約 125,402 件
https://w.atwiki.jp/uyoku310/pages/80.html
追悼集会当日。一平の単車は無事走れる様になってた。格さんの事とかちょっと気になる事はあるけど今日は祭りだ。一平達を送り出すための。神輿は大きい程いい。いろんなチームに声をかけた甲斐もあって当日は単車だけで400台集まる程の大きな集会になった。全盛期の頃ならともかく、いまの時代にこれだけ大きな追悼を開けるとこはあまりない。誰が呼んだかわからんけど阿弥陀の連中も来てる。普通なら喧嘩になるけど今日だけはシカトだ。一平達の追悼を汚す訳にはいかない。 「じゃーそろそろ集まったみたいだから頭にはルートの説明するから集まってくれ。」 今日の集合場所は浜。クイーンじゃこれだけの人数は入りきれない。 「今日は浜出発して市内を回って最後に事故現場で黙祷してまた浜に戻ってくるから。ケツモチはうちでやるから心配すんな。万が一他のチームとかち合ってもこっちからは手を出すな。今日はウチの仕切りだから勝手な事は謹んでくれ。それじゃ、ナイトが来たら出発だ。」 格さんが仕切る。これだけ大所帯だとまとめるだけで苦労する。でもそれよりも俺はこの前一輝の言ってた事の方が気になってた。 「なんだ元気ねーな。今日は祭りだぜ。もっと胸はれ。シャンとしろよ!」 格さんが笑いながら言う。 俺が聞こうとした瞬間ちょっと遠くから単車の音が聞こえた。ナイトが来た。 「今日は奴らの分まで楽しんでやれ!そろそろ出るぞ。」 格さんはそー言うと単車のエンジンをかけた。 俺は一平の単車のシートを外して腕章を取る。ヤマトが着けてた物だ。血で黒く変色してる。シートの下には二人の写真。一瞬涙が出そうになったけど今日は泣けない。二人をちゃんと送り出してやらなきゃならないからな。 「…格さん。全部終わったら話たい事があんだけど。」 「…わかった。後で聞くよ。」 一平の単車は盛大にいい音を出して走り出した。
https://w.atwiki.jp/uyoku310/pages/83.html
時計を見るともー10時過ぎてる。ちょっとぐらいは気にしない。ふねに行くと格さんがすでに来てた。 「おせーよ。わりーけど先にはじめてるぞ。今日はお前のおごりだろ?」 「ふざけろ!割りだよ割り。とりあえず生中!」 注文して席に着く。 「ガキが生意気に生なんて飲みやがって。コーラとか可愛げのあるもん頼め!」 マスターに嫌味を言われながらとりあえず乾杯した。 「もー一平達いなくなって2ヶ月か。早えーな。焼鳥も適当につまめよ。あんまうまくねーけど。」 格さんはマスターに嫌味を返しながら焼鳥を進める。ちなみにマスターは族じゃない友達の父ちゃん。 「アイツらにはいろいろ迷惑かけられたけどやっぱいなくなると寂しいな。今日は奴らに乾杯だな。」 俺達は一平達の事を死んだとは言わない。なんかヒョッコリ帰ってきそーな気がしていまだに“死んだ”って言葉は使えずにいた。 「そー言やお前と二人きりで飲むのってはじめてか?」 「ふざけんな、中坊のころてめーにぶっ飛ばされたあと一緒にてめーんちで飲んだだろ!何、勝手に忘れてんだ!あんときは口の中が修羅場んなってて大変だったんだかんな!」 「そーだっけ?わりぃわりぃ!そー言やそんな事もあったな。」 俺は今までコイツに1勝2敗で負け越してる。 「そーだよ。それにみんなで飲むと最後は俺とお前二人だけになっちまうだろ。みんな先に潰れちまってよ。」 「真也なんか勢いだけで飲むかんな。ペース守れねーから一番先に潰れちまうから。前にチン毛燃やした事もあったじゃん。」 「あん時はヒデーと思ったけど笑ったな!真也、ちょっと泣いてたもん!」 「お前も昔酔っ払って買い出し行って用水路に頭から突っ込んだ事あったじゃん。帰ってきたら臭くてビビったもん!」 「格さんだって酔っ払って俺んちで全裸になった事あったな。ウチのばーちゃんにフルヌード見せたじゃん。」 「ありゃー目の保養だろ!潤んだ瞳で俺の事見てたもん!」 「身内ネタは勘弁しろよ!」 俺達はくだらない事を話してた。お互いその話題を避ける様に。でもこのままじゃダメだ。俺は自分の気持ちに踏ん切りをつけるために聞いた。 