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登場神姫 結 三河宗司の神姫。Typeハウリン 公式戦には出ていないのでランクはない。草バトルはしているらしい。 戦闘タイプは「後の先」、反撃を基本とした技を使う。 マスターの呼称は「ご主人」 性格は大人しくも芯が通っている。真面目で仕事熱心。 趣味として盆栽を育ているらしい。 番茶とお勤めを愛するちっこい巫女さん。 本編の主人公(一応)。 彼女の生活の中は殆どを巫女としての勤めが占めている。でもバトルに興味はあるのでトレーニングはしている。見た目の派手さはないが地味に強い技が多い。 最近ボディーを肌色の外装に交換した。 春音 近藤直子の神姫。Typeフブキ 現在サードランクとセカンドランクの境目にいる。 戦闘タイプは「先手」、格闘メイン。 剣術に長け実力もそこそこ。でも耐久はやっぱり低い忍者。 マスターの呼称は「マスター」 常にキャットテイルの改造品フォックステイルを付けている。 性格は忍者型には珍しく陽気で気さく。表情豊か。目が細く、細目を通り越してもはや糸目。事故に因って半壊したフェイスをそんなフェイスに交換してある。 暇があると縁側でゴロゴロしている。 綾季 近藤直子の神姫。Typeジュビジー ランクは春音と同じ。勝率は少し下。 戦闘タイプは「力技」。格闘メインで投げも使う。 ハンマーや斧といった重量武器を使う。投げて殴るとか。 マスターの呼称は「マスター」 春音同様に縞々尻尾を常備している。 性格はのほほんとした癒し系。でもとある事で豹変する。怒らせるな危険。 散歩をしていて偶に迷う。ポヤポヤ感漂う性格のおかげか女性ファンが多かったりする。 チロル 泉谷隆一郎の神姫。Typeマオチャオ ランクはサードの下の方。始めてまだ1月程。 戦闘タイプは「先の先」。格闘のみ。 研爪をメインに防壁などナックル系を好む。 ジャンプからブースターでの急降下攻撃「チロルクロス」が必殺らしい。大降りなのでトドメにしか使えない。 マスターの呼称は「お兄ちゃん」 性格は天真爛漫を地で行くお子様。でも素直。でもお馬鹿。頭を使うより勘で動くは猫の如し。 マスターが登校中は結の居る神社でトレーニングをしている。某チョコレートの懸賞で当たった限定色で、本来ボディーの白い所が黒と灰色の縞カラー(サバトラ)。髪は灰色。装備も然り。アメリカンショートヘアーみたいになっている。 風魅 管原信也の神姫。Typeストラーフ ランクはセカンドの下の方。勝率はそこそこ良いが店があるのでセンターに行く時間が限られている。 戦闘タイプは「読み」。射撃メイン。 空中からの強襲と射撃を得意としている。 マスターの呼称は「ボス」 性格は明るく話し上手。神姫関係のショップにいる為接客が上手く話術に長けている。おかげで店の看板娘に。 黒い翼がトレードマーク。 湖幸 向島明の神姫。Typeイーアネイラ ランクはファースト。勝率は五分。 戦闘タイプは「邪剣」。通常のものより攻撃的で奇抜な剣術を使う。 愛刀「セブンエッジ天叢雲」を繰りフィールドを大暴れ。破壊しまくり。 マスターの呼称は「主」(ぬし)。 性格は姉御肌。頼られると放っておけないのはマスター同様。特にトレーニングに関しての相談を受けると鍛える為にコーチとなる程。話し方がどこか変、明が持っている漫画に影響を受けているらしい。結の師匠。 普段から着流しの姿で、戦闘中は鱗模様の肩当と手甲を装備する。 着物のせいで妙に色気があるそうな。 霜霞 佐々木望の神姫。Typeストラーフ ランクはサード。草バトルばかりしているのでランクは低いが戦闘力は高い。 戦闘タイプは「搦め手」。後の先に近い。自分の攻撃から始まり、相手の攻撃を絡め取って無効にする。そんな戦闘法。射撃に対しては無意味なので普通に戦う。 宗司制作の武器「大絶」を購入し装飾を施した大剣「大絶改[乖離の両手]」を装備している。この装備が入るまではソードオブガルガンテュアを使っていた。 常に黒と赤のゴスロリを着ている。 マスターの呼称は「お姉様」 性格は穏やかで大人し目。でもバトルでは好戦的で容赦がない。お嬢様口調で上品だが好感的。 初陣(草バトル)で結に敗北し以来彼女を「結姉様」と慕っている。今では努力の結果互角以上になっているとか。 結にゴスロリを着せようとしているがいつも断られている。でもめげない。自称「結のパートナー」。 翔 斉藤陽子の神姫。Typeジルダリア ランクはサード。でも専ら草バトルで楽しんでいる。 戦闘タイプは「一撃離脱」。近距離格闘戦メイン。 マスターの呼称は「オーナー」。 性格は陽気でつかみ所がない。隙あらばイタズラする。が、友人想いの人情かでもある。そして懲りない。 山伏装束に白き翼の色を塗り替えた「灰翼」(はいはね)を付け高下駄を履いた如何にもな格好の天狗様。長い髪を靡かせて好き勝手しているらしい。普段は陽子と共に働いている。結構人気があるとか。 トルテ 長谷川眞澄の神姫。Typeマオチャオ ランクはサード。始めてまだ2週間程度。 戦闘タイプは「先の先」。格闘型。 侍型の破邪顕正をメインとしている。 バトルよりトレーニングばかりしているので勝率は低いがその分技のキレは良く技術力は高い。 マスターの呼称は「ご主人様」 性格はマオチャオには珍しくそこそこ真面目。でもやっぱりお天気なところがある。チロルとは無二の親友。 最近泉谷と同じ区に越してきた為良く泉谷家と行き来しているらしい。 サバトラなチロルのカラーを羨ましいがったので黒猫カラーに。肌色の部分以外が黒いボディーになっている。黒髪。 流 古賀尚人神姫。Typeアーンヴァル ランクはサードの中間くらい。 戦闘タイプは「先手」。高い機動性からの一撃で沈める。 手甲の外周面(小指側)に鎌の刃が付いた武器「辻風」を使う。結構器用。因みに菅原の店で買ったもの。 マスターの呼称は「旦那様」 性格は社交的で落ち着きがある。場の空気が読める娘。チロル、トルテの姉的立ち居地。 アロエ 谷川逞の神姫。Typeエウクランテ ランクはファースト。勝率はそこそこ。 戦闘タイプは「オールレンジ」。全距離で対応できる。 イーアネイラの素体にエウクランテのコアで、 猫型の足「天舞靴」を右足に、 犬型の足脚甲・「狗駆」を左足に。 ヴァッフェバニーの胸部装甲「VLBNY1 胸部アーマー」を胸に、 リアにエウクランテのウィング「アイオロス」を装備し、 ヴァッフェドルフィンの腰部装備「UWベルト・タイプ・タウチャー」を増設。 更にイーアネイラの肩装甲「アンビリトテ・ショルダー・パーツ#1、2」を付け、 ウィトゥールースの銃「ルインM21#1、2」と、 ティグリースの「風神#1,2と雷神#1、2」をマウント、 犬猫のプチマスィーンズ(計6機)の一式装備「アニマルキング」を使う。 マスターの呼称は「大将」 性格は底抜けに明るく勝っても負けても笑う笑う。バトルの前には雄叫びを上げるのが常になっている。「パギャッ!」と。 マスターの思い付いたネタに協力して笑いを取るのが楽しみらしい。装備の元ネタも古い漫画から来ている。口調が微妙な(所々?)関西弁。戦闘は容赦無い。手は抜かない。何故なら「アニマルキング」だから。キングはいつも全力全開。
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舞い踊る、白鳥の乙女達(中編) 一見すると、それはミサイルにしがみついた鳥というフォルムであった。 白鳥の“スヴェン”と隼型の“ファルケン”、百舌鳥型・“ビルガー”。 これが“Valkyrja”進化の最終形として私が考えついた、追加武装だッ! 三羽の鳥はレーザーで“天使達”を威嚇しつつ、各々の主へと寄り添う。 「“SSS”着装!“Valkyrja・Skjald-maer・Phase”へっ!!」 『な、何?晶ちゃんのお手製かな?……い、一度下がってっ』 「う、うんっ!何アレっ?!」 次の瞬間“SSS”は分解されて、姿を現したばかりの“Valkyrja”に 接続。伝承に伝わる“白鳥の乙女”をイメージした姿へと変貌させる。 その手には、棺桶風コンテナミサイルランチャーと剣、そして……槍。 音叉の様な形状の槍、と言えば神姫に詳しい諸兄には察しも付こうな。 先に動いたのは、その槍を振ったクララだった。穂先から、音が響く! 「逃がさないよ……“ミストルティン”、常若の力を殺いで!」 「うぁ……ぁあ!?な、何?ブースターの出力が、落ちる……?」 「って言うか、なんだかフラフラ……こ、このっ!」 「気をしっかり持ってっ!この音に惑わされちゃ、ダメッ!!」 「……足が止まった、今だよ」 ジャミングスレイヤー“ミストルティン”。第四弾・ジルダリアの槍を 参考に私が作った、音波攻撃武装である。音圧で攻撃するだけでなく、 元来の武装と同じく神姫の制御機能をジャミングする事が可能なのだ! 本家本元のジルダリアには若干劣るが、これでも妨害には有効である。 効果を見計らって、ロッテがミサイルランチャーを上下に割り開いた。 「“ギャッラルホルン”、彼女らの決定的な敗北を……えいっ!」 「うぅ……って何このミサイル!?このっ、って黒いッ!?」 「え、煙幕弾!だめ、離れないと視界がとれないよ?!」 「ティニア、そう言ってもさっきのがまだ……うーっ!?」 