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前回の話 「……!」 水平線の向こうから幾つかの影が近づいてきた。 しかし、自分の心中は平穏ではなく、 夜空のかけた満月が運命を大きく捻じ曲げたと思わせる程度には不気味で脅威な存在に見える。 「提督、艦隊が帰投しました……」 岸壁に上陸した艦隊のうちの扶桑が報告に上がる。 しかし、扶桑は旗艦ではない。 では何故随伴艦の扶桑が報告に出ているのか。 何故今にも泣き出しそうな程に顔を歪めて低い声で報告しているのか。 敵艦隊撃退に成功したにも関わらず、何故他の随伴艦も一様に目を逸らしているのか。 何故なら。 「なお、旗艦山城の行方は未だ不明です……」 自分は、鉄の味がする程乾いた唇に歯を立てる。 海戦には勝利したが、ちっとも喜べなかった。 …………………… ………… …… 陰りない程燦々と海を照らしていた夕べの陽は、自分らを騙して悪夢の海に引き込もうと企てていたのだろうか。 何の罪もない筈の遥か遠くの恒星にさえこんな疑心を向けてしまう。 人間は兎角理由をでっち上げて何かに押し付けないと気が済まない生き物だ。 今の自分は冷静さを海の底へ沈めてしまっていた。 「何処へ行きやがったんだ、山城……!」 鎮守府庁舎の屋上で、自分は目の周りに痕ができる程双眼鏡を覗き込んでいた。 庁舎より低い背丈だが沿岸に建つ灯台も、山城へ母港の位置を示そうと忙しなく光の柱を回転させる。 闇の地平線に目を凝らしても、軍艦どころか貨客船一隻見当たらない。 「提督、お体に障ります……」 背後から扶桑の声が聞こえた。 いつの間に屋上に来ていたのか。気配に気付けなかった。 しかし気に留めない。 自分は双眼鏡を通して水平線を睨み付ける。 「提督、もう寝ましょう?」 「扶桑が先に寝ろ。私もそのうち寝る」 山城を大事にしている姉の扶桑が、今は鬱陶しかった。 誰かと話す気分ではない。 追い払う目的でそんな科白を吐き捨てる。 「…………」 扶桑は諦めたのか、何も言わなくなった。 下駄が小さく床を踏み鳴らす音の後、屋上の扉を閉める音が聞こえた。 …………………… ………… …… 次の日。 空腹感はあるのに食欲がないと言う経験を初めて味わった。 食事するのも億劫で、そんな時間も惜しい。 自分はスケジュールを乱し、真昼間にやっと起床した。 極最低限の書類執務だけ片付け、あとは手掛かりなく地平線を睨み付けるだけ。 出撃も演習も、建造も開発もさせず、遠征は前日行っていた指示を繰り返すだけ。 食事も間宮から押し付けられた握り飯を流し込むように食べただけ。 全てがどうでもよくなっていた。 陽が沈んでから海を見渡し続けても、目に映ったのは少しの艦娘の集団だけ。 あれは何処の鎮守府所属の艦だろうか。 嗚呼、数時間前に自分が送り出した遠征部隊だったか。 秘書艦扶桑に呼ばれて下に降りるまで分からなかった。 私の顔を見るなり艦らは異常なものでも見つけたようにぎょっとしていた。 よくやった。ではまた遠征に赴いてくれ。 気にせず空虚の労いの言葉を贈ったが、艦一同の表情は晴れない。 当然か。 遠征部隊の出港を見届けた後で扶桑に手鏡を見せられ、自分も驚いた。 開いていない程に細められた目の下には隈が出来ており、 その上から双眼鏡を押し付けた焼印のような痕がついていた。 おいおい、何て醜い顔を見せるんだ扶桑よ。 自分は逃げるように再び屋上に戻ったが、もう双眼鏡を手に取る気力さえ残っていない。 偶々ポケットに入っていた煙草に手を付ける。 煙草は双眼鏡と違って紙で出来ているから軽くて楽だなあ。 早速点火して煙を吸引してみると、思いのほか重かった。 肺に重くのしかかり頭がくらくらする。 でも構いやしない。 山城はもういないのだ。 あの日の夜戦で山城からの通信が途絶えた時、山城は命を散らしたに違いない。 扶桑が山城を"轟沈"ではなく"行方不明"と報告したのは、 沈んだ事も確認出来ない程文字通り木っ端微塵に散ったからだろう。 彼奴は姉と違って普段から"不幸"だの"欠陥"だのぼやいていたからなあ。 "口は災いの元"と言う諺を教えてやるべきだったか。 あの山城がいないのでは、自分も不思議と生きる気力が湧かない。 このまま呼吸不全で死んでしまってもいい。 自分はこの鎮守府の艦からは慕われている事もないから、困る奴もいない。 おや、いつの間にか携帯灰皿が臭い吸殻で満杯になっているではないか。 しかし喫煙はやめない。 今咥えている吸殻をほろりと落とし、そのまま箱に手を伸ばす。 吸う。落とす。吸う。落とすを繰り返す。 「提督!」 誰かが自分を呼ぶ声がした。 死神か。随分な重役出勤だな。 死神に体を揺さぶられる。 赤い目に黒髪、そこからそびえ立つ艦橋が目に映る。 ……山城? どうやら私の迎えを担当する死神は山城だったようだ。 死んだ山城が私を連れて行ってくれるのか。 「何を仰ってるんですか! お気を確かに!」 口に咥えていたものを奪われた。 何をするんだ、山、城……。 体を揺さぶられた事で限界が来たのか、遂に自分の意識は底なし沼へと堕ちてゆく。 山城、今行くからな……。 …………………… ………… …… 視界が黒で染まっている。 自分の後頭部が柔らかいものを感じている。 自分がいるのは天国か、地獄か? 判断がつかない。 そう言えばまだ走馬燈を見ていないな。 それならこの真っ暗闇を背景にぼんやりと流れる筈だ。さあ来い。 しかし待ち伏せても何も流れず、反して自分の意識が覚醒していく。 自分の視界も開けてゆく。 闇が真ん中から上下に向かって割れていき、ぼんやりと何かを映し出す。 「あ、提督……」 「……扶桑?」 長い黒髪を垂らして扶桑の赤い目が憂げに私を見下ろしていた。 頭と反して腰から下半身にかけては硬い感触がある。 ……扶桑に膝枕されているのか。 私はまだ死んでいなかったのだな。 扶桑は私の目覚めを確認してから夜空を見上げ、溜息をついた。 「月はあんなに綺麗なのに……」 それを聞いて私の鼓動は大きく跳ね上がった。 いやいや。 あれは山城とだけ決めた合言葉だ。それを知らない扶桑がそう言うつもりで言ったのではない。 それを知ってか知らずか、扶桑の口は小さく動く。 「提督。山城は沈んだと思いますか?」 分からない。 只さっきの自分はそう思っていた。 やけに乾いた唇を無理矢理動かしてその問に応える。 血が巡っていないかのように頭は働かず、思っている事をそのまま口にしたが、扶桑は平手を張る事もなかった。 「そうですよね……。煙草もあんなに吸っていましたし」 扶桑は少し顎を下ろして前方のある一点を見詰めた。 その方向に首を回すと、そこには煙草の吸殻が幾つも転がっていた。 あれは全部、私がやったのか。煙草一箱消費したのではないか。 ヘビースモーカーでない自分は只々驚く。 次に扶桑は私を見下ろした。 その顔には、まるで手のかかる子供を見る母親のような目が貼り付いていた。 「山城がちょっといなくなっただけでこんなになるなんて、提督は余程山城にご執心なのですね」 前まではその逆だったのに、とそのままの顔で言うが、遠回しに責められているように聞こえた。 それは、悪かったと思っている。 趣味ではなく大真面目な戦争だから仕方ないとは言え、大きな戦力を揃える事が急務だったあの頃は、 正直に言ってしまうと扶桑型より元々性能の高い戦艦の育成を最優先にしなければならなかったのだ。 只勘違いしないで欲しい。 お前ら扶桑型だって充分に活躍の場はあるのだ。 庁舎の部屋も限りがある故、全く使えないと判断していたらそもそも解体している。 「ありがとうございます。でも山城に向けているのは、そういったお考えだけではないのですよね?」 何が言いたい? 「提督は、山城に並々ならぬ好意を抱いていると思っているのですが、私の勘違い、でしょうか」 自分は、すぐには答えられない。 走馬燈のようにこれまでの事を鑑みる。 何時も不幸だのなんだの言っている山城。 姉だけにご執心と思いきや、重巡の前に出て敵の攻撃を受け止める山城。 自身の戦果を無邪気に姉に自慢する山城。 滅多にお目にかかれないが、姉と同じ位に慈しむ目を浮かべられる山城。 幸せを追いかけようと必死になるあまり、周りが見えなくなる山城。 そして、幸せを掴むのに何故か私に頼る山城。 自分は、そんな山城に愛らしさを感じていた。 扶桑。お前の目は確かだ。 私は山城に惹かれてしまっている。 「そうですよね。なら、信じましょう? 山城は、そのうち帰ってきます」 山城が敵の攻撃を貰ったところを見た筈なのに、山城は沈んでいないと信じる。 それは現実逃避ではないか? しかし扶桑の目に陰りや濁りは見受けられず、静かに強い意思を燃やす綺麗な紅の色をしている。 「逃避ではありません。分かりますか? ここ最近の山城ったら、楽しそうに"不幸だわ"って言うんですよ?」 分からない。 自分はそんな場面は見た事はない。 不幸を楽しむと言う感覚も理解出来ない。 そんな姿は扶桑の前でしか晒していないだけでは。 扶桑は首を振って私の言葉を否定する。 「そんな山城が呆気なく沈むとは思いません。山城は絶対に帰ってきます」 「…………」 「出撃する時、山城が約束したんですから、提督も信じて待ちましょう? 煙草の臭いが染み付いていては、山城も逃げてしまいます」 そうだった。 山城は約束したじゃないか。 必ず帰る、と。 山城は約束破りの常習者でもない。 あれだけ姉を慕っていた山城が姉を残して沈むか? いや、ない。 これらは精神論で物を言っていると言えばそれまでで、山城が生きている証拠はない。 それでも、己を見失わず妹の生還を祈る扶桑と話をして大分気分が軽くなったのは確かだ。 自分もまた、扶桑に倣ってみる事にしよう。 静かにそう心に刻み、まず散乱している煙草の吸殻を掻き集める事から行った。 …………………… ………… …… あれから気を持ち直し、扶桑を秘書にして私は日課を続けた。 執務を行い、演習を行い、出撃させる。 そこに山城の姿はなく、自分でも呆れる程に物足りなさ、寂しさを感じていた。 そしてその日課には、臨時として庁舎屋上からの海上偵察任務も加わっている。 それが三日は続いた。 その三日目の晩、双眼鏡にたった一つの影が映る。 薄気味悪い夜の海を一つだけの影が走っているのは何とも不気味だ。 