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好感度:双葉↑ セシル「双葉ちゃんは、自分の部屋に居るんだよね?」 芙美香「そうだけど・・どうするの?」 セシル「んと・・あの日の事・・気にしてないよって伝えて来る・・自分から伝えた方が良いと思うから・・」 芙美香「そう・・ありがと、セシルちゃん・・双葉の事、お願いするね?」 芙美香お姉ちゃんに「うん」と返事をすると、私は2階の双葉ちゃんの部屋へ歩いて行く ・ ・ ・ 『双葉の部屋』 セシル「双葉ちゃん、今大丈夫?」 こんこん、とノックをしてから双葉ちゃんの声を聞く 双葉「セシル・・お姉ちゃん・・?うん・・入って良いよ・・」 油断していると聞き逃しそうな小さな声をしっかりと聞いてからドアノブを捻る 中の風景は4年前と余り変わり無かったけど、双葉ちゃんの成長と同時に趣味の品とかは変わっていた セシル「こんばんわ、双葉ちゃん・・えっと・・ごめんね・・勝手に向こう行くのとか決めちゃって・・」 双葉「違うっ!悪いのはセシルお姉ちゃんじゃなくて・・双葉・・なんだから・・だから・・ごめんなさい・・酷い事言っちゃって・・」 セシル「酷い事って・・?」 双葉「だって・・セシルお姉ちゃんの事・・大っ嫌いって・・それにいっぱい・・いっぱい・・」 泣きそうになる双葉ちゃんの頭を撫でながら、笑みを作って精一杯優しい声で答える セシル「それは、双葉ちゃんの本心だったの?」 ブンブンと音が聞こえそうなくらいに双葉ちゃんは首を横に振る・・ セシル「んもぅ・・可愛いなぁ、双葉ちゃん」 そんな動作に我慢出来ずに双葉ちゃんに抱きつく・・双葉ちゃんは目を丸くしてるけど、今だけは何があったって離さないもん♪ 双葉「あぅ?せ、セシルお姉ちゃん・・?」 セシル「あの時の事、最初からぜんっぜん怒ってないから平気だよ? だから、双葉ちゃん明日からよろしくね?」 双葉「え・・あ、うんっ!よろしく、セシルお姉ちゃん!」 やっと笑顔の戻った双葉ちゃんとお話をしていると、芙美香お姉ちゃんが寝る場所を準備してくれた 色々とあって疲れてたみたいでベッドに入ると、何も考えずに眠った・・・ ・ ・ ・ 12月2日
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自由が丘の熱い夜 19歳の夏、ポストの中には同窓会と黒のゴシック体でくっきり書かれたハガキが入っていた。「行かないでいいや」。 それに気づいたのはゲームセンターから帰ってきた昼2時。そ う、僕は去年、いや3年ほど前から何も変わってない。世間からすればニート同然。自分でもぐうの音が出ないほどわかっている。 そんな醜い体たらくな生活にも慣れてきた2015年夏、僕はいつものようにパソコンの電源をつけた。爽やかなピンクのノートパソコンとは打って変わって風邪の通らない屋根裏部屋が僕の部屋だ。でも住み慣れればこんな部屋も快適に感じてしまう。 ポ ンポンポン....ポンポポン。スカイプを上げた途端着信がきて驚いた。しかも見慣れないアイコン、そしてmという変な名前。ん?おかし い。認証しなければかけられないようにしてるはず....「もしもし・・・」またリスナーのいたずらか、と思いながら無愛想な声で対応した。しかし、相手 の声で僕の心拍数は一気に加速した。この声覚えている。いや、忘れたくても忘れられない。忘れたくないのかもしれない。「mymrさん?!!」。 そ う、電話の相手はmymrさんだった。紛れも無い僕の元カノ。その時僕の頭には様々な疑問が駆け巡った。なんでかけてきたの?永遠にさようならじゃない の?学校は?そんな疑問を追い越して僕はこういった。「ひさし....ぶり.....」。当たり前なのかもしれない。あいさつをした。するとmymrさんは「う、うん....」。なつかしい。昔はよく寝落ち通話をしたものだ。 話を聞けばどうやら今の彼氏とうまく言ってないらしくヘラっていたそうだ。僕は自分でも最低な人間だとわかっている。けどしょうがない。直しようがない。 (今ならmymrを奪える.....)。心の中で確信した。わかっている。彼氏がいるというリスク。リスナーに叩かれるリスク。自分もメンヘラになるリス ク。どんなリスクがあっても気持ちは揺るがない。mymrともう一度......。 次の日、僕は長野に立っていた。持ち物はスマホ、財布、それから帰りのバスのチケット。それだけ。バス代はもちろんリスナーに貰ったお金。しかし罪悪感などなかった。長野は東京とは違い空気が綺麗で心も体も洗われた気がした。ガラスに映る自分の顔もすこしかっこよく見えた。もはやそこにじゃがいもの姿はなかった。誠実に一人の異性を想う19歳の少年がそこには立っていた。 バスを降りると一人電信柱に寄りかかりスマホをいじっている人影。やっと会える。あれはmymrさんに違いない。心が踊った。maimaiをしているような気分になった。「mymrさん!」ぼくは叫んだ。そこにいた人影はこちらを向いた。僕は走った。「mymrさーん!!」。ここからは覚えていない。 目 が覚めるとそこにはmymrさんが見えた。ベッドも見えた。けど僕はベッドには寝ていない。フローリングで寝ている。僕は何をしてたんだ?全身が痛い。 まさか会っていきなり?そんなことを考えた瞬間に僕は飛び起きた。体の細胞が逃げるように騒いだ。目の前には信じられない光景がうつっていた。mymrさ んの後ろに男がいた。 僕は目を凝らした。「おう、亜連!生きてたか?」。ふみやだ。松浦ふみや、僕をいじめた同級生の松浦ふみやがいる。 しかもmymrさんの家に。僕は何もしゃ べらずにその光景を理解しようと必死だった。しかしできるわけがない。こんな状況考えたこともない。なんだこれは?なにがあった?どうして? 「ほ らよ」キーンとした音が響いた。そしてその音の正体は僕の方に近づいてきた。僕の膝にあたって止まった。500円。「なに....これ?」その言葉は 500円に対してだったのか今の状況すべてに問いたのかは自分でもわからない。「お前覚えてないのか?昔パクったろ?悪かったな....」まったくわからない。なんなら疑問が増えたくらいだ。頭がパンクしそうだった僕は一番簡単に吐き出せる言葉を探した。探して探して「なんでここにいるの?」と言った。するとふみやは簡単に答えた。「東京のお前がここにいる。俺だって東京の人間だ。不思議じゃないだろ?」。昔と変わらず僕はこいつが嫌いだ。大嫌いだ。 長 い沈黙の後やっとmymrさんが口を開いた。「あれん.....久しぶり.....」。その声が聞こえた瞬間ふみやがいなくなっていた。夢だったのか。 僕は深呼吸をしてから、何があったのかをmymrさんから聞いた。「バス降りた瞬間に亜連こけて頭打ったんだよ!それで倒れちゃってさ!もう大変だったん だから!!」そうだったのか・・・。たしかにそんなことが起きてもおかしくないくらい興奮していた。だから僕はその話をすぐ理解して飲み込んだ。「ごめん」。とだけつぶやいた。 すると口に柔らかいものが触れた。わたあめ?それよりかは硬いがすごくふわふわして、すこし濡れていて。mymrさんが僕にくちづけをした。僕は日頃の自分、家族、リスナーに対するうっぷんをすべてmymrにぶつけるようにキスを返した。そのまま僕たちは一つになった。 暑 い.....体が焼けるほど暑い.....目が覚めると僕は裸だった。横にはもちろん裸のmymr。それとクシャクシャになったティッシュ。幸せだった。このまま時が止まればいいと思った。けど暑さで僕は起きた。するとmymrも目を開けてこう言った。「ぜーんぶ、絞りとったからね」。僕は恥ずかしさ と嬉しさが混ざった表情を浮かべ「あーね」。これしか思いつかなかった。このまま過ごせば幸せなのはわかっている。嫌なことから逃げてこの桃源郷のような 長野で過ごせばボーナス確定だった。しかし僕は帰ろうと決めた。東京に。自由が丘に。なぜそう思ったかは今でもわからない。なにか野生の勘と呼ぶべきもの なんだろうか。mymrも止めなかった。あっさりわかったとだけ言い家の前で手を振り僕を見送った。昔と変わらぬ笑顔で。 荷物を持って僕はバス停へ歩いた。僕の意識が途切れたバス停。バスに乗ると僕はすぐに寝てしまった。深い眠りに入った。途中サービスエリアにトイレ休憩で寄ったはずなんだろうが全く覚えていない。 起 きた時昨日と同じような感覚を覚えた。ここはどこで何をしていたのか、整理した。すべて思い出すと、僕はバスを降りて電車に乗ろうとした。「maimaiでもしてくか」。ひとりごとをつぶやきながらきっぷ売り場へ 行き、財布をポケットから出した。ん?感触に猛烈な違和感を感じ、財布を見た。紙幣がまったく入っていないのだ。五万はあったはず。どこかに落とした?使ってはない。バスに 慌てて戻り席を見回した。念の為に他の席もすべて見た。しかし落ちているのはペットボトルやお菓子のゴミだけ。落胆して僕はバスを降りた。このままでは帰れない。そう考えたのとほぼ同時に「あ!小銭!」そう言いチャックを開けた。その中には薄汚れた500円が一枚わずかに光っていた。その500円一枚でな ぜか紙幣がなくなったことも忘れたかのように安心してきっぷを買い自由が丘まで電車に揺られた。 しかし、不思議な一日だった。すべてが夢のように感じる。起こったことをリスナーに話そうと思い出そうとするがすべてが曖昧だった。電車はすぐに自由が丘 に着いた。いつもよりやけに静かな駅前を抜け、行きつけのゲームセンターへと足早に向かった。残った小銭で一回だけmaimaiをした。maimaiが終わり意味もなく店内をぐるっと周り外へ出た。その瞬間いきなり紙幣のことを思い出し、また 僕は落胆した。歩いて家に帰るまでに何回そのことを考えたのだろう。腹が立ったり、泣きそうになったり、どこに落としたのか必死に考えたり。家につくとママが出かける準備をしていた。夕方からどこに行くんだろう?聞こうと思ったがやめておいた。これは空気がそうさせた感じだった。 また薄汚れた屋根裏部屋に僕は帰ってきた。なんで帰ってきたのだろう。今になって後悔した。そういえばツイッターもろくに見ていなかった。開くとリスナーからの配信をしろという内容が何十件も来ていた。やっぱり長野にいたほうがよかったのだろうか?そうすれば配信をしない理由ができる。しかも毎日mymrと....僕はスカイプを立ち上げた。もちろんmymrさんに通話をしたかったからだ。昨日のお礼とそれから.....また行きたい。そう伝えたかった。 ス カイプが上がるとリスナーからのチャットが何件もきているのに気づいた。しかし、そんなのはどうでもいい。mymrさんと通話がしたいだけ。そのために スカイプを上げたのだから。しかしmというアカウントは見当たらない。おかしいと思い履歴を見た。するとm9という名前に変わっていた。僕はそれをクリッ クした。 そこにはmymrと松浦ふみやがキスをしているプリクラが写っていた。 僕はすべてを察した。思わずパソコンの電源を切った。涙なのか汗なのかわからないものが頬を伝う。 黒に染められたPCの画面にはぐしゃぐしゃになったじゃがいものような顔が映る。 セミの声が聞こえぬ自由が丘の暑い夜だった。
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マクロスなのは 第24話『教導』 前半←この前の話 『マクロスなのは』第24話 後半 (*) 10分後 「え~!? ダメだよシャーリー、人の過去勝手にばらしちゃあ!」 六課に帰還してすぐ伝えられた事実に思わずその言葉が口をついて出た。 なんでもティアナ達に教導の意味を教えるために自分の撃墜の話をしてしまったのだと言う。 「ダメだぜ、口の軽い女はよぅ」 バルキリーから降りて何事かと見に来ていたアルトが愚痴る。普段の彼のセリフとは思えなかったが、なぜだが違和感はなかった。 「あの・・・・・・その・・・・・・見てられなくて・・・」 シャーリーは頭を下げるが事態はそんな簡単ではない。自分の撃墜に関わる情報は管理局内では未だに『TOP SECERT(最高機密)』であり、違反すれば問答無用で軍法会議になりかねない。 それも機密に関わることなので完全非公開で行われ、どうなるか全くわからない。 だがなのはは、この中に告発するような者はいない事を知っていた。 なぜならこれが機密である事を知っているのはフェイトとヴィータ、そして自分だけだったからだ。 アルトやさくらも─────いや、教導の卒業者には〝教訓〟として話していたし、完全無欠に無関係な天城君は 「(ドラマの)続きはどうなった!」 と叫んで既に宿舎に飛び込んでいた。 (もう・・・・・・) ため息をつくと、頭を下げて両手を合わす困りものの友人に再び目をやった。 (仕方ない。言うのが少し早くなっちゃっただけかな) 思いなおした彼女はシャーリーからティアナの居場所を聞き出すと、義務付けられている報告を済ましてそこに向かった。 (*) 機動六課敷地内 桟橋 ティアナはこの場所が好きだった。 夜風に吹かれながら明るい月と対称的な暗い海とを眺め、この真夏に涼しげな波音を聞けるこの場所が。 普段は訓練が終了して2,3分ほどゆっくりしていく場所だったが、ここへ来てもう20分。まるで不思議な魔法がかかったようにその場を動けずにいた。 早く強くなりたいと思っていた。だけど、間違ってるって叱られて、隣を走る相棒にも迷惑かけて悲しい思いをさせた。 これらの出来事は彼女を深く落ち込ませた。 (それに、私は結局・・・・・・) (*) 「ティア・・・・・・」 彼女から『独りにして』と言われていたスバルだが、遠く離れた茂みに隠れてエリオ、キャロと共に彼女を見守っていた。 そこに数人の闖入者が現れた。 「アルト先輩?」 スバルの疑問形の呼び掛けに、彼は無声音とジェスチャーで 「よ!」 と挨拶する。その後ろでもさくら、そしてシャーリーが 「こんばんは」 と会釈した。 どうしたのか聞こうとしたスバルだが、ティアナの声が聞こえてきたため中断された。 『なのは・・・・・・さん?』 振り向いたティアナの視線の先を追うと、軽く手を後に組んだなのはの後ろ姿があった。 (*) なのははそのまま自らの隣に座り込み、涼しむように、明るい月が暗い海に沈んでいく幻想的な風景を眺める。 そんな沈黙が10分ほど・・・いや20秒ぐらいの事だったかもしれない。ともかく、その沈黙に堪えられなくなって口を開く。 「・・・あの、シャーリーさんやシグナム副隊長にいろいろ聞きました。」 「〝なのはさん〟の失敗の記録?」 「え・・・・・・」 てっきり「なんの話?」と聞かれると思っていたティアナは少し狼狽する。 「あ、いえ、そうじゃなくて─────」 ティアナは自らの思考力が上手く回っていない事を改めて実感した。なのは達が帰投してからそれなりに時間が経過しているのだから、シャーリーでもシグナムでも聞く機会があったはずだ。 そんな簡単なことすら失念していたことにティアナはすこし可笑しくなった。 「無茶すると危ないんだよって話だよね」 なのはの確認に、ティアナの頭ではさっきの話がフラッシュバックする。 普通の、魔法すら知らなかった9歳の女の子が、魔法をその手にしてすぐに死闘を繰り返した。 