「今日は話したい事あるって言ったじゃん。一輝とかから聞いたんだけど、格さんヤクザになんのか?」 格さんの顔色が変わった。「ふーん。そんな事言ってる奴がいるんだ。」 答えになってない。 「はぐらかさないでちゃんと答えろよ。なるのかならねーのかどっちだ?」 「…いま誘われてる。正直、俺みたいなのはそっちの世界でしか生きられねーんじゃねーかなって思って。学があるわけじゃねーし、とりわけコネがあるわけでもねー。俺みたいなのが生きてくにはマトモな世界じゃ苦しいんだよ。」 格さんは苦笑いしながら言った。 「てめーふざけんなよ!ヤクザになんてならねーって言ってたじゃねーか!!真っ当な人生歩んでくんじゃなかったのかよ!ヤクザなんかになったら畳の上じゃ死ねねーって。俺に教えてくれたの格さんだよな?俺は絶対認めねーから。とりあえず表出ろよ!」 格さんはうなずきながら立ち上がる。会計は俺が払った。 「タイマン張れよ。俺が勝ったらヤクザにはならねー。負けたら好きにしろ。俺に勝てねー様じゃヤクザなんか勤まらねーから。神社行くぞ。」 格さんは黙ってついてきた。 「懐かしいな。お前が俺に一番最初に負けたのこの神社だったよな。」 「ちゃんと覚えてんじゃねーか!でもここでお前は負けるぜ。いつもみてーに手加減しねーから。」 「無駄口たたいでねーでさっさとかかってこい。時間あんまねーんだからよ。」 ふざけやがって。今日ばかりは絶対に負ける訳にはいかない。 「…約束守れよな。」 そー言って俺は格さんを殴った。
https://w.atwiki.jp/uyoku310/pages/35.html
飯田さんちはジローが住んでる町にある。ジローは前は別のとこに住んでて、高校に入るのと同時にこの町に引っ越してきた。俺がジロー乗っけて真也が幸雄乗っけてった。途中スーパーで見舞の品を買って行こうということになり、みんな思い思いの物を買った。ジローは無難にカステラ。真也は誰がこんなに食うんだって思うぐらいのバナナ。飯田さんはゴリラか。俺はいつもガム食ってるって理由からガムを3000円分。メジャーリーガーだってこんなには食わない。幸雄はよっぽど飯田さんが嫌いなのか、塩と増えるわかめ。こいつは人としてどーかと思う。 とりあえず飯田さんちの前に着くと、俺達の単車に負けず劣らずの下品な単車が一台止まってる。ジローがちょっとビビりながらインターホンを押した。 中からは紫色の頭で豹が書いてあるトレーナーを着た肉食獣が出てきた。どーやらお母さんの様だ。 肉食獣の間合いにいたジローは腰を抜かした。ジロー曰く、あんな下品なおばさんは見たことないって言ってた。 肉食獣は、 「あんたらウチの豊に喧嘩売りにきたんか!!喧嘩するなら表に連れて行け、家の中でやられたら迷惑だっ!!」 と素敵なお言葉。 どんな修羅場をくぐれば初対面の高校生にこんな事が言えるのか、ちょっと気になったが、とりあえず敵じゃなくて見舞に来た事と、貢ぎ物を持ってきた事を伝えるとすんなり入れてくれた。肉食獣が一番喜んだのは、幸雄が買った塩と増えるわかめくんだった。
https://w.atwiki.jp/uyoku310/pages/84.html
冷たい土の感触が心地よかった。うっかりそのまま眠っちまうぐらい。 「俺の∞#%£☆#」 格さんがなんか怒鳴ってる。うるせーな。俺は立ち上がるけど力が入らない。 次の瞬間何が起こったかわからなかったけど、結局俺の意識は途切れた。 「…大丈夫か?」 「…どんぐらい寝てた?」 「わかんねーけど10分ぐらいじゃん。ジュース買いに行く位の時間あったし。ホイ!俺のおごりだ。」 得意気な顔してコーラを差し出してきた。 「…あのなあ、喧嘩の後にコーラはマズイって何度言ったらわかんだよ!口の中ズタズタなんだからここはどー考えても水だろ、普通!」 「そんなもんかな。俺はスッキリ炭酸の方がいいと思うけど。」 「そんな風に思うのはてめーだけだから安心しろ。」 格さんはちょっとしょんぼりしてた。 「…俺の負けかな。」 「どー見ても俺の勝ちだろ!これで3勝1敗。俺の勝ち越しだ。」 「…じゃー約束通りヤクザになんのかよ。