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前:二部/010 次:二部/012 028 研究所にはすぐついた。 「こんなとこにあったのか、見逃してたな。」 大きい反逆者は言う。 そう、ここは普段は気づけない。ない。いや、認識しようとしないといったほうが良いのだろう。別にここに特別な仕掛けがある訳じゃない。皆が無意識に認識しないのだ。 例えば、鹿のように 例えば、うさぎのように 例えば、ネズミのように 野生の本能とも言うべき力が生物には備わっている。それは、自分を守るために必要なものであり、それのおかげで生物は生き長らえる。そして、あまりに強大すぎる危険を目の前にしたとき、本能は訴える。 《こっちは駄目だ!》 《止めろ!》 それは、知覚できない本能ゆえ…それを避けていたことにすら気づけない……。 俺は、これでも結構な修羅場をくぐり抜けてきた。 ………だからこそわかる。 俺はここで死ぬ そこには、普段見てきた研究所よりも少し寂れた研究所があるだけ………それなのに………!!!!! 前に進む足は重く、頭に針を差し込まれたかのような頭痛がおき、肺に穴があいたように呼吸しづらい。 《生きたい》 俺は本能を殺した。 029 しばらく進むと少し開けた部屋に出た。 「何もないじゃん〜!」 小さい方がいう。 「実はこの下に……」 そう言いながら床の隙間に指をいれ隠し通路の戸を開ける。 「これはわかんないな」 声を無視して進む。 隠し通路を進んだ先には………《死》………大間があり………《死…ぬ》そこには一つの影がいて………《やだ》……… 「カナ…エ…?」 その声を聞いた影がこちらを向…い…《止めろ!!!!!!》……て 俺は…死んだ。 030 西の海の岸にを前にしてヴィクターは元気だった。 「まだ海水浴には早い時期だぞぅ! ここから本当に泳ぐかいカズマくん?」 「さっきまで倒れてたのに元気なやつだな。流石に泳ぐのは辛いから…」 ……感覚を集中させる。イメージを強く持つ。その妄想が現実であるかのように…。 次の瞬間、目の眩むようなまばゆい光に包まれて船が現れた。 「船をリアルブートさせた。これで濡れることはないだろう」 「おぉ、素晴らしい……アヒルさんボートだ」 確かにその船はアヒルの形をした船であった。 「手漕ぎボートにするか?俺の能力では有機物が作れないんだ。つまりモーターボート本体は作れても燃料が作れない。動力元としては足漕ぎのほうが良いと思ったのだが」 「だからってアヒルにしなくてもいいではないかっ?」 「それは…そっちのほうがイメージしやすかったんだ!」 「わかったわかったからさ」 ニヤニヤ顔をやめてほしいね。 そんな下らないことを話してるうち船に乗りそのうち向こう岸が見えてきた。 「思ったより近いんだな。最西端とか言ったから、結構時間がかかるのかと思っていたよ。」 俺達が船を漕いでいたのは、およそ一時間ほど、その距離は十数キロと言ったところか。 「ハハハ、まさか大洋越えとでも考えていたのか?それでよくこんなアヒルさんボートで渡ろうと思ったな‼」 何だか、最近ヴィクターによくからかわれている気がする。いや、最初からだったか。 「うっさいなぁ、別にいいだろうが‼」 あー、何だか感情的になってしまうな。まぁいいか、その方がコイツとは過ごしやすそうだし。 そうこうしている内に対岸が近づいてきた。 「そろそろ着くぞ。"双月の牢"、だったか。そこはすぐ近くなんだよな?」 さっきまでのやりとりのせいか、若干不機嫌そうにヴィクターに聞く。 「おぅ、その通りだっ。というかもう見えているぞ。そこに地面が隆起して岩山のようになってるところがあるだろう?こちらから入口は見えんが、そこに洞窟がある。その中だ」 確かにそこには岩山のようなのが見える。彼処にアトル達が居るのだろう。俺達を呼び戻すのだから、何かネオの事でわかったのか、若しくは今後の展望でも話し合うのか。まぁ、いずれにせよ、何か進展があって欲しいが。 「ヨシッ、着いたぞッ」 船底が柔らかな砂泥を擦って乗り上げるのを確かめて、ボートから降りる。勿論、船は回収する。リアルブートさせた物を常に維持させておくにも、体力を使ってしまうからだ。 「じゃぁ、行くかっ」 調子を整えるようにそう言って、俺達は歩き出した。 031 アトルから双月の牢に戻ってくるように連絡があった、とカズマから聞いた。 「一段落ついたから」だそうだ。"一段落"と言うのは、おそらくカナエの事だろう。ということは、ピュアライズは成功したということだろうか。ただ、戻って来いというのは、一体どういうことだ。何かあったのか、又は何かネオについて進展があったのだろうか。 双月の牢へと着実に足を進めて行く。あと十分と経たずに到着するだろう。 まぁ、会ったらわかるか、もうすぐだ。 あまり考えていても仕方がない、と割り切って俺は前方に見える洞窟の入口へと足を進めた。 「おい、ヴィクター、双月の牢ってどんなとこなんだ?名前の通り、牢屋か何かか?」 歩いていると、カズマが話しかけてきた。そういえば、カズマには双月の牢やアトル達の行動については、何も言ってなかったな。ピュアライズの件は、カナエと仲良くやっているように見えたから、あえて言わないようにしていたが。 「フッ。牢屋か、面白い事を言うな。しかし、残念ながらそれは不正解だッ。まぁ、無い頭に説明してもわからんだろうから、自分の目で確かめるんだな‼」 うむ、我ながらベストな返しだったと思う。カズマ君は、こちらを睨みつけているように見えるが、気にしないのだ。 「お前、何か俺のことからかってんのか?ちょっと怒っちゃいそうなんだけど、俺」 と少しキレ気味にカズマ君が言っている様だが、まぁ気に留めることはない。 「ハハハ、大丈夫だッ、カズマに負ける程、ヘッポコではないぞぉ」 カズマの顔がみるみる赤くなって行くのが分かるが、大丈夫だろう。そんな事をしている内に洞窟の入り口まで来た。 「着いたぞ、この中が待ち合わせの場所、双月の牢だッ」 さっきから一段と不機嫌そうになったカズマへそう告げる。 「ハハハ、まぁそうカリカリするな、さっきは、あんな風に言ったが、実際言葉では説明できるような場所ではないのだ、双月の牢は。」 少し意味を飲み込めない、というような表情をカズマは浮かべる。 暗い洞窟の中へドンドンと進んでいくと、その空間は現れた。 「ここが双月の牢だ。綺麗だろ?」 そこに広がる空間にカズマは驚きを隠せないようだった。まぁ、そうだろう。俺が初めて来た時も、そんな感じだった。人工的に造られた月とそれに対を成すように水面に映るもう一つの月、それらが放つ淡い光が映し出す幻想的な空間。とても、言葉では説明しきれない、そう言う場所なのだ、双月の牢は。 見惚れているのは後にして、辺りを見渡す。そして、すぐにおかしいことに気がついた。 「アトル達が、居ないぞッ‼」 「何言ってるんだ。そんな事は見ればわかる。きっとまだ来てないだけだろ。」 「そんなはずはないッ。よく考えてみろ。我々は最西端の地からこの極東の牢に来たのだ。順当に来たならば、我々よりも時間がかかるというのはありえないだろう。」 「…なら面倒事に巻き込まれたと見るべきか。」 ハヤトはあれでいて適当な性格だが、アトルは時間や約束といったことを重んじる奴だ。 アトルがついていながら、待ち合わせの地になかなか来ないということは無いだろう。何かしらのトラブルに巻き込まれたに違いない。 「探しに行くか?」 カズマが言う。 「…いや、ここで待つ。」 アトルとハヤトならば心配するまでもないだろう。 前:二部/010 次:二部/012
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Odyssea専門用語集 五十音順 あ行/か行/さ行/た行/な行/は行/ま行/や行/ら行/わ行 さ行 サウザンドリボルバー事件 詳細は「サウザンドリボルバー事件」を参照 彷徨える帝国軍人 彷徨える帝国軍人とは、魔界の伝説に語られる未来永劫呪われた放浪者。アハスエルスとも呼ばれていた。 魔王時代末期に広まった伝説によれば、逆十字架を担って公開処刑場におもむくアハスエルスがリタロウの家の前で休息を求めたとき、 リタロウは「無礼(なめ)げ」と答えて不死の聖詠を謳った。 それ以後アハスエルスは故郷と安息とを失い、不老不死になって地上を彷徨う運命を負わされたという。 しかしその後、リタロウの圧倒的なアウラに魅了されたのか、この身でOdysseaを全面的に支援するようになり、末端と邂逅。 己の能力『アハスエルスの呪力』を全て末端に授け、アハスエルスはこの世から乖離した。 この世を去る最後の言葉は「早く歩け」。この言葉はOdyssea史上最も美しい美談の一つとして今も尚、後世に語り継がれている。 サンカクサンカク マルマルの友達。義理堅い性格。 呼びづらい為、名前で呼ばれることはまず無い。 斬鯨刀 カイザーケイスケが使用する全長50メートル、重さ5000t超の超巨大な大太刀。 正式名称は「宍塊喰伴介(ししくればみともすけ)」。刀匠からは宍塊喰と呼ばれている。 そのあまりにも巨大な刀故、それは武器というよりも「50メートルほどの平たい岩盤」である。 その名の通り、シロナガスクジラすら縦からいとも簡単に真っ二つにすることが出来るあまりにも破天荒な刀である。 もちろん、カイザーケイスケ以外の者が扱うことはおろか、あのダムトですら持ち上げることも到底不可能であろう。 ざんこう 搾りカス。まごうことなき雑草である 残滓 ざんこうの社会構築に躍らされない正統派ラインハルト。 クラフトの傀儡(かいらい)は、残滓でしかないだろう! 斬道楽 末端を母体としている自律型殺戮兵器。 人工知能を有しているため人格があり、末端からはほとんど独立したプログラムである。 基本信念に武士の心得がインストールされており、 それを基礎(ベース)に戦闘スキルとして改変超視力師匠を軸にした動作プログラムが上書きされているので、 煽りと堅実さを兼ね備えた、非常に難のある性格に仕上がっている。 また、末端と同じく端末は別にあり、プログラムであるが故に容姿は常に変形可能。 大抵の場合は強靭な鬼の姿をしているか、奇襲時に備えて少女体型の物理ホログラムを起動している。 武器に『無銘大一座』という実体を持つ野太刀を佩用し、鍔部分には『Honey Bunny』という名前の付いた胴体の無い兎の剥製が取り付けられている。 兎の眼球からは常時血が流れ出ており、時折喋り出すことがあるが、これは主に少女体型時に敵を煽る為に使われる模様(特に意味はない)。 目標が刀の間合いに入るや否や四肢は此処彼処に撒布し、五臓六腑が堰を切り、血汐が迸る。 更にその血飛沫によって地に巴のようなカタチが刻まれる為、その業は『紅巴(べにどもえ)』という名で懼れられている。 「――熟達於斬奸。貪奸才不武能。 敵を屠り、此処に武断を呈すと乍申、兇刃に斃る事興醒め也」 引用『斬道楽断頭趣意帖』より Shiting(シッティング) 「糞をしています」の意。 社会構築 社会構築とは、カガによって提唱された理不尽さを徹底的に押し付けるマインドコントロールである。 社会構築によって構築されたものは洗脳され、構築者と同じ考えになってしまう。 主に、骸架教団幹部とその周囲の被洗脳者がこの理論を支持している。現在2500万人の人間が洗脳されている。 社会構築ボアズキョイシリーズ 毎週日曜朝7時半~8時で放送されている現代社会風刺を交えた痛快児童向けアニメである。現在、第4期が放送されている。 D-driver率いる悪の組織「C-drive」を主人公ボアズキョイが、敵陣地介入の際会得した必殺技「G-driving」で悪を退治する物語。 また、第8話「骸架教団、バンジージャンプする!?」にてイシバラが言った台詞「俺ら待つ意味なくね?」はネットスラングでは有名な格言である。 第1期(2001年~2002年):社会構築ボアズキョイ 第2期(2003年~2004年):社会構築ボアズキョイ2 第3期(2006年~2007年):社会構築ボアズキョイ~非想非非想天の息子~ 第4期(20012年~):ジ・アブソーブ・ボアズキョイ 銃剣の夜 詳細は「銃剣の夜」を参照 晶剣「裏切りの騎士公(ランスロット)」、運命剣「磔刑聖女(ジャンヌ・ダルク)」 二つは対の長剣。 見た目は晶剣の方は柄までは普通の剣と変わらない。刃のところが紅結晶で出来ている。 運命剣はサーベルの形をしている。柄に女性の横顔が彫られている。刃は蒼妖精銀(ルナ・ミスリル)製。蒼色の刃。 柄を合わせると両手剣「罪と罰(ラスト・ラスト)」になる。 この二つの剣は、オンドルーンの特製。 ラスト・ラストはネルヴァが自分の戦闘能力に合わせて追加したオリジナル機能。 ランスロットは「悪徳」 ジャンヌ・ダルクは「悲劇」を象徴している。 ランスロットは憎悪の焔と激情の嵐を、ジャンヌ・ダルクは嘆きの氷河と裁きの雷を呼ぶ。 蝕刀:禍つ夜蟲喰む常闇桜(しょくとう:イスカリオルテ) ネルヴァの振るう、大太刀。刀身は蠱毒に染めた藤色の鋒両刃造り(きっさきもろはづくり。刀身の半分迄が両刃で出来ている。) で造られた為、突きにも使える。また柄尻から持ち手に巻き付く様に、百足を模した鎖が着いている。 この鎖は主に刀を起点とした移動用のアンカーに使うが、鎖鎌の様に相手を拘束する目的にも使える。 刀としても非常に優秀だが、刀の『能力』も目を見張る物がある。その能力とは『切断した事象を蝕む』事である。 この刀で切られると、毒が回るのはもちろん、切られた箇所はネルヴァの支配する亜空間に強制接続させらせ、 その異界から出てきた『蟲』に『喰(は)』まれる。つまり、切られた箇所から『蟲』が出現する。 