約 19,734 件
https://w.atwiki.jp/teitoku_bbs/pages/1495.html
396 :taka:2013/02/07(木) 14 50 40 フトゥーロ運河に集結していたベルカ公国海軍艦隊は、まさに艦隊戦闘への布陣へ移行していた。 今まさにこちらへと牙を剥いて接近している、新鋭空母「ケストレル」を中心としたオーシア第三艦隊を迎え撃つ為だ。 予想を超えるベルカの執拗な反攻に、バードリアン・ラインの突破はおろか『解放』した南ベルカの都市の幾つかを取り戻されてしまったオーシアの焦りは募っていた。 再三の増援を送ったにもかかわらず、戦線はジリジリとした膠着状態にあり、この戦争に否定的だった国々の圧力は迅速な戦勝が遠離ると同時に強まっている。 この思わぬ事態を打開する為に、オーシア軍は『戦域攻勢計画4101号』を発動。 ベルカ公国海軍の海上戦力及び拠点の壊滅、フトゥーロ運河の封鎖と大規模輸送ルートの確保に乗り出した。 開戦以来オーシアの輸送路を神出鬼没に強襲し、少なからぬ損害を与えていた邪魔者を完膚無きまでに殲滅し制海権の確保と明確な勝利を得る為に。 「始まりますな提督」 「そうだな参謀長」 ベルカ艦隊旗艦である空母ニヨルドのブリッジで、老年の男は傍らに控えている参謀長に告げた。 空母を取り囲むようにして展開している護衛艦隊。そして頭上を幾つもの航空部隊が通過していく。 「南では幾らか押し返してはいるものの、オーシアはまだ健在だ。 開戦以来幾つかの海戦で勝利を得てもあれだけの戦力を揃えて向けてくる」 「はっ、しかしながら我等も上層部の計らいにより、主力艦隊を万全の形で迎撃へと持ち込めました。 加えて、陸上からの航空部隊も艦隊攻撃及び防空支援へ参加しております。……それに」 「それに、例の無敵のエースコンビが我が艦隊の防空に当たっている、か」 「はい、ハードリアン・ラインからの一斉反攻、南ベルカ解放戦に置いて比類無き活躍を見せております。 艦隊との共同作戦は初めてとの事ですが、鬼神と渾名された彼らが参加する事で将兵達の戦意は漲っております」 「ふふ。戦局すら引っ繰り返すと言われてる彼らの腕前を直に見られるのは幸いと言うべきかな?」 提督は目を細めて、窓の外の空を次々と過ぎっていく友軍機の群れを見やる。 こうしていると、まるでかつて旭日旗が翻る空母艦隊を率いていた頃の事を思い出す。 こちらには彼が心棒した皇室も、命に替えてでも守ると誓った神州も存在しない。 異邦の地で海軍士官へと成長した頃に記憶を取り戻し、途惑っていた彼を救ったのはよりにもよってあの組織の面々だった。 彼らは日本を取り仕切っていた頃と同じく、このベルカ公国を表と裏から支配していた。 (まさか、こちらでも連中に組み込まれ扱き使われるとは思わなかったがな) 相変わらず苦労の絶えない感じな友人や、こちらでも列強相手に立ち回ってる財務省の魔人の顔を思い出す。 有り得ない、転生と呼ばれる奇跡が我が身に起きてこそ、本当の意味で男は彼らの理解者となったのだ。 「全く、賭け事は好きだがこうも振り回され続けると刺激的過ぎるよ。 連中と付き合っていると退屈とは程遠い人生を歩めるものだな」 「提督、如何なされましたか?」 「いや、何でもない。参謀長。Z旗を挙げよ」 「はっ」 空母のマストに、高々と4色の旗が掲げられる。 そして、全回線を開いた提督の演説がベルカの全将兵の耳に届けられた。 「我ガベルカ公国ノ興廃此ノ一戦ニ在リ、各員一層奮励努力セヨ」 ベルカ戦争における転機の1つとされる、大海戦の火蓋が切って落とされたのである―――。
https://w.atwiki.jp/teitoku_bbs/pages/3164.html
431 :影響を受ける人:2015/06/07(日) 22 30 44 この作品にはTS要素が含まれています。 オリキャラ化が含まれています。と言うかオリキャラが出てきます。 最低系である最強要素があります。 それでも良い、という方のお読みください。 提督憂鬱×ストパン+零 第六十四話 ―黒雲来たりてⅨ― 切り札の大型砲。 艦載砲を改造して作り上げた改造砲塔。 口径は45口径41cm・・・元々紀伊型戦艦に搭載されていたが、夢幻会が「この世界において、戦艦の高火力はぜひとも欲しい。」という意見により、大砲製造などにか関わっていた人員を派遣したおかげで50口径41cmの開発が早期に終わり、早々に余ってしまった。 本当はそのまま破棄する予定であったのだが、艦体派ともいうべき堀井大将により保存されていた。 短期間で作り上げたせいで装甲は皆無。 列車砲にする予定もあったが、そんな余裕は無かった。 固定式でも上下に俯角が取れるだけでも有り難い。 現地改造により、無理やりだが旋回も可能だ。 「よぉし! もうちょい右だぁ!」 「「「うっす!」」」 駆逐戦車で無理やりけん引して砲台を動かす男達の横で、目標座標に向けて俯角を計算する兵士がハンドルを操作している。 『目標、射撃予定地まで、およそ二十分。』 「よぉし。そんなもんだなぁ!」 スピーカーから音声が聞こえてくるが、男達は無視して予定の範囲に砲弾を叩き込むために急ぐ。 「俯角はこんなものか・・・」 俯角を調整していた兵士は、そのまま天高く伸びる砲身を見上げる。 既に砲弾はセットされており、ここから見える三つの砲台もすでに準備は完了している事だろう。 最初の射撃で二門が射撃を叩き込む。 続いて二門が行動を鈍らせた目標に叩き込む予定だ。 チャンスはそう多くない。 艦船ならば平行移動するなど、移動しながら射撃できるだろう。 しかし固定砲となるとそれは出来ない。 クロスファイヤーポイントを設け、そこに誘い込まないと当る事は無いだろう。 ましてや相手は高速で移動する。 小口径で大量に打ち上げる高角砲でさえ、直撃させるのは難しいのだ。 大型砲であるこいつを直撃させるのは夢物語でしかない。 ただ“オニグモ”の出現が遅かったお蔭で、ある程度のデーター収集が出来たのは有り難かった。 それに基づいて調整したので問題は無いだろう。 兵士は戦車での調整を指揮していた男に近寄って声をかける。 「彼女達の状況は?」 「うぅん? 今のところ無事みたいだなぁ。」 「そうですか。混戦だと聞いていたので・・・」 「この作戦で抜擢された腕利きの部隊だぁ。問題ねぇさ!」 「ガハハハハ!」と豪快に笑う男に苦笑しつつ、兵士は持ち場に戻った。 空を飛べない自分は、出来うることが限られている。 その中で奮闘するのだ。 ――――― 北郷章香の指示により、“オニグモ”に徹底的に破壊された陣地救援に舞い降りた美緒達は燃え上がる陣地の惨状に息を飲んだが、すぐに行動に移った。 既に戦場の惨劇などは前線で見慣れている。 悲しい事ではあるが・・・慣れてしまっていた。 ホバリングしつつ負傷者の運搬、残骸の撤去等を行うのが仕事。 432 :影響を受ける人:2015/06/07(日) 22 31 14 しかし学兵の中で舞い降りていないのが一人だけいる。 弾薬係の大久保小毬だけ、上空で待機していた。 背中にしょっている弾薬運搬箱にはまだ弾薬が入っていたし、燃え上がる陣地に降りて引火したら目も当てられない。 その為、別の弾薬係と合流して北郷隊を支えている。 それとは別に、美緒達は小毬を連れてこなくてよかったと思っていた。 いかに慣れてしまったとはいえ、惨劇の現場を見るのはやはりキツイ。 燃えている人間を見るなど、この年代の子供にっとって悪影響が無いわけが無いのだから。 「誰か! 誰かいませんか!」 「声を出さなくても良い! 音を鳴らせ!!」 美緒は若本徹子と共に地上スレスレを飛行しながら呼びかける。 「もう、いないのかな?」 「そうだと思いたいな・・・」 会話しつつも視線は地上で動くモノを逃がさない様にせわしなく動く。 別の場所では醇子と飯島凛が捜している。 くまなく、根気よく捜し回り、もういないと判断した二人は集合場所に定めた野戦病院に向かう。 高射砲陣地から離れた場所に設けられた野戦陣地には、沢山の負傷兵が集められていて治療を待っている。 帰途に移っても負傷者を見逃さない様にゆっくりと飛ぶ。 「・・・なぁ。」 その途中で美緒の方に視線を向けずに徹子は話しかけた。 「なに?」 「ええっとな・・・」 普段の彼女からしたらもどかしい感じで、何とも言えない。 それでも勇気を振り絞って美緒の方を向いた。 「お前、大丈夫なのかよ。」 「えっと・・・ なにが?」 「なにがって・・・ 早良先輩の事だよ!」 思わず声を張り上げてしまい「しまった~」と内心で焦ったが、美緒はそんな事に気付く事は無く少しだけ俯いた。 「正直に言うと・・・ まだ後悔はしている。」 「そうか・・・ でもよ。遺言書で・・・ その・・・」 「確かに先輩は「自分を恨め」って言っていたけど、自分にはできない。 だって、感謝する事もあるから・・・」 美緒は悲しそうに微笑む。 「確かに先輩は自分を助けて死んでしまった。 でも、助けてくれた事は感謝しているんだ。 それに今思えば、今まで訓練の合間にかけてくれた言葉は自分の中に残っている。 先輩の教えは、しっかり残っているんだ。 だから恨まない。」 徹子にはわかった。親友だからわかった。 美緒は、自分が思っていたよりも強く、そして前を向いていると。 だから小さな声で「そうか。」とだけ言う。 悩んでいるのはもう自分だけ。 最初の頃に「言わなければいい。」とケリを付けたはずなのが、早良ミチルの死により再び悩みが出てきた。 どうすればいいのか? もし、安易に能力を発現すれば・・・ (美緒達を巻き込んで殺しかねない。) そのぐらい危険な能力だとしっている。 僅か1分のみの開放で、その場にいた試験管全員を半殺しにしかけた能力。 制御するために努力したが、それでも封印するしかなかった。 どうすればいいのか、まだわからない。 ほどなく二人は醇子達と合流し、“オニグモ”を追って飛び出す。 433 :影響を受ける人:2015/06/07(日) 22 31 47 救援の御礼として墳進砲を貰ってしまったが、火力が欲しいので丁度良い。 基地と連携できる陸戦ウィッチとは違い、積載量が小さい空戦ウィッチではこういった武器の確保は重要だ。 素直に御礼を言ってそれぞれ一本ずつ抱えていく。 「間に合いますかしら?」 「どうでしょう・・・」 重量物を抱えて多少速力が落ちているし、“アホウドリ”に負けない速度を誇る“オニグモ”。 普通に考えれば追いつけるわけが無い。 しかし、それは杞憂だった。 かなり先に進んでいると思われた敵は、先程の奇襲を警戒しているのか遅い速度で飛行していた。 『救援は終了したのか?』 あちらもこちらを認識したのか、章香の声が通信機から聞こえてきた。 「はい。」 「ついでに墳進砲もいただいてきました。」 美緒が答えると、見えるように徹子が憤進砲を大きく振るう。 『ほう、それは良いな。 だが少し待ていてくれ。もう少しで 予定地点 だ。』 「「「「!?」」」」 その言葉を聞いた四人は顔を見合わせると、大急ぎで上昇する。 しかし視線は上空ではなく地上、見つめる先には目立つ塗料で書かれた線があった。 その線こそ、改造大型砲の射程を示す線。 “オニグモ”が戦に到達するその前に、章香達は憤進砲で射撃をして加速を誘発させる。 ここからは見えないが、すでに大砲は射撃していると思う。 一時的な加速しかできない“オニグモ”の加速が終了し、速力が落ちる寸前に命中する・・・はずだった。 前に進んでいた“オニグモ”は、今度は足を思いっきり開いてブレーキをかけ、めくれ上がるくらい足を前方に向けて振り、 急 速 後 退 を掛けた。 降ってきた砲弾はむなしく地面を直撃し、大量の土砂を巻き上げるに終わった。 以上です。 誰が 単純に 仕留めさせる と言った?
