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全力で貴方たちを倒す! if√ 2 「まずいな…」荒廃した学園都市の第7学区一角に追い込まれた上条が息絶え絶えに呟いた。体には無数の傷があり、あちこちで出血している。だがまだ生きている。この状況下ではまさに奇跡と言える。御坂達と別れてからの数か月間、まだ残っているであろう学生達を逃がすために戦い続けてたからだ。「そうか…あれからもう何か月も経っているのか……うっ…!」(くそっ!骨を何本かやっちまったか?にしても一方通行のやつ無事かな…)基本的に一方通行と行動を共にしていたのだが、一度包囲されて絶体絶命という時があった。魔術やら超能力がひっきりなしに飛び交う中、無我夢中で包囲網を突破している内にはぐれてしまったのだ。集まろうにも連絡手段がない。と、ふいに視界がぼやけた。(まだ倒れるわけには…、あの約束まだ守れてないだろ!しっかりしろ俺…)気力を振り絞ってなんとか自らを奮い立たせる。(にしてもいったいいつまで続くんだこの戦い…早く終わらせなくちゃな)同じ頃第23学区の空港のロビー「ぐわあああああああ」断末魔の叫び声を上げ一人また一人倒れた。最後まで残った研究者は目の前の光景が信じられなかった。先ほどまでは絶対的優位に立っていたのに今は逆に追いつめられているからだ。床には泡をふいて気絶している仲間があちらこちらに転がっている。(そんな馬鹿な!対策はしっかりしてきたはずだぞ!!なぜキャパシティーダウンが効かない!?)「知りたいか?キャパシティーダウンってのは所詮音でしかない。なら話は簡単でよォ、その音の疎密波を反射しちまえば俺には届かないってわけだァ」「だとしてもここまで早く解析されるものじゃ…」「オマエ、誰を敵に回してんのか理解は追いついてんのかァ?」「はっ…やめ、たすk」「とりあえず死体決定だクソ野郎」1分後、誰もいなくなったロビーには動かなくなった人間が一人増え、静けさが戻った。同じ頃第10学区の広場「はあああああああああ!」「七閃!!」もう何人倒したことか。いくら倒しても、敵の数が減ることはない。むしろ増えているのではないか。このままではジリ貧だと判断した神裂は、天草式に一度引くと伝えた。「キリがありません。ここは一旦引きましょう!」「今のプリエステスの言葉を全員聞いてたのよな!1、2、3の合図で逃げるぞ!」「「「「「「了解!!!」」」」」」「行くぞ……1、2の3。今だ!」突如彼らの周りをまばゆい光が包み込んだ。ようやく目が慣れてきたころには、人っ子一人もいなかった。今までの場所から10km離れた場所にやってきた天草式はようやく一息つくことができた。「プリエステス、どうしますか?」「この状況からするとこれ以上戦うのは無理そうですね…」「仲間が何人か怪我を負いましたからね…」元々天草式を含めたイギリス清教の援軍は、本来なら今いる人数の2倍はいたはずだった。それがこの1カ月の戦いで半分が怪我などでイギリスへ戻ったのだ。一向に減らないどころか、ますます勢力を増している敵の前になす術はなく、こちらの負傷者が増えるばかりだった。「待ってください!そしたらあの人はどうするんですか!!」「あの人を見捨てるなんてそんなことはできません!私一人でもあの人を助けに行きます!!」「いい加減にしろ、五和!ちゃんと現実を見ろ!お前さん一人で何ができる!」「だけど建宮さん、このままじゃあの人が、あの人が…」「分かってる。いつも我々は上条当麻に助けられっぱなしだったからな。だから今回は我の番だ。」「絶対上条当麻を助ける!そのためにも今は生き残ることを考えろ!」「う、うっううううう」片想いの少年を助けることさえできない己の未熟さが悔しく、涙を流す少女の嗚咽があたりに響いた。学園都市ゲート付近「噂には聞いてたがここまでとはな」「あの男が守りたがっていた世界を壊させるわけにはいかない。俺様はまだあの男から何か学べるかもしれない」「別に私は借りを返すだけだ。貸しをつくったままだと気持ち悪いからな。」「どっちが多く倒せるか勝負しないか?」「望むところである。良い酒用意しとけよ」「その賭け、俺も混ぜてくれよ。家だとアイツが全然飲ませてくれなくてさ」「何か言ったかこのばか野郎。また小屋で三角木馬を味わいたいのか」あらゆる点で異なる7人が集う。たった1人の少年のために。 「上条当麻はまだ見つからないのか!」「はい、全力で探しているのですが…」「言い訳はいい。何が何でも探し出せ!」「お前、あの男を見つけたら、どうするつもりだ?」「殺すに決まってるだr…誰だ!?」振り向くと、肩から3本目の腕を召喚させてるやつがいた。「俺か?俺様は右方のフィアンマ」「右方のフィアンマ…アイツか!!なぜ生きている?なぜここにいる?」「決まってんだろ。あの男の力になりにきた。ここにいるやつら全員そうだぜ」「な…?」「左から前方のヴェント、後方のアックア、バードウェイ、オッレルス、シルビア、騎士団長」「なかなか豪華なメンバーがそろったろ。国も思想も異なるやつらがあの男のために集結したんだ。」「そんな男を殺させるわけにはいかない」学園都市外のある街「御坂さん、帰りにカラオケ行かない?男子も来るよ!」「えーっと…ごめん、今回はパス」「そうなの?残念ー。御坂さん男子に結構人気あるんだよ?」「転校してきて、まだ半年なのにもう告白された回数が3桁に突入したって噂もあるよね」「なのに御坂さん、全部断っちゃって。ねえねえ誰か他に好きな人でもいるの?」「うん、いるよ。今もあのなかで戦っているの。アイツが帰ってくるまで私何年でも、何十年でも待つって約束したの」「御坂さん…その人帰ってくるといいね」「うん…」第13学区「あァ?なんだアレ?」「おーおーおー。久しぶりだな一方通行、ハワイでの一件ぶりか?」「そう言うてめぇはバードウェイ。何しに来やがったァ」「別にお前らの敵じゃない。少なくとも今回はな…」「あの少年を助けるために来たのである」「?あァヒーローのことか」「状況はどうなんだ?」「最悪だぜェ。いくら倒しても減らない。ジリ貧だなァ。お前らが来たところで戦力になるのか?」「言っとくがこいつら私以上の化け物揃いだぞ。お前も瞬殺されるぞ」「チッ、絶対ヒーローを助け出せ」「もちろん、そのために来たのだからな」ザッ「そこにいるのは誰ですか!?」「!!お前ら天草式ではないか」「騎士団長!?後方のアックア、オッレルス…」「何なんですかこのメンバーは…」「お前らと同じだよ。上条当麻はそっちにいないのか?」「捜索はしているのですが、未だに…」「んじゃあ、敵さんを倒しつつ、アイツを探すとしますか。」「おい!!ここにいるぞ!!」「聖人とかいるぞ!こいつらを倒せば報酬たんまりもらえるぞ!」「見つかりましたね…ここは私が!」「私が行くよ。そのほうが簡単で早いだろ」「なんだ、このくそ女!気持ちわりい装飾品身に付けやがって」「まずはこの女からぶっ殺せ!」「そう思った時点でお前の負けだよ」「なにほざいて…んd」男は倒れ、昏睡状態に陥った。「はい終了。とっととこんなつまらない芝居幕引くぞ」 第7学区上条は今走っている。敵の魔の手から逃れるために。止まればそこで終わり。先ほどからカラフルな閃光やらが飛んでくる。(そういや、昔こんなことあったな。追ってくるのは美琴だったけど)(こんなところで死んじまったら、俺を追いかけまわしてた美琴に申し訳ないだろ!)上条は向きを変えて、敵の方へ走って行った。「お前らの攻撃なんかアイツに比べれば大したことないんだよおお!」飛んでくる閃光を効率よく打ち消し、上条は敵を殴り倒す。ふと辺りを見渡せば、美琴に本気の電撃を受けたあの鉄橋まで来ていた。(この鉄橋にはいろいろ思い出があるんだよな…会いたいな美琴)感傷に浸っていたら、肩に激痛が走った。「だーから、言ったのに。こいつにはこういう銃が一番効果的なんだって」「上条当麻、お前はもう逃げられない…ここでおとなしく死んどけ」どこから現れたのか、銃を手にしている10人の傭兵が上条の周りを取り囲んでいる。(万事休すか、俺はここで死ぬのか…)学園都市外 とある街喫茶店「はっ!アイツ今!」「どうなさいましたの、お姉さま?」「アイツが今危ない!なんか感じたの!」「気のせいではないんですか、御坂さん?」「ううん、間違いない。アイツ今死にかけてる…」prrrr「はい、御坂です」『あっ、短髪?今なんかとうまが危ないような気がして…』「アンタも感じた!?」『うん、占いをしてたら、急に皿が全部割れたんだよ』「…」『ねえ短髪、何かできないかなとうまのために』「私たちがあそこに行ったってアイツの足手まといになるだけ…私たちにできるのはアイツが…当麻が無事に帰ってくることを祈るだけなの」『分かったんだよ。私はシスターなんだからとうまの無事を祈るんだよ』会話が終わり、美琴は電話を切った。(当麻、お願いだから無事に帰ってきて…)黒子、佐天、初春はただその姿を眺めることしかできなかった。
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美琴「やったーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」 しかし上条当麻の不幸(?)をなめるでない。 ドカーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!! 当琴「「何!!」」 いきなりドアが吹っ飛んだ。そのふっとばした元凶が… 五和「当麻さん久しぶりです。そして御坂美琴さん…死ねえええええええええええええええええええ!!」 美琴「ア、アンタあの時の!!」 当麻「今の言葉どういうことだ!!説明しろ!!」 こんな時でも自分のことを考えてくれている当麻に、美琴は嬉しかった。 五和「説明しろと言われましても…言葉のとおりです。まあ簡単にいいますと当麻さんを賭けて勝負しろとそこの世間知らずな貧乳中学生に挑戦を挑んでいたんです。」 美琴「ひ、貧乳って!!ちょっとアンタね!!」 当麻「やめとけ美琴、それにお前は胸が小さくても魅力的だぞ。」 美琴「当麻…。」 当麻「美琴…。」 チュッ 二人はこんな時にもかかわらず、二人のキスの時間を楽しんでいた。 もちろん大人のキスで…。 五和「不本意ながら慣れてしまいましたので………そういうことなら当麻さん、あなたも消えてしまえぇぇええええええええええええええ!!!!!!!!!!」 上条「やめろぉぉおおおおおおおお!!!!!!」 五和の魔術攻撃は上条の右手によって無効化される。がその余波の爆風によって上条の部屋は完膚なきまでに破壊されていく。 「「「「「「なんじゃこりゃゃああぁああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」 当然隣の部屋も無事では済まされない。 今のは壁を吹き飛ばされた土御門宅にいた 土御門元春・白雪月夜・白井黒子・青髪ピアス・打ち止め・一方通行の声である。 一方「魔術ってチートすぎじゃねェのかァ!!!???」 土御門「こんな連絡は受けてにゃいにゃー!!!」 白井「おっ、お姉さまぁあああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」 白雪「うわーっ!!これってすごくない?」 打ち止め「この状況で落ち着いてるあなたの方がすごいよっ!!ってミサカはミサカは突っ込んでみたりっ!!!」 白雪「とりあえず、防壁でも作るかー。とりゃーっ!!!」 土御門「月夜っ!!雪の防壁の頑丈さは知ってるけど五和のはそんなんじゃ無理だーっ!!!」 白雪「じゃあどーすんの?」 土御門「総員退避――――っ!!!!!!!!」 青ピ「白井さんも死にたくなけりゃこっち来いっ!!!!!」そう言って彼は一人残ろうとしていた白井の首根っこを掴む 黒子「おねーさまーーっ!!!!!!!!!」 上条「ぜぇ、ぜぇ、美琴、無事か?」 美琴「ええ、当麻は?」 上条「この右手があっからな。」惚れた女を守るにはもってこいの能力だなと思いつつ彼は言う。 五和「さて、お二人さん。辞世は書けましたか??」もうもうとあがる粉塵の中から五和が現れて言う。 上条「だからおめえもいい加減あきらめろッ!!」 五和「まぁ、あなた方お二人の姿を鑑みるに、形勢逆転は無理ですけど、」やけに饒舌である。天草式が見たらそれだけで失禁しているであろう。 五和「私の純情をもてあそんだアナタにも死んでもらいますっ!!」 当麻「うぎゃあああああああ!!!!!!!!」 その時雷光が走った。正確には美琴のレールガン。 通常人には撃たないそれが五和に向けて正確に打ち放たれた!! 五和「ぐっ、ぎゃあああああああ!!!!!!」 彼女は初速1000メートル/秒の超電磁砲を見事に防いだ。 これだけでもすごい事である。 が、しかし! 生憎コインの持ち合わせがなかった美琴(まあ普通デートに行く時武器を持ってく人はおらんわな。)は手近にあった大きめの金属片(多分五和の攻撃で破壊された電化製品の一部。)重さ約3キロをぶっ放していた。 この重量で初速がコインの時と変わらないというのはすごい事である。まさに「愛は偉大なり」と言ったところであろうか。 ともかく重量があるということはそれだけエネルギーがあるということであり。 結果通常のコインなら無事ですんだはずの五和はまともにふっ飛ばされる結果となった。 当麻「えーーっと。今美琴何飛ばした?」 美琴「分かんないけど……。さすがにまずかったかな?」 当麻「いや、あいつなら問題ねえだろ。」 こちらは上条宅から500メートル離れた地点。 巨大なクレータが開いていた。その爆心地に埋まりこんでいるのは一人の少女。もとい五和。 敗北を喫した五和だが、その目にあるのは涙ではなく決意。 五和「さすが、当麻さんが選んだ彼女。世間知らずなだけでなく破壊力も桁はずれと来ましたか。」科学と言うもののすごさをかみしめる五和。 五和「でも、あきらめたわけじゃありませんよ。」彼女はムクリと身を起こす。 五和「当麻さん、いつかきっとあなたを後悔させてあげますからっ!!!」うわーおっそろしい決意表明です事。 建宮「おーい、五和ー大丈夫なのよねーーーー??」クレータの淵から声がする。 五和「大丈夫でーす。」 浦上「今からロープ下ろすぞー。それと……」浦上はすまなそうに続ける。 「ロンドンへの帰還命令が出たー!!すまんけどー」いいつつ下がるのは本能的にであろう。 五和「わっかりましたー!」 飲み込み&あきらめ(?)の早い五和にポカンとする五和。彼女は思う。 (今は引きますけど、今度会ったらケチョンケチョンのグチャグチャにしてやりますから。御坂美琴。名前は忘れません。)二人が聞いたらおびえるだろうなあとも思った。 そのころ破壊された上条宅では…… 土御門「まあ修理屋呼んだから直るまで晩飯でも食いにでもいくにゃー」 と言う事なので近くのファミレスで夕飯を食べる事になった。 