通神姫は飛べるパーツを付けてるんだからそんなことをする必要はない。 前に見たバトルでイスカはすごい跳躍力を見せていたけど、あれで高速で跳んで来たって視界は開けているんだから油断することはないと思うけど。 登ってくるか……。 登る――。 『シオン、そこから右に跳び退け!』 「え」 『いいから』 そこから、シオンは瞬時に判断、リアも気にせずぐるんと勢いよく横に転がった。 ドォンッ! と先ほどまでいた地面の床、コンクリートが盛り上がり中からイスカの姿が出てくる。腕にはミスズを仕留めたあのパイルバンカーだ。あれを使って下から仕留めるつもりだったらしい。 いきなりあんなもの持ち出してきて、本気で一発で仕決める気だったのか。 間一髪だ。 「……く、気付かれていた上にまさか避けられるとは。確かにここまで戦えるようになっているということか」 このステージを指定したのは一撃必殺のこの為だったのか。 姿を現したイスカは憎々しげに言いながらパイルバンカーをパージした。 もう使う気はないみたいだ。最大威力の一撃をもう確実に当てられないと思ったからだろう。第一あれは重そうだしな。 「螢斗さんの指揮がなかったら危なかったですけどね……」 「……キサマと違って、できた良いオーナーみたいだな」 「ふふ、確かにですね。私には勿体ないマスターです……ですけど、私はそのマスターの為に」 スッとフェリスガンを構え相手に向ける。 「お姉ちゃん、あなたを倒します」 「……面白い、行くぞ」 今のところ、あの大剣は持っていない。 転送され代わりに出してきたのは二丁の黒いサブマシンガン。それをシオンに構え返すイスカ。 痛いほどの静寂が場を包む。 先に動いたのは――シオンだ。 シオンは真横にブースターをかけながら、ビルの外に身体を投げ出す。 それを追いかけ、イスカもサブマシンガンを連射させ弾線を作りながら同時に屋上のエリア外に駆ける。 空中に投げ出されてシオンはその場に足場があるがごとく、空をうまく駆けていく。 イスカは速度を付けてビルを駆け下り、重力がないかのように衝撃を殺した後、先に下から地面についてもなおシオンに銃弾の嵐を浴びせてくる。 対するシオンは弾を空中で加速をつけながら避けつつ、フェリスファングをプレシジョンライフルに変換させ、量より質でいく気だ。 もちろんイスカも黙って見ているわけではないので、常に動き続けながら下から休みなく弾を撃ってくる。 それによってシオンも避けながらでは狙いが付けられない。 どちらも動いているからだ。 だが、その内シオンのブースターはオーバーヒートによって動けなくなる。ずっと空中を飛んではいられないから地面に降り立つ必要がある。 『シオン、そこから移動して、ビルの間へ!』 答えを返すほどの余力がないのか、僕の声を聞いて瞬間横の路地に飛ぼうとする。 だが、 路地に飛ぶ前に――目に捉えない程の速さでイスカの姿がシオンの真上に。 視界に捉えた瞬間。 「……遅い!」 「つうぅっ!」 イスカはサブマシンガンを空中で捨ててからビルの壁を三角蹴りの要領で蹴り、シオンの頭上から前転宙返りの回転かかと落とし。 シオンはそれに気付き、両手でプレシジョンバレル越しに重ね合わせ、それを受け止めた。 「……それでいて、甘い!!」 イスカは腰につけた補助ブースターを起動させ、かかと落としを放った状態から空中で器用に身体を返してから足刀の横蹴りを行った。 「ぐぁっっ!!」 その力が加わったことにより、シオンは新幹線ぐらいまで加速してメインストリートのビル壁にまで吹っ飛ばされ叩きつけられた。 ヒュンッと風を切る音だけを残して、ビル壁の中心を崩して中に突っ込まれるシオン。 ビルからはもうもうと煙を上げていて、イスカは地面に降り立ってシオンの突っ込まれたビルの前に行く。 転送されてきたのはあの緋色の大剣。 それを両手で持ち、叫ぶ 「……まだ終わりじゃないだろ!」 そう。まだ終わりじゃない。 ――まだシオンは生きている。 「……!?」 穿たれた壁、灰色の煙を上げてある場所の煙の風向きが突然丸まった。 そして、そこから飛び出てくるのは傷だらけのシオン。 両手で真下にいるイスカに構えたる武装は今のシオン最強武装「プレシジョンエクストリーマ・シューター」 「くらえぇーーーー!!」 