約 19,734 件
https://w.atwiki.jp/teitoku_bbs/pages/3107.html
839 :影響を受ける人:2014/09/28(日) 22 00 22 この作品にはTS要素が含まれています。 オリキャラ化が含まれています。と言うかオリキャラが出てきます。 最低系である最強要素があります。 それでも良い、という方のお読みください。 提督憂鬱×ストパン+零 第二十九話 ―大人達の集まり― ――カコン・・・・・・ 東京の某所。 料亭が自慢する日本庭園が見える場所で、古くから日本を支える家系が三人集まっていた。 海軍軍令部総長 九鬼嘉明(くき よしあき)大将 陸軍参謀総長 柴田勝義(しばた かつよし)大将 前総理大臣 織田信平(おだ のぶひら) いずれもこの国において、発言力のある人物たちである。 三人のうちの一人、最も年齢が高い信平が御猪口をテーブルに勢い良く叩きつける。 「くそ! 秀文め・・・ 自分の意見も真っ当に言えんのか?」 現政権を担っている豊臣秀文(とよとみ ひでふみ)は幼いころから知っている。 押しが弱い所があるのは承知していたが、こうも状況に流されているというのを見ると面白くない。 それを見た三歳年下の勝義がたしなめる。 「信平殿、落ち着いて。」 「ぬぅぅぅ・・・」 「気持ちはわからんでも無いですな。 いくら有効手段であるとはいえ、ウィッチ確保の為に学徒徴兵は・・・」 「それもあるがな。最近は九曜殿も動いているらしいではないか?」 信平が苦虫を潰したように言うと、二人は目線のみを合わせる。 「そうですな。」 「ですが、あくまで“お願い”ですぞ?」 九曜葛葉の動きはかなり活発だ。 一応派閥の上層に働きかけているだけとはいえ、影響力はこの場にいる者達よりもある。 「ふん! あの方が現政権に良い思いをしていないのはワシにもわかる。 しかしだな。今まで干渉を控えていたのに、何で今になってこんなに動くのだ?!」 信平はそう言うと、お酒を御猪口に注ぐことすらやめて徳利から直接飲む。 天皇家に仕え、この国の発展を影ながらに補助してきた九曜葛葉。 しかし、決して政権の方針に逆らうようなことや、捻じ曲げる事はしてこなかった。 常に一歩も二歩も下がった位置での助言に終始している。 それが現代において、この戦時中において積極的に動いている。 「野心が無いというのはわかる。 有ったならば今頃この国は、とうの昔に傀儡となっているはずだからな。」 暴言ともとれる発言に、嘉明は目を剥いた。 「信平殿!」 思わず責める様に怒鳴ったが、目の前の男は全く動揺しない。 「お主らにも接触していたのだろう? ワシの所にもきたわい。断ったが・・・」 「断ったのですか?」 「そうよ。勝義よ・・・お主はどうなのだ?」 「自分は・・・ 提案された案件は、元々考えていた事だったのでそのまま了承しました。 新興企業の倉崎重工は新しすぎて、信用できかねましたが・・・」 「九鬼も同じであろう。」 「自分は間違いを正す機会と、戦場で奮戦する子女の手助けが出来ればと思ってです。」 840 :影響を受ける人:2014/09/28(日) 22 00 52 胸を張って答える二人に、信平は冷たい視線を向けるのみ。 「だが、結局は九曜殿のいう事を聞いたのだろう?」 「「・・・・・・」」 つまらなさそうに酒を飲む。 「さっきも言ったがな。あの方に野心は無い、それはわかっている。 邪まな感情もないとな。 しかし・・・だからこそワシは危惧している。 あの方が、どこかしらの組織に肩入れしているという未確認情報。 この情報が無ければ、ワシはここまであの方を否定はせんかった。 政治において何が必要かわかるか? 常に最善を示し、大を生かし、小を切り捨てる覚悟。 己の手を血で濡らす事に躊躇しないだけの器。 国の為に、世界を見ながらにして判断できる能力。 己を捨てる事が出来る精神力・・・ 挙げればきりがないが、あの方にはそれらが全てそろっている。 信長公は言ったそうだ・・・ 『九曜葛葉が政(まつりごと)に関して万が一動いた時、我が家系は反対に回れ。 あ奴はこの国のため動くだろう。しかしだ、なんでも「はい」と言ってはいかんのだ。 一人くらい反対に回り、押さえつけなければならぬ。』 とな・・・」 一気に語り終え、渇いたのどに御酒を流し込む信平を見詰める。 九曜は確かにこの国の守護神として活動してきた。 その為、自分達は「この方に間違いはない」と勝手に判断していたのかもしれない。 しかしそれでも、自分で決断したのだからその責任は自分達が持つ。 それに・・・ 「九曜殿・・・・・・」 「寝てしまいましたな・・・」 「仕方がないでしょう。秀文に対して相当イラついていたようですし。」 「最初はその愚痴ばかりだったな。」 「左様。っと、ここで寝かせるわけにもいかんな。」 二人は料亭の従業員を呼ぶと、隣の部屋に布団を敷かせてもらった。 そしてそのまま信平を寝かせ、二人だけで飲み直した。 勝義が嘉明の御猪口に御酒を入れながら口を開いた。 「やれやれ、幼馴染三人での酒宴だったというのに・・・」 「ははは・・・ ああ、ストライカー装備はどうだ?」 「何とかなっているな。陸戦ウィッチは魔力さえ使えばある程度の重量を無視できる。 だから大の男が使う武器も扱えるのが良い。」 「ウチとしても共通武装が使えるから安上がりだ。 特にあの機関銃。倉崎は良い物作るな。」 「墳進砲はこっちにも回して貰えんか? あれがあると中型相手に楽なんだが。」 「【アホウドリ】を仕留めるのにしか使っていないから、回せられると思う。」 「ありがたい。」 「・・・しかし信平殿の危惧もわかる。」 「倉崎重工・・・あ奴らのアイディアには驚かされるな。これも九曜殿の肩入れだろうか?」 「わからん・・・ とりあえず、あの組織はバランス感覚に優れているというのはわかっている。」 「ああ、まさか海軍将校まで取り込んだ組織だとは知らなかったぞ。」 「うむ・・・」 二人は酒を飲みほして溜息を吐く。 「今、大陸は小康状態だ。この間に備蓄を済ませておかんと・・・」 「そうだな。そう言えば例の交流会。誰を選抜するのだ?」 「それはお楽しみだ。田中ウメ大佐に任せているから問題ないだろう。 お前だって、水瀬大佐に任せているんだろう?」 「うぐ・・・」 酒宴は夜遅くまで続いた・・・ ――――― 841 :影響を受ける人:2014/09/28(日) 22 01 27 皇居の某所。 天皇陛下の書斎で、九曜葛葉が仁王立ちしていた。 部屋の主は椅子に座っているが、目を潤ませている。 「駄目か?」 「駄目です。」 即答で断じられた。 「せめて、艦上から見学してもいいではないのか?」 「駄目です。」 回答は同じだ。 「ぐぬぅ・・・」 「唸っても駄目です。」 ションボリと肩を落とした陛下の前で、溜息を軽く吐く。 「陛下・・・確かに今大陸は小康状態です。 だからと言って、大陸おこなう交流会に出席するなど、許可できかねます。 ネウロイがどのように行動するかわからない以上、貴方様の身の安全を守るのがどれだけ大変か。 私も共に参っても良いですが。最悪の場合は貴方様のみを抱えて脱出せねばなりません。」 「そうか・・・」 目の前で気落ちする陛下を見ると、ちょっとだけ罪悪感が浮かぶ。 しかしこれは重要な事だ。 この国の象徴たる天皇がもし死んでしまったら・・・その影響は計り知れない。 それゆえに反対するのだ。 「わかって頂いて、ありがとうございます。」 「・・・わが娘は行くのになぁ。」 「分体を12体護衛に着けます。それで問題ないかと・・・」 未練がましく呟く陛下に、さすがの九曜も悪い気がしたのでお願いを一つだけ聞く事にした。 「おお! ほんとうか!!」 「大陸に行く事以外ならば・・・」 「ならば参加する者達すべてに、そなたの御菓子をやって欲しい!」 「ゑっ!」 「無論、朕が試食して合格した物だけだ。」 お願いは単純な・・・ しかし参加者全員となると、その量は半端じゃない。 九曜は何度目かの後悔をするのであった。 以上です。 夢幻会、たまには出さなくてもいいよね! オジサンたちの御話でそんなに面白くないかもしれない。 次回は交流会に入るぜ!
https://w.atwiki.jp/poke_ss/pages/1912.html
20ページ目 ――1220 女「さて、艤装もしっかり適合したみたいだし、お披露目といきましょう」 潮「どんな人なんでしょう……?」 女「会ってみてからのお楽しみよ」 女「ほら、出てらっしゃい」 北上「あたしは軽巡“北上”。まーよろしく」 漣「ダウナー系ktkr!」 曙「は……なんともやる気なさげ……」 潮「そ、そういうこと言うのは駄目だよぉ……」 那珂「那珂ちゃんスマイル!」 北上「……提督」 女「はいはい」 北上「……左遷?」 女「よくぞ見抜いた」 北上「キャラが濃いですねー」 女「まぁね。個性豊か、って言ってもらいたいかな」 北上「同じじゃんか」 女「ニュアンスよ、ニュアンス」 北上「うへー」 女「貴方も十分キャラが濃いと思うんだけど」 北上「マイペースが一番ですよ、マイペースが」 北上「あ、味噌汁は薄い」 女「分かる」 次へ トップへ
https://w.atwiki.jp/teitoku_bbs/pages/3117.html
915 :影響を受ける人:2014/12/07(日) 22 25 08 この作品にはTS要素が含まれています。 オリキャラ化が含まれています。と言うかオリキャラが出てきます。 最低系である最強要素があります。 それでも良い、という方のお読みください。 提督憂鬱×ストパン+零 第三十九話 ―墜ちる空― 交流会から二日後、北郷隊と狐狸部隊は本拠地を、別の場所に移し終えたばかりだった。 これは元から考えられた事である。防衛戦が下がると、自分達も下がるのは当然だ。 教えられていた美緒達もすぐに新しい基地に移動していく。 整備員や機材は交流会の間に運び込んでおり、あとは自分達の荷物だけだった。 新しい基地に来て、ちょっとウキウキしながら荷物を運び入れる。 ある程度荷物を開き終わると基地を回ってみることにし、そこでちょっとした驚きがあった。 同時期に志願した何人の学兵と再会できたのだ。 無事な姿を見て喜んだ彼女等は、一室に他の学兵も集め、女の子らしい話に花を咲かせる。。 自分達の部隊長の話。 初実戦の緊張。 他部隊の人達。 日常とは違う戦場の空気。 失敗と成功。 明るい話もあれば暗い話もある。 自分を庇って負傷し、後ろに・・・本土に戻る先輩。 初めての負傷で塞ぎこんだ事。 目の前で撃ち落とされた戦闘機。 降り立った地上で見た惨劇。 昨日まで隣の部隊で戦っていた友達が、翌日死んだことを聞かされた時。 話は弾み、夜分遅くまで話し込んでいたが、それぞれの上司に怒られしまった。 渋々彼女等は「この基地にいる限り、また話せる。」と思い直し、部屋に戻って睡眠に着く。 そして、翌日早朝からサイレンで叩き起こされた。 「なんだ、なんだ!!」 「敵襲ですわ!」 「委員長、それは分かっているって!」 「それならつべこべ言わずに動きなさい!」 いつもの二人罵り合いをBGMに、ほか四人は着替えて大急ぎで部屋を出て行く。 すでに通路には、昨日再会した仲間がすでに走って会議室に向かっていた。 その顔はもうすでに戦士だ。 そして美緒達も同じように真剣な顔で走っていく。 しかし・・・ 「ああ、くそ! 朝飯食えないじゃん!!」 「御握りぐらいは大丈夫なはずですわ。」 「味噌汁がないと、俺、だめなんだ。」 「贅沢言わないで下さいませ!」 この二人のやり取りが、皆の緊張をほぐしてくれる。 それに続いて里子が話しに加わる。 「アタイは沢庵があれば良いッスね。」 「自分は梅干です。醇子さんは?」 「鰹節・・・かな?」 「醤油「「「「「無いな。」ッス。」ですわ。」です。」よ。美緒ちゃん。」み、皆ひどい!!」 そうして皆が続いて喋るのが、いつもの光景だ。 それを上の階から降りて来たミチルが、呆れて首を振るのも何時もの事。 「お前たち、元気だな・・・」 「あ、先輩。おはようございます!」 「「「「「おはようございま~す。」ッス。」ますわ。」す。」」 「若本、あくびをしながら言うな。」 「叩き起こされたので。」 916 :影響を受ける人:2014/12/07(日) 22 25 39 シレッと言う後輩にまた頭を痛める。 しかし動きによどみは無い。 寝て、いきなり叩き起こされるのは何時もの事。 それに慣れるのが兵士だ。 それはそうとして、宿舎の窓から整備員が大慌てで動き回るのが見える。 基地の規模は前よりも大きい。 いくつかの航空部隊が同居しているというのもあるが、通常の戦闘機を抱えているのもあって、設備はかなり良い。 屋根あり、壁ありのお風呂には入れたのは一番うれしかった。(前はドラム缶風呂で、交代制) 話を戻す。美緒の目線の先では、待機していた戦闘機部隊が滑走路を駆け上がっていくのが見えていた。 「それにしても、かなりの大騒ぎですね。 敵の規模・・・大きいのでしょうか?」 「わからん。だが、久しぶりの大規模戦闘なのは分かる。」 基地の空気を感じ取っているのはミチルだけではない、美緒達だって感じているはずだ。 しかしそれでも、いつもの事をしていられる度胸はついている。 頼もしさもあるが、この年齢でこういうことに慣れるのは・・・とも思う。 いや、世界を見れば普通だろう。 世界のウィッチの寿命は短い。 大体20歳くらいが良い所、がんばれば25歳までいけるかもしれないが、シールドの強度が心配になる。 対して扶桑のウィッチは長寿命だ。 30~40歳くらいが終わりごろで、50歳までいければ良い。 血統により、魔力切れが無いのもあったりする。 とはいえ世界視点で見れば、異常なほど長いのが特徴といえるのだ。 それはこの国の制度がかかわっている。 少し大きい村や町になると、魔力検査の水晶が必ずおいてある。 一定年齢に達した女子はそれに触れて検査するのが義務となっており、反応すれば導術士学校・法術士学校に推薦入学することができるのだ。 その教育費用殆どを国が受け持つ。 戦闘技術も大切だが、庶民の生活に役に立つのも大切なこと。 医療技術、天候操作技術、未来占術等々・・・ そして彼女等にはある一つの義務が化せられた。 血統を薄くしないための・・・政略結婚だ。 と、いっても強制は無い。 恋愛による結婚も推奨されている。 後ろ暗い話だが、それなりに濃い血筋を作り続けることで、昔とほぼ変わらないウィッチの寿命を作り上げていた。 さらに言えば、大陸とは違って平和な時代が長く続いたのも、一つの要因といえる。 色々考え込んで急に黙り込んだミチルを、後ろを走っていたリンが横に並んで覗き込む。 「早良先輩、どうかなさいましたか?」 「え、ぁ・・・いや。なんでもない。」 急に現実に引き戻され、目をパチクリさせる。 内心では慌てつつ、外面は静かに受け答えをした。 もう会議室は目の前にあった。 ――――― その日、北郷隊と狐狸部隊の出撃は昼を跨いだ戦闘となった。 幸いにして敵新型とはかち合う事は無かったのだが、基地に帰ってきても引切り無しに飛び出していく味方に不安を覚えた。 休憩をとりつつも銃の点検をする傍ら、戦況の話を聞くが芳しくない。 すでに地上戦線はボロボロだと言う。 帰ってくる戦闘機も翼端が解け落ちていたり、大きな弾痕がついていたりしていた。 この基地には爆撃機隊はいないが、出撃ができない状態だと聞く。 そしてわずかな休憩時間で再出撃。 ミチルは美緒達の再出撃に反対したが、手が足りないという現状に黙るしかなかった。 夜中になっても戦闘は続き、敵がようやく引き上げたのは翌朝の、朝日が地平線から覗いたときだった。 917 :影響を受ける人:2014/12/07(日) 22 26 11 ――――― 「・・・お疲れ様。」 「ああ・・・」 宛がわれた執務室で、章香と敏子が倒れ付すように机の上に、身を投げ出していた。 周りには、まだ整理していない書類などが散らばっている。 しかしそれを片付ける気力も無い。 慣れない夜間戦闘までこなした両部隊の隊員達は疲れ切り、食欲も失せていたが軽く固形物を食した後、風呂にも入らずに寝に入っている。 窓の外を見れば、スズメがチュンチュン鳴いている。 憎たらしい。 「・・・・・・こうしても、いられんな。」 「・・・・・・・やり、ましょうか。」 疲れがにじみ出ている。 それでも身を起こすと、戸を叩く音が聞こえた。 「どうぞ?」 「・・・入る。」 物静かな声の後、扉を開いてサエが食事を持ってきた。 お茶碗が三杯だけ・・・後、大きな急須が一つ。 しかしよくよく見れば、真ん中に大きな梅干がある。 「・・・戦闘食の、ニギリ飯があった。」 「お茶漬けですか。いいですね。」 「汁物・・・それなら胃に入りそう。」 書類に手を付けず、いそいそと真ん中の応接テーブルに上にある邪魔物を、二人係で片付ける。 そして席に座ると、それぞれの前に茶碗がおかれ、熱々のお茶が振りかけられた。 ひたひたにお茶に漬かった白米が、水分を吸収して少しだけ膨らみ、ほろほろと結合が解けていく。 持ち上げて最初は熱いお茶を飲む。 旨い・・・ お茶の渋みと、梅干の酸味が口一杯に広がり唾が出てくる。 そのまま嚥下し、次にお茶とご飯をかき込む。 「はぁ・・・」 「五臓六腑に染み渡る・・・」 「・・・実家の梅干は旨い。」 「「え!! これ旗本さんの、実家の梅干なんですか!?」」 「・・・うむ。」 驚く二人を尻目に、梅干を端でつまみあげて食べる。 程よく暖められた梅干の酸味が口いっぱいに広がり、さらにご飯をお茶と共にかき込む。 酸味とご飯の甘味、そしてお茶の渋みが調和して幸せな気持ちを作り出す。 敏子は黙々と食べるサエを見つつ呟いた。 「ウチも、有能な副隊長抱え込もうかな。」 「今更寄越してくれるのか?」 「ですよね~・・・」 泣きたかった。 以上です。 最初の大攻勢は何とかかわした彼女達、しかし厳しい現実が待ち受けることになる。 昨日千葉に行って、航空博物館に行ってきました! 離着陸の光景を見れてよかった~ 今年最後の小旅行、楽しかった・・・ 皆も楽しもうぜ!! 美緒ちゃん達は地獄だけどな!
