約 36,196 件
https://w.atwiki.jp/kimo-sisters/pages/795.html
294 もしも織姫と彦星が姉弟だったら(1/3) sage 2009/07/08(水) 08 12 14 ID vH4NnOYK 「う~、牛飼い牛飼い」 今日も今日とて牧場の牛達の面倒を見ている少年。 違うところを挙げるとするなら、お空の上で飼ってるってことかナー。 名前は夏彦。 そんな訳で、ようやく最後の牛(花子:4歳)を牛舎へと移動させたて、自分の家の扉を開いたのだった。 するとそこには、天の川の向こうにある都で、機織をしているはずの姉さんの姿が! ウホッ! いい織姫! 「や ら な い か」 そういえば今日は7月7日。年に一度、川に橋が渡される日だった。 昔から、姉に逆らえないよう調教されていた僕は、ホイホイと家の中へ連れて行かれてしまったのだった… 「久しぶりだな。会いたかったぞ夏彦」 「ね、姉さん。う、うん、久しぶりだね」 居間へ連れて行くなり、僕に抱きつく姉さん。そういえば、昔から抱きつき癖があったっけ。 「一年ぶりだな夏彦。去年より背が伸びたんじゃないのか?」 「ま、まぁね。一応成長期の範囲内だから…」 「そういえば17になったんだったか。どうだ?仕事の方は順調か?」 「う、うん。皆僕の言うこと聞いてくれるし、近所の人も、みんないい人ばかりだし…」 世間話をしながらも、僕に抱きついたままの姉さん。 「どうした夏彦?汗をかいているようだが?」 「そ、それはその…」 「それに、心なしか体温が高いようだな。風でも引いたか?」 「ぅ…」 どうもこうも無い。姉さんの大きな胸が当たっているのだ。例え家族と言えども、こうもぎゅうぎゅう押し付けられては妙な気分になってしまう。 「ね、姉さん…離れてくれないかな…?」 「なぜだ?」 「な、なぜってそれは…」 「いつも会うことはおろか声を聞くことも出来ず、『天都の織姫』などという呼び名がついてしまったために、来る日も来る日も仕事に没頭され、一年に一度、ようやく休みを与えられて帰省した姉に、弟としてねぎらいの言葉をかける気は無いのか?」 「う、うん。それは大変だと思ってるよ。でも…」 「ならば良かろう。今日くらいは私の自由にさせろ」 「…はい…」 実際姉さんの噂は、川を挟んだこっちの方にまで聞こえてくる。曰く、 『都に美しい機織の女性がいる』 『都の主たる天帝の娘でありながら、それを笠に着ることも無く、自分の腕だけで生活している』 『天帝の姫は機織の名手』 『織姫タンハァハァ』 といった具合だ。 295 もしも織姫と彦星が姉弟だったら(2/3) sage 2009/07/08(水) 08 12 39 ID vH4NnOYK 「お父さんとお母さんは元気?」 「ああ。父上は相変わらず忙しいらしくて、殆ど寄り付かないが、母上は月に二度くらいは顔を見せてくれている」 「そうなんだ、よかった」 「夫婦仲も良好のようだな。だが、人が仕事をしている側で、ノロケを聞かされるのは勘弁願いたい」 「あはは…」 僕の両親は、都を治める王のような仕事をしている。特に父さんは、その手腕から『天帝』とまで呼ばれているほどだ。 「…………」 「姉さん?」 「なぁ夏彦。やはりお前こんな辺境などではなく、都で生活した方が良いのではないか?」 「それは…」 まただ。帰ってくる度、姉さんはこの話題を口にする。 「代々牛飼いが我が家系とはいえ、父上も母上も、そして私も、今や都で生活する身だ。稼ぎも多い。お前の一人くらい、余裕で養えるぞ」 「うん。ありがとう…」 都の主たる父さん。その妻であり、また有能な補佐でもある母さん。都で一番と評される腕の姉さん。確かに、僕の一人や二人、遊んで暮らせるくらいの金はあるだろう。 「でも、僕はやっぱりここにいるよ」 「お前…まだあの頃のことを気にしているのか?」 7年ほど前までは、僕も都で暮らしていた。でも、僕に都の空気は合わなかったのだ。 具体的に言うと、僕はよく虐められていた。両親や姉さんとは違い、僕は本当に普通の人間だったからだ。 助けてくれる人は誰も居なかった。両親はその頃から忙しかったし、姉さんは天子と称されるくらい、僕とは違う場所にいた。 「そんなことはないけど…」 「もうお前を虐めていた人間は居ない。もうお前を一人にはしない。誰もお前を傷つけさせない。この私が保証する。だからどうだ?私の元へこないか?」 「…………」 虐めにあったせいで心に傷を負った僕は、祖父母が暮らすこの田舎へ戻ってきた。 それ以来、僕はここで生活している。 「ありがとう、姉さん。姉さんの気持ちは嬉しいよ。とても」 「だったら!」 「でも約束したんだ。僕はここを守るって。おじいちゃんとおばあちゃんが眠るこの地を守る。おじいちゃんとおばあちゃんが遺してくれた牛達を守るって」 「…………」 もう祖父母は居ないけど、彼らが遺した、彼らが愛していた牛達は生きている。せめて彼らが天寿を全うするまで、僕はここで見守ろうと心に決めていた。 296 もしも織姫と彦星が姉弟だったら(3/3) sage 2009/07/08(水) 08 14 28 ID vH4NnOYK 「…そうか」 残念なような、ほっとしたような顔をする姉さん。 「お前がそう決めたのなら、もう私は何も言わない。お前の好きにするといい。だがこれだけは忘れるな。お前は一人ではない。例え祖父や祖母が居なくても、例え両親がお前の手の届かないところに居ても、 私だけはお前の傍にいる。私だけは、例え何があってもお前を裏切ったりはしない。これは約束でも誓いでもない。純然たる事実だ」 「…ありがとう、姉さん」 「…やはりだめだったか」 自分の腕の中で眠る弟の寝顔を眺めながら、私はここ数年恒例になってしまった言葉を呟く。 どうやら今年も説得に失敗してしまったらしい。まぁ力ずくで連れ帰ることは出来るが、我が最愛の弟にそんな真似はしたくない。 「それにしても腹の立つ…!」 嫌なことを思い出してしまった。 まだ弟が都で暮らしていた頃、この子は虐めにあっていたのだ。 おかしいとは思っていた。物腰穏やかな弟が、毎日のように生傷をこさえ、時には腕の骨を折るほどの重傷を負っていたのだ。 弟が祖父母に引き取られててからしばらくして、私はその事を知った。 「…我が事ながら何たる失態…!」 『天子』などと煽てられて、有頂天になっていた頃の自分を呪い殺したくなる。 弟を虐めたり、弟に手を上げていた人間やその家族には、死ぬより辛い目に合わせておいたが、時たま今日のように、過去の汚点がフラッシュバックする。 「…まぁいい」 大切なのはこれから、未来のことだ。 後1年で、この子も18になる。18。つまり、男性にとっての結婚適齢期だ。 「…夏彦…」 お前は知っているかい?私がお前を求めていることを。私が誰よりも、お前を愛していることを。 こう言っては難だが、私はどうも殿方に好かれる容姿をしているらしい。 私の職場でも、私に言い寄ってくる木偶の坊が後を絶えない。時には女性に口説かれることもある。 ハッキリ言ってウザイ。 「フッ…それももう少しの我慢だな」 明日の朝、私は都へ帰る。その時に告げるのだ。『来年は私のところへ遊びに来い』と。 難色を示すかもしれないが、『馬車を用意しておく』とでも付け加えれば了承されるだろう。 基本的に、他人(両親含)の手を煩わせる事が苦手な少年だ(その『他人』の部分に私が入っているのは不満だが…)。人を待たせておいてまで待ち合わせをボイコットするとは考えにくい。 「馬車にさえ乗せてしまえばこちらのもの…」 後は自宅に連れ込んで…クククッ! 「もう少し。もう少しだよ夏彦」 もう少しでお前は幸せになれる。この私が幸せにしてやる。他の誰でもない。この私がな! 「…おねえちゃん…」 「…………」 明日の朝は早い。寝言を呟く弟の体を強く抱きしめ、私も眠ることにする。 「愛しているよ。夏彦」 オネエチャンハ、オマエヲアイシテイルヨ。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1320.html
鋼の心 ~Eisen Herz~ 第八話:舞姫と歌姫(前編) 「はっ!!」 浅く、上下逆の放物線を描きながらの超低空フライパス。 アーンヴァルの機動性から逃れられる神姫はそうは居ない。 ましてやそれが、殆ど非武装の軽い機体ともなれば、皆無と言っても過言ではないだろう。 当然ながらジルダリアの機動性をもってしても逃れることは出来ず、刹那の間だけ抜き放たれた刀の一閃で胴を薙がれた。 「―――っ!?」 流石に手加減はしたので、真っ二つとまでは行っていない。 しかしフレームに及ぶダメージは、バトルロイヤルにおける“DEAD END”を意味した。 「これで撃墜3!!」 バトルロイヤルの戦闘開始からまだ2分たってない。 刀使いのアーンヴァル、フェータはアフターバーナーを吹かし、四度目の上昇を行う。 元来軽量なアーンヴァルと比しても尚、軽い彼女を飛ばすには過剰とも言える大出力エンジンは、大気を揺さぶり、轟音を撒き散らしながら超高速での上昇を可能にする。 高度150まで僅か3秒で駆け上がり、高高度からの索敵を再開。 程なくして荒野を移動するジュビジータイプを目視で発見、標的と定めパワーダイブにて急降下!! 機首を下げたままアフターバーナーを全開にするという荒業が、フェータの身体を一瞬で亜音速にまで加速する。 反転急上昇をかけるのは標的よりも遥かに上で。 最適なタイミングでピッチアップ(上昇)すれば、惰性と重力が標的とすれ違える地上スレスレにまで高度を引き下げてくれる。 