「突っ込んでも、大丈夫ですの。援護します!」 “ギャッラルホルン”と称されるミサイルコンテナには、ロッテ愛用の 煙幕弾が大量に搭載してあるのだ。黒い帳によりアーコロジーの天蓋は 闇に覆い尽くされ、その中途にいた“天使達”が暗黒に藻掻き始める。 重力設定の都合もある故、拡散には時間が掛かる。絶好のチャンスを、 アルマは見逃すことなく飛び込んでいく。雷を纏った刃を構えてなッ! 「“ノートゥング”の一撃、この状態でかわせますかっ!?」 「きゃ、あああぁぁぁぁあっ!?」 『ティニアッ!!?』 “ノートゥング”とは、とどのつまりスタン機能を備えたクレイモア。 だがシンプル故に色々と扱いやすく、打撃力も非常に高い逸品である。 上昇する出力を全て上乗せして、装甲ごと相手を叩き斬る事も可能だ。 そして事実その様に、“天使”の一人は切り伏せられた。ゆっくりと、 月面へと一人が落着していく。この時点で3対2と有利だ。だが……! 「迂闊に飛び込んじゃったのは、失敗ですよ!」 「あ……」 煙幕が晴れた時、アルマの前にはキャノンランサーの砲身があった。 ティニアとやらの位置を覚えていたミラ……か?が、接近したのだ。 今だ完全に闇が払拭されない現状で、傍目にはイリンとやらの位置は 完全に見えなくなっている。だが、度胸を付けたアルマは怯まない。 そう、ロッテが戦っていた時。アルマも己と戦っていたのだからな! 「……一つ、いいですか?」 「なんですっ?」 そっとアルマは指摘する様に、“左手”の人差し指を立て話し出した。 だが、それと同時に“SSS”から変じた“右肩”の防壁が展開する。 それは……無数のマイクロミサイルだ。それは正確に、後ろへ飛んだ! 暗闇の奥に潜んでいた天使を燻り出すには、十分な威力を持っている! 「えっ!?うわあぁぁぁっ!!」 「貴女達は、コンビネーションが完璧すぎます……!!」 「イリンッ!!な、なんでバレたの!!?」 「さっきロッテちゃんを掴まえた時も、ぴったり点対称でしたから」 「くっ……!」 同型である“天使達”のシンパシーは、三姉妹の非ではないだろう。 但し完璧すぎる同調は、こういう隙を産み出す事にも繋がっていく。 だからこそ私は、その手の調整プログラムをアルマ達には使わない。 訓練と実戦の中で積み上げ構築した、体感的なコンビネーションこそ 真に役立ち、強さを発揮する“絆の力”と言える物なのだからな!! 「これで、貴女達は分断されました!」 「後は一人ずつ、ボクら個人が……」 「お相手を務めさせてもらいますのッ!」 空中にいるミラと、アルマに叩き落とされたイリン・ティニアの位置は 大分離れている。合流を阻止する為に、ロッテとクララは落下している 二人の前に躍り出て、一対一の戦いを望んだのだ。同時に“SSS”は 願いに応える様に、展開して真の姿を見せる。追加武装としての姿だ! 全くフォルムを変えた三人を前にして、一歩も“天使達”は退かない。 それでこそ私の従姉……に仕える神姫達だと言える。見上げた闘志だ! 「妹を傷つけた以上、手加減はしないわよ!」 「それでいいです。あたしも全力でいきますから!」 「く、姉様の従妹の神姫だって手加減しないわよッ!」 「……それはボクらも同じ。さあ、決着を付けよう」 「強そうなのはわかるけど、私達も負けられないッ!!」 「大丈夫、勝つのはわたし達ですの!」 ──────どちらが真の“戦乙女”か、決着だよ……! 次に進む/メインメニューへ戻る
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第壱話 キーンコーンカーンコーン×2 国立学校法人・東都大学の構内に午前の講義が終わった事を知らせるチャイムがなる。 「はい、それじゃあ来月までにレポートの方を提出してください。テーマは「冊封体制と列強帝国主義の比較」です。これを出さなきゃ単位はあげません、よって進級できません」 中年の教授が課題を説明して文学部史学科東洋史専攻の午前の講義は終わった。 「さてと、今日の講義はもう無いし、これからどうしようか」 「いよぅ、同志よ。今はお暇かい?」 帰り支度をしながら考え事をしていた優一は声をかけられた。 今時風にまとめ上げた髪型に雑誌から丸々取ってきたようなファッション、顔つきはジャニーズ事務所に今からでもオーディションにでも行けそうな・・・、いわゆる「イケメン」である。しかし、その人物の本性を知っている優一からしてみればこれでやっとプラスマイナスがゼロになる。 「何だ拓真、言っておくが美少女フィギュアは買わないからな」 優一はそのイケメン、御堂 拓真に否定的な返事をした。実は彼、いわゆるアキバ系だ。 「おいおい優一、オタクに「フィギュアを買うな」は死活問題だぞ。どうせ暇ならサークルに来ないか?姉貴や由佳里ちゃんも来るってよ」 「ふむぅ、それじゃあご一緒させてもらおうかな。それとレッドもいるのか?」 「ったぼーよ、かく言うお前もアカツキちゃんはいつも一緒だろう?」 「私とマスターはいつも一心同体です!」 「それを言うなら以心伝心だろ」 カバンの中から出てきたアカツキに優一は的確なツッコミを入れた。 「おーやっぱりいたか。こんにちはアカツキちゃん。それとどっちもハズレだぞ」 「ハーイアカツキ、ご機嫌いかがかしら」 拓真の上着の胸ポケットから彼の神姫、騎士型のモルドレッドが出てきた。 「拓真さん、レッドちゃんこんにちは。話は聞かせてもらいました。すると、無頼さんもメリッサちゃんもいるんですね」 「そう言うことだ。ささ、行こうぜ」 「はい」 ―十分後・サークル棟内部・神姫同好会部室― 東都大学は他の大学の類に漏れず武装神姫のサークルがある。優一と拓真が所属している「神姫同好会」もその一つだが、初戦は同好会で、活動費用は全員で負担している。 「姉貴ー、クロ連れてきたぞ」 「ご苦労だったな我が弟よ」 部室の一番奥のいすに座った女性が拓真からの報告を受ける。パッチリとした切れ長の二重まぶたにすっきりとした目鼻立ち、髪の毛は焦げ茶のロングヘアーで何も飾り付けはしていないが、よく手入れされている印象を受ける。早い話が「べっぴんさん」だ。彼女の名は御堂 春香(みどう はるか)、拓真の姉であり、この同好会の会長も務めている。 「こんちわっす春香さん。由佳里はまだみたいですね」 「ああ、ゼミで少し遅くなると連絡を受けた所だ。どうせヒマだし、一戦どうだ?無頼もかまわないだろう」 「拙者は主殿の命に従うまでのこと、拒否はせぬ」 傍らに座していた春香の神姫・侍型の無頼も乗り気のようだ。 「ここで引き下がるのは俺の筋に反しますし、良いでしょう。受けて立ちますよ。行くぞアカツキ」 「はい」 実を言うとアカツキは無頼とあまり戦ったことが無く、しかも少ない試合の中で全て負けている。それも無頼本来の戦法が使われたのは一度もない。 「今回ばかりは拙者も本気で征かせてもらうぞ、アカツキ殿もそれでよかろう」 「こちらこそ、全力で征くよ」 今回のバトルフィールドは「円形闘技場」、ローマにあるコロッセオをモチーフにした最もシンプルかつ最も腕が現れるステージである。 アカツキと無頼は既に初期配置に着いている。 今回アカツキはリアウィングを装備していない。その代わりにヴァッフェバニーのバックパックをスラスターとして背中に、アークの後輪を両足に取り付けてランドスピナーとしている。左腕にはシールドではなく、どこぞの戦闘装甲騎からぶんどってきたスタントンファーを装備しており、右手にはビームサブマシンガン持っている。それ以外はいつもと同じだ。 対する無頼は胴と胸、腰回りは紅緒のデフォルト装備だが、左肩に装備されたシールドにはデカデカと「無頼」の文字がペイントされている。手には黒光りする太刀が握られており、左腕には刀の操作に支障が無いよう速射砲を装備している。対抗するつもりかどうかは知らないが、アカツキと同様にランドスピナーを装備している。 「今回は制動刀か・・・、アカツキ、間合いをよく考えて行くんだ」 「わかりました。無頼さん、行きます!」 「先手は譲ろう。いつでも来い!」 天使と武者、紅白が今、ぶつかろうとしていた。 第弐話へ とっぷへ