当麻「いやー、俺の方まで払ってくれるなんて助かるよ土御門。やっぱ持つべきものは友達だな!!」 土御門「カミやんには世話になってるからにゃー。日頃のお礼にゃー。」 白雪「日頃って?」 土御門「たいしたことないぜい。」 打ち止め「ミサカはハンバーグ食べるーって決定事項をあなたに伝えてみる!!」 一方通行「なんでンナこというンだよォ。」 打ち止め「だって~あなたとの思い出の味だもの~ってミサカはミサカはあの時の事を思い出してみたり~。」 青ピ「あの時ってなんや~?」 打ち止め「それはね~って痛い!!なにするのってミサカはミサカはあなたに抗議してみたり!!」 一方通行「いったらコロスゾ」 打ち止め「きゃーーあなたがいったらシャレになんない~ってミサカはミサカはあなたを恐れてみる!!」 美琴「黒子、あんたあの青いのとどんな感じになってるの?」 黒子「ど、どんな感じって!!あの殿方とはなんにもありませんの!!」 青ピ「なんの話や~」 黒子「殿方には関係ありませんの!!」バコッ!! 青ピ「なにすんねん!!」 そんなぎゃーぎゃーにぎやかに歩いていく。上条当麻の不幸(?)がまってるのも知らず…。 定員「八名様ですね。それではこちらにどうぞ」 そんなこんなでファミレスに着いた8人そんな中、当麻と美琴によく知ってる声がかけられた。 詩菜「あらあら、当麻さん的にはみんなで夜遅くに食事をするのがいいのかしら?」 美鈴「美琴ちゃんたらーこんな夜遅くに上条君と夜のお食事?」 当琴「「なんでお前がここにいるーーーーーーーーーーーーー!!」」 それは二人の母親がいた。 青ピ「ん?こちらのお二人さんカミやんと御坂はんにそっくりやなー。もしかしてお二人の姉さんなんか?ずいぶんベッピンさんやなー。」 黒子「少なくてもお姉様似の方はお母様ですわ…。」 青打雪「「「マジで!!??」」」 美琴「ちなみに言うと、もう一人は当麻のお母さんよ…。」 青一打黒雪「「「「「うそだ!!」」」」」 当麻「何でそこで全員一致!?てか母さん何でここに!?」 詩菜「いやねぇ、美鈴さんに誘われましてね、そんな理由で許可降りるか心配でしたけどあっさり降りたのよー。ムムム、そちらが美琴さんね。あらら。お母様そっくりで美人ですわぁー。当麻さんにはもったいないくらい。」 白黒一打青土「「「「「「ブッ!!!」」」」」」最後の一文で吹いた。 美鈴「いやだー、美人だなんてぇーっ。詩菜さん御冗談がうまいー。」 土御門「最後の一文スルーかよっ!!??」 青ピ「親公認と来たか……」 美鈴「ンン?間違ってたー?どう見たってバカップルじゃん。」 詩菜「ですよねー。」 上琴「「アンタらに言われたないわっ!!!」」 実際この親たち旦那とのバカップルぶりは伝説となりつつある。 美鈴「ムム、息もぴったりと来たかーっ、で美琴ちゃん」そう言うと娘の手を引っ張ってトイレへ。 美鈴「でさー、告白とかできたわけ?奥手な美琴ちゃんじゃあ無理だろうけどー。」 笑いながら言う。んなことできるわけないとでもいうかのように。
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美琴「やったーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」 しかし上条当麻の不幸(?)をなめるでない。 ドカーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!! 当琴「「何!!」」 いきなりドアが吹っ飛んだ。そのふっとばした元凶が… 五和「当麻さん久しぶりです。そして御坂美琴さん…死ねえええええええええええええええええええ!!」 美琴「ア、アンタあの時の!!」 当麻「今の言葉どういうことだ!!説明しろ!!」 こんな時でも自分のことを考えてくれている当麻に、美琴は嬉しかった。 五和「説明しろと言われましても…言葉のとおりです。まあ簡単にいいますと当麻さんを賭けて勝負しろとそこの世間知らずな貧乳中学生に挑戦を挑んでいたんです。」 美琴「ひ、貧乳って!!ちょっとアンタね!!」 当麻「やめとけ美琴、それにお前は胸が小さくても魅力的だぞ。」 美琴「当麻…。」 当麻「美琴…。」 チュッ 二人はこんな時にもかかわらず、二人のキスの時間を楽しんでいた。 もちろん大人のキスで…。 五和「不本意ながら慣れてしまいましたので………そういうことなら当麻さん、あなたも消えてしまえぇぇええええええええええええええ!!!!!!!!!!」 上条「やめろぉぉおおおおおおおお!!!!!!」 五和の魔術攻撃は上条の右手によって無効化される。がその余波の爆風によって上条の部屋は完膚なきまでに破壊されていく。 「「「「「「なんじゃこりゃゃああぁああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」 当然隣の部屋も無事では済まされない。 今のは壁を吹き飛ばされた土御門宅にいた 土御門元春・白雪月夜・白井黒子・青髪ピアス・打ち止め・一方通行の声である。 一方「魔術ってチートすぎじゃねェのかァ!!!???」 土御門「こんな連絡は受けてにゃいにゃー!!!」 白井「おっ、お姉さまぁあああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」 白雪「うわーっ!!これってすごくない?」 打ち止め「この状況で落ち着いてるあなたの方がすごいよっ!!ってミサカはミサカは突っ込んでみたりっ!!!」 白雪「とりあえず、防壁でも作るかー。とりゃーっ!!!」 土御門「月夜っ!!雪の防壁の頑丈さは知ってるけど五和のはそんなんじゃ無理だーっ!!!」 白雪「じゃあどーすんの?」 土御門「総員退避――――っ!!!!!!!!」 青ピ「白井さんも死にたくなけりゃこっち来いっ!!!!!」そう言って彼は一人残ろうとしていた白井の首根っこを掴む 黒子「おねーさまーーっ!!!!!!!!!」 上条「ぜぇ、ぜぇ、美琴、無事か?」 美琴「ええ、当麻は?」 上条「この右手があっからな。」惚れた女を守るにはもってこいの能力だなと思いつつ彼は言う。 五和「さて、お二人さん。辞世は書けましたか??」もうもうとあがる粉塵の中から五和が現れて言う。 上条「だからおめえもいい加減あきらめろッ!!」 五和「まぁ、あなた方お二人の姿を鑑みるに、形勢逆転は無理ですけど、」やけに饒舌である。天草式が見たらそれだけで失禁しているであろう。 五和「私の純情をもてあそんだアナタにも死んでもらいますっ!!」 当麻「うぎゃあああああああ!!!!!!!!」 その時雷光が走った。正確には美琴のレールガン。 通常人には撃たないそれが五和に向けて正確に打ち放たれた!! 五和「ぐっ、ぎゃあああああああ!!!!!!」 彼女は初速1000メートル/秒の超電磁砲を見事に防いだ。 これだけでもすごい事である。 が、しかし! 生憎コインの持ち合わせがなかった美琴(まあ普通デートに行く時武器を持ってく人はおらんわな。)は手近にあった大きめの金属片(多分五和の攻撃で破壊された電化製品の一部。)重さ約3キロをぶっ放していた。 この重量で初速がコインの時と変わらないというのはすごい事である。まさに「愛は偉大なり」と言ったところであろうか。 ともかく重量があるということはそれだけエネルギーがあるということであり。 結果通常のコインなら無事ですんだはずの五和はまともにふっ飛ばされる結果となった。 当麻「えーーっと。今美琴何飛ばした?」 美琴「分かんないけど……。さすがにまずかったかな?」 当麻「いや、あいつなら問題ねえだろ。」 こちらは上条宅から500メートル離れた地点。 巨大なクレータが開いていた。その爆心地に埋まりこんでいるのは一人の少女。もとい五和。 敗北を喫した五和だが、その目にあるのは涙ではなく決意。 五和「さすが、当麻さんが選んだ彼女。世間知らずなだけでなく破壊力も桁はずれと来ましたか。」科学と言うもののすごさをかみしめる五和。 五和「でも、あきらめたわけじゃありませんよ。」彼女はムクリと身を起こす。 五和「当麻さん、いつかきっとあなたを後悔させてあげますからっ!!!」うわーおっそろしい決意表明です事。 建宮「おーい、五和ー大丈夫なのよねーーーー??」クレータの淵から声がする。 五和「大丈夫でーす。」 浦上「今からロープ下ろすぞー。それと……」浦上はすまなそうに続ける。 「ロンドンへの帰還命令が出たー!!すまんけどー」いいつつ下がるのは本能的にであろう。 五和「わっかりましたー!」 飲み込み&あきらめ(?)の早い五和にポカンとする五和。彼女は思う。 (今は引きますけど、今度会ったらケチョンケチョンのグチャグチャにしてやりますから。御坂美琴。名前は忘れません。)二人が聞いたらおびえるだろうなあとも思った。 そのころ破壊された上条宅では…… 土御門「まあ修理屋呼んだから直るまで晩飯でも食いにでもいくにゃー」 と言う事なので近くのファミレスで夕飯を食べる事になった。 当麻「いやー、俺の方まで払ってくれるなんて助かるよ土御門。やっぱ持つべきものは友達だな!!」 土御門「カミやんには世話になってるからにゃー。日頃のお礼にゃー。」 白雪「日頃って?」 土御門「たいしたことないぜい。」 打ち止め「ミサカはハンバーグ食べるーって決定事項をあなたに伝えてみる!!」 一方通行「なんでンナこというンだよォ。」 打ち止め「だって~あなたとの思い出の味だもの~ってミサカはミサカはあの時の事を思い出してみたり~。」 青ピ「あの時ってなんや~?」 打ち止め「それはね~って痛い!!なにするのってミサカはミサカはあなたに抗議してみたり!!」 一方通行「いったらコロスゾ」 打ち止め「きゃーーあなたがいったらシャレになんない~ってミサカはミサカはあなたを恐れてみる!!」 美琴「黒子、あんたあの青いのとどんな感じになってるの?」 黒子「ど、どんな感じって!!あの殿方とはなんにもありませんの!!」 青ピ「なんの話や~」 黒子「殿方には関係ありませんの!!」バコッ!! 青ピ「なにすんねん!!」 そんなぎゃーぎゃーにぎやかに歩いていく。上条当麻の不幸(?)がまってるのも知らず…。 定員「八名様ですね。それではこちらにどうぞ」 そんなこんなでファミレスに着いた8人そんな中、当麻と美琴によく知ってる声がかけられた。 詩菜「あらあら、当麻さん的にはみんなで夜遅くに食事をするのがいいのかしら?」 美鈴「美琴ちゃんたらーこんな夜遅くに上条君と夜のお食事?」 当琴「「なんでお前がここにいるーーーーーーーーーーーーー!!」」 それは二人の母親がいた。 青ピ「ん?こちらのお二人さんカミやんと御坂はんにそっくりやなー。もしかしてお二人の姉さんなんか?ずいぶんベッピンさんやなー。」 黒子「少なくてもお姉様似の方はお母様ですわ…。」 青打雪「「「マジで!!??」」」 美琴「ちなみに言うと、もう一人は当麻のお母さんよ…。」 青一打黒雪「「「「「うそだ!!」」」」」 当麻「何でそこで全員一致!?てか母さん何でここに!?」 詩菜「いやねぇ、美鈴さんに誘われましてね、そんな理由で許可降りるか心配でしたけどあっさり降りたのよー。ムムム、そちらが美琴さんね。あらら。お母様そっくりで美人ですわぁー。当麻さんにはもったいないくらい。」 白黒一打青土「「「「「「ブッ!!!」」」」」」最後の一文で吹いた。 美鈴「いやだー、美人だなんてぇーっ。詩菜さん御冗談がうまいー。」 土御門「最後の一文スルーかよっ!!??」 青ピ「親公認と来たか……」 美鈴「ンン?間違ってたー?どう見たってバカップルじゃん。」 詩菜「ですよねー。」 上琴「「アンタらに言われたないわっ!!!」」 実際この親たち旦那とのバカップルぶりは伝説となりつつある。 美鈴「ムム、息もぴったりと来たかーっ、で美琴ちゃん」そう言うと娘の手を引っ張ってトイレへ。 美鈴「でさー、告白とかできたわけ?奥手な美琴ちゃんじゃあ無理だろうけどー。」 笑いながら言う。んなことできるわけないとでもいうかのように。
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10090号「決議第178号に参加中の御坂は速やかに先頭配置につけっ!!」 15072号「まああの浦上とやらが逃げ回ったおかげで五和とオリジナルの接触時間が少し遅れました。とミサカはちょっとだけ裏切り者の肩を持ちます。」 16548号「緊急報告!!」 20000号「何ですか騒々しい。とミサカは16548号への不快感をあらわに・・・・・・」 16548号「それどころではありません!とミサカはあの暴食シスターが遊園地方面に向かっていることを緊急報告しますっ!!」 15072号「なぜあのシスターがオリジナルの位置を?とミサカは疑問符で頭がいっぱいになります。」 16548号「察するに肉食動物などの『捕食者のカン』ってやつでしょう。とミサカは発言します。」 かくて五和vsシスターズの幕が切って落とされるっ!! 五和「いったい全体、あなた方は何者ですか?」バッチィン!!!!五和の声と電撃音が交錯する。 10572号「シスターズです。あなたを行かせるわけには参りません!」バチバチバッチインンン!!!! 19人のシスターズは遊園地の外にでて五和を止めるべく入れ替わり立ち替わり電撃&サブマシンガンによる遅延作戦を展開していた。その連携は天草式顔負けであった。まあ一つの巨大な脳みたいなものだから当然だが。 ただし。 当初「殲滅作戦」という恐ろしげな名前だったのが電撃&狙撃をことごとくかわされた上、シスターズの2名を捻りつぶされた結果(ドンだけすごいんすか五和サン!)遅延作戦に変更を余儀なくされたのであった。 五和「全く、あの世間知らずな貧乳中学生に鉄槌を加えようときたら全く同じ顔した20人に襲撃されるとはシャレになりませんねえ。」口調がおかしいですよ五和サン! 20000号「襲撃者はあなたです。とミサカは冷静につっこませていただきます。」 五和「しかし、もうそれも終わりですっ!!!!」 シスターズ「「「「「「「「「「「「「「「「っ!!!!!!?????」」」」」」」」」」」」」」」」グシャッ!! 19人の戦士たちは息をのんだ。 体が動かない。 のみならず何か攻撃をされたわけでもないのに建物の上などで踏みつけられたようにうつぶせで自分たちが倒れていることに恐怖を通り越して疑問すら感じた。 「広域拘束術式。」五和は言う。 「不本意ながらちょこまか動き回ることになりましたからね。ついでに仕掛けをさせていただきました。見境無く動けなくする術なので市街地では本来御法度ですがあなた方の派手な動きで一般人もなし。感謝しますよ。」 この騒ぎの仲でも五和の表情は変わらない。 五和が去って暫くして拘束は解けた。 20000号「これからどうしましょう。