当然、タイミングを誤れば、標的の遥か頭上を通るだけか、最悪の場合は地上に激突することになる。 許される誤差はコンマ01秒。実に100分の1秒という短い時間だ。 神姫の処理速度をもってしても、確実とは言い難い時間だが、非力なアーンヴァルの腕力で頑強なジュビジーの装甲を切断しようと思えば、どうしても支払わねばならないリスクであった。 しかし…。 「…悪いが、こ奴は頂くぞ」 攻撃まで後2秒というところで視界を横切る蒼い稲妻。 地上を疾駆するそれに気づき、ジュビジーがその場で旋回、武装神姫最大の防御力を誇ると言われる可動装甲を閉鎖し、鉄壁の布陣を引く。 「無駄じゃ」 衝撃が到達したのは、ジュビジーの計算よりごく僅かに遅かった。 そして、その方向は真逆。 前から迫って来た筈の蒼い閃光は、無防備な背後からジュビジーの身体を突き抜けていった。 「レライナさん、横取りは酷いです!!」 停止すれば、その稲妻が蒼い甲冑を纏った騎士型の神姫だと分かるだろう。 本来の騎士型、サイフォスタイプとは明確に戦法を異としながらも、その外見はスタンダードなサイフォスのそれを、さほど逸脱しては居ない。 目を引くのは可動範囲を重視し、剥き出しのままにされた肩部と、背面に背負ったリングと翼剣で構成されるジュビジータイプの主兵装、フローラルリングだけだ。 「さっきも私が見つけたストラーフを横取りしたじゃないですか!?」 「なに、あのような堅物は苦手じゃろう? なればこそ、我が手を貸したまでの事…」 騎士型、レライナと呼ばれた神姫はフェータを見上げてそう言った。 事実、重装甲の相手を一撃で倒そうと思えば高速でのアプローチは必須であり、先程のようにリスクの高い機動を余儀なくされる。 「それに、この勝負。どちらがより多くの首級(しるし)を上げるかというものの筈、なればおぬしの邪魔をするのも、我の策と言う事になるのぅ?」 現在の戦績はフェータが3、レライナが2。 瞬間的な速度こそレライナに分があるが、広いフィールドから敵を探し出し倒しに行くのは空を飛べるフェータの方が圧倒的に有利な状況だった。 元来、サイフォスはマオチャオやティグリースなどの高速格闘型の迎撃において最も力を発揮する。 パワーと装甲に優れる反面、敵に近づく機動性に欠けるのが原因だ。 それが、敵から接近して来るとなると、機動性を捨て装甲とパワーを高めたサイフォスのほうが有利になるのは明白だからだ。 そして、それは戦法が大幅に変わったレライナでも、結果的には同じことである。 短距離ダッシュの能力に優れるため、敵に近づく機動性は確保されているものの、それをなすために消費するバッテリーの問題から無制限にダッシュできるわけではないからだ。 ダッシュ抜きでの巡航速度においては、それに脚部の機能を最適化してしまった分、通常のサイフォスよりも遅くなる。 結局、どうしてもレライナの得意とする戦法は、敵から交戦圏に入って来るのを待つ迎撃的なものにならざるを得ない。 それなのに今回の勝負は倒した敵の数で勝敗が決する。 要するにこれは、圧倒的に不利な条件での勝負という事になる。 しかし、それでも。騎士として、主であるリーナの神姫として。 レライナは一歩も引く訳には行かなかった…。 というのは彼女たちの事情。 別の視点から見ればこうなる。 「あ、あわわわわわわわわわ」 「大惨になっとりますなぁ…」 「落ち着いてる場合ではありません!! あの子達なんて大した戦闘経験も無いんですよ、それなのにあれ程容赦無い相手が二体もいては…」 戦場で繰り広げられる光景を、ようやく事態を把握した少女と、彼女の直属たる二体の神姫が見つめていた。 「あのアーンヴァル。戦闘ソフトではなく動作で抜刀してらっしゃりますのえ?」 「ですから、姉さま!! そんな冷静になっている場合ではなく!!」 惨状を目にし、それを解して尚、平常心を崩さない紅緒タイプと、彼女を姉と呼ぶイーアネイラタイプの神姫。 それぞれ名を、舞薙(マイナ)と歌憐(カレン)という。 「知ってのとおり、通常神姫が攻撃を行う時の動作は、購入した武器に付属する戦闘ソフトの動作をそのまま読み込むだけですえ?」 「ですから、姉さま!! 冷静に解説などしている場合では…」 紅緒型、マイナは妹であるイーアネイラ型のカレンを無視して解説を続けた。 「要するに格闘ゲームで出す技のようなものですわ。攻撃を選択すれば一定の型を動作として実行する。最初は皆そこから始めますのん」 「…ええと、姉さま?」 「当然、実戦のさなか不都合もよう出ぇはります。それを修正して行き、神姫はやがて自分の型を、自分だけの型を持つんですのえ」 「…姉さま?」 姉の視線が虚空を見つめている。 その先には惨状を映し出すモニターがあるのだが、微妙に焦点があっていない気がするのはカレンだけなのだろうか? 「…ところがあのアーンヴァル。最初から戦闘ソフトの型を入れずに、動作の蓄積であの抜刀をしてはりますのん」 「………」 「人間と同じように、長い時間を修練に費やし、関節の一つ一つに動作を叩き込んで行った結果があの抜刀ですわ。あれはあきません。ウチでもよう対処し得ますかえ、微妙なところおすな…」 「…えっと」 「あのアーンヴァルのオーナーはん。よう時間かけて神姫との愛情を育みなはったんですえ?」 フェータのオーナー、伊東美空に対するべた褒めとも取れる賛辞。 実のところ単に美空は、付属武器以外には専用ソフトをインストールしなければならない事を理解していなかっただけだったりする。 「―――なるほど、ご高説拝聴いたしました。…所で姉さま?」 「かしわもち」 「は?」 「柏餅の葉って言うのんはな…」 「…やはり、現実逃避しておいでなだけでしたのね………」 無理もない。 軽い気持ちで戦場に立った劇団員10名が、不運にも壊し屋神姫2名の“狩りモノ競争”に巻き込まれ、全滅したのは僅か5分後の事だった。 「せ、責任を…!! 責任を取ってください!!」 「あんた誰?」 バトルロイヤル終了後、いきなりやって来たのは見知らぬ少女だった。 ちなみに開始後10分もせずに、他の参加者を一掃してしまったフェータとレライナはその後に直接対決。結果は交戦開始21秒でフェータが一刀の元に勝利している。 参考までに“狩りモノ競争”の結果はフェータ6のレライナ4だった。 「また負けた…。我、実は弱いのじゃろうか…」 落ち込むレライナ。 日本に来て以来、戦績が振るわない。 これでもイギリスに居たときは、ほぼ無敗の実績を持つチャンピオンだったのだ。 それが最近ではアイゼンに惜敗、その後挑んだフェータとは三回戦い全敗。そのフェータを一度は破ったというセタを相手には勝ち越しているものの、戦績は2勝1敗と土を付けられている。 ちなみにマヤア相手には三度戦い全てに圧勝。 なおリーナ&レライナのペアは、そのマヤアが実はアイゼンを二度以上破ったことのある唯一の神姫だと言うことは知らない。 マヤアは本来、戦績においてはアイゼン以上の実力者なのだ。 こうなって来るともう相性の問題なのだが、レライナの目には日本には強敵多すぎ、としか映らない。 「ぬうぅ、こうなれば剣技をさらに磨き、せめてフェータに一太刀なりとも…」 めげないのは良いですが、そのノリは武士道です。 「まあ、頑張りなさい。あたしのフェータは強いけど………」 えっへん、と胸を張る美空。 「あの、聞いてますか?」 「ああ、ごめん。…で、誰よあんた?」 レライナの決意に耳を傾けていた美空が、ようやく少女の方に体ごと向き直る。 「見たことない顔ね、美空の知り合いという訳でもないのでしょう?」 僅か一月で日本語をマスターしてしまった天才児、リーナ・ベルウッドもまた、少女の方へ向けて座り直す。 「神姫のオーナーだというのは分かりますけど………、見たことの無い方たちですねぇ」 フェータの言うとおり、少女の肩には左右それぞれに神姫がしがみ付いている。 タイプはそれぞれ紅緒とイーアネイラ。 「わたしは、先程あなた方に全滅させられた『武装劇団そうき』のリーダー藤堂晴香(とうどうはるか)です!!」 「…リーダー?」 「…武装劇団?」 「…全滅ですか?」 少女の名乗りに、美空、リーナ、フェータと三者三様の疑問符が浮かんだ。 ちなみにレライナは反省が終わったのでお休みモード。 我関せずとばかりにバスケットの中に潜り込み、眠りについていたりする。 「先程、そちらの刀使いのアーンヴァルと、異常に素早いサイフォスが私の劇団員を皆殺しにしてくれたじゃないですか!!」 「…いや、死んでませんから」 「…単に修理に時間を要するだけですえ」 主、晴香の暴走に突っ込む彼女の神姫、カレンとマイナ。 「それが問題なんじゃないですか!!」 晴香叫ぶ。 「どうするんです!! 公演は明日なんですよ!?」 「公演?」 「そうです、明日幼稚園で劇を公演することになっているんですよ!!」 「劇って、ひょっとして、神姫で劇を演じるんですか?」 晴香の言葉に興味を持ったのはフェータだった。 「そうです、我らが宋基(そうき)女学園人形劇部の初公演だったのに、劇団員が全滅なんて~」 「いや、全滅してませんから。私とお姉さまがいらっしゃいますから」 カレンが髪の毛引っ張るが晴香の暴走は止まらない。 「ああ、このままじゃ上演なんて不可能だわ。園長さんになんて言い訳すればぁ~!!」 「ねえ、美空?」 「…ん?」 「宋基女学園って、美空の高校じゃないの?」 「…ああ、そういえば。道理で聞き覚えのある名前だと…」 美空は、基本的に人の話を聞いていない。 「貴女、ウチの学校の人だったんですか!?」 「…違うわよ、ソレはこっち」 晴香に指差され不快そうに手を振るリーナ。 …どうやら人の話を聞かないのはお互い様のようだった。 