少女はその後も自分の信念と守りたいもののために「早く強くなろう」として命懸けの無茶をし続け、遂には撃墜され、瀕死の重傷を負ったという話。 その少女が目の前にいるなのはであると聞かされたティアナの解答は、1つしかなかった。 「すみませんでした・・・・・・」 なのははそんなティアナに頷き1つを返した。 (*) 「じゃあわかってくれたところで聞くけど、ティアナは自分の射撃魔法をどうして信じないの?」 「それは・・・・・・兄を最後の最後で守りきれなかった魔法だから・・・・・・」 ティアナと彼女の兄ディーダ・ランスターの射撃魔法は少し特殊で、通常の半分以下の大きさの魔力球(魔力弾)を使用する。これは誰も使えないから特殊というわけではなく、練る魔力量が少ないため6~8歳の子供が普通の魔力球の練習のために使う。 つまり、リンカーコアがあるものなら誰でもできるという事だ。 しかしほとんどの場合で真っ直ぐにしか飛ばず、誘導性能や機動力など汎用性に優れた通常の魔力球には到底及ばないため使われないのだ。 しかしディーダはこれを究めることによってそれを練習用から実戦レベルにまで引き上げた。 練る魔力量が少ないということはそれだけ早く生成でき、小さいということは空気による減殺が少なくなり、より遠距離に届く。 また、真っ直ぐにしか飛ばないというのは最高クラスの信頼性の象徴であり、なのはの砲撃ですら反動で多少のブレが出る。つまり戦場の原則である『敵より早く、敵より遠くから、敵より正確に狙い撃つことができる』そんな技だった。 事実彼の技術は陸士部隊の目に止まり、装備改編前に負担の大きい魔力砲撃に代わる主力攻撃方法となっていた。 閑話休題 「そっか・・・・・・でも模擬戦でさ、自分で受けてみて気づかなかった?」 なのはの問いかけの意味が分からず首を捻る。 「ティアナの射撃魔法って、ちゃんと使えばあんなに早く撃てて、当たると危な いんだよ」 「あ・・・・・・」 「私は今まで一度もティアナとは撃ち合ったことはないでしょ?だって正面から早打ち勝負したら絶対ティアナの方が早くて正確に当たるから。だから、そんな一番いいところをないがしろにしてほしくなかったんだ。・・・・・・まぁ、でもティアナの考えたこと、間違ってはいないんだよね」 なのはは言うと、隣に置かれていたティアナのデバイス『クロスミラージュ』を手に取る。 「システムリミッター、テストモードリリース。高町なのは一等空尉。承認コード、NCC-1701A」 『OK,release time 60 seconds.(承認。解除時間60秒。)』 解除を見届けたなのははデバイスを起動状態にし、ティアナに渡す。 「命令してみて。〝モード2〟って」 ティアナはそれを受け取ると、おそるおそる指示を出す。 「モード・・・・・・2」 直後銃全体がオレンジ色に瞬いたと思うと 『Set up.dagger mode.』 という復唱と共に変形していく。 フロント・サイト(照星)の付いたマガジンを兼ねるグリップと、ピストルグリップ辺りで折れ・・・いや、折れていた物を引き起こしたというほうが正しい。 ともかく、引き起こされて真っ直ぐになった銃身は、ピストルグリップの下から魔力刃で覆うようにして銃口までつながる。 そして最後に銃口から、自らが作戦時無理やり作った魔力刃より大きなそれが、まるで短剣のように伸びた。 「これ・・・・・・」 自らの相棒の変貌に目を白黒させるティアナになのはは説明する。 「ティアナは執務官志望だもんね。ここを出て、執務官を目指すようになったらどうしても個人戦が多くなるだろうし、将来を考えて用意はしてたんだ」 ティアナは規定の60秒が経ったのか元に戻ったクロスミラージュを握りながら涙する。そんな彼女になのはは続けた。 「クロス(近距離)はもう少ししたら教えようと思ってた。でも出撃は今すぐにでもあるかも知れないでしょう?だからもう使いこなせてる武器と魔法をもっと確実なものにしてあげたかった。だから1つの技術を身につける事が目的のさくらちゃんとは違ってゆっくりやってたんだけど・・・・・・ゆっくりって地味だから、あんまり成果が出てないように感じて、苦しかったんだよね。・・・ごめんね。」 「ごめん・・・・・・なさい・・・・・・こんなに私のために準備してくれてたのに・・・・・・私、なのはさんの期待に応えられなかったみたいで・・・・・・」 「・・・・・・え?どうしてその結論!?」 「だって2発目の砲撃、なのはさん、結構本気で私を落としにかかったじゃないですか!」 「ああ、それは・・・・・・」 なのはにとって触れたくなかった、できれば触れずに行きたかったこの事柄。しかし残念なことにティアナはその事実に気付いていたのだ。 もし彼女が事前に彼と接触せずにこの場面に遭遇してしまっていたら、バレまいと思って彼にしたときとまったく同じ嘘をついて煙に巻こうとしただろう。 (なんてバカだったんだろ・・・・・・私・・・・・・) この分では自分の教える優秀な生徒達の前では、彼にしたような嘘を見破るなど児戯にも等しきものだったようだ。 だからなのははそれを教えてくれ、さらには受け止めてくれた彼に改めて感謝した。 「ごめん!実は・・・・・・あれは私のせいなの!」 なのははすべてを話した。 彼女自身から湧きあがった黒い考え、そしてそれに至った理由を。 ティアナはこの告知を少し驚いた様子だったが静かに聞き入り、最後にはどこか嬉しそうな表情へと変わっていた。 こうなると納得出来ないのはなのはの方だ。自分は最悪の場合ティアナ自身の魔導士生命に終止符すら打ちかねない行為を教官の身の上で行ったのだ。批難される事こそあっても、その様な表情を浮かべられる場面では無いはずだっだ。 「落ち着いてるんだね」 「はい。だって、私の前にそれを怒ってくれた人がいるみたいでしたから」 「それってーーーーー!?」 「私、宿舎の屋上から見たんです。なのはさんとアルト先輩が言い争ってるのを。・・・・・・先輩すごいですよね、あんなに離れてたのにちょくちょく何を言ってるのか聞こえるって」 「・・・・・・」 「その時は断片的過ぎて先輩がどうしてあんなに怒ってたのかよくわからなかったんですけど、やっとわかりました。たぶんですけど、アルト先輩に嘘をついたんですよね?」 ティアナにどこまで聞かれていたかわからない以上、嘘を重ねても仕方ない。なのはは正直に頷く。 「でも、今話してくれた話は本当の方だった。だからちょっとびっくりしましたけど、なのはさんがちゃんと私と向き合ってくれてるってわかったらうれしくって」 その顔にウソはない。その事実になのはは安堵したが、彼女のセリフはまだ終わっていなかった。 「・・・・・・でも、やっぱりちょっと強引だと思います。不発だったからよかったですが、もし撃ってたら私、ここにいられませんでした」 こちらの心情は察してくれたが、さすがにティアナもあの砲撃を無条件に看過することはできなかったようだ。 そこでなのははひそかに温めていたできれば切りたくなかった打開策のカードを使うことにした。 「ごめんね・・・・・・・それで考えたんだけど、ティアナ言ってたよね?さくらちゃんみたいな教導をしてほしいって。もしティアナが望むなら明日からでもできるけど、どうする?でも私は・・・・・・あー、もちろんティアナ達全員をどこに出しても恥ずかしくないエース級のAランク魔導士にしてみせるよ!だけど私ね、あなた達には―――――!」 「いいですよ、このままの教導で」 ティアナは言うと、座り込んでいたポートから立ちあがって清々しそうな表情で大きく伸びをする。 「本当言うと私、なのはさんに煙たがられてる、手を抜かれてるって思ってたんです。でも、全然そんなことなくて・・・・・・。だからもう、そのことはいいんです。それに今の様子だと、この教導には普通とは違う秘密があるみたいですし」 「にははは・・・・・・」 危うく言いそうになったが、立場上はにかみ笑いで応える。しかし内心切り札のカードの無力化に焦っていた。 「(これ以上私がティアナにしてあげられることなんて・・・・・・)」 「そこで私から一つだけお願い、聞いてもらっていいですか?」 「なに・・・・・・かな?」 脳裏を最悪の可能性が過る。 小さきは自らの職権の乱用、果ては犯罪まで。ティアナがそんなこと願うわけないと思ってはいても、彼女の魔導士生命を奪うかもしれなかった対価としてはそれも止むをえぬとも思えてしまっていた。 だからティアナの次の言葉を聞いた時、なのはは心底安心したという。 「もう一度、模擬戦を受けさせてください!」 なのはは自らの生徒の純真さと安心感に万感の思いをもって頷き、それに応えた。地平線の先に見えていた月は軌道の影響で沈まず、新たに登ったもう1つの月とともにクラナガン湾を照らしていた。 (*) スバルには2人の会話は聞こえなかったが、どうやら和解できたようなのでそっと胸を撫で下ろした。 そんな彼女の肩が〝とん〟と叩かれる。振り返るとさくらが〝昨日と同じジェスチャー〟をしていた。 その意味を即座に理解したスバルは頷くと、ここにいたギャラリーと共にその場から撤退した。 (*) なのは達が戻ってきたのは10分後だ。2人はロビーに入るなり驚く。 「よぅ、遅かったじゃねぇか」 婉曲語法で2人を迎えたヴィータの手には数枚のトランプが握られている。 また彼女だけでなく、シグナムやシャーリー、アルト、さくらにフォワードの3人と総勢8人が1つの机を囲んで同じようにトランプを握っていた。 「・・・みんなどうしたの?」 しかしなのはの問いはアルトの宣言でかき消された。 「いざ、革命!」 放られる1枚のジョーカーに3枚のファイブ。しかし上には上・・・・・・いや、下には下がいた。勝ち誇った顔をするアルトの前に4枚のスリーが放られたのだ。 驚愕するアルトに放った主が厳かに告げる。 「勝ちを急ぎすぎたな大富豪よ」 シグナムは微笑を浮かべると8切りして4を投げると1抜けした。 盛者必衰。アルトは一気に都を追われることになった。 悔しげに項垂れるアルトと大富豪に興じる人々。なのはとティアナは石像を続けていると、背後の入り口の扉が開いた。 「お、やっとるやっとる~」 現れたのは何か箱を持ったはやてとフェイトだった。箱には〝ビンゴ抽選機〟とある。 「いったい何事なの?」 なのはのその問いに、はやては笑顔で答える。 「さくらちゃん発案のビンゴ大会や。・・・・・・おーい!みんなこっから1枚とってな」 はやての呼び掛けに大富豪に興じていた人々がわらわら集まって来て、ビンゴカードの束から1枚ずつ引き抜いていく。 「さぁ、ティアナさんもなのはさんもどうぞ」 空気から取り残されていた2人もさくらに招き入れられ、和やかな、そして楽しげな人々の輪の中に入っていった。 (*) そのビンゴ大会はひどく白熱した。賞品として先着3名にゲームに参加した者なら一度だけ言うことを聞かせられる〝王様カード〟なるはやて特製の手作りテレカが手に入るためであろう。 途中ロビーに来た天城が司会進行を申し出たり、ヴィータがビンゴ抽選機(取っ手を回して番号のついたボールを出す機械)を盛大回して誤ってぶちまけるハプニングがあったりと波乱を巻き起こした。 しかし誰の顔からも笑顔は片時も消えず、階級などない学校のレクレーションのように和気あいあいと進行した。 そしていろいろあって何度か振り出しに戻り、3枚目になってしまったビンゴカード。おかげでまだ勝利条件であるトリプルビンゴに到達した者はいなかった。 「─────54番!さぁ、誰かいませんかぁ!」 天城がハイテンションで転がり出た球の番号を読み上げる。それに1人の少女がニヤリと微笑んだ。 「ふ、みんな済まねぇな。トリプルビンゴだぜぇ!」 ヴィータが雄叫びと共にカードを持った右手を突き上げた。 そして天城から王様カードを受け取ると、〝ビシッ〟とアルトを指差した。 アルトは自らの一列も埋まっていないカードを見て覚悟を決める。 そしてヴィータは王様カードをどこぞの長者番組の紋所のように彼にかざすと、高らかに宣言した。 「早乙女アルト!私と明日勝負しろ!」 極めてヴィータらしい命令にアルトはため息をつく。今や彼の方が上官なので拒否権がないことはなかったが、余程と言える断る理由が思いつかなかったようだ。 「仰せのままに・・・・・・」 体の演技こそ王妃に従えるナイトのようであったが、不服そうに答えたという。 (*) その後また振り出しに戻るなど激闘が20分ほど続いてようやく残りの2枚の行き先が決定した。 それはどういう因果かティアナとアルトであったが、2人ともすぐには権利を行使せず、夜も遅かったのでそのまま解散する事になった。 (*) 次の日 スターズ分隊の再模擬戦は、引き分けに終わったライトニング分隊の後に行われた。 2人の機動は訓練通りだが、クロスシフトAからBや、BからAの変更の流れは滑らかで、なのはをずいぶん手こずらせたという。 そして───── (*) スバルの連続攻撃とティアナの間断ない誘導弾の攻撃を受け、白いワルキューレは遂に地上に引きずり下ろされた。 しかし地に足を着いた彼女の砲撃力はそれでも強力であり、高度の優位に立ったスバルでも近づけなかった。 だがそんな彼女の前に虚空からティアナが現れた。 この間合い、シールド展開は間に合わない。まさに一騎打ちの早撃ちの距離だ。 どうやら早撃ちなら勝てるという助言に忠実に従ったらしい。 だが───── (甘い!) なのはは魔法の起動の邪魔になるレイジングハートを右手に持ちかえると、利き手である左手の人差し指をティアナに向ける。 「クロスファイヤー、シュート!」 放たれる小型魔力弾。確かにティアナの射撃魔法は優秀だが、その魔法を模倣できないわけではない。 なのはとの勝負においては単純な魔法の起動時間の勝負ではないのだ。 (惜しかったけど残念だったね) なのはは勝利を確信した。しかしここは地上。つまりティアナのフィールドだった。 魔力弾はティアナを貫通して、そのまま彼女ごと消えた。 「フェイク(幻影)!?」 続いてレイジングハートが右から飛翔してきた魔力弾によって弾かれ、地面に転がった。 「え!?」 そちらを見ると、砲撃用魔法陣を展開したティアナがいた。 そう、何もかも罠だったのだ。 わざと目の前に出現して助言に従った一騎打ちが狙いであるようにアピールして見せたのも、なのはが砲撃を行わずいつもの癖でレイジングハートを持ちかえる(デバイスにプログラムされていない魔法を本体経由で使おうとすると、無駄に処理しようとして発動が少し遅れるため)のも、全てティアナの狙い通りだったのだ。 あたかも助言に従った演技をすることによって、本来レイジングハートによって飛行魔法などの面において優越するがゆえに、選択肢が多いはずのなのはの選択肢を完全に奪い取る老獪な罠。 なのはは急いでレイジングハートに駆け寄るが間に合わない! 結果として右手のビルの2階から放たれたオレンジ色した魔力砲撃が、無防備の彼女を直撃した。 (*) 「やったぁ!」 ティアナがビルから出てくると、彼女を迎えたスバルにハイタッチした。 なのはは晴れていく煙の中から姿を現すと、そんな2人に笑いかけた。 「うん。文句のつけようがないくらいいい戦いぶりだったよ。