約 488 件
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/1349.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/Equinox 九月の狂想曲 九月一八日。 残暑の名残が夕暮れの空気に漂い、風はやや涼しく秋の気配を徐々に感じさせる。 大覇星祭を明日に控え、『彼氏』上条当麻は『彼女』御坂美琴と手をつないで放課後の通学路を歩いていた。 大覇星祭とは九月一九日から二五日の七日間にわたって学園都市で催される行事で、ようするに大規模な体育祭だ。大ざっぱに言えばこの街に存在する全ての学校が合同で体育祭を行うのだが、学園都市は超能力と科学の街だけに、学園都市の外で行われるそれとは少々――いや、多々趣が異なる。 応援の歓声も飛び交うが能力も飛び交う。それが大覇星祭だ。 棒倒しをすれば能力で地面の土を丸ごとすくい上げて土煙を起こし、玉入れをすれば玉の代わりに念力の砲弾や超電磁砲が飛んできてポール籠を薙ぎ倒すと言った事が競技参加者である学生の手によって平然と行われ、かつ認められる。 上条は心の中で自分の出場する競技の数を数えながら、 「いやー、それにしても今年はお前と同じ白組か。良かった良かった、これで白組の勝利は揺るがねえな」 「何言ってんのよ。私一人で全ての勝敗に決着がつくわけないでしょ。全員で頑張ってこその大覇星祭じゃない」 美琴は苦笑しつつ軽く首を横に振って上条の言葉を否定する。 上条と美琴はこの学園都市に暮らす学生で、言わば彼らは明日から行われる大覇星祭の参加者にして主役でもある。 この二人、一年前はそれぞれ白組と赤組に分かれて罰ゲームをかけた勝負を行い、不幸にも上条は美琴に敗北した。 しかし今年は同じ白組、しかも二人は恋人同士なので何かをかけて争う必要もない。 今日はお互いが出場する競技をチェックして、合同参加の競技があったら協力し合おうと作戦を練っていたのだ。 そうだ、と美琴は話を切り替えて、自分のカバンをごそごそと漁ると中から二本の白いハチマキを取り出す。 「アンタの分のハチマキ用意したんだ。明日からはこれを使ってくれる?」 そのうちの一本を『はい』と上条に差し出した。 「ハチマキ? 俺去年使ったのを取っといてあるぞ?」 上条は不承不承美琴からハチマキを受け取った。 見たところ購買部でも売っているような何の変哲もない白いハチマキだ。美琴が持っているのだから常盤台中学の売店で買ったものかも知れない。 上条はまさかこれって最高級の絹(シルク)とか使ってんじゃねえだろうな、と思いながら、 「……まあ、いいけどよ。……ってあれ?」 美琴から渡されたハチマキを広げてみる。 長い。 上条が持っている使い古しのハチマキより一〇センチほど丈が長い。 「へぇ。常盤台中学のハチマキってのは、そこらで市販されてるものより長いんだな」 「違うわよ。それ手作りだから」 美琴は事も無げに告げる。 上条は手の中のハチマキと美琴の顔を交互に見ながら、 「はぁ? お前いちいち布買ってきてこれ縫ったってーのか?」 「そう、アンタと私の二本分。だからちょっと長くしてあんのよ。他の人のと違いが分かるようにね」 常盤台中学の家庭科ではシャツのちょっとしたほつれを直す感覚で骨董品の命を吹き戻すらしいので、ハチマキを手で縫うくらいは朝飯前なのだろうけれども、 「……お前暇なの?」 あっけにとられて尋ねる上条(かれし)。 「彼女が彼氏に手縫いのハチマキを贈る験担ぎって、アンタの学校にはないの?」 質問を質問で返す美琴(かのじょ)。 それはごく一部の女の子の間でまかり通っているおまじないだった。 汗をかいた運動部員にマネージャーがタオルを差し出すように、女生徒が意中の相手に『これ、体育祭で使ってください』とお手製のハチマキを贈ったり、恋人同士がお互いのハチマキに黒マジックで『必勝』と書き込んだり、思い人から自分の使うハチマキにサインを入れてもらうというものだ。 科学が発達した学園都市で呪いというのもナンセンスだが、女という生き物は何にでも運命や不思議な力を感じる事ができるらしい。 常盤台中学に通う『お姉様』御坂美琴は、朝から休み時間の度にハチマキにサインをもらおうと美琴のクラスに押しかける女生徒達に引きつった笑顔で対応し、逆にハチマキのプレゼントは全力でこれを辞退していた。 そもそも常盤台中学の内部も赤組と白組に分かれるというのに、美琴のサインがどれだけの効果があるのかは美琴自身首をひねりたくなるくらい怪しい。 上条は不思議な物を見るような目で手元のハチマキを眺めつつ、 「……そんなしきたり、俺の学校じゃ聞いたことはねーな。彼女がいる奴ならそういうのはこっそりやってっかも知れねーけど」 「あとさ、名前を刺繍で入れてあるんだ。白地に白の糸で縫ってあるから目立たないけどね」 美琴はいたずらっ子がいたずらを仕込んでその成果を予想するようにくすりと微笑む。 上条はハチマキの裾に目をやると、そこには確かに白い糸で漢字四文字が刺繍されていた。 「へぇ。そりゃなかなか手が込んで……っておい。お前、渡すハチマキ間違ってんぞ? これ『御坂美琴』って入ってるじゃねーか。お前が持ってるそっちが俺の分じゃねえのか?」 美琴は何を言っているんだとあきれたような表情で、 「ううん。それで合ってるわよ?」 「何で俺がお前の名前が入ったハチマキを締めんだよ?」 上条には美琴の言葉が理解できない。 美琴は上条が持つハチマキを指差し、 「これで、アンタと私がお互いのハチマキを交換したことになるでしょ? お互い競技場が離れても一緒にいられるようにって。だから私が持ってるハチマキには『上条当麻』って刺繍してあるわよ?」 「あるわよ、じゃなくてだな……」 何と乙女チックな青春学園ドラマだ。一体どこのテレビで放映されてましたっけこんな話。 美琴はにっこり笑うと、 「それ締めて頑張ってね? どこにいてもアンタの事応援してるから。アンタも時間があったら私の応援に来んのよ?」 「はいはい、分かったよ」 「去年はアンタさんざんだったもんねー。今年は頑張ってカッコいいとこ見せてね、彼氏?」 変なプレッシャーがかかったような気がする。 売られたケンカは全て買い、勝負事には勝たねば気が済まない美琴の気質で白組が負けたりしたら一体どうなるのだろうかと思うと、上条は気が重い。 と、 「あ、そうだ。アンタの学ラン貸してくれない? 衣替え前だからまだ出してないでしょ?」 美琴が妙な事を言い出した。 上条は『学ラン?』と聞き返して、 「六月にクリーニングに出して、クリーニング屋から引き取ってきてそのままだからきれいだと思うけど、一体何に使うんだ? まさか背中にでっかい龍の刺繍でも入れる気じゃ……」 「は? 刺繍? 何の話??」 「……いや、何でもねえよ」 『こっちの話。気にすんな』と片手を振ってみせる。 背中に昇り龍の刺繍が入った学ランを着た少年が出てくる、痛快ラブストーリーアニメが最近の上条のお気に入りなのだが、美琴はこの話を全く知らないらしい。 「そういやお前の寮じゃテレビなんてものは見ないんだったな」 「アンタ、今そこはかとなく私を馬鹿にしてる?」 「してないしてない」 上条は片手をわたわたと振って美琴の疑念を否定しながら『これも一種の世代格差(ジェネレーションギャップ)』って奴かな、と心の中で密かにため息をつく。 そんな上条の切ない気持ちを置き去りに、泣いても笑っても明日から大覇星祭が始まる。 ☆ 明けて九月一九日、快晴(どピーカン)。 澄み渡った秋空の下を上条は何やら叫びながら全力疾走していた。 彼の声に耳を傾けると、 「わたくし上条当麻は運営委員の皆様に一言物申しあげたい! 何故借り物競走にこんな指定が入っているのか小一時間問い詰めさせろォおおおおおおおお!!」 上条は悲嘆に暮れながら頭に白のハチマキを締め、右手に紙切れを握りしめて人の溢れる大通りを走り抜ける。 紙切れの中にもう一度視線を落とし、指定された物品を確認した。 ただ今の種目は『借り物競走』。去年美琴が参加したのと同じ競技だ。 上条が引き当てた借り物競走の『物品』は、もはやギャグとしか言えないくらいに難易度が高すぎた。上条以外の他の誰かが引き当てたら即リタイアは間違いない。 借り物競走は観客を含む一千万人超の中から指定の物品を借り受け、ゴールまで走る競技だ。 ただし、学園都市で行われる大覇星祭の借り物競走は外部の学校で行われるものとは規模が大きく異なる。 走るコースは街の中で、しかも学区を三つもまたぐ。決まったコースは指定されておらず、マラソン並の長距離を走りながら借り物の物品を探し、ゴールまで走らなければならない。ここではいかに最短距離で走るかの頭脳プレイが要求される。そして競技範囲の広さに比例して、探す物品の難易度も高いことで有名だった。 さらにはこの『物品』の指定だ。物品は観客から借りても構わないが、 “指定された物品が第三者の所有物である場合、その人物に了承を取った上で、第三者と共に競技場へ向かうこと。” と言う条件が定められている。 上条は足を止め、デパートの画面に取り付けられた大画面(エキシビジョン)を見上げる。別の競技場で行われているパン食い競争が中継で流されているのを確認し、近くにいた警備員(アンチスキル)に声をかけた。 「すみません。あのパン食い競争ってどこでやってるんでしたっけ?」 警備員とは学園都市では警察に相当する存在で、主に志願した教員を中心として構成される。元々国語や体育の教師なので学園都市内ではそれなりの私服を着て過ごしているのだが、今日の彼らは学園都市の住民や外部から来た観光客と見分けが付くよう、黒を基調とした正規装備に身を固めている。 ヘルメットがないのはせめてもの威嚇防止だろうが、麗しいお姉さんタイプならともかくゴツい野郎の警備員では、いっそヘルメットをかぶっていてくれた方が心の平穏につながる気がする。 それでも彼は上条の問いに答えるべく手にしたパンフレットをパラパラと広げ、鏡の前で毎日練習しましたと言わんばかりのさわやかさを無理矢理醸し出すよそ行きの笑顔で、 「パン食い競争だね? それなら第九競技場だね。ここから二キロほど先だ」 答えはとてつもなく汗臭かった。 にきろ……ッ!? と尋ねた上条がその場でへたり込み、絶句する。 スタート地点からここに来るまで五キロくらいは走った。その上あと二キロ追加で走って『物品』を調達しなければならないなんてあんまりだ。 上条に対し今回指定された『物品』の心当たりは、学園都市の総人口を基準に算出しても二三〇万分の二。そのうち一つはどこにあるか分からないので、二三〇万分の一の確率を引き当てなければならない。 外部から来たお客さんと学園都市の居住者は服装の流行(ファッションセンス)などで割と簡単に見分けが付くので、一千万人を相手にしなくてもいいだけマシかも知れないが、 ちくしょう、と叫んで上条は走った。 『これが不幸でなければ何なんだーっ!!』と叫びながら二キロ先の第九競技場を目指して走る。 場所は変わって、こちらは第九競技場。 パン食い競争に出場する御坂美琴は、フィールドに用意された選手待機列に並んで自分の出番を待っていた。 フィールドに敷かれた天然芝はゴルフコースのように綺麗に刈り揃えられている。 コースとして用意された四〇〇メートルトラックは、陸上競技で一般的に使用する敷き詰め型の素材でびっしりと覆われ、このままオリンピックで使用しても良さそうなほど手入れが行き届いていた。 ただし、見た目通りの一筋縄ではいかないのが学園都市の競技場で、ボタン一つで埋め込まれた各種機材がガシャンガシャンガシャンと立ち上がり、倒されたハードルがウィーンとか言いながら自動で所定の位置に戻されていく。 小学生の時も、美琴はパン食い競争に立候補して出場した。 もちろん順位は一位。 美琴は『えーともうかれこれ何年連続でパン食い競争に参加してるんだっけ私』と指折り数えつつ、 (パン食い競争に電磁罠とかあり得ないでしょ普通は) 体が冷えないように軽くストレッチしながらコース上に設けられた障害物の数々を睨み付ける。 昨年、美琴がパン食い競争に参加した際ぶっちぎりのコースレコードを叩きだしてしまったため、今年のパン食い競争はコース設定を大幅に変更した。 そうしなければ大覇星祭の名を借りた『実験』が行えないからだ。 今年のパン食い競争の概要は、一周四〇〇メートルのトラックをスタートして、まず五〇メートルを過ぎたところで一〇〇メートルハードル、次は網くぐり。その後コース上に仕掛けられた電磁罠を抜け、最後に紐で宙づりにされた『脳を活性化させる一二の栄養素が入った能力上昇パン』を口で取ってゴールまで走る。 怪しげなパンを食べたからといって能力が上昇するとは思えない。そんな味気ないパンより普通のあんパンやジャムパンにして欲しいと密かに思っているのは美琴だけではないはずだ。 『第三〇組、位置について下さい』の声が運営委員からかけられたので、美琴は他の選手達と共にゾロゾロと歩いてスタートラインにつき、スターティングブロックに足を置く。 小学生の頃は良かった。位置についてよーい、ドンで飛び出してパンまで真っ直ぐ走って行けば良かったのだから。 美琴一人のためにパン食い競争は障害物付きパン食い競争に変わってしまった。 本来、こういうのどかな競技に学園都市最高峰のレベル5を参加させるべきではないのだ。 競技開始の号砲と共に美琴はスタートラインから誰よりも速く飛び出し、高反発素材の靴底でトラックを蹴って加速を開始する。 最初は一〇〇メートルハードルだが、このハードルは一つ一つの高さがバラバラに設定されている。つまり走りながらリズムに乗って飛べないのだ。それぞれのハードルの高さを瞬時に判断して最適の高さで飛ばなければ無駄な体力を消耗する。一番高いハードルに合わせて全部同じ高さで飛んでしまうと言う方法も採れるが、『どれが一番高いハードルか』は飛んでみるまで分からない。もちろん一本でも倒せばその場で失格だ。 (くっそー、これ面倒臭いのよね) 心の中でぶつぶつと呪詛を唱えながら、美琴は一つ一つハードルを丁寧に飛び越える。 このあたりは能力レベル云々より純粋な身体能力が問われる。ここで選手の体力と判断力を奪ってしまおうという大層底の浅い設計思想が伺えて美琴は内心笑いたくなった。 お次は網くぐり。 この手の障害物で使われるのは決まってナイロン製の網だ。しかし学園都市では鋼鉄のワイヤーで編まれた網を使用する。網の入り口から出口までは二〇メートルほどだが、網の重さが桁違いだ。 総重量二〇〇キログラム。 しかも、一つの網を複数の選手がくぐるのではなく、網は一人に一つ用意される。この網を能力なり腕力なりを使って持ち上げなければ一メートルも先に進むことはできない。もちろんこの網を燃やしたり壊したりしてはならない。 この競技は能力干渉数値こそ低めに抑えられているが、美琴の能力では細心の注意を払わなければあっという間に指定数値を突破してしまう。 美琴は頭の中で必死に演算し出力を絞りながら鋼鉄製の網を電磁力で少しずつ持ち上げ、その下をくぐり抜ける。最大出力を振り回すことは得意でも、微調整を求められるのが苦手な美琴にとってはなかなかやっかいな障害だ。 鋼鉄の網を抜けトップを走る美琴の前方に、地雷式に設置された電磁罠が牙を剥く。 この罠につかまれば電流が流れ、たいていの人間がその場で失神する。 美琴は高レベルの発電系能力者であるためこの程度の罠など気にもしないが、 この罠、合わせ技で指向性のロープが飛んできてその場に拘束される。 選手が誤って罠に触れたり付近で能力を使用すると、選手を探知して捕縛用のロープが体に巻き付き体の自由を奪うのだ。 学園都市は実験都市でもある。 対能力者用の製品もふんだんに開発されており、このロープも数々の実験を繰り返し商品化の一歩手前までたどり着いた一品だ。その技術力には敬服するが、感心したからと言って罠を通り過ぎることができる訳でもない。 よって、ここでは罠を踏まずに通り抜けるのが望ましい。 美琴の前にスタートした選手達もそのほとんどがこの罠に捕まり、満足にパンのところまでたどり着けた者は少ない。こうなるとパン食い競争ではなくサバイバルゲームに近い感覚だ。 美琴は自らの体の周囲に張り巡らされた微弱な電磁波を使って罠の位置をチェックし、一つ一つを慎重に飛び越える。 『まだまだ詰めが甘いわね残念でした』と心の中でほくそ笑みながら美琴が最後の地雷を飛び越えて、 着地に失敗し、踵で罠を踏んだ。 「げっ!? うそでしょ?」 シュパン! という何かを発射する音が背後から聞こえ、シュルシュルと蛇が地を這うみたいに空気を切る音が近づいてくる。 美琴は血相を変え、前方につるされたパンに向かって走り出す。あのロープにつかまったら能力を使わずに抜け出すことはできないし、能力を使えば美琴のレベルではその場で失格だ。 ロープの有効範囲はどこまでかを探る暇はない。とにかくここは逃げの一手に尽きる。 「お姉様、頑張ってー!」 「御坂様ー!!」 女の子達の無邪気な声援が聞こえる。彼女たちは今、美琴が未曾有のパニックに襲われていることを知らない。 (あんなもんに捕まったら御坂美琴一生の恥だっつーの! 衆人環視の真っ只中で縛られるなんてまっぴらごめんよ!) あの馬鹿にだってそんなことは許しちゃいないんだからとあまり関係のないことを頭の中で思いながら、美琴は空中につるされた『脳を活性化させる一二の栄養素が入った能力上昇パン』に向かってジャンプ。歯でしっかりくわえて紐から引きちぎるとゴールに向かって残り二五メートルを一目散に走った。 背後からあのシュルシュルという音は聞こえない。どうやら追撃を振り切ったようだ。ロープはゴールまで届く長さほどではないのだろう。 美琴はなだれ込むようにゴールテープを切って、後ろを振り向くと後続の選手達が次々と罠に捕まっているのが見えた。ご愁傷様、と美琴は被害者達に向かって心の中で両手を合わせる。 体力に余裕はあるが、何だか精神的に疲れた競技だった。 美琴が戦利品のパンをかじっていると少し離れたところから白井黒子がスポーツタオルを手に駆け寄ってくるのが見える。 ああ黒子悪いわね、と白井からスポーツタオルを受け取ろうとして、 「いた! 御坂ちっと来い!」 スポーツタオルが掌に乗る直前、美琴の視界が高速でブレた。 何故なら息を切らせて競技場に乱入した上条が美琴の手を掴んで勢いよく競技場入り口に向かって逆送を始めたのだから。 「お待ちなさいそこの類人猿! お姉様をどこに連れて行くつもりですの!?」 「悪りぃ白井! こっちも借り物競走で困ってんだ! ちっと御坂借りてくぞ!!」 「え? え? 何?? 何が起こってんの!? 何かどっかで見た覚えのあるシーンだけど誰か分かるように説明してーっ!? もしかして私はここでもスルーされる運命なのーっ!?」 手にしたスポーツタオルを振り回して白井が叫び、 競技場に乱入して美琴の手を掴んだ上条が叫び、 パンをかじったままの美琴が叫び、 美琴に一位入賞のバッジを着けようとした運営委員がぽつんとその場に取り残された。 「こらーっ! ちょっと待ったーっ!! アンタ、一言あっても良いでしょうがーっ!!」 大通りに出た所で待て待て待てーい! と時代劇のお奉行様よろしく叫んで高反発素材の靴底で地面に踏ん張り、上条のダッシュを阻止する美琴。 「……何だよ? 何か文句あんのかよ? お前だって去年説明なしに人を引っ張ってっただろうが」 仕方なしに足を止め、うんざりしたように美琴を見る上条。 「あるに決まってんでしょうが! 私をどこに連れてこうって言うのよアンタは!?」 あーもううるせえな、と上条は頭をガリガリかきながら、 「……お前がパン食い競走に出場してる間、俺は借り物競走だって昨日教えたじゃねえか。んで、借り物競走で借りる物品がお前なんだよ。っつー事で協力してくれ」 かなりの距離を走って疲労しているせいか上条の言葉は投げやりだ。 はぁ? と美琴は口をあんぐりと開けて、 「何? 借り物札に『御坂美琴』とでも書いてあんの?」 「違うけど、限りなく似たようなもんだ」 上条は美琴に指定された『物品』の名前が書かれた紙切れを差し出す。 美琴は紙切れを受け取り開いて中の記述を確認すると、 「……………………………………………………何よこれ」 上条の判断は正しい。正しいがしかし。 ここまでアバウトかつ難易度の高すぎる指定を引いてくるあたり、上条の不幸の度合いが推し測れるというものだ。 そして常盤台中学のエースは彼氏に負けず劣らずなトラブル体質の持ち主だった。何せ自分自身が『借り物』に指定されてしまうくらいなのだから。 美琴はふふん、と鼻を鳴らして、 「アンタ、私が彼女で幸運(ラッキー)だったわね。感謝しなさい、他の男がこんなの持ってきたって協力する気にはならないわよ?」 「……いや、彼女とかどうとかそれ以前に普通に協力しろって」 「にしてもさー、私さっきパン食い競争で体力使ったばかりで疲れてんのよね。ということで」 「何だよ、おんぶか? 仕方ねえな、ほら」 背中を向けてしゃがみ込み両手を差し出す上条。 美琴はノンノン、と人差し指を顔の前で軽く左右に振って、 「ゴールまでお姫様抱っこでよろしく」 「要求すんなそんなの! テメェは人前で俺に何させようとしてやがんだコラ!!」 上条は立ち上がって両手をぶんぶんと振り回し抗議の声を上げる。 「連れてってくれなかったら一緒に行ってあげないわよ? アンタもここまで来てリタイアじゃクラスのみんなに怒られるんじゃない?」 「普通に走れよ普通に! 俺だってかれこれ七キロ走って疲れてんだよホントにもう!!」 上条は涙目だった。 本気で疲れているのだから仕方ないが美琴は上条の叫びを聞き流し、 「それにアンタ、今の私をまともにおんぶできる訳?」 「へ? 何で?」 そこで上条は見る。 美琴今身に着けている常盤台中学指定の本格的な陸上競技用ユニフォームは、高機能性と相まって生地そのものが薄くて軽い。 袖の部分をばっさり切り落としたランニングは汗をかいた美琴の体に寄り添うように張り付いて、下手な水着より布地の下のラインが目立つような気がする。 対して、上条当麻が身につけているのは普通の体操服だ。 彼が日頃通学時に着る学生服よりも素材が薄い。 このまま上条が美琴を背負えば、いつもよりくっきりはっきりぼっきりと文字で表現してはいけない何かが上条の背中に押し付けられるのは予想に難くない。 美琴の足も短パンと靴下と靴以外は全てむき出しになっている。 美琴を背負うと言うことは、そのむき出し部分を両腕で抱え込んで、美琴の太股が上条の腰のあたりに押し付けられたりする。 何をどこまで妄想したのか、気まずげに美琴から視線を逸らす上条に向かって、 「ということでよろしくね、彼氏?」 「……オイ」 「……あーあ、つっかれったなー」 棒読みで疲労をアピールする美琴に、 「あーちくしょう分かったよ! やりゃいいんだろやりゃ!!」 「うん、素直でよろしい」 美琴は上条の首に両腕を引っかけるように回し、上条は美琴の背中と両膝の裏に腕を通して美琴を抱き上げた。 美琴を抱き上げて上条は唸る。 「ちくしょう、ここまでやって入賞できなかったら恨んでやる」 「誰を?」 聞かなくたって分かってる。 こんな馬鹿な借り物を思いついたどこかの運営委員だ。 美琴は上条に抱えられて競技場に入り、そのまま上条と共にゴールテープを切った。 ゴール直後の上条はその場にがっくりと膝をつき、ぜーぜーはーはーと荒い息を吐いて天を仰いでいる。 いくらここが最新鋭の競技場で、コース全面に衝撃を吸収する最新鋭の素材を敷き詰めてあっても、それが上条の疲労軽減につながることはない。 重い荷物を担いで残り二キロのラストスパートはつらかった。 「重い荷物って誰のこと言ってんのよアンタッ!!」 美琴は上条にずびし、とチョップをお見舞いした。 待機していた運営委員が上条の頭に大きめのスポーツタオルを被せる。続けて酸素吸入用ボンベやスポーツドリンクのボトルがてきぱきと渡されるが、上条は両手がふさがっているためそれらは美琴が慣れた手つきで受け取っていく。 最後に、借り物を確認するべくクリップボードを持った運営委員の一人が上条達に近づいて、品物の名前が書かれた紙切れを受け取り美琴に質問する。 「常盤台中学三年、御坂美琴。『レベル5』です」 『品物』美琴はそこまで一息に答えると、差し出された簡易ID照合器に掌を押し当てた。指紋、静脈、生体電気信号パターンの照合を行って、美琴と品物が一致しているかどうかの確認を取ると、運営委員は美琴に紙切れを返して 「はい、結構です。お疲れ様でした」 くるりと踵を返して去っていった。 彼は記録専門らしく、二人がどうなろうと特に興味はないらしい。 「……にしても、これはないわよね」 美琴は運営委員から返された、今はもう燃えるゴミとなった紙切れを広げてみせる。 『超能力者(レベル5)』 上条が引き当てた、借り物競走で借りてくる『品物』だ。 上条の不幸は今回も健在だった。 上条が『超能力者』と問われて面識のある人物は、学園都市に七人いる超能力者のうち二人しかいない。 そのうちの一人にして学園都市最強の超能力者はどこの学校の生徒なのか上条も知らないため、自動的に美琴を連れてくるより他になかった。 常盤台中学にはもう一人『触れただけで人の記憶を抜き取る』超能力者がいるが、『とにかく美琴を連れてこなくちゃ』と頭がいっぱいの上条にはそこまで知恵が回らない。 美琴は上条の頭に被せられたスポーツタオルで上条の汗を丁寧に拭い、それから自分の汗を軽く拭き取る。激しい運動で熱した上条の頬にドリンクボトルを押し当て少しでも冷ましてやろうと試みる。 ちなみに、これらは全て上条の腕の中で美琴が行っている上に、借り物競走はカメラによる撮影が行われているため二人の一連の行動は世界中に発信されている。 だが、美琴を抱えたままくたくたになっている上条はそんなことにも気づかない。 運営委員に『表彰がありますのでこちらへ移動をお願いします』と声をかけられ、そこでようやく上条は美琴を地面に降ろし、『んじゃ俺ちっと行ってくるから』とふらふらしながら表彰台の方へ歩いていった。 