「―――あれ、何してるの?」 そこに戻ってくる祐一とアイゼン。 先程のバトルロイヤルにあぶれた祐一は、アイゼン用の新装備のテストに対戦台に篭っていた。 このセンターではかなり名を知られているアイゼンの事、挑戦者募集の表示を出し対戦台を確保すれば戦う相手には困らない。 最も、挑んでくるのは大半が一度破った相手なので、祐一もアイゼンも出方を知り尽くしている。 慎重にやれば負けることはまず無いのが現状だった。 時折、有名な神姫を倒して、一気に名を上げようとする初心者が挑んでくるが、その手合いに負けるようなアイゼンではない。 結果として、アイゼンの戦績と知名度は今日も上がったようで…。 「いや、負けたし」 って、モノローグぶち壊し。 パタパタと手を振る祐一と、彼の肩の上で同じ動作をするアイゼン。 「え、マジで?」 「マジ」 「ん」 美空に問われ頷く悪魔型。 「アイゼンを倒すなんて、一体どんな化け物が…」 戦々恐々と表情を強張らせるリーナ。 アイゼンはリーナの知る限り最強の神姫だ。 自分のレライナを破ったのみならず、フェータにすら圧勝している。 そして先日のデルタ1。 神姫の常識を打ち破る非常識な対戦相手を前に一歩も引かず、ついには打ち破ったのがアイゼンなのだ。 あれがもし、レライナならどうだっただろうか? 複数方向からの断続的な射撃を何処まで捌けただろうか? 結果は明白だ。 どれか一方の敵に近づけば別の敵から射撃を受け、敵はそちらに移動したと信じ込み、そちらに移動してしまっていただろう。 そうしてまた繰り返し。 最後まで訳の分からぬままに移動を繰り返し、疲弊した所を蜂の巣にされるのがオチだ。 つまりあの勝利は、想定外の方向からの攻撃に隙を見せなかったアイゼンと、敵の仕掛けを読み解いた祐一との勝利なのだ。 そんなペアに勝つ神姫とは一体…。 「じゃーん、それはあたしです!!」 「は?」 祐一の後から現れたのは幾度か対戦した相手、マヤアとその主だった。 「最近は負けが込んでましたからね。島田君相手の勝利は貴重な勝ち星ですわ」 マヤアの主、祐一の担任教諭でもある斎藤浅葱が上機嫌で微笑む。 「アイゼンさん、今日は変なバルカンしか持ってなかったんで楽勝でしたわ」 「…マヤアを想定した装備じゃないからな………。お陰でまったくテストにならなかった」 「敵が来たと思ったらマヤアだった。びっくり」 祐一とアイゼンにとってマヤアは専用装備でしっかりと挑みたい相手だ。 返す返すも、実力では負けているのである。 「なるほど、本調子じゃなかったのね。どうりで…」 そういう方向で納得したリーナ。 言っておくがアイゼンは、対マヤア用に組んだ装備でも負けたことがある。 「あのー。…あたしの話、聞いてくれませんか?」 「…だれ、この人?」 会話の中で完全に忘れされられた晴香だった。 「…要するに、対戦したいと言うことか?」 「そうです。それでわたし達が勝ったら貴方たちの神姫を貸してもらいます!!」 「ウチらの公演に必要なメンバー、全員壊してくれはりましたんはそちらさんおす。彼女らの復帰まであんじょう働いてもらいますえ?」 「…という事です」 最後に強引に纏めの台詞を口にする晴香。 ポニーテールなのは彼女の神姫たちと同じだが、妙に印象が薄い。 存在感が無いというか、希薄だと言うか………。 単に美空やリーナが濃いだけかもしれないが………。 「…って、言ってもバトルロイヤルの戦闘中の事だったんでしょ? ルール上、他の11人から袋叩きに在っても仕方が無いシステムだと思うんだけど?」 「参加メンバー12名のうち、10名まではウチの劇団員だったんです。残りの2名が貴方達の神姫みたいな化け物でなければ普通に終わったはずの事です!!」 「…って、実質10対2で負けたって事じゃん。卑怯というならそちらの方が卑怯だと思うけど………?」 「え、それは………」 祐一の指摘に怯む晴香。 「それは承知しています。ですので、勝負はその事とは無関係だと思ってください」 「単に、そちらさんの進退を賭けてウチらが勝負を挑むだけどす」 晴香に代わり、彼女の神姫たちが祐一との交渉を再開する。 「…それで、そっちが勝ったら君らの公演を手伝う?」 「さいどす」 「…それじゃあ、こっちが勝ったら?」 「そうどすなぁ。主様の実家の旅館に二泊三日程でいかがどす?」 「ちょ、ちょっとマイナ?」 自分の実家に話が及び、慌てる晴香。 「主殿、この公演、成功させん訳にはいかんのと違います?」 「そうだけど、お父さんたちに何て言えばいいのよ?」 「素直に話すしかありませんね」 「ちょっと、カレンまで?」 「園長先生はんにアレだけ大見得切って………」 「いまさら中止に出来ますか………?」 「…できません」 押しの弱いマスターは、神姫に論破されてしまっていた。 「…賭けの対象となる神姫の人数は、勝っても負けても同じどす。こちらが負けた場合、各々の主様方も招待させていただくと思えば、決して不利な話では無いのと違いますん?」 「無論、宿泊費、食費は只です。最高の部屋と食事を、全日程に置いてお約束しましょう」 「海も山も近く、海水浴もハイキングもお楽しみいただけますし、観光スポットとしては申し分ないはずどすえ?」 「近くには神姫センターの併設された遊園地もあります。そちらでの割り引き券もセットしましょう」 至れり尽くせりである。 相当切羽詰っているらしい。 「日程は?」 「そちらさんのお望みのままに………」 「わかった、少し相談してくる」 「では、お待ちしております」 カレンがそう言って頭を下げた。 「…って話なんだけど?」 「いい話じゃない。来週からは夏休みに入るし、海、山、遊園地で遊び放題ってのも魅力だわ」 「参加人数はどうなるの? 祐一たちは一緒に行けるの?」 「それは大丈夫。負けたときに向こうで働く神姫と勝ったときに招待してもらえる神姫は同じだから………」 「直接勝負に参加せずとも、話に加われると言う訳ですわね?」 「…そうですけど、先生も来るんですか?」 「…島田君、何か問題が?」 「…いえ、その」 「………教職員の給料は薄給なんですのよ。………それにこの間マヤアが、マヤアが………」 「あたし? あたしがどうした?」 名前を呼ばれて反応したマヤアがこちらにやってくる。 ちなみに、どういう話になったのか、神姫たちは組み体操ごっこで遊んでいた真っ最中。 マヤアの背後で、逆立ちして足を押さえて貰おうとしていたフェータがひっくり返っていた。 「あたしがどうしたって?」 「…ひょっとして、忘れてしまいましたの?」 「んに?」 「………。よーし、思い出させてやりますわ」 浅葱は、一見華奢だが、その気になれば鉄板すら貫通する砲弾みたいな拳を握る。 「ま、待て浅葱!! 暴力反対!! ノーモア暴力!! いぢめカッコ悪い!!」 「問答無用ですわ…」 「あの、せんせ?」 「何ですの島田君?」 「本当に先生も来るんですか?」 「何か問題が?」 「はい、姉の件が………」 「あ゛っ、…み、雅ぃ!?」 まともに顔色を変える浅葱。 自体の大きさを把握したようだ。 「…っ」 その隙にマヤアは脱走した。 「先生が行くとなると、絶対あの人も来たがります!!」 「ば、ばれなければ…」 「無理ですね」 「…確かに…」 「かと言って、セタを賭けの対象にして、万が一にでも負けたりしたら………」 「………」 「………」 地獄を語る術は無い。 沈黙こそがその表現に他ならなかった。 「…島田君。勝つ自信はお在りですの?」 「こいつ等に聞いてください」 ぎぎぎ、と首を回し美空とリーナに目をやる浅葱。 「そりゃ、勝つに決まってるでしょ?」 「レライナに勝てる神姫なんてアイゼンとフェータとセタ位だわ」 …少しずつ名前が増えていくんだろうな、と思いつつ祐一は浅葱を見る。 「せんせ?」 浅葱は祐一の耳元で囁く。 「…マヤアとアイゼンで出る訳には行きませんの?」 「…いや、それは不味いでしょ?」 「でも、この子達の神姫、偏りが激しすぎません? 相性しだいでは格下の神姫にも敗北しかねませんわよ?」 「それは判っているんですけどね………」 フェータ、レライナ共に、高速で近寄って強力な打撃を加え、一撃必殺を狙うタイプだ。 両者共に射撃やトラップなどの攻撃は無い。 「フェータがあんなのに負けるわけ無いでしょ!? それに、レライナもいるなら楽勝に決まってるじゃない!?」 「まったくだわ、さっきのバトルを見てれば無用な心配だったのに」 「………俺の心配事は2つ」 「何よ?」 「…ん?」 祐一の言葉に首を傾げる美空とリーナ。 従姉妹同士だけあって、動作がぴったり同じだった。 「まず第一に、向こうにイーアネイラが居る事」 「ああ、あの魚型?」 「水の外では只の雑魚でしょ、楽勝じゃない」 「水の中だったら?」 「え?」 「あ」 「ステージの話はまだしていないけど、水中戦になったらフェータもレライナもろくな移動手段はなくなるでしょ?」 移動が出来ないということは、勿論、回避も出来なくなる。 レライナはともかくフェータの装甲は脆弱だし、レライナにしても回避の為の機動力確保として、鎧が部分的に廃されており、サイフォスの中では比較的装甲が薄い。 すなわち、回避が出来なければ彼女らの防御手段はなくなると言う事だ。 更に、近接戦しか出来ないこの二名が移動できないという事は、要するに攻撃も出来ないということだ。 「…つまり、水の中ではお二方とも無力なのですわ」 浅葱の言葉こそが最初の結論だった。 「だ、大丈夫よ。向こうには紅緒が居るじゃない。先に紅緒を倒しちゃえば、判定負けしないようにイーアネイラも水から出てくるって」 「そうね、二対一と言うのはアレだけど、流石にレライナとフェータを同時に相手できる神姫は居ないでしょう?」 