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385: 加賀 :2022/01/06(木) 08 45 55 HOST softbank060070241111.bbtec.net 「さて、マリアナ沖海戦だったわね。ならその前に行ったトラック諸島沖海戦と松輸送から話すわ」 「フム……トラック諸島沖海戦は分かりますが松輸送もですか?」 「そうよ、松輸送が無ければマリアナも陥落していたからね」 瑞鶴はそう言って煙草に火を付ける。 「松輸送の発端とも言うべきが絶対国防圏の設定よ。絶対国防圏の設定はガダルカナル島の戦いが勃発して南太平洋海戦後に決められたわ」 「南太平洋海戦後にですか?」 「えぇ。その前の第三次ソロモン海戦で負傷した三川中将とソロモンの英雄になって軍令部入りした栗田中将らの主張でね。まぁ準備はしていたんけど……」 「けど?」 「……山本のアホが母艦飛行隊をラバウルに投入して『い号』作戦を強引に進めたから陸軍との協議が山本のアホが戦死してからになったのよ。あのアホがいらない事をしなければ作戦も早くに進められたのよ……」 瑞鶴が能面な表情をし青葉がアチャー(ノ∀`)という表情をする。 「まぁアホが戦死後の5月から古賀長官らが主体になって陸軍と協議したわ。それから松輸送が最初に実施されたのが43年の9月から。以後、マリアナ沖海戦が始まるまでに14回の輸送が行われたわ」 「確か被害は海防艦2隻だけの被害で……」 「海防艦と言いつつ駆潜艇2隻だけどね。ちなみに米潜水艦隊の被害は17隻ね」 「ニミッツ長官の頭を抱える様子が目に浮かびますねー」 「それが要因でリンガエンとタウイタウイで訓練していた機動部隊の状況が送られる事はなかったから一番嬉しい事よね」 「成る程」 「結果として松輸送は大成功。第31軍は四個師団、三個独立混成旅団、二個戦車連隊等々でマリアナ沖海戦を構える事になったわ。またマリアナ諸島に入植していた日本人も大半は本土に引き揚げる事が出来たしね」 「成る程。そしてサイパン島は要塞化され航空隊も……」 「えぇ。陸海軍合わせて450機近い戦闘機と彩雲で構成されていたわ」 そう言って瑞鶴は紙に編成を書いて青葉に渡した。 「フムフム……」 烈風120機 零戦53型150機 隼3型120機 疾風90機 彩雲60機 「確かこんくらいだったわね」 「豪勢ですねー」 「まぁそんなもんよ。そんで松輸送の話は終わり、そして……」 「そして?」 「トラック諸島沖海戦よ」 「あらま……」 「まぁトラック諸島沖海戦の前提としてYZ作戦なんだけど……」 「あぁ……チャーチルのハゲが更にハゲになった作戦ですねー。確か鹵獲したタンカーは約半年分の艦隊行動と同じく約半年分100オクタン価のガソリンが手に入ったと……」 「まぁその代償としての私なんだけどね」 短くなったタバコの最後を吸って灰皿にタバコを潰す。 386: 加賀 :2022/01/06(木) 08 46 29 HOST softbank060070241111.bbtec.net 「まぁ……空母の大半がいない事を知った米海軍がトラック諸島を空襲しようと攻めてきたけど、トラックにいた私が載せれるだけの機体を載せて出撃。米機動部隊からの攻撃隊はトラック上空で待ち構えていた烈風隊等に撃墜されまくったからね。そんで私が側面攻撃をして『イントレピッド』……『銀鶴』を鹵獲する要因を作ったからね……」 「その代わり飛行隊がまた壊滅したと……」 「まぁその生き残りは彼処で餅を食っているわよ」 「アチチ……」 瑞鶴の指差す先に三個目の餅を食べる加賀海軍大将がいた。 「しかも蒼鶴を鹵獲する要因の機関室を魚雷で破壊したのもあいつの分隊だからね」 「えぇ……( ´Д`)」 瑞鶴の言葉に呆れる青葉であった。 「まぁトラック諸島沖海戦で私の飛行隊は壊滅し再建する事になったわ。YZ作戦で練度を上げた601空も定数を満たしていたから丁度良かったわ」 「ですね」 「そして多聞丸……山口中将の第一機動艦隊に編成されたわ。確かあの時の空母編成が……」 そう言って瑞鶴は再び紙に記入して青葉に渡した。 第一機動艦隊 司令長官 山口多聞中将 参謀長 古村啓蔵少将 旗艦 『大鳳』 第一航空戦隊 『大鳳』(烈風×36 天山×27 彩雲×3) 『瑞鶴』(烈風×36 彗星×27 天山×27 彩雲×6) 『加賀』(烈風×27 彗星×27 天山×27 彩雲×6) 第二航空戦隊 『雲龍』(烈風×27 彗星×18 天山×18 彩雲×3) 『天城』(同上) 『葛城』(同上) 第三航空戦隊 『笠置』(零戦53型×27 彗星×18 天山×18 彩雲×3) 『阿蘇』(同上) 『生駒』(同上) 第五航空戦隊 『鞍馬』(同上) 『妙義』(同上) 第六航空戦隊 『蓬莱(サラトガ)』(烈風×27 彗星×18 天山×18 彩雲×6) 『蒼鶴(ホーネット)』(烈風×27 彗星×27 天山×27 彩雲×6) 第七航空戦隊 『隼鷹』(零戦53型×18 彗星×27 天山×18 彩雲×3) 『飛鷹』(同上) 『龍驤』(零戦53型×36) 烈風234機 彗星297機 天山306機 零戦53型207機 彩雲57機 「これが第一機動艦隊に配属されていた空母ね。前衛の第二艦隊には『瑞鳳』『龍鳳』『千歳』『千代田』が防空空母として零戦53型×27と彩雲×3ずつを搭載していたわ。それに四航戦の伊勢日向も合わせると零戦53型が全体で351機に彩雲69機になるわね。それと瑞雲改二が72機ね」 「成る程……銀鶴さんは修理から直っては……」 「直っていたとしてもこの時点での航空隊はいなかったんじゃないかしら。よくても50航戦の促成隊しかいなかったし……だから山本のアホがやった『い号』作戦のが悔やまれるのよ……」 瑞鶴は呪いそうな表情をしながらそう言うのである。 「……でもこの航空戦力があっても尚……」 「……艦攻隊はレイテ沖海戦で一回休みになる程の壊滅ね」 「米艦隊の弾幕能力ェ……」 387: 加賀 :2022/01/06(木) 08 49 58 HOST softbank060070241111.bbtec.net というわけで一話目でした。 第一機動艦隊ヤバくない? それを凌ぐヤバいのが米機動艦隊です(白目 紫電改二は? そろそろ烈風を主役にしてもええやん
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職人気質は遺伝か、努力の賜物か 初めての3on3は見事“私の妹達”が勝ち星を収めた。実にめでたいな。 そう言う訳で、近所の天丼屋にて本日は祝勝会だ……『豪華だな』だと? いや、仕方有るまい。私達四人だけならもっと適当な場所があるのだが、 今日は遠方の親戚も同席するのだ。しかもあろう事か、今日の対戦相手。 「というわけでだ……まずは公約通り、これをくれてやるぞ灯ッ!」 「うあうあ、痛い痛いですがッ。ギャアー、そここめかみーっ!?」 「灯さん……そのボイスチェンジャーはオフにしてほしいですの~」 そう。渋いバリトンで喚くこの幼女・碓氷灯が、一応私の従姉である。 人が怖いと言って声を変えたり大きなサングラスを常に装備する変人、 山奥に年中引っ込んで、こんな所になど来るはずもないと思っていた。 だが現に此奴めはアキバの神姫バトルランキングに、名を記している。 故に不可解は転じて不愉快となり、どうしてでも真実を知りたくなる! 「そもそもだ、何故貴様がここにいる。転居の話は聞いていないぞ」 「うん、してないですな。春休みでちょっと遊びに来ただけだから」 「……ミラさん、この人って何時もこうなのかな?どうみても……」 「言っちゃダメよ。当人はいつも気にしてるんだから、人間の目を」 「え、ええっと~……却ってこれは逆効果の様な気がしますけど?」 ロッテの溜息・クララの疑問・アルマの当惑、いずれも一々もっとも。 だが、病的な程に人を畏れる彼女は、人混みの中では必ずこうなのだ。 私は勿論彼女の親族も止める様に言うのだが、どうしようもない様だ。 この様な“病的な拘り”は、恥ずかしながら私の一族共通の物らしい。 「で、でもさ。晶ちゃんだって色々と変な所に拘ったりするですぞ~?」 「それを突かれると痛いな。お互い、治らん性癖であると言う事か……」 元を正せば、私の“職人気質”とてこういう所が発端なのかもしれぬ。 “灯の神姫”であるミラ・イリン・ティニアの三人は、その辺に理解が ある様で、ツッコミを入れる“我が妹達”を先程から制してばかりだ。 