約 664,652 件
https://w.atwiki.jp/lord_of_vermilion/pages/2120.html
「トリニティという名前がネタバレ」って説明自体がネタバレだよ。 説明しやきゃ名前なんて何とも思わないのに。 -- (名無しさん) 2016-02-27 21 02 51 超覚醒のマジシャンのダメはATK50相応のダメみたいです DEF30のグリンブルシティにATK170のプラチナで殴ったら143ダメでした -- (名無しさん) 2016-03-05 00 08 44 最終ATKは160なので誰か訂正お願いします -- (名無しさん) 2016-03-05 00 10 30 STはルナ、VRはセナのセリフになっている -- (名無しさん) 2016-03-06 07 22 39 フレイバー載せておきます 「魔法少女ルナ様登場♪ キラーン♪」 アークエネミー「雷轟・無兆鈴」の所有者。 魔法少女風の小さな身体の中には、勝ち気でせっかちな少女「ルナ」と、温和でのんびりした少年「セナ」、六英雄「トリニティ=グラスフィール」の魂が共存している。 普段は常にルナとセナ二人分の人格が発現しているため、言動・行動が読みにくい。 セナは「石橋を叩いて渡る」タイプで、ルナは「案ずるより産むが易し」タイプ。 物事への対応の姿勢が真逆のため、度々言い争いが起きている。 共通しているのは六英雄「獣兵衛」に馴れ馴れしい輩への嫉妬心。 身長 1.42[meter] 体重 37[kg] 出身地 第九階層都市「アキツ」 誕生日 12月13日 好きなもの 獣兵衛様 ドライブ名 マジカルシンフォニー -- (名無しさん) 2016-03-11 18 09 30 SP版フレーバー これは…事象干渉でも魔法でもない…? 見たところこの世界は私達の世界とは大きく違うようですが、ふふっ…少しだけ、イシャナに居た頃を思い出します。 (友人達と魔法の研究に明け暮れたこと…仲間達と力を合わせて『黒き獣』と戦ったこと…そして愚かな嘘に騙され、親友を陥れてしまったこと…) カズマさん…いえ、『ハザマ』。 『彼の器』も、ここに来ている…ルナ、セナ、お願い、少しだけ力を貸してください。 これ以上、彼の好きにはさせません。 これ以上、誰も不幸にさせてはいけません…! 身長 1.42 [meter] 体重 37 [kg] 魂の在り処 雷轟・無兆鈴の中 出身地 魔道都市イシャナ 得意な魔法 結界 嫌いなこと 眼鏡が汚れること -- (名無しさん) 2016-06-02 23 16 53
https://w.atwiki.jp/wiki2_350330/pages/17.html
第三章 小さな傭兵団 3 「フロリーナ、怪我はない!?」 駆けつけたリンにフロリーナは眼に涙をためて抱きついた。 「う・・・・・・うん。でも、怖かった・・・・・・、怖かったよぉ・・・・・・」 「ホラ、いまは戦闘中よ。泣かないで、ね」 「うん・・・・・・」 「あのぉ、大丈夫?」 「え?きゃあっ!」 声をかけたウィルにフロリーナが驚いて悲鳴を上げた。 驚いたのはウィルも同じである。 「え?お、おれ何かしたっけ?」 「あ、気にしないでウィル。彼女、男の人が苦手で・・・・・・。それに天馬騎士だから弓の方もね・・・・・・」 リンはウィルの持っている弓を見ながら答えた。 天馬騎士にとって弓は天敵で、当然その恐怖は刷り込まれている。おまけに男性恐怖症ときたら怖さも倍増だろう。 「あ・・・あの・・・、ご・・・・ごめんなさい。でも弓を見たらどうしても・・・・ふ、ふるえて・・・・・」 「もう、フロリーナもそんなにビクビクしないの!ウィルに失礼でしょ?それにさっきあなたを狙っていた山賊を倒してくれたのもウィルなのよ。ちゃんとお礼言って」 「う、うん・・・・・・。あ、ありがとう・・・ござい・・・ます・・・・・・」 フロリーナはおずおずとウィルの前に進み出ると、途切れ途切れのお礼を述べた。 頭では理解していても身体がどうしても拒絶する。 いまだに怯えの色を見せるフロリーナに、リンはため息をついた。 (久しぶりに会ったけど、全然変わってないわね) 「リンディス様!どうかなさいましたか!?このセインも只今お側に・・・!」 今までのフロリーナとの思い出を思い出しているとセインの声がしてふと我に帰った。 「馬鹿者!持ち場を離れるな!」 声に振り向くと、ケントとセインが二人で大勢のならず者の攻撃をしのいでいた。 うっかり話し込んでるうちに、二人の騎士は孤立奮闘していたのだ。 「ごめんなさい、すぐに行くわ!フロリーナ、あなたは上空から、ウィルは後方から援護してちょうだい!」 「う、うん!」 「ああ、まかせてくれ!」 二人に指示を飛ばすと、リンはマーニ・カティを手に疾駆した。 「やっと片付いたわね」 戦いはリンたちの勝利で終わった。 一流の剣の冴えを持つリンに正規の訓練を受けた騎士二人、それに見習いとはいえ天馬騎士のフロリーナや熟練した弓の腕を持つウィルまで加わったのだ。十人やそこらの山賊など物の数ではなかった。 「リン!」 マーニ・カティを鞘に収めたところにフロリーナが駆け寄ってきた。 「フロリーナ・・・どうして追ってきたの?あぶないじゃない」 「イリア天馬騎士が、一人前になるための儀式・・・覚えてる?」 フロリーナの言葉に、リンは以前に聞かされた言葉を思い出した。 「確か、どこかの傭兵団に所属して修行を積んでくる・・・だったわよね?じゃあ、フロリーナ。あなたも?」 「うん。・・・傭兵団を探すための旅に出ることをリンに放しておこうと思って。それで、サカに行ったらリンが見慣れない人たちと旅に出たって。・・・だから」 「心配してくれたのね?ありがとう。でも私は・・・貴方の方が心配」 「私?」 「いい?傭兵団っていうのは普通、男ばかりなのよ?フロリーナが一人でそこに入って修行だなんて・・・。むちゃだわ」 フロリーナの顔がみるみる暗くなっていく。 「・・・やっぱり、そう思うよね。・・・天馬騎士になるのは小さい頃からの夢だったから、必死で頑張れば、なんとかなると思ってたんだけど・・・。私も今日のことで自信なくなってきちゃった・・・。・・・あきらめたほうがいいのかなぁ・・・・・・・」 「フロリーナ・・・泣かないで・・・」 またも泣き出しそうなフロリーナを慰めるように、リンが励ましの言葉を言おうとした時、暗く湿りがちだった場の雰囲気を打ち破るような、明るい声が響き渡った。 「そう!あきらめる必要はありません!!」 「!?」 二人が驚いて振り向くと、そこには大仰に手を広げているセインの姿が見えた。 「俺に名案がありますっ!可憐なフロリーナさん!!」 「セイン!」 ケントが、またバカな事を言い出そうとしている相棒を止めようと叫んだが、セインは一向に気にせず話し続ける。 