約 488 件
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/358.html
撮影会はつつがなく(?)進行した。 土白・浜滝ペアは普通にそのまま順調に撮影された。 …女性陣がいつも以上に積極的だったのは別として。 青黒は 「は~い、お二人さんキスしましょう~♪」 「「えええー!!」」 とか 「じゃあ次はお姫様だっこしてキスして下さ~い♪」 「これでキスは10回目やん!!」 「しかも写真ですのっ!!初春はやはり鬼ですわっ!!!」 「何か言いましたかお二人さん♪」 「「何でもありませんっ!!」」 初春から来るす様じいオーラに押された二人は即答。 一打は 「こらクソガキィ!!初春の野郎が言うからってそこまでやるなぁーっ!!!!」 そして上琴は… 「おーい、美琴ー起きろー」 「…ふにゃ?」 「やっと起きましたよこのお嬢様は…」 「ええと…なんで私寝てたの…?」 「超すいません!!私が渡した超薬のせいでして…(本当はイギリスで買った超アイリッシュウイスキーですけど)」 「あれって眠気を誘うのね…まあいいわ。そういえばパーティーは!?」 「超中止になりました…。」 「そっ、そんな~」ガクッ… 「でもな美琴、俺達はこれから写真撮影だ!!」 「写真撮影?」 「この格好でな!!」 「え!!って私この格好で寝ちゃってたの!?」 「まあそんなことより皆待ってんだ。早く行こうぜ?」 「う、うん…でもさ、こんな格好で写真って本当に結婚したみたいじゃない?/////////」 「本当だったら嬉しいけどな/////////」 「当麻///」 「美琴///」 チュッ、レロレロレロ…カシャッ!! カシャッっというのは二人のキスは写真になった音である。 「「/////////!!??」」 「いい写真が取れました~♪」 上琴の決定的なラブラブ写真を撮ったのは初春で、その顔は清清しいほどの笑顔だった。 初春の後ろでは主賓4組と主催者一行が初春と同じように笑顔でこちらを見ている。 「やっぱり最後は当麻お兄ちゃんと美琴お姉さんですね~♪ しかも一番ラブラブな写真が撮れるなんて素敵です!」 「ちょ、飾利! お願いだからそのカメラの画像、今すぐ消去しなさい!」 「そうだぞ初は……飾利! キスした写真は処分しなくていいけど、ちゃんとした写真を撮ってくれ!」 「と、当麻何言ってるのよ!」 「はっ! しまったつい本音が! 上条さん的には心苦しいけどやっぱり写真は後で処分して下さい!」 本音を漏らす当麻とそれに怒る美琴の姿は面白いのでしばらく眺めていたい初春だったが、聞いておきたいことを聞くことにした。 「お二人に聞きたいことがあります。今日のパーティー、楽しかったですか?」 「まあ、色々恥ずかしい目に遭ったし、きついこともあったけど、こうしてワイワイ騒げるのっていいよな。それに美琴のウエディングドレス姿も拝めた♪ つまり……」 「そうねー、当麻には泣かされるし飾利にはおもちゃにされて疲れたかな。でもみんなとこんな風に過ごせたし、当麻のカッコいい姿も見れたことは収穫ね♪ ま、つまりはさ……」 「「最高に楽しいクリスマスをありがとう!!」」 一番祝福したかった二人から極上の笑顔と共に感謝の言葉をもらった初春は、嬉しくて涙が出そうになったが何とか堪える。 しかしこのままでは涙が流れそうになったので初春がごまかすために取った行動は、 「「うわっ!! ちょ、飾利!!」」 「こちらこそありがとうございました! 当麻お兄ちゃんに美琴お姉さん、私はお二人を心から祝福します♪ 今日は私も楽しかったですよ♪」 「あー、初春ばっかりずるーい! 私も二人の妹なんだからっ!」 「じゃあそうゆうことなら私も超権利があります。ここは妹として超抱きついてやりますよ♪」 「みんなだけにいい思いはさせないってミサカはミサカはパパとママの背後から抱きついてみたり!」 当麻と美琴に思いっきりダイブを敢行した。 それにつられて佐天と絹旗も上琴にダイブし、打ち止めは上琴の背後から抱きついた。 その光景を写真に収めたのは初春が手放したデジカメをキャッチしていた美鈴だった。 「あらあら、美鈴さん的にはあの光景を当麻さんと美琴さんの未来予想図とか思ってるのかしら?」 「ええ、それもそんなに遠くない未来ね。その時にはきっともっと面白い写真が撮れそうだけど♪ あっ……」 美鈴が反射的に撮った写真、それは初春にどさくさに紛れて抱きつこうとした建宮が家の外にぶっ飛ばされた写真だった。 その後、上琴はちゃんとした写真を撮ってもらい、無事に記念写真撮影は終わった。 しかしパーティーで騒いで皆ヘトヘトだったので、すでに帰宅した招待客を除いて上琴新居、上条家、御坂家にそれぞれ分かれてお泊りすることに。 「火織ちゃん、あの子達はもう寝ちゃった?」 「はい。仲良く川の字になってすぐに眠りました。よほど疲れていたのでしょう」 「そうね~。朝の5時半に起こされてずーっとパーティーの為に頑張ってたもの」 御坂家には美鈴、詩菜、神裂、対馬、浦上、黄泉川、芳川、そして中学生トリオの10名、上条家には刀夜、旅掛、建宮、天草式の男衆が泊まっている。 主賓五組はというと上琴新居でお泊りだが大人達、特に教師の黄泉川から羽目を外すなと厳命されている。 ちなみにその黄泉川だが芳川と共に一番酒を飲んでいたために、二人揃ってすでに夢の中である。 「対馬さんもご苦労さま~。招待客なのに私達のお手伝いをしてくれて~」 「い、いえっ! こちらこそウチのバカ建宮がお世話にというかご迷惑をかけてしまって……」 「そうでもないわよ。斎字くんのお陰で飾利ちゃんも元気になってくれたから。迷惑どころか感謝してるくらいよ♪」 「奥様方にそう言ってもらえるなら……。あの、ところでプリエステスはさっきから何を?」 対馬が神裂に話を振ると、神裂は小声で誰かと電話で会話中だった。 そして大声で怒鳴った後で電話を切ると、ゲンナリした表情でこちらを振り返る。 「プリエステス、さっきのお電話の相手は?」 「ああ、最大主教ですよ。あの馬鹿ときたらしばらく学園都市で待機しろと言ってきました。しかも私、建宮、五和、浦上、そして対馬、あなただけで」 「……何ですか、その作為的な面子。まあ入院中の五和が退院した時のことを考えれば妥当な気もしますが。他の天草式メンバーはイギリスに?」 対馬の質問に神裂は頷いた後でステイルとインデックスをイギリスに召集することも伝える。 報告が終わった神裂をニヤニヤして見ていたのは美鈴。 「嫌そうなわりには火織ちゃん、ちょっと嬉しそうね。もしかして飾利ちゃんがお気に入りになっちゃったとか?」 「あらあら、火織さん的には飾利さんのことを妹みたいに思っちゃったりするのかしら~?」 「そっ、そのようなことは! 確かに初春は小さくて人懐っこくて何かこう小動物みたいな感じがしますけど決して邪なことは……」 (プリエステスもどうやら重症のようね……。バカ建宮のような考えは持ってなくて安心したけど。しかし五和と初春は会わせるのは危険な気がする……) 「わ、私はですね、そう! 建宮が初春によからぬことをしでかさないか心配してるだけです!」 対馬の心配通り、神裂も初春のことをいたく気に入ってしまいローラの命令を内心では喜んでいるが、五和と初春の出会いで頭を悩ませるのは先の話。 ちなみに学園都市待機を心から喜びそうな建宮だが刀夜、旅掛の酒を飲むペースについていけず他の天草式メンバー共々すでにグロッキー状態。 こうして御坂家、上条家での夜は更けていく中、上琴新居でお泊り中の主賓五組はというと…… 「あ~、なぜベットが一つなんでせうか?」 「ここは家主の当麻と私が…」 「滝壺は今病み上がりなんだ!!熱でも出たらどうする!!」 「こっちはガキが居ンだよォ!!風邪ひいたら責任取ってくれるンですかァ!?」 「にゃー!!こっちは能力の使い過ぎで月夜がダウンしてるっての!!」 「あかん!!こっちはベッドを使う口実が無いやん!!」 今ここに、ベッドで寝ようとしている者達の口論が始まる!! 「俺はこの家の家主だ!!俺と美琴がここに寝る権利があるはずだ!!」 「こっちは能力使い過ぎて顔を赤くして、ハァハァしている月夜がいるにゃー!!」 「ハァハァ余計だよ……」 「そンなら子供はどォすンだァ?ソファーの上に寝て次の日風邪ひきましたってオチかァ!?」 「滝壺は身体が弱いの!!次の日大惨事もあり得るんだよ!!」 この醜い口論に口が出せない男が一人いる。 「○○様も参加なさって下さいな! このクリスマスという聖夜にわたくし達は結ばれる運命なのですわ、ベッドで!」 「せやけど黒子はん、黄泉川センセーにそないなことしたらアカン言われてるやん。それにボクは……ってカミやん、携帯鳴ってるで」 ここにいる男共の中で唯一平和な日常にいる青ピは横で黒子にせかされつつも、この争いに参加出来ずにいた。 だからなのか、誰も気付けなかった当麻の携帯の着信音が青ピにはちゃんと聴こえてきた。 「あっ、ホントだ。はいもしもし……って母さん? どうしたんだよこんな時間に」 『実はね、そっちの新居にちゃんと人数分の寝具があることを伝え忘れてたの~』 「マジですか! そうゆうことは早く言ってくれよ! おかげでこっちは無駄な争いしちまったじゃねーか! で、その寝具はどこにあるんだ?」 詩菜から蒲団のある部屋の説明を受けた当麻は、残る皆にその場所を教えた。 各自、どの部屋で寝るのかを話し合いですんなりと決め終わると最後に詩菜から釘刺しを受ける。 『当麻さん、皆さんに伝えてくれるかしら? いくら聖夜でもオイタはダメだって♪ もしオイタをしたらどうなるか分かってますよね~? じゃあおやすみ~』 そうして詩菜が電話を切った後で、当麻は詩菜からの伝言を皆に伝えるとそれぞれに『誰か』を思い出したのか、大人しく頷いた。 それから各々指定された寝室(客間)へ移動を始め、寝支度を整えてすぐさま蒲団に潜り込んだ。 ほとんどのカップルがすぐさま眠りにつく中、自分達の寝室のベッドの中で上琴は今日のこと、そしてこれからのことを考え出す。 「今日は美琴と恋人になって初めてのクリスマスなわけですが、色んなことがありましたなー」 「本当に色んなことがあったわねー。まさか親達公認の新しい妹が三人も出来るなんてね……いや、悪いわけじゃないんだけど」 「ちなみに美琴が寝てる間にあの三人から名前呼び捨て、および学園都市でもこの関係を続けると言われたぞ。断る理由無かったから断ってないけど」 「ま、いいんじゃない。当麻がそうしたのはあの三人といると楽しいって思ったからでしょ? 私も楽しいし。このままでいきましょ♪」 二人がまず思い浮かべたのは、義理とはいえ妹が三人も増えたという普通の家庭ではありえない現実だった。 そのことを楽しげに思い浮かべた後で次に二人が考え出したのは、 「学園都市に帰ったらインデックスが待ってるっぽい……。五和は入院してるらしいけど、無事に正月が迎えられるか心配になってきたな」 「大丈夫よ! 当麻のことは私が守ってあげるから! あの子には悪いけど姿見かけたら問答無用で焼いてあげるわよ、ギリギリ死なない程度に♪」 「サーチ&デストロイ精神ですか美琴さん! インデックスはあれでも俺の仲間だからせめて半殺し手前まで加減してやって!」 学園都市で待ち構えてるであろう因縁の二人なのだが、インデックスは二人が帰ってくる頃にはイギリスに向かっているので会えない。 二人が一通りインデックスの対処方法を討論したことで本格的に疲れてきたので、最後にあることを約束する。 「ねえ当麻。来年からはさ、イブは二人っきり。クリスマスはこうやってみんなでパーティーしない? 面子もほとんど同じで」 「そうだなー。こんなパーティーがこれからずーっとあるのならクリスマスは楽しいだろうな。で、俺達もいつかは結婚して子供も一緒に騒いだりするのかねー」 「こ、ここここ子供っ! ……うん、そうだね。と、当麻が欲しいんなら私が高校生、ううん、16になってから作っても……いいわよ」 「ちょ、ちょっと待て! み、美琴さん、あなたいきなり飛躍しすぎですから! ……もしかしてまだ酔っ払っていらっしゃいますか?」 「失礼ねー酔ってないわよ。というか冗談よ、冗談。早く子供が欲しいのは本当だけど、そんなに焦ってもいないから安心ムギュッ!」 洒落になってないレベルの冗談を言った美琴にお返しとばかりに当麻は美琴を不意打ち的に抱きしめる。 いきなりのことに驚いた美琴だが、時間が経つにつれて落ち着きを取り戻すとそっと当麻の背中に腕を回す。 「なあ美琴、俺達は俺達のペースでやっていこうぜ。なんたって俺達、これからずーっと死ぬまで一緒なんだからさ。俺は美琴を手離す気はさらさら無いので♪」 「その台詞、聞いてるこっちが恥ずかしくなってくるわよ……。でも当麻の気持ちは嬉しいし、私も当麻と同じ気持ち。私も当麻から離れてあげないんだから♪」 「「これからもずーっと末永くよろしくお願いします」」 最後に二人は目を合わせたまま、優しいキスをすると抱き合いながら心地よい眠りにつくのだった。 こうして上条当麻と御坂美琴の恋人になって初めてのクリスマスは何だかんだで無事に楽しく終わりを迎える。 (ちくしょおおおおおおおおおおっ! ク、クソガキを意識しちまって眠れやしねェ! 何ドキドキしてンだ俺はァ! これも全部初春のせいだあああっ!) 一人の少年の心に何かとんでもないものが植えつけられたことを除いては…… なお、この少年の心の葛藤による睡眠不足は3学期が始まるまで続くのだが、当の本人には知る由も無かった。
https://w.atwiki.jp/index-ss/pages/1279.html
香焼の学園都市トラベル 仏教で使われる道具に五鈷(ごこ)と独鈷(とっこ)というものがあるのを知っているだろうか? この道具は人の煩悩を打ち砕く仏の智慧を象徴するものといわれている。 その五鈷と独鈷がひょんなことから、天草式十字凄教の魔術師少年・香焼の元へたどり着く。 香焼と五鈷・独鈷が交わる時、物語は始まる― 第1章 天草の幼き魔術師 kouyagi_travel_to_gakuentoshi 1 天草式が本拠地を置く、ロンドンの日本人街。 ここは天草式がイギリス清教の傘下に入って以来、住みかとなり又治安維持も努めている。 そんな天草式に所属する少年・香焼はとある事情で、元教皇代理・建宮の部屋へ来ていた。 「で、何の用なのよな?」 部屋のなかにあるちゃぶ台の向かいから建宮が香焼に問いかける。 「教皇代理!」 香焼は勢いよく建宮へ詰める 「もうその呼び方はやめるのよな。」 そんな建宮の言葉を無視して続ける。 「俺を今度の、学園都市への遠征メンバーに入れてください!」 そう言って、香焼は机をバンッ!と叩く 建宮は五和の注いでくれたお茶をひとすすりし、 「ダーメ。」 速攻で、香焼の願いを却下した。 「というか、なんでお前が遠征の話を知ってるのよな?アレはイギリス清教の重役しか知らないはずなのよな。」 実は、今度天草式の数人がこの間起きた戦争の事後処理の為に、学園都市へ向かうことになっていた。 だがこのことは、イギリス清教の重役連中しか知らないはずなのだ。何しろ、戦後まもないこの時期に魔術師が学園都市に 踏み込むと多くの人に知られると、あまりかんばしくない状況になると思われたからだ。 149 :KGT:2010/04/28(水) 00 13 38 ID G.lJ1ags いや、だって最近ずっと五和が舞い上がってて、あれに気づかないほうがおかしいすよ。」 しかし、遠征メンバーに選ばれた五和が愛しの上条当麻に会えるということで、かなり舞い上がっており、 何があるかは天草式に筒抜けも同然だった。 毎日鼻歌を歌いながらカレンダーに×をつけていたり、ロンドンのブティックショップを練り歩いたり、 恋愛小説や恋愛マニュアル本を読み込んだり、どこか上の空で得意の料理に失敗したりと、天草式全員が気づくほどの気の舞い上がりようだったのだ。 (五和…、恋は盲目ってやつなのよな…) 建宮は心の中で溜息をつくと、 「大体、お前は学校があるのよ、学園都市なんて行く暇あるなら学校行ってあのフロリスとか言う奴といちゃいちゃしてるのよな。」 と、とりあえず正論を言ってみる。 香焼はまだ一応、子供なので現地の学校へ通っているのだ。 「学校なんて、サボればいいじゃないすか!つか、なんでフロリス!?」 香焼は息を荒げながら反論する。 「いやいや、あの娘、最近良くここら辺で会うのよな。で、会うたびに「あのぅ、香焼くんはいますか?」とか恥じらいながら聞いてくる のよな。香焼、あの娘絶対お前に気があるのよな。」 建宮はニヤニヤしながら答える。 「嘘だぁ!だってアイツ常に俺にツンツンしてるんすよ!?せっかく戦争のとき助けてやったのに。」 実は香焼、あの戦争時に身のより所の無くなったフロリスを庇い騎士達と戦ったりして、立派なフラグを立ててしまったのだ。 その後、フロリスはたっての願いで香焼と同じ学校に通うこととなっている。 「香焼。それはツンデレって奴なのよな。好きな人に辛く当たっちゃうっていう…」 「教皇代理。そんな都市伝説みたいなこと信じてるんすか?だから、いつまでたっても結婚できないんすよ…」 そう言って香焼が溜息をつくと、建宮の方からビキリという不穏な音がした。 「香焼ーッ!それ以上言うとフランベルジェで切り裂いてやるのよなーッ!!!」 建宮は壁に立てかけてあったフランベルジェを手に取り、振り下ろす。 