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───何なんですの!!あの女は!! 考え得る限りの悪罵を零しながら。 私、北条沙都子は夜の街を駆けていた。 金の髪を振り乱し、全身から汗をとめどなく流して走る。 狼に追われる羊の様に逃げ惑うその様は、今の私には似つかわしくない、無様な姿だった。 (おかしいですわ!こんなの…何故わたくしが……!!) 今の私は、オヤシロ様──雛見沢の新たなる神なのだから。 体感時間にして百年前。エウア、という正体不明の女神、或いは宇宙人に魅入られ。 私は力を得た。 自分の死をトリガーに時を操り、昭和五十八年六月を延々と繰り返す、その力を。 かつて雛見沢で起きた百年の惨劇。 その全ての脚本を手に入れ、惨劇を思うがままにコントロールできるようになった。 ループの力を活用し、銃の扱いも五十年以上の特訓を経て凄腕のガンマンと並ぶほどになった。 もう、大人であろうと一対一では負けない。そう思えるほどに成長した。 (わたくしには──こんな事をしている暇も…こんな場所で死ぬ訳にはいけませんのに!) 全ては、親友古手梨花を捕らえるため。 大好きな梨花と、永遠に続く昭和五十八年六月を繰り返す事こそ、私の望み。 強情な梨花。頑固な梨花。私に決して屈しようとしない不屈の梨花。 生まれ育った故郷を、私を捨てて、外の世界に出ようとする裏切者の梨花。 逃がさない、決して。絶対に。 貴方は既に、オヤシロ様である私の物なのだから。 オヤシロ様の巫女である貴方は、ずっと私のそばにいればいい。 それこそが終わらない幸せ。 ずっとずっと輪廻(ループ)する幸せを、私は永遠に着飾って。 大好きな箱の中の猫を、慈しみながら過ごすのだ。 ───ここでは君のオヤシロ様の力も制限されている。自殺するのはやめた方がいい。 あの、乃亜という子供に殺し合いをしろと命じられて。 兄弟が死ぬのを無感情に眺めていた私は。 訳の分からないカケラに迷い込んだと思った私は、先ず死のうとした。 とんだ意味不明な傍流に巻き込まれてしまった、そう思って。 そうして、自殺用の武器を探してデイパックの中を漁っていたら見つけたのが、私の制限を示した、乃亜からのメッセージカードだった。 どうやら、エウアさんから賜った能力はこの場所では制限されているらしい。 (つまり、此処で死んでしまえばそれで終わりということ……!!) だが、焦りは無かった。さっきの兄弟程度の相手ばかりなら、まぁ自分が負ける事は無い。 そう考えていたから。 兄弟の方の片割れは何某かの特殊能力を有していたようだが、あの程度なら抗す術は幾らでもある。 何しろ、雛見沢の百年の惨劇に、人が死ぬバリエーションは事欠かなかったから。 謀殺する手段は、簡単に思いついただろう。 もし本当に参加者があの兄弟程度の力量の持ち主だったなら…… (それなのに……!あんなの!反則ですわ!!) 支給された銃で撃っても、ビクともしなかった。 同じく支給された、私にとって馴染み深い悪魔の薬も、あんな相手では刺す暇がない。 今こうして逃げられているのも、相手が何か明らかにやる気がないからでしかない。 追跡者がその気になれば簡単に私は殺されるだろう。 (銃で撃っても!死なない相手を呼ばないで欲しいですわ!!) 迷いのない、支給された拳銃での頭部への三点制圧射撃(スリーショット・バースト) 見事命中したにも関わらず、相手の反応はケロリとしていた。 そして、その両手から伸びた剣で切りかかってきたのだ。 眼への銃撃と、咄嗟に尻もちつくことで命を拾ったが、追撃されていれば間違いなく死んでいただろう。 それから必死に逃走を開始して、今に至る。 (あの方は──いない!逃げ切れたんですの?) と、不意に背中から感じていた圧迫感が消えて、振り返り背後を確認する。 先ほど自分が出会った少女は、いなかった。 逃げ切ったのかと、立ち止まって、呼吸を整える。 ここまでずっと走り通しだったため、呼吸が苦しい。 胸を押さえながら深呼吸をして、もう一度走ってきた道を確認する。 そこに人影は無かった。 (どうやら──撒けたようですわね?) その事を確認して、思わず年相応の少女の様に胸を撫で下ろす。 拳銃も一先ず仕舞い、人心地つく。 どうやら相手は自分を見失った様だが、まだ安心するのは早い。 そう思って、直ぐにここから離れようとした、その時だった。 ─────!?!?!?!? さっきまでいなかった筈の少女が前方に現れ、振り向いた瞬間剣を向けてきたのは。 動くことが、できない。 そうすれば、この少女は私の首を即座に撥ねるだろう。 私は、私が詰んだことをその瞬間に悟った。 (あーあ、ここで負けとは。オヤシロ様も形無しですわね……) 屈辱だった。 少し前までのただの北条沙都子ならともかく。 今の私が、こんな殺し合いに巻き込まれて、為すすべなく早期脱落するのは。 だが、百年惨劇を繰り返してきた私だからこそ分かる。 今の私に、この状況から逆転する手段は無い。 口惜しいが、死ぬのには慣れている。 ここでなお不様を晒すよりは、大人しく断頭の刃を受け入れようと思った。 視線と視線が交わり、少女の瞳を見るその時までは。 「……どうしたんですか、早くおやりなさいな」 ……美しい女の子だった。伸ばされた白銀の髪に、妖精の様な整った顔立ち。 けれど、絶望に囚われた目をしていた。 梨花が同じ目をしてくれれば、私は手を叩いて喜んだだろう。 もっとも、梨花でも何でもない子供がそんな目をしていても、嬉しくも何ともないが。 私がさっさと殺すように促しても、当の本人はうわ言のように、何かをぶつぶつと呟いて。 何だか、見ていてイライラしてくる子供だった。 その苛立ちのままに手を伸ばす。 反射的に今度こそ首を絶たれると思ったが、慣れた死という現象は、やってこなかった。 そのまま目の前の少女の顔を両手で掴む。 「……やる気があるんですの!?」 返事は帰ってこなかった。 こうやって顔を触られても、まだ私を見ていない。 視界に入ってはいるが、それだけだ。首筋に剣を当てながらまだぶつぶつとうわ言を呟いている。 オヤシロ様となった私を完膚なきまでに詰ませた力の持ち主なのに。 何だそれは、と思った。 勝者は敗者の悔しがる顔を眺めて、それを踏み躙りながら先へと進むものだろう。 殺されるにしても、こんな夢現な相手に殺されるのはごめんだ。 気づけば、私は静かに、目の前の子供に問いかけていた。 「……貴女、お名前は?」 その言葉に、目の前の少女が初めて反応を見せる。 ぴくりと、肩を震わせて。うわ言ではなく、はっきりと。 彼女は、自分の事をメリュジーヌと名乗った。 ■ その日、私は私の一番愛していた妖精(ヒト)を殺した。 ■ アルビオン。 神の時代が落陽を迎え、人の時代に移り変わろうとしていた頃。 それでもなおブリテンに留まり続けようした紅き竜。 世界の裏側に消えていった同族たちから取り残された、最後の幻想種。 アルビオンは強大だったが、移り変わろうとする時代のうねりには勝てなかった。 神秘の衰退により力尽き、朽ち果てたアルビオンの左腕から生まれたのが私だった。 尤も、誕生した時は人の姿ですらない。 アルビオンの遺骸が眠る昏くて腐った汚濁の中に沈む、ただの肉塊だったけれど。 ────私は、オーロラ。貴女、お名前は? 昏くて汚い汚濁の水面で、僕は、妖精(オーロラ)に出会った。 彼女に抱きかかえられた時、肉塊だった私は、妖精の形を得た。 元は龍の遺骸の左腕だった僕が、少女の、妖精の形を取った理由は単純だ。 ただ、彼女(オーロラ)の様になりたい、その一心だった。 僕は、僕を抱きかかえる彼女以上に、美しい物を見た事が無かった。 眼にして、人の形を得た瞬間、瞳から熱いものが流れた。 それほどまでに、僕を救った奇跡(オーロラ)は美しかったのだから。 そして僕は彼女の騎士として生きようと思った。 何があろうと、オーロラを……彼女の笑顔と、七色に光る翅の輝きを守ると誓った。 ────貴女は私の王子様だもの。 ────何時だって、私が一番欲しいモノを持ってきてくれるのよね? そうして、僕は、私は。 オーロラの望みを叶え続けた。 『妖精も人間も共存できる世界を目指す。最も優しく慈愛に満ちた妖精』 いつだって彼女はそう見えるようにふるまい続けた。 でも、それは事実とは違っている。 彼女が愛しているのは、自分だけだから。 自分を愛してくれる環境。 自分が一番でいられる世界を大切にしている。 人間よりもずっと強い妖精の中で人間を庇護するのは、人間達からチヤホヤされるため。 妖精たちの旗印になるのは、そうしていれば誰からも尊敬されるから。 優れた指導者の様に見えるのは、彼女が誰とも争わないため。 自分が一番愛される存在でなければならない彼女がこれまで生き残ってきたのは。 彼女が強かったからからじゃない。 ただ、他の指導者の足を引っ張るのが上手かっただけなのだ。 ───僕は悪くない、僕が殺したかったんじゃない。 ───オーロラ、オーロラ…どうか聞かせてくれ…… ───僕は、私は、君がありがとうと言って笑ってくれれば、それだけで…… 自分より人気の妖精が出るたびに、“思いつき”で世界を悪い方へと転がしていく。 彼女に悪意はない。 だってそうすることが、彼女にとって生きるという事だから。 そうしなければ、自分より優れた誰かを貶めなければ、一番でなければ。 彼女は、枯れて死んでしまうから。精神のみならず、肉体的にも。 人が、呼吸しなければ死んでしまうのと同じように。 それが彼女の、妖精としての特性だった。 だから本当に、心の底から“自分に邪魔な相手は危険な相手である”。 そう思いつくだけなのだ。 その想い付きで、僕に一つの部族を滅ぼせと命じ。 最後には、彼女の思い付きは女王を…妖精國そのものを滅ぼすに至った。 そして、僕は、そんな彼女の思いつきに、最後まで従い続けた。 ───わかってる…わかってる……! ───愛されていないなんて、分かってる……! あれは奇跡、奇跡だった。 昏い沼の底で蠢くだけだった肉塊が、彼女に抱きかかえられた瞬間、人の形を得た。 人の姿のみならず、心を知った。憧れを知った。 決して揺らぐことのない、振りほどくことのできない愛を知った。 その愛を追いかけて、僕は後戻りのできないところまで進み続けた。 ───ブリテンの外!カルデアの人たちから聞いたでしょう! ───こんな、つまらなくなった世界より、きっとずっとマシのはず。 ───だって、憐れで汚くて弱弱しい人間達だけの世界なんですもの! ───もっと簡単に、もっと行儀よく、理想の世界が作れるわ!! ───可愛い人。私のメリュジーヌ。今一番貴女を愛しているわ。 ───手を出して、私の手を握って、新しい生活を始めましょう? 彼女の暗躍と扇動によって。 ブリテンは…女王モルガンが作り上げた妖精國は地獄絵図となった。 呪詛と殺戮、暴徒が蔓延し、誰の目にも末期であるのは明らかだった。 そんな地獄を創り上げてなお、彼女の関心は既に外の世界へ向いていた。 そして、彼女を、僕は。私は。 ───そんなわけ、ないんだよ……! ───君が外の世界で愛されるハズが無いんだ…!君は此処でしか一番になれないんだから……! ───外の世界はこの妖精國程単純じゃないんだ。君が害悪だなんて事は、直ぐに見抜かれる……! ───そんな世界で君が生きていけるとでも!? ───澄んだ水の中でしか生きていけない君が! 僕は、オーロラを刺した。 今迄生きてきた妖精國はもうすぐに滅びる。 かといって、外の世界は彼女にとって終わりのない地獄に他ならないから。 きっとすぐに、彼女の輝く翅も、姿も、色あせて衰えていく。 その事実に誰よりも彼女(オーロラ)自身が耐えられない。 自分を愛せなくなって、絶望する。 そんな地獄の未来に、彼女を連れて行くわけにはいかない。 だから刺した。 例え、彼女が死ねばこの身体がただの肉塊に戻るとしても。 生涯を賭けて守ると誓った、私の愛(すべて)を、喪うとしても。 ■ 「……そして、頭の中が真っ白になって……気が付いたら此処にいた」 話を聞いた理由は、反撃の手段を考える時間が欲しかったから。 何故そんな光のない瞳をしているのか、そう尋ねた。 尋ねた瞬間は無言で。十秒後にぽつりぽつりと語り出し、やがて止まらなくなった。 彼女の話を聞いて。 何を言っているかは八割がた分からなかったけれど。 それでも確信できることが、三つだけあった。 まだ、私の悪運は尽きていないということ。 今この、メリュジーヌさんは、空っぽなこと。 そして、この方は私の役に立つ、ということ。 「…なら、貴方がすべきことは一つですわ、メリュジーヌさん」 にぃ、と笑って。今も剣が首筋に添えられているにも関わらず。 私は、北条沙都子は前に進み出た。 抵抗は無いだろうと思って、事実抵抗と呼べる動きは無かった。 私は、メリュジーヌさんの身体を優しく抱きしめる。 そして、耳元で囁いた。 「オーロラさんとやらと、一緒に生きていきたいのでしょう?」 「彼女との最後を、後悔しているのでしょう?」 「愛が欲しいのでしょう?」 「そのために、わたくしを襲ったのでしょう?」 瞳を紅く染めて。 カラメルの様に甘い囁きを、彼女へと届ける。 リンゴを食べろと、嘯いた蛇のように。 「……でも、貴方だけでは駄目ですわ」 「貴女の様に、絶望に囚われた瞳をしていては、勝てる勝負も勝てません」 「絶望と言う運命を乗り越えるには、絶対の意志が必要なのですから」 抱きしめた彼女の唇が、仄かに震える。 その口から、呆然と「絶対の、意志…」と、言葉が漏れる。 そして、彼女とこの瞬間初めて、会話が成立する。 「………大した…自信だね。君に、その絶対の意志があるの?」 問いかけに、「ありますわ」と、即答で答える。 私は私を信じている。 絶対の意志が無ければ、梨花に打ち克つことなど出来はしないのだから。 何百年かかろうと、私は私の望んだ未来へ必ず辿り着く。 だから、こんな所で負けるわけにはいかない。 何を利用してでも、必ず昭和五十八年の雛見沢へと帰って見せる。 「……さっきは僕に殺されようとしてたよね」 「ええ。ですが、結果的に死んでいないでしょう?」 「………」 抱きしめていた体を離し、そっと右手を出す。 もう首筋に剣は当てられていなかった。 「一緒に、優勝を目指しましょう。メリュジーヌさん」 「貴方が信じて居なくとも、わたくしは絶対の意志を信じます」 「貴方はただ、わたくしを利用すればいい。わたくしも貴方を利用します」 「最後に二人残った時、わたくしの首を撥ねればそれで貴方が優勝者です」 その手が握られることは無かった。 けれど彼女はくるりと私に背を向けて。 一言、唸る様に言葉を紡いだ。 「……私は、君の騎士になるつもりはない」 「だけど、私は彼女のために生きる、そう決めた」 「彼女がせめて、もっとマシな最期を迎えられるなら──」 「君の様な者とだって、手を組もう」 ───すみませんね。オーロラさん? ───でも貴方、もうメリュジーヌさんは要らないのでしょう? ───だったら、わたくしが代わりに使って差し上げますね? ───私が私の望む未来へと、辿り着くために。 ■ 目の前の人間の少女が、邪悪である事は見ただけで分かった。 この子はきっと、オーロラと同じ気質の人間だ。 だけれど、オーロラよりもずっと賢くて…普通の人間ではない事も分かった。 彼女に与すれば、また僕の手は血に染まる事も察せた。 けどそれでも、僕は彼女の誘いを拒絶する事ができなかった。 愛してくれとは言わない。二人で生きていきたいとも願わない。 ただ、せめて。あの終わりを否定できるのなら。 僕の奇跡(オーロラ)の終わりをもっと穏やかなモノにできるのなら。 悪魔に魂を差し出しても、構わなかった。 「……私は、君の騎士になるつもりはない」 「だけど、私は彼女のために生きる、そう決めた」 「彼女がせめて、もっとマシな最期を迎えられるなら──」 「君の様な者とだって、手を組もう」 本当は、優勝を目指すだけなら、彼女の力など必要ない。 人間と最強種の間では、殺し合いなど成立するはずがないのだから。 此処で彼女を斬って捨てて、目についた他の参加者を次々に血の海に沈めて行けばいい。 魔力の問題も、無尽蔵にして超高出力の魔力を生み出せる龍種の心臓ならば問題ない。 けれど、「絶望に囚われていては勝てない」という彼女の言葉は。 皮肉にも、私の胸の奥深くへと突き刺さった。 確かにオーロラを刺した以上、私はいつまで人の形を保っていられるかは分からない。 最後の一人と言う所で、肉塊に戻る可能性もある。 だから、彼女の言う絶対の意志を利用しようと……いや、これは建前だ。 尤もらしい理屈をつけても、本当の理由は単純で。 酷く疲れ切っていた所に、彼女がはっきりと進むべき指針を示してくれたのは有難かった。 だから、私は家族と喧嘩した少女が行きずりの男に身を任せる様な、退廃的な思考で。 北条沙都子と名乗った少女の、甘言に乗ったのだった。 あぁ、僕は、私は。どうあっても君の為にしか生きられないらしい。 【北条沙都子@ひぐらしのなく頃に業】 [状態]:健康 [装備]:FNブローニング・ハイパワー(10/13発) [道具]:基本支給品、FNブローニング・ハイパワーのマガジン×2(13発)、H173入り注射器 [思考・状況]基本方針:優勝し、雛見沢へと帰る。 1:メリュジーヌさんを利用して、優勝を目指す。 2:使えなくなったらボロ雑巾の様に捨てる。 3:願いを叶える…ですか。眉唾ですが本当なら梨花に勝つのに使ってもいいかも? [備考] ※綿騙し編より参戦です。 ※ループ能力は制限されています。 【メリュジーヌ(妖精騎士ランスロット)@Fate/Grand Order】 [状態]:健康、自暴自棄(極大) [装備]:『今は知らず、無垢なる湖光』 [道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3 [思考・状況]基本方針:オーロラの為に、優勝する。 1:沙都子の言葉に従う、今は優勝以外何も考えたくない。 2:最後の二人になれば沙都子を殺し、優勝する。 [備考] ※第二部六章『妖精円卓領域アヴァロン・ル・フェ』にて、幕間終了直後より参戦です。 ※サーヴァントではない、本人として連れてこられています。 ※『誰も知らぬ、無垢なる鼓動(ホロウハート・アルビオン)』は完全に制限されています。元の姿に戻る事は現状不可能です。 【H173@ひぐらしのなく頃に業】 発症すると妄想や幻聴、疑心暗鬼を催す雛見沢症候群を強制発症させる悪魔の薬品。 H173はその促進剤であり注射すれば即座に末期症状まで進行した状態で発症するが、 今ロワでは制限により初期症状の状態で発症する程度に抑えられている。 投薬方法は主に静脈注射だが、綿騙し編では経口摂取によって発症したともとれるため、 飲み物に混ぜるなどでも発症させることができる。 176 灰色少年と明るい少女 投下順に読む 189 「藤木、殺し合いに乗る」の巻 時系列順に読む START 北条沙都子 009 さぁ誰かを、ここへ誘いなさい START メリュジーヌ
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まっすぐに愛してる 金月真美演唱的曲目之一,与心跳回忆无关。 歌曲信息 作詞:金月真美 作曲:木戸やすひろ 演唱:金月真美 歌词 緩やかな日差しが差し込むカフェテラス 窓際でぼんやり街を見つめる 通り過ぎてく季節をアルバムにかえて 二人で見送るのも何度目かしら? あなたの瞳に見つめられたとき どこかで覚えた駆け引きも嘘も なんにもいらない事に気付いたの まっすぐに…愛してる ふざけあう仕草もつないだ指先も ねぇ出逢いの頃よりずっと自然ね 過ごした時間の輝き 二人を変えてく 自分よりも大事なはじめての人 あなたの想いに包まれた時に 目溜まりみたいな安らぎ知ったの 溢れる愛しさ全て届けたい 透き通るその胸に 優しい笑顔の癖を真似てみる いつでも心にあなた感じてる 喜び哀しみ二人うけとめて まっすぐに…愛したい 收录CD 金月真美 もっと恋しよう (1996/09/21) 金月真美 catchy (1996/11/21) 相关页面 音乐
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毒まで愛して 最終リワード ・・・ガス・グレネード×10 part数 内容 必要数 ミッションリワード part1 通信タワーにティア3データドライブを保管せよ通信タワーにスモーク・グレネードを保管せよ 13 310FPICAの代用紙幣×810000K part2 毒線を届けよ合金を届けよ油圧ピストンを届けよ 3107 380FPICAの代用紙幣×1114000K ≪ミッション一覧に戻る
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- 新作の計画を立てたのはいいとして… 昨日は熱が39度もあり、今日も体調がすこぶる悪かったので 休日だというのに全く外に出れない不遇な週末を過ごしました。 そんな最中にCM動画作って投稿するとか、馬鹿ですねぇ。 健康な日にろくに新作製作進めねぇくせして。 次回作を2作同時に造り進めていると前にお話しましたが、 先に完成した方を動画にして公開しようかと考えています。 両方ともガンダム00の主題歌が元ネタなので もしかして痴音ミク劇場版観に行ってハマっちまったのかとか 今度はフェルト萌えが始まるのかとか考える人が出てくるかもしれませんが、 観てないんですよね。 テレビシリーズ全部見てたので、機会があったら観に行きたいんですが。 俺けっこう寂しがりやなので(ウソジャナイヨ) あんまし一人で映画館とかカラオケとか行けないんですよね… ※消失は公開初日に一人で観に行きましたけど。 まぁ何はともあれ、次の曲はやたらと難しいので ちゃんと練習して、聴き手のみなさんが怒りのトランザムバーストを起こさない程度に 完成度を上げていきますので、みなさんお楽しみに。 というかカゼ早く治します。 戻る コメント 楽しみにしてるよ。お大事に。 -- 名無しさん (2010-09-26 20 25 28) 今回はガンダムか・・・・焦らずじっくり身体を治してください -- 名無しさん (2010-09-26 20 35 20) お大事に。 -- 名無しさん (2010-09-26 21 07 45) 当たらし新曲どちらも面白そうですね 楽しみにしています -- 名無しさん (2010-09-26 21 19 16) ↑間違えた -- 名無しさん (2010-09-26 21 20 04) お大事に〜( ̄0 ̄)/ -- 名無しさん (2010-09-26 22 59 33) 初めまして~。。痴音さんの曲が原曲よりもすばらしいと勝手に思ってる中1です((ォィ 新曲楽しみです!!(ガンダムみてないけど両方好きな曲なので) 風邪早く治して新曲つくり頑張ってください!! お大事に~。 -- 悠架 (2010-09-27 08 37 25) 記事と関係なくてすいません 自分は痴音ミクさんの音楽をIpodで聞いているのですが -- 名無しさん (2010-09-27 16 07 44) 歌が始まるまでに1分近く時間が空く動画もあったりしてすこし不便です なのでよかったら全曲メドレーをうpしてもらえないでしょうか それではお大事に -- 名無しさん (2010-09-27 16 08 59) changeの替え歌もおねがいします -- 名無しさん (2010-09-27 18 38 57) やっぱクオリアを使うかwwwwww -- 名無しさん (2010-09-27 20 16 30) コモレアは期待しています -- 名無しさん (2010-09-27 20 16 59) お大事になさってください p(*^-^*)q がんばっ♪ -- 名無しさん (2010-09-27 20 47 05) ヤバい、原曲知らん -- 名無しさん (2010-09-29 21 31 04) 所で痴音神は何故糞アニメのガンダム00が好きなの? -- 名無しさん (2010-09-30 12 08 07) 気合で風邪治してください -- 七 (2010-10-02 07 57 36) はよ更新しろやボケ -- 名無しさん (2010-10-03 19 30 24) 遅いねえ・・・更新・・・早くしてよ・・・・・・・ -- 名無しさん (2010-10-04 18 49 16) まだ風邪治ってないのかな? -- 名無しさん (2010-10-04 23 11 49) 名前 コメント
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470 名前: NPCさん 2005/12/07(水) 12 58 30 ID ??? 11月の事ですがいいですか? 東京のI橋で行われたセッションの、トーキョーnova卓で起きたことです。 KというGMが運営していたんだが、その卓に入ったIという男が起こした行為です GMが卓紹介で「プレロールドキャラから選んで貰います」と宣言してるのに、 配られたキャラデーターにイチャモンつけて、自分でキャラ作成の許可を取ろうとする。 その時、11時30分過ぎ。 GMがついに折れて、 「飯時間含めて、1時に始めたいです。それまでに作成できるなら…」 と不承不承認めると、簡易作成(フリーカーでも30分はかかる)ではなくて、GMの持つ 基本ルールブックと全サプリメント+SSS(追加シナリオ・データー集)を拝借し、 完全作成(どんな達人でもゼロから造ると1時間じゃ済まない)を始める。 GMは、さくさくリサーチを進める為に、調査系技能の補強とキャラの色つけ用に、 経験点をブーストしたプレロールドキャラを用意してた。 GMの警告にたいし、Iの返答 「30分で出来る」 できあがったのは、予定を遙かに超えた時間。シナリオ開始したのは2時だった。 しかも、GMが用意したキャラと スタイルがペルソナしか一致していなかった、GMが用意したのは企業とテクノロジー畑 の調査が出来る、企業工作員だったが、Iが仕込んだのは、色つけ・調査系技能に廻された 経験点使って造り上げた潜入/暗殺型に特化した完全義体(サイボ-グ)の企業工作員だった。 シナリオは、他の参加者の努力でなんとか終了。このキャラは一人だけ話の中核に混ざり 込むことが出来ず、Iは終始詰まらなさそうに斜に構えていた。 これって、素なら迷惑行為、自覚してるなら進行妨害ではないか!? で、2次会。 GMが帰ったあと、 「自分が一番novaを愛してる、今日のは、嘆かわしい」 と酔っぱらいながら演説! 困った指定 okでしょうか? スレ86
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『狐を妻として子を産ましめし縁』というお話がある。 とある国に若者がおり、山で出会った少女と恋し結ばれ子を為した。 だが、その夫婦の生活は飼っていた犬によって終焉する。 犬に吠えられ追われた妻が、本性である狐の姿を夫に現してしまうのだ。 狐は哀しみながら山へと戻ろうとする。本当の姿をさらした以上、夫は自分を受け入れてくれないだろうと。 だが後を追ってきた夫は逃げようとする狐にこういった。 「お前とは共に暮らし子すら為したではないか。私はお前を忘れない。今まで通り、共に過ごそう」 例え種族という垣根を越えてでも愛が通じ合ったというお話である。 マヨヒガの最深部にある書庫で、読んでいた本を閉じながら私は嘆息する。 私は藍を愛している。妖怪の賢者の従者である九尾の狐を。 例え彼女が過去に傾国の魔性と言われても、大妖怪であるにしても私は彼女を愛している。 そこだけは変わらない。変えたつもりはない。 だが、彼女は私を信じられなかったのだろうか。 かつては人里の近くに家を構えてた私を連れ去り、主人から任されている屋敷の1つであるマヨイガに閉じ込めた。 彼女の愛情が深いのは解る。人の身で受けるにはあまりにも深すぎるという事も。 妬心、猜疑、不安、情念、執心。 彼女の内側で渦巻くモノが私を此処に押し込めてしまったのだ。 先の御話の中でも、信じたのは男で、逃げたのは女だった。 「○○、ここに居たのか。そろそろ寝よう」 襖が開き、肌襦袢姿の藍が書庫に入ってきた。 マヨヒガ内の時間で、もう就寝の時間なのだろう。 本を本棚に戻し彼女に近付くと、彼女は私を抱き締め頬ずりをした。 暗い寝室の中。上気した肌を寄せてくる彼女を抱き返しながら思う。 あのお互いに愛し合った夫婦でも、最初は妻が本性を現しても愛してくれると信じられず、山へと逃げてしまった。 逃げるなどせず拘束すらしてくる気性の持ち主である藍も、その根底には男が自分の元を離れてしまわないかという不安がある。 愛している、お前だけを。私は数え切れない程彼女にそう伝えた。 彼女が本当の意味で、私を信じてくれるようになるのは何時だろうか。