それに一撃どころか撃墜されちゃうとはね」 教官の面目丸つぶれだよ~と彼女は嬉しそうに苦笑すると、遠くで観戦するライトニングの2人に集合の合図を放った。 (*) 「みんなお疲れ様。今日は午前までで訓練は終わりだけど、定期模擬戦のレポートを書いて今日の18時までに提出してね」 「「はい!」」 4人は今回引き分けか勝ちだったので気分は良さそうだ。いつもの訓練終了時と違って覇気があった。 「あと、解散前に私から渡すものがあります」 『何だろう?』という顔をする4人の前に、昨日渡すはずだった4冊の冊子を取り出した。 「今日は訓練開始から6カ月の節目の月だからね。これまでやってきた訓練の要点とかアドバイスとかをまとめてあります。暇な時でいいから目を通してね」 「「はーい!」」 4人はそれを受け取ると、互いに目配せしながら指示もないのに整列した。 「え?・・・・・・みんなどうしたの?」 ティアナが代表するように応える。 「実は私達、昨日話し合って、なのはさんに伝えたいと思ってた事があるんです」 なのはからすると全く意表をついたものであり、何を言われるか少し心配したが、先を促す。 すると4人は声を揃えて合唱した。 「「半年間ありがとうございました。これからもよろしくお願いします!」」 それはまるで小学生のようなお礼の言葉だったが、心がこもっているためノー・プロブレム。 なのはは最上級の笑顔で 「こちらこそ」 と応えた。 この時、なのはは照れ笑いする自らの教え子達を見て誓ったという。 『この子たちは絶対私の手でどんな状況でもあきらめずに打破できるような一流のストライカーにして見せる。他の生徒のように短期ではできなかったけど、この子たちなら絶対大丈夫。だから何があっても、誰が来ても、この子達は落とさせない。私の目が届く間はもちろん、いつか一人で、それぞれの空を飛ぶようになっても』と。 (*) さて、昼頃から始まったアルトvsヴィータの模擬戦だが、一進一退の攻防をみせた。 そのため我慢出来なくなったさくらとフェイトが、続いて天城とシグナムが参戦する大演習となった。 勝敗についてはまた機会があれば記述したいと思う。 その2週間後、サジタリウス小隊の出張任務は解かれ、別れを惜しみつつフロンティア航空基地に帰投した。 ―――――――――― 次回予告 アルト達が第一管理世界に来てからここまでで半年が経っていた こんなにも長い間、第25未確認世界は指をくわえて一体なにをやっていたのか!? 次回マクロスなのは第25話「先遣隊」 想い人を奪われた少女の思いが炸裂する―――――! ―――――――――― シレンヤ氏
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ミドル・フェイズ06 徹 では次、沖那先輩ですか? ミドル・フェイズ06 シーンプレイヤー:堅陸沖那 GM さて、間に軽く幕間を挟んで、沖那さんです。 ―― 「いちいち、凝った演出を用意するのね……」 少し呆れたように、老婆が言う。 「あら、『凝る』には、疑うって字が入ってるわね」 馬鹿にするように、道化は応える。 「おばあちゃんには、必要があるとは思えないの」 穏やかな老婆に対し、 「私たちに、必要は必要?」 うふふ、と、赤い唇は言葉を紡ぐ。 「最後の仕上げよ……そして、 なるべくなら、納得してもらいたいじゃない」 いつもの仮面を着飾って。 「私は、泣かない語り部。 泣かないけれど笑いたい」 煙に巻くように、手を振って。 「好きにやらせて頂戴」 物語は進んで行く。 「…………」 諦めたように、老婆は目を瞑る。 ―― GM 以上。 遙 ふむ、語り部の仮面の下、か。 GM では、沖那さんのシーンです。 沖那 ああ GM 侵食率どうぞ。 沖那 (ころころ)3・・・ふむ、私も安定しているな GM ですね。 遙 いいことです。 GM 扉を開けて、中に入ります。 と…… 薄暗い――ここは、舞台裏。 沖那 ふむ GM シルクハットをかぶった人物が、慌てたようにやって来ます。 「急いで下さい、そろそろ幕が上がります」 徹 アクスかブリキだw 沖那 はははw GM 顔は、靄がかかったように……顔があるのに、顔が無いように。 背けた瞬間、忘れてしまいそうな顔で。 沖那 「やれやれ、急がなくちゃ、なら兎だろうに。帽子屋がせかすのか、ははっ」 歩みを進める GM 舞台に上がると…… 幕が上がる。 沖那 「と、いってもあの様子ではどちらかというとノーバディといったところだがな」 GM すすすすす ……。 観客達の拍手……。 どの観客の顔も、見分けはつかない。 沖那 それらを見やり (さて、折角用意してくれたようだからな…一曲ぐらい付き合ってもらおうか) GM ――曲がかかります。 沖那 ん?私の選曲でいいのか? GM 良いですよ。 沖那 ふむ、では 息を吸い 目を閉じ そして、腕を伸ばし それは、私に出来ぬこと ただ、想いは届かず ――――― 僕らの無意識は勝手に研ぎ澄まされていくようだ ベッドの下の輪郭のない気配に この瞳が開く時は心など無くて 何もかも壊してしまう激しさだけ 静かに消えて行く季節も選べないというのなら 白い手袋が闇に浮かぶ 薄桃色の眼が闇に灯る 願いだけが闇に消えた アンインストール アンインストール 僕の代わりがいないなら 普通に流れてたあの日常を アンインストール アンインストール この手で終らせたくなる なにも悪いことじゃない アンインストール 君の代わりなどいるはずもなく 明日を夢見て眠ることも無く アンインストール アンインストール この星の無数の塵のひとつだと 今の僕には理解できない アンインストール アンインストール 恐れを知らない戦士のように 振る舞うしかない アンインストール もう、死ぬことに恐れも無く ただ、ここに君がいないことに怯え 一人孤独に震え ―――だから 沖那 いじょー 今回は、前回使い損ねた2番 GM ……曲が終わり、踊りも終ると、また拍手が巻き起こる。 ぱちぱちぱちぱち、ぱちぱちぱちぱち。 沖那 一礼をし、舞台裏に下がる GM がこん と、電気が消えて…… 彼女と、二人になる。 映詩:「素晴らしかったわ」 軽く、手を叩いて、にこやかに。 沖那 「そう言って貰えるとは嬉しいな」 嬉しげに笑い GM 映詩:「ねぇ……届かない思いを抱きつづけるのは、悪い事かしら?」 沖那 「質問が漠然としすぎて答えかねるが…そもそも良い悪いなのか?」 GM 映詩:「そうねぇ……」 目をゆっくり瞑り、ゆっくり開く。 映詩:「富来克真君……だったかしら」 沖那 「ああ、あってるよ」 GM 映詩:「もう、死んでしまったのでしょう?」 沖那 「ああ」 GM 映詩:「また、会ってみたいかしら?」 沖那 「・・・・・ …会いたい。けれども、会えないと解っている」 GM 映詩:「それは……私たちの為そうとしている形では、納得行かないのね」 沖那 「ああ。どうしても、な。 それで納得できれば私も楽だったのだろうがな」 苦笑して GM 映詩:「何故……と、聞くのは、野暮な事でしょうね」 薄らと、慈愛に満ちたような笑みを浮かべて。 沖那 「ん、そうだな」 GM 映詩:「自分でも、わかってないのでしょうから」 沖那 「まあ、な。くくっ」 そう言って小さく笑い GM 映詩:「少し、夢みる乙女のようなお話をしてみない?」 くすくすと笑って。 映詩:「もし、もしも、よ。会えたのなら、何がしたいのかしら?」 沖那 「そうだ、な。 んー…と、その・・・なんだな」 GM ゆったりと、老婆は返答を待つ。 沖那 「え~っと、ほら…あの、あ~っと、なんというかその、だな… ・・・これではとても言えそうに無いな」 大きくため息を吐き GM 映詩:「あらあら……」 沖那 「まあ、なんだ…愛してると、好きだと。そう伝えたい…なぁ、と」 小さな声でそう何とか言い GM 映詩:「その一言が、中々難しいのよねぇ…… 私も、ずうっと言えてないわ」 沖那 「言った所でアイツだとスルーする可能性がありそうなのだよなぁ…」 GM 映詩:「そうなのよね。取り合ってもらえなかったら、恥ずかしくて仕方ないもの」 車椅子に体重を預けた老婆は、共感するように言う。 沖那 「まったくだ」 GM 映詩:「片想いは……辛いわ」 沖那 「ホント…まさか自分がこうなる時が来るなどとは思ってもいなかったよ」 GM 少しの、間。 何か聞きたい事があれば、どうぞ。 無ければ進めます。 沖那 んーーー…聞きたいことが無いわけでは無いが、聞かないでおく GM ですか。 沖那 それこそ野暮だからな GM 映詩:「……何故、私達の前に、貴方は立ち塞がるのかしら?」 沖那 「仲間のためだな。 茂野と玉響は、まだ両方生きている。 折角だからきちんと添い遂げてもらいたい。 八月朔日は頑張り屋だからな。 一人で仕事させるわけにもいくまい。 上成は、アイツが死んだときに泣いてくれた。 そんなアイツが助けたい人がいるなら、手伝わなくてはならない。 まあ、そんなところだな」 GM 映詩:「そこに、自分の意志が無くても……届かない言葉を抱いたままで、 そんな曖昧なもののために、頑張るのね」 首を振って。 映詩:「いいえ、それこそが貴方の意志、かしら……」 沖那 「そう、かもな」 GM 映詩:「自分の意志。 そんな滑稽な言葉も無いけれど……届かなかったところで、 抱くだけで人は動ける……」 まどろむように……。 この老婆は、何を抱いているのだろう? 映詩:「……昔話、聞いてくれるかしら?」 沖那 「構わないよ。長くなるなら、そう。お茶でも飲みながら聞きたいかな」 GM 映詩:「そうね……」 音も無く、二匹の猫がお茶を持ってくる。 …… 一人の少女がいました。 彼女を取り巻く環境は、がんじがらめでした。 旧き過去から連綿と続く、家と名前による束縛。 凝り固まった思想、身動きの取れない思惑。 少女は生まれた瞬間から、人生を決定付けられていました。 彼女の生まれた家は、没落の一途を辿る最中でした。 それは、まるで世を鏡に写した絵のように。 周りの大人達は必死でした。 継いできたものを、次へと繋げようと。 長く紡いで来たものを、自分達が断ち切ってはいけないと。 だからその少女は、結ばれる相手も他の誰かに決められて。 おおよそ今までの先祖がそうして来たように、自らもまた。 その家と名前を紡ぐ事を、選ばされました。 選ぶ。 こんなものは選択とは言えない。 しかし。 選んだ事にされた。 少女は、人間なんか嫌いでした。 少女は、世界なんか大嫌いでした。 少女は、自分なんか大々嫌いでした。 少女は、何もかもが大々々嫌いでした。 そして、それが少女の僅かな矜持でした。 夢なんて無い。 ここから見える景色全てが薄汚い。 ああ、なんて澱んでいるんだろう。 微笑みなんて全てが嘘だ。 誰もが腹の内にどす黒い思いを持っていて。 それこそが人間を人間たらしめている。 否定することは出来ないでしょう? そんな人間たちが紡ぎ建てたこの世界が、汚く見えるだなんて。 なんて自然な事だろう。 絶望する事すらも馬鹿馬鹿しくなって、ただただ嫌悪を抱き。 膝を抱え、傍観を決め込んだ少女は。 やっと、“それ”と出会いました。 “それ”は、少女と同じか彼女以上に、何もかもを見通してました。 しかし、少女が嫌ってきた全てを、愛していました。 悲しみを嘆き、苦しみを嘆き、寂しさを嘆き。 自分と言う認識を廃絶してまで、何もかもを救おうとしていました。 少女は、“それ”と出会い。 “それ”に恋をし、愛を抱きました。 救われたと思いました。感謝の気持ちで満ち溢れました。 夢も、現も、自分も、世界も、“それ”から貰ったのですから。 だから“それ”のために、少女は少女自身を捧げようと決めました。 ここに来て、誰が用意したでもない選択肢を、自ら選び取ったのです。 “それ”と同じ場所から、世界を見て。 “それ”のためだけに、景色を見よう。 世鏡絵我なんて名前は、誰かにあげよう。 妹にでも、あげよう。 私には、必要ない。 私は、うつしで良い。 そっちの方が、映えるもの―― 貴方の事を愛しています。 ずっと、出会ったその日から。 自分の存在も認めない。 何もかも愛しすぎる貴方。 だから私は貴方を愛します。 狂おしい程愛しています。 悠久の時を貴方と共に。 それが私の夢だった。 お城を、建てましょう。 せめて、世界に匹敵するほどの。 二人の城――全ての城。 遍く事象を景色と眺めましょう。 それが私の現となる。 やがて少女は、終結と言う思想の一つとなるのでした。 ……ただ、話し相手が欲しかっただけかもしれない。 理解してくれるかもしれない、相手が欲しかっただけかもしれない。 届くはずが無い思いを、ずっと抱きつづけてきた身として。 そして、その想いを貫いていく意志を、伝える相手として。 ――私も、歳を取ったものね。 沖那 「ふう…」 冷めてしまったお茶を飲み干し GM 映詩:「……長くなっちゃって、ごめんなさいね」 沖那 「いや。 そうやって、まだそんな風に語れるんだったら… もし私がこの戦いに生き残っても、なんとか生きていけるかな。 と思ってな」 GM 映詩:「そう……」 沖那 「ああ、皮肉でもなんでもないぞ。純粋な感想だ。 気を悪くしたなら謝るが」 GM 老婆は、まるでただの老婆のように、 本当に、ただの疲れた老婆のように、息を吐いて。 映詩:「いいえ……。ただ、少し嬉しくて、悲しかっただけ……」 沖那 「そうか……」 GM 映詩:「だから私達は、対立するしか、ないのだもの」 己が誰かを想い、己として何かを思うために。 ふぁ……と……周囲に花畑が展開する。 気持ちの良い風が、駆け抜ける。 かちゃ。 かちゃ。 GM 扉の開く音。 映詩:「さて、と。 のんびりする時間もそろそろ終わりにしましょうか。堅陸沖那ちゃん」 沖那 「ん…少し、残念だがな」 GM 映詩:「お互いにもう――」 思い残す事は無いでしょう。 GM カット。 沖那 うむ、時をかける少女思い出した GM ほふ。 遙 いやいやいや(笑 GM 実写版を少し見ただけで、私は見た事無いのですけれど。(苦笑 沖那 んー、まあ、昔そうだった叔母と、今そうである少女の会話があってな GM ふむふむ。 沖那 まあ、いいや GM ええと、突っ込みとかありませんか? 沖那 んー。いや。特に。 ああ、そうだ、ロイスロイス。 GM ああ、受け取ってもらえてませんでしたね。 遙 ああ、シナリオロイス。 沖那 んーと、推奨なんだったっけ GM 自由です。(笑 沖那 ふむ、正道は外していこう。 友情/嫉妬、でP表。 GM 了解です・・・嫉妬? 遙 想う所でもあるんですか? 沖那 ん、まあ。色々とな そういう風な道もまたよかったかもな、とか、そんな感じか GM 成る程です。 ◆ ◆ ◆ GM では、マスターシーンを流します。 こぽこぽこぽ、こぽぽ……。 「あいつは変な奴だったよ。 変な奴だったが、優しい奴だった」 うっすら白い湯気と、珈琲のアロマに紛れて、そう言う。 “果実の臭い(Yes Sweet)”――北化非。 「でも――今のこの状況は、 その人が引き起こしているんでしょう?」 “月崩し(Jealous Moons)”――鹿子木朋。 非の娘は、夫を持っても変わらず可愛らしく、そう尋ねた。 「そうだな……」 「悪いのはあいつじゃない、世界だーとか言っちゃう?」 「言わないよ。悪いのはあいつだ。悪いかどうかもわからんが」 「友達……だったんでしょう?」 「友達だったからこそ、救えなくて。友だったから、悔いてるんだな」 「よく、わからん事です」 「朋友でいたかったが――結局、悪友だったのかもな」 「朋――」 珈琲に口をつけ、北化非は不器用にウィンクをする。 「悪友が格好つけてきたら、こっちも格好よく返すしか、無いだろう?」 「……あっほらし。止めるべきだったんじゃないの?」 「若すぎ――いや。……年を、食いすぎてたのさ。お互いな」 夢なんか捨てちまうくらいに――現実にしか興味が無いくらいに。 だから、すまない。 あいつの亡霊を、止めてくれやしないか? 喫茶店のマスターは、無責任な大人らしく。儚く、願う。 ――今日も、喫茶:Dearは営業中だ。 誰かへ向けて。 粛々収縮。渦巻き込む。 気付きやしないすぐ其処で、その手を繋げ。 撓む現世に、ごあいさつ――♪ GM 以上です。 遙 はい。 GM 感想とかあったらお願いします! 沖那 とりあえず曲が消費できてよかったですw 明彦 まぁ、まさに最終回!という感じだなぁ。ほんと。 遙 精神面で来るものがありますね。 GM 一応、これで語り部以外の気になるキャラ(?) 過去話は軽く触れ終わったわけですが。 さりげない映詩の以前の名前と鹿子木朋のコードネーム公開。(笑 明彦 はははw