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4888.html
前ページ次ページゼロな提督 ガリア王国、王都リュティス トリステインとの国境部から1000リーグ離れた内陸に位置し、大洋へ流れこむシレ河が 中央を流れる。人口30万を誇るハルケギニア最大都市。シレ河の中州にある旧市街から延 びたボン・ファン街を郊外へ馬で30分ほどの距離に壮麗な大宮殿、ヴェルサルテイル宮殿 がある。世界中の建築家、造園師の手による様々な増築物により、今も拡大する王族の居 城。 宮殿中心には、薔薇色の大理石と青いレンガで作られた巨大な王城『グラン・トロワ』 がある。ちなみに、そこから離れた場所には王女イザベラが生活する薄桃色の小宮殿『プ チ・トロワ』がある。 グラン・トロワに暮らす長身美髯の美丈夫、ガリア王ジョゼフ。彼は来客を前に悠然と 金塗装されたクルミ材の肘掛け椅子に体を預けていた。彼の前で同じく椅子に腰掛けてい るのは聖エイジス三十二世。 二人は窓から差し込む明るい日差しを受けているのに、爽やかとは言い難いオーラを纏 いながら向き合っていた。 「まったく驚きましたね。まさかジョゼフ殿が虚無の担い手であったとは」 「いやはや、全くお恥ずかしい限りだ。内政をすれば国が傾き、外交をすれば国を誤ると まで言われる、この無能王の余が『虚無』を受け継ぐなど」 謙遜した風な言葉を連ねる王だが、その態度に謙遜した風は欠片も見いだせなかった。 各王より形式上の地位を上回る教皇を前にして、傲岸不遜に体を反り返らせている。そん な無能という言葉が相応しくない王を前にしても、ヴィットーリオの口元に浮かぶ柔和な 微笑みは変わる事がない。 二人は金銀で装飾された立派な応接用デスクを挟んでおり、室内には他に誰もいない。 既に人払いされていた。机の上に置かれたワインクーラーとワイングラス用クーラーの中 で、ワインとグラスが手をつけられないまま虚しく冷やされ続けている。 「さて、大まかな話は使い魔のミョズニトニルンより聞いている事でしょうから、前置き は省きますね」 「やれやれ、使い魔の種類まで見抜かれてしまう。彼女の額に落書きでもして、ルーンを 改ざんしようか」 「女性の美貌は、そのままで愛でるものですよ」 王の冗談に教皇も笑う。そして王も笑う。ただし、二人とも目が笑っていない。双眸に 湛える眼光は、相互を射抜かんとするほどに鋭い。 笑ったままの若者の口から、次の言葉が紡がれた。 「それで聖地奪還の事ですけど、まさか、弟君を殺して戴冠したとまで言われているあな たが、今さら真の信仰に目覚めたわけもないでしょう?」 その言葉に、ジョゼフの口から笑みが消えた。 「そういうお前は、本気でエルフから聖地を奪還しようなんて寝言を口にしているわけで もないだろう?」 王から、形ばかりの敬語すらも消える。 それでも教皇の口元は微笑みを崩さない。 「聖地を取り返す。それこそが私の目的であり、教皇としての使命だと思っています」 「ふん。まったく、ご大層な綺麗事をヌケヌケとほざくものだ。で…それと俺と、何の関 係がある?」 「あなたがレコン・キスタを使ってハルケギニアを統一した後に何をするか、と言う事と 関係があります」 「まさか俺に、エルフ共と戦え…と言うワケか?」 「最初からそのつもりでしょうに」 その言葉に一瞬ジョゼフは呆気に取られ、目も口もポカンと開いてしまう。 しばしの沈黙が二人の間を漂う。 そして、ジョゼフは顔を右手で押さえて笑い始めた。腹の底から、心底楽しげに。 「くははは、ははっははははっ! いやはや、その若さで大したものだ。その通り、実はそのつもりだった。何故分かった んだ?」 「レコン・キスタを使ってトリステインとゲルマニアを争わせ、疲弊した所でガリアが全 てを蹂躙しハルケギニアを征服する。…そこまでは良いとして、さてその後ジョゼフ殿の 飽くなき野望はどこへ向かうのか、というだけのことです。まさかロマリア含めてハルケ ギニア全てを手にしたら大満足。後は太平の世を楽しもう、なんて趣味はお持ちではない でしょうから。 でなければレコン・キスタなんてものを一から作り上げたりせず、王家の血を僅かばか りだけ引く地方貴族でも後押ししておけば簡単です。大方、ガリアがレコン・キスタに屈 服するとか、あなた自身がレコン・キスタに参加すると宣言する…とかも考えていたので しょうね」 その言葉に、ガリア王は腹を抱えて大爆笑しだした。 ひとしきり笑い、ようやく呼吸を落ち着ける。 そしてワインクーラーから一本取り出してグラスに注ぎ、一気に飲み干した。 ふぅ、と一息ついてから、ようやく話を続ける。 「やれやれ、アルビオンで俺の使い魔と会っただけで、そこまで見抜かれたか。 そうだ、その通りだった。聖地なんかどうでも良いが、エルフと戦うのは面白そうだっ たんでな」 「そのためだけに、ハルケギニアを血に染めようとしているのですか?」 「ああ。凄いだろう?」 詫びれる事無く、それどころか胸を張って野心を自慢するジョゼフ。 「まぁ、確かに凄いですね。『無能王』の仮面を被って他者を油断させ、人を駒とし、他国 を思うままに操り、己が欲を満たすためだけに戦乱を起こす。…なかなか出来る事ではあ りません」 「そうだな。そして、そんな俺を利用してまで聖地奪還を目指そうとは、お前も俺に負け ず劣らず狂ってる」 「信仰とはそういうものでしょう」 ヴィットーリオは何の躊躇いもなく、平然と言い放った。 くっくっく・・・とくぐもった笑いが室内に響く。 王はもう一つのグラスをクーラーから取り出し、ワインを注いで教皇の前に置いた。 「まぁ、お前も一つ飲んだらどうだ?言っておくが毒なら入っていない」 「ご馳走になりましょう」 教皇はなんの迷いもなくワインに口をつけた。 とたんに麗しい口元から感嘆の溜め息が漏れる。 「美味しいですね」 「俺の秘蔵ワインだ。もはや二度と手に入らぬ最後の一本だぞ」 「それは光栄です」 王も自分のグラスに再び赤い液体を注ぎ、一気に飲み干す。 二人はしばしワインの芳醇な香りと味わいを楽しんだ。 そしてグラスを置いた後、王は再び話を切り出した。 「とまぁ、お互い腹を割って話をした後で悪いんだが…実は、さっき話した俺の策は既に 放棄しているのだ」 「ほう、何故でしょうか?」 教皇は、特に驚いた様子もなく尋ねた。 王も、教皇が驚かなかった事に何のリアクションも示さない。淡々と話を続ける。 「何の事はない。トリステインへ侵攻出来ないからだ」 「おやおや。エルフとすら事を構えようかというあなたが、随分と弱気ですね」 ふん、と鼻で笑ったジョゼフはワインボトルを二人の間にドンッと置いた。 王と教皇の視線がワインボトルを挟んで交差する。 瓶の中で赤い液体が波打つ。 「このワインは、もしやタルブ産ですか」 「そうだ。先のトリステイン侵攻時に壊滅した、タルブだ」 「なるほど…確かに二度と手に入らぬ逸品なのですね」 「ああ。何しろ、ブドウ畑の半分が先の戦で焼かれ、荒野に戻った。必死で新しいブドウ の苗を植え直しているそうだが、このワインのような逸品が再び生まれる日は見れないだ ろうな」 二人の間で赤い液体の波は小さくなり、ささやかな静寂を取り戻しつつある。 ―――タルブのブドウ畑は半分が消えた。 実際にはアルビオン軍侵攻のせいではなく、夫婦喧嘩のせい。だが「逃げる亭主を逆上 した嫁が追いかけたら、ブドウ畑が半分消えました」なんて、一般人は誰も信じない。な ので侵攻してきたアルビオン軍との戦闘で焼失、という誤った情報の方が広まってしまっ た。 で、山の斜面に築かれた排水路も何もかもボロボロ。生き残ったブドウの木も枝が折れ るわ葉っぱが飛ぶわ。元通りになるのは何年先になる事やら。というわけで現在、倉に残 されていたタルブワインは希少価値が出て価格もうなぎ上り中。 村の生活と再建資金は、それまでの村の蓄えでは足りない。だがシエスタが拾った人工 ダイヤモンドのティアラ、通称『血塗れのティアラ』をフーケの闇ルートで好事家に売却 したので何とかなった。 ヤンとフレデリカは平謝りしながらタルブを後にした――― 「・・・だが、その『夫婦喧嘩』の方が、実は真実なのだ!」 ジョゼフはワインを再び自分のグラスに注ぎながら、楽しげに語り続ける。 「俺の姪、弟には娘がいるんだがな。名はシャルロットだが、今はタバサと名乗ってトリ ステイン魔法学院に留学している。なので、件の魔女達を監視させていた。その姪からの 情報だ。 使い魔のヤンへ、嫁が遠い国から船に乗って会いに来ていたんだ。が、ヤンは学院長の 秘書と浮気している真っ最中でな。それを見た嫁が怒り狂い、船で砲撃しながら亭主をブ ドウ畑の中で追いかけ回したんだ。結果、あっというまにタルブのブドウ畑が穴だらけに なった。 信じられるか?女一人で操る小さな船の砲で、あの広大なブドウ畑を、ほんの一瞬で だ!」 若き教皇は、ニッコリ微笑んで感想を一言。 「まさに天罰ですね」 この反応に、ジョゼフは露骨につまらなそうな顔をした。 「なんだ、知っていたのか」 「タルブの教区担当司教から報告がありました。…と言っても、妙な噂が同時に広まって いたので再調査させてみたのです。そうしたら妙な噂、夫婦喧嘩の話が真実と分かったと いうわけです」 教会の力には幾つかある。信者からのお布施や荘園からの収入という資金力。信仰とい う神の権威。何より教圏全域に行き渡る教会と各教区の司教からの報告という、国境線を 超える情報網。 「で、その船は夫婦喧嘩の果てに壊れたと聞いています」 「そうだ。だが、その後学院へ、同じ船が次々と飛んできたのだ。何か事情があるとかで 人は乗っていなかったそうだ。どうやら船自体が一種のガーゴイルらしくてな、全て無人 で飛んできた。 だが、それが意味する事、分からぬわけはあるまい」 「たった二人の平民相手でも軍事的に勝ち目がない、という事ですか」 「当然だ。例の船に付いている砲は、たったの一門。だが、その一発で遙か彼方の山を穿 つ。速力は風竜をも軽く上回る。素材からして不明。そんな物が何機も学院の横に並んで いるのだ。 ちなみに、奪おうとて無駄だ。シャルロットが船の中を見た。操縦法も何もかも、全く 理解出来ないそうだ。おまけに例の夫婦以外の誰が触っても何の反応もないし、重くて誰 にも動かせない、と」 「そうですか…残念ですね。それに、その情報は色々と大きな問題を含んでいますね」 教皇は、ここでようやく作り笑いを崩した。物憂げに溜め息をつく。 王もわざとらしく肩をすくめる。 「そう、極めて重大な問題だ。 まず例の魔女は、本物の『虚無』の系統だということ。何しろ俺と同じく人間を召喚し たのだからな。 にも関わらず、教会に対して露骨に反抗している。聖地奪還へも、だ。 これを軍事力で排除する事は既に不可能。ゲルマニアとトリステインの連邦制移行は決 定し、その国力は我がガリアにも抗しうる。そして件の船、ハルケギニアの全艦を集めて も勝ち目はない。 といって例の夫婦だけを殺したら、怒り狂った奴等の故郷から次々と船が飛んでくる。 無人のまま、脅威の大砲を乱射しながら、な なおかつ、あのヤンという使い魔…恐るべき軍師だ。俺のゲームを尽くひっくり返しや がった。それも異国の軍船など使わず、舌先三寸だけでアルビオンもゲルマニアも翻弄し たのだ」 「ほう?彼がひっくり返した…と言う事は、例の禅譲の一件はヴァリエール公爵の発案で はない、と」 「ああ。シャルロットが横で聞いていた、あの男が禅譲策を進言するのを、な。枢機卿へ 奇襲迎撃作戦を進言したのも奴だ。元は異国の元帥だそうだ」 教皇はもう一度溜め息をつく。物憂げに、ではなく驚嘆の溜め息を。 だがすぐに再び物憂げな表情へと戻った。 「今現在だけでも既に大事だというのに…今後について考えると、悲しみと不安で胸が潰 れそうですよ。 彼の国から妻が異国の軍船に乗ってやってきた。しかも次々と後続が送られてくる。ハ ルケギニアはエルフのみならず、彼の国からの侵攻にも怯えねばならない、という事に他 なりません。 おまけに例の魔女が言いふらす流言。聖地は既に無いとか、エルフ達が世界を守ってい るとか、こんな戯言を信じる者が増え出す始末」 「ああ、そうだな。まったく非常識な物言いだ。世の中は物好きな痴れ者で溢れかえって いる。滑稽にも程がある」 ジョゼフは楽しげに笑った。口の端を釣り上げ、低く押し殺した声で笑い続ける。 そして口の端を醜く釣り上げたまま、教皇を睨み付けた。 「…で、『光溢れた土地』と呼ばれる貧民窟の管理人が、結局俺に何の用だ?お有難い愚痴 を聞かせてやったから布施でも恵んでくれ、とでも言うつもりか?」 宗教都市ロマリア。聖職者は『光溢れた土地』と神聖化している。街には笑いと豊かさ が溢れ、神官達が敬虔なるブリミル教徒達を正しく導いている…と、信じ込ませている。 だが実際は、各地から流入する流民達の溜まり場だ。仕事も食事もなく、着る物にも事欠 く貧者の列が施しのスープに列をなす。その横を、着飾った神官達が談笑しながら寺院へ 向かうのだ。 そんな痛烈な批評にも、皇帝は怒りなど表すことなく静かに応じる。 「もちろん無心に来たわけではありません。ただ、我々は共通の敵を有している事を確認 しに参ったのです」 「ふん、そんなものは分かっている。だからといって、どうしようというのだ?」 「これです。恐らくは、あなたの所にも届いているはずですよ」 教皇は胸元から、見るからに立派な便箋を取り出した。それはトリスタニアで行われる ゲルマニア=トリステイン連邦建国記念式典、調印式への招待状。 ガリアの軍港サン・マロン。時は教皇とジョゼフが密会をした日、ようやく太陽が沈ん だ頃。 海沿いに作られた巨大な軍港には、ガリア空海軍の一大根拠地である。海に面した桟橋 や、地上に作られた鉄塔には、ガリア艦隊『両用艦隊(パイラテラル・フロッテ)』が、そ の威容を見せている。この大艦隊はハルケギニア最強と恐れられたガリア王国の、力の象 徴でもある。 一番高い鉄塔には、周りの戦列艦より一際大きい艦、ガリア両用艦隊旗艦である巨大木 製空中戦列艦『シャルル・オルレアン』号が係留されている。そして隣には、教皇の御召 艦『聖マルコー』号も。 その『聖マルコー』号の一室では、二人の男性が剣呑な空気を漂わせていた。魔法のラ ンプに照らされた青年と少年が、声を潜めて語り合っている。 「・・・既に三人の連隊長が応じました。ですがこれはロマリアの名を出すまでもなく、 ただ声をかけただけで、の数字です。恐らく教皇の後ろ盾が得られる事を臭わせれば、他 の騎士団や艦隊、一般兵からも同調者を得られます。 いえ、恐らくは軍と騎士団の大半が呼応してくれる事でしょう!」 テーブルを前に、興奮した様子で語っているのは二十歳過ぎの若い騎士。ピンと張った 髯が凛々しい美男子だ。 「東薔薇花壇騎士団に、反対の声は全くないんですか?」 テーブルを挟んだ向かいに座るのは、線の細い中性的な金髪の美少年。左は鳶色、右は 碧眼の月目(オッドアイ)を持っている。 「無論。このバッソ・カステルモールはじめ、ガリア東薔薇花壇騎士の総意は『簒奪者討 つべし』と、決行の日を心待ちにしています」 その言葉を聞き、細長くて色気を含んだ唇から嘆息が漏れる。そして柔らかい仕草で一 礼した。 「全く、心強い限りです。このジュリオ・チェザーレ、教皇聖下へ色よい返事を伝えられ る事を嬉しく思います。カステルモール殿のご協力には感謝の言葉も見つからないほどで すよ」 その言葉に、カステルモールの方が慌てて深く礼をした。 「何を申されるか!さぁ、顔を上げて下さい。あの簒奪者を討ち、シャルロット様の名誉 を回復し、真の王として戴けるというのであれば、聖地回復へのご協力に一片の迷いも差 し挟みませぬ!」 二人は互いに頭を上げる。 月目の少年は、鹿革の白い手袋に包まれた手をテーブルの上で組み、さてそれでは…と 話を続けた。 「では、実行計画の概要を話します」 カステルモールは顔を引き締め、チェザーレの言葉を聞き逃すまいと耳を澄ます。 「礼の調印式にマリアンヌ、アルブレヒト三世、クロムウェル、ジョゼフ…ハルケギニア の全ての世俗支配者が一堂に会します。そしてマリアンヌとアルブレヒト三世が調印し、 教皇聖下が始祖の名においてゲルマニア=トリステイン連邦国家建国の承認を宣言、とい うのが表向きです」 「だが実際には、トリステインの反連邦派が式典を襲撃して、全員を抹殺。教皇聖下は、 これを邪教徒討伐として承認する…ということですね」 騎士の言葉に、輝く金髪が上下に揺れる。 「ええ。あなたのおかげで、ガリア王がエルフと通じているという確かな証拠と証言が得 られました。例の連邦は、『虚無』を騙り人心を惑わす魔女を崇める邪教の国だと明らかで す。クロムウェルは、単に贈収賄等の教会法違反でもいいですが、まぁ簒奪者とか何とか 適当にしときますよ」 「その辺の政治的、宗教的処理はお任せします。ガリア国内の意思統一は、こちらに一任 あれ。よければ式典襲撃も、ジョゼフの警護に付いていく騎士にやらせましょうか?なん なら私が」 呼び捨てにした主君の殺害を口にする時、カステルモールの眼は期待に輝いていた。自 分自信でジョゼフを討ちたいと、その瞳は訴えいていた。 「いえいえ、あなたはガリア国内の方と、情報提供に集中して下さい。なにしろ式典襲撃 は簡単ですが、その後の各国を治めるのが大変ですから」 要人抹殺後、各国の統治をどうするか。その点についてカステルモールも少し頭を巡らす。 「アルビオンはウェールズ皇太子、トリステインはアンリエッタ姫、ガリアはシャルロッ ト様、ゲルマニアは…適当な有力貴族でも、ああ、ツェルプストー辺りを据えればいいで すな。 ふむ、アンリエッタ姫は未だ廃嫡も宣言されてませんし、ゲルマニアは三国の内政が落 ち着いてから切り崩せばよし…大きな問題は無さそうですが?」 不思議そうに尋ねるカステルモール。だが、まつげの長い美少年は残念そうに首を横に 振った。 「問題は王家ではなく、噂の魔女ですよ」 東薔薇騎士団の騎士は、ああ…と納得してしまった。 「なるほど、例の自称『虚無の系統』ですか。確かに真偽は別として、恐るべき魔力を秘 めているそうですからな。それに、その配下である異国の軍人、なんでも驚異的な軍船を 持つとか。 ですが所詮は平民。船から降りた時を狙えばよろしい。魔女にしても、魔法が強くとも 精神力は限りがありますから」 騎士の構想に、少年はさらに首を横に振った。 「いえいえ、そういう事ではないんです。 魔女と言われてはいるんですが、まだ年若い女の子ですよ。恐らくは政治的ライバルで あった枢機卿を追い落とし、トリステインの実権を握らんとする父君、ヴァリエール公爵 の策謀に利用されているだけでしょう。その配下の平民にしても、異国の者ゆえハルケギ ニアの事情に詳しくないし、始祖ブリミルの教えと深き慈愛を知らぬがゆえ…でもあるで しょう」 そこまで話して、チェザーレは口をつむぐ。にやにやと笑いながらカステルモールを見 つめている。 その様子にカステルモールも、彼が言いたい事について思い至った。 「なるほど…聖地奪還には彼等の力が必要、という事ですな」 「そうです。彼等の力があれば、聖地奪還は夢物語などではなく、現実の物となるでしょ うから。 でも実際には、彼等を『説得』するだけです。教皇聖下が直々に始祖の教えを彼等に授 けて下さるのですよ。要は、邪教の誤った教えを捨て、真の信仰に目覚めてくれれば良い のですから。 ですが、既に彼女が広めてしまった流言の方が心配です。お国の民へ目を光らせ、誤っ た教えが広まらないようにして欲しいのですよ」 その話にカステルモールも納得した。腕を組んでウンウンと何度も頷く。 カステルモールとてガリアの中枢に身を置く騎士なのだから、魔法学院に飛んでくる謎 の軍船の事は知っている。そんな船が編隊を組んで砲撃を加えれば、例えエルフでもただ ではすまない、と。 それに『己の過ちに気付き、邪教から身を洗い、始祖の信仰に目覚める』というのは喜 ばしい事だとも考えた。単に利用されているだけの者へ罪を問うて殺すより、温情に満ち た裁き、いや『救済』だと。 なので、彼は気付かなかった。少年が『説得』という言葉を発した時、そのイントネー ションに奇妙なものが混じった事を。彼の口の端が、僅かに釣り上がった事を。 もっとも、ランプのほのかな灯りの下では、そんな微妙な表情を気づけなかったとして も批判は出来ないだろう。 『プチ・トロワ』、それは王女イザベラが生活する薄桃色の小宮殿。 カステルモールとジュリオ・チェザーレが陰謀の相談をしていた日の夜更け、タバサを 乗せたシルフィードが小宮殿の前庭に降り立った。 タバサはツカツカと王女の部屋の前に立つ。すると部屋の前に立つガーゴイルが交差さ せた杖を解除した。天井から垂れ下がった分厚い生地のカーテンをめくり部屋の中へ入っ ていく。 タバサは手に持った書簡を広げ、黙って読んでいる。 無表情なまま、紙の上を視線が左右に往復している。 何度も何度も、書かれている内容を読み返している。 部屋の隅に控える侍女達は、タバサことシャルロットの初めて見る反応に、一体何が書 かれているのかと訝しんでいる。 「何度読んだって、内容は変わらないよ」 タバサの視線が、いい加減イライラし始めた部屋の主へ向けられた。 椅子に腰掛けているのは、17歳くらいの少女。青く細い目、絹糸のように細く柔らか い髪、大きく豪華な冠。