とミサカはあの襲撃者に追いつくのはもはや不可能であると指摘します。」 10572号「大丈夫です。計算通りならオリジナルは今頃観覧車を降りている頃でしょう。とミサカは請け合います。一般人の多いところならあの襲撃者も無茶はしません。逆にお二人は人の多いところでの先頭に慣れてますから。とミサカは一安心します。」 10035号「きっ、緊急事態です。とミサカは慌てて報告します。」 20000号「今度は何ですか10035号?とミサカはもう何があっても驚かないぞと返事します。」 10035号「お二人の乗った観覧車が故障で停止してますっ!!!!」 シスターズ「「「「「「「「「「「「なっ、なんですってぇええええ!!??」」」」」」」」」」」」 驚かないと豪語していたシスターズも驚く報告であった。さらに報告が続く。 10035号「どうも上条さんとの時間を少しでも楽しみたいと思ったオリジナルがしでかしたようです。とミサカは報告します。」 一瞬の沈黙。 シスターズ「「「「「「「「「・・・・・・・あのおのろけ馬鹿オリジナルが・・・」」」」」」」」」もはやオリジナルのデレッぷりにあきれるしかないシスターズであった。 神裂「ステイル。何をしているのですか!?しゃきっとしなさいしゃきっと!!」 ステイル「はっ!す、すまない。」彼の手には噛みちぎられたカード。 ステイル「一応噛み切られないように最大限強化したはずなんだが。」 神裂「さっきの歯磨きが聞いているんでしょうきっと。……はっ!それどころではありません!!あの子を追いますよステイル!!」 ステイル「了解!」 二人は駆け出す。 シスターによる人肉食を防ぐために。 そのころ 打ち止め「真っ暗なのはやだよーっってミサカはミサカは言ってみたり。」 一方「しゃあねェだろうがよォ。」 結標「全く停電なんていやねえ。」 ショチトル「こうも暗いと、ねえ。お兄ちゃん。」 海原「と、いうより御坂さんたちはご無事でしょうか?って痛い!!」 ショチトル「この状況でまだ言うか?」 件の上琴空間では・。 上条「さすがに停電はまずいんじゃねえか。」 美琴「だってさーもうちょっとこうしていたいじゃん。」現在彼女は上条の左側にいる。 上条からの信頼もしくは愛のあかしなのだが、結果として電撃を防げないことになった。 美琴「それに暗いと町明かりがこう、…ロマンチックじゃない?」 上条「まあ確かにな。…さっきの続きでもするか?」 美琴「う、うん」チュッ 乗り込んでからというもの頂上を待たずしてのり付け中のお二人なのであった。 神裂「ステイル、急ぎなさいっ!」 ステイル「分かってるさっ!………っ!!神裂、危ない!!!」 神裂「っ!?うわっ!!」神裂は何かに足を引っ掛けそうになった。 神裂「危なかった、ステイル、感謝しますよ。ところでこれは……??」それは地面に倒れる、五和とインデックスであった。 インデックス「シ、刺激が強すぎなんだよぉ……」かろうじて意識はあるが目を回している。 五和「も、もう駄目ぇ………」こちらは何やらゴニョゴニョいって、気を失っている。 神裂「大丈夫ですか二人とも!?なぜこのようなことに?」 ステイル「フム、これが原因らしいな。」その手には五和の横に落ちていた『赤外線暗視装置付き望遠鏡』がある。 ステイル「これで何を見たんだろうね?」言うと彼は五和とインデックスが頭を向けて倒れていた方向へ望遠鏡を向ける。 ステイル「ちっ、暗くて見えやしない。えーっと……このボタンで暗視装置とやらが作動するのかな?……よいしょっと」カチッ 暗視装置が作動した。 と、同時に! ステイル「う、うーん……駄目だ、僕にも刺激がぁ……」 神裂「スッ、ステイル!?おのれ、ステイルまで気絶させるとはいかなる術か、この目で見てやるっ!!」言うが早いか彼女はステイルが見ていたものを望遠鏡で見る。 さすがの神裂氏もこの距離この暗さでは直視できないらしい。 神裂「っ!!!!!」その神裂もふらついた。しかし18歳にしては老けた精神年齢の賜物か、それとも聖人であることが幸いしてか彼女は倒れない。 そしてつぶやく。 神裂「あのバカップル、もはや見たものを気絶させるほどにまでなったのか………」 そう、そうなのである。 現在絶賛大人のキスを堪能中のご両人。 それを見たものはあまりの衝撃にその二人に近しい人間を気絶させるに足る破壊力(?)を有すに至っていた。 10572号「『愛は偉大なり』とはよく言ったものです。とミサカは感嘆します。」 20000号「我々はあの方をあきらめたはずなのに。とミサカは心中の苦悩を吐露いたします。」 10032号「………」バタッ 10035号「やはりこいつが一番最初にダウンか。とミサカはばっさりと切り捨てます。」 10842号「私の隣でも一人倒れているのですが。とミサカは打ち止めに何人倒れているかを尋ねます。」 20001号「ざっと1/3のミサカが倒れちゃってるよっ。ってミサカはミサカはネットワークを通じて流れてきたオリジナルの姿に頬を染めてみたり。」 結標「そういえば、この子にはネットワークが有ったのよね。」 一方「クソッ、目隠ししてもい目がねェじゃねェかよ。」 ショチトル「まあエツァリが見なかっただけ良かったとしよう。」 海原「皆さん何の話を!?ハッ!!まさかあの糞上条が御坂さんに何か!?」 一方「いまさら行っても間にあわねェよ。」 海原「うぎゃぁああああああ!!!!!!!!」 ショチトル「まだ言うかっ!?」ボコッドゴッ!! ショチトル「あの槍がない時のエツァリなんてちょろいもんさ。」 結標「……あの海原を瞬殺だなんて。」(*気絶しただけです。) 一方「やるなァ、コイツ。」何だかんだ言って一番現状を楽しんでる一方通行であった。 当麻「お前…いきなりすごいキスするな…。」 美琴「だって…当麻の味知りたかったんだもん!」 当麻「そんなことを力説されても…。」 美琴「当麻…私とこういうキス…イヤ…?」 当麻「そんなことない…とてもおいしかった…。」 美琴「よかった…私もおいしかった…だからもっと…して?」 当麻「喜んで…」 チュロレロレロ… 二人の時間はアツすぎる… 建宮「グハ!!」バタ 浦上「なんちゅうでぅぐでばは!!」ばた 二人のキスは強烈過ぎる…。 かくて二人のデートは終わる。 仲良く二人して歩いて行く二人だが……。
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/Love is blind 第5話 積極的に 上条が美琴を抱きしめた時から、時間は2時間ほど巻きもどる。 ここは第7学区の街中。 結標の能力で飛ばされた直後の美琴は、1人呆然と立ち尽くしていた。 やや斜め下を向いているため、通行人からは見えていないが彼女の顔は真っ青で、生気が全く感じられない。 そんな状況で、美琴は声を絞り出すように呟く。 「そっか……あの2人…付き合ってたんだ……」 上条は結標と付き合っていた、その事実が美琴に重く、とても重くのしかかっていた。 まあ事実といっても勘違いなのだが、それを知らない美琴は悲しみに暮れる。 (アイツ……結標のどこを好きになったんだろ……) 性格だろうか、見た目だろうか、それとも別のところだろうか。 そして自分には何が足らなかったのか。 なんで付き合っているのが自分ではないのか。 悔しい、悲しい、苦しい、つらい、美琴を襲う絶望感は想像を絶するようなものだった。 (私…アイツのことこんなに好きだったんだ……自分でもびっくりね…) 絶望感が大きいということは、それだけ上条を好きだったということ。 しかし、もう上条と自分が結ばれることはない。 美琴は今にも大泣きしてしまいそうだった。 しかしこんな街中の人目のある場所で泣くわけにはいかないと思い、必死に我慢していると、あることを思い出した。 「あ…そうだ携帯…アイツにメール送ったんだっけ…」 確かに学校を出る前に、上条に『今日ヒマ?』とだけ打ったメールを上条に送っていた。 それだけならまだいい。 だが、美琴が結標の能力により飛ばされたことを心配して、上条からメールが送られてくる、もしくは電話がかかってくる可能性がある。 「……」 ふいに聞こえたバチッ!という電撃音、美琴が自らの能力で携帯電話を壊した音だ。 今、上条に会うわけにはいかない。というより会いたくない。 電話やメールにより、会ってしまう可能性があるため、美琴は迷い無く携帯を壊したのだ。 ならば電話に出ないでおく、又はメールを見なければいいじゃないか、と思うかもしれないが、美琴はとにかく上条と会う手段を残したくなかった。 (まぁ…アイツは私のことなんて気にしないわよね…なのに携帯まで壊して……バカみたい…) 本気で泣きそうになり、無意識のうちに携帯を握りしめる力が弱くなっていく。 今から何を目標に生きていけばいいのか、美琴にはわからなかった。 この悲しみの大きさを知ることができるのは美琴本人だけであり、他に誰も知ることなどできない。 と、そこへ一人の少女が通りかかった。 「あれ?御坂じゃないかー。こんなことろで何してるんだー?」 「え…つ、土御門…」 今にも泣きそうな美琴に声をかけてきたのは、メイド姿の少女、土御門舞夏だ。 メイド姿はいつも通りだが、珍しく掃除ロボットに乗っていない。 「土御門……アンタが掃除ロボットの上に乗ってないなんて珍しいわね……」 「ちょっと今急いでてなー、掃除ロボは便利だけど速度は遅くて……って御坂?なんか元気ないけどどうしたんだー?」 「あ…いや……」 隠していたつもりだが、舞夏には美琴に元気がないことがわかってしまったらしい。 だが、『好きな人に彼女がいて落ち込んでいる』などと言うわけにいかないので、美琴は慌てて元気なふりをする。 「そ、そんなことないわよ。それよりなんで急いでるの?」 「ああ、兄貴から電話がかかってきて早く寮に来いって言われたんだー。実は上条当麻が関係してるんだけどなー。」 「えっ!?アイツが!?また何か事件なの!?」 美琴は思わず声を荒げた。 上条と結標が付き合っていることが頭から吹き飛んだ瞬間だった。 美琴の声に舞夏は多少驚いた様子だったが、すぐに話始める。 「……事件と言えば事件だなー。実は兄貴が変な薬を飲ませたせいで…」 「ど、どうなったの…?」 「『フラグ体質』が強化されて、女の子がみんな上条当麻のことを好きになってしまうらしいんだー。」 「ええっ!?そ、それほんと…………ん?」 舞夏の話を聞いた美琴はあることを思いついた。 「女の子はみんなアイツのことを好きに……もしかして結標も…?」 舞夏の話が本当なら、十分可能性はある。 先ほど結標は“上条と付き合っている”と言っていたが、薬の影響を受け、上条を好きになっているのかもしれない。 だとすれば、まだ自分にチャンスはあるということだ。 (もしかしてもしかすると……いや!絶対そうよ!!アイツが付き合ってるなんて聞いたことなかったし、結標は薬の影響を受けてたのよ!) 光が見えた。 この時点で美琴は、結標と上条は付き合っていないと確信し、胸を撫で下ろす。 またよほど安心したのか、先ほどの暗い表情が一転、目映い笑顔がこぼれた。 ここに上条がいたら写真を取り出すだろうが、舞夏は不思議そうだった。 「…今度は急に明るくなったけどどうしたんだー?」 「なんでもないわよ、ありがとね土御門!………あれ?でも私もさっきアイツに会ったけど、なんともなかったわよ?」 「え…?おかしいなー…」 なぜか話が噛み合わない。 土御門の言う『女の子なら誰でも上条を好きになる』ということが本当なら、美琴も上条に惚れてしまっているはずだ。 なのに美琴がなんともないというのはおかしい。 不信に思った舞夏が兄に電話をし、再び説明を受けることに。 そして数分後。 「なるほどなー。そういうことかー。」 兄との電話を終えた舞夏は、なぜかニヤニヤしながら美琴を見る。 舞夏は何を聞いたのか、嫌な予感がしてならない。 「な、何よ…何かわかったの?」 「ああー。上条当麻のことを好きになるのは“普段上条のことを好きではない女性”らしいぞー。」 舞夏はそこで一旦言葉を区切り、ニヤリと笑みを浮かべた言う。 「御坂は上条当麻のことが普段から好きだから、いつも通りに話すことができたんだと思うぞー?」 「んな!?」 美琴にとっては予想外の舞夏の奇襲。 ボンッ!と美琴の顔は赤くなった。 「ち、ちがっ、違うわよ!?私はアイツのことなんて別に…」 「もうバレバレなんだから隠さなくていいぞー。じゃ、私は兄貴の寮へ急ぐからもう行くからなー。」 「違うからね!!好きなんかじゃないんだから!!」 立ち去ろうとする舞夏と最後まで言い争う美琴。 そして笑いながら舞夏も去って行った。 一人になり、ようやく落ち着いたところで、改めて今の状況について整理してみる。 「えーと…アイツは今結標と一緒にいるのよね…ていうことはやっぱり探したほうがいいのかな…ん?待てよ…」 ここで美琴は1つ考えついた。 今、上条は薬の効果によって、女の人に好かれるようになっている。 結標の行動から考えると、薬の影響を受けた女の子は結構積極的にアタックするようだ。 だが美琴は元から上条のことが好きなので、舞夏の話が本当なら、いつも通り接することができるだろう。 ということは… 「………今アイツに会えば惚れたふりをして抱きついたりとかできるんじゃ…?」 すごいことを思いついてしまった。 これぞ合理的に上条といちゃいちゃできる最強の方法だ。 妹とかなら絶対実行する。 「い、いやでもそれは恥ずかしいような…ていうか人としてダメかな…」 美琴は真剣に悩んだ。 上条に会いに行くことは決定しているが、その際普通に接するべきか、それとも惚れているふりをするべきか。 ぶっちゃけると惚れているふりをする方向へ気が傾いているのだが、問題があった。 (う~ん……卑怯かなー…) 確かに惚れているふりをする、というのは卑怯かもしれない。 上条といちゃいちゃしたいと考えている女性は世界各国に星の数ほどいるのだから。 だが、一度上条を他の人に取られるという絶望を味わった美琴は、たとえ卑怯な手を使ってでも、上条と結ばれたかった。 もうあのような絶望感を味わいたくない、上条を他の人に渡したくない。 そんな感じで考えに考えた末、美琴が出した結論は… 「………よし、会いに行こう。」 ♢ ♢ ♢ 「ねぇ君!一人みたいだけど…今ヒマ?」 「ヒマなんでしょ?だったら俺らと遊ぼうぜぇ~!」 と、下品な台詞でナンパをしているのは、頭の悪そうなスキルアウトの2人組。 その声の先に立っているのは、二重まぶたでショートヘアの可愛らしい少女。 そう、上条に恋する乙女の一人、五和だ。 (上条さんを捜しに町へ来たのに…なんでこんなことに…) どうしてこう上手くことが運ばないのか、五和は深いため息をついた。 正直なところ、こんな2人組など五和の敵ではない。 しかし、建宮より“なれべく目立つな”と言われている手前、叩きのめすわけにはいかない。 