結婚適齢期を越えても未だにまともな恋愛をしたことのない建宮には、結婚の二文字は禁句らしい。 「おわわわ!教皇代理!落ち着いて!落ち着いて!」 その一振りを間一髪でよけた香焼は建宮へ向かって叫ぶ。 だが、建宮の怒りは収まらず二振り目の為に、フランベルジェを振りかぶる。 「なにが結婚なのよ!俺にはディスプレイの中に嫁がいるからいいのよな!」 建宮は最近、日本発のオタク文化に凝っており、それで心を癒しているらしい。 まともな恋愛をしたことが無いのに、ツンデレだの恋愛の知識に詳しいのはそのオタク文化の一つ、ギャルゲーにあるということだ。 「のわッ!」 香焼は慌てて飛びのきフランベルジェを避けようとする。 だがフランベルジェは振り下ろされなかった。 何故なら台所にいた五和が騒ぎを聞きつけ、茶の間の障子をスパーン!と開け、 何故か手に持っていた一升瓶で建宮の頭をぶったたいたのだ。五和の本気の一発を食らった建宮は伸びてしまっている。 どうやら、五和は上条と会う緊張を紛らわす為に昼間から酒を飲んでいたらしく 「しんみりと1人酒を楽しんでたのに、うるさいですよ?建宮さん♪」 そして、完全に酔っ払っている五和は気を失った建宮をズルズルと引っ張っていた。 「た、助かった…」 とりあえず香焼は一難を逃れた。 (どうしよう、遠征の件は女教皇か最大主教に頼むかな…) 建宮はのびてしまってどうしようもないので、とりあえず女教皇・神裂火織のいる女子寮へ向かうために香焼は教皇代理の家を出た。 2 香焼は日本人街を出て、必要悪の教会の女子寮へ向かうためロンドンの街を歩いていた。 今は丁度昼時で、街は活気にあふれている。 香焼がトボトボと歩いていると、 「あれ?香焼?アンタなにやってんの!?」 後ろから聞きなれた声がした。 声のしたほうを振り向くと、そこには学校の制服姿のフロリスがいた。 最近、イギリスの女子学生の間では日本の女子高生の格好を真似るのが流行っているらしく、 フロリスもその例外ではないのか、黒いニーソにかなり短くなっているスカート、上はブラウスとカーディガンを着用している。 いかにも、日本の女子高生らしい格好だ。 香焼はフロリスのユニフォーム姿に見慣れていた為か、制服効果により普段よりカワイク見えてしまう。 「どうしたの?ボーッとして?」 思わずフロリスに見とれていた香焼はハッと我に返る。 「いや、なんでもないすよ!つか今日休日なのになんで制服なんすか!?」 「いや、ちょっと学校に用事があって…それにユニフォーム姿は目立つし…、何?似合ってないって言いたいの?」 フロリスは自信の勝手な勘違いで、少し機嫌を悪くする。 「いや、似合ってるっすよ…、カ、カワイイと思うすよ。」 「か、カワイイ!?ななな、何恥ずかしいこと言ってんの!バッカじゃないの!?」 顔を真っ赤にしてフロリスが言い返してくる。 「いや、褒めただけなのにバカ呼ばわりって…。つか用が無いんなら俺いくっすよ?」 どうにもフロリスのテンションについていけない香焼は先を急ごうとする 「用ならある!コレ拾ったから、アンタにあげようとおもったの!」 そう言ってフロリスは何かを握った手を突き出す。 「なんだコレ?」 「分かんないけど、さっきバッキンガム宮殿に行ってきてさ、何か大掃除したら色々出てきたからコレもらったの。 よく知らないけど、特殊な霊装らしいよ?」 そして、フロリスはその何かを香焼に押し付けてくる。そのとき、一瞬だけフロリスの手が香焼と触れ合う。 「ッ!!!!!」 その受け取った”何か”から目を離し香焼が顔を上げフロリスを見ると、タコのように真っ赤になっていた。 「どうしたんすか?フロリス?」 「ななな、何でもないッ!じゃあ、ワタシ帰るからッ!!」 そう言うとフロリスは香焼の目の前からあっという間に消え去ってしまった。 「なんなんだ?アイツ。」 フロリスの行動を不思議に思いながらも、受け取った物をもう一度確認してみる。 それは、二つあり、一つはダンベルのような形状で両端の膨らんだ部分が5個に分かれていて色は金。 もう一つは、ナイフのような形状で色は銀。 手で握れるぐらいの大きさではあるが、その大きさの割には重みがあった。 「これは、確か…仏具だったよなぁ…?」 仏具というのは、仏教で使われる道具のことであり、仏壇なども仏具の一つといわれる。 こう見えても、香焼は天草式の魔術師なので仏教などの法具に関しては詳しいのだ。 「確か…五鈷と独鈷だっけ?魔術的意味は、”煩悩を打ち消す”だったっけ?つかなんでこんな物がバッキンガムに?」 とりあえず、五鈷・独鈷よりも今の香焼にとっては学園都市遠征の問題のほうが優先事項なので、ちゃっちゃと女子寮へ向かうことにした。 3 神裂火織は悩んでいた。 それは例の学園都市遠征のメンバーについてだ。 (やはり、遠征メンバーに五和を入れるのはやめましょうか…) 彼女が何故こんなことを思っているのか。それは彼女自身が自らの気持ちに気づいた為だ。 ついこの間の戦争で、彼女にとっての大切な人である”禁書目録”こインデックスという少女を再びあの少年に助けられた。 あれ以来彼女は、あの少年のことを考えるだけで夜も眠れなくなるほどだった。 そして、彼女は気づいた。これが”恋”なのだと。 かりにもまだ18歳である、神裂にとってこの想いは重い物だった。 自分があの少年に恋をしていると気づいた以上、同じ対象に同じ想いを抱く少女を対象に近づけたくなくなるのはごくごく自然なことである。 自らの魔法名である「救われぬ者に救いの手を」という言葉を捻じ曲げてしまうほど、神裂にとって、この想いは重要な物だった。 (い、いけませんいけません!このような傲慢な感情をもってしまうなど私もまだまだ未熟ですね…) いろいろと神裂が悩んでいるところに、他人の声が割り込んでくる。 「神裂さん?来客者ですよ!」 それは、神裂の部屋のドアの外からの声だった。声の主はこの女子寮にすむシスター・ルチア。 「聞いてますか?神裂さん!?」 「は。はい!今行きます!」 一旦思考を中断し、神裂は部屋から出る。 するとそこには、ルチアと並んで天草式の少年魔術師・香焼がいた。 「ち、ちわっす。」 女子寮という空間にやや緊張気味の香焼はどこか動きがぎこちない。 「どうしたんですか香焼?」 「いや、ちょっと女教皇様に頼みたいことがあるんすよ…」 香焼はかなり深刻そうな顔をしている。 並ならぬ空気を感じたのかルチアは「私はこれで…」と言いながら立ち去っていく。 「まあ、立ち話もなんですから部屋に入りなさい、香焼。」 「は、はい!」 こうして二人は部屋へと入っていく。 二人とも腰を落ち着けてから、神裂が口を開く。 「で、相談事とはなんのことですか?」 「あ、あのー女教皇様、俺を今度の学園都市への遠征メンバーに入れてくれないすか?」 香焼はどこか申し訳なさそうに、相談事を話す。 「な、何故あなたがソレをしっているんですか!?あれは重役だけの…」 一方、神裂は驚きを隠せない。何しろ先ほどまで彼女の頭を悩ませていたことが香焼の口から出てきたのだから仕方がない気もするが。 「いや、それはっすねー最近の五和の浮かれ具合を見れば分かるんすよ…」 (五和…やはり侮れませんね…) 神裂は五和への対抗心を心に隠し、香焼との会話を続ける。 「でも、香焼。あなたには学校があるじゃないですか。」 「学校なんてどうでもいいじゃないすか!たった一週間だけっすよ!お願いしますよ、女教皇様!」 そういって、香焼は土下座をする。 「うーん、でも…」 「そこをなんとか!」 「いや、しかし!」 「何でもしますから!」 「うーん…」 「女教皇様!」 「わ、分かりました。考えておきましょう。」 結局、香焼の粘りに神裂は屈する形となる。 「本当すか!?ありがとうございます!女教皇様!頼みますよ!」 わずかな希望がさした香焼は目を輝かせている。 (困りましたね…最大主教になんといえば良いのか…) 「救われぬ者に救いの手を」を魔法名とする神裂はこのような熱心な頼みごとに弱いのだ。 しかし、なぜ香焼はここまでして学園都市に行きたいのだろうか…? 神裂はそこを不思議に思いながら、悩みの種が増えたことに困惑していた。
https://w.atwiki.jp/seisoku-index/pages/476.html
9月30日、第7学区のとある病院 とある病室 すっかり日が沈み、夕食の時間も終わった頃。 培養器の中で魔術理論を復習しているフルチューニングのもとに、『妹達』の1人、検体番号10032号が現れた。 通称『御坂妹』とも呼ばれる彼女は、少しばかり焦った雰囲気で唐突に告げた。 「緊急事態です。病院内で起きたテロ行為により火災が発生しました、とミサカは落ち着いて言います」 「…え?」 「まだ煙が出ていますし、患者全員を避難させる事にしました、とミサカは報告を続けます」 「…レイが培養器から出ても良いのですか?」 「いいえ。あなたは培養器ごと病院車に収容されることになります」 「その輸送の為に来ました、とミサカは説明が面倒になったので有無を言わさず移動を開始します」 それだけ言うと、御坂妹はテキパキと培養器の連結を解除。 移動用の車輪を取り付けて、ベビーカーのようにフルチューニングを運び出した。 「ちくしょう、まだあのクソガキを捕まえていなかったのに…」 「ちょ、もう少し丁寧にレイを運んでください!…っていうか話を聞けよ!?」 それからしばらく経って。 培養器を載せた病院車は、第七学区の立体駐車場で待機している。 事態が全く把握できないフルチューニングは、何も出来ない事を悔しく感じていた。 (一体何が起こったのでしょうか…?) (まだ調整中の『妹達』を武装させているなんて、ただ事ではありません) (…いざとなれば、強引に培養器から出なくては) もちろん今のフルチューニングが培養器から出ても、戦力と呼べるほどの力は無い。 今の彼女は、能力を使えば死ぬ可能性があるからだ。 しかもイタリアで監禁された際に、彼女は能力強化用の部品を多数失っている。 そんな状態で全力を出したところで、彼女の出力はレベル3を超える事は無い。 (レイに残された武器は、師匠から教わった『ゴーレム術式』と鋼糸のみ) (ですがゴーレムは完成に程遠く、鋼糸も以前ほど自由に扱えない) (このボロボロの体では、格闘術を学ぶことすら儘ならない…なんてレイは無価値なんでしょう) だが、誰かを救いたいのならそれでも前へ進むしかない。 フルチューニングが中から培養器を睨みつけていると、聞き覚えのある声が耳に届いた。 「だから、“ミサカネットワーク接続用電極のバッテリー”が必要なんだって言ってるんだよ!?」 (あれは…インデックスの声…?) それはつい最近イタリアで再会した、イギリス清教の腹ペコ修道女の声だった。 インデックスの焦り交じりの訴えに、御坂妹が話を聞こうと近づいて―― 瞬間。 その場でピシリと硬直した。 否、御坂妹だけではなくフルチューニング以外の全ての『妹達』が同時に動きを止めた。 理由は1つ。 打ち止めから送られた緊急コードが、脳の稼働領域の大半を奪い取ったからだ。 木原数多によって入力されたウイルスが、ミサカネットワークを通じて一気に拡大していく。 「しっかりしてください!」 もはや今の御坂妹には、フルチューニングの言葉に反応する余裕すらない。 そして、それだけでは終わらなかった。 (……ぐ、う!?) (この感覚は…あの時の…!?) フルチューニングの脳内に埋め込まれたチップが、無慈悲にシステムを稼働させる。 次にフルチューニングが目を開けた時、すでに彼女は別人だった。 「――特別コード『エンジェル』の受信を確認」 「――虚数学区の展開を補助……正常に終了」 「――AIM拡散力場の“魔術的”誘導を開始」 「――『ヒューズ・カザキリ』の出現を確認」 世界と切り離された培養器の中。 誰も気づくことのないまま。 フルチューニングの頬に、一筋の涙が儚く流れてすぐ消えた。 同時刻、窓の無いビル 全てを管理していたアレイスターは、ゆったりと微笑んだ。 (虚数学区・五行機関の展開に成功したか) (出力の低下は避けられなかったが…うまい具合にアレが役に立ったな) (――“能力者”は“魔術”を使えない) (その概念を捻じ曲げたミサカネットワークは、“魔術とAIM拡散力場の相互干渉”を可能にする) (科学と魔術の融合攻撃…能力者にも、魔術師にも効果的な『自爆誘導術式』が出来あがると言う訳だ) (廃棄された試作型では、ここまでの強度を得られるとは思っていなかったが…) (流石は『天草式十字凄教』に鍛えられた事はある) (多角宗教融合型十字教天草式…“十字教でありながら、天使への攻撃を可能にする唯一の流派”) (その魔術の流れを体で覚えたアレは、いずれは天使の加護を受けた魔術師でも無力化できるようになる) (喜ばしいイレギュラーも有ったものだ) この瞬間より、フルチューニングは正式にアレイスターのプランへ組み込まれることになった。 ――フルチューニングが意識を取り戻した時、事態は大きく進展していた。 第7学区のとある病院 とある病室 フルチューニングが培養器の中で意識を取り戻した時、すでに2週間近くが経過していた。 その期間には、『前方のヴェント』及び『左方のテッラ』との戦い、学園都市の暗部の抗争など、 様々な出来事があったのだが、その間フルチューニングは意識を奪われていた為ここでは省略。 そして今、フルチューニングはお見舞いに来た天草式の少年香焼と話をしていた。 「…だからまあ、結局はあの上条さんがまた全部解決してくれたって事すよ」 「流石ですね…そのテッラという魔術師も相当強いはずですが」 「ま、実際にテッラと戦ったのは俺らの中じゃ五和だけだったんすけどね」 ローマ正教の中でも、絶大な力を持つ『神の右席』との戦い。 フルチューニングが意識を取り戻した時、最初に建宮から聞かされたのはその事だった。 (レイが意識を失ったあの日、ローマ正教はヴェントという刺客を送ってきていた) (その標的は、上条当麻及び右手の『幻想殺し』) (結局ヴェントは上条当麻に敗れ、事なきを得た) だがフルチューニングは、ヴェントを弱体化させた自爆誘導結界の要が自分と打ち止めである事は知らない。 尤もそれを知っているのは、世界でただ1人なのだから当然ではある。 (その後上条当麻は、世界を混乱させたテッラをフランスで撃破) (しかも天草式のみんなもフランスに一緒に行っていた、とは) 培養器の中で、フルチューニングは自分の拳を強く握り締めた。 香焼はその事に気づかない様子で話を続ける。 「そんな感じで過ごしてたらようやくレイが起きたって言うんで、みんなでお見舞いに来たんすよ」 「…良く分かりました、とにかく香焼も無事で本当に良かったです」 「へ…あ、え!?」 「…何ですか…?」 「いや、レイが素直にそういう事を言うと、ちょっと気持ち悪いっていうか…」 「ム!…レイが回復した時に、香焼には今日の分もまとめて電撃をお見舞いしてあげますから!」 「さあ、そろそろレイを休憩させてやらんといかないのよな」 久しぶりの口喧嘩が始まりそうになったその時、建宮が割り込んでそれを止めた。 「香焼は先に戻って食事の用意を手伝え。そろそろ対馬が怒ってるかもしれん」 「ゲ、そうだった…」 急いで病室を後にする香焼。 だが、最後に振り返ってフルチューニングに手を振った。 「じゃあ、また来るから…大人しくしてなきゃダメっすよ!」 「それぐらい分かっています…!」 タタタ、と軽快な音で香焼が走り去り、フルチューニングは建宮と2人きりになる。 なんとなく互いに黙り、どこか心地よい静寂が満ちる。 その静けさを破ったのは、フルチューニングの方だった。 「…建宮さん」 「んー?」 「本当の理由を教えてください」 「……」 「どうして天草式の戦闘部隊50余名全員が、この学園都市に来ているのですか?」 「意外と忘れがちな事ですが、この学園都市は基本的に外部の人間が入る事は出来ません」 それなのにたかがお見舞いで全員が来るのはおかしい、とフルチューニングは問いだたした。 誤魔化しきれないと思ったのか、建宮はフー、と溜息をつく。 「やれやれ香焼のヤツめ、喋り過ぎなのよ。…その所為で予想は付いているんだろう?」 「はい。十中八九上条当麻に関係があると思います」 「レイは良く分かりませんが、ローマ正教にとって『神の右席』というのは最高戦力なのでしょう?」 「そのメンバーをすでに2人も倒している上条当麻を、このまま放っておくはずがありません」 レイがそう断言すると、建宮は深刻そうな顔で頷いた。 「大当たりなのよな。我らは上条当麻の護衛に来た」 「それも…敵は『神の右席』の1人、『後方のアックア』と呼ばれる魔術師だ」 「…後方のアックア…何故その人物が来ると?」 「それがなあ、ご丁寧に奴さんは“上条当麻を殺しにいくぞ”と果たし状まで送りつけてきたのよ」 「果たし状…!」 「その為イギリス清教は、我ら天草式を派遣したという訳よな」 最悪の予想が的中した事に、フルチューニングは愕然とした。 今まで戦ったローマ正教の魔術師は、どれもレイに圧倒的な強さを見せつけてきた。 アニェーゼ部隊やビアージオは、まさに悪夢としか言いようのない傷をフルチューニングに与えている。 だが今度の敵は、それら魔術師の遥か上を行く。 ――後方のアックア。 ローマ正教でもトップクラスの力を持つという魔術師相手に、天草式は勝てるのだろうか。 