https://w.atwiki.jp/imaska/pages/317.html
■浅間級巡洋戦艦(続・天海提督の決断)概要 艦歴 (妄想)性能諸元 参考文献 ■浅間級巡洋戦艦(続・天海提督の決断) 概要 対独戦に伴い建造された新型巡洋戦艦。物語中『金剛』型以来の巡洋戦艦である。米海軍『アラスカ』型大型巡洋艦の船体に帝国海軍の装備を艤装した「富嶽」と並ぶ共同開発兵器。35.6cm主砲を12門持ち、3万トンを越える船体で最高速度40ノットという驚異的な速力を誇る『金剛』型の後継といえる高速戦艦。 「浅間」の艦名で有名なのは横山信義氏著『激浪の太平洋 巡洋戦艦「浅間」』であるが、同作の「浅間」は、独『シャルンホルスト』型戦艦に日本製の主砲を始めとした火器を載せたものであり、直接のモデルはおそらく『アラスカ』型大型巡洋艦と同時期の計画のみで開発されなかった『超甲巡』と思われる(当初『超甲巡』は35.6cm砲を積む計画があった) 同型艦として旗艦「浅間」以下「阿蘇」「吾妻」「伊吹」があり、4隻とも新設された第九支援艦隊に所属する。 艦歴 +浅間 1943年12月 第9支援艦隊に所属、同艦隊旗艦となる 1944年1月13日 シチリア沖海戦に参加 5月16日 ジブラルタル沖海戦にて中破、ジブラルタルにて修理を受ける 10月14日 遣欧第2機動艦隊所属 10月 シェトランド沖海戦に参加 1945年3月10日 バルト海海戦に参加 +阿蘇 1943年12月 第9支援艦隊に所属 1944年1月13日 シチリア沖海戦に参加 5月16日 ジブラルタル沖海戦に参加 10月14日 遣欧第2機動艦隊所属 10月 シェトランド沖海戦に参加 1945年3月10日 バルト海海戦に参加 +吾妻 1943年12月 第9支援艦隊に所属 1944年1月13日 シチリア沖海戦に参加 5月16日 ジブラルタル沖海戦に参加 10月14日 遣欧第2機動艦隊所属 10月 シェトランド沖海戦に参加 1945年3月10日 バルト海海戦に参加 +伊吹 1943年12月 第9支援艦隊に所属 1944年1月13日 シチリア沖海戦に参加 5月16日 ジブラルタル沖海戦に参加 10月14日 遣欧第2機動艦隊所属 10月 シェトランド沖海戦に参加 1945年3月10日 バルト海海戦に参加 (妄想)性能諸元 排水量 35000トン 全長 246.4m、水線長:241.25m 全幅 27.7m 吃水 9.2m~9.72m 機関 ロ号艦本式缶8基、艦本式タービン4基4軸 165,000馬力 速力 40ノット 航続距離 15ノット/12,000海里(計画時) 燃料 3,710トン 乗員 1,800名 兵装35.6cm45口径3連装砲4基 15.5cm50口径連装砲10基 40口径12.7cm連装高角砲6基、25mm3連装機銃30基、13mm連装機銃15基 装甲 舷側:229mm(主装甲部、10度傾斜) 203mm(水線面下部) 甲板:90mm(主甲板) 25mm(断片防御甲板) 主砲塔:325mm(前盾) 133~152mm(側盾) 150mm(天蓋) 副砲廊 150mm 両用砲:25mm(前盾) 19mm(側盾) 19mm(後盾) 19mm(天蓋) バーベット部:279~330mm 司令塔:269mm(側盾) 127mm(天蓋) 航空機 4機(カタパルト2基) +... 装甲はアラスカ級大型巡洋艦の船体をベースに金剛レベルまで強化したもの(日本の戦艦が対応防御持たないとは考えられないため)だが、武装と同じくこの通りかどうかは不明 参考文献 Wikipedia アラスカ級大型巡洋艦 天海提督の決断 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/teitoku_bbs/pages/3096.html
80 :影響を受ける人:2014/07/06(日) 22 05 20 この作品にはTS要素が含まれています。 オリキャラ化が含まれています。と言うかオリキャラが出てきます。 最低系である最強要素があります。 それでも良い、という方のお読みください。 提督憂鬱×ストパン+零 第十八話 ―乙女の休日― 坂本美緒は疲れ切っていた。 【アホウドリ】迎撃作戦の時に、魔眼による弱点看破を行ったのであるが、その精度はどの魔眼所有者よりも高く、各戦線に引っ張られる事となってしまう。 結果、ネウロイに関するデータ収集に貢献はしたのだが・・・慣れない書類製作と魔眼の使用頻度向上により、完全にダウンしていた。 「ぅぁ・・・」 声を出すがまったく張りがない。 しかしもう書類は見なくていいという安心感があった。 そして現在ベッドに横になって休んでいる。 “魔眼殺し”の片眼鏡をとって、完全封印する眼帯を付けていることからも、かなり疲れているのがわかるだろう。 そこに、一人の人物が訪ねてくる。 狸釜隊の学兵、早良ミチルは両手に新聞紙にくるまれた何かを持ってきていた。 部屋に入るとぐったりとした美緒を見つけ、近くの椅子を引っ張って座った。 「おい、だいじょうぶか?」 声音はいつもと同じ不機嫌そうな感じだが、少しだけ心配なのか、相手を気遣うような感じが見受けられる。 もっとも、疲れている美緒にはわからなかったが。 「大丈夫じゃ・・・ないです・・・」 「魔眼使用と言うのはそんなにきついのか?」 「かなり・・・脳に、負担がかかります・・・」 「私は能力なしだからわからないが、二日酔いのようなモノか?」 「多分、その通りで・・・・・・へ?」 今、聞き捨てならない事を聞いたようなことを聞いたような気がする。 少し動かすのも億劫なのか、ゆっくりと首を動かして不機嫌な先輩を見た。 「お酒・・・飲んだことがあるんですか?」 「まあ、な・・・」 ミチルは「しまった!」と思ったのか、眉間に皺が寄っていた。 そこで美緒は思った。 自分は・・・自分達はこの人の事を良く知らない。と・・・ 「先輩は・・・いつお酒を?」 そう思ったら急に知りたくなった。 今思えば、狐狸部隊にいる学兵は三人。 数としては中途半端であり、副隊長陣を隊長にして古参の兵を副隊長に、その下を学兵にすれば部隊は四隊となるはずだと思う。 でも、何か事情があっているというならば、それは聞かない方がいい。 「前の部隊で、隊長の悪ふざけで飲まされた・・・」 他の戦線に行って、様々な出会いをした。 第一陣・第二陣の学兵は覇気があるモノもいれば、皆疲れたような人達もいた。 部隊が壊滅して、穴埋めで移動する学兵もいたのを知った。 もしかしたら先輩もそうなのかもしれない。 そうおもうと・・・直接は聞けなかった。 「そうなんですか・・・おいしかったですか?」 「興味あるのか?」 「・・・少しだけ。」 81 :影響を受ける人:2014/07/06(日) 22 05 54 北郷章香と旗本サエが、隠れて日本酒をこっそり飲んでいるのを見ていた徹子が、こっそり一杯だけ拝借してきて飲んで吐いたのを見たことがある。 そんなに不味いのかと聞くと、度数が強い奴だったらしい。 後にばれて説教された。 「意外と飲みやすかった。皆で騒いで・・・楽しかったな。」 笑って言う先輩に少しだけ驚く。こんな顔も出来たんだと。 しかしミチルの顔は笑顔なのだが、どこか影があるのが見えた。 だから話題を変えることにする。 「先輩・・・何か、用事があったんじゃ?」 「あ、ああそうだな。ほら・・・」 そう言って渡されたのは新聞の塊らしきもの。 少し焦げていて暖かい。 「これは・・・御芋?」 ガサゴソと新聞紙を剥がすと、出てきたのは綺麗な赤紫色の物体。 「ああ、近くの農家から差し入れがあってな。 今、外じゃ焼き芋大会している。」 「大会?」 「一度欧州義勇飛行隊と飛んだだろ? あいさつに来たメンバーと一緒に焼いている。」 それでいいのだろうか? 耳を澄ませると、何やら楽しそうな声が響いているから気にしない事にする。 しかしこうしてのんびりできるのも、【アホウドリ】を撃墜したからだ。 撤退作戦の為の一時攻勢はうまくいったと中央は判断している。 事実、【アホウドリ】は出てきた端から撃墜され、大多数の敵を破壊した。 新型戦車(駆逐戦車なのだが、美緒は知らない)をも投入し、制空権を握って大量投入された爆撃機群の爆弾の雨で粉砕、敵を奥地に押し戻す。 敵が戦力を整える前に一気に後退し、民間人を優先しながら順次戦線の後退をして行っている。 自分達も、いつかはここから去らねばならないのが寂しく感じる。 農家もここを去るくらいならば、物資を兵士達の為にと思って提供していくのが多い。 こちらとしては有り難い事だ。 芋を半分に割ると、中から黄金色の身が出てくる。 湯気を沢山出していて、光に反射したその身はとても旨そうだ。 ゴクリと唾を飲み込んで一口齧る。 最初は熱さがやってきて、その次に芋の風味と甘さが広がっていく。 程よい甘さの暖かさが口いっぱいに広がって、鼻から良い香りが通り抜けていく。 「ムグ、ムグ・・・おいしい。」 「そうか。」 美味しそうに食べているのを見て、ミチルも新聞紙を剥がして自分の芋を食べ始める。 しかし・・・甘い物なんて羊羹以外だと久しぶりだ。 羊羹は比較的前線に・・・飛行士達に配られている。 なので、馴染み深いが・・・やっぱり自分は子供で、女の子なのだ。 そればっかりだと飽きてしまう。量も少ないし。 夢中になって齧り付いていると、別の用事を思い出したミチルは、懐から紙の束を取り出した。 一瞬〔ビクッ!〕と反応するが、よくよく見るとそれは手紙の束だった。 ホッとすると、手紙を彼女に手渡して立ち上がった。 もう食べ終わったらしい。 「用事はこれで終わりだ。手紙は他の三人が戻ってきたら読むと言い。」 「あっ、はい! ありがとうございました!」 「・・・礼は農家の人に言え。」 そう言うと、そのまま出て行った。 しばらくモソモソと食べていると、徹子たちが戻ってきた。 82 :影響を受ける人:2014/07/06(日) 22 06 33 「はぁ~食った、食った!」 「はしたないですわよ! まったく・・・」 「お嬢もたくさん食べていたじゃないスッか。」 「さ、里子さん!」 「でも、久しぶりに食べたからおいしかった~」 「そうですね。また食べたいですね。」 「一部は干しイモにするみたいで、さっき茹でていたけどね。」 「そうなんですか。それはそれで・・・」 ワイワイ話しながら戻ってきた一行に、軽く手を上げておく。 「お帰り。」 「おう! 焼き芋、旨かったぜ!」 「美緒ちゃんのもあるよ。」 そう言って醇子が未開封の新聞紙を渡してくれた。 「え? でもさっき、先輩が持ってきてくれたけど・・・」 「それホントか?」 ミチルが苦手な徹子は怪しむように、自分達が入ってきたドアを見る。 「本当だ。ほら、新聞紙。」 「早良先輩・・・一人でいなくなられて、どこに行かれたのだろうと思っていましたけれど・・・」 「結構良い所あるんすね。」 意外な彼女の一面を知って、一同印象を少しだけ良くしたようだ。 そして手紙まで渡してくれたことに驚く。 「なんか・・・イメージ変わるなぁ・・・」 「良く考えたら私達、先輩の事何も知らないよね。」 「でも醇子さん。江藤大隊長が口を濁していましたし・・・聞かない方がいいのでは?」 「わたくしも小毬さんに賛成ですわ。こんな御時世ですもの、聞かれたくない事くらいありますわ。」 「むぅ・・・そうだな。そうするか。」 納得していない様子の徹子だが、とりあえず聞かない事に決めたようだ。 そして手紙を皆で読み始めた。 最初は家族の手紙、怪我をしていないか、辛くは無いか、一時的にでも帰れそうか・・・等々書かれていた。 皆心配させているという自覚はあり、ちょっと困った顔になってしまう。 それでも家族の近況も書いてあるので、返事を書く時はこちらの近況を書こうと思った。 そして次に見たのは学友たちの励まし。 これもありきたりな事ばかりだが、それでも嬉しい。 中には押し花まであったりして、美緒達に癒しを与える。 そして・・・戦死した仲間の話もあった。 葬式話が書かれており、一気に暗くなる。 楽しい時間もあれば、辛い時間もある。 戦場に身を置いている以上、“誰かが死ぬ”と言う現実は常に付きまとう。 それを再び自覚して、美緒は空を見上げた。 空は青く、どこまでも澄んでいて、星すら見えそうだった。 以上平和編でした。 まだまだ平和な時間は続くんですけどね。 取りあえずミチルとの絡みが書けたので良しとする。 今度は他の子と絡ませたい。 もし「こんなのはどうだろうか?」と言うモノがありましたら。なるべく採用させていただきます。 そして【ライトニング・フォックス】の残り№3~6・8~12までの子で、「この子いいんじゃない?」と言うキャラがいましたら教えてください。 宜しくお願いします。
https://w.atwiki.jp/teitoku_bbs/pages/3156.html
250 :影響を受ける人:2015/04/12(日) 22 40 35 この作品にはTS要素が含まれています。 オリキャラ化が含まれています。と言うかオリキャラが出てきます。 最低系である最強要素があります。 それでも良い、という方のお読みください。 提督憂鬱×ストパン+零 第五十六話 ―黒雲来たりて― 襲撃が予想よりも早まる事を考え、どの部隊も大急ぎで準備に走った。 前線では地上型ネウロイの襲撃が度々あったものの、“オニグモ”との連携を考えているのかその頻度は低い。 それもあって戦線後退と再構築はうまく進んだ。 大砲改造も順調に進み、配備数最大で考えても良くなった。 しかし油断はならない。 坂本美緒がいる基地でも、早朝には夜間戦闘組以外のメンバー全員が集まって、江藤敏子と北郷章香から訓辞を受けることになった。 別の場所では基地司令が同じように訓示しているだろう。 「諸君、懸念されていた早期襲撃は無かった。 しかしまだ、今夜の夜間襲撃がまだ可能性として残っている。 慣れない夜間戦闘になるが、各部隊がその対応策を講じている。 なに、防げなくとも次がある。 生きていれば再戦は可能なのだ。 無理をせず、仲間を信じ、自分を守り、敵を侮るな!」 言い終わると敏子は章香と代わる。 無言で壇上に上がり、全員を見渡す。 最初に目に映るのは頼りになる古参兵。旗本サエを筆頭に右側にいる。 次に陸軍所属の機械化航空歩兵。穴吹智子を先頭にして真ん中に。 残る左側に学兵達と、海軍の機械化航空歩兵がいる。 その中で最も過酷な任務に就いている一人を見やる。 「味方を見捨てでも偵察をしろ」と言う理不尽な命令を受けた少女は、真っ直ぐにこちらを見ている。 その瞳にはまだ迷いがある様に見えたが、それでも意思はしっかりとしているのがわかった。 内心でホッとしつつ、顔は不敵に笑う。 「皆、今度の戦いは“アホウドリ”の時とは違うのはわかるだろう。 あの時も陸軍海軍などと言うのは忘れて全力で応戦した。 今回も同じ様にすればきっと上手くいく。 いや。絶対にだ! 今回の総力戦で奴を仕留め、そして奴らにもう一度敗北を思い知らせよう。 我々はウィッチだ。一昔前では天女と呼ばれていたらしいが、常人では扱えない魔力と言う力がある。 だからと言ってそれに胡坐をかいてはならない。 努力しないモノに自力は付かないのだから。 努力している自分達に・・・ウィッチになるために努力した自分達に不可能はない!」 そう断言する章香に学兵達は感動していた。 彼女等は短期間ながらも頑張って技量を磨いた。 欠けていく仲間を見ながら、それでも努力し続けた。 それを肯定してもらえたのだから、こんなに嬉しい事は無い。 最もサエは眉間に皺を集め、陸軍組はちょっと苦笑気味。 彼女の訓示は学兵達に向けたものであると理解したからだ。 横にいる敏子は「ちょっとやり過ぎ」と思っていたりする。 「これは全ての将兵に言えることだ。 最大限努力し、そのうえで最高の結果を残そう。」 そう言い終わり。一度息を整える。 少しばかり興奮していたので、ちょっと体が熱い。 「そうそう、嬉しい報せも舞い込んできた。 欧州から派遣されていたウィッチの第一陣の帰還部隊が、ハワイに到着したという報告だ。」 