約 125,402 件
https://w.atwiki.jp/uyoku310/pages/74.html
「阿弥陀に喧嘩売ったのお前だろ。根性見せろよ。」 ここまで来たらやるしかない。開き直った。俺は鈴木を殴った。 「こいや、オラァ!!」 金属バットが襲いかかってくる。15対1の差は流石に気合いや根性だけでは乗りきれない。頭に鉄パイプを食らって倒れた。 「こいつ地元に連れて帰るぞ。人質だ。」 …目が熱い。鉄パイプが当たったのは左目だ目が開かない。立ち上がろーにも足の踏ん張りが効かなかった。 「何やってるんだ!!」 近所の駐在が近づいてきた。単車に乗り蜘蛛の子を散らす様に阿弥陀は逃げてった。助かった。 「おい、大丈夫か?救急車呼ぶからじっとしてろ!」 「…どけよ。何でもねぇから。」 不覚にも敵であるこいつらに助けられちまった。そしてホッとしてる自分が許せなかった。 「…くそったれが!」 くやしくて泣きそーだ。割られた頭がジンジンした。
https://w.atwiki.jp/uyoku310/pages/68.html
陸の居場所がわかった。阿弥陀の奴の家に寝泊まりしてるらしい。場所も聞いた。正直まだ一平とヤマトの49日も明けてないのに揉め事なんか起こしたくない。俺は平和主義者の真也と行く事にした。 阿弥陀の地元は単車で約30分。結構遠い。 「なあ、陸ってやっぱチームには戻れないんかな?」 真也が聞いてきた。 「んー。話聞かないとわかんねーけど、自分の意思で阿弥陀んとこ行ったっぽいから無理じゃね。それに一平の葬式にも出てこねーのも気にいらねーし。」 「…そっか。なんか寂しいよな。いくらあんな奴でも一緒にやってきた仲間だからな。やめるにしても話し合いでなんとかしたいな。」 「アイツ次第だな。強気で出られたらぶっ叩くしかないしな。」 そんな事を話ながら阿弥陀の地元に入って行った。 「タバコなくなったからコンビニ寄ってくわ。」 真也はそー言って駐車場に入ってく。 「ちょっと便所も済ましてくるから待っててな。」 「ついでにコーヒー買ってきて。もちろんお前のおごりで。」 真也は手をあげながら店内に入ってく。 ぼーっとしてるのもなんだからタバコに火をつけた。 「お兄さんかっこいい単車乗ってるね。地元の人?」 男が近ずいてきた。しくった。ここは奴らの地元だった。
https://w.atwiki.jp/uyoku310/pages/48.html
フルボッコにされてボロボロの俺と格さん。上には上がいることを思い知った。折れた鼻と風通しのよくなった前歯が少し悲しかった。 地元に帰るとコンビニのベンチの前に一平が正座してる。どーやら裁判が開かれているらしい。 仲間達はフルボッコの二人の顔みて、どーしたんだとかいろいろ聞かれたけど、答えるだけの元気が今の俺達にはない。俺は歯医者に行きたかった。 トオルが俺に聞いてきた。 「コイツどーする?」 俺はちょっと考えた。 俺を置いて逃げたのとかは正直どーでもいい。捕まらなかったし。 だけどここで甘やかしたらきっとコイツはこれから何かあったら逃げる事を覚えちまう。どーする。 「お前はどーしたいんだよ。これからチーム続けてくんならこんな事きっと何回もある。そのたびに逃げ続けんのか?そんな人生クソじゃねーか。」 一平はうつ向いたままだ。 「そんな自分が嫌いで、変わりたいから俺達と一緒にいるんじゃねーか。」 めずらしく信義がキレた。 殴りかかろうとした信義を真也が止めた。 俺は一平に聞いてみた。 「もーやめるか?」 正直俺を置いて逃げたのとかはどーでもいい。ただ、ここで甘やかしたらきっとコイツはこれから何かあったらすぐに逃げればいいと考えちまう。一緒にやってきた仲間としてケジメはちゃんとつけさせてやりたかった。 「まだみんなと一緒にやりたい。」 一平は消えそうな声で答えた。 「それならしばらくケツモチは一平がやれ。それでチャラだ。」 格さんが言った。 一平はうなずいた。 この時になんで止めなかったんだろうと俺は今でも本当に後悔してる。
https://w.atwiki.jp/uyoku310/pages/118.html