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一面の白い世界。そこに立つ一人の女性。 背は高く、髪も長い。そして、どうしてもその大きな胸に目が行ってしまう。 顔はよく見えないが、きっと美人だろう。 話しかけようにも、声が出ない。近づこうにも、体が動かない。 女性は何かを探すように辺りを見渡すが、やがて諦めたように溜息をつき、どこかへと歩き去っていく。 そして、辺りの景色が歪み、白い世界は消えていった。 「…またか」 そうじろうは上半身を起こし、頭をかいた。 ここ一週間ほど同じ夢を見る。 同じ場面に、同じ人物。相手の行動まで同じだ。 「たまってんのかな…俺」 毎夜女性の出てくる夢を見る自分に、そうじろうはそんな事を思った。 「…またあの夢?」 朝食の席で、そうじろうの顔色が優れないのを見たこなたが、そう聞いた。 「ああ、まったくこう毎晩だとこたえるよ…真夜中に目が覚めるしな」 「やっぱり、知らない女の人?」 「顔は良く見えないから、はっきりとはいえないけど…知らない人だと思う」 「ふむ…」 こなたは顎に手を当てしばらく考えた後、何か閃いたように人差し指を立てた。 「わたしは気にしないからさ、ゆーちゃんのいない時にでも抜いといた方がいいんじゃない?」 「…女の子がそんなこと言っちゃいけません」 ニヤつくこなたと、眉間にしわを寄せるそうじろう。ゆたかはハテナマークを頭の上に浮かべながら、その二人を交互に見ていた。 伝えたいこと - 「…ってなわけでね、ここんところ毎晩同じ夢見るんだってお父さんがね」 お昼休み。いつものようにかがみ達と昼飯を食べていたこなたは、父の夢のことを友人達に相談してみることにした。 「それで、みゆきさんが夢占いがどうこうって前言ってたからさ、なんの意味があるのかなって」 そう言いながら、こなたはみゆきの方を見た。みゆきは難しい顔をしながら、顎に指を当てている。 「そうですね…状況が曖昧過ぎて、これはというのが思いつきませんが…女性の方が出てくると言うのは、やはり…その…」 言い難そうにうつむくみゆき。それを見たかがみが、呆れたように溜息をついた。 「欲求不満…ってとこかしらね」 横からのかがみの言葉に、うつむいたみゆきの顔が赤く染まった。 「んー…どうだろうねー…わたしも最初はそう思ったけど、よく考えたらそれはなんか違うようなような気がするんだよね」 「そりゃどうして」 「お父さんが欲求不満だと、ロリっ娘が最初に出てくると思うんだよね」 こなたの言葉に、かがみが呆れたように溜息をついた。 「そういやそうなんだけど…でも、あのおじさんロリってだけじゃないじゃない。スタイルのいい女性が嫌いってわけじゃないんでしょ?出てくる可能性はあるんじゃない?」 「それもそうなんだけど、毎晩だからねー…それほどまでに印象深く残るってのは、やっぱロリじゃないかと…あのお父さんだし」 「…うーむ…さすがに娘の言う事は一理あるわね…」 そんなこたなとかがみの会話を聞いていたつかさは、冷や汗を一筋垂らしていた。 「なんだか、聞いてると凄い会話だね…」 「そうですね…とても自分や人の父親のことを話してるとは思えませんね…」 「うん、どっちかっていうと犯ざむふ…」 「つかささん…さすがにその先はだめです…」 つかさの口を押さえたみゆきは、こなた達の方を見た。幸い二人は会話に夢中なようで、こちらには全く意識を向けていない。それを確認しみゆきは安堵のため息をつき、苦しそうに自分の腕を叩いているつかさに気がつき、慌ててその手をつかさの口から離した。 そして、その日は結局何の結論も出ることはなかった。 その日の夜。こなたは白い世界にいた。 父から聞かされていたのと同じ風景。そして、同じ特徴の女性。 しかし、父から聞かされていたのとは違うことがあった。声こそ出ないものの、体は動くのだ。 こなたはその女性に近づいてみた。しかし、近づいてみても女性の顔がはっきりと認識できない。そして、さわることも出来ないし、女性がこちらに気がつくこともなかった。 こなたは何とか女性に気付かれようと色々試してみたが、結局女性は溜息をついて歩き去ってしまった。 「うそーん…」 目を覚ましたこなたは、上半身だけを起こして頭を抱えた。 次の日のお昼休み。朝からどことなく元気のないこなたに、かがみ達三人は心配そうな視線を向けていた。 「こなた、どうしたの?なんかあった?」 たまりかねたかがみが、こなたにそう聞くと、こなたは軽く頷いた。 「…わたしも、お父さんと同じ夢見ちゃった」 そして、ポツリとそう呟いた。 「…え?マジで?」 かがみ達三人が同時に固まる。 「え、えっと…内容はまったく同じものなのでしょうか…?」 みゆきが恐る恐るそう聞くと、こなたは再び頷いた。 「うん、ほとんど一緒だったよ…女の人も出てきてた」 「え、じゃあ、こなちゃんも欲求不満だったの?」 今度はつかさ以外の三人が固まった。 そして、その沈黙の中で、かがみは無言でつかさの額をピシャリと叩いた。 「痛っ!?…何するの、おねえちゃ-ん…」 半泣きで抗議するつかさを無視して、かがみはこなたの方に向き直った。 「なんつーか、あれじゃない?その話ばかりしてたからじゃないの?こなたって、なんだかんだでおじさんの影響受けやすいんだし」 「う、うーん…そっかなー…」 納得がいかないかのように、腕を組んで考え込むこなた。 「ま、その仲の良さだけは羨ましいけどね」 そう言いながら、話は終わったとばかりに、かがみは弁当の続きを食べだした。 「あの、泉さん…」 今度は、それまで何か考え込んでいたみゆきが、こなたに声をかけた。 「ん、なに?」 「先ほど『ほとんど一緒』だと仰ってましたが、なにか変わった点があったのでしょうか?」 「んーと…お父さんのは夢の中で動けなかったらしいんだけど、わたしは体を動かせたんだよね」 「それで、何か分かったことはありましたか?」 「うんにゃ、全然。顔が見えないし声もかけれないからさっぱりだったよ」 「そうですか…」 「そんなの当たり前じゃない」 弁当を食べていたかがみが、二人の会話に口を挟んできた。 「当たり前って?」 「何から何まで同じほうが、不気味ってことよ」 「うーん、それもそっか…」 こなたもそれ以上話すこともなく、その日の夢の話はそこで終わった。 更に翌日。困惑した表情で遅刻寸前に登校してきたこなたを見て、かがみ達は顔を見合わせた。 「ど、どうしたの、こなた?」 かがみが声をかけると、こなたはなんとも言えない複雑な表情をした。 「えっと…また昼休みにでも詳しく話すけど…ゆーちゃんも同じ夢を見たって…」 「マジで…?」 昼休み。集まった四人は、さっそく夢についての話を始めた。 「まあ、詳しく話すといっても、ゆーちゃんも同じ夢を見たとしか…あと、わたしもまた見たよ。一回見ると連続して見るようになっちゃうのかな」 「あの、小早川さんの夢も、何か変わった点があったのでしょうか?」 昨日と同じように、考え込んでいたみゆきがこなたのそう聞いた。 「うん。わたしみたいに動けるって事は無かったらしいんだけど…景色が見えたって」 「景色…ですか?」 「なんか、お花畑みたいな場所だったってさ」 カシャンと音がした。こなたとみゆきが音のしたほうを見ると、かがみが弁当箱に落とした箸を拾い上げていた。 「どったの、かがみ?」 「て、手がすべっただけよ…」 「ふーん」 こなたはかがみの手が少し震えているのが気になったが、それ以上何も言わずみゆきの方に向き直った。 「泉さん。その…一つ思ったことがあるのですが」 こなたが自分の方を向いたのを確認したみゆきが、話を続ける。 「なに?」 「一つの家に住んでいる人間全員が同じ夢を見ている。こう言うのは、その…躊躇われるのですが…霊障の類の可能性も」 「あるわけないでしょっ!!」 「ふわっ!?」 みゆきの言葉を遮り大声を出したかがみに驚き、今度はつかさが箸を取り落とした。 「どうしたの、お姉ちゃん?…びっくりしたよー」 「み、みゆきが変な事言うからよ。霊だのなんだの、あるわけないじゃない」 「ですが、こうも不可解だとそう言う可能性も…」 「ないわよ。もっと合理的な理由を考えてよ」 頑固に意見を通そうとするかがみに、みゆきは困った顔をした。 「…ねえ、その夢ってわたし達でも見れるかな?」 拾い上げた箸を両手で弄びながら、つかさがそう言った。 「どういうこと?」 こなたがそう聞くと、つかさは箸を置いて両方の手のひらを合わせた。 「わたし達でも、こなちゃんちで寝たらその夢見れるかなって」 「それは…どうだろう?」 「その夢、なにかきっと意味があるんだよ。ゆきちゃんの言う通りだとしたら、こなちゃんに近い人があの家に住んでる人になにか伝えたいとか」 「わたしに近い人ねえ…お母さんくらいしか思いつかないけど、お母さんはわたしと体型変わらないじゃない。あの女の人がお母さんとは、思えないんだよね。お父さんもそう思ってないみたいだし」 「そうだね…ねえ、やっぱりみんなでこなちゃんちに泊まってみようよ。こなちゃんとゆたかちゃんで微妙に違う夢を見てるならさ、もっと多くの人が見ればいろんな事が分かるんじゃないかな」 「あ、なるほど」 意外に納得のできるつかさの意見に、こなたは手を叩いた。 「それじゃ、みんなの予定が空いてたらさ、今度の土日にでも…」 「いい加減にして!」 こなたの言葉を遮り、かがみが大声を上げながら机を叩いた。 「さっきから聞いてたらなによ!霊だのなんだのあるわけないって言ってるでしょ!?そんな無駄なことに時間費やすなら、少しは勉強でもしなさいよ!受験生なんだから!」 「う、うぅ…そんな怒らなくても…」 あまりにも凄いかがみの迫力に、こなたもつかさも冷や汗を垂らして縮こまった。その中で、みゆきだけが冷静にかがみを見て首を傾げた。 「かがさん…もしかして、怖いのですか?」 そして、ポツリと漏らしたその一言に、かがみが固まった。 「な…何言ってるのよ、みゆき…そんなわけないじゃない」 先ほどの迫力が嘘のように、急に目が泳ぎだすかがみ。みゆきは、やはり冷静にかがみの腕を指差した。 「でも、かがみさん震えてますよ?」 「こ、これは…その…ちがうの!とにかくちがうのよ!」 そう言いながら、自分の手を隠すように抱きかかえるかがみ。それを見たこなたがニンマリと笑みを浮かべる。 「うし。じゃ、今度の土日にわたしの家で、泊まりで勉強会でもしようか。みんなで」 「ちょ、ちょっとこなた。だからそんな無駄なことに時間…って、勉強会!?」 「うん、これならかがみも納得」 得意気にブイサインをするこなた。 「や、でも…そんなわざわざ泊まりで…て言うか、その日用事が…いや、そもそもみゆきとつかさだけで十分じゃ…」 「やっぱり怖いんだ…やれやれ、かがみんは肝心なところでへなちょこですなー」 色々言い訳を始めたかがみに、こなたは大袈裟にお手上げのジェスチャーをして見せた。 「う…うううぅー…わ、わかったわよ!行けばいいんでしょ、わたしも!行くわよ!行ってあげるわよ!」 半ばやけくそのようにそう言うと、いつの間にか食べ終えた弁当箱を持って、かがみは足を踏み鳴らしながら教室を出て行った。 「…指摘しておいてなんですが、意外ですね。かがみさんは、こういうのは平気な方だと思ってました」 かがみを見送った後、みゆきがそう呟いた。それを聞いたつかさが頷く。 「うん。ホラー映画とか全然平気なのにね」 「わたしとしては、あれだけホラー物が苦手なつかさが平気なのが意外だけど」 こなたがそう言うと、つかさは顎に手を当てしばらく考え、困ったように頭をかいた。 「なんて言うんだろ…その女の人が怖い人って決まってないから、怖がっていい話かどうかまだ分からないから…かな?ホラー映画とかは最初から怖いの分かってるし…」 「なるほど。じゃ、かがみはその逆か」 「え?どういうこと?」 「かがみは、分からないから怖いんじゃないかなってこと。つかさも言ったけど、ホラー映画なんかは最初から怖いの分かりきってるし、作り物だって分かってるしね。今回のことは良く分からない、得体の知れないものだから、かがみは怖いんじゃないかな」 「うーん…そういうものなのかな…」 納得がいかないように首を捻るつかさ。それを見たこなたは、腕を組んで椅子にもたれかかった。 「ま、何が怖いかなんて人それぞれだよね」 そして、そう言ったあとこなたは、ふと思い出したようにみゆきの方を見た。 「みゆきさんは、こういうの平気なんだね」 「わたしですか?…少々怖いとは思っていますが、それ以上に何が起きているのか、知りたいと思う気持ちの方が大きいですね」 「そっか。みゆきさんの知的好奇心は凄いねー」 「泉さんはどうなのですか?」 みゆきに聞き返されたこなたは、なんともいえない複雑な顔をした。 「なんていうか…わかんないんだよね。少なくとも怖くはないんだけど、なんか胸の辺りがモヤモヤするって言うか、なんていうか…」 そう言ってこなたは俯いてしまった。それを見たみゆきは、声をかけるのが躊躇われ、黙って自分の弁当箱を片付け始めた。 土曜日。勉強会という名目で集まってきたかがみ達三人を、こなたは玄関で出迎えた。 「いらしゃーい…って…かがみ、なにそれ?」 こなたは、かがみの持っている鞄を指差した。そこにはこれでもかというくらい多くの、色とりどりのお守りが付いていた。 「なにって…見ての通り、お守りよ。念の為、色々そろえたのよ」 「…いや…もう念のためってレベルじゃない気が…」 視認できるだけでも、厄除けやら交通安全やら、家内安全やら学業成就やら、果ては安産まで括りつけられていた。 なにか痛い人を見るようなこなたの視線に、かがみの中の何かがキレた。 「そうよ!怖いのよ!これくらい持ってなきゃやってられないのよ!………文句ある?」 「…いえ…ありません…すいません…」 やけくそ気味に叫ぶかがみに、こなたはつい謝ってしまった。かがみはそのまま、勝手知ったるなんとやらとばかりに、ずかずかとこなたの家に入って行った。 「…厄除けだけでいいって、言ったんだけど…あはは」 つかさがそう言いながら、困ったように頬をかいた。 「鷹宮神社特製の、やけくそ守りをホントに見る日が来るとは思わなかったよ…」 「でも、あれだけあれば、本当になにが起きても大丈夫そうですよね」 こなたとみゆきは、顔を見合わせて苦笑した。 「…う…うぅ…」 「…か、かがみ…ちょっと休憩しようよ…」 こなたの部屋に、つかさとこなたのうめき声が響いていた。 「しない。続けるわよ」 その前では、かがみが腕を組んで仁王立ちをしていた。 「勉強会って名目で集まった以上は、キリキリやるわよ」 「くぞー…かがみに餌を与えてしまったか…」 「なんだ餌って…ま、今日はみゆきもいるし、はかどる…って、みゆきは?」 さっきまでつかさの隣にいたみゆきの姿が見えず、かがみは部屋の中を見渡した。 「みゆきさんなら、あそこに」 そう言って、こなたが指差したほうをかがみが見ると、部屋の隅の方でDSに興じているみゆきの姿が見えた。 「こーら、みゆき。なにやっとるか」 かがみはその背後から近づき、みゆきのDSを取り上げた。 「ふぇっ?…あ、かがみさん…え、えっと…これはですね…つい熱中してしまって…」 「熱中する前にやり始めるな、勉強会の最中に」 「で、ですよね…うぅ…新記録でしたのに…」 「みゆきさん…わたしのデータでこれ以上記録更新するのやめて…」 そんなみゆきを見ながら、こなたは冷や汗を垂らしていた。 「こなたお姉ちゃーん。晩御飯できたってー」 ノックの音と共に、ゆたかの声が聞こえてきた。 「ふえーい…って、もうそんな時間なんだ」 答えながら時計を見たこなたは、深く溜息をついた。 「なんか凄く無駄な時間を過ごした気が…」 「うん…あっという間だったよね…」 「無駄って言うな。勉強しただろ。つかさも同意するな」 「…新記録…」 「みゆきもいい加減あきらめれ…ま、今日はこの辺にしときましょうか」 かがみはそう言いながら、テーブルの上を片付け始めた。 「今日はって、なんか明日も勉強するみたいな言い方だね」 「当たり前よ。