251 :影響を受ける人:2015/04/12(日) 22 41 11 その知らせに一同が騒然となる。 しかしまだ訓示は続いているので、すぐに静かになった。 そもそもこれだけ苦戦している現状は、派遣軍に人員をとられていたからと言うのもあった。 その殆どがウィッチであり、政府が考えたPRの為でもあった。 他国では年齢が低すぎるウィッチが、扶桑ではそれ以上に戦えるというアドバンテージ。 特殊能力だって術符を使ったり、シールドの応用で疑似的に再現できる技術がある。 魔法と現代技術が融合した技術がある。 それらを国際戦略で使うという選択肢は正しい。 しかし・・・優秀過ぎて各国が手放せなくなったのは誤算であった。 彼女は遠い異国で、自国の苦闘を知ってやきもきしていたに違いない。 それが、ようやく帰ってくるのだ。 学兵達は複雑な思いがあるが、それでも嬉しい事には変わらない。 章香としても、元北郷隊の一人が帰還する部隊名簿に載っていたので、生存を喜びつつも期待している。 帰ってくるのは主にブリタニアや、まだ戦禍に吞まれていない国から。 一通り喋り終えたと判断した敏子は、手を叩いて視線を自分に集中させる。 「さあ、まだ今日は残っているわ。 気を抜かず。しっかり務めを果たす様に!」 「「「「「了解しました!!」」」」」 ――――― 懸念していた早期襲撃は起こらなかった。 そして考えられていた襲撃日にも、“オニグモ” は来なかった。 ほぼ決まってきていた敵にしては珍しく、肩透かしを食らった感じで兵士達は不完全燃焼気味。 予定日より遅れること三日。 彼等は襲撃をかけてきた。 タイミングをずらされた事に全軍の士気は一時的に落ちていたが、“オニグモ”出現の報は瞬く間に広がり、緊張感と共に再度上がった。 「やれやれ・・・ようやく現れたか。」 「そうですね。ですが遅れた事により、連絡網の再整備と調整は終わりました。」 大陸方面軍司令の呟きを東條英機が同意し、少しばかり良い情報を漏らす。 この世界でも通信網(2チャンネル)を作り上げんと奮闘していて、前世の経験を活かしてより早く事を進めている。 他にも転生者はいるのだが、この場に彼しかいない。 「全部隊の状況はどうなっている?」 司令がそう問いつつテーブルに広げられた地図を見る。 地図上にはそれぞれの駒が配置され、報告を受けるたびに駒がどんどん移動していく様子がわかる。 そのなかで、最も黒く大きい駒が前進してくる。 「やはり、協調性は無しか・・・」 「そのようですね。単独で行動しようとするというのは珍しいと思いませんか?」 「ふむ。私は学者ではないが、役割なら理解できる。 こいつは遊撃兵的な役割を持っているんだろう。 戦場を引っ掻き回し、戦力の薄い場所を作り出す。 そして後方で暴れ、機能をマヒさせる・・・ 理想的な運用方法だ。」 忌々しそうに黒い駒を睨み付ける。 参謀も同じ様に睨みつけつつも情報を聞き逃さない様にし、会話に加わる。 「あれ一体だけで戦局を変えようというのだから。たまったモノではないな。」 「ですが今回はそうはいきません。 切り札の大砲は予定通り12門ではなくさらに追加されて14門となっています。」 「そうだな・・・ 本土の技術者や企業には頭が下がる。」 司令はそのまま帽子を脱ぐと、汗をかき始めた頭皮をぬぐう。 戦争が始まってから剃り続けている頭の照りはかなり眩しい。 帽子をかぶり直すタイミングで、通信兵が振り返って報告してきた。 「“オニグモ”、前線に到達したという報告が入りました!」 252 :影響を受ける人:2015/04/12(日) 22 41 50 ――――― 黒田剛己の視線の先では、巨大な円筒状の巨体を浮かべる“オニグモ”が陣地に射撃している様子がうかがえた。 陸戦兵器では“オニグモ”に有効なダメージを与えられない為、攻撃を受けている間は耐えるしかない。 分厚い土嚢の天井を備え、結界士たちが協力して必死に障壁を張っているが焼け石に水だ。 「くそ!」 悪態をつきつつも、“オニグモ”がいるせいで、陣地に空いている穴に殺到しようとするネウロイを【扶桑号】でもって突き殺していく。 時には足を薙ぎ払って行動不能にし、部下と合流しては共同で大型を仕留める。 だが敵はいっこうに減らない。 視線を“オニグモ”から外すと、ある一団が見えた。 「可楽!」 『ァィ…』 通信機に呼びかけると、本当に小さい返事が返ってきた。 「大型が四体見えるか!?」 『ゥィ…』 「ひき潰せ!」 『ァィ…』 相変わらず小さな声になんだかなぁと思ってしまう。 が、すぐに戦場に大きな鉄鎧のサイ(モデル:舞Himeの愕天王)が現れて、大型四体を含んだ一団に突進していくのが見えた。 その周りには同僚の斧使いや薙刀使いが護衛していて、小型を殲滅し、中型の機動力をそぐ。 大型も攻撃するが、部隊最強のシールドを貫くには至らない。 た突撃にを避けようとして失敗した一体が、獣の機動力と質量を生かし体当たりに足を吹き飛ばされて倒れ込む。 その後ろにいた中型も吹き飛ばしつつ旋回し、もう一度突撃していくのを見て、剛己はもう一度視線を“オニグモ”を睨み付ける。 「頼むぞ。江藤・・・」 以上です。 中ボス戦スタートです。
https://w.atwiki.jp/teitoku_bbs/pages/4499.html
27: 第三帝国 :2017/04/02(日) 09 37 17 銀河連合日本×神崎島ネタSS――——「艦娘たちの憂鬱」 「初めに言っておく。 この会議は同じ艦娘の意見交換と意思統一のためにあり、普段の階級は忘れて欲しい。 そして今回の件はこの島最大の危機であると私は考えている。大淀、状況説明を」 「はい、昨晩0000にて駆逐艦吹雪が進行不能点の突破を確認。 電波情報を収集した結果、我々が戻ってきたのは21世紀の世界であると判断。 これに対し、軍令部総長の権限で第1種防衛基準体制を必要と判断し発動。 鎮守府は総動員体制へ移行、各種予備役の配置も間もなく完了する予定です」 「流石だ、大淀。 で、基地航空隊の方はどうだ?」 「全ての戦略爆撃集団は空中待機命令。 さらにすべての基地航空隊は24時間の即応体制に入っています。 また、景雲を始めとする偵察機による哨戒網を構築したさい米軍と自衛隊との接触を確認しました」 「マリアナと硫黄島は目と鼻の先ですからね・・・。 軍艦を派遣して来るのは、もはや時間の問題でしょう」 「ああ、違いないな大和。 この島の位置で無視してくれるお人好しな国はどこもいない。 ましてや人工衛星が飛び交うこの21世紀という世の中で誤魔化しは効かない」 「既に在日米軍と海上自衛隊が訓練を中止。 こちらに向かって来ているのは分かっていますから、それこそ2、3日後には邂逅するとこの霧島は計算しています」 「ひえー、殆ど時間がないじゃないですか!」 「それだけこの島の位置が絶妙だからな。 加えて北方と南方にある油田地帯も衛星で見られているだろう」 28: 第三帝国 :2017/04/02(日) 09 37 49 「だよねー。 株や先物取引でも早くも動いているのは衣笠さんも確認したし。 後たぶん皆が気になっている大陸の反応についてだけど、青葉が説明するわ」 「青葉です。 大陸で軍の通信が増大しているのを確認しました。 島の発見について国営メディアでの論説は既に中国の夢を実現させる絶好の好機。 と盛んに宣伝しており、軍令部第3部としましては最悪の事態について考慮すべきと意見を一致させています」 「まあ、予想通りだな大陸の反応は・・・。 飽和している人口に破裂寸前の経済を解決するために植民地を欲しているからな、あの国は」 「歴史は繰り返す。 というけど今度は相手が同じ歴史を繰り返すなんて皮肉よね、長門」 「それよりも中国の艦隊はどうするのですか? 空母こそ1隻しかありませんけど、フリゲート艦の数が多い上に技術差は埋められません。 もしもこの島を目指して来たらいくら改二となった瑞鶴先輩でもとても太刀打ちできませんよ!?」 「安心しなさい葛城。 あの子はどんな状況であろうと必ず一矢を報いるわ。 それと中国の正規艦隊については米軍が阻止するでしょう。 南沙諸島の件といいこれ以上の狼藉はあの国は許しはしないわ。 ・・・だけど問題は21世紀の便衣兵である海上民兵による上陸ね。 こちらか手を出せない上に、最悪一方的に悪者にされかねないわ・・・私が経験した上海事変のように」 「加賀さん・・・」 「心配しないで、赤城さん。 少しばかり感傷に浸っただけよ」 「ケケケケ、モシモノ時ハ望ミ通リ悪ノ帝国トシテ振ル舞ウダケ」 「ココハ幾度モ水底ニ沈ミ、ソノ先ニ得ラレタ安寧。 ユエニ我ラ深海棲艦モ協力ヲ惜シマナイ・・・・・・。 モシモノ時ハ、アイアンボトムサウンドノ様ニ纏メテ水底ニ沈メテアゲル・・・!!」 「協力はありがたい。 しかし、こちらから拳を振り上げることは無しだ。 ましてや提督が決断を下していない状況で軽挙妄動は控えてくれ、頼む」 「ヲ、分カッテイルヨ、長門サン。 深海棲艦デアル私達ハドウシテモ理性ヨリモ負ノ感情ガ先行スルダケサ」 「ところで、大淀さん。 提督の様子は?具合とか悪くないよね?」 「提督はこれまで纏めた報告書を確認している最中よ、神風さん。 流石に混乱しているみたいだけど、食事はしっかり取っていたから大丈夫よ」 「流石に提督でもこの事態は混乱するよねー。 増してや宇宙人が地球にやってきて何故か日本に居座っているなんて」 「何でも最近は日本で観光旅行をしているそうですわ、鈴谷。 イゼイラ人も神戸ビーフを食べているのでしょうか・・・・・・」 「・・・オホン! 兎に角、確認が終われば提督が決断を下すだろう、我々とこの島を守るための手段を。 それまでの間、何時での抜錨できるように準備をしておいてくれ」 おわり 29: 第三帝国 :2017/04/02(日) 09 41 20 以上です。 楽しんで頂けたら幸いです。 次回こそ本格的な接触となるでしょう。 しばらく出かけますので、では。
https://w.atwiki.jp/kancolle_ero/pages/22.html
この司令室はこんなに広かったのか。 今夜私が寝るための布団を残して、机も棚も片付けた部屋は、ひどくがらんとしていた。 明日にはこの部屋を引き払い、そして…… 「司令官、郵送の手はずは整えてきた」 艤装を全て取り外した響が、秘書役として最後の務めを終えて戻ってきてくれた。 艤装を外して水兵服だけになると、元の年相応の少女としての顔がよくわかる。 ……明日には、この子はソ連に引き渡される。 今さら何を言っても、どうわめいても、何一つ変わる事ではない。 この子の戦時賠償艦としての扱いを拒否する権限など、今の私には、わが国には無いのだ。 「最後まで、ありがとう響。もう遅くなってしまったが、君も休みなさい」 己の無力さに痛む胸を無視して、響に声を掛ける。 明日は早いのだから、という言葉を危うく口に出すところで飲み込んだ。 明日のことを、あえて思い出させることはない。 「司令官……」 いつもなら、仕事が終われば特に躊躇もなく「そろそろ戻ってもいいかな?」と自室に帰る響が、物言いたげな目でこちらを見てくる。 まさか朝まで酒を酌み交わすわけにもいくまいが、茶の一つを出してゆっくりと話してやることもできないほど片付けてしまったことが悔やまれる。 「響、どうした?」 我ながら、間の抜けた問いかけだと思う。どうしたもこうしたもあるまいに。 「司令官。……お願いが、ある」 何気ない仕草で、響が靴を脱いで畳の上に正座した。 「……」 響がお願いとは珍しいな、などとは言えなかった。 軽口で済ませてよいことではないと、その顔が告げている。 「響」 「司令官、私は明日、ソ連へ行く」 わかりきっていることを、しかし、響は胸を張って言った。 それも、連れて行かれるではなく、行くと言った。 こういう子だ。強い子だった。 だが、 「しかし、貴方もご存じのはずだ。満州で、ソ連兵が何をしたのかは」 きりきりと胸が痛む。それが意味するところと、響にそれを言わせてしまったことに。 「ああ……、よく聞いている」 「私も同じことになるだろう。彼らが戦時賠償艦を丁重に扱うとは思えない」 氷のような表情を変えることなく淡々と告げる響の言葉を、私は血が滲むほど唇を噛んで聞いていた。 響は、私の無能さ、無力さを、罵倒していいはずなのだ。 泣き叫んで、殴りつけて、この愚かな司令官を射殺してくれてもいいはずなのだ。 いっそ、響がそうしたいと言うのなら、私はそれでもいいと思っていた。 「だからその前に、司令官」 血の気の薄い響の頬に、めずらしく紅が差した。それは、怒りではなく、 「…………私を、抱いて欲しい」 予想だにしない言葉に、私は呆然となった。 そのような言葉を掛けてきた娘は何人もいたが、響はいつも冷淡だった。 妹の雷や電が私にじゃれついたり、姉の暁が私に頭を撫でられているときでも、響だけは私に直接触れることなく、常に一歩引いて私に接していた。 「貴方は、けっして私たちに手を出そうとなさらなかった。他の鎮守府にいる提督の中には、娘を手籠めにする者も少なくなかったと聞いているが、貴方は違った」 「私は君たちの命を預かっていたのだ。そんなことができるはずはない」 無論、間近に接する若い娘たちの身体に欲情をもてあましたことはある。 それでも、そんなことをすれば戦場へ送り出す彼女達の命だけでなく尊厳までも傷付けることになる。 何が何でも、私は自らを律することにした。そうし続けた。 「貴方は優しかった。でも、それゆえに残酷だった」 その私を、響は静かに糾弾した。 「残酷、だな。そうだ、私は……」 「違う。違うのだ、司令官。私の言いたいことと貴方の認識には齟齬がある。貴方が残酷だったのは、皆を戦場に送り出したからではない」 どういう、ことだ。 はらり、と。 響の瞳から一筋、美しく光るものが落ちた。 「……これほどに、貴方に胸を焦がされながら、ついぞ、抱いてもらえることもなく、乙女のまま沈んでいくことが、皆にとってどれほどにつらいか、貴方は理解して下さらなかった……」 静かに、されど血を吐くように、響は告げた。 「皆、貴方の優しさを、立場ゆえの苦悩を、それがゆえの強さを、愛していた。 恋い、焦がれていた」 こんな、もはや老いたと言ってもいいような、無能な司令官をか。 などと、言えるわけもなく、私はただただ、響の告白に曝されていた。 今、私が自らを貶めることは、私に恋い焦がれていてくれたという、今は亡きあの娘たち全てを、冒涜することになると、さすがの私でもわかっていた。 「私と、同じように……」 常に一歩引いていたこの子の態度が、姉妹たちへの遠慮だったのだと、今更ながらに気づいた。 姉妹たちや、他の娘たちの思いを代弁してからやっと、自分の思いを告げるくらいに、この子は優しいのだった。 その響をして、死んでしまった皆のことをわかっていてさえ、ああ言わせることがどういうことか。 「私の身体は、まだ男を知らない。ソ連兵にいいようにされる前に、……せめて、最初だけは、貴方に……」 最後は、蚊の鳴くような声だった。 「響……」 「私の……、一生のお願い、です……」 三つ指を突いて、まるで新妻のように、最後は口調さえ改めて、響は深々と頭を下げた。 様々なものが頭をよぎる。 この部屋に来て、そして帰ってこなかった娘たちの顔が、幾重にも、幾重にも重なる。 君たちは、私を恨んでいるのだろうと思っていた。 それは、大きな勘違いで、そして、同時に正しかった。 今、こうすることは、抱いてやれなかった君たちを裏切ることになる。 私はこれでも、君たちを愛していたつもりだ。慈しんでいたつもりだ。 それは、今目の前にいる少女とて、例外であろうはずもない。 いや、誰か一人を贔屓してはいけないと思いながら、どうしてもそうしてしまっていた少女だった。 明日には露助たちの手に落ちて穢される愛しい少女が、こうして何もかも振り捨てて頭を下げている。 済まない。 心の中で、幾多のものに頭を下げる。 最後に身体を動かしたものは、義務感や哀れみではなく、枯れたと思っていた男としての衝動だった。 愛しい女が他の男に抱かれる前に、我がものにしたかった。 頭を下げ続けていた響の身体を抱き起こし、部屋に唯一残っていた夜具の上に押し倒した。 