下にいるイスカに向けて、全力で声を上げエネルギー砲を放つシオン。 「……あぁーーーー!!」 イスカは雄たけびを上げ、大剣の柄を左手で掴み、その刃を右手で自分が傷を負うのも関わらず握り、横にしてそれを真っ向から受け止める。 刃の先から真っ二つに裂かれる橙色の光砲線。 その威力からかイスカの立つ地面は次第にひび割れ、沈み込んでゆく。 それでも、受け止めているイスカが歯を食い縛りながらも動きを見せる。 「……ぐぅ!……ッ消し飛べぇ!!」 右手を柄に戻し、勢いよく縦半円にフルスイング。 光砲線はイスカから反射したように直角に曲がり右方向に真っ直ぐ飛んでいき、通りにあった欠けた電柱が折ってから後に奥のビルに爆発が生まれた。 「はぁはぁ……そんな」 シオンは必殺の武装が効かなかったことで微かに狼狽してしまっている。 ダメだ、まだイスカは――。 「……どうし……った!!」 イスカは膝を沈み込ませてから、力を上に向け、ジャンプ。 浮かんでいるシオンの下まで来ると、身体ごとさせて回転力を大剣に乗せた縦回転斬りをシオンに仕掛けた。 「……つ……は」 シオンは大剣の衝撃をもろに受けた。 それにより頼みだった『プレシジョンエクストリーマ・シューター』はフェリスガンごとバラバラに砕かれてから、光砲線と同じ方向にシオンも声にならない声を出し吹っ飛ばされていった。 数メートル先、メインストリートの端まで、飛ばされて地面に数回転がってから 横向きに倒れてやっと止まった。 『シオン!! 大丈夫か!!』 僕は声を張り裂けて叫ぶ。周りの観客も僕の悲鳴に近い声にどうしたかと筐体に集まってきた。 だが、ぼくはそんなの気にしてられない。 シオンはバトルで、これほどのダメージを負ったことはまだ一度だってない。 それゆえにシオンが死んでしまうのではないかと、不安でたまらない。 バーチャルでもダメージの酷さは変わらないんだ。 CSCの精神的に死ぬなんてことも……それは嫌だ! 「かはっ! ……うぅ、ふぅ、まだいけます。フェリスガンを盾にして、なんとかこれで済みました」 シオンは口から血のような、オイルのような黒い液体を吐きだした後、腕を支えにして、四つん這い状態から腹を押さえてなんとか立ちあがった。 これで済んだ、ってすでに満身創痍じゃないか。立ってられるのも不思議なくらいのダメージを負っているのが目に見えてわかる。 これ以上は見ていられない。 もう降参して終わらせないと。 「……螢斗さん、はぁ……サレンダーしようとしてますね?……ダメですよ……はぁ」 『なんで!? もうこれ以上やったって勝ち目がない。フェリスガンも壊れて、もうぺネトレート・烈とかの近接武装しかないじゃないか!』 「ふふ……そうですね」 「笑っている場合じゃないよ! イスカは大剣使いのストラーフ。アリエみたいに小細工が通用する神姫じゃない」 話のイスカはもう勝ったと見ているのか、シオンのいる方に歩いてくるだけだ。 「確かに……ですけど……このぺネトレートクローに“力”があったらどうします?」 「え、」 一瞬シオンの言った意味が分からなかった。 でも、それはまだ分からないままだったんじゃないか。 「ようやく、わかったんです。これの正しい使い方を……」 シオンは横腹を押さえていた手を両手が空いた状態に戻し、ぺネトレートクロー・烈を腰から取り出した。 思えばよく無事だったよな。飛ばされまくって傷がないなんてどんだけ頑丈に作られているんだ。 シオンはそれを両手ずつに持ち、自然体でリラックスさせている。 いまだにイスカはそれをただの悪足掻きだと見ているのか歩みはゆっくりだ。 「はは、……私って馬鹿ですよね? 今までなんでこんな事に気付かなかったんだろう。私はアーティル型なんだから、きっかけはいくらでもあったのに。……でも、ようやく分かったんです。もう、私は逃げないから。私は山猫型MMS神姫アーティルのシオン。マスター長倉 螢斗の武装神姫です…………すぅ、はぁ……」 自分の事を再確認するかの如く呪文のように自分の名を言う。 目を瞑り、深呼吸。精神集中をしたのち、ぺネトレートクロー・烈を構え。 そして、次の瞬間、高らかに叫んだ――。 「 テラ根性!!! 