どう対処すべきか、五和が困っていると、スキルアウトの一人が五和が反応しないことに腹を立てたらしく、五和の腕を掴んだ。 「おい…シカトしてんじゃねぇぞ!!」 「え、ちょ、ちょっと!離して…」 「うっせぇ!いいから来い!!」 これぞ逆キレである。 振り払おうとする五和にさらに機嫌を悪くし、掴んでいる力が強くなる。 (さすがにこれ以上は……建宮さん、やっちゃってもいいですよね?) 我慢の限界、五和が2人の不良を思い切りぶちのめしてやろうとした時だった。 「その手を離さんかいコラァァァァアアアア!!!!!」 「は?なんごっはぁ!!」 謎の大声を共に、五和の手を掴んでいないほうのスキルアウトが吹っ飛んだ。 あまりの唐突な出来事に五和とスキルアウトは仲良く目を丸くする。 一体何が起こったのか、五和は目の前の状況を理解するのに多少時間がかかったが、 (え、えーと…この人がドロップキックを…?) “この人”とは、吹っ飛んだスキルアウトがいた場所に立っている一人の少年のことだ。 長身で青い髪の少年は五和の腕を掴んでいるスキルアウトを睨みつける。 睨まれてビビったスキルアウトは、五和の手を離し、その少年を殴りにかかるが 「お、おい!てめえ!!何しやがっふぅ!!」 まさに秒殺。 もう一人のスキルアウトはその少年の鉄拳により、地面にひれ伏す形となった。 当然、五和はこの青髪の少年を知らない。 普段学園都市に住んでいないのだから当たり前だ。 だが、彼が何者であろうと助けてもらったことは確かなので 「あ、あの…ありがとうございます…」 「いやいやお礼なんていらへん……って、今度はあっちのほうで女の子が困っとる声が!!今行くでぇ!!!」 と、言ったかと思うと、名も知らない青髪の少年はものすごい勢いでどこかへ走っていってしまった。 名前を聞く間もなかった。 「……な、なんだったんだろう…今の人…」 残された五和はしばらくの間呆然と少年が走って行った方向を見つめていたが、 「ああっ!そうだ、上条さんを捜さないと!!」 本来の目的を思い出し、再び上条捜索のためその場から走り出した。 ♢ ♢ ♢ 「い、いたー!!」 美琴は以前上条と偽デートで訪れたホットドッグ屋の近くで思わず大声を出した。 周囲の人の視線が集まったが、そんなことを気にしている場合ではない。 (いた!いた!!いた!!!ついにアイツを見つけたわよ!!) 探し始めて1時間、遂に念願の上条を見つけたのだ。 この1時間、本当に長かった。 なんで携帯を壊したんだ、と自分自身にいらだちながら街中を走り回っていた。 苦労した分、出会えた喜びは大きい。 しかし、上条は美琴に気づいていないらしく、誰かと熱心に電話をしている。 「一体誰と……まあそんなことどうでもいいわ!!」 本当に今は電話の相手を気にしている場合ではない。 早速『惚れているふりをして上条といちゃつこう』作戦を実行しようと思い、上条がいる方向へ一歩踏み出したのだが 「……なんて声かけよう…」 上条に声の掛け方がわからない。 普通に声をかけるのなら別に問題はない。 しかし今は『増強剤の効果を受け、上条に惚れている』と、いう設定で話しかけなければならないのだ。 (惚れてるふり……実はこれってすごく難しいんじゃないの!?) 直前になって、ことの難しさに気がついた美琴は、一度上条から見えないところへと移動した。 そこで改めて、どうやって話しかけるべきか考えるのだが、特にいい案は浮かばない。 (し、強いて言うなら、可愛い言い方でアイツの下の名前を呼ぶのがいいんだろうけど……) 上条を下の名前で呼ぶ、つまり『当麻』と呼ぶということなのだが、今まで『上条』とすら呼んだことがないのに、いきなり『当麻』はハードルが高過ぎる。 そんなことをすれば、頭が沸騰すること間違いない。 しかし、今日の美琴はいつもと違った。 (アイツに抱きつけるチャンスなんて、これからあるわけないし…名前を呼ぶくらいなら……) 『結標と上条が付き合っていた』と誤解したときの絶望感からか、美琴は勇気を振り絞る。 物陰から顔だけを出し、上条の様子を伺う。 「って、まだ電話してるし…」 上条を見つけてから数分が経っているにもかかわらず、上条は電話を終える気配がない。 「電話長いなー……それに私に全然気づいてないわね……………と、とぅまのバカ…」 と、美琴は上条に聞かれないことをいいことに、上条の名前を本当に小さく、小さくつぶやいた。 上条とは30メートル以上離れているのだから、絶対に声が聞こえるわけがない。 そう思っていたのだが 「ッ!?」 美琴は驚くと同時に、再び物陰に隠れた。 当然、この行動には意味がある。 反対方向を向いていた上条が突然こちらを振り返ったのだ。 (な、なんで!?これだけ離れてるのに…まさかさっきのが聞こえたの!?いや…さすがに偶然よね。こっちに他に知り合いがいたとか…) そう考えた美琴はもう一度木の陰から顔を出す。 するとそこには 「わわっ…」 「おお!やっぱり御坂!!」 上条だった。 また、なぜかはわからないが、上条は目を輝かせこちらを見ている。 (な、なんで私がここにいるってわかったの!?まさかホントにさっきのが聞こえて……) だとすればかなり恥ずかしい。 さらに“聞こえた”と思ったとたん、顔が熱くなった。 まるで顔の中で何かが沸騰しているのではないか、と思うくらい熱い。 「ん?どうした御坂?具合でも悪いのか?」 「あ、いや…」 目の前の上条は心配そうにこちらを見ていた。 どうやら顔が赤くなっているため、体調が悪いと勘違いされたようだ。 しかし、これで上条に近づくことはできた。 後は名前を呼び、薬の影響を受けているふりをするだけだ。 (…うわ…すっごく緊張するんだけど……) 喉が渇く。 まるで太陽が照りつける砂漠を歩いているかのようだ。 それほどの緊張だったが、こんなチャンスを逃すわけにはいかない。 美琴は意を決して、上条の名を呼ぶために、乾いた口を開く。 「えと、あの…と、とぅまぁ…」 ありったけの勇気を振り絞り、かすれるような声で、美琴は上条の名前を呼んだ。 上条に聞こえたどうかなどわからない。 だが、目的を達成することはできたのだ。美琴は達成感に包まれ……てはいなかった。 (あわわわ……よ、呼んじゃった…本人の前で名前を…想像してたより、すっっっっごい恥ずかしい……) 本人の前で名前を呼ぶという行為が、これほど大変だと思わなかった。 美琴は慌てて俯き、顔の火照りが治まるのを待つ。 が、火照りは治まるどころかますます勢いを増してきた。 (……ど、ど、どうしよう…なんだコイツ、とか思われてないかな…) 顔を上げるのが、怖い。 名前を呼ぶだけでなく、呼んだ後がこれほど大変だと思っても見なかった。 しかしいつまでも俯いているわけにはいかない。 (……大丈夫よね?な、名前を呼んだくらいで嫌われたり…しないよね?) それくらい大丈夫、美琴はじぶんに言い聞かせ、再度勇気を出して、前を向いた。 「………?」 目の前に映ったのは奇妙な光景、なぜかわからないが上条が両腕を動かしていた。 (何がしたいのコイツ……) 意味がわからない。 上条のこの行動が何を意味しているのか、舞夏のお義兄さんが飲ませたらしい薬の影響なのか、とか考えていると 「あ、すみません。」 「へ?」 ドンッ、と通行人が美琴の背中にぶつかった。 軽くだったので別に痛くはなかったのだが、ぶつかられると同時に急に目の前が真っ暗になった。 目の前に何かある。 これは、まさか、もしかしなくても――― (……………だ、だだだだだだだだだだだだだだ抱きついてる!!??!??私コイツに抱きついちゃってる!!?) 上条だ。 美琴は後ろから押されたため、上条に体を預けるかのように抱きついていた。 予想の斜め上をいく展開に、美琴はパニックになる。 (ど、どど、どどどどうしよう………って、やっぱり迷惑よね!!は、早く離れ……たくない…ていうか、離れられない…) まるで麻薬だった。 心地よさがハンパ無く、離れようにも離れられない。 あまりの心地よさに、美琴は抱きつく形で腕をまわした。 (………) ただ無言で抱きつき続ける。 美琴はこの後のことを一切考えていない。 また、周りに大勢の人がいるということすら頭に無い。 今後上条に抱きつけるチャンスなど、あるわけがないと思うと、少しでも長く抱きついていたかった。 (このまま時間が止まればいいのに…) 美琴は本気でそう思った。 だが無情にも時は過ぎていく。 もう数秒すれば上条は離れてしまうだろう。 ―――嫌だ。 もっと長く、この幸せな時を味わいたい。 例え一時的なものであるとしても、この時が終わってほしくない。 そんな想いから、美琴の腕には自然と力が入る。 「…ん?」 美琴が抱きつく力を強めたとき、自分の背中に何が触れていることを感じた。 何か手のようなものが触れている。 数秒間は何が起こっているのかわからなかったが、美琴はすぐに自分に起きている出来事を理解した。 (こ、これって………抱きしめられてる!!?) 美琴は上条にギュッとされていたのだ。 自分で抱きついていたときより、はるかに心地良く、通常では絶対に得られない幸福感に包まれる。 (わわわっ…コイツ、なんで私を……まあ…幸せだからいいや…) 抱きしめられている理由などどうでもいい。 とにかくこの幸福な時間が終わらなければなんだっていい、そう思った時だった。 「こうしたことも記憶からなくなるんだよな……でもな、みさ…いや美琴。俺はお前が大好きだ。だから絶対にお前を好きにさせてみせるぞ。」 「ッ!!!!???」 上条の口から出たのは、突然の告白の言葉。 美琴は自分の耳を疑った。 (……ウ、ウソ…ほんとに!?き、き、聞き間違いじゃないわよね……?) 自分の聞き間違いか、空耳か、夢だろうか、とも思ったが、今上条は『俺はお前が大好きだ』と間違いなく言っていた。 ということは、上条と両想いということ、上条と付き合うことできることだ。 美琴は嬉しさに震える。 (コイツも私のこと好きだったんだ……そ、そうだ!私もコイツに言わなきゃ!!) 上条が自分を好いてくれているのはわかった。 しかし、上条はまだ美琴と両想いということを知らないのだ。 自分の想いを伝えるためには顔を見せなければ、と考えた美琴は上条と密着した状態で上条の顔を見上げ 「あ、あのね、わ、わた、私も!アンタのことが、だ、だだ、大好き、だよ?」 と、震える声で上条に告げた。 一世一代の告白、心臓が爆発するのではないかというくらい鼓動は早かった。 上条は『好き』と言ってくれていたので、断れることはないはずだが、そう思っていても緊張しないわけがない。 今まで気にならなかった周囲の雑音や、風など自然の音、全てのことが気になってしまう。 そして上条は口を開いた。 「お、おう。」 たったの一言、上条の返事は素っ気ないものだった。 だが、素っ気なくても『おう。』というのは、告白を受け止めてくれたということ。 つまり、美琴は上条の『彼女』になれたということなのだ。 (う、うそ…これって夢じゃないわよね…信じられない…私がコイツの彼女だなんて…) しかし現に美琴は上条に抱きしめられている。 ウソでも夢でもないのだ。 1時間前にはもう絶対に叶うことはない、と思っていたことが実現できたということもあり、美琴の喜びをより大きい。 溢れ出る嬉しさ、喜び、幸福、といったこの感情をどうしていいかわからず、泣きそうになりながら上条を見つめていると 「わっ…」 再び顔を上条の胸に押し付けられた。 後頭部に触れているもの、多分だが上条の右手で、それにより押し付けられているのだろう。 そして上条の美琴を抱きしめる力はさらに強くなり、同時に美琴の意識も遠のく。 (も、もうダメ…意識が……) 上条の声が聞こえる。 だか意識が朦朧とする美琴には、彼が何を言っているのか理解ができない。 その声が子守唄のように聞こえた始めた時、 「……ふにゃー」 美琴は漏電し、意識を失った。 このとき美琴は大きな勘違いをしていた。 美琴は上条と恋人同士になれた、と思っているが、上条は美琴が増強剤の影響を受けているから告白してきたと思っているのだ。 そんなことを知らない美琴は、幸せそうに上条の腕の中で眠るのだった。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/Love is blind
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第二十三話 だってチューしたいんだもん 編注:「前回」は存在しません。 前回までのあらすじ土御門「カミやん、第三位と付き合ってもう半年だろ? キスくらいしたらどうかにゃー?」食蜂「ぷークスクス! 御坂さん、上条さんから倦怠力満載で飽きられてるんじゃなぁい?」婚后「こここ恋のお悩みならば、ひゃ、ひゃ百戦錬磨の婚后光子にお任せくださいなっ!」一方通行「クソ、どォなってやンだァ!? テメェは俺が殺した筈だろォがよ木原ァァァ!」小萌「いいですか、上条ちゃん。女性に恥をかかせるものではありませんよ?」インデックス「とうまはやっぱりとうまだから仕方ないと思うんだよ」上条「美琴…ちょっと目を瞑っててくれないか…?」美琴「えっ? こ、こうかしら…? …………っ!!!??!?!!?」佐天「って、それ思いっきりキスされてるじゃないですかっ!」吹寄「主文。被告人・上条当麻を死刑に処す」 ◇「はぁ~…」美琴は自分のベッドの上で横になりながら、先日のデートを思い出していた。デートの帰り際、ふいに上条に呼び止められ、彼に言われるがままに目を瞑った。そして次の瞬間に美琴が唇に感じたあの柔らかい感触が、今でもまだ残っているのである。美琴は指でスッと唇をなぞり、ウットリと天井を見つめたまま、一言漏らす。「やっぱり…キス、しちゃったのよね………って、うわああああぁぁぁぁ~~~!!!」自分で確認しておきながら、改めて自覚すると恥ずかしくなってしまい、美琴はフカフカ枕をギュッと抱き締めると、そのままゴロゴロと転がり始めた。こんな姿、今は風紀委員の仕事で部屋を留守にしているが、ルームメイトの白井には見せられないだろう。ただでさえ彼女は、美琴と上条が付き合い始めてから真っ白になっているというのに。「はぁ…」ひとしきり転がった【あばれた】美琴は、再び横になって上を見上げる。そして再び唇を指でなぞりながら、こんな事を思っていた。(また…キスしたいなぁ…)一度しただけで相当ハマってしまったようである。どんだけ気持ち良かったのか。そんな事を考えつつ何気なくテレビに目を向けると、つけっ放しだったワイドショー番組は、いつの間にか古い洋画に変わっていた。どうやら前の番組【ワイドショー】が終わって次の番組【えいが】が始まった事にも気付かない程、真剣にゴロゴロ(?)していたらしい。(映画とか途中から観てもアレだし、チャンネル変えよ)美琴は横になったまま、テレビに向かって能力を行使しようとする。