やるに決まってるじゃない」 「…明日が無事に来ればいいけどねー」 こなたの言葉に、かがみが固まる。 「な、なんのことよ…」 「今晩のメインイベント」 「…忘れようとしてたのに…」 泣きそうな顔でお守りを握り締めるかがみの肩を、こなたは笑顔で叩いた。 「ま、美味しい御飯でも食べれば気持ちも落ちつくって。かがみんなんだし」 「あんた、人をなんだと…」 「そう言えば、今日はこなちゃんずっと勉強してたけど、御飯はゆたかちゃんが作ったの?」 「うんにゃ。今日はお父さん」 「え…」 「ホントに…?」 こなたの答えに、微妙な表情で絶句するかがみとつかさ。それとは逆にみゆきは笑顔だった。 「わたしの家はお父さんが家事をしませんから、男の人が作るお料理って食べたことないんです。少し、楽しみですね」 「いや…そもそも食べられるものが出てくるかどうか…」 「お、お姉ちゃん…それは流石に失礼だよ…」 「『ホントに?』とか言ってる時点で、つかさもかなり失礼なんだけどね…ま、食べてみれば分かるよ」 「微妙に不安を残す言い方をしないでよ…」 食事を終えた後、四人はこなたの部屋に戻ってきた。 先頭で部屋に入ったかがみは、そのまま床に両手と膝をついて項垂れた。 「あれ?口に合わなかった?」 そのかがみにこなたがそう声をかけると、かがみはゆっくりと首を横に振った。 「…美味しかった…美味しかったんだけど…なに、この敗北感は…」 そのまま、床に倒れ伏したかがみを見ながら、こなたは困った様に頬をかいた。 「まあ、気持ちは分かるんだけどね…」 「でも、ホントに美味しかったよ…えーっと、こう言うと怒るかもしれないけど、こなちゃんが作ったのより美味しかった気が…」 「まー、そりゃお父さんはわたしの家事の師匠なんだし」 「そっかー…」 こなたとつかさが会話をしていると、かがみがユラリと立ち上がった。そして、つかさの方を向く。 「さ、つかさ。御飯も食べたことだし、帰りましょうか」 「…え?」 「まちなされ、かがみさんや」 こなたが、思わずかがみの腕を掴んだ。 「これからが本番であろう。柊かがみともあろう者が、逃げると申すか」 変に時代がかった口調で詰め寄るこなたに、かがみは力なく首を振った。 「…お願い見逃して…」 「ならぬ!今宵こそかの夢の真実を…ってか、かがみヘナチョコ過ぎ。もはやだめみんの領域だよ。このヘナチョコだめみんめ」 「そんな事言ったって、怖いものは怖いのよー…ってか、それ『み』しか合ってない」 「…突っ込む気力はあるんだ…っつーかこれでキレないとはね。しょうがないなー」 こなたは溜息をつきながら、かがみの間接をしっかりと極め、身動きをとれなくした。 「わたしがかがみ抑えとくから、つかさとみゆきさんお風呂入ってきなよ」 「はーい」 「わかりました」 「はーなーしーてー…鬼ー悪魔ー…ってかつかさー…あんたまでわたしを裏切るのー?」 こなたの下でもがきながらそう言うかがみに、つかさはゴメンとばかりに手を顔の前で合わせて見せた。 しばらくして戻ってきたつかさ達を見て、こなたは首をかしげた。 「つかさ、元気ないね。なんかあった?」 「なにかあったわけじゃないんだけど…」 つかさは隣に立っているみゆきをチラッと見た。 「…ゆきちゃんの見ると、少し自信なくなっちゃうなって…」 そして、今度は自分の胸の辺りを見て、溜息をついた。 「あー…まあ、みゆきさんじゃしょうがない。ってか、つかさでもそういうこと気にするんだ」 「こなちゃんのだったら、自信出るのに」 「…つかさ…それは喧嘩を売ってると判断してよろしいか?」 「そ、そんなことないよ…」 こなたに睨まれ、つかさは思わずみゆきの後ろに隠れてしまった。みゆきは何のことか分からず、こなたとつかさを交互に見ながら、頭の上にハテナマークを出していた。 「ま、いいや。それじゃわたしは、かがみをお風呂にぶち込んでくるから、布団ひいといて」 器用にかがみの腕を極めたまま部屋を出て行くこなたを、つかさとみゆきは手を振って送り出した。 相変わらずの白い世界にこなたはいた。 前と同じように、体は動く。例の女性も前に立っている。 しかし、今回はその女性がこちらに近づいてきた。そして、こなたの頭の上辺りを両手でさわり始めた。女性の手がすり抜けるので、こなた自身はさわられているという感覚はなかったが。 こなたが身体を避けてみても、女性は変わらず同じ場所をさわっている。こなたより背の高い誰かの顔をさわっている。こなたにはそんな風に見えた。 突如女性がビクリと体を震わせ、三歩ほど後ずさった。そしてなにやらうろたえた様な素振りを見せると、後ろを向いて全力で逃げ出した。 唖然とするこなたの周囲で、白い世界が歪み始めた。 「…なんだろ…いまの…」 頭をかきながらこなたが上半身を起こした。時計を見ると、丁度0時。部屋の中を見ると、同時に目が覚めたらしい、かがみ達三人も体を起こしていた。 「びぇぇぇぇぇぇん!!づがざー!ごわがっだよー!」 そして、かがみが泣きながらつかさに抱きついていた。 「…なにがあったんだよ、かがみん…えーっと、みゆきさんどうだった?女の人に夢見れた?」 二人から話を聞くのは、しばらく無理だろうと判断したこなたは、みゆきの方を向いてそう聞いた。みゆきは顎に指を当てて、何かを考えるようなしぐさのまま、黙ってうなずいた。 「泉さん。泉さんのお母さんが写っている写真か何かがあれば、見せていただけますか?」 「え?うん、いいけど…えっと、あれはっと…」 みゆきに言われ、こなたは本棚からアルバムを取り出した。そして、母親であるかなたの写真のあるページを開いてみゆきに差し出した。 「ほい。この写真だよ」 「ありがとうございます。では、失礼して…」 みゆきはかなたの写真をじっと見つめると、納得がいったとばかりに二度ほどうなずいた。 「間違いありません。わたしが見たのはこの人です」 「え…じゃあ、みゆきさんはあの女の人の顔が見えたんだ」 「はい、はっきりと見ることができました。こちらに近づいてこられましたので、じっくりと見ることができたのですが、泉さんに似ておられましたのでもしやと思い…でも、この写真より少し大人びてましたね」 「いや、みゆきさん。その写真のお母さんも、年齢的には大人なんだけどね」 「そ、そうでしたか…失礼しました…」 恐縮するみゆきにこなたは苦笑を返すと、今度はつかさのほうを見た。かがみは落ち着いてきたのか、肩が少し震えているものの泣き声はやんでいた。 「つかさはどう?」 「わたしは…女の人の声が聞こえたよ」 「ホント?なんて言ってた?」 「えーっとね…近づいてきてね、わたしの顔の辺りを撫でながらね『あ、あれ?そう君じゃない?…おっかしいなー…っていうか、この子誰だろ?こなた…じゃないわよね』って言ってね。その後急に『ひわっ!?』って驚いて『ご、ごめんなさーい!』って誤りながら逃げちゃった」 「ふむ…撫でられたって、さわれたの?」 「ううん。ふれてるって感覚は無かったよ」 「そっか…まあでも、これではっきりしたね」 「なにがですか?」 「あの女の人が、わたしのお母さんだってこと」 こなたの言葉に、つかさとみゆきは顔を見合わせた。 「やっぱり、顔が一緒だったから?」 つかさにそう聞かれたこなたは、腕を組んで難しい顔をした。 「それもあるし、お母さんがお父さんを呼ぶときは『そう君』だったらしいからね」 「そっかー」 「…にしても、なんであんなナイスバディになってたのやら…それに、なんで逃げちゃったのかな…」 「…ぐすっ…逃げたの、たぶんわたしのせい…」 こなたの呟きに、泣いていたかがみが鼻をすすりながら答えた。 「かがみ、だいじょぶ?」 腕を解いたこなたがそう聞くと、かがみは弱弱しくうなずいて、つかさから体を離した。 「…女の人…えっと、こなたのお母さん。名前かなたさんだっけ?…がね、黙ったままわたしの顔をぺたぺた触ってきて…逃げようとしても動けないし、すごく怖くて『やめてっ!』って大声だしちゃったの…」 「そっかー。かなたさん、お姉ちゃんの顔を触ってたんだ」 つかさの言葉に、こなたとみゆきがうなずく。 「どおりで、わたしの頭あたりを触ってたわけだ」 「わたしは首の辺りでしたから、絞められるかと思いましたね」 「…いや、それは怖がろうよみゆきさん…かがみ以上に」 物騒なことをにこやかに言うみゆきに、こなたは冷や汗をたらした。 「そういや、かがみ。触られたって感覚あったの?」 そして、かがみの方を向いてそう聞いた。 「う、うん…普通に人の手に触られてる感じだった…」 「それじゃ、かがみは触れるのと声を出せるのと二つあったんだ。さすがと言うかなんと言うか…」 「それに、わたし達の夢と違って、かなたさんはかがみさんを認識していたみたいですね」 「あ、そっか。それもか」 こなたは再び腕を組んで考え込み始めた。 「しっかし。みんな何かしら夢の中であるのに、なんでお父さんだけ何も無いんだろう…お母さんはお父さんに会いに来てるっぽいのに…」 しばらく考えた後、こなたは何か思いついたように顔を上げた。 「もしかしたら…みんな。自分の布団運んでよ」 「え?どこに?」 つかさがそう聞くと、こなたはニンマリと笑みを浮かべた。 「お父さんの部屋」 「…なあ、こなた。これは一体…」 困惑するそうじろうの前で、部屋に入ってきたかがみ達とゆたかが、こなたの指揮の元、布団を引き始めた。 「みゆきさーん。そっち入りそう?」 「はい、なんとか」 「ゆーちゃんの方は?」 「ちょっと無理みたい…」 「なあ、こなた…」 そうじろうがもう一度こなたの声をかけると、こなたは眉間にしわを寄せながら、そうじろうの方を向いた。 「なんだよー。今、忙しいんだから」 「いや、俺の部屋で何を始める気なんだと…」 「ここでみんなで寝ようとしてるんだよ」 「それは何だ?俺へのサービスか?」 「…いや、そんな気全然ないから」 呆れたように顔の前で手を振るこなたに、困った顔のみゆきが近づいてきた。 「泉さん。この部屋だと、どうしても一枚引けないようですね…どこか、もう少し広い部屋に移ったほうが良いのではないでしょうか?」 「うーん。この部屋が一番いいと思うんだよねー。仏壇もあるし…しょうがない、体の小さいわたしとゆーちゃんが同じ布団で寝ようか」 「えっ?お姉ちゃんと?」 その言葉に驚くゆたかを、こなたが訝しげに見た。 「なんだよ、ゆーちゃん。わたしと寝るの嫌?」 「だ、だって、こなたお姉ちゃん寝相が悪いんだもん…叩かれたり、蹴られたりするんだよ…」 「う、そうだったのか…」 「じゃあ、俺がこなたと寝よう」 ビシッと親指を立てながらそう言うそうじろうを、ゆたかは驚いた顔で見た。 「伯父さん。平気なんですか?」 「もちろん。愛しの娘と寝るのに、そんなもの何の障害にもならんよ」 さわやかに言い放つそうじろうを、こなたが胡散臭げに眺める。 「愛してくれるのは嬉しいけど、こちらでお断りします」 「何故だ、こなたーっ!」 涙を流しながら吼えるそうじろうに、耳をふさぎながら顔を背けるこなた。その二人のやり取りを困った顔で見ながら、つかさがこなたに声をかけた。 「あの、こなちゃん。わたしがお姉ちゃんと寝るよ」 「え、いいの?つかさとかがみじゃ、ちょっと狭くない?」 「狭いのは大丈夫だと思うよ。それに…」 つかさはそう言いながらかがみの方を見た。こなたもそちらを見ると、黙々と布団を引いていたはずのかがみが、布団を頭から被って震えていた。 「…お姉ちゃんが、あんなだから」 「なるほど。んじゃ、つかさ。頑張って」 「うん…頑張ってみる」 つかさは小さくこぶしを握ると、かがみの布団に近づき肩がある辺りを軽く叩いた。 「お姉ちゃん、布団にいれて。わたしと一緒に寝よう?」 つかさが言い終わるが早いか、布団の中からかがみの手が伸びて、つかさを捕まえ中へ引きずり込んだ。 「わーっ!?…きゅ、急に…ちょ、お姉ちゃ…そんな、抱きつかないで…痛いよぅ…」 少しの間、布団がごそごそと動き、唐突にその動きが止まって静かになった。 「…え、えーっと…さ、さあ、みんな寝よっか」 その様子を見ていたこなたが、冷や汗をたらしながら無理に明るくそう言った。 「あ、あの、つかささんは大丈夫なのでしょうか…?」 「た、多分大丈夫…少なくとも食べられはしないだろうからね…」 同じように、冷や汗をたらしながら布団を見つめるみゆきにそう言って、こなたも布団に潜り込んだ。 一面の花畑の世界。こなたはそこに立っていた。 「ビンゴ。思ったとおりだね」 得意げにそう言いながらこなたが周りを見ると、そうじろうの部屋で寝ていた全員が、戸惑ったように辺りを見回していた。 「こなた…これは一体どういうことなんだ?」 こなたのそばに来たそうじろうがそう聞くと、こなたは左手の人差し指を立てて答えた。 「細かいことは良くわからないけど、お父さんはまとめ役じゃないかってこと」 「まとめ役?」 「そ、まとめ役。家で寝て、この夢を見た人はみんななにかしら出来たり見たりしてたのに、お父さんだけ何もなかったんだよね。それで、もしかしたらみんなの夢をまとめる役目なんじゃないかなって」 「何でそう思ったんだ?」 「この夢を見せてる人が、お母さんだからだよ」 「かなたが?…ってことは、あれか?あの女性はかなたなのか?」 「多分ね」 「あれが、かなた…いや、なんて言うか…」 「まあ、詳しいことは本人に聞こうよ。もうすぐ出てくると思うし」 「そうだな」 こなたとそうじろうから少し離れた場所では、ほかの四人が景色を眺めていた。 「凄いですね。本当に見渡す限りの花畑です…小早川さんは、この景色を見ていたのですよね?」 「あ、はい…でも、あの時は体動かなくて、こんなに広いとは思いませんでした。それに、わたしが見たときより少し色合いがはっきりしてるような…」 額に指を当て、自分の見たものを思い出しながらみゆきに答えるゆたか。その向こうでは、つかさとかがみも同じように景色を眺めている。 「綺麗なんだけど、なんかヒヤッとするね…渡っちゃいけない河があったりして」 「つかさー…なんでそんな怖いこと言うのー…」 「…ご、ごめん、お姉ちゃん」 自分の腰の辺りに抱きついてくるかがみの頭を、苦笑しながら撫でるつかさ。ふと、視界の端に何か動いた気がして、つかさはそちらに目を凝らした。 「あれって…こなちゃん!あの女の人!」 つかさに呼ばれたこなたは、急いでつかさのそばに走ってきて、同じ方を見た。 「…本当に、かなたなのか?」 少し遅れてきたそうじろうがそう呟くと、それが聞こえたのかこちらに向かって歩いてきていた女性が立ち止まり、柔らかく微笑んだ。 『そう君…久しぶりだね』 「かなた…その…あのな…」 そうじろうが何か言いづらそうに視線をそむける。それを見たかなたが首をかしげた。 『うん?』 「その姿はないわ」 『なんでーっ!?』 左手を顔の前で振りながら言い放つそうじろうに、かなたは思わず大声を上げていた。 「いや、だって…なあ、こなた?」 「うん。ロリ属性こそが、お母さんのアイデンティティだと…」 『親子そろって、どういう目で私を見てるのっ!』 かなたの言葉に、こなたとそうじろうはお互い顔を見合わせ、同時に首をかしげた。