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アンジェラスの愛を受け入れる。 こうなってしまったのもの俺の所為だ。 アンジェラスにとってこの罪とは愛情表現だ。 だから俺はこの罪を受け入れる。 「俺は愛してるよ、アンジェラス」 「ご主人様!」 アンジェラスの奴は俺の顔に飛びつきキスしてくる。 しかも狂ったかのように。 ちゅううっ…れろっ…くちゅくちゅくちゅっ…… 「…んふ…ん…じゅる………!」 「……んぅ………」 激しく唇同士ぶつけるアンジェラスと俺。 でも人間の俺に武装神姫のアンジェラス。 身長差が違うし唇の大きさも違う。 それでもアンジェラスは一所懸命にキスしてくる。 いや、キスというよりディープキスだ。 「ご主人様は私のモノ。この世の中でたった一人の…」 「………アンジェラス…」 「たった一人の愛しい人。殺したい程に…」 言い切り終わるとまたキスしてきた。 もう俺はアンジェラスに身体を預けていたので何されようがどうでもよかった。 そして明日から新しい生活が始まるのだ。 アンジェラスと俺だけの生活が…。 …。 ……。 ………。 「おい、ルーナ」 「あ、どうでしたダーリン?あたしの小説は??」 俺は神姫用のスケッチブックを机に置く。 そして一言。 「ボツ!」 「酷~~~~い!!!!」 俺の返事に困惑するルーナ。 どうやら期待していたみたいだ。 でも残念だったな。 結果はボツだぜ。 「ヤンデレなのはいいんだけど、なんで俺達がキャラなんだよ?」 「だって扱いやすいでしたんだもの」 「肖像権侵害で訴えてやろうか?」 「そんなぁ~…」 今度は泣きそうな顔をしながら俺に迫ってくる。 その時だ、ルーナの巨乳がブルンと動いたのは。 もう溜まりません。 性欲を持て余す。 「特盛り!」 「はい?」 「あぁーいや、何でもないよ!気にすんな!!」 「変なダーリン?じゃあ今度はオリジナルキャラクターで書けば大丈夫ですね」 「ん~まぁ、多少良くなるんじゃないのか」 「ではすぐに書きます!楽しみに待っていてくださいね、ダーリン♪」 「…おう」 できれば、書いて欲しくないがそんな事は…言えないよなぁ。 ルーナの心底悲しむ顔なんか見たくないしな。 でもなんでいきなり小説なんか書こうとしんたんだろう? 動機がさっぱり解からん。 まぁいいや。 俺はパソコンに向かいヤンデレが出てくるエロゲーを起動する。 えぇーと、確か三日前のセーブデータは…あれ? なんか知らないセーブデータがあるぞ。 試しにそのセーブデータをロードしてやってみた。 するとゲームはすぐに終わって画面はスタッフエンドロールになってしまった。 ちょっ!? もう終わっちまったぞ! 俺はここまでゲームを進めた覚えはないし…。 ん~! ちょっとまて、パソコン、ヤンデレ系のヒロインが出てくるエロゲー、そしてルーナが書くヤンデレ系の小説…。 あぁ~そいう事か。 ようやく解かったよ。 「ル~ナ~」 「な、なにダーリン?変な呼び方なんかしちゃって」 「五月蝿い!テメェ、また俺のエロゲーをやったろ!」 「ゲッ!?バレてしまいましたわ」 「『ゲッ』じゃねぇー!つーかぁ、毎回毎回俺のアカウントによく入れるよな。一周間ごとにパスワードを変えているんだぞ」 「ダーリンのパスワードなんてお茶の子さいさいですわ!」 「威張るな!今日という今日は許さん!!擽りの刑に処す!!!」 「キャハハハハーーーー!!!!ゆるじでーーーー!!!!」 俺の部屋でルーナの叫び声が響く。 その叫び声を聞きやって来たアンジェラス達。 そして俺とルーナが戯れている姿を見てクスクスと笑われたのは言うまでもない。
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考えている、アタシこと豊嶋神無は考えている。誰の事を? それはまあ、彼女・・・じゃなくて彼の事を。 「だってさあ、男の子なんだよ?」 数学の吉田先生の方程式をガードするようにノートを立て置き、そんなふうに呟く。はっきりとしない感情。窓際席ゆえの暖房と、意外に暖かい冬の日差しの二重奏にぼんやりするのとはまた別の、良いような悪いような心地。 微音、叩。 「神姫って普通、女の子じゃないの・・?」 ロウの姿を思い浮かべる。顔の造形は女性的。あまり詳しくはないけれど、普通の神姫と変わりはないように見える。けれど、胸はない。父さん曰く「強化改造の影響」ということらしいけれど、そうじゃない気がする。まあ、男か女かなんて、“下の方”を調べてみればわかるはずなんだけど・・ 「できる訳、ないじゃない・・・」 ただ“その辺り”を見つめるだけだって何か恥ずかしいから、わざわざロウ用のショートパンツ作った位なのに、そんな事したら恥ずかしくて死んじゃうよ。 微音、叩、叩。 「大体、触るのだって怖いのに・・・」 ロウは普通の神姫より頑丈らしいし、その手足、後【背中の手】は大きいけど、首とか二の腕とかなんてちょっと触ったら折れちゃいそうなほど細い。すぐ痛がらせちゃいそうで触れない。でも、あの髪くらいなら触っても大丈夫かな? でも、何かヘンな事言われそうで、それが、また、怖い。 「・・・でも、今日手に触っちゃったんだよね・・・。あんな事くらいで喜んじゃって。そう言えば、ショートパンツあげた時もバカみたいに喜んでて・・・」 微音、叩、叩。軽音、叩、叩。快音、叩叩叩叩叩。 「・・・ってうるさいなあ、さっきか・・・ら?」 その音がした方を振り向く。それは窓の方、よく考えればアタシが窓際、しかもここ3階、つまり人がいる訳ない方向。振り向いたら確かに人は居なかった。でも、“居た”。 快音、叩、叩叩。 「・・カンナっ!」 「・・・え、ロウっ!?」 直ぐさま窓の鍵を外して、そっと開く。と・・・ 「カンナぁっ!!」 「うわっ!?」 急、飛込。回避。 「おりょ!?」 通過落下転倒、横転横転、巻込横転薙倒横転転倒横転、横転横転横転。 「きゃあっ!?」 「なんだぁ!?」 「うわ、机が!?」 横転激突、停止。 「ううううぅう・・・」 「・・・ロウ、あんたって・・・」 窓からアタシ目掛けて飛びかかってきたロウを避けたら、ロウはそのまま教室の中に突っ込んで机を吹っ飛ばし、クラスメイトの足を引っかけ、ホコリを巻き上げながらすごい勢いで転がって、教室の反対側の壁で止まった。ノートも教科書も机も椅子も薙ぎ倒されて、教室はメチャクチャ。クラスメイトのあびきょーかんの声。どういう勢いで飛んできたの、あんた。 「豊嶋さん! これは一体なんです!?」 「あ、吉田先生! ええと、まあ、うちの犬です」 「犬ぅ?」 「あー、いたかった。カンナよけるなよ~」 「犬って、神姫じゃん、これ」 クラスメイトが指摘する。いやまあそうなんだけどそうじゃないと言うか・・・。 「・・・ところでさ、ロウ、何しに来たの?」 「カンナのべんとーとどけに!」 確かに大きな手の中にアタシのお弁当箱が握られてる。とりあえず近づいてそれは渡して貰う。 「・・・で、用が済んだなら早く帰る!」 「は~い!」 疾走、跳躍、飛込、消。 また同じ窓から、ロウは北風みたいに飛び出していく。あんまりに唐突な出来事に、誰も声が出せないみたい。 「・・・ええと、まあ、ごめんなさい」 残りの授業時間は、お説教と教室の片づけだけで終わった。 「まったく、あいつったら・・。夕飯ヌキにしてやる」 「まあ、そのお陰で神無はお昼抜きにならなくて済んだんじゃない」 「このぐっちゃぐちゃの寄り弁見てもそんな事言うの?」 机を向かい合わせにしていた秋子にそう言い返す。ご飯とミニハンバーグとポテトサラダとオレンジが混ざっててすごい味がするんだよ、これ。 「でも、神無が神姫持ってるなんて知らなかった。あ、でも犬飼ってるって言っていたね。それがあの神姫?」 「うんまあ・・・。でもあの武装神姫っていうの? あれはしてないよ」 でも、神姫の事であんまり騒がれるのが嫌だったので、秋子も含めて学校では誰にもロウの事は言ってなかった。神姫って高いらしいから、知られると特に男子が騒ぐんだよね。大体あいつみたいなやっかい者の事を人に知られたら恥だし・・・って遅いかもう。 「確かに、神無がそういう事するようには見えない。まあ、私もそうなんだけど」 「え? 秋子にもいるの、神姫?」 「ええ。兄のお下がりみたいなものが、1人」 「どんな性格なの?」 「可愛いよ、人なつっこくて。でもちょっと頑固な所がある」 「ふうん、うちのロウよりはまともみたい」 「そうでもないのだけど・・。でもそんなに変なの、あの神姫?」 「うん、すごく変。だって“男の子”なんだよ? それに騒がしいしものは壊すしごはん犬食いだし・・・」 「男の子? そんな事もあるの?」 「あるみたい」 「ふうん。でもそう、“男の子”ね・・」 「?」 「なあなあ!! あの神姫って豊嶋のものなんだろ? カッコイイな!」 「へ!? あ、うん?」 突然、甲高い声が耳元を直撃。見上げると居たのはクラスメイトの男子。ええと確か相原武也君(男子の名前なんて全員は覚えてないや)。いきなり馴れ馴れしく話しかけられて、ちょっとびっくりする。 「俺も神姫持ってるんだけどさ、あのハウリン、見た事もない武装だよな? 何処で手に入れたんだ? バトルやらないか?」 「いや、あれ父さんが会社から連れてきた試作品?だから売ってないし、そのバトルってのもちょっと出来ないんだよね。アタシはマスターとか言うのじゃないし」 「え!! 豊嶋の親父って神姫メーカーに勤めてんの? 嘘!? 何か非売品パーツとかも貰えるの!? いいな、俺にも少し分けてくれないか?」 あ、やばい言っちゃった。だから神姫の事言わないでいたって言うのに。 「いや、そういうのはちょっと・・・」 「じゃあ、バトルだけでもしない? レギュレーションがマズイならフリーバトルでいいしさ。あ、もちリアルバトルは無しな、今修理中のパーツがあるしセッティングも・・」 「いやだからムリなんだってば・・・」 なんかよくわかんない単語の連続と、そもそもよくわかんない男子に話しかけられるウザさでちょっと嫌になる。けど相原君のこの勢いをどうやって止めれば・・・ 「・・・私の神姫で良ければ、会わせてあげてもいいわ。直接、バトルは無理だけれど、装備やバトルデータ共有で参考にはなると思う」 「何? 法善寺も神姫持ってるの!? だったら・・今度お前んちに行ってもいい?」 「え、あの、いやそれは・・・」 「お~い武也、体育館行こうぜ!」 「ああ、今行く! じゃあ、法善寺また後でな!」 