それらは彼女が魔法先進国ガリアの王女である証。だが、その王 女が手に持ったグラスの中で波打つワインを一気に飲み干し、紅で染められた唇を舌でぬ ぐう下品な仕草が、高貴さとも上品さとも縁がない事を示していた。 「命令に、間違いない?」 タバサが尋ねる。 とたんに王女はタバサを睨み付けた。 「ああ~ん?人形七号…あんた、北花壇騎士として、団長たるのあたしの、このイザベラ 様の命令が聞けない…て、いうつもりかい?」 人形七号と呼ばれたタバサの人形の様に無表情な顔に、イザベラの視線が突き刺さる。 それでもタバサの顔は全く何の反応も示さない。そしてタバサを睨み付けるイザベラの顔 も変わらない。 しばし二人は睨みあう。イザベラが一方的に睨んでいるだけにも見えるが。 いつまで経っても変化しない、無表情に見つめ返してくるタバサ。 結局、イザベラの方が先に根負けした。 「言っておくけど、そいつは父上直々の命令だよ!」 その言葉にタバサの眼は僅かに見開く。そして手に持つ書簡を再び読み直す。 「間違いない?」 「しつこいねぇ、んな嘘ついてどうすんだい。それとも何かい、あんた、この命令には従 えないのかい?」 タバサは視線を上げ、北花壇騎士団長を見つめ直す。 しばらく黙ってイザベラの顔を見つめた後、小さく礼をした イザベラも、ようやく納得したらしいタバサへビシッと杖を突きつける。 「ふん、それでいいのよ。北花壇騎士(シュヴァリエ・ド・ノールパルテル)七号のあん たの任務よ。さっさと片付けてきなさい」 こうしてタバサは部屋を後にし、シルフィードで星空へ向けて飛び立った。 「きゅ、きゅいいいっ!!し、信じられないの!ありえないの!そんな命令、絶対裏があ るの!やっちゃダメなのきゅいきゅい!」 目的地へ飛ぶまでの間、タバサから任務を聞いたシルフィードは、大きな目をさらに見 開いてしまった。一応はタバサに言われたとおりの方角へ飛んではいるが、必死にタバサ へ思い直すよう訴える。 だが、タバサの無表情な顔は、やっぱり無表情なままだった。 「命令」 簡潔な一言。 だが、シルフィードは納得出来ない。大きな口から唾を飛ばし、抗議し続ける。 「きゅい!いつもいつも、命令だからって何でもやってちゃダメなの!たまには命令の内 容を考えるの!頭は使うモノなのよ!きゅいきゅい!」 これに対するタバサの答えは、やっぱり一言。 「任務」 断言され、シルフィードは一瞬二の句が継げず黙ってしまった。 そして、しみじみと溜め息をつく。 「はぁ…利用されてるのは見え見えなのねぇ…きゅいぃ。お姉さまはさんざんこき使われ たあげく殺されちゃうのね…思えば短いお付き合いだったのだわ。きゅい~」 そんな使い魔の呟きを気にする風もなく、タバサはシルフィードを空の彼方へ向けて急 がせた。 アルビオンへ向けて。 ニイドの月、ティワズの週、ダエグの曜日。 まだ夜も明けきらぬ早朝から、ヴァリエール家の屋敷では人々が動き始めていた。 医務室では、ベッドにカトレアが寝ている。ベッドの横に立つシエスタが、天蓋から数 本のボトルを吊り下げ、細いチューブをボトルの口に突き刺している。ボトルには「アミ ノフリードVSOP」とか「ソリタ-T800号」とか、色々な商品名やら注意書きが書き込ま れている。 シエスタの横や後ろでは、執事のジェロームはじめ何人もの侍女や下男が興味深そうに 手技を観察している。 彼女は手に持ったゴム紐を周囲の人々に示し、カトレアの腕を取る。 「…で、この駆血帯で腕を縛り、血管を怒張させます。そこへ予め薬液で満たしたチュー ブの針を刺すわけです。チューブ内の気泡は無い方がいいですけど、少しくらいなら大丈 夫です。 でもカトレアお嬢様は、あんまりハッキリと血管が出ません。だから、おしぼりとかで 腕を温めておくと良いです。穿刺部位を決めたら消毒用アルコールで拭いて、アルコール が乾いてから刺します。 この時、ちゃんと血管に入ったら針の中に血が逆流してくるのが見えますので、針を軽 く固定します。それからクレンメ(点滴用チューブの栓。滴下速度の調節にも使う)を開 くわけです。 ちゃんと針が血管の中に入っていたら、逆流していた血が血管へ一気に流れ去り、滴下 もスムーズです。でも入ってなかったら滴下がすぐ止まったり、刺してる所の皮膚が腫脹 して、あ、いえ、赤く腫れて来るので分かりますよ。時々、血管壁で針先が塞がれてるだ けの時もあるので、ちょっと動かして確かめて下さい。 それと、滴下速度は注意して下さいね。早すぎたら心臓が驚いてドキドキしちゃいます し、遅すぎたら血が固まって針の中で詰まっちゃいますから」 そんな解説をしながら、シエスタはタルブで学んだ医療知識を皆に実演する。解説に合 わせて手技を行い、点滴の方法を教える。 一通りの手技が終わり、ベッドサイドから立ち上がったシエスタは、部屋の隅を指し示 す。そこには山と積まれた箱があり、中には生理食塩水50mlパックの練習用点滴セットが ギッチリと入っている。 「以上です。では、今日も皆さんで練習して下さいね。分からない事があれば、いつでも 教えますから」 ニッコリ笑い講義と実演を終えたシエスタ。でも、皆さんで練習して下さいと言われた 人々は、互いに顔を見合わせる。 誰だって人に針を刺されるのは怖い、という以前に痛い。刺す方だって怖くて手が震え たりするし、そんな状態で刺されれば当然失敗する。もちろんその時は練習台の人が冷た い目で睨んでくる。 そんなわけで、お前腕貸せよ、やだよあんた出しなよ、私怖いから無理、え~と確か急 用があったよなぁ、なんて囁き合っていた。 「大丈夫ですよ。私が練習台になりますから、皆さん気兼ねせずに練習して下さい」 と、笑顔で言ってくれたのは点滴を受けているカトレア本人。 そんなお嬢様の優しさに触れた人々は、勇気を振り絞って練習を始める。そしてシエス タは彼等の間を歩き回り、「ああ、ダメ、逆です。針は体の方へ向けて刺すんですよ」とか 「そうそう、滴下まで出来たら、こういう風にチューブで輪を作って、肌の上にテープで 止めるの」とか、講義を続ける。 コンコン 医務室の扉がノックされ、ルイズが顔を出した。後ろにはヤン・フレデリカ・キュルケ もいる。 「ねえ、ちい姉さまの点滴はどう?」 「あ、はい、良い感じで落ちてますよ」 元気に答えたのはシエスタ。 ちなみにこの『落ちている』というのは、「チャンバー」と呼ばれる太くなった箇所に薬 液がポタポタとスムーズに滴下されているということ。「点滴」という呼称はここから来て いる。これにより薬液中の微小な気泡が除去され、時間当たりの注入量、即ち注入速度を 測ることができる。 機械でやれば正確に行えるが、代わりにヴァリエール家の人々には扱えない。なので昔 ながらの方法が教えられていた。 ベッド上に寝ているカトレアが、少し寂しげに笑いつつルイズ達に手を振った。 「皆さん、もう学院へ行くんですね。また何時でも遊びに来て下さいな。ルイズも、あま り皆さんに無理言っちゃダメよ」 「そ、そんな事言わないもの!」 ちょっとむくれるルイズをヤン達がまぁまぁとなだめる。 ルイズは気を取り直し、シエスタの方へ目を向ける。 「それじゃ、私達は先に学院へ戻ってるから。ちい姉さまの事はお願いね」 「はい、承知しました。屋敷の人達に手技を一通り教え終えたら、私も学院に戻りますか ら」 「頼むわね、ヤンに『ドラート』で迎えに来てもらうから」 そんなわけでルイズ達は、使用人達が必死な顔で点滴の練習をする部屋を後にする。そ して二機の小型機は屋敷を飛び立ち、学院へ向かった。 ちなみに、運動神経をどこかに置き忘れてきたかのように見えるヤンだが、小型機は墜 落せずにちゃんと飛んでいた。 その日の昼、トリスタニア。タニアリージュ・ロワイヤル座。 本来なら聖堂から11時の鐘の音が響く。数ヶ月前ならそうだった。でも今、聖堂は建 て直してる真っ最中。打つべき鐘が無かった。 円柱が並び、どこかの神殿かと思わせる石造りの立派な劇場だ。おめかしした紳士淑女 が階段を上がり、劇場内へ吸い込まれていく。 演目は『君のために鐘は鳴る』。 上官の不興を買い、国立劇場へ飛ばされた若き士官が主人公。最初は劇場の雑用にこき つかわれ落ち込むが、美しき女優達や裏方の大道具係など劇団員達との交流によって立ち 直り、歌劇の素晴らしさに気付く。いつしか自分でも素敵な歌劇を生み出したいと、脚本 家への道を歩み始める。そして街に戦火が及ぶ時、団員達と愛する女優を守るため、一人 敵軍に立ち塞がる・・・。 「よくあるストーリーですけど、なかなか人気ですね。何より女優達の歌が良い。それに ラストも好評ですよ、女優達が実は訳あって貴族の地位を失ったメイジ達で、士官は女優 達を率い秘密部隊を結成、街を侵略者から守り続ける、と。…私としては趣味じゃないラ ストですが、町娘には受けてます」 商人風の男が隣の貴族へ呟く。 「いや、前回の『トリスタニアの休日』が不評でな。さすがに経営が傾いたので、ちゃん とした劇団を連れてきた」 初老の貴族は商人風の男へ向けて笑う。銀髪の貴族は冗談を言ったらしい。だが商人風 の男は、あの大根役者共では当然だろう、と納得していた。 その後も二人のひそひそ話は続く。 「…以上が調印式での警備体制だ。上空の竜騎士隊は…」 「…教皇聖下お付きの聖歌隊員を通して下さい、特徴は月目…」 二人が話しているのは、調印式典襲撃の詳細な実行計画。ハルケギニアの歴史を塗り替 える陰謀が、まるで世間話のように交わされていた。 そして終劇の頃、一通りの情報交換が終わる。商人風の男は貴族の男に小さな袋を手渡 す。貴族が中をのぞくと、中には金貨がぎっしり詰まっていた。 「アルビオンのお方は、豪毅ですな。そして信心深く、伝統の何たるかを理解していらっ しゃる」 「何をおっしゃる。かの魔女に惑わされず、真の信仰を貫くあなたを前にすれば、私など 修行の足り無さを痛感します」 「ふふ、信仰ゆえだけではありませんよ。白銀の船を駆るヤンという平民、そやつに裏か ら操られる公爵…このままでは、滅ぶのはトリステインだけでは済まぬ。ハルケギニア全 ての危機なのだ」 商人風の男は強く頷く。 「アンリエッタ姫も、異国の侵略を受けて滅び行く故国に心痛めております。姫をゲルマ ニアに売ろうとしたマザリーニも追放された今、真の王を回復するのは今を持って他にあ りますまい。 そもそもヤンにいたっては、フーケなどという盗賊の情夫ではありませんか。あんな盗 人を庇う連中など、城を傾かせて潰す以外の終幕はありますまい」 貴族も強く、何度も頷いた。 ―――マザリーニが追われた宰相の地位にはヴァリエール公爵が就いた。公爵自身の政治 的才覚と公爵夫人の伝説的武功、そしてルイズの持つ『虚無』のカリスマにより、マリア ンヌ以下の連邦派はトリステインの主流を占めている。加え、異国から謎の船を次々と呼 び寄せるヤン。彼は、かつて枢機卿達に示した知略からも、公爵の参謀か懐刀だ、と噂されていた。 無論、急速に権勢を増す彼等への反発や、激変する情勢についていけない守旧派、王家 への忠義を厳格に守るものも存在する。何よりアルビオンは、公爵とヤンに恨みを抱いて いる。 まずアルビオンがロングビルの正体を公表した。同時にロングビルは公の場から姿を消 した。ヤンへは公爵とマリアンヌが「不問に処す」と宣言。その後もトリステイン・ゲル マニアでは不満分子や信仰心高きものへ、レコン・キスタへの取り込みが隠密下で進めら れている。 反連邦派からは「公爵は売国奴。異国の軍人に操られて国を売った」との言葉が囁かれ た。「ヤンはエルフか東方の間者、奴等はハルケギニアへの侵攻を企てている」という噂 も、まことしやかに飛び交っている――― 「ところで、例の『虚無』の魔女はどうなのです?」 問われた貴族は、ふと首を傾げて考え込む。 「いや、実はここ数ヶ月、表舞台には出ておらんのです。学院が夏休みになると同時に、 例の船に乗って何処かへ飛び去ってしまいましてな。たまに帰ってきても、城に来る事も 少なく、所在不明でした。 ですが、調印式には姿を見せるそうです。貴賓席ではなく一般の貴族達の席で式典を観 るとか。当日、例の平民夫婦は銀の船に乗らず、主と共に席で座っているとのこと」 「ふむ、ならば計画への影響は少ないでしょう」 二人は小さく安堵の息をつく。 そんな話をしている間に、カーテンコールを受けた役者達が舞台に並んで観客席へ深く 礼をした。二人も軽く拍手をしてから劇場を後にする。 初老の貴族は、劇場前に待つ立派な馬車へと乗り込んだ。恭しく頭を垂れた御者が主に 尋ねる。 「リッシュモン様。この後はどちらへ向かわれますか?」 「高等法院へ戻れ。式典の警備を少し変えねばならん」 「かしこまりました」 馬車は方向転換し、城へと向かった。 同じ日の夜、トリステイン魔法学院。 新学期も始まるし、調印式も明日に迫っている。なので生徒達は既に学院に戻ってきて いる。 ルイズの部屋でも調印式用に新調したドレスと、新学期に着る制服を鏡の前で確かめて いる姿があった。何度も何着も着替えてしきりに確かめているのはルイズ、その隣で着替 えを手伝っているのはフレデリカ。 「うーん、やっぱりピンクの方が髪の色に合ってていいかしら?」 「そうですね。ネックレスはこちらのルビーが良いと思いますよ」 「え~?ピンクと赤かぁ、合うかしら?それよりこっちのサファイアのが…」 二人はドレスとアクセサリーのチョイスに夢中だ。時間が経つのも忘れて鏡とにらめっ こしている。 で、ルイズの着替え中、ヤンは寮塔の外に一人でほっとかれていた。 「やっぱり女性の着替えとかって時間がかかるねぇ」 「んだなぁ」 横に置かれたデルフリンガーを話相手に、ボンヤリと草の上であぐらをかいている。 そんなヤンの前に、小さな人影が立った。 「おや、タバサさん。こんばんわ」 ヤンの前に立つタバサはコクリと頭を下げる。 そして一言呟いた。 「客」 「客って、僕にかい?」 「あなたと、フレデリカと、ルイズ」 タバサは相変わらず無表情のまま、学院近くの森を指さした。 夜の森は暗く薄気味悪い。ヤン達の懐中電灯で足下を照らしてはいるが、それでも森の 闇は彼等を包んでいる。 「転ぶんじゃねぇぞ、ヤン」 「転ばないよ」 と、デルフリンガーに言われたヤンは、気の根っこに躓いて綺麗に転んだ。 「いわんこっちゃない」 いててて…と足をさするヤンは慌ててルイズ達の後をついていく。 タバサは森の奥、シルフィードのねぐらに三人を連れてきた。 そこには客らしき人物も、シルフィードもいなかった。 「ねぇ、タバサ。客って誰なの?」 ルイズが不安げに尋ねるが、タバサは何も言わない。ただ視線を上に向けた。 「あら、あなた…あれって、確かタバサさんの使い魔の」 フレデリカの言葉にヤンも上を見る。するとそこには、翼を広げ降りてくるシルフィー ドの影が見えた。彼等の前に舞い降りたシルフィードの背には、フードをすっぽり被った 人が乗っている。 「初めまして、『虚無』の使い手さん。それと異国の軍人さん達」 若い女性の声が森に響く。そしてシルフィードの背から軽やかに降り立った。 ルイズは懐中電灯で地面に降り立った人物を照らしてみる。だが誰なのか覚えはなかっ た。 「誰なのかしら?フードを取って名乗りなさい」 「あら、失礼しましたわ」 そう言って女性はフードを外して顔を露わにする。ヤンが持つ懐中電灯の光に照らされ た女性の額には、ルーン文字が書かれていた。 「あなたは…!?」 「私はミョズニトニルン。あなたと同じ虚無の使い魔よ、ヤン・ウェンリー」 女はヤンへ向けて不敵な笑みを向ける。 その指には、妖しく深く水色に輝く石を嵌めた指輪がある。 それは、クロムウェルがつけていたアンドバリの指輪。 第29話 説得 END 前ページ次ページゼロな提督
https://w.atwiki.jp/teitoku_bbs/pages/6416.html
386: 194 :2020/09/17(木) 19 20 32 HOST ai126213028071.77.access-internet.ne.jp 短編ネタ 現代日本大陸化&銀連神崎島クロスSS ある日、日本が『超』大陸と化してしまった件その29 かの国は如何にして考えるのを止めて、手の込んだ自殺をするに至ったのか 共通エンディング 戦争終結から一年が経過した、とある日。 戦後処理が落ち着いた事とティ連への正式加盟のお祝いを兼ねて、関係者達を集めての飲み会の開催となった。 因みに会場として使用している居酒屋も、勿論夢幻会所属メンバーが運営する店。守秘義務も完璧である。 二藤部「それでは、戦後処理が落ち着いた事とティ連正式加盟を祝って、乾杯!!」 一同「「「「「かんぱーい!!」」」」」 総理の音頭と共に、生ビールを飲み干すメンバー達。 大きな仕事を無事にやり終え、心から宴を楽しんでいる。 春日「二藤部さん。大変なお仕事、本当にお疲れ様でした」 三島「漸くゴダゴダが落ち着いたんですから、今日は楽しみましょう」 二藤部「有難う御座います。政府の皆さん、そして夢幻会の皆さん方のおかげもあって、この難局を乗り越えられました。本当に、有難う御座います」 辻「いえいえ、我々はあくまで助言役。決断をして、今回の事を乗り越えられたのは、他ならぬ総理の力ですよ」 東条「我々は言わば影の存在。光たる表の政府がしっかりしているからこそ、意味を持ってくるものです。辻さんの言う通り、総理の力量を疑う人はこの中にはいませんよ」 二藤部「まぁ、韓国本土への報復の決断をしたのは神崎提督ですけどね」 神崎「ハハハ・・・。でも、今の私は一鎮守府の提督です。今回みたいな決断を度々する羽目になるのは、勘弁願いたい所ですね」 387: 194 :2020/09/17(木) 19 21 03 HOST ai126213028071.77.access-internet.ne.jp 神崎提督の嘘偽りの無い本音に、思わず笑う一同。 ふとテレビ画面を見やると・・・・・、日韓戦争(公称・歯に衣着せぬ人物曰く「キムチの自殺戦争」)とアカ連中の逮捕等でゴダゴダしていた影響で中止となっていた、 「神崎島版絶対に笑ってはいけない」が二年振りに放映されており、その画面の中では・・・・・。 \デデーン/ 長門、タイキック-! エーレル「オウ、長門!約二年振リノタイキックダ!チャント受ケロヨー!」 長門「待て待て待て!!毎度の事ながら、この流れでタイキックはおかしいだろ!?」 エーレル「ソウハ言ッテモ、オ約束ダカラ仕方ガナイカラナ。デハ、イクゾー!!」 長門「嫌だって!!本当に勘弁してくれ!!」 そう叫んで必死に逃げる長門だが、狭い室内では逃げる事もままならない。あっと言う間に捕まる。 エーレル「ッタク、手間ヲ掛ケサセルナ!ソレジャア、イクゾー!!」 長門「ヤダヤダヤダ!!勘弁してくれ!!」 ズドォォォォォン 長門「痛゛い゛も゛ぉぉぉぉぉぉぉ!?!?!?あぁぁはぁぁぁぁぁん!?!?!?あぁぁぁはぁぁぁぁん!?!?!?あぁぁぁぁぁはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!?!?!?!?」※お尻を押さえながら、ド派手に転げまわっている 4人「「「「wwwww」」」」 \デデーン/ 信濃、金剛、日向、扶桑、アウトー! 金剛「チョwww長門wwwww」スパーン 日向「大袈裟に転げ過ぎだwwwww」スパーン 扶桑「久し振りだからってwwwww」スパーン 信濃「は、初めて見ましたけどwww凄いですね、コレwwwww」スパーン 長門が、約二年振りのタイキックを喰らう場面が流れていた。 柏木「・・・また派手にいったなぁwww」 フェル「悲惨ですケド・・・ついつい笑ってしまうデスヨwww」 388: 194 :2020/09/17(木) 19 21 34 HOST ai126213028071.77.access-internet.ne.jp 展開その物はいつもの流れだが・・・・・。今回大和が出演しておらず、代わりに末妹の信濃が代役で出ている。 というのも・・・、実は「特別手当(意味深)」を支給された菊水艦隊の面々が、何と妊娠したのだ。しかも、十人全員で有る。 「特別手当(意味深)」支給の効果は絶大だった(白目) そのおめでたい知らせに、日本ばかりか世界中からもお祝いの言葉が次々と来たが・・・・・。ネット界隈は、その知らせに色々とカオスになっていた。 334:184(向こうの世界の作者の同位体) あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛※体の穴という穴から血を吹き出しながら憤死中 335:世次郎(向こうの世界の弥次郎氏) 184-!?!? 336:Neo(向こうの世界のNew氏) 184が死んだ!このひとでなし!! 337:ハルワ一号(向こうの世界のハニワ一号氏) クッ!神崎モゲロー!! 338:ひょうが(向こうの世界のひゅうが様) おまいら落ち着け。絶望するにはまだ早いぞ。あと、考えなしに神崎モゲロというのもやめた方が良い。 339:184 ん?どういう事?※どうにか再起動に成功 340:ひょうが 生まれたのが娘なら、その子はフリーだ。頑張れば、文字通りお嫁さんに出来る。 問題は神崎提督で、その場合はお義父さんになるから、モゲロとか言うのは慎むべきだ。 だから皆の衆、最後まで希望を捨てるな! 341:184 340 貴方は神か!! 342:ツゥ!ヘァ!(向こうの世界の トゥ!