「あなたも、俺達と一緒に旅をすれば良いのです!我らは、このウィルを加えて今や立派な傭兵団同然!!」 「お、おれもっ!?」 出し抜けに自分の名前を言われ驚くウィルを尻目に、尚もセインは言う。 「ここで、お会いしたのも神のお導き!運命だったのです!!ささ、このリンディス傭兵団で、ともに修行を積もうではありませんか!」 「・・・セイン。この。お調子者が・・・!」 ケントが沈痛な面持ちでつぶやいた。 「ねぇ、リン・・・『傭兵団』って?」 「・・・詳しい話は、追い追いね。ちょっと乱暴な気がするけど、セインの言うとおり、一緒に来る?フロリーナ」 リンにしたらフロリーナを一人にしておくと危なくて仕方がない。だからセインの‘‘我々が傭兵団ならフロリーナと一緒に旅ができ、天馬騎士の修行もでき一石二鳥’’という考えには、リンも合致したのだ。 「・・・リンと旅が出来るの?本当に?だったら私・・・すごく嬉しい!」 思いもよらなかった提案に、花が咲いたように笑みを浮かべたフロリーナの傍ら、満面の笑みを浮かべた者がいた。 「やったー!!美しいフロリーナさん!俺はキアランの騎士、セインと申しま・・・」 「きゃあっ!ち、近寄らないで・・・ください」 「ああ・・・なんて奥ゆかしいんだ!」 さっそく仲間になったフロリーナに愛を語ろうとするセイン。一方のフロリーナは、男性恐怖症のため、近寄ってくるセインから逃げ回っていた。 その光景を横目で見つつ、ケントはリンに頭を下げた。 「すみません。『傭兵団』などとふざけたことを・・・・・・」 「ううん、私は賛成よ。フロリーナのこと、ほっとけないもの。それより、面倒かけると思うけど・・・頼んでもいい?」 「はっ!おまかせ下さい」 力強くうなずいたケントにリンは頼もしさを感じた。 彼等の使命はあくまでも自分がキアランまでの護衛なのだ。余計な仕事を背負い込むのに難色示してもいいはずなのに、ケントとセインは一も二もうなずいてくれる。リンは心の中で感謝していた。 「あの・・・。おれも、本当についていっていいのかな?」 「あ、ええ、もちろん!ウィルがイヤじゃなければ」 「いや、むしろ助かるな。実を言うと旅の途中なのに金を盗まれて途方にくれてたんだ。じゃ、おれも今日から傭兵団の一員って事で、よろしくお願いします!!」 「リンディス傭兵団、か・・・。なんだかにぎやかになってきたわねね・・・」 セインから逃れるため自分の後ろに身を潜めたフロリーナを見ながら、リンはそうつぶいた。
https://w.atwiki.jp/schwarze-katze/pages/549.html
小さな龍と猫の姫 序章 運命というのは、時に暴風のように、個人の人生を絡め取る。 人の生きる道など、まるでお構いなしなのだ。 「……ふう」 時刻は昼。空には太陽が輝いている。 今日は記念すべき日である。身を立てるために、これより都へ降り、晴れの姿を示す時であった。 天気は折良く晴れ、出立には絶好の日取りと、誰もが判を押したように言った。実際、朝に歩き始めた時には、どこまででも走っていける気がしたものだ。 しかし、ほんの少しだけその力を過信しすぎたのかもしれない。昼前頃、昼食を取ろうかと思った 頃合で、彼は自分の身体の失調を感じたのであった。 「……参ったな。日暮れまでには途中の里に着けると思っていたけど」 少年は、湿らせた布を顔から取り、こめかみを揉み解した。布はきちんと絞り、荷物の中へ戻す。 今の失調から立ち直るのに、大凡半刻分の時間を使ったと自分の体内時計が言う。より確実に判断しようと彼は天を見仰いだ。 そして、眉をひそめる。 「……?」 太陽は、まだ南中していなかった。それと判るのも、周囲の気温が上がりきっていなかったためだ 。幼きころから森を友とし、自然に親しみ続けた彼は、その一つの違和感を引き金にして周囲の異常を次々と確認した。 一つ、森の木々の流れが、いつの間にか変化している。 二つ、鼻を鳴らして息を吸えば、親しんだ山の空気とは違う緑の匂いが鼻腔を突く。 三つ、道は車が通れるほどの幅で、少年の記憶では自分の過ごした山にこれほどの幅を持つ道は二割とない。 四つ、そのいずれもが自分が歩く予定の道程には存在しないはずである。 迷ったか。……否。あの、己の庭と言えるほどに知り尽くした山で、自分が迷うはずがない。何より空気が違う。周囲を見れば見るほどに、ここは自分の知る地ではないとの確信が深まる。 開け放った荷物もそのまま立ち上がると、不意に横から声が響いた。 「そこのガキ、動くな」 声を掛けられた瞬間、少年は素直に動きを止め、反射的に警戒する。 葉摺れの音に紛れ、人の気配が七つ。それに加え、濃い獣臭がそよ風に混じる。ざわざわと木々を掻き分け、左右から人影が姿を現した。 少年はその姿を見て、一瞬思考を止めざるを得なかった。 「リーダーッ、こいつ、マジなんですか、マジですか、耳、耳がねえっ」 「ヒトだ……こいつヒトだぞ」 「うろたえるんじゃねえバカども。……おい、そこの。俺たちを見て声も出ねえか」 お頭、と呼ばれた『もの』が、口を利いた。重たい、鉛のような声だ。それも十分に驚愕に値することだったが、何より問題は、自分を取り囲んだ七人の容姿であった。 身体は彼らは濃い体毛で覆われ、皆一様に薄汚れた襤褸服を纏っている。――否、体毛と呼ぶのは不適切だろう。その有様ときたら最早毛皮と呼んだほうが相応しい。極めつけには、一人の例外もなく 首から上に、獣の顔が載っていた。 魑魅魍魎の類かと疑うも、相手は人語を解す様子。首領格と思しき眼帯の獣が、呟くように言う。 「その驚きよう……落ちてきて間もないらしいな」 確かめるような響き。オオカミのような顔をして、しかし『それ』は口端を裂き、笑った。 「野郎ども、こいつをふん縛れ。だが、傷はつけるなよ」 「わかりやした、リーダーッ!!」 号令一下、周りの狼人間達が囲む輪を狭め始める。その手には、ギラリと光る円月刀が握られていた。自分に集中する、殺意ではない――しかし害意に限りなく近い、欲望にまみれた視線。 少年はこの事態について、それ以上考えるのをやめた。 ――ぱん、と音が響く。 「あ?」 「……こいつ、何の真似だ?」 部下が珍妙な声を上げたのを聞き、狼たちのリーダー――バーゼルは眉をひそめた。 視線の先で、ヒトの少年が荷物を落とし、右拳で左手を打ったのである。両足をぴたりと合わせ、直立不動の体勢をしたまま、少年はゆっくりと頭を下げた。 復位するなり、彼は奇怪な呼吸をしながら腰を落とす。日常を生きるうえで、およそ必要ない呼吸だ。洞窟の中を吹く風笛のような音を立てて吸い、空気を引き裂くような音を立てて吐く。 一呼吸のあと、少年は脇を締め、右手を顎を守るように、左手を胴を守るように構えた。 その構えに見覚えがある。 