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【検索用 うたたねしてたらうなちゃんかいたすらしてきたのでそのままねたふりをつつけてみた 登録タグ 2022年 VOCALOID VOICEROID う きさら 曲 曲あ 音街ウナ】 + 目次 目次 曲紹介 歌詞 コメント 作詞:きさら 作曲:きさら 編曲:きさら 唄:音街ウナ 曲紹介 曲名:『うたた寝してたらウナちゃんがいたずらしてきたのでそのまま寝たふりを続けてみた』(うたたねしてたらうなちゃんがいたずらしてきたのでそのままねたふりをつづけてみた) 対抗Pに対抗しました。 「楽曲にキス音入ってると思ったらうp主のキス音だった…」 「安心して聴ける合成音声のキス音ってないのか…?」 あ り ま す 、 こ こ に 。 この曲のボーカルはすべてVOCALOIDの声から作られています。 安心してお楽しみください 対抗Pの「ウナの性惑」に対抗した【無色透名祭】参加作品 長らく作曲者が不明だったが、「きさらんちオンライン会議」にて、きさら氏が作曲したことが判明した。 年が明けた2023年2月4日に【ネタ曲投稿祭2023】の参加作品としてきさら氏から正式投稿された。 きさら家のウナちゃん幻のデビュー曲。 歌詞 (動画より書き起こし) お~い、ますたぁ~ う~ん、寝ちゃった? お~~い、寝てますか~? つんつん ふふっ ぴくってした! ますたぁ~ こちょこちょ こ~ちょこちょこちょこちょ~ いひひっ ねぇ…ますたー? す・き♡ すき♡ だ~いすき♡ ん..ちゅっ わぁ!? へ?!起きてたの!!?いつから!!? うあ~ん! ちがうもん!! もう言わない!! やだ!! きゃっっ!!!?? だめ…!うぅ... す、すき...♡ コメント この曲のページ作ってあったwいい歌詞だなぁ… -- 名無しさん (2022-12-29 02 07 31) BPMなにこれ…w -- ぽぽぽ (2023-02-25 23 26 49) 何なんだこの曲はww -- 名無しさん (2024-02-11 14 24 32) 名前 コメント コメントを書き込む際の注意 コメント欄は匿名で使用できる性質上、荒れやすいので、 以下の条件に該当するようなコメントは削除されることがあります。 コメントする際は、絶対に目を通してください。 暴力的、または卑猥な表現・差別用語(Wiki利用者に著しく不快感を与えるような表現) 特定の個人・団体の宣伝または批判 (曲紹介ページにおいて)歌詞の独自解釈を展開するコメント、いわゆる“解釈コメ” 長すぎるコメント 『歌ってみた』系動画や、歌い手に関する話題 「カラオケで歌えた」「学校で流れた」などの曲に直接関係しない、本来日記に書くようなコメント カラオケ化、カラオケ配信等の話題 同一人物によると判断される連続・大量コメント Wikiの保守管理は有志によって行われています。 Wikiを気持ちよく利用するためにも、上記の注意事項は守って頂くようにお願いします。
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仮面ライダーリリカル電王sts外伝第二話 「貪欲なる捕食者」 ここは次元犯罪者ジェイル・スカリエッティのアジトの一廓。クアットロは目の前にある四人分の食事を一人で食べていた。ガツガツ、クチャ、クチャ、ガブ、ゴクン!という音を立てながら。 「チッ、足りねえなぁ」 瞬く間に皿の数は減っていく。全てを喰らい尽くすその様子はさながら、野獣の様であった。 『牙王様ぁ、どうですぅ?』 「足りねえなぁ、こんなんじゃあ」 『そうですかぁ』 一見、独り言のようだが確かに二人は話していた。時さえも喰らおうした男と一人の男の夢のカケラは。 順調に食べ続け、四人分の量を食べ終わった直後、クアットロは突如動きを止めた。 「チッ、時間切れか」 そう言うとクアットロの周りの野獣の様な雰囲気は突如消えた。 「今の牙王様が表に出られる時間はせいぜい五分、まだまだ全開というわけじゃありませんねぇ」 『フンッ、その程度なんてことねぇ。それより、ガオウライナーはどうした』 「完成度は82%ってところですわぁ」 『チッ、早く完成させろ』 「分かりましたぁ。ドクターにそう伝えておきますねぇ」 さて、こんな風に話をする二人の出会いについて、語ることとしよう。 二人の出会いはほんの数年前のことである。 その日クアットロは、自室にいた。何をするわけでもなく只、そこに居た。自分の見たものを、その気持ちを再確認をするために。 その日の朝、クアットロが自室から出て、ラボの中を歩いていると足元に四角い金色の物体を見つけた。 (何なのかしら) そうクアットロは思った。あの光を見るまでは。 それは、突然現れた。禍々しい黒き光。その光は呟くように言葉を発していた。 足りねえ、足りねえ。 と。 その言葉はまるで呪祖の様に、繰り返し、繰り返し続けられていたのだから。 「喰らい足りねえ!」 クアットロはその様子をまるで引き込まれるように魅せられていた。 己を生み出した男。ジェイル・スカリエッティの様な狂わんばかりの喰らうことへの執着心。それでいて、ドクターとは違う野獣の様な猛々しきオーラ。 そしてその場を支配する圧倒的な存在感。 クアットロは動けなかった。いや、むしろ動こうとしなかった。ずっと見ていたかった。 「女、俺のマスターパスを返しやがれ」 「こ、これですの?どうぞ」 いつもの彼女なら皮肉を一つは言っただろう。しかし、彼女はこの光の前では何故か素直だった。 「それでいいんだ」 そう言うと光は消えた。クアットロはその部屋に戻り今に至る。 部屋に戻ったクアットロが考えるのはあの光のことばかり。そして、あの光のことを考えると胸が締め付けられる様に痛むのである。 (何なのよぉ、これはぁ) そう考えながら眠りについたクアットロ。 彼女が感じたこの気持ちは、誰もが一度は経験したもの。そう、世間で言う、〈初恋〉と言うものなのだから…。 目を覚ますと彼女の前にはあの黒き光が鎮座していた。 「お前が俺を呼んだってことか」 黒き光はそう言った。 「呼んだぁ、私がですかぁ」 「確かに呼んだんだ。だから、奪う。お前の身体を、な」 そう言うと光はクアットロの身体へと吸い込まれた。そして、目を一瞬閉じ、再び開いた目は、黒き光に包まれていた。 「これで、また喰らいつくす。全てを時も、だ!」 確かに身体を奪うことは出来た。しかし、それはほんの一瞬。次の瞬間、クアットロは苦しみ倒れた。 「どうしたんですのぉ?」 『チッ、俺の力が弱ってるのか…』 「でしたら私の身体の中で休むと良いですわぁ。これからは私があなたと共にいますからぁ」 『お前は俺に尽くすってわけか。』 「えぇ、そうですわぁ」 『俺は牙王。俺は全てを喰らい尽くす』 「私は、ナンバーズNo4、クアットロですわぁ」 こうして、二人の男女は出会った。 男の名は牙王。時さえも喰らおうとした男。 女の名はクアットロ。無限の欲望に生み出されし女。 この二人の出会いが後の世界の終末と呼ばれたJ S事件、最大最悪の悲劇『黒き空』を引き起こすことを一体誰が予想出来たであろうか…。 目次へ
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「第七廃棄都市区画にガジェットドローンⅡ型及びⅢ型が出現。機体数はおよそ20機」 「区画内を旋回飛行、或いは徘徊しています。出現時から変化なし」 シャーリーとルキノの報告になのはが頷く。 「数はそれほど多くないね。私とフェイト隊長、スターズ、ライトニングの新人達で行こうと思うんだけどどうかな?」 フェイトは無言で頷く。はやても特に異論はないようだった。 「ただ、廃棄都市区画には未登録でも住民もおる。建物への被害は極力避けて、避難と救助を優先するように徹底させてな?」 「うん、解ってる。それじゃ行ってくるね」 6人の降り立ったのは夜の廃棄都市区画。とはいえ、夜なのに明かりの一つも見えない全くの暗闇だ。 「ねえ、なのは。何かおかしくない?」 「うん、ガジェットが出たのに悲鳴どころか人の気配も感じない……」 皆が隠れているなら説明もつくのだが。なのはは何か言い知れない危険を感じた。 しかし何の根拠もないのに皆に話す訳にもいかない。今は自分の胸に仕舞っておこう。 「とりあえず私が空のⅡ型を叩く。皆は下の敵を。フェイト隊長はそっちの指揮をお願い」 「解った。それで行こう」 「了解!」 それぞれが散開するのを見届けてから、なのはは空に上がった。早速下では戦闘開始したらしく爆音が響いてくる。 空には10機のガジェットⅡ型がこちらへ向かっている。こちらから仕掛けるのが得策か。 夜の廃墟で戦う新人達のフォローに早く向かったほうがいい。 「行くよ、レイジングハート!アクセルシューター!」 『Yes,Master. Accel Shooter.』 レイジングハートから10を超える魔力弾が放射状に放たれる。 一つ一つが複雑な動きでガジェットに向かい、まずは半分のガジェットが貫かれて爆散した。 残りの5機はアクセルシューターを回避しながら熱線砲を発射。なのははこれを避けもせずに正面から受け止めた。それもシールドを張ることすらせず。 「もう一回……アクセルシューター!」 更に5発の魔力弾。但し今度は誘導ではなく直射。 ガジェットはこれを苦も無く回避。高機動型なだけはある。だが、なのはの狙いはそこにあった。 ガジェットを通り過ぎた魔力弾を反転させて追尾。そして最初に放った弾で生き残っているものを再び操作。 5機のガジェットは上下左右を塞がれ、敢えなく貫かれた。 「ふうっ、空はこんなところかな……」 新人達のフォローに向かう前に周囲をぐるりと見回す。夜の空は不気味なくらい静かなものへと戻っている。ただ一点、廃棄都市区画内の一画に奇妙なものを見つけた。 それは夜の闇の中でもそれと解る銀の煙。それがどうにもなのはの直感を刺激した。 「これは……」 銀の煙が闇を照らしている。その様は美しく幻想的ですらあった。 しかし逆に自分の足は動かない。これまでの戦いで培われた勘が警鐘を鳴らしている。 それでも見過ごせなかった。煙の中心には気絶しているのだろうか、男性が倒れているのだ。 有毒ガスの類かもしれない。身体は中に飛び込むことを拒否している。だが、目の前で倒れている人を見過ごすことは絶対に出来なかった。 「レイジングハート、この煙の成分が何か解る?」 暫しの沈黙の後に答えが返る。『該当するデータはありません』と。 幸い煙は深くない。バリアを張りつつ煙に入る前まで近づいて、バインドしてこちらに引き寄せることも可能だ。 少々不安だがそれしかないだろう。 なのははチェーンバインドで男性を引き寄せる。そして彼を抱くと煙から離れた。 「大丈夫ですか!?」 「あ、ああ……大丈夫だ……」 対象は30代か40代程の男性。ここの住民らしく服はボロボロだ。 呼びかけると微弱だが返事が返る。外傷も無く、顔色も悪くないし、意識もはっきりしてきた。 「あの……機械の襲撃に巻き込まれて避難してる最中に……頭を打ったんだ」 どうやら単なる失神のようだが、一応病院に搬送してもらう必要がある。このまま待機しているヘリに連れて行くか。 ガジェットに備え男性ごとバリアを展開。 そして飛び立った瞬間――ずぶりと胸に何かが突き刺さった。 「っ!?」 遅れて激痛が走る。身体から何かが抜けていく感覚も伴って。 「うめええええ!人間の……女の血だ!」 有り得ない程に大きく開かれた口から露出した注射器が、BJを貫いて血を吸っている。 注射器の中は真赤な液体で満たされ、男はそれをごくごく飲み干す。 「ああああああ……」 状況の認識が追いつかず、奇妙な感覚に力が抜けて意識が遠のく。 『Barrier Burst.』 バリアが爆発して二人とも衝撃にバランスを崩して墜落。本来はバリアの外からの攻撃に対する防御手段だが、内側への衝撃だけでも男を引き剥がすには十分だった。 男はすぐさま起き上がりなのはへと飛びかかるが、瞬時に桜色の光の輪に拘束された。 「ありがとう……レイジングハート……」 『All right.』 レイジングハートのおかげでなんとか助かったが、目が霞み意識がはっきりしない。 足はふらつき、出血は止まったがBJの胸部は赤く染まっている。 「ちぃぃぃ!もう少しだったのによぉぉ!」 男はバインドを引き千切り、注射器を口から出したまま悔しがる。 この男は何なのだろう。未だに状況が掴めないが、人間ではないこと、危険な存在であることは確かだ。 (まずは飛んで距離を取る……!) と、視界から男が消える。そして右腕に強い衝撃が走った。 「くっ!!」 男はいつの間にかなのはの右側面に回りこんでいる。 まさか目にも留まらぬ程のスピードで動いたのか?しかもBJ越しでこの衝撃。やはり人間ではない。 「あなたは……何者なの!?」 男は答える代わりに、再びなのはの背後に回り拳を繰り出すが――。 光の障壁に阻まれ仰け反った。 思ったとおり、見えない程速くてもバリアを突破出来る力は無い。そしてその瞬間は動きが止まる。 (そこを捕らえる――!) レストリクトロックで男を拘束。どれだけもがこうと、念入りに強固に設定したバインドを力任せに解くことなどできはしない。できはしないはずなのに。 「畜生!解きやがれえええええ!!」 男が暴れることでバインドが千切られていく。 「暴れないで!身体が壊れるよ!」 拘束を強化するとバインドは腕に食い込み、その腕から皮膚が剥がれ機械部分が完全に露出する。 (これは……ロボット!?) そうしている内にもバインドが緩まり、男が脱出しそうになる。迷っている時間はない。 不意を疲れて血を流し過ぎた。これを解かれれば次はやられるだろう。 (やるしかない……!) 捕まえて情報を聞く必要もあったし、何より人でないとはいえ意思の疎通が可能な存在を壊すのは抵抗もあった。 