店に入ると客は俺達以外いなかった。ミチが口を開く。 「アンタ達でしょ?私の事探してんの。」 さすがに崔も酔いが覚めたらしい。こっちの手は全部筒抜けだったらしい。 「探されてるのわかっててなんで俺達の前に顔を出したんだ?そのまま逃げちまえばよかったじゃねーか。」 「ヤクザに追われたままで一生逃げるのはキツいよ。私は全然関係ないのに。」 「その前にそのしゃべり方やめろよ。なんかオカマみたいで気分悪い。男か女かはっきりしろ。」 崔がはじめて口を開いた。 「私は女だよ。心はね。体が男だけど。だから学校行くのが苦痛だった。あそこじゃ私の事を男としてしか扱ってくれなかったから辞めた。」 当時は今ほど性同一性障害ってのに理解がない世の中だった。そんな時にそれをカミングアウトするのは度胸がいる。コイツは俺なんかよりも何倍も辛い人生歩いてるかもしれない。 「なんでもいいけどさ。母ちゃんどこだ?」 崔は無理矢理でも口を割らせる気らしい。さすがに犯罪の片棒担ぐ訳にはいかない。 「ちょっと待て、落ち着け。いまそんな事言ってもしょーがねーだろ。金は母ちゃんが持ってるんだな?」ミチは頷いた。 「母ちゃんに連絡とか取れるか?」 ミチは首を横に振る。 「あの人は誰も信用してないよ。私の事も。多分、お金貰ってからは電話しても繋がらない。お金渡したのって2ヶ月ぐらい前じゃない?そのぐらいから連絡取れなくなったから。」 崔は頷いた。そんなに前からだったのか。そんだけ時間があれば逃げるな。 「ただ、あの人には彼氏がいたからもしかしたら知ってるかも。お店あがったら一緒に行ってみない?あと2時間ぐらいだし。」 「それはいいんだけどさ。母ちゃんの事売って心は痛まねーのか?仮にも親だろ?ちょっとは逃してやる気とかはないの?」 「…あの人も大人でしょ?自分のやった事に責任取らなきゃ。私の人生までメチャクチャにする権利はあの人にないし。」 もっともらしい事は言ってるけどなんか引っかかるでもいまはコイツを信用するしかない。俺と崔はミチと一緒に母ちゃんの彼氏のとこに行く事にした。
https://w.atwiki.jp/uyoku310/pages/58.html
クイーンに着くとだれも口を開かない。当たり前だ。俺も震えて何もできない。誰も「死」って事は口に出さないけどきっとわかってたと思う。 ピッチの着信音が静寂を切り裂いた。 「もしもし。」 信義が出る。 「俺だけど。いま一平は東病院着いた。ヤマトは中央病院だって。とりあえずヤマトの方に誰か行ってやれ。」 格さんは落ち着いてた。さすがだ。 「特攻服と単車はまずいから着替えて行けよ。あと誰かヤマトんちに連絡入れてくれ。一平は免許証持ってたけどアイツは何も持ってないから連絡できなかったみたいだ。頼むな。」 格さんはそー言うと、静かに電話を切った。 「着替えて行こうぜ。あとこの人数で行ったら病院も迷惑だ。俺と信義と真也で行ってくるからお前らは待っててくれ。後で必ず連絡するから。」 俺はみんなに伝えると自宅に向かった。 家に帰ると適当な服を持って外に行く。 外はだんだん明るくなってきた。 「タクシーで行こうぜ。俺、捕まえてくるわ。」 真也が国道まで走ってく。 「とりあえずタバコくれよ。一服しよーぜ。いろいろありすぎてもたねぇ。」 信義はそー言って俺のポケットからタバコを抜いた。 「ちょっとヤマトんちに電話してくるわ。」 俺はそー言って家の中に入る。信義は無言だ。 番号を押す指が震える。正直、ビビってる。 なんとか押すと呼び出し音が鳴る。 いやな時間だ。 「もしもし。」 電話にでたのばあちゃんだ。 「こんな時間にすいません。斎藤って言うんですけど、ヤマト君のお母さんかお父さん起きてますか?」 「…どう言ったご用件でしょうか?生憎母親は眠っています。」 ばあちゃんはかなり不審な電話だと思って疑っている。 「すいません、実はヤマト君が事故っちゃいまして。いま中央病院に運ばれました。」 「…わかりした、すぐに向かいます。」 ばあちゃんはそう言うと電話を切った。胸が痛い。 俺が外に行くとタクシーが来てた。 「…中央病院まで。」 俺達を乗せたタクシーが走りだした。
https://w.atwiki.jp/uyoku310/pages/112.html