借り物競走は選手がメインのため『品物』は競技が終われば用済みだ。 美琴はスポーツタオルを首に引っかけ、片手でドリンクボトルを持っててくてくと競技場の隅っこへ歩いていく。 振り返ると三段になった表彰台の一番下に上条が立っている。一位から大幅に遅れたものの、どうやら三位で入賞できたらしい。 表彰台に乗った上条の姿に、美琴は満足の笑みを浮かべた。 ☆ イギリスはロンドンの日本人街。 天草式十字凄教用の拠点として与えられた純和風の一室で、五和をはじめとする待機組のメンバーは、多国籍放送で展開中の大覇星祭を鑑賞中だった。 ちなみに録画放送ではない。生中継だ。 ロンドンと学園都市の間にはマイナス八時間の時差が存在するが、そこは天草式にとってさしたる問題ではない。小さなテレビに一〇人単位の人間がかぶりついたらろくに見るものも見られないと、五和はこの日に備えて正副予備三つのルートで録画体制を整えている。 それでもあの人の活躍ぶりを生で見たいとベストポジションをキープしていたが、あの人はなかなか画面に映らない。 開会式からずっとテレビの前で粘っていたがそろそろ限界だ。お手洗いに行きたくなった五和はCMの合間に中座した。 お手洗いから戻って人波をかき分けテレビの前に腰を下ろそうとしたら、 「い、い、五和……」 「どうしたんですか建宮さん?」 神の右席・後方のアックアを前にしてもひるまなかった建宮斎字の声が震えている。 しかも画面を指差しながら。 他の面子も皆似たような反応だ。 五和は建宮のただならぬ様子に一瞬言葉を失って、 「どっ、どいてください! 何が、何があったんですか!? まさかあの人が怪我でもしたんですか!?」 テレビの前に陣取る牛深や香焼を薙ぎ払って視界を確保する。 次の瞬間、五和は見た。 見てしまった。 あの人があの少女を壊れ物のように大事に抱きかかえてゴールテープを切る姿を。 あの人の腕の中であの少女がスポーツタオルであの人の汗を丁寧に拭っているのを。 あの人の腕の中であの少女が冷えたドリンクの入ったボトルを差し出し、あの人がストローをくわえているのを。 上条からはあの少女について、学園都市の外で会った時に『御坂か? 良い奴だよ』と言うコメントをもらっている。 だからあの少女が上条に熱烈なアタックを仕掛けているだけで、自分にも反撃のチャンスはあると思っていた。 女は控えめ。 そして困った時にそっと力を貸すのが良い。 お味噌汁作戦で一度敗北したとはいえ、そこで引き下がる天草式ではない。 奥ゆかしき大和撫子路線でまずはプッシュ、そしてとどめに大精霊チラメイドをと考えていた五和の目論見は木っ端微塵に吹き飛ばされた。 何しろあちらは全世界放映で熱々ぶりをアピールしているのだから。 視線を画面に固定したまま五和の顔色はすーっと血の気が引いていくように白くなる。 ……………………………………………………………………………………。 「いっ、五和サン? きっとあいつにも何か事情があったんだと思うのよ? だからその、落ち着いて、落ち着いて。ねっ?」 建宮が場を取り繕おうとするが五和の耳には届かない。 五和は視線をテレビに固定させたまま、 「大丈夫。私は大丈夫ですから―――牛深さん、たしかイモ焼酎補充されてましたよね? 台所の床下収納スペースで見かけたんですけど、あれって新しく買い足した分でしたよね? ……建宮さん、『聖人崩し』の強化について語り合いませんか? ちょうど良いお酒も肴(ビデオ)もあることですし」 俺のイモ男爵は呑まれること確定なのーっ!? と青ざめてその場に崩れ落ちる牛深。 未成年から酌の相手に指名されてびくびく怯える建宮。 巻き込まれぬようじりじりと五和から距離を取る野母崎をはじめとする天草式の皆さん。 「そうだ、どうせなら牛深さんも一緒にいかがですか? サツマイモだかジャガイモだかよく分からない名前ですけど、あれおいしかったですよね」 それは俺の酒なのにーっ! 腹いせで呑むなーっ!! と暴れる牛深を対馬が羽交い締めにしながらアキラメロとなだめる。 「(どうすんですか建宮さん! 離れた距離が愛を育てるだなんて言っておいて、五和の奴完全に鳶に油揚げさらわれちゃってるじゃないですか!)」 「(まさかあの少女があいつの心をそこまでガッチリ掴んでるなんて思わなかったのよ。それに五和だって敗北を糧に立ち上がったはずなのよ!?)」 「(救われぬ者に救いの手を延べるのが天草式ですけど、この場合どうすりゃいいんですか!? キレた五和を止められる奴なんて天草式にはいませんよ?)」 「……才能ない人間が才能ある人間に立ち向かうために研鑽する。それが魔術師でしたよね?」 ボソッと五和に言われてその場でビシィ!! と直立不動になる元・教皇代理とイモ男爵の持ち主。 「そうですよね、建宮さん。だから私達は『聖人崩し』を編み出したんですよね。だったら才能ある人間に立ち向かえるようもっと強化しませんとね。そうですよね?」 才能ない人間(魔術師の五和)が才能ある人間(超能力者の美琴)に立ち向かうために研鑽する。 つまり。 朝まで呑むぞと言外に宣告されて、五和の同僚で尖った黒髪の男および大柄で短髪の男は二人並んでガクガクブルブルと震える羽目になった。 ☆ 慣れない表彰台から解放されて、上条が『あれ? アイツはどこに行ったんだ?』とキョロキョロ辺りを見回していると、競技場の隅で美琴が手を振っていた。 上条は美琴のそばに疲れた体を引きずりつつ歩み寄り、 「御坂、お疲れ。……付き合ってくれてさんきゅーな」 「三位入賞おめでと。……はい」 あたりに人がいないのを見澄ましてから、美琴は上条の頬に軽くキスをした。 唇を離すとにっこり笑って、 「……アンタが賞取れたお祝い。勝利の女神・美琴さんに感謝しなさい」 上条は美琴の唇が触れた頬に手をやって、 「ばっ!? ……お前何やってんだよ!? こんなところ誰かに見られたらただじゃすまねえぞ?」 口から出るのは感謝ではなく非難だった。 美琴は唇を尖らせて、 「人が見てないのは確認したわよ?」 「確認とかそう言うんじゃなくてだな……」 悪びれない美琴に上条は嘆息して、 「……三位でこれだったら、パン食い競争で一位だったお前はどうなんだよ?」 「……、」 美琴は何も言わず、自分の人差し指で桜色の唇を指差しながらとぼけてみせる。 「……あのな」 場所が場所だけに『そんなんでキスを要求すんなっ!』と叫びたいのを堪える上条。 「お前まだ中学生だろうが! 安い挑発すんじゃねえよ!!」 美琴は小さく舌を出して、 「冗談よ馬鹿。にしてもさ、アンタのおかげで表彰すっぽかす羽目になって今頃あっちは大騒ぎよ? 向こうに戻ったらツッコまれるのは必至だし、だったら今のうちに私だって何かしらご褒美欲しいわね?」 美琴に言いくるめられてるような気がして、上条は何か言い返すネタはないかと視線を方々にさまよわせる。 ふと、美琴の頭の後ろでハチマキの裾が風になびくのが目に止まった。 「ん? アンタ何見てんの?」 上条の視線の先を追い駆けて、美琴が『?』と横を向く。 (いっ、今だ! 触れれば良いんだから破壊力はいらない!) 上条は目をつぶって突撃する。吶喊先は美琴の頬だ。 上条にしてみればかなり恥ずかしいが、ちょこっと唇が触れる程度に頬にキスをして『これでどうだ』と言ってやればそれで良い。 だから上条は気づかなかった。 一歩踏み出した先の地面が光ファイバーのラインでできていて、ごくわずかに他よりも盛り上がっていることに。 (―――え!?) 不用意に踏み出した運動靴の爪先が引っかかり、バランスを失った体が若干前方へ傾いていく。 (嘘だろおい……ッ!?) 咄嗟に両手を振り回して踏み留まろうと試みるが間に合わない。 上条の頭は狙いを定めた位置からやや美琴の後方にずれて。 ちゅ、と。 上条の唇が美琴の耳たぶに直撃する。 「…………………………………………………………………………、えっと」 上条は自分の唇に、美琴の頬よりやや柔らかくそれでいて少し熱っぽい皮膚の感触を感じた。 鼻先で女の子独特のふわりとした匂いが漂う。 唇が触れた直後に体がビクッと跳ねて、そこから美琴の動揺が伝わる。少しなまめかしい悲鳴も小さく聞こえた気がする。 「……あ、あの、あのですね、御坂さん、これは……その……」 上条が慌てて顔を引き、後ろに二歩下がって両手をわたわたと振りながら『違う、これは誤解なんだ』と弁明するがもう遅い。 美琴は固く目を閉じ、胸の前で右手をグーに固定し、顔を真っ赤にしてブルブルと肩と拳を震わせている。 「あ、あ、アンタは……」 ヤバいこれ激発三秒前!? と上条が土下座の準備に移行しようとするその寸前で。 美琴の両目がキッ! と見開かれ、上条に向き直る。 「……ひぃ!?」 大振りに後方へ引き抜かれた美琴の左腕がピタリ、と静止しそのまま恐るべき速度で上条の右頬に襲いかかる。 (もうダメだ、黙ってこの平手打ちを受けるしか!) 上条は目を閉じ直立不動の姿勢で右の頬を打たれたら左の頬をすかさず差し出すべく心の準備を整えて。 ぺちっ。 美琴の平手打ちはごく軽く上条の頬を叩いた。 「……はい?」 上条が頬に伝わる予想外の衝撃におそるおそる目を開けると、相変わらず美琴は耳まで赤く染めたまま胸元で右拳を握りしめ、うつむいて肩を震わせて 「……あ、アンタね……あんな、あんな恥ずかしい真似を……人前ですんじゃないわよ。ひ、ひ、人が見てたらどうすんのよ、この変態。く、くすぐったいじゃない……」 美琴としては頬へのキスは問題ないが、耳たぶへのキスはそれなりに大問題だったようだ。 まぁ普通そんなところにキスしたりはしない。 上条は小首を傾げて、 「……お前殴んないの?」 「……アンタは殴って欲しいの?」 常盤台のお嬢様が何やら激しく恥ずかしがって照れている。 上条はとりあえず今の失敗は美琴が見逃してくれたらしいと言うことに安堵し、手をつないで常盤台中学の待機場所へ美琴を連れて行くことにした。 「……するんだったらそんなところじゃなくちゃんとしなさいよ……」 ちゃんと、ってやっぱりほっぺたの方だよなと思いながら上条は美琴の横顔を盗み見る。 美琴は何だか嬉しそうに笑っているように見えた。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/Equinox
https://w.atwiki.jp/index-ss/pages/1286.html
そして、機械が感情のない声で言う。 「白井黒子。女性。常盤台中学1年、大能力者(レベル4)の空間移動者(テレポーター)」 と、機械がそこまで言うと、次は黒子が風紀委員(ジャッジメント)の腕章をつけている状態の写真が映し出された。 「風紀委員(ジャッジメント)第一七七支部所属。 本人が所持している能力、空間移動(テレポート)はかなりの有用性を誇り、昨日の戦闘においても、同系の超能力者(レベル5)を単独で撃破。戦闘能力地は大能力者(レベル4)でもかなりのものだと思われます」 「実際に役に立つ能力ではありますが…結構繊細ですので、扱いが難しいんですの」 黒子が、誰ともなく言った。 それが拾われることなく、次にモニターに写ったのは、いつもと同じチャラけた格好の土御門だった。 「土御門元春。男性。現在では多角スパイとして、学園と市内の高校1年、イギリス清教の必要悪の教会(ネセサリウス)所属、という立場に立っています」 そこまで言うと、なぜか土御門は携帯を取り出し、誰かと会話し始めた。 機械はそれを無視し、話を続ける。 「学園都市の能力開発の時間割り(カリキュラム)を受けた影響で、魔術を使うと身体に多大なダメージを――――」 と、機械が離していた途中で、土御門は電話を切って発言した。 「あー、それ訂正訂正。今のスーパーイケメン土御門元春様は、魔術を使っても何の問題もないぜよ」 「…?え、それ本当かよ??」 その、結構爆弾な発言に上条は思わず聞き返す。 「本当だぜぃカミやん。今まで嘘をつきまくってた俺だが、今回ばかりはマジだ」 途中から真剣っぽくなった土御門の言葉だが、上条には今までの経験(キャリア)がある。そう簡単には信じられない。 「んじゃ、はいそーですか、じゃあ護衛頼むわー、ってなって、実際戦ってる途中に「あ、悪いカミやん~、さっきの、やっぱ嘘」みたいなことになるんだろどーせ」 「ですね。あの土御門のことですから、そんなとこがオチでしょう」 上条の否定と、聖人がその上条の肯定をしたことにより、土御門は多大なダメージを受けた。 「…うう…俺はあれか、嘘つきまくって喜んでいた羊飼いの少年か…?でも、最後には本当のことを言うんだにゃー」 机にグダー、っと突っ伏した土御門が、ほとんど顔を上げずに言った。 すると、今度は機械が反応した。 「先ほど、上層部からの連絡がありました。土御門元春は現在、魔術を行使してもなんら影響はありません」 やっときてくれた肯定だったのだが、機械である、というのがネックなのだろう。土御門はさほど反応しない。 「って…本当だったのかよ…」 「あの土御門が…?まさか、誰かに魔術をかけられているのでは。少年、あなたの右手で土御門にかけられている魔術を解けるのでは?」 「…こんなガッチガチな機械が言ってるのに、まだ信じてないのかにゃー…」 ハァ、とため息をつきながら言う土御門。 「いえ、その話は信用しました。ですが、あなたともあろう者があっさりと信実を言い放つことに疑問をもっているのです」 「俺も神裂と同じく」 その二人の言葉をまともに喰らった土御門は、もはやぴくりとも動かなくなった。さしずめ、HPはかなりあるがMP0状態の魔法にしか頼れない魔術師だろう。 「お待たせして申し訳ございません。今、情報の処理が終了いたしました。話を続けさせてもらいます」 これ以上追撃がきたらHPもだんだん減ってくかもな、とか上条が思っていたときに、タイミングよく機械が割り込んできた。 「やはり、土御門元春は、今はただの魔術師です。以前まで持っていた『肉体再生(オートリバース)』 は現在所持していません」 「どォやって、ンなことした」 今まで全く無関心だった一方通行(アクセラレータ)が、唐突に発言する。 「…極秘情報、とあります。簡潔に説明すると、能力使用に必要な脳回路を一時的に遮断しているようです。遮断期間は大体24時間程度かと」 「…それって、長いのか短いのかわからねぇな…」 上条がポツリと呟く。 それに土御門は、やっと顔を上げた。 そして意味ありげな笑みを見せ、 「カミやん。俺に丸1日魔術を使わせたら、実は結構とんでもないことになっちゃうんだぜい?」 そう言った。 「…やっぱ信じられん」 「もはや疑心暗鬼とかそういうレベルじゃねーぞカミやん」 「日ごろの行いが悪いあなたのせいです、土御門」 「ぐっ…あんな魔法名――――救われぬ者に救いの手を――――がセオリーのねーちんまでもが…?もはや俺は、今後の人生ずっと嘘をつき続けなければならないのか…」 そんな馬鹿な会話のやり取り中、ずっと黙っていた大勢だが、流石に痺れを切らしたらしい。 「…いい加減、話を進めなさいよ」 「さっさとこんなもの終わらせてご飯食べさせてくれないと、とうまの頭がウニに見えてきちゃうんだよ?」 「あ、インデックスさん落ち着いて…とりあえず席に座りましょうよ、ねぇ?…ま、まぁ…インデックスさんほどではないにしろ、話は進めて欲しいです…」 「てか、さっさと話し進めろやコラ。そこの土御門とかいう奴、魔術つかえるとかいってるけどぶっ飛ばしちまうぞ」 「同感だね。それに土御門には日ごろの恨みが募って、一発お見舞いしてやりたかったし」 「そういえば、あなたが妙に進めたせいで、わたしはあんな服を着る羽目になったんですよね土御門。あれはいったいどうしたらよいのでしょう?」 「…土御門。がんばれ」 「ちょ、皆さん待って!?特にそこのキレかけの聖人さんっ!あなたの本気は流石の土御門さんでも相殺しきれるかどうか――――」 「…ほう。相殺しきれるか…ですか。ということは、もとより致命傷を受けるつもりはない、と…あなたの腕がそこまでなら、本当に一発かましてもかまいませんね?」 「だから待って神裂さんッ!?ちょ、ちょっと時間を…時間をくれないと流石にねーちんの攻撃は…」 「救われぬ者に救いの手を(Salvere000)!!」 直後、キュインッ!!という妙な音とともに、莫大な衝撃波が生まれた。 そして、 「背中刺す刃(Fallere825)っ!!」 声が響き、 瞬間。 バシュウゥゥッ! という音が轟き、全ては平穏に戻る。 上条が妙に冷静に周りを見渡すと、ほとんどの人間は硬直している。 しかし、神裂と土御門は互いににらみ合っている。 神裂は腰を低く落とし、唯閃の柄に手を添えている。 対し土御門は、黒、赤、白、緑など、様々な色の何の装飾もない折り紙を丁寧に持っている。 それを見て上条は、 「ちょっとお二人さんッ!?何勝手にガチになっちゃってんの!?とりあえずここらで打ちきろ、な!?」 二人の真剣極まりない表情から本気であることを察してしまい、慌てて止めに入った。 「にゃー。もとから俺はねーちんと闘り合う気はないぜい。攻撃されたから、それを吸収しただけだ」 「今の…赤ノ式と黒ノ式の混合型防御用術式ですね。赤ノ式で生み出した炎で黒ノ式で生み出した水を蒸発させ、それまでの過程に魔術的意味を添えることで特殊な水蒸気を辺りに散らす…今回は『吸収』という特徴でしたか。しかし、そんな事をせずとも、やはり相殺すればよかったのでは?」 「それはないぜいねーちん。あんたが妙に手加減するから、こっちも攻撃に小細工を加えなきゃならなかったんだぜ、相殺するとしたら。それがとんでもなく面倒くさそうだったから、防御用術式にしといた」 「…流石、陰陽博士の最高位の魔術師。これくらいなら造作もないわけですか」 「まっ、そういうことだにゃー。いやー、久々に思いっきり魔術を使ったぜよ。攻撃用術式じゃなかったけど」 「…待て。何勝手に話を終わらせようとしているんだ君たちは。僕や天草式の連中はともかく、なに科学サイド側に専門用語をそうポンポンと…」 「ってちょっと待って!いったい今のは何事だったの!?ってミサカはミサカは当然の疑問を投げつけてみたり!?」 「…お前はややこしいから黙ってろ」 「…でも、本当にさっきのは一体…?」 「あれが、魔術って奴なのか?」 「…」 ハァ、と上条は大きくため息をついた。 思いっきり、魔術の話題で盛り上がってしまっている会議場。 それを引き起こしたのは、神裂と土御門。 この二人は、プロの魔術師である。あんなことをすればこういうことになることくらい、考えなくとも分かるだろう。 その二人が、多少イラっときたくらいで、魔術を行使するとは思えない。 つまり、 (…何かあったか?) おそらく、あの二人はステイルよりも強い。 ステイルも十分強いのだが、世界に20人といない聖人、陰陽博士としての最高位の魔術師が相手だったら流石に見劣る。 そして、インデックス。 彼女は、10万3000冊の魔道書の原典を、その頭に全て叩き込んでいる。そんな彼女が気づけない魔術なら、あの二人といえ気づけないだろう。 となると… 少し考えをまとめた上条は、少し落ち着いてきた頃を見計らい、天井に向かってこういった。 「おい、機械さんよ。まだ話って続くのか?」 「はい。といっても、あとは今後について簡単な予想を話すだけですが…なにか?」 「あ、話があるんなら続けてくれ。それでいいよな?」 上条がそういい、辺りを見回すと特に反応はなかった。科学サイド側は魔術について考えてるだろうし、魔術サイド側は科学サイドに出回った魔術の知識をどう扱うか考えているはずだ。反応がなくて当然だと思う。 そして機械は、その無反応を『肯定』と受け取ったらしい。話を始めた。 「今回反乱因子と闘ってもらう皆様の紹介は終わりました。次に、反乱因子と戦う際の、それぞれのグループに分かれてもらいます」 「待て。さっきの『あれ』はまるっきりスルーかァ?少しは説明しやがれ」 と、一方通行(アクセラレータ)が唐突に野次を入れてくる。 「それに関しては、完璧なイレギュラー事項ですので、当本人から聞いてください」 「もとからテメェに聞く気なンてねェよ。だから、こいつらに言ってんだ」 一方通行(アクセラレータ)の視線が、うっとうしそうに天井を睨んだ後、神裂たちに移る。 「あ、おい、一方通行(アクセラレータ)」 「あン?なンだ、お前に説明できンのかよ」 そういいながら一方通行(アクセラレータ)が振り向くと、顔だけを使い『ちょっといろいろあるらしいから』ということを伝えようとしている上条が目に入った。 …おそらく一方通行(アクセラレータ)は、それを見ても何なのか全く分からなかっただろう。しかし、何か事情があることは察したらしく、それ以上は言及してこなくなった。 一方通行(アクセラレータ)が黙った次に、機械がまた話し始めた。 「では、まずグループAの皆様から順に発表します」 そう機械が言った次の瞬間、モニターにいっせいに写真が写り、そのうちの一つがクローズアップされる。 「グループA、リーダーは上条当麻とさせて貰います。副リーダー、御坂美琴。以下、構成員です。削板軍覇、アニェーゼ=サンクティス、シスタールチア、アンジェレネ」 その写真は、一番上に上条が写っており、次にステイル、そして美琴、黒子…となっていた。 「何か意見がおありの場合は、全てのグループ発表後に受け付けますのでご了承ください」 特に誰も口を開いていなかったが、機械がそんな事を言う。 「グループB、リーダーは一方通行(アクセラレータ)。副リーダー、長谷田鏡子。以下、構成員です。五和、牛深、香焼」 今度写真に写ったのは、思いっきり無愛想な一方通行(アクセラレータ)。そして鏡子、結標淡希、と紹介された露出度の高い女。最後に、五和たちが写った。 「次に、グループC、リーダーは神裂火織、副リーダーは海原光貴。以下、構成員。諫早、野母崎、対馬」 やはりこの写真も変わらず、神裂、海原…と、順に移されていく。 「最後、グループDのリーダー、土御門元春。副リーダー、建宮斎字。以下、構成員。結標淡希、葛城妖夜」 機械の淡々とした説明が終わり、モニターには、全てのグループが映し出されていた。 「以上で、全グループの紹介を終わります。何かご意見のある方は、挙手してから意見してください」 その写真がモニタから消え去り、間髪いれずに機械が言葉を発する。 そして、無言で機械に言われたとおり手を上げる一方通行(アクセラレータ)。おそらく、機械相手には融通が利かない、というのを理解したのだろう。 「一方通行(アクセラレータ)の意見を聞きます。どうぞ」 機械が、思いっきり機械的に言う。 それに調子を狂わせられながらも、一方通行(アクセラレータ)はさっさと言葉を紡いでゆく。 「そこに3人で固まってる女どもの力量は知らねェが…それにしたって、グループAの戦力は低くねェか?」 そう、上条もそう思っていた。 美琴や軍覇は、それなりに頼りになると思う。しかし、一方通行(アクセラレータ)や心理掌握(メンタルアウト)、神裂や魔術を使えるようになった土御門、葛城妖夜などと比べると、どう見ても見劣りする。 「それなら、グループCもちょっとまずくないか?聖人がいるけど、それ以外は…」 自分で言っておきながら、途中で口ごもる上条。 神裂がいるのは心強いだろうが、正直言ってグループCはそれだけだ。海原なら、上条単体でも撃破出来たし、それ以外の魔術師も超能力者(レベル5)には勝てないだろう。 そんな質問を受けた機械は、冷静に対処してくる。 「まず、グループAについて、ですが…今回の戦いでは、上条当麻が持つ『幻想殺し(イマジンブレイカー)』が、大いに役立つ、と考えられます。そして、二人の超能力者(レベル5)により打点を補い、3人の魔術師により、魔術側を抑える。突出はしていませんが、バランスは保たれています」 「では、グループCの方はどう説明するのですか?」 そのリーダーを任された、神裂が率直に質問する。 「グループCは、神裂火織の統率による天草式の連携を期待しておりますので、その程度にしておきました。さらに、海原光貴…エツァリも、最近大きな力を手に入れたようですので、実はかなりの戦力を持っているグループ、となっております」 「うわ…ばれてたんですか?」 なんか、本名がエツァリとか言われていた魔術師が、否定せずに嫌そうな顔をする。 「本当なのか、海原」 土御門が、まじめな口調で海原に聞く。 「…まぁ、それなりの力は手に入りましたね」 「その、それなりの力ってンのは、具体的にドレくらいのレベルだ?」 一方通行(アクセラレータ)が、海原を睨みつけながら言う。 「いえ、そちら(科学サイド)にはあまりなじんでいない力でして…」 「じゃあ、俺に言え」 土御門に言われ、逃げることが出来なくなった海原。 いい加減諦めたのか、ハァ、とため息をついてから一息で言った。 「ちょっと…魔道書の原点を2冊ほど」 「…」 ちょっと一息置いたあと、 「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!??」 主に、魔術サイドの魔術師が、もはや叫びとなった声を上げる。 「…いや、あのですね…これは、あくまで自分のためではなく…」 とっさに言い訳をしようとしている海原だが、魔術サイド勢はそんな事を気にしていない。 主に土御門が、海原に掴みかかり、一気にまくし立てる。 「何で隠してたんだ海原ッ!?そしてその魔道所の種類とかそこら辺はどうなってる!?」 「ちょ、ちょっと!あなた、原典を2冊所持していても、なんともないの!!??ちょっと考えられないかも!」 インデックスも、土御門に加勢する。といっても、インデックスのほうが軽く5万1500倍は海原よりぶっ飛んでいるのだから、あまり説得力はないのだが。 「え、ええと…原典の種類は、『暦石』というものでして…」 「インデックス。その『暦石』ってのは、具体的にどんなものなんだ」 土御門が、一瞬もためらわずにインデックスに聞く。あれ?