ヘァ!氏) あ、でも男か女かは五分五分だろうから、 340の意見は画餅になる恐れも・・・ 343:184 342 敢えて考えなかった事を書き込むなんて!!阪神ちゃん共々シベリア送りだー!!(憤怒) 344:ツゥ!ヘァ! 343 アイエエエ!シベリア!?シベリア送リナンデ!?!? 345:世次郎 343 なんでや!阪神関係無いやろ!! とまぁ、こんな感じの悲喜こもごも(大本営発表)が展開された物の、最終的には暖かくお祝いする流れとなった。 現在彼女達は、産休及び育休を取得中で有り、軍務から離れている。 389: 194 :2020/09/17(木) 19 22 04 HOST ai126213028071.77.access-internet.ne.jp 辻「それはそうと、しま・・・神崎提督。奥さん達の傍に居なくて、大丈夫なんですか?」 山本「確か育休中だったか。傍にいてやらなくていいのか?」 神崎「いや、その皆に今回の宴会に行って来いって押し切られてな・・・」 近衛「押し切られた?」 神崎「・・・戦争の後始末に神崎島での政務、更に様々な交渉とかなり立て込んだ上に育児まで加わって、かなり一杯一杯だったんだ・・・」 神崎「で、かなり疲弊していたのを心配されてな。一旦仕事や育児から離れて、心身共にリフレッシュしてこいって事で、送り出されてきたんだ」 東条「まぁ、いきなり十人もの子供の父親ですからね。それは疲弊しますよ」 山本「自業自得ともいえるけどな。で、嶋田。他の娘達はどうしてるんだ?」 神崎「・・・・・大和達の妊娠が発覚してから、『特別手当(意味深)』の支給を巡って争いが激化しててな。調整役の吹雪と大淀も、頭を抱えている状態なんだ」 そう言ったと同時に、場の空気の変化を敏感に感じる神崎提督。 他のメンバー達の顔を見ると・・・・・、何とも微妙な顔をして神崎提督を見ている。 山本「・・・・・嶋田。やっぱりもう一度貴様に言っておく。一回モゲロ」 神崎「ちょ!?」 辻「ええ。本当に一回モゲて、世界中の男達にお詫びするべきですねぇ・・・」 東条「・・・・・傍から言わせてもらうと、贅沢過ぎる悩みですよ。やはりモゲるべきかと」 近衛「『英雄色を好む』というにも、限度が有りますからね。一回モゲときましょう」 神崎「皆色々と、言い過ぎだぁぁぁぁぁ!!?!?!?!?!」 神崎提督の絶叫に、場は爆笑の渦に包まれる。 理不尽極まりない戦争を挑まれながらも、それを蹴散らして再び勝ち取った平和。 これがいつまでも続く事を、ここに居るメンバー達は願ってやまなかったのだった。 かの国は如何にして考えるのを止めて、手の込んだ自殺をするに至ったのか END 390: 194 :2020/09/17(木) 19 22 35 HOST ai126213028071.77.access-internet.ne.jp 以上です。両ルート共通のエンディングとなりました。再び平和が訪れた戦後のとある一日でしたが、如何だったでしょうか? それと劇中にて、各コテハンの同位体を出演させていただきました。事後報告ですが、ご容赦の程を(汗) 大和達の子供ですが、性別の方は皆さんのご想像にお任せします。どちらにせよ、可愛らしい子供達なのは間違い無いでしょう。 そして、神崎提督は一度モゲるべき。はっきり分かんだね(非道) そういう訳で、短編ネタと言いながら長編ネタとなったこのシリーズですが、少なくとも本編はこれで終了とさせていただきます。 降伏ルートでも書きましたが、これ以降の展開は銀連神崎島本編と殆ど変わらないでしょうから、書く事が無いという(滝汗) まぁ何か思いついたら、外伝の形で何か書けたらとは思います。 それでは、また別の作品でお会いしましょう。 wiki掲載は、自由です。 420: 194 :2020/09/18(金) 08 06 10 HOST ai126213028071.77.access-internet.ne.jp 最後に、修正要請を。 388 誤 ツゥヘァ 正 ツゥ!ヘァ!(二か所あるので、二か所ともお願いします) wiki掲載時に、修正をお願いします。
https://w.atwiki.jp/teitoku_bbs/pages/3164.html
431 :影響を受ける人:2015/06/07(日) 22 30 44 この作品にはTS要素が含まれています。 オリキャラ化が含まれています。と言うかオリキャラが出てきます。 最低系である最強要素があります。 それでも良い、という方のお読みください。 提督憂鬱×ストパン+零 第六十四話 ―黒雲来たりてⅨ― 切り札の大型砲。 艦載砲を改造して作り上げた改造砲塔。 口径は45口径41cm・・・元々紀伊型戦艦に搭載されていたが、夢幻会が「この世界において、戦艦の高火力はぜひとも欲しい。」という意見により、大砲製造などにか関わっていた人員を派遣したおかげで50口径41cmの開発が早期に終わり、早々に余ってしまった。 本当はそのまま破棄する予定であったのだが、艦体派ともいうべき堀井大将により保存されていた。 短期間で作り上げたせいで装甲は皆無。 列車砲にする予定もあったが、そんな余裕は無かった。 固定式でも上下に俯角が取れるだけでも有り難い。 現地改造により、無理やりだが旋回も可能だ。 「よぉし! もうちょい右だぁ!」 「「「うっす!」」」 駆逐戦車で無理やりけん引して砲台を動かす男達の横で、目標座標に向けて俯角を計算する兵士がハンドルを操作している。 『目標、射撃予定地まで、およそ二十分。』 「よぉし。そんなもんだなぁ!」 スピーカーから音声が聞こえてくるが、男達は無視して予定の範囲に砲弾を叩き込むために急ぐ。 「俯角はこんなものか・・・」 俯角を調整していた兵士は、そのまま天高く伸びる砲身を見上げる。 既に砲弾はセットされており、ここから見える三つの砲台もすでに準備は完了している事だろう。 最初の射撃で二門が射撃を叩き込む。 続いて二門が行動を鈍らせた目標に叩き込む予定だ。 チャンスはそう多くない。 艦船ならば平行移動するなど、移動しながら射撃できるだろう。 しかし固定砲となるとそれは出来ない。 クロスファイヤーポイントを設け、そこに誘い込まないと当る事は無いだろう。 ましてや相手は高速で移動する。 小口径で大量に打ち上げる高角砲でさえ、直撃させるのは難しいのだ。 大型砲であるこいつを直撃させるのは夢物語でしかない。 ただ“オニグモ”の出現が遅かったお蔭で、ある程度のデーター収集が出来たのは有り難かった。 それに基づいて調整したので問題は無いだろう。 兵士は戦車での調整を指揮していた男に近寄って声をかける。 「彼女達の状況は?」 「うぅん? 今のところ無事みたいだなぁ。」 「そうですか。混戦だと聞いていたので・・・」 「この作戦で抜擢された腕利きの部隊だぁ。問題ねぇさ!」 「ガハハハハ!」と豪快に笑う男に苦笑しつつ、兵士は持ち場に戻った。 空を飛べない自分は、出来うることが限られている。 その中で奮闘するのだ。 ――――― 北郷章香の指示により、“オニグモ”に徹底的に破壊された陣地救援に舞い降りた美緒達は燃え上がる陣地の惨状に息を飲んだが、すぐに行動に移った。 既に戦場の惨劇などは前線で見慣れている。 悲しい事ではあるが・・・慣れてしまっていた。 ホバリングしつつ負傷者の運搬、残骸の撤去等を行うのが仕事。 432 :影響を受ける人:2015/06/07(日) 22 31 14 しかし学兵の中で舞い降りていないのが一人だけいる。 弾薬係の大久保小毬だけ、上空で待機していた。 背中にしょっている弾薬運搬箱にはまだ弾薬が入っていたし、燃え上がる陣地に降りて引火したら目も当てられない。 その為、別の弾薬係と合流して北郷隊を支えている。 それとは別に、美緒達は小毬を連れてこなくてよかったと思っていた。 いかに慣れてしまったとはいえ、惨劇の現場を見るのはやはりキツイ。 燃えている人間を見るなど、この年代の子供にっとって悪影響が無いわけが無いのだから。 「誰か! 誰かいませんか!」 「声を出さなくても良い! 音を鳴らせ!!」 美緒は若本徹子と共に地上スレスレを飛行しながら呼びかける。 「もう、いないのかな?」 「そうだと思いたいな・・・」 会話しつつも視線は地上で動くモノを逃がさない様にせわしなく動く。 別の場所では醇子と飯島凛が捜している。 くまなく、根気よく捜し回り、もういないと判断した二人は集合場所に定めた野戦病院に向かう。 高射砲陣地から離れた場所に設けられた野戦陣地には、沢山の負傷兵が集められていて治療を待っている。 帰途に移っても負傷者を見逃さない様にゆっくりと飛ぶ。 「・・・なぁ。」 その途中で美緒の方に視線を向けずに徹子は話しかけた。 「なに?」 「ええっとな・・・」 普段の彼女からしたらもどかしい感じで、何とも言えない。 それでも勇気を振り絞って美緒の方を向いた。 「お前、大丈夫なのかよ。」 「えっと・・・ なにが?」 「なにがって・・・ 早良先輩の事だよ!」 思わず声を張り上げてしまい「しまった~」と内心で焦ったが、美緒はそんな事に気付く事は無く少しだけ俯いた。 「正直に言うと・・・ まだ後悔はしている。」 「そうか・・・ でもよ。遺言書で・・・ その・・・」 「確かに先輩は「自分を恨め」って言っていたけど、自分にはできない。 だって、感謝する事もあるから・・・」 美緒は悲しそうに微笑む。 「確かに先輩は自分を助けて死んでしまった。 でも、助けてくれた事は感謝しているんだ。 それに今思えば、今まで訓練の合間にかけてくれた言葉は自分の中に残っている。 先輩の教えは、しっかり残っているんだ。 だから恨まない。」 徹子にはわかった。親友だからわかった。 美緒は、自分が思っていたよりも強く、そして前を向いていると。 だから小さな声で「そうか。」とだけ言う。 悩んでいるのはもう自分だけ。 最初の頃に「言わなければいい。」とケリを付けたはずなのが、早良ミチルの死により再び悩みが出てきた。 どうすればいいのか? もし、安易に能力を発現すれば・・・ (美緒達を巻き込んで殺しかねない。) そのぐらい危険な能力だとしっている。 僅か1分のみの開放で、その場にいた試験管全員を半殺しにしかけた能力。 制御するために努力したが、それでも封印するしかなかった。 どうすればいいのか、まだわからない。 ほどなく二人は醇子達と合流し、“オニグモ”を追って飛び出す。 433 :影響を受ける人:2015/06/07(日) 22 31 47 救援の御礼として墳進砲を貰ってしまったが、火力が欲しいので丁度良い。 基地と連携できる陸戦ウィッチとは違い、積載量が小さい空戦ウィッチではこういった武器の確保は重要だ。 素直に御礼を言ってそれぞれ一本ずつ抱えていく。 「間に合いますかしら?」 「どうでしょう・・・」 重量物を抱えて多少速力が落ちているし、“アホウドリ”に負けない速度を誇る“オニグモ”。 普通に考えれば追いつけるわけが無い。 しかし、それは杞憂だった。 かなり先に進んでいると思われた敵は、先程の奇襲を警戒しているのか遅い速度で飛行していた。 『救援は終了したのか?』 あちらもこちらを認識したのか、章香の声が通信機から聞こえてきた。 「はい。」 「ついでに墳進砲もいただいてきました。」 美緒が答えると、見えるように徹子が憤進砲を大きく振るう。 『ほう、それは良いな。 だが少し待ていてくれ。もう少しで 予定地点 だ。』 「「「「!?」」」」 その言葉を聞いた四人は顔を見合わせると、大急ぎで上昇する。 しかし視線は上空ではなく地上、見つめる先には目立つ塗料で書かれた線があった。 その線こそ、改造大型砲の射程を示す線。 “オニグモ”が戦に到達するその前に、章香達は憤進砲で射撃をして加速を誘発させる。 ここからは見えないが、すでに大砲は射撃していると思う。 一時的な加速しかできない“オニグモ”の加速が終了し、速力が落ちる寸前に命中する・・・はずだった。 前に進んでいた“オニグモ”は、今度は足を思いっきり開いてブレーキをかけ、めくれ上がるくらい足を前方に向けて振り、 急 速 後 退 を掛けた。 降ってきた砲弾はむなしく地面を直撃し、大量の土砂を巻き上げるに終わった。 以上です。 誰が 単純に 仕留めさせる と言った?
https://w.atwiki.jp/teitoku_bbs/pages/3141.html
879 :影響を受ける人:2015/01/18(日) 22 15 36 この作品にはTS要素が含まれています。 オリキャラ化が含まれています。と言うかオリキャラが出てきます。 最低系である最強要素があります。 残虐な、流血の表現があります。 それでも良い、という方のお読みください。 提督憂鬱×ストパン+零 第四十五話 ―墜ちる空Ⅶ― 江藤敏子、北郷章香が指揮する部隊は合計8部隊。 早朝から午前中は下田隊A・B両隊が。 午前中から正午を跨いで午後までは狐火隊と狸釜隊が。 午後から暗くなるまでは水蛇隊と淵猿隊が。 そして夜戦部隊に旗本隊。 以上で組まれている。 この部隊運用は殆ど休みなしに動ける半面、休息がかなり重要となっている。 最も忙しいのは整備班だが、部隊が集まって人員数が増えたことによりこちらも何とかなっている。 通常戦闘機部隊は基本的に昼戦しかしないが、忙しいのには変わりがない。 しかし防御が完璧に出来るウィッチに比べ、損耗率は高いと言えた。 機体の補充にしても通常戦闘機部隊の機体は難しい。 大車輪で生産設備を整えているらしいが、大きな機体であるのには変わらない。 むしろ小さめのストライカーの方が、補充がしやすい。 発動機こそかなり特殊ではあるが、生産性重視の設計なので一昔に比べれば雲泥の差だ。 夢幻会主導による規格共通化運動の効果が、十分に発揮している証拠と言える。 リベリオンとの共通化を推進しており、足りない部品は輸入で補っている。 武装面でもブローニングの銃器が人気を博していて、扶桑製20mm機関砲と相まって前線で多用されている。 一部の企業ではライセンス生産を行い始めたともいう。 整備関連の話はここまでにしよう。 最後に特務隊だが・・・基本的に彼女等は朝から晩まで出撃している。 “アホウドリ”が現れたら出撃としているのだが、戦闘開始から今まで出会う敵集団には必ず“アホウドリ”が存在しているという状況。 休みなど殆ど無いと言っていい。 敵は以前の攻撃密度で襲ってはこなかった。しかしながら “休み無く襲撃する”と言う行動はまるで変わらない。 弾薬補給係は以前よりも沢山弾薬を持って行かねばならず。 足りなくなって後退する時もあった。 そんな中で“アホウドリ”のみを標的にした特務隊の評価は・・・二分されている。 一日目と二日目の出撃で判明したのは、どの“アホウドリ”も全く違う部分に核を保有しているという事だ。 大体は胴体にあり、前後か中央部を見ればいいのだが、捻くれた様にエンジンを模した部分に核がある奴までいた。 最初は移動させてかわしているというのが上層部(主に夢幻会)の予想であったが、まだましな状況とわかり、ホッとしている。 しかし現場の兵士にとってはまったく嬉しくない。 いくら弱点がわかったと言っても、“アホウドリ”の火力は変わらないからだ。 一騎当千の猛者がいるのならともかく、大体は普通のウィッチ。 戦法は射撃部分を破壊しての皮むき戦法だ。 “アホウドリ”は名うての高速の敵。 前方に回るのも一苦労で、まずは足を止めねばならない。 特務隊は、弱点は教えてくれるが攻撃には参加してくれない、と言うのが不満だと現場からすでに上がってきている。 それを何とか処理するのが江藤と北郷だが、戦場を駆け巡っている美緒達はすでに覚悟していた事実でしかない。 三日目のこの日も最寄りの基地に降り立ち、整備と弾薬を受け取るために待機場に向かっていた。 「はぁ・・・」 「坂本、疲れたか?」 880 :影響を受ける人:2015/01/18(日) 22 16 10 先頭にいたミチルが、気遣うように振り返る。 振り返ると自然と歩みを止めるので、通路の端に寄って置く。 少しフラフラとしている美緒を彩子が支え、十香がちょっと広い美緒のオデコに手を当てる。 「ちょっと熱があるかしら。」 「は、い・・・ 少し、目と頭が・・・」 「魔眼行使をずっと、だからね。」 「冷却用の術符でも貰うか。」 特務隊の大事な戦力であり、高性能な透視能力を持つ美緒を大事にするのは当たり前だ。 ミチルはそのまま三人と別れて交渉に向かう。 お客さんである自分達は、いちいち許可を貰わないといけないのだ。 残った三人はそのまま待機室に向かう。 そして扉を開けると一気に注目が殺到し、美緒に気が付くと何人かが睨むような顔つきになる。 気まずい雰囲気の中、三人は隅の方に移動して美緒を横にする。 「ちっ・・・」 小さいが、舌打ちが聞こえてきた。 彩子はすぐに音源に顔を向けるが、誰も視線を合わせない。 先程まで扉越しに談笑が聞こえていたのに、今は誰も話さない。 まだ三日・・・されど三日・・・ 美緒達特務隊の特殊性は、どの部隊にも把握されている。 大体は軍人としての心構えが出来ているからとやかくは言わない。 しかしさっさといなくなってしまうのは気分が悪い、だから無視をすることで対応するのだ。 しかし、学兵達は違った。 「おい。」 「なにかしら?」 待機室の重苦しい空気を無視して美緒の方に向き直した彩子であったが、傍に寄ってきた学兵の剣呑な雰囲気に視線のみを向ける。 「アンタ等。例の特殊任務部隊だろ。」 「そうだけどさ。貴方達何さ?」 答えつつ様子をうかがう。 俯いている学兵は、数人の仲間と共に三人を囲むように包囲している。 ただ事ではない事態に他の者が動こうとしたが、何事かささやかれると動きを止めた。 後ろは加勢に来ないようだ。 俯いていた学兵が顔を上げると、憤怒に彩られている顔を向けてきた。 「どうして攻撃してくんなかったんだよ!!」 「どういう事かしら?」 怒鳴り声で半ば眠りかけていた美緒が目をさましたが、十華は問いかけながら抑え込むようにして寝かせ続ける。 「アンタ等の任務は、あの“アホウドリ”をどうにかする事だろ!?」 「・・・」 「どうして攻撃してくんなかったんだよ!」 「そうよ! そうしていれば・・・あの子は!」 怒りに任せ、怒鳴り声で攻め立てる学兵達であったが、それを受けている彩子たちはかなり冷静に見ていた。 要約すればこうだ。 美緒達がマークした“アホウドリ”を彼女達が攻撃したらしい。 美緒達はそのまま二体目もマーキングした。そこまではいい。 しかし美緒達の任務上、次の指示があればそこから離脱しなければならない。 そんな事を知らなった学兵達は、突然去っていく美緒達に驚いた。 隊長陣も驚いたらしいのだが、本部に問い合わせて説明を受けたという。 軍人として納得しつつ、苦虫を潰したような思いで攻撃を続行する。 しかし学兵達はそうもいかなかった。 簡単な説明では納得できなかったのだ。 どこの戦場も人手不足。戦力の集中は基本的なものだが、上手くいかないのが常。 そんな中で被弾した子が出た。 881 :影響を受ける人:2015/01/18(日) 22 16 41 肩から左腕を完全に損失したという。 彼女は左利きであり、持っていた銃が暴発して墜落した。 何とか地上に激突する前に回収でき、呪歌使いが回復を促進する歌を歌い、数少ない回復魔法を扱えるウィッチがいたこともあって幸い一命を取り留めた。 だが、暴発の影響は大きく。火傷の後が酷いという。 その話を聞いていた美緒は、申し訳なさで胸が張り裂けそうになる。 自分だって攻撃に参加したかった。でも出来ないのだ。 そう言い訳を言えれば良かった・・・しかし、美緒はそこまで無責任な子ではない。 「だから、私達が悪いって?」 「そうだ!!」 涙を流しながらも睨む学兵に、彩子は「ハッ!」というと相手にしていられないとばかりに無視を決め込んだ。 「おい! こっちを見ろよ!」 怒り心頭の学兵はその態度が気に入らず、胸倉をつかもうと前に出たが十華が邪魔をするように立ちふさがる。 「貴方達の怒りはわからないでもないわ。でも、私達にどうしてほしいの?」 学兵達は黙り込む。 彼女達だってわかっているのだ。原因はほかならぬ自分達だと。 しかし幼い彼女達は、どこかに怒りの捌け口をもめなければならなかった。 求めずにはいられなかったのだ。 だから肯定しようと大きく口を開けて、強制的に閉じられた。 「ぐぉぉいぃぃ・・・何やってんだぁ?」 「「「「「「真嶋、副隊長・・・」」」」」」 巨漢の大女がいつの間にか背後にいた。 その後ろにはミチルが仏頂面で立っている。 十華と彩子は、凄まじいインパクトのある真嶋志麻の登場に面食らって呆然としていた。 学兵達は自分達の上司の登場に道を自然とあける。別に彼女自身が怖いわけでは・・・無いと思う。 唯一面識のある美緒は、重い体を起こしてながら志麻を見上げた。 「真嶋さん・・・ここにいたんですか?」 「おうよぉ! なぁんか、大変な任務らしいじゃねぇか!!」 そう言いつつ学兵を解散させ、立ち去る後ろ姿を見つつ志麻は頭を掻き毟る。 「わりぃな。俺の部隊じゃなかったんだぐぁ、それでも仲が良くてなぁ・・・」 「いえ。それなりに予想はしていましたから。」 そう言いつつも暗い表情の美緒に、ミチルは冷却符をオデコに貼り付けて休む様に言う。 戦場は理不尽に満ちている。誰も予想は出来ない。 以上です。次は徹子ちゃん達に視点を移したい。 更なる戦場を! さらなる激戦を!