「で、紅緒が水中戦に対応していない保障は?」 「…あ」 「…それは」 向こうの提案は二対二のタッグマッチ。 そして、使用するのが紅緒とイーアネイラ。 連携してくるとは限らないが、相互に援護ぐらいはして来るだろう。 と、なれば主戦場が食い違っているとは考えにくい。 もし、主戦場が違うのなら先のリーナの言のとおり、二対一での戦局になるのを防ぐため、一対一の対戦を二回以上、恐らくは二本先取の形式で挑んでくるはずだ。 それが無いと言うことは…。 「まって祐一。水中戦に紅緒を適応させるより、イーアネイラが陸戦型になっている方が確率は高くない?」 「それはそうだろうね。俺も、多分イーアネイラは陸戦で来ると思う」 祐一はリーナの推測を肯定する。 「なら!!」 「でも、可能性は可能性」 「万一でもお二人のどちらかが撃破されてしまった場合、イーアネイラが水中に逃げるだけで敗色が濃厚になりますわ」 どちらにせよ、水中戦と言う鬼門が存在してしまっているのは確かなのだ。 「そして、第二の問題」 「…な、何よ」 「………」 「さっきのバトルロイヤル、12名エントリーできるバトルに12名居る劇団員が10名しかエントリーしていなかった。…その理由は?」 「え?」 「………そうよ、遊ぶつもりでバトルロイヤルをするなら、全員で出ない方が不自然だわ」 リーナの言うとおり、それは不自然な状況なのだ。 「つまり、あの二人が出ると実力が違いすぎて勝負にならないという事だ」 その差が、低すぎるのか、高すぎるのか…。 劇団員10名を打ち破った相手に挑んでくる事を考えれば、どちらなのかは明白である。 「ここからは推測だけど、他の10名を相手にするより、あの2名のほうが強いって事になると思う」 祐一が口にした推測こそ、第二の問題。 少なくとも、雅を賭けの対象に出来るほど確実に勝てると言い難い相手だということだ。 結局、ばれないように気をつける。 ばれたら雅の分は全員でワリカン。 という事で話がついた。 第九話:舞姫と歌姫(後編)につづく 鋼の心 ~Eisen Herz~へ戻る 鋼の心の八話です。 一応新キャラですが、レギュラーじゃないと思います。 そしてきしぶし!の椿さんの影響を強く受けているキャラがいます。 (きしぶし!の人さま、ご不快でしたらご一報を…。改変させて頂きます…。) 次の話は2on2なのでザッピングっぽく場面切り替えを駆使して書いてみようかと思います…。 リモコン神姫ネタを書きながら、詰ったらこっち書く、などとやっていたらこっちが先に出来ましたです。 お読みいただきありがとう御座いました、ALCでしたです。
https://w.atwiki.jp/mayshared/pages/1543.html
http //rano.jp/4288 ◇チョコブラウニーを作ろう お店の厨房ではバレンタイン向け商品の仕込みで、パパとママが忙しそうに働いている。私はその合間に借りたオーブンでローストしたクルミを持って、二階にある自宅のキッチンへ戻り……、 「やるかもしれないとは思ったけど、まさかガチでやるとはね」 深いため息と共に私は言った。 「まぁ、手作りチョコのオヤクソクだよねぇ」 「だって『チョコレートを熱して溶かす』って……」 ニヤニヤしているアヤナと申し訳なさそうな表情の眠り姫が続け様に口を開く。 まったく、ちょっと目を離した途端にこれだ。既にうちのキッチンにはチョコの焦げた臭いが充満していた。パパやママにばれるとウルサいので、私は急いで換気扇のスイッチを入れる。 「私さっきテンパリングの説明したよね? っていうかそっちのコンロで沸かしてるお湯を無視してなんでチョコ入れたボウルを直接火にかけるかな」 テンパリングとは簡単に言うと湯煎のことだ。チョコレートのように粘性の高いものは焦げやすいので気をつけろと言ったばかりだというのに……。いや、眠り姫は素だろうけどアヤナの方は絶対ワザとだな。 「ごめんね、ヒナキさん……」 いつもの長い髪をアップでまとめ、お気に入りの大きな純白のキャスケット帽を目深に被った眠り姫が、消え入りそうなほどの小声で謝る。 「……あぁもう、わかったから次は説明したとおりにやってよね。これは私が片づけとくから」 「うん」 「はぁい」 私は二人から焦げチョコ入りボウルを受け取り、別のボウルと新品のチョコを手渡す。 「ったく、あんたがついていながら何でこんなことになっているんだよ」 シンクへ移動する途中、コンロ組の二人とは別作業をテーブルで行っていた相羽さんに訪ねた、というか食ってかかった。 「ごめん、私も自分のことでいっぱいいっぱいだったもんで臭いがするまで気付かなかったよ。いやでも逆に鈴木さんがいたから大丈夫かなーって」 こいつはこいつで割った卵に混ざった殻を菜箸の先でチマチマと取り除く作業に必死のようだ。開幕から三人揃ってあまりにひどすぎる。 「アヤナは自分が楽しむことしか考えてないから。っていうかアヤナ、呼んでないのに何でいるの?」 「え? だって面白そうじゃん」 即答。そして予定調和過ぎ。相変わらずなアヤナに私は再びため息をついた。 「……とにかく、邪魔はしないでよね」 「だいじょーぶだいじょーぶ。あ、そーだ。コーラとかオレンジジュースとかいろいろ差し入れ持ってきたからぁ、姫音さんも相羽さんも作業の合間に気にせず飲んでねぇ」 言ってアヤナはどこから取り出したのかそれらのペットボトルをドンドンと勝手にテーブルへ並べていった。ちょっとそこ、この先で使うつもりでスペース空けといたんだけど。 結局ずっとそんな感じで、ぶっちゃけほとんどの行程が危険と隣り合わせだった。これってさっきアヤナの言ったオヤクソクの呪いだろうか。 私が監視してないと、砂糖や香り付けのラム酒は量りもせずボウルへ加えようとするし、小麦粉やココアパウダーはふるいにかけず、私がローストしてきたクルミは砕かないまま。 ぎりぎりのところで最悪の事態を回避しつつ、なんとか出来上がったものをクッキングシートを敷いた長方形の型へ流し込む。 「あとはこれを焼けばチョコブラウニーの完成なんだね」 眠り姫と相羽さんが私の両隣でほぉと安堵のため息をついた。 「そ。じゃ、私は下でオーブンに入れて、んで焼きあがるまでお店の方を手伝ってくるから、あんたたち三人はこっちの片付けを……」 「あ、もしよかったら田中さんちのお店の厨房って、見学させてもらってもいいかな?」 「別にいいけど。何、相羽さんてパティシエとかに興味でもあるの?」 「うん。ちょっと」 それは予想外……でも今日の手際を見る限り決して向いているとは言い難いのかもしれないが。まぁそれはいいとして。 「了解了解。それじゃアヤナと姫音さんでこっちの片付け任せていい?」 私は二つ返事で答えると、残る二人にキッチンの片付けを頼もうと……、 「アヤナさんが淹れてくれたコーラ、不思議な味がして美味しい」 「そう? コーラの他に、持ってきたジュースとかいろいろブレンドしてみたんだぁ。美味しいなら何より」 いつの間にか私の隣から移動していた眠り姫とジュースを飲み交わしているアヤナに、私はなんかムカついたもんで一発蹴りを食らわせた。 「ヒナキひっどい!」 「いい? アヤナ、姫音さん。ちゃんと片付け、しといてね?」 私は二人へずいと身を乗り出し、釘を指した。 アヤナは調理器具や材料、調味料なんかが散乱しているキッチンを見回し――何かに気づいたのかにやりとして――答えた。 「うぃうぃ。片付け、片付け、ね」 その時にアヤナのバカ面の意図に気づいていればよかったのだが……、私は二人を残し相羽さんと共に階段を下っていった。 それから約二十数分。私の両親の作業を輝いた目で釘付けになっている相羽さんをとりあえずそのままにしておき、私はきれいに焼きあがったブラウニーを手に階段を昇り―――― 「あ、おかえりぃ」 「ヒヤキひゃ~ん。これ見れ。アヤラひゃんのコーラ、すんごく気持ひいぃ~」 散らかったままのキッチンの床へ直接座りグラスを傾けているこの二人を残したことを海より深く後悔した。 「あんたら……片付けろって言ったのに……」 「ほら、ちゃんと片付けたよぉ」 言って、アヤナは空っぽになっているコーラのペットボトルとラム酒の瓶を私へ見せつけケラケラ笑ってる。そしてその隣では、人間って三十分足らずでこうまで酔えるのか? それともただこいつがとことんアルコールに弱いのか? ってくらいに真っ赤な顔で呂律が回っていない眠り姫。 彼女が被っていた純白のキャスケット帽は既にどこかへ脱ぎ捨てられていて、まとめ上げられていたはずの髪もほどけ、赤黒くウェーブがかった長髪が―――――― ◇二月十日(月曜日)の朝 「――――ってところで目が覚めたんだよ」 「はぁ、ヒナキが私のことどー見てるか分かった気がするよぉ」 強く冷たい海風が吹き込む東京湾ど真ん中の双葉島。私は一緒に登校中の幼なじみ、鈴木|彩七《アヤナ》にその場の流れで今朝見た夢の話をしていた。もちろんいっさい脚色無し見たまんまでの説明だ。自分でも細かいところまで覚えていてちょっと驚く。 「さーてなんのことかしら」 嘆くアヤナへ私はシラを切る。 「私とあんたはこの双葉島へ越す前からの腐れ縁なんだから。あんたはそういう奴よ、昔っからね」 「心外だなぁ」 唇をとがらせ不貞腐れているアヤナ。そんなこいつに私は指さし、 「それに、もしこの夢みたいな現場に出会《でくわ》したら、あんた絶対やるでしょ?」 「まぁねぇ。ないこともないということは否定できないかもしれないねぇ」 言ってアヤナは私から目線をそらす。ほらね、やっぱりこいつはそういう奴なんだ。 