」 ――声を上げた時、ぺネトレートクロー・烈の先から眩いほどの光刃が出現し出した。 交差させた二つともから、神姫サイズの片手剣程の刃が。 西洋の剣『ジャマダハル』の形状に似た剣が生まれ出た。 あれの出現条件はあの発声なのかどうかはシオンにしか分からないけれど、これで勝負がまだ終わってないことを僕は知った。 まだシオンは戦える。 戦えるんだ。 「まだ終わりませんよ。姉さん!」 シオンはニッと不敵に笑い、前にいるイスカを見据えてそう宣言をした。 前へ 次へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/229.html
装備品設定 【ガーベラ・ストレート】 別名、菊一文字。 2036年の武装神姫発売よりも前に作成された1/10スケールの打ち刀(日本刀)。 明確な記録は残っていないが、刃物職人が所持していた 複数のAI搭載型小型ロボットによって作成されたとされている。 総作成数は数百を超えるとも言われているが、 その中でもガーベラ・ストレートと呼ばれているのは 一定以上の(ほとんど限界とも思える)品質を持ったものに限られている。 作品中で柏木浩之が「将軍家御用達の刀じゃないか!」と言っているが、これは間違い。 正確には、鎌倉時代に後鳥羽上皇が一文字派の祖で備前国の刀工、 一文字則宗に打たせた一連の日本刀の総称である。 また、呼び名も正しくは菊一文字則宗という。 ただあくまでも総称なので、菊一文字という個別の刀は存在しない。 名刀と呼ばれた刀と同意な名を持つ、すなわちそれだけの品質があると認められた 数百の中の数十にも満たない小型ロボット用の打ち刀。 正しい使い方をすれば物理的な質量を持つあらゆるものを両断すると言われているが、 その神憑り的な切れ味に反し耐久力はけして高くなく、 誤った「真っ直ぐでない振り方」をすれば容易に破損してしまう。 そのため現存するガーベラ・ストレートは20にも満たないと言われている。 公式戦ランカーでの使い手は片手で足りる程度しかいない。 取引実勢価格は最低でも人間サイズの日本刀並で、 どうかすると高級乗用車並の値がつく事も。 2006年の経済基準で言えば二百~千数百万円といったところ。 【アムドライバー】 武装神姫の開発元である島田重工の前身、総合エンターテイメント企業・K社が 2004年に展開したマルチメディア作品の総称、及びその玩具シリーズの名称である。 TVアニメの放送終了と共に収束の一途を辿っていったが、 武装神姫の発売直後にK社から分離独立したAM社が 低年齢向けのMMSとして再展開した。 特徴は「低価格で頑丈」。 おおよそ武装神姫の半分程度の予算で済み、 大元から受け継いだ設計概念は高い耐久力を発揮する。 コスト面の問題から搭載されるAIは武装神姫よりも簡易なものが採用されているが、 実用上の問題は特に無い。 扱いやすさの点からパワーを低めに設定されているのだが、 その頑丈さは過剰なハイパワー化にも容易に耐えてみせる為、 他社MMSの強化パーツとして使われる事も多い。 ただしハイパワー化は制御が難しくなる面も併せ持っており、 公式戦でも過剰なハイパワー化で勝手に自滅する新人ランカーが 毎年の様に量産されている。 【エアバイザー】 正式名称、バンシー。 アムドライバーシリーズの強化装備であり、ステルス攻撃機に酷似した形状をしている。 速度は航空機型にしてはあまり早くないものの非常に優れた飛行制御能力を持ち、 ブースター停止時でも滑空による無音飛行が行なえる。 標準火器は軽量ビームガン「クラウ・ソナス(AGBS-HBG26)」を2門。 両翼には大型フィールドジェネレーターを内装し、 飛行時の揚力補助、並びにビーム防御フィールドを展開可能。 暫定的にビームガンとして利用することもできる。 バイザー系に共通の特徴として乗り物型のビークル・モードから アムジャケット(AM社のMMS)の鎧のようなブリガンディ・モードへの変形合体機能がある。 構成パーツのそれぞれはマスィーンズの様な自立機動が可能で、 バトルの最中に数秒以下で変形合体が可能。 レギュレーションによっては試合開始時の装備しか認められない事もあるので、 特性を大きく変えられるバイザーシステムは少ない装備で多くの戦略を取れる 優れた存在であると言えよう。 