只、それは走っていると言う表現がそぐわない動きをしていた。 あれは。もしや。 自分の胸は高鳴り、堪らず地上まで駆け降りる。 のろのろと蛇行しながらそれは、確かにこの鎮守府に向かっていた。 やがてそれは座礁した途端、力が抜けたように地面にへたり込んで呟く。 「山城、帰ってきました……」 嗚呼、これは夢ではなかろうか。 あるいは、此奴は成仏出来ていないだけの霊だろうか。 いや、ない。 傷一つない姿形をしていたらそうかもしれないが、 ぼろぼろずたずたの艤装と装甲を纏い、全身を煤で汚し、死にそうな声だがしぶとく生気を赤い目に滾らせている。 そんな酷い有様が、現実味を見事に演出していた。 「山城おおおお!!」 脇目も振らず全速力で山城の元へ駆け寄った。 飛び付くように、もう目の届かないところへ行ってしまわぬように、ひしと抱き締める。 山城の体は、ぼろぼろになって機能を低下させている缶のように冷えてしまっていた。 「わぷっ! ……提督?」 「山城っ……山城ぉ……」 「……大の大人が、なに泣いてるのよ……」 誰の所為だと思っているのか。 他人事のように言いやがって。 どれだけ心配したと思っているんだ。私が体を壊す程だぞ。 山城に嬉し紛れの罵倒を浴びせる。 思考が上手く出来ず感情だけで物を言う余り、語彙の無さが滲み出る。 「あの日近代化改装しろって言うからしてやったのに……、馬鹿だ。馬鹿! もうドックから出るな!」 「ひどい、言い方するのね……」 月は天高く艦が寝静まった静かな鎮守府の一角で、自分は張り詰めていた気を緩め、 弱っている山城の低い体温を確かめながらみっともなく喚く私を、山城は力のない手で擦って宥めてくれた。 山城は、大破しながらも確かに帰投した。 …………………… ………… …… 山城から目を離したくないと思う余り、逸る気持ちのまま山城の入渠に同伴する等と言う戯言をのたまった。 その直後我に返って自分で呆れたが、何故か山城は拒まなかった。 そう言う経緯があり、修復ドックの入り口に満杯の看板を立ててから、山城に続いて自分も暖簾をくぐった。 広間には艤装を修復する機器、疲れを癒す様々な物が整然と並んでいる。 山城が艤装を全て下ろすのを見届けてから、脱衣所へ向かった。 当然ながら脱衣所が仕切られていたりはせず、自然と山城と共にタオル一枚だけの姿になる。 「あまり見ないでくれます?」 それは恥じらいをもっての言葉か、体に煤が付いているのを気にしての事か。 どちらにせよ自分がそれに従う理由にはならない。 山城を促して浴場のタイル床に足をつける。 共に言葉を交わさず風呂の椅子に腰掛け、体を清めていく。 自分は手早く頭と体に付けた石鹸を流したが、山城はまだだ。 山城が疲弊し切っているのに先に湯船に浸かる事を憚られた自分は、髪を気にする山城に声をかける。 「山城、背中を流そうか」 「え……、いいです。自分で できます」 山城が湯船に入るのを待つので自分はやる事がないんだ。 丁寧にやるから、山城はゆっくりしていていい。 「むぅ……、痛くしたら姉様に言い付けますから」 山城は拒まなかった。 そう言うとタオルを緩めたか、山城の背中が露わになる。 手拭いに石鹸を塗りたくり、山城の背中に押し付けた。 煤で汚れた部分を特に念入りに、しかし強い力は入れず山城の背中を擦る。 艦娘を人と同義として良いのか分からないが、 露わになった山城の背中やうなじは人の女性と同義の物を持っていた。 髪を壊れ物のように扱う山城に見習って、手拭いを上下に動かす。 少しして、山城は鏡に向かったまま私への呼び声を浴場に響かせた。 「今日察しました。帰投するまでに、練度が限界まで上がったんです」 おめでとう。 思えばもうそこまで来ていたのだな。 私も嬉しく思うよ。 「で、聞きたいんです。提督は……、どうしてここまで私を使ってくれたのかって」 お願いしたのは私ですけど、と最後に付け加えられる。 放置したら拗ねて、使ったら使ったで疑心を持つとは面倒臭い奴だ。 ある期間放置した事はあったが、そもそも山城をもう使わないつもりでいたのではないんだよ。 山城が先に懇願してきただけで、そのうち招集するつもりはあった。 で、その理由だったか。 戦力を軒並み増強させねばならないと言うのも理由の一つだが。 「趣味だよ」 「は?」 山城は上官への言葉遣いを崩す程に唖然としていた。 顔を横にずらして鏡の中の山城を見やる。 山城は目と口を主砲口径のように丸く開けていた。 山城は私の言葉を反芻する。 「趣味……?」 「分からないか。お前ら扶桑型の高い艦橋に、妙な魅力を感じる者は多いんだよ」 扶桑型の造形について情を込めて語る者は、過去と現在、軍人と民間人、共に多く見られる。 それを記した書物も、探すのは容易い事だろう。 山城は周りが見えない質だな。 何でも不幸だと言うが、まさか人から慕われる事まで不幸だと思ってはいまいな? 「ま、私が山城に感じる魅力はそれだけではないんだがね……」 「え……、ひゃ……!」 手拭いでなく指で直に山城の背筋を、つつ、と撫でる。 山城は驚いたように体を震わせる。 立ち上がれないよう山城の弾薬庫の前に両手を回し、包み込むように抱き締める。 煤の混ざった石鹸が自ずと体に付着するが、どうでもよかった。 鼻先に来た山城の右の耳たぶを口に含むと、また面白いように山城は跳ねる。 「ひぅ……! て、ていとっ、くぅ……!」 あむあむと口先で山城の耳を甘噛みする。 山城は払おうと首を振るが、抵抗は無に等しいものだった。 それに合わせて耳を覆い隠そうと小さく揺れる濡れた横髪が顔に当たり、こそばゆい。 しかし邪魔しようとするそれさえも、自分は愛しく思えた。 気分が高じて自分は舌をも突き出し、山城の耳たぶを攻め立てる。 「提督っ……、なんで、こんな……っ」 この分からず屋が。 自身の価値を理解しようとしない山城なんか、こうしてやる。 山城の耳に舌を突っ込んだ。 「ふぁ、っ、……っ! うぅ……!」 山城の耳たぶを唇で挟む。 山城の耳の穴で舌を暴れさせる。 そんな事だけを繰り返していく。 それだけで体を震わせていた山城は、タオルが緩んでいる事も気付いていなかった。 その隙を見、身体の前を隠すタオルを震えに紛らわせて下ろしていった。 山城の耳を攻めながら鏡を見やる。 山城は、立派なものを持っていた。 抱き締めているうちの左手で、それを下から持ち上げるように揉みしだく。 「あっ!?」 山城の目が開かれ、私と目が合った。 自分は山城の超弩級なタンクに虜になり、耳から口を離す。 手に吸い付くような錯覚を覚える程に、柔らかくも張りがある手触りだ。 これだけのものを手入れするのだから、戦艦の入渠は長くても仕方のない事だなあ。 自分の理性はもう排水溝に流れてしまった。 邪魔物を取っ払って妙にすっきりした気持ちだ。 そうなると、自分の血液はある一点に集まってくる。 「……んっ、ちょっと、何か当たってるんですけど……」 それを覆い隠していたタオルの存在意義は潰れている。 タオルから顔を出した自分の単装砲が、たちまち戦闘準備に入るように首をもたげたのだ。 たった数秒で起き上がったそれが、山城の背中に当たる。 それの正体が山城にも分かるようにぐいぐいと尚押し付ける。 その間も、自分は山城のタンクに夢中だ。 経験のない雑な手付きで揉まれるそのタンクを、鏡越しで眺める。 タンクの中央に備えられた突起を摘み上げるだけで山城は言葉を詰まらせる。 こんなのでよがってくれるとは、山城は何と優しいのだろう。 もっと見せてくれ。 タオルの中に右手を突っ込み、すべすべな弾薬庫を撫で回す。 「ひゃ、そっちは……! ふ、うぅ……!」 何やら危惧した様子だが、どうしたのか。 知った事ではないが。 再度耳たぶを唇に挟み、タンクと弾薬庫の修復作業は続行。 あむあむ。 「っ! ……っ!」 もにゅもにゅ。 「ふあん! もっと優しく、扱ってよ……」 すりすり。 「うんん……、んやぁ……」 山城、すまん。 久し振りだから、我慢ならないんだ。 「久し振りって、三日しか経ってないでしょ……」 山城は三日の間海でどう命を繋いだかは分からないが、山城を待っている間の三日は途方もなく長かったのだ。 終わりの見えない隧道に入ってしまったようなものだ。 不安と絶望に塗れて仕方がなかった。 山城が悪いんだ。艦隊からはぐれて、私を三日も待たせた山城が。 不満なら自身の失態を悔やんで大人しく私に弄られてくれ。 有無を言わさずそう吐き捨て、弾薬庫を撫ぜていた右手を、下へ。 「なに、言って……、ひっ」 山城は身をよじった。 しかし両腕で固定している為に逃れられない。 手で初めて触れた山城の其処は、既に濡れていた。 陰毛の奥の裂け目からとろりと垂れている、お湯とはまるで手触りが異なる粘液で。 なんだ、早いじゃないか。 山城も期待していたのか? まだ始めたばかりなのにもう準備が整っているようではないか。 耳元で囁きかけ、これなら遠慮はいらないだろうとばかりに、山城の艦内に中指の第二関節までを突っ込む。 つぷぷ……。 「んはぁぁぁぁ……!」 山城の艦内は指を誘導するように疼いていた。 おお、と感嘆の声を漏らす。 山城の口は上と下、どちらが正直なのだろうな。 百聞は一見に如かず。 考察する前に試してみれば分かるだろうと、指を動かす。 「んあ! ちょっと、中で動かさ、なっ!」 言葉になってないぞ。 只、なっていても聞く気はない。言葉ではなく嬌声を聴く気ならある。 それしかないので指の動きは大きく無遠慮なものにしていく。 艦内の壁を撫でたり、一際柔らかそうな部分を押し込んだり、色々刺激を与えてみる。 「ていとくっ、待っ、まっ……てぇぇ……」 蚊の鳴くような声だ。 前方の鏡を覗き込む。 そこには、水も滴る良い艦がいる。 乱す黒髪に、目を強く閉じ、嬌声を作る唇。 露わにされている肩、鎖骨、胸部。 それだけでなく、それより下を隠すタオルさえも、みだりに乱れた山城の良さを引き立てていた。 それに自分が見蕩れるのは当然の道理だろう。 「ふう、ふぅっ、……?」 タンクを揉みしだく手、艦内を点検する手の動きが止まってしまう。 山城はふと目を微かに開いた。 その動きに自分も反応を示し、それを追う。 結果、当然ながら鏡越しではあるが視線が絡み合った。 「っ!」 山城は、指図されている錯覚でもしているように首を左に回転させて私から目を背けた。 ……なんて可愛い奴だろう。 しかし、その所為で鼻先にあった山城の耳が遠くへ行ってしまった。 玩具を取られた気分だ。酷い事をしてくれた。お仕置きしてやらねば。 山城の艦内に差し込んだ右手を、指だけでなく手全体を動かすように動かす。 くちっ、くちゅくちゅくちゅくちゅ……。 「んぁっ、ぁ、ぁぁああぁぁああ!」 山城の嬌声が、ドックに木霊す。 良かったな。貸切にしておいて。 山城の恥ずかしい嬌声は誰にも聴かれる事はない。 私を除いて。 「随分乱れるようになったなあ。山城?」 「あっ! んん……、んんんん……! て、提督の、せいでしょっ……!」 こら。鏡越しでいいから、目を合わせなさい。 山城からすれば、此方を責めているつもりなのかもしれないがな。 その科白は、此方の情欲を煽らせるだけなのだ。 我慢ならない。自分の単装砲は威勢よく跳ねているのだ。 山城の胸部と艦内の点検作業を中断する。 山城がこうも乱れているのは、我侭な提督の所為か。 しかし何時も私に主導権を握らせているのは山城なのだから、それは山城の自業自得と言えよう。 そんな私から逃げるように左を向く山城の左耳に小さく命令の言葉を放り込む。 立って壁に手を突け。 「~~っ!」 山城は背筋を痙攣させる。 耳に囁かれるのがそんなに気に入ったのだろうか。 一足先に自分は椅子から腰を上げた。 山城の両肩を持ち上げるようにして催促すると、山城は肩を痙攣させながらも何とか立ち上がる。 山城のタオルが足元に落ちた。それを私が向こうへ蹴り飛ばし、自分の腰に巻いているものも放り出す。 山城は、私の命令に逆らわない。 壁に両手を突き、腰は此方に突き出してくれる。 山城は本当に以前よりも練度が上がってきているな。 これから何をするのか、分かっているじゃないか。 「……っ」 自ずと主張される山城の尻の、なんとも男の性を刺激してくれる事か。 ふるふると誘うように震えている。 山城が海戦で中破帰投すると目にする尻を、今自分は弄ぶ権利を握っているのだ。 おくびにも出さなかったが、あの尻に己の手を沈めてやりたいと実は常々思っていた。 一先ずは山城の腰を左手でむんずと掴み、右手は自分の主砲に。 照準を定める。 「っ……、ぁ、ぁはあっ!」 入った。 ピストン輸送を開始する。 山城の艦内は潤滑油で程よく濡れているし、艦内が引きずり込もうと疼くし、 自分の主砲も山城の艦内を拡張工事する位に膨張したおかげで隙間がない。 複数の要素が上手い具合にかみ合っているので、とても円滑に行えている。 「う、ああっ、ぁ、ぁあああ……、てい、とくのっ、いつもよりも……っ!」 それだけ待ち遠しかったんだよ。 分かるか? 三日も待った私の気持ちが! ぱん! 「いひゃいっ!」 私は山城に、言葉をぶつけ、艦内に主砲をぶつけ、尻に手をぶつけた。 艦隊からはぐれるなんて問題外だ。 この鎮守府最古参の戦艦なんだからもっとしっかりしろっ! 後輩の戦艦が呆れるぞ! ぱん! 「あうぅっ! し、仕方、ないでしょっ! あん! や、夜戦は、苦手なのよおっ!」 苦手? 練度が限界に達しておきながら苦手なものがあるというのか。 本当に限界まで練度を極めたのか? このっ、このっ! ずぶっ、ずぶっ! 「あ! ああっ! だ、だってえっ! 夜戦に、いい思い出なんかないんだからぁっ!」 自分は、ぴたと動きを止めた。 第六感がここは話を聞く場面だと興奮する私を冷静に諭したのだ。 山城は酸素を求めて必死に息を整えようとする。 暫し待つと、山城は息絶え絶えながらも私に訴え始めた。 「はぁ、ま、"前"の時はっ、超弩級の威厳なんかなかった」 「私は、最期の夜に敵艦に囲まれて、姉様と一緒に虐殺されたからっ、それが、今でも……」 どくん。 自分の心臓が強く脈打つ。 艦が経験してきた事は、経歴には事細かに記されていない。 だから、その事柄は初めて知った。 日本軍艦はかつての大戦の戦況悪さ故に敵国より悲話が多いから、 此方から首突っ込んで聞くのはよしたほうがいいだろうと前々から判断していたが、ここまでとは。 彼女らの精神に深刻なダメージを与えてしまわないようにとの配慮だが、 たった一隻からそれを聞くだけでも聞く者に深刻なダメージが来るものなのだな。 囲まれて虐殺される。 躊躇いなくそんな言葉で表現できる山城の奥底の闇を垣間見てしまったようだ。 そこには、どれだけの悲しみやら憎しみやら辛さやらの負の感情があったか計り知れない。 悪ふざけで山城を虐げていた先までの自分の姿がとてもみっともない。 しかし、山城の艦橋を越える程自分に呪詛の言葉を積み上げるのは後だ。 自身の恐怖の根源である夜の海を三日も彷徨って命からがら帰って来た山城を、自分は修復しなければならない。 自分は、慈しむ想いで身体を山城に重ねる。 なるべく耳に伝わるよう首を伸ばしてそこに呟く。 すまんな。 「え、提督? ……んあっ!?」 止めていた腰を再び動かす。 両手を前に持っていき二つのタンクを揉む。 「あうっ! そんな、いきなりっ!」 自分の下腹部を山城の尻にぶつける音がリズムよく木霊す。 それに合わせるように山城の艶かしい歌声が響く。 欠陥だの不幸だのそう言った口癖だけ聞いていると弱そうだが、やはりと言うか山城はそんな事はなかった。 夜の海で凄まじく不本意な最期を遂げた山城に未練があるのは当然で、 それをばねに蘇ったと言っても過言ではない今の山城が、弱々しい訳がない。 山城もまた芯のあるしぶとい強さがある。 浴場に響くこの綺麗で儚げな嬌声にも、そんなものがあるように聞こえた。 聴覚がそう錯覚してくれると自分の心は揺れ動く。 「はあはあっ、あっ、ああっ! て、ていとくっ!」 自分の身体も突き動かされる。 山城に対するこの大きな感情が暴れて止まらない。 嗚呼、こんな感情が生まれたのは何時からだっただろう。 いつの間にかできていた。 不幸と言いながら死にたがりにならず生きる山城が、 深海へ足から引きずり込まれそうになりながらも足掻く様に生きる山城が、愛しくてたまらない。 「……っ、……っ!」 自分は思わず歯を食い縛る。 口から出ようとする心臓を縛り付けておくために。 それでも、山城とこうしていると次第に自分の枷も小破、中破、遂には大破してしまう。 嘗ては不幸から脱却したいと言う山城の為にこう言う事をしていた筈なのに、 今こうして山城と一つになっている事を、自分の方が幸せに感じてしまっていた。 おかげで、自分はあまり長く持ちそうにない。 「……しろっ、山城っ、山城っ! す……!」 危ない。 地の声を零し掛けた。 山城は別に私にそう言った意味での好意は持ち合わせていない。 そんな山城に自分がそんな想いをぶつけたって何も実らないし、山城が迷惑がるだけだ。 「あ、あっ! ああん! んっ、てい、とく……何ですか……っ」 何でもない。気にしなくていい。 もう出るから、山城は準備する事に集中しろ……っ!! そんな事を言いつつも山城にそんな時間なんか与えず、 頭の頂点から足先まで一つになったまま自分は達する。 唯一つだけ除いて。 どぷっ! びゅく、びゅくびゅくびゅる……っ!! 「んっ! ぁ、はああああぁぁ……!! うぅんっ……」 …………………… ………… …… あの後、自分は急激に萎えた。 自分の中の熱い想いは、外的攻撃によって墜落するように冷めたのだ。 自分の事だから理由くらい分かっている。 山城に対するこの想いが実らない事くらい分かっている。 言い方は悪くなってしまうが、山城は私の事を、自身が幸せになる為の踏み台としか思っていないだろう。 逆に山城にそう言った好意を抱かれる事をした覚えはない。 では出口を見つけられずに自分の中で疼くこの想いはどうすればいいのだ。 そんな葛藤が始まった自分は、早く寝床に身を沈めたい気持ちに包まれた。 山城は上手く修復できたようで、艦が大破した事で体に溜め込まれた疲労はすっかり抜けたと言っていた。 それを聞くや否や、自分は短い返事だけ返して湯船にも浸からずに出てきた。 そして今、こうして寝床の布団を頭から被っている。 山城を修復した代わりに私の調子が狂ってしまったようだ。 なあに。一晩寝れば直るさ。 「……提督? 寝てる?」 山城か。扉を叩かずにいきなり足を踏み込んでくるとは無礼者め。 提督はこうして惰眠を貪っているのだ。 お前の修復作業で疲れたのだ。眠っているのだから話し掛けないでくれ。 顔を覗きこまないでくれ。頼む。 「……馬鹿」 おいどういう意味だ。 自分の背後でそんな言葉を投げかける山城に心の中で問う。 山城は意味の分からない罵倒を静かに飛ばしてから、部屋の扉をゆっくりと閉めた。 今夜は、こうして煮え切らない想いを抱えた自分に構わず更けていった。 これが気に入ったら……\(`・ω・´)ゞビシッ!! と/
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作品名 :あきつ丸探訪記 ラバウル珈琲農園 短編鎮守府 筆者 :赤肩 種別 :Twitter ジャンル :日常 探索 エロ 連載形態 :連載中 作品タグ :#あきつ丸探訪記 #ラバウル珈琲農園 #短編鎮守府 作品感想タグ :#赤鎮 まとめリンク :pixiv(あきつ丸探訪記 ラバウル珈琲農園 その他) togeter(短編鎮守府のみ) 備考欄 :『あきつ丸探訪記』 暇を持て余し、爛れた愛人関係の日々にもたらされた一冊の日記。 大陸陸軍の書庫で埃をかぶっていた日記はラバウル基地提督を艦娘と深海棲艦の 真実へと誘う。艦娘という存在、深海棲艦という存在、この世界は何故戦争を しているのか、誰のために戦わされているのか、本作はこの疑問をテーマにしている。 『ラバウル珈琲農園』 ここ数十年誰も着任しなかったラバウル基地に配属されてしまったこの男。 何故か近海に現れない深海棲艦、出撃もない日々をただ暇をこじらせていた ボンクラ提督と艦娘たち。そんなある日、提督は島に自生する珈琲の木を 見つけ彼は思った。「敵がいないのならば、艦娘を使って農園をやろう」 『短編鎮守府』 作者が「ネタは思いついたけど既存のタグじゃ書けねぇよなぁ」と思ったツイ鎮 SSを殴り書きしているタグ。この世には提督の数だけ鎮守府があるらしい ならば艦娘の数だけ鎮守府があってもいいじゃないか。 つまりこうだ、提督の数に艦娘の数を乗算した数だけツイ鎮SSがある。 .