ちなみにリモコンを使わず能力でテレビに干渉するのは、単純にリモコンが手の届く所になく、尚且つ今の美琴は家ダラモードになっている為、動くのが面倒だからだ。しかし結局、美琴は能力を使ってチャンネルを変える事はなかった。変えようした次の瞬間に流れてきた、映画のワンシーンに釘付けになってしまったのだ。(っ!!! しゅ、しゅごい…きゃも!)それは洋画によくある、「ここ本当に必要か?」と思うくらいの激しいベッドシーンだった。家族だんらん中に流れると急激に気まずくなる、アレである。今まではこんなシーン観ても何ともなかった美琴だが、なまじキスの味を覚えてしまったが為に、その濃厚なディープキスに心ときめいてしまったのだ。一回しかキスしてないクセに。(こんな、キス……も、もも、もしアイツとしちゃったら… わ、わ、私どうなっちゃうの!? ねぇ、どうなっちゃうのっ!!?)知らんがな。 ◇その日、美琴がデート中ずっと気持ちがうわの空だった事に、上条は思う所があるのか、じっとりと嫌な汗をかいていた。恋人繋ぎしている右手にも、思わずギュッと力が入ってしまう。(う~…! やっぱ、この前キスしたこと怒ってるんですかね!? いや、まぁ確かに急だったけど、何かいい雰囲気だったし 上条さんだってお年頃な訳で、そろそろかな~とか色々と考えてですね!)言い訳なのに何故か心の中で済ませようとする上条。念話能力者でもあるまいし、美琴に伝わってほしいのかほしくないのか。とまぁ上条がそんな事を考えている一方で、うわの空だった当の本人【みこと】はと言えば。(たいチューしたいチューしたいチューしたいチューしたいチューしたいチューしたいチュ)先日に観た映画のベッドシーンを、頭の中で何度も再生させていた。映画の中の男優と女優を、ご丁寧にも上条と自分で置き換えながら。しかしツンデレ時代が長かった美琴は、無事に好きな人【かみじょう】とお付き合いが出来るようになった現在でも、その頃【ツンデレ】のクセは抜けきっておらず、思いっきり葛藤してしまう。(でででも、私から『チューして?』なんて言うのは…は…恥ずかしいし! それに当麻にエッチな女の子だって思われたくないし……あぁでもチューしたい~!)知らんがな。ちなみに美琴は普段、上条の事を『アンタ』だの『あの馬鹿』だと呼んでいるが、心の中ではしっかりと『当麻』と言っていたりする。これは恋人となって一番の大きな変化である。あくまでも美琴の心の中では、であるが。だがそんな事になっているとは露知らぬ上条は、意を決してキスしてしまった事を謝ろうとする。「あ…あのさ、美琴……こ…この前その、キ、キスし―――」「はっ! ひゃひゃひゃひゃいっ!!!」『キス』という単語を聞いただけで、過剰に反応してしまう美琴。内心では「もう一回しようとかそんな流れっ!!?」と小躍りしている所だろう。しかし次に上条の口から出てきた言葉は、美琴が望んでいるそれとは180度違うものだった。「―――キ、キスしちまった、だろ…? えっと…美琴が嫌…だったんなら、もうしない…からさ。き、機嫌を直」「イヤっ!!!」再び食い気味に割って入ってくる美琴。この流れは、恥ずかしいから言えないとか言っている場合ではない感じだ。「あ、ああ、うん。だから嫌ならもうしないから」「違うそっちの意味じゃないっ!!! もう馬鹿っ!!! 全然私の事分かってくれてないじゃないっ!!!」美琴は思わず声を荒げてしまった。このまますれ違ってしまうなんて耐えられなかったのだ。…何だか妙にシリアス風味な空気を醸し出してはいるが、要はキスするしないでケンカしてるだけなので、いっそ爆発してしまえばいいと思う。 「私はね! アンタとキッ! ……キ…ス…した時! すっごい気持ち良かったんだから! むしろいっぱいしてほしいと思ってるし! 何だったら! も、もももっと激しいヤツとかしてくれちゃっても全然いいかもくらいに思ってんのよ!」大声で何を言っているのかこの娘は。美琴は気付けば内に秘めていた思いの丈を、存分に吐き出し、そしてぶつけてしまっていた。勢い余ってツンデレを凌駕してしまったとかそんな感じっぽいけどどうなんだろうこれ。そしてその思いを知ってしまった上条は、顔を真っ赤にしながら聞き返す。「も…もっと激しいヤツって…?」「だっ! だからあのアレよ! そ、その……つつ、つまり…ベ…ベロチュ……ってのを…」勢いで言ってしまった美琴だったが、改めて確認されるとやはり恥ずかしくなってくる。上条と同様、顔が真っ赤になってしまった。もっとも美琴は付き合う以前から、しょっちゅう赤面していたけども。しかし女の子にここまでさせて、肝心の上条が何もしないでは男が廃る。上条は握ったままの手(ここまでずっと恋人繋ぎを持続させていたらしい)をグイッと引っ張り、何か表情をキリッとさせて、自分で考えられる一番のイケメン顔を作り出す。「……い…いいんだな…? 上条さんだって男だって事…分かってて言ってるんだよな?」すると美琴は、赤くしたままの顔で小さく頷く。そのサインを合図に、上条は美琴の腕を引っ張ったまま、ひと気の無い路地裏へと連れ出した。 ◇人通りの無い路地裏で、卑猥な音と艶かしい声が響いている。そこにいるのは二人の男女…いや、これはもう雄と雌と言った方が正しいだろうか。クチュクチュと音を立てながら激しく舌を絡ませ、お互いの唾液が混ざらせ、口から溢れた唾液が滴り落ち、ハァハァと熱い吐息が漏れ、抱き締め合っているその姿は、発情した獣その物のようだった。「ずぢゅ、んくちゅくちゅ♡ は、あぁ、んっぶ♡ にゅぶぶ、ちゅぷ♡ ぺちゃぺちゃ♡ んっ、ぁむっ♡ ふー、ふー♡ れおれお、ぢゅりゅっ♡ にゅちゅ、ぷちゅるる♡」生まれて初めて男の味を知ってしまった美琴の舌は、それを喜ぶかのように上条の口内をうごめき、その快感は容赦なく美琴の脳を破壊していった。上条とキスすること以外、何も考えられなくなってしまう程に。キスだけでこんな事になってしまったら、『それ以上』の事をしたら、それこそ一体どうなってしまうのだろうか――― ◇次回予告美琴「ねぇ、当麻…このまま………シよ…?」上条「もう後には引けないからな! ここまでさせた美琴が悪いんだぞ!?」刀夜「とととと当麻っ!? せ、せせ、責任はどどどうするんだ!!?」初春「ぬふぇ~~~~~~~~~!!!」建宮「教皇代理として総員に告ぐ! 今すぐ五和の半径100㎞圏内から離れるのよー!」一方通行「つまりありゃァ木原のクローンって訳かよ! めンどくせェもン作りやがって!」舞夏「お…おおぉ…そ、そうかー。まぁ、ヤっちゃった物は仕方ないんじゃないかー?」オティヌス「……それが貴様の選んだ答えなのだろう?」白井「オホホホホ類人猿さん。少々お聞きしたい事がありますので面をお貸しくださいな?」美鈴「つまりね美琴ちゃん。いっその事、お嫁さんになっちゃえばいいのよ」
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「あー!!追え、追えー!!捕まえろ!!いや、殺せ!!」 やっと本来の目的を思い出した常盤台上琴反対派の生徒達は直ぐ様追い掛ける。 「だー!!何で思い出すんだコンチクショー!!殺るならさっさとかかって来いやゴルァー!!」 常盤台上琴反対派の生徒達は攻撃するが直ぐ様かき消される。 (んじゃこれを使うか) 心理掌握は常盤台上琴反対派の生徒達に暗示をかけた。 『何がなんでも殺せ』と、 上条は常盤台上琴反対派の生徒達の動きが変わったのに気づいた。 何だか獣を狩る漁師の様な目だった。 (まさか、そこまでして俺をどーこーしたいのかよ!!) しかも、さっきと威力もはね上がってきている。 そのたびに肩やら足やらから苦い音がした。 「お前!!何で後輩をここまで使ってるんだ!?このままじゃ体がヤバイぞ!?」 「何でって言われてもねえ?レベル5がただの虫けらと付き合ってるなんて……レベル5の看板を汚してるだけでしょ?私まで軽い女だと思われるのが嫌なのよね~。」 彼女がそこまでするのは、ただそれだけだった。 「……っざけんな」 「はぁ?」 「ふざけんなって言ったんだよこのクソガキ! レベル5がそんなに偉いのか! この子たちを弄ぶ権利がてめえにあんのか! この子達はてめえの玩具じゃねえんだぞ!」 心理掌握は当麻の『幻想殺し』の影響で彼の心は読めなかったが向けてる感情は理解出来た、あるのは純然たる他人の為の怒り。 しかし心理掌握は能力のせいか、当麻の感情が理解出来ない人種になっていたのでその怒りを鼻で笑う。 「フフッ。何て青臭くて頭の悪い方なのでしょう。この子達を弄ぶ権利? この子達を玩具にするな? 分かっていませんのね。レベル5とはそれらを許容される存在。ゆえにその子達も本望なのですよ」 「俺の知ってるレベル5はてめえと違っていい奴ばっかりだったな。アクセラ、削板、そして美琴。てめえのような奴があいつらと一緒ってのは許せねぇな。俺がそのてめえの捻じ曲がった幻想、ぶっ殺して叩き直してやるぜ!」 「……出来もしないことを吠えるのはみじめでみっともなくて、そして愚劣です。あなた達、この男を血祭りに……なっ!」 怒れる当麻を引き戻し、心理掌握を驚かせた光景、それは心理掌握に操られた上琴反対派生徒達が一人残らず気絶している異様な光景だった。 「君が手を下す必要は無いよ、上条当麻。ここからはネセサリウスの領分だ。君の右手はこんな幼稚な子供に対して向けるべきじゃあない」 「ステイルの言う通りです。ああ、更に催眠でこの子達を動かそうとしても無駄です。意識を完全に刈り取りましたし、動けたとしても体を麻痺させてますから」 「この子達に手荒な真似をするつもりは無かったのだがな。事が事だ、緊急措置を取らせてもらった」 「ま、魔術師!」 心理掌握が『魔術師』というフレーズを口にしたことに驚いた当麻達だったが、駆けつけたステイル、神裂、闇咲は平然としていた。 ちなみに半蔵と郭は3人に頼まれて、中に居る人間の足止めを任されてしまう。 ステイル達がやって来た理由、それは実に魔術師らしいものだった。 「やっぱり貴女は私達の心を読んでいたのですね。でなければ私達から逃亡した際の怯えようは説明が付きません」 「さて、君は魔術の存在を知ってしまったわけだけど、もちろん無事に帰れるとは思ってないよね?」 「思ってますが? 私の能力ならあなた達をまとめて洗脳なんて……っ!!」 魔術の存在をこのような相手に知られるのは自分達も相手もまずい、つまりお互いの為に魔術の秘匿を行うのだ。 しかし心理掌握もレベル5の第五位、すんなりとステイル達の言葉を受け入れるわけが無い、いつも通りならばの話だが。 それをさせたのは『透魔の弦』で姿を消し、心理掌握の延髄に梓弓を押し当てた闇咲だった。 「君が彼らを洗脳すれば私は『衝打の弦』で首をへし折らせてもらう。もっとも、君よりも私の『衝打の弦』や神裂の『七閃』の方が速いだろうがな」 「私は人を殺すような真似はしません。ですが、貴女がこれ以上、人の尊厳を弄ぶのなら死なない程度に斬り刻ませてもらいます」 「僕は優しいから殺すとか壊すとか、そんなことはしないから安心していい。ただ、この炎剣で君の顔を人前で見せられないように焼かせてもらうだけだから。痛みは後で取り除いてあげるから心配はいらないよ」 魔術師三人のえげつない脅しに彼らを知ってる当麻、心を読んで彼らをそれなりに理解してしまった心理掌握、二人揃ってゾッとした。 しかし心理掌握は彼らの心を覗いた際に見つけたあるものの存在を思い出し、脅しにかかる、それがいかに愚かなこととは知らずに。 「……あなた達、自分よりも大切な人がいるのでしょう? その方達を壊すなんて造作も無いんですのよ? それでもまだ私を脅すつもりですか?」 「そうか、君は知ってしまったんだね。でも僕らの大切な人に手を出したらどうなるのかまでは読んでいなかったようだ。さあ、読んでごらん、僕たちの今の心理状態ってやつを」 ステイルに促されるまま、心理掌握は彼らの現在の心を読んだことを死ぬほど、いや死んだ方がマシと思えるほどに後悔した。 脳裏に入ってきたのは口に出すのもおぞましいほどの仕打ちばかりで心理掌握はガタガタ震え出し、涙を浮かべていた(特にステイルで)。 心理掌握は恐怖に震えながら、魔術の存在だけは決して口にはすまいと決意し、大慌てでその場から逃げて行った。 「……えっと、見せ場とか一切合財持っていかれ、しかも胸の中で燻ってる怒りを上条さんはどうやって発散させればいいのでせうか?」 「見せ場なら残してあるじゃないか。さあ、君の右手で彼女達にかけられた洗脳を一人残らずぶち殺すんだ」 「てめぇステイル! 人の決め台詞を勝手に使ってんじゃねぇ! あ、でも麻痺はどうすんだ? 俺の右手じゃあ麻痺とかは解除できないぞ」 「心配無用です。その麻痺も魔術によるものですからあなたの右手で解除されます。良かったですね上条当麻。さらに遣り甲斐が出て」 付き合いの長い二人にこき使われることにムッとしつつも、当麻は『幻想殺し』で洗脳と麻痺の解除に精を出す。 そして全員の洗脳と麻痺の解除を終えた当麻は心理掌握に対する三人のやり過ぎとも言える脅しに文句を言う。 「……それにしてもお前らさ、ちょっとやり過ぎだろ。いくらあいつが気に喰わないからってあんなになるまで追い詰めるってのは……」 「まあ、確かに少し過剰だったかもしれないね。でも僕らはこれでも被害を最小限に食い止めたつもりだよ」 「あれでかよ! ていうかそれ以上のことを…………やる奴らがここには一杯居たな」 ステイルの発言にツッコミを入れた当麻だが、彼ら以上に危険な存在がここにいたことを思い出す。 「土御門、アクセラ、建宮、シェリー……。あいつらだったらさっきのが可愛いくらいのことやりそうだもんな、笑いながら」 「そうゆうことです。私達は彼女の身の安全を考えてあのような行動に出たのです。それだけは察して下さい」 当麻が危険人物としてあげた仲間達の中に美琴と初春の名前が無かったのには理由があった。 彼が名前を挙げた4人は洒落にならないレベルの危険性を持っていて、心理掌握が壊れかねないことを平気でやりそうな面子なのだ。 本当なら初春の名前もコッソリ付け加えようかと思ったが、神裂に冗談抜きで唯閃される予感がしたのであえて省いた(美琴は自分の可愛い恋人という理由で削除)。 「では私は気絶しているこの子達を第二学区の外へと運んでくるとしよう。ステイル、悪いが手伝ってくれるか?」 「分かった。じゃあ僕らはこっちを片付けてから戻るとするよ。上条当麻、早く戻ってみんなを安心させるといい」 こうして当麻は神裂と一緒にジャッジメント訓練所へと戻って行った。 一方、逃げ出した心理掌握は心の中で悪態を付きながら寮への道を歩いていた。 (許さない! 絶対に許さない! あの生意気で無価値なレベル0! 今度こそ私の前に跪かせてやる!) (あの魔術師どもが居ない所で今度こそ! 今度こそ私の偉大さを思い知らせてあげるわ!!) 