灯火管制で裸電球に絞った傘を被せていたため、部屋の隅は夜の闇が舞い込んでいた。 その暗がりに組み伏せた小さな身体は蜉蝣のように儚く見えて、ここまでやっておきながら、思わず手を出すのが躊躇われた。 だがその薄闇の中で、響は、うっすらと、だが、決して見間違えようがなくはっきりと、微笑んでいた。 私の暴挙を受け止めるように、許すかのように、待ち焦がれていたとでもいうように。 私は、その微笑みに応えたかった。 だが、決して壊したりしないように、そっと、数え切れないほど見ても見飽きなかった赤いスカーフに手を掛ける。 後戻りできないことをしているという自戒とともに、思っていたよりも、するりとほどけた。 響の服を脱がしているのだという罪悪感に、甘い疼きが混じることが否定できない。 そうだ、長きに亘って気づくまいと目を背けていたが、私は、傍にいるこの娘の身体に、女を感じていたのだ。 感じていたからこそ、今の今まで手を出せずにいたのだ。 だが、次を脱がそうとしたとき、私は酷く間が抜けたことに気づいた。 水兵服の脱がし方が、わからない。 士官学校卒以来、水兵服を着ることもなかった自分の経歴を、この時ほど恨んだことはない。 服を揃えるのも、洗濯をするのも、皆、任せっきりだった。 こんな身近にいる少女の服の造りさえ知らずに居て、少女たちの指揮を取っていたなど。 「司令官、ひょっとして……」 戸惑っている私を見て、響がいつも通りの察しの良さで声を掛けてくれた。 まったく、私はつくづく戦術指揮には向いていない男だったというわけだ。 「済まぬ。どうやったら脱がせてやれるか、わからん……」 それを聞いて、響はくすりと笑った。 妹たちを思わせるような、邪気のない笑顔だった。 「安心した。貴方が、そういう人で」 左手を後に突いて上半身を少し起こした響は、右手を襟元に持っていき、何かを解いたようだった。 それで、襟元から下へ、スカーフに隠れていた部分が半分まで開かれた。 なるほど、こうして首が通る大きさに広げて上から被っていたのか。 「あとは、脱がせて欲しい。貴方の手で……」 是非もない。本来ならばさきほどのことも私がやらねばならなかったのだ。 裾に手を掛けて、響が身体を任せやすいようにゆっくりと上げていく。 白い腹がだんだんと露わになっていく。 さらにその上までたくし上げたところで、下に身につけている真っ白い胸当てが覗く様は、途方もなく淫靡だった。 響の頭が襟を抜けるときに、響の視線が遮られた瞬間に、そこへ目が行くのを止められなかった。 胸当てとはいっても、サラシと大して変わらないほどに、それが守っている胸は慎ましやかだった。 上着を脱がし終えて、その胸当てに手を伸ばそうとすると、響はかすかに身をよじった。 「その……先に、スカートを」 この期に及んで順序も何も無い気もするが、今これから男に蹂躙されようとする娘心は、せめて溢れる羞恥を後にしたいと思うのだろう。 「わかった」 スカートの造りは私にもおおよそ推測が付いた。 暗がりの中で手で探ると、左の腰の辺りに釦があり、これを外すと腰回りが広がった。 響の後腰に軽く左手を回して、彼女が腰を浮かせやすくしてから、右手でスカートを引くと、その下から胸当てと同じ色の腰巻きとすら言えない小さな布が、申し訳程度にその場所を守っていた。 これで、響の身体の線がほとんど露わになった。 胸だけでなく、腰周りも細く、これから蹂躙することが許されぬほどに幼い身体だった。 艦娘たちは、その役目を背負った時から老いることが無くなる代わりに、成長することも無くなる。 男を受け入れることができるほどに、成長しているはずもなかった。 その無垢な身体を前にして、私は恥知らずなことに、途方もなく劣情を催していた。 ただの子供の身体ではない。 私が長らく、愛しく思い続けてきた、少女の身体だ。 堅く絞っていた褌の中が、ひどく窮屈になってきた。 今すぐにでも、響の身体を覆う布を全て剥ぎ取りたくなってきた。 だが、己が願ったこととはいえ、貞操を叩き込まれた大和撫子としての響の恥じらいを無残に壊してしまうことはできなかった。 私は二度三度と、大きく息を吸い込み、吐き出して、己を辛うじて抑え込んで、響の両脚を覆い隠す黒い靴下から脱がせることにした。 少しでも後にしてやらねば、響の心に覚悟も定まるまいに。 「……ありがとう」 どうやら、その判断は間違っていなかったらしい。 指の先に微かに触れる素足の感触は滑らかで、脱がせやすかった。 ふと、右足からするりと脱がせた靴下が絹であることに気づいた。 戦時下ではまず手に入らなかったであろう代物だ。 響は、最初から私に抱かれるつもりで、目立たぬ中で精一杯着飾ろうとして、こんなものを履いてきたのだろうということが察せられた。 そのいじらしさを噛み締めながら、左足からも靴下を脱がせ取る。 見たことのなかった響の素足は、愛らしい指の先まで細く細く、大人の女性のような肉感的な色香はまだ無かった。 いや、まだもなにも、ついぞ、得ることはなかった。 ただ、美しかった。 「さすがに、これは……」 恥ずかしいのだろう。 露わになった二本の脚を、その付け根を隠すかのようにぴたりと合わせて揃えていた。 貞淑な、愛らしい仕草だった。 わずか二枚の布。 それだけが、最後に響を守っていた。 どちらから脱がしてやるべきか迷ったかが、やはり上からだろうか。 しばし逡巡していると、響がおそるおそる声を掛けてきた。 「司令官は……脱がないの?」 言われるまで、私は自分のことをすっかり忘れていた。 士官服のままで、ここまでの凶行に及んでいたなどと。 だが、響としては自分だけが裸に近い姿なのに、私がそのままではおかしいだろう。 「そうだな、済まなかった」 言われると、服はひどく邪魔だった。 身体が響を欲していて、服など早く脱ぎ去りたかった。 だが、慌てて脱げば、響を怖がらせてしまう。 焦らさぬ程度に、できるだけ悠然を装って、私は上下を脱いで褌一枚になった。 響は、そんな私をしばらく呆然と眺めていた。 「どうした?」 「司令官のお体を見るのは、初めてだから……」 そういえば、水泳訓練のときでも響は居なかったような記憶がある。 他の娘らのようにはしゃぐのを嫌っていたのかと思っていたが、今にして思えばただの強がりだったのかもしれない。 「もっと若い男の身体ならばよかったのだろうが……」 「いえ……、逞しい、ご立派な身体です」 うっとりと、響が言う。 ついぞ、愛する少女一人守れなかった程度の鍛錬に何の意味があったのかと思っていたが、そう言ってもらえるのなら僅かででも鍛えていた甲斐もあったというものだ。 今すぐにでも、窮屈になった褌を脱いでしまいたかったが、まだ駄目だ。 今でさえ、これから起こることの恐怖を抑え込もうと必死になっているはずなのに、さらに見せつけようものなら、響の心を傷付けてしまいかねない。 そして、それ以上に、私は響の裸身が見たかった。 胸当てに手を掛ける。 ぴくり、と響の身体が震えた。 いいな、と目で問いかけると、響は微かに目を伏せて頷いた。 背中に手を回し、胸当てを留めている結び目に指をかけた。 ほどく。 あっけなく、その一枚は響の身体を放棄した。 「ああ……」 どちらからともなく、ため息が漏れた。 紳士にあるまじきだが、私は凝視することを止められなかった。 暗がりの中で、その身体はほのかに白く、輝いているようにさえ見えた。 その、露わになった響の胸。 淡い、房とすら言えない小さな膨らみの真ん中に、二つの小さな蕾が、精一杯に尖って自己主張していた。 彼女そのものらしく、愛らしく、美しかった。 「小さいから……そんなに見ても……」 かすかな灯りを背にしている私の表情はわかりにくいだろうに、女の勘で視線がわかるのか。 それとも、わかりすぎるくらいに、私が食い入るように見ていたのか。 「……美しい」 思わず、そんな言葉が口から漏れた。 よもや童貞の小僧でもあるまいに、こんな少女の膨らみかけの乳に、崇めたくなるほどの思いを抱くとは、我ながら下劣な純情さに呆れかえる。 士官学校を出たての頃、遠洋航海で港に寄るたびに上官に引っ張り回されて地元の色街に踏み込むことが何度あったか。 肌の色も白いのから褐色まで色々な女を抱いてきた。 大半は顔すら覚えていないが、それでも今の響より胸の小さい女を抱いた覚えはない。 そして、今の響よりも美しいと思った女を抱いた覚えもなかった。 幼い少女の身体に、あどけなさの隠しきれない面差しが、ギリシアの大理石彫刻すら及ばぬ宝のように思えた。 「貴方が……、そんなに嘘が上手とは、知らなかった」 照れているのか、瞳をわずかにそらしながら、そんなことを言ってきた。 それはそうだろう。嘘偽り無く、本心で言っているのだから、上手な嘘に聞こえるだろう。 嘘ではないと、言葉で言っても聞いてはくれまいか。 どれほどに私が、今の響に欲情しているか。 この身体を、誰にも渡したくないと願っているか。 それが叶わないことに、どれほどに煩悶しているか。 せめて、だった。 せめて、響の身体の全てを最初に手にする男は、私であろうとするのだ。 左腕を伸ばして、響の腰の後ろに回し、彼女が抵抗する間も与えずに抱き寄せた。 私の腕の中に、すっぽりと響の小さな身体が収まってしまう。 今このときだけは我が物となったその白い肌にそっと右手の指を伸ばす。 細い頬をなぞり、乱暴にしたら折れてしまいそうな首筋をなぞる。 凹凸の浮いた鎖骨からさらに下へと伸びた私の指が、淡い膨らみに掛かった。 握るほどの大きさどころか、摘むほどもない。 だが、少女のそこまでの肉よりも確かな感触が、指の腹に伝わってきた。 滑らかな肌をなぞる。 かすかに力を掛けながら、撫で回す。 右も、左も、ゆっくりとなぞっていくと、そのかすかな膨らみの輪郭がわかる。 艦娘の宿業に囚われなければ、豊かに膨らんでいたであろうと思わされた。 だが、この慎ましやかな身体はあるいは響の心根のようで、なぞっているうちに、響に触れているという思いが湧き上がってきた。 もっと、触れたい。 心の臓に近い方の蕾に、人差し指を伸ばす。 その先に、ほんのわずかに触れた。 一瞬だが響の身体がぴくんと撥ねた。 女の、反応だった。 もう片方の蕾にも手を伸ばし、今度は、もう少し強く押した。 膨らみとは違う確かな感触が伝わってくる。 それを、そっと人差し指と親指で摘もうとするが、摘めるほどには大きくなく、その先端をいささか強く擦ってしまった。 「あっ……」 それは、嬌声だった。 響の口から漏れたとは思えないほどに艶のある声に、私は背筋がぞくりとするほどの背徳感が降りて来て、褌の中で滾るのをやめてくれなかった。 もっと、もっと声を聞きたい。 今度は、押し込みながら摘もうとする。 「んんっ……」 今度の声は、艶に痛みが混じった。いかん、やりすぎたか。 「司令官……、少し、痛い……」 「ああ……、すまない」 「だから……、もう少し優しく、もっと……触れてほしい……」 ねだってきた。 しかし、手で触れていると、響を手に握りたいという衝動が溢れてきて留めようがなくなってきそうだった。 それならば、いっそ、そうしよう。 唇を響の蕾に寄せて、私はその先を唇でそっと咥えた。 驚いた響が反射的に身体を跳ねさせたが、私は両手で響の肩を押さえつけて逃がさなかった。 そのまま、吸った。 響が堪えきれずにあげる、甘い悲鳴が耳に心地よい。 少し吸って、唇の中で、その蕾を舌先でなぞる。また、吸う。 そうしながら、両手は響の身体をまさぐる。 肩から今度は二の腕や背中に伸ばし、触れる、なぞる、撫でる。 「司令官……、なに、も、出ないから……」 そんなことはわかっている。 わかっているが、だが、響の蕾を貪っていると、ひどく満たされている自分がいることに気づかされた。 こんな老いも見えた男が、幼い少女にそんな思いを抱くなどお笑いぐさだが……。 いや、男など、いくつになっても所詮そんなものかもしれない。 艦が全て娘に限られるのは、我々のような情けない軍人たちの、愚かな懸想の結果なのかもしれないのだから。 それも、新兵から元帥まで揃いも揃って。 そんなことを内心で言い訳にしながら、乳が出ないとわかっている幼い果実を吸う。 右も、左も、時折舌で嬲ることを混ぜながら、そのたびに響は身体を震わせてくれる。 だが、やがてそれだけでは満足できなくなってきた。 この身体が、何者かに侵される前に、全てを私のものにしなければという、義務感のような思いに駆られてきた。 それは、乙女の純潔だけではなく、響の全てをだ。 そう思った私は、響の身体中を撫で回すだけでは飽きたらずに、蕾の周りに舌と唇を這わせていった。 膨らみの外輪から、脇の下を通り、か細い二の腕から右手の指の先まで。 「司令官……それ、は……」 最初は、私の愚行に驚いて、響は手を引っ込めようとした。 だが、その手をそっと、しかし逃れられるほどに強く握って止める。 「響……。そなたの全てを、私で染めておく」 あえて、何かが起こる前にとは言わずにいた。 こうしてやり始めるときから、わかりきっていたことだ。 「それなら……」 と、響は何か言いたげな顔をした。 指を泳がせて、唇を振るわせて……ああ、そうか。 まったく、そんなことも忘れるくらいに、私は彼女を貪っていたのか。 順序がまったく逆だった。 「そうだな。すまない。先にそうすべきだったな」 響のおとがいに指を添えて上向かせる。 どうしても身長差があるから、私が覆い被さる形になった。 白無垢を着せてこうしてやることができていれば、何もかもが違っていたのだろう。 誰かを贔屓してはならないなどという私の思い上がりが、結局は、何もかもを不幸にしたのか。 だが今こうして、深くなってきた夜の闇の中で私を見上げてくる響の姿は、白無垢さながらに美しかった。 白い柔肌は言うに及ばず、姉妹全てを失った悲しみで白くなってしまった髪さえも、今こうして見れば、彼女によく似合った。 間に合わなかった婚礼のつもりで、私は、彼女の唇に接吻した。 響の唇は見た目通り厚くはないから、さほど押しつけた時に深みはない。 だが、柔らかく、暖かく、芳しい。 驚いたような響の吐息を吸いこんだのか、鼻腔を甘くくすぐるような匂いがする。 芳醇な匂いを放つ青い果実を目の前にしているのだから当然だろうが。 唇だけで満ち足りなくなり、舌先を差し入れる。 フレンチ・キスと言うのだと、欧州留学の折に身につけた下らない知識が頭の深いところから浮かび上がってきた。 驚いたらしい響がかすかに身動きしたが、すぐにこちらの意図を察したのだろう。 唇にかかっていた力が抜けて、私の舌は響の口の中を侵し回ることができた。 響の味だと同時に、響が私を味わっていると思うと、妙な気分だった。 私はこの若々しい果実を味わっている果報者だが、こんな枯れた男を味わっている響はどう思っているのだろう。 そんな頭に浮かんだ疑問を察したわけでもないだろうが、差し入れた舌先に、濡れた感触が絡みついてきた。 あまつさえ、絡みながら舌を遡って、私の口の中にまで入ってきた。 もっと味わいたいと、言わんばかりに、しばらく、息をするのも忘れて啄み合った。 先に息が続かずに音を上げたのは響だった。 これで私の方が先に息を切らしていたらあまりに格好が付かない。 海軍士官学校で鍛えた肺活量が、こんなところで活きるとは思わなかった。 「髭が、くすぐったかった……」 まさか味がどうだったかと聞くわけにもいかなかったが、響は、少しはぐらかすようなことを呟いた。 そういえば、朝方髭を剃ってからなので、少し響の頬に刺さったかもしれない。 「髭は、いやだったか?」 接吻が嫌だったかとは聞けず、そんな尋ね方をした。 「いいえ。悪くない感触でした。……もっと」 接吻ではなく、髭の感触を名目にして、私たちはまた唇を合わせた。 それを、息が切れるまで繰り返す。 今度も、響の方が先に息を切らせ、もういいかと思ったが、響はまたもねだってきた。 都合、合わせて、四度。 終わったときには、水から上がってきたときのように二人とも荒く息を繰り返していた。 啄んでいるときには息ができないのに、まるで水中で空気を求めるかのようにお互いを求めているのだから、不思議なものだ。 