そう言って、友達に呼ばれた相原君は教室から走り去って行った。 「う~ん、言うだけ言って帰るし。でも、良かったの秋子? あんな事言っちゃってさ」 「・・・私の神姫、ちょっとバトル嫌いなだけだから」 「いやそうじゃなくって相原君を家に呼ぶって話。秋子って、男の子と遊ばないでしょ普段。神姫の事も隠してたんだから、そっちに興味ある訳でもなさそうだし。アタシを庇ったって言うなら後でアタシが断るよ?」 「そうじゃないの。ただ、ちょっと相原君に興味があるだけ」 「・・・あ、なるほど。秋子って相原君好きなんだ」 「・・ちょっと、興味があるだけだって」 クールな秋子が珍しくしおらしい顔を見せる。そういうのまだ興味ないんだって思ってた。でもそんな事も無いよね。 「うん、わかった。出来る事があったら応援するよ」 「それはいいけれど、神無は、自分の事も考えた方が言いよ」 「へ? どういう、意味?」 「え!神姫での犯行だったんですかあの窃盗!!」 豊嶋甲の裏返った声が、BLADEダイナミクス第4研究部に木霊する。周りの部下に変な目で一瞬見られるが、部長が変なのはいつもの事と、すぐに視線は消える。 『ああ、私がずっと犯人を追っていたんだ。そちらの方は処理出来たんだが、それよりちょっと気になる事があってな』 甲がパソコンに写した複雑な面持ちを知ってか知らずか、ボイスチャットの相手は少し重い声色に変わる。 「気になるって、もしかして犯行に使われた武装神姫の事ですか、“ファナティック”さん?」 甲は画面の向こうの低い電子音の主、ネットハッカー“ファナティック”に問いかける。“彼”はハッカーとは言え通常のそれとは毛色が違い、メーカー等関係者への有用な情報提供、ネットに漂う違法神姫サイトのクラッキングなど、MMS、特に神姫を守護する存在として有名だった。甲自身も研究の支援を受けた経緯があり、“彼”には無二の信頼を寄せていたのだ。 『いや、それを破壊した者の事だ。お前の神姫、確かロウ、と言ったな』 「ええまあ。ってロウがどうかしたんですか?」 『そのロウが、犯人の神姫を破壊した』 「へ!? ロウが!? そういえば庭に何か居たとか・・・でも何も無かったしなぁ・・・」 『それは私が回収した。犯人を追跡する途中で、その現場を目撃したんだ。どうもお前の家に盗みに入る所を、ロウが阻止したらしい』 「うちに盗みに? 本当に入ってたのかよ・・・」 『問題は其処じゃない。その神姫が、“自分の同類である神姫を何の躊躇いもなく破壊した”と言う事だ』 「・・・どういう、事ですか? 大体ロウはそんな凶暴な訳ないし・・・」 『その神姫は、“神姫を認識していない”。認識していなければただの人形と同じように“壊せる”。それどころか下手をすれば人間にも危害を加える可能性がある』 「う、嘘でしょ!?」 思わず甲は画面にかぶりつく。 『その神姫は、論理プロテクトが外れている可能性がある。いや・・適応されなくなった、とでも言った方が正しいか。確かその神姫は、自分の事を“男”と思っていると言っていたのだったな?』 「変な話だと思うけど、別にいっかと思ってたんですが」 『・・・普通はもっと怪しむがな。ともかく、そいつにお前は「留守中の家を守れ」と言ったのだったな』 「ええまあ、犬だし、昼間うちは蒼とロウしかいないから、家を守るのはお前の役目だって言ったけども確か」 『つまりはその“家を守る”為なら誰を傷つけても何とも思わないという事だ』 「そんな! そんな事、出来る訳・・・」 『“人間”ならば家族を守る為になりふり構わず、なんて事は普通だろう? いや、もっと残酷な手段であろうと日常茶飯事ではないか? “G・L”に感染しているとすれば、そんな事も有り得るんだろうな』 「へ? “G・L”って何のことで?」 『後で話す。まずは確認してからだ。今からその神姫に会う』 「ロウに会うって・・・」 『お前の家が近いと判ったからな、もう家の近くに来ている。もうすぐ・・・』 「もうすぐ・・・ 来たわね」 塀の上を歩いて来る影を見つけ、アニーはボイスチャットを一旦保留する。【玉座】を操作して、緩い速度で、その影へと近づく。 「ガッコってとこ、おもしろそーだな、カンナもいるし。もっといたかったけど、でもカンナがかえれっていうし・・・」 「はあい、あなたがロウ君ね」 「? あんただれだ? ロウとおんなじか? おんなじみたいなにおいがする」 「・・ふうん、自覚もあるんだ。それにジャミング無しでも“2次感染”もしない、本物ね、“G・L”だわ」 「だから、あんただれ?」 「ああ、ごめんなさい。あたしはアニーちゃんって言うのよ。あなたに大事な事を教えに来たのよ」 「え!! それってセンセってやつか! ガッコでいろんなことおしえてくれるひと!」 「先生? まあ、そうとも言えるかもね」 「やったー! これでおれもガッコにかよえる~!!」 「え!? いや、そういう事じゃないんだけど・・・」 「そうすれば、ずっとカンナといっしょだ!」 彼女、いや彼の名はロウ。それは「狼」ではなく、「浪」でもなく、「桜」でもなく、「Law」でもなければ、「Low」でもない。「ろー」、それはただ家族の為にある名。 ・・・“男”としての誇りに満ちた名。 “女性”を失い、同族を握り潰し、そして己が身すら省みる術を知らない。だが、家族があり、誇りがあり、・・・そして“愛するもの”が居る。 その“心”の何処が、劣ると言えるか? その心の何処が、狂っていると言えるだろうか? 答えを出せる“人間”は居ない。 ―第1章 狂犬 終― 目次へ
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現(いまどき)の神姫──あるいは祭 世間では、物の見事にお盆である。一般の人々は行楽の時だろうが、 接客業となれば暇か忙殺か、どちらかしかない。さて、私・槇野晶が MMSショップ“ALChemist”を置く秋葉原はと言うと、表通りを中心に 何処から集まったのか……とボヤきたくなる程の混雑を見せている。 「と言っても分かってるんだよ、マイスターもさっき行ってきたもん」 「これクララや、人の思考を勝手に継ぎ足すでない……とはいえ、な」 「ぁ、あぅぅう……鳳凰杯の比になりませんよぉ~……有明と幕張~」 「アルマお姉ちゃん、すっかり熱がこもっちゃってますの~……もう」 「やむを得まい。日中“行軍”して、これから店を開けるのだしな?」 そう。今年は久しぶりに、皆を連れて“祭典”へと行く事にしたのだ。 察しのいい諸兄なら分かるだろう、欲望渦巻く夏冬二回の“アレ”だ。 ……相変わらず殺人的な熱さと臭気だった。エアコンは有ると言うが、 あの大群衆だ。熱気を醒ますには、とても出力が足りんな。物見遊山が 主目的だったので、敢えて人混みは避けたのだが……それでもキツイ。 オマケにコスプレ等と勘違いされて写真を強請られたのも、頂けんな。 「事前事後の風呂、クリーニングに給水……毎回行く者の気が知れん」 「カメラさんを蹴り倒さなかったのは、良心が働いた為でしょうか?」 「……単純に、全力で薙ぎ倒す為のスペースが無かっただけなんだよ」 「でもマイスター、今回はわたし達が居る事で大分違ってましたの♪」 「有無。神姫があの界隈でどう扱われているか、妙に気になってな?」 ロッテのみならずアルマとクララをも擁して、敏感になってきたのだ。 今回“祭典”に私がわざわざ出向いた理由の一つは、それなのだが…… お約束の自作書籍類も、いかがわしい系統の本はそう多くなかったな。 と言っても、その手の本が集中する三日目は完全にスルーしたのだが。 妙に人気があったのは、マオチャオを題材にした小説本だったか……? 「今年は幕張で、玩具展示会もあったもんね。神姫も新作一杯だよ」 「うむ……第七弾・第八弾の試作型が、コンパニオンをするとはな」 「でも、そっちもハシゴするのはハードでしたよマイスター~……」 「そう言うなアルマや、なかなか可愛らしい連中だったじゃないか」 「わたしは、あの限定マオチャオさんが一番気に入りましたの~♪」 人気だったとは言え本は買わなかった……荷物を増やしたくないのでな。 だが気にはなるので、通販を実施するならばそちらを利用しようと思う。 それより、早々と抜け出して赴いた幕張もなかなかの物だった。神姫達を 扱う“EDEN”主催の共同ブースでは、様々な趣向が凝らされていた。 その最たる物こそ、新作の神姫達数名による“自己紹介”だったのだな。 『こんにちわなのにゃー!暑い中、有明から来た人もいるにゃー!?』 『こら、マオ。飛ばしすぎッ……オーナーの皆様初めまして、凛です』 『にゃー達は、今日ここで先行発売してるリミテッドタイプなのだ!』 『ってマオ!あの娘は神姫でしょ!すみませんでした、オーナーさん』 『気にしないで下さいですの~♪マイスターはこういうの好きですし』 リペイントとマイナーチェンジを施された第二弾の神姫二人は、私達を 出汁にして見事ギャラリーを沸かせた。その後、まるでモデル達の様に 最新作の神姫が己の一芸を披露しながら、特設ブースに出てきたのだ。 無論神姫の体格を考慮して、ブース上部には拡大用モニターも完備だ。 『俺様、お前、マルカジリーッ!なんて事はしないぞ、幾ら寅でも』 『い、いたいぃぃ~……こほん、でもウチらは合体もこなしますえ』 『第六弾が合体なら、私達は変形を主軸に勧めます。