子供じみたプライドを持った学園都市第五位、彼女の辞書には『懲りる』とか『改心』の文字は入っていないようだ。 その頃、第一七七支部では最近の固法の悩みの種こと絹旗が、ジャッジメントの腕章を付けてリラックスしていた。 どうやら今回も押しかけジャッジメントをやるらしく、本人もノリノリな所へ騒動から一先ず先に抜け出していた黒子がやって来た。 「あれ白井さん、パトロールは超終わりましたの?」 「それどころじゃありませんでしたの。さっきまで、私の学校の生徒達に捕まるし、第二学区に連れて行かれたりして大変でしたの。」 「超何をしたのですか!?」 絹旗は黒子が何かしたのかと思った。 「いえ私が目的ではなく、上条さんとお姉様に目的があって、その人質にされていましたの。」 「でもなんで白井さんが超捕まらなきゃいけないんですか?ひょっとしたら超助けに来ないかもしれませんのに。」 「それは、あの二人の性格からにしてないでしょう。あの二人は誰かが助けを求めていたら助けにいくでしょうし、自分のせいで捕まっているのならなおさらです。」 「で、超当麻お兄ちゃんと超美琴お姉ちゃんに助けてもらったのですか?」 「いえ、助けてもらったのは他の人なんですけど、なんでAIMジャマーが効かなかったのでしょうか?」 「え!!能力者なのにAIMジャマーが超効かなかったのですか!?」 「そうなんですの。一体どうやったらAIMジャマーが効かないで済むんでしょうか?」 「「う~ん…」」 絹旗と黒子はどうしてAIMジャマーが効かなかったのか気になっていた。 そんなこと話していたら、固法が帰ってきた。 「あら、どうしたの二人とも。そんなに考えて。」 固法は、来てそうそう二人が考え事をしていてちょっとビックリしていた。 「固法先輩、ちょっと聞きたいことがありますんですけど。」 「どうしたの?」 「能力者でAIMジャマーが効かない能力者って居ますの?」 「そんな人聞いたこと無いけど。」 固法はAIMジャマーが効かない能力者なんている訳が無いと否定した。 「そうですよね。なら、あの人たちは能力者じゃないのでしょうか?」 「ねぇ、一体何があったのかまだ分からないんだけど。」 黒子は固法にパトロール中に何があったのか話した 「そう言うことだったの。ま、それは仕事が終わらせてから考えましょ。 という事で、三人はジャッチメントの仕事をするのだった。
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その頃、クレイウーマンが造り出した特大粘土人形が暴れているのを攻撃範囲外から見ながら土御門は電話を受けていた、相手は初春である。 「成程、その魔術師は生け捕りにしろと。しかも顔は本人だと分かるように原型を止めておくんだな。つまり奴らのバックを暴こうって魂胆だな?」 『ええ。二人だけ、しかも明確な目的を持ってることからあの二人はどこかの魔術結社に属してるはずです。だったらついでに大元もって思いまして』 「いやはや初春ちゃんは本当に変わっちまったって実感させられるぜよ。まさか顔は駄目だけどそこ以外は何やってもいいって言うとは思わなかったにゃー♪」 『ち、違いますから! わ、私、そんなこと考えてませんから! じゃ、じゃあ着替え終わったら私たちもそちらに行きますから! シェリーさん、そっちは後で』 途中で切れてしまった初春の電話、最後に何があったのか気になってしょうがない土御門だがそれは後回しにすることに。 同じく行動を共にしていた一方通行と月夜、土御門の会話からある程度の事情を察していた。 「しかし初春ちゃんも無茶言うよね……。私達、何だかんだでそろそろ限界だよ?」 「ったく、ンなことならさっき御坂に電極の充電頼めば良かったぜェ。能力使用もあと五分が限界だぞ……」 「アクセラには黒系(黒翼や黒き悪魔の右腕のこと)があるだろ?」 「いかにも三下っぽい奴らに使うのは俺のプライドが許さねェが……まァ、いざとなったら使ってやンよ」 新入生達は何だかんだで彼らに色々と限界を与えていたようだ、伊達に全員がレベル4(ピンキリだが)では無かったらしい。 攻撃範囲外だからと油断していた土白と一方通行、しかし特大粘土人形が本能のままに飛ばしてきた人間大の大きさの粘土弾が容赦なく襲い掛かる。 「うおりゃー!!」 飛んできた粘土弾に対し、白雪は氷の盾を作ってなんとか皆を守った。 だが、気を休める暇などなく、ドンドン放たれていく。 「うぎゃー!!元春ぅ~!!なんとかしてー!!」 「今すぐ魔術師を見つけてやる。だから頑張ってくれ!!」 「頑張るしか選択肢は無かったの!?」 そう言いつつも、土御門にかっこよく応援されるとチカラがわいてくる。 白雪はかなり耐えたが、それでも限界は来る。 もう白雪がダメだと感じたその瞬間。白雪の視界に黒と白の塊が入った。 それは一方通行の最終兵器、黒き堕天使のチカラを持つ一方通行の姿だった。 「ざけてンじゃねェぞォォォおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」 一方通行が粘土人形に右腕を叩きつけたその瞬間。 粘土人形は潰れた。 「ンだァ、随分とあっけねェな。図体がデカイだけじゃねェか」 「だといいがな、絶対に油断はするなよ。……とはいっても残ってるのはあの不細工な粘土の化け物を作った魔術師だけか」 特大粘土人形が潰れ、ひしゃげた状態で沈黙し、その後方に自分達の知らない人間(クレイウーマン)の存在を確認した土御門。 脅威だった特大粘土人形がピクリとも動かないことを確認した土白と一方通行、用心しながらグラウンドに降り立った。 (自分の切り札がやられたってのに何であの女は余裕を崩さない? まだ終わっていないのか? それとも) 「後はあの女をブッ倒しゃあいいンだろ? 一気に間合いを詰めて終わらせてやンぜ!」 足元のベクトル変換を使い、クレイウーマンの元へと疾駆しようとしたその時、何の前触れも無く黒色の小袋が出現した。 クレイウーマンの余裕、それともう一人の魔術師の存在を繋ぎ合わせた土御門が一方通行を制止しようとしたが、一方通行は構わず小袋を引き裂いてしまう。 「アァ? ただの粉が入って……な、何だァ、きゅ、急に眠気が……っ。クッ、クソがァ……」 「あ、アクセラ、く、くん……。も、元春、ご、ゴメン、ね。私も、ちょっと、だ、ダメみたい……」 黒色の小袋に入っていたのは魔術で作られた特製の眠り粉で、疲れもピークな月夜、反射の設定を失念していた一方通行はモロに吸い込み眠ってしまった。 土御門だけは咄嗟に口と鼻を塞いだが、それでも眠り粉を少し吸い込んでしまい思考がおぼつかない状態に。 「成程、さすがは土御門元春といった所か。そこで眠ってしまった二人よりは危機回避能力は高いな」 (声だけしか、き、聞こえねぇ……。これはおそらく隠密術式……。だから小袋の存在にも気付けるのが遅かったってのか……くそっ! こんなことならねーちんか建宮を) 「ところであそこでひしゃげてる粘土人形だがな、あれでは完全に活動停止には至らないぞ。ほぅ、もう動き出すか。ならば俺は避難するとしよう」 眠りこそしないが意識が混濁し始めてる土御門が見たもの、それは潰れている粘土の塊がグニョグニョと蠢き再び活動を始めようとする特大粘土人形の姿だった。 そして粘土人形は巨大な腕をしならせて土白、一方通行へと振り下ろすが、 「ふうっ、何とか間に合ったわ。さっきの粘土人形よりもでかい上に不気味なんてやってやれないわね。超電磁砲でも完全に塵に出来るかどうか……」 美琴の超電磁砲が腕を跡形も無く消し飛ばしたので事無きを得るが、すぐさま腕は再生した。 土御門は助かったことを幸運に思うが、隣にいる当麻の不自然すぎる姿に、 「待たせたな土御門! 満を持して上条さんと美琴が助けに来ましたのことよ!」 「満を持してじゃねーだろーーーーーーーーっ! 何ぜよカミやんの顔や首筋に付いてるキスマークはーーーーっ!」 眠り粉による眠気も吹っ飛ぶほどの力強いツッコミを入れてしまうことに。 当麻を初めて目の当たりにしたクレイウーマンは思った、あんなのが自分達の最優先の標的の幻想殺しなのかと。 「ん?何かおかしいところでもあるか?」 「あるわボケェェェェえええええええええええええええええええええええい!!!! どこにキスマークつけてやって来る戦友がいるぜよ!?」 「???いや、俺たち怒り狂ってたから落ち着こうと思って全身にキスマークつけてただけだけど? あっ、ちなみに唇で激しいのもしたし、美琴の全身にも……」 「んなこと誰も聞いてないぜい!!さっさと右手で月夜とアクセラの頭触って起こせ!!」 「わかった」 「そうはさせるか!!」 どうやら上条の右手で触れたら二人は起きるらしく、クレイウーマンは特大粘土人形に粘土弾を放たせる。 だが上条の右手でそれは散る。 「クソォ!!まだ時間がかかると言うのに!!」 何の時間かは知らないが、また粘土弾が飛んでくる。これでは上条は進めず、相手の何かを叶えさせてしまう。 美琴も美琴で、電撃で粘土弾に攻撃している。 上条達ピンチである。 一方の校舎内、こちらでは一つの終わりを迎えようとしていた。 そう、新入生達による襲撃が彼らの完全壊滅という形で終了しそうな勢いなのだ。 「ふー、ここのフロアの襲撃者さん達もこれ以上襲ってくる心配は無さそうね。ご苦労さま黒子ちゃん。そっちのあなたもよく耐えたわね」 「私がしたのは単に動けなくなった彼らを気絶させただけですの。本当の功労者は制服を恥ずかしい程度に切り刻んだ浦上様ですわ……」 「ボクも何かしたわけや無いですよ、ホンマ。むしろ目の保養に半分はなったわけですし。それよりもボクは浦上はんともっゲフッ!」 新入生達の完全壊滅の立て役者とも呼べる活躍を見せたのは黒子、青ピ、浦上。 とはいっても青ピは戦ったわけではなく、女子のセミヌードだけを脳内に焼き付けていたに過ぎない(黒子の制裁は覚悟の上で)。 「さて、これで残りも少なくなってきたことでしょう。浦上様、次はどのようになさいます?」 「とりあえず下に降りながら考えましょう(外ではおそらく上条さん達が魔術師との戦闘をしているはず。この二人は近づけないようにしないとね)」 「うおっ! な、何やのこの人間の山は! しかも男も女も関係無く延髄に内出血の跡が! いったい誰がこない酷いことを……」 一階に降りて来て青黒、浦上は大いに驚いた、何せ新入生達がピクリとも動かずに倒れているのだから。 三人が驚く中、この事態を引き起こした張本人から声がかかる。 「あれ、○○くんにその恋人の黒子さん。それとそちらの女性は初めて見ますがお二人の知り合いですか?」 「あ、ああ、こちらは黒子はんの寮の寮監補佐の浦上さんや。せやけどどないしたん? 井ノ原弟。そない丁寧な口調になるなんて」 「そんなに気にして頂かなくても平気です。ただ少しだけ怒っているだけですから。それにしても皆さん無事で本当に良かったです」 マジ切れモードの真夜にキョトンとする黒子と浦上、彼の変わりようというか心配してきたことに妙な勘ぐりをしたのは青ピだった。 (……なんや、このいつも以上の優しさは? 井ノ原弟、一体何を企んどんのや?) 「ところで理后さんはどこに居ますか? 新入生の方々がどれだけ健在なのか知りたいと思いまして」 「滝壺はんとは屋上で別れたきりやから今はどこにおるか分からんなぁ。もしかしたら浜やん、半蔵はん、郭はんと一緒かも知れへん」 「半蔵くんと郭さんには会いましたが理后さんと一緒に居ませんでした。ならば確実に仕上くんと一緒でしょうね」 青ピの情報を元に滝壺とコンタクトを取る為に浜面に電話をかけた真夜だが、 「もしもし仕上くんですか? お忙しい所すみません、真夜です。理后さんに聞きたいことが」 『真夜ってことは井ノ原弟か? 頼む助けてくれ! 今ちょっと滝壺と痴女に』 『だーれが痴女なのかにゃーん? はーまづらぁ。悪いんだけどさぁ浜面も滝壺も私も取り込み中なの、後にしてくれる?』 「いえ、お手数は取らせませんから理后さんに代わっ」 状況の掴めない会話のせいで当初の目的は達成できなかった。 仕方なく真夜は何となくの勘で体育館を目指すことに。 「では僕はもう行きます。皆さんは保健室で休んでていて下さい。半蔵くんと郭さんもそこに居ますから」 体育館に向かう間、真夜は電話に出た女性の声に聞き覚えがあると思っていたが、それは麦野も同じで真夜の声に聞き覚えを感じていた。
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決め手は隠し味 『第1回 とある魔術やあらへんで!! チキチキカミやんのハートは料理で掴め 心を込めた手料理対決~!』「この企画の司会を勤めさせていただく土御門元春だにゃー」「アシスタントの土御門舞夏であるー」「え~、この番組では女の子が手料理を作ってカミやんに食べてもらうぜい」「いきなり連れて来られたと思ったら、なんだよこの企画……」突然始まった謎の企画、スタジオの真ん中には上条当麻が座っている。どうやら、上条当麻にフラグを回収するきっかけを作るのが目的みたいである。「料理といえばメイドの私も出たかったんだがなー、兄貴が許してくれなくてなー」「舞夏の手料理をカミやんなんぞに食べさせんぜよ」「そんなに気にすることも無いと思うけどなー」「前置きはこの辺にしておいて早速企画の説明をするぜい、舞夏頼むにゃー」「分かったぞー」そう言って用意されたフリップを手に持って説明し始めた。~企画説明~・上条当麻にはこれから出される女の子の手料理を食べてもらう。・全て食べ終わった後に誰の料理が1番印象に残ったのか答えてもらう。・公平を期するために全て『肉じゃが』を作ってもらう。・1度出された料理は、何があっても1口は食べなければならない。「以上だぞー、ちなみに女の子が出てくる順番は出てくるまでは分からないぞー」「いや、だから何で俺なんだよ?」「さて、説明も終わったところで早速最初の挑戦者の入場だにゃー」「スルーですか、そうですか」挑戦者1 五和「お久しぶりです、上条さん」「五和か、思ったよりまじめそうな企画で良かったー、五和の料理なら安心して食べれるな」知った人物の登場に上条はほっと息をついた。五和の料理の腕は以前作ってもらったことがあるので知っている。「はい! 上条さんの為に頑張って作りました!」五和もこれ以上無いチャンスなので張り切って作ったようだ。ここで料理の腕は自分が1番とアピールすることが出来れば、他の子とより一歩リードすることが出来る。「五和、がんばるのよな!」天草式のメンバーも何故か応援に来ている。まあ、料理を作った後のスタジオでの応援は大して意味は無いのだが……。「うまい! こんなうまい料理を食べたのは久しぶりだ」やはり料理は美味しかったようだ、上条はあまりの旨さに高く空の上へ引き上げられるような感覚になった。「ありがとうございます」上条の反応のよさに五和は安堵の息をついた。