さすがに酸欠で、姿勢を維持することもできず、夜具に背中から倒れ込む響の背中をそっと支えながら横たえさせた。 さしずめ、俎板の上の鯉のようにさえ見えた私は、どうかしている。 存分に味わった唇の周りの、頬や耳、瞼や額を、なぞり、接吻の雨を降らせた。 一カ所残らず、私が触れた跡を残すように。 響は、時折身じろぎしながら何も言わずに、私がまだ接吻していない顎や首元を自分で指さした。 言葉を返すこともなく、私はその指示に応える。 髪の毛一筋一筋までは舐ることは難しかったが、全てに触れておこうと、幾度も幾度もその長い髪を指で梳いた。 絹の糸でさえ、この髪には及ぶまい。 かつては姉の暁と同様に漆黒だった髪はこうして白銀になってしまったが、この色には、その姉妹を失った悲しみが込められているのだ。 顔の周りを撫で終わると、私は響の身体を下へ下へと侵略していった。 服の上からでもわかっていたが、裸にするとなおのこと細すぎる腰は罪悪感を呼び起こさせる。 そんな中に、小さな臍があるのが、愛らしかった。 その下には、辛うじて最後に残った一枚の布がある。 その布を取り去ったら、私の自制もそこまでだろう。 辛うじて堪えて、為すべきことを先にしようとする。 ふともも、などとはとても呼べない、幼い少女らしくすっきりと伸びた足のうち、右足を膝立たせながら、表も裏も指と唇と舌でなぞっていく。 膝裏も、ふくらはぎも、その感触を私の脳裏に刻みつけるように触れていく。 足の指を舐めていると、かすかに塩気と、汗の匂いがした。 だが、それすらも芳しいと思えてしまう。 私の中に乱歩の小説のごときこのようないかがわしい嗜好があったとは。 つくづく、あの娘たちに手を出さずにいてよかった。 手を出せばきっと、私はそれに溺れきってしまい、あの娘たちを壊してしまっていただろう。 「司令官に……、こんな、こと……」 私が響の足の指を口にしていると、私を足蹴にしているような体勢になることに響は気が引けているのか、恥じらうような顔を見せた。 男を足蹴にしてよいなどと、教わっては来なかったのだろう。 響に教え込まれた大和撫子としての慎みがわかって、私はなおいっそう愛おしくなった。 「私が、そなたを味わいたいのだ」 「……はい」 そう答える響の顔が嬉しそうなことに、私は救われた。 右足を舐り終えて、今度は左足を先の方から舐めていく。 隈無く、全ての新雪を踏み荒らし尽くすように。 左の股まで舐めて撫で終えてから、響の背中も蹂躙すべく、その細い腰に手を掛けた。 言わずともわかるのか、響は私が力を掛けるよりも先に、くるりと身体を翻す。 細すぎる背中が目に入り、そして、私はそのとき間違い無く、心臓が跳ねるのを覚えた。 わずかの布きれに覆われた小さな尻がこうして私に向かって突き出されるのを目の当たりにして、私ははっきりと、この娘を孕ませたいという衝動に駆られてしまった。 ひどく動物的で、暴力的な衝動だった。 欧州女で、尻の大きな女などいくらでも見て来たはずが、その今まで見て来たどの女に対しても抱いたことの無かった、はっきりとした生殖衝動だった。 否応なく、褌の中が固くなる。 そろそろ、我慢も限界に近くなってきた。 響がくすぐったがる声を聞きながら、背中を撫で舐め終える。 これでもう、響の身体で触れていないところは、最後に残った布一枚の下だけだ。 既に、私は響の身体を組み敷いていた。 無理やりにでもこの布を剥ぎ取って、獣のように交わりたかった。 だが、幼い響の身体にいきなりそんなことをしたらどうなるか。 この後に響を待っている運命がそれだとしても、せめて最初の交わりくらいは、優しく抱いてやらねば、今こうして私が生きている意味すらもない。 そう己に言い聞かせて、獣の衝動を辛うじて抑え込む。 ゆっくりと、身体を開いてやらねばならぬ。 今まで交わったどの女にしたよりも、もっと。 「響……」 そっと身体を抱きかかえて、仰向けに横たえさせた。 じっと私を見つめてくる響の瞳を見つめ返しながら、取るぞ、とは言わなかった。 わずかに睫毛を動かして、響が頷いたように見えたのを確認してから、その最後の一枚を取り去った。 予想はしていたが、その下には一筋の翳りもなかった。 わずかばかり膨らんだ割れ目はぴったりと閉ざされて、おそらくは自分で弄んだことすら無いのだろう。 女陰とは、こんなにも美しいものだったのか。 壊してはならない儚い硝子細工のようなその姿に、しばし、私は陶然と魅入っていた。 こんなところに、入るはずもないものを入れようとするのだ。 指の腹を当ててみると、硝子細工ではなく、柔らかく暖かい肉の感触だった。 まだ何者にも侵されていない、閉ざされた、穢れのない感触だった。 私の爪が伸びていないのが幸いだった。 まず小指の先を、割れ目の入り口にそっと差し入れてみる。 ぴったりと閉ざされていて、固い貝を開いてみるような感触だった。 いきなり力を加えては駄目だ。 少しずつ、響が痛がらないか確かめながら押し込んでいく。 それでも小指の第一関節まで入れるのがやっとだった。 それ以上はとても開きそうにない。 手首を返して割れ目の上側をなぞりながら、一度そっと指を抜き取る。 そうしてからまた差し入れて、また抜く。 一度目よりは二度目の方が、ほんの少しだけ深く入った気がする。 少しずつ、少しずつ、響の身体を開いていく。 何十回目かで指を抜こうとしたときだ。 「…………っっ!!」 響が弾かれたように首を仰け反らせた。 「響……?」 「し……れい……、いま、の……?」 響は戸惑った顔を見せた。 痛みを覚えた風ではなく、むしろ、自分が今し方初めて味わったものを咀嚼できずにいるという顔だった。 ようやくに響の幼肉に隠された陰核に触れることができたのだろう。 響にとっては、自分の身体にそんな感触を受けることができる部位があることすら知らなかったのかもしれない。 幼い身体にこれから刻み込むその感触が、せめて苦痛ではなく快感として記憶に留まってくれることを、願わずにいられなかった。 「響」 触っていいか、とは聞かなかった。 響も、やめてとは言わなかった。 ただ、核を私の指の腹が擦るたびに、声を殺して身体を震わせる。 はしたない声を上げるのが恥ずかしいのだろう。 私は、もっと声を聞かせて欲しいと思っているのだが、無理強いはさせたくなかった。 やがて、繰り返していくうちに、うっすらと湿り気を帯びてきた。 それでもまだ、入れるには到底足りるものではなかった。 生娘の響を傷付けずに済むとは思えなかったが、それでも濡れているとすら言えないこんな姫洞にねじ込んだらどうなるか。 「司令……官……?」 しばし思案に耽っていた私を訝しんで、響が声を掛けてくる。 「大丈夫だ、響」 何が大丈夫なものかと自分を嘲笑いながら、響の立てた膝を両手で開かせる。 響は身についた慎みのせいか、反射的に膝を閉じようとしたが、歳は食っていてもこれでも海軍士官の私に勝てるような力は無かった。 開いた膝の間に頭を入れて、響の下の唇に口づけした。 「し……司令!?……汚い、です……そこは」 「どこが、汚いものか。こんなにも美しい……」 一度唇を離し、響の非難に対して嘘偽りのない思いを口にする。 また口づけし、割れ目の間に舌を這わせ、唾液を垂らしていく。 だが、一方的に攻め立てているつもりはなかった。 かすかに感じる塩の味と、潮の匂いにも似た響そのものの香りが、舌と鼻腔から私の頭を蕩かしていく。 熟した女とはまるで違う、瑞々しく、若々しい、響の、味と、匂いだった。 脳髄が蕩けていっているのに、身体の下の方には熱く血が巡っていることがはっきりとわかる。 ただただ、精を放ちたいという少年の頃のような欲求が、この枯れた身体に残っていたとは。 痛いほどに陽根が固くなっていた。 これではますます響の中に入れるのは難しいかも知れないと頭のどこかで思いながら、もう我慢ができなかった。 褌を解き、今まで隠していたものを響の前にさらけ出した。 「……っ!?」 怯えたのも無理はない。 元々、同期の桜たちと風呂場で比べて、大きさでそうそう劣った覚えもない。 ただでさえそうなのに、私自身、こんなにも強く猛ったのはそれこそ初めて女と交わったとき以来だろうか。 そんなものを、生娘の前に突きつけるのはやはり残酷だった。 これがお前を刺す槍だぞと、喉元に突きつけているようなものではないか。 いっそ、見せることなく響が何も分からないままに貫いてやる方がよかったのか。 「これが……殿方の……」 屈み込んで、一思いに差し入れようかとした私の動きを、差し伸べられた響のたおやかな手が留めた。 おそるおそるという仕草で、そっと私の竿に触れてきた。 その白魚のような手が、赤黒く膨らんだ怒張に触れると、それだけで何か清められたような気さえしてくる。 おずおずと顔を近付け、まじまじと見つめてくると、さすがにいささか気恥ずかしい。 と、毒気を抜かれたような私の男根に、柔らかく湿った感触が走った。 驚いたことに、響が、先端の割れた鈴口に舌を伸ばして舐めたのだ。 先ほど怯んだことを気に病んでのことだろうか。 しかし、一度ではなく、二度、三度と舐めてくる。 まるで、子猫が水を飲むかのような愛らしい仕草で。 「響……そんな汚いもの、口にしてはいけない……」 商売女に無理やり咥えさせたことは何度かあるが、こうして見下ろす光景は、そのときの記憶とはまるで違っていた。 響のような美しい少女の、睫毛を伏せたような表情と、その眼前に突きつけられた私の醜い欲望の塊とが、無様な、あるいは見事な対比に見えて、その表情を一層美しく見せていた。 「どこが、汚い……。こんなにも、逞しい」 世辞にしても先ほどの私の言葉の意趣返しにしても、冗談が過ぎると思ったが、響は、それが嘘ではないと告げるかのように、一度口から離し、赤黒い竿元まで頬ずりさえした。 そして、なんということか。 響の小さな唇がめいっぱい開かれたかと思うと、私の欲望の先端がその中に飲み込まれた。 柔らかく湿った中に怒張が浸されて、その感触になおのこと膨れあがる。 響の口の中は小さく、上あごと舌とに挟まれて窮屈なのがなおのこと心地よい。 その中で、健気にも私の幹に快感を与えようと、瑞々しい舌が前後して私の裏筋を刺激する。 先端しか飲み込めていないのが気がかりなのか、無理にでも喉の奥に押し込もうとしているのがわかる。 たどたどしい動きながら、なんとか歯を当てないように気を使っていることがわかる。 むろん、初めてなのだろう。 だが、響がそもそも陽物を咥えるということを知っていたことが驚きだった。 「こんなことを……どこで」 商売女のような技巧は無い。 しかし、小さく湿った中でその舌が動き回るだけで、たっぷりとした唾液とともに私の竿に絡みついて、えもいわれぬ稲妻めいた感触が私の下半身を浸す。 「それは……秘密」 呼吸をするのを忘れていたのか、荒い息を継ぎながら、響は少しだけ謎めかして答えた。 「誰が教えたかは……、聞いた皆が全員、水底まで持っていくという約束で、教えて貰ったから……」 意外な答えが、返ってきた。 とすると、私が想像すらしなかった誰からしい。 ふっと、笑いたくなった。 笑う資格など無いとわかっていても、笑いたかった。 あの娘たちが、私に黙って、そんなささやかでひめやかな秘密を抱いていたことが、嬉しかった。 そんな感慨に耽っていると、ふと、不思議な感触がした。 咥えたり、舐めたりとかいがいしく仕草を繰り返している響だが、それだけではないような気がしたのだ。 まるで、南方の女宿で、何人もの娘を同時に相手したときのような……畳み掛けられるような感触が、私を予想外に昂ぶらせた。 そんなことがあるはずがないのに。 物思いに没頭していたのがまずかった。 気がついたときには、込み上がってくるうねりのような衝動が止めようのないところまで来ていた。 「ひび……き、離せ……」 聞こえなかったはずはない。 響は、それを聞いて、私の竿の根本をしかと掴み、小さな口で喉まで飲み込まんばかりに深く咥えた。 女陰の奥を突く感触にも似た響の口の奥は、暖かく私を迎え入れた。 駆けあがってくる輸液の奔流がもはやどうにもならぬままに、男の衝動を鼓動とともに脈打たせる。 小さな肉の中に包まれながら、私は許されたような解放感のままに、思い切り精をぶちまけていた。 こんなにも激しく放ったのは、もう何十年ぶりか。 一度の脈動で響の口の中にどれほど放ったのか、考えることも出来ぬほどの紫電めいた快感に私は燃え尽きるほどの喜びを味わっていた。 ただ、健気にもしかと握って離すまいとしていた響が、あまりの量に耐えきれずに咳き込みながら口を離してしまい、その口から涎のように白濁が滴り落ちる前に、その響の眼前で、第二射を炸裂させてしまった。 止めようがない。 第三射、第四射と、私は響の顔といい、頭といい、ありったけの精をぶちまけてしまっていた。 誤ってではない。 私は確かに、美しいものを穢す暗い喜びに良心の呵責すら悦に入って味わっていた。 精を顔にぶちまけるなど、南方の商売娘にさえしたことはない。 そんな所業を、ずっとずっと、慈しみ、守ろうとしてきた最愛の娘に行っていた。 「響……」 何度目かの脈動で、ようやく砲弾が発射されなくなったようだった。 目の前には、白く美しい髪と顔に、私の汚濁液をありったけ浴びせられた響の姿があった。 精を放った後に訪れる特有の後悔があった。 やってしまったことへの後悔があった。 にも関わらず同時に私の中には、これだけの精を、どうして響の胎の中にぶちまけることができなかったという後悔すらも併存していた。 若い頃ならばいざしらず、一晩に二発もやった最後の記憶は何年前だろう。 響が露助に穢されて、純潔を奪われる前に、私がしなければならなかったのに、この老いた砲塔を使い物にならなくしてしまうとは、なんという不覚か。 義務感と本能とがない交ぜになった身勝手な悔恨と、今し方味わった快感の余波で動けなくなっている私の前で、響は喉に精を詰まらせて咳き込んでいた。 しかし、咽せて何度か吐き出した白い塊を、響は自分の手に受け止めていた。 ようやく息を落ち着かせてから、響は両手に載った唾液混じりの精液を、再び口に持っていき、全て舐め取ってしばらく口の中に留めてから、こくりと嚥下した。 「これが……貴方の味……」 どくり、と、それを見た私の心臓が跳ね上がった。 響の口から出たにしてはひどく淫靡な、それでいて男の自尊心をくすぐる言葉だった。 それから響は、長い髪にべっとりとまとわりついた精液を拭うどころか、まるで椿油を差すように髪にすりこんでいった。 響の美しい白い髪に私の白い汚濁が絡みつき広がっていく。 不思議な光景だった。 夜の乏しい光の中で、私の汚らわしい欲望の雫が、響の髪の上ではまるで真珠のように輝いて見えた。 その美しい姿に、熱く流れ込んで来るものを感じた。 同時に、何かに支えられるような、弄ばれるような不思議な感触が下半身を浸した。 仰角が上がる。 この老いた身体に、これだけの精力が残っていたとは思えぬゆえに、助けられているとしか思えなかった。 仔細は分からぬが、ただ為すべきことはわかっていた。 いや、義務ではなく、私がやりたいと思って為すことだ。 この娘を、抱きたいのだ。 今この私の手で、その純潔を奪いたいのだ。 私の物に、したいのだ。 せめて、この時だけ、初めての時だけは。 幸い、響の唾液と私が溢れ出した精液や先逸り液のおかげで、私の怒張は濡れそぼっている。 ろくに濡れてもいない響の中に入れるにしても、少しは滑りがよくなるかもしれない。 「響……」 そっと肩に手をやり、響の身体を夜具に横たえさせる。 初めてのときに、無理な姿勢を取らせるのははばかられた。 しかし、恐怖に震えていてもおかしくないはずの響は、色濃くなってきた闇の中から真っ直ぐに私の瞳を見つめてきていた。 「響……?」 嫌がっているのではあるまいが、何か伝えたいことがあるのかと問いかけてみた。 「私の名前だけでなく、暁と、雷と、電の名前も、呼んで……」 その願いを、どう受け止めてやればよいのか。 これから乙女の花を散らそうとする閨で、他の女の名前を呼ぶなど、地獄で焼き尽くされても償えない大罪だろう。 それなのに、響はそんなことを頼んできた。 姉と妹たちの魂を、自分の身体に載せて、私に抱かれようというのか。 