【マオバイザー】 ブロードバンド配信の勇者シリーズにハマったマオがでっち上げた、 ガオガイガー似の装備。 ライナーバイザー(ネオボードバイザー・ソードダンサー)、 ドリルバイザー(ネオボードバイザー・ガンシンガーにガトリングブレード装備) ステルスバイザー(エアバイザー) の3機のバイザーマシンが合体し、マオが乗り込むことでマオバイザーが完成する。 さらに追加でモノクル・マーグ(モノクルバイザー)と合体し、モノクルハンマーモードにもなる。 完全にネタかと言うと、そうでもない。 ガーベラを使い、回避ありきで戦うマオはバリアを張られると対抗策が何も無い。 かといってバリアを貫通する重い一撃を可能にする重量のある装備品では 肝心の回避力を殺してしまう。 そこでマスィーンズ的な存在を採用する事を思いついたのだ。 大きく強力なボディをマスィーンズに与えると本体AIにも相応の負担がかかるため、 大会ルールにおいても神姫本体に重量・体積制限はあっても マスィーンズ類にはそういった規定が無い。 どこかのピz…御令嬢の様に、10体以上のスレーブ神姫を使っても構わないのだ。 マオは自分のAIが同時並行処理に向いているのをこれ幸いとし、 大型の機体をサポートメカに採用した。 エアバイザーの芸達者なフィールドジェネレイターを、 膨大な出力を持つ2機のネオボードバイザーで駆動させる事により ガオガイガーのほぼ全ての技を再現する。 唯一、ハンマーヘル&ヘブンだけは光学ハーケンに時間加速ドライブを併用し、 相手コアの時間速度をほぼ停止状態にする。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1919.html
登校 アンジェラスの視点 私が目を覚ますと綺麗な町並みの中で立っていた。 空は晴天でとても晴れていて風も穏やか。 前にもホログラムで出来たバトルをした事がありましたが、前回よりもバージョンアップしたのか、かなりリアルになっています。 ただ前回よりも更に違うと言えば… 「何故にセーラー服?」 そうです。 今、私が着用してるのは青色のセーラー服なのです。 まるで本当に女子高生になった気分です。 今回のモニターは『武装神姫に高校生をやらせる』みたいな感じでご主人様が言ってましたが…。 なるほど、そういう事ですか。 この筐体のプログラムの中にいる時点で勝手に服を着せられる訳ですね。 で、セーラー服は多分…ご主人様の趣味ですね、絶対に。 にしても、なんか服が皮膚…ていうか素体に擦れてムズムズするよーな…。 身体は基本的に素体のままだけど今までの感覚となんか違うし。 それに本来、武装神姫の私達は服という物を着ません。 …だからといって常日頃、裸という訳じゃないですよ。 素体という身体だから、別に服を着る必要性がないだけです。 人間と違う私達だからこその理由でもあります。 って、裸うんぬんは置いといて。 …他にも武装神姫としての能力がかなり限定されてるみたい。 たとえを上げるなら武装神姫にある内臓時計なんかいい例です。 従来の武装神姫には内臓時計というものが装備されていて瞬時に現在時刻を確認できるのですが、能力限定されている上に高校生ぐらいの人間並みの能力しか使えません。 故に内臓時計は使えません。 その代わりに時刻を確認するための腕時計が私の左腕についてました。 アナグロ時計で一々針を見ないといけないし、腕を顔近くに持ってこないと針が見えづらい。 「人間とは時刻を確認するためだけに、こんなにも動作するものなのですね。何だか新鮮な気分です」 …にしてもこうやって、外部装置で時間を確認することも本当に人間になったような気がします。 多分、気分の問題としてもみられると思いますが、私達武装神姫はこれだけの事でも大いに違うのです。 所で。 「皆や他の神姫達はいったい何処にいるんでしょうか?」 キョロキョロと辺りを見渡していると。 「おーい、アンジェラスー。そこで何してるの~?」 この声はクリナーレ。 声がする方に向くとクリナーレがブンブンと左手を振っていました。 ルーナとパルカも一緒です。 そしてやっぱり皆セーラーを着ていました。 