それを見たかなたが深くため息をつく。 『うぅ…分かった…元に戻ってくるから、少し待ってて…』 元気なく歩いていくかなたを、そうじろうとこなたは手を振って見送った。 「なんと言いますか…想像してたシーンとはまったく違いましたね」 「うん…こなちゃん達、普通すぎ…」 その後ろでは、他の四人があきれ果てていた。 しばらくして、さっきと同じ方から今度は見事なロリ体型のかなたが歩いてきた。 「かなたーっ!会いたかったぞーっ!!」 そして、こちらに来るのを待ちきれないかのようにそうじろうが駆け出し、かなたに抱きついていた。 「うわー…さっきと反応違いすぎだよ」 こなた達もあきれながらその後を追って、二人のそばへ向かった。 『…分かってたのに…そう君がこういう人だって、分かってたはずなのに…』 そうじろうに抱きしめられながら、かなたは感動とは違う涙を流していた。 「っていうか、最初からその姿で出てくれば、少しはややこしくならなかったのに」 『うぅ…私は好きで育たなかったわけじゃないのよ…少しくらい夢見させてよ…って、ややこしい?何が?っていうか、その人たちは誰?なんでここに?』 「今頃気がついたんだ…えーっとね…」 こなたは出来るだけ手短に、今までの経緯とここにいる人物と自分の関係を、かなたに伝えた。それを聞いたかなたは、難しい顔をしてうつむいた。 『そっか…そんなことに…夢枕に立つって難しいのね。ホントはそう君とこなたにだけ会うつもりだったのに』 そして、未だに自分を抱きしめているそうじろうの頭を軽く撫でた。 『でも、ちゃんと会えてよかった…これで、私の伝えたいことがちゃんと言えそう』 「伝えたいこと?」 そうじろうが、かなたから体を離しそう聞くと、かなたはしっかりとうなずいた。 『うん…私はずっと待ってる。ここで、変わらず待つことが出来るから。もう、これ以上遠くには行かないから・・・だから、ここに来るのを急がないで欲しいって、そう思って…それを言いたくて…』 そう言って、目を瞑ったかなたを、そうじろうはもう一度抱きしめた。 「今のように、また会うことは出来るか?」 『それは無理。こっちに引きずり込んじゃうから…今度会えるのは、そう君たちが本当にここへ来なければならなくなった時…』 「そうか…」 そうじろうはかなたの顔に自分の顔を近づけたが、こなた達がいる事を思い出し、躊躇するように動きを止めた。それを見たかなたは微笑むと、自分から顔を近づけそうじろうと唇を合わせた。そして、二人は体を離し、少し距離を置いた。 「もう、時間なのか?」 周りの花畑が、少し揺らいだような気がして、そうじろうはかなたにそう聞いた。かなたはうなずくと、かがみ達のほうへと体を向けた。 『みなさん…大変な子だと思うけど、こなたをよろしくお願いしますね』 軽く頭を下げるかなたに、かがみ達はうなずいて見せた。そしてかなたは、こなたの方へ向いた。 『こなた…大きくなったね』 「お母さんに似たから、あんまり大きくなってないよ…」 さっきまでとは違い、こなたはうつむき、声も少し震えていた。 『それでも、私の知ってるこなたは赤ん坊だったから…大きくなったよ、あの頃よりずっと』 「…お母さん…手、つないで…」 こなたはうつむいたまま、かなたに向かい左手を差し出した。かなたはその手を、両手で包み込んだ。 「お母さん、つぎ会うときは、わたしおばあちゃんになってるね…」 『そうね…そうなってないと、困るけど』 「…すごく先になると思うけど…こんな花しか無いようなところで、ずっと待つのは退屈だと思うけど…でも、楽しみに待ってて欲しいんだ…」 『楽しみに?』 「うん」 こなたは、顔を上げた。精一杯の笑顔で。 「わたしもお父さんも目一杯生きて、たくさん土産話持ってくるからさ。それを楽しみに、待ってて」 かなたは驚いたように目を見開いたが、すぐに笑顔に変わり、つないだ手を引き寄せてこなたを抱きしめた。 『ありがとう、こなた…ほんとに良い子に育ってくれて…』 時間なのか、それとも涙なのか、こなたの見る景色が大きく歪み始めた。 静寂の中、こなたは目を覚まし、上半身を起こした。時間は分からないが、真っ暗なところを見るとまだ朝にはなっていないようだ。 さっきと同じようにみんなも起きているのだろうが、誰も体を起こそうとはしていなかった。 「…こなた、やっぱり寂しい?」 暗がりから、かがみの声が聞こえた。 「そりゃ、少しはね…でも、今は嬉しいほうが上回ってるよ」 こなたはつないでいた左手を、じっと見つめた。 「お母さんが、わたしの言葉で笑ってくれたから…喜んでくれたから」 「…そう…じゃあ、恥ずかしくない土産話にするためにも、明日から少しは真面目にやんなさい」 「そんな退屈な土産話はしたくないから、お断りだ」 「…言うと思った」 かがみの潜ってるふとんから、ため息の音が聞こえた気がした。 「かがみ、怖くなくなったんだ」 「流石に…ね。それじゃ、おやすみ」 「…おやすみ」 再び訪れた静寂の中、こなたは身を横たえた。 理想で飾った母の姿を父が喜ばなかったように、飾った自分の話なんか母は喜ばないだろう。だから、目一杯飾らない自分を生きて、その話を持っていこう。 こなたはそう思いながら、布団の中で大きく欠伸をした。 そして、まだ温もりが残っている気がする左手を胸元に抱き寄せ、そっと目を閉じた。 終 - コメント・感想フォーム 名前 コメント GJ! -- 名無しさん (2017-05-17 08 27 17) かなりいいんじゃないでしょうかGJ! -- 名無しさん (2012-11-17 02 22 36)
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始めての禁書 地の文ありのクソ文章だけど書いたから聖夜に書いたんで投下させてください 設定とか時系列とか口調とか頭にないのであしからず シナリオ02 「愛してる」と言えないままに 科学によって超能力という現象を実現させた街。学園都市 その異能なる力をすべて右手で打ち消す少年が今日も街を走る 上条「くっそ!補習が予定よりも2分20秒も伸びちまった!」 幻想殺しを持つ少年の計画ではこの2分20秒はあまりにも大きかった 上条「全力で走れば間に合うか!!」 目的地まで後1.5k、残りの時間は5分少々 生命力を燃焼させて少年は走る あらゆる不幸と穀潰しのシスターのせいで貧困にあえぐ少年は咆哮と共に点滅した交差点を渡る 上条「うおおおおおぉぉぉぉ!!タイムセエエエエエルウウウウ!!!」 不幸少年こと上条当麻の目的地であるスーパーの付近 上条に好意を抱く電撃姫が自動販売機前に立っていた この電撃姫の目的は一つ上条へアタックする為だ だがいかんせん素直になれない、本音と裏腹な事ばかりの言動な為 色恋的なアタックが攻撃的なアタックになってしまっている 美琴「今日こそは…デートの約束を!」 決意に満ちたその魂に一本の杭を打ち込み自分を奮い立たせる 美琴「あいつは今日この道を通る、数週間のリサーチの結果間違いないんだけど…」 ストーカーの枠に入る様な独り言をつぶやき、待てど未だにこない少年に美琴はイラ立ちを感じた 美琴「おっと…。素直素直素直」 目を閉じ自己暗示を掛けながら自らに理性を戻そうとする 上条「ハァハァ…もう少し」 上条のゴールは目前、疲れは見えるものの勢いは未だに衰えていない走り 視界の端にいつも絡んでくるビリビリ中学生を確認した 美琴の心中など知る由もない上条は絡まれまいとスピードを上げ 上条「おっすビリビリ中学生、急いでるからまた今度なー!」 左手を振りながら後方へ美琴を置いていく まったくの逆恨みになるのか、鈍すぎる上条が悪いのか 自分の決意をあっさりと空振りにさせた美琴は待たされたせいもあってイラ立ち、一気に帯電する 美琴「ちょっと待てやああああああああ!!」 迸る電撃の槍、いつもならば軽いショック程度には抑えてあるものの 苛立ちも相まって若干強く放ってしまった しかしこの先の未来はすでに美琴によって予測されていた 美琴(どうせ右手で打ち消すんでしょ!…でも足は止めてくれるわ) 美琴(話聞いてくれるかな?) 自分の思いを打ち明かすと決意した今日。どんな手を使っても美琴は上条と話たかったのだ それがちょっと非常識な手段でも 美琴の絶叫を耳にした時点で上条は確信していた。電撃がくる 上条(右手で消すか…) 上条(いや御坂も危険なもん撃たないだろ) 上条の結論は打ち消す為に足を止めるよりも走る事を選んだ 上条(ちょっとビリってくるの我慢するだけだ!) 右手を使うだろうと思った美琴、対して電撃を身に受けても走る事を選んだ上条 --------------------両者の思いが交差しなかった時、物語が始まる------------------- 放つ美琴…追う電撃…走る上条 電撃が上条に届いた瞬間 上条「ギッ!」 妙な奇声を上げ、上条が崩れ落ちた 美琴「なんで右手使わないのよ!バッカじゃないの!!」 美琴(なによなによ!!あたしに構えない様な大事な用事でもないでしょ!!) 単純に上条が自分を気にも止めてなかった現実に腹を立てる 美琴「この御坂美琴様をシカトした罰よ!いい気味だわ」 ハンっと鼻で笑い上条が文句を言ってくるのを待つが、一向にその気配がない 美琴「気絶してんの?だっらしな!」 美琴自身としては正当な苛立ちが呆れに変わり、上条を公園のベンチに横たわらせる 美琴(もう…ほんとバカなんだから) デートの約束をして一緒に買い物したりといった妄想も散ってしまった pipipipi 突如携帯がなる。黒子の名前がディスプレイに表示されている 美琴「もしもし?」 黒子「お姉様!今どこにいらっしゃいますの?」 美琴「今公園にいるんだけど、何かあったの?」 黒子「何かじゃありませんの、今日は寮の中庭掃除の日ですのよ?お忘れでしたの?」 美琴「あっ!」 黒子「やっぱりお忘れでしたのね。」 黒子「寮監様にはわたくしから遅れると申しておきますので、お早めにお戻りになってくださいまし」 美琴「恩に着るわ」 美琴「あっ!黒子」 黒子「…はい?」 美琴「公園に倒れてる人いるから、救助呼んでくれる?…いや気絶してるだけ。 うんお願いね」 黒子に事後処理を頼み急ぎ寮へと帰る 掃除に遅刻したものの、実際の働きでなんとか怒りを免れた美琴 それから一夜明け、通学路から初夏の快晴を見上げ一日の始まりとしては最高だと胸中で思う 御坂妹「お姉様とミサカは暢気に歩いているお姉様に声をかけます」 ふいに声を掛けられ振り返る 美琴「あら妹達じゃない、奇遇ね」 御坂妹「いえ、奇遇ではありませんとミサカは暗に探していた事をお姉さまに知らせます」 美琴「何かあったの?」 御坂妹「それに関して説明がありますのでご一緒に来てくれますか?とミサカは断られた場合は引きずってでも連れて行く覚悟で言います」 美琴「何よ?事情が全然つかめないn」 御坂妹「早くきてください!…っとミサカは…」 あまりにもおかしな妹の言動に美琴は眉を顰め追従する 行き先は名医のいる病院だった 一日の始まりとしては最高の天気だった…そう天気だけは最高だった 病院で名医に説明を受けた 結論から話されて耳を疑った 経過などを聞ききながら呼吸が乱れ心拍数が上がる 何?なんで?止めて!止めて!と何度頭で思ったことか 途中で気づいた認めたくない事実…原因を聞いた時は緊張と興奮で嘔吐してしまった 未消化の朝食が散らばる床を御坂妹が拭きあげるのが視界の端に映る 冥土返し「…少しは落ち着いたかい?」 冥土返し「僕も最善は尽くしたんだけどね。焼ききれて無くなった神経まで再生させるのは不可能だった」 冥土返し「手は全くないわけじゃないんだけど、それは色んな許可がないとできないことなんだ。あっても完治する保障もないんだね」 耳から入って耳から流れるとはこういうことなんだろうか…美琴は名医の言葉を聞きながら そんな事を考えていた アイツが下半身不随…自分の電撃が原因で…歩けない 突きつけられた事実は最悪の一日の始まりと言うには十分すぎた 冥土返し「彼に会っていくかい?」 美琴は躊躇う…自分のせいで歩けなくなってしまった だからまず謝罪することだ、そうしないと前に進めない 怒られても恨まれてもしかたがない 許されない事をした。まずそれを詫びよう 美琴「…はい」 決意と真逆の沈とした返事 冥土返しは静かな眼差しでふぅっと息を吐く 冥土返し「彼の病室は6階だから、そこからはナースに案内してもらうといいよ」 嘔吐物の処理をしてくれた御坂妹に軽い謝罪をいれ俯いたまま部屋を後にする 自分のクローン体、姉妹としてみている御坂妹、紆余曲折あり色々話しだした関係だが 目を合わせるのが怖かった どんな目で自分を見ているのか知るのが怖かった 6F病室前 上条と書かれたプレートの前に美琴が立っている 心臓が早鐘を打つ 軽い目眩も始まる 胃の中には何もないのにまた吐き気が襲う 美琴(怖い…) 美琴(でも…いかなきゃ!) ガシッと取っ手を掴み勢いよく扉を開ける 一歩…二歩…三歩… 病室のベッドの上の上条がこちらを見る 上条「ビリビリ…」 上条の顔を見たとたんに言い知れぬ不安、闇が頭に渦巻く 美琴(言わなきゃ…言わなきゃ!) 美琴「すみませんでした!」 腰を90°折り頭を下げる 美琴「こんな事になるなんて思いもしませんでした。申し訳ありません!!」 美琴「許してもらおうなんて思ってません、どんな形でも責任を取らせてください!」 自分で言ってて愚かさに涙が出てきた なんであんなバカな事をしてしまったのか 軽はずみなことでこんな… 頭を下げたまま上条の答えを待つ 上条「…あのさ」 上条は頭を下げたままの美琴に告げる 上条「そんなに自分を責めるなよ」 許しともとれる言葉だった 上条「確かにお前の電撃が原因かもしれない。でもそれは俺がお前の話を聞かなかったからだろ?」 美琴「っでも!!」 上条「聞け! …だからさ、なんていうのかな、俺だって防ごうと思えばできたんだがしなかった。わかるか?」 美琴「はい」 流れる涙が床に落ちるのを見ながら美琴は返事をする 上条「つまりお互いの不注意ってことだろ?」 美琴「でも上条さんだけそんな目にっ」 上条「つーかさ!なんなんですか?さっきからその敬語は!?新しいキャラ作りですか?」 上条「お前が不安なのは分かるし、悪いと思ってる気持ちも分かる!それでも気がすまないっ!自分だけが悪いと思ってるならその幻想をぶち[ピーーー]っ!!」 上条「…なんてな」 上条「顔上げてくれよ…」 美琴は言われたままに顔を上げる 目に飛び込んできた上条の顔は笑みを浮かべていた いつもの優しい笑み かつて自分や1万人もの妹達を救ってくれた優しいの男 上条「泣かせちまってごめんな」 美琴「ごめんなさい」 上条「もういいって、ヘアピン取れかけてるぞ」 上条の指摘でいつもの場所にあるヘアピンを探す 上条「ああ、落ちて引っかかった こっちきてみ」 覚束ない足取りで上条の下に近づき襟に引っかかったヘアピンを取ってもらう 上条「ほら」 美琴「あ…ありがと」 上条「そんな顔すんなよ、まだ怒ってる顔のがかわいいぜ?」 