「まったく……」 「ってか、ヒナキんちでその眠り姫のチョコ作り手伝うっての実際には明日なんでしょぅ?」 「そう。明日の夕方に相羽さんと一緒に来るって。正夢にならなきゃいいけど」 ずっと煮えきらないままだだったその手作りチョコの件でちょっと前に相羽さんへけしかけたのだが、眠り姫自身になにか心変わりでもあったのか、先週末頃に本人から直接私のところへその話を持ち出してきたのだ。 と、そうこうしているうちに登校する学生たちで溢れ返っている昇降口へと到着した。先日の事件で破壊されたこの昇降口はこの土日のうちに修理されたようだ。真新しいガラス扉が広く口を開け、学生たちを迎え入れている。 アヤナと共に私たちのクラスのげた箱前へとたどり着くと、 「おーはーよー……」 「あ、田中さんと鈴木さん、おはよう」 そこには|姫音離夢《ねむりひめ》と相羽呼都の二人が通学靴から上履きへと履き換えているところだった。 「おはー」 へらへらとだらしのない顔で手を振るアヤナに続き、私も二人へと……と? 「おはよう。って、姫音さん顔色悪いけどどうしたの?」 私は、いかにも体調が悪そうにふらふらしてる――眠そうにふらふらしてる普段とはちょっと異なる――眠り姫の様子が目に付き、二人に尋ねた。 「あの日ぃ? 私痛み止めのクスリ持ってるよぉ」 そしてお遅れて彼女の様子に気づき、勝手な判断でごそごそと鞄をあさりだしたアヤナへ、 「違うよ、ありがとう。今朝からずっと胃がギューって、おぇーって、気持ち悪いだけ、だから……」 言って、眠り姫は胃のあたりをさすりながら力なく微笑んだ。 「風邪? まさかインフル?」 「うーん、熱とかはないし。それはたぶん大丈夫、だと思う」 私の問いにふるふると横へ首を振る眠り姫。そこへ相羽さんが彼女の顔を心配そうに見上げながら、 「私は休むように勧めたんだけどね。リムがどうしても学校行くって聞かなくて」 「出てきたってどうせ寝てるだけなのにねぇ」 アヤナが、本人のいる前だというのに平気で腐す。 「んー、もうちょとすれば平気になると思うから……」 「なんか起きたときからずっと気持ち悪いって言ってて。寮出てくるまで、何回もトイレで吐いてたみたいだし……。ほらリム、大丈夫?」 アヤナの嫌味は完全にスルーか。相羽さんがミネラルウォーターを手渡すと、眠り姫はふらふらしながらもチビチビと口に含んでいった。 そんな眠り姫の姿に、私は『よくある光景』を思い返していた。それは早朝、商店街の特に飲み屋街で見かけることの多い―――― 「姫音さんって、背ぇ高いしスタイルも大人っぽいからぁ、なんかその姿って二日酔いの|OL《オーエル》みたいだねぇ」 まるで私の思考とシンクロしたかのように、アヤナがストレートに失礼な発言をぶちかます。 「確かに、言われてみれば……」 眠り姫を見上げた相羽さんも、思うところあったのか再び眠り姫を見上げ小さく呟く。 当の本人は必死に気持ち悪さを耐えているのか、さっきからずっと「んー」とか「うー」とか小さな声で唸っている。 「二日酔いと言えば、さっきヒナキの話の中でも、ほら」 「あー、そういえばそんな――お酒の話なんかもしてたっけな」 アヤナに指さされ、私は頭の中でジグソーパズルのピースがあまりにも偶然に当てはめられていくような感覚に、不意ににやりと応えてしまった。 「んー?」 そんな私たちのやりとりに首を傾げる眠り姫へ、 「実は今朝――――」 私はおもしろ半分に口を開いた。 ◇願い叶いますように 「――――っていう夢を見たんだよ」 「………………え」 今朝見た私の夢の話が終わる頃、私たち四人はちょうど高等部一年B組の教室へと到着した。何人かはすでに登校していて席を囲んで談笑したり今日の宿題を見せ合ったりしている。 私は、教室入り口で立ち止まってしまった眠り姫を伺うと、その表情に信じられないほど驚愕を浮かべ、悪かった顔色がなお一層真っ白になっていた。そして彼女は私たち三人から目をそらし、なにやらブツブツと――「なんでそれを」とか「消し忘れた」とか「後半の記憶が曖昧」とか「アヤナさんのせいだ」とか――呟いている。何を? 何が? どういう意味だ? 「ねぇ田中さん。私、別にお菓子屋とかパティシエとかとかあまり興味ないよ? 料理全般得意じゃないし」 自分の席へ鞄を置いてまた戻ってきた相羽さんがさらりと言い放つ。そっちは私も特別気に留めてなかったので「あらそう」と適当に返しておいた。そういえば相羽さんの料理下手って部分は正夢になったのか。 相羽さはそのまま眠り姫へ向き合うと、 「っていうかリム、その夢みたいに、まさか私に隠れて昨日お酒飲んだりしたの? 駄目だよ、鈴木さんみたいな悪い子になっちゃうよ」 まるで非行に走ろうとする愛娘を諭す母親のような口調で詰め寄った。 「ちょ。相羽さん、私そんなに悪い子じゃないよぉ?」 「えっと……さっきのはほら、アヤナさんが美味しいコーラだって私を騙して……」 「いや待って待って! だからそれはヒナキの夢の話でぇ、姫音さんが今気持ち悪いのとは無関係じゃん!?」 いわれのない身に覚えのない『私の見た夢』を理由に悪者に仕立てられそうになったアヤナが慌てて反論する。 そう、あれは夢だ。確かに不思議なほど状況がリンクしてはいるが、常識的に考えてその二つが繋がってるなんて考える方がどうかしてる……と、あれ? 「……『夢の中の話』といえば、思い返してみると何か姫音さんの雰囲気がいつもと違ったような気がするんだよな」 「へっ!?」 顔面蒼白になっている眠り姫の声が裏返った。 夢なんて普段なら目が覚めてからある程度時間が経てば自然と忘れてしまうような物なのに、今回のは不思議と妙な感じで記憶が残っている。そう、私はその夢の中で眠り姫の容姿に違和感を覚えていた。それは―― 「髪型……髪の色? 表情とかもなんとなくちょっとこうキリっとしてたような……」 「きっ気のせいじゃないのかな。それに、ヒナキさんの夢に出てきた私がお酒飲んで酔っぱらったからって、目が覚めた後の私がそのせいで二日酔いになっちゃうとか、まさか、私が人の夢に出てくるとか、その夢と現実の感覚が繋がってるとか、そんなのありえな――うっぷ」 突然、普段はのんびり口調で話している|眠り姫《こいつ》にしては珍しく慌ててまくし立て、そしてその勢いで胃液かなにかが喉元をこみ上げてきたのだろう、嗚咽を漏らすと口元に手をあてその長身を小さく前かがみにした。 「あーまたリムったら……ホントに大丈夫? ついてってあげるから、席に鞄置いて一緒に保健室行こう?」 「んー……そうする……」 相羽さんの言葉に眠り姫は小さく頷き、ふらふらとした足取りで窓際前のほうの席へと向かっていった。 そんな彼女の後ろ姿に相羽さんは短くため息をつくと、 「それじゃ田中さん鈴木さん。リムがあんなんだしちょっと保健室連れていくね」 「了解。さっきアヤナが言ってたけど、あいつどうせ居眠りするんだしこの際だから保健室でぐっすりと横にさせてやんな」 「ん。まぁそれもそだね」 「コトー、だっこしてって」 ふらふらと戻ってきた眠り姫が相羽さんに両手を伸ばす。 「私とリムの体格差じゃ無理だから!」 「そういうのはさぁ、バレンタインでさっさと告ってぇその大好きなカレシにやって貰えばぁ?」 伸ばされた眠り姫の手を取り教室を出ようとした二人へ、ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべたアヤナが冷やかし半分に囃したてた。 「あぁ、そうだよねぇ。私にもそういう人がいればなぁ……」 「ひどいよアヤナさん、声大きいよ」 小さめの体で小さく頭垂《うなだ》れる相羽さん。そして彼女と繋いでいた手を振り解き慌ててアヤナの口を塞ごうと躍起になる眠り姫。 ここに中島君なんかがいれば面白いことになりそうなもんだったが、トラドラコンビはまだ登校していないようで教室内にその姿は見あたらなかった。残念。 ってそうだ、さっきまで散々その話をしていたというのに私としたことがうっかりしていた。 「姫音さん、この前話した『手作りチョコ大作戦』だけど、ほんとに明日で大丈夫?」 「うん、明日の約束の時間までにはさすがに回復出来ると思う、よ。夕方頃にヒナキさんちのお店に行くね」 「了解、って店のほうは店の仕込みで忙しくて無理だから、私の家な。材料は一通りこっちで用意しとくからラッピング用の袋とかリボンとか気に入ったの揃えて持って来なよ」 「うん。よろしくね」 「――今朝の夢が正夢にならなきゃいいな」 「チョコ焦がしたりとか、同じ失敗は|も《・》|う《・》|し《・》|な《・》|い《・》ように努力するよ」 「ならいいけ……ど……?」 ……ん? 「それじゃリム、行こっか」 ふと浮かんだ違和感は相羽さんの言葉で脳裏から離散していった。相羽さんは再び眠り姫の手を取ると、彼女を連れて保健室へと向かっていった。 二人を見送り私は深くため息ひとつ。そして私の隣でにいまだニヤニヤしている|幼なじみ《くされえん》へ、 「アヤナ。明日は来なくていいからな」 「ひどいっ!! そんな楽しい現場で私だけ除け者なんて!!」 「だってあんた来たら遊ぶ気まんまんでしょ?」 「もちろん! っていうか全力でヒナキの夢を正夢にするね!」 「……ブランデー類を使わないレシピに変えるかな」 「えー!? 私のおもちゃが!!」 相変わらずバカ丸だしなアヤナの姿に私は再びため息をつく。 「でも、まぁ」 もし万が一こいつが本気で余計なことして本当に正夢になってしまったとしても……、 「大丈夫だろ。それでも今朝の夢じゃ眠り姫の手作りチョコは(かろうじてだけど)完成してたし、それはそれで結果オーライだ」 言って私は大きく一つ頷いてみせた。 今し方教室を出ていった眠り姫たちと入れ違うタイミングでトラドラコンビが登校してきた。きっと間違いなく廊下で互いに顔を合わせたことだろう。 ……あぁ、|眠り姫と中島君《こいつら》の四日後がもの凄く楽しみでしかたがない。 それを想像するだけで、私は頬の綻びが止まらなかった。 【眠り姫と手作りチョコ】終 トップに戻る 作品投稿場所に戻る