それでも撃たなければ自分が殺されることになる。 「ディバイン……」 その時、彼女は選択を迫られ、そして選んだ。 「バスターー!!」 レイジングハートから放たれた光が男を包み、消し飛ばした。 後に残されたのは男の残骸である幾らかの部品のみ。これでは分析も難しいだろう。 緊張が解けると急激に疲労と眠気が襲ってきた。頭を振ってそれを振り払おうとする。まだだ、まだ倒れることはできない。 「(フェイトちゃん、そっちの状況は?)」 「大丈夫?なのは。肩貸そうか?」 なのはの顔をフェイトが心配そうに覗き込む。フェイトになのはは笑って見せた。 「大丈夫だよ、フェイトちゃん。まだ歩ける」 「そう?でもすぐに病院で治療を受けるんだよ?」 「解ってる」 自分で思っているよりも自分の身体は丈夫に出来ているようだ。少し息苦しい気もするが問題ない。 地上のガジェットの方はフェイトのフォローも特に必要無く、新人達だけで破壊できたらしい。ティアナを中心に見事に連携してみせたそうだ。 あの煙に関しても、フェイトがはやてに防疫装備の部隊の出動を頼んでくれたらしい。 「さあ帰りましょう、なのはさん。早く病院に行かなきゃ」 「スバル、急かさないの。なのはさん怪我してるんだから」 ヘリの方ではスバルをティアナが諌めている。 彼女達はいいコンビだ。性格も戦闘スタイルも互いを補い合っている。 このまま行けばもっともっと強くなれる。 少し苦しくなってバランスを崩しそうになるのを咄嗟にエリオが支えてくれた。横ではキャロがずっとヒーリングを掛けてくれている。 「大丈夫です、なのはさん。僕が支えてますから」 「傷はちょっと深いですが、少しは楽になると思います」 二人もまだ幼いのに、しっかりとした目標を持って頑張っている。きっと優秀な魔導師になるだろう。 「ありがとう。エリオ、キャロ」 でもまだまだ四人とも未熟だ。教えることは山程ある。その為にも早く傷を治さなければ。 でも今はとにかく休みたい。やはり血を出し過ぎたのか段々と息苦しくなってきた。 数歩進んだ時、唐突になのはの足が止まった。 「どうしたんですか?なのはさん……」 最初に異変に気付いたのはキャロ。 「なのはさん、辛くなったなら皆で――」 覗き込んだエリオがそれを確信する。 彼女の顔は蒼白で、全身が小刻みに震えていた。 「なのはさん!!」 その声に全員が振り向く。 崩れるようになのはは膝を着いた。エリオが支えなければ横に倒れていただろう。 「なのはさん!?」 ティアナとスバルも駆け寄ってくる。 いつも誰かに差し伸べられた彼女の手は当てどなく彷徨った後、自らの首を押さえた。 「なのは……?」 全身の震えは更に激しくなった。目は驚きによるものか見開かれ、瞳は地面の一点だけを見つめている。 口は固く食い縛ったり、或いは金魚のようにぱくぱく開いたりを繰り返す。 そして、ようやく彼女の口から出たのは――言葉ですらなかった。 〈ぜひ〉 予告? ミッドチルダ 機動六課隊舎 『高町なのは×フェイト・T・ハラオウン』 あの日から二日――たった二日間で全てが変わってしまった。 なのはは、部屋でできる事務だけをこなしている。このままでは教導官の仕事にも支障が出てくるだろう。 泣かせるといけないから、とフェイトやヴィヴィオとも別の部屋へと移った。そして毎日不定期に襲ってくる発作に苦しむようになった。 〈ぜひ!ぜひ!〉 「なのは!」 喉を押さえて悶えるなのはをフェイトはただ抱き締めることしかできない。 「大丈夫……〈ぜひ〉……大丈夫だから……」 そう言って彼女は気丈にも笑ってみせる。本当は自分が笑ってあげないといけないのに。その言葉は自分が掛けるべき言葉のはずなのに。 どれだけ口の端を持ち上げようとしてみても、涙が溢れるばかりで笑うことができなかった。 ミッドチルダ 機動六課隊長室 『フェイト・T・ハラオウン×八神はやて』 「フェイトちゃん……。なのはちゃんには治療法が解らないことは……」 「話したよ……。なのはがそれで絶望するはずないもの……」 「海鳴のことは……」 「話せるはずないじゃない……!」 なのはは自分のことは耐えてしまう。でも他人の痛みには特に敏感なのだ。 もしかしたら彼女の心が挫けてしまうかもしれない。 なのはには海鳴で静養することも考えた。だが彼女の帰る場所は、今はもうここしかない。 「ねえ、はやて。私を地球に行かせて。海鳴のこと、あの病気のことを調べてくるから!」 「それはあかん……。なのはちゃんが戦えへんのにフェイトちゃんまでミッドを離れたら……。カリムも動いてくれてる。病気はそっちに任せよ?」 「海鳴のことは……?」 病気のことはミッドのことでもある。だが海鳴は違う。管理局は動いてはくれない。 「ともかく……今フェイトちゃんが隊を離れるのは許可できへん」 「はやてはいいよ……。シグナムもヴィータもシャマルもザフィーラも。はやての家族は皆ここで元気なんだもの……」 こんなことを言いたい訳ではないのに、一度堰を切ったらもう止まらない。 「はやてにとって海鳴はもうどうでも――!」 パァン!乾いた音が部屋に響いた。 頬を叩かれたと気付くのに数秒を要した。見えていたはずなのに、避けることができなかった。 それは彼女の目にも大粒の涙が滲んでいたから。 フランス カルナック 『加藤鳴海×エリオ・モンディアル』 傷だらけになりながらも、その背中は雄雄しく逞しかった。自分には無いが、父や兄の背中というものは、きっとこういうものなのだろう。 「僕も……鳴海さんみたいに強くなれますか?」 彼は頭から血を流しながら力強く笑った。 「ああ、なれるぜ。俺よか強くよ!」 ・日本 仲町サーカス 『才賀勝×キャロ・ル・ルシエ』 「坊ちゃま……今、何と仰いましたか?」 「だからさ、僕としろがねとリーゼさんで。ううん、仲町サーカスのみんなの芸でキャロちゃんを笑顔にしてあげようよ!」 「キャウ!」 勝の耳元で白竜が鳴いた。当の飼い主は少し離れた場所に暗い顔で俯いている。 「ごめんごめん。勿論フリードも一緒だよ」 フリードは一鳴きして勝の頭に止まる。 「僕達芸人がしょぼくれた顔してちゃ、絶対にお客さんは笑ってくれないよ。ゾナハ病でもそうじゃなくても――笑うって楽しいことでしょ?」 日本 パピヨンパーク 『アリサ・バニングス×パピヨン×月村すずか』 彼女はまだ制御に慣れていないのか、ぎこちない動きでくるくる回りながら下りてくる。 「アリサちゃん……」 舞い散る純白の羽根に黒死の蝶が寄り添った。手を貸すわけでもなく面白そうに眺めている。 「どうだい、気分は?」 蝶人パピヨンがアリサに問う。 「鳥サイコー……なんて言う訳ないでしょ」 「なんだ、言わないのか」 パピヨンはわざとらしく残念がってみせた。 ミッドチルダ 機動六課隊舎屋上 『エドワード・エルリック×スバル・ナカジマ』 「ねえ、エドはやっぱり元の世界に帰りたいの?」 「ああ、待ってる奴もいるしな」 待ってる奴――その言葉に何故か胸が疼いた。 「少なくとも、俺の知ってる方法じゃ行き来は難しいし、しちゃいけない。だから……帰りたいんだ」 エドは機械の右腕を撫でた。彼が想っているのは失くした本来の右腕なのか、それとも――。 大切な人と離れ離れになって会えなくなる辛さ。それを今、初めて実感を持って想像できた気がする。そして彼がたまに見せる寂しげな表情の意味も。 同上 『アルフォンス・エルリック×ティアナ・ランスター』 物陰から大きな影が一つ、語らう二人を覗いている。 「ティアナさん。あの二人ってもしかして……」 「どうかしら?あの子はその手のことに鈍いから……」 「兄さんもそっち関係はとことん疎いからなぁ……。ところで……何でティアナさんは僕の中に入ってるんですか?」 「……隠れる場所が一つしかなかったからよ」 「そんなに覗きたかったんだ……」 日本 海鳴市 『武藤カズキ×津村斗貴子』 ホムンクルスが徘徊する街をカズキと斗貴子は駆け抜ける。面倒だが、一軒ずつ失敬してホムンクルスとゾナハ病の罹患者を確かめる。その内の一軒で彼はそれを見た。 ゾナハ病に罹り倒れている母親と、扉の向こうで泣いている双子の子供。 扉を開くと、まだ1歳か2歳程度の双子が這いながら母親に寄り縋って泣き出す。 「この子達はゾナハ病じゃないのか……?」 「そうみたいだ。この人は子供を守ってたんだ……。でもどうやって?」 化け物が徘徊する街で、自分のことも顧みず、たった一人で子供を守る。それがどれほど恐ろしいことか想像するまでもない。 暫く俯いていたカズキが顔を上げて、双子の頭に手を置いた。泣き喚く双子をあやすようにそっと撫でる。 「オレにはお母さんを助けてあげることはできないけど……。でも、絶対にこれ以上傷つけさせないから。 こんな病気をばら撒くのを止めさせてみせるから……」 「カズキ……」 「大丈夫!何を隠そう、オレは『正義の味方』の達人だ!」 彼は子供達の為に笑って見せた。その妙な日本語も彼が言うと何故か説得力がある。 ただ、斗貴子には子供達に見せたその笑顔は今にも泣きそうな顔に見えた。 背後――玄関の辺りでガラスの割れる音が聞こえた。ゾナハ病の人間を喰わないよう作られたホムンクルスが食物を漁りに来たのだろう。 「斗貴子さん……三人を頼む」 双子は不安げにカズキを見上げ、斗貴子は双子の前に回りこんでそれを遮った。 この子達が今のカズキの顔を、怒りの形相を見る必要はない。この子達が見るのは、ただ山吹色〔サンライトイエロー〕のキレイな光だけでいい。 「大丈夫だから……。君達はお母さんに付いて笑っていてあげなさい。きっとそれが一番嬉しいだろうから」 斗貴子は優しく頬を撫で、カズキの分も微笑む。双子は気持ちよさそうに目を細めた。 玄関には案の定、醜悪な蝶整体の姿。カズキはきつく、握りつぶさんばかりに強く左胸を掴んだ。いつになく昂っていることが自分でも解る。 「武装錬金!」 闘志に呼応して形を変える突撃槍〔ランス〕の武装錬金『サンライトハート』は、現在そのほとんどをエネルギーで形成し、身の丈以上に巨大化している。 カズキはゆっくりとサンライトハートを構え、山吹色の光を噴出させた。 「貫け!オレの武装錬金!!」 瞬間、そこに爆発的な速度が生まれる。蝶整体の動きよりも速く、巨大な光の槍はそれを粉砕した。 貫いた勢いのまま外へと飛び出すと、外には既に無数のホムンクルスが集まっていた。 カズキは怒りの眼で睨みつけると、再びサンライトハートを構える。槍は彼の心を表して、更に強くエネルギーを迸らせる。 「エネルギー全開!サンライトスラッシャァァァァァ!!」 ミッドチルダ 上空 『高町なのは』 無数の機影を前に彼女はたった一人だった。左手で喉を押さえ、荒い息を吐いている。 「(なのはさん!無理です、戻ってください!)」 通信の声になのはは首を振る。空間モニター越しの彼女の顔は泣いていた。 「(駄目だよ、シャーリー。陸の局員のほとんどがゾナハ病で動けないんだから……。〈ぜひ〉私がやらなきゃ……)」 「(でも……なのはさんだって!!)」 「(フェイトちゃんもはやてちゃんもいないんだもん……。〈ぜひ〉私しかいないから)」 言葉に出すことで改めて実感する。共に戦ってくれる、支えてくれる仲間がいないことを。それでも泣いている彼女に向かってなのはは力無く笑った。 「(皆の帰ってくる場所はここなんだから……。〈ぜひ〉だからもう少しだけ守らせて、ね?)」 「(はい……)」 彼女は一言だけ答えて通信を終了させた。きっと向こうでまた泣いてるだろう。 「行くよ……!レイジングハート!」 『All right.』 この病気が広がってから、皆が笑うことが少なくなってしまった。それもそう、大事な人が苦しんでるのに笑うことなんてできるはずない。 「スターライトォ――」 だから、せめて病気の私が笑ってあげたい。大丈夫だ、って。 今は近くに笑ってくれる人はいないけど、こうやって戦っていればきっと――。 「ブレイカァァァァァ!!」 私にじゃなくても、いつか誰かが笑ってくれるから。 静まり返った舞台。道化が舞台の袖より中央へと歩み出る。恭しく右手を差し出して一礼。 「病に倒れた高町なのは。今は翻弄させるばかりの加藤鳴海。ミッドに鍵を求めるエドワード・エルリック。そして未だ姿を見せぬ才賀勝と武藤カズキ。 果たして彼らの運命はどのように交錯してゆくのか、どのような形で相見えるのか……。 これは高町なのはの復活の物語」 そこで道化は一旦言葉を切って咳払い、懐を探り出す。 「さて、ここに於いて皆様のお目を"これ"に転じていただきたい」 道化が握っているのは小型の通信機のような物。片側には小さなタービンが付いている。 「そう、アクセルラーで御座います。覚えておいででしょうか?それはもう一つの物語。 果て無き夢を追い求める冒険者、その意味に思い悩む烈火の将と鉄槌の騎士の物語。 未だ答えを見出せず苦悩する二人は、続きを綴られるのを今かと待ち望んでおります。次回よりはその続きを追っていただくとしましょう。 彼女らの冒険を望むゴールへと導く為に。そしてこの物語をより昇華させる為に、どうか暫しのお時間を。 この続きはその後に語ると致しましょう。 どうぞ今後とも鷹揚の御見物を御願い申し上げます」 左右から緞帳が迫り、やがて舞台を覆い隠さんとする。 「では、『なのは×錬金』はこれよりほんの暫くの間――『一時閉幕』と相成りまする」 閉まりきる直前に道化は火花を散らしてタービンを分厚い緞帳に走らせ、同時に完全に幕を閉め切る。 幕の隙間から垣間見えたのは、真赤なアクセルスーツを纏った冒険者――。 ⇒『なのは×錬金』 戻る 目次へ 次へ