こいつらって、なんか面識あったんだっけ?と首を傾げる上条を置いといて、インデックスはすらすらと答え始める。 「暦石っていうのは、アステカ地方のカレンダーみたいなものだね。2つの方式の暦を同時に扱って、太陽の死、蘇生とかを書き込んでいくことで、とんでもなく複雑化したものだよ」 「その暦石にも、種類とかってあるのか?」 「けっこうあるね」 「海原」 「…なんかもう、自分を置いといて勝手に話し進めてますよね…」 そんな軽口を叩く海原だが、土御門たちは取り合わない。 「…自分は、どちらも名前を知らないのですが、少し知識は持ってます。1冊目は巻物状のもので、生と死に関する時間の内容を突出しており、宗教的な論説にまで発展させたものだとか」 「…『万物主管の書』だね。用途は、『武具を持つものへの反撃』。武器を操り、所持者を自殺に追い込ませる術式だよ。原典の自動迎撃術式の応用、みたいなものかな。原典の視点から、『武器』として認識された『万物』を所持している人間の精神に干渉し、その武器の所持権をのっとり、所持者を殺す、っていう内容。原典は、その知識を欲するものを護衛する性能があるから、武器を認識したら、その所持者をすぐに排除する、っていうのも原典の性能を少しいじれば出来ると思うよ。術式名は、『堕落による万物主管権の移動』だね」 何も見ずにすらすら言うインデックス。こういうところを見ると、やっぱりこの少女が只者ではないことを改めて認識させられる。 「…その原典のリスクは、大体どのくらいなんだ」 土御門が、まだ緊張した状態でインデックスに聞く。 「一般人なら、3日と持たないね。そこらの魔術師でも、良くて2週間程度」 「お前、その原典を所持し始めて、どれくらい経つ?」 海原を睨みつけながら言う土御門。 大使、海原は驚いたように言う。 「良くて2週間、ですか…。ちなみに、自分はちょっと小細工を加えてまして…所持し始めて、もう1ヶ月は軽く経つかと」 そう言った瞬間、海原は土御門に殴り飛ばされそうになった。そこは、聖人の神裂が止めに入ったが。 「…なんだ、その小細工ってのは」 神裂に動きを封じられている状態でも、土御門の眼には力がこもったままだった。 「この原典は、先ほどのインデックスさんの説明にもあったとおり、通常の原典よりも、原典の知識を欲するものに対する扱いが良いんですよ。なので、通常の場合より持つのは当たり前だと思いますが…自分の場合、その『保護』に対して、それに反する無効化術式を常に発動しているんですよ。まぁ、人間が扱う術式で原典の保護を無効化できるはずがないんですが、原典の方はそうは思ってないらしくてですね。その『保護』レベルをより一層高めることで、その術式の効果を薄めようとしてくれているんですよ。つまり、自分が保護に対して無効化術式を発動していて、その無効術式に対するように原典の方が勝手に保護レベルを格段に上げてくれている、ってことですよ。実際には、どれくらいのレベルなのかは分かりませんけどね」 「こいつの話の信憑性は?」 海原が一気に話した内容を聞いていた土御門は、インデックスに聞いてくる。 「十分ありえるよ。というか、もうその方法以外じゃ、多分生きてられないんじゃないかな?ただの人間が扱う術式程度で、原典の侵食を防ぐことなんて出来ないし、そうなればやっぱり、原典自体に手伝ってもらうしかないかも」 インデックスが、一人頷きながら言う。 「…で、それだとこいつはあとどれくらい持つ?」 「…分からない。今のところ、原典に関する術式はあまりにも少ないから、その原典の『保護レベル』を知る方法なんてないんだよ。でも、私の個人的な予想だと…あと10年くらいは持つんじゃないかな?」 「そんなに持っちゃうんですか…?もう少し早いもんだと思ってたんですけどね」 ケロッ、という表情で言う海原を、やはり土御門は睨みつけている。 「…2冊目は」 「そんなに急かさないでくださいよ…ちょっと待ってください」 土御門の単純な言葉に、海原は複雑な表情を浮かべて思案する。 「…形状は、石版、ですか…。内容は、『月のウサギ』に関する記述が強調されているものです。基となっているものは、月の輝きが強すぎるため、神々が地球からウサギを月へと放ち、その輝きを弱めた、という神話です。 その発動コストは、『ウサギの骨』なのですが…神話に出てくるそんなものを用意できるわけもないので、前代のこの原典の所持者は…人間の骨を変わりに使ってました…」 そこで海原は、言葉を切らせてしまった。上条には、なんとなく『それ』が理解できた。 「…その暦石は、『月への報復』。術式名は、『輝きを弱める輝き』。原典の所持者を『地球』、攻撃対象を『月』、そしてコストを『ウサギの骨』と見立てて術式を発動させるんだよ。・・・このコストは、別に何の動物の骨でも良いんだけど…その動物の性能が高ければ高いほど、術式の威力は高まっていく…神話に出てくる、『ウサギの骨』を使った場合は、本当に神話級の威力を発揮すると思う」 そこまでインデックスは言うと、後は静かになってしまった。おそらく、彼の事情を察したのだろう。 流石に土御門も、もう言及はしなかった。静かにインデックスに聞く。 「…所持者に対する侵食具合は…?」 「普通の原典と同程度。だけど、その…エツァリって人が、もう片方の原典に細工しているから、やっぱり10年くらいは生きれるんじゃないかな」 そのインデックスの言葉を最後に、場は妙な雰囲気に包まれ、誰も発言できなかった。 と、そんな空気を引き裂くのはやはり、 「質問内容は、以上でよろしいでしょうか?」 という、無粋な機械の声だった。 「…チッ」 そこで、なぜか一方通行(アクセラレータ)が舌打ちをする。…こんなキャラだったっけ、こいつ?と首をかしげる上条。 「良いんじゃねぇのか」 土御門が、思いっきり投げやりに言う。しかし、否定する人間もいない。 「では、最後に少しだけ話させてもらいます」 そう機械が言い、最後の話とやらが始まる。 「まず、反乱因子との戦闘についてですが、基本的にグループ単位で行動してもらいます。そのグループ内のみで作戦などを立ててもらいますが、その作戦には他のグループを干渉させないでください。逆に、そのグループ内のみに関することならば、基本的にどんな作戦を立ててもらっても結構です。つまり、そのグループのみで動き、反乱因子を妥当できる作戦を立ててもらいます」 「オイオイ。そんな、『グループ内の仲間をどう使っても良い』なんてタノシイこと言われたら、妄想が止まらなくなっちまうぞォ?」 一方通行(アクセラレータ)が、ニヤァ、と笑いながらいう。 「こいつの言い方は流石にイキすぎてるけど…でも、確かにそうね。おとりにでも使えっていうの?」 確か…結標とかいわれてた女が、一方通行(アクセラレータ)のほうを一瞥しながら言った。 「かまいません。しかし、死人が出ることは出来る限り避けてください」 「出来る限り、かよ…」 上条がその言葉を受け、立ち上がる。 「ふざけんじゃねぇぞ。どうせお前らは一人の命なんてどうだっていい、って考えてるだろうけどな!こちとら一人たりとも死なせる気はねぇからなッ!!」 「…何いきなりヒートアップしちゃってんのよアンタ」 「…逆に、ここでこういうことを言わなかったら、とうまの存在意義はないのかも」 美琴とインデックスに何か言われたような気がする上条だが、そんな小さいことを気にするような人間ではない。 「ですが、そうですわね。たかだが『反乱因子』どものために、この命を投げるなんてことはいたしませんわ」 白井が、珍しく上条の味方をする。 「たかだが、か…絶対能力者(レベル6)の事を、どう見てるんだか」 「かく言うお前も、この闘いで死ぬ気はないんだろう?」 「誰が死ぬだって?少なくとも、俺は死ぬ気はねぇ」 「…俺もだな」 妖夜と軍覇が、あっさりとそんなことを言い放っていく。この二人には、戦闘経験はあるのだろうか?軍覇は多少なりともありそうだけど…と、上条は一人思う。 「絶対能力者(レベル6)、といっても、私たち《超能力者(レベル5)》みたいに、弱いものと強いものがあるのかしらね?一方通行(アクセラレータ)みたいなのもいれば、念動砲弾(アタッククラッシュ)のようなものもいる。弱いほうならば、何人かでかかれば倒せると思うけど?」 「…それは喧嘩と受け取って良いのか、心理掌握(メンタルアウト)」 「7位に倒されるほど、私はヤワじゃないわよ」 「…アンタらねぇ」 と、3人の超能力者(レベル5)が、案外楽観的な言動を見せている中、現実を深く知っている二人の超能力者(レベル5)は冷静に意見を下す。 「まず、この一方通行(アクセラレータ)が超能力者(レベル5)だ、ってことを理解してる?」 「…」 美琴のその一言だけで、周りの空気が変わる。 「少なくとも、弱いほうの絶対能力者(レベル6)でも、一方通行(アクセラレータ)よりチカラを持っている。そして、あなたたちは一方通行(アクセラレータ)以上の相手に、数人でかかれば何とかなるだろう、なんて考えてんの?そうだとしたら、さっさと目を覚ましなさい」 「俺以上の能力者だ、おそらく今まで現れてきた能力者とは、根本から違っているはずだ。…想像も出来ないような能力を行使してくる、と考えて戦わなきゃまずいだろォなァ」 二人の超能力者(レベル5)の口から放たれた言葉は、妙に現実味を帯びていた。 「…だぁー。だからってさ、そんな言葉を言う必要ななくねぇか?少なくとも、ちょっとくらい希望を持ったって良いだろ?」 もう、場の雰囲気が凄いことになりそうだったので、とりあえず上条は意見してみる。 だが、それさえも一方通行(アクセラレータ)により粉々にされた。 「お前らに良いことを教えてやる。人間ってのはなァ、常に最悪の事態を想定して行動した方が、結果は良くなるもンなンだぜ」 「…この上なくありがたいお言葉だな」 げんなりする上条。 と、そこで、 「…いやぁ、なんかそちらの話になると…全然ついていけませんね?」 上条の隣に座っている五和が、肩身狭そうに言い、周りを見渡す。 「ほんとですね。さっきから、何の話をしているのやら」 「もう、アンジェレネにいたっては、子供のように寝ていますしね」 「…ふあ?ね、寝てなんか…ない…ですよぉ…」 「声が次第に小さくなっています、シスターアンジェレネ。その状態で、『寝てない』なんて言われても、信じれるはずないでしょう」 アニェーゼとルチアの冷たい視線を受けているアンジェレネだが、幸せそうな顔でまた寝始めてしまった。 「…まぁ、仕方ないでしょう。そっちの話ですから、理解できなくて当然です」 「それとこれとは違う問題のような気もするけどね」 神裂がアンジェレネのフォローに入るが、ステイルが興味なさそうに水をさす。 「まぁ、自分みたいなのは例外ですから、一般の方はあまり理解できないのは当然では?」 「そもそも、俺らみたいなのは『一般人』扱いされてるのかにゃー?」 海原と、とりあえず魔術サイドの土御門が言った。 「とりあえずだ」 なんかもう一気にうるさくなりそうな雰囲気がしてたためか、一方通行(アクセラレータ)が一つため息をついてから少し大きめの声で言う。 「これから戦う奴らは、考えられねェほど強ェ。もう、本当にどうにも出来ないくらいにな。だが、俺たちは学園都市が恨みを買いまくってるせいで負けるわけにはいかねェ。だから、今後のことを各グループごとで話し合う。異論は?」 それは機械の仕事じゃないのか、と突っ込みたかったが、変に機嫌を損ねて血液を逆流させられても笑えない。とりあえず黙っている上条。 と、仕事を奪われた機械が言う。 「一方通行(アクセラレータ)の言うとおり、我々が負けることは許されません。各グループごとに分かれ、今後の作戦を立ててください。以上で、この会議を終わります」 「あれ?終わりますって…強制的に?」 上条がそう天井に向かって聞いたが、返事は返ってこない。 と、そこで。
https://w.atwiki.jp/meteor089/pages/280.html
上条「初詣行かないか?」 神裂「私で…良ければ」① 戻る 次へ 3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 13 39 53.87 ID 4SyRupAbO 一月二日。三ヶ日のど真ん中。 午後1時、上条当麻は神社にいた。 ある人と待ち合わせをしているのだ。 「うわー、やっぱ人多いなぁ。 やっぱみんなこういうイベントは好きなんだな」 見渡す限り人で溢れている。 学園都市は科学の街だ。 科学に関しては、外の世界より十年は進んでいると言われている。 しかしこんな時の為、神社もあるのだ。 初詣。上条の今日の目的だ。 「しかし、こんな人でごった返して、 ちゃんと落ち合えんのか」 上条がそんな事を心配していると、人波を掻き分けて約束の相手が現れた。 4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 13 40 41.60 ID 4SyRupAbO 「お待たせして申し訳ありません、上条当麻」 深々と頭を下げているこの人物、 神裂火織が待ち合わせの相手だ。 イギリス清教ネセサリウスのメンバーであり、 天草式十字凄教の女教皇。 更には世界に二十人程しかいない聖人だ。 「……………」 ぼーっと神裂を見つめている上条に、 神裂が不安な顔をする。 「も、もしかして…お待たせしてしまって 怒っているのですか? 」 「え?いや違う違う!何でもねーから気にすんな!」 5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 13 41 58.20 ID 4SyRupAbO 神裂は着物を着ていた。 薄い青を基調に、色とりどりの花があしらわれている。 髪もポニーテールではなく、きちんと頭の上で結わえてあった。 普段の神裂は、白いTシャツに、 片方が太ももの付け根まで破られたジーンズを履いている。 その姿で現れるとばかり思っていた上条は、 そのあまりに珍しく、美しい姿に見とれてしまったのだ。 「き、今日は着物なんだな」 「へ、変ですか?」 「変じゃない変じゃない!! むしろ良い!上条さんは良く似合っていると思います!!」 「そ、そうですか?少し恥ずかしいです」 そう言って口元に手を添える姿は、妙に色っぽく見えた。 8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 13 43 05.87 ID r0wht7D90 神裂さんの着物姿とか妖艶ってレベルじゃねーぞ 10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 13 44 49.83 ID 4SyRupAbO 美しい黒髪に清楚で凛とした立ち居振る舞い、 神裂は見事に着物を着こなしていた。 (インデックスならこうはいかないな…) 上条は容易に想像出来た。きっと七五三みたいになるだろう。 そのインデックスは、上条の担任、月詠小萌の家にいる。 おせちパーティーに参加中だ。 「初詣とおせち料理、どっちがいい?」 そう聞いた上条に、インデックスは即答したのだ。 「おせち」と。 「では行きましょうか」 神裂に促されて、二人は境内に向かう事にした。 12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 13 46 07.31 ID 4SyRupAbO 「す、進まねー!!!」 上条と神裂は完全に人の波に飲まれていた。 少し気を抜けばはぐれてしまいそうだ。 「わざわざ一日は避けたのに!」 実は上条は知らなかった。この神社は駅からも近く、 出店もたくさん出ているので初詣の人気スポットなのだ。 境内に向かう人と出店で立ち止まる人で 境内までの通路は大渋滞だった。 「きゃっ!」 後ろから押された神裂は、 慣れない草履に踏ん張りが効かずよろめいた。 「あっ、あぶねー!」 上条は咄嗟に神裂の腕を取り、引き寄せた。 「す、すいません」 「大丈夫か?しかしこれじゃ 辿り着く前にはぐれちまいそうだな」 14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 13 48 05.76 ID 4SyRupAbO 「ほら」 そう言うと上条は自分の左腕を差し出した。 「俺なんかの腕で悪ぃけど、 とりあえず掴まってた方がいいぞ」 「!!!」 「また転びそうになったら困るだろ? それにはぐれても面倒だしな」 上条は何か特別な意味があって言ったのではない。 自分を気遣ってくれているだけなんだ。 頭では分かっていても、神裂の心臓は一気に鼓動が早くなった。 「で、では…あの…失礼します」 そう言って神裂は、 上条の腕を自分の右手でしっかりと掴んだ。 15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 13 52 00.33 ID 4SyRupAbO (こ、恋人みたいです!!) 上条の体温が右手から伝わってくる。 神裂は緊張で体がカチカチになっていた。 (て、手に汗が!大変です!) 「神裂?」 (ふぁぁ!!今ちょっと強く握っちゃいました!!) 「神裂ー?」 (かかか肩がっ!!今!肩が密着してしまっています!!) 「神裂さーん!」 「ひっ!ななな何ですか!?」 あまりの緊張に上条の呼び掛けなど気づかなかった。 聖人と言っても18歳の女の子なのだ。 「大丈夫か?もうすぐ順番回ってくるぞ」 」 16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 13 53 09.08 ID avO2X9/vO あっダメだニヤニヤしちまう 23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 13 56 34.87 ID 4SyRupAbO 気がつけばもう人混みの先頭まで来ていた。 名残惜しかったが、お詣りするには手を離さなくてはいけない。 「す、すいません!」 神裂は慌てて上条から手を離した。 賽銭箱にお金を入れ、二人は手を合わせ心の中で神様にお願いをする。 (今年は不幸が減りますように。 インデックスの食欲も減りますように) (み、みんなが…特に上条当麻が幸せになりますように!) 「さて、帰りに出店でも寄ってくか」 二人は人混みから少し離れた場所にある、 甘酒の出店へ立ち寄った。 25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 13 58 39.91 ID 4SyRupAbO 出店の脇にある小さなベンチで待っていると、 両手に甘酒を持って上条が戻ってきた。 「ほら。たいしたもんじゃないけど、上条さんの奢りだ」 「ありがとうございます」 二人はベンチで甘酒をすすりながら、 行き交う人を眺める。 みんなとても幸せそうだ。 新しい年への希望で溢れている。 「神裂は何をお願いしたんだ?」 突然聞かれた神裂はむせそうになる。 「そっ、そんなの教えられません!」 「そっか。それもそーだな。 それよりお前顔真っ赤だぞ。大丈夫か?」 「こ、これは…甘酒です!甘酒に酔ったのです!」 自分でも情けない言い訳だと思ったが、 【あなたの幸せです】などと口が避けても言えなかった。 26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 14 00 37.39 ID 4SyRupAbO 甘酒を飲み終わった二人は、 人混みを掻き分けてまた神社の入り口に戻ってきた。 行きの流れよりスムーズだった為、 上条と腕を組む機会がなかった。神裂はそれが少し寂しかったりする。 「その、今日はありがとうございました。」 「俺の方こそサンキューな。神裂と初詣来れて良かったよ。 着物姿も見れたし」 「な、何を言っているのです。からかうのはやめてください」 「でもやっぱ神裂を誘って良かったよ。 最初は一人で行くつもりだったしな」 「わ、私で良ければいつでも…」 27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 14 03 09.61 ID 4SyRupAbO 「この後すぐイギリスに戻んなきゃいけねーんだろ? じゃあ気をつけてな」 「はい。では私はこれで失礼いたします」 そう言って神裂は遠ざかって行く。 途中振り返って小さく手を降っていた。 「さて、俺も帰るとしますか」 上条が歩き出そうとしたまさにその時だった。 28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 14 04 19.94 ID 4SyRupAbO 「あっ!!アンタっ!」 「げっ!!!!御坂!!!!」 そこには学園都市第3位でレベル5の電撃使い、 御坂美琴がいた。 「"げっ!"て何よ、"げっ!"て!!」 「お前こんなとこで何してんだよ?」 「見て分かんない?初詣よ、は・つ・も・う・で!!」 「制服で?」 美琴は常盤台の制服姿だ。 着物を着た人ばかりの中では、 明らかに浮いていた。 「うっさいわね!校則なのよ!」 「…へー」 「ぐっ!!!聞いといて興味なさそうにしてんじゃないわよっ!!」 29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 14 07 09.01 ID FKwlJ5l1O ここでビリビリの嫉妬を挟むとはわかってる 31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 14 08 08.75 ID 4SyRupAbO 美琴の前髪からパチパチと電気が走る。 「お前も着物ぐらい着れば?せっかくの初詣なんだし」 「校則だっつってんでしょーがぁぁぁぁ!!!!!」 上条目掛けて電撃が飛んでくる。 しかし上条が右手で防ぐと、電撃は一瞬で消えてしまった。 「あっぶねー!!こんな人がたくさんいるとこで何考えてんだよ!!」 「アンタが私を怒らせるからでしょーが!!」 「カルシウムが足りないのか?よし!それなら上条さんが 牛乳をご馳走してあげよう!」 「だから…それが怒らせてんでしょーがぁぁぁ!」 32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 14 15 22.53 ID 4SyRupAbO 「わ、悪かった!!上条さんは猛反省した!」 「はぁ~、もうどうでもいいわ…」 上条当麻に何度電撃を放っても全く効かない。 美琴はぐったりしていた。 「で、アンタ。アンタはここで何してたのよ?」 「初詣に決まってるだろ。 三ヶ日に神社と言えば他に何があるんですか御坂さん?」 「ぐっ!!!あんたも私に聞いたくせにっ」 美琴は電撃を放ちそうになるのを耐える。 「あ、あんた一人で来たの?」 「いや、知り合いとだけど」 39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 14 37 03.85 ID 4SyRupAbO 「そ、そう。ちなみに……女の子?まさかとは思うけど」 「あのな~御坂。いくら上条さんでも 初詣に付き合ってくれる女の子くらいいますよ?」 「…っ!?」 美琴は胸のあたりが締め付けられる感覚がした。 もし美琴がもう少し恋愛に対して大人なら、 これが"嫉妬"だと分かっただろう。 「そ、そう。それは良かったわね…」 「な、何怒ってるんだよ!?」 「…別に怒ってなんかないわよ」 41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 14 51 58.48 ID 4SyRupAbO 「いや、上条さんには怒ってるように見えます」 「……怒ってない」 「いやいや、御坂さん! 頭からパチパチと音がっ!!」 「怒ってなぁぁぁぁい!!」 今日一番の電撃が上条を襲った。 「はぁ~、なんか当初の目的を忘れているわね…」 「そ、そうだな。一旦落ち着こう」 上条と美琴が一息ついた時だった。 42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 15 06 26.22 ID 4SyRupAbO 「あら?あらあらあら?お姉さまではありませんのっ!!」 「く、黒子!?」 そこには美琴のルームメイト、白井黒子がいた。 「黒子、あんた何でこんなとこいんのよ?」 「ジャッジメントのお仕事ですの。 これだけ人が集まれば、トラブルも多くなりますから。 定期巡回してますの」 確かに黒子の左腕にはジャッジメントの腕章が付いていた。 「で、お姉さま。確か初詣はお一人で行くと黒子は聞きましたけど?」 黒子は上条を値踏みするように眺める。 43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 15 10 16.70 ID jx1VQJIM0 神裂空気www 44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 15 20 19.88 ID 4SyRupAbO 「へ~、そうですの… お姉さまは黒子に嘘を吐いてまでこの殿方と…」 「ち、違うわよ」 「あら?私の目を見てお答え頂けますか、お姉さま」 「ぐ、だから違うわよ!!」 「まぁいいですの。黒子は仕事がありますのでこれで失礼しますわ。 ときに上条さん、お姉さまに何かいかがわしい事をしたら …羨ま…ではなくて許しませんわよ」 そう言い残すと、黒子の姿は一瞬で消えてしまった。 これが黒子の能力、テレポートだ。 45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 15 23 55.52 ID 4SyRupAbO 「な、なんだったんだ…」 完全に一人取り残された上条は、突然の嵐に巻き込まれた気分だった。 