https://w.atwiki.jp/voiceroid-game/pages/50.html
ゲーム名 東北三姉妹RPG ずん子と姫と王子様 作者 nomaly 制作ツール RPGツクールMV ジャンル RPG リリース日 2018/11/08 更新日 2018/11/10 動作環境 Chrome Safari Firefox メインキャラ 東北ずん子 東北きりたん 東北イタコ 価格 画像 ゲーム紹介 東北三姉妹がずんだを広めるためにモンスター退治の旅に出るというストーリーのRPG。 サクサクと稼ぎができるシステムなので、スムーズに遊べる。 また、ほんわかほのぼのとした雰囲気をしている。 東北三姉妹に癒されながら気軽にRPGを楽しみたい人にオススメ。 サイトURL https //game.nicovideo.jp/atsumaru/games/gm8834?link_in=others 紹介動画 http //www.nicovideo.jp/watch/sm34003338 http //www.nicovideo.jp/watch/sm34080214 コメント 最新の10件を表示します。 名前
https://w.atwiki.jp/k2727324602/pages/1004.html
<no image...> <リンク集> 位置づけとしては「教科書・参考書」。 StarChild モーレツ宇宙海賊:http //www.starchild.co.jp/special/mo-retsu/top.html Wikipediaモーレツ宇宙海賊 <作品概要> <◆基本情報> 本ページの対象作品モーレツ宇宙海賊[パイレーツ](TVアニメ) ※原作(小説版「ミニスカ宇宙海賊」)は2012/1時点で管理人未読のため、対象外。 <◆主要人物> TVアニメ ※★:ED「LOST CHILD」の超高速データ集に登場しているキャラクター。以下、原則的に同データ集の表示順で記載。 メインの3人★加藤茉莉香[かとう まりか](声:小松未可子):主人公。白鳳女学院高等部1年生にして、私掠船免状を公布された宇宙海賊(海賊船「弁天丸」船長)。 ★チアキ・クリハラ(声:花澤香菜):茉莉香のクラスにやってきた、黒髪眼鏡の転校生。公認海賊ケンジョー・クリハラの娘。 遠藤マミ(声:小見川千明):茉莉香の友人でバイト仲間。 「白鳳女学院」宇宙ヨット部員 (1番目:加藤茉莉香/学生服版) (2番目:チアキ・クリハラ) (以下、3~17番目) ★ジェニー・ドリトル(声:佐藤利奈):部長。金髪・リボン・ロングヘア。ヒュー・アンド・ドリトル船間運輸の後継者候補。 ★リン・ランブレッタ(声:日笠陽子):副部長→部長。茶(?)髪ショート。中等部時代にクラッキングで保護観察。 ★タルヴィッキ・ラウノ(声:?):紫髪・ポニテ。 ★フローラ・チャピー(声:?):赤髪。 ★ミレーネ・セルトン(声:早見沙織):黒髪・サングラス。 ★イズミ・ユノモト(声:内田真礼):眼鏡・黒髪・ツインテール。 ★アスタ・アルハンコ(声:安野希世乃):青髪・ショート。 ★小林丸翔子(声:野村香菜子):黒髪・片目隠し。冷めた口調。 ★エイプリル・ランバート(声:巽悠衣子):金髪。 ★ベリンダ・パーシー(声:三森すずこ):赤髪ツイン。 ★原田真希(声:赤崎千夏):赤っぽい髪、長身・面長。通称「ハラマキ」 ★サーシャ・ステイプル(声:高森奈津美):金髪・ヘアバンド・ロングヘア。 ★リリィ・ベル(声:佐藤聡美):黒肌・銀髪。 ★ウルスラ・アブラモフ(声:西明日香):緑髪。 ★アイ・ホシミヤ(声:茅野愛衣):新入生1。かぶりもの。操船技術は一流。 ★ナタリア・グレンノース(声:伊瀬茉莉也):新入生2。赤髪ボーイッシュ・体育会系。 ★ヤヨイ・ヨシトミ(声:南條愛乃):新入生3。長身・内気。機関担当としては一流。 宇宙海賊・その他アウトサイダー海賊船「弁天丸」 (1番目:加藤茉莉香/船長服版) (以下、2~12番目) ★ケイン・マグドゥガル(声:松風雅也):操舵手。ヨット部顧問教師として赴任。 ★ミーサ・グランドウッド(声:伊藤静):船医。ヨット部訓練航海にも船医としても乗船。 ★百眼(声:藤原啓治):レーダー担当。 ★ルカ(声:水原薫):航法士。 ★三代目(声:松岡禎丞):機関担当。 ★クーリエ(声:堀江由衣):電子線担当。 ★シュニッツァー(声:三宅健太):戦闘指揮担当。 その他★親父さん(声:松山鷹志):空港料理街の元締め。 ★ショウ(声:安元洋貴):ハロルド・ロイド保険組合のエージェント。 ★加藤梨理香(声:甲斐田裕子):茉莉香の母。かつて「ブラスターリリカ」と呼ばれた伝説的海賊。 ★ケンジョー・クリハラ:海賊船バルバルーサ船長。チアキの父。 ゴンザエモン・加藤(声:-):弁天丸の前船長。故人。 セレニティ連合王国グリューエル・セレニティ(声:戸松遥):第七皇女。紆余曲折を経て宇宙ヨット部に入部。 グリュンヒルデ・セレニティ(声:金元寿子):第八皇女でクリューエルの妹。同じく宇宙ヨット部に入部。 ヨートフ・シフ・シドー(声:斧アツシ):侍従長。 ヒュー・アンド・ドリトル星間運輸ロバート・ドリトル(声:津田英三):現専務・ジェニーのおじ。会社の経営を巡りジェニーと対立。 ジュナイ・クールフ(声:内匠靖明):ロバートと親しい運輸省の政治家の息子。ジェニーの婚約者。 <◆使用楽曲> OPテーマ:猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」 / ももいろクローバーZ EDテーマ:LOST CHILD / ももいろクローバーZ 劇中歌・挿入歌(イメージソング)Black Holy / 小松未可子(加藤茉莉香) [9話・12話・16話ED] (ゲストEDテーマ)透明な夜空~瞬く星に包まれて~ / 小松未可子(加藤茉莉香) [13話ED] <◆シナリオ> イベント時系列表モーレツ宇宙海賊 イベント時系列表(まとめ中)作品全体において重要な出来事を抜粋。ネタバレ注意。 TVアニメ公式:http //www.starchild.co.jp/special/mo-retsu/story SAILING 1 海賊、罷り通る SAILING 2 私の力、海賊の力 SAILING 3 オデット二世、出航! SAILING 4 決戦は深夜 SAILING 5 茉莉香、決意する SAILING 6 茉莉香、初仕事する SAILING 7 平穏ままならず SAILING 8 姫と海賊 SAILING 9 華麗なる船出 SAILING 10 嵐の砲撃戦 SAILING 11 閃光の彷徨者[ワンダラー] SAILING 12 永遠[とわ]よりの帰還 SAILING 13 茉莉香、招待する SAILING 14 茉莉香、募集する SAILING 15 密航出航大跳躍 SAILING 16 初仕事!白鳳海賊団 SAILING 17 意外なる依頼人 SAILING 18 打ち上げはジュース SAILING 19 四人の絆 SAILING 20 莉香[せんちょう]、波に乗る SAILING 21 決戦!ネビュラカップ SAILING 22 海賊狩り SAILING 23 目指せ!海賊の巣 SAILING 24 傷だらけの弁天 SAILING 25 開催!海賊会議 SAILING 26 そして、海賊は行く <関連情報、その他雑感> 雑多メモクジラザキウタウ星系第3惑星 海明星(うみのあけほし)、砂赤星(すなのあかほし) 私掠船免状 バイト先「ランプ館」 伝説の「オリジナル7」の生き残り クロスフィールド:二方向からレーダーをかけて空間を走査すること。「要するに挟み撃ち」 佐藤竜雄監督の一言チョイス 放映回 一言 SAILING 1海賊、罷り通る 公の海賊ってアリ?!(加藤茉莉香) SAILING 2私の力、海賊の力 決断は自分の選んだベスト!(加藤茉莉香) SAILING 3オデット二世、出航! ぽつんとしているのが宇宙(加藤茉莉香) SAILING 4決戦は深夜 心配より朝食(ケイン・マグドゥガル) SAILING 5茉莉香、決意する 戦闘、開始です。(加藤茉莉香) SAILING 6茉莉香、初仕事する だけど宇宙は、一人じゃない(チアキ・クリハラ) SAILING 7平穏ままならず 頑張っても、ダメな時はダメ。(ミーサ・グランドウッド) SAILING 8姫と海賊 船長どうする?(百眼) SAILING 9華麗なる船出 だいへんと呼ばれる非合法の特殊技術(グリューエル・セレニティ) SAILING 10嵐の砲撃戦 追いかけて出し抜いて上前をくすねる!(加藤茉莉香) SAILING 11閃光の彷徨者 船首から受ける!(ケイン・マグドゥガル) SAILING 12永遠[とわ]よりの帰還 海賊稼業は結果オーライ(加藤茉莉香) SAILING 13茉莉香、招待する まだ、わかりません(グリューエル・セレニティ) SAILING 14茉莉香、募集する 貴女が一番求めるものは何ですか?(ケンジョー・クリハラ) SAILING 15密航出航大跳躍 ぴょうぴゃん(※=ショウさん)(加藤茉莉香) SAILING 16初仕事!白鳳海賊団 本人に直接訊こう。(加藤茉莉香) SAILING 17意外なる依頼人 だったらやっちゃいましょうか(加藤茉莉香) SAILING 18打ち上げはジュース ちくわぶらぶ♡(加藤茉莉香) SAILING 19四人の絆 ゴミを集める時はG有り!ゴミを運ぶ時はG無し!書:小松未可子(加藤茉莉香) SAILING 20茉莉香[せんちょう]、波に乗る 俺の、オゴリでな。(ケイン・マグドゥガル) SAILING 21決戦!ネビュラカップ 船乗りの基本です(アイ・ホシミヤ) SAILING 22海賊狩り 時は、来た!(鉄の髭) SAILING 23目指せ!海賊の巣 このケンカ、買ったわ(加藤茉莉香) SAILING 24傷だらけの弁天 領収書は弁天丸で(クーリエ(イケイケver)) SAILING 25開催!海賊会議 親父、ぶっ殺す!!(チアキ・クリハラ) SAILING 26そして、海賊は行く 劇場で逢いましょう(佐藤監督?) <◆鑑賞記録> 2010年5月以降に鑑賞した分。◆TVアニメ(2013/4視聴完了)