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← ◆◇◆◇ ひとり分の隙間。 たったそれだけの、僅かな空間。 すぐ隣にいるのに。 すぐ傍にいるのに。 近くて遠い、距離があって。 ふたりの心は、分かたれている。 櫻木真乃と、星奈ひかる。 ベンチに腰掛ける少女達は、言葉を交わさず。 星空に見下されながら、静まり返っていた。 なけなしの勇気を絞り出して。 ほんの僅かに、手を伸ばそうとしても。 結局、後ろめたさのような躊躇いを感じてしまう。 お互いに、手を繋ごうとしているのに。 ほんの数センチの距離が、届かない。 ひかるは、苛まれていた。 “子供”の命を奪って。 “守るべき人達”を助けられなくて。 結局、真乃さえも支えられていない。 それどころか、真乃を心配させている。 真乃は、苦悩していた。 ひかるに重荷を背負わせて。 心に深い傷を負ってるのに、それを癒せなくて。 心を通わせたあさひやプロデューサーから、決別を告げられて。 思いを、何ひとつ届けられない。 二人の心は、互いを想っていた。 淡く輝く星の光のように。 二人の感情が、胸の奥底で燻っていた。 手を伸ばさなきゃ。 この子の手を、この人の手を、握らなきゃ。 二人はそう思っていた。 それでも、互いの心は縮まらない。 また一歩、踏み出して。 そうして、心を癒せなかったら。 結局、余計に苦しめてしまうかもしれない。 無理に励まそうとして、逆に相手に気を遣わせて。 それだと、結局自分の為にしかならない。 支えてあげたい。 でも、傷つけたくない。 どうすればいいか分からない。 そうやって二人は、沈黙を重ねて。 「―――真乃さん、アーチャーさん」 やがて、彼女達を呼ぶ声が飛び込んでくる。 二人はすぐに顔を上げて、声の主の方へと視線を向けた。 アサシンのサーヴァント―――ウィリアムが、二人を見つめていた。 「私は、マスター達のもとへと戻ります」 ウィリアムは、静かにそう伝える。 赤い瞳の表情を動かさず、黙々と。 彼の言葉に、二人は何も言わずに耳を傾ける。 「世田谷にいる283の脱出派の面々は、既に“子供達”の一味に捕捉されています。 先程来た“密告”が事実ならば、じきに攻撃を受けることになる」 伝えられたその情報に、思わず二人は目を見開く。 直後に真乃は、ひかるの方へと視線を向けた。 ひかるは、膝の上でギュッと拳を握って。 だけど、その手は―――静かに震えていて。 表情には、迷いと葛藤が滲み出ていた。 子供達。グラス・チルドレン。 この舞台で蠢く、幼い殺し屋たち。 白瀬咲耶を殺害した張本人。 そして、星奈ひかるが一度は手に掛けた相手。 ああ、そうだ。 ひかるにとって、苦悩の始まりだった。 彼女の責任と罪の意識を自覚させた、最初の出来事だった。 真乃はそのことを考えて、目を伏せた。 「そして彼らだけではなく、峰津院財閥……この聖杯戦争における一大勢力すら攻撃を仕掛けてくる可能性があります」 283の面々へと迫る窮地が、次々に伝えられる。 峰津院財閥―――その名前は、真乃達ですら知っていた。 この東京で絶大な権力を握っている組織が、聖杯戦争の勢力として存在している。 そして彼らが、283への攻撃を目論んでいる可能性がある。 件の“新宿事変”にも峰津院財閥が関わっていることが確実であると、ウィリアムは二人に伝えた。 「安全を確保できていない中でマスターを一斉に避難させれば、寧ろ彼女達が奇襲されかねない。 だからこそ、一旦合流した上で今後の対処を急がなくてはならない」 これから世田谷へと戻る中で、残留してる面々に避難の指示を出さない理由を語る。 グラス・チルドレンは確実に襲撃を仕掛けてくる。峰津院による攻撃もいつ始まるか分からない。 そんな状況下で考えなしにマスターの避難を急げば、敵にとっては格好の獲物となる可能性が高い。 サーヴァントの面々で護衛を努めたとしても、無力なマスター達をその場で守りながらの戦闘は容易である筈がない。 ならばこそ、今は自身が帰還するまで下手に動くべきではない。 敵を迎え撃つにせよ、撤退を選ぶにせよ、マスター達の安全は出来る限り確保しなければならないのだから。 「そして――283プロダクションの“黒幕”である私が、これから戦場となる世田谷へと到着する。 それだけでも、大きな意味がある」 そう、黒幕であるウィリアムが帰還する。 今まさに攻撃を受けようとしている彼らの元へ、脱出派の盟主であるサーヴァントが現れる。 それを告げたウィリアムの意図を、ひかるは悟ってしまった。 「アサシンさん、それって……もしかして」 「彼らにとって最優先で排除すべきなのは、脱出派の盟主に等しい私です」 そう呟くウィリアムの瞳に宿っていたのは。 生きるための覚悟か。勝つための決意か。 あるいは、限界を悟ったが故の抵抗だったのか。 ひかるには、分からなかった。それでも。 「私が、彼らを迎え撃ちます」 彼が宣言したことの意味だけは、理解してしまった。 アサシンが、敵を迎え撃つ――――違う。 彼が言いたいのは、そういうことじゃない。 相手にとって最優先に排除すべき存在であることを、彼は自覚している。 彼というサーヴァントを排除することは、283という集団の要を崩すことを意味する。 それは間違いなく、敵にとっては“勝利”に等しく。 つまり、ウィリアムは。 ――――自分が囮を引き受ける。 ――――彼らは、間違いなく此方を狙うのだから。 そう言っているのだ。 ひかるは、それに気付いてしまった。 そんな。それじゃ、アサシンさんは。 そうやって彼を引き留めようとした矢先。 「―――貴方達は、先に逃げて下さい」 紅い瞳が、真っ直ぐに二人を射抜いた。 真乃も、ひかるも。思わず唖然としたように声を漏らす。 「真乃さんも、アーチャーさんも、まだ心の傷は癒えていない。 それにお二人は今から戦線を離脱すれば、少なくとも今回の襲撃からは逃れられる」 ウィリアムは、伝える。 二人の心を案じて、訴えかける。 貴方達は、これ以上傷付かないでほしいと。 「他の皆さんの無事は……私や、彼女達のサーヴァントが引き受けます。 少なくとも、生存の道だけは必ず確保しなければならない」 此処から先は、自分達が引き受ける。 他のサーヴァントと連携して、彼女達を守り抜く。 大丈夫だから。貴方達は、先に逃げてほしい。 それは、ウィリアムにとっての本心だった。 自らの責任に葛藤する少女への、贖罪だった。 自分が果たさねばならなかった“汚れ役”を、彼女にやらせてしまった。 自分がもっと彼女達を支えていれば、苦しまずに済んだ―――。 その想い故に、ひかる達にそう伝えていた。 彼らの標的は自分である。 だから自分が、彼らを迎え撃つ。 その言葉を聞いたひかるは。 ほんの少しの躊躇いを、覚えつつも。 彼に、その疑問を投げかけようとした。 「その……アサシン、さん」 その矢先に。 真乃が先に、口を開いた。 「アサシンさんは……私たちを気遣ってくれてる。 本当に、ありがとうございます。その上で、聞かせてください」 恐る恐る。 しかし、何かを悟ったように。 彼女は言葉を紡いでいく。 それは、ひかるが抱いたものと同じ疑問であり。 「本当は―――ひとりで、引き受けるつもりなんじゃないですか」 だからこそ。 真乃はその言葉を、彼にぶつけた。 それを問いかけずには、いられなかった。 彼が他のサーヴァントと協力しようとしているのは、きっと間違いない。 だけど、もしもの時は、一人で全部を背負おうとしている。 自分が犠牲になることで、ひとつの終止符を打とうとしている。 真乃は、それを感じ取ってしまった。 ひかるもまた、それを察してしまった。 何か、不思議な感じがする。 なんとなく、胸騒ぎがする。 ざわざわと、ひかるの胸中に不安が込み上げる。 こんなことに、覚えがあった。 何か、思い当たる節があった。 こうして一人で背負おうとして。 自分の体と心を、犠牲にして。 痛みで引き裂かれそうになっても。 それでも誰かのために、奔らなくてはならない。 何だろう、この感じは。 確か――――。 「……ええ、その通りです」 そして、ウィリアムは一言。 そう呟いて、肯定した。 見抜かれてしまったことを、悔やむように。 既に腹は決まっているかのように。 彼は、ふっと口元に笑みを浮かべた。 ひどく、ひどく―――寂しげな微笑みを。 「これは、私がやるべきことですから」 その時。その一言。 アサシンが呟いた、何気ない言葉が。 ひかるの脳髄に、心に、打ち付けられ。 そして―――ふいに記憶が、蘇った。 ◆ あの瞬間。 灯織さん、めぐるさんに手を掛けて。 氷の鬼へと変貌した人々を“止める”と決意した、あの時。 拭えない罪で私自身を縛り付けた、あの言葉。 ――――“それでも”。 ああ。 それは、酷く単純なことで。 私はどうして、気付けなかったんだろう。 私はどうして、向き合えなかったんだろう。 ――――“これはわたしにしか出来ないことだから”。 苦しんでるのは。 背負ってるのは。 責任を抱えているのは。 何かがを守っているのは。 私“ひとり”だけじゃない。 真乃さんが、悩み抜いてたように。 あさひさんが、決別を告げたように。 他の人達だって、思いを抱え込んで。 そうやって、みんな苦悩と戦って。 前へと進んで、未来を見つめていく。 アサシンさんは、ずっと。 そう――――ずっと、ずっと。 私達に代わって、283プロダクションを守ってくれた。 たとえ仮初めだとしても。 この世界で再現されたモノだとしても。 真乃さん達にとっての大切な居場所を、大切な人達を、支え続けてくれた。 誰にも頼れない中で、戦い続けて。 考え抜いて、守り抜いて―――――。 私は、そんな簡単なことに気付かなくて。 それで、この人に重荷を背負わせていた。 ―――――“辛えよなぁ。嫌になっちまうよなぁ”。 ―――――“大人になれって突き付けられるのは……痛ェよなあ”。 ライダーさんが、あの時。 どうしてああ言ってくれたのか。 今なら、分かる。 痛みを背負って、何かを諦めて。 苦しみを隠して、妥協してしまう。 未来の輝きを、捨ててしまう。 そんなのは、とても悲しくて。 全然、“キラやば”じゃないから。 そして、すぐ側にいるひとを見つめた。 真乃さん。私の大切なマスターで。 私の―――掛け替えのない“家族”。 ずっと、ずっと、心配を掛けてしまった。 傷付いた私を、支えてくれようとして。 なのに、ちゃんと応えられなくて。 そうして、お互いに一歩を踏み出せなくなって。 真乃さんと、視線が交錯した。 ほんの少し、悲しそうで。 あることを、悟ったようで。 それで、何かを決意したような。 そんな表情をしていた。 何となく。何となくの直感だけれど。 今の私も、同じような顔をしていたんだと思う。 真乃さんも、アサシンさんの一言で気づいたんだ。 大切なことを、改めて分かったんだ。 星と星が結びつくみたいに。 私達の心は、繋がっていた。 ああ、そうだ。 私は今―――何をやるべきなのか。 ◆ 「アサシンさん」 星奈ひかるは、立ち上がった。 影が掛かっていたウィリアムの瞳を、真っ直ぐに見据えていた。 先程までのひかるとは、違う。 何かを悟り、何かを想い。 そして、何かを決意し。 自らの道を、見出したかのような。 そんな眼差しを、ひかるは持っていた。 そこに、弱々しく項垂れてた時の面影はなく。 彼女の姿に、ウィリアムは思わず微かな驚きを見せる。 「―――ごめんなさい」 ひかるは、深々と頭を下げた。 自らの過ちを、非を詫びるように。 大切なことに気付けなかった自分の不甲斐なさを謝った。 「アーチャーさん、貴方は……」 「“アサシンさんなら何とかしてくれる”って、私は思ってました。 あなたは私たちの光になってくれる。あなたなら、暗い未来を変えてくれる―――」 そうしてひかるは、正直に打ち明けた。 あのプロデューサーのビデオメッセージが来たとき。 ひかるは、ウィリアムを頼ることに迷わなかった。 彼なら何とかしてくれる。 星のように道を照らしてくれる。 何も出来なかった、自分とは違う。 そんな思いを胸に、ひかるはウィリアムの元へと駆けつけた。 「―――そう思い込んで、アサシンさんに重荷を背負わせようとしてたって。 やっと、気付いたんです。あなたの輝きばかり信じて、私はちゃんと輝けてなかった」 けれど、それは間違いだった。 ウィリアムへの盲信であることに、ひかるは気づかなかった。 信頼というものを履き違えて、彼に寄りかかろうとしていた。 それを背負うことになるウィリアムが、どんな苦悩を抱えているのか。 自分の葛藤ばかりに目を向けて、そのことに向き合えなかった。 「だから。本当に、ごめんなさい」 だから、ひかるは謝罪した。 あなたを分かろうとしなくて。 あなたの思いに、気付かなくて。 あなたを知ろうとせず、背負わせようとして。 そんな自分に、やっと気付いてしまったから。 呆気に取られたように、目を丸くしていたウィリアム。 顔を上げたひかるは、再び彼を見つめる。 星のような瞳が、彼を捉える。 確かな輝きを放って、彼と向き合う。 「私、一緒に行きます」 そして、ひかるはそう告げる。 迷いなき言葉で、伝える。 ――――あなた一人で、戦わせない。 彼女は確かに、それを示した。 「アーチャーさん、ですが……」 「アサシンさん。私、すっごく強いんですよ」 戸惑うウィリアム――彼はまだ、彼女達の傷を案じていた。 それに対し、ひかるはニッと笑みを見せて応える。 大丈夫。私はもう戦えると、伝えるように。 「みんなと手を合わせて――宇宙だって、救ってみせたんですから」 そう。 彼女は何者なのか。 彼女は一体誰なのか。 この街にいる誰もが、彼女を知らなかった。 犯罪卿でさえも、その全貌を掴んではいなかった。 無垢な祈りで、現実と向き合い。 個々の輝きによって、心を繋ぎ止めて。 希望を胸に奇跡を成し遂げてみせた、本物の英雄だ。 たった5人の少女達が、宇宙(そら)の理すら乗り越えてみせたのだ。 「私は、アーチャーのサーヴァント……星奈ひかる! 宇宙(そら)に輝く星、“キュアスター”!」 その名は、プリキュア。 銀河を救ってみせた、伝説の戦士。 そう、星奈ひかるは。 「私も―――みんなを守ります!」 キュアスターは、紛れもなく―――。 この聖杯戦争における、最強のサーヴァントだった。 この空を仰ぐのは、一人だけではない。 世界を超越する力を持つのは、新宿を破壊した“最強の英霊”だけではない。 “蝿の王”が全ての空を支配せんとする力を持つように。 “煌めく星の少女”は、果てなき星の空を救ってみせたのだ。 その輝きを前にし。 困惑と動揺を浮かべていたウィリアムは。 やがて、その瞳の淀みを――少しずつ、晴らしていく。 喪いつつあった色が、取り戻されていく。 「ひかるちゃん」 そして、ひかるを呼びかける声。 真乃もまた立ち上がり、彼女を見つめていた。 「……真乃さん」 ひかるは、同じように真乃を見つめていた。 互いの視線が、ようやく一つに繋がった。 それから、ひかるは―――届かなかった手を、ゆっくりと伸ばし。 「ありがとうございます。私を、ずっと支えてくれて―――」 真乃の手を掴んで、感謝を伝えた。 届けられなかった想いを、届けた。 「―――私の、“お姉さん”でいてくれて」 自らの友人であり、家族でもある真乃に。 精一杯の想いを、確かに伝えた。 「私は……正直、まだ気持ちは晴れてません。 救えなかった人達がいて、許されないこともしました。 心の奥が痛いのは、今でも変わらない……」 それからぽつり、ぽつりとひかるは呟く。 自らがするべきことを気づいたとはいえ。 まだ心の傷が癒えた訳ではないし、そのことを隠したくもない。 これ以上は、誰かに迷惑を掛けたくなかった。 「でもッ!それで足踏みして、後悔を積み重ねたら……いつまでも輝けない! 同じように苦しんでる人達がすぐ側に居るのに、寄り添ってあげられない……それが一番悲しいことだって、分かったんです!」 その上で、彼女は宣言する。 進むべき道を選んだことを。 自らが成すべきを理解したことを。 懺悔するように。 そして、決意するように。 「だから、真乃さん―――」 「――――うん。分かってるよ、ひかるちゃん」 そんなひかるに、真乃は微笑みとともに言葉を返した。 「ひかるちゃんが、アサシンさんに……誰かに寄り添うなら。 私は、ひかるちゃんに寄り添いたい」 罪というものは、拭いがたい傷で。 例えこの世界がなくなっても、それを背負いながら生きていくことになる。 誰かが赦してくれたとしても、その人の心はずっと苛まれるかもしれない。 優しい人達は、そうして苦しんでいく―――ひかるちゃんも、アサシンさんも。 そして、“七草にちか”を支えられなかったプロデューサーも。 だからこそ。 優しい人が、誰かに寄り添うように。 優しい人へと、寄り添いたいと。 真乃は、そう祈った。 星は、一つ一つ輝きを放つように。 星々もまた、繋がりを持って輝くのだから。 ――――アイさん。 真乃の脳裏に、あるマスターの姿が浮かぶ。 同業者であり。同盟者であり。 