今まで共に過ごしてきたからこそ、フルチューニングは分かる。 建宮たちはどんな敵が相手でも絶対に逃げないし、諦めない。 ……きっとその身が滅ぶまで。 (嫌だ…) (またみんなが傷つく事になる) (……ではどうするべき?) 「あれ、まだお見舞いの人がいたようだね?」 唐突に第3者から声を掛けられる。 フルチューニングが思考を中断して病室の入り口を見ると、そこにカエル顔の医者が立っていた。 「ようやく意識を取り戻したみたいばかりだと言うのに、無理はしてないだろうね?」 「大丈夫です」 「じゃあ、お見舞い中に悪いんだけど検診を始めても良いかい?」 「構わないのよな、俺もそろそろ帰らないと…」 「ああ、そう言えば」 邪魔にならないように帰ろうとする建宮だが、医者がのんびりと告げた一言がその動きを止めた。 「昨日教えてもらったけれど、イタリアでこの子に心肺蘇生を施してくれたのは君だったそうだね?」 「…?」 首を傾げるフルチューニングに対し、建宮は言葉を詰まらせて呻いた。 ちなみに、リークしたのは土御門元春であるのは言うまでも無い。 「いくら僕でも、死んだ患者を蘇らせる事は出来ないからね」 「是非ともお礼を言いたいと思っていたんだよ」 「…スマン!」 何故か突然建宮はその場で土下座した。 「どうして建宮さんは土下座しているのですか?」 「本当だねえ、彼は海で溺れた君の事を人工呼吸して助けてくれたというのに」 「そんな事があったのですか…」 医者の説明を受けたフルチューニングに、建宮は頭を下げながら力説した。 「謝っても済まないのは承知だ…」 「だがな、俺が言っても慰めにならないだろうが…アレはノーカンなのよ!」 「は?」 「あれはあくまでも人命救助、だからレイは何も気にしなくても…」 「建宮さん、話の意味が分からないのですが」 焦って弁解めいた事を語る建宮に、フルチューニングが訝しげに質問する。 「何故命を助けてもらったレイが、まるで取り返しのつかない事をされたかのような扱いを受けるのですか?」 「というより何が“ノーカン”で何が“気にしなくても良い”のでしょう?」 テスタメントは恋愛感情の入力はしていないし、おませなミサカネットワークとも繋がっていないから当然なのだが。 そこまで言われて、ようやく建宮はフルチューニングに“そっちの知識”があまりない事を知った。 (やばい、これは墓穴を掘ったことに…!?) (考えてみれば、ファーストキスだのなんだのをレイが知ってるはずもないのよな…!) (かと言って、ここで俺が説明するのも妙な話だし…) 「もういいですよ」 少し怒り気味のフルチューニングの声が聞こえたときには、すでに遅かった。 「後で五和や対馬さんに聞いてみます」 (ノー!?それだけはやーめーてー!) 当然心の中の絶叫は、フルチューニングに届く訳も無く。 結局建宮は、自分の口で全てを説明する事になった。 ちなみにカエル顔の医者は「検診は後回しで構わないからね」と言い残して姿を消している。 「はあ…好きな人と最初に交わす口づけをファーストキスと言うのですか」 「ううう、死にたいのよな…」 「で、何故建宮さんはレイとのそれをノーカンだと主張したのですか?」 「ええ!?」 「確かに救命措置としての人工呼吸と、口づけは意味合いが違うようではありますが」 「レイは建宮さんが好きですし、それがファーストキスでも全然構いませんよ?」 「ああ、いや、その…“好き”には色々な種類があるのよな」 何でこんなベタな少女漫画みたいな状況になっているんだ!?という心境を隠して、建宮は質問に答えなければならず。 それから30分ほど経ってようやく解放された建宮は、ぐったりと疲れ果てて病院を後にすることになった。 それから検診が始まっても、フルチューニングはモヤモヤと悩んでいた。 (…“好き”の種類、ですか) (美味しいお茶が好き) (甘いお菓子が好き) (優しい五和が好き) (面倒見のいい対馬さんが好き) (楽しい香焼が好き) (そう言えば、五和は…) (あの上条当麻が好き、とみんなに言われて大変な事になっていましたが…) (五和のあの“好き”は、確かに他とは違う感じでした) (…好き?) (あれ?…建宮さんは、どうして好き?) (あれ?) (あれ?) 悩み事が増えたフルチューニングは、培養器の中で難しい顔をする。 だがそれも、再びカエル顔の医者が唐突に遮った。 「じゃあ、これで検診は終了だ」 「…まだレイは退院できないのですか?」 「そりゃあまあ、1日2日なら何とかなるかもしれないけれど…正直止めた方がいいね?」 「お願いします、レイはどうしても外に行きたいのです!」 「何か大事な用事でもあるのかい?」 用事はある。 が、戦う為だと言えば絶対に退院の許可は下りないだろう。 それでも、何故だかフルチューニングはこれまで以上に焦りを感じていた。 (このままでは、天草式のみんなが殺されてしまうかもしれない) (それだけは、認める訳にはいかない…!) (あの建宮さんが死ぬなんて、絶対に!) 僅かに変化したその感情の揺れに、フルチューニングは気がつかない。 それでも必死に訴えるフルチューニングに、カエル顔の医者は渋々了承した。 「明日と明後日の2日間だけは、退院を許可しよう」 「ただし、その前にやっておく事があるね?」 そう言うと、カエル顔の医者は携帯で誰かに連絡を取り始めた。 それから10分後、呼び出しを受けて現れたのは… 「『妹達』に関する用事ってのは、一体なンだよ?」 学園都市最強の能力者、『一方通行』だった。
https://w.atwiki.jp/seisoku-index/pages/915.html
上条「………………」 五和「………………」 美琴「………………」 五和「……本当に…すみませんでした…」シュン 上条「い、いや…なんか…こちらこそ…」 美琴「……………」シュン 上条「ま、まさか海軍用船上鎗にあんな使い方があるとは~、上条さんも一本取られましたよ~…」アハハハハ 五和「……………」 美琴「……………」 上条「……………」(気まずい………) 五和「…じゃあ私はそろそろ天草式の皆と合流しますので…」 上条「あ、ああ…そうか…」 五和「まだ数日学園都市にいる予定なので…また明日皆と来ます」 上条「そうか…ならまた明日な」 五和「はい…ありがとうございます…」バタン 上条「…………不幸だ…」 美琴「…と、ところでアンタ体調は?」 上条「あ…ああ、大丈夫だけど…」 美琴「そう…それならいいわ…」 五和「ということなんです…」 建宮「そ、それは…」 対馬「………五和、あんたなかなかやるわね…」 牛深「…………」ゴクリ 建宮「で…上条当麻の体調はどうなのよな?」 五和「体調自体は今のとこ良好みたいですが…」 野母崎「……股間に電撃…」 建宮「さすがの上条当麻でも…股間に電撃はまずいのよ…」 五和「……………」 建宮「で、五和。上条当麻の股間はどんなだった?」 全員「!?」 対馬「ちょっと!建宮何聞いてんのよ!」 香焼「いや、そこは重要っすよ!」 五和「そ、その……………//」 建宮「うんうん」ニヤニヤ 五和「………建宮さんの変態!!」バゴッ 建宮「ぐっほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」バタ 対馬「……そりゃそうよ…」 五和「……………//」 建宮「あー…とにかく、上条当麻は今療養中ってことなのよな?」 諫早「まぁ…そうなるかな」 建宮「ならばここは今までの上条当麻への恩を返す時なのよな!」 五和「恩返し…ですか?」 建宮「そう。女教皇があーんな格好をしてくれたのに俺達はなんの恩返しもしてないのよ」 対馬「まぁ確かに一理あるわ」 建宮「かと言って回復魔術は上条当麻の右手のせいで使えないのよ」 野母崎「そういえばそうだ」 建宮「ならば…ここは特殊療法で行くのよな!!」 香焼「特殊療法っすか?」 五和「何ですか?」 建宮「特殊療法……その名は…………」 建宮「『性人崩し』なのよな!!」バン 全員「」 上条「…って……もう夕方か…」 美琴「Zzz」スピー 上条「あ?……御坂の奴…熟睡してんじゃねぇかよ…」 美琴「Zzz」ムニャ 上条「……………ほれ」プニュ 美琴「ふにゃー」プニュ 上条「ほら起きろよ御坂」 美琴「あ…って私寝てた?」 上条「人ん家で熟睡でせうよ」 美琴「ご……ごめん//」 上条「んなことより晩飯どうすんだ?」 美琴「あーそうね…なら私材料買ってくるわよ」 上条「え?なら俺も行くよ」 美琴「だからアンタは安静に……」 上条「いいだろ。何か悪いし」 美琴「……な、ならちゃんと働きなさいよ」 上条「わかってますって」 街中 上条「あー、もう寒いなー…」 美琴「すっかり冬ね」 上条「じゃあとりあえず近くのスーパーにでも行くか」 美琴「そうね」 上条「あ、ところで晩飯は何にすんだ?」 美琴「晩ご飯は…」 ??「上条当麻!」 上条「へ?」 建宮「我ら天草式が女教皇に代わって上条当麻に恩返しするよな!」 上条「…………やな予感…」 建宮「上条当麻、お前は今療養中らしいよな?」 上条「あ、ああそうだ…」 上条(あの時のことか…) 建宮「そこで我らが特殊療法を施すなのよな!!」バッ 上条「へ?ちょま…」 建宮「野母崎、牛深!奴を抑えろ!」 野母崎・牛深「了解!」 ガシッ 上条「な…何を…」 美琴「え?何なの!?」 建宮「ではこれから上条当麻に特殊療法を施す!その名は……『性人崩し』!!」バン 上条「『性人崩し』??」 建宮「では先生!頼んだのよな!!」 ??「フッフッフ…任せるのである…」 上条「この声は…」 アックア「さあ上条当麻。これから特殊療法『性人崩し』を行うのである」 上条「はああああああああ!?!?何でアックアが!?」 アックア「まぁ私も貴様にいろいろと恩があるからな。天草式の教皇代理からこの話を受けたである」 上条「てか何でお前ここに…神の右席は?」 アックア「 1はこのスレの作者であると同時に『アックア「ニートだけは嫌である…」』の作者でもあるのだよ!詳しいことはそっちに書いてあるである」 上条「はああああああああああああああああああああああああ!?つまり…お前は……フリーター!?」 アックア「正解である」 建宮「よし、では『性人崩し』を始めるよな!野母崎、牛深、ズボンを降ろせ!」 野母崎、牛深「了解!」ガバッ 上条「いやあああああああああああああああああああああああああああ!!」 アックア「……ウィリアム家に代々伝わる…特殊療法…」ヌギヌギ 上条「らめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」 アックア「秘技………『性人崩し』!!」バッ ムニュ 上条「あばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばば!!!」 アックア「アーーッ!」 プシュー アックア「これで大丈夫である」 建宮「助かったなのよな、アックア」 上条「」ビクッビクッ 美琴「」ガクブル 上条・美琴(どうしてこうなった……) 上条(上条さんJr.もだいぶ落ち着いてきたな…)ニュ 上条「……ま、まぁ気分取り直してスーパー行こうぜ…」 美琴「………そうね…」 スーパー 上条「よし着いたな。じゃあ食材は……」 ??「ちょっとまったァァァァァァァァァァァァ!!」 上条・美琴「!?」 レッサー「私を忘れてもらっては困りますねぇ」 上条「……………何でお前が出てくんだよ!」 レッサー「何やら貴方への恩返しが流行ってるそうじゃありませんか」 上条「流行ってねぇから!」 レッサー「フッフッフー、恩返しならばこのレッサーが一番だということを、今ここで分からせてやりましょーう!!」 上条「だからお前は…」 レッサー「じゃじゃーん!レッサースペシャルカスタームDX!!」バン 上条「またか…」 レッサー「無残にも壊れてしまった『鋼の手袋』を改修改造しまくった超高性能霊装とはこれのことだァァ!」 上条「あーあーまったく、そんなんで何やらかすつもりだよ」 レッサー「なら覚えていますかね?前回のレッサースペシャルカスタムの機能を」 上条「ああ?えっと…遠くの物をも掴んで操作できるとか………………ハッ!?」 レッサー「勘づきましたかね?」 上条「お前……まさか…」 レッサー「そう!このレッサースペシャルカスタムDXはその機能に加え、なんと!」 上条「…………」 レッサー「掴んだ物をムニュムニュする機能を追加したんです!!!」ババーン 上条「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」ダッ レッサー「あ!逃げるな!」ガシッ 上条「も、もう…やめてくれ…。上条さんの息子のHPはもう限界よ!」 レッサー「そぉぉぉい!問答無用!」ガシッ 上条「はふぅっ!!」 レッサー「せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!!」ムニュムニュ 上条「ぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴ!!」ビクッビクッビクッ 上条宅 美琴「アンタ……散々ね…」 上条「ははは…上条さんは不幸には慣れてますのことよ…」 美琴「……ある意味尊敬するわよ…」 上条「で、とりあえず鍋にするんだろ」 美琴「ええ、早く用意しましょうよ」 上条「OK」 グツグツ 美琴「さーて、そろそろ煮えてきたかしら」 上条「お、うまそうな匂いだなー」 美琴「具材にはフォアグラ、キャビア、エスカルゴに…」 上条「ちょ…御坂さん??」 美琴「へ?」 上条「あなた鍋になんてものいれてんですか!?」 美琴「え…鍋って入れれば何でもおいしくなるって…」 上条「……ケーキ入れてもうまいと思うか?」 美琴「違うの?」 上条「………………お前鍋やったことないだろ」 美琴「……………はい……」シュン 上条「はぁ……まぁいいよ。別に食えないもんじゃないし、御坂が選んで来てくれたんだろ?」 美琴「……………うん…」 上条「よし、なら腹一杯食うぞ!」 美琴「わ、私だって!」 上条・美琴「ごちそうさまでしたー」 上条「はぁー食った食った」 美琴「私も久しぶりにこんなに食べたわ」 上条「上条さんは久しぶりに幸せですよ」 美琴「あ、アンタ体調は?」 上条「見て分かるだろ?もう大丈夫大丈夫」 美琴「ならよかったけど…」 美琴(で、でもさっきの変な人達のせいでアイツの……股…が…その…大丈夫かな…) 美琴「あ…アンタ……その…股は大丈夫…なの?//」 上条「股?……ああ…さっきの奴らのか…」 美琴「…アンタがいくら丈夫だって言っても……あんなことされちゃったら…//」 上条「ああ……まぁ…若干…ちょっと…」 美琴「痛いの!?」 上条「ヒリヒリ…というかビリビリというか…」 美琴「えええ!?まだビリビリするの!?」 上条「え!?いや……まぁ…」 美琴(そんな…やっぱアイツ…辛かったんだ…) 美琴「やっぱり…痛いんだよね…」 上条「ま、まぁ…」 美琴(どうしよう…でも元は私の責任で……)アセアセ 美琴「………………」 美琴(やっぱり……私が…せ、責任とらなきゃ!!) 美琴「私の…せいだよね…」 上条「ほぇ?」 美琴「元はと言えば私が……」 上条「何のことでせうか…?」 美琴「わ、私が責任取るわよ!!//」バッ 上条「ちょおおお!御坂サン!?その体勢はァァ!?」 美琴「しょ、しょうがないでしょう!!私が…その…責任を………」ゴニョゴニョ 上条「御坂サンヤバい!ヤバいですよォォ!!」ジタバタ ガチャ 禁書「とうまただいまなんだよ!」 スフィンクス「ニャー」 上条「え?」 美琴「え?」 禁書「」 禁書「たんぱつが…とうまが………」 上条「い、インデックスサン!!これは深い深い深い訳があるのです!そう、あるのですよ!!」 禁書「とうま、とりあえず」 上条「……………ふ」 ガブッ(特大) 上条「不幸だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 数分後 禁書「つまり…たんぱつはずっと勘違いしてんだね」 美琴「…………//」 上条「……まさか『またかビリビリ』を『股がビリビリ』と間違えるやつがこの世にいるとはな…」 禁書「総合的に言うと、これが痴女ってやつなんだよ」 美琴「……………////」 上条「そのせいで五和にグリグリスピアされたりアックアにアーッ!されたりレッサーにガッチリムニュムニュされたり………」 美琴「で、でもアンタだって五和さんの時実は起きてたんでしょ!」 上条「え……」 禁書「ほう、聞かせて貰おうか…」 美琴「寝たフリなんかして…盗み聞きした挙げ句にちょっとグリグリスピアを楽しんでた…………とか」 上条「ななななな!?健全なる上条当麻にそんな卑猥なる考えなど……」 美琴「それにこれが嘘なのに、何で最初の時に激痛が走ったとか言って痛がってたのかしらね…」 上条「はは…はははははは…」 禁書「とうまはそろそろ噛むだけじゃなくて噛みちぎられないと反省しないようだね…」ガチガチ 上条「もう無理だから…ね?上条さんライフはもう0なのよ!」 美琴「はぁぁぁッ!」ビリビリ 禁書「はぁぁぁッ!」ガチガチ 上条「ぎゃあああああ!もう無理無理!死ぬ死ぬ!ホントに!!」バギン 美琴「この変態がぁ!!」 上条「お前にだけは言われたくねぇ!!」 美琴「な……アンタはぁぁぁぁぁぁ!!」ビリビリ 上条「ぎゃあああああ!」バギン 美琴「待ちなさいよ!」ビリビリ 禁書「待つんだよとうま!」ガチガチ 上条「不幸だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」バギン fin