「じ、じゃあ俺は帰るから」 「………いよ」 「へ?」 「待ちなさいよ!黒子に二人で初詣行くって勘違いされたのよ!!」 「そ、それが何か?」 「これで行かなかったら…後で黒子に説明すんのが面倒でしょーがっ!!!」 「な、なんて理不尽な!!」 美琴は口実が出来て内心嬉しかったが、上条にとっては災難だった。 「ま、待て御坂!俺はもう…!」 「アンタの意見なんか聞いてないっ!ありがたく付き合いなさい!!」 「ちょ、俺もう初詣は…!」 「うっさい!!!!」 「ふ、不幸だぁぁぁぁ!!!」 こうして上条は、本日二度目の初詣をするハメになるのだった。 73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 18 28 07.49 ID 4SyRupAbO 学園都市は現在お正月である。 午後1時、上条当麻は補習も全て消化し、 お正月は家でのんびりと過ごしていた。はずだった。 「なのに…ここはどこだぁぁぁ!!!」 時は遡る事3時間程前。 上条当麻はお正月を満喫していた。 コタツに入ってただひたすらにダラダラする。 「コタツを考え出した人、上条さんはこの恩一生忘れません」 同じようにダラダラしている銀髪シスターは コタツの中で足をパタパタさせている。 「ねぇトーマ、おなかへった。 何か作ってくれると嬉しいな」 「フ…上条さんは今コタツと心も体も一つ。」 「む~、トーマのケチ」 お正月、コタツから出るのは至難の技なのだ。 さてもう一眠り、 と上条がウトウトしかけた時だった。 74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 18 31 39.31 ID 4SyRupAbO ピンポーン 上条の部屋のチャイムが突然鳴らされた。 「め…めんどくさい。インデックス、見て来て」 ピンポーン 「いやだー。トーマのおうちなんだから トーマが出るのが当たり前なんだよ」 ピンポンピンポーン 「ぐ……そういう時だけ家主扱いしやがって」 ピンポピンポピンポーン!! 「だぁぁぁぁうるせー!!!どちら様ですかっっっ!!!!」 上条が玄関のドアを開けると、意外な人物がいた。 75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 18 32 59.72 ID 4SyRupAbO 「久しぶりよな、上条当麻」 黒々とした髪、首からは小さな扇風機をいくつもぶら下げ、 靴ひもは引きずる程長い。 「建…宮?は?なんでお前が?」 建宮斎字、天草式十字凄教の教皇代理だ。 「話は後だ。緊急事態が起きたのよな」 76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 18 34 27.10 ID 4SyRupAbO 建宮がいう緊急事態は何なのか? 上条は何か大きな事件に発展するような気がした。 そしてこの予想は間違っていなかったが、 今の上条は知る由もなかった。 「で、どこに向かってるんだ?」 学園都市の外で 建宮が用意してくれた車に乗り込んだ上条は運転手に聞いてみた。 名前は確か…牛深だったか。しかし返事はない。 もう1時間以上会話がないのだ。 「はぁ~、今日中に帰れるだろうか… 無理なら…インデックスに怒られちまうな」 インデックスは小萌に預けて来た。 困った時の小萌頼み。いつか恩は返そう。 上条がそんな事を考えていた時だった。 体が前に引っ張られる。車が急に止まったのだ。 78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 18 37 30.65 ID 4SyRupAbO というのがだいたいの経緯である。 車から降ろされた上条は置いていかれた。 降りる時に大きなカバンを渡された。 「ここはどこだぁぁぁ!!」 上条は改めて周りを確認してみる。 周囲は木々で鬱蒼としている。どうやら山の中らしい。 目の前には小さな山小屋。 「とりあえず…落ち着こう」 上条はカバンを抱えて山小屋の中に入ってみる事にした。 通常こういった山小屋は、遭難者などの 避難場所として開放されているはずだ。 案の定、山小屋に鍵はかかっていなかった。 「お邪魔しますよー……えっ!?」 山小屋は広さは6畳程しかないが、小さな暖炉、 テーブルに椅子、簡単なキッチンなどもあり小綺麗だった。 しかし上条が驚いたのは思ったより綺麗だったからではない。 その部屋にまたまた意外な人物がいたからだ。 80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 18 47 24.47 ID 4SyRupAbO 「い、五和…?」 そこには椅子にちょこんと腰掛けている、 天草式十字凄のメンバー、五和がいた。 「かかかか上条さんっ!!??」 ガタンッ!と大きな音を立てて五和が椅子から転げ落ちる。 「大丈夫か?つーかお前なんでここに?」 恥ずかしかったのか、五和の顔は真っ赤だ。 「わ、私は教皇代理に任務があるからここで待ってろって …上条さんは?」 「俺も建宮に緊急事態だって 連れてこられたんだけど」 (か、上条さんとこんなとこで会えるなんて… 確かに緊急事態です!) 二人が今の状況を把握しようと 必死に頭を動かしていると、 またもや意外な人物があらわれた。 81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 18 50 46.73 ID 4SyRupAbO 「!?かっ…神裂!!!」 山小屋の扉を開けて入って来たのは世界に20人程の聖人、 そして天草式の女教皇だった。 「なっ、上条当麻!?なぜあなたがここにいるのですか!? それに五和まで!」 見たこともない顔で戸惑う神裂に、 上条と五和は事の経緯を簡単に説明した。 「…なるほど、そうでしたか。私は土御門からこの場所の調査を依頼されたのです。 このあたりにイギリス清教の宝具があるらしいのですが。 調査に必要な道具も預かりましたし…」 そう言って神裂は大きなカバンを掲げて見せた。 「あ!?そういえば俺も渡されたんだ!」 上条は牛深に渡されたカバンを テーブルの上で開けてみる事にした。 「なんだ…これ」 3人がカバンを覗き込むと、中にはお肉や野菜、 飲み物やお皿などが入っていた。 五和も慌てて自分のカバンを確認してみる。 82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 18 53 30.13 ID 4SyRupAbO 【頑張れ。 天草式一同より】 と書かれた紙と共に、 おしぼりと大精霊チラメイドのコスチュームが入っていた。 「そんな…」 カバンの中身がすり替わっていた。 ここに来る前は確かに任務に必要な物を入れて来たはずだったのに。 「どーしたんだ?顔真っ青だぞ」 上条の声に五和は慌ててカバンを閉じた。 「ななななな何でもありません!!!」 83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 18 53 40.96 ID +3xuS4ht0 なにこのニヤニヤ合宿 85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 18 56 23.38 ID 4SyRupAbO 何かがおかしい。神裂は二人からは見えないように 土御門に渡されたカバンを開けてみた。 「!!!!!!!!」 【ねーちんファイト 土御門元春】 そう書かれた紙と堕天使エロメイドのコスチュームが入っていた 。見なかった事にしよう…神裂はそっとカバンを閉めるのだった。 「さて、どうなるか楽しみよな」 木々に紛れて山小屋を監視していた建宮が笑みを浮かべる。 「まったく、ねーちんも五和も世話が焼けるにゃー」 土御門も嬉しそうに答える。 「エロメイド対チラメイド…… 俺達にとっては最高のお年玉なのよな」 「今年はいい一年になりそうだにゃー」 そう言ってニヤニヤ笑う二人に、 天草式のメンバー達はただただ溜め息を吐くしかなかった。 89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 19 13 58.84 ID 4SyRupAbO 「とにかく、ここに居ても仕方ありません。 道は私が分かりますので山から下りましょう」 神裂の提案で3人は山を下りる事にした。ところが… ゴォォォォォ!!!! 山小屋を出た途端、地響きと共に激しい揺れが起こった。 同時にとてつもない魔力が辺りを包んでいく。 「なっ何だ!!!」 「きゃっ!」 「二人とも私の後ろに!!」 神裂は一瞬でワイヤーを張り巡らせ、 3人を包むように防御結界を作った。 91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 19 17 59.96 ID 4SyRupAbO 「フッフッフ、甘いにゃー。 そんな簡単に帰らせるわけないにゃー」 全て土御門の計算通りだった。 もともと陰陽師である彼は、 竜脈と呼ばれる魔力の流れを読む事に長けている。 竜脈に囲まれた場所を土御門が探し、 そこに天草式が山小屋を建てる。 あとは少し細工をして竜脈を小さく暴走させる。 「かみやんの右手は厄介だからにゃー。けどこれは消す事はできないぜぃ」 上条の右手には【イマジンブレイカー】という力が宿っている。 それが異能の力ならば、触れただけで打ち消してしまう。 結界を張ったところで無駄なのだ。 「けど竜脈なら別だにゃー。竜脈はいわば大地の生命の流れ。 いくらかみやんでも生命を打ち消す事は出来ないにゃー」 「そして竜脈の結界の上から天草式の対聖人用の結界も張ってあるのよな。」 「バカだ…全力のバカだ」 天草式のメンバーは二人を見て皆同じ事を思ったのだった。 92 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 19 21 53.78 ID 4SyRupAbO 「くっ!!!」 何度目だろうか、神裂は七天七刀で結界の破壊を試みていた。 上条のイマジンブレイカーも試してはみたものの、 破壊されたそばから再生されるのでは どうしようもなかった。 上条は知らないが、竜脈による結界を消すには、 竜脈の流れを制御している土御門の 折り紙に触れなければ意味はないのだ。 土御門はルートディスターブと戦った時の事を応用していた。 93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 19 23 26.52 ID 4SyRupAbO 「くっ、やっぱり駄目ですね。聖人用の結界が重ね掛けされています」 「うわぁー、神裂でも駄目か。どーすっかなー。 こんな山ん中じゃ携帯も圏外だし。不幸だ」 頭を抱えてうなだれる上条に気付かれないように、 神裂は五和に耳打ちした。 「五和、こんな事になった原因、私に心当たりがあります」 「えっ!神裂さんも?私も心当たりあります!」 「やはり…建宮と土御門の仕業ですね」 「どうしましょう…」 五和は今にも泣き出しそうな顔をしている。 「大丈夫。ずっとこのままという事はないはずです。 しばらくすれば出られると思いますよ」 「じゃ、じゃあ大人しく待つしかありませんね…」 94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 19 25 10.84 ID jmq3g+740 本気すぎる 95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 19 28 52.95 ID 4SyRupAbO 結局三人は山小屋に戻る事にした。 神裂と五和は、建宮と土御門が裏で糸を引いている事は、 上条には黙っている事にした。 パチパチ… 暖炉で燃える、薪特有の乾いた音だけが響いている。 (きっ、気まずい…) 上条は、女の子二人と隔離されたこの状況に緊張していた。 しかしそれ以上に緊張しているのは神裂と五和だった。 (……どうしたものでしょう。する事がありません… こんな時は何を話せばいいのでしょうか) (うぅ~、どうしよう。上条さん、さっきから一言も喋らない。 おっ、おしぼり渡す?ダメ、今は無理!) 「うぉぉぉぉ!!!!!」 突然上条が大声を出した。 二人はビクッと肩を震わせる。 「暗い!!暗いですよ二人共!! 決めました!ご飯にします!ご飯食べれば元気も出るのです!」 97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 19 38 50.00 ID 4SyRupAbO 上条の提案で晩ご飯を作る事になった。 何かしていた方が落ち着くのは3人共同じだ。 「じゃ、じゃあ私が何か作ります。 お二人はお皿なんかを並べて頂けますか?」 五和は食材をどんどん仕込んでいく。 その手際はある意味魔術だと上条は思った。 「ちなみに神裂って料理すんのか?」 皿を並べながら上条は尋ねた。 「たっ、多少は…」 神裂は五和を見ながら答える。さすがにあんなに手際よくは出来ない。 やっぱり男性は料理上手な女性に惹かれるのだろうか… 「得意料理は?」 「たっ……鯛茶漬け…です」 帰ったら料理を勉強しよう、神裂はそう心に決めるのだった。 98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 19 41 37.90 ID jmq3g+740 鯛茶漬けってただの好物じゃねーかww 99 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 19 55 28.16 ID 4SyRupAbO あっという間にテーブルは料理で一杯になった。 和洋折衷、様々な料理が並んでいる。 「すげー!五和ってやっぱり料理は達人だよなー!」 上条はその見事な腕を見て、素直に五和を褒めた。 「そそそそんな、たいした事ありませんから。 おっ、おしぼりどうぞっ!」 五和は上条と神裂におしぼりを渡す。 神裂は借りてきた猫の様に小さくなっていた。 「いただきまーす」 3人の晩ご飯が始まった。 「うっ、うまいっ!!!」 上条は夢中で箸を動かしている。五和はそれが嬉しくて嬉しくて、 自分が食べるのを忘れてしまっている。 「美味しい…」 神裂も素直に感心した。 (このレベルに達するには、私はどれだけ勉強すれば良いでしょうか… そうだ、この機会に上条当麻の好き嫌いも把握しておかなければ…) 100 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 20 04 55.20 ID 4SyRupAbO 「五和、お前絶対いいお嫁さんになれるよ」 ガチャンッ!五和が茶碗を落とす。 神裂の思考は停止する。 「な、なななな何をいっ、言ってるんですか!? そんなお、お、お嫁さんなんて!」 五和は顔を真っ赤にして俯いてしまった。 「で…でも上条さんさえ良ければ…その、お、お嫁さんに…」 五和は何かボソボソと呟いている。 「か、上条当麻!!あなたという人は、何を考えているのです!? お、お嫁さんなんてそんな… 五和も何真に受けているのですっ!」 なぜか神裂の顔も真っ赤だ。 「へ?お、俺なんか変な事言ったか?」 上条当麻はいつだって鈍感なのだ。 102 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 20 07 59.52 ID 4SyRupAbO 「さぁかみやん、お楽しみはこれからにゃー」 土御門は建宮とアイコンタクトを取ると、 不適な笑みを浮かべるのだった。 「は~、お腹一杯!ごちそーさま!」 あの後何故か神裂と五和は食事が終わるまで、 顔を真っ赤にしたまま、黙々と箸を動かしていた。 「じゃ、じゃあ私お片付けしますから」 五和はテーブルの上をテキパキと片付けていく。 最初から最後まで見事な手際だ。 神裂はそんな五和を見て落ち込んでいた。 (五和は私にないものをたくさん持っている) 単純に力なら神裂の方が圧倒的に強い。上条を守ってあげる事だって出来る。 しかし神裂は五和の様に料理が出来るわけでもないし、気が利くわけでもないのだ。 女の子としては五和の方が圧倒的に強いのかもしれない。 【強くなりたい】その思いは今も変わらないが、 神裂の心は言い知れぬ不安で溢れていた。 103 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 20 09 37.37 ID 4SyRupAbO テキパキと洗い物をしながら五和は思い出していた。 (神裂さんはやっぱりすごいな) 山小屋を結界が突然取り囲んだ時、五和は体がまったく動かなかった。 頭が状況についていかなかったのだ。しかし神裂は違った。 何が起きているのか頭で理解する前に、 一瞬で上条と五和を守ろうと動いたのだ。 五和は以前上条と共にアックアと戦った際 心に決めた事がある。 【上条当麻を守る為なら死んでもいい】 「はぁ~、私もまだまだです」 五和は深い溜め息を吐くのだった。 104 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 20 13 12.49 ID 4SyRupAbO そんな二人の思いなど知らず、上条は窓の外を眺めていた。 すっかり日も落ちて、辺りを暗闇が包んでいた。 見えるのは結界のかすかなゆらめきだけだ。 「あー、帰ったらインデックスになんて説明すっかなー」 インデックスは上条が危険な場所に身を置く事を極端に嫌う。 今日は緊急事態という事でインデックスを待たせているのだ。 心配しているのは目に見えている。 「はぁ~…まぁ噛みつかれるくらいは覚悟しとかないとな」 105 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 20 14 49.89 ID 4SyRupAbO 神裂はソワソワしていた。 この小屋には小さいが簡単なシャワールームがついている。 どうしてもシャワーを浴びたい。 結界を破ろうと四苦八苦した時に、 神裂はうっすら汗をかいてしまったのだ。 「か、上条当麻。私は湯浴み…いえ、 シャワーを浴びたいと思うのですが」 「は、はい?」 上条の体温が2度は上がる。 「で、ですからシャワーです。」 神裂の頬はすでに湯上がりのように赤い。 「あ!シャワールームの方は見ないでって事ですね」 五和は神裂に助け舟を出す 「五和。あなたも一緒に入るのです」 「えぇっ?一緒にですか?」 神裂は上条と五和を二人っきりにするのは何となく嫌なのだ。 「では五和、行きますよ」 106 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 20 16 37.41 ID 4SyRupAbO 五和は拒否する間もなく、神裂に手を引かれていった。 「上条さんはジェントルマン。決して振り返りません!」 上条は言い付け通りシャワールームに背を向ける。 振り返りたい気持ちもあるのだが、 今シャワールームにいるのは聖人だ。 命を懸けてまで覗く気はない。 シャワールームの前は狭い脱衣場になっていた。 神裂はさっさと服を脱いでいくが、 五和はなかなか脱げないでいた。 なんせ壁一枚隔てて上条当麻がいるのだ。 「どうしたのです?早く入ってしまいましょう」 「はっ、はい!」 シャワールームに入った五和は、神裂の体をまじまじと見る。 神裂の体は息を呑むほど美しかった。 出るところは出ているし、 引き締まるべきところは引き締まっている。 (それに比べ私は…) 107 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 20 17 23.24 ID 4SyRupAbO 五和はよく【隠れ巨乳】とからかわれる。 しかし神裂程のスタイルではないのだ。 「で…でも私だって……【脱いだら凄い】は男の夢だって… …みんな言ってたし…きっと上条さんだって…」 「何をブツブツ言っているのですか?五和」 「わわわわわ!何でも!何でもありません!!」 五和は消えてしまいたい程、恥ずかしかった。 108 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 20 18 51.13 ID 4SyRupAbO 「ターゲットの入浴を確認」 建宮のトランシーバーから女性の声がした。 「来たのよな」 「あぁ、来たにゃー」 建宮と土御門はこの時を待っていた。 神裂と五和がシャワーを浴びるこの時を。 「ミッションスタートだぜぃ」 「よし、対馬!やるのよな!」 建宮はトランシーバーに命令を出す。 対馬と呼ばれたふわふわ金髪の女性は、 脱衣場の床下で命令を受け取った。 ここに潜んでおくのは土御門や建宮でも良かったのだが、 対馬がそれを許さなかった。 「はぁ~、ごめん五和!申し訳ありませんプリエステス!!」 対馬は床下から出ると、二人の下着以外全て回収して また床下へ姿を消した。 109 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 20 21 02.13 ID 4SyRupAbO 「うそ………………」 神裂と五和は脱衣場で呆然と立ち尽くしていた。 「こ、これって…マズいですよね?」 確かにあったはずの衣服がないのだ。 何故か下着だけが残されている。 110 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 20 21 51.86 ID 4SyRupAbO 「普通逆だと思うんですけど…」 五和の的外れな突っ込みは、神裂の耳には届いていなかった。 「ど、どうしましょう、五和…」 「し、下着姿では出れませんよね…」 「……………………」 「あ!!!!!!!!!!」 神裂と五和は同時に何かに思い当たった。 そう、建宮と土御門の狙いはこれだったのだ。 カバンに入っていたコスチューム…。 「くっ、不覚です。まさかここまでするとは!」 「で、でもこんな格好じゃ出れませんよ!」 「し、仕方ありません…」 そう、神裂と五和は見事に罠にハマったのだった。 112 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 20 23 28.04 ID 4SyRupAbO 「かっ、上条当麻!!」 シャワールームから声を掛けられ、上条は一気に緊張する。 「か、神裂さん?なっ、なんでしょう?」 「そ、そこにある私と五和のカバンを取って頂けますか?」 着替えが入ってんのか?上条は深く考えずにカバンを手に取ると、 目を堅く閉じ、 手探りでシャワールームに近づく。 そしてシャワールームから伸びている神裂の少し火照った手にカバンを渡した。 「はぁ~、ビックリした…でもなんかいい匂いしたな~」 上条はまたシャワールームに背を向け、一人悶々とするのであった。 113 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 20 24 51.36 ID jmq3g+740 不幸な上条さんが何事もなく鞄渡せる訳がない 絶対足でも滑らせて脱衣所に突っ込む 114 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 20 24 58.82 ID 4SyRupAbO 「…五和……先に」 「いっ、イヤです!無理です!」 二人はもう10分近く押し問答をしている。 仕方なく着てはみたものの、 あまりに布面積の少ないメイド服で上条の前に出るのは 並大抵の勇気ではない。 これなら【神の右席】と戦う方がどれだけ楽か。 「…わ、私は天草式十字凄教の女教皇です」 「あー!!!ず、ずるいですよ!卑怯です!横暴です!」 神裂の肩を揺さぶって、五和は抗議する。 しかし次の瞬間、五和は足がもつれてバランスを崩してしまった。 「あ…」 115 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 20 26 07.35 ID 4SyRupAbO バターンッ!!! 大きな物音に上条はつい振り返ってしまった。 「へ?」 そこには神裂の上に馬乗りになった五和がいた。 しかし上条が驚いたのはそこじゃない、二人の格好だ。 神裂は背中に小さな羽の付いたメイド服だ。 ご丁寧に頭に輪っかまで付けている。 確か以前病室で見た記憶がある。 五和は蝶々のような羽の付いたメイド服だ。 精霊をモチーフにしているのだろう。 二人に共通しているのはその布面積の少なさだ。 馬乗りの五和は胸元が、 倒れている神裂は太ももが露わになっていた。 「な………なんですかその格好はぁぁ!!!!!!」 「い、いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」 上条が目に焼き付ける前に、二人はシャワールームに逃げ込んでしまった。 116 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 20 28 07.46 ID 4SyRupAbO 「うっ…うぅ…穴があったら入りたいです…」 五和は恥ずかしさのあまりメソメソしている。 「い、五和…もう覚悟を決めるしかありませんよ」 神裂だって顔から火が出る程恥ずかしい。 「うぅ…わ、私は神裂さんみたいにノリノリじゃないんです!」 「の、ノリノリ!?」 「うっうぅ…だってそうじゃないですか!服は仕方ないですけど 、 頭の輪っかは神裂さんの意志で付けてるじゃないですか!」 「うっ…こ、これは……」 神裂はいつだって律儀なのである。 「と、とにかく!私は行きますから! 