「で、“春休み”だと?まあ深くは追求せぬが、その様子だと……?」 「そうよ!先月の中程に登録して、どこまでいけるか挑戦したのよ!」 「私達が頑張る事で、少しでも“姉様”が外に出やすくなれるならね」 「でも、“姉様”の春休みも明日で終わりだから。今日がラストなの」 ミラ達、“灯の妹達”は口々に私達を挑発する。だが、姉への想いは どうやら本物らしい。全ては灯を案じての提案で、一応は奏功したが “有終の美”を阻止されたのは、そう言う意味で度し難いのだろう。 とは言うが、そんな理由があっても戦いの手を抜く事は……ないな。 「それは悪い事をしましたけど、わたし達に負ける気はないですのッ!」 「ロッテちゃん……そう、ですね。彼処で温情を見せるのは、失礼です」 「……うん。ティニアさん達だけじゃなくて、灯さんにも不義理だもん」 「え゛、わ……私にも?……あーあー、そう言われるとそうかも……?」 「そう言う事だ。灯を慕う神姫を侮辱する事は、貴様にも悪いからな!」 「む、むううう……でもラストで勝てないのはやっぱり悔しい~ッ!?」 灯とて、臆病ではあってもバカではない。彼女自身は理解出来た様だが、 彼女の“妹達”三人は、やっぱり最終戦に負けた事が大変悔しいらしい。 “私の妹達”は未だここまで敗北を引きずった事は無いので、新鮮だな。 「なら、また灯さんの都合がいい時にこちらへ来てくださいですの♪」 「え?何それ、再戦しよう……って事で良いの?ロッテ……ちゃん?」 「はいですの、イリンさん!わたし達も、また戦ってみたいですから」 「後悔しても知らないわよ貴女達。まだ姉様の神姫はいるんだから!」 「そうよ。セティ姉様に茶織(チャージィ)姉様に……後、穂積姉様ッ」 ……聴いた事もない名前がぞろぞろと出てくるがそれは後にして、だ。 再戦の約束はあっという間に神姫間で結ばれ、12の瞳が私達に向く。 当人達で決まってしまっては、私と灯が却下する事は……到底出来ぬ。 「そう言う訳でだ、また東京に出てこい。秘蔵の神姫を連れてなッ」 「い、いいの……ごめんなさいですなんでもないですコワイ顔!?」 不要に怯える灯に再び梅干しをかましつつ、そのサングラスを外して 首輪型ボイスチェンジャーのスイッチを落とす。うむ、つぶらな瞳に 鈴の鳴る様な声。勿体ないな……まあ、幼女では男も限られようが。 ──『お前もな』とか言った奴、この場で素揚げにしてやろうか!? と、ともかく!私は疑問だった事を口にする……すぐ後悔したがな。 「しかし、何故神姫オーナーになったのだ?しかも“姉様”とは……」 「あうあう……あー、それは晶ちゃんと“歩さん”に触発されてだね」 「──────もういい。そうか、それはきっと喜ぶだろうな。むッ」 私はすぐに灯の話を止める。『誰だ?』……まだ語るつもりはないッ! ……すまん、少々苦い過去なのでな。時がくれば、貴様らにも話そう。 ともあれ、そう言う人が居たのだ。それだけ覚えてくれれば構わない。 っと、頼んでいた天丼が三人前届いたか。そう、“彼女ら”の分もだ。 「って、貴方達神姫なのになんで天丼が食べられるのよーッ!?」 「……少々訳ありでな。彼女らは食事が出来るのだ、ティニアよ」 「ずーるーいー!?姉様、私達にも何か食べさせてくださいッ!」 「え、えう。ちょっくら無理ですな、どういう原理かさっぱりッ」 「ううぅ……姉様を責めるのは筋違いだし、あーもー悔しいッ!」 喚くミラ達“灯の妹達”を余所に、ロッテ達“私の妹達”は、一杯の 天丼を三人で分け、器用に食べ始めている。実に旨そうではないか! そうと決まれば、早速食べ始める事としよう。ミラ達には悪いがな。 「ほら、灯も食べるが良い。ここはアキバでもなかなか有名なのだぞ?」 「う、うん……いただきますなのだ。海老に目が無くて……あむっ、む」 「おいしいですの~……♪って、クララちゃんは食事が進まないですの」 「うん、脂っこい物はね……ボクは少しで良いよ、アルマお姉ちゃん?」 「あ~、ひどいですクララちゃん~!?で、でも……美味しいですッ!」 ──────それでも久しぶりの邂逅、本当に楽しかったよ? 次に進む/メインメニューへ戻る
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人間の本質とは、残酷さだ。 ───哲学する獣(ケダモノ) ライン=アインツヴァイド Profil 名前 ライン=アインツヴァイド/検体123番 性別 女 年齢 確か18 生年月日 知らないから取り敢えず1月23日 身長 176cm 体重 40kg /(義肢込み)92kg 所属 GIFT 髪色 錆色 肌色 白 アイタイプ 黒/赤い獣眼(右眼) 好きな物 人間、面白い人間、言葉を返してくれる人間 嫌いな物 チョコレート、獣 Aussehen ボサボサで手入れのされていないショートカットの髪、右眼が赤く左眼が黒いオッドアイは赤い右眼だけが獣のそれのような縦の瞳孔を持つ、加えて隈のある顔付き。 起伏の乏しい痩せた体にノースリーブの黒いタートルネックとホットパンツといった服装。 特筆すべきは2点、両手足は殆ど付け根辺りから機械製の黒い義肢にすげ変わっている事。鉄で出来た犬用の口輪で鼻口を覆っている事。 余談だが、両手足が義肢とは言っても、服の袖ギリギリの所までは人の部分が残っている。フェチズムだよフェチズム。 Fähigkeit 【人狼】 ワーウルフ、ライカンスロープ、ルーガルー。その他呼び名は色々あるが、彼女は人工交配で産まれた純然たる偽物の人狼。 そこに機械の手足と術式強化等を加えられた、愛玩用改造人間である。 元々の人狼としての贅力に加えて機械の力、更にそれを助ける魔術の力がプラスされ、こと戦闘力においては限りなく高い。ただしそれら全てをフルに使うと人間の部分がすぐに根を上げてしまう為、リミッターをかけている。 獣人隔世(オウガテイル) 自身の血液を魔力で固め、腰の辺りから巨大な錆色の右腕にして生やす。因みにホットパンツとタートルネックの間の素肌から出る、フェチズムだよフェチズム。 とんでも無く大きく、人一人を簡単に握る事が出来そうな腕は爪も鋭い、防御や移動補助等様々な事に汎用的に使える。 また、この巨腕は炎や水、魔力などの決まった形の無いものを掴み、投げ返す事が出来る。それはつまり、人だけが出来る手の使い方を顕著に表した物だ。 能力の核となっているのは半ば聖遺物と化した(聖遺物とは言ってない)人と獣の中間存在の化石。それを『とある臓器』に埋め込み能力の核としている。 【人工野生(エンキドゥ)】 四肢の代わりにある義肢と口輪の総称。 義肢の爪は鋭く、鋼鉄製の外殻と人工筋肉ファイバーによってとてつもない怪力とスピードを誇る。 口輪もまた、ただ口を覆うのではなく、犬のそれと同じ様に上下に開き対象を噛み砕く事が可能。その顎の力は凄まじい。 ただし、普段はセーブモードであるが、戦闘モードになるとそのまま突っ立ってるだけでも体力を消費する。彼女との戦闘においてはスタミナが重要なファクターとなるだろう。 慟哭(ロア) 開いた口輪を通して拡声した咆哮は、多大なる音圧と共に魔力に依る精神干渉作用を持つ。 野生を凝縮したようなそれは、大地を震わせ聞いた物の捕食者への原初の恐怖を呼び起こす。 それは即ち、野生に近い、獣に近い物にこそ効果を発揮する。 【???】 この人狼の言う言葉は須らく人の言葉を真似ただけの似非哲学、故にその発言にさしたる意味も内容も中身も無く、耳を貸すだけ無駄である。 だが、もしその言葉に耳を貸してしまえば引き返す事は許されない、一度聞き入れた言葉は思考となって発生し、その思考を放棄する事は即ち知性を棄てた獣と成ると同義。 Einstellung GIFT所属の人工能力者、その力は人工による物であり、戦闘においても寧ろ能力よりも機械義肢に頼っている節もあるが、能力者として在籍している。 とはいう物の、GIFTに於ける無能力者に対しての見下しの感情は殆ど無く、人間に対してなら能力者無能力者に関わらず『人を人たらしめる物とは残酷さである』という思考の元に観察対象となっている。 それはある意味自分への疑問であり、自虐であり、また嘲笑であり、その疑問への答えは無い。 そんな彼女がGIFTに居られるのはとある人物の故あっての事らしく、言って仕舞えば主人となる存在について来たが為。 渾沌とした思考は今の自分の姿が作られる中で、自分を保つ為の唯一の論理武装なのかもしれない。 