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2296.html
一方で本来なら調理場で料理を作っているはずだった神裂と建宮はテーブルの一角を占拠して、もの凄く落ち込んでいた。 お互い無言でウーロン茶を飲んでいる神裂が落ち込んでいる理由、それは当然ながら初春の渡英に他ならない。 そこへやや申し訳なさそうに土御門がやって来た、右手には沢山のねぎまと串かつを乗せた皿、左手には小萌にばれないように舞夏に用意してもらったオレンジチューハイを携えて。 「にゃー、お2人とも心中お察しするぜい……。2週間も初春ちゃんがイギリスにおぶっ!」 「よくもまあぬけぬけとそのようなことが言えますね。飾利の渡英をっ! 知っていながらっ! 止めなかったっ! 重罪人がっ!」 いつもの調子で話したのが悪かったのか、土御門は神裂の怒りを買ってしまい5回ほど顔面をテーブルに叩きつけられてしまう。 聖人たる神裂の手でテーブルに叩きつけられた土御門のダメージは深刻で意識が飛びかけるほどだった。 そこへ周囲にばれないように回復魔術で傷を癒してくれた建宮に感謝しようとした土御門だが、 「女教皇様も落ち着くのよね。この重罪人を殺るなら話を聞き終わってからでも全く問題無えのよ」 単に話をさせる為だけにしてくれたことを知ると一瞬で感謝の念は消え去った。 土御門は目の前の初春バカの2人に真面目な口調で今回の件について話した、当然ながら自分が初春の渡英を今日知ったことも忘れずに。 「成程。あなたも飾利の渡英は今日知ったはいいが渡英理由は知らされていない。そうゆうことですね?」 「まあな。闇咲と対馬が同行するって話だから十中八九魔術絡みだろう。おおかた最大主教が」 「飾利姫のあまりの可愛さにとうとう我慢出来なくなって自分の手元に置こうって考えたわけか、あの年齢不詳の女狐め」 「いや、そんなことは絶対に」 「むぅ、飾利の愛らしさなら起きうる事態ですね。建宮、こうしてはいられません! 我々も急ぎ飾利を追いあうっ!」 人の話を聞かず、勝手かつおバカな結論を出す神裂と建宮に呆れた土御門は暴走しかけた2人を止めようとした。 そこへ個展の最終チェックを終えたシェリーが神裂の頭をはたいて暴走を抑えた、真夜に作ってもらったぺペロンチーノを食べながら。 「ったく天草式のトップとナンバー2のお前らが取り乱してどうすんだよ。そんなんじゃ飾利も安心してイギリス行けねぇだろ」 「シェ、シェリー……」 「事情なら私が話してやる、包み隠さず全部な。だからもう妙なこと考えたりするなよ。飾利を困らせたくなかったらな」 そしてシェリーの口から初春の渡英の理由、その間に入れ替わるように学園都市入りするオルソラとアンジェレネの目的が語られた。 神裂と建宮はローラの目的に多少納得できなかったものの、キャーリサとヴィリアンとの思い出作りの為の渡英に納得した。 土御門はローラの呼び出しと初春のイギリスの2人の義姉への配慮にそれぞれのらしさを感じる中、オルソラとアンジェレネに監察役が務まるのか心底不安になった。 「基本、オルソラとアンジェレネの監察対象は私とお前ら2人だけど土御門、お前や他の学園都市支部の奴らも対象に入ってるだろうから気を付けろよ」 「心得てるぜよ。あの2人に監察なんて出来るとは思えねぇけどそれなりに大人しくするから心配いらないにゃー。ねーちんと建宮も分かってるとは思うが」 「分かっています。飾利が居ないからといって腑抜けるようなことはしません。しかしオルソラとアンジェレネが飾利の代わりとは全く以って割に合いませんね」 「それは仕方の無いことなのよ女教皇様。にしてもシェリーには話して我らにはお話して下さらなかったとは……物悲しいものがあるのよな」 (そりゃお前らがそうゆうリアクション取るって飾利が分かってたからだっての……) 失意のどん底からようやく立ち直った神裂と建宮を見て土御門とシェリーは安心したが、やっぱり初春不在ということを考えると不安が少し残った。 立ち直った2人が本来やるべきパーティーの料理作りに向かおうとしたが、調理場から発せられる雰囲気を感じ取り向かうのを止めるのと同時に暇になってしまう。 とりあえず何か食べようとしたその時、神裂の携帯が鳴ると神裂は相手が誰かも確認せずに電話に出た。 『もしも』 「飾利ですね! 良かった、渡英する前に貴女の声が聞けて!」 『あ、あの火織お姉ちゃん、黙ってイギリスに行くことになってゴメンなさい。けど安心して下さい、必ず火織お姉ちゃん達の所へ帰ってきますから』 「いいんです、いいんですよもう……。私も建宮もこうして貴女が電話をしてくれただけで充分です。ところで今どちらに居るのですか?」 電話を掛けて来た初春から第二三学区の国際空港に居ることを伝えられた神裂、今回は心に余裕が出来たので建宮にも初春と話す許可を与えた。 建宮も初春の言葉を聞いて心から満足していた、ただし初春と神裂の会話内容と殆ど同じことに気付かずに。 神裂は建宮から電話を返してもらうとオリアナが居ることを初春から聞かされたので、オリアナと電話を代わってもらった。 「はーい。天草式の聖人さーん。こちらオリアナ・トムソン。 貴方とまあた遊べなくなっちゃったのは残念だけど安心してえ。 プロの『運び屋』の名に懸けて貴方の可愛い妹ちゃんはお姉さんが責任を持って運んであげるからね♡」 「また…?」 「あっ。いやいや、こっちの話よん。」 何だか気になることを言われたのだが神裂にとってそれ以上に気になることは。 (な……何ていうか……私とはとても相いれなさそうな危険な香りを感じさせる女ですね。 こんな女に本当に飾利を預けて大丈夫なんでしょうか) 若干の不安を感じつつも、とりあえず飾利の『輸送』についての確認を慎重に取ることにした。 だがこの後の彼女の卑猥極まりない発言の連発により飾利の身を別の意味で非常に案じることになるのだった。 ―――――――――― パーティー本会場では、別の人物の電話も鳴っていた。 「ん?母さんか。ああ、真夜は今パーティーの調理中。 そっちは?ああ、父さんと。」
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/1073.html
一方青髪ピアスはというと、(形だけは)ハーレム状態になっていた。 「おりゃー!!」 「ぬお!?やってくれましたね~、超お返しです!!」 「ちょ!?最愛!?その波は大きすぎるってうぎゃー!!」 「……お二人とも、ここはプールではなく温泉ですの。いくら義理の妹とはいえ、少々やりすぎですわよ絹旗さん」 「いやー、超張り切っちゃいました!!てへっ☆」 「張り切っちゃったじゃありませんの!!佐天さんがあなたの波の衝撃でふらついてますわよ!!」 「きゃー!!涙子!!超すいませんでした!!」 「……うう、こんなときに仕返しできる能力がほしい」 青髪ピアスは、もう死んでもよかった。目の前の楽園に広がっているのは、 (ひんぬーパラダイス!!サイコー!!) 水着姿の貧乳達、佐天は普通のビキニ、絹旗はかなりきわどいワンピース、そして黒子は……、 「エロいねん!!黒子はんめっちゃエロいねん!!」 かなりどころか超きわどい水着だった。 「幸せや……。カミやんみたいにいっぱいフラグはもっとらんけど、目の前の光景は天国や!!」 青髪ピアスが死ぬ前にこの光景を記憶にこびりつかせて置くため、じっくりと目の前の光景を凝視してると。 「とりゃあ!!」 「うぎゃー!!何すんねん黒子はん!!」 青髪ピアスはいきなり、愛しの黒子に目潰しされた。 「何でもありませんの。ただ○○様が見るボディは私のボディだけで十分ですの」 「そ、そんなぁ……」 抜け駆けしようとした青髪ピアスの行為は、あっけなく不幸な結果に終わったのだった……。 「○○さんって変わってるだけかと思ってたけど変態だったんだね……」 「私、超決めました。白井さんの恋人に悪いとは思いますけど、超変態の青髪はたった今、浜面と建宮までランクダウンです」 はしゃいでいた佐天と絹旗だが、青ピのいやらしい視線に気付くと、大人しく湯舟に浸かっていた。 その間にも青ピがこちらを見るたびに黒子に金属矢(尖ってない方)で目を突かれ、その度にいちゃつくというループが形成されてしまう。 「それにしても女湯の倍以上の広さだよ、混浴って。これなら皆で一緒に入ったら楽しそうだよね~♪」 (みんな……それってつまりお、お兄ちゃんも、ちょ、超一緒……? いやいやいや! 私はもうお兄ちゃんにそんな感情は超も、持ったりは……) 「おーい最愛ー? どうかしたー? 急にボーっとしちゃってさー」 「ふぇ? な、何でもありませんから! そ、それよりも飾利とも超一緒に入りたかったです。どうしてまだ到着していないのか超気になりますが」 当麻の裸(水着着用)を想像した絹旗は頭が混乱しそうだったので、気を紛らわせる為にここに居ない初春のことを考え出す。 ちなみに初春がまだ到着していない理由、それは神裂とシェリーが度々小競り合いをし、その度に初春が止めているからだったりする。 初春の話題が出たことで佐天は気絶してる建宮のことを思い出し、嫌な予感が頭をよぎる。 「ねぇ最愛。建宮にあんなことしてさ、飾利に怒られないかな? あたし達」 「涙子は超心配性です。そりゃあ確かに飾利には超少しだけ怒られるかもしれませんけど、心配するほどではありません。あの建宮ですよ? 飾利も超少し心配する程度ですって」 (あの建宮だから不安なんだけど……。賭けよう、飾利の建宮への『お父さんフィルター』に。だって今の飾利は建宮にあんな感情持って無いもん!) 初春の建宮に対する真実を唯一知っている佐天は絹旗のように楽観的にはなれなかったが、それでも初春の『お父さんフィルター』を信用して前向きに考えることにした。 気付くと絹旗が青黒に波をぶつけており、青黒も対抗するようにはしゃいでるのを見た佐天もまた、彼女達の輪に入っていった。 その頃、地上に上がってきた上琴+気絶中の建宮はリビングへと向かった。 そこには五和のウエディングチョコケーキをゆっくりと味わっている土白、インデックス、ステイルの姿があった。 インデックスと付き合いの長い当麻は彼女の暴食っぷりが鳴りを潜めてることが信じられず、直接本人に尋ねることに。 「インデックスが……こわれた!?」 「いきなりでその反応はないんだよ!!」 上条が驚いていると、ステイルもこっちに気づいたらしく、なぜか恐る恐る上条たちの方向に首を向けた。 ステイルは上条と目を合わせると、次の瞬間ビックゥウ!!と飛び上がり、いそいそと上条達の前にやってきた。 「やっ、やあどうも。かみじょっ、とおめぁっ!!」 「大丈夫かステイル!?お前噛みすぎだぞ!?」 「でぁっ、だいじょうぶさ!!ぼくはいつぇも冷静ですが!!」 「おい!!本当に大丈夫か!?」 ステイルの噛み具合に首をかしげる一同。だがインデックス、土御門、白雪はやっと思い出した。 (((ここは上条家、つまりこの二人の気に入らないことがあったら殺されるッッッ!!!))) そう、この家は上条と美琴、つまりこの家で勝手なことをしようものなら待っているものは…………死。 特にステイルは外の家でかなり怖い思いをしたらしい。なのでチョコを食い散らかしたため怒られるとでも思ったのだろう。 「あっ、この食べ終わったチョコの紙くずは、ぼっ、ぼぼ僕が処分しておこう!!」 そういうとステイルは紙くずを両手いっぱいに抱え、外に出て行った そして、ステイルが外に出ると外には初春、神裂、シェリーがインターホンを押そうとしていた所だった。 「ステイルさん、何ですかその紙くずは?」 「いや、インデックスが上条当麻が貰ったチョコを食べてもらっててね。その紙くずを散らかしたから怒られると思って。」 ステイルは別に隠す事も無かったので初春達に正直に言った。 すると当麻が玄関に近づいてきた。 「ステイル、別に怒らないぞ。インデックスが俺の大量のチョコを食べて貰ってくれたから、それで散らかしたんだから怒られーよ。」 「そうなのか。でもこれはどうすれば良いか?」 「それなら家に捨てる場所があるから。ほら。」 当麻が指を刺したほうに燃えるごみと書いてあった所にがあった。 そこはゴミ箱があり、中を開けると奥が深くなっていた。 「ほんと、君の家は訳が分からないよ…」 「それは俺も思う。さっき地下を見たら隠しドアがいっぱいあったから…」 「「「「え!?まだ地下にそんなのがあったのか(ですか)!?」」」」 その場に居たステイル、初春、神裂、シェリーが驚いていた。 「まあな。とりあえずみんな入ってくれ。」 と当麻が言うと、五人は家の中に入った。 そして、五人がリビングに入ると、初春は建宮が倒れている事に気づいた。 「建宮さん!?どうしたのですか!?」 初春はすぐに建宮に近づいた。 すると美琴がどうして建宮がこうなっているのか話した。 「多分涙子か最愛のどちらかがやったと思うんだけど……飾利?」 美琴が建宮がどうしてこうなったか話したとたん、初春の表情ががさっきと全然違っていたのだ。 「美琴お姉ちゃん、その二人はどこに居ますか?」 ((((((((あんな初春(飾利)(かざり)(ちゃん)(さん)を今まで見た事が無い!!)))))))) みんなが驚くのも当たり前だ。今の初春の表情は、佐天、絹旗にものすごく殺気たっていて人を殺せるような表情をしていたのだ。 「え、えっと多分『ゲームルーム』からつながっている大浴場に居ると思うけっど……ってもう居ない!?」 いつの間にか初春は居なくなっていた。 そして、佐天、絹旗に地獄へのカウントダウンが始まったのだ。
https://w.atwiki.jp/seisoku-index/pages/463.html
9月8日(午後1時00分)、とあるレストラン 天草式のメンバーは現在主に2手に分かれている。 パラレルスウィーツパークで『縮図巡礼』と呼ばれる魔術の準備をする別働隊と、 オルソラと一緒に行動し、追手に備える本隊である。 魔術に詳しくないフルチューニングは、現在建宮と一緒に本隊として行動していた。 「それにしても、その移動魔術ってこんなに早くから準備しないと間に合わないんですか?」 「いや、急げば準備自体は2時間程度で完了するのよ」 「じゃあ、どうして今から取り掛かっているんです?」 「相手がいつ来るか分からない以上、あらかじめ準備を終えておくのがベストよな」 『縮図巡礼』自体は、午前0時からわずか5分しか発動しない。 ただ、その為の準備儀礼はあらかじめ終了しておくことが出来る。 「それにローマ正教の連中に、『渦』の場所がバレる訳にはいかないのよな」 「だからゆっくり少人数で行う必要がある。そのため早めに取り掛かっているのよ」 いかに隠密性特化型の天草式十字凄教といえども、ローマ正教の大部隊にかかれば姿を発見されてしまう。 それを警戒して、現在儀式に取り掛かっている別働隊はわずか2人だけにしているのだ。 そして当然人数が少なければ、準備に必要な時間は長くなる。 フルチューニングは納得して、デザートのパフェを食べ始めた。 「オルソラさんはデザートいらないんですか?」 「…」 「オルソラさん?」 「あ!…ええ、私は結構ですから、お気になさらず…」 「まあ、緊張するのも無理無いのよな」 建宮が苦笑して声を掛けるが、オルソラは誰にも聞こえないように呟くだけだった。 「…どうして、天草式の皆様はここまで…?」 「ん?何か言ったか?」 「いえいえ。それで、この後はいかがされるおつもりですか?」 オルソラの問いに、建宮は難しそうな顔で答えた。 「そこよ。『縮図巡礼』で飛べればこっちの勝ちだが、多分そう簡単にはいかないわな」 「先ほど聞いた話によると、ローマ正教が派遣したのはアニェーゼ・サンクティス率いる修道女部隊」 「…有名な人なんですか?」 「良くも悪くもローマ正教のお手本のような人間よな」 いい加減慣れてきたのか、建宮はフルチューニングがするこの手の質問に淀みなく回答した。 「まだ10代前半の年齢でありながら、250人以上の部下を持つ優秀な人間だ」 「それは…すごいですね」 「頭も切れるし容赦も無い。そんな相手が敵だと、最悪術を使う前に全滅させられかねないってことなのよ」 「だから時間いっぱいまで隠れるしかないのだが…」 建宮の言葉を遮るように、レストランの扉がドガガ!と粉砕された。 そして土煙りの中、件のアニェーゼがゆっくりと姿を現した。 「いやー、やめてくださいよ。あんた方みたいな豚さんに褒められたとこで、気持ち悪いだけじゃないですか」 「ローマ正教…!」 「天草式、でしたっけ?…獣の分際で、十字教を名乗るなんて図々しいとは思いません?」 「さあ、そこのオルソラっていう『神の敵』を引き渡してもらいますよ」 「…悪いが、我らの仲間に『神の敵』なんて人間は誰1人いないのよな!」 教皇代理、建宮の言葉を合図に、レストランにいた天草式のメンバーが逃げ出し始めた。 「ち!逃がすと思ってんですか!?」 修道女部隊が周りに散開するも、地の利がある天草式はバラバラになって逃げてゆく。 建宮が通信術式を使って全員に指示を飛ばした。 