あれは確か、ライオンの連中がよく使う、素手での格闘術のそれによく似ている―― 「おい、手前ら、油断すん――」 バーゼルが最後まで言葉を口にすることはならなかった。 少年が、地面を蹴ったためであった。 「おごばっ!?」 異様な声が響き、部下の一人が顎をぶち抜かれて後方へ吹っ飛んだ。 「……は?」 誰からともなく、間の抜けた声が漏れる。 少年は、真っ直ぐに突き出した右の拳を、坂を垂れ落ちる水のような速度で引き、ゆらりと次の『標的』へ視線をずらす。 「こ、こいつ、ヒトじゃねえのかッ!!」 『標的』となった狼が、少年の素性を疑った瞬間、芸術的な蹴りが彼の顔面にめり込んだ。 不覚にもバーゼルはその攻撃を見て、美しい、と思った。飛び立つ鳥のような軽やかな跳躍から、空中で身を三度回し、ひねりを加えて斜め上から蹴り下ろす一撃。 あんなことができるヒトなど、聞いたことがない。蹴られた狼はそのまま吹っ飛び、顔面を地面に引きずりながら木立の向こうへ消えていった。 部下達が及び腰になる。それを見て、バーゼルは自分のシミターを引き抜いた。両手に一本ずつ握るのが彼のいつものスタイルである。前に進み出ながら、彼はそのヒトの少年に向けて呟いた。 「おい、ガキ。手前、何者だ」 少年は蹴りを放った体勢からゆっくりと復位し、最初の構えを取り戻した。暫し迷うような沈黙をしてから、小さく、しかしはっきりとした声で言い放った。 「師父『黒龍』(ヘイロン)の元で修行をし、都に戻る途中の修行者にございます。見逃してはいただけますまいか」 年齢を見分けられるほど多くのヒトを見たわけではないが、それでも年に似つかわしくないと思わせる口調だ。着ている服は真新しいが、まるでそれが彼の一部であるかのようにしっくりと馴染んでいる。 ヘイロンという名に、聞き覚えはなかった。バーゼルは少年の素性を探るのを諦め、端的に結論だけを口にする。 「出来ねえなあ、そいつは無理だ。何せ手前らヒトには、売れば遊んで暮らせるような価値があるんだからよ」 言葉に、少年が不可解げに眉間に皺を寄せる。 「戯れを。このような小僧、売り払ったとて飯の種にもなりますまい。……そろそろその被り物を取っては如何です」 落ちてくる人間は稀なれど、その基本的な行動傾向は大体同じだと聞く。すなわち、目の前の種族を否定し、その次にはこれは夢だと思い出す。 「被り物じゃあねェーんだよ。……おい、どけ。このガキは俺が引っ立てる」 萎縮する手下を円月刀の峰で叩き、道を開けさせる。肩幅二人分の距離を開け、対峙した。 見れば見るほどに、脆弱な生き物だ。身を護る毛皮もなければ、分厚い筋肉の鎧もない。およそ戦闘とはかけ離れているはずのその肉体は、しかして二人の部下を戦闘不能に追い込んだ。呻き声は聞こえてくるが、起き上がる気配はない。 「バーゼル=スティンガーだ」 バーゼルは名乗りを上げた。それが通じたか否か、少年は前に出していた右足を引いて直立し、ゆっくりと、五指を伸ばした手のひらと拳を重ねあわせ、深く頭を下げる。 「吼意仁慈拳(コウイジンジケン)が皆伝、鄭孔龍(テイ・コンロン)。……では参ります、ばあぜる殿」 たどたどしい発音で律儀にこちらの名前を呼ぶヒトの子供。思わず微笑ましいものを覚えるが、獲物は獲物である。 最低限必要な息だけ吸い込んで、踏み込んだ。一瞬で間合いに入る。相手は構えを改めたばかりだ。右手に持ったシミターの刃を返し、殴りつけるように振り下ろす。首元を狙った一撃だ。加減はしているが、当たれば気絶は間違いない。 必中の距離になったときも少年は動かなかった。取った、と確信する。しかし、次の瞬間、期待した重い手応えは返ってはこなかった。 バーゼルの剣は、少年の首を素通りする。――否、彼の残像を袈裟斬りにしたのである。 「んなっ……」 右から敵意。バーゼルは二刀を重ね、反射的に胴を守った。そこへ飛び込む、コンロンなる奇態なヒトの影。 「砕ぃッ!!」 裂帛の気合が炸裂し、バーゼルの胴に、二つの刃越しに拳が打ち込まれた。 自分の身体がひしゃげる音を、狼は聞いた気がした。 「ッゴ……アッ!」 反射的に身体を引き、跳躍することで衝撃を逃がす。 バーゼルは手の中の刀を見て、思わず息を止めた。二刀は叩きつけられた衝撃によって歪み、まるで投石器で潰された十字架のように端を反らせていたのである。 「見事。中々の功夫をお持ちです。都に行けば警吏の位を得られましょうに」 「ワケのわからねえことを……口走ってんじゃあねえぞ、ガキがッ!!」 バーゼルは二刀を捨て、拳を握り固めた。その筋力とスピードは、一般的な彼らの種族――誇り高きオオカミの氏族においても、なお抜きん出ていると賞賛されたほどのものだ。 ――殺しはしねえ。しかし死ぬほど痛い目に遭わせてやる。 バーゼルは誓い、ガードを固め、少年へと弾丸のように突っ込んだ。 もう幾度目になろうか。 バーゼルの鉄拳が唸りを上げて、少年目掛けて真上から打ち下ろされた。両者の身長差、軽く頭三つ分。雲を突くようだと表現されるバーゼルの巨体の前では、少年はあまりに儚く小さく見える。 しかし、バーゼルはこの身長差が何の武器にもならないことを早晩悟り始めていた。 空気を引き裂く音がして、またバーゼルの拳が虚空を貫く。バーゼルはすぐさま自分の体勢を頭の中に描く。右拳を出したまま、若干体重は前に乗り、右の胴ががら空きになっている。 電光のように駆け抜けた思考に従い、彼は突き出した右腕を膂力だけで引き、そのまま円を描くように振り払った。 紙風船の爆ぜるような音が響く。少年の蹴りが、彼の腕と交錯した音だ。手の感覚が一瞬失せ、一瞬後に痺れるような痛みが骨を這い登ってくる。 すぐさま右腕を引き戻した。 少年――コンロンが、弾かれた蹴りの反動を生かしたまま身体を返すのが見えたからだ。 「ッシァアア!!」 ヘビの連中が威嚇する時の声よりも、その声は鋭利だった。身を切らんばかりの寒気のする叫びと同時に、目の前で嵐が巻き起こる。 空中で身を廻し右足の一撃、これは顎をそらして避けた。その足を掴み取ろうとして伸ばした右手が、『逆の』足に叩かれる。 そのまま身を回し、最初の体勢より一巡しての右中段蹴り。変幻自在の足技だ。バーゼルは防御を固め、その足の一撃を左腕で受けた。あたりは静寂。いつもなら五月蝿いほどに騒ぐ部下達が、この攻防を前に息を呑んだような沈黙に沈んでいる。 無理からぬことと思えた。 生半可な打撃など怖くはないという自負があった。しかし、この少年が放つ拳脚の技には、その自信も霞んでしまう。 だが―― バーゼルはバックステップをして、目を光らせて少年を見据えた。 「やるじゃねえか。手前、本当にヒトか?」 「……人以外の種が口を聞くと、お思いですか」 少年の息が弾む。口調から、バーゼルは敵に疲弊の色を感じ取る。 脆弱なヒトは、自分達ほど長くは動いていられない。心肺機能が根底から違うのだ。バーゼルはた だ正体不明の敵に怯える周囲の部下とは違った。