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675 :影響を受ける人:2014/05/01(木) 22 29 49 提督の憂鬱支援SS 小型偵察機の話 連絡とは大事である。 ホウ…報告 レン…連絡 ソウ…相談 この三つは社会に出ていくうえで、必須であると言えよう。 夢幻会はもちろん理解していた。 だからこそ東条英機の発案により、帝国陸軍の通信網が発達した。 とはいえ、それはあくまでも無線の距離での事・・・ 敵情偵察には、また別の方法が用いられることとなる。 艦載も考えられる単発の高速偵察機、爆撃機利用の高高度偵察機。 これらの機体は後々に作られ、確かな敵情を味方に伝え、勝利に貢献していく。 その中で、あまり知られていない偵察機もあった。 その機体は・・・パラグライダー・ハンググライダーを用いた小型の偵察機だ。 小型の発動機を搭載し、短い滑走路で飛翔可能なこの機体は、目立たないながらも色々と活躍した。 元々の発案は、モーターパラグライダー経験者の転生者がもう一度これで、大空を飛びたかったからなのだが・・・ 低空飛行が得意で山間を飛んで行ける。 しかし、騒音の問題があり。飽く迄も偵察機の範疇に収まった。 これを見た各国のスパイはすぐに伝え、同じような機体を作成した。 戦後は転生者が望んだ様に、娯楽の一つとして民間に定着する。 実は、組み立て式小型飛行船なるモノも存在したのだが、浮かせる気体が燃えやすい水素で会った為、不採用になっている。 以上です。昔ならまだ使えるかな?と思って出してみました。 設定の話としてはかなり短い・・・ スペックも書いていない・・・ 批判、不評を受け付けています。
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243 :223:2014/06/01(日) 23 37 27 ID MpmLk9d2 んじゃ投下します ケッコン編、提督視点と曙視点 ←前に書いたの R18編 ←続き書いたやつ で計三編ですが実質二編です、長い上にメンドクサイ構成ですみません 244 :提督×曙 side提督:2014/06/01(日) 23 39 34 ID MpmLk9d2 「曙」 「なに。わざわざ名指しで呼び出すなんて、ずいぶんと偉くなったものね。このクソ提督」 ある日の鎮守府。ここで艦娘たちを指揮して謎の敵「深海棲艦」を倒す「提督」となって、はや半年近くが経つ。 小柄な体で仁王立ちした駆逐艦娘が目の前にいる。今日は(今日も、かも知れない)少々ご機嫌斜めの様子だ。 割と長い付き合いとなるこの小さな艦娘―曙を呼び出したのは、一世一代の大勝負を仕掛けるためだ。 初対面でいきなりクソ提督呼ばわりされた時は面食らったが、その痛々しさが見ていられなくて、俺は彼女を大切にすることに決めた。 「大切にする」とは言っても、最初は駆逐艦娘特有の外見の幼さも手伝って どちらかと言うと庇護欲というか、父性をくすぐられたところが大きかった。 しかし、彼女と接しているうちにそれは間違いだったことがわかった。 艦娘は人間とは違い、外見が幼いからといって精神も幼いとは限らないのだ。 曙は、小さくとも駆逐艦としての矜恃を秘めた、そしておそらくそれを『以前』に何らかの形で傷つけられた、複雑な内面を持つ艦娘だった。 それに気づいた俺は彼女への認識を改め、同時に惹かれ、別の感情を膨らませることになった。 黙々と書類仕事を片付けながら、書類に目を落としたまま話題を切りだす。 「…お前、強くなったよな」 「そうね。誰かさんのシゴキのお陰でね」 彼女は元々うちの鎮守府内でも相当高い練度だったのだが、ここ最近、連日のように西方海域での敵潜掃討任務に投入されていた。 勿論、出撃命令を出したのは俺だから、正しくは「投入していた」だが。 「その話を切り出してくるってことは、そろそろ最近の不可解な出撃の訳を話してくれるってことでいいのかしら」 「ん、まあそんなところだ。お前の練度は現状、俺の施してやれるほぼ最高のレベルに達している」 「ふーん…で?もうこれ以上能力は上がらないから第一艦隊から外すって?」 「んー…ま、そうするのもいいかも知れんがな」 「…」 しまった、つい売り言葉に買い言葉を返してしまった。俺の悪い癖だ。 しかし、曙も曙だ。そんな辛そうな顔をするなら最初からそんな悪態吐くなよ、コッチまで傷つくだろ。 …ま、そういうところもこいつの可愛らしい点の一つなのだが。 ごほん、と咳払いをして嫌な感じの空気を追い払う。 「本題に入るぞ。上が艦娘の能力を更に引き出す、新しい技術を開発したそうだ」 「新技術?」 「ああ、そうだ。今のお前の限界を超える力が手に入る。正確には、従来の限界を超えて鍛錬の効果が出る、ということだそうだ」 「これ」の噂は一部の艦娘にも届いていたようだが、根が真面目な曙は意に介していなかったらしい。 まあ、それも計算に入れての、この呼び出しだが。 そして、「これ」が噂されていた時から、既に俺は心に決めていた。 「他にも燃費が少々良くなるらしい。あと、ささやかな加護が得られるそうだ」 「ふうん…加護ってのがよくわからないけど、燃費が良くなるなら大型艦向きじゃない?」 今では彼女も俺をそれなりに尊重してくれるようになった…と思う。うん、多分。 表面上の態度は相変わらずだが、言葉や仕草の端々にそんなニュアンスがある、気がする。希望的解釈だが。 「で、それをお前に施そうと思う」 「あんたあたしの話聞いてた?元々消費の軽い駆逐艦の燃費を上げてどーすんのよ。 それに、たかが駆逐艦の能力をこれ以上上げたって大した戦力増強にならないわ」 「付け加えると、これを受けられるのはひとつの鎮守府につき一人の艦娘だけ、ということだ」 「はあ?じゃあますますあたしに施す意味が薄いじゃない。 武蔵さんや長門さん、加賀さんたちのためにとっておくべきでしょうが」 「まあ、理屈で言えばそうなるな」 「だったら…!」 「それでも俺は、お前に施したい」 「何でそうなる…施し『たい』?」 「ああ。この件に限っては、艦娘側に受けない自由がある。命令じゃない」 曙が怪訝な顔をする。そう…「これ」は命令じゃない。 もし、先程述べたようなことがただの俺の勘違いだったら?俺がただ一人芝居で浮かれていただけだったら? 多分、今までも沢山の先人たちが恐れたであろう、そして不幸にも的中することも多々あったであろう嫌な仮定が次々と脳裏をよぎる。 その恐怖をなるたけ表に出さないよう、淡々と説明を続ける。 「これが、…その、装置だ」 意を決して、黒い小箱を取り出す。 「ふうん?ずいぶんと小さいのねえ。本当にそんな効果がある…の…」 何気なく小箱を開いた曙が絶句し、固まる。 彼女が言語機能を取り戻すまで、たっぷり数十秒はかかった。 「こ…れは、また、タチの悪い、冗談ね…」 「まさか。正真正銘、上から降りてきた新技術…その恩恵を受けるための装置、いや、証と言った方が正しいかな。 練度が最高レベルに達した艦娘にしか、効果が無いそうだ。…お前の、ここ最近の出撃の、理由だ」 「…」 「言い忘れていたが、その技術の名前は、"ケッコンカッコカリ"…と、言うそうだ」 「…!」 理解が及んだ曙の顔がみるみる赤くなる。多分、今俺の顔も同じようになっているだろう。 「いや、な?カッコカリと付いてる通りあくまでこれは艦娘強化策の一つであってだな、 これを開発した連中が脳内お花畑の馬鹿野郎だってのは間違いない、 まあ中にはマジで挙式する提督もいるらしいがいやそんなことは今関係ない…」 「…そ、それじゃ、ささやかな加護って…」 「…たぶん、愛の力、とか?」 「…」 いかんいかん、何アホなことを口走ってるのだ俺は。うう、呆れたような目線が痛い。 「ごほん、あー、さっきも言ったが、艦娘側に受けない自由があるというのは…まあ、そういう、ことだ」 「…」 うん、多分大体伝わっただろう。再び沈黙が執務室を支配する。 その沈黙は、曙のつぶやきで破られた。 「…あたしなんか、可愛げもない、ただの駆逐艦なのに…、どうして告白なんかしちゃってるのよ…」 「あー、まあ何だ…惚れちゃったもんだから仕方ないな」 「惚れっ…!? よ、よくそんな、恥ずかしいこと言えるわね!顔、真っ赤っ赤じゃない!」 「うるせえ、お互い様だ。そりゃクソ恥ずかしいが、言わなきゃイカン時ってのはあるんだよ。曙…俺とケッコン、してくれ」 「……!」 「曙には、これからも秘書艦をやって欲しい。…ずっと、俺の…傍で、だ」 「…」 不意打ち気味開き直り気味のプロポーズに、曙、二度目の絶句。だけでなく、真っ赤な顔を俯かせてしまった。あー可愛い。 しかし自分で言っておいて何だが、一連のセリフがクサすぎて死にそうだ。もうちょっと気の利いた…いや、こういうのは直球が大事… また双方黙ってしまった。今度はこちらから声をかけてみる。 「あー… 曙、さん?」 「…して、あたし…」 「え?」 「どうして、あたしなのよ…! あたしみたいな一駆逐艦じゃなくたって、もっと綺麗で強い、戦艦や空母の方々にだって、 アンタをすっ…好きだって…言ってる人もいるのよ…!」 「あー、金剛なんか特にな。光栄なことだよ…でも俺は、お前がいいんだ」 「…っ …あたしは…っ 提督に、いつも…いことばかり、言って…っ」 「もう慣れたよ」 「ド、ドMなのっ!?」 「ははっ、そうかもしれんな…で」 「え…」 「どう、なんだ。受けてくれる…か?」 「…」 「…」 「あたし…は、提督のこと、は…好きとかっ、そんなんじゃなくて…」 「うん」 一生懸命言葉を紡ぎだす曙を、じっと待つ。 「どっちか…って、言えば、…その、かっ、感謝とか、尊敬とか、信頼とか、そういうので」 「…うん」 感謝だって!尊敬だって!あの曙が! 俺はこの時点で奇声を発しながら走り出したい気分だったが、ダメだ、まだ堪えるんだ。 