『蟲』は傷口を拡げながら切られた相手を捕食し、成長してゆく。 『蟲』が一定の大きさに達すると、幼体を傷口に植えながら、ネルヴァが敵と「認識」した物を手当たり次第に攻撃してゆく。 刀の一振りから『蟲』はネズミ算式に増える為、30分もあれば、軍隊一個分の数になる。 『蟲』の戦闘スペックは下手な魔神よりも強い為、実質的な戦力は魔神の軍隊をも上回る。 余りにも凶悪なこの武器は人魔問わず蝕み、蹂躙してゆく。 まるで虫が餌を食むが如く無慈悲に、じわじわと染み入る毒の如く残酷に、そしてそれらの築く骸の上に裂き咲く桜の如く、艶やかに、淫靡に咲く刀。 其れ故その刀はこう呼ばれた。 ―「蝕刀:禍つ夜蟲喰む常闇桜」と― ジョシュ タケゾウと同じく、概念である。 最適(かる)い。最速(はや)い。最強(つよ)い。 —————報 復—————— 「これ、何だと思う?」 —————手榴弾—————— 引用『ジョシュ漢語録』より しらどり こんなやり取りがある。 「しらどり」 「そうだな」 これを聞けば、あの男を思い出さずには居られないだろう。 精心の武装・狂 ダムトが重要な戦いをするときに発動させる身体強化の技。 これを使用させることにより自身の戦闘能力を向上させ鋼の肉体を持つことができる。 心の力が強いほどこの技での向上力が上昇する。 しかし、発動中は自身の能力、心、意識を9割以上失うことになる。 とある敵軍の兵士がこの技の使用を試みたが使用者は狂化に耐えられず心と自我を失いただの魔物になってしまった。 発動中の使用者の失ったものは不可侵の異界へ送られ構成されているているといわれている。無論、ダムトも例外ではない。 世界最古のゼロ使 恐らくロビンフッドであろう。 詳しく述べると、街を亭主に代わって収めているマリアンが、無法者(アウト・ロー)のロビンフッドに警戒して、小屋の藁が敷かれた場所に寝かせるシーンであろう。 要約すれば、藁の上に男を寝かせることであろう。 そもそも、ゼロ使の時代設定が7〜800年前の中世に準えたもので、現実世界として考えると世界最古と言ってもロビンフッド自体は曰くゼロ使の時代と全く同じ。 石庭 対象が非常に厳格な趣があり、娯楽要素が一切排除され、内容に装飾も無く初志貫徹でいるモノに対して使う。「龍安寺の石庭」とも言う。
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『人類は無限に広がる暗黒の海に浮かぶ《無知》の孤島に生きている』 H・P・ラヴクラフト 第97管理外世界 A.D.1890.08.20 ~ 1937.3.15 小説家・詩人 次元世界は広大である。 それは誰もが知り得ている事象であり、事実であった。 その果てを知る者は居らず、また存在したとしてもそれは果てしのない過去、或いは未来に於ける人物である事は間違いない。 嘗ては次元の海を席巻し、あらゆる事象を手の内にしたとまで謳われる文明『アルハザード』であっても、その果てを知りえる事は不可能であったろう。 そして宇宙もまた広大である。 それもまた誰もが知る事象であり、疑い様のない事実であった。 その果てを知る者は居らず、また存在したとしてもそれはもはや人類ではなく、全く異なる概念の下に完成された絶対的存在である事は間違いない。 相対性理論という名の拘束を破る事の叶わぬ現状、秒速300,000kmの壁を打ち崩す事もできず、人はごく狭い空間へと隔離されている。 しかし、人は願った。 遠くへ往きたい。 遠くへ、もっと遠くへ。 更に遠く、更に更に遠く。 幾多の世界を過ぎ、数多の星を追い越し、次元の海を、光の瞬きを、恒星の束縛さえ振り切って、遥か遥か無量大数の彼方まで。 越えてはならぬ壁、越えられるべき定めにない壁にさえ『穴』を開けて。 そう――― ―――『事象の地平線』すら乗り越えて。 ■ ■ ■ 「スカリエッティの逃亡先が判明した」 突然の集合、そして部隊長より発せられた言葉に、古代遺失物管理部・機動六課の面々は各々の身体に緊張を走らせる。 ジェイル・スカリエッティ、広域指名手配次元犯罪者。 レリックの強奪、ガジェット及び戦闘機人による破壊活動、違法生体研究。 ありとあらゆる手段を用い、機動六課を苦しめた張本人。 六課設立の主な要因となった人物であり、その構成員とは因縁浅からぬ男。 そして、あと一歩にまで六課を、管理局を追い詰めながら、全てを打ち捨てて何処かへと消えた人物。 詳しい事は何も分からない。 理由を知る者も居ない。 ただ忽然と、しかし周到に、彼は消えてしまったのだ。 No.2を除く1から4までの戦闘機人だけを引き連れて、宛ら霞の様に。 彼は消える直前に、全ての情報を民間に流した。 最早、隠す必要すらないと言わんばかりに。 自身の出生に関する経緯、自らの目的、地上本部総司令レジアス・ゲイズ中将との裏取引、時空管理局最高評議会の陰謀、評議会の切り札『聖王のゆりかご』の存在。 ミッドチルダを中心に始まった情報の氾濫は瞬く間に管理世界を覆い尽くし、事実上の管理局体制の崩壊寸前にまで至ったのだ。 結局、最高評議会の失権と逮捕、レジアス・ゲイズ中将の更迭、聖王のゆりかご発掘、研究所跡の捜索によるレリックの回収、No.2及び5以降の全ての戦闘機人、そしてゼスト・グランガイツ及びルーテシア・アルピーノ、融合騎アギトの保護を以って、ジェイル・スカリエッティ事件は収束したかに思われた。 スカリエッティの消息不明、その一点を除いては。 しかし今、機動六課指揮官、八神 はやて二等陸佐が言い放った言葉通りならば、遂にその足取りが掴めたというのだ。 試験運用期間を5ヶ月以上過ぎた今、尚この部隊が存続しているのは偏にスカリエッティ逮捕の為である。 居場所がはっきりしたというのならば、こちらから出向いて拘束するまで。 誰もがそう思考しつつ、しかし続くはやての言葉に顔色を変える。 「奴が逃げ込んだんは・・・第152観測指定世界や」 第152観測指定世界。 その名称を耳にするや否や、六課隊員達の間にどよめきが沸き起こる。 管理局観測指定世界番号152。 その世界は次元間航行技術を持ちながら管理世界への加盟を果たしてはいない、希有な次元文明であった。 第97管理外世界に酷似した質量兵器技術体系、そして高度に発達した科学技術を有していたが為に、管理局による質量兵器廃絶要求をにべもなく撥ね退けたのだ。 管理局内部としては実力行使も辞さないとの意見も多かったのだが、次元航行技術と大量の戦略級核兵器を有している事もあり、慎重に慎重を来し観測指定世界に分類するに留め状況は諜報戦へと突入。 以降40年以上に亘り観測を継続してきたのだが、彼等は壮絶な内戦状態にあり、それが要因となって管理局との武力衝突が発生するには至らず、危うい均衡を保っていたのだった。 しかし今年になり、遂に最大勢力である統合政府が首都に対する戦略核攻撃により事実上崩壊。 暫定政権が核攻撃を実行した軍事国家を武力統治した後、全世界の実権を握るに当たって、被害の大きさを考慮し管理局への恭順及び質量兵器の段階的破棄を宣言するに至る。 40数年振りに当該世界を訪れた管理局次元航行部隊は、ドックを埋め尽くす次元航行艦の数に唖然としたものだ。 実に70隻を超える次元航行艦が、その巨大な艦体をドックに横たえていたのだから。 第152観測指定世界側から提供された情報により艦内を捜索すれば、それら各々の艦艇全てに搭載された20発超の核弾頭が発見される。 その事実も衝撃的ではあったが、何より管理局を戦慄させたのは90を超える空きドックの存在と、撃沈記録の存在しない60隻ほどの次元航行艦の存在であった。 その情報は管理世界に、JS事件に勝るとも劣らぬ衝撃を齎す事となる。 単艦につき20発超もの核弾頭を搭載した次元航行艦が最低でも60隻、最悪90隻前後、最終的な航行計画すら抹消された状態で消息不明となっている。 その情報に誰もが恐怖し疑心暗鬼となり、JS事件の余波も収まらぬ内に発信されたが為に管理局が情報封鎖に失敗した事実も相俟って、唯でさえ危うい各世界間の軍事バランスは崩壊寸前にまで追いやられたのだ。 現状でこそ大規模な武力衝突は発生していないが、最早その均衡が崩れ去るのも時間の問題である。 一刻も早く消息不明となった艦艇を発見・拿捕すべく、本局次元航行部隊は行動を開始。 しかし如何なる手段を以って足跡を絶っているのか、艦艇群が発見される様子は一向にない。 焦燥だけが募る中、とある情報が第152観測指定世界より齎されたのだ。 「スカリエッティは、暫定政権によって打倒された軍事政権と繋がりがあったらしいんや。其処で、とある実験船の開発計画に携わっていたらしい」 「実験船?」 「何でも、新理論によって開発された航行システムを搭載した、超深次元探査船だったそうや。戦闘機人技術の提供と引き換えにプロジェクトへ滑り込んだスカリエッティは、その探査船に何らかの可能性を見出したんやろうな。 研究員の証言によると『この船さえあれば、聖王のゆりかごなど稚児の玩具に等しい』とまで嘯いとったらしいんや」 「・・・船の、名前は?」 「名前らしい名前はない。プロジェクト上では『識別番号501072』と呼称されとった。全長2.5kmの巨大船や。この船も、他の艦艇群と同様に行方を晦ましとった」 「それが見付かったんですか?」 「そうや。第102管理世界の近辺、次元世界の真っ只中でな。今は102の保有する艦艇が監視に当たっとるが、いつ動き出すかも分からん。船内にはスカリエッティと戦闘機人が3名、それに軍事政権の残存兵が少なく見積もっても200名。 迂闊に踏み込む事はできんが・・・」 はやては端末を操作し、第102管理世界の艦艇が撮影した超深次元探査船の全貌を表示する。 極彩色の空間に浮かぶ鉄の艦体は、御伽噺から抜け出してきた異形の悪魔の様な印象を見る者へと与えた。 巨大な機能集約部である前部デッキ、其処から長く延びる複数本の主要連絡通路、巨大な翼部を思わせる後方機能集約部に巨大な球状の機関部。 まるで異形の十字架の様な造形のそれが、何ひとつ目に見える反応を返す事なく空間を漂っていた。 「これが・・・」 「『識別番号501072』や。3日前に発見された。出現時の状況は一切不明。通常航行で流れ着いたんか、特殊な航法で出現したのかもな。現状で判ってるんは、唯ひとつや」 「何なんですか?」 スバルの問いに、はやては答える。 感情を抑制した声の中にも、隠し切れない不審を込めて。 「この船は、救難信号を発しとる」 ■ ■ ■ 「今回、クラウディアクルーと共に目標船の調査に当たる超深次元探査船開発計画主任、エリック・ベニラル博士や。博士」 「どうも・・・はじめまして。今回は皆さんと共に任務へと当たれる事を嬉しく・・・」 XV級次元航行艦クラウディア、ミーティングルーム。 其処では艦が保有する武装隊と機動六課の面々、そして艦長たるクロノ・ハラオウンを含むクルー十数名が、1人の人物を前にしていた。 エリック・ベニラル博士。 第152観測指定世界、軍事政権下に於いて超深次元探査船開発計画の主任を勤めていた人物。 彼が述べる挨拶を遮り、クロノは必要事項の説明を促す。 「博士、余計な挨拶は結構だ。あの実験船の詳細について話して貰おうか」 親しみなど欠片も感じさせぬ声。 クロノのみならず、ミーティングルームに詰めた人員の殆どが、冷やかな視線を博士へと注いでいた。 彼は核弾頭を搭載した次元航行艦を管理世界へとばら撒いた世界の人間、しかも軍事政権下で研究を続けていた人間だ。 現在の管理世界の混乱を目の当たりにしている管理局員としては到底、好意的に捉える事などできる筈もなかった。 「・・・解りました。それでは『識別番号501072』についての説明に移りますが・・・これから話す事は、第152観測指定世界及び管理世界に於いて、最高機密に属する事柄です」 突然のベニラル博士の言葉に、誰もが目を見開く。 最高機密。 一体、何の事なのか。 「『識別番号501072』ですが、この船は従来の反動推進エンジン及び魔力による力場解放型エンジンではなく、新たな理論により開発された『重力推進機構』を備える、超高速深次元探査船です。その速度は光速を超え、管理世界の端から端までを一瞬にして・・・」 「与太話は止してくれ」 またしても、クロノの声が博士の声を遮る。 彼はその視線をより一層怜悧なものへと変え、射殺さんばかりに博士を見据えていた。 彼だけではない。 幾人かの人間が、蔑む様に博士を睨んでいる。 「光速を超えるだと? 馬鹿馬鹿しい、空想科学じゃないんだ。相対性理論を知らないのか」 「光速を超える事なんてできる筈がない。此処に居る人間がそんな事も解らないとでも?」 次々に吐かれる言葉は、明確な敵意を以って博士へと投げ掛けられた。 それは六課の面々も例外ではなく、博士が明らかにこちらを謀ろうとしていると判断した彼等は、胡乱げな者を見るかの様な視線で以って彼を見やっている。 しかし博士はそれを気にも留めてはいないのか、手元にある1枚のファイルを破ると、其処にペンで2つの穴を開けた。 「確かに、光速を越える事はできない。相対性理論は絶対だ。しかし相対性理論を破るのではなく、応用する事はできる」 博士はペンで、2つの穴を順に指す。 そして、問うた。 「A点とB点、この2つの穴の最短距離は?」 「直線じゃないんですか?」 ミーティングルームの其処彼処から笑いが起こる。 咄嗟に答えていたスバルは、横合いのティアナに頭を叩かれていた。 博士はその様子に苦笑すると、紙を折り曲げる。 「いいや。この2点間の最短距離は・・・『ゼロ』だ」 紙が折られ、2つの穴が重なり1つとなる。 その穴に、博士はペンを通した。 「こうして空間を折り曲げ、2つの地点を同じ時間、同じ空間に固定する。船は両者を繋ぐゲートを通り・・・」 ペンが穴を通り終えると、博士は紙を元に戻す。 