私、アークと』 『私、イーダです。地上戦ではこのスピードと機動性が武器ですよ』 『ちょーっと待った!ボクらも忘れてもらっちゃ困るね、飛鳥に!』 『小官はムルメルティア!軍事的要素を最大限活かして戦います!』 『ほう、今後も新機種が続々登場するのか……勉強は怠れぬな……』 とまあ、漫才なのか模擬戦なのか分からぬ掛け合いに始まり、己の躯と 武装を十分に見せつける為のファッションショー的イベントもあった。 掛け合いには居なかったEX版の面々も、ここでは存分に輝いていた。 圧巻は、ツガル二人による激しいダンスだ。限定版の青い娘もいたぞ。 そしてその横で、常設展示として新機種の紹介をしていた二人が……! 『あ、マイスター!こっちのエウクランテとイーアネイラは凄いです!』 『……如何ですか、レーシングカーや高級外車を彷彿とさせるこの躯は』 『ふふふ。黒と紅の妖しい魅力、このクールなボディペイント。そして』 『え!?あ、あぁぁ……イーアネイラさん、胸が増量されてますの!?』 『お~っほっほっほっ!そう、限定版らしく更に美しく更に華麗にッ!』 『……ボクらにはマイスターが付いてるから、悔しくなんかないんだよ』 『ぷ、プレッシャーを掛けるな三人とも!しかし、これは誰の企画だ?』 あの黒い限定版の姿は、今でも忘れられぬ。嫉妬の炎が神姫センターで 更に巻き上がるのも、そう遠い未来の物語では無さそうだな……有無。 そう言う訳で、半日使って“現(いまどき)の神姫”を探ってきたのだ。 決して入念に見たという訳ではないのだが、アンテナ感度は実にいい。 今後の創作活動にも、意欲が益々かき立てられるという物だ!まずは、 秋冬モデルの“Electro Lolita”を作り上げる所から始めるか、有無! 「実にいい収穫だった。お前達も、存分に見聞きして感じただろう?」 「はいですの♪マイスターの創作意欲がある内に、お手伝いしますの」 「まあ待て。風呂あがりでバッテリーが切れかけているだろう、皆?」 「あ……そう言えば。でもマイスター、お店は手伝わなくても……?」 「何、疲れていても半日位なら一人でこなせる。デザインもするしな」 「……そう言う事なら、ボクらは十分“お昼寝”させてもらうんだよ」 ──────現(いまどき)の神姫は、未来に向けて何処へ行くのかな? メインメニューへ戻る
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授業 さぁーて困った事になりました。 突然の放送で困惑しながらも考え込む私。 ある意味簡単な事ですが簡単故に悩んでしまう。 いえ、私一人だけの事だったらすぐに終るでしょうが、今回は他の神姫の方々が居ますので私の独断は決める事はできません。 やはりここは話し合いをしなければ。 「サラ、アイゼン、犬子さん。ちょっと集まってくれませんか」 私の掛け声に集まってくるサラ達。 輪を作るように、というよりゲームコントローラについてる方向キーの十字キーのように集まる。 並び方的には上がアイゼン、下が私、左がサラ、右が犬子さん。 ご主人様の神姫は私含めて四人とパチモン私(シャドウの事)、合計で五人いるのでその内の私が代表で出ます。 この面子で決めないといけません。 先生役を誰がやるのかを! 「え~と、さっきの放送通りに先生役を誰がやるか、という事なんですが…どうしましょうか?」 「どうするといわれましても」 「………なんでも」 「どうしましょうか?」 やっぱりサラ達も困惑しているご様子。 アイゼンは無表情で『なんでも』と言ったのであんまり困ってないのかな? それに『なんでも』って『なんでもいい』の略? 「…あ…でも…マスターを誘惑できる…かも…」 誘惑? アイゼンのマスターって確か男性の…島田祐一さん、でしったけ。 私のご主人様より年下に見えたので高校生あたりかな。 「衣替えの時期…失敗した……次こそ…」 「次こそ女教師姿でアイゼンのマスターを誘惑するの?キャーッ!アイゼンちゃんたら大胆!!」 「……ウザッ…」 いきなりヒョッコリ、とアイゼンのバックをとりつつ天使の如くの笑みをむけるシャドウ。 ちょっと何勝手に来てるのよ! 貴女は邪魔だからクリナーレ達の所に居てよ! それにアイゼンに迷惑かけないで! あからさまに嫌がれてるよ! ていうか、ハッキリと『ウザッ』って言われたから! このKYシャドウ! 「『KYシャドウ』って言うけど、自分の事も言ってるんだよ。半分アタシなんだから♪」 「キィーーーー!!!!黙らっしゃい!」 「まあまあ、落ちついて」 「そうですよー」 シャドウに掴みかかろうとした私をサラと犬子さんが左右から掴み止める。 はっ私とした事が取り乱してしまいました。 いけない、いけない。 「そうそう、冷静になるのよ♪クールになれアンジェラス♪♪」 「その台詞は某アニメの著作権に触れそうだから言うな」 「硬いこと言いっこなし~♪」 ウザイ…本当にウザイ。 殴り飛ばしてやりたい。 そんな衝動にかられてると犬子さんが。 「とりあえず、先生役をどのように決めるかを考えましょう、なるべく公平な方法で」 「まぁ、それなら」 「……意義無し…」 犬子さんが建設的な意見を出してくれました。 正直な話、助かりますー。 というかスミマセン。 このパチモン私の所為で話しを進める事ができなくて。 サラと犬子さんが私から離れ、また最初の陣形になる。 「それで、公平な決め方とは?」 サラが犬子さんに質問すると犬子さんは困った表情になり、そして重々しく口を開いた。 「いえ、そこまではまだ考えていませんが」 「…やっぱし……」 サラの質問にあっさりと答える犬子さんに、ツッコミを入れるアイゼン。 意外とアイゼンって容赦ない? 「申し訳ありません……といいますか、何故私が謝っているのでしょう?」 律儀に謝る犬子さん、でも最後の言葉に疑問を言う。 ええぇ、それは正しい言い方だと思いますよ。 でも公平の決め方かぁ~。 実際に公平な決め方と言われてもそう簡単に出てくるものでじゃないし。 一応、この面子で話しをしてみましょう。 一方、その頃のオーナー達は。 龍悪の視点 「あいつ等、いったい何やってんだが…」 その後に『はぁ~…』と溜息をつく。 今までの一部始終を見ていてドキドキハラハラさせられてきたもんな。 オマケにシャドウも出てくるし。 でもシャドウもこの企画を楽しんでるみたいだし、殺伐みたい事はしないだろう…多分。 一時はどうなるかと思ったけど。 あ、それと。 「スマンな、島田君。シャドウの所為でアイゼンに迷惑をかけてる。謝る」 「あ、いえいえ。あの時のバトルは驚かせれましたが、今はアイゼンと仲良くやってると思います」 「…アレ、本当に仲良くしてるかな。ただたんにアイゼンにウザイと思われてるだけと思うんだが。あ、それとアイゼンが先程言ってた、『誘惑』についてだがー、何かあったのか?」 「エッ!?あ、あれはーそのー…スミマセン」 「何で謝るんだよ」 「ちょっとその話しはー…」 「あ、なんとなく解った。いいよ、言わなくて。誰にでも喋りたくない事なんてあるもんさぁ」 「そうですね」 喋り終わった後、二人で一緒に溜息を吐いたのは言うまでもない。 そして戻って神姫の方。 アンジェラスの視点 「…はぁ~なかなか決まりませんねー」 「…もう何でもいいでしょう。頭にコップを乗せて一番長く落とさなかった人の勝ち、とか」 私が言った事に相づちうちながら言うサラ。 にしても困りました。 色々な案が出ましたが、あーでもないこーでもない、と皆言ってどっちつかずになってしまい、結局の所決まってない。 『あみだくじ』『多数決』『じゃんけん』その他もろもろ…って、そんなに無いんですけどね。 でもこのままでは埒があきません。 時間も結構経ってしまったし…。 「そんなに悩んでるなら『じゃんけん』でやればいいのに♪」 再びヒョッコリ、と顔を出すシャドウ。 このお邪魔虫をまずどうにかするのが先決かな? 「まぁまぁ、そう怒りに身をまかせちゃダメよ。アタシが何故『じゃんけん』を選んだか分かる?」 「分からない」 「分かりませんね」 「………」 「申し訳ありません、判りかねます」 一斉に『分からない』コール。 アイゼンだけは顔を左右に振ってジェスチャーする。 するとシャドウが何気ないセクシーポーズの格好しながら。 「私達は何で出来ている?『身体は素体でできている』なんて答えた人には、エクスカリバーをあげる♪」 「だからそういうネタは止めなさいって、ていうか、そういうのどっから覚えてくるのよ」 「マスターのパソコンにインストールされてるエロゲーから閲覧したの♪」 「…あっそー、で結局の所何が言いたいのよ」 「私達は武装神姫。人間より細かく動作を見れるじゃない。故に誰が『後だし』したか分かる、という事よ♪」 あーなるほど、確かにそうですね。 人間の反応速度と武装神姫は違います。 神姫同士ならバトルで鍛えられた反射神経みたいのが作動して瞬時に動くはず。 これなら『じゃんけん』でも構わないかもしれませんね。 「それを言うならばシャドウさん、一つ疑問があるのですが」 「はい、そこのプリチーな犬子さん。何かな?くだらない事言ったら、もれなくアタシからR‐18の世界に連れて行くプレゼントをあげる♪」 「疑問一つ挟んだだけでそこまでリスクを負わねばならないとは、どこの圧政地区ですか」 「はい、そこでチャカさないの」 ポカっとシャドウの頭を叩く。 