世界観察記録 自分に似ている人間は世界に三人いるとは言うが、あそこまで似ている人間がいるとは……いや、目立つパーツが似ていたからそう思っただけかな?まあいい、とにかく彼女───武牙は面白い人間だった、無能力者故に狩る対象なのが勿体無く思えるくらいにね。今回は僕の敗走だが、敗北から学び、次に会った時には殺してやろう。 -- 武牙 (2015-05-27 20 28 30) 人とは素晴らしいよ、醜く、気味が悪く、残酷だ、だからこそ素晴らしい、何かが何かを愛する理由なんて、それで十分だろう?彼女は『愛』に焦がれている、愛するのに大それた理由なんていらないよ、人を知りたいから人を愛す、人の醜さを愛す、それでいいじゃないか。 -- 黒い獣、もしくは白い女 (2015-05-30 23 20 29) この星を滅ぼすなどと、大それた願いを掲げるのは悪く無い、いや実に面白いじゃあないか、どんな過去があればあれ程までに残酷に、機械のようになれるのか、いやあ人というのはだからこそ素晴らしく面白い。自らが住む星を滅ぼすとは即ち自身すらも滅ぼすという事だ、それが果たして単なる憎悪か絶望か、どちらにせよ彼女は楽しい奴だったよ。惜しむらくはもう少し打ち解けて欲しい事かな。 -- ルナ (2015-05-31 20 43 21) 風の国を襲撃する六罪王とやらを見学しに行ったよ、いやはや恐ろしいね六罪王とは、あれに立ち向かうなんて強い正義感の為せる技だね。僕はああいう風にはなれないな、命が可愛いんだ。だから彼らの様な人間には期待しているし、大好きさ。さてさて、リヒト君は彼処にいたのが六罪王2人と言っていたけど、それが本当なら六罪王二人掛かりで一体何をしたかったのか……何にせよ、僕達の壁にならない事を祈るけどね。 -- リヒト・マグダウェル (2015-06-07 21 04 03) くふ、ふふふ…リチャード・トラヴィス、か…君の名前は覚えたよ、嗚呼、まるで恋い焦がれる少女になったようだ。あれ程残酷で素晴らしい人間は早々いない、あそこ迄人間らしい人間は彼の他にいるだろうか?くふ、僕の総てを見せてあげられなかったのが残念だが仕方ない、お互い丸裸になって語り合える日が来る事を祈っているよ。 -- リチャード・トラヴィス (2015-06-10 23 37 41) 遭遇した人間: 内容:
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【名前】愛追抜身(あいおい ぬきみ) 【性別】女 【所属】科学 【能力】名目坑道(ノミナルトンネル) 【能力説明】レベル3 透過系能力。一定以上のエネルギーを持った物体を、壁などの厚みのある遮蔽物に透過させる能力。物体は体積が小さく、エネルギーが大きな物体で且つ遮蔽物が薄い程透過させやすく、銃弾程度ならば一般的な建築物程度の厚みの壁を容易に透過できる。 理論上では人体も壁に透過させる事が出来るようだが、演算が複雑すぎる事や能力強度の不足、透過に必要なエネルギーの不足等の問題から実際は不可能とされている。 【概要】 国鳥ヶ原学園高等部三学年に所属する女生徒、不登校児で学校にも殆ど顔を出す事は無い不良少女。毎日学校をサボっては喫茶店で一人時間を潰したり第六学区にあるカジノ施設で学生から巻き上げた金でパチンコして一喜一憂したりしている。 それなりに犯罪にも手を染めているようで、「一応、一通りはやった」との事だが真偽は不明。 こういった人物である為友人と言える人物もおらずほぼ孤立状態、唯一落第防止の担任と国鳥ヶ原の女子高生の二人と関わりを持っており、荒らされたアパートの掃除手伝いや御飯奢ってもらったりなど色々と世話になっている。 陣地形成と奇策を得意とし、風紀委員複数人と交戦した際には隠れ家の一つを舞台とし一時的ながらも優勢に立ち回った。 都市伝説「モナリザシールの目」の実行犯、自作のステッカーの内側にマイクロカメラを埋め込み第十五学区周辺を監視、そこで性犯罪を行った人物を後日報復しに行くという行為を繰り返していた。 理由は自分と親交があった国鳥ヶ原の女生徒が自分を見失って探す途中男性に襲われたという事を知り、その犯人探しとこれ以上似た様な犯罪が起きる事を防ぐ為、らしい。 実際「モナリザシールの目」という噂が学園都市に広まった時、第十五学区の事件件数はほんの数件レベルだが減少した。 しかし傷害事件である事に何ら変わりはないので、後日風紀委員と交戦後に確保、留置場送りにされた。 その際女教師と更生する約束をしており、出所後は少しずつ社会復帰を試みている。 都市伝説「モナリザシールの目」 学園都市第十五学区で起きているとされる怪事件、およびそれに付随した噂話。『第十五学区の普段人目に付かない様な路地裏にある日を境にふくよかな女性の顔がプリントされたシールが貼り付けられており、そのシールは罪を犯した者を見ていて、後日女のシールから罰が下される』といった内容で、そのふくよかな女性がモナ=リザに似ている事からモナリザシールと呼ばれる事となった。 その後『シールの眼が見開かれた』、『シールの内側から銃弾が飛んできた』『黒ずくめの男がシールの事について嗅ぎまわっている』だの根も葉もない情報が追加され、遂には模倣犯まで出る始末となった。 【特徴】 国鳥ヶ原の制服にハイソックス。後ろで髪を結わいた明るい茶髪。顔立ちは中性的。背は女性にしては高い。 【台詞】 「いやいや着いてくんなとは言わねぇけどよ、お前も大概物好きよな。何だって俺みたいなスレた女と関わろうとするかね? 避けるだろフツー?」 「『モナリザシールの目』だってよ、何処も彼処も噂話にご執心とか暇なんだな。けどそういった『世間の目』ってのが無きゃ俺の計画はパーだし、寧ろラッキー、噂話サマサマだな」 「罪滅ぼしなんて高尚なもんじゃない、これは俺の自己満足。救いようも無いクズな俺に笑いかけてくれた、たった一人の“大事な友達”すら救えなかった。そんなやり場の無い気持ちをぶつけられる、たった一つの冴えたやり方だよ」 【SS使用条件】 とくになし 【捕捉】透過系能力について 1) 演算に必要な要素、及び理論の関係上可能な事例と不可能な事例 ①物質自体の極々小さな波の性質を理解 ②そしてどの位置に何の障害がどの程度の厚みで存在するかをある程度理解 ③波動関数を障壁の反対側まで染み込ませる ④透過する際の必要なエネルギーを演算 これら全てを考慮・演算して初めて透過能力が行使できる。これらどの工程を省いても透過は出来ないものとする。 巨視的トンネル理論のマクロ間のトンネル現象(第二種巨視的量子現象に基づく)を利用している。 更に演算の過程で透過率を導き出す。 透過率は粒子のエネルギー(ボールのエネルギー)、ポテンシャル障壁(壁が持つエネルギー)、その他難しい定数で求められ、またその壁がマクロな場合(無限の壁、有限の壁)、粒子自体の密度や粒子の流れ密度(ある地点で単位時間に横切る粒子の数)も関わってくる。 関わってくる要素の関係上壁に関する演算よりも粒子に関する演算をより具体的に算出する必要がある。(無論ポテンシャル障壁を観測しないと透過は不可能) こういった理由から能動的な透過は可能だが、 Ex1)自分が壁に向かっていって透過する。 受動的な透過は不可能であると言える。 Ex2)自分に向かってくる銃弾を透過させる。 Ex1)の場合、粒子側である自分は予め演算しておく事で演算の大幅な短縮が可能だが、Ex2)の場合、向かってくる銃弾が粒子側であり、放たれた銃弾の密度や材質等を目視で算出しなければならない為演算能力と動体視力、脳の認識速度の関係上不可能に近い。 コレが出来る者はレベル5級(と仮定)。 2) 透過能力で透過出来る壁、出来ない壁の違いについて 機密性が高い、分厚い壁(=ポテンシャルが高い)を透過させるのにはより大きな運動エネルギーを変換する必要がある。 なので自分よりポテンシャルの高い物には透過できない。 また多層構造となっている壁(壁と壁の間に気体や液体の層を挟む等)や透過前にエネルギーを分散させる壁(窓の無いビル)には透過は出来ないものとする。後者の場合はその分散パターンを完全に把握してそれを演算に考慮すれば或いは可能かもしれないが、窓の無いビルの演算型・衝撃拡散性複合素材は学園都市製のスパコンですら誤差を埋められなかったとされる為、事実上透過は不可能であるとする。 3) マクロの波の有効範囲について マクロの波は実際の波と同様距離に比例して減衰していくものとする。具体的な有効範囲は実際は観測できない波長の波であり、算出不可である為明記しないものとする。 4) その他考えられる事象に対する透過能力の反応 a) 『大きな金塊が一杯に詰まった金庫の壁に何かを透過させる、ただし中に何がどれくらいあるか分からず且つ物体をその中に入れる程の容量が無い場合とする』 この場合透過しようと思った物体が「かべのなかにいる」状態になるか、大抵は透過出来ずに弾かれるかになる。透過した先に入り込めるだけの容量がある場合は中身を押しのける形で、物体が透過する前の速度を保ったまま中に入る。 b) 『物体の速度、エネルギーが演算とは大きく異なる場合』 この場合は演算型・衝撃拡散性複合素材の例と同様透過は不可能。