彼には自分が勝てない存在などいるわけがないという暴力的な自信と、そしてその裏を取るための観察眼が備わっている。 「喋るんだよ、これがな。……いや、よくやってるぜ、手前は。だが、そろそろ疲れてきただろ?」 バーゼルは口端を吊り上げた。 黙して答えぬコンロンの額には、じわりと汗が滲み、流れ落ちている。 ヒト、それも骨格、筋力、体力的の全てが未熟な若年。しかも、『落ち』て間もないとなれば、身体に何らかの失調を抱えていてもおかしくない。さらには認めたくない現実を突きつけられたままにこの長期戦だ。消耗し、戦えなくなるのは時間の問題だろう。 加えて、戦闘の展開が彼に逆風を吹かせる。 攻めるバーゼルに対し、少年は防御からの反撃を主体としている。つまりバーゼルが、駆け寄って殴るというただそれだけの動作を取るのに対し、コンロンはその攻撃を回避し、一瞬の間隙を突いて死角へと回りこんで一撃を加える必要があるのだ。 防御に使う神経と、瞬間的な回避に使う運動量が、両面からコンロンを衰弱させにかかっている。 ――相手が悪かったんだよ、手前はな。 バーゼルが内心で嘯いた瞬間、そよ風に乗って声が届いた。 「……未熟。功夫が足りません。お披露目は先ずは陛下のご覧じるところと決めていたのですが」 コンロンが構えを解き、だらりと両手を下げた。しかしそれも一瞬、雨垂れを掬うように、両手を碗の形にして持ち上げる。 「致し方ありますまい」 少年は胸の前まで上げた手を、突き上げるように天に翳し、同時に右膝を上げた。 刹那の停止。一瞬後、腕を腰元に引くと同時――踏み下ろす! 「――……!!」 戦慄、ただその二文字。 動作だけを見れば、それは児戯以外の何者でもない。 だが、部下が皆一様によろめいたように後ろに下がったのだけは、気配だけでわかった。 コンロンが足を地面に叩きつけた瞬間、一帯が確かに揺れたのである。錯覚であるかないかなど、この際、些少な問題だった。空が落ちてきたような重圧と、目の前にそれを発するものがいるというだけで、十分すぎる。 「……オオオオオッ!!」 バーゼルは吼えた。重圧を寄せ付けまいとするように、ただ、地の底までも届くほどに吼えた。地面を蹴り、加速する。 鋭利な爪を持つその五指を広げ、己の最速を以て飛び込んだ。最早傷つけても構うまいと、割り切った。――否、割り切った、と言うのは正しくない。 殺さなければ殺されると、彼の本能が叫んだのだ。 彼は、そうせざるを得ない状況にまで、たった一瞬で追い込まれたのだ。 コンロンが動く。 その頭から股までを、カギ裂きにするつもりで振り下ろした。風を巻く死の右腕が、彼の頭頂部に襲い掛かり、 止まった。 少年の小さな手が、巨木が如きバーゼルの右腕を支えている。まるで羽毛を受け止めるように、音もなく狼の一撃が静止した。 バーゼルは理解できなかった。何故止められる? 筋肉の絶対量、それが生み出す加速度、そして自身の質量の関係性。狼の知りうる拙い知識を総動員し、あらゆる理論を立てたところで、その所業を説明することは出来ない。 コンロンの手のひらは優しく、静かだった。なのに、背中から這い登るこの寒気は何だ。 彼の細めた目の中に鋼色のきらめきを認めた瞬間、バーゼルは反射的に右腕を引き、再び引き裂くための一撃を放たんとした。 しかしその前に、コンロンがその懐に潜り込む。抱き潰せるような近距離、拳を加速させきることが出来ないような密着状態。 次に吼えたのは、少年であった。 「阿打ァッ!!」 爆発的な発声と同時に、バーゼルの腹に拳が食い込む。 瞬間、臓腑の奥で衝撃が弾けた。 「ご……」 喉の奥が痙攣して、声が凍る。 「打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打ッ!!」 怪鳥が笑うが如き甲高い独特の発声と、胴にぶち込まれる乱打が狼の耳朶で楽章を奏でる。目の前にいるのはヒトではないと、バーゼルはその瞬間に確信した。 引き戻した瞬間に既に打ち込める状態になっている左右の拳。決して力を入れていないように見える緩い握り。矢襖のような拳の瀑布を放ちながら、コンロンは一撃毎に更に摺り足で前進している。 ――ということは、あれか、オレぁ今、後ろに押されてるのか? 拳の数は既に数え切れない。目で追いきれない。カモシカの連中が横並びになって掃射する光景が頭に浮かんだ。 熱く焼けた鉄の雨のように、無数の拳が胴を滅多打ちにする。バーゼルは遂に爪を振り下ろすことが出来なかった。指先が戦慄くように震え、声すらも奪われたように顎が反る。 「吼意仁慈拳〝四拳〟が壱式……『百華』」 立ったまま意識を手放しかけたバーゼルの耳に、コンロンの澄んだ声が届いた。 意思に関係なく天に向こうとする鼻先を、震わせながら前を見る。 「……〝三分咲〟ッ! 絶掌ォ!!」 腕を揃えた双掌打。 彼の攻撃を見て取ることは出来たが、それが限界だった。 胴にめり込んだ最後の一撃。自分の体の内側から鳴る破裂音に意識を吹き飛ばされ、バーゼルの思考は闇に溶けた。 吼意仁慈拳。 知るものぞ知る、内家拳の流派の末席。〝勁〟を練り、拳脚によりそれを相手に送り込んで発破する技術――〝発勁〟を操るための想像を絶する修練が故、その修行の最中に命を落とす者も珍しくはない。その門徒を叩く子弟のうち、皆伝の位階を得るものはごく一握りである。 その狭く遠き門をくぐり、皆伝を名乗ることを許された者の実力たるや、推して知るべし。その力、その技、既に人の粋になし。 〝四拳〟が壱式、百華。短時間で練りあげた〝勁〟を、百に渡る数に細分し、連続的な寸勁として叩き込む。自らの中で練った勁を敵の体内で反響・増幅し、最後の一撃により炸裂させる魔拳である。 残心を取る孔龍の前で、狼がその巨体をぐらりと揺らした。発する声すらなく、仰向けに倒れ伏す。その目は見開かれたままであり、彼がいかな驚愕の中にいたか容易に推測しうるさまである。 左手を右拳で打ち、深く礼をした。その後、周囲で呆けたように立ちつくす狼たちを睨み据える。 「さあ、次はどなたですか」 返事はなかった。 ただ、狼たちは我先にと、道を争って逃げ出していった。棒で打たれた犬のような裏返った声は恐怖の表れか、何なのか。孔龍は駆け出していく狼たちの姿を消えてしまうまで眺め―― がくり、と膝を突いた。 「……〝三分咲〟が限界だなんて」 自分の掌を見れば、小刻みに震えているのがよくわかる。好調な時に比べ、勁の伝導率が酷く低かった。加えて、一呼吸で練れる勁の総量も少ない。 通常、『百華』は敵を完全に戦闘不能、或いは死亡に追い込むため、〝五分咲〟――五割の伝導率を目安にして放たれる。 孔龍は、この巨漢に目掛け、人間ならば勁を発動するまでもなく撲殺できる〝八分咲〟を仕掛けた。しかし、現実に放ってみれば、拳速は遅く、練った勁は敵に伝わらず、分散して散っていくのである。 