穴は2つ。 「通過を終えると、空間は元に戻る。これが『重力推進』だ」 誰も、何も言わない。 嗤う者も、馬鹿にするなと憤慨する者も居なかった。 何らかの学術的反論を行おうとする者も中には居たであろうが、しかしその言葉が声になる事はない。 「色々と異論はあるだろうが、とにかく我々はこの技術の実現に成功した。これを搭載したのが『識別番号501072』だ」 ミーティングルームに、ブリッジからの目標艦艇発見との報告が響き渡った。 次元の海に浮かぶ、鉄の威容を誇る船。 管理局、そして第152観測指定世界のそれとも異なるデザインのそれは、まるで無人の幽霊船の如く空間を漂っていた。 幾度ブリッジクルーが応答を呼び掛けても、超深次元探査船『認識番号 501072』からの返信は一切確認されない。 目標船は唯々、救難信号を発し続けるばかりである。 クロノは、第102管理世界の艦艇より受信した近距離スキャン結果をクラウディアによるそれと照らし合わせ、結論付けた。 「目標船の武装は全てオフライン。102艦艇による外部兵装の物理的な破壊も確認した。目標船に武力的脅威なし。接舷し生体反応をスキャンした後、武装隊を送り込む」 一方で、待機室にてモニター越しに実験船の全貌を見つめる魔導師達は、目標の余りの巨大さと荘厳さ、その威容に絶句していた。 全長2.5kmの巨大船と聞いてはいたが、実際に目にするとその巨大さに物理的な圧迫感すら覚える。 誰もが息を呑み、船体外周に沿ってゆっくりと航行するクラウディア、その外部光学認識システムを通して船体の全貌に魅入られる中、フェイトはベニラルへと語り掛けた。 「見事な船ですね、博士」 その言葉に、ベニラル博士は薄く笑みを浮かべる。 そして、口を開いた。 「ありがとう、テスタロッサ執務官」 フェイトはその呼称に、何か言い知れぬ違和感と不信感、そして不安を抱く。 ハラオウン執務官と呼称される事はあったが、テスタロッサの名で呼ばれたのは、シグナムとザフィーラを除けば随分と久しぶりの事だ。 何故この人物は、このクラウディアの艦長であるクロノと自身が同じ姓である事を知りつつ、自身をテスタロッサと呼ぶ事を選択したのか? そんなフェイトの内心を知る由もない博士は、彼自身も魅入られた様にウィンドウ越しの船体を見つめ続ける。 その目に、まるで恋人を見つめるかの様な熱が込められている事に気付いた彼女は、途端に背筋を走った得体の知れない感覚に身を震わせた。 そうして、フェイトは聞いたのだ。 ベニラルが嬉しそうに呟いた、その名を。 「ただいま・・・『クレア』」 ■ ■ ■ 「微量の放射能漏れを確認、安全レベル内。生体への影響はありません」 「船内環境は?」 「重力は発生していません。低出力AMFの稼動を確認。環境維持システムは停止状態、船内気温は-48℃」 ブリッジにてクロノは、接舷した『501072』のスキャン作業を見守っていた。 クラウディアの誇る優秀なクルーは、速やかに目標船の各種スキャンを実行してゆく。 「内部は極寒の世界か・・・生命反応は?」 「現在、スキャン中です」 クルーの指がコンソールを叩き操作を実行してゆく様を、クロノは確かな信頼と共に見つめていた。 しかし、その指の動きが不自然に停止、一瞬後には忙しなくコンソール上を走り始めた様を見て、彼は違和感を抱く。 「どうした?」 「いえ、それが・・・生命反応を検出しました。しかし・・・」 クルーは隠し様もない困惑を表情へと浮かべ、クロノへと振り返る。 そして、徐に口を開いた。 「位置の特定、できません・・・船全体が反応しています・・・」 ■ ■ ■ 『船内に入った・・・連絡通路に人影はない』 『何もかも凍り付いている・・・博士、聞こえていますか?』 『ああ、聞こえる』 武装隊、そしてなのはとフェイト、シグナムとヴィータが、防護服を纏い目標船内部へと侵入する様子を、残る武装隊員と六課隊員、そしてベニラル博士は待機室よりウィンドウ越しに見守っていた。 博士は船内に侵入した彼等のナビゲートを行いながら、更に各種質問に対する答えを通信機越しに述べてゆく。 AMFにより、念話は使えない。 防護服を着ている上、船体に穴を開ける訳にも行かないので、一応携帯しているとはいえデバイスも待機状態である。 『居住区と船の制御系は前部デッキ、後部機関室には原子炉と重力推進機関がある。この船内環境下で乗員が生存しているとすれば、乗員保護用の重力タンクしかない』 『タンクの数は?』 『60だ』 『全員が入るには数が足りない・・・つまり・・・』 『殆どは死体、って事か』 侵入班は二手に分かれ、それぞれ前部デッキと後部機関室を目指す。 フェイトとシグナムは前部、なのはとヴィータは後部の捜索班へと加わった。 『医務室だ・・・使われた形跡はない』 『クルーは?』 『博士、クルーを発見すればすぐに報告します』 数分後、捜索班の1人が重力タンクを発見。 しかし、それらの内には1人として乗員の姿はなかった。 『どういう事・・・?』 『全員死亡したのか・・・若しくは船を放棄したのか・・・?』 『どの道、碌な状況じゃなさそうだな』 捜索班は、この状況に対する各々の意見を交わし合う。 この瞬間、彼等が足元の重力タンク溶液保存槽内を漂う無数の人影に気付く事はなかった。 フェイト等が医務室へと足を踏み入れた頃、なのはとヴィータを含む後部捜索班は、機関室へと続く対放射能ドアを開けていた。 その向こうに広がる光景は、無数の巨大な刃を備えた円筒形の壁が回転する、その中を宙に浮く様にして貫く一本の通路。 金属的な異音が周囲を満たす中、なのは達はメイン・エアロックを通じクラウディアへと直結するセーフティワイヤーを引き連れながら、不気味な通路へと侵入する。 『博士、これは何なんです?』 『磁場の影響を避けて第二耐放射能ドアへと向かう通路だ』 『・・・まるで挽肉器だ』 やがて、第二耐放射能ドアを抜けた先には、漆黒の空間が拡がっていた。 漏れ出した炉心冷却液が周囲を漂う中、彼女等はCO2除去剤の装填されたフィルターの並ぶ通路を抜け、機関部メインコントロールパネルの前へと立つ。 生命反応、スキャン開始。 『おかしい・・・やっぱり、そこら中から反応がある』 『故障じゃないのか?』 『レイジングハートも同じ事を言ってるよ、ヴィータちゃん。アイゼンは?』 『・・・本当だ、反応の位置が特定できない』 『博士、此処は何だ?』 捜索班の問いに、博士からの答えが返される。 『パワーを上げてみてくれ。説明はその後だ』 1人がパネルに歩み寄り、炉心出力を上昇させる。 すると照明が徐々に明度を増し、空間全体を明るく照らし出した。 そして、その中央に位置する異形の装置をも。 『何だ・・・これ・・・』 それは、余りにも奇怪な造形の装置だった。 表面に無数の円盤が敷き詰められた、錆色を纏った巨大な金属球体。 その周囲を、同色の3つのリングがジャイロの様に取り囲み回転している。 それぞれのリングに角度を変えて通された支柱、そして装置全体の基部までもが回転し、とても理解などできない複雑怪奇な回転運動が、捜索班の眼前に展開されていた。 『それが重力推進のコアだ』 誰もが巨大な装置の威容に圧倒され、言葉もなく回転する球体を見つめている。 やがてヴィータが、搾り出す様に呟いた。 『訳わかんねぇ・・・何なんだ、一体・・・』 『その3つの輪は磁気リングだ。それが揃うと・・・』 『・・・博士? 博士、どうしたんです?』 『クラウディア、聞こえるか? 前部デッキ捜索班、おい、返事をしろ・・・駄目だ、通信障害だ』 突如、通信が途切れる。 全員の注意がそちらへと向いた瞬間、空間に重々しい金属音が響き渡る。 反射的に振り返った彼等の視線の先で、3つのリングが平行に並び、中心の球体が動きを止めていた。 重なったリングの断面は球体を中心に、捜索隊の位置するコントロールパネルの方向へと向いている。 『・・・何だ? 何が起きている?』 『・・・見て!』 数秒後、球体の中央、表面を覆う無数の円盤の1つが徐々にその表面を開放し始め、内部より強烈な光が放たれる。 余りの眩さに皆が視線を逸らす中、無数の円盤はその1つを中心に同心円状に次々と表層を開放してゆく。 空間全体が眩い光に覆われ、視界が機能を失う事、約10秒。 漸く光が止んだ時、其処には異常な光景があった。 『・・・おい』 『どうなってんだ?』 『球体が・・・無い?』 其処に、コアの球体は無かった。 3つのリングの中心には、ただ『闇』があるだけだ。 『闇』そのもの、平面の漆黒だけが、其処に現出していた。 『おいおいおいおい・・・何の冗談だ。魔力反応は?』 『・・・皆無です。あれは、魔法じゃない』 『じゃあ、一体・・・』 『ああもう、面倒くせえ!』 『ヴィータちゃん!?』 つと、ヴィータが進み出た。 グラーフアイゼンをハンマーフォルムへと変え、その先端を『闇』の表面へと近付ける。 なのはを含め数人が止めろと警告するも、彼女は止まらなかった。 『どうせ調査しなきゃならねーんだ、危険かどうかだけでもはっきりさせなきゃならないだろ!』 ハンマーヘッドを『闇』へと沈め、引く。 『闇』はハンマーヘッドへと絡み付き、黒い粘性の液状物質となって被膜を形成していた。 ハンマーヘッドから剥がれるや否や、それは漆黒の液面へと引き込まれる。 『・・・ほら、見ろよ』 『・・・異常は・・・無いの?』 『全然、ほれ』 そう言うとヴィータは再度、更に深くアイゼンを沈めた。 液面からの反応は、無い。 『何ともないぜ、ほら。怖がらないでこっち来いよ』 『何なんだろう、それ・・・』 『一体どういう原理なんだ?』 『分かんねーけどさ、特に危ないモンじゃ・・・ッ!?』 『ヴィータちゃん?』 突然、ヴィータの言葉が途切れる。 彼女の様子が豹変し、銀色の防護服が不自然に揺らめく。 そして、焦燥を多分に含んだ声が、通信機越しに響いた。 『なっ・・・クソッ、畜生・・・!』 『ヴィータちゃん? ねえ、どうしたのヴィータちゃん!?』 『おい、何だ、どうした!?』 『何かが・・・何かがアイゼンを引っ張って・・・クソッ、引き戻せねぇ!』 『おい、液面に近付いてるぞ、手を離せ!』 そう叫ぶ間にも、ヴィータはリングの中央へと向け引き摺られてゆく。 半ばまで『闇』に呑み込まれたアイゼンは一切の反応を返す事なく、必死に引き戻そうとする主に対する言葉さえ発せられる事はなかった。 『おいアイゼン! 何で黙ってるんだ、何かあったのか!? 返事しろ、アイゼンッ!』 『おい、デバイスを放せ!』 『ヴィータちゃん、アイゼンを離して! 引き摺り込まれるっ!』 『嫌だッ! 離すもんか・・・』 『ヴィータちゃんッ!?』 『畜生、何てこった!』 それは、一瞬だった。 ヴィータがアイゼンを手放す事を拒否し、それを促す言葉に対する反論を叫ぼうとした瞬間、彼女の小柄な体は一気に『闇』へと引きずり込まれていた。 磁力式ブーツが、金属製の床面より引き剥がされる程の力で。 跡にはクラウディアより伸びるワイヤーだけが、その場に激しくのたうっている。 直後、残る班員達は即座に行動を開始した。 『引き戻せッ!』 1人が、咄嗟にワイヤーを掴む。 瞬間、その指が根元から吹き飛んだ。 悲鳴、血飛沫。 ワイヤーは、高速で『闇』へと引き込まれ続けていたのだ。 『うぁぁぁあああああッ!?』 『よせ、暴れるな! 押さえろ、傷にフィルムを掛けるんだ! 気圧を維持しろ!』 『ああ・・・指が・・・指が・・・!』 『ヴィータちゃんッ! どうすれば、どうすれば・・・ッ!?』 一方で、クラウディアでも混乱が起こっていた。 通信が途絶えてから約4分後、突然ヴィータのセーフティワイヤーだけが急速に引き出され始めたのだ。 クロノは、すぐに指示を下した。 「巻き戻せ!」 「不可能です! 引き出す力が強すぎます! 既にモーターは破損、ワイヤーの残りは200mです!」 「現在の伸長距離は!」 「1360mです!」 「何が起こっている!?」 「残存ワイヤー『0』! 伸長、止まりました!」 ワイヤーの伸長が停止した瞬間、機関部では『闇』に異常な反応が起こっていた。 液面が通路側へと膨張し、今にも破裂せんばかりの様相を見せていたのだ。 唖然とその様子を見つめる捜索班の眼前で直後、膨れ上がった『闇』が一瞬、爆発するかの様に振動。 其処から、視認すら可能な空間の歪みが、衝撃となって放たれたのだ。 捜索班は一様に、鋭利な先端を持つ巨大な突起が並ぶ壁面へと叩き付けられた。 幸運にも、突起に接触する者は存在しなかったが、余りの衝撃に例外なく意識を奪われる。 だが、それで終わりではなかった。 衝撃波は機関部より解き放たれ、船内を舐める様に高速で移動しつつ、前部デッキ及び接舷したクラウディアをも襲ったのだ。 突然の破壊的な衝撃に、クラウディア内の人員は例外なく宙へと投げ出され、床面、或いは壁面へと叩き付けられた。 そして艦内の其処彼処から、破壊音と大量の火花が放たれる。 小爆発が連鎖的に発生し、優美なVX級次元航行艦の艦体を大きく引き裂いた。 艦内循環システムが停止、亀裂より空気が艦外へと漏れ始める。 火災発生、システムの6割が停止。 警報と破壊音、そして悲鳴が艦内を埋め尽くす。 「被害は!?」 『艦のシステムは既に8割がダウンしています! 魔力炉は暴走の兆候が現れた為に安全装置が作動、先程停止しました! 動力は非常用のバッテリーに移りましたが、こちらも火災が発生していて何時止まるか分かったものじゃありません! もうおしまいだ!』 「機関室を放棄しろ! 艦内の気圧は!?」 「既に低下を始めています! このままでは全員窒息です!」 『艦長、『501072』へ! あちらならまだ空気はある! システムを起動させれば救助が来るまでは保つ!』 「何だと!?」 ミーティングルームより、ベニラル博士の声が飛び込む。 