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先ず今作は試験的に固有名詞を使っている為ご了承を…… リレントレスポリス 石壁で囲まれた暗闇が支配する地下室。 鎖で繋がれた男が壁を背にうなだれていた。 ギィィと重い音と共に唯一の扉が開き、小柄だが貴族としての風格を備える少女が入って来た。 「考え直したかしら?私と一緒に運命を歩む事を……」 「誰が貴様の眷属になるか!」 少女は呆れたように息を吐き、言葉を続けた。 「いい?これは決定事項なの、逃れることの出来ない運命なのよ?」 「人の意思の尊重も出来ないヤツの言いなりになってたまるか。大体、俺には家族g」 「そんなことは訊いてないの。早く誓いなさい、レミリア・スカーレットの眷属になると……」 レミリアが胸倉を掴み、詰め寄ったその時、扉がドガンと勢いよく開き、一人の男がづかづかと入り込んだ。 その男は□□を見つけるとこう言った。 「お前が□□か?妖力による肉体汚染は無さそうだな。喜べ、外の世界に帰れるぞ。」 「誰だ貴様は!大体どこの分際で勝手n、カハァッ」 男は彼女が言い終わる前に鳩尾に拳を叩き込んだ。 拳は深くめり込み、レミリアは地に伏せ、うずくまる。 「人里で拉致、脅迫、その後10年間の監禁、強姦と無断で眷属化の未遂、この分だと名誉毀損も含まれるな。」 今の状況に置いてきぼりにされている□□が我に返ったようにその男に問いかけた。 「な、なぁ、あんたは何者なんだ?」 「俺か?俺はジョン・ドゥ、名無しの権兵衛だ。」 「…それで、裁定はどうなったんだ小野塚?」 「能力と人権の剥奪を一世紀さね。」 「随分と軽いものだな、もっと重くしても良いだろ。」 「人間に換算すれば懲役10年って所かねぇ~。そんなにカッカしなくても良いだろうに?」 今回の案件の報告書を届ける為に映姫の事務室まで向かう途中、彼は小町と話していた。 小町は皮肉を含んだニヤニヤ笑いで話していた。 「ふん、俺の部下を外の世界に戻してやるまでは徹底的に断罪してやる。」 「ほう、たしかお前さんとその部下は「遊郭」って所で捕らえられて、お前さんだけ四季様に身請けされたんだっけか?」 「刑事でなくとも考えりゃ彼処が風俗じゃなくて人身売買の取引場所であることは明白だ。 今回の案件はその組織に繋がらなかったがな。」 「しかし分からんもんだねぇ、なんで只の男一人に固執するんだか。」 「さあな。小野塚、お前だって何時かは起こり得る話だ。」 「残念、これでもアタイは酸いも甘いも苦いも辛いも経験したんだ、安っぽい惚れ方する程阿呆では無いさね。 っと、じゃあアタイは仕事に戻るとするよ、ごゆっくり。」 手をひらひら振りながら小町は去っていった。 「サボりの間違いだろうが……」 悪態をついた後事務室のをノックし、 「入れ。」 と返事が聞こえたのを確認し中に入る。 映姫は事務机で書類に目を通し、サインや判子を押している。皆がよく知る厳格な表情をしていた。 「ああ、ジョンですか。」 入って来たのが彼と分かると厳格な表情を解く。喜色を称えた表情にも見える。 「レミリアの件の報告書だ、次のターゲットと、組織の情報は掴んだのか?」 「いえ、組織は定期的に場所を変えている所までは分かっているのですが……、それより……」 そう言うなり映姫は彼に擦り寄った。腹部に埋めた顔からねっとりと熱い吐息がかかる。 「これで20人分の情報を教えました、10人毎の約束です。私を…、抱いて下さい……」 「情報を直ぐに渡して帰宅してからな。」 何も聞かなかったかのように彼は素っ気なく返事をする。 「そう言って一週間帰って来なかった時があったでしょう?お願い、もう我慢出来ないのです。ねぇ、良いでしょう、○○?」 その時、突然彼は彼女の胸倉を掴み、ドンと壁に押し付けた。 目線を合わせる為に彼女の体は宙に浮いていた。 「いいか、その売女みたいなツラで気安くその名前を呼ぶな!ここに居る間はずっとジョン・ドゥだ。 貴様が俺の事をどう思っているかは知らんが俺は貴様が大嫌いだ。 その貧相な体に、髪も、声も、顔も、見るだけで虫唾が走る! 俺の部下を救う為、外の世界に帰る為に仕方無く契ってやった事を忘れるな!……」 普通こういう風に凄まれれば身が竦むものだが、映姫は目を潤ませるだけだった。 お互いの顔が近い所為か寧ろ吐息が更に熱く、荒くなっていた。 「クソッ……」 彼女が頑固者である事を思い出し、近くにあったソファに押し倒し、乱暴に映姫の服を剥く。 映姫は若干の怯えと期待混じりの女の表情で彼に抱き付く。 彼は手っ取り早く情報を得る為に彼女を満足させる事に専念した。 クソが…、メンヘラだらけか此処は…… ◆幻想郷縁起妖怪録 名無しの権兵衛 ジョン・ドゥ :能力 妨害を受け付けない程度の能力 :種族 閻魔補佐 :危険度 高 :人間友好度 低 :主な活動場所 是非曲直庁 四季映姫・ヤマザナドゥの元に一人の部下が配属された。 是非曲直庁の制服にくたびれたトレンチコートと呼ばれる上着を羽織り、 不機嫌な表情と三白眼が特徴的である。 配属される前によく似た外来人の目撃情報がある為、元外来人ではないかと推察される。 また彼の名前である「ジョン・ドゥ」は名無しの権兵衛と同じ意味を持つ事から本名は別にあると思われる。 彼はある外来人を捜しているらしいが、それが彼との関連性に関しては不明。 ◆能力 簡単に言えば罠は不発に終わる、鍵は壊して開けるといった彼に向けられる妨害要素を全て無効化する能力である。 殆どの場合、この能力でお陰で事情聴取の際は必ず聞き出している。 ◆目撃報告例 居酒屋で容赦なく相手の指をへし折っていたよ、恐いねぇ……。 (匿名希望) 事情聴取という名の手荒い尋問である。 館を襲撃され、メイド長はおろか主まで殴り倒されました。 (門番) 最近どこかで家宅捜索が行われたようである。 私の××を返して!!!!!! (匿名希望) 彼が絡む案件は必ず全て外来人を外の世界に送還しているという共通点がある。 ◆対策 捜査以外で接触することは無いといって差し支えない。 前述の通り、彼にはいかなる妨害工作や嘘が通用しない為、尋問の対象にされたなら抵抗は一切してはならない。 逆らえば逆らう程痛い目を見る。
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夢みる現代音楽 〜武満徹没後10年〜 戦争を知らない世代の子供である私にとって、平和はあたりまえであり全ての前提である。ある程度のルールを破らない限り自由が保障されている。好きなテレビ番組を観、映画を観、音楽を聴く。政治や社会の都合で自分の権利が脅かされることはない。むしろ、権利という言葉に対して何ら欲するものはない。せめて、家族の機嫌がよくないときには話題に気をつけるくらいにしか、自分の主張というものが生きるうえで虐げられることはない。 「戦後60年」が過ぎ去り戦争の情報を与えられても、食べものがないのはつらいだろうなあ、とか、爆弾が降ってきたらたいへんだなあ、とか、実感を伴わない感想しかうかばない。みんなで協力して「敵」に立ち向かう状況は、現代の孤独に満ちあふれ生き方を見失った年間3万人の自殺者たちを救うかもしれないなどという無責任な想像や、終わらない日常を物理的に破壊して命をかけたサバイバルなモチベーションの昂揚、何かのために生きる覚悟を共有できる戦友を持つことができるのは、それなりに幸福ではないか、と、ないものねだりのような羨望を覚えてしまう。戦争には平和を、平和には戦争を、善悪の判断ではなくバランスとして、常に表裏一体で現存する世界の常識を感じざるを得ない。現に、世界中から戦争が消滅したことは一度もないし、日本の国防はアメリカと自衛隊が日々稼働しているから守られているわけである。