反対側のスタンドからの大ブーイングで試合が始まった。 「…ぶっ殺す。」 俺が行こーとすると博史が俺を止める。 「いままでのがんばりを無駄にする気か?あとちょっとだから辛抱しろよ。熱くなるな。」 コイツはいつも冷静だ。流されて暴れたら奴らと一緒になっちまう。 「…悪かった。もーちょい我慢するわ。」 なんとか堪えた。試合はウチの高校の勝ちで終わった。まだ一回戦。先は長そうだ。でも俺は二度と球場に来る事はできなくなったんだ。 俺達は旗とか楽器の片付けしてからだったから一番最後まで残ってた。一般の奴らは先にさっさと帰った。片付けが終わってバスに乗り込むと、博史が来てないのに気づいた。 「アイツ、どこいったんだ?」 ジローや後輩達に聞いても首を傾げるばっかりだ。バスで帰ってくるのを待ってると相手校の奴らが博史の腕章持って歩いてた。アイツ捕まりやがった。典も気づいたけど残念ながら手遅れだ。俺はバスから飛び降りてソイツらをぶん殴った。 「先生、悪ぃ。ちょっと行ってくっから先に帰ってろよ。」 典は慌ててバスから降りたけど後の祭りだ。なんとか博史は助けたけど俺は応援団にいられなくなり、無期限の停学になった。そりゃそーだ。教師の前で7人も怪我させりゃ十分だ。しかも絶対あやまらなかったし。間違った事してねーのに頭なんかさげたくなかった。博史には最後までバカだって言われたけどいまじゃ笑い話だ。 これで短かった團長生活は終わった。ちなみにウチの高校は2回戦で負けた。
https://w.atwiki.jp/uyoku310/pages/109.html
その日から俺は団員集めを始めた。どーせやるなら中途半端はしたくない。真也と幸雄に声かけたけど奴らは拒否した。当然だ。俺だって進んではやりたくない。付き合いがいいジローだけはなんとか引っ張りこむことができた。1コ下の後輩達は強制参加だ。ちなみに奴らは入ったばっかりの時に俺に喧嘩売ってえらい目にあってる。1コ上の暴君に逆らう奴はいない。 「先輩命令は?」 「絶対です!」 これで決まった。あと一人前に出てやる奴が欲しい。でも周りの奴らは無理だ。俺は隣のクラスの博史って奴に声かけた。博史は悪いとかじゃないけどなんかクラスの中じゃ浮いてる奴だ。世間を斜めに見てるってかちょっとした変わり者だった。俺とは真逆の人間。コイツの事は1年の時にぶっ飛ばした記憶がある。たしか肩が当たったとか当たらないとかくだらない理由だ。とりあえず勧誘してみた。 「お前、応援団やらねー?」 「…嫌だ。」 愛想がない。きっとコイツ俺の事嫌いだ。 「なんで?やってみたら楽しいかもしんねーじゃん。やる前から否定すんなよ。」 「馴れ合うなよ。俺は一人が好きなんだ。」 「…お前変わってるね。友達とかいらねーの?」 「…いらない。一人が好きなんだからほっとけよ。」 ひねくれてやがる。でも俺は大人だからそんぐらいじゃ怒らない。 「じゃーわかった。悪かったな。でも気が変わったらいつでも来いよ。今日の放課後視聴覚室で待ってるから。」 博史はなんか言いたそーだったけどわざと無視してみた。放課後、俺は全員を集めた。 「応援団って言えば長ランだろ。お前らのサイズ書いてけ。」 もちろん通販だ。お代は学校持ち。チャンプロード片手に好きな奴を次々に注文用紙に記入した。いきなり視聴覚室のドアが開いた。博史だ。 「…いや、ちょっと様子見にきただけだから。すぐに帰るよ。」 やっぱり思った通りだ。コイツは友達作りがヘタな奴できっと自分をうまく表現する事ができない。だから人間嫌いを装おってただけでホントは友達が欲しい。要するに不器用な奴。俺はそんな奴を見つける事がうまい。寂しいのが嫌いで必ず誰かと一緒にいたがりだから。 「待ってたぞ!さっさと服のサイズ教えろ!!長ラン頼むんだから。」 博史は苦笑いしながら教えてくれた。まさかコイツとの付き合いがこんなに長くなるとはまだその頃の俺は思いもしてなかった。
https://w.atwiki.jp/uyoku310/pages/71.html
ここまでなめられたらもー引けない。俺は特殊警棒を握った。平和主義者の真也も同じ気持ちだ。真也はテーブルの上にあるガラスの灰皿に手を伸ばす。阿弥陀なんか関係ねぇ。俺達は徹底的にぶっ叩いた。ラリってふらふらの奴らに負けるわけない。10分もすると動かなくなった。 「日丸連合だ。喧嘩してぇんならいつでも来い。叩き潰してやる。」 俺はそー言って意識のほとんどない陸を担いで単車に向かった。 「さっさと地元戻ろーぜ。囲まれると面倒だ。このバカも連れて帰る。」 「飛ばすぞ。陸の事落とすなよ。」 俺達は阿弥陀の地元をあとにした。 「ごめん、やっちまった。多分、阿弥陀と戦争になる。」 俺は格さんに電話した。今回だけはミスった。感情に流されて思うがままに行動しちまった。 「…やっちまった事はしょーがねーよ。お前らは大丈夫なのか?陸はちゃんと帰ってきたか?」 「…俺達は全然大丈夫だ。陸はアンパンやっててラリってた。いまクイーンに着いた。みんな集めといてくれ。」 陸にはケジメをつけてもらう。真也は便所からバケツに水をくんできて陸にぶっかけた。