結果、常の二倍の手数を加え、最後に渾身の勁を込めた双掌打を打ち込むことで威力を補う羽目になった。 「……技を崩すとは、なんて無様。師父に顔向けできないな、この様では」 自嘲気味に呟いた。全身を襲う虚脱感は、収まるどころかなお酷くなっていた。始めに敵を二人、先手を打って叩きのめしたその時にはまだ感じていなかったものが、一気に噴き出してきたような有様である。 上体を支えているのさえ辛い。地面に強く手を突き、孔龍は荒い呼吸をした。 息の吸い方を忘れてしまったようだ、と漠然と思い、そこではたと思い至る。勁が思うように練れないのも、通りが浅いのも、その所為ではないか。 気を巡らせるため、丹田に意識を集中し、息を吸う。しかして、呼吸が落ち着く気配はなく、逆に世界が回り始める。頭痛がし始め、手から力が抜けた。 まずい、と思ったときには、孔龍の身体は前へと倒れこんでいた。呼吸を落ち着けようとすればするほど、身体の自由が利かなくなる。かすみ始める意識の中、力を振り絞り地面に爪を立てたが、しかして彼の右手は最早土を掴むことさえできなかった。 そのまま、意識を失う。 半刻後。 「――」 倒れ臥したるは、この一帯を荒らして回る狼の盗賊団『レギオン』のリーダーたるバーゼル=スティンガー。そして、一人のヒトらしき少年。 女はそれを見て、口元に手を持っていった。 「壮観ですわね。この男が倒れているところを見るとは」 フリルのついたスカートの裾を直し、女は一人ごちる。しかして、それにも増して驚きなのは、傍にいる少年がほぼ無傷であることだった。 「けれどそれにもましてこのヒト、面白い匂いが致しますわ。お嬢様へお知らせしなくては」 小さな声で、女は喉を鳴らすように笑った。 その頭頂には、ぴんと立った一対の耳がある。白銀の髪と、つり目がちの目。身長は女性としては高い方であった。女は歌うように古代言語を唱え、くるりと指を回す。バーゼルと少年の身体が、宙にふわりと浮かび上がった。 「晩御飯の前にでも紹介したら、きっとお喜びになるでしょう」 女は足取りも軽く歩き始めた。腕をタクトのように振るたび、宙に浮かんだ一人と一匹が彼女のあとに追従する。 されるがままの男たちは、そうして、森の中から忽然と消えたのであった。
https://w.atwiki.jp/pixno/pages/198.html
『珍しくもない小さな小さなものがたりシリーズ』 作者:むらさきあおい(ムラサキアオイ) ステータス:完結済 タグ:短編集、童話、ファンタジー、寓話、短編、SS、女性主人公、男性主人公、ロボット、人形、植物 リンク:(別窓) 各話タイトル ジャンル pixiv ばらと王さま 童話 (別窓) お腹がペコペコペコペコだ 寓話 (別窓) 美しき人形 SF (別窓) 宇宙はブルーベリージャムよりも甘い 児童文学 (別窓) 機械仕掛けの太陽 ファンタジー (別窓) 花の女 寓話 (別窓) 夜空の瞳 星の涙 童話 (別窓) 狂ったお日さま SF (別窓) ばらの細工の銀時計 児童文学 (別窓) ぼくは大空へと旅立ちたい 一般 (別窓) たとえアナタがボクを愛さなくても 純愛 (別窓) 過ちの歴史 一般 (別窓) 物語の起源 童話 (別窓) 今夜のきみはぼくだけが知っている 一般 (別窓) コメント: 短編も多くなってきたので、まとめて登録させて頂きましたm(_ _)m 内容はごった煮の状態ですが、どうぞ宜しくお願い申し上げます。 ※当分長編に集中するため、1カ月ごとに更新する自信がありません。そういう事情から『完結済』タグを加えさせて頂きました。とは言いましても、今後も短編はアップしていこうと思っているので、そのときはどうか宜しくお願い申し上げます。
https://w.atwiki.jp/semavatarheroes/pages/333.html
つなぎ合わせた小さな牙 レア度 2 合成に使う素材アイテム 入手先 合成 TH モンスター海岸 つなぎ合わせた小さな牙を合成する 合成ランク1 小動物の牙×2+接着液×1 つなぎ合わせた小さな牙から合成する 合成ランク3 つなぎ合わせた小さな牙×1+つなぎ合わせた小さな骨×1+つなぎ合わせた小さな爪×1=マテリアルボーン ≪上半身≫ 合成ランク10 スパイダーシャツ(レッド)(ホワイト)(イエロー)(ブラック)(男性用) 情報お願いします 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/brutalanimal/pages/410.html
戦場の小さな恋 「ただいま~」 「おどぉおざぁ~ん!! おがぁざぁ~~ん!!」 戦場から無事、獣人居住区『家』に帰ってきた俺達狼型獣人部隊の家族は 少年が銀色に輝く灰色の髪を振り乱して泣き叫び、俺達のほうに走ってくる。 俺の方に抱きついてきた。 一体どうしたの、と妻が自分と同じ灰色の髪を撫でながら尋ねた。 「どうしたの? 英雄(ひでお)」 根室 英雄 (ねむろ ひでお) 俺、根室悠阿と 妻、大神鳴の 13番目の子供にして、初めての男の子。(5才)だ。 獣人は即戦力の為、一度に数人生まれ、人の3倍早く成熟するのだけど、 この子の場合1人で生まれ、人間として普通の人と同じ早さで成長していた。 息子より下の妹達はこの子より早く成長している。 (…今でもこの子が出来た日のことを思い出すと恥ずかしい…。) …話を戻してこのショタ息子の話を聞くことにしよう。 「冴子ちゃんがね…、怖かったの…。」 『冴子ちゃん(さえこ)』というのは虎型獣人部隊『虎島(こじま)』の娘さんだ。 狼型獣人部隊と同じくパワー型の獣人部隊で、 ヘリに取り付けるミニガンや、戦車砲等の兵器を歩兵として装備する為、 その火力をもって『鬼虎島』とまで言われる程だ。 そして『冴子ちゃん』もその虎型の獣人『虎島冴子』だ。 息子と同い年で、優しく、仲が良い。手を繋いで歩いているのを良く見かける。 でも息子を泣かすようなことをしたのは何故…? 俺は『冴子ちゃん』に何をされたのか尋ねた。 「『学校』の帰り、無理やり冴子ちゃんの家に連れていかれて……、」 しばらく間を空けた後、再び話す。 「冴子ちゃんに……、おちんちん舐められたの…、いつもの冴子ちゃんとは違って…、恐くなって…、逃げてきちゃったの…。」 俺の胸で泣く息子。おちんちん舐められた…って… とりあえず泣き止まないのでこのまま寝室の布団に連れて寝かせた。 次の日 我が家に客が訪れた。 インターホンが鳴ってドアを開ける。 出てきたのは、狼獣人と同じくらい体が大きく、金髪で色白の肌を持つ虎型獣人の母娘、そしてその父親だった。この人が虎型量産のパートナーみたいだ。 母娘、というよりは姉妹にも見えるが獣人というのは成長が早い。 この子が昨日言っていた冴子ちゃんだ。 「うちの娘がおたくの息子さんに迷惑かけたみたいで…。」 