https://w.atwiki.jp/teitoku_bbs/pages/233.html
372. yukikaze 2010/03/02(火) 19 17 37 お待ちかね。ユトランド沖海戦。 1916年5月31日から6月1日に行われたユトランド沖海戦は、第一次大戦における英独最大の艦隊決戦であり、 この海戦に敗北を喫したドイツは、建艦計画に大きな混乱を生じさせ、結果的にイギリスに大きな福音を与えることになるのだが、 本稿では、ユトランド沖海戦に参加した遣欧艦隊の行動を元に、本海戦を俯瞰したいと思う。 ・ 海戦の推移 1916年5月31日、遣欧艦隊第一戦隊「金剛」「比叡」(司令長官:秋山真之中将)を含む、イギリス巡洋戦艦部隊(司令長官:ビーティ中将)が、 停泊地であるフォース河河口を抜錨した。これは、暗号解読により、ドイツ艦隊が全力出撃をしたことが判明したためであり、イギリス側は、 日露戦争の時の日本海海戦の如く、艦隊決戦で圧倒的勝利を収めることで、戦争を有利にしようと考えていた。 同日14時38分、両軍の索敵部隊が、両軍の前衛艦隊の中核である巡洋戦艦部隊を発見したことにより、両艦隊は急速に接近。 15時30分には、英国巡洋戦艦部隊が、南東に進路を取るドイツ巡洋戦艦部隊(司令長官:ヒッパー提督)を視認することになる。 この状況に、ヒッパー提督は、予てからの作戦通り、ビーティをドイツ主力艦隊(司令長官:シェーア中将)の方向に誘導すべく、進路を変更。 ビーティも、敵前衛艦隊を早期に撃破することによって、艦隊決戦を有利にしようと、追撃を開始すると共に、約5キロほど離れた地点にいた、 秋山提督率いる戦艦部隊(金剛級2隻、QE級4隻)にも追撃をするよう、信号旗を掲げている。 しかしながら、距離と濃霧による視界不良により、秋山提督の旗艦である金剛は、この信号旗を確認するのが遅れ、 進路変更するのに2〜3分ほど時間を空費することになる。 実は艦隊間の連絡の悪さについては、演習でも度々問題となっており、秋山提督はビーティ提督に 「信号旗だけでなく、灯火信号や電信での伝達も行うことで、伝達の不備を解消するべきである」と主張していたのだが、 ビーティ提督はドッガー・バンク海戦の時の自らの失態をあげつらわれたように感じたらしく、 秋山提督が主張すれば主張するほど、かたくなに信号旗のみの使用に拘ったとされる。 だが、このツケはあまりにも大きく、本来ならばドイツ巡洋戦艦5隻に対して、イギリス側は11隻と 2倍近い戦力差で戦えた筈が、序盤に於いて、イギリス側が戦えたのは6隻だけと、数の優位性を失わせることになる。 15時45分、14キロの距離でほぼ平行となった体勢で、両軍による砲撃戦(俗に第一次戦闘と言われる)が開始されることになる。 しかし、この時もイギリス側の通信体勢の不備が祟って、本来ドイツ巡洋戦艦5隻全てに砲撃を与えるはずだったのが、不均等に分散してしまい、 結果としてドイツ二番艦の『デアフリンガー』が、全く砲撃を受けることもない状況となっている。 このことが、『デアフリンガー』に、余裕を与えることになり、以後、同艦が落ち着いて射撃指揮を行うことが出来る要因になるのだが、 イギリス側にとって更に不運だったのが、イギリス側が西に位置したことで夕日にはっきりと照らされていたのに対して、ドイツ側の艦影は夕霧と、 何よりも敵であるイギリス駆逐艦隊の煤煙によって上手く隠されてしまい、ドイツ側が次々と命中弾を与えるのに対して、イギリス側は中々与えられない状況になっていた。 ビーティ提督は余程頭に来ていたらしく、駆逐艦隊に「砲戦の邪魔をするな」と信号を送ったほどであったが、16時3分には、彼の怒りをあざ笑うかのように、 イギリス艦隊最後尾を走っていた『インディファディカブル』が『フォン・デア・タン』によって沈められてしまうことになる。 しかし、この時既に、『フォン・デア・タン』の命運も尽きようとしていた。 信号確認に遅れ、本隊よりもやや後方に位置していた秋山艦隊が、16時にドイツ艦隊に向けて砲戦を開始。 そして、秋山提督は、麾下の戦艦部隊に、射程に入り次第、敵最後尾艦を狙い撃つように指示したため、 最後尾を走っていた『フォン・デア・タン』は、時間がたつごとに撃たれる砲弾が多くなると言う、悪夢としか言えない状況に追い込まれることになる。 しかもたちの悪いことに、秋山麾下の戦艦部隊は、それぞれの艦の弾着観測を容易にするべく、主砲弾に各戦隊固有の色として決めていた染料を封入していたため、 「どの艦がどの場所に撃った」ということが分かり易くなっており、その結果、『フォン・デア・タン』の被害は加速度的に広がってしまい、 最終的には、砲戦開始8分後の16時8分に、比叡の射撃によって第三砲塔の弾薬庫を貫かれてしまい、爆沈することになる。 373. yukikaze 2010/03/02(火) 19 24 14 (その2) このように、状況が不利となりつつあるヒッパー中将だが、シェーア中将率いる本隊が急速に接近しつつあることを知ったことで、 囮作戦を成就させるために、艦隊速力を増速させて、さも退却をするかのように行動する。 これを見てビーティ提督は、敵艦隊が敗走していると判断し、麾下全艦隊に追撃命令を伝達。 『クィーン・メリー』爆沈と引き替えに、『モルトケ』を『ヴァリアント』の射撃で爆沈に追い込み、 このままでいけば、ドイツ巡洋戦艦部隊は遠からず全滅できると思われたが、 16時30分、イギリス偵察艦隊がドイツ艦隊主力を発見したことによって、状況は一気にドイツ側有利となる。 この時のドイツ側の戦力は、無傷のド級戦艦16隻に、傷ついたとはいえ戦闘力をまだ持っているド級巡洋戦艦3隻。 対するイギリス側は、数こそ11隻あったものの、既に旗艦ライオンとタイガーが無視できない損傷を受け、 充分な戦闘力を持つのは秋山艦隊所属の6隻でしかなく、3倍以上の戦力差が生じていた。 この状況に、ビーティはジェリコーの本国艦隊に敵を引きつけるため北への回頭を決めたのだが、この時一斉旋回頭(各艦が互いの位置を変えることなく、その場で180度回頭すること) ではなく、逐次回頭を執り行ったこと、更に偵察艦隊の報告がビーティの元に届くのが遅れ、報告が到着したときには、ドイツ主力艦隊に危険なほど近づいていた状態であったことから、 後続の秋山艦隊が回頭を終わる頃には、既にドイツ主力艦隊の射程圏内に入る状況になっていた。 その為、秋山提督は、ドイツ主力艦隊を撃つことが出来る位置にいた『マレーヤ』と『ウォースバイト』に、主力艦隊の戦闘艦に砲撃を集中させるよう命令すると共に、 未だ牽制の役割を果たそうとするドイツ巡洋戦艦部隊に対して、砲撃を命ずる。(第二戦闘) この時の砲撃戦で、イギリス艦隊で最も被害を受けたのは、『マレーヤ』と『比叡』で、『マレーヤ』の場合は、ドイツ主力艦隊からつるべ打ちに主砲を撃たれたことで、 後部砲塔2基が使用不能になった他、ケースメイト式副砲群に砲弾が直撃した際、弾薬が誘爆を起こしてしまい、右舷副砲群が全滅し、大火災を起こすことになる。 幸い、機関に損傷がなかったことと、重油専焼缶の特性から、最大速度を維持するのが容易であったことから、かろうじて離脱に成功することになる。 また『比叡』は、主要防御区画こそ貫かれなかったものの、それ以外の部分を『デアフリンガー』によって打ち据えられ、更にマレーヤと同様に副砲群が誘爆により消失し、 その穴をドイツ水雷戦隊に狙われて被雷し、大破の判定を受けることになる。 余談だが、仮に金剛原案のままの水雷防御であったなら、『比叡』は確実に撃沈されていたと言われており、評価が今ひとつ高くなかった金剛級の面目を大いに施すことになる。 かくして、『マレーヤ』と『比叡』を戦線から離脱させざるを得なくなった秋山艦隊であったが、ドイツ側もまた、旗艦である『リュッツォー』が大破し、一旦離脱には成功したものの、最終的には浸水が止まらずに自沈。 『デアフリンガー』『ザイトリッツ』も、それぞれ砲塔を一基失うと共に、度重なる打撃による浸水の影響で、速度も23ノットがやっとという状態であった。 その為、ドイツ側としては、最早これ以上の継戦は不可能ではないかという声が上がったのだが、イギリス巡洋戦艦部隊も戦力が半減しているという状況(実際、ビーティが指揮する部隊で、まともに打ち合える戦力は『プリンセス・ロイヤル』のみ)と、イギリス主力艦隊到着までまだ時間があるという誤断から、シェーアは、一旦避退したヒッパー艦隊と合流した後、イギリスの残存巡洋戦艦部隊を撃滅することを決定する。 かくして、陣形を整え、秋山艦隊の進んだ方向に進路を進めたシェーアは、度重なる被弾によって、船速が20ノットに衰えていた秋山艦隊を捕捉。(金剛は機関全速が可能であったが、被害を受けたQE級の船速に合わせる必要があった) このまま一気に秋山艦隊を撃滅しようとした矢先、信じられない光景を眼にする。 18時10分。イギリス主力艦隊が、シェーア艦隊の前をふさぐように、重厚な布陣を整えていたのである。 374. yukikaze 2010/03/02(火) 19 26 47 (その3) ジェリコーが理想的とも言える形で、ドイツ艦隊の正面に立ちふさがることが出来たのは、一つの理由があった。 彼は大兵力を運用する場合に於いて、最も重要なのは敵味方の正確な位置を把握することであると考えており、あらかじめ、決戦予定海域とされる部分を碁盤の目のように区切り、 その一つ一つにアルファベットと数字を組み合わせた名前を付け、双方がどの場所にいるかをわかりやすくしている。 無論、主力艦隊は、奇襲効果を出すために、敵と蝕接した艦以外は厳重に無電封鎖していたが、敵と蝕接した艦からの無電と、更にイギリス本土の陸上施設からの情報により、ほぼ正確な位置取りが出来ていた。 その為ジェリコーは、17時30分に、これまで並列陣形で進軍していた麾下艦隊に、東方向に向かいながら単縦陣を組むように命令。更に第三巡洋戦艦部隊には敵艦隊の後方に回り込ませ、包囲殲滅を図ろうとしていた。 (ドイツ艦隊の正面から東側を本国艦隊が、南側を第三巡洋艦戦隊、西側を秋山艦隊でふさぐというもの。 尚、ビーティの部隊は被害が甚大であったことから、戦闘力を有していた『プリンセス・ロイヤル』と『ニュージーランド』以外は戦場から離脱させ、残った二艦も秋山艦隊に合流させている) 何分大艦隊であるため、六列である並列陣を、一本の単縦陣に組み替えるのには、混乱が生じたものの、イギリス将兵はジェリコーの期待に応え、17時55分には陣形変更を完了。 ジェリコーはすぐさま南東方向に艦隊を機動させ、18時10分には、予定通りドイツ艦隊の頭を抑えることに成功したのであった。 この事態にシェーアは、すぐさま不利を悟り、水雷部隊の援護の下、急ぎ各隊に回頭を命じて避退しようとしたが、 その前にイギリス艦隊の猛射を受けて、『ケーニッヒ』『グロッサー・クルフェスト』『マルクグラーフ』が次々と被害を受けることになった。 特にドイツ側にとって厄介だったのが、イギリス艦隊が自分たちの回頭に合わせて進路を南へと取ったことによって、同航戦の状態に追い込まれてしまい、 時間がたてばたつほど、戦力がすりつぶされる危険性があったことである。 その為、シェーアは一旦西側に進路を取り、時計回りに進んで、イギリス主力艦隊の後方を突っ切ろうと決断し、南西方向に回頭。 これを見て、主力艦隊の頭を抑える行動と誤認した第三巡洋戦艦戦隊との間で激しい砲撃戦が生じ、『デアフリンガー』『ザイトリッツ』が更に被害を受けるも、 第三巡洋戦艦戦隊旗艦である『インヴィンシブル』を爆沈させる事に成功。第三巡洋戦艦戦隊は混乱を起こすことになる。 そしてこれがシェーアの評価を、結果的に悪化させることになるのだが、彼はこの時の混乱を利用して、予てからの計画通りに南西方向に回頭し、 更に時計回りに回頭することでイギリス主力艦隊の後方に出ようとしたところを、今度は秋山艦隊によって頭を抑えられることになり、 これまで最も奮戦していた『デアフリンガー』が『金剛』によって、遂に沈められ、『ザイトリッツ』も『プリンセス・ロイヤル』の砲撃によって大破漂流(後、自沈)し、 ドイツ巡洋戦艦部隊は一隻残らず全滅。更に先ほどイギリス艦隊によって損害を受けていた『ケーニッヒ』『マルクグラーフ』も 『ウォースバイト』と『ヴァリアント』によって沈められるという被害を受けることになる。 375. yukikaze 2010/03/02(火) 19 30 38 (ラスト。駄文続けて申し訳ないです) 勿論、秋山艦隊もただでは済まず、『ウォースバイト』と『ヴァリアント』、『プリンセス・ロイヤル』『ニュージーランド』は軒並み大破し、 秋山も自艦隊の離脱を命じざるを得なくなったのだが、秋山がドイツ艦隊を拘束したことと、同艦隊の位置を知らせたことで、ジェリコーはシェーアの意図を察し、 主力艦隊を一斉旋回頭させ、艦隊を反時計回りに機動させることによって、シェーアの艦隊の頭を再び抑えようとした。 この機動は図に当たり、シェーアが再び東に向けて進路を取った19時5分には、再びジェリコーの艦隊が、シェーアの艦隊にT字戦法で砲戦を開始。 シェーアは再び南西への回頭を命じ、続いて、先頭にあった第三戦隊と残存する駆逐艦部隊にイギリス艦隊の追撃を阻止するよう命じている。 この結果、『グロッサー・クルフェスト』が爆沈。『カイザー』『カイゼリン』が大破するという大被害を受けるも、何とか離脱に成功。 以後は、必死になって逃走を図るドイツ艦隊に対して、イギリスの巡洋艦戦隊や水雷戦隊による追撃戦へと移ることになる。(ここまでを第三次戦闘と称される) ドイツ艦隊にとって幸運であったのは、駆逐艦部隊の煙幕展開と水雷攻撃によって、イギリス主力艦隊の足並みが乱れてしまったことと、 イギリス艦隊の巡洋戦艦部隊が事実上壊滅していたことから、追撃戦力は巡洋艦戦隊と水雷戦隊によるものであったこと、 そしてイギリス艦隊が夜戦に不慣れであったことなどから、破滅的な打撃を受けることは免れたものの、 それでも追撃戦による被害は無視できるものではなく、戦艦では、『カイザー』『ポーゼン』『ポンメルン』を失い、 軽巡洋艦部隊も、10隻の内6隻を失い、駆逐艦も、62隻あった内、12隻が沈み、残った船もその殆どが損害を受けるという状況になっている。 一方、イギリス側も、ドイツ側の撤退の執念を甘く考えていたため、被害を受けるケースも多く、装甲巡洋艦2隻が沈められ、 第三巡洋戦艦戦隊の内、『インドミダブル』が大破するなど、予想以上の損害を受けることになる。 もっとも、それを差し引いても、イギリス側の圧倒的な勝利には変わりなく、「栄光の6月1日再び」と、イギリスに於いて喧伝されることになる。 ・ 海戦の影響 本海戦において、イギリス艦隊は、前衛艦隊である巡洋戦艦部隊(QE級含む)の内、3隻を喪失し、無事な艦は2隻しかないという被害を受けたものの、 その大半は艦隊に復帰する一方、ドイツ艦隊は巡洋戦艦部隊が文字通り全滅し、以後の艦隊行動が全く不可能とまで結論付けられる状況に陥ってしまう。 (出撃したド級戦艦部隊16隻の内、帰港後直ちに戦闘行動に移れる艦が5隻だけしかいなかったのも大きい) この大敗の報を聞いたヴィルヘルム二世は、シェーア提督を直ちに軍法会議にかけると共に、海相ティルピッツに対して 「役立たずの海上部隊は解体せよ」と発言し、ティルピッツは抗議を込めて辞任するという騒動を引き起こしてしまう。 こうした混乱は、ドイツ水上艦隊の再建を遅らせるだけでなく、ドイツ海軍そのものも混乱を生じさせ、 日英海軍が護衛戦に対応できる時間を与えることになる。 また、各国の海軍軍人が夢見た艦隊決戦において、イギリスは明確な勝利を収めたものの、 海軍軍人たちが予想したような「戦争終結」には結びつかなかった。 このことは、日本海海戦で生み出された「艦隊決戦思想」に対する有力な反証となり、 以後、各国において頭を悩ませる結果になる。 恒例の言い訳は後ほど・・・ 376. yukikaze 2010/03/02(火) 23 30 21 で・・・恒例の言い訳タイム。 まず最大の問題は「これSSか?」なんだが、実はこれ削りまくった結果によるもの。 つ〜か最初は、秋山提督とヒッパー提督を中心に書いていたのだが、あまりにも長すぎた。 ジェリコー登場までにA4が14枚というのはどういうことですか? まあそう言う訳で、SSとは違うけど、戦闘紹介という形で作ってみたと。 後、「未来知識があったとしてもイギリス圧勝じゃないのか?」と思うかもしれませんけど、 実際の戦力が圧倒的過ぎるのでまともにやればこれくらいにはなるかと。 史実海戦があまりにもgdgdだったのは、イギリスの連絡体制があまりにも悪すぎて兵力の有機的活用が困難だったこと。 まあジェリコーの場合は、艦隊を失うわけにはいかないとして、消極的にならざるを得ないのは判るのだが、 ビーティは勇敢であるのは認めるけど、艦隊司令長官としてどうよということばっかりしているし。 ぶっちゃけ、このSSでの秋山の役割って、ビーティが犯した失敗を可能な限り潰していく役割ですし。 しかしまあ・・・盛り上げる為とはいえ、史実以上に派手な殴りあいさせたなぁ。 まあビーティは冗談抜きにこれで軍歴打ち止めになりかねないけど、こいつ一次大戦終結後にろくでもないことしているから ここで軍歴終わっていた方がマシといえばマシな訳なんだが。
https://w.atwiki.jp/kancolle_ero/pages/22.html