「おーっと、これは好印象だにゃー」「さすがは私がライバルと認めただけのことはあるなー」舞夏は以前からライバルがここで活躍するのを見て、少し悔しい気持ちになった。「カミやんには満足してもらったところで、次の挑戦者どうぞだにゃー!」挑戦者2 オルソラ=アクィナス「オルソラまで来てたのか」「お久しぶりでございます」「オルソラの料理もうまかったもんなー、マジでおいしいもんばっかり食べられて上条さんは幸せですよー」インデックスに500倍くらい美味しいと言われた実力を持つオルソラ。イギリス清教の女子寮も彼女が料理当番のときは食堂もいっぱいになるほど定評がある。「あなた様に食べていただきたくて、頑張って作ったのでございますよ」「おお! 見るからにうまそうな肉じゃがだな」出された料理は声に出さずにはいられないほど美味しそうな料理だった。「和食はあまり得意ではなかったので、洋風肉じゃがにアレンジしてみたのでございますよ」「うめぇ! 五和の肉じゃがもうまかったけど、これもかなりうめぇー!」「天草式の五和に続いての好印象! これは誰が優勝するかわからないにゃー」「むむむ、新たなライバル出現の予感だなー。やっぱり私も出場すればよかったー」2人続けて実力者の登場に、舞夏は少しだけ不満を覚えた。「舞夏の料理はカミやんには絶対食わせんぜよ、さて次の挑戦者の準備が出来たみたいだにゃー」 挑戦者3 結標淡希「まさか、お前まで参加してるとは……」意外な人物の登場に、上条は少し不安になった。彼女の料理の腕は小萌先生から聞いている。今までの幸せ気分は一気に不安で埋め尽くされてしまった。「せっかく料理を覚えたんだから、誰かに食べてもらえって小萌が言うから」「なるほど、それでこれは肉じゃがなのか?」目の前にある謎の物体に疑問を覚えた。この企画がテレビ番組なら、不適切な表現で画面にモザイクがかかるだろう。「普通に肉じゃがだけど?」何当たり前のことを聞いてるの? と呆れ顔で問い返した。「……何でこんなに青いんでせう?」そう、謎の物体は青色だったのだ。醤油を入れすぎたわけでも、煮込みすぎたわけでもなく、普通に肉じゃがを作る工程で、肉じゃがが青色になることなんてありえないのだ。「普通に作っても面白くないから、ちょっとだけ着色料を入れてみたんだけど、何か問題でも?」結標としては料理にインパクトを持たせるためと遊び心を持って、調味料の中に置いてあった着色料を入れたのだ。「……妙な臭いがしません?」「別に変な物は入れてないから味は問題ないわよ」肉じゃがに青色の合成着色料を入れる時点で十分変な物なのだが……と、普段の上条ならツッコミを入れるところだが、あまりの臭いの為に上条の思考はツッコミより肉じゃがの方に奪われていた。「そうか? 食事中の人もいるだろうからソフトに表現するけどこれは……、 牛乳を雑巾で拭いてそのまま乾くまで放置した時みたいな臭いが……」記憶喪失の上条は牛乳が乾いたときの臭いなんて知らないだろうが、あまりの臭いの為に直感的にそう言ってしまった。「失礼ね! さっさと食べなさいよ」「食うのか? 俺が? コレを?」上条は意を決して、肉じゃがもどきを口に運んだその瞬間―――「……パクッ、ゴフッ」「なっ! 汚いわね!」口に入れた瞬間上条は吐き出してしまった。「ゴホッゴホッ、何だよコレ?」「だから肉じゃがだって……」「……絶対生物が食べるように作られて無いだろコレ」あまりの不味さに、上条の感想にはフォローすら入っていない。「そんなはずは……」「コレはインデックスですら残すレベルだぞ?」何でこんなものを食わせるんだよと上条は不機嫌になっている。ここでインデックスの名前を出すのはインデックスに失礼なのだが……。大食いの象徴であるインデックスですら食べられないとはよほどのものだろう。「調理中の情報が入ったぞー、その女が着色料だと思って使ったのはー」「着色料? あー青色の原因のアレか」「アレなー、実は青色の絵の具だったんだー」「ゴフッ、人に何食わそうとしてんだよ!」予想外の調味料に上条は思わずキレた。やはり人間が食べられるように作られていなかったのである。「ちょ、ちょっと間違えただけよ!」「とにかく、1口は食べたからルールは破ってないよな?」正確には食べずに口に入れただけなのだが、こんなものを食べてしまうと病院送りになってしまう。絵の具以外はちゃんとした素材で作られているので少しもったいないが……。「まー問題ないにゃー」「素材を無駄にするのは料理人として許されないけどなー」料理人として素材を無駄にするのは許されないし、世間では食べ物を粗末にするな! とクレームがつくかも知れない。そこで、『この後スタッフが美味しく食べました』というために土御門は秘策を用意していたのだ。「それは問題ないにゃー、別室に青髪ピアスが待機してるにゃー」「何で青髪が?」「女の子の手料理が食べられるかもって言ったら喜んで協力してくれたぜい」「……なるほど」土御門の一言で、上条は全て納得してしまった。「舞夏、残りの肉じゃがを別室まで持って行ってくれないか?」「分かったぞ兄貴ー、それじゃ行ってくる」ピーポーピーポーピーポー「それじゃ気を取り直して次の挑戦者だにゃー」 挑戦者4 白井黒子「白井……」驚いたことに、次の挑戦者は白井だった。「わたくしの手料理をご馳走しますわ、上条さん」白井はそう言って不敵な笑みを浮かべながら、肉じゃがを差し出した。「……何だこれは?」結標の時は出されたものがギリギリ肉じゃがと認識することが出来た。だがコレは―――「常盤台中学特製オリジナル肉じゃがですの」「俺にはただの石にしか見えないんですが……」「気のせいですの、肉じゃがをベースにすればオリジナル料理も許されると聞いたので」「いや……、コレは……、どう見てもただの石だろ?」「ただの石ではございませんの。ジャガイモの代わりに石を使い、肉の変わりに合成ゴムを使って、 鰹とこんぶで出汁を取り、砂糖と醤油とみりんで味付けした特製肉じゃがですの」「……つまり石ゴムじゃねーか」「それを言うならゴム石だぜいカミやん」土御門の鋭いツッコミが光った。上条は土御門を怒りをこめて睨みつけた。「さあ、お召し上がりください」「……コレを?」無機物を食べることの出来る人間がいたら、それはもはや人間では無いだろう。「そうですの」(類人猿にはここで放送中の事故として亡き者になってもらいますの!)「白井ー、さすがにそれは酷いと思うぞー」冷静に対処したのは舞夏だった。「ルールでは出された料理は絶対に1口は食べないとダメなんだけどにゃー」土御門は面白いものが見れるとニヤニヤしている。「兄貴はアレを食べ物と判断するのかー? アレは料理に対する冒涜だぞー?」料理を馬鹿にされた舞夏は、義兄を睨みつける。愛する義妹に睨みつけられた土御門はゴホンと咳をつき、全てを無かったことにした。「……そうだにゃー、カミやんそれは食べなくてもいいぜい」「なっ! せっかくわたくしが心を込めて作ったのに!」せっかくの計画が全て水の泡になってしまう、不機嫌なしわを眉間につくった。「こんなこともあろうかと、ある人物に助っ人を頼んでおいたんだぞー」白井がエントリーした時点で舞夏はある人物に協力をお願いしていた。コツコツコツ白井の後ろから不吉な足音が近づいてくるが、白井は気付いていない。上条はその足音の正体に気付いた、足音の正体の人物について一切知らないはずなのだが物凄い威圧感を感じてしまい、動けなくなった。「ほう、コレが常盤台中学特製と銘打たれた料理なんだな白井?」「ひっ」突然後ろから声をかけられて白井は心臓が止まりそうになった。そして振り向くと、『最強の無能力者』の異名を持つと恐れられる寮監の姿があった。「ここここれはご機嫌麗しゅう寮監様……」黒子は何事も無かったかのように挨拶をして、必死に誤魔化そうとする。「こんな料理が常盤台のレベルだと思われることに責任が取れるんだな?」「そっそそそお、それは……」「白井、今ここで私に首を刈られるのと、自分で作った料理を自分で食べるのとどっちがいい?」「……首を刈ってくださいですの」「そうか」ゴキッ黒子は首を180度回され、ゴミのように捨てられた。その光景を上条は真っ青になり見ている。全身から血の気が引いていくのを感じる。寮監は上条の前に立ち、凄まじい威圧感を出し上条に語りかけた。「ウチの生徒が迷惑をかけた」上条は恐怖のあまり固まっていた。「は、はい……」やっとの思いで出た返事は声が震えていた。「さて、次の挑戦者はこちらだにゃー」何事も無かったかのように土御門は進行している。 挑戦者5 佐天涙子「えーっと、君は御坂の友達の……」「……」挑戦者の佐天涙子は俯きながら何かを考えている。(マズイマズイマズイマズイ)「挑戦者の佐天涙子だにゃー」「あっはい!」名前を呼ばれた佐天はドキッっとして思わず返事をしてしまった。彼女がこんなことになっているのには少し事情がある。参加する前の風景「聞いてよ初春! 今度御坂さんの想い人の上条さんを対象とした料理バトルがあるみたいなんだけど」「私も舞夏さんから聞きましたー」「御坂さんも参加するみたいなんだけど、あたしも御坂さんの為に何か出来ないかなーって思ってさー」「具体的にはどうするんですか?」「聞いた話だと、料理を出す順番はエントリー順みたいだから、御坂さんの後にエントリーして、 すごくまずい料理を出せば前に食べた人の料理の印象が更に上がるって作戦なんだけどどうかな?」「なるほど、御坂さんの為に自分を犠牲にするわけですね」「そんなにたいしたことじゃないけどね、上条さんのことで悩んでる御坂さんを見てたら、あたしも応援したくなっちゃって」「それでもいい作戦ですね!」「でしょ? それじゃ早速エントリーに行くよー」「あれ? でもこの作戦って、佐天さんの後の人の印象も上がったりしません?」「大丈夫! ちゃんと考えてるよ!」開始10分前ピンポンパンポーン各調理室に放送が流れる。『今回の参加者の皆さんに、重要な話があるにゃー。最初はエントリー順番で料理を出してもらおうと思ったんだけど、公平を期するために順番はくじ引きで決めることになったにゃー』『料理対決ってのは料理を出す順番も大事だからなー、これから私がくじを持って調理室を回るから、みんなはギリギリまで料理に集中しておいていいぞー』「マズイマズイマズイマズイ」突然のアナウンスに佐天の顔は真っ青になる。美琴より後なら問題ないのだが、美琴より前になってしまうと……回想終わり 「すみません、御坂さんってもう出ました?」「御坂もこんな企画に参加してるのか?」「……まだなんだ」佐天は絶望した、このままでは大変なことになってしまう。自分の安易な行動のせいで友人が傷ついてしまう……。「あの、佐天さん?」「あっはい」佐天の顔はどんどん真っ青になっていく。「具合悪そうだけど大丈夫か?」「……あの、あたし棄権するってのはダメでしょうか?」棄権さえすれば上条に料理を食べさせることなく、全て丸く収まるはずと思った。「棄権? それは出来ないぜい」「そうですか……」「まー、棄権してもしなくても、料理を食べるのはカミやんだから君が気にする必要はないぜい」(だからマズイんだけど)佐天は今にも泣きそうな顔をしている。どうしたらいいのか分からなかった。「んー、どうして棄権したいのかわかんねーけど……、あ! もしかして料理に失敗したとか?」「え? 別にそういうわけじゃ……」「それくらい全然かまわねーよ、さっきの2人の料理の後だしな。多少のことなら全然平気だぜ」さりげない上条属性の発動、料理に失敗したと勘違いをしている上条は優しい笑みを佐天に向けたが、佐天にはそれに答える余裕が無い。「とりあえず料理を紹介するにゃー」佐天は肉じゃがを上条に差し出した。上条の優しかった表情がどんどん青くなっていく。「……何で赤いんでせう?」「……」佐天は答えなかった、というより答えられなかった。「結標のときみたいに赤い絵の具が入ってるとか?」「大丈夫だぞー、この料理には人間が口に出来ない食べ物や調味料は入ってないぞー」フォローを入れたのは舞夏、舞夏には各挑戦者が使用した素材と調味料のリストが渡されていた。「そ、そうか……」人間が食べられる物と聞いた上条は少しだけ安心して肉じゃがを食べようとした。「それじゃ、いただきます」「あっ」上条が肉じゃがに箸をつけた瞬間、佐天は小さく呟いた。「……ゴフッ」肉じゃがを口に入れた瞬間、上条は肉じゃがに口を噛まれたような感覚に陥った。「……」「ひたい! ひす! ひすをはやふ!」(痛い! 水! 水を早く!)肉じゃがは辛さを通り越して上条にダメージを与えた。あまりの痛みに上条はのた打ち回った。そんな上条の様子を見て、佐天は気の毒に思いながら上条に水を差し出した。(すみません、あたしのせいで……、そしてごめんなさい御坂さん……)「辛口肉じゃがは発想が良かったけど、少しハバネロソースを入れすぎたなー」「だから棄権したかったのかにゃー、まーカミやんならコレくらいのダメージ全然平気だぜい」「ひほほほたほほもって……、ふひははへる……」(人事だと思って……、口が焼ける……)「カミやん何言ってるかわからんぜよ」「はひ……」「カミやんの言語機能が回復するまで待つにゃー」「とりあえず喋れるようにはなった」「それでは次の挑戦者をこの人だにゃー」 挑戦者6 御坂美琴「御坂か」「……」御坂も何故か元気が無い、ただ気まずそうに下を向いている。「どうしたんだ?」返事は無い、美琴は元気が無いというより悲しみに近い表情をしている。「ほう、御坂まで参加してるとはな」「寮監! どうしてここに……」声を掛けたのは恐怖の寮監だった、上条の言葉には悲しみのあまり反応できなかったが、寮監の言葉には、恐怖のあまり反応してしまった。「ただの見学だよ」寮監の足元には白井黒子が転がっている。「黒子も出てたんだ……」なぜ白井が参加したのかは美琴は知る由も無かった。「さて、超電磁砲が作った料理を紹介してもらうにゃー」「……肉じゃが?」「……そうよ、ちょっと失敗しちゃったけど」「それを気にしてたのか? まー不器用なキャラが不器用なりに作ったものならなー」「私は別に不器用じゃないわよ!」ちょっとだけ元気になった様子を見て、上条はほっとした。「はは、この肉じゃがを前に不器用じゃないと言い張れるんだったら大したもんだよ」「さーカミやん、さっさと食べるにゃー」「ああ、分かったよ……」パクッ「こ、これは……!」「カミやん、感想を言うにゃー」「さっきの佐天さんの料理が原因で、舌が麻痺してて味がわからん……」予想外の上条の感想、そう佐天の作戦はこういうことだったのだ。美琴の後に料理を出し、激辛料理で上条の味覚を麻痺させて、後の挑戦者の料理の味を分からなくさせるという。しかし作戦は失敗に終わり、美琴の料理の味が分からなくなるという最悪の結果になってしまった。「そんな……」美琴としても、結果として料理は失敗してしまったが、せっかく作ったのだから感想は欲しかった。不味いと言われたら立ち直れなかったかも知れないが……。 