目標船への避難を促すその言葉に、クロノは思わず呻いた。 「馬鹿な事を言うな! クラウディアを放棄する訳にはいかない!」 『放棄はしない! 実験船には船体応急処置用の資材もある! 活動拠点をあちらに移し、クラウディアの修復作業に当たるんだ!』 「しかし!」 『もう時間が無いんだろう!? 此処でこのまま死ぬよりはマシな筈だ!』 「艦長・・・」 博士の声に続き、クルーの1人が響く。 そちらへと視線を投じたクロノは、絶望に満ちたその表情を目にし、もはや博士の提案以外に選択肢が残されてはいない事を理解した。 「残存空気量・・・最低基準値を切りました・・・」 前部デッキにて衝撃波に襲われたフェイト等であったが、損害は軽微であった。 態勢を回復した後、彼女達はクラウディアと後部捜索班、その双方と連絡が途絶した事に気付く。 2名をブリッジに残し連絡通路へと戻ると、シグナムを含め半数はクラウディアとの連結部であるメイン・エアロックへ、フェイトを含め残り半数は後部機関室へと向かった。 ブーツの磁力を解除し、中空に伸びるワイヤーを伝って機関室へと飛び込む。 先頭を行くフェイトは、そのワイヤーの先端が巨大なリングの中心へと吸い込まれている事に気付いた。 『まさか・・・!』 脳裏を過ぎる、最悪の予想。 果たして数瞬後、その予想は正しかった事が証明される。 リングの中心、『闇』の液面より、他の者より2回り以上は小柄な防護服が浮かび上がってきたのだ。 『ヴィータッ!』 力なく浮遊してくるその身体を、フェイトは正面から受け止める。 ヴィータは、何ら反応を返さなかった。 衝撃に対し、僅かなりとも身体を震わせる事すらしない。 気絶だけでは、こうはならない。 まさか。 『ヴィータッ! しっかりしてッ! お願い、目を開け・・・ッ!』 フェイトの言葉が止まる。 ヘルメットバイザーの向こう、ヴィータの双眸は、既にしっかりと見開かれていた。 一旦は安堵し掛けるフェイトだが、それが彼女の期待した状態ではない事を知るや、思わず息を呑んだ。 ヴィータの目は、確かに見開かれていた。 開かれているだけだった。 その瞳は一切の光を宿してはおらず、何も映してはいなかった。 口は閉じられ、呼吸をしているらしい事は判るも、唯それだけだ。 それ以外の一切が、ヴィータの身体より抜け落ちている。 彼女の状態を理解するや否や、フェイトの口から悲痛な声が上がった。 数十秒後、ブリッジに残った隊員により人工重力発生装置が起動し、全てが地へと落ちる。 環境維持システムが再起動し、艦内気温が上昇を開始。 原子炉からのエネルギー供給が正常に行われるや、船の内外に明かりが点る。 そして、船は息を吹き返した。 ■ ■ ■ 気温が18℃に固定される頃には、全ての人員が実験船への移乗を終えていた。 艦内の態勢が整えられてゆく中、クロノと六課の面々、そしてベニラル博士と主要クルーは『501072』のブリッジに集合。 状況の報告を始める。 「博士、システムの起動はどうだ」 「主要なシステムは全て起動した・・・何とかね。通常航行と武装、通信以外の機能はほぼ正常だ」 「クラウディアの損傷は?」 「艦体に40mの亀裂、Bブロックの修復は絶望的です。左舷のエンジンは完全に破壊され、通信機器も破損しました。内部にて主要区画の密閉修復を行ってはいますが、循環システムが機能を回復できなければ無意味です」 「循環システムの修復に掛かる時間は?」 「約16時間です」 その言葉に沈黙すると、クロノは六課の面々へと向き直る。 其処には、幾人かが足りない。 意識の回復しないヴィータは無論の事、その治療に当たるシャマル、彼女に連れて行かれたなのはの計3名は席を外しているのだ。 クロノに対し、はやては深刻な表情で頷きを返すと、空間ウィンドウではなく、この船独自のプリズムディスプレイへと映像を表示した。 「・・・ひッ」 「う・・・」 「酷い・・・」 其処彼処から、呻きと小さな悲鳴が上がる。 重力タンクと呼称されるこの船独自の生命維持装置、その溶液を満たしたタンク内から次々に引き上げられる『死体』。 既に30体を超えたそれらは、皆一様に凄惨な傷が全身へと刻まれ、長期間水中にあった為か、どれもこれもが醜く膨れ上がっていた。 既に崩壊を始めている骸は糸状の体組織を其処彼処より垂れ下げ、腹部や背部などに開いた体組織の穴は内圧により次々に破れて広がり、薄い蛍光色を放つ溶液を開放された蛇口の如く溢し続ける。 余りの惨状に口元を押さえる者が続出する中、はやては自身も顔色を酷く青褪めさせつつ、言葉を紡いだ。 「・・・今のところ、スカリエッティと戦闘機人は見付かっていない・・・保存槽内部の死体の数は、50には満たんそうや」 「つまり、150人以上が行方不明という事ですか・・・?」 「・・・そうなるな」 重い沈黙。 クロノが、首を振りつつ呟いた。 「この船で、何があったというんだ・・・?」 「・・・どうですか?」 なのはは強制的に治療を受けさせられた後、シャマル等によるヴィータの検診に付き添っていた。 ヴィータは、眼球の正面にペンライトの光を当てられ、鼻先にアンモニアのアンプルを近付けても、一切の反応を返さない。 仕舞いには指先に針の先を当ててもみたのだが、やはり一切の反応を示さなかった。 彼女は目を自然に見開いたまま、最低限の生命活動を除き一切が『静止』していた。 「シャマルさん・・・?」 「・・・なのはちゃん。ブリッジに行って、はやてちゃんを呼んできて欲しいの。お願いできるかしら?」 「それって・・・!」 絶望に目を見開くなのは。 しかしシャマルは苦笑しつつ首を振ると、穏やかに彼女へと語り掛けた。 「大丈夫、安心して。ヴィータちゃんは今、ちょっと意識が奥に沈んでしまっているだけだから。現状を説明したいから、はやてちゃんに医務室へ来るように伝えて。すぐにでなくても良いわ」 「・・・はい」 安堵した様に息を吐き、医務室を出るなのは。 その背を見送り、シャマルは目薬を取り出すと、薬液をヴィータの眼へと落とし入れる。 眼球に水滴が当たっても、ヴィータは瞼を微塵にも動かしもしなかった。 シャマルは、微かに呟いた。 「外部から与えられる全ての情報を拒絶している・・・何が起これば、こんな・・・」 ブリッジではフェイトを筆頭とする捜索班と、ベニラル博士による論争が発生していた。 フェイト等は、機関室への侵入時にリングが重なっており、その中心に黒い液面が発生していたと主張。 ヴィータはその中より現れ、重力の発生直後に黒い液面は消失し、その中からコアの球体が現れたと述べた。 なのはやヴィータと共に捜索に当たっていた者達も、リングが揃うと光と共に球体が消失し液面が現れ、その中にヴィータが引きずり込まれたと報告。 更には、衝撃波がその液面より放たれた事を明かす。 博士はそれらの状況報告を聞き、全てが理に叶っているという事を認めた上で、しかし乗員による操作もなしにリングが揃う事はないと、コアが全ての元凶とする彼等の主張を撥ね退けた。 彼はこの2時間以内のログを呼び出しそれを表示させると、其処にコアに関する操作記録が無い事を指摘する。 誰かが操作したにせよ、或いは偶発的な要因による事故にせよ、コアとそれに関連する事象の記録が一切存在しない、などという事象は有り得ないと結論付けた。 コアからの重力波の流出が起これば、クラウディアの破壊、ヴィータの消失、その全てに説明は付くが、そんな事は起こり得ないと。 幾人かが激昂し博士へと掴み掛かろうとする中、クロノはそれを静止し、博士を問い詰めた。 あのコアとは何なのか、一体どういう原理で重力推進を行うのか。 「・・・説明は難しい」 「時間はたっぷりある。説明して貰おう」 博士は沈黙し、周囲の面々の表情を見回す。 やがて、諦めた様に息を吐くと、彼は全員を機関室へと誘った。 ■ ■ ■ 回転するコアを前に、博士はこれが『ゲート』だと告げた。 誰もが僅かに距離を取り、遠巻きにコアを眺める中で、はやては彼へと問い掛ける。 「『ゲート』? この球体が?」 「ああ」 「具体的には、どの様な?」 「この3つの磁気リングが重なると、人工のブラックホールが発生する。船は其処を潜り、次元の何処へでも瞬時に移動できる」 「ブラックホール? 人工の? そんなもの造れる訳がない・・・」 「我々は造った。そして実際に、この船は何処かへと行ったんだ」 「何だって?」 全員の視線が、博士へと集中する。 彼は何処か誇らしげにさえしながら、嬉々として言葉を紡いだ。 「私はスカリエッティが犯罪者であるとは知らなかったが、しかし彼の人間性は理解しているつもりだ。完成したこの船を手に入れて、彼が何もしない筈がない。彼の目的はひとつだった。それはこの船に乗り込んだ者達も同じだったろう」 「目的?」 「『アルハザード』だよ。スカリエッティは、其処を目指していた」 アルハザード。 その名称に、ある者は顔を顰め、ある者は表情を凍り付かせる。 またある者は表情を消し去り、ある者は嘲笑を浮かべた。 「御伽噺だ。本当にそんな話を信じているのか」 「彼は信じていたよ。自分は其処の技術を用いて『製造』されたと語っていたしね。誰にも邪魔されない、好きなだけ自身の知識探求欲を満たせる楽園。彼は純粋にその世界を欲し、この船のクルーは未知の次元世界へと向かう為、政権の傀儡達はこの船の機能を利用して報復を行うべく接収の為に乗り込んだんだろう」 「彼等の目的は一致していなかったと?」 「そうだ。正規のクルーは超深次元へ、スカリエッティはアルハザードへと向かう為。兵士達に至っては単に奪取が目的だったのだろう」 「アルハザードが実在するとしても、それは虚数空間の向こうよ。この船も唯じゃすまないわ」 「この船には魔法技術は一切用いられていない。虚数空間の影響は受けないよ。初めから、其処への航行を想定されていたんだからね」 そう言い放つと、博士は眩しげに目を細めつつ、コアを見つめる。 そして、言葉を紡いだ。 「ログを遡ってみようじゃないか。きっと彼等の軌跡が残されている筈さ」 ■ ■ ■ 「どういう事だ・・・?」 クラウディアによるスキャン結果を前に、グリフィス・ロウランは呻く。 提示された情報の示すところは、余りに異常な事実だったからだ。 「どうしたの?」 「シャーリー・・・」 背後より声を掛ける幼馴染にして同僚に、彼は振り返りつつディスプレイを指す。 其処に表示された情報に彼女、シャリオ・フィノーニもまた表情を引き締めた。 「何、これ・・・」 「見ての通りだよ。スキャンの結果、前部デッキと主要連絡通路の材質組成に対して、後方機関部の材質組成が強靭過ぎるんだ」 「重力推進と原子炉の危険性を考慮して・・・って訳じゃないよね、これだけのばらつきがあるんじゃあ・・・まさか」 「前部と後部で、建造元が異なるんじゃないかな」 「それぞれ別に造ってくっつけたって事?」 「いや、それが・・・」 グリフィスはディスプレイを操作し、とある映像資料を拡大表示する。 後方機関部の第二耐放射能ドアの近辺、どうやら後部捜索班のカメラ映像らしい。 「これがどうかしたの?」 「今から拡大する箇所を見て」 グリフィスは更に操作を行い、停止した映像の一画を更に拡大する。 建造後に追加構築されたらしき放射能遮断壁の一画、何らかの要因で崩壊した其処に、その言語は刻まれていた。 「・・・まさか」 「僕だって信じられなかったけどね。でも間違いない。これは第97管理外世界、地球の言語だよ」 その文字の羅列は、雄弁に語っていた。 この船は、第97管理外世界の創造物であると。 第152観測指定世界でも、スカリエッティでもなく。 地球人類の手によって建造された船であると、声高に主張していた。 知らず戦慄しつつも、グリフィスはその名称を読み上げる。 震える舌先、震える声で。 「・・・U.S.A.C. DEEP SPACE RESEARCH VESSEL・・・『EVENT HORIZON』」 2人の背後、端末に表示された生命反応が、極大値にまで膨れ上がった。 単発総合目次へ その他系目次へ TOPページへ