この司令室はこんなに広かったのか。 今夜私が寝るための布団を残して、机も棚も片付けた部屋は、ひどくがらんとしていた。 明日にはこの部屋を引き払い、そして…… 「司令官、郵送の手はずは整えてきた」 艤装を全て取り外した響が、秘書役として最後の務めを終えて戻ってきてくれた。 艤装を外して水兵服だけになると、元の年相応の少女としての顔がよくわかる。 ……明日には、この子はソ連に引き渡される。 今さら何を言っても、どうわめいても、何一つ変わる事ではない。 この子の戦時賠償艦としての扱いを拒否する権限など、今の私には、わが国には無いのだ。 「最後まで、ありがとう響。もう遅くなってしまったが、君も休みなさい」 己の無力さに痛む胸を無視して、響に声を掛ける。 明日は早いのだから、という言葉を危うく口に出すところで飲み込んだ。 明日のことを、あえて思い出させることはない。 「司令官……」 いつもなら、仕事が終われば特に躊躇もなく「そろそろ戻ってもいいかな?」と自室に帰る響が、物言いたげな目でこちらを見てくる。 まさか朝まで酒を酌み交わすわけにもいくまいが、茶の一つを出してゆっくりと話してやることもできないほど片付けてしまったことが悔やまれる。 「響、どうした?」 我ながら、間の抜けた問いかけだと思う。どうしたもこうしたもあるまいに。 「司令官。……お願いが、ある」 何気ない仕草で、響が靴を脱いで畳の上に正座した。 「……」 響がお願いとは珍しいな、などとは言えなかった。 軽口で済ませてよいことではないと、その顔が告げている。 「響」 「司令官、私は明日、ソ連へ行く」 わかりきっていることを、しかし、響は胸を張って言った。 それも、連れて行かれるではなく、行くと言った。 こういう子だ。強い子だった。 だが、 「しかし、貴方もご存じのはずだ。満州で、ソ連兵が何をしたのかは」 きりきりと胸が痛む。それが意味するところと、響にそれを言わせてしまったことに。 「ああ……、よく聞いている」 「私も同じことになるだろう。彼らが戦時賠償艦を丁重に扱うとは思えない」 氷のような表情を変えることなく淡々と告げる響の言葉を、私は血が滲むほど唇を噛んで聞いていた。 響は、私の無能さ、無力さを、罵倒していいはずなのだ。 泣き叫んで、殴りつけて、この愚かな司令官を射殺してくれてもいいはずなのだ。 いっそ、響がそうしたいと言うのなら、私はそれでもいいと思っていた。 「だからその前に、司令官」 血の気の薄い響の頬に、めずらしく紅が差した。それは、怒りではなく、 「…………私を、抱いて欲しい」 予想だにしない言葉に、私は呆然となった。 そのような言葉を掛けてきた娘は何人もいたが、響はいつも冷淡だった。 妹の雷や電が私にじゃれついたり、姉の暁が私に頭を撫でられているときでも、響だけは私に直接触れることなく、常に一歩引いて私に接していた。 「貴方は、けっして私たちに手を出そうとなさらなかった。他の鎮守府にいる提督の中には、娘を手籠めにする者も少なくなかったと聞いているが、貴方は違った」 「私は君たちの命を預かっていたのだ。そんなことができるはずはない」 無論、間近に接する若い娘たちの身体に欲情をもてあましたことはある。 それでも、そんなことをすれば戦場へ送り出す彼女達の命だけでなく尊厳までも傷付けることになる。 何が何でも、私は自らを律することにした。そうし続けた。 「貴方は優しかった。でも、それゆえに残酷だった」 その私を、響は静かに糾弾した。 「残酷、だな。そうだ、私は……」 「違う。違うのだ、司令官。私の言いたいことと貴方の認識には齟齬がある。貴方が残酷だったのは、皆を戦場に送り出したからではない」 どういう、ことだ。 はらり、と。 響の瞳から一筋、美しく光るものが落ちた。 「……これほどに、貴方に胸を焦がされながら、ついぞ、抱いてもらえることもなく、乙女のまま沈んでいくことが、皆にとってどれほどにつらいか、貴方は理解して下さらなかった……」 静かに、されど血を吐くように、響は告げた。 「皆、貴方の優しさを、立場ゆえの苦悩を、それがゆえの強さを、愛していた。 恋い、焦がれていた」 こんな、もはや老いたと言ってもいいような、無能な司令官をか。 などと、言えるわけもなく、私はただただ、響の告白に曝されていた。 今、私が自らを貶めることは、私に恋い焦がれていてくれたという、今は亡きあの娘たち全てを、冒涜することになると、さすがの私でもわかっていた。 「私と、同じように……」 常に一歩引いていたこの子の態度が、姉妹たちへの遠慮だったのだと、今更ながらに気づいた。 姉妹たちや、他の娘たちの思いを代弁してからやっと、自分の思いを告げるくらいに、この子は優しいのだった。 その響をして、死んでしまった皆のことをわかっていてさえ、ああ言わせることがどういうことか。 「私の身体は、まだ男を知らない。ソ連兵にいいようにされる前に、……せめて、最初だけは、貴方に……」 最後は、蚊の鳴くような声だった。 「響……」 「私の……、一生のお願い、です……」 三つ指を突いて、まるで新妻のように、最後は口調さえ改めて、響は深々と頭を下げた。 様々なものが頭をよぎる。 この部屋に来て、そして帰ってこなかった娘たちの顔が、幾重にも、幾重にも重なる。 君たちは、私を恨んでいるのだろうと思っていた。 それは、大きな勘違いで、そして、同時に正しかった。 今、こうすることは、抱いてやれなかった君たちを裏切ることになる。 私はこれでも、君たちを愛していたつもりだ。慈しんでいたつもりだ。 それは、今目の前にいる少女とて、例外であろうはずもない。 いや、誰か一人を贔屓してはいけないと思いながら、どうしてもそうしてしまっていた少女だった。 明日には露助たちの手に落ちて穢される愛しい少女が、こうして何もかも振り捨てて頭を下げている。 済まない。 心の中で、幾多のものに頭を下げる。 最後に身体を動かしたものは、義務感や哀れみではなく、枯れたと思っていた男としての衝動だった。 愛しい女が他の男に抱かれる前に、我がものにしたかった。 頭を下げ続けていた響の身体を抱き起こし、部屋に唯一残っていた夜具の上に押し倒した。 灯火管制で裸電球に絞った傘を被せていたため、部屋の隅は夜の闇が舞い込んでいた。 その暗がりに組み伏せた小さな身体は蜉蝣のように儚く見えて、ここまでやっておきながら、思わず手を出すのが躊躇われた。 だがその薄闇の中で、響は、うっすらと、だが、決して見間違えようがなくはっきりと、微笑んでいた。 私の暴挙を受け止めるように、許すかのように、待ち焦がれていたとでもいうように。 私は、その微笑みに応えたかった。 だが、決して壊したりしないように、そっと、数え切れないほど見ても見飽きなかった赤いスカーフに手を掛ける。 後戻りできないことをしているという自戒とともに、思っていたよりも、するりとほどけた。 響の服を脱がしているのだという罪悪感に、甘い疼きが混じることが否定できない。 そうだ、長きに亘って気づくまいと目を背けていたが、私は、傍にいるこの娘の身体に、女を感じていたのだ。 感じていたからこそ、今の今まで手を出せずにいたのだ。 だが、次を脱がそうとしたとき、私は酷く間が抜けたことに気づいた。 水兵服の脱がし方が、わからない。 士官学校卒以来、水兵服を着ることもなかった自分の経歴を、この時ほど恨んだことはない。 服を揃えるのも、洗濯をするのも、皆、任せっきりだった。 こんな身近にいる少女の服の造りさえ知らずに居て、少女たちの指揮を取っていたなど。 「司令官、ひょっとして……」 戸惑っている私を見て、響がいつも通りの察しの良さで声を掛けてくれた。 まったく、私はつくづく戦術指揮には向いていない男だったというわけだ。 「済まぬ。どうやったら脱がせてやれるか、わからん……」 それを聞いて、響はくすりと笑った。 妹たちを思わせるような、邪気のない笑顔だった。 「安心した。貴方が、そういう人で」 左手を後に突いて上半身を少し起こした響は、右手を襟元に持っていき、何かを解いたようだった。 それで、襟元から下へ、スカーフに隠れていた部分が半分まで開かれた。 なるほど、こうして首が通る大きさに広げて上から被っていたのか。 「あとは、脱がせて欲しい。貴方の手で……」 是非もない。本来ならばさきほどのことも私がやらねばならなかったのだ。 裾に手を掛けて、響が身体を任せやすいようにゆっくりと上げていく。 白い腹がだんだんと露わになっていく。 さらにその上までたくし上げたところで、下に身につけている真っ白い胸当てが覗く様は、途方もなく淫靡だった。 響の頭が襟を抜けるときに、響の視線が遮られた瞬間に、そこへ目が行くのを止められなかった。 胸当てとはいっても、サラシと大して変わらないほどに、それが守っている胸は慎ましやかだった。 上着を脱がし終えて、その胸当てに手を伸ばそうとすると、響はかすかに身をよじった。 「その……先に、スカートを」 この期に及んで順序も何も無い気もするが、今これから男に蹂躙されようとする娘心は、せめて溢れる羞恥を後にしたいと思うのだろう。 「わかった」 スカートの造りは私にもおおよそ推測が付いた。 暗がりの中で手で探ると、左の腰の辺りに釦があり、これを外すと腰回りが広がった。 響の後腰に軽く左手を回して、彼女が腰を浮かせやすくしてから、右手でスカートを引くと、その下から胸当てと同じ色の腰巻きとすら言えない小さな布が、申し訳程度にその場所を守っていた。 これで、響の身体の線がほとんど露わになった。 胸だけでなく、腰周りも細く、これから蹂躙することが許されぬほどに幼い身体だった。 艦娘たちは、その役目を背負った時から老いることが無くなる代わりに、成長することも無くなる。 男を受け入れることができるほどに、成長しているはずもなかった。 その無垢な身体を前にして、私は恥知らずなことに、途方もなく劣情を催していた。 ただの子供の身体ではない。 私が長らく、愛しく思い続けてきた、少女の身体だ。 堅く絞っていた褌の中が、ひどく窮屈になってきた。 今すぐにでも、響の身体を覆う布を全て剥ぎ取りたくなってきた。 だが、己が願ったこととはいえ、貞操を叩き込まれた大和撫子としての響の恥じらいを無残に壊してしまうことはできなかった。 私は二度三度と、大きく息を吸い込み、吐き出して、己を辛うじて抑え込んで、響の両脚を覆い隠す黒い靴下から脱がせることにした。 少しでも後にしてやらねば、響の心に覚悟も定まるまいに。 「……ありがとう」 どうやら、その判断は間違っていなかったらしい。 指の先に微かに触れる素足の感触は滑らかで、脱がせやすかった。 ふと、右足からするりと脱がせた靴下が絹であることに気づいた。 戦時下ではまず手に入らなかったであろう代物だ。 響は、最初から私に抱かれるつもりで、目立たぬ中で精一杯着飾ろうとして、こんなものを履いてきたのだろうということが察せられた。 そのいじらしさを噛み締めながら、左足からも靴下を脱がせ取る。 見たことのなかった響の素足は、愛らしい指の先まで細く細く、大人の女性のような肉感的な色香はまだ無かった。 いや、まだもなにも、ついぞ、得ることはなかった。 ただ、美しかった。 「さすがに、これは……」 恥ずかしいのだろう。 露わになった二本の脚を、その付け根を隠すかのようにぴたりと合わせて揃えていた。 貞淑な、愛らしい仕草だった。 わずか二枚の布。 それだけが、最後に響を守っていた。 どちらから脱がしてやるべきか迷ったかが、やはり上からだろうか。 しばし逡巡していると、響がおそるおそる声を掛けてきた。 「司令官は……脱がないの?」 言われるまで、私は自分のことをすっかり忘れていた。 士官服のままで、ここまでの凶行に及んでいたなどと。 だが、響としては自分だけが裸に近い姿なのに、私がそのままではおかしいだろう。 「そうだな、済まなかった」 言われると、服はひどく邪魔だった。 身体が響を欲していて、服など早く脱ぎ去りたかった。 だが、慌てて脱げば、響を怖がらせてしまう。 焦らさぬ程度に、できるだけ悠然を装って、私は上下を脱いで褌一枚になった。 響は、そんな私をしばらく呆然と眺めていた。 「どうした?」 「司令官のお体を見るのは、初めてだから……」 そういえば、水泳訓練のときでも響は居なかったような記憶がある。 他の娘らのようにはしゃぐのを嫌っていたのかと思っていたが、今にして思えばただの強がりだったのかもしれない。 「もっと若い男の身体ならばよかったのだろうが……」 「いえ……、逞しい、ご立派な身体です」 うっとりと、響が言う。 ついぞ、愛する少女一人守れなかった程度の鍛錬に何の意味があったのかと思っていたが、そう言ってもらえるのなら僅かででも鍛えていた甲斐もあったというものだ。 今すぐにでも、窮屈になった褌を脱いでしまいたかったが、まだ駄目だ。 今でさえ、これから起こることの恐怖を抑え込もうと必死になっているはずなのに、さらに見せつけようものなら、響の心を傷付けてしまいかねない。 そして、それ以上に、私は響の裸身が見たかった。 胸当てに手を掛ける。 ぴくり、と響の身体が震えた。 いいな、と目で問いかけると、響は微かに目を伏せて頷いた。 背中に手を回し、胸当てを留めている結び目に指をかけた。 ほどく。 あっけなく、その一枚は響の身体を放棄した。 「ああ……」 どちらからともなく、ため息が漏れた。 紳士にあるまじきだが、私は凝視することを止められなかった。 暗がりの中で、その身体はほのかに白く、輝いているようにさえ見えた。 その、露わになった響の胸。 淡い、房とすら言えない小さな膨らみの真ん中に、二つの小さな蕾が、精一杯に尖って自己主張していた。 彼女そのものらしく、愛らしく、美しかった。 「小さいから……そんなに見ても……」 かすかな灯りを背にしている私の表情はわかりにくいだろうに、女の勘で視線がわかるのか。 それとも、わかりすぎるくらいに、私が食い入るように見ていたのか。 「……美しい」 思わず、そんな言葉が口から漏れた。 よもや童貞の小僧でもあるまいに、こんな少女の膨らみかけの乳に、崇めたくなるほどの思いを抱くとは、我ながら下劣な純情さに呆れかえる。 士官学校を出たての頃、遠洋航海で港に寄るたびに上官に引っ張り回されて地元の色街に踏み込むことが何度あったか。 肌の色も白いのから褐色まで色々な女を抱いてきた。 大半は顔すら覚えていないが、それでも今の響より胸の小さい女を抱いた覚えはない。 そして、今の響よりも美しいと思った女を抱いた覚えもなかった。 幼い少女の身体に、あどけなさの隠しきれない面差しが、ギリシアの大理石彫刻すら及ばぬ宝のように思えた。 「貴方が……、そんなに嘘が上手とは、知らなかった」 照れているのか、瞳をわずかにそらしながら、そんなことを言ってきた。 それはそうだろう。嘘偽り無く、本心で言っているのだから、上手な嘘に聞こえるだろう。 嘘ではないと、言葉で言っても聞いてはくれまいか。 どれほどに私が、今の響に欲情しているか。 この身体を、誰にも渡したくないと願っているか。 それが叶わないことに、どれほどに煩悶しているか。 せめて、だった。 せめて、響の身体の全てを最初に手にする男は、私であろうとするのだ。 左腕を伸ばして、響の腰の後ろに回し、彼女が抵抗する間も与えずに抱き寄せた。 私の腕の中に、すっぽりと響の小さな身体が収まってしまう。 今このときだけは我が物となったその白い肌にそっと右手の指を伸ばす。 細い頬をなぞり、乱暴にしたら折れてしまいそうな首筋をなぞる。 凹凸の浮いた鎖骨からさらに下へと伸びた私の指が、淡い膨らみに掛かった。 握るほどの大きさどころか、摘むほどもない。 だが、少女のそこまでの肉よりも確かな感触が、指の腹に伝わってきた。 滑らかな肌をなぞる。 かすかに力を掛けながら、撫で回す。 右も、左も、ゆっくりとなぞっていくと、そのかすかな膨らみの輪郭がわかる。 艦娘の宿業に囚われなければ、豊かに膨らんでいたであろうと思わされた。 だが、この慎ましやかな身体はあるいは響の心根のようで、なぞっているうちに、響に触れているという思いが湧き上がってきた。 もっと、触れたい。 心の臓に近い方の蕾に、人差し指を伸ばす。 その先に、ほんのわずかに触れた。 一瞬だが響の身体がぴくんと撥ねた。 女の、反応だった。 もう片方の蕾にも手を伸ばし、今度は、もう少し強く押した。 膨らみとは違う確かな感触が伝わってくる。 それを、そっと人差し指と親指で摘もうとするが、摘めるほどには大きくなく、その先端をいささか強く擦ってしまった。 「あっ……」 それは、嬌声だった。 響の口から漏れたとは思えないほどに艶のある声に、私は背筋がぞくりとするほどの背徳感が降りて来て、褌の中で滾るのをやめてくれなかった。 もっと、もっと声を聞きたい。 今度は、押し込みながら摘もうとする。 「んんっ……」 今度の声は、艶に痛みが混じった。いかん、やりすぎたか。 「司令官……、少し、痛い……」 「ああ……、すまない」 「だから……、もう少し優しく、もっと……触れてほしい……」 ねだってきた。 しかし、手で触れていると、響を手に握りたいという衝動が溢れてきて留めようがなくなってきそうだった。 それならば、いっそ、そうしよう。 唇を響の蕾に寄せて、私はその先を唇でそっと咥えた。 驚いた響が反射的に身体を跳ねさせたが、私は両手で響の肩を押さえつけて逃がさなかった。 そのまま、吸った。 響が堪えきれずにあげる、甘い悲鳴が耳に心地よい。 少し吸って、唇の中で、その蕾を舌先でなぞる。また、吸う。 そうしながら、両手は響の身体をまさぐる。 肩から今度は二の腕や背中に伸ばし、触れる、なぞる、撫でる。 「司令官……、なに、も、出ないから……」 そんなことはわかっている。 わかっているが、だが、響の蕾を貪っていると、ひどく満たされている自分がいることに気づかされた。 こんな老いも見えた男が、幼い少女にそんな思いを抱くなどお笑いぐさだが……。 いや、男など、いくつになっても所詮そんなものかもしれない。 艦が全て娘に限られるのは、我々のような情けない軍人たちの、愚かな懸想の結果なのかもしれないのだから。 それも、新兵から元帥まで揃いも揃って。 そんなことを内心で言い訳にしながら、乳が出ないとわかっている幼い果実を吸う。 右も、左も、時折舌で嬲ることを混ぜながら、そのたびに響は身体を震わせてくれる。 だが、やがてそれだけでは満足できなくなってきた。 この身体が、何者かに侵される前に、全てを私のものにしなければという、義務感のような思いに駆られてきた。 それは、乙女の純潔だけではなく、響の全てをだ。 そう思った私は、響の身体中を撫で回すだけでは飽きたらずに、蕾の周りに舌と唇を這わせていった。 膨らみの外輪から、脇の下を通り、か細い二の腕から右手の指の先まで。 「司令官……それ、は……」 最初は、私の愚行に驚いて、響は手を引っ込めようとした。 だが、その手をそっと、しかし逃れられるほどに強く握って止める。 「響……。そなたの全てを、私で染めておく」 あえて、何かが起こる前にとは言わずにいた。 こうしてやり始めるときから、わかりきっていたことだ。 「それなら……」 と、響は何か言いたげな顔をした。 指を泳がせて、唇を振るわせて……ああ、そうか。 まったく、そんなことも忘れるくらいに、私は彼女を貪っていたのか。 順序がまったく逆だった。 「そうだな。すまない。先にそうすべきだったな」 響のおとがいに指を添えて上向かせる。 どうしても身長差があるから、私が覆い被さる形になった。 白無垢を着せてこうしてやることができていれば、何もかもが違っていたのだろう。 誰かを贔屓してはならないなどという私の思い上がりが、結局は、何もかもを不幸にしたのか。 だが今こうして、深くなってきた夜の闇の中で私を見上げてくる響の姿は、白無垢さながらに美しかった。 白い柔肌は言うに及ばず、姉妹全てを失った悲しみで白くなってしまった髪さえも、今こうして見れば、彼女によく似合った。 間に合わなかった婚礼のつもりで、私は、彼女の唇に接吻した。 響の唇は見た目通り厚くはないから、さほど押しつけた時に深みはない。 だが、柔らかく、暖かく、芳しい。 驚いたような響の吐息を吸いこんだのか、鼻腔を甘くくすぐるような匂いがする。 芳醇な匂いを放つ青い果実を目の前にしているのだから当然だろうが。 唇だけで満ち足りなくなり、舌先を差し入れる。 フレンチ・キスと言うのだと、欧州留学の折に身につけた下らない知識が頭の深いところから浮かび上がってきた。 驚いたらしい響がかすかに身動きしたが、すぐにこちらの意図を察したのだろう。 唇にかかっていた力が抜けて、私の舌は響の口の中を侵し回ることができた。 響の味だと同時に、響が私を味わっていると思うと、妙な気分だった。 私はこの若々しい果実を味わっている果報者だが、こんな枯れた男を味わっている響はどう思っているのだろう。 そんな頭に浮かんだ疑問を察したわけでもないだろうが、差し入れた舌先に、濡れた感触が絡みついてきた。 あまつさえ、絡みながら舌を遡って、私の口の中にまで入ってきた。 もっと味わいたいと、言わんばかりに、しばらく、息をするのも忘れて啄み合った。 