私は皆がいる所に行き合流する。 よくよく見るとクリナーレとパルカのセーラー服がピンク色ですね。 ルーナは私と同じ色のセーラー服。 あ、ローファーや靴下の色も違いました。 事細かいなぁ~、と思いながら皆の事を見てると。 「い~なぁ~…」 私の脳裏にあの声が聞こえたのです。 もう一人の『私』…シャドー=アンジェラス!? 「『私』だけズルイよ♪アタシも参加させてよー♪♪」 シャドーが脳内でそう言うと突然、私の横近くに光りの電子が渦巻き、徐々に光りは人間の形になっていき…。 「フゥ~。こんな感じかな?」 電子の光りが消えると同時にシャドー=アンジェラスが出現した。 しかもちゃっかり服も着てるし。 …て、服がセーラー服じゃない!? ラフな格好で腕にシルバーとかつけちゃってるし! なんで!? どうして!? 「アハハッ♪似合う?」 クネッと身体を動かしセクシーポーズを決めるシャドー。 私と同じ顔と身体でそんなポーズをしないでほしい! 寧ろするな! 命令形ですよ! 「なんで貴女が出てくるんですか!というか、私がここにいるのに貴女が出れるはずがないです!!」 「あら?『私』は知らないの??アタシは自由にプログラムを改ざん出来るのよ♪ここはリアル世界ではなく、電子のカタマリ…バーチャル世界。つまり『私』がこの世界にいても『アタシ』が出てこれるわけ♪♪服が違うのも制服のデータを書き換えたからよ♪♪♪」 後に『便利でしょ♪』といいながらニヤリッと笑い私達に説明するシャドー。 そうでした…シャドー=アンジェラスはネットワークや電子関係は全て操作出来るという特殊能力もありました。 ルーナもそれに似た能力がありますが、レベルが違いすぎます。 チートキャラまっしぐらですよ。 そしてなによりも今一番ヤバイ事はこの筐体のプログラムはシャドーの手に落ちたという事です。 私達を生かすのも殺すのも自由。 活殺自在とはこのことかな。 どうしよう、ヤバイ状況だわ。 「うん?あぁ~、そんなに睨みつけないでよ♪別に殺し合いしたくて来たんじゃないんだから♪♪」 「えっ!?そうなの?てっきり私はそー思ってたんだけど」 「今日はこんなにも楽しい企画があるんだもん♪そんな血生臭い事なんかしたくないよ、折角だから楽しみましょ♪♪」 ニッコリと笑いながら私を見るシャドー。 本当に殺し合いをしにきたんじゃなさそう。 たまにはシャドーも楽しみたいものなのかしら? でも私だけの判断じゃマズイ。 皆に迷惑をかけちゃう場合があるから。 「クリナーレ達はどー思う?大丈夫だと思う??」 私の疑問顔のまま皆に訊いてみる。 「ボクは別に構わないよ。楽しければいいし」 「………お姉様に従うまでですわ」 「少し怖いけど、シャドーさんが嘘言ってると思えないし…大丈夫だと思います」 クリナーレ達は大丈夫みたいな事を言う。 ルーナだけは苦い顔で不服そうだけど。 大丈夫よね? 本人も殺しをしないって言ってるし…。 でも後から半殺しにしたりしないようね? 『殺しはしていないよ~♪』とか言われたら、ひとたまりもありません。 どこまで信用していいのやら。 「ネェネェ、こんな所で話し合いするのはいいけど♪早く学校に行かないとヤバイんじゃない?」 シャドーがニッコリ笑いながら言われると、私はハッと思った。 私の左手に着いてる腕時計を見ると時刻は午前8 17でした。 ち、遅刻になっちゃいます! というか学校は何処にあるの!? 武装神姫のプログラムなら即座に分かるのに能力限定されてるから学校の場所が全然分かりません! 「プログラムによると方角はこっちよ♪ほら、早くしないと学校に遅れちゃうよ♪♪」 「流石、シャドー。プログラムの中身を見れば一発必中ですか。なんだか反則的ですけど」 「率直に解説してる場合じゃないよ、ルーナ!みんな、早く行きますよ!!」 「ランニング?よし、ボクが一番だ!」 「初日にいきなり遅刻ですか。ナンセンスですわ」 「アワワワッ!遅刻はイヤですぅ~」 私達はシャドーが教えてくれた方角に向かって学校へと急いでいった。 も~っ! 今回はいったいどいう日よー! 「(c) 2006 Konami Digital Entertainment Co., Ltd.当コンテンツの再利用(再転載、再配布など)は禁止しています。」