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霞が関からほど近い、斜歯の医療施設。 常より遥かに厳重な態勢が敷かれたその場所にて、黒潮一人は身を休めていた。 「……結局、何も変わらなかった……いや、ひとつ大きく変わったか。」 「鞍馬のこれからの動向について、現在調査を急がせているヨ。」 返事を返すうちの一名は、Dr斜歯である。 「葬儀は済ませたらしい。次期頭領を巡ってひと悶着あるかといったところかネ。」 「ああ頼む。私は今手が回らんからな。会合については、感染症にかかったことにしてキャンセルしてもらおう。」 「第二研究所のデータについては、先だって送付した通りだ。例の件については……」 ベッドに横になった姿のまま、複数の端末を操作し、各所の部下とやり取りをする。 大統一を間近とした大流派といえども、一つの組織に過ぎない。 それをまとめ上げる彼がいてこその、斜歯忍軍なのであろう。 頭領はかくも忙しい。 「何も変わらなかった闘いだったが、収穫はあった。」 「三種の神器を再現できればまた一歩目標に近づく。」 「解析は済んだ。今回ばかりは、私もそちらに力を入れなければな……」 それはあらゆる忍法、あらゆる人心を掌握する、全能を汎用とする万能。 斜歯忍軍。"最高経営責任者(CEO)"。 国士無双、黒潮一人。 ______ 柳生の屋敷。その庭の一角に、一本の大太刀が突き立てられている。 墓を建てるなという三巌の言いつけに従って用意された、簡素な荼毘の証。 もちろん、彼は墓を建てず、弔いもせずというのが許される立場の人間では無かった。 しかるべき葬儀は大々的に執り行われ、日本剣術の正統なる伝統者に対し、数々の惜辞が送られた。 しかるべき墓碑が建立され、柳生の歴史とともに、その業績が展示されている。 しかし、真に三巌の遺志を識る門下生たちは、主を失った屋敷の庭の端、一本刺した剥き身の大太刀へと手を合わせる。 ここに集いしは、柳生の門下生にして、三巌の遺志を継ぐ鞍馬神流の上忍頭たち。 たった一つの頭領の座をかけて、闘いが始まろうとしていると、そう理解していないものは一人としていない。 三巌の墓標を前に、手を合わせ、黙祷し、頭を上げた刹那、一斉に斬りかかる。 彼ら皆、三巌の遺志を識る者たち。これが、三巌と対して真なる供養たると識る者たちである。 三巌の遺志は、継がれている。 勝利したのは、三巌の墓を模して突き立てられた大太刀を抜いて窮地を脱した一人の男。 師の墓標さえも闘いの道具とする彼ならば、三巌の遺志に違うことはないだろう。 それは自在の剣戟を一つの太刀筋に帰結させる、剣の術理を否定する剣闘士。 鞍馬神流。剣闘士“ブレードバトラー”。 深剣、柳生三巌。 ______ それは、どことも知れぬ暗闇の中。 影が、二つ。 あるいは、それは影か真かもしれぬ暗闇の中であるとしても。 二人の足取りは、どこか真っすぐで、ゆくべき先を知っているかのようでさえあった。 「"天上天下"は残念だったけど……」 「"深剣"だけでも、あの人には良いお土産になるよね。」 「彼岸にては、敵う由もない。か。」 影の一人は、石蒜。もう一人の影を見遣り、涼し気な雰囲気を漂わせている。 影の一人は、三巌。もう一つの影に従いて歩く彼は、その身に幾本の断ち痕を残している。 既に三度。 どことも知れぬ暗闇の中で、石蒜を目の前にして直ぐに理解へと至った三巌が、嬉しそうに挑む闘いが。 既に三度。 一太刀も返すことのなく、石蒜の鎌にその存在を断たれた敗北が。 此処は既に此岸にあらず。 彼処において、彼岸において、死神に敵う道理は無い。 「さっ、行こうか。お望み通りこれからいくらでも戦えるよ?」 にこり、と笑いかける。 「おうよ。永劫の深みの先、いずれ勝ってみせよう。」 「それは楽しみだね。」 「"ようこそ、こちら側へ"」 その言葉を最後に、二つの影が暗闇へと溶けていく。 それは“死”そのものの象徴。彼方より現れし絶対なる訪れ。 死神(リーパー)。ハグレモノ。 "死に近き"石蒜。 ______ 「――なるほど、彼が冥界でも戦い続けると言うのなら、彼らしいというものです。」 どことはなしに、その影武者を真似たようにひとりごちるのは、安倍信明である。 場所は首都高。一台の車が周遊するその後部座席で、タブレット端末を操り、『六合統一の儀』以降の彼らの動向を細かに追跡している。 決戦で負ったはずの太刀傷は見当たらない。 瞬時に治癒してみせたのか、あるいは真に斬られてはいなかったのか。 そもそも、その場に居たのは彼自身であったのか。 それとも、この場に居るのが彼自身であるのか。 概そ、動向の確認が済んで。 「しばらく、彼らが表に立つことはない。それなら、私もしばらくは影のままでいられそうです。」 彼が居るのは、高速道路という見まがうはずのない場所で。 しかし、誰もがそれを見失う。 「影なので、日の当たるところからは退散しましょう。」 その車を、その存在を見失った首都高の先。 道路脇に見えるビル壁のディスプレイには、影武者であり偽物――進次郎の笑顔が大きく映し出されていた。 それは三千年の歴史を歩み、一億の命を背負う国体の守り手。 比良坂機関。”最後の砦” 国体護持、阿部信明。 ______ 太平洋上。梯形に陣行する四隻の黒船。 その一つ、サラトガ号の看板上で、仁王立ちするミッシェルの姿がある。 「テンジョーもテンゲも手には入りませんでしたが……」 その表情は、敗北を喫したにしては晴れやかであった。 「”トモダチ”はいっぱい出来マシタ! 秘密裏な条約も結んだことデスし、今回はこのくらいでカンベンしてアゲましょう!」 その背後では、サラトガ号の船員たち、その一人一人が海外の御斎にて修練を積んだ忍者たちが、情報の処理と、艦船の整備に尽力している。 そして、奥の私信室では、交渉術のエリートたちが、各国に広がる御斎の忍者たちとの連合交渉を取り纏めている。 それは、『ミッシェルのために』。 「最後の様子を見るに、またチャンスもありそうデスし……」 「ワールドワイドに広がるオトギのパワー、見くびらないでくださいネ? ジャパニーズピープル?」 アッハッハ、と高らかに笑うミッシェルだった。 それは如何なる者の心も掴み、その力を我が物とする侵略者。 私立御斎学園。"交換留学生"(フレンドシップ)。 黒船、ミッシェル・ペリー。 ______ ゴン、と。 最後の音を立てて、岩戸は閉ざされた。 『六合統一』の、忍者界最大のその祭囃子に口を開いた岩戸は、暫くその封を解くことは無いのだろう。 唯仁はそこに坐し、臥し、また漂っている。 封がされている永劫の間。 あるいは、彼がその神性から解放されるその刻まで。 「案外、悪くないものでした。」 神の力を解析され、力を奪われる。 唯の人に戻るような感覚。 「いつか、全ての隠鬼の血統の子たちも、ただの人として幸せに暮らせる世の中が来ると……」 「期待していますよ?一人さん。」 それは誰も知らぬ、誰も語らぬ。故にこそ顕れる神代の神秘。 親王(インペリアル)。現人神(デミゴット)。 隠されし唯仁。 ______ 忍神の遺した万能の秘儀、“天上天下”。 どんな願いも叶えるというその忍法は、されど誰にも扱うことすら出来なかった。 ───ここに、6人の修羅が集うまでは。 それはあらゆる忍法に精通し、あらゆる忍法を手中に収める者。 それは誰よりも武芸を極め、すべての神器を封じる者。 それは如何なるものも捉えられず、なにものにも縛られぬ者。 それは悠久の歴史を受け継ぎ、国の礎を守り抜く者。 それは未だ若木なれど、故に無限の可能性を有する者。 それは人に非ずとも、なればこそ神と崇められる者。 全員が、頭領。 全員が、最強。 忍術バトルRPGシノビガミ 頭領セッション 「畏神(ビガミ)」 ______終。
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私が意識を取り戻すと固いシートに座っていて、 様々な計器類が混雑していて、 目の前のスクリーンには景色が高速で流れている。 そこで私は何かのコクピットに一人で座っていたことが分かった。 『気がついたか。』 何処にあるのか分からないスピーカーから聞こえる声。 私はそのスピーカーを探す。 どうやら、足の方にあった。 『元気か!』 私はもう死んでいるのだと思い始めた。。 念のため後ろを振り返ってみたが誰もいない。 あるのは張り巡らされたケーブルと空調のみ。 ますます自分は死んでいるのだという思いが強くなる。 『君は何を探しているのだ。』 「……」 『目の前にいるではないか。』 「………」 『だから目の前…。』 「……ぁぁあぁあぁああアアアアアアアアアアああああっぁああああああッ!!」 私は叫んだ。もう堪えられない堪えられない。 しんだのだしんだのだ、私は死んだのだ。 「ぁああぁああぁああぁあぁぁぁ………」 ここは何処だ、どこだどこだ。 『此処はわたしの中だ。』 「ァあ……ぁあ?」 『ここは私の中だ。君は生きている、死んではいない!』 「あ……」 『ゆっくり休むのだ、少女よ。』 「」 私は答える事も無く再び眠りに落ちた。 再び目覚めたのはあの夜から三日後の朝。 腕に巻いた時計で確認したから間違いない。 もっとも時計がくるっていれば終わりだが。 私はメインスクリーンに目を向ける。 何も映ってはいない。 『外を見るか?』 私は肯く。 ぶぅんという音を立てながら、 メインスクリーンに映像が映る。 そこは森だった。 地上にこんな所があるなんて知らなかった。 もうこんなところ無いとさえ思っていた。 『此処は地下だ。』 驚いた。 此処が地下だなんて驚いた。 凄く驚いた。 『君が眠ってしまってから少したった頃、砂山に大きな穴を見つけてな。 そこに入ったら、こんな、だったってわけだ。』 鳥は見当たらないが小さな虫たちはいくつか見られた。 どれも元気そうだ。 『六十年近く前に廃棄されたセクションらしい。』 彼の視界の片隅に小さな端末が在るのが見える。 『わたしはよく知らないのだが、キサラギ、という企業のものだったらしい。』 キサラギ。 世界最高の技術者集団。 奇人変人変態無職色々云々御用たちの変態企業。 でも其処の技術は何処も彼処もミラージュもクレストも使っている。 だから厄介事が起こるのには絶対この企業が関わっている。 古くにはUNION事件を筆頭に、 コンビナートの爆発や炉心溶解による放射能汚染。 あのサイレントライン事件だってそうだったらしいし、 最近でも生物兵器が大脱走を繰り広げた(伝統ある行事だそうだ)。 私は世界中の厄介事はキサラギによって 作られているんじゃないか本気で思う。 それを掲げて団体を組織すれば それこそ沢山の人が集まるような気がすると私は本気で思う。 そして強化人間技術もキサラギの独擅場だ。 あの大二企業など足元にも及ばないほどの凄い技術を持っている。 私の性転換手術もそこで行った。 私の仕事のクライアントもそこが一番多い。 そういえば、トラックに積んであった荷物はどうなったのであろうか。 クライアントがちゃんと見つけてくれれば良いがその確立は低いだろうな。 『ふむ、キサラギ、とはそんな凄い企業なのか。まるで、ムラクモ、のようだな。』 私は、ムラクモ、という企業は聞いた事も無かった。 彼のようなAIが知っていることなのならば、 私が知っていてもおかしくは無いはずなのに。 私は記憶記憶喪失なのだ。 そうに違いない。 だから彼に心配をかけないようにムラクモのそれについては尋ねなかった。 その代わりに大事な事を告げる。 私は男だ。 彼は至極驚いていた。 その話は遡ること子供の頃に。 私の母は、私が生まれるとすぐ死んだ。 私の顔を見ないままだったそうだ。 そしてそれを悲しんだ私の父親は気が狂ってしまったのか、 私を女として育て上げた。 幼いうちはよかったのだが、 成長するにつれて男っぽさを増す私に腹を立てた父は、 私にキサラギにて性転換手術を受けさせたのだ。 しかし、父は、手術が終わるまで気が動転していたのか(気は狂っているのだが)、 手術料を払うお金がなかったわけだ。 キサラギはそれを見越していたのか、手術が終わるまで金を父に催促はしなかった。 そして、金を払えない父は蒸発、私はキサラギの実験台となった。 神経を試作品の光ファイバー製に変えられた。 脳にインプラントを埋め込まれた。 私は人間であり、人間で無い物に生まれ変わらされた。 でもキサラギは他の企業とは少し違って、 なぜだか私をACなどの機動兵器のパイロットにはしようとしなかった。 多分、強化人間が普通の生活に馴染めるかのテスト、見たいなものなのだろう。 だから私は脳に直接インプットされていたトラック運転技術を生かして 運び屋をやっていたわけだ。 クライアントにキサラギが多いのはその所為だ。 身体のほうはその当時から殆ど歳をとっていない。 だがキサラギ職員は言っていた。 ある一定期間が過ぎれば君は一気に老け込んで死ぬと。 まだその時期は来ていない。 まだ私は死ぬわけにはいかない。 『じょ…冗談じゃ!』 冗談なもんか。 『じゃあ、わたしの話を聞いてくれ。』 ああ、聞いてやる。 『聞いて驚くな。わたしは……超弩級高性能スーパーAIなのだ!』 その告白に私は、知っている、と返す。 彼はしょぼくれた。 私は彼を慰める。 よしよしと慰める。 彼は立ち直ったのか、急に空調から出る風が変わった。 嫌な風だ。どうやら立ち直った訳では無さそうだ。 メインスクリーンの右上にあるレーダーを見る。 先ほどまで無かった巨大な赤い三角。 その三角に表示されるデータには《生態兵器》とある。 やはりキサラギは厄介ごとを、持ち込んできた 彼は私に逃げることを進めるが私は逃げない。 私は操縦桿を握る。 彼は彼自身の情報処理をする。 運命で決まっていたかのように私達のポジションは決まる。 そして、私達の初戦闘がはじまった。 敵との距離は1000。 敵の速度は遅いがレーダーに映る三角は巨大だ。 彼の二倍近くあるだろう。 私は各部の補助ブースタを軽く吹かせ、 機体をホバリングさせる。 機体は軽々と浮き上がる。 頭の中が焼けるように熱い。 腕や足の末端まで電気が走ったような感覚に包まれる。 敵との距離は800。 私は右肩のクラスターミサイルを選択。 FCSは敵を完全にロックオンする。 私がトリガーを引くと凄まじい音と閃光を発し、 ミサイルは垂直に飛び敵の頭上へと飛び、小さく弾ける。 その小さくはじけたものがもっと小さく弾ける。 その小さな小さな爆弾の飛礫が敵の真上から雨のように突き刺さる。 暴焔が晴れると固い装甲のような殻が所々窪み、醜い緑色の体液を流している。 それで私達の存在を確認したらしく此方を睨む。 そして頭頂部の突起から何かが散布された。 レーダーに砂嵐が混じる。ECMだ。 敵はECMを使ってきたのだ。 これではミサイルが使えない。 あと残っている武装は右手のレーザーライフルに左手のブレード、そして左肩のグレネード。 私は有視界戦闘がしやすい近距離戦を仕掛けることにした。 構えるのは左手のブレード。 敵は近づいてきた我々に触手を伸ばす。 私はそれをブレードで叩き切る。 汚らしい体液が辺りに飛び散ろうとするが、液体はブレードに触れて蒸発、 辺りは緑色の濃霧に包まれる。 私はそれを晴らす為に武装を変更。 グレネードを選択し天井付近まで上昇し、垂直目下めがけて放った。 グレネード砲弾特有の球状爆発が起こる。 爆発は濃霧だけでは飽きたらず、周りの木々にも牙を剥く。 薙ぎ倒された木々には火がつき、化け物の足をとめる。 そして化け物の真上までホバリングし、レーザーライフルを放つ。 化け物はあっけなく死んだ。 天井に設置されたスプリンクラーが火災を感知し、地上に雨を降らせる。 見る見るうちに消えていく火。 我々の勝利だ。