https://w.atwiki.jp/souku/pages/4400.html
《公開済》SNM002484 シナリオガイド 公式掲示板 蘇った古代兵器を撃退せよ! 担当マスター 半間浦太 主たる舞台 ヒラニプラ>アルト・ロニア ジャンル バトル 募集スケジュール 参加者募集開始日 参加者募集締切日 アクション締切日 2013-10-27 2013-10-29 2013-11-02 リアクション公開予定日 募集時公開予定日 アクション締切後 リアクション公開日 2013-11-14 - 2013-11-09 サンプルアクション (シナリオ参加者の方にお願い、サンプルアクションの具体的な内容を補完していただけないでしょうか)(サンプルアクション名の下の四角をクリックするとでてくる「部分編集」をクリックすると登録できます)(もしくはサンプルアクション登録用掲示板へお願いします。) 大廃都で機甲虫を駆除する + ... [部分編集] ▼プレイヤーの意図 イコンで機甲虫と対決したい ▼キャラクターの目的 大廃都で機甲虫を駆除する ▼キャラクターの動機 アルト・ロニアに機甲虫は入れさせない ▼キャラクターの手段 イコンなら、機甲虫の大群を相手にできるはず。 注意すべきは隠密型だ。索敵できないなら、いっそのこと炎で焼き払うか? もし白い機晶姫と出会ったら、機甲虫の襲撃をやめさせるよう交渉したい。 大廃都の地下迷宮に入る + ... [部分編集] ▼プレイヤーの意図 白い機晶姫と会話してみたい ▼キャラクターの目的 大廃都の地下迷宮に入る ▼キャラクターの動機 白い機晶姫と話をして、機甲虫を止めさせる ▼キャラクターの手段 白い機晶姫が機甲虫とどんな関係にあるのかは分からないが、丸っきり無関係ということはないだろう。 白い機晶姫と会って話をするため、大廃都の地下迷宮に潜る。 地下迷宮では機甲虫の群れと出会うと思うので、慎重に進みたいと思う。 その他補足等 [部分編集] 【タグ:SNM アルト・ロニア バトル 半間浦太 正常公開済】
https://w.atwiki.jp/gundamfamily/pages/3481.html
700 名前:通常の名無しさんの3倍 :2009/11/25(水) 01 50 12 ID ??? X総帥「怪盗とやらは、我らに遠慮でもしているのか?」 トレーズ「と、申しますと?」 X総帥「ヒタイレッドの髪の毛と私の眉は、強奪できぬという発表があったらしい」 トレーズ「我らに敵対したくはないとう、意志ではないでしょうか」 X総帥「フム。奴らは所詮、犯罪者。我らが正義の雷には、さすがに逡巡するか」 トレーズ「ですが、並々ならぬ実力者たちであります」 X総帥「ほう。戦いは避けろと?」 トレーズ「もっとも、降りかかる火の粉は払うべきでしょう」 X総帥「何が言いたい」 トレーズ「彼らが髪の毛をないがしろにした場合、私たちは黙ってはいない それ以上でもそれ以下でもありませんと、申し上げたいだけです 義賊としての活動は評価しますが、犯罪行為には変わりがない これを敢えて見逃してきた我々に牙を向くというのであれば、動かざるをえないでしょう」 X総帥「フッ。あくまでもエレガントな行動を好むか」 トレーズ「フフ。薔薇を添えて予告状でも出してくれるのならば、嬉しいのですがね」 シーブック「10年の呪いと現状レイプって、どっちが辛いと思う?」 アスラン「どっちもどっちだと思う」 シーブック「それはそうか。アスランも、苦労してるんだもんなぁ」 アスラン「隣の芝生は青く見えるっていうだろ?」 シーブック「そうだなあ」 アスラン「純愛なおまえが、羨ましくて仕方がないよ」 シーブック「ああ、こういうことなのか 俺も、アスランを羨ましく思うことがあるけど、この気持ちが、ソレなんだな」 マリュー「校内で堂々と性の話をしているそこの二人 ちょっと先生とお話ししましょうか」 シーブック&アスラン「ご、誤解ですよ先生!」 コーラサワー「ほお。友情+5か。これから先、どうなることやらな」 703 名前:通常の名無しさんの3倍 :2009/11/25(水) 02 05 46 ID ??? 700 ウモン「自爆小僧の身長みたく、眉も髪も奪えるほどないってだけじゃい!」 ザビーネ「私からも貴族主義は奪えんぞ!」 ベルナデット「トビアー!私は奪えるのに胸は奪えないとはどういう意味ですかー!」 トビア「俺が書いたんじゃないよー!」
https://w.atwiki.jp/koki-orika/pages/169.html
【森獣と海獣を重ねる躍輪/ガード・グリップ】 ツインパクト/UC 【森獣と海獣を重ねる躍輪】 読み方 シンカイミルフィーネイチャークリーチャーコスト 6 パワー 3000 🌱🌊種族 エメラルド・モンスター/ブルー・モンスター/躍輪屋 ⚡S・トリガー■このクリーチャーが出た時、相手のコスト5以下のカードを1枚選び、持ち主のマナゾーンに置く。 【ガード・グリップ】 呪文コスト 1 🌊 ■カードを1枚引く。 [FT]守りを握り潰す一手か、守りを掴み取る一手か、はたまたその両方か。 DMKP-03にて登場した、エメラルド・モンスター/ブルー・モンスター/躍輪屋。 ツインパクトカードで、クリーチャー面は自然/水の多色、呪文面は、水の単色になっている。 クリーチャー面は、相手の5コスト以下のカードをマナ送りにするcipを持つトリガー獣。 呪文面は、《ガード・グリップ》。 サイクル DMKP-03にて登場した、DM-36の1コスト呪文サイクルを持ったアンコモンツインパクトカードサイクル。 クリーチャー面はS・トリガーを持つ。 【隠れ潜む夢/ブラッディ・クロス】 【森獣と海獣を重ねる躍輪/ガード・グリップ】 【るぅ覇 ばグルスしア/ローラー雪だるま】 【夜照らし ニンファ/クルトの気合釣り】 【ランブる支援者/キリモミ・スラッシュ】
https://w.atwiki.jp/hammerfairy/pages/637.html
湖クラゲ(換金用) ショップ価格 500000G しっかりとした骨格のある珍しい海月。多方面で珍重される。 (換金アイテム/使用時 最大HP+200) 水底に棲む、希少価値の高いクラゲ。 発光することも無いが、毒ももたない。 クラゲは海姫オトヒメの病の治療を邪魔をしたことにより、 その仕返しに身体の骨を抜かれてしまったのだが、 中にはちゃっかりと海から逃げ延びて、湖で暮らす者もいる。 素材として珍しく、防具にも薬にもなるので、 道具屋や合成屋で高く買い取ってくれる。 ちなみに新鮮な物は刺身としても食べられ、 捌くのは面倒だが、味はかなりいけてる。
https://w.atwiki.jp/orzbit/pages/225.html
それが俺とお前の地平線 空と海外伝 その日は朝から雨が降っていた。 まる天が怒っているかのような、まるで空が泣いているような。強く、そして荒々しくそれでいてどこか物悲し気な面持ちを浮かべながら、大きな雨粒は地上をうちつける。 それは寒さに凍てつくような季節の事である。雪ではなく雨なので、気温的にはそこまでなのだろうが、それでも身を震わせながら人々は足早に岐路につこうとする。 しかし、そこには不思議な光景があった。 今や多くの者がこの寒い季節、しかも大ぶりの雨の中で地面に伏していた。その数はおよそ二百を超えるものではないだろうか。その中で、立っている者は十数名。 そしてそのほとんどの者が黒いレインコートを着ており、フードを深く被っていた。その他は女。三人の女達。 そこにいる者達は傷付き、血を流し、見れば服もボロボロになっている。が、皆総じてこの寒さの中で震えることもなく立っている。 そしてレインコートの者達は皆、大地を踏みならし、高らかに声を揃えて口を開く。 「「我ら、無限なる天上の涙なり。 我ら、偉大なる天上の刃なり。 我ら、絶対なる天上の愛その物である」」 彼らは大地を踏みしめながら言う。一点を見つめて。それを三人の女達は、ある者は冷ややかに、ある者は笑みを浮かべ、ある者は傲然とそれを見据える。 そんな彼らの中心には向かい合う男女。方や絶世とも言っていい程に、美しい長髪長身の少女。方やホビットかと思えるほどの短身金髪の少年。 二人は互いに敵意ある眼差しを向けていたが、よく見れば若干にその眼差しに差異があった。落ち着きを放ち全てを悟り、相手の全てを見透かしたような静かな目をする少年に対し、若干の驚きと戸惑いで目を淀ます少女の目。 そんな二人を周囲は固唾を飲んで見守っている。 「まさか、あんたがレインマン? 