艦娘たちの魂は、神社に祭られた柱のようなものではないかという説を聞いたことがある。 水底に送ってしまったあの子たちの魂が、今この場に来ているのか。 そう思い至ったとき、私の枯れそうな男根を先ほどから支えてくれているものが何なのか、私はようやく思い至った。 お前たちも、今こうして私が響を抱くことを願っているのか。 お前たちも、私に抱かれたかったのか。 その願いのために、水底から戻ってくるほどに。 「響……」 「はい……」 おそるおそる、私は呼びかけた。 「暁……」 「……はい」 響の瞳に、姉の面影が重なって見えたような気がした。 「雷……」 「はーい……」 響の口から漏れるこの声は、幻聴とは思えなかった。 「電……」 「はわ……」 思えば、この四人はこんなにも、似ていたのだ……。 せめてこの一時が、私の罪の意識が見せた幻などではなく、彼女達が少しでも救われる一助とならんことを。 「いい子だ」 彼女の、彼女たちの頬をそっと撫でる。 安心したように私の手に小首を軽く預ける彼女の表情は、四人の誰にも見えた。 その四人の娘の純潔を一度に奪うのだ。 役得というには、あまりに外道な果報者ではないか。 彼女達のお陰で、私の男根はこれ以上ないというくらいに固く張り詰めていた。 しかし、果たして本当に入るのか。 秘唇にそっと砲門をあてがうと、あまりの大きさの違いに愕然となる。 これはもう、濡れているとか滑るとかいったことでどうにかなるものではない。 入れようとすれば、彼女の身体を裂かずにいられるはずがない。 「問題……ないですから、一人前のレディとして……扱って……」 それは、誰の言葉だったのか。 私の躊躇を拭い去るには十分な言葉だった。 そうすると、果てしない肉欲が衝動として私の身体を突き動かす。 私の醜い肉塊が、翳り無く美しい割け目に突き刺さろうとするその様は、嗜虐心を呼び起こさずにはいられない光景だったのだ。 小さな下唇を掻き分けるように押し入れ、肉を膜に押しつける。 ただでさえ小さいそこに、紛れもない純潔の幕が下りている。 「いくぞ」 逃げられないように、彼女の細い腰を両手で押さえつける。 あとは、私の重みをそこに集めて押し通るのだ。 「はい……」 彼女は、そっと両手を伸ばしてきた。 まるで、自分の身体が痛みで逃げてしまうことを恐れているかのように。 掴まれ、と答える代わりに上半身を彼女に覆い被させるように倒して、彼女の両腕が私の首にしがみつけるようにしてやった。 もう、お互いに後戻りはできない。 気がつけば、間近に彼女たちの瞳があった。 そこに見えた四人分の思いを胸に刻みながら、私は最後の一押しを彼女たちの姫裂に叩き込んだ。 「…………!」 彼女たちが、言葉にならない声をあげて身体をのけぞらせた。 間違い無く、達成感があった。 そこを裂くその感触。 続いて私自身が潜り込んだところは、禁断を思わせる小さな世界だった。 そこを、勢いのままに蹂躙する。 だがそれなのに、彼女たちは、逃げなかった。 ひたすらに私にすがるようにしがみついて、私の暴虐を受け入れて、飲み込んでいった。 私は、抱いているのか抱かれているのかわからなかった。 貫いているはずが、包まれていた。 乙女たちの中には、紛れもない女というものがあった。 それも、今までに抱いたどの女たちよりも深く、果てしない世界が。 この小さな身体のどこに、私の欲望を受け止めるほどの器量があるというのか。 「……うれ……しい」 確かに、四人揃って、私はその声を聞いた。 隠しきれない涙をこぼしながら、その面影には四人全ての微笑みが集まっていて、私の胸を疼かせた。 だが同時に私を包む海原は、その幼さを忘れさせるほどにうねり、私を昂ぶらせた。 この行為は、まだ終わっていないのだ。 月と潮とに左右されるその身体の奥に、私は男として届けねばならないものがあることを確信した。 「動くぞ」 今し方純潔を失ったばかりの乙女の身体に、本来ならせめてもう少し落ち着くための時間をくれてやらねばならないだろう。 だが、彼女たちは、小さく、頷いた。 彼女たちは待つことを望んでいないと確信した。 私の欲望のたけを、彼女たちの身体は受け入れようとしてくれると信じた。 私を包み込む姫襞を、膨れあがった雁首で掻き分ける途方もない感触が、私の腰を甘く痺れさせた。 先ほど出していなければ一息で達してしまっていたほどの悦楽が私を襲った。 しかし、腰を引いても私の竿はそこから抜け出ることができなかった。 彼女たちがしがみつく腕と同じように、私の肉竿の先端を絡め取るように包んで離さなかったのだ。 ならばもう、躊躇はすまいと私は腰を前後させ始めた。 往復するごとに、そのあどけない世界は柔らかく、しかし決して緩むことなく私を奥へ奥へと誘っていく。 少しずつ少しずつ、私の身体が埋まっていく深さが増していく。 そのたびに私の竿から全身へと紫電のごとき快感が走る。 その竿は、私が先に出した精の白と、彼女たちの純潔の証たる紅とで、斑に染まっていた。 やがて、最果てに届いたという感触が、壮絶な快感の中に混じるようになった。 それでもなお彼女たちの小さい姫洞は私をさらに飲み込まずにはいられなかった。 もはや言葉もなく、獣じみた荒い吐息がお互いの声として交わされる。 彼女たちの月のものがどうとか、考えるまでもなかった。 他の誰に犯されるよりも、誰よりも先に、彼女たちの胎内を私で満たすのだ。 精通のときでさえ、男になったときでさえ、ここまで放ちたいとは思わなかっただろう。 男など所詮、自らの砲をより奥へと叩き込むための付属物なのだと思い知っていた。 全身が、痛いほどに固く張り詰めた砲身そのものになった気がした。 この悦楽をもっと味わいたいという願望すらあっけなく振り切って、本能を限りにした私の精の巣が爆発した。 砲身を駆け抜けていく私の分身たちの集団を、彼女たちの最後の聖域めがけて放った。 それはもう、一射とか二射とかいう量ではなく、私の身体にこれほどのものがよく蓄えられていたと思うほどの量を、彼女たちの胎内を文字通り満たすほどに注ぎ込んでいた。 痛みしか無かったであろう彼女たちは、そうして注ぎ込まれている間、何をされていたのかそれでもよくわかっていたのだろう。 かすかに甘く、切なげな吐息をついて、 「ああ……」 と、何かに浸るような声をあげて、私にしがみついていた腕の力さえ抜けて、夜具の上に力尽きて倒れ込んでいった。 そうしてようやく、彼女の秘唇が私の男根をようやく手放した。 濁った水音とともに、赤白く染まった私の竿が砲身を露わにし、先ほどまで純潔だった少女の姫洞は痛々しく口を開いていた。 そこから彼女の荒い呼吸に小さな身体が上下するのに合わせて、時折真紅混じりの白濁液が吐き出される。 我ながら、どれほど注ぎ込んだものかと呆れる。 にも関わらず、私の男根はまだ傾きを失っていなかった。 それどころか、あれだけ放ったというのになお、その硬さをも失っていなかった。 どういうことだ。 いくらなんでも、二度もありったけ吐き出しては、この老いつつある身体に力が残っているとも思えない。 それでは、なおこれを支えているのは、お前たちなのか。 その疑念を私が抱いたのを察したのか、それとも私の陰茎を支えながら姉妹の身体をも抱き起こしたのか、彼女は息も絶え絶えの有様の中、やっとのことで夜具の上の身体を翻して、うつ伏せに倒れ込んだ。 それから、背中越しに私を振り返り、ねだるような、すがるような目で私を見やった。 そろそろと、力の抜けた両手が、彼女自身の細い腰の下の、肉付きの薄い尻肉を掴む。 尻肉の間からは先ほど私が注ぎ込んだ白濁液が漏れて、しとどに濡れそぼっていた。 それだけで、硬さを保った私の下半身がさらに疼くほどに扇情的な眺めだった。 それなのに、その狭間を見せるように、彼女は自らの尻肉を開いて見せた。 「こち……らも」 ぞくりと、悪寒のごとき予感が私の肝を冷たくした。 大陸での露助たちの蛮行は噂に聞き及んでいる。 その中には嘘か誠か分からないが、前だけでなく後ろでも容赦無く楽しむのだという話があった。 誰だ、これから大陸へ行こうという彼女にそんな噂を聞かせた愚か者は。 いやしかし、その愚か者に感謝しなければならないだろう。 彼女は、その身体の全てを、露助に陵辱される前に、私に差し出しているのだ。 確かに、これだけ彼女の全身を味わいつくしておきながら、そこだけはまだ触れても、犯してもいなかった。 そして、その幼ささえ残る後ろ姿に、なおも欲情してしまう自分を否定できなかった。 これが本当に最後だ。 この時が終われば、用済みの砲塔など二度と立てなくなっても構わない。 その代わりに、彼女たちがこのおんぼろを立たせてくれているのだと信じるのみだ。 差し出された尻肉を両手で掴み、その真ん中にある小さな孔を指でなぞる。 暗がりの中でも、指で触れば大きさもわかろうというものだ。 先ほど無理やり貫いた女陰よりもさらに小さい。 せめて少しでも楽にしてやろうと舐めて、唾液を垂らしてやる。 汚いなどとは微塵も思わなかった。 彼女たちの身体に、一片の穢れさえもあるものか。 穢れているのは、この私と、戦場と、この後に彼女を待っている者でしかないのだ。 私は、鬼畜だ。 米英にも劣る鬼畜の所業をこの娘に刻み込んで、この後にこの娘を襲う鬼畜たちに先んじる。 そう、心に決めた。 あてがう。 まるで穴などなく、壁に突き立てるような堅い感触だった。 もはや尻を開く力もなく夜具に倒れた彼女に覆い被さり、全体重を一点に掛けて、堅くいきり立ったままの杭を思い切り押し込んだ。 「…………!!」 あまりの激痛に声も出ないのだろう、彼女が仰け反って、水中で空気を求めるかのようにもがいて喘いだ。 彼女自身が望んだこととはいえ、これは紛れもない強姦だった。 前よりもさらに小さい、本来の用途ではない小さな孔を、軋みさえあげながら、彼女の純潔の血で濡れたままの男根で刺し貫いていく。 押し込んだ砲身は、彼女の内臓を、私の男根の形にねじ曲げて掻き回している。 途方もない罪悪感と、それにも勝るくらいの薄汚い背徳感とが同時に私の脳裏を走る。 同時に、しがみつくどころか絞り切るほどに狭い穴を貫通させる中で、彼女の穴によって絞られる快感が私の脳髄を焼き尽くしそうになる。 私は、快楽のために愛しい娘を犯す外道だった。 それなのに、彼女は、激痛に涙と涎を垂らしながら、私を振り返って、微かに笑った。 そうだ、そなたを犯しているのは私だ。 これから先、誰に、どれほど陵辱されようと、そなたの身体の初めてを奪ったのは、この私だ。 この残酷な苦痛の時を、せめて心に刻んで、今よりも果てしない地獄でこの娘は生きていく。 こんな外道の、人にあらざる所業が、この娘の救いになってくれることを願いながら、私は彼女の身体の中に砲身の全てを埋め込んで、奇跡のように辛うじて身体に残されていた精の全てを彼女の内腑に解き放っていた。 ……ありがとう。お礼は、ちゃんと言うよ…… ……これでもう、大丈夫なんだから…… ……ありがとう、なのです…… そのとき、その言葉を、確かに聞いた。 私の罪悪感が聞かせた空耳などではなく、彼女の……響の口から、確かに彼女たちの声を、私は聞いた。 そして、 「ありがとう……。これで私は……、どんな世界でも、生きていける……」 最後に、響自身の声でそう私に微笑むと、彼女は気を失った。 そうして力の抜けた身体から、私は全ての役目を終えてふぬけた男根を引き抜いた。 私の役目は、終わった。 いや、まだ一つだけ残っている。 せめて、その身体を清めてやらねばならなかった。 露助たちの前に出すときに、男の精液まみれでは、引き渡しのその場で何をされるかわかったものではない。 響が目を覚ますまでに、せめて身体を洗う湯を用意してやりたかった。 とはいえ、撤収寸前の上に元々物資不足だったこの建物に、まともに動くボイラーも無い。 しかし幸い、空のドラム缶だけはそれなりにあった。 井戸水を汲んで中のきれいなドラム缶に注ぎ、空と思われたドラム缶の底で見つかった重油の残りカスを掻き集めて燃料にし、あとは簀の子代わりの木材は、建物の立て付け板からへし折って調達した。 三度も全力で精を放った身体は今にもへし折れそうであったが、今このときだけ動けばよいと己を殴って叱咤して動かした。 身体を殴って動かすことを叩き込んでくれた江田島の先輩共に、まさかこんな人生の終わりになって感謝する日が来ようとは。 東の空が少し明るくなり始めたところで、なんとか湯と着替えの準備が出来て、響の様子を見に行くと、丁度目を覚ましたところだった。 しばらく響らしくなくぼうっとしていたが、目の焦点があった途端に、その裸身に敷布を巻きつけて私の視線を遮って恥じらったことが、私には嬉しかった。 「湯を用意している。洗ってきなさい」 「いい。このままで……」 髪に絡みついたままの私の精液の雫に触れながら、響はそんなことを言う。 「私の響は、わが国の艦は、こんなにも美しいと、奴等に見せつけてやるんだ。 出陣の準備は、整えないとな」 笑いかけてやったつもりだったが、うまく笑えただろうか。 しばらく私の顔を見つめていた響は、こくりと頷くと、敷布を纏ったまま立ち上がった。 湯に入る寸前に一瞬、東の空から広がる朝日の前触れに照らされた響の身体は、生涯忘れられぬほどに美しかった。 ********************** 時が来た。 響を受け取りに来たソ連将校たちは、こちらを見下す態度こそあからさまであったが、さすがに雑兵とは違ってそれなりに節度を持っていた。 考えてみれば、バルチック艦隊を破った後でロシアことソ連の海軍力は激減しており、響は戦力として現実に貴重なものなのだろう。 その意味では、イギリスあたりに引き取られていく娘や、アメリカに奪われた娘よりも、あるいは、ましな運命になってくれるのかもしれない。 気休めかもしれないが、そう、思った。 見慣れた、そして、最後に見ることになる服装で、響は私を見上げてきた。 「司令……」 私が出世してからも、ついぞ提督とは呼ばなかったなと思い出す。 そうなる前から、私の傍に居続けているという気概があったのだろうと、こんなときになってようやく思い至った。 そんな私の朴念仁を悟ったわけでもないだろうが、響はささやくように小さく口を開く。 「愛してる。…………永久に」 不死鳥は、喩えようもなく美しい笑顔で永遠を誓った。 そうして、翼をはためかせるようにして身を翻す。 その背に幾重もの翼のように、三人の少女の姿が見えたような気がした。 それから堂々たる歩みで、自らの分身にして一心同体たる艦へと向かう。 居並ぶソ連将校たちが、思わず居住まいを正して一斉に敬礼するほどに、その後姿は余りにも美しかった。 そうして、響は振り返ることなく、日本海の向こうへと旅立っていった。 **************************** その後の人生は、私にとって蛇足のようなものだ。 だが、あえて一つ無理をして、かつての舞鶴鎮守府の近くに居を構えることにした。 生き残っていた同期の桜の首根っこを捕まえて、職権濫用をいくつもした。 佐渡や利尻の方がウラジオストクに近いことは分かっている。 しかしそこでは帰ってきたときに私がそこに居るとわかるまい。 舞鶴ならば、つてをたどれば私がいるとわかるかもしれない。 そんな、叶うはずもない望みのために、私は戦後という時代をそこで過ごすことにした。 戦後に溢れた未亡人をもらってくれと方々から頼まれたが、全て丁重に断った。 あの日以来、私は男としては役立たずになっていたから、それを理由とすれば皆引き下がってくれた。 だが、そもそも私にとっての最後の女は、あの不死鳥以外ありえないと誓いを立てたのだ。 生涯最後の交わりが最愛の女だった私は果報者に過ぎるが、その幸福を薄れさせたく無かったのだ。 何をしていたかといえば、何もしていなかっただろう。 あえていえば、漁師になった。 漁師といっても、小舟を日本海に出して日がな一日ウラジオストクの方を眺めていることが多かったが、そんな私の気配の無さが幸いしてか、よく魚は釣れた。 魚を売る市場で、アカの連中と顔が繋がったのは幸いだった。 元帝国軍人としてはあるまじきかもしれないが、それでも私は日本海の向こうの情報が欲しかったのだ。 そうして掻き集めた噂の中に、確かにその情報はあった。 ヴェールヌイ、と名付けられている。 どんな意味かと日露辞典を紐解いてみたら、信頼できる、という意味と知った。 虐げる艦に、そんな名前は付けないだろう。 彼女が、せめてその誇りを失うことなくあってくれることを願うしかなかった。 やがてヴェールヌイの情報が途切れ、再び手を尽くしたあげく、練習艦となったと聞いた。 響が、練習艦か。 次姉のくせに、長姉の暁よりも姉然としていた面影を思い出す。 さて、北の新兵どもにどんな練習をしているものか。 その頃には、私にはもはや、響が虐げられる姿を想像することができなくなっていた。 もはや戦後ではない、などと何を言うのか。 ラバウルよりも遙かに近いはずのウラジオストクが、こんなにも遠いままだというのに。 手を尽くしても、響の情報が手に入らなくなって数年が過ぎていた。 衰えた身体で日本海に船を出すことも出来なくなり、私自身、もはやただ生きているだけで、月日が虚しく過ぎていく。 そろそろ、先に逝ったものたちの後を追う日が近いだろう。 そんなある日、来客があった。 この家に来客があったことなど、新聞の勧誘を最後にここ数年記憶に無い。 扉を開けた私は、一瞬、目が眩んだかと思った。 長い黒髪を、太陽の光に梳かして風になびかせながら、ロシア風の毛皮服に身を包んだ少女がそこに立っていた。 最初は、暁が現れたのかと思った。 しかし次の瞬間、暁よりも、髪が白くなる前の響の方によく似ていることに気がついた。 だが同時に、もう遙か昔に胸を病んで若くして死んだ私の姉や妹にも似ているような気がした。 「そなた、は」 少女は、見覚えのある、生涯忘れまいと思ったあの笑顔を見せて、 「あなたが、私の……」 了