五和もいつまでもメソメソしてないで早く出てくるのですよ!」 ペシッと天使の輪っかを床に投げ捨てると、 神裂はシャワールームから飛び出すのだった。 117 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 20 29 26.22 ID 4SyRupAbO 「か、上条当麻。あまりジロジロ見ないで頂けますか…」 神裂はスカートの裾を下に引っ張りながら、モジモジしている。 「ふ、ふぁいっ!!」 上条は見ているつもりはないのだが、 つい目が行ってしまう。 「い、いやー、しかし災難だったな!アハハハハ…」 なんとか空気を変えようとするが、 空回りしてしまう。 「あれ、そーいえば五和は?」 神裂はスカートから手は離さずに、 目でシャワールームを指す。 上条がシャワールームに目をやると、 五和が顔だけ出して覗いていた。 「そのー、いつまでそんなとこにいるんだ?」 上条が問いかけると、ヒュッと頭が引っ込んでしまった。 119 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 20 31 43.51 ID 4SyRupAbO (大丈夫!大丈夫よ五和!! 恥ずかしくなんかない!!!) 五和は何度も自分に言い聞かせた。 シャワールームにうずくまって、もう20分は経つ。 (覚悟を決めるのよ五和!!) 五和は頬をパンと叩くと立ち上がる。 「やぁぁぁぁぁ!!!」 シャワールームから飛び出て来た五和に、 上条と神裂は心臓が飛び出しそうになった。 「も、もうちょっと静かに出て来れないのですか、五和」 「す、すいません…つい」 120 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 20 34 26.81 ID 4SyRupAbO 二人はモジモジとしながらただ黙って俯いている。 その姿勢のまますでに10分が過ぎている。 神裂も五和もさっきから椅子に座ろうとしないのだ。 「ま、まぁ俺もあんまり見ないようにするからさ、 二人共とにかく座れよ」 「…け、結構です」 「私も…」 スカートが短過ぎて、座れば色々見えてしまいそうなのだ。 上条はそんな事気づいていないが。 121 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 20 42 04.22 ID 4SyRupAbO 「よし!じゃあもう寝よう!!! 電気消しちまえば恥ずかしくないだろ?」 「え?そ、それはそうですけど…」 「じ、じゃあ俺はバスルームで寝るから!!おやすみっ!!」 気まずい空気に耐えられなくなった上条は、 シャワールームに入りドアを閉める。 (だ、だめだ。あんなの直視できねー!!) 余談だが、上条当麻は普段バスルームで寝ている。 インデックスにベッドを占拠され、 一緒に寝るのもマズい気がするのでバスルームに鍵を掛け、 寝袋で寝ているのだ。 なのでバスルームで寝るのは得意だ。 122 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 20 44 39.16 ID 4SyRupAbO 「上条さん寒くありませんかね…」 電気の消えた部屋で神裂と五和は横になっていた。 布団は用意されてないが、 二人でくっついていれば寒くはない。 「あれは…彼の優しさです。 普段はふざけているようですが、 あれで優しいとこもあるんですよ」 「ですね。あの、一つ…聞いていいですか?」 「何ですか?」 「上条さんの事…どう思ってるんですか?」 何だか友達の家に泊まりに来た中学生みたいだ。 神裂はそう思った。 123 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 20 45 26.68 ID 4SyRupAbO 「それは……秘密です。五和はどうなのですか?」 「ふふ……秘密です…あっ、でも」 「でも何ですか?」 「私負けませんから!」 神裂は五和の女の子らしさを、五和は神裂の強さを、 お互い羨ましいと思った。 しかし今の二人は不思議とそんな気持ちは消えていた。 お互い性格も得意な事も違う。 しかし誰かを想う気持ちは何も違わないのだ。 だから無いものねだりはやめにしよう。 自分は自分にしかなれないんだ。 同じ人を想う者同士、二人はそう思えるようになっていた。 124 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 20 47 00.32 ID 4SyRupAbO 翌日、上条は息苦しさに目が覚めた。 目を閉じてても微かに光を感じる。 どうやら朝になっているようだ。 (ん…なんだ…なんか息が…) (なっ、なんですかこれはぁぁぁ!!!!) 上条の目の前に、神裂の胸元があった。 神裂は抱き枕のように上条にくっついている。 後ろからは五和が抱きついている。 (よし、ちょっと状況を整理しよう。 上条さんは決して過ちは犯していません!) とにかくなんとか切り抜けたいのだが、 二人にしっかり抱き付かれて身動きがとれない。 (か、神裂って意外と寝顔可愛いな… いい匂いするし…ってそんな事考えてる場合じゃねぇ!) 126 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 20 49 38.81 ID 4SyRupAbO (よし、上条当麻脱出大作戦だ!) 上条は少しづつ体をずらし、二人の間から抜け出そうと試みる。 「んっ…ん………」 上条が動く度に神裂から吐息が漏れ、 五和はさらに強く抱き付いてくる。 (だ…だめだ……) それから1時間、二人が起きるまで 上条はひたすら耐えた。 これがオリンピックの競技なら 間違いなく金メダルだ。 二人は上条が寒くないように、 上条が寝静まってからこっそり来たのだが、 もちろ上条はそんな事は知らないのだ。 134 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 21 44 53.32 ID 4SyRupAbO 朝には結果も消えており、 二人の服も綺麗にクリーニングされて戻っていた。 二人は抱き付いた事を必死に謝ってくれたが、 上条は悪い気はしなかったので気にするなとだけ言った。 上条だけは建宮たちの悪巧みだとは気付いていなかったが、 神裂と五和は黙っている事にした。 悪巧みに腹は立っていたが、 上条と過ごせた事には少し感謝していたのだ。 「ではこの道を下れば街に出ますので。」 「あれ、お前らは一緒に帰らないのか?」 「私達はまだ用事がありますので。ね、五和」 「えぇ。上条さんは気をつけて帰って下さいね」 「それから、ちょっと遅くなりましたけど」 二人は声を揃えて言った。 「「明けましておめでとうございます!」」 135 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 21 46 06.89 ID 4SyRupAbO 上条を見送った二人の笑顔が邪悪なものに変わる。 「さぁ…いきましょうか五和…」 「ふふ…そうですね………」 物陰で今回の首謀者は反省会を開いている。 「いやー、甘酸っぱかったにゃー」 「なかなか良いものみせてもらったのよ」 「写真を撮っておけば良かったにゃー。あれは高く売れるぜぃ」 「しかし二人もまだまだ子供なのよ。押しが足りないというか…」 「まぁ何にせよ最高に楽しませてもらったにゃー」 「それは良かったですね」 「ホント良かったにゃー…………ってあれ?」 136 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/25(金) 21 48 11.90 ID 4SyRupAbO 二人が振り返ると鬼の形相をした神裂と五和が立っていた。 神裂は七天七刀を、五和はフリウリスピアをそれぞれ手に持っている。 「ホント良かったですね…」 「………ちょ…ねーちん」 「その腐った根性、新年早々叩き直してもらえるのですから」 「…あの…五和さん?」 二人は声を揃える。 「「いっぺん…死ねぇぇぇぇ!!!!!!!!」」 一応「完」 戻る 次へ
https://w.atwiki.jp/ws_wiki/pages/3885.html
autolink() ID/W13-T12 ID/W13-087 カード名:元天草式十字凄教 神裂 カテゴリ:キャラクター 色:青 レベル:2 コスト:1 トリガー:1 パワー:8000 ソウル:1 特徴:《魔法》?・《武器》? 【永】相手のターン中、このカードのパワーを+1000。 TD:余計なお世話でしたでしょうか? U:彼らがいるなら、 私がいなくても、天草式は正しき道を進めるでしょう レアリティ:TD U illust. 11/01/27 今日のカード。 文芸部の有希の互換。 今まで「神裂」の名を持つカードはコストが重たいものばかりだったが、このカードは1コストと割安。 天草式十字凄教 五和や建宮 斎字と合わせて、堅い守りを作りたい。
https://w.atwiki.jp/toaruindexpsp/pages/31.html
誤植 後方のアックアのコマンド表記 ゲーム中の後方のアックアのコマンド表内、「高速斬り払い」の派生技「突き」のコマンド表記が「高速切り払い中に□」となっているが、正しくは「高速斬り払い中に↑□」。 設定ミス? 魔滅の声のセリフ 五和と風斬氷華に対するセリフが逆? 五和→「周囲の意見に流されてばっかりじゃだめなんだよ!」 風斬→「最近とうまに接する態度があやしいかも!」 ↑ミスではない!? 上記“魔滅の声”セリフ参照 五和→天草式教皇代理:建宮 斎字の“大聖霊チラメイド”等の恋愛アドバイスに心揺らぐ五和に対してのセリフ。 ↑(詳しくは小説版を読んでみて。) 風斬→インデックスと上条当麻、2人は『大事な友達』なのだけど、もしかして・・・を口にしたセリフ。 パートナー黒子で理想完遂「最終信号」 パートナーを黒子にして理想完遂を最終信号にして 条件を達成しても発動しない。 公式よりアナウンスあり http //d-game.dengeki.com/toaru/news/?p=182
https://w.atwiki.jp/seisoku-index/pages/336.html
そこはどこまでも深い青色の世界だった 青と言うよりは、ネイビーやコバルトと言った方が正確かもしれない 空は星が一つも無く、月だけが唯一その暗く青い空を照らしている だが不思議な事に、その月は赤く輝いている 下はどこまでも水が広がっている 前も後ろも右も左も、どこを見渡しても水平線ばかり ここは海なのか? しかし、水は自分のふくらはぎの辺りまでしか浸かっていない 海にしては浅すぎる 浅いとは思うのだが、底は全く見えない それにしても、随分と殺風景だ 静かというよりは、ほとんど無音に近い ここは天国なのか地獄なのか? そもそも自分は誰なのか? 名前すらも思い出せない 存在してるのかしていないのかも曖昧だ 自分は何者で、この世界で何をすれば良いのか…… そんな事を考えていると、突然目の前に何者かが現れた 修道服を着た金髪の少女 長い前髪から僅かに見える、こちらを覗く金色の瞳 それは本来の月の光にも似ている 自分はこの少女を良く知っている気がする しかしどこか、ほんの些細な部分が違う気がする ?「nips天ergn世sigd」 何を言ってるのか理解できない ?「sbrg未snmt死phish失exdrspi」 なるほどわからん ?「nth戻ggbvrfl」 だからなんて言ってるのか分からないってば サーシャ「日本語しゃべれよ日本語ォォオオオ!!!(がばっ!)まあ私はロシア人ですけど」 五和「サーシャ…ちゃん……?」 サーシャ「五和…?」 五和「サーシャちゃああああん!!!」 サーシャ「むぎゅっ!なぜか目が覚めたらいつものホールド」 五和「ぐすっ、本当に…よかった…良かったですっ!!!」 サーシャ「第一の解答ですが、どうやらここが本当の死後の世界ですか。望み通り、また会えましたね。 いや、会えたという事は、もしや五和は……」 五和「グスッ、何をいってるんですか?サーシャちゃんは助かったんですよ?」 サーシャ「助かった?……第二の解答ですが、たしか腹部に…」 確認してみたら、確かに傷はまだ残っていた 五和「どうやら、サーシャちゃんは回復術式と相性が良かったみたいです。」 サーシャ「つまり、運が良かったという事ですか。」 それとも、先程見た夢のおかげか? 水を司る、青を象徴とする力 赤い月 サーシャの目の前に現れた謎の人物… サーシャ「第三の解答ですが五和、顔が酷い事になってますよ。まあそれでも可愛いと思いますが。」 五和「ばかぁ!誰のせいだと思ってるんですか!(ぎゅっ)」 サーシャ「五和…そんなに強く抱きしめられると傷口が……」 どうやら五和の話によると、サーシャはあの後寮に運ばれて回復術式による治療を受けたらしい しかも驚くべき事に、短時間で息を吹き返し、傷口も殆ど塞がったとか 誰もがまさに神の奇跡だと喜んだという その頃、寮の外では アンジェレネ「みなさーん!シスターサーシャが目を覚ましましたよー!」 アニェーゼ「本当ですか!」 ルチア「良かった…本当に…」 アンジェレネもアニェーゼもルチアもみんな目が赤くなっている それはけして寝不足で充血してるわけではない アニェーゼ「ぶっちゃけあの傷を見た時はもうダメかと思いましたけど、奇跡ってのはやっぱりあるんですね。」 ルチア「神様が敬虔な教徒であるサーシャに加護を与えて下さったのです。 ああ、今日ほど十字教を信仰して良かったと思う日はありません」 ?「ほんと良かったわ。死んだら私の首も一緒に飛ぶところだったのよ。」 全員「!?」 その声を聞いた瞬間に、一気にその場が和やかなムードから張り詰めた空気に変った アニェーゼ「やはり来ましたか。」 アニェーゼは蓮の杖を構える ヴェロニカ「早速ですが、サーシャ・クロイツェフの引き渡しを要求します。彼女は国際指名手配犯。 まさか神を信ずるあなた方が、罪人を匿ったりはしませんよね?」 アニェーゼ「あんたら如きが神を語るなんて、十字教文化も舐められたもんですね。 罪人は見捨てるものじゃない、教えを諭し、正しい道を歩ませるものなんじゃねえですか?」 ヴェロニカ「なら、その役割は我々に引き受けさせてもらいましょうか」 アニェーゼ「いいえ、あなた方も我々が正しい道へと導かねばならない対象ですよ? 安心してください。あなた方みたいなクソッタレの猿頭にも理解できる様に分かりやすく教えてあげますから。 少々痛い思いをするかもしれませんけどね。」 ヴェロニカ「どうあっても我々殲滅白書と対峙すると?」 アニェーゼ「いちいち言わないと分からねえんですか?」 その言葉を皮切りに、前方の闇から隊列を成した足音が響いてくる 現れたのは、ヴェロニカを中心とした殲滅白書のシスター達だ 先頭のヴェロニカは白い修道服を着ており、赤い修道服で統一された他のシスター達の中で浮いていた ヴェロニカの修道服はまっさらな雪の様に白く、その上から体を包む様に羽織っている外套も白い。そして、その外套を胸の当たりで留めている金色の装飾物がある 双頭の鷲だ かつては神聖ローマ帝国を統べるハプスブルク家の紋章であり、イヴァン三世が第三のローマを称し、 ロシアの主権を主張すると共にロシアで採用された守護聖獣 現在もロシアの象徴として国旗に描かれている ヴェロニカ「宣戦布告と見なしても良いですね?」 アニェーゼ「さっさとかかってきやがれってんですよォ!!!」 必要悪の教会と殲滅白書の戦争がここに受理された ヴェロニカ「オルガ!ローザ!それぞれ部隊を左右に展開!アーニャは中心を固めなさい!術式が完成するまで持ちこたえるのよ!」 アニェーゼ「ルチア!ローザの方をやっちゃってください!残りは部隊を二つに分けて、 一方はあの頭悪そうなデカ女を、もう片方は私と一緒にあの白い猿をぶっ潰しますよ!」 アニェーゼ部隊のメンバーは総勢252人 それに対してヴェロニカ部隊のメンバーはその四分の一にも満たない 数ではアニェーゼ部隊が圧倒的に多い オルガ「へっへっへっ、やっと自由にうごけますねー♪」 彼女は術式強化された鉄パイプの様な長い棒を振り回し、アニェーゼ部隊のシスター達を薙ぎ払っていく もしも修道服に防御術式が無ければ大変な事になっていただろう ローザ「русалка、その名は美しき水の精霊、惑わし人を溺れさせる水の精霊、水は恵みであり脅威となる」 ローザの詠唱と同時に、彼女の周囲に水の塊が集まる。 その水の塊が、まるで散弾銃の様にシスター達に襲いかかった ルチア「罪の無いものに罰は下らぬ、罪のある者にこそ罰は下る!」 ルチアの抱えていた車輪が爆発し、こちらも散弾銃の様に殲滅白書に襲いかかる 木片と水の塊は撃ち合い、相殺し合う ローゼ「やりますね。聖カテリナの車輪伝説ですか?」 ルチア「あなたのは水の精霊ルサールカですね。水難事故の原因とされ恐れられていたとか。 水属性の精霊の加護を基に、水の脅威の面を術式として構築したと言ったところでしょうか?」 ローザ「なるほど、ロシアの民間伝承に関する知識があるみたいですね。なら、これも分かりますか?」 ローザの周りに集まっていた水の塊が、突然光り出し、バチバチとした音が鳴り響く 同時に水の塊は一匹の蛇の形になり、ルチアに襲いかかる ルチア「これはッ!」 電気を帯びた水の蛇がルチアに絡みつき、縛り上げる ローザ「ツモクという稲光を起こす蛇を模したものです。」 ギリギリとルチアの体を縛り付ける水の蛇 同時、体中から放電する ルチア「ぐっ…あああッ!」 ローザ「良い眺めですね。防護術式のかけられた修道服が無ければ黒こげになっていたでしょうに。」 ルチア「こんな……ものッ!」 ルチアは縛られながらも右手を動かし、周囲に散らばった車輪の木片を自分の体を締め付ける水の蛇に向けて集める 大量の木片の襲撃を食らった水の蛇はバラバラの水の塊となり飛散した ルチア「大した事ありませんね!!」 ローザ「なッ!」 ルチアは鋭い目つきでローザを睨む ルチアの周囲には、木片の集合体が一定の軌道を描きながらグルグルと渦巻いている。 まるで、木でできた龍が彼女の周りを飛んでいる様だ。 ルチアが右手を振ると、木片はまるで生き物の様にローザに襲いかかる ローザ「ルサールカ!」 自分の周りに水の塊を集め、木片の襲撃を防ごうとする。だが ローザ「…ッ…防ぎきれないっ!」 幾つかの木片は防ぎきれず、ローザの体に刺さる ローザ「うっ…!なんてこと……」 ルチア「まだまだこの程度では終わりませんよ。」 シスターモブ「シスタールチア、いつの間にそんな技を使えるようになったのですか?」 ルチア「二次創作では全ての設定はそげぶされるのです!」 アニェーゼvsアーニャ アニェーゼ「私の推測ですが、たぶんあなたが部隊で一番強いんじゃないですか?」 アーニャ「がおー」(ゴオッ!) ふざけた言葉を吐いている様に思えるが、同時に灼熱の炎が彼女の口から放たれるからシャレにならない アニェーゼはそれを横に飛んで回避する。 アーニャの舌には魔法陣が刻まれている。 それだけではない。背中にも二カ所に対比する様な形で魔法陣が刻まれており、そこから炎が噴き出している。 まるで、一対の炎の翼の様だ。 彼女の魔術は、スラヴ神話のスヴァローグという炎の蛇が元になっている。 スヴァローグはスラヴ神話の太陽神であり、炎の翼を持つドラゴンの姿で描かれているのだが、 東欧に伝わるにつれ、悪竜とされたり守護竜とされたりと色々と形が変って来た。 ちなみに聖ダミアヌス、聖ミカエルなどはこのスヴァローグと同一視されており、復興異教主義においては最高神に列せられている。 まあ何が言いたいかと言うと、非常に格式の高い神様であり、そんな神様を模した魔術を使えるアーニャは凄いという事だ 舌に一つ、背中に二つ、そして右手に一つの合計四つの魔法陣が体に刻まれているアーニャ 魔道書の原典の恐ろしさを知る者なら分かるだろうが、体に魔術のノウハウである魔法陣を刻む事は、 自分自身が原典と同じレベルの負荷を背負う事と同じであり、非常に危険な事である。 それを平気な顔して耐えているところがアーニャの天才と呼ばれる由縁でもあるのだ。 インデックス級の彼女の食欲は、もしかしたらその反動なのかもしれない アーニャ「もえろー!もっと熱くなれよ!!」 背中の炎の翼が無茶苦茶に暴れまくる アニェーゼ「あちち…これじゃ近づけませんね。こんな化け物を中心に置いて白猿を守らせているという事は、 やはりあの白猿が部隊の要の様ですね。」 アーニャ「そ、そ、そ、それはちがうよ?」 アニェーゼ「無茶苦茶動揺してんじゃねえですか」 アーニャ「いずれにせよあなたはヴェロニカには近づけない」 アニェーゼ「随分と舐められたもんですね。」 アニェーゼは再び蓮の杖を構え、詠唱する アニェーゼ「万物照応。五大の元素の元の第五。平和と秩序の象徴『司教杖』を展開。 偶像の一。神の子と十字架の法則に従い、異なる物と異なる者を接続せよ。」 詠唱すると同時に、杖に衝撃を与える アーニャ「あうっ!」 見えない力がアーニャを吹き飛ばした アニェーゼ「万物全ての属性を持つエーテルを操る私の杖と、強大な炎を操るあなたの術式、はたしてどっちが強いんでしょうねえ。」 アーニャ「ぐぬぬ。」 アニェーゼ「さて、さっさとそこをどいてもらいましょうか?」 オルガ「アッハッハッハ!散れ―飛んでけー!」 シスターA「なんなの?あの孫悟空みたいなのは!」 シスターB「だめ!束になっても抑えられない!」 オルガ「はいそこー!お喋りしてる余裕はないよー!」 シスターB「きゃっ!」 一人のシスターの頭上に鉄の棒を振り下ろすオルガ ガキッ! シスターB「ひっ!……あれ?」 サーシャ「随分と好き勝手しくれましたね。」 いつのまにか、オルガの一撃を片手に握られたバールで受け止めるサーシャがそこに居た サーシャ「第一の解答ですが、もう大丈夫ですよ」 シスターB「サーシャちゃん/////」 オルガ「サーシャちゃん、もう動いて大丈夫なのー?」 サーシャ「ええ、第二の解答ですが、おかげさまでね!!」 サーシャはもう片方の手に金槌を握り、横からオルガの体を殴りつけて吹っ飛ばした オルガ「ゴッハァアッ!!」 そして、オルガが吹き飛んでいく先には、五和が槍を構えている 五和「これはさっきのお返しですっ!!」 まるでバッティングの要領でオルガに槍を打ち付ける オルガ「なんですかそりゃあー!!へぶっ!!」 さらにそのまま反対方向へ吹っ飛んでいくオルガ それを見て動揺する殲滅白書のシスター達 戦局はイギリス清教側に有利な展開になっていた ヴェロニカ「むむむ、不味いわね。あと少しで完成するんだけど。」 ?「何だ貴様ら!」 ?「きゃあッ!」 後ろが何やら騒がしい 建宮「やれやれ、後方の守りは薄いみたいなのよ」 ヴェロニカ「おや、天草式ですか?」 どうやら先程の声は、ヴェロニカの後ろを守らせていたシスター達の悲鳴だった様だ 建宮「さて、指揮官であるお前さんを倒せば、全て終わるってわけだが。」 ヴェロニカ「あ、そう。」 建宮「ここで降参するってんなら命まではとらんのよ。」 ヴェロニカ「そう言えば、私の部下が五和という少女を痛めつけてしまったわね。 我慢しないで一発くらい殴ったらどう?降参する気なんてどうせ無いし。」 建宮「そうかい。じゃあ少し痛い目にあってもらうのよ!」 建宮はフランベルジュを構え、ヴェロニカに斬りかかった しかし殺す]つもりは無く、あくまでも剣の平らな部分を打ち付ける バギン! 建宮「なにっ!!」 なぜかヴェロニカの修道服に剣を打ち付けると同時に、剣の方が真っ二つに折れてしまった ヴェロニカ「守護聖獣の加護を受けた法衣。名前はそのまんま”双頭の鷲”よ。 今回の任務のために上が用意してくれたの。羨ましい?」 ヴェロニカ「イギリス清教では10万3000冊の魔道図書館を守るために、”歩く協会”っていう 最高の防御力を誇る修道服を着せてるみたいだけど、この双頭の鷲はそれに勝るとも劣らない防御力があるのよ。」 建宮「クソッタレ!」 ヴェロニカ「それと、あなた達が後方から攻めてくる事なんて最初から分かってたわ。 守りの薄いとこを攻めるのは戦いの基本でしょ?だけど、あえてそれを罠にするのも戦術の基本なのよ。」 牛深「教皇代理!早く逃げて下さい!その女の周辺に、防衛術式が展開されてます」 ヴェロニカ「遅いわよ。双頭の鷲は絶対的な権力と支配の象徴。楯つく者を全て駆逐する。」 突然ヴェロニカの周りに風が巻き起こり、強風となって建宮を襲う 建宮「ぐあっ!」 強風だけではない、それに加えてかまいたちの様なものも襲いかかる。まるで、巨大な鷲の鉤爪に裂かれた様だ。 ヴェロニカの前から吹き飛ばされた建宮は、体中に切り傷を負ってボロボロになっていた ヴェロニカ「絶対的権力の象徴である双頭の鷲を着た私に攻撃することは、絶対的権力者に反抗する事と同じ。 あなたが私に攻撃すれば、それは権力者への反逆に対する罪となってあなた自身に返っていくのよ。 あなた達、いつまで寝てるの?術式が完成したわよ?」 その言葉を聞き、先程建宮達に倒されたはずのシスター達がむくりと起き上がる ヴェロニカ「遥か昔、キエフを守護する英雄に希望の光を与えた三人の老賢者。 歩けない者には足を、目の見えぬ者には光を、耳の聞こえぬ者には歌を、そして、弱きものには全てを覆す力を」 ヴェロニカが詠唱を始めたその瞬間から、今まで押されていた殲滅白書のシスター達の目の色が変った サーシャ「第一の解答ですが、遅かった…非常に不味いです…」 オルガ「あはっ!すごい!力が湧いてくるー!!」 オルガは鉄の棒をサーシャに打ち付けた 先程は片手で防げた筈の一撃 しかし、バールで受け止めたはずの一撃は、威力を殺せずにサーシャの体ごと吹き飛ばした。まるで交通安全に使われる人形の様だ。 五和「えっ?