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本ページではファタ・モルガナ帝国における教育制度について解説する。 沿革 教育制度の誕生 大学入試改革 制度 一般教育制度 初等準備教育 初等教育 中等教育 高等教育 大学制度 大学入試制度 主要な大学一覧 沿革 教育制度の誕生 ファタ・モルガナ帝国に最初に明文化された教育制度が制定されたのはIU100年頃であり、それが高度な教育システムへと拡充されたのは700年代頃であった。制定当初は初等学校のみが設置され、これらははじめから義務教育制度の対象とされた。学費は無償であった。711年に高等教育機関である大学が設置されたものの、793年に独立した中等教育学校が開設されるまでは初等学校と大学の間に「隙間」が存在する状態であった。隙間を埋める存在である中等教育は大学に内包されており、且つその大学に入学試験が存在したことから、初等学校とは別に「中等教育準備学校」と呼ばれる学校が制度、国家の介在無しに存在する状態となっていた。これらの学校は公立の中等教育学校が独立した後も私立の中等教育学校として残存するものが大半であった。 大学入試改革 IU1520年頃に国内で産業革命が発生すると、労働者と共に研究者、技術者人材の需要が急激に増加し、これに伴い国内の大学のニーズも爆増した。 大学の設置からその時に至るまで、入試には大学が自ら作成した試験問題のみが用いられていたものの、受験生の数が各大学のキャパシティを大幅に超過してスケジュールが上手く進まないといった問題が生じ始めた。この為受験生の数を各大学の管理許容量内に収める為に、受験生を篩にかける必要性が唱えられ始める。これを受けて政府は大学入試の共通一次試験の設置を模索し始めた。1531年の「大学入学試験共通一次試験設置に関する法律(通称 イザルーネ法)」制定に伴い「大学入学試験共通一次試験(府 Kauhdho Destih Jirk ren Tzahneaberthirk rae,KDJT)」制度が生まれた。この制度は現在でも継続されている。 制度 一般教育制度 初等準備教育 初等準備教育学校は3歳の者が入学対象となる3年制の学校で、いわゆる幼稚園に近いものである。初等準備教育自体は慣習的に生まれたものが後になって制度化されたもので、初等準備教育学校以外にも幼児教育学校、予備教育学校など同じような学校が存在している。これらはカリキュラムの観点から見ると基本的に同一である。 初等教育 初等教育は6歳の者を入学対象に初等学校と呼ばれる施設で6年に渡って行われる。公立の初等学校は学費が全面的に無償である。 最初の3年では公用語である現代ファシル語の読み書き、基礎的な算術、運動教育などが行われ、4年目から6年目にかけてはこれらに科学基礎、社会基礎、宗教学基礎、総合美術が追加される。 初等教育カリキュラム 1学年 2学年 3学年 4学年 5学年 6学年 現代府語 算術 科学基礎 社会基礎 宗教基礎 総合美術 運動 道徳 中等教育 中等教育学校で行われる。中等教育学校は13歳の者が入学対象となり、以後6年間在籍することとなる。初等教育で履修した科目が細分化(算術→代数学、幾何学、進学カリキュラム4年目からは解析学が追加など)され、より発展的、専門的な分野を学習することになる。 4年目からは大学進学希望者、就職希望者をそれぞれ進学カリキュラム、職業技能カリキュラムに分けて教育が行われる。 中等教育職業技能カリキュラム 1学年 2学年 3学年 4学年 5学年 6学年 現代府語 代数学 幾何学 総合科学 社会学 宗教学 絵画美術 音楽美術 運動 職業技能 道徳 中等教育進学カリキュラム 1学年 2学年 3学年 4学年 5学年 6学年 現代府語 代数学 幾何学 解析学 物理学 化学 生物学 地理学 現代社会学 歴史学 宗教学 絵画美術 音楽美術 運動 道徳 高等教育 高等教育機関は大学がこれに相当する。大学は中等教育を修了した18歳以上の者に入学試験受験資格が与えられ、その中で入試に合格した者のみが入学を許可される。高等教育では高度に細分化された教科から、学部学科の範疇の中で各々が希望するものを自由に選択して学修することが出来る。科目は大学、学部、学科によって極めて多彩である為、学部学科毎の必修科目を除けば科目選択は完全にその者次第である。その為このページでその全てを網羅することは不可能である為、以下には一つの例としてマーズカクス帝国大学の学部学科の一覧を記載する。 マーズカクス帝国大学 学部学科一覧 宗教法学部 法学科外国法学科宗教学科 国文学部 現代ファシル語学科ファシア文学科哲学科 外国語学部 グランダ語学科シャノワール語学科ワーシイワ語学科エレイス語学科アライド語学科リベント語学科晋迅語学科本京語学科星羅語学科ミュルネニヤ語学科 工学部 電気工学科電子工学科船舶工学科機械工学科建築工学科情報工学科生物工学科宇宙工学科 物理学部 物理学科数学科宇宙物理学科気象学科海洋物理学科 化学部 化学科応用化学科 生物学部 生物学科海洋生物学科分類学科遺伝学科 政治経済学部 政治学科経済学科 教育学部 言語教育学科科学教育学科社会教育学科外国語教育学科美術教育学科宗教教育学科心理教育学科 大学制度 帝国の大学は極めて数が少なく、大学進学率も決して高くないがその代わりに大学の学生は概して極めて優秀とされる。大学内では自治意識の高い自由な風潮が強く、それ故に優秀にも拘わらず問題行動の多い大学もある。 大学生の平均的な能力は世界的に高いが、そんなファ帝の大学生でも「彼処だけは異常だ」と口を揃えるのがマーズカクス帝国大学である。国家戦略に大きく影響を及ぼすマーズカクス帝大だけは他の大学と試験方式から校風に至るまで徹底して異なり、いわゆる天才、それも生半可でない者達の集まりである。 大学入試制度 KDJTが全大学共通の一次試験である。私立大学にも全ての入試方式において本試験を使用することが義務付けられている。 制限時間は無く、回答時間が記録され試験結果の導出に使用される。 科目 方式 問数 配点 現代国語Majiad Fathir 短答記述長文記述 462 1問2点*46問1問4点*2問 計48問100点 古典Xaedho Fathir 短答記述長文記述 481 1問2点*48問1問4点*1問 計49問100点 代数学 記述 54 1問1点*20問、1問2点*30問、1問5点*4問 計54問100点 幾何学 記述 22 1問2点*20問、1問5点*2問 計22問50点 解析学 記述 22 1問2点*20問、1問5点*2問 計22問50点 社会政治学 短答記述 50 1問2点*50問 計50問100点 歴史学 短答記述 50 1問2点*50問 計50問100点 物理学 短答記述 54 1問1点*20問、1問2点*30問、1問5点*4問 計54問100点 化学 短答記述 22 1問2点*20問、1問5点*2問 計22問50点 生物学 短答記述 22 1問2点*20問、1問5点*2問 計22問50点 課外活動報告 長文記述 1 1問*100点 主要な大学一覧 マーズカクス帝国大学 歴史上初の近代的大学であり、世界大学番付のトップである。他の大学とは決定的に異なり、IQテスト然とした適性検査を始め各分野で極めて難易度の高い入学試験が科せられる為世界基準での参考偏差値が89を超える異常な値となっている。極めて入学難易度が高い故にここに入学できる者ならば官公庁や一流企業へ入るのも造作もないと言われているが、一般的な受験生からはあまりにも遠い世界であるが為にその実態はあまり知られていない。特に理工系学科ではレーレフェムタ研究室の軍事研究などを始めファタ・モルガナ国家との結びつきが極めて強く、それ故にここに入れる程に能力の高い人材であればどんなに社会性に乏しくても研究室に残るという形で国家お抱えの人材になれる。 ラーヴィランス工科大学 国内では極めて希少な私立大学の一角であり、理工学分野で世界的な権威を持つ。反骨精神豊かな校風で、核開発サークルやマーズカクス帝大校舎爆破サークルの創設など学生による厄介ないたずらが後を絶たない。 レムカクス帝国大学 東部の大都市レムカクスに所在する帝国大学で、同都市の外れに非常に大規模なキャンパスを構える。実際に大学システムの実証実験として設立された経緯があり、制度の上でも都市学園とされている。キャンパス近郊にある陸戦隊の演習場からの騒音被害に耐えかねた結果、学生たちが結託しエアソフトガンを持って演習場に侵攻したことがある(レムカクス演習場侵入事件)。 マーズカクス高等法律学校 マーズカクスにある高等法律学校。その歴史は大学より遥かに古く、紀元前1600年代まで遡る。現代においても宗教法学界で最も権威ある機関の一角。
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ディセプティコン・ゼロ back / next 幾度目かの爆発は、それまでに無いほど巨大なものだった。 周囲を白煙が埋め尽くし、其処彼処から咳き込む声が聴こえる。 そしてルイズのみならず、コルベール、周囲の生徒達の視界をも閉ざした煙が晴れた時、全員が眼を疑った。 其処にあったのは、巨大な鉄の塊。 30メイルはあろうかという胴体の上に細長く先端に向かって僅かにしなる6枚の板が付いており、更に尾の先にも似たような4枚の板が垂直方向に付いている。 幅は約9メイル、高さも4メイル前後はあろうか。 とにかく、巨大としか言い様の無い物体が鎮座していた。 呆然とする生徒達を他所に、一人我に返ったコルベールはどこか興奮気味にそれの周囲を回り出す。 「これは・・・・・・!」 一通りの観察を終えた彼はルイズへと向き直り、内心の興奮そのままに叫ぶ。 「ミス・ヴァリエール! これは素晴らしい発見ですぞ! この物体は我々の未知の技術で作られている!」 有頂天になって声高に語るコルベール。 周囲の生徒達は、その言葉にざわつき始める。 一方、召喚主であるルイズは、目前の鉄塊を呆然と見上げていた。 (なに、これ? こんな巨大な・・・・・・使い魔? これを、私が?) どうやら、自分がこれほど巨大な使い魔を喚んだ事が信じられないらしい。 やがて我に返った彼女は見る見る内に笑みを浮かべ、使い魔へと歩み寄った。 「ミス・ヴァリエール! 早く契約の儀式を! 先ずは材質の調査にあのガラスらしき物の分析、嗚呼、この鉄の板の用途も・・・・・・」 最早いてもたってもいられないらしく儀式を急かすコルベールを尻目に、ルイズは契約の言葉を紡ぐ。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ・・・・・・」 何処が頭かは分からない為、先端の部分に口付ける。 胴体の横、尾の辺りに描かれた文字らしき物の側にルーンが刻まれ、此処に契約の儀式は成った。 ・・・・・・しかし。 「・・・・・・どうして・・・・・・どうして何も起こらないのよ!」 鉄塊は何の反応も返さず、只其処に鎮座しているだけであった。 ゼロのルイズが召喚した得体の知れない物体にどこか緊張気味であった周囲も、結局はただのガラクタだと思い至り、口々にルイズに対する嘲笑を浴びせ始めた。 「脅かすな『ゼロのルイズ』! ただの屑鉄じゃないか!」 「結局ゼロはゼロよね! お笑いだわ!」 それらの心無い罵倒に、ルイズは俯いて唇を噛み締める。 血が滲み、やがてそれが糸を引く頃になっても、嘲笑と侮蔑の声は止まなかった。 ・・・・・・やがて、コルベールが奇妙なルーンの写しを取り終え、生徒達はレビテーションで帰途に着く。 またもや嘲笑を浴びせられ、一人取り残されたルイズは大粒の涙を零した。 あんなに頑張ったのに。 あいつらを見返してやるんだと、そう誓ったのに。 結局、私は『ゼロ』のルイズなんだ。 絶望に沈みながらも、ルイズはとぼとぼと歩き出す。 だがその時、背後から何かが開くような金属音が響いた。 「え・・・・・・?」 振り返ったルイズの眼に入ったのは、鉄の塊の横に開いた人が潜れそうなほどの穴。 呆然とするルイズを催促するかのように、中で赤いランプが灯った。 「入れって・・・・・・言ってるの?」 涙に歪む視界の中で、物言わぬ鉄塊が『そうだ』とでも言うかのようにガラスの内側にも光を灯す。 ルイズはおっかなびっくり穴に近付き、それが扉なのだと理解した。 薄暗い内部を抜け、ガラス張りの狭い空間に入ったルイズは、何となくそこにあった座席へと腰を下ろす。 そして思ったよりも高い視界に妙な感心を抱いていると、後方で扉が閉じられる音が響いた。 「な、何!?」 同時に、慌てるルイズの内心など知らぬとでも言うかのように、更に耳障りな騒音が響きだした。 段々と甲高くなってゆくそれにルイズの不安が頂点に達しかけた頃、彼女は頭上の鉄の板が回転している事に気が付く。 そして回転の速度が眼で追えない程にまでなった頃、ルイズの視界がふわりと浮き上がった。 ルイズを除く生徒達は学院へと向け、ある者はレビテーションで、またある者は己の召喚した使い魔の背に乗って帰る途中であった。 誰もがルイズの事など忘れ自身の使い魔の自慢をし合う中、キュルケは己の親友タバサへと語りかけた。 「それにしてもルイズの使い魔・・・・・・一体何だったのかしらね。ミスタ・コルベールは未知の技術がどうとか言ってたけど・・・・・・」 「興味無い」 話を振るも、心底興味なさ気に己の風竜へと目を落とすタバサに、キュルケは肩を竦めた。 