https://w.atwiki.jp/teitoku_bbs/pages/2909.html
現在構想中のモノです。 未だ脳内構成が甘い段階ですので、御見苦しい点が多数存在します。 御都合主義が多いかもしれないです。 基本一人称視点で進めていこうかと言う、野心的なものです。 視点変更時・時間移動の時に、 ――ナナリー視点―― ――数分前―― を入れていきます。 頭が足りない作者ですので、皆様の構想や推察も積極的に取り入れていきたいと思います。 また残虐な描写も使用する事があります。 アニメの視聴もだいぶ前ですので、大分変っていると思われます。 キャラ贔屓もあります。 ご注意ください。 主要資料 ルート説明 ttp //www18.atwiki.jp/teitoku_bbs/pages/2491.html ギアス機体関連 ttp //ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%89%E3%82%AE%E3%82%A2%E3%82%B9%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA%E3%81%AE%E6%A9%9F%E5%8B%95%E5%85%B5%E5%99%A8%E4%B8%80%E8%A6%A7 影響を受ける人:バージョン 亡国ルート 試作品。 仮タイトル <提督の憂鬱×コードギアス 亡国の反撃> ――ナナリー視点―― お母様が殺されてから、私の世界は暗い闇に閉ざされました。 御医者様がおっしゃるには、 「目の機能に異常は見られないですね。」 「ではなぜ、ナナリーの目は開かないのでしょうか?」 「精神的なストレス・・・おそらくトラウマが原因です。 目の前で母親が殺されたショックで、「現実を見たくない」と言う心理が働いていると思われます。」 「そう、ですか・・・」 「トラウマに関しては、時間が必要です。 長い時間をかけて心を癒し、気持ちに整理をつけなければ目を、もう一度開くことは出来ないと思われます。」 「・・・・・・わかりました。」 お兄様との会話を横で聞いていた私は、あれが夢ではなかった事に嘆きました。 大好きだったお母様が死んでしまった。 しかしその嘆きは長く続きません。お父様から日本に行くように言われたからです。 お兄様は何か言いたそうでしたけど、何も言いませんでした。 思えばこの時から、私は接触している人間の心理をある程度は読める様になっていたのかもしれません。 後から理由を知った今では呆れかえるか、便利なものを貰った程度に考えるようになったのですけども・・・ ともかく! 私とお兄様は日本に渡りました。お見送りも無い寂しい出発・・・ 機内でも私たちはあまり話しませんでした。 ただ、お兄様が「大丈夫だ。自分がついているから。」と、私を励ましてくれたのが嬉しかった。 不安な気持ちで到着し、日本で待っていたのは嶋田繁太郎様でした。 海軍の軍人さんで、元航空母艦の艦長さん。 当初は首相である枢木玄武様に預けられる予定だったのそうですが、近衛文麿様がこれに反対。 「確かに留学ならば首相宅に預け入れるのはよいでしょう。」 「ならば問題あるまい?」 「しかしながら、相はブリタニア対し、強硬的な態度でおられる。 御子息も、最近差別発言が多い手お聞きしますが?」 「ぬぐ・・・ では、どうするのだ?」 「私の考えでよろしければ・・・ 島田繁太郎中将に預けてみてはいかがでしょう。 彼は中立的な立場ですし、陛下の覚えもめでたい。 ブリタニアには知人もいると聞きます。」 (何が中立だ。お前達の派閥の人間だろうに・・・ しかし、下手に息子と喧嘩をして開戦理由となるのは避けたい。 そんなくだらない事を起こすぐらいなら、こいつらの派閥で問題を起こし、勢力をそぐほうがいいか。) 「ふむ。彼ならば、私も反論は無い。」 結果から言えばとてもよい判断で助かりました。 私たちは嶋田様に…いえ、御家族の方に暖かく迎え入れられました。 当初は警戒していたお兄様でしたけど、嶋田一繁様・・・一成さんとちょっとしたことで喧嘩してからは仲良くなり、私もいろんな機材をもらって目の不自由さを克服する訓練を解します。 学校というのには通えませんでしたけど、私塾を開いている嶋田様のご友人の好意でいろいろ教えていただきました。 それで分かったのは見方の違い。 人・文化・歴史。 これらから見られるものにより構成される民族性。 それは新鮮なもので、ブリタニアで習ったものとは大きく違うものでした。 このとき習ったことは、後々になっても忘れられない大切なもの。 後変わったことは、よくご近所の子達と遊びに出かけたことぐらいですね。 そうそう、紅月カレンさんとの出会いも有りました。 お兄様・一繁さんと共に三人で、近所の駄菓子屋に行ったときに知り合ったのです。 どれを買おうか悩んでいたそうで、赤い髪に引かれて話しかけたのがきっかけ。 最初は男の子と間違えたとか・・・(お兄様、いくらなんでも・・・) 女の子か本当かどうか、胸を揉んで確かめて、殴られて喧嘩して、二人共打ち倒してしまったのが印象に残りましたね。 今思い出しても、笑ってしまいます。 私達は四人となり、いつでも一緒でした。 半年たったある日、嶋田さんが知り合いの御医者さんに連れて行っていただきました。 そこでは、まだ珍しかった針ツボ治療を行う場所だったのです。 最初はなんだか分かりませんでしたけど、そこで診ていただいたら・・・ 「ちょっと失礼するよ。」 「あいた!」 いきなりの痛みに思わず叫び、お兄様が乱入してきて非難轟々でした。 でも“足のほうから痛み”がやってきたのです。 それについて質問すると・・・ 「やられたのは神経だけだということだ、筋肉に異常は無い。」 「じゃぁ・・・ナナリーは歩けるようになるんですね!」 「うむ。これなら訓練すれば歩けるようになるね。 ただし・・・今まで使っていない神経を酷使して、鍛えるわけだから苦痛が酷い事になる。 それでもやるかい?」 「どのくらいで歩けるようになりなりますか?」 「そうだな・・・個人差はあるが、一年以上はかかると思ってほしい。」 「そんな!」 最初は喜んでいたお兄様でしたが、苦痛を伴うと聞いて絶望したそうです。 唯一残った肉親。 数少ない拠り所。 それゆえにお兄様は過保護になっていました。 私も不自由な生活ゆえに、負担を減らそうと“お兄様が願う妹”になろうと思っていたのです。 お兄様はあきらめるように言いました。 歩けなくても別に良い。自分が足になるからと・・・ ですが私はリハビリを受け入れました。 やっぱり自分で歩けるようになりたい。 走り回りたい! なによりも、お荷物になる理由を一つでも減らしたかった・・・・・・ それからは勉強とリハビリの生活が始まりました。 リハビリは大変で、何度もくじけそうになり・・・ それでも挫けないで、歯を食いしばって耐えました。 何よりもカレンさんの応援が、一繁さんの優しさが嬉しかった。 嶋田御夫婦もなるべく助け、しかし“自分で出来る様になった事”に関しては自分でやるよう厳しくしていただきました。 お兄様も私の姿を見て、ちやほやするだけでは駄目だと悟って勉学に励みだしたそうです。 ほとんど車椅子生活だったけど、日本から離れる前に10mもの距離を自力で歩けるようになりました。 まだ足が痺れる様に痛かったけど、あれも忘れられない思い出。 カレンさんのお母様が作ってくれた、お赤飯の御握りがおいしく感じられた。 あ、そう言えば。私達のことはユフィ御姉様に御手紙で報告し続けていたんでしたっけ。 嶋田様のご提案でしたけど、意外と宮殿内の事が書かれていたりするので馬鹿に出来ません。 今にして思えば、私たちがブリタニアとの繋がりを途切れさせないものだったのでしょう。 それでも子供心としては、かけがえの無い遣り取りでした。 ですが、それも途絶えます。 皇暦2010年8月10日 ブリタニア宣戦布告 寝耳に水の出来事。 言われ無き宣戦布告を受けた日本、私達はすぐさま移動を開始しました。 最初は何がなんだかわからなかった。 でも話を聞くうちに血の気が引いていくのが分かります。 お父様は、私たちを切り捨てた。 戦争の理由にされたことを理解した私達は、見せしめに殺されるものだとばかり思っていたのです。 その為の移動だと。 あの暖かな場所から離れ、殺されてしまうのだと。 「俺達を、どうするんだ?」 「どうもしない。おそらく日本は・・・いや、絶対に日本はブリタニアに勝てん。」 お兄様の問いに嶋田様は、今まで感じたことの無い声で返答しました。 冷たくて、とっても普段の温厚そうな人物とはかけ離れた、軍人としての嶋田繁太郎がそこにいたのです。 「勝てないならどうするんだ?」 「時間稼ぎをしつつ、脱出だな。行き先は中華連邦になる。 君達には付いて来てもらう。悪いとは思う・・・ しかし、君らを帰すことは出来ない。理由は分かるかね?」 「戦争の理由が、俺とナナリーが死んだことだから・・・ですね?」 「その通りだ。敵はブリタニアだけではないが。」 後に知ったのですが、この時枢木ゲンブ首相から暗殺部隊が送り込まれていたそうです。 私達は間一髪のところでかわし、脱出できたのです。 遅滞戦闘を繰り返し、民間人の被害を最小限にとどめつつ、殆どの戦力を脱出させることに成功した嶋田様が所属する派閥の方々・・・ 「近衛さん。後はお任せします。」 「ああ。戦争を回避することは出来なかったのが痛恨の極みだな・・・」 「仕方がありません。生まれた時期も、後ろ盾も無いこの状況下でここまで中枢に食い込めただけでも儲け物でしょう。」 「辻さんの嫌味を聞かなくて言いというのは、少し嬉しいかな?」 「そんなこと言わないでくださいよ、嶋田さん。そちらも大変なのですから。」 「しかし・・・四聖剣と藤堂鏡志朗を連れて行ってもよろしいので?」 「この世界では、厳島の奇跡はおきませんでした。一介の軍人に出来ることは無いでしょう。 むしろ連れて行ってもらい、訓練してほしいとも思っています。」 「四聖剣はバラバラにした方がいいな。」 「杉山さんの意見に賛成です。片瀬帯刀(かたせ たてわき)、草壁徐水(くさかべ じょすい)両名が捕まるとは思ってみませんでしたが。 まあ、邪魔にならなくていいと思うようにしよう。」 「しかし澤崎敦(さわさき あつし)が使える人物だとは思わなかったな。」 「意外と交渉も出来るし。現実主義というのも驚いたな。 宦官・・・高亥との繋がりを持っていたというのも切り札になり得るかもしれん」 「中華に関わりすぎるのはごめんだがな・・・」 海を渡り、カレンさん御家族との別れをも言えず。私達は海を渡りました。 この先待っているのは何か、この時の私達には知りようもありません。 ただこの胸に去来していたのは不安と、ブリタニアに対する怒りでした。 そして何よりも。お父様に対する怒りが最も強かった。 これでもし「世界を平和にする為」とかぬかしたら、あの頭をハゲに剃って、全裸にしてブリタニア中を引き回してやります。 「うっふふふふふ・・・・・・」 「か、一繁。ナナリーが恐ろしい笑顔に・・・」 「最初の頃の可愛いあの子はどこに・・・」 嫌ですわ。 お二人とも酷い言い様ですね。 お兄様もお忘れですけど、私・・・結構お転婆なのですよ? 以上導入部分でした。 まだ中編ネタの方が終わっていないので、続編はありません。 原作と違うのは、 枢木スザクとは幼馴染ではない。 玄武を殺したのはスザクだが、共に脱出している。(変更有) 紅月カレンが幼馴染になり、ナオトとも知り合いである。(脱出させるかは未定。) 扇グループになるメンバー数名とも知り合いである。(誰にするかは決めていない) 厳島の奇跡が起きていない。 対KMF戦闘を想定した防御陣地なので、ブリタニアの損害が原作よりも30%増し。(変更有) この時点でグラスゴーを何体か確保している。 日本解放戦線の中枢を、夢幻会が掌握している。 ルルーシュとナナリーが日本にいない。(アシュフォードとは接触させる予定) ナナリーの足が動けるくらいに回復。(原作開始までには通常歩行・走行が可能になる予定) くらいですね。後は亡国ルートを参考にしています。
https://w.atwiki.jp/teitoku_bbs/pages/2365.html