『今あの連中と戦う意味は無い』 『時間いっぱいまで逃げ切れば勝ちだ』 フルチューニングも、オルソラを連れて急いで逃げだした。 そして途中で牛深にオルソラを預けて、地下水道へ駆け込む。 (あれが、ローマ正教…) (一番頭のおかしい人種は科学者だと思っていましたが、修道女も負けず劣らずです!) (…今は私も修道女でしたか?) 9月8日(午後5時30分)、とある地下道 緊急時以外は連絡をしないよう言い渡されていたため、フルチューニングは1人で逃げながら時間を待っていた。 そして途中何度か発見されそうになりながらも、ようやく日暮れまで時間がたった時、牛深から連絡が入ってきた。 『すまん!オルソラをあいつらに攫われた!』 「!」 『ポイントはどこ!?』 対馬が怒鳴りながら場所を訪ねる。 『○○通り2丁目、バスターミナル近くだ!』 そこは、今レイがいる地下道のほぼ真上だった。 反射的にフルチューニングは返事をする。 「レイは今そこの近くにいます!オルソラを取り戻します!」 『そんな、レイちゃん!?』 五和が驚いて止めようとするが、建宮がそれを遮った。 『いや、まだオルソラは敵の本隊に合流していない。今のうちに取り返さないと厄介だ』 『でも…』 『五和、レイも天草式の一員なのよ。…レイ、俺もすぐに行く。やれるな?』 「はい!」 『…分かりました。私もすぐ行くから、それまでレイちゃんお願い!』 「もちろんです!」 仲間の信頼が嬉しくて、フルチューニングの顔にわずかだが笑顔が浮かぶ。 そして、猛スピードで地上へ戻り、アニェーゼ部隊を追いかけた。 「天草式!?」 「オルソラさんを返してもらいます!」 「ここで叩いておきましょう」 フルチューニングが見たのは、オルソラを連れて行こうとする4人の修道女だった。 すぐに彼女たちは武器を取り出し、迎撃態勢を取る。 (最優先はオルソラさんを連れて逃げる事です) (4人を足止めする程度なら、問題ありませ…) ゴッ!!!! 修道女の1人が取り出した車輪が、突如爆発してフルチューニングに襲いかかった。 咄嗟に電撃を放ち、大きい破片を撃ち落とす。 だが、抑えきれない破片がフルチューニングの腕を幾つも切り刻んだ。 (あれはいったい何ですか!?) (破片がこっちにだけ飛んでくる…指向性の爆弾…?) 「…罪ある者にこそ罰は下る――あなたに救いはありません」 謳うように修道女が断罪すると、辺りに散らばった破片が元の車輪の形に戻って行く。 (自動修復…ただの木材が形状記憶能力を持つなんて…!) (やっぱり魔術は常識が通用しませんね) それでも、フルチューニングは不敵に笑った。 「残念ですが、レイはあなたに救ってもらう気は全くありません」 「すでにレイは、みんなに救ってもらったのですから」 「世迷言を…天草式など、異教徒とさして変わらぬ異端の連中ではないですか」 「そんな判断しか出来ない心の狭い神様なんて、こっちから願い下げです」 「な!神を侮辱するのですか…!?」 「そもそも、レイは神様ではなく“人間”が作りだした試作品ですしね」 その言葉に、修道女――ルチアは怪訝そうな表情を浮かべた。 「あなたは一体何を言っているのです?」 「レイより長生きしているのというのに、あなたはお馬鹿さんですね」 「レイは、救われるためではなく――“救われぬ者に救いの手を差し伸べる”ためにここにいるのです!」 言葉と同時、操られた鋼糸が空中に広がり、4人の修道女に纏わりつく。 「バカな…これは何の術式ですか!?」 「ここで一々解説するのはお馬鹿さんである、と相場が決まっています」 そして、フルチューニングの流した強力な電流が、修道女の意識を刈り取った。 「オルソラさん、大丈夫でしたか?」 「…はい」 「おーおー、エゲツない攻撃をしたものよな」 「建宮さん!不意を突いての攻撃、大成功です」 「だが、喜んでばかりもいられない。本隊がこっちに向かっている。すぐに逃げるべきなのよ」 「分かりました!」 天草式とオルソラは、再び姿を消した。 それから数分後。倒れている4人を見つけたアニェーゼは、1人静かにクツクツと笑った。 「…天草式ね。随分引っかき回してくれるじゃないですか」 「逃げられる訳もねえのに。…このくそったれな世界からは、ね」 ローマ正教と天草式十字凄教の戦いは、未だ幕すら開いていなかった。 9月8日(午後6時00分)、とある地下道 現在天草式は、そのほとんどが地下の下水道に集合していた。 アニェーゼ部隊と何度もオルソラをとり合ううちに、当のオルソラが姿を消してしまったのだ。 そこで建宮は、敵の指揮官アニェーゼに追跡術式を仕掛けて、彼女をこっそり追いかける事にした。 オルソラが捕まった場合、必ず彼女のもとに連れてこられるだろうと予測したからである。 暗い地下に、フルチューニングのささやき声が響く。 「それにしても、どうしてオルソラさんは天草式からも姿を消したんでしょうか?」 「…」 珍しい事に、建宮は返事をしなかった。 思わぬ反応に、フルチューニングは建宮の弱りきった顔をマジマジと見つめる。 その表情を見て、彼の中で予想は出来ているらしい、と判断してそれ以上は何も聞かなかった。 しばらく黙って追跡を続けると、やがてアニェーゼは誰かと会話を始めた。 『…お宅から『法の書』とオルソラ・アクィナスを拝借したっていう天草式だけど…』 『…数や武装ならこちらが上なんですけどね…』 会話相手である“赤髪の神父”を術式で確認した建宮が、好戦的な笑みを浮かべた。 「イギリス清教の『必要悪の教会』――本物の魔術師サマかよ」 「ねせさりうす?」 「イギリスが誇る、対魔術師用の魔術師集団です。私たちの女教皇も今はそこに所属しています」 五和の答えに、さらにフルチューニングは混乱した。 「…そのイギリスの魔術師が、何故ローマ正教と一緒にいるんですか?」 「恐らくローマ正教と協力して、『法の書』とオルソラ・アクィナスを取り戻す為に来たのよな」 「じゃあ、あの人も敵ってことですよね…」 新たな強敵の出現に、うんざりとするフルチューニング。 建宮も、頭をガシガシと掻いて一言吐き捨てた。 「まったく、こっちは只でさえ弱い少数勢力だって言うのにな」 「しかも相手は『必要悪の教会』…やる気が出ちまうじゃないの」 その言葉に、フルチューニングはゾクリと背筋を震わせた。 自分たちの教皇代理、建宮の本気を初めて目の当たりにしたからだ。 「建宮、あれは!」 野母崎が緊張を含んだ声をかけた。 なぜなら、新たな人影――ツンツン頭の少年が現れたからだ。 それもオルソラと一緒に。 「…ドンピシャなのよな」 「こちらに余裕はない。オルソラを奪還したら、一気に離脱する!」 教皇代理の号令に、天草式の全員が応!と武器を構えて返事をした。 それを見届けると、建宮は術式を通じてオルソラたちに話しかけ始める。 「そう簡単に引き渡されては困るよなぁ?」 「オルソラ・アクィナス。それはお前が一番良く分かっているはずよな」 「お前はローマ正教に戻るよりも、我らと共にあった方が有意義な暮らしを送る事ができるとよ」 アニェーゼたちがその言葉に意識を集中しているその瞬間。 ゾフ!! 建宮たちは、正確にオルソラを囲むように剣を下から突き出した。 そしてオルソラのいる地面を正三角形に切り取って、地下へ落下させる。 「天草式!!」 アニェーゼが慌てて手を伸ばそうとするが、その時には牛深がオルソラを抱えて走り出していた。 建宮は時間稼ぎをするため、さらに語り続ける。 「ローマ正教の指揮官さえ追っていれば、オルソラ・アクィナスはいずれここまで連れて来られると踏んでいたのよ」 「まったく地下を辿って待ち構えていた甲斐があったというものよなぁ!!」 「くそ!」 話しながら逃走準備をしていると、先ほどのツンツン頭の少年が悪態をついて地下へ飛び込もうとしてきた。 だが、鍛えられた天草式のメンバーによる殺気が、素人である彼の動きを封じ込める。 プロの魔術師であるステイルだけが、その横で殺気をものともせず行動した。 「我が手には炎、その形は剣、その役は断罪――ッ!」 彼が捨てた煙草の軌道から、紅蓮の炎が出現した。 (なんですかアレ!?炎剣!?) フルチューニングが驚愕するのと同時、あらかじめ用意しておいた逃走魔術が発動した――。 9月8日(午後7時00分)、パラレルスウィーツパーク 『渦』に到着した天草式約50人は、あっという間に一般客に紛れ込んだ。 そしてローマ正教の魔力探査を防ぐため、ゆっくりと何気ない仕草だけで『縮図巡礼』の準備をしている。 その儀式に参加していない建宮とフルチューニングは、現在2人で話し合いをしていた。 「つまりあの炎剣はルーン魔術で作り上げた、と」 「その高熱は3000度を超えるらしい。いやー、恐ろしい術なのよな」 「あと一歩遅ければ、みんな黒焦げになるところじゃないですか…」 フルチューニングが改めて魔術の恐ろしさを実感していると、対馬が建宮に話しかけてきた。 「建宮。もうすぐ閉園時間よ」 「そんな時間か。仕方ない、一旦姿を隠すぞ。準備の続きは警備の人間が消えた11時から行うべきよな」 「分かった。けど…その間にローマ正教はここに気づくかもしれない」 「…どっちみち、0時までは術の発動は不可能なのよな」 一瞬不安そうな表情を浮かべた対馬に、建宮は肩を叩いて安心させる。 「仮にココに気づかれても、向こうは大部隊。人員の再編成や道具の準備に数時間はかかる」 「しばらくはお前さんも休むと良い」 「…そうね。そうさせてもらうわ」 手をひらひらと振って、対馬はお土産ショップへ姿を消した。 「そういえば、オルソラさんは?」 「今は、動かないように捕縛術式を掛けて見張りを付けている」 あんまり得意な術式じゃないけど、この場合仕方ないのよなー、と建宮がぼやいた。 「…説得しないんですか?」 「恐らく、今は言葉では何も伝わらんのよ」 「…」 「ならばこそ、実際に助け出すという行動で示すしかない」 「…」 「せっかくイギリスの人間も来ていることだし、我らが女教皇に見せてやるのよ」 「…」 「天草式十字凄教の今の姿をな」 「…はい」 その会話を最後に、フルチューニングは建宮と別れて姿を隠した。 (…顔も知らない女教皇) (あなたの生き方は、建宮さんたちが受け継いでいます) (……) (どんな人なんでしょうか…レイも一度会ってみたいですね) そして午後11時27分。 静寂に包まれたパラレルスウィーツパークを、アニェーゼ部隊が強襲した。 9月8日(午後11時30分)、パラレルスウィーツパーク 『縮図巡礼』のタイムリミットまで残りわずか30分。 ローマ正教が誇るアニェーゼ部隊が、怒涛の勢いで天草式に襲いかかった。 「超怖いですマジやばいですあいつら完全に目がイッちゃってます」 「逃げるな神の敵!」 「修道女のくせに!平和に話し合いとかしないんですか!?」 「異端者は神の名のもとに粛清されるべきです」 「ダメだこいつら話にならない」 当然フルチューニングも修道女部隊と戦闘中である。 だが、鋼糸を取り出す間もなく7人の修道女が魔術をバカスカ撃ってくるので、ひたすら逃げ惑うだけだった。 (ここで逃げ回ってるだけでは、やられるのは時間の問題です…!) 追いかけ回されたフルチューニングは、その7人を引き連れて室内アトラクション『巨大迷路』の中へ逃げ込んだ。 (確かこの先に…あ…) 「…行き止まり、ですね」 迷路に入ってすぐ、フルチューニングは行き止まりへ突き当たった。 立ち止まったフルチューニングを見て、7人の修道女は嗜虐的な笑みを浮かべる。 「さあ、懺悔をなさい」 「あなたが鋼糸を操る前に、体をバラバラにしてあげましょう」 「心安らかに、自分の罪を悔い改めれば…」 「逃亡など無意味でしたね」 次々と修道女が放つ勝利宣言を聞いて、フルチューニングは溜息をついた。 「…逃亡ではありません」 「レイは、計画通り目的地への誘導を達成しました」 「!」 言葉と同時、“あらかじめ”張って用意しておいた鋼糸が蛇のように襲いかかった。 手に持っている霊装ご「そんな…!」 「卑怯者!」 「どうやって術式を欺いたのですか!?」 混乱している様子を見て、フルチューニングは得意げに告げた。 「そもそも、鋼糸は罠として発明された迎撃用の武器ですよ?」 「ありえない…ただの鋼糸を、私たちが探知出来ないはずはありません!」 「早くシスター・ルチアに連絡を…」 「えい」 バリバリバリ!! 魔術的防御を完全に無視して、フルチューニングの電撃(ノウリョク)が修道女を沈黙させた。 全員が意識を失った事を確認すると、ようやくフルチューニングはほっと一息ついた。 と縛り上げられた修道女たちは、ほとんど抵抗も出来ないまま悔しそうにしている。 (ふふん。この鋼糸の張り方が示すのは“蛇の狡猾さ”。隠した術式は『探査術式のかく乱』です) (魔術に頼らず、しっかりと自分の目で見れば、あるいは気づけたかも知れませんでしたが) (ともかく、この魔術を対馬さんに教わっておいて正解でした) 7人を念入りに縛りあげて、フルチューニングは仲間の加勢に向かった。 フルチューニングが園内を走っていると、フランベルジェを振りまわす建宮と出会った。 「建宮さん!」 「おお、怪我はしてないな」 「当然です」 「よしよし。俺は今からあのイギリス神父サマとやり合ってくる」 「あの炎剣使いですか…」 最初から強烈な印象を残したルーンの魔術師。 彼が操る炎剣は、普通の方法では太刀打ちできない代物だ。 確かに、天草式のメンバーであの魔術師と一対一で勝負できるのは建宮ぐらいだろう。 フルチューニングは、そう言い聞かせて不安がる自分を納得させた。 「レイは浦上たちの援護に向かって欲しいのよ」 「分かりました」 「…いいな、無茶はするなよ」 「建宮さんこそ、気を付けてください」 その言葉を最後に、フルチューニングは迷いを振り切るように駆け出した。 そして、援護に向かった彼女が見たものは―― 「遅っせえ!!」 天草式の仲間である浦上が、ツンツン頭の少年によって地面に叩きつけられたシーンだった。 衝撃的な瞬間を目撃し、フルチューニングは頭が真っ白になった。 そして何が起きたかようやく事態を把握すると、怒りのままに突進する。 「あなたは!レイの仲間になにするんですか!」 激怒したフルチューニングが、強力な雷撃の槍を少年に向けて放つ。 「新手かよ!」 だが、少年が咄嗟に右手を伸ばして雷撃に触れると、跡形も無く消滅してしまった。 (…能力の無効化!?) (なら、これで!) 自分の能力が通用しない事に驚きながらも、フルチューニングは冷静に戦闘を続行する。 手持ちの鋼糸を操って、少年を縛り上げようと目論むが… 「無駄だ!」 「そんな…」 信じられない事に、少年が右手で鋼糸を掴むと、突然操る事が出来なくなった。 鋼糸を通じて電流を流しても、少年にはまるで効果が無い。 「それでも…負ける訳にはいきません!」 「まだやるのかよ!」 能力が通用しない以上、フルチューニングは只の女の子と変わらない。 それでも、今は天草式十字凄教の一員。逃げる選択肢など持っていなかった。 (相手は男、肉弾戦では勝ち目なしですが…) (ここで引き下がるわけにはいかないんです!) 一気に距離を詰め、ハイキックをしようとする――ヒラリ、と簡単に避けられた。 急いでもう一度攻撃しようとするが、その前に少年が体当たりをしてきた為、フルチューニングは地面に倒れ込んだ。 「うう…」 「テメェ、いい加減にしやがれ!」 「ここで諦めるはずがありません!」 怒鳴りつけてきた少年に、フルチューニングも反射的に怒鳴り返す。 さらに少年が何かを言おうとして…ピタリと固まった。 先ほどまで浮かべていた怒りの表情と違い、戸惑うような顔をしている。 「…お前、御坂!?…いや、ビリビリより背が高い…」 そして少年――上条当麻は、何か信じられないものを見たかのように問いかけた。 「まさか、お前は『妹達』なのか…?」 上条が口にした言葉に、フルチューニングも動きを止める。 「何故、あなたがオリジナルや『妹達』の存在を知っているのですか…?」 「ってことは、やっぱりお前も妹達なんだな?」 「…今は、関係無い話です」 動揺を悟られぬよう、フルチューニングは淡白な口調で言い返した。 ところが、上条が続けて吐き捨てた言葉を聞いて、フルチューニングから冷静さは失われることになる。 「なんだって妹達が、あんな連中と一緒に行動してるんだよ!」 (何ですって…!) 「…撤回してください」 「え?」 「レイを救ってくれた仲間を、“あんな連中”呼ばわりした事を撤回しなさい!」 作られて間もない、未熟なフルチューニングの唯一譲れない一線。 それなのに、目の前の男はその一線を土足で踏みにじった。 「目を覚ませよ!あいつらは、武器を持って女をさらうような凶人達だぞ!」 上条も必死で説得しようとするが、フルチューニングには届かない。 「どこまでもレイの仲間を、天草式を侮辱しますか!」 フルチューニングが、目に涙を浮かべて上条に電撃を放つ。 「くそ!後でお前の事情は聞いてやる。だがな、オルソラを渡す訳にはいかねぇんだ!」 電撃を無効化した右手が、そのままフルチューニングの腹部を強打し… (あ…レイは…また…助け…られない…?) 強制的に意識を奪われたフルチューニングが、頬を濡らしたまま地面に崩れ落ちた。
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/812.html