初めのナヨナヨと弱そうにしてたのはウソってこと?」 苦々しく言葉を発したのは少女の方である。レインマンと呼ばれる少年は薄ら笑みを浮かべる。それはあまりにも不敵、決して負けることを否定する笑み。 「別に騙してたわけじゃないさ。あんたが勝手に誤解したんだろ? それにあんたの事が気に入ってたのもウソじゃないし、あっちの方がどうもあんた接しやすそうだったから、あえて訂正しなかっただけだぜ。女豹ちゃん」 レインマンは笑みを浮かべたまま目を細め、ゆっくりと女豹に言った。その言葉に女豹はギラリと怒りを表す。 「よくも、よくも騙していたわね! 私を騙してさぞ愉快だったでしょうよ。今までの私の姿を見て、腹の底で笑ってたんでしょうよ。いい気味だと。四聖獣の一角と言われている私が、敵対するレインの対象と間抜けにも気付かず一緒にいた。いい、笑い者だわ。心底、私の姿は滑稽に映り、お前達は陰で笑っていたんだろう!」 爆発するように周囲の者に叫ぶ女豹に、一瞬雨すらも勢いがおさまったかのような錯覚を起こす。 「……いや、笑ってなんかいないさ。できることなら、このまま気付かれずにいたかった。俺はあんたが好きだから、戦いたくなんかなかった」 静かなレインマンの言葉に、女豹は一瞬言葉を失うが、すぐに頭を振り鋭い視線を送る。 「ウソだ! お前の言ったことなんかもう、何も信じてやるものか! お前は私を騙した。お前は私にウソを言った。お前は私を偽った! 信じてたのに! ……信じてたのに」 「全てが全てウソじゃないさ」 「……信じられるか!」 女豹が動いたのは言葉と同時であった。いっきに間合いを詰めると、下から拳を振り上げる。レインマンはそれを受け止めた。 「ウソだというのなら、それでいい。だがな。ハッキリ言っておく。俺が言うウソは、みんなお前のためのウソだ!」 受け止めたレインマンは微動だにすることなく言いながら、突き上げた拳を女豹に振り下ろす。彼の拳は女豹の肩を強打。痛みに顔を歪めた女豹は相手の顔面に抉るような拳を入れながら距離を取る。 「ただ……ただ確かに、偽ってきた関係じゃどこか擦れ違っているような、すれ違ってすらいなかった。どうせ俺達は空と海、永遠と平行線でしかない」 殴られながらも平然と血を拭うレインマン。 「俺はそれが嫌だ。おれはこのままじゃ嫌だ。確かにそう思う。錯覚でもいい。幻でも構わない。この心の中から、体の芯から沸き立つようなこの感覚。焦燥感にもにたこの渇き、どのような怒りよりも身体を熱し、苛立ちをも感じさせる。そう、それの正体を今俺はハッキリと理解したぞ!」 一同が見守る中、レインマンはハッキリと自信を持って宣言する。 「これは愛だ!」 周囲は一拍置いてザワついたが、彼は気にもしない。女豹も言っている意味が理解できず目が点になり、埴輪のような表情になっている。彼はお構いなしに続ける。 「そしてその愛が俺にこう叫んでいる! 俺はお前を俺のモノにする。そう、今日こそが俺とお前、空と海とが交わる境界線。地平線なのだと」 「そんな幼稚な手になんか乗らないわよ! この私を誰だと思っているのよ!」 レインマンが宣言した数瞬遅れ、女豹はキッパリと言い放つ。もちろん顔を赤らめて。 「愛もへちまも何だって言うの? 私には関係の無いことだわ。第一、そんな強引な告白でこの男女平等をうたう現代社会じゃ流行らないわよ。それにいきなり愛とか言われても…ウニャウニャ…ええい! 私は何を言っているんだ。そんなことを言っているんじゃない! 私はお前に騙された。だから許せないだけだ。それだけだ」 「照れるんじゃねぇよぅ。可愛い俺の子猫ちゃん」 「照れてないわ! アホかお前は」 「照れるんじゃねぇよぅ」 「照れてないわ!」 「てぇれるんじゃぁねぇよぅ!」 「照れるわ! アホ! あぁ~調子が狂う」 「フッフッフ。さぁ、素直になった所で、さっさと俺に倒されて素直に俺に全て捧げ、俺の愛を受け入れるがいいさ!」 頓珍漢な構えをしたレインマンは女豹に襲い掛かるが、女豹をそれをスラリと避けて足をかける。たたらを踏むレインマンの頭を膝と両肘でプレスするように打ち付ける。 痛がり屈むレインマンに女豹は、深呼吸をすると言い放つ。 「思いあがるなよ。レインマン。私がお前の物だと? はなはだしい。 お前が私の物になるんだぁ!」 周囲唖然。こっそり笑うものもいるが、驚いている。 「それでこそ、俺の愛を受け入れるに値する女だ。この勝負で負けた奴は……」 「勝った奴に死ぬまで絶対服従」 レインマンの切った言葉を女豹が続けて言った瞬間、両者の目が光り仕掛ける。 今までがお遊戯であったように思えるほどに、互いに鋭く、素早い攻防。ここまで上位の戦いであると、それは殴った蹴ったではなく、互いに互いの空間を支配するような戦いになる。結局、自分の領域で相手の領域を飲みこもうとする戦いである。「美しい」誰かの口から洩れた言葉。しかしそれは全ての者の心に芽生えた心。確かに両者の戦いは美しく、人を惹きつけ、魅入らせる物があった。 「五月雨 青空!」 「海原 シエル!」 戦いが佳境に迎えようとしている時、両者の口から同時に出た言葉であった。 「お前は私のものだ。誰にも渡さない。誰にも渡したくない」 「お前は俺のものだ。誰にも渡さねぇ。誰にも渡す気はねぇ」 互いに額をぶつけ睨む両者の目はギラギラと輝いていた。 ★ ☆ ★ 「こうしてパパとママは出会い。結ばれたんだぞ~」 ソラは娘の夜空に自慢げに話していた。 「パパはその頃、ママより背が低かったんだね」 父親譲りのキラキラ輝く瞳を父に向け、夜空は楽しそうに言った。明日から転校する夜空の不安を推し量り、ソラは娘の緊張をほぐすために、彼女の部屋で昔話をしていたのであった。 「いいな~。私のそんな出会いがしたいよ~。パパは幸せだね。ママに会えて」 メリメリメリ 「そうさ。パパは世界一幸せ者だよ。ママもきっと同じことを言うだろう。だから大丈夫さ。世界一幸せなパパとママの娘のお前が幸せになれないわけないだろ? 夜空は明日から新しい高校だ。お前は俺達二人の血が流れているから、どうにも腕っ節が強い。そして――これはママの血が原因だろうが――喧嘩っ早い。だからこそ、強さというものを理解しなさい」 「大丈夫よ。二日で今度の学校も制して見せるから。私ほど強い人間なんて、この世界でパパとママだけ」 「夜空。お前は人の強さをはき違えている。力ばかりが強さじゃないよ。パパはそれを新しい学校で学んでほしいな」 「なんで? ママだって喧嘩が強かったんでしょ?」 「あぁ、そして美しく、照れ屋で、可愛かったなぁ~」 メリメリメリ 「そう言えば、その、パパとママがした喧嘩は、結局どっちが勝ったの?」 「そりゃ、パパに決まってるだろ~。もう、そこはビシッと、男としてビシッと」 メリメリメリ 「まぁ、あの頃はママはパパに――今もそうだけど――ベタ惚れだったからなぁ~。パパ無しじゃ生きていけない。みたいな感じでなぁ」 メリメリメリ 「うんうん。それで?」 「それはそれは手に付けられないくらいにベタベタしてたっけ。それでパパは言ってやった『俺と一緒にいたかったら、付いて来いよ。ただ、俺は止まって待ってやることはしない。進み続ける。それでも追いかける気があるなら俺はほんの少し歩調を縮めてやるよ』ってね。それを聞いたママの返答と言ったらもう……うわぁ! ママ。い、いつからそこに?」 殺気と妙な音に振り向いたソラの目に、部屋の入口。少し空いた隙間から見える般若のごとき姿のウミ。彼女は扉横の柱を握り、潰さんばかりに圧していた。 「パパ。ちょっとお話があるんだけど」 手招きするウミの言葉に感情は無かった。顔面蒼白なソラは素直に部屋を出ていく。 「いや、ママ。違うんだよ。これは、その夜空が不安そうだったから安心して、あ、ちょ。それは……」 その後の言葉は、ウミの暴虐無尽、悪辣非道な言葉の数々により掻き消され、残るはソラの悲鳴のみであった。 ★ ☆ ★ 十六夜高校 そこが今日より夜空の通う高校であった。昔に彼女の父と母が通うっていた高校でもある。 小さく可愛らしい彼女に先生は名前を黒板に書き、夜空を紹介する。しかし彼女に先生の話しも、興味、好奇心で向けられる視線も全く興味がないことである。 先生に一言求められ、彼女はこうハッキリ言った。 「この学校で一番強い奴出てこい! 私は二日でこの学校を制する」 爆笑であった。 この言葉を言って白けなかったのはこの学校が初めてであった。この学校はただの学校ではない。と改めて心を引き締める夜空であった。 別段笑われることに特別な感情は無い。彼女にとって大事なのは強いか、弱いかである。 「ユーモアたっぷりな五月雨さんと仲良くしましょうね」 先生は言い、彼女は席について授業を始める。 暇だ。そう感じた彼女は頭を机に伏せたまま周囲を見える。今更ながら、このクラスには不良と呼ばれる種類の生徒が一切いない。まさか、皆、自分を騙すために化けの皮を被っているのかとも思ったが、睨み一つで逃げていくような奴らである多分違うのだろう。 暇だ~と突っ伏していると、廊下を歩く数名の髪がカラフルな者達。一目見て雑魚だと判断した彼女であったが、今日はなんだか機嫌が悪い。 喧嘩がしたい。自分の強さを誇示したい。誰か殴ってやりたい。その衝動が沸々と沸き立つのだ。しかし、喧嘩をしたと知るだけでも、母であるウミにボコボコにされる。一般人相手に手を上げたとなればボコボコボコぐらいにはされるだろう。 今は雑魚でも救いの女神のようにありがたい。 夜空は立ち上がると、カラフルな頭の生徒達を追い掛けていった。 この時、まだ彼女は知らない。この気まぐれな行動が、新しい空と海の地平線に向かうきっかけであったことに。