490 :Monolith兵:2014/02/05(水) 00 52 13 ※艦娘のキャラが(憂鬱世界準拠の為)崩壊している可能性があります。ご注意ください。 ネタSS「辻正信が鎮守府に着任したようです」 その2 辻政信が艦これ世界の鎮守府に提督として着任してから約半年、彼は次々と艦娘を建造・発見しては最適と思われるローテンションを組ませて彼女たちに経験を積ませて艦隊の増強に余念が無かった。その甲斐あってか、沖ノ鳥海域の攻略を成功していた。 そしてキス島撤退作戦に従事していたある日、出撃していた艦隊が帰還して辻に報告を行っていた時にその事件は起きた。 「第1艦隊ただいま帰還しました。」 「ご苦労様でした。負傷した艦もいるようですので、入渠してください。報告書はそれ以降でかまいませんから。」 辻は帰還した艦娘たちに労いの言葉をかけた。最初こそ辻正信が提督という事に反発をする艦娘もいたが、辻が艦娘を大事にして、資源運用を上手にこなして順調に戦力と補給の増強をこなしている姿を見て、殆どの艦娘は辻の事を見直していた。赤貧に喘いだ日々は、そして戦後の大軍縮は日本の為に必要な事であり、自分たちは退役したり解体されたりしたが、確かに日本の発展の為に活躍できたのだという自信を取り戻していた。 「今回の出撃ですが、新たな艦娘を保護しました。」 「ほう。それは嬉しいですね。」 辻は心の中で、ニーソックスの似合う艦娘だと嬉しいですね、と心の中で呟いた。そんな辻の心の声を知ってか知らずか、第1艦隊旗艦の阿賀野は新たな艦娘を紹介した。 「阿賀野型軽巡洋艦酒匂です・・・って!辻政信ぅ!?」 「・・・その反応ももう慣れましたよ・・・。」 流石に毎回のように魔王やら辻ーんやらと驚かれていたら慣れるというものだ。 「あっあっ・・・、な、何でもしますから、私の姉妹たちはもうう、売らないで下さい。解体しないで下さい。お願いします!」 酒匂は衆目の中土下座をして懇願した。流石の辻もこの反応は想定外で顎が外れんばかりに口を開いてしまった。 「え、ええと、どういうことですか・・・?」 そんな疑問を口にした瞬間、辻は前世で生き残った阿賀野型をイギリスに売り払ったりした事を思い出した。姉妹の殆どが沈んだ上に日本を裏切ったイギリスに売られたという経歴は、戦後海上保安庁で巡視船として活躍した酒匂にとって辻に複雑な感情を持たせるには十分であった。 その予想は間違っていないようだった。 「酒匂ちゃん、大丈夫だよー。辻提督はそこまで非道じゃないよー。」 そこで助け舟を出したのは、酒匂の姉であり阿賀野型軽巡のネームシップである阿賀野だった。彼女は第二次世界大戦中に戦没したために妹たちが戦後どのような運命にあったかは直接は知らなかったが、それでも辻の事は責められなかった。 なにより、裏切り者のイギリスに売られたとしても、結果としてそれは日本の為になったのだ。 「お、お姉ちゃん・・・?」 酒匂は信じられないようなものを見たかのようにうろたえていた。 「だ、だったら、売られもしないし、解体もされないし、身包みはがされたりもしないの?」 「・・・大丈夫よ、多分。」 阿賀野は妹の身包みはがされるという発言に軽く辻を睨んだが、再び妹を宥めにかかった。それに安心したのか、酒匂は見事な敬礼をして姉と共に執務室から出て行った。これで、彼女とも解り合うことは出来るだろう。 「・・・私って、そんなに非道に見えますか?」 毎回見られる光景とはいえ、流石の辻も堪えたのか、傍らに立つ大鳳に尋ねた。ちなみに今日の秘書艦は先程出て行った阿賀野だったのだが、妹に会えて嬉しい気持ちもわかるので、辻は今回の職務放棄は不問にする事にしようと思った。ただ、その代わりにこれからは妹ともども黒ニーソを履かせようと心に決めた。 「ご自分の胸に聞かれてはいかがでしょうか?」 辻の大盤振る舞いによって建造された大鳳といっても、同僚達の心の内を考えれば無条件で辻を擁護する事はできなかった。それほど、海軍内での辻に対する評価は厳しいものだったのだ。 「何で私がこんな目に・・・。トホホ・・。」 辻は胃の辺りを摩りながら弱音を吐いた。大鳳はそんな辻を尻目に書類仕事を手伝うのであった。 491 :Monolith兵:2014/02/05(水) 00 52 54 おまけ「今日の嶋田鎮守府」 艦これ世界に来た嶋田は、乗組み経験のある艦娘とそうで無い艦娘との間に挟まれて胃を痛める日々を送っていた。 だが、大和が嶋田鎮守府にやってきてからはそれも緩和されつつあった。彼女はそこにあるだけで凄まじい威圧感を放ってはいたが、寡黙で心優しかった。故に、嶋田の事を考えて二派の間に立って、その仲立ちをしてくれるようになっていた。その結果、確かにしこりこそ残っているものの、以前とは比べ物にならないほど意に優しい鎮守府に生まれ変わっていたのだ。 嶋田はそんな大和に感謝し、色々と便宜を図っていたのだったがそれが彼女の策略とは気がついていなかった。彼女もまた、嶋田を慕う一人なのである。 それはともかく、そんな嶋田鎮守府にあって嶋田の受けるストレスはやはり大きなものだった。いくら大和がストレス源を小さくしたといっても、通常業務だけでも激務なのだ。もっとも、それも大和を始めとする艦娘たちが提督業務の補佐を買ってくれている為に、徐々に小さなことになっていた。 それゆえに、嶋田は日に一度は散歩をする事ができるほどになっていた。 これは、そんなある日の出来事である。 「今日もいい天気だな。」 嶋田は昼食後の腹ごなしに鎮守府の周りを軽く散歩をしていた。ここ数日晴天が続き、出撃や遠征も予定通りこなせていた。 軍港では妖精さんたちが艦娘の本体である艦体を駆け巡って整備を行い、一部の艦娘は日光浴をしていた。 その時、嶋田は声を掛けられた。 「ヘーイ、提督ぅ。こんな所で会うとは奇遇ネー。」 「金剛か。どうしたんだ、その荷物は?」 嶋田に声をかけたのは金剛だった。彼女はこの鎮守府で数少ない常識派であり、大和が来る以前の嶋田争奪戦には参加せずに愚痴を聞いてくれたりしてくれていた。もっとも、流石に派閥抗争の仲立ちなどできる力は無かったが、それでも嶋田は金剛の存在をありがたく思っていた。争奪戦に参加しないというだけでこの鎮守府ではとても貴重な存在なのだ。 「ワタシは、ペットたちの世話しにいくのデス。良かったら提督もどうデスカ?」 「それはいいな。」 金剛がペットを飼っているというのは始めて聞いたが、動物と触れ合って癒されようと思い金剛に付き合うことにした。暫く歩き、鎮守府の外れに柵があり、そこに金剛はペットを飼っていた。 「ペットって・・・これが?」 「そうデース。可愛いでショウ?」 「へー、確かにかわいいな。」 嶋田と金剛の視線の先には柵の中にいる2頭の白くてメェーと鳴く動物、ヤギがいた。そう、金剛のペットとはヤギだったのだ。 「この2頭は番で、その内数が増えるヨ。そうしたらミルクも取れるカラ、提督におすそ分けも出切るネー。」 「あ、ああ。」 金剛の言葉に嶋田は生返事で答えた。金剛はそんな嶋田に気がつかず、柵の中に入ってヤギの世話を始めた。 そんな金剛を見ながら、嶋田は先程考えてしまった事を必死に頭から追い出そうと躍起になっていた。 (いくら金剛がイギリス生まれだからといって、ヤギなんて・・・。いやいや、これはただの偶然だ。) 「提督もこっちに来たらイイヨ。実際に肌を合わせたほうがこの子達もも喜ぶネー。って、もう駄目デショ。」 金剛が喋っていると、ヤギがじゃれ付き始めた。更には、スカートを口で引っ張る始末だ。 (は、肌を合わせるだと!やっぱり金剛は・・・。) それを見て嶋田は更に疑惑を深めていった。 「え、ええと、金剛は何でヤギを飼い始めたんだ?」 「え?それはその・・・。(提督の癒しになったらイイなぁトカ、一緒に世話をしたいなぁトカ言うのは恥ずかしいデース。)」 急にもじもじし始めた金剛を見て嶋田は疑惑を確信に変えていた。やはり、金剛はそういう目的でヤギを飼っていたのか!? これまで数少ない常識人として見ていただけに、この出来事は嶋田にとって衝撃だった。 (例え、生粋のイギリス人では無いとしても変態紳士の国の習慣は染み付いてしまうというのか!?) 「提督?」 「あ・・・、すまん!お前の趣味は否定しないが、俺には無理だ!?」 気付けば嶋田は一歩後ずさっていた。それに気付いた金剛は声をかけるが、嶋田はそう言ってその場を走り去っていった。金剛はその後姿を見て何があったのか解らずただ呆然と立ち尽くすだけだった。 それ以降、嶋田は露骨に金剛を避けるようになった。それは、金剛が泣き付いた大和が嶋田と話し合いの席を作るまで続くのであった。 おわり 492 :Monolith兵:2014/02/05(水) 01 02 35 辻ーんは海軍からかなり嫌われていると思います。そして艦娘も。 ただ、流石に艦娘たちも日本の境遇を考えると、大規模な軍縮を進めた辻ーんの行いは理解しているので、反発はしても反抗はしないと思います。 旧式艦や戦時急造艦は、戦後装備を身包みはがされて売り飛ばされるか退役させられたので、複雑な感情を持っているのではと思います。でも、初対面だとこういうこともあるよね。 そして、嶋田さんが金剛の事を誤解していくお話。イギリス海軍が日本海軍に軍艦引き渡す時に、ヤギもついでに乗っけていたという話は有名ですが、それが巡洋戦艦金剛でもあったらしいという話があります。 というわけで、金剛にはヤギを飼ってもらいました。別にそれ用じゃないよ?ただのペットだよ?癒されたいだけなんだよ? 後、艦娘はアルペジオ方式で行きました。艦娘の本体の艦があり、艦娘はそれのインターフェースという位置づけです。艦娘自体が戦闘するのは色々嫌だし。
https://w.atwiki.jp/teitoku_bbs/pages/3138.html
413 :影響を受ける人:2014/12/28(日) 21 50 35 この作品にはTS要素が含まれています。 オリキャラ化が含まれています。と言うかオリキャラが出てきます。 最低系である最強要素があります。 それでも良い、という方のお読みください。 提督憂鬱×ストパン+零 第四十二話 ―墜ちる空Ⅳ― 「でも、なんで話す気になったんですか?」 グシャグシャになった髪の毛を直しつつ、美緒は隣でタバコを吸う先輩に問いかけた。 「そうだな・・・・・・これからの任務について聞いたんだろ?」 「はい・・・・・・・・・」 問いかけたのに問い返された。 それはともかくとして、自分自身でも「見方を見捨てても帰還しろ」と言う命令は、どうしても納得できないでいる。 今まで肩を並べて戦ってきた味方を、そんなに軽々しく見捨てられない。 苦悩する美緒の心に賛同するように、ミチルも煙をゆっくり吐きながら頷いた。 「私も納得していない。」 「そうなんですか?」 ちょっと意外だった。 以前から「隊長陣の指示にしたがえ」と、口酸っぱく言っていた本人とは思えない。 そんな驚きを感じ取ったのか苦笑する。 「流石に私でも、今回の命令は思う所があった。 隊長に私が指名された事。 学兵のみで編成された事。 理不尽な命令もだな・・・ 納得できないから食って掛かったが、総隊長とけんかしてしまったよ。」 「ええ!? だ、大丈夫なんですか?!」 朗らかに苦笑するミチルに、呆れつつも驚く。 「結局言い負かされて、ここで気持ちを落ち着けていたのさ。」 豪胆な行動を聞いて、今まで抱いていたイメージが吹き飛んでしまった。 よくよく考えれば仕方がないのかもしれない。 話す事と言えば作戦の事や整備の事ばかり、プライベートな話なんて殆どしていないのだ。 「それで、最初に戻るが・・・いいか?」 「あっはい。」 「まぁ。教訓程度に聞いてくれればいい。」 そう言って短くなったタバコを消し、新しく一本取り出して火をつけ、一息吸った。 ――― ―――――― ――――――――― 私は最初の学兵徴集で大陸の戦場に出た。 お前達よりかは、それなりに長い期間で訓練してな。 元々私は海軍に行きたかった丁度良かった。少しでも軍の空気になれれば・・・ 今思えば、浅はかな考えだ。 戦場はそんなに甘い物じゃなかったよ。 だけど私が配属していた部隊、飯井オトメさんは優秀な人だった。 かなり豪快な人だったけど、面倒見が良くて、皆から慕われていたよ。 他の隊員も良い人ばかりだった。 一緒に配属された学兵とは最初はギクシャクしていたけれど、仲を取り持ってくれたりもした。 家族・・・そんな部隊だった。 戦場の辛さも。苦しい時も。そんな隊長がいたから乗り越えられた。 私も技量を高められた。 幸い私は同期に比べると腕前が良い方だった。 飯井隊長にも「筋が良い」って褒めたれたなぁ・・・ だから・・・私は驕っていたのかもしれない。 414 :影響を受ける人:2014/12/28(日) 21 51 20 いや。事実、驕っていたんだろうな。 戦場に出れば連戦連勝だった私達、皆が自分達を見れば士気を上げた。 自分達は負けない。 絶対に落とされない。 そんな風に思っていたんだろうと思う。根拠なんかないのにな・・・ あの日は曇りだった。 その日も敵の攻撃が激しくて、それでも皆何時もの通り戦っていた。 だけど・・・ 『くそ! サッサと落ちろ!!』 『早良、一体にかまい過ぎるな!』 『でも、隊長。』 『一体くらい放っておいてもいい。深入りだけはするな。』 『わかりました・・・』 私は初めて隊長に反感を覚えたんだ。 もう少しで落とせたのに・・・って。 『どうしたのよ。なんか不機嫌みたいだけど?』 『なんでも無い・・・ それより銃をくれ。』 『そう。でも銃は今、簡易的な整備中で『これでいい』あ、ちょっと!』 よく確認もせずに、銃を奪い取るように持って行って。 『よし、いける!』 『早良、まt〔Giiiiiii!!〕ちっ、まとわりつくな! 早良ァァァ!』 私は深入りして敵に囲まれた。 まだ“スズメバチ”が確認されていない時期。敵の殆どは“クマバチ”。 囲まれたのは驚いたけど、最初までは順調に撃墜出来て良かった。 だけど、連戦の影響が徐々に出てきていた。 弾薬が尽きつつあった。更に言えば銃器も、もう耐久力が無くなりつつあって。 そして私の銃は・・・壊れた。 一発も撃てなくなった銃。 弾薬が尽きつつあった事に焦っていた私は、その事実に混乱状態になっていた。 ストライカーに被弾して、出力が低下したのも拍車をかけた。 情けない話だけど、本当に何も考えられなかったんだ。 自分を殺しにかかってくる敵から必死に逃げた。 接近戦の為の刀もあったけど、振るうなんて余裕もなかった。 何時しか防御用の術符も尽きて、私は死にたくない一心で逃げ続けていた。 そんな時だった、隊長が助けに来てくれたのは。 『早良、無事か!?』 『た、隊長・・・』 『無事なら良い。とにかく切り抜けるぞ!』 何とか助かったけど状況は変わらなかった。 自分に引っ張られるように、敵陣深く進んでいたんだ。 味方も交代の為にいないというタイミング、敵がいないから周りのネウロイが群がってきていて・・・最悪な状況が出来ていた。 囲みを突破しようとみんな必死になって攻撃したよ。 『早良、銃をやるから刀を貸せ。』 『それじゃ、隊長が。』 『かまわん。お前達を・・・学兵を何としてもこんな場所から連れ帰ってみせる!』 私も隊長から銃を手渡されて反撃した。 隊長達が先頭になって斬り込んで、私達学兵が銃撃で押し広げる。 でも、敵の囲いは厚過ぎた。 死にもの狂いに攻撃したよ。それでも敵が減った気がしなかった。 突破できた時には、隊長と副隊長しかいなくて、学兵も一人死んだ。 『逃げろ。逃げるんだ!』 『ハァ…ハァ…『アユ、回避しろぉ!』え、ガフゥ!?』 『いやぁぁぁぁ!』 『・・・・・・くっ!』 415 :影響を受ける人:2014/12/28(日) 21 51 50 更にひとり仲間が腹を打ち抜かれて落とされて、隊長と副隊長は向かってきた敵に向き直った。 最初はわからなかった。なんでそんな事をするのかが。 『良いか、振り返らず逃げるんだぞ。』 『隊長達は、どうするんですか!?』 『時間を稼ぐ。副隊長行くぞ!!』 『隊長! たいちょぉぉぉぉぉぉ!!!』 隊長隊はもうその時に覚悟を決めていたんだと思う。 自分達を逃がすために囮になる事を・・・ 私は隊長達を追いかけようと思った。でも仲間がそれをさせてくれなかった。 いくら出力を高めようとしても、壊れかけのストライカーは聞き届けてはくれない。 隊長達は大部分を引き留めたけど、それでもあぶれたのが私達に襲い掛かってきた。 もう銃に弾丸は無くて、低空飛行で回避行動するしかなかった。 魔力も消耗していて、足手まといだった私は・・・仲間に庇われて墜落。 その後の事は良く覚えていない。 ただわかっているのは、墜落した私達にネウロイは興味を抱かなかった事。 隊長達は戦死した事。 遺体は回収できなかった事。 御咎めがほとんどなかった事。 私が・・・私の行動で部隊が壊滅した事だけだった。 ――――――――― ―――――― ――― 「このタバコは隊長がよく吸っていた銘柄で、あの人も縁起担ぎに吸っていたんだ。」 「・・・・・・そうだったんですか。」 北郷章香から大まかには聞いていた。 しかし、本人から聞くのとは重さが違う。 話している間に吸い終わったタバコを灰皿に捨てて、俯く美緒の横でミチルは空を見上げた。 「まぁ・・・言いたい事は「人の話を引け」「よく確認をしろ」「勝手な行動をするな」だな。 軍隊には必須で、当たり前の行動原理だ。」 「はい。」 「隊長としては頼りないかもしれないが、私の指示には従ってくれ。 それが理不尽であると思うならば、私を恨むと言い。」 「え?」 困惑して顔を上げてミチルを見ると、彼女は立ち上がっていた。 「お前はかなり気にするみたいだから、そう言う事があれば私に責任を押し付ければいい。」 「そ、そんなこと出来ません!」 慌てて椅子から離れて去ろうとするミチルの背中を見る。 少しだけ振り返ったミチルは小さく笑っていて、 「お前はそれをしてもいいんだ。」 そう言って立ち去った。 美緒はどうしていいかわからず・・・その場にたたずんでいるだけ・・・ 以上です。 今回初めて一人称を使ってみた。 意外と難しい・・・ 「た」終りがおおくて、どうしようかと・・・ 大晦日はどうしようか。ネタが浮かばない(汗