結果発表「……これで全員の料理を食べたことになったにゃー」「上条当麻にはこれから誰の料理が1番印象に残ったのか判定をしてもらうぞー」「うーん」どれが美味しかったか? 誰の料理を選ぶか? 五和か? オルソラか? と好印象を得たのは2人だけだった。「俺が1番印象に残った料理は……」何の番組だよ? とツッコミが入るほど上条はためている。「御坂の肉じゃがだ……」「どうして?」真っ先に疑問の声を上げたのは選ばれた美琴だった。それもそのはず、自分の料理は失敗して、更に上条は味が分からない状態になっていたのだから。「さっきも言ったけど、舌が麻痺して味なんて分からなかったんだ でも、味が分からなかったからかな……、何か温かいものを感じたような気がしたんだ。 そりゃ、味は五和やオルソラの料理の方がおいしかった。 だけど、今回の判定は印象に残った料理だろ? だから御坂の料理が1番印象に残った。それは間違いない」「意外な結果だにゃー」「そんなっ! 納得出来ません!」納得出来ない! と抗議したのは五和だった。「五和、お前の負けよな」建宮が五和の後ろから声を掛けた。「どうしてですか! 私の料理の方が―――」「お前さん、以前に上条に手料理を食べさせたことがあっただろ?」「……はい」「それが油断だったのよな」「意味がよく分かりません……」建宮の真意を理解できない。この状況を沈めるために舞夏が動いた。「後は私が説明してやるぞー この勝負は初めからフェアじゃなかったんだー 料理って言うのは1番食べてもらいたい人の為に愛情を込めて作るものでなー それはみんな理解してると思うけど」「私は上条さんの為に一生懸命作りました!」そんなことは当たり前だ! と言わんばかりに五和は舞夏に食いついた。「君が一生懸命だったのは上条当麻も分かってると思うけどなー 以前に作ったとき、上条当麻に美味しいと言ってもらっただろー? 料理を初めて作るときは、相手の口に合わなかったどうしようとか、そういう不安と戦いながら想いを込めて作るものでなー 前に上条当麻に作ったときに、ある程度の好みを知った君は今回は不安も無く安心して作れたはずだろー? それが油断につながったんだなー その点、御坂は今回初めて上条当麻に作ったわけだからなー、相当不安があったと思うぞー 実際、緊張しすぎて失敗の繰り返しだったしなー、それでも上条当麻の為に一生懸命作った差ってのはやっぱり大きいんだなー まー、御坂の前に上条当麻が舌にダメージを受けていなかったら、結果がどうなってたかわからないけどなー」「……私の完敗です」舞夏の言う通りだった、確かに自分は油断していた。そんな私の慢心を上条は見抜いたのだ……、感情的になり抗議するなんて……、そんな自分を恥じた。「さて、ここで優勝した超電磁砲には優勝商品を受け取ってもらうにゃー」「商品なんてあるの?」「料理対決の商品と言えば、審査員のキス、つまりカミやんのキスだにゃー」「ぶっ! 何言ってんだ土御門!」「この状況で逃げるのかー?」「うっ! でも、御坂の気持ちだってあるだろ?」「……私はいいよ」美琴の顔は真っ赤になっている。何かを決意したようだ。そして美琴の言葉に上条も決意をした。「……分かったよ」チュ「まさか口にするとはなー」「カミやん、普通こういうときはホッペにキスだろ?」土御門義兄妹はニヤニヤしながら上条にツッコミを入れた。「っ! すまん御坂! 大丈夫か!?」「ふ……」「ふ?」「ふにゃーーーーー」「ぎゃー漏電すんなああああああああ」こうして、第1回料理対決は美琴の優勝で幕を閉じたのだった。 そして……「あー、悪かったよ」「謝られる覚えなんて無いけど、アンタ何かしたの?」「覚えてないのか?」「別に謝られることは無いと思うけど?」「でも、勘違いであんなこと……」「ふふ、私のファーストキスを盗んだんだから、ちゃんと利子つけて返してよね!」「利子つけて?」「そうね、早く返さないとどんどん高くなっていくわよー?」「あの……ローンでもいいでせうか?」「……仕方ないわね、特別にローンで許してあげるわ!」「ありがとうな、まず最初は肉じゃがの作り方教えてやるよ!」「そうじゃないだろうが!」「ぎゃああああ!? なんでえええ?」今日も学園都市は平和である。
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/Time enough for Love 第5章 妹達(シスターズ) 12. 「MISAKA-CONSULTANT」 インデックスの完全記憶能力の検索に引っかかった。 (――世界に足りないものを示すコンサルタント……) そんなキャッチフレーズでもって世界を渡り歩く男。 名前は御坂旅掛。 (――そこになぜ、とうまの名前があるの?) 「ステイル、第零告解室は空いてる?」 「はい、今日はもう使う予定はありませんので……」 「そこへ通しておいて……。私が直接会ってみるんだよ」 『第零告解室』。 それは罪の赦しや告白に使用される小さな小部屋。 その中でもここは完全な防御魔術を施され、さらにAIMジャマーまでも装備された完全無欠の安全地帯。 インデックスの着任後、彼女が作らせた魔術と科学の力で守られた秘密の部屋。 その部屋の中なら、どんな話も外部に漏れる心配は無い。 当人達が漏らす場合を除いては。 ステイルが表情を緩め、顔を近づけ、ひそひそと小声で言った。 「最大司祭……」 (――ステイル、そのにやにやは何を隠している?) 「まだなにかあるのかな?ステイル」 「上条当麻は1人で来たのではありません」 「え?」 「もう1人、女性を連れてきています」 「は?」 「たしか学園都市にいた『御坂美琴』にそっくりでした……」 「え……?は……?はぁぁぁぁ!?!?」 「2人とも通しますか?」 「――え、あ……」 「では通しておきますので、あとはよろしくお願いします」 「――ちょっと待つんだよ!ステイルウウウウ!!」 その声が聞こえぬかの如く、ステイルはくるりと背を向けると、そのままスタスタとインデックスの前から去った。 上条譲りのスルー能力に加え、建宮譲りのおちょくり能力を最大限駆使して。 「ゴラアアアア!!!!人の話を聞けっつんだよオオオオオオ!!!!ステイルウウウウウウ!!!!!」 これがみことなら電撃の槍を飛ばすのだろうけど、生憎私にはそんな能力は無い。 だから決めた。今決めた。 あのクソ野郎は後で頭蓋骨粉砕の刑だ。 この犬歯が久しぶりに疼くんだよ……。 (ステイルなりの愛情表現なのは分かっているけれど、これはみことのツンデレより性質が悪いと思うんだよ。 私への愛情……いやむしろ恋慕に近いもの……だってのは分かってるけれど……。 もしかして……放置しすぎて捻くれてしまった……のかも?) 「神様……、どうかこの不幸な私に救いの手を……」 インデックスは疼くこめかみを押さえながら、『第零告解室』に向かった。 ロンドン、カムデンタウンのパブ。 上条当麻が御坂旅掛にリクルートされた日のことだ。 上条刀夜はその時、息子、当麻に言った。 「お前ももう一人前なんだ。 自分の道はわかっているんだろう。 後は自分で決断することだ」 「父さん……」 夕日が沈むあの夏の日の海岸での出来事。 上条の記憶に残る、刀夜と初めて向かい合った時のことが思い出された。 「あの日の言葉、私は父親としていろいろ考えさせられたよ。 お前はもう自分で決めた道を歩いていくんだなと……。 私に気を使う必要なんて無いさ……」 そういう刀夜の顔は少し寂しそうに見えた。 が、それはすぐに、1人の男の顔に変わる。 「1つだけ人生の先輩として言っておこう。 大切なものを守るためなら……最後まで手を尽くすことだ。 どんな手を使ってでも、自分が汚れ、穢れようともな……。 そして、黙って全て背負ってやれ。 背負うものが重いほど、いい男になれるんだからな」 刀夜はそこで言葉を切ると、じっと息子の目を見た。 上条はそこに、男の決意と覚悟を見た気がした。 上条が記憶喪失になってから、すでに数年の月日がたっている。 そのことは、まだ両親に打ち明けていない。 だがそれは、今はもうどうでもよいことだった。 記憶と言うものが、いずれ消えるものだということが分かってからは、『忘れた』の一言ですむ。 昔のことを忘れたと言われて傷つく人間はほとんどいない。 誰しも過去のことを忘れて生きていくのだから。 本当に大切なものは、決して忘れないし、また何度でも憶えられる。 今、ここで見つめている刀夜の瞳は、上条の記憶にない。 それでもどこかで見たような気がするのは、なぜだろうか。 多分記憶ではなく、自分の心のどこかに眠っていたものだろうなと思った。 それは、自分がこうありたいと思う男の瞳なんだろうと。 「ありがとう、父さん」 上条は、初めて父に礼を言った気がした。 父親に一人前と認められるのは、息子として喜ばしいことだ。 なら父親はどうなのか。 それはいずれ自分が父親になれば、わかることなのかもしれない。 だからそれはその時に考えよう。 そう思うと、上条は改めて旅掛に向き直った。 「よろしくお願いします。旅掛さん」 その言葉に旅掛は相好を崩した。 「こちらこそ、よろしく頼むよ、当麻君。 それとも、よろしく我が息子よと言うべきかな?」 その言葉に上条も刀夜も思いっきり噴いた。 翌日、上条は旅掛に教えられた部屋を訪れた。 なんと言うことは無い、ロンドンのとあるストリートに面した古いビルの一室。 かつて学園都市で住んでいた男子寮にあったような古ぼけたエレベータで上の階へ向かう。 薄暗い通路を奥へ進むと、突き当たりに『MISAKA-CONSULTANT』のプレートがつけられた扉。 開ける前に、上条は深呼吸をする。 この扉の向こうに待っている世界は、これまでの自分には経験の無い世界。 自分で決めた、新しい世界へ踏み出す第一歩。 ノックをして、返事を待った。 むこうから「どうぞ」という旅掛の声がする。 「失礼します……」という声とともに上条はドアを開けた。 やぁ、と笑顔で出迎える旅掛の横に、1人の女性がいた。 清潔そうな白い女物の長袖シャツに、下は細身のジーンズを穿き、ヒールの無い黒いパンプス。 背はそれほど高くなく、体つきはスレンダーだが胸はあまり無い。 肩まで伸ばした茶髪をヘアピンで留め、顔は…… 「え……!み……美琴……!?」 いや違う。 「ええと、いや……御坂妹なの……か?」 御坂妹がここにいるはずはない。 だとすると…… 「はじめまして、とミサカは憧れの人に会えて赤面しながら挨拶します」 「シスターズ……」 「はい、ミサカの個体番号はミサカ17000号です、とミサカはあなたに告げます」 「17000号……」 予想外の出来事に、驚き固まった上条に、旅掛が笑いかけた。 「びっくりしたかね」 「は、はぁ……」 「彼女はね、この国の研究所に『治療』のために預けられていた『娘達』の1人だよ」 「そうなんですか」 学園都市外で『妹達(シスターズ)』に会うのは初めてだった。 向こうにいるときは、御坂妹も、打ち止めも、番外個体も他の『妹達』同様、結構な頻度で顔を合わせていた。 確か美琴は昔、ロシアで他の妹達と会ったと言ってたっけ……。 「はい、ミサカ17000号は、この国に残った最後の個体です、とミサカは冷静に真実を告げます」 ――最後? 「え?、今何て……?」 「……」 旅掛が辛そうな顔になっていた。 それは我が子を失った親の顔……。 だが上条にそれは分からない。 「旅掛さん……」 「――そういうことなんだ……」 「そう……なんですか……」 ――ここは学園都市と違い、外の世界だ。 ――『妹達(シスターズ)』を取り巻く環境は学園都市とはまったく違う。 ――「調整」がうまくいかなかった……いやいやまさか。 ――大方、他の研究所にでも移ったのだろう。 上条はそう判断していた。 真実はもっと残酷だとは、その時の上条は夢にも思っていなかった。 「まあ、色々とあるんだが、とりあえず、今日は顔合わせがてら、彼女の話を聞いてやってもらえないかな。 彼女なら通訳兼ガイド兼運転手としても有能だから、一緒に外出してもらっても大丈夫だと思うよ。 私はこれから人と会う約束があるので、ちょっと留守にするが、よろしく頼む」 「分かりました」 「じゃ、お父さんは出かけてくるから、あとはよろしくな」 「いってらっしゃい、お父様……」 ――バタン 扉の閉まる音が響くと、後に残るのは沈黙…… 遠く離れたここロンドンで、まさか美琴そっくりのシスターズに会うとは想像すらしていなかった。 古ぼけたビルの突き当たりの一室で。 所々剥げた壁紙の壁に、くすんだ天井に囲まれて。 ジリジリと鳴るような蛍光灯の明かりと、湿気たような空気に包まれて。 唸るように響く空調に、テーブルとソファーと事務机に書庫が1つ。 奥に続くドアの向こうはキッチン?それとも……。 気が付けば、この部屋には窓がない。 ああ、もちろん牢屋のような鉄格子も無い。 だけど?だから?それとも……? 俺の背中をぞくぞくと走る感覚がある。 ここは処刑(ロンドン)塔ではないはずなのに、俺には彼女が死刑囚に見えて仕方が無い。 なぜだろう。 なにか寒気がする。 守りたい人、守るべき人と同じDNAを持った死刑囚。 目の前の彼女が儚く思われて。 彼女の口から助けてという言葉が聞こえそうで。 遠く学園都市に残してきた美琴の顔が彼女と重なる。 旅掛さん、アンタは俺に何をさせようとしているのか? もしかして俺に足りないものを示してくれるのか? 目の前の彼女がそうだとでも? (最後の個体って……俺の勘違いでなければ……やっぱり……そういうことでいいのだろうな……) その沈黙を破るように17000号の方から口を開いた。 「どうぞ、そこのソファーにでも腰を下ろしてください、とミサカは忘れていた言葉をかけます」 「あ、ついぼうっとしてしまってた……」 「向こうに残してきたお姉様のことを考えておられたのですか、とミサカは少し嫉妬を感じてあなたに問いかけます」 「あ、少し……な」 「あの……あなたは紅茶にしますか、それともコーヒーにしますか、とミサカは気まずさを隠して尋ねます」 「あ、コーヒーでいいぞ」 「分かりました。少しお待ちください、とミサカは恥ずかしさを隠すために奥へ引っ込みます」 彼女が奥へ続くドアを開けたとき、チラリと見えたベッドに、窓から差し込む外の光。 ああ、間違いない。 彼女は死刑囚だ。 さもなくば、高い塔に閉じ込められた、おとぎ話のお姫様。 (うう、俺に選択肢は無いんじゃないかよ、旅掛さん……) 第一位と戦った夏の夜。 今も残るあの時の古傷が、ちくりと痛んだような気がした。 俺は、また誰かと戦わなければいけないのか? (それで俺は、お前を救うことが出来るのか?) ――ドアの向こうに消えた彼女の背中に俺は無言でそう問いかけた。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/Time enough for Love