と父親が謝るように声を掛けた。 ここで話をするのもなんなので、 「とりあえず入ってください」 と言って、居間に案内することにする。 妻がお茶を出す。と同時に他の部屋に出て行ってしまった。 冴子ちゃんの父親が事を教えてくれた。 冴子ちゃんについて怒ってはいないけど、冴子ちゃんが怯えていたので 俺は優しく、冴子ちゃんにあんな事をしたのかと尋ねた。 うつむいていた冴子ちゃんが重い口を開く。 「好きだったから…、一緒になりたかったから…。 だから「ひでちゃん(英雄)」にお父さんとお母さんがシた時のようにおちんちんから……。」 と言って、冴子ちゃんが母親に抱きつき泣き始めた。 よしよし、と冴子ちゃんの頭を撫で、抱き返す母親。 一方父親は性の生活がばれ、恥ずかしそうにして、 とぼけるように横を向いた。 そう、か…。 息子の英雄が普通の人間と同じ早さで成長するのに対して、 冴子ちゃん達は獣人だから普通の人間の3倍早い。 息子にとっての5才は普通の人間と同じだが、 冴子ちゃんにとっての5才は15歳前後。 冴子ちゃんは…、息子を異性として、雄として見ていたのだ。 しかし、息子は第二次成長も、精通もしていない。 息子にとっていつもと違う冴子ちゃんの変わりようはさぞ恐ろしかったに違いない。 複雑な気持ちだった。 たぶん、冴子ちゃんに対する哀れみ。 大好きな異性に拒絶されたのだ。相当ショックだったろう。 俺と虎親子の4人はしばらく黙ったまま時が過ぎていったが、 部屋のドアが開いた。 灰色の髪と紫色の瞳の親子。 妻と息子だった。 2人が居間に入ってくる。 「ひでちゃん…」 「冴子ちゃん…」 涙でくしゃくしゃになった顔で息子と見、息子の名前を呟く冴子ちゃん。 気まずそうに冴子ちゃんの名前を呼ぶ息子。 一瞬目が合い、冴子ちゃんから視線を逸らす。 と、妻が息子の背中を叩いた。息子を見た後、 「冴子ちゃんの所に行け」と、顎で合図した。 息子は小さく頷くと、冴子ちゃんの所へ歩いて行く。 「ひでちゃん…。」 冴子ちゃんが抱きついていた母親から離れる。 そして、 ヒシッ…… 息子が…、その小さい体で大きい体の冴子ちゃんに抱きついた。 「ひでちゃん…?」 抱きつかれて驚く冴子ちゃん。 息子が口を開く。 「…よくわからないけど…、僕も冴子ちゃんが好きだから。」 と囁いて、冴子ちゃんの大きい胸に顔を埋めた。 「大好き…!ひでちゃん…。」 二人はしばらく抱き合った。 好きと言っても、 英語で言えば、likeとloveくらい違っていたけど…。 冴子ちゃんの母親はにっこり笑い、俺と妻に 「今日一日、大神さんのところで泊めてもらっていいかしら?」 「ええ。」 俺が返事をするより前に妻が頭を縦に振り、了承した。 そして、冴子ちゃんの両親は帰っていった。 夜、姉妹が増えたかのように娘達は冴子ちゃんを歓迎した。 食事を手伝い、娘達と風呂に入り、息子と一緒の布団で抱き合いながら眠った。 次の日 上司から連絡があった。 息子の英雄を、本国に送るという。 俺の両親、つまり息子の祖父母に預けるらしい。 理由は 来年から小学校に上がらせるから。 息子自身は人間なので、戦場にいるわけにはいかない、という。 大好きな冴子ちゃんと離れるのは可愛そうかもしれないが、 俺自身から思って、そのほうがいいのかもしれない。 案の定、息子は泣き喚いて嫌がり、その日疲れて眠るまで暴れた。 一週間後、軍の飛行場で息子の服等身近にあるものを持たせて飛行機に乗る準備をしていた。 「おじいちゃんとおばあちゃんによろしくね」 「うん…」 軍用の飛行機が到着し、いざ向かおうとしたその時、 一人の虎型獣人の女の子がこちらに駆けて来た。 「ひでちゃん!」 「冴子ちゃん…。」 息子に抱きつき、 ンッ ムグッ 冴子ちゃんは息子に口付けした。ただのキスでは無い。 舌を息子の口内に侵入させていた。 二人の唇と頬が妖しく動く。 しばらくのディープキスの後、冴子ちゃんが言う。 「ひでちゃん、待ってるから。成長するのも、ここに帰ってくるのも、私も生き残るから。」 「うん!」 息子は元気に頷き、別れの挨拶をして、軍用機に乗り、本国に行ってしまった。 獣人である冴子ちゃんはあと1~2年で成長が一度止まり、戦場にも出るようになる。 いつか息子も冴子ちゃんに追いつくだろう。 俺は息子がどのように成長していくのか想像しながら、戦いの日常に戻っていった。 終わり。
https://w.atwiki.jp/semavatarheroes/pages/335.html
つなぎ合わせた小さな骨 レア度 2 合成に使う素材アイテム 入手先 合成 TH モンスター海岸 つなぎ合わせた小さな骨を合成する 合成ランク1 小動物の骨×2+接着液×1 つなぎ合わせた小さな骨から合成する 合成ランク3 つなぎ合わせた小さな骨×1+つなぎ合わせた小さな牙×1+つなぎ合わせた小さな爪×1=マテリアルボーン ≪上半身≫ 合成ランク10 スパイダードレス(グレー)(女性用) ≪靴≫ 合成ランク1 ストラップサンダル(男性用) 合成ランク3 ストラップサンダル(男性用)(ライカンの足爪入り) 情報お願いします 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/yuina/pages/433.html
大陸南部、中央都市リエステール。 中央都市の名に恥じず、その大きさは南側の街で最大規模を誇っているのは この世界に住むものなら誰でも知っている筈。 その街に建つ、何処にでもありそうな小さな料理店の店長の話をしよう。 何、暇を潰すには一番言い話しだと思うのだが…? 今から私が語るのは日常を彩る歯車達。 即ち、街の住民達の話しだ。 今は静かに、口を閉じて聞いてもらえるとありがたい― 中央都市、リエステール。 その街には沢山の店が建ち、皆それぞれの仕事を持っている。 その沢山の店の中で、一店だけ名前を持たない料理店がある。 店で働いている店員の姿も少なく、店自体それほど大きくない。 立地条件が悪かったのかどうかまでは分からないが訪れる客は指で数えられる程の少数。 「…………。」 カウンターテーブルに座り、顔を机に突っ伏しているのは紛れもないこの店の店長。 営業時間のほとんどは寝ているため、従業員も余り話したことが無いのだと言う。 店長がこんなのでいいのだろうか…。 訪れる客、そして働く従業員の少数がそのようなことを思っている。 彼女が朝から寝てしまう理由… 朝の仕込みをやっているからとか、夜更かしして本を読んでるからではないかと 従業員達は口々に言うが、実際それは本人に聞かないとわからないことで。 一度、それを店長へ言おうとした従業員がいたのだが… 答えは聞き出せないまま、店長は再び眠り込んでしまったという。 普段なら、眠っている彼女だが今日は珍しく起きていた。 