今の本題はケッコンの方だ。尊敬と恋愛はまた別物だ。 「でもっ…提督が…そう言ってくれる、なら」 「うん」 「まあ、応えて…ても…かなって… きゃっ!?」 俯いてどんどん小声になる返事を続ける曙の可愛さに堪えられず、思い切り抱きしめる。 「やった!曙、俺はお前を幸せにするぞ!んで、俺もなるぞ!」 「ち、ちょっと!いきなり何サカッてんのよこのクソ提督!」 「うるせえ!これがはしゃがずにいられるか!コラ暴れるな大人しくしろ!」 「それが好きな女の子に言うセリフ!?ちょっと苦しいってば一旦離れむぅっ…!?」 唇を塞いでやると途端に静かになった。そのまま頭を撫でてやると強張った体からも力が抜けていく。 息の続く限り柔らかい唇の感触を楽しみ、ようやく開放する。 「ぷは…っ …ちゃんと、セキニンは、取りなさいよ」 「勿論だ。ずっと大切にするよ、曙」 「ふん、今までだって、…してもらってたけどね。これからは、あたしも返してあげるわ」 「しおらしい曙も可愛いぞ」 「うるさい。一言多いのよ、アンタは」 「…曙」 「なに」 「…これからも、よろしくな」 「こちらこそ、よろしくね。…提督」 ****************************************************************************** この後、複数艦と「ケッコン」する方法があることをひた隠しにしていたことがバレ、 大層不機嫌になった曙をなだめるのに苦労することになるのは、また別の話。いや、しませんよ? これが気に入ったら……\(`・ω・´)ゞビシッ!! と/
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あたしはもうお嫁にいけないっぽい? 秘書艦になった夕立が5500トン級も眠る夜遅くに呼び出されたかと思えば、改装を言いつけられた。 装備を外した瞬間に後ろから電源か何かを浴びせられたっぽい。気がついたら手を縛られ、無理矢理犯されていた。 あたしは提督さんの事が好きなのに、なんで? そんな疑問で一杯っぽい。 違う。好きだから許せないの。 初めは優しいキス、甘い言葉、それから、それから……駄目。もう幻想も浮かばないっぽい。 あはっ。良いよ。余りにおざなりな拘束を解いてその一部を提督の首に回す。 ううん、許さない。だから、素敵なパーティー初めましょ。 腰を動かし、血を潤滑油に提督のモノを扱く。ふふ、一回目。 あれ、小さくなるっぽい? むぅ、パーティーは始まったばかりっぽい。 ほら提督暴れたら危ないっぽい? 元気になるビタミン剤っぽいお薬打つよ。 あはっ、元気になったっぽい。 ぽい、ぽいと跳ねるような夕立の声。突き上げて来るのに反応する。良いじゃないですかー。 合わせてあたしも腰を振る。提督さんが小さくなる度、首を絞めたりお薬打ったり。 二人きりの素敵なパーティー。提督さんの弾が尽きるまで楽しむっぽい? ううん、弾が尽きてもハンモックを張って次の日にまた。 ぽい、ぽい、ぽいと夕立の矯正だけが響く。
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前回の話 「山城が帰ってこない?」 自分は航空戦艦扶桑の言葉の主語をオウム返しした。 扶桑は不安ながらぷりぷり怒っても自然そうな顔だ。 「ええ。最近増えてきまして……。 提督は何かご存知ありませんか?」 「いや。執務は日付が変わる前には終わらせる事が多いから、分からんな」 嘘だ。 自分が原因なのは冒頭から確信している。 この国は神が八百万はいるように、嘘も八百万はある。 ……これも嘘だ。実際のところは八百だが、多い事実は揺るがない。 扶桑の怒りの矛先が此方へ向かないよう、自分は冷や汗を掻きながら白を切る。 「兎に角、今度注意はしてみる。それを聞いてくれるかの保証は出来ないがな」 元より注意する気もないので予防線も張っておく。 山城に責任を全て押し付ける事になってしまうが、許せ。 夜な夜な連れ出してくれと頼んで来たのは山城なのだ。 「お願いします。あの子、何かあるとすぐどこかへ行ってしまうので……」 頭頂部を晒してから、扶桑は姉どころか母親の顔付きで挨拶し、執務室を去った。 …………………… ………… …… 「と言う事があった」 「ごめんなさい、姉様……」 山城は俯いてここにいない姉に謝罪の言葉を零す。 それでも、山城はこのベンチを立とうとはしなかった。 比較的良好な天気が続いてはいるが、海は自分らを責めるようにざあざあと喚く。 「あまり長く続くと、自分らが疚しい関係だと疑われるかもしれないぞ。控えた方が良いんじゃないか?」 「……気にしないわ」 良いのかそれで。 自分はともかく山城が面倒な憂き目に遭うんじゃないか。 実際に疚しい関係となってしまったが、自分にそれを止める気はない。 抵抗が全くない訳ではないが、憂いを共有できる仲間が一人くらいはいた方が幾分か落ち着く。 つまるところ、こうして深夜に庁舎を抜け出して山城と二人きりで他愛もない事をぽつりぽつりと交わす事に、 自分はかつてない心地よさを感じていたのだ。 その後に続く拙くも疚しい交わりもまた然り。 「て、提督はそう思われるのは嫌ですか?」 いいや。自分は気にしない。 先程の地での科白を口に出す気はないが、この時間の為ならそんな問題は些細な事だ。 「そうですか。なら私も気にしません」 「そうかい……」 「だから、これからもやることは変わりませんね」 ふと隣へ振り向くと、山城の赤い目と自分の目があった。 すると、山城はふわりとした笑みを浮かべてくれる。 反省する気は全くないようで、自分は安堵するように顔から力が抜けた。 「ふう……」 自分は色のない溜息をついた。 山城を気遣って、あれから山城がいる時は煙草を吸っていない。 それに山城が相手をしてくれるのに、わざわざ身体に毒である煙草に、口を、肺を預ける必要もない。 一人煙草でくすぶるよりも、こうしている方がずっと心のケアになる。 「扶桑が寝たのを見計らって抜け出すのがいいんじゃないかな」 「そうかも……」 親の目を盗んで逢引するおとぎ話は、世に幾つあるだろう。 少し面白い。 「合言葉とか、決めてみませんか」 「合言葉?」 「姉様が寝たのを確認したら、私が提督にそれを言うんです」 山城も中々面白い事を考えてくれる。 自分と山城しか知らない、鍵の言葉。 色褪せない子供心を未だ宿すこの身は、みっともないが考えるだけでわくわくしてくる。 となると、それはどんな形にしようか。 悩む時間もなく、物を考えるとき上を見る人間の癖が、すぐに答えを運んで来てくれた。 白銀の満月が、儚げに黒い夜空の中で輝く。 「月が綺麗ですね」 「へ?」 「と言うのはどうかな」 山城を見やる。 山城は、月に隕石でも落ちたところを目撃したように呆然として私を見つめている。 自分で言った後で、これは少し気取り過ぎかと反省しようとする。 が、それより先に電灯に照らされた山城の顔が少し赤く染まった。 「てっ、提督……。それ意味分かってるんですか?」 「分かっているよ。 唯使う相手がいないし、これは少し憧れていたからどうせならここで使ってしまおうと思ってね」 自分は命落とすまで、ここに身を置くつもりだ。 そして、部下から一人引き抜いて娶ろうという企てがある訳でもない。 だからそれに関しての望みが薄くなっていた自分は、そこのところは随分投げやりなのだった。 「はー……。提督でもそういう浪漫を感じるんですね」 「お前の中の私はどうなっているんだ」 「だって、普段がああだから……」 仕事の時だけだ。 軍人として然るべき理想像が、自分にはある。 只それは決して感性も感情も捨てているような姿ではないのだが、そう思われていたとは知らなかった。 「それで、提督は何と応えるんですか?」 「応える、とは?」 「提督の了承の言葉ですよ」 そうか。 そういえば合言葉とは言われた方も決められた言葉を返してやっと成立するのだった。 山城からの合図を設ける事ばかり考えていて、その事を失念していた。 何故なら。 「私が断る事はないから、それは要らないと思うんだがね」 「何を根拠に……」 「山城が時間さえ弁えれば、私に損はないんだよ。寧ろ……」 その続きの言葉は、既の所で呑み込んだ。 この疚しい間柄でその続きを言ってしまうと、聞きようによっては軽蔑されかねない。 「寧ろ……何です?」 「何でもない。了承の言葉は"そうですね"とでも言っておくよ」 「適当ですね」 いいんだよ適当で。 単純明快だろう。 重要なのは私が返す言葉ではなく、山城がかけてくれる言葉なんだから。 「はあ。とにかく、決まりですね?」 「嗚呼」 「"月が綺麗ですね"。……月並みですけど、悪くないです」 くす、と山城も楽しげに賞賛してくれた。 自分らだけが刻む秘密の日常にもたらしたこれが、 今後どのような変化を生むのだろうな、と先々の日々に想いを馳せる。 「では早速使います」 「は?」 「月が綺麗ですね」 突然山城が自分の世界に入ったようで、自分はついていけない。 もう既にこうしているのに、今使って何の意味があるんだ。 「……自分から決めておいて、何ですその顔は」 「いや、だって……」 「察して下さい。この後、いつものして下さい。って事です」 嗚呼、そっちか。 考えてみれば、この後の交わりの有無は何時も山城が決めていたのだから、何も可笑しくはなかった。 此方を小馬鹿にするような事を言っておきながら、山城も気に入っているんじゃないか。 全く。 …………………… ………… …… 「今日は、どうしたら良いですか?」 まるで待ち遠しいかのように、暁の水平線を隠すように山城は私の正面に立つ。 切っ掛けを持って来るのは何時も山城だが、主導権は何時も自分に委ねてくる。 