チームどーすんだ、頭がいなきゃまとまらねーだろーが!」 「…お前が頭張れ。お前ならきっとまとめられるから。頼んだぞ。」 「ふざけんな、俺はてめーのチームの特攻隊長なんだ!頭なんて死んでもやらねーぞ!それにヤクザなんかになったら俺達と遊べなくなる。それでもいいんかよ!」 「…わりぃ。決めた事なんだ。」 「…勝手にしろ!そのかわりてめーとはもー友達でもなきゃ知り合いですらねー。二度と俺達の前に顔見せんな。」 「…寂しいけどそーするよ。ヤクザの友達なんかいねー方がいい。いままで遊んでくれてありがとな。」 返事しなかった。遊んでもらってたのは俺の方だ。いろいろ思い出してたら涙が出てきた。 「…泣いてんのか?」 「うるせー!てめーなんかさっさとどっか行っちまえ!」 「悪かった。でもケジメだけはしっかりしたいから最後に一度だけみんなの前に顔出すわ。それで終りだから勘弁してくれ。じゃーな。」 そー言って格さんは歩き出した。これで最後。そー思ったらいてもたってもいられなかった。俺は叫んだ。 「てめーが決めた道なんだから絶対引くんじゃねーぞ!それとどんな世界にいってもてめーは俺達の友達だって事忘れんな。」 格さんはこっちは向かないけど手を挙げた。俺達は別々の道を行く。 格さんは17でヤクザになった。
https://w.atwiki.jp/uyoku310/pages/41.html
はじめから強い奴なんていねぇよ。そう言って俺は一平んちを出て行った。 イライラしてて今日は誰とも話したくないと思っているとベルがなった。この番号は格さんだ。 渋々電話ボックスを探して電話すると、電話の向こうからは脳天気な声。 格さんの空気の読めなさは異常だ。 「今日、イーグルの追悼らしいんだけど、俺達も参加するから人数集めといて!」 イーグルはウチの地元からちょっと離れた町に昔からあるチームで最近頭が変わったばかりだ。このチームは、代々一番強い奴が頭を張るってルールがあって、今の頭はハーフのマイク先輩だ。冬でも雪駄はいて、上は常にタンクトップと言うファンキーな先輩。先月やられた前の頭はいまだに病院から出られないらしい。 正直、あんまり気分が乗らないし、なんか嫌な予感がするから行きたくなかった。でも俺達は新しくできたチームで今は近くに敵はつくりたくない。 俺が答えに悩んでると、 「9時にクイーンに集合な!」 って言って電話を切られた。 自己中だ。 俺はとりあえず信義に電話して、9時にクイーンって伝えた。 クイーンってのはパチンコ屋で、俺達の集合場所。国道に面していて、それでいて出口が何ヶ所もあり、いつ警察が来ても逃げられる様になっていて、俺達のために作られた様な場所だった。 真也はベルを鳴らしたらまだ一平んちにいたらしく、一平も連れてくるって言ってた。ちょっと気まずい。あと、マッキーとかにも連絡しといてくれるって言ってたから、俺は香織に電話した。夜は香織んちに行く予定だったからちょっと遅れるって言った。やっぱり香織はいい顔はしなかったけど、条件付きで許してくれた。条件は、いまから会いに来る事と、絶対に帰ってくる事。時間はまだ5時。全然余裕はある。姫のかわいい願いだ。聞いてやるほかあるまい。俺は一回家に帰って特攻服に着替えて香織んちに向かった。 今日がどれだけ大変な夜になるか、俺は全然想像もしてなかった。
https://w.atwiki.jp/uyoku310/pages/67.html
「もしもし。」 格さんは寝起きだったのかちょっとダルそーだ。 「俺だけど、陸が見つかった。」 「…あの馬鹿どこにいたの?」 「…残念ながらいま阿弥陀の世話になってるってよ。」 「はぁ!?なんで?意味がわかんねーんだけど。ちょっと説明してくれ。」 俺は今までの経緯を格さんに説明した。 「…話はわかった。ウチのケツモチ(ヤクザ)には俺から話通しておくから。無理矢理にでも引っ張ってきてくれ。」 「多少無茶するかもしんねーけどそん時はよろしく。」 「…無理はすんなよ。」 そー言って格さんは電話を切った。 ウチの弟が情報持ってくるまでは待ちになる。 めんどくせーな。 陸の話より先に香織の話が入ってきた。どーやらジローが香織に告るらしい。 