まったくこのシャドウはマジでどうにかなんないかな。 いっその事、何かに頭を打ち付けて死ねばいいのに。 「冗談、冗談よ♪で、何?」 「あの、私たちは今現在、このヴァーチャル世界で能力制限されていて、通常の人間と同じ程度の能力しか発揮できないはずです。当然、反応速度も」 「ん~…やっぱりくだらない質問だね。そんな犬子さんにR‐18指定世界に突入♪」 「い、いえ貴女先ほど、冗談と仰っていたはずですが」 犬子さんは、じりじりと後ずさりしながら答えた。 さすがの私も『仏の顔も三度まで』です! 「いい加減にしなさい!」 今度はグーでシャドウの右を殴り犬子さんを助ける。 というか殴り飛ばしってやった。 殴り飛ばされたシャドウは勢いよく机と椅子を巻き込みながらゴロゴロと転倒する。 これ以上犬子さんに迷惑かけるなら本気で潰すよ! 「も~、容赦ないなぁ~アタシの半身は。分かったわ、ちゃんと説明するからカッカしないで。犬子ちゃん、アタシを誰だと思う?」 殴りとばされたのにも関わらず涼しそうで平気な顔しながら起き上がるシャドウ。 やっぱり、あの程度じゃダメなのね。 「は?ええと、アンジェラスさんのシャドウだとお伺いしましたが」 「正解♪そしてアタシはこのヴァーチャル世界、基、この筐体システムを掌握してるのよ。つまり『じゃんけん』する時だけ本来の皆の反応速度を元に戻す事ぐらい造作もないって事よ」 「…チート野郎……」 「あら、可愛いアイゼンがそんな乱暴な言葉を使っちゃだめよ♪因みに女に向かって言っているから『チート野郎』じゃなくて『チートアマ』って言わないと♪♪女に対しては『アマ』だから♪♪♪」 さりげなくアイゼンが嫌味を言った。 それをどうでもいい事でシャドウが訂正する。 訂正するのは良いとして、文句言われてる事に腹立たないのかな。 まぁ常に機嫌を良くしてるみたいだからいいか。 「では、やりましょうか?」 「…やる」 サラとアイゼンはもうじゃんけんの構えをとっていた。 「最後に負けた人が先生役をそれでいいね!」 私がそう言うとサラ達が無言で頷く。 よし、準備は整った。 あとは運のみ! 「いくよー!じゃんけん!」 パーを出す チョキを出す グーを出す 銃を出せばいいんじゃないの
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戻る TOPへ 次へ 一回戦目はシルヴィアの粘り勝ちだった。 一撃離脱を繰り返すシルヴィアと、数少ない反撃のチャンスを物にする敵マオチャオ。時間経過と共に両者に蓄積されるダメージ。三度目の格闘戦にもつれ込んだ際に功を焦った猫型が迂闊なステップを踏み、そこをマグネティックランチャーで迎撃。接近の間合いで放たれた高速貫通弾は猫型の装甲を貫いた。 敵は一回戦目から持久戦に陥った事により焦れていたのだろう。だがおれ達のテンションは最高にクールだった。御影キョウジと《ミラー・オブ・オーデアル》マスターミラーを倒す。この目標を掲げるシルヴィアは焦りが生じやすい持久戦の中でも勝利を見逃す事は無かった。 二回戦目までまだ間がある。控え室に戻り、備え付けの自販機でホットココアを購入。シルヴィアには神姫サイズのアップルティーを買ってやる。コーヒーブレイク。二人とも珈琲飲んでないけど。 神姫サイズの紙コップにアップルティーが注がれていく様を見て、おれはまた昨日の出来事を思い返していた。 ツガル戦術論 鏡の試練 後編5 エルゴのバトルフロア。バトル観戦の途中でブレイクタイム。休憩スペースに備え付けられた自販機を認める。マスターミラーに飲食出来るのか確認し、ミラーの好みに合わせてドリンクを選ぶつもりだったが、その必要は無いと彼女に言われた。 飲食が出来る神姫と一緒に食事する際は、マスターの分量を神姫に分けてあげるのが普通だ。武装神姫と言うバトルサービスが市民権を得ているとは言え、神姫と食事をするユーザーが一般的に多いわけではない。神姫用フードサービスなどは見たことは無いし、もし現実的な状況になったとしてもコスト的な観点から普及はまだまだ難しいだろう。かと言ってマスターが神姫のために人間一人前を注文しては無駄な出費が多い。そんな重箱の隅に転がる要望にいち早く応えたのが通称「ちっちゃい物研」。彼らは神姫サイズまで小型化された自動販売機の製作に着手したのだ。自動販売機の概念発祥は紀元前の古代エジプトまでさかのぼり、国内に於けるメカトロニクスの元祖は二十世紀初頭に完成されていたが、新世紀から四半世紀を余裕で過ぎた今日のテクノロジーを以ってしても紙コップ自販機の、あの『飲み物が流れた後に紙コップが降ってくる』悲劇は健在だった。 神姫のドリンクを缶で提供するにはあまりに大掛かりな投資になる。紙コップ式の選択は必然と言えた。だが前述にある悲劇の存在が技術者達の行く手を阻む。神姫達にあの悲劇を味あわせてなるものか! かくして男達は立ち上がる。だが製作は難航した。突貫作業でこさえた試作一号はとても満足の行く精度は出なかった。そして失敗の連続。いたずらに過ぎて行く時間。無力感と絶望感が男達に圧し掛かる。 男達の神姫は彼らを思いやった。 「マスター、もういいんです。私はマスターの好きな飲み物は全部、大好きですよ」 「砂糖やミルクが入ってないコーヒーでも、私、飲めますから!」 「頼れる神姫にはブラックが似合うんです! …あれ? おかしい… な」 「やっぱり… まだ… 飲めませんでした。私、まだまだ、頼れる神姫じゃないみたい… です」 男達は再び立ち上がった。何度も試行錯誤を繰り返し幾度も挫折を味わい数々の困難と逆境が彼らを襲う。つらく苦しい長期戦となった。だが男達は一人として諦めたりはしなかった。何故なら男達の目は常に未来を見据えていたからだ! そしてついに神姫サイズの紙コップ自動販売機の先行量産型が完成した。 数少ない先行量産型は大規模神姫センターに先行モニターとして設置され、そのうちの一台は製作スタッフの熱意あるプッシュにより『ホビーショップエルゴ』に設置される事と相成った。 かくして、エルゴのバトルフロアには神姫サイズの自動販売機が設置され、休憩スペースにおいてマスターと神姫が個々の好みのドリンクを片手に、今まで以上に賑わう事となったのである。 だがこのマシン設置の裏側に上記の壮絶なドラマが存在する事を、多くの人は知らない。 「私にはグレープジュースを頼む」 氷は抜きで。 神姫サイズの紙コップに黄金色のドリンクが注がれてゆく。途方も無い技術の塊とは思えないほどの手軽さで神姫サイズのグレープフルーツジュースは完成した。こんな極小サイズで精巧に動くこの筐体を初めて目の当たりにし、製作秘話を知らないおれでも製作者に最大限の敬意を持った。 大会の二回戦目は大いにてこずった。 敵の武装構成は大幅に手を加えられており、コンセプトを一言で表せば突撃兎型。武装はバズーカ、フックショット、マイクロミサイルランチャーをひとまとめにした統合武装火器を一丁装備。全身を覆う重装甲に背面高機動ユニットを装着した出で立ちのバッフェバニーによる執拗な攻撃がシルヴィアを襲った。 一個の兵器を評価する際、一般的に重視される能力は『攻撃力・防御力・機動力』の三点である。この評価はバトルステージに立つ神姫にも当てはまる。これらの要素はお互いにバランスを取り合うように存在しているのだ。『攻撃力』と『防御力』を上げれば重量がかさみ『機動力』が落ちる。『機動力』を上げるためには『攻撃力』と『防御力』を削る必要がある。『機動力』をそのままに『攻撃力』を上げるためには『防御力』を削ぎ落とさなくてはならない。云々。あっちを立てればこっちが立たずのジレンマの連鎖、トリレンマが延々と付き纏うのだ。明確なコンセプトが見えるマスターは、この限られたリソースを神姫の戦術に合わせ、三点に的確に配分しているのである。 外部電源装置、パワーユニット装着などの手段を講じればリソースの底上げが可能である。だが、攻撃力の増強はある上限を超えれば過度の武装装着と言う手法を取らざるを得なく、複数火器扱いの煩雑さが足枷となり得る。防御力の増強は装甲過剰装備による可動クリアランスの低下、及び運動性の低下を招き、結果的に攻撃力と防御力の低下につながる。機動力の増強は、パワフルな機動ユニットの制御技術と高度な射撃及び格闘能力が無ければかなわない。 明確なコンセプトを打ち立て、余りあるリソースを適切に配分しなくては強化足りえないのだ。もちろん創意工夫と取捨選択により上記の欠点を抑えつつ強化する事は可能であるが、即ちマスターの武装選択センスと神姫の高い能力無しには無し得ないパワーアップなのである。手軽に取れる手段では無い。 だが今回の相手、敵兎型の装備する武装センスと、それらを操る神姫の手腕は洗練され尽くしている。重装甲により高い防御力を実現。パワーユニット兼機動ユニットを背負う事で機動力を確保、さらに複数火器を一つにまとめる事で総重量を抑え機動力低下の懸念を解決している。総合攻撃力こそ控えめなものの、右腕に装備された統合武装バズーカ『カリーナ=アン』のコンセプトは明確である。即ち、「マイクロミサイルで撹乱しフックショットで押さえつけバズーカで粉砕する」。脅威の度合いは、限りなく高い。 こんな敵に小細工は通用しない。真っ向勝負だ。 シルヴィア、飛翔。敵の唯一の弱点である低い運動性に付け入るために、近距離射撃戦を敢行する。 ホットココアを片手に、スクリーン上で繰り広げられるバトルの戦術分析を続行していると、こちらの度肝を抜く神姫が出現した。コートを羽織った犬型。カバンやコートの中に武装を仕込む暗器使いとして分析を続けていたのだが。彼女が劣勢に追い詰められると何と発光、そしていかにも戦闘には不向きな、こう、「ヒラヒラでフリフリ」とした衣装へと変身を遂げたのだ。いや落ち着け、あれは武装換装の一形態だ、と分析を続行したが、珍妙な名乗りを可愛らしい声で述べられると、おれは口に含んだホットココアを吹き出すしか無かった。なんだあれは。理解不能。だが顔を真っ赤に染めながら変身後の前口上を述べるハウリンタイプを見れば、マスターの明確な意図が心に響く。 おれは心の中で静かに親指を立てた。 グッジョブ。 心の栄養を補給し、引き続き戦術分析を続ける。 続く 戻る TOPへ 次へ