山城を秘書に戻してからそれなりに経ったが、逢引は毎日行っている訳ではない。 だから、これに関しては山城はまだまだ練度は低い。 それを言うなら自分もそうなのだが、山城は受けの姿勢に身を置き続けた。 これも山城の望む幸せに入るのかは分からない。 「そうだな……っ」 ひゅううううぅぅ。 山城の艦橋から艦底までを眺めながら考えようとすると、冷たい潮風が音を立てて自分らを舐めた。 寒い。 思わず自分の体を抱くよう擦る。 だがもっと寒そうなのは山城だ。 空気の入りやすい構造をしている巫女を模った上部装甲に、袴を短くしたような下部装甲だ。 「……提督? 寒いですか?」 「まあね……」 しかし、山城は何食わぬ顔でいた。 よく考えれば、当たり前だ。 艦娘の肉体が耐寒仕様でなかったら、露出部のある格好のままこんな夜更けに表に出ないし、 その格好を年がら年中保ち続ける訳が無い。 一方、まだ冬は訪れていないので防寒対策は要らないだろうと呑気にしていた自分は、 今ここに熱源となりそうなものは目の前のそれしかないと踏んだ。 「私に跨るんだ」 「跨る……?」 山城の艦底を地につけさせてやるにはベンチが邪魔な為、自分も尻を前にずらしてベンチに浅く座るようにする。 疑問符を浮かべておずおずとする割には、 山城は指示通り的確に私の足、正確には下腹部に馬乗りになってくれた。 山城はそれだけでなく、まだ口に出していないのに私の首に両腕まで巻き付けてくれる。 「こ、こうかしら……」 それでいい。 では此方も、とズボンの腰周りを緩める。 下穿きも下にずらし、己の逸物を取り出した。 「わぁ……」 感嘆の声が漏れてるぞ。 しかし指摘はせず、続けて指示を出す。 「これに乗っかって、腰を前後に動かすんだ」 言われるままに、山城は私の下腹部の露出を下部装甲で隠した。 自分のそれが、体重のかかった布に沈むのが分かる。 「んっ、と……。潰しちゃってますけど、重くないですか」 大丈夫だよ。 健康的な程度で良い事だ。 ある程度の重さがないと、これからやる事が快感に恵まれない恐れもある。 「そうですか、男の人の事情は知らないけど。……んっ」 山城が腰を前に動かす。 「……っ! ……?」 ところが、自分はやや痛みを覚えた。 布の目が粗いようで、期待していた程の快感は来ない。 自分は咄嗟に手で山城を制止させた。 不可解な顔をする山城に問う。 「山城。お前、下着は何を履いている?」 「……褌ですけど」 山城は少し蔑むような顔で答えた。 そんな目をするな。 艦娘の下着事情を熟知している変態じゃないんだ。 それにしても、褌とは。 となると、この感触は木綿か。 「すまん。褌とは知らなかったから、少し痛い」 「そうなんですか」 「……脱がなくて良いから、あの部分だけ布をずらしてくれ」 山城は、少し腰を浮かせて下部装甲に手を突っ込む。 もぞもぞさせてから再び腰を降ろされた時、自分は生々しい素肌の感触を得た。 甲斐あって、これなら痛い思いをしなくて済みそうだ。 山城に事を再開するよう促す。 「下着を教えなきゃいけないなんて、不幸だわ……。んっ」 まだ濡れていないながらも、痛みはなかった。 山城がゆっくりと前後に腰をピストン運動させる。 「っ……、っ、ん、うん……、なんだか、変な感じ……」 山城の顔はまだ羞恥心のみに支配されているだけの様子。 潮風に容易く吹き飛ばされる程度の微かな山城の喘ぎだけを耳に取り入れ、静かに情欲を燃やしてゆく。 「んっ、んっ、はぁ……、ん……」 そのままそれだけの動作を続けていると、 喘ぎと言うより只の呻きのようであった山城の声も色を帯びてくる。 柔らかい肉の割れ目を充血した自分の逸物の、特に凸になっている部分が主な刺激の産出を担っている。 「う……」 今から火照ようとする自分らの身体を咎めるように、潮風が撫ぜる。 再び寒さに震えた自分は、山城の背に手を回し、やんわりと引き寄せた。 腰を止めたが山城は拒まない。 抱き寄せて山城の二つのタンクに顔を埋める。 「提督? 寒いのね……」 そうだ。 それだけだ。 母に甘える赤子の体勢になってしまうが、そんなんじゃない。 自分はいい歳した大の男なのだ。 タンクの谷間に顔を埋めているから反論出来ないだけだ。 さっさと腰を動かしてくれ。 「くすっ、提督じゃないみたい……。んっ……」 山城は、からかうようにそう笑ってから、私を包み込むように己の両腕で己の身体に押し付けた。 再び動き始めるのに合わせて感じ取った感触は、熱い水が少し含まれていた。 何を切っ掛けに濡れたのか分らないが、これで滑りは良くなる。 両腕で山城を抱き締め、暖を取る。 月のように冷めている山城でも、こうしてみると確かに温かかった。 山城の胸の中ですうーっと一杯に空気を吸い込むと、山城の匂いが鼻に広がる。 甘い匂いに包まれながら、局部に与えられる快感も助長されてゆく。 「んっ、はっ、はぁっ、ぁっ、あっ」 程よく濡れてくれた山城も速さを上げていった。 くちゅ、くち、と、淫らな水の音が微かに耳をつく。 更に融通がきくようになった山城の割れ目は、擦れる異物に抱き着くように広がっている。 そこから先は、長くなかった。 「ぐっ……」 「ああっ、ああっ、はあっ、あっ、……ぁ……」 自分は、山城の温かさに包まれながら達した。 ここが表である事もあり、妙な開放感を感じる。 もやもやしていたものも飛散するように自分の中から抜けた。 山城は押し潰していた異物が強く脈打った事から察したのか、動きを止める。 「はあ……、はあ……、はあ……」 「くす……」 山城は何を思ったか、私の背に回した腕を動かす。 上下する私の肩と背が、山城の両腕に撫でられる。 山城のそれは穏やかで落ち着かせてくれる手付きだった。 子供扱いか。 しかし反論する気力はない。 脱力感と山城の温かさの前では、つまらない男の意地の面目はどうでもよかった。 呼吸が落ち着くまで、もういいと指示を出すまでの、山城に包まれる時間を私は大事に味わった。 事の終わりを私から告げる時に、名残惜しくならないように。 これが気に入ったら……\(`・ω・´)ゞビシッ!! と/
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タチアナ・オルロワ(宇宙暦?年 - )は自由惑星同盟軍の軍人。オリジナルキャラクターである。 略歴 宇宙暦793年3月末エリヤが憲兵司令官ドーソン提督に抜擢されたのに伴い、フェーリン軍曹、パークス上等兵、アイランズ一等兵とともに、副官付としてエリヤのもとに配属された。階級は地上軍伍長。ハイネセンポリス砲術専科学校を首席で卒業している。(13話)エリヤの手足として働き、名副官エリヤ・フィリップス誕生に果たした役割は大きい。エリヤがドーソン提督の副官を外れた後の消息は不明だが、同僚のアルネ・フェーリンがそのまま副官付として後任副官ユリエ・ハラボフを補佐している(22話)ところから、彼女も副官付を続けていたものと推測される。 宇宙歴796年9月准将に昇進したエリヤへお祝いのメールを送っている。その時点で曹長に昇進しており、翌年から幹部候補生養成所に入所するという。メッセージの中には、「提督の指導のおかげです」と記されていていた。(47話)その後の消息は不明。
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真実と決断 依頼主 :アリゼー(北ザナラーン X20-Y17) 受注条件:レベル50~ 概要 :アリゼーは、大迷宮バハムート侵攻作戦について報告したいようだ。 アリゼー 「どうにか地上に戻ってこられたようね。 転移先は前と同じ・・・・・・北ザナラーンだったみたい。 ・・・・・・さっきは守ってくれてありがとう。 あなたは、先に砂の家へ戻って、 ウリエンジェに報告をお願い。 私も、すぐに後を追いかけるから・・・・・・。 大丈夫・・・・・・少し疲れたから、休んでいくだけよ・・・・・・。」 アリゼー 「砂の家へ戻って、ウリエンジェに報告をお願い。 私も・・・・・・すぐに後を追いかけるから・・・・・・。」 砂の家のウリエンジェと話す ウリエンジェ 「英雄の凱旋・・・・・・よくぞ戻られました・・・・・・。 その眼は、使命を果たした者の眼・・・・・・。 「拘束艦」は沈黙したようですね。 しかして、万事は無事にならず・・・・・・。 あなたに落ちた影の理由を、お聞かせください。」 ウリエンジェ 「・・・・・・白銀の凶鳥、ネール・ヴァン・ダーナス・・・・・・。 そして、我が師が・・・・・・。 ・・・・・・それでは、ルイゾワ様のエーテルは、 ネールと同様に蛮神「バハムート」に取り込まれ、 かの蛮神のテンパードになったというのですね・・・・・・。 なんという・・・・・・ことでしょう・・・・・・。 ・・・・・・エーテルを束ねし虚構なる幻影とはいえ、 ルイゾワ様と相対するは、私でさえ耐え難きこと・・・・・・。 ・・・・・・ましてや、アリゼー様にとっては如何ほどか。 この戦い、もはや協力を望むべきではないかもしれません。」 ???? 「余計な心配は不要よ、ウリエンジェ。」 ウリエンジェ 「アリゼー様・・・・・・。」 アリゼー 「私は奴らを倒すと決めた・・・・・・それがすべて。 それよりも、今回判明した事実を整理させてちょうだい。」 ウリエンジェ 「・・・・・・委細承知しました。 報告から察するに、今回の要となるのは、 大迷宮の衛士となったネール・ヴァン・ダーナスです・・・・・・。 あなたには説明をするまでもない・・・・・・。 ネールは、あなたが5年前に通称「月下の闘い」で破った、 ガレマール帝国の第VII軍団長・・・・・・。 「交信雷波塔」を覚えておいでですか・・・・・・? ネールがダラガブを制御するために建設した、 クリスタルタワーの代用品・・・・・・あなたが打ち砕いた野望を。 