前からジローが香織の事気に入ってたのは知ってた。ジローはわざわざちゃんと俺にことわりにきた。 「香織ちゃんと別れたらしいじゃん?」 「あぁ、振られた。」 「俺、告っちゃってもいいかな?前から好きだったんだよね。」 「…ダメって言っても言うんだろ。いいよ。ってか俺に聞くなよ。もー彼氏じゃないし。俺にそんな権利はないよ。」 「わかった。ありがとう。恨みっこなしな。」 「…なんか複雑だけどがんばれよ。アイツいい奴だから絶対泣かせんなよ。」 正直、心の中は穏やかじゃない。精一杯の強がりだ。香織が他の男と付き合う。考えたくもない。 なるべく俺は他の事考えるよーにした。不幸中の幸いでいまは考える事は山の様にある。
https://w.atwiki.jp/uyoku310/pages/53.html
「今日からてめぇらとは戦争だ。俺達が止まるか、てめぇらが折れるかだ。俺達は止まらない。」 格さんが掃きすてる様に言って俺達は警察署をでた。 やっと俺達は解放された。朝9時から8時間。道は帰宅する車達で渋滞を起こしてた。 「なあ、どーする?飯食って帰らねぇ?」 真也が言った。俺達はそのまま居酒屋に入った。 すきっ腹にビールが染み渡る。今日はいつもより酔いが回るのが早そうだ。 「ちょっとだけかっこよかったぜ。」 格さんが俺に言った。柔道場の時の事か。 「普通だよ。格さんの方がすげータンカ切ってたじゃん。戦争とか普通言わねーよ。」 「それにしてもあいつらしつこかったな。しかもなんで俺達だけなんだろーな。」 真也は不満そーに言った。 「幹部だと思ったんじゃん。他のチームの奴らも幹部だけファイルにとじてあったし。」 信義はめざとく見てたみたいだ。 「とにかくこれで俺達は奴らに敵って認められた訳だから、気合い入れてかないと潰されちまう。いろいろ大変だけど引退するまでがんばろーぜ。」 流石は俺達の頭だ。まとめるのはうまい。 8時過ぎた頃俺達は店を出た。 「これからどーすんだよ。もー1軒行こーぜ。」 真也はテンションがあがってる。格さんはもー出来上がってた。 「ちょっと香織んとこ行かなきゃなんねーからあがるわ。楽しんでこいよ。」 俺がそー言うと真也は不満そーだ。 「香織ちゃんによろしく言っといてくれ。こいつらの面倒は俺が見るから、心配してるだろーから早く行ってやれ。」 さすがは信義。空気の読みは抜群だ。アホ2人とは違う。 「じゃーな。」 そー言って俺達は駅で別れた。 香織が家にいるのかベルを鳴らしてみる。ソッコー返ってきた。とりあえず読めない。香織んちに電話してみる。 「もしもし、いま終わった。いまから行っていい?」 「早く来なよ。ってかアンタ酔っ払ってんの?ロレツ回ってないんだけど。」 「ちょっとだけな。じゃーいまから行くから。電車なんでちょっと時間かかるから。」 そー言って電話を切った。 香織の町の駅に着くと、改札のとこに香織が立ってた。 「迎えにきてくれたんだ。どーも。」 「酔っ払いのアホ野放しにできないでしょ。早く帰るよ。」 香織はちょっとだけ嬉しそーだった。
https://w.atwiki.jp/uyoku310/pages/40.html
仁さんが東龍会に突っ込んだ日からさらに3日。 一平はまだ学校に出てこなかった。さすがに今日は土曜日。頭不在のまま走るのはなんとも格好悪い。学校は半日で終わるから俺と真也は帰りに一平んちに寄った。ディズニーランド以来、香織は俺にあんまり口煩くなくなってきた。少しは信用されてきたらしい。 一平んちは学校と俺んちの丁度中間あたりにある。一平んちの前まで行くと、単車はあるから家にいる様だった。格さんには、自業自得だから相手にするなって言われたけど、俺達のせいで学校にこないのはなんとも気分が悪かった。 一平んちの親はすんなり俺達をあげてくれた。部屋には布団にくるまった一平。真也が、 「いつまでそんなことやってんだよ。とにかく出てこいよ!」 ってやさしく言うと、一平は見事に無視。 真也がいろいろ話してるうちに、俺は一平の態度にだんだん腹が立ってきて、一平の布団をひっぺがし、ベランダから下に投げようとした。 バタバタしながら、 必死で抵抗しようとする一平を俺はまたベッドに投げて、 「ウジウジしてんじゃねーよ!!いつまでも引き込もっててもしょうがねーだろーが!!」 って怒鳴ったけど、一平は相変わらず無言で下を見てる。さすがに真也も愛想がつきたのか、漫画を読みはじめやがった。 一平はボソッとこぼした。 「最初から強い奴に俺の気持ちはわかんないよ。」 気づくと俺は一平を殴っちまってた。 真也は止めもせずに漫画読みながらお茶菓子食ってた。