だが仕事は一切せず、文字の羅列に目を通していく。 その分厚い本にはリエステール中央図書館のエンブレムシールが張られていた気がする。 集中力が途切れたのか、目が疲れてしまったのか。 文字の羅列から目を離すと、静かに本を閉じた。 「…やれやれ。」 それだけと呟き、厨房の中へと入る店長。 「スティロ店長、コーヒーですか?」 「うん。どうも…。」 マグカップに入った黒い液体をすすりながら、彼女はまたカウンターテーブルについた。 また本でも読むのかと思えば、本には人触れもせず目を細めてとある客を凝視している。 その客は、周りをキョロキョロと見回し何かを待っているような感じだった。 給仕人達が厨房へ注文された料理を伝えにいく。 それと同時にその男は行動を開始した。 「…お待ちください。」 端的な言葉が聞こえてきた、男性客は全身をこわばらせた。 声をした方向へ顔を向けると、そこには眼を冷たく輝かせる店長の姿があった。 「な、なんだよ。お前」 「代金を、お支払いください。」 ぼそりとした声だったが、はっきりとした意思を持っていた。 目の前の女性に気圧され、男性客はいつも食い逃げをするように、 腰のポケットから折りたたみナイフを取り出し、派手な音を立てて抜き放つ。 「お、大人しくしろなぁに、騒がなきゃ何もしねぇよ。 死にたくないんならとっととそこから退きな。」 使い慣れていない脅し文句。 そんな彼を見て、何を思ったのかスティロは何のためらいもなく男性客へと歩み寄った。 「さ、騒ぐんじゃ…」 慌てた男性客は、脅しのつもりでナイフを下から突き上げた。 「……騒いでいるのは、君。」 呟きながら拳を握った両手をクロスしそのまま覆いかぶさるようにして下へと突きおろす。 「なっ」 ナイフを握った相手の手は、交差したスティロの手首に止められる。 そして流れるような動きで、いつの間にか握られていた男の手首は、 彼女の方へ引き寄せられ入れ替わるように、彼女の体自体が男の後ろへと回り込んだ。 「あれ?」 逆らえば、折れる。 「あ、がががっ!」 気がつけば、後ろに立たれて腕をひね上げられている。 ナイフが床に落ち、店長は何事もなかったように片手でナイフをたたみポケットへしまいこむ。 「…折れるよ。」 「るせぇ!放しやがれぇ!!」 そう叫んだ瞬間、嫌な音が店内に響き渡った。 少人数の従業員といつも寝ている店長の料理店から食い逃げすることは容易いとでも考えていたのだろうか? あまり知られていないが、数々の食い逃げ事件を未遂で終りにしており一度も食い逃げされたことが無いという。 それでもこんな奴が来るのは何故か? それは、何処からどう見てもこの店はそういった人物達にとって食い逃げしやすい。 という印象を抱かれているからであろう。 「ハリーさん、自警団お願いできるかな?」 「にゃー。」 とことこと走っていく黒猫。 自警団という言葉に反応する男。 彼はすぐに立ち上がり、出入り口へと向かおうとしたのだが 店内の明かりが一斉に消えた。 「ふむ、ご協力感謝。」 暗闇が支配する店内。 聞こえてくるのは、静かに詠唱をする店長の声。 それもはっきりとではなくボソボソと呟いているので余計に怖い。 「如何なる賢者であれ、零れる砂は止められない。 君に用意された銀色の砂時計、残された砂はあとわずか…。 小さな棺の揺り籠で、目覚めぬ君を送ろう。」 「やめてくれぇぇぇぇえ!!」 男は暗闇の中で何を見たのか? それは彼自身と何かを呼び出した店長しか知らない。 足に力が入らなくなってしまった男は結局、ハリーさんが連れてきた自警団に連行された。 「スティロ店長、エルヴィオン姉妹が起こしになられてます。」 「スッティロー、久しぶりー。」 「相変わらず、小さいな。」 コーヒーをすすりながら、厨房へと引っ込んでいくスティロ。 食い逃げ目当ての連中がいない限り、今日も彼女の店は平和である。 「皆、お疲れさま。ウィル・オー・ウィスプも、明日に備えて休んでくださいな。」 ――― キャラ紹介 スティロ・チャック 性別:女 年齢:16歳 ジョブ:? 能力:? 武器: 支援士ランク:? 形見:- 所属:幽霊船 名前のない料理店 店長 所持能力 店長命令:店内に存在する悪魔、精霊、妖精全てに絶対命令を出せる。※店内限定 他、いくつかあるらしいが不明 詳細 リエステールにある小さな名前のない料理店の店長を務める少女。 普段は寝てばかりいて、食い逃げしやすい店だという印象をつくってしまった人物で 狙われるのは自分の責任だ、ということから自らの全能力を使って対象を容赦なく叩きのめす。 ハリー 性別:オス 年齢:不明 ジョブ:- 能力:- 武器:己の牙と爪 支援士ランク:- 形見:- 所属:名前のない料理店 所持能力 人語の理解:人が何を言っているか理解できる。 詳細 リエステールにある小さな名前のない料理店の店長が、 支援士として活躍していた頃、馬車にひき逃げされた所を助けられる。 人語を理解する賢い猫で今では、店の看板猫として活躍中。
https://w.atwiki.jp/bsr_e/pages/2898.html
小さな少女に突然押し倒され、幸村は畳に背をつけたが、それきり二人の動きは止まってしまう。 衝動的に押し倒してみたものの、いつきも何をして良いのか分からないのだ。 だけど、彼から離れようとは思わなかった。ここで離れたら、何も伝えられぬまま終わる。 「いつき殿…どうされた?」 いつきの小さな身体を払いのけることなど、幸村にとっては簡単なことのはずだ。 それなのに幸村は、いつきの予想外の行動に目をまるくするばかりで、抵抗する様子はない。 いつきも何をすればいいか分からないが、幸村もどう反応していいか分からないのだ。 もしいつきが大人の女性だったら、身を寄せることをきっぱりと拒否されたかもしれないが。 ならば、先に心を決めたほうが、この場を制することができる。でも何を決めるというのだろう?いつきの頭が次第に混乱してきた。とにかく今、幸村の顔が近い。 初めて見た時から今まで積み重なっていた幸村に対する思いが、いつきの中で弾ける音がした。 村の仲の良い夫婦が、いつかこうしていたのを見てしまった時のことを思い出しながら、いつきは近付いた幸村の顔に自分の顔をさらに近付け、震える唇同士をそっと合わせてみた。 「…っ……!」 技巧以前の、ただ唇をくっつけるだけの行為。 いつきの唇よりも大きくてかさついた幸村のそれの感触に、想像していたよりも心が満たされる。 だが、それ以上はどうすれば良いのか知らないいつきは、長く口付け続けることも出来ずにやがてそっと唇を離した。幸村は黙っている。その重苦しい沈黙が、少し怖い。 怒られるだろうかと、おそるおそる幸村の顔を見たが、幸村は真っ赤になって呆然としていた。 生まれて初めて口付けというものをしてしまい、いつきの心臓も早鐘のように高鳴っていたが、幸村のほうはそれ以上に動揺しているように見える。 誰だって、いきなりこんな事をされたら普通は驚くだろう。だがそれにしても。 「……なあ、もしかして…幸村、おらが初めてか?」 「なっ…なななななぜ、そのようなことを!」 「だって幸村、おらよりもびっくりしてるべ?」 「そそそそそそそのようなこと、そなたには関係なかろう!!?」 可哀想なほど取り乱している幸村が、声を荒げれば荒げるほど、いつきの心は落ち着いていく。 確かに、仕えている忍や他の武将たちからも、うるさいだの子供っぽいだのと言われていたが、いつきから見れば、それでも充分大人の男なのに。 幸村も知らないのだと分かると、いつきの中に不思議と勇気が湧いてきた。 そうだ、幸村だってよく知らないのだから、間違えたって呆れられることは無い。 しあわせのみち7