https://w.atwiki.jp/uyoku310/pages/104.html
俺はチョン高前にいた。どーせ喧嘩すんなら拐ったりよりタイマン張りたい。自分のわがままだけど俺が始めた喧嘩だ。テメーのケツぐらいテメーで拭きたい。迷ったけどこれが一番だ。信義、ごめん。ワラワラと奴らが出てきた。 「崔出せ。俺一人だ。」 「日本人なんて信用できる訳ねーだろ!素直に頭だすと思ってんのか!」 予想はしてたけどやっぱりそんなに甘くない。その日もボコボコにされた。でも次の日も俺は一人でチョン高に行った。また同じ事の繰り返しだ。次の日も、また次の日も。さすがに5日も繰り返すと奴等も気味悪がって近付いて来ない。おかげで顔中腫れてすごい事になってる。 「…テメーが5日も俺の事待ってた奴か。」 やっと崔が現れた。長かった。 「タイマン張れよ。元々は俺が原因の喧嘩だ。俺とそっちで一番強え奴で決着つけるのが筋だろ。それとも日本人が怖くて喧嘩できねーか?」 わざと逆上するような言葉で言った。だけど崔は至って冷静だった。 「…怪我が治ったら来いよ。それまで停戦しといてやるから。いまお前と喧嘩してもただの弱い者いじめになっちまう。俺達は日本人と違うからそんなカッコ悪い事はしねー。出直してこい。」 なめた事言いやがって。 「じゃー10日後。場所は佐伯水源でどーだ?」 佐伯水源はナイトがよく使う集合場所。チョン高からも近い。 「わかった。ビビって逃げんなよ。」 「テメーこそだ。怖かったら国に逃げ帰ってもいいぜ。」 そー言って俺達は別れた。正直、この崔って奴は当時のヤクザドラフトに引っかかるくらい喧嘩が強くて有名だった。イーグルのマイク先輩、雹のみっ君、ウチの格さんとそしてチョン高の崔。その4強の一人。神風でも吹かない限り勝てそうーもない。我ながらバカな事したと思ったけど俺達みたいなのはマグロと一緒で動いてないと死んじまう。なめられたままじゃー終われない。この頃の俺達、つまんないプライドに命懸けてた。母ちゃん、ごめんな。アンタの息子は想像以上に大バカだ。
https://w.atwiki.jp/uyoku310/pages/55.html
10時になった。久しぶりの喧嘩だ。テンションが高い。 「今日はナイトがくるから。寿連合ぶっ叩いたら浜で合流すっから気合いれてけよ!」 格さんが言った。 寿連合は今日走るらしい。その辺はリサーチ済みだ。奴らも浜に向かってくるから51号線でかち合う。弱小暴走族が。ぶっ潰してやる。 みんな一斉にエンジンかける。緊張するけどこの瞬間が一番好きだ。 「いくぞーウラァ!!」 格さんの掛け声で俺達は走り出した。 俺と信義が持ってる特攻隊も奴らの地元に入らせてる。後と前から挟みうちだ。 10分も走ると前から群れが来るのがわかった。寿連合だ。奴らも気付いたらしく、止まった。 51号線は完全に封鎖された。 向こう側から木刀が飛んでくる。開戦の合図だ! 前から俺と信義が行く。 喧嘩のときは精一杯キレてる奴を演じる。腕力が強い奴よりも金属バットで頭に向かってフルスイングできる奴の方が怖えぇ。誰だってそーだ。 最初は威勢のよかった奴らもさすがにキレてる奴らは相手にしたくないらしい。しかも後ろからも挟まれてる。 あっと言う間に奴らは単車を置いて両側に散っていく。でも頭だけは逃がさない。俺と信義は頭を捕まえて徹底的にフルボッコにして拐った。 ウチのカンバンなめてた奴だ。見せる地獄は少しじゃ済まない。奴らの乗り捨ててった単車とチームの旗に火をつけて喧嘩は終りだ。寿連合の頭は裸にして浜の真ん中に縛ってきた。これで二度と俺達にはたてつけない。 ナイトが合流した。このチームも今年代替わりして、格さんの友達が頭になった。 夜の浜は無法地帯だ。夜はまだ長い。俺達の時間は終わらない。