これは一体どういう事…」 オルガ「こういうことー♪」 速い、いつの間にか目の前に現れて、五和もサーシャ同様に薙ぎ払われた おかしい、明らかにスピードもパワーも先程までとは格段に違う ルチア「何ですか…これは……?」 ルチアの前には、うわばみと言えるくらの巨大な水の蛇が立ち塞がっている。 こちらも今までのローザでは考えられないくらいの力だ。 ローザ「どうやら、ムウロメツの薬が完成したようですね。今までのお返しです。」 巨大な水の蛇は、目にもとまらぬ速さでその巨大な尻尾でルチアを弾き飛ばした アーニャ「……」 アニェーゼ「……」 アニェーゼの額に嫌な汗が浮かぶ ヴェロニカ部隊最強の少女は、さらに手がつけられない状態になっている 巨大なニ対の炎の翼 手にはこれまた巨大な炎の剣 見た目だけでなく、その威力も格段に上がっている。 イメージで言うと、機動力を得たイノケンティウスだ。 アニェーゼは蓮の杖にナイフで傷を付け、目に見えないの力をぶつけようとするが、 アーニャは巨大な炎剣を一振りしてその力ごとアニェーゼを吹き飛ばした アニェーゼ「ぐっ!…やばいですね…こんな時に幻想殺しが居てくれたら…」 サーシャ「本当は、こうなる前に終わらせたかったのですが……」 五和「サーシャちゃん、これは何なんですか?なぜみんな先程とは比べ物にならないくらいに強くなってるのですか!?」 サーシャ「第一の解答ですが、これがヴェロニカの魔術の真髄です。 自分が味方であると認識した者の身体能力と魔翌力を爆発的に高めるドーピングの様な魔術。 彼女はこれをムウロメツの薬と呼んでいます。」 五和「ムウロメツの薬……ってなんですか?」 サーシャ「イリヤ・ムウロメツという英雄伝を知っていますか?ロシアでは有名な民話です。 とある子宝に恵まれない老夫婦の間に一人の子供が生まれたのですが、その子供は生まれつき足が悪く、歩けなかったのです。 しかし三十歳になったある日、三人の老賢者が彼の前に現れて、彼に薬を与えたのです。すると、歩けなかったはずの彼は 超人的な力を手に入れ、その後キエフを守るために異民族と戦う英雄になったという話なのですが…」 五和「要するに、その伝承を元に組み上げた身体魔翌力強化の術式というわけですか。対策は何か無いのですか?」 サーシャ「第二の解答ですが、この術式はヴェロニカを中心に展開されています。 そしてヴェロニカの魔翌力が途切れると、自動的にムロウメツの薬による効果は消滅します。」 五和「つまり、ヴェロニカを倒せばどうにかなるのですね!」 サーシャ「第三の解答ですが、それが出来たら苦労しません。 まず、彼女の元に辿り着くためにはアーニャを倒さねばなりません。彼女も非常に強いです。 そして、ヴェロニカの着ている真っ白な修道服は、おそらく双頭の鷲というものでしょう。 あれは、歩く協会に匹敵するくらいに強力な防護服です。その上、攻撃してきた者を自動的に強力な魔術で排除する機能も付いています。」 五和「何ですかそのチート性能、もはやどうにもならないじゃないですか。」 サーシャ「第三の解答ですが五和、オルソラのもとに行って下さい。彼女なら、何か対策を打てるかもしれません」 五和「でも!」 五和の脳裏に、先程の死にかけたサーシャの姿が浮かぶ サーシャ「第四の解答ですが、私は大丈夫です。もうあなたを悲しませたりはしません。」 五和「絶対……絶対ですよ!約束してください!」 サーシャ「約束します。父と子と精霊の御名において」 五和はサーシャの元を離れ、寮の内部へ向かう オルガ「あはっ♪みーつけたー!」 五和「しまっ」 五和の姿を確認して襲いかかるオルガ だが、攻撃が届く前にサーシャがオルガに横からとび蹴りを食らわせた サーシャ「五和!早く!」 オルガ「ぜーんぜん効いてないよ?」 その言葉の通り、オルガには全くダメージは無かった オルガ「ねえサーシャちゃん、ヴェロニカ部隊に来ない?そうしたら、ここでボコボコに痛めつけるのは勘弁してあげるよー?」 サーシャ「第一の解答ですが、あなた方の仲間になるくらいなら恥ずかしい服を着てワシリーサの下で働いたほうがマシです!」 (ガギッ!) 鉄の棒とバールがぶつかり合い、つばぜり合いになる ガリガリと鉄と鉄が擦れ合い、削れる音がする オルガ「じゃあアタシの物になりなよ。アタシの実家は金持ちだからさー、何でも好きなもの買って上げられるよー?」 サーシャ「口説くならもう少しマシな言葉を聞きたいものです。そんなんじゃ虫けら一匹落とせやしませんよ!」 オルガ「もう、つれないんだから。でもそんなところが可愛いよねぇッ!!!」 鉄の棒を薙ぎ払い、サーシャの体が簡単に弾かれる サーシャ「くっ…五和…ッ!」 五和「オルソラさん!」 オルソラ「五和さん!御無事でございましたか!」 オルソラは非戦闘員のため、シェリーと共に寮内で殲滅白書に関する様々なデータを集めていた シェリー「やれやれ、こんな時に神裂でも居りゃ良いんだが。」 五和「残念ながら、女教皇様は別の任務についています。」 シェリー「在らざるモノか。どうやらここ最近の在らざるモノの事件は、あの殲滅白書の奴等が原因ってことで間違い無さそうだな。」 五和「どういう事ですか?」 シェリー「分からないか?奴等が何らかの方法で在らざるモノをイギリス各地に流し込み、 実力のある魔術師達を各地に分散させてるって事だ。つまり、この戦争に神裂みたいな 聖人クラスの魔術師を介入させないために、わざと事件を各地に起こる様に仕組んだってことよ。」 五和「そんな事が可能なのですか?」 シェリー「殲滅白書は在らざるモノに関する知識も魔術もトップクラスの機関だ。在らざるモノを誘導させ、 罠を仕掛ける魔術を転用させればこんくらいの事は可能だろ。 まあ、証拠が見つかっちまえば国際問題に発展する事は間違いねえけどよ、 そんなヘマを犯さねえ辺りが奴等の実力を示してるのかしらね。」 五和「なるほど…」 シェリー「感心してる場合かよ。で、アンタは何しに来たんだ?逃げ帰ってきたわけじゃないわよね?」 五和「そうでした!オルソラさん、ムウロメツを御存じですか?」 オルソラ「ええ、ロシアの民話でございますね。」 五和はサーシャから聞いた話をオルソラに伝える オルソラ「なるほど、ムウロメツの伝承を元にした術式でございますか…」 五和「何か手はありますか?」 オルソラ「ムウロメツは……確か、天軍にも勝てるという慢心の言葉を吐いた事により、 最後は後悔の祈りと共に石像になってのでございます………良い案がございますわ!サーシャさんをここに連れてきてください!」 五和「はい!わかr」 シェリー「私が行くよ。」 五和「シェリーさん!」 シェリー「アンタはここに残ってオルソラの手伝いをしろ。」 そう言うと、シェリーは白いチョークを握りしめ、戦場へ向かっていった 五和「シェリーさん…」 オルソラ「五和さん」 五和「はい?」 オルソラ「あなたに聞きたいことがございます。」 五和「はい!私の知っている事ならなんでも!」 オルソラ「では神の右席について、あなたの戦った経験を詳しく話してください。」 オルガ「どうしたのー?張り合いがないなー!」 サーシャ「うっ…」 そろそろ体力の限界が来ている このままでは… オルガ「そろそろ終わりにしようかな。楽しかったよー?サーシャちゃん♪」 オルガは気絶させる程度に計算された力でサーシャに渾身の一撃を食らわせようとする もはやそれを防ぐだけの力はサーシャには無い サーシャ「五和、すみません…守れそうにないです……」 シェリー「シケた面してんじゃないわよ!」 サーシャ「えっ」 突然巨大なゴーレムが現れ、オルガの体を殴り飛ばした シェリー「やれやれ、なんだよそのザマは」 サーシャ「シェリー……ありg」 シェリー「良いからさっさと五和の元に行け!お前が必要らしい。」 サーシャ「第一の質問ですg」 シェリー「質問なんかしてねえでさっさと行けって言ってんのよ!」 サーシャ「はい!」 シェリー「さーて、そこの銀髪。ガキと楽しそうに遊んでくれたみたいね?」 オルガ「だから何ですかー?」 シェリー「ムカツクガキを痛ぶってくれて感謝するわ。でもガキはお疲れみたいだから、今度は私が相手をしてあげる。行くよエリス!」 エリス「グオオオオオオオオ!!!」 サーシャ「五和!」 五和「サーシャちゃん!オルソラさん、来ましたよ!」 オルソラ「ええ!サーシャさんも御無事でなによりでございます!」 サーシャ「はぁ…はぁ…別に無事というわけではないですが、それで、私に用とは…?解決の糸口が見つかったのですか?」 オルソラ「はい。早速ですが、イリヤ・ムウロメツは、味方の一人が天軍に勝てると慢心したのが衰退の原因なのでございますよね?」 サーシャ「第一の解答ですが、その通りです。」 オルソラ「では、ここイギリスで言う天軍とは?」 サーシャ「第二の解答ですが、ヘンリー8世の天使軍でしょう。現在の王国騎士団ですね。」 オルソラ「その通りでございます。そして、その天使軍を象徴する武器と言えば」 サーシャ「……まさか、※カーテナを?」 ※王家の者しか使えない慈悲の剣で英国最大の霊装。術者は天使長としての力を宿すことで強化され、 その剣からは全次元切断術式の発動できる。つまりヤバい剣。 ちなみにヘンリー8世が天使長を名乗ったのはローマ教皇に対抗し、教皇こえる地位であるとアピールするため 詳しくは禁書原作17巻と18巻を サーシャ「あれは王家の者にしか使えませんよ?」 オルソラ「ええ、ですからあなたに女王様になってもらうのでございます。」 サーシャ「……はい?」 この人はいきなり何を言い出すんだ オルソラ「簡潔に言えば、今すぐここで即位式をやってもらいます」 サーシャ「あの…話が見えてこないのですが…」 オルソラ「もちろん本物の即位式ではありません。全部偽物で代用し、 あなたにはたった一度だけの仮初の女王様になってもらうのでございます。」 サーシャ「第一の解答ですが、それでカーテナの力など使えるのですか?」 オルソラ「おそらくたった一度しか使えないでしょう。全て偽物なのですから。」 つまり、即位ごっこと女王様ごっこでカーテナの力を借りるというわけだ サーシャ「成功する可能性は?」 オルソラ「他に方法がございましたら、そちらを選択させていただきます。」 サーシャ「……」 オルソラ「では五和さん、先程指示した物を用意して下さい。」 五和「あ、はい!」 サーシャ「第二の解答ですが、あなたの案に賛同しましょう。ですが、なぜ私がクイーンを?」 オルソラ「はい。失礼ながら、サーシャさんの事を調べさせていただきました。 どうやら、あなたは神の力、後方の青を司る大天使ガブリエルをその身に宿した事があるのでございますよね?」 サーシャ「そこまで調べたのですか…?」 オルソラ「そして、その時にミーシャと名乗ったと?」 サーシャ「覚えは無いのですが、そう聞いています。」 オルソラ「やはりそうですか。本来、大天使が自分の名前を変えて名乗ることなどあり得ないのです。 なぜならその名は神の力と性質を示すのですから、勝手に名を変える事は神への冒涜になるのでございます。」 オルソラ「ですが、あなたの体に宿ったガブリエルは、ロシア語でミカエルの名前を示すミーシャと名乗った。 これは明らかにおかしいことでございます。」 サーシャ「確かに、ミカエルの火とガブリエルの水では、全く性質が異なります。」 オルソラ「なぜこの様な現象が起きたのかは分かりません。しかし、もしも私の推測が正しいのならば、 今この世界では四大元素の歪みが起きているのではないかと思います。」 サーシャ「例えそうだとしても、それと私に何の関係があるのですか?」 オルソラ「ガブリエルは青と水の象徴。しかし、この歪みにより赤と火による浸食を受けてしまったのです。 ミカエルの属性に浸食されつつある中で、あなたはガブリエルにとって宿主として最適だと判断されたのでしょう。」 サーシャ「それはつまり…」 オルソラ「あなたには、ミカエルに似た性質があるのではないでしょうか?」 サーシャ「……」 話がぶっ飛び過ぎて付いていけない オルソラの仮説はこうだ まず第一に、大天使のテレズマを丸ごと身に納める事は普通の人間にはできない。 例えるなら、安い電卓にパソコンの機能を全てぶち込むのと同じ事だ。 そして過去に莫大なテレズマを身に納めた特別な人間として、聖母マリアがいる。 第二に聖母崇拝と言うものがあるが、これによると聖母は神の子を身に宿した時点で原罪から免れたという。 つまり、大天使のテレズマを受け入れられるかどうかは、その宿主の原罪の濃さに影響があるという事だ。 第三に、原罪を薄め、神や大天使の力の一部を行使できる者達が居る。神の右席だ。 彼らは四人居て、それぞれミカエル、ウリエル、ガブリエル、ラファエルと同じ性質を持ちあわせている。 オルソラ「つまりサーシャさん。あなたは生まれながらにして原罪を免れる者であり、 ミカエルと同等の性質を持って生まれて来たのではないでしょうか? そしてあなたの目が赤いのは、赤を象徴とするミカエルの性質の名残ではないかと思うのでございますよ。」 五和「しかし、大天使の性質を持つ者は、普通の人間の魔術は使えないはずですよ?」 オルソラ「はい。ですが、アックアとの戦いを思い出して下さい。彼は聖母の原罪を免れる性質を転じて、 普通の魔術が使えないというルールから免れる事ができたはずでございます。」 オルソラ「神の右席は、原罪を薄めるという事で力を得ています。 つまり、原罪から逃れられぬ者がそれに抵抗するという事になります。ですが、サーシャさんの場合、 初めから原罪の束縛を受けぬ者として生まれたのではないでしょうか? だとしたら、性質がガブリエルの生母の慈悲ではなくても、ルールから逸脱する事は可能でございます。」 五和「逃れる者と縛られぬ者の違いですか……とすると、もしかしたら女教皇様よりも強いのでは?」 オルソラ「受け入れる器があるという事と、その器がミカエルに似ているというだけの話でございます。 力を行使できるだけの能力があるかどうかはまた別の話になるのでございましょう。」 サーシャ「第一の解答ですが、こんな原作ガン無視な設定を上げてますが、結局凄いのか凄くないのかは微妙なところですね。」 オルソラ「そんな事はございませんよ?」 サーシャ「?」 オルソラ「これも私の推測ですが、本質がミカエルとは言え過去にガブリエルを身に宿したあなたは、 今はガブリエルの性質の方が濃くなっているはずです。ガブリエルは最期の審判において終焉のラッパを吹き、 死者を復活させる天使でございます。つまり、神の理を無視した力を行使できる天使でもあるのでございますよ。」 サーシャ「もしかして第一の質問ですが、私が助かったのは、回復術式との相性が良かったというわけではないという事ですか?」 オルソラ「ええ、おそらくはガブリエルの加護によって死から逃れたという事でしょう。 おそらくガブリエルはまだ四大元素の歪みによる影響から解放されていないため、 運良く見つけたあなたという器を失うわけにはいかなかったのかもしれません。」 サーシャ「第二の解答ですが、なんだかさっきから話が飛び過ぎていて、まるでとんでもな物語でも聞かされている様な気分です。」 それもそうだろう。自分がミカエルと同等の性質だの、原罪を免れる者だの、 あまつさえ自分のコンプレックスだった赤い目はその影響だのと言う話だ 納得して全てを受け入れろと言うのも無茶である オルソラ「全てが正しいというわけではありませんし、もしかしたら全部まちがっているのかもしれません。 ですが、私はあなたに可能性を見出しているのでございますよ。」 オルソラ「カーテナの力の性質は天使長であるミカエルと同義。つまり、 ミカエルと同じ性質を持つあなたなら、擬似的なカーテナの力を振るえるのではないかということでございます。」 サーシャ「第一の解答ですが、私がクイーンの役をやる理由は分かりました。 私に出来るのであれば、喜んで引き受けさせていただきます。」 オルソラ「まあ!ありがとうございます!」 五和「えーっと、これで全部揃ってるでしょうか?」 五和が用意した戴冠式ごっこのレシピ 指輪 白い手袋 赤いペンキで塗られ、先端に棒磁石を埋め込んだ杖 白い杖 サーシャの着てた拘束衣の赤い外套 椅子 正方形の座布団みたいな石(シェリーの作業場から拝借) 香油 聖水 サーシャの修道服のベール カーテナの力を移すための聖水で清めたナイフ オルソラ「では、蝋燭を西に、聖水の入った小瓶は南に、北はアニェーゼさんの部屋から拝借した小型扇風機、 東にシェリーさんが彫刻に使っていた石を。」 オルソラの指示通り、それぞれの場所に、赤い蝋燭、青いビンに入れられた聖水、 黄色い絵の具で塗られた扇風機、そして緑色に着色された石が置かれた 戴冠式のための簡単な儀式場を作ったのである。 しかし、何かがおかしい サーシャ「第一の質問ですが、風と黄色を象徴とするラファエルは東方の性質を与えられています。 位置が違うのでは?あと、それアニェーゼに怒られますよ。」 オルソラ「先程も説明した通り、四大元素に歪みが生じてる可能性があります。 大天使の四大元素の力を行使する神の右席では、前方が黄色と風を象徴とするウリエル、 左方が土と緑を象徴とするラファエルになっていたのでございます。」 サーシャ「一体どうなってるのでしょうかね?」 オルソラ「きっと神様の国で痴話喧嘩でもあったのでございますよ。さて、ではサーシャさん、部屋の中央に来て下さい。」 サーシャ「はい。」 オルソラ「では、五和さん、サーシャさん、よろしいでございますか?戴冠式の真似事とは言え、 カーテナの力を宿すための儀式でございます。道具は全て偽物ばかりのなんちゃって戴冠式ですが、 あなた方の英国と神への忠誠は本物である事を証明しなければなりません。」 オルソラ「覚悟はよろしいでございますか?」 サーシャ・五和「はい…(ごくっ)」 今、世界で一番滑稽な戴冠式が始まった ルチア「まったく、一体何なんですか!」 ルチアは不条理な状況に文句を垂れつつ車輪を巨大な水の蛇に向けて、両手と体全体を使って円盤投げの要領で投げる 。 そして、巨大な水の蛇に車輪がぶつかると同時に爆発する 巨大な水の蛇は爆発によって頭部が木っ端微塵に吹き飛んだ ルチア「やった!?」 ローザ「無駄ですよ。」 木っ端微塵に吹き飛んだ蛇の頭は信じられないくらいのスピードで再生する ローザ「ツモク!」 ローザがその蛇の名を叫ぶと、巨大な蛇の口に光が溜まり始める ローザ「消し飛びなさい!」 巨大な蛇の口から極太の光線と化した電撃が放たれた まるで荷粒子砲の様だ ルチア「……!!?」 蛇の口が光り始めた時点で危険を察知したのか、ギリギリでかわす事が出来たルチア あんなものをまともに食らったら、髪の毛一本すらこの世に残らないだろう ローザ「さあ、いつまで避け続けることができるでしょうか?」 再び蛇の巨大な口が光り出す アンジェレネ「シスターアニェーゼ、ここは一端引きましょうよぉ…」 アニェーゼ「無理ですよ、あのスピードからは逃れられません。アンジェレネ、危ないから下がってください。」 アンジェレネ「シスターアニェーゼッ!」 アーニャ「吹き飛べ」 アーニャは上空からとてつもないスピードでアニェーゼに向かって滑空してくる そしてその勢いのまま、自分の身長の倍近くある炎の剣の切っ先を向けてアニェーゼを潰そうとしてきた アニェーゼ「クソ暑苦しいんですよぉ!!!」 アニェーゼも負けじとナイフで傷付けた蓮の杖を振り回す しかし、その力を持ってしても相殺する事すら敵わずに、炎の剣の爆発に巻き込まれる 爆発とともにアニェーゼの体は吹き飛ばされた アンジェレネ「シスターアニェーゼ!!!」 まるで道路に打ち捨てられたゴミの様に、吹き飛ばされその体は地面を跳ねる様に叩きつけられる アニェーゼ「…対火術式なんて…これじゃああってもなくても同じですね……」 来ている修道服は焼け焦げてボロボロになっている それだけならまだ良いが、アニェーゼの柔和な白い肌も裂傷や火傷だらけで痛々しい姿だ アンジェレネ「ぐっ……!(ぎりっ)」 奥歯を噛みしめるアンジェレネ 腰につけている硬化袋を取り外し、十二使徒の一人、徴税者マタイの名を唱えながら硬化袋を頭上に投げる すると、硬化袋から六つの羽が生え、同時に中から数枚の硬化が弾丸の様なスピードでアーニャに向かって発射された しかし、アーニャのもとに辿り着く前に硬化は燃え尽きてドロドロに溶けてしまう 当のアーニャは「良く見てなかったけど、何かしたの?」とでも言わんばかりの表情をしていた。 悔しかった 何もできない自分が 目の前で傷ついてる仲間が居るのに、何もできない無力な自分が 彼女も五和と同じだ 建宮「くそっ……」 半分に折れた剣を手に、ボロボロに傷付いた体を庇いながら、建宮はふら付く足で立ち上がりヴェロニカを睨みつける 他の天草式の連中は、後方の防衛を任されていた殲滅白書のシスターと戦闘していた 先程は難無く撃破できたはずなのだが、今はヴェロニカの魔術のせいで苦戦を強いられている ヴェロニカ「もう諦めたら?どんなに頑張っても私には傷一つ付けられないわよ? それなのにそんなボロボロになるまで頑張るなんて無駄じゃないかしら?」 建宮「黙れってんのよ……テメェには、どうしても一発ぶちかましてやらねえと気が済まねえのよ! テメェらに利用され、自分の友人をその手で殺しかけるなんて事をさせられた、 どんな拷問よりも地獄に落ちる事よりも耐え難い絶望的な思いをした奴がいるんだよ!! こんなとこで諦めたら、俺は五和にも女教皇様にも他のみんなにも顔向けできねえのよ!!」 ヴェロニカ「へえ、あなた随分と部下思いの上司みたいね。そういう上司は大好きよ。」 建宮はヴェロニカの話など全く聞いていない すべき事は、あの澄ました端正な顔に一撃を与える事 建宮はヴェロニカに向かって突撃し、剣を振るう しかし、ヴェロニカは簡単な動作でそれをかわした もはやボロボロでまともに剣を振るう力すらない建宮の一撃など、 わざわざ注意して避けるまでも無い。 そもそも双頭の鷲の加護があるので避ける必要すらないのだが。 ヴェロニカ「私も二年前までは良い上司の下で働いてたの。あなたとは違っておちゃらけた感じの人。 まああなたも普段はどうなのか知らないけれどもね。変態的な趣味の持ち主で変な服を着させられてたけど、 それでもドライでギスギスした殲滅白書の中では、珍しく人懐こくて明るい人だったわ。」 建宮「おらァ!!」(ブンッ!) 今の自分に出せる全力の一撃 しかし、そんな建宮の奮闘など微塵も意に介さず まるで頑張りを嘲笑うかの如く簡単に避ける いや、避けているいうよりは、むしろどいているという感じだ ヴェロニカ「実力を認められて、一部隊を任せられた時は嬉しかった。 同時に、絶対にその人を超えてみせるってヤル気まで湧いてきた。私にとっては憧れの様な人だったのかもしれない。」 建宮はヴェロニカの話に耳を傾ける事は無い それでもヴェロニカは建宮の剣を避けながら、話を続ける 誰も聞いてはいない なのに、なぜこんな身の上話を建宮の前でするのか、彼女自信も疑問に感じていた。 もしかしたら、建宮の部下を想う姿に何か感じ入るものがあったのだろうか。 ヴェロニカ「あなたには分かるのかしらね?自分の行動や言動だけじゃない。 その態度や表情の細かい部分一つ一つ、本当に自分でも意識していない部分でも、 それは部下に影響を与えるの。上司を心から信頼し、その指導を仰ぐ部下にとってはね。」 ヴェロニカ「上司の笑顔や褒め言葉一つでいつもの百倍は頑張れる様な気がする。 逆にため息や暗い顔ひとつで部下は不安な気持ちになるのよ。 だから、私は彼女達の前では極力明るく振舞う様にしてるわ。 人望なんて大して無いかもしれないし、憧れなんてこれっぽっちも持たれてはいないかもしれないけれど。」 ヴェロニカ「上司ってそういうものなの。特に憧れ信頼してる上司は。だから分かる? そんな上司の落ち込んでるとこなんて見たくないっていう部下の気持ちが? 上に立つ者は絶対にそういう雰囲気を出しちゃいけないし、不安な言葉を吐く事も弱みを見せる事もしちゃいけない。 なのに、自分の憧れていた元上司がそんな情けない姿を晒している事がどれだけ耐え難い事か。」 斬りかかって来た建宮を、右腕を軽く翻すだけで風を起こして吹き飛ばした それでも立ち上がる建宮斎字 建宮「分かんねえわ、そんなの…うちはあんたらみたいにデカイ組織じゃないからよぉ…… 部下である以前に、上司である以前に仲間なんだよウチらは……確かに……アンタらの組織の体裁は立派だとは思うが……」 ヴェロニカ「あら、聞いてたの?」 建宮「うおおおおおお!!!」 再びヴェロニカに向けて突進する ヴェロニカ「はぁ……無駄だと言うのn!?」 ビュン!と何かが高速で顔の横を通り過ぎた 建宮が最後の力を振り絞って投げた剣だ 建宮が投げた折れたフランベルジュはヴェロニカの頬を掠め、修道服のベールごと遠くに吹き飛ばした 建宮「修道服の外側は鉄壁でも、内側はそうでもない…か……そういうもんなのよ、アンタらの関係は……」 何度でも立ち上がって来た建宮は、最後の一撃がようやく届いた事を確認し、そのまま倒れ伏した ヴェロニカ「……」 倒れた建宮を見つめるヴェロニカ 絹の様に滑らかで白い肌に、一つの赤い線ができている そこから血が流れてくるが、彼女は気に留めていなかった ヴェロニカ「建宮さんと言ったかしら……私も昔はそうだった。自分が上に立つ様になってから、 それを忘れてしまったのかもしれないわ……あの人の弱り果てた姿は、あの人の下を去ってから初めて見たから……」 ヴェロニカは、普段は部下に明るく振舞っている。部下からの暴言だって許している。 頼りないが近寄り易い上司を演じている。自分の憧れたかつての上司がそうであった様に。 演じているのだ。どこまでも演じているだけで、その枠を超える事は無いのだ。 それは例え苦しい事があっても悲しい事があっても、いつも同じ仮面を被って同じ自分を演じなければならないのと一緒。 けして自分の本質をさらけ出してはいけない。 