やがて決別へと至った、とあるアイドル。 例え汚れても、傷付いても、私は立ち続ける。 そう宣言してみせた彼女のことを、追憶していた。 ――――アサシンさんが、言ってたように。 ――――あなたは、“強い人”だったんだと思います。 ――――自分で“いま”を考えて、自分の道をちゃんと見つめてた。 だから、これからは。 進む道は、きっと相容れないけれど。 私も―――自分の道を、真っ直ぐに見据えたい。 貴女みたいに、強くありたい。 そうすることで、優しい人達に寄り添いたい。 誰かが、前へと進みたいと願ったときに。 誰かが、自分の世界に色を求めたときに。 ほんの少しだけ手を伸ばして、小さな光を与える存在。 それが彼女にとっての、アイドルだったから。 星野アイが、生き抜いた果てにアイドルで在り続けることを望んだように。 櫻木真乃は、アイドルで在り続けるために生きることを誓った。 ――――あさひくん。 ――――いつか、あなたと向き合える日も来れば。 その果てに。 あの優しい少年に。 想いを背負って、戦い続けるあの子に。 再び、寄り添うことができれば―――。 真乃は胸の内で、小さな祈りと決意を抱いた。 そしてひかると真乃は、再びウィリアムと向き合う。 その瞳に、迷いはなかった。 双子の星の輝きが、そこに宿っていた。 そんな二人を見つめる、ウィリアムの瞳には。 霞みかけていた、微かな光が宿っていた。 自ら希望を取り戻した彼女達に、驚嘆の思いを抱いていた。 そして、暫しの沈黙の後。 彼もまた、口を開く。 「―――感謝致します。本当に、良かった」 僅かな負い目を感じるように。 それでも安心したように、彼は微笑んだ。 ◆◇◆◇ 世田谷へと急行していく最中、ウィリアムは摩美々と念話によって情報を共有していた。 真乃達との合流を果たしたこと。 にちか同士の会談が無事に終わり、共に道を見出したこと。 ウィリアムが手を結んだ“協力者”の一味が襲撃を受けたこと。 グラス・チルドレンが皮下医院の勢力と手を結んだ可能性が高いこと。 ライダーが聖杯戦争を打破する上での具体的なプランを述べたこと。 峰津院財閥が283を標的にする可能性が極めて高いこと。 プロデューサーから送られた、あの動画のこと。 そして―――じきに世田谷への“襲撃”が始まり、乱戦になる可能性があること。 今対処すべきことは、これから訪れるであろう敵襲の件だ。 ここで下手に外部へと散らばれば、逆に奇襲攻撃の餌食となる可能性がある。 だから今は拠点で待機するように。 自分達が到着してからマスター達の安全を確保し、急ぎ侵攻へと備える。 ウィリアムは摩美々にそう伝えた。 NPCのアイドル達は、恐らく既に犠牲になっている。 密告のメッセージについて言及し、ウィリアムはその可能性を打ち明けた。 これからこの聖杯戦争を生き抜けば、遅かれ早かれ気付かされることになる事柄だ。 故に隠し通したりなどしない。 どのみち襲撃の根拠となる密告の件に触れる上で、避けては通れないことだった。 そして、とあるメッセージが届いたことを、摩美々が伝えた。 傷心を抱く少女達に、更なる追い打ちをかける言葉だった。 『仲間思いの誰かさん。貴女の尽力のお陰で死人が増えました』 『無駄な努力をご苦労様でした』 それは、NPCである彼女達の死を突きつける宣告。 それは、283にとっての決定的な“敗北”を伝える通告。 それは、彼女達を守護してきた犯罪卿にとって。 その心の奥底を深く抉る、後悔という呪いを叩き付けた。 ―――守れなかったのは、自分だ。 ―――予測できなかったのは、自分だ。 ウィリアムは、自責の念を抱く。 “子供達”への脅迫が無意味になっていたことを、もっと早く悟るべきだった。 ああ、そうだ。彼女もまた―――“星奈ひかる”も、このような想いを抱いたのだろう。 罪や過ちが身体に伸し掛かり、鎖のように縛り続ける。 それでも彼女達は、寄り添うことを選んでくれた。 その輝きに、ウィリアムは安心を覚えた。 二人の輝きを守りたいと、確かな想いを抱いた。 その姿を見届けられたことで、少なからず苦悩が癒やされたとは言え。 彼女達を戦線へと巻き込む結果になったのは、変わらない。 そして、ひかるの心の傷が簡単には癒えないように。 ウィリアムの心に掛かる影も、容易くは消えず――――。 『……アサシンさん』 そんな矢先に。 摩美々が、ふいに声をかけた。 『こうなったのは自分のせいだ、って思ってませんか』 そして、単刀直入にそう問い掛ける。 ウィリアムは、思わず目を見開き。 『……はい。お恥ずかしいことながら』 『そういうの、やめてくださいね』 『真に……申し訳ありません』 僅かな沈黙の後に、そう打ち明けた。 やっぱり、と摩美々はぼやきつつ釘を差した。 『誰が悪いとか、誰が憎いとか、誰のせいだとか……多分、そういうのじゃない。 こんなのを送ってきた人は、許したくないけど。 でも……やっぱり、何か違うと思います』 それから、一呼吸の間を開けて。 ゆっくりと、言葉を紡ぎ出した。 『前に真乃と話した時に、思ったことがあるんです』 どうしても叶えたい願いがあって、そのために戦う。 そんな人達の思いに向き合う意志は忘れたくない。 真乃は以前、摩美々との電話でそう伝えていた。 『本当に許せないのは……願いのために誰かを殺す道を選んだ人達じゃないし。 もしかしたら、平気で酷いことをする人達ですらないかもしれない』 良い人。悪い人。あるいは、どっちでもない人。 様々な者達が、この聖杯戦争に招かれている。 願いを叶えるために、生きるために、皆戦いへと駆り出されている。 戦わなければ、この世界に消されるのみ。 聖杯が欲しくても、そうでなくとも。 マスターとサーヴァントという主従関係を結ばされた以上、勝ち抜くために奔らなければならない。 それが界聖杯における絶対的な掟だ。 そんなルールを、有無を言わさず押し付けられている。 願いを叶えるためだった。仕方がないことだった。 そんな謳い文句で戦う人達がいるかもしれない。 自分以外の他人なんて、障害物でしかない。 そうやって誰かを蹴落とせる人達だって、いるかもしれない。 だけど、違う。 摩美々は、思う。 例えそういった者達を受け入れられなかったとしても。 本当に憎まなければならないのは、彼らではない。 『“たった一組しか願いは叶えられませんし、生き残れません”。 “他は皆死んじゃうから、争ってください”――――そうやって皆を巻き込んだ界聖杯が、一番許せない』 “こんなこと”を強いているのは、この世界。 “命懸けの戦い”を無理やり始めたのは、この世界。 何でも願いが叶う奇跡の力。元の世界に生きて帰れる権利。 それらを餌にして、奪い合いを正当化しようと押し付けてくる張本人。 悪戯好きで、天邪鬼で、優しくて、誰よりも身内想いで。 そんな少女が、一番許せなかったもの。 それは―――界聖杯だった。 『勝ち取るとか、奪い合うとか、覚悟とか。 一組しか幸せにできないから、蹴落とし合わせるとか。 そうやってアイドル同士のオーディションみたいに、平気で命を競わせる。 聖杯に到れるかどうかで、命の価値を決めつける』 だから摩美々は、改めて憤る。 皆に痛ましい責任や覚悟を背負わせる、この世界に。 身勝手な理屈で可能性を語る、この舞台に。 『そんなの、奇跡の願望器なんかじゃない。 みんなを幸せにして、めでたくハッピーエンドで終わらせて……それが“奇跡”でしょ?』 本当の“奇跡”は、そんなものじゃない。 犠牲のもとに積み上げられる戦利品なんかじゃない。 優しい人達が追い求める“理想”こそが、奇跡だと。 摩美々は、そう信じていた。 『なんていうか……プロデューサーも、咲耶も、そうだったんです。 誰かに怒ったりするよりも、まず自分を追い詰めてた。 自分を許せなくて、苦しみを抱え込んで……』 そんな優しい誰かを支えられたら、どんなに良いか。 摩美々は、それを果たせなかった。 “七草にちか”を挫折させてしまった在りし日のプロデューサーの哀しみに、寄り添うことが出来なかった。 奇跡に縋るまでに追い詰められる―――そうなる前に、彼を支えることが出来なかった。 『“いい人”は、みんな……自分だけで責任を背負おうとするから』 それが、摩美々の哀しみであり。 彼女が背負ってきた、確かな想いだった。 みんな、一人で抱え込んで。一人で悩んで。 そうやって、押し潰されてしまう。 『正直……あのビデオメッセージ、ショックでした』 だからこそ、プロデューサーからの“決別の言葉”に打ちのめされた。 『最初見たときは、“何でこんなことになっちゃったんだろう”って思いました。 しばらく、気持ちも上手く纏まらなかった』 もう君達の元へ戻るつもりはない。 君達のプロデューサーは死んだものと思ってくれて構わない。 『彼等』と共に全ての役割を遂げて、全ての結末を見届ける。 摩美々を見つけてくれたあの人は、淡々とそう告げていた。 『だけど、それ以上に……悲しかったんです。 “ああ、プロデューサーは一人で全部背負う気なんだな”―――って』 ―――この道しか、俺は今まで自分が犯した間違いと折り合いがつけられない。 その一言で、摩美々が抱いたのは“悲しみ”だった。 裏切りを告げられた衝撃。 もう戻らないと伝えられた断絶。 だけど、それだけではない。 彼が何を思っているのか。 何故こんなことに至ってしまったのか。 かつてプロデューサーが経た一件を振り返って。 この聖杯戦争での経験や、対話を通じて。 摩美々は、半ば悟っていた。 『マスターは、彼から……何を見出しましたか?』 『夢で見た“生前のアサシンさん”と、同じものです』 ウィリアムの問いに、摩美々はそう断言した。 その一言と共に、互いが思い浮かべた心象風景は―――同じものだった。 『走馬灯みたいで曖昧だったけど……あのときのアサシンさんが何を思ってたのか、やっと分かったんです。 プロデューサーの気持ちが、少しでも分かったから』 そうして、摩美々は言葉を紡ぎ続ける。 プロデューサーが抱える痛みを、静かに噛み締めるように。 『ずっと一人で苦しんでるのに、独りぼっちのまま戦おうとしてる。 痛い、辛い、悲しいって。心が泣いてるのに、無理して全部引き受けようとしてる。 だけど、そういう風にしか生きられなかったから、前に進むしかない……』 摩美々の紡ぐ想いと共に。 “彼”の言葉が、ウィリアムの脳裏をよぎる。 生前にぶつけられた、あの言葉が。 『だから、誰かが手を掴んであげないといけないんです』 ―――まだ間に合う。 ―――この世で、取り返しのつかないことなんて! ―――ひとつもねえんだよ! 夢を通じて共有した、とある“探偵”の姿。 救われぬ道を進もうとした青年に手を伸ばした、一人の“親友/ヒーロー”の姿。 俺はお前を救いたい。 取り返しのつかないことなんてない。 だから、共に生きよう。 そう叫び続けた“彼”の姿が、“今”と重なった。 ウィリアムは、確信した。 摩美々は、確信していた。 最後に残された、決定的なピースを。 彼が抱えている痛みを、苦悩を。 それ故に背負っている、大きな十字架を。 ああ、同じだった―――ウィリアムは、全てを悟った。 自身を慕う少女達と決別し、たった一人で戦い抜こうとする青年の心を、確かに捉えた。 そして、そんな生き方を選ぶことの哀しみに、改めて向き合った。 ―――“誰が相手でも、こう言うと決めているんだよ。” ―――“俺がお前に協力すれば、全ては丸く収まるのだろうか。” そうだ。 善とは、正しさとは。 孤独に背負う犠牲の意志ではない。 心を繋ぎ止める、光り輝く道なのだ。 進むべき道を見つけたのはウィリアムだけではない。 罪を背負おうとする彼の手を掴む。 きっと、それが出来るのは。 “七草にちか”だけなのだろうと。 あの会談を経て、摩美々は既に理解していた。 そのことに一抹の寂しさを感じても、摩美々はもう受け入れている。 にちかにしか出来ないことがあるように。 自分には、自分の出来ることがある。 悲しんでる場合じゃない。苦しんでる場合でもない。 今やるべきことは、一歩前へと進み続けることなのだから。 プロデューサー。咲耶。 そして、ウィリアム。 摩美々にとって、みんな大切な人達で。 そんな人達が、この世界で傷付いていた。 『……だから、アサシンさん』 そう。 だからこそ、摩美々は告げる。 『“あなた一人のせい”だなんて絶対に考えないで』 自らを守ってくれた、“優しい人”へと。 摩美々は、寄り添いたかった。 ウィリアムは―――ただその言葉を、静かに聞き届けていた。 『私は、優しい人達に傷付いてほしくないです。 プロデューサーも、プロダクションの皆も……もう家族みたいなものですし』 そうして噛み締めるように、どこか照れ臭く思うように。 摩美々は言葉を紡ぎ、一呼吸を置いて。 『アサシンさんだって、私の家族ですから』 そして、そう伝えてきた。 その一言に、ウィリアムは目を再び丸くして。 少しばかり驚いたように、沈黙し―――そして。 『……ありがとうございます、摩美々さん』 ふっと微笑んで、礼を伝えた。 ひどく安心したように。 心の霧が晴れたように。 だからこそ、ウィリアムは確信する。 『貴女は、僕の……親愛なる友人です』 “もう一人友達を作りなさい”。 それは一日目の夕方に、摩美々から告げられた命令だった。 あの言葉は、支え会える仲間―――信頼できるサーヴァントとの交流を持ってほしいという祈りであり。 そういう意味では、未だに果たされていない事柄ではあったけれど。 それでも“友達を作ってほしい”という願いそのものは、知らず知らずのうちに果たされていた。 『どういたしまして、リアムさん』 寄り添い、支え合うのは“家族”だけではなく。 きっと“友達”もまた、そういうものなのだろう。 摩美々がいたから彼は自らの心を繋ぎ止められ、彼がいたから摩美々はこの世界に屈さなかった。 “掛け替えのない親友”とまでは行かなくとも。 “運命で結ばれた二人”には及ばなくとも。 摩美々とウィリアムは、間違いなく―――友達だった。 さあ―――往こう。 この世界で抱いた“理想”を胸に。 彼(ヒーロー)が守った未来に焦がれ。 犯罪卿は、夜を駆ける。 ◆◇◆◇ 「なあ、ランサー」 夜風に吹かれながら、男は問いかける。 窶れた眼差しで、星空を見つめながら。 彼は、虚ろな木偶の兵隊達を率いる。 「俺は、滑稽なのかな」 自嘲するような笑みを浮かべて、男はそう問いかけた。 彼の従者であるサーヴァント―――猗窩座は、目を閉じて。 ゆっくりと、口を開いた。 「ああ」 弱い奴が、嫌いだった。 常に間に合わず。 何も成し得ず。 信じるものを、喪っていく。 そんな者を、憎んでいた。 虫酸が走るほどに、忌まわしい。 「哀れで、惨めで、“役立たず”だ」 そう。弱い奴が、嫌いだ。 眼前の男も、そうだった。 守るべき者たち。 愛する者たち。 その死を、まざまざと見せつけられ。 そして今、あの幼き殺人者達の掌で踊らされている。 彼女達を守るために、彼女達の陣営を崩す。 皮肉で、惨い話だ。 「だからお前は、鬼になろうとする」 脳裏をよぎる、記憶。 遥か昔。霞の掛かった、朧気な情景。 口から血を流し、肌を青白く染めて、ぴくりとも動かず。 そんな愛しき者の“亡骸”を前に、泣き崩れる者がいた。 俺が守る。俺が助ける。 下らぬ戯言を吐き続けて、何一つ成し遂げられなかった。 