言われながら頭を撫でられ、また涙が溢れる 涙と一緒に自分の罪が一緒に流れる気がした さながら神に許しをもらった咎人の様な光景 許されざる自分の罪に対しても優しさをぶつける男 美琴は上条にしがみ付き声を上げて泣いた ごめんなさい、ごめんなさい と悪さをした子供が親に許しを求めるように しがみ付かれた本人はその純情さから躊躇いがちに体に腕を回し抱きしめる 幾多の幻想を打ち破ってきたその右手で美琴の頭を撫でながら繰り返す 上条「もういいんだ御坂、もういいんだ」 美琴の泣き声だけが病室に響いた 泣き止んだ美琴は病室を後にし、携帯を確認した 同室の後輩から着信が15件、メールが8件入っていた 時刻は昼を軽く回っていた 連絡は後にしようとポケットに入れ、前を向く 美琴(これからはずっとあいつについててあげよう。それくらいしかできないけど…) 美琴(…一生かけてでも絶対一緒にいてやる!) 新たな決意を胸に待合ロビーからエントランスへ歩く 「このアイスも一緒に欲しいんだよ」 聞き覚えのある声が売店から届く 禁書「とーまは来れないから私ががんばっておつかいするんだよ」 売店のおばちゃんと話している禁書目録だった 美琴(あのシスターも来てたのね…) おばちゃんに手を振り袋を提げてこちらへ来る 美琴「アンタもここに来てたのね」 白衣のシスターは声の主を確認すると、恐ろしく冷たい目に変わる 禁書「短髪はどうしてここにいるのかな」 美琴「どうしてって、アイツの見舞いよあたしのせいなんだs」 禁書「どの面下げてきてるのって意味なんだよ!?」 禁書の顔は全てを知っている顔だった 美琴「分かってるわ…自分が許されないことをしたのは」 美琴「でもこれからあいつをずっと支えようと思うの」 禁書「そうやってとーまの優しさに甘えるんだね」 禁書「とーまがどんな気持ちで許したのかも分からないくせに、甘えないで欲しいんだよ」 美琴「なによ…それ、 アイツは… だって……」 禁書「最初からとーまは短髪の為に許すつもりだったんだよ」 禁書「とーまはもう歩けないんだよ。普通は許せる事じゃないんだよ。自分だけ背負えばいいと思ってるんだよ」 美琴「なによ…それ」 お互いが通じ合ったと思ったつい先ほどの出来事から数分 自分の決意がこんなにも早く揺らぐとは思わなかった よく考えればそうだ 自分がアイツと同じ立場になればどうする?許せるか? 今はその自信はあるが、同じ状況になればどうだろうか 歩けない体にされて、その人間が目の前に来て陳腐な謝罪をする 許せないんじゃ……… 美琴は踵を返し、上条の病室へと走る 今日いくら涙を流したのだろう…未だに枯れず頬を伝う ------------私はまだ許されて無い------------- 御坂美琴がまだ寮を出て初夏の空気を味わう前 上条は目を覚ました 禁書「おはようとーま」 上条「ああ おはよう」 病院に運ばれ検診しそのまま手術を受けた上条 左腕に繋がる点滴が痛々しくも恨めしくもある 沈黙がしばらく続いた後、上条が口を開いた 上条「俺さ、御坂を許そうと思うんだ」 禁書「…とーまはそう言うと思ったんだよ」 禁書「でも私は許せないんだよ」 上条「なんでインデックスが怒るんだよ?」 禁書「とーまにこんな事してほったらかしにして…あんな奴ころs「インデックス!!」」 ビクっとして上条の顔を見る 上条「インデックスお前はシスターだろ?それから先を言っちゃいけません」 上条「お前が俺の為に怒ってくれてるのは嬉しい」 上条「でもな?インデックス。どこかで誰かが許さないと恨みってのは延々続いちまうんじゃないか?」 上条「そこに気づいたらお仕舞いにしないとこの先の人生までつまんないだろ?」 わかるか?と年下のシスターに説き伏せる 禁書「…わかるんだよ、神様も許すことを教えてるんだよ」 禁書「でもインデックスはまだ修行中だからそれができないんだよ」 禁書「とーまがどんなに短髪をかばってもインデックスは短髪が憎いんだよ」 禁書「ごめん…ね とーまぁ」 上条「泣くなよインデックス 上条さんはインデックスがそこまで考えてくれてたのが嬉しかったぞ」 上条(インデックス泣かせちまったな…) 病室の窓の外を見て赤髪黒衣の神父がいたら殴られてるだろうな等と物思いにふけるのだった 動かない足 そこにあるのは分かる 力がまったく入らないというより伝達されて無い 自分は歩けない体になってしまったんだなと実感させられる 禁書「インデックスはシスターとして一人の人間としてとーまのお世話を頑張るんだよ!」 上条「……………ああ」 涙をぬぐった禁書目録の決意に、消え入りそうな声で上条は返事をした 上条(………お世話か) 美琴が病室へたどり着きドアを開ける 美琴「あんた何してんの!?」 上条「っ!!見るな!!」 歩こうとしたのか、ベッドから落ちたのか上条が床に這いつくばった状態で叫ぶ 上条「くっそ!見るなよ!御坂!頼む見ないでくれええええ!」 二本の腕で必死に動こうとする、のたのたと床を這いずりまわりそれはまるで虫の様に… 美琴「ちょっと落ち着いて?」 上条「来るな!触らないでくれ!!」 上条「頼むからこんな俺を見ないでくれよ…」 顔を歪めて懇願する 上条が許せなかったのはこんな体になって無様な姿を晒す自分だった 当たり前の事もできず、こうして惨めにも床を這いずる姿 禁書「とーま!」 禁書「でていって!」 禁書「出ていってっていってるんだよ!?」 呆然として上条に視線を固定したままの美琴を病室から押し出すインデックス 体格差を物ともしない押し、抗おうともしない体 そのまま病室外に突き飛ばされ尻餅をつく バンっとドアを閉められる スカートを正し、上条の姿を脳内でリピートさせながらフラフラと帰途につく 常盤台女子寮の一室 ベッドに横たわりずっと再生され続ける上条の姿 美琴「あたし、どうしたらいいの…」 黒子「何がですの!?」 美琴「ああ…黒子」 美琴(そういえばずっとなんで休んだのかとかいろいろ聞かれてたっけか) 質問からずっと生返事ばかりで小一時間、黒子も諦めて最後に何かありがたい話を述べていたが記憶にない 黒子「やっと口を利いて下さって黒子は安心しましたの」 黒子「日頃お姉様の露払いとして献身しているt~~~~~~~~~~~~~~~~~」 美琴(心配させて悪かったな… はぁ~) 美琴「あのさ、昨日の件でさ」 いかに自分はお姉様に忠誠と愛を持ってるか語っているところを遮って語り始める 美琴「大変なことになってさ…」 美琴の語りと共に夜が更けていく、快晴だった昼間と変わり外は湿った風が吹いていた ---------------後悔は一度すれば二度としなくていいわけではない----------------- --------------------きっかけはいつも些細な事から始まる------------------------ 目に涙を溜め美琴の説明が終わる 黙って聞いていた黒子が口を開く 黒子「その様なことが…」 黒子「あの殿方もお気の毒に」 黒子「お姉様の今のお気持ちはあの殿方に何か力になりたいのでしょう?」 黒子「わたくしの気持ちとしてはいい気はしませんが」 黒子「先程から申しています様に、黒子はいつだって、何があっても美琴お姉様味方ですの」 黒子「今日はお休みになられて、明日また殿方のところへお見舞いとお詫びに行ってはいかがでしょう?殿方もいろいろあって気持ちに整理がつかないのではないでしょうか?」 黒子「なんでしたら黒子も一緒に参りますが?」 美琴「い…いいわよ。自分で行けるから!」 黒子「それでこそいつも前向きなお姉様ですの」 黒子「さぁ、もうお休みになりましょう」 美琴「そうね おやすみ」 黒子「おやすみなさいですの」 美琴「黒子ありがとね」 「はいですの」とお互いの信頼を確かめ合い眠りにつく 編者注:ssの最初で安価。1)起きて真っ先に病院へ行き上条に会いにいく 2)起きて学園都市第一位、一方通行を頼る 3)やはり現実が怖いので諦める 4)今から黒子を起こす。このssは2を選択したストーリーとなる。 翌朝歯を磨いている最中ふと思いついた 学園都市第一位、一方通行 自分の知る限り最高の頭脳と能力を持つ 絶望的な脳の損傷からも回復している経歴もある わだかまりが無いと言えば嘘だ、しかし拘っている場合でもない 昨日はあんなに晴れていたのに、天気は最悪の土砂降りだった 藁にでもすがる思いで打ち止めがいるマンションへ行く 靴下が濡れて気持ち悪い ピンポン 打ち止め「はーいってミサカはミサカは元気にどなたさま?」 美琴「久しぶりね」 打ち止め「お姉さま!?ってミカサはミサカはおどいてみる」 美琴「あのさいきなりで悪いんだけど一方通行いる?」 打ち止め「いるけどすごく機嫌が悪いからよした方がいいかもってミサカはミサカはお姉さまの行動を遮ってみる」 美琴「んーちょっと相談があるからさ、あがらしてもらうわ」 打ち止めの制止を聞かず部屋へはいる リビングのソファーで横になってバラエティを見ている白髪の男 TVの音量がちょっと耳障りなくらい大きい 打ち止めがダスキンモップで美琴の足跡を拭きあげる 美琴「TVの音でかいわね、耳悪くするわよ」 一方「あァン?」 一方「人ンちに勝手にあがりこンで何なンですかァ?」 後ろを一瞥してテレビに視線を戻す 美琴「相談があるの」 一方「どーせ三下のこったろ?クソガキが昨日から騒いでうるせェのなンの」 美琴「じゃあ話が早いわ解決策はないの?」 一方「なンか勘違いしてませンかァ?何で俺が三下助けなきャいけねェンだァ?」 美琴「他に頼る人間がいないのよ!お願いだから力を貸して!」 打ち止め「ミサカからもお願いってミサカはミサカはお姉さまの横で一緒に頼んでみたり」 一方「チッ!」 一方「甘い考えをぶっ壊して悪いがなァ、ご存知の通り俺ン能力はベクトル操作だァ」 一方「能力使用は触れてなきゃならねェ、無くした神経のバイパス役で24時間介護なンざ御免こうむらァ。それに人体をいじりまわすなァ冥土返しの方が上手だ」 一方「しかも三下の能力がある限り俺ら能力者にゃやるこたァねーよ」 一方「できることはせーぜー身の回りの世話とヒーローの心のケアくれーなもんだ 俺じゃできねェよ」 美琴「そうね…ありがと……」 一方「……今回はテメーの責任だァ。どう落とし前つけるか知らねェけどよォ」 一方「この件でこれ以上後悔すンじゃねーぞ」 一方「それだけだァ、テレビ見てェからさっさと消えろクソレールガン」 こちらを振り返らないまま第一位はテレビの音量をさらに少し上げた 美琴「ありがとね、一方通行」 打ち止めに見送られ玄関へ 一方「テレビがうっせェから聞こえねェよ」 リビングで一人つぶやく 一方(こんな時に腐ってるしかできねェで何が第一位だ!クソッタレ) 彼もまた自分の無力感に苛まれていた、超電磁砲に言った事は全て自分に言っていた様なものだった 一方(三下みてェに上手く説教できねェなァ、あいつァやっぱスゲェわ) 病室の前、決意を新たにドアに手を掛ける ここ数日何度決意を固めたか 美琴(随分と安い決意よね、でもこれで終わらせる!) ドアを開けて上条の元へ 美琴「おはよ、具合はどう?」 上条「御坂か?おはよう、変わりは無いよ」 「変わりはない」もこのケースだといい意味ではない 上条「昨日は悪かったな、取り乱して…ほんと恥ずかしいです」 美琴「ううん、アタシだってちょっとビックリしちゃってごめん。アンタの気持ち汲んでやれなくてさ」 上条「美琴センセーに分かってもらえて上条さんは嬉しいですよ」 美琴(ほのぼのとした気持ちになる、あぁやっぱりアタシはコイツ、上条当麻が好きなんだ) 美琴(今しかない!) 二日前の胸の内、そして今回のことに対して自分なりのケジメをつけるべく口を開いた -------------------しょせん人と人は他人同士、思いが重なるのは奇跡に等しい--------------- 美琴「私はあなたが好きです!!」 時が止まった もう止まれない!このまま走りぬける!! 恥ずかしさで俯きかちに話続ける 美琴「あれから黒子に相談して、ほらあの子って実はあんたの事よく思ってないのよね」 美琴「でもあの子だって今の状況分かってくれて応援してくれてさ」 美琴「すごい怒られるかと思ったけど理解してくれて嬉しかった!」 美琴「それにさっき一方通行にも相談したの」 美琴「打ち止めもアンタのこと心配してたわ」 美琴「んで一方通行なんだけどさ、残念だけどアイツでもどうしようもないみたいでさ…」 美琴「でも諦めないからアタシ!ずっとアンタと一緒にいて世話してあげるから」 プロポーズとも取れる内容に顔が赤くなる しかしこの勢いを止めるわけにはいかない 美琴「んで一方通行も『後悔だけはするな』って背中押してくれたの」 美琴「あの一方通行がよ?こっち見ないまま相変わらず捨てセリフみたいだったけど」 美琴「うれしかったわ」 美琴「それで応援してくれる人もいるんだって…、アタシはとんでもないことしたけど、アンタが心から許してくれてまた一緒に笑えるように頑張るから!!」 美琴「迷惑もいっぱい掛けたけど、それまで…ううんそれからもずっと一緒にいてあげるから!」 完璧にプロポーズの言葉だ 熱がドンドン上がり上条の顔が見れない 上条「言いたい事はそれだけかよ」 震えた上条の声を聞いて熱が急激に冷める 上条「白井や一方通行に相談しただ?俺はもういいって言わなかったか?」 上条「お前を許すからもうほっといてくれって意味だったけど、伝わらなかったみたいだな」 上条「悲劇のヒロインよろしく友達と相談して、勇気付けられて、思いを打ち明けてハッピーエンドってか?」 上条「ふざけんじゃねーぞ!!!!」 心のどこかにヒビが入る 足が振るえだした 上条「俺の気持ちはどうすんだよ!歩けないんだぞ!トイレもままならねぇ!一生このままだ!」 上条「それを無様に晒し上げて楽しいかよ?可哀想だから世話して『あげる』ってか!」 上条「御坂、お前のせいでこの様だ、7人しかいないLEVEL5だかしらねーけどよ、どこまで上から目線なんだよ!」 上条「知り合いに話題にされてる事実を知っただけでも、惨めな気持ちだ」 上条「御坂、もう俺に近づくな。顔も見たくねぇよ!!」 脳内砂嵐状態。何も考えられないが、上条の言葉だけはしっかりと受け止めてしまっている 上条「さっさとでていけ!!」 投げた携帯が御坂の額に当たる 血がでてきたが不思議と痛みはない 痛みを感じる心が折れてしまっているから --------------幻想殺しがまた一つ幻想を打ち砕いた時だった--------------- 禁書「とーま?元気ないけどなにかあったのかな?」 上条「…別に」 禁書「そう?インデックスはとーまにいっぱい迷惑を掛けたからお返しするんだよ。歩けなくても大丈夫!支えて『あげる』んだよ。」 えへんと胸を張る禁書目録 禁書「…とーま?」 上条「お前もかよインデックス」 禁書「え…?」 上条「お前も哀れんで惨めな俺に施していい気になってんのかよ?」 禁書「そんなことないんだよ!?ッッゥグッ!?」 上条「お前も俺を見下してっ!!」 首を絞める上条の手が強まる、ツメを立ててもがく幼いシスター 上条「なんでっ!なんで俺がこんな目に会わなきゃいけないんだよおおおおおおおおおおお!!!!!!」 上条心からの絶叫、涙を流しての絶叫 不幸不幸不幸我慢我慢我慢 今まで頑張ってこれた しかし年端もいかぬ若い人間、上条にはもう限界だった 指が首に食い込む、細い首が折れる?折れそう…折れる…手前 ブンっと腕を振り禁書をほうりやる 禁書「ゲヴォッ!ゲホッ!ォオッ!」 咽る禁書を涙が止まらない上条が言う 上条「すまないインデックスしばらく一人にしてくれ」 禁書「ッッ!ゲホッ!」 何も言わなかったのか言えなかったのか足早に出て行く 上条「………もうだめだ俺」 全てに耐えられない、周囲の視線にも、今の自分の環境にも、今禁書にしたことにも、誰かの優しさにも… 窓の外は大雨だった…雨粒が地面に吸い込まれるように落ちていく 窓を叩く雨音は親しい友人がノックをしてるようだった………… 数時間後 禁書は経緯を説明して首の容態を冥土返しに診てもらった 冥土返しは珍しく怒って上条に電話しようとしていたが禁書が大丈夫だからと収めた 首に痣が残ったので包帯は巻いてもらい病室へ戻る ドアを開けた瞬間ビュウッと風が吹き抜ける 外は大雨なのに窓を開けたのだろうか 車イスがベッドの脇に置いてあるが、上条の姿がない…… 翌日学園都市LEVEL5の順位変更が行われた 1位~6位までの発表を飛行船が空を悠然と漂い知らせていた シナリオ02 「愛してる」と言えないままに END