体裁なんか気にしない様に見えるが、実際はその関係など体裁の塊に過ぎないのだ。 ヴェロニカ「もしかしたら、私はあの娘に嫉妬していたのかもしれないわね……」 その頃、バッキンガム宮殿では エリザード「ん?……カーテナが…?」 騎士団長「カーテナがどうかしましたか?まさか変な細工したとか壊したとかそんなんじゃないでしょうね? エリザード「どんだけ主君を信用してないんだよお前は」 英国王家の者だけが手にするカーテナ・セカンド 英国女王エリザードは、そのカーテナに違和感を覚えた。 まるで面白そうな者を見つけた好奇心旺盛な動物の様に、カーテナに宿る力が何かに反応しているのを感じる。 騎士団長「ウエストミンスターの清教派の女子寮で抗争が確認されました。 どうやら、襲撃者はロシア成教殲滅白書の一部隊の様ですが…」 エリザード「知らんよ。そういうのはアイツの領分だ。あの女の事だ、 むざむざとロシアの連中の侵入を許したわけでも無いだろうし、何か企んでるだろうね。まあ大方予想は付くが。」 騎士団長「ちなみに、あの女子寮周辺で強力な結界も確認されたそうです。どうやら、 戦争が始まると同時に発動する仕掛けで、外側から援軍を送る事ができない状態になっています。 範囲は限られているとは言え、あれだけの密度の高い結界ですから、 最低でも一カ月近くかけて念入りに調整を施したのでしょう。解除するには最低でも一日は要するかと。」 エリザード「だから知らないよそんなの。あの女がどうにかなるって判断したんだろ。」 騎士団長「しかし、最近の在らざるモノの事件の急激な増加もありました。 この様な事態になるまで放置した最大主教には責任という物があると思いますが?」 エリザード「大切なのはこの国の国益だ。最終的にどう転ぶかを見届けるまでは判断できん。」 (戴冠式とか見た事ないので詳細は分かりません。というわけで割愛します。) サーシャ「これは……?」 オルソラ「どうやら成功したみたいでございますね…」 サーシャはカーテナの代用品であるナイフを右手に握っているのだが、そのナイフが異様な光を帯びている 五和「まさか本当に成功するなんて……」 オルソラ「ええ、私も半信半疑でございました。」 五和「いや、オルソラさんが考えたんでしょ」 オルソラ「とにかくサーシャさん。今この時だけ、あなたは英国女王と同等であり、 天使長ミカエルの力を有しています。ただし、その擬似カーテナは一度しか使えません。」 サーシャ「第一の解答ですが、分かっています。さあ、行きましょう!反撃開始です!」 ヴェロニカ「さて、そろそろ決着がつきそうですね。予備のために組み込んでおいたコレも必要無かったみたいです。」 戦局は完璧に殲滅白書優勢 ムウロメツの薬の力を得た殲滅白書のシスター達は、一人で10人分の働きをする。 アニェーゼもルチアも、みんな傷だらけで辛うじて生きている様な状態だ。 シェリー「エリス!」 オルガ「無駄ァー!」(ドゴン!) エリス「ゴオオォォ…」 ゴーレムがオルガの一撃で簡単に崩れ去っていく シェリー「クソッ!化け物かアイツは!」 ローザ「さて、そろそろ終わらせますか。今まで避け続けた事は素直に賞賛します。まあ、全て無駄に終わりそうですけど。」 ルチア「はぁ…はぁ……ッ…!」 体中が痛む 極太のレーザーみたいなのは運よく一撃も当たっていないが、あの巨大な蛇には何発かテールアタックを食らってしまった もしかしたら、わざと一撃必殺の技を当てないでじわじわと痛めつけていたのかもしれない アンジェレネ「アニェーゼ!起きて下さい!目を覚ましてください!」 アニェーゼ「……」 もはや戦える状態では無い 生きている事が不思議なくらいボロボロになってしまっている アーニャ「もう終わり?つまらない」 巨大な炎の翼を背負い 巨大な炎剣を携え 喋るたびに口から炎がこぼれる そんな怪物がアンジェレネとアニェーゼの前に迫ってくる アンジェレネ「……絶対に」 アンジェレネは、アニェーゼを庇う様に両手を広げ、立ちふさがる アンジェレネ「絶対にアニェーゼを殺させたりはしませんよ!!」 足が震える 恐怖が全身を駆け巡る 敵わないのは分かってる このままでは自分は確実に死ぬ それでも彼女は逃げようとは思わなかった 逃げたところで、このまま生き延びたとこでその先に幸せなど存在しない ルチアやアニェーゼ達が居ない世界に幸せなど無い 彼女はその幸せを守るために戦う アーニャ「邪魔。」 例え彼女の小さな幸せと大きな勇気が、アーニャの振り上げた炎剣の前に簡単に消えてしまうとしても アーニャの炎剣がアンジェレネの頭上にギロチンの様に振り下ろされる 一瞬で灰と化すだろう……と思われた アンジェレネ「ひっ!………あれ?」 アンジェレネの頭上で、その炎剣は止まる 熱気でアンジェレネのフードの先が少し焦げ、アンジェレネは頭上の炎剣の圧迫感に思わず腰を抜かしてしまった アーニャ「おかしい……」 自分の振るう力に違和感を感じる その違和感を感じていたのはアーニャだけではない ヴェロニカ「何かしら……さっきから魔翌力が乱れて……」 そして気がついた 今もイギリス清教と殲滅白書のシスター達が戦っている戦場 その奥に、異様な光が見える それはサーシャ・クロイツェフと、右手に握られている謎の武器 その武器が異様な光を放っている ヴェロニカ「……何よアレ…?」 あれは良くないものだ 本能でそう感じる しかし、対策が思い浮かばない。 なぜなら、あれがどういうものでどの様な影響があるのかを理解できないからである サーシャ「第一の解答ですが、これで終わりですよ、ヴェロニカ。」 カーテナ・イミテーション サーシャはたった一度だけ使える偽物の慈悲の剣を天に翳した カーテナの力は地球という惑星から英国領土を切り離し、その内部を制御管理できるというもの。 まさにイギリスを支配する国王に相応しい剣だ(原作参照) しかし、偽物ゆえにその力はカーテナ・セカンドの1割あるかどうかと言ったところだが。 それでも、「ムウロメツの薬をヴェロニカの全ての魔翌力ごと根こそぎ打ち消す」くらいは簡単にできる ヴェロニカ「なっ!一体どうなってるの!」 ヴェロニカの体から魔翌力が光となってあふれ出てくる あふれ出た魔翌力が全て空へと登り、消えて行く まるで光るシャボン玉を見てる様な気分だ…… アーニャ「あれ…?」 アーニャの手から炎剣が消えた 同時に背中の炎も消える ローザ「どういうこと……?」 ローザの水の蛇も形を維持できなくなり、崩れた オルガ「力が…抜けてく…」 エリス「グオオオオオオ(すごいパーンチ)」 オルガ「ビブルチッ!」 ドガーン! ルチア「これは……サーシャ!」 アニェーゼ「いたたっ…どうやら……再び私達に勝機が訪れたみたいですね……アンジェレネ?」 アンジェレネ「すみません、腰が抜けて立てません……」 五和「やった!やりましたよオルソラさん!」 オルソラ「ええ!まさに奇跡でございます!」 まだ戦争が終わったわけでもないのに二人ははしゃいでいた 殲滅白書のシスター達は誰もが負けを確信した そもそも元々の戦力差が違うのだ ヴェロニカのムウロメツの薬が無ければ勝てない戦いである どんな時でも、辛い時でも悲しい時でも、例え負けそうになって絶望しても、絶対に上に立つ者はそれを隠さなければならない 上司とはそういうものだと高説垂れていたヴェロニカ ヴェロニカ「あはっ……あははははははははははっ!」 サーシャ「どうしました?敗北が確定して気でも狂いましたか?」 サーシャは、全ての魔翌力を失い立てなくなってその場に座り込んでいるヴェロニカの前に立った ヴェロニカ「違うわ。素直に満足してるの。まさかここまで私が追いつめられるなんて、今まで無かったもの。」 サーシャ「第一の解答ですが、やはり狂ったみたいですね。」 ヴェロニカ「そうじゃないって言ってるでしょ?」 突然、ヴェロニカの足元に青白い光が溢れだし、その光がヴェロニカを包んでいく サーシャ「……!?」 ヴェロニカ「ふふっ、予備のために術式を組んでおいて正解だったわ。 まさか、私がムウロメツの薬を破壊された時のための対策を立てていない思ってたのかしら?」 サーシャはヴェロニカを殺そうと、カーテナの効力を失ったタダのナイフでヴェロニカの額に切りかかる しかしヴェロニカはそれを避け、ナイフはヴェロニカの修道服に当たった 双頭の鷲への攻撃は、自分へ返ってくる 強風とかまいたちで切り傷だらけになったサーシャの体が吹き飛んだ ヴェロニカ「さて、第二ラウンドと行きましょうか」 サーシャ「うっ……」 ヴェロニカ「ねえサーシャ、スヴェントヴィトって知ってるかしら?」 サーシャ「スラヴ神話の…軍神…」 ヴェロニカ「そうよ。スヴェントヴィトにも色々と逸話があるけど、私はその中で、 戦士達が戦いで得た戦果の一部をスヴェントヴィトに捧げていたエピソードを元に術式を組んだのよ。」 サーシャ「……まさか、自分が相手に負わせたダメージの一部を、自分の魔翌力に還元する……?」 ヴェロニカ「さすがはあの人の直属の部下ね。でも惜しいわ、その程度ならそこらの三流でも組める術式ね。 私の術式は、自分の味方全員が相手に与えたダメージが、ムウロメツの薬を通じて全部そのまま私の魔翌力となるの。」 ヴェロニカ「ローザみたいな性癖は無いけど、あなた達の感じた痛みや苦しみ、絶望が全て私の力になるのよ?」 要するにこそこそと魔翌力を集めて予備電源みたいなものを貯めていたらしい ムウロメツの薬が再起動した 殲滅白書のシスター達の目に再び光が宿る どうやらイギリス清教の敗北は確定した様だ ヴェロニカ「あなたはそこで見てなさい。あなたのせいで死んでいくイギリス清教のシスター達を。」 絶望に形があるのなら、きっとこんな感じなのだろう ゲルニカというスペイン内戦を題材にしたピカソの絵画がある 彼はきっと、こんな光景を見て絵にしたのだろう 遠くでルチアが車輪を抱えた右腕ごと光線を受けて、華奢な腕が消失したのが見えた 痛そうに苦しみもがいている アニェーゼとアンジェレネがまとめてアーニャの炎で焼き払われるのが見えた きっと死体は原型すらとどめていないだろう ほかにも、戦いで敗れ、死んでいく仲間の姿が目に映る もうやめてほしい、戦わないで、死なないでほしい たぶんサーシャがそう懇願しても、イギリス清教の仲間達は止まってはくれないだろう 彼女達は仲間のためなら命をかける。かつて、何の関係もない自分達を命懸けで救ってくれた少年の様に。 そしてもしもサーシャが彼女達と同じ立場だったら、間違いなく自分も命をかけて仲間のために戦うだろう サーシャは再び立ち上がり、ヴェロニカに立ち向かう しかし、彼女も建宮と同じ様に軽くあしらわれる ヴェロニカ「黙って見てなさい。」 サーシャ「あぐっ…!」 サーシャはうつ伏せの姿勢のままヴェロニカに頭を踏まれ、地面に縫いつけられた サーシャの視線の先には五和が居た 海軍用船上槍を構え、オルガと対峙している シェリーの安否は確認できないが、もうゴーレムは尽きたらしい やめて……勝てるはずがない… 五和はオルガに向かって突撃する もうやめてほしい、どうか死なないでほしい 五和の槍は簡単にオルガに弾かれた 神様、どうか自分の命と引き換えに、五和を助けて下さい、どうか… しかし願いは届かない 二人の勝負は早々の決着がついた オルガの棒が五和の胸を貫き、呆気なく五和はそのまま倒れた 五和の体から引き抜いた棒には、彼女の鮮血がべっとりとこびり付いている オルガ「あはっ♪サーシャちゃんを串刺しにしたんだらか、当然の報いだよねー?アハハハッ!」 その瞬間、サーシャの中で何かが切れた もがき、力づくでヴェロニカの足をどけると、ナイフでヴェロニカの体を切り裂く しかし、当然攻撃は通らず、強風とかまいたちがサーシャを襲う サーシャ「がっ、ぐっ、があああああああああああ!!!」 幾つもの裂傷を浴びて吹き飛ばされても、すぐに立ち上がり襲いかかる もはや理性など欠片も無い獰猛な獣の様に牙をむく ヴェロニカ「無駄だって言ってるでしょうがッ!!」 ヴェロニカは手を翻して風を起こし、サーシャに叩きつけた しかし、サーシャはけして怯まない おそらく腕が捥がれても足が千切れても、ヴェロニカに襲いかかるだろう ヴェロニカは上からサーシャを[ピーーー]なと指示を受けているが、このままではサーシャの方が双頭の鷲の加護で自滅しかねない ヴェロニカは再び風を叩きつけ、サーシャが地面に転がったところを取り押さえ、首を絞めた そして立ち上がり、サーシャを、首を両手で絞めたままの状態で持ち上げる サーシャ「ぐがっ!あがっ!があああああッ!!」 ヴェロニカ「まるで獣みたいね。」 サーシャの赤い目の瞳孔が猫の様に細くなっている 首を絞められながらも、サーシャはヴェロニカに噛み付こうとしていた ヴェロニカ「落ち着きなさい」 サーシャ「あがっ!!ぐっ!ああッ!!」 ヴェロニカはサーシャの首を絞める力をさらに強くする ヴェロニカ「無駄なの?分かる?もうあなたの仲間はみんな死んだの?あなたが戦う意味は無いのよ?」 サーシャ「jfhrpl黙jduoa!!!」 声にノイズが走る ヴェロニカ「もう終わったの。結局あなたの努力は無駄だったのよ?」 サーシャ「sbrg;snmtp|hish!」 ヴェロニカ「みんなあなたのせいで死んだの」 ?「nipsergnsigd」 ヴェロニカ「だからいい加減に……」 ?「nthggbvrfl……」 そこでおかしな事に気付いた 先程から、サーシャの声にノイズが混じっている 何かを喋っている様だが、言葉の意味は理解できない そして、先程までの獣のような獰猛さが感じられない ヴェロニカ「まさか、死んd」 その刹那、サーシャの目が鋭く見開かれた ヴェロニカ「なッ、ぐあっ!」 何が起きたのか分からず、謎の力でヴェロニカはサーシャの前から弾かれる ?「Sjhdtdplk起qlhg」 ヴェロニカの手から解放されたサーシャはそのまま空中に登って行く 突然、彼女の背中から黒い黒曜石の巨大な翼が現出した 赤かった目は、月の様に黄色く輝いている ヴェロニカ「サー…シャ……?」 ?「解一、私はサーシャではない。補足、私を示す適切な記号はミーシャ」 ミーシャ「私見一、人間の下らない争いに興味は無い。私見ニ、下らない願いにも興味は無い。 しかし私見三、私はこのサーシャ・クロイツェフの体を失うわけにはいかない。」 ミーシャ「結論、よってサーシャ・クロイツェフの敵となる者を排除する。」 その瞬間、夜空から星が消えた いや、正確には夜空を濃紺色に塗りつぶされたのだ 同時に、空一面に複雑な紋様の巨大な光の魔法陣が描かれる 水の象徴、月の守護者にして後方の青を司る神の力、名をガブリエルと言う それは最期の審判にて終焉のラッパを吹き、死者を蘇らせる大天使 それゆえに、神の定めた摂理をも覆す力を行使する事もある ミーシャ「……」 ミーシャはその右腕を軽く振るった ただそれだけで生と死の理が覆される 消滅と再生が逆転する ルチア「腕が…治ってる……?」 アニェーゼ「あれは…サーシャですよね?」 アンジェレネ「私に聞かれても…」 五和「サーシャ…ちゃん?サーシャちゃんなのですか!?」 ミーシャ「戦え。お前たちには加護がある。」 死んだはずの者が一人残らず復活していた 傷も全て回復している ミーシャ「戦え、この少女を守りたくば。」 アニェーゼ「言われなくとも、百倍返しでやってやりますよ!!!」 今度こそ、本当に奇跡と共に形勢は逆転した 大天使は神の命令なしに人を傷付けたり殺したりする事はできない ミーシャが唯一その掟を破るのは、彼女が正しい位置に還るチャンスがある時のみ この争いに興味が無いと言っていた通り、彼女はこの戦いで直接的に相手を傷付けたり殺したりするつもりは無かった それゆえに、五和達が復活したのは自分の代わりに戦わせるためであって、慈悲と言う物はそこには無い ヴェロニカ「あれは…大天使ガブリエルの…そんな……」 ヴェロニカの頭に初めて敗北と言う言葉がよぎる。 大天使とまともに戦って勝てる可能性が1%でもあるのなら、 初めからわざわざ聖人である神裂の居ない時を見計らって襲撃するという作戦など立ててはいない。 ローザ「ツモク!どうしたの!」 ローザの巨大な水の蛇は、再び崩れ去った 水を司るミーシャにその力を奪われたのだ ルチア「水が使えなければただの人ですよね、あなたも」 ローザ「!?」 ルチアは魔術を行使せず、ローザの顔にハイキックをお見舞いした ローザ「がはッ!」(ドサッ) 一撃で気絶したローザ ルチア「こんな雑魚に構っている暇はありません!」 ルチアは一番苦戦していると思われるアニェーゼの元へ向かった 五和「さっきはよくもやってくれましたね。」 オルガ「うわっ、ちょっタイム!」 五和「死んだ後ならいくらでもあげますよ?」 オルガの棒が弾かれ、体は壁に叩きつけられた オルガ「ま、待って!ねえ待ってってば!」 五和の目は本気だ 本気で殺しに来ている オルガは尻込みしながら命乞いをする 綺麗な顔立ちは恐怖で歪みに歪んでいた 五和「さようなら」 五和は本気の一撃を当てた。 オルガの顔のすぐ隣の壁にだ。海軍用船上槍が壁に深々と突き刺さっている。 オルガ「う……ア……」 オルガは恐怖のあまり、泡を吹いて気絶してしまった 五和「ま、これでチャラって事にしてあげますよ。」 五和は槍を引き抜き、アニェーゼの援護に向かった アーニャ「うぐっ…」 アニェーゼ「どうしたんですかい?さっきの方が百倍手強かったですよ?」 アーニャの魔術は火だ それゆえにローザと同じくミーシャ属性による干渉を受けているため、思う様に力が機能しなかった それでも脅威である事に変りは無いが ルチア「アニェーゼ!アンジェレネ!」 五和「アニェーゼさん!」 アニェーゼ「ルチア!五和!」 五和「アニェーゼさん、こちらは全て片がつきました。ですから」 ルチア「あなたはヴェロニカを倒してください。ここは私と五和さんがどうにかします。」 アニェーゼ「分かりました。私は優秀な部下を持てて幸せです!」 五和「私は部下じゃないですけどね。」 アニェーゼはアーニャを二人に任せて正面突破しようとした アーニャ「逃がさない」 アーニャはアニェーゼにむけて灼熱の炎を吐く しかし、ルチアが車輪を投げつけ、アーニャの前で爆発させる 攻撃はアーニャの炎で全て防がれてしまったが、それでも車輪の爆発にアーニャの注意が向けられたおかげで炎の軌道を反らす事はできた アーニャ「邪魔…」 ルチア「あなたの相手は私達ですよ!」 五和「アンジェレネさん!」 アンジェレネ「はいっ!」 五和「あなたにお願いがあります。私とルチアさんだけでは彼女を倒すことはできないでしょう。」 アンジェレネ「でも、私の攻撃も全く通用しませんでしたよ?」 五和「大丈夫です、彼女の力は以前よりも落ちています。」 アンジェレネ「で、でもでも!」 五和「アンジェレネさん!あなたにしかできないんです!ルチアさんも私もあなたを信頼しています!」 五和はアンジェレネにとある作戦を簡潔に話した アンジェレネ「……わ、分かりました!」 五和「大丈夫!あなたなら絶対にできますよ!」 アンジェレネ「頑張ります!」 アンジェレネはその場から離脱していった 五和「ルチアさん!」 ルチア「はい!?うおっ!」 ルチアはアニェーゼが投げつけてきた炎の塊を避けながら返事をする 五和「アーニャを、寮の近くまで誘導してください!」 ルチア「良く分かりませんが、なにか策があるのですね!?」 五和「はい!(お願いしますよアンジェレネさん、そしてサーシャちゃん!)」 ミーシャ「……?」 ルチアは五和の指示通り、アーニャの攻撃を掻い潜り、アーニャを女子寮に近づける様に仕向けた 五和「アーニャさーん!あなたの技って大した事ありませんね!!」 アーニャ「……?」 五和「ぶっちゃけステイルさんの方が100倍凄いですよ?あなたの技って100円ライターよりしょぼくないですか? マッチですかそれ?あ、マッチに失礼でしたね。」 アーニャ「……(ビキッ!)」 ルチア「あの…五和さん?」 五和「悔しかったらあなたの全力を見せて下さいよ!どうせ大した事ないと思いますけど!!」 アーニャ「ナメてやがるな、よほど愉快な焼死体になりてぇと見える」 在庫一掃セール並みの安い挑発にキレたアーニャは空に向けて炎の剣を高くかざした すると、突然彼女の背中の翼が膨らみ始めた かざした炎剣も同時にさらに巨大化する そして、巨大な炎剣は球体となり、天にかざしている右手の上で太陽の様に激しく燃えている アーニャの持つ全ての力をこめた必殺の一撃を繰り出そうとしていた ルチア「で、五和さん、アレどうするんですか?」 五和「……ぶっちゃけヤバいかもしれません」 ルチア「おい!」 上空のアーニャから巨大な炎の塊が放たれた たぶん逃げても逃げ切れないだろう ルチア「オワタ」 五和「サーシャちゃん!今です!」 ミーシャ「……チッ」 同じく上空に浮かぶミーシャの黒曜石の様な巨大な翼が伸びてきて、巨大な炎の塊を簡単にズタズタに潰してしまった 五和「サーシャちゃん!やっぱり助けてくれましたね!」 ミーシャ「解一、私の名前はミーシャ。」 五和「ありがとうございますミーシャちゃん!」 ミーシャ「解ニ、別にあなたを助けたわけではない。あとちゃんはやめろ。」 ルチア(ガブリエルってツンデレなんですか?) アーニャ「……どういうこと?」 はっきり言ってここら一帯が焼け野原になってもおかしく無い様な大魔術なのに、 あの上空のミーシャと名乗るサーシャが呆気なく簡単に消してしまった 本当はプライドも一緒にズタズタにされた様な気分で落ち込んでいるが、次の攻撃に備えなければならない そう、あれだけの大技を使ったのだから、自分の力が弱っているのだ 巨大な羽も小さく萎んでしまっている アーニャ「じゅうでんかいし…」 アーニャ再び力を貯め始める 今度はあのミーシャごと愉快に素敵に吹き飛ばせる一撃をお見舞いしてやろうと しかし、彼女は気付いていない 背後の女子寮の屋上から、弱って力の落ちているアーニャを狙っている人物が居る事を 五和「今です!アンジェレネさん!」 アンジェレネ「発射ー!!」 アンジェレネの羽の生えた硬貨袋から、何枚もの硬貨が弾丸の様なスピードで飛び出てきた アーニャ「!?」 前に同じ攻撃をした時は、硬貨がアーニャの炎で溶かされてしまった しかし、今のアーニャは力が弱くなっている ガン!ゴン!と何枚もの硬貨がマシンガンの様に上空のアーニャの体に直撃する かなり痛そうだ アーニャ「くっ…まけない…」 ゴン! 最後の硬貨の一枚がアーニャの額に直撃した アーニャ「きゅう~」 そのまま上空で気を失い、墜落するアーニャ 五和「やりましたね♪」 五和は屋上のアンジェレネに大して親指を立てて合図する アンジェレネ「イエ―イ♪やりましたよ!私やりましたよ!」 同じく五和に向かって笑顔全開で親指を立てた アニェーゼ「やっと辿り着きましたよ…」 ヴェロニカ「ぐっ……!」 どうしてこうなった? 戦局は9割方殲滅白書に傾いていたはず もはや勝利は確定していたはず そして何よりも、イギリス清教のシスターは殆どが戦闘不能かあるいは戦死したはず なのに、なぜ生きてる?なぜ形勢が逆転してこちらが負けそうになっている? そしてなぜ、サーシャ・クロイツェフにガブリエルが? ヴェロニカ「ふざけてんじゃないわよ!何なのよこれは!」 アニェーゼ「神様が私らに勝利する様に仕向けた。戦争に勝った方が正義なんて考えは気に食わねえですけど、 それでもあんたらよりは私らの方が正しいのであり、勝利するのに相応しいと主が判断されたんですよ。」 ヴェロニカ「主の御考えを知った様な口で語るとか何様のつもりよ!」 アニェーゼ「アニェーゼ・サンクティス様のつもりですよ!!純粋に仲間を助けたいだけの私らが負けるなら、 そんな結末を与える神様なんて初めから信仰してねえんですよ!!」 蓮の杖に衝撃を与え、エーテルによる見えない攻撃をヴェロニカにぶつける しかし、双頭の鷲の防御力には及ばず、攻撃はアニェーゼへと還る アニェーゼ「へえ、修道女のくせに良いモン着てますねぇ。どこのブランドですか?」 ヴェロニカ「部隊の要なんだから当然でしょ?」 アニェーゼ「そうやって自分は安全な場所に立って、危険な事は部下にやらせるんですか。」 ヴェロニカ「それが私達の戦術なの。」 アニェーゼ「そうですかい。私には性に合わねえですよ!」 アニェーゼは再び蓮の杖を振るうが、当然の如く防がれ、逆に強風とかまいたちを浴びせれる ヴェロニカ「学習しないわねほんと。」 アニェーゼ「なるほど……四大元素を統べるエーテルも防がれるという事は、全ての属性の攻撃に対して強い耐性があるってわけですか。」 アニェーゼはかまいたちで付けられた頬の傷から流れる血を軽く拭った ヴェロニカ「当然、打撃斬撃もよ。たぶん核ミサイルも防げるんじゃない?」 アニェーゼ「サーシャ!」 ミーシャ「解一、サーシャじゃなくてミーシャだから。お前らいい加減名前覚えろよ。」 アニェーゼ「私に力を貸してください。」 ミーシャ「メンドクセ」 ヴェロニカ「大天使は神の命令無しに人を殺せないのよ。一体何をする気かしら?」 アニェーゼ「こうするんですよ!」 アニェーゼは蓮の杖を振った。 すると今までとは違い、青い光の塊が放出され、ヴェロニカに直撃する ヴェロニカ「だから、無駄だと言ってるのに。」 ヴェロニカは手を翻して風を起こし、アニェーゼめがけて投げつけた アニェーゼはそれを避け、再び同じ様に青い塊をヴェロニカにぶつけた ヴェロニカ「一体なにがしたいのかしら……」 そこでおかしな点に気付く さっきからアニェーゼの攻撃を受けているはずなのに、攻撃がアニェーゼ還らない 本当なら強風とかまいたちがアニェーゼを襲うはずだが、それが無いのだ アニェーゼ「くらいやがれってんですよぉ!」 ヴェロニカ「うっ……ッ!まさか!?」 気付いた時には、ヴェロニカの真っ白な修道服が青く染まっていた アニェーゼ「どうですか?大天使の水の加護は!」 アニェーゼの蓮の杖はエーテルを含む火、水、土、風の全ての属性を操る事が出来る それを利用し、水を司るミーシャことガブリエルの水の加護を、蓮の杖を仲介してぶつけていたのだ アニェーゼのぶつけていた青い光の塊は、攻撃ではなく回復魔術と同義であり、当然双頭の鷲はアニェーゼを排除しようとはしない アニェーゼ「大天使レベルの水の加護を受けたあなたの修道服は、水の攻撃に対しては最強の防御力を得ているでしょうね。 ですが、その代わり他の属性の攻撃に対しては極端に弱くなっているはずですよ。強すぎる加護というのも考え物ですね。」 アニェーゼ「さあ、覚悟は良いですか?万物照応。五大の元素の元の第五。平和と秩序の象徴『司教杖』を展開。 偶像の一。神の子と十字架の法則に従い、異なる物と異なる者を接続せよ。」 ヴェロニカ「クッ…負けて……たまるものかッ!!」 ヴェロニカは周囲に風を起こし、それを手に集める ヴェロニカ「この私が…常勝のヴェロニカ部隊が!負けてたまるものかァァッ!!!」 有らん限りの魔翌力を手に、体を引き裂く暴風をアニェーゼに向けて投げつけた 自分のプライドにかけて、彼女達の上司としてのプライドにかけて負けるわけにはいかない だが負けられない理由はアニェーゼにもある。 たった一カ月そこそこ一緒に生活してきただけの仲間 しかし、仲間であるという事に時間や素情など関係無い サーシャは命を懸けるに値する大切な仲間だ アニェーゼ「教えてあげますよ。私達が何度でも立ち上がれる理由を、例え無駄だと分かっていても立ち向かえる理由を。 この気持ちは、この絆は絶対に幻想なんかじゃないんですから。」 アニェーゼは渾身の力で蓮の杖を地面に叩きつけた あまりの力に蓮の杖の方が耐えられずに折れてしまう しかし、その威力は死ぬ事なく、 彼女の激情の全てをぶつけるかのようにヴェロニカに向かって飛んでいく アニェーゼ「大切な誰かのために戦う人間はァッ!!!ぜーーーーったいに負けたりしないんですよぉッッ!!!!」 水も火も土も風さえも、全ての属性を統べる万物の象徴たるエーテル その本気の一撃は、ヴェロニカの強風を粉々に穿つ そして彼女の激情の全てを込めた一撃は、権力と統治の象徴である双頭の鷲の加護なんかでは止められない アニェーゼの攻撃が直撃したヴェロニカは派手に吹き飛び、声を上げる事さえも敵わずに気絶した