「お前は、なれもしないのに―――」 脳裏をよぎる、記憶。 ほんの十数分の過去。 守るべき者の“亡骸”の前で、沈黙する男がいた。 淀んだ眼差しで、自らの罪を背負う男がいた。 彼女達を守る。あの娘を幸せにする。 そんな儚き理想を抱いて、修羅の道を歩んでいく。 ああ、お前も―――俺も。 だが、お前は違う。 お前は、人であることしか出来なかった。 何処まで行っても心を棄てられず。 それでも尚、戦うことを選んだ。 最早幾ばくの命も無く。 愛する者達と生きる未来も見えず。 今にも朽ち果てそうな身体を引き摺り。 それでもお前は、戦い続ける。 ひどく惨めで、滑稽で。 何ともまあ、つまらない姿だ。 だが、それ故に思う。 「―――――故に。此の俺が、修羅になろう」 お前が、空ろな勝利を求めるのは。 慈しき者達を、守るため。 ならば。なればこそ。 己は―――貴様の“鬼”となろう。 俺は、強さを求めていたのか。 俺は、武を極めることを望んでいたのか。 俺は、鬼神になりたかったのか。 違う―――それくらい、識っていた筈だった。 鬼の王の支配から解き放たれた時点で、真理を悟っていたはずだった。 俺は、取り返しが付かなかった。 弱さを憎み、己を憎み。 そうして全てを取り零し、化外へと成り果てた。 百余年もの間、望みも忘れ去り。 暴虐に明け暮れ、この手を業で穢し続けた。 だが、お前は違う―――お前は鬼になれなかった。 罪を背負い、罪に苛まれ、お前は人で在り続けた。 お前は、俺のような悪鬼ではない。 陽の下に立てず、虚ろに彷徨う影法師などではない。 人間であるお前には、未来がある。 故にお前は、光を求めてもいい。 愛する者達と共に歩む道を、選んでもいい。 鬼であることは、俺が引き受ける。 だから。 ―――――生きろ。 その為に、俺は戦う。 ◆ 鬼が駆ける。鬼が翔ぶ。 百鬼夜行の如く。逢魔の如く。 闇夜と共に、化外が跋扈する。 上弦の参、猗窩座。 今宵、正真正銘の修羅が此処に立つ。 ◆◇◆◇ “犯罪卿”は絶望の淵に立たされ、それでも慈しき者達の為に奮い立つ。 “星の少女”は苦悩と葛藤の果てに、己が果たすべき使命と向き合う。 “狛犬”はかつて取り零した祈りを一人の男に見出し、修羅の鬼となる。 そして、迫り来る“蝿の王”は、ただ全てを蹂躙すべく翔ぶ。 今宵、世田谷の地にて。 誰にも譲れぬ死闘が、幕を開ける。 その果てに―――誰が散り、誰が生きるのか。 【新宿区(世田谷区へと移動中)/二日目・未明】 【アサシン(ウィリアム・ジェームズ・モリアーティ)@憂国のモリアーティ】 [状態]:心痛、覚悟 [装備]:現代服(拠出金:マスターの自費)、ステッキ(仕込み杖) [道具]:ヘルズ・クーポン(少量)、Mとの会話録音記録、予備の携帯端末複数(災害跡地で入手) [所持金]:現代の東京を散策しても不自由しない程度(拠出金:田中家の財力)→限定スイーツ購入でやや浪費 [思考・状況]基本方針:聖杯の悪用をもくろむ主従を討伐しつつ、聖杯戦争を望まない主従が複数組残存している状況に持って行く。 0:マスターの元へ戻る。そして、彼女達を生かすために動く。 1:いずれはライダー(アッシュ)とも改めて情報交換を行う。 2:『彼(ヒーロー)』が残した現代という時代を守り、マスターを望む世界に生還させる。 3:"割れた子供達"、“皮下医院”、“峰津院財閥”。今は彼らを凌ぐべく立ち回る。 4:いざとなればマスターを信頼できるサーヴァントに預けて、手段を選ばない汚れ仕事に徹する―――だが、願わくばマスターの想いを尊重したい。 5:乱戦を乗り切ることが出来たならば、"もう一匹の蜘蛛(ジェームズ・モリアーティ)"の安否も確認したい。 [備考] ※ライダー(アシュレイ・ホライゾン)とコンタクトを取りました。以後、定期的に情報交換を試みます。 ※櫻木真乃およびアーチャー(星奈ひかる)から、本選一日目夜までの行動を聞き出しました。 【櫻木真乃@アイドルマスターシャイニーカラーズ】 [状態]:疲労(小)、精神的疲労(中)、深い悲しみ、強い決意 [令呪]:残り三画 [装備]:なし [道具]:予備の携帯端末 [所持金]:当面、生活できる程度の貯金はあり(アイドルとしての収入) [思考・状況]基本方針:どんなことがあっても、ひかるちゃんに胸を張っていられる私でいたい。 0:ひかるちゃんと共に戦う。 1:優しい人達に寄り添いたい。そのために強くありたい。 2:あさひくんとプロデューサーさんとも、いつかは向き合いたい。 3:アイさんたちがひかるちゃんや摩美々ちゃんを傷つけるつもりなら、絶対に戦う。 4:ひかるちゃんを助けるためなら、いざとなれば令呪を使う。 [備考] ※星野アイ、アヴェンジャー(デッドプール)と連絡先を交換しました。 ※プロデューサー、田中摩美々@アイドルマスターシャイニーカラーズと同じ世界から参戦しています。 【アーチャー(星奈ひかる)@スター☆トゥインクルプリキュア】 [状態]:ワンピースを着ている、精神的疲労(中)、悲しみと大きな決意 [装備]:スターカラーペン(おうし座、おひつじ座、うお座)&スターカラーペンダント@スター☆トゥインクルプリキュア [道具]:洗濯済の私服、破損した変装セット [所持金]:約3千円(真乃からのおこづかい) [思考・状況]基本方針:何があっても、真乃さんを守りたい。 0:真乃さんと共に戦う。 1:何かを背負って戦っている人達の力になりたい。 2:ライダーさんには感謝しているけど、真乃さんを傷つけさせない。 3:罪は背負う。でも、大切なのは罪に向き合うことだけじゃない。 【世田谷区 七草にちか(弓)のアパート/二日目・未明】 【田中摩美々@アイドルマスター シャイニーカラーズ】 [状態]:健康 [装備]:なし [道具]:白瀬咲耶の遺言(コピー) [所持金]:現代の東京を散財しても不自由しない程度(拠出金:田中家の財力) [思考・状況]基本方針:叶わないのなら、せめて、共犯者に。 0:ただ、プロデューサーに、生きていてほしい。 1:プロデューサーと改めて話がしたい。 2:アサシンさんの方針を支持する。 3:咲耶を殺した人達を許したくない。でも、本当に許せないのはこの世界。 [備考]プロデューサー@アイドルマスターシャイニーカラーズ と同じ世界から参戦しています 【世田谷区・住宅街/二日目・未明】 【プロデューサー@アイドルマスターシャイニーカラーズ】 [状態]:覚悟、魂への言葉による魂喪失 [令呪]:残りニ画 [装備]:なし [道具]:リンボの護符×10枚、連絡用のガラケー(グラス・チルドレンからの支給) [所持金]:そこそこ [思考・状況]基本方針:“七草にちか”だけのプロデューサーとして動く。……動かなくてはいけない。 0:283のサーヴァントを攻撃。犯罪卿は必ず仕留める。 1:にちか(騎)と話すのは彼女達の安全が確保されてからだ。もしも“七草にちか”なら、聖杯を獲ってにちかの幸せを願う。 2:283陣営を攻撃する中でグラス・チルドレン陣営も同様に消耗させ、最終的に両者を排除する。 3:白瀬咲耶が死んだことに悲しむ権利なんて、自分にはない。 4:『彼女』に対しては、躊躇はしない。 5:序盤は敵を作らず、集団形成ができたらベスト。生き残り、勝つ為の行動を取る。 6:神戸あさひは利用出来ると考える。いざとなれば、使う。 7:星野アイたちに関する情報も、早急に外部へ伝えたい。 [備考] ※チェス戎兵を中心に複数体のホーミーズを率いています。中には『覚醒者』であるグラス・チルドレンのメンバーや予選マスターの魂を使った純度の高い個体も混じっています。 ※今回の強襲計画を神戸あさひ達が認知しているのか、またはその場合協力の手筈を打っているのかは次のリレーにおまかせします。 【猗窩座@鬼滅の刃】 [状態]:令呪『今回の戦い、絶対に勝利を掴め』 [装備]:なし [道具]:携帯電話(犯罪卿より譲渡されたもの) [所持金]:なし [思考・状況] 基本方針:マスターを聖杯戦争に優勝させる。自分達の勝利は――――。 0:283のサーヴァントを強襲。 1:プロデューサーに従い、戦い続ける。 [共通備考] ※今回の時間軸は少なくとも106話「Cry Baby」以前を想定しています。 時系列順 Back 向月譚・弥終 Next 輝村照:イン・ザ・ウッズ 投下順 Back 蒼い彼岸花のひとひら Next チルドレンレコード ←Back Character name Next→ 096 プロジェクション・イントロデュース 田中摩美々 114 逆光(前編) 101 さまよう星と僕 アサシン(ウィリアム・ジェームズ・モリアーティ) 櫻木真乃 114 逆光(前編) アーチャー(星奈ひかる) 093 支え合う心! あさひの覚悟と確かな繋がり プロデューサー 117 prismatic Fate ランサー(猗窩座) 114 逆光(前編)
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佐々木幸男をお気に入りに追加 佐々木幸男のリンク #bf Amazon.co.jp ウィジェット 佐々木幸男の報道 【DDT】12.26代々木大会でササダンゴ&青木真也&堀田祐美子がチーム結成しフェロモンズとの対戦希望!ササダンゴ「好きな女ができました。堀田祐美子です…青木は僕にそう伝えた。」 | ガジェット通信 GetNews - ガジェット通信 小川淳也 幻の勝利のシナリオ 立憲民主党代表になれなかった男 - NHK NEWS WEB 地域に貢献 市政功労者を表彰 石巻市、東松島市 - 河北新報オンライン 佐々木幸男とは 佐々木幸男の73%は祝福で出来ています。佐々木幸男の16%は気の迷いで出来ています。佐々木幸男の11%は怨念で出来ています。 佐々木幸男@ウィキペディア 佐々木幸男 Amazon.co.jp ウィジェット 掲示板 名前(HN) カキコミ すべてのコメントを見る ページ先頭へ 佐々木幸男 このページについて このページは佐々木幸男のインターネット上の情報を集めたリンク集のようなものです。ブックマークしておけば、日々更新される佐々木幸男に関連する最新情報にアクセスすることができます。 情報収集はプログラムで行っているため、名前が同じであるが異なるカテゴリーの情報が掲載される場合があります。ご了承ください。 リンク先の内容を保証するものではありません。ご自身の責任でクリックしてください。
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道化師の恋 道化師と聞いてピエロ萌えが爆発して書いてしまった このスレに住まう神達に先に謝罪します文がおかしい上クソ長いですすいません 彼は幼い頃に顔を火傷して以来、 周りからは醜いからと蔑まれ、優しかった親にまで虐げられていた。 そして10才の頃に捨てられ、サーカスに拾われた後はピエロとして世界各地を回っている。 ピエロは顔を白く塗り、醜い素顔は誰にも見せず、人を信じられぬ醜い心も ひたすら隠してただサーカスという道化の世界の中で生きてきた。 ある国での公演の後、いつものように 手品で花を出し客に配っていた時だった。 会社員の風貌をした男がこちらに近づいて来た。 一人で鑑賞に着ていた彼が少し気になっていたのだが、 ピエロは同じように花を差し出す。 しかし、その顔と同じように白い手は彼の大きな手に掴まれた。 そして「この花は泣きそうな貴方にこそ相応しい」と言われ、 花はピエロの衣装の胸ポケットに差されてしまう。 そして、歯の浮くような台詞に戸惑うピエロに彼は 「いつか本当の笑顔を見せててください」 と子供のように無垢な笑顔を向けられる。 いきなりの告げられた言葉に戸惑うピエロであったが、 道化師は喋ってはならない。 だから、いつもの張り付いた笑顔のまま手を振り、 ピエロは裏方へと戻って行く。 最後に笑ったのはもう10年以上の前の事なのだ。 10年以上張り付いたままのこの偽物の笑顔はいくら望まれても消せないだろう。 あの彼の笑顔、初めて言われた言葉が頭に残っているが、もう会うことはないだろう。 そう思い、ピエロは次の日の公演の準備にかかった。 しかし、彼は次の日も現れた。そしてその次の日も。 一週間の公演全てに彼はあの眩い笑顔で現れ、ピエロに話しかけた。 そして迎えた最後の公演の日、彼は悲しそうに言った。 「幼い頃から、僕は女性を好きになれずにいました」 「それを誰にも言えず、自分は普通の男だといい聞かせて生きてきました」 「しかし、10年前に遠い国で貴方を一目見て、好きになってしまいました」 「悲しそうに笑う貴方を、笑顔にしてあげたいと思い、 幼いころに見た貴方にもう一度会う夢を持ち続けていました」 彼は続けた。ピエロはただ黙って聞いている。 「しかし、ある日家を継ぐために親から縁談の申し出がありました」 「育ての親の彼らを、裏切ることは出来ませんでした」 「僕はずっと自分を偽って生きてきました」 「そして、また偽りの家庭を作り、道化のまま生きる、そう思ってました」 「でも、貴方にもう一度会うという夢が、現実になってしまいました」 「もし、ずっと変わらない泣きそうなあなたを笑顔に出来たら」 「…僕は貴方を追ってこの街を去ると決めていました」 言い終えた後、彼は辛そうに笑った 「でも、結局私は…貴方に何も残せませんでした」 告白を黙って聞いていたピエロは、今までに感じたことのない気持でいた。 彼の存在が頭の中から離れない。彼は、ピエロに大きなものを与えてしまったのだ。 しかし、道化師は喋らない。夢の中でしか生きられない。 「分かっています、貴方が道化師なのも」 僕も同じです、彼は言った。 「道化師同士、無意味な恋なのかもしれませんね…すみません」 何も感じない、偽りの世界で生きる自分に意味をくれるのかも知れない ピエロは、この一週間、彼と関わるうちに変わってしまっていた。 しかし、自分の素顔を彼は知らない。心の内も過去も知らない。 心は全てを諦めていた。この場を去ろうとしていた。しかし、口が、10年来に自然に口から出ていた。 「・・・・私が、私が化物でもいいですか…この…この仮面の下に醜い素顔があっても」 何を言っているのだろう。 私は道化だ。そして今言った通り化物なのだ。 彼を信じてはいけない、でも彼を信じたい。 自分がわからくなっている。 彼はそんなピエロを申し訳なさそうに抱きしめた。 「無理を言いました。ごめんなさい。貴方に無理はしてほしくない。」 「僕は、もう一度、貴方に会いに行きます何年かかっても。」 「まず、僕が変わらないといけませんでした。もう、これ以上自分に嘘はつきません。」 「この街を、家を僕は捨てようと思います。」 名残惜しそうにピエロの体を話した彼は、去っていく。 去っていく彼を追いかけたいと思うが体が動かない。 泣いて呼び止めたいのにさっきまで出ていた声が出ない。 彼を信じてみたくなったのだろうか。それも分からない。 次の公演からは大陸を渡るんです、もう会うことはきっと無いんです。 そう伝えたいのに、体は石のように固まったままだ。 会えない可能性のほうが高いというのに もし、次に逢えたら彼を信じられるだろうか、そんな期待が頭から消えない。 ピエロも彼も、もう道化ではない。道化師の恋は終わった。 プラシーボ効果