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皆様、始めましテ。自分ハ第6弾建機型MMSグラップラップの試作機、ビルトと申しマス。只今自分ハ神姫センターの一角ニ有ル、とあル店舗ニ居リマス。 「さーさー、キモオタ共も婦女子諸君もよってらっしゃいですにゃ! うちは安さと品揃えじゃ他のツイヅイを許さないですのにゃ! ホラっ! 其処のこぎたにゃいアンタ、自分の神姫に甲斐性見せたって損は無いのですにゃよ?」 「小汚くって悪かったな、仕事帰りだよ。・・・あ、そういやシビルが何故かツナギなんて着たがってた覚えはあるけど、流石に・・・」 「あるですにゃ。ピンクのツナギだって完備完備!!」 自分ハ、武装神姫デ在りマス。つまりハ戦い合う為ニ開発されたタ機械でありマス。 「へえ、久しぶりに来て見たらこんなお店もあったのね。あ、これつくもに似合いそうな色のケープ。このストールとかロングスカートとか帽子も・・・」 「隊長ぉっ!! そんなものでお金使い切る前に、僕を早くメンテに連れて行って下さいよぉ!!」 「・・・何だか甘い匂いのする客だにゃ。店内への飲食物の持ち込みは止めて欲しいにゃ。試着の時ベタるから」 そしテ自分ハ建機型でありマス。建機と言えバ藤岡・・・でハ無ク、総じて無骨ナ外見ヲ有しマス。何故ならバその用途に見タ目は重要視されまセン。自分モそれニ習イ、見タ目ニ囚われズ何時か巡り合ウ自分ノ主の為ニ粉骨砕身すル所存デス。 「ったくネギの奴―、『俺は金出さないぞ。欲しかったら盗ってでも来い。俺はゴスロリ以外買う気は無い。そもそもゴスロリこそ、少女の魅力を最大に引き出すファッションでありetcetc・・・・』とか脳沸いた事言いやがってー! そんなに言うなら望みどおりにやってやるー! やっぱいいよなフライトジャケットはー」 「にゃに!? にゃーの目前で万引きするとはごっつええ度胸ですにゃ!! 行け下僕ぷちどもっ!! 泥棒カラスを北京ダックにするにゃ!!」 「後このスカジャンも・・・ あ? 何だこのぷち共はー。オレっちの邪魔を・・・」 「必殺にゃイツオブラウンドぉ~!!!」 射撃斬撃砲撃突撃爆撃襲撃狙撃打撃投撃鞭撃過激惨劇、盥。 「ぎゃー! まわってまわってまわってオチ~る~〈泣〉」 「・・・なのニどうしテ自分ハ服飾店ノ店員なドやって居ルのでしょウカ!?」 「新入り! つべこべ言ってにゃいで働くにゃ!! 手が多いからって使わなきゃムダムダにゃ!」 窓ヲ見れバ、人工光デ埋メ尽クされてイタ閉店時間。慣れヌ作業デ疲レ果てた自分ノ横デ、先輩はデコマ様よリ何かヲ受け取ル。在れハ、プリペイドカード? 「はいにゃーの助、バイト代だよ。新人教育の分、それとアレの分も含めて今日は多めにしておいたよ」 「さすがデコ魔ちゃん、あのヘタレと違って気前がいいですにゃ♪ これであのヘタレを素敵な刺激の旅へと誘えますにゃ♪ ぐふふふふ~♪」 「あはは、ほどほどにね。それじゃあ、お疲れ様。兄さんによろしく」 「お疲れにゃ! また猫の手が借りたくにゃったらいつでも呼ぶにゃ~♪」 言ウよリ早ク、先輩はカードを振リ回シながラ走り去って行っタ。もう見えナイ。しかシ神姫ニ・・・ 「さて、次は貴女の分を・・・」 「・・・神姫ニ、アルバイト代ヲ渡すノですカ?」 「え、変? だって正当な報酬じゃない?」 こノ人、こノ神姫用服飾店店長デ在リ、自分ヲ此処ヘ無断デ連れて来タ張本人で在ル彼女、通称デコマ様ハ、本当ニ不思議そうナ顔デ自分ヲ見つめ返ス。そんナ事、変ニ決まっテ居マス。 「労働基準法ニそんな項目ハ有りまセン。ソモソモ自分達ハ戦う為に造られタ武装神姫デス。其れガ人間の様ニ働くナド、可笑シイでショウ」 「えーでも、子供にお手伝い頼んだってお駄賃あげるのは普通じゃない? 別に正統さに法律関係ないよ。あ、でもお年玉とかたまに法で規制して欲しくなるな~。自分であげる様になってから切に思うよホント。それから役目が違うっていうのだってさ、副業で農家やるラーメン屋とか画材をアルバイトで買う画家とか・・あ、それは違う?じゃあ公務員・・はバイトしちゃいけないんだっけ。でも今じゃ公務員の給料下がりっぱなしだしバイトしないと食べてけないよねー。あ、そういえば昨日役所に行ったら丁度モトオさんがいてね、あ、モトオさんて私の恋人なんだけどコレがまた格好良くてね。でもそのとき手元を見たら貰っていたのが何とぜ・・・」 「兎モ角!! 自分ヲ開発部ニ返しテ下さイ!! ソモソモ何故ニ自分なのデスカ? 客引キでしタラ先輩ノ様ナ可愛らしいタイプを選定スレバ・・・イヤ其レ以前ニ・・・」 「でも建機型の貴女って腕いっぱいあるじゃない? だからいっぺんに服何個も持てて適材だと思ったの。それで貴女の開発会社に勤めてる友達の所に行ったの。そうしたら別会社だけど同じ第6弾試作2人は両方失踪した~って話してるじゃない? だから貴女もう一人くらい減っても大丈夫かなって思って。あ、でも皆会議やってたし、私も店の開店時間近かったから勝手に連れてきちゃったけど、ちゃんと断りの手紙は置いて来たよ。それにお給料は払うけど? そう言えば建機といえば土方子って娘がここのセンターによく来るの。今日はマスターだけ来てたけど。で、その土方子ちゃんも面白いんだよ。まああのカラーリングは重機と言うより猛獣注意・・・」 ソレニソレカラ彼是云々カンヌン・・・ト、デコマ様ハ矢継早ニ取り止めモ無ク話シ続ケル。この方ハ一度話し出したラ止まら無イらしイ。イヤそんナ事よりモ・・・ 「待って下サイ!! ソモソモ、どうしテ神姫ヲ雇用スル必要ガ在ルのデスカ!? 普通ハ人間ヲ雇用スルでしょウ!!」 「だってここ、神姫が自分の服買いに来る所だもの」 「・・・ハ? そんナ馬鹿ナ・・・アっ!!」 ソウ言えバ気ニなっテいまシタ。店内ノ通路ハ狭ク、小物陳列用什器ヲ改造したハンガー掛けハ店内ニ過密過ぎル程ニ配置さレ、奥まっタ場所ノ商品ハ完全ニ人間ノ目線からでハ死角ニなりマス。シカシ、ワザワザ神姫ガ手ニ取っテ見れル様、ソノ全てニ階段ガ用意されていマス。そしテ商品はパッケージングされずタグのミ、これハ明らかニ“玩具”でハ無ク“服飾”ノ陳列方法デス。更ニ、店内にハ神姫用試着コーナーすら有ル。 「・・・確かニ、神姫サイズに合わせタ服飾品点ト考えれバ、全テ合点ガ行きまス・・・」 「ついでにお値段も良心的でしょ? 神姫の貰えるお小遣いなんて大して高くないしね。布代は当然少ないし、“神姫用らしいある方法”でうちは製造コスト安いからこの値段で出せるの」 「しかシ、これハ・・・」 神姫ハ人間ニ従うモノ。神姫ハ人間ニ奉仕すル為ニ生まれタ機械。其レが義務。其レが目的。それなのニ・・・ 「神姫ガ自分ノ為ニ服を買うなんテ、全ク無意味デス!!」 「そお? でも奉仕するとか別にいいじゃないそんな事。私も好きでやってるんだよお店。色々な服作るのも見るのも好きだし、私の選んだ服で着飾った娘が喜ぶの見るの好きだし、色んな娘がワイワイ服選んでるの見てるだけだって楽しいし。大体オンナノコにとって服選びは一番楽しい事じゃない。その辺に体の大きい小さいは関係ないでしょ。だったら普段ココで気持ちよーくお買い物してたらバトルの時だって調子いいんじゃない? それにオーナーが自分の甲斐性見せるためのプレゼント用にって買いに来る場合もあるし、人間様にもそこそこ人気よ。あーそう言えば今度友達が作った神姫用の靴も販売するんだよココ。そしたらまた新しいお客さんも来るし、大体靴も合わせないと服って選びづらいし。あ、そうだ水着もあったら・・って、元々水着みたいなかっこうしてるか。じゃあ・・・」 「しかシっ!! 自分達ハ戦う為だけニ・・・造らレたモノなのデス」 「でも・・・だったらオンナノコの形に造らないでしょ。だからいいの♪ 小さかろうと大きかろうと、オンナノコが着飾りたいのは世の摂理よ!! それを邪魔なんて総理大臣だって出来ないでしょ♪」 「ハ・・ハイ・・・」 つまリ、女性であるなラ、着飾るのハ必然ニ近ク、それハ神姫であろうト変わら無イ。其れガこの方ノ考えらしイ。しかシ・・・ 「自分ハ、建機デス。見てくれなド、気にモ、されナイ・・・」 「じゃあ塗ろっか?」 「・・・ハイ?」 「実はずっと気になってたんだよね、そのアームの色。ちょっとジジくさいよねー。どうせならライムグリーンでどわ~って塗っちゃわない? バイオレットに白ストライプとかもちょっといいかも。あーラメもいいかもラメ。