「これは………………………………………………どういうことか説明してもらいましょうか……?」 「どうした美琴?……………………………………………………よし、殺しはしない十分の九殺しだ」 この二人は上琴のケンカを売った。そして二人は絹旗とレッサーのケンカを買った。 目の前のリビングは傷だらけだった。 「……土御門アクセラ浜面青ピィ!!」 上条は玄関にいる土御門たちを怒っているように(絹旗とレッサーには怒っているが)呼ぶ。 「な、なんぜよ?俺はカミヤンを怒らせた事は……これはいったいなんぜよ?」 「今から『最愛&レッサー捕獲作戦』を実行する。土御門は知り合いの中に探すのが得意のヤツに探すように頼んでくれ。 アクセラは早速能力のオンパレードで探してくれ。浜面は昔のガラの悪い連中に頼んでくれ。青ピはクラスメイトに連絡。」 新居の上条は最強敵無しと知っている彼らは、 「に、にゃー。わかったぜい。いくぜ!!野郎共!!」 「「「ら、ラジャー!!」」」 そういうと男達は(上条含める)外に飛び出していった。 一方女たちはと言うと。 「あっ飾利?ちょっと頼みごとよ。うん、最愛とレッサーを探してほしいの。 いろいろとハッキングとかお願い。え?何でかって?二人ともちょっとおいたが過ぎたから罰ゲームよん♪ うん、ありがとうじゃあね~。あっ白雪さんと打ち止めも捜索お願い、滝壺さんはわかれば教えてね」 「「わかった」」 白雪と滝壺は聞いてくれたが、 「ミサカ疲れた~てミサカはミサカはソファーに崩れ落ちてみる……」 「見事つれてきたらごほうびに部屋ひとつあげるわよ?」 「ミサカふっかーつ!!てミサカはミサカは勢いよく外に飛び出してみる!!」 上条勢力、本気を出せばこんなものである。 「おいおい、何の騒ぎよな……ってうおっ! なんつーことしやがったんだ、あの二人は……」 「あ、建宮も悪いけど手伝ってくれるか? 最愛とレッサーにちょっとお説教しなくちゃいけねーからさ」 「ま、まあそれは一向に構わんが一つだけ冷静になって聞いて欲しいのよ。きっとリビングをあんなにしたのはレッサーで、絹旗は止めようとしたはずよね」 建宮は自分が出る前はリビングは綺麗そのものだっただけに、上琴以上に驚き、そして呆れていた。 そんな建宮の予想通り、実は主犯はレッサーで絹旗は止めようとしており、逃げた理由は友達の付き合いとしてだったりもする。 ちなみに男性陣といっしょに探しに行った当麻だがここにいるかというと美琴と一緒に探したいからという理由で引き返したのだ。 「確かに最愛はそんなことする子じゃ無いわよね。でもま、逃げたんだから同罪よ♪ お仕置きは軽めにはしてあげるけど」 「そうだな。じゃあ建宮は天草式のみんなにも頼んでくれるか?」 「それなんだがな、上条当麻。プリエステスと五和は連絡が取れず、対馬と浦上は別の用事で手が放せないのよ。でもその分、わしが働くから安心するよな」 神裂は初春を愛でると言う名のストーキング中で五和は気絶中で連絡が取れず、対馬と浦上は寮監命令の黒子の監視でそれどころでは無かったのだ。 建宮の言葉に納得した上琴は、建宮が出陣するのを見送った後で自分達も絹旗&レッサー探しを始めるのだった。 (もし飾利姫に会ったらさっきのパンツの件、謝るべきか……。いやしかし、気絶する前に見たあの方のことを考えると……むぅ) こちらはジャッジメント第一七七支部、美琴に頼まれて絹旗&レッサー探しとその他もろもろを頼まれた初春が行動していた。 ちなみに今までは固法、それと遊びに来ていた佐天と学園都市の巡回をしていて戻ってきたのはついさっきのことだ。 「固法先輩、止めなくていいんですか?」 「止められるならとっくに止めてるわよ……。さっきまでは私がよく知る初春さんだと思ってたのに……」 「アレが、ですか? あの飾利は確かにいじり甲斐がある方の飾利ですけど、少し変じゃなかったです?」 佐天の言う通り、初春は巡回中も建宮にパンツを見られたことを思い返し、恥ずかしさで頭が一杯で心ここにあらず状態だったのだ。 最近見せていた怖さが無いという点では固法の言い分も理解出来るが、佐天だけは何か悩みでもあるのではと心配していたのだ。 (皆さんが暴れてもいいようにジャッジメントの演習ってことで学園都市中に連絡終了♪ あとは最愛さんとレッサーさんを……あう~~~~っ) 大人しくすると言っても初春は美琴の頼みとあって手早く情報操作を済ませ、今度は絹旗とレッサー捜索をしようと思っていたが突然、顔を真っ赤にしてボーっとしてしまう。 理由は絹旗のことを思い出し、彼女にスカートを捲られて建宮にパンツを見られたことも思い出したからだ。 「ちょっと初春さんしっかりして! 大丈夫? 私のこと、分かる?」 「た、建宮さんに、パ、パンツを……。は、早いんです、ま、まだまだ……。わ、私じゃ、つ、釣り合わないし、あ、あと、6年は……きゅう」 「飾利、飾利ーーーーっ! 固法先輩、とりあえず飾利を寝かせましょう!(後で建宮さんに事情を聞こう。そして場合によっては許さない!)」 初春は顔から湯気が出かねないほど顔を紅潮させて気絶してしまい、しばらくの間、使い物にならなくなる。 佐天は気絶する前の初春の言葉を聞いて、建宮に佐天特製金属バッドを持って事情を聞く決意をするのだった。 当麻の高校の食堂、そこに真夜と半蔵に電話がかかってきた。 今、半郭、トライアングルカップル、木山は真夜が作った料理を食べ終え、まったりと過ごしていた所。 「もしもし浜面か? 何かあったのか? いやまあ、別にいいけど。分かった、こっちからも探してみる。じゃあまた後でな」 「どうかしました? 半蔵様」 「浜面から人探しの依頼だ。きっとそんなに時間はかからないだろうから郭はここで待っててくれ」 「分かりました。でも私が必要とあらばいつでも呼んでください! すぐに駆けつけますから」 浜面の頼みごとが人探しだったので自分一人で充分だと考えた半蔵は、郭をここに残す決断をする。 郭もそれを了承したが、その時の二人は木山曰く、亭主とその亭主を見送る妻のようだったという。 「あれ? 真夜君、電話にも出ないで切っちゃったけど誰だったの?」 「青ピだよ。ここ最近、真昼さんと赤音さんに迷惑かけてるのにこんな時だけ頼ろうとするなんて虫が良すぎるから無視したんだ」 「そーだよなー。青髪のやつ、うちのクラスの男共を集めて俺達を付け回しやがって。ナイス判断だぞ真夜♪」 「……でもそんな青髪君たちを毎回やっつけてるんだよ私達。けど確かに協力する理由、無いもんね~♪」 最近、毎日のように青ピ率いる『嫉妬ファミリー』に追い回されてるトライアングルカップルは、青ピにはかなり冷たかった。 とはいえ青ピ達を毎回毎回ぐうの音も出ないくらいに返り討ちにしているが、それでも彼らに対する不満は消えることは無いのだ。 「じゃあ悪いなみんな。すぐ戻るから郭のことよろしく頼む」 半蔵が出て行くのを見送ると真夜と赤音は後片付け、郭と木山と真昼は午後の訓練の準備に向かうのだった。 「あーっ! 井ノ原弟のやつ、人の話も聞かんと切りよった! まったく何て友達甲斐の無い奴や!」 「あのな青ピ、井ノ原弟を狩ろうとしてるのにこうゆう時だけ協力してもらおうって虫が良すぎるだろ……」 「何言うてんねん、浜面はんは。それはそれ、これはこれや♪」 こちらは上琴に命じられるまま、行動を起こしている土御門、青ピ、浜面。 青ピが真夜のことで怒ってるのを見て、土御門と浜面は目の前の人間を揃って最低だと思っていた。 「絹旗とレッサーの動きに体力を気にせずついて来れる井ノ原弟が参加しないのは痛いが、他のクラスの男共は参加してくれる。そう悲観することも無いぜよ」 「そうだな。半蔵も動いてくれるみたいだし、絹旗とレッサーちゃんもすぐ見つかるさ。じゃあ俺は半蔵と合流して捜索に当たるから二人もちゃんとやるんだぞ」 「了解にゃー♪ ほら青ピ、俺達もクラスの連中と合流するぜよ」 浜面は半蔵と、土御門と青ピは参加してくれるクラスの男子こと『嫉妬ファミリー』と合流して絹旗&レッサー捜索に向かうのだった。 その際、土御門は密かにこんな決意を固めていた。 (カミやんと美琴ちゃんの新居二号の件は絶対にバレないようにしないとな。それはあの二人も困るし、何より俺達も困るからな) そのころ、初春をストーキングしていて、初春が気絶したのを見た神裂、シェリー、ヴィリアン、ウィリアムはというと… 「なんか飾利が変ですね。」 「さっきから顔が赤くなったり、気絶したりしてますからね。」 「なんで顔が赤くなっているのかここからじゃわからないね。」 神裂、シェリー、ヴィリアンはなんで初春の顔が赤くなっているのか気になっていた。 「おーい、そこの4人とも何をしているのね?」 初春の顔が赤くなっている原因の建宮が神裂達に走って近づいてきた。 「建宮、そんなに走っていったいどうしたのですか?」 「それが、レッサーと絹旗が上条当麻と御坂さんの新居を傷つけてしまったのね。それでみんながレッサーと絹旗を捜索しているのね。」 「そうなんですか。(あの二人は何をしているんですか!!)」 「それでプリエステス達も手伝ってほしいのよね。」 「わかりました。それじゃあ私たちは飾利の尾行をやめてレッサーと絹旗を探しにいきます。」 というと神裂、シェリー、ヴィリアン、ウィリアムはレッサーと絹旗を捕まえにいった。」 「さてと俺も二人を探しに行くのね。ってあれ、誰かがこっちに近づいてくるのよね?」 建宮もレッサーと絹旗を探しにいこうとしたら佐天が近づいてきた。 「これでもくらえー!!この変態ロリコンクソオヤジー!!」 挨拶代わりに何故かバットが飛んできた。 「どわー!?いきなり何なのよね!?」 「飾利のスカートをめくっていいのは私だけだー!!」 「何の話なのよね!?」 実は佐天、初春が途切れ途切れに『めくられた…………健宮さんに………見られた』と言ってる事を聞いてしまったのだ。 (めくったのは絹旗だが) 「待てやゴルァあああああああ!!」 「り、理不尽なのよねー!!」 相手が初春と同じ中学生の女子とあって逃げることしか出来ない建宮だが、こちらも事情があるので逃げることを止める。 建宮が逃げるのをやめたことで佐天も追いかけるのを止めると、話だけでも聞くことにした(バッドは構えたまま)。 「逃げるの止めたってことは観念したってことですよね? 飾利のスカートめくってパンツをガン見した罪を告白する気になったんですか?」 「待て待て待て待て! ガン見はおろか捲ってもいないのよ! わしは絹旗が飾利姫のスカートを捲りやがったもんだから、つい飾利姫のパンツを見ちまったというか何と言うか……」 「つまり建宮さんは飾利のパンツを見たのはあくまでも事故、そう言いたいんですね?」 しきりに頷く建宮を見て、日頃の彼の初春に対する態度を改めて思い返した佐天はとりあえず信用することにして、バッドを下ろした。 もっとも、初春のパンツを見たことで鼻血を出したと分かっていれば建宮はバッドで殴殺されかねかったのだが。 「ところでどうしてあんな場所に居たんです? 気のせいか急いでた気がするんですけど」 「おおっ! お前さんとの追いかけっこですっかり忘れてたのよ! 悪いが佐天、お前さんも手伝ってくれ!」 建宮はレッサーと絹旗(主犯はレッサー)が上琴新居二号でやらかしたこと、上琴の指揮のもと二人を追いかけてることを説明した。 佐天はそんな命知らずがいることに驚くとともに、すぐさま携帯を取り出した。 「最愛がそんなことするとは思えないですからきっとレッサーって子の仕業でしょうね。ところであっちはあたしが動いてることは知りませんよね?」 「おそらくは。ただ、御坂嬢が飾利姫に連絡を取っていたからそれ経由で伝わってると思ってるかもしれないが……」 彼女達も自分が捜索に加わっているとは思っていないだろうと踏んだ佐天は、絹旗に連絡を取り始めた。 しかし絹旗の携帯の電源は切られており、繋がることは無かった。 「ダメですね。最愛のことだから飾利を頼ると読んで連絡を一切取らないつもりですよ。でも今、飾利は気絶してるから情報で追い込むのは難しいですね」 「気絶! 飾利姫はどこかお加減が宜しくないのか? 佐天、詳しく説明すウゴッ!」 「ぜーーーーったい建宮さんには理由は教えてあげません! それと飾利は無事ですから安心して下さい。最愛とレッサーって子の捜索、手伝いますから早く行きましょう」 初春が気絶した理由をありえないとは思いながらも感じ取っていた佐天は、暑苦しく迫る建宮をバッドで殴って黙らせると絹旗&レッサー捜索を始めるのだった。 なお、初春から佐天だけに驚愕の真実が聞かされるのは絹旗&レッサーが捕まってから後のことである。 時は少し遡り、建宮と佐天が追いかけっこを始める前、実は近くの路地裏に絹旗とレッサーが隠れていたのだ。 第一七七支部なら安全だと踏んだ絹旗だったが、建宮がここにいたこと、佐天が今後自分達の敵に回ることを考え、悩んでいたのだ。 「ちいっ、ここはもはや超安全ではありませんね。もっと違う場所を探しましょう」 「ごめんなさい絹旗。元はと言えば私があなたの言うことを聞いてさえいれば……」 「過ぎたことを言っても超始まりません。とりあえずみんなのほとぼりが超冷めるまで……レッサー避けて下さい!」 絹旗の勘は見事に的中、先ほどレッサーが居た場所は酷い有様でそこに立っていたのは、 「よォ獲物ども。思ったよりも簡単に見つけちまって少々拍子抜けしてンだ。最後の抵抗ってやつ、やってみなァ」 「ヒーーーーッ! あの白い堕天使がいきなりですか! どうします絹旗……絹旗?」 「ふうっ、アクセラが相手なら超余裕です♪ こっちにはアクセラ対策を何個も超授かってますから」 学園都市最強の一方通行だが、怯えるレッサーとは対照的に絹旗はとても落ち着いていた。 その態度が癪に障った一方通行が迫るが彼は知らない、絹旗が初春にいくつか一方通行を萌え死させるアイディアを授かっていることなど。 「ははははは!!超必殺!!打ち止めの萌え写真!!」 バーン!!と言葉通りの打ち止めの萌え写真を何枚も持っていた。 メイド打ち止め、看護師打ち止め、婦警さん打ち止め、バニー打ち止め等々…… 一方通行には大ダメージどころか超ダメージだ。 「オマエラバカだなァ?」 だが 「こんなんで俺をどォこォできると思ったかァ?」 一方通行は突き進んでいた。 「な、何ですとぉ!?」 「対策ってこれですか!?」 一方通行も手に何かを持っていた。それはケータイだった。そこには…… 「ね、寝顔ですとぉ!?」 「子供の寝顔を待ち受けって変態!?」 「俺はロリコンじゃねェ、そしてオマエラ地獄行きィ!!」 悠然と突き進む一方通行を前にレッサーはさらに怯えるが、絹旗は決意を秘めて切り札の一つを投下する。 「これだけは、これだけは超使いたくありませんでした。アクセラの名誉を傷つけることになりますが超止むを得ません、行きます!」 「ほほォ、随分と余裕じゃねェかァ! てめェらの持ってる手とやら、俺に見せてみろ! 効くわけねェけどなァ!」 「では打ち止めとの初夜を超イメージしやがって下さい! 学園都市最強のP・Rを超駆使して!」 絹旗に言われるまま、条件反射的に一方通行はまだまだ先の話である『打ち止めとの初夜』をイメージしてしまう。 ちなみに『P・R』とは『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』の略で、初春の言葉を借りれば『妄想・信じる力』である。 当然ながら学園都市最強のP・Rともなると並大抵のものではなく、より現実的かつ鮮明にイメージ出来てしまうわけで結果、 「ブハッ!!!!!!! て、てめェ、ひ、卑怯だぞ…………ぐっ」 『打ち止めとの初夜』をイメージしてしまった一方通行は鼻血を常人ではありえない量を噴出し、負け惜しみを言って崩れ落ちた。 それを見ていたレッサー、実際に一方通行にそう仕向けた絹旗も効果の程に驚くと同時に倒れた少年にドン引きしていた。 「小さな子のしょ、初夜を妄想して鼻血だなんて学園都市最強ってもしかしなくてもぺドフィリアなんですね……。上条さんとは雲泥の差です」 「いや、ぺドとは超違いますけど妄想だけでよくあれだけの鼻血を噴いたアクセラが超キモいです。とりあえずメッセージを超残しましょう♪」 絹旗はそう言うと、一方通行の鼻血で、汚いとは思いながらも近くの壁にメッセージを残した。 レッサーは知りたくも無いので周囲を見渡し、顔見知りが居ないことを確認し始める。 「よし、これで超バッチリです♪ アクセラには超申し訳ないですけど、私達を襲った罰ですよ」 「絹旗、今なら私達を狙ってる人は居ません。急いでここを離れましょう」 レッサーからの呼びかけを受けて、絹旗は一方通行が倒れてる路地裏を後にした。 なお、鼻血の血文字のメッセージは『僕は小さな恋人でHなことを考えたムッツリです』という、かなり酷いものだったり。 路地裏から出た絹旗とレッサー、身を潜めつつも素早くかつ的確に逃亡していた。 しかし潜伏先を考えていなかったので単なる行き当たりばったりな逃亡になってしまっている。 「絹旗、本当にあなたが知ってる隠れ家とかは使えないんですか?」 「おそらくは、ですけど。浜面と滝壺さんも敵に回ってるでしょうから、そういう場所はむしろ超危険なんですよ」 「成程、じゃあしばらくは逃げ回るしか無いようで……絹旗、気のせいかあの人達、こっちを見てませんか?」 絹旗の読み通り、浜面と滝壺により元アイテム時代に使っていた隠れ家とかは押さえられているので彼女の判断は正解だったりする。 