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小蒔「雪、積もりましたねぇ」 霞「山の方はこのまま根雪かしら?」 初美「それはウィンタースポーツがはかどりますねー」 小蒔「ウィンタースポーツ……雪合戦ですね!」 霞「ええ、そう……なのかしら?」 初美「冬にしかできないという意味ではそうなのですよ」 小蒔「あれ、違いました?」 初美「いえいえ、雪があればどこでもできますから……こんなふうにっ」ビュッ 霞「きゃっ」ポスッ 霞「もう、いきなりなにするの」 初美「ただの戯れなのですよ。いつも説教されてる恨みとかはこれっぽっちもないですよー」 霞「まったく……」フゥ 初美「隙有りっ」ビュッ 霞「ま、また!?」ポヨン 初美「まだまだっ」ビュッ 霞「ちょっと、初美ちゃ――」ポヨン 初美「くらうのですよ!」ビュッ 霞「いい加減に……!」ポヨン 初美「……」 初美「私の、負けなのですよ……」ズーン 霞「ねえ、なんで雪まみれの私が敗北宣言されているのかしら?」ピクピク 初美「おっぱいガードとか卑怯極まりないのですよ……」 巴「あれ、姫様たちだ」 春「先に帰ってたはずなのに」 巴「なんか遊んでるみたいだね」 春「楽しそうでなにより」ポリポリ 巴「はるる……また黒糖禁止にされるよ?」 春「姉さんはいないから大丈夫。それにこれはカロリーオフの黒糖……のような気がする」 巴「カロリーを気のせいってことにできたら、みんなダイエットに苦労しないよね……」 霞「こら、待ちなさい!」 初美「お、鬼がっ、鬼が来るのですよ!」 霞「だれが鬼ですか!」 小蒔「二人とも楽しそうです……よし、私も!」 小蒔「んしょ……えいっ」ビュッ 小蒔「ああ、明後日の方向に……!」 春「黒糖がおいしい……きゃっ」ポロッ 小蒔「ご、ごめんなさい! 大丈夫でしたか……って、春?」 春「……姫様、戦争の準備はいい?」 小蒔「え」 春「黒糖の恨み、晴らさせてもらう……!」ビュッ 小蒔「つ、つめたっ」ポスッ 霞「おとなしくそこに直りなさい! 今ならコタツに入るの禁止で許してあげるから!」 初美「ひぇ……年増はやることが陰湿すぎるのですよっ」 霞「――っ」プチッ 初美「あわわっ、何かが切れる音が……」 霞「頭が、冷えたわ」 初美「やっと冷静になってくれましたかー……さ、もう帰るのですよ」フゥ 霞「怒りって、限度を越すとこうなるみたいね……ふふっ」ガシッ 初美「!?」 小蒔「は、春! 話せばきっとわかります!」 春「話せばわかる……たしか、そう言って殺された総理大臣がいた」 小蒔「か、過去の過ちをくり返してはいけないと思います!」 春「歴史からは、教訓が得られる」 小蒔「そうですよね……さっきのことは私が悪かったですから――」 春「つまり、問答無用……!」 小蒔「ど、どうしてですかー!」 巴「……えっと、これ、私が止めなくちゃダメかな?」 初美「あったまりますねぇ……」 霞「冷えてたからなおさらね」 初美「うぅ……服の中に雪を入れてくるなんて鬼畜の所業なのですよ……」 霞「自業自得って言葉、知ってる?」 初美「ひぇっ」 春「黒糖の恨みは晴れた……」 小蒔「おかげで体、冷えちゃいました」 春「ぶい」 小蒔「もう、春が話を聞いてくれないから」 春「当然」 巴「黒糖一個でやりすぎだとは思ったけど」 春「……私は悪くないもん」プイッ 巴「はぁ……黒糖のことになると見境なくなるんだもんね」 小蒔「でも、楽しかったです」 小蒔「またみんなで、ああやって遊ぶのもいいかもしれないですね」 霞「そうね……なら、スキーにでも行ってみる?」 小蒔「あれ、聞こえちゃってました?」 初美「はいはーい、賛成なのですよ」 巴「そうだね、こもりっきりなのは良くないと思うし」 春「また運動……」 小蒔「決まりですね。みんなでスキー、行きましょう!」 春「あ、そうだ」 小蒔「どうかしました?」 春「あの人、呼んだらどうかなって。スポーツ好きみたいだし」 京太郎「スキー? 行きます行きます!」 良子『オーケー、姫様たちに伝えておきましょう』 京太郎「いやぁ、ちょうど良かった。息抜きしたいと思ってたんですよ」 良子『息抜き? あぁ、君は受験生でしたね』 京太郎「で、いつですか? いつ行きます?」 良子『週末の予定です。空いていますか?』 京太郎「むしろ週末しか空いてません」 良子『受験生は普通、週末も空いてないのでは?』 京太郎「根詰めすぎてダウンしたら元も子もないですって」 良子『まぁ、ユニヴァーシティやカレッジに進学した経験はありませんが』 京太郎「中東で傭兵やってたって本当ですか?」 良子『そのデマはどこから来ているのやら……』 京太郎「そういや、なんで戒能さんが俺に連絡を?」 良子『あそこはテレフォンがないですからね』 京太郎「あ、そうだった」 良子『たまたま私が居合わせからいいものを……』 京太郎「とりあえず、ありがとうございます」 良子『いえ、私も参加するのでお構いなく』 京太郎「さて……こんなもんか」 「なになに? スキー行くの?」 京太郎「ああ、永水の人たちと」 「あら? あららー? これはもしかして、あるんじゃない?」 京太郎「……一応聞くけど、あるってなにが?」 「だって姫様と一緒にでしょ? 遭難して山小屋に二人っきり……きゃっ♪」 京太郎「やっぱり聞くんじゃなかった……」 「ガンガン行ってきなさい!」 京太郎「遭難して山小屋って、どんだけレアなケースだと思ってんのさ」 「あーあー、聞こえなーい」 京太郎「おい、アラフォー」 「なんですって!」 京太郎「聞こえてるんじゃねぇか!」 京太郎「着いたぜ、鹿児島」 京太郎「空港で待ち合わせだったな……まだ来てないか?」キョロキョロ 京太郎「まぁ、まだ一時間前だしな」グゥ 京太郎「……先に昼にしようかな」 「あ、お兄様ー!」 京太郎「お、明星か」 明星「はい、お久しぶりです!」 京太郎「また大きくなったな」ワシャワシャ 明星「もう、子供扱いはやめてくださいっ」 京太郎「はは、照れんな照れんな」 霞「はい、そこまで」 京太郎「ま、お前もいるよな」パッ 明星「あっ……」 霞「久しぶりね」 京太郎「小蒔たちは?」 霞「ほら、あっち」 小蒔「京太郎様ー!」 小蒔「やっと、やっと会えました……」ギュッ 京太郎「元気だったか?」 小蒔「はい。この前はみんなと雪合戦したんです!」 京太郎「はは、ちゃんと当てられたか?」 小蒔「当てられまくりました!」 明星「……」シュン 霞「ふふ、もっと撫でてほしかった?」 明星「姫様、羨ましいです」 霞「……そうね」 明星「お姉様?」 霞「さ、他のみんなも呼んできましょうか」 良子「さて、それではランチにしましょうか」 京太郎「そういや、戒能さんも来るって言ってたな」 巴「はい、引率者としてついてきてくれて」 春「……それだけじゃないっぽいけど」 京太郎「それだけじゃない?」 良子「……」ジー 京太郎(なんか、見られてるような……) 『次に会うときはリベンジを果たします、必ず』 京太郎(……まさかな) 京太郎「どこの店入る?」 小蒔「私は、京太郎様の食べたいもので」 霞「じゃあ私は小蒔ちゃんの食べたいもので」 巴「私はみんなに合わせようかな」 京太郎「主体性のない意見をどうも」 春「私に名案がある」 京太郎「黒糖か」 小蒔「黒糖ですね」 霞「黒糖ね」 巴「黒糖だね」 春「み、見破られてた……!」 良子「なぜ見破られてないと思うのですか」 初美「しょうがないですねー、ここは私が一肌脱ぐのですよ」 京太郎「それはやめろ」 小蒔「私もそう思います」 霞「そうね、これ以上は……」 巴「はっちゃんが脱ぐのは……」 初美「どうしてですか!? ちゃんと厚着してるのですよ!」 良子「そもそも実際脱ぐわけではないでしょうに」 京太郎「ああもう、埒あかないな……十曽、明星、お前らは?」 湧「えっ」 明星「私たちですか?」 京太郎「遠慮してないでなんでも言ってくれよ」 湧「え、えええっ、遠慮なんてそんなっ」 京太郎「そうか? ならなに食いたい?」 湧「えっと、それはその……あ、明星っ」サッ 明星「あっ、もう……また私の後ろに隠れて」 京太郎「あー、やっぱダメか……会ってから結構経つはずなんだけどな」 明星「お兄様を嫌ってるわけじゃないですよ。そうだよね?」 湧「うぅ……」 明星「ほら、恥ずかしがってるだけです」 京太郎「まぁ、嫌われるってのはもっと……あれだからな」 京太郎(出会った当時の池田みたいな) 明星「あ、私カレーライス食べたいです」 京太郎「よし、じゃあそれで行こう。みんないいか?」 湧「えっと……明星が、そう言うなら」 小蒔「楽しみです!」 霞「……甘口、あるかしら?」 巴「私は構いません」 春「黒糖カレー……興味ある」 良子「あるわけないでしょうが」 初美「私が一肌脱ぐ機会はどこいったですか!?」 京太郎「用意できたかー?」 霞「ふぅ……ちょっと胸が苦しいわ」 初美「そのアピールはいらないですねー」 霞「はい?」 初美「天然ですか……けっ」 京太郎「なにやさぐれてんだ、お前」 春「黒糖も完備。これでもしもの時の非常食になる」ポリポリ 良子「必要のないときに食べていてはエマージェンシーに対応できないのでは?」 春「……くっ」 京太郎「カイロと一緒に入れてたら溶けるぞ」 春「それは盲点だった」 良子「ふむ、なら私が預かりましょう」サッ 春「ああっ」 巴「二人とも、準備できた?」 明星「私は大丈夫です」 湧「わ、私もっ」 京太郎「慌てなくてもいいぞ?」 湧「ひゃいっ」サッ 巴「あれ、今度は私の後ろ?」 京太郎「……機敏な動きでなによりだ」 明星「湧ちゃん、運動神経良いんですよね」 小蒔「私も準備ばっちりです」 京太郎「よし、じゃあ行くか」 小蒔「はい――わっ」ガクッ 京太郎「っと、そこ滑るから気をつけろよ」ガシッ 小蒔「……もうちょっと、このままつかまって歩いてもいいですか?」ギュッ 京太郎「はは、転ばれるたびに助けてたらキリないからな」 小蒔「もう、私そんなに転びませんっ」 京太郎「ここに来て、重要なことに気づいたんだけど……みんなさ、どれぐらい滑れるんだ?」 小蒔「えっと……どうなんでしょうか?」 霞「うーん、ぼちぼち、かしら?」 巴「普通ですかね?」 初美「それなりなのですよ」 春「まぁまぁ」 明星「正直、あんまり滑ったことありません」 湧「わ、私も普通です」 京太郎「全員曖昧だなぁ……」 良子「私は上級コースも滑れますが、あなたは?」 京太郎「伊達に長野のスピードスターとは呼ばれてませんよ」 良子「それは初耳ですが……好都合ですね」 京太郎「はい?」 良子「いえ、とりあえずはみんながどれぐらい滑れるかトライアルといきましょう」 初美「らっくらくなのですよ」スイー 湧「うん、ちゃんと滑れる」スイー 京太郎「あの二人は普通に上手いな」 良子「上の方に行っても大丈夫そうですね」 巴「っと、久しぶりだけど意外に滑れるね」 春「まさにまぁまぁって感じ」 京太郎「中級者コースなら行けそうな感じか」 良子「少しトレーニングすれば、上級コースも滑れるようになるかもしれませんね」 京太郎「それで、残りの三人は……」 小蒔「あうっ」ズシャ 霞「あ、あら?」ズシャ 明星「きゃっ」ズシャ 京太郎「うん、初級コースからだな」 良子「アグリーですね」 京太郎「というわけで、こういうチーム分けになりました」 京太郎(普通に上手い二人は一緒に滑りに行って、戒能さんは狩宿と滝見についた) 京太郎(それで俺はこの三人) 小蒔「よろしくお願いします!」 霞「私、こんなに滑れなかったかしら?」 明星「お姉様、一緒に頑張りましょうね」 京太郎(石戸は小蒔に似てて、明星は従姉妹だからやっぱり石戸に似てて……) 京太郎(なんだろう、スキーできない遺伝子でも混じってんのかな?) 京太郎(ついでにある一部分の身体的特徴も……) 小蒔「京太郎様?」 京太郎「あ、ああ、なんだ?」 小蒔「具合、悪いんですか? ぼーっとしてました」 京太郎「小蒔に見蕩れてた」 小蒔「そ、そんな……」モジモジ 京太郎「――なんてな」 小蒔「え、あ……もうっ、またからかったんですね!」 京太郎「はは、じゃあ行こうぜ」 明星「うぅ~」プクッ 霞「そんな顔しないの」 明星「だって……」 霞「我慢して、少なくとも姫様の前では……ね?」 明星「……わかりました」 京太郎「二人共ー、リフト乗るぞー」 霞「行きましょうか」 明星「はーい」 小蒔「到着ですね」 霞「坂も緩やか。これなら安心して滑れそう」 明星「つ、次は私がお隣に乗ってもいいですか?」 京太郎「ああ、そうだな。石戸もリフトはちゃんと乗れるみたいだし」 明星「やった」 霞「明星……!」 小蒔「……」 小蒔「そうですね。霞ちゃん、次は一緒に乗りましょうか」 霞「……いいの?」 小蒔「霞ちゃんはいやですか?」 霞「そんなわけないじゃない」 小蒔「なら決定です。明星も京太郎様に甘えたいみたいですし」 霞「大丈夫?」 小蒔「ちょっとモヤモヤしますけど……うん、大丈夫です」 霞「そう……」 霞(成長したのね、小蒔ちゃん) 小蒔「ハの字、ハの字……」 明星「ゆっくり、ゆっくりと……」 京太郎(二人共、もうブレーキングは大丈夫そうだな) 京太郎(次はターンもやらせてみるか) 京太郎(それで石戸は……) 石戸「な、中々バランスが……」フラフラ 京太郎(基本的な滑り方は知ってるっぽいのに、なんでか安定しないな) 京太郎(なんだか重心が……ん?) 京太郎「石戸、ちょっといいか?」 霞「な、なに?」フラフラ 京太郎「よっと」ガシッ 霞「きゃっ」 京太郎「やっぱりそうだ」 霞「あの、離してくれない?」 