斯く言う彼女も本心から疑問に思って話を振った訳ではなく、単に話題が無かったからこそ口にしたに過ぎない。 彼女達・・・・・・否、コルベールを除くハルケギニアの人間達にとって、あの鉄の塊は単なる屑鉄に過ぎないのだ。 (全く、せめて生き物を召喚できればねぇ・・・・・・) 仇敵と称した玩具が見せた打ちひしがれた姿を思い出し、深い溜息を吐くキュルケ。 そんな彼女と、その姿を首を傾げて見ていたタバサ、そしてその周囲を飛ぶ全員の耳に奇妙な重低音が飛び込んできたのは、学院まであと僅かという所であった。 「・・・・・・?」 「何? この音」 音の出所を探そうとメイジ達が視線を彷徨わせている間にも、音は徐々に、徐々にその大きさを増してゆく。 リズミカルに鳴り響く重低音は腹の底に響き、使い魔達の中には聴いた事の無いその音に怯え出すものも居た。 そして、一人のメイジがそれに気付いた。 「上だ!」 その声に頭上を見上げ、コルベールを含めた全員が唖然とした。 あの鉄塊、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの使い魔が、轟音と共に凄まじい速さで彼等を追い抜いていったのだから。 ルイズが使い魔の内部に乗り、級友達をいとも簡単に追い抜いてから数分後。 彼女は乗り込んだ時と同様、誘導されるようにして外部へと帰還を果たした。 頭上で回転する鉄の板から巻き起こる風に翻弄されつつも、少し離れた位置から己の使い魔の全貌を見る。 つい十数分前までは、ただの鉄塊にしか見えなかった。 しかし今、自分の目に移り込むそれは何よりも力強く、安心感に満ち、そして頼りになる存在。 未知の原理で動く、不思議な鉄の鳥。 私の、使い魔。 本来であればルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールという少女は、その高すぎる貴族としてのプライドと魔法を使えない事から来る劣等感と相俟って、素直に礼を言えるような人物ではない。 しかしこの瞬間、彼女の目の前には物言わぬ鉄の塊しか存在しない。 その事実が彼女の中の壁を取り払い、素直に言葉を紡ぐ事が出来た。 「・・・・・・ありがと」 そう言って、颯爽と身を翻して教室へと向かうルイズ。 その顔は先程までの鬱々としたものではなく、微かな笑みさえ浮かぶ希望に満ちた顔だった。 ルイズは知らない。 己の使い魔が、異世界『地球』にて『Sikorsky MH-53 Pave Low』という名で製造されていた軍用機であると。 本来のそれには、自己意識など備わってはいないという事を。 無人のコックピットに、少女の声が響く。 同時に、この世界のものではない奇妙な言語が、それと重なるようにして響き渡った。 『ありがと』 《Thank you》 『ありがと』 《Thank you》 『ありがと』 《Thank you》 やがて、その奇妙な合唱は他の言葉にも及び、複数の単語が混然と機内に木霊する。 『これは素晴らしい発見ですぞ!』 《This is a brilliant discovery!》 『どうして』 《Why?》 『ただの鉄屑じゃないか!』 《Isn t it steel scrap?》 『お笑いだわ!』 《It s funny!》 記録された音声だけでは飽き足らず学院中の声を拾い、『分析』は更に速度を増す。 そして唐突に声が止み、コックピット内に不気味な、それでいて流暢な『ハルケギニア言語』で、人間には到底発声できない合成音声が響き渡った。 『ブラックアウト、状況開始。ディセプティコンに栄光あれ』 back / next
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531: 加賀 :2020/03/08(日) 14 33 06 HOST softbank126209030131.bbtec.net 「遅くなって申し訳ない。私が気が付いたのはノモンハンの事後処理中だった」 神楽坂にある小さな料亭で集まった橋本達。その今回の中心は新たに此方側に舞い戻った杉山元だった。 「杉山さん……ッ」 橋本は涙を流しながら杉山と握手をする。 「樺太の時は申し訳ありませんでした。私の艦隊がもう少し早く樺太に来ていたら……」 「橋本さん、歴史にifはありません。あの時は彼処が私の死に場所だったんですよ」 涙を流しながら謝る橋本に杉山はにこやかに話す。 「それに私は今回、早くに憑依したから今度こそ日本の戦車を活躍させる場所を用意する使命があります」 「頼みます杉山さん」 「はい」 橋本の言葉に杉山は力強く頷いたのである。この時、杉山は軍事参議官であり軍事参議院を通して陛下に上奏した。 「此度の戦、関東軍司令部が参謀本部の命令を無視して暴走をしたのが全ての始まりであります。よって関東軍司令部は全て一新する必要があります。また、軍を指揮した者は厳重に処罰するべきです。此度の戦、末端の兵士や佐官級に責任はありません」 杉山が態度を変えた主張に陛下は驚きつつも杉山の上奏にはほぼ賛同していた。このため沢田茂参謀本部次長が考案した人事処分案は修正を受けて再度上奏、陛下も認可したのである。 処分者(将官) 関東軍司令官 植田大将 解任 予備役 同参謀長 磯谷中将 解任 予備役 第六軍司令官 萩州中将 予備役 第23師団長 小松原中将 予備役。暴行事件で入院中に病死 他史実通り。 なお、参謀の中で一人だけ銃殺刑に処されたのがいた。つじーんこと辻政信である。参謀の末席だった辻がノモンハン戦を主導し、事実上の関東軍司令官とまで言われた事情は参謀本部も承知していた。だが辻を擁護する笠原少将や板垣元陸相らがいる事で辻が一旦は救われると思われたが杉山は容赦しなかった。 「歩兵連隊長やらに自決勧告を行い自決させのうのうと生きているのはそれでも陸軍軍人のすべき事ではない」 陛下の名の下で処罰は参謀や将官級と宣言していたが、それでも歩兵第72連隊長の酒井大佐ら数名は責任を感じて自決していた。なお、第23師団捜索隊の井置中佐も当初は自決をしようとしていたがフイ高地で戦闘を共にした玉田大佐の説得で自決をやめている者もいる。ちなみに井置中佐が自決しなかった事に小松原中将は玉田大佐の下に怒鳴りこんだが逆に玉田大佐が小松原中将に右ストレートを叩き込み「自分の不味い指導を人に押し付けるんじゃねぇぞこの屑野郎!!」と全治一ヶ月の病院送りにして杉山の頭を悩ませている。 またこの暴行事件に関してはノモンハン事件に参加した将兵共々は玉田大佐の擁護に回っていた。 「玉田大佐のチハ車がいなかったら俺達はノモンハンで戦死していたぞ!!」 「神様仏様チハ様だな」 「てかチニ車を生産の許可出した奴が死んでこいよな」 実際にチニ車を生産させた某大佐は第二次ノモンハン事件で名誉の戦死をしており彼等を溜飲は下げさせたがチハ車の増産と改良型の開発が直ぐに開始された。この時、チハの弱点は砲弾の定数と大型の空冷ディーゼルエンジンだった。空冷ディーゼルエンジンについては直ぐに目処がつきそうだった。 和製T-34を作ろうとして追い出された技術者達が民間企業に行っていた事もあり統制型百式発動機は昭和15年から量産の予定だった。この百式発動機をチハ改に搭載する予定である。 また、ノモンハンは航空戦にも多大な影響を及ぼしていた。 「次期新型戦闘機には強力な航空無線機を搭載する事を具申する。また、防弾装備を搭載し7.7ミリ以上の機銃を搭載する事も具申する」 ノモンハンで航空戦を展開した第三連合航空隊からの報告で敵戦闘機ーーI-16にはパイロットを守る装甲板が取り付けられておりまた味方が連携を取ろうにも無線機が弱いのではどうにもならなかったのである。 「三菱が開発中の新型戦闘機については今言った具申点を考慮して開発中であります」 532: 加賀 :2020/03/08(日) 14 34 19 HOST softbank126209030131.bbtec.net 航本の会議に参加した堀越二朗はそう断言した。堀越が開発していた十二試戦闘機は防弾装備、強力な航空無線機を搭載を当初から考慮していたのである。そしてそのための栄発動機の改良型、水メタノール噴射装置付を搭載した栄三二型が栄シリーズにおける零戦が堀越の第一の通過点だった。 更に海軍は専用偵察機の開発を推し進める事になる。ノモンハンで陸軍航空隊の九七式司令部偵察機を筆頭に活躍していた。高低差に乏しく目立つランドマークもないノモンハンの地形にあっては航空偵察は重要であり報告を受けた近藤達も海軍独自の艦隊偵察機の保有を主張する事になる。 この主張を受けて海軍は中島飛行機に艦偵の開発ーー十五試艦上偵察機ーー後の『彩雲』開発に取り組む事になる。 そして1939年9月1日、ナチス・ドイツはポーランドへ侵攻を開始した。第二次世界大戦の勃発である。 「遂に始まったか……」 「我々はまだ二年の猶予はありますが何処までやれるかが問題です」 10月下旬に集まった会合で橋本らは話し合う。 「是が非でも海上護衛総隊の創設は必要です」 「ん。宮様には強く具申しているが……中々頷かん強情者だよ」 10月21日に軍令部次長に就任した近藤は、就任当初から宮様に海上護衛総隊の創設を強く具申していた。 「日米開戦、やるなら大いに結構。だがその前に南方から内地へ運ぶ物資を護衛する護衛艦隊が数個必要です」 「しかしね……君が主張する艦艇を根刮ぎ取られては艦隊も活動出来んよ」 近藤は海上護衛総隊創設に三個水雷戦隊の導入を主張していた。 「私が主張するのは三、五、六水戦です。つまりは旧式艦艇です。それくらいの艦艇を投入しないと船団は護衛出来ません。第一次大戦時、地中海の二特は何の為に派遣されたのですか?」 「……新見君のかね?」 「はい、新見少将が折角纏めてくれた報告書を我々は彼を異端児扱いしてこの様です」 新型のソナーや爆雷は以前開発中だった。 「……分かった。艦艇については一旦は待ってもらいたい。GFと協議する必要がある。だが司令部については先に創設しよう」 「御英断、感謝します」 宮様の言葉に近藤は頭を下げたのである。1939年12月1日付で横須賀鎮守府の一角を借りて海上護衛総司令部が発足したのである。司令長官には第三遣支艦隊司令長官の野村中将が兼任する事となった。三遣支艦隊は十二戦隊と21水雷隊を率いていたので一旦はこの形となったのである。 そして翌年、1940年の幕が開けた。この頃から対空演習の機会が増やされ各艦艇の艦長達は航空機の有効性とその対処に苦心する事になる。 「『筑摩』に25ミリの単装か。良いじゃないか」 『筑摩』艦長に就任していた橋本は対空火器の増設として25ミリ単装機銃の開発を具申していた。近藤らも対空火器ーー特にスウェーデンのボフォース40ミリ機銃の取得を目指していた。だが、この行動に目をつけたのがイギリスだった。ワシントン・ロンドン海軍条約から撤退した日本を敵と認識して取得交渉を妨害、結局は物別れとさせる事に成功させるのである。 「クソ、腹黒紳士め」 「やはりマレー戦線で捕獲するしかないですか」 「陸さんはラインメタルの37ミリをライセンス生産してますけど、それにしますか?」 「いや、40ミリのが有効だからな。そっちしかあるまい。一先ずは25ミリの単装を搭載して航空機の妨害に徹する」 7月15日、大陸戦線の第二連合航空隊にある戦闘機13機が進出した。 「こいつが三菱の最新鋭戦闘機か」 横山保大尉と進藤三郎大尉は送られてきた戦闘機ーー十二試艦上戦闘機を見つめる。 「美しい機体だな」 「あぁ。こいつで中国空軍機を撃滅してやる」 二人は意気揚々と頷きあったのである。 533: 加賀 :2020/03/08(日) 14 36 57 HOST softbank126209030131.bbtec.net つじーん、満州に響く銃声 玉田、殴る。玉田はこれが原因で戦車学校に一時的に左遷 彩雲、開発へ 護衛総隊創設 零戦、大陸へ ちなみにこの零戦は史実二二型です