https://w.atwiki.jp/seisoku-index/pages/793.html
禁書キャラの声優一覧 上条 当麻(かみじょう とうま) 声 - 阿部敦 インデックス 声 - 井口裕香 御坂 美琴(みさか みこと) 声 - 佐藤利奈 一方通行(アクセラレータ) 声 - 岡本信彦 土御門 元春(つちみかど もとはる) 声 - 勝杏里 青髪ピアス(あおがみ - ) 声 - 川原慶久 姫神 秋沙(ひめがみ あいさ) 声 - 能登麻美子 吹寄 制理(ふきよせ せいり) 声 - 藤村歩 月詠 小萌(つくよみ こもえ) 声 - こやまきみこ 黄泉川 愛穂(よみかわ あいほ) 声 - 甲斐田裕子 白井 黒子(しらい くろこ) 声 - 新井里美 婚后 光子(こんごう みつこ) 声 - 寿美菜子 薄絹 休味(うすきぬ やすみ) 声 - 升望 寮監(りょうかん) 声 - 尾小平志津香(『禁書目録』)、生天目仁美(『超電磁砲』) 初春 飾利(ういはる かざり) 声 - 豊崎愛生 土御門 舞夏(つちみかど まいか) 声 - 福圓美里 海原 光貴(うなばら みつき) 声 - 岸尾だいすけ 妹達(シスターズ) 声 - ささきのぞみ 打ち止め(ラストオーダー) 声 - 日高里菜 アレイスター=クロウリー 声 - 関俊彦 風斬 氷華(かざきり ひょうか) 声 - 阿澄佳奈 木原 数多(きはら あまた) 声 - 藤原啓治 結標 淡希(むすじめ あわき) 声 - 櫻井浩美 麦野 沈利(むぎの しずり) 声 - 小清水亜美 冥土帰し(ヘヴンキャンセラー) 声 - 仲野裕 芳川 桔梗(よしかわ ききょう) 声 - 冬馬由美 天井 亜雄(あまい あお) 声 - 鈴木達央 ステイル=マグヌス 声 - 谷山紀章 神裂 火織(かんざき かおり) 声 - 伊藤静 シェリー=クロムウェル 声 - 渡辺明乃 ローラ=スチュアート 声 - 川澄綾子 オルソラ=アクィナス 声 - 遠藤綾 建宮 斎字(たてみや さいじ) 声 - 鳥海浩輔 五和(いつわ) 声 - 茅野愛衣 浦上(うらがみ) 声 - 渕上舞 アニェーゼ=サンクティス 声 - 釘宮理恵 ルチア 声 - 伊瀬茉莉也 アンジェレネ 声 - 片岡あづさ アガター 声 - 渕上舞 マタイ=リース 声 - 木村雅史 リドヴィア=ロレンツェッティ 声 - 佐久間レイ ビアージオ=ブゾーニ 声 - 若本規夫 前方のヴェント 声 - 平松晶子 後方のアックア 声 - 東地宏樹 サーシャ=クロイツェフ 声 - 寺崎裕香 アウレオルス=イザード 声 - 杉田智和 闇咲 逢魔(やみさか おうま) 声 - 中田譲治 オリアナ=トムソン 声 - 柚木涼香 テルノア 声 - 石塚さより ラクーシャ 声 - 桑島法子 ハリーシャ 声 - 岡村明美 上条 刀夜(かみじょう とうや) 声 - 乃村健次 上条 詩菜(かみじょう しいな) 声 - 井上喜久子 御坂 美鈴(みさか みすず) 声 - 篠原恵美 スフィンクス 声 - 虎太郎 一一 一(ひとつい はじめ) 声 - 谷山紀章
https://w.atwiki.jp/ws_wiki/pages/3823.html
ID/W13-118 カード名:おやすみ インデックス カテゴリ:キャラ 色:青 レベル:0 コスト:0 トリガー:0 パワー:500 ソウル:1 特徴:《魔法》?・《本》? 【永】 他のあなたの前列の中央の枠のキャラに、パワーを+1000。 【起】集中[① あなたのキャラを2枚レストする] あなたは自分の山札の上から4枚をめくり、控え室に置く。それらのカードのクライマックス1枚につき、あなたは自分の山札を見て《魔法》?のキャラを1枚まで選んで相手に見せ、手札に加え、その山札をシャッフルする。 レアリティ:PR ID/W10-097 カード名:回復魔術 カテゴリ:イベント 色:青 レベル:3 コスト:2 トリガー:0● ●このカードは、あなたの《本》のキャラが1枚以下なら、手札からプレイできない。あなたは自分のクロックの上から2枚を、控え室に置く。このカードを思い出にする。 テーブルの上に作った神殿は、 この部屋とリンクしています レアリティ:U illust. 特徴 禁書目録&超電磁砲の特徴《魔法》を持つ魔術サイドを中心としたデッキタイプ。 2015年のカムバックキャンペーンによって大幅に強化されている。 構築 メインとなる「インデックス」の多くは《本》も持つことから、強力なイベント回復魔術も無理なく採用できる。 基本的に特徴《魔法》を中心に構築したいが、お姉さまへの憧れ 黒子や一つ屋根の下 美琴&黒子などの【超能力デッキ】で使われる優秀なカードを少数なら出張させてもいい。また賑やかな昼餐 インデックスは「当麻」ネームも参照してくれるので、脅威に立ち向かう当麻などの上条さんを採用することもできる。 レベル0 前列 ・いつもの光景 当麻&インデックス 3500アタッカー。 デメリット持ちだが、山札を削れるメリットにもなりうる。デッキトップを確認できるのも便利。 ・体操着のインデックス キャラレストでパワーの上がるアタッカー。謎の純白少女 インデックスとの相性が抜群。 後列 ・賑やかな昼餐 インデックス アドバンテージの得られるサーチ式集中を持つこのデッキのキーカード。 確実に引くためにも複数枚採用したい。 ・チア衣装のインデックス 応援に加えて2コストでのサーチ効果を持つ。強力だがコストの枯渇には注意。 ・謎の純白少女 インデックス 起動能力を使ったときに《魔法》?のキャラに+1000パンプできる。 体操着のインデックスとの相性が抜群。 レベル1 ・氷華&インデックス 身代わり能力持ち。猛獣少女 インデックスの絆にも対応している。 ・冬の贈り物 インデックス アタックされた時に手札を一枚捨てることでパワーが2000上がる1/0/5000。手札を擬似的な助太刀として運用でき、相手にプレッシャーを掛けられる。 ・物欲しげなインデックス キャラをレストさせるとパワーが上昇し、相手キャラをリバースさせると次のターンまで思い出に飛ぶ。 賑やかな昼餐 インデックスやチア衣装のインデックスとの相性は最悪なので注意。 ・幼児体型 インデックス パワー上昇と手札交換を持つ扱いやすいレベル1。 ・建宮 斎字 盤面が《魔法》?単なら1/0/2000になる助太刀。 謎の純白少女 インデックスの効果と併用することにより、早い段階からパワー面でのプレッシャーをかけることが出来る。 レベル2 ・前方のヴェント 擬似リフレッシュ持ち。その優秀さは説明不要だろう。 ・天草式十字凄教 五和 《魔法》?持ちレベル応援。建宮 斎字との相性が抜群。 ・屋台の誘惑 山札から2枚サーチできる優秀なイベント。 レベル3 ・賑やかな昼餐 インデックス 早出しに加えてCIP回復を持つレベル3。 パンプ効果によって早出し後も生き残りやすい。 ・脅威に立ち向かう当麻 3/2にしてソウル3の上条さん。ショット効果とソウル上昇により、このデッキに不足している詰め手段を補ってくれるだろう。 相変わらずサイドアタックに弱い上に相打ちにも無力なので注意。 ・完全記憶能力 インデックス ソウル減点と2レベル以上相手リバース時に1ドローを持つレベル3。 ・銀髪碧眼のシスターさん CXシナジーでの回復を持ち、相手ターンまで続くCIP強化により相手ターンでの回復魔術出力を安定させるレベル3。 完全記憶能力 インデックスを強化することにより防御機能も増すだろう。 ・回復魔術 このデッキのキーカード。インデックスがメインとなるこのデッキでは発動条件を満たすのは容易だろう。 参考 2015年カムバックキャンペーン追加後 BCF2015 in 横浜 トリオサバイバル1位 ブシロードカードファイト2011 in 大阪地区決勝大会 ヴァイスシュヴァルツ新春トリオ祭 Dブロック第3位(2013/1/13) 以下コメント一覧 シリル -- (名無しさん) 2011-01-14 17 35 07 ↑ミスったwwスマン -- (名無しさん) 2011-01-14 17 35 36 これホントどうすんの?作成者は何をしてるんだ? -- (名無しさん) 2011-01-19 12 34 43 どやぁ -- (どやぁ) 2011-07-31 14 13 27 一応とある青単が大阪で優勝したし、今となっては禁書魔術サイドデッキは一応アリなんだよな 禁書ネオスタにして最初から作りなおせばいいんじゃね ならお前がやれって言われるのはわかってるが -- (名無しさん) 2011-07-31 15 33 07 言われる前に簡単に作っておいた いや、全部消して作り直しはマズイだろ、と思ったら復元でもしてくれ キーカードはとりあえず個人的に必須レベルのものだけ書いた 他にも追加していってくれ デッキレシピは誰かうp頼んだ いろいろ投げっぱなしで悪い -- (名無しさん) 2011-07-31 16 06 17 「建宮 斎字」は1/0の2000助太刀ですよね・・・ -- (名無しさん) 2011-07-31 18 49 39 ↑1/12000助太刀ですよ にしても間違いだらけだなぁこのデッキレシピ -- (名無しさん) 2011-07-31 19 28 20 ↑すみません。「このデッキでは」が抜けてました -- (名無しさん) 2011-07-31 20 17 28 別に魔術デッキなんて作ったことも考えたこともねえから間違いが多いのは許せ 文句あるなら以前の復元してくれ ↑他にどこ間違いがあるんだよ -- (名無しさん) 2011-07-31 20 20 43 大阪の使用者はジャッジキルしまくって勝っただけって聞いたけどどうなん? -- (名無しさん) 2011-07-31 21 08 18 ↑2間違えじゃなくって足らないだった すまん 一目見たら能力が分かる程度には色々付け加えてみた -- (名無しさん) 2011-07-31 21 31 49 L3キャラは青にこだわる必要ないから黄色のTD限定当麻インデックスがパワーは高いし、黄色には変化する日常一方通行もあるからパワーゲーができるようになる。 -- (名無しさん) 2011-08-01 10 56 46 いかにも夏休みって感じのデッキやなwww -- (名無しさん) 2011-08-01 12 03 10 いかにも夏休みって感じのコメントやな(苦笑) TD当麻インデックスはありだと思うが、一方通行はコンセプトが違うのでは?デッキ名的に -- (名無しさん) 2011-08-01 14 14 19 全部のキャラを魔法サイドに絞る必要があるなら不適切だけど、普通に勝ちに行くなら…ねぇ?魔法って書いてあって黄色で一方通行と同じ効果のカードあるならそっちを使えばいいんだろうけどさ…。俺のとある単青黄t赤の黄色は当麻インデックス4枚、変化日常4枚、竜王の顎1枚だけで十分回るし回復魔術も撃てるよ。 -- (名無しさん) 2011-08-01 20 41 24 これってギミックがどうこう言うよりもただの嫁デッキだろ。大阪で入賞したときのデッキレシピはほぼインデックス単だし、一部なんで入ってるか分からないカードは絵が可愛いからとかサインだからとかそんな理由で入れてるだけな気がする -- (名無しさん) 2012-06-04 04 37 44 ↑ただ単に魔術側の優秀なカードがインデックスに集中しているだけだと思うよ -- (名無しさん) 2013-01-26 15 33 30 竜王の顎と氷華&インデックスの連携は結構優秀じゃない?相手のターンで、一気に二枚を退却するじゃない?最近リバースでサーチ能力を持ちキャラが多いし。 -- (名無しさん) 2015-09-29 21 24 16 移動黒子と屋根下はガチなら入るんじゃないかな?皆入れてるし。 -- (名無しさん) 2015-10-26 10 42 36 名前 コメント すべてのコメントを見る コメントのログはこちらから。 コメントログ【魔術サイドデッキ】001
https://w.atwiki.jp/deruta_sanbaka/pages/137.html
主賓一行が東京を満喫してる頃、パーティー会場の方はというと、 「パーティー会場の方はもう完成のようね。会場を替えたから間に合わないかと思ったけど」 「ええ。まさか建宮が私の部下達を呼び寄せてくれていたとは思いもしませんでした」 初春と神裂が建宮を迎えに行っていた頃、建宮は助っ人として今こちらに来れる天草式十字凄教のメンバーを呼び寄せていたのだ。 その手際の良さに感心した初春に建宮が手を握りそうになったが神裂に止められたのはご愛嬌。 残るのは料理、一方通行&青ピ&浜面に着せるコスプレ衣装、それとゲームの案くらいのもの。 「料理の方は火織ちゃんのお陰で無事に終わりそうね。色々な国の人がいるからバリエーション増やすのは大変だったけど」 「でも美鈴さん的には作り甲斐はあったでしょ? それに火織さんも楽しそうでしたし~」 「ええ、まあ(火織と名前で呼ばれるのはどうにも照れくさいですね……)」 料理の方は神裂、美鈴、詩菜の力で無事に終わりそうなのだが問題は残りの二つだったりする。 「何やってるんですか建宮さん! あれだけ大見得切っておいてまだ3人決まってないなんて!」 「仕方ないのよ! ぶっちゃけ男のコスプレを選ぶなんて初めてなのよな! やる気湧かないのよ!」 「超役に立たないですね、この超おっさん。まあ浜面だったら超知り合いですし、案が超無いこともないですけど」 絹旗が出した浜面のコスプレの案を受け入れた初春、佐天、建宮だが、まだ二人残ってると思うと気が滅入る。 そこへ更に追い討ちをかけるようにゲームの案を考えようとしたのだが初春の一声。 「ゲームですけど私達がやるんじゃなくて主賓の五組で誰が一番ラブラブかを競ってもらう形でいいですよね?」 「それでいいんじゃない? 何か御坂さん達が白熱しそうだし」 「私も超賛成です。これなら後は何をするかを超決めるだけですから難しくなさそうです」 と、言うことに。 「さすが我が愛しの飾利姫! うむ! この気持ちを今度こそ我が抱擁にて伝えるのよな!」 その後、建宮は佐天の金的&絹旗の『窒素装甲』でのボディーブロー&神裂の七閃を喰らう羽目に。 この流れ、実は何度もあったので最初は天草式メンバーも驚いていたが今は冷めた目でその光景を眺める程度の反応しかしない。 「あらら、斎字君も飽きないわねー。ま、飾利ちゃんが元気なのはいいことだけど。ところで詩菜さん、誰にメールしてるの?」 「当麻さんと美琴さんに。私もあの3人を娘みたいに思ってるから。」 当麻さんに妹が出来ましたよ メールはこの一文のみ。 「なななななな、美琴の親のみならず家の親まで。そんなに付き合い始めたのが嬉しかったのか!?」 「どうしたンだァ?」 「いやいやなんでもないでせうよ」 「にゃー。じゃあ携帯をみせるにゃ」 「ちょっとまてぇぇぇええええええ」 上条の抵抗もむなしく土御門と一方通行に抑えられて青ピに携帯をとられた。 「これはおめでたいことやん」 「両家の親も二人を祝福するために頑張ったってかァ」 「だったらせっかくだし玩具買っていこうぜ」 絶妙なタイミングで余計な提案をする浜面。 「それはいい案だぜい」 「あのー。ちょっと待って欲しいんですが」 「なに買うんや?」 「決まってるぜい。ここは秋葉原だにゃ」 土御門が買おうとしたのは... 「じゃーん!!メイドごっこセットだぜい!!」 「「「「却下!!!」」」」 「にゃ!?にゃぜに!?こんな素晴らしい時代の象徴を新しく生まれる命に引き継いであげようとは思わないのかにゃーっ!!??」 「それのどこが『素晴らしい時代の象徴』なんだ?」 「つっちーさすがにそれはあかんで。やっぱりここは……」 そう言って青ピが指さしたものは…… 「ナースさんごっこセットやでー!!」 「「「どこがどう違うんだ!!??」」」 「な、なんやて!?天と地ほどの違いが有りまんがな!!」 「教育上よろしくねェのは共通だろォが!!」 「なあ、ここは女性陣の考えを聞いた方がいいんじゃねえか?」 「おっ、浜面いいこと言うじゃねえか。」 上条はケータイを取り出す。 メールを見た美琴 「ええええええええええええ!!」 「お姉様!!どうなさったんですの!?」 「耳にくる」 「ええええええええ!!上条くんの所にもできちゃったの!?」 「「「ええええええええ!!」」」 「しょうがない、妹 義妹の玩具を選んであげますか。」 「「「「おー!!」」」」 男性陣への返信をすっかり忘れてしまっていた。 ゆえに 上条は待っていたのだが美琴から返信は来ない。 土御門、青ピ、浜面も同様に返信が来ない。 「仕方ねェ。玩具のことならガキに聞けばいいンじゃねェかァ?」 「「「「それは名案だ!!」」」」 一方通行が打ち止めに電話をかけると予想に反してすぐに出た。 「突然だけどよォ。テメェなら玩具もらえンならなに貰ったら嬉いンだァ」 『あなたからなら何でも嬉しいよ、ってミサカはミサカは照れながらも言ってみる』 「そういう意味じゃなくて俺からじゃなくてもなに貰ったら嬉しいンだ?」 『ミサカはアニメも好きだしお人形も好きだし普通の女の子と一緒だよー、ってミサカはミサカは電話を切ろうとしてみたり』 「だから普通の女の子はなn...切られた」 「で、なんて言ってはった?」 「アニメと人形」 「「「「............フィギュアだ!!」」」」 この声は勿論一方通行以外の全員。 「じゃあかみやんが行ってた店に戻るぜい」 数分後…。 「外じゃあ『とある魔術の禁書目録』や『とある科学の超電磁砲』 なんて本やマンガやアニメがあるなんてな…」 「随分とリアルだよな…」 「もしかしてカミやんが記憶喪失だってことも本当かもにゃー」 「な!!」 「冗談だぜい!!」 「それにしても本当にリアルだよなァ…」 「「「「だな…」」」」
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/289.html
主賓一行が東京を満喫してる頃、パーティー会場の方はというと、 「パーティー会場の方はもう完成のようね。会場を替えたから間に合わないかと思ったけど」 「ええ。まさか建宮が私の部下達を呼び寄せてくれていたとは思いもしませんでした」 初春と神裂が建宮を迎えに行っていた頃、建宮は助っ人として今こちらに来れる天草式十字凄教のメンバーを呼び寄せていたのだ。 その手際の良さに感心した初春に建宮が手を握りそうになったが神裂に止められたのはご愛嬌。 残るのは料理、一方通行&青ピ&浜面に着せるコスプレ衣装、それとゲームの案くらいのもの。 「料理の方は火織ちゃんのお陰で無事に終わりそうね。色々な国の人がいるからバリエーション増やすのは大変だったけど」 「でも美鈴さん的には作り甲斐はあったでしょ? それに火織さんも楽しそうでしたし~」 「ええ、まあ(火織と名前で呼ばれるのはどうにも照れくさいですね……)」 料理の方は神裂、美鈴、詩菜の力で無事に終わりそうなのだが問題は残りの二つだったりする。 「何やってるんですか建宮さん! あれだけ大見得切っておいてまだ3人決まってないなんて!」 「仕方ないのよ! ぶっちゃけ男のコスプレを選ぶなんて初めてなのよな! やる気湧かないのよ!」 「超役に立たないですね、この超おっさん。まあ浜面だったら超知り合いですし、案が超無いこともないですけど」 絹旗が出した浜面のコスプレの案を受け入れた初春、佐天、建宮だが、まだ二人残ってると思うと気が滅入る。 そこへ更に追い討ちをかけるようにゲームの案を考えようとしたのだが初春の一声。 「ゲームですけど私達がやるんじゃなくて主賓の五組で誰が一番ラブラブかを競ってもらう形でいいですよね?」 「それでいいんじゃない? 何か御坂さん達が白熱しそうだし」 「私も超賛成です。これなら後は何をするかを超決めるだけですから難しくなさそうです」 と、言うことに。 「さすが我が愛しの飾利姫! うむ! この気持ちを今度こそ我が抱擁にて伝えるのよな!」 その後、建宮は佐天の金的&絹旗の『窒素装甲』でのボディーブロー&神裂の七閃を喰らう羽目に。 この流れ、実は何度もあったので最初は天草式メンバーも驚いていたが今は冷めた目でその光景を眺める程度の反応しかしない。 「あらら、斎字君も飽きないわねー。ま、飾利ちゃんが元気なのはいいことだけど。ところで詩菜さん、誰にメールしてるの?」 「当麻さんと美琴さんに。私もあの3人を娘みたいに思ってるから。」 当麻さんに妹が出来ましたよ メールはこの一文のみ。 「なななななな、美琴の親のみならず家の親まで。そんなに付き合い始めたのが嬉しかったのか!?」 「どうしたンだァ?」 「いやいやなんでもないでせうよ」 「にゃー。じゃあ携帯をみせるにゃ」 「ちょっとまてぇぇぇええええええ」 上条の抵抗もむなしく土御門と一方通行に抑えられて青ピに携帯をとられた。 「これはおめでたいことやん」 「両家の親も二人を祝福するために頑張ったってかァ」 「だったらせっかくだし玩具買っていこうぜ」 絶妙なタイミングで余計な提案をする浜面。 「それはいい案だぜい」 「あのー。ちょっと待って欲しいんですが」 「なに買うんや?」 「決まってるぜい。ここは秋葉原だにゃ」 土御門が買おうとしたのは... 「じゃーん!!メイドごっこセットだぜい!!」 「「「「却下!!!」」」」 「にゃ!?にゃぜに!?こんな素晴らしい時代の象徴を新しく生まれる命に引き継いであげようとは思わないのかにゃーっ!!??」 「それのどこが『素晴らしい時代の象徴』なんだ?」 「つっちーさすがにそれはあかんで。やっぱりここは……」 そう言って青ピが指さしたものは…… 「ナースさんごっこセットやでー!!」 「「「どこがどう違うんだ!!??」」」 「な、なんやて!?天と地ほどの違いが有りまんがな!!」 「教育上よろしくねェのは共通だろォが!!」 「なあ、ここは女性陣の考えを聞いた方がいいんじゃねえか?」 「おっ、浜面いいこと言うじゃねえか。」 上条はケータイを取り出す。 メールを見た美琴 「ええええええええええええ!!」 「お姉様!!どうなさったんですの!?」 「耳にくる」 「ええええええええ!!上条くんの所にもできちゃったの!?」 「「「ええええええええ!!」」」 「しょうがない、妹 義妹の玩具を選んであげますか。」 「「「「おー!!」」」」 男性陣への返信をすっかり忘れてしまっていた。 ゆえに 上条は待っていたのだが美琴から返信は来ない。 土御門、青ピ、浜面も同様に返信が来ない。 「仕方ねェ。玩具のことならガキに聞けばいいンじゃねェかァ?」 「「「「それは名案だ!!」」」」 一方通行が打ち止めに電話をかけると予想に反してすぐに出た。 「突然だけどよォ。テメェなら玩具もらえンならなに貰ったら嬉いンだァ」 『あなたからなら何でも嬉しいよ、ってミサカはミサカは照れながらも言ってみる』 「そういう意味じゃなくて俺からじゃなくてもなに貰ったら嬉しいンだ?」 『ミサカはアニメも好きだしお人形も好きだし普通の女の子と一緒だよー、ってミサカはミサカは電話を切ろうとしてみたり』 「だから普通の女の子はなn...切られた」 「で、なんて言ってはった?」 「アニメと人形」 「「「「............フィギュアだ!!」」」」 この声は勿論一方通行以外の全員。 「じゃあかみやんが行ってた店に戻るぜい」 数分後…。 「外じゃあ『とある魔術の禁書目録』や『とある科学の超電磁砲』 なんて本やマンガやアニメがあるなんてな…」 「随分とリアルだよな…」 「もしかしてカミやんが記憶喪失だってことも本当かもにゃー」 「な!!」 「冗談だぜい!!」 「それにしても本当にリアルだよなァ…」 「「「「だな…」」」」