https://w.atwiki.jp/tesu002/pages/5038.html
唯「よっしゃー! これで完璧なはずだよ、えいしゃおらぁー!!」ガチャコン! 梓「……もう、何も言うまいですよ」 律「梓もこれで一歩、真の軽音部に近づいたわけだ。喜べ」 梓「何ですか、真のって…。 そんなの近づきたくありませんよ。それじゃ、電源付けますよ」ポチッ 唯「あれれー?あずにゃん、今度は青一色だよ」 律「うーん、おっかしいな。 本体も逆さにしてみるか?」 唯「なるほど! 了解だよ、律っちゃん、私に任せて!」グイッ 梓「………せいっ!」ブン スパコーン! 唯「はふぅん! な、なに…あずにゃん。上靴で叩かないでよぉ」 律「またさらに一歩…。末恐ろしい部員だぜ」 梓「いちいちツッコんでたらキリがないんで。 とにかく逆さに振るのはダメです。今度こそ壊れちゃうでしょ」 唯「えー。でもそれじゃどうすればいいのさ、あずにゃん」 梓「…あ、そだそだ」ポンッ 律「ん? どうしたんだ梓。何か閃いたのか」 梓「いえ、閃いたっていうか。 純のウチでやってた時に、カセットに息をフーフーしてたような気が…」 唯「フーフー? おかしな佐々木さんだね。 カセットにフーフーしなくても別に熱くないのに」 梓「鈴木ですよ。いや…でも今思えば、あの息をフーフーって…」 律「そ、そうか!? そうだよ梓! 佐々木の方法を使えばいいんだよ!」 梓「鈴木ですよ! まさか、純の方法って、カセットに息を吹きかける事により…」 律「あぁ、そのまさかだ! 息を吹きかける事により…」 唯「…え? どうしたのさ二人とも!?」 律・梓「口から噴出す風圧で、 本体に触れることなく接続部のホコリを取り除けるんだ(です)よっ!!」 唯「な、なんてだい!? そうだよ、それなら本体もカセットも振動を与えて壊す恐れがないよ!」 梓「いやいや…、純に助けられたよ。 まさか、あの無意味に思える行動にも重要な意味があるなんて」 律「あぁ、まったくだぜ。 でも、その些細な行動をしっかり記憶していた梓もたいしたもんだ」 梓「ふふっ、おだてても何も出ませんよ」 律「私は本当の事を言ったまでさ…」 唯「な、なんだかズルイよ! 私も褒めてよ律っちゃん! んじゃ私がこの本体にフー…」 サッ! 梓「……なんだか嫌な予感がするので私がやります」 唯「ぶーぶー。あずにゃんの才能に嫉妬しちゃうよ!」 梓「なんの才能ですか…。それじゃいきますね…せーのーっと」スーーッ… フーフー 律「よし、それじゃスイッチを入れるぜ。覚悟はいいか二人とも…」 唯「うん。任せたよ律っちゃん、これできっと映るはずだよ!」 律「よいっしょっと…!」ポチッ ブォォォォォン……! 梓「あ、凄い。本当に映りましたね。……あれ?」 唯「凄いよあずにゃん! カラーだよ、色がいっぱい付いてるよ! カラー一杯だよ……、でも。 …なんの統一性もなくメチャクチャに並んでるだけにしか見えなくて、 目がチカチカするよぉぉぉ!!?」ゴロゴロゴロ! 梓「ちょっと、映っただけで、 どれだけテンション上がってるんですか!? 落ち着いて下さいよ!」 律「うーん…。映ったはいいけど、どう見てもゲームが出来るような画面じゃないよな」 梓「そうですね。私が見たのはもっと綺麗で、タイトル画面が表示されてたんですよ」 唯「目がぁぁ! 目がチカチカするよぅ!」ゴロゴロ 梓「うーん…、でも一応、 画面が映ったんだから前進はしてるんですよね」 律「そうだな。吹き込みが足りなくて、 まだ端子にホコリが残ってるのかもしれないな」 唯「ふ……ふふ…。そ、そういう事なんだ…ね。ぜぇ…ぜぇ…」フラフラ 梓「少しは落ち着きましたか? 唯センパイ、ほらお茶でも飲んで下さいよ」サッ 唯「ありがとうあずにゃん…! でも、その原因はあずにゃんだったんだよ…ゴギュゴギュ」 梓「わ、わたしですか…? どういう事なんですか」 唯「あずにゃんのその小さな身体じゃ…ゴギュゴ……ブッパンー!!」ビチャチャ 梓「あ、コラっ!! 飲みながら喋るからそうなるんですよ、もうっ!!」 律「ヤバイ、ファミコンに掛かったら一発で壊れちまうぜ! 梓、はやく雑巾とか拭くものを!」 梓「は、はいぃぃ!」ダッ 唯「ゲッポ…ゲッポン…。 あずにゃんや…、モノを飲みながら喋ると危ないね」フキフキ 梓「知ってますよ! それで、さっきは何を言いかけたんですか」フキフキ 唯「そうそう、それだよ! あずにゃんの小さな身体じゃきっと肺活量が足りなかったんだよ!」 律「なるほど、それは一理あるかもな。 小さい風圧でいくら長い間吹きかけても、取れないホコリはあるもんな」 梓「だったら……、一気に全てを吹き飛ばすほどの風圧が必要って事ですか」 唯「そう! その通りなんだよ! あずにゃんはついてるねぇ、 ここにはあずにゃんのより年上のセンパイがいるんだから!」グイッ 梓「まぁ、それは否定できませんね…。 中身はともかく、外見なら唯センパイの方が大きいですから」 唯「そういう事なんだよ! というわけで次は私が吹くよ。いいよね律っちゃん!」ビッ 律「ん? いいぜ、私と唯は年齢一緒だし、どっちがやって同じだよ」 唯「よーしぃ! それじゃ二人とも待っててね! 準備してくるからさ!!」ダッ バッタン! タッタッタッタッタ…… 梓「え!? あ、ちょっと。どこ行くんですか唯センパイ!!」 律「さてさて、んじゃちょっと休憩でもするか。飴食うか? 飴」 梓「な、なんなんですかその落ち着きようは…? どっか行っちゃいましたよ唯先輩!」 律「まー、別に今に始まった事じゃないからなぁ。お前もいずれ慣れるさ」 梓「慣れたくないですよ…。ま、別にそんな唯も嫌いじゃないけどけど……」 律「だったら大丈夫だ。 あれだけ振り回されてそんな事言えるんなら、また一歩近づいたわけだ」 梓「真の軽音部ですか…? 完全に私の理解の範疇を超えてますよ」 律「いずれ分かるさ…。ほら、飴食え、飴」ヒョイ 梓「まったくもう…」モシャモシャ 4