https://w.atwiki.jp/uyoku310/pages/28.html
格さんはまず、ケツモチのヤクザに話を持って言った。やはりヤクザも揉め事が多い方が儲かる。快く俺達の事を認めてくれた。ヤクザを抑えれば後は簡単だ。人数使って一人一人潰していけばいい。格さんがヤクザに話を通したりしてる頃、俺と真也と信義はウチのチームのOB達の住所を調べてた。現役でやってた先輩達だけでなく、後から出てこれない様にOBまで潰す事になったからだ。もちろんOBには拓ちゃんの兄ちゃんも含まれてる。ひとチーム4人で5チームできた。各チームごとに頭をあげて、頭が仕切ってひとりひとり潰していった。俺も頭の一人になった。俺の受け持ちには拓ちゃんの兄ちゃんが入っていた。 拓ちゃんの兄ちゃんを襲うって事は、必然的に拓ちゃんもやらなきゃならない。だけど、拓ちゃんや拓ちゃんの兄ちゃんに良くしてもらったのは、きっと俺が一番だと思う。正直悩んだ。なんでこんな事になっちまったんだろうと、たりない頭で精一杯考えたけど、結局答えは出なかった。 他の奴らに兄ちゃんを任せて、俺は拓ちゃんを潰しに一人で向かった。
https://w.atwiki.jp/uyoku310/pages/102.html
奴らに促されるまま俺は近くの公園に連れてかれた。そこには顔中絆創膏と包帯だらけの痛々しい奴がベンチに座っていた。 「…コイツが神田か?」 「お前、誰だ?」 仲間達は無言だ。 「お前、竜って知ってるだろ?俺、アイツのツレ。」 問答無用で蹴り入れた。神田はベンチの後ろに転げ落ちる。途中、何か言ってたけど気にしない。気がすむまで神田を殴った。 「…テメーら仲間じゃねーのかよ!助けねーの?」 仲間の一人がボソッと言った。 「この人はやり過ぎた。もー誰も仲間だなんて思ってねー。俺達も無益な血なんて流したくないから終わったらさっさと帰ってくれ。」 そー言ってタバコを吸い始めた。クソ共が。仲間意識とかねーのか。俺は神田を殴り終わるとそいつらに言った。 「…次に駅で見かけたら殺す。ってかやられてる仲間見捨てるぐれーの関係なら最初からつるんでんじゃねーよ。俺達みてーのが仲間大切にできなかったらクソじゃねーか。」 奴らは何も反論しなかった。自分達のしてる事がどんだけ情けない事かはわかってるらしい。俺が帰ろうとすると公園の入口に10人ぐらいの制服着た奴らが立ってる。 「…なんだアイツら?」 そー言った瞬間、奴らが動き出した。あっという間に囲まれていきなり殴りかかってきた。俺は反射的に殴っちまった。 「おい、コイツら誰だ!?」 尋常じゃない雰囲気だ。俺は“天地”の奴を一人連れて逃げた。駅前のデッキの上を走り抜ける。俺達を追ってくる奴らの人数はどんどん増えてた。最初は5人ぐらいだったのがいまじゃ20人近くいる。捕まったらただじゃ済まない。駅の南口まで行ったら俺はバスに乗り込んでしゃがんだ。「…おい、アイツらなんなんだ!?まとまりよすぎるだろ!」 息を整えながら聞いた。 「…アイツらチョン高だよ。神田君がちょっかい出したら毎日あの調子だ。さっき神田君怪我してたろ?あれもチョン高。チョン高なんかに喧嘩売ったらどーなるかわかるじゃん。あの人はやり過ぎたんだよ。」 チョン高ってのは朝鮮高校。やたらまとまりがあって仲間が一人でもやられると100人単位で仕返しにくる武闘派高校。俺は青くなった。いくら逃げるためとは言っても殴っちまった。 「今日からアンタも奴らのマトだな。気をつけた方がいい。」 俺はバスが出発するときに“天地”の奴を表に放り出した。ワラワラとサファリパークのライオンみたいにチョン高生達が集まってきてた。ヤベェ、大変な事になった。いまはそれしか考えられなかった。