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542: ナイ神父MK-2 :2016/07/14(木) 01 35 52 憂鬱日本大陸化ネタ 1942年編 其の9 1943年11月、ドイツ及び枢軸同盟各国は敵対しているソ連へとイギリスが支援を行っているとして連合国へと 宣戦を布告、英国への攻撃を開始しした。戦いが開始されるとドイツは日本から齎された戦略爆撃機B-29を戦線へと投入し更に、 独仏の海軍を中心とした艦隊によってイギリス本土の各港は砲撃と雷撃、機雷によって其の機能を完全に麻痺する事と成る。 勿論、ドイツがソ連より先に連合を狙ってきたことにこそ驚いたイギリスであったが、日本との戦争中と言う事もあり、直ぐに 対空防衛網を用意し、ドイツの爆撃機に備えた。しかし、枢軸国の猛攻はイギリスの予想を遥かに超える苛烈さとなり イギリス軍を苦戦させる。 「不味い!テンペストだとあの爆撃機に追いつけない!」 「スピットファイヤはどうした!?」 「的の戦闘機の足止めで精一杯だ!」 「きゅ、九六式、九六式は如何したんだ!有れさえあればあんな爆撃機に・・・」 「政府のバカ共がアメリカに渡して数が無いんだ!!」 「ああ、ロンドンが・・・」 「くそ、政府が日本を裏切る様な真似をしなければクラウツ共の航空機なんぞ」 空軍が必死の防空戦追われている頃、北アイルランドに対してドイツとの同盟を表明したアイルランド共和国軍が攻撃を開始していた。 主力は対ソ連戦では既に威力不足と成っていたⅢ号戦車が主力であったが、Ⅲ号突撃砲や長砲身のⅣ号戦車等も少数ながら投入され イギリスの戦車の大きな脅威となっている。 そして第一陣の攻勢を凌ぎ切ったイギリスに広がっているのは見るも無残な光景であった、被害状況を聞くハリファックスの顔も 避難している地下壕が暗い事も助長して、幽霊のように青白く見える。 「被害はどうなっている?」 「・・・ロンドンでは多数の建物が倒壊、道路や橋も爆撃機で通行不可能な物が多く一部では火災が今も続いています。市民に関しては避難こそ間に合いましたが少なくない人数 が犠牲なっています。」 「空軍から報告させて頂きます。前日まで続いた爆撃からの防衛によって既に主力であるテンペストやスピットファイヤは既に戦闘開始前の3割にまで数を減らしています。 現状は複葉機や試作機も動員して部隊の編成に当っていますが、次にドイツが攻勢に出れば航空隊の壊滅は必死かと・・・」 「・・・海軍は先の艦隊襲撃で殆どの艦が港湾内で雷撃を受けて出航は不可能、空軍は主力が壊滅か・・・陸軍は?」 「陸軍は対空兵器や北アイルランドの守備隊こそ失いましたが本土分の兵力に関しては問題はありません。民兵も含め 現在戦力を拡充中です。」 「仮に潜水艦を使用したとして陛下の脱出は可能か?」 「不可能です・・・アメリカ海軍は現在イタリア海軍に牽制され身動きが取れません、また、ドイツとフランスが大西洋へ出る為の港湾へ駆逐艦を派遣して対潜警戒を 行って居います。」 「此処まで、か・・・此れが裏切り者の末路と言う事か・・・」 1944年2月、大英帝国は日本及び枢軸へと降伏を宣言、降伏後は暫定的に枢軸の占領軍によって統治される事となる。 543: ナイ神父MK-2 :2016/07/14(木) 01 36 30 イギリスが脱落する一方で、アメリカでは先の海軍の機密情報が漏れた疑いに加えて、今度は陸航空隊から機密が漏れたとして 騒ぎが更に多きくなっていた。そして、其の混乱は造船所に加えてボーイングが有する工場の工員等から話が広まり市民にも広まっていく。 此処まで来て何が起きたかと言えば、簡単に言ってしまえば魔女狩りである。 「黒人や黄色人種共が情報を売ったんだ!」 「いや、ユダヤ人に決まってる!きっと金の為に受け入れた俺達を裏切ったんだ!」 「ロシア人だって怪しい!きっと国を取り戻してやるとか言われて騙されたに決まっている。」 「外国人を追い出せ!」 「俺達のアメリカを守るんだ!」 一旦火が付いてしまえば後は熱病の様に運動が広まっていった、被害に有ったのは日系人や日本人を含む黄色人種や元々差別的に見られていた 黒人、此れ加えてユダヤ人系の移民や難民達も標的となり各地で弾圧や破壊が起っていた。ワシントンでは日本から 送られた桜の木が軒並み切り倒され、ニューヨークではユダヤ人の経営していた店がユダヤ人ごと焼かれると言う自体まで発生し流石に看過しきれなくなった 政府が鎮圧に乗り出したのだが、運動は更に加速し遂には現状を気にしていられない西海岸を除いたアメリカ全土へと波及した。 この民衆の動きから政府は最終的に差別されている人種の人間を収容所へと送る事を決定した。 そんな混沌としたニューヨークの街中でとある白人の男達が公園の片隅で立ち話をしていた。片方はドイツ系、片方はロシア人と思わしき白人である。 「久しぶりじゃないか、元気にしてたか?」 「ああ、何処も彼処も猿共を追い出せと大騒ぎだよ・・・」 「まあ、何処も大変なのは一緒だろうが聞いたか?『大学の学長』は『ダンスパーティー』の準備をしているそうだぞ」 其の言葉を聴いたドイツ系の男の顔が一瞬強張ったが、すぐさま平静へと戻り会話を続けた。 「へえ、で、誰を誘うんだ?其の『ダンスパーティー』は・・・」 「さあな?『例の金持ち』や『床屋のチャーリー』辺りじゃないか?」 「それは又豪華だな、で何時やるんだよ?」 「まだ準備中だって話しだなやるならきっと『サプライズ』だぞ此れがその『招待券』だ。まあ、そっちの『金髪の上司』によろしく伝えておいてくれ」 「そうか、解かったよそっちの『コート好きの上司』よろしく言ってくれ」 ロシア系の男から渡されたメモを男はしっかりと受け取ると其のまま内ポケットに入れて歩き出し、それを見ていたもう一人の男も街頭人ごみへと消えていった。 この後、枢軸・日本両勢力でアメリカがペストの兵器転用を行っている重要な証拠を入手し、其の対策に負われていく事に成るがそれは又少し時間が経ってからの 話しである。 そんな、大勢の人間の命運を決める重要な話が成されている頃、西海岸では反戦でもが活性化していた。ハワイでの敗戦以降、西海岸周辺は陸軍の増強こそ行っている 物の、海軍戦力は申し訳程度に戦艦1隻と空母2隻が居るだけであった。最初は日本軍が来れば家をトーチカ改造して迎え撃ってやると意気込んでいた住民も時が経つに 連れて徐々に冷静になり海軍の更なる増援や航空戦力の派遣を求める様になっていた。民衆の信任を受けた州知事も日本軍が来る可能性を説いて増援を願うも 政府や軍の反応は芳しくなく民衆の不安は募る一方であったが、そんな中での強制収容騒ぎである。此処に来て西海岸住民は政府は東や中央の連中の意見ばかりを 重視していると批判が殺到、中央や東の都合で家を焼かれては敵わないとしてデモの規模は拡大していった。 「何が、本土は戦争に巻き込まれないだ!適当なこと抜かしやがって!」 「今の政府は私達西海岸側の住民をまるで捨て駒の様に扱っている!」 「政府はさっさと本土が無事な内に和平を行えー!」 「中央と東だけがアメリカじゃない!俺達だってアメリカ国民なんだ!」 「俺達はおとなしく日本の戦艦に吹き飛ばされれば良いのか!」 相した声は西海岸地域全体へと広がり、此処に来て巨人国家たるアメリカは節々から悲鳴を上げて徐々に崩れ始めていた。そして、日枢によるアメリカへの攻撃が本格化することで 其の動きは拡大し、アメリカ崩壊へとつながって行く事となる。 544: ナイ神父MK-2 :2016/07/14(木) 01 37 28 以上ですWIKIへの転載は自由です。次回から何とかアメリカ本土への攻撃の話しへ移って行きたいと思います。
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227 名前: くとぅるふクロス ◆69.0kY8lhQ [sage] 投稿日: 2007/06/19(火) 12 31 27 絶望の大地に飲み込まれた少女の胸元から重力に反逆する光が迸っている。 泥炭の闇色を切り裂き天さえ貫くその光は理不尽な力を持って空を奪う。 やがて水銀は形ある物に存在を作り変えてゆく。 円の縁を作りだし、鋭さを備えた切っ先が左回りに回転を始める。 時針の時を刻む音が響き混沌と化した場を戻してゆく。 時計の空から水銀が落ちて少女の両手に銀の篭手を造る。 許されざる事象を作り上げた懐中時計を士郎は同級生の胸元に視た。 (あれは何だ……?) イリヤと士郎を包んでいた言語の螺旋は銀を怖れて魔道書へ潜り込む。 絶対的な力を示した神父を上回る神聖なる銀は天の雫となり形を持たず其処彼処に流動している。 「あ、あああああああああああああああぁぁ……」 両手を強奪され、意思を略奪され、非現実的な音声を発しながら、 視点の定まらぬ虚ろな瞳で神父を視認し少女は天空から伸びた銀糸に操られ篭手を振るう。 届くはずのない打撃は銀色の奔流となり神父に襲い掛かる。 今まで必殺の暴力を歯牙にもかけず平然としていた彼は ここに至って初めてリアクションを見せた。 「■■■■■のオナホールがぁあああああ!! アルブレヒトの『メランコリア』よ、不幸を従え無限を廻せ!」 片手を地に着け其処を基点とし朱色の呪いが走ってゆく。 法則性を伴った数秘術は加速しユピテル魔方陣の過程を経て未知の魔法陣へ登り詰める。 陣の中央からソレが隆起し神父を覆い隠す様に1514の■が立ち塞がった。 士郎は何処までも高く、見上げるまでに肥大化した壁を正視出来なかった。 懐にいるイリヤの目蓋を強く抱きしめて身を襲う怖気から耐えようとしても、 耳から聞こえる痛苦と羨望と絶望の声から逃れる事は出来ず視線を向ける。 腐敗した人間達が複雑怪奇に腕や脚を絡ませていた。 ある者は手を他者の口に、別の者は臓腑を癒着させて、顔と顔を融けさせて。 残酷に組み上げられた死者の防壁は慈悲を求める様に蠢いている。 士郎の胸に恐怖や怒りといった感情が浮かび上がる前に銀が壁に激突する。 血煙が噴出し幾多の悲鳴が奏でられ高密度に構築された防壁の大部分を吹き飛ばしてゆく。 脆弱な城を討ち滅ぼす破壊槌が無音の唸りをあげるたびに 人のパーツが彼方此方に飛び散り士郎とイリヤにも襲い掛かる。 高い壁から落ちてくる小腸や濁った血の雨から 懐にいるイリヤを守る様に地に伏せた士郎は無数の人の声に責め立てられる。 『また殺した! 痛ィ…… 助けて助ヶテ』 過去に見た風景と酷似した現実に士郎は囚われそうになる。 学園に充満した血の匂いや人の肉が散乱するという違いはあるが かつて感じた死の予感を彷彿とさせる場を前に脚が震えて意識が遠退きつつある。 無様に這いつくばった士郎の腕の中で少女が身じろぎをした。 己とは違うぬくもりを思い出した彼は視線を向ける。 228 名前: くとぅるふクロス ◆69.0kY8lhQ [sage] 投稿日: 2007/06/19(火) 12 33 31 美しい銀糸の髪は土と血に汚れ、 生気を失った様な輝きの無い瞳に情けない顔をした自分が映っている。 己とは違う命を前に士郎は既視感を感じる。 「ああ、そうか。そうだったのか」 思わず口から洩れた言葉に士郎は唇を歪める。 ようやくわかったのだ。義父の気持ちが。 嬉しいのだ。他者の暖かさがあるという事は。 少女の吐息が優しかった。震えた小さな手が愛おしい。 その姿を胸に焼きつける。身を駆け巡る熱さが心地よい。 この悦びが自分を走らせる力になる。 「自分の身は守れるか?」 「シロウ、無理だよ。あんなのに……」 意思を察したイリヤが士郎に手を伸ばすも、 緩慢な動作と情熱を伴った声によって押し止められてしまう。 「出来なきゃ俺が救われた意味が無いんだ」 告げて立ち上がった士郎は正確な状況を判断する。 空は銀時計に覆われて、そびえ立つ死者の塔が魔方陣の中から無限に湧いてくる。 学園のアイドルである少女が拳を振るうと銀の波動が飛翔し神父に向うも、 鞭の様にしなる死者達の塔が攻撃を阻害し悪意を持って襲い掛からんとしている。 その全てを天空から落下する水銀が牽制しており膠着状態におちいっていた。 つくづく非常識な光景ではある。士郎は今まで見ていた全てを魔術師として視る。 一つほど、試す価値のある事を思い浮かべて実行に移す。 地に刻まれた元は木星魔方陣の数式の一つに意識を集中させる。 数を狂わせれば無限を構成する式に穴を開ける事が出来るかもしれない。 小さな望みを前に士郎は所持していた弓を探すために周囲を見る。 血と内臓と死者で染まったグラウンドでは困難な作業になると思われたが すぐ近くから柔らかく発光する螺旋が破魔弓を持ち上げて空へ向い伸びている。 破魔矢が一本だけ添えられた弓に手を伸ばし、疲労も極まる精神を統一する。 夕方の戦いで枯渇に近い魔力を捻出し、自身のみ強化する。 弦の強度も、矢の速度も、絶望的に足りない。 それでも手の内側を返し弦に当たらぬ様配慮をしながら射出の瞬間を待つ。 背後で小さな声が聴こえた。弓と矢に見知らぬ魔力が付加される。 振り向く事はしなかった。礼は必ず中てる事によって報いろうと決心し、 血液の様に蠢動する魔法陣の一部へ極限まで集中し矢を放つためにイメージを構成する。 229 名前: くとぅるふクロス ◆69.0kY8lhQ [sage] 投稿日: 2007/06/19(火) 12 35 43 魔力の気配を感じた神父が嘲笑いながら痩躯を二人に向けて突進を開始した。 「ロリータと糞餓鬼が……そんなに懲罰が貰いたいならくれてやるわ! 泣いて喜べよマゾヒスト!!」 僅か一歩。 ただそれだけで眼前に凶悪な表情をした神父が口から闇を流しながら迫ってくる。 迫る死そのものを前に士郎は身動きをする暇さえ無く処刑されるはずであった。 士郎の視界が岩によって遮られる。 神父の突撃により凄まじい音をたてて崩れてゆくそれは規格外の石剣であった。 闇より昏い眼を輝かせながら剣を打ち破る悪鬼を前に巨人が立ち塞がり拳を振るう。 凄まじい音をたてながら打ち出された豪腕は神父の胸に当たり、衝撃波を伴って神父を止める。 神父は不愉快そうに舌打ちしながら再び首を刎ねようと 脚を振るうも何処からか黒色短剣が飛び必殺の軌道をかえられてしまう。 片目を瞑った士郎はこの光景を前に身を焦がす熱さを抑えきれず天に向って吼えた。 「うおおおおおお!」 弦の風を切る音が聴こえそれに連動し撃ち出された破魔矢は 直線の軌跡を描きながら素数の一つを直撃する。 魔力と未知の力が鍔迫り合いを始めた。 螺旋が疾る。 背後を振り向けば魔道書の表面から青い牙を生やした口が開き其処から文字が生まれている。 高速に回転した言語が黒と赤の色を混じらせて赤銅色となり矢尻へ吸い込まれてゆく。 破魔矢は極彩色となり、左右に回転しながら素数を陣から弾き飛ばした。 実体さえ伴った素数が地に弾かれる音をたてて崩れ去る。 その刹那、魔方陣の輝きは消失した。 塔は根元から折れて上空から落下する。 殺戮の銀が地に堕ちる骸達を飲み込みながら神父を貫いた。 貫かれた腹から幾何学模様を発生させ、開いた孔に引き摺られる様に内側へ消えてゆく神父。 うつむいた顔からは表情を伺う事は出来ない。その後に続いた言葉に二人は震撼する。 「またな」 猫は視ていた。 A 銀の時空は針を停めて懐中時計へ戻った。(遠坂凛の精神状態:Bad) B 銀の時空は針を停めて懐中時計へ戻った。(遠坂凛の精神状態:Neutral) C 銀の時空は針を停めて懐中時計へ戻った。(遠坂凛の精神状態:Good) 投票結果 A 3 B 5 決定? C 0