あとアクセ色々つけるとか? このアームに神姫用ブレス入るかなぁ? アンクレットの方が・・・あーそれは大きすぎかな。とりあえずリボンつけましょリボン。在庫はえっと・・・」 「イヤイヤイヤイヤ! 普通建機ニ其ノ様なビビットな配色ハ行わナイでショウ!!」 「そう? 似合うと思うけれど?」 「そうカモ知れマせんガ、しかシ・・・」 物にハそれなリノ根拠ガ有ルからこソ、配色ガ決めラレ、其れニ色を塗リ替えたとテ、其ノ本質マデ変えらレル訳でハ無いのデス。 「もー、カタいなあビルトは。いいじゃない見た目くらい好きでも」 そうハ言えド、例エ色如キを変えようトモ、自分ガ“機械”で在リ“建機”で在ル事にハ変わり無イのデス。其レでハ、只、虚しクなるだケ・・・ 「そもそも貴女って、建機“型”じゃない」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ア。」 「そう、つまり自分の好きな色でいいんじゃない?」 「・・・そンナ気ガして来まシタ」 「じゃあともかくリボンつけましょ。この深緑のとかどう?」 結、結、結、結、緑。 「・・・イイっ!!」 「イヤイヤ黄色に緑は悪趣味ですにゃ」 「ギャァっ!? 先輩!?」 「忘れ物取りに来たらナニ洗脳されてるにゃ新人。デコ魔ちゃんは別にあんたの事考えてるワケじゃにゃくて、単にヒトサマのモノだろーが神姫だろーがヒト自体だろーが気に入らにゃかったら徹底的に自分色に塗り替えちゃうだけな変人ですにゃ。ホラそこのヘンな色の壁とか道端にあった重機とか」 「えーでもこの前のロードローラーをレモンイエローに塗ったのは好評だったよ? ピンクも結構いいのよねピンク。ダンプ塗った時、赤系アクセントに入れたらカッコ良かったんだよねー、血が付いてるぽいって言われたけど。あーでも何でパールホワイトのバックホーは不評だったんだろう?・・・あ、汚れ目立つからだ。だったらシルバーを地にして、赤系でスリットを塗ったり~。でもこの前間違えて排気口ふさいじゃった事あったんだよね。あの時は結局機械が火を噴いて怒られた怒られた。だから・・・」 「塗ったンでスカ!? 重機を!?」 「え?うん。後放置自転車とかここのオーナーの車とか電車とかそれから・・・」 「イヤイヤイヤイヤ!! 器物損壊罪デスよ!!」 「それから・・・あれもこれもそれも・・・それで・・・」 「・・・聞いてテ居りマせんネ」 「新人、逃げるにゃら今のウチにゃ」 「うゥ・・・自分ハ一体何ヲ信じれバ良いのデショウ・・・」 「そんなもんにゃ、人生にゃんて」 ちゃんちゃん(?) 目次へ
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叡智、輝いて──あるいは梓の日常 Σはつまり……あっ、気付かなくてごめんなさいなんだよ。ボクは、 犬型神姫のクララ……と言っても、この姿じゃ全然説得力無いかな? 今ボクは人型神姫インターフェイス・HVIFを装着して、学習塾の “一応塾”って所に、女子高校生・槇野梓として通っているんだよ。 「講義をおわーるッ!はい君達、次の時間まで自習しなさーい!」 「……ん。相変わらず、金鉢先生のは歯応えがある授業なんだよ」 「ん~……ねえ、もう出ていいでしょ?はぁい皆、そして梓さん」 「そっちも結構お疲れみたいだね、ジュピジーの“綺羅”さん?」 「あら分かる?神姫だって、ずっと同じ姿勢は大変なのよね……」 隣の友達が持つバッグから這い出してきたのは、種型神姫の綺羅さん。 この塾では、神姫等の“ホビー”を持ち込んでも講義中に使わなければ お咎めはないんだよ……流石に、ボク自身が神姫の姿で塾生になるのは 一蹴されちゃったけど。でもそれはある意味、仕方がない事だもんね。 「にしても、やっぱ人間の学問って面白いわよねー聞いてるだけでも」 「……そう?神姫でそれを活かせる機会は、あまり多くないんだよ?」 「そうよ!メカメカしい種のアタシでも、色々と知る悦びはあるの!」 「その変換は危険なんだよ……ともかく、物事を知る事自体が好き?」 「そうねー……うん、そう!自分のまだ見えない世界が分かるのよ!」 敢えて意地悪な振りをしてみたけど、彼女の本音を引き出す為だもん。 そしてこれは、少なくない姉妹達──神姫が持っている願望なんだよ? 勿論“人間の世界なんか関係ない”って言うスタンスの娘も多いけど、 ボクが実家……MMSショップ“ALChemist”と、この“一応塾”で触れた 神姫の中では、凡そ6:4の割合で積極派が多かった計算になるもん。 「秋葉原は、知り合いにも結構逢えるし。黙ってるのは辛いけど!」 「知り合い?……神姫センターにも近いもんね。バトルはするの?」 「アタシは防御力がどーだとか言うけど、あんまり興味ないかなー」 「……マスターの倭さんも、あんまりバトル派じゃないみたいだね」 そのマスター・倭未来さんは、一生懸命英単語学習ゲームで学習中だよ。 流石に塾内では構ってあげられないみたいだけど、綺羅さんは綺羅さんで “勉強”を楽しんでるし、このコンビに取り立てて問題はない……かな? そして、バトル重視ではなくファッション重視みたいなのはその服装から 分かるよ。汎用肌色素体に換装して“TODA-Design”の服を着てるしね? 「あ。ねーねー梓さん!アンタん家、MMSショップなのよねッ?!」 「……そうだよ、よく調べたね綺羅さん?お姉ちゃんが経営してるよ」 「だって、“TODA-Design”にも並ぶ可愛い服作ってるって評判よ!」 「それ聞いたら、お姉ちゃんは『む、それは照れる』って喜ぶね……」 「自分の家なのに知らないのー?三月から、ちょっと話題なんだから」 時々ネットは見るけど、ボクらは余り評判のリサーチをしないんだよ。 そもそも経営してる晶お姉ちゃんが、世間の目を気にしない人だもん。 だから、それだけ密かな評判があるというのは……ちょっと驚きかな? ……お姉ちゃんに帰って報告したら、照れ笑いを浮かべて喜ぶかもね。 「前の鳳凰杯だっけー?あそこで限定版売ってたそうじゃない、いーなー」 「……売れ残りが一セット位はあるから、今度持ってくる?綺羅さん用に」 「えっ、いいの!?ありがと梓さん!アタシのケチなマスタ……痛ッ!?」 「こら!人に集るんじゃありません綺羅ッ!梓さんも甘やかしちゃダメよ」 「え゛~!?いいじゃないせっかくくれるって言うんだし。ね、梓さん!」 知らず知らずヒートアップする綺羅さんを止めるのは、常にマスターの 倭さん。今もやっと英単語ゲームから目を離して、綺羅さんを小突く。 結構騒がしくてケンカばかりだけど、ボクには仲良しに見えるんだよ。 決して“マイスター(職人)”の側だけでは知覚しきれなかった、神姫と 人の関係。それを知る“勉強”に、このHVIFは有用なツールかな。 「構わないんだよ。“フィオラ”を着てもらえば宣伝にもなるから」 「……本当商売人ね、貴女達姉妹は。お姉さんが職人さんだから?」 「かな。晶お姉ちゃんの側にいると、色々とボクらも学べるんだよ」 「気苦労だけじゃないといいんだけど……本当、真面目ね梓さんは」 「物を学ぶって態度は、常に真摯な物だって思うからね……人生も」 「いっつも堅いねー梓さん。でも何故か面白いのよね、変なの……」 『貴女仙人?』ってツッコミを受けるけど、真理の一面だとは思うもん。 特に、ボクら神姫が人間の……具体的に言えば別の文化を学び取る上で、 真面目な志を欠かしてはいけない……と一体の神姫なりに考えるんだよ。 だってボクらを産み出した存在であり、ボクらの側にあるのが人だもん。 パートナーか主か或いは別の仲か、それぞれの神姫で異なるけどね……? 「兎に角、高いのをただでもらう訳に行かないし。今度何処か行く?」 「……ファーストキッチンのガーリックバターポテト、プラスαだよ」 「はぁ。貴女へのお願いってなんでもそれで片づくんだから……ねぇ」 「……貴女もっと欲張らないでいいの?って言いたいのかな、倭さん」 「神姫じゃ参考にならないけど、なんかそういうのは淡白かなアタシ」 機先を制されて黙る倭さんと、的確な感想を言う綺羅さん。これも二人の 一面なんだよ。そう。本当は神姫であるボクも、物質関係の欲望は希薄。 服飾や武装をもらって喜ぶ神姫は多いけど、人間程欲深くはないんだよ? むしろ神姫は、何もないが故……周りと触れ合い“心”を満たしたがる。 そっち方面で言えば、物質社会が発展した人間よりもずっと欲深いかな? 「そんな人間もいたっていいかもね。もちろん神姫だっていていいもん」 「だねー、その方が面白いし。でさ、取引成立したんならいいでしょ!」 「しょーがないわね綺羅は……じゃあ、今度お願いね梓さん?ってヤバ」 「ほら席に着けぇ!そろそろ講義を始めるぞ、全員フィルムを出すッ!」 渋々倭さんの鞄に戻る神姫の綺羅さん。また後でねー、と手を振る彼女に ボクも軽く手を振って、筆記用のフィルムスクリーンを取り出すんだよ。 「……ねぇ、そんな淡白で将来何になりたいとかあるの?梓さんって」 「敢えて言えば、大事な人の支えに……かな。お金は別にいいんだよ」 「それなのに塾ねぇ……つくづく変わり者なのね、っと続きは後でね」 「そこ私語禁止ッ!いいか、学問は力こそパゥワァーで──────」 ──────学びたくて学び、尽くしたくて尽くす。普通の欲望だよね? メインメニューへ戻る