先に息が続かずに音を上げたのは響だった。 これで私の方が先に息を切らしていたらあまりに格好が付かない。 海軍士官学校で鍛えた肺活量が、こんなところで活きるとは思わなかった。 「髭が、くすぐったかった……」 まさか味がどうだったかと聞くわけにもいかなかったが、響は、少しはぐらかすようなことを呟いた。 そういえば、朝方髭を剃ってからなので、少し響の頬に刺さったかもしれない。 「髭は、いやだったか?」 接吻が嫌だったかとは聞けず、そんな尋ね方をした。 「いいえ。悪くない感触でした。……もっと」 接吻ではなく、髭の感触を名目にして、私たちはまた唇を合わせた。 それを、息が切れるまで繰り返す。 今度も、響の方が先に息を切らせ、もういいかと思ったが、響はまたもねだってきた。 都合、合わせて、四度。 終わったときには、水から上がってきたときのように二人とも荒く息を繰り返していた。 啄んでいるときには息ができないのに、まるで水中で空気を求めるかのようにお互いを求めているのだから、不思議なものだ。 さすがに酸欠で、姿勢を維持することもできず、夜具に背中から倒れ込む響の背中をそっと支えながら横たえさせた。 さしずめ、俎板の上の鯉のようにさえ見えた私は、どうかしている。 存分に味わった唇の周りの、頬や耳、瞼や額を、なぞり、接吻の雨を降らせた。 一カ所残らず、私が触れた跡を残すように。 響は、時折身じろぎしながら何も言わずに、私がまだ接吻していない顎や首元を自分で指さした。 言葉を返すこともなく、私はその指示に応える。 髪の毛一筋一筋までは舐ることは難しかったが、全てに触れておこうと、幾度も幾度もその長い髪を指で梳いた。 絹の糸でさえ、この髪には及ぶまい。 かつては姉の暁と同様に漆黒だった髪はこうして白銀になってしまったが、この色には、その姉妹を失った悲しみが込められているのだ。 顔の周りを撫で終わると、私は響の身体を下へ下へと侵略していった。 服の上からでもわかっていたが、裸にするとなおのこと細すぎる腰は罪悪感を呼び起こさせる。 そんな中に、小さな臍があるのが、愛らしかった。 その下には、辛うじて最後に残った一枚の布がある。 その布を取り去ったら、私の自制もそこまでだろう。 辛うじて堪えて、為すべきことを先にしようとする。 ふともも、などとはとても呼べない、幼い少女らしくすっきりと伸びた足のうち、右足を膝立たせながら、表も裏も指と唇と舌でなぞっていく。 膝裏も、ふくらはぎも、その感触を私の脳裏に刻みつけるように触れていく。 足の指を舐めていると、かすかに塩気と、汗の匂いがした。 だが、それすらも芳しいと思えてしまう。 私の中に乱歩の小説のごときこのようないかがわしい嗜好があったとは。 つくづく、あの娘たちに手を出さずにいてよかった。 手を出せばきっと、私はそれに溺れきってしまい、あの娘たちを壊してしまっていただろう。 「司令官に……、こんな、こと……」 私が響の足の指を口にしていると、私を足蹴にしているような体勢になることに響は気が引けているのか、恥じらうような顔を見せた。 男を足蹴にしてよいなどと、教わっては来なかったのだろう。 響に教え込まれた大和撫子としての慎みがわかって、私はなおいっそう愛おしくなった。 「私が、そなたを味わいたいのだ」 「……はい」 そう答える響の顔が嬉しそうなことに、私は救われた。 右足を舐り終えて、今度は左足を先の方から舐めていく。 隈無く、全ての新雪を踏み荒らし尽くすように。 左の股まで舐めて撫で終えてから、響の背中も蹂躙すべく、その細い腰に手を掛けた。 言わずともわかるのか、響は私が力を掛けるよりも先に、くるりと身体を翻す。 細すぎる背中が目に入り、そして、私はそのとき間違い無く、心臓が跳ねるのを覚えた。 わずかの布きれに覆われた小さな尻がこうして私に向かって突き出されるのを目の当たりにして、私ははっきりと、この娘を孕ませたいという衝動に駆られてしまった。 ひどく動物的で、暴力的な衝動だった。 欧州女で、尻の大きな女などいくらでも見て来たはずが、その今まで見て来たどの女に対しても抱いたことの無かった、はっきりとした生殖衝動だった。 否応なく、褌の中が固くなる。 そろそろ、我慢も限界に近くなってきた。 響がくすぐったがる声を聞きながら、背中を撫で舐め終える。 これでもう、響の身体で触れていないところは、最後に残った布一枚の下だけだ。 既に、私は響の身体を組み敷いていた。 無理やりにでもこの布を剥ぎ取って、獣のように交わりたかった。 だが、幼い響の身体にいきなりそんなことをしたらどうなるか。 この後に響を待っている運命がそれだとしても、せめて最初の交わりくらいは、優しく抱いてやらねば、今こうして私が生きている意味すらもない。 そう己に言い聞かせて、獣の衝動を辛うじて抑え込む。 ゆっくりと、身体を開いてやらねばならぬ。 今まで交わったどの女にしたよりも、もっと。 「響……」 そっと身体を抱きかかえて、仰向けに横たえさせた。 じっと私を見つめてくる響の瞳を見つめ返しながら、取るぞ、とは言わなかった。 わずかに睫毛を動かして、響が頷いたように見えたのを確認してから、その最後の一枚を取り去った。 予想はしていたが、その下には一筋の翳りもなかった。 わずかばかり膨らんだ割れ目はぴったりと閉ざされて、おそらくは自分で弄んだことすら無いのだろう。 女陰とは、こんなにも美しいものだったのか。 壊してはならない儚い硝子細工のようなその姿に、しばし、私は陶然と魅入っていた。 こんなところに、入るはずもないものを入れようとするのだ。 指の腹を当ててみると、硝子細工ではなく、柔らかく暖かい肉の感触だった。 まだ何者にも侵されていない、閉ざされた、穢れのない感触だった。 私の爪が伸びていないのが幸いだった。 まず小指の先を、割れ目の入り口にそっと差し入れてみる。 ぴったりと閉ざされていて、固い貝を開いてみるような感触だった。 いきなり力を加えては駄目だ。 少しずつ、響が痛がらないか確かめながら押し込んでいく。 それでも小指の第一関節まで入れるのがやっとだった。 それ以上はとても開きそうにない。 手首を返して割れ目の上側をなぞりながら、一度そっと指を抜き取る。 そうしてからまた差し入れて、また抜く。 一度目よりは二度目の方が、ほんの少しだけ深く入った気がする。 少しずつ、少しずつ、響の身体を開いていく。 何十回目かで指を抜こうとしたときだ。 「…………っっ!!」 響が弾かれたように首を仰け反らせた。 「響……?」 「し……れい……、いま、の……?」 響は戸惑った顔を見せた。 痛みを覚えた風ではなく、むしろ、自分が今し方初めて味わったものを咀嚼できずにいるという顔だった。 ようやくに響の幼肉に隠された陰核に触れることができたのだろう。 響にとっては、自分の身体にそんな感触を受けることができる部位があることすら知らなかったのかもしれない。 幼い身体にこれから刻み込むその感触が、せめて苦痛ではなく快感として記憶に留まってくれることを、願わずにいられなかった。 「響」 触っていいか、とは聞かなかった。 響も、やめてとは言わなかった。 ただ、核を私の指の腹が擦るたびに、声を殺して身体を震わせる。 はしたない声を上げるのが恥ずかしいのだろう。 私は、もっと声を聞かせて欲しいと思っているのだが、無理強いはさせたくなかった。 やがて、繰り返していくうちに、うっすらと湿り気を帯びてきた。 それでもまだ、入れるには到底足りるものではなかった。 生娘の響を傷付けずに済むとは思えなかったが、それでも濡れているとすら言えないこんな姫洞にねじ込んだらどうなるか。 「司令……官……?」 しばし思案に耽っていた私を訝しんで、響が声を掛けてくる。 「大丈夫だ、響」 何が大丈夫なものかと自分を嘲笑いながら、響の立てた膝を両手で開かせる。 響は身についた慎みのせいか、反射的に膝を閉じようとしたが、歳は食っていてもこれでも海軍士官の私に勝てるような力は無かった。 開いた膝の間に頭を入れて、響の下の唇に口づけした。 「し……司令!?……汚い、です……そこは」 「どこが、汚いものか。こんなにも美しい……」 一度唇を離し、響の非難に対して嘘偽りのない思いを口にする。 また口づけし、割れ目の間に舌を這わせ、唾液を垂らしていく。 だが、一方的に攻め立てているつもりはなかった。 かすかに感じる塩の味と、潮の匂いにも似た響そのものの香りが、舌と鼻腔から私の頭を蕩かしていく。 熟した女とはまるで違う、瑞々しく、若々しい、響の、味と、匂いだった。 脳髄が蕩けていっているのに、身体の下の方には熱く血が巡っていることがはっきりとわかる。 ただただ、精を放ちたいという少年の頃のような欲求が、この枯れた身体に残っていたとは。 痛いほどに陽根が固くなっていた。 これではますます響の中に入れるのは難しいかも知れないと頭のどこかで思いながら、もう我慢ができなかった。 褌を解き、今まで隠していたものを響の前にさらけ出した。 「……っ!?」 怯えたのも無理はない。 元々、同期の桜たちと風呂場で比べて、大きさでそうそう劣った覚えもない。 ただでさえそうなのに、私自身、こんなにも強く猛ったのはそれこそ初めて女と交わったとき以来だろうか。 そんなものを、生娘の前に突きつけるのはやはり残酷だった。 これがお前を刺す槍だぞと、喉元に突きつけているようなものではないか。 いっそ、見せることなく響が何も分からないままに貫いてやる方がよかったのか。 「これが……殿方の……」 屈み込んで、一思いに差し入れようかとした私の動きを、差し伸べられた響のたおやかな手が留めた。 おそるおそるという仕草で、そっと私の竿に触れてきた。 その白魚のような手が、赤黒く膨らんだ怒張に触れると、それだけで何か清められたような気さえしてくる。 おずおずと顔を近付け、まじまじと見つめてくると、さすがにいささか気恥ずかしい。 と、毒気を抜かれたような私の男根に、柔らかく湿った感触が走った。 驚いたことに、響が、先端の割れた鈴口に舌を伸ばして舐めたのだ。 先ほど怯んだことを気に病んでのことだろうか。 しかし、一度ではなく、二度、三度と舐めてくる。 まるで、子猫が水を飲むかのような愛らしい仕草で。 「響……そんな汚いもの、口にしてはいけない……」 商売女に無理やり咥えさせたことは何度かあるが、こうして見下ろす光景は、そのときの記憶とはまるで違っていた。 響のような美しい少女の、睫毛を伏せたような表情と、その眼前に突きつけられた私の醜い欲望の塊とが、無様な、あるいは見事な対比に見えて、その表情を一層美しく見せていた。 「どこが、汚い……。こんなにも、逞しい」 世辞にしても先ほどの私の言葉の意趣返しにしても、冗談が過ぎると思ったが、響は、それが嘘ではないと告げるかのように、一度口から離し、赤黒い竿元まで頬ずりさえした。 そして、なんということか。 響の小さな唇がめいっぱい開かれたかと思うと、私の欲望の先端がその中に飲み込まれた。 柔らかく湿った中に怒張が浸されて、その感触になおのこと膨れあがる。 響の口の中は小さく、上あごと舌とに挟まれて窮屈なのがなおのこと心地よい。 その中で、健気にも私の幹に快感を与えようと、瑞々しい舌が前後して私の裏筋を刺激する。 先端しか飲み込めていないのが気がかりなのか、無理にでも喉の奥に押し込もうとしているのがわかる。 たどたどしい動きながら、なんとか歯を当てないように気を使っていることがわかる。 むろん、初めてなのだろう。 だが、響がそもそも陽物を咥えるということを知っていたことが驚きだった。 「こんなことを……どこで」 商売女のような技巧は無い。 しかし、小さく湿った中でその舌が動き回るだけで、たっぷりとした唾液とともに私の竿に絡みついて、えもいわれぬ稲妻めいた感触が私の下半身を浸す。 「それは……秘密」 呼吸をするのを忘れていたのか、荒い息を継ぎながら、響は少しだけ謎めかして答えた。 「誰が教えたかは……、聞いた皆が全員、水底まで持っていくという約束で、教えて貰ったから……」 意外な答えが、返ってきた。 とすると、私が想像すらしなかった誰からしい。 ふっと、笑いたくなった。 笑う資格など無いとわかっていても、笑いたかった。 あの娘たちが、私に黙って、そんなささやかでひめやかな秘密を抱いていたことが、嬉しかった。 そんな感慨に耽っていると、ふと、不思議な感触がした。 咥えたり、舐めたりとかいがいしく仕草を繰り返している響だが、それだけではないような気がしたのだ。 まるで、南方の女宿で、何人もの娘を同時に相手したときのような……畳み掛けられるような感触が、私を予想外に昂ぶらせた。 そんなことがあるはずがないのに。 物思いに没頭していたのがまずかった。 気がついたときには、込み上がってくるうねりのような衝動が止めようのないところまで来ていた。 「ひび……き、離せ……」 聞こえなかったはずはない。 響は、それを聞いて、私の竿の根本をしかと掴み、小さな口で喉まで飲み込まんばかりに深く咥えた。 女陰の奥を突く感触にも似た響の口の奥は、暖かく私を迎え入れた。 駆けあがってくる輸液の奔流がもはやどうにもならぬままに、男の衝動を鼓動とともに脈打たせる。 小さな肉の中に包まれながら、私は許されたような解放感のままに、思い切り精をぶちまけていた。 こんなにも激しく放ったのは、もう何十年ぶりか。 一度の脈動で響の口の中にどれほど放ったのか、考えることも出来ぬほどの紫電めいた快感に私は燃え尽きるほどの喜びを味わっていた。 ただ、健気にもしかと握って離すまいとしていた響が、あまりの量に耐えきれずに咳き込みながら口を離してしまい、その口から涎のように白濁が滴り落ちる前に、その響の眼前で、第二射を炸裂させてしまった。 止めようがない。 第三射、第四射と、私は響の顔といい、頭といい、ありったけの精をぶちまけてしまっていた。 誤ってではない。 私は確かに、美しいものを穢す暗い喜びに良心の呵責すら悦に入って味わっていた。 精を顔にぶちまけるなど、南方の商売娘にさえしたことはない。 そんな所業を、ずっとずっと、慈しみ、守ろうとしてきた最愛の娘に行っていた。 「響……」 何度目かの脈動で、ようやく砲弾が発射されなくなったようだった。 目の前には、白く美しい髪と顔に、私の汚濁液をありったけ浴びせられた響の姿があった。 精を放った後に訪れる特有の後悔があった。 やってしまったことへの後悔があった。 にも関わらず同時に私の中には、これだけの精を、どうして響の胎の中にぶちまけることができなかったという後悔すらも併存していた。 若い頃ならばいざしらず、一晩に二発もやった最後の記憶は何年前だろう。 響が露助に穢されて、純潔を奪われる前に、私がしなければならなかったのに、この老いた砲塔を使い物にならなくしてしまうとは、なんという不覚か。 義務感と本能とがない交ぜになった身勝手な悔恨と、今し方味わった快感の余波で動けなくなっている私の前で、響は喉に精を詰まらせて咳き込んでいた。 しかし、咽せて何度か吐き出した白い塊を、響は自分の手に受け止めていた。 ようやく息を落ち着かせてから、響は両手に載った唾液混じりの精液を、再び口に持っていき、全て舐め取ってしばらく口の中に留めてから、こくりと嚥下した。 「これが……貴方の味……」 どくり、と、それを見た私の心臓が跳ね上がった。 響の口から出たにしてはひどく淫靡な、それでいて男の自尊心をくすぐる言葉だった。 それから響は、長い髪にべっとりとまとわりついた精液を拭うどころか、まるで椿油を差すように髪にすりこんでいった。 響の美しい白い髪に私の白い汚濁が絡みつき広がっていく。 不思議な光景だった。 夜の乏しい光の中で、私の汚らわしい欲望の雫が、響の髪の上ではまるで真珠のように輝いて見えた。 その美しい姿に、熱く流れ込んで来るものを感じた。 同時に、何かに支えられるような、弄ばれるような不思議な感触が下半身を浸した。 仰角が上がる。 この老いた身体に、これだけの精力が残っていたとは思えぬゆえに、助けられているとしか思えなかった。 仔細は分からぬが、ただ為すべきことはわかっていた。 いや、義務ではなく、私がやりたいと思って為すことだ。 この娘を、抱きたいのだ。 今この私の手で、その純潔を奪いたいのだ。 私の物に、したいのだ。 せめて、この時だけ、初めての時だけは。 幸い、響の唾液と私が溢れ出した精液や先逸り液のおかげで、私の怒張は濡れそぼっている。 ろくに濡れてもいない響の中に入れるにしても、少しは滑りがよくなるかもしれない。 「響……」 そっと肩に手をやり、響の身体を夜具に横たえさせる。 初めてのときに、無理な姿勢を取らせるのははばかられた。 しかし、恐怖に震えていてもおかしくないはずの響は、色濃くなってきた闇の中から真っ直ぐに私の瞳を見つめてきていた。 「響……?」 嫌がっているのではあるまいが、何か伝えたいことがあるのかと問いかけてみた。 「私の名前だけでなく、暁と、雷と、電の名前も、呼んで……」 その願いを、どう受け止めてやればよいのか。 これから乙女の花を散らそうとする閨で、他の女の名前を呼ぶなど、地獄で焼き尽くされても償えない大罪だろう。 それなのに、響はそんなことを頼んできた。 姉と妹たちの魂を、自分の身体に載せて、私に抱かれようというのか。 艦娘たちの魂は、神社に祭られた柱のようなものではないかという説を聞いたことがある。 水底に送ってしまったあの子たちの魂が、今この場に来ているのか。 そう思い至ったとき、私の枯れそうな男根を先ほどから支えてくれているものが何なのか、私はようやく思い至った。 お前たちも、今こうして私が響を抱くことを願っているのか。 お前たちも、私に抱かれたかったのか。 その願いのために、水底から戻ってくるほどに。 「響……」 「はい……」 おそるおそる、私は呼びかけた。 「暁……」 「……はい」 響の瞳に、姉の面影が重なって見えたような気がした。 「雷……」 「はーい……」 響の口から漏れるこの声は、幻聴とは思えなかった。 「電……」 「はわ……」 思えば、この四人はこんなにも、似ていたのだ……。 せめてこの一時が、私の罪の意識が見せた幻などではなく、彼女達が少しでも救われる一助とならんことを。 「いい子だ」 彼女の、彼女たちの頬をそっと撫でる。 安心したように私の手に小首を軽く預ける彼女の表情は、四人の誰にも見えた。 その四人の娘の純潔を一度に奪うのだ。 役得というには、あまりに外道な果報者ではないか。 彼女達のお陰で、私の男根はこれ以上ないというくらいに固く張り詰めていた。 しかし、果たして本当に入るのか。 秘唇にそっと砲門をあてがうと、あまりの大きさの違いに愕然となる。 これはもう、濡れているとか滑るとかいったことでどうにかなるものではない。 入れようとすれば、彼女の身体を裂かずにいられるはずがない。 「問題……ないですから、一人前のレディとして……扱って……」 それは、誰の言葉だったのか。 私の躊躇を拭い去るには十分な言葉だった。 そうすると、果てしない肉欲が衝動として私の身体を突き動かす。 私の醜い肉塊が、翳り無く美しい割け目に突き刺さろうとするその様は、嗜虐心を呼び起こさずにはいられない光景だったのだ。 小さな下唇を掻き分けるように押し入れ、肉を膜に押しつける。 ただでさえ小さいそこに、紛れもない純潔の幕が下りている。 「いくぞ」 逃げられないように、彼女の細い腰を両手で押さえつける。 