冒頭に述べた「平和はあたりまえ」という感覚こそ、現実認識の乏しい愚かな感覚である。だがしかし、便利で豊かな社会に生きる我々にとって「現実」とはどこにあるのだろうか?そして、「豊かな社会」とは誰にとって豊かなのだろうか? あたりまえの社会。すでにここにあるシステム。それらの欺瞞は、日々くりかえされていく。だが、死者の亡霊は語りかけてくる。社会はあたりまえではない、と。その囁きには過去の夢が語られている。亡霊の夢。 現代音楽。この言葉に示されるサウンド(=音楽)は非日常的である。非日常ということは、つまり、日常には非現代音楽がそこかしこにあるということである。たとえば、コード進行が一定のルールに従っているポップス、ドラムや打ち込みのリズムが激しいロック、古い西洋のクラシック音楽。繁華街、スーパーマーケット、店舗、テレビやラジオを点ければほぼ24時間、音楽が其処彼処にあるのは「あたりまえ」である。移動をするさいにまで、ポータブルステレオ装置を駆使して耳にイヤホンをさしこんで、音楽に浸り続けるヒトたちも普通である。むしろ、楽器やアンプから発音する空気を振動させた音響を耳にするよりも、電気装置によってあらかじめプログラムされた録音を聴くことの方が日常的となっている。だが、私たちが生きている現代には、楽器の演奏技術を研鑽しているヒトもたくさんいる。新しい音楽であることを命題とした「現代音楽」を生産し続けるヒトもいる。もちろんポップスやロックの新曲も大量に量産され、これまでのCD販売による流布セールスから携帯電話のダウンロードを通じての課金制度という新たな流通の姿をあらわし始めている。 はなしはどこまでも逸れつづける。武満徹が亡くなってから10年、生前に彼と交際のあった演奏家や音楽学者たちはこぞって彼の真正なるエピソードやいかに偉大であったかということを披露してきた。「ノヴェンバー・ステップス」によるオーケストラと邦楽の競演、作曲家の大御所であったオリヴィエ・メシアンやジョン・ケージとの交流、実験工房をはじめ同世代の小沢征爾や大江健三郎などと並ぶ時代精神を代表する評価、そして未だに続く権威としての「武満作曲賞」。いまさらその高尚な芸術家に対して賛辞を送ったり反論を述べたりしたところで、何ら問題にはならない。追随することも反対することも、私たちの生活に影響を及ぼすことはない。選挙における投票率が50%をきっていたとしても日本は民主主義国家であるのと同様に、どこかに偉いヒトがいたからといって反応を示す必要はないのである。だが、歴史はここにあり、没後10周年の武満徹作品は各地で演奏され、現代作曲家の代名詞として海外では「日本」というパッケージにくるまれて受容されているのだから(もちろんどんな作曲家の場合でも国籍はついてまわるのだが)、知らないという姿勢はどうにも面白くない。おもしろいこと、それは武満徹が評価されていることではなく、彼自身の「亡き芸術家の夢」とでも言うようなこの文章に惹かれた。 あるインタビューの抜粋。 質問)芸術家は自分自身の生活を大事にするべきですか。 それともそのようなことは問題ではありませんか。 武満)自分の生き方に専念するのが正しいと思います。 一人の人間としてそうしなければなりません。 でなければ私の音楽は死んでしまいます。 このことは非常に難しい問題です。 私としては社会主義が好きです。 しかし多くの共産主義国において芸術は政治的なイデオロギーの下に コントロールされています。人々が単一化を強いられることは 私の最も嫌いなことです。※ 社会の根底をなす主義の否定。そう、現代音楽が発展してきた土壌には、主義による政治的な活動があった。60年代〜70年代の現代音楽運動と学生運動の同時的発展、山崎豊子「仮装集団」(1967、文芸春秋)の題材として取り上げられた労働者音楽同盟(通称、労音)の全国化と衰退、どちらも現行の社会に対する抵抗運動として活動しており、多くの人々をまきこんだ時代の流れとして歴史に刻まれている。三島由紀夫の割腹自殺のあと、親交の深かった黛敏郎は政治的な活動に積極的になり、氏がホストを務めていた「題名のない音楽会」のゲストとしてアメリカからジョン・ケージを招いた際には、ケージから政治的理由による出演を拒まれたこともあった(のちに和解して出演)。1980年に生まれた私にとって左翼も右翼も知識でしか理解できず、ましてや政治に関しても無知同然である。選挙権を持つ社会人としてはたいへん嘆かわしいことなのかもしれないが、「あたりまえの豊かさ」の時代に育てられた私にとって、たとえ政治による操作だとかイデオロギーだとしても、当時の熱狂的な音楽活動の活発な状況は夢物語のようにおもえてしまう。なぜならば、私の身の回りの音楽をとりまく状況はホットではないからである。国内外のコンクールを受賞した「素晴らしい」音楽家が「素晴らしい」演奏(作曲)をして「素晴らしい」とありがたがる聴衆。なんて「素晴らしい」演奏会!感動!そして、残るものはない。次の予定にむけて準備する日常。それが生きることなのかもしれない。されども、過去にホットな時代があったということは、再度リバイバルするかもしれない。もしかするとカタチをかえて、インターネット掲示板「2ちゃんねる」の「祭り」や、各個人のブログの「炎上」など、まったく関係ない場所ですでにホットなのかもしれないが。 民主主義の社会にたいして社会主義を好むという発言をした武満徹の「希望」に、政治的熱狂をわすれてしまった現代に生きる私の「希望」が共鳴する。現実はつねに変化の最中であることを忘れず、現代音楽がはらんでいた政治的姿勢、つまり積極的な社会参加を自覚して。 ※武満徹著作集1(2000/新潮社)より、P210抜粋
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宜野座伸元とアールが立つ街の道路に、光が指す。 光の正体は、とうとうやって来たタクシーのヘッドライトだった。 やって来たのは、それも二台。 両台のドアがバタリと開く。 宜野座は後方の、アールは前方の車に乗り込もうと足を挙げる。 そしてその直前、アールが口を開く。 「どちらまで向かうんですか?ギノさんは。」 「さて、何処でしょうね。」 気難しそうな顔を作った宜野座はそう返し、車に乗り込む。 アールもそれを確認し、自分の方の車に乗る。 ◆ ◆ ◆ 「うっ!」 街灯とヘッドライトだけが照らしてくれる夜の街。 其処でタクシーは急に真っ直ぐな公道で曲がりだした。 「どうしたんです?」 ドアにぶつけた頭をなでながらも神妙げな表情で宜野座が、運転手に問う。 「いや、道路にデコボコが有りまして……。」 「……成る程。」 横を見てみれば、辺りのビルが一部ボロボロになっている。 サーヴァント同士の戦いが、此処で繰り広げられていたのだろうか、と独り言ちながら、宜野座は頬杖をついて窓の景色を覗く。 ◆ ◆ ◆ 「此処で構いません。」 目的地の廃倉庫に到着した所で、宜野座は運転手に合図を掛ける。 そして、財布から千円札を一枚取り出し、運転席と助手席の間の所に手を伸ばし運転手に差し出す。 「ああ、ありがとうございます。しかし、此処は通りが少ないですが、大丈夫でしょうか?」 「いえいえ、少し捜査関係で……ん?」 ふと、前窓に止まっているタクシーが気になる。 アレはアールが乗っている方の車だ。 更に、開いたドアからはアールが出てきている、これは一体……? (何故彼が此処を…?) 可笑しい。 通報が有るにしても、仮にも日本警察の人間ではないアールに110番が届くはずもない。 況してや彼は協力者だ、そんなことは。 「お客さん、まだ降りないのですか?前にいるご友人さんはもう出ていらっしゃった頃ですけど。」 「わかりました、ありがとうございます、それではこれで。」 ドアが開き、宜野座は其処から出る。 それと同時にタクシーは、既に暗闇の向こうへと走り去っている前方の車両を追うように走り去っていく。 此処で宜野座は、横にあるレンガに身を隠し、アールを見つめる。 幸い、廃倉庫に向かって歩くアールは此方には気づいていない様だ。 スキを見計らって、後で此方も向かおう。 『マスター。』 不意に、隠れているであろうセイバーからの念話が届く。 『どうした。』 『此処らに霊圧を感じる、恐らくはサーヴァントの気配だろう。』 『何!?』 面倒だ。 ともなれば、恐らくは近くに自分やアール、そしてあの死体まみれであろう配倉庫の存在が他のサーヴァントに漏れているということだ。 