おそらく、あの塔を完成させるべく、 ダラガブへの交信を試行錯誤するうちに・・・・・・ その内に眠る蛮神を目覚めさせ、魅入られたのでしょう。」 アリゼー 「・・・・・・そして、数千年の時を越えて、 蛮神「バハムート」の新たなテンパードが誕生したのね。 戦いに敗れ、その命はエーテルへと散ったけれど、 「バハムート」に吸収され、エーテル界には還れなかった。 ネール・・・・・・哀れな存在よ。 蛮神「バハムート」のテンパード・・・・・・。 それが、奴らだけだったのならいいのだけれど・・・・・・。 ネールが言った「愛し子らを抱くゆりかご」という言葉・・・・・・ 狂言と捨て置くには、妙にひっかかるの。 もし、ほかにもテンパードがいるのならば、 「拘束艦」を止めるのと同時に、 そいつらの排除も必要になるでしょうね。」 ウリエンジェ 「アリゼー様・・・・・・。 ルイゾワ様にも引導を渡すと・・・・・・そうおっしゃるのですね。 しかし・・・・・・本当によろしいのですか?」 アリゼー 「・・・・・・何度も言わせないで。 蛮神「バハムート」と、それに関するすべてを断つこと・・・・・・ それだけが、お祖父様を救うのよ。 テンパードの件も含め、しばらくこちらで調査を進めるわ。 次の作戦が立案されるまで、あなたは休息をとっていて。 まだ気の抜ける状況じゃないけれど・・・・・・ おつかれさま、Niuniu。」 ウリエンジェ 「・・・・・・そうですか。 あれから5年、もう逝ってしまわれたと知っていて尚、 こんなにも・・・・・・悲しいものなのですね・・・・・・。 我が師ルイゾワ・・・・・・。 真理とは、真実とは・・・・・・いったい何なのでしょう・・・・・・。 これまで、それに至ることこそ、 私たちシャーレアンの務めと信じてきました・・・・・・。 ・・・・・・しかし、その真実が悲しみと絶望を呼び、 他者を傷つけるものであっても・・・・・・ それでも、明かさねばならないのでしょうか・・・・・・。」 アルフィノ 「・・・・・・それが君の「決断」だとでも言うのかい、アリゼー。 ならば、次は「鍵」を使うことになるだろう。 Niuniuでも、暁の血盟でもない・・・・・・ 私たちが持っている「真実の鍵」をね。 鍵は、扉を閉めるためにもあるんだ。 ・・・・・・蛮神「バハムート」は、閉じられるべき過去なのさ。」 ウリエンジェ 「去る者あれば・・・・・・来たる者あり・・・・・・。 私に何かご用でしょうか・・・・・・?」 (何を聞く?) (メテオの痕跡の調査について) ウリエンジェ 「世界の秘めた真実は、深く険しき淵にあり・・・・・・。 人は往く・・・・・・「決断」を胸に抱きて・・・・・・ されど、剣を持たざれば、想いを成す術もなし・・・・・・。 ・・・・・・蛮神「バハムート」にまつわる万事を断つには、 あなたが必要不可欠です。 どうか・・・・・・その力の冴え渡らんことを・・・・・・。」 アナエル中牙士 「よくぞご無事でお戻りくださいました。 しかし、ご帰還以来、お嬢様は思いつめている様子・・・・・・。 どうかこれからも、お嬢様をお支えください。」
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セルゲイ・ポターニン(宇宙暦?年 -799年 )は自由惑星同盟軍の軍人。オリジナルキャラクターである。 略歴 同盟軍第一一艦隊D分艦隊に属する第三六機動部隊の指揮官の一人として登場した。(51話)第三六機動部隊副司令官を務めており、階級は宇宙軍代将であった。初登場時には「努力家だが競争心が強い」とされ、指揮官会議では「誰かに噛み付」いた。 宇宙暦798年、第三六機動部隊司令官エリヤ・フィリップス准将の指揮のもと、帝国領侵攻作戦「神々の黄昏(ラグナロック)」作戦に参加し、准将に昇進する。第三六機動部隊においては、別動隊を任される機会が多く、フィリップス少将がホーランド機動集団前方展開部隊司令官に昇格したのちは、後任の第三六機動部隊司令官となった。戦況が悪化したのちもヴァルハラへ撤退するまで生き残る。 宇宙歴799年4月末から始まる第二次ヴァルハラ会戦においてはフィリップス少将がバイエルライン提督を敗死させる際、重要な役割を果たした。 同年5月5日バイエルライン提督の戦死に奮起したミッターマイヤー提督の猛攻を受け、戦死した。(69話)
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コン……コン。 控えめなノックが、執務室に漂う夜の静寂を打ち破った。 「入りたまえ」 僕は努めてぶっきらぼうに、ドアの向こうの気配へと声をかける。 「て、提督、失礼……します」 おどおどした様子のひとりの少女が、月明かりだけが照らす執務室の扉を開いた。 「い、磯波……です。ご、ご命令により……出頭いたしました」 消え入りそうな声で彼女は名乗り、執務室の入り口で敬礼をした。 僕が黙って頷くと、磯波は真鍮のドアノブを回し、静かに扉を閉めた。 しばし僕は、青白い月の光に浮かぶ磯波の姿をしげしげと観察する。 穏やかな波間を思わせる、三つ編みの黒髪。日々、遠征の任に駆り出されながらも白さを保つ若々しい肌。 膝より少しだけ高い、吹雪型のセーラー服から垣間見える、柔らかそうな太腿――。 普段彼女が足を踏み入れることも、いや、直接的に話したことさえも殆どない僕の部屋に 招かれた彼女は、いつにも増して小さく、儚く見える。兵装が完全に解かれている今は尚更だ。 現に、この部屋の中にいるのは磯波と僕だけだというのに、彼女は一向に僕と目を合わせようとしない。 照明が完全に落とされた執務室の中、磯波の長いまつ毛の奥にある瞳は、内股に寄せられたブーツへと 所在なさげに落とされたままだ。 ふぅ、と僕が大きくため息をつくと、それだけで磯波は細い肩をぴくっと躍らせた。 それでも僕は黙ったまま、磯波に更に視線を注ぎ込む。 「……ぅう」 磯波は、吹雪型が揃って纏うセーラー服の胸元の紐をいじりながら、チラチラと僕を見た。 僕からの一言を引き出そうと、必死のようだった。 海から吹き込む穏やかな風が窓から吹き込み、白いカーテンを揺らす。重たい空気の中、 時が確かに進んでいることを示すかのように。 だが、それでも僕は革張りの椅子に深く腰をかけたまま、彼女をじっ……と見つめたままだ。 磯波は、震えているようにさえ見えた。 「あっ……あのう……提督」 部屋の隅と僕の間を、まるでげっ歯類の動物のように素早く、しかし居場所なさげに視線を 揺らしながら、磯波がようやく唇を開いた。 「磯波に……何かご用でしょうか?」 彼女がこの鎮守府に配属されて2週間。僕は初めて、その声をまともに聞いたような気がした。 それは、本当に女の子らしく、か細く……そして消え入りそうな声だった。 仮に月が雲に隠れていて、磯波の実体が目の前に映し出されていなければ、耳に届いてさえ いなかったかもしれない。 磯波はそれ程までに控えめな声で、ようやく言葉を口にしたのだった。 僕はその声の余韻を耳に感じながら、彼女を手招きする。 部屋に入ってからというもの、一歩たりとその場を動かなかった磯波が、ようやく小股で 執務机へと近づいてきた。しかし絨毯が敷いてあるとはいえ、足音がほとんどしない。 意識的に音を殺しているのだとすれば、どれだけ自分に自信がないのだろうか。 ――もっとも、僕が彼女をこの部屋に呼んだ理由は、まさにそれなのだけど。 磯波は思った通り、執務机の前にたっぷり1メートルの間を取って、僕の正面に立った。 僕からは机を挟んで、ほとんど2メートルも離れていることになる。 「はぁ……」 予想はしていたことだが、僕は思わず2度目のため息をつき―― 「磯波?」 ようやく彼女の名前を口にした。 優しく名前を呼んだつもりが、彼女は身体を強張らせ、両目をぎゅっと閉じてしまった。 言い訳もできず、叱られるのを待つだけの子供のようだ。 「自分がどうしてこの部屋に呼ばれたか、分かっているかい?」 首を縦にも、横に振るでもなく、ますます磯波は体を小さく、固くしてしまう。 僕はほの暗い中、デスクの書類受けに手を伸ばした。 「磯波、配属されてどれくらいになった?」 「えっ?」 「二週間だ」 忠実な秘書艦娘が纏めた数枚のレポートをぱらぱらと捲り、そのうちの一枚を彼女の方へと差し向ける。 「見たまえ」 磯波はまるで危険な生き物にでも触れるかのように、コピー用紙におどおどと手を伸ばす。 暗闇の中では読みづらいのだろう、柔和そうな垂れ気味の目が細められ、書類を走った途端―― 「あ……ぅ……!」 磯波は驚愕とも恐怖ともつかない顔になり、そのまま硬直した。 「それは君の、ここ二週間の成績を纏めたものだが、見てのとおりだよ。残念ながら 、先輩諸氏のような戦績を残せてはいない。遠征にしても、作戦にしても、だ。分かるね?」 「は……はい……」 磯波はがっくりと肩を落としたまま、細い首を小さく縦に振った。 「同じ吹雪型と比較すると、なおのこと顕著だ。どうしてこんなに差が出るんだろうな? ん?」 月明かりのせいでなく、磯波の顔は、真っ青だった。 「あのっ……あの、提督……!」 磯波はレポートを持つ両手を強張らせながら、何かを伝えようと必死だった。 「これは……そのっ、私……」 「それに聞いたところによれば、何度か他の艦娘と衝突しかけたとか?」 意見しかけた磯波を、僕はより強い言葉で一蹴してやる。 「その衝突が原因で隊は陣形を乱し、結果的に燃料と弾薬を海中に失ったそうじゃないか……」 磯波は口を開いたまま、自分の意見を完全に失っていた。息をするのさえ忘れていそうだった。 「あの日は悪天候だったからな。遠征の報告書には、荒天に伴う高波の影響で物資を消失した、 とされていたよ。正式な報告書には、君の不始末はひとつも上がってきていない。