あとは、私の重みをそこに集めて押し通るのだ。 「はい……」 彼女は、そっと両手を伸ばしてきた。 まるで、自分の身体が痛みで逃げてしまうことを恐れているかのように。 掴まれ、と答える代わりに上半身を彼女に覆い被させるように倒して、彼女の両腕が私の首にしがみつけるようにしてやった。 もう、お互いに後戻りはできない。 気がつけば、間近に彼女たちの瞳があった。 そこに見えた四人分の思いを胸に刻みながら、私は最後の一押しを彼女たちの姫裂に叩き込んだ。 「…………!」 彼女たちが、言葉にならない声をあげて身体をのけぞらせた。 間違い無く、達成感があった。 そこを裂くその感触。 続いて私自身が潜り込んだところは、禁断を思わせる小さな世界だった。 そこを、勢いのままに蹂躙する。 だがそれなのに、彼女たちは、逃げなかった。 ひたすらに私にすがるようにしがみついて、私の暴虐を受け入れて、飲み込んでいった。 私は、抱いているのか抱かれているのかわからなかった。 貫いているはずが、包まれていた。 乙女たちの中には、紛れもない女というものがあった。 それも、今までに抱いたどの女たちよりも深く、果てしない世界が。 この小さな身体のどこに、私の欲望を受け止めるほどの器量があるというのか。 「……うれ……しい」 確かに、四人揃って、私はその声を聞いた。 隠しきれない涙をこぼしながら、その面影には四人全ての微笑みが集まっていて、私の胸を疼かせた。 だが同時に私を包む海原は、その幼さを忘れさせるほどにうねり、私を昂ぶらせた。 この行為は、まだ終わっていないのだ。 月と潮とに左右されるその身体の奥に、私は男として届けねばならないものがあることを確信した。 「動くぞ」 今し方純潔を失ったばかりの乙女の身体に、本来ならせめてもう少し落ち着くための時間をくれてやらねばならないだろう。 だが、彼女たちは、小さく、頷いた。 彼女たちは待つことを望んでいないと確信した。 私の欲望のたけを、彼女たちの身体は受け入れようとしてくれると信じた。 私を包み込む姫襞を、膨れあがった雁首で掻き分ける途方もない感触が、私の腰を甘く痺れさせた。 先ほど出していなければ一息で達してしまっていたほどの悦楽が私を襲った。 しかし、腰を引いても私の竿はそこから抜け出ることができなかった。 彼女たちがしがみつく腕と同じように、私の肉竿の先端を絡め取るように包んで離さなかったのだ。 ならばもう、躊躇はすまいと私は腰を前後させ始めた。 往復するごとに、そのあどけない世界は柔らかく、しかし決して緩むことなく私を奥へ奥へと誘っていく。 少しずつ少しずつ、私の身体が埋まっていく深さが増していく。 そのたびに私の竿から全身へと紫電のごとき快感が走る。 その竿は、私が先に出した精の白と、彼女たちの純潔の証たる紅とで、斑に染まっていた。 やがて、最果てに届いたという感触が、壮絶な快感の中に混じるようになった。 それでもなお彼女たちの小さい姫洞は私をさらに飲み込まずにはいられなかった。 もはや言葉もなく、獣じみた荒い吐息がお互いの声として交わされる。 彼女たちの月のものがどうとか、考えるまでもなかった。 他の誰に犯されるよりも、誰よりも先に、彼女たちの胎内を私で満たすのだ。 精通のときでさえ、男になったときでさえ、ここまで放ちたいとは思わなかっただろう。 男など所詮、自らの砲をより奥へと叩き込むための付属物なのだと思い知っていた。 全身が、痛いほどに固く張り詰めた砲身そのものになった気がした。 この悦楽をもっと味わいたいという願望すらあっけなく振り切って、本能を限りにした私の精の巣が爆発した。 砲身を駆け抜けていく私の分身たちの集団を、彼女たちの最後の聖域めがけて放った。 それはもう、一射とか二射とかいう量ではなく、私の身体にこれほどのものがよく蓄えられていたと思うほどの量を、彼女たちの胎内を文字通り満たすほどに注ぎ込んでいた。 痛みしか無かったであろう彼女たちは、そうして注ぎ込まれている間、何をされていたのかそれでもよくわかっていたのだろう。 かすかに甘く、切なげな吐息をついて、 「ああ……」 と、何かに浸るような声をあげて、私にしがみついていた腕の力さえ抜けて、夜具の上に力尽きて倒れ込んでいった。 そうしてようやく、彼女の秘唇が私の男根をようやく手放した。 濁った水音とともに、赤白く染まった私の竿が砲身を露わにし、先ほどまで純潔だった少女の姫洞は痛々しく口を開いていた。 そこから彼女の荒い呼吸に小さな身体が上下するのに合わせて、時折真紅混じりの白濁液が吐き出される。 我ながら、どれほど注ぎ込んだものかと呆れる。 にも関わらず、私の男根はまだ傾きを失っていなかった。 それどころか、あれだけ放ったというのになお、その硬さをも失っていなかった。 どういうことだ。 いくらなんでも、二度もありったけ吐き出しては、この老いつつある身体に力が残っているとも思えない。 それでは、なおこれを支えているのは、お前たちなのか。 その疑念を私が抱いたのを察したのか、それとも私の陰茎を支えながら姉妹の身体をも抱き起こしたのか、彼女は息も絶え絶えの有様の中、やっとのことで夜具の上の身体を翻して、うつ伏せに倒れ込んだ。 それから、背中越しに私を振り返り、ねだるような、すがるような目で私を見やった。 そろそろと、力の抜けた両手が、彼女自身の細い腰の下の、肉付きの薄い尻肉を掴む。 尻肉の間からは先ほど私が注ぎ込んだ白濁液が漏れて、しとどに濡れそぼっていた。 それだけで、硬さを保った私の下半身がさらに疼くほどに扇情的な眺めだった。 それなのに、その狭間を見せるように、彼女は自らの尻肉を開いて見せた。 「こち……らも」 ぞくりと、悪寒のごとき予感が私の肝を冷たくした。 大陸での露助たちの蛮行は噂に聞き及んでいる。 その中には嘘か誠か分からないが、前だけでなく後ろでも容赦無く楽しむのだという話があった。 誰だ、これから大陸へ行こうという彼女にそんな噂を聞かせた愚か者は。 いやしかし、その愚か者に感謝しなければならないだろう。 彼女は、その身体の全てを、露助に陵辱される前に、私に差し出しているのだ。 確かに、これだけ彼女の全身を味わいつくしておきながら、そこだけはまだ触れても、犯してもいなかった。 そして、その幼ささえ残る後ろ姿に、なおも欲情してしまう自分を否定できなかった。 これが本当に最後だ。 この時が終われば、用済みの砲塔など二度と立てなくなっても構わない。 その代わりに、彼女たちがこのおんぼろを立たせてくれているのだと信じるのみだ。 差し出された尻肉を両手で掴み、その真ん中にある小さな孔を指でなぞる。 暗がりの中でも、指で触れば大きさもわかろうというものだ。 先ほど無理やり貫いた女陰よりもさらに小さい。 せめて少しでも楽にしてやろうと舐めて、唾液を垂らしてやる。 汚いなどとは微塵も思わなかった。 彼女たちの身体に、一片の穢れさえもあるものか。 穢れているのは、この私と、戦場と、この後に彼女を待っている者でしかないのだ。 私は、鬼畜だ。 米英にも劣る鬼畜の所業をこの娘に刻み込んで、この後にこの娘を襲う鬼畜たちに先んじる。 そう、心に決めた。 あてがう。 まるで穴などなく、壁に突き立てるような堅い感触だった。 もはや尻を開く力もなく夜具に倒れた彼女に覆い被さり、全体重を一点に掛けて、堅くいきり立ったままの杭を思い切り押し込んだ。 「…………!!」 あまりの激痛に声も出ないのだろう、彼女が仰け反って、水中で空気を求めるかのようにもがいて喘いだ。 彼女自身が望んだこととはいえ、これは紛れもない強姦だった。 前よりもさらに小さい、本来の用途ではない小さな孔を、軋みさえあげながら、彼女の純潔の血で濡れたままの男根で刺し貫いていく。 押し込んだ砲身は、彼女の内臓を、私の男根の形にねじ曲げて掻き回している。 途方もない罪悪感と、それにも勝るくらいの薄汚い背徳感とが同時に私の脳裏を走る。 同時に、しがみつくどころか絞り切るほどに狭い穴を貫通させる中で、彼女の穴によって絞られる快感が私の脳髄を焼き尽くしそうになる。 私は、快楽のために愛しい娘を犯す外道だった。 それなのに、彼女は、激痛に涙と涎を垂らしながら、私を振り返って、微かに笑った。 そうだ、そなたを犯しているのは私だ。 これから先、誰に、どれほど陵辱されようと、そなたの身体の初めてを奪ったのは、この私だ。 この残酷な苦痛の時を、せめて心に刻んで、今よりも果てしない地獄でこの娘は生きていく。 こんな外道の、人にあらざる所業が、この娘の救いになってくれることを願いながら、私は彼女の身体の中に砲身の全てを埋め込んで、奇跡のように辛うじて身体に残されていた精の全てを彼女の内腑に解き放っていた。 ……ありがとう。お礼は、ちゃんと言うよ…… ……これでもう、大丈夫なんだから…… ……ありがとう、なのです…… そのとき、その言葉を、確かに聞いた。 私の罪悪感が聞かせた空耳などではなく、彼女の……響の口から、確かに彼女たちの声を、私は聞いた。 そして、 「ありがとう……。これで私は……、どんな世界でも、生きていける……」 最後に、響自身の声でそう私に微笑むと、彼女は気を失った。 そうして力の抜けた身体から、私は全ての役目を終えてふぬけた男根を引き抜いた。 私の役目は、終わった。 いや、まだ一つだけ残っている。 せめて、その身体を清めてやらねばならなかった。 露助たちの前に出すときに、男の精液まみれでは、引き渡しのその場で何をされるかわかったものではない。 響が目を覚ますまでに、せめて身体を洗う湯を用意してやりたかった。 とはいえ、撤収寸前の上に元々物資不足だったこの建物に、まともに動くボイラーも無い。 しかし幸い、空のドラム缶だけはそれなりにあった。 井戸水を汲んで中のきれいなドラム缶に注ぎ、空と思われたドラム缶の底で見つかった重油の残りカスを掻き集めて燃料にし、あとは簀の子代わりの木材は、建物の立て付け板からへし折って調達した。 三度も全力で精を放った身体は今にもへし折れそうであったが、今このときだけ動けばよいと己を殴って叱咤して動かした。 身体を殴って動かすことを叩き込んでくれた江田島の先輩共に、まさかこんな人生の終わりになって感謝する日が来ようとは。 東の空が少し明るくなり始めたところで、なんとか湯と着替えの準備が出来て、響の様子を見に行くと、丁度目を覚ましたところだった。 しばらく響らしくなくぼうっとしていたが、目の焦点があった途端に、その裸身に敷布を巻きつけて私の視線を遮って恥じらったことが、私には嬉しかった。 「湯を用意している。洗ってきなさい」 「いい。このままで……」 髪に絡みついたままの私の精液の雫に触れながら、響はそんなことを言う。 「私の響は、わが国の艦は、こんなにも美しいと、奴等に見せつけてやるんだ。 出陣の準備は、整えないとな」 笑いかけてやったつもりだったが、うまく笑えただろうか。 しばらく私の顔を見つめていた響は、こくりと頷くと、敷布を纏ったまま立ち上がった。 湯に入る寸前に一瞬、東の空から広がる朝日の前触れに照らされた響の身体は、生涯忘れられぬほどに美しかった。 ********************** 時が来た。 響を受け取りに来たソ連将校たちは、こちらを見下す態度こそあからさまであったが、さすがに雑兵とは違ってそれなりに節度を持っていた。 考えてみれば、バルチック艦隊を破った後でロシアことソ連の海軍力は激減しており、響は戦力として現実に貴重なものなのだろう。 その意味では、イギリスあたりに引き取られていく娘や、アメリカに奪われた娘よりも、あるいは、ましな運命になってくれるのかもしれない。 気休めかもしれないが、そう、思った。 見慣れた、そして、最後に見ることになる服装で、響は私を見上げてきた。 「司令……」 私が出世してからも、ついぞ提督とは呼ばなかったなと思い出す。 そうなる前から、私の傍に居続けているという気概があったのだろうと、こんなときになってようやく思い至った。 そんな私の朴念仁を悟ったわけでもないだろうが、響はささやくように小さく口を開く。 「愛してる。…………永久に」 不死鳥は、喩えようもなく美しい笑顔で永遠を誓った。 そうして、翼をはためかせるようにして身を翻す。 その背に幾重もの翼のように、三人の少女の姿が見えたような気がした。 それから堂々たる歩みで、自らの分身にして一心同体たる艦へと向かう。 居並ぶソ連将校たちが、思わず居住まいを正して一斉に敬礼するほどに、その後姿は余りにも美しかった。 そうして、響は振り返ることなく、日本海の向こうへと旅立っていった。 **************************** その後の人生は、私にとって蛇足のようなものだ。 だが、あえて一つ無理をして、かつての舞鶴鎮守府の近くに居を構えることにした。 生き残っていた同期の桜の首根っこを捕まえて、職権濫用をいくつもした。 佐渡や利尻の方がウラジオストクに近いことは分かっている。 しかしそこでは帰ってきたときに私がそこに居るとわかるまい。 舞鶴ならば、つてをたどれば私がいるとわかるかもしれない。 そんな、叶うはずもない望みのために、私は戦後という時代をそこで過ごすことにした。 戦後に溢れた未亡人をもらってくれと方々から頼まれたが、全て丁重に断った。 あの日以来、私は男としては役立たずになっていたから、それを理由とすれば皆引き下がってくれた。 だが、そもそも私にとっての最後の女は、あの不死鳥以外ありえないと誓いを立てたのだ。 生涯最後の交わりが最愛の女だった私は果報者に過ぎるが、その幸福を薄れさせたく無かったのだ。 何をしていたかといえば、何もしていなかっただろう。 あえていえば、漁師になった。 漁師といっても、小舟を日本海に出して日がな一日ウラジオストクの方を眺めていることが多かったが、そんな私の気配の無さが幸いしてか、よく魚は釣れた。 魚を売る市場で、アカの連中と顔が繋がったのは幸いだった。 元帝国軍人としてはあるまじきかもしれないが、それでも私は日本海の向こうの情報が欲しかったのだ。 そうして掻き集めた噂の中に、確かにその情報はあった。 ヴェールヌイ、と名付けられている。 どんな意味かと日露辞典を紐解いてみたら、信頼できる、という意味と知った。 虐げる艦に、そんな名前は付けないだろう。 彼女が、せめてその誇りを失うことなくあってくれることを願うしかなかった。 やがてヴェールヌイの情報が途切れ、再び手を尽くしたあげく、練習艦となったと聞いた。 響が、練習艦か。 次姉のくせに、長姉の暁よりも姉然としていた面影を思い出す。 さて、北の新兵どもにどんな練習をしているものか。 その頃には、私にはもはや、響が虐げられる姿を想像することができなくなっていた。 もはや戦後ではない、などと何を言うのか。 ラバウルよりも遙かに近いはずのウラジオストクが、こんなにも遠いままだというのに。 手を尽くしても、響の情報が手に入らなくなって数年が過ぎていた。 衰えた身体で日本海に船を出すことも出来なくなり、私自身、もはやただ生きているだけで、月日が虚しく過ぎていく。 そろそろ、先に逝ったものたちの後を追う日が近いだろう。 そんなある日、来客があった。 この家に来客があったことなど、新聞の勧誘を最後にここ数年記憶に無い。 扉を開けた私は、一瞬、目が眩んだかと思った。 長い黒髪を、太陽の光に梳かして風になびかせながら、ロシア風の毛皮服に身を包んだ少女がそこに立っていた。 最初は、暁が現れたのかと思った。 しかし次の瞬間、暁よりも、髪が白くなる前の響の方によく似ていることに気がついた。 だが同時に、もう遙か昔に胸を病んで若くして死んだ私の姉や妹にも似ているような気がした。 「そなた、は」 少女は、見覚えのある、生涯忘れまいと思ったあの笑顔を見せて、 「あなたが、私の……」 了
https://w.atwiki.jp/teitoku_bbs/pages/1495.html
396 :taka:2013/02/07(木) 14 50 40 フトゥーロ運河に集結していたベルカ公国海軍艦隊は、まさに艦隊戦闘への布陣へ移行していた。 今まさにこちらへと牙を剥いて接近している、新鋭空母「ケストレル」を中心としたオーシア第三艦隊を迎え撃つ為だ。 予想を超えるベルカの執拗な反攻に、バードリアン・ラインの突破はおろか『解放』した南ベルカの都市の幾つかを取り戻されてしまったオーシアの焦りは募っていた。 再三の増援を送ったにもかかわらず、戦線はジリジリとした膠着状態にあり、この戦争に否定的だった国々の圧力は迅速な戦勝が遠離ると同時に強まっている。 この思わぬ事態を打開する為に、オーシア軍は『戦域攻勢計画4101号』を発動。 ベルカ公国海軍の海上戦力及び拠点の壊滅、フトゥーロ運河の封鎖と大規模輸送ルートの確保に乗り出した。 開戦以来オーシアの輸送路を神出鬼没に強襲し、少なからぬ損害を与えていた邪魔者を完膚無きまでに殲滅し制海権の確保と明確な勝利を得る為に。 「始まりますな提督」 「そうだな参謀長」 ベルカ艦隊旗艦である空母ニヨルドのブリッジで、老年の男は傍らに控えている参謀長に告げた。 空母を取り囲むようにして展開している護衛艦隊。そして頭上を幾つもの航空部隊が通過していく。 「南では幾らか押し返してはいるものの、オーシアはまだ健在だ。 開戦以来幾つかの海戦で勝利を得てもあれだけの戦力を揃えて向けてくる」 「はっ、しかしながら我等も上層部の計らいにより、主力艦隊を万全の形で迎撃へと持ち込めました。 加えて、陸上からの航空部隊も艦隊攻撃及び防空支援へ参加しております。……それに」 「それに、例の無敵のエースコンビが我が艦隊の防空に当たっている、か」 「はい、ハードリアン・ラインからの一斉反攻、南ベルカ解放戦に置いて比類無き活躍を見せております。 艦隊との共同作戦は初めてとの事ですが、鬼神と渾名された彼らが参加する事で将兵達の戦意は漲っております」 「ふふ。戦局すら引っ繰り返すと言われてる彼らの腕前を直に見られるのは幸いと言うべきかな?」 提督は目を細めて、窓の外の空を次々と過ぎっていく友軍機の群れを見やる。 こうしていると、まるでかつて旭日旗が翻る空母艦隊を率いていた頃の事を思い出す。 こちらには彼が心棒した皇室も、命に替えてでも守ると誓った神州も存在しない。 異邦の地で海軍士官へと成長した頃に記憶を取り戻し、途惑っていた彼を救ったのはよりにもよってあの組織の面々だった。 彼らは日本を取り仕切っていた頃と同じく、このベルカ公国を表と裏から支配していた。 (まさか、こちらでも連中に組み込まれ扱き使われるとは思わなかったがな) 相変わらず苦労の絶えない感じな友人や、こちらでも列強相手に立ち回ってる財務省の魔人の顔を思い出す。 有り得ない、転生と呼ばれる奇跡が我が身に起きてこそ、本当の意味で男は彼らの理解者となったのだ。 「全く、賭け事は好きだがこうも振り回され続けると刺激的過ぎるよ。 連中と付き合っていると退屈とは程遠い人生を歩めるものだな」 「提督、如何なされましたか?」 「いや、何でもない。参謀長。Z旗を挙げよ」 「はっ」 空母のマストに、高々と4色の旗が掲げられる。 そして、全回線を開いた提督の演説がベルカの全将兵の耳に届けられた。 「我ガベルカ公国ノ興廃此ノ一戦ニ在リ、各員一層奮励努力セヨ」 ベルカ戦争における転機の1つとされる、大海戦の火蓋が切って落とされたのである―――。