京太郎「いや、まだだ。まだ離さない」 霞「ちょ、ちょっと……」カァァ 京太郎「……よし、これぐらいだな」パッ 霞「……離さないんじゃなかったの?」 京太郎「ああ、もう大丈夫だ。体の傾きは直したからな」 霞「ひょっとして、姿勢悪かったかしら?」 京太郎「姿勢というより重心だな。前のめりすぎだったり、後ろに反りすぎてたりしてたから」 霞「そうね、なんだか自分でも安定しないと思ってたのよ」 京太郎(きっと、前に滑ったときはその胸部装甲がまだ薄かったんだろうな……) 京太郎「次はそれでやってみろよ。いくらかは滑りやすいと思うぜ」 霞「ええ、やってみるわ」スッ 霞「……すごい、さっきまで転びそうだったのに」 京太郎「だろ?」 霞「ブランクのせいで下手になったかと思ったわ」 京太郎「なんかちぐはぐだったのがようやく納得いったよ」 霞「ふふ、ありがとう、先生」 京太郎「お、いいなそれ。もっと呼んでくれ」 霞「それより二人を見てあげたら?」 京太郎「はいはい、先生頑張りますよっと」 小蒔「なんだか滑れるようになった気がします!」 明星「ちょっぴり慣れてきました」 霞「もう少し上に行ってみる?」 京太郎「集合場所ももうちょい上だし……そろそろ合流しとくか」 小蒔「またリフトですね」 明星「次は……」ジッ 京太郎「まだリフト乗るの不安か?」 明星「そういうわけじゃ……でも、あんまりわがまま言うのも……」 小蒔「じゃあ、じゃんけんで決めちゃいましょうか」 京太郎「じゃんけん?」 小蒔「明星も私も、京太郎様の隣に座りたいんです」 京太郎「え、そんな話だったのか」 明星「はい、負けませんっ」 小蒔「霞ちゃんも」 霞「わ、私も?」 小蒔「みんなでやった方がきっと楽しいです」 京太郎「まぁ、好きにしてくれ」 霞「はぁ……わかったわ」 明星「それじゃあ」 小蒔「いきます!」 「「「じゃんけん――」」」 明星「お兄様のお母様って、神代の分家筋の方なんですよね?」 京太郎「そうらしい。詳しく聞いたことはないけど」 明星「じゃあ私たちって親戚なんですね♪」 京太郎「なんか嬉しそうだな」 明星「なんだか本当にお兄様ができたみたいで……ちょっと憧れてたんです」 京太郎「他のとこに男っていないのか?」 明星「年が近い人はいないです」 京太郎「そっか、そういや俺も見たことないな」 京太郎(そもそも女系っぽいしな、あの家は) 京太郎「ま、そういうことなら兄貴だって思って甘えてくれよ」 明星「本当ですかっ?」ズイッ 京太郎「っと、リフト揺れてる揺れてる」 明星「あ、ごめんなさい」 京太郎「気にすんな。ほら、もうすぐ着くぞ」 京太郎「よっす、上達したか?」 春「……姉さんは鬼」 京太郎「そんなにきつかったのか」 巴「別にそういうわけじゃないんですけど……ほら、黒糖に制限をかけられて」 京太郎「まぁ、たしかにスキー場でホイホイ出して食べるもんでもないけどな」 春「くっ……」 良子「姫様、上達したようでなによりです」 小蒔「京太郎様の教え方が良かったんです、きっと」 霞「でも、小蒔や明星も頑張ってたじゃない」 明星「お姉様もですよね? 体を支えられながら教えてもらってました」 霞「……見てたの?」 小蒔「羨ましかったです……」 霞「あ、あれはあくまで指導を受けてただけなのよ?」 良子「……まあ、とにもかくにもスキルアップには成功したようで」 初美「あ、いたのですよ」 霞「あら、ちょうどいいタイミングね」 湧「すみませんっ、つい時間を忘れて……」 初美「まぁまぁ、明確に集合時間を決めてたわけじゃないから」 湧「そうですよね……あ、明星」 明星「湧ちゃん、ちょっぴりだけど上達しちゃった」 湧「後で一緒に滑ろうよ」 明星「うん、でも手加減してね?」 良子「さて、みんな集まったようですね」 京太郎「どうします?」 良子「ナイターまではフリータイムでいいのでは?」 京太郎「ですね」 京太郎「じゃあみんな、ナイターまで自由に滑ろうぜ。集合場所はまたここらへんで」 湧「明星、行こっか」 明星「あんまり急なとこはやめてね?」 巴「私も混ざってもいい?」 明星「お願いします。私と湧ちゃんだけだったらちょっぴり不安ですから」 湧「よろしくお願いします!」 巴「そ、そんなかしこまらなくても」 春「私はほっと一休み……」 初美「そうはさせないのですよっ」ガシッ 春「ちょっ」 初美「あの急な坂を直滑降でまっしぐらですよー」 春「そ、そんなっ」 初美「ふふふ、黒糖切れのはるるなど恐るるに足らず……なのですよ」 春「くっ、黒糖さえあれば……!」 京太郎(さて、俺はどうするかな) 京太郎(もっと上の方にも行きたいし……) 良子「須賀くん」 京太郎「はい?」 良子「良ければ一緒に上に行きませんか?」 京太郎「お、ちょうどそうしようと思ってたんですよ。心の声聞こえちゃってました?」 良子「そういうことができるのをサモンすることはできますがね」 京太郎「できるのかよ……」 小蒔「……」 霞「いいの?」 小蒔「私だと、ついていけないですから」 霞「そう……我慢強くなったのね」 小蒔「……」 良子「この坂はモーグルバーンになっていますね」 京太郎「うっひゃー……楽しそうだなぁ」 良子「滑りますか?」 京太郎「やりますか」 良子「なら、どっちが先に降りれるか……レースといきましょう」 京太郎「やるからには負けませんよ」 良子「そうでないと、私がここに来た意味がありません」 良子(そう、私にはこの前の雪辱を晴らすというミッションがある……!) 良子「では――」 京太郎「――行きますかっ」 京太郎「っしゃ! 俺の勝ちっすね」 良子「くっ、あと少しだったというのに!」 京太郎「良い線いってたんじゃないですか? まあ、次やっても俺の勝ちですけどね」 良子「僅差の勝利のくせにビッグマウスを……!」 京太郎「あんまり言いたくないですけど、男女の差ってのもありますし」 良子「いいでしょう、そこまで言うのならこの場でリベンジです!」 小蒔「……はぁ」 小蒔(最初はみんなと楽しく遊べたらって思ってたんですけど……) 小蒔(今は……) 小蒔「京太郎様……」 京太郎「呼んだか?」 小蒔「ひゃっ」 京太郎「悪い、びっくりさせたな」 小蒔「もう、いるなら言ってください」 京太郎「でも、驚いた顔もかわいいからな」 小蒔「あうぅ……卑怯です」 京太郎「重ね重ね悪いな……まぁ、別に驚かせようとしたわけじゃないんだ。ため息ついてたのが気になってさ」 小蒔「大丈夫です。ため息の原因はなくなっちゃいましたから」 京太郎「そっか。そういや石戸は? 一緒にいたよな」 小蒔「お花摘みです」 京太郎「そうか……」 京太郎(雪山でお花摘みとか、言葉通りに受け取ったらわけわかんねぇな) 京太郎(まぁ、トイレだろ) 小蒔「京太郎様は良子さんとは一緒じゃなかったんですか?」 京太郎「ああ、勝負にひと段落ついたとこで休憩中だ」 小蒔「勝負ですか?」 京太郎「レースしてたんだよ。ほら、あそこのコブだらけの坂で」 小蒔「わっ、急なのにあんなにコブが……」 京太郎「滑れたら楽しいんだよな」 小蒔「頑張りますっ」 京太郎「無理すんなって。ま、のんびりまったり滑るのも悪くはないよ」 小蒔「そうなんですか?」 京太郎「そうなんだ」 小蒔「ふふっ」 小蒔(こんな時間が、ずっと続けば……) 京太郎「……ん? 風が出てきたな」 小蒔「雪も……さっきまで晴れてたのに」 京太郎「天気予報じゃ、ここらは晴れるって言ってたんだけどな」 京太郎(それどころか、雪も風も強くなってきてるな……視界が狭くなってきた) 京太郎「ちょっと収まるまでどこかに避難してようか」 小蒔「そうですね――きゃっ」グラッ 京太郎「小蒔っ――」ガシッ ――ビュウウ! 京太郎「――のわっ」グラッ 小蒔「きょ、京太郎様っ」 京太郎「くっ、口閉じてしっかり掴まってろ!」 京太郎「……いてて」 京太郎「ここは……そうだ、ポールの外側に落ちたんだったな」 小蒔「んんぅ……きょう、たろうさま?」 京太郎「怪我ないか?」 小蒔「……大丈夫みたいです」 京太郎「そうか、ならさっさと上登ろうぜ」 小蒔「そうですね」 京太郎「……は?」 小蒔「なにも、ないですね」 京太郎「いやいや待て待て、スキー場どこいったんだよ」 小蒔「みんな神隠しに遭ってしまったんでしょうか?」 京太郎「普通逆だろ、俺たちが別のとこに連れてこられたのかもな」 京太郎(神隠しかどうかはともかく、周りになにもない、誰の姿もない、となると……) 京太郎「ひょっとして、遭難?」 小蒔「そうなんですか?」 京太郎「そうなんです……ってダジャレを返してる場合じゃないな」 京太郎(遭難したときは、下手に動いたらまずいって聞くけど) 京太郎(ずっとこんなとこにいたらそのうち凍死だ) 京太郎(どこか、雪と風をしのぐ場所を探さないとな……) 京太郎「移動するか」 小蒔「ごめんなさい、私のせいで……」シュン 京太郎「大丈夫だ、俺に任せとけ。ほら、手」スッ 小蒔「……はい」ギュッ 京太郎(とは言ったものの、どうすればいいかなんてわかんねえな、これ) 京太郎(雪山で遭難した場合に備えてる奴なんてどれだけいるんだか) 京太郎(こんな時に高鴨がいれば心強いんだけどな) 京太郎(まあ、やるしかないか) 小蒔「京太郎様!」 京太郎「どうした」 小蒔「山小屋、ありました」 京太郎「マジか……」 小蒔「まじみたいです」 京太郎「……よし、とりあえず入るか」 小蒔「だれもいない……ですね」 京太郎「せっかくだし使わせてもらおうぜ。お、灯油ストーブ……って、肝心の灯油がないな」 小蒔「毛布ありました!」 京太郎「でかした!」 京太郎「寒くないか?」 小蒔「はい、こうやってしてたら暖かいです」 京太郎「まあ、毛布が一枚しかなかったからな。ぎゅうぎゅうだけど我慢してくれ」 小蒔「二人っきり、ですね」 京太郎「ホント不可解だよな。スキー場はどこ行ったんだかな」 小蒔「……私のせいかもしれないです」 京太郎「だから気にすんなって。落ちたのは仕方ないんだから」 小蒔「そうじゃなくて……思っちゃったんです。京太郎様と二人きりになれたらなって」 京太郎「だからってこんな状況になるわけ――」 京太郎(……あるな) 京太郎(他のやつだったらともかく、小蒔だったら) 京太郎(過保護なのが傍にいるからな……) 小蒔「えへへ……私、悪い子ですね」 京太郎「そういうとこも俺に向けてくれって言ったろ」 小蒔「じゃあ、まだわがまま言ってもいいですか?」 京太郎「どうぞ、お姫様」 小蒔「……キス、したいです」 京太郎「……目、つむって」 小蒔「はい……んっ」 小蒔「しちゃいました」 京太郎「しちゃったな」 小蒔「あの、もう一ついいですか?」 京太郎「毒を食らわばってやつだな、言ってくれ」 小蒔「実は、まだちょっと寒いんです」 京太郎(これは多分ウソだ) 京太郎(今、小蒔の目が泳いだのを俺は見逃さなかった) 小蒔「だから、もっとギュッとして欲しいです」 小蒔「そ、それと……こういう時は、その……ひ、人肌で暖めたほうが……」カァァ 京太郎(人肌でって……よく漫画とかであるアレか?) 京太郎(……そんなことして耐えられる自信なんてないぞ) 小蒔「ダメ、ですか?」 京太郎「わ、わかった……やるよ」 小蒔「お、お願いします」 京太郎(落ち着け、あくまで肌と肌が触れていればいいんだ) 京太郎(だから全部脱ぐ必要なんてどこにもないし、胸が触れてしまってもそれはしかたな……って違う!) 京太郎「じゃあ、脱がせるぞ?」ドキドキ 小蒔「は、はい」ドキドキ 良子「二人共、無事ですかっ」バターン 京太郎「え……」 小蒔「あ……」 良子「……ソーリー、邪魔しましたね」パタン 京太郎「ウェイト! 戒能さんウェイト!」 小蒔「あうぅ……」プシュー 良子「ともかく、無事でなによりですね」 小蒔「あの、良子さんはどうやってここに?」 良子「なにやらおかしなフィールドが発生してたので」 京太郎「おかしなフィールド?」 良子「外から見たらすっげー不自然でしたからね、あれは」 京太郎「もしかして、いきなりスキー場が消えたのは……」 良子「お二人がフィールドに取り込まれたせいでしょうね」 小蒔「それで良子さんが助けに来てくれたんですね」 良子「いえ、フィールドがハードすぎて入ることはおろか、干渉もままなりませんでした」 小蒔「え、じゃあどうやってここに」 良子「答えはシンプル、フィールドが弱まったからですよ」 京太郎「……」 小蒔「弱まった……どうしてでしょうか?」 良子「コンシダレーションは置いておいて、ここを出ましょう。みんな心配してますよ」 霞「小蒔ちゃん、良かった……!」ギュッ 小蒔「く、苦しいですっ」 初美「はいはい、姫様が窒息する前に離れるのですよ」グイグイ 霞「良かった、本当に……」 巴「戒能さん、ありがとうございました」 良子「いえいえ、私一人ではどうにもならなかったですよ」 良子(彼の力がなければ、侵入することは不可能でしたね) 京太郎「ふぅ、何とかなってよかったよ……」 明星「お兄様、お怪我はありませんか?」 京太郎「平気だよ。丈夫なのがとりえだしな」 湧「こ、これっ」スッ 京太郎「カイロ? くれるのか?」 湧「さ、寒かったと思いますからっ」 京太郎「サンキューな」 春「じゃあ私からはこれ」スッ 京太郎「まぁ、黒糖か」 春「姫様を守ってくれてありがとう」 京太郎「そんなの今更だろ。それに、多分あのままでも危険なことにはならなかったんじゃないかな」 春「姫様の貞操が危険」 京太郎「そっちかよ」 京太郎「雪山で遭難か……本当にシャレにならないよな」 京太郎「まぁ、無事に帰れて良かったけど」 「まったく……舞台を整えてもあの体たらくですか」 京太郎「やっぱりあんたは大概過保護だな」 小蒔「少し結界を張った程度です。大したことはしていません」 京太郎「大したことの基準が違うよな……」 小蒔「それよりも、またあなたは私の力を略奪していきましたね」 京太郎「あんたの仕業なら、それでどうにかなるかって思ったんだよ」 小蒔「前にも言いましたが、みだりに私たちの力を宿すのは危険です」 京太郎「心配してくれるんだな」 小蒔「この子のためです」 京太郎「だろうな」 小蒔「では私は去ります。……誰かが来るまで甘えさせてあげなさい」スッ 京太郎「っと、もうお馴染みのパターンだな、これ」ガシッ 小蒔「ん、んん……あれ、私また……」 京太郎「よう、目、覚めたか?」 小蒔「えへへ……願いが通じました。こうやって一緒にいたいなって思ってたんです」 京太郎「思う存分甘えてくれていいぞ」 小蒔「じゃあ、明星にしてたみたいにしてもらえませんか?」 京太郎「明星に?」 小蒔「なでなで、羨ましかったです」 京太郎「なんか妹っぽいのがいるとやっちゃうんだよなぁ」 小蒔「羨ましかったですっ」 京太郎「わかったわかった……ほら」ナデナデ 小蒔「んっ……」ウットリ 小蒔「……京太郎様」 京太郎「ん?」 小蒔「大好きです」
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