果ての無い逃亡にげんなりしつつも、レッサーはこちらを凝視している当麻くらいの歳の男子数名がこちらを見ていることに気付く。 そして次の瞬間、その男子の一人が大声でこんなことを叫んだのだ。 「リーダー! ターゲット発見したぞーーーっ!」 「おーっ、ご苦労さんだにゃー♪ さあ絹旗にレッサー、観念して大人しくお縄に付くぜよ」 「「土御門!!」」 リーダーと呼ばれた土御門が楽しげな笑みを浮かべて現れたことに絹旗とレッサーは驚くが、それ以上の驚きが二人を待っていた。 なんと、周りの人間の同い年くらいの男子が全員こちらを見てニヤニヤ笑っているのだから。 「ま、まさかこの人達全員、あなたの仲間なんですか? 土御門」 「レッサーは察しが良くて助かるにゃー♪ 抵抗はあまりおススメしないぜよ。アンチスキルの世話になりたくないだろ(これで二人も暴力には訴えないだろ)」 「それよりもみんながニヤニヤと笑ってる方が超気になります。これの説明を超求めますよ」 アンチスキルと言う言葉を使い、相手の実力行使を押さえ込むことに成功した土御門、これで終わりだと確信していた。 ところが青ピがバカ正直にも絹旗の問いに答えてしまうことで形勢が変わってしまうことに。 「そんなん簡単や♪ みんな二人を捕まえたら一人一人とデート出来るからな~♪ こない可愛い子とデート、みんなのテンションはうなぎ上りっつーやつや!」 「バッ、バカ! 余計なこと言うな青ピ…………あっ」 絹旗とレッサー、乙女の防衛反応が土御門、青ピ、そして『嫉妬ファミリー』に襲い掛かる。 しかし、そんな襲われてる二人は 「「(超)ふざけんなぁぁぁあああああああああああああ!! 女を何だと思ってるんだオマエラはァァァあああああああああああああ!!」」 と暴れていた。ちぎっては投げちぎっては投げ、こんな表現大げさだなぁと思ってる諸君も見てもらえば納得して頂けるだろう。 土御門もヤバイと思ったのか退却命令をだそうとしたが何かに気づいた。 「さすがだにゃー。だがオマエラ二人を捕まえようとしている二人は今どこににゃー?」 何を言ってるんだコイツは?と二人は首を傾げたが二人とも何かに気づいた。それは何かは解らない。だがそれは何かを押し潰すようなものだった。 そしてレッサーは前にもこれを感じたことがあった。 イギリスのクーデターの時も、ロシアの時も感じた。そしてつい最近、とある家でも…… 二人は後ろに何かを感じた。何かはすぐにわかった。たが二人は後ろを向けなかった。 何故なら…… 「アンタたち、こんなところで何をしてるのかしら?」 「オマエラは今日、俺が殴っても仕方ないことをしたからな?」 そこには自分達の愛の巣をどうこうするなら、即叩き潰すバカップルがいるからである。 「建宮さん、あそこに最愛が! 隣にいるロングの子がレッサーって子ですよね? ……って当麻兄さんと美琴姉さんも一緒ですよ!」 「んなっ! まずい、それは非常にまずいのよ! あの二人、殺されかねんぞ!」 「じょ、冗談ですよね? そりゃあ新居の件の話は聞いてますけど、ここは外ですよ? 家の中ならまだしもこんな往来の場でなんてことは……」 「有り得るから言ってるんだ! あの二人をひとまず落ち着かせられるのは義理の妹の佐天、お前さんしかいないのよ! さあ、早く向かうのよね!」 絹旗&レッサーのピンチにギリギリの所で駆けつけたのは佐天と建宮だった。 建宮は上琴の尋常じゃない怒りを肌で感じ取り、真っ昼間の惨劇を止めるべく上琴抑止力の一人でもある佐天をけしかける。 「当麻兄さん、美琴姉さんストーーーーーーップ!!!」 「「うおっ!!」」 怒れる上琴を一先ず止めることに成功した佐天だが、バットを振り下ろしての制止は少しやり過ぎかもしれない。 上琴は佐天の登場に驚き、レッサーは呆然とし、絹旗は助けてくれた佐天に泣きながら抱きついた。 「うわ~~~~~~~~ん、涙子~~~~~~~~~。ちょ、超、こ、怖かったです~~~~~~」 「はいはい、ゴメンね遅くなって」 「ふうっ、どうにか間に合ったか……。レッサー、お前さんも大丈夫か?」 遅れて到着した建宮にただ頷いて返答するしか出来ないレッサーは佐天の存在に頭の整理が追いついてなかった。 一方、上琴はようやく佐天の登場に頭がついてきて、彼女と建宮に事情を尋ねた。 「涙子、どうしてお前が? いや、建宮と一緒ってことは多分途中で合流したんだろうけど……。けど邪魔したのはどうゆうつもりだ?」 「どうゆうつもりはこっちの台詞です! こんな往来の場で最愛に酷いことしようとするなんてあんまりです二人とも!」 「い、いや、あのね、る、涙子。それは、その、二人が、というかそっちのレッサーが悪いというかね……」 佐天の言葉に土御門は絹旗&レッサーがやったことにツッコミを入れようと思ったが、そんな茶々を入れられる気配が無いので諦めた。 困惑する上琴に佐天、そして建宮が正論をぶつける(絹旗は佐天の胸の中で怯えてる)。 「悪いことしたのならまずは当人達に理由を聞いて下さい! お仕置きするのも説教するのも話を聞いてからです! だから最愛がこんなに怯えてるんですよ!」 「佐天の言う通りなのよね。惨状がどうであれ、お前さん方は人の話を聞くべきだ。相手にも言い分があるかもしれん。それすら聞かずに行う仕置きはただの暴力だ」 (……アレは理由を聞くまでも無くお仕置きしてもいい気がするが、これであの二人も少しは考えるようになるから黙っとくぜよ) 佐天と建宮の言葉に思い当たることがある上琴は、怒りを収めて話を聞く態勢になる。 ちなみに土御門が黙っていたのは上琴がこれで新居の件で我を忘れないようになって欲しいという願いというか目論見があるのだが。 「そうだよな、レッサーはともかく最愛がそんなことするわけ無いって建宮に言われてたのに俺ってやつは……ゴメンな最愛」 「ヒッ!!」 「……うっ、自分達のせいとはいえさすがにそれは傷付くわ。大丈夫よ最愛、私達もうアンタには怒ってないから。だからそんなに怖がらないで、ね?」 「ほーら最愛、二人もああ言ってることだからさ。もう怯えなくても平気だから」 上琴は絹旗の反応に想像以上にショックを受けていた、普段の懐きっぷりが印象的なだけに。 佐天が宥めたことでようやく絹旗も上琴にいつもの表情を見せることに。 これで全て丸く収まったと思っていたのはレッサーだが、そうは問屋が卸さない。 「さて主犯だと思われるレッサーさん。上条さん達にちゃーんとリビングをあんな風にしやがった経緯を説明してもらおうか」 「……えっ? で、でもここは人通りがある所ですよ? さっき言ったことを、も、もう撤回するんですか?」 「大丈夫よレッサー♪ ちゃーんと家に帰って庭であんたの釈明を聞かせてもらうから。覚悟はいいわよね?」 レッサーは上琴が自分に対してだけ怒りをそれほど収めていないことに気付き、当麻に引きずられるままに上琴新居二号へと連行されることに。 その後ろを無事だった青ピ、土御門、佐天、絹旗、建宮が後を付いていった。 無事に上琴新居二号に戻った上琴、土御門、青ピ、佐天、絹旗、建宮、レッサー。 絹旗とレッサー捕獲の知らせを捜索続行中の仲間達に連絡するのを忘れ、庭ではいきなりレッサーの聴取が始まった。 レッサーがリビングを滅茶苦茶にした理由、それが本人の口から語られ始める。 「いやー……実はですね?絹旗さんとの勝負が決着ついてなくて、うずうずしてたんですよ……」 「「で?」」 しばしの沈黙………… 「それで……………………………………………………………………………………きゃは♪」 「「きゃは♪じゃねえよ!!」」 上琴の怒りは当たり前、突っ込むのも当然である。 「何よそれ!!特に理由なんてないじゃない!!」 「それであの惨事かよ!?ふざけてんじゃねえ!!思いっきりやってやれ美琴!!」 「にゃー!!落ち着け二人とも!!月夜ー!!」 土御門がここにはいない白雪を呼んだ。 「ここにいない白雪さんを呼んでどうするんですか!?」 すかさず佐天の突込みが入る(当たり前だろ!!)。 「甘いぜい!!」 すると遠くからキラーん☆と何かが飛んできた。 そしてその何かは上琴とレッサーの間に降りた(正確には落ちた)。 その何かとは?察していただきたい。その名は……… 「白雪月夜!!ただいま参上!!」 「おお!!白雪さんタイミングよすぎですよ!?どこの漫画ですか!?」 佐天は鋭く当突っ込む(突っ込まないほうがおかしい!!)。 「ふっ、甘いよ佐天ちゃん。私と元春の間には距離もタイミングも問題じゃないの。だって二人は愛の絆で結ばれてるから♪」 「愛の絆ですか、それじゃあ仕方ありませんね~……って言いませんよ! 色々ツッコミ所が多いじゃないですか!」 「まあまあ。佐天ちゃんのツッコミ精神も分かるけど、今はカミやん達の問題を片付けるが先決ぜよ。ツッコミはその後でたっぷりするにゃー」 土御門の言うことに納得した佐天はひとまず月夜に対するツッコミは置いておくことにした。 そして問題はレッサーのお仕置き&上琴の怒りを鎮めることに再度注がれる。 「どいて白雪さん、そいつ殺せない」 「お、落ち着いて美琴ちゃん。新居で殺人なんて穏やかじゃないよ……」 「悪い白雪。今回ばっかりは俺も美琴も心底頭に来てんだ。落ち着くなんて出来そうにねぇ」 「だーかーらー! 二人とも落ち着いてってば! とりあえずレッサーちゃんが何をしたのか私に話してよ!」 上琴はレッサーに襲い掛かりたい衝動を抑えながらも彼女がリビングをあんな風に仕出かした理由っぽいものを月夜に話した。 それを聞いた月夜は呆れたように溜め息を吐いた後でレッサーに向き直ると、身も心も凍りそうな笑顔(レッサー談)をレッサーに向けた。 「レッサーちゃん、理由がアレじゃあ私も庇いようが無いよ。だからせめてあの二人に病院送りにされないように私がお仕置きしてあげるね♪」 「えっと、そ、それでど、どのようなお仕置きになるんですか……? 痛いのは……イヤですよ?」 「大丈夫大丈夫。痛いのなんてそんなに気にならないから。とりゃー!」 月夜がいつもの掛け声を言うと、レッサーは首より上を残されて氷漬けに。 「寒っ! 冷たっ! 痛っ! でも冷たっ! それでいて寒っ!」 「ね♪ 痛いのなんてそんなに気にならないでしょ? 上条君に美琴ちゃん、これでレッサーちゃんを許してやってよ。ね?」 「なんかそっちの方が酷い気がするから俺は別にいいけど美琴はどうだ?」 「私もいいわよ。その代わり、すぐさま解放は無しだからね。今の時刻は午後2時だから……2時間放置で♪」 この状態で二時間放置は地獄にも等しかったので抗議しようとするレッサーだが、言葉がうまく紡げずにいた。 絹旗と佐天はレッサーを可哀想と思いながらも、自業自得を思うことにして二時間放置を受け入れた。 「さて、とりあえずやることといえばリビングの後片付けか……。はぁ、何か久々に不幸だ」 「リビングはわしと絹旗で片付けるのよ。元を正せばわしの監督不行き届き、ならびに絹旗の甘さが招いたこと。せめて後片付けはわしらがするのよね」 「建宮の言ってることが正しいのは超悔しいですけど、私も建宮に超賛成です。お兄ちゃんたちは食器や衣類の収納を超お願いします」 「傷だらけのリビングの修復は俺が受け持つぜよ。なぁに、ちょっとしたサービスにゃー♪ パパッと修復出来る業者の皆さんを呼んでやるぜい」 こうして上琴、土白、佐天、青ピは小物類の収納、絹旗と建宮はレッサーのやらかした後始末を開始する。 その際、土御門は一打、浜滝に、建宮は神裂、シェリー、ウィリアム、ヴィリアン組に絹旗&レッサー捕獲終了を忘れずに伝えるのだった。 浜滝は途中で合流した半蔵と一緒に絹旗&レッサー探しをしていたが、そこへ土御門から終了の知らせが入る。 ちなみに浜面と滝壺が一緒の理由は上琴と同じで一緒がいいという、バカップルなら常識的な考えのものだったり。
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/1045.html
そして超ドン引きした。 「ちょ、超何なんですかこれわ!?」 「…多分ウエディングケーキならぬウエディングチョコケーキですの…」 「せやなー……ようこんなもん送ってきたな…」 「みんなもうこの状態に慣れてる気がするのよな……」ため息交じりに建宮が言う。 「そりゃー、当麻お兄さんですから」 「「「「ですよねー!」」」」 全員一致。 「で、さらにこれに学生寮の分もあるんやと。」 「超世界一もらってるでしょ超確実に!!」 「で、さすがにこの家に入りきるか私不安なんですけれども…」白井が言う。 そして佐天が言う。 「でもその中でもこのウエディングチョコ見た美琴姉さんがどういう行動とるか……」 「その間だけでもわてら外にいた方(逃げた方)がええやろな。いちばん高そうな電化製品持って」 「「「「ですねー。」」」」 この量と質でおそらく御坂の堪忍袋の緒が切れると判断した5人は避難準備を始めるのだった。 そうとは知らない配達業者がトラックもろとも黒こげになるとも知らずに…… 同時刻 上条の実家では。 上条刀夜がチョコ(の入った箱)の山を見て 「…当麻のやつ、もらいすぎだろうこれは」 「あらあら、刀夜さん羨ましいのかしら??」 「そ、そんなわけないだろう私だって若かりし頃は……はっ!」 刀夜はうっかり口を滑らしたという感じで口をふさぐがもう遅い。 振り返らずともどす黒いオーラが後ろから漂っている。振り返ったら間違いなく陰影がすごい というより陰影しかない妻が仁王立ちしていることだろう。 「確かに刀夜さん、私とバレンタインにデートした帰りには絶対にお宅まで連れてきてくれませんでしたからねえ」 刀夜は詩菜とデータした後、自宅前に積まれたチョコの山を詩菜にばれないように処理していたのだ。 「は、ははは母さんや それはもう昔のことだし、な?」 そう言ってごまかしに入る刀夜。 だが。 そのタイミングを見計らったかのようにチョコの山から包みが一つ落ちてきた。 英語で書かれていることからおそらく海外からだろう。 まったく当麻の奴 世界規模で女たらしをしているのか と刀夜が他人事のように思っていたが。 包みを拾い上げた詩菜が。 その宛先を読み上げる 「宛先は Toya kamijo ですか……」 一気に気温が100度下がった。 「あらあら、刀夜さん的には妻がいても女の子に手を出しちゃうのかしら??」 「待ってくれ母さん!! 多分それは仕事の取引s」 「問答無用!!!!!!」 刀夜がその夜 家に入れてもらえず野宿する羽目になったのは言うまでもない。 その頃、トライアングルカップル改めポリアモリーカップルはというと、真夜の携帯で小萌と電話していた。 「で、俺たちの結果はどうだったのですか?」 『あ、そうでしたね。すっかり三人の成長の事ばっか話してしまいましたね。』 そう、先ほどまで小萌が今までのポリアモリーカップルの成長を話ばっかしていたのだ。 『それで、三人のシステムスキャンの結果なんですが、まずは真夜ちゃんはレベル4になったのですよ。』 「え!?真夜君レベル4になったの?」 いきなり電話が赤音に代わっていた。 『あれ?さっきまで真夜ちゃんと話していたのに、なぜ赤音ちゃんに代わっているのですか?』 「それは、私が真夜君に代わって言ったから。」 『そうなのですか。じゃあ次は赤音ちゃんの結果を言いますね。赤音ちゃんも真夜ちゃんと同じくレベル4になりましたのですよ。』 「おお、真夜も赤音も凄いじゃないか。」 今度は真昼に代わっていた。 『今度は真昼ちゃんに代わったのですか!?』 「俺も聞きたかったからな。それで、俺の結果はどうだったのですか?」 『真昼ちゃんはレベル3になりましたよ。3人ともレベルが一つずつ上がったのですよ。』 「そうなんですか。じゃあ真夜に返すな。」 真昼はそういうと、真夜に携帯を返した。 「すみません。二人が代わってと言うもんで。」 『別に良いですよ。それと木山先生からの伝言なんですが、今日から訓練はしないとのことで。』 「そうなのですか?じゃあこれからは放課後は自由にして良いのですか?」 『そうなのですよ。それじゃあ木山先生の伝言も伝えた事ですし電話切りますね。』 小萌はそういうと電話を切った。 「おっしゃー!!レベル4だ!!ひゃっほーい!!」 「真夜、はしゃぎすぎだろ?まあ俺も色んな意味で嬉しいがな♪」 「ふっふふ~ん♪このまま行けばレベル5になれるかもね!!」 「「いや、それはない」」 「姉弟そろって即否定!?」 何て楽しげに話ながら真夜の家に向かっていった。 だが、途中の公園で露出狂の女が十歳位の男の子を抱き締めていたが、あえてスルーした。 「何でカミやんはこんなにモテるん……やッ!!」 ドーン!!テッテレテ~♪120て~ん♪ その頃上条家にいた五人は、美琴の怒りから逃れる為、上条家の地下の『ゲームルーム』にいた。 最初は外に逃げようとしたのだが、またまた宅配便が来たので居留守を使うことにしたのだ。 ちなみになぜ『ゲームルーム』かと言うと、ここなら無料でゲームセンターのゲームで遊べるのだ。 だがクレーンゲーム等の類は無く、全部と言うわけではないだろう。 おっと、話を戻すとしよう。 青ピがパンチングマシーンの最高記録を更新すると、黒子がすぐさま抱きついてきた。 「さすが○○様!!最高記録更新ですわ!!」 「いやー、そこまでの事ちゃうて~」 「う~、私の最高記録が……」 佐天は自分の最高記録を打ち破られ、青黒の近くでうなだれていた。 だが、そこに絹旗が出てきて佐天に手をさしのべる。 