言った通り、 あくまで『噂』だ」 磯波は魂が抜けたような、愕然とした表情のまま、何も映ってはいないであろう瞳をレポート用紙に 落としている。提督である僕と会話していることさえ、否定するかのように。 「だが、君の成績を見るにつけ、一度直接に確認しておかねばと思ってね。磯波、衝突は真実か?」 答える代わりに磯波は、よろけるように半歩、後ろに下がった。 「どうした磯波、答えたまえ」 「……う……わ、わた……」 「磯波! はっきり答えたまえ!」 焦れた僕は、少しだけ語気を荒げ彼女の言葉を再び遮った。それだけで―― 「くぅ、 う……」 どこまでも静まり返った部屋に、たっ、たっ……と、絨毯に雫が落ちる音が響いた。 磯波の、涙だった。 磯波は薄い唇を噛みしめ、必死に涙を堪えようとしている。しかしその意志とは裏腹に、 熱い雫が白い頬に幾重もの軌跡を描いては、カーテンを透かす星の光に輝いた。 「それが貴艦の答えか、磯波?」 僕は椅子から立ち上がると、磯波の方へとゆっくり近づいていく。 「その涙が、僕に対する答えだというんだな?」 静かな僕の怒声に、ひんっと磯波が子犬のように鳴いた。 そしてまるで磁石の同極のように、僕が近づいた分だけ離れようとする。 だが、逃がすつもりは毛頭ない。 「どこへ行くんだ」 磯波の細い手首を、僕はがっしりと掴む。 「いや……あっ!」 磯波はレポートを取り落とし、僕から逃れようと顔を背けた。 「その涙が何で出来ているか、分かって泣いてるのか! 答えろ磯波!」 「うぅっ、は、放してぇ!」 「貴艦が目からこぼしているそれは、何だと聞いてるんだ、僕は!」 抵抗しようとする磯波の手を振り払い、僕はもう片方の手で磯波のきれいに編み込まれた おさげを掴み、容赦なく引っ張った。 「きゃあぁぁ!?」 磯波の悲鳴と散らした涙がきらめいて、暗黒の絨毯へと吸い込まれていく。 「提督ッ! うあっ、痛い、いたいですぅっ!」 「まだ『無駄』にする気か、その涙を、あぁ?」 悲鳴を上げるのも構わず、僕は磯波の小さな耳を引き寄せて、息さえかかるであろう距離で言い放つ。 「貴艦が流しているそれは、戦列を同じくしている駆逐艦娘達が運んできた『燃料』だろうが!?」 抵抗する磯波の体から、ふっと力が抜けたのが、良く分かった。 「日々危険な海域を掻い潜り、やせ細る兵站を何とか維持しているのに……何だ貴艦は? 燃料一滴持ち帰れもせず、ロクな戦果も無いくせに、のうのうと補給まで受けて、更に無駄遣いか!」 返事がない中、「ふっ」と僕は小さく鼻で笑い、もう一言。 「磯波……我が鎮守府はね、常に逼迫しているんだよ。燃料も弾薬も……それに鋼材も」 力の抜け切った磯波の腕を放し、僕は頬を伝う涙を指で掬った。人間のそれと同じく、熱い。 「この涙さえ、一滴も無駄にはできないんだぞ?」 言って、朴は磯波の雫を口に含んで見せた。 塩辛く、ほのかに甘い味が舌に広がり、消えた。 「常勝無敗、そんなもの僕は端から求めていやしないさ。だがね、子供のお使いにも劣るような 近海の輸送任務も果たせず、あまつさえ味方に損害を与えてしまうような艦は……僕の手には 少々余ってしまってね」 「あ……あ、ぁ……」 「君の処遇は、試験運用期間の終わりを待つまでもなく決まりそうだ、磯波。貴艦の意向は既に伺ったしな」 「え……?」 顔を背けたままの磯波が、怯えきった表情で僕を見つめた。 「わたし……まだ、何も」 「何を言ってるんだ、貴艦は。僕は確かに『聞いた』よ?」 磯波の細い肩にぽんと手を突き、僕は笑顔で首を横に振った。 「僕の質問に対して、磯波。貴艦は無言だった。即ち衝突の一件は申し開きの余地無し、と。そうだな?」 ただでさえ青白かった磯波の顔から、さああっと音を立てて血が引いていった。 「ち、ちが――」 「磯波、貴艦は最期に正しい判断をした。衝突した艦を修理するために、自ら一肌脱いで――」 「だめっ……提督! い、嫌……いやあぁ……ッ!」 僕の最後通告は、磯波のか細い悲鳴にかき消された。 硬直したままだった磯波の身体が急にがくがくっ! と震えたかと思うと―― ぽたっ、ぱたぼた……っ。 スカートの下から漏れ出した雫が、絨毯に染みを広がらせていく。やがてその波は勢いを増し―― しゅわああ、あああ……。 あふれ出した温かな金色の流れが、湯気を上げながら絨毯へと降り注いだ。 太腿にも幾筋もの細かな流れが至り、紺のハイソックスをしとどに濡らしている。 「うぅっ、うううう~ッ……」 磯波は絶望とも、解放ともつかない声で呻いた。きつく閉ざされた瞼の間からも、まだ涙が溢れている。 僕がおさげを放してやると、磯波は自分の作った水たまりの上に膝を折りへたり込んだ。 まだ全てが出切らないのだろう。細い肩を震わせ、磯波は両手で顔を覆い、すすり泣いている。 「ふっ、何だ貴艦は。燃料タンクにも欠陥があるのか?」 たった今、体を離れたばかりの生暖かく、そして若々しい磯波のにおいを吸い込みながら、僕は笑う。 「貴艦の姉さん達が聞いたら、さぞ悲しむだろうね。それこそ姉妹などとはもう――」 「いゃ……です……! て、と……く……!」 磯波は顔を覆っていた両手で濡れたスカートの裾を握りしめ、僕を食い入るように見つめていた。 「提……督……! 磯波の、お願いです……!」 そして涙に揺れる瞳に、ありったけの哀願と崩壊寸前の理性を浮かばせ、 「か、解体だけは……どうか……許してください……! えぐ……ひうっ……うぅぅ……」 何とかそれだけを言い切ると、磯波は天井を仰ぎ、静かにすすり泣き始めてしまった。 「すんっ……まだっ、まだ、磯、波は……うあぁ……あぁ……ぁぁ……」 僕の乱暴な扱いに抗ったからだろう。セーラー服はすっかり着崩れ、さらけ出た肩が夜風に震えている。 月夜に照らされながら細い顎を上げて涙にくれる磯波は、船首をもたげて静かに沈んでいく軍艦を思わせた。 磯波は、完全に堕ちかけていた。このまま放っておけば、手を下さずとも次の作戦あたりで 沈むかもしれない。 静かに彼女が朽ち果てる姿を見ていることもできる。だが、僕はそうはしなかった。 ――そうしては、意味が無いのだからね。 「磯波……解体は、嫌か?」 磯波はうっすらと黒い瞳を開き、言葉を知らぬ子供のようにこくっと頷いた。 まだ、魂は生きているようだ。そこは艦娘、歴戦の軍用艦の名を引き継ぐ少女達である。 「そうか……だが磯波、僕は貴艦を今のまま運用することはできない。故に『改造』する」 「かい、ぞう?」 「あぁ、そうだ」 言いながら、僕は磯波の前にしゃがみ込んで視線を同じくした。 「磯波……人にも艦にも、『向き不向き』がある。僕は貴艦らのようには戦えない。しかし、 貴艦らを率い、深海棲艦に立ち向かう術を与えることはできる。『適材適所』とでも言おうか」 「はい……」 磯波は時折しゃくりあげながら、涙声で応じる。僕はゆ磯波が落ち着くのを待ち、続ける。 「磯波、君は艦娘ではあるが、今はたまたま、戦いに『向いていない』だけかもしれない。 ならば、貴艦は生まれ変わらねばならない。貴艦が建造され、進水され、この鎮守府に就役した ことに、意味を持たせる。それは貴艦を『改造』する事のみによって成し得ることだ。分かるね?」 「は、はい……!」 磯波は若い。蒼白だった頬に血色が戻り、何も知らない子供同然の瞳に、月と星の光が再び 差し込んでいる。暴れて着崩れたセーラー服の奥で止まりかけていた心臓が強く動き出して いるのが手に取るように分かった。 僕はよし、と小さく頷く。 「磯波、では早速だが、改造の儀式に移る。深呼吸して、息を整えろ」 「はい、提督!」 磯波は袖で顔を拭うと、言われた通り、二度、三度と胸を開いて大きく息を吸い、少しむせながら 吐き出した。 「よおし、いいだろう」 僕は人差し指を柔らかな磯波の頬に寄せ、拭いきれなかった涙をそっ……と掬い取る。 そしてその指を、ゆっくりと磯波の鼻先へ。 「磯波……目を離すな。僕の、貴艦の提督の、人差し指から」 「はい……」 磯波の黒目がちな瞳が、しっかりと、僕の指先を捉えている。 「貴艦を改造する第一歩、それは、貴艦自信をよりよく知ることに他ならない」 「はい……」 僕はその視線を試すように、ほんの僅かに指を右へ、左へと動かしながら、静かに囁く。 「磯波、僕はこれからひとつ質問をするが」 「はぃ」 「貴艦はその答えを、もう知っている。僕は既に、貴艦に答えを与えている。磯波……いいね?」 「は…………ぃ」 極度の集中からか、磯波の表情は虚ろになりつつも、その唇は既に僕がこれから命じようと してることを鋭敏に察していた。 僕は磯波の正中で、ぴたりと指を止め、問う。 「磯波……貴艦の身体から零れた『これ』は、何だ?」 磯波は答えるよりも早く、そっと唇を開き―― 「んっ……」 僕の指を、優しく暖かな口の中へと運んで、ちゅぱっと涙を舐めとった。 「ん……ふっ……。『これ』は、皆が運んでくれた……燃料、です……提督」 「良い娘だぞ、磯波」 優しく頭を撫でてやると、雲間を抜けた月の光が、ふっと強まった。 カーテン越しに届くその静かで鮮やかな白に照らされた磯波の表情を見て、僕は少し驚いた。 磯波は、笑顔を浮かべていた。 「あ、ありがとうございます、提督……」 思わず細められた磯波の眼から、悲しみや恐怖とは違う涙がこぼれる。 「おっと、磯波?」 「も、申し訳ありません……れろ……んちゅ」 咄嗟に僕が手で受け止めたそれに、磯波は躊躇なく滑らかな舌を這わせ、丹念に舐め取る。 「は、初めて……だったので、つい」 「何がだい?」 「そのっ、提督に……褒められたのが」 磯波は僕の手を取ったまま、はにかむように小さく、口もとだけで笑った。 瞳からまた涙がこぼれるのを防いだつもりだったのかもしれない。 ――成程、健気で……想像以上に早い『仕上がり』だな。 「磯波……!」 次の段階の到来を感じた僕は、へたりこんだままの磯波の足元へと手を伸ばした……。磯波ちゃん×提督6-853に続く