ニュースで伝えられる前に、直ぐに此方の状況がバレているという事だ。 (だが、俺のセイバーの能力はバレていないはず……) 大丈夫だ。 余程、派手に動くことさえなければ…… そう考えながらも、宜野座はアールを見つめ、物陰でじっと様子を伺う。 ◆ ◆ ◆ 『サーヴァントがいるみたいだけど、大丈夫なの?』 『何、そのままにしておいてやれよ。』 アーチャーからの念話に軽口で答えたアールは、しかし神妙げに、廃倉庫の中を覗き込む。 中は血塗れ。 其処に有るのは無数の赤い肉片。 職業柄、戦闘沙汰になることがしょっちゅうあるアールだが、しかしこんな無残な光景は久々に見た感覚がする。 お得意の演技力で口は弧を描いているが、決して気分が良いわけではない。 ポケットからスマートフォンを取り出す。 警察に連絡をするためだ。 この組織については概ね把握はできている、後は警察と手を組んで捜査をさせてもらうだけだ。 ◆ ◆ ◆ 5分後。 夜が更け静まり返っていた此処らの廃倉庫に、喧しい騒音が鳴り響いた。 赤い光がサイレンとともに差し込み、此方にやって来る。 宜野座はその光が指す方向に目をやる。 見れば、やって来るのは数台のパトカー。 (アールが電話を掛けたのか……?) 思い返せば、アールは彼処で携帯電話を耳に当てていた。 まさか、110番通報をした、と言うことなのだろうか。 と考えている内に、パトカーの群れは宜野座の眼の前で停まり、ドアが立て続けに開く。 中からは複数の警官が姿を表していき、即座に現場に向かう。 そして、一人の女性刑事も、中から出てきた。 「どうした宜野座警部補、此処は捜査現場だぞ?」 宜野座はそれに一旦項垂れながらも、表情を立て直して頷く。 「分かっているよ、真戸。」 そう言って宜野座もまた、他の警官とともに現場へと走る。 捜査は、まだこれからだ。 【F-2/廃倉庫/1日目 夜(22 05)】 【宜野座伸元@PSYCHO-PASS】 [状態] 健康 [令呪]残り3画 [装備] ポリスリボルバー [道具] スマホ、ウォッチ@PSYCHO-PASS、警察手帳 [所持金] 普通 [思考・状況] 基本行動方針:元の世界に帰る。 1. 聖杯戦争に付いて調べる。 2. これから捜査を始める。 [備考] 寒気と緊張で酔いが醒めました。 【セイバー(朽木白哉)@BLEACH】 [状態] 健康、霊体化 [装備] 斬魄刀 [道具] [所持金] かなり裕福 [思考・状況] 基本行動方針: マスターを護る。 1. ルキアを止めたい。 2. マスターに居場所を教える。 [備考] バーサーカー(朽木ルキア)の姿を発見しました、生前に面識はありますが宝具まで知っているかは不明です。 F-2の廃倉庫からルキアの霊圧を感知しています。 アーチャー(北岡秀一)の霊圧を確認しました、ただし、姿は観ていません。 【アール(レナート・ソッチ)@ヨルムンガンド】 [状態] 少し酔っている(強い方) [令呪]残り3画 [装備] スマホ [道具] 銃 [所持金] 普通 [思考・状況] 基本行動方針:元の世界に帰る 1. 鬼兵隊について調べる。 2.警察の捜査に協力する。 [備考] 酒は強い方ではありますが一応酔っています。 【アーチャー(北岡秀一)@仮面ライダー龍騎】 [状態]健康 [装備] [道具] カードデッキ [所持金] かなり裕福 [思考・状況] 基本行動方針:第二の生命を手にする 1. 此奴は不味いでしょ 2. マスターは護る [備考] セイバー(朽木白哉)が近くにいることを感知しましたが、誰かは知りません。 投下順で読む 前ページ 次ページ 07.Case with drinknird htiw esaC 16.一期一会 時系列順で読む 前ページ 次ページ 07.Case with drinknird htiw esaC 16.一期一会 キャラ別で読む 前ページ 今回の登場人物 次ページ 07.Case with drinknird htiw esaC 宜野座伸元 25.二人の思惑 セイバー(朽木白哉) アール(レナート・ソッチ) アーチャー(北岡秀一)
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松島 検索対象:作家別テキストファイル(『青空文庫 全』2007.10) 検索文字:松[島嶋] ※「松島」「松嶋」を含む行頭を一部表示。 泉鏡花 灯明之巻 「いや、今朝は松島から。」 …… 泉鏡花 神鷺之巻 「おたずね、ごもっともです。——少し気取るようだけれど、ちょっと柄にない松島見物という不了簡《ふりょうけん》を起して……その帰り道なんです。——先祖の墓参りというと殊勝ですが、それなら、行きみちにすべき筈です。関屋ま …… 泉鏡花 醜婦を呵す 男子の、花を美とし、雪を美とし、月を美とし、杖を携へて、瓢《へう》を荷《にな》ひて、赤壁《せきへき》に賦《ふ》し、松島に吟ずるは、畢竟《ひつきやう》するに未《いま》だ美人を得ざるものか、或《あるひ》は恋に失望した …… 岩野泡鳴 神秘的半獣主義 僕がはじめて直觀といふことに思ひ付いた當座、松島の大仰寺へ登つて獨禪を試みたことがあるが、ずツと跡になつてから、人の云ふ坐禪はどう云ふ工合のものかを知りたいと思つて、江州の紅葉の名所、永源寺を訪ふ …… 岡本綺堂 半七捕物帳 33 旅絵師 旅絵師も自分のゆく先を話した。かの芭蕉の「奥の細道」をたどって高館《たかだち》の旧跡や松島塩釜の名所を見物しながら奥州諸国を遍歴したい宿願で、三日前のゆうぐれに江戸を発足《ほっそく》して、路草を食いな …… 岡本綺堂 綺堂むかし語り 仙台《せんだい》の名産のうちに五色筆《ごしきふで》というのがある。宮城野《みやぎの》の萩、末の松山《まつやま》の松、実方《さねかた》中将の墓に生《お》うる片葉の薄《すすき》、野田《のだ》の玉川《たまがわ》の …… 岡本綺堂 鰻に呪われた男 わたくしの家で平素から御懇意にしている、松島さんという家《うち》の息子さんが一年志願兵の少尉で出征しまして、負傷のために満洲の戦地から後送されて、ここの温泉で療養中でありましたので、わたくしの家からも誰か一 …… 尾崎紅葉 硯友社の沿革 (例)遊[#二]松島[#一]記 …… 織田作之助 わが町 他吉の俥のあとからよちよち随いて来る君枝の姿を見て、彼女はむかし松島の大火事で死なしたひとり娘の歳もやはりこれくらいであったと、新派劇めいた感涙を催し、盗んで逃げたい想いにかられるくらい、君枝がいとおしかった。夜 …… 折口信夫 稲むらの蔭にて にお……………………信州全体・羽前荘内・陸前松島附近 …… 北村透谷 三日幻境 狂ひに狂ひし頑癖も稍《やゝ》静まりて、茲年《ことし》人間生活の五合目の中阪にたゆたひつゝ、そゞろに旧事を追想し、帰心矢の如しと言ひたげなるこの幻境に再遊の心は、この春松島に遊びし時より衷裡《ちゆうり》を離れず。幸に …… 幸田露伴 突貫紀行 十九日、夜来の大雨ようよう勢衰《いきおいおとろ》えたるに、今日は待ちに待ちたる松島見んとて勇気も日頃にましぬ。いでやと毛布《ケット》深くかぶりて、えいさえいさと高城にさしかかれば早や海原《うなばら》も見ゆるに、ひた …… 小島烏水 天竜川 湯島大屈曲をしてからは、松島から中部《なかつぺ》まで、直下といつてもよかつた、東岸には中部の大村があつて、水楊は河原に、青々と茂つてゐる、裸体に炎天よけの絲楯《いとだて》を衣た人足が、筏を結んでゐる、白壁の土蔵が見え …… 小林多喜二 蟹工船 最初「実写」だった。宮城、松島、江ノ島、京都……が、ガタピシャガタピシャと写って行った。時々切れた。急に写真が二、三枚ダブって、目まいでもしたように入り乱れたかと思うと、瞬間消えて、パッと白い幕になった。 …… 坂口安吾 わが戦争に対処せる工夫の数々 私が新潟にゐる期間、もう秋になつてから、檀一雄がやつてきた。ちやうど大詔奉戴日《たいしようほうたいび》といふ禁酒の日だから仕方がない、こゝならいつでも酒があるといふ親類の病院で酒を強奪して、海へ …… 坂口安吾 明治開化 安吾捕物 その八 時計館の秘密 瑞巌寺の岸へつけ、一力は松島の漁師に後事を託し、正二郎を残して去った。そこで正二郎は首尾よくイタチ組から離れることができた。さッそく塩竈へとって返して、造り酒屋の聟におさまったのである。 …… 三遊亭円朝 菊模様皿山奇談 医「貴方は何ですかえ、松島見物にお出《いで》になった事がありますかえ」 …… 島崎藤村 北村透谷の短き一生 透谷君がよく引っ越して歩いた事は、已に私は話した事があるから、知っている読者もあるであろうと思うが、一時高輪の東禅寺の境内を借りて住んでいた事があって、彼処《そこ》で娘のふさ子さんが生れた。彼処に一人食客 …… 島崎藤村 夜明け前 02 第一部下 「さようでございます。」と降蔵は同国生まれの仲間の者だけを数えて見せた。「わたくし同様のものは、下諏訪《しもすわ》の宿から一人《ひとり》、佐久郡の無宿の雲助が一人、和田の宿から一人、松本から一人、それ …… 島崎藤村 家 1 (上巻) 東京で送った二年——殊《こと》にその間の冬休を三吉叔父と一緒に仙台で暮したことは、正太に取って忘れられなかった。東京から押掛けて行くと、丁度叔父は旅舎《やどや》の裏二階に下宿していて、相携えて人を訪ねたり、 …… 島崎藤村 山陰土産 無數の島々から成る眺めの好い場所といふと、人はよく松島あたりを比較に持ち出す。この比較は浦富には當てはまらない。松島はあの通り岸から離れた島々のおもしろさであるのに、私達がこゝに見つけるものはむしろ岸に倚り添ふ島 …… 島崎藤村 若菜集 松島|瑞巌寺《ずいがんじ》に遊び葡萄《ぶどう》 …… 島崎藤村 藤村詩抄 島崎藤村自選 松島瑞巖寺に遊びて …… 鈴木行三 菊模様皿山奇談 医「貴方は何ですかえ、松島見物にお出《いで》になった事がありますかえ」 …… 相馬愛蔵 私の小売商道 なお遠く旅行して見聞をひろめ、また大いに旅の興味を感得せしめる必要もあって、西は京大阪、東は仙台松島くらいまでは、多数がすでに見物済みとなっているが、これより遠くの旅行はちょっとむずかしいので、毎年春秋二回、古 …… 田沢稲舟 五大堂 はれて妹背となる日をば、むなしくこゝに松島の観月楼上、三階の端いと近く立いでゝ、糸子は四方をながめながら「ほんとにどうもいゝ景色ですね、これにまさるところは日本にはありますまいね」寝ころんで居た今宮もおきてきて、糸子 …… 田山花袋 道綱の母 かの女はたまさかに來るその手紙を唯一の戀人か何ぞのやうにして待つた。またその來た手紙は、何遍も何遍も出して來ては讀むので皺にされたり汚れたりするのであつたが、しかしそれを丁寧に疊んで、一つ一つ來た日をかきつけて、 …… 太宰治 惜別 それまで田舎の小さい城下町しか知らなかった私は、生れて初めて大都会らしいものを見て、それだけでも既に興奮していたのに、この全市にみなぎる異常の活況に接して、少しも勉強に手がつかず、毎日そわそわ仙台の街を歩きまわってばか …… 辻村もと子 早春箋 まづまづ安着いたしましたこと、ご安心あそばして下さいませ。二日二晩も汽車や船にのりづめでは、臟腑がごちやごちやになつてしまふだらうにと、お母さまはおつしやつて不安さうになさいましたけれど、おもひのほかなんともないも …… 徳冨健次郎 みみずのたはこと 茶の後、直ぐ川を渡って針葉樹林の生態《せいたい》を見に行く。濶《はば》五|間《けん》程の急流に、楢《なら》の大木が倒れて自然に橋をなして居る。幹を踏み、梢《こずえ》を踏み、終に枝を踏む軽業《かるわざ》、 …… 徳冨蘆花 みみずのたはこと 茶の後、直ぐ川を渡って針葉樹林の生態《せいたい》を見に行く。濶《はば》五|間《けん》程の急流に、楢《なら》の大木が倒れて自然に橋をなして居る。幹を踏み、梢《こずえ》を踏み、終に枝を踏む軽業《かるわざ》、幸 …… 徳冨蘆花 熊の足跡 明方にはまたぽつ/\降つて居たが、朝食を食ふと止むだ。小舟で釣に出かける。汽車の通ふセバツトの鐵橋の邊《あたり》に來ると、また一しきりざあと雨が來た。鐵橋の蔭に舟を寄せて雨宿りする間もなく、雨は最早過ぎて了うた。此 …… 富田木歩 小さな旅 姉も妹も帰ったので別れを告げて俥上の人となった。晩春の墨田川を眺めるために俥は堤へ上った。その辺にまだ妹が彳んでいるものと思って四顧したけれども見えない。夜のお稽古にでも行ってしまったのであろう。何となくもの淋しさ …… 直木三十五 死までを語る 水道が引けたり、電燈がついたりしたのも、その頃であるから、市内電車など無論ない。築港、松島間に一線あるきり——私の家は、大阪の東の端近く、学校は市内を離れて、西の方までが、田圃の中、二里以上三里近くもあろう …… 長塚節 旅の日記 其日は後に雨が止んだ。降るだけ降つた雨は地上の草木に濕ひを殘して心持よく晴れた。汽船は定刻に先つて港へついて靜かに煙を吐いて居る。昨日から待つて居た乘客はごや/\と渚に集つた。空は一杯に晴れて日がきら/\と射して居る …… 長塚節 鉛筆日抄 松島の村から東へ海について行く。此れは東名《とうな》の濱へ出るには一番近い道なので其代りには非常に難澁だといふことである。磯崎から海と離れて丘へ出た。丘をおりるとすぐに思ひ掛けぬ小さな入江の汀になつた。青田があつて蘆 …… 長塚節 長塚節句集 一九〇六(明治三十九)年 七月、「炭焼の娘」を「馬酔木」に発表。八〜九月、松島、山形、新潟、佐渡などを約四〇日間旅する。 …… 長塚節 長塚節歌集 2 中 三日、御嶽より松島村に下る途上 中里介山 大菩薩峠 29 年魚市の巻 「そうですね、なんにしても東北の北陬《ほくすう》ですから、さのみ名所、名物といってはござらん、まあ、陸前の松島まで参らなければ」 …… 中里介山 大菩薩峠 31 勿来の巻 駒井に暇を告げる時は、香取鹿島から、水郷にしばしの放浪を試み、数日にして帰るべきを約して出て来た身なのです。それが、鹿島の浦で興をそそられて、奥州松島を志し、「勿来」の関まで来てしまったことが、我なが …… 中里介山 大菩薩峠 32 弁信の巻 それというのは、小名浜までは白雲先生一人旅であったが、あれから道づれが出来たことになっている。一人旅としての目的は陸前の松島へ行くことに間違いなかったが、二人連れとなってから誘惑を蒙《こうむ》ったも …… 中里介山 大菩薩峠 33 不破の関の巻 磐城平《いわきだいら》方面から、海岸線を一直線に仙台領に着した七兵衛は、松島も、塩釜もさて置いて、まず目的地の石巻《いしのまき》の港へ、一足飛びに到着して見ました。 …… 中里介山 大菩薩峠 34 白雲の巻 福島の家老に杉妻栄翁という知人があって、これをたずねてみると、この人は藩の政治になかなか勢力ある一人ではあったが、またよく一芸一能を愛することを知るの人でしたから、白雲のために、その家がよい足がかりと …… 中里介山 大菩薩峠 37 恐山の巻 その一石は、いま現にほぼ証跡をつきとめ得たらしいところのマドロスと、兵部の娘を取押えんがためでありました。目下、松島湾の月ノ浦に碇泊しているところの駒井甚三郎創案建造の蒸気船、無名丸から脱走して来たと …… 中里介山 大菩薩峠 38 農奴の巻 それはさて置き、船はグングン松島湾をあとにして、早くも大海原へと乗り出してしまいました。いずれへ行く目的かはわからないにしても、その針路の向うところによって見ると、北を指している。 …… 中里介山 大菩薩峠 39 京の夢おう坂の夢の巻 読者の便宜のためというよりは、書く人の記憶の集中のために、まず地点を陸中の国、釜石の港に置きましょう。人間のことを語るには、まず地理を調べてかかるのが本格です。陸中の釜石の港に、今、駒井甚三郎 …… 中里介山 大菩薩峠 41 椰子林の巻 甲州の山で泣いた月、松島の浜の悩ましい月も思い出の月ではあるけれど、この豪壮で、そうして奥に限りのない広さから来る言いようのない淋しさに似た心地、それが何とも言えない。 …… 野口米次郎 能楽論 天には寂しく光る秋の月が懸つてゐる。彼等は『羨ましくも澄む月の出汐をいざや汲まうよ』と渚に近寄る。彼等は自分等の浅ましい姿が、月夜の水に映るのを見て恥ぢる。然し眼前の麗はしい景色から、彼等は喜ばしい慰藉を感ずるであ …… 林不忘 丹下左膳 01 乾雲坤竜の巻 「へえ。実はその、松島——へえ、松島見物でございます。松島やああ松島や松島や……」 …… 樋口一葉 琴の音 頃は神無月はつ霜この頃ぞ降りて、紅葉の上に照る月の、誰が砥《(と)》にかけて磨《(みが)》きいだしけん、老女が化粧《(けはひ)》のたとへは凄し、天下一面くもりなき影の、照らすらん大廈《(たいか)》も高楼も、破屋《わら …… 正岡子規 墨汁一滴 自庭妹郷至松島途中 南方熊楠 きのふけふの草花 さて松嶋の雲居は、盗人に取られた残つた金を渡しに立ちかへつたといふから、右の金源三の一条は塵添埃嚢鈔七巻二章にあると、出処までも教えおく。 …… 紫式部 源氏物語 12 須磨 松島のあまの苫屋《とまや》もいかならん須磨の浦人しほたるる頃《ころ》 ……} 紫式部 源氏物語 40 夕霧二 「馴《な》るる身を恨みんよりは松島のあまの衣にたちやかへまし …… 森鴎外 伊沢蘭軒 石田梧堂、名は道《だう》、字《あざな》は士道と註してある。秋田の人であらう。茶山集甲子の詩に「題文晁画山為石子道」の七律、丁丑の詩に「次梧堂見寄詩韻兼呈混外上人」の七絶、庚辰の詩に「題石子道蔵松島図」の七古がある。 …… 森鴎外 安井夫人 そのまたつぎの年に、仲平は麻布長坂《あざぶながさか》裏通りに移った。牛込から古家を持って来て建てさせたのである。それへ引き越すとすぐに仲平は松島まで観風旅行をした。浅葱織色木綿《あさぎおりいろもめん》の打裂羽織《ぶっ …… 山路愛山 明治文学史 吾人をして正直に曰《い》はしめば、世若し福沢君の説教をのみ聞きたらんには、此世に棲息するに足らざる者也。彼れの宗教は詮じ来れば処世の一術に過ぎず。印度《インド》の古先生が王位を棄て、妻子と絶ちて、樹下石上に露宿し …… 横光利一 琵琶湖 私の友人の永井龍男君は江戸つ子で三十近くまで東京から外へ出たこととてない人であるが、この人が初めて関西へ来て、奈良京都大阪と廻つたことがあつた。常人以上に勘のよく利く永井君のことなので、私は彼が帰つてから、関西の印象 …… 与謝野晶子 源氏物語 12 須磨 松島のあまの苫屋《とまや》もいかならん須磨の浦人しほたるる頃《ころ》 …… 与謝野晶子 源氏物語 40 夕霧二 「馴《な》るる身を恨みんよりは松島のあまの衣にたちやかへまし …… 検索結果:416件。 うち、人名・他の地名の分を除外。 公開:2011.3.29 八面玲瓏。 しだひろし/PoorBook G3'99 翻訳・朗読・転載は自由です。 (c) Copyright this work is public domain. カウンタ: - 名前 コメント
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女「ちょっと、そこのアンタ」 狂「………」 女「詩集買ってかない?」 狂「ししゅう?」 女「一冊五百円」 狂「………いやよ」 女「頼むよ、私を助けると思って」 狂「いや」 女「詩集は嫌い?似顔絵もあるよ」 狂「似顔絵も嫌」 女「アンタ可愛いから可愛く描くよ?一枚千円」 狂「だからいや」 女「じゃあ木彫のナナフシはどう?」 狂「いらない」 女「じゃあ、折り紙には興味ある?」 狂「おりがみ?」 女「そう………これ」 狂「…………」 女「去年まで私オージーに居たんだよねー。アンタ、オージーって分かる?そんで月末になって金が無くなってきた時にさ、ストリートに出て折り鶴作ってるとさ、みんな、珍しいから高く買ってくれるんだよ」 狂「…………」 女「アンタなら、いくらで買う?」 狂「ギンガミ……」 女「ん?」 狂「全部、銀紙なの?」 女「ああ、これ?私が銀が好きなだけよ。だって赤い鶴や青い鶴なんて吐気がするじゃない」 狂「銀の鶴……」 女「私の昔の友達がね、銀は月の色だから好きだって言っててさ」 狂「綺麗」 女「でしょ?でもね、月の光は人を狂わせるのよ。昔から」 狂「…………」 女「ルナティックって知ってる?狂人とかの意味なんだけど」 狂「………私のこと?」 女「自分が月みたいに美しいって?あはは」 狂「…………」 女「アンタ、家出少女?」 狂「……いえで?なんで?」 女「ぽいから。元気無いし。家出少女なら金せびってもしょうがないんだけど」 狂「…………」 女「よかったらメシ奢るけど付いてくる?」 狂「私は自分を見つめなおさないといけないんだって」 女「へえ」 狂「………えへへへ」 女「……まあ勝手にしなよ」 狂「………」 女「さて、腹も膨れたし寝るか」 狂「え、どこに?」 女「車の中」 狂「…………」 女「ついてくる?家出少女よ」 狂「……うん」 女「Zzz……」 狂「…………」 男「おはようさん」 友「……五時間目から来るな」 男「いいじゃない」 友「……ニュース見た?」 男「最近はテレビも見ない」 ゆうや「昨日の夜、また三人死んだ」 男「…………」 友「ウチの高校の女子だ」 男「……いや、なんかさ怖いよねぇ」 ゆうや「何が」 男「周りが異常だと、人が死んだくらいで動じなくなるよな」 友「……………」 男「美少女はどうした」 ゆうや「腹痛で休んでるらしい」 男「殺されなきゃいいけどな、はは」 友「……………」 男「……あれ?優はお休み?」 友「…………」 男「…………優は?」 女「昨日の晩さーアンタ何処か行ってたよねー」 狂「うん」 女「おしっこー?」 狂「そんなとこ」 女「オイオイやばいよアンタあそこの公園巷じゃエンジェル公園って呼ばれてんのよ注意しなよ彼処でどれだけの幼女が子宮破壊されたと思ってんのよ」 狂「早口で聞き取れないよ」 女「まあそんな嘘は置いといて、深夜にふらふらしないのよ」 狂「大丈夫だよ」 女「へぇ」 狂「ねぇ、ここどこ?」 女「遠い町よ」 狂「……………」 女「あーあ、全然売れなーい」 狂「いいじゃない別に」 女「なにがよ」 狂「私は、あなたの詩好きだよ」 女「五百円」 狂「持ってない」 女「だっけか」 狂「それに」 女「ん」 狂「あなたの事も、大好きだよ」 女「……」 狂「えへへ」 女「アンタ惚れっぽいんだね」 狂「そうかな」 女「……ルナティックねぇ…」 狂「………聞いて」 女「ん」 狂「私が好きだった人はみんな、もうこの世にいないの」 女「………」 狂「でも、好きだから、大好きだから、私の中では生き続けてるの。永遠の命を与えられるのよ。みんな結晶化するの。その最後の言葉や想いや表情一つ一つ………その瞬間、彼等は私だけのものになったよ」 女「…………」 狂「誰にも渡さない、絶対に」 女「…………」 狂「………えへへ……変かな」 女「……土地にはさ」 狂「?」 女「やっぱ特有の地場?みたいなもんがあるんだよね」 狂「じば?」 女「そう。それは他人を受け付けないの。先祖の霊は層になって、よそ者を排除する」 狂「…………」 女「アンタの生きてきた環境が特殊だって事は分かった。アンタ受け入れて貰えないかもね」 狂「…………」 女「なんちゃって。はは、気にしないの」 男「狂がいなくなった」 友「うん」 男「と同時に起きた連続殺人」 俺「…………」 男「関連性はあるか否か」 友「あるに決まってる」 俺「………お前ら見舞いに来たんじゃなかったのか」 友「黙れ元凶」 俺「……まだ決まったわけじゃないし」 男「状況が語っている」 俺「…………」 友「まあ俺たちはお前を責めたりはしない」 俺「………優」 男「それは言うな、もう」 友「つうかさ、俺達がやる必要は何処に」 男「ないかな」 友「ないのかよ」 俺「……まあ俺はやらなきゃいけない空気ですよねなんか」 男「そうだな」 友「うん」 俺「……情報収集のエキスパって誰だっけ」 男「めんどいから軍師とかでいいか」 友「めんどいな」 男「俺たちにできるのはこれだけ」 友「…………」 俺「無力だなぁ」 男「うん」 女「Zzz……」 狂「………」 狂「………寝れない」 狂「私はね、あなたを殺したいの。好きだから。でも………私はあなたの話、もう少し聞いてみるよ。でも苦しい」 ガラッ 狂「………寒い。えへへ、ごめんね。……あれ?私、今誰に謝ったのかな?……皆私の知らない風景。私の手は届かない。家が一番暖かい……。彼女は受け入れてくれないとかって言ったけど、あれって、単純に家が一番落ち着けるって意味なのかな」 変態「ねえ君~」 狂「!」 変態「そんな顔しないでよ、おじさんのと遊ぼう?」 狂「………!!」 ダッ! ガチャ! 変態「ああ~トイレー?おじさんも混ぜてよーねぇー」 ドンドン!ドンドン! 狂「……助けて……受け入れて……助けて」 女「あんた、こんな所に居たの。朝便?」 狂「………」 女「そんな人を殺したて満点みたいな目でみないでよね……」 狂「………」 女「震えてるけど、もしかして風邪?」 狂「………」 女「もう出発しようよ」 狂「ねぇ」 女「なあにー?運転中はドライバーに話しかけんなって教習所で教わんなかったー?って私教習所なんて行ったことないけど」 狂「何処に行くの?」 女「決まってんでしょ」 狂「…………」 女「もっと遠い町よ」
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