「著安心してください!!私が涙子の敵を取ってきます!!」 「さ、最愛……」 絹旗がパンチングマシーンの近くにたつと、100円の代わりにボタンを押す。 そして絹旗は構えた。だが、 「最初に言っておくけど、それは能力使用禁止なのよね」 それを聞いた瞬間絹旗は動けなくなった。 「そ、そんなの超嘘っぱちです! だってこの地下室って能力者が能力使っても超壊れないって……」 「それは建物の強度と一部のアミューズメント施設に言えることよな。中には能力使用禁止のものだってちゃーんとあるのよね。上条当麻のことを配慮してな」 学園都市最強やローマ正教最強を倒した当麻だがシステムスキャンではレベル0の無能力者扱いにされてしまう。 それに当麻の友達には能力者じゃない者達も居るということを考えた美鈴の計らいによるものだったりする。 「くっ、超仕方ありませんね……。でも青髪さんの得点なら能力を超使わなくても……建宮の超バーーーーーカっ!!」 もう絹旗の暴言に悲しいことにすっかり慣れてしまった建宮だが、それでも聞く度に少しばかり傷付いてしまう。 “ドーン!!”という大きな音を立てたパンチングマシーンから聞こえてきた点数は、 『テッテレテ~♪ 117て~ん♪』 「あーーーっ! 超惜しかったですーーーーーっ! ごめんなさい涙子! 私はあなたの敵を超取れませんでした!」 青ピの得点まであと少し及ばないもので、悔しさのあまり絹旗は佐天に抱きつく。 悔しがる絹旗をあやしつつ、佐天は負けた理由を理不尽にも建宮に擦り付ける。 「最愛は良くやったよ。○○さんの得点まであと少しだったんだからさ。悪いのは掛け声に使われた建宮さ……建宮だから」 「ちょ! 何で絹旗の負けた原因がわしにならなきゃならんのよ! つーか佐天! どうしてわしのことを呼び捨てにわざわざ呼び直した?」 「んー、なんとなくかな♪ 建宮って大人の威厳とかあまり無さそうだから。それにこれは親しみを込めてフランクな感じで話してるんだから悪いことじゃないよ」 いきなりタメ口になった佐天に納得出来ない建宮だったが、佐天に上手く言いくるめられて納得してしまう。 そこで建宮がここに来た目的、すなわち初春のチョコ(正しくは義妹トリオチョコ)の件を思い出す。 「あーーーっ! そういえばすっかり忘れてたのよ! 佐天、絹旗。飾利姫のチョコを寄越すのよ!」 「うわ、この超オッサン、私達ガン無視で飾利のチョコしか食べない気ですよ……」 「ん……? 私達、とな? つまりお前さん達もわしにチョコを? ……そうか、それは失礼な態度を取ってしまってすまんかったのよ。ありがとな」 「(うっ、こんなに素直にお礼を言われると心苦しいけど……それはそれだもんね♪)じゃあ早速。建宮、口開けて。今からあたしのチョコを放り込むから」 義妹トリオチョコ、まずは佐天のチョコ、すなわち99.9999999%チョコを食す建宮。 口に放り込まれ、何の警戒もせずに佐天のチョコを噛んだ瞬間、生まれて初めて味わう境地の苦味を体験することに。 「にっ、苦っ!!!! み、水! ガフッゲホッ! も、もしくは甘いチョコを! ゲフッゴフッ!」 「言っとくけど他のモノで誤魔化したり吐き出したりしたら飾利のチョコはあたしが食べちゃうからね♪」 味覚でこれほどの苦しみを味わったことの無い建宮、しかしこれを食べないと初春のチョコが食べられないとあって何とか食べきった。 肩で息をしてる建宮に続けて絹旗の火薬チョコが襲い掛かるかと思われたが、青黒からストップがかかる。 「ちょい待ちぃや絹旗ちゃん。あない苦しんどる建宮はんにアンタのチョコは止め刺すようなもんや。きっととんでもないチョコなんやろ? それも」 「○○様の仰るとおりですわ。きっとそれは建宮さんも覚悟されてることでしょう。建宮さんが回復されるのを待ってからでも遅くはありませんの」 「……それもそうですね。じゃあ建宮が回復するまで超遊ぶついでに待ちましょう♪」 こうして絹旗に付いていくように佐天、青黒は建宮の体調が回復するまでゲームで再び遊ぶことに。 その頃、土白が『喰わせ殺し』へと到着、すぐさま店内に突入する。 目的はそう、インデックスとステイルを上琴新居二号を連れて行くという建前のもと、二人のデートを冷やかす為である。 「どうもー!!ういういしいお二人さーん!!」 「チュ~ぐらいはしたのかにゃー?」 入ってきてそうそう、食べ物を取りに来てる聖職者の二人をからかう白雪と土御門。 その聖職者、インデックスとステイルは何も入っていない口で思わず吹き出してしまった。 「つっ、つつつつつつつつつつつつつ」 「咬みすぎ咬みすぎ」 「土御門!!君は何を言ってるんだ!?」 「そっ、そうなんだよ!!なんで私とステイルが付き合ってることになってるんだよ!?」 「えー?私たち、まだそんなこと言ってないよねー?」 「月夜の言うとうりだにゃー」 ううっ、とひるむ二人。土御門と白雪の周りにはみーんなでれでれしていて恥ずかしがる人間が居ないため、からかうのが楽しくなってきてしまう。 「そっ、そんなことより!!二人は何をしにきたんだよ!?」 「あれ?聞いてなかったかなー?元春がステイル君に連絡したはずなんだけどー?」 「もしかしてステイルはインデックスちゃんの食べる姿に惚れ惚れしてたのかにゃー?」 周りから聞けばそんなことあり得ない(理由:インデックスの食べる姿は正に猛獣だから)のだが、ステイルにはそんな常識は通じない。 ステイルはインデックスにとことん惚れ込んでいるため、インデックスのどんな姿にもよくじょ……うではなく、惚れ惚れしてしまうのだ。 「とっ、とにかきゅ!!」 「噛んでる噛んでる」 「さっさと上条当麻の家にいくじょ!!」 「あっ、また噛んだ」 ステイルはお会計をすませると、インデックスの手を握りさっさといってしまった。 「さりげなく手なんか繋いじゃって、ういういしいなー」 「全くだにゃー。あっ、ステイル!!そっち逆方向!!」 そのころ、上琴は後少しで家に着こうとしていた。 それが美琴の嫉妬のカウントダウンになるとも知らずに……。
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/311.html
主賓一行が東京観光を楽しんでる頃、佐天と絹旗は正座してる建宮を睨み付けていた。 初春に頼まれたことを結局一人分しか考えていないことがバレてしまったのだ、神裂によって。 「酷いですよね建宮さん。初春の前でいいカッコしたいからって神裂さんの手柄を自分のものにしてたんですから」 「私の中でこの建宮は浜面と同じランクに超位置づけしました。まったく建宮のくせに、初春さんを超どうにかしようなんて超生意気です」 「(え? 呼び捨てってことは格下げ?)聞いて欲しいのよ! 土御門に関してはプリエステス御自らお考えになると仰ったのよ! だからすでに終わったものとああっ、プリエステス!」 絹旗の中で浜面と同格になってしまった建宮が言い訳していた所へ神裂が戻ってきた。 建宮の縋るような目に溜め息を吐いた後で、神裂は佐天と絹旗を優しく諭した。 「もうその辺にしてあげましょう二人とも。それに建宮の言っていたことは全て事実ですし、これ以上は時間が勿体ないですよ」 「ま、まあ神裂さんがそう言うなら……」 「神裂さんに超感謝しなさい。本当ならこんなモンでは超済まないんですから」 「あ、ありがとうなのよね。しかしプリエステス……土御門に堕天使エロメイドを着せるとは正気の沙汰じゃないのよ!」 堕天使エロメイドが何か分からない佐天と絹旗に建宮が実物の写真を見せる。 想像力豊かな二人は堕天使エロメイドを着た土御門を想像すると、もの凄く気分が悪くなった。 「うわぁ……。イメージしただけでも相当キツイですね」 「この衣装を土御門が着た時点で一種の超セクハラですよ。恥ずかしいという点では超間違いないんですけど……うぷっ」 「その点はご心配なく。土御門は男ですからスカートではなく半ズボンです」 「「「そうゆう問題じゃないっ!」」」 土御門の堕天使エロメイドカスタム(仮)を却下したい佐天、絹旗、建宮だったが妥協することに。 まだ一方通行と青ピのコスプレも決まっていないし、恥ずかしいという点では適切だと判断したのだ。 「はぁ、もうこれしか無いのかなぁ……」 そこへ頭を悩ませた初春が合流した。 「おおっ! どうしたのよ愛しき飾利姫! 悩む姿も美しいが貴女には笑顔あだだだだっ!」 「すみません初春。ところでその、白雪月夜への謝罪の件はまだ終わってないのですか?」 「いえ、それはもう終わりました。今は○○さんのコスプレを悩んでて……。あ、建宮さんを離してあげて下さい。耐性付きましたから」 初春から月夜が重度のやきもち焼きだと聞いた神裂は、素直に月夜のメールに答えたことを反省していた。 そこで今度は自分ではまた波風が立つと思い、月夜への謝罪のメールを初春に頼んだのだ。 お詫び1割、土御門から受けた数々の仕打ち&愚痴8割、祝福1割の長文メールを(土御門には内緒にしてもらって)。 「○○さんって白井さんの彼氏さんだよね? もしかして全く思い浮かばないの?」 「いえ、思いついたのはいいんですけどその衣装があまりにもその、みなさんには刺激が強すぎて……」 「刺激が超強いって一体どんなコスプレなんです?」 佐天と絹旗が興味津々で聞いてきたので、初春は仕方ないと思いながらも携帯の画面にその衣装を表示した。 次の瞬間、佐天、絹旗、神裂、そして建宮までもが引いてしまった。 「……何、これ。初春あんた、これを○○さんに着せるつもり……?」 「これは私が今まで見たことも無い、というか見たくも無かったおぞましい服ですね……」 「いや、これはいくらなんでもキッついのよな。これを愛しの飾利姫が着るのならアリごふっ!」 「建宮の超変態嗜好に超興味無いから余計なことは喋らないで欲しいです。でもこれは、私でもちょ、蝶、じゃなくて超寒気が……」 顔を覆う蝶々の仮面、胸元から股間ギリギリまで開かれたスーツ、そして股間部分にあしらわれた蝶々のエンブレム、普通の感性にはきついようだ。 しかし中にはこれを好しとする人間が居ることを初春は話し出す、気絶した建宮には気付かずに。 「白井さんならこれも有りなんです。御坂さんに着せようとした衣装の幾つかはこれの比じゃないですし」 (常盤台のジャッジメントは超変態だったんですね。これは超警戒する必要がありそうです) (これを受け入れるどころか好ましいと思う女子がいるとは……世の中は広いですね) 初春の言葉に絹旗と神裂はまだ思考する余裕があったが、黒子を知っている佐天はショックで頭が真っ白になっていた。 「恥ずかしいという点では申し分無いので○○さんはこれでいきましょう。少しエレガントとは思いますけど」 「ちょ、ちょっと待ちなさい初春! 貴女は! 貴女だけは道を踏み外してはいけない!」 「超その通りです! 初春さんにそんな美意識は超似会わないです!」 「そうだよ初春! あんたは白井さんのような変態さんになっちゃダメだからね!」 「皆の言う通りなのよな愛しの飾利姫! 姫のような純真無垢で可愛らしい女子がこれをエレガントと思ってはいけないのよね!」 初春の美意識にストップ&更生を迫る4人に初春はただただ頷くしかなく、その後も必死で諭されることになってしまった。 ちょうどその頃、神裂の本心を込めたメールを月夜は…… 「ねえ元春、この人知ってる?」 「ん?ああ、ねーちんか」 「ねーちん?」 「いや、それは呼び名だぜい!!」 「関係は?」 「仕事の同僚!!ちなみに俺が先輩だぜい!!」 「そっ、ならよかった。」 (にゃー…危なかったぜい…) 「そういえば元春って仕事仕事って言うけどなんの仕事してるの?」 「世界の平和についてだぜ!!」 「おおー!!かっこいいー!!」 「で?」「にゃ?」 「仕事ついでにいろんな女の人とあってるわけだ?上条君は公開型旗男、元春は密室型と。」 「ち、違いますにゃ!カミやんからも言ってくれい。」 「あ?まあ確かにそいつの同僚には変な人が多いな。老若男女問わず。」 ボロボロの上条が答える。 「だよなァ。」 「むっ、そろそろ着くよーってミサカはミサカは呼び掛けてみてリ。」 5バカップルが東京タワーについたころ、 傭兵崩れのゴロツキに試練が訪れていた……。 「ああ!ウィリアム、ウィリアム!!」 「ぬう!?ヴィリアン!?」 「おー!!さすが私の娘、大胆だ!!」 「若き頃を思い出すのよん♪」 「ヴィリアン様…」 「ウィリアム、ウィリアム、ウィリアム、ウィリアム!!」 「ヴィリアン!!少々落ち着くのだ!!」 「嫌です!!ウィリアム、貴方は何時も何処かへ行ってしまうではありませんか!!こうやって会うとき位よいではないですか!!」 「ぬおおおおおおおおおお!!」 傭兵崩れのゴロツキの試験とは理性との戦いであった。 「「良いものを見た!!」」 と、姉達が言っていたのは言うまでも無い。 「騎士団長からメールにゃー。おっ♪ カミやん、これを見てみるぜよ」 「どした? 土御門。へぇ、これはこれは」 土御門に送られてきた騎士団長からのメールにはアックアと第三王女が往来の場でいちゃついている画像が添付されていた。 幸せそうな第三王女と顔を赤くしているアックアの周りには驚くほどの量の野次馬がいるのだが、 「でもこれ大丈夫なのかよ。世界的な大ニュースになるんじゃないのか?」 「それは心配無用だぜい。あんな所に王女様がいるなんて誰も思わないにゃー。よく似た他人ってことで話は終わるさ」 土御門はこれが大事にはならないという確信があったので大して気にしていなかった。 むしろ今の土御門が気にしていることは先の月夜に送られてきたメールの方だった。 「なあカミやん。もしかしなくてもねーちんもパーティーに呼ばれてるのかにゃー?(嫌な予感がプンプンするぜ)」 「多分な。白雪のアドレスを神裂が知ってるはずねーから初春さんに教えてもらったんだろ。となると天草式の奴らも……」 「来てるだろうな。でも安心していいぜよカミやん。五和は入院中だからパーティーは欠席ですたい」 五和が来ないことに心の底からホッとした当麻だが、そこでようやくもう一つの脅威を思い出す。 「そうだ、インデックスは? あいつもパーティーに出席なんてことは……」 「それも心配無用。禁書目録は学園都市を出られない風斬氷華とクリスマスを過ごすらしい。同じく欠席のステイルからの確かな情報にゃー」 「そっか、それは良かった。あいつ一人でパーティーの食事全部食われたらシャレにならないからな」 (……禁書目録からの「パーティーから帰ってきたら短髪ともども覚悟するんだよ」の伝言は言わないほうがいいみたいだな) 当麻と土御門が話し込んでると、お互いのパートナーから声がかかる。 「当麻ー、何してんのよー。モタモタしてると置いてくわよー」 「元春もー。早く行こうよー」 「ま、今は東京タワーを楽しむとしようか」 「賛成だぜい」 パーティー主賓一行が向かう先は……蝋人形館。 蝋人形館の歴史 東京タワーろう人形館は1970(昭和45年)に開館しました。展示されているろう人形は、 ろう人形館発祥の地、ロンドンの工房から直輸入したものです。 2001年にリニューアルし、「20世紀を飾った人たち」をテーマに国内外で活躍した人物が追加されています。 中でも宇宙開発事業団の協力を得て製作された、 毛利衛さん・向井千秋さんは人気があります。 「だってよ、」 「ふーん。」 「(ロンドンの工房って、何か嫌だな…)」 「(安心しろ、呪いの蝋人形なんてないぜい。)」 「(そういう問題じゃない…。)」 「(じゃあどう言う…)」 土御門の発言は一方通行によって遮られた。 「くォらクソガキィ!!!蝋人形に抱きついたりして遊ンでンじゃねェ!!」 「だってあなたは抱っこしたりしてくれないもの。ってミサカはミサカは膨れてみたり。」 「だからって言って入っちゃいけません!!」 「はーい、ってミサカはミサカは言うとおりにしてみたり。」 「まったく。お姉さまに似てお嬢様らしくなゴギュウウウウウ!!!!」 「一言余計よ黒子。」 「…にゃー…まったくもって平和だぜい。」 「「「「「だな(ァ)」」」」」 男ども全員納得。 「あっ、もうこんな時間!そろそろ行かないとパーティーに遅れるわよ。」 美琴が呼びかける。 「んじゃ行くか。……なんかやな予感がするけど。」 同時刻、上琴宅(新居)。 「なんか凄いことになってるようなのよな。」 「どういうことですか建宮?」 「騎士団長からのメールなんですが……まぁ見てください。」 そこには。 くだんのいちゃつく英国第3王女のお姿が。 「…バカップルぶりが英国まで伝染してる気がします……」 「ところで建宮さん達、男性陣の服の用意はできたんですか?」 「できたのよな!!!」 そう言って彼は天草式の対馬以下何名かに買ってこさせた『物』を開陳する!! 「「「「げぇーーっ!!!」」」」 「よ、よく対馬さん達も買いに行ってくれましたね…。」 「う、初春、これはさすがに却下だよねえ。」 「ですが超時間が有りません。超パーティーまで2時間ないんですよ!」 「仕方がないのよな♪ってゴギュ!!!!」 「「「「(超)楽しそうに言うなっ!!」」」」 「はぁ、仕方ありません佐天さん。これで行きましょう。」 「っ!?本気なの初春!?英国女王も来るのに!!??」 「超そうですよ!!!不敬罪で超死刑になりかねません!!」 「それは…まあ大丈夫でしょうあの方なら。…どうも秋葉原で買い漁ってるご様子ですし。」